○内田
委員 外務大臣もすなおに、
総理とお
考えを同じくして、
交渉の結果が満足すべきものでなかったということをお認めになられた、私どもと憂いをともにするものでありますが、私どもから
考えますと、前の
松本全権による
交渉、その次の
重光外務大臣による
交渉、それから
総理を首班とする今度の第三回目の
交渉におきまして、結果はかえって悪くなったように私は思うのであります。この点も、私は簡単に述べますが、
歯舞、
色丹さえもが、今度の
交渉の結果においては返ってこない。将来結べるか、結べないかわからない
平和条約を
締結しなければ、これは返ってこない。おそらく
ソ連としては、今度の
共同宣言でその目的を達するのでありますから、
領土その他の問題とか、自由主義国との
関係でありますとか、いろいろな面において
日本がよほどの譲歩をしない限り、
平和条約の
締結はなかなかしないのじゃなかろうかという心配があることを
考えますと、
歯舞、
色丹も戻ってくるかどうかわからない。その上、
択捉、
国後が、先ほどから私が申しますように、こちらはいろいろ
考えておりましても、文書の上に何も残っていないということになりますと、
重光さんが
最後に決意をされた妥結案よりも、
歯舞、
色丹がとれなくなっただけ悪い。もし
歯舞、
色丹が再び質権の目的にされますと、従来われわれがさんざん苦しんだ抑留者質、あるいは魚質、あるいは国連に加盟させるとかさせないとかいう国連質、こういう三つの質を、今度われわれの譲歩によってやっと片づけたと思ったら、今度はまた
歯舞、
色丹という質を作って、この質を取り戻すため一に、将来われわれはどれだけの譲歩をしなければならぬかということを
考えますと、私は今度の
交渉が、過去二回の
交渉の結果よりも悪かったように思うのであります。
総理大臣や
外務大臣が、今度の
交渉の結果は必ずしも満足すべきものでなかったと言われていることは、御自分のことがありますから、必ずしもというお言葉をお使いでしょうが、まことに満足すべきものでなかった、それと同じでありまして、この点は、ぜひ
一つ国民にはっきりさような
考えを持たせたいと思いますし、私どもが今度この国会において、この
共同宣言案外三件をかりに
承認する者多数ありといたしましても、不満足であるけれども
承認することにならざるを得ない点を、私は強調せざるを得ないのであります。
そこで、もう
一つお聞きしたいのであります。あなたは、御自分が第二次の対ソ
交渉をなさって、
最後の御決心を固められて、九月三日でございましたか、
日本にお帰りになったときに、羽田で簡単な声明を発せられておるのでありますが、私は大へんいい声明だと思って感じ入ったのであります。ここにありますが、こういうことが書いてあるのであります。自分は今度
ソ連の意向は徹底的に突きとめてきた、ということをまず言われておりまして、それから、今やこれは
国民的決断をなすべき時期であるが、
ソ連との間に十分検討の余裕は残してきたから、あらゆる角度から慎重に検討してくれ、
国民的検討を求める、こういう
意味のことを言われておるのでありますが、あなたがお帰りになった九月三日には、
国民的検討をするとか、あるいはあらゆる角度から慎重に検討するとかいうひまもなく、実は国内においては、
鳩山総理大臣を
全権として
ソ連に出すのだという議が起っておったのでありまして、何らの検討もされないで、
鳩山総理大臣は御出発になったように思うのであります。これはもう国会内におきましても、
社会党の諸君はしきりに臨時国会を早く開いて、そうして国会的検討をしたいということを述べておりますし、われわれ党内におる者も、党内でよく検討して、その上で、脈があるならば、成算の見込みがあるならば、第三回の
交渉を
総理によって始めるということも
考えたのでありますが、何らの検討もしないで出ていかれてしまったことが、私は今度の不満足の結果を招いたことの起りだと思うのであります。
それはそれとして、今私が聞きましたように、あなたは
ソ連の意向は徹底的にこれを確かめてきたということを申されておるのでありますが、それはどういうことでありましょうか。私の推察するところによりますと、
ソ連は
平和条約を結ばない限り、
歯舞、
色丹も返さない、また
平和条約を結んでも、
択捉、
国後というものは絶対に返さない。いわゆる暫定協定の場合においては、
択捉、
国後はもちろんのこと、
歯舞、
色丹さえも返さないという
ソ連の意向を徹底的に突きとめて帰られたことと思うのでありますが、そうではなかったのでございましょうか。