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1958-03-04 第28回国会 衆議院 社会労働委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年三月四日(火曜日)     午後一時二十三分開議  出席委員    委員長 森山 欽司君    理事 植村 武一君 理事 大坪 保雄君    理事 田中 正巳君 理事 野澤 清人君    理事 八田 貞義君 理事 滝井 義高君    理事 八木 一男君       小川 半次君    大橋 武夫君       加藤鐐五郎君    亀山 孝一君       草野一郎平君    田子 一民君       中山 マサ君    藤本 捨助君       古川 丈吉君    松浦周太郎君       山下 春江君    亘  四郎君       赤松  勇君    井堀 繁雄君       岡本 隆一君    栗原 俊夫君       多賀谷真稔君    堂森 芳夫君       中原 健次君    長谷川 保君       山花 秀雄君    吉川 兼光君  出席国務大臣         労 働 大 臣 石田 博英君  出席政府委員         労働政務次官  二階堂 進君         労働事務官         (労政局長)  亀井  光君         労働事務官         (労働基準局         長)      堀  秀夫君  委員外出席者         専  門  員 川井 章知君     ――――――――――――― 三月三日  委員稻田柳右エ門辞任につき、その補欠と  して加藤鐐五郎君が議長指名委員に選任さ  れた。 同月四日  委員竹山祐太郎君、多賀谷真稔君及び西村彰一  君辞任につき、その補欠として松浦周太郎君、  勝間田清一君及び井堀繁雄君が議長指名で委  員に選任された。     ――――――――――――― 三月三日  国民健康保険事業運営円滑化に関する陳情書  (第五五一号)  清掃施設費国庫補助範囲拡大等に関する陳情書  (第五五二号)  簡易水道施設拡張工事費国庫補助等に関する陳  情書(第五五三  号)  医療費の三割国庫負担等に関する陳情書  (第五五四号)  精神薄弱児施設等拡充強化に関する陳情書  (第五五五号)  民生委員及び児童委員指導研究費増額等に関  する陳情書  (第五五六  号)  家族計画普及促進に関する陳情書  (第五五七号)  精神病患者療養費国庫率引上げに関する陳情  書(第五五八号)  結核健康診断及び予防接種徹底等に関する陳  情書(第五五九号)  医業類似行為既存業者業務存続に関する陳情  書  (第五六〇号)  簡易水道事業国庫補助増額に関する陳情書  (第五六一号)  養老年金制度確立に関する陳情書  (第五六二号)  未帰還者留守家族等援護法による医療給付期間  延長等に関する陳情書  (第五六三  号)  特別失業対策下水道事業補助率引上げに関する  陳情書(第五六五  号)  上水道事業の起債わく拡大に関する陳情書  (第五六六号)  国民健康保険事業に対する国庫補助増額に関す  る陳情書外一件  (  第五六七号)  同和対策促進に関する陳情書  (第五七四号)  診療報酬一点単価引上げ等に関する陳情書  (第五七八  号)  保育事業に対する援護率引上げ等に関する陳情  書外十三件  (第五八四号)  萩港に検疫所設置に関する陳情書  (第五九一号)  工場等の汚水による岸漁業被害対策に関する  陳情書  (第五九二号)  上下水道等建設事業に対する国庫補助率引上げ  等に関する陳情書  (第六〇〇号)  下水道事業に対する国庫補助増額等に関する陳  情書外三件  (第六一一号)  水質汚濁防止法制定に関する陳情書  (第六一二号) を本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  日本労働協会法案内閣提出第三九号)  労働基準に関する件      ――――◇―――――
  2. 森山欽司

    森山委員長 これより会議を開きます。  日本労働協会法案を議題とし、審査を進めます。質疑続行いたします。滝井義高君。
  3. 滝井義高

    滝井委員 日本労働協会法案に関する二、三の点について大臣に質問いたしたいと思いますが、大臣は参議院に行かれるそうでございますので、途中で行かれる都合もあるでしょうから、おもな点だけ先にお聞かせ願って、残ったところはまた次の機会にやらしていただきたいと思います。  石田労働大臣大臣に就任せられましてから、労働政策の基本的な考え方についていろいろ大臣のお考えを伺ったわけでございますが、昭和三十三年度の予算を審議するに当って大臣は、労働政策目標として三つの点を掲げておられるようでございます。その一つ労働教育の振興ということであり、一つ最低賃金実施、いま一つ職業訓練の総合的積極的な実施、こういう三つの重要な政策を掲げて、その達成に努力をせられておることについては深い敬意を払うものでございます。これら三つ目標が、それぞれ教育の面では労働協会法となり、賃金の面では最低賃金法となり、職業訓練の面では職業訓練法となって、具体的に法案に現われてきておるわけでございます。いわば労働協会法というのは、石田労政における精神的な支柱をなすものであるという考えが私にはするわけでございます。小坂さんが労働大臣になって以来、千葉、西田、倉石、松浦、それから大臣と、こう四、五代ずっと労働大臣が続いて参ったのですが、今回その精神的な支柱としての労働協会法をお出しになることになった、その提出動機と申しますか、一体どういうことからこれを出すお気持になられたのか、それをまずお聞かせ願いたいと思います。
  4. 石田博英

    石田国務大臣 日本労働運動――これは組合運動だけではなく、一般に労働問題に対する取扱いを含んだ労働運動というものは、その歴史の浅さ、特殊性その他からいたしまして、また日本近代国家に入ってきたのがわずか百年くらい前にすぎないという点からもいたしまして、いわゆる近代的労使関係のあり方について、労使双方の知識あるいは認識が非常に低い、これは一般的にいえるのではないかと思うわけであります。使用者側の中にはいまだに、労働組合といえば、それ自体社会秩序あるいは経済秩序と相いれないものだという考え方が残っておるわけであります。それから組合側にいたしましても、労働組合運動をそのまま社会主義運動あるいは社会革命運動と申しますか、そのものの力をもって現在の社会秩序経済秩序を変えていこうとするような動きがあるかと思えば、また片一方におきましては共済組合かあるいはレクリエーションの団体かというふうな考え方にとどまっている者もあり、非常にでこぼこのように思われます。特に直接労働問題に関係の少い一般国民の層に至りますると、なお一そうその弊がはなはだしい。私は、労働問題の取扱いということだけを取り上げて考えますと、日本はまだまだ後進的要素が非常に強い、しかし日本産業、特に工業力は今や世界の一流国に近づきつつある、こういうびっこの状態を直していくことが、正しい労働運動、ひいてはよき労使の慣行の樹立になると考えたわけであります。すなわち、考えました動機は、日本の労働問題あるいは労働運動労働組合運動というものの現状並びにそれに対する労使双方国民認識不足ということが原因でございます。
  5. 滝井義高

    滝井委員 それぞれ労働問題に関係のある資本家なり労働者あるいは一般大衆に非常な認識不足がある、労働問題に関する限り非常に後進性が強い、こういうことでございます。同時に今の御説明の中でも、近代的な労使関係を確立しなければならぬ、こういうことを言われましたし、この設立の理由の中にもそういうことが述べられておるのですが、石田労働大臣の描いておる近代的労使関係未来像というか、あるいは現実に打ち立てようとするその姿というものはどういう関係になればいいんでしょうか。
  6. 石田博英

    石田国務大臣 第一に、基本的な考え方としては、労働問題の処理に当っては労使が完全に対等立場に立ち、そして合理的な共存の道を求めていく、企業繁栄はそれ自体が直ちに労働者諸君生活向上にもなり得る、逆に労働者諸君勤労の成果は企業繁栄をもたらし、同時にまたそれが勤労者諸君生活向上になり得るという形を双方でとっていくということであると私は思っておりますが、現在の法治国家のもとにおきましては、労働法規の順守を根本といたしまして、そしてその法規に従って、ルールに従って、労使対等立場で労働問題を処理していくということが近代的な労使関係であろう、私はこう考えておるわけであります。従って近代性ということはそのまま封建制というものに対立するものでありまして、封建的な一切の労使関係を改めていくことが近代的という意味考えておるわけであります。
  7. 滝井義高

    滝井委員 近代的な労使関係を打ち立てていくということは、労使対等立場に立ち、合理的な共存の道を歩み、企業繁栄を願っていく、こういう立場になりますと、企業内部経理その他についてある程度労働者に知らせなければ共存の道はやはり歩めないと思うのです。というのは、共存の道を歩むということはお互いが共通の認識に立つとき初めて共存の道を歩むことができるわけです。そうしますと、ここに労働協会法を作って、そしてその協会の働きによって封建的な労使関係を近代的な労使関係に編成がえをしていくということになれば、当然そこに、たとえば西ドイツに見るような企業経営労働者参加をしていく、あるいは利潤分配が、もっと経理内容が明白にされて、労働者が均等に恩典を浴するという姿が同時に出てくることが考えられなければならぬと思うのです。私まじめにここに出て、労働大臣のいろいろの達見も聞かしていただいたんですが、そういう点についてはまだ寡聞にして大臣から一言の御説明も聞いていないのですが、少くとも労使対等の道を歩み、そして合理的な企業繁栄の道を歩もうとするならば、西ドイツがとっておるような姿は、一体現在の日本では考えられないものなのかどうか、こういう点一つ大臣の御見解を率直にお聞かせ願いたい。
  8. 石田博英

    石田国務大臣 そのままの形については西ドイツの中でもいろいろ議論がございますが、しかし方向として労使経営強化に協力をすることによって、労働者諸君生活向上をはかり、同時にその勤労意欲を振起せしめるという方向については、私は望ましい方向だと考えておるわけであります。日本におきましても、生産性本部等におきましては、労使協議制についてすでに結論を得て公表いたしておるわけでありまして、これがそのままでいいか、悪いかは別問題といたしまして、そういう方向に向って努力されることが望ましい。ただその場合に、いわゆる経営権範囲につきましては、これはもっと研究をして明確にしておく余地はあるだろうと思います。日本労働協会において御研究を願いたい、あるいはその結論を広く世間に普及してもらいたいと思いますことは、西欧諸国におきまする、そういうよき前例の日本に対する適用の方法ということについても、研究していただくことが非常に大切なことと考えておるわけであります。
  9. 滝井義高

    滝井委員 今の大臣の御発言は、きわめて大事な発言だと私は思います。合理的な共存、しかも繁栄の道を歩もうとするならば、西ドイツのような利潤分配の問題、あるいは生産性向上の問題、あるいは経営参加問題等、少くとも封建的な労使関係とは異なった近代的な進歩的な方向に向くことは当然必要であり、しかもそういう問題についてこそ、労働協会は積極的に研究をしていくことが必要であろうという御意見は、私ありがたく胸におさめておきたいと存じます。そうしますと、そういう方向に立ってこの労働協会法が動くことになるわけなのですが、この日本労働協会法の立案に当って絶えず労働者がいろいろの重要問題についての意見を求めておりました労働問題懇談会ですか、この御意見はお聞きになったんでしょうか。
  10. 石田博英

    石田国務大臣 直接は実は伺わなかったのであります。非公式にいろいろの方の御意見を伺いました。この直接伺わなかった理由を率直に申し上げますと、実は私は当初におきましては、この予算獲得について十分の自信を有さなかったのであります。従って十分に自信を持たなかったものについて先にあまり公けにいたしておいて、平たい言葉で言いますと、あと予算がとれなくて恥をかくことをおそれましたから、非公式にいろいろの方面の御意見は伺いました。
  11. 滝井義高

    滝井委員 どうも大臣からそういう工合に率直に打ち明けられると、追及のほこ先が鈍るのでございますが、私は大臣がそう率直に、どうも自信がなかったので相談しなかったと言われると工合が悪いのですが、この労働協会法というものが、少くとも石田労政における精神的な支柱役割を演ずるということになる、私はあとでもまた質問いたしますが、やはり労使共存の道を歩むという点にこの協会法役割が通じておるとするなら、やはりこれはぜひ聞いていただかなければならなかった点ではなかったかと思います。大臣が率直にそう言われるので、これ以上は追及いたしませんが、いずれこれはわれわれとしては大臣の今このような御答弁もありましたので、各界の意向というものを、おそまきながらこの国会で公聴会か何らかの形でやはり聞かしていただきたい、こう思うわけです。そこで大臣は、この協会法予算がとれるかどうかなかなか危ぶかったので相談をしなかったということでございますが、当初は多分経済基盤強化資金の十五億でなくてむしろ三十億ぐらいを御要請されておったのではないかと思うのです。そうしますと、それが六分か五分ぐらいの利子でまかなう場合に、三十億が十五億になったときの構想と、三十億の構想とは相当達った構想になるのではないかと思うのですが、当初大臣が抱いておった構想は三十億要求でございましたので、相当大きな構想ではなかったかと思うのですが、三十億が十五億に削減された、その結果何か大きな構想の上に変化を来たしたことがありますか、できれば当初の構想をお知らせ願いたい。
  12. 石田博英

    石田国務大臣 当初は約二億円ぐらいの金を使いたい、こう考えたわけであります。それを基金としてどうして要求したか、年々補助金なり助成金なりでやったらどうかという意見もございました。しかしこの仕事は基本的にはいかにしてよい人を得るかということにあると私は思います。よい人を得て、役所かあるいは政府が干渉するという結果がないように、その人にすっかりまかせていける形にこの法律もなっておりますが、なっておるだけに人を得なければならぬ、ところがよい人を得るためには、ときの政府考え方あるいは政府ふところ工合というものによって補助金が左右されたりするようなことでは、働く人に安心して来てもらえない、従ってどうしても基金を設定して、政府がどう変ろうと基本的な基礎になるものだけはやっていけるんだということでなければならないと思いまして三十億円の要求をいたしました。それが十五億円に削減をされまして、使える金が約半分に減ったわけであります。そこで当初は東京本部を置きまして各産業中心地区に支部を設けたい、こう考えておったのでありますが、半分に減りましたので初めはいわゆる本部だけ、東京における活動だけに限定せざるを得ないと思っております。ただしこの基金獲得は本年だけであきらめるわけのものではございませんので、年々増加していくような方向をたどって参りまして、それとにらみ合せて全国的な組織の拡充ということも考えて参りたい、こう思っているわけであります。そこでこれは一旦発足いたしましたらその会長なり、理事人たち考え方仕事内容等はおまかせをするという考え方でいきたいと思っております。
  13. 滝井義高

    滝井委員 初めの構想とは違って、金が半分になったので本部だけをお置きになる、こういうことでございます。私は経済基盤強化資金の中から十五億の金を出してその利子協会をまかなっていくというこういう姿を見るにつけて、私たちが思い出すのは、戦前にあった労使協調会の姿なんです。協調会は一体どういう資金でまかなわれておったのか。人間の歴史というものは螺旋状に回っていくと言いますが、どうもやはり過去の経験というか、そういうものを少し修正して出してくる形が非常に多いのです。協調会は、ちょうど大正七年の八月の冨山の米騒動契機として、物情騒然たる中に、社会政策立法をやはり作らなければいかぬというようなことが基礎になって、そして社会事業調査会というものを内閣が作って、そして協調会というものが答申されてできてきたという歴史を読んだことがあるのです。この協調会の金は一体何によってまかなわれておったのでしょうか。
  14. 石田博英

    石田国務大臣 当時の財界から集められた基金、それから政府補助もありました。六百万円のうち二百万円が政府補助で、四百万円が財界からの基金であったように覚えております。  そこで、ついでにお答えをしておきますが、私は、協調会と同じじゃないか、こういう考え方に対しまして、協調会とこの構想との基本的な違い方について二、三申し上げておきたいと思います。それは協調会基金は、ただいま申し上げましたように、大部分使用者側から出されておるが、その形は避けなければならぬということが一つであります。それを避けて、政府の出資でやる。第二には、協調会の果しておりました労働問題あるいは労働争議の調停的な役割は、今日は中央労働委員会公企業体におきましては公労委がやっておりますので、そういう仕事はやらないのであります。その他協調会がやっておりました研究調査それから教育、そういうことは協会でやるわけでありますが、その基金がよってきたような立場、これは根本的に捨てていく、つまり第三者による中立性の確保ということを貫きたい。その点において非常に違っておるわけであります。すなわち協調会は、どちらかといいますると、使用者側要求する産業平和というものを確保することを目的といたしたのに対しまして、この労働協会は、使用者側立場でもなければ、労働者側だけの立場でもなく、いわゆる第三者的な立場に立って、むしろ労働省といたしましては健全な労働運動の発達が労働者生活水準向上をもたらすものだという確信の上に立って出発をいたしておるわけであります。
  15. 滝井義高

    滝井委員 今大臣から協調会と今度の労働協会との本質的に異なる点についてお伺いして十分わかったのでございますが、しかし問題は、非常によく似ている点は、六百万円と申しますと、七百倍にしても今の金で四十億くらいの金になると思うのです。そうしますと、やはり協調会は今の金にして四十億ばかり、六百万円を基金にしてその利子でまかなったわけです。いろいろ大臣が本質的な相違点を述べられたことについては納得をするのですが、利子をもってまかなわれる点というのが非常に似ておるということと、私がおそれるのは、なるほど協調会ができた大正七年からずっと終戦の当時まで歩んだ道というものは使用者側中心とする労働政策あるいは労働教育一つのセンターとしての役割を演じたのでしょうが、今の日本労働政策石田さんの労政は、あとでも述べますが、きわめて例外的な要素をある程度持っておることは認めますが、今まで保守党の政府のもとにおいて石田さん以前の労働政策の歩んだ道というものは、それは第三者的な国の立場と言わんよりか、むしろ使用者的な立場労政というものが非常に強く出ておったような感じがするのです。私は労働問題にはしろうとですが、しろうとだけに観察も鋭いと自認しておるのですが、そういう感じがする。そうすると、むしろ大正七年に米騒動契機としてできた協調会の方が、前面に使用者というものが出ておっただけ正直ではなかったかという感じさえするのです。むしろそこに使用者というものが背後に隠れてしまって、そして国というものが前に出てきた格好は、いかにもそれは第三者がやるような格好には見えるけれども、その背後には厳然として使用者が控えている、こういう感じがどうもするのです。こういう点に対する大臣の率直な御意見といいますか、納得いくような御説明をお願いしたいと思います。
  16. 石田博英

    石田国務大臣 私の前の人のやった労政について私は批判したいとも思いませんし、何とも別に申しません。しかし私は少くともそういう立場をとってきたこともございませんし、今後したいとも思いません。この日本労働協会というものの運営につきましては、人事を決定すれば、あと労使におまかせするわけでありますが、その人事の決定に際しては、私の良心にかけて、そういう立場をとっておるのではないかという今お話のような疑いを受けるようなことはいたしません。これは私は明確に申し上げておきたいと存じます。
  17. 滝井義高

    滝井委員 今の大臣の御答弁は、先般同僚田中君からの質問に対しても、とにかく会長の人事だけは公平無私立場で、ほんとう日本労働教育を推進する意味でやりたいという御答弁をいただき、本日また重ねてそういう御答弁をいただいたので、その点については信頼をしたい、こう思うわけです。ただしかしあまりにも戦前協調会と非常に似ている感じがするわけです。しかも運営の金は利子でやるということもそういう点で似ているということで、幾分の疑問なきを得ないのです。最近こういう外郭団体的なものができて、そしてその運営のための経費というものが、何かこういう基金的なものを作ってその利子でまかなわれるという傾向が方々で出てきつつあります。たとえば日本生産性本部も同じように余剰農産物資金財政投融資に入って、その財政投融資から十億だかを借りて、その金を又貸しをして、その利子日本生産性本部に向ける、こういう形をとってきているわけです。利ざやで運営していく形になっている。今度労働協会は別にたな上げ資金四百三十六億の中からやる、こういう形になっておる。こういう形は、大臣の言われるように、国の補助金やその他のものでは非常に不安定で、優秀な人物を得るためには、どうしても年々歳々確実の資金が入ってきて運営するという点には異議ないのですが、ほんとうに恒久的に労働教育なりあるいは生産性向上をやろうとするならば、何かそこにはっきりと国が一つ政策としてやはり金を出していくことが必要じゃないかと思う。何か不労所得みたような形の利子をもらってそれで細細とやっていくという形じゃなくて、恒久的に国が毎年きまった予算――われわれの税金、一般財源の中から出していくという形の方がかえってすっきりするような感じがするのです。どうも生産性本部のような関係が出てくる。労働協会がまたこういう形をとるということは、どうもそこらあたり石田労働大臣の言われるのと逆の形があるような感じがする。たとえば労働教育のために必要だというときにも基金から一定の利子七千万円とか八千万円しか出さないという弊害がそこに出てくるわけです。こういう点、何かそこに労働教育を推進していかれる上に基金利子だけでは足りないという場合には、思い切って恒久的に一般会計の方からでも出していくという形をおとりにならぬですか。
  18. 石田博英

    石田国務大臣 もちろん補助金とかあるいは全く無条件な寄付金というようなものを拒むわけではございません。しかし私の申し上げたいのは事業永続性というものを確保するためにはやはり今のような基金を作る必要がある。それを土台として仕事が伸びた場合の処置は、今御指摘のような方法をもちろんとらなければならぬと思います。それも必要でありましょうし、基金をふやしていくことも必要でありましょう。しかし何と申しましても、どんなに内閣がかわっても、土台だけは、極端に申しますと、人件費と基本的な運営費だけは必ずあるんだということでないと、いい人は得られない。これは例は非常に悪いのでありますが、新生活運動の例をちょっと申し上げてみますと、これはやはり恒久的な補助金でやるということで出発をいたしました。しかしなかなか金額の上においても恒久性定額性というものを保持できなくているような状態のように私は承知しております。こういう状態では困ると思います。いい人を得られない、またいい人に来てもらってあとで何かの思わざる事情でかえなければならぬということになりますと、これは非常にその人に対しても不信になりますし、そういう状態では私はいい人は得られないと思いますので、基本的な土台のものだけは基金利子で確保しておきたい、こういうことでございます。
  19. 滝井義高

    滝井委員 基本的な、いわば労働協会の核になる部分だけは基金で確保したいということはよくわかります。それにしては、たとえば第一年度で六分として九千万円程度です。そうしますと、協調会大正九年に初年度の予算を組んだときは多分四十四万円くらいだったと思うのです。これは二億ちょっとの金なんですね。そうすると、まだ日本労使関係というものがほとんど近代化の緒についたという非常に封建性の強い段階で、当時の使用者側にしても――当時は澁澤榮一さんかだれかだったと思いますが、当時の日本資本家のチャンピオンは少くともあの当時四十四万円という金、二億をこえる金を組んで教育をやろうとした識見を持っておったのです。ところが今石田さんは、労使対等立場に立ち、合理的な共存の道を歩もうという段階で、一億以下の九千万円でやろう、こういうことなんです。これは私は構想はいいんだが、どうも協調会と似ておると言いましたが、その予算の面を見ると協調会に隔たることあまりにも遠いので、ちょっとがっかりするんですが、こういう点はどうお考えになっておりますか。
  20. 石田博英

    石田国務大臣 その不足という点は、全く私も不足に思います。おっしゃられればその通りでございますが、この構想自体をわかってもらうのに相当ひまがかかりまして、私自身が当初の基金すら一体今度の予算に組めるかどうか――生まれつき気が弱い方でございますけれども、気が弱い私がより一そう自信を持ち得なかったような状態で、ようやく私としてはここまでこぎつけたと考えておるわけであります。しかし決してこれで満足しておるわけではございませんので、それは逐年基金の増加、あるいは要すれば補助金の獲得にこれから努力をして参りたいと思っております。ただ協調会の場合は、これは間違っておるかもしれませんが、初めに何か相当な建物を建てたのじゃないか、今のような建物を建てるのに相当な金がかかっておったのじゃないかと思っております。私どもの方では特に特別な建物を建てるなんということは考えておりませんで、事業自体でやるつもりでございますが、比べられて金が足りないじゃないかとおっしゃられれば、決して満足だとは申しません。御協力を得て逐年ふやして参りたいと思っております。
  21. 滝井義高

    滝井委員 経済上の問題はそのくらいにして、次にこの法案石田労政あるいは日本の労働行政における精神的支柱確立のための法案であるという点において、日本におけるそういう問題の歴史的な状態について一応石田大臣の見解をお聞きしておきたいのですが、昭和二十八年にアメリカで池田・ロバートソン会談があったわけです。そうして池田・ロバートソン会談を契機として愛国心の問題が当時論議をせられました。そして日本にも愛国心教育をやらなければいかぬということを強くアメリカから要請をせられて、池田さんが日本に帰ってきた。そうして具体的に教育法案というものが国会に上程せられることになりました。さらに教科書法案教育委員会法の改正というものが出て参りました。それらの一応基礎固めが終ると、具体的な問題として道徳教育の問題が出、勤務評定の問題が出てきたわけでございます。私が冒頭に申し上げました通り、小坂さんから松浦労働大臣までの労政とあなたの労政とは非常に違うところがある。というのは、この点なんでございます。先般この委員会であなたの前の大臣松浦さんは、自分の労働行政というものはマホメットのような労働行政だ、左手にコーランを持ち、右手に剣を持つ、こういうことを日経連の総会でも御演説をされたのです。自来私はずっと日本の労働行政を客観的に見ておりましたが、今まではやはり右手の剣が多く働きました。あなたの労政の初期においてもそういう傾向が見えたと思います。しかし石田労政第二年に入ってから、いわば右手が次第に低くおろされて、左手のコーランが上り始めたということなんです。日本の青少年に精神的バックを与えるために勤務評定とか、道徳教育が出る時期に、労働行政において左手のコーランが高く上げられつつあるということは、やはり私たちは無視してはいかぬと思うのです。いわば石田労政一つの転換期に立とうとしているということなんです。こういう点においてむしろこの左手のコーランの役割を演ずるものとしての労働協会法というものを私たちは非常に重く見るのです。それは物質的な裏づけとしての最低賃金法に比しても劣らない重要法案であるというのは、そういう昭和二十八年以来の歩み来たった、ここ四、五年の日本状態を見ても、そういう感じを非常に濃厚にするのです。われわれは日本労働運動の近代化をはかるために、労働者というものが知的にもきわめてすぐれたものになることを望みますが、労働教育というものは二つの面が考えられると思うのです。一つ労働者を近代的な労働者に仕立て上げながらどんどん組織化していくという方向一つ、今一つはいわば小学校教育における道徳教育というものが、木口小平は死ぬまでらっぱを放しませんでしたという形で道徳教育が行われるのか、それともほんとうの社会の中における道徳というようなもの、個人が尊重され、基本的人権が尊重されるという道徳、主権がわれわれ国民にあるという道徳が確立される道徳教育ならば、これはりっぱな道徳教育だと思う。それと同じように、組織的な労働者、知的な労働教育、組織率を高める労働教育までいくのか、それとも御用組合を作る労働教育にいくのか、こういう二つの問題があると思うのです。私はあなたを疑うわけではないけれども、池田・ロバートソン会談以来の一連の動き、その中の一つの歯車の役割をする労働教育、いわゆる左手のコーランの役割仕事がもしありとすれば、これらの二つの労働教育の中における一つである組合御用化の道、あなたの意図しているものと違った方向に追いやられる可能性が出てこないとも限らない。こういう点が心配なのです。  そこでこれらの四、五年来の歴史的な歩みを顧みて、われわれと世代を同じくするあなたですから、私はそういうことはないと信じておりますが、ここにこの数年来の歩みをかんがみて、大臣の率直な考えを承わっておきたいと思う。
  22. 石田博英

    石田国務大臣 池田・ロバートソン会談に出発する動きと関連があるかということであります。私は不勉強にして池田・ロバートソン会談の内容というようなものについて詳細を知っておりません。従ってそれに関連があるわけはまずないわけであります。  それからもう一つ、愛国心の問題あるいは道徳教育の問題。これは私の個人の認識でありますが、愛国心というものは自然に作られるべきもので、むしろ民族及び個人の持つ本能的な要素が当然基礎になるべきものだ、私はこう考えております。これに特殊な体系を与えることは不自然である、こう思っております。それから道徳の問題は、結局、終局するところは、ただいまの御議論にもございましたように思いますが、社会と個人との関係、その関係を規定する、その関係をよりよく、より楽しくする規律を、あるいは戒律というようなものを教えていくことだと思っておるわけでありまして、根本はやはり個人の人権の尊重ということが、基礎になっていくべきものだと思っておるわけであります。そういう立場から見まして戦後の日本状態というものは放置してよいものだとは私は思いません。愛国心の問題は、時日が解決をし、本能的なものでありますからだんだん戻って参りまするし、道徳にいたしましても、初めに道徳があって、社会があとからできたのではなくて、人間の社会が初めにあって、その社会の中に個人がよりよく生きていくために、だんだん道徳というものが生まれ、それが変ってきておる、こう考えておりますが、それだからといって為政者が全然放置していいものだとは思いませんけれども、一定の型を押しつけていくことは間違いだ、私はこう考えておるわけでございます。これは、しかし全く私の個人の哲学と申しますか、考え方であります。  従って私は日本労働協会の意図する労働教育というものは、決して御用組合を作っていくものだとは思っていないのであり、そうあってはならない。これは現行の労働組合法にも、厳重にそういうものを禁止する規定が設けられてございます。労働協会の作ろうとする新しい労使関係というものは、現行法規の順守を建前といたしておりまするから、御用組合を作る目的のものとは全く相背馳するものでございます。ただこの際誤解のないように申し上げておきたいのでございますが、日本労働協会法は、あくまで政府が出資するだけ、そうしてその出資した金の正しい使い方だけを監督するのであって、その業務の内容方向というものは、政府から離れて独自にあるべきものだと私は考えております。従って、その独自のものは何か、それはやはり良識ある第三者によって与えられる方向、そしてそれが健全な労働運動というものを助長し、組織化を推進することによって労働者諸君生活を守り得る、向上せしめ得ると私は考えておるわけであります。  先ほど松浦労働大臣のお言葉の御引用でありました。私はやいばという言葉が、もし敵に対するものという言葉であるならば、やいばという言葉は使いたくないと思います。やはり同じ社会、同じ国家の中に暮らし、しかも民族を同じくして、好むと好まざるとを問わず共存の道を歩まなければならない以上は、その中におるいかなる人に対しても、私は敵という考え方をもって臨むべきものではないと考えております。私を敵という人はずいぶんありますが、私の方ではそうは考えません。それから、私自身の考え方が、初めはやはりやいばの面があって、今は幾らか変ったというお話でございますが、私は日本労働運動の中に是正すべき面、反省をしていただかなければならぬ面、未成熟な面、行き過ぎの面もあったということは、どなたもお認めになるだろうと思う。そういう場合に、そういうものを矯正する指圧療法くらいのことは、ときどき行政機関としてはやはり考えなければならぬ。弾圧弾圧とおっしゃいますが、私は指圧程度のことでやって参る。これは医者の反射療法みたいなものであると私は思っており、基本的には労働者諸君生活向上させるために一貫してやって参ったつもりでございます。     ―――――――――――――
  23. 森山欽司

    森山委員長 この際、赤松委員よりの御要望がありますので、労働基準に関する点について特に質疑を許しますが、本日の本来の議題外でありますので、委員長との申し合せ通り、五分以内にお願いいたします。
  24. 赤松勇

    ○赤松委員 労働問題に関して国民の理解を深めるための重要な法案が目下審議されておるわけでございます。ところが他方におきまして、これに逆行するような現象が実は生まれてきておる。この点につきまして、行政府の御見解をこの際ただしておきたいと思うのであります。  問題は、裁判所の判決の問題でございますけれども、使用者が従業員に相談なく一方的に時間外労働をさしたときに、労働基準法の規定の割増賃金を支払わなければならないが、たとい支払わなくても同法違反ではなく、刑事罰を加えるべきではない、こういうような判決が名古屋高等裁判所で行われたわけであります。これにつきまして、愛知労働基準局長は、困った判決だ、割増賃金は支払うべきであるというのが常識だ、この判決は支払わなくてもよいといっているのではないけれども、実際問題としては刑事罰のバック・アップがないと行政指導上困難だ、こういうことをいい、さらに高検の検事は、これを最高裁に上告する、従って、法律の文理解釈はともかく、その精神をくめば、名古屋高裁の判決は、どう考えても全くおかしい、こういう見解をとりまして上告の手続をとったのでございます。  これは名古屋に発生しました女子従業員十一名を使っておる工場のできごとでありますが、四時間十分の時間外労働をさした。そこで労働基準法で三万二千九百十五円八十六銭の割増賃金を払わなければならないのに、一万六千五百九十一円六十九銭しか払わなかった。そこで愛知労働基準局は、基準法三十二条、同じく三上七条違反でその使用者を検挙したわけであります。事件を起訴されまして、第一審判決は、昨年九月三日、名古屋簡裁の法廷で開かれまして、三十二条違反、三十七条違反、両条とも有罪、罰金区二万円の判決があったのでございます。ところが、これに対しまして被告の方は、同法三十七条の規定によれば、使用者が割増賃金を支払う場合は、災害その他の理由で時間外労働さしたときか、労組あるいは労働者の過半数を代表する者と協定をしたときに限られており、この量刑は不当である、こういう理由で控訴をしました。そこで第二審の判決公判は、去る二月五日に開かれまして、名古屋高裁の影山裁判長係で開かれて、被告の言い分が認められて、三十二条については有罪、三十七条は無罪、量刑も非常に軽くって、罰金一万五千円、こういうことになったわけでございます。この判決によりますと、私は判決文は見ておりませんが、新聞報道によりますと、この判決は、使用者が労基法に規定した手続をとって時間延長すると、法律上は割増賃金を払わなければならず、相談なしにやったときは、違法ではないということになっておって、この判決文の中に、払わなければならないが、刑事罰は加えるべきではないという注釈がついておるというのでございます。これは、愛知基準局としましては、割増賃金制度の根本に触れる問題である、もしこういう判決がありますと、基準法の割増賃金制度が根本的にくずれてしまうということから非常にこれを重要視しました。高検も同じくこれを重要視いたして上告の手続をとったのでございます。この問題は名古屋高裁がこういうように判決を下したということになりまして、基準局が先ほど申し上げましたように行政上非常に困った問題が発生した。なお労働者労働組合方面におきましても、もしこのような判決が正しいというふうになって参りますれば、基準法の精神は全く骨抜きになってじゅうりんされてしまうというので、非常に問題になっておるのでございます。これはひとり地方の問題ではありません。当然最高裁において論争される重大な問題でございますが、私はこの判決文に対する批判を労働省に求めておるのではないのであります。問題は、労働基準法をば忠実に実施しなければならぬ監督行政の立場にある労働省といたしましては、今後どのような態度をおとりになるか。またこの判決文は今控訴中でございまするから、最高裁で最後の判決が下ると思うのでありますけれども、これらに対して行政府としての見解をこの際明らかにしていただきたい、こういうふうに思うわけであります。特に基準法の三十二条、三十七条の解釈につきまして明確にしていただきたい、こういうふうに考えるわけであります。
  25. 石田博英

    石田国務大臣 私はその事件について今初めて伺うので、基準局長からお答えをいたします。
  26. 堀秀夫

    ○堀政府委員 ただいまお話の問題は、労働基準法第三十七条の解釈の問題にからむ事件でございます。三十七条には、使用者が、第三十三条あるいは三十六条の規定によって労働時間を延長し、あるいは休日に労働させた場合におきましては、割増賃金を払わなければならない、このように規定してあるわけでございます。そこでこれにつきまして、この三十三条あるいは三十六条の手続によらないで、違法に時間外労働あるいは休日労働をさせたときはどうなるのかという問題が出るわけでございますが、労働基準局といたしましては従来から一貫いたしましてこのような場合には当然三十七条の義務がある、割増賃金支払いの義務があるのである。従いましてこれに違反すれば三十七条の違反にもなる、このような見解をとっておるわけでございます。  ところがただいまお話のように、名古屋の一綿糸工場におきまして、女工の時間外労働違反事件があったのでありますが、これに対しまして名古屋の簡易裁判所の最初の判決によりますると、三十二条違反であると同時に三十七条違反であり、この併合罪が成立する、このような見解をとったわけでありますが、これに対しまして被告から控訴がありまして、名古屋の高等裁判所におきましてはこの二月五日に、三十二条違反であることは当然であるけれども、三十七条違反には該当しない、これは罪刑法定主義のと原則に反するものであるから、そのようなこれに違うような解釈はとれない、このような判決をしておるわけでございます。従いまして労働基準局としての解釈、それから検察庁としての解釈と、名古屋高裁の判決とは違っておるわけでございます。  そこでこの処置でございますが、われわれの方といたしましては、最高検察庁とも連絡をとりまして、最高検から刑事訴訟法の四百六条に基いて、法令の解釈に関する重要な事項を含む判決であるからという理由をもちまして、最高裁あてに二月十七日に上告受理の申し立てをしているわけでございます。われわれといたしましてはただいまのような考え方を持っておるわけでございます。ただいま上告申立中でございまするから、最高裁のこれに関する処理を持ちまして、検察当局とも相談の上善処いたしたいと考えておるのでございます。
  27. 赤松勇

    ○赤松委員 基準局長の今の見解なり御答弁は、労働大臣のご答弁あるいは御見解と解釈してよろしゅうございますか。
  28. 石田博英

    石田国務大臣 けっこうであります。     ―――――――――――――
  29. 森山欽司

    森山委員長 引き続き日本労働協会法案について質疑を続行いたします。滝井君。
  30. 滝井義高

    滝井委員 今ちょっと中断されましたが、今までの行政というものは右手のやいばの方が働くことが多くて、むしろ左手のコーランというものが働くことが少かったということを述べたわけですが、今池田・ロバートソン会談以来、学校教育における道徳教育が問題になるその時期を同じくして、労働問題においても教育ということが政治の日程に上ってきたという、こういう相関関係の重要性を質問をいたしたわけです。それについて労働大臣の率直な御所見があり、自分としては労働教育というものは政府は金を出すだけであってあとは公正な監督をやっていくのだ、こういう御説明でございました。私が心配をするのは、石田さんのような公正な人が労働大臣である間はそういうことでよかろうかと思うのですが、まあ少し反動的な、左手より右手の方をよけいに上げる大臣が出ますと、この事態というものは一変をしていく可能性があることは、すでに戦争中に協調会がだんだん産業報国会にいつの間にか肩がわりされてしまったという、そういうあつものにこりてなますを吹くわけではないけれども、歴史を持っているわけです。そういうことをわれわれが心配をするのは何も抽象的に心配するのでなくして、すでに具体的にこの条文の上にもあるわけです。あとでこまかい条文は指摘しますが、一体労働大臣は今いろいろ御説明をいただきましたが、この協会の政治的な中立を保っていくためにはどれだけの具体的な配慮をやっていくのかということなんです。
  31. 石田博英

    石田国務大臣 まず首脳者の人選について先ほどから申しましたような態度で臨みたい。第二は条文の中に、第三十五条の三項に「協会の業務の運営の自主性に不当に干渉するものであってはならない」として労働大臣の監督権に限界を設けております。その二つによってこの自主性を貫いて参りたい、公正さを貫いて参りたい。それから会長の任期は四年でございます。当初の任命に十分注意をいたしますならば、それが四年の間に協会の性格というものを形作っていってもらえるものであって、人がどうかわってもそれは、たとえば労働大臣がかわっても、その四年間にでき上った形というものを急激にあるいは逆の方向へ持っていくことは私は防げるものだ、こう考えているわけであります。
  32. 滝井義高

    滝井委員 それでは大臣の今この御答弁に私は具体的に指摘してみたいと思うのですが、まず会長と監事、これは大臣が任命をせられます。従ってまず石田さんのような公正な方が大臣でおられる間は私はそう心配はないと思います。しかし問題は、今度は会長が任命をする理事というものの任命の段階になると、大臣の承認を必要とするのですね。そうしますと承認をしなければ会長がいかにこの人を適任者と思って任命しようとしても、おそらく条文の上からできないと思う。そうしますと、ここでまず第一に、石田さんのような人はいいですが、少し反動的な人が出ると、もう理事をチェックすることができます。さらにこの協会運営にあずかる評議員会を見ると、これは会長任命でない、大臣の任命なんです。そうしますとその協会運営をするお金は全部政府が出資をしておる。そしてその理事によってまかなっていく。それから会長と評議員という、いわば龍を描いたその眼に当る分は、全部大臣が手中に握ってしまっている、こういう形なんですね。こういう形になると、なるほど口では政治的な中立を保っておる、会長がりっぱな人ならばいいという、こういうことになるのですが、そうはいかないと思うのですよ。だからもしそういうことを言われるならば、会長だけは大臣が任命せられても、あと理事や評議員というものは自主的にそこの会長が任命をする形をとられる方が、この協会ほんとうに正しい道を歩む、中立の道を歩む道に通ずるのではないかと思うのです。こういう点で、すでに条文の上にわれわれが疑わなければならぬ点が出ておるのですが、こういう点を大臣もう少しはっきり納得のいくような御説明を願いたい。
  33. 石田博英

    石田国務大臣 この役員の任命の理事以下の規定は、これはほかの特殊法人の例に実はならったものであります。それから理事の選任の手続でありますが、私はさっきから繰り返しておりますように、四年間の任期の中に一つの――最初に私はもうほんとうに良心にかけて公正な中立性を保ち得る人にお願いをいたしますが、その人によって得られた四年間の実績による基礎というものは私はくずさない。それから戦前と違いまして社会的な反響というものは非常に大きく影響いたしますから、そういうものの手前も、私は御心配のようなことは起らない、こう考えておる次第であります。
  34. 滝井義高

    滝井委員 あまり具体的な問題はあとで条文の上で事務当局にいろいろとお聞きしてみたいのですが、特に大臣においでいただいておるので、私がさいぜんから申し上げますように、石田さんはこれをお作りになった方でございますから、私は公平な道を歩んで下さると思っているのですが、一たび法律ができますと、その法律というものはそれが廃案になるまでは相当長期にわたってこの役割を果していくものなんです。そうしますと、会長はあなたが任命になるし、評議員も任命になるということになっておるのですが、一体具体的に任命の基準というものをどういう工合大臣はやっていく所存なのか、私はこの基準というものがある程度はっきりしておれば、これはあとからいろいろ大臣が出られてもそう曲げられないと思うのです。具体的な基準というものを一体どういう工合におきめになるのですか。
  35. 石田博英

    石田国務大臣 会長には労使いずれの立場にも片寄らない人で、かつ学識経験の十分豊かな人で、特に労働問題についての御造詣の深い人を選びたいと思っております。それから評議員は労使、公益、三者からおのおの同数の人をお願い申し上げたい、こう考えておる次第であります。
  36. 滝井義高

    滝井委員 基準といえば結局双方に片寄らず、学識経験豊かな労働問題に豊富な知識を持っておる者というようなおざなりの基準になってしまうんですね。こういう基準というものはお互いのそのときそのときの考え方で自由に説明のできることになりやすい問題です。私はこれ以上この問題については申し上げませんが、ぜひ一つこれは公正な立場でやってもらわなければならぬ、こう思うわけです。  そこで次にお尋ねをしたい点は、今まで一体労働省は労働教育にどういうことを具体的にやってきたかという点です。過去に労働省がやった労働教育というものは多く、協会ができればその協会というものはそれを一つの有力な参考資料として、もって他山の石とするだろうと思うのです。そうしますと、一体労働教育について具体的にどういう道を今まで労働省は歩いてきたのか、これは一つ概要だけでけっこうですから、簡単に説明願いたい。
  37. 石田博英

    石田国務大臣 もって他山の石とされては実は困るのでありまして、今までの官僚的なひとりよがりなやり方を改めて、もっと大衆性のある、普及性のある仕事をしてもらいたい、こう考えておるわけでございます。今までやって参りましたことその他については労政局長からお答えを申し上げますが、繰り返して私はもって他山の石とされることを非常におそれているということだけを申し上げてお答えといたしたいと思います。
  38. 亀井光

    ○亀井政府委員 こまかい事柄につきまして御説明申し上げますと、昭和二十二年から労働省が発足しまして以来、労働教育は引き続き行われておるのでございます。そのおもなものを申し上げますと、「週刊労働」は二十二年から今日まで六百三十四号出ております。それから月刊誌といたしましては、昭和二十五年から今日まで行われております。それから「労働問題叢書」、これはたとえば「英国労働者教育史」だとか「アメリカの労働教育と大学」、これが二十三種類、昭和二十二年から二十八年の間に出ております。それから「労働新書」、これは論説を中心としたものでありますが、二十九年から今日まで五種類出しております。たとえば多数決の原則の適用あるいは賃金というようなこと、それから一般教育資料としまして四十一種類、パンフレットが二十一種類、これも二十二年から出ております。リーフレットは十一種類、壁新聞が二十三年つから三十一年まで五十六種類、絵本が昭和二十四年から二十七年まで四種類、それから映画は、二十三年から今日まで毎年一巻もの一種類ずつ労働ニュースを十一種類作成いたしております。教育映画としましては、四巻ものが一つ、三巻ものが一つ、二巻ものが四つ、合せて六種類製作をいたしております。それから幻燈、これが三十種類、紙芝居三、レコードが十五、掛図が十三というふうなことで、それとともに、この法案にございますように、講座の設定で直接労働者教育に当っておりますのが二十七年から今日まで行なわれておるのでございまして、東京労働大学講座、大阪労働大学講座、福岡労働大学講座で毎年二百名近くの労働者教育いたしておりますが、そのほかに各県におきまして夏期大学その他夏期講座等で昨年一年間で二百九十六回、人員としましては四万八百三十九人の労働者教育いたしております。こういうようなのが労働省設置以来労働教育として行いましたおもな業績でございます。
  39. 滝井義高

    滝井委員 今盛りたくさんな労働教育の具体的な御説明がありましたが、それらの盛つりたくさんな労働教育が、きわめて官僚的であったと大臣みすからが御告白をなさったわけです。従って今後労働協会の運動と申しますか、教育目標というものは、実効性があり、大衆性のあるものにしていきたい。従って今までの労働省のやった教育というものは他山の石とはできぬだろう、きわめてわれわれの共感を呼ぶ御答弁をいただいたわけなんであります。そこで労働省が今までやったいろいろの教育のお述べをいただいたのですが、今度の予算を見ても、労働教育費として千六百十九万五千円、その中でも一番おもなものは「週間労働」の発行の経費だと思います。そうしますと、「週刊労働」と今後できる労働協会との関係というものはきわめて密接なものになっていくことは明らかなんです。一国の労働行政というものがどういう方向に向いておるかということを、やはり中立の立場教育をやるにしても、労働協会というものは、知っておらなければならぬと思うのです。従って将来労働協会と「週間労働」との関係というものは、一体どういうこなにるのとかということです。今まで私たちは「週刊労働」を読んで参りました。しかし「週刊労働」は一方的に政府のことばかり書いておるのです。簡単に言うと、都合のいいことばかり書いておるのです。そしてあじけないことはなはだしいというのが「週間労働」の実態です。読んで大して参考にならない。一千万円をこえる金をお使いになってあれをお出しになっておる。その努力には敬意を払いますが、一体今後労働協会と「週刊労働」というものはどういう関係になっていくのか、これはきわめて重要なことだと思います。
  40. 石田博英

    石田国務大臣 労働協会が行います広報活動というものは、やはり労働協会ができて、その構成員で、ただいま申しましたような方向に向って御研究を願いたいと思っております。その場合におきまして「週刊労働」との関係は、「週刊労働」自身をもっと大衆的なものにするか、あるいはまたそれにプラス・アルフアしたものを別に考えるか、そういうようなことはこれからあとできた人たちによってお考えをいただきたい、こう思っておる次第であります。
  41. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと「週刊労働」は労働省の予算の中で、労働省自身の機関誌と申しますか、そういうものとして一応しばらくはやっていく、それから協会ができれば、協会のそういう週刊誌的なものあるいは月刊誌的なものを出すか出さぬかは協会できめたがよかろう。われわれは「週刊労働」と労働協会とは一応そこに合体をして一つのものを出すことはないのだ、一応別個のものとして出すのか、こういうことなんですが、そういう理解の仕方でよいですか。
  42. 石田博英

    石田国務大臣 現在の予算の面はそうでございます。ただ実際運営をして参りまして、その後において、明年度の予算編成のときとかあるいは適当な機会に再考を要するような事態が生じましたならば、そのときは別に、またあらためて考えなければなりませんが、予算の面ではただいまおっしゃった通りになっております。
  43. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと一体現在「週刊労働」を出すためにはどれだけの人的な構成が持たれておるのか。同時に私が新聞か何かでいろいろ読んだのには、労働省の構想というものは「週間労働」を協会とを一本にしていくようなことを読んだことがあるのです。それでそこらあたりを今お尋ねしておるのですが、一体「週刊労働」はどれだけの人的構成であれだけのものを出されておるのか、それから一方労働協会というものは今年度利子を先にもらって、それで発足することになるのだが、その場合の労働協会の構成人員はどういうことになっていくのか、この点を一つ明らかにしてもらいたい。
  44. 亀井光

    ○亀井政府委員 現在「週刊労働」の編集その他に従事しております職員は十名でございます。そのうち公務員が三人入っております。将来この団体としてどれくらいの規模で運営するかは、先ほど来大臣が申し上げますように、会長、理事がきまりましてから具体的に検討されるものだと考えるのでありますが、十五億、六分の運用収入で回しますと、大体九千万円の事業を行うという事業規模で考えらますことは、一応われわれとしては四十人ないし四十五人という事務職員の数を考えております。しかしこれは最終的には先ほど来大臣が申し上げますようにに、新しくできます団体の幹部において決定をされるということになります。
  45. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと現在「週刊労働」では十人でやられておる。新しくできる労働協会というものは四十人ないし四十五人になるということであります。そうしますとその協会の四十人ないし四十五人という中には当然会長と五人の理事と二名の監事というものが入っておるのですか。
  46. 亀井光

    ○亀井政府委員 役員は別にしまして職員だけのことを私先ほど申し上げたのであります。
  47. 滝井義高

    滝井委員 職員だけということになりますと、この構成は約五十人以上が常勤の形になるわけですね。会長は常勤の職員になるのですか。
  48. 亀井光

    ○亀井政府委員 会長一名、理事五人以内、監事二人以内というのが法律の予定しております定員でございますが、会長はもちろん常勤とわれわれは考えております。理事五人の中で二人は常勤として三人は非常勤とするのが適当ではないだろうか。と申しますのは、大学教授その他適当な方を選びますには、やはり非常勤の職員も一応念頭に置いておきませんと、優秀な人材を集めるのがむずかしいかと考えておりまして、監事二人は非常勤で差しつかえないというふうに考えておりますが、これも先ほど来申し上げますように具体的には会長がきまりましてから決定さるべきものだと思います。
  49. 滝井義高

    滝井委員 会長が常任になって理事二名が常任になっているが、しかもその幹部は公正な立場で、労働問題に対して豊かな学識経験を持っておる者だ、そうしてこの機関が労働問題に関する学問的な研究や資料の整備をやるし、同時にいろいろな講座等を開いていく、情報活動もやる、こういうことになりますと、相当な給料をもらわなければ会長や理事に専念する人はいない。それはいい加げんな者を持ってくれば、だれでもおると思うのです。しかしさいぜん労働大臣が言われたような相当な人物を持ってくると、相当な高給をやらなければならぬということになるのですが、一体会長とか理事などの理事者の俸給は常勤、非常勤幾らの給料をおやりになるのですか。
  50. 亀井光

    ○亀井政府委員 これも具体的には協会が成立しましてから定款できまって参ることと思いますが、一応われわれが頭に描いておりますのは、福祉事業団の理事長、理事、監事というようなものの給与を頭に描いております。職員はわれわれは別に考えております。会長大体十三万円、常勤の理事が十一万円というところが一応われわれの頭にあるものであります。職員についても優秀なスタッフを集める関係上、その賃金についても社会的な相場というものを十分頭に描きながら決定されていくものと考えております。
  51. 滝井義高

    滝井委員 あと少しまだ大臣に残っておりますが、事務的なことはきょう私ちょっと十分準備してきていないので一応これで終ります。
  52. 森山欽司

    森山委員長 それではこの際、前回の委員会において井堀委員より御質疑のありました機関車労働組合の問題につきまして、亀井政府委員から答弁を願いたいと思います。
  53. 亀井光

    ○亀井政府委員 前回の委員会において、国鉄当局が十二月に出した通牒をめぐりまして、機労の支部におきまして三六協定の締結を見ておるにかかわらず、二四協定の締結について当局はこれを拒否しておる事実についての見解を求められたわけでございますが、その後具体的に国鉄当局と連絡をいたしまして、その通牒の内容その他について事実を調査いたしたのでございます。確かにそのときに御説の中にございましたように、十二月二十日付で機関車労働組合に対する今後の取扱い方についてという通牒は出されておるのでございます。そこでこの機会にわれわれとしまして国鉄と機関車労働組合との間に存在しておる問題点について解明をいたしますことが、この前の御答弁になろうかと考えておるのでございます。第一は現在の機関車労働組合委員長、副委員長、書記長の三人が四条三項の違反の状態にある。すなわち公労法十七条で解雇された者がこの三役を占めておるというところに第一の問題点がございます。そこでわれわれとしましてはこの三役特に組合を代表する権限を規約上持っておりまする委員長、副委員長が四条三項違反の状態にあるという問題につきましては、現在公労委に不当労働行為として団体交渉拒否についての申し立てがなされておるわけでございます。従いましてわれわれとしてこれに対する法律的な見解は、それが団体交渉拒否の正当な理由になるかどうかという法律的な解釈につきましては、公労委の判定に待ちたいと考えておるのでございますが、歴史的にこの経過を見ますると、昨年の春闘において四人の職員が解雇されて、その後この組合の正常化のためには大会あるいは中央委員会等の機会もございましたし、あるいは昨年秋は藤林公労委会長の個人あっせんの機会もあったのでございまするが、いずれの機会におきましても機関車労働組合としましては正常化に対して一歩も近づくことはなく、依然として委員長、副委員長、書記長を解雇された、者から選任をし、この地位を埋めておるような状況でございまするだけに、当局としましてもこういう法律無視の機関車労組に対しまして団体交渉拒否の態度に出ておることもやむを得ないものとわれわれは一応考えております。これは事実問題として考えておりますが、法律的なぎりぎりな解釈につきましては、先ほど申し上げましたように、公労委に不当労働行為の申請がなされておりまして、公労委におきまして目下審査が行われておりますので、その結論に持ちたいと思います。ただわれわれとしましては、そういう事態のいかんにかかわらず、できるだけ早く機関車労働組合自体が正常化に一歩踏み出すということを期待をいたすのでございます。  それから第二の問題は、この十二月二十日の通牒につきまして、これは不当な組合に対する介入である、従ってこの通牒を撤回しろというのが同じく不当労働行為事件として公労委に目下係属をいたしておるわけでございます。従いまして、これに対しまする法律的な解釈も意見も公労委の判断にわれわれとしましてはおまかせをいたしたい、われわれがここで結論を申し上げることは避けたいと考えておるのでございます。ただここでこの問題につきまして申し上げたいことは、機関車労働組合というものは、いろいろ意見はございまするが、一応組合もいわゆる単一組合というふうな考え方をとっておるのでございます。現在の機関車労働組合のあり方を見ますると、下部の支部並びに分会というものは、やはり中央の機関車労働組合の指揮統括のもとに動いておるのでございまして、これは明らかに連合体とは違う性質を持っておるわけでございます。そこで、大会あるいは中央委員会におきまして解雇されました三役を選任いたしまするについては、下部からいわゆる支部から単位によりまして選定された代議員あるいは中央委員というものが、それぞれその解雇された三役を選定しておる選挙に参加をいたしております。従って、そういう違法な状態の正常化につきまして、何ら下部の機関というものは努力が見られていない。従って、機関車労働組合本部における瑕疵の状態は、当然下部にまで影響を及ぼすものとわれわれは解釈するのでございますが、これもまた先ほど申し上げましたように、法律的にはぎりぎり公労委の不当労働行為事件として目下係属をいたしております。その方の結論を待ちたいと考えておるのでございます。  第三の問題点は、この前も御指摘ございましたように、機関車労働組合の分会、支部におきまして三六協定は締結しておるが、三四協定についてこれを拒否しておるというふうな御意見でございます。この事情を調査をいたしましたところ、三六協定は一応締結がなされておるようでございますが、これは従来の三六協定の期間の更新という手続において労働基準監督署に届出がなされておるようでございます。二四協定につきましては、まだその協定の成立を見ていないという現状でございます。ただこれにつきまして当局が交渉に応じないという態度で、通牒はそういう形になっておりまするが、そういうことを含めて、二十四条協定を結ぶことが適当であるかどうかということを含めて、すなわち窓口と内容とを含めまして、目下五つの地方調停委員会に調停申請がなされております。調停が今行われておる段階でございますので、われわれとしましても、この問題に対しまするはっきりとした見解を申し述べることは差し控えさせていただきたい、かように思うのでございます。ただいわゆる団体交渉というものと三六協定あるいは二四協定というものには、おのずから性質の違う面があることをわれわれとしても一応考えておりますが、これらに関連いた号しまする基本的な考え方については、地方調停委員会に係属中の問題でございまするだけに見解は差し控えたい、かように考えておる次第でございます。  以上でございます。
  54. 井堀繁雄

    井堀委員 今御答弁のありましたことは、これは格別われわれも問題にしておらぬのであります。この前お尋ねいたしましたことが基準法の二十四条、三十六条等の関係を具体的に取り上げたから例をあげたわけであります。今のあなたの解釈から参りますと、公労委にこの判断をまかせて、その間労働省は開店休業だという答弁にしかならぬのでありますが、私はその部分的なものについての解釈については、そういう提訴が行われておるという事実に対して、そうであっていいと思う。しかし労働省の任務は、言うまでもなく全体にわたっての問題で、ことに私は公企労法の解釈上の大きな間違いを起しておるのではないかということを問うために、こういうわかりやすい具体的事例を多賀谷委員があげたと思うのですが、ここから話をすればきわめて明確になるので取り上げたのですが、今の解釈を聞きますと、全く公企労法というものをばらばらにして解釈しようとしておるきらいがあると思う。言うまでもなく、いずれの法律でもそうでありますが、特に労働法規というものはやはり近代的ないろいろな多様な要素を含んでおる。そういう説明を聞きますと長くなりますから、要点だけを私の方からお尋ねして今の問題に関連さしてさらにお尋ねしたいと思うのですが、公企労法の第三条の規定ですが、これはどういうふうに御解釈になりますか。三条の中でこの公企労法に定めのないものについては労組法の解釈に譲っておるわけです。この考え方はどのようにお考えでございますか。
  55. 亀井光

    ○亀井政府委員 公企体その他いわゆる三公社五現業の職員の組合につきましては、当然労働組合法が適用になるわけでございます。ただ三公社五現業の職員の団体に特有な性質、すなわちその持っておりまする業務の性格あるいはその他のことからいたしまして、四条におきまして一応労働組合法と違いまする制約が加えられておるというふうに理解をいたしております。
  56. 井堀繁雄

    井堀委員 それで明らかになりましたように、やはりよってもっところは労働組合法と共通したものの中に公企業体という特殊性だけを公企業体法の中に求めておるというのは、あなたも御承知のように立法の基本的な建前です。この基本的な建前から考えていきますと、団体交渉というものは労働運動の生命なんです。それを奪うということは非常に矛盾があるので、この法律に対しては議論があるわけです。そこで労働省のように、こういう法律についての、特に労政局はその衝にあるわけでありますが、公企労法の精神は、あくまで労使関係の平和の問題について一番強く求めている。民間企業と異なって、企業の性格が公衆に及ぼす影響というものが敏感であるから、産業平和を維持するために、特殊の条件を設けたというにすぎないのです。この基本的な考え方からいたしますならば、何でもかんでも理屈のつくものはへ理屈をつけて、争いをするというような事態の場合には、法律に照して、そういうものを排除するのが労働省というものの働き、特に労政局の任務はそこにあるわけです。ところが、この十二月二十日付の通牒というものは、これはあなたが読めばすぐわかるのです。三六協定をやって、二四協定については、まだどうするとかこうするというようなことを言うに至っては、これはもうそこら辺の三百代言の争いに使われる議論なら別でありますけれども、少くとも国鉄のような国家企業の最たるところで、こういうことで争いをますます迷宮に追い込むようなやり方をしておるものに対して注意を与えるということは、私は労政局の重要な任務だと思うのです。その労政局が、法廷で、また労働委員会で争っておるから、ほおかぶりをするという態度であっては、この労政局という機能をみずから放棄するようなことではないか。こういうところに大事な問題があるのです。あなたの先ほどの御説明によりますと、三つの疑問点に対してそれぞれ解釈を加えようとしておりますが、その解釈もつかない。その結論委員会と裁判所に求めておる。裁判所にそういう訴えが起ったら、その解決がつくまでは、その労働争議というものは、またそれから起ってくるいろいろな弊害というものは、公企労法が懸念しておるような事柄について、放任しておくということに結果はなるわけでありまして、これはおそるべき答弁だと私は思うのです。むしろ、こういうような事態があった場合には、こういうところにあなた方としては主張を求めて――干渉になることはいけません。労使関係の争いに介入をするということはいけませんけれども、そういうようなてこがちゃんと出てきた場合、そこからやはり労使関係の公正な判断を推進するように、特に国鉄に働きかけるということが、むしろあなた方の使命ではないかということがわれわれの質問の要旨なんです。それをあなたがいやこういうわけだから違法になりません、こういうわけだから仕事をしなくてもかんべんしてもらえるというような言いわけをするのは、むしろ恥をさらす結果になるのではないか。戦前、こういう労働者に対する保護規定もなければ、労働省のような労働者に対するサービス機関がない場合においても、取締り官庁の専門の警察が、労働争議調停法のようなものを適用した過去の歴史を見てもわかりますように、何とか労使関係を早く平和な状態に戻すためには、無理な理屈をつけてでも入り込んできて、よい方向へ持っていったいい例もあるくらいなんです。労働省設置法を読むまでもなく、あなたのお仕事というものは、こういうことが起ったときには、とんでもない話だということで、直ちに国鉄当局を呼んでしかるべき措置を指導されたり、またあなたがやることが適当でなければ、あなたの上司には国務大臣がちゃんとついておいでになるから、閣議でこういうものは当然問題にして、同僚である運輸大臣を通じて監督に出ていく条項ではないかということが、私どものあなたに対する質問の要旨なんです。大臣答弁を求めたのもそこにあるのです。ところが、全部読んでいないからというお話できょう回答が延びた。あなたの御答弁を聞いて、私はまことに労働省の性格それ自身がいかがなものであろうかという不安を感ぜざるを得ません。そういう意味で、これは大臣がおれば――先ほど滝井さんは、労働行政について大へんほめておいでになったけれども、こういうようなことでは国民からおしかりを受けなければならない。答弁をはずさないように、そういうところへ重点を置いて御答弁を願いたいと思います。
  57. 亀井光

    ○亀井政府委員 井堀先生の御主張の御趣旨はよくわかるわけでございます。ただ問題は、先生は機関車労働組合が四条三項違反の状態にあるということを御認識の上で、そういう御質問をなさっておられるだろうと思いますが、それだけにまたわれわれは、この四条三項違反の状態にある労働組合というものについて、法律を正しく執行するわれわれの責任として、どうあるべきかということを、先生とまた違います立場から検討しなければならぬと思うのでございます。ところが問題は、先ほど来申し上げておりますように、当事者間で争いのありますことが、第三者の機関によって、今その内容について審査が行われ、あるいは調整が行われている段階でございまして、それに対して行政府意見を述べますことは、第三者の判断を誤まらせる、あるいは第三者結論に対して、われわれが不当に介入するというふうなことになるのでございまして、これは労調法の期待せざるところであります。そういう趣旨で、私としては先生のおしかりを受けるかもしれませんが、しばらく公労委なりあるいは地方調停委員会結論を待ちたいというふうに御答弁申し上げた次第であります。しかし、それかといってこの労使関係の紛争が、そのままの形でおさまっていくか、あるいはそのまま放置してよろしいかという問題になると、私自身は私なりの考えを実は持っているのでございまして、そういう面においての努力は私としても払って参りたい。しかし、あくまでもそれは第三者機関である公労委なり地方調停委員会の、そういう結論に介入しないような立場における努力をわれわれは考えている次第であります。
  58. 井堀繁雄

    井堀委員 わかったようなかわらぬようなところもあるのでありますが、私の言いたいところは、労働省の立場をもっと広い立場考える必要があろうと思う。あらゆる法律がそうでありましょうが、行政官には、法律を運営する場合にかなり広い自由裁量が与えられている。ことに労働行政については、労働省設置法の中でも、あなたの担当されております労使関係の問題については、かなり広い裁量が与えられるとともに、その現実は、法律で把握できない、予測しがたい事態が刻々に起ってくるものです。そういうことをこの法律では読んでいるわけです。あなた方行政官の使命もそこにあるわけです。具体的な例をとりますならば、労働委員会がそのあっせんを行うにいたしましても、この機関にすべてがゆだねられているわけではなくて、むしろそれの助力をしたり、あるいはそのための準備を整えたりするあなたのところのお仕事が、かなり大きなファクターを占めている。それをあなたはしゃくし定木にものを解釈されて、地労委に圧力を加えるとか、あるいは政治的な配慮を加えて干渉するというようなことは、それはもちろんいけません。しかしこういう具体的な事実がある。これはさっきのあなたの答弁でも、よく読んでおられるようですから、内容をよく理解しておられると思うが、私があの三条を引用したのはそういう意味です。元来労働組合の常識というものはさまっているじゃありませんか。これは失礼な批判をするようでありますけれども、機関車労組と当局との争いは、私は本質を誤まっていると思う。もっと基本的な問題で取り組むべきであると思う。要するに、法律の条章にこだわり過ぎている。団体交渉の衝に当るべき人が、公企労法に基いて、そこの従業員で、いかにも資格を失ったからということで、しかもそれは全然資格がないのでなくて、資格のあった者が、一方が解雇という処分に出て問題が起っている。その処分に対して、一方は反対を唱えているのである。争いはむしろそこにある。だから、その解雇が正当であるかいなかということについては、当然労働者の基本的な権利として異議を唱えることができるじゃないですか。これに対して争いをしておるのです。だから、それを委員会で争うとか、法廷で争うとかいうことについては、私は批判を避けるのでありますが、事態をそういうところに持ち込まないように解決していくことがこの法律の使命なのです。ここに本質的なものがあるのだから、その本質の上から、こういう事態が起ったときには、私は行政庁というものは積極的な活動を開始するいい機会だと思う。それをあなたのように、いかにも危うきに近寄らずという――物事に大事をとるのはけっこうなことでありますが、自由裁量のよき方向というものは法律に基本精神がある。憲法にも基本的なものがあるわけでありますから、こういう点で私は、もっと正しい判断を下してしかるべきじゃないかということで質問をしたわけでありますが、問題は政策の論議にもなるかと思いますので、いずれ機会を得てまた大臣から御答弁をいただこうかと思います。法律解釈についても、労政局長としての判断は、もっと労働行政の基本的なものに立ち戻って、正確な判断、積極的な行為をされるよう期待いたしておきます。
  59. 亀井光

    ○亀井政府委員 労調法第三条によりまして政府は「労働関係の当事者が、これを自主的に調整することに対し助力を与へ、これによって争議行為をできるだけ防止することに努めなければならない。」この御主張の御趣旨はよくわかるのでございます。われわれもできるだけそういう方向に進みたいと思ますが、問題が法律上の問題になって参りますと、事実問題を離れましていろいろむずかしい問題が出て参ります。しかもそれ自体が現に裁判所において争われ、あるいは第三者機関において争われるという場合におきまするわれわれの力の及ぶ限界がありますことも、先生御承知の通りでございます。しかもこの問題は、四条三項違反をいかにして直すかというのが法律執行者としてのわれわれの責任でございます。そのためには去年以来実はたびたび機会があったわけでございます。機会がありましたし、またわれわれはその機会を利用すべく陰ながら期待をいたしておったわけでありますが、残念ながら今日までその機会が利用されなかったというところにもやはり問題がありますことを、先生どうか御了承をいただきたいと思うのでございます。そういう事情がございますので、われわれは先ほど申し上げましたように、公労委なり地方調停委員会なりにまかせっぱなしで事が片づくというふうには考えておりません。われわれはわれわれなりに何らかのこれに対する解決が期待されることを念願をいたしておる次第でありまして、その努力もいたしたいというふうに考えております。
  60. 井堀繁雄

    井堀委員 この問題は、先ほどの御答弁でわかりますが、できれば一度国鉄当局と、直接監督の地位にあります運輸大臣労働大臣立ち会いのところで、労働法の正しい運営がどうあるべきかという点を、もっと掘り下げて政府の所見を伺い、また問題をできるだけすみやかに解決するという方向に法律の解釈なり運営をすべきであるという建前の上に立って質問いたしたいと思いますので、本日は皆さんおそろいが困難でもありますから私の質問は保留しておきます。
  61. 森山欽司

    森山委員長 ちょっと速記をとめて。     〔速記中止〕
  62. 森山欽司

    森山委員長 速記を始めて。  本日はこれにて散会いたします。     午後三時二十四分散会