運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1958-03-12 第28回国会 衆議院 社会労働委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年三月十二日(水曜日)     午前十時三十一分開議  出席委員    委員長 森山 欽司君    理事 植村 武一君 理事 大坪 保雄君    理事 田中 正巳君 理事 野澤 清人君    理事 八田 貞義君 理事 滝井 義高君    理事 八木 一男君       小川 半次君    加藤鐐五郎君       亀山 孝一君    神田  博君       草野一郎平君    小島 徹三君       田子 一民君    中山 マサ君       南條 徳男君    藤本 捨助君       古川 丈吉君    松岡 松平君       山下 春江君    亘  四郎君       赤松  勇君    井堀 繁雄君       岡本 隆一君    栗原 俊夫君       五島 虎雄君    中原 健次君       長谷川 保君    山花 秀雄君       吉川 兼光君  出席国務大臣         労 働 大 臣 石田 博英君  出席政府委員         総理府総務長官 今松 治郎君         総理府事務官         (内閣総理大臣         官房審議室長) 吉田 信邦君         調達庁長官   上村健太郎君         総理府事務官         (調達庁労務部         長)      小里  玲君         労働政務次官  二階堂 進君         労働事務官         (労政局長)  亀井  光君         労働事務官         (労働基準局         長)      堀  秀夫君         労働事務官         (職業安定局         長)      百田 正弘君  委員外出席者         専  門  員 川井 章知君     ————————————— 三月十二日  委員小林郁君、福田赳夫君、松浦周太郎君、阿  部五郎君及び岡良一辞任につき、その補欠と  して神田博君、南條徳男君、松岡松平君、川俣  清音君及び中村高一君が議長指名委員に選  任された。 同日  委員川俣清音辞任につき、その補欠として栗  原俊夫君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 三月十一日  引揚者給付金等支給法の一部改正に関する請願  (大高康紹介)(第一七七三号)  同(北澤直吉紹介)(第一八七九号)  同(塚原俊郎紹介)(第一八八〇号)  同(中山榮一紹介)(第一八八一号)  医業類似行為既存業者業務存続に関する請願  (淺沼稻次郎紹介)(第一七七七号)  同(井堀繁雄紹介)(第一七七八号)  同(伊藤卯四郎紹介)(第一七七九号)  同(猪俣浩三紹介)(第一七八〇号)  同(石田宥全君紹介)(第一七八一号)  同(今村等紹介)(第一七八二号)  同(小川豊明紹介)(第一七八三号)  同(川俣清音紹介)(第一七八四号)  同(片島港君紹介)(第一七八五号)  同(勝間田清一紹介)(第一七八六号)  同(木原津與志君紹介)(第一七八七号)  同(久保田豊紹介)(第一七八八号)  同外二件(五島虎雄紹介)(第一七八九号)  同(志村茂治紹介)(第一七九〇号)  同(下川儀太郎紹介)(第一七九一号)  同(田中武夫紹介)(第一七九二号)  同(堂森芳夫紹介)(第一七九三号)  同(中村時雄紹介)(第一七九四号)  同(長谷川保紹介)(第一七九五号)  同(山口シヅエ紹介)(第一七九六号)  同(山田長司紹介)(第一七九七号)  同(横錢重吉紹介)(第一七九八号)  同(吉川兼光紹介)(第一七九九号)  同(井岡大治紹介)(第一八五八号)  同(井上良二紹介)(第一八五九号)  同(大西正道紹介)(第一八六〇号)  同(加賀田進紹介)(第一八六一号)  同(上林與市郎紹介)(第一八六二号)  同(神近市子紹介)(第一八六三号)  同(久保田鶴松紹介)(第一八六四号)  同(河野密紹介)(第一八六五号)  同(佐々木良作紹介)(第一八六六号)  同(佐竹新市紹介)(第一八六七号)  同(櫻井奎夫君紹介)(第一八六八号)  同(西村榮一紹介)(第一八六九号)  同(平岡忠次郎紹介)(第一八七〇号)  同(前田榮之助君紹介)(第一八七一号)  同(松岡駒吉紹介)(第一八七二号)  同(松原喜之次紹介)(第一八七三号)  同(森本靖紹介)(第一八七四号)  同(山口丈太郎紹介)(第一八七五号)  同(山田長司紹介)(第一八七六号)  同(山下榮二紹介)(第一八七七号)  同(吉田賢一紹介)(第一八七八号)  衛生検査技術者身分法制定に関する請願(井  谷正吉紹介)(第一八〇〇号)  同(菅太郎紹介)(第一八〇一号)  国民障害年金法制定に関する請願徳安實藏君  外二名紹介)(第一八〇二号)  保育所予算に関する請願野澤清人紹介)(  第一八〇三号)  生活保護法最低生活基準額引上げ等に関する  請願中崎敏紹介)(第一八八三号)  国立病院等賄費増額に関する請願中山マサ  君紹介)(第一八八四号)  民間電気治療営業禁止反対に関する請願山下  春江紹介)(第一八八五号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  日本労働協会法案内閣提出第三九号)      ————◇—————
  2. 森山欽司

    森山委員長 これより会議を開きます。  日本労働協会法案を議題とし、審査を進めます。質疑の通告がありますので、これを許します。赤松勇君。
  3. 赤松勇

    赤松委員 法案政治的背景と申しますか、そういう問題は先般同僚滝井君の質問によりまして、少し触れられております。その問題はあと同僚中原議員も触れられると思うので、時間をあまりとることはいけませんので、そういう点を私はきょうは省きたいと思います。  ただ一点お聞きしたいのは、この協会目的が非常に抽象的に書かれておるわけであります。すなわち「広く労働者及び使用者並びに国民一般労働問題に関する理解と良識をつちかうことを目的とする。」こういうことになっております。これは滝井委員が前に指摘いたしましたように、その方法いかんによりましては逆の結果をもたらすおそれもあると思うので、この際その目的についてもう少し具体的に御説明をばお願いしたい、こう思います。
  4. 石田博英

    石田国務大臣 この前滝井委員の御質問にもお答えいたしておいたのでありますが、まず第一には労働問題に対する認識についての現状判断であります。使用者側の中には、まだ依然として労働運動あるいは労働組合ということ自体が、現在の社会秩序経済秩序に相反するものだ、あるいは産業平和確立を妨げるものだという考えを持っておる人々が相当あることは事実であります。中には平然とあるいは公然とこれをと口にする人、別に口にはしないけれども、腹の中ではまだそういう考えを捨てない人が相当あることは事実であります。それから一般国民の中にもやはり両様の認識を持ち、労働組合運動というものの実態についてよく知らない者のあることも事実であります。それから労働組合の一部の中にも、はなはだしきに至っては労働組合というものは単なる共済組合あるいはリクリエーションの団体というような程度の意識しか持たない者もあり、あるいはさらに極端に言うならば、労働組合の持つべき役割あるいはその本質の範囲を出て、その組合の力をもって政治的目的達成手段にしようとする、あるいはこれは社会主義的政治運動の別働隊だというような考え方を持っておる人もまたあるわけでございまして、そういう状態の中で労働組合運動問題の実態というものをよく知らしむる必要を私どもは痛感いたすのであります。すなわち概括的に申しますならば、労働問題に対する知識、認識という点についてはまだわが国は後進国だ、そこでその後進性を脱却いたしますために、諸外国の実情紹介したり、あるいは国内におきますよき慣行を作っております実情を調べたり、あるいはまた賃金問題、労働時間問題その他についての研究調査をしたりする必要を私どもは痛感をいたしておりましたので、そういう目的を達成いたしますためにこの法律案を提出したようなわけであります。
  5. 赤松勇

    赤松委員 今おっしゃいますように、使用者の前時代的な考え方、すなわち憲法及び憲法に伴う諸立法等理解をば深めていく、あるいはよき慣行をば周知徹底せしめるという点につきましてはもとより必要でございまして、われわれは反対すべきところはごうもないわけであります。ただ本委員会におきまして一昨年以来問題になっておりますのは、労働大臣行政解釈というものは憲法範疇でやることはもちろんであります。またそれぞれ労働法規範疇において解釈していくということも、もとより当然であります。ただその解釈の問題につきましては、これを拡張解釈するのじゃなかろうか、そういう点についてしばしば本委員会において問題になったわけであります。目的がかりにそうでありましても、問題は手段であります。そしてまた労働大臣の立っておられます世界観なりあるいは労働問題に対する立場というものが非常に重要な問題になってくると思うのでありますが、よき慣行をば普及徹底せしめるということはけっこうです。しかしよき慣行をば作り上げていくという役割も同時に演じるであろうということが予測されますが、その際によき慣行というものの行政解釈を拡張して行うという危険必ずしもないわけではないのであります。私はそういう考え方はない、こう労働大臣はおっしゃいますけれども石田労働大臣がおやめになりまして、あとをお継ぎになる労働大臣等が間違った解釈をされるという危険もないわけではないのであります。従って国の重要な予算を使って行います事業でありますし、ことにこれを民間人にまかせるという事業でございますから、その点は非常に重要でございまして、われわれは今の御説明だけで簡単にその目的に賛成するわけには参りません。この点につきましては、日本社会党としましては、もっと本法案の持っておる目的及びその意図するところをば追及いたしまして、本法案に対する態度をばきめたい、こう考えておりますが、今労働大臣のお言葉の中で、使用者の中に前時代的な考えを持っておる者があるということをおっしゃいました。その通りであります。それが最も顕著に今出ておりますのは、例のいわゆる神風タクシーであるのであります。御承知のように一昨日全旅客は大会を開きまして、この問題についていろんな決議をば行いました。政府の方も業者の非をお認めになりまして、従来の交通取締りという面からさらに本質的な給与の面にまで、そのメスをば入れられておるのでございます。ここで奇怪にたえないのは、日々雇い入れて、そして常時使用しておる、いわゆる運転協会なるもの、人入れ稼業と申しますか、こういうものが存在しておりまして、これに対しましては東京都の基準局は厳重に警告を発しておるのでありますが、一体基準局は今までこういう事態が存在しておるにもかかわらず、なぜこれを摘発するなり、あるいはやめさせるなり、適当なる措置をばおとりにならなかったのであるか、世間が相当やかましくなってからあわててこういうような措置をおとりになるということは基準法の「日日雇い入れられる者」というあの解釈臨時工社外工などと関連して非常に問題になっておりますときに、私ははなはだ遺憾にたえない事態であると思うのでありますが、これに対する労働大臣の御所見をばお伺いしたいと思うのであります。
  6. 石田博英

    石田国務大臣 実はこういうことが問題になる前に、私は今のタクシー業労働条件というものは非常に不思議であり、奇怪にたえなかったのであります。従って基準局長に対してその研究方を命じておりました。基準局の方でそれに従った処置をとっておったわけでありますが、法律上ですと今の雇用条件というものは形式的には合っておる面もあるし、また改善された点も、たとえば労働時間等の面におきましては改善された面もいろいろございましたが、今まで不十分でありました。私は基準局長にはたしか昨年の九月か十月ごろに、このタクシー業労働条件はおかしいではないかということを注意を喚起して、その後処置をとって、だんだんに改善してきておったのでありますが、御指摘のようにこれがこういう大きな問題になってしまいました。  それからもう一つ職安法違反の問題でありますが、これは私は、実はそういうものがあったことを新聞記事承知しただけでありまして、これは非常にうかつでありますが、この問題の点につきましては実は就任早々から非常に不思議に思って、また改善すべきものがあると思って注意を促し、適切な、あとう限りの処置はとって参った次第であります。その経過は、基準局長が参りましたから後刻申し上げます。
  7. 赤松勇

    赤松委員 警視庁調査によりますと、三十三年の二月調べでは、自動車事故数は二万五千九百十七件、そのうちタクシーは五千三十三件、三一・六%の数字を示しておるわけでございます。警視庁交通部のこの事故の結論は、労働条件が不適正であるということを指摘しておりまして、十分に休養を与え、最良の身心状態運転をば行い得るような条件を作ることが大事である、こう言っております。  そこで今どういうような状態になっておるかと申しますならば、現在、労働時間の問題はあとで御質問申し上げるといたしまして、給与の問題につきましては御承知のように非常に基本給が、たとえば一例でありますけれども、これは全旅客労連調査ですが、三十三年の一月の事例です。基本給が三千円、無事故手当が千円、皆勤手当が千円、家族手当が千円、能率給が三千円、歩合給が二万二千五百二十三円、こういうことになっておりまして、そのほとんどは歩合給になっておるわけであります。基本給は三千円。これは労働大臣が昨年以来、最低賃金に関する業者間協定というもの、これを行政指導されて参りました。私どもむろんこれには賛成しておりませんけれども、おそらく労働大臣のお考えは、こういうような極度に低い労働条件の存在するところに対しまして業者間協定を奨励している、そうして事態改善をはかっていくということがあなたのねらいではなかったかと思うのであります。それで業者運輸大臣に呼ばれまして出しました意見によりますると、賃金体系については現在四千円程度固定給であるが、これを一万二千円くらいにふやしていきたい、こういうことを言っております。大体三千円か四千円程度という基本給につきましては、業者旅客労連もこれは認めておるわけであります。従ってこれが不合理であるということは、もう議論の余地はありません。これをば一万二千円程度に高めていきたい、こういうわけなんですね。あなたは今の民間給与ースあるいは官公庁の給与ース、そういう全体の給与ースから比較いたしまして、三千円、四千円というものは極端としても、今業者代表運輸大臣に出しました一万八千円くらいな最低賃金保障制度を作りたいという考え方に対しましては、妥当であると考えられておるかどうか。妥当でないとするならば、これに対してしかるべき最低賃金を作るような行政指導なり勧告なりを行う用意があるのかどうか、こういう点を聞いておきたいと思います。
  8. 石田博英

    石田国務大臣 三千円、四千円の固定給でやられて、歩合給に重点を置かれているという状態は非常に不合理だと思っております。先ほども申しましたように、昨年九月末ごろから注意を喚起するように基準局長に命じておいたわけであります。その後基準局においては研究や、いろいろな処置をとって参りました。それはあと基準局長から御説明をいたします。  それから今出されている問題については、その収入の絶対額の問題でなく、結局給与体系の問題だろうと思う。その一万何千円かという提出されたものだけをとらえて、他の給与の金額の絶対額と比較して議論をするというわけにいかないだろうと思いますね、歩合給その他も入るでしょうから。それについて私が、適切であるか適切でないかということを今直ちに申し上げる段階ではございませんけれども給与体系といたしましてはでき得る限り固定給を多くして、少くとも病気その他のことがあっても固定給だけで最低生活が保障されるということが望ましいと私は考えておる次第であります。なお基準局長から補足説明いたします。
  9. 堀秀夫

    堀政府委員 タクシーの問題につきましては、御指摘のような事実があるのはまことに遺憾でございまして、労働基準局といたしましても関係運輸省警視庁その他の各省と連絡をとりまして、この問題の是正に当ってきたところでございます。まず第一に労働基準法法律の面につきましては、これはタクシー運転手につきましては、最近まではその業務特殊性にかんがみまして、基準法基本労働時間を八時間にせずに十時間にするという特例が認められておったわけでありますが、これは妥当でないということで基準法施行規則を改正いたしまして、基本労働時間は八時間ということにいたしたわけであります。八時間をもとにいたしますから、一昼夜交代勤務が認められておりますので、その変形は認められますけれども基本はとにかく八時間にする。従来のような十時間というのは妥当でないということで改めたわけでございます。これに基きまして労働時間の指導をいたしますと同時に、睡眠施設等につきまして、法律違反の面につきましては厳重監督を実施してきたところでございます。ただ問題はただいまお話のように賃金体系が問題でございまして、御指摘のように歩合給の割合が非常に大きい、固定給的な要素が非常に少いという点が、やはりこのタクシーの現在市民に迷惑をかけるような運転一つ原因になっておるのではないかという工合に考えます。そこでこの点につきましては、実は労働基準法違反の問題ではございません。しかしながらわれわれといたしましては、やはり賃金の中で生活を保障するような固定給的要素が大きいことは望ましいところであり、特にタクシーのような変則な従業をいたしますものについては、これが保障されませんと、結局その歩合的な賃金をよけい取ろうということで無理な運転をするということになると考えまして、運輸省警視庁連絡をとりましてこの歩合給的要素をなるべく少くし、固定給的要素をなるべく多くするという方向の指導に努めていっているところでございます。最近具体的に運輸省でもこれに基きまして運輸省監督権限を行使するに当りましても、この賃金体系合理的であるかないかという点も判断に入れまして指導をする、このようなことになっておりますので、われわれとしては運輸省と密接な連絡をとりまして、この賃金体系合理化是正に努力したいと考えておるところでございます。
  10. 赤松勇

    赤松委員 そんなものは運輸省にまかしたって給与の問題は解決できません。給与の問題は労働大臣にお尋ねします。基準局長には給与の問題ではなくて労働時間の問題をお尋ねしますから、給与の問題は労働大臣にまかして下さい、あなたは答弁は要りませんから。  それで時間の問題ですが、変則八時間制を実施しているということです。実際は、われわれの調査によれば、十六時間制をとっておるものが二名、十七時間が六名、十八時間が八名、十九時間が七名、二十時間が十四名、二十一時間が四名、二十二時間が四名、二十三時間が二名、最高二十四時間が五名、こういうような労働時間で、事実上あなたたちがきめたのは有名無実に終っておるという事実があるわけなんです。こういう点についてのいろいろな取締りというものは、現在基準法施行の過程におきまして、全三国的にいえばなかなか違反件数も多いし、人も足らぬ。私は全部あなたの責任だなんということは言いません。しかしながら少くとも労働時間の面からも、これがもし変則八時間制に無理があるとするならば、やはりこの変則八時間制そのものメスを加えて、そうしてやり得る合理的なものを作り上げていくことの努力は必要だと思うのです。こういう点については、業者意見でなくて、全旅客労連ども呼んでいただいて、十分に実情を調べて善処をしていただきたいということをあなたに望んでおきます。  労働大臣には、現にあなたが昨年四月からずっと最低賃金制業者間協定行政指導をおやりになっておるが、ことに極度に給与体系の悪いこのタクシー業界に対して、そういう業者間協定行政指導を行う意思があるのかないのか、いや、今自主的にいい給与体系を作ろうとして彼らは努力しておるから、しばらく見るんだとおっしゃるのかどうか。ところが現に業者代表運輸大臣に呼ばれまして、今申しまげましたように、一万八千円の最低保証制度をば作ると言っておるのです。民間給与平均ベースは幾らになっておりますか。
  11. 堀秀夫

    堀政府委員 民間平均賃金ベースは、現在の毎月勤労統計等によりますと、約一万九千円ないし二万円でございます。
  12. 赤松勇

    赤松委員 そうだといたしまするならば、あの過酷な、しかも変則的な労働時間の中で、極度に神経をすり減らして働いておるこの労働者が、最低保障額として一万八千円というものを業者は出しておるということは、民間給与ースより著しく下回るものである、不当であると言わざるを得ないんです。そこで私は労働大臣にお尋ねしたいのですけれども、元来これは運輸大臣給与体系を出すべき性質のものじゃないと私は思うんです。運輸省やあるいは警視庁というものは、交通取締りの面から、たとえば台数の許可であるとか、その他免許の問題であるとか、そういうものを取り扱うべきものであって、本来これらの給与問題というものは、労働委員会なりあるいは労働省行政指導をやっておるところの最低賃金制——それが最低賃金制といえるかどうかわかりませんが、業者間協定をやれ、そうして合理的な最低賃金をきめろということを現に指導されておるのですから、なぜタクシー業界に対してその指導をおやりにならぬか、これほど世間が問題にし、問題は単に交通取締りの問題ではなくて、給与の面にあるのだ、労働時間の面にあるのだ、労働条件にその原因があるのだということは世間周知の事実なんです。政府もこれを認めておる。だから給与体系に対して改善を加えるということを、運輸大臣勧告しておるじゃありませんか。この点について、あなたは行政指導を昨年からおやりになっておるのだから、まっ先に合理的な業者間協定をば作れという、そういう勧告なりあるいは指導なりを労働大臣はなぜおやりにならないか、またこれからおやりになるかどうかという点を聞いておきたいと私は思うんです。これはむろんこの労働協会法案にも関係ありまするし、現にこの委員会で審議しております最低賃金のあの四つの方式の第一点の問題にも非常に大きな関係がございますから、この際一つ明確にお答えを願いたいと思うんです。労働大臣は相当思い切った行政をやるのですから、いやおれは知らない、運輸大臣にまかしておくといったって、中村さんもこの委員会におった人なんだ。しかしあの人は給与体系についてはあまり専門家じゃないのです。だから専門家であり、同時にそういうような行政指導をやらなければならぬ労働大臣みずからが、そのイニシアチブをおとりになるということは当然なことじゃありませんか。
  13. 石田博英

    石田国務大臣 先ほどから申しております通り、私はその責任も感じ、現状にはなはだしく不満を持っておりますからこそ、昨年来この問題についての研究を命じ、また労働省から運輸省に対して——運輸省が直接監督者でありますから、運輸省に対しまして、給与の問題、労働時間の問題を含めた改善方を要望して参ったようなわけであります。今内閣交通事故防止対策協議会というのがありまして、その協議会の中の自動車部会で、私の方からも人が出ておりまして、給与の問題をもちろん含んだ対策を今やっておるわけであります。事実問題といたしまして今出ております状態が一種の業者間協定の形になると思いますが、またそうしていくべきものであると思っております。ただその額の認定、他の一般給与ースとの比較は、その場合の固定給だけと他の一般給与ースとを比べるべきものでなくて、それに付加されるいろいろなもの、歩合給なりその他のものを加えたものと比較すべきものであって、それについて、現在新聞紙で報ぜられておるものについて、それが適切であるか適切でないかということをここでまだ言う段階ではないと私は思います。しかし、いずれにしろ、問題の重点が労働条件にあるということは御指摘通りであり、私は就任して間もなく、ただたび申し上げた通り注意を喚起し、適切な処置を求めてきておったのでありまして、運輸省が動き出しましたのも、私の方からこういう新聞紙上に問題になる前から動き出してきておりまして、そういういわゆる行政指導をやって参ったつもりであります。それから、こういう話し合いができますならば、それを全部に適用するような行政指導をしていかなければ効果が上りませんから、全部に適用されるような行政指導はやっていくつもりであります。
  14. 赤松勇

    赤松委員 ちょっと希望しておきますが、この給与体系は、どこまであれしたって、問題は出来高払いになっておるのですから、これについての根本的な検討が必要だと思います。変則八時間の問題もそうなんです。この労働時間の問題と給与体系の問題については、なお労働者側の意見も十分お聞きになりまして、近い機会に本委員会に対して労働省の方針を示していただきたい。  そこで私は労働協会法案に戻りますが、たとえば公労法の解釈、これは明らかに私ども労働大臣との間には食い違いがあります。そして、その解釈は、最終的に裁判所が決定すべきだということはしばしば労働大臣もおっしゃり、われわれも言ってきたわけです。ところで行政解釈が拡張されまして、そしてその拡張された行政解釈がどんどんこの目的に規定しておりまするようなPR活動が行われておるということになりますと、労働運動に対する著しい侵害になると思うのです。こういう点はたくさん問題がございます。なお先ほど申し上げましたように、この行政解釈の拡張解釈だけの問題ではなくて、その目的一つ一つにつきまして、滝井君が先般の委員会で言いました協調会が果しました役割は、労働大臣承知だと思うのですけれども、あの時分は、労働争議の調停にやっていきましたり、まあPRの活動はあまりやらなかったですけれども、当時工場監督官あるいは小作争議の監督官、それから協調会というような調停機関がありまして、これがよくやってきて問題を処理したものです。ところが、これは一応民間の機関であるからあれなんだが、今度の場合は、政府が公然と予算を出して、そうしてPR活動をやるということになると、問題は非常に重大になってくるということを、この前滝井委員指摘しておりましたが、私もそうだと思います。実は先般総評の組織あるいは全労会議の下部組織の諸君にも会っていろいろ聞いてみたのですが、この問題については、非常な関心と非常な不安を持っております。目的をもう少し明確に——法文の中で明確にしろということは困難と思いますけれども協会自身の行き過ぎがないように、労働大臣が監督権を発動しなくてもいいように、いろいろな場合を想定しまして、一つ一つの場合をずっと聞いていきたいと思うのでありますけれども、そういう点について、どうですか、これから労働省の方へ一つ一つあの協調会がやった当時のこと、それから最近いろいろ問題になっておるところ、そういうものをずっと一つ一つ取り上げて御質問をしたいと思うのでございますけれども、きょうは適当でしょうか。
  15. 石田博英

    石田国務大臣 これは滝井委員の御質問にお答えしたこととはなはだしく重複するのですが、明確にしておきたいことは、協調会とは全然とは申しませんが、本質的に違う幾つかのものを含んでおるわけであります。一つはでき上りの、この会の持っておる資金の作り方であります。協調会は御承知のように、たしか当時六百万円だったと思うのでありますが、全額当時の財界の醵出に待ったものであります。従ってその労働問題に対する立場は、もっぱら使用者側の立場に立たざるを得ず、立っておったと思うのです。それを避けるために政府が出資するというのが第一点であります。第二点は、協調会の果しておりました争議の調停という役割は、今日中労委なり公労委がやるのでありますから、その必要がありませんから、本協会目的ではありません。従ってそういうことはさせるつもりもないし、する意思もない。それから問題は、この労働協会の中立性はいかにして保つか、これも田中委員の御質問に明確にお答えしておいたのでありますが、私ども労働法の解釈の統一をやりました。これは行政機関が法を執行する場合に、その法解釈の統一をしておくことは当然のことで、不統一に法を執行されれば、相手方がはなはだしく迷惑するのでありますから、統一することが必要であると思って、当然のことをやったと思っておりますが、その解釈が拡張解釈であるか、行き過ぎであるか、間違いであるか、それは結局それを最終的にきめるものはやはり裁判所だと思うのです。しかし将来、労働省がやりました法解釈あるいは労働問題に対する見解と本協会の見解とが違った場合どうするかという御質問田中君からありました。私はそれにはっきり答えておきましたが、それもやむを得ない、私は、そういう場合においても、こういう場合を含んで労働協会業務ということに政府は干渉すべきものでないと思っておりますし、法文上もそういう処置をとっております。しかしながらこれは国家の金を使うのでありますから、財政上の監督はしなければなりません。財政上の監督だけはいたしますけれども業務についての監督はしない。それから中立性を保たせますためには、会長の人選については、私は良心にかけて決してへんぱな人事をやる意思はありません。最初そういう出発をいたしておけば、あとはそれによって協会の性格というものがおのずからできてくるわけであります。そういうものによって独立した人格としての協会の動き方というものを期待していきたい、こう考えておるわけであります。
  16. 岡本隆一

    ○岡本委員 議事の進め方について、私は一言委員長に希望を申し上げておきます。労働関係については非常に重要な法案がたくさん出ております。それにもかかわらず、与党の委員の諸君の出席がきわめてりょうりょうであるのは、私は残念に思う。野党の私たちがほとんど全員に近い形で出席しておるのに、与党の諸君の出席がきわめて少いのであります。そのために定員を欠いておるのであります。従って定員が満つるまで暫時休憩されんことを要求いたします。
  17. 森山欽司

    森山委員長 ちょっと速記をやめて下さい。
  18. 森山欽司

    森山委員長 それでは速記を始めて下さい。井堀繁雄君。
  19. 井堀繁雄

    井堀委員 日本労働協会法案の提案の趣旨説明と本案の逐条のそれぞれの質疑応答を比較いたしまして、どうしても納得、理解のできない事柄がございますので、明らかにいたしたいと思うのでございます。  この法案を立案したのが労働省当局であることは間違いがないと思いますが、元来こういう法案労働省の任務において行うということについて、私は非常な疑義を持つものであります。たとえばこの協会目的とするところは、条文によりますと、第一条で、「日本労働協会は、労働問題について研究を行うとともに、広く労働者及び使用者並びに国民一般労働問題に関する理解と良識をつちかうことを目的とする。」と、きわめて明確になっておるのであります。この目的といたすところは労働省の任務の範囲を逸脱するものであると私は理解しておるのでありますが、これに対する労働大臣の所見を伺っておきたいと思います。
  20. 石田博英

    石田国務大臣 労働省設置法の中の労政局の分に属する条項の中に、この協会のやる仕事もまた労働省のやる任務と規定してあるはずであります。それは設置法第七条の四項、「労働組合及び労働関係の調整に関する啓もう宣伝を行うこと。」ということであります。
  21. 井堀繁雄

    井堀委員 労働省設置法の第三条に任務が規定してあります。むしろ三条の一項をさす方が明確だと思います。その一項によれば、「労働組合に関する事務、労働関係の調整及び労働に関する啓もう宣伝」と規定してあるわけですが、この「啓もう宣伝」をさすのであろうと思うのであります。これは言うまでもなく、先ほど御答弁になりましたように、もっと狭い意味に理解しておるようでありますが、労働関係の調整と啓蒙宣伝との任務の関係においてこの問題を発案したということになるようでありますが、これは間違いありませんか。もう一ぺん確認しておきたいと思います。
  22. 石田博英

    石田国務大臣 そうであります。
  23. 井堀繁雄

    井堀委員 きわめて明確になったと思います。ところがこの法案の第一条では、労働者及び使用者並びに一般の者をさしておるわけでございまして、一体労働者が労使関係の調整を行うということは、言うまでもなく労働省にはそれぞれの任務権限が法律によって規定されておるのでありますが、その中で多少これと関連をもって考えられると思う節は、今御答弁ありました第三条の一項の「労働に関する啓もう宣伝」ということに準拠する以外にないと思うのです。ところがこの目的を裏づけるように、それぞれの定款内容の規定その他の——あとで逐条的にお尋ねすることによってきわめて明確になってくると思うのでありますが、そのことをお尋ねするまでもなく、この第一条でいっておりまする労働者の啓蒙宣伝を行うということについて、労働省の職務権限の限界というものがあるはずであります。それはこの法律のいう啓蒙宣伝の範囲を理解する上に大事だと思いますから、この啓蒙宣伝の限界について、どの法律がそういうことを指示しているか、また労働省の職務権限の中において啓蒙宣伝の限界というものは必ずあるはずだと思うのでありますが、その限界について明確にお答えいただきたい。
  24. 石田博英

    石田国務大臣 啓蒙宣伝の限界と申しますと、一つの抽象論でもあり、具体的な問題ともなるかもしれませんが、私は労働省が行う労働問題の啓蒙宣伝の限界というのは、やはり公益性の維持と中立性の確保だ、こう考えております。
  25. 井堀繁雄

    井堀委員 きわめてばく然たる御答弁です。そういうふうにお答えいただかなくて、もっと明確にお答えいただけると思ったのでありますが、労働三法外労働関係の法規に、それぞれ労働省の任務は規定されております。また労働省設置法第一条によってきわめて明確になっております。これは言うまでもなく、労働者の福祉と労働者のための職業の確保に関する問題が労働省の重要な任務であって、それを補強するために種々なる規定が行われておるのであります。中心は労働者の福祉と職業の確保になけらねばならぬことは疑いの余地がないと思うのであります。この限界の中に立って、教育、宣伝、啓蒙というようなものは、きわめて狭い範囲内にしか労働省の活動はあり得ないのではないか。たまたま終戦後の日本の客観的な諸条件からいって、労働者自身の自主的な力による労働者の地位向上のため、ことに社会的地位を引き上げるための教育活動がはなはだしく脆弱であったので、政府がお手伝いをするという意味における労働省の教育活動が相当高く評価された時代があるのであります。しかしその後非常なスピードをもって日本の労働運動も成長を遂げておることは、あまりにも明瞭であります。従って労働省の教育に関する任務というものがおのずから限界が狭まってきたことは明らかだと思うのであります。またよい意味でこれを理解すれば、従来労働省が担当しておりました仕事を民間に移行しようとする善意の現われは私は認めるのであります。しかしその善意の現われをどういう工合にするかということについては、よほど慎重でなければならぬのでありまして、ここに提案しております労働協会なるものによって、その仕事を肩がわりせしめようとする考え方一つについては正しさもあるし必要性も認める。しかし労働省がこれを立案するということについて問題が一つある。しかしその立案は善意に理解するといたしましても、その結果である法案の内容が非常に重要になりますので、第一条の関係をお尋ねしたのです。私の知る範囲においては労働省の職務権限、任務の中においては、これは少々行き過ぎた内容であると私自身は理解しておるのであります。そういう意味で私の疑いを明確にいたしたいとかなり努力いたしまして、全文について検討を加えてみたのであります。しかしここで問題になります点は——きょうはとうてい時間がありませんから多くは述べられませんけれども、問題点をここに指摘して、御検討いただいて、次会にまた十分うんちくを傾けた大臣の方針を伺いたいと思っております。そこでここに提起いたしておきたいことは、これは私の考えではなくて、労働省設置法並びに労働関係法規のいずれをとってみましても、労働者の自主的な力、特に資本主義の現社会制度のもとにあっては個々の労働者と雇い主との間においては対等の力は認めがたい。そこで、労働者の団結権が問題になり、団体行動権が保護規定として労働立法の中に強く要請されてきていることは今さら言うまでもないのであります。その労働者の自主的活動、その力を育成し、その社会性を育成していくためには労働者自身の自主的な力、すなわち組織的な方法によって、言いかえれば民主的な手段と方法によって労働運動の公的性格を引き上げていくことを期待しておるわけであります。これをもし他からその限界を越えて引っぱったり、押しつけたりするようなことがありますならば、これは労働省全体の労働行政の方向を誤まり、非常におそるべき傾向になると私は思うのであります。これは短時間に論議してすぐに結論が出るものではございません。条文の一つ一つについてお伺いしていけば、だんだんと明らかになっていくと思うのでありまして、この点についてはもっと検討をいただく必要があると思うのであります。  それから次に問題になりますのは、こういう法案を論議いたしますのに一つの具体的な事例を私はここに持ち合わしております。このことを一つ検討していただくことによって、だんだん明確になってくると思うのであります。その一つは、労働省の任務としてきわめて重大な事柄で、実行に移し得ないもので、すでになされた労務に対する賃金の支払い、すなわち労働者の生存権を守る唯一の方法である賃金の債権の保護が今日完全に行われていない。これはいろんな事情があることは私もよく承知しておるのでありますが、こういうように労働の保護としてぜひと万全を期さなければならぬものについても手が届かない。それから労働保護に関する災害の問題などを見ましても、かなり多くの災害が出て、死亡率は依然として高い水準を統計の上で示しておるのでありまして、こういう問題等を一々あげていきますると、労働省のやる仕事はあまりにも多過ぎて、いずれも手が回らないという実情にあるときでありますから、こういう意味から、できるだけ教育といったような仕事はぜひ他に回そうというお考えについては私は賛成なんです。しかしそれは目的手段をはき違えてはならないことは、この法案の中で私は指摘しておきたいと思うのであります。この問題につきましては、あと少し時間がありますから逐次お尋ねしていきますが、こういうような観点からお尋ねをしようと思うのでありますから、あらかじめこの法案労働省の各関係法規との関係において、矛盾がないならば、そのことを明らかにしてほしいと思うのであります。  そこできょうは、これもやはり労働保護の最たるものの一例でありますが、これはかつて予算委員会その他の委員会におきまして政府の所見をただし、また政府の積極的な保護活動を期待して参りました日米安保条約に基きまする行政協定の十二条の二項と五項の関係において問題がございます。しかもそれは国民の、特に労働者に対する保護といたしましては、非常に重大な事柄でございますが、その保護の上にいろいろな、不都合が生じておるのでありまして、この事実についてただしていきたいと思っております。  まず今松総務長官がそういう問題を処理される行政府の当面の責任者だということを政府は明らかにいたしておりますから、今松長官にお尋ねをいたしたい。日米行政協定の十二条の二項と五項のこの二つの関係において、条文は簡単なことなんですが、たとえば五項において、労働者の保護及び労働者の権利は日本の法令に定めるところによるということがきわめて明確でありますから、この関係をどのように今松長官が理解しておるか、それから二項はあなたのお仕事でありますから御存じだと思いますが、米軍が現地すなわち日本国において、労務調達について日本経済に不利な影響を及ぼすおそれのある場合においては、日本国の当局との調整または当局を通じて援助を求めるという、すなわち役務調達についての規定であります。この規定が今米軍によって破られようとしておる、こういう事実が今現存いたしておりますので、この問題の解決をたびたび労働組合からも政府に要請があったようでありますが、一体その後どういう工合にこの問題を処理なさっておられますか、現状について一つ具体的な答弁を伺ってみたいと思います。
  26. 上村健太郎

    ○上村政府委員 行政協定に関係いたしまして、現在問題になっております駐留軍労務者の特需の切りかえの問題であろうと思いますが、まず第一にこの行政協定の解釈につきましては外務省が所管しておりまして、一応外務省の解釈といたしましては、第十二条第二項の「日本国の経済に不利な影響を及ぼす虞」があるものはという条項は稀少物資の関係すなわち日本におきまして非常に少い物資を調達するというような問題をおもに規定をしておるのであるという解釈をとられておるようでございます。しかしながら私どもといたしましては、米軍の仕事があるにかかわらず、労務者を解雇いたしまして特需に切りかえるということにつきましては、昨年以来大量の解雇が行われました際でありまして、非常に大きな離職の問題が起り、困難な問題が起っております際に、さらに今回のような形で相当な数の離職者を出すことは社会問題としましても非常に遺憾だと思いますし、従いまして調達庁といたしましては、米軍司令部に対しまして折衝を続けて参っております。今日に至るまで合同委員会を通じても申し入れをいたしましたが、いまだに解決に至っていないことはきわめて遺憾とするところでございます。こちら側の要望といたしましては、先ほども申し上げましたように、特需に切りかえるということをやめてもらいたい、またさしあたりそういう問題が起っております基地につきましては延期をしてもらいたいということを申し入れをいたしております。これに対しまして米国側といたしましては、米軍全体がそういう切りかえの方針をとるということはない、しかしながら各基地におきまして、予算の不足または米国軍人の監督者の不足、軍人の引き揚げに伴いまして監督者が少くなるというような理由からいたしまして、特需に切りかえざるを得ないのだという答えをいたしております。しかし私どもといたしましては、さらに先月の末にキャラウェイ参謀長あてに申し入れを行いまして、予算の不足ということは能率の向上その他でもカバーできるのではないか、あるいは監督者の不足というものは労務者の責任を厳重にすることによって解決がつくのではないか、あるいは労務者による企業団体に引き受けさせることができるのではないかというようなことを申しまして、再考慮を促しておるのであります。今月に入りまして米軍は、司令部に陸海空三軍の関係当局を招集して連日会議をしておるようでございますが、私どもの方にまだその後の正式回答はいたしてくれておりません。しかし各基地ごとに具体的の事案について延期をいたしましたり、あるいは離職者の人員を減らしましたりしていることは現実にはあるようでございます。現在のところそういう状況でございます。
  27. 井堀繁雄

    井堀委員 今お聞きのように、調達庁長官からの報告によりますと、調達庁としてはあとう限りの努力をしたという意味の御答弁だと受け取るのでありますが、しかし調達庁長官の努力の限界はもう来ておるように思うのです。そうすると、言うまでもなく十二条第五項の精神によりまして、日本国の労働保護によってこの侵されておる労働者の利益、あるいは侵害されておる権利などについて、労働省としてはよほど積極的な処置に出なければならぬ事態にあると思うのでありますが、これに対して労働大臣はいかなる処置をおとりになろうとするか、明確にお答え願いたいと思います。
  28. 石田博英

    石田国務大臣 御指摘通り、問題はやはり政府全体として取り上げなければならぬ問題だと思っておりますので、これを特需等対策協議会の主管者である内閣の方へ移しまして、総務長官の手を通じて努力をやっていただいておる段階でございます。それで問題が解決されない場合には、さらに政府全体としての立場から処理をしなければならぬと思っておるわけでございますが、今総務長官の方で努力をしていただいておる段階であります。それからもう一つは、現在行われております特需切りかえのあとに生じてくる職安法違反の疑いがある問題についてもただいま検討を命じておりますが、しかしこれは実際の事態が出て参らないと明確につかめないという点もあります。出てきておることもありますので、そういう研究も命じておるわけであります。
  29. 井堀繁雄

    井堀委員 あなたはたびたび同一の趣旨の御答弁をなさっておいでになります。古くは二月の二十日の参議院の社労においても同様の答弁をされて、それ以来問題はだんだん深刻になってきておる。労働者の権利はいたずらにじゅうりんされて、しかも相手は軍という、かつては占領軍という支配的な強力な立場をとる雇い主であります。駐留軍労務者並びに特需労働というものは、単なる労使関係の問題として見送るわけにはいかない事柄だと思う。従って政府は去る予算委員会でも、補正予算の中で、額はまことに乏しくてお話になりませんけれども考え方としては特別の保護を必要とするので、特別手当のごとき誠意の片りんが現われてきておるということは、私は非常にけっこうなことだ思うのでありますが、そういう処置政府自身がとらなければならぬほどの問題であります。こういう事態が発生したにもかかわらず——労働省の設置法を見るまでもありません。あなたのお仕事というものは非常に重大だと思うのです。委員会質問を受けると、同じことを繰り返しておるということでは、あなたの任務としては相済まぬと思います。ちなみに二月の二十日に、あなたはこれ以上もっと強い決意のほどを参議院の議員の質問に対してお答えになった。その後だんだん悪化しておる。あなたはそういう事実を御存じですか。
  30. 石田博英

    石田国務大臣 私の発言の日にちをいろいろお調べいただいて大へん恐縮に存じます。以降繰り返してその方針に基いて折衝をやっておりまして、その後今月の上旬であったと思うのでありますが、一応調達庁の手でやっておりましたり、あるいは日米合同委員会で、やっておりました政府の行為というものの限界もつきましたので、今度は政府としてこれを取り上げなければならない段階であろうということで、総務長官が中心になってこの問題の処理に当っていただくということに関係省の話し合いできめまして、今その努力を傾注中であります。その後別に遊んでおるわけではなく、鋭意努力を重ねておるわけであります。相手方の方との交渉の経過は、ただいま上村政府委員から御説明申し上げた通り、なかなか困難であります。困難ではありますが、しかし政府は既定の方針に基いて、執拗にその目的達成のための努力を重ねていくつもりであります。
  31. 井堀繁雄

    井堀委員 あなたの言やまことにりっぱである。しかし行政府を、実践上の誠意というものによってわれわれは評価をしなければならぬ。議会で言いのがれればいいというようなものでは相済まぬことは今さら言うまでもない。日本の労働市場は、私があなたに説明するまでもございません。世界のいずれに比べましても、日本の労働市場は深刻な社会問題を誘発しそうな劣悪な諸条件の中に置かれております。すなわち需要供給の関係から役務の状態をいいますならば、一等悪い状態です。その一等悪い状態につけ込んで、しかも一方は権力者である、そういう人が、従来長い占領下といえども日本政府の援助を受けて役務を調達したものを、独立後対等の立場を許された日本政府と米軍の間で、今度は逆に、日本の業者は穴さえあれば飛び込もうとする、いわゆる飢える者のような状態の中において、その人たちに多少の利益を提供するという方法で下請をせしめようという。現に三月三日には一番大きなキャンプでありまする東京管下の成増、朝霞などの下水工事の入札をすでに納富組にやらしておる。先ほど調達庁長官の言い方で言いますと、交渉中、まだ話のつかぬうちにこういうことだ。これはもし行政協定の解釈に疑義があるといたしましても、これは権利の乱用なのです。依然として軍という要するに支配的な地位でふるまう、日本民族を奴隷のように心得ている、私は許されざる屈辱的事態だと思う。労働大臣がこの間、商店の日曜日の休みの状態を視察されたということについては、私は新聞を見て、なかなかいい大臣だとほめておきたい。しかしあなたがさっきおっしゃったように、こういう深刻な、政府自体が当らなければならない問題があるのに、あなたは現地においでになったことがありますか。この事実はお知りですか。この問題をどう処理なさいますか。
  32. 石田博英

    石田国務大臣 米軍のこの問題に対してとっておる態度はもちろん不満であります。それからその事実は承知しております。従ってその事実の解決のために執拗に努力を続けていくつもりであります。今当面の交渉は、その直接管掌をいたしております総務長官がこれに当っておりまするけれども、われわれもその協力を惜しむものではございません。その交渉の段階として、関係各省の間で現在、総務正長官に一つ政府を代表して先方と話し合ってもらおうじゃないかという申し合せをして、今それをやっていただいておる段階であります。相手のあることでございますから御満足のいく結論はなかなか得られないのであります。しかし、目的及び趣旨は井堀委員の御意見と全く同一でありますので、この上とも目的達成に執拗な、あるいは有効な手段を求めて繰り返しやって参るつもりであります。
  33. 井堀繁雄

    井堀委員 あなたの答弁はまことに親切で、すきのない御答弁だと思います。そこで、もう一つ私の方から重ねてお伺いします。これは三月三日に行われておるから既成事実であります。おそるべきことであります。納富組というのは日本人でありますから、この方の関係をお調べになったかどうか。
  34. 石田博英

    石田国務大臣 事実そういう事態が職安法に違反する疑いがあるから調査をするようにということは、職安局長に命じてありますが、その結果についてまだ報告は受けておりません。
  35. 百田正弘

    ○百田政府委員 ただいま御指摘のございました米軍の上下水道の維持管理作業の納富組の問題につきまして、われわれも実はここに切りかえがあるということで調達庁から連絡を受けております。これにつきましては東京都を通じて調査をいたしたわけであります。それで最初の契約におきまして、われわれの見ただけの感じでは、どうも職安法違反の疑いがあるということで調査を進めて参ったわけでございますが、米軍側におきましても、そういう点があるということで、この請負作業について総合的に職安法違反にならないような請負に切りかえた、そして再入札をした、こういう形になっているわけでございます。これにつきましては、単にその契約面だけではなく、実態について調査をいたす必要もございますので、引き続き東京都をして調査をするように命じてあるわけであります。なお最近におきましても、現在われわれの方で情報を得た点について、たとえば青森県、埼玉県、東京都、神奈川県、長崎県等についてこうした情報が入った場合には、直ちに調査をさせることにいたしております。最近は米軍側におきましても、職安法の違反の疑いがあるものについては、一つ注意してもらいたい、指摘してもらいたいというようなこともありまして、われわれの方としては、当然こうした職安法違反があってはならない。ただ政府といたしましては、こういう切りかえが合法的であればよろしいというものではなくて、調達庁を中心といたしまして、こういう切りかえ自体が不適当だということで交渉しておる段階でございます。われわれはこれを是認する立場ではございませんけれども、すでに切りかえがあった分につきましても、こういう職安法違反につきましては徹底的に調査いたしたいと考えております。
  36. 井堀繁雄

    井堀委員 今の答弁で明らかなように、当局としては、職安法違反であるかいなかという問題もあるが、それよりもっと——職安法は単独法ではありません。労働法全体の中の一つ法律ですから、先ほど来大臣にお尋ねしておりますように——あなたも明確に御答弁になっております。それが職安法違反であるかどうかという、国内法に照らして問題を処理するという場合、三月三日の納富組の事件に対しては、労働大臣が直接調査を進められる権限と義務があるわけでありますから、もうこれは即刻やるべきだと思う。職安法違反であるかどうか、法廷で争うようなこまかい条項についてどうこうというよりは、職安法全体からくる保護立法の立場から問題にされなければならぬ。これは先ほどの質疑応答の中で明らかであります。問題は、大臣が何回も国会で責任ある答弁を繰り返しておる間に起ってきたという事実であります。続々と今起ろうとしている。去る十日には、右地区並びにその他の地区でボイラー関係において入札をせしめ、またその後これをきっかけに次から次に出ようとしておりますことは明らかであります。こういう状態につきましては、ここでよい答弁をしていただくことも大事でありますけれども、それよりも、一ぺんここで約束した以上は、時間的に迫られている事態でありますので、即刻解決をなされるようにいたすべきだと思う。これに対しもう一度大臣より具体的に決意のほどを伺っておきたい。
  37. 石田博英

    石田国務大臣 これはできるだけ早く解決し、そういう事態がこれ以上広がらぬようにしなければならぬことは申すまでもないことでありまして、そのための努力を政府としてやっております。また、もっと有効適切な方法をさらに別個に見出し得られるかどうかということについても検討いたしておるわけでありますが、なかなか相手のあることでありますから、政府の思う通りに参らない点は非常に遺憾でありますが、しかし、この上とも執拗に目的達成のために努力は傾注いたします。
  38. 井堀繁雄

    井堀委員 ではこの問題については、今回のお約束は行動に移していただけるものと確信をいたしまして、誠意を行動に待つことにいたしたい。  次に、これと関連して、昨年の九月二十四日の閣議で離職者対策に関する方針が決定をされましてから相当時日を経過しておるようでありますが、一向にらちがあかないという当事者の訴えが頻繁に行われております。私も、近いところではありますが、二、三カ所現場を調査いたして参りました。職業補導の問題についても、出先は既存の職安法並びに予算などの制約から、どうも意にまかせないように感じます。これは私の受け取り方かもしれません。当事者はもっと熾烈な訴えを起しております。一体労働省はこの閣議決定事項に対する適切な措置をどういう工合におとりになっているか、また具体的にどういう計画をお持ちでありますか、この機会に御答弁願いたい。
  39. 石田博英

    石田国務大臣 駐留軍の引き揚げに伴う離職者対策といたしましては、職業訓練、公益職業紹介あるいは中央組合の助成というような各般の項目につきまして指導をいたしておりますとともに、所要の予算は補正予算でも計上し、三十三年度予算におきましても計上いたしておるわけであります。さらにこの要綱の具体的実施のために、昨年の暮は数班に分れた指導班と申しますか、監励班を派遣いたしましたが、現在なお引き続きまして昨年漏れたところにもう一度派遣をしていただくように内閣の方に要請をしておるわけであります。金やその他不十分な点もあるかと思いますし、いま一つは、それぞれの事情によりましていろいろな格差ができている場所もあるかと思いますが、具体的な事例に従って積極的に援護措置をとって参りたいと存じておる次第であります。  なお、今までやりました具体的な成果につきましては職安局長から答弁をいたさせます。
  40. 百田正弘

    ○百田政府委員 ただいま御指摘のありました点につきましてお答えを申し上げます。特に職業補導等を例に出されましたので、この関係を申し上げたいと思います。職業補導につきましては、昨年の十月予備費千百万円を支出いたしまして、新しい予算におきまして千三百四十人、既存補導者を含めまして三千六百九十五名の補導を三十二年度において実施中でございます。この職業補導の成績が非常によろしいし、要望も強いので、来年度におきましてはさらにこれを拡充いたしまして、新規予算による実施として四千三百八十名、既設の補導所の活用によって六千三百七十人、計一万七百五十人補導できるような計画をいたし、大体本年の三倍程度はできるということにいたしております。さらに、特に駐留軍労務者の多つい東京、神奈川、埼玉の三つの県につきましては、これも後に予備費の追加支出によりまして新しい職業補導所を設置いたすことに相なっておるわけでございます。これは三十三年度に入りますれば新しく補導が実施できる見込みでございます。さらに職業紹介につきましては昨年中におきまして七千人、四月以降につきまして五千人の就職者を見たわけでございます。この場合におきまして特に問題になりますのは、特に仙台地区でございますとか、そういったところから東京地区に就職いたしたいという人があるわけでございます。住居がないために就職できないというような場合を考慮いたしまして、現在東京では神奈川の日吉並びに大阪の方面におきましても一カ所、ここに臨時の居住施設を設置中であります。
  41. 井堀繁雄

    井堀委員 ただいま伺いますと、昭和三十三年度の新しい予算が使えるようになりますと、約一万何千人かの人が職業補導所によって就職の準備行為に入ると思うのです。非常にけっこうなことであります。ところが昨年の一月以来、駐留軍関係の人だけで約四万人の解雇が行われておる。今の三十三年の実施計画に入りましても、もちろんこの人たちが全部お世話になるとは思いません。しかし実際におきましては、なかなか容易ならぬということをこの数字は物語っておるわけでございます。これは労働大臣万々御承知の上でありましょうけれども、一般の失業と違って特殊のケースとして政府も力を入れるということをたびたび明らかにしておりますのは、まあ議員の質問に対してそのときのがれの答弁で済むような事柄でないことは、さっきの質疑応答で明らかであります。こういう点については、私は労働省にとってはなかなか重い責任だと思うのであります。うっかりしておりますと、この次にまた私は小言を言わなければならない。小言で済むなら何でもありませんが、私がやかましくこのことを言うことは、この法案とも非常に重大な関係のあることでありますが、日本の労働行政というものは今日国際的な視野において非常に重大視されてきていると思うのです。日本経済の復興のかぎが輸出貿易の振興にあるということはあまりにも明確であります。この問題は、やはり日本の労働行政のあり方、荒廃しておる日本の労働市場に対するなるべく早い機会における正常な姿への努力というものが、これは政府だけではありません、すべての国民が力を入れなければならぬ問題であるわけであります。こういうときに、アメリカのようにあり余っている国で、しかも占領下においてやりたいほうだいのことをやって、屈辱的な条約と言われております安保条約、それを補強するところの行政協定の条文までを相手方の都合のいいように解釈をして押しつけるに至っては、独立国の面目がない。私はこういう具体的な事実についてこそ日本の労働行政というものの強い性格と国際的な対等の地位というものは主張できる、日本民族に与えられた屈強の主張の立場であると思うのであります。こういう問題について、私は労働省責任というものは重大だと思うのです。そういう意味で、こういう問題については一日もなおざりにしてはならぬことを痛感いたしますから、もちろんこれは政府だけでなくわれわれも力を入れてやらなければならぬ問題だと思います。大いに使ってもらいたいと思っております。そういう意味で、こういう具体的な事実を一、二あげて、あまり目に余ると思いますからお尋ねをし、政府の所見をただすとともに、活動を期待しておるわけであります。労働省は非常に重要です。そこでこの問題は、先ほど労働大臣の答弁でも明らかなように、労働省だけをもってしては今日の対外交渉は、軍との折衝といったいろいろ複雑な関係にありますから、そこには条約上に基く問題としては日米合同委員会、この日米合同委員会の申し入れに対しても、軍は言葉を左右にして権力をほしいままにしておる。これは調達庁長官がさか立ちしてもどうにもならぬかもしれません。これは日本国政府がまっ正面に取り組む大きな国際問題だと思うのであります。こういう具体的な事実を解決しないで、安保条約の改正を口にしたところで意味はないのであります。この点に対して、今松長官は政府を代表してどういうことをおやりになったか、具体的なことを三つばかり聞きますからそこに書いて、そうして御答弁をいただきたい。  二月二十七日に調達庁から米軍参謀長あてに文書で申し入れたということを聞いておりますが、それは事実かどうか。調達庁長官のそういう申し入れに対しては軍はいかなる態度をとっておるか。また、それに対して政府はどういうふうに解決策をとられておるか。さかのぼって二月六日に日米合同委員会でも米軍側に対して申し入れた事柄があるやに聞いております。その内容について示せということを非公式でありますが求めたのでありますが、なかなか明らかになりません。長官は御存じでしょう。この機会にこれを明確にして下さい。それから新しいところでは二月二十八日に本問題を閣議でお取り上げになったようであります。その席に調達庁長官は出られて、事実問題について御報告をなさったそうでありますが、どういう内容の御報告をなされ、また今松長官はそれの方法としてどういうことを閣議でおきめになりましたか、またおきめになったことをどういうふうに推進されておりますか。この三つの具体的事実について明快な御報告を、またその対処について結果を一つお答えいただきたい。
  42. 森山欽司

    森山委員長 この際井堀君に申し上げます。御発言は重要問題でありますが、日本労働協会法案につきましては議題外にわたる点もあると存ぜられますので、この問題につきましては簡潔に終るようにお願いいたします。
  43. 今松治郎

    ○今松政府委員 まず第一の、二月二十七日に調達庁長官が米軍の当局に申し入れをした点でございますが、これは先ほどから問題になっております切りかえの問題について、非常に遺憾であるから、そういうことのないようにしてもらいたい、こういうことを申し入れたわけであります。そうして、もしも必要があれば企業組合を作って、特需業者にかわってやらしてもよいから、そういう点も一つ考慮をしてもらいたい、こういうことを申し入れをいたしたわけであります。ところが、先ほどから問題になりましたこの問題は、米軍の当局といたしましては、労務者を使うか、また業者を使うかということは、自分の方の一方的に自由な権利であるというような態度を、とっておりますので、なかなかこちらの申し入れにすぐ応じてもらうことはできませんが、今の業者のかわりに今度解雇されようとする労働者の企業組合によってやらしてくれ、こういうことは考えようということになっておるのです。従ってその返事を待っておるわけでありますが、その間に今お話のあったような問題が起きたことはまことに遺憾であります。  それから二月二十八日の閣議におきましては、調達庁長官ももちろん政府を代表して行っているわけでありますが、平素あまりにそういう問題で取引があって懇意になっておるから、それよりは一応その返事を待って、別の方法でもう一ぺん申し入れをしたらどうか、こういう問題が論議されましたが、その席には調達庁の長官は出ておられません。従って向うの返事が来ればそれにすぐに対応してこういう処置をとろうということは相談をいたしておりますが、まだそこは実行に移しておらないわけであります。  それから二月六日の合同委員会に問題を提起いたしました点につきましては、調達庁長官から詳しく申し上げます。
  44. 上村健太郎

    ○上村政府委員 二月六日には先方に対しまして、先ほども申し上げました通り、実際の仕事があるにかかわらず労務者を解雇し特需に切りかえるようなことはやめてもらいたいという申し入れをいたしております。これに対しまして、一週間ばかり後でございますか、米軍側からは、全般的方針としてこういう切りかえを行うということではない、先ほど申し上げましたように、もっぱら予算の不足及び米国軍人の監督者の不足ということによって各基地ごとに生ずるのである、しかし日本政府側と事前に協議をいたしたい、日本側の中止あるいは延期等の要望については、急に趣旨に沿うわけにはいかないという回答がございました。そこでさらに二月二十七日に私から申し入れをいたしまして、その後毎日のように司令部と連絡をとっておりますが、現在先方は三軍で協議中でございまして、その返事いかんによりましてはまた総務長官の方にお願いを申し上げまして、何らかの手段を講じていただきたい、こう考えておる次第であります。
  45. 井堀繁雄

    井堀委員 委員長の御注意はよく承知いたしております。議題外にわたる発言でないことを私は信じ、お尋ねしておるつもりでございますが、委員長の御注意でありますから……。この法案は、提案理由の説明によると、一番重点をおいておりますのは、まだ日本には一部に労働運動を頭から否定するような使用者がおるとか、あるいは労働問題に対して日本国内でも一般の理解が足りないのでこういうものをやるということなんです。ところが労働問題がこういう国際的な舞台においてスポットを合せられるような事態に来ておるときに、こういうあまりにも謙虚なる日本の労働保護政策というものが、権力の前に踏みにじられようとしておる事態の解決一つできないようなことでは、お説教したって意味がない。特に労働問題を理解させるということは、何も学問的な研究を行うことが主ではなくて、生きた社会問題、ことに近代社会における新しい所産である労働問題の研究は、具体的事実に対する実践的効果をどう認めていくかということが価値判断の中心になることは言うまでもない。従ってこういう生きた具体的な事実について日本政府は、また日本の労働団体は、また日本の使用者は、また一般の国民はどういうふうになすべきであるかということは、具体的なこういう事実を研究課題として取り上げてこそ、この団体の面目が発揮できるのです。委員長は議題外のことを言っておるように言われるが、非常に重要な、核心に触れた質問をしているのです。こういう点は私も注意してやりますが、委員長一つわれわれが本法案の核心に触れて審議できるように御指導をいただきたいと思っております。  そこで九月十八日に日米合同委員会がこの問題に先がけて——これは前にも問題になりまして労働大臣から御答弁もいただいておりますが、なお記憶を呼び起していただきたいと思いますのは、今の直接雇用の問題を間接に切りかえよう、特需に置きかえようとする政策は、日本に下地がある。それは特需労働で味をしめておる。それで毎回国会においても、与野党とも特需労働等の労働問題に対する特別委員会を設置して、議会で、また政府もこれと同じような委員会を設けて、鋭意その処置に当ってきたことは明らかな事実であります。その問題の中の一事実でありますが、日本の労働慣行に従って、解雇するときには、ただ予告を三十日間の期間を設ければいいという条文の解釈については、日本の労働慣行は予告手当を出すことが一つ慣行になっておるということで、合同委員会でもこれを取り上げて採択されて、関係当局である三軍のそれぞれに勧告をいたしておるのであります。その勧告は今日実行されておらぬのです。これは大へんな問題だと私は思う。これは労働大臣の手を離れておると言えば言えぬこともありませんが、こういう問題について労働大臣といたしましては閣議でどのような処置をお求めになりましたか。閣議で発言された内容を詳しく聞こうとは思いません。また九月十八日の合同委員会に対して勧告しておりますが音さたがない。ところが近ごろ聞きますと、そういう日本の慣行を無視するかのごとき解釈のもとに否定的な態度に出ておるやに聞いております。これはいかがなものでしょう。
  46. 石田博英

    石田国務大臣 ただいま御指摘のような事実は遺憾な事実でありますので、合同委員会において日本側の立場を貫徹するように努力をしてもらいたい旨の発言はしばしばいたしております。
  47. 井堀繁雄

    井堀委員 発言をいたして一向実効が上らぬところを見ますと、労働大臣の閣僚としての評価にも相なると思いますが、まあそういうことはないでしょう。その力を正しく評価されておる労働大臣でありますから……。こういう問題は専門的な問題ですから、所管大臣としてはただ主張するということではなくて、実効の上る発言をなすったと思うのです。これは直接交渉に当られたのは外務省でございましょうか、それとも今松長官でございましょうか、どの人でしょうか。また今後扱うのに、われわれはどの人にお尋ねすれば明確になるのでしょうか。
  48. 今松治郎

    ○今松政府委員 合同委員会は外務省と防衛庁の関係であります。
  49. 井堀繁雄

    井堀委員 外務省と防衛庁の責任者が来ておりませんので……。
  50. 今松治郎

    ○今松政府委員 もう少し詳しく申しましょうか。
  51. 井堀繁雄

    井堀委員 ええ。
  52. 吉田信邦

    吉田(信)政府委員 お答え申し上げます。この問題につきましてはお話の通り、合同委員会において米側に勧告の具体化を再三にわたり申し出たのでありますが、本年になりまして米側から、日米間に勧告解釈について食い違いがあるから、特別委員会を再設置し、さらに検討したい旨の申し入れがございました。日本側もそれを了承いたしまして、特別委員会でこの問題についてはもう一度検討し直そうという段取りにまで進んでおります。
  53. 井堀繁雄

    井堀委員 これは奇怪しごくなことだと思う。かって合同委員会では、日本の慣行に従えはこうあるべきだということをおきめになったんです。またこれを特別委員会に差し戻されるというのは一体どういうわけでしょう。
  54. 吉田信邦

    吉田(信)政府委員 その際きめました言葉の解釈につきまして、米側と日本側との解釈が違うということになりましたので、その解釈について、もう一度はっきりさせようということに相なった次第でございます。
  55. 井堀繁雄

    井堀委員 まことにこれは国辱に類することだと思う。私は合同委員会というものはきわめて重要な、こういう条約上の疑義について、いわば決定権が要するにここにゆだねられていると思う。この合同委員会できめたことが、しかもこれはあなた、簡単なことじゃありませんか。予告手当は日本の場合は、文書によれば、予告期間を与えるか、あるいはそれに相当する手当を出すかというふうに一般に解している。そこで私が労働法と言うのは——よく大臣が用いるじゃありませんか、よき労働慣行、よき労働慣行——これは世界的な労働法に対する基本概念なんです。そこで問題は、条約にも書いてある。条約をよく読んでもらいたい。日本の労働法だけとしか書いてないのじゃなくて、日本の労働慣行に従うことになっているんです。日本の労働慣行——そんなことではあまりへっぴり腰じゃないか、どうです。これは総理大臣の権限に属すことであろうと思いますけれども、合同委員会に対して、われわれはもう一ぺん考え直さなければならない。占領軍の場合においてだって日本政府はいろいろな問題でかなり抵抗したですよ。正義の主張はやっぱりやってきた。だから追随外交だとかいろいろな悪口を言われるのであって、こういうところで譲ったら、私は日本の労働運動というのは国際舞台に出ていって、まじめな議論はできないと思う。だから日本の労働条件が非常に後退しておる弱みにつけ込むというのなら何も労働法は要りやしない。
  56. 吉田信邦

    吉田(信)政府委員 別に譲ったわけではございませんで、当方の主張をあくまでも通すために、解釈について特別委員会でもう一度当方の主張をし、あくまでも向うを納得させたいという趣旨のもとに特別委員会を設置することに賛成いたしたわけでございます。
  57. 井堀繁雄

    井堀委員 私はあなたに議論をして、文句を言っているのじゃありません。私がここで言っておりますことは、事柄がそうめんどうなことでありますならば、それはいろいろな専門的知識を必要としたり、あるいは専門的事実を調査するための機関を置くとか、いろいろあり得ると思います。特に外交折衝については手数のかかることは私よく承知しておる。しかしこれは私が冒頭に申しましたが、行政協定というものは屈辱的なものなんだ。その中に最小限度のぎりぎりの線が書いてあるんだ。にもかかわらず、その線を下るようなことをして何の外交なんだ。何が独立国の主張なんだ。しかも実害はもう起っているじゃありませんか。予告手当をもらうかもらわぬかということはこれからの問題じゃない。そのために日本の労働者が日本の労働慣行以下に——しかも相手が支払う力のない相手なら仕方がない。——仕方がないとは言えませんけれども、また別な方法で払わせなければならぬかもしれぬけれども、相手はあり余っているじゃありませんか。そういう相手方に譲るようなことを、日本側ががまんをしているということではだめですよ。そういう考え方で本問題を処理してはいけないということを私は主張しているのであって、委員会で一ぺん申し合せたことについてまた特別委員会を作る、そんなことを言ってたら、特別委員会を年から年じゅうやっておればいい。一ぺんきめてからまたきめ直す、そういうことでは合同委員会のかなえの軽重を問われるのであって、合同委員会というものは言うまでもなく、小さい委員会であっても日本国を代表しておる。個人じゃありませんよ。もしそのよろしきを得なければ政府責任ですよ。これは国務大臣としては労働大臣が答弁するのにふさわしいと思います。ほんとうは総理大臣が答弁すべきでありましょうが、総理大臣にかわってこの問題に対しての政府の御所見を伺っておきましょう、非常に大事な外交問題の基調をなすものでありますから。
  58. 石田博英

    石田国務大臣 日本側の主張を譲ったわけでも、また譲歩したわけでも何でもございません。日本の労働慣行というものは今、井堀委員指摘通りでございます。われわれはそういう建前で米側に対して交渉をいたしておるわけでありまして、今交渉の過程でございます。しかし、譲るつもりももちろんなければ、われわれの主張の貫徹のためになお努力を傾注しておるわけであります。閣議等におきましても、しばしばそういう要請をいたしておるわけでございます。しゃべるだけで一向に実が上らないのはだめじゃないかという御意見でございますが、日本の国内だけで解決することにつきましては、ずいぶん我意を通しますけれども、どうも労働大臣も、アメリカ側に納得させるだけの力を持ち合せておりませんことは遺憾でございますが、なお努力を傾注いたしまして御趣旨に沿うようにいたしたいと思います。
  59. 井堀繁雄

    井堀委員 多くの問題のあることでございますが、私ひとりが長い時間をとることはいかがかと思いますし、本法案についてはいずれまた私の発言する機会もあろうかと思いますので、この程度にしておきます。
  60. 森山欽司

    森山委員長 午後一時半まで休憩いたします。     午後零時十七分休憩      ————◇—————     午後二時十九分開議
  61. 森山欽司

    森山委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  日本労働協会法案の質疑を続行いたします。井堀君。
  62. 井堀繁雄

    井堀委員 労働協会法の提案理由の説明で、労働大臣はこの協会目的について次のように述べられております。「わが国の労働運動は、飛躍的な発展をいたし、労使関係も次第に改善されて参ったのでありますが、なお一部には労働組合運動を頭から否定してかかる使用者もあり、またその反面、労働組合側の行き過ぎた行為もなしとしないのであります。」こういう前提で国民一般労働問題に対する理解の足りない面を指摘されておるようであります。私もこの点については一応そうであると思うのでありますが、この問題を解決するのに労働協会を設立して、その力に待とうとするように受け取れるのでありますが、その通りであるかどうか、またそれについて労働大臣の現実に対する見方と、それの対策としての協会目的なり、その機能なり、この点についてまだ言及が他にはなされておりませんし、法案の中においても説明になるべき条項というものが欠けておるかに思われますので、この点についてまず所見を伺っておきたいと思います。
  63. 石田博英

    石田国務大臣 ただいま御指摘いただきました目的を達成するため、本協会だけで十分だとは考えていないのであります。やはり労働組合が自主的に行われる労働問題に対する啓蒙活動も、それからジャーナリズムその他が個々の問題に触れてなされる活動も相待って、健全な労働問題に対する認識を深め、広めていきたいと思っておりますが、それに必要な資料、研究等を提供することも、本協会の任務と考えているわけであります。
  64. 井堀繁雄

    井堀委員 この協会が、そういう研究家のために、資料を提供するという任務を強調されておるようでありますが、その点について私はいかがなものであろうかと思いますのは、ここにあなたの指摘されております労働組合運動に対する認識が足りないというのは、労働問題を研究するための資料に乏しいということも、確かにその大きな理由ではあると思うのです。しかしもっと原因は他にあるのではないか。労働問題に対する認識を深めるためには、日本の労働問題に関するところの文献なり、あるいは歴史なり、あるいは現実に展開されております労働問題を整理し、あるいはそれを資料として取りまとめるということも、もちろん重要なことではありますけれども、私はここにあなたが指摘しておいでになります労働運動を頭から否定してかかる使用者というものの中には、私は二つの傾向があるのではないかと思うのであります。その一つの傾向は、今あなたのおっしゃられるように、労働問題に対する理解の足りないという点から起り得るものについては、以上の資料を提供するということは、大きな私は社会的意義があると思う。しかし私はその原因の大きな二つというものは、むしろそういうところにあるのではなくて、日本の労使関係の困難な、大きな障害になっておるものは、日本の経済構造なり日本の労働市場に横たわっております重大な難問題があるからであって、これを排除することなくして、ただ単に労働問題に対する認識を深めるというようなことでは、こう言っては失礼でありますが、その協会の構想の上からこの法案を通じて見ます場合には、きわめて規模の小さいものしか期待できない。その金額がわずかに十五億の利息に経費を依存しておる、あるいは他から収入を求めるといたしましても、この案には寄付行為としての法人としての機能は認められていないのでありますから、いわば限られた十五億の利息と、わずかの篤志家によって協力されるというようなものであります以上、そういったような今日の労使関係の上に大きくはだかっておる問題を解決するためには、何らの働きを私はこの協会に期待することはできないと思います。この点に対する一つ御見解をただしておきたいと思います。
  65. 石田博英

    石田国務大臣 それは確かに御指摘通り、他の要素も大きい要素であります。しかしそれらの要素については別途の政策が必要でありますが、しかしやはりこの協会の果すべき役割も相当大きいものがあるものと思っております。それから費用は、この前も田中君の御質問にもお答えしておいたのですが、十分だとは思っておりませんけれども、初年度はまずこの程度から初めまして、漸次拡大をしていくつもりであります。
  66. 井堀繁雄

    井堀委員 私のお尋ねしようとするところは、もちろん最初から大規模のものでなくても、将来目の出るものであれば、ごくささいなものでも育てていくべきだという点については、全く私も見解を一にするわけであります。今私のお尋ねしておりますのは、この協会が期待しております労働問題の研究のために便宜を供しようという考え方については、何回も申し上げている通りでありますが、そうではなくして、今の日本の労使関係の中で労働組合をすら否定しようとする経営者がいかに数多いかということ、それは露骨に不当労働行為になって現われたり、あるいは労働組合にむちゃな弾圧を加えるといったような極端な事例を取り上げるまでもないと思うのであります。意識的に無意識的に労働組合を否定しようとする者の中に、その経営者自身、労働者の福祉を増進していく経営者としての能力を欠くがごとき、言いかえますれば経済ベースを踏みはずしたような経営者がかなり多い。これは中小企業、零細企業に見ることができる。それから表向きはりっぱな社団法人の構えはしておりましても、経営の内容というものは、金融操作その他で非常にりっぱやかによそおうているが、実際においては健全な経営体とはなりきれない、いわゆるヤマカン的な経営というものが、大企業と分類される中にも相当あるのであります。こういう中から起ってくる労働組合否認の行為というものは、これはその原因を絶つことなくして問題を解決できないといえばそれだけでありますけれども、ここに私は労働省としては、どうすればいいかということは、むしろこういう協会を作って、いかにもこの協会がそういう問題に解決を与えるかのごとき印象を与えたり、あるいはそういうところにカムフラージュしようとする危険性が私はあると思うのでありますが、労働大臣はこの点についてどのように考えておりますか。
  67. 石田博英

    石田国務大臣 そういう現象を解決いたしますためには、いろいろの施策が必要であります。またその原因は、そういうただいま井堀委員指摘のような面に相当大きな要素があることも私は同感であります。ただそのいろいろの原因の中でモラルな面をこの協会において解決していく、他の面はまた一般的な経済施策あるいは賃金制度の改訂などというような他の施策によって裏づけをしていかなければなりませんが、この協会はモラルな面について理解を深めていきたい、そう考えているわけであります。
  68. 井堀繁雄

    井堀委員 労働大臣はモラルといわれるが、とにかく良識や道徳などの改善で解決できる問題でないということはあまりに明確であります。今いう経済実態、非常に困難な日本経済なり日本産業の実態に目をおおうわけにいかぬのでありますから、もちろんそういう問題が、他の産業政策、経済政策、金融や財政政策などの総合的な結果を待たなければこの問題は解決つかぬと言い切ってしまえば、私はこれはおのずから別だと思うのです。しかしそういう問題の解決を促進するための労働政策は、むしろこの種の協会などを設立することによってそういう運動を回避する、一つの障害になるということを指摘しておかなければならぬと思うのであります。この点にお気づきになっておるかどうかをお尋ねしたいために以上のことを聞いておるのです。今までの御答弁によりますと、そういう点に深い検討が行われていないという御答弁にしかとれないと思いますけれども、これに対する労働大臣の所見を伺いたい。
  69. 石田博英

    石田国務大臣 私はこの協会の活動が、今井堀さんのおっしゃるような、別のこういう状態改善のための動きを阻害するとは考えておりません。
  70. 井堀繁雄

    井堀委員 そこで労働大臣の大きな間違いが生ずるのではないか、私はそう思うのであります。そういうことをここにことさらに取り上げたのは、あなたがこの提案理由の中に大きく扱っておるのは、労働運動を否定してこようとする経営者に対する備えとしてこの協会を作ろうとしておるところに非常な間違いがあるのじゃないかということを指摘したいのです。もしそういうお考え方であるとするならば、次のことをお尋ねしたいと思うのであります。それは労働組合を否定しようとする非常に困難な諸条件を背景にして出てきた問題を今取り上げたのであります。しかしこの問題はあなたも繰り返して答弁しておられるように、そう簡単に解決のできない大きな深刻な問題であります。少し言い過ぎかもしれませんけれども、その問題の解決に対する現在の内閣なり、あるいはその内閣の背景となっておりまする保守党の労働政策を、私は最近気をつけて見せてもらっておりますが、この急所に言及するような対策を政策として見受けることができないのであります。従ってそういうところからこういう工合に出てきたものではないか、私の考えはそこから類推してきておるのであります。これは私の勉強が足りないためかもしれません。保守党の労働政策はもっと内容のあるものが他にあるかもしれません。私の知るところによりますと、この一番大事な、すなわちあくまで経済問題として解決をしようとする場合における対策として、保守党にいたしましても、革新政党にいたしましても、一応現実を認める立場に立ってこの対策考えるということになりますならば、もっと労働政策の中にはっきりしたものが出てくるのではないか。たとえば一例をとりますならば、今申し上げるように労働組合を否認することについては、常識としては、また法律理解しないようになって、現行法の形からいって不当労働行為になるし、またそういうことは道義的に見ても許されぬことだということを万々承知をしている。しかし経営者の立場からいえば、背に腹はかえられぬ、こういう、言い方をするわけです。すなわち経済的に労働者の要求を受け入れるだけの実力を欠いている。こういう関係というものをそのままにしておいて労使問題というものを、たとえば労調法の精神にありますように、産業平和を維持しようとしても困難なんだ。だからこういう実態に対していかなる解決をなすべきかということは、日本の労働行政としてはきわめて重要なものだと思うのです。そういう重要なものの必要を特に認めておいでになる。しかしそれがこういう協会で何とか解決への、あるいはそういうものの処理がこういうものに期待してしかるべきだという表現の仕方は非常に危険だとすら考えるからお尋ねしておるのであります。もしそういう点に対して、そこまでお考えにならなくてこういう表現をお使いになったということでありまするならば、これは何をか言わんやであります。そういう意味でお尋ねしておるのでありまして、そこら辺は非常に大事なことでありますから、くどいようでありますが、そういう問題に対して、労働大臣政府としてまた起案者としてどれほどの考えをいたしておるかということが聞きたかったのです。
  71. 石田博英

    石田国務大臣 経営上のいろいろな問題を労働条件の方にしわ寄せをする傾向、つまりどうにもならないという表現で表わされる傾向というものには、私は二つの型があると思います。一つはほんとうに苦しくてどうにもならない場合、第二にはほかの経営条件改善の努力を怠って労働条件だけにしわ寄せをしていこうとする、この二通りあると思います。前段の問題、ほんとうにどうにもならない場合におきましても、私はむしろそういう条件の向上というものは、経営自体の中から見まするならば、労働条件にしわ寄せすることなく解決していくべきものだと考えるわけであります。しかもよき労働力を得、よき労務管理を行うことは逆に他の悪い要素をも克服して、近代的な経営を確立し得られるという考え方を私は持っておるわけであります。しかしそれ以外に、政府が企業の安定を確保するための諸施策が必要であることは申すまでもないのであります。しかしそれは労働行政の範囲の問題ではないのでありまして、それについては、他の経済政策によってやっていくことを期待しております。労働政策といたしましては、そういう考え方を持っておる経営者に、むしろ積極的によき労働力を得、よき労務管理を行うことが経営の強化安定にもなるのだということを教育する必要がある。それから逆に経営者の責任は、ただ経営を維持するということだけでなく、やはり自分のところで働いておる人々の生活の安定をはかることにもあるんだということもよく徹底させる必要がある。従ってそういう御指摘のようなことを解決するのに、他のいろいろな方法も必要でございましょう。しかしその中のモラルの問題は——モラルというのは道徳という意味ではございません。それだけでなく精神的な問題一般を含めた分野をこの協会が担当していこう、こう思うわけであります。ほかのことを否定しておるわけではないし、ほかのこともやるつもりでありますが、またやらなければならぬことでございますが、そのうちの一つの分野をこの協会が分担をするということであります。
  72. 井堀繁雄

    井堀委員 非常にくどいようでございますけれども、非常に大事な点で、今のあなたの答弁でかなり明らかになりました。もしそういう意味でこの協会が使われることになりますと、正常な労働運動は抑圧され、前進をはばまれ、民主的な成長を抑えられる役割を果す結果になると私は思う。こう結論を先に申し上げてお尋ねしたらはっきりするのではないかと思います。それはあなたのおっしゃられるように、確かに私はここで日本の経済構造、特に二重構造がやかましく論議されておるときでありますから、経済ベースに企業能力を全く欠いておるものを否定しようとしたところで、現実は否定できないのです。これは意識的に労働運動の存在を無視し、労働組合の存在を否定しようとするおそるべき一つの力になっていることは事実であります。そういうものに対して、もしここでいう労働問題の関係資料を提供して、その資料を使って、そういう問題を経営者側がもし対策の具に供するということになりましたならば、極端な言い方をするとわかると思いますが、上手に労働法網をくぐり、労働関係というものをきれいなヴェールでかぶせて、労働者の真実を抑えるような機関として働き出すおそれがあるのであります。これはよほど考えていただかなければならぬことでありまして、そこでそういう回りくどい質問をいたしましたが、端的に言いますと、この提案理由の中には二つのことを言っておる。一つにはこう言っております。各国の労働問題あるいは労働運動関係した事柄を検討してのことだと思いますけれども、元来世界の労働運動あるいは労働保護法の歴史というものを見ていけばきわめて明確なように、言うまでもなく民主主義の国においては全く同じ立場に立って労働教育というものを、かなり強く推進をしてきておるのでありますけれども、いずれもそれは労働者の自主的な活動に期待をかけておるのであります。民主主義のもとにおける労働運動というものは、労働者の自主的な、組織的なものを通じて、労働者または労働組合の社会的意義を認識し、発揚していくということについては一貫したものを持っている。もしそれにどういう第三者が便宜を提供し、あるいは協力するという言葉であっても、その自主性を脅かすようなことをしたり、あるいは自主性の成長を妨げるようなものが少しでもありまするならば、それは角をためて牛を殺す結果になるのであります。でありますから、この種の機関というものは非常に警戒を要すべきものであります。民主主義の運動の中で一番尊敬されてくるのは教育であります。特にあなたがここに指摘しておるように、日本の労働組合がたまたま行き過ぎがあったり、あるいは世論のひんしゅくを買うような行為なしとはしないのであります。しかしそれは民主的にその結論を得させようとするならば、労働組合の組織的な操作の中に、自主的な努力によって、すなわち労働組合に対する世論の絶えざる制肘との中に生々発展していくということが一貫した民主主義国における行き方であります。特に日本の場合は、先ほど来私がくどいように申し上げておりますように、先進国の中で、近代工業国、商業国の中で、日本はある意味においては高い水準に国際競争の場裏を求めております。労使関係においては、組織率においては世界の先進国に近いところまで成長を遂げております。しかし労働運動自身が持たなければならない教育的な職能と申しますか、職分というものについては大きに欠けている点を私は認めます。こういう問題は、ここに大きな二つの理由をあげておる。一つは経営者の反動的な傾向、一つには労働組合の未成熟をあげておる。この問題はかかって労働組合自身の自主的な、社会的な訓練の中に成長を遂げていくべきことだ。またそれを第三者たるもの、政府たるものはしんぼう強く見守り、それをよい意味において協力援助するという立場以上を出てはならぬのじゃないか。そういう意味で、労働省設置法の中では、日本のように戦後急速に労働問題に対する知識を国民全体にも、特に労働組合にも持ってもらわなければならぬにもかかわらず、わずかに一課を設けて労働教育活動を展開してきたのでありますけれども、その目的は明確になっている。こういう点が私は非常に重要だと思いますが、そういう点に対する私の危惧は、単なる危慎ではなくて、今の労働大臣の答弁によって果せるかなという感じを私は強く受けたのであります。この点に対しても、もしそうでないとおっしゃるならば、こういう二つの問題について労働省の、あるいは政府の、政党でもけっこうであるが、基本的な政策はどうあるべきかということを明らかにしていただかないと、この法案全体にわれわれの持つ不安やおそるべき危惧というものは解消しないのみならず、ますます高まってくる。こういう意味で、非常に質問としてはやりにくい、また答弁していただくのにもやりにくいことだと思いますけれども、時間をかりて質問をしていることを理解して御答弁願いたい。
  73. 石田博英

    石田国務大臣 私が先ほどから申しましたのは、使用者の中で労働問題についての知識が、不十分である、あるいは認識の非常におくれておる人がある。この条件改善するためには、いろいろな処置が必要なのであるが、そのいろいろな処置の中の、知識あるいは認識を深めるというモラルな面をこの協会が分担するということを私は先ほどから繰り返して申し上げておるが、そのことが労働組合の民主的な、自主的な発達を妨げるという御質問の趣旨はどうしても私の方は幾らお聞きしてもわかりません。それからもう一つは、この協会が、労働組合の行う自主的な活動というものを妨げるものでは決してございません。それからこの協会が行う啓蒙宣伝、あるいは調査研究ということは、今御指摘通り労働省はその項目についてわずかに一課、しかも主として官僚の諸君だけがやっていることでは不十分であるから、より大衆的に、より民間の広い知識を集めて効果的にやろうといたすのであります。従っていろいろ御意見は承わりましたけれども、それはこの協会だけでは不十分だということはわかりますけれども、この協会が必要でない、むしろ逆にこれは妨げるものだということは、どうしても私の方がわからないのでございますが……。
  74. 井堀繁雄

    井堀委員 正直におわかりにならぬとおっしゃっておられるのか、あるいはつめを隠しておられるのか、その点は知る由もございませんが、前者だろうと思います。決してつめを隠しているなどという、そういう悪意のある労働大臣ではないと私も信用いたしております。そうすると、私の質問することが危惧でないということにちょうど当てはまってくるわけであります。というのは具体的にお尋ねすればわかると思うが、今までこの種の労働問題研究所というものが民間にもかなりあります。しかしそういうものがどういう働きをしてきたかということをごらんになればわかる。最初は善意に基いて、労働者のためにということでやっております。それが文化活動の程度にとどまっておりますと無難なのでありますが、労使関係の中に資料を提供しようというようなことになりますと、これは世界共通ですが、絶えず経営者側に戦術、戦略を売り込むような役割を努めてしまっているのであります。これは労働者認識を深めていただきたい。労働者ということは語弊があるかもしれませんが、特に保守党の中でも、一番労働問題に誠意を持ち、真摯な態度で御勉強いただいておりまする労働大臣には敬意を表しているのでありますが、よくお考えいただきたい。具体的にだんだん聞いていけば、私の質問が明確になってくると思いますが、これは出発点が間違っておりますと、どこまで追い込んだってだめなんです。私が非常にびっくりしたのは、この提案理由の説明を聞いたからでありますが、これと関連して、この法案の第一条でこういっております。「広く労働者及び使用者並びに国民一般」と規定している。一体この使用者に対して労働者がサービスせられる理由、今日の不如意な日本財政の中から十五億の金を注ぎ込んで、その金をせっかく労働行政の一助として使おうというお考には疑いを持たないが、この機関で経営者を教育したり、啓蒙したり、そのために資料を提供したりするということは、一体どんなところから出てくるのでありましょうか。あなたは、私が冒頭に質問したときに、労調法の関係の中で啓蒙宣伝という文字が使われております。その点に唯一のよりどころを求めておいでになるようであります。しかし労使関係の調整を行うため労調法の中からくる啓蒙宣伝という意味は一体雇い主をどう教育するのか、もっとわかりやすくいいますと、ここでいう雇い主のために資料を提供するというのは、要するに戦術を教育するというような意味かと思います。しかしそうではなくて雇い主も何かこの協会によって啓蒙宣伝ができるというふうにお考えでありますならば、そのことをここで、あなたのお考えでけっこうでありますから、そのものずばり一つお答えいただきたい。
  75. 石田博英

    石田国務大臣 使用者の前時代的な労働問題に対する認識を改めさせるような教育を行うことは、私は労働者のためになると考えておるわけであります。  それから先ほど御自分でも杞憂々々とおっしゃっておるのでありますから、私があらためて申し上げるまでもないのですが、いろいろな憶測は全く杞憂でございます。
  76. 井堀繁雄

    井堀委員 言葉じりで議論をしたいとば思いません。しかし私の杞憂というのは善意に理解したいと思って申し上げたのです。しかしあなたの答弁で明らかになりました。杞憂じゃありません。労働省の計画するところがいかにおそるべき計画を進めておるかというふうにとるべきでありましょう。今の答弁では、杞憂じゃなしにそういうふうにとりましょう。というのは、ただとりましょうではなくて、労働問題に造詣の深いきょうお集りの委員の方々でありますから、それぞれとり方があると思う。あなたはさっき経営者を教育しなければならぬと答弁した。経営者が労働問題に理解が足らぬためにあやまちを犯した、あるいは封建的な思想に災いされて民主主義の前進をはばむというようなものに対しては、教育でそれは大いに役立つと思います。しかしその教育は一体だれがすべきか、どの機関がやるべきか、ここに大事なところがあるのです。労働省がそういうところに手を出すべきものであるか——それはそういう保守的な、封建的な、反動的なといういろいろな見方は、程度の違いはあるでありましょうけれども、そういうものがよし教育の力で改善されたとしても、その改善はだれがどこで当るべきかということが大事なことなんです。しかしその以前に問題がある、私がさっき言ったように、話がわかってもどうにもならぬという日本の経済実態、労使関係の足にまつわる大きな障害があるわけです。その一番よくわかるのは、労調法の精神でいいますと調停、あっせん、仲裁の段階を持っている公企労法の中でもわかりましょう。あっせんをしてうまくいかぬ、調停をしてもうまくいかぬ、仲裁にまで持ち込んで、話がわかれば手が打てるというなまやさしい日本の労使関係じゃないのです。私は非常に基本的な問題だと思いますから、くどくどお尋ねしたのでありますが、御答弁は残念ながらちょっと困難かと思いますので、少し変えてお尋ねしてもかまいませんが……。
  77. 石田博英

    石田国務大臣 何も困難でございません。御指摘のような実情改善するためには他の施策を必要とするということは私は何度も認めております。これだけではいいとは申しません。しかしこれも必要だ。それからわかっておってもどうにもならぬ面もあることも認めます。しかし認めますが、それだからほっておくわけにもいかないのでありまして、そういうものを改善する前に何をしてもむだということはないと思います。  それからきわめてささいな一例でありますが、労働基準法の趣旨を徹底させるにいたしましても、やはり労働問題というものの理解を深めていきさえすれば、たんねんにそういう風潮を作っていくことに努力をすれば、一見非常に困難に見えました、たとえば商店の休業制の実行などもできましてそういう啓蒙宣伝の効果というものはだんだんと現われて参るわけであります。  それから経営者に対する啓蒙は労働者のためにならぬとおっしゃいますが、経営者の前時代的認識のためにいかにたくさんの労働者が困っておるかということは事実でありますから、その前時代的認識を改めさせることは、私は労働者諸君のためになると固く信じます。
  78. 井堀繁雄

    井堀委員 ようやく明確になって参りましたが、経営者の封建性を改めさせる、あるいは進歩的な労働法規理解を深めるために、この機関が相当働きをするということは期待しておいでになる。そこで私はそういうことは間違っておりゃせぬかということを前段でお尋ねしたわけであります。しかしあなたと私の立場や考え方の相違を議論し合おうとは思いませんけれども、それでは労働省のあり方としては間違っておりはしないかということを最初からお尋ねしておるのです。というのは、一番最初にそのものずばりお尋ねしたわけであります。労働省設置法の中から、労働法規の中から、一体第一条の文句はどこから出てきたかということを聞いておる。啓蒙宣伝ということだけでしょう。ほかに何かございますか。
  79. 石田博英

    石田国務大臣 労働者の福祉の増進をはかるための啓蒙宣伝のほかに、あるいは調査研究あるいはそれに伴う行政的ないろいろな措置も含んでおります。従ってこの協会は、労働省設置法の中で指定されている啓蒙宣伝や調査研究ということ、それは直ちに労働者の福祉のために行うものでありますが、それをより効果的、より大衆的に行うということを目標としたものであります。
  80. 井堀繁雄

    井堀委員 非常に複雑な質問をするようになって恐縮でありますが、それではこうお尋ねしましょう。労働法なり労調法なり職業安定法なり、その他労働保護立法を一々ここで取り上げるまでもないと思いますが、いずれもよりどころは労働組合法の第一条に規定しているように、労働者の福祉を増進し、労働者の社会的経済的地位を引き上げるためには、一にも二にも三にも労働者の自主的な組織の力、言いかえれば団結力によって労使対等の立場を作るというこの基礎をはずしてはどうにもならぬ。これはいうまでもなく労使の対立を前提にしておる。労使の利害関係を明確にいたしておるわけであります。でありますから、もし労働者の福祉を増進し、もしくは労働者の地位の向上のために労働省がものを考えるということになりますれば、これはどんなに考え過ぎたところで決して行き過ぎではないかもしれませんけれども、この対立した片方の連中を一緒に取り扱おうとするところに、踏み出しの上に混乱がある。こういうものに対して諸外国の先進国の立法例がありますれば、あと一つ聞かせていただきたい。
  81. 石田博英

    石田国務大臣 使用者に対する労働問題についての啓蒙宣伝ということは、労働者の福祉を増進するために行うのでありまして、私はちっとも混乱をしておるとは考えておりません。諸外国の立法例等については事務当局から答弁させます。
  82. 亀井光

    ○亀井政府委員 諸外国の立法例等につきまして、あるいは前例につきまして、この日本労働協会考えておりますところとぴたりとするような実例は実はございません。と申しますのは、全額政府の出資によりましてこういう教育活動を行うような例はありませんが、国の補助金、地方公共団体の補助金で教育を行う機関はございます。それはイギリスにおきましてもアメリカにおきましても、スエーデン、フィリピン等でも実例はございますが、日本労働協会のように全額国が持ってやるという例はないのであります。
  83. 井堀繁雄

    井堀委員 今明らかになりましたように、全額国が持って、しかも主務官庁である国務大臣が監督権限を発動するような団体はないはずであります。労働者の教育機関に補助金を出すとか、助成金を与えるとかいうことは当然なことで、悪いことではありません。私も勉強が足りぬのでありますけれども労働教育についてはある程度関心を持って外国の文献などを調べてきたつもりであります。これは基本的な問題です。ほんとうに労働者福祉のためになりさえすればという、その結果だけを取り上げておいでになる。今回もあなたの良心的なものを疑うわけではない。しかし民主主義は手続をやかましく言うのです。民主的だと簡単にみな言ってのけておりますけれども労働組合の自主性というものを尊重しなければならぬことは一般的な理念でありますが、ことに教育、啓蒙というようなものは、先ほど来非常に失礼な言い方でありますが、民主主義の基礎はやはり一にも教育、二にも教育だといわれている。教育を誤まりますればどっちへ行ってしまうかわからないのでありますから、その教育というものはあくまで労働者の自主的な意思に基いて、自治的にそういう機関というものを運営されてこそ、初めて労働者のためになる教育活動として生まれてくるのであります。お説教をしようと思いませんけれども労働組合の職分の中に、教育的職分というものはかなり重く、そうして決定的な条件とされておるのであります。その職分を誤まったり、あるいはそれが足りないところに労働組合の失敗があったり、行き過ぎがあったり、世論のひんしゅくを買うということも、これもまた労働運動者としては考えなければならぬところであります。しかしあくまでそれは自主的に、自治的に行うべきものであります。そういう意味でこれは画期的かもしれません。善意の出発であっても、その善意は決して最後までその効果を上げ得るものだという考えは、それは独断だと思うのです。こういう点について、実は最初杞憂を申し上げましたのは、まさかと思いましてお尋ねしたところが、その通りだったということで、私自身が納得するところの答弁にはなったのです。そういうなにを私は責め立てようとかなんとかというのではありません。これはそれがわかれば、あとについてはぞうさなくどれもこれも出てくる。第一この中で、これはモデル定款を示して、そしてモデル定款に従っていろいろの団体を作らしめるという社団法人、ことに公益社団などについては、そういう例はたくさんございます。しかしこれは政府の外局として作られるというものにも見えますが、しかしこれはもう全く縛ってしまう、理事の定数まできめて、理事選考の方式から選挙の手続までも法律で縛り上げちゃって、ここには自治もなければ自主もありません。こんなものは結局労働省の外局なんです。そうするとこの問題は、ここの点だけでも、これは労働大臣考えぬといけませんですよ。一体こういう行政機関ともあるいは民間団体ともつかないようなものを作り上げて、しかもそれが一番大切な労働者の教育活動の自主性、民主的なあり方というものをここでけ上げてしまっては、出発がいかに善意であり、いかに好意的にものをお考えになったところで、答えはそう出てこないということが非常に大切だと思いましたからお尋ねをして、もうこの質問で大体考え方基本になるべきものは私にはのみ込めました。しかしそう私がのみ込んでしまいますと、この法案は非常に悪いものになってしまいますので、何か弁解をなさる余地がありましたら……。
  84. 石田博英

    石田国務大臣 大がいのことは今までお答えを申し上げたことと同一でございますが、自主性を妨げる意思は決してございません。しかし自主性を守らなければならないという建前の上に立っても、なお労働省の設置法の中に明確にしてありますように、これは労働省自身で労働者の福祉のために行うべき啓蒙、宣伝、調査研究、そういうものをより大衆性を持たせ、より積極的に行おうとするものでございます。それから監督権の問題でございますが、あれは諸外国のような基金を出すのではなくて、補助金や助成金だけでありましても、財政上の監督はいたさなければならないのであります。補助金や助成金を出すのと基金を出すのとでは、私は基金を出す方がよりその目的を達するために安全かつ効果的であると信ずるのであります。それから労働大臣の行います監督権は、あくまで財政上の問題に限っておりまして、三十五条の三項でも業務に関与することのないように明確に規定をいたしておる次第であります。それから役員等の選任について自主性を保たせまするためには、会長は労働大臣の任命でございますが、理事その他は会長の御選考によって労働大臣が承認をするという形になっておるわけであります。これは特殊法人の先例に従っておるわけでありますが、その特殊法人の先例に従った以外に、先ほどから申します通り、あくまでこの協会業務の自主性を守るための努力を私自身もいたしますけれども法案にも考慮してある次第でございます。
  85. 井堀繁雄

    井堀委員 少し大臣に休んでお考えいただこうと私は思いますが、その間事務当局の御答弁を煩わしたい。今大臣の答弁は実に常識の発達した者の御答弁として尊敬に値しますけれども、事柄がやややはり基本的な専門的な問題になると思いますので、お考えいただく材料として、確かに十五億の金がどんな金であるかということは私もよく知っている。その運営を誤まればたまったものではございませんから、これを管理監督するということはごもっとも。これはしかし大蔵省のお仕事ではございませんかな。だから大蔵省がこの法案をお出しになるのはよろしい。労働者がお出しになる場合は、先ほどから言っているように、労働者の福祉あるいは労働者の地位の向上のために労働省がお仕事をなさるというのは、労働組合法の説明をさっき引例いたしましたが、あくまで労働者の自主的な、自治的なものに対してサービスをし援助を与えていくということを踏みはずしては——これはかつてドイツにおける、あるいは日本における産業報国会のごとき、名は産業一家、労使協調、労使一体を言いながら、事実は労働者を隷属せしめる全体主義的なものに陥るということは、今さら議論の余地のないところであります。一番大事なのは、やはり民主主義の原則というものが労働運動の中に少しでもゆがめられたら、どんないいことを考えても全部だめなんです。ここに大きなあやまちのあることをこの法案の中から発見して、くどいことを言ったのですが、それはしかしあなたと私の間で少し冷却期間を置いたらいい答弁をしていただけると思います。きょうのところは私がこれを追い詰めてはいかぬと思いまして、遠慮いたします。  そこで局長にお尋ねをいたしますが、今大臣は私の問わぬことまで説明して下さいましたが、会長は労働大臣が任命されて理事は会長が御指名になる、こういっておりますけれども、しかし大臣は総理大臣が任命されます。日本の行政機構で、局長の選考まで実際問題として総理大臣が関与するはずはありません。主管大臣がそれぞれ選んでいく。同じことなんです。徹底した官僚機構なんです。会長を選んで、会長の持ってきた者が悪ければほかの方で幾らでもいじめられます。そんなことを、しろうとじゃあるまいし、それで自主性を一向侵していない、自治的な機能を妨げないなどと言うことは、ちょっと白を黒と言う御議論以外にないと思うのでありますが、そういう点を私は議論しようとは思いません。局長に一つお尋ねいたしますが、この労働大臣が任命いたします会長のもとにどういう理事を選ばれたところで、その協会の主管者、会長に対する資格というものはこの法案で絶対です。ただ労働大臣に頭が上らぬだけ。どこに理事会の自主性があるでありましょうか。どこの条文に、どういう工合に自治の機能がございましょうか。自動的に働ける点があったら一つ説明願います。
  86. 亀井光

    ○亀井政府委員 この協会法案の十三条をごらんいただきますと、その点が一応条文としてございますが、ただほかの特殊法人と比べますと、特殊法人の中にはすべて主管大臣が理事の一人一人まで任命する方式をとっているものもございますが、その点につきましては、この協会は一応会長を労働大臣が任命いたします。理事につきましては労働大臣が承認、認可という権限はございますが、一応自主的に会長に選任権を与えているという点がほかの特殊法人と違う一点でございます。それからもう一つは、ほかの特殊法人には理事会という運営の仕方はないのでございます。すべて会長なり理事長が専決いたす仕組みになっておりますが、この協会はあくまでも理事会の合議制によって運営していこうという考えであります。それからさらに評議員会というのも、これも他の特殊法人には少いのでございますが、評議員会で十五人以内の評議員におきまして重要事項は会長の諮問を受けてやる。単なる諮問機関ではないかという御質問もあろうかと思いますが、この点は結局運営の実態でございますが、そういう実質的な運営ができるようにわれわれとしては強い期待を寄せておりますし、またそういうことのできるような会長を選ぶ、これはかねがね大臣から御答弁申し上げておりますような、そういう会長を選ぶことが、私はこの協会の一番大事な仕事だろうと思います。この協会の仕事がうまく成長するかしないかは、結局会長にどういう人を選ぶかということによって大きく決定されるんじゃないかと思います。
  87. 井堀繁雄

    井堀委員 私のお尋ねしないことまで答弁して明確になってしまいました。十三条だけを見てみますと、なるほどあなたが最後にお答えになったように、会長の人選を誤まったらだめだ、その会長が生まれつき民主主義者であって、神様のような人が得られますならば、民主主義は人によって育ってしまう。しかし民主主義は、人間の限界を明確にしたのが民主主義の原理なのであります。すなわち各人の人格が平等に尊重されるところに民主主義の原則があることは今さら申すまでもありません。個々の支配者にそういう理想的な人を求めることができるのが全体主義なんです。個々の人格を尊重し合うとともに、そういう神様を人間の中に求めることのできないことを明確にしておるところに民主主義があるのでありますから、そこで私は今の御答弁でも解決したような気がいたしましたが、この機関は決して自治的な、民主的な、任意な団体ではなくて、労働省の分局かあるいは一課を設けたものとしての機能ならこれでよろしいのです。この点に対しては何か十三条の中で会長の選考について、労働大臣ですから、そういう世界にもないようなりっぱな方を日本の中から見つけていただけるかもしれません。そういう者が得られればこれに越したことはございません。私の主張はこれでなくなるのであります。しかしこれは私の主張ではないのです。民主主義という原理は一人や二人で考えられたものではなくて、しかも世界共通の原理じゃございませんか。その原理をくずして答弁されたのでは、これは初めから哲学の論議からやっていかなければならぬ、それは自主的でないということをはっきりお認めになる方が、むだな議論をせぬで済むと思うのです、これは確かに民主的じゃございませんと。
  88. 石田博英

    石田国務大臣 これは会長を選任する場合における御苦心というか御心配、それは神様のような人を求められるとは思っておりませんけれども、しかし私はこういうことを初めて提案をし、その成立を期しております以上は、その人選については良心にかけて適当な人を選ぶ確信があります。それから以後は、これは毎年々々の補助金でありますと、たとえば補助金を減額するとかなんとかいうことで、いわゆるいじめようがありましょうけれども、基金がすでに設定されておって、その基金の利子もきまっておるのでありますから、最小限それだけのものは仕事ができるわけであります。つまり財政上いじめるということはこの場合にもちろん想像する必要はないと思います。それから会長及び理事の任期は四年でございますから、その四年間はとにかくどんな労働大臣が出、どんな労働行政が行われようと、金はある、それから任期はあるのですから、思う存分自由にやれるはずでございます。しかもいわゆる不正な財政上の行使をしない限りにおいては干渉を受けないわけなんでありますから、業務上の干渉はしないわけですから、自由にやれるわけでございまして、その建前で私どもは作っており、この自主性は守り得るものと確信をいたしております。
  89. 井堀繁雄

    井堀委員 どうもあなたに休んでいただいた方がいいと思うのですが。あなたはどうも自信があり過ぎる。なかなかこれはそういい人を会長に選べませんよ、困難を求めるならまだいいのですが、要するに不可能を可能にするということで。しかし善意の発意については決して疑ってお尋ねしているのではありません。しかしこういうものができてしまいますと、この法律によって一切は律せられるのでありますから、それこそあなたがいつもおっしゃられておりますように、法治国でありますから法律を守らなければなりません。悪法でも、できれば守らなければなりません。しかしこういう悪法が世に出れば、守る方の側に立ったらたまったものではないということは、この法案を審議する国会としては非常に重要なことです。これはさっき局長にお尋ねしていたのですが、今大臣はあなたの答弁を横取りされて、四年間は非難を受けないりっぱな会長を選んで、その会長は民主主義の理想に徹したよい人をお考えのようでありますから、そういうお方がおいでかどうかは、こういう席でお尋ねすることは当を得ないと思います。何かおありのようでありますが、もし、そういう方が得られたと仮定して、もう一つ進んでみましょう。  第五条に、名称、事務所、四は資金の問題でありますが、その次に役員及び理事会に関する事項、評議員会及び評議員に関する事項、業務及びその執行に関する事項、しかも定款の変更は、労働大臣の認可を受けなければならぬ、こう書いてある。今日のようなりっぱな労働大臣が永年その席におられるということは、政党政治のもとにおいてはあり得ない。選挙も間近でございますから、全くできもせぬことを約束してわれわれはものを判断し、きめるわけにいかぬのでありますが、この五条で定款にこういうことをきめてくるということは、労働教育というものが労働者の福祉向上のために考えて、他には何の邪念もないという大臣のお言葉をそのまま信用いたしまして、こういうことが信用できるなら、こういうことを書かないでもいいじゃありませんか。こういうことを書かなければならぬというのは一体どういうことでございましょう。
  90. 亀井光

    ○亀井政府委員 これは先ほど来大臣から御説明ございますように、十五億の基金をもって設置されます特殊法人でございまして、十五億という大きな基金をいかにこの団体が扱っていくかということは、法律上の大きな責任がこの協会に課せられておると思うのであります。こまかい事柄については法律において一々縛ることはやめまして、それこそ井堀先生の言われる自主的な定款においてそういうものはきめさせていくというのがこの法律の建前でございます。たとえば役員及び理事会に関する事柄でありましても、この中の役員の定数は一応法律では理事は五人以内、監事は二人以内となっておりますが、それをどういうようにきめるとか、あるいは役員の事務分掌をどうするかというふうな事柄もきめられましょうし、あるいは評議員会あたりでは、その招集の手続とかいうこともありましょうし、あるいは業務については、業務の内容の具体的な細目等もございましょう。こういうことを自主的にきめさしていきたいというのが第五条の立法案の精神であります。
  91. 井堀繁雄

    井堀委員 五条の精神はよくわかりました。一々御答弁を願わなくてもだんだんはっきりしたようでありますが、もしこの法案通りますと、この団体はもう全く徹頭徹尾縛りつけられて、ただその必要を認めるのは、十五億という国民の血税によった大切なお金ですから、それを国民にかわって、その目的以外に使わないように、またその運営を誤まって国民に迷惑をかけぬようにするということは、もう申すまでもない。この点は私も全然同感であります。しかし、この種のことは、さっきも言ったように、大蔵省の今日のこういう基金に対する厳重過ぎるほど厳重な行政機構というものは、私の承知しておる範囲内ではこういう法律の、こういう形まで持っていかぬでもいいのではないか。  それよりも、ここでもう一つ新しいことを聞きましょうか。第七条の、労働協会という名称あるいはこれに類似の名称を用いてはならぬという法律のこの条文でありますが、これはきわめて重要なことじゃございませんか。日本労働協会という六字のうち、日本労働というのはたくさんあります。その下に協会という文字を使ったらいかぬということですが、こういうことは憲法二十一条の結社の自由や表現の自由に対して、しかも一番自主的で自治的でなければならぬ民主主義の原則を貫く労働者保護のための法案として、こういうことはいかがなものでしょうか。起案者はこういうことに対して一体どうお考えですか。
  92. 亀井光

    ○亀井政府委員 先ほどの御質問の中にございました、財務規定にすべて大蔵省の監督にまかしていいんじゃないか、それが前例ではないかというお話でございますが、そうではございませんで、どの特殊法人でありましても、第一次監督者は主管の主務大臣でございます。大蔵大臣は、その主務大臣が監督するにつきましての協議の相手方になるのでございまして、直接大蔵大臣は監督いたしません。  それから今の第七条の問題でございますが、これもどの特殊法人にも共通の規定でございます。と申しまするのは、類似の名前をもちまして不測の損害を協会に与えますことは、やはりわれわれとして避けなければならぬということがあるわけでございます。しかもそれは先ほど来申しますように、十五億の国の出資によって作る団体でございます。その信用問題に大きな影響を与えるようなことがないようにというのがこの七条の趣旨でございます。どの特殊法人の法律にもこういう規定はございます。
  93. 井堀繁雄

    井堀委員 まだたくさんある。聞けば聞くほど問題が大きくなる。聞かねばよかったと思うほど問題が出てきましたが、大体きょうはこの程度にいたそうと思いますが、今の関連事項でちょっと大切だと思います点は十五億の金は、今の御答弁の趣旨によりますと、労働省の方が労働者の福祉のために、教育という任務もありますが、自由に——自由という言葉はありませんが、その目的の範囲内において使うことについては、労働省のワクの中にがっちり受けとめることができる性質のものでありましょうかどうか、たな上げ資産の一部のようでありますが、そういう点はどうですか。永続性またそれの拡大などについてどういうふうにお考えでしょうか。この点一つ伺って、あとは保留して次会に譲ることにいたしたいと思います。
  94. 石田博英

    石田国務大臣 そのお金の使途は、この法律に規定しておる任務の範囲内であります。それからもう一つの永続性は、これは集金として出資するのでありますから、もちろん永続性を持っておるわけであります。それから将来の拡大の見込みでありますが、これでは不十分でありますから、あらゆる機会を求めてこの基金の拡大に努めなければならぬと思っております。
  95. 森山欽司

    森山委員長 質疑の御通告がありますが、本日は他に御質疑はございませんか。
  96. 岡本隆一

    ○岡本委員 定足数が切れておりますから、これで散会にしていただきたい。
  97. 森山欽司

    森山委員長 散会に先だちまして、この際法案の審議の促進について一言申し上げます。  日本労働協会法案は去る二月十一日付託され、去る二月十八日に提案理由の説明を聴取し、二月二十日より三回にわたって質疑を重ね、その間社会党よりは滝井義高君、赤松勇君、井堀繁雄君が質疑を行い、自由民主党よりは田中正巳君も質疑をいたしました。本委員会は原則として毎週四回委員会を開いておりますが、そのうち日本労働協会法案を審議する日は一日であります。社会党よりは、重要法案であるので、特に労働大臣の出席を求め、本日は労働大臣も一日じゅう審議に臨む御意向で出席しておられると存ずるのでありますが、通告されても御質疑もなさらぬということでは、委員長としては審議の促進上はなはだ遺憾であります。  本日はこれをもって散会いたします。     午後三時二十五分散会