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1957-02-22 第26回国会 衆議院 内閣委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年二月二十二日(金曜日)     午前十一時開議  出席委員    委員長 相川 勝六君    理事 大平 正芳君 理事 福井 順一君    理事 山本 粂吉君 理事 山本 正一君    理事 受田 新吉君       江崎 真澄君    大坪 保雄君       北 れい吉君    船田  中君       眞崎 勝次君    粟山  博君      茜ケ久保重光君    飛鳥田一雄君       下川儀太郎君  出席政府委員         外務政務次官  井上 清一君         外務事務官         (大臣官房長) 木村四郎七君  委員外出席者         専  門  員 安倍 三郎君     ————————————— 二月二十一日  委員石橋政嗣君及び坂本泰良君辞任につき、そ  の補欠として吉川兼光君及び西村力弥君が議長の指名で委員に選任された。 二月二十一日  行政機関職員定員法の一部を改正する法律案(  内閣提出第三二号)  同 日  下田村森地区寒冷地手当引上げ請願(亘  四郎紹介)(第一〇八二号)  金鵄勲章年金復活に関する請願池田清志君紹  介)(第一〇八三号)  同(淺香忠雄君外一名紹介)(第一〇八四号)  傷病恩給増額に関する請願芦田均紹介)(  第一〇八五号)  同(江崎真澄紹介)(第一〇八六号)  同  (清瀬一郎紹介)(第一〇八七号)  同外二件(田村元紹介)(第一〇八八号)  同(植原悦二郎紹介)(第一一五九号)  同(岡良一紹介)(第一一六〇号)  傷病恩給受給者家族加給に関する請願清瀬  一郎紹介)(第一〇八九号)  同外二件(田村元紹介)(第一〇九  〇号)  同(帆足計紹介)(第一一六一号)  同(眞鍋儀十君紹介)(第一一六二号)  旧海軍特務士官及び准士官恩給是正に関する  請願高村坂彦君紹介)(第一〇九一号)  同(保科善四郎紹介)(第一一六六号)  旧軍人関係恩給加算制復元に関する請願(小  平久雄紹介)(第一〇九二号)  同(田村元紹介)(第一〇九三号)  同(高瀬傳紹介)(第一〇九四号)  同(藤枝泉介紹介)(第一〇九五号)  同(中馬辰猪紹介)(第一一六三号)  同(松永東紹介)(第一一六四号)  紀元節復活に関する請願外九件(纐纈彌三君紹  介)(第一一五号)  同外三十四件(大坪保雄紹介)(第一一五六  号)  立国の日制定に関する請願水谷長三郎紹介  )(第一一五七号)  元満州国等日本人公務員恩給法適用に関す  る請願井谷正吉紹介)(第一一五八号)  元外地鉄道職員に関する恩給法等特例制定に  関する請願)(福永一臣紹介)(第一一六五  号) の審査の本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  外務省設置法の一部を改正する法律  案(内閣提出第二一号)     —————————————
  2. 相川勝六

    相川委員長 これより会議を開きます。  外務省設置法の一部を改正する法律案を議題とし、これより質疑に入ります。質疑の通告がありますので、これを許します。受田君。
  3. 受田新吉

    受田委員 政府はこのたび外務省設置法の一部改正法案をお出しになられたのでございまするが、その目標とするところが二点指摘されてあります。それは欧亜局アメリカ局を分ける案がその第一にあるわけでございますが、先般政務次官趣旨説明をされたところによると、戦前にもこういうように二様に分れていたことだし、事務も複雑化したので、ぜひそういうふうにお願いしたいということでございました。戦前にもアメリカ局欧亜局を分けておったという実情は、われわれもよく承知しております。ところが特に最近において、これを分離してそれぞれの局で能率を上げなければならないようになった理由は、ここで御説明をいただいている程度のものではなお満ち足りないものがあると思うのであります。中近東政策というようなものを推進していく上においても、今回の欧亜局任務重大性があるという意味がございましたが、中近東に対する特に重大なお仕事ということになると、これはどういうものであるか。もう一つ大洋州が入っておると思いますが、大洋州は今までよりもどういうところに重みが加わっておるか。従来よりも仕事が多くなり、また仕事内容が重大化しているという点を、中近東及び大洋州についてお示しを願いたいと思います。
  4. 木村四郎七

    木村政府委員 お答え申し上げます。欧亜局設置に関連して、中近東地区及びオセアニア州における事態重要性について答えろという御趣旨と解します。中近東におきましては最近、特に昨年来スエズ問題が起り、またそれ以前よりイスラエルとアラブ諸国との争いはここ数年来特に激しくなっております。その政治的な意味は私から申し上げるまでもなく、世界史的な意義を持っておるとわれわれは見ている次第でございます。従いましてこの地区政治的進展を絶えず検討いたしまして、わが国の中近東政策の適切公正なるを期することが、外務省にとりましてきわめて緊切な題目となっておる次第でございます。また貿易通商企業協力等の面からいたしましても、これを経済局において管掌しておるのでございますが、その政治的な関連というものは、絶えずこれを探査していく必要があるのでございまして、中近東におきまする政治的の意味というものは、アラブ諸国の台頭とともに今後ともますます重要性を加えるとわれわれは考えております。豪州につきましては、戦争時のほとばしりがまださめず、対日感につきましてはまことに憂うべきものがございます。従って貿易面等におきましても、きわめて消極的な歩みを歩んで参ったのでありますが、最近はいろいろな問題につきまして、特に貿易交渉の面におきましてはなはだしく良好な傾向を見せておるのでございます。なおニュージーランド及び豪州の政治的な意味は、コロンボ・プランでA・A国両国との提携という点については、御説明申し上げるまでもなく、非常に緊密に進んでおりますので、われわれがA・Aグループの一員といたしまして、この両国との関係を緊密化していくということは、政治的に見ましても一段と重要性を増しておる現状でございます。従いまして欧亜局によってこの両地区におきましての十分の政策を勘案してこれを実施するということが、緊要の問題となっておると存ずるのでございます。
  5. 受田新吉

    受田委員 行政機構の改革は、漸次その機構を縮小して、その間における能率を高める方に政府の施策が今あるわけです。ところがその機構整備縮小と逆に機構を複雑化し、また拡大していくという形にこの法案はなってくるわけなんです。これはわれわれといたしましても、今御説明のごとく、外交上の重点が米州、欧州アフリカ太洋州、中近東、こういうふうに幾つもの地方に分散的に置かれておるという状況にあることは、特に政府として外務省仕事をなさる上においてはなはだしく不便であろうと思うし、提案され、また御説明を伺うと、御趣旨にある程度の賛成もいたさざるを得ない情勢だろうと思うのでありますが、しかし問題は、こうして機構を拡大していくという形になる法案提出に当っては、十分の用意をして、なぜこれを拡大強化しなければならないかという理由を明らかにしなければならぬし、これには当然予算を伴うことでありますし、また人的な配置をさらに考えられることでございますから、そこで私お尋ねしておるわけであります。今中近東大洋州についての御説明を伺ったのでありますし、またアジアアフリカ機構についても、A・A会議その他を通じてアジアアフリカにも触れられましたので、そのアフリカに対する質問はやめますが、その欧亜局の中身をどういうふうに分けて仕事をさせようとしておるのか。第一課、第二課と考えておられるようでございますが、それぞれの課の仕事はどういうものであるか、従来欧米局として一局でまとめた時代と変った仕事としては、欧亜局アメリカ局とどんなものがあるのか、ただ地域的な仕事分担を分けただけか、あるいはそれぞれの地域に対する特別の任務を持つような仕事がふえたのかどうか、そういうこともあわせて御答弁を願いたいと思います。
  6. 井上清一

    井上(清)政府委員 御質問お答えを申し上げます。行政機構を簡素化して能率化していこうということは、これはもう前内閣時代からの方針でございますし、石橋内閣に至りましてもこの方針を堅指いたしておるわけであります。外務省設置法の一部改正法律案政府部内で討議いたしました際におきましても、このことは非常に問題にいたしたわけであります。ずいぶん各方面との折衝を重ねまして、ようやくここに法律案として御審議を願う段階までに至ったわけでございます。  御承知のように、現在の欧米局内容は、非常に複雑なことに相なっておりまして欧米局長のもとに欧州参事官というのがおりまして、欧州関係仕事だけを特に取り扱っておったというのが現状でございます。かてて加えまして、昨年の暮れに日ソ国交回復があり、かつまた、先ほども官房長が申し上げましたように、中近東関係仕事が非常に複雑を加えてきておる。また豪州との関係におきましても、従来の豪州とは違って、オーストラリアにおきましては今後非常に日本と提携していきたいというような機運が高まってきておりまして、日豪通商協定のごとき話がだいぶ進んでおるというような状況で、今後日本といたしましては東南アジア方面に力を入れますると同時に、やはり豪州アメリカ中近東という方面通商関係その他において力を入れていかなければならぬというような状況下に、欧州アフリカ大洋州も、また南北アメリカ一つの局で扱うということはどうも事務の分量が大き過ぎるということを、極力行政管理庁その他に私ども立場説明いたしまして、ようやくにこの法案としてまとまったような次第でございます。欧亜局内容は、現在も欧州参事官の手元で三つあるわけでありまして、第一課は東欧関係を扱っておる、第二課は英連邦関係、第三課は西欧ということで、そのほかに中近東関係だけは、特別に一人の書記官がこれを担当しておるという状況でございますが、今後なおまたこの仕事の分け方につきましては、いろいろ研究しなければならぬ点も多々あろうかと存じますので、いろいろ御意見も承わろうと私ども考えております。ただ予算の点につきましては、これはもう現在ございます人員をいろいろ配置がえいたしまして、ただ事務系列を正すということだけでございまして、予算的には特別な措置を必要としないということをこの際つけ加えて申し上げておきたい、かように思っております。
  7. 受田新吉

    受田委員 大体二局に分けられた構想を伺ったわけでありますが、予算的には何ら御迷惑をかけないようにやるのだ、事務系列をはっきりさせるだけだということでございまして、事務系列をはっきりさせるだけということになったのでは、これは今までの欧米局として一局を設け、欧州参事官を置いた形と大差がないことだと私は思うのですが、それでは今までの機構をもっと能率化していけば任務を果せることで、別に局長を二人置いて、今まで一人で済んだ局長を二人にしたために局長という月給の高い職員が一人ふえるというくらいの意味しかないことになりはせぬかと思うのです。外務省のお役人には最近大使公使になる機会がたくさん与えられてきたのだし、別に局長を一人ふやしてポストを与えるということだけではこれは大した意味がないと思うのですが、いかがでしょう。
  8. 井上清一

    井上(清)政府委員 お答え申し上げます。系列を正すと申しましても、ただ機械的に仕事を分けるということではございませんで、やはり仕事内容について深く研究もさせ、諸般の問題について平素からいろいろ準備もさせ、また今後いろいろ東欧諸国との交渉も非常にふえてくるだろうと思います。あるいは通商関係におきましても、あるいはまた漁業関係その他諸般の大きな問題が出てくるわけでございまして、そういうことに対処いたしますためにはやはり一つの局としてそうした問題に専念していく、そのために力をもっぱら注いでいくという局がどうしても必要であるというふうに私ども考えておるわけであります。  なお、このほかに、私ども中近東ソ連関係を特別に担当していく人員増加を要求したわけでございますが、これは大蔵省で認められなかったのでございますが、できるだけ外務省人員のやりくりを精一ぱいいたしまして、御期待に沿うような活動をさせていきたい、かように考えております。
  9. 受田新吉

    受田委員 私は、人をふやさないでそれぞれの地位にある人に責任感をはっきりさせるようにして能率を上げたいというお気持はわからないでもないのですが、しかし今通商の問題などについても経済局というものが一つあって、そこで世界各国通商関係事務を十分遂行しておられることだし、また情報を集めるところもあれば、調査をするところもあれば、情報文化局という非常に文化的な、文化国家らしい適切なところもある。こういうそれぞれの担当部局がある。従って別にここに地域的な担当局一つふやして、それぞれの責任をはっきりさせるということについて、多少今理解に苦しむ点が発生したのでございますが、いかがでございましょうか、欧亜局アメリカ局戦前あったこともよくわかっておりますけれども、最近における欧州の、特に東欧諸国の新しい事態の発生、共産圏国々との国交回復というような問題も起って、欧州にも今新しい仕事がふえてきたということは、中近東大洋州、アフリカの、さっきお答えいただいた問題とあわせてわれわれには納得はできるのでございますが、人をふやさないで、ただ役所だけ分けていくということになると、結果的には局長をふやすことになり、また課長をふやすことになる。そしてそれぞれが、責任分担をはっきりして、能率を上げていくという程度のものにしかならぬのではないか。もっと突っ込んでいえば、仕事がふえたのであれば人もある程度ふやさなければならぬではないかということを私は申し上げておるわけです
  10. 井上清一

    井上(清)政府委員 仰せごもっともでございます。私どももできるだけ予算をふやし、人員もふやしていきたいということはやまやまでございますけれども、なかなか国家財政がわれわれの言う通りのみには参りません。来年度におきましては、人員増加はやらないかわりに、諸般活動費用を今度の外務省予算に相当見込んでおります。そうした点で補いをつけて、できる限りの能率を上げ、所期の効果を上げたい、こう考えておる次第でございます。
  11. 受田新吉

    受田委員 活動費用を少し多くしたと言われたが、予算はどのくらいふえておるわけでございますか。
  12. 木村四郎七

    木村政府委員 お答えいたします。今政務次官お答えになりました活動費の点でございますが、これは主といたしまして報償費増加でございます。三十一年度は約三億八千万円でございましたが、三十二年度の予算におきましては六億に増加しておるわけでございます。この六億は国内において一億八千万円、外国において四億二千万円というふうな仕分けになっております。御承知通りこの報償費は今政務次官の申された通り外交の遂行上の活動費でございます。諸種の方策を進める点における外交の妙味を発揮するための経費がこの中に盛られているわけでありまして、この経費で、従来と同じ人員ではありますが、活動の分野は自然豊富かつ広範になる次第でございます。
  13. 受田新吉

    受田委員 私昨年もアメリカの視察を終えたときに思ったんですけれども大使館の大使接待費外交上のいろいろな儀礼的な集まりなども、他国に比べてははなはだしく日本大使接待会議が貧弱で、タイ国とかビルマとかいう小国——小国と言っては失礼でございますが、われわれとは違って人口も少いことでありますから小さい国と言えます、そういう国々接待よりもなお貧弱なような印象を受けるわけであります。こうしたレセプションその他に見られるような日本国外交上の儀礼的な集会にさえも、よほどのハンディキャップを見出すということになりますと、日本国権威にも関すると思うのでございますが、こうした問題はどうなんですか。役所いたずらに作るよりは、そうした重点的な費用の使い方などに心を配られて、そしてそこで能率を上げることと外交官らしい権威を保たしめることと、両方をはかられることも私は必要じゃないかと思いますが、いかがでございましょう。
  14. 井上清一

    井上(清)政府委員 受田委員から非常に外務省に御同情ある御意見を承わり、まことにありがたいと思います。現在の状況から申しますと、必ずしも御指摘になりましたように十分とは言えないと思いますが、これも限度のあることでありまして、逐次増加をして参りたい、そういう意味で本年も約五割程度増額を見込んでおるような次第であります。一つそういう方面に心がけていきたいと思います。しかしこれもやはり、局の増加をやめてそればかりに力をというような御意見でございますが、そうもいきかねるのでありまして、両々相待って仕事の完璧を期して参りたい、こう思います。
  15. 受田新吉

    受田委員 従来外務省にはお役人山脈があるといわれております。山脈幾つもある。すなわちある系列に属する方々、他の系列に属する方々、こういう系列があって、末端というと何ですが、在外公館におきましても、たとえば大使がある系列に属される方であるならば、そこにおられる人が他の系列に属される人がいると工合が悪いからよそへかわっていくというようなことになって、わずかしかいない在外公館職員の間でもとかく派閥的な立場になりがちである、気に食わぬ上司がいると下の者はそこに居ずらくなってどこへかかわっていくようになってくる、そしてまた大使公使もあるいは総領事も領事もその役所にいる職員ではだの合わない職員は締め出すような措置をとっていく、というような種々のうわさをわれわれは聞いているし、また私たち外国を何回か旅行した経験からながめてみましても、そうしたああこれはこういう派閥、この山脈だというような印象を受けるわけです。ここに一つ外務省としては根強い伝統があると思うので、この伝統を破っていかないというと、いわゆる外務族、はなはだ失礼でございますが外務族なるものが幅をきかされて、その中でさらに派閥争いをするということになってくると国際信用の上にも大へん影響があると思うのです。だから在外公館職員最高責任者から末端に至るまで、真に日本国を代表する職員らしく、りっぱに品位権威を保っていただかねばならぬと思うのです。そういうところについて政府はどういう考えを持っておられるのか。いたずら役所をふやして、局長の数を一つふやしまた課長をふやすというようなことになるだけでは、私は外交上の成果を上げることはできないと思うのです。外交上の成果はむしろその人を得ることにあるのであって、少数であるといえども精鋭の人材をもって、この人々が日本国外交官として誉れ高き仕事をしていただくことが私は大事だと思うのです。ここを一つどうお考えになっておられるか御答弁願いたいと思います。
  16. 井上清一

    井上(清)政府委員 ただいまお説にございましたように、外交は人を得るにありという御意見、まことにごもっともであります。りっぱな人物を養成してりっぱな外交官を作り上げるということは非常に大事なことであり、外務省といたしましてもそうした方面で力を入れておりますことは、御承知通りであります。先ほど外務省人事派閥があるような御意見がございましたが、まあ人の集まるところ親疎あり、おのずからそこに何かこう一つグループができるというようなことは従来ありがちのようではございますけれども、現在の外務省には決して派閥と申し上げるようなものは全くございません。この点ははっきり私から申し上げておきたいと思います。岸外務大臣就任以来、人事に清新はつらつたる気風を吹き込むということは外務大臣一つ方針であり、かつまたもしそうした派閥というものがあってはいかぬ、またそういうものを生ずるような余地なからしめるというところに、人事行政重点を置いて努力をいたしておりますようなことでございます。この点一つ御了承を願っておきたいと思います。なおまた省の規律の厳正ということにつきましては、綱紀官紀の粛正と相持ちまして、外務省として最も力を入れているところでございます。
  17. 受田新吉

    受田委員 外交官の中には、在外勤務中に国内外務省役人として得ることのできなかった財政上の穴埋めをすることができると伝えられてもいるということを、私聞いたことがあります。すなわち外国勤務の間にドルかせぎといいますか、外貨獲得による便宜を得ることができるとか、あるいは文化生活の高い特典があるとか、いろいろな点で在外勤務中に外務省役人としての少い収入を穴埋めすることができるのだと、伝えられているのでありますが、この私が聞いていることは誤まりであるかどうか。すなわち外務省役人は、国内においては外交官あるいは外務省の識員として権威を保ち品位を保持するほどの収入がない、しかし外国へ勤務するとそういう機会に恵まれるのだいうこととを、示唆したものかとも思うのでございますが、この間の事情を明らかにしていただきたいと思います。
  18. 井上清一

    井上(清)政府委員 お答えいたします。外交官は、外国に参りますと在勤加俸というものがございまして、生活程度の高い外国におきまして、外交官としての品位を損しない程度の俸給を加俸することに相なっております。内地におりますときよりも、あるいは若干のゆとりがあるかとも思いますけれども、しかしこれも何も個人生活をただ高めてやるということが起旨ではございませんで、外国人とのいろいろな交際、あるいはまた外国において日本国の官吏としての体面を失墜しないようにということのために、特に支給されるものでございまして、これらの費用というものは、個人生活といえどもやはり国家的な立場において使わるべきものであり、そうした見地において支給されておるものでございまして、そのために特にドルをどうするとかこうするとかいうようなことは、私どもは聞いてはおりませんが、若干そうした点から、外国に行きましてもひけ目を感じさせることがなく、日本外交官として堂々と仕事ができるようにという趣旨でもって支給してあるのでございます。
  19. 受田新吉

    受田委員 ここに第二の問題として出されておるのは、すなわち在ジュネーヴ国際機関日本政府代表部を設置することです。ここへ責任者として特命全権公使を置くことに規定づけられておるのでございますが、この御趣旨は私たち一応納得させられる点であると思います。諸外国ジュネーヴに同様のものが置かれて、日本だけが置かれてないという理由も納得できるのでございますが、それなら今までジュネーヴは何をしておったかということについても、ちょっとこれは触れてはおられますけれども、今まで済んでいたものを今度どうしてもやらなければならなくなったということになると、今までのやり方は何か大きな欠陥を持っていたということになると思うのですが、いかがでございましょうか。今までこれがどうして放置されておったか。
  20. 井上清一

    井上(清)政府委員 別にこれまで非常な支障があったというわけではございませんが、とにかくあそこに世界外交機関が集まっておるのでございまして、他の外国はみなそれぞれ公使を置いておるのに、日本では総領事を置いてあるということになりますと、いろいろ対外交渉その他におきまして、やはり何と申しますか、押されるというようなことも感ぜられるわけでございますし、それからまた交渉をやっております者にいたしましても、やはり一つタイトルがありますと、うしろに力を持っておるという感じでもって仕事をいたしますわけでございますので、そうした点から、ぜひ今度は日本政府代表部というものを法律上設置して、公使を置くというようにいたしたい、かように考えて提案をいたしたようなわけでございます。
  21. 受田新吉

    受田委員 そうしたつり合いの上から置かれたというお話で、タイトルがあると多少権威も保持できるという御趣旨のようでございますが、大体外務省は今大使公使という特別職がどのくらい世界各国に置かれてあるのか、お答えをいただきたいと思うのです。
  22. 井上清一

    井上(清)政府委員 大使館が二十八、公使館が三十、総領事館が二十、領事館が十一でございます。
  23. 受田新吉

    受田委員 その大使館には、アメリカのごとく大使館付の公使も置いてあるところがあると思うのですが、大使の数と公使の数、総領事の数を一つお示し願いたいと思います。それをお答えいただく前に、これだけの数を置くとなると、それは外務省の出身の方々のみならず、一般の特別任用者もおると思うのですが、おおむね大、公使になる人は外務省でお育ちの方である。他の省には十五級職以上の任につき得る人は数えるほどしかないのである。しかし特別職を含めて最高級の待遇を受けるお役人が——今数をはっきりしていただくとその差がはっきりわかるのですが、これだけ進路のあり得る役所というのは外務省一つです。そこで、その役所がさらにジュネーヴ特命全権公使を一人置くということになると、またここに一人ほど新しいポストができるわけなんです。他の省を見ますると、次官と同格以上の人というのは、これは全く暁の星ほどしかおらぬ。外務省に行くと、もう大使にも公使にもなって、それがきら星のごとく並んで、前途まさにけんらんたる花を咲かせるという外交官生活をやる。ここに私は、外務省いたずらに大公使を作って、おば捨て山ではないけれども外交官の死に花を咲かせるというような形にタイトルをお考えになることになると、これは問題だと思うのです。今の数はきわめて重大な数でございまして、いいかげんな予算書などではこれはとてもはっきりしないのです。この際堂々とここでお示し願いたい。   〔委員長退席、山本(正)委員長代   理着席〕
  24. 井上清一

    井上(清)政府委員 現在大公使の総数はたしか五十六人と記憶しております。他の省に比べまして認証官の数の多いことは御指摘の通りでございます。これは伝統にもよりますし、また仕事の性質の重要という点からも、さようなことに州なると思うのでございます。
  25. 受田新吉

    受田委員 さらに総領事などにおきましてはもっと大きな数字になってくると思うのですが、大使公使を置かなければならないところで、できれば兼務でやり得るところがあるならば、どしどしそういう道を開けばいいと思うのです。実際やっておられると思うのですが、たとえばジュネーヴの場合は、スイスの大使をして兼ねさせることができれば——これは公使となっているのが問題ですが、それは何とか職制上考慮する道はないかと思うのですけれども、そういうようにして、いたずらにポストに人を振り向けることにきゅうきゅうとするような考え方は、私はこれは考えなければならぬと思う。五十六人も大、公使がおる。これはまさしく日本人の認証官を総合計しても及ばないほどの数字ということになるわけです。大へんなことなんです。だから外務省に入りさえすればみんな認証官になれる。ほかの役所に行ったんじゃせいぜい局長どまりということになるが、外務省局長さんたちはもう例外なしに大、公使になって行けるというので、大へんお喜びではありましょうが、いたずらにポストを作って自己満足をするような形にはならぬように、私は外交上の権威だけは一つ保持していただきたいと思うのです。
  26. 井上清一

    井上(清)政府委員 現在世界の情勢は、比較的小さな国でも大使を交換するというようなしきたりがどんどんで、きて参りまして、自然終戦後におきましても大使の数がふえておるということは事実でございます。わが国といたしましては、大使を置くことをきめておりまするものの、実際に大使を置かないで他の大使を兼任さしておる、たとえばネパートという国に大使を置くことを今度の法案でお願いしておりますが、これはインドの大使が兼任するとか、その他そういう例がだいぶございます。何と申しましてもやはり他の国が大使を置いております場合に、わが国が公使を置くということはどうもいろんな外交慣例だとか格式とかいうことやがかましい外交界においては、やはりわが国としては公使でいいというわけにも参りませんので、そういう点も一つ御了解を願いたいと思うのであります。  ただいまジュネーヴ公使をスイスの大使が兼任したらいいじゃないかという御意見もございました。しかしこれはやはり他の国とのいろいろなつり合いもあり、また仕事重要性もございまして、従来外務省で持っておりまする公使の定員の中から特に定員をさきまして、そうした関係からジュネーヴに出したい、かように考えてお願いをいたしておるようなわけでございます。なおまた大使を置いておりまする国におきましても、仕事関係で非常に人を置くことが必要だという場合におきましては、たとえばワシントンとかロンドンとかいうところには特に大使のほかに公使を置いておるというような状況でございます。この点もお含みおき願います。
  27. 受田新吉

    受田委員 いずれ外務省設置法案はそうした機構上の根本問題にも触れるし、外交上の儀式にも触れる問題でございまするので、外務大臣に直接御出席をいただいて慎重審議をする必要がある。きょうは政務次官に非常に懇切に御説明をいただいておりまするので、きょうの場合は私満足をいたしますが、重大な問題が幾つもまだ残っておりまするので、機会をあらためて慎重審議をさしていただくということをお願いをしておきたいと思います。  もう一言だけお尋ねして、飛鳥田君もお持ちになっておりますので、お譲りします。非常に質問がたくさん出ておりますが、きょうは昼までということですから、なるべく急いでお話を進めます。今ネパールの話が出ましたが、ネパール、ブータンという中国との間にある小さな国に、向うが大使を置いたからこっちも大使を置くという形になって、インドの大使をして兼ねしめておるということですが、大使公使を置く設置基準というべきものが、いろいろ外交上の格式から——ネパール、ブータンはおそらく数百万くらいの人口の国じゃないかと思うのですが、これは多分酋長国になっていると思います。そういう国と外交関係を結ぶときに日本の国の在外公館を置く場合に大使館を置いて、外交上の格式でそれよりもウェイトの高い国に公使を置いているという場合には、そこをどういうふうに調整されるのでしょうか。ことに向うが大使を置けばこっちも大使を置くというようなことで大使にしてしまったら、みんな大使館になって公使館はなくなると思うのです。これははなはだいいかげんなところへ設置基準を置いておられるようでごさいますので、お尋ねを申し上げたいと思います。
  28. 井上清一

    井上(清)政府委員 ネパールは九百万の人口がありまして、今立憲君主国なんですが、大体東南アジア諸国は新興国として非常にはつらつというか新進気鋭で、国としての自覚自信という点から各国に対して大使を派遣し、また各国も東南アジアの新興国家に対しては大使を派遣するということが外交上の世界の傾向になっているわけでございます。わが国といたしましても、そうした趨勢に沿いまして、東南アジアの諸国に対しては今後全部大使をもってこれに充てていくというような方針で進んでおるわけであります。
  29. 山本正一

    山本(正)委員長代理 飛鳥田君。
  30. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 それでは受田君がもう伺いましたから、時間もありませんので簡単に伺います。今度の欧米局を廃止して、アメリカ局及び欧亜局に分けられました場合に、私たちしろうとが考えますと、中近東及びアフリカ、これはむしろこの際一思いにアジア局の方へ移されてしまった方が御便宜じゃないだろうかという感じがするわけです。と申しますのは、今までの歴史的なつながりから申しますならば、確かにヨーロッパのカテゴリーの中に入れていくことの方が正しいだろう、こう思いますが、しかし最近に至りますと、A・Aグループなどと称してこのグループが非常に民族主義的な動向を強めてきている。そうしてその行動もそういったものに代表されているという感じがいたします。しかもそれはアジアにおけるいろいろなかっての植民地諸国家の動きとも非常に協調をしておるわけでありまして、むしろこれら中近東及びアフリカ国々世界的な動きを見て参りますと、現在の傾向からいえばアジア局の方に入れていかれることの方が、その国の動きを正確にとらえ得るのじゃないだろうかという感じがするわけです。たとえばA・Aグループとインドの動き、こういうものとは今切り離せないわけです。従ってインドの所属しているアジア局あるいは中共政府との動きともまたこれは切り離し得ないわけです。こういう点で政治的な面にだけ着眼をして課を移すというようなことが果していいか悪いか、この問題は議論があると思いますが、現在の世界政治の段階からいえば、アメリカ局欧亜局にお分けになる際に——分けることについては私たちも賛成でありますが、一思いに中近東及びアフリカに関する課はアジア局の方へ移してしまう方が御便宜じゃないか、こういう感じがするのですが、いかがでしょう。
  31. 井上清一

    井上(清)政府委員 ただいまの御説まことにごもっともでございまして、この局を分けます際にも御説のような意見外務省内にもございまして、いろいろな角度から検討をいたしたようなわけでございます。ただアジアの方に中近東あるいはアフリカを移しますと、アジア局の仕事は現在も非常に大きな組織になっておるのでございますが、さらにその上アジア局が非常にふえてくるということがあるわけでございます。ことに御承知のように、東南アジア諸国との賠償の問題とかあるいはまた東南アジアに対する経済協力の問題とか、いろいろな問題がアジア局を中心に動いております今日、中近東アジア局につけますことは、さなきだに事務の多いアジア局をさらに膨大なものにするというようなことから、あるいは便宜的といえば御意見も出るかもしれませんけれども、一応中近東アフリカを欧亜の方面につけてやらした方が、事務の分量その他からいって適当ではないかということから、ただいまのような分け方をしてお願いいたしておるような次第でございいます。
  32. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 今までの課の分け方を拝見しておりますと、アジア局は四課ですか、それから欧亜局の方は六課あったと思うのですが、六課抱えてもともかくやってこられたのですから、一課アジア局の方にふやされてもそう事務の点で御支障があるとは思えませんが、しかしそれは現実に仕事を担当していらっしゃるあなた方のお説ですからそのまま伺ってけっこうでありますが、それではどうでしょうか、これは私たちのしろうと考えですが、中近東諸国及びアフリカ諸国を一つの局にするということはむずかしいのでしょうか。もしそういうことがむずかしいとするならば、今申し上げましたように、現状欧亜局の中にあるといたしました場合に、アジアとのつながりというものを一体どこで検討していかれるかという問題が疑問になのてくるわけです。もちろん同じ省内にある局同士ですから、相互連絡をなさるには違いありませんが、そういう点で非常にアジアと結びつけて中近東考えていかなければむずかしい事態がやってきていると思いますので、そういう連絡などはどういうふうになさいますか。
  33. 井上清一

    井上(清)政府委員 ただいま御説十分拝腹いたしましたわけでございますが、私どもはやはり中近東アフリカというものは一つの局としてまとめていきたい、かように思っておるのでございますが、中近東アフリカあるいはまた豪州というものをまとめて一つの局にするほどにはまだ仕事の量はないし、今後わが国との関係がさらに密接になって参りましていろいろな問題が出てきます場合には、あるいは考慮しなければならぬと思いますが現在のところは欧州と一緒にやって欧亜局ということで、大体事務の処理ができるのじゃないか、かように考えております。  なおまたアジアとの関連でございますが、これはもう、外務省のことを申し上げますと何でございますが、毎週三回各局長が集まりまして、現在朝九時から約一時間半程度連絡会議をやっておりますし、官房長あるいは次官のところで、それ以外の日の日常の業務につきましては連絡をつけてやっておりますので、決して局が分れておりましても、不都合を来たすことがないように処理して参りたいと思います。
  34. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 多分そういうふうにお答えになると実は思っておったんですが、よその省では省議というものがあります。ところが外務省には省議というものが実際には行われずに幹部会という形でおやりになっておると思われるのです。ところがいろいろ——これはうわさですから当っていなかったら失礼ですが、幹部会というのは集まられてなるべく深く問題に触れないように上っつらだけ議論して、ウナギどんぶりでも食べて散会してしまうというお話だそうです。なるほど外交上にはいろいろな機密もあって省内といえども十分話し合いしていくことは不可能な場合も間々あることはあるでしょうけれども、現実に幹部会というものは形式的にはお集まりになるが、そういった形で実際の外交の機微について御議論をなさっていないように伺うわけですが、その点どうなんでしょうか。十分これによって連絡が保たれているというお話ですが、われわれはそういううわさを聞いて危惧を感ずるわけです。
  35. 井上清一

    井上(清)政府委員 外務省の幹部会についていろいろ御意見がございましたけれども、あるいは前にはそんな時代もあったのかもしれません。しかし現在のところは非常に各局長、それから事務次官、官房長、私も出まして、各所管の仕事について連絡をし合って、十分な連絡をとっておりますし、なおまた重要な問題につきましては、大臣のところで関係局長会議、あるいはまた全局長会議もやっております。今後は一つそういう御意見が出ましたので、私どもさらに省が一体となってやっていくように心がけて参るつもりでおります。
  36. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 その幹部会には顧問、あるいは参与という方も出席されるわけですか。
  37. 井上清一

    井上(清)政府委員 現在顧問が出席されております。
  38. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 どうもこれもこう申し上げると、それは過去のことであって今はもう改めましたとおっしゃるかもしれませんが、今までの重光外相の時代には顧問と参与、こういう方々だけで重要問題が決定されてしまうという事態がしばしばあった、悪口を言えば重光御三家などというとてつもないものがあって、これが外交上の枢機を決定している、これには幹部会あるいは省内の重要な任務に当られる方々は参画もできないというようなことをしばしば聞くわけです。事実これはあったと私たち想像されますが、こういった重光の御三家が枢機を決定するというようなことを伺いますと、私たちは疑問になりまして、外務省設置法の参与とか顧問とかいうところの条文を見てみるわけですが、一体この幹部会とこうした顧問あるいは参与、こういうものとの関連性、そうして外務省の根本的な外交プランを決定する場所がどこにあるのか一つ教えていただきたいと思います。
  39. 井上清一

    井上(清)政府委員 従来のことについては私はまだ就任いたしておりませんので存じませんが、いろいろな世間のうわさもあったかとも存じますが、しかし現在は御指摘になりましたような点は全くございませんので、大臣を中心に政務次官事務次官、各局長一体となって事務の処理に当っておるわけであります。なお顧問という制度について御意見がございましたが、顧問は御承知のように、積極的に何する任務ではございませんので、「外交上の機務に参画し」ということに相なっておりますが、どっちかと申しますと、大臣が外交上の問題を決定いたします際にいろいろ意見を徴するあるいは相談をするということでございまして、日常の事務に顧問が深く立ち入るということは、現在は全くそういうことはございませんので、この点は一つ御了承を願っておきたいと思います。なおまた参与は「外交政策の実施に参画する」ということに相なっておりまして、外交政策を実施いたしまする場合において、いろいろ御協力を願っておるわけでございます。参与と顧問との間に若干仕事の性質が違っておるわけでございます。
  40. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 ほかの省を見ますと顧問という制度は比較的ないわけです。顧問、参与というのを官制の中にきめられておるのはおそらく外務省だけじゃないかと思います。そういう意味で顧問というものの仕事内容、こういうものをもう少しこの際明確にしておく必要があるんじゃないか。この外務省設置法によりますと、今お読み上げのように、「顧問は外交上の機務に参画し」こう書いてあるだけです。機務に参画するというのが、果して今お話のように、諮問があれば消極的にそれに答えるというだけになるのか、「機務に参画し」と書いてあるのですから参面する権利があるわけです。従ってどんどんくちばしを突っ込んでいいものなのか、こういう点も非常に不明確ではないかと思います。むしろ顧問という制度は私はなくした方がいいと思いますが、しかし置くとすれば、もう少し明確にしておく必要がある。そういたしませんとまたその上に、この前の日ソ交渉の場合のように外交長老会議などという妙ちりきんなものができて、そうしてそれがあたかも幽霊が地下からはい出してきたような形で、勝手な議論をして、それがまた同時に外務省の室内で、外務大臣も出席して行われて、その結論は新聞に大々的に報道せられて、国民の外交路線について相当大きな影響を与えるという形になるわけです。これは私は長老会議などというものは官制にないわけですから、これはプライベートにおやりになるならけっこうです。どこか会場を借りて一ぱい飲みながら御意見を伺うというならけっこうですが、堂々と役所の中でおやりになって、そうしてその結論が発表されるという形になって参りますと、国民に何かこれが官制であるかのごとき印象を与え、しかもそれがオーソライズされたもののようにアピールされて、外交路線をねじ曲げていく可能性があるわけです。こういうふうな長老会議などというものが、顧問の性格をまだ明確にしておかないために官制外に現われてくるということは、私は民主的な外交というものに対して非常に好ましくない、こういう感じがするわけですが、こういう点についてどうでしょうか。今後長老会議をおやりになる意図があるかどうか。ほんとうならこれは岸さんに伺うべきでしょうが、お伺いいたします。
  41. 井上清一

    井上(清)政府委員 お答えいたします。長老会議というのは、全然外務省関係なしに行われた会議であったやに私は記憶いたしております。岸外務大臣ともいろいろお話し申し上げておりますが、岸外務大臣は長老会議というものを置くお考えはございませんようでございます。
  42. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 時間がありませんので、ごく簡単にばらばらに伺います。  ソ連との国交が回復せられたわけですが、そしてこれは欧米局の中のソ連関係の課に非常に堪能なソ連語通の方がおられるそうですが、しかし今後はどんどん向うに外交官を出さなければならぬわけです。従ってロシヤ語の十分にできる方を養成する機関、あるいはそれだけではなしに、中国語を十分にしゃべられるようにする養成の機関、こういった——これだけではありませんが、各国語の養成機関というような形をどういうふうにやっていらっしゃるのか伺いたいと思うのです。今までですと、外国に委託をせられるとか、あるいは外国を出られた方を書記官に採用せられるとか、あるいはパリあたりで遊んでいる——遊んでいるといっては失礼ですが、現地委任をやるとかいうような形でやっていらっしゃったようですが、やはりこれは外務省としては組織的に外国語養成機関をお持ちになる必要があるのじゃないかという感じがするわけです。まあ学校を出て、かつての高文の外交科を通ってこられた方はいいのですが、それ以外の方についてどういうふうに養成されていくおつもりであるのか、これを伺いたいと思います。
  43. 木村四郎七

    木村政府委員 御指摘の点でございますが、特殊語学の研修ということは、東京におきましては外務官吏研修所において若干行わしめております。また留学生制度を設けまして、二年特殊語学の国に留学を命じまして、その国の語学を勉強するという制度が現在実施されておりまして、約二十名はその学生になっておるわけでございます。特殊語学は、御承知通り、実際的に考えまして、二十九カ国語くらいは研修しなければならぬというわれわれの結論に達しております。今御指摘のロシヤ語に至りましては、もう特殊語学の域を脱しておりまして、多くの者が研修しなければならぬという趣旨におきまして、外務省も今後一段の努力をいたしたいと存じております。
  44. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 それから私たち日ごろ疑問に思っておるのですが、日独文化協定とか日伊文化協定というものをどしどし結んでいらっしゃるようです。ところが予算の方を拝見いたしますと、これに関する費用というものは全然ないのじゃないかという感じがいたしますが、現実にはこういう文化協定をどしどし結んでいかれるについて、予算の裏づけあるいはこれを広い意味で実施していくについての費用などというものは計上せられておるのですか。
  45. 井上清一

    井上(清)政府委員 ただいま御指摘ございましたように、文化協定を作っても、それに関する予算がないじゃないかという御意見、まことにごもっともでございます。ただ私ども日独文化協定などの協定を結びます場合におきましては、一つのいろいろな文化的交渉、交流ができます下地を作るということが大体の任務でございまして、下地を作った上において、学会とかあるいはまた民間その他、たとえば出版、映画だとかあるいはまた音楽だとかあるいはまた雑誌、新聞というようなそれぞれの部門において、たとえば日独文化協定でありますれば、日本とドイツとの間の文化的な提携というものができるだけ容易にできるというような下地を作るということが任務で、外務省自体といたしましては、いろいろ協定を作ります、その協定を実施いたします油の役目と申しますか、そういうふうな油の役目の金は若干見てあるわけでございまして、それは交渉費だとかあるいはその他の費用を、できるだけ協定ができました場合に、全体の国のいろいろな各方面の部門がうまく円滑に動くように、若干でございますが、心づもりをしておるのでございます。
  46. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 お説として、議論としては僕はそれがいいと思いますが、しかし実際にあなた方も私たち日本の実情を知っているわけです。学会とおっしゃってみたところで、学会自身が金を持っているわけではありません。官立大学でもそういう費用はたくさん持っておりませんし、私立大学に至ってはなお持っていないわけです。従ってわれわれは素地だけ作ってやって、あとはお前さんたちやれ、こうおっしゃっても実際はなかなかできない。また場合によれば文化的な音楽の問題、絵画の問題、こういうような問題でも、民間にまかせておきますと、そう日本を代表するようなよいものがいつでも行くとは限らないと私は思います。現実にそういう幾つかの失敗を、向うへ行って帰ってきた友人なんかに聞くわけです。そういう意味で今の日本の段階では学術、文化、そういうものに予算がたくさん行かない。そして全体としてそういう面がお金の面で苦しんでいるという状況の中では、やはりここで、幾らか筋違いかもしれませんが、文化協定について外務省の方でたくさんのお金を用意なさるという必要があるのではないか、こう私たちは思っているわけです。従って、これは要望になりますが、今後こういう文化協定などをお結びになる場合には、素地を作ったり潤滑油程度ではなくて、むしろ外務省が積極的にやっていただく、こういう予算を組んでいただきたい。またそういう意味でこそ、私たちは単に政治的な外交でなしに、国民と国民との結びつく結接点としての在外公館ということを考えていけるのではないかという感じがいたしますので、これは将来ぜひそういうふうにしていただきたいと思います。  次に伺いたいのですが、最近移住局で移住振興株式会社というのをお作りになって、アメリカのお金と政府のお金とそれから民間会社——大阪商船なんかそうですが——の出資で移住振興株式会社ができて、移住関係の一切の仕事をやられる、この下部に海外協会というものができて、各県庁にその出張所があります。ところが最近農林省の方で拓殖移民をやる、こういうことで農協の中ですか、何かそういうものの中に同種類のものを作っていかれる傾向が出てきておる。こういうことになりますと、農林省と外務省の間に権限争いが出てくるわけです。そしてまた海外に行かれる場合に当然一本で世話すべきものが、農林省と外務省がけんかをしたりあるいは権限争いしたりいたしますと、出ていく人が非常に迷惑するのではないかという感じがするわけです。これについて外務省としてはどうお考えになるでしょうか。農林省には別に伺うつもりですから。
  47. 井上清一

    井上(清)政府委員 ただいま御指摘のように、従来海外移民、海外移住に関しまして外務省と農林省の間にいろいろ意見の相違がある、そのためにいろいろ海外に移住される方に迷惑を及ぼした事例があるということでございましたが、私もこれらの点についてはかねがね承わっておったことであり、移住の仕事を積極的にやって参りますためには、これらの点につきましては、外務省と農林省とでお互いに、ことに農業移住の問題については緊密な連絡を保持しなければならぬということで、かねてから農林省との間で話し合いを進めております。大体の話し合いの了解はもちろんできておるのでございますが、今後も一つ緊密に連絡をとって参りたいというふうに考えております。私どもの見解といたしましては、農業移住と申しましても、海外に出ます場合、日本の港を離れていきましたら、やはり外務省としてこれはお世話をしなければならぬ筋合いにある。しかし海外における農業技術指導というような点については、これは農林省にも今後緊密な連絡をとって、農林省としていろいろな指導もしてもらわなければならぬと思いますけれども、身分的に考えて参りますと、日本の港を出てから先は、私ども外務省においてお世話を申し上げていかなければならぬのじゃないかと思っております。
  48. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 その話し合いはついたのですか、もしついておるとすれば、その話し合いの内容を教えていただきたいと思います。
  49. 井上清一

    井上(清)政府委員 大体の太い筋では話し合いがついておりますけれども、まだいろいろな問題について完全な了解というところまではいっておりません。私どもの基本的な考え方は今申し上げた通りでございます。
  50. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 一番困るのは出ていく人ですから、早いところ、その話をきちっとつけてもらいたいと思います。  時間もありませんで、受田君がこの次質問するときに、基本的な問題はまた便乗さして伺わせていただくもつりですが、一番私たちが疑問に思いますことは、各外国へ出ておられます領事の任期などを調べてみますと、大体二年くらいで転任なすっていらっしゃる。これは平均そのくらいとだ思います。ところが私などは不敏ですから特にそうなのかもしれないが、新しい国に行きまして二年くらいで一体その土地になれるだろうかということを非常に疑問に思うわけです。特に日本の領事あるいは大公使の機能の欠陥としては、その土地における民間経済あるいは商社、こういうものとの総合的な活動をしないという点がよくいわれるわけです。外交官はこういう線で交渉しているのに、実はそこに出ていっている日本の商社は、全然外務省方針を裏切るような行動をどんどんとっていく。従って表裏一体をなさないために、情報の収集などという点についても欠陥があるし、あるいはその国の政界に働きかけるというような場合でも、予算がないというだけではなしに、非常に幅が狭いためにだめになるというようなことをしばしば聞くわけです。蒋介石がアメリカ議会の中にチャイナ・ロビーを持っているような形で、日本外務省活動をせよと私は言うつもりではないのですが、しかしやはりそこの国の政治勢力なり、その国の経済的な重点政策を施していかなければならぬ場合がしばしばあるわけです。それでなければその国との完全な了解その他を取りつけこるとはできない。ところがそういう点について非常に欠陥があったやに聞くわけです。なぜ欠陥があったかということを考えてみますと、その一つの原因として任期が非常に短かい。むしろ本省の出世街道を歩くためにどんどん移ってえらくなっていくという形が、その原因の一つじゃないかという感じがするわけです。もう少し外国に出している外交官に、その任地に腰を落ちつけさせて、そしてゆうゆうとその国の中に溶け込んで仕事をしていくというようなやり方はできないものでしょうか。
  51. 井上清一

    井上(清)政府委員 ただいま飛鳥田さんから御指摘になりました点、まことに私ども同感でございます。日本の官吏制度の一つの欠陥を端的に御指摘に相なったものと存ずるのでございます。外交官におきましても、やはり御指摘のように長く任地にあって、そしてその国の風俗、人情に溶け込んでいって初めて私はりっぱな仕事ができるのじゃないか、かように存ずるのでございます。外務省といたしましても、本人の希望もありましょうが、できるだけ長く任地に置いておくというのが、一つ方針にはなっておるのでございますが、どうもその方針がいろいろな人のやりくりの関係その他によってくずされますことは、まことに遺憾に思います。今後できるだけ御意見に沿ってやっていきたい、かように存じます。それで領事につきましては、大体少くとも三年程度は置かなければいかぬじゃないかということが、外務省の首脳部において今話し合っております基本的な考え方であると思います。  なお、またこの間も私、ある席で非常に愉快に感じたのでございますが、南米にボリビアという国がありまして、そこにおります参事官はもう数年間そこにじっとおりまして、そのボリビアの経済界並びに政界と非常に緊密な連絡をとって、非常にりっぱな仕事をやっておる。しかももうかわろうという気持もなく、そこに骨を埋めるという気持でやっておるということを聞いて、私は非常にうれしく思っております。今後そういうような方向で人事行政をやっていきたいと思っております。
  52. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 もう時間がありませんので、簡単に申し上げます。これもうわさですが、あいつはどうもヨーロッパに長くいたから、今度はアジアに持っていこうとか、アジアでずいぶん苦労したから、今度は少し楽なヨーロッパに持っていってやろうとかいうような形の人事がだいぶあるように伺いますが、こういうのは一つよしていただいて、ほんとうにその任地に腰を据えて、今お話のように、そこに溶け込むという態度をとっていただきたいと思うわけです。その意味で、先ほど私、語学の養成についてどういう組織的な方法をおとりになっているのかということも実は伺ったつもりですが、そこでは語学の養成だけでなしに、そこの特殊語学を学ばれた人は、その国の風土あるいは習慣一を非常に愛好して、そこに自分も溶け込んでしまうというくらいの覚悟と、そうして二度と再びこっちの本省に戻ってこようというような根性を捨てて、そこに赴任していただくくらいの気持に養成をしていただく、私はそういう根性が必要であると思うのです。お説のように官僚制度でもって、えらくなっていくという形を捨てて、その国と溶け込むという形でやっていただかないと、外交というものはむずかしいだろうと思う。かつての日本の帝国主義を背景に背負った外交なら、これは楽でしょうが、そういう点で一つぜひやっていただきたいと思うわけです。  そこで、そういう意味で私たちの頭に当然浮んで参りますのは、民間人の起用ということだと思うのです。民間人は、今までの官僚制度というものに災いされておりませんから、比較的喜んで自分の好きな国に行くでしょう。そうしてそこで一生出先官憲として暮していく情熱を持ち得るだろうと思うのです。現にインドの大使であった西山勉さんとか、あるいはシンガポール、ボンベイの領事という方々は、民間から入っていかれて非常に成績を上げておられるというふうに私は聞いているわけです。従って外務省としては、今後民間人をそういう形で起用なさる御意図があるかどうか、こういうことを最後に伺っておきたいと思います。と同時に、そういう民間人の起用を特に必要とするのは、ブラジルあるいは中南米、こういうところじゃないか。そうしてまたわれわれ国民の中にもこういう中南米に対する特殊な知識を持ち、そこに仕事重点を置いて情熱を感じておる人たちが相当いるわけです。中南米あるいはブラジルというようなところに民間人を起用なさるおつもりがあるかどうか、これを伺っておしまいにしたいと思います。
  53. 井上清一

    井上(清)政府委員 現内閣成立いたしまして以来、内政と外交というものは一体化していかなければならぬというような見地から、外交は必ずしも外交の専門家でなくても、やれるところにはできるだけ民間人を起用していきたい。ことに現内閣は経済外交ということを非常に表看板にいたしておりまして、経済外交を推進して参りますためには、やはり従来の考え方にとらわれない民間の方々を、外交の面にも起用していくことは非常に大事だということで、その方針で進んでおるわけでございます。ところがなかなか適当な方が見当りませんし、よし一つ行ってやろうというような適当な方というものはなかなか見当らないわけでございますが、御指摘のように、南米とか、ことにブラジルとかあるいはまた東南アジアとかいうような、今後従来とは違った意味において親善の度合を増していかなければならぬ国については、私はやはり民間から適当な人があれば起用していくということが、外交上大きな効果を上げるのではないかと、これはお説の通り私も感ずるわけでございます。岸外務大臣も同様な考え方をもって、今後適切な人があります場合には、できる限り民間人を起用していくという方針でありますることを申し上げて、御答弁といたします。
  54. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 もう時間もありませんので、この次にさしていただきます。
  55. 山本正一

    山本(正)委員長代理 次会は二月二十七日午前十時より開会することとして、本日はこれにて散会いたします。    午後零時二十一分散会