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1957-02-12 第26回国会 衆議院 法務委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年二月十二日(火曜日)     午前十一時九分開議  出席委員    委員長 三田村武夫君    理事 池田 清志君 理事 福井 盛太君    理事 横井 太郎君       小島 徹三君    高橋 禎一君       馬場 元治君    花村 四郎君       林   博君    松永  東君       横川 重次君    佐竹 晴記君       田中幾三郎君    吉田 賢一君       志賀 義雄君  出席国務大臣         法 務 大 臣 中村 梅吉君  出席政府委員         検     事         (大臣官房経理         部長)     竹内 壽平君         検     事         (刑事局長)  井本 臺吉君  委員外出席者         判     事         (最高裁判所事         務総局総務局総         務課長)    海部 安昌君         判     事         (最高裁判所事         務総局経理局         長)      岸上 康夫君         判     事         (最高裁判所事         務総局経理局主         計課長)    上野  宏君         専  門  員 小木 貞一君     ――――――――――――― 二月八日  委員西村力弥辞任につき、その補欠として坂  本泰良君が議長指名委員に選任された。 同日  委員坂本泰良辞任につき、その補欠として西  村力弥君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 二月七日  人権擁護に関する請願加賀田進紹介)(第  三四五号) 同月九日  前橋地方法務局沼田支局庁舎新築請願(藤枝  泉介紹介)(第五三七号) 同月十一日  宇都宮地方裁判所真岡支部庁舎新築に関する請  願(山口好一紹介)(第六一三号) の審査を本委員会に付託された。 二月十一日  申立人損害救済に関する陳情書  (第  一二八号)  裁判官等不当行為に関する陳情書  (第一二七号)  門標掲示に関する法律制定陳情書  (第一六  三号)  検察官の不当行為等に関する陳情書  (第一七五号)  在留中国人及び朝鮮人保障等に関する陳情書  (第一七六号) を本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  法務行政に関する件  裁判所司法行政に関する件     ―――――――――――――
  2. 三田村武夫

    三田委員長 これより法務委員会を開会いたします。  本日は法務省関係、算の説明当局より聴収することといたします。中村法務大臣
  3. 中村梅吉

    中村国務大臣 先般委員会の第一回委員会と申しますか先日の委員会でごあいさつをいたしました際に申し述べましたように、私といたしましては、法務行政を担当する上において前牧野大臣方針を大体において踏襲して参りたいということを申し述べたのでございます。本日さらに委員長から法務行政に関する基本的な所信を述べろという御内意もございましたので、ここに要領をかいつまんで申し述べたいと思います。  御承知通り法務省所管業務は、検察関係を主軸といたしまして、刑務所少年院等矯正及び保護関係業務、登記、戸籍、供託等法務局関係、それに破防法に基く公安調査関係出入国管理民事刑事等実体法及び訴訟法等基本法制定及び改廃等のことを所管いたしておるのでございます。この際特に私が重視したいと思う要点について所信を披瀝いたしたいと思います。  法務省所管の最も重要な任務でございます検察権の行使に当りましては、厳正かつ公平を旨とするとともに、刑事訴訟法の精神に従って、証拠の裏づけが十分であって、なお迅速であることが肝要であると思うわけであります。それと同時に、基本的人権を尊重し、かりそめにも、人権じゅうりん検察を通してあってはならない、かように考えます。これらの点に十分留意しながら、検察当局綱紀粛正治安維持の達成に全力を尽さなければなりないと思うのであります。なお、現内閣は、御承知通り綱紀粛正を施政の重要な一環といたしておりますので、涜職事件等につきましては、できるだけ政府機関部内の協力を得まして、これを二葉のうちに刈り取るように努めて参りたいと思うのであります。次に、法務省所管重要業務である補正保護関係について申し述べたいと思うのであります。御承知通り法務省予算の五〇%余り刑務所少年院等矯正費に使われておるのであります。私といたしましては、現在刑務所少年院等で行なっております生産作業を一そう合理化しまして、できるだけ受刑者職業補導、授産という方面に意を用いまして、刑余者が釈放後なるべく生業につきやすいように努めることによって再犯の防止をはかるとともに、更生保護施策を一そう充実下ることに努めまして、一定の改悛状を確認し得た者については安心して仮釈放を行い得るような基盤を造成して、一面において行刑費合理的節減を期待し得る方向を作って参りたいと思っております、なお、現在の矯正制度は、四十数年前に制定された監獄法によっておりますような次第で、すでに監獄という観念が根本的に改められ、現在、部分的改正によってその名称も刑務所拘置所等に改められている次第でありまするし、実際運用の面から見ましても幾多改善すべき点があると思われます。かような点にかんがみまして、諸般の準備と検討を進めまして、すみやかに現行監獄法時代に即応する矯正法規改正する努力を払いたいと思うのであります。また、破防法の命ずる破壊活動防止出入国管理等法務省所管であります。これらは治安確保の上に重要な関連がありますので、その使命を果すために所要努力を続けて参りたいと思います。  次に、基本法典改正について一言いたしたいと思います。法務省民事刑事に関する基本法律所管しておるのでありますが、これらの基本法律がその時代国民生活に適しているかどうかについては、常に深い関心を払い、これらの基本法律国民生活に背馳しないよう適時改正を加えて行く必要があることを痛感いたしております。終戦後憲法も改まり、これらの基本法典についても必要最小限度応急的改正が行われてきたのでありますが、本格的な改正検討は後日に譲られてきたのであります。従って、今日においては基本法典改正問題と真剣に取り組むべき時期に到達しておると言わなければなりません。この趣旨に基いて、法務省におきましては、牧野大臣の当時、昨年基本法典改正に関し特別顧問制度を新設し、斯界の最高権威者特別顧問を委嘱して着々と作業の進行をはかっている次第であります。私としては、この作業を適正かつ円滑に進行せしめるよう努めて参りたいと思っております。  最後に、最高裁判所制度改善について申し述べたいと思います。最高裁判所は、現に非常な努力を払いながらも、なお三千数百件の事件が積滞しておりますし、上告制度の基本問題と関連して現状に対していろいろと世論の批判がありますことは御承知通りであります。すでに国会におきましても種々御研究をいただいて参りましたのみならず、法制審議会にも諮問いたしまして、すでにその答申を得ておりますので、私といたしましては、急速に所要検討を進めまして、でき得れば今国会にこれが制度改正案を提案いたしたいと思っております。  以上、法務行政方向について所信の一端を披瀝いたした次第であります。何とぞ法務委員の各位におかれましては御理解ある御支援のほどをこの機会に切に御願いいたす次第であります。
  4. 三田村武夫

    三田委員長 続いて竹内経理部長から予算説明を求めます。竹内政府委員
  5. 竹内壽平

    竹内政府委員 お手元に三種の説明資料を御配付申し上げておきましたので、それに基きまして法務省所管昭和三十二年度予算案成立経過内容につきまして概略説明を申し上げたいと存じます。  法務省大蔵省に提出した昭和三十二年度歳出予算概算要求総額は三百五十六億七百七万一千円でございまして、そのうち十九億六千九百四十七万一千円は官庁営繕費建設省所管計上要求したのでございます。右要求に対する大蔵省査定結果は、建設省所管計上分一億六千五百二十六万八千円を含めまして二百三十二億七千三百四十四万三千円となり、前年度予算額に比較いたしますると二十一億三千四百二十万七千円の増額となっておるのでございます。  増額のおもなる内容は、人件費関係において十五億四千二十三万一千円、旅費関係において三千一百九十九万三千円、庁費関係において七千四百四十二万五千円、営繕費関係において二億五千一百七十八万七千円でございます。さらに分説いたしますると、人件費関係において、給与改訂に伴う所要財源として前年度人件費の六・一%並びに昇給、昇格財源四%がその大部分でございます。旅費庁費関係におきましては、わずかながらも従来の予算の窮屈な状態の改善に向けられた増額でございます。営繕費関係は、大幅な増額は前年度に引き続き法務局関係等の老朽廃施設並びに収容施設改善のための新営費でございまして、これらは前年度に比べて顕著な増額をみたものでございます。  次に、重点的施策経費は、おおむね、第一には治安対策費、第二には史生保護充実強化経費、第三には矯正行政刷新充実経費、第四には営繕費、第五には売春対策費、第六には人権擁護活動充実費、第七には基本法典調査立茶関係経費、第八には給与事務貧等改善経費でございます。この重点的施策査定経過並びに内容につきまして概略の御説明を申し上げたいと思います。  これは別表の「法務省所管昭和三十二年度歳出予算参考資料査定経過)」と書いてあります表をごらん願いたいのであります。このおもな重点的施策経費総額は、三十二年度の概算要求におきまして百五十七億一千六百万の要求をいたしました。この関係の三十一年度の予算は六十二億五千九百万余りでございまして、この査定結果は六十九億八千三百万でございましたので、差し引き七億二千四百万が増額になっておるのでございます。  そこで、まず第一の治安対策費でございますが、この関係におきましては、今の三つの欄をごらんいただきまして、差引一億五千百万円の増額になっております。この治安対策関係部局は、第一には公安調査庁でございます。第二には刑事局検察庁関係でございます。第三は入管関係でございます、この三組織につきまして概要を申し上げます。  公安調査庁関係におきましては、三十二年度概算要求十八億に対しまして、査定結果は四億三百万でございます。差引一億二千四百万の増になっております。このおもなる要求は、増員関係調査活動費その他関係器材費等でございますが、増員関係は、この表でごらん通り査定ゼロでございまして、増員は一人も認められておりません。公安調査庁の調査官の調査活動費におきまして一億二千四百万の増額が認められております。これが公安調査庁における治安対策費のおもなる経費増額内容でございます。  次に、刑事局検察庁関係を見ますと、この関係におきましても増員は全部ゼロになっております。それから、治安統括参事官室犯罪対策審議室犯罪対策連絡会議、社会を明るくする運動といったような一連の施策があったのでございますが、これらもいずれも査定結果はゼロになっております。そして、この関係におきまして認められましたのは、情報活動強化検察事務科学化というところの欄に書いてあります調査活動費の千九百四十万円というのが治安対策費として認められた唯一の費目でございます。要求概要摘要欄に記載してありますが、これらはすべて査定の結果とお比べいただきますとわかります。  次に、入管関係でございますが、入管関係におきまして、やはりここでは四百五十二人の増員を予定しております。この増員関係におきまして認められましたのは、審査官三十名と、二ページのまん中辺にあります調査活動費五百四十万円、これがおもなる査定結果でございます。  結局、治安対策費につきましては、増員主体とした事務費は認められませんで、調査活動経費によって情報活動を活発にするということが査定内容になっておるのでございます。  次に、二番目の、更生保護充実強化の点に進みたいと思います。三ページの一番上でございます。この関係におきましては、三十二年度の概算要求で十億を要求いたしました。前年度は一億六千六百万でございます。査定結果は三億一千六百万で、差引四千九百万の増額となっております。おもなる要求内容は、増員関係更生保護会に対する補助金保護司実費弁償金増額更生保護委託費増額更生保護会職員研修保護司研修補導援護旅費庁費等増額というような費目になっておるのでございますが、増員関係査定結果はゼロでございます。  更生保護全等に対する補助金関係におきましても若干の問題は残ったのでございますけれども、査定結果は結局前年度通りということで、増減はございません。  保護司に対する実費弁償金関係におきましては、この委員会でも毎々申し上げたかと思いますが、保護司に対しまして一人年間約三千円の予算を八千円に引き上げてほしいという要求をいたしたのであります。これは、月一件当りに換算いたしますと、百二十円を二百五十円まで引き上げてほしいという要求をいたしたのでございますが、その関係におきましては、百二十円を百三十円まで、十円だけ値上げをするという査定結果になっております。それから、もう一つは、ロのところに書いてあります特殊勤務保護司四百二十六人の増加を認めていただきました。それから取扱い件数増加も認められまして、この関係において二千二百万の増額になっておるのでございます。  それから、更生保護委託費、これは更生保護会に対する対象者委託のための経費でございまして、これは委託費単価引き上げ委託期間延長要求した内容になっておりまするが、査定結果は若干ずつ認められております。すなわち、単価引き上げにおきまして、ごらん通り若干の値上げが、食事付宿泊、ただの宿泊、両方ともにつきまして単価値上げを認めておりますし、委託期間延長につきましても、食事付宿泊の場合には若干認めております。その関係におきまして一千七十三万九千円の増額になっております。  それから、更生保護会職員研修保護司研修経費でございますが、これは更生保護会幹部職員研修だけにつきまして、百九十三人について七日間の研修東京で行うことを承認されております。  それから、補導援護旅費庁費関係でございますが、これは三ページの下の方に書いてありますように、保護司に対する通信費とか、巣鴨の刑務所を出ました第三国人援護補助金、それから鉄道運賃値上げ等を見たものでございます。  結局総額におきまして四千九百万の増額になっておるのでございます。  次に、第三番目の矯正行政組織経費でございます。まず、この関係におきましても、増員主体をなしておりまして、左の方に書いてありますように、千六百九十八人の増員要求をいたしたのでございますが、結果は摘要欄査定というところに書いてございます。上の方から要求査定と書いてありますその査定のところに、刑務所関係において、豊多摩小菅刑務所及び東京拘置所移開設に伴いまして、二百二十人の看守の増員定員で認められ、少年院関係において、教化活動充実のため教官の増員が九十二名認められました。これは、千六百九十八人の増員要求に対しまして、得た結果はそれだけでございますけれども、本年もまた定員増加ということは極力抑制するという編成方針でございましたので、それにいたしましてはよく認められたというふうに考えております。  この刷新充実といたしまして矯正科学研究経費要求しましたが、これは査定結果はゼロとなりました。  受刑者職業補導経費、これは非常に私どもとしましては重視した経費でございましたが、査定結果は前年度通りということでございました。  ただし、少年院の同種の職業補導経費につきましては、三百五十三万六千円の増額が認められたのでございます。特にこの関係におきましては、補導用の器具とか原材料費増額が認められたのでございます。  次に刑務所収容費の点でございまするが、これは千四百九十五万五千円の増額となっております。この数字はわずかな数字でございますが、内容を分析してみますると、相当顕著な改善が認められるのでございます。すなわち、この関係におきまして、査定のところをごらん願いたいのでございますが、豊多摩刑務所開設に伴う備品等経費、それと、口にあります小菅刑務所東京拘置所移開設、これも当然の経費であると思いますが、収容者の処遇の改善というところで、金額はわずか四十四万二千円という数字が出ておりますけれども、内容をもう少し申し上げますと、三十二年度は、前年度の八万七千人の収容対象者に対しまして八万五千人という査定を受けましたので、この関係で二千人の減ということになりました。この二千の収容者が減ずるということになりますと、その二千人に対する食糧、衣料その他の付随します経費はぐんと減るのでございます。にもかかわらず、その他の点で改善されましたために、差引におきまして結局四十四万二千円という増額になっているという点を御注目願いたいのでございます。すなわち、どういう点で改善されたかと申しますと、まず日用品単価引き上げが認められた。すなわち、男については二百四十五円のものが九百八円というふうにふえておりますし、女子につきましては三百十三円が千二百三十一円というふうにふえております。これはシャボンとかちり紙とかいう身の回り品日用品でございます。二番目がお菜代の一円の値上げ、これは一昨年も承認されたのでございます。その結果としまして、書いてありますように、被告を十六円五十銭から十七円五十銭、成人受刑者が十八円五十銭から十九円五十銭、少年受刑者が二十一円五十銭から二十二円五十銭、そのほかに特別菜代として勤労食が三円から十円に上った次第であります。こういう関係給養関係が非常によくなっております。五ページの方にお目を通していただきたいと思いますが、そこに内地米値上り分を見てもらいまして、それから医療器具増額。それから、主食配合率等の変更によって一千五百万円も減っております。その減っておりますことも、その次に書いてあります二千人の減員に伴いまして六千八百万円減になっております。こういう点で大きく減っているにかかわらず、ふえた面もありまして、差引少額ながらふえたという結果になっております。次に作業賞与金増額の点は、これは、ここに内容は書いてございますが 二十五年当時の作業賞与金の八割増ということになっておりまして、これも顕著な改善あとを示しているのでございます。収容人員の減少に伴いまして、当然収容者被服費等が減っております。こういうふうに出入りの激しい経費でございますが、内容的にはかなり顕著な改善あとを示しております。  次に刑務所作業費でございますが、これも八千七百万の増額になっておりまして、この内容で顕著なのは、原材料費不足補てん額として四千万円認められた点でございます。  このような改善少年院収容費につきましても同様でございますし、少年鑑別所収容費につきましても同様でございます。同様でございますが、少年院の場合は二千百万円の減額になり、少年鑑別所の場合は一千三百万円の減額になっておりますけれども、これは収容対象者の数が、少年院につきましては一万二千人から九千六百人というふうに、一千四百人の対象者減を見込んだために生じた減額でございます。少年鑑別所の場合は、二千五百人が千八百人と、七百人の減員となりましたために生じた結果でございます。  次に、六ベージの第四番目の営繕費関係でございます。これは、御承知通り法務関係営繕は全国に三千四百庁ございますし、延べ坪数にして八十三万坪という大きな施設をかかえております。それに対しまして与えられました予算が、二十九年が四億三千、三十年が五億五千、三十一年が六億四千というふうにふえてはおりますものの、これではとうていその損耗補充にも当らないのでございまして、これが大幅な増額を求めることは法務省にとりまして切なる要求であるわけでございます。それらの要求がある程度承認されまして、ここに数字に示しておりますように、前年度の五億二千八百万に対しまして、三十二年度は七億八千三百万、二億五千五百万の増額になっております。その法務官署の方と収容施設との割合、査定になりました各庁の名前等はこの表の記載の通りでございます。なお、その下の方に書いております官庁営繕費として建設省所管計上されましたものが、本年は一億六千五百万でありまして、前年度と比較いたしますと五千三百万ふえておりますので、法務省計上された二億五千万と建設省の五千三百万とを加えますと、本年は三億円以上の増額となっておる点はまことに注目すべき増額であると考えております。  次に、七ページに参りまして、五番目の売春対策費のことを申し上げたいと思います。売春対策につきましては、売春法法務省において立案せられました経過等にかんがみまして、法務省としましては熱意を傾けてこの対策に取り組んでおるのでございます。そこで、予算要求におきましても二億七千万の概算要求になっておったのでございますが、その査定結果は三百万でございまして、三十一年度の査定が三百十二万八千円でございまして、三十二年度と比べますと、三十二年度が八万三千円の減額になっておるという実態でございます。それを各関係組織別に見て参りますると、結局これは関係部局が会同する経費だけが法務省に与えられた売春対策費であるということになるのでございまして、この点、はなはだ遺憾に存ずるのでございますが、慎重御審議を願いたい項目でございます。  次に、八ページに参りまして、人権擁護活動充実経費といたしまして、三十二年度の概算要求が一億でございました。前年度が千七百万でございますし、本年が千八百万、差引百四十二万七千円の増額となっております。この関係におきましては、要求のところに記載してありますように、かなり大幅な思い切った人権予算を組んだつもりでございますが、結果におきましては、遺憾ながらきわめて事務的に査定を受けたのでございます。たとえば、人権擁護委員増員若干が認められましたほか、事件増加に伴う侵犯事件調査旅費が認められた。あるいは諸謝金、庁費等について事件増加に伴う分として認められたものでございます。その中で特に力を入れましたのは貧困者訴訟援護のいわゆるリーガル・エイドという経費でございます。約一千が要求いたしましたが、査定結果はゼロでございます。この関係は、最高裁判所側におきましても同じような費目につきまして要求をして、これも査定ゼロとなっておるようでございます。この辺の調整は本年度に持ち越された関係になっております。  次に、七番目の基本法典調査立案関係でございます。三十二年度の概算要求は一億六千九百万でございました。三十一年度予算が四千二百万で、査定結果は五千万でございます。前年度との予算の比較をいたしますと八百三十一万二千円の増額となっております。この関係におきましては、まず増員関係特別顧問一名の増員要求いたしまして、要求通り増員が認められたのでございます。常勤職員の十九名は査定ゼロとなっております。  それから、国際会議に出席する旅費等もこの中に含まれておりますが、前年度在外研究員というものを一人認められましたが、それに引き続きまして本年ももう一人、結局二人の在外研究員が承認されております。さらに、在外公館駐在員を置く、アタッシェというのでありますが、これは外務省に人を派遣して外務省の職員にしてしまいまして、給与その他も外務省の予算計上されるわけであります。昨年初めて一人認められまして、さらに本年一人追加になりまして、合計二名ということになるのでございます。そのほか、国際私法会議の分担金等もこの中に入っております。  さらに、注目を願いたい点は、八ページの一番下に書いてあります犯罪防止及び犯罪者の処遇に関する第二回国連のアジア大会でございます。これは本年の十月初旬を目途としてただいま準備の準備と申しますか、全くの準備態勢でございますが、寄り寄りと話し合いを進めておるのでございます。このアジア大会を東京で開催するという国連からの要望に基きまして、閣議了解のもとに開催を決定して、その予算要求したのでございますが、これは概算要求約二千万円に対しまして、三百九十六万六千円という査定結果をいただいております。参加予定は二十六カ国でございまして、参加人員は日本側を含めまして大体百二十名、日程は十日間ということになっております。日本にとりまして、国連加盟最初の日本主催の国際会議でございますし、さらに、これが犯罪防止及び犯罪者の処遇といったきわめて法務省にとって大事な会議でございます。この会議がうまくいきますために三百九十六万六千円が適当な経費でありますかどうか、ここのところがいささか疑問でございますけれども、そういう査定になっております。  次に、八番目の給与、事務費、これは、さきに差し上げましたのは給与改善費と書いてありますが、給与、事務費改善でございます。これはきわめて事務的なものでございますが、法務省は御承知のように各組織を通じまして事務量が激増しております。これらの関係で、あるいは宿日直手当とか、あるいは超過勤務手当というようなものの改善を要する面が多々あるのでございますし、また、旅費庁費等でどうしても増額してもらわなければならぬ必要な経費があるのでございます。これらを一括いたしまして特に強い事務的な予算折衝をしたのでございます。その結果をここに掲げておりますが、大きい点を申し上げますと、法務局出張所の宿日直手当が若干ではございますが認められました。それから同じ法務局の中に渡切費という三等郵便局に認められております経費がございますが、この渡切費も若干、五百七十万ばかり増額になりました。ただしこれは純増ではございませんで、庁費をその方に組みかえていただいただけでございます。それから、検察事務官の超過勤務手当が従来月二時間でございましたものを五・二時間にふやしていただいたのでございます。公安調査官の超過勤務手当も、二時間を四・六二時間に伸ばしていただきました。そのほか、法務省は専用電信というものを持っておりますが、その技術者に対しまして特殊有技者手当というものも本来は若干認められました。  給与の面でそのような改善を見たのでございますが、事務費の方におきましても、登記職員作業衣だとか、あるいは登記所の白蟻車、あるいは地方検察庁の庁費、あるいは外国人登録記録事務の処理のためのマイクロ・フィルムといったようなものが新たに認められたのでございます。  以上が大体重点的施策内容査定経過でございます。  なお、その他の経費につきましては、もう一つの資料の組織・項別比較表、それから事項別比較表等をごらんいただきますと、大体の内容はわかると思います。はなはだずさんでありますが、私の説明をこれで終らせていただきます。
  6. 三田村武夫

    三田委員長 次に、最高裁判所予算について当局より説明を聴取することといたします。  この際お諮りいたします。最高裁判所当局より出席、説明いたしたいとの申し出がありますので、国会法第七十二条第二項の規定によりこれを許可するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と一呼ぶ者あり〕
  7. 三田村武夫

    三田委員長 御異議なしと認め、さよう取り計らいます。岸上経理局長。
  8. 岸上康夫

    ○岸上最高裁判所説明員 それでは私から三十二年度の裁判所所管歳出予算概要を申しあげます。  お手元に差し上げてあります資料に基きまして、三十二年度歳出予算総額は百六億七千七十九万六千円でございまして、前年度の予算額九十五億三百六十一万九千円に比較いたしまして、十一億六千七百十七万七千円の増加ということになっております。  その内訳を重要事項について申し上げます。  まず第一は営繕費関係でございますが、これは、三十二年度予算額は新営費、それから修繕費全部入れまして八億三千九百六十二万七千円、前年度の六億五百二十万三千円に比較いたしますと、二億三千四百四十二万四千円の増ということでございます。その計上されております新営費等の内訳の詳細は資料の一番最後のところに庁舎別に掲げてある通りでございます。新営関係は、前年度からの継続工事のところが二十庁、新規工事が十八庁でございまして、その関係の金額は七億二千九百七十一万四千円、それから補修費、法廷調停室等の増築費といたしまして五千七百二十万円、不動産購入費が四百七十二万円、営繕事務費が千八百七十九万八千円、こういう内訳になっております。  第二は、第一審の充実強化に必要な経費ということで四千三百七十三万五千円。これは前年度には特にこういう題目を掲げた経費はございませんので、新しく三十二年度で認められたわけでございますが、その内容は、第一審強化のための協議会の経費が三百六十四万八千円、それから法廷等の増築費が二千九百十九万五千円、それから書記官等の超過勤務手当は七百八十九万二千円、自動車の購入費が三百万円というのがその内訳でございます。  第三は、裁判官調査研究費及び管理職手当。これは最高裁判所の判事について調査研究費月額五万円、それから高等裁判所以下下級裁判所の判事について管理職手当を要求いたしたのでございますが、これは認められるに至りませんで、ゼロということになっております。要求額は全部で一億五千六百六十二万三千円の、要求をいたしたので、ございますが、ゼロということになっております。  四番目は、家庭裁判所調査官研究所。これは、三十一年度から認められましたのを、三十二年度についてさらに若干増額して認められたのでございますが、御承知のように、家庭裁判所調査官の養成、研修のための機関でございまして、おもなものは研修生五十名を一年間養成する、これの所要旅費、講師謝金、教材費その他器具費等で、全部で千六百六十六万四千円でございます。  第五番目は、法律扶助協会補助金。これは、先ほど法務省関係で御説明ございましたのと重複しておるわけでございますが、一千万円を要求いたしまして、実は査定はゼロということでございます。  六番目は、調停協会補助金。この五千万円は前年通り認められ、計上されておるわけでございます。  七番目の裁判費、合計いたしまして十四億三千八百三十六万七千円。これは、御承知のように、裁判に直接必要な経費といたしまして、調停委員、鑑定人、証人等の日当、旅費、国選弁護人の報酬、刑事補償費その他通信費裁判所職員の臨検のための出張旅費等でございますが、これは前年度に比べまして約一億四千八百六十六万九千円ほど増加になっております。これは主として事件数の見込み増ということによる増加と、なお、三十一年度予算には法律上改正になりました証人、調停委員、鑑定人、国選弁護人等の目当の増額かございましたが、予算締め切り後の関係で三十一年度には計上されていなかったのを、三十二年度にはその法律通り単価で計算いたしました。それによるものを含んでおるわけでございます。  それから、八番目に、最高裁判所の機構改革に伴い必要な経費というのを要求いたしたのであります。要求内容は四億七千百二万五千円というものを要求いたしました。これは、結局、最高裁判所の機構改革に伴って、機構改革を目的とする法案が成立した場合には、それに必要な人件費施設費その他の物件費等として計上いたしたものを要求いたしたのでございますが、この法案が今国会に提出されて成立するといたしましても、時期的に三十二年度中にそれを実施するということは準備等の関係から技術的に困難だ、従って、三十二年度予算計上しても結局使えないということになる、そういう観点から、この関係経費は三十二年度予算には計上しないということに裁判所側も了解いたしまして、ゼロということになっております。  九番目は、以上重要経費として申し上げました以外の経費でありまして、職員の俸給その他の人件費、通常の庁費旅費というものでございます。この合計は全部で八十三億二千七百四十万三千円ということになっております。これの内訳は非常にこまかく、かつ経常的な経費が大部分でありますので、説明は省略させていただきまして、御質問等によってお答えをいたしたいと思います。  簡単でございますが、以上で御説明を終ります。
  9. 三田村武夫

    三田委員長 これにて法務省及び裁判所予算についての説明聴取は終りました。予算に関する質疑は次会に譲ります。
  10. 三田村武夫

    三田委員長 次に、相馬ケ原農婦射殺事件及び広島における自衛隊員の演習中の死亡事件について井本刑事局長から事情を聴取いたします。井本刑事局長
  11. 井本臺吉

    ○井本政府委員 相馬ケ原の農婦殺害事件について簡単に御報告申し上げます。  この事件は本年の一月三十日の午後二時十分ごろに起きた事件でございまして、鉄砲を発射した被疑者と目されるものはジラード・S・ウイリアムスという者でございます。この日に相馬ケ原で米軍の部隊が約三十名演習をしておったのでございますが、その演習の部隊に追随しまして約六十名くらいの付近の農婦などが薬莢を拾って歩いたわけでございます。演習は、午前中は実弾射撃、午後は仮想敵に対する空砲発射による襲撃演習と申しますか、さような演習がありまして、午後の一時四十分と申しておりますが一応演習が終了いたしました。その演習の終了した場所が通称物見塚と言うておりますところだそうでありますが、農婦に対しまして被疑者が鉄砲を放ったというわけでございます。これは、ただいまの調べでは、ライフル銃の先に砲弾の薬莢をつけまして、空砲を約十メートルぐらい離れたところから撃ったということになっております。その撃ち方は、これもまだ調べが確定しておりませんが、目撃者の証言その他によりますと、ねらい撃ちをしたという説と、腰にかまえて撃ったという説と、両方あるようでありまするが、大体のところは腰にかまえて撃ったというように調べが固まりつつあるように聞いております。その撃ちました空砲の先についた薬莢が被害者の背中に当りまして、肺動脈を切断して、直ちに死んだわけであります。この農婦につきましては、群馬大学で解剖いたしました結果、肺動脈が切断されておるということで、その薬莢によって死亡したということは明らかでございます。  現在、この被疑者の行為が行政協定第十七条の公務執行中の作為、不作為に基く罪であるかどうかという点を確定いたしますることが、第一裁判権がどちらにあるかということの結論が出ることになりますので、鋭意取り調べまして、その結論を急いでおる次第であります。この事件発生以来、日米協力いたしまして関係者を鋭意調べておりますが、現在までの状況では、まだ結論は出ておりません。引き続き関係者を取り調べておる状況でございます。  前橋地方検察庁におきましては、二月の九日に傷害致死罪として通報、事件の送致を受けまして、現在は検事が乗り出して調査しておる状況でございます。  さような次第で、今しばらくお待ち願いますと、いま少しく詳細な御報告ができると存じますが、現在の段階ではその程度でございます。  それから、広島の自衛隊員死亡事件につきましては、私ども刑事事件としての報告をまだ受けておりませんので、この点につきましては、事件として扱うかどうか、まだ結論に達しておりません。新聞などによりますと、何か業務上過失致死罪であるとか、あるいは強要罪になるのではないかというような説も記載されておりますので、目下鋭意研究中でございます。(「調査中じゃないのですか」と呼ぶ者あり)まだ、広島の事件につきましては、事件にするかしないかということまでも研究中でございます。
  12. 三田村武夫

    三田委員長 中村法務大臣から相馬ケ原農婦射殺事件及び広島における自衛隊員の演習中の死亡事件について説明を求ます。中村法務大臣
  13. 中村梅吉

    中村国務大臣 相馬ヶ原の坂井なかさんの死亡いたしました射殺事件は、非常に遺憾のできごとでございまして、私どもも、国際関係等もございますし、演習場に起りましたかような事件を重視いたして、非常に憂慮いたしておるような次第でございます。この事件については、まず第一に、事件の起きました翌日の一日に、日本側の群馬県警察本部刑事部、長、捜査課長等が、日本側の目撃者となっております五人の人を連れて、その事件の起きました米軍側の部隊三十数人に全部出てもらって、一体そのうちのだれがやったのか、首実検をいたしまして、目撃者によってその犯人と目される被疑者が明白になりました。引き続いて米軍側ではその被疑者を逮捕いたしておるのでありますが、日本側の県警察部の方では、その被疑者に直接当って一応の調べをいたしましたが、被疑者は真相を述べていないように受け取られますので、その後県警察部におきましては諸般の調査を遂げておったわけでありますが、一昨日でございますか、前橋の地検の方に事件が書類として送検をされて参りましたので、前橋の検察庁といたしましては、警察側と協力して、引き続き捜査を続けておる次第であります。昨日は現地において検証をいたしましたようでありますが、その内容等は、いろいろ検討すべき点がまだございますので、結論を得てから適当の機会に法務委員の皆さんに御報告申し上げるようにいたしたい、かように存じております。  なお、ただいま委員長からお話のありました自衛隊の広島県における事件、まことにこれは遺憾なできごとでございますが、法務省としては、主として人権擁護の立場からこの問題を検討すべきものと考えまして、目下研究中でございます。まず第一次的には、防衛庁の所管のできごとでございますから、防衛庁において事態を明らかにして、今後の対処策及び今度できた事件についての善後措置等について結論を出されることと思いますが、それと相待ちまして、法務省としては別の角度からこの事件研究をいたしたいということで、目下研究中でございます。さような段階にございますことをとりあえず御報告申し上げます。
  14. 三田村武夫

    三田委員長 両件に関する質疑は次回に譲りたいと思いますが、この際委員長から法務当局に一言申し上げておきたい。両事件とも世論の中心になっております重要な問題であり、法の権威及び人権擁護の立場から当委員会においてもその真相を究明いたしたいと思いますから、法務当局においては十分その真相把握のために御努力の上、質疑に対する御用意を願いたいと思います。  本日はこれにて散会いたします。    午後零時二十分散会