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1958-03-11 第28回国会 衆議院 法務委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年三月十一日(火曜日)     午前十時五十四分開議  出席委員    委員長 町村 金五君    理事 高橋 禎一君 理事 林   博君    理事 福井 盛太君 理事 三田村武夫君    理事 横井 太郎君 理事 青野 武一君    理事 菊地養之輔君       小島 徹三君    小林かなえ君       世耕 弘一君    徳安 實藏君       古島 義英君    横川 重次君       田中幾三郎君  出席政府委員         法務政務次官  横川 信夫君         検     事         (大臣官房調査         課長)     位野木益雄君  委員外出席者         判     事         (最高裁判所事         務総局総務局         長)      關根 小郷君         判     事         (最高裁判所事         務総局総務局総         務課長)    海部 安昌君         判     事         (最高裁判所事         務総局人事局         長)      鈴木 忠一君         専  門  員 小木 貞一君     ————————————— 三月七日  委員田中幾三郎辞任につき、その補欠として  上林與市郎君が議長指名委員選任された。 同月十一日  委員上林與市郎辞任につき、その補欠として  田中幾三郎君が議長指名委員選任された。 同日  理事猪俣浩三辞任につき、その補欠として青  野武一君が理事に当選した。     ————————————— 三月六日  訴訟費用等臨時措置法の一部を改正する法律の  一部を改正する法律案内閣提出第一二四号) 同月十日  悪質泥酔者犯罪に対する監護矯正法制定に関  する請願(中村高一君紹介)(第一六一六号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  理事の互選  小委員会設置に関する件  裁判所職員定員法の一部を改正する法律案(内  閣提出第八一号)  裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する  法律案内閣提出第一一二号)  検察官俸給等に関する法律の一部を改正する  法律案内閣提出第一一三号)  訴訟費用等臨時措置法の一部を改正する法律の  一部を改正する法律案内閣提出第一二四号)      ————◇—————
  2. 町村金五

    町村委員長 これより会議を開きます。  この際お諮りいたします。理事猪俣浩三君より理事辞任の申し出がありますので、これを許可いたしたいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 町村金五

    町村委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたしました。  なお、補欠選任を先例によりまして委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 町村金五

    町村委員長 御異議なしと認め、理事青野武一君を御指名申し上げます。     —————————————
  5. 町村金五

    町村委員長 次に、小委員会設置についてお諮りいたします。交通犯罪に関する調査小委員会を設置することに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 町村金五

    町村委員長 御異議なければ、さよう決定いたします。  なお、ただいま設置いたしました小委員会の小委員及び小委員長選任につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 町村金五

    町村委員長 御異議なければ、さよう決定いたします。     —————————————
  8. 町村金五

    町村委員長 次に、裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する法律案検察官俸給等に関する法律の一部を改正する法律案訴訟費用等臨時措置法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案、以上三案を一括議題とし、提案理由説明を聴取いたします。横川法務政務次官。     —————————————
  9. 横川信夫

    横川政府委員 裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する法律案及び検察官俸給等に関する法律の一部を改正する法律案について、その趣旨を便宜一括して御説明申し上げます。  この両法律案は、最高裁判所長官最高裁判所判事及び高等裁判所長官並びに検事総長次長検事及び検事長報酬または俸給の各月額を増額しようとするものであります。御承知通り、これらの裁判官及び検察官以外の裁判官及び検察官報酬または俸給は、一般政府職員俸給に準じて昭和二十三年六月以降数回にわたり増額されたのでありますが、右に述べました最高裁判所長官及び検事総長等裁判官及び検察官報酬または俸給は、内閣総理大臣等の他の特別職職員俸給に準じて定められております関係上、これらの職員俸給と同様にしばしばその増額が見送られたまま現在に至っております結果、他の裁判官及び検察官並びに一般政府職員報酬または俸給に比較して著しく均衡を失しているのであります。今回政府におきましては他の特別職職員給与一般政府職員給与との権衡等を考慮して改訂することとし、別に特別職職員給与に関する法律等の一部を改正する法律案を今国会に提出いたしましたことは御承知通りでありますが、この改訂の趣旨にかんがみ、この際、前に述べました最高裁判所長官及び検事総長等裁判官及び検察官報酬または俸給についても、これを改訂するのが相当と考えられるのであります。そこで、最高裁判所長官報酬月額を十五万円に、最高裁判所判事及び検事総長報酬または俸給格月額を十二万円に、東京高等裁判所長官報酬月額を十万円に、その他の高等裁判所長官及び東京高等検察庁検事長報酬または俸給の各月額を九万五千円に、次長検事及び東京高等検察庁検事長以外の検事長俸給の各月額を九万円にそれぞれ増額することといたしたのであります。  以上がこの両法律案趣旨でございます。  何とぞ慎重御審議の上すみやかに御可決下さいますようお願い申し上げます。  次に、訴訟費用等臨時措置法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明いたします。  執行吏は、御承知通り一般公務員に準じて恩給を受けることになっており、その年額は、執行吏手数料に対する国庫補助基準額、すなわち執行吏の一年間に収入した手数料がその額に達しないときに国庫から不足額を支給するための基準になっている金額俸給年額とみなして算定することになっているのでありまして、この国庫補助基準額は、一般公務員給与水準に応じて定められているのであります。ところで、このたび政府におきましては、老齢の退職公務員等の処遇の改善をはかるため、昭和二十八年十二月三十一日以前に給与事由の生じた一般公務員恩給について、その計算の基礎となる俸給年額を従来の一万二千八百二十円の給与水準による金額から一万五千四百八十三円の給与水準による金額に増額する等所要の措置を講ずることとし、そのために必要な法律案を今国会に別途提出いたしましたことは、御承知通りであります。そこで、執行吏恩給につきましても、これと歩調を合せる必要がありますので、この法律案では、昭和二十八年十二月三十一日以前に給与事由の生じた執行吏恩給について、その年額を、一般公務員の場合と同様に、一万五千四百八十三円の給与水準による国庫補助基準額である十二万五千円を俸給年額とみなして算出した額に増額することとしたほか、一般公務員恩給の場合と同趣旨措置を講ずることといたしました。  以上が訴訟費用等臨時措置法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案趣旨であります。何とぞ慎重御審議の上すみやかに御可決下さいますようお願い申し上げます。
  10. 町村金五

    町村委員長 以上で提案理由説明は終りました。  ただいま提案理由説明を聴取いたしました三案及び裁判所職員定員法の一部を改正する法律案の四案を一括議題として質疑を行います。  質疑の通告がありますから、これを許します。三田村武夫君。
  11. 三田村武夫

    三田委員 ただいま議題になりました法案について、二、三の点に関しお尋ねしておきたいと思いますが、まず、裁判所職員定員法の一部を改正する法律案について、問題を具体的にして一々項目に分けてお尋ねいたします。  判事補を二十名増員するということになっておりますが、第二十六国会で改正された判事補職権特例等に関する法律によって、地裁家裁判事補が現在何名くらい高裁陪席判事になっているか、それが第一点です。  第二点は、現在地裁家裁判事補が十九名欠員になっているが、どういう理由か、どういう理由欠員のままでこうなっておるか。  第三点といたしまして、判事補欠員十九名と今回の判事補増員二十名の供給源についてどういうふうなお考えを持っているか。  高裁地裁家裁判事が現在五十六名欠員になっているが、どういう理由欠員になっているか。その充当計画があったらこの点についても具体的な御説明を願いたい。  その次に、最高裁高裁事務局司法行政事務に従事している判事判事補は現在何名くらいいるのか、これらの判事判事補のやっている仕事一般事務官にやらせてできない仕事か、裁判官つまり判事及び判事補でなければやれない仕事かということ。たとえば、人事とか経理とか総務課仕事、こういうことは必ずしも判事判事補でなくてもいいのじゃないかという意見もあるのであります。先般来ずっと問題になっております一審の強化充実をはかるという観点から見ますならば、優秀な裁判官第一線裁判に活用できさる判事方々は、その第一審強化の方に回した方がいいのじゃないかという意見が当委員会で強く出ている。こういう点についても当局の御見解を伺いたい。  それから、判事補増員についての予算措置はどうなっておるか。  大体以上の点について具体的な御説明を願いたいと思います。
  12. 關根小郷

    關根最高裁判所説明員 ただいま三田委員からお問いの点でありますが、順に従いましてお答えいたしたいと思います。  昨年判事補のうち職権特例のついている、すなわち五年を経過いたしました判事補は特に高等裁判所左陪席判事に採用できるという法律が出まして、その結果現在どういう状況かということがまず第一かと思いますが、その法律施行後におきまして職権特例判事補高等裁判所に入っております数が現在十八名ございます。今後の人事の問題といたしまして、まだふえていくのではないかと考えられております。  その次に、現在判事補欠員が十九名あるが、そのわけはどうか。この欠員判事補が十年たちますと特別の事情がない限りは判事に任官いたしますので、その意味判事補の数が減って参ります。それからまた、判事補のうちに十年たたない間に退官して弁護士になる方もいる、そういったいろいろな事情から欠員が出てくる場合があるわけでございまして、現在約十九名欠員があるわけでございます。  それから、第三番としてのお問いですが、判事補欠員十九名と今度の今提案になっております改正案がもし通りますれば合せて三十九名ということになりますが、この供給源についてのお問いにつきましては、これは、毎年司法修習生約五十名以上の者が判事補に任官いたすことに相なりますので、そこからとる。それから、もう一つは、弁護士検察官の中から希望をつのりまして判事補になっていただく。これはあまりたくさんな数ではございませんがそういったところから供給してもらうということに相なっているかと思います。  その次のお問いの、現在の判事欠員状況はどうか。これは、お手元に資料を差し上げてございますが、大体現在五十六名あることになっておりますが、この欠員状況は、昨年以来行われました十年たちまして再任されるかどうかという問題におきまして、その結果約七十名以上の者が再任されないことになり、従って判事になれない、そういうところもございまして、現在五十名以上の欠員があるわけでございます。これも今後判事補の十年たちました者のうちから判事に任官いたしますし、あるいはまた検察官なり弁護士の方から判事になっていただくということで補充していくことに相なるかと思います。  その次のお問いで、判事身分あるいは判事補身分のままで最高裁判所などに勤めて行政事務をやっている者の数。これは、判事の数が大体二十名、詳しく申し上げますと二十一名、これは最高裁判所だけでございます。それから判事補が二十名、約四十名人っております。それから高裁事務局には局長として判事及び判事補合せまして八名、大体五十名近くの者が司法行政事務を担当しておるわけでございます。それは、お話のように、第一審の裁判充実という点から申しまして、できることなら避けまして、実際の裁判事務を担当すべきことはもとよりでございますが、何と申しましても、司法の独立という点から申しまして、司法行政裁判所で担当せざるを得ないことになっておりますので、その司法行政をいた、しますのには、どうしても裁判官資格のある者でないと運用がなかなかう、まくいかないわけでございまして、やむを得ざる事態としてそういう事態が出ているわけでございます。特に、お問いの中に、それでも経理とか会計のこと、それから人事のこと、一般総務のことなどは事務管からも採用してもいいのではないかというお問い、これももっともな点で、そうあれば一番いいのじゃないかと思いますが、何分にも、お話のように、最高裁判所及び高等裁判所行政につきましては、かなりの数の判事判事補が入っておりますけれども、これは、御承知の憲法の七十七条に基きまする規則制定権、そういった何と申しますか案を作らざるを得ない、それからまた経理などにいたしましても、特殊の法廷の設備の仕組みなどにつきましてはやはり裁判官資格のある人が必要です。それから、人事につきましても、裁判官人事の案を事務当局で一応の案として考えるというようなことになりますると、どうしても裁判官資格のある人を必要とするというところから、やむを得ざることとして現在の事態になっておるわけでございます。  次に、判事補の二十名の増員予算措置でございますか、これは非常に大まかに申し上げまして約千二百万円認められたわけでございます。これも御審議いただいたわけでございます。以上でございます。
  13. 三田村武夫

    三田委員 ただいまの關根総務局長の御説明で大体わかりましたが、重ねて一、二点今の問題についてお尋ねをいたしておきます。  現在地裁家裁判事補が十九名欠員になっておる。その理由は御説明でわかりました。今度の判事補の二十名の増員ですが、そうすると、合せて三十九名になる。欠員を補ってなおかつ二十名の増員ですから、三十九名になるのでありますが、それは大体司法研修生を毎年五十名ずつ採用していってその中から補っていくというような御説明でありました。従来しばしばこの委員会で問題になったのですが、欠員をどうするか、定員は十分満たされていないじゃないかという質問に対しては、それぞれそのときどきの御説明、御答弁はあります。しかし、どうもわれわれとして納得のいかないことは、形式の上だけの定員、これは増しても意味はないと思うのです。端的に出しますならば、十九名の欠員をまず満たしてかかること。十九名の欠員はなかなか満たされない、その上に法的処置として二十名増員する、それでは私は意味はないと思うのです。法曹一元化という問題が出ても、弁護士側から判事あるいは判事補にきてくれる人はない。われわれが現地に行って現地の人々の意見を聞いても、そういう意見が強いのです。この点については、私はやはりよほど真剣に考えていただきたい。もとより現在の判事補が足りないことはよく承知しておりますから、今回の措置、二十名増員に別段私は異論をさしはさむものではありませんが、十九名実際欠員があるところへ二十名増員せられる。この法律ができますと制度上三十九名の欠員ということになる、だから判事補司法研修生五十名の中からとると、こう關根さんはおっしゃいますけれども、一体とれるかどうか。実際問題としてそういう懸念があるのです。その点もう一度念を押しておきますが、どうですか、実情は。
  14. 關根小郷

    關根最高裁判所説明員 三田委員の今のお問い非常にごもっともなんですが、ことしは研修所を出まして判事補を志望する者が七十名をこえております。でありますから、二十名をふやしていただいても十分欠員の補充は可能であると思います。今後もそれ以上の判事補希望者が毎年出てくるのではないか。それは、研修所に入る研修生の数が次第にふえて参りますから、従って判事補希望者もその割に応じてふえていくのではないかという考えでございます。
  15. 三田村武夫

    三田委員 そうだと思いますが、実際問題として、ことし七十名の志望者がある、毎年五十名くらいある、そうしても、令すぐこの研修生の中から、ここに要求されている十九名の欠員、二十名の増員、合せて三十九名を満たし得ますか。今の研修生の中からすぐ判事補にできますか。
  16. 關根小郷

    關根最高裁判所説明員 それは三十九名でございますから、七十名以上になりますれば当然満たされることになろうかと思います。
  17. 三田村武夫

    三田委員 それではそのように了承いたしておきますが、私はまだ懸念があるのです。これは、司法研修生になっても、どうも一年や二年研修しただけですぐいきなり判事補になって裁判に加われるかどうかということになると、ちょっと疑問がありまして、やはり相当の期間研修をして法律上の研さんも重ね、また事務上の修練も重ねてその地位につくのであって、ことし希望者がよけいあるからといって、その七十人の中から判事補にすぐとれるということは私にはちょっと納得ができませんが、それはそのままに承わっておきます。  次に、五十六名の欠員ですが、現在高裁地裁家裁判事の五十六名欠員理由として、昨年の十月でしたか、再任せざる者が七十名もあった、そういうことも理由になって欠員が多くなったのだ、また途中で弁護士にかわっていく者もあるのだ、こういうお話であります。しかし、ここに現在高裁地裁家裁判事が五十六名欠員になって、それから判事補を三十九名ふやさなければならぬ、こうなると、だいぶたくさん要るわけですが、その説明なり計画のもとに予算措置をしておるのですが、予算措置だけはしても、実際の人員が充足されないと意味がないのです、だから、五十六名の判事欠員をどうやって埋めていかれるか。この問題の答えの一つとして、その次にお尋ねした今の高裁最高裁あたり事務局司法行政をやっておられる判事判事補の有資格者の中から回したらどうかということが当然出てくる。これは今の關根局長お話によりましても、大体高裁で八名、最高裁で四十一名ですか、判事判事補を加えてあるわけなんです。そうすると約五十名くらいある。これは、關根局長の御説明によれば、裁判所には規則制定権があるのだ、だから単なる事務官じゃ工合が悪いので、やはり判事判事補資格を持った者が必要だ、こういうお話。それもわかるのですが、しかし、規則制定権というものは最高裁全体の司法行政事務であって、これは最高裁の部ないしは課に勤めている人の独断専議できまるものじゃないのです。これは全く行政事務でして、ここでいろいろな準備をされる。この規則制定に当っては、こういう資料も要るんだ、こういう意見もあるんだ、こういうことは必ずしも私は判事さんでなくてもいいんじゃないか。そして、ここでできた資料に基いて裁判官会議なら裁判官会議規則制定されるのでして、最高裁規則制定権を持っているから、判事判事補資格のある者が職員としてその部局の事務をとらなければならぬという理屈はちょっとうなずけないのです。できるだけこういう人は、実際裁判の促進という点から言えば、最高裁もさることながら、第一審の方が重要なんです。判事が足らない、判事補が足らないということの方が重要なんです。だから、その点は、ことに最高裁高裁あたり練達たんのうな経験の深い司法官、判事さんがたくさんおられるのですから、私は、若い事務官を十分訓練され、指導されても、こういう司法行政事務にはそう事欠かないのじゃないかという気がするのです。今までのしきたりとか伝統がありましょうが、この点はもう一歩一つ踏み切ってお考えになるわけにいきませんか。実際われわれはこの法案をここで審議するに当りましても、説明だけ聞きますと、判事補を二十名ふやすんだということですが、現在欠員が十九名ある。事実この法案が成立すると判事補で三十九名の欠員考えられて、同時に高裁地裁家裁で現在すでに五十六名の欠員がある。これをどうやって補っていくか。司法研修生が毎年ふえてくるから、それで補うという御答弁はきわめて事務的でして、もっと現実に即したお考えを願いたい。全部はこれで補えませんが、最高裁高裁司法事務を担当しているその中に判事判事補資格を持った人が四十九名ある。約五十名ということでありますと、とりあえずその全部を持っていかなくても、判事欠員五十六名のその大半はこれによって充足されるということが言えるのです。そうして、逆に、司法研修生の中から、そういう司法事務に将来大いに熱情も持ち、また勉学心も非常に旺盛な人をこういう事務に携わらせる、やがてそれが第一線に出てくるような、そういう修練準備もする、実際毎日々々裁判所事務をとらせながらそういう訓練をするということも、私は将来の裁判構造のために非常にいいことじゃないかと思うのですが、その点いかがですか。今のひとり人事経理というだけでなしに、そういった高裁及び最高裁の中にその司法行政事務をやっておられる非常に優秀な判事判事補、これを何とか一つ大いに勇気を持って第一線に回して、第一線のほんとうに痛い欠員を補てんしていくというお考えはありませんか。
  18. 關根小郷

    關根最高裁判所説明員 今三田委員のお説の通り、もちろんできる限り、事務当局と申しますか、司法行政を担当しております者を一線に回すことが理想であり、できる限りわれわれとしても裁判事務に直接タッチしていかなければいかぬという考えを持っておりまして、今お話しのように現在でも司法行政事務担当者を少くしつつありまして、たとえば兼務している課長なども相当おります。それから、たとえて申し上げますと、最高裁判所に勤めておりました若い判事補方々は、ほとんど東京などに転任せず、北海道——最高裁北海道が直接結び着いているような最近の状況でございまして、お話のように、なるべく事務当局に勤めております判事判事補を少くしようという努力を重ねております。それにかえまして、お話のように、資格者じゃない事務官を養成していくべきじゃないか、これもある程度ごもっともだと思います。しかも、人事それから経理などにおきましては、御説のように、仕事たんのう事務官が出ますれば課長に昇進していくことも考えていいのじゃないか、こう考えております。
  19. 三田村武夫

    三田委員 これも私十分納得はできませんけれども、一応了承いたしておきます。  次に移りまして、今度常勤職員四十四名を定員化するという措置がとられておるようでございますが、このことについて二、三点お尋ねいたしたいのです。現在裁判所には常勤職員が何名ぐらいおるのですか。どういう仕事をしておるのか、その人数と職務種類別にわかっておったらちょっと御説明願います。
  20. 關根小郷

    關根最高裁判所説明員 大体のところを申し上げますと、現在裁判所常勤労務者は二百五名ございます。その内訳いかんというお問いでございますが、一番多いのは、いろいろな雑務を行う用人でございます。そのほか、統計を集計する仕事を担当しております、統計集計員と言っておりますが、これが十三名ばかりいます。そのほか看護婦、これは家庭裁判所医務室でございます。それから法廷警備員、これは法廷の秩序を保つために必要な要員でございます。それから交通事件職員、これは刑事の面でございますが、現在非常に交通事件がふえておりまして、交通裁判所と申しますか、隅田にございますが、そういったところで特に非常に多忙をきわめております関係から、約四十五名。大体こまかに申し上げればそういった種類の人々でございます。
  21. 三田村武夫

    三田委員 これは現在の扱いは大体ニカ月で更新しているようですね。常勤というけれども実際の扱いは非常勤だな。毎日出ることは出るのですね。どういうわけですか、二ヵ月ずつに切って更新しておられるのは。同じ常勤職員なら三カ月ずつに切らなくてもいいような気がするのですが、何か特別の理由があるのですか。これは予算の裏づけはあるのでしょう。予算の裏づけがあるにかかわらず、二カ月に限って切っていくというのはどういうわけですか。
  22. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 常勤職員のことにつきましては、政府全般にわたる問題でありまして、本来定員法で規定しておる職員の中に入っておらないのでありますが、実態は常勤の実態を持っておる、ちょっと御疑問の出そうな制度でございます。これは、今の定員法ができたときに、定員の中にはほんとうに最小限度必要な恒常的な事務を行う者のみを入れまして、たとえば現業の官庁で季節に応じて職員を必要とする——増減があり得るようなものは定員の中に入れなかったのであります。しかしながら、たとえば地方の河川の修理をするとかいうふうな事務所の職員は、そういう性質だとはいいながら、何年も続いて仕事が行われているということになりますと、それを更新していかなければいけない。そういうようなところから、これの実態がだんだん定員内の職員と変らなくなってきて、人事院の方も、実情に応じまして、それと実際上の定員の前の職員とあまり区別ができないという取扱いにだんだんいたしまして、今まで給与関係なんかでは全然定員内の職員と同じであります。形式的に定員内に入っている職員と違っておるのは、二カ月ごとに期間を定めて更新をするというのが差異の著しい点であります。今度そのうちの一部分を定員化いたしたのでありますが、この常勤職員の制度自体が御指摘のように必ずしもはっきりしない点がございますので、これにつきましては、現在政府におきまして、公務員制度調査全等の答申もありまして、制度調査室を設けまして、そこでどういうふうな取扱いをするかということを検討いたしております。
  23. 三田村武夫

    三田委員 私もそうだと思いますが、今の調査課長の御説明のように、常勤職員というのは波がある。非常にたくさん人を要するときもあるし、少くて済むときもある。こういうことで、年間通じて普通の職員にしておくと困るというのが二カ月に限った初めの理由だろうと思いますが、今の勤務状態は普通の公務員と変らないんですね。それなら、二百五名の二カ月に限って更新される常勤職員の中で四十四人が定員化されるのもおかしい。私がさっきの關根局長お話でもう少し突っ込んでお尋ねしたかった点は裁判所職員のことなんです。庭掃除とか走り使いのための定員常勤職員はいいですが、今交通犯罪が非常にふえて、そのために普通の定員内の正規の公務員として採用された者だけでは手が回らぬから、そこに定員外の者も置くという場合、実際は二月々々にかわっちゃ困る。同じ人間を使わなければいけない。同時に、これは裁判事務の一部を担当するんですね。実際問題として、こういう交通裁判所あたりに働いている人は、記録の整理とか、おそらくは検事、検事補、判事仕事のある部分もやっている。ただ整理だけでなくて、この事件はこういう性格のものだというものを作ったり何かしているのですよ。私もある程度事情を知っているのですが、交通裁判所なんてものは、こいつは三べん目だから罰金三千円、これは千円でよろしい、これは重いから体刑にしてやるなんということは実際に机の上で仕事をやっている人の判断できまっていくので、一々検事や判事が被疑者から事情を聞いてやるのと違うのです。そういう性質のものであるなら、私は中途半端なことをしない方がいいと思うのです。今回は一応の限度内の御提案ですから、一応これは私了承いたしますが、それでは、二百五名の常勤定員外の者の中から四十四名だけ定員化するというのはどういう基準でこれを選考されるか。やり方によっては二百五名の職員の中でまたトラブルが起きますよ。何かそこに判断の基準、採用の基準がなければいかぬと思うのですが、どうですか。
  24. 關根小郷

    關根最高裁判所説明員 今度の切りかえに関しまする法案が通過いたしますれば実際任用になるわけでありますので、私の方からお答えした方がよいかと思います。今四十四名の内訳として一応考えておりますのは、先ほど申しました統計の集計員、それから法廷——交通事件の問題につきましてはお話通り確かに裁判事務自体に関与いたします関係から、それに充てる方がよいのじゃないかと考えるわけです。それから、それではどういう者を切りかえに際して採用するかという点でございますが、これは短い期間で切りかえてずっと勤続しておりますので、長く、たとえば五年以上勤続の者もおります。そういった本来の公務員と同じように勤めておる者の勤続年数などからも一つのしんしゃく材料が出て参ると思います。そのほか、職務の重要度、責任の大小その他、俸給にも段がございますが、俸給を相当取っておる者、そういったいろいろな事情をしんしゃくいたしまして、採用に当りまして選考の上任用することになろうかと思います。
  25. 三田村武夫

    三田委員 裁判所、法務省同時に伺います。法務省も同じ関係ですから、つけ加えて法務省の説明をお願いいたしますが、その前に、常勤職員でない非常勤職員というふうな者があるのですか、このほかに。日当で実際は常勤職員と大して違わぬことをやっておる、名目は非常勤職員、そういった者はどのくらいありますか。
  26. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 常勤職員の方から申し上げますが、法務省の常勤職員は、三十二年度の予算では千八百人余りでございます。今度やはり定員化の数がございまして、そのうち五百五名ですか、これが正式の定員の中に繰り入れられております。非常勤の職員の数は、今手元に持っておりませんが、これはそれほど多くないと思っております。あとでお知らせいたします。
  27. 關根小郷

    關根最高裁判所説明員 最高裁判所側の非常勤職員は、現在約八十名、正確に申し上げますと八十三名おりまして、そのうち家庭裁判所医務室に医者が三十三名、それ以外は、臨時要員といたしまして、ほとんど庁夫と申しますか、小使い、そういう方々でございます。
  28. 三田村武夫

    三田委員 それでは次に参ります。  裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する法律案検察官俸給等に関する法律の一部を改正する法律案、この二件でありますが、これは、法務省、裁判所承知通り、昨年の二十六国会でこれが問題になった際に、当委員会で附帯決議がついているのです。「高等裁判所長官検事長並びに裁判所長、検事正その他経験年数等においてこれらの者に準ずる裁判官及び検察官給与は、一般行政官の上位者に対する給与改善が行われた関係上、これと比較するときは、著しく均衡を失するに至ったものと思料せられる。政府は、司法の使命の重要性にかんがみ、速かにこれを是正する措置を講ずべきである。右決議する。」、三十二年四月二十三日の当委員会の附帯決議であります。これは御了承のはずでありますが、そこで、今度の出された法案ですね。これによって高裁長官、検事長以上の裁判官検察官一般裁判官検察官との不均衡は全部是正されることになりますか。まず第一点。
  29. 鈴木忠一

    ○鈴木最高裁判所説明員 お答えいたします。前回当委員会で附帯決議をされました等の事情に基いて、今回法案として出されましたこの新しい案によりますと、大体において結論としては裁判官の内部における不均衡というものは一応是正された結果になっております。ちょっとその内容を申し上げますと、判事の特号報酬に一二%がついた者の年間を通じての月額平均は、これはもちろん地方税を控除する前の額でございますが、それが九万一千六百四十円になります。それに対して東京を除く高裁長官の新しい額によります月額の受取額、これも地方税を控除する前の額でございますが、これは九万五千九百八十九円で、大体五千円の開きが出て参ります。それから、東京高裁長官の同様の月額の手取りが十万百六十一円でございます。それに対して、判事の特号報酬は九万一千六百四十円でございますから、約八千四百円ばかりの開きが出て参ります。最高裁判所判事月額の手取額が十万八千二百一円、従って、東京高裁長官との開きが約八千円、こういうことになります。従来、部内において、判事特号報酬で管理職手当一二%を受ける者の月額報酬東京高裁長官をも凌駕しておったというきわめて不均衡な状態が、これによって解決をされたということになります。ただ、私どもの欲を申し上げれば、これはあるいは隴を得て蜀を望むというような非難もあるかとは存じますけれども、高裁長官の九万五千九百八十七円という手取額に対して、判事の特号が九万一千六百四十円でございますから、その間差は約四千円でございます。この四千円の間差というようなものについては、私どもとしては必ずしも満足はいたしておりませんけれども、従来に比べますれば、今申し上げたように、まず部内の均衡というものも辛うじて保たれておるということになると思います。
  30. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 大体今人事局長が言われた通りでございますが、特に検察官の分を補足して申し上げますと、やはり、今度の給与の改善によりまして、現在の状態では、普通の検事が検事長給与を上回るということは勤務地なんかを異にしない限りはないわけです。しかしながら、たとえば東京にいる特二号の検事で、管理職手当もついておる、こういう人がいなかの検事長に転任するというふうな場合には、これは収入が減ることになります。のみならず、そういう点を除きましても、たとえば、検事長及び次長検事は今度の改訂によりまして、年額——これは税金を引かないものですが、百四十四万九千円というふうになりますが、検事の特二号で管理職手当がつきますと、百四十三万四千九百六十円ということになりまして、その差はきわめて僅少であります。これで十分均衡が保たれておるかと申しますと、そうは言い切れないというふうに感じております。
  31. 三田村武夫

    三田委員 認証官以外の一般裁判官及び検察官給与と、一般行政官の給与との比較ですね、これはあまり詳しい御説明は要りませんが、大体の傾向はどうでしょうか。この前委員会で問題になったのは、どうも裁判官検察官は一定の地位まで行くに相当の年月を要する、ところが行政官は早いというので、大学は同期であっても、行政管の給料の方がうんと上だというようなこともあって、いろいろ問題になっておったようであります。どうですかね、認証官以外の一般裁判官検察官給与と、一般行政管の給与とは、今度の是正によって、今どんな見当になっておりますか。
  32. 鈴木忠一

    ○鈴木最高裁判所説明員 行政官の方の一般職の一番上が、いわゆる各省の次官ということになっておるわけであります。次官の標準官職の給与といたしましては、行政職の一等級の四号というのがその標準の号俸になっております。その一等級の四号というのをとりますと、年間を通じまして、月額手取り額が地方税を控除いたしまして八万八千三百八円ということになります。そういたしますと、判事の特号がさいぜん申し上げましたように年間を通じて月額九万一千六日四十円でございますから、これは判事の特号の方が上になっております。ただし、次官の経験年数と判事の特号の経験年数を比べますと、これは平均いたしましておそらく七、八年から十年以上違うような格好になりますから、その点から言いますと、八万八千何がしに対して九万一千六百円というような間差は非常に縮まっておるわけです。それから、さらに、現在次官で一番上をとっておられる方が一級の五号らしいのでございます。一級の五号を今申し上げました月額の手取り額に引き直しますと、九万八百五十四円になります。そうすると、九万八百五十四円に対して、判事特号の九万一千六百四十円でございますが、これはほとんど接近して参るということになります。ただ、現実の問題として次官に一級五号以上の者は現在ありませんけれども、六号、七号というような者がかりに出るといたしますと、これは完全に凌駕されてしまうわけであります。
  33. 三田村武夫

    三田委員 大体わかりました。  次に、裁判官及び検察官に対する管理職手当ですね。これは一般行政官との比較はどういうふうになっておりますか。その点を一度伺っておきたい。
  34. 鈴木忠一

    ○鈴木最高裁判所説明員 一般行政官に対するいわゆる管理職手当というのは、中央、地方等の官庁の差別によりまして、中央の官庁の管理職の地位にある者に対しては二五%、それからブロックの官庁に奉職する者の管理職手当は一八%、それから地方の官庁の管理職手当が一二%というように、二五、一八、一二という三種類の管理職手当の率がきまっておるわけです。これに対して、これはもうくどくは申し上げませんけれども、管理職手当はいわゆる超過勤務手当の変形である、裁判官検察官に対しては、本来超過勤務手当というものはなくて、超過勤務手当は本俸の中に加算をしてあったはずなんだ、だから超過勤務手当が管理職手当に変形をしても、裁判官検察官には管理職区手当は依然として給与できないのだ、こういうイデオロギーで大蔵省が参ったのを、昨年からようやく裁判官にもじゃつけようということに折れて、つけるようになったのでございますけれども、その率は裁判官に対しては一二%、しかもその人数は百二十人を限るということになっておるわけでございます。ただし、ついでに申し上げますと、裁判官以外の裁判所職員に対しては、二五、一八、一二というように、やはり三種類の管理職手当が認められておるわけであります。
  35. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 検察官につきましても、裁判官と大体同様になっておりまして、現在管理職手当のついておる検事は七十九名、割合は一二%、ですから、中央行政官庁の課長級以上についております二五%よりは率がだいぶ悪い。先ほど人事局長から申されたような事情で、今では一二%というようになっております。今度裁判官につきましてもその管理職手当を給与し得る範囲が予算上広く認められまして、大体昨年の二倍で、検事につきましては百六十八名を認められております。
  36. 三田村武夫

    三田委員 これはお尋ねするまでもなく当然のことでございますが、今の両法案についても、予算措置は十分できておるのですね。
  37. 鈴木忠一

    ○鈴木最高裁判所説明員 予算の措置はできております。
  38. 三田村武夫

    三田委員 以上でこの法案関係の私の質疑は一応終りますが、次に、私はきょう事務総長に出ていただいてぜひお尋ねしたいことがあるのですが、出てこられぬようですが、時間の関係もありますし、最高裁人事局長総務局長がおられますから、両局長からも御意見を伺いたいし、さらに重ねて事務総長の責任ある御答弁を要求することを留保してお尋ねいたします。  それは、昨晩の毎日新聞に「裁判官の小使ご免、全司法労組が春の闘争」、こういう見出しで大きく出ております。これは簡単な町の記事と違いまして、事裁判所に関する問題で、裁判官に対する国民の信用といいますか、信頼性といいますか、私は相当大きな影響を与えることだと思うので、これは、法務省の横川政務次官もおいでになっておりますから、法務大臣にもとくとお伝えを願いたいと思います。「裁判所の書記官たちの組合である全司法労組(一万八千人)では、法の番人である裁判官自身が法律を無視していると、このほど春季闘争の一環として裁判官を相手に順法闘争を行なうことになった。これは刑事、民事訴訟法で裁判所の命令、決定は裁判官が作成すると決められているのに、実際はこれらの書類作成(裁判書きという)は全部書記官に押しつけられ、ひどい裁判官になると私用までも書記官にやらせているというもの。去月十七、八日の中央委員会で賃上げ要求とならんで裁判書き返上、私用拒否の方針を決定、指令を発した。これに対し最高裁当局は闘争参加者は業務命令違反で処分するとの態度をみせており、注目される。」、続いて、「強行すれば処分」、これは最高裁判所側の見解として載っております。これは国民はいわば第三者の立場からこの問題を見守っておるのだと思いますが、事裁判所に関する問題なんです。ここには二つの問題が含まれておる。つまり、裁判所の書記官が裁判書きまでもやる、刑事、民事の訴訟の規定によれば、裁判書きすなわち判決文は裁判官が書かなければならないことになっておるが、実際は書記官が書いておるのだ、こういう点が一つあります。もう一点は、書記官を私用にまで使うというのですね。これは特殊があり得ると思いますが、この二つの問題が提起されて、これから順法闘争だというのです。オール法務の連中が順法闘争をやられることは自由であるかもしれません。しかしながら、それによってもし裁判事務が遅滞を来たすようなことがあっては、これは非常な問題であろうと思うのです。実際に、司法書記官、昔の書記ですね、これをどの程度裁判所裁判事務に関与させておるのか。元来これは記録の作成者でして、裁判書、判決文まで書く権限はもとよりないのです。こういうことは、お尋ねしたって、そんなことは絶対にありませんとおっしゃるに違いありませんが、これは内部の人の言葉でして、実際問題として私はむげにありませんと言い切れないものがあるような気がする。この点の責任ある最高裁当局の言明がほしいことが一点。それから、全司法、俗にいわれるオール法務、この組織というものはどのくらい裁判所の中にあるのか。もとより、勤労者でありますから、当然勤労に対する報酬の要求、待遇の改善というものはそれぞれ何らかの機関によって要求されることはあり得ると思います。しかしながら、裁判所職員が春季闘争に加わる、春の闘争の一環としてわれわれは順法闘争をやるのだと、裁判書を拒否する、こういうことになると、私は相当与える影響は大きいと思うのです。これは新聞にこんなに大きく出てしまいましたから、一つ何らかの見解を承わっておきませんと、世の誤解を解くことができないと思います。まあ事務総長に御出席を願って——ほんとうは事務総長でなくて田中長官でも来てもらって私は聞こうと思ったのですが、きょうはその時間もありませんし、事務総長も御出席ありませんので、一つ最高裁総務局区長と民事局長がおられますから、両局長ともこの問題に直接職務関係の深い方々なんですから、一応局長としての立場からの御見解を伺っておきたいと思います。
  39. 關根小郷

    關根最高裁判所説明員 今三田委員お話の毎日新聞の記事は、私も実は今持っておりますが、これは「裁判官の小使ご免」という題で、書記官がどの程度裁判官仕事を手伝っているかという問題に触れての記事でございます。これは相当な、この記事を読まれた一般の国民の方々司法に対する、裁判所に対する信頼を失う大きな問題だ、これはお話通りでございまして、もし司法労組がこのようなことをやっていくとしますれば相当な問題だと思います。それで、実は、われわれの知っております限界では、地方裁判所の一部におきまして、裁判書の原本の浄書、清書、そういった事務については裁判所職員の職務に属するのかどうかという問い合せが最高裁判所に参りまして、その答えを最近いたしました。それにこの記事がまあ幾分関係があるのじゃないかと思います。その意味で、実際裁判所におきまして裁判官がどの程度裁判書のことについて、裁判官以外の職員、これは書記官を含めてのことでございますが、どの程度やらしているかということを申し上げたいと思います。  これは御承知かと思いますが、裁判書のうちにもいろいろございまして、非常にむずかしい判決と申しますと、刑事事件あるいは民事の事件、それ以外に決定、命令、これは御承知の、逮捕いたしますにつきましての令状、それから略式命令、支払命令、こういった決定、命令に属する裁判がございます。これもやはり裁判官が作成すべきことはもとよりでございますが、ただ、判決にいたしましても、そういった決定、命令にいたしましても、裁判官が一々初めから終りまで筆をとり、あるいはペンをとるということは要求されていない。これは御承知だと思いますが、タイピストのいるところではタイピストに命ずる、それからタイピストのいないときには雇員に命ずる、雇員も忙しいときには事務官に命ずる、事務官も忙しければ書記官に命ずるということは、昔から裁判所でやっておりますことで、裁判所法でそれを認めておるわけでございます。でありますので、そういったタイピストなりほかの職員がいなかったり、あるいは病気、実際そういった浄書に関する事務ができないときには、書記官といえども、上司の命を受けてそういうことをする義務があるという考えでわれわれはおります。それで、事務総長の名義で事務総長の回答を、全国の所長に対しましてその意味の通達を知らせました。でありますので、何もかも裁判官がやる必要はないという見解でございます。ただ、裁判でございますから、判断はあくまで裁判官がやる。言葉をかえて申し上げれば、タイピストに命ずる場合に、タイピストに判断を含むことまでやれということは言えない。それと同じに、書記官に対しても、判断は裁判官がやりまして、ただ清書するということの意味でやらせる。それを全司法がもし取り上げて、それもいけないのだということになりますれば、これはやはり義務違背になるのじゃないかということに考えておる次第でございます。
  40. 三田村武夫

    三田委員 關根総務局長の御説明は一応了承いたしますが、この問題にはいろいろな意味が含まれているのです。これは私はあえてこの機会に申し上げるつもりはなかったのですが、従来ともすると裁判の公正とかなんとかいうものに疑惑の目が向けられる。しばしば例のあったことですが、これは判決宣告後ならいいのですが、判決宣告前に裁判所の浄書、清書あるいは決定・命令の作成、こういうことは訴訟関係者に直接大きな影響を持つのです。そうして、人間だれでも弱いところがあるものですから、重要な判決書の浄書をやった、清書をやった、代筆をやった人がうちに帰ってきて、今世上やかましいこの事件は大体こういうことになりそうだというようなことが、もしかりに漏れたとすると、これは非常に重大な問題になるのです。ここでオール法務の組織がどれだけ強いのか知りませんが、こういう一つの団体的組織体をなして、そして裁判所の浄書か清書か、あるいは下書きか知りませんが、そういうことについてわれわれはその職務を拒否する、こういう意思表示があることは、私はなかなか軽からぬ問題だと思うのです。そういう場合に、もとより公務員としての機密保持の責任はあります。それは裁判官と同様に規律されることは当然でありますが、私は簡単なこの記事を見て何か非常に考えさせられた。關根さんお話通り、従来も現在も裁判官が一々判決文の下書きから清書まで全部やるということは、私はそうでないことを承知しております。昔の書記、現在の書記官あるいは事務官が下書きあるいは事件関係の書類の整理をやることはよく知っておりますが、こういう形になって出てくる以上は、この点について、裁判の規律といいますか、あるいはまた裁判の厳正の権威を保つ上において、どういうことを一つ考えになっておるか、この記事を見た者は変に思いますよ。なるほどな、これだと裁判官というか、裁判書きの作成は書記官がやるのだな、それなら書記官のところへ適当にしかるべく手を回したら、どういう判決が下るか、判決決定前にわかりそうだという気持を与えますよ、これは。そういう点もとくと考慮されて、すでに現われてしまったこの問題についての最高裁当局の処置というものをきわめて厳粛にお考え願いたいと私は御要望申し上げるのです。今ここでこれ以上この問題を追及はいたしませんが、なかなか簡単な問題ではないのだ。世上に具体的な事実として話題を提供してしまいましたから、裁判所の判決は書記管が書くのだ。それなら言い渡し前にわかるじゃないか、そういう気持が一般の国民に、特に訴訟関係者の頭に入るといたしますならば、私はこれは相当問題が重要だと思うのですが、どうぞそういう点とくと御検討の上、相当厳粛な態度でこの問題を処理せられんことを要望いたします。  私の質問は大体以上で終ります。
  41. 町村金五

    町村委員長 他に御質疑はありませかん。——なければ、本日はこれにて散会いたします。     午後零時十二分散会