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細田委員 政府としてはやらないのだが、理論的にそういう場合も
考えられる、こういうわけなんですが、明治、大正、
昭和を通じて、大東亜戦争に入るというようなことは、当時は理論的にも
考えられなかったことです。
世界を相手に戦争をおっ始めるということは、当時は全く理論的にも
考えられなかったのだが、
現実はそうなった。そこで今、理論的に
考えられることを十分糾明しておかなくちゃならないのですが、あなたは閣内における
総理の側近として十分おわかりだと思うが、あなたの
意見としても、急迫不正の侵害があった場合には、基地をたたけばそれで祖国は守れるようにお
考えになっているか。私の
意見からいえば、急迫不正の損害が来たら向うの基地をたたく、そうすると必ず向うはしっぺ返しをする、また今度向うへ行ってたたく、これは完全な戦争状態に入る。そのときに
日本は宣戦の布告のない戦争状態になるが、これは何だかかたわで、窮屈で、相手国に持ち込むところの武器なんかも拿捕できない、第三国船に対しては手も出ないということになる。こんなばかな戦争をやったら
日本は手も足も出ない。一挙に参ってしまう。急迫不正の侵害があっても、
あと続かないという
前提なら別ですよ。次から次に基地をたたかれる。一カ所から三カ所、三カ所から十カ所たたかれる。また向うの基地もだんだんふえてくる。そんなことはきまり切っているのです。そこで、急迫不正の侵害があったら、行って基地をたたくというようなことは、向うが一基地を二基地に、二基地を四基地にふやすことを誘導する以外の何ものでもないと思う。また三機来るものは十機、十機来るものは五十機というように、だんだん熾烈な戦争状態に入ることを誘導する以外の何ものでもないと思う。だからこういうふうなことは、理論的に見ても、むしろ祖国をもっと早くつぶしてしまうことになる。大東亜戦争では
民族が残ってしまったのだが、
民族をもう一思いにつぶしてしまうということには忠実であると思う。けれ
ども民族の永久の存在を信ずるならば、こういうことは、いかにも一見悲壮にして忠実であるかのごとく
考えられるけれ
ども、
日本国にとっては、あるいは
日本民族にとっては、これほど危険なことはないと思う。(「じっと黙って受けているのか」と呼ぶ者あり)だからこういうことは、たとえて言うならば、ここで大坪先生が黙って侵略を受けておるのかということを言われているが、この前、同僚稲村議員が本
会議の憲法調査会法案の
反対討論の中でも述べたように、ガンジーが無抵抗主義をとったのに対して、アインシュタインがまれに見る
現実政治家であると言って彼を激賞したというが、ちゃんとインドは時期を見て
独立した。これはガンジーが
独立さしたと言っても断じて過言ではない。あるいは第一次
世界戦争のときに、御
承知のようにフランスがドイツのルールを占領したでしょう。これは
長官よく御
承知のことだ。そのとき、ドイツのルールの労働者はゼネラル・ストライキをもって臨んだため、どうにもしようがないのでフランス軍は
撤退したでしょう。あえて急迫不正の侵害に対して、武力と権力による制圧に対して、行って基地をたたく以外には手はないというがごとさ
考えは、最近巣鴨から出てきた戦犯の某大将が、
日本は負けたと思ったから負けたんだと言って、なお焦土戦術の余地があり、それを遂行したら
日本軍は勝てたというがごとき印象を強く持たせる言辞を吐いているのと、どうも
長官の御
意見は隔たりがないと思う。どうも私は、荒木大将が出てきて突拍子もないことを言って、この人は少し頭が牢獄ぼけして出てきたのかと思うのだが、しかしあれが偽わらざる片の将官級の
現状だと思う。八千万、九千万国民の生命などへでもない。自分の命令一下何でもできると思っている
人たちの偽わらざる
考えである。これは急迫不正の侵害に対しては、私は二つの例をあげたけれ
ども、これを撃退する有効適切な手は幾らも例があると思う。ところがあなたにしても
総理にしても、急迫不正の侵害があったら行って基地をたたく、飛地をたたいたら向うはなくなってしまうのだ、こういうようにお
考えになっているならば、これはきつき冒頭申し上げたように、さらにたたかなければならぬ基地をまた多数にし、急迫不正に侵略してきた敵勢をより多く増す以外の何ものでもないと私は思う。非常に危険な御思想だと思うのだが、これに対しては急迫不正の侵害に対して、
総理を初め
防衛庁長官も、一にかかって行ってその基地をたたくにあり、こういうふうにお
考えになっているらしいが、まさに
現状においてもさようでございますか、伺ってきます。