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1955-05-10 第22回国会 衆議院 予算委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年五月十日(火曜日)     午前十時二十一分開議  出席委員    委員長 牧野 良三君    理事 上林山榮吉君 理事 重政 誠之君    理事 中曽根康弘君 理事 小坂善太郎君    理事 西村 直己君 理事 赤松  勇君    理事 今澄  勇君       赤城 宗徳君    井出一太郎君       稻葉  修君    宇都宮徳馬君       小川 半次君    北村徳太郎君       河本 敏夫君    小枝 一雄君       楢橋  渡君    福田 赳夫君       藤本 捨助君    古井 喜實君       三浦 一雄君    三田村武夫君       村松 久義君    相川 勝六君       植木庚子郎君    太田 正孝君       北澤 直吉君    倉石 忠雄君       周東 英雄君    野田 卯一君       橋本 龍伍君    平野 三郎君       福永 一臣君    伊藤 好道君       久保田鶴松君    志村 茂治君       田中 稔男君    田中織之進君       滝井 義高君    福田 昌子君       柳田 秀一君    井堀 繁雄君       岡  良一君    小平  忠君       杉村沖治郎君    川上 貫一君  出席国務大臣         内閣総理大臣  鳩山 一郎君         法 務 大 臣 花村 四郎君         外 務 大 臣 重光  葵君         大 蔵 大 臣 一萬田尚登君         文 部 大 臣 松村 謙三君         厚 生 大 臣 川崎 秀二君         農 林 大 臣 河野 一郎君         通商産業大臣  石橋 湛山君         運 輸 大 臣 三木 武夫君         郵 政 大 臣 松田竹千代君         労 働 大 臣 西田 隆男君         建 設 大 臣 竹山祐太郎君         国 務 大 臣 川島正次郎君         国 務 大 臣 杉原 荒太君         国 務 大 臣 高碕達之助君  委員外出席者         専  門  員 小林幾次郎君         専  門  員 園山 芳造君         専  門  員 小竹 豊治君     ――――――――――――― 五月十日  委員滝井義高君辞任につき、その補欠として武  藤運十郎君が議長の指名で委員に選任された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  昭和三十年度一般会計予算  昭和三十年度特別会計予算  昭和三十年度政府関係機関予算     ―――――――――――――
  2. 牧野良三

    牧野委員長 これより会議を開きます。  この際御報告をいたします。作目委員会散会後の理事会におきまして、昭和三十年度総予算公聴会を来たる十九日及び二十日の両日にわたって開くことを申し合せましたので、御了承を願います。  それでは昭和三十年度一般会計予算外二案を一括して議題といたします。  質疑を継続いたします。周東英雄君。
  3. 周東英雄

    周東委員 私はただいま議題になっておる昭和三十年度予算を中心としての諸政策に関し、また広くその他内政、外交に関しまして、主として鳩山内閣総理大臣にお尋ねいたしたいと思います。おからだの工合がお悪いようでありますから、着席のままの御答弁でけっこうでありますが、どうか少し声を大きくして、聞こえるように御答弁をお願いいたします。  まず第一にお伺いしたいことは、昨日の本委員会において同僚の社会党右派今澄君の質問に対し、特に日米間における共同声明に関して、総理はあの声明なるものは、鳩山内閣拘束するけれども、これからあと内閣拘束しない。守ろうが守るまいが、それは自由勝手だというお話がありました。私はこれは非常に驚き入ったことだと思うのであります。たとえ自由党、民主党、社会党と党派が異なっておりましても、その内閣国民の選んだところによって国政を担当し、担当中は日本の国を代表するものだと考える。それがある問題について外国話し合いを進め、たまたまそれが協定でないからとか、条約でないから、それは自分内閣だけは責任を持つが、あとはどうでもよろしいのだというお考えであるとすれば、従来、今後ともに、国際信用を害することが、おびただしいと思うのであります。一体そういうことが許されるとするならば、今後の日本国に対する諸外国交渉は現在の内閣総理大臣内閣交渉しておっても、先になったらどうなるかわからぬという不安を持たれるということになりますと、安心して話し合いも何もできないのではないかと思います。それでは鳩山内閣総理大臣の昨日の御答弁は本心からそうお考えになっておるのですか、重ねて私ははっきりお答えを願いたいと思うのであります。
  4. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私の考えました趣旨は、最後に申し上げましたところによって御了承を願いたいのでありますが、私の考え方はあの声明鳩山内閣がいたした声明でございまして、それが後の内閣をすべて法律的に拘束するという意味ではないということを申したのであります。条約ならば、後の内閣拘束いたしますけれども、単なる声明ですから、法律的に拘束しないものと思うのでありますが、拘束しないからといって次の内閣が、鳩山内閣のなしたこと、前内閣のなしたものを尊重しないというようなことは国際慣例上おもしろくありませんから、私としては次の内閣もこれを尊重してもらいたい。尊重してもらいたいとは思いますけれども、これは鳩山内閣政治責任においてしたことでありまして、国会の承認を得ていない。その声明が次の内閣法律的に拘束することができないことは、あなたも御承知通りでありますから、それで私は法律的に拘束力がないということを申したにすぎません。
  5. 周東英雄

    周東委員 そういうお答えがあると思いましたが、私はこういう問題は法律拘束するとかせぬとかいう問題でなくて、長い間の国際慣例になっておると私は思います。今あなたは条約でないから拘束しないとおっしゃいました。それならば政府が結んだ行政協定なんというものは、あと内閣拘束される義務はない、こういうことになるわけであります。そうではなかろうかと思う。いやしくも一国を代表したその当時の政府首脳者外国といろいろ話し合いをし、そうしてそれに対して――これはあとでお尋ねいたしますが、予算外国庫負担契約までさせられております。そうして共同声明をさせられております。かつての自由党内閣においては、共同声明までされたことはないのであります。このたびはいろいろの経緯でそこまでなされたことはやむを得ませんが、その話し合いの途中においては、少くとも将来ともその内容については、日本の国の次の内閣がそれを受けてやってくれると思って、ある程度信用して来ていると思うのであります。あなたは今澄君の、なぜ議会に諮って承認を求めないかという攻撃を避けんがために、そういう答弁をなさったのじゃないかと思うのであります。そういうことの内容がいいか悪いかは別であります。しかし一たんやられた問題に対して、時の政府だけは責任を負うけれどもあとからくるものはどうなってもかまわない。野となれ山となってもよろしいんだという考え方では、これからの国際関係において信用は保持できない。これを国家のために憂うるのであります。むしろ私は拘束はする、しかしながら次の内閣をとった人が反対であり、気に入らなければその改訂を要求するということがあっても、国として一連となってそれに対して責任を負い、義務拘束されるということが、国際慣例上のしきたりではないかと思う。そうでないと私は安心して交渉ができないと思うのでありますが、重ねてあなたの所見を伺います。
  6. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 前内閣がこういう約束をしたから、それはその通りにやるべきものだと考えてもらいたいということは私どもも同じなんです。けれども私の出したあの声明が、後の内閣法律的に拘束するというようなことは言われないと思います。
  7. 周東英雄

    周東委員 あなたは次の内閣に拘泥されるからいけないのです。日本の国として一応それを守って行くという義務があっていいのじゃないかと思うのでありますが、これは重ねてあなたと押し問答しても切りがありませんが、長い間外交の経験を有しておられる重光外務大臣は、こういうことで今後日本国際信用の保持をいたします上において、また外国との交渉をいたします上においてそれでいいと思われますか。ただ単に条約というものでなければ、あとは守らないでもよろしいんだというようなことを一国の総理大臣がおっしゃったのでは、国際間の信用はゼロになると思う。あなたの長い外交官生活の上からお考えになっても、それでよろしいのでありますか、一つ外務大臣の御意見を伺いたい。
  8. 重光葵

    重光国務大臣 私はこの問題は、純法律問題として、条約問題として考えます場合において、いろいろ考え方も言い方もあろうかと思います。しかしこれを政治的に見ますと、こういう話し合いをした結果は、むろん話し合いをした内閣責任であることは申すまでもございません。しかし話し合いを将来のことにして、もしその内閣がその約束を果すまで続かなくても、将来その約束が守られるということを期待いたしまして――その期待をするということは、現内閣と申しますか、約束する内閣責任において期待をして参るのである、こう申し得ると思います。そこで、今総理も、あと内閣はこの約束を全然無視していいということを言われておるわけではないので、無視せずして、尊重することを期待して、現内閣責任においてこれを結んだ、こう言われたように私は了解するのでございます。またそうでなければならぬと思います。法律上の、国際法上の法理論がどうなりますかということは、一つ専門家意見を述べさしてもよろしゅうございますが、しかしそれよりも私は常識的にそう判断をして、さような意見――あの声明においても、御承知通りに、合意に達したのはあそこに一、二、三として掲げられたことに合意をされたのであって、将来のことなんぞは双方の意向――日本政府意向、またアメリカ政府意向を単独に発表しておる形になっております。さような考え方でございます。
  9. 周東英雄

    周東委員 私はただいまの外務大臣のお言葉のうちには非常に含みがあると思う。あなたが法律上の問題については専門家意見を間かしてもよろしいとおっしゃるところに、この問題についてまだ疑義があるので、そう簡単に、今の内閣が結んだけれどもあとのものは守る義務はないというような、しかく簡単なものではないと私は思う。しかも私はこういう事柄法律というようなものの問題ではなくて、長い間の国際慣行国際慣例というものがあると思うのです。国が一国と交渉する場合において、どこの国でも内閣は変ります。変りましても、その外交というものは超党派外交でなくちゃならぬというような問題もそこに出てくるゆえんでありまして、いやしくも外と外との話をするときに、今の内閣だけは責任を負うけれどもあとはどうなってもよい、あとは野となれ山となれ、それでかまわぬのだ、こういうような話し合いで持っていけば、一日も国際間の話し合いというものはできてないと思うのです。そこに私は重大な意義があると思うのでありますが、きのうのお話は、私は非常に残念に思うのです。今あなたがお話のように専門家に調べさせなければわからぬほどにおほかしになったのは、私はあなたの腹ではわかっておると思うのです。しかしそれをそう研究させるとおっしゃったところに問題が残っておるということを、私ははっきり受け取るわけであります。あくまでも私は法律論ではなくて、国際慣行上一体そういうことが許されるかどうかということを、重ねてあなたにお伺いいたしたい。
  10. 重光葵

    重光国務大臣 いやしくも一国の政府はその国を代表し、その国民を代表してあるという立場にあることはお話通りだと私は考えます。従いまして、その政府が倒れて、後の政府が前の政府約束したことを履行しなければならぬ立場になりますときにおいては、後の政府はその約束は必ず尊重する、こう考えております。ただ約束であるか、またはただ一方的なそのときの政府意思表示であるかということについてはまた別論になりますが、それはおのおの軽重があろうかと思います。この場合において、ただ政府意向を表示したものについては、その度合いが軽いことはこれは御了承を得るだろうと思います。
  11. 周東英雄

    周東委員 私は電光外相お話はよくわかります。私はその事柄内容軽重というものもよくわかるのですけれども、いやしくも一国の総理大臣がそういう問題について軽々に意思表示されて、これは自分内閣責任を持つけれどもあとは守る義務はないのだというようなお話をなさることは、日本外交に非常に悪い影響を及ぼすところが多いと私は思う。先ほど総理は、それは自分はどうか次の内閣も尊重してほしい、期待するということを言われた。これはあなたの、鳩山内閣個人考えである。国というものは悠久一体なものです。だから、原則論としては、やはり国際慣行から見て、一応それは次の内閣も守るべき義務があると私は思う。それで初めて国際間の信義も取引も確立するものなんです。もしあとから来た内閣がそういうものに対して反対であり不平であるならば、それはわしらは守れぬから改訂してくれと言って出ていくのがほんとうだと思う。それは守る義務がないのだと言ってしまえば、あと内閣は出てきて何もせぬでもいいということになる。ここに原則の置き方、考えの置き方が違う。こういうことではいけないということを申し上げた次第でありますが、繰り返しても仕方がないからこれくらいでおきます。  次に、私は同じような問題があります。去る六日の本委員会においてわが党の橋本委員から総理にお尋ねいたしました。それは日中貿易協定に関して協力をなさいますかどうかという質問があった。それに対して鳩山総理は、いや私はあの協定本文には協力するとは言わぬ、こういう答弁で、私は非常に奇妙に感じましたが、そのときは聞き流しておきました。思うに、四月二十五日ですか二十七日でしたか、いろいろな経過によって、日中貿易協定というものが暗礁に乗り上げたことは周知の事実であります。それを何とかして結んでいきたいということに対して政府のある種の保証というものを求められたことも事実であります。それは日中貿易促進議員連盟代表者が、総理のところへおいでになってお示しになった案なるものの内容は、私は今度の協定本文とほとんど違っていないと思う。これは鳩山総理が本委員会において、前に見せられたのと今度の本文は、まだ見ていないけれども大体違わぬということを申されたのであります。しかもその二十七日に示された提案については、協力するとおっしゃっております。ゆえに、五月四日でありますが、貿易協定調印が済んだときに、中共側代表者は、本協定に関しては日本政府において鳩山内閣総理大臣がその実現に協力すると言われておって、非常に喜びとするというあいさつをされておる。そういたしますと、私はおとがめするわけじゃないが、この内閣中共貿易推進のために信念を持って立ち上らなければならぬにもかかわらず、本文には協定しないのだ、また協力するとは言わなかったのだ、こういうようなあいさつをされておることが、私にはよくわからないのです。なぜそういうふうなあいさつをされるのか私にはわからない。橋本委員はそういう形式的なことを聞いておるのじゃないと私は思う。本文協力すると言うたかどうかということを聞いているのじゃなくて、あのときに読んだ本文の中に盛り込まれた内容、これは、とりもなおさずココム制限禁止物資というものを、ある程度よけい入れてくれ、出してくれということになっているその問題、両国における国立銀行決済関係をどうするかということに対して、協力を求めておる問題、そうして通商代表部日本に置くという、この三つの問題なのです。この問題以外はないのです。この問題について、二十七日の関係においては、よろしい、協力すると約束されて、調印の日に中共代表者が、あなたが協力されるということについて非常な期待を持って、富んであいさつをしていれば、実質に協力したか、どうかということをお尋ねしたと思うのです。ところが総理は、いや、わし本文には協力をすると言ってはおらぬ、こういうお活ですから、私らにはさっぱりわけがわからぬ。ところが七日の日及び昨日の社会党の諸君のお尋ねには、民間努力に対して協力するとおっしゃる。どっちがほんとうなのでありますか、はっきりこの際お答えを願いたい。
  12. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 貿易が振興され、改善されるということについては、協力したいと思っております。ただあのときには、日本と中国との貿易協定ができ上ったものは私は見ておりません。ただ通商外交使節団取扱いについて、外交官として、取り扱ってもらいたいというようなことが、今度の協定の中に書いてある、こういうように思ったのです。私はそういうようなことができるかできないか。判断ができないのです。私が最初拝見しました、促進連盟の人から参りました案には、身体の安全保障をしてくれ、通信の自由を守ってくれというようなことが書いてありまして、外交団と同じような取扱いをしてくれということは書いてないのです。外交団として取扱いをすべきかどうかということは、これはちょっとデリケートな問題だと思って、私には判断ができなかったのです。ですから、あのときにはああいう留保をしたような答弁をしたのです。片方承知をして協力約束したけれども片方は見ておりませんものですから、協力をするということは明言ができなかったのであります。あとで見ますると、大体は似ておりまするし、外交団として取扱いをしてくれというような点だけが私にはわからないのですから、これはやはり外務大臣判断をして処理してくれるものと思うのです。そういうような、外交団として取り扱うことによって、それがすなわち中共政府承認するという形になれば、これは外交上の問題だと思ったものですから、それで私には判断がつかないで、留保をしたような答弁をしたわけであります。御了承願いたいと思います。
  13. 周東英雄

    周東委員 それでは橋本委員の御質問のときには、まだよくわからなかったから、留保した答弁であるけれども、その後の御調査の結果、外交使節団として認めるかどうかということは別だが、あの内容になっておる間間の国立銀行をして決済に当らしめるという問題、及び民間代炎使節を交換する問題、それからココム制限物資等を相当よけい輸出させるというような問題については、協力をされるという御意思でありますか。
  14. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 協力をしたいと思っております。
  15. 周東英雄

    周東委員 ところがその同じ問題に関して、四月三十日には、一萬田大蔵大臣重光外務大臣河野農林大臣等数人の閣僚がお集まりになって、御相談になっているはずであります。そして今日の場合において、まだ両国国立銀行決済関係取扱いをする時期ではないというような、そういう方針で行こうということをきめられたようです。また外交使節団の交換に対しましても、やや今難色があるようなことのお打ち合せのようでありますが、こういうお話し合いは一体どうなっておりますか、一つ萬田大蔵大臣でもよろしい、重光外相でもよろしい、お答えを願いたいと思います。
  16. 重光葵

    重光国務大臣 中共貿易の全般にわたってお話になったようでありますが、むろん現内閣といたしましては、中共貿易はできる範囲内において、これを極力増進いたしたいという方針であることは、施政演説等で御承知通りでございます。そこでできることについて、民間の間において貿易を増進しようという協定ができたのでありますから、できる範囲内において、これは協力をいたすことが適当である、こう考えているわけでございます。  さてそのできる範囲内でどういう協力ができるかという一々につきまして、ココムの問題については、一般方針としてもう詳細に御説明申し上げた通りに、努力はいたしておりますが、なかなかココムを広げるということは困難であるということも、御説明申し上げたと思います。しかし努力は絶えずいたさなければならない。その範囲が急に広がらずに現状のままでも、これは非常に努力余地があると考えて、私どもは進めているわけでございます。そこに協力余地があると思います。  それから代表部の問題でございますが、今日すべての日本の置かれている地位にかんがみて、今中共を政治的に承認するということは行き過ぎだと、こう見なければなりません。そこでそういう行き過ぎにならぬ範囲において、できるだけの便宜を与えるということも、これまた考えなければならぬ、こう考えているわけであります。  中央銀行決済問題は、実は私ははなはだ暗いのでございまして、かつまた私の答弁では御満足もいきますまいから、関係閣僚から御答弁申し上げましょうが、これについても、全体の考え方としては、できる範囲内において協力したいという今の総理大臣気持は、われわれもその通りに汲んで実行に移したい、こういう気持だけを申し上げて御了承いただきたいと思います。
  17. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えします。ただいまの御質疑の、決済方式両国中央銀行間でやる。これは今の両国関係から見て、その時期ではないという考えであります。ただしかし総理協力すると言われたことは、今後なるべくそういうふうなことができるように、両国の国交も調整して、そしてそういう時期が早く来るように努力される、こういう意味で話されたと私は思います。
  18. 周東英雄

    周東委員 私は、日中の貿易協定の問題に関して、決してそれを進めるのが悪いとかいいとかいうことを申し上げているわけじゃないのです。できれば貿易だけは、すなわち政治体制が回復しなくても進めて行く方がよろしいと、私ども自由党でも考えている。その意味において、むしろ私どもは援助的です。問題は、決済方法をどうするかということがきまらなければ、何ぼやってもだめです。しかも従来といえども片道三千万ドル程度のものは考えておったのですが、せっかく鳩山内閣が、日中貿易というものを振興するとおっしゃった。そこで私どもは心ひそかに、どういう具体案を持って進められるかということについて期待を持って見ておったわけです。ところが行きつ戻りつしている。何だかそれをやるとどうもほかに影響するから、やりたくないようなやりたいような格好で、ある場合には協定協力すると言ってみたり、ある場合には協定協力せぬと言ってみたりすることになる。それで今すぐにはなかなかむずかしいとはいえども、一体両国国立銀行決済方法については、一萬田大蔵大臣の方では何か具体的に考えを進めようとされておるのですか、あるいはこの間の申し合せのように、これは当分の間むずかしいのだからまあということになるのですか。そこらのところを一体今後どうお考えになっていこうとされるのですか、また総理は一番大事な決済銀行の問題をどうされるつもりか。決済方法がきまらなければだめなのですから、あなたがもっと進めて、大蔵大臣やれと命令されるのですかどうですか。そこらのところは鳩山内閣の一枚看板になっておる日中貿易推進ということに対して今後の大きな眼目の点だと思うが、どうお考えになるのですかお伺いします。
  19. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 ただいまお答え申し上げましたように、中央銀行間の決済によることは今その段階ではない。そういう決済方式に持っていく前に、外交上、その他いろいろと解決すべき問題がある、私はこう考えております。
  20. 周東英雄

    周東委員 今外務大臣はただいまのところ中共承認することはなかなかむずかしいとかおっしゃいました。私もそうと思います。しかるところ、去る二十五日の内閣総理大臣施政方針演説の中に、しかしながら、幾らわれわれが反対しておる共産主義思想であっても、現にその共産正義を信奉しておる有力な国家が存在する事実は否定できない――その通りだと私は思う。また、このような国家に対してはお互いに相手国の主権を尊重し云々、こうあるのです。相手国の主権を尊重しということは、一体どういうことなのですか。総理施政方針演説としてはどういうお考えで事実上の承認をしていくのでありますか。ことにこの点に関連しましてわが党の橋本君がお尋ねをしたときに、民間代表部の交換をする場合に、日本民間です、向うは国家貿易であります。日本へ出てくるのは民間じゃないのです、国家機関が出てくるのだから、それを認めるということは、一体事実承認するのかどうかということを繰り返しお尋ねしたのですけれども、言葉をそらされて適当な答弁がなかったのであります。そのことと、ここにあなたが施政方針演説でおっしゃっておる、相子国が共産主義を奉じようといえども、その相手国の主権を尊重しと言われることは、その尊重するということは具体的にどういうことなのか。やはり事実上において今のような通商代表部の交換についても協力されるというのなら、相手方は民間の代表じゃない、国家機関が出てきて、日本でも国家機関で通るのですから、そういう意味において、この施政方針演説の御趣旨と通商代表部の問題を考え合せたときに、事実上これを承認されるのですかどうですか。
  21. 重光葵

    重光国務大臣 主権を尊重するということは、私はいかなる場合においてもそうでなければならぬと考えます。承認の問題に関連なく、いかなる場合、相手を承認しておる場合においても、しない場合においても主権は尊重しなければならぬと思います。それではなぜそこにそういうことを言われたか、何か特別の意味があるかというお話かと思います。しかし今大きな共産国の勢力があるということを認める、これは事実として認めなければならぬ、そこで主権を尊草しなければならぬ、こういうことになると思います。しかしそれならば主権を尊重するということが事実上の承認になるかという疑問に対しては、それはそうでない、これは承認の問題とは関係ないと私は申し上げたいのでございます。そして私はそう信じておるのでございます。そこでそれならば共産国はすべて国家機関でやっておるのだから、通商代表部が出てくるという場合においては、これは国家機関だ、私は理屈はそうなるだろうと思います。国家機関が出てくるものだから、それですぐ法律上の承認、事実上の承認になるか。これはまた少し国際法の議論になるようで恐縮ですが、しかしそれはそうはならぬ、こう思います。従来の関係上でも、極端にいけば領事館などでも設置してもまだ承認の問題まで進んでない例がずいぶんあるのでございます。しかし通商代表部を置いてこれに外交官の資格を与えるということになりますと、これは少し行き過ぎることなので、さような処置は私は承認の問題とからんですべきでないと、こう考えております。しかし実際上の便宜を与えるために、実際上の機関に便宜を与えて通商増進に資するように持っていくということは考えなければならぬと、こう思うのでございます。
  22. 周東英雄

    周東委員 私は説明はよくわかるのですが、何かそこにはっきりしない。よく二元外交と言われますが、これはもう今日のような時代ですから、世界の各国と平和に結んでいくということについてちっとも異議はありません。しかしそれならそれでここまでやるのだという大族をはっきり掲げてぶつかっていかれたらいいのです。それをこの間別のところでは、鳩山総理は中国に関する関係においては台湾政府承認している立場上、これは取扱いは別だとおっしゃった。そうかと思うと、ここには主権を尊重し、そしてその次を読まなかったのですけれども、演説においては、主権を尊重し、経済交流の道を開いていきたいと言われている。それでは、まだ具体的な承認もなければ法律論は出てきませんけれども、私は相手方の主権を尊重して経済交流をやって通商代表部を置いたら、これは事実承認以外の何ものでもないと思うのです。そういうことはいいならいいとはっきりして進めておいでにならぬと、いいがごとく悪いがごとく言われるものだから、せっかくの努力をしても中共の方からもあいそをつかされる。せっかく日米関係においていろいろお話をされても、ああいうものは自分のところだけで責任を負うと言いながら次にはだめだというようなことを盲われると、また米国の方からもあいそをつかされることになりはせぬかということを私は心配するのであります。何と申しましても今民主党は保守党のチャンピオンでありましょう。保守党の内閣として出ておられる、それが世界各国が日本政府というのは当てにならない、そのときそのときで、あっちではいいことを言い、こっちではいいことを言うということになると、私はほんとう国家のために惜しむのです。私はちっともあなた方をいじめようとも何とも考えてない。ほんとう一つの信念を持っておいでになるならば、それをなぜ押し通されないのか。ある場合にはいいと言い、ある場合には悪いと言うようなことでは、外交がふらふらしておるということを言われても私は一片の弁解もないと思う。あまりにもそのときそのときの御都合主義で動いておるのじゃないかと私は思うのです。そういう点について私は日本国家のために深く反省してもらいたい。大事なときです。外国信用を落すというようなことは、今後の国際折衝の上において私は非常に問題が多いと思う。しかしこの点はこのくらいにいたしまして、次に移ります。   〔委員長退席、上林山委員長代理   着席〕  次にお伺いしたいことは、六月一日から日ソ交渉が始まるようであります。最近の本委員会において両派社会党の諸君からもお尋ねがあって、大体の輪郭はわかりました。おそらく日ソ交渉をやる前提としては、まず領土問題、それから、漁業問題、引揚者問題等が同町に解決されて、初めて終結宣言に持っていくというようなお話を承わりましたが、その通りでありますか。
  23. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 その通りであります。
  24. 周東英雄

    周東委員 私はそれを聞いて安心しましたが、この際に特に私は領土問題に一言触れておきたいと思います。去る四月二十八日にサンフランシスコ条約に対して米加入国が加入する期限というものは切れました。そこでソ連と日本との関係はよほど変ってきたと思う。ソ連自体はあのサンフランシスコ条約について同一なものを締結する義務もなければ、日本も同じものでなくちゃならぬということもないということで進むことになったわけです。いわんや千島、樺太というものは、日本はサンフランシスコ条約で放棄いたしておりますけれども、まだあの所属はソ連にきまっておるわけではない。これは御承知通り。あれは軍事占領をやって継続してあるだけであります。しかも最近においてヤルタの内幕が発表され、あの当時においても千島それ自体について、南千島は持っていくべきものではないということになり、ああいう問題は民族的な考え方によってきめるべき問題だということになって――千島は昔から日本の領土であります。これは御承知通り。決して侵略でとったものでも何でもない。しかも雨千島というものについてすら、そのときにすでに日本からとるのはおかしいということになっておったにかかわらず、ヤルタにおける妙なソ連の圧迫によって承諾されておる。こういう問題に対して私は積極的な返還の要求をしてもらいたいと思う。ことに当時日本の外務省からは、あらゆる角度から千島及び樺太がソ連に領有されるべき理由のないことを民族的立場から、また千島、樺太交換に至る経緯から考えて反駁書を出してあるはずであります。これは重光さんも御承知通りだと思う。しかもサンフランシスコ条約において、あれは侵略した結果日本がとったのだからとるべきだというソ連のグロムイコの演説に対して、当時の全権吉田さんは、その点に対して非常に遺憾の意を表して、そういうものでないということを留保した演説をされておる。やむなくあのときに条約で放棄はやりましたが、今日ヤルタの内幕を発表しているアメリカの真意、しこうして四月二十八日が経過した今日、私はどうしても日本の民族的立場から千島、樺太の返還は要求してしかるべきものと思うのでありますが、これに対して総理はそういうことの準備とお覚悟を持っていらっしゃるか、お尋ねいたしたいのであります。
  25. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 周東君と同一意見を持っております。あなたと同じ考えです。
  26. 周東英雄

    周東委員 この点についてはぜひとも一つそういう御努力をしていただきたい。ただしこれはソ連に対しては返還の要求ということになりますが、日本としてはサンフランシスコ条約の中に放棄の問題を承認しております。ただソ連に対しての返還要求だけではだめであります。行く行くはどうしても今日の場合日本としてはサンフランシスコ条約の改訂までも考えて要求しなければならぬと思う。そういう点については、その領土問題に関する限りにおいてどういうふうに総理はお考えになりますか。
  27. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 どういうふうな手続をするかということについては、外務大臣から答弁してもらいます。
  28. 重光葵

    重光国務大臣 この領土問題につきまして、サンフランシスコ条約においてすでに日本及びサンフランシスコ条約調印国との間に解決を見た点のあることは、今お話通りでございます。しかしソ連との間に今回交渉を開くのは、結局サンフランシスコ条約と離れて交渉もし、かつまた平和条約をこしらえるという建前のもとにやることになっているわけでございます。もっともサンフランシスコ条約に加入することができるとかできぬとかいうようなことは、まだいろいろ国際的に議論が戦わされているようでございます。しかしいずれにしても今回の日ソ交渉は、サンフランシスコ条約を離れてやることになる。それでございますから、サンフランシスコ条約の規定に規定されてある部分であるといなとを問わず、日ソの間には全面的に重要な問題については交渉話し合いをしなければならぬということが、今日当然な結果として出てくると思います。そうしてその結果、サンフランシスコ条約調印した国々に対して、またさらに了解もしくは交渉しなければならぬことが出てくるかもしれません。そのときには当然これはやらなければならぬと考えております。
  29. 周東英雄

    周東委員 樺太、千島の問題に関連しては、ソ連はサンフランシスコ条約にもかかわらず別個の条約を結ぶ話し合いをすることができる関係にあることは、お話通り私もそう思う。それを進めると同時に、一応サンフランシスコ条約関係上放棄している点については、別個の立場において必要とあればサンフランシスコ条約の改訂を要求する覚悟であると了承してよろしゅうございますか。
  30. 重光葵

    重光国務大臣 今サンフランシスコ条約の改訂というふうな言い回しぶりで、これに御賛成を申すわけには参りません。しかし日ソの交渉の結果、これらの国との間に交渉を要する部分が出てくるかもしれない。それはむろん交渉するつもりでございます。
  31. 周東英雄

    周東委員 その点はそのくらいにいたしまして次に移ります。まず総理にお伺いをいたします前に、一萬田さんあるいは重光さんでもよいのですが、余剰農産物の処理に関する処置がどういう形に進んでおりますか、御説明願いたい。これはすでに予算の中には、投融資会計の中には――本年は相当大きく、投融資会計について去年より四百何十億ふやしたといわれるが、その中に余剰農産物処理に関する金が二百十四億入っておるわけであります。その点についてまだこれに関する取りきめというようなものがきまっていないように聞いておりますが、どういうような進捗状況でありますか、ちょっと先にお話を願いたいと思います。
  32. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 お答えいたします。二百十四億の使い道につきましては、経済審議庁が中心になりまして今せっかく策定いたしておりますが、現在のところ大体電源開発という方面と、それから農地開発という方面と、それから生産本部の推進、この三つに分けてやっておりまして、詳細な数字はただいまちょっと記憶しておりませんが、三項目に分割することに方針をとっております。
  33. 周東英雄

    周東委員 今の私の質問は、その内容をお尋ねしているわけではないのです。余剰農産物処理に関して、アメリカとの間における話し合いはまだきまっていないのですか。それは一体どういう状況になっておるかということをまずお話しを願いたい。
  34. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 あれは全体の数量は一億ドルという金額があげられておりまして、そのうち一割五分、一千五百万ドルはこれは日本に対する贈与となっております。あとの八千五百万ドルの中の九割、つまり五千九百五十万ドルですか、これは日本に対する貸与になっておりまして、三割はアメリカ側がこれを日本に持ってきて、処分して、これを円に変えてアメリカ側が使う、こういうことになっております。その日本側に長期に借りますものにつきましては、最初われわれの考えでは、これは円で借りて、それで円で返す、こういう考えで進んだのでございますが、昨年の暮れあたりからアメリカ側が円で返す場合にはこれはドル・クローズをつけろ、こういうふうな突然の申し出があったのでございます。ドル・クローズをつけるということになりますと、ほかの方に非常に関係いたしまして、前からの日本の円の借款はその支払い時期になるとまた非常な大きな金額になる、こういう関係になりますから、なるべくこれを控除したいということでいろいろ交渉いたしましたが、どうもそれはできない。それならいっそドル・クローズをつけるくらいならば、ドルで借款してドルで払おうじゃないか、こういうことで交渉しておったのであります。ところがここにほかの債権団、つまり世界銀行の方ではドルで返すということになればこれは世界銀行のあとの借款に対する信用が減退するということになる、こういう申し出があったものですから、現在は日本側の希望によってドルで借りてドルで返すことも、またドルで借りてこれを円で返すことも、両方できるように、この方法で今せっかく交渉中であります。
  35. 周東英雄

    周東委員 私はこの点はどうも合点がいかぬ。何がゆえにドルの借款を起されるかということであります。本来余剰農産物処理法四百八十条は現地通貨でもって買い上げ、返還させることを認めておる法律なんです。ことに余剰農産物の買い入れの話し合いは、これは実質的にはいろいろありましょうけれども、形式的にはあくまでも通常の輸入ワク外のものを輸入することになるのです。アメリカではあり余ってできた余剰農産物をほかのに国買わせるわけです。これは一面においてアメリカの農民に対する保護であります。しかしそういうものを通常の輸入のワク外に買うのです。大事な大事な外貨で苦しんでいる日本が、何がゆえにわざわざ外貨でこれを買うようにお変えになるのかということです。ほかの国でもみんな四百八十条の規定によってこの余剰農産物処理の問題は、各国に意義がある、魅力がある、というのは、現地通貨-ローカル・カレンシーで払うからなんです。しかもそれで返してもよろしいということをアメリカの法律では言うておるのです。日本のような貧乏国が何もあり余ったものを買うときに、なけなしの、ドルで払う必要はないじゃありませんか。何がゆえにこれをドルの形に持っていかれるのか、私にはよくわからないのです。国民のために、ほんとうにアメリカもある程度日本立場考えて、ドルはなかろうから日本の円で払ってよろしい。しかも聞くところによるとこれは五ヵ年すえ置き四十ヵ年賦と聞いております。そういうふうな形であるならば――話が少し妙なたとえですけれども、十年先の百万円より今日の十万円がいいというものです。今さしあたってドルに困っておるでしょう。あとで詳しくお伺いしますが、経済六ヵ年計画においてもなかなかむずかしい、御苦労をなさっております。そういう際に何がゆえに――向うは円で買ってよろしい、現地通貨で買ってよろしい・現地通貨でお払いなさい、こう言っておる、それをドルに変えていくということはどこに理由があるのですか、一つお伺いいたします。
  36. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 お答えいたします。ただいまの御質問は、せっかく向うは現地通貨で売ってやろうというのを、なぜ現地通貨で買わないか、こういう御質問でありますが、これは先ほど申しました通りに、日本の円で払いますときには、ただいま一ドルが三百六十円と計算いたしてりおますが、これから二十年光にどういうふうになるかわからぬ。そのときに三百六十円は三百六十円で返させてくれる、こういうならば私はとります。ところがそのときにドル・クローズをつけるということになりますと、現在イタリアその他の間において、前からの円で持っておるところの借款、それなどがまたドル・クローズをつけられると、大きな数字になりまして、他に影響するところが多いから、これは借款はドルでいたしますけれども、円で返し得る、こういうことになっておるわけなのであります。それでとにかくアメリカではあり余った農産物でありますし、これを買い取ってやるのであります。とにかく三年すえ置いて、それは無利息です。そうしてドルでした場合には三分でよい、四十ヵ年賦になる。円でやる場合にはこれは四分にしろ、こういうことであります。実際問題として私も少し研究いたしました結果、一年度の払う分は、分割して払いますから、約二百万ドルから三百万ドルの範囲があります。ところがアメリカの大使館では一年に三百万ドルぐらいの経費を使っております。これは当然彼はドルを持ってきて、日本で円に変えて払うわけでありますから、これは余剰農産物の支払いをそれに充当して、かりに円で払った場合には、彼はもうドルを持ってこずに、その円をすぐに使いましょう。ドルで払ってもそれを円に変えのるだということになれば、四分よりも三分の利息の方が有利だ。こういうふうに存じまして、私はそういうふうな交渉をしたのでありますけれども、ただいま申しました通り、世界銀行の話がありましたから、周東さんの御意見のようなぐあいになれば、これはまた円で払ってもよいというふうに、両方日本の都合によってできる、こういうふうに今交渉中であります。
  37. 周東英雄

    周東委員 一応の話はわかるのですが私はそのことは一つの面を見て他面が抜けておるのではないかと思う。あなたは今ドル・クローズをつけられるがゆえに、二十年先にドルの価値が下ったときにとおっしゃいますが、今度は逆に、ドル借款で二十年先にドルでお返しになるときに、あなたのような心配があって、日本の通貨価値が下っていたときに、外貨の調達責任日本にあるのです。そのときに日本がうんと輸出超過でどんどんドルが入ってくるならば別ですが、あなたのようにもしも日本の通貨関係が悪いということになれば、そのときに外貨の調達責任日本にあって、やはり三百六十が四百五十になれば、四百五十持っていかなければ返済すべきドルは返せないのです。そういう問題を考えてきたときに、むしろ現在の日本の経済状態からいえば、大事な大事なドルをもって借款を返すということよりも、円で買い、円で返すという形をとっておくのが、一つの行き方でないのか。そこにこの余剰農産物処理法に基く魅力もあり意義があると私は思う。何も苦しんでこの際通常の輸入ワク外のものをたくさん買ってくる必要はないのです。しかしその一億ドルの中で一割五分、千五百一万ドルですか、これは日本にギフトとしてくれる。その三制はアメリカの日本内地におけるいろいろな処理に使ってくれるので日本に金が落ちる。それはけっこうです。非常な一つの恩恵だと思います。しかしその恩恵の上に、日本は貧乏だから円で払い、円で買うことを認めるというのを、ただ目先の金利が高いとか安いということでやられるよりは、もっと――しかも三年すえ置きですか、五年すえ置きですか、四十ヵ年賦ですから、そのころになれば日本の経済も今のようにそんなに貧乏ではないと思う。それをあなたはドル・クローズをつけられて、二十年光に通貨価値が下るのだから困るという心配なら、あなたの六ヵ年計画はどうするのです。六カ年計画ではよくなるということを目当てにしてお出しにならなければ、国民はさっぱりどうもならない。それを私ども考えているのです。ドル・クローズで驚く必要は少しもない。しかも向うにドルを返す場合に、外貨調達の責任日本が持つ。下れば、日本がやはり三百六十でなくて、四百五十なり五百なり出してドルを調達していかなければならぬという実態を考えたときに、むしろ現況から見て、円で払うという行き方の方がいいのじゃないか、こう思うのですが、いかがですか。
  38. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 ただいまの御意見は非常に傾聴する点だと存じます。それで私どもの現在交渉いたしておりますことは、日本の都合によって、周東さんのおっしゃる通りに、その時期によって円払いでもできる。ただしその場合は利息は四分になる、そういうふうなことで交渉を進めております。
  39. 周東英雄

    周東委員 私はそこらにおいても頭の置き方が違うのです。もしそれならば、円払いで四百八十でやらせてくれているのだから、日本の経済の現状から見て、円で返すことにきめておいて、日本の経済状態がよくなってドルで払うことができる場合においてはドルで払うことを認めろ、原則を逆になぜ持ってこないのですか。ドル借款をわざわざやって――この間の新聞で見ると、日本銀行に一たん入った五千何百ドル、日本円にすれば二百五十余億を、預金勘定ですか、特別会計勘定に入れて、それをドルに直して借りた格好にして円にするというようなことまでしなくても、円で貸してもらって円で返すことにして、これから先において日本の通貨事情がよくなって、経済事情がよくなったときにおいて、ドルの状況がよかったらドルで払うことも認めなさい。そのときには、ドルで払うのだから、金利を下げなさいという条件を逆につけたらいいではないか。あなたみたいに、ドルにしておいて、そのときに非常に苦しかったら円で払うというよりも、向うが言うておる円払いにしておいて、日本の経済がよくなって、ドルがよければドルで払うということを条件をつけるということに、私は頭の置き方を逆にした方が日本の利益になると思うが、いかがですか。
  40. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 それは先ほど申しました通りに、円に対してドル・クローズをつけるということは、この余剰農産物の問題だけでなくて、ほかの方の支払いに非常に影響するところがたくさんあったものであるから、そういうふうな方針をとったのであります。
  41. 周東英雄

    周東委員 その点は私は同じだと思うのです。あなたの方が世界銀行から抗議を申し込まれて、日本に対する借款の能力は一億ドルしかないのだ。しかし今日世界銀行から四千万ドルは貸しているのだから、残りからいうと、あと五千何百万ドルしか貸せないということを言われて、びっくりしてしまって、今度はドルにしますけれども、帯しいときには円で払いますからかんべんしてくれ、こういう話なんです。同じことです。日本がこれだけ貧乏だ、ドルはないといっておるのに、わざわざ余剰農産物を買うためにドル借款までして払うということになれば、東南アジア地区における賠償問題について、日本は余剰農産物を借りてまでやるなら賠償金をくれといわれたら、どうしますか。その影響というものはありましょう。それは攻撃だけはいたしません。ありましょう。しかしそれは両方同じです。だから世界銀行は困ると言ったのでしょう。そんなことは初めからわかっておる。世界銀行が来て、一億ドルくらいしか日本には償還能力がない。それに四千万ドル貸しておるから、あと六千万ドルしかない。しかるに余剰農産物でドル借款するのは六千万ドル、そうすると、これじゃ困ると言われる。そこであなたの方では非常にお困りになって、今までいった手前、ドルでどうしても借款しなければいかぬ、しかし困ったときには円で払いますからかんべんしてくれ、これじゃ私は世界銀行は困りはせぬかと思う。私はほんとう国家のため、国民のために思います。もう面子におとらわれるになる必要はない。私はむしろ法律通り、四百八十条に、ローカル・カレンシー、現地通貨で払うと書いてある。それで返還してよいというのは恩典です。これをそのまま認めてやっていって、そうしてあなたのいろいろなお考え――もしも日本の経済事情がよくなったらドルで払うことを認めろ、ドルで払うときには金利を三分にせよ、これは一つの順の行き方だと思いますが、一体総理大臣はこういう問題についてはどうお考えになりますか。わざわざ日本の農民のために通常のワク外のものを入れるのです。それだからこそ日本の通貨で買うてもよろしい、こうなっているものを、わざわざドル借款をもってきてそういう苦しい行き方をせぬでも、知恵はあると思う。どういうふうにお考えになりますか。
  42. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 大蔵大臣から答弁させます。
  43. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えします。周東さんのおっしゃったことはごもっともなんです。私どもは、やはり円で買って円で払う、この建前でむろんいくべきだと思う。ただ途中で、ドル・クローズを入れよう、こういうような話が出てきたものですから、そうしますと、アメリカの余剰農産物を買って、しかも相手がアメリカの政府、それに対して日本側が為替リスクを考える、こういう考え方は、戦時、戦前その他において民間の円債務が相当ある、しかもそれは余剰農産物から生ずるというような、債権と違った性質のものである。そういうものについても為替リスクを考えてくれ、こういうような場合には、これははなはだ拒否する理由に因る、困難を来たす。だからここで波及しないようにするにはどうすればよいか、こういうような見地からだんだんと話を進めて参った。今高碕長官が話したように、ドルと円と選択できる、今こういうことになっているわけです。これは選択になっておりますけれども、やはりお話のように円で払うということが、実際そういうふうに行われていくだろう、こういうふうに思っているのですが、要するに他に波及しないということを形の上で中心に考えて、実際は周東さんのお話のような方向になる、こういうふうに考えております。
  44. 周東英雄

    周東委員 よくわからないのですが、実際上私の説に賛成するとおっしゃいますが、それならば私はその条件を逆にされたらよいと思う。円貨で払うということと、日本の経済が、ドルが相当たまってある場合にはドルで払うから、そのときには利子をまけろ、こういう貧乏なときは、余剰農産物を買うのであるから、円でかんべんしてくれ――町うは円でいいと言っているのですから、そういう行き方をなぜとらないのか。今お話のことは、さっきも申しましたように、ほかに響くからとおっしゃいますけれども、ドル・クローズというものをおそれていらっしゃるのは、あなた方の自信のないところがある。経済六ヵ年計画というものを今度お尋ねしますが、これでもってある程度日本貿易収支というものを改善していく。三十五年にはやるということになっておりますね。具体的なものがないから、だんだんお尋ねしなければならぬのですけれども、これをやる考え方としては、そうすると日本信用は高まる、貿易収支というものはよくなって、日本の総生産指数が上って、雇用も何とか完全雇用になる。そうなったときに、ドル・クローズの三百六十円が減るとか減らぬとかいうことは心配に及ばないんじゃないか。もし悪くなったというときに、ドルの調達の責任はだれが持つのですか、こういうのです。クローズはつけないけれども、返すときには、ただドルがわいているわけでないでしょう。そうすると、日本が円をもって買わなければ外国に払う金はない。もし日本の経済が悪く、信用がないというなら、そのときは三百六十が四百五十になったら、四百五十でドルを調達しなければならぬと思う。同じです。それならむしろ逆に持っていって、現在のような貧乏のときには何もドルを借款までしてやる必要はない。世界銀行の問題についてああいうふうな横やりを入れられて そうしてあわてて、悪かったときには円で払います、これは実際少しおかしいんですね。むしろいいときはドルで払うからまけろという方がいいと思う。金利というものは、アメリカの方はドルからきている話である。しかもこれは四十ヵ年年賦です。その間に日本の経済の建て方が今のままで済むわけはないのです。そういうときに、円で買い、円で返却するところに、余剰農産物処理に関する法律の恩恵的な意義があるわけだと私は思うのであります。重ねて、お伺いいたします。
  45. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 円で払う。そしてドルができたときはドルで払う。これでいけるのなら、私はこれでいいと思うのです。しかしアメリカ政府としてはそういうことをいいと言わない。円で払うという建前をとる以上はドル・クローズを入れよう、こういうふうになるわけであります。いろいろと他の関連もありますので、そこで選択的にしておけば、ほかに波及しませんから……。実際は周東さんのお話になったのと同じ結果になるのだろうと思います。
  46. 周東英雄

    周東委員 そうすると、今度のなにはまだ確定はしてないのですか。政府のおやりになるように、ドルで返す。しかし非常に都合が悪くなったら円で返す。こういうときにはドル・クローズをつけませんか。返す場合には、それはいらないのですね。――私はこの問題については、あくまで所見を異にします。一体その問題についていつきまるのですか。予算の上においては二百十四億ですか、投融資会計に見返り資金を入れてありますが、果して今日までこれが成立しておりません。話合いだけではこの予算案の中に盛るわけにはいかぬと思う。現実に余剰農産物処理法によって買い入れた品物が日本に来て、日本で処理されなければならない。まだ一つも船出してないと思いますが、これから半年――もうちょっとありますが――入ってくるのです。一体こういう問題について未確定な資金原資が入れてあるということを――私はあとでもお尋ねしますが――非常に心配になるのですが、一体いつになったらこの余剰農産物処理に関する取りきめができ上るのですか。しかして、この取りきめができて、 いつになったら現実に農産物がこれで入ってくるのですか。
  47. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 ただいま折角交渉中でありまして、相なるべく早く決定いたしたいと存じます。
  48. 周東英雄

    周東委員 それではできるだけ早くやって下さい。とにかく日本は貧乏ですから。二百十四億の予算の中の投融資会計繰り入ればきまっている。これは日本に現物が来て、日本で処理しなければ、その金は使えませんよ。来るという期待だけでは。どこかから借りてくるとおっしゃるかもしれないけれども、だいぶん行き詰っているわけですし、だいぶん資金原資についても水増しになっているというような情勢ですから、どうか一つ、今後の努力をお願いいたします。  次にお伺いしたい点は、ガリオア、イロアの返済関係に関する政府とアメリカとの交渉はどうなっております一か。
  49. 重光葵

    重光国務大臣 大要をお話申し上げます。ガリオア、イロア等の米国による戦後の対日援助は約二十億に相なっております。その処理について昨年五月より十月末まで東京において交渉が行われておりましたが、その後政局の変化もあって中断をいたされた次第であります。政府といたしましては、本件は日米間の重要懸案であり、日米関係を強固な基礎に置くために、適当な時期に交渉を再開して、その解決を促進する意向をもって、今処理をいたしておりますが、まだ交渉の再開には至っておりません。
  50. 周東英雄

    周東委員 これは巷間伝うるところによりますと、もう相当に提案が出てきていると聞いております。アメリカから大体返済すべき元金の額、しかしてそれを五年据え置き三十五年賦というような格好に、ある種の額がきていると聞いております。違うんですか。まだそういうところへいっていないのですか。
  51. 重光葵

    重光国務大臣 そのところまでいっておりません。なお私もよく調べましょう。まだそういうことにいっておりません。
  52. 周東英雄

    周東委員 私どもの聞いているところによると、大体六億ドル、それを五年据え置きの三十五ヵ年賦というように聞いております。私はガリオア、イロアの問題は、社会党の諸君やなんかに言わせると、あの混乱時代に貿易関係の手足を縛って日本に輸入させぬようにしておいてくれたんだから、それは当然もらえばいいじゃないかというような質問がこの前あった。これはいろいろの見方がありましょうが、手足を縛らなくたって、あの終戦の混乱時に必要なものを全部金で買うということなら、日本には金はなかったはずです。そういう場合に、ガリオアなどによって直ちに支払いをせずに入れてくれたということは、一つの恩恵であります。これに対しては、あくまでも日本が独立国の立場から返済をするというのが、私はいいんだと思うのです。当然相手方はくれるべきものだという考えの人もありますが、そうじゃなくして、やはり堂々と返済するというくらいの格好は私は必要だと思う。それに関してある程度の提案が来ているはずです。そういう問題は、私は現内閣において早く処理されるがいいと思う。いろいろな関係でもらうものはもらう、しかし払うものは払うということのけじめが、国際関係においては非常に信用を高め、信用を害するのです。こういう問題については、大分長くなっている。一体内閣ができましてもう五ヵ月近くなるのに、こういう問題をそのまま捨ておかれている。また先ほどの農産物処理の問題もずいぶん長くかかっている。今努力中というお話でありますが、こういう問題は敏速にお片づけになっていくことが、国の信用を高めていくゆえんだと思うのでありますが、全然その話はないのですか。
  53. 重光葵

    重光国務大臣 今のお話の趣旨は、私もその通り考えて、こういう問題はなるべく早く片づけたいと思っております。アメリカの方もこういうふうに早く片づけてもらいたいという意思表示はしているわけでございます。しかしこの問題につきましては、わが方においてもアメリカに対する債権もございます。さようなものを十分に主張をいたしまして、これを有利に解決することが、この際必要であろうかと考えます。ガリオア、イロアの関係を処理して、一体これをどこまで突き詰めていけば日本承認し得るかというところまで突き詰めなければなりません。その突き詰めた上で、その額についてはまた議会に提出をしなければならぬかと思いますが、さようにしてこの交渉は促進していくことが適当であると考えているわけでございます。
  54. 周東英雄

    周東委員 それではこれはこのくらいにいたしまして、次に移ります。  鳩山総理は十二月から二月まで、今度の予算を編成するにあたっては、防衛分担金を百八十億ほど減額削減して、これを内政費に充てる、主としてこれを住宅その他の社会保障的なものに充てるということをたびたび申されました。私は、この問題は相手方のある問題であり、自由党内閣時代岡崎外相が非常に苦労した問題です。しかし国民的感情からいたしますと、日本の今日の財政状態からみて、できるだけ防衛分担金を減じてもらって、それが内政に使われるということは非常にいいと思っております。これは鳩山総理がおっしゃることですけれども、超党派的にどうか成功してもらいたい、こう私は祈っております。ほかの市井の人が言うのではなくて、内閣総理大臣がおっしゃいますのですから、何か当てがあっておっしゃっておるのだと、私どもも非常な期待をかけており、国民もまたこれに期待をかけておったと私は思う。しかるに今日は、防衛分担金については減額はありましたけれども、内政費にこれを使うことはとめられた。しかもそのしわはどこへ来たかというと、他の方の予算にみんなそのしわが寄ってきた。こういうことに対して、総理はどういう御所見をお持ちでございましょうか、どういうふうに責任をお考えになるかということをお伺いをしたいのであります。
  55. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 この点については、すでに答弁をいたしましたが、防衛庁費を漸増していけば、防衛分担金の減額はできるという建前があるのですから、防衛庁費をだんだんと漸増してきた今日では、防衛分担金の減額をアメリカに請求することは当然筋道が立つと思っております。そこで防衛庁費の漸増、これを約二百億円と見なくちゃならないが、それだから二百億円くらいの防衛分担金の減額は、アメリカでも承知するだろうというような見通しで、一方を二百億ふやせば、一方を二百億くらい減らしてもらえるだろうというので、二百億ということを申したのであります。
  56. 周東英雄

    周東委員 私は防衛分担金を何百億減らすとおっしゃったという問題をお尋ねしておるのではないのです。それを減らして内政費、民政費に持っていくとあなたがお話になった、ことに社会保障費、住宅その他にという言葉がついております。持っていくというお話であります。そこで私どもは、これは非常にけっこうなことだと思った。ことに一萬田大蔵大臣内閣を代表されて、一兆円予算というワクを早くから声明されております。これは、今日の状態として万やむを得ない仕儀だったかと思いますが、それをやっておられる上に、いろいろな公約をなさっていく。その実行のためには、防衛分担金を百八十億か減して、それを内政費に回すということは、それだけ内政費がふえるということです。これは非常に国民にとってよいことでありますし、私どもも先ほど申し上げたように、ぜひこれは成功させたいと祈っておったと申し上げた。しかも国民は、アメリカの防衛分担金を減して大いに使ってくれ、これを期待しておる。おそらく選挙あたりでも、これを期待してだいぶ票が来たと思うのですが、これは別としまして、それをやっておったにもかかわらず、一つも内政費に使えないようになったということです。このことは、あとでお尋ねいたします内政費の諸費に影響する。ことに農村対策費というものは百十六億減っておる。あの気の強い河野君であります。民主党内における農政通というお話でありまして、大いに期待しておりましたが、農村が一番よけい減っておるのであります。そういうふうなしわ寄せが来ているのはどこに原因があるかということです。別のところを一兆円のワクで縛っておる。そうしてこれは、防衛分担金を持ってきて内政費に充てますということを、あなたがお話になって選挙に臨まれた。国民はこれを多く期待した。それができなくなったから、ほかのものを削らなければならない。公約を果すためにこうなってきておる。そういう問題について、総理はどういうふうにあなたの発言に対して責任をお考えになるかということです。
  57. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は防衛庁費の二百億円増額が、ほかの方の金でもって埋め合せをしなくちゃならないのが、防衛分担金の百七十八億円の流用によってできたということによって、予算面ができ上って、住宅の問題も減税の問題も解決していったということは成功だと思っております。
  58. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 私は補足いたしまして御答弁申し上げます。私どもとしましては、予算編成の上におきまして、防衛庁費と防衛分担金との総計が前年度のワクの中にと、こういう考えが閣議できまった方針であります。従いまして、この防衛関係の費用を減額をしてもらって、特に分担金を減額してもらって、それを内政費に回すということは当初より予定しておることではないのであります。事実またさようになっておる。ただ従来の質疑応答の中において、総理のお言葉が参議院等の御答弁にあったようでありますが、これは、そういうふうになればよかろうというお気持と思っておるわけであります。
  59. 周東英雄

    周東委員 私はほかの方なら知りません。市井の人が自由の意見を述べることは勝手であります。しかし、いやしくも一国の内閣総理大臣が選挙に臨み、また国政を担当する場合の所見として、防衛分担金を削除して内政費に回すということを言われたことは、そう思いつきや勝手に言われたのでは困る。私どもは先ほども申しましたように、ほんとうに超党派的にこれの成功を祈ったということは――一萬田さんが一兆円のワクをきめて、いろいろな公約を実行するのにお苦しみになったことは、私は同情する。その際に防衛分担金を減らして、百八十億を内政費に回したということなら、それだけ内政費がふくらむことは当りまえです。それを私ども期待し、国民期待しておった。ところがいろいろのところでおっしゃったけれども、希望を言われたというなら、総理大臣というものは、希望だけあっちこっちで言えばよいということになる。この席で、橋本君のお話によっても、私は非常に遺憾に思いました。鳩山さんがあの御病躯を押して無理をなさっております。同情申し上げておる。しかし参議院においてココムを全廃すると言われたが、あれは理想論を言ったので、理想が通らぬときもあるのだというような話をされたのでは困る。日本の一国の総理大臣、それが全廃に賛成だと言われた。その賛成の方に努力するということは裏に含まれておるのです。あなたは政治家でしょう。普通のそこらの市井の人が演説して、思いつきを言うのとは違うのです。そのことをあなたがほんとうに病躯を押して今日やっておられる。とにかく政治家としては、戦前から残っておる政治家なら優秀な方だと思っておる。それがそういうふうな形で、理想論を言うたのだ、思いつきを言うたのだ、できないならおしまいだといったら、だれを信頼して政治をやっていったらよいのですか、私はそれを言うのです。私は今日の日本立場として、一兆円予算はなかなか苦しいと思います。これをうんとこさ広げろとは言いませんが、ある種の財源はあると思います。そういうときに、一升ますに盛り込むのだということを鳩山内閣はちゃんと政策としてきめておいでになるのに、それとは別に、あれもやる、これもやるということを勝手におっしゃるから、その跡始末をつけるために御苦労なすっておると思う。しかし今の防衛分担金を削除したものを内政費に回すということは、思いつきであるということではなかろうと思う。おそらくこういうことは国民の非常な期待であって、これによってこそ、今度鳩山内閣はやってくれるであろう、内政費がふえるだろう、こういうことが今度の選挙で非常に響いたと思う。私はいたずらに政府が宣伝の内閣であるという、そんな悪口は言いません。実質的にやってもらえばいいと思っておりましたが、実際問題として、おっしゃっておることが現実にできてこない。こういう問題について、よほどお考えになっていただきたい。その意味においては、総理は、閣僚が担当しているにかかわらず、やはりどうも、何と申しますか、悪口もいやですけれども、軽率に思いつきをおっしゃり過ぎると私は思う。そのものをあとからあとから外務大臣、大蔵大臣がしりぬぐいして歩かなければならぬ。そういう問題については、ほかじゃないのです。内閣総理大臣というものは、ほかの閣僚がちょっとやり方が間違ったときに、最後にあなたが修正し、まとめる役なんです。それをあなたが第一線に出てしまっては、間違ったときは、ほかの大臣が直しょうがない、こう私は思うのです。いつかの外交文書の取扱いでも、私が伺っておりますと、ドムニッキーが持ってきたものを受け取って何が悪い。そんなことを聞いているのではない。いやしくも外務大臣というものがあるので、重大な事項については私も聞くが、それは外務商を通じてこい、あなたの意見というものは、最後には腹にあっても、そう軽々に出さないようにしなければ、日本内閣は不統一になってしまう。そのことは、内閣はどうなっても、それは問題になりません。しかし日本の国全体の損じゃありませんか。ほんとうに今日は危機に臨んでおると私は思う。保守党の危機だ、日本の国の危機だ、そういう場合に、あれは思いつきを言ったんだ、あれは前とは違うのだと言われてはまことに残念でありますし、せっかく御病躯を押して台閣の首班になり、政治を処理せられておられますあなた、傷をつけないといことがう必要だと私は思っておるのです。しかし、されること、なすことを見ていると、あまりどうもでたらめで、軽率過ぎているのではないかと思うのです。私は重ねて申します。今の、防衛分担金を削除した額は民生費に充てると言われたが、一つも行かない。それに対してどういうふうな責任をお感じか、もう一ぺんお答えを願いたい。
  60. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は、防衛分担金の軽減を、国民生活定費のために必要だといってアメリカに交渉することは、適当だと考えておりました。今でもそういうように思っているのです。
  61. 周東英雄

    周東委員 適当であって、交渉したということはわかりますが、しかし結局ならなかったでしょう。そこでです。そのしわがほかへみな来ているのですよ。住宅問題、失業問題、社会保障費、これはある程度ふえました。大いに川崎君がこの間喜んでおられました。これはとにかくふえたが、それをふやすために、初めは防衛分担金削除でもって持っていくと言われたが、行けないから、その方が使えなくなったから、ほかの方の予算を削除して減らさなければいかぬようになってきた。そのことが農村に対する問題にたくさん来ているのです。いずれお伺いしますが、そういう問題についてあなたはどうお考えになるのか。国民期待していたんですよ。ところが防衛分担金というような問題について、アメリカと折衝して、日本は貧乏だから、それを内政費に使ってやるのだ、こういうことで選挙に臨み、宣伝された。それが一つも行かない。行かなくて、今度はほかの方をあっちを削り、こっちを削りして公約のつじつまを合したということなんです。私は苦しいときだから無理は言わぬが、そういうことはいけないじゃないか、それに対するあなたの責任を重ねてお尋ねいたします。
  62. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 先刻の答弁で御了承願いたいと思います。
  63. 小坂善太郎

    ○小坂委員 議事進行……。ただいまの周東君の発言について、政府から答弁があったわけでありますが、全然答えになっていないのです。周東君は、その責任をどう感ぜられるか、その心境はどうか、こういうことを聞いている。ところがこれについて、非常に答えにくいでありましょうけれども、われわれとしては全然誠意が感ぜられない。こういう重要な問題を党を代表して質問しているので、もう少しわれわれとしては誠意をもって答えていただきたいと思うから、政府の方において、この点について十分考え答弁せられるために、暫時休憩を要求いたします。
  64. 上林山榮吉

    ○上林山委員長代理 政府の方でもう一ぺん答弁する考えはございませんか。
  65. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 先ほど答弁をした通りであります。
  66. 上林山榮吉

    ○上林山委員長代理 一時まで休憩いたします。    午後零時七分休憩      ――――◇―――――    午後一時三十七分開議
  67. 牧野良三

    牧野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行します。周東英雄君。
  68. 周東英雄

    周東委員 次の質問に入ります前に、あと関係もございますので、しつこいようでありますが、もう一度総理大臣の御所見を伺っておきたい点は、先ほど申しましたように、総理大臣は選挙に臨んで、内政費に充てるために防衛分担金というものを削除していくのだということをおっしゃいましたが、今日の事態としては、内政費にこれを使用することは全然禁せられております。それがために、これから私が質問しようとする問題に触れるのですけれども、他の重要予算の削減ということが出て参っているわけです。私は、そういう問題について総理がどういう責任を感ぜられるかということを先ほどお尋ねしたのでありますけれども、どうも顧みて他を言われておるのでありますが、その点について、もう、一度はっきりと御言明を願いたいのであります。
  69. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私が先刻申し上げましたように、日本は、自衛力というか、防衛力の増進、漸増を約束をしておりますので、防衛力の漸増のためには、日本は相当の金額を使わなければならないのであります。それで一方において、また自衛力を漸増すれば、それに応じて防衛分担金を減額してくれるというような話もあるのでありますから、防衛力を漸増すれば、それに相当をする防衛分担金の減額ができると思いまして、そういう主張によってできたところの防衛分担金の減額分を、生活安定費とか、その他に使いたいと思ったのであります。その通りに実行はしてきたのでありますが、ちょうど防衛分担金の減額というものは、そのまま自衛力漸増の方に用いられるような約束になったものですから、私の理想としていた通りに物事が運ばなかったのであります。それは認めます。しかし防衛力を漸増することによって防衛分担金の減額は成功したのでありますから、私の考えていたことの半分だけは通ったわけであります。
  70. 周東英雄

    周東委員 国内における自衛力の漸増ということに対しては、わが自由党といえども、前からやっていかなければならぬことは承知している。しかもアメリカとの間におきまして、自衛力が漸増するに従って、それに応じてある部分の防衛分担金の削除ということも考えられておるわけであります。これは今さら始まった問題じゃないんです。問題は、防衛分担金を削除した額を内政費に使うというあなたの御言明なんです。こういうことに国民は非常に期待しているものだと思う。先ほども申しましたように、一兆円のワクはきめてあるんですから、ほかから金が出ようわけはなかなかない。そのときに、防衛分担金を減して内政費に持ってくれば、それだけふえるのですから、大きな期待国民に持たせておられたことは、あなたの御言明からなんです。私どももその実現することを望んだのです。しかし相手方のある問題でありますから、そう簡単に行かないということは、過去においても、岡崎前外相が苦労した経緯をよく知っておるわけです。そういう苦労をよく御承知の上で、なおかつ内閣総理大臣が御言明になるのですから、ある一つの見込みがあって、できるものだと私は思っておった。ところが実際にはできない。防衛分担金が減ぜられたことが成功だとか不成功だとかいうことを聞いているんじゃないんです。当然ある種の形において減るのが当りまえなんです。しかしそれを内政費に持っていくというところに鳩山内閣の特性があり、あなたの政治力を期待しておった。大いに期待したけれども、何もできなかったというのでは、それじゃ仕方がないではおさまるまい。それについてどういう政治的責任を感ずるかをお尋ねしておるわけであります。
  71. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 ただいままでの答弁によって御了承を願います。
  72. 周東英雄

    周東委員 これ以上申し上げてもお答えがないと思いますから、それでは内政の問題に移ります。  ただいまの事柄が一番大きく響いているのは、内政面に現れた予算上の実態であります。総理施政方針演説でこう言っておられます。「経済自立のためには、国民生活の安定をはからなければなりません。国民生活を安定させることは、」云々、こういうことであり、しこうしてこれに関連して、日を取り上げられております。輸出の振興並びに産業基盤の育成ということを考えていかなければならぬ。私はその通りだと思います。私はあなたの施政方針演説には満腔の敬意を表します。しかしその産業の基盤育成に関しては、具体的にはどういうことを考えておられるりかということを、まず聞きたいのであります。
  73. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 大蔵大臣から答弁してもらいます。
  74. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 産業基盤の育成については、端的に申し上げますれば、融投資を重点的に、特に産業合理化を推進していく。同時に一般的な経済の情勢から見て、今日健全なる国民生活並びに経済を推進していく、こういうところにある。それのさらに具体的な裏づけとしては一兆円の予算があるし、それから融投資を増額しておる。これが具体的な現われだと御承知を願いたいと思います。
  75. 周東英雄

    周東委員 産業基盤の育成ということでどういうことをお考えになってわりますかということを申し上げたところが、大体産業の合理化をやるんだというお話であります。これはその一つでありましょう。しかし忘れてならぬことが、これについては二つあると思う。内地における資源の開発、内地における国土の保全、維持という問題、農地の造成による内地における食糧増産、これによって輸入を防遏して外貨支払いを減すということ、この根本をやはり考えていかなければならぬ。これはやはり産業基盤の育成だと思うのであります。同時に、あなたのおっしゃった合理化の問題は、日本は輸出によって立たなければ成り立たない国情にあります。食糧こそ、ある程度において高い自給度を持っておりますけれども国民生活を維持するに必要な各種の必要物資の原料、材料、日本にはないのでありますから、どうしたって輸入に仰がなければならない。また職場を開くために、産業を発展させるための原料、材料というものも、多くを外国期待しなければならない。それを輸入できない日本の実情である。ただでくれないのでありますから、買うためにもうける。すまわち輸出振興というものが問題になっておると思う。しかして輸出振興のために何が問題かというと、今日日本の輸出品の価格が高くて、国際価格を上回っているがゆえに売れないという実情及び市場の狭くなっているという実情、これを考えていかなければ輸出は振興しないですか、いわゆる産業基盤の育成というものの他の一面は、この一本の輸出鉱工業に関する産業設備その他に関して、これを合理化する、こういう問題だと思う。ともすると今大蔵大臣が言われるように、産業基盤の育成というと、すぐ合理化という問題が出て、鉱工業の方面ばかりが頭に浮びがちであります。そうして、ともすれば農山漁村における問題が忘れられがちであります。ここに私は、今回の鳩山内閣の農山漁村に対する考え方が薄いということを言わざるを得ないのであります。時間がありませんから予算を通じてお伺いします。  食糧増産をやるということは、総理施政方針演説にも現われております。しかもその点については、総合食糧計画を立てる、こういうお話である。ところが予算を見ますと、先ほど触れましたように、今度の農林省関係予算、食糧増産関係予算、これを通じて見まして、大体百十六億の減になっておる。こういうことで、一体日本の農村における施設が育成強化されて、食糧増産ができるかどうかということに私は疑いを持つのであります。この点について、総理はどういうようにお考えでありますか。
  76. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 農林大臣から答弁してもらいます。
  77. 河野一郎

    河野国務大臣 お答えいたします。周東さんも御承知通り、三十年度の予算におきましては、予算の総額を一兆に抑えるという関係からいたしまして、次年後において増験して間に合う分は、これを次年度以後に譲りまして、当面早急に必要な予算につきましては、必要なだけの予算を組んだわけでございます。詳細につきましては別な機会に申し上げますが、決して農村関係予算において、本年度の農村振興もしくは農産物増産に必要な予算が、特別に減額になっておるというようなことはないつもりでございます。
  78. 周東英雄

    周東委員 農林大臣はそうお答えになるだろうと私は思う。しかし私は、予算の款項目にわたって詳しく見ておりますが、あなたのおっしゃるようにはなっていない。経済六ヵ年計画というものを政府が発表しかけておりましたが、六ヵ年先の問題はなかなか立てにくいものでありまして、私も経験があります。しかし最近において、少くとも三ヵ年の計画というものを立てておられる。その中において、三十年度の問題の予算がこういうような状態にありながら、三十一年、三十三年には農産物の生産を六%ずつ、二ヵ年で一二%増加する計画になっております。これは増加することを期待すると書いてあります。期待することは、一つの計画でありますけれども、それに関する施策がなくして期待するというのでは、これはから証文に終るんじゃないか。あなたは、ことしはやらないでも、来年からやればいいと言うのですけれども、来年急激に土地改良をやったところで、来年の植付には間に合いません。ことしからやっておいて来年植え付けるから、来年の増産に寄与するわけであります。あなたは今のようなお話をなさいますが、土地改良一つをとってみましょう。私は抽象論をいたしません。具体論について議論をいたします。  長い間問題でございました小団地の開墾これについては一億五千一万円ふやしておられる。これは非常にけっこうだ。あなたの功績を認めます。ところがそれをふやした瞬間に、土地改良全般については七億削っておる。片方ふやして片方削ったら、それはどうにもならないじゃないですか。私どもはまじめに日本の食糧問題についても心配いたします。日本の貧乏な国において、輸入を防遏して輸出を増進するという二つの問題を解決するときに、食糧の問題については、内地においてでき得る可能性が一番多いのです。そういう問題のときにおいて、二面にはなるほどふえていますけれども、一億五千万円ふやして七億削ったら、これは小学校の生徒でもわかる。二歩前進、三歩後退したら、ちっとも進まぬことになるのですが、これでもなおかつ将来大丈夫だとおっしゃいますか。
  79. 河野一郎

    河野国務大臣 お答え申し上げます。私たびたび申し上げます通りに、土地改臭は、ことし予算を使って来年できるのは小団地であります。その他のものにつきましては、おおむね五年ないし十年かかるようになっております。現に今全国で工事にかかっておりますものも、御承知通り無数にあります。私はこれらのものにつきまして重点的に、なるべく完成を取り急いで、できるものから予算の分配をいたしまして、そうして今お示しのように、全体の金額から見れば確かに七億減っておりますけれども、これは七億減るということは、全体から見れば非常に大きな数字ではございません。一方におきましては、御承知通り愛知用水につきましてもやるわけでございますから、これは予算の数字で申せば議論はいろいろ別にございます。しかしこれを実施する上におきまして重点的に、企画的にこれをやることによりまして私は所期の目的は達成できる、こういうふうに確信しております。今までのように、ただ全体にゴマ塩をまくようにやっておりますると、工事は少しも完成いたしませんから、そこに増産のめどがつきにくいのであります。そういう点について格別な施策を講じていきたい。これは一つ皆様方の御協力を願いまして、ぜひそうやっていきたい、こう思っております。
  80. 周東英雄

    周東委員 私は、その点については一部は賛成、一部はあなたと所見を異にするのです。小団地の開墾に対して着手されたことは、非常にけっこうでありますが、他の大きな問題になればなるほど、早くから着手しなければ実際の効果はあげ得ないのです。それをあなたは、ことしはとにかく、来年からやればいいのだ、こういうお話ですが、その問題もさっきの問題に触れているようでありまして、結局防衛分担金の削除を内政費に持っていって、社会政策的の問題をやるのだ、住宅も建てるのだ、失業対策もやるのだ、社会保障もやるのだということを言われておったら、どっこい、その方は内政費に使うことは禁じられた。これは公約だからやらなければいかぬというので、これをやるために、あちらこちらから財源を捻出し、ひっぱり出したという結果になっている。これは率直にお認めになった方がいいと思う。そういう問題を考えますと、減っていることは事実である。しかもあなたは、この間本会議でも、わが党の平野君が質問いたした際に、愛知用水があるから、ちっとも減っておらぬじゃないか、こういうお考えです。私はそこにあなたと折本的な意見の相違があります。あなたは食糧.政策と農業政策、農村対策というものを混同されていると思う。食糧政策という面からいえば、あなたが大臣就任当時直ちにおっしゃいましたように、安いものがあったら外国からどんどん買えばいい。内地の土地改良なんというて金のかかるものはやらないでいい。これがあなたの真意です。それは食糧政策の立場からいえば、どこからでも安いものを買うてくればよろしい。それは、ことに日本が外貨がたくさんあるときにはその通りでしょう。今日外貨に困っているときには、なおさら困る問題ですが、それはしばらくおきまして、食糧政策の立場はそうです。しかし日本の農業政策というものは、即農村対策であるということを忘れてはならぬのです。日本の農村というものが、いかに零細過小農がたくさん集まっているかということ、そのものたちに対して、食糧増産を負わせているわけです。こういう人に対して食糧の増産をお願いするときに、自己の力でもって土地改良をやりなさい、借金をしてやれといっても無理です。私は、農村における農民の過小な形態を改めつつ、できるだけ収入を増加するためにも、耕作反別をふやしていくというのが国の政策でなくちゃならぬ。そこに開墾があり、干拓があり、あるいは土地改良があると思うのです。ところが、そういうものを自己負担でやれない日本の農村の現状です。そこに農村自体に対するある種の保護政策があるわけです。われわれが長くとってきました農村に対する政策というものは、なるほど土地改良については金がかかるかもしれぬ。しかしそれは、一面においては国の食糧の増産のために農村をつちかいつつ、過小なる形態を助けつつ、国の力で土地改良を行い、開墾、干拓をして土地の造成をはかっていこう。そうして一面においては、弱い農村に対して、そのものの経営安定の方向へ持っていこうということが、これには含まれていると思うのです。ところがあなたからいうと、ただ単に食糧問題からいえば、安いものがあれば外国から買えばいいのだ、こういうことであっては、この過小農形態の農村の設計図、安定ということをどうお考えになっているのか。私は、やはり金は要っても、その農村の特色というものから考えまして、ある程度国家が保護政策をとりつつ、そこに土地改良をし、開墾をし、干拓をして、こうして土地の造成をして、一面においては農村の安定をはかっていく、こういうことが筋でなくちゃならぬと思う。一体どうお考えですか。
  81. 河野一郎

    河野国務大臣 決して私は議論をしようとは思いませんけれども、今あなたのおっしゃったことと、私が言うたこととちっとも違わないと私は思う。食糧政策と農村政策とを混同してはいけない、食糧政策は食糧政策で別個のものだ。しかし農村政策は農村政策で、この二つの調和をとりつつ農林大臣はその職務を敢行していくべきものだ。こう私は言うのであって、ただ外国から安いものを買ってきて食わせればいいのだと言うて、それっぱなしで私は議論をやめたことはないのであります。この点はよく誤解がありますから、お聞き取りを願いたい。決して私は、日本の国内の米価を外国の米価に順応してむやみに引き下げてよろしいというような議論をしたことは、絶対にございません。また今でもそういうことは考えておりません。今後またそういうことをしようと考えておりません。ただ今申しますように、外国の食糧が下っていく。下っていくから、外国の労働力に対して、国内の労働力が競争していくような格好に貿易の上ではなっていくだろう。そういうことも感情しつつ行かなければならぬことになるだろうから、そこに農村政策として考えなければならぬ面があるのだ。その負担を全部農民に負わすわけにいかないのであるから、そこに農村政策がある。補助政策も生まれてくる。こう私は考えているのであります。ちっとも意見は違わないのであります。ただ今申し上げておきたいと思いますことは、今年やめたら来年に間に合わぬじゃないか、来年に間に合うようなものは、小団地でやるのだ。数年にわたるものはあとから予算をふやせば、これは御承知通り、狭いところで仕事をするわけじゃございません、広いところでやるのですから、金をふやせば五年のものは四年で完成することはできるだろう。だからことしは一兆の予算でやるのだから、来年にふやせば五年先の完成に間に合うようになるだろう。そういうことはしばらくあと回しにしてもいいじゃないか。一兆の予算の制約を受けますから、そういう意味合いで七、八億の予算あと回しにした。但しこういう愛知用水のことを持ち出すのは、今これをどういうわけで周東さんがお考えになったかわかりませんけれども、全体の金額で申されるならば、決して土地改良の予算は減っておりません。愛知用水の予算が入っております。金額だけならそういうことになりますし、またこれを実質的に内容で申すならば、先ほど申し上げましたように、重点的に使うことによって完成度を早めていけば、年次の増産計画は達成されていくじゃないか。今までのようにこれを全国にばらまいて、完成年度がむやみに延びておるようなことはよろしくないじゃないか、これが第二のお答えであります。  第三は、干拓や開墾をなおざりにしようとは思いません。これはどんどんやるつもりであります。しかしこれにおのずから限界があります。農家の負担において開墾をし干拓をし、それが収穫量の少いところに、とれさえすればどこでも開墾するどこでも干拓するというような考え方はとりません、こういうことを私は申しております。しかし干拓、開墾その他食糧増産の面において、経済的に引き合うところであればどこでもやらなければならぬし、絶対に金額を増していかなければならぬ。この点については意見は全く同じでございます。御了承願いたいと思います。
  82. 牧野良三

    牧野委員長 周東委章にこの際申し上げます。持ち時間がわずかになります。
  83. 周東英雄

    周東委員 大体その意見は同じだというがそうでなければならぬと私は思うのです。しかし私は具体的に現われた政策芦のものにあなた方の御意思は出ていないというのです。そういう御意見がなんぼあったところで今お話の――私は愛知用水の問題に触れますけれども、あなたのその愛知用水は相当に金額を投じたからそれで増産ができればいいじゃないか、この考え方があたかも安い米があったら外国から買えばいいじゃないかという考え方と同じになるのです。今日日本の農村というものが、過小農家が全国的に非常にたくさんばらまかれておる。従来の農地改良なりあるいは開墾、干拓が、ただ八方美人的にばらまかれているとは私は思わないのです。全国的にある程度土地を改良し、全国的にある程度開墾、干拓をするということが、その過小農形態をある程度でも多く増反をし、土地を持たせ、その経営を安定し得る方向へ持っていく、これが農村政策の現われだと私は言うのです。あなたのお考えでは、愛知用水だけ気をつけてやれば、それは金も使っているし米もふえるだろう、こういう考え方ですが、そうじゃないのです。全国に広まっておるところの農民のために広くやることがほんとうなんです。愛知用水というものに対してやられれば当然あれによって用排水ができて、それによる反当収量も増すでしょう。また水田もできるでしょう。これはよくわかっております。しかしながらあなたの部下である農林省においても、愛知用水ができたからといって全国的に一般予算が削られては困る、これはほんとうの叫びだと思うのです。私は農村に対する政策、農業者に対する政策、過小農形態に対する施策としての考え方からいえば、あなたは今日の予算が減っているからそういうふうなりくつをつけになりますが、やはりまだまだ足りないと思うのです。しかも多くの場合に考えられることは、そんな高い割の合わぬ金を出して土地改良をやるなんてつまらぬじゃないか、こういう考え方がありがちでありますけれども、あくまでも今日の農村の過小農形態を助けていきつつ、堅実な農村を育てるためには、ある程度金をやって保護政策をとって国が金を出すのが当りまえだと思う。私はそう思う。これをあなたの方では、愛知用水だけやればそれでよろしいというような考え方でほかを削られているということは困る。
  84. 河野一郎

    河野国務大臣 今お話でございますけれども、決してそういう答弁は私はしたつもりはないのです。金額が減った減ったとおっしゃるから、金額でおっしゃるならば愛知用水を三十何億やりますから金額はふえております。小団地をやっておりますから全国にばらまく面におきましてはこまかな面まで入れるようになっております。金の使い方は変っておりますけれども趣旨においては同じでございます。ただあなたのお示しになりましたように、前年度に比べて、前年度と同じモデルのものは七億か八億減ったじゃないか、これは来年度において追加いたしますから、どうせ始めましても三年、五年、七年とかかるものでございまして、あとから金額をふやせば追いつくものでございますから、それで間に合うという考えでやっております。あればあるに越したことはないのでありますが、一兆円の予算の中でやっていかなければなりませんし、先ほど来周東さんは、総理が食言食言とおっしゃいますけれども、私は総理のおっしゃることで、そのために農村予算が減ったとは考えていないのであります。私の考えで、農村予算でこれだけ一応下っておかなければいけないと考えましたのは、一兆円の予算のわく内において予算を組まなければいかぬ、そういたしますと、当然増加するものが二百億や三百億は出てきます。それだけのものは各省においてそれぞれ負担しなければいかぬじゃないかというような考えのもとに、それならば来年に回しても間に合うだろうというものについては、来年に回すというふうに考え予算の編成に私は同意したのでございまして、考えは違うかもしれませんが、大体私の考えはそういうわけであります。
  85. 周東英雄

    周東委員 私はその点が多少おかしいと思うのです。あなたは一兆円予算のわくだから減しましたとこうおっしゃる、ほかの省にはふえておるのです。私はあなたが農村に対する問題、食糧増産という問題に対して非常にお考えになり、そのこと自体は日本貿易のバランスの調整の上からも非常に大きな役割をなすとすれば、農林省の予算はそう減らさぬでもよかったと思う。厚生省の予算あるいは通産省の予算は多少なりふえておる。ところがあなたの方はいろいろのりくつをおつけになりまして、小団地をふやしたから片方は減ったっていいじゃないか、これは来年ふやすじゃないか、こういうふうに言われますが、しかし土地というものを改良し、そこに植え付けていくという土地の造成というものは費用がかかる、今までだって十分あり余るものを予算としてとっておるわけじゃありません。それをことさらに減してやっていくところに、農村の方はどうでもいい、農村を軽視される考え方があるのじゃないか、こういうふうに私は思うのです。
  86. 河野一郎

    河野国務大臣 お示しのように、農林省の予算の中で見れば、緊急やむを得ざるものは増加いたしております。決して全部減っておるわけじゃないのでございまして、それは予算の組み方でございますから、今年度内にぜひやらなければならぬものにつきましては、ふやすことが当りまえでございます。明年におくらせるものにつきましてはこれは譲って明年に延ばす。これは内閣全体でもそういう考えでやられたと私は思うのでありまして、たとえば厚生省の予算のごとき年度割でいくもので、明年に譲れないものにつきましてはおふやしになったのだろう、こういうふうに私は考えております。
  87. 牧野良三

    牧野委員長 大体議論はこの程度にして質問をお進めください。
  88. 周東英雄

    周東委員 この点は私は水かけ論だと思うのです。あなたの方では、たとえば畜産の問題ですが、総理施政方針演説におきましても、総合食糧計画というものを立てておる。これは米麦偏重というもの避けて総合食糧にいくということは非常に私は賛成であります。けれどもそれをやるために、参議院におけるわが党の佐藤君の質問に対して、畜産の方は相当ふやした、こう御答弁になっておる。よく調べてみると、草地の改善についてある程度ふやしておる。反対に自給飼料の増産に対しての予算は削ってある。片方にふやして片方は減っておるという、こういう格好で果して畜産がうまくいくものかどうか。私どもは総合食糧という立場から考えるならば、土地改良という問題におきましても、ある程度の土地生産力を増加しつつ、その一部は米麦――人間の食糧でやるが。ある程度の飼料の自給という立場考えなければ日本の畜産というもの成り立たないと思う。あなたは御存じのように、今日学童給食によって日本国民が米麦にのみよらなくたって生活ができるということは実証されておる。この趨勢を助長していくために何をやるかといえば、どうしたって米麦プラス日本の畜産によらなければならぬのですが、その畜産か乳価あるいは獣肉の値段というものが高ければだめなんです。およそ今の生産を倍加して、値段を半分にしなければならぬというところに、日本の食糧政策の根幹があると思う。しかもそういう問題について、牧畜会社を作ってやるのではなくて、やはり農家の分散飼育という形ができていかなければ、農村を維持しつつやっていけない。そこに飼料の自給を考えなければならぬ問題があるにもかかわらず、今日予算を見ると、ちっとも畜産に関してはふやしておらぬ。むしろ装置の改善をふやしたけれども、自給飼料その他については減らされておる。しかも家畜の伝染病予防に関する予算が減らされておる。こういうことで果して食糧計画に関する畜産施策が行われておるとあなたは思われるのですか、どうですか。
  89. 河野一郎

    河野国務大臣 周東さん、予算の一部分をごらんになっておりますが、全体をごらんになってお話いただきませんと、これはお聞きになった人が間違える場合があるように思います。予算をごらんになっての御質問でございますが、私は、ふすまの対策といたしまして、四億五千万でしたか、予算に組んであります。そういうふうに、濃厚飼料に力を入れることは一群大事だということで、飼料政策に力を入れております。その他長岡の畜産団体の育成も必要だろうということで入れております。畜産局の予算全体を通じてごらんいただけばおわかりの通り、今までに比べて、畜産の振興につきましては、相当に努力をしておるということを御了承いただきたいと思います。
  90. 牧野良三

    牧野委員長 周東君、もう一間くらいにとどめて下さい。時間が十分経過いたしました。
  91. 周東英雄

    周東委員 その点については、私は予算を通覧いたしております。あなたの言う通りになっておらないことを遺憾としますが、これはまた別の機会に譲ります。  政府では経済六ヵ年計画というものを立てておられる。六ヵ年先のことはなかなかむずかしいのですが、一応三ヵ年計画として一つの計画を立てておられるようであります。これに関連して、長期防衛計画を立てられる。これは当然でありましょう。私どもは、従来から防衛力の自然増強ということに対しては、これはやらなければならぬ条約上の義務を負っておると思う。しかし、それはあくまでも国民生活を圧迫しない限度において徐々に進めるということで、われわれはやって参りました。このたびの鳩山内閣の折衝においても、おそらくその点は考えておやりになっておるとは思いますが、三十一年度、三十二年度に予算外契約をやられて、実質上の負担は三十一年、三十二年に負担することになっておる。とすると、およそ三十一年、三十二年に対する計画というものがあるわけだと思う。ここに三十年、三十一年、三十二年としての計画があります。これは国民総生産が幾ら、国民総所得は幾ら、こういうふうに出ておるが、その国民所得なりの関係から、どういう割合で年度計画で防衛計画をお立てにならんとするのか。現に立っておるはずだと思いますが、この御説明を願いたい。
  92. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 お答え申し上げます。今、周東さんがおっしゃいましたように、私らも、防衛の関係におきましても、独立国にふさわしい体制を作ることは、やはり必要があると思う。そしてこれには、吉田内閣以来とってきておられます。いわゆる漸増をする。それにはあくまでも国民生活を圧迫しないように、その点に細心の注意をもってやっている。こういう点、全然同じ考え方でございます。それからまたさらに自由党でも昨年いわゆる長期計画なるものの案を作っておいでになります。それを作る趣旨にゆきましては、私ら今考えている長期計画と全然同じ趣旨だと私考えます。しかし今周東さんのおっしゃいましたように、これは申すまでもなくむずかしいことであります。それでせっかく今研究中でございます。従いまして経済六ヵ年計画と見合う長期防衛の計画について、まだ成案を得るに至っておりません。昨日私御説明申し上げました三十一年度及び三十二年度において国庫の負担になるものといたしまして、航空機の調達という問題がございます。近代の国防における航空機の特質からいたしましても、またこれは計画しても急にはできないということからいたしまして、三十年、三十一年、三十二年の三ヵ年度につきまして、ジェット機の生産という面だけについて実は計画を立てまして、その点について予算外の契約をお願いしている次第でございます。そのほかの点につきましては、まだ計画をいたしておりません。
  93. 周東英雄

    周東委員 これは将来の問題に大きな関係がありますから、今日案ができておらなければただちにお伺いしょうと思いませんが、少くとも三十一年、三十二年の負担になる予算外契約を今日なさっている。しかも経済計画は内閣として審議庁でお立てになっている。しかしてこれはおそらく内閣においてすべてが承認されていると思う。たとえば三十年度における国民所得は六兆三千二百億、三十一年は七兆九千余億、三十二年は八兆二千幾らということがきめられているわけです。そうすると、一体われわれが常に心配している国民生活を圧迫しない程度において、国力の増進に伴って自然的に自衛隊の増強をするというならば、この国民所御から来る増加割合から見て、どの程度に税金をとり、どの程度の予算規模を考えるか、その何彫を防衛費に充てるかということは、おそらく計画が立っているんじゃないか。そういう面から見て、次の機会でよろしいから、ぜひともその計画をお示し願いたい。というのは、三十一年、三十二年の予算外契約に基く義務を認めておらなければよろしいのです。それは先にきめておしまいになった。これから三十一年、三十二年度の予算編成については、常にこれがついて回るわけであります。こういう意味におきまして、どういうふうに全体を考えているかということを考えてみなければ、私ども日本の防衛計画に対して、同町に日本国民生活の安定をはかる上において、安心ができないからお尋ねするわけであります。どうかその点一つお出しを願いたいと思います。これを要望いたしまして、私の質問を終ります。
  94. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 お答えを申し上げます。先ほど申し上げ談したように、今具体的な計画として三十一年度、三十二年度にわたるものは、航空機の点だけでございまして、そのほかの点は実はまだ計画が立っておりません。しかし国民生活を圧迫しない、そういう点を十分考えまして、これから一つ計画を立て、研究してみたいと考えております。
  95. 牧野良三

    牧野委員長 この際赤松勇君より政府に対する資料要求に関して、発言を求められております。これを許します。赤松君。
  96. 赤松勇

    ○赤松委員 これは西田国務大臣にお願いいたします。先般私どもより資料の要求をしました。その資料の要求は、米軍使用飛行場の名称、及び拡張が予定されておるところの飛行場の所在地、それから拡張工事の規模、それから予算、この三つの資料の要求をしました。ところが出て参りました資料というのは、西田さんごらんの通り、これ一枚です。こんなばかな資料がありますか。これの予算が十二億計上されておる。十二億を要する飛行場の拡張の資料がこれ一枚です。しかもその内容たるや、拡張予定の米軍使用飛行場の名称は、小牧は調査中、新潟は調査予定、木史津、立川、横田は検討中、こう書いてある。検討中の飛行場をばなぜ予算に組むんですか。それからこの拡張工事の規模については、二千ないし三千フィート延長すると書いてある。ところが現地部隊の発表では七千五百フィートから九千フィートを拡張すると言っておる。全然その予算内容は違ってくる。従いまして、かような資料では予算の審議は十分できません。しかも第三の、予算の中には十二億。十三億では足らぬというので、現に調達庁は非常に困ってやり繰りしておるじゃありませんか。従ってこの小牧は調査中、新潟は調査予定、木更津、立川、横田は検討中、これでいいのかどうか。もし検討中でなくてすでに決定済みのものであるならば、その飛行場拡張の規模、これに要する予算。その予算も単なる予算の概要ではいけません。この飛行場拡張工事に必要なる人民あるいは資材、また完成期間、こういうものをば詳しく資料として出していただきたい。なお予算の点につきましても、十二億では足らないということは、これはもう周知の事実ですから、この点につきましても予算をちゃんと出していただきたい。以上の要求いたします。
  97. 牧野良三

    牧野委員長 田中稔君。
  98. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 私は、鳩山内閣の平和外交、自主外交というものの達成を心から希望するものであります。自由党橋本委員などは、この平和外交や自主外交、これはナンセンスであるというように言って非常にけなしたのでありますが、私は、今日日本が置かれている具体的な国際関係におきまして、日本内閣総理大臣があえて平和外交、自主外交という言葉を言われることは、十分意味があると思う。ただ問題は、この平和外交なり自主外交という言葉が、単に羊頭狗肉ということに終ってはいけないということであります。ところがこの平和外交というものは、まず今日われわれが持っております平和憲法を堅持するということから始まると思うのであります。しかるに鳩山内閣は、外におきましては、先般来の防衛分担金交渉にも見られましたように、アメリカの圧迫に屈して、自衛隊の増強を盛んに進められておる。内においては、総理みずから公然と憲法の改正を唱えて、本格的な再軍術をやろうとしておられるのであります。私はこういう実際の行動から見まして、首相の平和外交なり自主外交というような言葉は、一片の口頭禅に終るという心配があるのでありますが、私はこの際特に首相にはっきり一つ念を押してお伺いいたしておきたい点は、日本において再軍備をするために断固として憲法の改正をやるという御意向は、今日なお変りはないかどうか。そのままでけっこうでありますから、一つはっきり御答弁を願いたい。
  99. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 それでは、失礼ですが、すわったまま答弁さしていただきます。  田中君は、日本の現在の憲法はこのままで世界の平和が維持できるというように考えておるようでありますけれども、世界の現在の平和というものは、お互いに平和憲法を作っただけでは維持はできないと思います。とにかく今日の世界の平和は力による平和だということはいなめないと思うのです。それで、もしも日本だけが軍備を持たないために、世界の平和ができ上るというような事態があるならば、それはあなたのおっしゃることも一理ありますけれども、世界のうちで自衛軍を持たないものはただ日本ひとりであるというような情勢において、日本が軍隊を持てば世界の平和を脅かすし、持たなければ世界の平和が維持できるというような事態はないと思います。日本はやはり自由主義国次群と協力関係を緊密にして、経済の許す範囲において相当の自衛軍を持っていなくちゃならない。世界の平和をこいねがう人があって、世界の平和のために戦争は断じてしないという国ばかりならけっこうですけれども、そうでないような国がないとも言えない現在でありますから、日本はそれ相応の自衛隊は持っていなくちゃならないと思います。これを持つのには、やはり戦闘力を持っちゃいけない、戦力を持っちゃいけないという明文はじゃまだと思いますので、ああいうような占領時代に作られた憲法は訂正をいたして、やはり世界平和のために自衛隊は持つというような、明らかな、誤解のない軍隊を持ちたいと思っておるのであります。
  100. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 ただいまの首相の御意見に対しましては、私はもとより反対の見解を持っておりますが、先を急ぎますから、そのことにつきましてはあえて反論はいたしません。  そこで憲法の改正をやるという御決意でありますが、この衆議院におきまして、今日与党が、あるいは保守党派が三分の二以上の議席を持たないという現実のもとにおきましては、療法の改正は発議できないのであります。そこで解散をやる、総選挙をやる、こういうことを考えましても、現行の選挙法、特に現行の選挙区制のもとにおきましては、総選挙を繰り返すごとにわれわれ社会党の議席は、むしろふえて行くのでありまして、いつまでも三分の二の議席はとれないのであります。そういう事情からして、どうしても憲法の改正をするためには、三分の二以上の議席をとらなければならないが、それには相撲をとる土俵を少しかえて、そうして三分の二以上保守派において議席を確保することができるような選挙法なり選挙区制を一つ作りたい、こういう考えがおのずから出てくるわけであります。現在、小選挙区制に改めたいというような意向が、政府部内でも大体固まっているようでありますが、この選挙区制の問題は、ただ一般的、抽象的にはいろいろの議論があり得ると思います。まだ賛否両論いろいろあり得ると思いますが、今日の日本のこの政治的な情勢のもとにおいて、憲法改正ということと結びついて小選挙区制が問題になりますことは、これは非常に重大な問題だと私は思うのであります。まず首相にお伺いしたいのは、政府としましては、現在の選挙区制をかえて、小選挙区制を採用するお考えがあるかどうか。その場合、小選挙区制にもいろいろありましょうが、やはり 人一区という、そういう定員の小選挙区制でないと、これはほんとうの小選挙区制と言えませんし、またそれでなければ、保守派が優勢を占めることもできないのでありますから、私の考えますのはそういう形の小選挙区個でありますが、こういうものを、どうしてもこの際何とか実現したいというふうにお考えでありますかどうか、一つお尋ねしたいと思います。
  101. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 世間でよく、小選挙区にすれば、保守勢力が社会党勢力よりもよけい代講士を出し得るというようなことを言う人があるのです。しかしながら、保守勢力が今日のように民主党と自由党との二つに分れて、統一ができない今日において、それで保守勢力と革新外力が争って、私は保守勢力が勝つと思わぬのであります。それでありますから、小選挙区制にすることが、憲法改正をするには便宜の地位が築けるというようには、にわかに考えられないと思っております。
  102. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 小選挙区制を採用するということは、保守合同なり保守連携ということを前提しませんと、憲法改正をやる上において、これは意味がないわけであります。私、この点ちょっと言い落しましたが、保守合同と相伴って小選挙区制を考えるということ、これが現在の民主党内閣考え方だと思いますから、そういうふうに具体的に限定しまして実はお尋ねしたかったのでありますが、そういうことではどうでしょうか。
  103. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 田中君のその説明がついていましたならば、私も答え方が違っておりました。私は小選挙区というものが、中選挙区や大選挙区より、よりよき選挙制度だとは思うのです。それですから、保守が連携できたならば、そういうような制度をとった方が、選挙もしやすくなるし、選挙費用もあまりかからずに選挙ができる、そうして代表者としては、かえって適当な人が出やしないかという考え方を持っておるのでございまして、これを憲法改正とからんで言う人があるが、その論には私はにわかに同意できないということを申したのであります。
  104. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 首相の主観的なお気持はそれでわかるのでありますが、客観的な効果を考えますと、やはり小選挙区制を採用しますと、これは保守派に有利になる。と申しますのは、そういう改正をやります場合には、どうしても保守合同なり保守連携ということが伴うと私は考えるのであります。そこで、これ以上御質問はいたしませんけれども、首相のお気持をもう一度確かめますが、小選挙区制に改正する何か法律案を、今度の国会にでも、あるいは今度間に合わなければこの次の国会にでも一つ早く提出するという、そういうお考えがありますかどうか。
  105. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 先刻申しましたように、保守両党が政策でも一致して、そうして渾然一つの保守政党になれば、そういうようなことをやってみたいと思ってはおりますけれども、現在においては、そういうような謙虚な気分に今町党がなっているとは思っておりませんものですから、この議会あるいは次の議会に必ず出したいという希望は、持っておらないのであります。
  106. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 次に、松本首席全権以下の任命も終りまして、近くロンドンで日ソ交渉が開かれるということになっておりますが、私はやはりその成功を衷心から希望しております。ところで、この間も御答弁があったようでありますが、ソ連との交渉は、結局日ソ二国間の平和条約を締結するということを目ざしておやりになる考えであるかどうか、お尋ねします。
  107. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 その通りであります。   〔委員長退席、中曽根委員長代理着席〕
  108. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 これもお答えがあったようでありますが、もう一度念のために、日ソの二国間条約を締結するという場合、これは単に戦争状態の終了と国交の回復とを規定する法三軍的なものにとどまるのか、それとも領土問題まで含めた各種の懸案の処理を規定した広範な内容のものになるのか、その見通しを二つお伺いしたい。これは外務大臣でもけっこうであります。
  109. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 外務大臣答弁いたします。
  110. 重光葵

    重光国務大臣 国交の正常化ということでございますから、これは二国間の平和条約を取りきめ石ことになります。そうなりますというと、両国間の根本的の問題については十分話し合いをした上で、条約の締結という結果になる、とこう考えております。
  111. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 私の質問の要旨を取り違えておられますが、私は単に国交の回復、戦争状態の終結ということの実現を考えたごく簡単な条約になるのか、それとも各種の懸案、領土問題まで含めて、これを全部やはり解決して、その条約に織り込む、そういうお考えであるか、その見通しをちょっとお尋ねしたい。
  112. 重光葵

    重光国務大臣 私のお答えも同じことになりますが、重要な問題は全部検討して、そのことについて話し合いをしなければならぬと思いますから、これは一、二ヵ条の条文では済まされないと考えております。
  113. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 これは私がある新聞で読んだんですが、政府は、とにかく国父の正常化ということについて一応の取りきめをして、それから各種の懸案の解決については、さらに継承して交渉をするという約束をソ連側から取りつけるというような考えで大体今度の交渉には臨むのだということが、これは新聞は忘れましたが、有力な新聞であります。朝日新聞であったと思いますが、そういうことを書いておりましたから、特にそれをお尋ねするわけであります。
  114. 重光葵

    重光国務大臣 その新聞記事は、事態を正確に記述していないように私は考えます。多分お話通りに朝日ではなかったかと思います。それは、ただ観念上のこととしてそういうことはいわれると思います。ごく観念的にいえば、まず国交を回復して、それからおもないろいろな条件を何するということは言えましょうけれども、実際国交を回復する、国の利益をどうするかという場合に立ち至ってみまして、国交の回復という、平和条約を作るという場合においては、重要な問題を十分に討議し、交渉して、結果を求めなければならぬということに事実上なると私は思いますので、さように申し上げた次第であります。
  115. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 そこで領土問題につきましてちょっとお尋ねしますが、領土問題というのは、私はなかなか簡単にはいかないと思います。歯舞、色丹の問題、千島の問題、それから南樺太の問題、これはそれぞれやはりニュアンスの違いがあるのであります。その処理も、やはりいろいろ違ってくるんじゃないかと思います。  そこで一つ一つお尋ねいたしますが、まず歯舞、色丹は、鳩山首相もたびたび触れておられまして、これは返してもらうのだというようなお話で、首相があえて歯舞、色丹を特にそういうふうに言われたことについては、これは交渉したら何とかなるだろうという一応のお見込みがあると思うのでありますが、果してそうでありますかどうか。またあるとすれば、どういう根拠によるか、ちょっとお尋ねしたい。これは外務大臣でもどちらでもよろしい。
  116. 重光葵

    重光国務大臣 領土問題に関連してでございましたが、 今日の午前中にも、その問題に質問者は触れられました。サンフランシスコ条約については、領土問題について規定はございます。しかしそれは、日本とサンフランシスコ条約調印国との間に関することでございます。従いまして、ソ連との間に新たに二国間の平和条約を作るという場合におきましては、全部さような大きな主権の問題、領土――国交の回復をするのに、相手国の領土がどこまでかということは、十分検討しなければならぬ問題と思うのでございます。従いまして、サンフランシスコ条約に規定があるといなとを問わず、これはソ連との間には空白でございますから、これは空白を埋めなければならぬと思います。ところが今その問題について、どの領土をどういうふうに交渉の爼上に上せるかというようなことは、実はまだ交渉がこれからというときでございますから、ここで一々議論を戦わせると申しますか、質問応答に詳しく入るということはいかがかと実は考えますので、全体の問題、そういう重要な問題については、十分に交渉の爼上においてこれは解決する努力をしなければならぬ、こういう一般的のことを申し上げて御了承を得たい、こうお願いする次第でございます。
  117. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 今の御答弁は、確かに一般的な御答弁であります。まあ外交上のかけ引きもありましょうから、それは何もかにも詳細に一つ答弁してくれというわけじゃありませんが、ただ今の歯舞、色丹につきましては、この返還を求めるということを首相は当初から言っておられます。それで、これは首相のお話でありますから、首相の方に一つ答弁を願いたいと思います。これは、交渉したら何とか返してくれそうな見込みがおありでありますか。
  118. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は、そういうように考えられる節があると思います。
  119. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 その節を少しお話いただけませんか。
  120. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 北海道に非常に近いから、そういうような気がするのです。
  121. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 それじゃそういうことにしまして、次に千島は、これはヤルタ協定においても、千島と、南樺太の場合は表現が違っておることを御承知になっておることと思いますが、千島を返してもらいたい、これはもちろんわれわれも希望するところでありますが、ただこの場合も、ここに第二の琉球ができてしまうと困るわけでありますから、結局この問題は、日米関係と関連がある。もう一つは、日本の国内の政治の問題でもあると思う。日本の国内の政治がほんとうに平和的なものであり、民主的なものであるというならば、これはまた話がしやすいのでありますが、かりに――帆山内閣は、そういうことはありませんが、かりに、ソ連に対しまして非常に侵略的な傾向を帯びたような内閣日本の政治をやっておりますと、これはやはりなかなかうまくいきません。しかし鳩山内閣は、とにかく国交の回復をやろうといって手を差し伸べておられますから、そういう態度自体は、向うに好感を与えるのではないかと思いますが、そういうような関係がありますので、千島の返還を、ただもと日本の領土だったから返してくれというだけじゃ、なかなか簡単に話ができないと思いますが、これには一体どういう条件が必要とお思いになられますか。
  122. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 昨日赤松君から、それに関連して質問がありました。それはソ連としては、せっかく日本に領土を返したのに、それが沖繩などと同じように、米軍の基地に使用せられると困るというような考え方を持つだろうというような御質問がありましたが、私もそういうようなことは、ソビエトにしては、考えるだろうと思うのであります。もしもソビエトが南樺太、千島等を返してもいいというようなときには、それに対して条件を付するか、それに対してアメリカと交渉してもらいたいというようなことが、話し合いが出やしないかというようなことを予測をしておるわけであります。
  123. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 南樺太は千島と若干事情は違いますが、これも返還を要求する以上は、そういう考慮が必要だと思います。私は、この具体的な問題を離れまして、まず、考えたいことは、今も申し上げましたが、日米関係が根本的に変って、日本がアメリカの隷属を脱却するという条件、もう一つは、日本の政治がもっともっと平和的な、民主的な性格を持つということ、鳩山内閣も私は、そうだと思いますけれども、もっとその点が顕著になっていなければならぬ。こういうことが条件になりますならば、私はこういう領土問題につきまして、ソ連との交渉は非常にやりやすくなると思う。あの広い圏でありますから、あの小さな辺境の領土を是が非でも確保しなければならぬという必要はなかろうと私は思う。それだけじゃなく、そういう条件が整いますならば、あの広大にして、しかも人口の非常に希少なシベリアのごとき、地下資源は非常に豊富であります。こういうところに、日本の技術移民でも労働移民でも迎えるというようなことでも、これは私は話しになると思う。要は、旦本がアメリカの隷属から脱却するということと、日本の国の政治がもっと平和的に、民主的になるということだと思いますが、そういう私の見解、これは私個人の見解ではなく、わが党の見解でありますが、首相はそれに対してどういう御感想を抱かれますか。ちょっと参考のために聞いておきたいと思います。
  124. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 日本がアメリカの隷属国家ではなく、自主的の独立国家だというようなことを世界の人が認識するように努めなくてはならないと思っております。とにかく、しかし日本人が今日平和を欲しない人はないと思っておりますので、どうかしてこの誤解が世界人から消え去るように、日本国民は努力しなくてはならないと思います。
  125. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 北のことばかり申しましたが、それと関連しまして、南の沖繩と小笠原の問題でありますが、これが現在事実上アメリカによって占領されておる。潜在主権は日本にあるということでありますけれども、事実上これはアメリカの領土と同じになっておりまして、そこに住んでおる同胞の不幸な事態は、たびたび新聞紙上等にも伝えられております。日ソ交渉の際、北の方の領土についてソ連に返還を要求されるならば、アメリカに対しまして、当然南の日本の旧領土、その返還を要求しなければならないと思います。またこれは国民の一致した要望でもあります。このことにつきまして、政府のはっきりした御意向を聞きたいと思います。
  126. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 日本自分の国を守ることについて、相当の自衛力を持つというようなことがだんだんと実現せられてくれば、アメリカとしても、日本の防衛力を信じて、日本からだんだんと撤退してくれるものと思っております。そうして日本人としては、とにかく沖繩なり小笠原なりの住民が日本に帰属したいという希望を持っておるのでありますから、国民のそういう希望を達成するように、政府としては努力をしなくてはならないと思っております。
  127. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 そうしますと、小笠原や沖繩におる米軍というものは、ただわれわれ日本八千万の国民の平和と安全を保護するためにのみおるとお考えになっておるのでありますか、お尋ねいたします。
  128. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 アメリカとしては、そういうように考えているのであろうと推測をしております。
  129. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 これは議論になりますけれども、そういうものじゃないと思います。沖繩はアジアにおける、極東におけるジブラルタルにしょう、こういう考えで、とても返す見込みはないと思いますが、その基地の軍事的な役割というものは、アメリカのアジア政策なり極東政策において非常に重要なものでありまして、決して日本国民の安全を守るというようなものではないと思う。私は、今の御答弁でははなはだ不満でありますが、今後政府は、一日も早くこういう基地の返還をお考えいただきたいと思って、これを要望いたします。  次に、ただいま重光外相お話しもありましたが、重光外相のような構想で交渉に臨まれるとしますと、日ソ交渉というものはなかなか手間取る、相当時間がかかると思います。そういうことは十分お考えになっておると思いますが、首相いかがですか。
  130. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 先刻も重光さんが答弁されたように、今度の日ソ交渉というものは、とにかく戦争状態を終結せしめるためなんですから、それには、最初に締結されるものは講和条約でなくてはならぬのであります。講和条約ならば、占領地域というものを占領しているということが継続するはずのものじゃないと思っておるのであります。どうしても、領土問題にも必然には触れてきて、解決されていかなくてはならないと考えておりますが、そういうようなものを解決するには、ずいぶんひまがかかるだろう、こういうように思っております。
  131. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 そこでお尋ねいたしますが、いわゆる三木発言以来、保守合同のうわさが巷間においてしきりに行われておるのであります。七日の日に、岸民主党幹事長は、首相を音羽の私邸に訪問して、首相の了解を得た上で、保守合同に対処するという党の正式の態度の表明がありましたが、私は、実はこの保守合同はそう簡単にはいかないと思っております。しかし、もし万一保守合同が意外に早くできたとしました場合に、私の最もおそれることは、せっかく始まりかけた日ソ交渉がそのために坐折するというようなことがありはしないかという一点であります。保守合同が行われるその結果、おそらく政変があると思う。そうして新内閣ができる。その新内閣自由党首班内閣でありますならば、鳩山内閣の政策はもちろん御破算になる。またかりに第三次鳩山内閣ができましても、鳩山保守合同内閣でありましては、党内において、旧自由党系の諸君の発言権が非常に強くなる。そうして、やはり鳩山首相のお考えなんかはなかなか行われなくなるのじゃないか。現在でも、率直に申し上げまして、政府及び与党の中で、鳩山首相の対ソ国交回復の熱意に水をさそうというような人々もあるように見受けられる。こういうふうなわけで、私は実は心配です。実は私は、鳩山内閣の手によって、特に鳩山首相の手によって日ソ交渉が成功することを非常に期持しているのです。これは私一人の考えではなく、国民の世論であると私は思うのであります。この際あえて鳩山首相にお尋ねをいたしますが、首相は何のためにその地位についておられるのでありますか。その私ども見るに忍びない不自由なおからだを、ただいたずらに予算委員会総理大臣席にさらすためにその地位におられてはならないと私は思う。私は、首相かねての御信念というものを非常に高く評価しておるのでありまして、第三次世界大戦というものの惨禍を未然に防止するためには、どうしても中ソ両国その他共産圏諸国との国交を回復しなければならぬと言われておる。また、休会前の予算委員会における私の質問に答えられて、社会制度を異にするいわゆる共産圏の諸国とも平和的に共存することは可能である、こういうふうなことも言われた、これは私はまことにりっぱな御信念であると思う。それはこの前の吉田内閣が、自由諸国との集団安全保障体制の美名のもとに、日本をアメリカに隷属させるような、いわゆる向米一辺倒の外交政策をやってきたのでありますが、これを転換する重要な契機を作るものであると思う。果してそうでありますならば、首相は一つ、日ソ交渉はぜひ自分責任でやる、やってみせる、その成功を見るまではこの病躯を賭しても、首相の職責を守り通すというくらいの自信と勇気とがあっていただきたいと思うのであります。首相のほんとうのお心持を一つ聞かせていただきたいと思います。岸幹事長あたりの話では、あるいは保守合同が急速にできそうにも思われますし、また首相は首相で二年くらいやるつもりだから、もう一年半はぜひやるのだというお話もあったので、国民はその判断に迷っておるのでありますが、特に首相の真剣な御答弁一つ国民にかわってお尋ねしたいと思います。
  132. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 ただいま田中君のお話のように、現在われわれの責任の最も重大なことは、世界第三次大戦を避けることにあると思っております。それですから、世界第三次大戦を避けるためには、私は自分の一身を犠牲にしてやりたいと思っております。自分の健康もあと一、二年は大丈夫だろうと思いますので、その間にソビエトとの交渉をやり遂げて、世界平和に対しての一つの見通しが達成できることを切望しているわけであります。その希望を犠牲にしてそれで保守合同をするようなことは断じてありません。
  133. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 今の御言明を聞いて、私非常に心強く感じました。首相のおっしゃる通りに政策抜きの保守合同というものは、結局これは党利党略に基くものにすぎないのです。それで日ソ交渉を始められた鳩山内閣なり、鳩山首相のお考えというものは、私は非常に大事だと思うので、こういうものをうやむやにして対米隷属に今日の日本を陥れたその責任者である自由党なんかと、いいかげんな合同をやることは、私は政治的な野合だと思うのです。断じてそういうことのないように希望いたします。  かつて後藤新平氏は、ヨッフェを呼んで、その当時の日ソの国交を開く糸口を作られたのでありますが、私は今度の鳩山首相のお仕事は、もっともっと大きな歴史的な意義を持つ事業だと思いますから、もう一、二年くらいは健康が大丈夫だと言われる首相の悲壮なお気持に同情いたしまして、首相の御事業の成功を祈ります。  次にせっかく日ソ交渉に乗り出した政府も、同じくいわゆる共産圏に属する中国に対する態度におきましては、きわめて消極的であることを私は非常に遺憾とするものであります。中国が今や歴史上初めて強大な統一国家となり、急速に建設を進めている事実は、もはや何人もこれを否定することはできないのであります。先ごろこの中国を視察して帰られました村田省蔵氏などからも、首相はじきじきその模様をお聞きになったと思います。しかもこの中国は二千年来わが国と相互に友好関係を保ってきた隣邦であり、そうしてまたこの数十年来、日本はこの国に対しまして侵略政策をやって参りました。その国土を焼き、その国民を非常に苦しめてきたのであります。こういうふうな事情がありますので、私は政府は一日もすみやかに新中国と国交を回復し、進んでこちらから友好の手を差し伸べるというようにしなければならないと思います。このことができなければ、政治は政治、商売は商売と申しましても、中国との貿易ほんとうの軌道の上には乗らないと思うのでありますが、この点について首相の御意向を聞きたい。
  134. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 中共ともできるだけ善隣友好の実を上げたいとは思っております。しかしソビエトのようにこれを承認して、そうして中共政府承認をしてつき合うということは、現在の国際情勢ではもう少し考えなくてはならないと思っておりますので、そこで親密関係を増進するために貿易を増進して、できるだけ貿易上の緊密関係を作っていって、そのうちにはこれを承認する時期がだんだんと近寄ってくるものと思っております。現在でもだんだんとそういう事態になりつつあるような気がいたしております。
  135. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 これはあとから詳細に触れますが、たとえば今度の新貿易協定を実施するにつきましても、決済問題についてやはり日本政府が何らかの保証を与えなければうまくいかない、決済がうまくいかなければ、やはり貿易そのものもうまくいかぬ、こういうわけになる。こういうわけでどうしても両国の正式の国交が回復されることが、貿易の上からも必要なんです。そこで私は、首相がよく二つの中国ということを言われることにつきまして、少し触れてみたいと思います。  私は実は首相のそういう考えについて反対でありまして、二つの中国ではない、一つの中国に二つの政権があるだけでありまして、しかも北京にある中華人民共和国の中央人民政府こそ正統の政権でありまして、台湾にある国民政府というものは、アメリカのかいらい政権であることは、もう世界公知の事実であります。しかしながら、百歩を譲りまして、首相の二つの中国という主張を認めたといたしましても、それではなぜ首相は、国民政府国民政府としておいて、これと並んで今度は北京政府を相手に国交の回復をおやりにならないのか、二つの中国ならやはり二つの中国でいいのであります。二元外交と悪目を言う人がありますが、そういう場合の二元外交は私はけっこうだと思うのです。台湾の国民政府との国交はそうしておいて、それとまた別に中華人民共和国中央人民政府と国交回復の交渉を始めるというふうに、一つおやりになったらどうかと思うのです。これは異常な事態でありますけれども、とにかく今日の世界には異常な事態が多いのでありますから、やはり異常な事態に即応する態度が必要だろうと思う。これがむしろきわめてリアルな外交じゃないかと思いますが、どうですか。
  136. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は、二つの中国があるということに現実の事態でありますから、その二つの中国という言葉を使ったのであります。けれども承認ということになりますと、やはり国際関係があって、直ちにこれを承認するということは、また争いを引き起すような気がいたしましたので、その点については外務大臣から答弁をしてもらいます。
  137. 重光葵

    重光国務大臣 御承知通り中国政府承認問題は、戦争終結後相当長い間のいきさつがございました。そして日本政府といたしましては、台湾における国民政府承認いたしておるわけでございます。さようなわけで、これはそのときの世界情勢が非常に作用いたしておることはむろんのことでございます。そこで中共政府承認しないという方針のとられたことも御承知通りでございます。それでは今日同じ世界情勢が続いておるかと申しますと、そうは申せません。非常に変化をして参りました。そして端的に申し上げれば、中共政権のために有利に展開したということは事実でございます。しかし日本といたしましては、さようないきさつもあり、過去においてとられた決定、すなわち台湾国民政府を中国政府として承認したというこの決定は、世界情勢が非常に動かなければ、これを変更するということは、日本国際的地位から見て、利害関係上、日本の利益の点から見て、軽々になすべき問題ではないと考えます。しかし将来国際関係が大きく動くようになりますれば、これもよく見なければなりません。今日の場合におきましては、中国大陸において実際に大きな政権ができておるということは事実上これを見て、これと貿易関係を調整して進めていって、日本の利益及び将来の国交をも頭に入れて、改善をしていくという実際的な手段に努力をする段階だろう、こう思って工作を進めておるわけでございます。少し説明が長過ぎましたが……。
  138. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 いや、長いのはけっこうでありますが、先ほど外相の説明にいろいろないきさつがあるというような言葉があったようでありますが、そのいきさつの最も具体的な形は、いわゆる吉田書簡ではないかと思うのでありますが、これは御承知通り一九五一年十二月二十四日付でダレスあてに出した。私は、この吉田書簡は吉田書簡であって、鳩山書簡ではないと思っております。これはもちろん条約でもありません。昨日来今度の日米共同声明の効果の問題とか責任の問題になっておりましたが、   〔中曽根委員長代理退席、委員長着席〕 私は大体この吉田書簡というようなものは、日本外交政策を将来にわたって拘束する正式の外交文書であるとは思わない。そこでこれは外交専門家であります外相に、この書簡の性格と効力とを一つお尋ねしたいと思います。
  139. 重光葵

    重光国務大臣 お話通りにいわゆる吉田書簡なるものは、むろん条約意味を持った約束ではございません。日本側の政策を表明した文書に違いないのでございます。ただ問題は、それを全然日本として無視すべきものであるかどうかということは、これは大きな日本の政策問題、日本の利害関係の伴う問題でございます。そこで吉田内閣時代に表明されたその政策を、国際関係もしくは中国の情勢が根本的に変化を見ない前に、一たん日本の政策として表明せられたものを軽々しく変えるということも、これは大きな日本の利害が伴う問題と相なります。さようそわけでございますから、今日はまだそれを根本的に変えるという時期ではそい、こうわれわれは見ておることを、先ほど御説明いたしたつもりでございます。
  140. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 この吉田書簡なるものをちよっと読み上げてみたいと思いますが、実はこれには二つの重要なポイントがあります。それを一つ一つ指摘して政府の御見解をただしたい。  第一点はこう書いてあります。「一九五〇年モスクワにおいて締結された中ソ友好同盟及び相互援助条約は、実際上日本に向けられた軍事同盟であります。」と、こう書いてある。これが共産政権と二国間条約を締結する意図を有しない一つの理由になっておりますが、私の理解するところ、そしてこれは私だけじゃない、一般に識者のすでに定論でありますが、中ソ友好同盟相互援助条約というのは、日本に対して侵略的な意図をもって結ばれた条約ではない、これは当時日本が漸次アメリカの重事的隷属国と化しつつあった極東における事態を憂慮した中ソ両国が、アメリカの手先となって日本が再びアジア大陸に侵略することの危険に対して、あらかじめ警告したものである、こういうふうに解釈しておるのであります。また一般にそういう定説であります。まあ常識で考えましても、その当時の日本というものは今よりずっと国力が弱かったので、そういう敗戦国日本などというものを目ざして、あの中ソ両国が何か軍事同盟を作るというようなことは考えられないことであります。中ソ両国がおそれたのは日本でない、日本の背後にある力なんです。そのことはこの条約にもはっきり書いてありまして、中ソ友好同盟相互援助条約の第一条には、「両締約国は、日本国または直接にもしくは間接に日本国と侵略行為について連合する他の国の侵略の繰り返し及び平和の侵害を防止するため、両国のなし得るすべての必要な措置を共同してとることを約来する。」こういうふうに書いてある。私はすなおにこう理解すべきだと思うのであります。従って日本がアメリカへの隷属から脱却しましたならば、この条約の少くとも第一条は全くナンセンスになってしまうのです。そうなればこういう条約の廃棄を要求することもできると思いますが、これについて一つ首相の御見解を承わりたいと思います。
  141. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 それについては外務大臣から答弁してもらいます。
  142. 重光葵

    重光国務大臣 今御指摘の点は、いわゆる吉田書簡の末節に書いてあることに関連してであろうと思います。吉田書簡には今御朗読の通りに「一九五〇年モスクワにおいて締結された中ソ友好同盟及び相互援助条約は、実際上日本に向けられた軍事同盟であります。」と書いてあります。今また読み上げられました中ソ条約の第一条も全く日本に向けられておるということは否定できません。当時日本をめぐる国際状勢が非常に険悪であったわけで、さようなふうに感ぜられ、また中ソ側も日本再侵略を防止するんだというようなことで非常に宣伝をしたことも事実でございます。従いましてかように日本に向けられた同盟が作られて、またその同盟の意味も相当日本に対して日本を侵略者呼ばわりをした宣伝が行われておったことは事実でございます。それだからそういうことだけが中共承認しないという意図を表示した原因になっておるというふうに読むわけにも参りません。それは確かに一つの原因となってその結論が出ておるようであります。そこで私はその後の国際状勢、日本をめぐる国際状勢が共産国との間にどうなっておるかというと、私は非常な関係の改善は認めさるを得ないと思います。そしてさようなことがだんだん改善をして感情も融和し、誤解もなくなるようになってくれば、この書簡の意味が非常に軽減するのじゃないか、こう考えております。しばらく国際情勢の変化また改善を一つ希望いたしたい、こう思っております。
  143. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 ここで一つ関連して私取り上げたいのは、最近ソ連とオーストリアとがオーストリア国家条約の成立に必要な諸条件に関する正式の協定をモスクワにおいて調印したのであります。これは非常に注目すべきものでありまして、そのコミュニケにこういうことが書いてあります。「オーストリア代表団はオーストリアが一九五四年のベルリン外相会議で行なった宣言の趣旨に基き、いかなる軍事同盟にも参加せず、またオーストリア領内における軍事基地の建設を設めない意図であるとの保障をソ連側に与えた。」こうなっておるのです。これは現在大西洋条約機構ができている。そうしてアメリカがその音頭をとって、結局ソ連に対抗する、こういう軍事的な体制を作り上げております。そういうヨーロッパのまん中で、しかもヨーロッパにおいては最も由緒ある国で、文化的にも非常にこれは伝統のある国でありますが、このオーストリアがいよいよ今度独立するにつれて、ソ連はこれを何も自分が一方的に支配しようとは考えない。そのかわりまたこれがアメリカ陣営に入っては困る。だからこれを中立化しよう、こう考え協定になって現われた。今度日ソ交渉が始まりますが、日本のアジアにおける国際的な地位というものが問題になります。その場合にソ連として、まさか日本を共産圏の中に入れようというようなことは考えもしないし、できもしないことであります。しかしながら現在のように日米安全保障条約日米行政協定、MSA協定というようなものにがんじがらめに縛り上げられてしまって、アメリカの軍事基地に国全体がなってしまった、こういうふうなことでは、これはソ連としても不安であろうと思う。そういう不安が続く限り中ソ友好同盟、相互援助条約というものはいつまでも私はなくならないと思う。そこでソ連の日本に対するマキシマムな希望というか要望というものは、日本がソ連圏内に入ることはもちろん要求をしないが、ただアメリカの何か軍事的の隷属国というような現状だけは改めてもらわなければならない。だからオーストリアに関する協定に書いてあるように、日本がアメリカの軍事的な繁縛を脱する。そうしてアメリカの軍事基地などは一切撤廃してしまうという条件があれば、私はこれはソ連の日本に対する態度はぐっと改善されて、中ソ友好同盟、相互援助条約というものは廃棄することができると思うのでありますが、これは私はいよいよ近く始まる日ソ交渉においても具体的に向う側の意向として出てきやしないか。すでにオーストリアの協定一つのサンプルとして非常に国際的に重要だと思う。これが四ヵ国の会談でこの通りになるかどうかわからないが、ソ連の意図としてははっきり出ている。しかも今日、ダレス氏の考え方など大分緩和しまして、ソ連や中国の動向が非常に穏やかになってきたということを盛んに言って、調子を合せているような工合でありますから、私も外交専門家でありませんが、四国会談でも私は大体こういう線でまとまるのじゃないかと思う。だからこういうことにつきまして、日本外交を預かる外務大臣は、どういうふうにお考えになっておりますか。こういうふうなことになりまして日本安全保障条約も廃棄する、同時に中ソ友好同盟、相互援助条約も廃棄してもらう。これは日本を含めて、日本の平和と安全を守るための諸国間条約というものを関係諸国で作る。日本を含め、中ソあるいは米英、そういう関係諸国が一つ日本について何かそういう条約を作る、こういう構想についてはどういうふうにお考えになるか。
  144. 重光葵

    重光国務大臣 非常に大きな問題でございますが、お話通りにオーストリアの中立化は、今回はあるいは実現されるのじゃないかと私は思います。四国会議もできそうです。しかしオーストリアの地位と日本の地位とは全然異なっております。オーストリアは、御承知通りにまだ連合国と申しますか、ソ連、米英仏の共同の占領行政のもとにおるのであります。独立は許されておりません。そこでいよいよ独立国にするためには、この全部の占領軍を撤退さして、主権をオーストリア国に返して、そうして独立を実現しようというのが基礎のようでございます。しかし決定をする以上は、オーストリアをしてどこの国とも軍事的に提携をさせない、すなわち中立政策をとらしめる、こういうことで、オーストリアの中立ということが今盛んに論ぜられておる状況であると思います。日本の場合は、御承知通りこれはもうサンフランシスコ条約によって日本が独立をしたのでありまして、日本の国内においては、今は占領軍はいないことになっおります。そこでその独立をいかにさらに改善をしていくか。改善すべきことは改善をして、領土問題にしてもその他の問題にしても、いわゆる独立の完成をやるという事業はまだ残っておるようでございますから、これはいたさなければならぬと思います。さようなわけでありますから、ソ連との間においては、日本はオーストリアのように自分を中立の地位に置いて、これをいわば交渉の題目にする、値段のかけ引きにするというような意味のことは余地がないと私は思います。日本は今日の状態においても、あくまで自分自身の独立自走の立場をもって進んでいかなければならぬと思います。そこでその意味において、ソ連との間にオーストリアの場合とは全然異なったいわば対等な国家としての交渉がここに望まれるわけじゃないかと思います。ただし今お話通りに、日本が今日独立完成のためにやらなければならぬいろいろなことがございましょう。アメリカに対してもさような点がたくさんあるのでありまして、それは努力しなければならぬと思いますが、それだからといって、日本の地位がオーストリアと同じであるという考え方をもって進むわけには参りかねる性質のものだ、こう考えております。
  145. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 外相の所見には全く反対でありまして、占領は形式上終りましたが、事実上はアメリカの軍隊によって占領されているという実情であり、講和会議ができて独立したというが、それは全く名目的な独立であります。またオーストリアと日本との国際的な事情が違うとおっしゃいますが、わが党はかねて自主中立外交ということを唱えておりまして、これはオーストリアだけじゃありません。今日アジアの主要な諸国は自主中立という外交政策を大体とっております。アジア・アフリカ会議にはたくさんの国が集まりまして、共産圏の国も来ましたし西欧圏の国も来ましたが、しかし基調となるもの、キー・ノートとなるものは、インドなりインドネシアなりビルマなり、こういう国々によって主導された自主中立政策ということであったのであります。私はそういう自主独立外交、自主中立政策こそ、ほんとう日本を平和と安全に導く道だと思いますし、オーストリアのこれはむしろいい例だと思いますが、そういうことをあまり論じますと、時間がかかりますから次に進みます。  そこで吉田書簡の第二の要点であります。今のに続くのでありますが、「事実、中国の共産政権は日本の憲法制度及び現在の政府を、強力をもって転覆せんとの日本共産党の企図を支援しつつあると信ずべき理由が多分にあります。」これがまた共産政権と二国間条約を締結しない理由の一つになっておる。これは私は首相にお尋ねしますが、果して吉田書簡のいうように事実中国の政権、現在北京にある中国の政権は、日本共産党の企図を支援しつつあると信ずべき理由が十分にある、こういうふうにお認めになりますかどうか、お尋ねいたします。
  146. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私はそういう事情についてよく知るところがありません。外務大臣から答弁してもらいます。(「よくわからぬ」と呼ぶ者あり)私はそういうような事情についてつまびらかにしておりません。
  147. 重光葵

    重光国務大臣 吉田書簡のその点は、私は当時の共産党の政策を検討して生まれた字句じゃないかと思います。しかし今日国家国家との間においてさようなことが公然行われておるとは、私ども決して今申し上げることはできません。
  148. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 これは追及しますと非常に重要な問題であります。しかしこれ以上追及しませんが、外相も、そういうことは現在は少くともないだろう、また共産党の政策も変っておるからというようなふうの御答弁でありましたが、私もそう考えております。また日本共産党といえども外国の支援を頼みに国内で改革や革命をやろうというような、そんなけちなことはしないだろう。またもしかりにそういうことをやりますと、国民感情が反撥しますから成功もしないので、そんなばかなことはしないだろう。だから私はこれは吉田内閣の一種のデマだと思う。  そこで今二点を申し上げましたが、外相もはっきり言われたように、国際的にずっと見ていくと、中国の国際的な地位もだんだん変っている。国際情勢もだんだん新中国に有利に展開しつつある。いわゆる共産中国、中共に対して有利に展開しつつあるというようなお話、そして共産党に関するこういうデマも今日は解消しておるとしますならば、私は一日も早く中国と国交回復をする努力を払うべきだと思うのであります。重ねてお尋ねしますが、そういう努力を払うお考えがあるかどうか。今直ちに国交の回復をやれというのではありませんが、国交の回復をはかるように準備するといいますか、研究してみるというようなお考えはおありだと思いますが、お尋ねいたします。
  149. 重光葵

    重光国務大臣 私はその努力を払うことがわれわれの政策だ、こう思っております。ただしこれについては今申し上げた通り国際情勢の変化その他をおもむろにかつまた正確に観察をして、それに応ずるようにだんだん政策を立てるべきだ、こう思っております。むろん国際共産党の状況等をもつぶさに検討する必要のあることは言うを待たぬところであります。
  150. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 なおこの際特に首相にお尋ねしたいことがあります。それは去る四月二十八日吉田前首相がプレス・クラブの招待昼食会に行かれて、ずいぶん大胆な演説をされました。一種の放言だと思うのでありますが、それが各新聞にも載っております。要約いたしますとこうであります。中ソ両国の実力をきわめて低く評価しておる。中ソ両国なんというものは、これはもうおそれるに足りぬ。非常に力が弱い国である。中国が建設をやっているというが、そんなことはうそであろう、そういうふうな見方。しかしながらそれにもかかわらず、やはり中ソ両国日本を侵略する、こう何かかまえをしておるように言って、その危険を非常に強調しておるようであります。そうして首相に特に御留意を願いたいのは、鳩山内閣がソ連のワシの口に飛び込もうとしておる。こういうわけで日ソ国交回復の御努力のごときものを、非常にこれで誹謗しておるわけであります。そうして結論としましては中国をソ連から引き離さなければならぬ、こうすれば共産勢力は非常に弱まるのだ、こういうことを述べておる。私はこういう人がついこの間まで、日本内閣責任者であったということを、非常に遺憾に思うのでありますけれども、こういうことを言っておる吉田前首相――これは決してその影響力は無視できないのでありますが、こういう吉田首相の見解に対しましてどうお考えになりますか。具体的に申しますと、中ソ両国というものは、いつも日本を侵略しようとかまえているという、首相もそうお考えになるかどうか。さらにまた中国をソ連から引き離すべきだとお考えになるか。また引き離すことができる、こういうふうにお考えになるか。その三点について特に首相の御見解を聞きたいと思います。
  151. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 ソ連と中国が今日日本を侵略する意図は持っておらないと思っております。それからソ連と中国が相離れんとしておるというような事実もないと思います。この間ちょっと見たのでありまするから間違っているかもしれませんけれども、エキスプレスというイギリスの雑誌には、中国とソビエトとが共同で鉄道をかけているというようなことが書いてありまして、どうも相反しているような態度に出ていないような記事がありました。これは僕はよくわかりませんから、責任を持つわけにいきませんけれども、外務省の方では有名な雑誌ですから読んでいると思いますが、あれによってみれば共同で大鉄道を二本こしらえているというようなことが書いてありましたから、相反している態度ではないと思っております。  もう一つ何でしたかしら……。
  152. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 日本として中国とソ連とを離間させるといいますか、引き離すべきだとお考えになるかどうか。それを希望されるかどうか。
  153. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 そういうことは考えません。
  154. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 今の答弁で満足であります。さすがに首相の良識だと思います。これは国民の常識でもあります。  その次に日中貿易協定について御質問いたします。これは今まで触れた委員もありましたが、特に私は、これは力を入れて詳細に聞きたいと思いますから、首相なり関係大臣に一つそれぞれお尋ねをいたします。  そこでまず第一に申し上げたい点は、今度の協定ができたが、これは民間協定でありますから、どうしてもやはり政府が何らかの形で保証を与えないと円滑な実施はできないのであります。しかも政府の与党である民主党は、この前の総選挙におきまして、盛んに日中貿易の拡大ということを国民に訴えたのであります。それで民主党は勝ったとも言えると思うのです。国民に対する最大の選挙公約の一つであります。その責任は私は大きいと思う。もう一つは、これもたびたび聞かれましたが、去る四月二十七日、この協定調印の直前において鳩山首相は、日中貿易促進議員連盟の代表と会見されまして、新協定に対して支持と協力を与える旨明言されておるのであります。で、この責任も私は大きいと思う。そうしてまた中国側もこの首相の言明を信頼して協定調印をしたわけであります。調印式の席上、向うの雷団長はこういう書簡を日本側に渡している。  一九五五年五月四日附左の内容をもつ貴書翰を受領いたしました。   「貴我双方の間に一九五五年五月四日東京において締結された日中貿易協定にたいして、わが国政府が支持と協力をあたえる問題に関し、日中貿易促進議員連盟の代表が一九五五年四月二十七日嶋山内閣総理大臣と会見した際、鳩山内閣総理大臣はこれにたいして、支持と協力をあたえる旨明言いたしました。」  右御返答申しあげます。   一九五五年五月四日       中華人民共和国日本訪       問貿易代表団         団長 雷 任 民  日本国貿易促進協会   会  長  村田省蔵先生  日中貿易促進議員連盟   代表理事 池田正之輔先生 これは条約でなく、協定でもありませんけれども、ちゃんと協定の付属文書としてこういう書簡が参っておるのであります。事は国際信義にかかわる重大問題であります。もし万一首相がこの協定の実行に責任を負われなかったといたしますならば、内においては国民を裏切り、外においては中国の侮蔑を買うに至ることは、これは必至であります。こういう協定に対しまして首相は責任を負うか負わないか。この点については率直な御答弁一つお願いいたします。
  155. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 四月の二十七日の促進議員連盟の諸君から提出せられたる要望書に対しまして協力約束した点は事実であります。つまり中共との貿易振興のためにはできるだけの協力をいたしたいと思っております。
  156. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 一般的にはその答弁でいいのでありますが、もう少し具体的につつ込んでお聞きしたいと思います。首相がごらんになりました日中貿易促進議員連盟の要望書はこれでありますけれども、これと新協定とは何かそごしておって、自分は要望書には責任を持つが、協定には責任を持たぬというような無責任な御答弁がたびたびあったのであります。しかしながら、事実はそうではないのでありまして、この要望書にはこう書いてあります。目下日中両国にて交渉中の貿易協定の締結を見たる上は、政府はこれが実現に協力すること、特に左記事項に関し万全の措置をとられるよう要望する、こういうふうな書き出しで、要望事項が三つ書いてあります。その要望事項は、決済の問題に関しましては新協定の第五条、それから見本市の問題に関しましては同じく第九条、通商代表部の問題につきましては同じく第十条の条文に該当しておるのであります。しかるに首相は議員連盟の要望書には支持と協力を与えるが、新協定には責任を負わない、こういうふうに言われた。今の御答弁では大分進んでおるようでありますが、新協定に対しましてはっきり支持と協力とを与えていただくお考えだと思います。向うの代表はそういうことを信頼して調印して帰ったのであります。しかも雷という人は向うでは通産省の次官ですか――次官でもたくさんおりまして、第一次官というような人でありまして、非常に重大な人であります。それから代表はみなそれぞれ一流の人でありますので、メッセンジャー・ボーイが来たのではないのでありますから、一つその点を確かめておきたいと思います。御答弁を願います。
  157. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 せんだってその質問がありましたときには、私は全く日中貿易協定というものを知らなかったのです。その後日中貿易協定を見ますと、いささかは違った点がありますけれども、大体において同一なものであると思っております。そのことについては過日赤松君でしたかの御質問に対して、大体は同じようなものでありましたということを答弁いたしましたが、同じようなものでありますから、もちろん日中貿易協定に対しても、できるだけの協力はいたしたいと思っております。
  158. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 それで一応満足いたしました。この際特に申し上げておきたいのは、首相の政治的な責任ということを十分お考え願いたいと思います。  それで今度協定内容に入りまして関係大臣に聞いてみたいと思います。まず第一に決済の問題、これは今度の協定交渉のうち一書核心に触れる問題でありますから、大蔵大臣から伺いたい。少し経過を説明いたしたいと思いますが、御存じのごとく今日まで、日中間の貿易は主としてバーター方式をとってきたのでありますが、バーター方式というのは、ある商品の輸入のための外貨は、必ず見返り輸出によって補わなければならないというきわめて窮屈にして不自然な方、式であります。特に昨年の下半期から米とか大豆とか塩とかいうような国民生活にとって必需品とされている商品が、中国から大量に輸入されるようになってきたのでありますが、その見返り商品の問題について、関係者ば非常に憂慮を重ねてきたのであります。一部はポンドの割り当てを受けて決済した分もありますが、現在の外貨事情からして今後多くを望むことは不可能であります。また決済手段としてポンドのごとき、日中両国以外の第三国通貨を使用することは、種々の理由から好ましくないのは申すまでもありません。そこで今度の新協定を締結するための交渉の過程において、中国側は両国おのおの本国通貨による直接決済という方式を提案してきたのであります。これはわれわれが一昨年北京において締結しました第二次貿易協定の付属覚書にも明記してあるところでありますから、中国側の提案はまことに当然のことであります。ところが今一気にかかる決済方式を採用することは不可能であるということがわかりましたので、中国側は日本側の交渉委員の一人である木村禧八郎君の考案しました日本円建て方式日中支払い協定という案に同意をしたのであります。その要領を申しますと、日本銀行の中に中国人民銀行の清算勘定を開設いたしまして、両国間の支払いは輸出輸入ともにその勘定に記入されて、一切が日本用で決済されるという方式であります。これはまことに日本側に有利な決済の方式でありまして、バーター取引の煩瑣もなく、また外貨使用の必要もない、事務処理も簡単である、さらにまた為替率の変動のリスクを免れることができる。しかも日中貿易は当分はどうしても輸入超過が続くものと考えられますが、日本は中国からクレジットを供与されるというような形になりまして、一瞬都合がいいわけであります。従って日本側の関係業者はみなその実現を切望した次第であります。しかるに日本銀行は大蔵省の許可がないという理由で、中国側再三の懇請にもかかわらず、ただの一度もこれと会談をしなかったのであります。以上のような経過で木村私案は葬られてしまいました。そうして新協定の第五条には、決済の問題につきましては、「双方の取引上の支払と清算は、日本銀行と中国人民銀行との間に支払協定を締結し、清算勘定を開設して処理する。両国国家銀行間に支払協定が締結されるまでは英ポンドによる現金決済とする。」と、こういうふうな規定に話がついたのであります。そこで私は一萬田蔵相にお尋ねするのでありますが、政府はこの協定に支持と協力を与えるという首相の言明に塞ぎまして、この日本銀行と中国人民銀行との間に支払い協定を締結するその交渉を大体いつごろから始め、そしてまたどういう態度でこの交渉に臨むお考えであるか、これは一つ萬田大蔵大臣日本銀行を監督する立場におられますから、専門的な御意見を聞きたいと思います。
  159. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えします。ただいま中共との貿易がバーター方式でポンドによる現金決済である。この決済の上で不便があるということですが、私もそのように思います。同時に単に取引の点ばかりからいえば、今お説のようなそういう決済方式が便利であるということも、これも私は率直に認めていいと思います。ただそういうふうに中共銀行間において清算勘定を置いて決済するためには、今日の日本中共の国交の調整がもう少し外交的に進んだ上でないと、そういうことが先行することが困難であるということを申し上げておきます。
  160. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 それでは支払い協定両国中央銀行の間に締結する交渉をすぐ始めるということではなくとも、そういうことについて、とにかく一応政府としてはまあ準備だけはする、あるいは研究だけはするという程度の御熱意はおありだろうと思いますが、これはとにかく民主党の重要な選挙公約でありますから、しかも貿易の問題はやっぱり決済の問題が片づかないとうまくいかないことは、御存じの通りでありますから、そのくらいのことはお考えになっておると思いますが、一つ答弁を願います。
  161. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 それは、そういう取引をやり得る日本中共との国交関係ができれば、そうむずかしい取引ではないので、この準備もそう要ることではないと考えます。
  162. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 それで支払い協定ができるまでポンドによる現金決済をするということにこれはなっておりますが、政府はそのために必要なポンドを外貨予算に計上する用意があるかどうか、その点を一つ……。
  163. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 これは現在ロンドンで民間の銀行の間でやってるおことであります。特にそのために計上する必要はないのであります。
  164. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 先ほど国際関係云々と言われましたが、日本は国交がまだ正式に回復していないインドネシアであるとかフィリピンというような国とも、支払い協定というようなものを結んでおるのでありますが、それだけの理由ならば、中国と結べないことはないと思いますが、何かほかに理由があるのですか。
  165. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 御趣旨がちょっと聞きかねましたから……。
  166. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 国際的な事情がまだ未熟であるからというようなお話であったようでありますが、日本と中国とは正式な国交が開かれていない。同様の関係日本とインドネシアについても言い得るわけでありますが、日本とインドネシアの間には支払い協定が結ばれ、しかもそれは政府がバック・アップしておると思うのでありますが、それにもかかわらず中国とはどうしてこういう支払い協定を結ぶ、政府がバック・アップするということができないのでありますか。
  167. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 それはむしろ私よりも外務大臣お答えになった方がいいと思うのですが、それだけ日本中共との関係は、私は国際情勢が複雑だ、こういうふうにお答え申し上げます。
  168. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 実はただ複雑であるだけでは、どうも満足できないのであります。これは政治じゃない。商売の話なんです。だから、政治は政治、貿易貿易というような話もあるくらいでありますから、しかもまた鳩山首相は、国交の回復はできぬが、少くともまず貿易、商売だけはやって、それから漸次国交を開くおぜん立てをしたい、こういうようなお話で、そういうふうに首相も非常に熱意を持っておられる。ところがその貿易決済の点でひっかかってなかなかうまくいかないということでありますが、どうも熱意が足らないと思いますが、外務大臣にお尋ねをしたい。もう一度繰り返しますが、国交の開かれていない国との間にも支払い協定はすでに結んでおる。インドネシアの事例もある。そんならば、国交の開かれていない新中国とどうして支払い協定が結べないのか、政府はそれにバック・アップできないのか。さらにまたここで問題になる貿易は、ココムの制限のうち内の貿易なんです。密輸でもない、また禁輸品目を輸出するのじゃない。ちゃんとココムの許可品目だけについて取引をしようというわけであります。そうしますと、取引をするためには、決済の問題まで解決しませんと、取引は完了しないわけでありますが、ともかく問題は中国貿易に対する熱意の問題である。首相はこのことに非常に熱意を示されております。またこの前の総選挙でも民主党はこれを最大の選挙公約とした。国民はこれにつられて民主党に投票したのであります。ところが選挙が済んでいよいよこういう協定ができ上りましても、何かどの大臣もいいかげんな答弁だけで、少しも具体的に問題の処理において熱意を示さない。外務大臣どうですか。
  169. 重光葵

    重光国務大臣 ごもっともな御質問と思いますが、支払い協定の問題、それからまたココムの問題までもお話がありましたが、実はその民間協定というのは、政府関係なくできたものでございまして、内容は相当複雑でございます。従いましてまだどこまでそれが一般方針のもとにおいて十分に協力ができるか、たとえば支払い協定をどこまでし得るかということを、今つぶさに検討中でございます。これはできるだけ熱意を持って貿易の増進ができるようにしていきたい、私はこういう考え方をもって、もっとこれを検討しょう、こう思っております。
  170. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 とにかく鳩山内閣の最大の欠陥は、総理の意図が閣僚全体に十分伝わらないという点だと思います。この問題は一番はっきりした事例でありますが、私はここでいろいろ質問して追究しても仕方がないが、総理がすでに新協定に支持と協力を与えるという約束をしておられる。これは非常に大きな国際信義に関する言明であります。そしてまた先ほどから繰り返して言っておりますように、民主党の大きな選挙公約でもありますので、せっかく協定ができた、そしていよいよ日中貿易という大きな船がすべり出そうとしておるのだから、私はいろいろ議論はしませんが、関係大臣それぞれこの協定が百パーセント実行できるように、それぞれ知恵をしぼっていただき、一つ協力を願いたいと思います。特に大蔵大臣も、これはお願いします。  それから次に、これはごく簡単な問題でありますが通産大臣に伺いたい。見本市のことにつきましては、第九条にこういうことが書いてあることは御存じの通りでありますが、「双方は互いに見本市を相手国において単独に開催することに同意する。」単独が大事なのであります。「日本側の見本市は一九五六年春に北京および上海において開催し、中国側の見本市は一九五五年内に東京および大阪において開催することとする。双方は相手側に見本市開催の事務の執行と委員の往来にあらゆる便宜を与えること、およびその安全を保障することについて、それぞれ本国政府の同窓を得ることとする。」これだけのことで、これは大してむずかしいことではありませんが、これはぜひ一つこういうふうにできますように、通産大臣の御協力をお願いしたいと思いますが、いかがでありますか。
  171. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 これは通産省だけの問題ではございませんが、私としては実現するように努力いたします。
  172. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 それでは外務大臣からも一つ……。
  173. 重光葵

    重光国務大臣 私も同様な考えを持っております。
  174. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 それでよろしゅうございます。引き続いて通産大臣にお伺いしますが、これはこの間通産省から発表されました昭和二十九年度の通商白書なんかを読んでみましても、二十九年度の貿易の好調というものは、今後永続するものとは思われない。そうしてこういうふうなことが書いてあります。「中国大陸との貿易が完全に開かれていない現在、わが国の貿易は先進国からくる貿易自由化への傾向と、貿易自由化の行われない諸国との動きの間に立ってきびしい試練にさらされることも予想される。」こういうことが書いてある。この白書の警告は裏返してこれを読みますと、中国貿易なり中国市場というものが非常に重要であるということをこれは物語っているわけであります。この中国における大きな建設、それからまた民度の急速な向上というものが、中国貿易の将来の拡大を約束することは、これは異論のないところであります。ところがこの第一次の協定の遂行率は協定金額のわずか六%、第二次の協定の遂行率は同じく四〇%にすぎなかったのであります。その最大の理由は、やはり何と申しましても、日本側の輸出商品のうち、甲類に属するものが全部禁輸品目になっているためであります。この間からこの委員会で通産大臣が御答弁になっておりましたが、現在日本ココムの禁輸リストの関係においては、西欧並にまで緩和されたとおっしゃったのです。これは大体そうであることは私も認めます。しかし日本は中国に隣りしておるという特殊な地理的な条件から申しましても、実は西欧並にということではこれは困るのであります。また同じ共産圏の国と申しましても、中国に対する場合と、ソ連その他東欧諸国に対する場合とでは、禁輸の度合いがずっと違う。そこで私はこの際通産大臣にお尋ねをしたいのは、日本としては中国に対する禁輸品目の緩和をソ連並にしてもらうように、ココムあたりに訴えたいというようなお考えはないか。結局そういうところでやはりそのネックを破りませんと、およそ禁輸品目の緩和の問題では限界に達しているようであります。
  175. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 お説のように、ココム中共に対する禁輸の範囲が、せめてソ連並くらいまでになりますと、日本としては非常な有利であるということは申すまでもありませんが、この間も申しましたように、その西欧並というのは一応中共に対する輸出品目が西欧並までなったもんですから、そのあと今度は広げようということはなかなかむずかしい。従って遅々として進まないということは事実であります。ですから私どもとしては機会あるごとに、今お話しのように、日本は西欧よりも一層支那大陸に対して重要な関係を持っておるという点を強調して、この禁輸の品目の解除に努力を今までもいたしておるつもりでありますが、今後なお一瞬努力いたしたいと考えております。
  176. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 禁輸品目につきましては、いわゆるケース・バイ・ケースで特認を申請して出せるのでありますが、その方面の努力が非常にやはり今まで足りなかったと思うのであります。それにつきましては、ココムの本部のあるパリが、日本から非常に遠いというようなことで、特に代表を派遣するのでなく、パリにおる駐仏大使館の館員あたりの兼務で、折衝に当らせておるというような事情もあると私は思うのでありますが、ココムに対する特認の申請をもっと積極化するということのためには、たとえばそういう特別の専門家をパリに派遣するというぐらいの熱意もあってしかるべきだと思いますが、どうお考えになりますか。
  177. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 ただいまのところではまだその機会がございませんが、そういうふうに取り計らいたいという意思は持っております。
  178. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 そういうふうにお願いします。  次に重光外相にお伺いしますが、例の通商代炎部のことであります。これは外交官符遇というような言葉になっておるので、なかなかむずかしくなったのでありますが、これは一つ首相にもよく聞いておいていただきたいと思いますが、この通商代表部及びその部員は、外交官待遇と申しましても、大体関係者が考えたのは、まず領事の性格を持ったものでありまして、最小限度の待遇としまして、滞在期間を制限されたり、通信及び行動の自由を妨げられたり、任命財産の安全を脅かされたりしないだけのことを一つ保障してもらいたい、こういうわけであります。そしてこれは要望書にもそれが書いてあって、首相はそれならばよろしい、こうおっしゃっておった。それが新協定の第十条になっております。そういうわけでありますから、外交官待遇というとえらいむずかしいようでありますが、あれは領事並に扱ってくれというわけでありますから、これはそう大した問題じゃない。だから重光外相は、一つこの第十条の条文を実現しますように、お考えを願いたいと思いますが、いかがでありますか。
  179. 重光葵

    重光国務大臣 今のようなお話しの意味であるならば、私どももそう窮屈に考えないでもよい、こう考えております。しかし実際これを実現する場合においては十分先方の誤解のないようにしておきませんと、外交官並ということになりますと、これは大へん行き過ぎたようなことになりますので、向うの希望もよく確かめた上で、できるだけの便宜を与えることに努力いたしたいと思います。
  180. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 実は今日私の前に質問した自由党周東君に答えられた重光外相の御答弁の中にも、領事というようなものならば、国交がまだ正式に回復していない国と国との間でも交換することができるのだ。領事の職務というものは、自国民の身分や通商に関するような事務を処理する人であります、そういうふうなお話しもありましたから、私はこれは非常にいいお話しを承わったと思ったのでありますが、一つ領事的な性格を持つものとして、これも外交官といえば外交官でしょうが、少し違いますから、そういうことで通商代表部日本に参りまして満足に仕事ができるように、しかもまたこの間バンドン会議に先発した中国代表にああいう不幸な事態が起りましたが、ああいうようなことがないように、外務省でお考えいただきたい。これだけでありますから、これは要望として申し上げておきます。  それからその次にこれも外務大臣でありますが、実はこの間新協定の締結の交渉が幾らかひま取りまして、再度にわたって中国代表団の滞在期間の延長の申請が行われました。ところが二度目の申請に際しまして、外務省は非常に冷酷な態度でこれを拒否し、そうして場合によりまして強制退去でも命じるというようなけんまくを示したことがあったのであります。漁業交渉のために北京に参りました日本代表は、本年の一月から約四ヵ月間北京に滞在して、終始快く待遇された。この二つのケースを比べますと、どうも日本人としてまことに汗顔の至りにたえないのであります。私の聞くところによりますと、外務省がそういう冷酷な態度を表明した裏には、台湾の国民政府筋の強要があったというようなことでありますが、果してそういうふうなじゃまが入ったものかどうか。またそうでなくて外務省が独自にそういう考えでやられたのか、外相の御答弁を願いたい。
  181. 重光葵

    重光国務大臣 旅券の再度の期限延長について難色を示したことは事実でございます。実は旅券の期限につきましては、われわれの方の日本側よりも外国側はずいぶんむずかしいことを言っております。しかし、期限のある以上は、これは期限を守ってもらわなければならぬ。そして、これがためには誤解のないように、念には念を入れて期限を設定して、相当長い期限をつけました。しかも一度は希望の通りに延長を認めたのでございます。そうでありますから、こういうのをだらだら、言えばすぐ延長ができるのだというふうな取扱いも、果していかがかと思います。従いまして、難色のあったことは事実でありますが、しかし何もそれがために交渉に差しつかえは結局なかったのでございます。
  182. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 どうも今の御答弁には満足しませんけれども一つ今後を戒めてこれ以上追及しません。  次にアジア・アフリカ会議のことを少し聞きたいと思いますが、鳩山首相代理として出席された高碕経審長官の御労苦に対しましては一応敬意を表します。ここに外務省から発表された「アジア・アフリカ会議経過白書」というものがありますが、私これを見ました。これを見ますと、非常に日本代表は活躍したように書いてあります。ところが、新聞紙の報道その他から私仄聞しますと、必ずしもそうではなかったように感じられます。首席代表の冒頭演説もきわめて抽象的で低調であります。また、日本代表が四月二十三日の首席代表会議で説明したバンドン平和宣言案も、何の理想も情熱も感じない簡単な外務官僚の作文にすぎない。これであります。しかもこれとても、最初から代表団が用意したものではなく、わが党の佐多顧問などの進言によってしぶしぶながら持ち出した格好であったために、会場では全く注意を引かない、無視された、こういうことであったそうでありますが、幸いに二十三日、中国の周恩来代表から非常にほめられまして、積極的な支持を受けましたので、やっと面目をほどこした、こういうことを聞いております。中国代表も七項目の平和宣言を提案し、結局最後に、会議は各国の平和提案を全部総括したところの平和十原則を採択して閉幕したのであります。そこで高碕首席代表にお尋ねいたしたいのでありますが、周恩来代表――今度の会議の立役者でありましたが、その周恩来代表の言動、平和提案のイニシアをとったその言動を通じて、中国の対外政策が、伝えられるように、何か侵略的なものという印象を受けられたのか、それともいや中国はやはり平和を欲しているんだ、こういうふうにお考えになったのか、それを一つ御披露願いたいと思います。
  183. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 お答え申し上げます。バンドンにおけるアジア・アフリカ会議において、周恩来首相のとられた態度につきましては、私は侵略的な意味はない、ほんとに周恩来首相は平和を愛している人だと、あの会議において私はそう解釈いたします。
  184. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 大へんよろしいのでありますが、ついでに外相にお尋ねいたします。バンドン会議には、中国を代表して周恩来が出席した。台湾の国民政府の代表というものは初めから招請を受けなかった。国際情勢はこんなに変っておりますが、こういうことが、これは当然のことだとお考えになりますか。それとも蒋介石の代表が来てしかるべきであった、このことは不当な措置であったと、こういうふうにお考えになりますか、一つ外相の御感想をお聞きしたい。
  185. 重光葵

    重光国務大臣 これは私は招請国のお考えによってきまったんだと思います。私はアジア特に東亜の安定を実現するためには、全部のものがやはり一堂に集まることが望ましかったと、こう思います。
  186. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 とにかく周恩来が中国を代表してバンドンに来、あれほどの大きな働きをしたという事実が、先ほどのお話じゃありませんが、国際情勢がずっと変った、新中国の実力がもう堂々たるものとして国際的な承認を受けつつあるということの私は証明だと思う。そうしてまた吉田書簡に書いてあるあの共産党に対するデマ、こういうようなものも解消した今日、私はどうしてもやはり新中国との国交を早く回復するという努力をしていただきたい。これをこの機会に重ねて要望しておきます。  ところで白書でありますが、これを読みますと、植民地主義に関する討議が行われた際、セイロン代表のコテラワラ首相が、古い植民地主義は滅びつつあるが、これにかわって新しい型の植民主義が台頭しつつあるということを申して、等々の事例をあげその脅威を指摘したのであります。トルコやパキスタンはその意見を支持し、インドや中国はこれに反対したということであります。そのときわが方は本問題に関しまして、コテラワラの意見を支持されて、そうしてこの白書によるとこう書いてある。わが方は本問題が将来の国際政局に重大なる影響を及ぼすべきことを考慮し、名称の如何を問わず、新しい植民地主義侵入による危険を指摘して積極的に前者の立場を支持する発言をした。」と書いてある。政治的な発言はできるだけ控え目にせよというのが政府の訓令でもあったようでありますが、事実非常に政道的には遠慮された態度であったのでありますが、がぜんこの点につきまして非常に積極的な態度を示しておられますが、「この将来の国際政局に重大なる影響を及ぼすべきことを考慮し」というのは、一体どういうことを意味するのでありますか。一つお尋ねしたい。これは高碕さんにお尋ねしたい。
  187. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 お答え申し上げます。ただいまの問題につきましては、二十二日に突然コテワラが、普通の植民政策以外に新しい植民政策が現われている。こういう発言がありまして、まっこうにこれに反対いたしましたのが周恩来でありますが、その後これは委員会において――本会議でなく委員会において論議されることに相なったのであります。つきましてはわが方の態度といたしましては、初め日本を出ますときに外務省から出ました訓令に基きまして、私どもはパキスタン、トルコと同歩調をとってこれに同調をいたしたわけであります。
  188. 牧野良三

    牧野委員長 田中君、時間が経過いたしておりますから御注意申し上げます。
  189. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 トルコ、パキスタン、フィリピン等の諸国は、バンドン会議で終始アメリカのかいらいとして踊ったことは明白な事実であります。日本代表代理の一員である谷顧問のごときも、しきりにインドネシア駐在アメリカ大使と連絡をとっていたと新聞紙は伝えておりますが、右のような政治的な発言は、結局トルコやパキスタンと同様、日本がアメリカの手先である、アメリカの意を受けてバンドンに来たんだというような印象を会場に与えた。私はそういうことは万なかったと思いますが、アメリカとの間に何かいろいろそういうような連絡というものがあって、こういう発言をされたのでありますか。
  190. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 お答え申し上げます。アジア・アフリカ会議の主催国の中にはパキスタンも入っております。それから提案いたしましたセイロンも入っております、主催国のうちの二国もそういう点に同調しておるわけであります。これにつきましては断じてアメリカの指示を受けてやったのではありません。以上をもってお答えといたします。
  191. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 どうも時間が少いようでありますから、私はもう一問質問をいたしたい。御答弁によってはもう二間ぐらいになるかもしれませんが、もう一問だけ……。  外国の通信記者は皮肉にも、日本の代表はバンドンで商売に没頭して、政治には無関心な態度をとったと伝えておる。白書においても経済協力の面においては大いに活躍したように書いてあります。先ほど申しました例の平和宣言案も、結局経済問題における日本代表団の活動、そのための単なる政治的なアクセサリーだというふうにも考えられる。ところで今後アジア、アフリカにおける日本の経済協力のあり方ということが私は問題だと思います。特にこの方面に達識を有しているといわれる高碕長官が幸い代表でもありましたから、その日本の経済協力のあり方ということについて、バンドンにおけるなまなましい印象に基いて一つお話を願いたい。お話を聞きまして都合によってはもう一問だけやります。
  192. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 お答え申し上げます。アジアに対する経済政策はおのずから二つありまして、一つは開発、一つ貿易、これの二またをもちまして私はこの交渉に当ったのであります。それで経済開発ということになりますと、御承知のごとく未開発の資源がたくさんありますから、この開発に対しては日本の技術、日本の余っておる人を持っていって、あるいは日本の設備を持っていって、これを開発して、そうしてその土地の人たちの生活を向上せしめるということを主眼に置いてやりたいと存じます。つきましてはその地方における生活が向上すれば、自然貿易が増大する。その貿易の増大を両国間で解決するのではなくて、三角貿易をやってこれを十分伸ばしていくという所存でありました。もう一つは、このアジア地域におきましては、技術が足らぬというだけでなくて、資本も足りませんから、その資本につきましてはアジア、アフリカだけが一つのブロックを作るのではなくて、ヨーロッパ、アメリカの資本も導入し得るように、世界銀行がこちらに出てくるとか、あるいは国際連合が別の金融機関を持ってアジアに置く、こういうことにつきましては、全会をリードいたしまして日本方針通りに決議いたしたのであります。以上をもって私の答弁といたします。
  193. 牧野良三

    牧野委員長 それではもう一問お許しいたします。田中君。
  194. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 今の御答弁では私は満足できないのであります。高碕さんは戦前戦時中満州におられてずいぶん働かれたのでありますが、満州においてお仕事をなさった場合とはこれは全然違う。今は日本はアジア、アフリカ方面に出て経済協力一つやろう、こういうふうなことを言っておる。その場合に一番大事なのは、どういう立場でどういう心がまえでやるかということであります。それはまず第一に平和主義である。平和的共存の考えを持つということ、それから諸民族の平等互恵、こういうふうな心がまえといいますか、これが非常に大事である。これはアジア・アフリカ会議で採択された平和十原則にありますが、何か日本が特定の国、特定の大国の利益のために奉仕するというようなことは、これは非常に禁物であります。それは軍事的にもいえるし、また経済的にもいえる。ところが今の日本の行き方、日本政府の行き方を見ておりますと、結局はアメリカと結びついてやろう、アメリカがアジア、アフリカ方面におきまして軍事援助をやる、また軍事的性格を持った経済援助をやる、そうするとそれに結びついてうまく汁を吸おう、こういうふうな行き方がやはり見られる。今度バンドンに集まった中近東諸国の代表を日本に呼ばれた。これは私はいいことであると思います。いいことでありますけれども、今この中近東はどういう事情になっておるかと考えますと、決してアラビアン・ナイトにいわれたようなおとぎの国ではない。この中近東は御承知のごとく新しい非常に豊富な油田に満ち満ちておって、今その油田の開発が始められておる。しかもここにはアメリカの石油資本が盛んに今進出を始めておる。それだけでなく、この中近東というのは現在アメリカが地球上にずっと築き上げた共産圏包囲陣のうちでまだ完成されていない最も弱い部分であります。それでこの間トルコ、イラクの防衛協定というものが結ばれましたが、この背後にはもちろんアメリカがある。こういうふうにして中近東というものは、軍事的にはアメリカの一つの防衛線になって強化されつつある。あそこはアメリカ資本の植民地になっておる。そういう国々の代表を日本に呼ぶのはいいけれども、何かやはりアメリカの手先になって、アメリカがそこでいろいろなことをやる、それで日本がうまい汁を吸おう、こういうことでは東亜共栄圏の何かアメリカ版みたいなものを日本が書いておるような形になる。だから私はこれはあえて御答弁を求めませんけれども、(笑声)   〔「何だ、しっかりしろ」と呼び、その他発言するものあり〕
  195. 牧野良三

    牧野委員長 お静かに願います。
  196. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 答弁をいただくことができれば非常にけっこうでありますが、あえて答弁を必要ともしませんが、とにかく今後経書長官として、アジア、アフリカの経済開発その他に経済協力をしようという政府のちょうど専門の責任者として、十分お考え願いたい。私は、こういうふうな考え方を、アジア、アフリカ会議でしっかり固めて帰っていただいたらよかったと思うのでありますが、どうもまだ依然として満州重工業総裁高碕達之助氏というような感じしかしないのでありまして、非常に遺憾でありますけれども、以上お願いして、これで終ります。
  197. 牧野良三

    牧野委員長 田中稔男君の質問に関して、田中織之進君より関連質問の発言を求めておられます。これを許します。田中織之進君。
  198. 田中織之進

    ○田中(織)委員 ただいまの同僚田中稔男君の質問に関連して、幾多の問題について実は伺いたいのでありますが、だいぶん田中稔男君の時間も経過いたしておるということでございますから、一つの問題だけ私総理に伺っておきたいと思うのであります。それは、ただいまの田中稔男君の質問に対しまして、中ソ両国日本に対して侵略的な勢力だとは考えないという鳩山総理大臣の御見解、私は正しいと思う。そういたしますると、ちょっと矛盾したことができております。それはなぜかというと、今度の予算にも相当費用の増額をしておるところの、いわゆる防衛力の増強ということです。現在日本を取り巻く諸国のうちで、中ソ両国が侵略的な勢力ではないという見解の上に立つならば、一体何のために自衛隊を増強する必要があるかということに私は大きな疑問を持つわけです。この防衛力漸増のアメリカのさしがねによる――われわれはそういうように考えておりますが、そういう関係のために、数日来続けられておりますように、民主党の選挙のときの公約がきわめて不完全にしか、不十分にしか予算に具体化することができないというところに、この予算案の最後の結論がどうなるかということを、あなたたち自身非常に心配するような事態が予想されるわけです。その点は私は大いに矛盾すると思うのです。それで、いわゆる独立国としての固有の自衛権に基くところの防衛力というものを持つのだという考え方が、だんだん、防衛分担金の削減交渉等の過程から見れば、現在安保条約に基いて日本に駐留しておるアメリカ軍の撤退を求めるために、自衛力を増強していかなければならぬのだ、こういうような答弁に変ってきている。そういう観点から見て、どうも、固有の自衛権に基く自衛隊を増強するのだというような、根本的な総理の言われたような、根本的な総理の言われたようなことがだんだん消えて、全く日本の軍事力の再編という点になれば、アメリカのさしがね以外に私はないように感ずるのでありますが、ただいまの田中稔男君に対する、いわゆる中ソ両国日本に対して決して侵略勢力とは考えないという総理の御所信からいえば、現在内閣がとりつつあるところの自衛力増強ということは、私は矛盾すると思うのですが、その点に対する総理の御所信を伺いたいのです。
  199. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 お答えをいたします。私は、現在において、ソ連や中共日本を侵略するという意図はないと思っております。けれども、やはり一国をなす以上、適当の防衛力を持たなくてはならない。どの国でも、現実侵略国があるという仮想敵国をこしらえて自衛軍を持っておるわけじゃないと思います。おもんはからざる侵略に対して、一国はどうしても常に自衛力を持っていなくてはならない、そういう用意がなくてはならないと思うのです。その用意をしたいという考えから、国防にも相当の費用を使うわけであります。
  200. 田中織之進

    ○田中(織)委員 そういうようにおっしゃられるだろうとは予想できるのでありますけれども、問題はやはり現在の段階において、中ソ両国というものが、ことに日本にとって侵略的な勢力と考えられないということになれば、そういべ事態をどういうようにして長続きさせるかということによって、国民経済の上に大きな負担になるところの、いわゆる防衛力増強というものに対する別な対策というものを考えていかなけばれならぬと私は思うのです。しかしその点は議論になると思いますので、もう一点、私これは総理に伺いたいのでありますが、防衛力漸増の問題に関連しまして、今総理が言われたような自衛力、国川有の自衛権に基く防衛力を平時から備えておくという考え方ではなしに、見えざるというか――はっきりしておると思うのですが、アメリカの千によって日本の防衛力の増強というものが義務づけられてきておる。それが予算の形の上にも現われてきていると思う。その証拠には、この間からの、赤松君なり、あるいは昨日の今澄君の質問に対して、防衛分担金は前年度より百二十五億円軽減されているという。これは百二十五億円ではないでしょう。百一十五億円も計上されておらない。あなたたちは国会の答弁でわれわれを欺瞞しておるのです。その証拠には、予算書の総則の十六条に何と書いてある。「防衛庁の施設整備および合衆国軍に対する施設提供に関する歳出予算の執行上必要あるときは、内閣は、総理府所管防衛庁に計上した防衛庁施設費の項の金額を大蔵省所管大蔵本省に計上した防衛支出金の項の金額へ移用することができる。」日本のいわゆる自衛隊のための防衛庁の予算として計上しておるものを、駐留軍の施設のためのいわゆる防御支出金に振りかえることができるという。自衛隊の経費、防衛庁の経費というのは、これは宗全なる国内費なんだ、駐留軍に払うところのいわゆる防衛支出金というものは、国外的な経費なんだ。それだから、国内的な経費として計上しておるものを、この予算総則の十六条に従って――これは金額は幾らかわかりませんけれども、われわれの調べたところでは大体十一億、少くとも十一億を予定しておるということですが、それは結局、防衛庁関係の経費が、防衛分担金と同じような防衛文出金の方へ振り向けられるという抜け穴をここにこしらえておけば、防衛分担金の削減が、百二十五億を削減されて満足だという総理大臣答弁も、これは理屈に合わないことになる。われわれが心配するように、現在の自衛隊というものは、この予算の面、金の面から見て、全くアメリカ駐留軍と一体のものなんだ。私は、これは非常に重要な問題だと思うのです。総理はこういうこまかいところまで気がつかなかったかもしれませんけれども、あなたはやはり、百二十五億円アメリカに払うべき防衛分担金が、削減の交渉に成功したとお思いになるかもしれませんけれども、さらにその百二十五億のうちからも、われわれの調べただけでも、この十六条によって、十一億の国内の自衛隊のための経費を向うへ回さなければならぬような事態が起っておる。私は、自衛のために軍隊が必要だという考え方についても根本的に反省してもらわなければならぬと思う立場から、この十六条の点については、総理はあるいはお気づきにならなかったかもしれませんけれども、私の申し上げたことで、つじつまが合わないことは総理もお認めになると思う。その点について総理もお考えいただきますとともに、もし従来総理が、お述べになってきたことが正しいといたしますならば、この十六条は政府の手によって変更していただきたいと思います。
  201. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 大蔵大臣から答弁をしてもらいます。
  202. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えします。防衛庁で今後防衛力を増強するにつれまして、兵舎とか、あるいは飛行場その他を拡大に持っていくことになりますが、その際におきまして、土地の収用とかいろいろな関係から、なかなか急速にいかぬ場合があります。従いましてそういう場合に、日本におるアメリカの駐留堀の飛行場を拡大するとか、あるいは兵舎を共用するとか、そういう事態が今後予想されるのです。そういう場合において移用する、こういうことになるのであります。
  203. 田中織之進

    ○田中(織)委員 大蔵大臣、それでは私の質問に対する答弁にはならぬ。あなた方は、防衛分担金は前年度より百二十五億削減できたということをこの問うちからこの委員会で御答弁なさっている。ところが少くともこの十六条の関係から見て、さらに自衛隊のための経費として、われわれの調べたところで、防衛庁関係から十一億円をいわゆる防衛文出金として駐留軍に渡す部分の中に振り向けていくということになれば、百二十五億という金額は当然変更されてくるわけなのです。そこにも私らは、防衛分担金の削減交渉に何か裏がある、共同声明も問題であるが、さらに共同声明の裏にアメリカから義務づけられたものがあるという点を心配するのです。しかし関連質問でありますから、私はこの程度にとどめますが、いずれ総括質問に立つ予定でございますから、この点についても明らかに――こういう技術的なことで国内費を国外経費に振り向けるということは、私は財政法上も非常に問題であろうと思う。大きな、また防衛分担金の削減交渉という政治的な問題に対する議会の答弁を、あなた方は裏切るようなものがすでに証拠としてここに出ておる。  それからこの問題に関連して、昨日及び一昨々日の赤松君の質問でも明確になっておりませんが、たとえば防衛分担金の削減は自衛力の増強分だけ、いわゆる防衛庁費のふくらんだ分だけは防衛分担金を削減してもらおうというのが、これはたしか岡崎・ラスク会談で了承されている問題です。それ以前の問題がある。いわゆる行政協定の第二十五条による附帯的施設費の、今澄君及び赤松君が非常に指摘をいたしましたその絶対額の半分を日本は負担するということが、行政協定によって義務づけられている。そのいわゆる一億五千五百万ドルという総額は、御承知のように二十六年度の終戦処理費――これは朝鮮動乱が起った翌年の終戦処理費で、非常に膨脹した経費である。しかもそれに物価高三制をかけたものの半分を日本が負担するということで、きまっておる原則であります。その当時の米軍の駐屯兵力というものは六個師、現在はそれが三分の一の二個師に減っている。さらに昭和三十年度には、これは大村前長官が選挙中に言明したように、九州にあるところの一個師がさらに本年度中に日本から撤退するということも、あなた方は聞いておるはずである。そうするならば、アメリカ駐留軍に対するいわゆる附帯的経費の日本が負担する半分というものは、うんと減るべき話なんです。それはただ防衛庁費の増額分のうちの幾らかは負けてもらったから成功だということにはならない。これは、大蔵大臣はよく事務当局に聞かれてごらんなさい。もともとの二十六年度の終戦処理費に物価三割高をかけた、それからそれが現在幾らに減っておるかということに基いて、防衛分担金の削減交渉の基本ベースが置かるべきはずである。だからわずかばかりのものでは、ことに内政費の公約実行の面に振り向けるということもできなくなったわけです。こういうふうな問題については、十分一つ政府部内で用意をしておいてもらって、私はいずれ総括質問のときにこの点を明確にいたしたいと思います。このことだけを申し上げて、私の関連質問を終ります。
  204. 牧野良三

    牧野委員長 本日はこの程度にいたしまして、次会は明十一日午前十時より正確に開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時五十七分散会