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政府委員(
板垣修君) 私から
通産省通商局で考えておりまする本年度の
貿易振興対策につきまして、概略を御説明いたしたいと思います。
資料を三、四配ってございまするが、資料を離れまして概括的な
考え方を取りまとめてお話を申し上げたいと存じます。
御承知のように、昨年度の
日本の
輸出は
予想外に伸びまして、
為替受け取りで十六億ドル、
通関統計によりますると十七億ドルという大きな数字になっておるのでありまするが、本年度の
貿易の方針といたしましては、いろいろな内外の事情にかんがみまして、第一には、昨年
相当輸出振興、
輸出増進のささえになったと言われておりまする人為的な
貿易施策を逐次廃止をして行きたいということが一つ、それから世界的な
貿易自由化の潮流に従いまして、
日本の実情からいって急速にこれに追随することはできませんけれども、漸進的にでも、これに態勢を添うように持って行きたいというような二つの基本的な
考え方のもとに、今後
貿易を振興して行きたいというふうに考えております。そういたしますと、一時的には
貿易が従来のようなペースで伸びるということは困難になるかもしれません。そういう点も考慮に入れまして、ますます通常の一般的な
貿易振興政策のほうを強化して行かなければならない、こういうふうな
考え方でおります。従って本年度の
貿易の
輸出の目標といたしましては、大体
通産省の
事務当局といたしましては、十六億二千万ドル見当というところを最低の目標として設定いたしております。今後努力次第によりまして、これ以上ますますふやしたいのでありまするが、一応の最低の目標といたしまして十六億二千万ドルということにいたしたい、大体昨年の横すべりというところを維持できたらいいのじゃないかというふうな
考え方でおります。それで、ただ先ほど申しましたように、人為的な
貿易施策をやめまするので、それの補いといたしまして、これにかわる一般的な
通商策を進めて行かなければならない、そのために本年度は
相当額の
予算を要求いたしておる次第でございます。今後
貿易を振興して行きます上におきまして、私どもの考えておりまする点は三つあると思うのであります。第一には、海外の市場の維持及び開拓という点が第一点、第二点には、
日本商品の
国際競争力をさらに強化して行くという点が第二点、第三点といたしましては、国内における
輸出取引態勢を整備いたしまして、
過剰競争を防止するという点、この三つが大体今後のわれわれとしましてとるべき
貿易政策の
中心点ではないかと考えております。この三つを推進して行きますためには、
日本の全般の
産業経済政策を総合的にとって行かなければできないわけでありまして、このうちで、
通商局として
通商施策として実施し得る面につきまして本日御説明申し上げたいと存じます。
第一の
海外市場の維持、開拓という面につきましては、これもまず基本的には
経済外交の推進ということが非常に重要なことでございまして、今後
日本のおかれました現状におきましては、この
経済外交の面で
日本の
輸出の隘路になっている点を打開しなければならぬ点が非常に多いわけであります。この点につきましては、後ほど
外務省の
経済局長から御説明があると思いますので、忍はこれは省略をいたしたいと存じます。それで
通産省として考えておりまする第一の点は、従来ともやっておりましたが、何といたしましても海外の市場の調査ということが不十分でございます。従いまして、この点につきまして本年度は
相当額の
予算を要求いたしまして、この
海外市場の調査という方面に努力をいたしたいと存じます。第一には、
海外貿易振興会というものを中心といたしまして、ここに
補助額を増額いたしまして、このジェトロを通ずる
海外市場の調査をさらに強化したいというふうに考えております。第二に、
在外公館にもう少し通商の
専門家を増置いたしまして、役所の面といたしましても、
海外市場の調査の方面に力を入れたいと考えております。それからその次には、海外に対する
日本の商品のまあ
宣伝紹介、こういう点は従来ともやっておりますが、今年はさらに飛躍的に強化いたしたいというふうに考えております。それの第一といたしましては、
海外見本市に対する、従来とも参加しておりましたが、今年度は大体八カ所ばかり参加をしたいというふうに考えております。従来よりも
補助額を多くいたしまして、規模などもさらに大きくしたいというふうに考えております。それから本年度、実現はまあ来年度になると思いまするが、今年私どもが考えた一つの特色的な方策といたしましては、
アメリカの
一流百貨店と提携をいたしまして、そこで
日本品の
展示会を開きたいというふうに考えて、いま計画を進めております。ただいま
ニューヨークの
メーシーの副社長が
日本に来ておりまして、この
予備調査をやっておりますが、これは単に
日本に現在あるものを買って行くというだけじゃなくて、
日本の商品、主として雑貨になると思いますが、そういうもので、
アメリカで売れそうなものを選択いたしまして、さらにこれにつきまして、品質なり、
デザインの点でいろいろと注文をつける、
アメリカ人にアッピールするような意匠の改善なり、品質の向上を指導してもらいまして、その製品を
アメリカの
百貨店が買い上げて行って、
ニューヨークでそれを展示して即売をするという方式で、これは一昨年
イタリアで
メーシーとともにやりまして非常な成績をあげたのであります。この方式を
日本でとれないかということで、ただいま
メーシーと相談中でございます。で、
メーシー側も非常に乗り気でありますが、これもやる以上は成功させなくちゃならぬというので、非常に慎重な
準備行動をとっておりますので、大体結論を出すのは今年の秋、それでいよいよやれることになりますれば、開催は来年度になると思いますが、そのための
予算を本年度要求いたしております。これが成功いたしますと、将来の
日本の雑貨の対
米輸出に大きな道が開けるのじゃないかと考えております。それからその次には、一般的な
広報宣伝でありますが、これはもちろん従来やっておりましたが、何分経費の関係上、非常にこういう方面の
日本の努力が不足でございます。本年度はこの点につきまして
相当額増額いたしてもらいまして、この
広報宣伝という面にも力を入れたいというふうに考えております。従来の雑誌、
新聞等の広告以外に、テレビジョン、映画の作成、こういうふうな方面にも力を入れたいというふうに考えております。
それから第二の問題は、
日本商品の
国際競争力の培養の問題でございまして、これは言うまでもなく、今後世界的な
貿易自由化の潮流にもかんがみ、また
日本といたしましては人為的な
貿易施策をやめていくという方針からみますと、ますます
日本商品の
国際競争が激化いたしますので、
日本商品の
コストの
切り下げということが非常に大事だと思います。従いまして、今後一般的な物価の
引き下げと相伴いまして、さらに基本的には
輸出産業の
コストの
切り下げという方面に力を入れなくちゃならないと思います。この点につきましては、
産業政策の基本問題でございますので、一応私の
所管外でございますが、ただいま
通産省といたしましても、この
輸出産業並びにその基幹になる
基礎産業の強化、
合理化という点につきましても全般的な
産業政策を進めております。これと伴いまして、
通商局といたしましては、その他の面におきまして
日本商品の
国際競争力の
助長培養という点につきまして、できる限りの
通商施策をやりたいというふうに考えております。そのために考えておりまする第一の点は、
繊維雑貨類につきましては、どうしてもこれは
コストの
切り下げよりも、意匠の改善、品質の向上という点が重要でございますので、この点につきまして本年度は力を入れたいというふうに考えまして、多少の
予算を御要求いたしておる次第でございます。で、
デザインにつきましては、
意匠改善費を多少設けまして、これによって
予算の許す限りにおいて、
日本から
デザインの
研究者を
アメリカないし
フランスあたりに派遣いたしまして、これが比較的短期間のうちに意匠などを研究して帰ってきて、その研究したことを公開をする、それから
関係団体、
関係業者を指導するという行き方でいっております。こういう方面の経費が今後だんだんふえて参りますれば、そういう方面の道をだんだん拡大して参りたいと思います。元来意匠の改善ということは
業界自体がやるべきことでありますが、こういう
雑貨類につきましては、主として
中小企業の産品が多うございますので、
企業自体に
負担力がない、そういう関係で、当分の
間政府の援助でもってこういう方面を進めて行かなければならぬというふうに考えておる次第でございます。それから第二の問題といたしましては、
プラントの
輸出の問題でございますが、昨年いわゆる
人為的対策の最も大きな恩恵を受けたのは
プラント類の
輸出でございました。これが本年度以降廃止をいたしましたので、今後
プラント類が自由に、円滑に出るかどうかという点が一番重要な問題でございます。従いまして、
プラントの対策につきましては、私ども一番苦心いたしておるところであります。しかし基本的には、もちろん産業の
合理化による
コストの
切り下げというところにもう少し竿頭一歩を進めなければならぬわけでありますが、これには多少時間もかかりますので、そのつなぎといたしまして、
通商政策として、できるだけのことはやりたいと考えております。第一には、
プラント輸出を
金融面から助けている
輸出入銀行の
資金源の確保ということであります。これは私ども期待したほどたくさん取れませぬでしたが、大体
財政投融資から二百二十億というものを確保いたしました。また
協調融資率も、現在よりも上げ得るようにいま
大蔵省と話をしております。この点で
プラント輸出者の金利の面で
相当助けになるというふうに考えております。それから
プラント輸出につきましては、
輸出代金保険というものがございます。これにつきましても、最近料率を
引き下げることを決定いたしました。この点で多少
プラント輸出者の負担が軽減される、ひいては
ブラント輸出の
コストの
引き下げに役立つというふうに考えております。それから第三には、現在あります重
機械技術相談室というものを拡充いたしまして、この運営を強化して、この面から間接的には
プラント輸出の振興に資したいということで、本
年度予算の増額を要求いたしておる次第でございます。その他これに伴いまして、
予算には関係ございませんが、
輸出プラント用の原材料の安定した低価格の供給の確保という問題もございます。この点は行政的にいろいろ対策を今研究しております。それから
過剰競争防止のための共同の
受注態勢というものを整備する必要がございますので、この点も
行政指導を研究中でございます。
それから
輸出振興の第三の問題として、私ども重要視しておりますのが、国内の
取引態勢の整備ということであります。御承知のように、昨年最も顕著に現われたのでございますが、国内の
輸出業者なり、あるいは場合によっては
メーカーの
過剰競争のために不当に安値に
輸出しているということで、数量的にはふえても金額的には手取りが少いという実例が顕著なのでございます。しかも、そのために外国からの非常な非難を受け、外国からも、もう少し高くても安定した値段なら買えるのだが、
日本はますます値段の
引き下げ競争をやって外国の業者にも不測の損害を与えているという非難が多いのでありまして、こういう情勢にかんがみまして、どうしても
過剰競争防止のために
国内取引態勢を整備することが最も重要になって参ります。これによりまして、私どもといたしましては、昨年の九月から
輸出入取引審議会にも諮問をいたしまして、現行の
輸出入取引態勢の
取引をさらに改正いたしまして、この運営を強化したいということを考えております。これにつきましては、ただいま法案を準備中でございますので、近い機会に国会に提案される運びとなろうと思います。
改正の要点といたしましては、第一には、従来
輸出業者間の
協定締結の自由が非常に狭い範囲に限られていたのでありますが、今後はおよそ
輸出入取引態勢の
取引の秩序の維持のために、対外の場合に
輸出業者の
協定が結べるというふうに拡大をいたしたいと考えております。それから
輸出業者間の
協定だけで不充分の場合、どうしても
国内取引の面でも何らかの
協定を結ばなければうまく
取引態勢が整備できない場合には、
通産大臣の認可を得て
国内取引に対する
協定も結び得るというようにしたらどうか、さらに条件は限定されるかもしれませんが、場合によっては
メーカーの
協定も結び得るというふうにいたしたいというふうに考えております。先ほど申しました中で、特に
輸出業者の
対外取引の面につきましては、従来のように認可ということでなしに、届出だけで結べる、これが非常に不当なことがありますれば、あとで政府がこれを取り消し、あるいは変更ということはできまするけれども、一応締結は届出だけで効力を発するというふうに、自由にいたしたいというふうに考えております。それから第二の点といたしましては、
アウトサイダーの問題であります。現行でも、ある場合によっては
アウトサイダーの規制を
通産大臣ができるということになっておりますが、非常に条件が狭いので、この点につきましては今後相当自由を拡げまして、
輸出取引の秩序の維持のためには、
アウトサイダーの規制を相当範囲やれるというふうに拡大したい、これによって
輸出業者の
取引秩序を確立いたしたいというふうに考えております。こういう法律の改正によりまして、一応態勢として
過剰競争を防止するというふうにいたして行きたいと考えておりますが、要するに法律の改正だけではできませんで、
業者自体の自主的な運営によりまして、心がまえによりまして、
過剰競争を防止することが肝要になって参ると思うのであります。これにつきましては、
通産省としても業界の施策を今後進めて行きたいと考えております。それから第三の点といたしましては、
貿易商社の強化の問題でありますが、御承知のように現在、戦後非常に弱体、細分化された
貿易商社が乱立しておる。その結果が
貿易競争を誘発して来ると思うのです。どうしても
貿易競争を防止する必要があると思います。これにはどうしても
資本力が充実することが必要なんでありますが、現在のような焦げつき資産をどうするかという根本問題がありますので、この点については、政府の最高のところで研究中でありますので、それ以外の面につきましては、できるだけ
商社の
資本力が充実し得るような措置をやって行きたい、たとえば税制上の優遇というふうな面で、
資本力の蓄積ができるような施策をやりたいというふうに現在研究中でございます。それから
商社の統合というようなことにつきましても、これも政府が統合せよという命令はできませんが、こういう機運が徐徐に起りつつありますし、またこういう機運が譲成せられるように私どもも
行政指導をやって行きたいと考えております。それから海外における
活動分野の調整の点につきましては、現在各地に非常に
商社の支店が出ておるのでありますが、御承知のように、
パキスタンなどは非常に多数の
商社の支店が出て、無益な競争をしておるので、
在外公館の設置についても、ある程度の基準を設けて、できるだけ世界的に
支店活動の調整というものをやって行きたいというふうに研究いたしているのでございます。これに伴いまして、現在御承知のように
為替管理法及び
貿易管理法がございまして、非常に
商社の活動が制約されておるのです。基本的には、
日本の現状からして根本的に緩和することは困難でありますが、その範囲内においては、できる限り
商社の機能が正常化するように、漸次できる限り
自由化したいと考えておりまして、ただいまいろいろと研究中でございますが、今までのところきまりましたのは、たとえば
外貨預託制度、この運用によりまして、
商社の
海外支店がもう少し自由に商
取引できるというふうにしたいと、最近その措置を完了しました。行く行くは
商社の
外貨保有制度を研究いたしたいと考えております。他面国内の
為替手続きあるいは
貿易手続きについても、できる限り
事務手続きを簡素化して、
商社活動がもう少し機動的にできるように研究いたしております。
外貨予算運営の面につきましても、現在の六カ月
予算をできるだけ利用いたしまして、この六カ月
予算の範囲内において、もう少し機動的に
外貨予算を運営いたしまして、商機を逸しないように商売ができるというふうに、事務的の面も運営の面で改善をして行きたいと研究いたしております。
大体ただいま申しましたように、
海外市場の維持、開拓、それから
国際競争力の培養、
国内取引の態勢、大体この三つの点を中心といたしまして、今後
貿易政策を推進して行きたいと存じます。本年度の御要求いたしました
貿易振興予算の関係では、主として第一、第二、ことに第一の
市場開拓という面で、
予算的には一番関係が深いので、大体
予算の八割以上は、この
海外市場の維持、開拓という面の費用が占めておる次第でございます。一応簡単にお答えいたします。御質問によりお答えいたします。