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1958-02-06 第28回国会 衆議院 大蔵委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年二月六日(木曜日)     午前十一時四分開議  出席委員    委員長 足鹿  覺君    理事 黒金 泰美君 理事 藤枝 泉介君    理事 平岡忠次郎君 理事 横錢 重吉君       足立 篤郎君    井出一太郎君       遠藤 三郎君    大平 正芳君       川野 芳滿君    杉浦 武雄君       高瀬  傳君    竹内 俊吉君       内藤 友明君    中山 榮一君       夏堀源三郎君    古川 丈吉君       前田房之助君    森   清君       有馬 輝武君    井上 良二君       石野 久男君    石村 英雄君       春日 一幸君    神田 大作君       久保田鶴松君    竹谷源太郎君       横路 節雄君    横山 利秋君  出席政府委員         大蔵政務次官  坊  秀男君         国税庁長官   北島 武雄君  委員外出席者         大蔵事務官         (大臣官房財務         調査官)    大月  高君         大蔵事務官         (主税局税制第         一課長)    塩崎  潤君         大蔵事務官         (国税庁税部         長)      金子 一平君         大蔵事務官         (国税庁税部         法人税課長)  志場喜徳郎君         専  門  員 椎木 文也君     ――――――――――――― 一月二十四日  委員山本幸一辞任につき、その補欠として横  路節雄君が議長指名委員に選任された。 同月三十日  委員山手滿男辞任につき、その補欠として戸  塚九一郎君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 昭和三十二年十二月二十四日  製造たばこ定価決定又は改定に関する法律  の一部を改正する法律案内閣提出第一号) 同月二十七日  たばこ専売法の一部を改正する法律案内閣提  出第二号)(予) 昭和三十三年一月二十九日  日本開発銀行法の一部を改正する法律案内閣  提出第三号)  昭和二十八年度から昭和三十二年度までの各年  度における国債整理基金に充てるべき資金の繰  入の特例に関する法律の一部を改正する法律案  (内閣提出第四号)  昭和三十二年産米穀についての所得税臨時特  例に関する法律案内閣提出第五号)  所得税法等の一部を改正する法律案内閣提出  第八号)  法人税法の一部を改正する法律案内閣提出第  九号)  酒税法の一部を改正する法律案内閣提出第一  〇号) 二月三日  補助金等臨時特例等に関する法律の一部を改  正する法律案内閣提出第一四号)  食糧管理特別会計法の一部を改正する法律案(  内閣提出第一五号)  食糧管理特別会計における資金設置及びこれ  に充てるための一般会計からする繰入金に関す  る法律案内閣提出第一六号)  国庫出納金等端数計算法の一部を改正する法律  案(内閣提出第一七号)(予)  関税法の一部を改正する法律案内閣提出第一  八号)(予) 昭和三十二年十二月二十七日  酒税引下げに関する請願今松治郎紹介)(  第七六号)  旧陸軍共済組合員中の女子組合員年金支給に  関する請願灘尾弘吉紹介)(第七七号) 昭和三十三年一月十八日  特許権譲渡及び分権に対する課税撤廃に関する  請願池田清志紹介)(第一六八号)  国有財産払下げに関する請願内田常雄君紹  介)(第一六九号)  酒税引下げに関する請願高見三郎紹介)(  第一七〇号)  同(山崎巖紹介)(第一七一号)  奄美群島産業開発基金制度設定に関する請願山中貞則君  紹介)(第三三一号)  昭和三十三年度税制改正に関する請願外九件(  中井徳次郎紹介)(第三三八号)  同(永井勝次郎紹介)(第三三九号)  煙火類に対する物品税率引下げに関する請願(  三宅正一紹介)(第三四〇号)  煙草専売法の一部改正に関する請願外三件(三  鍋義三紹介)(第三五九号) 同月二十七日  塩田枝条架の農作物に及ぼす影響調査に関する  請願河本敏夫紹介)(第三八三号)  生命保険に対する所得税法上の取扱に関する請  願(神田博紹介)(第四一九号)  新潟港の日ソ貿易港指定に関する請願田中彰  治君紹介)(第四二〇号)  特許権譲渡及び分権に対する課税撤廃に関する  請願黒金泰美紹介)(第四五五号)  中小企業金融円滑化のため政府資金長期預託  等に関する請願山下春江紹介)(第四五六  号)  煙火類に対する物品税率引下げに関する請願(  福田篤泰紹介)(第四六六号)  ラムネに対する物品税撤廃等に関する請願(植  村武一紹介)(第四六七号) 同月三十一日  ラムネに対する物品税撤廃等に関する請願(植  原悦二郎君外二名紹介)(第四九六号)  同(椎熊三郎紹介)(第四九七号)  とん税譲与に関する請願門司亮紹介)(第  五四二号)  航空に対する通行税撤廃に関する請願關谷勝  利君紹介)(第五七三号)  文部省推奨映画及び文化教育映画免税に関す  る請願牧野良三紹介)(第五九八号) の審査を本委員会付託された。 昭和三十三年一月十八日  たばこ耕作組合法等制定に関する陳情書  (第一  一号)  輸出振興のための税制措置に関する陳情書  (第四  六号)  金融機関裏利取締に関する陳情書  (第八三号)  政府関係金融機関資金わく増額に関する陳情書  (第八四号)  国内塩業需給対策に関する陳情書  (第九六号)  山口県の塩業危機打開に関する陳情書  (第一〇〇号) 二月一日  消防用燃料に対する免税措置に関する陳情書  (第一三二号)  銅合金製品免税点引上げ等に関する陳情書  (第一四〇号)  たばこ販売利益率引上げに関する陳情書  (第一八七号)  信用保証協会に対する国家資金導入増額に関  する陳情書(第二  〇三号)  公営簡易火災保険事業法制定に関する陳情書  (第二三五号)  労働金庫に対する政府資金導入に関する陳情書  (第二四六  号) を本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  製造たばこ定価決定又は改定に関する法律  の一部を改正する法律案内閣提出第一号)  たばこ専売法の一部を改正する法律案内閣提  出第二号)(予)  日本開発銀行法の一部を改正する法律案内閣  提出第三号)  昭和二十八年度から昭和三十二年度までの各年  度における国債整理基金に充てるべき資金の繰  入の特例に関する法律の一部を改正する法律案  (内閣提出第四号)  昭和三十二年産米穀についての所得税臨時特  例に関する法律案内閣提出第五号)  所得税法等の一部を改正する法律案内閣提出  第八号)  法人税法の一部を改正する法律案内閣提出第  九号)  酒税法の一部を改正する法律案内閣提出第一  〇号)  補助金等臨時特例等に関する法律の一部を改  正する法律案内閣提出第一四号)  食糧管理特別会計法の一部を改正する法律案(  内閣提出第一五号)  食糧管理特別会計における資金設置及びこれ  に充てるための一般会計からする繰入金に関す  る法律案内閣提出第一六号)  国庫出納金等端数計算法の一部を改正する法律  案(内閣提出第一七号)(予)  関税法の一部を改正する法律案内閣提出第一  八号)(予)  税制に関する件      ――――◇―――――
  2. 足鹿覺

    足鹿委員長 これより会議を開きます。  本日は、まず去る十二月二十四日本委員会付託に相なりました製造たばこ定価決定又は改定に関する法律の一部を改正する法律案、同じく二十七日予備付託に相なりましたたばこ専売法の一部を改正する法律案、一月二十九日付託に相なりました日本開発銀行法の一部を改正する法律案昭和二十八年度から昭和三十二年度までの各年度における国債整理基金に充てるべき資金の繰入の特例に関する法律の一部を改正する法律案昭和三十二年産米穀についての所得税臨時特例に関関する法律案所得税法等の一部を改正する法律案法人税法の一部を改正する法律案酒税法の一部を改正する法律案、並びに去る三日付託に相なりました補助金等臨時特例等に関する法律の一部を改正する法律案食糧管理特別会計法の一部を改正する法律案食糧管理特別会計における資金設置及びこれに充てるための一般会計からする繰入金に関する法律案、及び同日予備付託に相なりました国庫出納金等端数計算法の一部を改正する法律案関税法の一部を改正する法律案の十三法律案を一括して政府委員より提案理由の説明を聴取することといたします。大蔵政務次官坊秀男君。     —————————————
  3. 坊秀男

    ○坊政府委員 ただいま議題となりました製造たばこの定価の決定又は改定に関する法律の一部を改正する法律案外十二法律案につきまして、この提案の理由を御説明申し上げます。  最初に製造たばこの定価の決定又は改定に関する法律の一部を改正する法律案について申し上げます。  この法律案は、日本専売公社製造たばこ最高価格を定めている価格表の一部を改定するものであります。  その概要を申し上げますと、専売公社におきましては、フィルター付紙巻たばこが世界的な流行を示し、国内においても強い発売の要望がありましたので、この要望にこたえるとともに、専売益金の増収をはかるため、昭和三十二年七月一日からフィルター付紙巻たばこホープを試製して販売中であり、また新しい需要層を開拓して売れ行きの増進と専売益金の増収をはかるため、同年八月一日からはっかを主とする特殊加香を施した両切紙巻たばこみどりを試製して販売中でありますが、その売れ行き状況はいずれも良好でありますので、今後継続して販売するため、これらを価格表に追加しようとするものであります。  次に、たばこ専売法の一部を改正する法律案について申し上げます。  第二十六通常国会におきまして、たばこ専売法の一部を改正する法律案提出しましたが、審議未了となりましたので、同法案の内容にさらに検討を加え、葉タバコ収納価格及びタバコ耕作計画決定等について適正を期するため、日本専売公社の総裁の諮問機関として、新たにたばこ耕作審議会を設けるとともに、公社の行うタバコ耕作の許可の基準に関する規定を整備し、あわせて当該許可について異議の申し立ての道を開く等のため、この法律案提出した次第であります。  次にこの法律案の概要を御説明申し上げます。  まず第一に、現行法には、収納価格は毎年日本専売公社が定めて公告するとあるのみで、価格決定の基準については別段の定めがありませんが、この際規定を設けた方が適当と考えますので、従来から日本専売公社が実際に行なっていた価格決定の基準を法制化することといたしまして、生産費及び物価その他の経済事情を参酌して、耕作者が適正な対価を得ることができるように定めなければならないとの規定を設けることといたしております。  第二に、現行の耕作許可制限規定を実情に即して改正し、これを許可制限許可基準とに分けて規定することとし、さらに許可基準の一として、新たにタバコ耕作の経験の有無についても参酌することとして、経験のある耕作者の地位の安定をはかることといたしております。  第三に、タバコ耕作許可処分の適正を期するため、日本専売公社耕作許可処分に対して不服がある者には、新たに異議申し立ての道を開いて、行政上の救済措置を講ずることといたしております。  第四に、葉タバコ収納価格決定は、専売事業の経営にとっても、また耕作者にとっても重要な事柄でありますので、従来から日本専売公社においては、その決定について各方面の意見をも徴し慎重に取り扱ってきたのでありますが、今回法律上の制度といたしまして、日本専売公社総裁諮問機関として、たばこ耕作審議会を設立することとし、葉タバコ収納価格決定のほか、毎年耕作するタバコの種類及び耕作面積決定に際しても、あらかじめその意見を聞かなければならないことといたしております。  次に、日本開発銀行法の一部を改正する法律案について申し上げます。日本開発銀行は、昭和二十六年四月に設立されて以来、長期設備資金の融通により、わが国経済の再建及び産業の開発の促進に努めて参っておりますことは御承知のとおりでありまして、今後ともわが国経済基盤充実強化について、同行の業務活動に期待するところはきわめて大きいものがあると考えます。  現在、日本開発銀行が行います借り入れ及び債務保証金額につきましては、法律自己資本と同額以内ということに制限されておりますが、最近における同行の業務の状況、特に国際復興開発銀行よりの外貨借款増大等を考慮いたしますと、現行規定では借り入れ及び債務保証限度額に制約されて、今後の円滑な業務運営に支障を来たすこととなります。従って、この制限を金融機関としての健全性をそこなわない範囲内において緩和することが必要と考えられますが、この点につきましては、すでに日本輸出入銀行について適用いたしておりますところと同様に、借入金限度額自己資本の二倍といたすとともに、貸付金債務保証との合計額は、自己資本の額と借入金限度額との合計額をこえないこととすることが適当と考えられ、これがために日本開発銀行法に所要の改正を行う必要があるのであります。  次に、昭和二十八年度から昭和三十二年度までの各年度における国債整理基金に充てるべき資金の繰入の特例に関する法律の一部を改正する法律案につきまして申し上げます。  昭和二十八年度から昭和三十二年度までの各年度におきましては、国債の償還等に充てるための資金繰り入れ特例といたしまして、国債の元金償還に充てるために一般会計から国債整理基金特別会計繰り入れるべき最低金額は、財政法第六条の規定による前々年度の剰余金の二分の一相当額にとどめ、国債整理基金特別会計法第二条第二項の規定による前年度首における国債総額の一万分の百十六の三分の一相当額繰り入れ基準は、これを適用しないことといたしております。また、これとともに、日本国有鉄道または日本電信電話公社日本国有鉄道法施行法第九条または日本電信電話公社法施行法第八条の規定により一般会計に対して負ういわゆる法定債務償還元利金については、直接、国債整理基金特別会計繰り入れ、この繰入額に相当する金額については、一般会計から国債整理基金特別会計繰り入れがあったものとみなす特別の措置が講ぜられて来たのでありますが、昭和三十三年度におきましても、国債償還の状況にかんがみ、かつ経理の簡素化をはかるため、前年度と同様これらの措置を講じようとするものであります。  次に、昭和三十二年産米穀についての所得税臨時特例に関する法律案について申し上げます。  政府は、昭和三十三年度税制改正につきましては、追って関係法律案提出し、御審議を願うこととしているのでありますが、さしあたり緊急を要する昭和三十二年産米穀についての所得税臨時特例に関する法律案提出し、御審議を願うこととしたのであります。  この法律案は、昭和三十二年産米穀について昭和三十一年産米穀と同様に、政府に対し、事前売り渡し申し込みに基いて米穀を売り渡した場合に、昭和三十二年分の所得税について、その売り渡しの時期の区分に応じ玄米一石当り平均千四百円を非課税とする措置を講じようとするものであります。  次に、所得税法等の一部を改正する法律案及び法人税法の一部を改正する法律案について申し上げます。  政府は、国民の税負担の現況に顧み、合理的な租税制度を確立するため、一昨年の臨時税制調査会に引き続き、昨年六月以来税制特別調査会を設けて、税制改正の諸方策について鋭意検討を加えて参りましたが、昨年末その答申を得、その後さらに検討を重ねた結果、相続税について体系の合理化及び負担の軽減等根本的改正を行うほか、法人税軽減及び下級酒類に対する酒税の軽減をはかるとともに、当面要請される貯蓄の増強及び科学技術の振興に資する等のため、所要の税制改正を行うことといたしました。これらの税制改正諸法案のうち、今回、所得税法等の一部を改正する法律案及び法人税法の一部を改正する法律案提出した次第であります。  まず、所得税法等の一部を改正する法律案について、その大要を申し上げます。  第一は、証券投資信託の収益に対する課税方式簡素化合理化をはかったことであります。すなわち、証券投資信託の収益に対する課税方式簡素化し、従来の収益源泉別課税方式を廃止し、その収益全体を単一の所得として配当所得のうちに含めて課税することとしようとするものであります。この改正に伴い、証券投資信託の収益についての配当控除について特別の規定を設け、また、その収益に対する源泉徴収については、その収益全体が源泉徴収の対象となることに改められますが、現行の税負担を考慮して、昭和三十三年四月一日から昭和三十四年三月三十一日までの間に支払いを受けるべきものについては、特にその税率を六%とすることとしております。  第二に、税務執行簡素化の見地から、給与所得者確定申告書提出しなくてもよい範囲を拡張したことであります。すなわち、一カ所から給与の支給を受ける給与所得者給与所得以外の所得を五万円に満たない金額しか有しない場合等には、確定申告書提出を要しないことといたしております。  第三に、昨年の改正において給与所得とみなして課税されることとなった共済組合年金等について、源泉徴収についての手続の簡素化等の見地から、給付金額が九万円に満たないものについては源泉徴収を要しないことといたしております。  以上のほか、還付加算金の計算について、還付の請求が遅れたため、還付金の還付ができなかったような場合に、その遅延期間について還付加算金を加算しないこととする等所要の改正を加え、また、総所得金額及び山林所得金額合計額が一千万円をこえる者の確定申告書に財産及び負債の明細書の添付を求めることとする等所要の規定の整備をはかっております。  次に、法人税法の一部を改正する法律案についてその大要を申し上げます。  第一に、法人の税負担軽減に資するため、法人税率を一律に二%ずつ引き下げるとともに、中小法人税負担の実情に顧み、軽減税率適用範囲を現在の年所得百万円以下から年所得二百万円以下の金額に引き上げることといたしております。この結果、改正後の各事業年度所得に対する法人税率は、普通法人にあっては、年二百万円以下の金額については百分の三十三、年二百万円をこえる金額については百分の三十八に、特別法人及び公益法人等にあっては百分の二十八にそれぞれ引き下げられ、また、清算所得に対する法人税率は、清算所得のうち積立金等からなる部分の金額以外の金額について、普通法人百分の四十三、特別法人百分の三十八にそれぞれ引き下げられることとなっております。  第二に、申告手続適正化をはかるため、災害その他の事由により各事業年度確定申告書提出期限を延期したい旨の承認申請があった場合には、申告期限を指定して承認することができることといたしております。  以上のほか、証券投資信託の収益に対する課税方式及び還付加算金の計算について、所得税法改正に準じた改正規定を設けております。  次に、酒税法の一部を改正する法律案について申し上げます。  この法律案は、最近における酒税負担の実情に顧み、国民大衆税負担軽減に資するために、今次税制改正の一環として、清酒第二級、合成清酒第二級、しょうちゅう、雑酒第二級等の下級酒類に対する酒税の税率を、おおむね一割引き下げようとするものであります。  この税率の引き下げをおもな酒類について申しますと、清酒第二級では、現行税率石当り二万二千五百円を二千円引き下げて二万五百円とし、合成清酒第二級では、現行一万七千六百円を千八百円引き下げて一万五千八百円とし、二十五度のしょうちゅう甲類では、現行一万四千三百円を千五百円引き下げて一万二千八百円とすることといたしております。  なお、租税特別措置法で設けられている二十度しょうちゅうの軽減税率については、二十五度しょうちゅう等とほぼ権衡のとれた程度に引き下げるとともに、同じく、同法で規定されている特殊用途酒類については、おおむね従来と同程度の税負担に据え置くこととし、いずれも、この法律案の附則において、改正を行うこととしております。  次に、補助金等臨時特例等に関する法律の一部を改正する法律案について申し上げます。  政府は、国の財政の健全化等の目的から、補助金等整理合理化につきまして、昭和二十九年度以降予算において所要の措置を講ずるとともに、法的措置を講ずる必要があるものにつきましては、補助金等臨時特例等に関する法律により、特別の措置を講じてきたのであります。  政府といたしましては、補助金等整理合理化につきまして、今後もなお調査検討を進めて参る所存でありますが、昭和三十三年度予算の編成に当りましても、この建前から、各種補助金等につき検討の結果、同法による特別措置を、昭和三十三年度においてもなお引き続き講ずることとする必要があると考えられますので、今回、その有効期限昭和三十四年三月三十一日まで一年間延長することとし、この法律案提出した次第であります。  次に、食糧管理特別会計法の一部を改正する法律案について申し上げます。  食糧管理特別会計におきましては、従来、食糧管理のためにする食糧、農産物価格安定法規定する農産物等飼料需給安定法規定する飼料、及びてん菜生産振興臨時措置法規定するテンサイ糖買い入れ及び売り渡し等、並びに農産物検査法規定による農産物の検査に関する歳入歳出を一体として経理して参ったのでありますが、これらの経理の内容をさらに明確にするとともに、この会計の運営の健全化をはかるため、今回この法律案提出した次第であります。  その大要を申し上げますと、第一は、この会計国内米管理勘定国内麦管型勘定輸入食糧管理勘定農産物等安定勘定業務勘定及び調整勘定の六勘定に区分することといたしております。これを各勘定について申し上げますと、国内米管理勘定国内麦管理勘定及び輸入食糧管理勘定においては、国内産米穀国内産麦及び輸入にかかる主要食糧買い入れ及び売り渡し等に関する歳入歳出を、農産物等安定勘定においては、農産物価格安定法飼料需給安定法及びてん菜主振興臨時措置法に基く農産物等、飼料及びテンサイ糖買い入れ及び売り渡し等に関する歳入歳出を、業務勘定においては、この会計事務取扱い及び施設運営農産物検査等に関する歳入歳出を、調整勘定においては、調整資金に充てるための一般会計からの受け入れ、他勘定における所要資金借り入れ及び償還並びに他勘定における所要資金当該勘定への繰り入れ及びこの繰入金返還金受け入れに関する歳入歳出をそれぞれ経理することといたしております。  第二は、調整勘定資金を設け、一般会計からの受人金及び当該勘定における利益組入金に相当する金額をもってこれに充てることとし、食糧管理特別会計の運営の健全化に資するための措置を講ずることといたしております。  第三は、各勘定利益及び損失の処理に関する規定であります。すなわち、国内米管理勘定国内麦管理勘定輸入食糧管理勘定及び業務勘定利益または損失は、調整勘定に移して整理することといたしております。なお、この整理をした後に、調整勘定利益または損失があるときは、利益の額を調整資金に組み入れ、または損失の額を限度として調整資金を減額して整理することができることといたしております。また、農産物等安定勘定利益または損失は、当該勘定の積立金とし、または積立金を減額し整理することといたしております。  第四は、前述の諸措置に伴いまして必要な規定の整備をはかるとともに、この会計昭和三十二年度末における資産及び負債の各勘定への帰属、並びに昭和三十二年度にこの会計に設けられる資金の承継について、所要の規定を設けることといたしております。  次に、食糧管理特別会計における資金の設置及びこれに充てるための一般会計からする繰入金に関する法律案について、申し上げます。  この法律案は、食糧管理特別会計の運営の現状にかんがみまして、この会計資金を設け、この会計の運営の健全化をはかろうとするものであります。この資金は、一般会計から繰り入れる百五十億円を充てることといたしておりますが、これに必要な予算措置といたしましては、別途、今国会で御審議を願っております昭和三十二年度一般会計予算補正におきまして、一般会計から食糧管理特別会計への繰入金のうちに所要額を計上いたしております。  なお、各年度の損益計算上、利益があるときは、その額を資金に組み入れ、損失があるときは、その額を限度として資金を減額し、その処理をすることができることといたしております。  次に、国庫出納金等端数計算法の一部を改正する法律案について申し上げます。  国、公社その他の政府関係機関及び地方公共団体等における計算事務の迅速化及び簡素化に資するために、これまで国庫出納金等端数計算法によりまして、国税、地方税等については原則として十円未満、その他の受払金については一円未満の端数の金額をそれぞれ整理いたしまして、受け払いをすることといたしているのであります。しかし、同法がこれら国及び公社等の収入金額または支払い金額の受け払いの段階における端数計算を規定したものであるため、いまだ受け入れ及び支払いに至らない債権または債務の金額については、端数の整理を行うことができず、また、債権債務金額とその受け払い金額との食い違いの突き合せを要する場合もあるなど、事務処理の簡素化の目的が十分達成されていない部面が残っているのであります。本改正法律案は、従来の端数計算制度の持つこれらの欠点にかんがみ、また、民間の取引慣行をも勘案いたしまして、法律規定を債権債務自体の金額についての端数計算に切りかえることとするとともに、端数計算の方法についても、従来は一円未満四捨五入の方法によっておりましたものを、一円未満全額切り捨ての方式に改めることといたしまして、会計経理事務の一そうの簡素化をはかろうとするものであります。  なお、国の一般会計または特別会計の決算上の剰余金資金金額政府関係機関の資本金の金額等、従来から端数金額の付されているものが多いのでありますが、これらの金額についても、この際端数整理を行なって、なるべく全面的な計算事務の簡素化の実をあげたいと考えまして、所要の経過的規定を設けております。  最後に、関税法の一部を改正する法律案について申し上げます。  この法律案は、税関行政の適正化に資するため、特定の保税地域について外部と交通する場所を指定することができることとし、輸出または輸入の規制に関する規定及び輸入の許可前に外国貨物を引き取ることができる場合の規定を明確にするとともに、開港が開港でなくなる場合の基準が的確を欠くのでこれを改める一方、貿易実績の多い姫路港と佐賀関港とを新たに開港に追加しようとするものであります。  以下、改正の内容について簡単に御説明申し上げます。  まず、保税地域とその他の地域との交通場所の指定につきましては、最近港頭地区の保税地域における交通量が著増し、税関の取締りが困難となっているのに乗じて、密輸を行う事例が発生している実情に顧み、特に必要のある保税地域については、その管理者の意見をも聞いた上、外部との交通場所を指定することができることとしようとするものであります。  次に、輸出または輸入の規制につきましては、他の法令の規定により輸出または輸入ができないこととされている貨物に対しては、税関においてこれらの許可を与えないことを明らかにして、粗悪品輸出の防止等に資するとともに、外国貨物の輸入の許可前における引き取りの制度につきましては、これを貨物の性質等により早期引き取りがやむを得ないと認められる場合に限り認めることとして、この制度の適正な運用を期することとしようとするものであります。  また、開港の問題につきましては、最近の開港の実情に顧みまして、貿易実績の多い兵庫県の姫路港及び大分県の佐賀関港を新たに開港に追加するとともに、開港であるための基準を入出港船舶隻数と輸出入貨物との双方にかからせることに改めようとしておりますが、これにつきましては、現在実績の少い開港の事情をも考慮いたしまして、改正規定の適用を一年間猶予し、来年末までの実績を見ることとしております。  その他、税関長が指定した保税地域とその他の地域との交通場所を指定した場合は告示する等所要の規定の整備を行うこととしております。  以上が、製造たばこの定価の決定又は改定に関する法律の一部を改正する法律案外十二法律案の提案の理由及びその概要であります。何とぞ御審議の上、すみやかに御賛成下さいますようお願いいたします。
  4. 足鹿覺

    足鹿委員長 これにて提案理由の説明は終了いたしました。本案に対する質疑は次会に譲ることといたします。     —————————————
  5. 足鹿覺

    足鹿委員長 税制に関する件及び金融に関する件について調査を進めます。質疑の通告があります。これを許します。横山利秋君。
  6. 横山利秋

    ○横山委員 実は、ちょうど一年くらい前に本委員会で取り上げまして、国税庁に研究を依頼いたしました問題が二、三ありますので、この機会を利用して、その研究ぶりを御報告願いたいと思います。  といいますのは、第一に問題になりまして、理事会で満場一致あなたの方の善処を要望いたしたのですが、勤労所得と事業所得ないしは農業所得の合算の問題です。生計を一にして、日常の起居を同一にしておるという場合が、まず一番の問題でありますが、主人が工場へ行っておる、お母さんがたんぼをやっておる、ないしはお父さんがたんぼをやっておるという場合には、原則として今の基本通達では、当該事業に要する資金の調達をなし、その他当該事業経営の方針の決定について支配的影響力を有すると認められる人が何人であるかによって判定をするのだ、特に何人かわからなかったならば、生計を主宰しておると認められる者がその者であるとするという意味でありますから、原則的には、生計を一にして一緒に生活をしておれば、そこのうちの主人が家族のもうけたやつを全部背負いかぶって税金を払うのだ、合算して払うのだという原則に立っておるわけであります。これについて、一、二の例外が基本通達の中にあるわけではありますが、これは、私どもは明らかに所得税法の実質課税の原則に反しているのではないかという大原則から、研究を願ったわけです。しかも今度具体的に申し上げれば、あの当時一つの例示をいたしました。子供が鉄道へ行っておる、お母さんがたんぼをやっておる、たんぼの名義もお母さんであり、働いているのもお母さんである、農協との契約もお母さんである、にもかかわらず、磐田の税務署でありましたか、合算にいたしましたので、異議申請を出しておる。それが契機となって、続々と二十数件協議団へ異議申請が出たわけであります。これを例として本委員会で取り上げて、自民党の方からも、それは、単に農業所得ばかりでなく、事業所得についても同じような例が全国にあるのであるという見解の発表もありまして、あなたの方へこの総合的な検討を依頼したわけであります。しかるところ、じんぜん日をむなしゅうして、今や一年になんなんとしております。この間、実は直税部長からちょっと立ち話で承わったのでありますが、ほぼその研究の結果ができ上って参ったような話を聞きました。しかるところ、名古屋へ帰りまして、その異議申請の結果を聞いてみますと、ほとんどことごとく却下をしたと言う。私が例を出しましたものは、どういうかげんか、今なお保留してありますと言う。例を出したものだけ保留をして、自余のものは、二十八件のうちで十六件ばかりことごとく却下をしておる。一体何を研究しておるのか、どういう方針でやっておられるのか。その研究と、それから下部における異議申請の審査といかなる関係を持って研究しておられるのか、まことに不誠意千万な話だと私は考えるわけであります。この点については、一たん大蔵委員会で取り上げましたからには、少くとも期間を区切ってすみやかなる研究がされ、そうしてあの席上においては、重ねて善処するとかたく約束をされて、その中には、一つの原則すらも私どもに提示をされたのでありますから、当然それが短かい期間のうちに報告がされて、かかる事情になったということがなさるべきが当然と考えて、私は質疑をしておるわけであります。そういう意味におきまして、どういう結果に相なっておるか、具体的に一つ御答弁を願い、その御答弁によって、さらに私どもは意見を開陳したいと思います。
  7. 北島武雄

    ○北島政府委員 勤労所得と農業所得との合算について、従来から相当納税上事情があるように聞いておるのです。これは、先ほど横山先生がおっしゃったように、今までの所得税の基本通達が、とにかく原則として、事業に要する資金の調達をし、その他事業経営の方針の決定について支配的影響力を持っている方の所得とする。もしそれが何人であるかわからないときには、生計を主宰しておる者を、原則としてそういうふうに見るというような通達に基因しているわけであります。この通達にもいろいろ沿革があると思いますが、個々の、ことに農業所得給与所得の問題については、非常に多くの問題があると思います。ことに農村に参りますれば、御主人が小学校の先生、あるいは国鉄に勤めておる、奥さんは家でもって農業をされておる、こんな場合に、この通達によりますと、そのほとんど大部分が合算になりそうであります。しかし、これは先ほど申しましたように、実質課税の原則から申しまして、いかがかと思われるふしもございますので、国税庁におきましてその後鋭意研究を続けて参りましたが、最近ようやくある考え方に到達し得ましたので、さらにこれを練りまして、近く通達いたしたいと思います。その考え方を申し上げますと、生計を主宰しておられる方が会社、官庁、地方団体等に勤務いたしまして、主たる職務を持っておる。他方家庭にあって農耕に従事しておる農家の場合におきましては、かりに奥さんと仮定いたしますと、昔から奥さんが田畑について土地の所有権を持っておったり、あるいは耕作権を持っておったりすると、これはもちろん奥さんの所得と考えます。また奥さんがきわめて小規模に、ほとんど内職的に家庭にあって農業に従事しておるという場合におきましては、これは奥さんの所得と考えまして合算いたさない。それから、今度は主たる会社、官庁、地方団体に勤務する御主人の方にこういうような事情がある場合には、奥さんの方の所得と見る。その事情と申しますと、たとえば御主人が国鉄とか小学校に勤めておられて、主たる職業に専念されておるために、農業経営に関与できないと見る場合、それから農業に関する知識、経験が御主人にないために、農業経営に協力できないと認められる場合、それからまたかりに農業経営に関する知識が主人にあっても、勤務地が遠隔の地にあって、事実上農業経営に協力できない、こういった場合には、原則としてこれを奥さんの経営と見て、奥さんの所得とする、こういうふうに考えております。ただし、その農業の経営が相当大規模でありまして、農業の経営によって家計費の大部分をまかなうという程度が相当大きなものである場合は、やはり御主人のものと見ざるを得ないのではなかろうか、こんなふうに考えておるわけであります。親子の場合も、大体今言ったような考え方で構想を練っておりまして、そういった方針で通達いたしたい。これによりますれば、おそらく現在まで農業所得給与所得の合算について非常に多くの問題がありましたことも、その大部分が解消するのではなかろうか、こういうふうに考えております。
  8. 横山利秋

    ○横山委員 ただいまのお話によりますと、これは明らかに基本通達の一五九の前文ですね。前文をまず削除しなければいけないという考え方に立つわけです。前文が基本原則になっておりまして、まずだれかわからない場合においては、その事業に要する資金の調達をなし、経営の方針の決定について支配的影響力を有すると認められる者がだれかで判断をせよ、だれかわからない場合においては、その生計を主宰していると認められる者にしろ、これが原則である。その原則が現在の基本通達の一、二に書いてあるわけであります。今あなたのお話を聞けば、だれかわからない場合には、一家の主人にしろという基本原則をまず抹消して、そうして、かりにあなたの言葉を是とするならば、あなたのおっしゃったような趣旨を原則として、これでいくのだというふうにならなければならないと思うのでありますが、そういう意味でありますか。
  9. 北島武雄

    ○北島政府委員 この一五九を全然死文にするかどうかについては、たとえば農業所得以外の場合について言いますと、場合によっては問題があると思います。これは私の個々の感じでありますが、しかし少くとも生計を一にする親族間における農業経営者の判定については、別の通牒によってやる、この一五九の通達にかかわらずこれでやる、こういう考え方をいたしております。他の所得について、あるいは特殊の場合について、個々に書き分けることはむずかしいのじゃないかと思いますが、しかし、原則としては今言ったような考え方であろうと思います。
  10. 横山利秋

    ○横山委員 そうしますと、あの当時出たのは、給与所得と農業所得との分離の問題でありましたが、しかしまた別の角度から、たとえばたばこ屋さんについても同じことが言えるのではないか、奥さんがたばこ屋さんをやっておるという場合には、どうなるのかという意見も出ておったわけであります。この簡単なたばこ屋さんを例にとってみまして、そんなものは常識でもわかるのでありますが、当然留守番をしておる奥さんがたばこ屋さんをやるのであるから、それが一五九の基本通達と関連して、やはりここに問題が生ずるのではないか。  それから第二番目に、一五九はそのままにしておき、そうして勤労所得と農業所得だけは別な通達を出すとおっしゃるのもいかがなものであろうか。現在の一五九は、そのまま勤労所得と農業所得のことをうたっておるわけでありますが、その辺で、通達の出し方についてまた新しい疑義を生ずるのではないかと思います。これは技術的なことでありますから、直税部長からでもけっこうでありますが、明快な通達の出し方についての御説明を願っておいた方がよろしいかと思います。
  11. 北島武雄

    ○北島政府委員 ただいまの農業の経営者の判定についての通達は、農業に即して具体的に書いてありますので、これは、一般的に他の場合どういう書き方をしたらいいかということは問題があるわけでありまして、その点につきまして、他の所得との関係を十分考えて、他の所得においてはどういうふうにあるべきか、今言ったような農業所得、勤労所得の合算の場合と同じような思想でいった場合には、どういうふうになるかということを頭に入れまして、この一五九の通達を全面的に改正するかどうかということを一つ考えたいと思います。
  12. 横山利秋

    ○横山委員 それでは、まだはっきりきまっていないようでありますから、私は強く意見を付しておきたいと思うのであります。一五九の前段は、明らかに実質所得課税の原則に反しております。わからなければ、その主人がもうけたことにしろ、わからなければ、その事業の経営で支配的な影響力を持っておる者がもうけたことにしろ、それを全部積み重ねて税金をかけてしまえ、こういうむちゃな原則に立っているわけでありまして、これは、もう税法の建前からいって根本的に誤まりを犯しておる。従って、かりにこの合算の問題でなくとも、税法の基本原則からいって、これは削除さるべきだ、こういうふうに私は考えておるわけです。従いまして、今回の合算に関連をする問題について、一五九の前文を、ともかくこれを削除するか、あるいはこの問題には適用しないという建前を貫いて、明確に一つ措置をしていただきたい。私どもがかく言うのは、今日の農業所得と、それから勤労所得との不均衡はおおうべくもないからであります。これは、大蔵委員会でも何回も議論をされておるところでありますから、国税庁の皆さんも御存じの通りであります。特にこの合算をされる場合において、明確にこの不均衡が出てくるわけであります。お隣はお百姓さんで、一家そろって働いておられる。こちらの方は、だれかが工場か会社に行っている、そうしてうちが多少たんぼをやっているという場合に生じて参ります不均衡というものは、各農村において特に痛烈なるものがあるわけであります。それが各方面において異議申請となって現われてきておるのでありますから、せっかくこの改正をなさる場合においては、思い切って改正されんことを強く私は要望したいと思います。きょう具体的でないようですから、一つその成案ができましたら、すみやかに当委員会提出をして下さって、さらに検討をいたしまして、質問を継続したいと思います。  第二番目の懸案となっております問題は、退職課税の期間通算の問題であります。これはちょうど戦時中におきまして、軍需工場が敗戦によって一応大量の労働者を解雇いたしましたときに、涙金であるか、あるいは退職規定による退職金であるか、さだかでない、わからないままに、何がしかの金をもらって軍需工場から去っていった。ところがその軍需工場が、経済再建とともにさらに再雇用をいたしまして、そうしてその間多少のブランクがありましても、旧職員としてこれを処遇をし、そうしてある工場においては、前の期間とそれから再就職後の期間とを通算をし、そうして退職金の支給についても、新規採用の職員とは違った取扱いをし、またある会社においては、労働協約、賃金規定によってこれを締結しておるわけであります。ところが税法の段になりますと、これについてきびしい制限を加えておるわけであります。つまり前にもらった、敗戦のときに渡したお金が一体どういう金であるかはっきりしろ、こういうのであります。はっきりしようにも、当時敗戦の混乱の中で、それが一体どういう金であったか、会社もはっきりしないし、本人も何かさだかでない。そうするとあなたの方としては、それでは再雇用されたときに、前にもらった金を返したらいいではないか、そのときに返しておったならば、これは期間を通算してやる、こういうことであります。こんな知恵のあるような会社も、また銭のあるような労働者もあろうはずがありません。従いまして、会社において、あるいは労使間において、前後の期間を通算するとかたく契約をし、あるいは協約を結びながら、退職の際における在職期間というものは、戦後のわずか十年かそこらとして、税金が大量に引かれるわけであります。会社からもらう金は前後期間を通算し、税金はわずか十年としてしか引かれないのでありますから、格段の違いがあります。当時敗戦後といえども、細々経営をいたしておりました軍需工場に居残ったわずかの労働者だけは、前の期間も通算されるのでありますから、非常な違いがございます。この点を当委員会もやはり取り上げまして、あなたの方に検討を依頼したはずであります。これもまた一年になんなんたる深い御研究を続けていらっしゃるように思います。私は、こういうことはきわめて簡単なことであり、人数としても大したことでもございませんし、明らかにこれは戦後の混乱時において、もうアメリカ軍の上陸を前に控えて、多少の金を分けて、とにかく一応うちへ帰ってくれ、この後もし仕事が始まったら優先雇用するという状況にあった周知の問題でありますから、前にもらった金が幾らであるか、それはどういう性格のものであるかということをいつまでも言うことなくして、すみやかにこれは前後期間を通算するというふうに割り切ることが必要じゃないか。今日退職金制度についても、政府としては非常に新しい構想を立てておいでになるようでありますから、税法もこれと相マッチして格段の措置をとるべき必要があると痛感するわけであります。これも長期にわたる深い御研究の結果を聞きたいと思います。
  13. 金子一平

    ○金子説明員 お答え申し上げます。ただいまの問題は、非常に技術的な問題がからんで参りますゆえに、退職金の課税に関連して、全般的な問題として相当やっかいな問題もございました関係上、まだ結論は出しておりません。しかし勤続年数の通算を認めるような方向において研究を重ねておりますので、近く結論が出せる段階だと思います。出次第御報告を申し上げたいと思います。
  14. 横山利秋

    ○横山委員 はなはだ御答弁が甘いと思う。一体何を研究するんです。私は、全国における軍需工場の当時の実態をあなたの方が研究をなさるにしても、かくも長い時間はかからないと思う。またそれを調べても、実際問題としては、当時の軍需工場の帳簿が残っているとは思われません。現在残っておりますのは、労働協約もあるでありましょう、あるいは賃金規定として現在のものがあるかもしれません。しかし、私は思うのです、かりに現在労働協約で前後期間を通算するというふうに規定をいたしておりますところ、ないしはおらないところ、両方あっても、戦前及び戦後にわたってその規定に多少名称が変り、あるいは多少資本構成が変っても、一貫した一つの経営規模、経営の内容をもって継続しております工場の労働者に、期間を通算するということが一体いかなる支障があるのであるか、一体いかなる調査が必要であるのか、今後一体どれくらいの日数がかかるものであるのか、一体何をこれからなさろうとしているのか、それを一つ明らかにしていただきたい。
  15. 金子一平

    ○金子説明員 あるいは今月中には結論が出せるかと思います。今お話しのように、従来から退職金の取扱いの問題につきましては、非常にやかましい取扱いをいたして参りまして、その例外を設けるということになりますと、やはり相当慎重にいろいろの事例の場合も考慮してやらなければいかぬというようなことで、はなはだ申しわけないことでありますが、おくれたわけです。御了承願います。
  16. 横山利秋

    ○横山委員 今のあなたのお話では、前後期間を通算するという原則に立って今月中に結論づけたい、こういうお話でありますから、原則的にこれを了承いたします。ただ、これも記録に残ってあとで議論になるといけませんから、念のために申し上げておきますが、私の提起をいたしておりますのは、今のところ、敗戦に伴い解雇された労働者が、若干の期間を置いてその同一の工場、名称はあるいは多少違うかもしれません、業務内容も多少違うかもしれませんが、同じ系統の工場に再就職をした場合、これについては、当時もらったお金がいかなる性格のものであるかについては、この際議論をせず、これを継続すべきである、簡単にいいますと、そういうことであります。先ほど申しましたことを整理して申しますと、そういうことであります。それについて、期間を通算をする方法において今月中に成案を得る、こういうことでございます。間違いありませんね——。それでは、その点につきましても、具体的な通達が出ましてから、さらに継続してお尋ね申し上げます。  もう一つ二つこまかい問題があります。これは、さらにさかのぼれば二年前になるわけでありますが、あなたの方に御検討をお願いして、また長期の検討をお願いしておるわけでありますが、夜間全国で働いております労働者の現物給与の問題であります。当時シナそば法案としてこの国会に上程がされまして、現行のものでいきますと、一カ月七百円ぐらい現物給与をしたものにつきましては、これは課税をしない、こういうことになっております。しかしこの七百円が定まりましたのは、たしか昭和二十六年くらいだったと思います。もっと前かもしれません。自来あらゆる物価も上り、税法の具体的な金額もそれぞれの条項で上っておりますのに、この七百円ばかりだけはいささかも上っていないのであります。交通費の方もまた同様でありまして、これは一体何としたことであろうか。政府の方は、今回国家公務員に、人事院勧告を了承して交通費を支給する、こういう法案を国会に出されるような趣きを新聞で承知をいたしておるわけであります。しかりといたしまするならば、交通費に対するものの考え方は、政府側としても、相当大幅に見解を変えられて参ったと思います。当時私が七百円の問題を列挙いたしました際には、現物給与を受けておる人と受けていない人との比較上、なかなかこれが踏み切れないのだ——私は七百円を二千円にしろ、三千円にしろと言っておるのではありません。少くとも物価にスライドして千円なり千二百円ぐらいに上げたらどうかと言っておったわけでありますが、それが他との均衡上とおっしゃっておられた。政府が今回交通費を国家公務員に全般的に支給するという決意をされたとするならば、国税庁が今日まで持って参りましたこの七百円に対する論拠というものは、明らかに基礎が崩壊をしたと思わざるを得ないのであります。従って、この際すなおに七百円についての再検討をなさるべき当然の段階であると思うのでありますが、いかがなものでありましょうか。月七百円と申しますと、毎晩徹夜をする労働者はありませんから、せいぜいまあ一カ月に七日か十日であります。十日といたしまして、一晩七十円、これはシナそば一ぱいであるから、シナそば一ぱいにも税金をかける、こういうわけです。夜の夜中に徹夜をして仕事をしております人々には、看護婦あり、警察官あり、鉄道労働者あり、あるいは溶鉱炉の火を消さない産業労働者あり、全くその人々の仕事というものは、他の人をもってかえることもできず、しかも肉体と精神とを摩消して働いておる労働者であります。それらの働いておる人々に対するわずかな現物給与が、七百円までしか税金がかからぬということは、これはもう古いのであります。この際、一つ七百円の金額を進めるべき条件と時期が成熟してきておると思いますが、いかがなものでありますか。
  17. 北島武雄

    ○北島政府委員 現在の所得税法に関する基本通達は、御指摘のように、だいぶ昔に作られたものであります。現在の実情に合わない点をちょこちょこ私も見受けております。それにつきましては、全般の改正の一環といたしまして、ただいまお話のようなことも十分再検討いたしたいと思います。
  18. 横山利秋

    ○横山委員 私は、長官が率直に再検討をされるというお話で、従来の長官とは、非常に違ったところであると思います。これは、率直に私申し上げておきたいと思いますが、もののかわり目というものをはっきりいたさなければなりません。従来の長官は、せっかくでありますが、今日としてはいたしかねるということでありました。北島さんは、十分に検討をして善処したいというお話であります。明らかにこの七百円の問題は、二年をたどってようやく第一歩を踏み出したものであると思うのであります。  そこで再検討の方法であります。これは、具体的にやっていただかなければなりませんから、七百円が幾らで妥当であるかということは、まず第一に、当時きまったときの状況から今日までの物価の推移、それから他との関連、交通費を支給するという政府の基本方針との調整等が必要であります。北鳥さんにお伺いをいたしますが、御検討はどういう方法で、いつごろこれを実現をして下さるのでありましょうか、事は簡単であります。そこで、所得税の方の御大が笑っているようでありますが、あの人は前から検討をしているのであります。今あなたが、大体このくらいだというふうに考えれば、直ちにそろばんが出てくるようになっているわけであります。私もいささか資料を持っているのであります、お差しつかえなければ、直ちに私はあなたに差し上げたいような資料がそろっているわけであります。これは、一年は絶対にかかりません、一カ月もかかりません、わずか一週間ぐらいで検討が可能であると思います。その点の、善処される時期的判断と、私どもが検討ができるのはいつごろであるか、お伺いをいたしたいと思います。
  19. 北島武雄

    ○北島政府委員 さしあたり現物給だけについて取り上げてどうこうするか、あるいはまた所得税法の基本通達の工合の悪いところもちょこちょこ見まして、それとの関連においてするか、私の今の気持は後者の方なのですが、現在の基本通達で、もうすでに死文に化しているようなものもちょこちょこ見受けられます、現在の事態に合わないものも中にはある。そういうものの一環として、ただいまお話しのようなことも検討したいと考えているわけでありまして、今直ちに現物給だけ切り離してどうこうするということは、今のところは、私ちょっとふん切りがついておりません。
  20. 横山利秋

    ○横山委員 きわめて意外なことを承わります。先ほどあなたは、基本通達もすぐに改正をするとおっしゃる、あるいは合算所得についても、今月中には改正をされるとおっしゃるわけでありますから、それと同じにやるならば、問題は一週間ぐらいでありますから、今月中に当然基本通達の改正が出ることになるでありましょう。それだったら、一緒にやれないことはないと思うのでありますが、いかがですか。
  21. 北島武雄

    ○北島政府委員 非常におそいとおしかりを受けましたものの、とにかく農業所得と勤労所得の合算につきまして約一年もかかっているわけであります。この所得税法の基本通達の全般にわたりまして、その不合理な点を再検討し、直すとなると、やはりちょっと今月中というわけには参りかねると思います。できるだけ私のフレッシュなうちに、新しい目でもって見まして、不合理な点を直したいと思います。その程度で一つよろしくお願い申し上げます。
  22. 横山利秋

    ○横山委員 ちょっと、私聞き違いかもしれませんが、合算と退職の通達は、先ほどのお話によりますと、基本通達を改正する案が今月中に実行に移されるというふうに聞きましたが、これは誤まりですか。
  23. 北島武雄

    ○北島政府委員 ただいまの農業所得、勤労所得の合算の問題、あるいは退職給与に対する期間通算の問題などは、個別、別途の通達でありまして、その基本通達の中の一部についての改正でありますから、そのあと現物給与についてすぐ追ってやるかどうかにつきましては、もう少しほかとの全体のバランスを見ましてからいたしたい、こう考えております。
  24. 横山利秋

    ○横山委員 あまり押し問答をすると、時間がかかって恐縮なんですが、何か長官非常にむずかしくお考えになるのでありますが、事はきわめて簡単な問題であります。文章としても、七百円というのを、ちょっと数字を変えれば済む話であります。別に深い検討は必要ない。こういう基本通達の一五九のようにややこしい文章ではない。しかもあなたは、前の退職金との合算については、基本通達の改正は別の通達として出すとおっしゃるのでありますから、その末尾に、カッコ七百円をカッコ千何ぼにするということで話は済むのであります。これは、決して私はむずかしい問題とは思いませんから、さらに機会をあらためて十分に御説明をいたしたいと思うのでありますが、格別にこれは慎重にお取扱いなさらんことを、私はお勧めをしておきたいと思います。  最後に、もう一つだけ聞いておきたいと思います。それは、この間の税務執行委員会におきまして取り上げられた問題で、直税部長御存じでありますが、大阪の納税協会について御報告があるべき段階になっておりますから、この機会をかりて御報告を願いたいと思う。私どもが当時指摘をいたしました点は、大阪の納税協会が、民間団体であるにかかわらず、役所の電話、役所の事務所を使い、それから公務員であります税務署長と連名をして、本ですか帳簿ですか、そういうものを売る。あるいは税務執行についての連名の書面を出すというような事実が公けに開陳をされましたので、この点につきまして、すみやかにあなたの方で御調査を願い、適当な機会に本委員会に報告をされるということになっておりましたが、いかがなっておりましたか、御報告願いたいと思います。
  25. 北島武雄

    ○北島政府委員 前回の小委員会で御指摘がございました。直ちに調査したのでございますが、実は、私手元に持ってこなかったので、そらで申し上げることは、ちょっと場合によって間違ったお答えをするかもしれませんので、次会に申し上げます。
  26. 横山利秋

    ○横山委員 本件は、形に現われたことは、私が今申したことでありますが、形に現われざる問題を含んでおるわけであります。従いまして、今正確な資料がないとなれば、次会にいただくのでありますが、単に形に現われたその件をどうするかということにお取り過ごしになりますと、問題がかなり発展をいたします。その点十分お含みの上、次会に報告を願いたいと思います。これで私の質問を終ります。
  27. 足鹿覺

    足鹿委員長 石村英雄君。
  28. 石村英雄

    ○石村委員 ごく簡単に。これもだいぶ古いことですが、渡邊さんが長官時代に、例の法人成りとかなんとか大蔵省は言っていらっしゃるのですが、中小企業なんかが、個人営業であったやつが法人になるということが非常に盛んに行われておるのですが、その場合に、税務署が行為否認をなさる。その行為否認をなさる例として当時の渡邊さんにお尋ねしたのは、小さな商売かもしれませんが、とにかく法人になったら社長になる。そうすると、その社長の給料が、お前のところはそれは高過ぎると言って、うんと下げて、給与として認めない。こういうやり方をなさっていらっしゃるようですから、一体国税庁は、行為否認をなさる場合に、何か基準があるのかと聞きましたら、渡邊長官は、基準はないとおっしゃった。基準はないかもしれないが、しかし実際各税務署は、その行為否認を盛んにやっておる。そこで、実際どのような行為否認を給料についてやったか、調べて報告をして下さい、こうお願いをしておいた。渡邊長官は、それは調べます、こういうことだったのですが、まだ、調べられたと思うのですけれども、御報告はないわけですので、一つその報告を至急にやっていただきたい、こう考えております。
  29. 金子一平

    ○金子説明員 お答え申し上げます。ただいまのお話は、同族会社の行為計算の否認の一事例としての給与の否認だと思いますが、これは、国税庁といたしましては、一般的基準を設けておりません。給与の否認は、結局法人の規模なりあるいは営業の状況なり、同じような会社とのバランスを見て、果して適正であるかどうかということで、否認をするなり、あるいは是認をするなりしなければならないわけでございますので、一般的な基準を設けるというような気持は全然持っておりません。結局各局にまかしておるわけでございます。お話のこのケースは、各局によってまちまちだと思いますが、早急に取りそろえて御報告を申し上げたいと思います。
  30. 石村英雄

    ○石村委員 この点は、非常に非常識な否認が行われておるから言うのです。あの行為否認の法文の問題だと思うのですが、しかし一方では、非常識な給料を取るというやり方もないとはいえないのですから、まあ行為否認の条項も必要かもしれませんが、その運用はよほど慎重でなければならぬ。ところが、実態は非常に非常識な、お前のところの給料は五千円でいいとか七千円でいいとかいうような、とてもそれでは飯も食えないような給料に引き下げてやっておるという例を聞いたから長官にお尋ねした。長官は、その後の話によると、ある程度お調べになったようです。それは公式な席での話でないから申し上げませんが、お調べになった結果を、一つ公表していただきたいということなのです。
  31. 金子一平

    ○金子説明員 各局まちまちな、しかも過酷な否認をやっているというお話でございますが、中には、そういった例もあろうかと思いますけれども、私どもの指導といたしましては、先ほど申しましたような、各会社の実情に応じたような見方をするようにということで注意をいたして参っております。なお、お話しのございました資料は、取りそろえまして後刻御報告申し上げます。
  32. 石村英雄

    ○石村委員 今の行為否認の問題ですが。ただいま渡邊長官との報告問題を申し上げたのですが、新長官に、さらにこの行為否認のことでお尋ねいたしますが、こういう例があるのです。それは、やはり今申しましたような会社で、年度末に現金が不足して、社長に対する給料が払えないという事態が起るわけなんです。もちろん会社のことですから、黒字になっても、現金がなければ払えないということがある。そうすると、その社長さんが他に所得があって、赤字で、現金がないために、その会社の社長としての給料をもらえずに翌年度に繰り越す、こういうことが行われると、税務署が参りまして、お前は、その給料をもらわぬでも飯を食ったのだから、その一カ月分の給料は給料として認めない、つまり一二カ月分を十一カ月分の給料にしてしまう、こういう例があると伝えられておるわけです。そこで、そういう例になったものは、これから先は、金がないときには、銀行からでも金を借りてきて自分の給料をもらっておいた方が得だ。こういう取扱いがあるようです。これなんか、一体どうお考えですか。きわめて僕は、これこそ非常識きわまる取扱いであると思うのです。
  33. 北島武雄

    ○北島政府委員 私も今のお話を承わりまして、よもやそういうことはあるまいかと思いますが、しかしもしありますれば、そういうことは厳重にやめさせます。あとでまた具体的な事例を承わりまして、善処いたします。
  34. 石村英雄

    ○石村委員 私も、長官がそんな非常識なことを指示されるとは考えない。ところが、実際地方の税務署には、そういうことが非常に多いわけです。さっきの給料の問題でも、あなた方は、他のそういう同程度の規模の会社とか、いろいろそういうことを見て給料は査定する、こうおっしゃるのですが、実際は、非常に非常識な扱いがされておるわけです。今の十二カ月の給料を十一カ月分にしてしまうというのも非常識な例ですが、いま一つは、旅費を否認するという問題も出てくる。たとえばある小さな町の化粧品店を御主人と奥さんで経営していらっしゃる、それが会社になっておる、主人と奥さんが東京なり大阪に仕入れに来る、化粧品のような婦人に関係する商売ですから、やはり奥さんも出てきて、いろいろ店の経営方法とか陳列とか何とかも、やはり婦人の感覚で見なければならぬ。いろいろ相談相手にもならなければならぬというので、夫婦で出張してくると、夫婦の出張は認められない、主人だけの旅費を認める。もし他の店員を連れて来たのなら認めるが、奥さんならこれは認めないというようなことがやられておるわけです。夫婦連れだから遊びに出たのだろうという推定も成り立つのですが、しかし商売が、そういう婦人の感覚の必要な商売をしておるというときには、夫婦で仕入れに出てきて、いろいろ他の商店、東京銀座のハイカラな店も調べるということが当然あると思うのです。それを、夫婦であったら認めない、店員だったら認める。こういうやり方もきわめて非常識だと思うのです。そういうことが行われておるわけですが、やはりこの点、国税庁長官の方針は、夫婦なら認めない、こういうことですか。
  35. 北島武雄

    ○北島政府委員 夫婦なら必ず認めないということはないと思います。しかし、これは時と場合によりけりで、具体的な事例によってまたそれぞれ考えなければいかぬ問題じゃなかろうか、夫婦で来たのをすべていかぬということも、一がいには言えぬと思います。
  36. 石村英雄

    ○石村委員 もちろん、そんなことを言えば切りがないので、お役人さんが出張される、ところが行ったらごちそうとか見物だけして、何も出張の用事はなかったというようなこともあるのです。一体そんなのは出張ではないじゃないかということも起り得るわけです。そんなこともあり得るというので否認されちゃたまらないと思うのです。税務署は何を根拠で——そのときの夫婦の出張について歩いて、あのときは仕入れをしなかった、研究をしなかったから否認するというような、そんな具体的な証拠が一体ありますか。ありっこない。最後になって、このときの出張は夫婦連れだから、一人分しか出張旅費としては認めない、こういうやり方をなさる。こういうやり方をされるのは、どちらかといえばその店がしっかりして、帳簿がしっかりしていて、あらを探そうとして行ってみてもあらがないから、苦しまぎれに作り出されるあらなんです。そうして、これを否認したからと言ってお帰りになる。これは、国税庁長官に考えていただきたい税務行政の上で非常に大事なことだと思うのです。帳簿をちゃんと正確につけて、つけ落しのないようにしていると、欠点がないからいかぬというので、どこかから欠点を無理やりしぼり出して、税金をよけい取って手柄にしようという考えが、地方にはないとは言えない。苦しまぎれにそういう非常識なことを、何らの根拠なしにやる。そして、そういうこともあり得るじゃないか。それは確かにあり得るが、あり得るからといって、根拠なしに否認をするということは、これは間違いじゃないか。これは、長官として地方の税務署の職員に対する指導の問題に関係してくると思う。そんなことがいいとあなたはお考えになっていらっしゃるとは思わないが、ところが現実には、そういうことで無理やりにあらを探し出す。これは作り上げたあらである。それは根拠も何もない。ちょうど松川事件のように、汽車をひっくり返すこともあり得るというので死刑にしたりなんかするのと同じように、蓋然性を持っていない。この点、長官として、地方の税務署の職員をどのように指導されるか、その基本的な考えをお話し願いたい。
  37. 北島武雄

    ○北島政府委員 これは、なかなかむずかしい問題でございまして、えてして調査能力のない税務官吏は、帳簿上否認ができないと、往々にしてそういうような無理な否認をするということがあります。一つの現象を取り上げて、考えて無理な否認をするということは、全体としてしない方がいい、やはり調査能力を税務署の者が十分につけまして、そして具体的に帳簿上から正当な否認をやっていくということが建前だと思います。いやしくも江戸のかたきを長崎で討っとか、帳簿でわからないが、少くとももっとありそうだというので、一番目につきやすいところへ持っていって否認するというようなことは、やはり避けるべきであると思います。私どももそういう気持で指導して参っておるつもりであります。
  38. 足鹿覺

    足鹿委員長 本日はこの程度にとどめ、次会は来たる十一日午前十時三十分より開会することとし、これにて散会いたします。     午後零時二十八分散会