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1956-04-19 第24回国会 衆議院 内閣委員会 第37号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年四月十九日(木曜日)    午後二時二分開議  出席委員    委員長 山本 粂吉君    理事 江崎 真澄君 理事 大平 正芳君    理事 高橘  等君 理事 保科善四郎君    理事 宮澤 胤男君 理事 石橋 政嗣君    理事 受田 新吉君       大坪 保雄君    北 れい吉君       薄田 美朝君    田村  元君       高瀬  傳君    辻  政信君       床次 徳二君    福井 順一君       眞崎 勝次君    松浦周太郎君       横井 太郎君   茜ケ久保重光君       飛鳥田一雄君    稻村 隆一君       西村 力弥君    細田 綱吉君  出席国務大臣         国 務 大 臣 船田  中君  出席政府委員         防衛政務次官  永山 忠則君         防衛庁次長   増原 恵吉君         防衛庁参事官         (長官官房長) 門叶 宗雄君         防衛庁参事官         (防衛局長)  林  一夫君         防衛庁参事官         (人事局長)  加藤 陽三君         防衛庁参事官         (経理局長)  北島 武雄君  委員外の出席看         専  門  員 安倍 三郎君     ――――――――――――― 四月十八日  委員西村力弥辞任につき、その補欠として戸  叶里子君が議長指名委員に選任された。 同日  委員戸叶里子辞任につき、その補欠として西  村力弥君が議長指名委員に選任された。 同日  委員西村力弥辞任につき、その補欠として安  平鹿一君が議長指名委員に選任された。 同月十九日  委員安平鹿一辞任につき、その補欠として西  村力弥君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 四月十七日  事務次官補を設置するための外務省設置法等の  一部を改正する法律案内閣提出第一六四号) 同月十八日  特定郵便局長任免等に関する特別措置法案(  赤城宗徳料外二名提出衆法第三九号)  国家公務員法等の一部を改正する法律案赤城  宗徳君外二名提出衆法第四〇号) 同月十七日  名古屋市内駐留軍家族住宅移転促進に関する  請願江崎真澄紹介)(第一九二七号)  京都府京北町弓削地区地域給指定に関する請  願(加賀田進紹介)(第一九二八号)  同(岡本隆一紹介)(第一九二九号)  薪炭手当制度化に関する請願松平忠久君紹  介)(第一九六一号)  同(下平正一紹介)(第一九八三号)  同(原茂紹介)(第二〇一四号)  長野県下各市町村の地域給指定等に関する請願  (松平忠久紹介)(第一九六二号)  同(下平正一紹介)(第一九九八号)  同(原茂紹介)(第二〇一三号) の審査を本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  国防会議構成等に関する法律案内閣提出第  八七号)     ―――――――――――――
  2. 山本粂吉

    山本委員長 これより会議を開きます。  国防会議構成等に関する法律案を議題とし、質疑を続行いたします。細田君。
  3. 細田綱吉

    細田委員 まず伺いたいのですが、ただいま防衛庁で茨城県鹿島郡の神ノ池に、演習場か何かの設営を準備されておるように聞いたり見たりしておりますが、これはどういうことになっておりますか。
  4. 船田中

    船田国務大臣 神ノ池の演習場につきましては、最初地元方々の十分な御理解を得ないために、一部に反対的な空気がありましたことは事実でございます。しかしその後だんだん地元方々理解をせられまして、近く円満な妥結ができると信じております。演習場として使いたいということで、今その準備を進めておる次第でございます。
  5. 細田綱吉

    細田委員 長官のお見通しと事実は違うのです。実はわれわれ同士数名で、数日前に行ってきたのです。そして農民諸君の大多数は絶対困る、命にかえてもこの地所は手放せない。手放した限りは、一家全滅というか、餓死するよりしようがない。絶対に手放せないという、その士気はきわめて旺盛なんです。そういう場合には防衛庁はどういうふうに御処置なさいますか。
  6. 船田中

    船田国務大臣 ただいま細田委員は、絶対に反対だというふうに御指摘でございますが、私ども承知いたしておりまする事実は、だんだんよくなって参りまして、地元方々も御理解を深めつつあるのでございます。まだ多少の御理解のいかない地元方々もございますけれども、しかしせっかく努力をいたしておりまするので、近く適当な妥協ができるものと私は信じております。決して私どもは無理なことをやろうという考えは持っておりません。地元方々の十分な御理解を得て、自衛隊演習場なり飛行場なりを建設するように進めて参っておるのでありまして、決して一方的に無理に押しつけるというようなことはやっておりません。だんだん地元の御理解を得つつある状況であります。
  7. 細田綱吉

    細田委員 地元農民諸君納得でいくことでしたら、われわれも別に心配することはないと思います。防衛庁のやられることには別に異議はないわけだが、実際は今長官の御答弁になった見通し情勢と違う。そこで特に心配して伺うのですが、防衛庁方針としては、強制測量その他収用法というような、手荒な手は打つ方針であるのかないのか、その点を一つ伺っておきたい。
  8. 船田中

    船田国務大臣 私どもは決して無理なことをやろう、押し通そうというような考えは持っておりません。できるだけ地元方々の御了解を得て、自衛隊演習場飛行場を作りたい、かように考えまして、その方向努力をいたしております。
  9. 細田綱吉

    細田委員 できるだけ地元了解という御趣旨はよくわかるのですが、防衛庁方針としては、全員納得の上で買収あるいは立ち入り等をされるか、あるいはあなたの方で見て、そこに残って反対している人たちがある場合には、何らかの強制的な措置をとるか、そこの方針を伺いたい。
  10. 細田綱吉

    細田国務大臣 なるべく関係全員方々の御了解を得るように努力をいたします。それから先のことになりますと、今努力中でございまして、どういう状況が起るかということについては、ここで今いろいろなことを予想して申し上げるわけにいきませんが、どこまでも御了解を得て、土地の獲得をしたいという考えで、せっかく努力をいたします。
  11. 細田綱吉

    細田委員 これはあなたの方じゃなく、米軍基地拡張ですが、砂川は御承知通りかなり手荒な発足をしたけれども、いまだ目的を達しないというような事例もあるので、まだ将来のことだからわからないと言われるのですが、防衛庁方針としては、あなたが見て過半数だという程度に見られたら、あとは何か強制的な措置を講ずるのか、その方針一つ伺いたい。具体的にどうということじゃなくて、あなたの方の方針が、そういうようなどうしても半分以下の、あるいは若干の反対があるというような場合の防衛庁方針を伺っておきたい。
  12. 船田中

    船田国務大臣 防衛庁といたしましては、できるだけ地元の御了解を得て円満に事を運んで参りたいという方針で進んで参ります。
  13. 細田綱吉

    細田委員 われわれ四日くらい前に行ったのですが、鹿島の町で前古未曾有というほどに人が出て一大デモンストレーション、いまだかつてこれだけの人がそこの地区から出ることはだれも予想しなかったほどに、きわめて反対空気が濃厚たんです。その点は一つ将来防衛庁においても情勢の見定めを誤まらないように慎重にお願いしたい。  それから本論について伺いたいのですが、あなたの方ではいわゆる防衛六カ年計画を立てておられる。三十四年かが完成期といわれているが、あなたの方のいおゆる六カ年計画進捗状況を見ると、もっと早いテンポで、これを五ヵ年、四ヵ年で完成される、そしてどんどん軍備拡張されていくというふうにも見られる。というのはたとえば陸上自衛隊十八万といいながら、昨年一万、ことし三万、もうすでに昭和三十一年で十七万、残るのは一万です。こういうような進捗の経過を見ても、あなたの方の六カ年計画はもっと早いテンポで完成する御予定ではないか、この点を伺っておきたいと思います。
  14. 船田中

    船田国務大臣 昭和三十一年度におきましては、今の御指摘と違いまして一万増強いたしまして、昭和三十一年度の終り、すなわち来年の三月三十一日現在の定員は陸上十六万ということになります。あとの二万を昭和三十五年度までの間にどういうテンポで増強するかということにつきましては、これから十分検討して参らなければならぬことでございますが、その年次計画につきましては今のところまだきまっておらない次第でございます。
  15. 細田綱吉

    細田委員 あなたの方でいやしくも六カ年計画と銘打ってやったのに、年次計画が定まっていないというのはどうもおかしい。これは六カ年計画というものを立てる限りは必ず年次計画というものは、若干の修正はあるにしてもあるわけなんです。それを一つ御発表願いたい。
  16. 船田中

    船田国務大臣 この問題につきましては、予算委員会あるいは当委員会、その他の機会にしばしば申し上げておりますように、昭和三十五年度に達成する目標は御指摘のように一応きまっておりますが、しかしその目標に達するまで、すなわち三十二年度以降どういう年次計画でいくかということについては、研究はいたしておりますが、まだその年次計画というものは立っておりません。これから具体的な検討を進めて参りたいと考えております。
  17. 細田綱吉

    細田委員 どこの例を見ましても、これは国柄が違いますからソ同盟あるいは中共の例を引いては違うかもしれませんが、第一次五カ年計画、第二次五カ年計画、さらに第三次五カ年計画というようなことが、共産圏の国だけでなく、各国でもまた同じように六カ年計画とか五カ年計画とか三カ年計画とか銘を打って、次にさらにまたそういうものが継続されることは、従来の歴史を通じてわれわれはっきりした経験を見るのでありますが、日本自衛隊としては六カ年計画を完成された上にさらにどういうふうに進んでいかれるか、防衛庁のお見通し一つ聞かしていただきたいと思います。
  18. 船田中

    船田国務大臣 昭和三十五年度最終年度といたしまして防衛六カ年計画というものを持っておることは、先ほど来御指摘通りでございますが、それから先の第二次計画というものは今日持っておりません。これは今後国際情勢、また国内の財政経済、そういうようなものを十分勘案いたしまして、これから研究を進めて参りたいと考えております。
  19. 細田綱吉

    細田委員 十八万というと、私が申し上げるまでもなく、専門家方々も大ぜいおるのですが、満州事変当時の日本陸軍よりも相当膨大なものなんですが、現在日本の置かれておる国際情勢から、そういう膨大な軍備と申しましょうか、自衛体制というものが必要でございましょうか、この点を一つ伺いたい。
  20. 船田中

    船田国務大臣 これは国際情勢をどう見て、それに将来対処していかなければならぬかということが前提となると存じます。私ども防衛責任者といたしましては、これも予算委員会あるいはその他の機会にたびたび申し上げておることでございますが、国際情勢の見方につきまして、大体外務大臣総理大臣があらゆる機会に申し述べております国際情勢についての見通し、分析、これを私ども前提といたしまして、わが国国情国力に相応した最小限度防衛体制を整備していきたい、かように考えておる次第でございます。
  21. 細田綱吉

    細田委員 国際情勢をどういういうふうに見ておられるかということも伺いたいのですが、その前に、当時日本陸軍世界最強陸軍といわれた。しかも仮想敵国ソ同盟に置いて、ここに辻先生どもおいでですが、先輩石原大佐でしたか、少将でしたか、中佐でしたか知りませんが、シベリア駐団といいますか、旅団まで作戦計画の中に入っておったような一触即発の態勢においても、日本陸軍は十五万程度でよかった。ところが十八万といいますと、御承知のように、日米間の条約において協力するとなると、その力はむしろ二倍あるいは三倍に換算されていいわけです。それだけ緊迫した国際情勢の中に現在日本は置かれておるのでありましょうか。またそれだけのものが今日の国防体制として日本現実に必要でありましょうか、それを伺いたい。
  22. 船田中

    船田国務大臣 結局国際情勢をどう見るかということが大きな前提になっておると思いますが、国際情勢については、総理並びに外務大臣が申し述べておりますることを、私も大体同様に考えておるのでございまして、すなわち原水爆をもってするいわゆる世界第三次大戦ともいうべきものが今直ちに、あるいはごく近い将来に起るだろうというふうには考えておりません。しかしさればといって、部分戦争なり、あるいは冷戦が全然終息してしまったというふうに安心はできないと存じます。ことに最近の中近東の状況を見ましても、そういう危険はいまなお世界のどこかにあるわけでございます。極東の情勢必ずしも全く安心ができるということではないと存じますが、そういう国際情勢、また近い将来においてこれに非常に大きな変化が起るというふうにも考えられませんので、先ほど来申し述べておりますように、わが国国力国情に相応する最小限度自衛体制はぜひともできるだけ早い機会にこれを整備して、そしてわが国真空状態のないようにして参りたい、こういうことを考えておる次第でありまして、その考え方によりまして、漸次わが国自衛体制を整備しつつあるのでございます。
  23. 細田綱吉

    細田委員 現実わが国国防体制とでも申しましょうか、その構成アメリカ軍考えに入れないで持っておられるのか、あるいはアメリカ軍考えに入れて、言いかえればプラスしての国防体制考えておられるのか、その点を伺いたいと思います。
  24. 船田中

    船田国務大臣 現状におきましては、御承知通り日米安保条約を持っておりまして、すなわちわが国独立は獲得いたしましたが、その当時におきましては全く自衛体制というものを持っておらなかったのでございます。従いまして日米安保条約によりまして、わが国土の防衛につきましてはアメリカ協力を得てしてもらうということになっております。そこでアメリカとの共同防衛ということを考慮しつつ、わが国自衛体制国力国情に沿うようにして漸次整備して参りたい、かようなことで数年来努力して参ってきておるわけであります。従いまして先ほど問題にたりました長期防衛計画につきましても、それを実現いたしますならば、米駐留軍撤退基礎もできる、そして自主的にわが国防衛体制を整備するようにして参りたい。でありますから、もちろん現状におきましては、アメリカとの共同防衛ということを考慮しつつ、わが国防衛体制を整備しつつあるわけでございます。
  25. 細田綱吉

    細田委員 そういう御意見からすると、私たちは非常にわからなくなってくるのだが、あなたの今の御説明によると、日米安保条約によってわが国国防体制アメリカ協力計算に入れている。アメリカ協力計算に入れるならば、現実日本自衛体制の二倍、三倍あるいは数倍と考えられる国防体制を持ってくる、しかも現実においては日本国防線はきわめて短かくなっていることは私が申し上げるまでもない。満州を失い、樺太を失い、台湾を失い、朝鮮を失う、きわめて国防線は短かくなるのみではなくして、今まで国際的に見てもこれらの植民地が非常に危険地帯であったわけです。こういうところがなくなる。だから国防線とでもいうべきものがきわめて狭隘になり、そこへ持ってきてアメリカの力を計算に入れる、そして原爆、水爆なんかといわれているが、これを考えに入れるならば十万あろうと二十万あろうと三十万あろうと、問題はそういう科学兵器のいかんによるのであって、あなたの指揮下にある自衛隊諸君が二十万や三十万、竹やりを持ったって、竹やりでなくしても現実に武器を持ったって、これはナンセンス、笑い話である。どうしても私にはわからない。日米安保条約に基くアメリカ軍備計算に入れての国防である。しかも日本国防線が半減され、また国際的にもきわめて困難なところが抹殺されているのだから、そんなには私は要らぬと思う。私はあなたの言われることがどうしても納得がいかないのですが、いま一度御説明願いたい。
  26. 船田中

    船田国務大臣 先ほど細田委員満州事変当時の日本国防軍規模についてのお話があり、それとの比較において現在の自衛隊は少し多過ぎるというようなお話でございましたが、満州事変の当時、すなわち昭和六年におきましては陸軍は約二十三万持っております。海軍は百万トン以上の精鋭な海軍を持っており、また飛行機にいたしましても四、五百機持っておったわけでございます。それに比較いたしますと、今日の自衛隊の兵員また機材等は決して大きなものではないのであります。しかもその当時の二十三万というものは、第一線に使い得る、いわば戦闘部隊としてすぐ使い得る陸上兵力が二十三万でございまして、しかもその背後にはそれに数倍する予後備兵というものがございます。ところが今日十六万といい、あるいは昭和三十五年度に十八万と申しましても、それが全部でございまして、その点から申しますと補充のきかない部隊でございます。従って満州事変当時と比較いたしますれば、はるかに小さな防衛力しか今のところはまだ整備されておらない状況になっているわけでございます。従いまして私どもといたしましては、何とかして陸上においても昭和三十玉年度には十八万名をぜひとも獲得いたしたい、そして予備自衛官もできるならば二方あるいはそれ以上のものを持ち、また郷土防衛隊といったような民防衛関係ももう少し整備をするようた方向に進みたいと考えておるのでありまして、結局現在の自衛体制はしわが国力、国情に相応する最小限度のもの、最小限度というくらいに毛達しておらないようなことでございまして、満州事変当時と比較いたしまして決して過大なものではないと私は信じます。
  27. 細田綱吉

    細田委員 あと意見の相違だと思います。  そこで将来日本がほんとうの独立をして国防体制を完備したとする場合のあなたの構想からいうと、日進月歩ですから将来変るにしても、現在の段階においてあなたの構想からいうと、日本陸上、海上、航空各部隊は、日本が独自に国防体制を整えるとしたならば、どこまで今の三軍を必要とするか。
  28. 船田中

    船田国務大臣 この防衛規模をどの程度にするかということにつきましては、近く国防会議法が成立をいたしまして、国防会議が設けられますれば、直ちにこの国防会議に諮問いたしまして、あらゆる資料を整えて、先ほど来申し上げておりますわが国国力国情に相応する最小限度防衛体制というものについての基本方針規模等政府の案として決定いたしたい、かように考えておりますが、一応防衛庁試案として持っておりますものは、すでに御承知通りでございまして、防衛庁といたしましては、この試案昭和三十五年度のうちに達成するということをまず当面の目標といたしておるわけであります。
  29. 細田綱吉

    細田委員 そうずると、いわゆる防衛六カ年計画を完成すれば一応日本独自の立場国防を全うすることができる、こういうお考え計画でございますか。
  30. 船田中

    船田国務大臣 そのときになりまして全く独力でという意味に解釈されれば、それは私は少し違うと思います。日本防衛がそれだけり最終目標を達成したからどこからも援助を受けずに、何らの共同防衛ということも考えずに、日本の独力で国土を守り得るというふうには、私は考えられないと思います。しかし一応の目標はそれで達成いたしまして、そしてしかも米駐留軍撤退基礎がこれによってでき上る、かように私は考えます。
  31. 細田綱吉

    細田委員 防衛庁長官として、アメリカ軍撤退はいつごろだと見通されておるのですか。
  32. 船田中

    船田国務大臣 これもたびたび申し上げておることでございますが、昭和三十五年度最終年度において達成する目標が実現いたしましたときにおいて、米軍撤退基礎はできますが、しかし米軍現実にいつ撤退するかということは、これは国際情勢ともにらみ合せまして日米の合意によって行われることでございまして、今その時期をいっと予定することはできかねる次第でございます。
  33. 細田綱吉

    細田委員 御承知のように、今は世界の大国が軍縮方向へ向っておる。お互いに軍事予算の過程に耐えかねたということもあるでしょうが、とにかく軍縮方向に向っておることだけは確かです。まだこれが具体化していないことはきわめて遺憾だが、だといって軍備拡張方向へ向っていないことはもちろんです。しかもこの前は時間も少かったので総理からもはっきりしたことは伺えなかったが、別に近い間に日本が侵略されるというおそれがないのみでなく、むしろ逆な方向へ進んでおる。いわゆる冷たい戦争は徐々に、春風駘湯とまではいかないにしても、春先のような見通しが持てるのです。こういうのですから、そのときそのときの情勢によってと言うが、あなたの言う情勢は、世界情勢がもっと険悪化する必然性に置かれておるがごとく響いてくるのです。これはそういう御趣旨でないかもしれないが、今こそやはりアメリカに対して一つ期限を提起する時期ではないですか。あなたのようにアメリカに対して、何というか、ちょうだいのしほうだいということであったら、むしろフィリピンのように、九十九カ年でもつけてもらった方がいいかもしれない。これは日本安保条約には御承知のように期間がない。期間のない条約なんというものは世界中にありませんよ。これはあなたたちは侮辱に考えておりませんか。期間のない条約だ。こんなばかなことはないですよ。むしろフィリピンの九十九カ年という方がよほど気がきいている。だからそういうばかな侮辱された条約アメリカさんまかせというばかな話はないでしょう。これは城下の誓いをされたんだからやむを得ないといえばそれはやむを得ない。しかし日本はもう立ち直っており、しかも眞崎先生なんか日本民族世界一の民族なりとして誇った一人なんです。そういう世界一の民族だ、八紘一宇の宗家なりとした、このかつての日本民族を持っている防衛庁長官が、無期限米軍駐留を甘んじているなんてばかな話はない。これは今、世界情勢を分析して現実撤退時期を明示しろとアメリカに提案すべき時期なんです。一番いい時期なんです。ところがあなたの考えは、何でもアメリカまかせだ。これは重要な問題だ。田本の運命を決定する。世界にこういう他国の駐留を受けて無期限だなんという国はありません。そういう条約があったらお示しを願いたい。こういう侮辱された中で、これはもう現実アメリカ軍駐留期間を何年にしてくれるかということを提案すべき時期ではないかと思うが、防衛庁長官、どうお考えになるのです。
  34. 船田中

    船田国務大臣 今直ちに日米安保条約の改訂なりあるいは廃棄を提案すべき時期ではないと私は存じます。国土防衛につきまして、これは戦前と戦後とだいぶ違っておると思いますが、日本以外におきましても、大英帝国と言われるイギリスにおきましても、あるいはイタリアとかその他の国々、あるいは西ドイツにおきましても、やはり外国の駐留軍はおるのでありまして、集団安全保障ということがどうしても今日においては実情に即するのではないかと存じます。そういう点において、イギリス米軍駐留をいたしておりましても、イギリス人は少しもそれに対して卑屈な考えを持っておりません。アメリカに対しても同様でございまして、日本駐留軍がおったからといって何もアメリカに言うべきことを言わないというのではありません。こっちは自主的に自分の防衛計画を立て、また自衛体制を整備しつつありまして、それについてはアメリカからの供与を受ける、これは全く対等の立場におきましてやっておることでありまして、そこに何ら卑屈感を持つ必要は私はないと存じます。
  35. 細田綱吉

    細田委員 私は寡聞にしてでありますので、防衛庁長官に伺いたいのですが、あなたの今例にとられたドイツは別です。まだ平和条約を結んでいないのだからこれは別だと思いますが、イギリスや何かはやはりまだ期間はありませんか。その点を一つまず伺っておきます。
  36. 船田中

    船田国務大臣 私が申したのは、イギリスやイタリアや西ドイツにも外国の軍隊がおるということを申したのでありまして、それが期限があるかないかということについては、調べた上でないと、ここで即答は申し上げかねます。
  37. 細田綱吉

    細田委員 それが重要な問題なんですよ。私の調べたところによると、日本だけがアメリカから無期限駐留を押しつけられている。そういうばかな、侮辱された体制を、しかも国土を守るというあなた方が、ほかの例はまだ調べていませんというようなことは、これはおかしいのです。もちろん私は日本だけで国防体制を全うしろなんということは言いません。今は国際連合なんかを通じて、お互いに共産圏の国であっても自由主義国家にしても、協力体制をとっているのですから。この協力体制をとっているのと、城下の誓いを受けてその強圧下に結んだ日米安保条約とは、おのずから性質が違うと思う。しかるに日本の城下の誓いを受けたあと安保条約では、これは無期限です。こういうことはまず国防独立だといって、国民生活をあえて犠牲にしてまでも一千四百億円の予算を使われるあなたたちとしては、まず第一に考えるべき問題じゃないですか。アメリカに負けたんだからしようがないという奴隷根性で見るべき問題じゃない。すでに終戦以来十年たっている。平和会議から数えても五年ぐらいたっている。もうすでにそういうことは具体的にお考えになるべき時期ではないかと思うのですが、いかがですか。
  38. 船田中

    船田国務大臣 日米安保条約は、これは条約に示しております通りに、もちろん暫定措置として米駐留軍日本国土を守る、こういう建前になっておるのでありまして、日本防衛力が整備されて参りますれば、今御指摘のように、日米安保条約の改訂なりあるいは廃棄、効力を失うということが起ってくると存じます。しかし今日わが国自衛体制というものは、まだ安保条約の改訂なりあるいは廃棄なりを提案すべき基礎ができておらないと存じますので、私はそういうことを提案する時期ではない、かように考える次第であります。
  39. 山本粂吉

    山本委員長 細田君、ちょっとお諮りしますが、北君が関連質問をしたいということですが、よろしゅうございますか。――それでは北君。
  40. 北昤吉

    ○北委員 御承知のごとく戦争が始まれば、どこの国でも軍需省というものができて、軍需大臣ができるのでありますが、この国防会議法案では軍需省や軍需大臣を予定しておらぬ。これは私は仮の国防会議法案だと思う。戦争が起きないときを見越したもので、戦争が起ったせつなには軍需省ができて、軍需大臣ができて、これが国防の補給の第一線の責任を持たなければならぬと思う。ちょうど東条内閣のときに藤原銀次郎さんが軍需大臣になりました。また岸君も軍需大臣になりましたが、私は、これはやはり平時の国防会議だと思うのです。戦争になれば面目が違うと思う。いかがです。
  41. 船田中

    船田国務大臣 先ほど来申し上げておりますように、私どもは第三次世界大戦というものが起るというふうには考えておりません。ただしかし日本が全くよそからの侵略を受けないということも保証ができません。そこで最小限度自衛体制を整備しようということでございまして、その自衛体制を整備するにつきましても、国防の基本計画あるいは防衛生産と他の産業との調整、そういうことにつきましては、これは国策としてあらゆる要素を十分勘案して防衛計画を立てることが適当である、それにはその機関が必要であるということから、この国防会議法案を提出しておるわけでありまして、国防会議が設置せられましたならば、あらゆる面にわたって、わが国力、国情に相応する自衛体制を整備するという問題につきまして、真剣に取り組んで参りたいと考えております。
  42. 北昤吉

    ○北委員 よくわかりましたが、私は、戦争が起きた場合の国防会議と、起きないときのふだんの国防会議と、性質が違うと思うのです。やはり軍需省というものが兵站部係であって、これが日本の戦争では十分に整っておらなかったから、ビルマのインパール作戦あたりをやって補給が続かぬでみたり、そうして無用な犠牲者を出したり、レイテ作戦で、とりあえず満州から鈴木混成師団長を重武装を持ったままで派遣した。ところが途中で船が沈んで、から身でもって上陸して、レイテ作戦に負けた。これはみな補給が十分でなかったからだ。漢の高祖が天下を平らげたときに、勲功第一は韓信であろうか、張良であろうか、陳平であろうかという当時のうわきだったが、結局蕭何が勲功第一であった。蕭何はいわゆる軍需大臣、運輸のことや食糧のことをみなつかさどった大臣で、これが勲功第一で、当時の人を驚かしたということは、十八史略にもすでに書いてあるところであります。日本はあまり軍需大臣というものに重きを置かなかった、私はやはりこれに非常に重きを置かなければならぬと思う。英国は、御承知のごとく第一次大戦の際、ロイド・ジョージがアスクィスにかわって内閣総理大臣になったときに、チャーチルを軍需大臣に任命した。それがチャーチルの第一次大戦回顧録――九冊ありますが、その中にあります。私はちょうど稻村君が東方会に所属しておる時分に、木を貸してくれたので、読みました。その第七巻に、チャーチルが軍需大臣になったときの模様が書いてある。自分が軍需大臣に任命されたけれども、一人のスタッフもなく、大きな、いすがたくさんある部屋を渡された。そこで考えて、あらゆる産業の総務課長級の人たち、三役ではない、一番よく事業のわかる人たちに三十何名集まってもらって、トラック会社とか、運輸会社とか、船舶会社とかあるいは石炭会社とか、あらゆる会社の人三十何名に集まってもらって、協議をした。ところが非常に参考になったから、直ちに各会社に、政府は俸給を十分出せないから、あなた方の俸給でこの人々を戦争中貸してくれという手紙を出して協力を求めた。ところがみな応じたから、三十何名のスタッフをつかまえて、人ができたからすぐにその翌日からどんどん動いて、そうしてしすべて運輸から食糧の問題がうまく解決した。こういう記事があって、私も非常に感心したから、軍需大臣になりたての藤原銀次郎さんにそのことを書いてやったら、藤原さんから丁寧な手紙が来た。ところが、あとで星島君から聞いたのだが、東条さんが藤原銀次郎さんの話を聞いて、その書物を読み始めた。ところが東条内閣の滅びる前に読み始めたから、もうだめで、手おくれだった。日本ではすべてそういうことになるのです。それで軍需大臣というものは非常に重要な地位である、私はそう思うのです。日本の戦争は第一線にのみ重きを置いて、軍需の方が十分に整わない、たとえば石炭が要るとか、石油が要るとか、船舶が要るというのは、これは戦争になればわかり切ったことで、このごろの戦争はいわゆる総力戦争、トターレル・クリークの時代でありますから、私はこの国防会議法案を見て、軍需省がない、軍需大臣がないから、これはふだんの国防会議で、戦争が始まるとすぐに模様がえをしなければならぬ、そういう自覚があっての論争ならけっこうでありますが、それがないとなると――第三次大戦が起きなくても、部分戦争が起きても、私はこれは必要だと思うのですが、これはいかがでしょう。
  43. 船田中

    船田国務大臣 今第三次世界大戦というようなことは予想しておりません。国力国情に相応する最小限度の自衛力を持ちたいということが現在の問題でございます。その問題を解決すべく努力しておるわけです。しかしそれにいたしましてもわが国防衛生産の問題は今、北委員からも御指摘通り、きわめて重要な要素で、しかも防衛生産は非常におくれております。御承知通り十年の空白がありましたために、船舶、通信機材につきましてはやや進んでおりますけれども――進んでおるというよりはむしろ回復しつつありますけれども、しかしその他の防衛生産につきましては非常におくれております。そこで防衛責任者といたしましてはその点を考慮いたしまして、何とかこの防衛生産が育成されるようにやって参りたい、かように考えてその努力をいたしております。また米側に対しましてもその方針に従って供与兵器、艦船、飛行機を要求する場合におきましても、現物をもらうということも現状においては必要でございますが、将来のことを考えますと、やはり技術、資材等の供与を受けまして、日本防衛生産がだんだん育成されていくように仕向けて参りたいというふうに考えております。生産力が結局防衛の基盤をなすものであるということにつきましては、北委員のおっしゃられる通りでありまして、私どもも及ばずながらそういうことに努力を指向しておるわけでございます。
  44. 細田綱吉

    細田委員 私は外交官じゃない、国際法学者じゃないので、皆さんに知ったかぶりで教えるような知識は正直なところ持っていません。けれども私のきわめて狭い範囲で調べたところによりますと、先ほどのことを蒸し返すようですが、日米安保条約のように、日本駐留は無期限だというようなことはこの条約だけだと思う。そこであなたは先ほど日米安保条約は暫定期間だからというのだが、そうすると日本政府はこの日米安保条約の暫定期間を大体何年ぐらいと踏んでおられるか。
  45. 船田中

    船田国務大臣 これは安保条約の第四条でございますか、効力終了のことが書いてありますが、「国際連合又はその他による日本区域における国際の平和と安全の維持のため充分な定をする国際連合の措置又はこれに代る個別的若しくは集団的の安全保障措置が効力を生じたと日本国及びアメリカ合衆国の政府が認めた時はいつでも効力を失うものとする。」こういう規定になっておることは、もう御承知通りでございます。従いまして先ほど来日米安保条約というものは暫定措置として取りきめられたものである、わが自衛体制がだんだん整備されて参りまして、先ほど来問題になっておりました長期防衛計画が実現されたときにおきましては、米軍撤退基礎ができますから、そのときの国際情勢にもよることでございますが、その上において日米安保条約の改訂なりあるいは失効なり、そういうことが考えられるのでございますが、その時期が何年後ということをここに明示するわけには参らぬと思います。しかし日米安保条約が暫定措置であるということにおいては間違いのないことでございます。
  46. 細田綱吉

    細田委員 これは暫定措置で、従前ありましたいわゆる従属国あるいは保護国、そうした制度からまた発展して合併というような例をとっても、一応一つ期間とか暫定とかいう構想から出発している、これは申し上げるまでもなく防衛庁長官の方が私なんかより数倍御存じです。あなたは暫定だから暫定だからと言われるのだが、その暫定については、そうするとこう伺っていいのですか、日米安保条約の効力存続期間というものは、国際連合に日本が加盟したあるいは集団安全保障協定に加盟したときに一応効力の満期が来たものと見ていい、こういうふうな御趣旨ですか。
  47. 船田中

    船田国務大臣 今御指摘のこととは私は違うと思います。わが方の今立てておりまする長期防衛計画が実現したというときには米軍撤退基礎ができます。従ってそれから先のことになると存じますが、ただその時期がいつであるかということは、先ほど来申し上げておるように、ここにはっきり申し上げることはできないわけでございます。しかし日本自衛体制が整備されずにSEATOに加盟するとかあるいは国連に入って警察軍に参加するとかいうことはできませんし、またもちろん自衛隊としては常に憲法なり国内法規に従って行動をするのでございますから、今お話がございましたように、SEATOに参加して日米安保条約が廃棄されるというようなことには私はならぬと存じます。SEATOに参加するというようなことは現在考えてもおりませんし、また今直ちにできることではないのでございます。政府としてはこれに参加するというような考えは今のところ全く持っておりません。
  48. 細田綱吉

    細田委員 しかし昔でいうとあなたは軍当局です。軍当局のあなたとしては一つ見通しは持っておられるでしょう。しかも先ほどはこの六カ年計画が実施されたときは一応米軍撤退基礎ができるというのに、今から何年後にはそういう交渉に移るのだというめどをつけないで、ただあなたは軍を拡張しておられるのですか。でたらめというか何というか知りませんが、何らかの計画と対米交渉に対する心構えというものは含まれていないのですか。
  49. 船田中

    船田国務大臣 これは繰り返して申し上げるようでございますが、長期防衛計画が実現したとき――長期防衛計画と申しましても、今問題になっておりますのは防衛庁試案でございますが、それが実現したときに米軍撤退基礎はできます。しかし果して米軍をそのときに撤退させられるかということは、どうしても国際情勢というものをもう少しよく見て参らなければなりませんし、また長期防衛計画が実現した上のわが国国情また周辺の事情そういうものを十分勘案して日米両国政府の間において十分協議をしていかなければならぬのでございます。従いましてその時期を今日からいつごろだということを予定してこれを明言するというわけには参らないわけでございます。
  50. 細田綱吉

    細田委員 どうも軍の当局としては、昔は外務省すら引きずった経験もあったのですが、あなたはどうも親米を抜きにして従米まで行っているのではないかと私は思うのです。アメリカに対してはあまりにも無批判無能力であると思うので、六カ年計画による三十五年ですか、これが済んだら一応アメリカに対して安保条約撤退の時期は客観的にきたくらいの心がまえを持ってもらわないと、日本のこれだけ貴重な一千四百億の金を使って、あなたの方の、この前の選挙公約の社会保障なんというものを犠牲にして、国民からこれだけを取り立ててやっていながら、国民はさっぱり楽しみがないと思う。どうもたよりない軍の責任者だと私は思うのですが、それはそれとして、大体アメリカ軍がこういうふうに日本駐留していろいろ最新兵器を持ち込んでおる。日本は一応アメリカ軍撤退基礎なれりとする程度軍備を持ったとなると、日本軍備というものはアメリカ軍を加えるから実質的には非常に強くというか膨大なものになる。こうなると日本の隣邦諸国も、日本はどんどん軍備拡張するので、今まで日本に対しては何らの軍備的な警戒を持たなかったけれども、これは冗談じゃないぞという考えを隣邦諸国に与えるおそれはありませんか。
  51. 船田中

    船田国務大臣 私ども考えております長期防衛計画が実現したといたしましても、それが隣国に脅威を与える程度のものにはならぬと存じます。むしろ外国から日本侵略の意図を事前に阻止することができるようになると私は考えます。日本が全く無防備でおるということになりますと、これは不測の事態を生ずるという危険もあるわけでございまして、自衛力を整備するということによりまして、そういう侵略の意図を事前に阻止し得る力は日本が持つことになると存じます。
  52. 細田綱吉

    細田委員 そうすると、誤弊があるかもしれないが、三軍の責任者たる防衛庁長官は、今の脅威を与えないのだという、いわゆる不脅威不侵略の限界というものをどこに置いて軍を拡張されておるのですか、一つ具体的に教えていただきたい。
  53. 船田中

    船田国務大臣 これも具体的にどこに線を引くかという、数字的にはっきり申し上げるということは非常に困難なことだと存じます。抽象的に申しますれば、国力及び国情に相応する自衛体制ということでございますが、先ほど来申し述べております昭和三十五年度に達成する防衛庁試案として持っております目標、この程度のものを昭和三十五年度に持ちましてもこれは決して他国に脅威を与えるものではない、かように信じます。
  54. 細田綱吉

    細田委員 これはどうなんです。ほんとうにざっくばらんというか、あなたのおっしゃるように、もうアメリカ撤退していい基礎はできるんだ、そこに持ってきてプラスのアメリカ軍なんだ、それを不脅威、不侵略でないと言っても、かりに中共にしたって、現実日本と親善関係にある台湾にしたって、そうは思わないでしょう。いわんやフィリピンだの西南諸国はそんなこと言ったって思いませんよ。現実にたくさんこしらえてもう一応撤退しても大丈夫だ、自衛はできるのだという力を持って、おまけにまだアメリカがいつ撤退するかわからない、九十九年になるか二百九十九年になるかわからないというような軍隊まで加えておいて、そうして不脅威、不侵略の限界を越えないのだと言ったって、あなた正直に言って下さいよ、こんなことは国際社会においては通りませんよ。
  55. 船田中

    船田国務大臣 米軍駐留いたしております数字は、この前も申し上げたと思いますが、陸上戦闘部隊は漸次撤退しつつありまして、今年中にはおそらく一万一千ぐらいのものが撤退するだろうと思います。そうなるとあとに残りますものは三万そこそこではないか、空軍、海軍にいたしましては相当な数字が残りますが、しかしそれと日本自衛隊とを加えましても、決して隣国に脅威を与えるというような大きな軍事力にはなりません。もちろんわが方といたしましては、ソ連なり中共というものを仮想敵国などと考えてはおりませんが、しかし少くとも私の希望といたしましては、ソ連のようなあるいは中共のような膨大な陸軍や空軍を持つことが隣国において現実に行われておるということは、これはまことに遺憾なことでございまして、決してソ連や中共を仮想敵国であると見てはおりませんが、しかし希望といたしましては、もし平和を唱え、軍縮を主張されるならば、まず主張されるものが思い切った軍縮をやりあるいは軍備の撤廃をするというようなことをやってもらったならば、世界はほんとうに平和になるのじゃないか、私はかように考えます。
  56. 細田綱吉

    細田委員 それはあなたがかりにアメリカ責任者であったって、ソ連の責任者であったって、自分だけさっさと軍備撤廃なんてばかなことはできない、これは相対的ですよ。そこでもう一つ伺いますが、現在でも防衛庁には例の顧問会議というのですか、顧問制度というものがあるのですか。
  57. 船田中

    船田国務大臣 今の細田委員の御質問は、おそらく前長官のときの旧軍人の顧問と思いますが、現在はおりません。
  58. 受田新吉

    ○受田委員 今の細田さんの質問にちょっと関連して尋ねておきたいことがあります。今長官長期防衛計画の具体的な内容をお示しにならないのでありますが、しかし昭和三十五年度に一応の目標を置いておられることは、ここでしばしば言っておられるのです。それで私きのう防衛大学校及び横鎮――今は横鎮と言いませんけれども、横須賀の海軍地方総監部を見に行ったわけですが、この視察を通じて、実は日本のあなたのおっしゃる防衛力漸増ははなはだ心もとない感じがしたのです。特にわれわれが地方総監部でいろいろ留守部隊長からお話を聞き、SS潜水艦、かつて辻議員から痛烈な批判を加えた例のくろしお号の中身へ入って実態調査をしていたときに、あなたはその沖合いにおいて中国代表団を御案内されてすさまじい演習をごらんに入れたということであります。その時刻がちょうどあなたが前線において防衛庁長官として代表団を御案内されたときと、われわれの貧弱なるあちらの古物を拝見したときとが軌を一にしておったわけですけれども、私はきのうの視察を通じて一つの非常に疑惑を感じている点があるので、これを明らかにしていただきたい。それは長期防衛計画を企図されておる政府として、この計画昭和三十五年度に一応完成されるという目標のもとに努力せられておるということはわかるのでありますが、十二が四千トンの艦船、それから千三百機の飛行機、その十二万四千トンの中身が、たとえば戦艦、駆逐艦、巡洋艦、潜水艦等がそれぞれどうなっておるのか、飛行機はどういう種類のものが何機で、どういう種類のものが何機というような具体的な計画であるのか、あるいはばく然とした総トン数と総機数だけを目標にしておるのか、この点がまず非常に疑いになってきたし、それに続いてアメリカの貸与兵器というものが考えられまするので、今の目標の内容がどうなっておるのかをまずお尋ねしたいと思います。
  59. 船田中

    船田国務大臣 昭和三十五年度に達成すべき目標は御承知通りでありますが、その艦船の種類あるいは飛行機の種類、機数というようなことにつきましては、まだ実はきまっておりません。また昭和三十二年度から昭和三十五年度に至る年次計画につきましてもこれから検討するところでございまして、まだ具体的にきまったものを持っておりません。
  60. 受田新吉

    ○受田委員 十二万四千トンとそれから千三百機というのは何を基準にお定めになられたのでしょうか。
  61. 船田中

    船田国務大臣 これは大体陸上におきましては、非常の事態、すなわちもしわが領土に侵略が起った、攻撃が加えられた、こういう場合において、敵の上陸をある程度期間撃退して領土を確保する、こういうことであり、また海上におきましては港湾、各水道の護衛、それから必要物資を輸送いたしまする外航船についての護送船団を作るというようなこと、それからまた航空につきましては、わが方の制空権を敵に渡さない程度防衛力を持つ、こういうことが標準になりまして大体数字を出したわけでございます。
  62. 受田新吉

    ○受田委員 大体標準によってそれをきめたとおっしゃるのですが、これははなはだあいまいなもので、私はなはだ解せないですが、十二万四千トンという艦船にはどのような中身を考えているのか。たとえば戦艦であるならばトン数は一隻でずいぶんこれを食うわけですし、潜水艦のようなものをやるならトン数は軽くて済むというようなことになる。また飛行機でもしばらくの間制空権を確保するとおっしゃるけれども、練習機を含めて千三百機とおっしゃっておったと思うのですが、練習機のようなものが制空権にそう役立つとは思えないのです。最近対潜哨戒機P2Vという飛行機をあなたの方でこちらへ輸入される計画昭和三十五年までの間に九十六機となっておったところが、その予定の限度内よりは予想外によけい対潜哨戒機をくれることに最近きまったというので、防衛庁も大いに満足しているような話も新聞などで承わっているのですが、そういうものを全部含めて制空権確保の機種とされるということになるならば、これは戦闘力を大いに確保する意味からいったら、何かの中身がなければいけないと思う。練習機をどのくらい、哨戒機をどれくらい、あるいはジェット機をどれくらいというような中身を考えないで、練習機の部位が非常に多く占めたり、あるいはジェット機の部位が多く占めたりというようなことになったのでは、無計画でいいかげんな線を引いて、大ざっぱに千三百機を計画に入れたなどと非難されても仕方がないのですが、中身なき機数、中身なき十二万四千トンというものは、はなはだ防衛庁としてはふまじめな考え方だと思うのでありますが、これがふまじめでなという御自信がありますか。
  63. 船田中

    船田国務大臣 それらの問題につきましては、今御審議を願っておる国防会議法案が通りましたら、直ちにあらゆる資料を提供いたしまして、わが国防衛基本方針なり、また防衛生産の体制なり、そういう基本的な計画を諮問いたしまして、そうして政府案として立てるようにいたしたいと考えております。先ほど艦艇につきまして十二万四千トンということについて、もし大きな船を作るとすればたくさんできないじゃないかというような趣旨の御質問がございましたが、それらの艦種をどういうふうにするかということにつきましても、過去の実績をよく勘案いたしまして、また米側からの供与ということも考慮に入れまして、そうして先ほど掲げました基本方針を実現するために最も適当な艦種、機種を選んで参りたいと思います。なお千三百機の飛行機につきましては、大体半数が練習機と考えております。しかしこの具体的な数字等については今後十分検討を加えまして、適当なる防衛体制を整備することにして参りたいと考えます。
  64. 受田新吉

    ○受田委員 今一例を千三百機の内訳について触れておられて、約半数を練習機とおっしゃったんですが、練習機のようなものが半数で制空権確保が可能でありますか。
  65. 船田中

    船田国務大臣 わが領空に侵入してくる飛行機に対しまして、わが国土を守り、制空権を敵に渡さないようにするということにつきましても、もちろん今日の場合は航空自衛隊の力だけでは足りません。従ってそれらにつきましてはアメリカ側の援助を受けるということになると存じます。それらも考慮しつつ案を作って参りたいと考えております。
  66. 受田新吉

    ○受田委員 大臣はしばしば三十五年度計画が完成した場合においては、一応米軍撤退基礎ができると仰せられております。そうすると、三十五年度米軍撤退されたる基礎というときは、空軍は千三百機しかない。半数は練習機だということになって、千三百機の半数の練習機をもって米軍撤退をする基礎ができるのでありまするから、そのときに米軍納得をして帰る場合も私はあると思うのですが、三十五年度の一応の目標が完成した場合には、基礎ができるということは、結局そのときの情勢にもよるが、米軍撤退し得る場合があるかどうかお尋ねします。
  67. 船田中

    船田国務大臣 これもたびたび申し上げておることでございますが、その三十五年度最終目標が達成されますれば、今御指摘通りに、米軍撤退基礎はできます。しかし現実米軍撤退するかどうかということは、国際情勢とにらみ合せまして、日米両国政府の合意によって行われることでありまして、その時期を今から明言するというわけには参らないわけでございます。
  68. 受田新吉

    ○受田委員 そうしますと、基礎ができるということは、話し合いにもよるけれども米軍撤退し得る場合もあるということになりますかどうか。
  69. 船田中

    船田国務大臣 そのときの情勢によることでございまして、今必ず撤退するかどうかということは、ここに明言し得る限りではないと思います。
  70. 受田新吉

    ○受田委員 そうすると、あなたは今の長期防衛計画米軍撤退を求める基礎を作るために努力しておられると思うのであって、その三十五年の完成期には、米軍撤退されるような情勢に置く計画だとわれわれは了解をしておったのでありますが、そうじゃないのでしょうか。
  71. 船田中

    船田国務大臣 米軍撤退基礎はできると存じます。
  72. 受田新吉

    ○受田委員 そうすると、千三百機で、もしそのときに米軍撤退してくれたならば、その千三百機だけで、あるいは十二万四千トンだけで、今あなたがおっしゃった日本へ襲いかかってくる敵を撃退し得る場合も考えられますかどうか。
  73. 船田中

    船田国務大臣 これはわが区域に行われる侵略によって、その侵略の様相によって、いろいろ違ってくると思うのです。今の長期計画、これは防衛庁試案でございますが、それによりまして駐留軍撤退基礎ができますから、まずこれは一応の今日の目標としておるわけでありまして、それから先のことにつきましては、いわゆる第二次計画となりますると、今日のところは何も持っておりません。また今御質問のように、侵略の度合が非常に大きくて、いわゆる第三次世界大戦になるような場合でありましたならば、それはとても日本の独力でわが国土の防衛というものはできないと思っております。しかししばしば申し上げておりますように、防衛庁試案程度のものが実現いたしますれば、何といってもこれは米軍撤退基礎はそれで築かれる、こういうことに考えております。
  74. 受田新吉

    ○受田委員 あなたのお考えによるならば、昭和三十五年度情勢が許せば、また米国との協定がつけば、そのときには、あなたの、政府目標とされている兵力だけで、もう日本は独自の立場でこれを防衛し得るという体制が可能であるという目標でありますかどうか。
  75. 船田中

    船田国務大臣 そのわが区域に襲いかかる侵略の規模、様相によって結論は非常に違ってくると思うのです。ですから、今それについて日本のそれだけの長期計画が実現したら、それによって必ず日本の独力でわが区域の日本防衛が全くなし得るものであるということは、これはなかなかむずかしいと思います。これは長期計画を立てるにつきましても、陸上自衛隊につきましては、これもたびたび申し上げていることでございますが、米駐留軍陸上戦闘部隊というものが、一番先にだんだん引いていっております。ですから、それもにらみ合せて、陸上自衛隊の増強のテンポが少し早くなっているわけであります。ところが海空につきましては、大体において米軍の援助を得ることも、陸上と違いましてきわめて容易である、こういうことも勘案いたしまして、従って陸に比較して、海空につきましてはややテンポがおそい、こういうことになっているわけであります。
  76. 受田新吉

    ○受田委員 ロバートソン国務次官補が先般米国の下院外務委員会において発言したことによると、日本は今後二カ年以内に自衛隊は急速な増強をはかってくる。従って米軍撤退する時期も、そういう問題と兼ね合せて考えられるであろうというような意味のことを発言しているようです。今後二カ年以内に日本自衛隊が徹底的に増強されるであろうという、二年という年限を切ったロバートソンの発言は、日本政府としては何かの形で了承しておられるかどうか。あるいはロバートソンの今私の申し上げた米国外務委員会の発言は、間違いであったのかどうか、お尋ね申し上げたいと思います。
  77. 船田中

    船田国務大臣 米国の国会においてロバートソン国務次官補がどういう発言をされたかということは、私詳細承知しておりませんが、日本政府といたしましては、ロバートソンと何ら打ち合せをしていることはございません。
  78. 受田新吉

    ○受田委員 何か今後二カ年以内の計画のようなものをあちらと話し合いされたことはないでしょうか。
  79. 船田中

    船田国務大臣 それもございません。
  80. 受田新吉

    ○受田委員 そうすると、アメリカでは勝手に向うの政治家たちが発言をするのがこちらの新聞に報道されてくるようでありまして、これは私としてははなはだ了解に苦しむところであって、われわれ国会で論争している最中に、ロバートソンは海のかなたで日本自衛隊の増強計画日本政府との間でいろいろ話し合いしているというようなことを言うているということになって、これはわれわれ国会の権威にも関する問題だと思うのでありますが、私もう一つ今のに連関してお尋ねするのですけれども船田長官は五カ年計画というものをアメリカとの間で話し合いを進めるという形でなくして、日本独自の形で立てておられる、この間そう言われたと思うのですが、アメリカ日本独自の計画遂行を了承しているのですか。それともその日本計画をあちらへ話し合いをされたこともないのでありますか。
  81. 船田中

    船田国務大臣 これは昨年八月末に外務大臣及び岸幹事長がアメリカに行かれるときに、防衛庁試案というものは外務大臣にお示しをしました。しかし外務大臣がそれを先方に示されたかどうかということは、これは私は消極的に聞いております。すなわちお示しにはなっておらぬようでございます。この防衛庁試案を立てるにつきましては、もちろんアメリカからの供与兵器というようなことも考慮に入れて計画を立てておることでございますが、立案に当りましては、わが方としてはどこまでも自主的に立案をしておるわけでありまして、その意味におきましては、防衛体制の整備ということは自主性をもってやっておるわけであります。ただそれが全く日本の独力で日本防衛体制が整備ざれるかといえば、その意味におきましては、全く日本の独力で整備されるというのではなくして、アメリカ共同日本国土を守り、なお自衛体制を整備するにつきましては、艦船、飛行機あるいは火器類等について、多くのものをアメリカの供与に期待しておるというのが実情でございます。
  82. 受田新吉

    ○受田委員 もう一つ、あなたはアメリカの援助を期待しながら、日本防衛計画を立てるということであるのですが、援助をする国と日本そのものとが話し合いをしないで、日本独自の防衛計画を立てるということがあり得ますかどうか。すなわち十二万四千トンと千三百機というものの中身も、アメリカから供与される。艦船がそのうちに幾らあり、飛行機が幾らあり、国内で生産するもの幾らあり、というようなはっきりした内訳を考えての計画ではないのでございますか。
  83. 船田中

    船田国務大臣 今お示しのような点は、もちろん考慮しつつ、案を立てておるわけであります。しかしアメリカから艦船、兵器等の供与を受けますけれども、わが方は独立国としてどこまでも防衛体制を整備するについては、自主的に案を立てておるわけであります。ただその自主的にと申しておりますのは、先ほど来お断わり申したように、何でもかんでも日本の独力でやっておるという意味ではないので、アメリカに従属して日本アメリカからたのまれて防衛体制を整備しつつあるのであるということは、絶対にないのであります。わが方が自主性を持って立案をし、それについてはアメリカ協力を求めつつある、こういう意味のことを申し上げたわけであります。
  84. 受田新吉

    ○受田委員 船田長官、あなたが今目標にしておられる十二万四千トンと千三百機というものは、これは国内産がどれだけ、供与がどれだけという計画を立てないで、目標を達成されるはずはないと思うのですが、そのトン数と機数の国内産と供与との割合というようなものは、どう考えておられるのでありましょうか。
  85. 船田中

    船田国務大臣 この問題は、先ほど北委員の御質問に対してお答え申し上げましたように、日本防衛体制を整備するにつきましては、一番それが弱点になっております。自主的に防衛体制を整備して参りますためには、何としても防衛生産にもっと力を入れていかなければならぬのであります。これが十年の空白のために非常におくれております。ところが、アメリカ側といたしましても、今日日本防衛体制を整備するについて、多大な協力をしてもらっておりますが、その協力の仕方が、だんだん現物の兵器弾薬等の供与ということから、漸次日本防衛生産が育成されるように、そうして日本の力で防衛体制がだんだん整備されるように、その供与あるいは援助の仕方もそういう方向に進みつつあるのでありまして、たとえば今外務委員会で審議されておりまする防衛生産のための技術上の知識の交換、いわゆる技術協定というものもだんだんできて参りまして、向うの技術上の知識あるいは特許権の使用というようなことを受けまして、日本の生産力がだんだん増強されていくように、向うも仕向けておりますし、われわれの方といたしましても、そういう方向に進んでいくようにやっておるわけでございます。  なおこの防衛生産が進みますれば、それによりまして、わが国の工業の上における技術、科学の進歩も非常に促進されることになりますので、これは日本経済のためにもそういう方向に進むことが必要である、かような考え方からいたしまして、防衛生産には特段の力を入れて参りたい、かように考えておるわけでございます。
  86. 受田新吉

    ○受田委員 私は、国内の兵器生産について、いっか辻委員指摘されたが、古いあちらの型を作るのでなくして、独自の新兵器、ずっと進んだものを日本自身で作るというあなた方の御意向があるならば、われわれとしてもあなた方の御意向を了とすることができると思うのですが、あちらの古いものを修理され、供与されるものも古もの、こちらの作るものも古ものというのでは、まるで意味をなさない。それに対する御見解と、もう一つは、あちらの兵隊の駐留しておるものに対する分担金は、西ドイツでは全部英米仏三国の分担金を拒否した実例もあるのだが、これも正確なものは調べておらぬと、いっか参議院で申しておられたようですが、その後調べた結果がはっきりしたかどうか、その二点を伺いたい。
  87. 船田中

    船田国務大臣 西ドイツの問題は、御質問の趣旨と違うようでございますので、それは経理局長から資料がありますから御説明してもらうことにいたします。  御質問の前段につきましてお答え申し上げます。これは先ほど来北委員も強調されておったことでございますが、日本防衛生産がもっと進んでおりますれば、日本の独力でもって兵器、艦船等もできるのでございますが、御承知通り、十年の空白がございまして、そこで自衛の体制を整備するためには、まず何といってもアメリカの供与兵器を受けませんと、急速に整備ができませんので、アメリカから供与を受けております。しかしその供与を受けますものにつきましても、いろいろ御批評があるようでございますが、今ただちに日本の兵器にこれを全部切りかえるというまでに参りませんので、先ほど来申し上げておりますように、多少古くなったものも中にはございます。しかしそういうものを補修をし、あるいは修理をするというだけでなく、日本防衛生産によってだんだんこれを改善し、改良を加え、日本人の性格あるいは国情に沿うようなものにだんだん作り上げていく、そのために防衛生産の育成発達のために今努力をしておるわけであります。その一つが、最近外務委員会にかかっております技術協定というようなものも、その一つである、こういうことを申し上げたわけであります。
  88. 林一夫

    ○北島政府委員 御質問の後段につきまして、お答えを申し上げます。昨年の五月五日にパリ条約が締結されまして、西ドイツの主権がこれによって回復され、かつ西ドイツのNATO加入が認められたわけでありますが、その際にパリ条約に付属するものといたしまして、経費の負担に関する取りきめが行われたのでございます。その条文によりますと、昨年の五月一日以降一カ年間に、西ドイツは西ドイツに駐留します連合国軍の経費を分担するため、総額で三十二億マルクの支払いを約束いたしました。ところがその際に一カ年間経過後、すなわち本年の五月五日以降のものにつきましては、経費の分担に関する規定がございませんで、ことしの五月五日以降については、この取りきめの中に、連合国駐留軍に対しまして、わが国でいえば、いわゆる施設提供関係を約束するということが書いてあるわけです。物資及び役務につきまして西ドイツに駐留する連合国軍に援助するという協定ができた。そこでこの協定の解釈として、ことしの五月五日以後、果して西ドイツが経費分担の義務がないかどうかという点につきまして、英、米、仏とドイツとの間に意見の食い違いがあるわけです。一応西ドイツといたしましては、昨年のパリ条約に付属しまする協定によりまして、現金の負担は一カ年だけはとにかく書いてあります。それ以後につきましては、物資及び役務を提供するということになって、経費についてはないのであります。主として協定の解釈上について、まず根本的な争いがあるわけです。西ドイツ政府は、最近行われた米、英、仏三国から、本年五月五日以降も分担金を出してもらいたいという要求に対しまして、四月六日付をもちまして一応拒否の回答を出しておりますが、これに対しまして米、英、仏三国の政府においても、種々なる理由をあげまして、西ドイツの拒否に対してまだ応じておりません。目下これに対して米、英、仏及び西ドイツの間において交渉が行われておるようであります。
  89. 受田新吉

    ○受田委員 日本政府はドイツに学んで、ことしすぐということでなくても、近い機会にこの分担金を断わるような熱情を持っているかどうか。
  90. 船田中

    船田国務大臣 分担金の問題につきましては、一月三十日の日米共同声明によって原則的なものがきめられまして、日本側で防衛力を漸増して参りまして、前年度に比較いたしまして施設等提供費及び防衛庁費、その合計額が増加した場合におきましては、その半分だけを防衛分担金から減らすということになっておるわけでありまして、その方針によってしばらくやっていくのがよかろうと思います。
  91. 細田綱吉

    細田委員 ただいまの受田委員の質問に関連して。どうして防衛分担金が半減の程度でやっていくことが日本のためにいいとお思いになるか。ドイツは拒否したのだから日本でも拒否したらいいでしょう。ドイツより条件のいい日本です。アメリカにとっては、四十八州に一つ加えて四十九州になった。日本は、実に柔順そのもので、いい従属国ができたと思っていると思うのです。これは正直なところ私はそう思っている。あなたは、防衛分担金を半分減らしてもらったからけっこうでございます。これでいいと言うが、日本では、まだもっと減らしてもらいたい。国防費をもっと減らしてもらって、民生安定の方に向けてもらいたいと国民全部が思っている。それをそんなに犠牲を払って、あなたの方で何と言おうと、アメリカの意向によってどんどん軍をふやしている。従って分担金はどうして全部やめてほしいというように出ないか。またそれがどうしていいのか。
  92. 船田中

    船田国務大臣 わが国土の防衛につきましては、日米共同防衛の責任を持っているわけでありまして、アメリカ軍協力を得て日本国土防衛を担当してもらっているわけであります。従いまして米駐留軍の費用を日本が負担することは当然なことでございまして、行政協定の二十五条によって一億五千五百万ドルときめてある。ところがそれに対する便宜の規定といたしまして、先ほど申し上げた一月三十日の日米共同声明になったわけでありまして、私はその原則にかえるよりも、共同声明で示されました防衛分担金を漸減していくというその一般的方式に従っていく方が、日本のために便利であり、またその方が得であると考えますから、先ほど来そういうことを申し上げたのであります。
  93. 細田綱吉

    細田委員 共同防衛条約でうたっているからと言われますが、西ドイツは共同どころではなく、全部守ってもらっている。それですら拒否するのだから、アメリカのよりよき忠実な従属国としての日本なら、まことにお説の通りだと思う。しかしきぜんとして立とうとする日本としては、それは日本国民に忠実なお考えではないと思う。あなたの言うのは、全く何というか、こういう失礼な言葉を使ってはいかぬかもしれないが、奴隷根性だな。実際アメリカにどうしてそんなに遠慮気がねをしなければならぬのか。その点は意見の相違としておきましょう。将来十分一つ考え願いたい。現状において日本に急迫不正の侵害はない、日本の周辺において戦争の起る危険性もないということで、そういう見通しを立てていると総理大臣のおっしゃったことも、おそらくそうだろうと思います。そこへもってきて三十五年ですか、一応撤退基礎ができるというのだから、何もそんなにアメリカに気がねしなくてもいい。あなたはまるで頼んでやってもらっているようだが、鳩山内閣は頼んでやってもらっているのですか。国民からすれば、アメリカ協力というのは、言いかえれば、招かざるお客であり、頼まざる協力なんですよ。鳩山内閣は、心からアメリカに援助を懇請して防衛体制をしいているのですか。
  94. 船田中

    船田国務大臣 これは今さら申し上げるまでもなく、日米安保条約につきましては、当時の事情からいたしまして、日本は全く無防備の状態である。しかもこの日米安保条約の前文にも書いてありますように、無責任な軍国主義はまだ世界から駆逐されていないので、前記の状態にある日本国には危険があるということで、よって日本国は平和条約日本国とアメリカ合衆国との間に効力を生ずると同時に効力を生ずべきアメリカ合衆国との安全保障条約を希望する、こういうことで日米安保条約ができているわけでございます。ですからこれは先ほど来申し上げておりますように、日本国力が非常に充実をいたしまして、日本の独力で安全保障が確保されることになりますれば、それは非常にけっこうなことであり、またそのときには米駐留軍撤退ということも考えられることと存じます。しかしながら日米安保条約はそのときの国際情勢――またそのときの国際情勢と今日と非常な大きな変化をしておるとは考えられないのでありまして、しばしば申し上げることでございますが、いわゆる部分戦争なり冷戦というものは今全く終息してしまったと安心はできませんので、そこで日米安保条約というものの存続が必要である。しかしこれは暫定措置でございますから、日本といたしましては国力国情に相応する自衛体制を漸次整備いたしまして、そうして米駐留軍撤退に備えるということが必要である、かように考えてその努力をいたしておるわけでございます。
  95. 細田綱吉

    細田委員 どこまでもアメリカに忠実でありたいというようにしかわれわれには響いて参りません。おそらく国民諸君もあなたの御答弁をほんとうに心からなるほどと聞く人は、私はほんの一部を除いてはないと考えます。おそらく自民党内部においてすら私と意見を同じくする人もかなり多いかと考えます。この問題はそのままおきましょうが、先ほど受田委員に対して、その前に私に対しての御答弁の中に、現状における五カ年計画の内容については、国防会議に諮ってからきめたいと思う、こういうふうにおっしゃっておる。本法案が通過した場合に国防会議にかけるのでしょうが、国防会議にかける原案というものはどこで御作成になりますか。あるいは防衛庁で作られるか、ここに事務局を設置して事務局で作られるか、どっちなのですか。
  96. 船田中

    船田国務大臣 国防会議が設けられまして、これには二十二国会に提出しました案と違いまして、今度は事務局ができます。事務局が整備されますと、その事務局が内部的には総理大臣の補助機関になりますから、従いまして防衛に関する諮問事項については事務局が総理を助け、そうして総理の決裁によりまして国防会議に付議される、こういうことになっておるのでございます。
  97. 細田綱吉

    細田委員 そうするとあなたの今の御答弁は、原案は事務局で作成する、こう伺っていいのですか。
  98. 船田中

    船田国務大臣 こういう問題をかけてもらいたいというようないわゆる要求原案は防衛庁なり、あるいは防衛生産に関することでありますれば通産省なりが、事務局の方に提供することになると思います。しかしそれをどういう諮問をするかということは、これは総理大臣が決裁をいたしまして、そうして国防会議に付議する、こういうことになると思います。
  99. 細田綱吉

    細田委員 だから国防会議ができたらそういう順序になると思うのです。今ないのだから、だからあなたのところで五カ年計画を立てておられるその年次計画はこうだということを、率直に御発表になっていいわけではないですか。何も遠慮しておることはないでしょう。大体立てておられるのだから、年次計画を持たなくて二年目でというようなことは、これはちょっと実際考えられませんよ。そこでまず伺うのですが、五カ年計画の内容はいわゆる軍の機密でございますか。
  100. 船田中

    船田国務大臣 現在においてはそういうものは何ら機密というものはございません。ですからこの委員会におきましても率直にあらゆる資料を提供してお答えを申し上げておるわけでありまして、(「出さないじゃないか」と呼ぶ者あり)ないものはしようがないわけでございます。昭和三十二年度から昭和三十五年度に至る年次計画と、それから機種、艦船、そういうようなものについてはまだきまっておりませんので、お示しすることができないということを申し上げておるので、決してそういうものを秘密にしておるということはございません。
  101. 細田綱吉

    細田委員 それじゃどうして五カ年計画あるいは六カ年計画なんという名前をつけるのです。国防会議でもあればそれはあなたのさっき御答弁になったように、一応そういう機構ができたんだから諮る前は発表をはばかるということもあるだろうが、今そんなものはない。しかもそれは昭和三十年度計画にこれ、三十一年度計画にはこれだ、これで十分じゃないですか。何もあえてあなたの方で五カ年計画なんという大きなのを――大きなのをというのじゃないが、そういう思わせぶりを言わなくたっていいのじゃないですか。
  102. 船田中

    船田国務大臣 これも決して防衛庁が進んで自慢そうにお示ししたというわけじゃないのであります。いろいろ質疑応答の際に、正直に申し上げた方がよかろうというので目標を申し上げただけでございまして、三十二年度から三十五年度に至る年次計画というものはこれから作るのですからして、まだお示しする段階に達しておらないということを正直に申し上げておるわけであります。
  103. 細田綱吉

    細田委員 尋ねるからもちろんあなたの方で御答弁になるのでしょう。(笑声)それは当然です。当然だけれども、どうして五カ年だとか六カ年だとかいう数字があなたの方の答弁の中に出てきたか。これはあなたの方で十二万四千トン、千三百機というような目標を立てて五カ年という数字がどうして出てきたというのです。これにはやはり年次計画というものは含まれていなくちゃならぬのです。これは当然ですよ。お尋ねになったからといったって、答えたならその中身がなくちゃならぬ。あなたは中身のない答弁をされておるのですか。それを一つ伺いたい。
  104. 船田中

    船田国務大臣 これは繰り返し同じようなことを申して恐縮でございますが、年次計画はまだ持っておりません。これから研究してなるべく早い機会に、政府案として防衛長期計画というものを持ちたいと考えております。
  105. 細田綱吉

    細田委員 日本自衛隊においては原水爆の何というか、私は専門のことは知らないが、これに関係の貯蔵はどうなっておるのですか。あるいはまたどういう御計画を立てておられますか。
  106. 船田中

    船田国務大臣 自衛隊が原水爆を持つというようなことは全然考えておりません。また今後も持つことはないと思います。
  107. 細田綱吉

    細田委員 アメリカ軍がオネスト・ジョンを持ち込んで今使っておられる。これは御承知通りであります。アメリカ撤退のときはこういうものを持って帰ってもらうのですか、どうですか。
  108. 船田中

    船田国務大臣 アメリカ軍撤退すれば、もちろんアメリカ軍が持ち込んだ兵器、弾薬等は大部分持ち帰ることと存じます。オネスト・ジョンにつきましては、昨年ずいぶん問題になりましたが、射程がそう長い距離でございませんので、海岸に上陸してくるものを撃退する、国土防衛をする上におきましては、オネスト・ジョン程度のものは、これは攻撃的兵器というのではなく、むしろわが方としては防御的なものである、かように考えております。
  109. 細田綱吉

    細田委員 そこで、それでは一つその基礎的なことを伺いたいのでずが、防衛関係のワク内で現在日本は戦力を持っておられるのですか。
  110. 船田中

    船田国務大臣 戦力という意味がただ単に戦い狩る、いわゆるポテンシャリティということでありますならばこれは警察隊も、あるいはわれわれ人間がおるということがもう一つの戦力だろうと思います。しかし現在整備しつつありまする自衛隊のこの程度のものでありまするならば、これは憲法九条に禁止しておるいわゆる戦力にはならない、かように考えております。
  111. 西村力弥

    西村(力)委員 関連。ただいま長官は、オネスト・ジョン的兵器は防御兵器として用いることを予想している、あるいは望んでいるのだ、こういうことでございましたが、それはオネスト・ジョンの性能のうちの射程距離だけを言うているのか、性能全体のことを言うているのか、いずれであるか明瞭にしてもらいたい。
  112. 船田中

    船田国務大臣 これは使い方によりまして、もちろん攻撃的兵器にもなると思います。手ぬぐいでも人殺しはできますから……。それかといって、手ぬぐいが凶器だとは私には考えられない。ですから、その使い方によってはオネスト・ジョンも攻撃的兵器になると思います。わが自衛隊といたしましては、ああいうものがもし米軍から供与されましても、これはどこまでも防御兵器として使って参りたい、かように考えておる次第でございます。
  113. 西村力弥

    西村(力)委員 防御的兵器としてという、そういう質問ではなく、ああいうオネスト・ジョン的なものを持ちたいというのは、あの性能全体を言うているのかどうかということなんです。あなた方は、オネスト・ジョンは弾頭にコンクリートをつけているから原子兵器じゃないと言うけれども、そんなことは世界の常識が許さない。兵器の常識からいうと、そんなことは許されないことなんです。今御答弁のように、オネスト・ジョンが供与されればそれは持って、そうして攻撃には使わなくても防御には使いたいという、そういうオネスト・ジョンを言う場合に、攻撃力を言うのか、性能全体を言うのか、どちらを言うのかということを御答弁願いたいのです。
  114. 船田中

    船田国務大臣 オネスト・ジョンは射程が、そう大陸間を飛ぶというような、いわゆるICBMといったようなものとは全然違います。しかしこれはいつかも問題になりましたが、原子弾頭をつけることができるかできないかといえば、つけることもできるということを聞いております。しかし原子弾頭のようなものを持ち込むことにつきましては、日米の間でもって同意が成立しなければ持ち込まないことになっております。またわが国といたしましては、原子爆弾を作るとか、あるいは持つとかいうことは全然考えておらない。従ってオネスト・ジョンにつきましても、これはわれわれとしてはどこまでも防衛兵器として使うようにしたい。もし供与ざれた場合においても、防御兵器として使って参りたい、かように申しておるわけであります。
  115. 西村力弥

    西村(力)委員 自分たちの善意に基く解釈はその通りだと思うのですが、オネスト・ジョンは、世界の常識では原子兵器だということになっているのです。それに目をおおってもだめだと私は思うのです。しかもオネスト・ジョンは、射程距離は二十キロから三十キロだということになっていますけれども、その破壊力は、私たちが知った範囲では、広島原爆の七割五分の破壊力を持っているという。しかもその命中確率は、富士山でのオネスト・ジョンの射撃に私は行ってみましたが、まことに確率はいい。ほとんど確実に命中するというくらいに言うていい。そういう点からいうて、あの兵器というものは局地戦争における原子兵器としての役割を十分に果すものだ、こういう工合に私たちは把握して、富士山麓において実験ざれることに徹底的に反対した。こういう立場を私たちはとっているわけですが、それをオネスト・ジョンは原子兵器としては持ち込まないと言うけれども、それは単なるこっちの希望だけであって、あの兵器を原子兵器として使用するという、発生から言うても、形から言うても、性能から言うても、あれが原子力兵器であることは畑違いないのだ、私たちはそう考えるのです。だからオネスト・ジョン的兵器を持つことを考えるということに対して、私たちは相当危険を感ずるわけなんです。その点については、今日本の国に原子兵器を持ち込まない、こういう日米間の約束があるというが、去年の国会で持ち込むか、持ち込まないか事前の連絡があるかというと、そういうことはないという答弁が鳩山総理から出ておるはずです。そういうところから言って、ますますオネスト・ジョンそのものが入る、あるいはこちらが供与を受ける、あるいはオネスト・ジョン的兵器を持つことが必要だという防衛庁考え方、そういうものに対して私たちは非常な不安を感ずるのです。そういう点一つ明瞭にしていただきたいと思う。
  116. 船田中

    船田国務大臣 自衛隊として今直ちにオネスト・ジョンの供与を受けたいということは米軍側に申し出ておりません。  なお先ほど私が答弁申し上げましたように、オネスト・ジョンが将来供与されるようなことがありといたしましても、これを原子兵器として使うということは日本は全く考えておりません。また米軍側といたしましても、原子弾頭を日本に持ち込むというようなことは日本政府の同意なしにはやらないという約束をいたしておるのでありまするから、私は米軍は持ち込まないであろうと信じます。
  117. 西村力弥

    西村(力)委員 関連ですから、あとは後日に……。
  118. 細田綱吉

    細田委員 先ほど、憲法にいわゆる戦力ではない、こう言われる。一つ言葉を変えて、自衛隊――隊だから軍隊ですか、それを一つ……。
  119. 船田中

    船田国務大臣 これは自衛隊法の制定されまする当時以来問題になっておりますが、軍隊というのはどういうものであるかという定義によりまして、今の自衛隊を軍隊と呼んでも私は差しつかえはないと思います。すなわち一定の指揮官がおって、制服を着て、そうして規律に従って行動する部隊でありますから、これは軍隊と呼んで差しつかえはなかろうかと存じます。しかしながら憲法は、御承知通り、平和憲法として、いわゆる陸海空軍その他の戦力を禁止するという規定もございます。ですから現在におきましては自衛隊というふうに呼んでおるわけでありまして、私は現在の陸海空の自衛隊、そうして大将とか中将と言わずに、陸将とか空佐というような名前を使っておることは適当であると、かように考えます。
  120. 細田綱吉

    細田委員 そうすると、軍隊ではあるが、戦力を持たない、こういうわけですか。
  121. 船田中

    船田国務大臣 その戦力という意味が、戦い得る力、ウオー・ポテンシャリティーという率直な意味におきましては、私は戦力のうちに入るかと存じます。これは戦力の解釈の問題ですから……。しかし私どもの言っておりますのは、憲法九条の禁止しておる陸海空軍その他の戦力、その中には入らない、こういうことを申しておるのであります。
  122. 細田綱吉

    細田委員 そうすると、日本自衛隊は戦力ではあるが、憲法第九条にうたってあるいわゆる戦力ではない、こういう御趣旨ですね。――そうすると、現在持っておる戦力と、憲法九条にいわゆる戦力とはどういう違いがあるのですか。
  123. 船田中

    船田国務大臣 たびたび申し上げるようですが、戦力という意味は、ただ戦う力だ、こういうことであれば、人間そのものも戦力になるわけであります。従って第一次大戦後においてドイツに課せられた条件として、警察隊は十万、陸軍は十万、海軍十万トンというような制限をされました。それは要するにウォー・ポテンシャリティというものの中に警察というものも含めて考えられたために、ヴェルサイユ条約によってそういうふうに制限をされたことは御承知通りであります。ですからそういう意味において戦力ということを解釈しますれば、非常にこれは広い意味でございますから、自衛隊も一定の規律のもとに制服を着て、そうして指揮系統がはっきりして、そうして行動をする部隊でございますから、これも軍隊といい、あるいは戦力ということができるかと思います。しかしながら御承知通り憲法九条においては、第一項、第二項を通じて、前条の目的を達するために陸海空軍その他の戦力を持つことはできない、交戦力はこれを持たないという規定がございます。そのいわゆる憲法第九条第二項にうたっておる、禁止しておる戦力ではない、自衛隊というものはその中には入らない、すなわち自衛権を行使する実力部隊である。憲法九条の禁止しておる戦力の中に入るものではない、かように考えるわけでございます。
  124. 細田綱吉

    細田委員 頭脳明晰をもって聞える船田長官の御説明を伺っておると、われわれ頭の悪い者はだんだん混乱してしまって非常にわからなくなってくる。そこで私は率直に軍隊と戦力との比較は――あなたの御説明が非常に長いものだから、どこにどういう御説明があったのか、さっぱり捕捉できないが、これは私の頭が悪いせいとしてそのままにしておきましょう。  そこで伺いたいのですが、自由民主党の憲法改正の原案がきょうの毎日新聞にでかく発表されておる。これにはどの程度の軍の存在を織り込んでおられますか。
  125. 船田中

    船田国務大臣 自由民主党の出しております憲法の問題点としてあげております中に、この憲法九条の問題が取り上げられておることは事実でございます。これは問題点として再検対をすべきであるというので、自由民主党がこうしようというその改正案とは違うのでございます。それには憲法九条の問題は取り上げておらぬ、問題点として取り上げておるわけであります。
  126. 細田綱吉

    細田委員 自由民主党の憲法改正草案には、これはもちろん党の責任者現実自衛隊責任者である長官関係されるのは当然だと思うのですが、あなたの今おっしゃったのには、問題点として取り上げている、こういうわけですが、問題点として取り上げているという内容が、われわれは長官総理の今までの答弁を総合してみての想像ですが、自衛のための無隊はいわゆる憲法九条の戦力じゃない、従って現行憲法九条の意味をはっきりきした程度において、自民党の憲法草案はそれを明確にしているのか、あるいは新しくそういう制限を撤廃しての自衛隊、軍隊を想定されておるのか、この点を一つ伺いたい。
  127. 船田中

    船田国務大臣 これも総理大臣及び私からたびたび答弁申し上げておりますように、現行憲法の九条は自衛権を否認いたしておりません。自衛権を否認しないということは、結局国情に相応する自衛体制を整備するということを否認しておらぬ、こういうことでありますから、現行憲法のもとにおいても自衛隊は違憲ではないということができるわけであります。しかし憲法全般について再検討する必要があるということで、憲法調査会法案も提出いたしているわけでありまして、憲法調査会ができましたならば、憲法全般について再検討をいたす、その再検討をする中に現在の憲法の第九条の問題も含まれる。これは私の希望でございますが、できるならば最小限度自衛体制は持ち得るものであるということを、やはり憲法に明記する方がはっきりしてよかろうと考えます。しかしそれは憲法調査会ができて、どういうふうにするかということは十分検討して、その上で結論を出していただきたい。かように考えているわけでございます。
  128. 細田綱吉

    細田委員 自衛体制の解釈を明確に甲乙なからしめるように今の憲法九条――要するに戦力というか、軍隊の問題を取り扱う、こう伺っていいわけですね。
  129. 船田中

    船田国務大臣 憲法九条の解釈につきまして、私どもは確信を持ってこの自衛権は否認しておらない。従って自衛隊を整備することは憲法九条に違反するものでない。政府はこういう確信を持って今やっているわけです。しかしそれにつきまして皆様方の方では御異論がある。そういう御輿論があるということは、やはり憲法九条の規定の文句に明瞭を欠く点もあるからかと思いますから、従って憲法を全面的に検討をいたし、改正するならば、そういう点について一点疑いのないようにし、なお祖国の防衛は国民の義務であり、国民全体が義務、責任として国土防衛に当るのだ、こういうようなことは私は憲法の上にはっきりした方がよかろうと思いますので、そのことを申し上げたのであります。
  130. 細田綱吉

    細田委員 何もあなたは声を大にして憲法全体を改正する場合はなんと言わなくても、私の今の質問は、一体現行憲法九条の方向を書き変えるのか、要するに自衛体制というか、国防体制を鋭く打ち出すために書き変えるのか、あるいは現行憲法の解釈で、自衛体制は否認していないというあなた方の解釈を明確にするのか、憲法全体のことなんか伺っているのではないのです。それを伺うのです。言いかえれば、憲法改正のときに現行憲法九条については、何条になっていくかそれは知りませんが、九条については皆さんの解釈を明確にした程度の条文の改正になるのか、あるいは自衛体制をもっと露骨に――露骨にといっては語弊があるかもしれないが、現行憲法のように変な条件をつけない文章にして、日本は自衛能力を持つ上から、軍隊、戦力を持てる、こう押し出すのか、これを伺っている。
  131. 船田中

    船田国務大臣 そのどういう文章にするかということを、十分憲法調査会において検討してもらうことがいいと思います。そうして私の希望といたしましては、やはり自衛体制を持ち得ることに疑いのないように、はっきりしてもらうことが必要であると思います。
  132. 細田綱吉

    細田委員 今の長官の御答弁は、答弁としては巧みかもしれないが、意味を捕捉するという意味においては、われわれは頭が悪いものだから全くわからない。あなたの答弁にぐるぐる引き回されて、これでは答弁と質問のイタチごっこになりてしまう。そこで具体的に伺いますが、この前あなたは私の質問に対して、また同僚の質問に対してもそうだったと思うが、急迫不正の侵害のあった場合には、こっちから行って基地をたたく――これはいわゆる憲法九条の問題をどうするかということよりも、具体的に伺いましょう。これはわれわれは非常に心配にたえないのです。急迫不正の侵害に対しては、あなた方のお考えは、行って基地をたたく以外には、祖国を防衛する道なしとお考えになっているのですか。
  133. 船田中

    船田国務大臣 この問題も、総理大臣及び私からたびたび答弁申し上げておりますように、これは理論的の問題として御質問がありましたので、理論的の問題として、自衛権の解釈といたしまして、急迫不正の侵害があって、そうしてこれを防ぐのに他に方法がない、このままおれば自滅するのだ、そういう自滅することを憲法は認めておるものではない。従いまして、誘導弾等によって侵略が行われる、そうしてほかに防ぐ方法がないときには、敵基地をたたくということも自衛権の範囲である、かように理論的の答弁を申し上げたわけでありまして、現実の問題としてさようなことをやるということを言ったのではございません。ことに参議院におきましても、海外出動をやってはならぬという院議も決定しておりますので、海外派兵とか海外出動というようなことは、政府としてはやらないということを、またここに再びはっきり申し上げておく次第でございます。
  134. 細田綱吉

    細田委員 政府としてはやらないのだが、理論的にそういう場合も考えられる、こういうわけなんですが、明治、大正、昭和を通じて、大東亜戦争に入るというようなことは、当時は理論的にも考えられなかったことです。世界を相手に戦争をおっ始めるということは、当時は全く理論的にも考えられなかったのだが、現実はそうなった。そこで今、理論的に考えられることを十分糾明しておかなくちゃならないのですが、あなたは閣内における総理の側近として十分おわかりだと思うが、あなたの意見としても、急迫不正の侵害があった場合には、基地をたたけばそれで祖国は守れるようにお考えになっているか。私の意見からいえば、急迫不正の損害が来たら向うの基地をたたく、そうすると必ず向うはしっぺ返しをする、また今度向うへ行ってたたく、これは完全な戦争状態に入る。そのときに日本は宣戦の布告のない戦争状態になるが、これは何だかかたわで、窮屈で、相手国に持ち込むところの武器なんかも拿捕できない、第三国船に対しては手も出ないということになる。こんなばかな戦争をやったら日本は手も足も出ない。一挙に参ってしまう。急迫不正の侵害があっても、あと続かないという前提なら別ですよ。次から次に基地をたたかれる。一カ所から三カ所、三カ所から十カ所たたかれる。また向うの基地もだんだんふえてくる。そんなことはきまり切っているのです。そこで、急迫不正の侵害があったら、行って基地をたたくというようなことは、向うが一基地を二基地に、二基地を四基地にふやすことを誘導する以外の何ものでもないと思う。また三機来るものは十機、十機来るものは五十機というように、だんだん熾烈な戦争状態に入ることを誘導する以外の何ものでもないと思う。だからこういうふうなことは、理論的に見ても、むしろ祖国をもっと早くつぶしてしまうことになる。大東亜戦争では民族が残ってしまったのだが、民族をもう一思いにつぶしてしまうということには忠実であると思う。けれども民族の永久の存在を信ずるならば、こういうことは、いかにも一見悲壮にして忠実であるかのごとく考えられるけれども日本国にとっては、あるいは日本民族にとっては、これほど危険なことはないと思う。(「じっと黙って受けているのか」と呼ぶ者あり)だからこういうことは、たとえて言うならば、ここで大坪先生が黙って侵略を受けておるのかということを言われているが、この前、同僚稲村議員が本会議の憲法調査会法案の反対討論の中でも述べたように、ガンジーが無抵抗主義をとったのに対して、アインシュタインがまれに見る現実政治家であると言って彼を激賞したというが、ちゃんとインドは時期を見て独立した。これはガンジーが独立さしたと言っても断じて過言ではない。あるいは第一次世界戦争のときに、御承知のようにフランスがドイツのルールを占領したでしょう。これは長官よく御承知のことだ。そのとき、ドイツのルールの労働者はゼネラル・ストライキをもって臨んだため、どうにもしようがないのでフランス軍は撤退したでしょう。あえて急迫不正の侵害に対して、武力と権力による制圧に対して、行って基地をたたく以外には手はないというがごとさ考えは、最近巣鴨から出てきた戦犯の某大将が、日本は負けたと思ったから負けたんだと言って、なお焦土戦術の余地があり、それを遂行したら日本軍は勝てたというがごとき印象を強く持たせる言辞を吐いているのと、どうも長官の御意見は隔たりがないと思う。どうも私は、荒木大将が出てきて突拍子もないことを言って、この人は少し頭が牢獄ぼけして出てきたのかと思うのだが、しかしあれが偽わらざる片の将官級の現状だと思う。八千万、九千万国民の生命などへでもない。自分の命令一下何でもできると思っている人たちの偽わらざる考えである。これは急迫不正の侵害に対しては、私は二つの例をあげたけれども、これを撃退する有効適切な手は幾らも例があると思う。ところがあなたにしても総理にしても、急迫不正の侵害があったら行って基地をたたく、飛地をたたいたら向うはなくなってしまうのだ、こういうようにお考えになっているならば、これはきつき冒頭申し上げたように、さらにたたかなければならぬ基地をまた多数にし、急迫不正に侵略してきた敵勢をより多く増す以外の何ものでもないと私は思う。非常に危険な御思想だと思うのだが、これに対しては急迫不正の侵害に対して、総理を初め防衛庁長官も、一にかかって行ってその基地をたたくにあり、こういうふうにお考えになっているらしいが、まさに現状においてもさようでございますか、伺ってきます。
  135. 船田中

    船田国務大臣 ただいま敵基地をたたくという問題についていろいろ御意見がございましたが、これは先ほども申し上げましたように、きわめてまれな場合であろうと思いますが、理論的にそういう御質問があったので、ただ自滅を待つということは憲法の趣旨ではなかろう、他にどうしても防ぐ方法がないというときには、敵基地をたたくことも自衛権の範囲内である、こういう解釈を申し上げたのでありまして、現実の問題としてそれをやろうというようなことを申したことはございません。また今後におきましても、いわゆる先制攻撃とか、あるいは海外出動というようなことは、これはやらないというのが政府方針でございます。自衛体制を整備するということは、そういう急迫不正な侵害な事前に防ぐ保障である、かように考えるわけでありまして、今御質問の御懸念になっているような点はむしろ私は逆でございまして、自衛隊が整備されればそういう懸念はなくなってくる。これは過去の歴史をごらん下さればきわめて明瞭なことだと思います。政府としてはどこまでも先制攻撃を加えるとか、あるいはいわゆる自衛の名をかりて戦争をしかけるとか、あるいは海外出動するというようなことは絶対に考えておらないのでございます。
  136. 細田綱吉

    細田委員 それでは私は実はまだ十四項目あるが、八項目しか終っておりませんけれども、今日はこの程度でやめておきます。
  137. 山本粂吉

    山本委員長 本日はこれにて散会いたします。    午後四時三十二分散会