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1957-04-18 第26回国会 参議院 社会労働委員会 第23号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年四月十八日(木曜日)    午前十時四十八分開会   —————————————   委員の異動 本日委員小滝彬君辞任につき、その補 欠として吉江勝保君を議長において指 名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     千葉  信君    理事            高野 一夫君            榊原  亨君            山本 經勝君    委員            勝俣  稔君            草葉 隆圓君            鈴木 万平君            寺本 広作君            吉江 勝保君            藤田藤太郎君            山下 義信君            田村 文吉君            竹中 恒夫君   衆議院議員    野澤 清人君   国務大臣    厚 生 大 臣 神田  博君    労 働 大 臣 松浦周太郎君   政府委員    警察庁刑事部長 中川 董治君    厚生大臣官房国    立公園部長   川嶋 三郎君    厚生省公衆衛生    局長      山口 正義君    厚生省児童局長 高田 浩運君    厚生省引揚援護    局長      田邊 繁雄君    通商産業省鉱山    保安局長    小岩井康朔君    労働省労働基準    局長      百田 正弘君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○労働情勢に関する調査の件  (北海道夕張清水沢炭礦坑内火災  に関する件)  (明治鉱業株式会社佐賀炭坑ガス  爆発災害に関する件)  (北海道札内川砂防林道工事現場  における雪崩による災害に関する  件)  (日曹炭鉱株式会社魚沼鉱業所の飯  場等における雪崩による災害に関す  る件)  (北海道檜山今井マンガン鉱山の災  害に関する件)  (業者間の協定による最低賃金方式  の実施に関する件) ○引揚者給付金等支給法案内閣提  出、衆議院送付) ○児童福祉法の一部を改正する法律案  (内閣提出衆議院送付) ○旅館業法の一部を改正する法律案  (内閣提出) ○社会保障制度に関する調査の件  (公衆浴場の料金の改訂に関する  件)   —————————————
  2. 千葉信

    委員長千葉信君) ではただいまから社会労働委員会を開会いたします。  労働情勢に関する調査を議題といたします。質疑を願います。
  3. 山本經勝

    山本經勝君 去る本月九日、北海道夕張市にある北海道炭鉱汽船株式会社清水沢炭鉱本坑で、原因ははっきりいたしておりませんが、火災が発生いたしました。その際に、現場作業に従事しておった二名の鉱夫が逃げおくれて行方不明になった。当日職場にいたのは三十数名と出ておりますが、その三十数名の避難が終ったあとに、なお二名、被害者のうちで救済漏れがある。ところが、その状況のもとで、災害が発生するのをおそれた保安官あるいは保安担当の係官が、現場でいろいろ協議があったのでありますが、二缶の鉱員を救い出すことを完了しない前に、密閉をし、注水をして、火災を消しとめるという対策がとられた。このことにつきましては、先日商工委員会におきましても、一応検討はされておるようでありますが、非常に詳細な原因経過等につきまして、いまだ報告がなされておりません。そこで、質疑に入る前に、その概要、その後の経過等について、保安局長の方から御説明、御報告を願いたいと思います。
  4. 小岩井康朔

    政府委員小岩井康朔君) ただいまの御質問でありますが、今回の変災におきましては、山側から急報を受けまして、監督官現場に着きましたときには、すでにもう密閉注水相談を直接受けたというような実情になっておりまして、詳細なる坑内の当時の情勢というものは、ほとんど監督官庁側の、特に私の方の関係ではキャッチしておりません。しかし、山側の大体の報告によりますと、この清水沢炭鉱本坑の坑口から約三千五百メートルも離れました、三片のゲート坑道、こういう非常に遠い所で、局部扇風機スイッチを、どういう理由であったか、詳細わかりませんが、スイッチを入れましたときに、ぱっと火が出た。それでスイッチをすぐ消して、本人は退避をした。そのうちに火勢が強くなって、煙がどんどんきて、拾収がつかない。炭鉱側におきましても、当初は四塩化炭素消火器あるいは砂で一時的には消火作業をやったようでありますけれども、とうてい及ばずして、全員が坑外に退避した。いろいろ情況を聴取しまして、まず密閉注水以外に方法なしという断定を下しまして、そのときには、もちろん私どもの方の監督官も着いて、すぐ相談を受けております。で、まあ事情やむを得ないという判断同意を与えたようであります。従って、原因につきましては、詳細一切わかっておりません。その後の状況は、ごく時間別に、かなり詳細に、きょうプリントでお配りしてございます。そのうちでまず重要なことは、変災が四月九日四時半に起りまして、大体ただいま申し上げました、非常に火足が早くて、煙その他爆発の危険で、情況の詳細なる調査並びに救出作業ができないということで、密閉の決意をいたしておりますが、十日の零時二十分には、一応人気側密閉完了、それから零時二十五分には排気側が完了しております。その後四月の十一日に、ここには十四時三十分から十出時五十分の間、時間が明瞭にわかりませんが、密閉内の爆発をやったように報告がきております。その後、危ないのでしばらく様子を見ておりましたが、結局四月十四日には完全に注水をいたし、同日の十八億五十分には人気側の正式の本坑密閉が完了し、同じく二十三時には排気側完全密閉ができ上って、現在まで、目下様子を見ている次第でございます。従って、坑内現場につきましては、全然見ることができませんので、詳細な報告にはいまで接しておりません。
  5. 山本經勝

    山本經勝君 このいただきました資料の報告書によりますというと、四月九日午前四時三十分災害が発生した。これははっきりしているのです。そこで、四時三十分に災害が発生して、八時に入坑後二片排気戸門を開放したところ、〇〇〇・一%以上の煙がもうもうとしておった、こういうことが火災確認の具体的な最初の問題だと思うのですが、それまでの間、相当の時間があるのですが、どういう現場における措置が講ぜられたかは、何ら報告されておらぬ、この点はどうなんですか。
  6. 小岩井康朔

    政府委員小岩井康朔君) これはちょっと災害が起りました時間と比べて、かなり、四時間に近い、三時間半はかりの時間がございますが、炭鉱側におきましては、直ちに救護隊準備は指令したようでございます。しかしながら、まだ入坑さしていいかどうか、救護さしていいかどうかという断定を下し得ないで、退去をさしたような状態でありまして、この間の時間につきましては、ただいま御質問の〇〇〇・一というのは間違いでございまして、COが〇〇というふうに書いてあるのでありますが、ちょっとプリントが悪くて、ごらんになれなかったかと思いますが、戸門を開放したところ、CO一酸化炭素が〇・一%と、こう書いたつもりであります。これまでの間何をしておったかという詳細な点につきましては、まだ自六体的にはわかっておりません。いずれ現地で調査しておりますので、詳細がわかることと思います。
  7. 山本經勝

    山本經勝君 それから、続いて時間の経過ですが、十時三十分に、監督部長より清水沢炭鉱鉱長、副保安管理者に対して、注水について諮った、こういうことになっております。先だって商工委員会での局長答弁では、たしか、現場保安管理者の方から一応注水について話があり、しかもその場合に、二名の未救済鉱員災害現場に残っているというので、組合並びにその罹災者遺族等と話し合った。そこで保安管理者としては、災害の拡大を阻止するために、あるいは爆発等のおそれもあるので、了解を求めて、注水をする話を持ちかけられたという話であったのですが、ここでは、保安監督部長から清水沢炭鉱鉱長保安管理者に対して、注水について、死亡確認した上でという前提で報告がなされているということですが、その間の食い違いはどうなんですか。
  8. 小岩井康朔

    政府委員小岩井康朔君) この前、商工委員会において御答弁をいたしましたのは、先方から相談があったように申し上げましたが、電話連絡の行き違いでありまして、当方の方から、直ちに変災急報を受けまして、すぐ現場電話したのだそうであります。従って、現場の方から電話がかかってきまして、そのときに、ただいまのような相談を受けまして、監督部長として指示をしたような次第でございます。
  9. 山本經勝

    山本經勝君 この監督部長指示というのは、法的にはどういう根拠の上に立って、まだ罹災者救済が完了していない状態で、あるいはそれが生きているか死んでいるか確認されておらない状態で、密閉をするなりあるいは注水をするなれば、かろうじて、窒息等で倒れておったり、あるいはその他の事情で動けなくなっている、こういうような、生きているのにかかわらず鉱員が救い出されぬままで、注水なり密閉という作業によって完全に死に至る、こういうことなんですが、これはやはり非常に重大な問題であって、いわゆる鉱山保安法なりの規則等に照らしてどういう条項にのっとって保安監督部長の方からの指示がなされたのか、その点をはっきりしていただきたいと思います。
  10. 小岩井康朔

    政府委員小岩井康朔君) 監督部長指示をいたしましたのは、密閉をしろとか、注水をなせとかいう指示ではなくて、もしそういうことが実情で追っておるのならば、監督官を出しておるからよく監督官相談をしてやれということが一つと、それからもし万が一、密閉をするようなことがあれば、中におる二名はまずだめだという十分なる証拠をつかんでからやってほしいということが一つと、その前には必ず組合は、家族の了承を得てほしいという希望を述べたにすぎないのであります。
  11. 山本經勝

    山本經勝君 そうしますと、大体注水開始が十二時四十分になっておりますが、それまでに死亡というものは確認されたのですか。
  12. 小岩井康朔

    政府委員小岩井康朔君) 死亡は実際には確認することはもちろんできませんでしたけれども、まずだめだという推定でありますけれども、まず九分九厘だめだという断定を下しましたのは、一つには火勢が非常に強くて、すでに排気側密閉一酸化炭素コンマ一を検出されておる、一酸化炭素コンマ一ありますれば、普通の人間ですと、一時間半前後で死亡に至るということは従来からわかっております。それが一つと、この残られました二人の位置というものは大体想定できるのでありますが、いずれも火災現場を通らなければ域外には逃げ出し得ないということが一つ、そういうようなまずだめであるという情勢、その情勢によって、確認はいたしておりませんけれども、相当確かな推定をいたした結果だと判定いたしております。
  13. 山本經勝

    山本經勝君 これはむろん火災現場にあって、どういうふうに確認されたかということが実は非常に不明確なんです。火災がどの程度火災であったか、そこで避難ができたのか、できぬのかということについてもこれが確認ができない。しかも現在では厳重な密閉がなされたということですから、なおさら困難だ。当時の状況からいいますというと、問題の個所の図面がございませんから具体的な御質問が申し上げにくいのですが、問題の個所スイッチを入れると同時に火が見えたと言われるのが、どの程度のものであったかということが明らかでない。非常に大事な点ですが、その火災の様相が、いわゆる規模がどういうものであるかということが非常に問題なんです。しかも、もうもうと黒煙が出て一酸化炭素が多量に発生をしたと言われておるけれども、実は火災規模状況というものについては全くあいまいなんです。第一番にスイッチを入れて、かりに漏電やその他の機械故障等スパークがあった場合にでも、ガスがなければまず火はつかない。あるいは炭塵がなければ火はつかない。一ぺんでいきなりスパークでもってつくようなものではない。非常に一酸化炭素等条件もかつてはあったようですが、当時の模様が、それほどその現場がそういう条件であったかどうかということもはっきりしておらぬわけだ。ですからそういう状態のもとで、まして救命隊準備をされておるなれば、当然まず何をおいても救命隊現場に入ってそうして応急消火対策が講じられるのが順序だと私は思う。ところが、そういうことはこの報告書に一向書かれておらぬ。しかも、時間は四時間にわたって最初火災確認に至るまでの間の措置というものは全くない。そうしますと、鉱員現場でどういう状態であるかということの推定がつかないのです。そういう状態のもとでこの密閉注水等もう避難をする余地のない方法が講ぜられたということは新聞にも書かれておりましたように、実に鉱員を蒸し殺すということなんです。これほどの重大な事柄が、しかも保安管理者並びに現場に行かれた監督官派遣班によって、あるいは組としても、これほどの重大なことが軽々となされては、これはたまったものではない。そういうことが監督局並びに部長等指示によって話し合い了解が遂げられたというのですから、私は当然法的に何によってなされたかその根拠があろうと思う。それを局長の方からまず御説明をいただきたい。
  14. 小岩井康朔

    政府委員小岩井康朔君) ただいまの御質問でありますが、炭鉱変災につきましては、非常に種類によりましては、臨機措置をとらざるを得ない場合がたくさんございます。従いまして、保安規則の中におきましては、二十六条の一項二号というところで、もし災害が起った場合には、保安管理者はもう直ちにいろいろその適当な措置を講じ、危険防止方法を講じなければいかぬという義務を負わしておるわけであります。従って、今回のような変災の場合におきましては、保安管理者が全責任をもちまして処置をとることが規則上からも求められておるところでありまして、もしその処置が後ほど非常に妥当を欠いておったという場合があれば、当然刑事上の問題になりますが、その保安管理者措置につきましては、私どもの方の監督部長であろうとも、監督官にも別に承諾も同意も要らない建前になっております。これは炭鉱変災の特質と申しますか、非常に直ちに即刻手を打たなければならぬというような状況も生じますので、かような規則を設けておるわけでございます。
  15. 山本經勝

    山本經勝君 今お話しになったのは二十六条ですか。
  16. 小岩井康朔

    政府委員小岩井康朔君) 二十四条でございます。間違いました。二十四条の一項二号でございます。
  17. 山本經勝

    山本經勝君 そうしますと、続いてお伺いしたいのですが、二十四条には「保安管理者は、左の各号の事事を守らなければならない。」として一、二、三、四、五号をあげられておる。「危険または危険のおそれが多いときは、ただちに適当な防止または応急措置を講ずること」二番目が「災害が発生したときは、応急措置または適当な危険防止措置を講ずること」こういうふうになっているのですが、その「危険または危険のおそれが多い」ということは、これは変災がこの場合にも起っておるのであるからわかる。しかし「ただちに適当な防止または応急措置を講ずる」ということは、現に鉱員が未救済のままそのところにおるという事実が確認されておる、それを救済をすることをせずして、そして密閉注水によって、単に保安規則規定にのっとってやったということでいいのかどうか、私はこれは重大な疑問がある。一般に言われることは、たとえ病気で死亡した人でも、医者が脈をもって見て、これはすでに死亡しておると確認されてからも、なお普通の場合、二十四時間を経過しなければ火葬その地の措置が講じられない。事、人間ですから非常に重大だと思うのです。ところが、それが現場状況確認されておらないだけではなくて、その死亡あるいはそのときに死亡しておるかどうかということが確認はされていない、推定です。そういう状態のもとで密閉をしてついに救うことのできない状態、しかも骨さえもこの密閉が解除されて作業が平常に復するときまで掘り出すということができない、こういうような状態に追い込むということは、これはきわめて重大だと思うのですが、たとえ数が一名にせよ、二名にせよ、事、人命であるから、そこで私は特にこの点を伺っておかなければならない、はなはだ納得がいかない。保安法の第三条ですかの規定を見ますと、まず人命の安全を第一項に取り上げている、次に資源あるいは施設こういうことになっている。そうしますというと、まず第一番に考えられねばならぬのは、この鉱山保安法あるいは石炭鉱保安規則なるものは、この危険な職場で働く労働者をまず守るということがこの法の精神であり、しかもその規定であると思う。ところが、今局長の話を聞いているというと、火災の拡大するおそれがある、なるほど二十四条の一項にいわれる「危険または危険のおそれが多いとき」というものに当ると思う、ところが、その下に「ただちに適当な防止または応急措置」とは私は注水密閉によって保安法の三条第一項にいわれている基本的な目的、精神、これと私は大きな食い違いがあるような印象を受けてならぬ。これはあとから労働大臣にも伺いたい点なんですが、まず、ここを直接監督指導の立場にあられる局長からこの「適当な防止または応急措置」とはどういうものをまず指されるのか——きわめて重要なんです、その点を一つ説明いただきたい。
  18. 小岩井康朔

    政府委員小岩井康朔君) ただいまの御質問に対しましては、もちろん私どもの考え方といたしましても、人命を第一に考えておるわけでございます。しかし、この場合に、二名がおるのに、これが生きておるということがある程度判断し得るならば、もちろんこういう措置はとらなかったというふうに私どもも考えております。しかし、一般炭鉱災害におきまして、一名であろうとも二名であろうとも、救助に行かせまして罹災する場合が非常にたくさんございます。従って、責任を持っております保安管理者も、私どもも、災害の場合に救助をさせる場合には、特段の考慮を払っておるわけでありまして、それらのこまかい具体的な事情につきましては、管理者におまかせ願いたいというふうに考えておるわけであります。もちろん生きておるかもしれぬという状態のときにこうした方法をとらせるということは絶対排除しなければならぬということを考えておりますけれども、まず、この場合には、九分九厘いけないという予想がつき得たので、密閉注水の断を下したものだと考えております。たとえば例をとりますと、ごく最近、昨年起りました国見炭鉱落磐災害でありますけれども、これは労務者が一人埋まって非常に騒いでおる——助けてくれということを非常に騒いでおりまして、近辺の者が救助に参りました、本人あとで助かりましたけれども救助に行った者が数名負傷してしまった、特になくなった方もあるというふうに、簡単に救助に飛び出すということが非常に危いわけでありまして、従って、保安管理者変災における救護隊の出動については相当考慮したものと考えております。従って、その間にかなりの時間を経過しておるようでありますが、その間の事情管理者判断におまかせ願いたいというふうに考えております。
  19. 山本經勝

    山本經勝君 先ほど局長お話また今の御答弁をあわせて一応考えてみたい。そう申しますのは、炭鉱は御承知のように、地下坑道を中心にして採掘をする作業ですから、勢い坑道が新しい炭壁あるいは岩磐等を通って、これは掘進作業といいます。その掘進作業延び先ということになりますというと、いずれも延び先空気が自動的に循環いたしませんから、卸口扇風機を用い、電動機が必要になる、あるいはドリルを使う、あるいはその他の機械を利用する、そうしますと、それらの動力のもとになります電気が当然要る、あるいは圧搾空気のコンブ・レッサーが必要である、こういうふうなことになってきますと、長い地下に延びていく坑道を掘進する場合には、いずれもその卸口にそうした設備が置かれる。これは私が申し上げるまでもなく、局長よく御存じだ。そうしますと、その延び先であるいは多い所では十名、少い所でも五名ぐらいが掘進作業、あるいは掘り出した石炭なりあるいは岩石等を積み出す運搬の作業というものがなされている。もし今の局長お話では、こういう作業場では労働者は働けない、自然の条件の変化がいつも起っている坑内のことだから、地圧によって土地が常に亀裂を生じ、落磐等があって、そのために電動機等の上にそれが墜落して故障を起す、あるいはケーブル線に落ちて故障を起すとか、そういうことになってくると、いつ何時、のど首に当るところの卸口火災が起らないとも限らない。そうしますと、あなたの説明だと、そういう場合には、要するに、火災個所を通らなければ避難をすることができないのだから、今はまだ生きているかもしれないけれども火災が起っているから当然死ぬものだ、そうすれば災害を拡大しないためには坑道密閉する以外にない、水を流し込んで埋ずめてしまう以外にない、こういうことになってくる、それもさも当りまえのように考えられるならば、炭鉱坑内夫の掘進等延び先において作業するということは不安心ばかりでなく、これは全くできませんよ。こういうように局長がもし主張されるならば、この保安法は、労働者の安全を確保し、作業の遂行をはかるという意味における保護の法じゃなくて、おそるべき法律になってくると、私はそこら辺の関係がもう少し具体的に懇切にお話を願えぬというと、私ども炭鉱の者は大体状況についてはわかるが、ここにおいでの同僚議員にしてもなかなか状態がわからない。要するに、炭坑の中で働けぬということになると思います。この点をもう少し具体的にお話を願いたい。
  20. 小岩井康朔

    政府委員小岩井康朔君) 炭鉱坑内は御承知のように、非常に千変万化でありまして、各炭鉱ごとに非常に状況が違っているわけであります。従いまして、そのどこに災害が起った場合にどういう措置をとれということを一一規則できめることは非常にむずかしい、従いまして、そういうこまかい規則は作らずに、また、作ることがほとんど困難でありますので、いろいろ起ります実態に即して責任ある保安管理者臨機措置をとるという工合にきめているのでございまして、ただいまおっしやいます通り、果して今回の災害の場合には、実際にどうであったかということにつきましては、残念ながら、これは密閉注水が完了しておりますので、見ることができませんけれども、おそらくは保守管理者としては四囲の情勢を十分に判断いたしまして、しかも組合家族とも相談をして、いよいよこれは投げざるを得ないというふうに断を下したものと推測いたします。
  21. 山本經勝

    山本經勝君 その経過については、いい悪いは別問題として、実際そういう経過をたどって今日にきているということは仕方がない、私の言っているのはそういうことじゃないのです。二十四条にいう「危険または危険のおそれが多いときは、ただちに適当な防止または応急措置を講ずる」ということが救済されない、労働者が。先ほどから言われているような、なるほど推測としては死んでいるだろうと考えられる、しかしながら、死んでいるだろうと考えられた場合でもこの「適当な防止または応急措置」とは密閉をし、注水をすることでは私はないと思う。その前に、先ほどからこの報告書について御質問申し上げたように、朝の四時半に起った変災から、八時に火災確認し、そうして十時半、監督部長等の間でこの保安管理者話し合い電話で行われた。それから十一時に末吉監督官現場に到着して、そうして十二時四十分には注水が開始された。その前に何がなされたかということ。その前に、いやしくも救護隊が用意されておるならば……。私も坑内災の経験はしばしばあるのです。炭壁が燃えているのにも出くわした。そういうときには、当然密閉はします。しかし、そのような火災が拡大するまでには、少なくとも救護体が煙の中を入っていって、現場を一応詳細に調べ、あるいは消火に必要な措置現場で講じられて、そうして最終的にどうにもならぬという事態が起ってきた場合に、その次の手段が講じられておる。ですから、問題として考えられるのは、そうした時間の余裕があり、救護隊準備をされたけれども入坑をしていない。で、COO・一というガスの含有量は、人命に危険を及ぼすことは言うまでもない。しかし、それであればこそ、それぞれ山に用意され、訓練された救護隊が派遣できるわけです。この夕張には、大きな炭鉱がたくさんあります。もし必要であれば、何百人のいわゆる救護隊の動員も可能であったと思う。そういうような措置が講じられることが、この規則第二十四条の一項に掲げている「ただちに適当な防止または応急措置」ということになるのではないですか。注水または密閉によって、救い出すことを不可能にしてしまうような対策は、この時間経過から見ましても非常に矛盾を感じてならぬ。この点を私は質問申し上げておりますが、どうなんでしょうか、局長の方では。
  22. 小岩井康朔

    政府委員小岩井康朔君) 私の方の考えは、「適当な危険防止措置」というのは、必ずしも密閉注水だとは考えておりませんけれども、まあこの場合にはこういう措置が妥当ではないかというふうに考えておるわけでありまして、ただいまの御質問の点もよくわかるのでありますが、もしこの二人が生きておるかもしれぬということが予想され得る場合には、当然この二人の危険防止のために救護隊を入れることも必要でありましょうし、そのほかの適当な措置がとれたわけであります。その場合なら、この密閉注水をすることは私どもは不適当であると考えるのでありまするけれども、まず九分九厘いかんという四囲の情勢で、組合家族も了承を得たというような場合におきましては、やはり密閉注水することが適当な措置ではないかというふうに考えておるのであります。で、必ずしも、この場合に密閉注水が是が非でも正しい措置であったというふうには考えておりません。この二人が生きておったかもしらぬという状態が予想され得る場合に、もしこの方法をとったならば、不適当な措置であるというふうに考えておる次第でございます。
  23. 山本經勝

    山本經勝君 労働大臣にお伺いしたいのですが、今お聞きのような状況で、北海道の清水沢炭鉱火災があり、そこで二名の鉱員密閉のもとに閉じ込められ、注水ということになって、これは二人の鉱夫が死亡しております。ところが、今鉱山保安局長お話のように、この措置をとったのは規則第二十四条の第一項の解釈、運用を要するものであるということが言われておるのですが、労働者を保護するこの立法、あるいは資源、施設を保護するこの立法むろんこの法は、第一番に人命危険防止を第一義に考えておることは私が言うまでもないことだと思うのです。そこで、この法解釈について労働大臣の見解を伺いたいのですが、「危険または危険のおそれが多いときは、ただちに適当な防止または応急措置を講ずること」といわれている、それ以下五項目にわたって書かれている、これは保安管理者の権限でもってこの規定からいうとやれることは言うまでもないのですが、今申し上げたような状況のもとで、いまだ十分な確認ができない、生死の状態あるいは救助方法がなかったのかどうかということは疑問と一応いたしまして、この法解釈、運用の面から見て妥当のものであるかどうか。この点に私は重大な問題があると思う。少くともこの法が妥当でない、あるいはこの取扱い方が妥当でないという結論が得られるならば、すみやかにこの法を改正してもらわなければ困る、もし局長のような御意見ならば、私は法の改正は必要である、直ちにしておかなければ、三十万に余る炭鉱労働者の生命は保障できぬと思います。変災が起ったならば、何どきでも密閉して殺すということができます、明治時代には炭鉱の鉱夫が坑内死亡するというと、あとくずしの中にほうり込んでつぶした例がたくさんあったようでありますが、今日ではそういうことは許されない。そこで大臣として、もし今のような状況のもとで、この現地の監督部長なりあるいは保安管理者がとった措置は妥当であるかどうかということが一つ、しかも、この法を、言われるような解釈の上に立って運用されていくならば、次に起る事態は、炭鉱労働者はもう働けないということになってくると思うのですが、これに対する大臣の見解を伺っておきたい。
  24. 松浦周太郎

    ○国務大臣(松浦周太郎君) 北海道の夕張炭鉱清水沢坑において坑内火災が起った問題についての質疑応答がただいま政府と皆さんの間で行われております。その状況を聞いておりまして、私は人命、保護の面から考えて、また、労働行政に携わっておる面から考えまして、その家族並びになくなった方に対してはほんとうに心から追悼の意を表する次第でありますが、今お尋ねになりました点に対しましては、一口に申し上げますならば、資源も大事でありますけれども、資源より優先的に処置しなければならぬものは人命救助であると私は思っております。それがほんとうの産業の発展であり、また、日本民族の発展であると思う。でありますから、その法の解釈が、もし資源本位に考えあるいは経営の損益を中心にして考えるというようなことがありましたならば、その法は直さなければいかぬと思うのです。それくらいにしましても軽んぜられるような場合が多いものでございますから……。私は、今回の内容は、ただいま局長さんのお答えになった通りであると思います。しかし、もし軽視されるような場合がありましたならば、これは警告をするなりあるいは法を直すなりすることが必要であろうと思います。
  25. 山本經勝

    山本經勝君 続いて大臣に伺いたいのですが、警告等は、当然あの鉱山保安のことに関しては労働大臣に通産大臣に対する勧告権がある。むろんその点はわかるのですが、今問題は、この危険または危険のおそれある状態に対して適当な防止または応急措置という表現でもって構成されているんですが、こういう点について大臣の考え方から申しますというと、適当な防止または応急措置とはどういうものをお考えになるのか。
  26. 松浦周太郎

    ○国務大臣(松浦周太郎君) この鉱山保安局の調査の結果を待っていろいろお答えしなければならぬのでありますが、まだわれわれの方に十分の結果が届いておりません。そこで今のお問いに対しましては、私どもがこの鉱山保安法に基く勧告を行なって、そしてかようなことが再び起らないようにいたしていきたい。かように存じておる次第であります。
  27. 山本經勝

    山本經勝君 それはわかるのですよ。大臣のお話、勧告をなさる——それはやっていただきたい。ところが問題は二十四条の「適当な防止または応急措置」というものがどういうふうに講じらるべきであるか。これは坑内実情は大臣御存じないと思うのです。しかし、一般に捕捉し得るそれぞれ手があると思う。これはきょうお答えできなければあらためてお伺いするとして、よく通産当局との間で特に保安局との間で話し合って、この解釈ははっきりしていただかなければ、ことによったら炭坑労働者は、なんぼ石炭が必要でも働かぬということになるかもしれません。そういう状態さえも考えられるし、これは、この際、この法律を変えてもらわなければ困るという声が、今猛烈に起りつつある。ですから、重大なこれはポイントになってくると思います。  それからいま一つは、現場状況を今しさいに点検することは不可能になっている。この密閉は、おれらく火がついておるならば、三年、四年は、密閉を取り除いて常態に復することは不可能である。あるいはそうでなくして、単なる局部の機械施設等の火災であったとするならば、これは割合短い期間に密閉を解除して、あるいは水を上げて作業に復するということになるでしょう。その場合も二ヵ月や三カ月ではないと思う。そういうような状態に置かれておりますから、現地の実情が詳細にわからぬということは、きわめて遺憾でありますが、しかし、調査が粗漏であったというのであれば、あるいは現場におけるこの規定に基く応急措置が、われわれの全く納得いかない状態にある、たとえ二名といえども貴重な人命である、それが死亡したかどうかということが確認できない、そういう状態のもとで推定でまことにむちゃくちゃな措置が、しかも規定によって公然と監督局了解のもとになされておるということになるときわめて重大ですが、そういう点について、なお労働省としても御検討願っておきたい。  それからいま一点大臣に伺いたいのは、鉱山保安に関する具体的な予防の措置、あるいは災害に対する救助、あるいは罹災者に対する援護の措置、こういったものは、しばしば私は労働大臣にお願いをして、勧告してもらったり、いろいろ手を打っていただいていると思う。この問題ばかりではなく、時間の関係もありますから、かいつまんで申し上げますが、ちょうど四月の四日には、佐賀の明治鉱業佐賀炭坑というのがございますが、ここでガス爆発が起って、そして三省の死亡と一命の重傷者を出した。これも一応資料を求めたのですが、監督当局の方には、実は御提出をいただいておらない。そこで、私は現場の方から送っていただいて、組合並びに会社の調査を持っておりますが、これを今御質問申し上げても、十分なお答えが不可能かもわからぬ、そう私は推測をしますから、きょうしいて掘り下げません。  それから最近に起ったその他のガス災害、また、通産省の方で出していただいている、この鉱山保安白書というのは、これにはたくさんに災害がありますが、このガス並びにガスの燃焼、窒息、爆発あるいは火災、こういった事故が起るシーズンになる四、五、六という月は、年々災害の起る月なんです。最近また顕著にこうした災害が連続的に起りつつある。こういう状態にかんがみまして、特にやはり十分対策をお考えにならねばならぬ。それで大臣としては、どういう勧告なり、あるいは措置を講じたいとお考えになっておるか、その点を伺っておきたい。
  28. 松浦周太郎

    ○国務大臣(松浦周太郎君) るるいろいろ適正なる御注意を受けたのでございますが、これは、今回の二名の問題に対しましては、通産当局から御答弁通りであると思いますが、この尊き、二名の犠牲によって、鉱山関係の安全施設その他、法の不備な点を発見いたしまして、これを直して、将来こういうことを再び繰り返さないようにすることによって、二人の尊き犠牲が、日本の国家のためになることであり、せめてもの遺族の気持をそれによっていやすことができるだろうと思うのでありますから、十分通産当局と、いろいろ御指摘になりましたような点を相談いたしまして、改善すべきところは改善し、勧告すべきところは勧告いたしたいと、かように思っております。  しからばどういう具体的な勧告をするかという御指摘でありましたが、今直ちにここで申し上げることはできませんから、両省との間にいろいろ研究いたしまして、近くその方法が決定いたしましたならば、次の機会に御発表いたしたいと思います。
  29. 山本經勝

    山本經勝君 時間の関係がありますから、大臣にいま一つ所信を承わっておきたいのですが、通産省との問で話し合われて、具体的な措置を講じられる、これはその通りでけっこうですが、ところが、今までしばしば話し合いはされていると思う。ただあまり具体的な話がいつも出てこない。で、こういう点、私は実は不安に思うのですが、いつごろまでにという大体の目安が持てるかと思う。で、通産当局との間で、話し合って、およそいつごろまでには、何らかのこうした災害に対する対策、あるいは法の不備なら不備で、この法の運用の改善なりあるいは法そのものの改正なりを考えてみたいというお考えがあるのか、そこら辺を一つ大臣から承わっておきたい。
  30. 松浦周太郎

    ○国務大臣(松浦周太郎君) 通産当局の方とも相談いたしましたが、至急一つ改善の要点を具体的にいたしまして、今国会終了以前に皆様に御提出いたしたいと思います。
  31. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 今の問題に関連して局長にお尋ねしたい。どうも聞いておりますと、先ほど山本委員から……、問題の事件が起ってから八時、十時半、十一時という段階で報告書が作られているのですが、私も炭鉱へ入ってみまして、炭鉱の、いろいろ雑多ですから私の認識は十分ではありませんが、切羽と坑道との関係の認識ぐらいは私は持っているのです。そこで問題は、どうもわからないのは、スイッチを入れたら火が出たから逃げたという。そこで鉱夫の監督といいますか、その作業の指導をしているといいますか、そういう人が、この個所々々の責任者としているはずだと私は思う。そこでそういう人が、たとえば三十人いるとか二十人いるという、この中の方方の現状把握という中において、災害防止避難という問題が起ってくると私は思う。そこで、今日のこの事件は、二名の者はその中に入っている。このあとの方の図面を見てみますと、扇風機のところあたりにおったのじゃないかということが、ここに書かれてあるわけです。そこで〇・一のガス黒煙があって、物理的といいますか、一時間半ぐらいしたら人命がそれでもう失われるという状態にあったという、ここで報告をされているその確認は八時の確認なんです。問題は、炭鉱には私はガス・マスクとか設備をして、人命尊重の建前から、鉱山保安法の三条の一項の一番最初人命の問題が取り上げられている。今日の憲法でも同じであります。そこに国の国是というものが明確になっている。そういう格好で、順を追ってみますと、人気、排気側密閉の問題が四月十日の零時二十分ですか二十五分、その密閉後の爆発というのが十一日の十四時三十分から十四時五十分ということになっているわけです。だからその推定判断、危険判断という問題は、おのおの専門の経験の度合いから生まれてくるのだと私は思うのですけれども、その二人の人が坑内にいるという状態そのままに、家族組合の協議の上に了承を得てやつたというのだが、実際、現実の結果論ですけれども、そこで爆発とかそういうことになったというのは、二日後に起きているわけです。この経過報告から見ると。そうなるというと、私は経験の度合いやその他の問題があると思うのですが、四時三十分にこの災害が発生して、鉱山の監督、安全保安の立場から、その監督的立場といいますか、業者の立場といいますか、その欠員になった二名を、鉱山に備えている、たとえばマスクとかいろいろの設備があるでしょう、その坑内ガスが発生したときにはどういう工合にして坑道を歩くとか歩かぬとか、こういう設備をして四時三十分から十一時までの状態、たとえば八時までの状態において、そういう処置一つもこの経過報告に書かれていない。そういうところは、先ほど局長お話を聞いてみると、わからぬというようなことに私は聞いたのですけれども、私はそこのところがどうも納得がいかない。しろうとでありますけれども、納得がいかないのです。人命尊重ということからいって、これは納得がいかない。そこのところあたりをもう少し説明をしていただきたいと思います。
  32. 小岩井康朔

    政府委員小岩井康朔君) ただいまの、四時半から八時までの間の炭鉱側救助作業その他に関する行動が不明確であるという御質問でありますが、私どももこの間の詳細はまだ受けておりませんけれども先ほど来も申し上げておりますように、まず本人が、局部扇風機を扱っておりました本人スイッチを入れたときに火が出たと、こういうのですが、どこからどう出たのか、私どもの考えでは、おそらく本人はよくわかるはずなんですが、しかも、この本人は無事に退避しておりすすので、この本人を十分に調査すれば、かなり詳細はわかると思いますけれども、なかなか変災の場合には、本人の言うことをそのまま判断してやるわけにも参りませんので、まだ十分な的確な調査ができていないというふうに私どもとしては考えておりますが、もちろんこの坑内火災の初歩の段階といたしまして、炭鉱側としては、先ほども申し上げましたように、直接消火方法はとっておるようでございます。これらも果してほんとうにとったものかどうか、今後の、密閉をあけましてからの調査に待つ以外にないのでありますけれども炭鉱側の申し述べるところによりますると、四塩化炭素消火器で消すこともいたしましたし、砂をかけて一応直接消火をやったようでございます。しかし、おそらく退避その他の状態、それからその現場の係員もすぐに逃げたわけではないのでありまして、図面がちょっと小さくてわかりにくいと思いますけれども災害現場のごく近くのとびらをあけまして、内部を見ましたところが、もう非常に火災も強く、煙も非常にたくさんあって、もう入り得ないという実態を見きわめまして、坑外に退避しているようでありまして、災鉱側はもちろんのこと、その部署付近におりました関係の者は、でき得る限りの初歩の段階の方法としてはとっておるようでございます。しかし、これは果してどの程度にとったかという点につきましては、今後の調査に待っていただきたいというふうに考えておりますけれども、この三時間半の間、全然放任状態ということはないのでありまして、当然またそういうことをするはずもないと考えておりまするし、かたがた直接消火をいたし、かたがた万一の場合の救護隊の練成を直ちに指令し、準備をし、そして、情勢によって着々処置に移っていったというふうに考えております。こういうようなケースはたくさんございまするが、むしろ大がいの場合は、控え目にするというよりも、むしろ積極的に出過ぎるというようなケースが多いのでありまして、おそらく、資源を先にして人命あとにするということは、まず私どもの従来の経験からは考えられない、むしろ、先ほど私が申し上げましたように、必要以上に無理な救助に行く姿の方が、大がいの場合に多いのでありまして、私の方の実例でも、かなり救助に参りまして、罹災者を出している例をたくさん持っているような次第でございまして、その間の事情は、でき得ることならば、保安管理者の正しい判断におまかせ願いたい。なお、もちろん私どもも十分に理解し得ない点が多々ございますが、目下調査中でありますので、もう一段詳細な調査を待っていただきたいというふうに考えている次第であります。
  33. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 問題は、炭鉱現場局長はお入りになってよく御存じだと私は思うのです。日本の炭鉱は、大てい鉱脈が、斜坑であります。その斜坑をコンベアか何かで上げるか下げるか、切羽というものを順次うしろを埋めながら進んで行く。そうして、どちらかに運搬車とか、コンベアで上げているところもありますけれども、運搬車で上げているところがあって、その運転によって鉱石を坑外に運び出すというのが大体の、私は、大なり小なり違っても、そういう状態じゃないかと思うのです。そうすると、その切羽が、順次三十メートルか五十メートルの切羽が進むに応じて坑道というものが、あとが坑木その他でかまえられて、順次切羽が進んでいく、上か下かに人がいるのであって、現場のその中にいる人、切羽にいる人が全部避難しているわけです。避難して、その上か下かのところに係員がおって、監督する人がいるわけです。火が出たときに、大多数の人が避難している。その二名の人がどこにおったか知らないけれども避難されてないということになれば、そこにおのずから上の監督者、下の監督者といいますか、そういう局所心々における監督者が、何名入っておった、何名の人名を捕捉して、避難という問題が最大限講じられるというところに、私は日常の人命尊重、企業をやっている会社の責任が私はそこに出てくると思う。それが、ここでは報告書に何も載ってないのだが、四時半から八時まで、八時において〇・一のガスがあるから、これはもう危険だ、三時間半たっているから、一時間半で人命がなくなってしまうのだから、これで了解してくれ、家族の皆さん、もう人命がないものと思う、こういうことを了解さして、そこで注水をする、こういう状態というものが私はあっていいかどうかということが第一の問題点です。  そこでもう一つの問題点は、朝の四時半から、朝の四時半といったら深夜作業でしょう。そういう場合に、会社の責任者がおったのかおらないのか、炭鉱責任者がおったのかおらないのか、適切な処置を講じる人がおったのかおらないのか、三交代で終日炭鉱は掘るのだけれども監督官も、ここで末吉監督官現場へ到着したのが十一時だというのです。こういう形で、何ら措置が講じられなかった、十時済んでから監督官と業者との間で、こういう状態だから、もし〇・一のガスが出たからこれは死んでいるものと測定するから、これは一つ他に及ぼすから密閉するのだということで、家族に納得さしている。それで密閉している。私はこういうやり方というものが人命尊重、鉱山法の初っぱなに書いている「人に対する危害の防止」という精神につながっているかどうか、私はしろうとです。しろうとだけれども、どうもこのところは納得いかぬのです。こういうことがしょっちゅう講じられるということなら、こういう感じで鉱山の処理をするというなら、さっき山本委員が言ったように、三十万の炭鉱労働者は安心して石炭を掘るために坑道に入ることはできぬ。こういう工合に資源の問題を重点にといいますか、そういうものの考え方で鉱山保安をやられるなら、入る者がおらぬという発言がありました。私もつぶさにこの問題をしろうとながらに考えてみて、どうも納得がいかぬ。そこのところあたりをちょっと御説明願いたい。
  34. 小岩井康朔

    政府委員小岩井康朔君) 私どもは決して御答弁を逃げる考えは毛頭ございません。一刻も早くこれらの実態をよく詳細に聞きまして、今後の災害防止の手を打ちたいというふうに考えておりまするが、この間の、三時間半ばかり、いかなる状態に対してどういうふうに手を打ったかということは、いずれ詳細わかると思います。私の方の立場といたしましては、すでに監督官が現地に着きましたときには、もう注水密閉をせざるを得ないような実情にあった。果してこれがそのような実情にあったかどうかは今後の取りあげによってかなり詳細に判明してくるのじゃないかと考えておりますので、果して取りあけまして私たちの想像に近いような姿であったかどうか、あるいは非常に妥当性を欠いたような姿であったかどうか、これはいずれ取りあけの次第によりましては判明いたすことと考えております。ほとんど現場調査をいたしておりません。従いまして、ここで個々の実態に対してどうすべきであったかという点につきましては、満足なお答えができないのははなはだ残念に思っております。もちろん私どもの想像といたしましても、中に人が生きておるかもしれぬという状態のときに、こういうような措置がとられたとは考えていないような状態でありまするが、これも法的の根拠がどうこうというような御質問先ほどございましたが、法的に冷たくこれを解釈するならば、やはり二十四条の一項の二号で、保安管理者が全責任をもって緊急措置をなしたということになるのでありまして、問題を冷たく解釈するならば、私どもには何ら同意も承諾も要らない、保安官自体の緊急措置として正しいと思ったことを正しく実行したというにすぎないのでありまして、もしも万が一、取りあけいたしまして、罹災したと思われております御本人たちが、あるいは密閉した近くまではい出しておった、死体がその辺まで来ておったという事態が、もし取りあけ後起るならば、これは妥当性を欠いた措置であるというふうに判断ができると思うのでありますが、これらにつきましては、今後の取りあけによってはっきりいたしてくるのじゃないかというふうに考えております。いかんせん、残念ながら事態があまりに窮迫でありましたがために、私どもの方で現場の詳細調査ができなかったという点につきまして、的確な御答弁ができないことを大へん残念に思っております。
  35. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 私はもう一つ今のお答えに関連して聞きたいのです。私はたとえば十三時、十五時の間に救護班が入坑して、昇抗しているのが大体二時間ですね、家族の承認を得て注水をして、そのあとから救護班が入っていった、こういう処置というものはしろうとが考えたならば、おざなりの処置としか考えられない、会社の責任者、企業の、炭鉱責任者がおったら四時半に発火したというなら、なぜこの救護処置というのが四時半からその近い時間でなぜ行われなかったか、給水をしてしまってから救護班が入っても何もならない、零時半に、一時間か一時間半で〇・一で死ぬということを言って家族に承認させて、あとから救護班が入っていく、これは何のための救護班ですか、何のために入ったか、しろうとでよくわからないからこの辺説明していただきたい。
  36. 小岩井康朔

    政府委員小岩井康朔君) この救護隊の二班がやりますのは、人命救助のための救護隊ではありませんで、注水その他の状態がどうなっているかと、実際の処置につきます作業について救護隊が入っておるのでありまして、救援の意味の救護隊ではないのでありまして、非常に坑内が素面で作業ができませんので、一般作業もこの救護隊によって作業をしておるのであります。
  37. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 そんならね、これは救護班ではないんでしょう、これは何とか適切な言葉があるはずです。これはこのままお出しになるんでしょう、一般のところに。
  38. 小岩井康朔

    政府委員小岩井康朔君) これはちょっとおっしゃる通り不適当とは思いますけれども救護隊というのは非常にむずかしい関係上、隊員も平素一定の期間限って訓練をいたしております。編成もほかの余人を許さない、ほかのものではかわりができないというような、いわゆる広い意味の救護隊というものを特定の炭鉱に設置さしておりますので、その隊が動く場合にはいかなる目的であっても救護隊という名称を使っておりまして、多少不適当な場合もございますが、かなり広い意味であります、その隊員が動く場合には、すべて救護隊の出動ということに広い意味で解釈しておるのであります。
  39. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 私はもっと……時間がないので一応それじゃこれで打ち切りますけれども、その初期の状態について明確にして委員会で御報告を願いたい。その上でまた、審議する機会を委員長にはかっていただきたいということを私はお願いしておきます。
  40. 千葉信

    委員長千葉信君) 承知しました。
  41. 山本經勝

    山本經勝君 警察庁の刑事部長に来ていただいておりますので、この際お伺いをしておきたいんですが、今お聞きの通りで、夕張の清水沢炭鉱火災事件があったんです、しかも坑内救済されない鉱員が二名残っているままで実は注水密閉という処置がとられた、これは規則第二十四条の一項二号ということになっているんですが、この条項については警察の方はノー・タッチであったわけですか。
  42. 中川董治

    政府委員(中川董治君) 鉱山の災害とか、こういった関係等につきましてはただいま御答弁がありましたような状況で、それぞれ所管の監督機関でおやり願っておるわけですが、私ども警察機関といたしましては、全般的に人命の保護、ことに犯罪の取締り、こういう責任を持っておりますので、この北海道のこの状況にいたしましても、理屈を申しますと、刑法の業務上の過失傷害致死事件があったかというようなことが私どもの方の事案になろうかと思います。私どもの方におきましては、地元の警察におきまして本件事案を認知いたしまして、業務上の過失傷害致死事件が今回の事件にあったかどうか、こういう点を現在捜査中でございます。それで先ほどいろいろ政府委員との間に質疑応答がございました密閉したことについてあるいは殺意があっただろうか、あるいは業務上の過失があったかどうか、こういう点も一応観念的には考えられるのでございますけれども、現在のその状況では、この点についてはそう刑事責任がないんじゃなかろうか、むしろ爆発したこと自体について防止するための相当な注意が行われておったかどうか、こういう点について刑事責任の有無等について現在捜査中でございます。
  43. 山本經勝

    山本經勝君 部長に重ねてお伺いしたいんですが、一般死亡者ですね、つまり病気で死亡する、あるいはけがでもいいですが、死亡した場合、つまりお医者が脈を持ってみて、これはいよいよ息が切れたということが確認されてなお——一般の場合ですよ、変災の場合と違うんですが、二十四時間は埋葬その他弔に付すわけにはいかぬというふうに聞いておるんですが、そうしますと、たとえば変災ではありますけれども、この死亡ははっきりと確認はされていない、それからまた、行方不明という一応形になっておるように感じるんですが、そういう状態のときにでも私は別に、たとえば船等の遭難の場合には行方不明ということが死亡だと断定されるのはたしか相当な期間があったように思う。そう考えてみますと、これは変災ではあるけれども死亡確認されなければ、私はいわゆるこのような処置がとられるのは妥当であるということにならぬのではないかという感じがいたします。そこら辺一つ、専門的な立場でお考えを伺っておきたい。
  44. 中川董治

    政府委員(中川董治君) ちょっとその前に、先の発言中に爆発と言いましたが、言い違いで、発火でございますので訂正をいたします。  それからただいまの御質問の点でありますが、犯罪という点はすでに御案内だと思いますけれども、故意犯と過失犯がございます。故意犯というのは、御案内のように、たとえば不明の場合、生きていることを認識しているにもかかわらず、こういう密閉作業をやってしまう、こういう場合には故意犯の関係が出てくると思うのですけれども、そういった故意は今回の場合にはなかったように考えられるのであります。残る問題は、過失なんでございますが、過失の点について問題が二つあろうと思うのですけれども、この自然発火をするという状態になったということの結果を招来したのですけれども、そのことについてあるいは会社側、あるいは直接そういうことに責任を有する関係職員のところに業務上の過失があったかどうかという点が、刑事責任の問題になろうかと思うのであります。今度のそういう事故が起りました後において、その対策として、こういうただいま御質問のような措置を講じたことが何かの過失であるかどうかという点でございますけれども、これももちろんそういった点も着意は持っておりますけれども、いろいろ現地の捜査状況等にかんがみまして、そういう点については少くとも刑事上の過失はないように考えられる節が多いのでございます。
  45. 山本經勝

    山本經勝君 そこでやはり警察が、法の規定に基く諸般の業務を推進なさる、今のお話ですと、今のいわゆる刑事上の問題、すなわち過失にせよ、あるいは故意にせよ、いずれも問題があると思うのですが、あるいはまた、業務上の過失としてもやはり問題がある。そういう意味で変災に臨んでいろいろな調査をなさる、捜査をなさる、これは当然だと思うのです。ところが、この清水沢災害の際には、警察はおいでにならなかったという話を聞いているのですが、そういうことであったかどうか。それとあわせてお伺いしたいのですが、四月四日に佐賀の明治鉱業佐賀炭坑爆発を起しております。ところが、ここでは現地の警察官の方が事務所あるいは現場等にありました諸般の資料を証拠物件として押収されたために、通産当局の方の側の、つまり国の出先機関、両方の出先機関がそれぞれ調査をするものですから、さっぱり通産局の鉱山保安監督部の派遣班調査ができなかったというような事態が起ったと聞いている。これは一つの業務上の競合かわかりませんが、しかし、そういうような点について、警察当局としてはやはり統一的でないと困ると思うのですが、現場も迷惑するし、あるいはまた、その紛争のために業務推進がむしろ阻害される、肝心な救済なりあるいはまた、災害予防の措置等の円滑な推進等が妨げられるということにもなりはせぬか、そういうような事態があったのかなかったのか、あったらどういうことであったのか、一つ説明を願っておきたい。
  46. 中川董治

    政府委員(中川董治君) これすべて一般的に申せることなんですが、私ども警察といたしましては、そういう犯罪関係を認知いたしました場合におきましては出かけていく、また認知するように努力する、こういうことに相なるわけでございますが、北海道の場合におきましても、警察官が認知いたしましたときに直ちに出ているのですけれども、何と申しましても御案内のように、炭坑関係は比較的警察関係職員のおる場所から遠ざかったような場所に多いわけでございますので、何時何十分に到着したかということまでは調べておりませんけれども、北海道の関係でこういう事故が起ったことを認知いたしましたときに直ちに出かけていっている、こういうふうに私承知をし、そういう報告が来ておりますが、時間の点はさらに明確にしておきたいと思います。  それから他の職務機関との競合の問題でございますが、まず、一般論から申し上げて御説明いたしたいと思うのですけれども、すべて犯罪につきましては警察官は権限と職責がございます。ところが、その警察はすべての犯罪について権限と責任があるわけでございますが、特別司法警察職員という制度がございまして、特別司法警察職員または特別司法警察の職務を行う職員というのがそれぞれ法律根拠を持ちまして機関がございます。たとえて申すと、列車内の犯罪、列車内で警察官がスリを捜査し、その処理について刑事手続を進めることもできますけれども、鉄道公安職員がございまして、鉄道公安職員もまた同様のことができる、こういうふうな建前に相なっておるわけでございます。その関係でそういう特別警察職員を置いている制度の本旨は、これは御案内のごとく、そういうところの場所等におきましては、一般の警察だけを持ってきては何と申しましても、そういったようなすみずみまで徹底しがたいところがあるだろう、場合によっては、特別の技能を持つ者が司法警察の職務を行なった方がより効果的であろう。こういう趣旨のもとに特別警察職員の制度が置かれているわけであります。  御質問の場合は、鉱山保安法違反被疑事件につきましては、鉱務監督官がその特別警察の職務を行うことが可能なのでございます。佐賀の場合にもそういうことに相なろうかと思います。鉱務監督官は。鉱山保安法被疑事件については警察も可能でございますけれども、鉱務監督官も可能である。ところが、問題の事案につきましては、鉱山保安法違反事件だけでなしに、業務上過失傷害致死事件も考えられますので、そういう意味において刑法犯につきましては、この場合には、鉱山鉱務監督官には権限がない。こういうのが法律関係でございます。実際問題はそういう専門の知識をお持ちになっている鉱務監督官は刑法犯についても捜査権を有する警察官と共同して、おのおの事案の真相を明らかにしてゆく。そして刑法犯につきましては警察職員がやらざるを得ないのでありますけれども、場合によっては共同の結果、いろいろ事案に即する措置を講じてゆく、こういう制度が現行制度と理解いたすのでございます。御質問の佐賀の場合は、そういう建前で警察側と鉱務監督官側と共同してやろう、こういう建前でやっておったのでございますが、若干現地で、ある時期において行き違いとか、誤解の点があったようですが、そういうことがありましたけれども、これは話し合えばよくわかることでありますが、これはその当事者の方である時期に話し合ったということは私ども聞いております。少くとも現在におきましては、そういう誤解は当局間において解消しまして、共同で事案の真相発見に努めておるのが現状でございます。
  47. 山本經勝

    山本經勝君 そうしますと、鉱務監督官というのは、いわゆる坑内においては一応警察、つまり災害等の原因糾明等に当っては特別の警察権を持っている、こういうことになると思うのです。それは当然派遣班、つまり監督部が現地に派遣する監督官、こういう者が持っているということになるのでしょう。そうしますと、そうした人々がいよいよ現地に着いてそして実情調査し、そして判定するということは、警察権と同様な決定をあるいはやることになってゆくと思うのですが、その場合に、責任はやはり鉱山保安監督局あるいは監督部に属するのですか。その点をちょっと伺っておきたい。
  48. 中川董治

    政府委員(中川董治君) この責任は、その行為をしたものに関連する行為についての監督官と、こういうことになろうと思いますが、結局、警察官が法令の根拠に基いて行為をしたことについては警察官自身が責任を持つ、その職務を監督する機関が責任を持つ、こういうことになろうと思います。つまり鉱務監督官もこれと全く同様であると思います。今回の場合は、今回の場合に限りませんが、鉱山保安法被疑事件につきましては、鉱務監督官責任と権限がある、それから刑法犯及び鉱山保安法被疑事件につつきましては警察に権限と責任がある。逆に申しますと、刑法犯については警察だけしかできない。それから鉱山保安法違反については警察官もできるが、鉱務監督官もできる、ちょうど列車内のスリと同じで、列車内のスリはお巡りさんもできるけれども、鉄道公安官もできる、こういうことなんだと思う。それでそういう関係一つの事案についてそういうふうに競合する、競合するのは意味があるのですが、そういう場合には共同してやる。国家機関同士ですから、分けの機関同士ですから共同して相互の目的を達成することが、これが趣旨だろうと思うのであります。そういう競合して権限を持っている立法の趣旨を案ずるに、そういう特別な事件については警察官も権限があるけれども、さらに専門知識、技能を有する者に地方警察の職能を与えておいた方がより合理的になるであろう、こういう趣旨であろうと思いますが、少くとも今回のような、そういう事案の場合においては共同してやるというのが、これが健全な常識であろうと思いますが、その趣旨でやっております。少くとも現在は、ある段階においては若干の誤解とか行き違いがあったようでありますけれども、これは鉱務監督官と共同してやっておる、これが現状であります。
  49. 山本經勝

    山本經勝君 刑事部長の方の御質問を一応これで終りました。  それで保安局長にもう一点だけ伺っておきたい。  今お聞きのように、刑事部長の方のお話では、鉱務監督官、すなわちこれは現地派遣班と称する監督官をさすのか、あるいは監督部長をさすのか、それとも本省においでの、ここにおいでの局長さんがこれに該当するのか、そこいら辺はどうなんですか。
  50. 小岩井康朔

    政府委員小岩井康朔君) 鉱務監督官と申しますのは、私どもも鉱務監督官になっておりますし、本省にも何人かおります。それから現地の部長ももちろん監督官でありますし、ほかに監督官はたくさんおるわけであります。いわゆる鉱務監督官と名のついたもの全部さすものと考えております。
  51. 山本經勝

    山本經勝君 そうしますと、この清水沢の問題の火災変災に当っては、坑内に二名の残存者があることは公認されておる、生死の状態については不明である。先ほどの藤田委員質問に対して、局長の御答弁を聞いておりますというと、たとえば坑内避難をする努力をした、つまり坑道密閉箇所の近くまでその被害者罹災者がはい上ってきてそこで倒れた、こういうふうなことになっていると問題があると言われたのですが、問題はそういう不明確な状態で、この密閉作業あるいは注水作業がなされて永久に要するに救われがたい状態に追い詰められたということですから、これはやはり将来密閉が解除されて作業が復旧いたしますというと、そのことは明らかになるでしょう。しかし、そのことについても非常にこれは困難な問題ですけれども、長い間たちますと、坑内はいわゆるバレと称して坑道はつぶれてしまう。あるいは切羽にしてもつぶれてしまう。こういう状態でますます困難になりますが、一応原因についてはその究明がなされるものとして、石炭鉱保安規則二十四条に基く措置が正当であるかどうか、つまり業務上の過失、あるいは不可抗力であったのかどうか、そういう原因から経過、そうしてまた、二人をなお残して密閉注水等作業に切りかえて、そうして救われがたい状態に追い詰めたというような原因経過、そういうものが解明された際に、その責任はこの規定からいうならば、およそ局長答弁を求めるまでもなく、保安管理者、つまり経営者の責任であると、こういうことに御主張なさるのでしょうが、今の刑事部長の話を聞きいておりますというと、その原因等の究明について、その権限と責任というものが法的にはやはりこの鉱務監督官と称する特別の警察職がその権限を持った現地の派遣班なり、これが一職員であろうと何であろうとみな同じ権限を持っておると言われるのですから、その点が非常に重大になってくると思いますので、この点を御説明を願っておきたい。
  52. 小岩井康朔

    政府委員小岩井康朔君) 私もうたびたび申し上げておりますように、災害が起りました緊急の措置でありますので、原則としましては保安管理者が一切責任をもってやったというふうに解釈せざるを得ないと思っておりますが、従って、その措置に非常に妥当を欠いたというような点がございますれば、当然保安管理者責任を負うべきであるというふうに考えております。しかしながら、監督官といたしましても、その保安管理者措置保安管理者独自でできるものではありまするけれども同意を与えておりますので、責任は十分に感じております。しかしながら、法的にどう妥当を欠いた場合に措置をされるかという点につきましては、最終は裁判において決定するより以外にないのではないか、私どもも十分な責任は感じておりますけれども、原則の立場からしては、緊急の措置としての保安管理者措置だというふうに考えておりますが、当然監督官同意を与えておりますので、責任は十分に感じておりますが、どういうふうに具体的にあと処置がとられるかという点につきましては、最終は裁判所におまかせする以外にないのではないかというふうに考えております。
  53. 山本經勝

    山本經勝君 大体以上の点で、本日の質疑については終りたいと思うのですが、ここでお願いをしておきたいのは、先ほど労働大臣から非常に重要な御発言をいただいたそれは通産省と十分検討した上で対策を含めて思想統一といいますか、対策等を持ってそうしてこの委員会に報告かつ検討をして参りたい、こういうお話でしたから、しかもその時期としては、私お伺いしたところによりますと、今国会の会期中ということでありますから、いずれもう一皮こうした委員会を御開催顔って、関係各省の当局者並びにこの保安問題に対する対策等を含む御検討をお願いすることにいたしまして、本日この保安関係の問題、特に鉱山保安に関する問題については以上で終りたいと思います。  そこでなお二、三の問題について、労働基準監督局の方に御質疑を申し上げておきたい。  それは本年の三月三十一日、つまり前月の末日の午後に、これは私ども現在資料を持ちませんので新聞によるのですが、北海道の十勝、帯広というところで砂防工事、林道工事の現業者がそこの萩原組と称する土工等現場係員、そういった人々がなだれのために六十七名埋った、そこで死亡十二名、負傷十一名というようになっておるようですが、これは数字はわかりません。同じく四月九日に、これは午後の二時、北海道の檜山郡というのですか、上ノ国村今井マンガン鉱山、ここの休憩所がこれまたなだれのために埋った。その際に、休憩中の工員二十五名がいわゆる生き埋めになった、そうして死亡七名、重傷四名という事故が起った。さらに四月の十二日には、午後の五時半ですが、新潟県の中魚沼郡の日曹炭鉱魚沼鉱業所というのがあって、ここで持田という飯場がこれまたなだれで三十六名が罹災したのですが、そのうち二十名が生き埋めになり、死亡者が十七名という、最近一カ月たらずの間のこの重要な事故が起っておる。それがいずれも飯場、あるいは居住を含む鉱員住宅なんです。これは基準法上から申しましてもいろいろ問題があると思う。私は詳細な実情は、ここに申し上げましたように新聞による以外になかったので資料を持ちません。そこで、基準監督官の方で御調査になった詳細な資料があるなれば、あわせて御説明をお願いしたいと思います。
  54. 百田正弘

    政府委員(百田正弘君) お答えいたします。一番最初に御指摘のありました帯広の上札内の砂防工事のなだれの事故の状態であります。今お話通りに、本年の三月三十一日の午後一時半ごろ、なだれが発生いたしておりまして、萩原建設工業、そこの飯場が倒壊いたしまして、死亡が十七名出ております。そのうちの二名は労働者家族でありまして、重軽傷十人出しております。災害の発生状況でございますが、災害発生の前日から、午後四時ごろから非常に雨が降り続きました。そしてその発生の三十一日の昼ごろみぞれ、一時ごろから風速が非常に、十ないし二十五メートルの風速がありまして、従って、仕事ができないものですからして、全員飯場あるいは事務所に一時待機いたしておった。そこに非常に大規模な幅で、約六百メーメル、七ヵ所からのなだれがやって参りまして、そして飯場を倒壊した、こういうふうな事件でございます。  それから失礼でございますが、第二番目におっしゃったのは……。
  55. 山本經勝

    山本經勝君 四月九日の午後二時、北海道檜山郡……。
  56. 百田正弘

    政府委員(百田正弘君) その資料を今ちょっと持ち合せておりませんので、最後の日曹の件について御説明申し上げます。新潟県の日曹鉱業の魚沼鉱業所でありますが、これは四月十二日の夜、地すべりによりまして約一万立方米の土砂が崩壊いたしまして、社宅が倒壊埋没されました。これは先ほどの飯場とは違いますが、三棟、八世帯が倒壊いたしました。死亡並びに行方不明が十名、うち労務者が五名でございます。事故の発生の原因として考えられておることは、非常に雪解け水が地殻に浸透いたしまして、地盤がゆるんで大きな地すべりを起したというふうに推定されております。非常に簡単でございますが、一応御説明を終ります。
  57. 山本經勝

    山本經勝君 北海道の今の十勝の萩原組ですか、これのなだれによった死傷災害は、実は聞くところによりますと、この飯場はかって基準監督署の方で、前にこの飯場が同じく札内川のそばに作られておって、そして洪水のために流れて災害が起ったことがある。そこで、監督署の方ではこれを勧告して移転をさせたと聞いているのですが、そういう事情がありましたか。
  58. 百田正弘

    政府委員(百田正弘君) ただいまお話のございましたような事実がございます。と申しますのは、ダム工事の近所に札内川という川が流れておりますが、以前はそこに飯場を作っておったのでございます。三十年の六月三十日でございますが、はんらんいたしまして飯場が流れた。幸いにしてこのときは死傷者がなかった。そういう危険な事情の場所にありましたものですから、そこから離して、洪水の危険のないようなところに移さした、こういうことになっております。
  59. 山本經勝

    山本經勝君 今のお話で、新潟県の日曹炭鉱の場合にはこれは社宅なんですか、従業員の。
  60. 百田正弘

    政府委員(百田正弘君) 社宅でございます。
  61. 山本經勝

    山本經勝君 そうすると、もう一度お伺いしておきたいのは、北海道の場合には何といいますか、合宿のような形で、これは基準法でいう、基準法の五十四条に規定がありますね、これらの規定に、「使用者は、常時十人以上の労働者を就業させる事業、命令で定める危険な事業又は衛生上有害な事業の建設物、寄宿舎その他の附属建設物又は設備を設置し、移転し、又は変更しようとする場合においては、第四十五条又は第九十六条の規定に基いて発する命令で定める危害防止等に関する基準に則り定めた計画」が必要になっておりますね。そうしますと、それに基いて一応移転をさせたのだと思う。ところが、この山の斜面へ持ってきて、しかも北海道のごとく積雪量の非常に多い地域でありますから、これは傾斜があればなだれがあると考えなきゃならぬのですが、こういう状況についての監督行政の面では非常に手落ちがあったのではないかと私ども印象を受ける。山の斜面に並行して家を建てる場合に、どこかがけを削って平地を作る、つまり宅地を作るということか、もしくは山の斜面を切り取ってそしてそこに平地を設けてこうした施設をするということになると思うのです。そのことは特に雪の多い、しかも雪解けとともに地殻がゆるんでくる。こういう自然条件を持っているのですから、これは非常に危険な状態であったと想像しなければなりません。そういう点についての労働基準局の監督状況というのは、きわめて私の聞くところによると不十分なように感じるのですが、その点はどうであったか御説明を願っておきたい。
  62. 百田正弘

    政府委員(百田正弘君) お説の通り、このなだれの災害、これは冬になって……大体の概況を先に申し上げますと、昭和二十九年に四件、三十年に五件、三十一年度になって十件と非常にふえている。特に今年は積雪が多かったというような事情と、天候がまあいろいろ変化したというような事情もございましょうが、本年三十二年になって非常に多くなった、この冬が多かったということはおっしゃる通りでございます。それでこれに対しまして労働省といたしましては、どういう監督措置を講じておるかというお話でございますが、われわれはこの点につきましては、特に最近におきまして、電源開発工事ないし建設工事が非常に多くなりまして、しかもそれがだんだん不便なところで行われる、そういう山の奥等で行われることが多いのでございまして、特に従って、積雪期におけるなだれ対策につきましては非常に労働省といたしまして、できるだけこの災害防止いたしますために、昨年におきましても労働基準局長に対しまして必要な監督措置につきましての通牒を出しましたし、同時に、これに基く会議ないしは昨年の暮れにはこのなだれ災害に関するいろいろな資料を集めました。なだれ災害防止という資料を配付いたしまして、この冬におけるなだれ災害防止の完璧を期するように措置をとるような指示をいたしてきたところでございますが、この北海道のこの場合におきましては、これが現地、おっしゃる通りに、非常にこれは危険な場所というふうにおっしゃいましたが、まあ非常な傾斜面ということじゃございませんのですが、非常に不便なところでございます。一方こっちに建てれば、夏になって今度は洪水の危険がある。といって、こっちがなだれにつきまして、地形上そこに飯場を建てなければ建てるところがないというようなところでございますので、これに対しましては、なだれが起った場合に対する措置を十分講ずるようにということで、北海道の帯広監督署としては指示していたところでございます。何しろ部落からその地区が十八キロばかり離れているところでございまして、非常に地形の関係上適当なところに建てられないというような事情もあったようでございます。なお、このなだれがその翌日あたり、あるいはなだれがくるのじゃないかということで、片方の宿舎がら二号宿舎と申します宿舎に労働者を移動させたのでございますが、結果におきましては、両方ともやられたのでございまして、非常になだれが大きかったので、ある程度の、相当程度対策を講じておっても、これは結局効果が上らなかったように考えられたのでございます。われわれといたしましても御指摘の通り、なだれ災害防止につきましては、さらに一そう十分な監督をしていきたいと、こういうふうに考えております。
  63. 山本經勝

    山本經勝君 今お話のことだと、どうも変な話だと思うのですよ、これはここの合宿施設については、なだれ予防の方法について具体的な指示をなさったと言われるのですが、これはただ勧告をするなり、予防の措置を講じなさいという口伝えや手紙、あるいはパンフレットを出されたって、それが直接なだれを防止しないのですから、人間がその気で対策を講ずる以外にない、そうしますと、やはり監督行政の強化ということに求められると思うのです。そうして基準法の五十四条を見て参りますと、先ほど読み上げに「第九十六条の規定に基いて発する命令で定める危害防止等に関する基準に則り定めた計画を、工事着手十四日前までに、行政官庁に届け出なければならない。」こういうことになっておる。これは届けられたのだろうと思いますが、届けたのがいわゆる飯場の請負師だと思うのです、萩原組なら萩原組というものがどういうふうにやったかということについては、やはり現地について、たとえ距離が遠くてもこれは当然監督署は監督官を派遣して実情を見ておかなければならぬと思う。この確認はおよそなさっておると思うのですが、どういう状況であったのか、そうして内容としては、たとえばどういう予防措置が監督署の方で要求されたか、その点を一つ説明を願っておきたい。
  64. 百田正弘

    政府委員(百田正弘君) 当然そうした届出が計画書とともに出てきているのだろうと思いますが、それに対する措置につきまして、普通の場合、当然遠くても現地に参りまして現地を確認した上で適切な指示を与える。特になだれの場合には、そういうことを今年度において強化いたしておりますので、当然そういう措置をとったと存じますが、詳細な資料が手元にございませんので、これは資料としてお手元に差し上げたいと思います。
  65. 山本經勝

    山本經勝君 先ほど答弁の中で、一応予防措置を勧告をしたけれども、起ったなだれはそれを上回った予想外に大きななだれであったから、しょせん予防措置を講じておっても、この際はむだであったろうというお話があった。これはきわめて大事なことだと私は思う。なるほどやってなおそれに予防措置が講じられて、しかもその予防措置の能力以上の大なだれが起ったということは、また起るということは私はあり得ると思う。ところが、どのようなことがなされたかということは明らかでないだけではなくて、なだれが予想外大きかったのだから、実際は効果がなかったのであろうというようなことは、私はどうもおかしいと思うのです。  それからしかも、本省の方には、こうした届けが監督署だけでとまって、上ってこないのかどうか。あるいは北海道の基準監督局でとどまって、そうしてそれから上へは上ってこないのかどうか。これは非常に大事な行政的な問題だと思う。その辺をはっきりしておいていただきたいと思います。
  66. 百田正弘

    政府委員(百田正弘君) ただいまの届けでございますが、これは監督署に届け出るものでございまして、こちらには参りませんのです。
  67. 山本經勝

    山本經勝君 そうしますと、なるほど行政事務的な手続はそうでありましょう。しかし、先ほど話があったように、通牒では監督行政事務に対する具体的な指示をなさると思う。ところが、ことにこういう大きな事故、これは小さい事故ではないと思う、こういう大きな事故が起きれば、当然監督署は現地の実情をつぶさに見て、こういう措置を講じてこういうことをやったのだが、こういうことになった。そうして事後の措置はこうであるというのが、当然私は労働省の方に参る筋合いだと思うのですが、その点はどうなんですか。
  68. 百田正弘

    政府委員(百田正弘君) ただいま私が申し上げましたのは、寄宿舎、飯場等を設備する場合の届出が監督署にくるということでございます。ただ、今のような、こういう災害の起りました場合にどういう事情で起り、その間の行政監督ないし現地の局としての措置はどうであったかといったようなものは、全部私の方に報告させる、こういうことにいたしております。ただ、今資料がございませんので、入手いたしまして直ちに御報告申し上げます。
  69. 山本經勝

    山本經勝君 それからもう一点は、先ほど申し上げた北海道の檜山郡の問題ですが、これはお手元に何の資料もないということですが、これはおそらく新聞ではありますけれども、うそではないと思う、いいかげんなことではないと思う。今はマンガン鉱山の休憩所というのですから、私はやはり五十四条でいう「附属建設物又は設備」こういうことにやはり該当していくと思うのですが、そうしますと、これは労働者が休憩所として集団で利用する場所だと思う。そこになだれが起っているのですが、これは資料がないということであれば、すみやかに一つ調査をして資料をお出し願いたいと思います。ですが、これは当然、こういう私の解釈で誤まりかどうか確認しておきたい。基準法五十四条にいう「附属建設物又は設備を設置し、」という条項に該当すると思うのですが、その点の見解はどうでしょうか。
  70. 百田正弘

    政府委員(百田正弘君) 原則として該当すると思いますが、具体的な事情を調べてから、先ほどの御要求の資料とともに提出いたします。
  71. 山本經勝

    山本經勝君 それから最後に、新潟県の問題ですが、日曹炭鉱の方は社宅である、つまり鉱員の社宅であるということでありますが、鉱員の社宅として考えます場合にも、この種の災害は、やはりあらかじめ危険であるという状態については、基準監督局としてもあるいはその所管の監督署としても当然関知するところだと思いますが、この点はどうなんですか。
  72. 百田正弘

    政府委員(百田正弘君) 新潟の魚沼の鉱業所の場合は、多少その間の事情は違うのじゃないかと思うのでございますが、たまたまそうした地形で地すべりが起ったということで、ある意味においては不可抗力、天災地変による不可抗力ではないかと、こういうふうに考えます。
  73. 山本經勝

    山本經勝君 もう一点だけ伺っておきたい。これは炭鉱の例ですがボ夕山が雨のために、降雨のために地すべりが起った、そうして炭鉱の社宅がつぶれたことは、しばしばこれは長崎にもありましたし、福岡でも大きな災害が起っている。これはなるほど天災でしょう、天災であることは私どもわかるのです。地すべり等が天災であることはわかる。しかし、そこに建てられた鉱員の住宅あるいはその他の設備というものは、やはり「附属建設物又は設備」というものに入るのかどうか、あるいはまた「事業の建設物、寄宿舎」という明確な規定がある場合とは違うようでございますけれども、これは設備なり施設あるいは付属建設物、こういうことにならないのかどうか、私どもはそう理解しているのですが、この解釈が誤まりであったなれば、当局の方の御見解で是正をしておきたいと思うのですが、どうでしょうか。
  74. 百田正弘

    政府委員(百田正弘君) 五十四条の方は「命令で定める危険な事業又は衛生上有害な事業の建設物、寄宿舎その他の附属建設物」こういうふうになっておる。しかもこの規定がある趣旨といたしましては、有害な危険な作業なり、あるいはまた、衛生上有害な事業の建設物等は、その建物の設備その他が非常に安全衛生に重大な関係を持ちますので、これを特に届け出でさせるということにいたしておるのであります。社宅等については、直接これには入ってないと、こういうふうに解釈しております。
  75. 山本經勝

    山本經勝君 それでは最後にお願いをしておきたいのですが、なお、資料等詳細にお出し願って、次の機会に再度御質問を申し上げたいと思います。
  76. 百田正弘

    政府委員(百田正弘君) 今の資料と申しますのは、北海道の檜山のマンガン鉱の休憩所、それから先ほどお話しのありました監督署の措置の問題、こういった点でよろしゅうございますか。
  77. 山本經勝

    山本經勝君 北海道の十勝の場合の状況は、前につまり届けが出て、それでそれに対する対策等が指示されておるというのですが、そうしたその内容、それから日時、内容、そうしてそれに対する監督の状況、これはもう届けが出しつぱなしだったら意味ないと思います。それでなしに、届けが出れば一度は現場へ行って見られたと思う。そのときに勧告された内容の予防措置が講じられておったかどうか。もし講じられておらなければ、さらに講ずるように要求されるのだろうと私は思う。そういう点、あわせて資料として御提出願いたい。
  78. 千葉信

    委員長千葉信君) 山本委員とよく打ち合せの上、お願いいたします。
  79. 田村文吉

    ○田村文吉君 時間もありませんから、簡単に一つ伺いたいのでありますが、四月の十二日に次官通牒が出ておりますが、これはたぶん基準局の方で御起案になっているんじゃないかと思うのでありますが、さように承知してよろしゅうございますか。
  80. 百田正弘

    政府委員(百田正弘君) さようでございます。
  81. 田村文吉

    ○田村文吉君 そこで伺いたいのは、これは通産省とのお打ち合せは済んでおりますか。もう一つ、公正取引委員会の方とのお打ち合せが済んでこの通牒は出ておりますかどうか、伺っておきたいと思います。
  82. 百田正弘

    政府委員(百田正弘君) 通産省並びに公正取引委員会とは、この通達を出すことにつきましては打ち合せはいたしておりません。ただ中小企業庁等のいろいろな御協力を得なければいけませんので、十分一つ趣旨を説明しておきたい、かように考えております。
  83. 田村文吉

    ○田村文吉君 そうすると、こちらで、基準局で御起案をなさいまして、そうして通産省の方には協力を求めた、それから公正取引委員会の方には、たとえば今の最低賃金の協定ですね、こういうことになりますと、公正取引委員会に関係があるかとも思いますが、全然これは関係がないとお考えになっておりますか。
  84. 百田正弘

    政府委員(百田正弘君) われわれ通牒を出しますにつきましては、このことは業者において、自主的に労働者の労働条件の向上のためにそうした協定をするということで、直接の関係はないと存じまして、打ち合せはいたしておらないのでございます。
  85. 田村文吉

    ○田村文吉君 その点はなお御検討願って、はっきりしておきたいと思っております。というのは、ふろ銭を値上げするとかということがあっても、一々これはやかましい地方庁の取締りを受けておるわけであります。各業者が業者間で最低賃金をきめるというときに、これは実は最低賃金をきめるんじゃなくて、基準賃金をきめるようなことになる。そういうようなことが公取の関係上、お差しつかえがない、こういうふうに結果としてなるのでございますか、御検討願っておかなければならぬと思います。  それから、なお、私は労働大臣と通産大臣の御出席のときに、この問題をもう少し突っ込んで御質問申し上げたいと思うのでありまするが、大体の私のお尋ねしたいという要領から申しますと、つまり社会党の方で最低賃金法をお出しになった。それに対する一種の弁解的な意味でこれをお出しになっておるようなふうに考えるのでありますので、労働問題の懇談会に一応はおかけになっておる、こういうことでありまするが、労働問題懇談会の組織はどういうふうになっておりますか。
  86. 百田正弘

    政府委員(百田正弘君) 労働問題懇談会は、昨年のたしか四月に発足したというふうに承知いたしておるのでございますが、組織は、懇談会の会長が一橋の中山伊知郎先生でありまして、公労使、三者の構成になっております。
  87. 田村文吉

    ○田村文吉君 何名ですか。
  88. 百田正弘

    政府委員(百田正弘君) 約三十名でございます。
  89. 田村文吉

    ○田村文吉君 そこで私は、その社会党の提案になっておりまする八千円、六千円というような最低賃金をきめるというようなことは、いわゆる世界の趨勢として、ある程度まで、ある時期にきめていかなければならぬということが起ってくるとは考えておるのでありまするけれども、今、日本で一番問題になっておるのは、完全雇用の問題、いかにして失業者をなくするかという問題になっておりまするので、今のように、中小企業者がそういうたがをはめられますると、中小企業というものは成り立たないような場合が起ってくる。こういうことができるというと、同じ業種である大工業の人たちに非常に利益である。中小企業が低賃金で仕事をやってくれるために大工業というものがずいぶん圧迫を受けておる。でありますから、もしこういうもので最低賃金が、自由的、自主的にでも、地方的にきめて参りますと、中小企業というものは、もうあまり安い賃金はやらないことになるから、自分たちの競争能力は、力の弱いものになってくる、こういうふうに感じられまして、大工業の援助になる。そういう点をそこまでお考えになっておるかどうか、私はわかりませんけれども、そういうことをお考えにならぬというと、結局その付近の中小企業というものは、賃金を、ある官憲も慫慂し、ある有力者の慫慂によってでき上りますというと、結局そこの中小企業というものは、大工業のために圧迫されてしまう。こういうような例は、まあ卑近の例でありますけれども、名古屋に大日本製糖がある。あの付近には非常に小さな中小企業がある。もしその賃金を、大日本製糖あたりになりまするというと、相当に高い賃金を出してもやれる。ところが、あの付近の小さな工業になるというと、そういう賃金を払ったんでは、事実成り立っていかない、輸出もできない。こういうことになりまするので、今では相当安い賃金でやっておる、こういうことになっておる。そういうものが官憲の慫慂等によりまして賃金が上って参りますというと、中小企業を破壊して、大工業を援助する、こういうことに結果においてなる、こういうふうに私は考えますので、しからば大工業のない所の中小企業はいいじゃないかということになりまするけれども、たとえば織物等になりますると、やはりこれは各地に織物の工業がございまするが、皆お互いに競争しておる。それで甲地がもし最低賃金をきめられたということになると、乙地の方は非常に有利な状況になる。こういうようなことで、なかなかこういう問題は、その自主性に沿った政策をとるということは困難である。でありまするにかかわらず、私はまあ社会党でお出しになった最低賃金というものは、これは一つの大きな理想として掲げて、今後日本はそういう事態にいくんだということはけっこうなんですが、今のような完全雇用を目ざしていく日本の現状からいくというと、ある程度の時間と、それから段階が要ると思う。そこで多分こういうようなものを、次官通牒をお出しになったのだろうと思うのでありまするが、もしこれが各地において、皆慫慂によって最低賃金を業種別に、地域的にきめるということになりまするというと、そういうような大工業を一方において補助する、大資本を援助するという結果になるのではないか、こういうことを実は心配するのであります。そういう意味で、この問題については労働大臣、通産大臣の特に一つ御意見を承わってみたいと、こう思っておりましたのですけれども、次官通牒をお出しになりましたあなたの方としては、そういう点についてはどういうふうにお考えになってこれをお出しになっておりますか、ちょっと伺っておきたいと思います。
  90. 百田正弘

    政府委員(百田正弘君) いろいろと先生の御意見、承わったのでございますが、最低賃金制の問題についてはいろいろ御議論も多いことでございまして、また、先生のような見方もあろうかと思います。また、一面におきまして、中小企業におきまして非常な過当競争が行われまして、その競争というのが、賃金の切り下げ、あるいは労働条件の切り下げというような形でますます労働条件を低下させていくというような形の弊害も一面においてはあるのではないかというふうな点も考えられます。そういう意味におきまして、そういう労働者の最低生活を保障いたしまして、公正なる労働条件のもとに、しかも生産性を向上させて、企業が十分に生きていけるように、これは一面においてそればかりの対策ではいけないと思いますが、一般の中小企業振興対策等ともにらみ合せましてやっていくというふうな考え方の基礎の上に立っております。
  91. 田村文吉

    ○田村文吉君 見方が違うのでありまするから、これは私議論になりまするので、しいては申しませんですけれどもね、今日本の……、さっきから繰り返して申しますように、何とかして失業しておる人のないようにするということが、今日においてはこれは重大な問題なのです。今のような法律が先にできて、先にそういうものができると、せっかく事業が起って完全雇用にいこうというものを、途中でチェックするようなことになるわけなんですね。ですから、非常に矛盾した……、自民党内閣のいわゆる完全雇用という問題と、最低賃金の協定という問題はちょっと矛盾してくると思うのですね。しかし、最終の理想においてはぜひ一つそういう問題は、あまり安い賃金で働くようなことがないように措置するということの理想はけっこうなんです。しかし、現在の、現実にそういうことをやっていかれたのでは、完全雇用と矛盾する、こういうふうに私は考えるのでありまするが、それはどうですか。
  92. 百田正弘

    政府委員(百田正弘君) 完全雇用と矛盾するというお話でございますが、この点もいろいろ実は見方もございます。たとえば、完全雇用というのがどういう一体形のものであるか、ただ、人が何らかの形で雇われてさえおればいいのか、安い賃金でも雇われてさえおればいいのかというようなことは、むろんそういうことではないと思うのであります。単に雇用量が……、賃金が安くても雇用量をふやすというか、あるいは一定の、少くともわが国の国民経済の状況から見て、妥当な賃金で、しかも完全雇用が実現されるということが望ましいのじゃないかとわれわれは考えております。実際問題としては非常にむずかしいことかもしれませんけれども、必ずしもそれが相矛盾するというふうに考えておりません。
  93. 田村文吉

    ○田村文吉君 仕事の分量がふえてくると、いやおうなしに賃金というものは上るのです。これは古今東西もうはっきりした原理であります。ただ仕事をなくするというようなことをせずに……、輸出も振わないし、内地の産業もそれがために振わないということになりますると、当然これは失業者を出す、こういうことになって、しかもそれが全部大工業にすべてが集中してしまう、こういうことで、私は社会党さんのあれも、ただ理想論として掲げていられるのはいいけれども、実際論にくると、そういうことのために、実は大工業のちょうちん持ちをしている、こういうふうに私は言いたいのでありまするが、そういうことを役所の方でもお考えになって、まあ社会党からこういう案が出たから、ちっとは何とか言わなきゃならぬだろうというので、次官通牒というものをお出しになった、こういうふうになりましたが、どうもそういう点が少しく御認識の、私は相違する点でありますけれども、不十分でないかと、こう思うのであります。  もう一つ伺っておきますが、この文句の中に、第二項ですか、「業界の協定締結に関する相談に応じ、これに対し積極的な援助を行うことを主眼とする」、これはどういう点までおやりになろうということをお考えなんでありますか。
  94. 百田正弘

    政府委員(百田正弘君) この協定は、あくまでも業者の自主的な協定ということになっております。従いまして、その業界におきまして、こうした協定を結びたいというふうな相談がありました場合には、たとえばいろいろな同業種の賃金の状況なり、地域的な賃金の状況、あるいはその他の資料の提供その他の形によって援助をする、これが主体であります。
  95. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 関連して……。  私はこれは今の田村委員質問された最低賃金、特に「業者間協定による最低賃金方式の実施について」という次官通牒が、これが出ているということを知ったのですが、私はこれは労働省はどういう建前でこういうものを出されたかということを非常に疑問に思うが、その基準法に、最低賃金を作るという、最低賃金委員会を作って最低賃金を実施する、これは日本ばかりの問題じゃなしに、今日の世界を見ても、多くの国が最低賃金、最低生活保障という概念を実施している。三年ほど前に最低賃金委員会が、基準局の主宰、要するに労働省の主宰でできて、いろいろと論議されて、業者の問題からやっていこうとかというような論議がされたことも私はもうよく知っている。で、今日われわれは最低賃金の法案を出しているのであります。今、田村委員は理想ということを言われましたが、現実の問題として、われわれはこの最低賃金が今日の経済状態下において実施できるという確信を持っております。われわれは十分な角度から、いろいろの角度から検討いたしまして、これを裏づけるあらゆる角度の資料も、国会にも提出いたしております。皆さんも、よく基準局もお知りだと思うのであります。そこで、それじゃ労働省と労働者関係を見るとどうかというと、最低賃金委員会を今月中に発足をして、日本の労働者の最低賃金の問題を検討しようということになっているのです。ところが、ここで業者協定というような問題を次官通牒で出されるという趣旨が、それじゃせっかく労働省が今最低賃金委員会を開いてやろうという趣旨と、どうなんですか。私はそこのところは大問題だと思う。私はこの問題は、きょうここで時間がありませんから、具体的にやろうとは思いません。しかし、その意図だけは私ははっきりしておいてもらいたい。後日検討するためにはっきりしておいてもらいたい。
  96. 百田正弘

    政府委員(百田正弘君) この次官通達を出した意味でございますね。
  97. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 ええ、そう。
  98. 百田正弘

    政府委員(百田正弘君) これは御承知と思いますが、労働問題懇談会におきまして、この問題の御審議をいろいろ願って、最低賃金の問題について御審議を願ったところでございますが、去る二月に同懇談会から意見書が出まして、それの要旨としますところは、政府は、真剣になってその法制による最低賃金の実施に努めねばならいということが一点。  第二には、現在のわが国の中小企業の実態を見るときに、賃金形体、その他に合理的でないものがある、いろいろな近代的でないものが多いからして、まずそうした基盤を育成するためにも、業者協定方式等を導入することは適当な方式であろう。  それから第三に、なるべくすみやかに中央賃金審議会を再開して、法制による最低賃金の法制準備を進める、こういう御意見でございましたので、その御意見をそのまま尊重いたしまして、中央賃金審議会を早急に再発足させるために去る四月三日に労使に対しまして委員の推薦を願い、委員の任命をみまして、早急に法制による最低賃金制に関して御審議を願うことになっております。同時に、その今の御意見書にございました、業者間の協定方式ということも、それ自体として実質的な賃金の向上になって、労働者の保護にもなり、あわせてまた、法制によるそうした最低賃金制の法制のできる基盤の育成にもなる、こういう見地からいたしまして、その意見書を尊重したらどういうふうにやるのかということで、基準局長に対してその大体の骨子につきまして通達した、これがこの通達であります。
  99. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 最低賃金委員会が、その国の憲法の定めに従って最低賃金の具体的な問題を検討しようというときに、業者協定の問題をやりなさい、労働問題懇談会でどのような意見があったかということはともかくといたしまして、法律に基いて最低賃金の問題を基準法の精神に基いて労働保護の立場からやろうとしているのに、頭からげたを預けておいて最低賃金委員会を開こうということについては私は納骨できませんよ、これは。実際問題として、政府は最低賃金問題をどういう工合にお考えになっておるか。私はその問題は重大な問題だと思うのです。たとえば先ほど田村委員から意見がありました理想とか、極端にいえば空想といいますか、そういうふうな雰囲気の発言がありましたけれども、実際問題として、今日の業者保護も一つ方法でしょうが、業者協定じゃなしに、国が最低賃金立法を定めて保護していくという方式がみんなどこでもとられている、それがこういう格好で、たとえばひがみかもしれませんけれども、こういうものによって最低賃金というものをずらしてしまって、業者の最低保護でなしに、業者の利益を主体にした業者最低賃金というものを作ろうという意図がこういうところに盛り込まれるということになれば、社会保障、福祉国家という道というものをどこへ作っていくのだ、こういう最低賃金、最低生活保護という根本的な問題についてでも、私はもっともっと検討されてやるべきじゃないか、これは意見なんですから何ですけれども、しかし少くとも私の言いたいことは、最低賃金委員会が今開かれようとしている前にこういうことを出すということは、私はどうしても納得できない。今の返事を聞きけばいいのです。いずれこの問題は検討いたしますからいいですけれども、私はそういう点は十分に労働省としては、特に担当される基準局としては考えるべき重大な問題であろうと私は、今率直に考えるわけです。しかし、これはもういずれあらためて、機会を得てやりたいと思いますから、これで打ち切ります。
  100. 山本經勝

    山本經勝君 次官通牒は、今私ども初めて承わって、こんなことが出ているということを知らなくて、びっくりしているのですが、すみやかに次官通牒なる文書を近日中に委員全体にお配り願いたい。  それから、これはきわめて基本的な重大な問題ですから、十分時間をとって、掘り下げた次官通牒に対する検討を、別個にいたしたいと思います。こういうことを一つ確認願っておきます。
  101. 千葉信

    委員長千葉信君) 労働情勢に関する本日の調査は、この程度にいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  102. 千葉信

    委員長千葉信君) 御異議ないと認めます。  暫時休憩をいたします。    午後一時五分休憩    —————・—————    午後二時二十八分開会
  103. 千葉信

    委員長千葉信君) 休憩前に続いで会議を開きます。  委員の異動を報告いたします。四月十八日付をもって小滝彬君が辞任し、その補欠として吉江勝保君が選任せられました。   —————————————
  104. 千葉信

    委員長千葉信君) 引揚者給付金等支給法案を議題といたします。提案理由の説明を願います。
  105. 神田博

    ○国務大臣(神田博君) ただいま議題となりました引揚者給付金等支給法案につきまして、その提案の理由を御説明申し上げます。  過般の大戦の終結により、きわめて多数の同胞がその生活の本拠とする外地からほとんど無一物になって引き揚げ、地縁、人縁の乏しい内地で生活の再建をはからねばならなかったのでありまして、内地の戦災者等に比較いたしましても、その再起更生にさらに大きな障害があったことは、ここにあらためて申しあげるまでもないところであります。  政府は、これら引揚者に対しましては、その実情にかんがみ、応急的な援護を行うとともに、住宅の供与、更生資金の貸付等の援護更生施策を実施いたして参ったのでありますが、多年の懸案であった在外財産問題につきましては、昨年六月、内閣総理大臣から在外財産問題審議会に対し、在外財産問題処理のための引揚者に関する措置方針について諮問がなされたのであります。同審議会においては、きわめて慎重、かつ、熱心にその本質及び実態の究明を行い、昨年十二月に至り、内閣総理大臣に対し、右の諮問に対する答申が提出されたのであります。政府といたしましては、右の答申の趣旨にのっとり、引揚者に対する施策を実施するという基本方針を定め、その実施方法等につきましてはできるかぎり、引揚者の要望に即することを旨として種々考慮いたして参ったのでありますが、ようやく先般、諸般の調整を終り、ここに引揚者給付金等支給法案として提案する運びに至った次第であります。  以下この法案の概要について御説明いたしたいと存じます。  まず第一に、終戦時、外地に六カ月以上生活の本拠を有していた者等所定の要件を満たしている者を本法にいう引揚者とし、これら引揚者に対しましては、終戦時の年齢の区分により、五十歳以上の者に二万八千円、三十歳以上五十歳未満の者に二万円、十八歳以上三十歳末満の者に一万五千円、十八歳未満の者に七千円の引揚者給付金を支給することにいたしたことであります。なお、外地に長く残留することを余儀なくされ、講和条約発効後引き揚げた者は、その実情にかんがみ、外地に生活の本拠がなかった場合においても、引揚者給付金の支給対象とし、さらにそのうち、いわゆる戦争受刑者につきましては、年齢にかかわらずすべて二万八千円を支給することにいたしました。  第二に、ソ連の参戦または終戦に伴って引き揚げねばならなくなった者あるいは外地に残留することを余儀なくされていた者が外地において死亡した場合及び引揚後二十五歳以上で死亡した場合は、それぞれその遺族に対し、遺族給付金を支給することとし、その額は、外地で死亡した者の遺族につきましては、死亡した者の終戦時の年齢の区分により、十八歳以上であった場合は、二万八千円、十八歳未満であった場合は、一万五千円とし、引揚後死亡した者の遺族につきましては、引揚者給付金の額に見合う額といたしたことであります。  第三に、一定金額以上の所得のある者等現に生活基盤の再建をなし得た者には給付金を支給しない趣旨のもとに、その所得税額が八万八千二百円をこえる者及びその配偶者には、引揚者給付金及び遺族給付金を支給しないことといたしたのであります。  第四に、引揚者給付金及び遺族給付金は、記名国債で交付することにし、その利率は年六分、償還期限は十年以内、発行期日は昭和三十二年六月一日にいたしたことであります。  その他、不服申し立、国債元利金の免税、実施機関等所要の事項を規定いたしておりますが、この法律により引揚者給付金及び遺族給付金の支給件数は約三百四十万、国債発行総額は五百億円に達するものと見込んでおります。  なお、以上申し述べましたこの法案による措置にあわせて、政府は、引揚者に対する生業資金の貸付、住宅の貸与の援護施策につきましても、その拡充に努力いたす所存であります。  以上がこの法案を提出いたしました理由であります。  何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いする次第であります。  なお、終りに、この法案に対しましては、衆議院におきまして、終戦後引き続き外地にある間に、いわゆる戦争受刑者として拘禁された者で講和条約発効前に引き揚げ、かつ、引き続き昭和二十七年四月二十九日以後にわたって拘禁されていた者は、講和条約発効後も外地において拘禁されていた者と同様に取り扱う趣旨の修正がありましたことを申し添えておきます。
  106. 千葉信

    委員長千葉信君) 次に衆議院修正点について、衆議院議員野澤清人君から御説明を願います。
  107. 野澤清人

    衆議院議員(野澤清人君) ただいまお手元に配付いたしました自由民主党及び日本社会党共同提出にかかる修正案の趣旨について御説明申し上げます。本法案によれば、日本国との平和条約第十一条に定める裁判によりいわゆる戦争受刑者として外地で拘禁された者で、昭和二十七年四月二十九日の講和条約発効後に本邦に引き揚げてきた者は第二条第一項第四号において本法の対象となっておるのでありますが、同様の事情にあった人々で講和条約発効まえに引き揚げ、そのまま戦争受刑者として、巣鴨刑務所に引き続き拘禁された者は、その長く拘禁状態にあった実情においては、講和条約発効後に引き揚げてきた者と少しも異なるところがないのであります。よって今回これらの人々とも第二条第一項第四号の引揚者に含めることとして本法の対象として処遇いたそうとするものであります。  何とぞ御審議の上、すみやかに御可決あらんことを望みます。
  108. 千葉信

    委員長千葉信君) 本案に対する質疑は、次回以降に譲りたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  109. 千葉信

    委員長千葉信君) 御異議ないと認めます。   —————————————
  110. 千葉信

    委員長千葉信君) 次に、児童福祉法の一部を改正する法律案を議題といたします。御質疑を願います。ちょっと速記をとめて。    〔速記中止〕
  111. 千葉信

    委員長千葉信君) 速記を始めて。
  112. 山下義信

    ○山下義信君 今回の改正は時宜を得た妥当な改正であると思うのですが、内容について事務当局から説明を伺っておりませんから、この改正の内容につきまして御説明を受けたいと思う。精神薄弱児通園施設については、従来の収容施設に異なって、それぞれの保護者からこの施設に通わせようという趣旨の施設のようであります。その保護指導するというこの施設の事業の内容は、従来の収容施設と大体同じなのでありましょうか。この施設の事業内容は若干異なるのでありましょうか。という施設の事業の内容について伺いたいのです。  それから何としても精薄児童でありますから、保護者から通うと言いましても、通園いたしまする往復等についても相当なる保護が要るだろうと思う。そういうことの配慮等はどういうふうになっているかという点ですね。  それからいま一つは、これはそれぞれのこの児童の保護者からのみ通園をさせるのか、あるいはその他の施設からも、個人的な保護者でなくして、他の施設からも通園させるということにするのか。この施設の事業の内容等に入って、そういう点を御説明を願いたい。
  113. 高田浩運

    政府委員(高田浩運君) お答え申し上げます。  第一点の事業の内容でございますが、従来ありました精神薄弱児の収容施設と目的が同じでございますので、従って、事業の内容もまあ大体同じでございます。すなわち、生活指導を主としまして、学習指導等も行い、また、将来におきましては職業指導等も行う、そういうようなことにいたしておりますけれども、ただ日々通わせるわけでございまするからして、従って、精神薄弱児の家では、どちらかといえば、収容施設に入っております者に比べますと、総体的にいってまあ軽い者と申しますか、そういったことになることが一つと、それから昼間だけのものでございますので、そういうような特色に伴う実際上の差異というものは、これはあり得ると思いまするけれども、目的でありますとか、抽象的な内容でありますとか、そういったことは大体同じに考えております。  それから第二点の往復の点で、非常にこまかい御親切な御心配をいただきましたが、その点が実はこの問題を始めますについての一番の問題点でございましたので、特にまあ施設にバスを付属せしめまして、この通園施設は必ずバスをつけることにいたしまして、そのバスで、朝、一定の個所に集まっております者を乗っけて、施設に連れて行き、帰りにはまた同じようなしかけで帰宅をさせる、そういうような考え方をとっておりますから、もちろん相当広い地域から通うにつけまして、こんなバスだけで十分でないことは、これはよく私どももそう思っておりますので、今お話のように、通園途上、いろいろな危害でありますとか、そういった点については十二分に気をつけて参らなければならないと考えておる次第でございます。  それから第三点の御質問の点につきましては、これはやはり施設に収容されておる者から通わせるというのではなしに、保護者の手元から通わせる、そういうような考え方をとっております。
  114. 山下義信

    ○山下義信君 各個人の家庭で、精薄児を持っている家は、非常にまあ困っておられて、気の毒でありまして、その対策としてこういう通園の精薄施設を持ったということは、非常に進歩的な施策でありまして、非常にけっこうだと思うのですが、文部省との関係はどういうふうでありますか。非常に知能の低い子供ははっきりとわかりますから、あまりそういう水ぎわが不明瞭になるということはありませんが、大体文部省で特殊学級にでも入れようというような、いわゆる——何と言いますかね、そうそう、知能指数の五〇前後と言いますか、そういうようなものをどちらに入れるか、いわゆる学校教育法の特殊学級に入れる児童か、もしくはこの施設に通園させていい児童かというような区別は、文部省との、そういう関係はどこできめることになりますか。
  115. 高田浩運

    政府委員(高田浩運君) 大まかに申し上げまして、文部省との関係につきましては、大体の目安としまして、IQ五〇以上の者はこれは学校教育でやる、それ以下の者につきまして、従来は厚生省の精神薄弱児対策の対象として考える。従来そういうような考え方を実は取って参っておったのでございます。それで従来は収容施設でございますので、まあ両者の関係というものがそうこんがらからずに済んだわけでございますが、こういうふうに通わせるということになりますと、確かに今お話のような点が、まあ心配をされる点かと思うのでございます。これにつきましては、もちろん学校教育の方をこれは優先すべきことは当然でございまして、従って、大体論としまして、今申し上げました五〇を境として取り扱うということになるわけでございますが、形式的に申し上げれば、就学を免除、また猶予されてない者は、すべてこれは学校教育であります。そういう猶予、または免除された者が——猶予は別でありますが、免除された者についてだけ通園施設なり、あるいは収容施設というもので、お世話を申し上げる、そういうふうな考え方にしたしております。
  116. 山下義信

    ○山下義信君 父兄が文部省の特殊学級の方へ入れるということを好むか、——かりにですね、五〇前後の知能の、どちらに入れていいかわからぬような、境目をかりに例をとるとして、学校の特殊学級の方へ入れたがいいと思うか、こういう新しい、この非常に保護福祉について十分な尽力がしてもらえると思うような、こういう施設の方を父兄が好むかということは、これはなかなかいろいろ父兄が考えるだろうと思うのですが、どちらにしても、何ですね、今局長の言われたように、これは学校の方には入れない子供だということを学校で、まあ先に鑑定して、そしてそれをきめてもらって入れるのでしょうかね。それとも児童相談所あたりで鑑別をして、そして鑑別をすれば、学校の方へ行く、あるいは行かなくてもこちらへ通園をするというような手続にするのでしょうかね。その辺は文部省の方の決定を待って、この通園者の、通園児童の……、どちらにしても児童相談所で認定しなくちゃならぬのでしょうから、その辺の関係をどういうふうにしていこうという御方針でしょうかね。非常にこまかいことを聞くようですけれども、やはり一応手続としては、父兄にとってみれば学校の方へ先に行ってから、いやこの子供は学校ではいけないから、学校でなくてと言われるのを待って相談所へ行くのか、もうそういうことをしなくても、児童相談所へ行って、児童相談所の方と相談をして、児童相談所が文部省、学校側と相談をして手続をとってくれるのか、父兄にとってはなるべくそういう手続等もめんどうでない方がよろしいのですね。一方からいけば児童のことですから、児童相談所へ行けば児童相談所から教育委員会に伺うというか、学校側へ連絡をとってそういうサービスをしてもらう方が実情はいいわけですね。その精薄児の子快をあっちへ連れていく、こっちへ連れていくということは、父兄としても繁雑で気の毒でもありますし、そういうことはどういう関係でやろうとするのでしょうかね。
  117. 高田浩運

    政府委員(高田浩運君) 形式的に申し上げますと、学校教育の免除を受けた者について措置をするということでございますが、免除するまでの実質的な過程についての御質問、御心配かと思うのでございます。免除は保護者の申請に基いてするということになっておるわけでございますが、従って、保護者が申請をするまでに学校の方から指導的に父兄の方に申し上げて、そういう経過になる場合もこれはあろうと思います。それから自分の子供の性情等にかんがみまして、児童相談所等に相談に行ってそれから学校の方に申請を出す、そういうようなことになる場合もあろうかと思うのでございます。児童相談所というものが御承知のように、非常に全国的に見れば地域的に数が少い現状でございますので、先に児童相談所の方へかけこんでこまかい知能テスト等をやってということには参らぬ場合も相当あろうかと思うのでありますが、従って、今申し上げました内方のケースというものは当然出てくると思うのでございます。そういう意味におきまして、児童相談所とそれからいわゆる学校関係あるいは児童福祉関係者と学校関係というものの両者の、関係者の連絡をより一そう密接にいたしまして、その間要らざる摩擦なり、あるいは親に要らざる負担をかけるというようなことがないように、この実施につきましては、これは注意をして参らなければならぬと考えております。
  118. 山下義信

    ○山下義信君 そうして下さい。文部省とよく御協議下すって、そして父兄のために便利のいいように御検討を願いたいと思います。こまかいことをお尋ねすることになると際限がありませんが、いま一つは、これは予算を見ますと、六カ所か七カ所一応お作りになるのですね。実は精薄児の問題は非常に大きな問題で、周知のごとく、数十万という精薄児があるわけです。これを少しでもこの施設が強化されるということは非常にわれわれとしてもけっこうに思うのですが、この少い施設に、定員もあることでありますから、もし多数の通園の希望が出ましたらば、どういうふうにして採否を決定しますか、一つの施設に百名とか八十名とかというところへ二百も三百もうちの子供も通わせてくれ、うちの子供も世話になりたいということが殺到すると、これは入学試験みたいに、精薄児に入学試験するわけにはいきませんから、どの子供を入れてどの子供をということもよほど考えなければならぬ。知能の低い者から入れるということもこれもおかしげな基準……、できるだけ私の希望としては、その精薄児をかかえておるために困っておるような家庭というような、何としてもこの福祉施設でありますから、いろいろその通園児を決定されるにつきましても、あらゆる観点から考慮されましていかれることが必要じゃないかと思いますが、そういう点のお考えはどうなっておりますか。
  119. 高田浩運

    政府委員(高田浩運君) 今お話の点、これは精神薄弱児対策全般に通ずる問題かと思うのでございますが、何しろ一ヵ所きわめてわずかな人数でございますので、今お話のような点が相当起ってくると思うのでございます。これの選択につきましては、これはまあ精神薄弱児の特殊性にかんがみまして、大へん苦労なりまあむずかしい問題だと思うのでございますが、大体考え方としましては、今お話のありましたような、家庭における養護の状況等を相当しんしゃくをいたしまして措置をする、しないということを決定すべきだと思うのでございますが、同時に、こういう通園の施設でございますので、おのずから先ほど御心配のありました通園の関係でありますとか、あるいはこの訓練の可能性と申しますか、適否と申しますか、そういった点を考えて措置の適否をきめるということにいたしたいと思います。これらの点は、措置の基準をできるだけこまかに作りまして、地方にできるだけ摩擦なり迷ったりするというようなことが少しでも少くなるように努めて参りたいと思います。
  120. 山下義信

    ○山下義信君 最後にお尋ねしますのは、国立の精薄児の施設ですね、この国立精神薄弱児童施設の設置法は、行政機関の設置法というので内閣委員会の方へ付議せられて、実際はこちらの委員会で関係の深い事業なんですが、非常に形式的に、あれも一つの国の行政機関というので、他の委員会で審議せられて、その内容等伺う機会がこの委員会では実はなかった。大体においてけっこうでありますから何も異議はありません。ないことでありますが、それがこの児童福祉法へ持ち込まれて改正案となってここへ出てきておるのを伺いますと、国立の精薄児では年令をずっと、相当、一本立ち、一本立ちというとおかしいですけれども、相当まあ何ですね、やっていけるようになるまでは置くことができると、こういうことになっておる。これは他の精薄児施設も同様な措置をされますか。国立の精薄児施設に関する限り法律の上でそういうふうな、いわゆる在所年限というものが俗にいう無期限に、そういう生活の自立といいますか、とにかくある程度まで、出しても差しつかえないというまで無期限に置かれることになっておる。他の施設はそうでないことになっておる。他の施設はよくよくの場合、知事が特別に認可をしまして若干の年令に延長が許されてある。たしか二十才までという延長が許されてある。この国立の分が今言うような、ずっと長く置けるようになっておって、これは他の施設との関係は、離れて、こういうふうに特別の考え方をされましたのは、何か理由があるのかどうか、他の施設との関係はどうするか、年令の延長の点ですね。  それからもう一つついでに、これでしまいですが、国立の精薄児施設を作ると、これは実にけっこうなこと、多年の斯界の要望を実現するものでありまして、双手をあげて賛意にたえませんが、国立でやる以上には国立らしいやり方がなくちゃなりませんね、どういうところに特に力を入れてどういう点をりっぱに一つやるという、独得の目的が当局にはこの事業内容等についてあるのか、この点を設置法のときに伺うことができませんでしたから、一応ここで、この委員会で伺っておく方がいいと思います。
  121. 高田浩運

    政府委員(高田浩運君) 従来、国立の精神薄弱児施設を設けるということについての考え方の一つの根本は、いわゆる精神薄弱児の分類収容と申しますか、そういった考え方に出発いたしておるのでございまして、御承知のように、精神薄弱児は非常にたくさんございますが、そのうちの九〇%ぐらいはIQ五〇以上のいわばどちらかと申しますと軽い方、それ以下の者を厚生省の方で担当しているわけであります。このうちにも御承知のように、比較的軽い者と非常に重い者、あるいはまた、精神薄弱児で同時にほかの障害も持っている者というようなものがございまして、これらを一緒に従来の形の精神薄弱児で取り扱っていくということは、その実効を上げる上からいいましても非常に難点がございますし、そういう関係からいたしまして、精神薄弱児のうちの程度の重い者、それから白痴の者、あるいは盲でありますとか、あるいはろうあでありますとか、そういったものと精薄と一緒に持ってるいわゆる二重の不幸をみずからしょってる者、これらもやはり一般の精薄児と一緒に収容して処置をするというのには不適当な面がございますので、これらをやはり重症の、白痴でありますとか、あるいは盲ろうあとダブルになっております精薄児は、特別の収容をしなければならないというような考え方が非常に年来あったわけでございます。しかもこれらの者につきましては、その数からいいまして、一面において、また、管理運営という点からいいましても、府県なりあるいはそれ以下、個人等にまかせるということでなしに、やはり国で本腰を入れてやらなければうまくいかないぞというような点もありまして、これらについて一つ国立でやってもらいたいということが、御承知通りの従来の関係者の非常に熱望するところであったわけでございます。従いまして、今度三十二年度の予算でできることになりました国立の施設につきましても、今申し上げましたような考え方に基きまして、程度の重い者、ないし二重の障害を持っておる者、そういったものを収容するという考え方に達しておらないのでございます。しかし、これはそういう重度の者、あるいは特別の障害を持っておる者だけを集めてお世話をするということは、日本でいえばいわば初めての経験でございまして、これはよほど気をつけて参らなければならぬというふうに私ども考えておるのでございます。もちろん従来精神薄弱児を取り扱って参りました経験からいたしまして、生活指導の面においても、学習指導、あるいは治療の面においても、骨の折れることでございますけれども、特に国立としてそういう特殊な者だけを、重い者だけを扱うということになりますと、その辺のところがさらにこれはむずかしい点であろうと思いますので、それらの点を遺憾なくお世話ができるように準備に、あるいは土地の選定等に万全を期して参るつもりでございます。それと同時に、精神薄弱児の問題については、まだまだ未解決の点が多うございますし、それから施設の管理運営等についても、十分いろいろな技術面において研究しなければならない面もありますので、国立たるからには、やはりほかの精神薄弱児の施設に関しまして、相当指導的な立場に立ち得るように、技術面なりその他の面において研究もし、工夫もし、努力もして、それらの資格も十分備えて参らなければならないと思っておるのでございます。そういうように、特殊の精神薄弱児の世話とそれから全体の精神薄弱児の対策についての研究、技術、そういった面での指導的な立場をとり得るようにというようなふうに気をつけて参りたいと思っておるのでございます。  それから年令の点につきましては、まことにごもっともな御質問でございまして、いわゆる児童福祉法の建前からいたしましては、今度の措置はいわば例外中の例外でございますが、今申し上げましたような特殊の精神薄弱児、特に重い精神薄弱児を取り扱います関係上、これが訓練でありますとか、あるいはしつけでありますとか、そういった面について普通の今まで収容されて参りました精神薄弱児の施設等におきますよりもより長期の期間を、ある程度完成するにいたしましても、より長期の期間を必要とするということは、当然考えなくちゃならないことでございまして、そういう観点からいたしますと、十八才あるいは二十才ということではきわめて中途半端なものに終ってしまって、かえって不幸に帰するというようなことも考えられますので、特に例外といたしまして、社会生活に一応順応できるまでというふうにいわば年令延長をしたわけでございます。もちろん一般精神薄弱児の収容施設におきましても、特殊な場合に二十才まて延ばし得るというふうになっておりまして、原則としては十八才でございまして、従って、これを、その年令をオーバーいたしますというと、そこから出なくちやならない、さてそれから行く先というものはきわめて少いということで、その辺が一つの問題点になっていることは、私たちも十分承知をいたしておりますけれども、やはりこれは児童福祉法によりまして、十八才とかあるいは二十才とか、そういうふうな区切りをつけておりますことは、やはりそれ自体として意味のある、相当な人間の生理的その他の関係根拠を置いた考え方であろうと思いますので、一応従来の線を守っていく、従来の線で参りたいと考えておりますけれども、しかし、これらの点は国立の施設におきまする経験なり研究なり、そういった点を十分しんしゃくをいたしまして考えまして、将来における一つの研究問題として一つ研究さしていただきたいと思います。
  122. 高野一夫

    ○高野一夫君 簡単でけっこうですから、局長から説明求めたいのですが、厚生省から資料が出ておりますが、この資料を見ますというと、精薄児の概数が出ている。全国で十八才未満のうちで精薄児の概数が約九十七万人、そこで最後の表を見ますると、全国で現在施設が公立、私立合せて八十五カ所、そしてその収容者が総計わずかに四千六百九十六名、そうすると、現存あると推定される九十七万に対しまして、現在入所している精薄児はわずかに、今計算してみましたが、〇・四八%にすぎない。これはどういうことになるわけでありますか。希望者は多いんだけれども、施設が足りないという意味なのか、施設を作っても入りたがらないという意味なのか、この辺は今後の対策としても根本の問題だと思うので、この点についてお伺いします。
  123. 高田浩運

    政府委員(高田浩運君) 施設が対象数に比べまして非常に少いということは、これはもうお説の通りでございます。ただ、今お話になりました数字について申し上げますが、この九十七万のうちには、実は精神薄弱の程度の各段階の者が入っておるわけでございます。そのうちの約九〇%というものは、いわばIQ五〇以上、すなわち学校の特殊学級に通えるような者でございまして、厚生省で主として対象といたしておりますのはそれ以下の、IQ五〇以下の者でございまして、従って。パーセンテージにいたしますと、そこに書いてありますように非常にパーセンテージとしては少いものでございます。しかし、それにいたしましてもやはり何万という数字になることはお話通りでございますし、一方また、この精神薄弱児についての的確な調査というのはなかなか困難であるし、また、収容の適否、そういうことになりますと、さらに困難でございますけれども、いずれにいたしましても、現在の収容施設では非常に不足であるということはお話通りでございます。従来、この精神簿弱児対策が出発いたしましてからまだ日が浅いのでございまして、今後において十分これが拡充に力を注ぎたいと思いますし、設備費等につきましても、三十二年度においては前年度の二倍見当にふやしておるような状況でございます。
  124. 高野一夫

    ○高野一夫君 大体この統計でいけば八方六千とにかく八、九万の丸塚児童があるというふうに考えていいんじゃないか、これは医学関係者の学童調査の統計でありますから、一応これを基準にして考えて、そういたしました場合に、現在五千名足らずしか収容ができない、これから通園もあるし、また、新たに施設の増加もありましょうけれども、この数万の対象者をことごとく入所せしめるということの対策にはどのくらいの国家の予算がかかるであろうかというようなことについて、厚生省で一応研究をされたことがありますかどうか。
  125. 高田浩運

    政府委員(高田浩運君) 今お話しの数とまた別個の数でございますが、二十七年に要保護児童調査、保護をしなければならない児童が一体幾らぐらいあるかということの調査をやったのでございます。これはもちろん調査のやり方なりについても問題がございますけれども、一応それによりますと、精神簿弱児で収容保護しなければならないという数字が出ましたのが約四万五千でございます。この数字自体が的確な数字であるかどうかということについては十分検討の余地がありますけれども、一応そういうふうな数字が出ているわけでございます。そこで、実はそういった収容をしなければならない児童の数字を的確に把握いたしまして、それに応じた何年計画でどうするということの計画を立てるのが、普通の行政のあり方でありますし、当然そうすべきでございますけれども、今お話のありましたように、それにいたしましても、対象児童とそれから現有勢力との間があまりにも開いておりまして、実は何年計画を立てるというところまでも進んでないというのが偽わらざる現状であります。とにかくかけ足で進んでおるというのが現状でございます。しかし、だんだんこういうふうに国立の施設ができ、あるいは通園施設ができ、あるいは収容施設の増加をはかるというふうに、組織体系が整って参りますと、今お話しのように、その辺の対象児を把握することが困難は困難としましても、それに応じた何年計画というような計画を立てて進まなければならないと考えておりまして、今後そういうふうな考え方で準備をして参りたいと思っております。
  126. 高野一夫

    ○高野一夫君 とにかく八万六千人が正確か、今局長のおっしゃる四万五千人と見込みましたのが正確かは別問題といたしまして、とにかくそれにしても現在の十倍の数があるわけです。そこでこれを何年計画ということでなく、この全体の精薄児を収容するための施設として公立、私立に補助する、あるいは国立でやるということにかりに一気呵成に解決するとするならば、一体何十億要る、何百億要るという金はすぐ出てくるはずだと思う。それですぐ一気呵成にできないから、それじゃ三年計画でいこう、五年計画でいこう、あるいは十年、二十年待たざるを得ない、こういうことにしまいになってくるわけであって、とにかく全体のものを収容し得るためにはどのくらいの金がかかるのかどうか、そういうことは今までの補助あるいは経費の関係からしておよそ見当が厚生省としてはっけられなければならないと思うから、これから何年計画を立てるということでなくして、すでに過去においてそういう調査研究がなされていてしかるべきものだと思う。従って、何年計画はともかくとして、四万五千なら四万五千というものを収容するためにどれくらいの金がかかるか、そういうことのおよその見当は今までつけられていないですか。
  127. 高田浩運

    政府委員(高田浩運君) 大ざっぱな計算でございますが、設備費としまして国で約十四億円、それから措置費としまして国で約三十六億円、そういうふうな計算になっております。
  128. 高野一夫

    ○高野一夫君 公立、私立等に対する補助はどのくらいになりますか。
  129. 高田浩運

    政府委員(高田浩運君) 設備費の方は国が半分持つわけでございます。半分の額が今申し上げました十四億。それから措置費につきましては、これは大部分公けで持つということだろうと思いますけれども、援護率九〇%程度、約九〇鬼と見まして、そのうちの八割を持つといたしまして約三十六億。
  130. 高野一夫

    ○高野一夫君 そういたしますと、国の支出合計五十億あれば大体全体の日本におけるこういう階層、精薄児の収容ができるということになる。そこでかりに一カ年五億ずつ出せば十年で完成する、十億ずつ出せば五年で完成する。厚生省のいろいろな生活保護の予算そのほか膨大なる予算から考えましても、これを相当のある年数に限っての計画実現でやろうと思ってやれないことはないのじゃないかとも思うけれども、そういうことが今まで政府の方でもわれわれ案を聞いたことがないのでありますが、これだけ五十億がかかるということで、これを何年計画で計画してみたけれども、大蔵省の方の話がつかなかったとか何とか、そういう経過でも何かありますか。ただ厚生省で、そういうふうに厚生省だけの調査数字にすぎませんか。
  131. 高田浩運

    政府委員(高田浩運君) これはいわゆる具体的な予算折衝の問題としては、そこまで厚生省として正式の省議を経て持ち出したことはございません。ただ実際上お互い事務的なものの話し合いとしてはもちろんいたしたことはございます。そういうことでございますので、御趣旨の点は、今後におきまする予算編成等につきまして、十分御趣旨の線に沿いまして努をして参りたいと考えております。
  132. 高野一夫

    ○高野一夫君 この問題につきましては、後刻大臣が見えたときに、大臣の所見をただすことにいたしまして、これに関する質問を終ります。
  133. 勝俣稔

    ○勝俣稔君 この児童通園施設でございますが、精神薄弱通園施設は私立のものはあるのでございますか。
  134. 高田浩運

    政府委員(高田浩運君) 一応従来ありますのは、みんな地方公共団体に作らしたわけでございまするけれども、今後の問題としては、私立の認可というものが形式的には起り得るわけでございます。しかし、私どもの考え方としては、できるだけ地方公共団体にやってもらうし、補助もそういうような考え方で進みたいと思っております。
  135. 勝俣稔

    ○勝俣稔君 今まで公立のこういう通園施設はどのくらいあるのでございますか。
  136. 高田浩運

    政府委員(高田浩運君) これは御承知のように、三十一年度の予算から初めて設けられたものでございまして、三十一年度の予算におきまして六カ所、三十二年度の予算において七カ所ということでございますから……。
  137. 勝俣稔

    ○勝俣稔君 そうすれば、実績がないのであって、その効果は一体どういうようにお考えになっておられますか。よほど効果がおありになる、あるいは金がないからやむを得ずそういうような通園の施設に持っていくのか、ここのところは今後の問題のあり方として考える必要があるのじゃないか、こういうように思うので、ちょっとお伺いいたします。
  138. 高田浩運

    政府委員(高田浩運君) 確かに今お話のありましたように、いわば実績がないわけで、日本においては実績がないわけでございますから、これを比較検討するというわけには参らぬと思いますが、実はこれを始めます以前において、外国におきまする精神薄弱児の取扱い等をいろいろ検討、研究をいたしました結果、特に英国等におきまして、こういう通園施設という方式を相当広範に取り入れてやっておるような実例もございましたので、その辺も考慮の上、こういった制度を新たに創設することにいたしたのであります。
  139. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 この精神薄弱児の通園施設の一カ所八十坪、三十人収容七カ所分として予算がとってございますね、これはどこへ作られるのですか、大体場所の予定……。
  140. 高田浩運

    政府委員(高田浩運君) 結局、一定の場所に施設を設けまして通わせるということになりますというと、相当人口が密集をいたしまして通う対象の者がある程度おるという、そういう場所になるわけであります。そういった関係上、出発としましては大都会から始めるということにいたしております。
  141. 高野一夫

    ○高野一夫君 厚生大臣にお伺いいたしたいのでありますが、今局長に伺った結果が出ているのでありますが、それは現在精神薄弱児の収容施設が公立、私立合せて全国で八十五、収容人員が五千人足らずになっている。ところで、対象として収容すべき者が、原告省の見込みとしては、大体四万五千人ぐらいある、こういうようなお話です、なおほかの数字も出ておりますけれども。そこで私が伺ったのは、この四万四千六百というようなわずかな数字じゃなくして、すべての全国の精薄児を収容してあげたい、そのために国がどれくらいの負担をしなければならぬであろうかという計算をしてもらったわけであります。そうしましたら、施設に十四億、別に三十六億、合計五十億の金を国が出せば、全部の、全国の精神薄弱児を収容することができるというようなふうのお話でありました。これは概算であります。そこでこの五十億の金があるならば、こういうかわいそうな精神薄弱児すべてを収容し得るというならば、これを五ヵ年計画、あるいは十カ年計画でもって厚生省の予算支出ということになるならば、非常にこの問題の解決ができるのじゃないか。十カ年計画ならば五億ずつ、五カ年計画ならば十億ずつ出すということならばできはしないか。そこで、そういうような計画は今まで厚生省として立てたことはない、こういうお話でありますから、そこで私は大臣にお尋ねし、かつまたお願いを申し上げたいのでありますが、この程度の金でありますから、何とか何年計画で全体を収容し得るような施設にもっていく計画を立てていただきたい、こう思うわけでありますが、そういうお考えはお持ちでないだろうかどうか、その辺の御見解を伺いたい。
  142. 神田博

    ○国務大臣(神田博君) この精薄児童をどう取り扱うか、研究してあたたかい思いやりをもって収容施設を建てたらどうかということでございますが、これはもう全たく私も同感でございまして、この法案の審議の過程におきましても、いろいろ委員の各位からそういう御要望がございまして、お答え申し上げた次第でございますが、政府といたしましては、この問題をもっと一つ突き詰めて考えてみたい。今御要望もございましたように、ある年次計画というようなものを一つ立てまして、そうして善処して参りたい、こういう所存でございます。  ただ、まあ、これがその場合五年計画でいくか、十年計画でいくか、財政上の問題もございましょうし、また、厚生行政各般にわたる、いわゆる均衡のとれた一つ施策をとって参りたい、かように考えておりますので、それらも含めまして十分検討いたして、御要望に沿いたい、こういうような考えでございます。
  143. 吉江勝保

    吉江勝保君 これは児童局長の分野に属するかどうかわかりませんが、大臣がおいでになっておりますので……。  先般東京都内の中野で起りました、青年ですが、中学生を誘拐しまして、これをずたずたにしたというような事件が起っておりますが、これは精神薄弱児と言えないかもしれませんが、精神薄弱青年ということですか、こういう青年に対しましては、厚生行政の上でどういうようにお取扱いになっておるのでありますか。また、対策をお持ちになっておるのでありますか、お伺いしたいと思います。
  144. 神田博

    ○国務大臣(神田博君) 今の吉江委員のおあげになりました事例でございますが、これは私どもと同じく、皆さん一同びっくりなすったことと考えておりまして、あれはまあ私どもの方の見方は、やはり精神病の一種じゃないか、こういうようなふうに考えておりまして、ああいった悪質の精神病につきまして、なお一そう一つ施策を立てまして、早急にああいった社会不安を起さないように隔離あるいは治療するというような一つ措置を講じたいということに、先般もそういう打ち合せをいたしたようなわけでございまして、なかなかあれも新聞に出ておりましたように、よほどよく注意しないとわからぬような病気でございまして、あとからいろいろ行動を調べると、思い当る節があったというようなことも出ておりましたが、相当ああいった危険性のものがあるのではないかというようなことも考えられますので、なお、一そう一つ十分調査いたしまして、対策を立てていきたい、かように考えております。
  145. 千葉信

    委員長千葉信君) 他に御発言もないようでありますから、質疑は尽きたものと認めることに御異議ございませんか    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  146. 千葉信

    委員長千葉信君) 御異議ないと認めます。  それではこれより討論に入ります御意見のおありの方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。なお、修正意見がおありの方は、討論中にお述べを願います。—別に、御意見もないようですから、討論は終局したものと認めることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  147. 千葉信

    委員長千葉信君) 御異議ないと認めます。  それでは、児童福祉法の一部を改正する法律案について、採決いたします。本案を原案通り、可決することに賛成の方は挙手を願います    〔賛成者挙手〕
  148. 千葉信

    委員長千葉信君) 全会一致でございます。よって本案は、全会一致かもって原案通り可決すべきものと決定いたしました。  なお、本会議における口頭報告の内容、議長に提出する報告書の作成、その他の手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  149. 千葉信

    委員長千葉信君) 御異議ないと認めます。  それから報告書には多数意見者の署名を付することになっておりますから、本案を可とされた方は順次御署名を願います。   多数意見者署名     山下 義信  山本 經勝     藤田藤太郎  竹中 恒夫     榊原  亨  勝俣  稔     吉江 勝保  鈴木 万平     高野 一夫   —————————————
  150. 千葉信

    委員長千葉信君) それでは次に、旅館業法の一部を改正する法律案を議題といたします。御質疑を願います。
  151. 榊原亨

    ○榊原亨君 先般いろいろ風紀の問題についてのお話を承わったのでありまするが、だんだん政府の御意見を聞いて参りますると、旅館の許可を与えます場合には、主として構造、設備の面において御考慮になるというようなことであったのでありまするが、この百メートルの区域内におきまして、「当該学校の清純な教育環境が著しく害されるおそれがある」という御判断はどういうものさしによって御判断をなさるのでございましょうか。この前のお答えによりますると、そういうことはちょっとできかねるのではないかと思われる、「清純な教育環境が著しく害される」というような結果が出たときにはそれはわかるでありましょうが、許可をいたしますときには、あらかじめその「清純な教育環境が著しく害される」かどうかということを判定するものさしはどういう点にございますか。一応局長さんからでもお聞きをいたしたいと思います。
  152. 山口正義

    政府委員(山口正義君) 設置の際に、教育環境を著しく害しますかどうかという点の判定はなかなかむずかしいと思うのでございますが、一応は建物の構造とか、設備の面から判断しなければならないと思うのでございますが、しかしながら、どういう建物、どういう設備というようなことになりますと、一々具体的な問題になりますと、むずかしい問題があるかと思うのでございますが、ただ基準といたしまして、一応こちらで政令で定めました基準に合致いたしますれば、建物、構造そのものが合致しておりますれば許可しなければならないと存じますが、それが、これは私どもの方で一応何と申しますか、学校の方から非常によく見えるような場所に、建物の構造上、清純な教育環境が害されるというようなおそれがないように、ということを政令の中でも定めたいと思っているわけでございますが、そういう点から考えて、害されるおそれがあるというようなときに許可しないようにいたしたいというわけでございます。
  153. 榊原亨

    ○榊原亨君 そういたしますると、第三条の二項にありますところの「その申請に係る施設の構造設備」というものは政令できめられるのでありましょうか。その政令できめられた中には、当然その風紀を害するような構造設備は基準としてきめられないはずでございます。従いまして、さようでございますれば、その「施設の構造設備が政令で定める基準に適合しないと認めるとき、」でありますれば、これは当然許可しない。構造設備が風紀を害するようなときでも、厚生大臣あるいは都道府県知事が認めたというたとき、この「学校の清純な教育環境が著しく害されるおそれ」があるということがいえるのであって、構造設備の面からもそういう風紀を害するものは許可しないのでありますから、当然これは第二項の最後のものであります百メートル云々というものは要らないものではないかと思うのでありますが、その点はいかがでございましょうか。
  154. 山口正義

    政府委員(山口正義君) 政令の書き方かと思うのでございますが、一応その申請にかかる施設が一般的な施設基準には合っておりましても、たとえば浴室とか、客室、ホールなどの内部が学校の校舎または運動場から見通せるような工合になっておりますというようなときには、具体的にそれが清純なる学校教育環境を害するというふうに解さなければならぬのじゃないかというふうに考えております。
  155. 榊原亨

    ○榊原亨君 普通の浴室でございましても、学校だけじゃなしに、普通の民家から見ても裸体が見えるような構造設備は当然いかんわけでありますから、それは当然この政令の中にそういうことを定めるべきものであって、従って、教育環境の著しく害されるおそれがある構造設備は、当然政令でそういう設備はしちやいかんということがきめられるべきであるのに、この百メートル以内においてこういうことが起った場合には云々という第四条で、ありますとか、後段の場合第八条の二でありますとか、そこにはそういう規定が必要であると思うのでありますが、許可をする場合に「清純な教育環境が著しく害されるおそれがある」かどうかということは、これはただいままでの質疑応答でははっきりわからない。そういうわからぬものをここでこう御規定になりましておかれるということが少し私にはわかりかねるのでありますが、くどいようでありますが、その点を一つもう少しはっきりさしていただきたい。
  156. 山口正義

    政府委員(山口正義君) 先ほど浴室と申しましたのは、少し言い過ぎでございまして、これはもう当然一般旅館においても御指摘の通りでございます。まあ私ども一応考えましたのは施設面になるかと思います。その政令の最初の方に入るべきものとも思いますけれども先ほど申し上げましたような例とか、あるいは旅館の出入口が学校の校舎または運動場に直面している場合、また、その宿泊者の出入りが児童生徒の目に触れやすい、その場合にそれをどういうふうな措置を講じろというようなことになるかと思うのでございますが、具体的な問題として先般の、鳩森小学校のような問題がございましたので、そういう際に許可し得ないようにしておかなければならないというふうに考えるわけでございますが、ただいま御指摘のように、それは初めからもう施設基準で全部きめてしまえばいいんじゃないか、ということもごもっともと存じますが、まあ私どもは一応一般的な施設基準を考えまして、そうし特殊なものは別にというふうな考え方で進んだわけでございますので、こういうふうになっているわけでございます。
  157. 榊原亨

    ○榊原亨君 そういたしますると、今後においても政府はそういう特殊な旅館を許可されるというおつもりでありますか。今、既設のものは別といたしまして、今後はそういう正常なる営業をする旅館しか許可されないのじゃないかと思うのでありますが、そういう、学校から見える出入口、清純なる教育を害するようなものでも許可されるというおつもりでありますか、その点……。
  158. 山口正義

    政府委員(山口正義君) そのような旅館は許可しないという方針でございます。
  159. 榊原亨

    ○榊原亨君 それでは全く今後は許可をされないのでありますからして、この条項の後段は不必要ではないかと私は思うのでありますが、なおこの点は応、私これ以上申し上げませんが、御研究の上……、ただし、私はくれぐれも申し上げますが、この第八条の二というところにある条項は、既設のもの、あるいは正常なるものとして許可を得たものであるが、結果においてそういう場合が出てきたという場合でありますから、これは必要かある、百メートルはこれはまた問題でありますけれども、結局三条の二項というのはこれはやはり鳩森町か知りませんけれども、ああいうふうに問題になってきますと、それに刺激をされまして行き過ぎの法律と申しますか、無理に法律をここに作るということは私どうかと思うのでありまして、やはり法律は公正な立場において考えていかなければならぬものではなかろうかと私は思う。従いまして、構造設備というものを中心として衛生上、風教上適当な構造設備をするお考えであるということを承わっておるのでありまして、当然政令の中でそういうものは規定されるものとするならば、第三条の第二項のただいま問題になっておりますものは不必要ではないかというふうな、まあしろうと考えでありますが、これは一つ御考慮をお願いしておきたいと思います。それからもう一つは、第二条の下宿というのは、一カ月以上の期間を単位として、宿泊料を受けている、そうして宿泊させる営業である、こういうのであります。宿泊させるというのは寝具を提供してやるという、ところが、学生なんかで自分で寝具を持ってきて泊めてもらう場合には下宿ではなくなるのでありますが、その点はいかがでありますか
  160. 山口正義

    政府委員(山口正義君) ただいま御指摘の通り、この法案で申します下宿は宿泊させる宿泊の定義が出ておりますので、自分が寝具を持って参りますいわゆる今までの下宿の大部分が許可を要しない自由営業になる、そういうように考えております。
  161. 榊原亨

    ○榊原亨君 そういたしますると、こまかいことでございますが、その下宿の構造設備というものは無統制、たとえば階段におきましても、狭い階段で火災等について非常に危険なような階段を設けて、いわゆる下宿屋を営んでおりましても、ふとんを持ってくる学生を入れればそれで、もうそういうものは規制されないことになるわけでございますか。
  162. 山口正義

    政府委員(山口正義君) 御指摘のような建築物につきましては、旅館業法では規制はいたしませんが、建築基準法の方で規制があるのではないか、そういうふうに考えます。
  163. 榊原亨

    ○榊原亨君 第八条の二についてでありますが、これは先ほど問題になりました学校の敷地の百メートル以内において、営業者のいろいろ違反したような場合を規定されたのでありますが、既設のものでありまして、そういうようなものの場合に、あとから学校ができてきたという場合においては、やはり今まである宿屋なんかを立ちのきを命ぜられるということになるのでありますか、その点はいかがでありますか。
  164. 山口正義

    政府委員(山口正義君) 御指摘のような御心配ごもっともだと存じますが、その点は、この法制定、改正案の立案途中に文部当局と十分打ち合せをいたしまして、文部当局の方でそういうところには学校を投資しないような方針で進みたいというふうに文部当局が言っておるわけでございます
  165. 榊原亨

    ○榊原亨君 それは文部当局のお約束でございましょうが、万一そういうことが起つた場合にはどういうふうな御適用になるか、あるいはそれらに対して補償というような問題が起るようになるんでしょうかりもう絶対にそういう宿屋の回りには学校は建たぬと文部省はそうおっしゃっても、いつそういうことがあるかもわからぬのでありますが、その点はどういうふうにお考えでございましょうか。
  166. 山口正義

    政府委員(山口正義君) 一応文部省の方でそういう意思を表明しているわけでございますが、具体的にそういう事例が起りまして、既得権をいろいろ侵害されるというような事態になりますれば、そのときには具体的にまた検討しなければならぬのじゃないかというふうに考えております。
  167. 榊原亨

    ○榊原亨君 これは旅館の過不足の問題でありまするが、先日御資料をお願いいたしておるのでございますが、百メートルというような線を引きますというと、たとえば東京都におきましては、私は直接やったことはないのでありますが、ある専門家の意見を聞きますというと、各小学校を中心として百メートルの円を描くというと、ほとんどもう余地がなくなるというような話を聞いておるのでありますが、実際上、この法案を御決定になります場合に、たとえば最も稠密なるところの東京都におきまして、小学校あるいは中学校を中心といたしまして百メートルの円を描きますと、東京都の面積のどれくらいのパーセント、どれくらいがこの百メートルの範囲の中に入りますか。具体的に一つ数字をお示しを願いたいと思います
  168. 山口正義

    政府委員(山口正義君) 第一の、先般榊原先生から御要求のございました旅館の過不足の問題と申しますか、需給関係資料は、数字的にいたしますることがなかなかむずかしい資料でございますので、私の方で現在苦心をしているわけでございますが、ただいま御指摘のように、百メートルでこう円を描きました場合に、面積がどれくらいになるかというような点はただいまお甘え申し上げる資料がございませんが、これは文部当局と現在相談いたしまして資料を作成するようにいたしております
  169. 榊原亨

    ○榊原亨君 なお、この点につきましては、参考人からも意見を聞かれるそりでございますが、一つそれらの意見を聞きました上で、なお質疑の部分があれば、質疑をさせていただきます。一応この程度で終ります。
  170. 高野一夫

    ○高野一夫君 私は局長に伺いますが、第五条のことで伺います。第五条には、旅館営業者は一部の除外例は別だけれども、それ以来は宿泊を拒んではならないとしてある。そしてその除外例にあげている除外は、ちようど医師法に医師は特別の事由がない限りは診療を拒んではならないというのと全く同じ筆法の条文だと思う。かように、旅館営業者が特別の除外例以外は宿泊を拒んではならないというところまで営業者を拘束していいものであるかどうかという点について疑問を持つのです。それが一点。それからもう一つは、除外例であります。除外例で「伝染性の疾病にかかっていると明らかに認められるとき。」こういうものはなかなか。——明らかに認められる場合は、らい病とかなんとかいう場合は別として、結核にかかっていてもなかなかわからないそのほかの病気でも、しろうとがただそこへ泊りに来る人を見て、明確にわかり得る場合はきわめて少いだろうと思う。急病にしても、伝染病にしても。そうすれば、この除外例というものは、きわめて意味の少い除外例になりはしないか。  次の第二の風紀を乱すおそれのある場合、あるいは違法行為のあるような場合、それは拒む、これはけっこうです。そして施設に余裕がない第三番目の場合、これは当然のことで、もう一つお金を持っていないような場合はどうするのか、これはふところ工合というものはあけてみなければわからないのですけれども、金を持っていそうにないと思った場合には、従来は番頭さんもさっさと出入りを断わっておるようだが、こういうふうに除外例をあげるというと、それは金を持っていないおそれがあるという場合にはどうするか、その場合でも宿泊を拒まねばならないということになりはせぬか。飲んだくれで酔っ払いが暴れそうだと、そのような場合には、どの除外例に入れて断っても差しつかえないのか。こういうふうに考えますと、あるいは一級、二級、三級の旅館がある。非常な高級の旅館にそうでない風体の者が入ってくると困るから断わりたい、しかし、この除外例に該当しない場合は、この五条がある限りは断われないと私は考えるこの点について、どういう趣旨で第五条をお置きになったか、そしてまた、この一、二、三の除外例という点についてどういうようなお考えをお持ちになっておるか、それ以外、私が申し上げたような一、二の事例の場合にはどういうふうにして拒んでいくのか、どうして拒んではならないのか、その点についての立案者としての御見解を伺いたいと思います。
  171. 山口正義

    政府委員(山口正義君) 最初の高野先生のおっしゃいましたことちょっと私聞き漏らしましたので、あとで再び御質問を受けるかと存じますが、第五条の一のその宿泊しようとする者が伝染性の皮膚病云々、これは確かに御指摘のように外見上はっきりわかるものだけでございまして、内部的な、あるいは内科的な伝染性の疾患を持っているということはちょっと見ただけではなかなかわからないのでございますので、これは外見上はっきりわかる、たとえば先ほど例をおあげになりましたらい疾患というような場合ならばこれで断われると思うのでございます。  それから金を払わないという者につきましては、法制局ともいろいろ打ち合せをいたしたわけでございますが、金を払わない者はこれは拒み得るわけでございますが、ただ泊ります前に払うか払わないかということは判定がなかなかこれはむずかしいわけでございますので、現実の問題としては、事前に断わるということはなかなかむずかしいのではないかというふうに考えるわけでございます。  それから酔っぱらいなどの点につきましては、この第五条の三に「都道府県が条例で定める事由があるとき。」というようなことになっております。県におきまして、条例で泥酔者を拒絶する、断わることができるというような規定を設けていただくわけでございます。  第一点についての御質問はちょっと私伺いそこねましたのでなんですが、これは当然旅館業も営業でございますから、いろいろ自由意思が働き得ると思うのでございますが、医師法ほど厳格な意味ではないように私どもは解釈しているわけでございます。それで、ただ旅館というような営業は相当に公共性を持った営業でございますので、こういうふうに特別な場合以外は、旅館の宿泊を拒まないようにというような規定を設けておるわけでございます。
  172. 高野一夫

    ○高野一夫君 正当に泊りたい者がどうも金もありそうもないなんて疑われて、むやみやたらに宿泊を拒ばまれるということはきわめて迷惑で、これは避けなければならぬけれども、これは法制局とも先ほど打ち合せしたというお話があるけれども、金を払わなかった場合というのは、これは結果である。持っていそうもないと思うその最初の予想が、それじゃどうも持っていそうもないとこう思うけれども、これでは断わることはできない。そして案の定、持っていそうもないと思ったのがそれが当って金を払わなかった。こういうような場合はどうなるのですか。そうすると、それは営業者がそれだけの損害を受けるより仕方がない、これは医師の診療行為の場合と私はいろいろ違った営業の問題が出てくると思うのです。
  173. 山口正義

    政府委員(山口正義君) これは旅館業法でどうこうということではなしに、むしろ私は無銭飲食とか、無銭宿泊というような場合と同様に刑法で処置さるべきではないかと、そういうように考えております。
  174. 高野一夫

    ○高野一夫君 私はそういう考え方であるならば絶対に反対なのでありまして、せっかくここに営業者を保護するとか、あるいはまた、営業が公共的の営業であるから、それで一般宿泊者に対して不当なる不便を与えないようにという双方の配慮から五条を置かれたと思うわけです。それがここにいろいろ拒んでも差しつかえない事例を置いておいて、そうして明らかに拒んで、明らかに金は払わない、しかし、金をとらなければ営業が成り立たない、それがはっきりわかっておってそれを拒む、それは別な法律でもってやるというならばこれも要らないことになりはしないかと私は思うのです。それだから、拒んではならないというならば、拒み得る場合にやはりそういうことを置かなければ、私はこれは非常な片手落ちな条文になりはしないか、こういうことです。それからさらに、旅館に高級やら中級やら低級やらある。そうしてわれわれは三等旅館に入る風体、一級旅館に入りたいけれどもこれは向うが入れてくれない。あるいはいろいろなしきたりがあって、その旅館の風格もいろいろありましょう。それで私を拒みたいけれども、私は第五条があるからと言ったら、その旅館は私を拒みたくても拒めない。そこでかりに、私が一流の国際観光ホテルみたいなところにゆかたがけで、金は持っておりますと言って行った場合に、私を断わることはできない、第五条で。
  175. 山口正義

    政府委員(山口正義君) 明らかにこの第五条に規定してございます二、あるいは三の宿泊施設に、あるいは条例で規定しておりますものに該当しない限りは断われないと思うのでございますが、先ほど高野先生も御指摘のように、金は持っているか持っていないかわからないというような場合は、実際問題としては非常にむずかしいのでございまして、また、その第一にいたしましても「伝染性の疾病」、これは外見上はっきりしている者以外はなかなか断われないということでございますので、せっかくこういうことにしておきながら、ほかでまたそれを規制しようとするのはおかしいではないかという御指摘はごもっともとも思いますが、実際問題としてこの規定は外から見てどうこう、それで拒むということはできないのは仕方ないじゃないかと思います。
  176. 高野一夫

    ○高野一夫君 厚生省が、国立公園その他自然公園法案も出ておりますが、こういうような日本の自然風致をもとにして外国から盛んに観光客を誘致しなければならない、これは日本のある意味における国策、そういうようなときに、ホテルの営業というものは外人に対しての営業状況、品位を保つ、あるいは非常に気持よく衛生的に泊らせるようなこと、こういうようなことは非常に今後も大事に考えなければならない。そういうホテルが至る所に私はできなければならないと思う。そういうようなホテルにかりにゆかたがけで、げたばきで行って拒めないでしょう。それを断われないといった場合に、国策として観光客を誘致してくる、しかもげたばきで、ゆかたがけで行っても、金は持っているがゆえに断われない、部屋があれば断わることができない、こういうような事態が起るとすれば、まあ、ないだろうけれども法律だから私は極端な例をあげて考えたいわけですが、そういうことがあっても断われない、こういうようなことは、私は実際問題として非常にまずい結果になると思うのです。従って、そお泊りを願えばいいわけであって、すべてそれを拒むことはできないと、こういうことになるというと、私はここに問題が出てくる。これはどういうふうに処置したらいいか、そういうようなときに、この法律には外人専門、日本人専門というようなホテルの区別というものは、これには置いてない。従って、ホテルへ入れようと、日本式の旅館に入れようと、こういうような区別は定義で設けてあったけれども、日本人は泊っちゃいかぬとか、外人向きのホテルということはない。従って、日本人が泊ろうと、外国人が泊ろうと、これは自由勝手である。そういう場合に、私が申し上げたような事例が起った場合に、旅館の営業者は、どういうふうに処置をしたら最も適正なる処置となるのかどうか。そういうふうな場合に、どういうふうに立案者としての局長としてお考えになるか。
  177. 山口正義

    政府委員(山口正義君) 先ほどお答え申し上げましたように、現行法におきましては、そこまでそういう具体的な点、まあ特に先生は極端というふうにおっしゃいましたが、そういう極端な例まで法律においては規制しておりません。条令でこまかい点を規定いたしておりますが、泥酔者などは先ほど申し上げた通りでございますが、先ほど御指摘になりましたような、高級ホテルにゆかたがけ、げたばきというような、そういうことはないとは申し上げられないのでございますが、普通一般に起り得ないことでございますので、そこまでこまかく規制していないわけでございますが、そういうことムしばしば起り得るというようなことで、そして正しい旅館の運営が云々されるというようなことが多く起るようなことになりますれば、また検討しなければならないというふうに考えます。
  178. 高野一夫

    ○高野一夫君 条文でこういうふうにはっきりきめてある以上は、それに該当する場合、あるいは該当しない場合があり得るということを想定して審議しなければ、私はなるまいと思う。そこで私が申し上げた例は極端かもしれないけれども、あり得ない事例ではないだろうと想像されるので、そういうような場合が起ったら、この第五条はどうなるかと、こういうことでお尋ねするわけです。金を持っているか持ってないか、怪しまれる場合にしてもしかり。そこで、それじゃ一つ逆な点から伺いますが、もしもこの第五条全部を削除してしまった、第五条がなぐなったというような場合には、この旅館営業の立場、あるいは宿泊したいという一般の人の立場から見て、どういう支障があるでしょうか、第五条が全部なくなったとして、こういう条文は置かないとした場合には、何かどういう欠陥が出てくるか。
  179. 山口正義

    政府委員(山口正義君) 最初に申し上げましたように、こまかい点は条令に譲ってございますので、条令は、これはまあいろいろ府県によって情勢が違うと思うのでございますが、先ほどから御指摘のような具体的な問題については、条令で規定しておりますことですから、私の方で至急調べてみたいと思いますが、第二の御質問のように、この第五条がなくなりますということになりますと、やはり旅館営業、これが宿泊させる施設であるということでいろいろな規定が設けられ、また起るというようなことも考えられ得るのでございますので、やはり旅行者の便を考えまして、一応普通の場合には拒んではならないというふうに規定しておかないと、旅行者の不便になるのではないかというふうに考えます。
  180. 高野一夫

    ○高野一夫君 この問題について、私はまだ今までの局長の御説明では、とうてい納得ができない。従って、二十三日の参考人においでを願うその機会に、さらにこの問題について、もし御意見がなかった場合は、私からお尋ねをして、参考人の方々からこの問題について意見を伺った上で、さらに再質問したいと思いますから、第五条の質問は、きょうはこれでやめます。  次に、第四条第一項と第二項について伺いたい。それは「旅館業を営む者は、営業の施設について、換気、採光、照明、防湿及び清潔その他宿泊者の衛生に必要な措置を講じなければならない。」その最低の基準は、都道府県の条例で定める、こうなっておりまするが、都道府県の条例ということになりまするというと、採光、照明、防湿でも、非常に厳重な条例を設ける所もあるだろうし、あるいは非常にゆるやかなきめ方をする所もあるだろうと思うのでありますが、これは何か厚生省から一定の基準の事例でも出して、そうして県議会あたりで、それにのっとった条例を可決する、こういうようなふうのことにでも持っていかれるつもりであるかどうか、これを一つ伺っておきたい。
  181. 山口正義

    政府委員(山口正義君) 御指摘のように、第四条の第二項の条例が、非常にまちまちになりましては困りますので、一応の基準を示して参りたいと存じております。私どもの方でも、現在都道府県が、現行法におきましても条例で定めておりますので、一応の基準についての指導をいたしておるわけであります。
  182. 高野一夫

    ○高野一夫君 第七条は、都道府県知事は、当該吏員に、営業の施設に立ち入って検査をさせることができるようになっております。そうすると、この「当該吏員」というのは、保健所の職員か何かになるわけですか。県庁の関係の職員ならば、すべて吏員になりますか。「当該吏員」というのは、どういうのに該当するのか、どの程度に限定してあるのか。
  183. 山口正義

    政府委員(山口正義君) 原則と申しますか、一番多い場合は保健所の職員であると思うのでございますが、これは環境衛生監視員という職名を規定いたしまして、環境衛生監視員の証票を携帯させてやるわけでございますが、実際の場合には、県庁の職員でも、環境衛生監視員として監視を行うという場合もございますが、大部分の場合は保健所の職員が行うということになっております。
  184. 高野一夫

    ○高野一夫君 これは旅館営業の中に立ち入って検査をするのでありますから、私は相当軽くない規定だと思うんですが、環境衛生監視員というのは、どこかに規定がありますか。別な法律規定があるわけですか。
  185. 山口正義

    政府委員(山口正義君) 法律規定はございませんので、省令の旅館業法の施行規則の第四条にその規定が置いてございます。
  186. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 公衆衛生の見地から必要な取締りを行うということが第一条に書いてある。具体的なことは政令を見せてもらったり、公聴会後においていろいろな問題は聞きたいと思いますが、私はここで、どうもこの法案に直接関係があるかどうかわかりませんが、この第一条の精神について少し聞いておきたい。で、具体的な衛生の取締りですね、必要な取締りを行うという細則的な、たとえば人が泊ったらどういう部屋で泊めなければならぬ、そういう規格とか、そういうものはどういう規則によって取り締っておられるんですか。
  187. 山口正義

    政府委員(山口正義君) 御審議願っております改正案につきましては、第三条の第二項の政令で一応基準を定めたいと存じておりますが、現在は、現行法の第二条に基きまして、都道府県知事が条例で定めておるわけであります。
  188. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 この一番うしろの方についている資料ですね、宿屋営業取締規則、明治二十年、大警視三島と書いてあるんですが、これは生きているんですか。
  189. 山口正義

    政府委員(山口正義君) ただいま御指摘の規則は、現在廃止になっております。現在は、現行の旅館業法に基いていろいろな公衆衛生上の取締りをいたしております。
  190. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 どうも私はよくわからんですが、私の聞きたい点は、公衆衛生の立場からいろいろの規則や政令なんかがあると思うのですが、ここでは参考資料の中にはないのでお尋ねしているのです。そこでたとえば小学生の修学旅行の問題なんですね。局長はあの実態を御存じですか。私はまずそれを聞きたいのだが、大がいひどい状態で、旅館は小学生の修学旅行を扱っている、食品衛生の関係による食品衛生上の問題も問題をよく起すのだが、現在修学旅行の生徒を泊めているあの状態というものを厚生省はどういう工合にお考えになっているか。もう少し続けますが、たとえば、この宿屋営業取締規則の中の一人一坪半という基準、大体会社の寮やなんかにおいても一人三畳を基準にするという規定があると思うのです。あわせて旅館の人を泊める場合においても、一定の場所、そういうものが一律にあると思うのだが、そういうものがここにないので私はお尋ねしているのですが、小学生の修学旅行というようなものは、足の踏み場もないどころか、きっちり、長いふとんとか短いふとんでも重ねあって人間を並べて寝かせているという状態なんです。こういう問題について、厚生省はどういうお考えであの問題を見ておるか、私は一つ聞いておきたい。
  191. 山口正義

    政府委員(山口正義君) 先ほどから申し上げておりますように、現在の旅館業法におきましては、部屋の大きさ、部屋の数というようなことは都道府県条例できめておりまして、そうしてその部屋に宿泊させるべき客の定員につきましても条例で規定しているわけでございますが、ただいま御指摘のような状態で、現実になかなかそれがその条例通りに守られていないという状況が多いのでございまして、これはまことに遺憾なことだと存じております。
  192. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 厚生省は、公衆衛生風紀という問題で、旅館のことで大原則が第一条に書いてあるのだが、府県にまかしきりだから、厚生省は、何やつてもかまわんという趣旨でやったら、私はこういう条文というものは、旅館の営業の問題は出てこないと思うのです。具体的な問題で、ただ頭の方だけに並べるという概念だけの問題で、実施はどんなにされてもいいという状態であっては私はならないと思うので、私は今の問題をお聞きしているのです。だから府県の条例で定めるといっても、そこから一つの基準というものが私はなくてはならない、ただ遺憾でございますじゃ、このたとえば明治二十年の大警視三島と書いてある宿屋営業取締法の中に、たとえば一坪半その他の規定が、だいぶこれは古いものですけれども書いてある。そういうものが廃止されたら、それに見返りとして何かの規則が、何かが出ていなければ私は意味ない。それで現状の修学旅行の生徒の状態というものは、ほんとうに私はああいう状態を見て厚生省はあれでいいのだとはお考えにならないと思うのですが、あれでいいとお考えになっているか、その点あたりは大臣からも一つお聞きしておきたい。
  193. 神田博

    ○国務大臣(神田博君) 今、藤田委員のお述べになりましたことは、これは全くごもっともな点でございまして、私もかねがね憂慮しているものでございます。よく最近でも、輸送関係等いろいろな面におきまして定員超過としいうことが非常に非難をされておる際でございます。  大体旅館業の取締りと申しましょうか、構造の問題あるいは一間における定員の問題、あるいは食料品の問題等いろいろ府県知事が条例によって指示しておるわけでございまして、それを当該吏員が監督するという建前になっておるわけでございますが、今お述べになられたような季節的、あるいは修学旅行等の団体的な扱いに対して、よく問題が出ております。しかもいろいろな改めなければならない段階にあることを承知いたしておりますので、これらも考えながら、今度の旅館業法一つ改善いたしたい、こういう意図をもって御審議を願っておるわけでございまして、お述べになりました事項は、これは各地におきましてそういう事例が多いようでございまして、今後十分一つ府県全体の問題でございますので、厚生省におきまして規格を定めまして、明示いたしまして、適当な府県条例というものをできるだけ画一的な方法をとって参りたい、そうして当該吏員の監督、指導というものも十分いたして参りたい、こういう所存であります。御了承を願いたいと思います。
  194. 山下義信

    ○山下義信君 関連質問ですが、時期を失しまして……。  榊原委員からの御質問に御答弁がありました下宿業の定義ですね、第二条の第六項に、「「宿泊させる」とは、寝具を提供して」云々という定義がありますので、今の寝具を持ち込まない下宿は下宿でないかという御質疑があったのですが、当然それは下宿でないとおっしゃった。私はこれは少し疑義があると思うのですね。この第六損の「寝具を提供して」ということは、全般にかけられてあることですけれども、ホテル、旅館業、簡易宿泊所、みなかけられていることでありまして、当然下宿にまでこれは及ぶのでありましょうか。これはそう狭く解釈すべきではないので、いわゆる拡大解釈をすべきでありまして、寝具を業者が提供しなくても、持って入って、自分の寝具で寝ましても、一晩その施設で泊って、この定義の中には夕食を食べる、朝食を食べるという食事のことはありませんけれども、宿泊ということであります仏が、この寝具も業者の寝具でなくて、今榊原委員から具体的な、適切な例をあげられましたが、学生あるいはサラリーマンにしましても、自分自身の寝具を持っておっても、一月以上宿泊をして、宿泊料を払って、あるいは食事のことで、食事代も払ったならば、寝具一つでも、業者から提供を受けなかったというだけで下宿業でないということになりますと、非常にこれは影響が大きいのじゃないかと思います。そういう例は非常に多くて、現在下宿業の許可を受けているもののおそらく相当の部分が、寝具は下宿人が持ち込むというのがかなりあって、それはみな下宿業でないということになりますと、本法から排除せられるという、適用外になるものが非常に多いことになるのじゃないかと思うのですが、この「寝具を提供して」云々の宿泊の定義は、私は相当広く解釈すべきじゃないかと思うのですがね。先ほどはっきりとおっしゃったので、必ずこれは下宿業に相当影響があると思いますから、御答弁が、間違っていたと私は言いませんけれども、さらに追加なさいまして、自分が持って入った寝具でも、下宿屋の方、あるいはその他これらの規定する業者が、自分のものをお持ちになってもよろしゅうございますといったら、やはりこの営業の範疇に入るべきじゃないかと思われますが、この点はいかがでございましょうか。
  195. 山口正義

    政府委員(山口正義君) 御指摘の点、先ほど榊原委員からも御注意がごさいましたので補足いたしますが、一応私ども今回の改正案で考えました際には、宿泊と申しましても、社会通念的に申しますとわかるのでございますか、理論上の問題になりますと、睡眠させることが要件か、あるいは寝具を提供することが要件か、あるいは休憩させることだけでも宿泊というかというような問題になって参りまして、非常に不明確になって参りますので、この際は法制局とも相談いたしまして、宿泊というのは寝具を貸して施設を利用させることであるというふうに規定したわけでございます。そこで、先ほどから御指摘になりました下宿の問題でございますが、先ほど榊原先生にお答え申し上げましたように、寝具を提供するということだけを下宿の対象とるということになりますと、ただいま山下先生もおっしゃいましたように、従来のいわゆる下宿の大部分がこの許可の対象からはずれるということになるのでございまして、私どももこの件は非常に大きな変革になって参りますので、十分に検討しなければならぬというふうに考えておりますが、一方におきまして、やはり下宿とアパートあるいは間貸しというものの区分が不明確になるのではないかというふうに考えて参りまして、戦後特に現在のような住宅事情から間貸しが非常にふえて参りまして、また、一間限りのアパートもふえて参りましたので、下宿とアパート、あるいは間貸しとの区別が非常に困難になって参りました。そうして許可対象にいたしますと際限がつかなくなるような感じもいたしますので、一応先もお答え申し上げましたような線で今回の改正の原案としたわけでございますが、御指摘の点は私どもの方でさらに検討さしていただきたいと存じます。
  196. 山下義信

    ○山下義信君 そういうふうに割り切ってですね、はっきり下宿というものを、今日までの下宿と一応考えられたものをですね、そういうふうに改めていくんだというならば、それで筋が通ります。それでよろしゅうございます。寝具を提供しないものは、食事を提供しても、宿泊させても下宿ではないと、従って許可は要らないと、そういう営業も成り立つ、それは無許可でできるということは、この法律で言いますと、幾ら人を泊めても、幾ら食事を提供しても普通の下宿である、あるいは普通の宿泊のような形であっても寝具さえ提供しなかったならばですよ、その業者が—あるいはたとえばですよ、こまかいことを言うようで恐縮ですが、たとえばお客、そこへ下宿した者が自分のものでなくても、貸しぶとん屋から随時電話でとってきて、そしてそのふとんで休むならば、その業者が提供しないのでありますから、ですから業態が旅館に近く、あるいは今日までの下宿業であっても、寝具を提供しないという一つによってこの本法の対象のあらゆる業種からはずれてしまう。それらは何らの許可も要しないということになると私は思う。でも、それでも、つまり割り切って、ちゃんとそれらは本法の対象からはずれてくるということならそれも筋が通ります。それによってどういう利害得失があるか、例外があるかということはもっとよく検討の問題でありますが、それにそれで筋が通ります。ですから、一応ここでは寝具を提供しないものは今後は下宿業とは言わない、下宿とは言わない、だから申請も許可も要らないということになればはっきりする。しかし、そういういわゆる割り切ったことをしておるために、かえってこの抜け穴を利用して幾らでも無免許営業のものができるという道だけは残るということになる。きょうは関連質問でありますから、その点だけにいたしておきます。
  197. 山口正義

    政府委員(山口正義君) 私どももただいま山下先生御指摘の点、大部分が無免許ということになりまして、そのためにどういう弊害が起るかということも当然考えていかなければならないというふうに考えているわけでございますが、一応先ほど答弁申し上げましたように、宿泊という定義を設けましたために、それからおのずからこういう先ほど答弁申し上げましたようなことになりまして、また、アパートと間貸しとの区別が非常に困難になるということで、一応今後そういうふうに考えていきたいというわけでございますが、なお十分御指摘の点、検討させていただきたいと思います。
  198. 高野一夫

    ○高野一夫君 ちょっと関連して一つだけ。これはきょうでなくてもいいのですが、この次御検討願ってもいいのですが、この旅館であって、それはこの法律にいう旅館営業である。で営業者である。それが朝、汽車で着いて、そうして旅館に入って、泊らないで夜帰ったと、これは下宿の場合の別の場合です。そうすると、朝、停車場に着いて宿に行って、そうして一日おって夜は晩飯を食って帰ったと、こういうことはこの宿泊させるということにそうすると入らぬわけだから、旅館営業者であり、旅館を営業する場所ではあるけれども、私はそういうことをした場合には、営業の行為の中に入らない、私はそういうことは、朝、着いて夜、帰った……。
  199. 山口正義

    政府委員(山口正義君) ただいまのようなことはよくあり得ることでございますが、寝具を提供—まあ昼間でも寝具を提供して使わせて休ませるという場合もございます。(高野一夫君「それをしない」と述ぶ)提供いたしません場合には、普通の会をいたします場合とか、商談をいたします場合と同様に取り扱われるのじゃないかと思います。
  200. 千葉信

    委員長千葉信君) 本案に対する本日の質疑は、この程度にいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  201. 千葉信

    委員長千葉信君) 御異議ないと認めます。速記をとめて。    〔速記中止〕
  202. 千葉信

    委員長千葉信君) 速記をつけて。   —————————————
  203. 千葉信

    委員長千葉信君) それでは次に、社会保障制度に関する調査を議題といたします。御質疑を願います。
  204. 山下義信

    ○山下義信君 ただいまお許しを得まして御質疑いたしたいと思いますのは、最近問題になっておりまする、実は旅館業法にも関係がないとは言えませんけれども社会保障制度調査関係としてお許しを得まして御質疑を申し上げたいと思いますのは、最近問題になっておりまするふろ屋の料金の問題でございます。これは公衆浴場営業者関係の法規が国会にも提案されておりまするので、その機会において質疑をお許しを願うこともでき得るのでありますが、事態は急迫しておると思いまするので、この際、お伺いをしたいと思うのでございます。  公衆浴場のいわゆるふろ屋の料金の問題につきましては、御承知のごとく、けんけんごうごうとして議論が非常にやかましいことでございます。相当以前からこれが問題になっておりまして、おそらく厚生省の当局としては相当慎重に御検討になっておられると思いますが、私は御方針があるいはおきまりになっているのじゃないかと思う。また、少くともその御方針はおきめにならなければならぬ時期に近づいておるように考えられますので、この際、問題でありまする公衆浴場の料金の引き上げについては、厚生省におかれてはどういう方針を持っておいでになるかということをこの際、承わりたいと思います。
  205. 神田博

    ○国務大臣(神田博君) ただいま山下委員から公衆浴場の料金の改訂の問題が起きておるようであるが、どういうような状態になっておるかというお尋ねでございます。昨年の暮れごろからでございましたか、だいぶ石炭の需給の関係が逼迫いたして参りまして、いわゆる燃料の入手難と申しますか、それから価格高騰……、そういうことを契機としましてこの浴場の経営が困難になってきた、ことに昨年は水道料金の大幅な値上げも見た、ことに賃金の上昇も来たしておる。諸般の情勢上、上げてくれぬかという陳情をこの三、四月ごろになりましてなお熱心に訴えて見えておるのでございます。厚生省といたしましては、これはまあ厚生省と申しますよりも政府といたしまして、先般来予算案審議等におきましても、今年度の物価の推移というもりは大体現況を維持していくのじゃないか、全体といたしてでございますが……。そこで値上げというようなもりは、特にやむを得ないものでない限りはやらないというような方針で参っておりますことは御承知通りでございまして、このふろ屋の料金改訂の問題につきましても、厚生省といたしまして非常に慎重な態度をとっております。しかし、いろいろそういった要望もございますので、実情一つ調査をしたらどうか、すなわち、原価計算を一つやってみたらどうかというようなことでございまして、その作業をするようにいたしております。たまたまこれはけさの新聞にも出ておりますが、昨日も主婦連の方々が大会を開かれまして、ふろ屋の経営はいろいろ事情はあるが、なおかつ現状をもってして相当の利潤が確保されておる。そこで、主婦連が一つの原価計算の基準を作ったというようなことも耳にいたしまして、そういうような消費者の方のそうした資料も、非常にこれは貴重なものでございますので、至急手に入れて、一つ十分調査してみようじゃないかというようなことをけさも公衆衛生局長と話し合ったわけでございまして、ただいまのところ、結論から申し上げますと、上げるとも上げないとも、またどうなるかということについては、まだそこまで突き詰めた考えを持っておりません。すなわち、今申し上げましたような経緯をたどっておりますが、その裏づけとなる調査が完了いたしておりませんので、これは山下委員のお尋ねでございますので、まあざっくばらんに、あけすけにありのままを私申し上げたようなわけでございまして、調査の内容がどの程度進んでおるかということになりますれば、一つ公衆衛生局長から詳細に御説明さしたいと思いますが、以上の通りでありますので御了承願いたいと思います。
  206. 山下義信

    ○山下義信君 政府の方でいろいろ御研究になっておいでになることは当然そうだろうと思うのです。しかし、あと局長からも伺いますが、しかし、大体の方針としては諸般の事情万やむを得なければ、いわゆる非常に大きな弊害のない範囲内において適正な料金の引き上げはやむを得ないのじゃないかという大体の御方針は持っておいでになるのじゃないかと思いますが、その点はいかがでしょうか。あるいは断固この際は、この種国民生活に非常に影響のある料金等はいかなる事情があろうと、いかなる原価が騰貴しておろうと、どのように業界から、業者から要望があろうと断じて引き上げはしないという基本的の御方針であるか、どちらであるかということは、大体においてお腹がまえがあるのじゃないかと私は思う。その点はいかがでございましょうか。
  207. 神田博

    ○国務大臣(神田博君) 今のところ、調査の途中でございますので、どの程度の一体実際の裸の数字が出て参りますか、やはりその数字の出ようによりまして値幅ががまんできるようなものであれば、もちろんこれは政府といたしましてはがまん願おうという、これはあけすけの考えでございますが、しかし、そのことによって浴場経営が困難になる。同時に、そのために減価償却もできない、施設の改善もできない、それが今度逆に回って公衆衛生上利用者が非常に不便、非衛生になるというようなことになりますると、浴場本来の目的が損うことになりますので、そういうことも十分考慮いたしまして、そうして結論をつけたい、こういう考えでおりますが、いずれにいたしましても、今のところそれを判断する資料の十分な調査が完了いたしませんので、お答えしかねるのでございます。いろいろ調査も、実は浴場を夏と冬と一体一定料金にしておくことがどうであろうかというようなことも調べてくれぬかというようなことも実は申しておるのでございます。夏冬、これはまあ非常に原価が違うわけでございます。条件が違うわけでございます。それを夏冬一緒にしておる。そこで夏はいい、冬が悪いとか、あるいはこれは相場の変動にもよることでございますが、夏冬の料金を変えることによってなお合理的な浴場経営というものができるのではなかろうか。やはり従来のしきたりというそのままを尊重して、夏冬一本にするのだというようなことがいいかというようなことも、一つあわせてこれは研究するようにということを命じておるわけでございまして、今のところ、上げないということで調査をするとか、あるいは上げようということで調査をするとかということではないのでございまして、裸の数字を一つつかんで、そうしてがまん願えればもちろんこれはがまんしていただきます。しかし、がまんすることによって、今申し上げたように内容の整備というものが怠って参りまして、非衛生あるいはまたお湯の温度がぬるくてこれが満足できないような状態になるのだというようなことで、本来の目的を欠くようなおそれがあるとすれば、非常に適当なところまで持っていって正常な経営にするということにやはりしなければならぬのじゃないか。これは一般原則を申し上げておるわけでございますが、そういうようなことも頭に置きながら、今のところは、上げないとも上げるとも、とつおいつ、まだ未定だというふうに御了承願いたいと思います。
  208. 山下義信

    ○山下義信君 抽象的な一般論としては大臣今お答えの通りでありましょう。しかし、私はそういう御答弁では了承いたしかねる。事は小さい浴場の料金でありますが、しかし、非常に社会が注目をいたしておる。基本的な御方針は値上げであろうと、あるいは不許可であろうと—値上げをさせないのであろうと、基本的なお考えというものは、御方針というものがなければ、どの程度値上げさせるか、あるいはどの程度……現状で当分値上げを許さないかという大体の御見当は私はお考えがあるのではないかと思う。もしそういうお考えなくして、ただいまのような御答弁を、私は何もきょう皆御答弁いただこうとは無理には思いません。無理にそういうことをしいて御要求はいたしませんが、しかし、ただいまのような何らの方針がないと、現在ではまだ何にも、上げるともどうするとも考えていないのだと、その方向すらも考えていないのだとおっしゃいますというと、私は国会の質疑としては了承いたしかねます。それは、何を御遠慮なさってそういうことを御答弁を回避されるのか存じませんが、どうしてもこの浴場の料金について、厚生省としては—政府として、また、大臣としても方針はないんだとおっしゃいますると、私は当委員会といたしましては了承いたしかねます。
  209. 神田博

    ○国務大臣(神田博君) 私のお答え申し上げたのは、正味のところをそのまま申し上げたのでございまして、山下委員から、もっと突っ込んだ腹を割れというような意味かもしれませんが、とにかく物価が相当上って、二十八年の二月以来据え置きになっておりまして、二十八年の二月以来大体物価の変動を見れば、大体上っておると見なければならないと思います。それで、浴場組合からも上げてくれという陳情でございます。しかし、全国からみな来ているわけでもないのでございます。東京都が中心になって、それから東北その他、全部で十二県ほどの声でございます。いろいろ原価計算もお出しになって、一定の線で上げてくれぬかという要望でございます。これは物価の統制でございますので、上げてくれと言わなくても、ある変動があれば、これは上げたり、あるいはまた下げたりすることがあり得ることは、当然のことでございますが、今回上げてくれという要望でございまして、約三割ほどの値上げを望んできておるわけでございます。そこで、厚生省といたしましても、二十八年二月以来でございますから、これはまあ相当変動のあったのも事実でございますし、調査の時期にも大体きておるわけでございます。十分調査いたして一つ善処してみたい、こういうことを申し上げたのでございまして、私はよくこの会議にもお話しているのでございますが、一昨年の夏は石炭が非常に下ったことは、御承知通りでございます。おそらく最低値段だと思います。そういうときには浴場の値下げをしなかったことも、御承知通りでございます。今度は非常に炭が上っておることは、これは御承知通りでございまして、ときによって、非常に下っても下げなかったこともある。また、今日非常に上っておって苦しいということから非常に訴えられておる際でございます。ですから、そういうことも一つ参考にいたしまして、十分調査いたしたい。さらに、さっき申し上げたように、こういう機会に物価の変動でやるということになると、夏、冬——ことに燃料費が一番ファクターになっておりますから、この燃料費が夏、冬違う。それからふろの利用も、夏、冬庶民の使い方が違うわけでございまして、そういうことも勘案し、夏、冬料金を分けるということも一つ方法ではないか。とにかくいずれにしても、精細な調査をしてみて、その調査の結果を一つ見た上で、どうするか、がまん願えるものであるならば、これはもちろん経済界の先の見通し等もつけて、がまん願う。あるいはまた、どうしてもこの際先の見通しをも考えて、ある程度上げてやらなくちゃ設備の改善もできない、浴場の条件が悪くなる、そのために利用者が結局迷惑を受けるわけでございまするから、そういう際には、そういうふうにがまんをしていただくことが、かえって利用者の方が不便でございますので、何がしか一つ上げなければならぬのじゃないかりいずれにいたしましても、素直な気持で、業者からも原価計算が出たのであるから、それにこだわらずに一つ内輪として立ててみょうじゃないか、こういうようなことで調査を始めておるのでございます。さっき申し上げたように、利用者の方から、主婦連の方から原価計算が一つ出るというようなお話でございまして、それも一つ御参考にいたしましょうと、こういうような気持でございまして、今その資料のまとめ方をいたしておると、こういうことでございまして、上げるのか上げないのかとこう追い詰められますと、上げるということも言いかねますし、上げないということも言いかねると、ほんとうの腹を割ったお答えを私申し上げておるわけであります。しかし、それはそう長くかからないで、三月も四月もこれからかかろうとも思っておりませんそうかからないでそうした資料がまとまると思いますので、そういうときにあらためてまた詳細にお答えできる機会があろうかと思っておりますので、御了承願いたいと思います。
  210. 山下義信

    ○山下義信君 私も率直にお尋ねしまして、意地の悪い質問はいたしません、私も率直に伺います。これから調査をするのだとおっしゃいますと、それでは厚生省は今日までまだ何も調査したことがないのか、まだできていたいのかと伺わなければならぬかと思いますが、相当調査をなさっておると思う私は業者のためにこの際値上げをすべきだと言って代弁するものではふりません。もちろん、かくのごとき公共性のある料金は、値上げには反対であります。すべきではありません。しかしながら、諸般の事情でかりに値上げをすべきであるというならば、私は早くその方針をお示しになって、俗に言う抜き打ち的にこれをなさるというようなことは、私はおやりにならぬ方がよろしいと思う。大体こういう方針でおるとお示しになって、そうしてさらに、こういう席を通じて、大臣ももとより国会に議席をお持ちの方でありますから、こういう場を通じてある程度は示されて、そうして世論の動向を徴せられて、さらに最後の具体的な確定的な施策をおとりになるのが、これが私は民主的だろうと思うお尋ねいたしますというと、非常に慎重な態度で御答弁をなさる。そうして、行政的に時期を見て、一方的に俗に言う官僚的な措置をなさるということは、こういう大衆を相手とする料金に対する対策としては、私は妥当でないと思う。従来はかくのごとき方法を政府はおとりになったのでありますが、できるだけむしろ国民と相談するというような意味でおやりになるのが至当であろうと思う。もし厚生省が今日まで調査をしていない、公衆浴場のいわゆるふろの料金に対しては何らの方針がないとおっしゃるのであると、私は了承しがたい。そういう御答弁でこの席をお立ちになるということは、私は了承ができない。それならば、あらたまって、開き直ってお尋ねをしなければならぬことになる。今日まで厚生省は、公衆浴場の料金の値上げを認可してきておられる。今当面する未定だとおっしゃるのは、東京都の問題になっている料金でありましょうけれども、厚生省は今日まで、最近においても地方の俗世の料金はそれぞれ値上げを許可しておいでになる。どれだけ許可なさったか、この場で御説明を求めなければならぬことになる。それならば、なぜ地方の料金は、あるいは十一円を十三円に、十三円を十五円にというように、ある程の引き上げをなされておるか。それが厚生省の御方針じゃないのですか。やはりそういうように厚生省としては御認可になっておる最近の事例もあるのであります。浴場の料金は値上げを許さないのだとおっしゃるならば、地方の浴場料金をなぜ値上げを許可なさるのかということになる。私は方針としてはある程度の方向を持っておいでになるのじゃないかと思う、今御答弁の中に若干その意味が幾分か、示唆されないではありませんが、ただ二十円がいい、あるいは十七円がいい、十八円ぐらいがいいという、そういう具体的な金額になりますと、これは御検討の余地はありましょう。しかし、どういうことを御検討になっておるかということはこの際お示ししていただきまして、あらためて世論を徴せられるというのがいいのじゃないかと思います。たとえば婦女子の洗髪料、これはやめさせる、そうしてかりに料金の引き上げをするならばその中に含めてしまう、こうするつもりである、ああするつもりである、いろいろ御構想もありますれば、私は承わっておきたい、こう思うのであります、
  211. 神田博

    ○国務大臣(神田博君) お気持の点はよく了承いたしておりますが、一つ今お述べになられました地方の料金を値上げしたことがあるというお話でございましたが、これは値上げとおっしゃると、そういうことにもなろうかと思いますが、これは年々四月早々に前年度の町村合併等がございまして、いわゆるB地区からA地区に入るとか、あるいはC地区からA地区に入るというようなのがございまして、その調整だけは、いわゆる料金の改訂という、これはその地区だけの改訂になるわけでございますが、補正ということでございまして、年々前年度の町村合併によるものを補正いたしております’そのことをお述べになられたと思いますが、これは一般料金改訂とは別問題で、そこの市町村の肩をずらした、こういう意味のことでございますので、山下さん十分御承知のことと思いますが、申し上げておきます。  それから今の、もし値上げをするならば、早く上げると言う方が親切ではないかというような意味にも受け取ったのでございますが、といって別に上げろということを言っておるのではなく、調査しているというのであれば、しかし、調査するとしても目的があって調査しておるわけであって、ただ調査をするというのではないだろう。もう少し正面に言えといいましょうか、あっさり言った方がいいという大へん御親切な御要望に承わっておるのでございまして、それは私も先ほどからお答え申し上げておりますように、値上げの強い要望が東京都ほか十二県からございまして、それをどうしようかということで調査をいたしておるわけでございますから、その値上げを認めないという調査をするとか、値上げを認めようという意味で調査をしているのでなく、そういう要望がございます。常識的に二十八年二月以来上っておることが実際でございます。その物価の値上りを浴場経営がどういうように原価に吸収しているかということが問題なのでございまして、それから将来こういった状態が続くといたしますと、浴場経営にどういうふうな影響を与えるか、設備の改善をどこから合理化してみていくかということが関連するのでございますので、それらを一つ十分見通しをつけたい、こういうことを申し上げたわけでございます。上げるとも上げないともということは、まあ結論が出ないのをあまり申し上げてもどうかと思って申し上げたのでございますが、諸般の情勢が上げるということが一応の常識だということは、これはもう経済事情からいえば当然だと思います。しかし、これを政治的に考えて押え得るのかどうかということが一つの問題だろうと思っております、政治的に押えて、しかも浴場経営が成り立つ、浴場の利用者も満足するような施設が持続されるということができれば、値上げを抑えるということになろうかと思っております。いろいろ今お述べになりました髪洗いとか、あるいは幼児の問題をどうするか、子供さんなんかの問題をどうするかというようなことも、この前の料金改正の際にもいろいろ問題になったことでございまして、据え置いた事情等もございます。今度改訂するとすれば、その辺も問題が強く出ようと思っております、いずれにいたしましても、上げる方向は見えておるわけでございますが、政治的に一体どうしようかという考え方もございますので、それは調査した結論をはっきり把握しないと、何でもかんでも押えていくのだということは、ちょっと浴場経営の中小企業の脆弱性から考えて、やはりがまんさせる限界というものがあろうかと思っております大企業等でありますれば、ある程度融資するとか、あるいは何か一つ行政上の手段方法等によって一定期間ささえるということもありますが、そういう浴場経営者の相当資力の強いのもあるように聞いておりますが、全部が必ずしもそうでないことは御承知通りでありますので、その辺も考えまして、調査を急がせ、調査が一向進まぬじゃないかということでございましたが、何しろ国会中でございまして、いろいろその方が予算等で先行しておった関係上、おくれたのでございます。しかし、だいぶもう進んでおるはずでございます。これからそう長くかかろうとは思っておりませんので、もしこれはどうしてもある程度上げなければならぬということでございますれば、幾ら上げるかというような問題までいかない前に、上げるようなこと、あるいはそういった内容について、当委員会におきまして御報告申し上げる機会を持ちたい、かように考えておりますので、御了承願いたいと思います。
  212. 山下義信

    ○山下義信君 いろいろこの問題について伺いたいと思って、せっかく勉強もして参りましたが、ただいまの御答弁では、これ以上伺う必要がありませんそういうことでございますれば、私にも考えがあります。  ただ重ねて伺いますが、大体いつごろ当局の御方針を御決定になる御予定でございますか。
  213. 神田博

    ○国務大臣(神田博君) 今月一ぱいで調査を完了したい、こういう考えでございます。その完了した結果に基いて、若干考慮いたしまして考えたい、こういうことになろうかと思います今月一ばいと申しましても、もう十日そこそこでございます。そう長くはかからぬということであります。
  214. 千葉信

    委員長千葉信君) 本問題に対する本日の調査は、この程度にいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  215. 千葉信

    委員長千葉信君) 御異議ないと認めます。本日はこれをもって散会いたします    午後四時五十八分散会