運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1957-11-07 第27回国会 衆議院 商工委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年十一月七日(木曜日)     午前十時二十八分開議  出席委員    委員長 福田 篤泰君    理事 笹本 一雄君 理事 島村 一郎君    理事 西村 直己君 理事 長谷川四郎君    理事 加藤 清二君 理事 松平 忠久君       阿左美廣治君    有馬 英治君       内田 常雄君    大倉 三郎君       川野 芳滿君    菅  太郎君       神田  博君    佐々木秀世君       齋藤 憲三君    櫻内 義雄君       篠田 弘作君    首藤 新八君       中垣 國男君    中村庸一郎君       松岡 松平君    森山 欽司君       横井 太郎君    伊藤卯四郎君       片島  港君    佐々木良作君       佐竹 新市君    田中 武夫君       田中 利勝君    多賀谷真稔君       中崎  敏君    帆足  計君       水谷長三郎君    八木  昇君  出席国務大臣         通商産業大臣  前尾繁三郎君  出席政府委員         通商産業政務次         官       白浜 仁吉君         通商産業政務次         官       小笠 公韶君         通商産業事務官         (大臣官房長) 齋藤 正年君         通商産業事務官         (通商局長事務         代理)     杉村正一郎君         中小企業庁長官 川上 爲治君         通商産業事務官         (中小企業庁振         興部長)    今井 善衞君  委員外出席者         大蔵事務官         (大臣官房財務         調査官)    大月  高君         大蔵事務官         (銀行局特別金         融課長)    磯江 重泰君         大蔵事務官         (主税局税関部         業務課長)   加治木俊道君         通商産業事務官         (企業局長)  松尾 金蔵君         通商産業事務官         (軽工業局長) 森  誓夫君         通商産業事務官         (石炭局長)  村田  恒君         通商産業事務官         (公益事業局         長)      小出 栄一君         専  門  員 越田 清七君     ――――――――――――― 九月十六日  委員伊藤卯四郎辞任につき、その補欠として  田中利勝君が議長指名委員に選任された。 同月十七日  委員前田正男君及び南好雄辞任につき、その  補欠として木崎茂男君及び古井喜實君が議長の  指名委員に選任された。 同日  委員木崎茂男君及び古井喜實辞任につき、そ  の補欠として前田正男君及び南好雄君が議長の  指名委員に選任された。 十月四日  委員帆足計辞任につき、その補欠として春日  一幸君が議長指名委員に選任された。 同月二十二日  委員中村庸一郎辞任につき、その補欠として  小澤佐重喜君が議長指名委員に選任された。 同日  委員小澤佐重喜辞任につき、その補欠として  中村庸一郎君が議長指名委員に選任された。 同月三十一日  委員春日一幸君及び山崎始男辞任につき、そ  の補欠として多賀谷真稔君及び帆足計君が議長  の指名委員に選任された。 十一月一日  委員前田正男辞任につき、その補欠として、  櫻内義雄君が議長指名委員に選任された。 同月六日  委員永井勝次郎辞任につき、その補欠として  伊藤卯四郎君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 十一月一日  中小企業産業分野確保に関する法律案(水  谷長三郎君外二十三名提出、第二十六回国会衆  法第五号)  商業調整法案水谷長三郎君外二十三名提出、  第二十六回国会衆法第六号)  中小企業に対する官公需確保に関する法律案  (水谷長三郎君外十三名提出、第二十六回国会  衆法第三〇号)  下請代金支払遅延等防止法の一部を改正する法  律案水谷長三郎君外十三名提出、第二十六回  国会衆法第三一号)  百貨店法の一部を改正する法律案水谷長三郎  君外十三名提出、第二十六回国会衆法第三二  号)  小売商業特別措置法案内閣提出、第二十六回  国会閣法第一五七号) 同月五日  播州織物輸出振興に関する請願田中武夫君紹  介)(第四六号)  中小企業育成強化に関する請願今井耕君紹  介)(第四七号)  県営発電電力県内売電制度確立に関する請願  (唐澤俊樹紹介)(第四八号)  中小企業対策費確保に関する請願田中武夫君  紹介)(第一〇八号) の審査を本委員会に付託された。 十一月六日  産業集中排除に関する国策樹立に関する陳情  書(第二二号)  中小企業金融に対する政府資金投入拡大強化に  関する陳情書  (第二四号)  中小企業金融特別措置に関する陳情書外一件  (  第二五号)  中小企業金融対策強化促進に関する陳情書外一  件(第二六  号)  中小企業団体組織法案成立促進等に関する陳情  書外一件  (第二七号)  中小企業振興対策に関する陳情書外一件  (第二十九号)  中小企業育成強化に関する陳情書  (第三一号)  チンコム解除及び日中貿易協定締結に関する陳  情書(第三五  号)  石炭価格引下げに関する陳情書  (第四〇号)  国際収支改善のための総合経済対策に関する陳  情書(第五四  号)  経済外交推進強化に関する陳情書  (第五八号)  外国為替貿易管理法令の改廃のための委員会設  置に関する陳情書  (第六〇号)  輸出振興対策確立に関する陳情書外一件  (第九五  号)  名古屋市に中国見本市開催促進に関する陳情書  (第  九八号) を本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  国政調査承認要求に関する件  通商産業基本施策に関する説明聴取  中小企業年末金融対策に関する件     ―――――――――――――
  2. 福田篤泰

    福田委員長 これより会議を開きます。  この際委員席について御了承を願っておきたいと存じます。すなわち、委員席は、必要あるとき、委員長において適宜変更することにいたしまして、ただいま御着席の通りといたしたいと存じますので、御了承願います。     —————————————
  3. 福田篤泰

    福田委員長 次に国政調査承認要求の件についてお諮りいたします。今国会におきましても、従来通り経済自立あるいは通商産業基本問題等につき調査を進めて参りたいと存じます。つきましては、次の諸事項について、議長に対し、国政調査承認を求めたいと思います。  すなわち、一、日本経済総合的基本施策に関する事項、二、電気及びガスに関する事項、三、鉱業、鉄鋼業繊維工業化学工業機械工業その他一般鉱工業及び特許に関する事項、四、通商に関する事項、五、中小企業に関する事項、六、私的独占禁止及び公正取引に関する事項、以上の事項調査事項とし、このほか衆議院規則第九十四条第二項に規定する目的方法等につきましては、前国会通りといたしまして議長承認を求めたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 福田篤泰

    福田委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  5. 福田篤泰

    福田委員長 この際、通商産業大臣より、通商産業基本施策に関しその所信を承わることにいたします。通商産業大臣前尾繁三郎君。
  6. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 私就任いたしましてから、一回この委員会に出席いたしました。その際におきましても、アメリカの輸入制限問題が主となりまして、私が考えております今後の通産行政に対する考え方とか、あるいは来年度の予算を要求するにつきましての考え方というようなことを、まだ皆さんにお話し申し上げておりませんので、この機会に、それらの問題について、一応私の考えを申し上げたいと存じます。  御承知のように、日本経済は、この数年来非常に順調な成長率を見せておったのであります。ところが、昨年から本年にかけまして、設備投資が非常に活発になって参りました結果、本年に入りまして、国際収支の面で赤字を続けることになり、また保有外貨の危機というような問題に直面いたしまして、御承知通りのいわゆる国際収支改善総合緊急対策というような対策をとったのであります。それにつきましては、いろいろ摩擦も多いことではありますが、その結果は順調に参っておりまして、物価下りぎみになって参りますし、生産は頭打ちで多少減産になっておりますけれども、国際収支の面につきましては漸次改善され、本月なり先月ごろから、収支も黒字に転ずるということになって参りました。また物価も安定したというような姿に現在あるわけであります。また、下半期の見通しとしましては、当初計画しました二十八億ドルは十分達成できる、また先般の外貨予算を組みますにつきまして、二十八億二千万ドルという輸出の予想なり見通しをもって外貨予算を組んだのでありますが、それよりもできるだけプラス・アルファをして、極力二十九億ドルくらいには持っていきたいということで、鋭意努力をしておる次第であります。また来年度におきましても、三十一億五千万ドルの輸出を目標といたしませんと、日本経済縮小均衡になるのじゃないかというふうに考えておりまするし、また現在の情勢を推進して参りますならば、三十一億五千万ドルの輸出は達成できるというふうに考えておるのであります。  ところで、問題は、国際収支の面も十分考えながら安定をはかっていかなければなりませんが、さりとて、日本経済の将来を考えます際には、あくまで成長という問題も考えていかなけばなりません。安定と成長をいかにマッチさせていくかということが、現在の通産行政に課せられた課題だと思います。そして、あくまで輸出振興によって拡大均衡に持っていくべきだ、かように考えておるのであります。従って、通産行政としましては、あくまで輸出振興ということが第一でなければなりません。それにつきましては、現在におきましても、今回の国会輸出所得税法上の控除というような問題も御審議願っております。また輸出保険限度引き上げ、あるいは為替損失の補償の問題につきましても、その限度引き上げというようなことを御審議願っておるのであります。今後税法上の恩典につきましても、これだけで足るわけではありませんし、輸出損失準備金の期限の延長とか、あるいはさらに市場開拓準備金というような問題もありますので、鋭意税法上の恩典についても努力していかなければならぬと思っております。  また輸出金融の問題につきましては、金利の引き下げとか、あるいは特別ワクということを非常に要望されておりましたが、形式上ではなしに、実質的に優遇していくという考え方をとって参りました。八月ころまでは輸入金融のはね返りのために、いろいろ問題がありましたが、現在におきましては、輸出金融の優先ということについては、あまり問題がなくなっておるのであります。いずれにいたしましても輸出金融については今後も十分考えていかなければならぬと思っております。  また輸出保険につきましても、将来改善をして参らなければなりませんし、すでに輸出代金保険料料率引き下げを、わずかではありましたがやりましたほか、将来におきましては、輸出保険の事故の問題も改善し、あるいは長期貸付保険制度というようなものも考えて参りたいと思っておるのであります。  また輸出手続簡素化ということが、以前からやかましく叫ばれております。仕向地別に認証の制度をとって、できるだけ簡素化いたしたい、かように考えておりますほかに、いわゆる標準決済制度というものにつきましても、根本的に考えて、極力手続簡素化というようなことも考えて参りたいというふうに思っております。  また、いろいろクレジットの問題につきましても、輸出入銀行の取扱いの改善というようなことで、たとえば、協調率につきましては、船舶の六対四の比率を七対三に引き戻しをいたしましたり、あるいは担保条件の緩和というようなことも、現在までにやってきておるのであります。今後輸出入銀行の活用ということについても努力して参りたいと思っておるのであります。  さらに、輸出振興ということは、大きな構想で、海外における、ことに東南アジア方面におきまするいわゆる経済協力というような問題を考えていかなければなりません。資金の面につきましても、技術の面からいいましても、その交流をはかって、極力貿易の円滑ということを考えていかなければならぬ、かように考えておりますほか、いろいろ経済、外交上の問題もあるのであります。これらの面を極力打開していきたい、かように考えておるのであります。  通産省といたしまして、もう一つの問題は、中小企業の問題であります。中小企業につきましては、従来金融対策というものを中心考えてきたのでありますが、中小企業金融対策につきましては、従来の考え方は、政府関係の機関を作るなり整備をいたしまして、そうして財政資金を投入するということが中心で参りましたことは御承知通りであります。しかし、もうここらで根本的に中小企業者信用力を強める。従来は信用保証協会によってその仕事が行われて参ったのでありますが、ここらで、府県中心でなしに、国が中心になって信用保証強化ということを考えて参らなければならぬ時期だと私信じておりまして、この問題につきましては、特段の力を入れたいと考えておるのであります。  また、組織の問題も考えて参らなければなりません。あくまで組織化し、安定をきせて、そのもとに中小企業育成ということを考えていかなければなりません。御承知のように、ききに皆さんの御審議によって衆議院を通過いたしました中小企業団体組織に関する法律は、この臨時国会におきまして、極力参議院の通過をはかって成立をさせなければならぬ、かように強く考えておる次第であります。  さらにまた、設備近代化あるいは技術向上というようなことで、今後企業診断ということに力を入れまして、そうして中小企業指導といいますか、今後国際競争力に十分対応できるような方向にまで持っていかなければならぬ、かように考えておるのであります。  しかし何と申しましても日本の将来の輸出の問題を考えます際には、日本産業構造に根本的に考えをいたさなければなりません。いわゆる産業構造を変えていく、言いかえれば、今後重化学工業品輸出を、十分国際競争に勝って行い得ますためには、今までの軽工業中心産業構造を変えていかなければならぬ、かように考えております。と申しまして、これを急ぎ過ぎますと、また投資の過剰というような問題を引き起しますので、その速度を考えながら、しかし一歩々々着実に新しい産業構造に変えていくためのいろいろな諸施策をしていかなければならぬ、かように考えておるのであります。  ところで、来年度の予算というものを考えます際に、どういうふうにやっていったらいいかということを、お手元に差し上げております書類によって御説明申し上げて参りたいと思います。予算の要求の点から申しますと、ただいま申し上げましたことを四つの柱によって説明するのが便宜じゃないかと思います。  今後の通商産業政策といたしましては、第一に、総合輸出振興対策を樹立いたしまして、輸出の伸長を期さなければならぬことであります。第二、中小企業わが国経済に占める重要性にかんがみまして、その組織強化経営の安定をはかりますための諸方策を強力に推進し、その地位向上をはかることであります。第三に、国際競争力維持培養のため基礎産業輸出産業育成強化産業立地条件整備等産業基盤強化をはかることであります。第四に、世界的な技術革新趨勢に即応した鉱工業技術振興をはかることでありまして、その四つの柱に従いまして各項目ごとにその具体的施策の概要について簡単に申し述べたいと存じます。  第一は、輸出振興であります。今後におきます世界的な輸出競争の激化に対応いたしまして、国際収支長期的均衡を可能ならしめるよう、重化学工業育成輸出期待産業設備近代化推進するものといたしまして、また価格変動による輸出の阻害を防止するため、主要輸出品主要原材料につきまして所要価格安定対策を講ずる等、輸出振興のための国内条件整備しながら、特に次の貿易振興対策を強力に推進する考えであります。  すなわち、貿易振興施策としては、従来から実施していた海外市場調査輸出商品普及宣伝貿易あっせん国際見本市等従来の諸事業拡大強化し、さらに新たにマーケーッティング事業によりまして重要輸出市場の維持、開拓を積極かつ活発に行うなど、海外貿易振興事業を飛躍的に拡大するとともに、これが実施に当る中核団体組織機能刷新強化を図りたい所存であります。  また主として東南アジア諸国との経済協力促進については、従来必ずしも十分ではありませんでしたが、さきに岸首相東南アジア訪問ネール首相来訪等により、ようやく促進の気運が醸成されつつあるので、この際これら諸国との経済協力を画期的に促進することによりまして、わが国輸出市場の培養と輸入原材料安定的確保を図るものといたしまして、これがため特に円クレジットの供与についてその具体的方法を検討中であります。  また技術者等の受け入れ及び派遣に関する体制整備するほか、これら諸国産業貿易事情を基礎的、かつ組織的に調査する等の諸施策を強力に推進していきたいと考える次第であります。  第二、中小企業振興であります。御存じ通り中小企業は、わが国経済上、きわめて重要な地位を占めている反面、その規模が零細であり、かつ、その数がおびただしいため、絶えず過当競争による経営の不安定に悩んでおり、またその設備技術等において立ちおくれておりますので、今後中小企業の特質に応じました振興策を強力に講ずることによりまして、中小企業の健全な発展と国民経済安定的成長をはかりたい所存でございます。  政府が、今国会におきまして、中小企業団体組織に関する法律成立を強く希望いたしておるのも、全くここにあるわけでありますが、さらに、来年度におきましては、金融ベースに乗り得ない多くの中小企業信用力を補強しまして、これを正常な金融ベースに乗せることを目的とする強力な信用補完制度の創設を考えている次第であります。  また、中小企業生産性飛躍的向上をはかり、あわせて輸出振興に資するため、設備近代化助成、組合の共同施設設置促進公設試験研究機関による技術指導及び技術再教育の強化中小企業診断指導強化拡充等各般措置を講ずる考えであります。  第三に、産業基盤強化であります。わが国産業対外競争力は、欧米諸国に比べまして、いまだかなり遜色があると考えられるのでありまして、この点輸出産業基礎産業及び新規産業設備近代化生産体制整備生産性向上等により、今後産業合理化近代化をさらに徹底的に推進していきたいと存ずる次第でありますが、さらに今後の産業発展趨勢に即応し、エネルギーを初めとする主要基礎原材料の供給の確保とその価格の安定をはかることが肝要と存ずる次第でございます。このため、電源開発促進特に電源開発株式会社に対する財政投資増額、その他開発所要資金確保石炭資源合理的開発促進のための新炭田の総合的調査実施財政投資増額による海底油田中心とする国内石油資源開発促進天然ガス、銅、鉛、亜鉛等重要鉱産物探鉱探査強化等、国内の各種開発資源開発を画期的に促進いたしますとともに、海外地下資源の探査、開発につきましても、関係国との協調の下に積極的に推進していきたい、かように考えておる次第であります。  また産業立地条件整備につきましては、今後の経済拡大近代化に果す役割の重要性にかんがみまして、これを強力かつ計画的に推進する必要性を痛感いたしておる次第でありまして、これがため豊富かつ低廉な工業用水確保をはかるための助成強化するとともに、道路、港湾、輸送施設等産業関連施設飛躍的増強を期しておるのであります。  第四に、鉱工業技術振興であります。以上の輸出振興中小企業振興及び産業基盤強化促進いたしますための基礎条件として、鉱工業技術画期的振興が特に必要であることを痛感するのであります。御存じ通り、最近における欧米諸国技術の進歩は、まことに目ざましいものがあり、わが国はこれに著しく立ちおくれていると存ずる次第でありまして、この際官民力を合せてこれが推進をはからねばならぬと存ずるのであります。これがため学術会議産業界等各界要望をも取り入れ、特段措置を講ずることとし、まず国立試験研究機関研究設備更新近代化等により、その機能の強化拡充をはかり、産業界等からの各種の要請に応じ得る体制整備するとともに、今後最も緊急を要する電子技術オートメーション技術分析技術生産加工技術等の基本的かつ新規の技術研究推進について、各試験所の諸能力の総合的発揮に努め、迅速な成果を得て、各界の要望に応じ得るようにいたしたいと思います。また諸外国に比し著しく低調にある民間研究活動強化するため、電子機器中型輸送機国産化を初め、木材化学石炭化学、新金属利用開発等重要研究実施についての助成強化し、あわせて研究成果普及徹底及び企業化促進に関し各般の施策を総合的に行い得るよう措置し、その推進をはかっていきたいと思っておるのであります。  ただいま大蔵省と折衝中であります、その推移を待たなければなりませんが、いずれにしましても、皆さん方の非常な御協力と御鞭撻を賜わらなければなりません。この際どうぞいろいろと御指導、御鞭撻を願いますことを心からお願い申し上げまして、私の考えを率直に申し上げた次第であります。
  7. 福田篤泰

    福田委員長 引き続き通商産業基本施策に関し質疑に入ります。質疑の通告があります。順次これを許します。中崎敏君。
  8. 中崎敏

    中崎委員 ただいま通商産業大臣通商産業政策に関する説明を聞いたのであります。なかなか作文はよくできておるのでありますが、要は、これがいかに実現をされるかということにあると思うのであります。今までも、しばしばこうしたようなことは聞かされたのでありますが、その結果から見て、いかにもこの裏づけが伴わないということに非常に失望を感じて参ったわけであります。今回においても、そうしたことのないように切に要望するとともに、そうしたような問題について、具体的な問題を含みつつ、また過去におけるところの政府施策の要点に触れつつ、一つ質問してみたいと思うのであります。  まず第一に、去る通常国会におきまして、政府は、いわゆる神武景気なるものを謳歌いたしまして、いかにも、今後においてもそうした繁栄が長く続くであろうというふうな大きな期待をかけられておったのでございましたが、その国会が終るや、間もなく神武以来の不景気がやって参ったような、急転直下の大変動と大混乱日本経済財政の上にもたらされたのであります。そこで五カ年経済計画の点においても、今後はこの五カ年経済計画を相当に大きなる指針、指標として、すべての国の経済財政を進めていくというふうなことを、国会においては終始聞かされたのでございますが、実際においては、この経済財政の上に相当こうしたような混乱等がやって参りまして、ここに幾多の困難が生じて参ったと思うのであります。そうした点につきまして、まず一番大きな当面の問題は、国際収支改善目的として金融引き締め政策がとられたのでございましたけれども、その金融引き締め政策なるものが、いわゆる車の両輪のごとく、産業経済政策と並行して、そうして均衡のとれたような形において行われればよかったのでございますが、金融政策が突如として独走した。一人でどんどんかけ出した。それがために、車が片一方から回りして、片一方が動かないというところに、大きなる経済混乱があったと思う。ことに、その一番大きなるしわ寄せを受けたのが中小企業者であったことは、実際の結果が示しておるのでございますが、まず金融の指導方針の上で政府が万全を期さなかったという点について、政府はどういうように考えておるかをお尋ねしたいのであります。
  9. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 金融面につきましては、御承知のように、昨年と今年は非常に情勢が違っております。と申しますのは、去年は輸出が伸びて参りまして、また税金も御承知のように決算が済んだあとで納めますから、その間は銀行に金があるというわけで、金融機関に非常に金がダブついた年なんです。本年はちょうどその逆になりましたので、金融はむしろ昨年とは非常に違った様相を呈してきたわけであります。従って、昨年の金融機関は、むしろ財政投資を慫慂してきたような関係でありますが、今年に入って逆の様相になり、また引き締め政策もとらなければならなくなる。引き締め政策をとらないと、結果においてインフレになるという懸念も出、また輸出の後退というような問題も起りますので、国際収支改善のためと申しておりますが、経済全般として引き締め政策をとらなければならないような状況になったことについては、政府考えもさることながら、全般的にそういうような情勢に変ってきたのであります。ただ、それが急にやったので、最初は実情に適しなかった、こういうようなお話だと思います。確かに上りぎわと、逆に、押えて下降していかなければならない、経済の縮小をはかっていかなければならない際とは、非常に違いが出て参りまして、その間において、かなり混乱したことは事実であります。しかし、中小企業者に対するしわ寄せという問題については、当初から予想されておりましたので、御承知のように総合施策において、中小企業者に第四・四半期のものを繰り上げたり、あるいは資金運用部資金を回したりいろいろやって参って、八月危機あるいは九月危機ということが言われておりましたが、そういう不安は実際に起らずに済んで参りました。最近におきましては、あるいは従前からの関係で不渡りなどもふえておりますが、実勢からいいますと、金融機関としても、資金の流れが現在の実情に合うような姿になって参りました。私は、漸次実際に即応した金融が行われれば、今後においてはそんな不安はない。もっとも年末においては、いろいろ金詰まりの問題も起りますので、それについては、今度の国会で御審議願っておるような措置をとりましたら、そういう心配もない、かように考えておるのであります。
  10. 中崎敏

    中崎委員 ただいま大臣の答弁によりますと、八月危機、九月危機は起らないで済んだ、こういうように考えておられるようでありますが、これは事実と著しく認識が異なっておるのではあるまいかと考えております。本年の六月におきましては、神武以来の不景気で、手形の不渡りは日本経済始まって以来最高の記録を示しているものと認識しております。七月八月に至っても、なお不渡りは次から次へと最高を示してきているということは、何といってもこれはおおうべからざる事実である。それを八月危機、九月危機が現実に到来した、こういうように考えておるのであります。しかも、急に金融の引き締めをしたために、鉄鋼関係の問屋筋、こういうようなものが手持ちしておったストックを、金が詰まったので投げ売りをし、あるいは繊維関係の問屋筋が次から次へと投げ売りをする、こういうわけで、小切手の不渡りがふえている。これは一、二種の業態に限らず、相当広範な業種に及んでいることは事実であります。これを危機が来ないで済んだということは、大きな認識の誤まりではないかと考えますが、この点について通産大臣の重ねての答弁をお願いします。
  11. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 不渡りという問題に  つきましては、すでにいろいろ傷のあった企業あるいはかなり思惑をされた企業、そういう面において起りましたことは非常に遺憾であります。しかし、八月危機、九月危機というので倒産者が続々と連鎖反応を起して出るというような事態までいかずに済んだということを申し上げておるのであります。われわれとしては、極力連鎖反応が起らぬようにということで万全を期してきたわけであります。不渡りの出ました数の多いということは私も承知いたしております。ただそれが、いわゆるパニック状態というようなことで連鎖反応を起すことなしに済んだということを申し上げておるわけであります。
  12. 中崎敏

    中崎委員 どうも傷を持っておった中小企業者とか、あるいは思惑をやった中小企業者が、こうした被害を受けているというような御意見でありますけれども、神武景気が長く続くということであおっておいて、急に銀行が首を締めていく、実際原材料、商品を持っておるのに、今度は金融を引き締められて、ノルマルな商業資金さえ貸し出しをしないということでやってしまっている。だから、その責任は何らこれらの業者にあるのではなく、全面的に政府と金融機関にある、こう私たちは認めざるを得ないのであります。無理をして自然の間に行き詰まってジリ貧の状態に倒れていくというのではなしに、十分資産と商品を持って支払いの予定をしておったものが、急に首を締められ、日銀はどんどん金を回収してくるし、もう貸し出しをするなと言われて中小企業者が参っているというのが実情である。してみると、これは明らかにいわゆる金融の独走がこういうことにしたのである。態勢がまだでき上っていないのにこういう方向に行く。外貨の問題等もあって、日本経済はこういう方向にだんだん行くということが明らかにされ、そういうような方針が打ち立てられて、準備ができておって順次金融を締めていくというならわかるが、いきなりぽかっと中央銀行が未曽有な引き揚げをする。それがどんどん貸出金の回収をやり、新しい貸し出しをやらないということになったところに問題がある。であるから、何といっても金融の独走ということは、中小企業を初めとして、国の経済に大きなる打撃を与えたのです。いわゆる予期せざるところの大きな打撃を与えたということは、大臣も認めざるを得ないと思いますが、この点をもう一度明らかにしてもらいたいと思います。
  13. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 一つの屈折をなしたことは事実であります。またその間、全般的に見通しが悪かったことについても、認めざるを得ないと思います。しかし、率直に言えば、大事に至る前に総合対策をとりました。その屈折は、自然に世界各国で同様な問題が起っておるのでありますが、その点におきましては、そう手おくれではなしに、その対策をとり得たということだと思います。いろいろ責任とかそういうような問題になりますと、この間も大蔵大臣が、これは実際問題としてわからぬということを言われておるのでありますが、国民全体ときのはずみといいますか、そういうような事態に立ったと私は考えております。
  14. 中崎敏

    中崎委員 実はこうしたような、まず第一に、国際収支が非常に悪化したということが、大きな問題になってきたのでありますが、これはすでにもう昨年からこういう様相を帯びておった。昨年の六月ごろにおいては、もう輸入信用状の発行が相当多くて、それが非常な勢いでずっと上り詰めておった。こういう状態が続く限りは、輸入の超過は火を見るよりも明らかであったにもかかわらず、当時政府としては、逆に輸入を奨励する傾向があった。というのは、どんどん輸出振興するためには、材料や何かを輸入して、うんと手持をしておく必要があるのだ。やがてそれが生産に振りかえられて輸出の大きなるもとになるのだから、輸入をどんどんやらせてもかまわぬのだというような、手放しの楽観論と奨励がそういうふうにさせておるのであって、それはすでに一年も前にわかっておった。それがようやくことしの国会が終った六月ごろになって、急に国際収支が悪くなったということであわて出して、急にこういうようなことをやっておる。しかも、一面において、国際的事情並びに国内における購買力等を含んだ設備の過剰投資ということが、急にまた金融を引き締めねばならぬ大きな理由になっておる。これを政府は、いわゆる産業五カ年計画という計画を持っていると称しながら、実際においてそういう方向に何ら努力しないというか、ただ数字だけをいじくって、その裏づけとなるような施策が伴っていなかったところに、私は問題があると思う。であるから、すべてこれは政治上における大きな責任の問題であって、この政治的責任がどうのこうのという問題は、政府としては触れたくないかもしれませんけれども、長い保守党の政権下において、いまだかつて政治的責任を一度も感じたことがない。どうもこういう行き詰まりをやって国民に対して迷惑をかけたというふうな、ほんとうの自分の政治的責任を明らかにするような気持は、どこにも現われていない。非常にこれは遺憾である。一生懸命でやったのだがこういう点においてそごがあったのだ、こういう点が至らなかったのであるというようなことを、率直に国民の前に明らかにして、政治的責任を明らかにするということは当然のことです。総辞職するかせぬかということは別問題として、そういうことを明らかにするのが当然のことだと思う。今日までいまだかつて大きなる経済、財政上の行き詰まりなどについて、何ら国民に対する責任を明らかにされていないということは、非常に遺憾でありますけれども、そういう意味において、今言ったように、すでに国際収支の悪化ということは昨年から見えすいておった。それを輸出入の割合はとんとんであるというがごときずさんな手放しの楽観の政策を立てられたところに問題があると思う。この点をどういうふうにお考えになるか、お尋ねしたい。
  15. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 結果論としては、いろいろ言われると思います。また、あるいは昨年の秋ごろに金利の引き上げその他もやらなければならなかったという方々もあります。また直接の原因は、御承知のように石油の緊急輸入、鉄鉱の緊急輸入という問題に発しておりまして、石油の緊急輸入につきましては、御承知のようにスエズ運河問題というような問題がありまして、それが解決に相当長引くのではないかというような予想のもとに緊急輸入が行われた。これらも大きな国際収支の赤字に対しては原因をなしておるわけであります。あるいはそれが見通しが悪かったといえば、確かに悪かったのでありましょう。しかし当時としてはやむを得なかったと思うのであります。もちろん今後の成長と安定という問題は、常に調和をはかって一歩々々段階を踏んでよくしていくということでなければなりません。今度の問題についても、相当な反省を持って、今後の施策考えていかなければならぬということについては、われわれも始終考えておる次第であります。
  16. 中崎敏

    中崎委員 いわゆる三十二年度の予算の方針としては、一千億減税、一千億施策という鳴りもの入りの上に立ってこれが組まれたのでありましたけれども、その後においては、今みたような結果になって、足踏みであるのか、後退であるのか知りませんが、そういう経済財政の様相を呈しておることは事実であります。そういう現在の状況下において、依然として自然増収一千億円というふうなことが、昭和三十三年度の予算編成の上においても見込まれておるようであります。そういたしますと、経済の実態が、初め予期したような、そういう状態でないので、言いかえれば、なるほど去年はもうかっておったかもしれないが、現在の状態においては打撃を受けて、もうこれに耐え得るような経済の力になっていない、企業の実情がそういうふうになっておると思うのであります。そうすると、ここに苛斂誅求が行われる可能性がある。これが日本経済並びに国民経済の上に、相当悪影響を及ぼすようなおそれも考えられるのでありますが、通産大臣はこれに対してどういうようにお考えになっておりますか。
  17. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 本年度の剰余金が、おそらく一千億あるだろうというようなことについては、これは何も苛斂誅求の結果ではなしに、自然に出てくる結果としてそういうものが出ると思われるのであります。上期においては、経済の実勢は決して悪くなかった。また下期においても、いわゆる消費景気は予想以上に衰えておりません。従って、その点で、われわれはむしろ引き締め政策を続けていかなければならぬということは、そこにあるのであります。そういうような面から考えても、今年度一千億の自然増収が見込まれるということは、苛斂誅求の結果ではなしに、自然に出てくる結果だと思います。もちろん、これはただいまの予想だけでありまして、現実問題としてどういう結果に出てくるか。決してその間に苛斂誅求をやって剰余金を出そうなどということは、全然考えておらぬのであります。
  18. 中崎敏

    中崎委員 苛斂誅求の問題は、大臣もかつて主税局長などやったこともあるので、よくおわかりだと思いますが、その情勢は、今日においてもあまり大きく変っていないのではないか。言いかえれば、中央において、ある一つの目安を立てて、これを末端の方にも下していく。これが勢い、いわゆる下級税務官吏などの第一線に立ってやる人に相当無理がくる。これだけは否定することのできない事実である。現在におけるあの従業員の争議などを見ても、それが一つの大きなきっかけになっておることも、もう周知の事実です。こういう意味合いにおいて、全般的にそうであるかどうかは別として、相当苛斂誅求の様相を呈して、年々これが積み重ねられておって、何千億かの、いわゆる自然増収の大きな要素があるということだけは、否定することのできない事実だと思います。  それからもう一つは先ほど申し上げますように、ことしの三月ころまでに見たように、経済が相当発達成長期にある場合においてはよかったけれども、今度は急に傾いて、ことに中小企業者あたりは相当参ってきておるのであります。それが、去年もうかったから、税金はことし取るのでありますが、そうなると、とても払えないではないか、そこに相当無理があるじゃないか。こういうふうなものに対しては、一体どういうふうなことが考えられるかということを尋ねておるのであります。
  19. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 いわゆる割当課税という問題は、実は私、御承知のように、総司令部と非常な意見の衝突をやりまして、非常に戦って割当課税というものはやめさせたということになっておるわけであります。ただ、税務署によって強弱がありまするから、それを一応ならしていく、見方をならしていくということは現在でもやっておるわけであります。これはいつになりましても、税務署の目がでこぼこであってはならぬわけでありますから、その点はやむを得ないと思います。従って、一千億の自然増収があるということにいたしましても、大部分は法人の申告で出ておるわけであります。八百億程度は上期において出ておる。下期においてどの程度に出るかということになりますと、もちろん上期みたいなわけには参りませんし、あるいは出ないのかもわかりません。一千億といわれておりますのは、もうすでに上期において出ておるわけであります。今後の経済の推移いかんによっては、どういうふうな結果になりますか。その間に、別に苛斂誅求をやって、税金をよけい取らなければならぬという事情は何もないのでありますので、その点は御安心願いたいと思います。
  20. 中崎敏

    中崎委員 次に、いわゆる五カ年計画なるものであります。これは相当に手直しされたものもあると思いまするし、また今後において相当これについてなたを振わなければならぬと思うのでありますが、これを一体どういうふうにお考えになるか。そしてまた、その五カ年計画というものを一体どの程度に尊重というか、いわゆる政治を行うところの金科玉条、目標としておやりになるか、その尊重の度合いは一体どういうふうにお考えになるか。ということは、これはほんとうは経済企画庁長官にお尋ねしたいのでありますが、これはやはり国の産業経済の上における関係の深い通産大臣に一つお尋ねしておきたいのであります。
  21. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 五カ年計画につきましては、従来の五カ年計画を、今見直して検討いたしておる最中であります。新しい五カ年計画というものは、まだできていません。しかし、結局五カ年計画の考え方の基礎というものは、バランスの問題だと思うのです。人口増加がどの程度にあり、消費がどの程度にあり、それについて、今度は所得をどういうふうにしていかなければならぬ、それには輸出がどの程度に伸びていかなければならぬ。そうすると、経済成長率がどのくらいになると今度は電力がどういうふうになるというふうに、そこでアンバランスが起りますと、全体としてこわれて参りますので、その中のバランスを考えながら、また日本経済自身、国民の所得、あるいは国民の生活というものを土台にして考え、そしてそれが健全な経済成長なり発展をしていくということを中心にして作られるものでありまして、従って、もとよりかくあらねばならぬという意味は、十分あると私は思うのです。またこれによって、予算についても、それに従って組み立てて参りませんと、結局どこかでアンバランスが起りますと全体がこわされる、こういう問題だと思っております。
  22. 中崎敏

    中崎委員 大体現在持っておられる五カ年計画を、方向として今後どういうふうに考えておられるのか。たとえば、経済成長率を手直しをして、一体来年度においてどういうふうに見るのか、その後においてどう見るのか、おおよその指針方向がわからないと、国民が、国の経済は一体どうなるのであろうかということについて、大きな不安を持っておるわけですから、まずそういう大きなものの判断をする資料として、一体今度はおおよそどういうふうに手直ししてやっていこうとするのかという、その方向を一つ示してもらいたいと思います。
  23. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 五カ年計画の結論が出ておりませんから、ただいま何とも申し上げるわけには参りませんが、結局、ただいま見直しておるというのは、そこで安定と発展をどう調和するかということでありまして、ただ従来のように、できるだけ発展中心にして、成長率が高いからという考え方ではいろいろな問題が起ってくる。従って成長率はさることながら、安定ということを中心にし、来年度にしますと、成長率は三%くらいに考えておるのであります。もちろん、それは将来におきましては、三%毎年というのではなしに、もっと七、八%の成長率考えておるようでありますが、結局、安定しながら、段階を追って成長していくという考え方のもとに組み立てなければならぬ、かように考えております。
  24. 中崎敏

    中崎委員 次に、国の産業機構に関する問題でありますが、一体産業構造をどういうふうにするか。この問題については、先ほど大臣も触れておられたようであります。その説明の中に、軽工業偏重というか、相当に重く考えておったのを、今後においては、むしろ重工業に移っていくのだ、置きかえていくのだというふうな考え方もあります。それは、なるほど一つの面を言ったに過ぎないのでありまして、いわゆる国の産業構造という問題に至っては、きわめて広範なものであって、またこれに対するところの施策が適正を欠いておる限りにおいては、国の経済財政というものは、むちゃくちゃになってくるということを考えるのであります。今の段階において産業構造をいかにするかということは、政府がまずこの産業行政の上において打ち出さなければならぬ一番の大きな問題であるのにかかわらず、ただ軽工業を重工業に置きかえていくのだというふうな、こういう程度のことでは、私はどうしても納得がいかないのであります。  そこで、まず第一にお尋ねしたいのは、近年におけるところの国の経済というものが、あまりに大資本に集中をして、いわゆる独占的な資本の形態がさらに強化せられ、そうして独占的資本でないまでも、いわゆる大資本の中心のものである財閥的な形態というものが、相当に強く現われて参っておるのであります。そういたしますと、そうしたような大きな資本が、さらにトラスト、カルテルというふうな形をとって——これは独占事業にも関連があるのでありますが、いわゆる大きなるところの少数業者が肩を並べてカルテル的な地下組織の機構を作って、そして価格の一方的な協定などをやっておるという事実はたくさんにある。こういうふうなやり方では、結局において中小企業者がどうしても太刀打ちができない。そういう意味においては、だんだん中小企業者が倒れつつあるのだけれども、一体この中小企業者とそうした大企業とのあり方をどうするのか。すなわち、すべての産業を一つの系列的な形において持っていくということになれば、勢いまたこういうふうな大資本というものがだんだんと根を張ってきて、しまいには中小企業者の分野まで細分化していってしまう。そうすると、中小企業者の存在意義がなくなる。社会党といたしましては、この点について、いわゆる産業分野確保に関するところの法律案を出して、中小企業者の分野をこういうふうにしてきめて、そうして中小企業者の立場を守って、国の経済の健全な発展を一つ期待していきたい、こういう考え方をもって、この提案をしてもおったのでございますが、一体こうしたようなことについて、どういうふうにお考えになるか。これは、同時に独禁法の問題とも関係がありますが、この問題については、いずれ同僚委員から質問をする予定になっておりますから、この問題は私はこの際省きますが、いずれにしても、こうした大資本集中の傾向、これが独占的な事業形態になり、それがだんだん細分化して、中小企業者の分野にも入り込んでいく、こうしたような問題を一体どうするのか。そして少くとも社会党の考えておるような産業分野確保に関するような、こういうことぐらいはやるというお考えはあるのかどうか、こういうことをお尋ねしたいのであります。
  25. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 産業構造と申し上げましたのは、私は現在、輸出ということが中心になって考えていかなければならぬと思います。その輸出の三分の一は、昨年度で見ますと、繊維品であります。そうしてその次は雑貨品、それが一四%、機械類のパーセンテージは一九%になっておりますが、それは船舶が入っておりますために大きな比重になっておりますが、実は一割以下なんであります。今後の、文化の開けた英米とかいうような方面には、繊維工業としては、高度化された繊維品が出ていく。これについては技術の進歩、その他を指導していかなければいけない。ところが、低開発地域につきましては、御承知のように、開発が進むにつれて機械類、あるいはそれに要する化学原料というものが、今後の輸出の大きなものに変っていくということが予想せられるわけであります。それに対応しますためには、やはり現在の機械、重化学工業というものでやっては、将来の輸出発展性というものが非常に弱まって参ります。それらに対応して、産業構造の変化ということを考えなければならぬ、かような考え方からして申し上げておるわけであります。ただ中小企業と大企業の問題ということは、これはおのずから別であります。また現在におきましては、御承知のように五〇何%、約六割が中小企業の製品が輸出されておるわけであります。やはり中小企業者輸出業に占めております割合というものは、非常に比重が高いのであります。また今後におきましても、そういうふうに指導していかなければならぬと思っております。それにつきましては、中小企業者の安定ということを考えるとともに、設備近代化、あるいは技術向上ということに力をいたしていかなければなりません。われわれは、別に資本の集中をはかっていこうという考えではなしに、むしろ中小企業そのものを強固にして安定のあるものにしていきたい。別に系列化を特別にやらなければならぬというふうに考えておりません。ただ系列化は、輸出の面におきましては、確かに効果を上げております。従って、これは別に阻止しなければならぬというものではないと思います。しかし、中小企業者自体を強固にして、そうして、その分野はむしろ拡大する方向に持っていくということが筋道だと思います。現在御提出になっております産業分野をはっきり、これはこうだというふうにきめていくことは、非常に困難でもありますし、また憲法上の問題も起り得るのではないかというので、十分われわれとしても検討さしていただいておりますが、考え方としては、私はむしろ資本の集中というようなことは全然考えておりません。中小企業者を、さらに強固にしていくというふうに考えておるのであります。
  26. 中崎敏

    中崎委員 産業分野をある方向でおよその線を引く。こういう範囲においてはこれは中小企業者が担当すべき分野である、こういう分野は大資本がやるべき分野である、こういうようなことは、数字できちっと勘定するわけにはいかぬかもしれないけれども、どこかである線が引けるということは、当然できることだと思う。現に、たとえば中小企業者というようなものも、一体中小企業者というものが、実際的にどんなものであるかということは、なかなか困難であるが、一応の線は引いておる。中小企業者にさえ引いておる。いわんや事業分野においては、それほどでなく、割合まだ引き得るものがあるのではないかと思う。これに対して、大臣は、憲法違反だというふうに考えておられますが、これは中小企業の団体法に見るがごとく、いわゆる強制加入までしてやっていこうという、こういう方向に進んできておる。それと、産業分野確保するということと、どっちが憲法違反であるのかということは、もう一度大臣に一つ考え直してもらいたいと思うのでありますが、いずれにしても線が引きにくいということは事実だと思う。けれども、どこで線を引いた方が、中小企業の真の利益を守る上からも、さらに国民経済全般の上からいっても望ましい姿であるかということを、私は考えておるのであります。この点は、さらに大臣の方でも検討してもらいたいと思う。  次に、近年金融資本が産業を支配する傾向が非常に濃厚であります。自分たちの会社の重役や従業員をどんどん事業会社へ持っていってほうり込んで、そうして実際に肝心なところを首を絞めてやっておる。あるいははなはだしいのは、古手の銀行に因縁のあったような者をどんどん重役に送り込んで事業を支配している。これはだんだん財閥の形をとって、だんだん事業を乗っ取るというような、そういう方向にまで進んできている。今日ほど金融資本の力が産業資本に強くのしかかっておる時代はないと思う。いわゆる傍若無人とでも考えられるような場面が相当に濃厚であります。こういうようなことも、産業構造のあり方からして、一体どうであるかということをはっきりしておくべき問題ではないかというふうに考えておるのでありますが、この点についてはどういうふうにお考えになっておりますか。
  27. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 御承知のように、今までは日本経済が非常に底が浅い、資本の蓄積が足りないというような面からしまして、金融資本を相当に入れなければ、事業が運転できないというようなことから、ただいまお話しのような趨勢は、確かに認めざるを得ないと思います。しかし、これは決して好ましいことではありません。従って、そういう風潮は、極力押えていかなければなりませんが、それにつきましては、やはり資本の蓄積、金融の正常化というような面を強く押し出していけば、自然にこれは解消するものだと思うのです。そういう意味からいたしますと、ただいまのところは、そういうような状況になって参りましたが、昨年あたり、正常化がはかられ、また将来におきましても、私はあくまで貯蓄の奨励なり、あるいは会社におきましても、できるだけ社内留保をして、そうして企業そのものが健全になっていくということによって、金融資本の支配なり圧力を受けないという方向に進むべきだ、かように考えております。
  28. 中崎敏

    中崎委員 大臣は、中小企業に対する認識はまだ足りないのではないかと思うのでありますが、現在のごとき政策をもってしては、中小企業者というものは——少数の企業者は別ですが、大多数の中小企業者というものが、信用などが十分に確保できて、そうして安定した経営ができるような状態に、私はなり得ないと思うのです。であるから、ただ理論的には、それは信用ができれば、また資産の内部蓄積ができれば、その心配はないということにはなるのでありますが、さて実際においてそういうふうな状態をどうして作り上げるか、いつのときにおいてそういう状態になるかということを考えてみたときに、今大臣の言われたような問題は、なかなかそれだけでは割り切れない問題があるということを一つ御了承願って、今後こうした問題についてさらに精進、検討願いたいと思うのです。次に、もう少しその問題について言うのでありますが、デパートの問題であります。最近において各中小都市にまで新しくデパートを作っていこうというふうな動きが相当に濃厚であります。それは一つにはデパートがもうかるものだ、将来性のある事業であるということが言えると思うのでありますが、これがために、中小企業者の莫大なものが犠牲になっておる。そういうことを考えて、社会党といたしましては、中小企業者の生活の確保、そうして国の経済の中において中小企業者の占める立場というものを、少くとも確保していくというような考え方から、これ以上のデパートの新しい進出は、原則的には打ちとめていくのだ、こういう方針の上に立ってあの法律ができたのだと思う。これは社会党だけではない、結果においては自民党の方でもそういう方向において、この法律ができたと思うのであります。ところが、今申し上げますその後の経過が、相当全国各地区に及んで、最近は中小都市にまでどんどんデパートの建設が進められつつある。こういう問題に対して、大臣はどういうふうにお考えになっているのか、今後これに対してどういうふうに対処するかということをお尋ねしたいのであります。
  29. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 最初お尋ねの金融資本の支配という問題につきましては、私は現在中小企業者にどんどん金融を送り込んでというふうには考えておりませんので、お答えがあるいは的をはずれたかと思います。中小企業者につきましては、先ほど来申しておりますように、政府関係の金融機関から融資をする、その反面におきまして信用保証強化ということをやれば、一般の金融機関からも借りられる。これは保証力があるわけでありますから、何も金融機関の支配、あるいはなすがままにまかせるというようなことはないと思うのであります。そういうような意味で、今後の中小企業金融対策の問題を考えていきたいと思っております。  それから、ただいまお尋ねの百貨店の問題につきましては、御承知のように、百貨店法というものは、今後においては大体原則として作らないんだという考え方でできておりますことは、私も十分承知をいたしております。ただ、ちょうどかけ込み増設という問題が起りまして、今までにおきましては、あれはむしろ百貨店を作るのではないかという、作る法律案というようなことまで言われておるのであります。これは非常に過渡的な問題でありまして、今後におきましては、ほんとうに中小企業者も、これがあるがためにかえって両方繁栄するというような形に持っていきたいと思っておりますが、いずれにしましても百貨店法の本来の趣旨に従って運用されなければならぬ。今後は原則としては百貨店を作るというようなことは阻止していこうというふうに考えております。
  30. 中崎敏

    中崎委員 この問題には、いろいろ意見がありますが、時間の関係で省略いたしまして、次にお尋ねしたいのでありますが、先般法律でできましたいわゆる合成ゴムの会社を作って、合成ゴムを奨励していくという問題であります。これが中間加工について、いわゆる中小企業のゴム事業を擁護するがために、中間加工の措置については政府において助成の善処方を要望する決議案ができております。従いまして、これについては、そうした角度から今後施策を進められると考えておるのでありますが、さらに、合成ゴムは、まだ相当広範な原材料を使うものでありまして、こういうふうな場合においても、中小工業者に供給し得るような立場で、できる限り一つ門戸開放する、こういうふうな考え方であるべきだと思うのでありますが、たとえばそうした原材料を供給するがために、いわゆる排他的な会社などが作られる、原材料を供給するがために、排他的に独占的なある会社が作られるというふうな計画もあるやに聞いております。この点は一体どういうふうになっているかをちょっとお尋ねしておきたいのであります。
  31. 森誓夫

    ○森説明員 私からお答えをいたします。合成ゴムの製造会社の設立につきましては、その法律につき、いろいろ御配慮をいただいたわけでありまして、われわれとしましては、本年の七月から、その会社の設立に全力を傾注いたしておるわけであります。大体十二月上旬には設立を見るということになっております。しかしながら、この会社で作られる品物は、そのままで加工するということができないのでございます。中間において粗練りの加工をする必要があります。大事業は、そういう設備を自分のところで持つことができますけれども、中小企業では、その設備が大へん規模が大きいために、個々に持つわけにはいかない。どうしても共同でそういう設備を持つようにしないと、せっかくの合成ゴム会社の製品が処理できないということになるわけであります。そこで、われわれとしても、大体関東地方に一カ所、関西に一カ所、二カ所くらいに、そういう中間の加工設備を設置いたしまして、そこで合成ゴム会社の製品を粗練りをして、中小企業の使いやすいような形にして配給するようにいたそうという構想で、ただいま予算の折衝をいたしておるわけであります。そういう設備の企業の主体については、ただいまいろいろ大蔵省と話し合っておるのでございますが、いずれにしても、これは中小企業中心になって運営する経営形態になることは、疑いのないところでございます。そういう意味で、この設備は、中小企業の意向を反映して運営せられるということになりましょう。また大もとの合成ゴム会社の方から、ゴム業界から広く出資を集めて作られるのでございますので、合成ゴム会社の動きが、中小企業の意向を無視するということはあり得ないと考えます。ただいま御質問になりました中小企業に対して合成ゴム会社の製品の配給を阻害するというような……。
  32. 中崎敏

    中崎委員 そのほかの原材料です。たとえば界面活性剤のごときいろいろなものが相当量あるはずです。そういう類のものを供給するのに、別な会社を作ってやるようなことがあるかどうかということなんです。
  33. 森誓夫

    ○森説明員 その点については、まだ私の方では具体的なものを聞いておりません。そういうことのないように、指導をしていきたいと考えております。
  34. 中崎敏

    中崎委員 次に貿易の問題がありますが、この問題はいずれだれかから質問があると思いますので省略をいたします。  次に、科学技術振興について、これもごく簡単に触れてみたいのであります。大臣は、今後相当科学技術振興をやるということで、大へんけっこうなことでありますが、何といっても、要は人だと思うのであります。その人の点において、今日まで日本においては、いわゆる技術者というものが、絶えず法文系統の行政官の下にあって、いつまでたっても、うだつが上らないというようなことが、最近までの実情であった。たとえば、今回ソ連において、人工衛星があれだけの成功をしておるというのでありますが、これなど見ても、もう科学者については、相当に高い給料を出して、そして他の一般の行政官みたような事務官系統よりも、はるかに優遇しておる。日本においてはこれと逆であるのだが、そういうようなことを見て、一体どういう配慮——これは内閣全体の問題であると思うのでありますが、通産大臣として、そういう人に対するところのあり方をどうするか。そうして今度は、技術要員というものは、なかなか簡単にでき上るものではないけれども、大学、工業高等学校の人員、設備の拡充を初めとして、あるいはまた短期技術要員の養成などについて、一体今度は具体的にどういう予算措置をとる用意を持っておるかということをお尋ねしたい。
  35. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 ただいま中崎さんのおっしゃることについては、全く同感であります。日本の今までの官庁組織にいたしましても、民間におきましても、法文科系統の連中が管理者になり、技術者が優遇をされておらないという現状は、実にわれわれも間違った行き方であったと思っております。これは現在の人工衛星の時代になりますと、全く逆の方向をたどっておったので、大きな反省をし、また国全体として、技術尊重という方向に持っていかなければならぬと思います。ただ官庁組織にいたしますと、今までのいろいろな伝統を、即時打破してしまうというわけには参らぬと思います。公務員制度というものの根本に触れていかなければならぬ。しかし、技術者尊重ということについては、これはもうあらゆる機会において、根本的な考え方を変えるような方向に持っていき、それを実現するようにやっていかなければならぬ。私、ただいま具体的に成案があるわけではありませんが、根本的には、もうあらゆるチャンスをつかまえてこれを変えていく。また民間の思想にいたしましても、しっかり変えていくように指導していかなければならぬ。またいろんな褒賞制度にいたしましても、あるいはまた特許権なんかの尊重という、創意工夫に対する褒賞という問題については、常に考えていかなければならぬと思います。また補助金の問題につきましても、やはり技術者尊重ということを常に念頭に置いて、あらゆる機会をとらえて、ただいまお話しのような方向に持っていかなければならぬ、かように考えております。
  36. 中崎敏

    中崎委員 特許権に関する問題で、ちょっとお尋ねしておきます。今言うたように、産業近代化につれまして、技術というものが非常に重要になると同時に、一面において、大きなる組織と機構の上に研究を進められて、その研究の中で発明されるのでなければ、なかなか町の人たちが簡単に発明し得るような態勢ではなくなってきたと思うのであります。言いかえますと、職務発明、自分で仕事をやっておるかたわらにおいて、その職務の範囲において発明をやったのだという場合が、今後においては相当多くなってくると思うのであります。そういう場合において、現行法のように、それはどこまでも発明した本人がその発明の権利を持つべきものであるというふうな考え方の上に立つと、せっかくその機構の上に立って、莫大な犠牲を払って、そういう目的でどんどん仕事をやらしておって、たまたまそこで見つかったというその発明が、全く個人の功績にのみ帰するというふうなことは、適当でないと思うのでありますが、一体これについてどういう調整を考えておられるのか。  さらに、特許権の法の改正を政府の方では考えておられるということですが、一体その改正は、いつ国会に提案されるような段階になるのかということをお尋ねしておきたいのであります。
  37. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 ただいまのお話のような御意見もあり、また逆の御意見もあるようでありますが、これらの問題につきましては、先ほど申し上げた技術の尊重という根本問題を考えながら、解決していかなければならぬ問題だと思います。特許法の改正は、ただいま大体において成案を得ておりますが、通常国会に相当長い期間をかけて御審議をわずらわすことになると思います。
  38. 中崎敏

    中崎委員 次に、石炭に関する問題、これはまた同僚の質問があると思いますので省いておきたいと思いますが、ただ一点お尋ねしておきたいのは、石炭の標準炭価が引き上げられるやに巷間うわさされているのでありますが、この標準炭価の引き上げについては、どういうふうにされようとするお考えであるのか。そうして、もし標準炭価を引き上げられたならば、電気料金の方にも影響があるのではないかと思いますので、この点もあわせてお尋ねしたいのであります。
  39. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 標準炭価の問題につきましては、いろいろコストの計算をすると、多少上っているようであります。しかし、われわれとしましては、御承知のように物価は下げなければならぬ、そうして輸出振興していかなければならぬという立場に立っております。それらのことを考慮に入れて、極力押えていかなければならぬ、かように考えております。
  40. 中崎敏

    中崎委員 標準炭価を百円とか二百円とか、何らか具体的に引き上げるという数字までちらほら耳にするのでありますが、具体的にそこまで行っているのかどうなのか、いずれにしても引き上げなければならぬ情勢にあるのかということをお尋ねしたい。
  41. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 実は私まだその問題について相談にあずかっておらぬのであります。まだ具体化されたような状態にはありません。
  42. 中崎敏

    中崎委員 次に、今度は電力の問題でありますが、これもこまかく触れることは省きまして、この電力の再々編成に関する問題であります。現在、いわゆる九電力会社によるところの電力の経営形態が、幾多の点において矛盾を来たしている、こういう事実だけは、ひとしく認められるところであると考えているのであります。そこで、これを今後一体どう処理していくのかということが問題になるのでありまして、この点について、通産大臣はどういうふうに考えておられるかをお尋ねしたいのです。
  43. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 電力の再々編成の問題に関しまして、従来の九分割の形態が、いろいろ効果がありましたことは事実であります。そのために電源が開発されていったという事実は、認めなければならぬと思います。しかし、また最近におきましては、いろいろ価格の問題あるいは会社の経営内容の問題で、格差がひどくなって参りまして、新事態に応じ得ないというような状況にあると思います。また、さらに将来のことを考えまして、いわゆる原子力発電というような問題を考えて参りますと、必ずしも今の分割制度がいいとは私思っておりません。ただ、直ちに現在問題になっております料金の問題などを解決するのに、合併あるいはその他の再々編成を急速にやっていかなければならぬかどうか、あるいはまたどの程度の規模にしていくのが、将来に対しまして適当であるかというようなことは、直ちに即断するわけに参りません。従いまして、現在われわれがいろいろ問題にいたしておるところを明らかにいたしまして、そうして一つ自主的に考えてもらいたいというのを九電力会社に提示しております。それに従って、いろいろ目下検討中であります。この答案は、早急に出してもらうように話をいたしております。その答案に従って、またいろいろわれわれも検討をいたしまして、少くとも当面の問題はできるだけ早く解決していきたい。また将来の問題としても、再々編成を含めた考え方で検討して答案を書いてもらいたい。また通産省といたしましても、料金問題は、もっと根本的にさかのぼっていろいろ考えなければならぬ問題が多いと思います。従いまして、これらの問題については、審議会を設けまして、そして相当な期間をかけて慎重に、場合によりましては、料金問題に限らず、根本にさかのぼっていろいろ会社の形態というようなことについても討議をしてもらって、そして公正な判断によって今後電力行政の万全を期していきたい、かように考えております。
  44. 中崎敏

    中崎委員 実は電力に関する問題は、言うまでもなく国の基幹産業の基本に関する問題であり、その逼迫の事情並びに膨大なる新しい資金を要する事情並びに国土総合開発に関する事情、あるいは原子力発電に関するところのにらみ合いとの関係、さらにはまた、電源開発会社自身との関連性など、幾多広範な問題を持ち、しかも、料金のいわゆる地域差のいかにもはなはだしいような条件などを考えてみて、何といっても、これは国のいわゆる経済に関する問題の中で、最も大きな問題をはらんでおる、そうして早急に解決しなければならぬ問題であると考えておるのであります。  次に、今大臣は、これらの九会社に対して、自主的に一つの意見を出すように今進めておるということでありましたが、元来こうしたような重要な産業であり、しかも、それが独占的な事業であり、しかも、国民生活との関係の深い、それぞれ国家から特別の権益を与えられておるという事業について、政府がもう一歩進んで、より大きな角度からこの問題を取り上げるのが当然であるが、そうした焦眉の急の問題を、ただ会社の自主性にまかすというふうな、なまぬるい態度で、今日許されるかどうか。奥歯に物のはさまったような政府考え方、やり方に対しては、国民は割り切れないものを持っておるのだが、もう一歩政府が積極的に突っ込んで、こういう調査会なり審議会なり、そうした強力なる機構を設けて即座に取っ組むのだという考え方に、一体なれるかなれないかを一つお尋ねしておきたい。
  45. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 これは民間企業でありますし、ほんとうに自主的にやってもらうということが、最も好ましい問題であります。従いまして、ただいま申し上げたような態度でいく反面におきまして、私は、早急にこの審議会を作るという考えであります。何も審議会を遠い将来に作るのではなしに、早急に作って、そしてそれはそれとして公正ないろいろな判断をしてもらいたい、かように考えておるわけであります。
  46. 中崎敏

    中崎委員 時代の要求というものは、かつて自民党が言ったような自由主義の上に立って、民間の事業は民間にまかすというような、こういうことにばかりこだわっておるような時世ではもはやないと思うのです。現にいわゆる中小企業団体法にいたしましても、あれなんか民間にまかしていいのに、強制的に引きずっていってこの中に入れていけ、出るものはごめんこうむる、出てはいかぬといって縛りつけておいてやっけていこうというような仕組みになっておるのです。そこまできておるのに、こういう大きな資本に対しては、これは民間事業であるからあまり手を触れたくないというようなやり方は、明らかに時代から取り残されておるのではないかと思いますが、この点について、もう一度お尋ねしておきたい。     〔委員長退席、笹本委員長代理着席〕
  47. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 決して電力問題を軽視しているわけでも何でもありませんけれども、最も望ましい民間企業の形態としては自主的に積極的に考えていくことが必要だと思います。その点におきましては、電力会社も十分承知をしております。中小企業団体法の強制加入の問題につきましては、これはやはり組合内部に入って自主的にやっていくという自主性を強化する意味での強制加入であります。またわれわれとしては、自主的に検討をしてもらって、自発的に心から問題の解決に積極的に当っていくということを要請もし、また電力会社としても、その点については十分納得をしてやりたい、こういうことであります。その方が望ましいということでやっておるのであります。われわれとしても、おろそかにしたり、また会社が自主的にやるからほっておけばいいという考えでは毛頭ありませんで、十分検討もし、考えてみたいと考えております。
  48. 中崎敏

    中崎委員 最後に、電気料金の値上げがされるのではないかということを、戦々きょうきょうとして民間人は心配しておるのでありますが、こうした電力に関する幾多の問題が、基本的に大きく取り上げられて、何らかの方向が明らかにされるまでは、電気料金の値上げをしないというような考え方を持っておられるかどうかを、大臣にお尋ねしておきたいのであります。
  49. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 大体そういうような考え方であります。
  50. 中崎敏

    中崎委員 それでは私の質問はこれで終ります。
  51. 笹本一雄

    ○笹本委員長代理 内田常雄君。
  52. 内田常雄

    ○内田委員 私は中小企業、なかんずく中小企業金融の問題に関しまして、端的かつ簡明に通産大臣にお尋ねをいたし、その上で、なおまた通産大臣の御認識がないかもしれない点を明らかにいたしまして、この問題についての改善策をとることに資したい、かように考えるものであります。  いわゆる経済緊急総合対策ということで、去る六月以来、金融引き締め政策が行われましたが、その結果は、もう大臣も十分御承知のように、非常に中小企業にしわ寄せされてきた。従って、中小企業金融は、政府が当初御想定になった以上に苦しくなっておりますことは、われわれ地方におりまして、地方で非常に無尽が盛んになってきた、また高利貸しが勢いを盛り返してきた、ことに親類縁者からの金借りが非常にはやってきた、こういうような状況がこれを雄弁に物語っておるのでありますが、これに対しまして、政府もいろいろお考えでありましょうが、今日の政治といたしましては、日本経済基盤を高めるというような意味から、基幹産業を十分振興しなければならぬことはもちろんでありますけれども、しかし中小企業者というものは非常に数が多い。従業員を合せると二千万人をこえるというような状況でありますから、ただ机の上で算術をするのと違いまして、経済は人間を生かすものでありますから、二千万人の人間を殺したり、また二千万人を機軸とする日本経済が動かなくなってしまっては何もならないことであります。この点に関する政府の認識を十分に明らかにすることが、国民を安心させるゆえんと思いますので、簡単に一つ御披瀝を願いたいと思います。
  53. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 先ほども申しましたように、あの総合緊急対策をごらん願いますと、当初から、むしろ引き締めについてはただ一行か二行書いてあるだけでありまして、それ以外は、中小企業者のしわ寄せがないようにという措置をいろいろと書いておるわけであります。そしてその効果は、もちろん上っておると存じますし、また、その各政府関係の金融機関につきましても、始終私は最近の状況はどうなっておるかということに注意をいたしておるわけであります。もとよりこれは数が多い、従って実情の把握ということは非常に困難であります。しかし、少くとも窓口でどういうことがいわれておるかということについては、絶えず中小企業庁の連中に調べてもらって、適切な方法を講じていきたい。そして、最初申しましたようなワクでいいかどうかということについては、私も非常に心配をいたしておるのであります。ただ公庫の意見を調査してみますと、この際年末金融を考えてもらいたい、そうであれば大体において困らぬ程度には推移していく、こういうような意見もありますので、その要求額につきましては、われわれとしては全面的に支持して、今度の予算を出しておるわけであります。
  54. 内田常雄

    ○内田委員 この緊急総合対策におきましては、中小企業の金融を引き締めるというような言葉は、大臣の言われるようにほとんど書いてありませんが、しかし、一般産業に対して金融を引き締めましても、いつも強いものは大企業、基幹産業でありまして、弱いのは中小企業でありますために、先ほど申し上げましたように、政府が予測しなかったかもしれないしわ寄せが、中小企業に著しく来ているということを、十分御認識をいただきたいのであります。また政府も、われわれ自民党議員の声、また全国の自民党員あるいは国民大衆の声を聞かれて、わざわざ今回の臨時国会を招集せられた。(「社会党はどうした」と呼ぶ者あり)社会党もこれは非常に御鞭撻なさったのでありますけれども。そうして、中小企業金融公庫、国民金融公庫の予算を補正せられて、現在その予算は当衆議院において審査中であります。のみならず、予算には現われておりませんけれども、商工中金に対しましては、先般七月の金融緊急対策をやりましたときに、商工中金債の引受額を当初の二十億円に加えてさらに二十億円を増額したのでありますけれども、今回さらにこれに三十億円増額されて、合計七十億円を引き受けるということは、近年まれに見る政府の英断で、われわれの主張が通ったところであると思うのであります。     〔笹本委員長代理退席、委員長着席〕 これは前尾通産大臣、さすがは御練達の士であると敬意を表するわけであります。ところが、私は政府に十分認識をしていただかなければぬらぬ点があります。それは、中小企業金融は、決して今大臣が答弁されたような中小企業金融公庫、国民金融公庫、あるいはまた商工中金といった政府関係機関ばかりではないので、むしろこれらの政府関係中小企業金融機関が供給せられる金は、全体の中小企業関係の資金からいいますと、九牛の一毛であります。おそらくこれは一割以下程度のものでありましょう。大部分はやはり市中銀行がこれを供給しているのであります。しかし、市中銀行の中小企業金融機関に対する最近半年間の実情は、まことに嘆かわしい実情であります。日本銀行で調べましても、たとえば、都会の銀行のこの三月から八月までの五カ月間の貸付増加額は千七百四十四億に及んでおるのでありますが、その反面、これらの都会銀行の中小企業に対する貸し出しは、逆に二百九億減っておるのであります。これはひとり都市銀行ばかりの傾向ではありません、地方銀行においてもまたしかりであります。元来、地方銀行というものは、地方にはそう大企業がありませんから、従来は全体の貸出残高に対しまして、中小企業の貸し出しは六割ぐらいを占めておるのでありますが、しかしこの数カ月の貸出増加の趨勢を見ますと、これらの地方の銀行でさえもが、一般貸し出しの七千二十億のうち、中小企業に対する貸し出しはわずかに百七十億しかないというような状況にあるのでありまして、このような状況を続けます限り、政府がいかに補正予算を出しまして、国民金融公庫、中小企業金融公庫等の政府資金をふやしましても、一方においてこのような勢いで中小企業に対する一般市中金融機関の貸し出しが減りますならば、何にもならない。ますます中小企業はしわが寄るということになりますので、今回における政府措置はよろしいが、それとあわせて私は市中の金融機関に対する政府対策の万全を期していただきたいと思いますが、この点は御同感でございましょうか、いかなる対策がございましょうか。
  55. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 実を申しますと、国民金融公庫なり、あるいは中小企業金融公庫の金は、御承知のように長期運転資金なりあるいは設備資金と、かなり長期のものであります。従って、短期の問題につきましては、むしろ商工中金を考えなければならぬというので、ただいまお話しのような措置をとっておるわけであります。  また一般の市中金融機関につきましては、ただいまお話しのように、遺憾ながら貸出率は下っております。この点は、もうすでに八月でありましたか銀行協会その他に要望いたしまして、全国の銀行業者に反省してもらうようにというわけで、いろいろ手を打っておりますほか、御承知のように、信用保証協会の保証付のものにつきましては、二百億まで金融債の買い上げをするという措置をとっております。ただこれは遺憾ながら、どうも私どもが考えておるような程度に買い上げができておりません。それにつきましては、結局貸出増差額だけの金融債を買い上げる、これは理論上そうあるべきだと思いますが、そういうようなやり方に不備な点がありはしないか。理屈はともあれ、もう少し実際に金が回るような方法をとらなければいかぬのじゃないかということで、せっかく大蔵省と折衝いたしておりまして、まず翌月買い上げは前月、年末等におきましては、十二月の買い上げということをやることにいたしておりますが、さらに、そうではなしに、貸し出しましたものについては、その相当額の金融債を買い上げるといったやり方もやるべきじゃないかというので、強く要望し、折衝いたしておるのであります。お話しの点は、私も重々よく承知をいたしておりまして、今後も極力その点に努力をいたしたい、かように考えおります。
  56. 内田常雄

    ○内田委員 私は大臣が認識のあるのを伺いまして、一応安心はいたしたのでありますが、この安心だけでは保証になりません。たとえば、今大臣がお話しになりました、政府がこの七月、総合対策の一環としておとりになった、市中銀行が中小企業に対して信用保証協会の保証付の貸し出しをした場合には、その金額に見合うだけの金額を、当該市中銀行が保有する金融債の買い上げをして資金の供給をしてやるという方策によりまして、これが年末までに総額二百億円の金を供給することになっておるわけであります。ところが、大臣、この実績はどうかといいますと、七、八、九の三カ月間においては二百億のうちわずかに三十四億七千万円の買い上げ。いいかえますと、この制度の活用化による市中金融機関から中小企業への貸し出しはないのであります。しかも、最近実績がまとまりました十月分を加えましても、七、八、九、十の四カ月合計いたしまして、五十億にならないのであります。あと年末までは十一月、十二月の二カ月しか残っておりませんが、この二カ月間で残額の百五十億をどうして一体今の特別措置によって市中銀行から中小企業に供給することができるかというと、私は非常に不安であります。現に私どもは、大臣方と違いまして、始終地方に接触しておりますから、身によく感ずるのでありますが、地方の銀行は、こういうことを言っておる。政府はああいう制度をお作りになって、得たりとしているけれども、実際はそんなめんどうくさいことをわれわれ銀行はいたしません。政府からさような自分の持っておる金融債を買い上げてもらっても、政府はまた次の機会には、今度は政府の都合によって、そいつをお前の方に売り戻すということをいわれるから、わざわざ中小企業に対するサービスをするために、自分の持っている金融債を売ったり買ったりすることは、何も利益にならないし、手数倒れであるから、せっかくの政府施策でありますけれども、きょうなことを活用する意思でありませんと言っておるのであります。これは通産大臣を責めても無理であろうと思います。現に委員の諸君から声がありますように、大蔵省あるいは銀行局長に、十分な監督をいたしていただかなければならないわけでありますが、これはどういう対策をとるか。私は大蔵大臣なりあるいは銀行局長に伺いたいのでありますが、予算委員会も開会中でありまして、大臣並びに局長が出ていない。幸い大蔵省の幹部の大月君がおられるようでありますけれども、もっていかんとなすか。ことに、伺いたいのは、最近大蔵省の銀行局長から全国銀行に対して、画期的と世論で評される通牒を出しております。それは、従来の大蔵省の銀行監督方針というものは、もっぱら銀行の経理面の監督に重点を置いたけれども、今回は思い切って経営方針に重点を置いた銀行局長通牒を出した、こういわれておるのでありますが、私は精読いたしましても、この新しい銀行局長の通牒というものは、ただ単にオーバー・ローンをしてはならないとか、あるいは一会社に対して資本金の二五%をこえる以上の貸し出しをしてはならぬとかいうような、やはり何と申しても堅実経営主義の指導方針でありまして、銀行というものは天下の公器として、ことに日本産業また国の政治を行う上において一番大切な中小企業に重点を置いてやれという事項が、新通牒の中には見当らないのでありまして、私は遺憾にたえない。これは今日の官庁というものが時代に即さない、政治を解さないように思うのでありますが、これらの点を、あわせて一つ大蔵大臣の代理官からとくと御説明を願いたいのであります。
  57. 大月高

    ○大月説明員 お尋ねの問題は、二百億の金融債の買い上げの実績がはかばかしくない、これが中小金融対策に役に立っておらぬじゃないか、こういう御質問だと思いますが、七月、八月、九月の実績は、ただいまお話のございました通り、合計三十四億七千万にすぎません。合計まだ二百億のワクから申し上げますれば、百六十五億ばかり残っておる、こういうことであります。ただ過去の実績から考えますと、三十年、三十一年、いずれもそうでございますけれども、信用保証協会の保証にかかる中小金融の実績は、大体十一月、十二月において集中する傾向があるわけでございまして、対策のきまりました七、八、九、十そのころの実績は、あまり増加がないという傾向を示しておるわけでございます。従いまして、われわれがあの制度考えましたときには、年末までを考えまして、特に十一月、十二月ごろに集中的に金が要る、そのときにこれが役立つであろうということを考え制度を立てたわけでございます。その百六十五億も残っておりますものを、年末までにどうするかということがございますので、先般この制度といたしまして、本来、前月にこの貸付をやりました分を、来月の二十五日に清算をして買い上げる、一月おくれという制度になっておるわけでございます。そういたしますと、かりに十二月に中小金融をやりました分が、一月の二十五日になる。これでは実際の資金繰りに役立たないということがございますので、十一月分と十二月分につきましては、その見込みの額を立てまして、あらかじめ二カ月分を一括いたしまして、十二月十日に買い上げる、こういうような方式を採用することにきめたわけでございます。現に各銀行からその見込みを取っておりますが、従来の実績、それから御承知の金融債を七百億逆に市中に売り戻すというような措置がございまして、金融債が非常にふえて、買い上げてくれという金融債が増加するということもあります。中小金融に積極的な関心を示しておるところもございますし、大体において残りの分を全額に近く消化する見込みでございます。年末金融に対しましては特別のプラスになるであろう、こういうふうに考えておるわけでございます。  それから、先般の銀行局長通牒が時代の要請に沿わないというお話でございますが、実はわれわれが銀行行政をやっております面に二つあります。一つは、預金者の保護という点で、堅実経営をやってほしい、健全な経営をやってほしい。よそから金を借りて人に貸すというようなことは、銀行ではないのだ、貸金業者と同じではないか。預金者を持っておる銀行としてはあるべきでない、こういう考え方が一つでございまして、先般の通牒は、預金者保護という本来の銀行法の建前から守ってほしいということを通牒いたしたわけであります。  その他の面といたしましては、われわれは一般に質の面だと言っておりますが、たとえば、緊要産業に金を流して、不要不急の事業には差し控えてほしい、中小企業には特別な配慮を払ってほしいという、流す方面についての指導をやっておるわけでありまして、これは緊急対策以来、この通牒以前にもたびたび銀行に対して通牒いたしておるわけでございます。そういう傾向といたしまして両建ての行政をやっており、そのうちの一つの問題をあとから出した。むしろ質の面は、緊急対策以来たびたびやかましくなお言っておる、こういうことでございます。  それで、この月曜日にも、銀行協会におきまして、年末金融について大いに努力をするということで、預金額の二割を下らない、少くとも五百億は出すというようなこともきめましたし、その他下請企業の金融措置も具体的に考える、その他数項目、具体的に対策を銀行協会として決定いたしたわけでございます。そういうことで、今年の年末金融につきましては、政府機関それから商工中金の資金の充実もはかり、市中においても重大な関心を持って、積極的な対策と態度を示しておりますので、その点は御心配ないと私は確信いたしております。
  58. 内田常雄

    ○内田委員 大蔵省の担当官から、年内に必ず二百億の金は政府資金を市中銀行を通じて貸し出させることに確信があるということでありまして、私も大へん安心いたしたのでありますが、ぜひその通り実行していただきたいのであります。ただ、私が心配いたしますのは、今度の新方式というものは、見込みで、銀行の持っている金融債を買い上げて金を入れてやる、こういうことでありますが、果して銀行が今までこの半年間やってきたような状況でありますと、政府から受け入れた金を中小企業に貸すかどうか、まだ疑問の点があって、安心できない点がある。しかも、政府に売りました金融債というものは、時期が来れば、また政府から買い戻さなければならぬ。その場合には、政府が金融引き締めの基調を続けております限り、銀行は非常に金詰まりでありますから、その金をどこからか調達しなければならぬ。その場合に、中小企業に対する貸し出しを削って、その金で大蔵省に買い上げてもらった金融債の買い戻しをするというようなことになりますと、中小企業に対して、年末から来年にかけまして二重の苦しみを与えることになりますから、大蔵省は一つ十分監督をせられまして、あなたの言われる確信を、実際面において示していただきたいと思います。  次に、私がお尋ねいたしたいのは、商工中金の金利の問題であります。これは当委員会において毎回やかましい決議が行われ、要請がありまして、この春であったかと思いますが、商工中金が金利の引き下げを行なったのであります。しかし、御承知のように、商工中金というものは、その資金源の大部分を商工中金債の消化に仰ぎますために、一般金利の上昇に伴って、資金コストが高くなっていく。その結果、一たんこの春に下げた商工中金の貸出金利というものを、また引き上げてもとへ戻してしまった。ことしの正月まで戻したわけではありませんけれども、一たん引き下げた分の半分くらいまた引き上げてしまったということは、まことに残念にたえないのであります。これは、もとより通産大臣あるいは大蔵省の担当官が御承知のように、同じ政府関係機関でありながら、国民金融公庫、中小企業金融公庫の資金源というものは、全部政府から出すものでありますために、その貸出金利というものは四分六厘というような安い金利であったのにもかかわらず、一方商工中金に対しては政府態度が必ずしもはっきりしないために、政府資金供給が十分でなかった、あるいはまた供給方法が適切でなかった。そのために、同じ中小企業者であり、しかもその中小企業者の系統金融機関である商工中金から借りる場合には、中小企業金融公庫から借りる場合よりも高い金利を払わなければならぬという不合理な状態に今までも置かれており、また今回さらにそういう度合いがひどくなったのであります。これは何とかしていただかなければ困るのであります。この点については、岸総理大臣も申しておりまするし、前尾通産大臣も先ほどの施政の方針で申されたように、商工中金にも十分政府資金を入れるということでありまするし、現にこの国会でも、かなりお入れ下さったわけでありますから、今後も十分入れていただきたいのでありますけれども、ただそれは金融債の引き受けという方法しかされていないのであります。それで、国民金融公庫や中小企業金融公庫に対するように、資金運用部資金の直接貸しというものをやっていない。しかも、債券の引き受けは、市中の引き受け条件と同じだということになっておりますために、非常に高い。そこで私は、これは何としても新通産大臣に——通産大臣は新しい大臣で、いろいろ今までのかかわり合いがございませんから、あなたの施策として御研究になられた上、商工中金に対して、他の二つの金融機関に対すると同じように、資金運用部資金の直接貸しを行なって、つまり低利の直接貸しを行なって、金利の引き下げをはかるという面の御努力を願いたいのでありますが、これに対しては、実はいつも大蔵省と通産省の態度が違っておりまして解決がつきませんでした。通産大臣はこのような御努力の方向をとられるでありましょうか、またそのお見込みはいかがでありましょうか、とらわれないで、率直にお考えをお述べ願いたいのであります。
  59. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 商工中金と中小企業金融公庫その他の金利差という問題は、私も長い間実に困った問題だと思ってきたのであります。商工中金の金利を下げるということは、今後私も努力をしなければならぬ課題だと思っております。ただ、一本にすれば金利はならされるではないか、こういうことになりますと、そうでなくても少い資金でありますから、できるだけ窓口は広い方がよいというような関係で、商工中金は商工中金として、別個の機関として活動していただくのがいいではないかというふうに考えております。金利の問題は、今後あらゆる機会に、ことに、最近におきまして資金のコストが上って参りまして、格差がひどくなったという実情は、全くわれわれの今まで意図しておりましたのと逆の方向でありますから、こういう状況はできるだけ早く直したい。さらにまた、商工中金の金利の引き下げにつきましては、あらゆる機会に極力努力いたしたい、かように思っております。
  60. 内田常雄

    ○内田委員 大蔵省の方のお考えを。
  61. 大月高

    ○大月説明員 商工中金の金利につきましては、本年金利の引き下げをいたしまして、両公庫にさや寄せをするということをいたしたのでありますが、その後緊急対策によりまして、全般に金融の引き締めをやらなければいかぬということになりました結果、商工中金の資金源でございます金融債の金利も、当然ほかの金融債と均衡をとって上り、それから借入金の金利も上り、預金の金利も上ったわけであります。そういう意味で、商工中金の経理の面からいたしまして、どうしても金利を上げざるを得なくなる、これが実情でございますが、しかし、商工中金の金利は極力下げなくてはいかぬという要請が、最も基本的な問題でございますので、この金利の幅につきましては、通産省ともいろいろ御相談申し上げまして、最小限度にとめるということで五毛程度の引き上げをやったわけでございます。そういう意味で、実は中央金庫の金利から申しますれば、三月の末に一厘アップをやり、五月には二厘アップをやり、三厘上げたところでございますが、それが全体として五毛でとまっておる。一般の市中銀行の貸し出し金利は、ほぼ公定歩合に見合って上っているわけでございます。そういう意味で、これは日本の国全体が国際金利に比較して高いという問題がございますので、われわれは極力下げたいとは思いますけれども、しかし総体的の比重から申し上げますれば、中小企業の金利は、今の金利水準から言えば非常に優遇されている、こういうように御了解願いたいと思います。  それから、それではそのために来年度何らか手を打つのかという御質問だと思いますが、これは来年度の予算全体にも関連いたしますし、一体出資が要るのかどうか、金融債の引き受けがどのくらいになるかということが根本的問題でございます。  それから、直接貸しの問題は、これは資金運用部の資金運用方針といたしまして、民間出資のあるものに対しては貸さないということになっておりますことは御存じ通りであります。これは資金運用部の性格としての根本的問題でございまして、最近政府機関は一切民間からの資金を待たない方式をとっており、資金運用部も政府、地方公共団体及び政府出資の機関だけに貸すというのが基本原則になっておりますので、この点は将来研究すべき問題であると思いますけれども、最終的な結論は留保さしていただきたいと思います。
  62. 内田常雄

    ○内田委員 私は、大臣から、算術的に、それを原料とすると商工中金の金利が上るのだというような御説明を聞かんとするものではないのであります。私ども自民党の者は一団となって、たとえば、本国会におきましては中小企業団体法の成立を期しておるのでありまして、中小企業者組織化というものが、今や自民党の一大政策として取り上げられておるわけであります。しかるに、商工中金というものは、この組織化の上に乗った中小企業者の系統金融機関であります。これは長期信用銀行などと違って、商工組合中央金庫法という政府の特殊機関としての法律があり、天下に一つしかない、まさに中小企業組織系統金融機関でありますから、もしその組織系統金融機関にたよる場合には、国民金融公庫や中小企業金融公庫から金を借りるよりも高い金利で借りなければならぬということは、これはほかにいろいろ弁明や理由がありましても、何としても、この一点からのみ申しても、私どもは納得できない点といわなければならないわけであります。先ほど、大蔵省の担当官から資金運用部の方針は資金運用部資金法という法律によるということですが、それならば法律を直せばいい。国会は国権の最高機関であります。ことに、資金運用部が直接貸しをしております政府関係機関の中には、これを詳細に当ってみますと、政府の出資ばかりでなしに、政府以外のものの出資を加えておる機関が現実にあるのであります。これは一つお調べを願って、もしさようなことが一つもないということであるならば、一つ証拠を示していただきたいと思うのでありますが、これは私は保留をいたします。  それはそれといたしまして、次に私は、これは一つ通産大臣にも、将来の御参考までに申し上げるのでありますが、政府は本年度の当初におきまして、国民金融公庫、中小企業金融公庫に、それぞれ二百億円の政府資金の貸し出しを計画され、また今回両公庫合せて百七十億円の貸し出しをなされるわけでありまして、われわれ喜びにたえないものであります。ところが、しさいにこの貸し出しを見ますと、最近だんだん国民金融公庫や中小企業金融公庫が、かつて資金運用部から借りた金を返す分が多くなっているのであります。従って、二百億出資したいといいましても、たとえば国民金融公庫についていいますと、八十億返すのでありますから、差引出資増加は百二十億にしかならないとか、あるいは中小企業金融公庫におきましても、返さなければならぬ分が五十八億ありますので、差引出資というものは百四十二億しか今のところはない。これにそれぞれ百億乗っかるのでありますから、大へんいいことでありますけれども、これは一つなるべく長期の金で、今、中小企業金融というものが苦しい際に、二年や三年で返さなければならないような資金の貸し出し方をなさらないで、少くとも七年とか十年とかいうような長期の資金を、しばらくはおつぎ込みになることが私は中小企業金融対策としては必要ではないかと思います。ことにまた、最近われわれ自民党の者は、われわれの政府でありますから、政府鞭撻して、今回百七十億円の新しい出資、これは返さなくてもいい出資をさせたのでありまして、政府もわれわれの言うことを聞いて下さってありがたいわけでありますが、ところが、もしそれができなければ、私はこういう方法もあるとさえ思ったのであります。これは、通産大臣にお教えするというわけではございませんが、今、資金運用部から借りて返さなければならぬ金を、延ばす方法もなきにしもあらずであります。それは大蔵省預金部等の債権の条件変更等に関する法律というものがちゃんとありまして、災害だとかその他必要なる場合にはこれを延期するということもありまするから——社会党の諸君からは、今度の百七十億を、何でもかでも、もう百億頭からふやせというような御要求があるようでありますが、そうなりますと、今の中小企業金融公庫、国民金融公庫の現在の能力をもってしては、この年末を控えて、貸し出し事務能力の問題もありましてなかなかできない。事態によって、それが能力が許します場合には、私は償還延期の方法等も、これは大蔵大臣は賛成ではないと思いますけれども、通産大臣としては、また一つ御研究を願いたいと思うのであります。  さらにまた、この両公庫の資金運用の問題に関しましては、これはいつも予算で縛られておる。従って、年度途中におきまして、資金繰りがきゅうくつになりましても、臨時国会でも開かない限り、予算で縛られた借り入れ限度というものは動かすことができない。しかし、これはほんとうは税金を貸し出すのとは違いまして、資金運用部の資金運用計画でありますから、厳密の意味の予算ではありません。御承知のように、単に予算総則できめておるだけでありますから、何か開発銀行とかあるいは輸出入銀行においてやっておりますように、中小企業金融公庫、国民金融公庫等におきましても、年度内の、あるいは年度をまたがりましても、予算に縛られない短期資金の借り入れの道を何らかの方法で講ぜられることがよいと思います。これは両公庫ともっとに要望いたしておるところでありますから、これは御答弁は要りませんが、通産大臣に私は御研究を願いたいのであります。  またそれに関連いたしまして、今回いろいろ政府は金融緊急対策で、たとえば資金運用部資金につきましては、その貸し出しを、政府の財政投融資を一五%切りますとか、あるいは政府の歳出をずらすとかいうようなことをなさる一方、租税の方はなかなか待ってくれませんから、国庫金の状況あるいは資金運用部の資金状況というものは、非常にお金がたまって困っておるはずであります。私はここでその数字は申し述べませんが、しかるに、一方中小企業金融資金というものは、枯渇をいたしておるのでありますから私は今こそ、できるならば、必要に応じて、ことにこの政府関係機関でないところの一般の市中の中小企業金融機関、すなわち相互銀行でありますとか信用金庫、信用組合等におきましても、こういう余裕のある国庫余裕金の預託制度というものをおやりになったらいいのじゃないかとも思うのであります。これは元の通産大臣石橋湛山氏を初めといたしまして、代々の通産大臣は賛成をするのでありますが、二、三年前から、これがなかなか実現しないという状況にあるのであります。この問題も、いろいろむずかしい問題はございましょうけれども、私は示唆を申し上げますから、十分御検討願いたいのであります。  その次に、私は信用保証協会の問題に一つ触れたいのであります。去る二十六国会におきまして、われわれは信用保険特別会計法を改正いたしまして、政府資金を十億この特別会計に入れまして、その金を信用保証協会に貸し付けるということになっておるのであります。これは本年度の予算できまっておることでありますから、すでにことしの三月以前にきまったのでありますが、この日本国じゅうの信用保証協会が、これに対しては非常に苦情を述べているのでありまして、この十億円がまだ全部貸し付けられていない。まことに政府のやることは困る。ことに、この貸し付けに関しましては、非常にむずかしい条件を出しておる。信用保証協会というものは、御承知のように法律による特殊法人であります。国が法律によった特殊法人に、しかも予算できめられ、特別会計法できめられたその十億円を出すのに、しかも一方においては金融が逼迫して非常に困っておるというのに、どうしてこういうことになるのでございましょうか。何か特別の理論づけでももしおありになるのならば、これを一つ御疎明願いたいのであります。これは通産大臣でなければ、中小企業庁長官あるいは大蔵省の担当官等から御説明願いたいのであります。
  63. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 関連して。ただいまの御質問の中に、黙っておってはわが党の名誉に関することがありますので、これだけは議事進行としてでも私は申し上げたいと思ったのですが、中小企業の金融に、この差し迫った年末に当って、百億ほどの増額をわが党が要求しておることは、お説の通りであります。しかしそれについて、もしやっても事務上の能力がない、従ってやれない、こういうことでございますが、私どもはそう思っていない。やれないのじゃない、やらないのだ。そのことを明らかにするために、私は次の事例を提出してみたいと思います。たとえば、愛知県におきましては、先般水害を受けました。水害地区に対しては、緊急融資をやれということで、与野党一致した意見がまとまったはずであります。ところが、あの水害地区は、これはあえて名前は伏せますが、大体選挙投票が二万五千ばかりのところですから、人口約六万に満たないと思います。ここに銀行の支店があります。ここに中小企業金融公庫の金を、こうなったそうですから、ぜひ貸していただきたいと、そこへ行かれた人がございます。ところが、支店長いわく、わが市においては、始まって以来そのような貸し出しをいまだ一度も行なったことがございません、こういうことでございます。このような市が、あちらにもこちらにもあるわけでございまして、まず百億を支店の数に割つてみれば、これは十万か二十万に区切った場合には、一支店一回やれば済むことです。まだそれでも足りないくらいです。さすれば一支店一回なんだ。中小企業金融公庫は、御承知通り、代理店を全国に持っております。それがやらない。やらないから能率が上らないというだけのことであつて、やれないわけではない。むしろやれないのは一体どこにあるかといえば、先ほどお話にもありましたように——やれない事実を一つ指摘しましょう。それはどういうことかというと、あなたたちが、中小企業の団体法、組織法を通そう、通そうと言っている。通ったら金融はますますむずかしくなってくる。(「ノーノー」)いやそういう例がある。たとえば、組合を作って商工中金へ借りに行くと、金利は高うなる。ところが、組合を作らずに国民金融公庫や中小企業金融公庫へ単独で行けるのだ。そうすると安いのだ。組合を作った方が損だという結果が出てくるじゃないか。ごらんなさい、どうです。そこで、今の私の質問が間違いであるならば、間違いであると、大臣ははっきり言うてもらいたい。間違いであるというならば、私はまた次の事例を出してあなたの方の間違いを指摘しようと思う。
  64. 福田篤泰

    福田委員長 この際午後二時まで休憩いたします。     午後零時五十二分休憩      ————◇—————     午後二時二十七分開議
  65. 長谷川四郎

    ○長谷川委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  委員長が所用のため暫時出席がおくれますので、委員長指名により、私が委員長の職務を行います。  通商産業基本施策に関し質疑を継続いたします。内田常雄君。
  66. 内田常雄

    ○内田委員 先刻私は、信用保証協会に対する中小企業信用保険特別会計から十億円の貸付をことしの三月に決定しておるのに、今に至るもこの中小企業金融が非常に逼迫しておる事態のもとにおいて、なおその十億円の貸付が渡っていないということは、いかなる事態によるものかという御質問をしたのでありますけれども、まだ通産当局並びに大蔵当局からその点について御答弁がありませんので、まずその答弁をお願いいたします。
  67. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 さっき内田君の質問に、まだお答えしておりません。いろいろありましたが、中小企業金融公庫なり国民金融公庫の出資は相当しても、回収分があるから、これは差し引き考えていかぬと仕方がない問題かと思います。今後極力差引純増とという意味で、大いに資金確保をはかりたいと思っております。ただ償還期限の問題は、現在の商工業の一般の通念でいくと、五カ年ということになっておりますので、これを特別に延ばすがいいかどうかということは、相当やはり考えていかなければならぬ重要な問題だと思います。  それから、借り入れの限度引き上げるのに予算上の措置を必要とする。これは、確かに不便なことであります。この点は、何と申しましても政府関係金融機関で、経理についても、みんな予算上の承認、議決を経なければならぬ、こういうことも関連をいたしておりますので、今後検討をしてみたいと思います。  それから、預託制度については、これは前に会計検査院のいろいろな問題がありました。また、預託をすると、回収が非常に困難だという問題があった。この問題も、相当研究を要する問題だと思います。  それから、先ほどお話のありました、また関連質問としてもたしかあったと思いますが、信用保証協会の貸付の十億円は、八月末だったと思います。いろいろ貸付条件や何かで、大蔵省との折衝がおくれておるという話を聞きまして、とにかく早く話をつけて地方に出すようにということで督促して、八月末に確かに全部出したと思います。あるいはその残額の問題があるかと思います。といいますのは、災害地なんかにつきまして、長崎県あるいは愛知県、そういうところにも特別の融資をしておると思います。たしか愛知県には三千万円でありましたか、行っておると思います。それから、先ほど関連質問でありました緊急な災害地に対する融資の問題でありますが、これは私もいろいろ聞いてみましたところ、相当額が愛知県にも行っておるというふうに承知いたしておりますので、もしその点に食い違いがありましたら、事務当局から御説明いたします。
  68. 内田常雄

    ○内田委員 大臣から御説明がありましたけれども、私はまことに不可思議だと思う。この信用保証協会に対する十億円貸付の予算を決定いたしましたのは、ことしの三月でありまして、これは八月ぐらいまでには、だんだん片づいてきたようでありますけれども、数カ月を経ております今日、まだ貸付が済んでいないところが全国に多数ございます。これはお調べになればわかるのでありまして、今大臣が御引例になりました長崎県などは、あの水害がございまして、わざわざわが党総裁の岸内閣総理大臣が出向かれまして、至急金融対策その他万遺憾なきを期すということになっておりますのに、その長崎県の信用保証協会にも十億円がいっていない。何も長崎県の信用保証協会というものは、水で流れてしまったわけではございません。これは特殊法人として、厳として存在し登記されておるのであります。また私の選挙区の山梨県にもいっておらないのであります。これはわが党議員として、私もはなはだ面目を失しておりますので、ぜひ現内閣の御善処を要望するものであります。  信用保証協会のお話が出ましたから、ついでに申し上げます。大臣はあまりこまかいことは御存じないかもしれませんが、保証協会の保証料というものが、現在非常に高いのであります。何ぼかといいますと、日歩六厘または七厘。保証協会の保証は、担保をとるのでありますが、担保の種類によりましては、日歩八厘という保証料をとっておるのであります。従って、中小企業が商工組合中央金庫から金を借ります場合には、先ほども議論が出ましたように、国民金融公庫、中小企業金融公庫から金を借りる場合よりも、はなはだ金利が高い。さらに、最近はその金利がまた引き上げられた。その上に保証協会を利用するということになりますと、中小企業者の金利負担というものは、保証料を含めて一割から一割五分ぐらいにもなっておるのが現状でありまして、保証協会の保証料の引き下げの方向に、私どもも政府とともに努力はいたしておるのでありますけれども、いまだそのことがなりません。従って、この保証料引き下げ実施を円滑ならしめるためにも、先般の十億円の貸付というものは、ぜひ早く実現をしたい。このことにつきましては、幸いにわが党並びに政府が一致いたしまして、明年度は中小企業信用保険事業団を作ることに方向をきめておりまして、これは総理大臣が先般来宣明をいたしておる通りでありますけれども、これができることになりますと、現在中小企業信用保険特別会計が基金として持っております何十億かの金あるいは百何十億かの金は、今のところは運用されないで、日本銀行あるいは資金運用部に預託されたままでありますけれども、今度はその金を生かして、中小企業金融機関の方に回す、あるいは信用保証協会の貸付に回すことになる。これをやらなければ、仏作って魂入れずということになりますし、全国の信用保証協会並びに中小企業者もそのことを相当期待しておりますので、これはぜひ万遺漏なきを期するように、われわれも進めて参りますけれども、通産大臣においても、とくとこの点につきましては御考慮を願いたい。これはまた、先ほども問題になりました国庫余裕金の預託の方法とも関連し、あるいはそれにかわるべきものともなるのじゃないかと私は考えるのであります。  次に一、二点あわせてお尋ねをいたしたいのでありますが、今回、幸いこの国会措置によりまして、中小企業金融公庫、国民金融公庫にも金が百七十億ふえるのでありますが、これを年末に際して貸し付けます方法としては、それはうっかりすると、両公庫の事業能率といいますか、あるいは事務能率の関係から、なかなかこの金が出ません。勢いこれは代理店を活用することが、一番大切なこととならざるを得ません。また他面からいいますと、年末で一番金に困りますのは、中小企業の中でも零細企業でありますから、これらの零細企業に、今回の国の施策恩典を及ぼしますためには、たとえば中小企業金融公庫におきましては、今までのように市中銀行を代理店として使いますよりも、できるだけその重点を商工中金に置きまして、商工中金の窓口を通じて貸し出しをするとか、あるいはまた信用金庫、相互銀行というような代理店をできるだけ生かして使うように、その方に金を回すことが肝要であると私は考えますので、善処をお願いいたします。今日、私が正直に申しまして、この国民金融公庫と中小企業金融公庫の政府関係二つの金融機関の中で、国民金融公庫の方は、地方においても比較的難点がございません。中小企業金融公庫の方におきましては、せっかく政府が入れます金の大部分が、市中銀行を窓口として、その代理貸しの制度になっておりますために、これが国民に徹底いたしておりません。また中小企業者は、非常に借りにくくなっておるのでございます。詳しくはたびたびの委員会で出ますから申し上げませんが、勢い市中銀行というものは、自分の事業の補足としてしか、この中小企業金融公庫の金は使いません。先般も申し述べましたように最近数カ月の市中銀行の中小企業金融に対する貸し出しが減っておるという状況のもとにおきましては、せっかく中小企業の金を、市中銀行を代理店として回しましても、自分が貸すべきものの補足としてしか貸さないのでありまして、政府の新しいプラスの恩典としては利用しないのが現状であります。市中銀行と取引のない一般の中小企業者には、この中小企業金融公庫の金を利用させないのが、何といっても現実でありますから、これではまことにまずいのであります。これは市中銀行の考え方が直るまでは、どうしても相互銀行なり信用金庫なり信用組合なり、あるいは商工中金というものを十分に活用していくほかないと思いますので、この点は十分御留意をお願いしたいのでございます。これは御答弁は必要ありません。  次に、一点御質問をいたしたいのは、日本不動産銀行に対する資金の供給であります。御承知のように、日本不動産銀行というものは、閉鎖機関の朝鮮銀行の残余財産を財源といたしまして今年の四月に発足いたしまして、その目的は、不動産を担保とする中小企業金融ということを主としておるのでありますが、悲しいかな金がないのであります。今日まで市中金融機関から、いわば金融債の前借りのような金、また政府から優先出資を受けたり、朝鮮銀行の残余財産十八億を合せまして四十億ばかりの貸し出しをいたしておるでありますけれども、この機関は、とにかく看板が不動産を担保とする中小企業金融ということでありますから、中小企業が殺到いたしておる状況であります。この資金の供給につきましては、実は今年の春、政府当局も、資金運用部からその資金を供給する、すなわち不動産銀行債券の引き受けを資金運用部でめんどうを見てやる、こういうことになっておるのでありますけれども、今日まで実現をいたしておりませんが、これは何か特別の事情がおありでございましょうか。法制上の困難でもあるのでありましょうか、お尋ねいたします。
  69. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 先にお尋ねの信用保証協会の問題でありますが、十億円を、あるいはそういう意味で本年とったと思います。来年度につきましても、私自身の考えでは、二百億くらい信用保険事業団というものに投入いたしまして、その一部の五十億くらいは地方の信用保証協会を通じて預託をさせる。もちろん、信用保険事業団の基金も、中小企業関係金融の政府機関を通じて貸し出しをやる反面において、その運用益を保証に充当する。また地方の信用保証協会を通じて、低利でこれを貸し付けるということになりますと、結局において、利ざやが一種の補助金的な役割をやって、保証料が引き下げられるという構想でありますので、ぜひともこれを実現をしていきたい、かように考えております。  それから中小企業金融公庫は、一般の金融機関を通じて貸し出しをやっておりますが、もちろん信用金庫あるいは相互銀行を通じてやっておるわけで、私もその点につきましては、信用金庫などを利用するのが、一般の中小企業者には親しみもあり、借り出しやすいという点も十分承知いたしておりますので、極力御趣旨に沿っていきたい、かように考えておるのであります。  それから、日本不動産銀行につきましては、実は通産省が直接管轄をいたしておりません。大蔵省だけの関係でありますので、今まで同銀行の問題については、あるいは関心なり熱意が足りなかったと思います。ただいまのお話の点については十分検討いたしまして、極力御趣旨に沿って考えていきたい。やはり不動産銀行も、中小企業者を主として対象としておるというふうに私考えておりますので、所管のいかんにかかわらず、今後考えていきたい、かように考えております。
  70. 内田常雄

    ○内田委員 国民金融公庫、中小企業金融公庫あるいは商工中金などの資金操作については、まだたくさんお尋ねをしたいことがあり、私もまた意見を申し述べたい点がたくさんあるのでありますけれども、これは他の同僚の諸君に譲りまして、最後に私は、税金の問題を一点だけお尋ねをいたしたい、また私の意見を述べてみたいのでありますが、これは大臣も、あるいは委員の諸君も御承知のように、明年度地方公共団体に対する地方交付税の税率引き上げの問題が、これは好むと好まざるとにかかわらず、この国会の議題になっておるわけであります。これは次の通常国会に引き継がれるわけでありましょう。しかるに、一方におきましては三十一年来の好況の影響を受けて、三十一年度における所得税、酒税、法人税の三税の増収などがありましたために、三十一年度の清算分として、相当の地方交付税が地方公共団体に入ります。さらにまた、明年度においても、税の自然増収が、これは国民所得が伸びます限り、これも相当額期待せられるのでありまして、そこへさらに地方交付税の税率一・五%の引き上げがもしも実現されますならば、これは四、五百億円の新しい財源が地方公共団体に入るわけでありまして、これは地方財政の確立上、また地方公共団体の運営上、好ましいことではありますが、他面から見ますると、今一番中小企業者が苦しんでいるのは、所得税等においては、先般の千億減税の影響等をかなり受けておるのでありますけれども、地方税で中小企業者が非常に苦しんでおりますのは、その中でも、特に事業税について苦しんでいるのであります。所得税、法人税については、御承知のように、特別措置法等の関係で、非課税の部分とかいろいろ免除の部分などがございますけれども、事業税につきましては、そこまで至れり尽せりではありませんので、いろいろ事態が発生いたしましても、事業税はとられる一方だ。さらにまた勤労所得者とか農民等との負担権衡の問題もありましょうし、とにかく今の事業税というものは中小企業者泣かせであります。しかし、これは地方税でありますから、今私が申しましたような地方交付税収入などが、来年度において増額する機会におきまして、私は中小企業対策の一環として、通産大臣は、通産大臣であるのみならず、国務大臣でありますから、ぜひ事業税の引き下げ、あるいは減免というようなことにつきまして、格段の御考慮を閣内において払っていただきたいのであります。中小企業対策等につきましては、これはわれわれ委員一同、あるいは政府のだんだんの努力によって、逐次解決にもなるでありましょうけれども、税の問題がだんだんまた重きをなして参りますので、ぜひお考えを願いたいと思います。これは御答弁をいただく問題ではないと思いますので、私はこれをもって午前中からの質疑を打ち切ります。     —————————————
  71. 長谷川四郎

    ○長谷川(四)委員長代理 佐竹新市君から発言を求められておりますが、まだ外務省から来ておりませんので、この際お諮りをいたします。自由民主党及び社会党共同提案によりまして、中小企業年末金融対策に関する件について、本委員会におきまして決議せられたい旨の提案がなされております。提案者の趣旨弁明を許します。内田常雄君。
  72. 内田常雄

    ○内田委員 ただいま委員長からお諮りがありましたように、私どもは商工委員会全員の総意といたしまして、ここに中小企業年末金融対策に関する決議案を上程いたしました。  まず案文を読み上げます。    中小企業年末金融対策に関する件   国際収支改善のための総合対策として現に採られている金融引締め政策が、中小企業におよぼしつつあるしわ寄せの実情は、真に重大なものがある。   政府は、今次臨時国会において採られつつある諸施策とあわせ、さらにその効果を確実ならしめるため、この際、左の方途を講じ、中小企業金融年末対策に充分遺憾なきを期すべきである。  一、政府は、市中銀行に対し、最近の実績を反省して、中小企業に対する融資を積極化するよう強力に指導すること。    殊に市中銀行の中小企業向貸出資金源として、政府実施中の信用保証協会の保証付融資に見合う金融債の買上措置については、その実施実績にかんがみ、要すればその方式に改善を加えるとともに市中銀行の充分な協力を求めること。  二、今回資金増額を受けるべき政府関係中小企業金融機関の貸出にあたっては、その能率増進につとめしめるとともに、年末に際して、特に零細企業の金融緊迫の実状に対処し、相互銀行、信用金庫、信用組合などの代理店の拡充とその機能の活用とに留意し、これらの中小企業金融専門機関に対する資金の配付に遺憾なからしめること。    なお、中小企業金融公庫の資金については商工中金の代理機能を重点的に活用すること。  三、日本不動産銀行をして、中小企業者に対する不動産担保金融を促進せしめるため、年末における資金繰りの状況に応じ資金運用部資金による同行発行債券の引受を実施すること。  四、中小企業年末金融円滑化のため、この際、特に政府機関の支払を敏速化するとともに、大企業の下請中小企業に対する支払の促進につとめしめ、要すれば大企業に対する銀行の融資に際し、これをひも付きとするなど、所要措置指導すること。   右決議する。  簡単に趣旨の弁明をいたしまするが、これは先般来、私並びに同僚委員から、この問題について意見の表明並びに質疑応答のありましたところで尽されるわけでありまして、今回政府はわざわざこの臨時国会を開きまして、中小企業金融対策その他につきまして、十分とは申せませんけれども、ある程度の措置を講ぜられたことは多とするものではありますが、年末を控えまして、なお一そうの方途を講じなければならないものが多々あります。ことに、何と申しましても、この経済緊急総合対策のしわが中小企業に寄っておりますることは、争えないところでございますので、ここに掲げました各項の説明は省略いたしますけれども、今回の臨時国会における諸決定の効果を、一そう適切ならしめるためにも、ぜひこれだけの措置はこの際急速に講ずることを必要とするという、われわれ商工委員会委員一同の考えでございます。  何とぞ政府におかれましては、われわれのこの決議の趣旨を尊重せられまして、至急この線に沿う措置を、一通産大臣としてばかりではなしに、政府全体として講ぜられますよう、内閣総理大臣にも通産大臣から御進言を願いたいのであります。またこの趣旨の実現につきまして、委員長の特別の御配慮をもお願いいたします。  これをもって、簡単でありますけれども、提案並びにその趣旨の弁明といたします。(拍手)
  73. 長谷川四郎

    ○長谷川(四)委員長代理 これより討論に入ります。通告がありますので、これを許します。田中武夫君。
  74. 田中武夫

    田中(武)委員 私は日本社会党を代表し、ただいま議題となりました中小企業年末金融対策に関する決議案に賛成の意見を述べ、あわせて若干の希望を申し述べたいと存じます。  中小企業が、わが国産業構造の中にあって、きわめて重要な地位を占めていることは、今さら申し上げるまでもないことで、中小企業は、わが国産業の基礎であるにかかわらず、わが国産業発展は、常に中小企業の犠牲の上に行われてきたことは、すでに御承知通りであります。そこで、わが社会党は、この資本主義経済発展の歴史的事実にかんがみ、常に中小商工業者の味方として、その保護発展に留意し協同組合組織強化資金面の打開、租税の減免あるいは産業分野確保輸出振興、下請代金の支払いの促進、百貨店の規制等に不断の努力を払ってきたことも、これまた委員各位御承知通りであります。  しかるに、岸内閣は、重点施策の一つに、中小企業振興政策を掲げながらも、そのなしたところは、自己の経済に対する見通しの誤まりから、経済政策の転換のやむなきに至ったときも、中小企業の犠牲も顧みず、金融引き締めをあえて断行したのであります。この金融引き締めの影響が中小企業にどのように深刻な影響を与えたかは、去る七月、中小企業金融公庫が、その代理店に対して行なってアンケートの集約を見ても明らかでございます。  この集約の結果を一、二申し述べてみますると、まず第一に、引き締めの影響が、中小企業にすでに現われているかどうかについては、すでに現われていると答えたものは八百八十店舗のうち七百十九店舗、すなわち八一・七%であります。次に、最近の窓口での借り入れ申し込み状況については、非常にふえたと答えたものと、かなりふえたと答えたものを合せると、六百八十二店舗、七七・六%であります。また大企業からの中小企業へのしわ寄せはどうかと申しますと、受注量が減ったと答えたものが八百四十一店中百七十五店、すなわち二〇・八%、受取手形の割合がふえたと答えたものが六百十一店、七二・六%、受取手形のサイトが長くなったと答えたものが六百四十五店、七六・七%であります。  中小企業経営の面に現われた影響はどうかと申しますと、資金繰りが苦しくなったものが八百三十二店、九四・五%、不渡手形がふえたと答えたものが五百三十八店、六一・一%、倒産がふえていると答えたものは、三百三十二店、三七・七%となっております。これは前にも申しましたように、政府の金融引き締めの措置以来、なお日浅い七月のことであります。七月にすでにこのような重大な影響を受けている中小企業が年末を控えてどのような状態にあるか、今さら申し上げるまでもなく、十分おわかりのことと思います。  そこで政府は、鬼の目にも涙とでもいいますか、それとも罪滅ぼしのおつもりかしれませんが、今次臨時国会に当り、中小企業年末金融対策として、国民金融公庫に七十億、中小企業金融公庫に百億の資金の追加を計上、そして補正予算国会提出しております。目下予算委員会において審議中でありますが、この程度の資金源の追加をもってしては、今や生死の境にある中小企業の年末金融対策としては、俗にいう焼け石に水、鬼にせんべいであって、中小企業資金需要にこたえてないことはもちろん、断じて中小企業者を救うことができないということは、先刻十分御承知のことであろうと思います。  そこで、わが社会党は、中小企業年末金融に関し、中小企業金融公庫に対し百億円の財政投融資を新たに行うこと。その内訳は、繰り上げ融資分の補てん六十億、年末融資分四十億。国民金融公庫に対しては二百億円の財政投融資を新たに行うこと。この内訳は、繰り上げ融資分の補てん七十億、貸付範囲拡大に要する資金百三十億。商工中金に対しては六十億円の金融債を新たに政府が引き受けること。中小企業の年末金融のため、国庫余裕金を商工中金に対し五十億円、相互銀行に対して五十億円、信用金庫に対し三十億円、信用組合に対し二十億円の預託をすみやかに行うこと。なおその上、年末に当っては、政府中小企業者に対する税金の徴収が苛酷にわたらざるよう、末端徴収機関に対し、具体的な措置を徹底することを政府要求いたしておることも御承知のことと思います。  決議各項目については、今さら申し上げる必要はないと思いますが、この際一言申し上げておきたいと思いますことは、第三項の日本不動産銀行についてであります。日本不動産銀行は、国民的期待をになって、長期信用銀行法に基き、中小企業金融打開の使命を帯びて、昨年の四月一日発足を見たのでありますが、日本不動産銀行は、開店早々からおびただしい借り入れ希望者が殺到し、その総額は百七十六億円で、その件数は二千九百件を上回っておるのであります。これに対して同行の資金量はと申しますと、出資金十七億五千万円、うち優先出資七億五千万円。準備金八億円、銀行よりの借入金二十二億五千万円、合せて四十八億円ではとうてい資金不足で、その借り入れの要望には応ぜられない実情であります。四月以来の貸付の累計は十月末現在で約四十億円で、差引手持金は約八億円しかなく、年末を控えて資金は枯渇して動きがとれない状態となっております。不動産銀行は、不動産を持ちながらも金融の道がない中小企業者に、これを担保に長期の貸付を行うわが国唯一の特殊銀行であるから、中小企業の福祉のため、不動産銀行の増強は焦眉の急であると思います。  そこで資金量の増強施策として、本年十一月より発行予定の同行金融債毎月八億円の債券の消化は、現今の金融情勢下では、一般市中での消化は困難であるから、発行額の半分額以上を政府資金で引き受ける措置を講ずることが必要であると思うのであります。政府は、この際、商工中金債券の消化と同様な例にならい、同様な率で資金運用部で引き受ける緊急措置を講じていただきたいことを、特に申し上げておきたいと思います。  政府は、中小企業の年末を控えてのこの苦しい実情を直視し、本決議案をすみやかに実行することはもちろん、中小企業の年末金融に対し、わが社会党の要求をも直ちに受け入れられんことを要望いたしまして、私の賛成討論を終ります。(拍手)
  75. 長谷川四郎

    ○長谷川(四)委員長代理 これにて討論は終局いたしました。  お諮りいたします。中小企業年末金融対策に関する件を本委員会の決議とするに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  76. 長谷川四郎

    ○長谷川(四)委員長代理 異議なしと認め、さよう決定いたします。  なお関係当局への参考送付その他手続につきましては、委員長に御一任を願いたいと思います。御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  77. 長谷川四郎

    ○長谷川(四)委員長代理 異議なしと認め、さよう決定いたします。  この際前尾通商産業大臣より発言を求められております。これを許します。前尾通商産業大臣
  78. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 ただいま御決議になりました中小企業年末金融対策に関する件については、その御趣旨に従って万全の努力をいたしたい、かように考えております。(拍手)     —————————————
  79. 長谷川四郎

    ○長谷川(四)委員長代理 引き続き通商産業基本施策に関し質疑を続行いたします。佐竹新市君。
  80. 佐竹新市

    ○佐竹(新)委員 私は通産大臣に、主として貿易の問題について——大体は貿易全般の問題について質問いたしたいのでありますが、時間の関係上、今当面しております一番具体的な問題について、質問申し上げてみたいと思います。  私が質問いたします問題の中心は、目下問題になって通産大臣も御承知であろうと思うのでありますが、韓国ノリの輸入問題に関してであります。御承知のように、七月二十六日に、通産省は公表第一〇三号をもって、韓国ノリを輸入する、枚数は一億枚。八月二十一日に百万束、八十万ドルの外貨割当をいたしたのであります。この八十万ドルの外貨割当をいたしました一億枚のノリが、七月二十六日に公表になりまして、八月二十一日に外貨割当をいたします以前に、韓国ノリ需給調整協議会の輸入部会並びに日本の問屋の組合、これらが、韓国のノリの輸出をいたしますところの全南漁連に対して、文書をもって、公表いたしたから早く入れてもらいたいということで、日本へ入れております。しかしながら、自来今日まで、一向に商談がきまらない。八十セントの外貨割当をいたしましたけれども、これが四十セントあるいは三十八セントと値切って、値引き交渉でもって日にちを経過させて、ついに今日に至りますれば、十月以降においては生産者の方が韓国ノリを入れてはいけないということで、これを入れさせない。いまだにこの話の解決がついておらないのであります。日韓交渉の正常化、こういうような面からいきましても、韓国側は早く七月、八月に持ってきておるのであるから、国内でこう長い間、問屋側やインポーターの値引きのためにもませておいて、そうして、かように今日まで時期をおくらせたということは日本側に責任がある。これは単にノリばかりではない、韓国との関係は、李承晩ライン、あるいは漁民の拿捕、こういうものを通じまして、外交方面におきましても相当問題になり、岸首相もしばしば新聞その他議会におきましても、日韓問題の正常化を主張しておられますが、一向にはかどりません。こういうようなことは、日本側がこんなにおくらせた責任を考えて、一日も早くこういう問題は処理してやるべきだとわれわれは考えるのでありますが、通産大臣はいかような処置をとられんとしておられますか、この点に対する御答弁をお伺いしたいと思います。
  81. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 本年度の韓国のノリの輸入につきましては一億枚、通関期限が九月末ということできめておりまして、それは生産者、輸入業者、問屋を含む需給調整協議会の意見を尊重して処理する方針でありました。ところが、価額について、お話のように日韓の話し合いがつかぬままに、十月になってしまったのであります。通産省といたしましては、内地ノリの生産期に入ってしまったのでありますが、生産業者の納得が得られるようでありましたら、輸入期限の延長を認めても差しつかえない、かように思っております。水産庁とも連絡をいたしまして、需給調整協議会の意見が一致することの一日も早いことを期待しておるような状況であります。
  82. 佐竹新市

    ○佐竹(新)委員 これはいろいろな経過を経まして、値引きのまとまりがつかないから、通産省の方から、十月の二十一日に調停案を出しておられます。この調停案は、一、十月末日までに通関をすること、二が、国内販売については、農林省の指示に従うこと、三が、七十社別同一規格、同一条件で輸入すること、四は、値段は双方中間をとり六十セントとすること、五は、緊急輸入として実績に算入しない、こういう調停案を十月の二十一日に出しておいでになるのでありますけれども、今日いまだに通産省の調停案が実施されていないという、その困難な点はどこにあるか。     〔長谷川(四)委員長代理退席、委員長着席〕
  83. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 私、詳細な点を承知しておりませんので、事務当局から答えさせます。
  84. 杉村正一郎

    ○杉村政府委員 十月に入りましても、日本と韓国側の商談が値段の点で全然まとまっていません。私どもは、ノリは必ずしも生活必需品というわけではございませんので、非常な無理をして輸入をしなければならぬというほどには考えませんけれども、日韓関係もございますし、せっかく生産者、輸入業者、問屋の構成する需給調整協議会で、一億枚入れてよろしいときまった趣旨もございますので、なるべく輸入を実現したいと当初から考えておりました。従いまして、十月に入る前も、日本側の業者には、しばしば早く韓国側と円満に話をつけるようにという指導をしておったわけであります。御承知のように、とうとう話がつかずに十一月に入りました。  そこで、私どもといたしましては、問題は値段のことでございますので、あまり立ち入った干渉がましいことをするのはいかがかと思いましたが、両者の話が少しでも早くつくように、強制するわけではないけれども、この辺で話し合いを進めたらどうかという意味で、先ほどお話がございましたような趣旨の調停案というようなものを示したわけでございます。その後、日韓それぞれ話し合いを進めておりましたが、現在のところでは、韓国側業者、それから日本側では輸入業者、問屋は、大体私どもの示しましたような趣旨に沿って妥協ができまして、先ほどきました報告によりますと、さしあたり二千万枚は出したいけれども、その他は生産者に影響のない時期までは預かっておいていいというような趣旨で話し合いがついたようでございます。  ただ問題は、そういうような条件で、生産者側が果して納得するかどうか、生産者側としましては、日本の国産品の一割ちょっとをこえる数量であるけれども、内地産のものの出回り時期の出鼻をくじかれることは非常に困るということで、いまだに輸入をすることに賛成をしておらないように伺っております。この点につきましては、その生産者の心配ももっともでありますので、それはどういうような出荷の方法でやるならば、生産者としても納得がいくか、その辺について、私どもとしましては、水産庁にもいろいろ生産業者の意向をただしてもらって、その辺何らか早く結論が出ることを期待しておる次第でございます。
  85. 佐竹新市

    ○佐竹(新)委員 通商局が言われるように、もちろんノリはぜいたく品であると見られておる。わが国も年間十六、七億万枚の生産をしておりますが、大体値段が高い。これは絶対に入れなければならないという必需品ではない。しかし、韓国と日本との関係で、日本が品物を韓国に売り、韓国から日本が品物を買う場合に、ドルに換算をしてみますと、約五千万ドル以上のものが、日本輸出超過になっておるわけであります。いわゆるお得意先であります。だから、そのお得意先に対しては韓国は日本と目と鼻の先でありますし、向うからはあまり買う品物がありませんから、水産関係のものではノリがその王座を占めるでありましょう。そういうことで、日本でも輸入をしておいでになるのであろうと思います。私が一番申し上げたい点は、ややもすると、日韓関係というものが正常化しない、お隣り同士でごたごたしておる。そういうやさきに、最も多くの影響を及ぼしますところの全羅南道の全南漁連から、そこの漁民たちが作ったものを、外貨を割り当てて入れたのであったならば、それは七月、八月に入れておるのだから、そんな八十セントを四十セントにしろとか、あるいは三十八セントにしろとかいうような常識はずれた値引きのために、がたがた、がたがたもめさして、そうして通産省が調停案を出さなければならぬというところまでやっておいて、そうして今では生産時期に入っておるから入れてはならぬということになったならば、一体韓国民の側ではどういうように考えるか。何でも話に聞きますと、日本ではこの問題はあまり大きく取り扱っておりませんが、韓国における新聞には相当大きく取り扱って、日本の政治家や役所の役人をボロクソに書いているそうであります。そうして全羅南道からは十五人からの国会議員が出ておるそうでありますが、こういう連中が、自分たちが出したものに対して、けちをつけられて、いつまでも解決がつかぬということになれば、その迷惑を受けるのは、いわゆる李承晩ラインに起る問題とか、その他の日韓関係に対して大きな問題が起きてくると私は思うのであります。こういう問題を解決するためにも、日本国内に入ってきてから、もうすでに八十セントというのを六十セントまで通産省の調停案において向うも負けておる。いたずらに商社に引きずられてここまで時期を延ばしたということは、日本側の責任である。私が問題にしたのは、ノリが下って、日本の消費者が安く食べられるのならいいのです。韓国から八十セントで入れましても、一じょに対して韓国のノリが二十円といたしますれば日本のノリは百円。今入っておるノリでも、これから入れますノリでも、日本で売る場合には二百円とか二百五十円とかという高い値段で売っておる。われわれは、去年バナナでもみましたけれども、むしろこのノリに対しては、差益金をとって国がもうけるのなららいいけれども、一部の商社——七十社あると申しましても、その七十社の中で、ほんとうに外貨を多く割当をももらっておるのは、第一物産とか、伊藤忠とか、東食であるとか、東棉であるとか、著名な業者だけではありませんか、そのほかのものはスズメの涙ほどの割当なんです。そういうように一部の業者が多額な利益を得て、そして一方において韓国に対しては悪い影響をもたらす、こういうようなことでやらしておく。私は大体一億枚を売れとか、韓国からノリをそうたくさん入れてもらっては困るとかいうようなことは、農林水産委員をしておりました当時、あの需給調整協議会を作ることは必要だと言ったが、そういうために作ったのではないのであります。あまり韓国から入れると、日本のノリが値下りして、日本生産者に影響するから、日本生産者を保護するために、一億万枚という限度でここ二、三年来入れておるのであります。しかるにかかわらず、最近では、その入れた結果が値下げにならない。一部の輸入業者と問屋が値段をつくり上げて、日本国内のノリよりもうんとつり上げて売っておる。これは大もうけをしておる。こういうようなことのために行政の面でいつもそれらにひっこじられた形になっておらぬかと私は思う。そういうことでは、日韓会談をいくらやっても、李承晩は、それでなくても日本に対して反感を持っていますから、正常化するはずはないのです。これらに対して、通産大臣はいかように考えておられるか。
  86. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 需給調整協議会の意見を尊重するという建前になっておりますので、できればその意見の一致ということによって運営することが、本来の趣旨だと思います。ただいまの御趣旨の点もありますので、今後できるだけ問題の解決を早くやりたいというようなことで、促進して参りたいと思います。
  87. 佐竹新市

    ○佐竹(新)委員 私は通産大臣あるいは政務次官でも、最近なられたのだから、あまり既往のことについて、とやかくあなた方の責任をどうとかいうようなことは申し上げたくないのでありますが、大体この韓国ノリというものは、四、五年前から大阪の東和商事なんかを通じまして、二億枚あるいは三億枚、多いときには四億枚くらい入れておったときに、これはもう莫大なもうけをしたものだ。そこで日本生産者側の方の全海苔というものがやかましく申しまして、それでこういう需給調整協議会というものができた。ところがここ二、三年来は、大体一億という線を引いて入れておりますが、昨年のノリの扱い高はどうであったかと申し上げますると、約六十三万ドルばかりが、七、八万ドルの外貨の割当をしておるのであります。その外貨の割当をしておるのであったならば、それだけのものを——向うは窓口が一本でありますから、全南漁連というのが日本に入れます場合には、通商代表部を通して韓国の李承晩の政府に相談をして、そうして日本との交渉の結果、みな一々向うへわかっておる。こちらで去年は入れましたけれども、この入れたノリを全部外貨の割当通り、ここで相談がまとまって入れてやればよろしい。ところが、私は去年の国会で、どうもふしぎな点があった。それはどういうことかと申しますと、今はおられませんが、通商局の樋詰さんにも私は尋ねた。一体大阪や神戸の辺に入るやみノリを、どんどん有為替で扱わせる。こういうことは一体どうしたのだといって私が尋ねましたところが、樋詰次長はこういうことを言った。それは日本に朝鮮ノリが高くてなかなか持ってこれない、そこで仕方がないから、日本の港に密輸で入ったのが、十七万束ばかりのもので、金額にして十二万ドルばかりのものです、これをそのワク内で操作する、こういうことを私に言う。もちろん密輸でありますから、無為替で入っておる。それを今度日本で、六十八万ドルばかりの有為替をその方へ流用さして、それを合法的に操作して——これは実績には入れてないだろうと思いますけれども、操作さしておる。私はなるほどノリが足りないから、そういう操作もやむを得ないだろうと思っておりました。ところが、最近聞いてみますなれば、当然向うの全南漁連から入ったもの、これは有為替で入った。その入ったものを買わずにおいて、そうして無為替を扱っておる。この無為替を有為替で取り扱わして、為替の切りかえをやらしておる。そうして向うから入ったものは、去年の八月から大阪の渋沢の保税倉庫へ持っていった。十六万束ばかりのものが去年八月から入っておる。もう赤うなるかもしれない莫大な損を韓国に与えておる。こういう行政措置は、通産省としてどういうわけでおとりになったのか、それを説明していただきたい。
  88. 杉村正一郎

    ○杉村政府委員 債権回収のために無為替輸入の許可をもらったが、その分だけのノリをよけいに輸入するということになりますと、先ほど来お話がありましたように、日本に入れて適当であるべきノリの輸入量をオーバーするおそれもありますので、そういう場合には、有為替の輸入の割当をもらった割当の範囲内で、ただ金を使わないで済むという形になるわけであります。そういう形で、まあ輸入を認めたわけであります。しかし、今お話がありましたように、向う側が全南漁連という形で、向う側からすれば輸出でありますが、輸出の統制をとっておることになりますと、それ以外のものを無為替でとるということになりますと、明らかに向う側からいえばやみ輸出、これを日本側がどんどん認めたようなことになって、これは日本でも同じようなことをやっている立場からみれば、確かにおもしろくないだろうということはよくわかります。そこで、最近は無為替輸入を認める場合でも、有為替の割当の範囲内にすることはもちろんでありますが、それにつけ加えて、全南漁連の品物でなければいけないというふうに運用いたしておる次第であります。
  89. 佐竹新市

    ○佐竹(新)委員 しかし、これはことしもあったのです。今警視庁の問題になっておりますが、あなた方は、そういうことで国会の答弁をのがれようとしておる。あなたは日が浅いから、あまりよくお知りにならぬ。しかしながら、全南漁連のものは、大阪の渋沢保税倉庫に、割り当てられたドル、外貨において去年の八月に入っておる。それを国内ノリとして扱ってそこで操作するということは、これは為替管理法違反にならぬのですか。債権の焦げつき云々と言われるが、どういうような債権の焦げつきを整理したか、それを伺いたい。
  90. 杉村正一郎

    ○杉村政府委員 債権回収のために無為替輸入を認める場合ですが、明らかに向うに債権があって、これを回収することが必要である。それを金で取らずに無為替輸入で、品物を取るという場合には、これは大蔵省でその必要を認定いたしました上で、通産省の方へ回ってきまして、こちらで無為替輸入の許可をするという形をとるわけであります。
  91. 佐竹新市

    ○佐竹(新)委員 大蔵省おられますか。——どうも私はその点がわからぬ。焦げつき債権を整理するのには、いわゆる通関をさせますよ。無為替で入ったものは密輸です。密輸で入っておった。それを有為替に切りかえて、これで向うから入った人間に、その債権があったかどうかという問題です。それをどういうわけであなたの方で許したのですか。
  92. 加治木俊道

    ○加治木説明員 実は私は税関部の税関の現場の仕事を監督指導する立場の者でございまして、今の問題点は為替局の仕事かと思いますが、残念ながらその辺の事情を私はつまびらかにいたしません。
  93. 佐竹新市

    ○佐竹(新)委員 それじゃ尋ねますが、無為替で入ったもの、これは有為替のノリの引当ノリですよ。それは全南漁連から送ったものである。ところが、私の考えるには、商社がこれをとれば一束八十セント、こちらの無為替の分をとれば五十セントとか四十セントとか、密輸ですから値切られる。この方が割がいいので、通産省へ運動して有為替に切りかえておる。その場合に、為替管理法違反になるかどうかということです。
  94. 加治木俊道

    ○加治木説明員 税関の現場では、ライセンスがあるかないかだけで判定しまして、無為替であろうとも有為替であろうとも通関、輸入の許可をいたします。ですから、ライセンスをどういう理由で取得したか、あるいはそれが正しいかどうかということは、税関の面では判定できない問題で、通産省あるいは大蔵省の為替局の問題になるので、私はお答えいたしかねる、かように申しておるのであります。
  95. 佐竹新市

    ○佐竹(新)委員 今、大蔵省の言う通りで、密輸で入っておるのにライセンスがあろうはずはない。いわゆる無為替で入っておるのを、あなたは知らないけれども、私はよく知っておる。その入ったものを、なぜ有為替に切りかえる操作をして、そうしてワク内の操作をして、国会をごまかしたのか、その点を言っておる。だれがそういうことをさしたのですか。
  96. 杉村正一郎

    ○杉村政府委員 韓国から出しますときには、もちろん向うでも輸出についての統制があることと思います。大部分はその手続を経た上で日本の港に入ってくると思いますが、かりにその手続を踏まずに、いわゆるやみで出たものでも、日本の税関の保税倉庫までは上ることはできます。なお、日本の業者としましては、外貨の割当があり、あるいは無為替輸入の許可がありまして、輸入許可の手続を踏めば、その税関の品物を引き取ることができるわけでありますから、そういう手続を踏んでおるものにつきましては、為替管理法とか輸入貿易管理令とかの違反はないものと考えます。
  97. 佐竹新市

    ○佐竹(新)委員 それはおかしいですよ。あなたはそういうことを言われるけれども、今の言葉に責任を持たれますか。そうすると、どこからでも密輸で入ったものを、みな外貨さえあればそれを買うことについて、あなたの通商局として、だれにでも今後そういうことを許しますか。台湾から入ろうとどこから入ろうと、外貨の割当を持っておったら、何でもできますか。
  98. 杉村正一郎

    ○杉村政府委員 向う側からきたものが密輸出でありましても、日本貿易なり為替管理令のそれは範囲外でございますので、日本輸出輸入業者が正当な手続さえとっていれば、日本の法令には違反しないことになるわけでございます。
  99. 佐竹新市

    ○佐竹(新)委員 そういうことになりますと、私は非常にいかぬと思う。これはことしです。今まだ一億枚も、値段を何ぼにするかといって引き取らぬのです。これは東京食品が扱っているのですが、岡山の国際産業株式会社が買い取った。韓国から出たときには、これは密輸品です。これを有為替に切りかえて、そして通関させているのです。そうすると、これは法律違反にならぬか。これは通産大臣にお伺いいたします。  日本からものを送るについては、あくまでも窓口を通してやっている。韓国も、全南漁連という一本のものがノリを輸出する窓口だ。これから成規に入ったものを扱わずに——これを向うは通商代表部なりいろいろ交渉して、これだけ日本が外貨を割り当てると、買ってくれるものだとして入れている。入れているにもかかわらず、国内にそういう手続をして、そして安いものがあれば、その密輸品をどんどん買ってしまって、そして相手方のお得意さんのものは倉庫に入れておいて腐らせる。いつまでも通関させない。そういうようなことをして、一体韓国との正常な貿易なり、あるいは韓国との正常な国交の回復ができると思うのですか。その責任はどうです。これはだましていることになる。これは国と国との道義上からいっても、重大な問題であります。通産大臣、どのようにお考えになりますか。
  100. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 違法でなくても、不当ということだと思います。どうもお話を聞いておりますと、妥当な行政措置とは考えられませんので、その点は十分検討いたします。
  101. 佐竹新市

    ○佐竹(新)委員 今、通産大臣が、違法ではないが——私はどうもまだそこの点は違法であるかどうか、為替管理法違反であるかどうかということは、もう一ぺんよくそういう面において調べてみぬとわからぬと思うのですが、そういう形式で、外貨の割当さえ持っていれば、外国から密輸で入ったものが、何でも外貨割当の特権があるのだということをやっておったら、輸出、輸入の秩序は保てぬ。そういうことを通産省が認めるということになれば、どこの国も日本を信用しません、貿易においては、だから、この問題を私は特にやかましく言うのです。これは相手をだました形になっている。つまり入れさせておいて、値引きさして、そして期日をおくらしたのはどこの責任か。これは要するに日本側の責任だ。そして生産側がやかましく言う。こんなことを韓国の方に話してごらんなさい、どんなことになるか。ですから、そういう始末を——行政当局は業者に引きずられてばかりいる。業者の思うつぼにはまっている。そして業者は、安く入れたものを値下げをしないのです。あなた方は、業者がもうける役割を果している。そういう判こばかり押している。そういう通商局は、われわれは信用することはできぬのです。あなた方、安いものなら、バナナでも、差益をとったら国民は文句はほとんど言わない。これは業者が大もうけをする背後に、だれかまた教える人がおるのです。それを通産局が、何だかんだという便法をもうけて、こんな悪いことをして相手方を困らせるようなことをやっておる。これに対する通商局の責任はどうです。
  102. 杉村正一郎

    ○杉村政府委員 これは数々の輸入品につきまして、普通は業者同士で商談が成立して輸入されておりますので、商談そのものに干渉することは、役所としてはもちろんすべきではないと思いますので、やっておりませんが、本件に関しましては、先ほど佐竹先生のおっしゃいましたように、日韓関係にもいろいろな影響もございますので、私どもとしては、例外的ではございますが、いささか出過ぎたような感じもいたしましたけれども、いわば日韓両方の調停案のようなものまで出しまして、円満な輸入が実現するように努力したつもりであります。ただ、何分にも日本側の業界も、いろいろ複雑でありますので、私どもの意図したように、事がスムーズに運ばなかったのは遺憾でありますが、気持としましては、少しでも早く円満に輸入ができるようにという心がけで、衝に当ってきたつもりであります。
  103. 佐竹新市

    ○佐竹(新)委員 とにかく、これは通産局の方でも、よほどよく考えてもらわなくてはいかぬと思う。大体ことしの割当が七十社くらいあるのじゃないですか。その七十社くらいある中で、ほとんどのものはわずかずつしか割り当てられてもらっておりません。あとはみな旧実績あるいは新実績において、今申しましたように伊藤忠とか、第一物産とか、東京食品とか、東棉とかいう一流の連中が大きな割当を受けておる。この連中によって作られた「韓国のり輸入取引に係る協定」というものがあるのです。これは第一条から第十四条まで、いろいろな条項をきめておるのですが、これは通産大臣の認可を受けた日にその効力を生ずるということになって、このうちの一番問題は、十三条の「協定者は、この協定の履行を確保するため、別に定める期日までに、」これは初めは一〇〇%といっておったそうですが「当該協定者が取得した外貨資金割当証明書の金額に相当する円貨額を保証金として協議会に積み立てなければならない。」だから十万ドルであったら、それに対する五〇%であるから五万ドルを積み立てなければならぬ。これは政府の方では、三八%というようなものをすでに保証金として積み立てさせる。これ以外に業者が五〇%も積み立てさせたら、金のないものは困るのです。これは実際には、小さいものはこれを積み立てなければ取引をさせないというような協定書を作らして、通産大臣が認可しておるということになれば、小さい零細業者をつぶしてしまうことになる。だれがこんなものを作成させてやらしたのですか。いうならば、一流の大きなもの同士が外貨を持っておる、金をたくさん持っておるものが積み立てる、そのほかのものはみんな権利を売るという形にさせる。それで、こういうものを作らして、これは通産大臣の認可を得てやらしておる。大臣は、言っては失礼ですが、下の方から持ってくると、めくら判を押されたのか知らぬけれども、こういう協定書を作らしておいて、そこへ持ってきて、一部のものが、いわゆる需給調整協議会の幹部ですから、みんな七十人が寄って相談するのじゃないのですが、こういうところで値引きの相談をして、大もうけをするために策動をしておる。これに便乗するような協定書をあなたはどうして認められたのですか。
  104. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 実は私はそういう問題については、あまり承知しておりません。これは委任事項になっておりまして、私のところじゃなしに、あるいは次官どまりくらいの話し合いになっておるのじゃないかと思います。
  105. 佐竹新市

    ○佐竹(新)委員 通産大臣、それはあなたもお忙しいでしょうからということになりますが、こういうことが、通産省に対してみんなの苦情の出るもとになるのです。こういうものによって、一部の実力者の貿易業者のために、こういうものを作ったという結果になる。あとの小さい貿易業者は、全部反対しておるのです、こういうものに対して。もう三八%すでに輸入の保証金として、国の方でとっておるのですから、その上にまた五〇%というものを積み立てなければならぬ。それには組合費も払う。そういうことをして、わずかばかり割り当ててもらったものは、権利を大きいところに売るよりしょうがないのです。そういうことを、あなたの下の人がどうしたか、こうしたかわからないが、あなたはめくら判を押されたかどうか知らぬが、こういう協定書に判を押されてやって、今日のような実態をかもしている。何でも業者は、どこでどういうように飲んでいるか、食っているか、悪いことをしているか知らぬけれども、寄ってたかって自分らの都合のいいようにしておいて、そして役人とぐるになっておる。それで問題が大きくなって、日緯会談に対して大きな悪影響を及ぼしている。国としては迷惑です。しかも、こういうことは、あなたの下寮がやっていることです。私はそのために、去年なぜ無為替を扱うのか、なぜ正式なものを扱わぬのかと言ったら、何回も私のところへ来て、朝鮮の方がとても高いことを言うて話にならない、それで国内において無為替を有為替に切りかえなければいかぬのであるが、これはワク内でやるのだから、しんぼうしてもらいたいと言うのです。私も、そのときは、なるほど朝鮮が持ってこぬということになれば、それだけの外貨があるのだから、これはやむを得ないと思った。ところが、あなたがさっきも申したように、正式に入ったものはこの処分を、損害をどうするかということになる。こういうことをして通関さしておるということになると、その根本的な問題は、こういうようなものを作成して、そして業者が集まって、これは通産大臣の認可だからということを唯一の御旗として、値段をぐんぐん値切っている。ほかの連中は、八十セントでもいい、九十セントでもいい、何ぼでもいい、もうかるんだから、買いたいという業者が一ぱいいる。ところが、これは外貨を割り当てられた者でなければ、絶対に扱うことができぬということになっているから、即時何千万円という金を持ってきて、これは倍にもなるんだから、八十セントでも、九十セントでも買いたいと言っても、遺憾ながら外貨を割り当ててもらっていない者は買うことができない。それで一部の業者だけが、そういう寄り集まりをして、その裏づけとしてはこういうものができておるということは、通産当局としてはよほど考えてやってもらわぬと、大問題が起きると思うのだが、通産大臣はどのように考えておられるか。
  106. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 従来のいきさつなり、ただいまお話しのような点も、私承知しておりません。いろいろ事情を聴取いたしまして、できるだけ善処いたしたいと思います。
  107. 佐竹新市

    ○佐竹(新)委員 こういう大きな問題を、従来のいきさつを承知していないとおっしゃる。それは実にその通りでしょうが、しかしながら、こんなことで今度これが生産者の方へいく。この間、農林水産の方では秘密会を開いて、水産委員会の方で、一つのこれに対する処置をきめられたということですが、しかしながら、こういうような一連の、われわれから言ったらボスですよ、ボスどものやる、実績者と称する連中にやらしておいたら、もう通産局の中の連中とぐるになって、こういうことをやるのですよ。あなた方は、あとから来られたからわからぬだろう。幾多の問題もあるが、きょうは私はいろいろな問題は言いません。言いませんが、この問題一つだけ考えてみても、あなた方はそうじゃないが、あなた方の下の連中がめちゃくちゃをやっておる。事務的なことを全部まかされておるものだから、上の人はめくら判でそういうことを一つも知らずに、下の方ではがたがたやっておる。それだから、大きな問題が一つも解決つかないという結果になる。だから、こういう実務に携わっている人の責任を、もう少しとらすように考えてもらわなければいかぬ。私は、きょうはまだ無為替、密輸を扱ったという点については、納得ができないのですが、こういう点を十分に考えてもらわなければいけない。結論は、通産大臣はこういう日韓問題に悪影響を及ぼすような問題に対して、どう処置をしようと考えておいでになりますか。
  108. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 先ほど来申し上げておりますように、極力その促進方をはかって、問題の解決を一日も早くやるということが、私のただいまお答えできる点でありまして、またいろいろ事情をよく聞きまして、この問題について全般的に検討してみたい、かように考えております。
  109. 佐竹新市

    ○佐竹(新)委員 私は昨年バナナの問題であるとか、あるいはレモンの問題であるとか、ノリの問題、いろいろなことについて、ここで質問をいたしまして、そのときには、河野大臣にしても、水田通産大臣にしても、おざなりな答弁で終ったのですが、そのやったあと、ことしはどうですか。もう為替管理法違反となり警視庁の問題となって、とうとう福田君は刑務所へ拘置されてしまった。こういう問題は、次々に起ってくる問題です。だから大臣は、この問題だけでなしに、幾多の事例、通産局の連中のやり方、マージャンをやったり、飲みに行ったり、そういう者でなければ絶対に近づけない。何か通産局へ行っても、上の局長さんなんかに言い寄るのじゃない。私は昨年も水田通産大臣に、もういいかげんに、悪い標本的な者はわかっておるのだから、どこかへ転勤させるとか、首を切るとか、断固しなければならぬのじゃないか、そうしなければ、通産当局は一つの悪の温床みたいなものである、こういうことを言った。ところが、それに対して、十分人事行政について考えるということがあったが、これは通産大臣によく言っておきますが、知らぬは亭主ばかりなりなんだ。通産大臣は、そういうことは一つも知らぬでしょう。ところが業者なんというものは、自分の商売をうまくやろうと思えば、みんな事務当局の連中に巧みにもぐりついて、そして時間のひけるのを待って、料理屋へ行ったり、マージャンをやったり。とにかくそんなことをしなければ、いろいろなことの事務上の手続、これがなんですよ。自動車の問題にしてもしかり、すべてこういう問題があるのだから、通産大臣は非常に正直な人ですから、この際一つ思い切って、庁内のそういう輸出入の一課なり二課なりの窓口、農林水産の方の窓口、こういう事務的なことをやっておるところに、あなたは十分気をつけて、行政監察をしてもらわぬと、国民は安心してあなたに事務をまかせておかれぬ。この点についてどのようにお考えになるか。
  110. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 自動車の問題その他に関係いたしまして、官紀の粛正ということにつきましては、私も非常に関心を持ち、努力をいたしておる次第でありまして、機構の改正あるいは人の配置というような問題につきましては、すでに官房長とも御相談して、いろいろやっておるのでありまして、その点は、あくまで今後も努力したいと思っております。
  111. 佐竹新市

    ○佐竹(新)委員 まだいろいろなことについて質問したいことはたくさんありますけれども、時間の関係で、私は要点だけを言っておきましたが、今の、一つ無為替で密輸品を扱ったという問題は、まだ質問を保留しておきまして、あらゆる方面から十分に調査いたしまして——私はどうもその点が通産当局の方の御答弁ではまだ満足いきかねまするが、これをもって一応質疑を打ち切ります。
  112. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 議事進行について。だんだんの御質問と御答弁によって、徐々に明らかになりつつありますが、質問はまだ序の口でありまして、すでに私の方から質問の予定者が提出してございます。いずれ劣らぬ重要問題ばかりでございますので、大臣はあす、あさってと引き続いて御出席していただかないと、進行いたしません。進行いたさないと、次にあなたの方から頼むということができなくなりますが、よろしゅうございますか。大臣の御都合はどうですか。
  113. 福田篤泰

    福田委員長 ただいま打ち合せ中でございまして、なるべく御要望に沿うように、とりあえず明日出席するようになっております。
  114. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 それでは、この一点で終りでございますが、あす行いたいと考えております特殊物資輸入の件について、本件が非常に大きな関連を持っておりまするからお尋ねしますが、密輸をした場合のその品物を、外貨を持っていさえすれば正規輸入に切りかえるという手続は、相手国に債務があった場合においては、これを許すという意味の御答弁でございましたが、さよう解釈してよろしいか。次に、その相手国には限られているのか、ないのか。同じように日本に対して債務を持っている国であれば、一様にこれは許されるのか、朝鮮ノリだけの特殊なものであるかこの点を伺いたい。
  115. 杉村正一郎

    ○杉村政府委員 日本の為替管理なり輸入管理なりの法規は、日本の輸入の場合は、もちろん適用されるわけでありますが、ただいまお話しの密輸品という言葉が、もし日本への輸入の場合に、それが密輸入であるということになりますと、これはたとい輸入業者の方で成規の割当なり許可なりを持っておっても、適正な輸入とは言えません。ただ向うの国を出るときに、その国の輸出手続を成規に踏んだものであるかいなかということは、日本の輸入貿易管理令の関係からいけば、これは一応無関係なので、ただいまの密輸という言葉が、日本への密輸ということならば、お尋ねのような輸入は、もちろん認めるわけには参らぬわけであります。
  116. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 ちょっと待って下さい。日本への密輸ということが最初からわかっておるものについてはいけない、こういうことですか。ここをはっきりしておいて下さいよ。あすの特殊物資輸入に関係を持ってきますから……。  簡単にもう一度私の要点を質問しましょう。密輸があった、ここに外貨を持っていた人がいた。そうしたらこれは正式輸入に切りかえた。何でそんなことをやったのだと尋ねたら、先ほどのあなたの御答弁は、いや向うに債務があったからだ、先方の輸出国に日本に対して債務があったからだ、それでこれを振りかえた、それでこれは許したのだ、こういうことなのだ。その他は無為替輸入はやりませんということは、代々の大臣も担当係官も再三言われたことなのだ。そこで私が今聞いているのは、こういうケースはノリだけに許されるのか、あるいは、いわば朝鮮だけに許されるのか。そうでなくして、法律は平等である建前からいけば、いずれの国から入るものに対しても、そのように許されるのかと聞いているのです。
  117. 杉村正一郎

    ○杉村政府委員 日本への輸入が成規の手続をとっていないという意味の密輸品につきましては、たとい債権が向うにあったのを回収するための無為替輸入であろうと、為替割当があった輸入であろうと、そういうものは正規の輸入とは認めません。
  118. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 密輸ですぜ。このノリは成規の手続をとったら正規輸入になるじゃないか。冗談を言ってはいかぬ、成規の手続をとっていないじゃないか。
  119. 佐竹新市

    ○佐竹(新)委員 関連して。そこはさっきの私の質問は、どうも私がふに落ちぬのは、密輸品はあくまで密輸品ですよ。密輸品でなければ、堂々と入ってきますよ。向うが許可して入ってくるものであれば、堂々と入ってくる。それを日本の港へ入ったときに為替を切りかえたということが違法であるか、それをノリに限ってあるのかどうかということを質問している。それに対して答弁して下さい。
  120. 杉村正一郎

    ○杉村政府委員 言葉がもしあいまいで間違うといけませんので、お確かめした上でお答えしたいと思いますが、密輸と言われますのは、外国輸出手続が違法であった意味で密輸と言われるのか、あるいは日本への陸揚げが違法であったという意味で密輸と言われるのか、それをお伺いした上でお答えしたいのです。
  121. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 私はこのノリの件が主題で聞いている。あれかこれかと言っているのじゃない、抽象論じゃないのです。
  122. 杉村正一郎

    ○杉村政府委員 保税倉庫に品物が揚げられましたまででは、まだ輸入とは認められませんので、そこまでですと密輸とか密輸ではないとかいう段階にまだ来てないわけでございます。そこから出るときに、成規の手続をとらないで出れば密輸になりますけれども、そこから出ますときに成規の手続を踏んで出れば、密輸にならないわけであります。
  123. 佐竹新市

    ○佐竹(新)委員 あなたがさっきも言われましたように、密輸であっても一応保税倉庫までは入れられるのです。そこでいわゆる無為替を有為替に切りかえたときの問題を言っておるのです。そのことのために、せっかく成規の手続を通して入ったものが、去年の八月からいまだに売れぬから、買ってくれぬから外貨がなくなっておる、その問題を言っておるのです。
  124. 杉村正一郎

    ○杉村政府委員 保税倉庫へ入ったまででは、まだ輸入ではございませんので、それまでの出てくるまでの筋道で、向うの国を出てくるときに、向うからいえば密輸出のものがあり、正規の輸出品があるのだろうと思いますが、それが日本の保税倉庫へ入ってくるまでは、いずれもまだ密輸ではないわけであります。そこで、そうは申しましても、先ほども御答弁したつもりでございますけれども、向う側から見ての密輸出品と、そうでない正規の輸出品と、差別なしに日本側が輸入を認めるということは、相手方に与える感じも悪いことは、よくこちらでもわかりますので、最近では、そういうようなものにつきましては、無為替輸入を認めるというようなことをしないことに措置しております。
  125. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 杉村さん、私どもは、あなたや新しい大臣を責めているんじゃないのですから、そんなここだけをうまくのがれようということをお考えにならぬでもいいのです。どんなにのがれても、出るものはクライスラーのように出てくるのです。どんなにうまくここをのがれても出るものはバナナのようにちゃんと出てくるのですから……。そこで、今回のノリみたいな形を今後適用される場合に、もうこんりんざいこれで今回一回限りで、ありませんと言われれば、文句ないのです。それを合法化された答弁をなさるものだから、それが合法であるならば、ほかに適用される場合があり得るだろう。従ってそういう相手国はどういう国であるか、どういう品物かを聞いておるのです。
  126. 佐竹新市

    ○佐竹(新)委員 LCを発行して、LCに基いて向うは積み出してくる、そのものが正規のものなんです。片一方はLCも何もないのです。韓国をのがれて積んできて黙って日本へ持ってくる。そして従来は神戸へ密輸をうまく揚げて、今度は日本の国の人絹なんか積み込んでいく。そういうブローカー、そういう者にあやつられる政治家というものが行って押えるから、通産省がそういうことをやるのです。問題は根本的な問題なんです。
  127. 齋藤正年

    齋藤(正)政府委員 ちょっと通産局次長から説明しましたものが、このノリの特殊問題と一般論を一緒に申し上げましたので、おわかりにくかったろうと思いますが、一般論を申し上げますと、先ほどお話しいたしましたように、輸入というのは、税関の門を出て国内に入ったときに輸入になるわけであります。従って、税関に入るまでは輸入ではないのであります。これはこういうノリという問題に限りませんで、ごく一般のものにつきましても、あらかじめ外貨の割当を受けて入れるものと、それから外貨の割当を受けないで、単に受けられるという見込みのもとに入れるものと両方でございまして、これは一般のものについてもたくさんございます。まだ外貨の割当を受けないのに輸入の契約をいたしまして、それまでに発券が済まなくて品物が到着してしまう。そうしますと、それは税関でとめ置きになるわけであります。これは決して違法の輸入ではございません、まだ輸入にはなっておりませんので、それをそのまままた第三国へ持っていけば、日本の輸入には全然ならないで出てしまうわけでございまして、再輸出でもございません。これは日本の輸入とは全く無関係なのでございます。従って、通関をしますときに、正規に外貨の割当をもらっておれば、それは日本の輸入としては合法的な輸入である、こういうことでございます。お尋ねの件は、そういう問題ではございませんで、おそらく正規の外貨の割当を持たない者が、見越しで輸入をして税関の上へ上げてしまう。それを、その後に何か行政当局に特殊の運動をして、無理に外貨をもらうのが適当かどうかという、実際の行政上の措置をお尋ねになっているものと思うのでございますが、そういう措置は、われわれとしても適当ではないと思います。従って、今後はやらないということを、次長からも大臣からも御説明しておるわけであります。しかし、形式的に見ますと、そういうのは違法でも密輸でも何でもない。またノリに限らず一般に行われる慣習であるということを、一般論として御説明したわけでありますから、どうぞ御了承願います。
  128. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 あなたの助け舟は、一般論として言っておる。聞いておる方の連中は古ネコばかりですから、何もかも承知で聞いておる。けれども、助け舟どうも御苦労さん。そこで、あなたの顔に免じて、今日はこの程度にいたしますが、本日のところはまだ了解しておりませんから、あしたの朝からごゆっくり承わりたいと思いますので、何とぞそのように委員長もお取り計らい願いたいと思います。
  129. 福田篤泰

    福田委員長 本日はこれにて散会いたします。     午後四時二分散会