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八木幸吉君 私は
法律案に対して反対の意思を表明せんとするものであります。
申すまでもなく電話事業は独占事業でありますから、
加入者に負担をかける問題は十分慎重にこれを検討しなければならぬと思うのであります。この意味合いにおきまして、公共企業体の合理化審議会の会長である原氏その他民間の有識者の
意見を聞いておきたいとの希望を申し出たのでございますが、御賛同を得ることができませんでしたので、大へん残念に思っておる次第でございます。
さて、本
法律案は
建設費の一部を電話加入申込者に負担させようというのがその眼目でございますが、
建設資金を
調達するのは、民間会社であれば増資によるか、
金額が少なければ積立金でまかなう場合もあれば、一時借入金による場合もございます。
公社の場合は財政投融資にこれを求めるのが当然の筋道であろうと存じます。電話拡充第一次五カ年計画におきましては、所要
資金の総額は二千七百七十二億円、収支差額の
建設繰入金が四百四億円、公募債券または政府の借入金が七百四十三億円でありまして、このほかに国際
電信電話株式会社株式代金の引当で三十二億円、
加入者引受債券が二百四十二億円、設備負担金が百七十八億円、電話設備料金十三億円でありまして、残額の一千百六十億円が減価償却引当金となっておる次第でございます。
ところが、
昭和二十八年、二十九年、三十年度の
建設資金調達の計画と実績とを
比較いたしてみますと、次の通りであります。すなわち、
加入者負担金及び引受債券勘定で百二十三億円、利益金の繰り入れで七十二億円、装置料等の勘定で四十六億円、合計二百四十一億円計画より実績が多かったのでありますが公募公債において二百九十二億円減少しましたために、償却費を五十一億円減少してつじつまを合せておるのであります。ただ、最初の五カ年計画と今回提出の
建設資金調達状況という
資料とで修正変更されておる点は、最初の分は装置料の計画
予算が七億円でありましたものが、四十二億円と三十五億円増加訂正されております。同時に、国際
電信電話株式会社の株式売却代金の三十二億円がなくなっておることでございます。従って、この
資金計画のほかに、なお約九億円の国際
電信電話株式会社の株式の売却代が収入されておるわけであります。また、この
資金調達状況の
資料の中で、三十年度の利益繰入れは十三億円と見込まれておるのでありますが、実際は事業収入の増加は五十億円と予想されておるのであります。このうちから経費を若干
程度引きましても、この十三億という
計算から相当上回ることは間違いないと思われるのであります。
そこで私の申し上げたいのは、かくのごとく外部
資金の減少の穴埋めを
加入者負担の方へしわ寄せすることなく、あくまでも
公社本来の立場からその
資金の
調達計画は財政投融資に仰ぐべきであって、
昭和三十一年度の財政投融資計画は二千七百六十六億円でありますから、しかもこの中に
電電公社勘定が一文も計上されていないというのは、まさしく本末転倒でありまして、政府はこの点に十分の力及び思いをいたさなかったことを残念に思うのでありまして、これが私の本案に反対する第一の理由であります。
第二に私の申し上げたいのは、
電電公社の
経営内容についてでありますが、
昭和二十九年度において
会計検査院より、不当または不正事項として
指摘されておりますものは十九件あって、その
金額は二億八千三百万円に及んでおります。なおまた、このほかに青山
電話局の増設
工事のごとく、温湿調整装置の整備のためだけであれば三百二十万円でできるものが、これに便乗して、現
局舎になお相当の余裕があるにもかかわらず、自動交換作業室のほかに、全庁舎に温湿調整装置を整備するという不急
工事を一億三千七百五十万円もやっておられるということは、まことに不
経済なことであったと思います。また、館林
電報電話局のごとく、十五年後の加入見込数二千名、これに要する
局舎は三百八十七坪で足りるものを、五百三十三坪余の
局舎を建て千二百万円余の失費をした事例もあります。さらに、約三千七百万円で
昭和二十九年六月に完成した九州の鳥栖
電報電話局のごとく、部内の連絡が不十分であったために、機械の
方式がまだきまっておらないのに、建築に着工されまして現在すでに竣工後一年十カ月になっておっても、いまだ遊休状態であるといったようなものもございます。また、昨年に竣工しました東銀座
電話局のごとくに、機械設備一切十億六千七百万円の
資金を投じ、なおこのほかに五百数十坪の土地代があって、四万の
収容力があって、現在の
稼働数一万二千、しかもこの一万二千の施設をしたために、その周辺の京橋、築地、銀座の各局にも余裕ができておる、この事態は大へんけっこうのようでありますけれ
ども、とにかく一方には積滞数の多い郊外の中野、荻窪等を設備した方がより以上に適切じゃなかったか、相当研究を要すべき問題でありまして、最も需要の多いところからまず着工して、機械設備をフルに動かして、その収益を上げるのが
経営の本筋ではなかろうかと存ずるのであります。これを要するに、
電電公社としては
経営の合理化、
資金の効率的
使用になお一段の
努力の余地があると考えられるのであります。
第三に、私の申し上げたいのは、国際電電株式会社の株式保有の問題であります。電話拡張五カ年計画には、この株式売却代金三十二億円は
建設資金の中に計上されておったのでありますが、しかるにこのたび提出の
資料の中には、これが省略されておるのであります。過日来のいきさつからであると考えるのでありますが、
加入者負担の時限立法さえも延期して、お客に迷惑をも忍んでもらいたいというくらいに
建設資金に困っておる際に、また
地方財政窮乏の折柄、本年度七億五千万円の納付金さえ大問題になっておる今日、何の必要があって、国際電電株式会社の株式を保有するの必要があるのでありましょうか、
電電公社首脳部としては郵政、大蔵両当局に一日もすみやかにこの株式を売却して、その対価約八億円を
建設資金に回すべきことを交渉すべきであると思いますのに、むしろ反対に国際電電の株主たることを希望するがごとき行動は、真に
加入者のためを思い、かつ
建設資金に苦慮しているものとしての十分の熱意を、遺憾ながら認めることができないのであります。これが私の本案に対して反対する第三の理由であります。
第四に、私の申し上げたいのは、第一次電話拡張計画は
昭和三十二年度で終るのでありますから、この時限立法もこれとマッチせしめて、その期限を二年とすべきであると思うのであります。政府は最初の二カ年は
加入者負担金も第一次五カ年計画との
関係からそのまま据え置くが、その後の負担の問題は、そのときの情勢に応じて政令できめると
説明しておられるのでありますが、国会は毎年開かれておるのでありますし、二年後は政令できめるなどというあやふやなことでなしに、そのときに再び立法措置を講ずればよいのであって、政府は二年後には
加入者の負担が若干減少するがごとき口吻を一方では漏らしておられますが、また他方では五年過ぎた後でも、
加入者の負担をやめる自信がないというようなことも言っておられるのをみれば、本法案は名は時限立法でありますけれ
ども、その
内容は電話
加入者に一定の税金を課する実体を有するものと言わなければなりません。従ってわれわれは厳重にこの法案を審議する義務があり、少くとも期限を二カ年とせず、五カ年とすることには反対せざるを得ないのであります。
次に第五に、電話事業の進歩発達と時限立法の
関係について申し上げたいのでありますが、前述の通り、
公社の
経営内容にも幾多
改善を要すべき余地があり、ことに
公社最近の
報告によりましたら、電子交換機のごときも小型で寿命が長くて、しかも安くできそうだというようなことまでいわれておるのでありますから、現在十五年
さきを目途として設計されておる庁舎の面積、構造等につきましても、幾多革命的の設計変更も予想されておりますし、また、他方では無線電話のこともありますし、また三年前の料金二割の値上げの問題にいたしましても、その後電話事業の発達に伴って合理的ではなかったと
総裁も仰せられておりますし、また、
建設資金の
調達計画を見ても、計画と実績とは相当の開きがあるのでありますから、従って第一次五カ年計画も終る二カ年
さきで、さらに立法措置を講ずる必要ありゃいなやを再検討するのが最も妥当であると信ずるのであります。この意味におきまして五年の期限延長には反対であります。
最後に申し上げたいのは、三万円の
加入者負担金を債券引受けに変更したらどうかということであります。これは
加入者の側から言えば債券は売れるから、九万円の債券を引き受けても転売によってその差損金は一万円以下になって負担は軽減されます。他方
公社の側から言えば、
資金調達の面から言えば増減なく、ただ問題は利子と償還のことでありますが、これも五年
さきであって、第二次五カ年計画を立てる際に、外部
資金調達と見合って解決すればよいことであると思うのであります。
さらにこの際一言つけ加えることをお許し願いますならば、アメリカの電話事業のことであります。アメリカの
電信電話会社は同国の約五千万以上の電話の九割を有し、
年間十億ドル以上の
建設資金を増資と社債によってまかない、毎年二百万以上の増設をやっております。この会社は約六十五万人の従業員によって一九五一年には十億六千四百万ドルの利益を上げて、なお六億二千九百万ドルの税金を払っております。長距離の接続時間もわずかに一分八でありまして、むろん
加入者の負担金というものは一文も取っておりません。他山の石と申すべきでありましょう。
これを要するに私の申し上げたいのは、本案反対の論拠を逆に申しますと、当局が
公社本来の使命から考えて、
建設資金を財政投融資に仰ぐの
方針を確立して、内部の
経営の合理化と
資金の効率的
使用に徹し、国際電電会社の株主たらんとするがごとき道くさはやめて、時限立法の期間を二カ年とし、
加入者負担金を債券引受けに切りかえるなれば、本案に賛成するにやぶさかではないのでありまして、もしこれもできずに、あくまでも相当
部分を
加入者の負担によって電話事業の
建設拡張を行わんとする安易な道を選ぶという
方針であるならば、増資と社債によって
建設拡張をする、民営
方式に
公社方式を切りかえるの段階に立ち至らざるを得ないと信ずるのであります。
これをもって私の反対討論を終ります。