運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1958-04-15 第28回国会 衆議院 社会労働委員会 第38号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年四月十五日(火曜日)     午前十時五十七分開議  出席委員    委員長 森山 欽司君    理事 大坪 保雄君 理事 田中 正巳君    理事 八田 貞義君 理事 滝井 義高君    理事 八木 一男君       小川 半次君    大橋 武夫君       亀山 孝一君    小島 徹三君       中山 マサ君    古川 丈吉君       赤松  勇君    井堀 繁雄君       受田 新吉君    岡本 隆一君       五島 虎雄君    多賀谷真稔君       中原 健次君    長谷川 保君       山花 秀雄君    吉川 兼光君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 堀木 鎌三君         労 働 大 臣 石田 博英君  出席政府委員         厚生事務官         (引揚援護局         長)      河野 鎭雄君         労働事務官         (職業安定局         長)      百田 正弘君  委員外出席者         専  門  員 川井 章知君     ————————————— 四月十二日  委員亀山孝一辞任につき、その補欠として高  碕達之助君が議長指名委員に選任された。 同日  委員高碕達之助辞任につき、その補欠として  亀山孝一君が議長指名委員に選任された。 同月十五日  委員受田新吉辞任につき、その補欠として石  村英雄君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 四月十一日  日雇労働者生活保障に関する請願石坂繁君  紹介)(第二九二五号)  生活保護法基準額引上げ等に関する請願(田  中彰治紹介)(第二九二六号)  国民健康保険法助産給付に関する請願橋本  龍伍紹介)(第二九二七号)  最低賃金法及び家内労働法社会党案成立促進に  関する請願阿部五郎紹介)(第二九五八  号)  同(赤松勇紹介)(第二九五九号)  同(足鹿覺紹介)(第二九六〇号)  同(淺沼稻次郎紹介)(第二九六一号)  同(石山權作君紹介)(第二九六二号)  同(井堀繁雄紹介)(第二九六三号)  同(今村等紹介)(第二九六四号)  同(稻村隆一君紹介)(第二九六五号)  同(風見章紹介)(第二九六六号)  同(片島港君紹介)(第二九六七号)  同(北山愛郎紹介)(第二九六八号)  同(高津正道紹介)(第二九六九号)  同(木下哲紹介)(第二九七〇号)  同(小牧次生紹介)(第二九七一号)  同(佐々木更三君紹介)(第二九七二号)  同(下川儀太郎紹介)(第二九七三号)  同(田中織之進君紹介)(第二九七四号)  同(堂森芳夫紹介)(第二九七五号)  同(中井徳次郎紹介)(第二九七六号)  同(平田ヒデ紹介)(第二九七七号)  同(細迫兼光紹介)(第二九七八号)  同(三鍋義三紹介)(第二九七九号)  同(八木一男紹介)(第二九八〇号)  同(八木昇紹介)(第二九八一号)  同(矢尾喜三郎紹介)(第二九八二号)  同(安平鹿一君紹介)(第二九八三号)  同(和田博雄紹介)(第二九八四号)  引揚者給付金等支給法の一部改正に関する請願  外七件(橋本龍伍紹介)(第二九八五号)  同(永田亮一紹介)(第三〇〇五号)  国民年金制度創設に関する請願關谷勝利君紹  介)(第三〇〇四号)  活性酸素利用による健康保持に関する請願(長  谷川四郎紹介)(第三〇二四号)  養老年金支給に関する請願濱野清吾紹介)  (第三〇二五号)  民間電気治療営業禁止反対に関する請願外三件  (受田新吉紹介)(第三〇六二号)  地方衛生研究所法制定に関する請願臼井莊一  君紹介)(第三〇六三号)  薬事法改正に関する請願五島虎雄紹介)(  第三〇六四号)  医業類似行為既存業者業務存続に関する請願  (細田綱吉紹介)(第三〇六五号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  最低賃金法案内閣提出)外二件について公述  人選定の件      ————◇—————
  2. 森山欽司

    森山委員長 これより会議を開きます。  去る七日当委員会に付託になりました失業保険法の一部を改正する法律案を議題とし、審査に入ります。政府より趣旨の説明を聴取することといたします。石田労務大臣。     —————————————     —————————————
  3. 石田博英

    石田国務大臣 失業保険法の一部を改正する法律案提案理由を御説明申し上げます。  現行失業保険法におきましては、五人未満労働者を雇用する小規模の事業主については、これを強制適用とすることなく、失業保険への加入任意といたしております。  現在、雇用労働者五人未満事業所は約百十万、労働者数約二百二十万人と推定いたしておりますが、このうち失業保険加入している事業所は約四万、被保険者数は約九万人でありますので、大多数の小規模の事業主に雇用される労働者はまだ失業保険制度の恩典に浴していないわけであります。  これらの労働者失業保険の被保険者とし、その福祉の増進をはかることは強く要請されるところでありますが、一挙に強制適用とすることは現状から見て困難でありますので、当面は現行法上の任意加入制度を活用し、任意加入促進により強制適用の基盤を醸成して参りたいと存じます。しかし、小規模の事業主は、事業経営に伴う一切の事務をみずから処理している例が多く、さらに失業保険に関する事務をみずから行うことは無理なものが多いと考えられますので、その事務手続について簡素化するよう失業保険法について所要改正を行い、これらの小規模の事業主に雇用される労働者失業保険加入できるようにいたしたいと存じます。  次に、失業保険法の施行以来今日まで十年余を経たのでありますが、この間、政府関係職員を鞭励し、適用事業所の把握に鋭意努力して参ったのであります。しかしながら、現実には、当然適用事業所でありながら適用漏れとなっているものもまだ相当数あると推定されますので、この点についても所要改正を行い、これら適用漏れ事業所雇用労働者現実に法の保護を受けることができるようにいたしたいと存じます。  また、この機会に、保険料等徴収に関する諸規定を整備し、失業保険事業の一そう円滑な運営をはかって参る所存であります。  これがこの法律案を提出いたした理由でありますが、次にその概要を御説明申し上げます。  第一に、雇用労働者五人未満事業主に雇用される被保険者に関する特例についてであります。  まず、保険料及び失業保険金の額の算定の基礎として特定賃金月額制度を新たに設けたことであります。現行制度におきましては、保険料及び失業保険金の額を算定するに当っては、事業主労働者に支払う賃金総額に基いて行なっておりますが、毎月の賃金総額には、異同が生ずるのが通常でありますから、事業主保険料納付するには、毎月、労働者に支払った賃金総額保険料率を乗じて保険料額を計算するとともに、被保険者の負担する保険料額についても、毎月計算する必要があります。この方法は小規模の事業主事務能力から見て煩瑣となりますので、各被保険者ごとに、過去六月間の賃金総額に基いて特定賃金月額を決定し、その後一年間は、この特定賃金月額基礎として計算した一定額保険料納付することができる道を開いたのであります。  次に、現行法では保険料は、毎月納付することとなっておりますが、小規模の事業主については、政府の承認を受けて三カ月ごとに年四回の納期とする特例取扱いの道を開きました。  第二に、失業保険事務組合制度を設けたことであります。すなわち、事業協同組合等事業主団体は、労働大臣の認可を受けて、その団体構成員である事業主のために、被保険者資格得喪に関する届出、保険料納付等失業保険に関する事項をこれらの事業主にかわって処理することができることとし、この場合における事業主失業保険事務組合との責任を明確にいたすとともに、保険料納付が著しく良好な失業保険事務組合に対しては、報奨金を交付することといたしました。  第三に、適用漏れ事業主に対する適用促進のための措置についてであります。現行制度において適用漏れ事業主が発見されますと、二年前まで遡及適用され、その二年前までの保険料及び追徴金を納付しなければならないことになっておりますが、適用促進をはかるため特に今後約五年間すなわち昭和三十八年三月末日までは、遡及適用期間を一年間に短縮し、一年以前の期間については保険料徴収しないことにいたしました。  第四に、労働者失業保険任意加入を希望する旨を申し出た場合等に、事業主がその労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをすることを禁止する規定を設け、労働者保護に万全を期することといたしました。  最後に、保険料等徴収に関する諸規定を整備することとし、被相続人保険料納付義務相続人に承継されることを明確にする等、他の社会保険におけると同様の諸規定を設けるとともに、遡及適用により徴収決定された保険料額納付については、一時に納付することが困難な場合には、納期を、一年を限度として延長し、かつ、分割納付することができるようにいたしました。また、延滞金徴収しない限度額は、従来十円未満であったのを、百円未満に引き上げ、かつ、延滞金に百円未満の端数があるときはこれを切り捨てることといたしたのであります。  以上が今次改正の主眼とするところでありますが、このほか必要な条文の整備を行い、一そう適正な法の運用をはかりたいと存ずる次第であります。  何とぞ御審議の上すみやかに可決せられますようお願い申し上げます。     —————————————
  4. 森山欽司

    森山委員長 次に、内閣提出戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案を議題し、審査を進めます。質疑を許します。滝井義高君。
  5. 滝井義高

    滝井委員 戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案について、直接法案関係のある一、二の点から、先に御質問させていただきたいと思います。  まず第一に、今まで遺族年金が三万五千二百四十五円であったものが、五万一千円になったわけです。一体三万五千二百四十五円を五万一千円に引き上げた、何か科学的な根拠でもあって、五万一千円に引き上げられたのか、これを一つ説明願いたいと思います。
  6. 河野鎭雄

    河野政府委員 従来、遺族援護法における遺族年金の額は、恩給法における公務扶助料の兵の額に合わせてきめておったわけでありますが、今回恩給法改正に伴いまして、公務扶助料の額を引き上げるようにいたしたいというような意向で、今国会に提案されている次第でございますが、それと平仄を合せる意味合いにおきまして援護法改正をいたしたい、かように考えている次第でございます。ただその額でございますが、公務扶助料におきましては、今回御承知のように五万三千二百円になったわけでございます。これは、私ども承知いたしておりますところでは、仮定俸給ベースを一万五千円に引き上げて、三十五・五の倍率をかける、こういうふうなことでそういう額がきまったわけであります。援護法対象といたしておりますのは、御承知のように軍人というよりは、むしろ軍属対象として考えているわけであります。この軍属と申しますと、いずれかといえば、これは文官的な性格を持つものであろと思います。今回の恩給法改正におきましても、文官の増額の度合いが、軍人差別を設けておるように承知をいたしておるわけであります。ごと文官戦闘公務普通公務とを区別をしてそれぞれ定められておるように承知をいたしておるわけでございます。軍属の場合におきましては、その差別をすることが非常に困難でございますので、従来もこれを一括してきめておるわけでございますが、そういたしますと、文官との均衡を考えまして直ちに兵の公務扶助料をそのまま持ってくるというふうなことは必ずしも妥当ではないということで、文官の場合における普通公務扶助料の場合と、戦闘公務の場合との中間をとって——倍率に直してみますとちょうど三十四割ということになるわけでございますが、その中間をとった二十四割というふうなことで計算をいたしました額が五万一千円、こういうふうになるわけでございます。
  7. 滝井義高

    滝井委員 今まで三万五千二百四十五円という遺族年金公務扶助料の額と同じであったわけです。ところが今回の改正遺族年金だけが五万一千円になって、恩給法公務扶助料は五万三千二百円、こうなったわけですね。今の御説明軍属文官に非常に似通っているのだ、従って兵は公務扶助料では三十五・五だが戦闘公務普通公務との平均数値は三十四割くらいだから三十四割くらいにすると五万一千円になるのだ、簡単に言うとこういう御説明なのですね。そうすると一体今までの出発点が三万五千二百四十五円と一緒であったかということなんです。昭和二十八年ですかに恩給法が復活したときには同じスタートに立っておったものが、それから二十八、二十九、三十、三十一、三十二、三十三と六年の年月が経過したら、今度は軍人軍属との差ができるというのはおかしいと思うのです。そういう差をつけることになるからこそ、どうも軍人恩給をやると軍国主義の思想をあおるのじゃないか、こういう考え方になってくるわけなんですね。これはやはり出発点が同じであったならば終局点も同じにしておくべきだと思うのです。同じ命を国にささげたという点については変らぬと思うのです。命に高下の差別はないと思うのです。従って私はどうもその点今の理由だけでは少し理論的にいっても納得のいかない点がある。そうしますと軍人だけが非常によくて文官が悪い、こういうことになると上薄下厚精神でいったのだという精神にも反するのです。それは軍属であろうと軍人であろうと少つくとも上と下との間に階級の差は今までついておったから、一挙に縮めることは無理にしても、少くともほとんど同じところのものはスタートが同じであったのだから、同じにしても差しつかえないのじゃなないか。それを今回に限って同じスタートなのに二千二百円違うことになるわけです。その差をつけるということ、わずかに二千二百円なんですから、その差をつける理論的な根拠も今のままではどうも不十分だと私は思うのです。もしそういうつけ方をやるとすれば、三十五・五ではいかぬ。四十割にすべきだ、こういう議論になってくると思うのです。やはり遺族年金公務扶助料を同じにしなければならぬ。もしそれがどうしても予算上できなかったというなら、三百億というつまみ金で問題を片づけようとして、三百億というワクを先に出したために、結局逆算をしてそうならざるを得なかったという御説明では理屈は成り立たぬけれども、予算から締められてこうなったというならば一つ納得のいく点なのだ。今の御説明と同じように、軍属文官と似ているから文官にさや寄せしたのだ、こうなると今度は援護法対象遺族からまた運動が起りまして、そして軍人と不均衡じゃないか、兵とわれわれとは出発点が同じであったものを二千二百円違うのはけしからぬという運動が必らず起りますよ。だからその点もう少し納得のいく御説明を得たいと思うのです。今の御説明ではどうも科学的じゃないですよ。
  8. 河野鎭雄

    河野政府委員 兵隊の場合と軍属の場合とは勤務態様が必ずしも同じに考えられないという点が一つあるわけでございますが、今回の恩給法改正というものが、同じときに勤務をしておった文官と不均衡であるというふうなところに出発してきたように承知をいたしておるわけでありますが、文官の方はむしろ従来の兵の公務扶助料よりも高いところにあったわけです。その文官軍属との均衡の問題はむしろなかったと申しますか、軍属の方が高過ぎるというふうな問題はなかったわけでございます。今度は軍人恩給改正によりまして、同じときに勤務しておって戦闘公務でなくなられた文官の方々と同じところまで引き上げられるというふうなことになりましたので、軍属につきましても文官との均衡ということを新たに考えなければならない点が出て参ったと思うのでございます。文官の方で、たとえば遺族援護法対象としております軍属雇用人軍属でございますが、判任文官たる人は恩給を受けるわけでございます。恩給を受ける判任文官の人よりも雇用人軍属を優遇するということはむしろ筋が立たないことになるわけでございますので、その辺の均衡を考えまして、先ほどお答え申し上げましたような線できめることにいたした次第でございます。
  9. 滝井義高

    滝井委員 今まで出発点が同じであったのですから、いろいろ理屈はつくと思いますが、やはり恩給とか遺族年金等に対する国民感情は終戦の後はやはり二十八年のときの方が今よりもっと強かったと思う。今は戦後十三年になっておりますから幾分社会保障をやれという世論が出ておりますことは、いろいろその処遇について国民のものの考え方が徐々に変ってきておるものだと私は考えております。ところがその変ってきておりますときに、また政府がここに差別をつけるということは結局問題を政府自身が先に延ばすというか、種をまく形を作っておることになると思う。少つくとも社会保障精神というものは、やはりある程度均衡を保ってほんとうの戦争の犠牲者に国の恩恵を平均に与えていこうという精神だと思うのです。それが二十八年のときには何も問題なく三万五千二百四十五円と均衡を保っておったものを、今度は政府自身均衡を破ったのですから問題をまいているのです。社会保障と逆行する形に終っていると思う。従ってこういう点は大臣もおいででありますが、よほどこれは考えてもらわなければならぬと思うのです。  そこで一体そういうものの考え方でいくならば、今後政府年金をお作りになり厚生省はいろいろ年金の案を出されておりまして、政府は今年中には調査をして三十四年ごろからは年金をやりたいという気持を持っておられるようでありますが、三十四年からは確実にやるとは言明しておられないようでありますが、やるようなお考えのようであります。そうしますと岸さんは国民年金にだんだん切りかえていくんだとおっしゃっているが、切りかえていく場合にも、軍人軍属と準軍属文官と今年金適用対象になっていない、いわゆる独立自営農民中小企業諸君、こういう者を年金に入れれば一体今のような段階をつけるのかということです。年金をやる場合には一番先に軍人を優遇する。その次に軍属を優遇する。その次には準軍属、その次には文官、その次には独立自営農民中小企業だ、こういうことに年金の構想というのはなっていくのかということです。大臣、これを一つお尋ねしたい。
  10. 堀木鎌三

    堀木国務大臣 これは滝井さんも御承知の通り、恩給関係その他と、今回われわれが企図している国民年金制度調整については今後の問題として待たなければならぬ。社会保障制度審議会の御答申においても、既存の各種の年金問題、共済組合制度による年金及び恩給その他との関係につきましては具体的には私今後の問題だと思うのであります。ただこの法律から年金をどうするかということが出てくる問題ではないであろうというふうに考えるのであります。社会保障的見地から行います年金既存のこれらの問題との総合調整をいかにするかということが一番問題なのであって、私どもは少くとも国民年金制度をしく以上は、ベースのものについては通算できるような制度を行いたい。またそれが社会保障見地からは当然であるということを考えて、いろいろ具体案既存のものとの調整をはかって参りたいという準備はいたしておりますが、確定的なことはいまだお答えする段階になっておりません。
  11. 滝井義高

    滝井委員 大臣援護法の問題からは年金は出てこない、こうおっしゃるのですが、私はそうではないと思うのです。狭義の社会保障の中には恩給は入りませんが、広義の社会保障の中には恩給というものの概念は入るのです。従って恩給よりもっと社会保障に近いものは、この援護法なんです。これは受田委員がしょっちゅう言われるのですが、現在の恩給制度自体の中にも、もはや年令制限をつけていく、所得制限を課していく、あるいは扶養加算をつけるということは明らかに社会保障的な色彩をそれが帯びてきておることはわれわれ受田委員の主張と全く同感なんです。今政府年金制度を企図するというのは、少くともことしの八月ごろまでには——制度審議会はおそらく五月ごろには結論を出すでしょうが、それにのっとって八月ごろまでにあなた方は結論を出したい。厚生省から出ておる案は、独立自営農民中小企業、いわゆる国民年金加入をしていない諸君対象にするが、同時に、きのうか、おとといか見た新聞によれば、それを今度は国民年金にみんな入れていくんだというような案も出ている。初めのうちは国民年金とは別にして、これだけを一つやってみろという案もあった。そうしますと、現在の独立自営農民中小企業者諸君の中には百五十三万の遺族の皆さんなり援護法対象諸君というものは相当あるわけなんです。そうすると、新しくできるであろう年金とこれとを併給するか、統合して、その上積みにするか当然問題になってくるが、そのときにまず第一に優遇をしておるものは軍人だ、その次は軍属で、こう現実に出ておる法案はなっておる。それから準軍属だ、文官はそこらと同じようなところにいっておる。そうすると後に出てくるものはそれらのものに関係のない独立自営中小企業者農民だ、こうなってくるでしょう。そうすると、この段階というものを今つければ、これは一つ既得権になっていくんです。憲法の財産権からいっていかんともしがたいものであるということは議論済みなんです。これが何とかなるならば恩給問題というものは解決はやさしい。ところがそういかないところに問題がある。だとすると大臣は、この問題から年金の問題は出てこない。先になって総合調整とおっしゃるけれども、それは先じゃない。今から総合調整の問題を論議し考えていかないと、先になって突如調整をやろうとしても、既得権が発生するとできない。せっかく二十七年に援護法ができ、二十八年に恩給法が出たときに、三万五千二百四十五円と出発点を同じくしておったものを、何というか、軍人は非常に国家に尽した功績が重かった、軍属や準軍属文官に似ているから、それより下げてもよろしい、こういう理論の立て方を今の段階でいたしますと、これは永久についていきますから、三百億の予算の範囲を越えるかもしれないが、三万五千二百四十五円の同じ出発点に立って五万三千二百円に遺族年金もしていかなければならなかったと思うのです。それをわざわざ軍属文官に近いんだということで、あとで給与金その他にも触れますが、明らかに差別がついてきている。またそういうことが次の段階では不均衡是正の問題になることは明らかである。だから少くとも恩給に関する問題はこれでピリオドを打つのだということを言っておったはずである。これも岸総理に来てもらわなければならぬところです。何か内閣委員会では委員長の質問に今松総務長官が違う答えをしているようでありますが、そういうように依然として不均衡を先へ先へと送るならば、年金は絶対にできません。その点失礼な言い分だけれども、大臣自身の認識が少しあいまいだと思う。当面問題を何とか濁して、国会だけ通せばそれで済むというようなお気持のようですが、何だったら、きょうこれを通さずに五万三千二百円に与野党話し合って修正をやりたいと思う。今のあなたの答弁ならば、先に問題を残すばかりです。少くとも遺族年金については五万三千二百円に修正すべきだと思うのです。しかし予算がなくて、恩給法に先食いされてやむを得なかったと正直に言うならば、やむを得ぬ。しかし今のようなものの考え方ならば、私は次の段階が心配です。どうもその点国民年金関係ありませんと言うけれども、これだけ社会保障制度審議会でも恩給問題が論議されているし、われわれが昨年の夏中かかって論議した臨時恩給等調査会においてもやはり論議されているところなのであります。この点もう少し年金制度援護法なり恩給との関係について大臣の明白な態度が伺いたい。きまっておらぬということで先へ先へ送ることはいけないと思う。少くともこういう法案を出し、年金問題がこれほど重要な政治問題となり、自民党さんでも選挙のときは減税と年金を掲げていくのだとおっしゃっているのだから、その掲げていく年金制度が、担当大臣にもはっきりした考えもなく、今のように年金といっても先の問題だということはおかしいと思う。もう少しその辺の見解を明白にしていただきたい。大臣が明白でなければ、予算委員会で岸さんが年金の問題については社会党と話し合いたいと言っておりますから、何なら午後にでも岸さんを呼んでもらって、はっきりとした政府の態度を聞かせていただきたいと思うのです。
  12. 堀木鎌三

    堀木国務大臣 私、滝井さんと議論こをするつもりはございませんが、しかし国民年金制度を創設する際に、一応既存国民年金制度自体は全体の国民経済の基礎の上に立って、そうして私は年金制度を受けていない人々に対して、社会保障的見地からどう考えるかという問題が根本であろうと思うのです。その上に立ってむろん統合調整をいたしたいと言っております以上は恩給なりあるいはその他の問題を同時にどう調整するかという問題が逆に起ってくるのであるというふうに考えておるので、恩給その他の問題を私は無視しているわけではございませんが、国民年金制度を創設するという考え方は、根本はそこにあるべきものであろう、こういうふうに考えておるわけであります。これは私が滝井さんに申し上げるよりも、滝井さん自身も従来御関係になっておって、この点は私は御了承を願えるのじゃなかろうか、その上に立って既存の諸制度との調整をどうはかって、国民年金制度のいわゆる統合調整の観点から社会保障的にこの問題をどう統合調整して参るかという問題であろう、こういうふうに考えて先ほど御答弁いたしたわけであります。全然無視するとは決して言っていない。むしろ逆に、こっちから国民年金制度が逆算されるべき性質のものではないかというふうに考えて申し上げたような次第であります。  それから文官遺族年金の問題につきましては、これも御承知だと思うのですが、戦時中公務で死亡した文官、この文官については戦闘公務という場合と普通公務によって死亡した場合、二つ設けて差別をつけておるわけであります。今回の遺族年金の問題に当りまして、この援護法適用者につきまして、この間の事情をくんで率をきめましたことは、私はただ全体として均衡を得た点に落ちついたのではなかろうかというふうに考えておるような次第でございます。
  13. 滝井義高

    滝井委員 それならば大臣の答弁を裏返して質問してみれば、一体遺族年金を三万五千二百四十五円と公務扶助料と一緒にしたのはどういう理論的根拠で一緒にしたのですか。今の御答弁をすれば、なぜそのときに違えていなかったかということなんです。
  14. 河野鎭雄

    河野政府委員 従来の文官公務扶助料普通公務の場合は三十三割というふうなことになるわけであります。兵の場合が二十六・五割でございますので、三十三割でもまだ兵の場合より高いわけであります。兵隊が二十六・五割ということであれば、軍属はそれ以上にするわけにはいかないというふうに考えられるわけでございます。従来は兵隊の額とそろえた。今度は三十三割という普通公務はそのまま据え置かれて、制度的には二十六・五割になるわけでありますが、従来の実績を保障するというふうな意味で従来の額がそのまま支給されるというようなことになりますれば、それとの均衡ということを新しく考えて参らなければならないのじゃないかというふうなことが言えると思うのであります。そういうふうなことで、今回は文官との均衡ということを考えて、兵の場合と若干の差が出てくる、こういうふうな事情にあるわけでございます。
  15. 滝井義高

    滝井委員 倍率の問題が出ましたが、大臣にしても局長にしても、臨時恩給等調査会の報告書の、公務扶助料の年額の増加に関する問題点の倍率に関する意見をお読みになっても、倍率そのものは大して異議がないのだということ、と同時に、文官の扶助料の基礎公務扶助料基礎とはそもそも俸給の基礎が違っておる。片方は退職時の俸給だし、片方の軍人の方は仮定俸給表という全く架空のもので——架空といってはおかしいけれども、一応現実にもらっている給料とは違ってきているわけです。従ってその意見においても明らかに、大してそのものに異議がないのだということを書かれておるわけです。それが国会の答弁になってくると、三十六・五割と文官の方の普通公務三十三割とを持ってくるということ自体がおかしいわけなんですよ。どうもそこらあたり納得のいきかねるところがあります。  そこで納得がいかぬので大臣にお尋ねしますが、一体大臣は、国民年金を作ったときには恩給受給者や援護法対象者は年金加入せしめるのですか、加入せしめないのですか。
  16. 堀木鎌三

    堀木国務大臣 これも基本的には社会保障制度審議会の御答申を受けて最後的決定をいたしたいと思います。しかし国民年金の理想的形態としては、私は今、通算制度というものが各年金間にでき、年金及びその他の制度と通算ができるということを一番理想的な形態とすべきであろう、従いましてべースになる一つの固定の金額につきましては通算ができるようにして、その上に付加方式でいくのがいいのじゃなかろうか、自分ではそういうふうに考えて、厚生省としてはそういう研究を命じておるような次第であります。
  17. 滝井義高

    滝井委員 年金相互間の通算の問題は当然そうなければならぬと思うのです。たとえば国家公務員の共済組合が、今度は組合管掌方式で三公社五現業関係が発足いたしましたが、国家公務員の方はそれが政府管掌になるのか組合管掌になるのかごたごたしております。組合管掌にするか政府管掌にするかということについては根本的に議論しなければならぬところだと思いますが、現実軍人恩給というのはほとんど国家が税金でまかなっているわけで、納付金はかってあったことがありますが、終戦のときはなかったわけです。そうしますと恩給なり援護法年金との通算の問題は起ってこない。もうすでに過去のものですから、起ってこないのですよ。そうすると援護法対象者は六十才以上とか、いろいろ制限はありますが、昭和三十四年から年金ができた場合に、厚生省の前に出ておった構想でいって、農家とか中小企業諸君の中で恩給を受けたり援護法対象者は多いのですよ。この人たちは一体年金加入者になるのかならぬのかということは非常に重要なところなんです。遺族だって約百五十万いらっしゃる、援護法対象者は幾らになるか、相当いらっしゃいます。そうすると、一体こういう方々は年金加入せしめるかせしめないかということは政策を立てるのは非常に重要なことだと思うのです。加入せしめるとするならば、一体既存恩給法なり援護法の——今度法案が通れば五万一千円もらうことになるのですが、それとの関係は一体どうなるのか、大臣の言われるようにたとえば年額二万四千円なら二万四千円の年金額がきまる。そうすると五万一千円から二万四千円引いたものだけを今度は上積みでやるということになるのか、そうしますとこれは既得権の侵害になるのです。大臣の言うように下を作っておいて余剰だけは上積みで付加方式でいくということになると、今度は掛金をかけなければならぬということになる。無醵出年金なら別ですが、しかし保険料をかけるということになると、かけなくてももらっておったものなんですから、これは既得権の侵害になる。こういう点がやはりある程度援護法という法律改正し、恩給法改正して出す場合には、与党の重要な政策として国民年金をやるのだと掲げておるからには、それとの関連というものを国会法案を通す前に堂々と内閣が説明してくれなければいかぬ。しかも選挙のスローガンには国民年金をやるのだ、減税をやるのだということを掲げておるのですから、それはまるでうそじゃないですか。そういうところをもう少しはっきりしていただかぬと遺族の方々は心配ですよ。年金をくれるということになっておるのは、国民年金になったら掛金をされて何ぼになるかちょっとわかりませんが、われわれ社会党の案なら五万四千円で、それを上回るから遺族の方は安心がいきますよ。しかしもしも政府が出すように、月々百円の掛金をする、そのほかに奥さんの掛金は五十円くらいになるので、そうしてちょっぴり年金をくれる、しかし恩給なり公務扶助料の規則からはそれを差し引かれてしまうのだということになると一大恐慌を来たします。だから親切心があるならそこらあたりを明確にして、恩給受給者なり援護法対象者に対してはそれを除外いたしますとかなんとか、もしきめていなければもう少し明確にきめてかからなければいかぬと思うのです。
  18. 堀木鎌三

    堀木国務大臣 今滝井さん自身もおっしゃいましたように、年金額が非常に多かったら問題にならぬ部分がたくさん出る、それが年金制度そのものから本質的にきめていく方が先だ、こういう年金制度をしくのだということが基本になって総合調整の具体的問題が出てくるのだというふうに私は考えるのであります。私ども不幸にして社会党の案の財源的処置もいまだつまびらかにいたしておりませんし、その他研究すべき残された問題はたくさんございます。社会党の案につきましても、私もよく研究しているが、いろいろお教えを請わなければならぬ疑問の点がたくさんある、結局そういう点から考えますと、これはもう、滝井さんはしいて私に答弁を求められるが、内閣としても社会保障制度審議会の御答申を急いでおるのは、われわれ自身が一日も早くこの問題を解決したいから、各委員の方にも政府の意向を伝えてなるべく早く御答申をちょうだいしたい、こう言っておるのでありますから、それの上に立っての問題であることは、滝井さんといえどもこれは御了承できるだろう、それをしいて私に今の段階で具体的にどうするのだとおっしゃることは少し無理な御注文ではなかろうか、こういうふうに考えております。
  19. 滝井義高

    滝井委員 こういう国民的な大問題になった恩給法援護法というものを国会に提出するときには、内閣としてやはり基本的な態度というものをきめておかなければ、これは砂上の楼閣だと思うのですよ。それは社会党の案はいろいろ財政的に問題があるでしょう。しかしわれわれが天下をとればわれわれの方式があるわけなんですから——これはここで議論をしても水かけ論になります。私が議論をするのは、結局現実に政権を担当して、そうして現実に政策を打ち出していらっしゃる自由民主党の基本方針というものを聞かしてもらわなければ工合が悪いのですよ。もう一方において援護法においては五万一千円という数字が出てきておるわけなんです。そこらあたり御答弁ができなければもう少し先へ行ってもう一ぺん関連をしてお聞きしますから。  この援護法で今度は遺族給与金というニュー・フェースの給与金が出てきたわけです。その遺族給与金を見ますと、たとえば父母については六十才以上なんですね。そうしてその後に「扶養することができる直系血族がないこと、」こうなっておるわけです。扶養することができるできないということは一体どういう基準でおきめになるのか、これを一つお教え願いたいと思います。
  20. 河野鎭雄

    河野政府委員 非常にむずかしい問題であると考えるわけでありますが、具体的に法律適用いたします場合に、その世帯の家族状況、資産の多寡、あるいは居住している地域であるとか、いろいろ各般の事情を十分考慮して考えていかなりければならぬと思っておりますが、大体一般的に考えまして、国民平均の生活を維持する収入資産があるという場合に扶養能力があるというふうに考えていいのじゃないか、かように考えておるわけであります。
  21. 滝井義高

    滝井委員 国民平均の生活を維持する収入——日本は御存じの通り最低賃金制度がないのです。最低賃金制度があれば、大体このくらいの賃金を得ておれば少くとも最低の生活を営めるのだ、こうなる。今度政府最低賃金法を出しておるのも、これは業者間協定が柱になっておる。業者がきめたものが最低賃金、こうなっておるわけです。国民平均生活を維持する収入というと、これを与えるか与えないかは地方庁のものさしかげんで自由になってくるということになってくるのです。だから扶養することができるということの具体的な尺度をやはりこの際示しておいていただかないと問題が起ってくると思うのです。こういうことでせっかく戦争犠牲者を救済しようとするいい立法が、今度は逆にあなた方がうらみを買うということになっては困ると思うのです。だから国民平均の生活を維持する収入というのは、もう少し具体的に数字でこれを表わしてもらわなければ困ると思うのです。わが党の案をごらんになると、年金の案でも、所得十三万とか所得三十二万とかきまっているのです。それはそれぞれ三十二万なら三十二万は減税の対象を三十二万までの所得は非課税にするのだという基準をもって、党の政策としてこっちにひいてきておるわけです。所得十三万なるものは、地方税法で所得十三万以下の収入は免税だという一つの基準があるわけです。これは何かそこに基準をある程度明白に数字で示してもらいたいと私は思うのです。そうしないと今の局長さんの答弁のように、国民平均の生活を維持する収入ということになると、一体平均の収入とは何ぞやということになる。これはむずかしいですよ。主観的に違いますよ。客観的に必ずしも決定ができないかもしれない。私が平均の収入だと思っておっても、人は客観的にいい生活だというかもしれない。だからここらあたりは、新しい給与金をこういう形でやると、場合によっては一人もやる必要がないということになるかもしれない。だからそのあたりをもう少し明白にしておいてもらわないと、これでは今度は地方庁が行政上の仕事ができないですよ。もう少し明白に数字で言って下さい。
  22. 河野鎭雄

    河野政府委員 数字で機械的にきめることは非常にむずかしいのではないだろうかと考えておるわけでございますが、ただこれは、御質問のございましたのは、地方庁で取扱いが区々になってはいかぬのじゃないかという御懸念のように拝聴したわけでございますが、実は本省直接裁定になりますので、地方庁で取扱いが区々になるというような問題はないわけでございます。それからまた実はこういった法律の条文は、新しく設けられたわけではないので、現在でも祖父母につきましては同じような条件が設けられておるわけであります。ただいまお答え申し上げましたような方針で運営しておるわけでございますが、法律ができましたのが二十七年ですから約六年経過をしておるわけでございますが、その辺の問題であまり問題を起したこともないので、大体そういうふうなことでいって支障はないのではないかというふうに考えておるわけであります。
  23. 滝井義高

    滝井委員 今度軍属から準軍属にまで拡大されていくわけですね。そうしますと、現実において相当時日も経過してきておるわけなんです。やはりある程度ものさしをはっきりしておかぬと、自分は自分のかわいい子を失ったのだからもらえるだろうと期待しておったものが「その者を扶養することができる直系血族がないこと、」こうなって、たまたま貧しい生活をしておる直系血族があったというような場合に、いや君のところは扶養できるのだというようなことにされてしまったら、かわいい準軍属を失ったその両親というものは悲嘆にくれるわけなんです。法律が通ったから安心だと思ったところが、まるっきりだということになるわけです。そうすれば、そのどたんばになってあなたはだめだというよりは、今からやはりはっきり一つの線を出しておく方がいい。たとえば国民平均所得なら平均所得をこえたらもうだめだとか、何かそういう具体的なものを出しておかぬとこれは困るのです。引揚者の給与金だって、地方税法の所得五十万か何かで線を引いたと思うのです。だから私はそこらあたりで線を引いておく必要があるのじゃないかと思うのです。これはできぬことじゃないでしょう。
  24. 河野鎭雄

    河野政府委員 ただいま国民平均収入というようなお言葉がありましたが、気持としてはそんなようなことをねらっておるわけでありますが、一律的にそういうふうにぴしゃっと法律的にと言いますか、一つのものさしできめてしまうとかえって実情に合わないようなケースも出てきますので、実は抽象的にお答えをいたしたわけであります。なおこの基準をもう少し具体的にきめられるものならきめた方がいいことはお説の通りなんでありますが、この点なお研究はいたしてみたいと思いますが、ただ従来の実績を申し上げますと、大体そんな気持で運用しまして問題もございませんでしたので、実はさらに掘り下げたところまで考えていないわけであります。
  25. 滝井義高

    滝井委員 実際問題として、運営の点になると非常にむずかしいと思うのです。従ってある程度抽象的でなければならぬが、やはり一つの大まかな基準というものは示しておかないと、援護法対象になる人が非常に不安だと思うのです。自分が果してかかり得る者なのか、かかり得ない者なのか、そういう点、一つここで御答弁ができなければ、大ざっぱな行政指導の基準でもお教えを願えればけっこうだと思いますので、そういうものを一つ考えていただきたいと思います。  次には、給与金を五年間与えることになっておるわけですね。二万五千五百円を五年間与える。この二万五千五百円というものが出た根拠は、おそらく軍属遺族年金が五万一千円だ、従ってその半分だ、こういうことに割り算をしてみてなったのだと思うのです。そうするとさいぜんの問題にまた返ってくるが、段階がついてしまっておる。五万三千二百円、五万一千円、そうしてその半分の二万五千五百円、こう段階がついてきておる。それでさらに文官がもう一つ間に入ってくる。これは障害年金も同じだと思いますね。半分になっておると思いますが、こういうように私は多くの段階をつけることが——もちろん戦争犠牲については軽重はあると思うのです。けれどもこういう形ですることの方が、将来の年金制度との関連を考えていいのかどうかということ、これは問題を非常に複雑にしてきています。少くとも戦争犠牲者の救済という、年金とは関係ない救済という面を考えてみても、これはやはりアン・バランスの種を政府がまいたことになると思うのです。で二万五千五百円はどうしてどこから出てきたのか、その根拠と、それから五年間というのに何か意義があるのかどうか。この有期年金を支給すべしということは私は年じゅう恩給調査会で主張しているので私の主張が取り入れられた。私が主張の張本人です。あとで主張した根拠を述べますが、政府の方が二万五千五百円と五カ年という基準をきめたそれを一つ御説願いたい。
  26. 河野鎭雄

    河野政府委員 準軍属をどういうふうに考えるかということは従来から非常に議論されて参ったことでございまするし、またただいまお言葉の中にありました臨時恩給等調査会におきましても非常に議論されて参つったところでございます。従来国会におきまして厚生省としてお伺いを申し上げておりました線は、やはり年金を出す対象として考えられますのは、恩給法がその典型的な場合でございますが、国との雇用関係のある者を対象として考えるべきではないか、戦争の犠牲をこうむったというふうなことで雇用関係のない者までに広げていくというふうなことになりますと、一方におきまして一般国民がすべて戦争犠牲者であったということとまた均衡の問題が出てくるというふうなことで、やはり雇用関係のない者に対して年金をお出しするようにするのはいかがであろうかという気持で従来は御答弁申し上げておったわけです。国会におきましてはそれに対しまして、やはり何らか年金的なものを考えるべきではないかという御意見がしばしば出ておりましたことは私も聞き及んでおるわけでございますが、そういったような議論恩給調査会でもまた繰り返されたわけであります。結局これは両方の考え方があり得るわけなので、その辺を加味して、これでなければならぬという機械的な算定というのは非常にむずかしいと思うのではありますけれども、国の雇用関係にあった者とそれから一般戦争犠牲者との中間的な地位にある準軍属というふうな考え方において、まあまあこの辺が適当であろうというところで今回御提案を申し上げたような線にきめた次第でございます。
  27. 滝井義高

    滝井委員 われわれが有期年金をあそこで主張したのは、大体、日本に国民年金が発足をしていくその場合に、当然準軍属なりあるいは準軍属の範囲を拡大するということが、あの場合の空気としてはなかなかできない。従って一応準軍属というものにしぼって、そしてこの法律に出ておるように、総動員関係、戦闘参加、国民義勇隊、満州国青少年義勇隊、特別未帰還者、それから二十年の九月二日以後海外にあった者とかいうように六つくらいにしぼったのですが、それらの諸君のワクをさらに拡大をしていくということはいろいろ問題があるので一応そこまでにしぼろう、こういうことになったが、そういう場合にこれらの皆さん方と、それから学徒動員等の負傷者、特に重傷者については有期の年金を両方考えるべきだということなんです。ところが政府の案では障害の方の関係は有期でなくなってずっと永久に年金をお上げしよう、こうなっておるのです。その点はけっこうだと思いますが、答申とは違っておるわけです。当然五カ年ということにしたからには、やはり五年のうちには年金制度というものでそれらのものもひっくるめて考慮され、発足をするのだという前提をわれわれは考えて主張したわけなんです。私はあのときに、三年長くても五年ぐらいで年金が発足できるのじゃないか、そうするとこの援護法規定をされた準軍属というものは当然新しい年金制度に吸収されて、発展的に解消していく、こういう主張だったわけです。あれは私が主張の本人ですからその精神で書かれたと思っておるのです。そこらあたりの五年としたことと年金とを政府関係を持ってやったのかどうかということなんです。われわれの主張は関係を持っておるのです。そして答申にそれを書いたのです。大臣は答申を尊重する、制度審議会の答申を待つというのです。制度審議会と同じ立場で臨時恩給等調査会もやったのですけれども、政府は調査会の結論通りにやっていないのです。私から言うと、はなはだ失礼な言い分だけれども、諮問機関というものはいつも刺身のつまに利用されて、政府は体よく自分の都合のよいところは答申片々といってとっていくけれども、都合が悪くなると答申にはほおかぶりをしていくというのが今までのならわしなんですね。だからぼくはあまり答申のことを言ったって信頼しないんです。だからどうしてもあなたの答弁を求める、こういうことになるのです。大臣は与党の政策を一身に背負って実践もしていく代表者なんですから、どうですか、ここらあたりになりますと、二万五千五百円というと今の厚生年金とちょうど同じぐらいな額になってきたわけですね。厚生年金は基本額が二万四千円ぐらいなんですね。そして上に報酬の比例がつきますから、月に三千円から多い人では四千円ぐらい、年に四万八千円ぐらいなんです。これはちょうどフラットに当るところにきて、国民年金をやるところの土台になる。大臣の言ういわゆる通算をする土台になって、その上に付加するという形の土台が出てきている。そうすると、五年とうことにしているのですが、これは何か年金関係がなくちゃ困るのです。だから最初私が言ったように、もう一ぺん年金の問題に返ってくるというのはここなんです。一体軍人恩給とか援護法における遺家族年金というものは、既得権として恒久的にいきますが、これは五年という限られたもので有期なんですから、いわばこれは十二万何がしのお金を結局分割払いにしたという形なんです。一挙にやることはいかぬだろう、だから簡単に言うと分割払いというわけなんです。言葉を裏返していけば有期年金なんです。新しい言葉で言えば給与金なんです。当然年金とここで結ばれるという形が出てこなければならぬと思うのですが、ここらまで質問がはっきりしてくると大臣ももう態度を明確にしなければならぬと思うのですが、この点どうですか。
  28. 堀木鎌三

    堀木国務大臣 さっきから滝井さんは国民年金との関連ばかりをお聞きですが、臨時恩給等調査会においては、恩給法自体の関係からも論議されたことは事実だと思うのです。そう簡単に一つの方面だけで論議されていない。ことに戦没者遺族援護法の問題、直接には軍人恩給改正に伴っての改正であることはもう万御承知の通りであります。むろん滝井さん自身が臨時恩給等調査会におきまして、有期年金的なものをお考えになったの、社会保障制度審議会の方の国民年金制度との関連をお考えになっておるかもしれない。それらは一つ考え方としては当然起って参りますが、本法案については、軍人恩給改正に伴って、少くとも各種の戦争犠牲者の中の限定された人についてその比較較量の上に立った一つ制度を作るという考え方から起きていることは事実であります。ただ社会保障制度審議会の方の国民年金制度の問題がどの程度に出て参りますかによってこの額はきまる。不幸にして滝井さんは五年くらいたたなければ国民年金制度はできないようにお考えかもしれないけれども、私どもとしては早くやりたい気持で考えているような次第であります。ですから直接にこの問題から何でも国民年金制度を抽出するという考え方には立っておらないことは先ほど申し上げた通りであります。
  29. 滝井義高

    滝井委員 大臣、臨時恩給等調査会報告書の四十ページをお開きになってお読みになるとよくわかる。どう書いてあるか。「さらに被徴用者、動員学徒等は国家権力によって動員されたものであるとしても、当時の国民のほとんどすべてが何らかの形において国策に順応し、または危難に身をさらし、ために死亡し、または身体障害を残すに至った者も少くないので、これらの者とのつり合いを考え、広い視野に立って他の戦争犠牲者を含んだ対策を講ずべきであって、むしろ国民年金制度の早期実現に努力し、その一環として準軍属及びその遺族に関する年金問題の解決を期すべきであるとの議があった。これに対し、国民年金制度の早期実現をはかることは当然であるが、準軍属の身体障害または死亡に関しては、国が当然負うべき責任として処遇すべく、国民年金制度とは別に考慮すべき問題であり、もしかりに国民年度金制度の一環として準軍属に関する年金問題を解決するとしても、国民年金制度実現の時期等の見通しから考え、その実現を見るまでの間この問題を放置すべきでないとする見解の表示があった。」、こういうことで結局有期年金になった。従ってこれは当然早く年金をやるべきだが、しかし今見通しがつかぬので有期年金だということになった。だからこれは年金問題と無関係ではない。ここが一番年金問題と関連してきているところだ。しかもそれが他の戦争犠牲者、準軍属の範囲の拡大の問題と常に密接になっておるところです。準軍属の範囲の拡大に火のつくところだ。従ってその火をつけさせないためには、年金問題に対する政府の態度をここらあたりで明確にしておく必要があると私は言うのです。何も私は五年と言うのではなく、政府が五年にしたから、どうしてだと言うのです。私は二年ないし三年だという意見です。そういう決定をしたならば、政府も次の段階では必ず年金に追い込まれるだろうというのが当時の私の主張だった。ところが政府は間隔を置いて五年になってきたが、このごろ盛んに岸さんにしてもあなたにしても、三十三年に調査して八月くらいから本格的にかかりたいと言っているところを見ますと、三十四年からやられるような気ぶりのようでもあるし、今の答弁でも、滝井さんは五年後を考えているが、われわれの方はもっと早くやるのだとおっしゃるならば、二万五千五百円と年金との関係、しかも期間を五年に限っておれば明白にしておく必要がある。明白にしておかないと、これらの人は、やはり五年になったら打ち切られるのではないかという不安を持つ。不安を持てば、二年くらいすれば、われわれは打ち切られるのではないか、延ばしてもらいたいという陳情が始まるのです。そういうむだな金を使って気の毒な人が陳情する前に、政治ははっきりと方向を示さなければならぬということです。私は、その点を大臣ここでいつからとは言いません。しかしこれらの給与金をもらっておる、いわゆる有期年金をもらっておる人たちに安心立命を与えるために方向だけは明白にする必要があると思う。それらの人たちは、将来五年が来たなら年金の中に全部吸収していくんだ——五年なら相当大臣余裕がありますよ、だから、吸収していくということになるのか、もう五年になったらそれでお別れだということになるのか、その点はどうですか。
  30. 堀木鎌三

    堀木国務大臣 その点につきまして、今滝井さんがわざわざ念のためにお読みになりました答申案に対する主張、私どもも社会保障を担当する者として当然の主張であったわけであります。かねてそういう主張を持っておったのですから、むろん私は率直にいえば、今準軍属についての問題だけをお取り上げになっておりますが、しかし社会保障的な見地からのこの国民年金制度というものには五年を待たずしてこれらの問題を解決していかなければならない問題であると思います。今度の軍人恩給改正に当りまして、世論として国民年金制度を急速に要望するようなものが出て参りましたということ自体が、戦争の犠牲者が非常に広範であって、しかもどこで線を引きましても、それらの問題について諸種の問題を残しておる。しかも一方終戦後の社会情勢は、基本的に旧来の家族制度の依存的なものから脱却して参っておるというふうな状況から見ますと、本質的にも国民年金制度をしがなければならない情勢である、私はこういうふうに考えております。むろん五年後における準軍属遺族の援護につきましては、なるべく早い機会に国民年金制度を創設して吸収して参りたい、こう考えておるような次第でありますが、そのほか一般の国民的に見ましても、今申し上げましたような見地におきまして年金制度の創設を急いでおるような次第でございます。
  31. 滝井義高

    滝井委員 大臣。早く早くとおっしゃいますが、一体大臣の見通しでは昭和何年度から国民年金を実施しようと考えておられますか。
  32. 堀木鎌三

    堀木国務大臣 滝井さんは、先ほどは時期はあまり追及しないとおっしゃったのですが、率直に申し上げますと、今の私の考え方では三十四年度から実施いたしたいという考え方をもって準備を急いでおるような次第でございます。
  33. 滝井義高

    滝井委員 三十四年を目標として実施したい、こういうことですから、一応午前中はこれで終っておきます。
  34. 森山欽司

    森山委員長 午後一時半まで休憩いたします。     午後零時十三分休憩      ————◇—————     午後二時九分開議
  35. 森山欽司

    森山委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  内閣提出戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を続行いたします。受田新吉君。
  36. 受田新吉

    受田委員 戦傷病者戦没者遺族援護法と、もう一つこれに関連する法案で、未帰還社留守家族等援護法という二つの法律があるわけでございます。この法律は、いずれも国の起した戦争の処理に重大な役割を果しているものでございますが、一方戦傷病者の援護法の方はその第一条に「国家補償の精神に基き、」という言葉がうたってある。未帰還者留守家族等援護法の方は、「国の責任において、」とうたってあるわけです。これはどういうところにその相違の根拠があるか、御答弁を願いたいと思います。
  37. 河野鎭雄

    河野政府委員 戦傷病者遺族援護法におきましては、ただいま御質問がございましたように、「国家補償の精神に基き、」云々と、それから未帰還者留守家族等援護法におきましては、「国の責任において、」というふうな使い分けをしておりますが、本質的にこれがどの程度違うのかというふうなことになりますと、いろいろ議論があるところだと思いますが、気持といたしましては、戦傷病者遺族援護法の方、これは実は恩給法ができます一年前に、そのつなぎのような役割も果したような関係もあるわけであります。当初は軍人を含めて、軍人軍属対象とし、その後恩給が復活して、軍人恩給の方にいったわけでございます。従いまして、現在は軍属を主としております。国との特別な雇用関係にあったものを主たる対象として法律ができて参ったと思うのであります。そういうふうな背景と申しますか、そういった対象を考えます際に、国がこの人たちに対して戦争犠牲者としての援護をするわけでございますが、こういった雇用関係にあったというふうな特別な関係にあるものを対象といたします場合には、一般邦人を対象とするという場合よりは、国家の補償的な色彩というのが一段と強いのではないかというふうな感じがいたすわけであります。そういうふうな考え方で両者の条文の表現に差が出てきた、かように考えておるわけであります。
  38. 受田新吉

    受田委員 ちょっとわかりにくいところがあるのでございますが、未帰還者留守家族の場合の援護と、それからなくなられた方の場合の援護とが性格が違うものでございましょうか。大体帰られざる方々がなくなっておられたならば、それは軍人軍属の場合は恩給法、それからその他の恩給法対象以外になる方は戦傷病者の方の援護法と、いずれかの恩典に浴するわけなので、結局未帰還者留守家族といえども、国の責任においてそういう不幸な運命になられたのであって、国のとるべき責任の度合いにおいては、これは相違しないものだと私は思うのでございます。言葉のあやからくる相違点という程度のものであって、本質的に同じものと解することはできないものでございますか。
  39. 河野鎭雄

    河野政府委員 対象者の国とのつながりというものが若干違うと思うのであります。未帰還者留守家族援護法の方におきまして、一般邦人も実は対象として考えるという社会立法的な色彩の方が強い。補償というようなことよりも援護というふうな考え方の方がむしろ強く考え方基礎になっておるのではないか、そういうふうな気持が条文の上にも出ておるのではないだろうか。本質的にどこが違うかということになると、いろいろ議論はあるかと思うのでありますが、気持としてはそういうふうな若干のニュアンスの差といいますか、違いがあるのではなかろうか、かように思うのであります。
  40. 受田新吉

    受田委員 未帰還者留守家族の中には恩給法対象になる人々が大半なんです。むしろ戦傷病者遺家族よりはもっと強い国家の補償責任のある形のものを対象としているわけであって、それがたまたま一般邦人がちょっとそれへ宿借りをしている格好になっておる法律であるからというので、援護の性格が強いのだという考え方は問題がありはしないかと思うのですがいかがでしょうか。
  41. 河野鎭雄

    河野政府委員 これは繰り返して申し上げるようでございますが、気持の相違というものが表現に出ておるわけでありまして、一般邦人も含めた援護法であるということになりますと、やはりどういう立場から援護するのかということになりますと、やはり最大公約数でものを考えていくというふうなことになるのではないだろうかと思うのであります。御質問にございましたように、未復員者が大半であるというふうなことはその通りでございますけれども、一方におきましてやはり一般邦人も援護の対象として考えなければいけないというふうなことになりますと、やはりその最大公約数で考えていくというふうなことになるのではないだろうか、こういうふうに思うわけであります。
  42. 受田新吉

    受田委員 この未帰還者留守家族の方々が戦死されておられたということがわかった場合には、これは戦傷病者の方へ入るかあるいは大半は恩給法の方へ入る、こういうことになる。従って帰られたならばこれは何より喜ばしいことでありますが、なくなられた場合には、当然そうした二つの法律対象になるわけです。そこで今局長さんが仰せられたような考え方があるがゆえに、未帰還者留守家族の方には帰還するその日まで俸給を支給しない、給料を出さぬという法律がある。これは大へんなことであって、国家の公務に従っておる者であって国から給与を出さぬというような職種があるということは、これは問題が非常に大きいと思うのです。これは援護法という今仰せのような軽い意味でお考えになるのですが、国家の公務に従事している人が取り残されている。そのお考え方が手伝って、国家の公務に従事しておると思われる未帰還者に給料を出さぬでもいいという法律ができたというふうに考えられるのですが、現実に国家の公務に従事しておると思われる人に給料を出さなくてもいいということは、いやしくも法治国であり、憲法の存在する立憲国であるという意味からいったら許されないことであると考えますが、いかがでありましょうか。
  43. 河野鎭雄

    河野政府委員 未帰還者の中には、お説のように、旧軍人軍属が大半を占めておるわけであります。帰って来るまでは未復員者ということになっておるわけでございますが、勤務の実体から見ますと、実はこれを公務員というかいわぬかということは、ある意味では言葉の問題だと思うのであります。たとえば恩給法では未帰還公務員という言葉があるわけでございますが、それは先生の御承知の通りでありますが、それは正真正銘公務員というふうに考えるか、広い意味の公務員と考えるか。狭義の意味の公務員というふうなことになると、それははずれるという考え方もできるわけでございます。いずれにいたしましても、その実体々々に応じて考えるというふうな考え方に立っておるわけであります。先ほど申し上げましたように、なるほど未復員者ではございますけれども、勤務の実体は実はない。ことに陸海軍解体後におきまして、そういった身分も実はないわけでございます。いろいろの関係上、そういう手続を帰ってきたときにやるというふうな技術的な操作をいたしておるわけでありまして、勤務の実体はすでになくなっておる。従って俸給を支給するというふうな考え方は、必ずしも実体に合わぬのではないかというふうなことで、未復員者給与法から留守家族援護法にかわったときに、給与の支給というふうな考え方から援護というふうな考え方に切りかえて法律ができて今日に至っておる、こういうふうな事情にあるのではないかというふうに思うわけです。     〔委員長退席、大坪委員長代理着席〕
  44. 受田新吉

    受田委員 巣鴨に拘禁されておる三十四名の戦犯の方々は、未帰還者であるかあるいは帰還した人であるか、お尋ねしたい。
  45. 河野鎭雄

    河野政府委員 留守家族援護法におきまして、未帰還者の定義でありますが、日本国との平和条約による裁判で拘禁された者、これは本来の未帰還者ではないけれども未帰還者として扱うというふうな条文になっておるわけです。
  46. 受田新吉

    受田委員 そのいわゆる準未帰還者、この人々には留守家族手当が出ているかどうか。また、全然国から手当が出ていないのか。つまり純粋の未帰還者と同じように、国からびた一文金が出ない、給与を支給しないという該当者があるのかないのかということが一つ問題になると思うのです。
  47. 河野鎭雄

    河野政府委員 一応未帰還者としてみなしておりますので、留守家族手当の支給の要件に該当する場合には支給することになっておるわけです。
  48. 受田新吉

    受田委員 未帰還者の取扱いをこれに準じて受けるという形であるから、留守家族手当を出している。ところが中には、たとえば生活主体者でない人、あるいは両親が六十才になっていない人、こういう人々には給与を出していない、こういうように了解してよろしゅうございますか。
  49. 河野鎭雄

    河野政府委員 御質問の通りでございます。
  50. 受田新吉

    受田委員 戦犯で巣鴨に拘禁されておる人が解除されたときに、その身分はどういう形になりますか。
  51. 河野鎭雄

    河野政府委員 解除されたということで特別な身分が発生するわけではないと思います。軍人であれば、軍人としての処遇を受けることになっておるわけであります。一般邦人であれば、一般邦人としての法の適用を受ける、こういうことになるかと思います。
  52. 受田新吉

    受田委員 巣鴨に拘禁されておる期間中留守家族手当を出していない人人——日本には帰って現に服役しておるわけですが、手当を出していない人人が、三十四人の中でどのくらいおるものでございましょうか。——資料はないですか。なければ、これは一つ問題が起るわけです。たとえば巣鴨でなくなられた場合は、戦死者として取扱いを受けますかどうですか。
  53. 河野鎭雄

    河野政府委員 戦犯として拘禁中になくなられた方につきましては、援護法によって年金を支給することにいたしておるわけです。
  54. 受田新吉

    受田委員 そうすると、巣鴨におってあす解除されるという前の日になくなられた戦傷病者に対して、その御遺族に一生差し上げるが、巣鴨の門を出られたその瞬間に、門の外でなくなられたら、何ら手当が出ないというふうな格好になると、これは問題がややこしいことだと思うのです。処刑をされたとかという方々の場合は、今まで援護法あるいは恩給法適用を受けておりますけれども、巣鴨で普通の病死をなさった方々の場合、そういう戦死者の取扱いを受けるということになっておるのかどうか。
  55. 河野鎭雄

    河野政府委員 拘禁中になくなられた方が全部対象になるということではないのでございまして、その死亡が公務上の負傷または疾病による死亡と同視することを相当と認めるというふうな関係にある場合にこれを適用する、こういうふうなことになっておるわけでございます。拘禁中の場合と出てから死んだ場合と、その辺に不均衡があるのではないかというふうな御趣旨の御質問だったと思うのでありますが、これはやはりどこかで線を引くというふうなことになると、それが一つの線の引き方ではないか、こういうふうに考えるのであります。
  56. 受田新吉

    受田委員 未帰還者留守家族援護法は、今回の法律改正によりまして、その帰還後における療養期間がさらに二年間延長されるということになった。これはやはりその後の問題とその前の問題等につながりがあるわけでございますけれども、このたび二カ年延長の法案をお出しになった、年限を切られた根拠はどこにあるのでございましょうか。
  57. 河野鎭雄

    河野政府委員 その点はこの前長谷川委員から御質問があったかと思うのでございますが、実は昨年実態を調べてみたわけでございます。といいますのは、すでに十年たってなお継続しなければならぬということになりますと、そこにどういうふうな事情があるかということを一回検討してみる必要があるのではないかということで、入院者を中心といたしまして各施設に照会をいたしまして、症状それから療養の見込み等を調べたわけでございます。そのときによりますと、大体三年たつと見通しが立つというふうな施設からの回答でございました。それが昨年の秋の調査でございまして、ことしの十二月からさらに二年延ばせば、調査のときから三年あまり延びることになるわけでございますので、それで一応処理がつくのではないかというふうな見当をつけた次第でございます。
  58. 受田新吉

    受田委員 時間の関係で要点だけお尋ねします。まずこの改正案の中身へ入りますが、今回のこの改正措置で特筆すべきことは、新たに障害年金及び遺族給与金という形の国の給与の対象になる人の範囲を拡大したわけです。これは非常にけっこうな話であって、今日までこれが放任されていたというそのことに政府の怠慢ぶりを国民から恨まれておったわけです。おそまきながら政府が臨時恩給等調査会の答申に基いてかかる措置をおとりになったということに対しては一応の敬意を払いたい。ところがこの中身を拝見しますと、幾つも問題があるわけなんですが、大体この援護法そのものが国家補償の精神という線を強く打ち出しておられるために、かかるりっぱな措置がとられたにかかわらず、これが適用を受ける対象になる人々にはおのずから限界線が引かれておるわけです。従って今度法律案の中にうたってある軍人軍属等という等の中に、新たに準軍属を含むという御意思のようでございますが、その準軍属の範囲が問題になると思うのです。この範囲は一体どういうところへ引いておられるか。今まで、この援護法の三十四条にこの規定が掲げられてありますけれども、少くとも戦闘に参加した者の中で国の意思がどの形かで動いて動員された結果、亡くなられた方々が遺族年金あるいは遺族給付というものの対象になるのか、あるいはもっときびしい形が考えられておるのか、もっとゆるい形が考えられておるのか、政府の御意思を伺いたいと思います。
  59. 河野鎭雄

    河野政府委員 準軍属の範囲をどういうふうにするか、いろいろお考え方はあると存ずるのでございますが、今回の改正措置におきましては、従来三万円の弔慰金を差し上げておった方々、これは法律的には準軍属と正式に定義があったわけではございませんが、弔慰金の関係においては軍属とみなして弔慰金を差し上げるというような規定があったわけでございます。その範囲をそのままとりまして、新たに準軍属の定義を設けてその対象をはっきりさせたわけでございます。
  60. 受田新吉

    受田委員 そうしますと従来の援護法で弔慰金の対象になった人々を新たに障害年金給与金対象にする、かように理解してよろしゅうございますか。
  61. 河野鎭雄

    河野政府委員 準軍属の種類につきましては今御質問ございました通りでございます。ただ、たとえば遺族給与金を支給する範囲でございますが、軍属の場合におきましても弔慰金をもらっている人と遺族年金をもらっている人の範囲が違うわけでございます。一定の要件に該当する場合に遺族年金を差し上げる、こういう関係になっておりますので、種類といたしましては従来から弔慰金を差し上げておった方々が対象になるわけでございますが、現実給与金を支給する遺族の範囲ということになりますれば、それぞれの要件に合致した者に対して支給する、こういうふうな関係になるわけでございます。
  62. 受田新吉

    受田委員 従来の弔慰金支給の対象になっておる方々においても、どうもその解釈のあいまいなところがあるわけです。たとえば閣議決定による国民義勇隊、こういうものが一応入っておる。同時に一般の船舶に乗って、船舶そのものは国家総動員業務の制約のもとに動員された船である。しかし、乗っておったその人は純粋な、今ここに規定してあるような徴用令による徴用工としての船員でない、船舶はその船だという場合もあり得ると思う。そういうようなものでいろいろ問題があるし、もう一つは、たとえば死亡によって初めて軍属の地位を獲得したような方、この恩恵に浴していない。学徒動員でそのまま軍工場に残った。しかしその後において空襲でなくなったというような場合に、その人は動員された学徒でなくして、みずから任意にそこに勤めたような格好で、これを純粋な軍属という形から省いておる。こういうような問題がある。この問題はやはり禍根を残しておる。たとえば旧令共済組合の対象になっておる、この法の恩典にも浴せず、またこの援護法の恩典にも浴しないというような人々も出てくると思う、こういう人々は一体どういう形で救われるものであるかということですね。
  63. 河野鎭雄

    河野政府委員 無給の軍属が死んだときに有給に切りかえるというようなことも現実にあると思うのであります。それはそのときのいろいろな処遇の関係で、むしろ恩典としてそういうふうな措置をとって差し上げたのではないかと思うのであります。そのためにこの援護法で有給軍属の扱いをするということになると、かえって不均衡になりますので、そういう人たちは遺族援護法対象たる軍属としては考えていないわけであります。準軍属の範囲をどこまで広げるとかいうふうな問題はあるわけでございますが、一方において戦争犠牲者というのは、全国民に及んでおる実態を考えてみますと、この範囲を広げるということは、またほかの不均衡を起してくるというふうなことで、先生も御承知のように、例の臨時恩給等調査会におきましても、そういうふうな問題は将来の国民年金制度等の実現に期待をすることによって、この際広げない方がいいのではないかという御意見でございましたので、その線に沿って今回は従来の範囲にそろえて案をお出ししておる次第でございます。
  64. 受田新吉

    受田委員 この法律適用に当って、行政府として解釈の仕方でその範囲に幅を持たせることが可能でございますか、これはきちっとしたもので、融通つかないものであるとお考えでございますか。
  65. 河野鎭雄

    河野政府委員 どういうふうにお答えしていいかと思うのでありますが、法律でございますので、法律の条文に合致した者がこの対象になる。そういう意味では行政庁の主観によって範囲を云々するというふうなことは適当でないと思いますが、ただおのずから対象に入るか入らないかということについては解釈の問題があるわけであります。そういうふうな場合には従来ともまた今後ともそういたしていきたいと思っておりますが、法律の範囲に含めて考え得るというふうなものでありますれば、できるだけ親切な扱いをいたしたい、かように考えるわけであります。
  66. 受田新吉

    受田委員 準軍属のうちの戦闘参加者という要件の中には、いろいろ行政的な取扱いで、いわゆるニュアンスの差といいますか、そういうもので調整ができるものもあると思う。あなたの方でいいということになれば、そのまま認められるというようなことになると思うのです。この引揚者に対する給付金等支給法などで対象になっております満州開拓民のごときものを戦闘参加者と見て、こちらへ移すような問題も私は起ってくると思う。そういう行政府考え方結論を生み出されるような格好の場合には、少くとも幅のある方を行政府としてもとるべきだ、かように考える。法律というものはそう厳格にやり過ぎて、それを一歩も逸脱してはならないのだというふうなきびしいものではなくして、こういう援護法という法律精神そのものが、できるだけ関係の多くの人々を救ってやろうという精神に立っているのでありますから、従ってこれが有給軍属となったときの事情、無給であったかどうかというようないろいろな行きがかり等を検討する際に、有利な方へとって解釈して、なるべく準軍属としての処遇に浴せしめるというような取扱いを行政府としてするならば、われわれ法律を作る側の者も、特に援護の精神などからいったら、これは大いに歓迎すべきものだと思っているのです。行政措置にそういったような精神を生かしてやっておられるかどうか。ことに厚生省という役所は多くの人々を喜ばせる役所です。堀木厚生大臣もしばしば言っておられるように、その多くの人を喜ばせる役所でお仕事をされている皆さんの心の喜びというものは、これはおおい隠すことができないと思うのです。そういう形でお仕事をされている皆さんのお仕事の中に、法の精神が生きるならば、できるだけ手広く救ってやろうという考え方にいくならば、われわれはこの法律精神は生かされると思うのですが、きびしくやり過ぎるか、広く抱き入れるかというところに行政のコツがあると思うのですが、堀木厚生大臣、あなたの御見解を伺いたいと思います。
  67. 堀木鎌三

    堀木国務大臣 受田さんのおっしゃるように行政の方針としては法の解釈の許す範囲において、できるだけ本人の利益のために、つまり本人のために考えるべきであるという御方針に対しましては私も同感でございます。その点については今後の本法の適用に当っても私はその精神で参りたい、こう考えておる次第でございます。
  68. 受田新吉

    受田委員 大臣の御答弁で行政府の御意見がはっきりいたしましたので、これに対して敬意を表したいと思います。そういう観点からこの準軍属取扱いを考えられるならば、おおむね戦闘に参加した、いわゆる準軍属と称せられる方の中では、処遇に漏れる人はないと思うのですが、さように了解してよろしいでしょうか。
  69. 河野鎭雄

    河野政府委員 陸海軍の要請に基いて戦闘に参加した者は戦闘参加者として、準軍属の扱いをしていくというふうになっておるわけであります。陸海軍の要請があったかなかったかというふうなことは、これは事実問題になるわけでございます。私どももただいま大臣が申し上げたと同じ気持で仕事をしてきているつもりでございます。今後ももちろんそういうふうなつもりで参りたいと思っておるわけでございますが、具体的にこの人が全部入るとか入らぬとかいう問題になりますと、個個の問題になりますので、一がいに申し上げにくいのでありますが、気持としてはただいま申し上げたような方向で仕事をして参りたい、かように思っております。
  70. 受田新吉

    受田委員 障害年金を受けられる方がなくなった場合、特に準軍属で障害年金を受けられる方がなくなったという場合に、その年金の支給はそれでそのままとまることになりますか。
  71. 河野鎭雄

    河野政府委員 その辺の扱いは軍属の場合と同じように規定を設けておるわけであります。障害年金を受けておる人が平病死した場合に、やはり遺族年金がいくような格好に、条文はなっておるはずでございます。
  72. 受田新吉

    受田委員 その遺族年金がいく形が、これは恩給法の場合のいわゆる増加非公死という場合と関連があるわけです。そのかね合いについて、厚生省としては今回の準軍属の場合の遺族に対する処遇というもの、たとえば学徒動員で障害年金を受ける人がなくなったという場合の処遇を、そうした増加非公死などの場合の法律規定に基いて、これを参照して考えられるということになっておるのですか。
  73. 河野鎭雄

    河野政府委員 従前も軍属で障害年金を受けておる人があるけであります。現行の援護法対象としてあるわけであります。その人たちが平病死した場合には年金を差し上げるというふうな立て方をしておるわけであります。今回の準軍属もそれと全く同じに平仄を合わせた規定を設けております。具体的に申しますと、六割の遺族年金を差し上げる、こういうふうになっておるわけであります。
  74. 受田新吉

    受田委員 その支給する年限、遺族年金の支給年限はどうなっておりますか。
  75. 河野鎭雄

    河野政府委員 軍族の場合と全く同じであります。
  76. 受田新吉

    受田委員 遺族給与金をもらう人は、五カ年でその給与金を打ち切られることになっておる。障害年金を受けられる方々の遺族年金の支給と、その間の調整はどうお考えになられましたか。
  77. 河野鎭雄

    河野政府委員 ただいま申し上げたのは申し上げ方が間違っておったわけでありまして、軍属の場合には遺族年金にいくわけでありますが、準軍属の場合には遺族給与金になるわけであります。従いまして五年間ということになるわけであります。
  78. 受田新吉

    受田委員 そこにこの法律は差異をつけておられるわけです。そうしますと障害年金を受ける者が三つの線でいくわけです。一方の遺族給与金に変っていく人の期間というものが有限であるところに、今回の法律の特色があると思うのです。これは遺族給与金とのかね合いでそうされたのか、あるいは独特の名案としてお気づきになってかかる措置をとられたのか伺いたい。
  79. 河野鎭雄

    河野政府委員 なくなった方の遺族給与金との均衡を考慮して、かような措置をとったわけであります。
  80. 受田新吉

    受田委員 同じ障害年金を受ける人の中に、一方は無期限に遺族年金を受け、一方は有期限に遺族年金を受けるということ、法の取扱いとして片手落ちではないかと思われるのですが、厚生大臣いかが考えられるでしょうか。
  81. 堀木鎌三

    堀木国務大臣 準軍属の扱いをいかにすべきかということは、今回の法改正に当りまして私どもの一番頭を悩ましたところでございます。ことに今回初めてこの点を取り上げて処遇をいたすようなことになりましたので、私どもとしてもこの際に何とか講じたいという考え方からいったのであります。滝井さんが午前中に質問されました中にも、遺族給与金を五年にして、障害だけは年金を支給すればいいじゃないかというふうな趣旨のお話もありまして、臨時恩給等調査会ではある程度の期限を切って考えることが社会保障制度関係から適当でないかというふうな考えを持っているんだというお話があったのでありますが、率直に申して、私どもとしてこれらの処遇をこの軍人恩給改正に伴いましてどこまでできるかということに主力を注いだわけでございます。給与金の方は五年になりましたが、障害年金の方は、身体障害を受けて今後の生計をしていかれるような方には年金という性質のものが適当であるというふうな考え方から、この障害に関してだけは年金制度を創設したいという考え方で主張いたしまして起ったわけでございます。それが採用されたわけでございますが、これらにつきましてむろん兵の軍属の場合等との処遇の関係、午前中にもございましたように各般の御批判があるかと思いますが、まずまずここら辺でがまんをしていただくよりしようがない、率直に申せば私はそうだと思うのです。そのがまんをしていただくのにも、本人及び本人の遺族たちにとっては非常にお気の毒な感じもいたしますが、毎々申し上げますように、一方戦争の犠牲者は非常に全国民的な状態ですら考えられるときに、われわれのこの際に取り上げる限度としてはまずこの程度でがまんをしていただくよりほかないのじゃないか、いろいろな均衡を考えましてこの程度に落ちついたような次第でございます。
  82. 受田新吉

    受田委員 障害年金の支給は、これは無期限であるという形のものに漸進的な措置をとられた。これは私たちといたしまして別にこれを有期限で食いとめなければならなかったというようと理由は存在しないと思いまするし、むしろこうして一代その人を守ってやろうという考え方に進んだことは、私としては非常にいいことだと思っております。そのことに関して、障害年金を受ける人が遺族給与金をもらうときに、そこに一般の軍属との間の差があるということ、ここに不均衡感というものがまた新たに発生すると思うのです。それはまたどういうところに関係が発展するかというと、たとえば学徒動員が、その学徒動員期間中に負傷または疾病にかかって、それが原因で法律に定めた期間よりも後に死亡した場合があるわけですね。その死亡の時期がちょっとずれていたというだけで何ら恩典に浴しない、学徒の死亡者としての取扱いを受けないという人が出てきておるわけです。こういう人々ははなはだお気の毒なのですが、こういう遺族給与金の支給の対象になる場合に、直接戦闘に参加して死亡した学徒動員であるならば、その場でなくなられた方も、それからそれがもとでなくなられた、時期がおくれたからといってそれがはっきり原因であるならば遺族給与金というものを支給の対象にすべきじゃないか、そういうことはどういう形になっておりますか。
  83. 河野鎭雄

    河野政府委員 学徒動員がその業務に基いて死んだ場合には、職場でなくなった場合も、やめたあとでなくなった場合も同じように対象に考えております。必ずしも職場でなくなったという人だけを対象に考えておるわけではございません。
  84. 受田新吉

    受田委員 職場でなくなった場合とそれからその人が学徒動員をやめた後になくなったという場合を同じように考えておるということでございますが、その死亡の時期は無期限で差しつかえないのでございますか。
  85. 河野鎭雄

    河野政府委員 準軍属の業務上の理由によって死亡した場合ということのほかに、それが戦時災害であるというふうな要件がついておるわけであります。これは一般国民との均衡を考慮してそういう要件が課せられておるわけでございますが、そういった要件に合致いたします場合には、必ずしも時期にとらわれて云々するというふうなことにはなっておらないわけでございます。
  86. 受田新吉

    受田委員 恩給法においてはその死亡の時期に制約が付してあるわけです。すなわち戦争参加中に起因して死亡した人に対して、内地死亡者については昭和二十年の九月二日まで、それからさらに一年間延長の規定も持たれているわけなんです。それをはずれた者は公務扶助料の支給の対象にならないという規定があるわけです。これとのかね合いはどういうふうになっておりますか。
  87. 河野鎭雄

    河野政府委員 ただいま御質問のございましたのは職務関連による死亡の場合かと思います。公務の場合には、恩給法におきましても、公務によって死亡したということであるならば、死亡の時期がいつであっても別に差しつかえないのでありますが、公務といえない職務関連による死亡というふうな場合に、ただいま御質問のございましたような関連もあるわけでありますが、準軍属の場合には職務関連のことを考えておりませんので、戦時災害によって死亡したというような場合に対象として取り上げられておるのでございます。今のような問題は準軍属の場合には起って参らないかと思うのでございます。
  88. 受田新吉

    受田委員 この規定が生まれて、そうして内地における営内居住者の職務関連、そういう場合が今度新たに取り上げられなければならない。これは学徒等でなくなった方々に無期限で、発病して十年後にそれが原因でなくなったという場合の処遇があるということになれば、内地で勤務した上に起った公務の障害による病気の治癒ができなくて、なくなった時期がおくれても、当然これは救済しなければならない。その方へはね返る問題が起る。     〔大坪委員長代理退席、委員長着席〕 これは対象の問題としては、内地でなくなったという形においてはよく似通った性質のものですから、この法律がすなわち恩給法の内地職務関連死亡という今の特例につながってくる問題だと思うのです。そういうことは全然考慮しないでこの問題を考えられておるのか、そういうところへ当然波及するであろうということを一応想定されておったかどうか。
  89. 河野鎭雄

    河野政府委員 準軍属につきましては、先ほど来何回もお答え申し上げましたように、一般国民との関連を考えなければならないと思います。一般国民が多かれ少かれ戦争犠牲者であるというふうな観点からのことも考えていく必要があると思うのであります。そういうふうなことで戦時災害によって死んだ場合に対象として考えるというふうな立て方をとっておるわけでございます。従いまして準軍属の場合に職務関連まで広げていくというふうなことはむしろ考えにくいのではないか。従いまして今御質問のございましたような問題は起らないのではないか。およそ戦時災害でなくなられたということであれば、その時期は必ずしもいつでなければならぬというふうな制限を設けておるわけではございませんので、準軍属に対しまして今のような考え方をとります限り、御質問のような問題は出て参らないのではないかと考えております。
  90. 受田新吉

    受田委員 そうしますと、未帰還者留守家族援護法では二年間の療養給付期間があるわけですね。その期間を過ぎると、今度は自己の負担による療養ということになるわけですね。その自己負担による療養の後においてもこの未帰還者に対する公務死としての取扱いをすることになるのですね。
  91. 河野鎭雄

    河野政府委員 期間がだんだんたっていきますと、公務関連というのが薄れてくる場合が多いのではなかろうかと思いますが、理論的には公務死であるというふうに考えられる限り、二年たってももちろん対象として取り上げるわけであります。
  92. 受田新吉

    受田委員 民間で治療に当る期間が相当長期にわたる。しかしその期間は国家は治療上の経費負担をしない。しかしその人が民間に入って、たとえば結核などのような長期の病気のために十年も後になってなくなったというころに公務死としての取扱いを受けるというような考え方が成立しますですね。
  93. 河野鎭雄

    河野政府委員 理論的に申しますれば、御質問の通り病気がずっと継続してその病気で死んだということであれば、時期にはとらわれる必要はないと考えております。
  94. 受田新吉

    受田委員 その場合に政府がとかくおろそかにしがちなことは、民間の治療に移った場合はもう責任が薄くなって、民間の医師がなおったくらいに診察をすることを希望することになってくると思うのです。そうすると、もう療養の打ち切りだというようなことになって、それが戦地からの病気が原因で死亡したことがはっきりしておりながら、これらの人に対する取扱いが片手落ちになっている例がしばしばあるわけであります。民間に療養が移ると、そこに非常に行政上の取扱いにおいてルーズになるというおそれがあると思う。この点は二年間の療養期間を越えても常にその本人の病気の観察を続けて、療養費は民間で負担させるが、その病状は常に監視するという格好になっているのかどうか伺いたいと思います。
  95. 河野鎭雄

    河野政府委員 病気を国の方でずっと監視するというふうなところまではなかなか手が届かないと思うのでありますが、民間に移ったからということで公務性がなくなるとか切れるとかいう問題は、理論的にないわけであります。ただ取扱いにおきましていろいろ証拠書類等の関係でなかなか書類が整わないというふうなことはあり得るわけでございますが、そういったような場合でもできるだけ親切な調査のお手伝いをして、法に漏れることのないように心がけておるつもりでございます。今後もそういうふうな方針で参りたいと思います。
  96. 受田新吉

    受田委員 おおむね質問を終わりますが、この厚生省の所管の仕事にこういうところであたたかい心をおくるのにいい対象がたくさん出てくるわけです。たとえば十八才という年令がこれは年令構成上の要件として遺族年金を支給する限界になっているわけです。恩給法は二十才となっている。その他のいろいろな法律で十八才とか十六才とかいろいろありますが、とにかく援護法では十八才で打ち切られるが、恩給法では二十才までいただけるということになると援護法の方に残っている人々が非常にさびしく思っていることは、あの調査会の答申の作成のときに一言触れざるを得なかった事情でもおわかりと思うのです。従って十八才で年金を打ち切られるその人々が、恩給法にいけば二十才までもらえるのに、二年間自分の方が不遇な目にあっているというような印象をなくする方法も、やはり厚生省としては考えなければいかぬ。その辺の年配の人はちょうど今一番多いところになってきているのです。上級学校へ行く場合の学資金などにさしあたり影響するわけですが、そういう者が進学する場合は育英資金を特別便宜を供与する、年金を与えないかわりにそういう方面の取扱いをする。あるいはその者が直接職場に乗り込む場合には就職のあっせんに特別努力をする、こういう取扱いをすることによって法律の不均衡を救う道があると思うのです。こういうことについてはそうした人々に対する、遺族年金対象となる十八才の子供と二十才の恩給法対象になる者の差等を均衡化するという取扱いとして、育英資金の優先取扱い、あるいは就職の優先処理、こういうようなことをお考えになっているかどうか。
  97. 堀木鎌三

    堀木国務大臣 受田さんの指摘されたところは私どももまさに大切なところだと思うのであります。一つ法律でもってすべての問題が解決するとは私たち思っておりません。広い国民の生活を安定するということを目標として社会保障を中核にして各般の社会政策を進めていくという厚生省の役割としては、各種の法律を通じて円満なる起用をしていく。ただこれが実は口で言うはやすく行うはなかなかかたいことも私存じております。しかしながら各種の法律を通じまして円満な運用によってできるだけそれらの国民の不安感あるいは不均衡感というものを払拭して参るというふうなことが私どもに課せられた問題である。過般御審議を受けました母子福祉貸付金の問題にいたしましても、今度改正いたしましたのは、今例におあげになりましたような、要するに二十才、現に学業に従事しておる者が、しかもそれが年を越したために就学資金が得られないというふうな状態を是正しようというので、過般当委員会で御承認を得たような次第でありまして、各般の問題を通じまして適切なる運用をいたして参りたい、こう考えておる次第でございます。
  98. 受田新吉

    受田委員 質問を終ることにしますが、今のような取扱いによって、法律規定した範囲を越えてなお救済の手を差し伸ばすべき面の救済ができると思うのです。そういうところへ心を配ることによって、別に法律にはなくても遺族は満足するわけなんです。その方がむしろ遺族年金を少額もらうよりは——そうしたところへ心を配ってあげる方が、高い立場では遺族は大きな満足をすることが考えられるわけです。そこには厚生省の努力をしていただかなければならない問題があるわけです。それを大臣から非常に好意的な熱情のある御答弁があったので、今後の厚生行政には期して待つべきものがあるとわれわれには安心感を与えたわけです。  最後に一つ、今度の改正措置の中で最も重点と思われる遺族給与金の支給対象の中に、直系血族のない者という条項が一つあるわけですが、これをあまりきびしく考えられ過ぎていくと——答申の場合には、私自身はいろいろ意見も持っておったわけですけれども、その対象になる人が非常に少くなってくる。この解釈をうんと広げて、たとえば婚姻をしてよそへいっている娘さんがある場合に、そのあとに残ったお父さんやお母さんは当然対象になる、あるいはもっと範囲を広げるいろいろ具体的な例があると思いますが、そういう問題についてはできるだけ範囲を広く取り上げるようにしようという考え方を持っておられるかどうか、このことをお答え願いたい。
  99. 河野鎭雄

    河野政府委員 直系血族があれば機械的に切ってしまうというふうな考え方は毛頭ございません。法律にも、扶養能力がある場合にというふうなことになっております。ただいま御質問のございましたように、直系血族があって、その人がお嫁にいってしまっているということであれば、特別の事情のない限り、おそらくその人が扶養しているという関係にないわけでございますので、そういう場合にはもちろん対象にして考えていいんじゃないか、かように考えております。これを非常に厳格に適用するというふうな——厳格にといいますと語弊がございますが、何でもかんでも少くやることがいいんだという建前で運営する考え方は毛頭ございません。実情に合ったような法律適用をして参りたい、かように考えております。
  100. 滝井義高

    滝井委員 これは問題になるたった一つの点ですが、死因の公務性ということです。公務傷病死の範囲等を決定する場合に、死因に公務性があるかないかによって線を引くわけです。その場合に、死因の公務性がないために、現在七万件くらいが却下されている。ところがこれはなかなか遺族の方々が納得がいかぬので、再審査を要求して不服の申し立てがくる、こういうところに問題があるわけです。今後こういうように準軍属にまで範囲を拡大していますと、やはりその問題が今までよりもっとひんぱんに起ってくるだろうと思います。そこでこの死因の公務性というものをこの際少し明白にしておいてもらいたいと思うのです。
  101. 河野鎭雄

    河野政府委員 死因の公務性、これは一がいにこういう場合が公務だというふうなことは言いにくいと思うのでございますが、この点は先般長谷川委員からの御質問があったかと思うのでございますが、恩給法が長年施行されておるわけであります。そこでこういった場合には公務になるというふうな一つの慣例がだんだんできてきておるわけであります。大体そういった線を尊重して仕事をいたしておるわけであります。もちろん医学の進歩あるいは医学的な判断の推移によって、今まで考えておったところをもう少し広げたらいいじゃないかというふうな動き方は現実にあるわけでございますが、基本的には恩給法でいえば恩給審査会がございますし、また援護法におきましては援護審査会があるわけでございまして、そのメンバーも相当ダブっておるわけであります。一流の専門家にお願いして委員におなりいただいておるわけであります。できるだけ同情のある運用をするように委員の方々もお考えいただいておるわけでございますので、私どももそういった先生方の御意見を尊重しつつ仕事をして参りたい、かように考えております。
  102. 滝井義高

    滝井委員 今回準軍属になりますと、その病態と申しますか、公務傷病の範囲が非常にバラエティに富んだ形で出てくると思うのです。今のような軍人軍属とはちょっと違ったいろいろのケースが、たとえば工場の中の者なんかも、そのときにさかのぼって検討しなければならぬという者も出てくるだろうと思います。ぜひ一つ援護審査会等の審議も慎重にやっていただきまして、死因の公務性ということをできるだけ弾力をもってしていただかないと、せっかくいい法律を作って、ある程度民間まで拡大することになるのですから、その点だけお願いして質問を終ります。
  103. 森山欽司

    森山委員長 他に御質疑はありませんか。——御質疑もないようでありますから、これにて質疑は終了したものと認めます。  これより討論に入るのでありますが、別に御通告もないようでありますので直ちに採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔総員起立〕
  104. 森山欽司

    森山委員長 起立総員。よって本案は原案通り可決すべきものと決しました。  なお本案に関する委員長報告書の作成につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが御異議ありませんか。     [「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  105. 森山欽司

    森山委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。     —————————————
  106. 森山欽司

    森山委員長 この際公述人選定の件について申し上げます。  来たる十七日に開会いたします、内閣提出最低賃金法案外二件についての公聴会における公述人の選定につきましては、すでに委員長に一任されておりましたが、次の通り選定いたしましたので御報告いたします。国民経済研究協会理事長稲葉秀三君、労働科学研究所社会科学研究室主任研究員藤本武君、全日本労働組合会議議長滝田実君、日本労働組合総評議会調査部員小島健司君、日本経営者団体連盟常任理事入江虎男君、東京商工会議中小企業委員会委員長石田謙一郎君、以上六名の方々であります。  なお、右の公述人の事情等によりまして、変更を要する場合は、委員長に御一任を願いたいと思いますから御了承下さい。  本日はこれにて散会いたします。     午後三時十七分散会      ————◇—————