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1956-03-27 第24回国会 参議院 本会議 第26号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年三月二十七日(火曜日)    午前十時五十六分開議     ━━━━━━━━━━━━━  議事日程 第二十六号   昭和三十一年三月二十七日    午前十時開議  第一 昭和三十一年度一般会計予算   (委員長報告)  第二 昭和三十一年度特別会計予   算       (委員長報告)  第三 昭和三十一年度政府関係機関   予算      (委員長報告)     ━━━━━━━━━━━━━
  2. 河井彌八

    議長河井彌八君) 諸般の報告 は、朗読を省略いたします。      ─────・─────
  3. 河井彌八

    議長河井彌八君) これより本日の会議を開きます。
  4. 竹中勝男

    竹中勝男君 私はこの際、各府県における保険医辞退問題に関する緊急質問動議を提出いたします。
  5. 寺本廣作

    寺本広作君 私は、ただいまの竹中君の動議に賛成いたします。
  6. 河井彌八

    議長河井彌八君) 竹中君の動議に御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 河井彌八

    議長河井彌八君) 御異議ないと認めます。よってこれより発言を許します。竹中勝男君。   〔竹中勝男登壇拍手
  8. 竹中勝男

    竹中勝男君 私は、日本社会党代表いたしまして、ただいま各府県における健康保険医辞退事態が起っておりますが、それにつきまして緊急質問をいたします。  健康保険法改正反対しまして、さきに保険医の総辞退を決議いたしましたが、一昨々日、東京医師会はその代表を送りまして、医師会所属保険医のほとんど全員、六千七百数人の所属保険医保険医辞退届を出しました。京都府におきましては、三月二十日に、すでに医師会の総員に近い千三百七十九名が保険医辞退を知事のもとに届を出しました。四千七百人の全員を持つところの大阪府の医師会も、またその九割までが一昨々日の二十四日に総辞退の届を出しました。この保険医の総辞退は、今や全国各府県医師会に、あるいは歯科医師会に波及する形勢にあります。さらに昨日、二十六日には、公的医療機関であるところの国立病院の全医療労働組合全員、あるいは日本赤十字従業員組合、合せて約三万人の医療従業員保険医の総辞退に同調しまして、政府協力をしないということを申し入れております。まさに国民医療重大危機に直面しておると私ども考えざるを得ないのであります。(拍手)さらにわが国組織労働者代表するところの総評もまた、こぞってこの健康保険法改正反対闘争に立ち上っております。わが国医療担当者医者団体が、あたかも罷業にひとしいような重大な決意と行動を示し、労働組合がこれに呼応して、社会保障闘争を展開しておるというような事態は、かつて類例のないことであります。  医師にとっては、この健康保険改正が行われるならば、良心的な治療ができないのみならず、ひいては医師としての生活保障を失う危険があると考えておるようでありますが、私どもは、医師会はこの場合には、ただ自分の利害関係のために立ち上っておるのではなくて、国民医療問題、被保険者医療問題の解決のために立ち上っておるところの行動であると考えております。また一千万の賃金労働者及びその家族が、この健康保険法改正反対いたしておりますことは、明らかにこの健康保険赤字を国が負担することを避けて、そうして中小企業零細企業に働くところの労働者初診料あるいは再診料、あるいは入院料、あるいは保険料増加、あるいは保険診療制限というようにいろいろな制限を加えて、かれらの負担増加し、そうすることによって、この国が負うべきところの国民医療赤字労働階級に押しつけてきておることに対する激しい反対であるのであります。賃上げ闘争によって労働者がわずかの賃金を獲得いたしたとしましても、この社会保障の面において、かれらはさらに多くのものを失うのでありますから、実質的にはかれらの賃金はよくならないのであります。これが労働者、被保険者婦人団体家庭婦人一般国民が、この健康保険改悪に対して強く反対しておる理由であります。  そこで私は鳩山総理にお伺いいたしたいのでありますが、鳩山内閣重要政策一つとして国民に公約した社会保障充実強化は一体どうなっておるのでありますか。本年度において社会保障は、現実に言えばわずかに六十億円が増額されたにすぎませんし、これは防衛費軍人恩給増額に比べますならば、まことにわずかな増額であります。しかもこの増額については、何らの計画性積極性もなく、申しわけ的な増額であって、実質的にはむしろ減額になっておるのであります。すなわち人口の自然増加社会保障対象者考えましたならば、実質的にはむしろ社会保障後退いたしておるのであります。こういうような状態にいくならば、国民医療国民生活の安定も絶対に望むことはできないのであります。鳩山総理は、対外政策の上におきましては国民に公約したところの日ソ交渉早期妥結を裏切っております。対内的には国民に公約したところの民生安定、社会保障充実という公約を一片のほごのようにしてしまっておるではありませんか。(拍手鳩山内閣が再軍備の強化、憲法の改悪、小選挙区制などの実現に狂奔しておられる間に、国民生活は不安にさらされ、結核患者増加し、親子心中が起り、年寄りが家出をしておる、こういう状態が至るところに頻繁に起っておるのであります。国防の基礎であるところの国民生活の堤防はすでに決壊しておると私ども考えておるのであります。(拍手)  この機会に私は本議場を通して総理が、社会保障充実のこの闘いに立ち上って、もし充実強化されておるならば、こういう事態は起りません。それに対しまして明確な釈明をお願いいたします。単なる名目的に六十億が増加したということではなくして、社会保障重要政策であるならば、その充実のためにどれだけ計画的な前進がなされたかを御答弁願いたいと思います。  厚生大臣にお尋ねいたします。最初厚生省健康保険赤字対策として、健康保険医療給付総額の一割、四十六億円を大蔵省に要求したのでありますが、これに対して大蔵省は二十億円、赤字借入金の返還を繰り延べることによって十億、すなわち三十億円の国庫負担をしたのにすぎません。六十億円のうち残余の二十六億円の赤字は、この健康保険法改正改悪によって、この働く者の家庭婦人の上に押しつけてきておるのであります。なぜこのような国民の反撃を受けるような赤字対策をやりながら、ほんとう健康保険確立を実行しないのでありますか。なぜ厚生省最初に要求しました四十六億円の国庫負担ができないのでありますか、これは実にまずいことであります。わずかに四十六億円出せば、大体に国民がこういう一部負担加重化を受けるはずがないのであります。すでに国民健康保険には二割を国庫負担しております。日雇い労働者保険には一割の国庫負担がありますか。そうしてどこまでも医師会をどうかつするような態度でもって、この改正案を強行されるつもりでありますか。  第三は、この総辞退という当面の事態し緩和するために、医師会医療従業者協力を得るために、この改正法案をさらに大幅に修正する考えがおありですか。  第四におきまして、厚生大臣がこの新医療費体系医薬分業の原則の新医療費体系を出したり引っ込めたり、それからまた出そうというような、こういう確信のない、計画性のない態度、そうしてまたこの健康保険法においても、これを修正するとかしないとか、あるいは医師会の顔を見たり、あるいは国民の顔を見て、そうしてこれに対してほんとう計画性を持っていない、積極性を持っていない。こういうことのために起るところの紛糾に対して、大臣はいかなる責任をとられるかを御質問申し上げます。明快に答えていただきたいのです。再質問の時間を取っておきます。(拍手)   〔国務大臣鳩山一郎登壇拍手
  9. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 竹中君の御質問お答えをいたします。  最近各地におきまして保険医が総辞退を行う動きを見せておりますことは、まことに遺憾に思っております。保険医公的使命にかんがみまして、まことに残念にたえません。健康保険法改正は、健康保険財政を立て直し、将来のわが国医療保険の健全な発展をはかる趣旨のもとでできたのでありますが、このことを各保険医の方に十分御理解を願いまして、最悪事態に至ることのないようにいたして参りたいと思います。詳細のことは厚生大臣から答弁をいたさせます。   〔国務大臣小林英三登壇拍手
  10. 小林英三

    国務大臣小林英三君) 竹中さんの御質問お答えをいたします。  社会保障後退であるというお話がございましたが、これはいろいろの御議論もございますけれども、とにかくいずれにいたしましても、本年度厚生省予算というものは、昨年度よりも六十億円の増加になっておるのでありますから、内容で、あの仕事を控えてこの仕事をふやすとかいうようなことはありますけれども、私は全般的に社会保障制度進歩だと存じております。なお、竹中さんの御質問の中に、最初医療費の一割の四十六億円を要求しておきながら云々と、こういうような御質問があったのでありますが、私は就任以来、本年度におきましては医療費の一割近くを国庫補助を得たいと、こういう願望を持っておったのであります。しかしながら国家財政関係もありまするし、また一方におきましては、全然社会保険の恩典に浴してない人も三千万人いるのでありまして、いろいろの関係からいたしまして、少くとも被保険者負担をいたしまするいわゆる一部負担にマッチいたしまする程度のものを出したいというので、いろいろ政府内でまとまりまして、三十億円を本年は計上いたしたのでありまするし、また国庫補助という問題につきましても、これを法制化いたしまして、いわゆる社会保障確立の見地からいたしまして、健康保険財政を健全にしよう、健康保険発展をさすということで法制化いたしておる次第でございます。  それから新医療費体系の問題につきまして、出したり引っ込めたりというようなお話がありましたが、これは大へんにお話が行き違いでございまして、私は四月一日から医薬分業を実施するにつきましては、従来の医療費の払い方から、この物と技術とに分けるという考え方に立ちまして、いわゆる新しい医療費体系中央社会保険医療協議会諮問をいたしておったのでありますが、四月一日からスタートいたしますいわゆる医薬分業には、いろいろの関係から、客観的情勢からいたしまして、答申ができ得ない。こういう考え方からいたしまして、四月一日の医薬分業に間に合う程度暫定点数表諮問を二十三日に得たのでありまして、私ども考えておりまする基本的の新医療費体系の問題につきましては、できるだけ早くこれを完成する。暫定点数表というものは、それが完成するまでの間の暫定処置であるのでございます。決して私は出したり引っ込めたりしたのではないのでございます。  それからただいま医療担当者諸君が、いわゆる総辞退という動きがございまして、すでに竹中さんのおっしゃったように京都大阪、あるいは東京は、大体相当数の総辞退があったのは事実でございます。しかしこれは、日本医師会評議委員会におきましては、その時期においては、日本医師会の会長に一任ということになっておったのでありますが、大阪東京京都のお医者さんの諸君は、辞退をされたのでありますが、私は良識あるお医者さん方といたしまして、しかも医療保険の重要なる公共性にかんがみまして、まことに遺憾千万に存じておるのであります。ただ問題といたしましては、お医者さんの諸君反対理由は、いわゆる三十一年度におきまする赤字の六十六億円を全部国庫負担するということが御要求でございます。私は今日の健康保険というものは、非常にこの数年来より向上進歩をいたしており、その内容は非常にレベルアップいたしておるのでありまして、今日の状態におきましては、国庫も法制化いたしました補助を出す、そうして被保険者諸君も、この程度まで向上した健康保険でございまするから、従来の初診料相当額の五十円のほかに、多少の一部負担をしていただいて、そうして健康保険の健全なる発達をさすということが、私は被保険者並びに医療担当者すべての人々の利益であると存じまして、この改正案を出しておる次第でございまして、従いまして竹中さんの御質問にありましたような、これを撤回するという意思はないのでございます。  なお、ただいま国会において御審議中でございますが、国会の御審議並びに国会においてこの点をこういうふうにするというお考えにつきましては、別問題でございまするが、私みずからこう修正しようという考えは持っておらないのでございます。  それから公的医療機関の問題がございましたが、その地区々々におきまして最悪の場合がありました際におきましては、公的医療機関を動員いたしまして、国民諸君に御迷惑のかからないようにいたしたいと存じております。ただ、けさ新聞にも出ておりましたが、実は私、昨日総評代表者藤田議長という方にもお目にかかりました。これは健康保険の一部改正に対する反対の御陳情だったのであります。けさ新聞によりますと、私が、公的医療機関従業員が全部反対しているというような陳情を受けたということでありまするが、これは相当の行き違いがあると存じております。あくまでも公的医療機関を動員いたしまして、最悪の場合に処したいと考えておるのであります。(拍手
  11. 河井彌八

    議長河井彌八君) 竹中勝男君。   〔竹中勝男登壇拍手
  12. 竹中勝男

    竹中勝男君 今の社会保障費について、時間がありませんから、二、三簡単に申しますが、社会保障費が、絶対に進歩していない、前進していないということを私が申したのに、それが前進しているということは、これはちょうどウサギとカメのかけ比べで、社会保障のことしの増額は、国民の必要なものが、ずうっと百歩も進んでおるのに、カメはたった六十歩しか進んでいない。そういうときには、これは絶対に社会保障前進とは言えないのであります。これは後退です。この点を私ははっきり申し上げたいのであります。  それから今の厚生省は、もっと確信を持ってやっていただきたいと思うのであります。新医療費体系が出たり引っ込んだり、出したり引っ込ましたりしております。そうして六月にはまた出すというじゃありませんか、これははっきりしているじゃありませんか。あなた方の態度が、こういう確信のない態度で、ほんとう日本社会保障計画が、それでできるかということです。経済五カ年計画といいますか、あなたは三千万人の非保険者があると言いますが、これは今の計画でやるならば、最低七年かかるじゃありませんか、国民保険には……。そういう計画性のないこと、そうして確信のないこと、合理性のないこと、それを一体、厚生大臣はどう思いますか、ほんとうに、何か非常に弱いのですよ、社会保障に対し、大蔵省に対しても国民に対しても弱い。まるでこれでは、鳩山総理はからだが悪いから、出たり入ったりされたかもしれませんけれども、あなたはからだも丈夫だし、精神も普通らしいから、それだから……。
  13. 河井彌八

    議長河井彌八君) 竹中君、時間が来ました。
  14. 竹中勝男

    竹中勝男君(続) もっとしっかりやるべきだと思うのです。まるで何だかナメクジがはっているような、そういうぐじぐじした態度では、私はほんとうに大事な社会保障の問題は、絶対に解決しないと思いますが、もう一度御意見を伺います。(拍手)   〔国務大臣小林英三登壇拍手
  15. 小林英三

    国務大臣小林英三君) 竹中さんの再度の御質問お答えをいたします。  私が社会保障後退ではないと申し上げましたことは、これはいろいろ御議論はあるでありましよう。しかし私はいずれにいたしましても、今年度予算よりも三十一年度予算増額したということは、これは一つ社会保障前進であります。(拍手)  それから今御質問のありました新医療費体系について、出したり引っ込めたりというお話がございましたが、私は決してそうではないのであります。新医療費体系は、いわゆる新しい医療費体系でありまして、四月一日からスタートいたします医薬分業に間に合うように諮問をいたしておったのでありますが、いろいろの客観情勢からいたしまして、四月一日に間に合わないという見通しをいたしましたので、この審議をおくらせまして、そうして去る八日でございましたが、これに間に合うような暫定案点数表答申を受けたのでありまして、これは本日告示をいたしまして、四月一日から実施いたすことに相なっておるのであります。ただ、基本的な新しい医療費体系の問題につきましては、引き続き御審議を願いまして、できるだけ早くこれの答申を得るべく尽力をいたしておるのであります。(拍手)      —————・—————
  16. 河井彌八

    議長河井彌八君) 日程第一、昭和三十一年度一般会計予算  日程第二、昭和三十一年度特別会計予算  日程第三、昭和三十一年度政府関係機関予算  以上、三案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  17. 河井彌八

    議長河井彌八君) 御異議ないと認めます。まず、委員長報告を求めます。予算委員長西郷吉之助君。
  18. 西郷吉之助

    西郷吉之助君 ただいま議題となりました昭和三十一年度一般会計予算昭和三十一年度特別会計予算及び昭和三十一年度政府関係機関予算予算委員会におきまする審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。  昭和三十一年度予算は、公債を発行しない前提のもとに、租税その他普通歳入の確保に特段の努力を払うことにより、一般会計歳入総額を一兆三百四十九億円と見込み、その範囲内において、重点的に政府重要施策を推進することといたしております。この一般会計予算規模一兆三百四十九億円は、これを三十年度予算規模に比べますと、二百十六億円の増加となっておりまするが、国民所得に対する比率を見ますと、一四・八%でありまして、三十年度比率より〇・四%減少しております。また、一般会計財政投融資を加えたものを見ますると、三十一年度財政資金による投融資額は若干減っておりますが、ほかに民間資金活用を一千三百九十七億円見込んでおりますので、これを合わせた総額は一兆四千三百十八億円でありまして、三十年度に対し、九百三億円の増加ということになっております。  次に、一般会計歳入について申し上げます。三十一年度におきましては、租税負担均衡化をはかるため、給与所得控除額引き上げにより、給与所得者所得税を百五十一億円軽減することといたしております。しかして、これに必要な財源を捻出するため、法人税につきまして、交際費の損金不算入措置範囲の拡大及び退職給与引当金積立限度額制限等を行い、また、砂糖に対する関税の税率引き上げる等、税制の改正を行うことといたしておりまして、これらを織り込んだ租税及び印紙収入総額は八千二百六十七億円となり、三十年度に比べまして三百五十九億円の増加となっております。また、専売納付金につきましては、たばこ消費税税率が三十一年度から引き上げられますため、三十年度限りの臨時措置であったたばこ専売特別地方配付金の減と相殺いたしましても、なおかつ四十七億円の益金の減少となりますので、増収対策に格段の措置を講じまして、三十年度より二億円増の一千百二十七億円が計上されております。  次に、歳出予算のうち、主要な経費につきまして、その概要を申し上げます。  まず第一に、社会保障関係費でありまするが、総額一千百三十四億円でございまして、これは三十年度に比べまして百億円の増額となっております。このうち、生活保護費につきましては、三十年度に対して生活困窮者増加を二・五%と見込んで、三百六十三億円を計上し、また、社会保険費につきましては百六十億円を計上いたしております。このうち、特に政府管掌健康保険については、財政再建のため根本的対策を講ずることとし、医療給付費につき患者の一部負担標準報酬月額引き上げ薬価対策等措置とともに、国庫からも補給金として三十億円を厚生保険特別会計健康勘定へ繰り入れることといたしております。さらに、失業対策費は三百五十一億円でありまして、失業保険費では三十億円を減じておりまするが、失業対策事業費には、一般失業対策及び特別失業対策のほか、臨時就労対策事業費建設省予算に計上いたしておりまして、その合計は二百六十億円と相なり、三十年度より九十二億円の増加となっております。かくして三十一年度におきましては、一般失業対策事業で二十万八千人、特別失業対策事業で二万人、臨時就労対策事業で二万人、合計二十四万八千人の失業者を吸収しようというのでありまするが、これは三十年度に比へまして約三万人の増加となっております。  第二に、文教関係費でありまするが、総額千二百二十六億円、三十年度に比べまして三十二億円の増加と相なっております。また、科学技術振興費につきましても、三十年度に比べまして三十億円が増額せられて、総額百十四億四千万円となっております。なお、原子力の平和的利用に関しましては、この科学技術振興費に含まれているもの以外のものをも合わせまして二十億円を計上しているほか、国庫債務負担行為十六億円を計上しております。  第三に、恩給関係費は、旧軍人遺族等恩給費といたしまして七百二十六億円、文官等恩給費として百七十三億円、合計八百九十九億円が計上されております。旧軍人恩給につきましては、三十年度から実施された号俸是正ベース改訂の平年度化による増加百億円並びに一時金の減少その他によりまして、差し引き三十九億円の増加となるのでありまして、また、文官恩給につきましては、自然増によるもののほか、昭和二十三年六月以前に退職した文官に対する恩給の不均衡を是正するための措置がとられているのであります。  第四に、防衛関係費につきましては、陸上自衛隊における制服一万人の増員、海上自衛隊における艦船七隻の新造、航空自衛隊における航空団新設等を中心として、引き続き自衛隊充実をはかることとして、防衛庁費を三十年度に比べまして百三十四億円増の一千二億円といたしております。このほか、米軍に対する施設提供等のための経費を二十六億円増額し、百五億円計上いたしております。一方、防衛分担金につきましては八十億円を減額しておりますので、防衛関係費総額は、三十年度に比べまして八十億円の増加で一千四百七億円となっております。なお、この歳出予算のほか、装備品、航空機、艦船購入等のため百四十二億円の国庫債務負担行為と、潜水艦建造のため総額二十七億円の継続費が計上されております。  第五に、公共事業関係費でありまするが、三十年度災害が少かったため、災害復旧費において約六十六億円減少いたしましたものを、治山、治水、道路、港湾、食糧増産対策費等において増額いたしまして、総額としては九億円増の一千四百十九億円計上いたしております。事業別に見ますると、道路整備に最も重点を置いております。すなわち道路対策といたしましては、揮発油税財源増加に見合いまして、道路整備事業費を三十年度に比べ八十六億円増加し、別に新たに日本道路公団を設立いたしまして、総資金八十億円をもって有料道路画期的拡充をはかることとしております。また、食糧増産対策事業費につきましては、土地改良開拓等事業重点化をはかることとして、十九億円を増額し、二百四十七億円を計上いたしておりますほか、外資による農地開発事業が総資金百億円をもって着工されることになっております。  第六に、住宅対策費につきましては、民間自力建設を含めまして、約四十三万戸の建設をはかりますとともに、住宅規模適正化及び不燃化高層化促進等質的向上に努めることにいたし、これに要する資金として、民間資金活用をも含めまして公営住宅、住宅金融公庫及び日本住宅公団を合わせまして五百十二億円を予定し、三十年度に比べまして四十九億円を増額しております。  第七に、地方財政関係費でありまするが、三十一年度における地方財政対策といたしましては、まず、歳出面におきまして教育委員の公選制を廃止いたし、地方議会及び地方行政機構の簡素合理化に努めまして一さらに公共事業国庫補助率の引き上げ補助金の整理合理化等により、地方財政負担を軽減することを予定しております。  次に、歳入面につきましては、公社の全固定資産に対する課税その他により、地方自主財源充実に努めるとともに、入場譲与税の配分方法を改訂いたしまして、財源の偏在を是正し、また、公債費の累増による地方財政負担を緩和するため、できる限り普通債を削減するための措置を講ずることとしております。以上の措置を講じた結果、なお生ずる財源の不足額を補てんするため、地方交付税の率を百分の二十二から百分の二十五に引き上げることとし、これによりまして、地方交付祝交付金の額は一千六百二十七億円となり、三十年度に対しまして七十三億円の増額となっております。  次に、特別会計及び政府関係機関予算について申し上げます。  特別会計の数は、新設の賠償等特殊債務処理及び特定物資納付金処理の両特別会計を加えまして三十七であります。そのうち、食糧管理特別会計につきましては食糧管理制度の急変を避け、さしあたり普通外米の消費規制を自由にすること、三十年度と同じく事前売り渡し申込制度を継続すること、及び収支の均衡を確保すること等を編成の前提といたしております。また、米麦の買い入れ価格につきましては、三十年度の価格算定に準拠した方式により、パリテイ指数の変化を織り込んで算定いたし、米の消費者価格につきましては、一応現行価格に据え置くこととなっております。  政府関係機関の数は、新設の北海道開発公庫を入れまして、総数、十でありまするが、そのうち国有鉄道につきましては、国有鉄道の運賃は、これは据え置くことといたしておりまするか、工事資金につきましては二百九十五億円の外部資金の借り入れを予定する等により、所要の金額を確保することといたしております。なお、この工事資金のうち、新線建設に対しましては五十五億円を予定いたしております。  以上が昭和三十一年度予算の概略の内容であります。  本予算案は、一月三十日、国会に提出せられましたので、予算委員会におきましては、二月三日、一萬田大蔵大臣より提案理由の説明を聴取いたし、二月二十八日、衆議院よりの送付を待ちまして、翌二十九日から本審査に入り、それ以後、委員会を開くこと十三回、慎重に審議を重ねましたが、さらにこの間、三月六、七の両日には公聴会を開き、また十九日から三日間にわたりまして分科会を開きまして、審議の周到を期した次第であります。しこうして、この予算審議に当りましては、内外の広般多岐にわたる諸問題につきまして熱心な質疑が行われました。なかんずく憲法に関連いたしまして、自衛力ないし自衛隊に関する鳩山内閣総理大臣の発言並びに船田防衛庁長官の見解をめぐって、特に激しい論争が行われましたことは、すでに御承知の通りであります。ここでは委員会におきまするこれら幾多の質疑のうち、直接予算に関連する若干のものにつきまして、簡単に御報告いたすにとどめたいと存じます。  まず、三十一年度予算の前提条件、予算の性格につきまして、政府は、日本経済は安定し、正常化したという前提条件に立って本予算を編成したと説明しているが、国民生活の面は一向安定化していないではないか。歳入見積りは、昨年財政懇談会に示されたときは、せいぜい一兆二百億円前後とされていたのが、予算編成の過程において水増しされ、一兆三百五十億円となったと見られるが、どうか。従って、この予算は弾力性が著しく欠け、年度内に補正を必要とするのではないか。三十一年度中には公債発行をしないという自信があるかどうかなどの質疑がありましたが、これに対しまして、政府より、「日本経済は正確には安定し、正常化しつつあるのであって、雇用の関係は安心すべき状況ではないが、最悪事態は脱したように思われる。歳入見積りは、最近の国民所得の見通しや経済活動に基いて積算されており、水増しとは考えていない。それにしても、歳入歳出の関係において、従前に比し、弾力性が乏しいことは認めるが、特別の事情がない限り、補正予算は組まない方針である。もちろん三十一年度には公債発行をする意思はない」と、鳩山総理大臣及び一萬田大蔵大臣より答弁がありました。また、「財政投融資計画に一千四百億円の民間資金活用を見込んでいるが、政府はこれだけのものを単に期待するというのか。もしできなかった場合には、何らか強制的な手を打つ覚悟があるのか」という質疑に対しましては、「実施の方法としては、大蔵大臣諮問機関として資金委員会を設け、ここで、政府の作った経済五カ年計画に沿うて資金の流れについて基本的な点をきめる。これを受けて、民間における投融資委員会が自主的に資金を供給すれば、きわめて弾力的に、かつ適正に資金が流れると思う」旨、政府側より答弁がありました。  次に、防衛関係予算でありまするが、「防衛六カ年計画の目標並びに年次計画を示せ。その目標が達成されたならば、アメリカ駐留軍は全部撤退するか」との質疑に対しまして、船田防衛庁長官より、「防衛六カ年計画は、まだ正式には決定していないが、防衛庁の試案としては、三十五年度において陸上十八万人、海上十二万四千トン、航空一千三百機を目標としている。年次計画はまだできていない。この目標が達成された暁には、米軍撤退の基礎は一応できるのであるが、しかし米軍の撤退ということは、国際情勢にもよることであり、日米間の合意により行われるものであって、目標達成に見合って必ず米軍が撤退するとは言えない」との答弁があり、重ねて、「防衛分担金削減に関する一般方式により、防衛分担金は何年度になくなるのか。経済五カ年計画では、三十五年度に、これをあるものとして計画しているのか、ないものとして計画しているのか」との質疑がありましたが、船田防衛庁長官より、「防衛力の増強に伴い、いつ防衛分担金がなくなるかということを数字的に示す段階に至っていない」、また高碕経済企画庁長官より、「長期経済計画においては、防衛庁費防衛分担金とを合計して、国民所得の二・二%程度を予想しているが、その内訳については検討しておらない」と、それぞれ答弁がありました。なお、防衛費につきましては、毎年繰越額の多いことや、調達実施の面に不当支出の多い事実につき、詰問的質疑と、これについての会計検査院、防衛庁、大蔵省当局の弁明がありましたことを、特に御報告いたしておきます。  次に、外交問題でありまするが、「日ソ交渉の結局の見通しはどうか。政府は日ソ交渉を決裂という状態で処理するつもりか、あるいは決裂でなく、一種の中断という形で、冷却期間を置くというふうな考え方か」との質疑に対しまして、重光外務大臣より、「現在の状況では、領土問題について双方の妥結を期待することは困難な見通しであるが、しかしながら、日ソ国交正常化の大目的にかんがみ、交渉の決裂はあくまで避けたい」との答弁がありました。さらに日比賠償交渉について、「フィリピンに対する賠償の内容はどういうふうに決定したか。伝えられるように、総額八億ドルであるとすれば、大野・ガルシア協定に比べて重きに失しはしないのか。当初フィリピン側の要求した二千万ドルの現金賠償はどうなったか。また、この賠償はほとんど物資で支払われるものとすれば、日比貿易に重大な圧迫を加えることにならぬか。政府は、対比賠償がわが国将来の貿易にどのような影響を及ぼすと思うか」などの質疑が行われましたが、これに対しまして、「対比賠償は、五億五千万ドルの純粋の賠償と二億五千万ドルの経済借款との二本建である。大野・ガルシア協定は四億ドルであるから、そこに一億五千万ドルの差のあることは認めざるを得ない。双方交渉の結果、この線で妥結したわけである。現金賠償の要求については、わが方としては物資で払うという建前をとり、先方がそれを金にかえてどう使うかということは、一定のワク内においては自由であるということに妥協すべきが順当ではないかと考えている。賠償交渉が妥結すれば、それを基礎として、さらに貿易拡大に関する話し合いを始める手はずになっているが、賠償問題が解決すれば、貿易その他経済上の関係が好転することは、ほとんど疑いを入れないところである」との答弁がありました。  次に、農業問題につきましては、「最近数年来の予算の組み方を見ると、公共事業費や農林関係費等が年々削減され、他の経費に回されている傾向がある。これは最近の世界的な食糧過剰や、わが国国際収支の順調等に幻惑され、わが国農政の基本方針たるべき食糧自給度向上ということをおろそかにした結果、それが農政の後退となって予算の上に現われたのではないか。また新農村建設計画予算は、当初計画のわずか半分にすぎない十五億円より計上されておらず、これではとうてい計画通りの進捗は期待できないのではないか。のみならず、新農村建設計画が農業の生産力を総合的に発展させて行こうとしても、農林省機構のセクショナリズムのため、なかなかうまく行かないのではないか」などの質疑に対しまして、河野農林大臣より、「食糧自給度の向上という基本政策には変りはないが、現在の農村の実情から見て、農家の経営状態は必ずしもよくなっていないので、自給度の向上とともに、あわせて営農の改善、農家経済の安定をはかって行きたい。新農村建設計画もこのような考えから始めたわけである。新農村建設計画予算は初年度のことでもあり、一応半額としたが、末広がりにやって行き、大体五カ年内に、全国のおおむね五千市町村に及ぼそうという当初の方針は変えていない。またこの計画を推進するため農林省の行政機構にも改革を加え、新たに農村振興局並びに農林水産技術会議を設置することとしている」との答弁がありました。  次に、社会保障の問題でありまするが、まず、「政府管掌の健康保険に対する三十億円の補助金は、一体どういう理論的根拠に基くものであるのか。厚生省は当初医療給付費の一割、すなわち四十六億円を大蔵省に要求したが、もしこの医療給付費の一割国庫負担ということが実現しておれば、今回の健康保険改正案にあるような、無理な患者の一部負担制をとらなくても済むし、理論的にも筋が通るわけである。健康保険赤字を生ずる根本的な原因は結核にあるが、その抜本的な対策として、健康保険から結核を分離する考えはないか、政府国民保険を標榜しておるが、それならば、五人未満の零細企業で働いている賃金労働者に対して特別健康保険制度を作る考えはないか」などの質疑がありましたが、これに対しまして小林厚生大臣より、「健康保険は二十九年度に四十億円、三十年度に六十億円の赤字を出し、現状のままでは三十一年度に六十六億円の赤字が予想されている。この際、高度の医療給付を保持しつつ、しかも健康保険の健全なる発達をはかるためには、国庫からも一部を補助し、被保険者もまた一部を負担することによって健康保険を正しい軌道に乗せるのが最善の方法である。よって健康保険法改正するとともに、保険財政の収支均衡に必要で、かつ被保険者負担に見合った程度のものを補助金として支出したのである。政府としては医療保障には最も重点を置き、昭和三十五年度までには、すべての国民社会保険に入ることを目途として、健康保険国民健康保険はもとより、結核対策あるいは零細企業の特別健康保険等についても、今後十分に検討したいと考えている」との答弁がありました。  最後に、地方財政についてであります。「地方財政の最も大きな問題の一つは給与費であって、過般の実態調査の結果、地方財政計画上の人員と実人員との開きが五万一千人もあることが判明したが、これに対して政府は具体的にどのような措置をとったか。また公債費については、その軽減に役立つような抜本的措置がほとんどとられていないではないか」などの質疑に対しまして、太田自治庁長官並びに一萬田大蔵大臣より、「給与費については国家公務員との間に差のないようにしようという大原則のもとに、地方財政計画上、国家公務員並みとしている。また人員はとりあえず計画と実人員とを合わせ、漸進的に整理する方針であるが、地方団体の中には財政再建のため相当思い切った整理案を立てているところも多く、これが大体一万三千人見当あるので、三十一年度地方財政計画においては、その一万五千人のうち、過去に整理されたものを除いて約九千人ばかり減少することを予定している。公債費に関連して、借りかえや政府資金による引き受けを多くすること、あるいは利子補給等、いずれも重要な問題ではあるが、わが国財政の現状から今後に残されたわけである。さしあたり、まず普通債をなるべく減らして、公営事業債はある程度これを認めるという行き方に改めたが、しかし全体の起債額を思うように減額することができなかった。今後、中央、地方を通ずる税制の根本的な改革とにらみ合せて、地方債の発行を少くして、しかも地方財政が成り立って行くようなあり方にしたい」との答弁がありました。  その他委員会における質疑の詳細は、会議録によって御承知を願いたいと存じます。  かくいたしまして、去る二十四日をもちまして質疑を終局いたし、越えて昨二十六日討論に入りましたところ、まず、日本社会党代表して吉田委員より反対、また自由民主党を代表して安井委員より賛成、また無所属クラブの木村委員より反対、緑風会を代表して豊田委員より賛成、最後に第十七控室の八木委員より反対の旨、それぞれ述べられました。  これをもちまして討論を終局いたし、採決の結果、予算委員会に付託されました昭和三十一年度予算三案は、いずれも多数をもって原案の通り可決すべきものと決定した次第でございます。  以上、御報告いたします。(拍手
  19. 河井彌八

    議長河井彌八君) 三案に対し討論の通告がございます。順次発言を許します。相馬助治君。   〔相馬助治君登壇拍手
  20. 相馬助治

    ○相馬助治君 私は日本社会党代表して、ただいま議題となりました政府提出にかかる昭和三十一年度予算三案に対しまして、反対の意思を表明するものでございます。(拍手)  その国の政治の良否を判断する尺度はいろいろあると存じまするが、血と汗の結晶でありまするところの国民の税金が、何人の利益のために使われるかということを究明することによって、最も端的に政治の良否を判定することができるものであると私は確信をいたします。イギリス労働党の理論的指導者ラスキーは、税金の高いことは問題でない、問題はその税金がどう使われるかであると述べております。上に軽く下に重い税制を持つところのわが国においては、もちろん税金の高いことも重大なる問題であります。しこうして、特にこの税金がどのように使われているかということは、より重大なる問題でございまして、この予算案に盛られた税金の行方を正しく見つめ、これを批判することなくして政治の前進は断じてあり得ないものであります。すなわち、いかなる美辞麗句を連ねようといたしましても、政府の責任において提出された予算案がこれに全く逆行するものであっては、てんで問題になりません。首相以下政府側の説明並びに答弁は、しごくまことにもっともらしいものでありましたが、この美辞麗句で飾った説明と、本予算案の実体との矛盾があまりにも大き過ぎることをわれわれは否定し得ないのであります。(拍手)責任政治の確立という点から見まするならば、選挙時における公約や、国会を通じてしばしばなされますところの施政方針演説の主張が、そのまま数字をもって、予算案という形を通じて表現されなければならないはずであります。昨年の総選挙において、当時の民主党総裁たる鳩山氏は、従来の吉田外交に対し、秘密独善外交であると激しくきめつけ、強力に勇敢に日ソ交渉を進めるべきであると主張して国民の共鳴をかち得ました。また内政におきましては、国民医療充実や、住宅政策を積極的に推し進めまするところのものを内容といたしまする社会保障制度前進、これによるどころの民生の安定、教育の民主化、合理的なる行政改革、大幅なる減税等を約束し、平和にして文化的なる新日本建設すると主張して国民のかっさいを博し、衆議院において多数をかち得て第一党となり、第三次鳩山内閣は成立し、その施政演説において、首相は、弱き者に味方することこそ政治の要諦であると喝破されたのであります。しかるに、ただいま議題となっておりまする予算三案は、以上の公約のすべてに違反するものであります。民主主義の名に全く遂行するものであります。本予算案をしさいに研究し、その性格を解明いたしまするときに、私は不満を感ずるというよりも、むしろ大きな憤りをすら覚えずにはおられません。わが党は国民の名において、公約無視のごまかし予算であるところの本予算案に対して断固反対せざるを得ないのであります。(拍手)  そもそも正しい予算案は、国際情勢の正確なる認識と、国際、国内経済情勢の正確な把握と、今後の見通しの上に立って編成されなければなりません。その第一点でありまするところの予算編成の基本的前提である国際政治情勢の把握が、鳩山内閣においては全くなっていないという言葉をもって表現する以外の道を私は知りません。その判断は根本的に誤まっております。部分的にいささかの問題はあるといたしましても、国際緊張は徐々に緩和し、東西両陣営それぞれの声明を見ても明らかでありますように、平和共存への希望と確信はいよいよ増大しつつあるこのとき、その間に処してアジアの諸民族、諸国家は、いずれもたくましく自主外交を推進して、自由と独立の国家的基盤を固めつつあるのであります。しかもこれは何人も疑うことのできぬ現実であります。しかるに、鳩山内閣によってなされている外交の実態はいかがでありましょうか。党内における外交上の意見の相違は、いまだに統一調整されずに持ち越され、鳩山氏のかねての悲願であった日ソ交渉推進への積極的意思は、まず党内においてじゅうりんされたのであります。二元外交の正体は完全に今日暴露され、かつての岡崎外交時代の、そのつど外交時代以上の醜態をさらすに至っております。かくて自主性と勇気とを欠除したこの内閣は、世界の大勢に目をおおい、しゃにむに日米安保条約一本にしがみつき、ダレス外交に追随し、再軍備強行の予算案を提出するの余儀なき政治情勢をみずからの手をもって作り上げて今日に至りました。  政府は、一体アジアの現実を何と見ておるのでありましょう。インドを先頭に、アジア各国は各国の民族的自覚の上に立ち、平和共存の思想と平等互恵の国策は、今やアジア全地域に満ち満ちております。特に隣国の新中国の確信に満ちた足取りを私たちは見のがすわけには参らないのであります。これら諸国は、アメリカの植民地主義、帝国主義にするどく対立しておりまするし、そのときに当り、わが国のみが唯々諾々としてアメリカに追随し、内には憲法を改正して軍事力を強化し、軍需産業を育成し、日本全土の軍事基地化をいよいよ推し進め、アメリカの一喝に会って、予算編成については防衛費増額し、外にはソ連、中共との国交回復、貿易の再開に一片の熱意をも示さず、いよいよアジアの孤児として戦争への道、破綻への道を驀進することを余儀なくされておる事実は、断じて国民の名において私は許しがたきものであると思うものであります。今般の日ソ交渉の失敗も、先般の国連加盟の問題の完全なる黒星も、あげて現内閣の国際情勢判断の錯誤と、自主外交の欠除にあることを思いみまするときに、私はこの予算三案を通じて、現内閣に対し、心からなる反省を迫らざるを得ませんと同時に、世界の大勢に逆行し、防衛関係予算を優先的に増額し、しこうして編成された本予算案に対しまして、予算編成の基礎条件たる国際認識の誤謬の一点に対して、まずもってするどくこれを批判せざるを得ないことを悲しみとするものであります。  第二の点として、昭和三十一年度の内外経済情勢の判断が、本予算にいかなる形をもって表現されておるでありましようか。一言にして言うならば、その情勢判断はまことに甘い。従って提出された予算案は、日本経済再建の具体的にして統一的な積極的意思の片りんをも発見することのできぬ、いわばその場限りの人気取り予算であるという点を指摘することができるかと思うのであります。一萬田蔵相は議会の答弁において、世界経済の下半期になれば景気は下向きとなり、日本としても十分警戒する必要がありますと、賢明にも述べております。しかしながら、本予算を通じて、その意図が現われていないことはいかがしたものでございましょうか。昭和三十一年度の経済情勢の判断を、世界的に好景気であった昭和三十年度並みに楽観しておるという点と、全世界の国々が、今やインフレ克服の方向に積極的な手を打ち始めておるにもかかわりませず、本予算にはその積極的な手段が講ぜられておりません。一日々々と前進し、激しく変動しつつありますところの世界経済に適応した積極的政策の何ものをも発見することができないのであります。  以上のような経済的な立場に立った予算案でありまするがゆえに、当然予算の規模はふくれ上り、増大すべきでありますけれども政府は、財政法上一般会計に当然計上すべきものを特別会計に計上しておるというような苦肉の策を弄しております。すなわち昨年度一般会計中、出資及び投資の四十億を今回は全額削除いたしまして、北海道開発公団あるいは道路建設公団等の起債として特別会計に回しておるのでありまして、これは予算上、財政法上不正ではないといたしましても、明らかに不当であると私は断ずるものであります。また賠償費関係につきましても、昨年度並みに百億を計上したにとどまっております。本年はフィリピンあるいはビルマ等の賠償問題も解決に向って一歩前進するでありましょう。東南アジア外交拡大の年と目されているこの年に当り、かかる予算案の編成に当って、賠償費計上の過小見積りは東南アジア外交貿易問題の基調ともいうべき賠償問題について、積極的意思を欠くものでありまするとともに、当然補正予算の提出を予想するに至っているという点におきまして、本予算財政インフレの萌芽を内包するものであると断ぜざるを得ません。予算規模総体といたしましては、大蔵官僚のいわゆる敏腕と上手さによって、一見慎重適正のようなスタイルを見せておりますが、その実は以上述べましたような危険性を内蔵するという点におきまして、本予算は、吉田内閣時代においてもその例をいまだかつて見なかった、きわめて陰険、悪質なる予算であると断ぜざるを得ません。(拍手)  次に、私は本予算の性格を歳入歳出の両方面からこれを批判し、これに対して反対せざるを得ない理由を開陳したいと存じまするが、まず歳入面から見ますると、政府国民租税負担の不均衡を是正すると言いながら、実は高い収益を上げておりまする大企業に対して、税金減免の恩恵を依然として与えておるものであります。しこうしてその歳入は全く無秩序なやりくり財政でありまして、国の予算の収入はわれわれが税金や料金で支払う金の積み重なったものでありまするし、従って一兆三百四十九億はすべてわれわれ国民のふところからしぼり取られる金でございます。従ってこの歳入の面にそのときの政府の政策がよく反映するものでありまして、ことしの予算案は全くのやりくり財政でありまするだけに、国民への影響はきわめて大きく、かつ不安定であり、かつ微妙であると言わざるを得ないと思うのであります。  今度の予算案の評判の悪い中で、ただ一点面目を保っているものがあります。それは給与所得者、つまりサラリーマンへの減税措置としての給与所得控除の引き上げの実施でございます。ところがこの措置にしても、これをしさいに見まするというと、実は大きな問題を二つ抱いていることがわかります。第一に、この減税で減りまするところの国の収入の穴埋めの一つとして、砂糖の輸入関税が引き上げられようとしております。製糖会社のもうけを吸い上げるのが目的の関税の増収ではありまするけれども、その実、消費者にはね返って小売値段が上らないという保証はどこにもございません。しかも現在自民党の最高幹部のある方は、製糖会社と深い関係を持ち、常にその利益を代弁して今日に至ったことは、天下隠れもない事実であることを銘記しなければなりません。またこのようなスズメの涙ほどの減税が実施される一方、新設の都市計画税におきましては、土地家屋の評価額の〇・二%をその持ち主が納めることになっておりまするから、当然地代、家賃にはね返って一般大衆のふところを脅かすでありましょう。さらに国税、地方税を通じて滞納の整理を進め、増収をはかることになっておりまするから、税務署は一段と強腰になるでありましょう。大蔵省の発表によれば、昭和三十一年度租税収入の見込み額は、給与所得控除の引き上げで百五十一億の減税にもかかわらず、この分は砂糖の関税引き上げ等でほぼ埋め合せ、さらに経済全体の好況から、政府は三十年度よりも五百二十八億増しの八千四百八十五億を租税収入として見込んでおります。しかも大口の税金は前述のようにそのままにしてありまするから、いよいよ中小企業者や農民に対する重税が予約されたものであることをわれわれは指摘しなければなりません。国立大学の授業料は値上げとなり、血を売ってまで勉強をしているアルバイト学生や、その父兄をいよいよ苦しめる結果となりましょう。次に、各府県においては高等学校授業料の値上げが行われております。清瀬文部大臣は衆議院の予算委員会において、国立大学の授業料の値上げと、高等学校の授業料の値上げに関連する質問に答えて、国立大学の授業料の値上げはやむを得ないが、高等学校の分は各府県によく言うて、上げないようにするつもりだということを申しておりますが、自治庁の示しますところの昭和三十一年度地方財政計画を見まするならば、ちゃんと二割方引き上げ予算を組めと指示しておるのであります。こういう支離滅裂なるところの、しかも文教の長官である文部大臣が、国会において、ぬけぬけと嘘言を吐くに至りましては、全く話にならぬと私は言わざるを得ません。文教施設費は大幅に削減され、校舎建築、改造に伴いましてPTAの負担はいよいよ増大するでありましょう。また六月の参院対策のためにか、本予算案には姿を見せておりませんが、今年の九月には国鉄運賃が平均一割五分程度引き上げになるということは、今日見逃し得ない事実であります。  以上のように、国民財政負担均衡をはかると政府は申しながら、本予算案の実態は、税金、料金を通じて一般勤労国民負担はいよいよ増加し、せっかくの減税は実質的には何らの利益ももたらさないことは今日明白なることでございます。しかも米の統制問題の行方によりましては、配給米の値上げのおそれすら十分あるのでありまするし、国鉄運賃の値上げによりましては、他の物価に対して基本的な影響を持つものでありまするがゆえに、その影響はむしろおそるべきものがあると思うのであります。しこうして、政府は勤労所得税減免に名をかり、実は大企業に対する大幅の減免規定を温存している点をわれわれは指摘しなければなりません。現行の租税特別措置法に規定されておりまする利子所得の非課税の問題、配当所得課税及び証券投資信託収益課税の特例の問題、配当控除の特例、増資配当の特例、あるいはまた貸し倒れ準備金、価格変動準備金、こういうものに対する減免を依然として認めております。これをそのまま取るならば、わが党の計算によれば、大体八百億から一千億と推定されるのでありまして、かかる財源をむざむざと見逃しておりまするところに、鳩山内閣の性格が明瞭に露呈されていると思うのでございます。しこうして、この予算はさんざん与党の中でもみ抜き、各省のぶん取りの結果、予備費を大幅に減額いたしましたのを手始めに、ある財源のすべてをあさり尽して、しかもふえた予算のワクの財源の中には、罰金だとか、科料だとか、没収金など、昨年度より七億も増収すると見込んでおることは、まことに悪者がふえることを当てにしている珍妙きてれつな予算であると言わざるを得ません。私は皮肉を申し上げるつもりはありませんが、今の鳩山内閣が弱い者いじめの政策をどんどんやるならば、この現内閣としての歳入見積りは正しいでありましょう、この増収は、今のような社会保障制度を根本から破壊するような、民生安定を根本からゆるがすような政策を今後も続けて行く限り、十分期待できる七億でありましょう。そうして来年度予算では、この財源はいよいよ大きく見込まれますると同時に、一方においては刑務所の大増築予算を提出しなければならないのではないかということを、念のために私はつけ加えておきたいと思うのであります。(笑声、拍手)  要するに、歳入の面から見ますと全く笑いごとでない、給与所得の減税という美名に隠れて、大企業への奉仕を進め、間接税その他を含めて見るならば、いよいよ勤労階級の負担を重からしめておる点を私は指摘しなければならないのであります。次に、歳出の点から見ますると、第一に、この予算は不生産的な軍事予算であるという一点であります。直接軍事費だけでも千四百億を突破し、それでもまかない切れず、航空機購入のために予算外契約百四十三億、潜水艦建造継続費二十七億、これを加えて参りますれば、総計では千五百五十七億、しかも防衛庁費は、今後防衛支出金削減額の倍額を増さねばならないという、例の一月三十日の日米共同声明の線によっていよいよふくれ上ろうとしております。しこうして、これはアメリカの防衛六カ年計画の第一年度に照応する予算であり、特筆すべきことは、従前の防衛型から攻撃型に移行せんとするおそるべき性格の予算でありまして、同僚議員戸叶武君、亀田得治君等の質問に対して、鳩山総理大臣は失言をしたということになっておりまするが、そうでなくて、本音を暴露したと見ることができるのであります。しかも、この膨大なる防衛費が国内的には何ら論議されず、アメリカの交渉だけで増額されているということは、予算編成の自主性喪失という意味合いにおいて、問題はきわめて重大でございます。かように見て参りまするときに、ともかくこの予算は再軍備予算としての性格をいよいよ強めるものであると断定することができます。  第二に、この予算案におきまして、民間資金活用の問題に端を発し、これはいよいよ大企業本位の経済独占化への促進強化の性格を持つ予算であると申すことができます。具体的にこれを述べる時間のないことを遺憾といたしまするけれども、要するに、この予算中小企業者、農民、労働者、これら一連の勤労階級を著しく圧迫いたしますることは、各項目の歳出において明らかであります。社会保障費は失業費を含めまして百二十二億の増加を見せておりまするが、自然増を差し引きますと、実質的には向上しておりません。むしろ、ある面は後退しております。防衛費増加や、千三百億に上る民間資金による産業投資の活用措置などと対比いたしますれば、実に大幅の後退現象であることが明瞭であります。予算案全体に対する社会保障費の割合は、本年度は二・五%、三十一年度予算では一〇・九%にまで下げられております。どうしで社会保障費を優遇した予算であると、委員会や本会議でぬけぬけと申せるのか、その心臓のすごさに私は驚くばかりでございます。要するに、わが国のような財政規模においては、バターも大砲もというわけには参りません。さようなる予算は、絶対に組み得ぬというところの貴重な教訓を、私はしみじみと感ずるものでございます。  失業対策費におきましても、まことにそのことが言い得るのでありまして、七十万人に達する完全失業者、七、八百万人と推定せられまするところの不完全失業者を思いまするときに、本予算案はまことに未熟にして破綻に満ちたものであると言わざるを得ません。  厚生省関係予算については、先ほど竹中委員が鋭くつきましたように、健康保険の問題に関しまして、今日政府は、健康保険法の一部改正を企図し、赤字の穴埋めの片棒を、あわれなる患者どもにかつがせようとしております。この無慈悲にして冷酷なる、同僚木村禧八郎議員の言葉をかりるならば、血の通った人間の作る予算にあらずして、冷血動物的予算であるという言葉は、まことに表現し得て妙なるものがあると思うのであります。しかも皆さん、母子福祉貸付金の前年度五億を、本年度は四億五千万に減額しております。千四百七億もの防衛費をぬけぬけと出し、年々二百億もの使い残しを出すところの政府が、このようなところで、このようにみみっちい吝嗇性を発揮するということは、何としたものでありましょう。ヒロポン対策についてもそうです。取締経費は一千万増額いたしましたが、患者の保護費、防止費については二千五百万減額しているというところにその性格が現われているのでございます。私はその他農林問題につきまして、かつまた地方財政問題につきまして、文教費につきまして、多くの点を申し述べ、特に中小企業金融対策の矛盾をつきたいと念願を持ったものでありまするが、時間がそれを許さないのを残念といたします。ここに予算案が年度内成立を見ることは、野党のわれわれとしても一応けっこうなことに存じまするが、予算関係法案が三十数件もいまだに通過していない現実を政府は何と見ますか。自衛隊法、特定物資納付金処理特別会計法、健康保険法の一部改正、このような重大な法律案がいまだ成立しておりません。予備金だけではまかなうことのできないこれらの金額であることを思いまするときに、私は政治上の責任を追及せざるを得ないのであります。  以上、要するに歳出歳入ともに多くの問題と矛盾をはらむこの再軍備予算を強行するために、狂暴的に反動化した最近の政府は、憲法論議の答弁においてしばしば失言を繰り返し、その本音を暴露し、教育委員会、教科書制度の大改革を内容とする教育二法案の提出、その他もろもろの反動立法を続続提案し、衆議院においては数の暴力によって一挙にこれを決しようとしております。
  21. 河井彌八

    議長河井彌八君) 相馬君、時間が切れましたから……。
  22. 相馬助治

    ○相馬助治君(続) しかも、小選挙区制度を実施しようとする公職選挙法の改正は断じてわれわれの許し得ないところであります。  以上、要するに本予算案の性格と、その方向は日本民族の運命に強く関連するものであり、この不自然なアメリカ追随の軍事予算に対しまして、私は日本社会党代表し、日本国民の名において反対の意思を表明するものであります。(拍手)     —————————————
  23. 河井彌八

    議長河井彌八君) 池田宇右衞門君。   〔池田宇右衞門君登壇拍手
  24. 池田宇右衞門

    ○池田宇右衞門君 ただいま議題となっておりまする昭和三十一年度予算三案に対しまして、私は自由民主党を代表いたしまして賛成の討論を行わんとするものであります。  これら三案は、二大政党が出現して以来、初めて審査をいたしました年度予算でありますが、新年度が開始いたしますまでに四日間もの余裕を残して、今日ここに成立するに至りましたことは、わが国国民経済の円滑なる発展のため慶賀にたえないところであります。およそ予算というものは、その年度を開始するまでに成立させなければならないものであることは当然のことであります。この当然過ぎるほど当然なことが、昭和二十八年度以来一度もなかったのであります。しかも今回ほど順調に成立したことはかってなかったというこの一事をもっていたしましても、事実をもってこの予算案の妥当性を証明したものであると私は認めざるを得ないのであります。  私は、以下討論を進めて参りますに当って、まず第一段階において、予算案全体を通じまする性格について検討を加え、第二段階においては、さらに具体的に予算案に盛られました重点施策についてつぶさに検討を加え、順次賛成の理由を明らかにして参りたいと存ずるものであります。  まず一般会計予算の規模でありますが、野党諸君の中には、一兆円予算はくずれたのであるからインフレ予算である、あるいは膨張予算であると早合点をしておる者があるのでありますが、決してインフレ予算でも膨張予算でもありません。この一兆三百四十九億円は、三十一年度国民所得六兆九千七百十億円に対しまして一四・八%の比率であります。三十年度予算の一五・二%、二十九年度予算の二八・三%に比較いたしましても著るしい規模の縮小であります。しかのみならず、歳入は公債の発行によらず、すべて租税その他の普通歳入によってまかなっておるのであります。わが国経済が昨年来、数量景気と言われているほど順調な発展を遂げつつありますのは、欧米その他の国際景気に負うところ大であるとはいうものの、わが党内閣の財政健全化政策が大いに役立った結果であることはいなむことができません。今年は、国際景気がやや鈍化を予想されますし、各国がインフレ抑制、国際収支の均衡化等に努力しておる状況にありまするので、わが国といたしましても、引き続き健全財政の基調を堅持して行く必要があるのであります。またこの予算を実施した場合の財政資金の対民間収支は九百八十億円の散超でありまして、前年度の実績二千八百億円の散超に対比しましても、散布超過はわずかでありまして、インフレの危険を持つものでないことが明白であります。  次は、財政投融資でありますが、三十一年度は二千五百九十二億円で、前年度より二百三十四億円減少しておりますが、民間資金を大幅に活用しておりますので、これらを合わせた額は千三百九十七億円に上り、前年度に対して九百三億円の増加であります。このように財政資金民間資金の総合的活用によって、経済自立に必要な資金重点的に確保することになっておるのであります。特に三十一年度は経済自立五カ年計画の初年度でありますので、生産基盤の強化、輸出の振興、雇用の促進等に意を用いておるのでありまして、輸出の増大を中心としたいわゆるインフレなき経済の拡大を押し進めて行こうとする意図が十分にこの予算からくみ取れるのであります。また、この民間資金活用につきましては、一般会計の膨張のしわを、民間資金活用によって逃げたものであるという批判もありますが、決してさようなけちなことはいたしません。資本主義経済下における投資というものは、民間自力において行わせるのが本来の姿であります。租税として国民から集めた金をもって財政投資に充てるということは、投資の常道ではありません。いわんや昨今のごとく金融が緩慢になり、金融機関の資金繰りの好転、金利の低下等、金融の正常化が急速に進展しつつあるときてにおいておやであります。  また、この予算を評して無性格予算であるとか、あるいは総花予算であるとかの批判も聞くのでありますが、これにつきましては、次の第二段階におきまする重点施策の検討において、その批判の当らないゆえんを明らかにしてみたいと存ずるのであります。第一は、貿易の振興及び産業基盤の強化であります。貿易の振興については、輸出入銀行の貸付資金のワクを百四十億円拡大して五百四十八億円を予定しており、民間資金活用と相待って輸出金融の円滑化をはかっておりますほか、海外市場の維持拡大、国際経済協力及び海外投資の積極化等、所要の措置が講ぜられております。また産業基盤の強化については、開銀資金重点的、効率的使用をはかっておりますほか、電源開発には財政資金を三百七十一億円を予定し、前年度より三十三億円を増加しておりますし、石油資源の開発、工業用水の確保につきましても新たに予算を計上しております。このほか北海道開発のために財政資金民間資金とを合わせて八十億円の資金を投入することになっております。これらを見ましても、貿易及び生産の上昇を通じて、経済の拡大をはかって行くというインフレなき経済の拡大の施策が如実に現われております。  第二は、民生の安定であります。社会保障関係費は、かくのごとき困難なる財政状況下にもかかわらず、前年度に比べて百一億円を増額して一そうの充実がはかられております。また、失業対策費も前年度に比し六十三億円の増額を行い、失業吸収人員も二万余人を増加し、二十五万人の吸収ができるようになっておるのであります。また政府管掌健康保険につきましても、保険財政建て直しのため、一般会計から三十億円の支出を行なっております。住宅対策につきましても、財政資金によるものと民間自力建設によるものとを合わせて四十三万戸の建設を行うことになっており、前年度の四十二万戸に比し、さらに馬力がかけられておるのであります。  第三は、農山漁村及び中小企業対策であります。農林漁業関係につきましては、新農村建設計画により、一般会計から十五億円、農林漁業金融公庫からの融資十五億円とをもって、農山漁村振興の総合対策を強力に推進することになっておりますし、また新たに農業改良資金制度を設けまして、耕種改善事業等における各種補助金の奨励的貸付への転換をはかる等、農民の営農改善を助長することになっております。また、中小企業対策としては、国民金融公庫及び中小企業金融公庫の貸付金のワクを、前年度に比し百億円を拡大しておりますし、その他商工組合中央金庫の貸付利率の引き下げ、中小企業設備の近代化、中小繊維工業の設備の調整等につきましても、それぞれ所要の予算措置を講じております。  第四には、文教及び科学の振興であります。文教関係予算は、前年度に比し三十二億円増額されておりまするし、科学技術の振興にも特に重点を置き、なかんずく原子力の平和利用のための経費は、ウラニウム鉱等の探査費、原子炉の購入費、その他を合わせまして一躍二十億円の予算を計上してあるのであります。  第五には、国土の開発保全であります。国土の開発保全につきましては、特に道路整備重点を置いて、公共事業関係費の効率的使用をはかることになっております。すなわち道路整備関係予算は、揮発油税財源増加に見合って、前年度に比し三十六億円増額し、新たに日本道路公団を設立して、財政資金民間資金とを合わせて八十億円の資金を投入して、有料道路の整備を大いに促進することになっております。  第六には、自主防衛体制の整備であります。自衛隊につきましては、国力に応じ、漸次自主防衛体制を整備して参るという基本方針にのっとり増強することになっておりまして、防衛庁経費は前年度より百三十四億円増加しておりまするが、これと施設提供費を合わせた額の半分を防衛分担金から減ずるので、漸次自主防衛体制が整いつつあるわけであります。社会党の組替案によれば、この防衛分担金を全廃して、公務員給与の引き上げや生産者米価の引き上げを行うことになっておりますが、わが国が安保条約、行政協定により約束をしておる防衛分担金を、国際条約上の義務を無視して全額削減するというようなことが、実際問題としてでき得るものかどうか。もし、できないことを承知の上で、これを財源にしてベース・アップや生産者米価の引き上げ予算組替案に組んだものといたしますならば、それこそ公務員や農家に対する空手形であり、その無責任さにあきれざるを得ません。私はかくのごとき現実離れした予算を組まんとしておる社会党を、二大政党の相手として深く惜しむものであります。(拍手)  第七には、地方財政対策であります。地方財政については、ここ数年来国家財政上の最大問題でありましたが、地方財政再建促進特別措置法の成立、前国会における財源措置等によりまして、過去の赤字を解消する見込みを得ておるのでありますが、三十一年度においては地方行政機構の合理化、公共事業費の補助率の引き上げ、自主財源充実、三十一年度において償還期限のくる地方債の一部借りかえ、及び地方団体間の財源調整等の措置を行うほか、地方交付税につましては、国税三税に対する税率を三%引き上げております。また地方財政計画も、給与費等について、実態に即し増加を認めておりますので、これまでにない非常な改善がなされております。  最後に、減税でありますが、かくのごとく財政需要の多い中にもかかわらず、勤労者の租税負担の過重なる現状にかんがみまして、さしあたり給与所得控除の引き上げによりまして、百五十一億円の減税を行い、三十二年度を期して税制の根本的改正を行うことになっております。この点につきましても、社会党組替案は、平年度約六百億円に及ぶ減税を源泉所得税等を中心に行う一方、平年度約六百四十四億円に及ぶ増税を、大企業中心の法人税関係において行うことになっておりますが、現下わが国の産業にとって最も必要なる資本の蓄積を忘れ、所得の源泉である資本をいじめて痛快がっておる非現実的な考え方を変えざるにおきましては、社会党内閣の実現は日暮れて道遠しと言わざるを得ないのであります。(拍手)  以上のごとく、この予算は五カ年計画の初年度たるにふさわしく、堂々たる重点施策がとられておるのでありまして、無性格予算との批判の入る余地はありません。特別会計予算も、政府関係機関予算も、いずれも妥当な編成であります。以上を要約いたしまするに、昭和三十一年度予算三案は、内外経済情勢に即応し、健全財政の方針が堅持されておること、民間資金の大幅活用により、経済自立五カ年計画の初年度たるにふさわしく、所要資金重点的に確保してあること、及び当面の重点施策の遂行により窮屈なる財政の現状にもかかわらず、勤労者に対する減税を断固行なっておることの二つの理由により、私は三案に賛成の意を表するものであります。(拍手)     —————————————
  25. 河井彌八

    議長河井彌八君) 木村禧八郎君。   〔木村禧八郎君登壇拍手
  26. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 私は、ただいま上程の昭和三十一年度関係予算三案に反対いたすものであります。  反対理由のおもなる点については、すでに予算委員会の討論において申しましたので、ここに繰り返すことを避けます。しかし、ただこの際反対理由の最大のものとして、どうしても強調しておかなければならない点は、防衛費の膨張のために、いかに国民生活が犠牲になっているかという一点であります。先ほど社会党の相馬議員が指摘されましたが、この予算ほんとうに弱い者、経済的な弱者に防衛費の犠牲をしいている予算と言わざるを得ません。この間九州の戸畑に参りました。七十才の老人が肺が悪くて、そうしてぜんそくであります。その老人がニコヨンとして、日雇い労働者として働いていたのであります。そのニコヨンとして働いている姿があまりに苦痛に見えましたので、どうして七十才の老人が生活保護法の適用を受けないのですかと聞いたのでありますが、生活保護法の適用を受ければ、一人について一ケ月約千六百円である。千六百円ではどうしても食えない。だから自分は日雇い労働者になっているのである。ニコヨンならば、一日二百四十円、十日働けば二千四百円である、二十日働ければ四千八百円、であるから、自分は生活保護法の適用を受けたのでは食っていけないのである。従って肺病であり、ぜんそくであるけれども、そうして七十才の年寄りであるが、ニコヨンをやらざるを得ないのである。こういうことを述べたのであります。これは、生活保護法の基準があまりに低過ぎるのであります。また生活保護法の適用を受ければ、ほかに所得があれば、この千六百円から引かれるのであります。これでどうして七十才の老人が暮していけるでありましょうか。しかも日本のこの予算は、年寄りをいたわることが実に乏しいのでありまして、全国で今六十才以上の老人七百十六万のうち、その二割二分の約百五十万人が救済を必要とすると言われております。これに対して救済施設は全国で四百五十カ所、二万五千人しか収容しておりません。また、有料保護施設には三百五十人収容しておりますが、しかし、この人たちは一カ年の負担が二十万円もするのであります。従って貧乏な老人はここに入れない。さらに現在も緊急に救済する必要のある老人は九万五千人、このうち二万五千人しか救っていないのであります。なぜこのように老人を虐待しておるのであるか、なぜ養老年金が実現できないのか、養老年金が実現できないとしても、なぜ四百五十カ所しか、百五十万人も老人を救済しなければならぬのに、この保護施設を拡大できないのであるか。予算がないという、財源がないというこの一言によってこの施設が葬られております。  また、何度か私は繰り返しましたが、新聞でも非常に問題になりましたあの養護児童の問題です。親のない子供が政府から保護を受けて、その一日の給食代は五十七円六銭である。野犬狩りでつかまえた犬の一日の給食代にひとしい。そこであまり気の毒だというので、厚生省養護課におきまして、これを十円三十六銭値上げしまして一億七千六百万円の予算大蔵省に要求した。養護課長の渥美節夫さんの言葉によれば、四日に一ぺん、この親のないかわいそうな養護児童にリンゴを一個食べさしてやりたい、三日に一ぺんミカンを食べさしてやりたい、一個のミカンを食べさしてやりたい。そこで一億七千六百万円の予算を要求したのであります。ところが大蔵省は、予算がないというので七千七百万円に削減しております。その理由財源がない、予算がないということであります。老人を虐待し、しかもまたこういうかわいそうな児童を虐待しておるのがこの予算であります。  さらにまた厚生省は、児童福祉司の設置費補助金として一億五千万円要求しました。盲ろうあ児童の施設訓練用器具費の補助金八百五十万円を要求しました。精神薄弱児の指導センター、職業補導費の補助金を二千五百万円要求しました。または季節保育所の設置費の補助金を二千四百万円要求しました。児童遊園地の設置費の補助金を千七百万円要求しましたが、児童に関するこのような施設は全部削減されておるのです。一文も計上されておらないのであります。それは予算がないという。老人とか、こういうかわいそうな、あるいはいたいけなこの児童に対する予算をこのように削っておるのであります。そうしてその最大の理由予算がないということであります。一体予算がないのでありますか、財源がないのでありますか。  三十一年度防衛費全体として一千四百七億と言われておりますが、ただ一般的に千四百七億と言いますと、いかにそれが大きい予算であるかということが気がつきませんが、これを具体的に、兵器がどのくらいするものであるかということを検討してみますれば、その予算の大きさに驚かざるを得ません。たとえば警備船の甲を建造するのに、十三億九千三百二十万円かかりまして二隻作ることになっております潜水艦は先ほど相馬君が指摘しましたように二十七億一千八百万円かかる。F86Fジェット機、これは二百二機増強する予定になっておりますが、一機は一億六千万円、T33は百五十機増強する計画でありますが、一機七千万円、スイスのエリコン社から買うと言われる一発のたまが一千万円もするところのあの誘導弾、三億六千二百万円であります。三十トン戦車は二億五千万円、五トン戦車は一億二千万円、百五ミリのハウザー、無反動砲は一億五千万円、百五十五ミリのハウザーは二億五千万円、航空自衛隊の基地を一カ所作るのに二億二千八百万円、航空自衛隊の基地一カ所作るのに二億二千八百万円で、結核患者の五百のべットを備えた国立療養所が一つ建てられて、さらに予算が余るのであります。また、操縦学校の施設は一カ所二億一千九百万円、三十一年度ではこれを七カ所作ろうとしております。決して予算がないわけではありません。再軍備のためにはこのようにたくさんの予算が使われるのであります。今度、大学の月謝を六千円から九千円に引き上げて、また検定料を一〇〇%から一五〇%に引き上げて、その増収額はわずか四億五千五百万円であります。そのために非常に大きな問題を起しておりますが、スイスのエリコン社から買うところの誘導弾一つだけで三億六千二百万円、ジェット機F86Fを三機作るのを、これを繰り越せば、節約すれば、大学の授業料を引き上げなくともよろしい、また、ジェット機F86一機を節約すれば、養護児童に一億七千六百万円の予算を与えることができて、四日に一ぺんリンゴ一個、三日に一ぺん、ミカンを一個与えることができるのであります。再軍備賛成、反対の立場を一応別にしましても、三十一年度予算では、一億六千万円もするところのF86F百十機も作る計画になっております。なぜこれを一機節約して百九機としまして、そうしてこのかわいそうな養護児童に十分な予算を与えることが一体できないのでありましょうか。また、この養護児童に対しては身の回り費の予算として一日十円あります。十円で着物を着せたり、くつをはかせたりしますので、この保母さんの話によれば、ちり紙は二枚しか与えられない、便所に行く紙が一枚、鼻をかむ紙が一枚、一体今、日本でちり紙がないのでありましょうか、どこのお店に行ってもちり紙は売っております。たくさんある、そのちり紙がどうしてこのかわいそうな養護児童に二枚しか与えられないのか、便所に行く紙が一枚、鼻紙が一枚、そうしてその理由としていわく、予算がない予算がないというのです。金が一体ないか。飛行機を作るためにはF86F一機に一億六千万円も予算がある、なぜ百十機作るのを百九機にとどめて、そうしてこの養護児童の予算を確保できないのであるか、それはできないはずでありましょう。自主的に再軍備ができない、アメリカ防衛計画の一環として組まれておるから、どうしても百十機作らなければならないのではないですか。このように、老人とか、あるいはかわいそうなこういう児童、児童憲章なんかまるで空文であります。こういうことをして、老人や子供を犠牲にして、そうして殺人の兵器であるところのこういう兵器、人を殺す兵器をどんどん作っておるのです。そうして鳩山首相は何と言うか、自衛のためには外国を攻撃し、あるいは侵略してもいいという失言をされた。自衛といって、どこから攻めてくるのでありますか、どこに敵があるのでありますか。どっかに仮想敵国をこしらえまして、敵は外国にある、外にあると宣伝しまして、(「いや内にある」と呼ぶ者あり)そうしてどんどん防衛予算をふやしている。私は今、海野さんがヤジが言いましたように、実は敵は外にあるのではなくて内にあるのではないか。今度も全く良識を越えた小選挙区制度を強行しようとしている。この小選挙区制度は党利党略と言われていますが、党利党略を越えています。全く私利私略の、現在の代議士だけが当選すればいいのだ、ほかの者は当選させないという全くの私利私略あるいは私利私欲と言った方がいいでしょう。そういう小選挙区法を強引に通しまして、そうして保守独裁の政治をやり、憲法を改悪して、ますます老人とか、あるいは子供の犠牲において再軍備費をふやそうというのが、この予算のねらいであります。敵は確かに私はこういう悪政を行うところのその政府にある、国内にあると断ぜざるを得ません。(拍手)     —————————————
  27. 河井彌八

    議長河井彌八君) 豊田雅孝君。   〔豊田雅孝君登壇拍手
  28. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 私は緑風会を代表いたしまして、昭和三十一年度一般会計、特別会計及び政府関係機関の三予算案に対し、若干の希望を付しまして賛成の意を表するものであります。  三十一年度予算案が三十年度内に、しかも相当の余裕を残しまして成立せんといたしておるのでありますが、かようなことは近来珍しいことでありまして、それだけにこれは経済界に対してはもちろん、広く国民一般に対して大きな安定感を与えるものと深く喜ぶものであります。しかし政府におかれましては、これによって楽観されることなく、この際、特に行政能率の刷新向上と、予算執行の厳正を期せられたいと考えるのであります。会計検査院の検査報告によりますると、予算の不正不当なる使用として批難されておるものが、昭和二十九年度において二千二百四十六件、金額にいたしまして七十三億円に上っておるのであります。しかも、これは予算執行の全部を調査した結果ではないのでありまするから、全体としてはさらに巨大な額に上ると思われるのであります。この際、政府は不正不当な事例を調査するだけではなく、徹底的にその責任の所在を明確にして、国民の血税の結晶である予算の乱費を厳に取り締るように、画期的な措置を要望するものであります。  予算規模を検討してみまするに、一般会計予算総額は一兆三百四十九億円でありまして、三十年度の当初予算額に比べますると四百三十五億円の増加でありまして、補正後の予算額に比べましても二百十六億円の増加となっておるのでありまするが、一時に比べまして、経済環境も漸次好転してきておる情勢等を考慮に入れまするならば、まずもって妥当な予算規模だと言わざるを得ないと考えるのであります。しかしながら、しさいに内容を検討いたしてみますると、租税及び印紙収入は八千二百六十七億円でありまして、三十年度に比べて五百十九億円の増加でありまするが、補正後の収入に比べましても三百五十八億円の増加となっておるのであります。そのうち増税分は、法人の交際費に対する課税の強化、あるいは退職給与引当金制度の改正、砂糖輸入税の増徴等によりまする百五十億円でありまするがゆえに、給与所得控除の引き上げによりまする減税額と見合うのであります。従って自然増収の見積りは七、八百億円の巨額に上るのであります。われわれは経済界の好転を計算に入れましても、なお歳入見積りが過大ではないかという懸念を持つものであります。かように巨額の自然増収を見込むことと相なりますると、必然的に税務当局の辛らつ過酷な追求がいよいよ激しくなってくることが予想せられますので、政府はこの点に対しまして、十分の配意をせられるよう、特に切望するものであります。  三十一年度予算は、従来の税制を基盤といたしまする最後の予算におそらくなるであろうと考えられるのであります。従ってこの際特に一言しておきたいと思うのでありまするが、国民が税の過重負担に悩んでおりますることは、今日よりはなはだしき時はないのであります。しかも終戦後間もないころと現在とにおきましては、経済情勢が全く一変してきておりまするために、従来の税制は、はなはだしく負担の公平を欠くに至っておるのであります。たとえば農業者と中小企業者との間において、あるいはまたメーカーと販売業者との間におきまして、あるいはまた中小法人と大法人との間におきましても、著しく負担均衡を欠いておるのであります。この意味におきまして、事業税法、物品税法、租税特別措置法の三法が最も負担均衡を欠いておる代表的なものでありまするがゆえに、政府は、これに対しまして特に根本的検討を加えられまするとともに、全体的に国民負担の軽減を新たにはかり得るような画期的な税制改革を要望するものであります。  一方、歳出面を見まするに、昭和三十年度より増加いたしておりまするのは、社会保障費、文教費、恩給費、地方財政費、防衛費等でありますが、それらはいずれも当然増でありまするか、あるいは消費的な支出が多いのであります。先に政府予算編成の基本方針に掲げられましたる重要施策を中心とする生産的な支出の面におきましては、きわめて不徹底であると言わざるを得ないのであります。ことに経済五カ年計画の二大目標でありまする経済自立と完全雇用の裏づけとなりまする輸出振興あるいは中小企業対策等に、ほとんど見るべき予算の計上がないことは、われわれの最も遺憾とするところであります。かようなことでは、果して経済五カ年計画が所期の目的を達成できるかどうかということを憂慮いたすものであります。政府はこの点につきまして、今後真剣なる検討と最善の努力を払われるよう要望するのであります。  さらに、地方交付税交付金は、三十年度よりも増額されておるのでありまするが、この程度の交付金の増額と、また政府が今回とらんとしておる対策によりまして、果して地方財政赤字が解消できるかどうか、はなはだ疑問なきを得ないのであります。従って将来政府地方制度の根本的改革を断行するように要望するものであります。同時に、食糧管理特別会計におきましても、三十年度までの赤字は一応補てんされたのでありまするが、現行食管制度のままで、三十一年度赤字が発生しないように措置し得るかどうか、この点につきましても、はなはだ疑問なきを得ないのであります。また、やみ米の横行しておりますることは、国民の順法精神、国民道義の上より放置し得ない問題だと考えるのであります。従って食管制度につきましても、今後急速に根本的な検討を加えられるように要望する次第であります。  最後に、財政と金融の一体化は、三十一年度予算の特色をなしておるものと思われるのでありますが、三十年度以来、政府引き受けの金融債の市中肩がわりは、当初予想されましたよりも順調に消化せられておりますことは、われわれの喜びとするところであります。しかし、これは時たまたま金融緩慢のときであったことを見のがしてはならないと思うのであります。さきに三十年度予算編成の際におきましては、いわゆる一兆円予算の線が死守せられたのであります。しかし三十一年度予算編成の際には、ようやく公債を発行しない、公債不発行の線が死守せられたのであります。しかし最近におきましては、公債発行も市中消化ならば、あるいは差しつかえないという線に変りつつあるように見られるのであります。しかしながら、インフレ再燃の懸念が必ずしも絶無とは言えない今日におきまして、インフレ抑制につきましては今後とも万全の措置を講ぜられるように要望する次第であります。  以上の要望を付しまして、昭和三十一年度予算三案に対し、緑風会を代表いたしまして賛成をするものであります。(拍手
  29. 河井彌八

    議長河井彌八君) これにて討論の通告者の発言は、全部終了いたしました。討論は、終局したものと認めます。  これより三案の採決をいたします。  三案全部を問題に供します。三案の表決は記名投票をもって行います。三案に賛成の諸君は、白色票を、反対諸君は、青色票を、御登壇の上、御投票を願います。  氏名点呼を行います。議場の閉鎖を命じます。   〔議場閉鎖〕   〔参事氏名を点呼〕   〔投票執行〕
  30. 河井彌八

    議長河井彌八君) 投票漏れはございませんか。投票漏れないと認めます。  これより開票いたします。投票を参事に計算させます。議場の開鎖を命じます。   〔議場開鎖〕   〔参事投票を計算〕
  31. 河井彌八

    議長河井彌八君) 投票の結果を報告いたします。   投票総数 百七十八票   白色票   百十五票   青色票   六十三票  よって三案は可決せられました。(拍手)      —————・—————   〔参照〕  賛成者(白色票)氏名      百十五名       上林 忠次君    片柳 眞吉君       梶原 茂嘉君    柏木 庫治君       飯島連次郎君    井野 碩哉君       山川 良一君    森田 義衞君       森 八三一君    村上 義一君       溝口 三郎君    三浦 辰雄君       前田 久吉君    廣瀬 久忠君       早川 愼一君    野田 俊作君       豊田 雅孝君    土田國太郎君       田村 文吉君    館  哲二君       竹下 豐次君    佐藤 尚武君       河野 謙三君    小林 武治君       小林 政夫君    北 勝太郎君       武藤 常介君    白波瀬米吉君       松原 一彦君    井上 清一君       伊能 芳雄君    青柳 秀夫君       佐藤清一郎君    酒井 利雄君       有馬 英二君    仁田 竹一君       滝井治三郎君    関根 久藏君       吉田 萬次君    白川 一雄君       菊田 七平君    岡田 信次君       中川 幸平君    田中 啓一君       榊原  亨君    高橋進太郎君       藤野 繁雄君    木島 虎藏君       宮田 重文君    一松 政二君       植竹 春彦君    三浦 義男君       左藤 義詮君    石原幹市郎君       寺尾  豊君    中山 壽彦君       池田宇右衞門君    青木 一男君       西田 隆男君    野村吉三郎君       津島 壽一君    苫米地義三君       大野木秀次郎君    佐野  廣君       小幡 治和君    宮澤 喜一君       大谷 贇雄君    石井  桂君       雨森 常夫君    平林 太一君       西川弥平治君    白井  勇君       高橋  衛君    松平 勇雄君       長島 銀藏君    最上 英子君       寺本 廣作君    青山 正一君       紅露 みつ君    秋山俊一郎君       加藤 武徳君    高野 一夫君       横川 信夫君    松岡 平市君       鈴木 強平君    野本 品吉君       平井 太郎君    川村 松助君       堀末  治君    西郷吉之助君       杉原 荒太君    松野 鶴平君       吉野 信次君    笹森 順造君       黒川 武雄君    小林 英三君       一松 定吉君    木村篤太郎君       石坂 豊一君    三木與吉郎君       新谷寅三郎君    島津 忠彦君       岡崎 真一君    重政 庸徳君       入交 太藏君    小柳 牧衞君       川口爲之助君    木内 四郎君       深水 六郎君    古池 信三君       岩沢 忠恭君    井上 知治君       山縣 勝見君    重宗 雄三君       草葉 隆圓君     —————————————  反対者(青色票)氏名      六十三名       高田なほ子君    久保  等君       清澤 俊英君    山本 經勝君       山口 重彦君    加藤シヅエ君       安部キミ子君    岡  三郎君       海野 三朗君    河合 義一君       三輪 貞治君    田中  一君       東   隆君    荒木正三郎君       三橋八次郎君    平林  剛君       竹中 勝男君    内村 清次君       赤松 常子君    山下 義信君       藤原 道子君    野溝  勝君       栗山 良夫君    村尾 重雄君       相馬 助治君    佐多 忠隆君       市川 房枝君    八木 幸吉君       須藤 五郎君    羽仁 五郎君       木村禧八郎君    鈴木  一君       成瀬 幡治君    若木 勝藏君       森崎  隆君    長谷部ひろ君       千田  正君    亀田 得治君       矢嶋 三義君    菊川 孝夫君       片岡 文重君    小林 亦治君       小松 正雄君    重盛 壽治君       吉田 法晴君    加瀬  完君       藤田  進君    湯山  勇君       千葉  信君    近藤 信一君       大倉 精一君    永岡 光治君       阿具根 登君    天田 勝正君       秋山 長造君    羽生 三七君       曾禰  益君    松澤 兼人君       森下 政一君    岡田 宗司君       小酒井義男君    戸叶  武君       三木 治朗君      ─────・─────
  32. 河井彌八

    議長河井彌八君) 本日の議事日程は、これにて終了いたしました。次会は、明日午前十時より開会いたします。議事日程は、決定次第公報をもって御通知いたします。  本日は、これにて散会いたします。    午後一時二十八分散会      —————・————— ○本日の会議に付した案件  一、各府県における保険医辞退問題に関する緊急質問  一、日程第一 昭和三十一年度一般会計予算  一、日程第二 昭和三十一年度特別会計予算  一、日程第三 昭和三十一年度政府関係機関予算