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1956-03-13 第24回国会 衆議院 内閣委員会 第22号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年三月十三日(火曜日)     午前十時五十一分開議  出席委員    委員長 山本 粂吉君    理事 大平 正芳君 理事 保科善四郎君    理事 受田 新吉君       大坪 保雄君    大村 清一君       北 れい吉君    小金 義照君       椎名  隆君    薄田 美朝君       辻  政信君    床次 徳二君       福井 順一君    眞崎 勝次君       松浦周太郎君    宮澤 胤勇君       粟山  博君    横井 太郎君       飛鳥田一雄君    石橋 政嗣君       稻村 隆一君    西村 力弥君       細田 綱吉君  出席国務大臣         国 務 大 臣 清瀬 一郎君         国 務 大 臣 倉石 忠雄君  出席政府委員         内閣官房長官  根本龍太郎君         法制局長官   林  修三君         行政管理政務次         官       宇都宮徳馬君  委員外出席者         議     員 山崎  厳君         専  門  員 安倍 三郎君     ――――――――――――― 三月十日  委員永井勝次郎辞任につき、その補欠として  下川儀太郎君が議長指名委員に選任された。 同月十二日  委員横井太郎辞任につき、その補欠として田  村元君が議長指名委員に選任された。 同月十三日  委員田村元君及び江崎真澄辞任につき、その  補欠として横井太郎君及び松浦周太郎君が議長  の指名委員に選任された。     ――――――――――――― 三月九日  宮内庁法の一部を改正する法律案内閣提出第  一〇七号)  行政機関職員定員法の一部を改正する法律案(  内閣提出第一〇九号) 同月十日  国家公務員に対する寒冷地手当及び石炭手当の  支給に関する法律の一部を改正する法律案(黒  金泰美君外一名提出衆法第一九号) の審査を本委員会に付託された。 同日  薪炭手当制度化に関する陳情書  (第三三  五号)  薪炭手当制度化等に関する陳情書外二件  (第  三八七号)  公共建設行政の一元化に関する陳情書  (第四〇二号)  東北地方薪炭手当支給に関する陳情書外十二  件  (第四〇四号)  新潟飛行場の移転に関する陳情書  (第四二一号) を本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  憲法調査会法案岸信介君外六十名提出衆法  第一号)  昭和二十三年六月三十日以前に給与事由の生じ  た恩給等の年額の改定に関する法律案内閣提  出第一〇一号)  宮内庁法の一部を改正する法律案内閣提出第  一〇七号)  行政機関職員定員法の一部を改正する法律案(  内閣提出第一〇九号)     ―――――――――――――
  2. 山本粂吉

    山本委員長 これより会議を開きます。  憲法調査会法案を議題とし、質疑を続行いたします。稻村君。
  3. 稻村隆一

    稻村委員 ちょっと林法制局長官質問をしたいのですが、二十二国会参議院会議において、木下議員質問に対して、あなたはこういうことを言っておられるのです。「憲法九十六条の条文からはっきりいたしますように、これは国会国民の関係をきめたものでございまして、国会がこういう憲法改正国民に対して発議されるにつきましては、あらかじめその意思決定議案についてなされることが必要であるわけでございます。その意思決定をするについての議案を誰が発案するかということにつきましては、憲法九十六条は直接にはきめておらないわけでございまして、これは憲法一般原則から解釈すべきものであるわけでございます。それにつきまして国会議員提案権を持っておられることは、これはもちろん申すまでもございません。しかし憲法七十二条の規定からいって、内閣提案権を持っておるということは、理論的に言えることだと存じておるわけでございます。」この調査会法案の問題でありますが、それにつきまして、九十六条は直接それをきめておらない、きめておらないから憲法一般原則から解釈すべきものである、こうあなたは言っておられる。憲法一般原則からいえば、たとえば調査会法案にいたしましても、憲法問題の規定に対する一切の提案権は、どうしても立法府に専属しているものだと思うのです。あなたはこれは憲法一般原則から解釈すべきものである、こう言っておられるのに、七十二条をここへ持ってきまして、一般法律予算などと同じように、政府においても提案権あり、こういうふうに言っておられるのは矛盾しておると思うのですが、これはどういうわけでありますか、お答えを願いたいと思います。
  4. 林修三

    ○林(修)政府委員 昨年の参議院会議で、ただいま稻村委員からおっしゃられました通り私答弁しておるわけでございますが、そこでは結局憲法九十六条に「各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、」というところの「発議云々言葉は、国会国民に対して発議する手続をきめたものであろう、さように解釈いたしますということを申し上げました。この三分の二の議決は、国会国民に対して発議する場合の必要要件、かように考えるわけであります。従いまして、今度各議院がその二分の二をもって議決すべき議案をだれが国会において提案をするか、この問題はこの憲法九十六条には直接書いてない。これは他の憲法規定あるいは憲法解釈からきめるべきものである、その意味で私は一般原則という言葉を用いたわけであります。その意味は、今の憲法のほかの規定あるいは憲法趣旨から考えて、こういう議案提案権をだれが持つかということから考えるべきものだという意味で申し上げたわけであります。その一つの手がかりとして、第七十二条には「内閣総理大臣は、内閣を代表して議案国会提出し」とあります。この言葉を主体といたしまして、現在の日本憲法はもちろん三権分立建前をとっておりますけれども、いわゆる議院内閣制建前をとっております。従いまして、内閣法律案あるいは予算案提案権を当然持っておると同様な意味で、憲法改正原案提案権を理論的には内閣も持っておると考えてしかるべきものである。これは一つ根拠として七十二条があげられる。他の規定からいってもこれを排除する規定はない、こういう意味で申し上げたのであります。一般原則と申しますのは、結局九十六条以外の規定、そういう規定解釈としてそう解釈すべきものだ、そういうわけであります。
  5. 稻村隆一

    稻村委員 しかし、それは私どうもおかしいと思うのです。憲法一般原則からいいますと、ほかの国の例を出すわけではありませんが、主権在民憲法というものは歴史があり、きまっておる。イギリスだってアメリカだってそうです。イギリスのようなところは不成文憲法ですから、もし憲法を勝手に解釈するならどうにでも解釈できる。けれども憲法問題に関するあらゆる法律国会だけが取り扱う慣例になっているわけです。日本国憲法アメリカのものを模範としているのは間違いないのですが、アメリカ憲法条文を調べてみても、政府憲法問題に対してくちばしを入れるということは絶対にないだろうと思うのです。だから、内閣憲法問題にくちばしを入れるということは憲法原則に反している、こう思うのです。ところが、七十二条をもって内閣にも提案権があるというふうなことは、これは絶対に間違いであるというふうに解釈するわけなのです。それはこの前も清瀬さんとの問答のときにも私申し上げたのですが、政府権限を制約するために憲法が制定されておる。ところが制約される政府憲法問題の原案を作るというふうなことは本末転倒しておるのであって、これは絶対に間違いだと思う。これは付論のようになりますけれども憲法一般原則からいって七十二条によって内閣提案権があるなどということは理論的にいっても矛盾しておるし、また実際問題としても主権在民憲法をとっている外国の例からいっても、これは間違っていると思うのです。こういうはっきり規定していない場合は、これはあくまでも法律的には立法府のみが憲法の問題に口ばしを入れることができるのであって、内閣が口ばしを入れるのは明瞭に憲法違反であると考えるのですが、七十二条を持って参りまして内閣提案権ありと言うがごときは、そういう解釈をして鳩山首相の間違った憲法改正提案権内閣に置いても差しつかえないというふうなことは、これはどうも法制局あたりの三百代言的な解釈がこういうふうな憲法違反をやって平気でおるということになるのじゃないかと私は思うのです。あなたの言うこと自身も憲法原則からいって、これは原則はきめるべきであるということを言っているんですから、憲法原則からいけば当然これは立法府以外にはやれないと思っているのですが、私法律のことはよくわからないのでもう一度はっきりあなたからお聞きしたいと思うのであります。
  6. 林修三

    ○林(修)政府委員 実際問題として、将来の日本政治慣行が果してどういうふうにいくかということは別問題として、特に理論的な問題についてだけお答えいたしますが、現在の憲法改正議案提案についての考え方は、学説三つあることは御承知だと思います。第一は、法律案についても内閣提案権がないという考え方、それに立って当然憲法改正議案提案権がないという考え方一つございます。それから法律案については内閣提案権は認めるけれども憲法改正については提案権は認めない、さらに第三の説としては、法律案についても認め、憲法改正についても認めるという三つの説がございますが、私どもとしては最後の説が一番合理的だと考えておるのであります。その理由としましては、先ほど来申し上げました通りに、憲法九十六条の文句そのものからは、実はだれが憲法改正議案国会提案するかということは、直ちに出てこない。従いまして他の憲法条文なり規定趣旨とするところから解釈しなければならない。それにつきましてはこれらの憲法趣旨議院内閣制建前をとっております。憲法七十二条というものがございまして、内閣法律案予算その他の議案内閣を代表して総理大臣が出すことを認めておる。そこから考えて、憲法改正議案だけ提案権を認めない、それを区分けして解釈すべきものじゃないのではないかと考えております。憲法改正議案提案することはあくまで提案権でございまして、それについての御決定は、あくまで国会両院の総議員の二分の二の議決でなされるわけであります。その提案をだれがするかということについて、憲法改正の場合とその他の法律案予算議案というものとを、しかく厳格に区別するだけの理由はないのじゃないかとわれわれは考えております。先ほど申しましたように、実は今の憲法からいって法律案についても内閣提案権を認めない、憲法改正提案を認めないという説もございますが、これはただいまの憲法解釈としては、私どもはどうも取り得ないのじゃないか。第二の法律案提案は認めるけれども憲法改正議案だけは認めないというのは、今申し上げました理由で、それだけの根拠はないのではないか。従って法律案提案権内閣に認められておると考える。それからまた今の内閣制度アメリカのような完全な三権分立ではございませんで、いわゆる議院内閣制度をとっております。衆議院基礎として内閣制度ができておる。この建前から申しまして、内閣憲法改正議案提案権を認めることが、しかく条理に反するということではないと私どもは考えております。むしろ憲法七十二条等の規定から申せば、当然理論的には認めてしかるべきものと考えるわけでございます。実際の慣行上はいかなる取扱いをするか、あるいは政治慣行上いかなる取扱いをするかということは、これはまた別問題でございまして、それはそのときどきの考え方あるいは政治慣行できまっていくべきことと私は思うわけであります。理論的には今中しました通りに、内閣憲法改正議案提案権を認めないという根拠はどうも出てこないと考えておるわけであります。
  7. 稻村隆一

    稻村委員 議院政治だから内閣提案権を認めるのが妥当である、こういうお考えですか。
  8. 林修三

    ○林(修)政府委員 憲法七十二条の趣旨から申しましても、これはアメリカのように完全な三権分立建前で申せば、アメリカでは行政府は一切の議案提案権を持っておりません。すべて議員提案でやるわけであります。日本憲法制度衆議院基礎を置いたいわゆる議院内閣制度をとっております。イギリス流考え方でございます。そういうところから申せば、内閣提案権を持つということは、しかくこの憲法趣旨からいっても条理に反することではないわけであります。また憲法七十二条は明らかに総理大臣内閣を代表して議案国会に出すことを認めております。この議案の中には予算案はもちろんのこと、法律案の入ることも一般に認められておるわけであります。同様な理由憲法改正議案が入らないという根拠はないのじゃないか、逆に申せば入る、かように考えるべきものじゃなかろうかと考えておるわけでございます。
  9. 稻村隆一

    稻村委員 一体法律というものはやはり実際の政治的ないろいろな習慣とかいうふうなものを考慮の上に適用を考えなければならぬと思います。単に条文から解釈できないと思うのです。今あなたのおっしゃるように、なるほど日本アメリカのように三権分立ははっきりしていない、その点はこの前にも私清瀬さんとの問答のとき申し上げたのですが、アメリカははっきりしておる、ところが日本はそれがはっきりしていない、イギリスと同じ議院政治です。従って議会の多数党の代表者内閣を組織するというわけですから、そこで立法府の多数の代表者が同時に行政府の実権を握るわけなのです。それがアメリカと少し違うところで、そこで非常にあいまいになってくる。憲法精神からいえばそういう料神から法律適用を考えるのは当然なのです。それなら議院制というものがこの基本的人権をじゅうりんすることがないかどうか、こういう点をまず考慮しなければならぬので、これは君主とかあるいは大統領というものが勝手に独裁権をふるうことができるという場合はむろん危険です。危険ですが、だからアメリカでは三権分立をはっきり規定しているわけなので、あれだけアメリカ大統領が絶大な力を持っておっても独裁政治になることを防ぐのは、やはり立法府もしくは立法権司権法が厳然と独立をしているからなんだ。ところが日本とかイギリスの場合においては、多数党の代表者が同時に行政権を握る。これは場合によっては非常に強いものになるわけです。ヒトラーの場合はワイマール憲法の破棄も何もしないのですから、これは暴力でとったわけじゃない。議会の多数党として政権をとった。そうして絶大な権力をふるって、行政権力を握ると同時に実際上立法府権限を全く奪ってしまった。こういうふうな独裁政治が生れるわけです。憲法国家としてむろん多数決に従うのが民主主義原則であるが、しかし多数派が少数派人権を蹂躪したり基本的人権を蹂躙していいはずがない。これは多数派独裁です。レーニンが多数派独裁を唱えた。それがブルジョア・デモクラシーをくつがえしたのです。これは多数派独裁議論です。これはやはり少数派人権を蹂躙することになるのです。憲法少数派人権を守るのが憲法だと私は思う。そこで議院内閣であるからといって、多数党が横暴することはどうしても阻止しなければならぬ。そういう立場から多数党政府といえども憲法問題に対して容喙するということは、憲法制定精神に反すると私は思う。すなわち政府権力を適当の度合いにおいて制約して、少数派といえども少数派の個人でも、その自由を守るというこの憲法精神に全く反しておると私は思う。内閣提案する、憲法問題に容喙するということは——だから議院制であってもイギリスでは、先ほど申しました通り、不成文憲法ですから、解釈によってはどのような解釈もできないことはないわけだ。ところが憲法上の規定に対しては、御存じ通りイギリスでは議会以外は絶対に容喙しないことが慣例になっておる。それが議院政治の常道からいっても本旨である。それを七十二条を持ってきて内閣提案権があるというがごときは、三百的の議論だと私は思う。そういう法制局解釈内閣をして、鳩山首相をして憲法違反をやらしめる原因であると私は思う。その点よほどあなた方注意してもらいたい。
  10. 林修三

    ○林(修)政府委員 ただいままで私が申しました解釈は、決して政府独善的解釈と思っておらないわけでございまして、これは先ほど申しました通り御存じのように、憲法九十六条の憲法改正議案提案権をめぐっては幾つかの説があるわけでございますが、私が先ほど申し上げましたような説が、これは学界におきましても比較的多数説だと私は存じております。そういうところからもこのお説は私は合理的なものと実は考えておるわけでございまして、決して独善的に憲法解釈云々という考え方からいっているわけではないことを御了承願いたいと思います。これは結局内閣がかり提案いたしましても、決して国会権限を奪うわけでも何でもないわけでありまして、この出た議案につきましても、九十六条の規定によりまして、両院議員の二分の二の賛成をもって議決しなければ、憲法改正国民に対する発案はいかにしても成立しないわけであります。かりに内閣議案提案するということを認めましても、それが直ちに国会権限をどうしたということにならない、かように考えておるのであります。今のは法律論でそう申し上げたのであります。実際論といたしましても、これは御承知のように、今の内閣というものは議院内閣制でありますから、実は国会の多数党と内閣長安一体のものでございます。従いましてあるいは閣僚が議員として提案することももちろんできるわけであります。そこに実は議院内閣制のもとにおきましては内閣提案することと、議院の多数党が提案することと、実際問題としてはあまり差がないのではないか。もうばら理論の問題だろうと思うのであります。理論的には、先ほど申しましたように、今の憲法解釈としてはそれを排除するものはないというのが、私としては正しい解釈だと考えております。
  11. 稻村隆一

    稻村委員 幾ら言ってもこれは並行線で解決のつかない問題であります。むろん内閣原案を作って提案したところで、これは議会の二分の二の賛成がなければ提案できないのですから、それはわかっておる。わかっておるけれども、実際上政治の面からいきますと、これはたとえば過去における政党政治を見ても、政友会あるいは憲政会全盛時代、いわば多数派独裁の横暴の事実があったわけです。それが日本憲法政治——たとえば明治憲法でも、これはやはりほんとうに正しくこれを守っていったならば、あのような日本政治の悲劇はなかったと思うのです。それを多数派独裁で勝手なことをやるものだから、ああいうふうなことになったと思うのです。なるほど衆議院の三分の二の賛成がなければこれは提案できない。それはわかり切っております。しかし実際問題としてこれは多数党の首領が政権を握って、そうして勝手なことをやろうと思えば何でもやれるわけです。党議によって勝手なことを押え、そうして勝手なことをやる、こういう事実は、事実ワイマール憲法下におけるヒトラーの行動がそうであったわけです。そういうことを防ぐのが憲法ではないか、こう思うのです。従って何度も繰り返すようですが、イギリスのような国は、立法府以外は憲法問題に関与しないことになっておる、政府権限を制約するための憲法であるのに、政府が悪法問題に容喙する、原案を作るということは、これはもう本末転倒して、間違いなんです。憲法精神に間違っておる。条文解釈からいえば、なるほどいろいろな理屈もあるだろうし、三つの説があるでしょう。日本学者もそういう説をとっておる人があることは私も知っておりますが、しかし憲法精神からいえば絶対にこれは間違いである。おそらく主権在民憲法を持つ国においては、憲法が簡単に改正できるようになっている国は、ニュージーランドかどこかあるだけであって、他はほとんど御承知のように硬性憲法といって、憲法改正はなかなかできないようにしてある。それはできないようにしてあるのは多数党といえども何であっても、権力を握ったものが勝手な解釈によって憲法を蹂躙したり、少数派といえども国民の自由を蹟翻しないようにしてあるのが、各国の主権在民精神だと思います。それで今あなたが言われた三つ学説のうち第二番目の学説が、一番憲法歴史慣例に適応したものだと私は思う。しいて三百的な議論をもって——三百的というか、そういう解釈をしている人も日本学者にありますけれども、それは憲法歴史とかそういうものを知らないというわけではないが、そういうことを無視した議論であると私は思う。これは討論のようになりますけれども、このごろ憲法違反の事実が非常に多い。憲法に違反して平気でおるのです。これは最も悪いことなんです。立憲政治家としてこれくらい悪いことはない。そういうふうなことを平気でやられるのでは憲法があっても何にもならない。そういう意味からいかなる意味においても政府権力を制圧するために憲法が制定されたのに、制圧されるべき政府原案を作るなどということは絶対に間違いである、こう考えるのであります。七十二条の通用はあなたの一つ法律理論であって、憲法の実際論でない、こう私は考えるのですが、それに対しましてもう一度あなたのはっきりした御意見を承わりたいと思っております。
  12. 林修三

    ○林(修)政府委員 わが国の憲法解釈といたしましては、今まで申し上げたことを繰り返すほかないと思うわけでございます。日本憲法趣旨から申しまして、この改正条項をきめております。憲法九十六条ではこの提案権のことについては直接に触れておらない。結局憲法の他の条章の規定、あるいはその趣旨から解釈するほかないと思うわけであります。それにつきましては憲法七十二条が一つのよりどころになるわけであります。これで内閣にも議案提案権を認めておる以上、これについで憲法改正議案だけを排除する理屈憲法条准からも出てこない。その根拠としては先ほど申し上げましたように、内閣議院内閣制で、結局国会における多数党を基礎としてできておる。決して、非民主的な行政権というものが今の日本憲法でできているわけではないのでありまして、すべて国会の信任のもとに議院内閣制という制度になっており、内閣提案権を認めることが憲法趣旨にそう反するものでもないと考えるわけであります。まして七十二条の根拠もある。こういう考え方で先ほどから申し上げておるわけであります。もちろんこの憲法原則が民主的な基礎に立っておることは、これはもう申すまでもないことでありますが、そういうことから申しまして、必ずしも内閣提案権を認めることが著しく文理上反するということにはならないと私は思うので、これはあるいは見解の相違になるかもしれませんが、そういうふうに考えておるわけであります。
  13. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 ちょっと関連して……。今の稻村さんの問題に関連して私もちょっとお伺いしたいのですが、憲法九十六条それ自体からは、いずれに提案権がありやを判定することは不可能だ、こうあなたは今おっしゃるのですが、私はそうは思わないのです。というよりはむしろこの憲法をもう一度読んでいただきたいと思います。九十六条を読んでみますと、「この憲法改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民提案してその承認を経なければならない。」こう書いてあるわけです。ここでは発議という行為提案という行為とを二通りに厳格に分けて規定しているわけです。もしあなたのように、内閣にも国会に対して提案権があるんだということになれば、そしてそれを承認するかしないかは議会の自由だ、議会がこれを承認すれば国民提案してよろしいんだ、従って議会権限を侵すものではない、こうおっしゃるならば、「国会が、これを発議し、」という言葉は要らないはずです。各議院の総議員の三分の二以上の賛成国会国民提案して、その承認を経なければならないと書いても十分に意味がわかるはずです。ところが、特に「これを発議し、」と入れているところにこの九十六条を厳格に解釈していくべき手がかりがあるわけです。もしそうだとすれば、「これを発議し、」という言葉を重点的に特に入れた意味を考えていただきたい。そういたしますならば、発議という行為がどのようなことを意味するかと申しますと、発議という言葉の中には当然起草と、これを言い出すことと、両方を含むはずです。そういう意味でこの九十六条それ自身が、いずれに憲法改正案を提案する権利があるかをおのずから決定しているはずです。こういう点でもう一度発議と承認とこの二つを厳格に分けたところから出発させて御説明いただきたいと思います。
  14. 林修三

    ○林(修)政府委員 九十六条の条文は、ただいまお読み上げになりましたように、国会が両議院のそれぞれ三分の二の賛成をもって発議し、そうして国民提案するといっておるわけです。ここにいっております発議という言葉は、あくまで国会国民のこととしてこれを書いてあるはずだと私は思うわけです。先ほど申し上げました説もそういう説をとっておるわけであります。従いまして、これは国会法等では、ある場合には議員の方が国会議案提案されることについて、この発議という言葉を使っている場合もございますけれども、この憲法の九十六条の規定は、あくまでその文理解釈から申せば、国会国民発議し、提案するということに書いてあるわけです。それについては三分の二の同意が要るということになるわけであります。この発議を今おっしゃいました提案言葉まで広げて考えますと、結局憲法改正議案国会に出すについても三分の二の賛成がなければならぬ、こういうふうに文理上なってくるわけであります。それはどうも憲法解釈としては不自然ではないか。議案提案について三分の二の同意を要するものとは書いてないではないか、つまり国会国民に対して発議し、提案する議案をきめるについての三分の二の同意、かように解釈すべきものだと思うのであります。従ってそこにいっております発議は、国会国民に対して提案するものを決定する、そういう意味発議と、こう読むべきものだと考えるわけでございまして、その前提としての議案提案ということは、この発議という言葉の中には入っておらないものだ、かように考えるわけであります。
  15. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 今発議ということは国会国民との関係だと、こういうふうにおっしゃったのですが、結局それは先ほど僕が第一に発した疑問のように、発議提案というものを二つに書き分ける必要が一体どうしてあるのですか。発議国民国会との関係であるならば、提案もまた国民国会との関係でなければならないはずです。二重にその議論をここで展開する必要はないので、これはともかく発議提案というものとは別個の関係であって、発議それ自身の中には提案権を含み、場合によっては調査権までも含むというふうに解釈していかなければ、その文理を正確に解釈できないじゃないか、こう私たちは思うのですが、いかがでしょう。
  16. 林修三

    ○林(修)政府委員 ここで発議といっておりますが、国会国民提案すべきものとしての意思を決定するという意味で、発議という言葉を使っていると思います。それで国会が意思を決定したものを国民提案する、そういう意味で、発議し、これを提案するという言葉を使っているものと考えます。発議という言葉国民に対して提案すべき憲法改正の案を国会意思決定をする、そういう意味で使っておる。それ以上に出ないものと、かように私は考えるのでございます。
  17. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 それならば発議し、という字はなくてもよいのですか。
  18. 林修三

    ○林(修)政府委員 国会が三分の二の同意をもって意思を決定する、そういう意味にこれを使っているものと私は考えるわけであります。しかし直ちに「提案して、」と書くとあいまいになるわけであります。「国会が、これを発議し、」という意味は、国会が意思を決定して、しかる後にこれを国民提案する、そういう意味としかこれは読みようがないと考えるわけでございます。その前提としての議案の調査というものはこれに入ってくる、これは文理解釈から申しましても、これを必ずしもそう読めないじゃないか、いささか不自然じゃないか、かように考えておるわけであります。
  19. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 これがないとあいまいになるからなんという解釈をいやしくも憲法の字句の解釈にしていただくことは不謹慎だと思います。当然憲法に、これを発議し、同時に国民提案をしてと分けて述べている以上は、分けて述べているように私たちは解釈をし、その分けた理由がなぜであるかをはっきりとつかんでいかなければならないはずです。ところがあなたの提案権に関する御説明を承わっておりますと、国会がこれを発議しという言葉はなくても十分に九十六条は通ずることになります。このように言葉を無視していくような解釈が正しいものであり得るかどうか、私ははなはだ疑問だと思う。ことに先ほどのあなたの御説明は、発議というのは国会国民との関係だ、こういうふうにおっしゃったが、二度目の御説明によると、発議というのは国会国民提案すべき原案を定めることだ。そしてその原案は、さらに国民提案するという特殊の行為を待って初めて国民との関係が具体的に生じてくるのだ、こういうような御説明でしたが、前の説明とあとの説明と違うじゃないですか。むしろこの発議ということは、国会原案を定めることだというふうにあなたは言われた。そのことが正しいはずです。原案を定めるはずだ。原案を定める行為だとするならば、その原案を定めるということの中に、当然起草とその原案決定することと二つを含むというのは、少くとも法律常識からいって正しい解釈じゃないか、こういうふうに私たちは思うわけです。どうでしょう。
  20. 林修三

    ○林(修)政府委員 どうもそうならないと思うのでございまして、発議提案ということが国会国民の関係であることは先ほど申し上げた通りでございますが、しかしそれを分けて考えれば、まず国会が自分の国民提案すべき憲法改正案を意思決定する必要がございます。その意思決定として三分の二の同意をもって両院がこの憲法改正案を議決すれば、それによって国会国民に対して発議する案ができるわけであります。それを国民提案して、そこで国民投票に待つ、こういうことになるわけであります。その発議というのは、あくまで国会国民提案すべき案をそこで確定するという意味にこれは使ってあるもの、やはり国会国民の関係で使ってあるもの、かように考えます。国会がそういう議案を確定するにつきましてのもととなる議案をだれが出すかということは、この発議という言葉には含まれない。これは別の規定から解釈する、かように考えるのが九十六条の文理から申しましても私は自然であると考えております。
  21. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 この問題は水かけ論ということにしておきましょう。それじゃさらに一歩進んであなたは憲法第七十二条で、内閣提案ができる、こういうお話でした。同時にまたこの七十二条だけではわからないから、いろいろな諸関係の法案を見て決定する、こういうお話でした。それじゃ伺いますが、憲法七十二条を有権的に解釈したものとして、内閣法第五条があるのじゃないですか。
  22. 林修三

    ○林(修)政府委員 内閣法五条は、この憲法七十二条を受けて制定されたものと思うわけであります。この中に法律案予算その他の議案提案しと書いてございます。憲法改正議案が書いてないじゃないかという御質問だろうと実は思うわけでありますが、これにつきましては、憲法改正ということはまことに異例なことで、めったにあることでもございません。従いましてここにはっきり書くことがいいかどうかというようなこともございまして、内閣法制定の際にその他の議案ということに含めて考えておったわけでございます。
  23. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 そこで私は清瀬先生とあなたに伺いたいのですが、七十二条の有権的な解釈として内閣法五条が——これはあなたと私の間に意見の違いはない。もしそうだとした場合に法律案予算案その他の議案というふうに上からこう並べて参りましたが、「その他の議案」などという言い方の中に憲法改正提案を含めたような、そういう各国の解釈なり、あるいは法案があるならお聞かせをいただきたい。少くとも私たちが長年日本法律を読んで参りまして、何々その他の議案とか、その他の問題とかいう場合には、この「その他」ということの中にはきわめて軽微なものを含ませるというのが常識です。ところがこの「その他」という言葉の中に日本の国の運命を左右するかもしれない憲法改正案などを含ませるということが法律の常識としても——いや、それよりも下って国民の常識としてもあり得るかどうか、こんなばからしいことをおっしゃるから私たちが納得しないのです。もし世界の法令の中で法律案予算案、その他、この「その他」という中に憲法改正を入れているものがあるなら教えていただきたい。私は清瀬先生とあなたのお二方に教えていただきたいと思います。こんなことで国民が納得しますか。
  24. 林修三

    ○林(修)政府委員 内閣法はもちろん憲法七十二条を受けているわけでございますが、内閣法第五条で例示しておりますのは、通例毎国会に起りますことを例示しているわけであります。あくまで前のは例示でありまして、「その他」というのは、これだけにとどまっておらないことは明らかであります。従いまして今おっしゃいましたように、普通起らないようなことを「その他」という言葉に含めることは、これは立法技術としては幾らもあることであります。  それからまた憲法規定の七十二条の解釈から、先ほど申しましたのは、私は当然これは入るものと言っているわけであります。それをまた内閣法で排除するということはできないはずであります。憲法上入ってくるものを内閣法の規定によって排除する、あるいはつけ加えるということはできないはずでございまして、当然これは憲法規定を受けて赴いてある規定でございますから、憲法解釈から入るものをここで排除したということにはならない、かように考えているわけであります。それでこの憲法改正云々ということをここに書きませんでしたのは、先ほど申しましたように、これは通例起ることでもございませんし、きわめて異例のことでございますので、ここに明らかに古くことは果していいかどうか、そんな配慮もございまして、これはのけたものと考えているわけであります。
  25. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 文部大臣のお話を伺う前にあなたに伺いたいのですが、私たちも、長年法律を扱っておりますが、何々その他といって、その他ということの中に起り得ることの予想できないようなものを含めるということについてはわかります。時代はどんどん進歩していくのですから、通常の今のわれわれの法律概念ではとらえ得ないものが出てくるだろう、そういうものを「その他」といって弾力性を持たせておくということはわかります。あなたは今この憲法について希有のことだ、通常ないことだといって、その他の中にはうり込んでしまおうとするのですが、冗談を言ってはいけません。憲法改正する可能性があることはちゃんと憲法九十六条に書いてある。予想できるのです。憲法を絶対に改正しないということはないのです。そのために憲法九十六条はあるのです。従って憲法九十六条は日本の法体系の上から、改正という事態が絶対ないということを言えないことを証明している。それではその他の起り得べきことを予測できないものの中に入れることは不可能です。同時にまた希有であるからこれを規定しておかなかったというのは、それこそ今稻村先生の言われた三百代言的な理屈じゃないですか。私たちはナポレオン法典が時代とともに百年間のよわいを保ったということを知っております。なるほどナポレオン法典ができましたときには、風車小屋と馬車しかなかった。ところがその後自動車ができ、飛行機ができた。そういうものをやはりその他というような意味でくくっていく解釈でこの中に入れてきた。そうして百年のよわいをナポレオン法典が保ったということを知っておりますが、しかしこれは予測できない人智の発展をくくっているだけです。ところが憲法の問題は、改正が明確になっているのですよ。それを希有の例だから、あるいは予測できない例だから「その他」などという言葉の中に入れてしまうのだという解釈をあなたほんとうになさるのですか。私はあなたの法律学者としての誠実に問うて聞きたいのです。そうしてまたもう一つつけ加えさせて下さい。あなたは日本憲法を順守する義務があるはずです。僕らもあります。順守ということは、これを守ってたがわないというだけでなしに、大事にしていくということを含んでいるはずです。ところが文字の枝葉末節にこだわるつもりはありませんが、日本国の根本的な精神規定すべき憲法を、「その他」などというものの中に入れて平然としていらっしゃるのか、これも伺いたいと思います。
  26. 林修三

    ○林(修)政府委員 内閣法第五条が憲法七十二条を受けていることは、先ほども申し上げた通りでありまして、また七十二条に入るものを内閣法第五条が排除することのできないことも当然でございます。憲法七十二条の解釈としまして、先ほば来申し上げました通りに、私どもとしては、また一般の多数の学説としては、憲法七十二条等を援用いたしまして、内閣にも憲法改正議案提案権があるという解釈をしておるわけであります。そういう解釈憲法上成り立つ以上、内閣法のみによってそれを排除することは考えられないことであります。内閣法は当然そういうものを受けて書いてあるわけです。ただこれをここに書かない理由でございますが、これは先ほど申しましたように、法律案予算案のごとく、毎国会起るものではございません。希有のことと申しますか、あるいは異例のことと申しましたのは、もちろん憲法改正憲法は予想しておりますけれども、毎国会起るようなものでないということは、これは明らかなことであります。いわゆる例外的の、めったになかなか起らないものだという考え方でございます。  もう一つは、こういうことを申していいかどうかわかりませんけれども内閣法制定の当時は、まだアメリカの占領下にございまして、そういうときの情勢ということも、一つの配慮の中にあったことは御了解願っておきたいと思います。
  27. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 問題をそらしたりずらしたりしちゃだめですよ。もっとぶっつけ合って、焦点を合して質疑をするなり議論をしたいと思います。  先ほどあなたは、憲法七十二条の有権的な解釈として内閣法五条がある、こうおっしゃったのですから、そのことについては意見が一致したのです。もしそれならば、内閣法五条で「法律案予算その他」、この「その他」の中に憲法を入れるのはおかしい、こういうことになってくれば、七十二条を解釈して内閣法五条を作るときには、憲法改正のための草案を提出する権利を内閣に認めなかったんだ、こういわなければならないはずでしょう。それならば政府は、この内閣法の第五条の改正提案しなければならないはずです。ところが内閣法の五条をほうっておいて、こっちで都合が悪くなるとこっちに逃げ込んでくる。この前受田さんが七十二条について質問をしたときに、あなたは内閣法五条のところに逃げ込んできて、「法律案予算その他の議案」この「その他の議案」の中に入ります、こういうふうにあなたは説明して、こっちに逃げ込んだじゃないですか。今度はこっちから僕が追い上げると、こっちに逃げていって、内閣法五条は必ずしも七十二条の全部ではない、排除できない、こういうふうな追っかけっこみたいな議論はよしましょう。僕があなたにはっきり伺っておきたいのは、「その他」という言葉の中で、憲法改正案などを取り扱うような世界の各国の側があるかないか。当然あなたは、世界の各国の例についてお調べになっている職制上の義務があります。日本で世界の歴史上始まって以来の珍無類の例を、ここでお作りになるのかどうか、教えていただきたい。これは清瀬先生にも教えていただきたいと思います。
  28. 林修三

    ○林(修)政府委員 外国の例につきましては、それぞれの各国の立法例もあることでありますから、一概に申し上げられないと存じますが、日本の今の内閣法の解釈といたしましては、決して私は憲法解釈内閣法の解釈をあっちこっちにしているわけではございません。「その他の議案」の中に入るのだ、内閣法の中に入るのだということを最初から申し上げておるわけでございます。これは憲法七十二条の解釈として、そういうものが入ることが排除されていない以上、内閣法も当然そういうことを予測して占いたものだ、こういうことを申し上げておるわけであります。決して内閣法に入らないというようなことを言っておるわけではございません。「その他の」という言葉は、これは法文の解釈といたしまして、当然にそういうものを含み得るものだ、それをあげたことがいいか悪いか、立法技術として、あるいは立法政策としての御議論はあろうと思いますけれども、それをもって直ちに内閣法がこれを予測していなかったものだということにはならないものだ、かように考えているわけでございます。
  29. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 一つ文部大臣に教えていただきましょう。
  30. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 政府委員のおっしゃった通りで、別段新たにつけ加えることはございません。ただしかし、もし申し上げるならば、国会国民発議するまでに、その案を三分の二以上で決するのでございます。これは九十六条にあります。三分の二以上で決するというのには、だれかが議案提出しなければなりません。今日の議事法では国会議案提出されるのでありまして、そうして七十二条には「内閣を代表して議案国会提出し、」とありまするから、国会議案提出する権能はやはり内閣にあるものと私は信じております。
  31. 稻村隆一

    稻村委員 関連して……。これは私この前も清瀬さんと議論みたいになったんですが、しかし清瀬さんは憲法学者であり法律学者なので、私は法律は何も知りませんが、これはどうもおかしいんですよ。憲法国民政府権限を制約する目的で制定されたものであることは間違いないと思うんですが、そうすれば、いかに議院政治でも、制約されるはずの政府がみずからの原案を作るということはどうもおかしい。これはちょうどどろぼうが窃盗罪の原案を自分で作ると同じことなんですよ。そんなことは絶対ないと思うのですが、どうですか清瀬さん、そうお考えになりませんか。それはっきりさっき言った通り、多数党政府だと横暴なことをやるから、それを制約するための憲法でしょう。その憲法原案政府が作るということは、どろぼうが窃盗罪の原案を作ると同じですよ。そんなばかな話はあったものじゃない。
  32. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 たとえをお引き下さるから、私もたとえを引くことを許してもらいたいが、どろぼうでも、自首して、私を成敗して下さいと言うことはあるのです。今の内閣議院内閣で、決してどろぼう的立場でありませんので、ある意味においては議院代表者とも言える。しかしながら昔はそうでなかった時代がありまして、憲法の発達はむしろ政府の横暴を防ぐにあったことはあなた御承知通りでございます。そういう時代でも、政府すなわち国の方が憲法提案した事実は歴史上あるのでございます。御了承願いたいと思います。わが国がそうと言うと当りさわりがありますけれども、もとの憲法も欽定憲法でございます。
  33. 稻村隆一

    稻村委員 それはそういう古い時代、おくれた時代にはそういう事実があるでしょうが、いやしくも主権在民といわれるこの憲法のある国においては、そういう例は絶対にないと私は思います。これは議論になりますけれども、どんな理屈を持ってきましても、権限を制約されるはずの政府がその憲法原案を作るということは、これは憲法違反ですよ、間違いです。この主権在民憲法からいって、絶対に違反だと私は思うんです、今の日本国憲法精神からいって。  そこでたった一言、話は別になりますけれども、これで、私は清瀬さんにお聞きして、私の質問を終りたいと思います。  この前私は清瀬さんに、国家の問題を質問いたしました。清瀬さんはそれに対してルソーの言葉を引かれて、国家は土地と人民と主権である、こう言われた。ところが、この間受田委員及び西村委員の御質問に対して、清瀬さんは、国家に忠誠であるのは当然だ、だれが国家に忠誠でないなどという人間があるか、そういう者は間違いだ、こういうことを言った。私はここで、決して議論のための議論をするのではないのです。それは日本の過去の政治において、国家主義というものがいかに民権主義を圧迫して日本を破滅させたか、こういう事実をわれわれは体験している。その国家万能主義の台頭を非常にわれわれはおそれるわけです。そこで国家に忠誠ということは、ただ常識的に普通の人がそう言うのはまあそれをいろいろ問いただす必要はありませんが、憲法問題の議論のときに、国家に対して忠誠という言葉を使うのは、聞き捨てならないのです。そういうことは、また国家主義を台頭させ、反動的な専制政治を台頭させる原因になると思う。大体国家というものは、一つのメカニズムであって、国民の道具なのです。むしろ国家が国民に奉仕をすべきものであって、国民が主人公ですから、何も使用人の国家に忠誠である必要はない。それを国家に忠誠とか何とかいうことは非常な間違いで、そういう考えが、たとえば自由党の原案では、天皇が国家を代表するということになるわけです。これは大へんな問題であります。それから天皇を元首にするということとこれと結びつけることは、大へんな問題になってきます。これは明治憲法と同じような専制政治に転落する危険性がある。こういうことを私は心配するものでありまして、あくまでも国家は国民のための道具であって、国民が国家に忠誠であるというふうなことは、絶対間違いであります。そういう考えで憲法を起草されては、たまったものではないのですが、その点に対して、あなたはそういう考えが国家万能主義を台頭させる危険はないかどうかということをどう考えておられるか、お聞きしたいと占うのであります。
  34. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 非常に根本的な御質問でありまして、あるいは失礼にわたるかもわかりませんが、国家に関する観念は、二通りあろうと思います。一つは、国家がすべて主権を持っておるものだ、国家は万能だ、学問をするのも、文化を育てるのも、すべて国家のためだというような全体主義的考えであって、これが今のソ連の考えでございます。また、もとのドイツ式の考えもそれに似ております。一方、わが日本が終戦後取り入れましたこの憲法の思想、あるいは刑法その他日本の思想はそうではなく、いわゆる自然法主義の思想によっておると思います。すなわちフゴ・グロティウスから、しまいにはルソーに至るまでの考えで、人間は個人が絶対権を持っておる。しかしながら、集団生活をするために、そのうちの一部の主権を国家に渡してある。渡した以外のものは基本的人権、渡した部分は国家に譲渡——デレゲートしておるのだ、こういう考えが、アメリカ独立の時分の考えであり、それがずっとアメリカに残っておって、この現在の憲法もそうなっておるのだと思います。私はその後の方に賛成です。今回憲法改正するについても、人民主権、基本人権、平和主義は変えないと鳩山さんは言っておられますし、私も言っておる。この考えは後の自然法主義の考えでございます。たとい自然法主義の考えで、基本人権は残っておる、人間が生まれたときに得た権利は死ぬまで残っておるとしても、集団生活をするために、そのうちの一部を国家に供出しておるのです。一たん国家に供出した以上は、約束であります。主人が使用人に忠誠を尽す必要はないではないかとおっしゃるけれども、あなた方のやっておらるる労働運動もそれであります。労働協約をした以上は、会社の方に対して、労働者は約束だけは忠誠に守らなければなりません。それと同じく、われわれの主権を一たん国家に供出した以上は、供出した主権の範囲内においては国家の言うことを聞かなければならぬ。それを忠誠とわれわれは名づけておるのであります。この言葉歴史的なものでありまして、ニュアンスというか語感というものから申しますと、今、忠という字を使うと何だか古いような感覚でありますが、あのくらい民主主義アメリカ大統領でも、アイゼンハワーは就任の前に忠誠——ロイアルティのオースをやっております。それと同じく、今言った格好で近代国家、自然法主義の国家ができましても、国家に与えた主権の範囲内において、われわれが国家に従い、ひとり従うのみならず、国家のために尽すということは、決して軍国主義に戻る道ではございません。むろん憲法改正委員会ができまして、委員諸君がおきめになるのでありますけれども、今私の心のうちをお聞きになるならば、全体主義国家とか、ソ連、中国のような国家を私は夢見て、憲法改正しようという考えでないことはおわかりであろうと思います。
  35. 稻村隆一

    稻村委員 清瀬さんのそういうことを聞いて私安心したのですが、しかし国家に忠誠などという言葉を使うことは、憲法上の問題で非常に聞違った考えを与え、また憲法原案を作る上においても、間違ったことをやることになるのであります。この前も触れましたが、自由党並びに改進党案を見ますと、いずれも天皇を元首にする、こういっている。そういうことが実際政治の場面になると、必ず私は、例の一億玉砕とか何とかということになって、そういう専制政治の方向に日本を向けるようなことになると思うのであります。それは、天皇を象徴にしておくことは私は差しつかえないと思います。たとえばイギリスの国王は元首といっているけれども、実際は君臨するが統治しないのですから、象徴であります。日本ははっきり第一条に、象徴ということをうたっている。それを象徴をやめにして今度は元首にするということになると、非常に危険が伴ってくるわけであります。そこでたとえば明治憲法のもとにおいても、天皇が非常に平和論者であった。明治憲法ではすべては大権に属するから、平和論者の天皇がこうだと言えば、戦争でも何でもとめられたわけです。ところが一つの慣習で天皇が非常に憲法を守る慣習をもっておられたので、東条氏が言うてもだれが言うても、それに対していかぬと言わない。つまり、内閣の助言によって、自分の意思を表明しないで内閣の言う通りに一切の裁可を与えるということになった。すなわち天皇を元首にして、そこでかりに天皇が国家の権力を代表していわゆる元首として象徴から力を持ってきて、そうして天皇が直接政治に口ばしを出さないでも、そこにやはり明治憲法時代と同じように、大体において天皇をとり巻く専政主義者の連中が勝手なことをやる危険性が出てくる、私はこういう考えを持っているのですが、改進党や自由党の原案には天皇を元首にするという考えが出ておりますが、そういう考えを清瀬さん、山崎さんは持っておられるのですか。
  36. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 これも言葉の連想、語感がありまして、日本憲法を書く以上は国民のきらうような文字はやはり避けた方がいいと思います。ただ事実申しますと、元首という言葉は、国際法で使った言葉を明治時代に日本が翻訳したオーベルハウプトという言葉であります。決して悪い意味言葉じゃなかったのであります。そのエッセンスを言いますと、一つの国を代表する人を元首と言っておるのです。条約に署名するとか大使公使の信任状に署名するとか、向うから来た大使を接受するといったようなことを言うので、決してさきに言いました全体主義国家だけが使う言葉じゃなかったのです。しかしながら明治憲法に天皇は国の元首にしてという言葉がありしまして、明治憲法がある点において失敗をいたしました。それゆえに新しい憲法を書くのには何らかそこに工夫は要るだろうと思います。しかしながら一つの国をなす以上は昔からの国際法で言う元首はきっとあるのです。大統領が元首の国もありますし、ベルギーのようなキング、実権は全くない、平民と同じくらいですけれども、ここにも元首をこしらえております。われわれが今の憲法に不平なことは、翻訳調で英語みたいなものを書いている、それが第一よくないのです。それと同じくまた非常に古典的なおどかしのような大きな文字を使うことも考えものだと思います。私ども属しておりました改進党は元首は要ると考えましたけれども、最後の成案には天皇は元首としてという文字は抜いておるのであります。何かの形で国の代表が要るのでありますが、日本言葉の豊かな国でありますから何かこれを考えるべきものじゃないか。そこらの点は委員会で十分に研究して下さることと信じておるのであります。
  37. 山本粂吉

    山本委員長 細田君。
  38. 細田綱吉

    ○細田委員 まず第一に林さんの言葉の中にちょっと気にかかるものがあったのですが、憲法ができたのはちょうど米国の管理下にあったからというようなことを言われたのですが、管理下にできたから従ってその解釈はゆがめて解釈していいのだ、それはどういう情勢下に置かれてもはっきり改正してからそうすべきか、その点を一つ伺っておきたいと考えます。
  39. 林修三

    ○林(修)政府委員 私の申しました趣旨はそういうことではございませんで、もちろん先ほど申しましたのは法律のことでございまして、憲法のことではございませんが、法律につきましてももちろんあるものの条文によって解釈すべきものと思います。しかし先ほど御質問がございまして、内閣法五条に憲法改正議案ということが出ておらぬじゃないかというお話がございましたので、それの一つ理由としてそういう事情を申し上げただけでございます。もちろんしかしその他の議案という言葉の中に入るのだということを先ほど申し上げたのでありまして、歪曲して解釈する云々ということではございません。その点は御了承を得たいと思います。
  40. 細田綱吉

    ○細田委員 なおあなたの先ほどの御説明の中に、日本内閣議院内閣制をとっている、国会と表裏一体だ、だから言いかえれば憲法改正原案をどっちから出してもいいのだというような結論に持っていかれたのですが、これはあとで伺うこととしまして、議院内閣制であるから国会内閣というものの混同をある程度までしていいのか、これは厳に戒めなくてはならない。その点を一つ清瀬国務大臣から伺いたい。
  41. 林修三

    ○林(修)政府委員 これは国会立法府でございます。内閣行政府でございますから、やるべき仕事の範囲は憲法の条章によっておのおの分れておるもの、かように考えます。しかし私が先ほど申し上げましたのは、ただいまの憲法の立て方ではいわゆる議院内閣制で、多数党が内閣を組織するという考え方でございますから、内閣というものが国民の意思から離れてできているものではない、そういう意味で申し上げたわけでございます。
  42. 細田綱吉

    ○細田委員 憲法の七十二条と九十六条でございますが、九十六条は七十二条に対しては特別規定の関係ではないかと思いますが、その点はどうですか。
  43. 林修三

    ○林(修)政府委員 これは先ほどから御説明いたしました通りに、九十六条は国会憲法改正の案をみずからの意思を決定して発議する、国民に対して発議提案するという手続をきめたものでございまして、その国会がみずからの意思として発議すべき議案をだれが国会提案するかということには、九十六条は直接触れておらない、そういう意味のことを先ほどから繰り返して申し上げたわけでございます。従いまして、この七十二条はむしろそういう場合の議案提案権内閣に認めたものでございますから、九十六条に対して特別法、一般法というようなことになる関係ではなくて、別の関係のもの、かように考えるわけであります。
  44. 細田綱吉

    ○細田委員 七十二条は内閣法律案議案提出することができるということであり、九十六条は憲法改正の場合にのみ規定しておるのです。一般法と特別法の関係か、もう一度伺いたい。
  45. 林修三

    ○林(修)政府委員 憲法の九十六条は、先ほどから申し上げました通りに、七十二条を排除して、憲法改正議案国会議員のみが国会に出すということを書いてあるわけではございませんで、先ほどから御説明いたしました通りに、これは国会はみずからの意思として憲法改正の案を国民提案すべきものとし、この案を決定する手続を書いてあるわけであります。その決定の手続に至る前に原案をだれが出すかということについては触れておらない、かように考えるわけでございます。従いましてこの九十六条は国会議員のみが出すということをきめておらないわけでございますから、七十二条に対する特別法にはならない、かように考えております。
  46. 細田綱吉

    ○細田委員 非常に乱暴な御意見ですが、それではかりに、たとえて申しますならば国会の中に予算編成審議会法というようなものをこしらえて、大体政府の出すものをほとんど国会でやって今度はこういうふうに出せということをしたらば、これはどういうことになるか。あるいは個々の裁判を、裁判準備法とでもいいますか、この殺人事件は死刑が相当である、あるいはまた懲役十五年が相当である、こういうことを下調べして判事に突きつけようじゃないかということで、国会が裁判の事実上の調査を引き取る、そうするとこれは裁判の言い渡しは裁判官がやるので、ただデータ、材料を提供するだけなんだ、予算提案政府がやるので、ただ資料をこしらえるだけなんだというようなことが、国会の中で、たとえて言うならかりに裁判審議会とか予算編成審議会というようなものをこしらえたら、これは三権分立建前からどうなりましょうか。
  47. 林修三

    ○林(修)政府委員 先ほどから申し上げておりますことは、憲法改正議案国会議員のみが出すものか、あるいは内閣にも提案権があるかということでございます。これは憲法のほかの条章から考えて、議院内閣制ということから内閣にも議案提案権がある、こういう前提から御説明しただけであります。その議案の中に法律案も入れば憲法改正議案も入る、そういう意味で申し上げておるわけでございます。ただいまおっしゃいましたような裁判の問題とか、あるいは予算提案問題とかと、少し別の意味でこれは申し上げておるわけでございます。いわゆる国会が審議すべき議案法律案あるいは憲法改正議案、あるいは予算というものをだれが国会に出し得るか、これについては、法律案についてただいま国会議員及び内閣が出し得ることは、これは一般に認められております。で、そういうものと同じ意味で、憲法改正議案国会議員のみならず内閣も出し得る、こういうことで申し上げておるわけでありますから、今おっしゃいました例とは相当方面の違うことだと思います。
  48. 細田綱吉

    ○細田委員 かなりあなたのは牽強付会の説だと思うのですが、憲法九十六条は、これは一般法、特別法に関係はないのだ、一般規定と特別の規定との関係はないのだとあなたは言われるのだが、それは一目瞭然であり、学者もそう言っておる。九十六条は憲法改正について言っているだけなんです。七十二条はこれは一般の場合、従って憲法改正については九十六条で、あえて七十二条にかかわらない、これは特別の規定をしているのだということは、学者のだれしもが言っているところです。そこでこの問題は国会発議提案することは議員であればいいのだというならば、その原案といいますか、発議するもとの原案はだれがこしらえてもいいのだということになれば、裁判を言い渡すのは裁判官だから、具体的な刑事事件についてはどうしようと国会一つ審議して、こいつを裁判官に突きつけようということと同じことではないですか。あるいは予算だって同じことではないですか。要するに七十二条は内閣権限一般規定をしてあるのに対して、九十六条は特別の規定なんです。従って憲法改正については、先ほど稻村さんが言った実際はどろぼうが原案を作るようなものである。行政権というべらぼうにでかい権能を持っている人がああじゃ都合が悪い、こうじゃ都合が悪い、そういう感覚で法律原案ができるにきまっております。行政執行の過程において不便だということが原案に盛られるのは当りまえでしょう。そう思いませんか。あなたは野におられたことがあるかどうか知りません。大学を出ていきなり役人になったからそういうことはわからないかもしれませんが、国民から言うと行政権というものはべらぼうにでかい、強いものである。その行政権をあずかっている人がああいうのじゃ都合が悪い、こういうのではおれたちは都合が悪い、こういうときには軍事基地なんかひったくってでもこしらえよう、こうしたら人民が文句を言いやがってしようがないからそういうふうに直したらいい、そういうふうに行政権を担当する者は直したがる。単なるニュアンスの問題ではない、当然そうなる。過去の歴史でもそうでしょう。そうでない歴史がありますか。先ほども飛鳥田君から申し上げましたから私は聞きませんが、大体憲法改正で国王がみずから自分の権利を制限して出したなんということがありますか。日本の欽定憲法だってそうでしょう。明治十年から十五、六年の間にあの熾烈な議会設立のほうはいたる運動を阻止できなくて欽定憲法ができた。内閣という膨大な権力を持っておる人たち、こちは憲法改正するということはその都合のいい角度からできる。だから九十六条というものが特別規定でできた。それをあなたの今の御説明では発議原案をこしらえるのだからいいのだと言うけれども、そういうことであると先ほど稻村さんのおっしゃったボルシェヴィズムになってくる。だからこの九十六条でそれを制限しておる。今飛鳥田君の言ったようにこれは国会議員の専権です。専権だけがその専権を行使する前の原案はいいのだということになれば、さっき言った裁判所の判決の原案をこしらえるのと同じなのである、予算案原案をこしらえるのと同じなのである、これはどうお考えになりますか。
  49. 林修三

    ○林(修)政府委員 憲法九十六条は、先ほどから申し上げました通り憲法改正の手続をもちろんきめたものでございますけれども、これは国会がその憲法改正原案国民に向って発議し、提案するについての手続でございます。その意思決定については、国会議員の二分の二の同意が要るということでございます。これはあくまで国会権限でございまして、それを内閣がかり提案をいたしたといたしましても、この九十六条の手続を排除するわけにはもちろんいかないのであります。当然に提案したものについて、九十六条の手続に従って国会がそれぞれの議員の三分の二の多数によって御決議になるわけであります。こういうその国会で審議すべき議案、これはもちろん国会議員がお出しになることは当然のことでございますけれども日本憲法建前から、議院内閣制から申しまして、多数党を基礎とする内閣議案提案権がある、こういう建前から御説明しておるわけであります。これは裁判所に議員が入られてそこで原案を作るというのと全然違うわけでありまして、国会において裁判判決を作るということはあり得ないわけであります。その議案国会に出すということもあり得ないわけであります。そういうものとは全然これは違うものだと私は思います。
  50. 細田綱吉

    ○細田委員 あり得ないといっても、国会の中で予算編成審議会というものを法律でもって持って、内閣にそれを突きつけてこれを出せということであるならば、これはどうなりますか。裁判所だってそうでしょう。同じくあなたはあり得ないと言うけれども、何も裁判をやるというのじゃないのです。裁判の材料を提供するというのです。しかし文字通りそれは強い力になって裁判を圧迫するのです。内閣予算提案権を圧迫するのです。あなたは先ほどから三分の二と言うけれども、反対する野党が三分の一以上あるならば憲法改正は出さない、出ない。言いかえれば三分の二以上の憲法改正の与党があるときに、憲法改正原案というものが発議されるのです。完全にこれだったら多数派独裁です。そういうふうになっていってしまう。これは別としまして、あなたは先ほどから予算の編成や裁判の問題とは違うと言うけれども、どういう点が違うか、国会の中でそういう法案を、あるいはまた具体的な事実を、予算を審議するという関係においては、それは提案者じゃない、裁判者じゃないといったところが、材料をこしらえるのだということになったら、事実上圧迫するという点においては同じだと思うんだが、その点についてはどうですか。
  51. 林修三

    ○林(修)政府委員 これは内閣法律案提案し、あるいは憲法改正議案提案いたします。これは国会で御審議になる議案提案するわけであります。それは国会議員の方が国会議案をお出しになるのと同じようなものでありまして、その議案国会議決せられるならば、法律案の場合であれば多数の決議で両院を通過すれば法律になります。憲法改正議案である場合には、三分の二の多数で国会を通れば、これは国民に対する発議になります。しかし裁判というのは国会で幾ら御決議になりましても、これは裁判になりません。これは裁判所そのものがあくまでも裁判すべきものであって、議案というものは国会において御審議すべき材料として、憲法の手続によって出ておるわけであります。それを国会で御決議になれば、法律となり、憲法改正発議となるわけであります。
  52. 細田綱吉

    ○細田委員 あなたの御議論三権分立を全く無視している。先ほどもあなたの説明の中で、議院内閣制であるから国会と表裏一体になっているから、実際はそこはどっちでもいいという感覚からあなた方は抜け切らない。あなたは先ほどから繰り返し繰り返し言っておられるけれども予算提案権はどこまでも内閣憲法によって内閣、けれどもこういうふうに予算編成審議会なるものをかりにこしらえて押しつければ、これは文字通り内閣を圧迫する。そういうことをするならば、三権分立の、特に九十六条で現に憲法改正議院の専権としてうたっておる。それを七十二条にひっかけて、また内閣法二条か五条にひっかけて、そうしてこれはやはり一般だというようなことは、これは稻村さんの言ったようにまさに三百代言です。あなたのような学者が、これは立場上内閣の代弁をするよりしようがないかもしれないが、これは惜しい。と同時に、こういうことをやっておくと行政権が非常に強くなる。稻村さんが繰り返し言ったように、行政権が非常に強くなる。そうして最後には、何かというとまた戦前の日本を繰り返すようなことに一歩踏み出していくことになる。あなたは内閣の番頭として、御用学説を振り回すより以外にしようがないかもしれない。しかし明日の日本がそうなってきて苦労するのは若いあなた方です。法制局は特別の使命を持っておるのだから、ただ内閣の言う御用ぢょうちんを持っておればそれでいいというものじゃない。法制局法律解釈憲法解釈の上で、もっと権威ある御発表を願いたいということを申し上げて終ります。
  53. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 関連して。最後に一つ伺っておきますが、今後もこの提案権の問題は、私たちは何べんも御質問申し上げなければならぬと思います。そこできょうのようなぐるぐる回りをしないために、一つ法制局長官国民がこれを発議しという発議ということと、さらに国民提案してということの提案ということを、大学の法律の教科書に書いてあるような形で定義をはっきり聞かしていただきたい。その定義の上に立って今後さらに御質問申し上げよう、こう思います。それを聞かしていただきたい。  それからもう一つこれは清瀬さんに伺っておきますが、内閣憲法改正提案権というものを、内閣法五条の法律案予算案その他という言葉で片づけていくのが現内閣解釈であるか、そしてまたこれは自民党の立場であるか。これは全国の各大学の法律学者の間でも相当議論せられるでしょうが、その点明確にしておいていただきたい。私たちは少くとも憲法改正などという重大な事項を、その他などという言葉で解決していくということは信じられないのですが、その点明確にお答えをいただきたい。この二つだけ伺います。
  54. 林修三

    ○林(修)政府委員 先ほどから申し上げておりますことは、私どものほんとうの憲法解釈として申し上げていることでございまして、決して一時のことで言っているわけではありません。  それから今の飛鳥田委員の御質問に対してお答えいたしますけれども発議というのは、先ほどから何回も申し上げました通り、結局憲法改正の案を国会議決されまして、これを国民投票にかけてきまる、つまり憲法改正は二つの段階があるわけであります。憲法を三分の二以上の同意で国会が決議して、それを国民投票に付するものとして決定するということを発議という言葉が表わしていると思います。提案は、国民投票にかけられる、そのときに一々具体的な提案という言葉を使って発議案をきめるのか、あるいは憲法上当然国会憲法改正案を議決すればそれは憲法規定によって当然に提案されたことになるのか、この手続についてはなお研究の余地がございますけれども、いずれにいたしましても、この憲法改正の案を国民投票に付すべきものと国会決定するということが発議、それが国民提案されて国民投票にかけられる、こういうことだと思います。
  55. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 ただいま説明の通りでございます。  それから御質問ではございませんが、われわれの言うことを明らかにするために一つ付加しておきたいと思います。具体的にこのものを考えますと、憲法改正の際には、九十六条で三分の二以上の賛成というまでに、国会一つの手続があろうと思うのです。かりに名前をつければ、日本国憲法改正発議に関する件といったような案が出ようと思います。これがすなわち国会議案でございます。この国会議案はむろん国会議員参議院衆議院——国会法じゃ定足数がありますが、一定の数で発議されると思います。あるいは国会法がそのときは改正されて定足数を少し大きくすることはあり得ますけれども、今ではこちらは二十人、向うは十人というような定足数で議案が出て、その議案に対して賛成反対があるのです。その議案を出すことは、七十二条の議案国会提出するというこの文字に含まれると思います。かくのごとくしてもし三分の二の賛成が得られると、その次にどうなるか、今法律はございませんが、きっと国民投票法とでもいうべき法律ができまして——日本国民にこの議案を知らして投票するだけの数カ条の法案はいると思います。その議案のうちには、国民にどう提案するか、あなた方がおっしゃる通り部分的に提案するか、あるいはまた一括提案をするかとか、議案はどうして国民に知らせるとか、投票は記名か無記名かといったようなそういう法案が出ようと思いますが、その法案によって、それが選挙管理委員会のような政府と別な団体ができて、国民にこれを公示するのかあるいは政府がお世話するのか知りませんが、最後には国民提案して賛否を求める。その提案発議するのはすなわち国会の三分の二で発議する、こういう順序にいくものと想像しておるのでございます。お問いのことにつきましては、林法制局長官の申した通りでございます。
  56. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 その他という言葉解釈をしておられるということに間違いありませんか。
  57. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 その通りでございます。
  58. 山本粂吉

    山本委員長 受田委員
  59. 受田新吉

    ○受田委員 今林法制局長官は、内閣法第五条は、この法案ができた当時の国会は占領下における国会であった関係上、憲法改正の問題を含むことについていろいろの気がねもあって、そういう意味も考えられたということを答弁されたが、さよう了承してよろしゅうございますか。
  60. 林修三

    ○林(修)政府委員 国会においてそうということは申しませんが、私ども内閣法を立案いたしますときに、そういうことを申していいか悪いかこれは問題でございますけれども、多少そういうことが内部においてあったということを申し上げたのであり、なす。
  61. 受田新吉

    ○受田委員 内部にあったことがこのまま法案の中に現われて、内閣法第五条は当然総理は内閣を代表し、内閣提出憲法改正案、法律案予算案その他の議案と出すべきところを引っ込めたような形になるのではないか。
  62. 林修三

    ○林(修)政府委員 しかし先ほど申し上げました通り憲法規定から当然解釈せらるべきものを、内閣法がそれから縮めるということは考えられないことでございます。内閣法で書いてありますことは、当然憲法でできますことをその他のものに含めて規定したもの、かように考えておるのでございます。
  63. 受田新吉

    ○受田委員 あなたの、当時の内閣部内においてそういう意見もあったということは、それが有力な意見であったということになると思うのですが、占領下における法律であるから当然これを改正して、内閣法五条はここに書いてある内閣提出法律案の上に憲法改正案を持っていく、こういうことをやってこの法律改正して、しかる後にあなたのおっしゃるような内閣提案権があるということが筋が通るのじゃないですか。
  64. 林修三

    ○林(修)政府委員 そういう法律改正をするかどうか。立法論としては御議論のあるところだと思いますけれども、私ども申します通り解釈として入るということは、別にそれによって左右されるものじゃない、かように考えるわけでございます。
  65. 受田新吉

    ○受田委員 憲法改正案を法律案の上に持っていくのは法律論としては通ると解釈してよろしゅうございますか。
  66. 林修三

    ○林(修)政府委員 それは御見解でございまして、そういうことをすればますますはっきりするということは言えると思いますけれども、しかし先ほど申しました通りに、解釈としては入るものがそれによって入らなかったり入らなくなったりするものではない、かように考えておるわけであります。
  67. 受田新吉

    ○受田委員 法律案の上に憲法改正案を持っていけばますますはっきりするというあなたの御意見であるならば、当然内閣法第五条は改正をしてしかるべきではないか、いかがですか。
  68. 林修三

    ○林(修)政府委員 それは必ずしもその改正をいたさなくても、先ほど申し上げました通り解釈として当然入るものと、かように考えておるわけであります。改正をすることが立法政策としていいか悪いかという御判断はまた別だと思いますけれども解釈上今入るものと考えておれば、しいて今この段階においてやらなくてもいいもの、かように考えております。
  69. 受田新吉

    ○受田委員 政府提出法案が三つほどあって、それを御説明されるためにずらりと政府委員がお並び遊ばしておりますので、時間の関係もあって非常にお気の毒ですが、これはきわめて大事な段階で、先ほど飛鳥田君、稻村君、細田君からこの事柄を痛烈に追及されておるにかかわらず、のらりくらりと責任を転嫁されておる。私は最後にとどめを刺しておきたい。林法制局長官内閣法の第五条は法理論の立場から改正してもいいものだ、その方が実際は筋が通るとお考えになっておられますかどうですか。
  70. 林修三

    ○林(修)政府委員 先ほどから申し上げます通りに、改正しても差しつかえないものでございますが、改正しなければならないものとは考えておりません。
  71. 受田新吉

    ○受田委員 あなたは憲法改正はまれにしかないんだからこれへ列記しなかったので、もしこれがしばしばあって毎国会でも改正案が出るような場合だったら、法律案予算案よりウエートが高いのですから、憲法改正案の方を先に持っていくべきだと御答弁になったと思うのですが、きわめてまれにしかないといってもあり得る場合はこれに列記して、しかも憲法改正案は基本的な大問題ですから、法律案予算案よりも先へ掲げるべきだと思うのです。あなたの御議論でいくならば、「その他の議案」などへちょっぴりそれを含ませるなどということは、国権を重んずるものとは言えないのであって、政府の御用学説をお立て遊ばされる法制局長官としてはいつも首を覚悟で、清瀬さんたちに対して適当に牽制されるくらいな覚悟で祖国のために国権を重んじ憲法を尊重する意味から、もし内閣の意図が悪法改正案というものを当然これに掲げるべきだと思うならば、まれにある場合でも、あり得ることであれば当然内閣法の第五条を改正して、憲法改正案を法律案の上にどっかりと置いたらどうですか。
  72. 林修三

    ○林(修)政府委員 先ほどから申し上げます通りに、解釈上これは当然入るものと考えておるわけでございます。ここに掲げなければならないものとは思わないわけでございます。これは憲法解釈から入ってくるということでございますから、ここに書いてある、書いてないにかかわらず入るという建前でございます。従って立法論として、今おっしゃったような議論が立つことは、私も認めますけれども解釈上ここへ書かなければそう解釈できないというものではない。従って必ずしも改正する必要はない、こう考えておるわけであります。
  73. 受田新吉

    ○受田委員 必ずしも改正する必要がないとすれば、改正した方がいいのであるが、改正しなくても済むという意味であるかどうか。
  74. 林修三

    ○林(修)政府委員 先ほどから申し上げます通り憲法改正ということは非常に例外なことでございます。めったに起ることでもございません。従ってここに書くことが立法政策として果していいかどうかということもこれは検討の余地があるものと考えております。
  75. 受田新吉

    ○受田委員 検討の余地があるようなものをあなたはその他の議案の中へしまっておいて、しかも内閣提案権があるのだと自説を固執しておられるわけですが、あらゆる点から考えて、第四十一条の「国会は、国権の最高機関であって、国の唯一の立法機内である。」九十六条でも国会発議する。いろいろなところで国会に重点が置かれておるときに、内閣法には憲法改正規定がないのです。あなたは政府の法制の責任者としてどこから内閣提出権を固執せられるのか、内閣提出権というのは七十二条にちょっぴり出ておるだけです。これも国会になされる仕事の中へ国会指名した総理が行政権の責任者として内閣を組織してその内閣議案を出すという、国会よりも非常に軽い意味で、行政権内閣提案権が認められておるのです。その軽い意味のところへ憲法改正案というような国の基本的な法規の改正をこじつけようとされることが不当なんで、どう考えてもあなたの御説であるならば、内閣法第五条で憲法改正案を法律案の上に持っていって、現在の政府の強引な憲法解釈内閣法第五条で明確にすべきじゃないか。大体あいまいに物事をしておくからこういう議論が出るので、憲法改正案を法律案の上に持っていけば、これだけ毎日々々引っぱり出されなくても政府の態度がはっきりするじゃないですか。
  76. 林修三

    ○林(修)政府委員 私ども解釈は今まで申し上げておる通りでございます。必ずしもここにあげなくてもその解釈は成り立つ、そういうことを申し上げておるわけであります。書いたから成り立つ、書かなければ成り立たないというものじゃない、かように申し上げておるのであります。
  77. 山本粂吉

    山本委員長 本案に対する質疑は後に譲ります。     —————————————
  78. 山本粂吉

    山本委員長 昭和二十三年六月三十日以前に給与事由の生じた恩給等の年額の改定に関する法律案を議題とし、政府より提案理由の説明を求めます。倉石国務大臣。
  79. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 ただいま議題となりました昭和二十三年六月三十日以前に給与事由の生じた恩給等の年額の改定に関する法律案について、その提案理由及び概要を説明申し上げます。  この法律案は、去る第二十二回国会の衆参両院内閣委員会における恩給法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案審議の際の付帯決議の主旨に従い、昭和二十三年六月三十日以前に退職し、もしくは死亡した文官関係の公務員またはその遺族に給される恩給を増額改定いたそうとするものでありまして、内容のおもなる点について申し上げますと、次のごとくであります。  第一の点は、恩給の増額改定に関するものであります。昭和二十三年六月三十日以前に退職し、もしくは死亡した公務員またはその遺族の恩給で特に増額を要望されているものは、文官関係の公務員またはその遺族の普通恩給または扶助料であると思われますが、これらの恩給の年額は、同年七月新給与制度が実施され、一般公務員の給与が増額されたのに伴い増額されてから、昭和二十八年まで、公務員の給与支給水準が引き上げられるたびごとに増額改定されて現在に至っているのであります。  ところで、新給与制度実施の際は、各省局長は、十三級職または十四級職に格づけされることになっていましたが、かつて旧高等官官等俸給令が施行されていた当時、勅任官たる各省局長としての俸給を受けて退職した者に給されている恩給の年額は、いわゆる一万二千円ベース当時の一般職の職員の俸給表による十三級職三号俸を受けて退職した者に給される恩給と同類に、また、各省局長で年功加俸を受けて退職した者に給されている恩給の年額は、十四級職五号俸、すなわち、十四級職の最高俸の一号下位の俸給を受けて退職した者に給される恩給と同額となっていますので、昭和二十三年六月三十日以前に退職した各省局長にかかる恩給は、そのまま据え置くこととし、その他の各省局長以上の俸給を受けて退職した者にかかる恩給についても、同様の取扱いをしようとするものであります。  しかしながら、旧判任官俸給令が施行されていた当時、判任官一級俸を受けて退職した者に給されている恩給の年額は、一万二千円ベース当時の各省課長補佐としての下位の俸給であり、かつ、係長としての高位の俸給である九級職三号俸を受けて退職した者に給される恩給と同額となっていますので、これを改めて、新給与制度実施の際の各省課長補佐としての中位の俸給である十級職工号俸またはこれと同額の係長としての最高位の俸給である九級職八号俸を受けて退職した者に給される恩給と同程度の額になるように増額することとし、その他の勅任官たる各省局長の俸給に満たない額の俸給を受けて退職した者にかかる恩給についても、その後に退職した者にかかる恩給との権衡を考慮して、右に準じ、その年額の是正を行うこととし、現行の恩給年額計算の基礎俸給年額三十五万四千円以下のものについて、一万二千円ベース当時の一般職の職員の俸給表の通し号俸一号俸ないし五号俸上位の俸給年額に相当する額と現行額との差額に相当する増額を行い、恩給を増額改定しようとするものでありまして、この措置は、本年十月分以降の恩給について、本人の請求を待たずに行うこととしようとするものであります。法律案第一条並びに別表第一及び第二の規定が、これに関するものであります。  第二の点は、増額改定措置の制限に関するものであります。恩給に関する経費は、最近急激に増加し、年額九百億円をこえる巨額に達していますので、国家財政の現状にかんがみ、このたびの増額は、公務傷病者及び遺族たる子が受給者である場合を除いて、六十才以上の受給者の恩給に対してのみ行うこととし、受給者が六十才に達するまでは増額を停止しようとするものであります。法律案第二条が、これに関するものであります。  なお、右のほか、昭和二十三年六月三十日以前に退職した公務員に給する普通恩給で、昭和三十一年十月一日以後に給与事由の生ずるものについても、同日前のものに準じて取り扱うこと、及び、この法律は、公布の日から施行することを定めようとするものでありまして、法律案第三条及び付則の規定が、これに関するものであります。  以上が、この法律案提案理由及び概要であります。  何とぞ、御審議の上、すみやかに御賛成あらんことをお願い申し上げます。     —————————————
  80. 山本粂吉

    山本委員長 次に宮内庁法の一部を改正する法律案を議題とし、政府より提案理由の説明を求めます。根本内閣官房長官
  81. 根本龍太郎

    ○根本政府委員 ただいま議題となりました宮内庁法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び概要を御説明申し上げます。  今回の改正は、第一に、内部部局の所掌事務について所要の調整を行うことであります。すなわち、従来物品を管理することは管理部の所掌事務でありましたが、これを長官官房に移しかえまして、現在長官官房の所掌事務となっております金銭会計事務との統合をはかりましたこと、また従来の宮内庁法には表示されておりませんが、現在待従職と管理部に分れております調理供進事務を一元化して、これを管理部の所掌事務とすることにより当該事務の能率化、合理化をはかることにしたことであります。  第二に、宮内庁と皇宮警察との事務連携につきましては、従来とも特別の注意を払って参ったのでありますが、今回は、さらにその緊密化を促進し、宮内庁所掌事務の遂行を円滑ならしめる意味におきまして、宮内庁長官は、必要がある場合には、皇宮警察の事務について、警察庁長官に所要の措置を求めることができることにしたことであります。  第三に、宮内庁に置かれております特殊な名称の内部部局の長、すなわち侍従長、東宮大夫及び式部官長の官職名及び権限をこの際明記するとともに、従来内部規程で置かれておりました侍従次長を侍従長の補佐官として掲げることにしたことであります。  第四に、現存する京都事務所、正倉院事務所及び下総御料牧場の責任の所在を明確にするため、これらを宮内庁の附属機関とすることにしたことであります。  なお、東宮大夫、式部官長及び侍従次長を宮内庁法に明示したことに伴いまして、国家公務員法及び特別職の職員の給与に関する法律の一部に所要の改正を加えることにいたしました。  以上が、この法律案提案理由及びその概要であります。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御賛同あらんことをお願いいたします。     —————————————
  82. 山本粂吉

    山本委員長 次に行政機関職員定員法の一部を改正する法律案を議題とし、政府より提案理由の説明を求めます。宇都宮政務次官。
  83. 宇都宮徳馬

    ○宇都宮政府委員 ただいま議題となりました行政機関職員定員法の一部を改正する法律案提案理由について御説明いたします。  今回提案いたしました行政機関職員定員法の一部を改正する法律案は、昭和三十一年度における各行政機関の事業予定計画に即応して、必要やむを得ない事務の増加に伴う所要の増員を行いますとともに、業務の縮小に伴う余剰定員の縮減を行いまして、行政機関全般の定員の適正化をはかろうとするものであります。  次に法律案の内容について申し上げますれば、第一に、今回の改正によりまして、第二条第一項の表における各行政機関職員の定員の合計六十三万六千三百五十二人に対しまして、五千七百八十人の増加を行うとともに、千百四人の縮減を行い、差引四千六百七十六人を増加いたしまして、結局合計六十四万千二十八人といたしました。増員及び減員の内容につきましては、別に詳しく御説明いたしますが、そのおもなものについて申し上げますれば、増員のおもなものといたしましては、北海道開発庁の篠津地域泥炭地開発事業遂行に伴うもの百人、科学技術庁の新設に伴うもの二百九十三人、文部省国立学校の学年進行、学部、学科の増設等に伴うもの七百八十三人、特許庁の特許審査事務の増加に伴うもの六十一人、運輸省の航空交通管制業務の引き継ぎに伴うもの六十人、南極調査船の運航に伴うもの七十六人、郵政省の郵便取扱い業務量の増加に伴うもの六百六十九人、保険料集金事務の増加に伴うもの二百人、電気通信施設の拡張に伴うもの千三百七十二人、特定郵便局における勤務時間に関する仲裁裁定の実施に伴うもの千六百二十二人等でありまして、おおむね現業的業務の増加に伴う必要やむを得ないものであります。減員のおもなものといたしましては、大蔵省の旧軍用財産の転用に伴うもの六十二人、郵政省の電話業務の一部を日本電信電話公社に移管することに伴うもの三百六十人、建設省の営繕関係業務量の減少に伴うもの六十人、科学技術庁設置に伴う関係各省庁からの移しかえによる減員二百九人等であります。  第二に、暫定定員につきましては、総理府本府、警察庁、行政管理庁、法務省、大蔵省、厚生省、農林省、通商産業省、運輸省、郵政省、労働省及び建設省におきまして、事務の縮小、定員の移しかえ等に若干の時日を必要とするものがありますので、それらの事情を考慮の上必要な員数の定員を経過的に附則で新定員に付加することといたしました。  第三に、この改正法律の施行期日につきましては原則として四月一日から施行することといたしております。ただ科学技術庁が、その設置法施行の日から発足いたしますので、それに関する部分その他一部の規定につきまして、別途規定いたしました。  以上がこの改正法律案の主要な内容であります。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いいたします。
  84. 山本粂吉

    山本委員長 以上三案に対する質疑は後日に譲ります。  明十四日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後零時五十三分散会