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1957-03-19 第26回国会 衆議院 予算委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年三月十九日(火曜日)    午前十時三十二分開議  出席委員    委員長 山崎  巖君    理事 江崎 真澄君 理事 川崎 秀二君    理事 河野 金昇君 理事 小坂善太郎君    理事 重政 誠之君 理事 川俣 清音君    理事 柳田 秀一君       池田 清志君    今井  耕君       宇都宮徳馬君    大橋 武夫君       小川 半次君    上林山榮吉君       北村徳太郎君    河本 敏夫君       坂田 道太君    周東 英雄君       須磨彌吉郎君    竹山祐太郎君       中曽根康弘君    長井  源君       野田 卯一君    橋本 龍伍君       平野 三郎君    福田 赳夫君       船田  中君    古井 喜實君       松本 瀧藏君    三浦 一雄君       南  好雄君   出口喜久一郎君       山本 勝市君    山本 猛夫君       石山 權作君    井上 良二君       井堀 繁雄君    今澄  勇君       岡田 春夫君    勝間田清一君       河野  密君    小平  忠君       島上善五郎君    田原 春次君       成田 知巳君    西村 榮一君       三宅 正一君    森 三樹二君       矢尾喜三郎君    和田 博雄君  出席国務大臣         内閣総理大臣  岸  信介君         法 務 大 臣 中村 梅吉君         大 蔵 大 臣 池田 勇人君         文 部 大 臣 灘尾 弘吉君         厚 生 大 臣 神田  博君         農 林 大 臣 井出一太郎君         通商産業大臣  水田三喜男君         運 輸 大 臣 宮澤 胤男君         労 働 大 臣 松浦周太郎君         建 設 大 臣 南條 徳男君         国 務 大 臣 田中伊三次君         国 務 大 臣 小滝  彬君  出席政府委員         内閣官房長官  石田 博英君         内閣官房長官 田中 榮一君         法制局長官   林  修三君         大蔵事務官         (主計局長)  森永貞一郎君         食糧庁長官   小倉 武一君  委員外出席者         会計検査院長  東谷傳次郎君         専  門  員 岡林 清英君     ————————————— 三月十九日  委員植木庚子郎君、太田正孝君、楢橋渡君、有  馬輝武君、井上良二君、野原覺君及び辻原弘市  君辞任につき、その補欠として池田清志君、平  野三郎君、長井源君、和田博雄君、古屋貞雄君、  三宅正一君及び石山權作君議長指名委員  に選任された。 同 日  委員池田清志君、長井源君及び平野三郎辞任  につき、その補欠として植木庚子郎君、楢橋渡  君及び太田正孝君が議長指名委員選任さ  れた。 同 日  委員石山權作君三宅正一君及び和田博雄君辞  任につき、その補欠として辻原弘市君、小松幹  君及び井手以誠君議長指名委員選任さ  れた。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和三十一年度一般会計予算補正(第2号)  昭和三十一年度特別会計予算補正(特第2号)  昭和三十一年度政府関係機関予算補正(機第1  号)     —————————————
  2. 山崎巖

    山崎委員長 これより会議を開きます。  昭和三十一年度一般会計予算補正(第2号)外二案を一括して議題といたします。  質疑を続行いたします、井上良二君。
  3. 井上良二

    井上委員 ただいま委員長から御説明されました昭和三十一年度予算補正第2号、特第2号及び機第1号の各案について質疑をいたします前に、岸総理大臣に一、二点質問をいたしたいと思います。  それは昨日わが党の島上君から、岸総理石橋総理計画されておりましたアメリカ訪問を、石橋総理がやめられまして今度は自分総理大臣になったので、石橋総理のかわりに自分が今度はアジア訪問よりも先にアメリカに行きたい、こういうことを昨日申されておるのでありますが、私は岸総理日本総理大臣として、日本アメリカとの外交上また経済上諸般の重大な関係がありますので、総理としては当然アメリカに対して日本立場なり、日本で行われております国際的ないろいろの諸問題を率直にアメリカと話をされまして、日本の平和と独立のためにさらに一そう両国信頼度を高める目的をもって同国を訪問されるということについては、別に私はとやかくこの際申すものではありませんが、私ども総理石橋内閣当時の外務大臣として、まず日本アジア各国との緊密な善隣友好関係を積極的に推し進めることが何よりも大事であるかということで、このことを重要なこととして岸外務大臣として取り上げられて発表された。そこで関係アジア各国岸外務大臣が近くわれわれの国にそれぞれ訪問されることを期待しておったと思います。ところがこの外務大臣としての公約は、総理になりまして全く踏みにじられたといいますか、あと回しといいますか、アジアへ行くよりもまずアメリカの方が先だ、こう心境が変りましたのは、一体どういうところに根拠がありますか、それを御説明願いたい。
  4. 岸信介

    岸国務大臣 私は昨日高上君の御質問に対しましてお答えを申し上げたのでありますが、その際必ずアメリカを先にするとかアジアあと回しにするとかいうことを、確定的に申し上げたわけではございません。ただ私が石橋内閣成立当時、当時の石橋首相外務大臣として外交方針についていろいろと意見を率直に話し合った際に、私は外務大臣として国会が終了すれば、できるだけ早い機会にアジア諸国をたずねたいという意向を述べ、総理自分総理としてアメリカをたずねて、会井上君も言われるような点において、率直な話し合いをしてきたいつもりである、二人の間でそういう話をしたのであります。今、私が総理外務大臣としてその地位につきました今日におきまして、首相と話をした石橋首相アメリカ訪問ということも国の上から重大な意義があるし、また私がアジア諸国訪問するということにも重大な意義がございます。私は両方を実現したいと考えております。しこうしてその時期等につきましては、私の方の都会もございますが、それぞれたずねていく相手方都合もありますから、それらのものを十分見合せて、私としては両方を実現したい、その順序等につきましては、決してアメリカを先にして、アジア諸国の方をあとにするということを確定して島上さんにお答えしたわけではないのであります。その点はどうか誤解のないようにしていたがきたい。ただ今申すよう相手方の国の諸種の都合考えなければなりませんし、私としては両方を実現したい、かよう考えております。
  5. 井上良二

    井上委員 総理は、自分は別にアジアあと回しにしてアメリカを先に訪問するというようなことは考えてない、両方とも大事であるからそれぞれの国の都合を聞いて、自分の今後の訪問先をきめたい、こういう御答弁ようでございます。ところが最近新聞の伝えるところによると、アジア各国に対しましては別に相手方の国の御都合を聞いた報道一つも発表されておらず、反対アメリカに対してはきわめて熱心にアメリカ訪問の具体的な打ち合せがされておるように報じられております。そのことから国民はどうもアジア訪問あと回しにして、やはり総理大臣になると何よりもまずアメリカに行かなければならぬことになるのじゃないかと、こういう一つ誤解を生んでおるのではないかと思います。私さいぜん申します通りアメリカ日本関係はきわめて重要な関係を持っておりますから、日本の平和と独立を守る立場からこの国との関係を調整するということは、総理外務大臣としては当然の緊急任務であろうと思います。ところが、日本が今アジアの一角におりまして、アジア国々との間に十分な理解相互援助友好関係がはっきり確立されておるとは言えません。特に私どもは、日本とインドの関係というものは今後ますます緊密の度合いを加え、この両国の提携が一そう強度に高まるところに、アジア全体に対する大きな影響力を持っていくのではないかと考えております。そうしてまた、これらの国々日本が一そう親密の度合いを高め、いつでも打って一丸に立ち上れるという体制をまず先に確立しておいて、アジア相互利害関係のうちにいつでもお互いが胸襟を開き、お互いが共同して事に当るという体制を確立しておいて、その上でアメリカへ行かれた方が、日本の対米問題を処理する上にさらに有効に展開をしやせぬか、こう私ども考えておりますが、総理はさようにお考えになりませんか、この点を伺いたい。
  6. 岸信介

    岸国務大臣 御承知通りアジア地域、国連におきましてもいわゆるAAグループと称せられるアジアアフリカ国々は、やはり共通した一つ考えもございますし、またこれらと緊密な関係をとっていくということは、日本の将来から見ましてきわめて重要なことだと考えております。と同時に、このAAグループと称せられる国国は、かねてバンドンにおいて会議が開かれまして、ある一つ考えもその当時声明をされておりますが、これらの国々におきましては、やはりまたそれらの国々の特有の事情もございますし、一口にアジアアフリカグループといって、直ちにこれが一つのはっきりした形における利害や、あるいは国の大きな方針として一致した意見を持っておるということもまた言えない状態にもございます。こういう中にあって、日本がやはりアジアに地理的にもあるいは長い歴史から考えましても、また民族的な関係から申しましても非常に密接な関係を持っておりますから、将来日本が国際的に、またいろいろな経済その他の発展の上から申しましても、このアジアアフリカグループとは特別に密接な関係を持つことは、これは絶対に私は必要であると思います。これはあくまでも日本の自主的な立場から、特にこれらの国国は新しく独立した国々が非常に多いのでありまして、またある国は非常に古い文化を持っておるという点もありますし、それらの国々特殊事情というものを十分考えつつ、協力を進めていくということを私は常に念頭に置いておるわけであります。しこうして今お話しになっておりますアメリカアジア諸国との訪問の先後につきまして、井上君の言われるような御意見も私は非常にあちこちから聞きますし、今の御発言につきましてもこれは十分考えるべき意義を持っておるということは、私もその点におきましては同感でございます。ただ現実の問題として、この外国訪問を取りきめますについては、先ほど申しましたよう相手国事情等もございますし、また新聞等にいろいろなことが報ぜられておりますけれども、私は新聞報道がことごとく正確とも申し上げかねますし、また同時に相手方都合等を聞きますのにつきましては、それぞれの国に在外公館を持っておりまして、新聞には出ておりませんけれども、その国の大体の事情等もそれぞれの公館をして非公式には打診もいたしておるというのが現状でございまして、まだ確定的なことは申し上げかねますけれども、今井上君の言われる御意見につきましては、私も十分傾聴して承わっておきます。
  7. 井上良二

    井上委員 いずれにしましても私ども総理がこの際、アジア全体の平和といいますか、またアジア各国それぞれの国の独立というものを守るという立場からもそれぞれ御訪問をされることについて、国民は非常な期待を持っておりますが、どうもアメリカへ行かれる場合におきましても、あるいは東南アジア各国へ行かれる場合におきましても、総理の渡米なり東南アジアへ行かれる目的というものが一つも明確にされておらぬ、いろいろ今までこの委員会でも角度を変えて質問をしておりますけれども総理答弁ははなはだ抽象的であります。少くとも一国の総理外務大臣がこの国民の輿望をになって訪問される以上は、その訪問目的を明確にする必要があるし、国民をして理解せしめる必要があろうと思います。単に親善のための外遊や、単に遊び半分の外遊ではないと思います。それなればこういう目的でこういうことを一つできるだけ了解してもらい、また解決するために参りたい、国民一つ協力を願いたいという、国民外交の背景を持って少くともその目的を達成する方向に努力せなければなりませんから、従ってアメリカへ行かれるに対しましても、行かれる前は、必ずこれとこれの目的で行くということを、国民をして理解せしめることが必要でないかと思いますが、その点に対してどうお考えになりますか。
  8. 岸信介

    岸国務大臣 アメリカをたずねることにつきましては私は、かねていろいろの御質問に対してお答えもいたしておりますし、また外交方針等におきましても、私自身が日米関係についてどういう考えを持っておるかということも、はっきりと国民の前に明らかにいたしております。私はやはり日米関係というもの、現在ありますいろいろな日米間の諸問題というものが、真に両国の間に十分な理解——多少でも理解が不十分である、あるいは多少の誤解があるというようなことは、これは日米両国にとっていかないことである。従って真の理解の上に立って日米の諸問題を討議するということが、日米の将来のために最も必要であり、また占領下以来今日まで日米の間の関係について、国民的要望もいろいろな点において具体的に現われておる、それらの点を取り入れた日米関係を再調整するというためには、今申しますように、両国首脳部の間に率直に国際情勢の分析、また国際情勢見通し等についての意見を交換していく、そうして両国の真の協力関係というものを作り上げるためには、私は両国首脳部が率直に話し合うことが必要であるということを申し上げてきておるのであります。具体的にどういう問題とどういう問題とどういう問題を取り上げてここで話をするというふうに、具体的の問題を取り上げることは、私は今日の状況からいうと適当でない。すでに私がいろいろな点において日米関係を再調整しなければならないというよう意見を明らかにいたしましてから、井上君も御承知通り日米関係について存在しておるいろいろな問題についての国民の批判あるいは意見というものが、いろいろな点において今日開陳をされております。私は十分それらを胸におさめて、そうして日米の間の正しい——日本独立完成自主独立立場を堅持して、日米の正しい協力関係を作り上げるということを主眼に置いておるわけであります。  また東南アジア諸国に対しましては、実は国々にとって、あるいは賠償問題であるとかあるいは特別円の問題であるとか、あるいは経済協力具体的問題等、すでに国民承知いたしております幾多の問題がございます。私がこれらをたずねる場合においては、もちろん親善友好関係を増進するということでございますが、同時にこれらの懸案の問題を、それぞれの国において解決に向って努力をするという意図を持って参りたい、かよう考えております。
  9. 井上良二

    井上委員 外遊をいたします場合は、国会を通じてその目的をやはり明確にされて行かれることが、一そうその目的に対する国民理解を深めて、協力することになりはせぬかと思いますから、その点はぜひ一つように願いたい。次に、今日本外交問題で一番重要な緊急問題は、私は総理アジアあるいはまたアメリカへ行くよりも、まずクリスマス島における水爆実験を即時中止さすために、英国に積極的な外交を展開することであろうと思うのです。すでに政府は、国会における決議並びに国民の各方面の要望にこたえまして、先般来数回にわたって英国政府にその反省を促し、実験中止方をたびたび申し入れておりますけれども英国政府は何ら反省を示しません。ために、国民の一部には世界の平和を守り、特に数回にわたって原爆の被害を受けました日本国民は、この英国の無謀な水爆実験に対して、身をもって決死船団を送ってでも、これを中止さそうというような悲壮な運動計画されておるように伝えられておる。こうなって参りましたので、岸内閣といたしましても、事態きわめて重大と考えて、先般各著名な宗教家に呼びかけて、最近立教大学の学長というのですか、総長というのですか、松下さんにお願いをして、総理特使として、数名の人をお供をさして、英国に乗り込んで、国民的な協力を求める運動を起すことが計画されて、今月末には渡英されるようでございます。これらの著名な宗教家の方々の御協力はもちろん仰がなければなりますまいし、また全国民のあらゆる機関を通して、あらゆる方途を講じて、この反対運動を巻き起すことが必要でございますとともに、私は、この際総理が、この予算案国会を成立いたしました直後において、総理みずから両院議長を帯同いたしまして、英国政府英国国会に対して、クリスマス島における水爆実験即時中止方を申し入れ、懇請する必要がありはせぬかと思う。それが、ほんとうに今日日本政府として最も必要な緊急な外交上の措置じゃないかと考える。総理国会の許可を得て、予算成立直後に、英国に衆議院、参議院の議長とともに参られて、この即時中止方を懇請する意思はありませんか、この点に対してお答え願います。
  10. 岸信介

    岸国務大臣 原水爆実験中止の問題は、国会の数回の決議もございますし、日本国民の一致した悲願でございまして、私は政府を代表してあらゆる方法によって世界の世論を起し、あるいは持っておる米英ソの三国に対してあらゆる方法でその反省を求めて参っております。クリスマス島の問題につきましては、差し迫った問題として、今お話がありましたように、松下氏を私の特使としてイギリスに送ることを決定いたしまして、今月の末にはこれを立たすことにいたしております。私はこの問題は今後もいろいろな有効な合理的な方法をとって、われわれの国民的要望を十分到達させるように努めたいと存じますが、今井上君の御意見としてお話しになりましたようなことは、ただいまにおいては私まだ考えておりません。
  11. 井上良二

    井上委員 総理としましては、なるほど国会開会中でございますし、まして予算審議中でありますから、予算が成立しますまでは国会を離れることはなかなか責任上できないと思います。ところが予算が成立いたしますならば、そう重要な法案というものは問題にならぬと思いますから、そこで所管大臣にこれをまかせておいて、せめて一週間、十日の日をかければ十分行ってこられるのでありますから、私はその結果がかりに不成功に終りましょうとも、少くとも国をあげてこの反対運動に立ち上っておるときでありますから、一国を代表する総理外務大臣は、当然私はこの際英国に乗り込んで、英国政府及び国会に対して、水爆実験がいかに無謀なものであり、人類の生活の上に重大な影響を及ぼすものであるかということを、あらゆる角度からほんとう熱意を持って説き伏せる決意が私は必要であると思う。いま一度この問題に対して御考慮願うことを私は答弁を求めますが、いかがでありますか、まだそこまで考えませんか。
  12. 岸信介

    岸国務大臣 井上君の御熱意に対しましては私は敬意を表しますが、まだ具体的にそこまでは考えておりません。
  13. 井上良二

    井上委員 次に、問題の予算補正に入りますが、そのうちで特に私は本日食管会計赤字問題について質問をいたしたのであります。ただいま審議中の昭和三十年度の食管会計赤字は、政府の説明によりますと、三十年度内に百六十七億をも補てんした上に、さらに二億七千万円の赤字となりまして、これを合計いたしますと百六十九億七千万円となっております。これは表面帳簿上に現われた赤字でありまして、実質赤字はもっと多いのではないかと考えますが、その点一体どうなっておりますか。大蔵大臣なり農林大臣から御説明願いたい。
  14. 井出一太郎

    井出国務大臣 お答えいたします。昭和三十年度の赤字、これは決算がすでに確定いたしましたので、この数字が動くということはあり得ない、このように御了承願います。
  15. 井上良二

    井上委員 決算上に現われた赤字は百六十九億七千万円であろうかと存じますが、私の今質問しておるのは、食管会計実質的な赤字はこれでいいのかということを聞いているのです。
  16. 井出一太郎

    井出国務大臣 これ以上は累増することはないと考えております。
  17. 井上良二

    井上委員 そうしますとお伺いしますが、私の調べたところによると、このほかにまだ二十五億二千万円の赤字が出ている。これは帳簿上では赤字があまり多くなるというところから、食管固定資産たる食糧事務所土地及び建物評価がえをして、評価益金で二十五億二千万円を落しているのです。だから食管の実際操作上の赤字というものは二十五億二千万円よけい出ておるのですよ。あなたふえやせんと言うが、そんなことはあらへんです。(笑声)
  18. 井出一太郎

    井出国務大臣 三十年度の約三十四億に近い赤字というものは、決算の結果でございまして、今御指摘の二十五億何がし、これを資産評価益ということで、その年度に、計数上に明らかにいたしまして処理したことは御指摘通りであります。
  19. 井上良二

    井上委員 この実質的な赤字を加えますと三十年度の赤字は実に二百億に近いのであります。二百億という膨大な赤字を出している。政府は、三十年度の予算編成当時は、三十年度の赤字は大体百億見当見込んだ。そこでただいま申しましたようにあまりにも赤字が大きいものだから、そこでその赤字を少しでも少く見せようとして、食管固定資産たる土地建物評価がえをやって評価益金で出してきているのです。食管米麦買い入れ売り渡しによる実質操作上の赤字ではないのです。その赤字評価がえでもって穴埋めをしているのです。さらにまた一体こんなに大きな赤字がどうして出たかということを私どもが調べてみますと、これは全く政府米麦買い入れ売り渡しの不手ぎわが原因になっている。それは政府みずからにも責任があるのでありますが、昭和三十年度の予算編成方針においてこの食糧統制の問題に対しては、米の統制管理については近い将来に統制を解除する、このことを前提として三十年度においてはその過渡的措置として、現行制度を維持すると閣議で決定しているのです。すなわち近い将来には米の統制撤廃をする、それを前提として三十年度は現行制度を一応維持する、こういう前提で三十年度の食糧会計予算は組まれているのです。だから統制をはずすという前提に立って需給計画が立てられている、それによって米麦買い入れ売り渡しが行われている、こういうことです。そこで今度は、この予算編成当時の統制を撤廃する前提において政府が組みました米の買い入れ売り渡しというものは、一体どうなっておったか。当時の予算書を見ますと、内外米買い入れ予定高をきめて、準内地米買付必要量を六十六万トンと予定して、この国会の承認を得た予算書が成立いたしまして、四月、五月、六月と三ヵ月を経過して、七月になって政府はどういう計画を新しく打ち出したかといいますと、表面食管赤字百二十五億を消すことを目的にして、一つ輸入食糧の値下りで四十八億、それから業務川米売却利益金三十九億、酒造米の値上げで三十三億、中間経費の節約十八億、これで百二十億の予想される食管赤字を帳消しにしよう閣議できめたのです。この閣議決定は七月九日です。その結果一体この決定通り食管操作は行われておりますか。
  20. 井出一太郎

    井出国務大臣 だいぶ井上委員しさいにお調べでございますが、この問題は食糧庁長官からお答えいたします。
  21. 井上良二

    井上委員 これは閣議決定でありますから、食糧庁長官は閣僚じゃありませんから、あなたでいけなければ総理大臣に聞きますよ。
  22. 井出一太郎

    井出国務大臣 食糧庁長官からお答え申し上げること、私の責任においてお答えした、こう御理解願いたいと思います。
  23. 小倉武一

    小倉政府委員 ただいまのお尋ねでございますが、特別会計操作のためにただいま御指摘になりました事項についての結果でございますが、業務用を新しく売却するということにつきましては、輸入食糧計画よりもふやして買い入れるということと相関連する問題でございまして、これが予定をはずれまして、計画ほど売れなかったということでございますので、計画ような利益は、この方面からは上らなかったのであります。  それから酒米の点でございますが、これはほぼ予定のような利益が上ったというふうに見ております。
  24. 井上良二

    井上委員 輸入食糧の値下りで四十八億予算から浮きましたか。わからなければ調べて、あと答弁して下さい。  ただいま食糧庁長官から御説明がありました通り政府は三十年度のこの閣議決定を行いながら、特に統制をはずそうという一つ前提がありますから、準内地米を六十六万トン買い付けた上に、一般配給用として二十九年から持ち越されました米を九万トンに過小に評価して、業務用の需要量をさらに十万トン過大に買い付けて、今御説明の通り、これはもうけるためにやった。三十九億円もうけようとした。もうけようとしたところが、政府の見込み違いもはなはだしい。たった二千トンしか売れぬ。十万トン過大に輸入して、たった二千トンしか売れない。このために二十三万トンという莫大な量が、三十一年度に持ち越されておる。そうして保管料と金利で九億円という金を、何でもなしにむだに支払っていますよ。一体こんなむちゃなことをしてどうするんです。しかも当時国際価格はどんどん下ることが予想されておる。すでに今説明を申し上げた通り輸入食糧の値下り、わずか三月でもってすでに四十八億というものを見積るほど、輸入価格は値下りをしておる。国会予算が成立してたった三月しかならぬのに、すでに四十八億も予算よりも値下りを来たすほど、国際価格は値下りを来たしている。しかも国内的にはすでに豊作が予想されておる。そういうときに国内の保有量はできるだけ少く見積って、そうして輸入はできるだけ過大に見積って、しかもそれはほとんど売れずに、民間の倉庫業者と金融業者にわずかの間に九億円もの金利と倉敷料を払って、一体それでいいとお考えになりますか。そんなむちゃくちゃなことがありますかいな。これは実際私どもの血税で払わなければならぬのですから、そんなだらしないことをされたんじゃたまったものじゃありませんよ。大蔵大臣、あなた一体どういう予算を組み、どういう会計の決算を見ておるのか。この実情をようようも見のがして、それでのこのこと、こんな説明をつけてここへ出しよるね。国民が聞いたら怒りまっせ。どうですか、大蔵大臣一つ正直に答弁願いたい。
  25. 池田清志

    池田国務大臣 昭和三十年度におきまして、外米が相当入ってきた。そして値下りをしたということは聞き及んでおります。従いまして私といたしましては、この食管会計の合理化についてぜひとも今回措置いたしたい、こういう考えで特別調査会を設けるようにいたしたのでございます。外米を買うことも一つの、何と申しますか商売でございます。見込み違いが事実上出てきたということは、これはやむを得ぬことでございますが、将来はそういうことのないようにいたしたいと思います。
  26. 井上良二

    井上委員 まあ大蔵大臣は肝っ玉の大きい人ですから、一兆一千億もの予算を組んでるんやから、五億や十億のことをけちけち言うな、食管も商売をやってるんやから多少見込み違いがあるわいなということで、あなたがこれを見のがされるということはですね、これはけしからぬことだと思う。もしこれが民間会社だったら、つぶれてしまいますよ。しかもその上にイタリアから、スペインから、中共から、規格外の軟質米を七万トンも買い入れて、その上にさらにタイ、仏印等から砕米を抱き合いに買うてだね、一体どうするんです。こういうむちゃなことをして、それで年度末になって総額二百億という赤字が出てる。これは何も輸入食糧だけじゃありません。内地の豊作を見込み違いをして、最初二千三百万石か四百万石予算では買うことになっておるが、実に三千四百万石からの超過供出を見まして、しかもこれが東北を中心にする早場地帯でありましたために、実質的な買付金は莫大に増額をして、このことからも食管会計操作による大きな赤字が出てきておりますけれども、これはともかくといたしまして、現実に規格に合わない軟質米まで買うておるんです。これを全然あなた方は検討せずに、それでこういうことをやったことについての不手ぎわについては、だれも責任を負わぬ。二百億の大きな国損を与えてるんですよ。この穴埋めを、先般食管会計の食いつぶしで百億、一般会計から六十七億、さらに今度またここへ三十何億というものをわれわれの税金から出してくれと言うとるのや。こういう不手ぎわをやった、こういう見込み違いの責任はちっとも言いやせぬ。しかもこれは閣議決定です。一体だれが責任を負うんです。責任の所在はこうしました、こういう見込み違いがありましたということを国民に納得さし、得心さして、それでやむを得ないからこうしてくれいというて国民に頼むならば、国民はまた政府を信頼して、その政府の申し出には応じましょう。だれもこんな不手ぎわをやったことに対して責任を負わないではないか。一体岸総理大臣はこういうことでいいとお考えになりますか。あなた責任を負わないでいいとお考えになりますか。この際かような不手ぎわによる大きな国損に対して、しかもこれが閣議の決定によって発せられた問題でありますから、これはいかに現内閣の当時のことでないといえども、少くとも与党の歴代内閣のやってきたことをあなた方はバトンを受け継いでいるのだ、これは反対党がやったときではないのだ、あなた方の前内閣がやっているんです、そのバトンを受け継いでいるんです。岸総理はどうお考えになりますか、御答弁を願います。
  27. 岸信介

    岸国務大臣 数字的の根拠につきましては、私まだ明確なことを承知いたしておりません。もちろん食管法の運用につきましては、言うまでもなくこれは法規に従って正確にいくことは当然でございます。ただ従来の食管法の運営等につきましてはいろいろな批判もございますので、私どもはこれを根本的に合理化する意味において、さらに根本的な調査をする意味において、特別調査会を作ってせっかく今審議をいたしておりますが、今御指摘の点につきましては、今だけの質疑応答では明確な事情がわかりませんから、明確にいたしましてあくまでも公正な運営をして、損失を増大しいような合理的は運営方法考えていきたい、かよう考えております。
  28. 井上良二

    井上委員 大へんなことですよ。私はあなたの内閣から提出されている予算審議しているんです。この予算の数字からやっているんです。三十年度の赤字をやっているんです。あなたの方で三十年度の赤字審議してくれというてきておる、それでわからぬと言われちゃ審議方法がありませんぞ。わかるまでしばらく待ちましょうか、そうしなければ話ができません、そんなむちゃなことを言われちゃ……。
  29. 岸信介

    岸国務大臣 数字の問題につきましては食糧庁長官なり農林大臣から、なお一そう質疑を続行いたしまして明確にしていただきたいと思います。
  30. 井上良二

    井上委員 私は数字の点をあなたに聞いておるのではないのです。二百億からの赤字を出しておる、閣議決定による政府の食糧需給の不手ぎわ、見込み違いがこういうことになっているのだ、その責任はだれが負うのだと言っているのです。一体だれが責任を負うのか、責任を負わないで、ぬけぬけと赤字が出たから一般会計から補てんさせてくれ、与党は多数で異議なし、そうやられてはたっまたものではない。私はそこをどうするかといって聞いておる、責任をだれが負うのかと言っておる。あなたの責任を聞いているのだ、内閣総理大臣としての責任を聞いているのだ。これはちょっとやそっとの金ならいいですよ。二百億という大きな傘が一年間に出ておりますよ。しかもその大部分は不手ぎわですよ、見込み遅いですよ。それを一つはっきりして下さい、責任をはっきりして下さい。
  31. 岸信介

    岸国務大臣 私は食管会計なりあるいは食管制度の運営というものが公正にやられ、そしてその間において十分誠意をもってこれがやられておるということであば——今のこの運営上の見込み違いというものが非常な過失やあるいは不当なることによって生ぜられたものであれば、これは責任問題を考えなければならぬと思います。そうでなしにただ見込み違いで、どういう数字が出るか私は知りませんが、買付及び売り渡しをするという上において、国際的な事情の変化やその他の何でもって見込み違いが生じたという欠損は、誠意をもってこれを施行しておるということであれば、もちろんこれは特に責任を問うという問題ではなかろう、かよう考えます。
  32. 井上良二

    井上委員 それは大へんな話ですよ、総理。私が一番ここで明らかにしなければならぬ点は、私がさいぜんじゅんじゅんと申し上げております通り予算編成の基本方針及び予算が成立いたしまして後三ヵ月後における七月七日の閣議決定、これによってこの年度の食糧の輸入計画需給計画というものは立てられてきている。また食管赤字操作というものの計画が立てられてきている。それが予定通りいかなかったからということであって、国にも大きな損害がかからなかったならば問題はない。ところがさいぜん私が申し上げています通り、国内では農作が予想されておる。最初は二千四百万石くらい買い上げる予定の数量が三千万石を突破するほど、事前割当の申し込みがふえてきている。上回っているのです、最初の食糧計画からいえば非常に上回っている。「社会党でも見込みが違ったろう」と呼ぶ者あり)さらに現に七月九日の閣議決定によっても、外国食糧の値下りで予算上と実際とは非常に開きが出てきたから、これだけの益金があるということがきめられている。外国食糧はどんどん安くなっていく。国内では豊作が伝えられる。そういうときに一体米をどんどん買うといり手がどこにあります。常識上そんなことが許されますか。これは重政さんもぐずぐずはたで言うけれども、あなたも農林次官をやっておって、そんなことわかっているはずだ。それだから、そういうべらぼうな常識をはずれたことをしておいて、それで赤字が出たからというて、何か多数の力で国会に何でもかんでもつじつまさえ合して出してくればいいという、そんなものじゃありませんよ。金銭の授受による不正事件なら、それは明確に検察庁の手で処分ができますけれども、こういう政治的な失敗に対しては政治的な責任を負わなければなりませんよ、そうしなければ政治の公明さと明るさを貫けませんよ。そこを私は聞いているんです。あなたは正直な人だからその点はっきり答えられると思うから聞いている。どうですか。
  33. 井出一太郎

    井出国務大臣 昭和三十年の七月とただいま言われました二年前のそのごろを回想してみますと、二十八、二十九と非常な凶作が続きました。従いまして三十年度に例の予約集荷制というものが実施せられたわけでございますか、私どももその当時としまして果して予約集荷制度というものがうまくいてか、どれだけの米の集荷ができるかということに相当な不安があったように記憶をいたすわけでございます。従いましてやはりある程度の政府の手持米を持つ必要があろうかというようなことから、おそらくは準内地米その他これを政府の手に操作米というような意味で手持ちをしょう、こういう考え方が働いたのではなかろうかと思うのであります。三十年度の赤字というものは、それが見込み違いになって起った、不手ぎわと言われますれば決して弁解はいたしませんが、そういう面と、一方においては、ともかくあの大豊 作というものは、まだ七月、今おっしゃる閣議当時は、これは予想もせられなかった点でありまして、これらが重なり合って、御指摘ように二百億を上回るよう赤字が出た。このことはまことに遺憾でございます。従って、私も食営会計のあり方について、これを再検討しなければならぬということから、就任以来携わっておるようなわけでございまして、あえて責任を回避するわけでございませず、むしろこの問題と取り組んで、井上さん御指摘ようなもろもろの欠陥を究明をいたしまして、そして国民の批判にもこたえたいというつもりであるわけでございまして、御了承願いたいと思います。
  34. 井上良二

    井上委員 私はここではっきり申し上げておきますが、食管の会計上の操作上から起った赤字でありませんよ。これは政府の食糧政策の見込み違いですよ。それを食管の何か操作の失敗があって赤字が出たような印象を与える答弁はごめんをこうむります、同時に、あなたは準内地米操作の必要から多少買い過ぎた。こう言うけれども、 閣議決定は、準内地米操作の必要から買ったのではないのです、業務用としてこれを配給して、一升百九円に見て百十五円か百二十円に売ってもうけようと思ってやった。そしてそれで全体の主要都市に対する希望配給をつのってうまく米を回しておいて、その次には統制をはずそうという計画が進められたのです。それが農業団体から吹き上げられて、統制もはずすことができぬようなことになって、逆に国内産麦はどんどん下っていく、これを農産物価格事情によってどんどん買い上げなければならぬことになった。今までは国民の消費経済国民経済の安定の方回に食管を設けてやっておったけれども、今度は一般農業経済を安定させなければならぬ立場から食管法を守らなければならぬことになってきたのじゃないか。それが事実じゃないか。とぼけたらあかん。それは断じていかぬ。そういうよう責任の所在は所在として明らかにしていきませんと、われわれはかような補正予算を簡単に承認するわけにいかない。しかも次に伺いたいのでありますが、決算確定の赤字はこれでもうないのですか、まだありますか。
  35. 井出一太郎

    井出国務大臣 三十年度決算は、その補正予算にお示しをしておる通り、二十三億五千万円、これでございまして、自余のものはございません。
  36. 井上良二

    井上委員 政府は、二十八年九月までに十五万二千トンの病変米を買い入れたまま保管しておる。この病変米を昨年秋まで一つも売却してない。約二年半ずっと持っている。これが一般配備用に使えぬというところから、厚生省の方でいろいろ検査をいたしまして、そこでこれを工業用あるいはその他の用途に向けるか向けぬかは、いろいろ検討してやっと最近になって二、三万トンも売ったですか。まだこれが十一万トンくらいあるんじゃないですか。あるように思う。これの評価がえは一体どうなっているのです。
  37. 井出一太郎

    井出国務大臣 病変米のことをお触れになったわけでありますが、これは今御指摘ように、政府の手持ちは十一万数トンございます。厚生省のサンプリング調査の結果、上中下と分けまして、その上の部に属するものは、これは無菌という証明がつきますから、これは食品加工用に回るわけでありますし、下というどうにもならぬと申しますか、食品に向けては危険であるというものは、アルコールであるとか、のりであるとかの方に向けるつもりでございます。その中という部類のものについてはてまだ目下検討中、こういうことになっておるわけでございますが、三十年度におきましては、この病変米から参ります赤字が約六億円、これだけのものは織り込み済みで処理をいたしておるわけでございます。そこで、今評価がえをどうするかというお話でございますが、ようやく検査が済みまして、これから処理をするという段階に相なりますので、できるだけこれは国損を大きくしないように処置はいたすつもりでございますが、もし減価償却をしなければならぬという場合には、今後の問題として起ってくることがあり得ようか、このよう考えております。
  38. 井上良二

    井上委員 そういたしますと、二十九年の九月から昨年の秋まで、これは全然売らずに保管をしておりましたが、その間は評価がえをせずですか、保管をしたままですか、そうしてこれは会計には現われておりませんか。
  39. 井出一太郎

    井出国務大臣 この間にも評価がえはいたしておりますので、もし詳細お求めならば事務当局から説明いたさせます。
  40. 小倉武一

    小倉政府委員 病変米の評価の問題でございますが、取得価格に対しまして、病変米のうち食用等に向きがたいものにつきましては、価格で申しまして、約二割程度の値引きでもって二十九年度末に評価いたしております。大体そういう方針で現在まで参っておるのであります。
  41. 井上良二

    井上委員 重ねて伺いますが、二十九年度末はそれでいいのですが、三十年度末はどうなっておりますか。決算ではやっぱり二割の評価がえで出しておりますか。二十九年度に二割で落してそのままですか、それとも三十年度にも二割で落しておるのですか。
  42. 小倉武一

    小倉政府委員 三十年度はそのまでございます。
  43. 井上良二

    井上委員 さらにこまかいことを伺いますが、ただいま大臣から言われたこの病変米十一万数千トンは、取得価格にすると、少くとも四、五十億の金額になります。それが全然処分をされずに、倉庫へ足かけ三年居眠りさしておるわけです。この金利と倉敷料が、大体年間五億円つくということが指摘されておる。そうすると三年間持っておれば十五億。それから今の二割欠損を見ますと、これで大体十二億、合計二十七億というものがこの病変米で国損になっている。赤字になっているのですよ。これでいいかと思うと、そうじゃあらへん。また別に食管の中にはくず米、いわゆる砕米というやつがある。抱き合せて買わされた、これがそのままある。それから切りぼしカンショがあり、別に腐っておる。軟質米がある。これらは一体どうなっていますか。その数字と価格をお示し願いたい。
  44. 小倉武一

    小倉政府委員 聞きもらした点がありますが、切りぼしカンショは在庫はございません、それから軟質米の問題でございます。これは昨年、一昨年の豊作等の結果、軟質米の処理に苦慮いたしたのでございますが、できるだけ軟質米を消費に充てるということで、持ち越しになっておる米は、硬質米のいい米でございます。そういうわけで、なおお尋ねに対してお答えの足りない分がございましたら、またお答えいたします。
  45. 井上良二

    井上委員 三十年度は、病変米には決算上全然触れてない、しかし結果は、厚生省の話によると、上中下と三等分している。検査が済んだのでありますね。そこで、あた方、この前の委員会ではむずかしい修正売価主義をとって決算を出したとか言うているやのが、これはそれを何で適用せぬのです。そいつは別ですか。ちょっとそこがおかしい。上中下と分類して、上は何トン、中は何トン、下は何トン、その売りさばく見込み数量と価格、これはどうなっています。
  46. 小倉武一

    小倉政府委員 先ほど大臣からお答えいたしました、病変米の仕分けにつきましては、仕分けいたしました対象は約八万トンございまして、そのうち上と見られるものが五万トン近く、四万七千トンほどございます。そして下と見られるものが一万トン余り、残りが中間ということになっております。上に属するということで一応仕分けのつきましたものについても、なお菌の検討をいたしまして、無菌の証明のつきましたものを加工食用に回すというようなことにいたしております。価格は加工原料の価格を適用いたしまして、トン当り五万二千八百円でございます。加工食用以外に、のり等の一般の原材料に対しますものは、それよりは低くいたしまして、砕米等の価格も参照して、ほぼその平均価格みたいなところで決定いたしております。
  47. 井上良二

    井上委員 はなはだこまかいことを聞くようでおそれ入りますけれども、この上の五万トンというのは食料用に回る、下の一万トン余りはだめ、そしてあとへ残っておりますこの中等のやつ、五万トンほどでございますが、これは一体何に使うのです。
  48. 小倉武一

    小倉政府委員 その中級の米につきましては、これはなおいろいろ中の種類がございまして、これをできるだけ簡単に仕分けをする、品質の見きわめをするという方法が、まだ実は見つからないのでございます。それが見つかりますれば、その中でさらにいいもの悪といものとに分けるということになろうかと存じますし、なおまた別途、黄変米の処理自体について、毒性を消すといった方法についても若干検討が行われておりますので、そういう方法が早くいけば、しかもコストも低くできるということがわかりますれば、そういうことでも処理ができることになろうかと思いますが、ただいまのところは、中級品についてのサンプリングの仕方について研究を進めておるのであります。
  49. 井上良二

    井上委員 農林大臣に伺いますが、どうですか、一体、こんなのんきなことをしておっていいとお考えですか。二十九年の九月に輸入してきて、これが病変米であるということがわかって、二年半もたってやっと——厚生省ものんきかしりませんが、やっと昨年の秋ごろになって仕分けがついた。ところがなおかつ五万トン余りは、今後これをどうしたらいいかということがまだわからぬ。この間、一年間に約五億円もの倉敷金利を払ってきている。これからまだどんどんお払いになろうというんじゃが、一体そんなことをしておって、それで農林行政がいいとお考えになっておりますか。
  50. 井出一太郎

    井出国務大臣 御指摘通り、私もその問題についてては非常に焦慮いたしておるのでございます。サンプリングの結果も判明いたしましたので、この点は大蔵大臣とも話し合っておるのでありますが、できるだけ取り急いでこの始末をつけたい、かよう考えております。
  51. 井上良二

    井上委員 この病変米問題は、たしか三十年、三十一年の決算委員会でもこれが問題になり、農林委員会でも問題になり、大蔵委員会でも問題になって、政府の処置をやかましく追及したものです。一体大蔵大臣は、こういう事実をどう見て、予算をどう考えて、こんなのを組んできておりますのやな。あなた、予算の問題では相当やかましいということで通ってきておるのだが、こんなずさんなことをして、それで足かけ三年にもなっているのやで。そうしてあなた方、得々として、社会保障に何ぼやったかんぼやったというもんだから、予算を見たら、一人当り何ぼにつく金をやっているのやがな。わずか二円か三円上げて、よけいあげたように言いよって、それで片一方ではこんな大きな損をして、それにはちょっとも追及もしなければ、知らぬ顔して、よっしゃよっしゃということで予算を組んできて、ここで承認を求める。そんな一体だらしのないやり方がありますかいな。国民はそんなことは承知しませんよ。これは日々食べている米ですから、日々、汗水たらして働いて納めた税金ですから、一番国民には切実ですよ。貧乏人は麦を食えというて心安う言うけれども、こっちは病変米食ったら命がなくなっちまう。生きているわけにいかぬで。大蔵大臣、一体どうお考えになりますか、これでいいと思いますか。予算上、資金上、かつ決算上これでいいとお考えになりますか。あなた、そこを一つ答弁して下さい。
  52. 池田清志

    池田国務大臣 食管会計におきましては、今お話のような点があるのでございます。黄変米につきましては早急に処理をしなければならぬと思っております。農林省の方では仕分けいたしまして、適当な方法考えられておるのでありますが、大蔵大臣としては、こういう状態がございますので、就任後いち早く、食管会計につきまして合理化、健全化をはからなければいかぬということで取り上げまして、そうして今後食管の特別調査会でこういう問題を十分検討して、今までの、お話のようなことのないように努力していきたいというのが、私のただいまの心境でございます。
  53. 井上良二

    井上委員 最後に会計検査院長に伺いたい。私がさいぜんから質問をいたしております食管会計の内容について、いかに政府が不手ぎわで、かつ見込み違いで大きな国損を出したかということについて、部分的にはあなたの方からそれぞれ政府指摘をいたしまして、国会にもその指摘個所の報告が出ておりますが、これらの指摘に対して、一体政府は何とあなたの方へ答えてきておりますか。そうしてあなたの方では、その指摘したことが完全に訂正され、反省され、さらによい運営になっておると見ておりますか。会計検査院は一体どう処置を考えておりますか、また総理はこの会計検査院の指摘に対してどう処置をされておりますか、伺いたいのであります。
  54. 東谷傳次郎

    ○東谷会計検査院長 お答えいたします。先ほどお示しになりましたように、会計検査院で昭和三十年度の食管会計の経理に対して批難をいたしておりますのは、準内地米の購入計画に見込み違いがありまして、倉敷料だけで見込み違いの分が十九万トンで四億五千万円の倉敷料を払っておる。さらに外国の小麦でございましたかの関係で、ダストなどの入ったものと入らないものとに分けるのでありますが、入っていないものを入っているものと同じような安い価段で売った、こういう関係でこれは千七百万円ばかり損になってきておる、こういうふうに見ておるのであります。これらに対しては政府の弁明といいますか説明が参っておりますが、いずれも将来十分注意するという説明的弁明が、これは国会の方にも出ておりますが、そういうふうになっております。  私ども年々会計検査をいたしておるのでありますが、会計検査の目的は、やはりそういうことのないようにということをこいねがうのが主目的でありまして、そういう観点から見ますると、食管会計におきましても、会計経理運営の面からは相当によくなっているように見ております。
  55. 井上良二

    井上委員 次に三十年度の補正予算の内容について質問をいたしますが、今度の食管会計補正で二十九年度までの赤本が三十億八千万円と三十年度にさらに決算の結果二億七千万円で合計三十三億五千万円となっておる。ところが二十九年度の赤字約三十億八十万円は三十年度の補正予算で消えておる、このことに関して先般本委員会でわが党の横路君が質問をいたしたのでありますが、これに対して森永主計局長は、政府は三十年度百六十七億を補てんすれば、三十年度の決算上黒字が出て二十九年度の赤字三十億八千万円は帳消しになる予定であった。ところが三十年度の決算をしてみたらなお赤字になったので、二十九年度の損失が新しく生き返ってきた。これは会計技術上やむを得ない問題であってということで、国の予算決算を会計技術上の問題に逃げておりますが、一体会計技術上というようなことが会計法、財政法、食管法、食管特別会計法、これら関係法規のどこに規定してありますか。それをまず知らせてもらいたい。
  56. 森永貞一郎

    ○森永政府委員 三十九年度の損失金三十億円が三十年度に繰り越されました経緯につきましては、先般も申し上げたのでございますが、三十年度の補正予算の際に、二十九年度からの繰り越し損三十億に三十年度の損失見込み百三十七億円を合せました百六十七億円を、六十七億円は一般会計からの繰り入れ、百億円はインベントリーの取りくずしで埋めることといたしたわけでございます。その場合の繰り入れのために提出いたしました法律でありますが、政府は食糧管理特別会計昭和三十年度における損失を埋めるため三十年度において一般会計から六十七億円を繰り入れることができる。三十年度の損失を埋めるためということが法律に明記してあったわけであります。その法律の第二条ではインベントリー百億円の取りくずしを規定いたしておりますが、これは昭和二十六年法律第六十九号によってこの百億円は一般会計に食管から返さなければならぬという規定がありましたので、その規定を削っただけの法律品であったわけでございます。そこで予定通りの損でとどまっておりますれば、この百億円の取りくずしによりまして、三十年度に三十億円の利益が出て、それと二十九年度の繰り越し損とが相殺されまして、二十九年度の損が消えるということであったのでありますが、三十年度はただいま御質疑にも御指摘がございましたように、さらに損失が増加いたし決したために、一般会計から繰り入れました六十七億円、それから百億円、この百六十七億円では利益が出ない、むしろ損が出たわけであります。その場合に三十年度の損失を補てんするためという規定の法律でございます関係と、インベントリー百億円をくずす、これは三十年度の利益にならざるを得ない関係からいたしまして、まず優先的に三十年度の損失補てんにこれを充当せざるを得ない結果になりまして、初め意図いたしましたところと異なりまして、二十九年度の損がそのまま残ったというような経緯に相なっておるわけでございます。今回三十三億五千万円を繰り入れますのは、食管会計法附則第二項によってこれを繰り入れます。そういたしますと決算上の損失を補てんするという法律でございますので、今回は間違いなく三十一年度に関係なしに、三十年度の期末の繰り越し損三十三億五千万円が直ちにこれで埋まるわけでありますが、三十年度は今申し上げましたような三十年度の利益にならざるを得ないような法律の規定によって百六十七億を補てんいたしました結果、損失が増大いたしましたために、やむを得ず二十九年度の赤字が残らざるを得なかった、さような経緯に相なっております。財政法と申しますよりは、繰入法ないしはインベントリーを取りくずしました法律の規定からくる技術的な問題でさような結果になりましたことを先般お答えいたした次第でございます。
  57. 井上良二

    井上委員 先般本委員会におきまして、三十一年度赤字百六十一億を一般会計から、米価値上げ抑制の必要からも当然繰り入れるべきである。もし必要があるなら所要の法律を作ってでもやるべきであるということを強力に主張をいたしたのでありますが、政府食管会計法附則第二項をたてにとりまして、決算が確定しないとできない、こういうことで断じて野党側の主張をいれようとしません。ところが今主計局長の説明によると、二十九年の決算は三十年の七月に確定しておる。そうするとそれは当然食管会計法附則第二項の規定に基いて、補てん繰り入れの処置を講じなければならぬ。それをそういう法的措置を当然とらなければならぬ政府の義務があるにもかかわらず、三十年度内においてやらずにほうっておいて、三十年度は別の法律を作ってそれで二十九年度と抱き合せにしてしまって事を済まそうとしたところが、三十年度の決算の結果はさらに赤字が出た、こういうことになって大へんな矛盾と不合理をここに来たしておるわけだ。これは会計検査院長に聞きますが、会計技術によって当然法的措置を講じなければならぬ結論になっておるものもやらずに特別の法律を作る、一体そんなむちやなことが、会計を検査する権威のあるあなたとしては会計技術上許されますか。許されるとなると、事重大な問題になってきます。技術上は帳簿のやりとり、たなおろしというようないろいろなことで裏面操作における操作は多少許されても、政治的に私どもがこれを考えます場合は、さような融通というものを法律は命じてない、国の金を使います場合はことごとく法律によって規定されて使わなければならぬ。役人の勝手な考え方によってどうでも使えるということになっては大へんであります。会計検査院はどうお考えになっているか、お伺いいたします。
  58. 東谷傳次郎

    ○東谷会計検査院長 お答えいたします。先ほど政府委員から御説明がありましたが、六十七億の損失の補てんは三十年度におけるというのでありまして、三十年度中の予定上の損失を補てんするものと私どもは法律並びに予算を見ておる、そうしてその通りに処理されてあります。従いまして会計検査院の公文書で国会に出しております検査報告にも、一番初めに食管会計の三十年度の損失は二億七千万円である、こういうことを書いております。そして二十九年度の三十億八千万円と合せると決算じりにおける三十年度の欠損は三十三億五千万円になる、こういうことを私ども検査報告にしたためておるのであります。そういうわけ合いでありまして、六十七億を予定されておる三十年度の損失の一部分の補てんに充てておるということは、違法でないと考えておるのであります。
  59. 井上良二

    井上委員 それはちょっとあなたとあと先を間違えておりはせぬか。というのは二十九年度の決算の確定は三十年の七月です。その確定によって、政府は当然食管会計法附則第二項の規定によって補てんの措置を講じなければならぬ。法的にそうなっておる。会計法上はそうなっておるんじゃありませんか。それはやらぬでもいいのですか。そこを明らかにして下さい。
  60. 東谷傳次郎

    ○東谷会計検査院長 二十九年度の三十億八一十万円でありますが、それはなるほど仰せのように三十年の七月には決算が確定いたしております。しかしながら御承知よう食管会計法の附則でありましたか見ますと、決算上生じた損失は一般会計から補てんすることができるとなっておるのでありまして、その措置が講じられていないままになっておるのでありすが、いずれそれは政府が適当のときに補てんの予算を組むであろうと私ども考えております。従いまして六十七億を、三十年度だけの損失の予定額の分を補てんするということは進法ではないと孝えております。
  61. 井上良二

    井上委員 それは政府の御都合でそんなことをされたのか知りませんけれども、筋道としては実におかしい。それはやはり決算が確定をしたら、当然政府は補てんの措置を講じなければならぬのです。ところが二十九年の赤字を三十年度の赤字と抱き合せておるというところに問題がある、まして今お話し通りこれを抱き合せておけば、三十年度にはもうかる、三十億がもうかるのだ、赤字が黒字になるのだ、こういうつもりでこれは抱き合せをしたんだ、それに違いない。もしもうからぬというんなら、そういうことをしないで別々に処理するに違いない。また特別法を作る必要もない。特別法を何で作ったかといえば、もうかって黒字になる、帳消しになると思えばこそ、特別法を作って措置をするということにしたに違いないのです。そうじゃないのですか。
  62. 森永貞一郎

    ○森永政府委員 繰越損の三十億と三十年度の百三十七億を合せまして百六十七億を埋めるために、六十七億の繰り入れとインベントリーの取りくずしをやったわけでございます。その際私どもといたしましては、よもやこの見込みが違うことはあるまいと存じまして、予算も提出し、またこの補てん措置もお願いを申し上げたわけでございます。その補てん措置のうち六十七億は三十年度における損失を埋めるためと明記してございます、またインベントリーの取りくずしの方はその取りくずしをいたしましたとき、つまり一般会計から特別会計に債務免除をいたましたときの年度の利益になるわけでございまして、食管の損益が予定通りに参っておりますれば、それで二十九年度の損益が消えたわけでございます。損失補てんの方法としてインベントリーの取りくずし、一般会計からの特別会計への債務免除という方法をとりましたために、損失が増加いたしました結果、その増加した限度におきまして二十九年度の損失が残ったということでございます、政府の意思といたしましては、こういう方法で二十九年度の決算上の損を埋めるために、法的措置を講じたわけでございますが、予定と実績とが食い違ったために、かような結果が起ったわけでございまして、ほかには何ら他意はございません。
  63. 井上良二

    井上委員 問題はそういう会計技術上の問題よりも、私が一番心配をいたしますのは、政府は御都合のいいときは帳簿をどうでもつけかえる、一般の国民にはよくわかりませんから、その年度の赤字は当然その年度に始末するという建前をとらずに、三年もたって今ごろぽこっと頭を出してくる、全くの御都合によって帳簿をごまかしておりはせぬかということが疑われる。実際はそうでなくても、そういうことをすると疑われる。そんな手心を加えたりそんな操作を加える必要はないのです。二十九年度の決算確定の金額と三十年度の赤字は全然別なものになるのです。それを一緒に抱き合せするからややこしくなる。しかもそのためにわざわざ別な法律を作ってやろうとしておるのです。そこに問題があるんですよ。だから今度の国会でも、三十一年度の赤字補てんについてどうせい、こうせいという議論が出てくるのです。あた方は都合のいいときは、何やら前のやつまで、ことしもうかるかもわからぬ、もうかったら差し引きする、国の予算がそんなうまいこと行きますかいな。そんなつもりでやっていなはるんですか。それは大へんですよ、そういうつもりなら。これは技術上としてはそういうことも許されるかもわからぬけれども、政治的に予算を見たときに、それではちょっと国民は変に思いますよ。大蔵大臣はそれでいいとお考えになりますか。
  64. 池田清志

    池田国務大臣 御質問の点は私はこうだと思うのでございます。二十九年度の赤字は三十年の七月末で確定いたします。そうして三十億余りの二十九年度の赤字は、食管会計法附則第二項によりまして一般会計から別の法律を設けずに入れることができます。しかしそれは三十一年度の予算でぜひ入れなければならぬことはない、入れることはできるというのであります。従いまして昨年の今ごろ食管会計法附則第二項によりまして一般会計からこれは入れ、そして別に三十年度におきまするインベントリー・ファイナンスの取りくずしと、それから六十七億から二十九年度の決算確定額を除いた百三十五、六億というものを特別法によって一般会計から繰り入れる、こういうことにすれば二十九年度の赤字は消えたわけです。そういうことを私は考えましたがゆえに、やはり食管会計赤字というものは決算確定を待って入れる方が、あとから法律をこしらえる、または附則第二項を適用することも要らない、一ぺんで済むからというので、附則第二項によることが本筋だと今まで説明してきたわけであります。私のよう考え方でいったら、こういう問題がことし起らなかった、だから私は三十一年度の状況におきましても、決算確定を待ってやるのが本筋だとこう従来申し上げておったわけであります。
  65. 井上良二

    井上委員 そうすると大蔵大臣はかようなやり方は妥当にあらず、こういうことですね。
  66. 池田清志

    池田国務大臣 私は、本筋は今私が申し上げたのが本筋だと思います。しかし昨年三十一年度の予算を組みます場合において、インベントリー・ファイナンス百億円もくずしたいし、またそれ以上、三十年度で起るべき三十数億円の分も一般会計から入れたいということで、私の説とは違いますが、あのとき特別の法律を作って、これだけで三十年度は済むから前の二十九年度の分と合せて埋めてしまおうと計画いたしたと思うのであります。そこでこの場合におきまして法律に三十年度の赤字を埋めるためとこう書いてあるものでございますから、二十九年度の分もその百六十七億のうちに入ってくればよかった、形がつくのでございましたが、たまたままた三十数億円オーバーしてきたものですから、それで法律には三十年度の赤字となっておるから、それが優先的に埋められて二十九年度が残るということになるわけであります。だから私はあの当時、私が今これが適当だと申し上げた方法でやっておれば、こういう問題は起らなかったのじゃないかと思うのであります。
  67. 井上良二

    井上委員 これは全く国会審議をごまかそうというよう誤解をされても仕方のないやり方じゃないかと思うのです。もしもかようなことが許されるということになりますれば、これはゆゆしき問題で、われわれは少くとも三十年度の特別会計の損失を埋めるための法律というものを特別法として作って、そうしてその裏づけで三十年度の赤字これこれということで処理をしたはずです。それがまた今日姿を現わしてきましたから、これは大事な問題だということで非常に疑惑を持ってきておるわけです。かようなことは会計技術としては許されるかわからないけれども、政治的には私どもは断じてこれは見のがすことのでき得ない問題であると考えておるのです。大蔵大臣もまたかようなことは妥当な処置にあらずということを明確にされましたから、私はこれ以上この問題は追及いたしません。  ただこの際特に私は、時間がだいぶ迫って参りましたから、申し上げておきたいのは、三十年度の赤字二百億に近いものを出してきました大きな原因は、政府閣議決定によって予算編成の基本方針として米の管理統制は近い将来に解除する、こういう方針を打ち立てられてきたところにあるのです。今日岸内閣は一体米の統制問題に対してどういうお考えを持っておりますか、簡単にお答えを願いたい。
  68. 岸信介

    岸国務大臣 米の管理制度は——申すまでもなく米の問題は、生産者及び消費者、両者にとってきわめて重大な意義を持っております。先ほど来この食管制度の問題につきましてはいろいろの点もございますので、これを特別調査会にかけまして、調査会の結論によってその合理的な、健全な姿を作ろうと考えております。私は今日この管理制度の根本を変える意思は持っておりません。
  69. 井上良二

    井上委員 そうすると、現行管理制度を維持するということにわれわれは了解をするのでありますが、しからば一体現行管理制度において完全な、食管法に規定しております第一条の目的を達し得ることができておるか、できていないかということにかかってきます。現に政府国民食糧を確保し、国民経済を安定さすという目的で米の統制を管理いたしております。ところが現在の政府需給計画に基くというと、御存じの通り、一般配給を受けておりますものは、基本配給において約十日分、希望配給において十日分、合計二十日分の配給を受けてきております。ところが最近次第にこの希望配給を求める声が高くなって参りまして、どんどん配給量がふえて参りましたために、現状の保有量をもってしましては、とても希望配給通り十日分を渡すことができないということから、予算書においても三十三新米穀年度からこれを五日分切り落す、すなわち配給は十五日にする、こういうことにきまっております。そこへいくまでに、さらに二、三日落すことになるかもわかりませんが、ともかく十一月一日からは、配給は十五日ということになっております。そうしますと、あと十五日は全然政府責任を持っておりません。総理はそれでいいとお考えになっていますか十五日配給して、あと十五日分は米をくれないのですか。それでいいとお考えですか。
  70. 岸信介

    岸国務大臣 米の問題は申すまでもなく、国民の主要食糧でございまして、その配給につきましても、国民生活の安定という観点から、十分考えなければならぬ問題であります。しかし現在の状況で申しますと、一時過去においてあったように、いわゆる配給される米の量並びに価格というものと、一般のやみ取引されるやみ米の価格とか数量とかいうものの関係が、御承知通り、かって非常に国民生活を脅かしたような事態もございます。しかし今日の状況では、その状況は非常に変ってきておると思います。しかし常にわれわれは食管法の一条に書いてあるような趣旨によって、米の管理制度を保持していかなければなりませんけれども、現在の見通しから申し、また本年の作柄ももちろん関係することでありますが、そういうものを見通して、われわれはやはり全部がこれによって配給されるということをしなくとも、国民生活が安定される、安心できるような状態であれば、一応管理制度の目的は達せられるものである、かよう考えております。
  71. 井上良二

    井上委員 年間わが国の国の総予算に匹敵する会計を持っておるのです。収支八千六百億ですか、それに食糧証券の発行高を合せますと、国の年度会計にほとんど匹敵する大きな会計です。それに二万五千人の職員を使っておる。そうして実際扱っておる結果は、十五日しか台所を受け持ってもらえない。あと十五日はお前たち勝手に何でも食っておれ、こうなっておる。これでは完全に国が国民食糧を確保し、国民生活の安定向上をはかるためにという食管法の目的を果しているとは言えません。そうなってきますと、何ゆえに一体国民はこの食管制度を維持するかということに疑問を持って参ります。ですから、あと十五日をやみのものを食っておる。他の食糧によって間に合わしておるということになれば、少くとも政府は何ゆえにやみ米が出るであろう、何ゆえに農民は政府に売らずに商人に売るであろう、このことについて、もっと真剣に考えるべきです。農民だって何も政府に売るのをいやがっておるわけじゃないのです。政府に売っておったんでは、農家経済が維持できないのです。そこで供米制度の際は、供米量をできるだけ下回るように、そして保有量をできるだけ多くするようにということが建前であった。それで結局供出が低米価のために集まらぬというところから、やむなく統制撤廃前提として、事前供出割当制度にきめた。その結果は、ますます政府の手持ちは、豊作を予想しておりましたから、あの通りいきましたけれども、そうでないとなかなか予定通りあの米価ではいきません。農家経済政府に売り渡します分と、やみで売ります分と合せて、辛うじて最低の経済を維持しているのです。消費者もまた政府の配給にプラスやみ米を買うて辛うじて消費生活の食糧を充足している。ですから、政府みずから一升百九円の配給米を、業務用の場合には百十五円ないし百十八円にも売ろうとしておる。現に売っておる。一方農民の方も石当り一万円の米を、やみではやはり相当に売っておるわけだ。そこで、かりにこれを生産者価格石一万五千円なら一万五千円で買い上げて、これを適確に配給するという手を打った場合に、どういう現象になるか。全国の農業団体は石一万二千円以上に買ってもらいたいといっているが、それでかりに買い上げた場合、日本の全体の経済の上から得か損か。国内ではできるだけ集荷の量を少くして、やみによけい回しておいて、それで海外からは食糧を入れるというような行き方が、一体国の経済の上から、どういうことになるかということは、およそ自明の理であります。これは申すまでの必要はありません。食糧は消費物資でありますから、こんなものを、どんどん海外に貴重な外貨を使って、年々輸入を増大する必要はありません。農民は相当増産意欲を持って、食糧の自給度を向上し得る農業政策を拡充して、適正な米価でこれを買い上げる方式をとる方が、どれほどわが国の経済の自立の上には役立つかわからぬ。その両に積極的な手を少しも打たずに、農業面に対する予算は年々削減して、そうして一方食糧が足らぬといえば、外米によってこれを穴埋めしていくというよう考え方は、何としても考え直してもらいませんと、国全体の経済の上からも、農家経済及び消費者経済の上からも、食糧管理を現行通り維持していこうとする場合は、何としても矛盾と不合理がそこに起ってきますから、この点に対しては積極的に御検討を私は願いたいと思いますが、農林大臣及び総理大臣はどう考えますか。
  72. 井出一太郎

    井出国務大臣 現行食糧管理制度のあり方に対しましては、井上さんの段段の御発言でございましたが、確かに現行制度は、その中に矛盾を内在しておると申しましょうか、御指摘を受けましたような欠陥があろうかと思うのであります。しかしながら、これがやはり生産者に対しましては、一つの価格安定政策に相なっておる、また消費者に対しましては、全量配給というわけには参りませんけれども、しかしこれによって政府責任のもとに食糧が消費者家庭へ届けられるという姿が、やはり安心感を与えていることは間違いないと思うのであります。従いまして、われわれとしましても、御指摘を受けましたような問題を十分に検討をいたしまして、ことに臨時食糧管理調査会にもこういう問題は当然議題と相なるでございましょう。その線で十分な検討をいたしたいと考えておるのであります。
  73. 井上良二

    井上委員 次に農林大臣に伺っておきたい問題は、産麦の買い入れの価格決定のために米価審議会を開かなければなりませんが、これはいつごろ開く予定ですか、それをまず明らかにしていただきたい。
  74. 井出一太郎

    井出国務大臣 当然御指摘ように米価審議会に諮問しなければなりません。この時期は、やはり出回りを前にしました適当なころ合いを見計らうつもりであります。
  75. 井上良二

    井上委員 適当なころ合いというてはわかりませんが、大体毎年五月ごろ開くことになっておりますが、五月ごろやりますか。
  76. 井出一太郎

    井出国務大臣 麦の買い入れに支障のない時期を予定しておりますが、まだ、五月幾日というふうに明示するわけには参りません。
  77. 井上良二

    井上委員 実はこの米価審議会の開催は、政府が大きく期待しております食管の特別調査会の開催と相前後いたします。御存じの通り政府米麦価の決定は食糧管理法に基きましていろいろ検討されるのでありますが、その諮問を米価審議会にかけるわけであります。麦価の決定は、当然米を何ぼにきめるかという対米比価で基準が出てくるわけです。そうなってきますと、食管の特別調査会がこの前に開かれて結論が出ますならば工合がいいのですが、もし五月ごろに米価審議会が開かれて、ここで政府に答申をする。しかもその答申は対米比価によって麦価を決定してある。そうなりますと、そのあとに法的根拠のない特別調査会が出てきて、政府に答申をする。そうすると政府は一体どちらの答申を尊重するか。片一方は法的機関として政府の諮問にはっきり答申する責任があるのです。片一方は法的根拠のないものです。これはあとで非常な問題を起してきますから、農林大臣は一体このかね合いをどうお考えになっておりますか。
  78. 井出一太郎

    井出国務大臣 昨年は麦価についての諮問は、たしか六月の審議会をわずらわしたと思っておりますが、今御指摘ような米審と特別調査会との時間的なかね合いもございますので、その辺は十分含みまして処理をいたしたいと考えております。
  79. 井上良二

    井上委員 最後に一つ伺いたいのは、政府はこの特別調査会の結論によりましては、米価の値上げを計画するかもわかりません。しかるにさいぜんも申しました通り、一方においては配給量を削減しようとしている。そういう関係と、さらに本年度の産米の見込み等もございますが、一体本年度の外米の輸入買付、これらを中心とします外国為替予算というものが、この予算審議の過程において全然示されておりません。総額少くとも四、五千億の大きな外貨予算であろうと思いますが、この外貨予算が食糧を中心として全然本予算委員会で論議もされなければ、政府から発表もされてない。政府は通産、大蔵等の関係省において秘密裏にこの計画が検討され、編成されておるようであります。もうすでに三月も二十日が近い今日、一体いつ上半期の外貨予算を発表いたしますか。この際、関係大臣は通産大臣であると思いますが、通産大臣から御説明を願いたいと思います。
  80. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 外貨予算は、ただいま関係当局間で計算、整理中でございまして、三月の末までには予算を作成するつもりでおります。実は本日関係閣僚の審議会が開かれる予定になっておりましたが、いつも閣議あとで開くことになっておりますが、今、国会のいろいろな事情がございますので、この方針についての閣僚審議会がおくれておるということにはなっておりますが、実質的な作業は進んでおりまして、別に平年とおくれているようなことはございません。月末までには作成したいと思っております。
  81. 井上良二

    井上委員 御存じの通り、外貨予算がどう組まれるかということは、わが国今後の国内経済にも重大な影響をもたらしてくるわけであります。特に政府の今まで組んでおります外貨予算が、上半期と下半期に分れておって、しかもその発表がこま切れに特殊物資についてそれぞれ発表される。この結果が買付の時期あるいは輸入、配船等の諸般の事務の上に重大な支障を来たして、事実において非常な見込み違いを見なければならぬことが起ってくる。ですから米なら米、砂糖なら砂糖、あるいはガソリンならガソリン、原油なら原油等に対しましては、年間の割当全部を発表して、その間最も都合のいいときに適時適法で、また適地その他の配船等を考慮されて輸入される方策を講ずることが、私は最も当を得たやり方じゃないかというようにも考えておりますが、これらの点に対して通産大臣はどう処置されますか。なお依然として前年通りそれぞれのワクをきめて、それぞれの時期に、あるいは時期おくれに発表をして、実際において見込み違いを来たす事実を作るつもりでありますか。それらの点はどうお考えになっておりますか。これを最後に伺って、私の質問を終るわけであります。
  82. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 予算の編成方針は、今申しましたよう関係閣僚の審議会が開かれておりませんから、はっきりした政府方針は申せませんが、大体従来とそう変化がなかろうと思います。つまり国民の生活に必要な必需品、あるいは産業険路となっている物資、こういうものは私どもは十分な余裕のある予算をつけたいと思っております。不急不要品というようなものは、各国と特別の通商協定のある場合を除いては、従来通りそうたくさん輸入させないという方針をとるとか、要するに方針自身については大きい変化はないことと考えております。ただ問題は、今私どもに対して諸方面からいろいろ忠告や勧告がございまして、一年のうちで何を幾ら買うんだ、どの国から買うんだとか、通貨別でどうだというような、国の外貨予算の内容をそっくりそのまま発表する国というのは、あまり世界にない。欧州の各国を見ましても、そういうことをやることが、適応適切なときに必要な物資をどう入れるかということについて、いろいろ支障を来たすことはわかっておりますので、こういうものを今まで通り全部発表するという方法考えなければならぬという意見が非常に出ておりますので、今度は私ども方針をきめて計数をきめたあとで、政府部内においてどの程度の発表をするかということについて、とくと考えて善処したいということになっておりますので、この点も御承知を願いたいと思います。
  83. 井上良二

    井上委員 終ります。
  84. 山崎巖

    山崎委員長 以上をもちまして質疑は終局いたしました。これより討論に入ります。
  85. 矢尾喜三郎

    ○矢尾委員 私は日本社会党を代表いたしまして、政府提出による昭和三十一年度予算補正(第2号)外二案に対しまして、反対の意向を明らかにせんとするものであります。  政府案の一般会計予算補正(第2号)は旧軍人遺族等恩給費、義務教育費国庫負担金、国民健康保険助成費、食糧管理特別会計の繰り入れなど、三十年度決算上の赤字額と、三十一年度赤字見込み額とを計上し、さらに沖縄関係特別措置費として十一億円を計上しているのであります、政府案の特別会計及び政府関係機関予算補正は、この一般会計の補正に伴って生ずる補正であります。  一般会計予算補正の内容を拝見いたしますと、部分的にはわが党がさきに補正第1号に対する組みかえ要求動議として提出した案と、補正の内容が大体同じであります。私どもといたしましては、旧軍人遺族等恩給関係、戦傷病者、戦没者等遺族援護関係、義務教育関係、水産関係、大蔵省関係の非現業共済組合に対する支出と、国庫受け入れ預託金の利子支払いの政府案につきましては、全く同意見であります。ただし国民健康保険助成費については、昭和三十年度決算不足額だけを補てんし、三十一年度には、明らかに事務費単価が低過ぎるために生ずる赤字見込み十二億円余を全く無視しており、また政府管掌健康保険の三十一年度赤字見込みについても何ら補正を行なっておらないのであります。また国立大学病院に対する補正増額も十分とは申されませんし、さらに沖繩住民に対する特別措置費は、わずか十一億円しか計上されておりませんので、きわめて不満足であります。少くとも社会党が組みかえ要求をしたように、三十億円程度は確保すべきが当然であります、このよう政府案の内容の各部分を検討してみますると、部分的には私どもと全く同じ意見のものもあります。  それにもかかわらず私ども日本社会党が政府案に絶対反対し、この返上を要求する理由は、第一に予算補正に対する政府の基本方針そのものが、財政法の裏をかいた法の悪用であるからであります。(拍手)すなわち政府は三十一年一度補正(第1号)において、産業投資特別会計に三百億円を繰り入れております。この三百億円は、三十二年度及びそれ以降の産業投資の原資に充てられており、三十二年度における財政規模膨張の一翼をになっているのであります。政府が三十一年度の赤字見込みに対しても、国民を納得させ得る措置をとって後に、明年度以降の原資としての繰り入れを行うのであれば、これは一種の超均衡予算として認められるべきでありましょうが、政府食管会計赤字百六十一億円に対しては、食糧調査会の結論待ちと称して、何らの赤字補てんを行なっておらず、むしろ消費者米価の値上げという結論の出るのを、首を長くして期待しているありさまであります。医療保険関係について見るならば、先ほど申し上げましたように、三十一年度に明らかに赤字となる部分についての補てんを怠っているということであります。  国の予算、特に一般会計予算は、第一義的に国民生活保障のための諸経費を計上するという大原則を政府は曲げて、財政法を拡大解釈することによって、産業投資特別会計に三百億円の原資を確保し、もって大企業本位の自民党経済政策の円滑化をはかっているのであります。私どもはこのよう予算補正の基本方針には断じて賛成することはできないのであります。ただいま申し上げましたように、政府の三十一年度予算補正は、財政法第二十九条第一項に規定する赤字補てんを行うものではなく、同条第二項を乱用して、三十二年度以降の財政投融資計画の原資充当を目当てにしているのであります。この意味におきまして、政府案の三十一年度予算補正は、三十二年度予算編成方針に沿って編成されているのでありまして、三十一年度予算補正といいますより、むしろ実態的には三十二年度予算の一環としての性格が強いのであります。  しかるに、政府の三十二年度予算編成方針につきましては、私どもが本日まで政府にただした結果としましては、政府は三十二年度の内外経済の見通しについては、何ら明確なる説明ができないままであります。明確になったことは、三十三年度になれば、陸上自衛隊一万人の増強を行うという言質を、アメリカ側に与えたという点だけであります。  三月十八日付の朝日新聞の全国世論調査は、石橋内閣に対するよりも、岸内閣に対する国民支持率は、八%も低下しております。読売新聞の第百九十二回紙上討論は投書者の三分の二が解散を要求していると報告しております。これら岸内閣の不人気、政策に対する不信は、何に原因しているでありましょうか、それは国鉄運賃、ガソリン税を値上げし、消費者米価の値上げのチャンスもねらっているという政府の高物価政策の真意がどこにあるのか、国民理解できないからであります。露骨に言えば、政府予算編成は、目先の保守陣営の利益擁護にのみ奉仕しており、経済自立と国民生活安定については、何ら長期的展望のある政策を用意していないのであります。  わが国経済に対して、最大の影響力を持つ国際収支の見通しについて見るならば、三十一年度は、政府の当初の予測では、実質的には八千万ドルの赤字、形式的には余剰農産物や外国銀行ユーザンスを含めて、六千万ドルの黒字になるはずでありましたが、本年三月に入ってからの計算によれば、実質的には一億八千万ドル程度の赤字、形式的には黒字なしの均衡すれすれという観測に変ったのであります。これで見ますと実質的に一億ドル、形式的には六千万ドルも国際収支関係は見込みが悪く変化したのであります。政府の三十二年度国際収支の見通しは、この誤まった当初予測に基いて計算されて、実質的には五千万ドル赤字、形式的には均衡するというのでありましたが、衆議院の予算委員会の開かれているわずか一カ月余りの間に、政府以外の一般の観測は、実質的には二億ドル近い赤字、形式的にも赤字と変って参ったのでありまして、政府答弁も、国際収支の見通しはこうなるという説明ではなく、国際収支をこうしたいという願望に変ってきておるのであります。  次に、勤労国民自分たちの生活を守るために、最も商い関心を持っている物価の動きについてはどうでありましょうか。政府は明年度は卸売物価は二・六%、消費者物価は〇・九%の上昇にとどめるという予測を立て、いずれにせよ消費水準の伸びより下回るから、物価高による悪影響はあり得ないと答弁してきたのでありますが、最近の物価じり高は、経済企画庁の週間卸売物価指数を見ますと、昨年十二月の平均一七〇・六に対して、三月第一週は一七三・九と三・三%もじりじりと上昇を続け、わずか三カ月の間に、政府が三十二年度中に予測した二・六%という上昇率を上回ったのであります。しかも政府は、国鉄運賃、ガソリン税を値上げし、電力料金、私鉄バスの運賃の値上げも認めようとしています。池田大蔵大臣は、物価高要因はすべて企業努力によって、企業コストのうちに吸収せしめると答弁されたのでありますが、今や四月を待って、セメント、化学肥料、ガソリン等重要商品の値上げは、すでに予約されているのでありまして、私どもの身辺を見ますと、肉類、マッチに至るまで、すでに値上りしております。物価の根強い上げ歩調は、家庭の台所にまで侵入してきているのでありまして、政府の物価見通しは、予算執行の四月を待たずして早くも狂ってきているのであります。  もう一つの重要な例を示しますと、政府は三十一年度予算補正による三百億円のうち、百五十億円を三十二年度財政投融資に加えてまで、一般会計及び財政投融資規模の膨張をはかっているのでありますが、これが金融にいかなる影響を与えるか、私どもが本日まで政府を追究した結果としては、まことに悲観的な見通ししか立たないのであります。財政膨張による金融圧迫を警戒して、すでに三十二年度予算の執行を前にして、市中金融機関の貸出しは繁忙をきわめております。銀行側は再びオーバーローン状態に陥り、近日中に日銀の公定歩合引き上げと、高率適用制度の緩和を行わざるを得ない状態であります。これがすでに中小企業金融を圧迫していることは言うまでもないことであります。また財政膨張が、市中の起債市場も圧迫する実例としましては、九電力会社に課せられたる三十二年度分の新規開発及び継続工事の、合計五百九十三万キロワット計画の所要資金三千百億円のうち、電力債の予定八百十億円のうち実現するものは、せはぜい六百億円程度と見込まれておるのであります。これでは生産増強に見合う電力の供給が、計画通りにできなくなるばかりではなく、明年度の雇用吸収の面でも大きな狂いが生じてくるのであります。政府はこれらの諸点について財政と金融、財政と国民経済全体との調整をいかにはかるか、何一つどもを納得させる答弁をしていないのであります。  このような三十二年度の膨張予算に奉仕するために編成された三十一年度予算補正に対しては、私ども反対せざるを得ないのであります。政府案の補正第2号において三十一年度食管会計赤字補てんを行わず、医療保険関係赤字補てんも不十分にしか行なっていない原因は、すべてこのような補正方針にあるのであります。  従って日本社会党は財政法上の法理論からしても、また予算の内容から見た実態論としても、政府提出の三十一年度一般会計予算補正(第2号)外二案に対し、絶対反対せざるを得ないことを申し述べまして討論を終ります。(拍手)
  86. 山崎巖

    山崎委員長 松本瀧藏君。
  87. 松本瀧藏

    ○松本(瀧)委員 私は自由民主党を代表して、ただいま議題となっております昭和三十一年度一般会計予算補正(第2号)外二案につきまして賛成の意見を申し上げたいと思います。(拍手)  まず一般会計についてみますと、歳出面には遺族及び留守家族等援護費を初めとして、年度内に必要とされる最小限度の諸経費が追加計上されております。これらの諸経費は大部分国の義務的経費と呼ばれるべきものでありますが、特に賛成の意を強めることは、国民健康保険に対する助成費、遺族及び留守家族等援護費、旧軍人遺族等恩給費、沖繩関係特別措置費等、社会保障ないしは社会政策的な経費が多い点、また義務教育費国庫負担金、国民健康保険助成費と並んで、地方交付金の増額を行うことにより、当面の地方財政の逼迫緩和に留意されておる点、さらには国立大学附属病院の医療費の不足補てん等にも配慮が行われている点であり、まことに喜ばしいことであると思われます。  これらの経費の増額そのものに関しましては、社会党の諸君も異論がないようでありますが、問題となりますのは、今回も食糧管理特別会計赤字補てんに関する点だと思います。食管赤字につきましては、先ほども質疑があったようでありますが、われわれとしましてはすにでこれまでの予算審議の過程においても十分明らかとなったごとく、三十一年度分については決算の確定を持って赤字の補てんをするという、いわばオーソドックスなやり方に賛成するものであることは言うまでもありません。(拍手)  次に取り上げるべきものは沖繩関係特別措置費であります。御承知通り米軍接収の土地補償の問題は、平和条約の条文解釈に関して日米双方の間に食い違いがあるため、いまだに解決を見ていないのでありますが、これはまことに遺憾とするところであります。昨日の総理答弁によっても明らかな通り、わが方としましてはあくまでも、この問題については米国側に対する請求権が放棄されていないという、これまでの主張を堅持すべきであると思います。  次にこのような歳出面の追加を可能ならしめたものは、主として酒税、物品税、関税等の間接税収入の自然増であり、これらの租税収入の増加は、商品取引量の増大に対応した、すなわち経済の好況を反映したものであります。従ってこの点からしても、経済の好、不況いかん、すなわち結局は経済政策の適、不適いかんが財政政策を左右する度合がはなはだ強いことを、あらためて認識せざるを得ないわけであり、われわれとしましては明年度以降の政府経済政策に強く期待するものであります。  特別会計の補正は、一般会計の補正に対応するものであり、また政府関係機関予算の補正は、国民金融公庫及び中小企業金融公庫の借り入れ限度額の拡張を内容としたものでありまして、いずれも時宜に適したものであります。  以上のような理由によりまして、私はこれら補正三案に賛成するものであります。(拍手)
  88. 山崎巖

    山崎委員長 これにて討論は終局いたしました。  これより採決に入ります。採決は一括してこれを行います。昭和三十一年度一般会計予算補正(第2号)、昭和三十一年度特別会計予算補正(特第2号)、昭和三十一年度政府関係機関予算補正(機第1号)、以上三案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  89. 山崎巖

    山崎委員長 起立多数。よって昭和三十一年度一般会計予算補正(第2号)、昭和三十一年度特別会計予算補正(特第2号)、昭和三十一年度政府関係機関予算補正(機第1号)の三案は、いずれも原案の通り可決いたしました。(拍手)  委員会の報告書の作成につきましては、先例によりまして委員長に御一任を願いたいと存じますが御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  90. 山崎巖

    山崎委員長 御異議なしと認めます。よってさよう決しました。     —————————————
  91. 山崎巖

    山崎委員長 この際お諮りいたします閉会中審査申し出の件及び閉会中委員派遣に関する件につきましては、その手続等はすべて委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  92. 山崎巖

    山崎委員長 御異議なしと認めます。よってさよう決しました。  本日はこれにて散会いたします。    午後一時八分散会      ————◇—————