○
政府委員(
村上孝太郎君)
補足説明を申し上げます。
最初に、交付税及び
譲与税配付金特別会計法の一部を改正する法律案について御説明申し上げます。
お手元に配りました新旧村照表をごらんになっていただきます。傍線がございますが、傍線の左を右のように改正したいという意味でございます。この交付税及び
譲与税配付金特別会計と申します
特別会計は、地方の
自主的財源をここに集めまして、それを配付するという機能を営んでおりますが、その財源となりますところの、いろいろな収入源が、本年度におきましては、昨年の交付税及び入場税、及び二十九年度限りの
揮発油税という三つの財源、そのうちの
揮発油税だけは二十九年度限りでなくなりまして、その代りに、
先ほど提案理由にありましたように、新しく
地方道路譲与税というものが創設されます。これは
地方道路税として国税で収納されたものを、
地方道路譲与税として
地方団体に配付するわけであります。約七十二億円の金額が計上されておりますが、この
地方道路税の創設に伴いますところの歳入、及び
地方道路税譲与金を配付しますための歳出の改正、こういう点が実体的にまず第一の問題になるわけでございます。
その次には、同時に提案されておりますところの
専売公社法の改正の中にございますように、昨年十九国会で、
大蔵大臣が約束されました、約三十億円の
専売益金を地方に配付するという、その約束に基きまして、本年度これを、
たばこ専売特別地方配付金といたしまして、
地方公共団体に配付することになりまして、
専売益金からこの
特別会計に直接受け入れられることになっております。これは本来ならば、
たばこ消費税として税金を地方に譲与することになるわけでございますが、今年は年度途中でございまして、税率その他の関係から、こういう形で特別に
専売益金をこの
特別会計に収納するという形になっております。これが実体的に第二の改正の主体をなしております。
第三の問題といたしましては、御存じのごとく、
地方公共団体の財政的な窮乏その他にかんがみまして、昭和三十年度に限りまして、入場税の収入の十分の一、これは従来
入場税収入の十分の一は
一般会計に
繰り入れることになっております。残りの十分の九が譲与税として地方に配付されることになっておったのでありますが、今年度に限りまして、その
一般会計に
繰り入れるべき十分の一も、これを
地方公共団体に配付するということになっております。これが改正の第三点でございます。
他の改正は、これはまあ手続的なものでございまして、たとえば従来の譲与税の配付時期を、三月分は三、四、五とまとめまして、翌月の六月に
地方公共団体に配付したのでございますが、今年度はそれをさらに繰り上げまして、一、二、三の三カ月を三月に配付するという形になっております。
地方公共団体の資金繰り、あるいは財政状態を緩和するためでございますが、そのため三月分は、これは
見込み額で配付するという形になっておりまして、その財源となりますものは、いまだ現金が、
租税収納資金からこの
特別会計に入っておりませんので、今度一時借入金、あるいは借入金借りかえという制度を恒久的に付置したわけであります。二十九年度限りに一時借入金の制度がございましたが、これは二十九年度限りの制度として、付則にうたわれておったわけでありますが、今度はこうした
繰り入れ時期の改正の点から、恒久的な制度として本法に入れております。こういうような改正がおもなる点でございます。
逐条的に申し上げますが、第三条の歳入及び歳出のところで追加されておりますのは、今申し上げました
地方道路税の新設ということによりますところの、歳入の科目がふえたという改正でございます。そのあとの「第十三条第三項ただし書の規定による一時借入金の借換による収入金」と申しますのは、これはただいま申し上げましたような一時借入金の
年度越しの借りかえの制度を恒久化する結果、第三条の歳入の中に規定したというわけでございます。その次の歳出の面におきましては
地方譲与税譲与金、従来は
入場譲与税譲与金だけでございましたが、
地方道路税譲与金が入りますので、それをくるめて、
地方譲与税譲与金というような規定のいたし方をいたしまして、カッコの中で、
入場譲与税の譲与金と、
地方道路譲与税の譲与金に分れるというように改正をいたしました。
その次には歳出といたしまして、一時借入金の借りかえをした場合の償還金及び利子、あるいは一時借入金の利子というものを歳出にいたしました。これも先ほど申し上げましたような一時
借入金制度の創設に伴うところの、本法の
歳入歳出の規定でございます。
その次の十二条は、先ほど申し上げました三月分の譲与税を、三月に
見込み額で地方に配付するということになりました結果、
現金収入がなくても配付いたさなければなりません。そのため、一時
借入金制度を創設した、しかも、それを
年度越しに借りかえることにいたしております。
十三条は、その一時借入金及び借りかえの制度、一時借入金ができます会計は、一時借入金をする代りに、
国庫余裕金を繰りかえ使用することができます。その規定が十三条に新しく置かれたのであります。その内容は例文でございますから、説明を省略いたします。
第十四条は、一時
借入金制度を創設いたしました結果、
国債整理基金特別会計への
繰り入れの規定が、新しく必要として加わったわけでございますが、これも例文でございます。
その次の改正は、これは単に十三条を十五条にしたという整理だけでございます。
あとは付則にございます先ほど申し上げました、
たばこ専売特別地方配付金という、新しい
地方公共団体に対する配付金ができまして、そのソースが、
専売益金から三十億今年度はさかれて、この
特別会計に収入されるということを申し上げましたが、その規定がおもなるところでございます。
付則の各項について御説明を申し上げますと、第四項の「第五条の規定は、適用しない。」というのは、先ほど申し上げました入場税の十分の一を
一般会計に
繰り入れるという制度を今年やめました結果、第五条のその規定を停止するという意味でございます。次は、四項を五項に繰り上げました規定、及びその改正は、昭和二十九年度に限りまして、
揮発油税の三分の一を
揮発油譲与税として、この
特別会計は
地方団体に配付されるわけでありますが、その
収入見込み額は決算と違っております。昭和二十九年度の予算では、
揮発油税は二百三十七億円というような
見込み方をいたしまして、その三分の一の七十九億円が、
ガソリン譲与税として
地方団体に配付されたわけでございますが、実際には二百九十億円ございます。従ってその三分の一の九十七億円は見込額に対しまして約十九億円ばかりの増加になるわけでございますが、それは今度できます地方の
道路譲与税法の付則におきまして
地方道路税とみなすという形で、昭和三十年度または三十一年度において
一般会計からこの会計に
繰り入れることとなったわけでございます。この新しくできました四項に五項を繰り上げた規定の改正の趣旨はそういう意味でございます。五項が削られましたのは、旧五項の規定は、この
収入見込額がむしろ実績より多かった場合に、逆にこの
特別会計から
一般会計に返還する必要があったわけでございますが、現実には
収入見込額に対して実績が増加しておりますので、この規定が事実上要らなくなったというわけから削除してございます。十一項は、これは非常に複雑な規定でございますが、この趣旨は、昭和三十年度限りの新しい歳入と、それから歳出の事項をここに追加しているのでございまして、その主力をなしますものは、先ほど申し上げました
日本専売公社の益金を昭和三十年度の歳入とするということと、それから
たばこ専売特別地方配付金を昭和三十年度の歳出とするという、臨時的に
歳入歳出に、この
たばこ専売益金の関係を追加するという改正でございます。
これで交付税及び
譲与税配付金特別会計法の一部を改正する法律案の御説明を終ります。
次に
糸価安定特別会計法の一部を改正する法律案の御説明を申し上げます。
これもお手元に差し上げました
新旧対照表を御覧になっていただきます。この
特別会計法の改正のもとになりまする実体的な、実体法の改正は
繭糸価格安定法という実体法ができまして、これは別途農林省から国会に提案されておるわけでございますが、その中で二つの点が非常に大きな改正となっております。その実体法の改正に伴いますところの
特別会計法の改正がここに出ておるわけでございます。
まず第一点は、従来
繭糸価格安定法の建前といたしましては、生糸が十九万円よりも安くなりますと、この会計で買い上げまして、それが二十三万円になりますと、この会計が売るという、十九万円から二十三万円の間の価格の安定帯に対して、この
特別会計が生糸を
買い入れ、あるいは売り払うという、
てこ入れ操作によって価格安定の機能を営んでおったわけでございます。ところがこの生糸の価格の安定ということと、さらに繭の値段の安定ということも、これは相互に、相関的な関係にあるわけでございますが、
繭糸価格安定法の目的といたしましては、この両者の価格の安定ということが目的となっておりまして、生糸の
買い入れ、あるいは売り払いという操作だけで繭の価格の異常な低落というふうなものを直接的に防止し得ないときに、繭についてもこれを
買い入れて、繭の価格の安定をも直接的に操作する手段が欲しいというわけで、
繭糸価格安定法におきまして繭の
買い入れについても新しく規定をすることになったわけでございます。その関係の改正が第一点でございます。これは具体的には、繭の価格が
農林大臣が定める一定の価格を下ることになりますと、まず
農業協同組合が乾繭の
共同保管をするという形で、一定の数量を流通市場から引き揚げるという形でまず価格のてこ入れをするわけでございますが、しかも一定の期間、この
農業協同組合の
共同保管が続きましても価格がなかなかもとへ戻らない、従って
共同保管をした乾繭が売り払えないというときに、この
特別会計が購入するわけでございます。で、この購入した乾繭を、乾繭といたしましては長い貯蔵に耐えませんので、交換したり加工したり、あるいは貯蔵の直接の経費というものを支払ったり、この
特別会計がいたさなければならぬわけであります。そうして一定の繭の価格が回復しましたときにこの
特別会計としては売り払う、こういようなことになります。そうして、この繭の
買い入れ、売り渡し、あるいは交換、加工、貯蔵という経費の出し入れが
特別会計として新しく追加されるとともに、先ほど申し上げました
農業協同組合の
共同保管費というものにつきましても、その一部、たとえば金利、倉敷というものを補助することになっております。その補助制度が新しく追加になったという関係、これが繭の価格の安定のためにこの
特別会計法を改正するという必要が生じたわけであります。
第二の点は、これは従来この
特別会計の資金といたしましては
一般会計から三十億の出資金がございまして、この三十億円の資金によりまして、繭、生糸の市場価格というものの、てこ入れを考えておったわけであります。そのときには今から五年ばかり前の経済条件を前提といたしまして計算をされておりましたので、現在の生糸の価格の値上り、あるいは生糸の生産量そのものの増加という点から、このてこ入れ資金が、買入れ資金が十分ではないというふうなことになって参りましたので、この際、新しく生糸価格あるいは繭価格に対するてこ入れのための資金としてはどの程度が妥当であるかという計算をし直しまして、新しく資金的な手当をしたわけであります。この資金的な手当といたしましては、証券の発行、あるいは一時借入金、さらにその一時借入金の借りかえ、あるいは借入金の制度というようなものによって約三十億円の資金を追加して、従来までありました三十億の
一般会計からの出資金と合せまして、六十億円の資金で生糸あるいは繭価格の安定をはかりたい、こういうふうな改正をここでお願い申し上げておるわけであります。
まずこの六十億の資金的な基礎と申し上げます点は、これは非常にむずかしい数学的な結論でございますが、昭和二十四年の六月に生糸の統制が撤廃になりましてから以降の生糸の平均の糸価というものを、一体毎月の生糸の市場価格がどういうふうに変化しているか、その度数、分布の確率を求めまして、結論的に一五%以上の価格のズレが起った回数は大体約一〇%であるというふうな結論から、ここ数年間の生糸の生産量約三十万俵と見まして、その三十万俵の約一割の三万俵に対して十九億円をかけた五十七億円という一応計算をいたしております。これは生糸の買入れ資金といたしまして、従来の実績からある程度有効なものであるというふうな建前から、この三十億円の資金の追加という措置をお願いしておるわけであります。
この二つの点がおもなこの
特別会計法の改正の理由でございます。
そこでお手元の
新旧対照表で簡単に御説明申し上げますと、
第一条の改正は、繭の価格の維持のための直接的な買入れ手段、従ってその売り渡し、交換、加工等の機能が新しく加わったということと、先ほど申し上げました
農業協同組合の
共同保管費に対する助成金がこの会計として一つの機能的に加わった操作であるということを規定したわけでございます。
第四条の改正は、こうした改正に伴いますところの歳入及び歳出の科目が新しく追加されたものでございます。第五条も、これも繭の買入れの結果、在高明細表が新しく繭についても加わるという規定でございます。第六条の規定は、これは単に条文の整理でございまして、昭和二十七年の財政法の改正で、歳出につきましては款の区別というものはなくなったわけでございますが、その後、この
特別会計をいじる機会がありませんでしたので、そのままになっておりましたのを整理したわけでございます。その次の第八条は、短期証券及び一時借入金の制度でございます。第九は、この新らしく創設されました短期証券及び一時借入金の年度内借換の規定でございます。第十に追加されましたのは、この一時借入金及び短期証券の
年度越しの借換の規定でございます。
それから十一条は、これらの借入金、あるいは一時借入金、あるいは長期、短期の証券の限度を、通じて三十億円とするという限度額の規定でございます。第十二条は、こうした
借入金制度が新らしくできました結果、その借入金の仕事を
大蔵大臣が行うという条文でございます。十三条は、借入金に関する経費の支出に必要な金額は
国債整理基金特別会計へ
繰り入れなければならんということでございます。十四、十五、十六と、ずっとこれは条文の整理でございます。それから十六条は、生糸に加えまして繭の在高明細表をつけ加えなければならないという、これも単なる改正でございます。十七条、これも決算書に添えますところの繭の在高明細表を加えなければならないというだけの規定でございます。十八、十九、二十、これらもすべて条文の整理でございます。
それから付則の二項は、これはこの繭の在高明細表につきましては、大体、繭の購入が今年の春蚕あるいは夏秋蚕——、大体春蚕はアメリカのクリスマスに対する引合——需要になりますので、大体この夏秋蚕から適用になるといたしましても、現実の購入は来年度となるわけでございます。従ってここにございまするところの繭の在高明細表についての規定は、最初の繭の購入がもしあったといたしましても、昭和三十一年度になるということから、それぞれ適用になる年度の調整をいたしたわけでございます。これが付則の説明でございます。
その次の改正は、
国庫余裕金の繰替使用に関する法律という法律でございまして、この法律によりまして一時借入金を許されておりますところの
特別会計におきましては、一時借入金の代りに
国庫余裕金を繰替使用することができるというふうな規定がございます、その中に
糸価安定特別会計を加えたわけでございますが、だいぶ前になくなりました薪炭需給調節
特別会計という、これは大きな赤字を出した
特別会計ですが、これが整理にならずに残っておりましたので、この際にこれも削除して条文を整理しようというだけの規定でございます。これが
糸価安定特別会計法の一部を改正する法律案の御説明でございます。
その次に、
労働者災害補償保険特別会計法の一部を改正する法律案の説明を申し上げます。これもお手元に差し上げました
新旧対照表をごらんになっていただきます。
これは先ほど参事官から御説明になりましたように、けい肺及びけい肺
外傷性せき髄障害に関する
特別保護法案という長い題名の法律案が別途に労働省から提案になっております。これによりますと、御存じのいわゆる「よろけ」と申しますか、けい肺という非常に悲惨な職業病でございますが、けい肺の関係と、それから、せき髄の障害、これも不治の病気でございますが、こういう二つの特殊な職業病に関しまして、従来の労働者の災害保険法あるいは労働基準法の原則をこえて
療養給付、
休業給付等を行い得るように、新しい保険制度を追加いたしております。その追加になりました保険制度を、従来ありました
労働者災害補償保険特別会計において行います結果、労災
保険特別会計法が改正になる、こういう関係でございます。
そのけい肺及び
外傷性せき髄障害に関する特別保護法の内容は、先ほどもちょっと
提案理由で触れられましたけれども、大体中味は三つの点が大事なんでございまして、その一つは、先ほど申し上げましたように、従来の労働基準法あるいは労災保険法によりますと、疾病になりまして、その療養開始後三カ年を経過しましてもなお負傷あるいは疾病がなおらない場合には、千二百日分の打ち切り補償をしてその後は事業主は療養補償は行わなくもいいということになっております。この三カ年という期間は、大体普通の疾病あるいは負傷につきましてはその回復には十分な期間でございますが、けい肺というふうな、ちょうど現在適切な治療法がない深刻な職業病とか、あるいはせき髄障害のように治りましてもある程度以上にはよくならないというふうな、こういう病気につきましては、その後も二年間さらに
療養給付を行う、この二年間の
療養給付につきまして、その期間もし療養ができない場合には休業給付を行う、これは労働基準法にも規定してございますが、打ち切り前の休業補償相当額でございまして、普通平均賃金の百分の六十でございますが、そうした休業給付を行うという、その制度を新設したわけでございます。これは大体現在のところ、けい肺につきまして、この
療養給付あるいは休業給付の適用の対象とされておりますのは約百九十一人、せき髄障害に関しては約二十四人、計二百人あまりの人がこの新しい制度の恩典を受けるわけでございます。
その次は
転換給付と申しますか、具体的に申しますと、けい肺の第二傷度あるいは第三傷度——けい肺については第一傷度から第四傷度まで、四位の段階がございまして、第二傷度、第三傷度という程度のものになりますと、たとえば従来メタル山で、粉塵のある、さく岩機とかそうした仕事をしておった人を、今度は強制的に、坑外夫と申しますか、そうした粉塵に触れないような作業に転換させることになっております。その坑外夫としての転換は病気には非常によいわけでございますけれども、一方、賃金から申しますと、従って下るというようなことにもなりますので、そうした場合に、
転換給付といたしまして平均賃金の約三十日分をこれに支給する、これは一回限りでございますが、そうした給付制度を新設しております。この給付制度が第二に新しく追加されたものであります。
第三には、一般にこうした粉塵作業から、たとえば遊離珪酸分が入ってけい肺を起すといったような、こういう病気は、必然的な職業病ではございますが、これを始終
健康診断をして看視しておりますれば、ある程度防げるわけでありまして、こういうような遊離硅酸分が肺の中に入るという危険性のある粉塵作業をしておりますのは現在日本に約九万人の労働者があるということですが、その九万人の労働者については適切な事前の
健康診断を行うということが必要でありまして、そうした
健康診断を行うようになっております。そうした
健康診断——最初の
健康診断につきましては国が三分の一の経費の負担をするようになっておりまして、その経費がこの労災
保険特別会計法から出るわけであります。
こうした三つの新しい制度につきまして
特別会計法の改正をいたしておりまして、お手元に差し上げました新旧対照条文を見ていただきますと、これは非常に簡単でございますのであまり説明の要がないと思うのでありますが、第一条は今申し上げましたような従来の
労働者災害補償保険事業のほかに、けい肺及びけい肺
外傷性せき髄障害に関する特別保護法による給付に関する政府の経理を明確にするために、
特別会計を設置するのだという、この
特別会計の新らしく加わりました目的を規定しておるわけでございます。
その次には、この会計の
歳入歳出について新らしい立法によるところの事項が追加になったことを規定しておるのでありまして、歳入としましては
一般会計からの受入金、これはこの新らしい法律、特別保護法によりますところの給付金の三分の一というものを国が負担することになっておりまして、これを毎年
一般会計から繰入れるわけでございます。これが新らしいこの
特別会計の歳入になるわけであります。それから特別保護法によりますところの残りの三分の二につきましては、事業主が負担するわけでありますが、これも
特別会計の新らしい歳入となるわけでございます。歳入面ではこの二つが加わりまして、歳出といたしましては、特別保護法による給付費、それから事業主の負担金の還付金、これはたとえば過誤納の場合などそれを返還します還付金、あとは従来通りでありますが、最後に業務取扱費、これは条文整理の一種でありまして、従来の事業取扱費という言葉がやや適切な表現ではございませんので、業務取扱というふうに変えたわけであります。
それから第四条は、これは借入金の規定でありまして、借入金の限度は、従来の労働者災害保険法だけでなく、今度の新らしい特別保護法のために必要な資金が不足する場合にこの借入金ができるのだという、借入金ができますところの限度額の中に新らしい特別保護法の給付費及び事業主負担金の還付金を入れたわけであります。そういう改正であります。
それからこの新旧対照条文に出ておりませんが、先ほど申し上げました事前における粉塵作業をやっております労働者に対する
健康診断につきましてはこの法律の附則の二項に書いてございまして、「政府が行う
けい肺健康診断、機能検査又は結核検査に要する経費は、
労働者災害補償保険特別会計法第三条の規定にかかわらず、この会計の歳出とする。」、こういうふうになっておりますが、これを先ほど申し上げましたように、政府がけい肺になるおそれのある労働者の
健康診断に関与しますのは最初の回だけでございますので、臨時的な歳出の科目としまして附則において規定しておるわけでございます。これが
労働者災害補償保険特別会計法の一部を改正する法律案の説明でございます。
最後に
自動車損害賠償責任再
保険特別会計法案の御説明を申し上げます。
これはお手元に法律案の全文が配付になっておると存じますが、この
特別会計を新らしく創設しますゆえんのものは、先ほど政務次官からも申し上げましたように、別途
自動車損害賠償保障法案なるものが運輸省からこの国会に提案になっております。その骨子となりますところのものは、最近における自動車の数の非常な激増、これはこの五年間に約三倍の百万台という非常に大きな数に達しておりますが、自動車の数が今や交通の不可欠な手段として用いられております半面、この交通事故の大部分というものは自動車によるところの事故というふうな状態になっております。たとえば昭和二十八年の交通事故の件数は八万件でございますが、その中で自動車の事故の件数が七万四千件、約九割三分を占めております。それから死傷者数も、全交通事故の六万四千八百二十四人という数に対しまして、自動車の死傷者数は五万八千九百十七人、約九〇%を占めておるというような状態になっておりまして、交通手段としての自動車というものが非常に重要性を持って参ります一方、それによるところの民生の安定というものはかなり阻害されておりまして、しかもこれは新聞などでよく御存じのように、ひき逃げという、相手が全然わからないということの結果、けがをした人あるいは死んだ人、遺族というものがその賠償を十分に受けられないというふうな、社会的な悲劇も起っております。この結果、今度
自動車損害賠償保障法案なるものをこの国会に提出いたしまして、一方では賠償責任の適正化と申しますか、従来の民法の原則を越えまして、一種の無過失責任に近い自動車の事故によるところの賠償責任を負わせますと同時に、この賠償責任の適正化の裏付けといたしまして、そういう事故を起しました際に、それに十分な賠償能力を保険制度でもって獲得するというふうなことが、この
自動車損害賠償保障法案の骨子でございます。国は保険の十分の六につきまして再保険制度を創設しまして、それをこの
特別会計の
保険勘定で経理することになっております。それから先ほど申し上げましたひき逃げというような、全然加害者がわからないという場合に、被害者が何ら適切な賠償を受けられないということによって起るところの悲惨事を救いますために、この
特別会計に
保障勘定なるものを設けまして、その
保障勘定に、一定の自動車を持った者に対する賦課金を収入として集めまして、もしそういうひき逃げというふうな事態が起りました場合には、それに対する保障金を交付するという仕事をさせることを考えております。この
特別会計といたしましては、この二つの再
保険勘定と
保障勘定が大きな意味を持つものでありまして、これら二つの事業を営むための業務関係の経理といたしまして、
業務勘定が別個にございます。
特別会計法の内容は大体例文でございまして、あまり新らしい規定はございませんが、大体主要なところだけを申し上げますと、
第一条はこの
特別会計を設置する目的をここに書いてあるわけでございます。
自動車損害賠償保障法による
自動車損害賠償責任保険事業(これは先ほど申し上げました
保険勘定の仕事でございますが、)及び自動者
損害賠償保障事業、これが先ほど申し上げましたひき逃げ等々の保険にかかわらない被害者に対する保障をやる勘定でございますが、この二つの事業に関する政府の経理を明確にするために、この
特別会計を設置する。これは財政法十三条のいわゆる特別の事業を行う
特別会計であるということをここに明示したわけでございます。
第二条は、この
特別会計の管理、これが運輸大臣であるというだけの例文でございます。
その次は区分、これは
特別会計の勘定が、先ほど申し上げましたような
保険勘定、
保障勘定、
業務勘定の三つに区分されるという規定でございます。
まず
保険勘定の歳入及び歳出は、一般の損害
保険会社が、自動車の所有者または運転手、いわゆる被保険者と契約をいたしまして、そうして取りました保険料の中の百分の六十を、この
特別会計に納付するわけでありまして、その納付されました再保険料と、その次に書いてございます法第四十六条の規定による納付金と申しますのは、第三者の過失で事故が起ったという場合には、
保険会社は第三者に対して請求権を持っております。商法六百六十二条のいわゆる代理請求権でございますが、その行使によって一定の金額を収納しました場合には、その百分の六十を再保険会計たるこの
特別会計の
保険勘定に納付しなければならぬという規定がございまして、その納付金を言っているわけでございます。歳入としましては、そのほかに借入金及び付属雑収入がございまして、歳出としましては再保険金、これは事故が起りました場合に被害者に支払われますが、その支払い保険金額は一体幾らかということは、これは政令で定めるようになっておりますが、大体死亡した場合に一人三十万円、それから重傷の場合に十万円、軽傷の場合に三万円というふうな金額を予定しておるようであります。この保険金額を払いますときに、その百分の六十はこの
特別会計の
保険勘定から支払われるわけであります。そうした再保険金、これがこの
保険勘定の歳出の大きなものでありまして、その他、法第四十五条の規定による再保険料の払い戻し、例えば、従来この保険の対象となっておりました自動車が廃車されるという場合に保険料を払い戻すという場合がありますが、そういう払い戻し金がそういう歳出として考えられる。そのほか借入金の償還、利子、あとは普通の
特別会計歳出でございます。二項は先ほど申し上げました
保障勘定、いわゆるひき逃げその他保険の対象となりませんところの事故に対する国が保障金の支払いをするための
保障勘定でありますが、それには先ほど申し上げました保険金の中に、一部、これは交通事故のいろいろな確率から計算されるわけでありますが、ひき逃げ率といいますか、そういう部分を、この
保険勘定へ再保険料を納めますと、その再保険料分の中にそうしたひき逃げ分が入っておるわけであります。これを
保険勘定から
保障勘定へ
繰り入れることになります。その
繰り入れる
繰り入れ金は、「同勘定における保障金の支払財源に充てるため、予算に定めるところにより、再保険料のうち政令で定める金額を
繰り入れるものとする。」そのひき逃げ料というのは政令で定めて、その政令で定められた金額を
保険勘定から
保障勘定に入れる、こういう規定でございます。
その次は
保障勘定の歳入、歳出の規定でございますが、これを簡単に申し上げますと、
保障勘定で払いますところの保障金と申しますものは、これはいわゆる保険の対象になりませんひき逃げとか、あるいは被保険者の悪意による事故とか、あるいはその自動車を運転する正当な権利のない者が、例えば他人の自動車を奪って乗っておるというふうな者が事故を起した場合に、それに対して保障金を支払うのがこの会計の歳出としては一番大きなものでありまして、歳入といたしましては、それに見合うところの賦課金というものを、これは
保険会社がとります保険料の中から出て来るわけでありますが、その他、保険の対象からはずされますところの都道府県、公社、国等の自動車を所有しておるものが一定の賦課金として
繰り入れるものを財源といたしておるという規定でございます。
それから第六条は、これは
保険事業及び保障事業のための業務についてのいろいろな事務取扱費その他をこの
業務勘定で取り扱うということの規定でございます。
第七条は
歳入歳出予定計算書の作成及び送付、これも普通の
特別会計と同じ例文でございます。
第八条は
歳入歳出予算の区分。第九条は予算の作成及び提出。
第十条は利益及び損失の処理。この第十条が書いてございますところは、毎年出て来ますところの保険経理の尻というものはプラスとかあるいはマイナスとかいう形で出て来るわけでありますが、そうした損益勘定、利益または損失を生じましたときは、この
特別会計でやっておりますところの
保険事業の建前から申しまして、短期保険といたしましては、利益が出ればこれは保険料の引き下げということで被保険者あるいは保険契約者に還元する。損失を生じた場合には新らしく保険料率を引き上げまして保険採算がとれるような保険料制度にするわけでございますが、その間出ましたところのプラスまたはマイナスを積立金として整理しまして、積立金の益でその年度の損失が払えません場合は損失を繰越金として整理するという、この
特別会計の短期保険としての性格から生じますところの利益および損失の処理を規定した規定でございます。
十一条の剰余金の繰入、十二条の
歳入歳出決定計算書の作成及び送付、第十三条の
歳入歳出決算の作成及び提出、これらはすべて例文でございます、十四条の余裕金の預託、これも普通の
特別会計と変ったところはございません。十五条の借入金、十六条の一時借入金、及び十七条の借入金及び一時借入金の借入及び償還の事務、十八条の
国債整理基金特別会計への
繰り入れ、これらも全部例文でございます。第十九条に支出未済額の繰り越しの規定がございますが、これも通常の
特別会計にある規定でございます。
付則の「退職職員に支給する退職手当支給の財源に充てるための
特別会計等からする
一般会計への繰入及び納付に関する法律の一部を次のように改正する。」という規定は、いわゆる官吏が退職いたしました場合に、その退職手当が通常の失業保険の一定率と同じようになるようにということで、その差額を支給するようになっておりますが、その財源をそれぞれの
特別会計から
一般会計に
繰り入れることになっておりまして、ほかの
特別会計と同じように、
特別会計におきましてもそうした
繰り入れをしなければならんという規定をここに追加したわけでございます。
これをもちましてこの
自動車損害賠償責任再
保険特別会計法案の
補足説明を終ります。