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1956-05-12 第24回国会 衆議院 外務委員会 第43号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年五月十二日(土曜日)     午前十時五十九分開議  出席委員    委員長 前尾繁三郎君    理事 石坂  繁君 理事 北澤 直吉君    理事 須磨彌吉郎君 理事 高岡 大輔君    理事 穗積 七郎君 理事 松本 七郎君       愛知 揆一君    植原悦二郎君       菊池 義郎君    並木 芳雄君       福田 篤泰君    森下 國雄君       森島 守人君    岡田 春夫君  出席国務大臣         外 務 大 臣 重光  葵君  出席政府委員         防衛庁参事官         (防衛局長)  林  一夫君         防衛庁参事官         (装備局長)  小山 雄二君         外務政務次官  森下 國雄君         外務事務官         (条約局長)  下田 武三君  委員外出席者         専  門  員 佐藤 敏人君     ————————————— 五月十一日  委員戸叶里子君及び古屋貞雄辞任につき、そ  の補欠として武藤運十郎君及び福田昌子君が議  長の指名委員に選任された。 同月十二日  委員江崎真澄辞任につき、その補欠として松  本俊一君が議長の指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  防衛目的のためにする特許権及び技術上の知識  の交流を容易にするための日本国政府とアメリ  カ合衆国政府との間の協定及び議定書の締結に  ついて承認を求めるの件(条約第一四号)  国際情勢等に関する件     —————————————
  2. 前尾繁三郎

    ○前尾委員長 これより会議を開きます。  国際情勢等に関する件について質疑を許します。穗積七郎君。
  3. 穗積七郎

    穗積委員 外務大臣にお尋ねいたします。昨日から今朝にかけてモスクワからいろいろ公電が入ったと思うのだが、おそらくはその公電によれば、本日調印されることに予定されておる漁業協定については、国交回復が大きなる前提条件になっておる、これは動かすことのできない事実だろうと思うのです。そうなりますと、今度の漁業協定なるものは、漁業協定比重よりさらに重要な比重を持ちますものは、国交回復に対する予約の協定である、こういうことになるわけでございますが、そうなると、国交回復に対する基本的な政府態度がきまらなければ調印ができないはずなのです。逆に言えば、調印をする以上は、国交回復に対する責任のある基本的態度の変更がなければならぬと思うのです。それはあなたがきのうも、事実であるかどうか知らぬが、新聞報道によれば、そういう意見も述べられたということが報道されているのは、私もまさにその通りだと思う。そういうことでございますが、そうでありますならば、国交回復そのものに対する外務大臣並びに政府の御方針をこの際最初に伺っておきたいと思うのです。
  4. 重光葵

    重光国務大臣 大体今お話のような順序であると私も思います。これは最近の状況をはっきりと申し上げなければならぬと思います。きのうまでの状況は、昨日のこの委員会で的確に私は申し上げたわけであります。ところがその後ただいま得ました状況お話します。  漁業協定ついては、昨日お話しました以後、お話をする材料がまだ参っておりません。海難救助に関する協定文は大体全文参りました。海難救助に関する来ただけのことをお話いたすことがよかろうかと思いますが、それでよろしゅうございますか。(穗積委員「どうぞ。」と呼ぶ)  海難救助に対する協定の文について、大体今まで明らかになっておるところを申し上げます。  この協定目的と申しますか、これには目的適用水域救助対象救助具体的協力方法発効時期というようなことに分けて、内容検討してみたのでございます。全文は七カ条からなっておって、日ソ両国協力によって、海難救助の円滑な実施をはからんとするということが目的になっております。  適用水域救助対象両国海難救助機関協力して、日本海、オホーツク海、ベーリング海等を含む北西太平洋水域において、海難に遭遇した乗員のすべてに対し、その国籍のいかんを問わず、急速かつ効果的な援助を与えることとなっております。これを具体的に申し上げれば、日ソ両国の遭難した船舶乗員に限らず、第三国船乗員にも適用があることとなっておるのであります。  協定対象人命救助であって、船舶については、その取扱い等複雑な問題を生ずるので、協定範国外とされておる、こういうことでございます。  次に救助具体的協力方法についていろいろ規定がございます。締約国の一方の海難救助機関が、船舶海難通報を受けた場合は、右船舶乗組員に対し、最も適当と認める救助措置をとるものとなっております。海難現場相手国に近い場合等においては、右の救助機関相手国海難救助機関協議の上、救助作業を行うほか、相手国船舶海難通報に接した場合にも同様協議が行われる。すぐ協議をして適当な処置をとるという意味でございましょう。また救助作業完遂に必要なときは、他方の海難救助機関協力を要請することができるようになっておる。その場合には、指定の場所に船舶を派遣する等の協力を行うということに相なっております。なお以上のほか、両国海難機関の間の無線連絡具体的方法、たとえば波長をどうするとかいうような方法を詳細にきめております。また両国の領海内における救助作業は、それぞれの国内法に従って行うことを明らかにいたしております。これが救助具体的協力方法に関する内容でございます。  なおこの協定効力発生の時期については規定がございます。協定効力発生の時期は、両国間の平和条約発効同時となっております。有効期間は一年間で、その後は、廃棄されない限り三年間ずつ更新されるようになっております。  この点について、また別の文書で、平和条約に関する交渉が行われることが調印条件となっておる模様でございます。この別の文書でという以下は、これまでの情報によって得たものであります。以上でございます。  それで御質問の点にお答えいたします。これが今日まで私どもの得ておる情報、昨日以来得ましたことの全部でございます。そこでお話の、協定効力発生平和条約効力発生にかかっておるということは、海難救助協定にあるのでございます。そうでありますから、漁業協定全文が来ましても、それと同様な規定があるのではないかと考えます。今のところでは、海難救助協定について、今御展開になりました議論が当てはまるわけでございます。  そこでそれじゃ政府方針はどうなっておるか、政府方針は、この報告に基いて、昨日申し上げました通りに、慎重に検討して決定をしなければならぬように考えます。今その手続を進めておるわけでございます。
  5. 穗積七郎

    穗積委員 河野代表調印権を与える全権委任状はすでにお発しになりましたかどうか、これが一問。お発しになったならば、それは協定文内容そのもの政府がすべて承知して検討した上で、政府自身がそれに賛成をする意思決定された後に、調印をしてもらいたいというような、いわば条件付全権委任状になっておるのか、あるいはまたそれらの細目のことについては河野全権に一任をするという、いわば白紙委任状とまではいきませんでしょうか、概括的なことがわかれば、以後のことはまかせるというような意味全権委任状になっておりますか、そのいずれであるかをお尋ねいたしたい。と申しますことは、河野代表か、または全権調印をいたしましたその調印効力について関係がございます。従って政府のその調印に対する合意意思表示内容をお尋ねするわけですから、私の質問のピントに合うような答弁をいただきたいと思います。
  6. 重光葵

    重光国務大臣 それは昨日も御説明申し上げた通りであります。政府承認条件として調印をしてもいい、河野代表裁量によって調印してもいい、こういう訓令は与えておるわけであります。そこで資料が全部集まりまして、その上で政府はそれに承認を与えるかいなかを決定いたさなければなりません。その決定をいたしますのには、今お話しになりましたような点をも考慮しなければならぬ、こういうことは当然なことだと考えておるのでございます。
  7. 穗積七郎

    穗積委員 本日まだ政府意思決定するだけの材料が整ってきていないということになりますと、正式な調印は本日予定されておりますが、場合によりますと、調印が延びることもあり得るわけでございますか。
  8. 重光葵

    重光国務大臣 今申し上げた通りに、それは河野代表裁量によることでございます。
  9. 穗積七郎

    穗積委員 続いて、意見をお尋ねする前に事実をお尋ねいたしますが、河野代表ブルガーニン首相との会談には、他の日本人は立ち会っていないということでございますが、これは実はプライベートな会談とは違いまして、両国政府代表の正式な会談でございますから、当然その内容については、文書にいたしませんでも、相手国に対してオブリゲーションを負うわけでございましょう。ですから、このことは実はさっき言いました国交回復前提条件となる。漁業協定調印に当りましては、国交回復内容が問題になりますから、内容にわたる話し合いがもしブルガーニン・河野代表との間においてなされたといたしますならば、これは非常に重要な意味を持つと思うのです。ですから、そういう意味でお尋ねするのですが、河野代表から、国交回復内容にわたってブルガーニンとの間に重要なる話し合いが行われ、それに対して正式な報告が今までにございましたでしょうか、どうですか、それをお尋ねいたしたいと思うのです。
  10. 重光葵

    重光国務大臣 お話通り、非常に重要な会談であったであろうことは、むろん想像にかたからぬことございます。従いまして、それに対する報告は、五月九日に会見したという報告がございました。その報告につきましては、昨日はっきりと申し上げた通りでございます。(「きのうはないと言った」と呼ぶ者あり)いや、きのうはちゃんとそれを申し上げておる。(「内容は言っていませんよ」と呼ぶ者あり)それだから、来たことだけを申し上げておる。
  11. 穗積七郎

    穗積委員 その内容を聞きたいのです。
  12. 重光葵

    重光国務大臣 だからその内容については、国交回復平和条約効力発生する場合でなければ、この協定効力はないという意味話し合いがあることをきのう申し上げておきました。しかし昨日申したこと以上の内容が、どうい内容であったかということは、河野代表が帰朝の上で口頭をもって報告するということに相なっております。そこでもう間もなく帰朝されるわけでありますから、これは十分内容を確かめなければならぬと思っております。それで私は今日まで得ておる公けの報告について的確な御説明を、きのうも今日もいたしておるわけでございます。さような状況でございます。
  13. 穗積七郎

    穗積委員 非常に重要な問題に触れているわけです。ということは、われわれ予測いたしますのに、また外電の報ずるところもそうでございますが、会談内容について一番重要な点は、あらかじめ国交回復の時期を示す、たとえば七月末日までに交渉再開をするとかいうことが一点でございます。さらに重要な問題は、今までのロンドン会議において細部の問題で懸案となりました領土問題に触れているということが推測されて、報道されているわけです。しかもその中においては、昨年われわれがブルガーニン、フルシチョフと会いましたときに、向こう側がとった態度並びに松本全権に終始一貫してとりました態度と同じ態度をもって、領土問題について河野代表に対して接したということが報道されております。これはおそらくそうであるとわれわれにも想像されるわけでありまして、しかも歯舞、色丹以外の南千島については、領土権日本に譲渡するわけにはいかぬという態度を明示したと思うのです。そういう内容を聞いた上で、河野代表がそれを承知の上で、それに反発もせず、そうして国交回復をすみやかにやることを約束いたしますから、ぜひ漁業協定を結んでもらいたい、そういうことなら君を信用して結ぼうということになって、その君たるや、日本政府代表でございますから、従って正式の漁業協定文書の中には、国交回復の後にこの条約効力を発するというような成文だけが出て参りましょうが、その内容については、交渉の義務を持ち、それから交渉を再開した場合においては、領土問題についても具体的な討議が行われ、それは私人の討議ではない、政府代表間の正式な討議だということで、われわれは非常なオブリゲーションをになわなければならない、そういうわけですね。そうなりますと、河野代表が帰ってからその内容については報告するということでございますか、その公電報告して参りました漁業協定条約文そのものについては、政府検討した上で、これは差しつかえないから結びなさいといって電報を打つ、すなわち全権委任状を渡して、正式な調印をして帰る。そうして文書には出ていないが、言葉の上ではあるけれども政府間のオブリゲーションを負うところの領土問題についてのブルガーニン・河野代表会談内容が、もしあなたの考え方、または自民党の従来の方針と迷っておったものであるならば、それはわれわれとしては錯誤に基くものだと言って、漁業協定に対する調印は批准をしないというような態度が出て参りますかどうか、そのことをあらかじめ一般的な問題として伺っておきたいのです。
  14. 重光葵

    重光国務大臣 今御議論の筋は非常によくわかりますが、少し先ばしっておるように考えます。(穗積委員「先ばしっておりませんよ、重要なことだ、それが焦点ですよ。」と呼び、その他発言する者あり)いや待って下さい。私の言うことも聞いてもらわなければ……。そこで今申し上げた通りに、あなたの言われる両国国交調整の問題にかかっておる、これは今私は的確に申し上げている。海難救助協定を見ても、両国間の平和制条約発効同時効力発生するとこうなっておる。おそらく漁業協定も同様であろうと私は申し上げております。平和条約発効同時になるのでありますが、それでは平和条約というものはどういうことでできるかというと、私が今申し上げた通りに、今日までの情報によると、これは別の文書平和条約に関する交渉が行われるということにはっきりなっておるのです。ですからあなたの言われた趣旨に、私はそういうふうに考えなければならぬと思う。そこで平和条約交渉が行われるということになれば、ロンドン交渉の結果はあれまできたのであるから、それから先はどうなるかということは、これは検討をしなければなりませんことはお話通りであります。しかし、たとい私的の会談であっても、さような会談が行われておるからには、その内容は、その値打においてこれは十分検討をしなければならぬ問題であるのは当然のことで、あります。いろいろ往復をしてみたのでありますけれども、時日のない関係上、今日もう出発するというふうな状態になっておりますから、その内容の詳しいことはわからないということを申し上げておるのであります。わかっておる点は、この協定平和条約発効同時にやると書いてある、その趣旨を繰り返しおった点がわかっておるのであります。今あなたは日ソ国交調整に対する条件について、あなたがモスクワに行かれて聞かれた話なんぞをるる述べられました。しかし私は日ソ交渉においてロンドンで両全権の間で討議をされたり交渉をしたその内容から見ても、私はソ連考え方が変っておるとけ考えられません。またソ連は今御無知の通りに非常に大きな国力を持っており、実力を持ち、自信も持っておるのでこれは当然のことであります。でありますから、この交渉に対する考え方をそう変えるということは、私は外交当局として想像することはできません。そこでそういうことを材料にして交渉を始めなければならぬことは、これは当然の帰結でございます。しかし今われわれの直面しておるものは、今日まで申し上げた材料に基いて——またきょうあしたあたりに入りましょう。その正確な材料に基いて、これを政府承認するかしないかということが今問題になっておる。その場合においてきょう言われたようなことなども、十分に検討しなければならぬと私は考えております。しかしそれはその審議の後に考えてきまることでありますから、それで私が少し先走った御質問だと申し上げたのはその点あります。私はこういう大きな問題についてこれを陰でやろうなんということは決して考えておりません。十分に一つこれは御検討を願いたい、こう考えておるのであります。
  15. 穗積七郎

    穗積委員 領土問題に関してブルガーニン・河野代表が話をされたということは推測されて間違いがない。そういう推測の上に立っておられる。そして出て参りました漁業協定正文そのものには、その領土工問題等についで、もとより触れていない。従って漁業協定を結ぶことに日本政府合意をいたしましても、領土問題について合意を与えたという法律上の関連性はございません。しかしながら先ほど申しましたように、外交上または政治上の深い関連性を持つことは当然でございます。従来特にアメリカとの関係にお  いては、まるで相手の言いなりほうだい、ゆるふんどころかふんどしをしておらぬよりな外交をやってこられ、中国、ソビエトの関係については、われわれから言うと、まるで不当と思われるほど警戒をして慎重に取り扱ってこられたあなたが、法律上のオブリゲーションはありませんが、政治上には重大なる関連を持つというその内容をあらかじめ取り寄せて、または検討せずして、国交回復条件のついた漁業協定調印合意を与えたということに  なると、あなたの外交官政治家としての判断からいきますならば、 ブルガーニン並びに河野代表領土問題に対する話し合い内容を了承した上で、この調印賛成をしたという結果にならざるを得ないと思うです。ですからこそあなたはきのうこう言っておられるではありませんか。われわれにはそのことを怯懦にしておっしゃいませんでしたが、新聞記者会見ではこういうふうに言っておられる、今度の漁業協定は、国交回復前提条件になっている、だから国交回復をしなければならない、国交回復をすることになれば、問題は領土権であるが、領土の問題については、ソ連ロンドン会談の線を譲るまいと思う、従ってその結果は南千島を放棄せざるを得ない結果になるだろう。こういう三段論法で、あなたは政治的な明確なる判定をして意見を述べておられるわけです。それは一にかかってブルガーニン・河野会談内容をあらかじめ推測し、それがほぼ間違いがないという類推の上に立っておられるから、そういうことを言われていると思う。われわれの判断と同じです。そう私どもにあなたの考え方判断しなければならない。これは法律の問題ではございません、政治的または外交上の判断の問題でございます。従って、昨日のあなたの新聞発表意見というものは、あなたの間違いのない意見、大体間違いのないい見通しとして受け取ってよろしゅうございますか、この際承わっておきたい。
  16. 重光葵

    重光国務大臣 私にこの点について今までの御説明通りだと申し上げます。それで、いろいろ御想像があります。それからまたいろいろな私のやり方に対する御非難もございます。私は強く申し上げておきます。私はいまだかつて外国に対して、どの国に対して無条件に追随をするとか、どの国に対して強硬に出ろとか、そんなことはやったことはございません。私は日本の国の利益の命ずるところに従って、いずれの国に対しても十分に主張をし、日本の立場を理解せしめることに努力して参りました。お話をそういうふうにに持っていかれますと、アメリカには強硬にいけ、ソ連に対してなら何でもかでも譲れというふうにも聞えるが、そういうことはないのです。(「だれもそんなことは言いませんよ」「そんな言いがかりをつけらちゃいけません」と呼ぶ者あり)言ったとは言わないが、あなたが言いがかりをつけるのはこっちだって言いがかりをつけるのは当然のことです。しかしそういうことは衆知の事実……(「何が衆知の事実だ」と呼ぶ者あり)僕の言うことが衆知の事実であります。しかし推測はそれは御勝手でございます。私は、今日まで得ておる的確な報告に基いて申しておるのでございます。両国間の平和条約発効同時にやる、平和条約がまだできていないのだから、どうしてできるか、これから交渉をするということになる。交渉をするということは何かというと、ロンドン交渉しておったのだから、その結果も考慮しなければいかぬということはこれは当然のことである。あなたが言わなくてもだれでもこれはわかり切ったことである。だからそのわかりきったことをするわけであります。しかし、これはどういう具合にするということは、今検討中であるということを申し上げておきます。そういう状況であります。
  17. 穗積七郎

    穗積委員 私も簡潔に質問いたしますから、あなたも簡潔に質問だけに答えて下さい。言いがかりなんか言わないでお答えをいただきたいとおもいます。  そうしますと、この漁業協定調印に伴って、鳩山内閣は、従来の南千島事前奪還をしなければ調印しないという基本線を変更してもいい、やわらかく言えば、それにはあえて拘泥しないで、情勢の変化に伴って、国の実益を考えながらここで荷検討してもいいという用意は持っておられるわけでございますね。そういうふうに理解してよろしゅうございますね。
  18. 重光葵

    重光国務大臣 平和条約交渉を再用するということになれば、基本的のことも検討をしなければならぬのは当然のことでございます。その基本的のことをも検討しなければならぬことを私は申しておるわけであります。
  19. 穗積七郎

    穗積委員 わかりました。再検討の用意ありということが明確になりましたから、重光国務大臣にしては情勢に押さて一歩前進したということで、私は大いに多といたしましょう。どうぞ途中で引っ込むことなしに、前へ前へと進むことをお願いいたしまして、日本か世界の孤児にならぬような外交方針をとっていただくことを要望いたしておきます。  次にお尋ねいたしますが、先ほどの海難救助協定前文に書かれたもの、また本日調印される漁業協定前文にも同様なことが書かれるであろうところの、文書の中に、平和条約発効後と明確に書いてある。ばく然と国交回復と書いてはございません。そうしますと、この場合においては、いわゆる平和条約方式でいくかアデナウアー方式でいくかという——河野代表平和条約方式でいくということをあらかじめ予定し、そういう方式でいこうという合意に達して、この文書をお書きになったというふうにわれわれは理解せざるを得ないが、そのようにこの前文の字句を理解してよろしゅうございますか。
  20. 重光葵

    重光国務大臣 今言われたことは、前文にあると言われますが、そういうことは私は申しません。私はこの協定の中のいつ効力発生するかということを取りきめたところに、両国間の平和条約発効同時となっておるということを申し上げました。しかし、それは海難救助協定でございます。漁業協定についてはまだ全貌を得ておらぬ、こういうことを申しているのであります。(穗積委員「おそらく同様だろうとさっきおっしゃったじゃないですか。」と呼ぶ)だから、その点はおそらく同様であろうと申しました。前文にどうであるとかこうであるとかいうことは私は申しません。そこで、平和条約発効同時となっておりますから、これは向うもこちらも協定をした協定内容でございます。そこで、平和条約というものができることが予想されておることを申し上げることができると思います。
  21. 穗積七郎

    穗積委員 委員長から他に質問者もあるからという御注意でございますから、私はまだ問題点をたくさん持っておりますが、最後に二点だけお尋ねしておきたい。  それは先ほども海難救助協定内容についてちょっとお尋ねして御意見を伺ったのだが、この協定の中に相手国の港に寄港することを認める、そういうような規定はございませんか。そしてその場合においては、救助方法については相手国国内法によってこれを行うという規定はございませんかどうか。もしありとすればお尋ねいたしますが、日本側の新聞報道によると、協定の一条には、北海道の港をこちら側は開放しておるわけです。向う側は港を一つ一つ列挙はいたしておりませんが、ソ連領内の港云々と書いてある。その場合に、この協定に多分あるだろうと思うのだが、もしありとすれば、択捉、国後の港は、この協定においては一体どちら側の港として理解して規定してあるか、それを一点伺いたいのです。
  22. 重光葵

    重光国務大臣 一般的なことを私からお答えしましょう。今お話のような、一々の港の、そういうようなことの一々の規定はないようでございます。しかし、今申し上げた通り両国の領海内における救助作業は、それぞれの国内法に従って行う旨を明らかにしている、こういうことを申しました。
  23. 穗積七郎

    穗積委員 択捉、国後の港の問題はどうなりますか。
  24. 重光葵

    重光国務大臣 その点は、はっきり規定はないそうでございます。
  25. 穗積七郎

    穗積委員 条約局長にお尋ねします。
  26. 下田武三

    ○下田政府委員 そういう点は協定では全然触れておりませんで、先ほど大臣が申されました最も適当と認められる救助措置をとるものとする——最も適当と認められるということは、近い港に入るということも含むでありましょう。とにかく協定にはそういう具体的な地名、港の名前等は入っておりません。
  27. 穗積七郎

    穗積委員 しかし、相手国の領海内云々と書いてあるでしょう。その場合に択捉、国後の港はどうなるのですか。
  28. 下田武三

    ○下田政府委員 なお、この協定関連いたしまして、いかなる領土についてもその領土権の問題は、全然別問題であるという趣旨の……(穗積委員「もう調印したあくる日から起きるかもわからぬよ。」と呼ぶ)そういうことがございましても、いかなる地域についても領土権の問題とは無関係であるという趣旨の留保の公文が行われる模様であります。
  29. 穗積七郎

    穗積委員 それだから聞くのだが、どっちの国内法でやるの。大体今まで保守党政権は、サンフランシスコ条約前から、第一降伏文書の受諾のときの領土条項についても、ばく然とした抽象的な言葉で調印してしまっている。だから、あとになって、どことどこが武力をもって取った領土であるのか、そうでない領土であるのか区別がつかない。それから、たとえば講和条約でも、北海道、本州、四国、九州並びにその付属諸島、その境はどこだということをさっぱり話をしないで調印しているから今度のような問題が起るのです。それからクーリール島についてもそうです。どこまでということがはっきりしていないから、クーリール島というのは北千島だけであるといい、南千島を含むといい、何を言っているかわからぬことになる。もしこの協定効力を発して、日本船が択捉、国後で難破したとき、そのときはどっちの国内法によるのですか。
  30. 下田武三

    ○下田政府委員 ある地域が現にどこの国の施政権下にあるという事実は、その領土がどこの主権に属するかという事実とは全然別個の観念であります。ですから、現に国後、択捉がソ連の施政権下にあるといたしますれば、そこにおいて施政権を有する国の国内法適用になるでありましょう。しかし、それはその土地に対する主権の問題とは別の問題であるという趣旨の付属文書が行われる模様でございます。
  31. 穗積七郎

    穗積委員 はなはだ不十分でございますが、時間がないから、次にもう一つお尋ねしたい。明日羽田に着くと報道されているチフヴィンスキー氏のヴィザ、これはオフィシァルなパスポートとしてお出しになるつもりでございましょうね。これは条約局長に伺います。
  32. 下田武三

    ○下田政府委員 これは普通の慣例に従いまして渡航証明書を発行しているわけであります。
  33. 穗積七郎

    穗積委員 オフィシャルとして取り扱っているわけですね。
  34. 下田武三

    ○下田政府委員 渡航証明書の中には、入ってくる人間の資格を書いておるのであります。これは外国政府の公務員であることは間違いないのであります。ただその事実を記載しておるだけであります。
  35. 穗積七郎

    穗積委員 最後に外務大臣にお尋ねしますが、こうやってつらつら昨年来の日ソ交渉の経過を静かに見ますと、まことに重光外交の大失敗であると言わざるを得ない。私は個人的にはあなたの人柄を愛するし、あなたの人格を疑ったり、けなしたり、憎んだりするものではない。しかしながら政策はこれまた別でございますから申し上げるのだが、これはあなたの本心でとったか、アメリカに言われてとったか、あるいは財界の要望でおとりになったか知らぬが、少くともあなたが責任の地位に立っておっておやりになった日ソ交渉は、大失敗だと言わざるを得ない。しかもこんなことを今ごろおやりになるなら、昨年の暮または本年の正月、松本全権ロンドンでおやりになれば早く解決してしまっておる。しかも漁業協定についてはもっと有利な条件で解決がついたと思うのです。それをやらぬから、首根っこを抑えるために、われわれから見ると非常に過的な制限を加えておる。水域についても制限する、魚類の範囲についても、またその尾数についても、また漁撈する方法についても、漁具の制限までしている。それを全部うのみにしてしまった。それから河野全権代表がそのときに、すなわち三月二十一日にソビエトの閣僚会議の声明が発表されましたものより、さらに水域についても、その制限の魚類の対象にいたしましても、制限が拡大されておる。それを全部うのみにしてしまっている。こういう状態ですべてが非常な日本のために不利益な——われわれから言えば、初めから言わぬことじゃない、それ見たことかと言いたいのだが、私はそういうことを言って一人よがりをしたいとは思わぬから、あえて申しませんが、あなたはみずから反省されて、ながめてみるならばこれは明らかに失敗であった。あるいはあなたの思い違った新しい事態が出てきたという、可能の変化というようなことも弁解の理由の中にはおあげになるかもしれぬが、しかしいやしくも外務大臣として、国際情勢の先を見ながら、広い範囲の視野において判断しなければならないい外務大臣——全権ではない、外務大臣ですから、それから見るならば明らかに重光外交の失敗だったと思う。もしそうであるとするならは、そのことをこれ以上申しませんが、あなたが客観的にされるならば、あなたの政治家としての出所進退はこの際明らかにさるべきだ。調印とともにあなたは退いて、そして他の外務大臣によって約束されるところの日ソ交渉の再開をお譲りになった方が、あなたの政治家としての出所進退もりっぱでございますし、それから交渉するにいたしましても、その方が円滑にいくと思うわけですから、私は個人としてはあなたの人柄を愛しますが、政策上は、遺憾ながら日ソ交渉に関しましては、これは明らかに手違いなり失敗であるから、国のために不利益をこうむった。しかも引き揚げ問題についても、昨年の暮れを越さず、正月には東京でやれるものを、あの寒いシベリアでまた一年越さしめたというようなことから見まして、すべてこれは後手々々となったために、当時に早く解決したよりはさらに不当な条件において不利な条件において、ついに向うの言った線で解決せざるを得なくなったと言うことは、あなたは事実として認めなければならぬでしょう。そういう基本方針を転換する用意があることをさっきあなたは言われたのだから、それを機会にしてあなたはこの際出所進退を明らかにされることを、愛する重光外務大臣のためにも私は申し上げるのでございますが、あなたの御所感はいかがでございますか、この際率直に伺っておきたい。
  36. 重光葵

    重光国務大臣 私の外交のやり方について御親切なるご批判をいただいて、これは感謝をいたします。私が公けにやっておることについての御批判なり、御非難なりは、私はこれは十分にやっていただきたいと考えております。私自身としては今直接にこれに触れたくございません。ただ日ソ交渉についてかような交渉をそのときに早くまとめれば相手方との関係においては利益である、こういうこと代交渉のことについては常にございます。これはむろん考えたければならぬ。しかしそれだけによって交渉を進め、もしくは左右するということも私は今までの歴史の示すところでは、そうは参りません。そこについていろいろ御批判はありましょう。十分批判をいただきたいと思います。そこで私はあえて弁解をするわけじゃございませんけれども、早くやればもう少しよくいったではないか、こういうことだけで御批判をするというのは、私は少し十分でないと思います。(穗積委員「時期の問題じゃない。実益ですよ。」と呼ぶ)実益の問題は時期の問題に伴っておるわけです。そこでこの問題について今の政府方針とか、与党の方針とかいうことをどう変えるということを、私は今申しておるわけじゃございません。これは変えるまではむろん従来の方針通りであります。しかしこの根本問題について今検討しなければならぬことになってきておるということは申しました。そこで今審議をこれからしなければならぬ、こういうことを私は申し述べたのであります。まだその審議の結果を待ちたいと思います。
  37. 下田武三

    ○下田政府委員 先ほど穗積委員の御質問に対しまして、海難協定関連いたしまして付属文書を作りまして、その中で領土権に関する主張を留保する趣旨規定があるように申し上げました。これは実は重要な点でございますので、訂正さしてただきたいのでございますが、ただいま確報に接しておりますのは、領海の範囲に関する両国の立場に対して何らの影響を及ぼすものでないという趣旨の付随文書でございます。領土権につきましてのことも問題になっておると推察するのでありますが、それがどうなったかという点につきましては、ただいままで何らの報告に接しておりません。しかしこれはたとい何らの留保がございませんでも領土主権というものは平和条約できまるわけでございます。ですから、それまでの間はたとい現実にある地域に対して施政権を持っている国で、その国の国内法によって救助されたからと申しましても、平和条約できるまでは、まだ影響はないというのが法律的の関係であると存ずるのでございます。
  38. 前尾繁三郎

    ○前尾委員長 岡田君、大臣は十二時までに帰るのだから、簡潔にやって下さい。
  39. 岡田春夫

    ○岡田委員 ただいま穗積委員からだいぶ詳細な御質問がありましたので、私は簡潔に伺いますが、まず第一点は、きょうモスクワにおいて調印が行われることになっておるわけですが、この調印というのは先ほどから御答弁のあったように、アド・レフェレンダムですか、これに基いて調印をする権限が、河野政府代表に与えられた、それに基いて調印する。ところがこの調印される文書の中には、先ほどから再三御答弁のあったように、七月三十一日までには日ソの国交回復交渉を再開する、こういう点が条件となっているところのこの二つの協定調印されるわけでありますから、現在のところ少くとも政府、特に外務大臣としては、七月までに交渉を再開するという考え方をもちろんお持ちになっておるのであろうと考えておりますけれども、この点は、かようにお考えになっておるのでありますか、政府態度はきまっておるのでありますか、この点をまず第一に伺いたいと思います。
  40. 重光葵

    重光国務大臣 繰り返し申し上げます通りに、それを今審議しなければならぬのであります。
  41. 岡田春夫

    ○岡田委員 そうすると、その前提的な条件すらもきまっておらないというわけでありますか。そうすると、そういう場合は、政府決定によって前提条件を認めないということになれば、この協定それ自体は直ちに無効になって、日ソの漁業上の問題についていろいろ不測の問題が起るという場合も当然考られるわけですが、それの責任は政府がおとりになるというお考えですか。
  42. 重光葵

    重光国務大臣 さようなふうに、状況がどういう工合になるかということも検討しなければなりません。
  43. 岡田春夫

    ○岡田委員 そうすると、その交渉再開についての見通しを立てるのは、大体いつごろにお立てになるというお考えですか。
  44. 重光葵

    重光国務大臣 それはまだきまっておりません。
  45. 岡田春夫

    ○岡田委員 それもまだきまっておらないとおっしゃるのですが、そういう点をきめられる見通しの立てられるのは、大体いつごろなのですか。
  46. 重光葵

    重光国務大臣 それは協議をしてみなければわかりません。
  47. 岡田春夫

    ○岡田委員 協議は今だってできるじゃありませんか。いっても協議はできるのになぜなさらないのですか。(「案がきてからだよ」と呼ぶ者あり)案がきてからとおっしゃるのですか、あるいは河野代表が帰ってきてからとおっしゃるのですか。
  48. 重光葵

    重光国務大臣 材料がそろっていない。
  49. 岡田春夫

    ○岡田委員 材料というのは、漁業協定の正文を意味するのですか、どういうもの言うのですか。
  50. 重光葵

    重光国務大臣 正文もきていないような状況で何も進められません。
  51. 岡田春夫

    ○岡田委員 少くともそういうことをきめなければ、今まで大国間における——日本が大国かどうかはともかくとして、大きな国の間において条件付の委任状をまかされて調印をして、そのあとで政府がその調印に対して否認をする、承認をしないというような実例はあまりないように考えるし、もしそれを行なったとするならば、これはその国の政府として一大面目を失して、今後の外交上の一大汚点になると私は考えざるを得ない。そうなると、この調印以前においてあなたは慎重にそういう諸般の事情を考慮した中で、すなわち交渉の再開の問題もやっていいのではないかという考慮のもとにおいて、調印条件付の委任状として認めておるのだと思う。そういう点も認めないで河野政府代表条件付の委任状を渡したのだとするならば、河野代表はおそらく調印することはできないでしょう。あるいは調印をしてしまったところでそれがひっくり返るという場合が相当あり得るというように考えられるならば、ソビエト側だって簡単に条件付委任状に基く調印なんか認めないと思います。それでは今度の交渉というものはそこで成立するというわけにはいかないじゃ、ありませんか。そういう点が大よその目安としてででておればこそ、そういう点についてのお互いの了解に基いて調印がきょう行われるという予定になるのじゃありませんか。そういう問題については漁業協定内容がこなければ全然白紙だとおっしゃるのですか。白紙だとおっしゃるなら白紙でけっこうです。そういう点は国際的にあなたの答弁がモスクワの方へそのまま反映して、河野代表はこう言っておるけれども重光外務大臣はこういう態度である、日本に帰ってきてから、河野代表がきめたことをひっくり返すかもしれない、こういうことを重光外務大臣が言っておるという印象をとられた場合に、日本の国の対面かどうなりますか、あなたはそういう点をお考えになって御答弁になっておるのですか。
  52. 重光葵

    重光国務大臣 むろんそうであります。むろんそうでありますが、問題は何じゃないですか。政府承認条件として調印する。今政府はその承認をするかどうかということを審議中だ、こう言っておるのです。それではっきりしておるじゃありませんか。それ以上のことをかれこれあなた方がこうしなければどうだとか、ああしなければどうだとかいうその言論が反響する場合において、かえってそれが妙に響くだけのことであります。
  53. 岡田春夫

    ○岡田委員 あなたの御見解はどうであっても私は見解がある。それはいろいろ違うでしょう。あなたの御見解はどうであっても、ただそれは世界に笑われるかどうかの問題は別なんだから、その点だけは忘れないでおいて下さいよ。  そこでもう一度、きのうの問題について重ねて伺いますが、昨日私が、河野政府代表から全権委任状の請訓はきておりませんかと聞いたときに、きておらないとお答えになった。あなたはきょうは穂積君の質問に対して、全権委任状の問題についてはいまだ閣議で相談もしておらないとお答えになったように聞いております。条件付委任状の問題については出しましたと言っているが、全権委任の問題に対しては、これはお出しになるお考えがあるのですか、ないのですか。
  54. 重光葵

    重光国務大臣 今政府承認条件として調印をしてもいいという、委任状を出したわけであります。
  55. 岡田春夫

    ○岡田委員 それじゃ、もう一度伺いますが、日本の新聞各紙は、すでに全権委任状に対する河野代表からの請訓が十日にきておって、これを中心にして政府の内部においては、十日の夕方、限本官房長官を初めその他の諸君によって、全権委任状の請訓に対してどのように回答するかということについて打ち合せをした、しかもこれに基いて、門脇外務次官は鳩山の音羽邸を訪れて、現在の段階においては条件付の委任状の段階であるという回答を一応首相の了解を求めた、こういう意味のことが出ていり。そうすると私の伺いたいのは、河野代表から全権委任状に関する請訓はやはりきておらなかったのですか、きておったのですか。この点をきのうも聞いておりますが、もう一度明らかにしていただきたい。
  56. 重光葵

    重光国務大臣 私はきのうも申し上げた通り、何日の何時にどういう電信  がきたかということはあまり重要でないと申し上げた。私は条件付委任状を出したということを申し上げた。
  57. 岡田春夫

    ○岡田委員 あなたの答弁はちょっとおかしい。そういうことを言っているのではないですよ。いいですか。条件付委任状についてはすでに出したということは穂積君に答弁をされた。これははっきり私は知っておる。ところがそうじゃなくて、全体を包括するところの全権委任状について河野代表から十日に請訓があった、このように新聞に出ている。そうすると、条件付委任状という場合になると、河野代表日本に帰ってきてから閣議の承認を得なければその調印効力が問題になるわけです。その点、今日新聞で発表しているように、包括的な全権委任状を請訓した場合に、それをもしあなたがお出しになったとするならば、その場合にはあらためて閣議の承認その他のことが条件になることではない。そういう点で根本的に食い違いがある。新聞社かそういう発表をしているならば、それか事実と違うならば遣うとおっしゃることが必要だと思う。違ってないなら違ってないとおっしゃったらいいではありませんかと私は言っている。だからさっきの御答弁ではきわめて不十分だと私は申し上げている。いいですか。
  58. 重光葵

    重光国務大臣 私は何のことかわからぬのです。だからはっきりと今日までのこの問題に対するなにを申し上げます。今日まで河野政府代表に対して、政府承認条件として協定調印してもいいという委任状を出しております。それは申し上げました。
  59. 岡田春夫

    ○岡田委員 だから請訓があなたにきたかということを言っている。
  60. 重光葵

    重光国務大臣 往復をしたからそういうことになっているわけだから、それだけを申し上げます。
  61. 岡田春夫

    ○岡田委員 もう一回言いますよ。条件付の委任状を出すことをきめたあとに、包括的な全権委任状を重ねて出してもらいたいという請訓があったと伝えられている。その包括的な全権委任状についてそういう請訓があったのかどうかということを、きのうから聞いているのですよ、その点についてあなたは外交関係からどうも言えないとかなんだとか、言っている。
  62. 重光葵

    重光国務大臣 それはきのうも申した通り、そういうことは私はきてないと申し上げた。全権委任状条件付で出している。それに調印すれば、あとから政府は審議しなければいけない。包括的も何もありはしない。
  63. 岡田春夫

    ○岡田委員 それではそれはあとでまたやりましょう。  それからきのうこの点も伺っておるのですか、この漁業協定海難救助協定というものは、きのうあなたがはっきり御答弁になったのは、憲法の規定に基いた国会の承認を得て批准をするということをはっきり答弁されましたね。これは間違いないでありましょうか、再度伺っておきます。
  64. 重光葵

    重光国務大臣 私のきのう御答弁申し上げましたことは、これは国会の御承認を得なければならぬ、こう心得ておるということを申し上げたのです。
  65. 岡田春夫

    ○岡田委員 だからそれはもう憲法の規定に基いているものだと思うのです。そこで伺いますが、それじゃこの協定は非常に急がなければならない協定だと思うのです。なぜならば、七月以前にこういう交渉の再開等をやらなければ、八月からこの協定自体も失効するし、了解事項も失効して、ことしの漁業自体が問題になるのです。そうすると、この協定河野代表が持って帰られるとともに——そのころはまだ国会は、おそらく会期延長で来月の三日まであるわけですから、その間にこの二つの協定を国会におかけになるお考えがあるだろうと思うのですが、この点はいかがでしょう。
  66. 重光葵

    重光国務大臣 この協定は、きのうから申し上げる通りに、今全文を取り寄せているわけであります。河野代表が帰りがおそくなければ、そういう必要はございませんが、ほかの方法で取り寄せておるわけであります。なるべくすみやかに資料をそろえて、そして準備のでき次第成規の手続をとりたい、こう考えております。
  67. 岡田春夫

    ○岡田委員 これはあまり時間をとりたくないから、私簡略に申し上げているのだが……(重光国務大臣「それならそれだけでいいじゃないか」と呼ぶそれだけでよくないじゃありませんか。あなたいいかげんに言っているから、それだけで終りにならない。準備がそろってからと言っても、さっきから言っているように、七月までにこれをきわめておかなければ、条約発効しないじゃありませんか。そういう点からいって、協定を今国会にかけるようにするという意味の答弁がない限りにおいて、あなた自身いろいろな資料を準備して云々というようなことを言ったって、そんなことわかりませんよ。われわれ了解できませんよ。だからそういう点を伺っているのじゃありませんか。そういう点をはっきり伺いたいと言っているのです。その点が第一点。  第二点、時間がありませんから伺いますが、きのうの外務大臣の御答弁によると、今度の国交回復問題並びに今度の協定は慎重にやらなければならぬのだと記者団会見でも発表して、おられることは、先ほど穂積君の質問に対して、質問のときにも言っておりますし、そういう意味の御答弁もあった。ところが、きょうあなた新聞をごらんになったかどうか知りませんが、読売新聞ではロンドン支局で河野農林大臣と直接に国際電話をやっている。これを見るとわれわれとしては非常に同感のことを河野代表は言っております。どういうことを言っているかというと、たとえばとにかくこれまで日本ではソ連方針態度を正しくつかんではおらなかった。しかも大へん日本態度というものは甘くて、非常に情勢を甘く見ておって、押したら何でもできるのではないかというように考えておった、こういう考え方の根本が間違いなんだ、こういうことを鋭く河野代表は言っているわけです。こういうような情勢の観測をしておったのは、ほかならない外務省であり、外務省の責任者であるあなたである。こういうように情勢の食い違いが、あなたも一緒に入って選んだところの河野代表からはっきり言われているじゃありませんか。(「松本全権も言っている」と呼ぶ者あり)今お話通り松本全権も言うているじゃありませんか。こういう情勢に基いてあなた自身の今までのソビエトに対する考え方がいかに甘いかということを、はっきり御理解願わなければならないし、今までのようなやり方ならばますます恥の上塗りをせざるを得ないと思う。  まず第一にここで伺いたいのは、河野代表のこういう意見について、あなたはどういうようにお考えになっておりますか。  第二の点は、きのう閣議であなたが慎重にやる必要があると言ったところが、その閣議の最中に鳩山総理大臣は、日ソ交渉再開の問題については、あまり重要な問題ではないから、あなたの言っているほど重大に考える必要はないという意味のことを言ったと新聞に出ている。もはや鳩山さんとあなたとすら意見が違っているじゃありませんか。(「初めからだ」と呼ぶ者あり)初めから違っているのだけれどももますます違ってきた。そうするとあなたと同じ考えを持っている者は、もはや閣内にはほとんどおらなくなったということを意味しているではありませんか。このときにおいて、同じ外務委員会の、そうして主管大臣であるあなたに対して私たちは野党といえども、卒直にこの機会にそのような甘い見方、従来の外務省のような古い考え方やめて、新しい情勢に応じた考え方になる必要があるということを、われわれも切々としてあなたに訴えて、あなた自身がわかってもらわなければならぬと思うのです。主管大臣であるあなたが首切られて、われわれ喜んでいる気持には必ずしもなれない。この際に非を改めるが賢明ですよ。間違っているのならこの際に卒直に改めたらどうですか。その政治責任をおとりになるのはやめておとりになるのもけっこうです。おそらくやめざるを得ないでしょう。そういう点であなた自身の情勢観測は、少くとも日本の閣内においてさえこういうようになっているじゃありませんか。岸幹事長だって言っているじゃありませんか。岸幹事長は、今までのような平和条約の締結方式ではだめだ、アデナウアー方式でなければだめじゃないかと言いかけているじゃないか。あなただけが何ぼがんばったってだめですよ。日本の国内ではあなただけが孤立している。自民党の中でも孤立しているのですよ。せいぜいやってくれているのは、ここにいる北沢君か……(北沢委員「何を言うか」……と呼ぶ)だれか知らないが、外交調査会かあるいは吉田派の一派くらいでしょう。そういう人たちと心中するのはおやめになったらどうですかというのです。  第三は、あくまでもこういう協定を強行するならば、吉田派というような頑迷固陋な連中は、脱党、除名されてもやるのだと言っている。あなたはもしこの漁業協定交渉するについて、自民党の中で除名、脱党の問題起こっても、断固としてやる決意があるのか。その当時にまた妥協するのですか。そういうようなことまで考えてやる決意があるのかどうか。こういう点についても第三点として伺っておきます。  時間があまりないから、一括して伺っておきます。
  68. 重光葵

    重光国務大臣 えらい熱弁を伺いました。(岡田委員「あなたのために言いました。」と呼ぶ)いや私のために−それだから、その意味においては私は感謝します。(岡田委員河野代表意見は。」と呼ぶ)このやったことはどうですか、私はそういうようなことについて、今日観測を誤まっておるとかなんとかいうことを申し上げるわけにいきません。(岡田委員河野代表ははっきり言っていますよ。」と呼ぶ)それはだれか知らぬが、そう言ったことがほんとうなら、それは言った人の意見であって、私はソ連が甘く出ようとかなんとかいうことは、一言も申したこともなければ、考えたこともない。だからこそ、日本の主張は、あくまでも主張すべきことは主張してその上で妥協する必要があるならば妥協しなければならぬ、終始一貫そう言ってきておるのであります。私がどうしてソ連の力を軽視することができましょうか。それは当然のことだ。そういうことは、いろいろ断片的に言われるということは、それもよろしゅうございましょう。よろしゅうございましょうが、あまりそういうことについて言っても、それは効果的ではございません。ただ大きな声を出して言われたって、それほどの効果はない。私は私の信ずるところによって国の利益のために国の利益の命ずるところによって行動しよう、発育もいたそう、こうかたく思っておるわけであります。私一個のことについては何も考えてはおりません。しかしそういう不実に反したことを言われてそれに対して私は肯定をするわけには参りません。
  69. 岡田春夫

    ○岡田委員 それはどういうことですか。事実に反るということがその事実のことを言っているのです。先ほどから私が言っているのは、あなたが国のために一身を顧みずやっていると私も信じていますよ。あなたは個人のためにやっているとは必ずしも私は考えておりません。(重光国務大臣「それでいいじゃないか」と呼ぶ)しかしよくないですよ。あなた自身の考えている国のためにという考え方が、現在の段階における日本としてずれているかずれていないかが問題なのです。ずれておったらいかに善意を持ってやっても、外交担当者としての資格があるかどうかという問題になってくるじゃありませんか。ですからわれわれは言っているのです。われわれは資格の問題なんかを言おうとは思っていない、そういう失礼なことは言いたくない。しかしだからこそ世界情勢を、特にソビエトその他の情勢を甘く見ないで、同じ閣内の河野農林大臣でさえこう言っているのであるから、今までの見方を改めておやりになったらどうですかということを私は言っているのです。別にあなたを非難しようとかなんとかいうことを言っているのじゃないですよ。日本外交のためにわれわれは言わなければならぬのです。あなただって日本のために考えているならわれわれだって日本のために考えている。日本のためにならばそういう考え方ではやれないぞということを言っているのです。何も大きい声で言っているのは私の地声が高いからじゃないのです。それはあなたのために言っているから私はつい大きい声になるのですよ。それならばあなたは平和条約方式というのはおやめになったらどうですか。せめてあなた自身の救われる道は、領土の問題はあとで相談するというアデナウアー方式でおやりになったらどうですか。日ソの国交交渉の問題についても先ほど答弁の中にいろいろあったのだが、漁業協定発効その他の問題については、何も平和条約を締結する場合のみを書いているのじゃありません。国交の回復ができるならばと書いてあるのは、これはアデナウアー方式によって戦争の終結宣言が行われて、それによって国交の回復が行われた場合でも漁業協定は正式に発効するのです。そういう点を今真剣に考える必要がある。先ほどから穂積君の質問に対する答弁を聞いていると、あなたは故意に曲げているのです。国交回復というのは平和条約であるから云々とこう言う、これはいいかげんなごまかしですよ。河野代表ブルガーニン首相との話において、国交回復方式に二つあると言っているじゃありませんか。平和条約方式とアデナウアーの方式と二つあると言っているじゃありませんか。しかも平和条約方式というのはロンドンで壁にぶつかってしまったとするならば、別な方法で解決するというのか、あなたがほんとうに日本の国を考えている道だと私は思うのです。そういう点についてあなたはどういうようにお考えになりますか。もっと卒直に——私も個人的にはあなたに対しては尊敬もしている。しかし公人としてはそういう点は許すわけにはいかないので卒直に私は言わなければならないし、あなたも卒直に大きな声でお話しになったらいいじゃありませんか。小さな声で議していると、何だかうしろめたくなってきて気の毒になってくるから、大きな声で話しなさいよ。
  70. 重光葵

    重光国務大臣 今のお活、非常に大きな声で言われたことの結論は、一体平和条約の締結をしなくてもいいのじゃないか……(岡田委員「そんなこと言いませんよ。国交回復ができればどっちでもいいじゃないか。」と呼ぶ)国交が回復ができればどっちでもいいじゃないか、平和条約ロンドンでやらなくてもいいじゃないか、ブルガーニンもそう言っているじゃないか、なぜドイツのような方式でやると言わないかとこう言う。私はいまだそんな意見をここで言ったことはありません。今日までは現在まで、私のところに来ておる的確な資料はどうであるか、これを第一にこの委員会に申し上げて、そうしてあなた方が審議をして結論を得るためには、私はまず常に冷静に御判断を願いたいと思っておる。あまり大きな声を出さぬでも、それからまた私の個人的のことについていろいろ——決して御親切でないとは私は申しません。それはそれでよろしい、それは一つ私にまかせて下さい。  そこで今の会談は何でやるかというと、あなた方はこの委員会でおそらく将来どういう工合にやるかということを十分に意見を吐かれ、また審議をされる機会が私はあると思う。しかしそれに対しては的確な資料を差し上げなければいかぬので、的確な資料を毎日差し上げておるわけです。そこでその的確な資料の中にこの海難救助協定があるわけです。それをきょうは御報告申し上げた。その中には両国間の平和条約の発效と同時にこの協定が效力を発效すると書いてある、そういうことを私は申した。これは的確な資料であります。私の意見でも何でもない。こう書いてある。(岡田委員「さっきはそればかりじゃないという答弁をしている。」と呼ぶ)いやそういうことを言ったというだけで、少しは君まっすぐものを聞いてもらいたいな。そう資料でなっておる。今後これをどうするかということは、また別の審議に譲らなければならぬけれども、さしあたって協定にはそうはっきりなっている。それをうそだ、こう言われるけれども、それはちょっと困るな。(岡田委員「うそだとは言わない。」と呼ぶ)、事実を事実として言っておるのに一体何がうそか。事実によって私は申し上げておるのです。将来はっきりうそであるということがわかればまたそれは申し上げましょう。しかしうそでないことはここに書いてあるのだから、協定文が来ておるのだからその通りです。これがうそであるということを前提としていろいろ大声叱呼されることについては、これは迷惑しごくなことです。     —————————————
  71. 前尾繁三郎

    ○前尾委員長 大臣は所用のためにお帰りになりますから、議案を変えまして、防衛目的のためにする特許権及び技術上の知識の交流を容易にするための日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定及び議定書の締結について承認を求めるの件を議題といたします。  質疑を許します。穗積七郎君。
  72. 穗積七郎

    穗積委員 日米間の技術協定について、きょう審議に入るならば、私は防衛庁長官にお尋ねしたいのだが、長官は怠慢であるか御用であるか知らないが、きょうお見えになりません。従って、ちょっと緊急な問題で、関連して局長にお尋ねしたいのです。というのは本協定関係がないことではないのですが、防衛庁の技術に対する認識の個々の問題に関係しておるから、そういう観点からもついでにお尋ねしたいのです。   実は私どもの郷里の、愛知県渥美半島の、旧海軍の射撃場があった地点から伊勢湾にかけて、潜水艦その他の船舶を探知するために、何か聴音機みたいなものを設置するという御方針を持っておられるようなことがもしあるとするならば、それを少し具体的に、どういう目的でどういう内容のものをどのくらい、いつからいつにかけて設置されるつもりであるか、その御説明をいただきたいと思います。
  73. 林一夫

    ○林(一)政府委員 お尋ねの施設はこういうことであります。ただいまおっしゃったように潜水艦その他の船舶を  探知する装置であります。その探知するいろいろの訓練をいたすために、そのような施設を設置するわけでございます。内容といたしましては、詳しく申しますと、探信機、聴音機、磁気探知という三色あるのであります。探信機と申しますのは音波を出しまして、そのはね返りによってその方向と距離がわかる。聴音機というのは音響を聞きまして、これは方向、距離はわからないのですが、いずれにかその船舶があるということがわかる。磁気探知装置というのは、船舶がその上を通るとそれがわかるというような、概略申しますと、そんなような性能の装置でございます。このようなものは潮流とかあるいは海底の状況によって非常にその働きが違うし、またその識別が非常にむずかしい。たとえば潮流が激しいところでは十分に聞えない、あるいは音波がくずれるというような、いろいろの問題があります。また海底が岩盤であるか泥地であるかあるいは砂地であるかというようなことによって、その音波が吸収されるとかはね返るとかいうような、いろいろな障害があるわけであります。このようないろいろの形の潮流とかあるいは海底の状況というようなものに対して、十分に訓練をしておく必要があるというわけで、そのために、今おっしゃった渥美半島南端の伊良湖岬村ですか、あの突端に設置する予定であります。範囲は大体あの陸岸から八千メートルくらいの距離に長く出るわけです。(穗積委員「それは神島の方に向ってですね。」と呼ぶ)あれは南方に向ってでございます。深い所で五十メートルぐらい、浅い場所で約十五メートルぐらいな程度に設置するということになっております。  これを設置することによりまして、どういう障害が起るかと申しますと、船舶の航行というようなことについては、全然差しつかえございません。船舶がそこへ停泊するということについても差しつかえございません。ただ困りますのは、底びき網をやる場合に、非常に障害があるということになります。一本釣とかあるいは延べなわといったようなものの場合には、何ら差しつかえはない。底びき網の場合にはどうしても障害があるというようなことになるわけであります。そういう実体のものでございます。  さらに詳しく申しますと、そのような施設のほかに、陸上施設といたしまして現在考えておりますのは、そこの伊良湖岬村に日出というところがあるのでございます。日出というところの突端に建物を設置いたします。その建物の建坪は約二百坪というふうに聞いております。敷地は役二百坪、ここに要員約十名を配置しまして、先ほど申しました各施設から入ってくる音波とかそういうようなものを、そこの陸上施設に設置します受信機によって受信するということになるわけであります。大対以上のようなものでございます。
  74. 穗積七郎

    穗積委員 二つの点について疑問持つのですが、私の意見を申し述べる前に、時期について最初にお伺いしておきたいのです。訓練のための期間は、いつからいつくらいの間ですか。
  75. 林一夫

    ○林(一)政府委員 時期につきましては、もちろんこれは先ほど申し上げましたように、底びき網操業というようなものについて支障があるということで、漁業操業の制限または禁止をしなければならないということになるかと思うのであります。そのような関係から、それの補償という問題が起るわけであります。
  76. 穗積七郎

    穗積委員 補償の問題はあとにして、時間は……。
  77. 林一夫

    ○林(一)政府委員 そういう補償問題を地元の村あるいは県当局とよく協議して、決定するというようなこともありまして、問題のないようにしなくてはならないということで、十分の討議をしてやる、そういうようなことで、十分時間がかかると思うのであります。いつから始めるということは現在申し上げかねます。
  78. 穗積七郎

    穗積委員 もし設置するとすれば、いつごろまでの予定でしょうか。
  79. 林一夫

    ○林(一)政府委員 もちろんこれは訓練のために行うものでありますから、その設置はその訓練に必要なる——訓練の結果得たいろいろの資料を得る必要があるのでありますから、その必要な期間設置するということが目的であるのであります。その必要がなくなればさらに考える。
  80. 穗積七郎

    穗積委員 およそどのくらいの期間ですか。
  81. 林一夫

    ○林(一)政府委員 その点が今申し上げられないのであります。訓練に必要な期間設置するということで考えております。
  82. 穗積七郎

    穗積委員 実は三点について私ども疑問を持つのです。第一点に、一体日本の今日の立場は、その地理的な環境から見、また国際的な武器の発達等から見ますと、航空機並びに原子兵器というような時期に、海上におきまして、しかも近海において船舶——おもに潜水艦になりましょうか、潜水艦の探知訓練をするというようなことは、まるで時代おくれじゃないかということが一つ、それからもう一つは、もし訓練としておやりになるならば、はなはだ迷惑なことであって、実際今申しました通り、私はそういうこと自身第一に疑問を持つのですが、もしその専門的な判断から、やはり潜水艦その他の探知訓練が必要だということであるなら、事実防衛上の立場から見て、この地点に一番危険があるから必要なんだというところへ設置すべきでなかろうか、もしあるとしても……。それを単に訓練のために、その地点が実戦上何ら価値のないところを選んで、そういうところへ設置してみてもナンセンスだと思うのです。もしどうしてもそういうことが必要だとお考えになるならば、やはり実戦上の判断から見て、防衛の計画から見て、この地点が一番危険性があるし、危ないのだ、この地点にどうしても置く必要があるというふうな視点からその地点を選ばるべきだと思うのです。それが訓練のために、おそらくはその交通の便利とか、あるいはまた周囲の海流、海底等の必要から、いろいろの変化が多いから、訓練にはこれがよかろうというようなことでお選びになったと思うのだが、それはナンセンスでございますよ。実際このようなところにお置きになったら、訓練のためでなくて、もっと防衛計画そのものの恒久的本格的に必要な地点を選ばるべきだ、こう思うのです。これが第二の疑問。  それから第三の疑問は今局長がお触れになりましたように、実は地元の経済的利益をはなはだしく侵害するのでございます。この地帯は三河湾または伊勢湾全体にわたる影響を持っておりまして、この地帯の漁業は沿海漁業ではございません。おもに近海漁業によって立っておる経沢内環境におる地域でございます。ですからそうなりますと、特に今お話しになりました地びき漁撈に非常な影響を持つことが一つ、それからもう一つは、あなた方お考えになっておるかどうか知らぬが、いろいろな魚の種類によりまして、産卵を湾内においてするのです。それが今度そういう探知器を置かれるというと、魚が伊良湖岬村から神島の間の海峡を伝わって入ってくるのが入らなくなる。そうするとあなた方は、三重、愛知近海、和歌山に至ります全体の魚族の資源をはなはだしく侵害することになるわけでございますから、これはぜひやめてもらいたい。  この三つの理由によって思うのですが、それはしろうとの思い過しであるというならば、納得できるような説明をしてもらいたいと思う。そのほかにあるかもしらぬが、今までの御説明で私どもしろうとが思いついた程度のこの三つの理由によってながめましても、これははなはだしく不当な御措置ではないかと思うのでございまして、賛成するわけにいかぬのですが、局長の御所信はいかがでございますか。
  83. 林一夫

    ○林(一)政府委員 ああいうところに設置せずに、危険を予想される場所に設置したらどうかというような御意見でございますが、先ほども申し上げましたように、さしあたり訓練いたしまして、その訓練のいろいろな資料を得るということを目的といたしておるのであります。そのためにはやはり潮流のいろいろな変化に富んでおり、また海底の状況がいろいろな変化に富んでおる——たとえば岩盤のところもあるし、泥地あるいは砂地のところもあるというような、いろいろ変化に富んでおる場所が一番適当である。さらにその上船舶がはなはだしく多く航行するところ、そういうところが訓練に適しておるのであります。そのような観点からこういう場所を選んだのでございます。どこまでも、訓練のためにはこのようなところが適当であるということで選定したわけであります。  それから経済的な影響が非常に多い。それは大体その通りでございまして、地びき網あるいは底びき網には影響があるのでございます。そのために、場所によっては漁業権の消滅とか操業の制限または禁止を、所定の手続によってやるというようなことも考えておるのであります。そのためには補償という問題が起ってくるのでありますが、補償というような問題につきましては、十分地元の方、県当局と相談しまして、一つ円満に進めていきたいと考えておるわけであります。  また先ほど産卵のため魚が湾に入るのを妨げるというようなお話があったのでありますが、この設備は海底に没するのでありまして、別にそこに防潜網のように網を張ったりするものではないのでございまして、そういう御心配はないと思います。
  84. 穗積七郎

    穗積委員 私はこの時期に防衛庁がこういうような、低級というか近視眼的な防衛技術に力を入れて予算を使い、そうして訓練をしておられるというようなことは、全く時代錯誤というか、時代おくれであって、おそらくはアメリカの要求でこういう訓練をしろというようなことを言われたのじゃないかと思うのだが、もっと日本人自身の科学的な判断から見れば、全くドン・キホーテみたいなことではないかとわれわれは思うのですが、そういうふうにお考えになりませんか。これから審議するところの技術交流協定内容についても、おそらくは古武器を入れてみたり、日本の立場から見れば、アメリカの植民地軍として、アメリカ軍の一端として使うなら役に立つかもしれぬような技術や武器を作ってみたりするようなことでは、アメリカの利益には何らかなるかもしれぬが、日本には迷惑しごくというようなものにまで、技術協定でいろいろなものを作らされたり、作ったりすることになると思うのです。この考え方が第一にこういうところに現われておる。そういう点は私はあとで協定そのものの内容検討するとき、防衛庁の技術全体に対する認識なり方針というものと関連して伺いたいと思いますからきょうはこれ以上は申しませんですから、ぜひそういう点は自主的に判断さるべきで、今の御答弁では私がさっきあげました第一第二の疑問に対する納得のいくような御答弁でないことを遺憾ながら申し上げておきたい。これはもうある地区における具体的な問題ですから、委員会においてはこれ以上申しません。ですからこの問題について、委員会において最後に、政府態度として一般問題に関連するから伺いたいが、今まで米軍基地を作るときには両国協定に従って国際的なオブリゲーションを持っておるということで、実は抜き差しならぬということで、むりやりに押しつけたりしがちであった。ところが今度は米軍の基地ではございません。日本国民によって選ばれたる日本政府の防衛の計画でございますから、アメリカの圧力を受けることなしに、政府と国民との間で納得ずくでこれは話を進めるべき問題だと私は思う。そういうような国際的な圧力は何らないわけですから、従ってあくまで原則として伺っておきたいが、こういうことがこれから各地において起きて参ると思いますが、その場合において、防衛庁は一体国民に権力、法規をもってあくまでこれにのしかかって強行されるような態度をもって臨まれるつもりであるのか、そうではなくて、あくまで政府の立場計画を地元の者に納得せしめ、そうして利害関係者の納得の上でやろうとされる態度を持っておられるか、そのいずれであるかを基本態度としてこの際伺っておきたいと思うのです。
  85. 林一夫

    ○林(一)政府委員 場所的に申しますと、現在計画予定しておりますのは、ただいま申し上げました伊良潮岬とか淡路由良とか関門海峡の六連島、この三カ所を大体予定をいたしておるのであります。もちろん今の権利の消滅とかあるいは漁業の制限禁止というようなことにつきましては、これは十分納得していただいて納得ずくでやっていきたい、こういうふうに考えております。
  86. 穗積七郎

    穗積委員 そうしますとぜひ一度あなたに限らず——あなたに行っていただけばけっこうだが、あなたに限らず、防衛庁の方は現地をよく調査して、そうして今の防衛の技術的観点から潮流の変化が多いとか、岩盤がどうだとか船の航行が多い少いというようなことは調査されたでしょうけれども、経済的な調査というものはおそらく十分できていないと思う。そういう点について机の前にすわっておって、人民から陳情があれば聞く、なければ強行してしまうというような片手落ちな封建的な役人の態度をとらないで、親切な親心をもってそういうふうな経済的な国民生活の点も十分調査し、そうして現地解決をされるというような御用意がありますかどうか。これは当然そうあるべきだと思うが、この際最後に政府態度として伺っておきたい。これはちょっと今あなたは淡路島と関門とだけで言っておりますが、私はそういうことだけで言っておるのではない。練兵場の強化だとか、射撃場だとか、あるいは兵舎を建設するとか、火薬を作るとかいうような問題が、全国至るところにあなた方政府がやろうとしておる軍隊拡張、質の転換等に伴って起きる問題ですから、一括して私は、そういう問題に対する政府態度として伺ったわけです。単に三カ所だけの少い個所において起きておる問題だというような理解で取り扱っていただいては困りますから、これは誤解のないように念のために申しておきますが、その点は誤解のないようにしていただきたいと思います。それでさっきの質問に対してお答えいただきたい。
  87. 林一夫

    ○林(一)政府委員 従来もそうだったのでありますが、十分に現地調査をいたしまして、どのくらいの被害があるかという点につきまして、十分調査いたしまして、納得ずくで一つ進めていきたい、こういうように考えております。
  88. 前尾繁三郎

    ○前尾委員長 ほかに質疑はありませんか。——次会は公報をもってお知らせいたします。  本日はこれにて散会いたします。  午後零時四十一分散会