○
井堀委員 きわめてばく然たる御答弁です。そういうふうにお答えいただかなくて、もっと明確にお答えいただけると思ったのでありますが、
労働三法外
労働関係の法規に、それぞれ
労働省の任務は規定されております。また
労働省設置法第一条によってきわめて明確になっております。これは言うまでもなく、
労働者の福祉と
労働者のための職業の確保に関する問題が
労働省の重要な任務であって、それを補強するために種々なる規定が行われておるのであります。中心は
労働者の福祉と職業の確保になけらねばならぬことは疑いの余地がないと思うのであります。この限界の中に立って、教育、宣伝、啓蒙というようなものは、きわめて狭い範囲内にしか
労働省の活動はあり得ないのではないか。たまたま終戦後の日本の客観的な諸
条件からいって、
労働者自身の自主的な力による
労働者の地位向上のため、ことに社会的地位を引き上げるための教育活動がはなはだしく脆弱であったので、
政府がお手伝いをするという意味における
労働省の教育活動が相当高く評価された時代があるのであります。しかしその後非常なスピードをもって日本の
労働運動も成長を遂げておることは、あまりにも明瞭であります。従って
労働省の教育に関する任務というものがおのずから限界が狭まってきたことは明らかだと思うのであります。またよい意味でこれを
理解すれば、従来
労働省が担当しておりました仕事を
民間に移行しようとする善意の現われは私は認めるのであります。しかしその善意の現われをどういう工合にするかということについては、よほど慎重でなければならぬのでありまして、ここに提案しております
労働協会なるものによって、その仕事を肩がわりせしめようとする
考え方の
一つについては正しさもあるし必要性も認める。しかし
労働省がこれを立案するということについて問題が
一つある。しかしその立案は善意に
理解するといたしましても、その結果である
法案の内容が非常に重要になりますので、第一条の
関係をお尋ねしたのです。私の知る範囲においては
労働省の職務権限、任務の中においては、これは少々行き過ぎた内容であると私自身は
理解しておるのであります。そういう意味で私の疑いを明確にいたしたいとかなり努力いたしまして、全文について検討を加えてみたのであります。しかしここで問題になります点は——きょうはとうてい時間がありませんから多くは述べられませんけれ
ども、問題点をここに
指摘して、御検討いただいて、次会にまた十分うんちくを傾けた大臣の方針を伺いたいと思っております。そこでここに提起いたしておきたいことは、これは私の
考えではなくて、
労働省設置法並びに
労働関係法規のいずれをとってみましても、
労働者の自主的な力、特に資本主義の現社会制度のもとにあっては個々の
労働者と雇い主との間においては対等の力は認めがたい。そこで、
労働者の団結権が問題になり、団体行動権が保護規定として
労働立法の中に強く要請されてきていることは今さら言うまでもないのであります。その
労働者の自主的活動、その力を育成し、その社会性を育成していくためには
労働者自身の自主的な力、すなわち組織的な方法によって、言いかえれば民主的な
手段と方法によって
労働運動の公的性格を引き上げていくことを期待しておるわけであります。これをもし他からその限界を越えて引っぱったり、押しつけたりするようなことがありますならば、これは
労働省全体の
労働行政の方向を誤まり、非常におそるべき傾向になると私は思うのであります。これは短時間に論議してすぐに結論が出るものではございません。条文の
一つ一つについてお伺いしていけば、だんだんと明らかになっていくと思うのでありまして、この点についてはもっと検討をいただく必要があると思うのであります。
それから次に問題になりますのは、こういう
法案を論議いたしますのに
一つの具体的な事例を私はここに持ち合わしております。このことを
一つ検討していただくことによって、だんだん明確になってくると思うのであります。その
一つは、
労働省の任務としてきわめて重大な事柄で、実行に移し得ないもので、すでになされた労務に対する
賃金の支払い、すなわち
労働者の生存権を守る唯一の方法である
賃金の債権の保護が今日完全に行われていない。これはいろんな事情があることは私もよく
承知しておるのでありますが、こういうように
労働の保護としてぜひと万全を期さなければならぬものについても手が届かない。それから
労働保護に関する災害の問題などを見ましても、かなり多くの災害が出て、死亡率は依然として高い水準を統計の上で示しておるのでありまして、こういう問題等を一々あげていきますると、
労働省のやる仕事はあまりにも多過ぎて、いずれも手が回らないという
実情にあるときでありますから、こういう意味から、できるだけ教育といったような仕事はぜひ他に回そうというお
考えについては私は賛成なんです。しかしそれは
目的と
手段をはき違えてはならないことは、この
法案の中で私は
指摘しておきたいと思うのであります。この問題につきましては、
あと少し時間がありますから逐次お尋ねしていきますが、こういうような観点からお尋ねをしようと思うのでありますから、あらかじめこの
法案と
労働省の各
関係法規との
関係において、矛盾がないならば、そのことを明らかにしてほしいと思うのであります。
そこできょうは、これもやはり
労働保護の最たるものの一例でありますが、これはかつて
予算委員会その他の
委員会におきまして
政府の所見をただし、また
政府の積極的な保護活動を期待して参りました日米安保条約に基きまする
行政協定の十二条の二項と五項の
関係において問題がございます。しかもそれは国民の、特に
労働者に対する保護といたしましては、非常に重大な事柄でございますが、その保護の上にいろいろな、不都合が生じておるのでありまして、この事実についてただしていきたいと思っております。
まず今松総務長官がそういう問題を処理される行
政府の当面の
責任者だということを
政府は明らかにいたしておりますから、今松長官にお尋ねをいたしたい。日米
行政協定の十二条の二項と五項のこの二つの
関係において、条文は簡単なことなんですが、たとえば五項において、
労働者の保護及び
労働者の権利は日本の法令に定めるところによるということがきわめて明確でありますから、この
関係をどのように今松長官が
理解しておるか、それから二項はあなたのお仕事でありますから御存じだと思いますが、米軍が現地すなわち日本国において、労務調達について日本経済に不利な影響を及ぼすおそれのある場合においては、日本国の当局との調整または当局を通じて援助を求めるという、すなわち役務調達についての規定であります。この規定が今米軍によって破られようとしておる、こういう事実が今現存いたしておりますので、この問題の解決をたびたび
労働組合からも
政府に要請があったようでありますが、一体その後どういう工合にこの問題を処理なさっておられますか、
現状について
一つ具体的な答弁を伺ってみたいと思います。