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1956-02-14 第24回国会 参議院 外務委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年二月十四日(火曜日)    午前十時五十三分開会     —————————————   委員の異動 一月二十五日委員堀眞琴君及び加藤シ ヅエ君辞任につき、その補欠として須 藤五郎君及び江田三郎君を議長におい て指名した。 一月二十八日委員江田三郎辞任につ き、その補欠として加藤シヅエ君を議 長において指名した。  出席者は左の通り。    委員長     山川 良一君    理事            鶴見 祐輔君            羽生 三七君            須藤 五郎君    委員            黒川 武雄君            重宗 雄三君            野村吉三郎君            曾祢  益君            梶原 茂嘉君            佐藤 尚武君   政府委員    外務政務次官  森下 國雄君    外務省参事官  法眼 晋作君    外務大臣官房長 島津 久大君    外務省アジア局    長       中川  融君    外務省欧米局長 千葉  皓君    外務省条約局長 下田 武三君    外務省国際協力    局長      河崎 一郎君   事務局側    常任委員会専門    員       渡辺 信雄君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○国際情勢等に関する調査の件  (日比賠償に関する件)  (日韓関係等に関する件) ○理事補欠互選在外公館の名称及び位置を定める法  律等の一部を改正する法律案内閣  送付予備審査) ○国際金融公社への加盟について承認  を求めるの件(内閣送付予備審  査)     —————————————
  2. 山川良一

    委員長山川良一君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  初めに国際情勢等に関する調査を議題といたします。
  3. 鶴見祐輔

    鶴見祐輔君 私はこの際外務省当局者にお伺いしておきたいのでありますが、一昨日十二日の毎日新聞日本経済新聞日比賠償に関するまことにこまかい記事が出ております。この記事が果して真相を得たものであるのかどうか。万一さようであるならば、こういう記事がどういうわけで早く新聞に出るようになりましたか、まずその点につきまして外務省の御報告を伺いたいのです。
  4. 森下國雄

    政府委員森下國雄君) ただいまの御質問のことでございますが、これは新聞に先日出ました二つの事柄とも政府関係のないことでございまして、これを説明しますると、昨年の六月の日比賠償交渉専門家間の了解事項なるものが出ていたが、右の記事は全く政府の関知せざるものであります。同専門家会議内容についてはこれを公表しないということになっているので、その内容について言及することは避けたいのでありまして、ただしこの会議賠償交渉の過程において専門家間で行なったものであり、正式代表間で行なったものではなく、政府が別に法的に何ら拘束をするものでないことをここにはっきり声明いたしておきます。  それからもう一つ新聞に出ておったのでございますか、これは日比賠償協定案及び経済協力協定案なるものは、何ら根拠のない記事でありまして、おそらく日本ビルマ間の賠償協定等を参考として想像によって作られたものではないかと、かように思っておる次第であります。
  5. 鶴見祐輔

    鶴見祐輔君 それでは重ねてお伺いいたしますが、この新聞記事内容については政府関係がない、また内容が第一の点については正確であるかどうかということにも言及されない、こういうことでございますな。そういたしますと、私はさらに進んでお伺いしたいことがあるのです。これは日比賠償問題に対する政府のお考えについてお尋ねをし、同時に私は政府のとるべき態度について私の意見を申し上げてその御答弁を得たいのであります。  第一はこの日比賠償問題は相当長い間両国の間で問題になっております。自由民主党が成立いたしまして、その前からもうすでに第二次鳩山内閣のときからこれが問題になっておるのでありますが、一番大きな問題になっておるのは賠償額の点とその内容の点のようであります。ところが私がここで政府に対して根本的な問題についてお尋ねいたしたいことは、こういうことであります。  自由党内閣のときに交渉をされておった日比賠償の問題については、フィリピン側が明白に断わったのであって、これと新しい鳩山内閣の案と対比して、前の方がよかったかあるいは悪かったかということは私は問題にならないと思う。日比賠償を成立さすということが根本の問題であるならば、相手があるのでありますから、相手が承諾できるような交渉をしなければ外交にならない。従って前のものと比べて議論をすることは今日はそれは実際的でないと思うのであります。私が今ここで取り上げて政府にお伺いしたいというのは、もっと突っ込んだ根本的の点であります。  一つ見通しの点であります。見通しの点というのは、日比賠償を早く成立させれば賠償額が多少多くなっても貿易が進んでくる。従って早くそれだけ貿易ができるようになるから、その僅かばかりの差額は取り返して余りがあるという見通しの問題であります。これは純粋なそろばん勘定の問題であります。  それから第二に、しかし私がもっとお伺いいたしたいと思うことは、重大な日本の対世界政策の問題であります。それは昨年のジュネーヴのいわゆる四巨頭会談以後、世界情勢は変って来て、ことに昨年の秋からソ連アジア、中近東及びアフリカに対する攻勢が非常に活発になって来た。これがためにアメリカイギリス両国において多少ろうばいの色のあることは疑う余地はございません。ところが今日日本国際間の地位というものは二、三年以来急激に増加して重大さを増しておると思うのであります。だから日本としてはこのソ連のことにアジア政策に対する態度について対岸の火事祝することはできないのであって、これに対して根本的な国策を作らなければならぬ。その第一の要点は東南アジアに対して日本の政治的経済的の立場を強化する、こういうことであります。そのときに一番先に起ってくるのは、ビルマは済みましたから、日比賠償の問題が出てくる。すなわち日比賠償の問題は、貿易のあるいは賠償金額だけの問題ではないのであります。それより大きな、日本世界政策根本を形成するものでありますから、その大乗的の観点からいって、私はこれを早く解決すべきものであると思います。  次にさらに大切だと私の思いますことは、日本フィリピンとの間の関係、ことにフィリピン側の対日感情が非常に悪いということが日本国民の間にまだ十分周知されていないことだと思うのであります。この点、外務省においてもっと的確な材料を次々と発表されて、いかにフィリピン国民の間の感情が今日も悪化しておるかということを明らかにされることが私は必要だと思うのであります。ビスマークも、政治問題の一番の要諦は数字ではかることのできない条件であると言っておるのでありまして、数字ではかることのできない条件というものは、たとえば政治的の国家の権威であるとか国民感情であるとかいうものである。そして、日比賠償は単に金額の問題というよりは、大にしてはソ連アジアに対する平和攻勢に対して、日比共同の歩調をとり得るという一つ基礎を作るものであり、第二には、今フィリピンの人々が日本に対してどのような深刻な恨みを抱いておるかということを日本国民に周知させないでおいては、日本東南アジア貿易をやろうとしてもできない話であって、まずフィリピン貿易の門戸を開いてからわれわれは東南アジアに行かなければならないのであるが、外務省当局としては、この実情国民に知らすことが少し足りないのではないかと私は思うのであります。最近私の知っておりますアメリカ人マグサイサイ大統領に呼ばれて話をした。アメリカフィリピンとの間の問題を話しておるときに、その人が日本フィリピンとの間の具体的な協力の話をした。すると今まで非常に春風駘蕩として話をしておったマグサイサイ大統領の顔色が急に変って、態度が一変してしまった。それでフィリピンの人が日本に対して持っておる恨みの深いことを改めて痛感したが、日本方々はそれを案外ご存じにならない、と、そういうことを言っていました。私もそう思う。日本国民の間には、フィリピンの人がどれだけ日本を恨んでいるかということを知らない人が多い。今度の賠償の問題は、数字の問題以外に、われわれが進んで非常に大切な友邦としてのフィリピン、ことに民主主義陣営新興国家として非常な誇りを持って発足しておるフィリピンに対して、われわれ日本人が尊敬の感情を持つこと、従来のような考え方、大東亜共栄圏というようなことを考えていないということをはっきりさせるということが、私は東南アジア対策、ひいてはアジア対策根本になると思うのであります。賠償問題をこえる根本的な問題であると思いますから、この点について御意見を伺うと同時に、なぜもっとこのフィリピン事情国民に周知させるようになさらないのか。今後おやりになる考えはあるのか。ということをお伺いしたいのであります。
  6. 森下國雄

    政府委員森下國雄君) 仰せ通り、これはきわめて大切な問題でございます。むろん全力を傾けてやっておるのであります。外務省がこの問題を一日も早く解決したいということにどれだけ全力を傾けておるかということを、これからアジア局長から申し上げますから。
  7. 中川融

    政府委員中川融君) ただいまの鶴見委員の御意見、私ども全く同感でございます。われわれ外務省の国内に対するいろいろの御説明が不十分であったという点は、まことにわれわれとして今後おしかりを大いに心に銘じて努力したいと思うのであります。  最初に申されました総額の問題について、四億で片づかなかったのであるから、四億を基礎としていろいろ是非を議論することは当を得ていないのではないかという御指摘がございましたが、われわれ折衝に当っておるものといたしましても同じ感を深くするのでありまして、四億ドルのいわゆる大野ガルシア覚書フィリピンの国会及び一般国民の圧倒的な非難を浴びまして、そのためにあれが一夜にしてくつがえされてしまったのであります。その間の事情を顧みまして、あれではとうてい片づかないということから次の交渉が出発したのであります。従って金額がどうしても四億をこすものでなければ向うは満足しない。先方は十億と言ってきたのでありますが、十億と四億の間でなければ片づかないということは明らかであったのであります。従って、四億と比較するということは当を得ないということはわれわれも同感であります。非常にこれは従来の経緯からも鑑みまして、あまり世の中に経緯が伝えられれば交渉がまとまりませんので、昨年いたしました交渉は非常に内々裏にやったわけでありまして、非常にむつかしい折衝をいたしまして、一カ月もここに代表がおりまして政府首脳部交渉いたしましてぎりぎりにもんだ結果、向うが出した案が五億五千万ドルということでありまして、われわれはこの五億五千万ドルの案は、今の状況におきまして日比間において行い得る妥協のぎりぎりの線ではなかろうか。こういうふうに考えておるのであります。  次に賠償貿易との関係でありますが、フィリピンは御承知のようにアメリカと非常に経済関係が現在も緊密につながれておるのでありまして、フィリピンの総貿易額の約八割はアメリカとの貿易であるのであります。しかしながらフィリピンは自分の国の経済の独立を完成するためには、このアメリカのみに依存しておる経済態勢を何とかして打破して、広くいろいろな国と多角的な経済関係を結ぶというふうな態勢に切りかえたいというのが念願でありまして、これは現マグサイサイ政府のまた強い政策となっておるのであります。この結果御承知のごとく一昨年の暮に米比通商協定改訂が行われまして、これによってフィリピンアメリカとの貿易関係というものの態様が変ってきたのでありまして、この改訂の結果本年の一月一日から、アメリカ品フィリピンに入るものは、アメリカ以外の第三国輸入品に対して、フィリピン政府が課している関税の二割五分の関税がかかるということになったのであります。従来は無税でアメリカ品は入ったのでありますが、他の国に比しまして今年からは二割五分の税がかかる。これが三年間続きまして、その次の二年間は今度はこれが倍になりまして、五割の税がかかるということになるのであります。またその次の三年間にはさらに二割五分をふやしまして七割五分の税がかかる。その次から九割がかかるというようなふうに、急速度アメリカ品物フィリピンに入る税は高くなるのであります。これによって、フィリピンアメリカからの経済攻勢に対して一つの障壁をだんだん作って参りまして、それに基いて自国の工業を起すと同時に、ほかの国に対するところの貿易をだんだんふやして行くということになっておるのであります。一方フィリピンアメリカに入る品物につきましては、非常にゆるい格好で税が課せられている。しかもフィリピンの対アメリカ輸出品の大宗であります砂糖であるとかマニラ麻というようなものにつきましては、その税も減免されまして長期間にわたって一定のワクが与えられておるというように、非常にフィリピンアメリカに対する通商関係は有利であります。また一方アメリカからフィリピンに入りますものは、非常に急速度に税がかかって行くというふうに切り変ったのであります。これによってフィリピンは何をするかということになれば、他の第主国に対する貿易をふやして行く。今までアメリカから輸入していたものも他の国に振り向けるということになるのでありまして、その最も適当なマーケットが日本であることは問題ないのであります。日本は距離からいいましても一番近いのでありますから、工業製品を直接フィリピンの需要に最も適したようにできるのであります。その意味日本フィリピンの最も自然な貿易上、輸出入ともにお客さんであるということになるのであります。しかしながら、日本貿易は、まだフィリピンに対しては年三千万ドル、四千万ドルしか輸出はありません。一方フィリピンからは年に五千万ドル、六千万ドルのものを買っておるのでありまして、どうしてこういうアンバランスができるかと申しますと、フィリピン側におきまして日本に対して最恵国待遇を与えてないのであります。この最恵国待遇賠償が解決し、正常国交が回復すれば、平和条約によって当然日本に与えられるのでありまして、その際は日本貿易というものは、対フィリピン輸出及びさらに貿易全体というものは急速度にふえる。これは今の最恵国待遇関係及びアメリカとの貿易依存というものが日本に振りかわるという、この二つの点から日本輸出が急速度になると思うのであります。この点が、しかしながら国交が回復しなければその効果は得られないのでありまして、賠償の結果それが、日本貿易がふえるということは想像されるのであります。また賠償で出しますものは大体資本財が主であります。今日本からフィリピンに出しておりますものは、いわゆる機械等資本財はきわめて金額が少いのでありまして、年四、五百万ドルしか出ておりません。従って今後日本賠償によって出します機械類というものは、結局フィリピン経済開発計画、これを促進するためのものであるのでありまして、従来日本から輸出されていた品物とは競合しないのでありまして、日本輸出とは別の、要するに上積みと申しますか、別のカテゴリーのものが出るということに大体なるのでありまして、賠償貿易を害するということはまず予想されないのでありまして、貿易は急速度にふえるという見通しを持っております。この貿易が実質的な問題でありますが、さらに大きな意味でこの日本の対東南アジア政策といえば、世界に対する日本外交政策という点からこの問題は片づけなければならぬ、この方の要請がむしろ鶴見委員の御指摘になりました通りより重大であろうと思うのであります。フィリピンにおきます戦禍というものは非常にはなはだしいものでありまして、またそれに伴いまして住民等も非常に被害を受けたのであります。この日本に対する、何と申しますか、恨みと申しますか、憎悪の感というものは、戦後十年を経まして今なお強く残っておるのであります。しかしまだフィリピン国民は決してこの日本恨みをいつまでも恨みとして持っていようという考えではない、しかしながらそれには日本がとにかく何か戦争中のことは悪かったという、日本から遺憾の意を、誠意を表示してもらいたい。その表示は結局賠償という形で表わさざるを得ないと、こういうのがフィリピン人の心の奥にある考えでありまして、この意味日本にとにかく賠償を払ってもらいたい。とにかく賠償を払ってもらえば気が済むので、あとは仲のいい隣人として、同じ陣営に属するアジア人として手を握っていこうというのがフィリピン朝野をあげての考えでありまして、この賠償問題について、遺憾ながら今までのところ数カ年にわたりまして交渉しましたが、日本は、これはもちろん金額の問題とも関連してのためでありますが、まけろまけろでがんばったわけでありますが、こういう態度先方では非常に遺憾に見えてくるのでありまして、とにかく、ことに最近のようにもう話がきまってきた、少し近寄ってきたときには、あまりここをどうしろ、あすこをどうしろということではなくて、一つ大乗的に話をきめてもらいたい。それでこそ日本誠意というものが示されると、これをあまりいわゆる普通の場合の商売上の交渉のようにいろいろのことでかけ引きずるということははなはだ心外という気持を確かに持っておるように思うのであります。しかし、この問題をとにかく片づければ日本フィリピンとの関係というものは急速度によくなるということは目に見えておるのでありまして、またアジアにおいて、日比が提携するということによってアジアにおけるいわゆる民主主義陣営というもの、これは大きな共産陣営に対する意味民主陣営であります、いろいろなグループがあるわけでありますが、との国々が日本を見る目というものが非常に違ってくると思うのであります。さらにインドネシア賠償というものが片づき、またビルマ賠償現実段階に入ってくるということになると、ほんとうアジアにおける新しい日本を見る目というものがはっきりしてくるのではないか、われわれは、日本平和国家になったということを身をもって体験、信じておりますが、彼ら東南アジアの諸国の人たちは、まだそれを信じないのであります。現実にこれを実証しなければ、なかなか信じないというのが実情でございまして、これによってやはりアジアの一国としての日本地位が初めて確立するというふうに考えるのであります。この点についてもさらに外務省として、もう国民一般の方に理解していただくような努力はぜひやっていきたいと、かように考えております。
  8. 羽生三七

    羽生三七君 関連して一点お伺いしたい。  政務次官にお伺いしたいと思いますが、今鶴見委員の御質問でお答え願ったわけですが、アジア局長の今の御答弁を承わっていると、とにかくある程度まとまってきて、もう少しというようにお話しになっているわけです。それで新聞に出ていることがほんとうかうそかということは別として、最後のまとめをやる場合にはどうなんですか、内容が全部固まってから表面に出てくるのか、あるいは正式の機関で最後的に取りまとめをやるのか、どういう段階にあるのですか。
  9. 森下國雄

    政府委員森下國雄君) 最後全権団を送りまして、そうしてその全権団で正式な協定をきめることになっております。
  10. 羽生三七

    羽生三七君 もう一点……今もし障害があるとすれば、それは与党の中の旧自由党系、そういう言い方はちょっと失礼ですが、そういうことの折衝にあるのか、相手フィリピン側にあるのですか、どこですか。その問題を一つ
  11. 森下國雄

    政府委員森下國雄君) これは日比間にまたやはり最後一致点を見出すところがあると思います。
  12. 佐藤尚武

    佐藤尚武君 簡単に関連質問したいと思いますが、お許し願いたいと思います。  先ほど鶴見委員の言われましたフィリピン関係賠償問題についての見解は、私も全然同感であります。のみならず私も前内閣時代から、つまり吉田内閣岡崎外務大臣時代から、この問題は私の見解を述べて、かつまた賠償促進についての政府の善処を促してきたわけであります。今度の内閣になりましてからも、新大臣に対して同じようなことを申しております。従いまして鶴見委員の御意見は私全然同感であります。そうしてまたアジア局長の御説明の中で、大局から見て東南アジアに対する日本態度に関しての御説明、これもまた私は政府当局から聞くことができたことを非常に幸いとするものであります。ただしかし、この際私は本日この質問に関連して一言しておきたいと思いますることは、今朝の質問フィリピン中心にして行われた質問でありまするけれども、今アジア局長が言われたごとく他の東南アジア、ことにインドネシアに対してのこの問題に対する日本の関心というものも、もっと高めなければいけないと思うのであります。とかく賠償というと、フィリピン中心となって論議されているようでありますけれども、インドネシアも同じような要求を持っているということは、特に皆さん方承知通りであります。かつまた岡崎外務大臣時代に、インドネシア賠償はあたかもフィリピンの半額ぐらいであるかのようなうわさが立って、そうしてそのためにインドネシア側の非常に感情を害したこともあるのであります。そういう点はもちろんわれわれとしても考えたこともないし、政府としてもそういう見解を持っておられるわけではないと思うのでありますが、とにかくこの大局に立って、賠償問題をできるだけ早く解決して、そうして各方面における対日感情の融和をはかるということが第一の目的でなければならぬとするならば、インドネシアに関しても政府としては深甚なる一つ誠意を払って、そうして促進方をやっていただきたいと思うのであります。ことに来月か再来月にインドネシアにおきましても、新しい内閣ができるとかという話を聞いております。かたがた政府としてもこの際としては決心を新たにされる必要があると思うのでありますが、それらの点に関しまして簡単に一つ御回答願いたいと思います。
  13. 森下國雄

    政府委員森下國雄君) 仰せ通りでございます。まことに同感でございます。     —————————————
  14. 須藤五郎

    須藤五郎君 事務的な問題ですが、これまで李ラインで拿捕された船員家族生活補助に対して政府はどのようなことをやっておるのでございましょうか。
  15. 中川融

    政府委員中川融君) この問題は政府部内の所管から申しますと農林省の所管でございますが、私の承知しておりますところでは、一つ皆さん大部分の方が船員保険に入っておられるということで、船員保険上の保護給付がございます。なおそのほかに、これは昨年の末だったと思いますが、政府としては李ラインで拿捕された漁夫の家族方々が非常にお気の毒であるというので、たしかお見舞のお金を差し上げたと存じております。
  16. 須藤五郎

    須藤五郎君 見舞の金を贈ったということは私も知っておるのですが、ここに一つ具体的な問題があるのですが、昨年、昭和三十年十一月二十五日に拿捕された金比羅丸家族政府から見舞金として三万五千円、それからこれは山口県の船ですが、山口県から三千円贈った、そういうことが確認されておるわけですが、これは見舞金として三万五千円贈ったのでしょうか、ほかに何か意図があったのでしょうか。
  17. 中川融

    政府委員中川融君) 李ラインでつかまりまして抑留されておりまして、長く帰って来られないということがお気の毒であるということでお見舞として差し上げたというふうに聞いております。
  18. 須藤五郎

    須藤五郎君 見舞金としてならば問題はないのでありますが、この金が後日山口県の水産部長から書類でこの家族に通達されておるのですが、その中にはこういうふうに書いてあるのです。「見舞金差入品購入費補助(一五、〇〇〇円)は専ら差入品の購入に充つること」。それから差入品購入については、「補助により購入された差入品の発送前に抑留者が本邦に帰還し又は帰還する旨の通知があった時はその抑留者に係る差入品購入費補助(一五、〇〇〇円)の返還をしなければならない。」、こういう通知が山口県の水産部長から、政府からこういうことが言われたからといって、それで今非常に家族が困っておるわけなのです。これに対しては政府の方ではどういうお考えですか。
  19. 中川融

    政府委員中川融君) 具体的にこの見舞金として差し上げたものが、どういうふうにこれが会計上整理されるかという点の問題ではないかと思うのでありますが、おそらく水産庁が大蔵省と予算の折衝をいたしました際に、そのうちの一部は向うに抑留されている本人に対する差入品に充てるという名目で予算がとられたのではないかと思うのであります。これらのことについては水産庁が所管でございますので、私から御答弁申し上げるとかえって間違った御説明をしてもいけませんので、水産庁にお聞き願いたいと思います。
  20. 須藤五郎

    須藤五郎君 この通達は、「水産長官より別紙写の通り通知がありましたので」、という前置きをしてこういう通知があり、家族は最初は見舞金としてもらったところが、あとからその見舞金の中に、一万五千円は抑留者に対する差入品だ、こういうようにあとから言われたって金は使ってしまった、返せと言われたって返す金はないというので非常に今家族が頭を痛めておるというわけであります。こういうふうに水産庁長官の名前で言っておるわけですから、外務省がこれは全然知っていらっしゃらないわけですか。
  21. 中川融

    政府委員中川融君) その件につきましては水産庁から外務省に別に相談もありませんので、われわれは新聞等を通じて間接に知っておるだけでございます。
  22. 須藤五郎

    須藤五郎君 外務省は、これは見舞金として出したということははっきりまあ先ほどあなたがおっしゃったのですが、こういうふうに見舞金として出したものが、途中でその内訳がそういうふうに変更されて家族に混乱を起させるということがあり得ていいものでしょうか、どうでしょうか。その責任はどこにあるのでしょうか。
  23. 中川融

    政府委員中川融君) その点は水産庁に、水産庁長官に御質問いただきたいと思います。私どもは事情を詳しく存じません。
  24. 須藤五郎

    須藤五郎君 そうですか。それからもう一つ、この一月二十七日の西日本という新聞記事にも出ておりますが、最近帰った抑留者の話によりますと、日本から慰問品を送りますね、その慰問品に対して韓国は税金をかけているということなのです。それでせっかく慰問品を送ってもらった方が、その税金を払う金がないために、前に送ってもらった慰問品を売り渡して、それで次の慰問品を受け取る税金を払った、こういうことが帰ってきた方から報告された。三百円の品を受け取るのに五百円も税金をとられたといって、それが西日本に談として発表されております。そういうことは外務省は御存じなのですか。
  25. 中川融

    政府委員中川融君) 慰問品で、留守家族から個々に一般郵便で送る慰問品もございます、これについては普通の韓国の輸入規則によって税がかかるのではないかと思います。しかし慰問品の大部分は日本政府及び業界の団体の方が集まりまして、そして船を仕立てて、韓国側と特別に打ち合せをいたしまして韓国の官憲に渡してそのまま収容所の漁夫の人に入れてもらうのでありますから、これについては税はかからない状態になっております。従ってその分の慰問品には税はかからないというふうに考えております。
  26. 須藤五郎

    須藤五郎君 何ですか、個人で送る慰問品は税金はかかるということは、外務省はもう御存じなのですか。
  27. 中川融

    政府委員中川融君) 個人で送る慰問品には普通の規則で税はかかるというふうに聞いております。
  28. 須藤五郎

    須藤五郎君 それは外務省考え方では正しいというふうに考えていらっしゃるのでしょうか。そういうことに対して何か韓国側と交渉なすったことがあるんでしょうか。
  29. 中川融

    政府委員中川融君) 慰問品は原則といたしまして業界の人が肝いりになりまして、政府がこれに協力して時期をみまして集めまして、船を仕立てて、そしてこれが間違いなく本人に到着するように一々受取証を書かせてそうして渡すという仕組みになっておるのでありまして、この分については韓国当局とはっきり約束をいたしまして、責任を持って向うが処置するという仕組みになっておるのであります。それ以外に個々の留守家族の方が送る慰問品について、その慰問品の免税をしてもらうというようなことにつきましての交渉はいたしたことがないのであります。
  30. 須藤五郎

    須藤五郎君 家族は慰問品を送りたいという気持なんですね。ところが向うの拿捕された人たちは金を持っていない。そうすると慰問品に税金がかかるとするならば、送りたい慰問品も送ることができないのですね。そこで家族の訴えは、せめて慰問品ぐらいは税金をかけないようなことぐらい外務省一つ交渉をしてほしいというのが家族の訴えなのです。それで、一つ外務省としてそういう家族の訴えを取り上げて向う交渉してあげたらどうですか。慰問品に税金をかけている国というものは私はどこにも聞いたことがないわけですが……。
  31. 中川融

    政府委員中川融君) 従来、従来と申しますか、初めのころ慰問品を個々に送った場合に、なかなかこれが着かないという事態が発生したのであります。税がかかる、かからぬの問題だけではなくて、慰問品が着かない、あるいは着いても半分しか着かない、非常におもしろくない事態がありましたので、それから改めて一括して保証を取りつけて送るという方法を考え出したのであります。従って個々に送る慰問品については、非常にこれは韓国側にいろいろ注意はいたしましたが、なかなか実行を期しがたいというのが実情であります。もちろん個々に送る慰問品について税を免除するというようなことを交渉することは考えてもよろしいのでありますが、具体的な問題といたしましては、一まとめにして出す。慰問品を頻々として出したいというふうに考えておりまして、この前の十一月に発送いたしましたが、現在また慰問品をまとめて本月中に送る手配をいたしております。従って安全を期すれば、やはりこの分に慰問品を入れておやりになるという方が安全ではないかと思っております。
  32. 須藤五郎

    須藤五郎君 もう一つ伺っておきますが、そうするとなんですか、家族が個々に送りたい慰問品も、そういうふうな手続きさえすれば、まとめて送ってくれるということなのですか。
  33. 中川融

    政府委員中川融君) さようでございます。
  34. 須藤五郎

    須藤五郎君 それから萩市で拿捕された第一繁好丸という船の船長さんがこういう報告を萩市の公会堂でやっておるのですが、韓国の警備艦長は私に対して、拿捕された韓国の警備艦の艦長が話したというのです。艦長は私に対しこのようなことを言いました。われわれは日本漁船に対し恨みを持っておるのではないが、アメリカの進駐軍から日本漁船一隻拿捕すれば、二日の休暇をもらえるので、これで五隻拿捕したから十日間休暇がもらえるから、京城に帰れる、こういうことを韓国の艦長が言ったというのです。そういうことを外務省は知っているのですか。
  35. 中川融

    政府委員中川融君) そういう事実は聞いたことがございません。アメリカの方針として聞いておるところでは、アメリカ自体も李ラインというようなものけ賛成しないというふうに聞いております。
  36. 須藤五郎

    須藤五郎君 それからまだ一つ、これも万栄丸という乗組の船員から聞いたといって、私の友人が報告してきたのですが、延繩漁業操作中、アメリカの飛行機が低空飛行でやってくる、しばらくすると韓国の警備艦がやってきて拿捕された、われわれは季ライン外で操業しておるのであって、何ら気にかけずにいたが、今から考えると、アメリカの飛行機はわれわれの位置を見て、韓国に連絡したのではないかというふうに思われるというふうな報告もしておるのですが、こういうことが李ラインで行われていると思うと、非常に不愉快なことだと思うのですが、これは外務省はそんなことは存じないと答えるにきまっているのですが、こういうことが拿捕船の人たちから報告をされ、おそらくこれに似たことが現場において行われておるのではないかというふうに私たち考えている向きもあるわけです。それで、私は外務省に注意を喚起するために、この報告を一応いたしておいたわけなのです。  それからもう一つ。今日朝鮮におる日本の在留民ですね、在朝鮮日本人の帰国問題で、日赤の代表が平壌に参って今交渉中ですが、これがなかなかうまく行かないで今難航しておるということを聞いておるのです、それは、向うが朝鮮におる日本人の帰国問題を話し合うと同時に、日本におる朝鮮人、在日朝鮮人の帰国問題も同時に話し合いをしたいということを向う代表が申し入れたのに対して、日本の日赤の代表は、われわれが今度来たのけ朝鮮におる日本人の帰国問題のことだけに話し合いを限定して来ておるのだ、そういう政府の命令でわれわれは来ておるのであって、在日朝鮮人の問題を話し合う権限がないから、それができないという答えをしたために、この問題が暗礁にぶっつかっておる、こういうことであるが、これに対して政府次官はどういうふうにお考えになりますか。
  37. 中川融

    政府委員中川融君) 今御質問の問題でありますが、これは御承知のように日赤の代表が北鮮の赤十字の代表交渉いたしております。政府が直接しておるのではないのでありますが、われわれは日赤から写しをもらいまして、実情を知らせてもらっております。この経緯は、簡単に申しますと、北鮮の日本人約五十名日本に帰す用意がある、そのために話に来いということで、日赤の代表が行ったのであります。その行く前に、自分らとしては日本人の引揚問題だけを議することにしたい、そのほかの問題、たとえば在日朝鮮人引き揚げなどの問題は、いろいろ複雑な関係がある問題であるから、これはこの際討議することは避けたいということを念を押しまして、先方もその通りということであったのであります。行きまして会議を開いてみますと、在日朝鮮人の問題を人道問題として同時に討議しようじゃないかということを、向う代表が言ってきたのでありますそれに対し、葛西団長は、その点について赤十字本社から訓令のないことであり、自分らに権限がないから正式会談で取り上げることはどうしても因る、もしどうしてもこれを話し合いたいというなら、非公式の形の会談でなら話し合うもいいと言っておる段階であります。先方はやはり正式会談でこの問題を同時に討議したいということを言って、そこで話が合わないというのが現在の状況であるように承知しております。
  38. 須藤五郎

    須藤五郎君 そうすると正式会談でそれを取り上げてはいけないというのは、政府考えで、政府がそういうことを日赤代表に命令をなさったわけですか、それとも単なる日赤の考え方でしょうか。
  39. 中川融

    政府委員中川融君) 葛西団長が向うにたつ前に、われわれのところ及び引揚援護庁等政府当局のところに見えられまして、向うに行っていろいろ話し合いをするわけだが、自分らの話をして政府の方針と違ったことをもし話をしてきても、帰ってみてそれが実行できない、政府の方針と違うために実行できないということになっては、かえって困るから政府としては一体こういう問題に対してはどの程度まで考えるかというふうに御質問があったわけであります、つまり在日朝鮮人の問題についてはどう考えるかという御質問がありましたので、それに対して政府としては今のところはこうこうだ、これ以上のことはできないというようなことをいろいろお話したのであります、それを参考にされて、日赤自体が葛西団長に対して訓令を書かれたのでありまして、その訓令に基いて向う交渉しております。政府自体が日赤に命令する、訓令するという権限はないのでありまして、そういうことにはなっておりません。
  40. 須藤五郎

    須藤五郎君 政府は訓令を発したことはないし、日赤の独自の考え方でそれをやっておるということは、それではっきりしたのです、そうしますと、ここで朝鮮の方がそういう問題を出してくるのは当然だと思うことがあるわけですね、昭和二十九年一月七日、朝鮮赤十字あての日赤発の電報があるのです、こういう電報を打っておるのです。日赤は「終戦後貴国に残っておる日本人の安否につき日赤は留守家族と共に重大関心を抱いて来た、これら日本人につきできる限りの情報を伝達され、家族との文通を許可され、でき得れば速かに帰国できるよう援助されんことを希望する、もし帰国が許されるならその便船を利用し、日本にいる貴国人で帰国を希望する者を帰すことを本社は援助したい、これらにつき何分の回答を得れば幸いである。」こういう電報を日赤から朝鮮赤十字あてに打っているわけです。いいですか。これに対しまして三十年の、これはそれに対しての電報ではないでしょう、時がだいぶ違っていますから。三十年十二月三十一日朝鮮赤十字会中央委員長から日赤島津社長あての電文には、これこれの問題は、人道主義的見地に立って在日朝鮮人の問題を解決するため朝鮮の代表を派遣したいという旨の電報がそのころ来ておるわけなんです。そうしますと日本でも朝鮮人の問題を日赤は援助して帰すように、帰りたい者を帰すように援助したいということを日赤の方から申し出ておるわけです。ですから朝鮮の赤十字はこの日赤の電報に対して、今度の問題を出してきているにすぎないわけなんですね。ですから日赤が今さらそれを拒否する理由というのは、私は少しもないと思うのです。どうしてそれを日赤は拒否しなくちゃならぬか、私たちは了解に苦しんでおるわけです。そこでまあ私たちは政府が日赤をして拒否させるように日赤に対して訓令を発しているのではないかと、こういうふうにまあ考えていたわけなんですが……。
  41. 中川融

    政府委員中川融君) 日赤がただいま御指摘のような電報を先方に打ったのはだいぶ前のことでありますが、その後戸朝鮮日本人の引き揚げの問題が起ったのでありまして、その引き揚げ問題に関連して日赤が向うに行くという場合に、日赤はよく念を押しまして、今度行く場合は北鮮におる日本人の引き揚げ問題だけを議するのだということをよく念を押しまして、向うの了承を得て来たのでありまして、その間に日赤の考え方というものが若干変った。それは決して人道問題としての日本にいる朝鮮人の問題を無視するということでは決してないと思うのでありますが、やはりいろいろ研究の結果、これを実施するためには単に日赤と北赤とだけで話し合うということではこの問題は解決しない。もう少し違う角度からこれを検討する必要があるという考えに立ったのではないかと思いますが、従って現在行っております葛西団長は、在日朝鮮人の問題は討議しないという初めからの考え、了解のもとに出て行っておるのであります。その点については必ずしも前に電報があったから先方が当然その在日朝鮮人の問題を同時に取り上げることを提議する根拠があるというふうにもいかないのではないかと思っております。いずれにせよ、これは日赤の問題でございますので、外務省としては間接に知っておる情報を御説明しておるだけでございます。
  42. 須藤五郎

    須藤五郎君 まあ外務省は日赤の問題だから関知しない。じゃ日赤が向うで要するにこの問題を公式に取り上げても、外務省の関知したところではない、取り上げなくても関知したことではない、こういうことになるのですね。そうですね。
  43. 中川融

    政府委員中川融君) その通りでございます。
  44. 須藤五郎

    須藤五郎君 そうですね。私はそうすると、この文句は日赤へ持って行かなければならないことになるのですが、しかし日赤がなぜこの二十九年にこういう問題を積極的に電報を打っておきながら、今日それを取り上げないというような消極的な態度をとらなければならないようになったかの理由。それから日赤の性格として、また日本外務省としても考えてもらわなくちゃならないことは、自分のところのことばかり考えて、相手の立場、相手のことを少しも考えないという今度の態度、やり方が、私は間違っていると思う。特に日赤ともあろうものが、自分のところの人間は帰してもらう。お前のところの人間を帰すことにおれは関係せぬぞという態度は、日赤の性格として正しくない。もしも日赤があくまでもそういう態度をとるなら、われわれは日赤の性格というものを世界に暴露しなくちゃならぬことになってくる。そういうことは好ましくない。しかし理由なしにそういう勝手なことばかり言っているのは、これははなはだ私はおもしろくない。それに対して政府のもっと積極的な意見一つ聞きたいのです。次官一つ意見を述べて下さい、これに対してどうしたらいいか。これははなはだ片手落ちです、こういうやり方は……。次官から答えなさい。そういう政治的な問題を次官が答えないと意味ないですよ。
  45. 中川融

    政府委員中川融君) 今の御質問の前段についてまずお答えいたしたいと思いますが、これはもちろん日赤の問題でありますが、日赤がどうして前に在日朝鮮人の問題について協力すると言っておりながら、今そういう問題を正式に議することを回避しておるかという点の御疑念でございますが、これは私は決して日赤がその問題を回避しているという意味じゃないと思います。問題がより具体的になって参りました場合には、やはりこれをいかに効果的に実施するか、効果を上げるかという点を考えなければならない。つまり方法論の問題として日赤は考えておる。方法論といたしますと、やはり今両赤十字問で話すのでは、問題をこじらすだけで、かえって問題を実現するゆえんでない。従ってこれは別途の方法により、別途の角度からやらなければいかぬということでああいう態度をとっておると、こういうふうに私は了解いたしておるのであります。
  46. 須藤五郎

    須藤五郎君 次官どうですか。
  47. 森下國雄

    政府委員森下國雄君) 私もこの問題はやはりよほどよく研究もしなければならぬそうして実際問題としては赤十字がこちらから連れて行くということはきわめて危険なんですね。今の韓国の状態から見て、こういう問題は季ラインの問題を解決しない限りは、なかなかむずかしい問題なのです。私どもも、まあ私は個人的にはどうしてもこれはやはり送りたい、どうにかして送りたいと実は考えて、一生懸命そのことで苦慮しております。一日も早く希望者を送り帰してやりたいのでありますが、商業ルートを通って行けばどんどん行けるのでございますけれども、なかなかそうしますと費用の関係など非常にまた同情すべき点もありますので、あちらが望んでいるようにその船に乗せて、そうして仰せのように集団的に送り届けるということは、これは非常にけっこうなことなんですが、もしそれが李ラインで拿捕されるというようなことがあったら、せっかくの志も水泡に帰しますので、こういう問題も何とか解決したいということで実はこの問題で数回私的にも集まりまして、いろいろ懇談を重ねておる次第でございます。志はもう仰せ通り十分に苦慮しておる次第でございます。
  48. 須藤五郎

    須藤五郎君 次官の気持はよくわかりました。ぜひそういうふうに考えてもらいたいと思うのでありますが、そういうふうに考えていらっしゃるならば、日赤が公式会談によって問題を取り上げて、相談をするということは、何ら私は矛盾しないと思うのです。そういう心配を持っていらっしゃるのは、これはそれでいいとして、その心配を持っていることと、公式会談で議題として相談するということとは、何ら矛盾しないと思うのです、私は。何で日赤が公式会談の議題にそれを出すことを拒否しているか、ここに私たちは了解のいかぬ問題がある。ですからこれに関して、何か政府は日赤代表が行くときに、強く訓令を発して、その問題に全然触れてはいかぬぞ、触れないという条件で旅券を出されたのであるか、また触れていけないということなら、何がために触れていけないというのか、その点を私は聞きたいところなんですよ。どうしても私は了解できないのです。  それから先ほど商業ルートで行けば行けるとおっしゃったが、商業ルートで帰りたい者はいつでも自由に帰すということになっているわけですか。
  49. 森下國雄

    政府委員森下國雄君) さようでございます。
  50. 須藤五郎

    須藤五郎君 そうですね。さっきの問題もう一つ説明して下さい。何でそれだけの気持を次官が持っておりながら、日赤の代表が公式会談でこれを議題とし得ないのか、それを拒否する理由はどこにあるのか、説明して下さい。
  51. 中川融

    政府委員中川融君) 政府が日赤の代表にこの問題を公式議題として取り上げてはいけないという指令を出したわけではないのでありまして、われわれが日赤の葛西さんに申し上げたのは、在日朝鮮人をたとえば船に乗せて帰すというようなことは、日本政府としてはやり得ないということを言ったのであります。従ってその情報に基きまして、日赤は実行可能な線ということで、いろいろ向うとの交渉の方法を考えておられると思うのでありまして、決して交渉の方法自体について政府が指示したというような関係にはないのであります。
  52. 山川良一

    委員長山川良一君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  53. 山川良一

    委員長山川良一君) 速記を始めて。それでは次に理事補欠互選の件を議題といたします。  本委員会は、先に堀理事辞任され、ただいま理事が一名欠員になっておりますので、その補欠互選を行いたいと存じます。つきましては、互選は成規の手続きを省略いたしまして、委員長にその指名を御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  54. 山川良一

    委員長山川良一君) 御異議ないと認めます。よって委員長須藤五郎君を理事に指名いたします。     —————————————
  55. 山川良一

    委員長山川良一君) 次に、在外公館の名称及び位置を定める法律等の一部を改正する法律案及び国際金融公社への加盟についての承認を求めるの件を議題にいたします。
  56. 森下國雄

    政府委員森下國雄君) 在外公館の名称及び位置を定める法律等の一部を改正する法律案の提案理由及び内容説明いたします。  まず提案理由を説明いたします。外務省といたしましては、昭和三十一年度における在外公館の新設及び昇格につきまして、次のような計画を立てているのであります。第一に、新設するものとしては、法律上のみならず、実際上新設するものとして、次の四館を考えております。一、在パラグアイ日本国公使館、二、在ギリシャ日本国公使館、三、在ウイニペッグ日本国領事館、四、在メルボルン日本国領事館、次に、新設ではありますが、法律上の設置にとどめるもの、すなわち、隣接国にすでに駐在する大公使に兼任公使として勤務せしめ、現地には事実上公館を維持しないものとして次の五館を考えております。一、在ハイティ日本国公使館、二、在エクアドル日本国公使館、三、在サウディ・アラビア日本国公使館、四、在ジョルダン日本国公使館、五、在スーダン日本国公使館、第二に、昇格せしめるものとしては、次の二領事館でありますが、これらは、いずれも総領事館に昇格せしめたいと考えております。一、在シアトル日本国領事館、二、在ベレーン日本国領事館、以下これら各公館につき御説明いたします。  まず第一に、パラグァイに公使館を新設したい理由といたしましては、移住振興のためでありまして、同国には、戦前七百名、戦後は七百八十名移住しており、引き続き移住の道が開けておりまして、同国政府もわが在外公館開設を希望している現況であります。第二に、ギリシャに公使館を新設したい理由としましては、貿易促進のためでありまして、同国とは昨年三月に年間片道二百五十万ドルの貿易支払協定が締結されており、わが国に対する造船発注も五十九隻八十万トンに達している現況でありまして、同国もわが方在外公館の開設を要望しております。第三に、カナダのウイニペッグに領事館を新設したい理由でありますが、ウィニペッダは、世界における最も重要な穀物地帯の中心地にありまして、カナダ小麦の集散地であり、わが国の対加輸入の大半を占めるカナダ小麦及び大麦の買付中心地となっており、最近付近における石油、天然ガスの大規模な開発ははなはだ盛んでありまして、わが国から開発資材として工業製品輸出希望が大いにあるわけであります。従いまして、ここに領事館を開設し、日加貿易の増進に寄与させたいと考えております。第四に、オーストラリアのメルボルンに領事館を新設したい理由でありますが、同地は、豪州西南部の通商基地でありまして、わが国の対豪輸入の大宗物資たる大麦、小麦及び羊毛の買付中心地となっており、これがため、同地方からキャンベラのわが大使館に対する通商上の問い合せがきわめて多いので、ここにわが領事館を開設して、メルボルン在住の彼国実業家と直接接触を保たしめ、もって日豪通商の増進に寄与させたいと考える次第であります。なお、本年秋には、当地で第十六回オリンピックも開催される予定であります。  次に、法律上の設置にとどまる在ハイティ公使館ほか四個の公使館についてでありますが、これら諸国については、今後彼我間の貿易促進等経済的進出のため、及び国連関係国際会議等においてこれら諸国の支持を獲得するためにも至急外交関係を樹立し、もって将来における万般の経済ないし政治上の外交施策の基盤を作っておくことが肝要であると考えられるのであります。しかし、予算との関係もあり、この際とりあえず近隣駐在大公使をして兼轄せしめる方針のもとに、外交関係を開くこととしたのであります。  最後に、総領事館に昇格せしめる在シアトル及び在ベレーンの各領事館についてでありますが、シアトルは、米国北西部のうち対日貿易、対日関心が最も大でありまして、その対日地位たるや、ロスアンゼルスやサンフランシスコに比肩する地位にあり、後二者に総領事館があるのにかんがみ、現地居留民のみならず、米側官民もその総領事館昇格につき、熾烈な要望を出している次第でありまして、これに応えるため、総領事館に昇格せしめたいのであります。また、ベレーンはアマゾン移民受入及び移住民の指導上の重要性が著増し、移住者関係事務が増大して参りました関係上、現領事館の陣容を立て直して格式の高い総領事館とし、有能なる人材を配したいからであります。  以上が各館別の説明でありますが、これらの計画を実現するためには、法律上の措置として、昭和二十七年法律第八十五号、在外公館の名称及び位置を定める法律及び昭和二十七年法律第九十三号、在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律の一部を改正する必要がありますので、今般右二法律の一部改正をうたった本法律案を今次の第二十四回国会に提出する次第であります。以上が提案理由の説明であります。  次に、本法律案内容につき説明いたします。本法律案の第一条におきまして、昭和二十七年法律第八十五号、在外公館の名称及び位置を定める法律の一部の改正を行い、もってすでに説明いたしました各公館の名称及び位置を定めんとするものであります。また、第二条におきまして、昭和二十七年法律第九十三号、在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律の一部改正を行い、前述の各館に勤務する外務公務員の在勤俸の額を定めんとするものであります。また、付則におきまして、本法律は、新年度初の昭和三十一年四月一日から施行するよう措置しようとするものであります。  以上をもちまして、本法律案の提案理由及び内容説明を終ります。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御採択あられんことをお願いいたします。  次に、国際金融公社への加盟について承認を求めるの件に関する提案理由の説明を申し上げます。  ただいま議題となりました国際金融公社への加盟について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  国際金融公社は、国際連合の要請に基き、客年四月に国際復興開発銀行、すなわち世界銀行が作成した国際金融公社協定によって設立され、世界銀行とは姉妹関係に立って世界銀行の活動を補完する役目を持ったいわば国際的な投資会社でありまして、加盟国、特に低開発地域の生産的民間企業に対して、民間投資家と協調して融資を行うことによってその企業の成長を助長し、もって経済開発の促進に寄与することを目的といたしております。  わが国が公社に加盟するためには、協定に署名し、協定の義務を受諾する旨を示した受諾文書を寄託した上で、二百七十六万九千ドルの出資を行うことが必要であります。この出資金については、本年度補正予算に計上して本国会に提出いたしております。また、出資を行い、かつ日本銀行を寄託所に指定するための法律案も同じく本国会に提出し、御審議を仰いでおります。なお、現在までに加盟の手続を了した国は、米英を初めとして九カ国で、その出資額合計は約五千六百万ドルに達しておりますが、公社が発足するためには、三十以上の政府で七千五百万ドル以上の出資額を持ったものが公社に加盟することが必要であります。  わが国は、公社に加盟することにより、経済開発のための国際的投資の分野に参加協力することになり、他面、公社が投資を行いますと、これと協調する形でわが国の民間資本の海外進出も促進され、また、それに関連してわが国産品及び技術の輸出の伸長も期待され、さらにはわが国の生産的民間企業についても、しかるべき条件を備えた場合には公社から融資を仰ぐこともできることとなるわけであります。よって、政府国際金融公社への加盟について御承認を求める次第であります。  右の事情を了承せられ、御審議の上、本件につきすみやかに御承認あらんことを希望いたします。
  57. 鶴見祐輔

    鶴見祐輔君 私、ごく簡単に本案の根本問題について発言しておきますが、これは本案審議の際に外務省の方から御答弁願いますが、第一の在外公館の名称及び位置を定める法律等の一部を改正する法律案、この法律案についての根本意見と申しますのは、実はこれは少い、もっと大きな規模で外務省がやっていただきたい。それでそれについてはいろいろ事情もございましょうし、お考えもございましょうから、これはあとで本案審議の際に十分御研究の上御発言願いたいと思いますが、たとえばここでシアトル総領事館についておっしゃいましたが、それでその例としてサンフランシスコ、ロスアンゼルスをお出しになっておりますが、私は対米関係から言えば、テキサスのヒューストンはニューヨークに次ぐ第一の港になっておって、いずれニューヨークを凌駕する、金力については凌駕しつつあるテキサスに領事館をお置きにならなければならぬと思うのに、これをおとり上げにならなかった。これははるかに重大だと思うのでありまして、これは予算の関係もあったと思いますが、私はもっと外務省が大胆に大きな計画をお出しになって——われわれの方から出せませんから、あなたの方からお出しになって、われわれはその外交政策を助けるような御協力をいたしたいと思いますから、これについて本案審議の際に十分の御答弁をいただきたいと思います。一言発言いたします。
  58. 山川良一

    委員長山川良一君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  59. 山川良一

    委員長山川良一君) 速記を始めて。  それではこれをもちまして委員会を散会いたします。    午後零時八分散会