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1955-06-24 第22回国会 衆議院 商工委員会 第30号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年六月二十四日(金曜日)     午前十時三十六分開議  出席委員    委員長 田中 角榮君    理事 首藤 新八君 理事 長谷川四郎君    理事 山手 滿男君 理事 内田 常雄君    理事 前田 正男君 理事 永井勝次郎君    理事 中崎  敏君       阿左美廣治君    大倉 三郎君       小笠 公韶君    菅野和太郎君       上林榮吉君    齋藤 憲三君       笹本 一雄君    鈴木周次郎君       田中 彰治君    野田 武夫君       鹿野 彦吉君    神田  博君       小平 久雄君    田中伊三次君       堀川 恭平君    南  好雄君       村上  勇君    櫻井 奎夫君       多賀谷真稔君    田中 武夫君       帆足  計君    八木  昇君       伊藤卯四郎君    菊地養之輔君       佐々木良作君  出席国務大臣         通商産業大臣  石橋 湛山君  出席政府委員         総理府事務官         (経済審議庁調         整部長)    松尾 金藏君         通商産業事務官         (大臣官房長) 岩武 照彦君         通商産業事務官         (通商局長)  板垣  修君         通商産業事務官         (鉱山局長)  川上 為治君         通商産業事務官         (石炭局長)  齋藤 正年君  委員外出席者         議     員 松平 忠久君         外務事務官         (アジア局第五         課長)     鶴見 清彦君         外務事務官         (経済局第三課         長)      吉良 秀通君         大 蔵 技 官         (主税局税関部         鑑査課長)   木谷 忠義君         通商産業事務官         (大臣官房物資         調整課長)   中野 正一君         専  門  員 谷崎  明君         専  門  員 越田 清七君         専  門  員 円地与四松君         専  門  員 菅田清治郎君     ————————————— 六月二十四日  委員田中伊三次君、田中彰治君及び櫻井奎夫君  辞任につき、篠田弘作君、上林榮吉君及び和  田博雄君が議長指名委員に選任された。 同 日  委員上林榮吉辞任につき、その補欠として  田中彰治君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  連合審査会開会に関する件  重油ボイラー設置制限等に関する臨時措置  に関する法律案内閣提出第一一四号)  対琉球貿易に関する件     —————————————
  2. 田中角榮

    田中委員長 これより会議を開きます。  お諮りをいたします。ただいま本委員会において審議中の石炭鉱業合理化臨時措置法案について、昨二十三日社会労働委員会より連合審査会開会の申し入れがありました。これを受諾することに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 田中角榮

    田中委員長 御異議なしと認め、受諾することに決定いたしました。  なお連合審査会開会の日時につきましては、社会労働委員長協議の上、追って公報をもってお知らせすることといたします。
  4. 田中角榮

    田中委員長 次にお諮りをいたします。先日当委員会で議決をいたしまして本会議を通過し、参議院に送付いたしました中小企業信用保険法の一部を改正する法律案に対しまして、参議院は、「第八条中「回収した額から弁済期以後保険金支払を受けた日の前日までの利息を控除した残額」を「回収した額と保険金支払を受けた日の翌日以後の利息の受領した額との合計額」に改める」という修正をいたして、衆議院に回付をして参りました。先ほど各派理事とお打合せいたしましたが、別に御異論もないようでありましたので、当委員会といたしましては、これを了承することにいたしたいと存じます。
  5. 田中角榮

    田中委員長 重油ボイラー設置制限等に関する臨時措置に関する法律案を議題となし、審議を進めます。本日は理事会の申し合せにより各派質疑時間はそれぞれ一時間となし、総括質問を行うことにいたしますから御了承願います。質疑通告順によってこれを許します。田中伊三次君。
  6. 田中伊三次

    田中(伊)委員 それでは重油ボイラー設置制限等に関する臨時措置に関する法律案について、通産大臣の御意見を伺いたいと存じます。  まず私の質問は、この法案が鉄鋼の部門からも、ゴムの部門からも、砂糖その他の部門からもいろいろ意見がありましょうが、私は御承知京染め——京染めのみならず、京都における染色業界というものに過去二十年間にわたって深い関係を持ち、その実態をよく存じております関係で、ひいてこの京都関係染色と軌を一にするわが国染色工場、その全局について深い影響があるものと考えるので、ここに質問をするわけであります。一口に申しますと、この法律案を厳格に適用なさるということになると、京染め及び京都染色工場日本全国染め工場というものは全滅の危機にさらされることになる。これはどうしても救済する必要があると考えるので、この法律適用に関して大臣の御所見を伺っておきたいのであります。時間がありませんし、きょうは無理に出て参りましてお許しをいただいているので、単刀直入に第四条を中心として時間をかけないように伺ってみたいと思います。  この第四条の条文によると、重油ボイラーについて、重油使用を抑制すること必要ありと認めるときは転換を命じ得る、こういう条文になっております。この間転換したものをまた逆転換を命ずるという意味でありますが、この必要ありと認めるのはだれが認めるのか、通産当局通産大臣が最終的にお認めになるのか、詳しいことが条文に表われてはおらぬが、何か施行規則その他の方法によって必要なりと認める機関、たとえば審議会なら審議会というようなものを設けられて慎重に事を決定されるのか、それとも通産大臣が良識によっておきめになるのか、この点をまず伺いたいと思います。
  7. 石橋湛山

    石橋国務大臣 これはいわゆる総合燃料対策立場から、重油規制をやむを得ずいたそう、こういうわけでありますから、無理はしたくないのです。そのために産業に、特に今御指摘の染色業などに非常な打撃を与えるというようなことはしないつもりであります。御質問通産大臣が勝手にやるのかということについては、今までもこういう場合に重油規制調整協議会というものがありまして、これは消費者代表者等も入っておるでありますが、それの意見を十分聞いて、そしてできるだけ産業にそういうはなはだしい障害を起さないように取り計らう、こういうつもりでいるわけであります。
  8. 田中伊三次

    田中(伊)委員 ものは見方でありますが、見ようによっては何か物資需給調整に関する総動員法のごとき傾向があるやに見受けられ、そういう反響も絶無でないわけであります。そういうときにこういう大事な法律を作って、その実施をしようというに当っては、ことに第四条の発動などということに当っては、何か協議会を設けるなり、慎重審議をしているのだということが徹底するように処置を講ぜられることが、この法案に対するむだな風当りを除去する上からいっても必要なことではないか。法律というものは無理があっても国民が得心すればいいもので、国民が得心しない方法において新たなるこういう法律を実施するということ自体相当考えるべきところがあるのではないか。私は野党の立場でありますから、いいものはいい、悪いものは悪いと言えばいいんだが、親切心を持ってあえて言うとすれば、こういうものにはやはり協議会なら協議会といったような種類のものを設けられて、慎重審議して無理はしないのだ、転換のしやすいものから順次転換をするのであって、転換の困難なものはあと回しにし、さらに困難なものには手をつけないことが必要なんだ、無理はいたしませんということがよくわかるように協力されることが適当ではなかろうか、親切心からそのように考えるわけであります。この点もう一度伺っておきたい。
  9. 石橋湛山

    石橋国務大臣 先ほども申しましたように、決して無理はするつもりはないのでありまして、これは通産大臣にまかされても実際においてある産業が非常な打撃をこうむるような規制は、今までの例に照らしましてもなかなかできないと思うのであります。戦時中の例の総動員法のときとは事情が全然違いますから、むしろ役所の規制が弱いという非難を片方から受けるぐらいのことになるだろうと私は考えております。ことにこの審議会法案の上にはございませんが、実際においてはそういうものを設けて今までもやっているし、今後もやるつもりでおります。
  10. 田中伊三次

    田中(伊)委員 審議会を設けられる、法制上のものであろうが任意のものであろうが、これを設けられて、万一この法案を施行することができるような状態がきたときには、慎重な態度をおとりいただくようにまず要望をしておきます。  それから染色工場の建前からどういう点が転換が困難で、どういう点が困るのかという点を時間のかからぬように一口に申し上げますが、御承知のように染色というものには普通染めというものがある。普通染め石炭でやれるわけである。ところが堅牢度の高い高度の染めをやりまして、これを輸出に振り向けていくような輸出向け染色を行うためには、重油ボイラーにあらざればやれないのであります。やれないことはないが、外国品競争はできない。現に御承知のごとく通産省輸出制限をしておられるのは、カナダ、オーストラリア、 ニュージーランド、さらに南ア連邦、この方面に対しては一般普通染め輸出を許さない。なぜ許さないかといえば、イギリスからはどんどん高度の染めを持ってくる、日本普通染めを持ってくる、こういうことでは競争ができない、日本の商品の信用にもかかわるということで輸出制限をする。現に制限をしておりますが、この制限はますます強化するという方向において、通産省が行政をとっておられるということが現状であることは大臣も御存じの通りなんです。そこでその普通染め石炭でもやれる、高度の堅牢性を持った高級の染めものというものは重油ボイラーでなければやれない、重油ボイラーでやれば単価も安くつく、こういうことで輸出ができます。私がこれを言うことは自分の党が行いましたことの手前みそのようになりますが、これは非常に大きな遺産であると思います。二十八年の一月に転換いたしまして以来、非常にコストが安くつくことになった結果外国品競争ができる、このごろは内地向けが二分の一、染色加工した分の二分の一は輸出に振り向け得るような方向に向って非常に輸出が強化されてきた。国家のためにめでたいことなんです。これが逆に転換をするということになりますならば、この輸出は少くともとまってしまう。二年前に金を借りて石炭を使っておったものを、重油を使えとおっしゃるから、善良な業者重油を使った、重油ボイラー転換するために使った金は手元にあるわけがない、開発銀行興業銀行輸出入銀行等から金を借りてやったが、その三分の二はまだ払っていない、目下償還中である。それをさらに染色についてボイラー転換を命ぜられれば第一資金的に参ってしまう、こういうふうに考えられる。政府が若干の資金を用意するなどということをおっしゃっても、なかなか思うように資金というものは業者の手に入るわけのものでもない。こういう状態にありまして、私がここに申したいのは、わずかな重油制限されて外貨の始末をなさることはまことによろしいが、それによって生ずる利益と、せっかく伸びておる染めものの輸出が縮むことによって生ずる国家の不利益というものをはかりにかけてみたときに、果してこれで日本経済全局から見、これを制限することが利益なりと判断することができるかどうか、こういうことを第一点に私は非常に案ずるわけであります。そういう高級染めをやるためには、大臣はしろうとであるかもわかりませんが、高度の温度、具体的に申しますと摂氏の百三十度ないし百四十度、このごろは百五十度に近いような高温度というものが一定の時間ずっと変化なく、落ちることなく一定の限度に直線で持続していかなかったらこの高度の染めものはやれません。ところが石炭を使えとおっしゃって、石炭を使わなければならないことになれば、三十分に一回は灰落しをしなければならぬ。灰落しをするためにボイラー圧力は激減する。こういうことになると、この堅牢染めというものはやれないことになる。普通染め以外のものはやれないこととなって、通常一般の地域に対する輸出はストップの状態に入らなければならぬことになります。この場合にも、普通この染色工場の中に予備がまと申しましてかえがまが備えてあります場合は石炭を使っても圧力が落ちないで、どうにかやる道はあるわけなんです。また転換をする場合にも、予備がまを使っておる場合には転換ができるということになるわけでありますが、予備がまは持たないのです。これは京染めの場合も染色工場というものは予備がまというものを一つも持たぬ。これはあなた方の部下にお聞きになるとよくわかるわけです。一つ予備がまを持たぬ。そういう立場に立って、目下苦労をされてやっております者に対して転換を命ぜられるということは、無理ではなかろうかと考えることが一つ。  それからもう一つお聞きを願いたいと思うことは、染色加工という事業はみずから自主的に事業操作ということはやれないのです。それはどういうわけかというと、原反、材料というものは委託する人が持って参る。すべてはその委託品染色を施す。今しばらくかまをかえる間はこうしておこう、ああしておこうという操作はできない。何月何日にどこそこの港の船にこれを載せなければならぬ、何月何日の何時までにこの染色をやり上げてくれという時間を限った委託品を取り扱うことがわが国染色業界実態なんです。こういう業態にあってみずから自主的な操作ができないという立場に立っております者に、かま転換を命ぜられるということは、まことに困難な事情が伴うのではなかろうかと考えるときに、こういう実態にある業態に対してこれが適用されるということになるならば、もう京染めはだめだ、それから染色工場というものは全部あきらめなくちゃいかぬ、小幅ものの内地向けのものに転換して輸出向けのものはあきらめるよりほかはない。高級染料輸入大臣は御苦労をいただいておりますが、いかに高級染料を輸入しましても、重油ボイラーを使い得ない染色工場には外国向けの堂々たる輸出品はできないんだという実態を私はここに申し上げるわけであります。これはおそらく転換の困難なものの業種のうちでは、最も困難なものの一つではなかろうかと存じます。こういうものに対しては第四条の適用はいかがなものか。あえて我田引水に導こうというものではありませんが、こういう業態にありますものについて、この第四条の適用ということについては深く考慮されて国家のためにしかるべきものだ、こう考えるわけでありますが、こういうものにでもあえて適用するというお考えなのか、これは適用すべきものにあらずとお考えになるのか、この点についての御意見を伺いたいと思います。
  11. 石橋湛山

    石橋国務大臣 私は染色のことについてはそう詳しくありませんが、しかし日本繊維業で一番の弱点は染色加工にあるということくらいは知っているのです。でありますから、お話のように重油ボイラーがどうしても不可欠の設備であるとするならば、そういう産業に対して第四条を適用して無理なことをしようとは先ほどから申しているように決して考えておりません。これは十分事情を調査しましてそういうものに対してはやはり重油を使わせるようにいたすつもりであります。
  12. 田中伊三次

    田中(伊)委員 大へん筋の通った、もののわかった御答弁で、質問をする立場からは満足をするわけでございますが、どうか私の今述べた実情に誤まりがない限りは、今の御方針の通りに、少くとも全国染色工場ボイラー部門についてはあえてこれにしわ寄せをすることのないように、慎重な態度をもってお考えを願いたいと存じます。  もう一度あらためて聞き直しておきますが、こういう実態にある工場については、無理をして転換する、すなわち第四条を適用していろいろな指示を与えてこれに制限を加える意思はない、こういうことに拝聴してよろしゅうございますね。
  13. 石橋湛山

    石橋国務大臣 その通りであります。
  14. 田中角榮

  15. 内田常雄

    内田委員 御提案になられております重油ボイラー設置制限等に関する臨時措置に関する法律案、大へん長いむずかしい名前の法律案につきまして、石橋通産大臣並びに関係政府委員の方に総括的にお尋ねをいたしたいと思います。  すでに政府当局においても十分お耳に入っていることと思いますけれども、この法律案提出ということは、これは今に始まったことではなく、かなり長い間の、少くとも昨年の秋ごろからの懸案であったようであります。けれども、それがなかなか国会の提案に今日まで至らなかった。その間、これは世間で非常に評判の悪い法律案であるということは十分御承知通りと思います。なぜ評判が悪いかということでありますが、この法律案は、重油ボイラー設置制限というようなことが書いてありますけれども、その実体は重油ボイラー設置制限ということだけではなしに、もっと広範な意味がこの法律の中に伏在をしておる。あるいはこの法律の中にも第六条のような条文があるのでありますが、重油の一般的な消費規正のための法律のような点もありまするし、ことに一番問題のありますのは、私は次の二点にあると思います。その第一点は、政府燃料政策というものに一貫性がないということが世間でいわれております。御承知のように石炭ボイラー重油ボイラー転換させたのは、これは相当深い理由があって、政府は積極的に勧奨をせられて昭和二十七年ごろから始められたことであります。申すまでなく、石炭、石油というものは重要なエネルギー資源でありましょうけれども、世界的な傾向としては石炭だけにたよれない。重油燃料として使うことが企業合理化とか、あるいはコスト引き下げのためにどうしても必要であるというような観点から、政府自身が積極的に勧奨されて、わざわざ石炭ボイラー重油ボイラーに切りかえてやって参ったものが、ここ二年ばかりの間に、今度また逆転換ということはあまりに燃料政策一貫性がないじゃないか。その間、あちらに転換したり、こちらにまた逆転換をしなければならないというので、一般産業界は非常に迷惑をしているということが第一点であります。次は、今日わが国産業最大命題は、このインフレを乗り切って企業合理化コスト引き下げをして輸出を増進するということに撤しなければならない際に、だれがどう考えても今日の石炭価格また経済効率というものは、とうてい重油に及ばない、これは世界傾向でありますから、さような世界的傾向経済原則を無視して、再び石炭に戻そう、逆転換をなさろうというところに私は世間の不評や危惧があると思うのでありますけれども、あえて問題の多いかような事態を御承知の上で政府はここに法律案を出そうというのか、ほんとうの御趣旨をこの際あらためて伺いたいと思います。
  16. 石橋湛山

    石橋国務大臣 率直に申しますと、あまりうれしい法案ではないのです。燃料のごときはできればほうりっぱなしで、何でも経済的に使用ができるものを使わせるというのが一つの理想でありましょう。しかしながら同時に現在の日本としては、国内産エネルギー源というものについても考えを及ぼさなければならぬ。従って特に今田中君から質問がありましたような産業等に対しても、重油を使わなければならぬ、重油を使うことが絶対必要だというものは別でありますが、そうでない部門において、石炭を使ってもやれるというものについては、やはり国内産石炭を使ってもらいたい。そのかわり石炭価格一つ合理化によって下げよう、こういうのでありまして、現在の日本の状況としては、いわばやむを得ざる規制でありますから、その弊害のできるだけ少いようこ努力をする、こういう含みでこの法案を出したわけであります。
  17. 内田常雄

    内田委員 そうしますと今日政府他方において石炭鉱業合理化臨時措置法案というのをお出しになっておるので、石炭というものは今日のままではとうていやっていけるものではない、何らか思い切った措置を講じなければいけないということは私もよくわかるのでありますが、それをやるためには、どうしても今回のような重油ボイラー設置制限、あるいはこれに関連する重油一般的消費規正ということをやらなければ、この石炭鉱業合理化ということはできない、こういうお考えでおられるのか。私は率直に申して、石炭合理化はまことにけっこうであるが、それはそれとして十分にやって参って、しかして一方において重油のような経済効率のいい、またコスト引き下げ得る燃料を使える部面は、それはそれで進めていけるのではなかろうか。重油消費規正という裏打ち、援護がなければ石炭合理化というものは絶対になし遂げ得られないとは私は考えないのであります。ことにせっかく石炭企業合理化、また石炭価格合理化というものをやろうとする際に、一方において産業の経済的必然的な要求である重油を押え、さらにまた他方において重油や原油に関税までかけて、そしてその重油を使うことを非常に不便にしている。また重油価格を引き上げるというようなことをやって石炭企業合理化をやるということであれば、これは正しい意味での経済政策ではないし、また石炭合理化にとってもはなはだ中途半端な迷惑な合理化になる。石炭石炭として生きるためには、これは世界的な燃料の問題として十分重油競争していけるような意味合理化をやっていかなければならないのに、無理に重油規制をしたり、あるいは値段を引き上げて石炭合理化するということでは、石炭合理化にならない、こういう考え方を持つものでありますが、大臣はいかが考えられますか。
  18. 石橋湛山

    石橋国務大臣 長い目で見ればお説の通りであります。だが当面の問題としては、石炭にある程度の需要があるということが石炭合理化——つまり石炭需要を起すということが石炭合理化一つ必要事であります。そこで先年来急激に重油にかわりましたその傾向をそのまま続けさせるということは、国内の燃料合理化に支障を来たす。でありますから石炭合理化にはどうしてもある程度の重油規制というものが必要だ、こう考えております。
  19. 内田常雄

    内田委員 私はそこに非常な無理があり、この法律案に対する世間の風評というものがあると考え、従ってその点は見解の相違ということにもありますので、それでは次の点をお伺いしたいと思います。  この法律案についての提案理由説明にもございましたし、またただいまの大臣のお言葉からもうかがわれるのでありますけれども、しいて重油を使わなくてもよい部門においては重油を使わせないのだ、こういうお話でございます。ことにこの提案理由説明には、経済的に重油使用を必要としない面においてはこれを規制するということでありますけれども、今日重油が使われておりますのは、ここ二、三年来重油需要が伸びてきたのはいずれも経済的な根拠があり、その必要から重油が使われているのであって、経済的に重油でなくてもやっていけるという面が重油を使っておるのではないのであります。さっきもわが党の田中伊三次君から質問がありましたように、輸出染めものの問題であれ、その他の部門であれ、重油でやることが採算ベースからいってどうしても必要だというものがこの重油転換しておる。これを無理に押えつけるということが一体できるかどうか。いかなる基準でこの重油を使わせたり、あるいは重油制限されるか。この法律案によりますと、第二条とか第三条とかあるいは第四条に、先ほど田中委員から言われたように、「やむを得ないと認められる場合」であるとか、あるいは「必要があると認めるとき」とか、こういう場合においては「この限りではない」というような字句が使われておりますけれども、実際に経済的に重油を使わなくてもいいという認定をされる基準というものが一つも現われていない。さっき田中君が言われたように、何か審議会なり協議会を置いて、そこでこれから議を練るということでもやればともかく、何かここにめどがなければならない。ただ一般的な権限を通商産業大臣に与えて、通商産業大臣が必要と認める、あるいはやむを得ないと認める場合にはこれを規制するということだけでは、世間で非常に不安に思っておると思いますが、その辺の何か基準、原理というようなものについてお示しを願いたい。
  20. 石橋湛山

    石橋国務大臣 広い意味に解釈すれば、それは現在もう自然に重油が使われておる、その自然に使われた理由は、いずれも経済的理由が根拠になっておるということはその通りであります。たとえば暖房についても経済的といえば、それは確かに重油を使う方が経済的な場合があると思いますが、そういう部面においては、少くとも今後設置するものについてはできるだけ一つ石炭を使ってもらおう、こういう程度のことは日本の現状から見ればやむを得ないことだと私は思っております。それでありますから、むろん産業の方面については、先ほど田中君にお答えしたように、指示を行う場合には十分その産業実態考えて、無理が起らないようにすることを原則として行う、こういうわけであります。
  21. 内田常雄

    内田委員 この問題はだんだんお互の考えを狭めて接近させていきたいと思いますが、いずれこの法案の第二条、第三条において、政府が必要と認めて通商産業省令に織り込むようなその原案というものをぜひお示し願って、そうしてわれわれの納得いくように御説明願いたいのでありますが、ぜひその通商産業省令の原案をお示し願いたい心なおまた第四条につきましては、これはただし書きには「ただし、重油使用量が著しく少い者に対しては、この限りでない。」、つまり微量需要者に対しては、今までの重油ボイラー石炭ボイラー転換するような命令を出さないということが書いてあるだけでありまして、第四条には通商産業省令で定めるような基準もない。従って先ほどの染料のようなものは、ただし書きの微量需要というようなことで除外されるのか、微量需要ではないけれども、これは必要やむを得ざるものとして除外になるのか、この四条だけではわからぬ。また四条の建前が二条や三条と違うから、直ちに今の染料のような問題が起るので、私は場合によってはこの四条も、二条、三条と同じように通商産業省令でおきめになるというようなことで修正をされた方がいいかとも思いますが、これらの点についてもだんだんあとからお伺いすることにいたします。  次にこの法律案臨時措置法ということで、時限立法でありまして、附則には「十年以内に廃止する」ということになっております。ところが先ほど大臣お話のように、これは石炭企業合理化するために、その裏打ちとして重油使用制限というものが必要である、こうするならば、石炭企業合理化特別措置法の方は同じく時限立法であっても、あれは五年ということになっておったと思いますが、石炭の方は五年である、こちらの方は、重油がにくらしいから刑期を倍加して十年の刑期を与えるということでありますが、なぜ一方は五年、一方は十年であるか、これはどう考えたらいいのですか。
  22. 石橋湛山

    石橋国務大臣 これは燃料転換等に時間を要する、こういう考えから合理化と同じ年限よりも幾らかそこに余裕を見た方がいい、こういう考え方であります。
  23. 内田常雄

    内田委員 どうもそれはおかしな説明で、石炭の方が合理化できてしまえば、そのあと重油をいじめる必要はないので、あくまでも石炭合理化と歩調を合せるためならば、石炭合理化が五年で目的を達成するならば、もはやそれ以上重油を押えつけるということは、これは天然自然の、世界の経済原理に逆行するもので、もっと適切な説明でないと私には納得できませんが、これは問題として指摘をしておきたいと考えるものであります。  その次にお伺いいたしたいのは、私自身がこれは重油ボイラー設置制限と言ってみたり、重油使用規制と言っておるのでありますが、だれもどうもこの法律を読んで重油ボイラー設置制限だけの法律とは考えないのであります。実はこの法律重油全体の消費規正であるから私どもは当初は非常に重大に考えまして、あるいは本会議において大臣の御説明を願い、またわれわれから質問もいたしたいということで当初態勢を整えておりましたところが、だんだんこの法律の題名が変って参って、とうとう重油ボイラー設置制限等に関する法律案ということになってしまいました。従ってわれわれも、重油一般の消費規正の問題であるならば、あるいは本会議で取り上げて大臣から経済政策に関して御説明を得たいと思いましたけれども、どうも重油ボイラーだけの問題を本会議で取り組むということもできまいというこで、引っ込んだのでありますが、その辺を御察知になって——私はこの法律の看板に偽わりがあると思うのであります。つまり実態重油規正をするのであるけれども国会の通過を容易にする、代議士をごまかすために、重油ボイラーというような表現にしてしまった。まんまとその手にひっかかって、私どもも遂に本会議にこれを取り上げ得なかったというようなことになっておるのでありますが、その証拠に、頭隠してしり隠さずといいますか、第六条の条文が入っておるわけであります。この第六条は重油ボイラーには何にも関係がないのでございまして、いわば一つの、大げさに言えば一種の総動員法、少くとも物資需給調整法という、この敗戦の前後を通じて一時ありました物資需給調整法と同じ体裁の規定でありまして、これがまるでこの法律案の題目と合わない。重油一般にその出荷を規制をしたり価格規制したりすることでありまして、これは政府法律案でありますから、政府があるいは政府の法制局に圧迫を加えて、かような六条を盛り込みながらも、この法律案のタイトルは重油ボイラーということで通したと私は考えますが、これがもし議員提案法律でありますならば、衆議院の法制局では決してかような題名のもとに六条のような総動員法規、物資需給調整のような法規をやらなかったと思うのでありますが、一体この法律は、重油ボイラー重油をたくことを規制することを目的とする法律か、それはほんの申しわけであって、実際はその六条の重油全般に関する消費規正を広く行うことを目的とする法律であるか、この点をお示し願いたいと思います。
  24. 石橋湛山

    石橋国務大臣 この第六条は、水産業などに対する重油についていろいろ問題がございますので、これに対して、そういうぜひとも必要だという方面に向っては重油の供給を十分に確保する、また価格も適当に安くする、こういう意味であります。今お話のように重油ボイラーとは直接関係のない条項でありますが、しかし重油の問題としてここに取り上げられておるわけであります。
  25. 内田常雄

    内田委員 どうも大臣が大へん正直なお話でありますので、それならばむしろわれわれがこの法律案の表題だけでも修正した方がいい、あるいは表題を突っ張られるならば、この六条は削除した方がいいと思います。これはまあだんだんとその話を進めたいと思うのでありますが、大臣のお言葉の中で、農林水産用などの重油を確保するためにどうしてもこういう条文が必要だ、こういうお話でございますが、私は農林水産用の重油を確保するためにこれが必要だということは、もう一つ別な問題があると思うのでありまして、これは当委員会に付託になっておりませんが、今回政府重油並びに原油に関税をかけられる。今までこれは燃料の最たるもの、エネルギーのもとでありますから、臨時措置として関税は御承知のように非課税になっておる。それを今回原油に対しては二%、重油に対しては六・五%の関税をかけるということをお考えになって、別の委員会に御提案になっておるようであます。しかもこの関税に対しては、農林水産業はむろんのこと、鉱工業その他全国需要者から非常に大きい反対があるのでありますが、この農林水産業者の反対に対しましては、政府はこう説明をしておるようであります。それは、行政措置をもって関税を重油にかけるけれども、水産用の重油には関税がかからぬと同じように、鉱工業用の重油よりも安い値段で配給するような措置を必ずとってみせる。つまり関税のかかるしわはすべて陸上の鉱工業用の関税にしわ寄せして、行政措置で水産業用の重油は関税がかからぬと同じようにしてみせるという御説明をなさっておる。そういうことをしてみせるためにこういう六条のようなものを置かれた。大臣はおそらく部下の局長の方から、これがないとまことに困るのだ、農林水産用の重油に関税をかけるような結果になって困るのだ、だからこういうことが必要だということで、大臣はお気持の広い方ですから、言うことをそのままのまれた。ところが、そういう原油や重油に関税をかけることが間違いであって、あれをおやめになれば、今大臣が言われたような、農林水産業用に安い重油を確保するためにこういうことが必要だということを言われる必要もないし、この条文を置く必要もないということになるわけでありますが、そこの事情大臣一つ正直に、悪いことは悪いこととして、まだ国会で審議中でありますから、重油関税をやめることもできる、それをやめればこれも削ることもできる。いろいろの立場の方もありますから、反対の方もございましょうが、私は広く、経済の原理から考えて申し上げるわけであります。
  26. 石橋湛山

    石橋国務大臣 第六条は、関税だけの問題でもございませんが、関税の方でも水産業に、主として使うような重油に対しては関税をかけないことになっております。B、Cだけかけるということになります。
  27. 内田常雄

    内田委員 大臣はあまりその実態を御承知ない。われわれはいろいろな実態を伺ったり勉強してみたのでありますが、A重油から関税をはずしましても、決して海上用の重油が全部はずしてあるということにはならないのでありまして、これはまたB重油の問題、関税の問題はだんだんお伺いいたしたいと思いますが、とにかく私は六条というものは、さような関税との関係もあり、また法律の建前からしてもまことにおかしい。むしろ政府のお考えは、第六条は一条に持って行くような法律の建前であるものをこれをしまいの方に持ってきて、頭隠してしり隠さずというようなかっこうになった。そのゆえに私はこの法律案は非常に重要なものであるとも考えるのであります。これはまた数字的に見ますと、大体この法律案はずいぶん前にこの委員会提案をされましたけれども、いかなる理由か、資料らしいものはほとんど一つも配付されない。たまたまきょうここへ出て参りましたら初めて資料が配付された。まだ説明を承わっておりませんけれども、これには昭和二十九年度大口工場ボイラーの業種別消費実績と書いてあるが、これはおそらくこの法律が施行されますならば、こういうものに対する重油の供給を差しとめたり、あるいはボイラー石炭転換を強制なさろうとする対象になる数字だろうと思いますが、この大きいものを見ましても、こういう業種に対して重油使用を差しとめるとか、あるいはボイラー転換を強制されるということが一体可能かどうか、経済政策から見て可能かどうかの問題があるのでありますが、それを無理にやったとしましても、この数字の合計額は、昭和二十九年度の計で、電力を入れまして百四万四百キロリッターということであります。ところが私どもが伺っておるところによりますと、本年の重油輸入に対する外貨割当の基礎数字というものは、五百二十万キロリッターの重油使用する。昨年はおそらく五百三十七万キロリッターというような数字であったと思います。従って五百万も六百万もの重油を使っている中で、ボイラーに使うものは、押えることができないものを集めても、その五分の一、六分の一の百万キロリッターにしか当らない。従って人が好まないかような法律を強行して、この百万キロリッター、あと小口のものは幾らもないということでありましょうが、これを押えれば果して石炭合理化の目的を達成するだけの強力なる裏打ちになるでありましょうか。あまり裏打ちにもならないのではないか。もしこの石炭の強力なる裏打ちをしようとするならば、ボイラーだけではだめだ。ボイラーに使うのは百万キロですから、この半分に押えても五十万キロ、従ってボイラー以外の平炉用でありますとか、あるいはいろいろの今の輸出産業重油の消費を押えなければ、この法律の所期の目的を達せられないという数字的の結論になるかと思いますが、これは大臣がおわかりにならなければ川上局長でもけっこうでありますが、大体どういう数字をこの法律案でねらうのか、何を押えるのかということを、お配りになった数字についてその大体のところをお伺いしたい。
  28. 川上為治

    ○川上政府委員 今お話がありましたように、昨年度におきましては五百三七十万キロリッターくらい使っております。それから本年度におきましては、五百十万程度で押えたいというふうに考えておりますが、その五百十万くらいの中で、ボイラー関係のものは大体百八十万くらいというように考えております。百八十万のうちで、今ここにお配りしましたように、年間二千キロ以上の大口のものにつきましては、約百四万キロリッターということになるわけでございますが、私どもの方としましては、この五百十万程度の中で、水産関係あるいは船舶関係、これはどうしても石炭が使えないのでありまして、どうしてもこれは重油を使わなければならぬわけでありますが、これが百八十万程度ありますので、これは何とかして確保してやらなければならないというふうに考えております。それからボイラー関係を除きましたあとのものにつきましては、たとえば鉄鋼の平炉でありますとか、あるいはガラス関係なんかにつきましての特定炉、そういう特殊なものがありまして、これはまたどうしても石炭よりも重油を使わなければ、輸出関係あるいはそのコストに対しまして、非常に大きな影響を持つとかいうものにつきましては、私どもとしましては、どうしてもこれは重油を使わした方がいいというふうに考えておるのでありまして、結局百八十万程度のボイラーの中で、微量需要を除きました大口関係のものを、極力石炭の方に転換させていきたいというふうに考えておるわけでございます。しかしながら、この中でも先ほどお話がありました染色関係等も入っておりますが、そういうものにつきましては、たとえば立地条件等によりまして非常に転換がむずかしいというような問題でありますとか、輸出関係のものであって、そのボイラー転換することによって非常に輸出に影響があるというようなものでありますとか、あるいはまたこの染色関係に見られるのですが、どうしても一定温度を保たなければならぬ、それには石炭ではどうしてもうまくいかない、石油の方でやらなければいけないというような、そういう特殊なものでありますとか、そういう意味合いのものにつきましては、私どもの方といたしましては、これを石炭の方に転換を強要するようなことはしないと考えているわけでございます。この百万というものは、本年度において直ちにこれをそういうふうに持っていくという考え方ではないのでありまして、終局におきましては、どうしてもこの程度は転換さすように持っていきたいというように考えているわけでございます。  それからまたこういう法律を出しませんというと、結局現在の重油の方に転換するその勢いをどうしても押えていくことができないのではないかというようにわれわれは考えますので、私の方といたしましては、これは非常に遠慮した法律であると考えているのですが、やはりこの程度で何とかして一つ押えていきたいというように考えているわけでございます。
  29. 内田常雄

    内田委員 今川上政府委員からお話がありましたような数字的な資料を一ぜひ一つこの次までにお出しを願いたいのであります。私が先ほど触れましたこの時限立法は、十年がよいか五年がよいか、考え方がおのずから出てくると思いますが、これを強行することによって、五年後の昭和三十五年あるいは十五年後の昭和四十年には、重油使用量がほんとうに減って、石炭の助けになることができますか。五年先、十年先の重油使用量をどのくらいと想定されておりますか。
  30. 川上為治

    ○川上政府委員 その数字につきましては、近い機会に提出申し上げたいと思うのですが、私の方といたしましては、本年度におきましては、五百十万ということで抑制をいたすわけでございます。正確な数字を申し上げますと、五百十五万で本年度は行政的な指導をしていきたいというように考えております。これを五百二十万というのは、五万程度はある程度余裕を持っておかなければいかぬだろうということで、実際の行政指導といたしましては、五百十五万で押えていきたいというように考えております。三十年度におきましては、五百十五万という数字でいきたいのですが、三十四年度におきましては、これまた大体五百十五万程度というように考えております。それから三十五年度におきましては、五百三十万というふうに考えておりますが、これは重油だけではなくて、石炭の方も、三十年度が四千六百万トンから三十五年度におきましては五千二百万トンというふうにだんだんふえることを考えているのですが、やはり重油につきましても、五百十五万が三十五年度におきましては、五百三十万程度というふうに考えております。
  31. 内田常雄

    内田委員 今の数字を伺いましても、こういう法律を無理に作られても、そう重油の消費量を押えるわけにはいかぬと思う。ほんとうに気休めのようなことであって、石炭合理化の強力な裏打ちにはならない。これは世界的の傾向で、日本だけではないのであって、どうしても安い経済効率のいい燃料を押えることは決してできない。こういうことをなさろうと考えれば、また二年か三年のうちにもう一ぺん再再転換だというようなことで、また法律の御審議を願うことになりはせぬかということを心配をいたすものであります。それはまただんだんその話を突き詰めて参ることといたしますが、今の二条、三条という条文は、これから重油の専焼ボイラーなりあるいは混焼ボイラーを作ってはいかぬ、あるいはまたそういうものは改造してもいかぬが、しかし通商産業省令に定める一定の基準によるものは、改造しても作ってもいいことになっておりますから、この程度押えるのはまだいいが、今の四条のように、政府が干渉して、政府重油転換したものをこの際さらに石炭転換させるということは、ずいぶん無理がある。そこまでやらなくてもいいではないか。ことに御承知のように、石炭から重油転換した場合には、灰を捨てる場所も要らないということで、そこに工場を建ててしまうとかいうことで、もう一ぺん石炭転換しようと思っても場所がないという工場もたくさんあるそうであります。また資金の問題で、再転換するためには相当の金がかかる。そこで第五条というものが置いてありまして、この法律案には、そういう再転換のための資金については確保に努めるものとするというふうに書いてあるのですが、これは政府がその資金を何か無償ででも下さるという意味でありますか。あるいは補償でもして下さるという意味でありますか。第五条は、政府が確保するというのですが、どういうことを政府が確保して下さるのか、一般会計の予算にも、特別会計の予算にもこういう予算が載っておったことを私は不勉強にしてまだ見ていないのでありますが、どういうことをなさるのでありますか。
  32. 川上為治

    ○川上政府委員 別に助成金を出そうとかそういうことではございません。またあるいは政府が補償するということではございませんが、転換するものに対しましては、極力資金のあっせんをするという考えであります。
  33. 内田常雄

    内田委員 この条文は、私が法制局の役人だったら決して通さない。あっせんするという意味じゃないですよ。政府が確保するというふうに書いてある。あっせんするという意味に読めません。私はこのあっせんについてどういうあっせんをするかいろいろ調べてみましたら、すでに政府は今日まで昨年秋から行政措置でいろいろやって参った際に、中小企業金融公庫に申し入れをしているようであります。中小企業金融公庫から国内の各代理店に何か通牒が出ておるのでありますが、それを読みましたところが、ちっともあっせんの文句にも何にもなっていない。ただ政府がこういうことをおきめになったからこういうことを通知するという、何とか要綱を通知しているだけでありまして、おそらくあの程度であれば、第五条は要らない。ほんとうにあっせんするつもりならば、何か予算措置その他を講じたり何か裏打ち措置を講じなければ、あの今出しておられる通牒をそのまま援用するというようなことでは意味をなさない。私はこれは非常に大きな問題であると思いますので、委員各位の御審議のために、私は御注意を喚起いたします。だんだん私の考えも申し述べるつもりでおります。  それから最後にもう一つ。きょうは私は総括質問でありまして、だんだんこまかい点をこれから申し上げるつもりでございますが、重油外貨割当のことは先ほど重油関税の問題と同じように、いろいろの問題があるように聞いております。これもやはり関税をかけるという問題から派生すると思いますが、水産用の重油を安い値段で確保する。ことに石橋通商産業大臣が言われたように、水産用の重油には関税はかけないはずだ、こういうことでありますならば、それをやるためには石油外貨の割当方法を変えてくれという意見が、たとえば全国漁業協同組合連合会等に起っておるようでありますが、一体この重油ボイラー制限法とか、あるいは関税の賦課に関する法律とかいうものを出されるとすればそれと一体をなして、やはり農水産用の重油の割当までも、これは行政措置でありましょうが、法律は出ていませんけれども、やはりこれもそのように漁業協同組合等に直接割当をするということをお考えになっておられるのかどうか。私はそれはそんなことをしたらとんでもないことになると思う。いろいろな業界において直接需要者割当をしてもらいたいということをお言いになると思いますが、どういうふうにお考えになっておりますか。これは一つ通商産業大臣に伺います。
  34. 石橋湛山

    石橋国務大臣 これは農林省等ともよく打ち合せをしておるのでありますが、水産業者に特に外貨の割当をするつもりはありません。
  35. 内田常雄

    内田委員 私はまだいろいろこまかいこともありますが、最後に一番大切なことを伺いたい。これには重油ボイラー制限法と書いてありまして、二、三、四条でやる。そうして六条のごときは水産用の重油を確保するためには大したことではないという大臣お話でありますが、しからば法律が成立いたしましたならば、このボイラー使用する重油以外の重油につきましては、政府は現在やっておるような行政措置と申しましょうか、何か各工場ボイラー以外に使用する重油についても別々に割当標準量のようなものをきめたり、また石油の販売業者に対しましても、何かボイラー用以外の重油についても出荷規制などもやられておるようであります。そういうことはやる必要がない。少くともこの法律の、二、三、四条などの運用によって重油規制できるから、今までの行き過ぎのような行政措置はすべてやめる、こう私は解釈をするものでありますが、そこはどういうふうに考えてよろしゅうございますか。
  36. 石橋湛山

    石橋国務大臣 これはこの法律ができましてもある程度の行政指導は必要だろうと思うのです。
  37. 内田常雄

    内田委員 そういうことになるのでこの法律世間評判が悪い。私も最初から事重大に取り上げておるのでありますが、それも国家経済のために必要であるというならばかようなことに包んでしまわないでこの条文をお書きになったらいかがでありますか。もし政府が書けないというなら、議員修正でも議員立法でもして、ここまではのめるという範囲をちゃんと法治国でありますから法文に明定をして、いたずらに総動員法的な、あるいは物調法的な形のもとに行政官庁が何でもできるというようなことにならないように、特に今の石橋通商産業大臣お話のように、ボイラー制限だけでなしに、今やっておるような出荷制限や買い入れ制限をやるんだということであれば、それをはっきりされた万がこの法律通りがよいと私は思います。私は御忠告を申し上げるものであります。  今日は私はこれで終ります。今の点に対して何かお考えを承わりたいと思います。
  38. 川上為治

    ○川上政府委員 今内田先生がおっしゃいましたようなところまでこの法律で書くということは、現在の段階におきましては少し行き過ぎではないかというふうに考えまして、実はこの六条程度にしたわけであります。
  39. 田中角榮

  40. 長谷川四郎

    ○長谷川(四)委員 ただいまも同僚委員からたくさんのこまかい点について御質問がありましたが、これだけ広い通産省の中でナンバー・ワンといわれる局長がこの立案をしたというからわれわれは驚かざるを得ない。そのナンバー・ワンといわれる局長がその頭のよさをこういう面に使うということ、先日も私が申し上げた通り、何ゆえに中小商工業者を苦しめなければならないのか、中小商工業者というものを維持育成しなければならないところの通産省が、どうしてこういうことをやらなければならないか。私は先日来伺ったのでありますが、なお本法案中に立法の目的というものがない。こういう条文がないということは私は実に不思議に思うのでありまして、この種の法案としてむしろ異例に属するものだと思うのだが、この点についてまず第一点に伺いたい。新聞の伝えるところによると、立案の過程においては本法案の目的として特に一条がりっぱに作られておったが、重油消費者などに及ぼす衝撃を緩和するためにこれを削除した、こういうことを伝えておるが、それは果して事実かどうか、これは局長から一つお答えを願いたい。
  41. 川上為治

    ○川上政府委員 これは立法の当初におきましては今長谷川先生からお話がありましたようなことを書いてあったのでありますけれども、その書いてあるのが非常に長い文章に結局なりまして、その内容そのものが全くあとに出てくる各条文と同じようなことになりましたので、結局その点は書かなくてもいいじゃないかという法制局の意見もありまして、そうしてそれは削除したわけであります。
  42. 長谷川四郎

    ○長谷川(四)委員 実に奇怪千万なことなので、必要と認める法案であり、これを国会に提出するのならば、もっと堂々たる態度をもって提案すべきであろうと私は考えます。また立案者の意思がどこにあろうとも、条文の解釈はあくまで条文に即して解すべきである。このような見地から、第六条とか第四条を額面通りに読むと、重油消費規正一般に関する指示指定というふうに読めるのであります。この点に関して先ほどの御答弁によりますと、大臣がこれらの権限を持っているというようなことは言っておるが、事実になって参りますと、一事務官、担当事務官が勝手にこれらに対して自由に値段及び数量等に対して強力に規制をすることができる、私はそう考えるが、その点はいかがでございますか。
  43. 川上為治

    ○川上政府委員 この第四条及び第六条の指示、これは勧告と全く同じなのですが、その勧告につきましては、どこまでもこれはどうしてもやらなくちゃならぬという最小限度の場合において、われわれの方は発動したいと考えておるのですが、これはわれわれ属僚が勝手にやる問題ではありませんので、どうしても大臣の責任において、大臣の名においてやりたいというふうに考えております。
  44. 長谷川四郎

    ○長谷川(四)委員 もちろん大臣の名においてでなければできないはずである。大臣の名においてやるけれども、大臣が、現在ここにおられる大臣が、また今後かわるであろう大臣が、一々こういうことは目を通してやるはずがない。担当官にまかせることは事実じゃないか。その担当出目の意思によってこれらが規制されるというようなことになる。これをわれわれは憂えるのであります。たとえば、これらの問題に対して政府があえてこの法案を成立しようとするゆえんのものは、この一年間に何ら法的根拠もないところの行政指導と称して、重油工場別消費とかその他のワクの設定、重油の専焼設備の石炭専焼への転換勧告を矢つぎばやに行なった事実は、必ず本法案の成立を期して、ボイラー以外の重油に対しましても、石炭対策の名のもとに、あらゆる制限をすることは火を見るよりも明らかで、これが目的なんだ。先ほどから同僚が言われておるように、いかにごまかそうか、いかにカムフラジージュしようかというのがこの法案の実体なんだ。ですからもっと正直になさなけれならないところの事実をあげて、そしてわれわれに協力を求めるというならば、われわれもこれに対して協力をするということは決してやぶさかではない。初めからしまいまで全部われわれをごまかさんとする目的があると思う。こういう点について私は申し上げておるのであります。またこれらに対して政府考えておる点を二、三申し上げるならば、あえてこの法案というものを成立せしめるという点は、石炭と関連があるんだ、こういうことをいっている。石炭との関連というものを石炭対策上必要であるとするならば、ボイラー以外のいかなる重油をも規制せんとするのであるか、こういう点についても考えてみる必要があると思うのであります。つまり石炭合理化法案とうらはらの関係があるから、どうしてもこれが必要だということを局長は唱えているようだが、果してうらはらの関係がどこのところにどのくらいひそんでいるか。要は通産省の一担当官が、その権限を持ちたいというよりほか何ものもないと私は断言しておきます。それをはっきりお答え願いたい。
  45. 川上為治

    ○川上政府委員 私どもとしましては、そういう権限を持ちたいからこの法律を作ろうということは、毛頭考えていないわけでございます。これは昨年の通産委員会において、総合燃料対策を決定されまして、その中でやはり重油についてはある程度どうしても抑制して、そして行政指導によってその転換させるようにしなければいかぬという趣旨の決議もされておりますし、また昨年の三月の末でありましたか、閣議においてもやはり同様の決議が行われておるわけでございます。私どもはその決議の趣旨によって、昨年度行政指導をやって参ったのでありますけれども、行政指導というのはなかなか限界があってむずかしいので、何とか法律的な措置によって裏づけをしてもらいたいというような考えをもちまして、こういう法案を出しておるわけでございまして、決してわれわれの権限をつくろうがために、この法案を出そうという気持は毛頭持っておりません。
  46. 長谷川四郎

    ○長谷川(四)委員 石炭から重油転換したその理由としては、合理化の必要があるのだということをいっているわけです。石炭価格重油価格に比して割高のためであって、石炭の販売量を確保するためと称して、経済上有利であるところの重油使用というものを制限しなければならない、こういうふうにあなた方は考えている。先ほどお話がありました通り、中小商工業者というものの昨年の暮れ以来非常に貿易が伸張してきたゆえんのものはどこにあるかというと、まずわれわれが痛切に実態を見て考えているのは、この燃料であって、それが重油に変った面において非常に大きく生産が拡大されてきた。こういう点は見のがすことができない事実であろうと思うのであります。せっかく今やっと芽ばえてきたところの中小商工業に対して、この規制をした場合には、だれが一番大きな影響を受けるか。あなた方が出してきた資料で、この面に規制するものは一つもないでしょう。これらのしわ寄せというものは全部中小商工業者に行くことは明らかな事実である。こういう面をどういうふうに調整をおとりになるお考えであるか、こういう悪法を考えた局長から一つお答え下さい。
  47. 川上為治

    ○川上政府委員 私どもの方としましては、今度の法案によりましても、なるべく中小企業方面には影響がないようにしたい考えを持っているのでありまして、そのためにやはり第四条におきましてもただし書きにおいて、微量使用者に対しましては、これは適用しないというような考えを持っているわけでございますが、この需給関係の調整の問題につきましても、中小企業方面には極力影響がないように、たとえば鉄鋼でありますとか、あるいは電力でありますとか、あるいはセメント事業でありますとか、あるいはガス事業でありますとか、そういう大工場ボイラーを特にわれわれは問題にしているわけでございまして、そういう大工場ボイラー石炭の方へ転換させるように努力したいというふうに考えておりまして、中小企業の方面につきましては、そういう強い行政指導はしないというふうに考えているわけであります。
  48. 長谷川四郎

    ○長谷川(四)委員 石炭産業の育成、合理化というようなことを口で唱えておいて、もしもこの法案が国会を通過したならば——私はこれは断じて通過さすべきじゃないと信ずるけれども、もし通過したとするならば、これによって石炭業者というものはより以上甘えてくるであろう、そして目的の徹底を期することができないであろう、こういうふうに私は考えます。一般中小商工業者としては、石炭をたくよりも重油をたく方が経済的であり、これが先ほど申し上げたように、すべての生産が拡大し、それが輸出の伸張の原因になってきている。生産コストというものをこれによって安くすることができて、そして能率的であるということは明らかな事実でございますが、それに対して石炭鉱業を保護するためにこういう処置をとらなければならないのだといわれるが、たとえば先ほども申し上げました通り合理化法案は五年であって、この法案は時限立法で十年だという大臣のお答えは、実に逆転したお答えであります。こういうような点から考えてみて、石炭鉱業というものを保護するためだという事実が一つもここに現われてきていない。われわれも現在国内資源である石炭を保護育成するために、合理化をするということには決してやぶさかでないけれども、そういう目的とかけ離れているというところに欠陥が生じている。であるから、これは石炭合理化ということを目的とし、石炭鉱業を保護するために作ったのか、これをもっと明らかにしてもらいたい。ここに石炭局長が来ているが、この法案が成立すれば、一方の重油を使う方面はずっとドロップするであろうけれども、石炭の方はどのくらいアップするか、あなはどう考えておりますかお答え下ない。
  49. 齋藤正年

    齋藤(正)政府委員 この法案の内容は、現在重油を使っているボイラー石炭転換するということ、それから新規の重油使用の設備を制限するということと二つあります。それで昭和二十六年度、二十七年度、二十八年度三年間の鉱工業用の重油、すなわち石炭の用途と競合する面におきます重油の消費の伸びようを見て参りますと、大体年ごとに二倍ずつになっております。昭和二十六年度が約九十万キロ、昭和二十七年度が約百八十万キロ、昭和二十九年が約三百六十万キロでございまして、大体毎年二倍ずつ増加しております。この傾向が、このまま継続いたしますならば、これは石炭にとってはフェータルな問題になる可能性が十分あるわけでございまして、そういうことにならないように、さしあたり保障をする必要があるとわれわれは考えておるわけでございます。  それからもう一つ、すなわち現在のボイラー転換する二とによる需要でございますが、これは昭和三十四年度で、現在に比べまして七十万キロくらい節約することになっております。石炭に直しますと大体二倍程度の量になりますので、百三、四十万トンの需要がここに転換需要として出て参るわけでございます。今度の合理化法でわれわれが考えておりますのは、御承知のように非能率炭鉱を買い上げ整備をいたします。それを三百万トンやろうというわけでございまして、それの半分くらいになるのでございますが、三百万トンの整備をいたしますのに八十億の金と二万七千人の離職者とを出さなければならぬことになるわけでございます。そういう見地から見ますと、七十万キロの転換需要ということも、石炭業にとっては非常に重要な問題のように私は考えております。
  50. 長谷川四郎

    ○長谷川(四)委員 実におもしろい国で、値段の安い、能率のいいものを使おうというのを、法律規制しようというのが日本という国であります、前代未聞といわなければならない。自然の経済というものをいかに無視するか、また政治の要諦というものにいかに反するかということも考えなければならぬ。石炭と競合する重油は、全重油販売量の二割弱である、従ってこの措置のほかに、たとい関税を加えても石炭は保護できないと私は考えている。こういうようなことをやっている国はおそらく世界的にないと思うのだが、局長は、こういうことを考え出した以上は、日本という国はどこかの国の例を見てすぐまねる国だから、どこかの国にこういう例があったのでありますか。
  51. 川上為治

    ○川上政府委員 別に米国でありますとかフランスでありますとか、そういうところにおきましてはこういう措置は取っていないようでありますが、ただ米国におきましては、最近この石油類と石炭との関係が非常に深刻になりつつあるようであります。しかし日本ほど深刻ではないと思いますが、日本におきましてはこの問題は非常に深刻でありますので、昨年、当時の通産委員会におきましても、やはりこういう総合調整をやるべきだという決議もされておりますし、また御承知のように閣議等の決定も見ておりますので、私は他の国のいかんにかかわらず、日本経済の現状におきましてはどうしてもこういう措置を取らなければならないのじゃないかというふうに考えております。
  52. 長谷川四郎

    ○長谷川(四)委員 閣議に行ってお話したときのお話は、もっとうまい話だつたと思う。それで閣僚をころっとまるめ込んだだけの話である。通産大臣だって初めに引き受けたものだから仕方がないのでやっているようなものである。あなたがうまいことを言ったので、ああそうか、では出してみようかというだけの話である。そこで昨年来の行政措置がうまくいったようなお話を聞いて、それに得々としているのが局長である。しかしここで一つ考えてみなければならないのは、これは昨年来のデフレ政策の結果であると私はいわなければならない。そこで一般にエネルギーの需要というものが減退したからあなたの言う目的も達せられたので、それでも中小企業は相変らず不景気であったということは言える。それで昨年はうまくいったとするならば、前内閣が行政措置だけでいこうとしたものを、こういうものまでわざわざ出す必要はない。うまくいっていると考えておるあなた方なら何もこんなものを出さなくてもいいだろうと思う。しりぬぐいはごめんだ。
  53. 川上為治

    ○川上政府委員 行政指導がうまくいったかいかなかったかという問題でありますが、私は非常にうまくいったとも考えておりません。それからデフレの関係がありまして需要の方がわれわれが最初予想した数子よりも少なかったことは事実でありますけれども、やはり行政指導がある程度のブレーキをかけて、そうしてそり五百三十数万ということでおさめ得たのではないかというふうに考えております。私の方としては、最近においてはさらにまたこの需要が非常にふえておりますので、どうしても従来の行政指導ではなかなかやりにくいというふうに考えるわけでございますから、やはり何とかして法律の裏づけによってやらなければできないのではないかというふうに考えております。たとえば水産関係だけを一つ考えましても、どうしても水産関係のものは一定の数量を確保しなければならぬ、しかも値段を安くしなければならぬ、そういうようなことになりますと、われわれの単なる行政指導だけではとても限界点に達していてできないと考えますので、やはり法律による措置をとらなければならぬのではないかというふうに考えられるわけであります。
  54. 長谷川四郎

    ○長谷川(四)委員 ですから、たとえば石炭合理化をやる、これが幾分でも芽ばえてきて、そうして目的の第一段階に入って、石炭コストがこれだけ下ってきた、消費者はもう心配するな、ストライキもないぞ、こういう芽ばえがあったときにはあなたの言うようなことは通るのです。ところがこれをこれから行なうやさきに今度の合理化問題をめぐってストライキが行われようとしておる。そういうふうになって、さあ法律ができた、片一方重油も押えてくる、今度はストライキもやっちゃう、こういうことになったらどうなるんだ。しかもそれに加えて五年であり、片一方は十年だ、こういうような矛盾だらけになってくるのではないか。ですから、一年間やったけれども、こうであった、石炭の方はかくのごとくなったから初めてこれをやるのだというならいいけれども、これはまだ海のものとも山のものともわからない。たとえば石炭合理化をやろうとしても、それが目的の一部を達するのには容易ならぬ時間を要するとわれわれは考える。だから、この合理化法案の実際の第一段階の目的が達したときにこれを有効だとするならば、私は全面的に賛成するけれども、こういう点はどういうふうにお考えになりますか。
  55. 川上為治

    ○川上政府委員 やはり石炭合理化ということと、またこういう重油の抑制ということにつきましては並行してやっていくべきではないかというふうに私は考えるのであります。石炭合理化も相当の年数がかかりましようが、この抑制につきましてもやはり相当の年数がかかるわけでありますから、一面においては石炭の方では合理化をやってもらうと同時に、また一面においては重油需要もどんどん伸びて、そうして供給も非常にふえて、ますます石炭を圧迫するというようなことのないような措置を一面においてやはり講じなければいけないのではないかというふうに考えるのであります。
  56. 長谷川四郎

    ○長谷川(四)委員 これは企業国民生活に対して非常な干渉をするものといわなければならぬ。従って私に言わせれば、憲法にも違反をしやしないかとまで私は考えている、まだそこまで調べてないが。そこで先ほどの第四条に関する限り、入り用であっても何でも新設は一切禁止をする考え方であるかどうか、こういう点を御答弁願います。
  57. 川上為治

    ○川上政府委員 新設につきましては、第二条によりまして、ここに書いてありますようなものを除きましては、一切禁止をしたいというふうに考えております。
  58. 長谷川四郎

    ○長谷川(四)委員 第六条にある緊急な用途——緊急とはいずれを指すか、これをお答え願いたい。
  59. 川上為治

    ○川上政府委員 これは緊要と書いてありますが、緊要な用途というのは、たとえば現在水産関係等においていろいろ問題が起きております。特に水産関係は時期的な、あるいは場所的な問題がありますので、そういうものに間に合せるような場合においては、あるいはその出荷の指示をやる。またところによって非常に値段が上るというような場合においては、値段を下げるような指示をしたいというふうに考えておりまして、とりあえず現在問題になっておりますのは水産関係でございます。
  60. 長谷川四郎

    ○長谷川(四)委員 緊急と称するもの、目ざすのは水産ですか。
  61. 川上為治

    ○川上政府委員 緊急でなくて緊要であります。緊要というのは、現在のところは水産関係がいろいろ問題を起しておりますので、水産関係を一応対象に考えております。
  62. 長谷川四郎

    ○長谷川(四)委員 緊要が水産関係が第一目標であり、第二目標、第三目標もおありだと思う。第一目標はわかったが、第二、第三は何でございましょうか。
  63. 川上為治

    ○川上政府委員 これはそのとき、そのときによっていろいろ問題があると思うのです。たとえば名古屋方面における陶磁器などは、輸出産業として非常に重要でありますので、ああいう方面に油の需給関係が非常にアンバランスになったとか、あるいは値段が上ったとかいう場合においては、この措置をとりたいと考えております。
  64. 長谷川四郎

    ○長谷川(四)委員 そこが私の指摘したところなんです。大臣が何も知らぬうちに、事務担当官が自由に値段だとか、数量だとか、今局長が言ったように、不必要と見る。一事務担当官がそれを見ただけでもってそれが行える。こういう危険があるから、こういうものはまかりならぬといっている。これは大臣の名前で出ていても、大臣が一一そんなことはやりっこない。であるから、そういう点についてわれわれは納得できない点がたくさんある。こういうことを申し上げている。ですから、あなたがおっしゃるような考え方でいくと、一担当官が何とか言われた。言われると、そうであるかというので、すぐ命令を出してやる。命令を出してやるときは、担当官の命令ではない。ちゃんと通商産業大臣の判こを押して出してやる。こういうことになっている。これはあなたには絶対ないんだということは、おそらく言い切れますまい。今日まで何十年とあなたが事務をやってきて、全部あなたが出すにしても、大臣の名前で出しているものがたくさんあるでしょう。こういうところに大きな危険があるということを私は申し上げており、また四条なり六条なりというものは不必要なものである。四条、六条はどうしても必要であるか、これはなくてもいいものか、それはどうですか。
  65. 川上為治

    ○川上政府委員 私は先ほどから申し上げますように、昨年度においても通産委員会なりあるいは閣議で決定されました方針に基いて行政指導をやっているわけでございますけれども、どうしても行政指導の限界というものがありまして、なかなか最近においてはむずかしい状況になっておりますので、私はこういう法律を作って、こういう条文を置いてやらなくちゃできないじゃないかというふうに考えているわけでございます。それからわれわれは、こういう条文を乱用するという考えは毛頭持っておりません。先般漁業用のA重油についてある程度の値下げをいたしまして、これを行政指導でやりましたときも、非常に大臣お忙しい時分でございましたが、ちゃんと大臣に御相談申し上げまして、大臣の御許可を受けて措置をとっておりますし、四条、五条につきましては、やたらにやるわけじゃございませんので、十分大臣の御決裁、御許可を受けまして、われわれはやろうと考えております。
  66. 長谷川四郎

    ○長谷川(四)委員 たくさん質問があるのですけれども、ちょうど時間なので、あとは総合エネルギー政策要綱等に関連して行うことにいたしまして、私の本日の質問は打ち切ります。
  67. 田中角榮

    田中委員長 午前の会議はこの程度にとどめ、残余の質疑は午後に引続いて行うことにいたします。  この際念のために申し上げます。石橋通産大臣は、参議院予算委員会出席の予定がありますので、午後の会議は正一時より開きます。質疑の通告者及び政府委員は、定刻までに御参集を願います。  午後一時まで休憩いたします。    午後零時七分休憩      ————◇—————    午後一時二十二分開議
  68. 田中角榮

    田中委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  重油ボイラー設置制限等に関する臨時措置に関する法律案について質議を続行いたします。永井勝次郎君。
  69. 永井勝次郎

    ○永井委員 本法案の目的が明確になっておらないのであります。明確というよりも、全然目的が提示されていない。先ほど来各委員から質疑がありましたが、本案の目的、性格についてやはりはっきりとさしておく必要がある。これは石炭鉱業の長期安定をはかる、こういう立場で電力あるいは油の総合燃料に関する一つの計画を立てて、その一環として重油規制という本案が生まれてきたのであるかどうか、そうして本案がそういう形で生まれてきたとするならば、これらのエネルギー資源は基礎産業であるから、これに対する日本産業構造なり、あるいは今後の組み立てに対しても、計画的なものが推進されなければ、石炭、油、電力、こういうものだけが計画的な一つの内容を持って、これの関連する諸産業が投げっぱしなしであるということになれば、木に竹を継いだようなものであって、この基礎産業がこの案に示しているように計画的に動かない結果になる。従ってこの案の性格はどういうものであるかということを一つ明確に伺っておきたいと思います。
  70. 石橋湛山

    石橋国務大臣 これは今御質問の中にすでにありましたように、総合的に燃料対策を立てたい、その総合燃料対策の一環であります。むろんこれはまた例の経済六カ年計画の中の一つになりますから、あの中にも燃料の問題は織り込まれておるわけでありまして、すなわちあの計画を遂行するために必要なる燃料あるいはエネルギーの計画、こういうわけでございます。その中の一つとして、石炭合理化法案の御審議をわずらわしておるし、その一つの裏づけとしてこの重油ボイラー規制の問題が考えられたわけであります。
  71. 永井勝次郎

    ○永井委員 そういたしますと、この法案は総合エネルギーの計画化、こういうことが重点であり、性格である。そういたしますと、これを十年という時限立法にいたしました根拠はどこにあるか。たとえば石炭鉱業は、五カ年で石炭合理化を完成する、そういたしますと、これで日本における油、石炭、電力の総合エネルギーの基礎産業の安定はできるんだ、こういう見通しに立って、あとはこれは野放しにしても、日本石炭あるいは電力は、十分油に対してひとり立ちで対抗できる、こういう条件が成熟するというお考えであるかどうか、そういうお考えであるとすれば、十年後の展望としての油と電力と石炭価格関係、それからこれらの基礎産業日本産業の中に占める地位というものを明確にしていただきたい。十年後にこういうふうに解除しても、油と石炭関係は、これでもう安定した条件の確立ができるんだ、こういう前提に立った時限立法でありますから、十年後のいろいろな実相というものは大体展望して、計算済みであろうと思うから、これを伺いたい。
  72. 石橋湛山

    石橋国務大臣 変化が非常に激しい時代でありますから、十年後のことを的確に予想することは申せないと思いますが一大体石炭合理化法案は五年ということになっておりまして、これによってその効果が上るのは、その五年たった——五年中も上りますが、ほんとうの効果が上るのは、それからなお若干あとに延びる、こういうような関係から、重油の問題については一応十年ということにしたわけであります。見通しについては、昭和三十五年くらいまでは一応立ておるのであります。
  73. 永井勝次郎

    ○永井委員 この法案によって現在規制しようとしているのは、消費量であります。量の関係だけであって、価格関係は、全然この内容に入ってきておらないないわけでありますが、十年後にこの法案をなくしてしまって、そのときに油と石炭関係を規整しないでも、十分国内石炭が油に対抗していけるんだという、この価格の安定とつり合いというものの大体の展望ができていなければならぬ。それがなしに、ただ十年でまあこのくらいだろう、こういうめくら算用でやっておるのか、何か十年というものには根拠があるのか、そのときにおける価格関係はどうなのか、これを一つ伺いたいのであります。この法案ではそういう関係が出て参っておりません。従ってそれを伺いたいのであります。
  74. 石橋湛山

    石橋国務大臣 この法案の中の価格の問題は、先ほども論議になりました第六条の中にあるわけであります。第六条によって価格の問題も相当の指導をするということになっております。なお石炭その他との価格のつり合いにつきましては、石炭合理化五カ年計画が完了した場合の重油石炭との価格のつり合いについては、計算がございますから、これは政府委員からお答えをいたさせます。
  75. 齋藤正年

    齋藤(正)政府委員 十年後の価格につきましては、現在推定いたしました資料がございませんが、石炭関係法律に関連してお配りしました資料の中に掲出いたしておきましたが、現在の値段と、それから三十四年度における値段と、油と比較したものがございます。それによりますと、現在では京浜、阪神というふうな、石炭の生産地以外の消費市場では油の方が安い。しかし合理化が完成いたしますと、こういった消費市場の石炭の方が安くなるということになっております。そうなりますと、この法律が矛盾、摩擦なしに執行できるような状態になる、こういうふうに考えております。
  76. 永井勝次郎

    ○永井委員 石炭の問題は別の場合にいろいろ論議したいと思いますが、五カ年後に二割コスト引き下げを行う、そうすれば油よりも石炭が安くなるというような夢物語は、また後刻問題を現実に引きおろして論議をしたいと思っております。そこで、石炭と油の価格のつり合いというものをどういう形によって行おうとするのか。第六条にはいろいろなことを何していますけれども、これは正確なものじゃない。ですから、たとえば油の関係には関税をかける、あるいはいろいろな消費税をかけるというような形で消費価格をつり上げていく。それから石炭関係においては、合理化によってこれを引き下げる。石炭を下げ、油を上げて、そしてここで価格の調整をはかっていく、こういうような措置を講ずるのか。油はそのままにしておいて、石炭だけを合理化によって引き下げてつり合いがとれると考えておるのか。その辺の、油と石炭との価格関係についての計画を伺いたい。
  77. 川上為治

    ○川上政府委員 今先生からお話がありましたように、現在におきましては、特に消費地におきましては、何と、申しましても石油の方が割安でありますし、かつまたいろいろな能率的な問題からいいましても、やはり石油を使った方がいいというような点もありますので、私どもの方としましては、この法律によりまして、一面ボイラー石炭の方へ転換させると同時に、価格の面におきましては、B、C重油につきましてある程度関税をかけまして、そして石油の値段を引き上げて、現在の石炭との価格の調整をはかりたいというふうに考えまして、別途重油の関税をかけることにいたしておるわけだございまして、B、C重油についての価格につきましては、大体関税をかけることによりまして五百円ないし六百円くらい引き上るのじゃないかというふうに考えております。
  78. 永井勝次郎

    ○永井委員 先ほど大臣は、油の関税についてはいろいろ国内生産のコストの問題もあり、貿易市場におけるコスト引き下げのいろいろな状況からして、これをできるだけ押える、上げないようにする、そういう万般の措置を講ずる、こう答弁されたのでありますが、現在の日本の市場における油の価格というものに対して、大臣はどのようにお考えになっておられるか、これを伺いたい。
  79. 石橋湛山

    石橋国務大臣 それはお話のように確かに若干の矛盾はあります。これは全般を考えてやるよりほかない。しかしB、C重油に関税を課する結果が各産業にどういう影響を及ぼすかということも、一応計算をしておりますが、その程度ならば、そうコストに大いなる響きを来たすというふうには実は考えておらないのであります。これは石炭との競争上、石炭が少し使われる、有利になるということは確かにありますが、しからば関税をかけたために、それぞれの産業コストにどれだけ響くかというと、それほど大きなものではないというふうに考えております。
  80. 永井勝次郎

    ○永井委員 矛盾があるどころではなくて、大きな矛盾がありますし、また現在の油の価格に対する考え方にも、大臣は正確にこれをつかんでいないのではないか、こう思うのであります。一九五五年の三月十七日の西ヨーロッパにおける石油価格ということで、国連欧州経済委員会が発表しております。これによると、日本に現在輸入されておる油——中東ものが八割からを占めて、ほとんどでありますが、この原油価格がどのくらいかというと、一キロ四百五十円か、あるいはセリア種なんかで九百円くらい、四百五十円か九百円程度の原油の価格のものを日本に持ってきて、それが消費の面においては一万三千円前後、こういう価格で売られておるのであります。もちろんこの間には船運賃も入りましょう、諸掛りも入りましょう、あるいはいろいろな関税というようなものも入りましょうけれども、何と申しましてもこれは売手市場であるというような考え方から、量的には少いにしても、油資本家のいい食いものになっているのではないか、こう思われるのでありますが、これらに対して大臣はどういうふうにお考えになって、総合エネルギー資源の今後の運営の上から、燃料資源の中において油というものをどういう地位に置いて、そしてこれをどういうふうに処理しょうと考えておるのか、基本的な油に対する態度考え方を伺いたい。
  81. 石橋湛山

    石橋国務大臣 御承知のように、油は現在においてはほとんど全部外国から輸入していると言うてよろしいのでありますから、今の価格のことはいずれ政府委員からなおわかるだけのことは申し上げますが、私どもとしては、この石油も、これは国内産ができるなら国内産油をもってふやすべきだ、また海外においてもできれば日本自身が開発し得るようなところを探して開発して、この油の値段も、日本のものとしてまず安い価格のものが出るようにすべきだ。これは大ざっぱな議論でありますが、現在日本の四千二百万トンがらみの石炭が国内で消費ができないという一体経済状態は、どこかに間違いがある。私は今後われわれの経済政策を強力に推進していって、そして石油の方面も、あるいは石炭の方面も、もっと消費が増すべきものである。この経済六カ年計画においては増すように計算をしておるわけであります。ですから、石油もむろん一応は規正しますが、今後の消費は漸次ふえます。同時に石炭もふえる。しかしながらできるだけ国内産エネルギー資源を育成し、これの使用をふやしていきたい。外貨を必要とするところの現在のような石油の輸入は、必要最小限度にこれをとめるのが、現在の日本の国策としては適当である、かように考えております。
  82. 永井勝次郎

    ○永井委員 大蔵省から見えていますから、一つお尋ねいたします。  油に対する関税は年代によっていろいろの動きはありましょうけれども、明治三十年以来ずっとかけている。二十六年になってから、改正関税定率法が公布になり、当時朝鮮事変で非常に船運賃が上った。当時USMCに対してプラス六十、従って一キロ三千何百円かの船運賃、こういうふうに高くなった。これでは国内の消費価格に大きな影響を与えるからというので、これはとらないということで関税を中止した。従って一年刻みでやってきた。一年刻みで関税をとることをやめて来たのは、当りまえのことだ。関税をとることによって消費者価格が非常に上って、トラック業者が困る、あるいは水産業者が困る。こういう消費面から盛んに関税反対という運動が起ってきている。明治三十年以来ずっととってきたものが、今船運賃が非常に高くなったためにこれを中止しておる。今どうかというと、USMCに対してマイナス三十五ないし四十五、今、船運賃が一キロについて一千五、六百円程度であります。昭和二十六年から比べますと、二千円以上の船運賃の値下りになっている。こういうふうに船運賃が値下りをしておるのであるから、二十六年に関税を中止した当時の条件とは非常に変ってきているのだから、当然もっと早くこれは復活してもよろしい、こういう条件であろうと思う。それが今、A重油に対しては無税にする、あるいはBとCの重油に対してだけおっかなびっくりで関税を幾らかかけようというような態度に出ていることは、一体経済的な根拠によるのですか。やはり国際的な油のカルテルの資本の前に日本の大蔵省や官僚たちが屈して、こういういくじのないことをやっているのか。これは大蔵省の方から伺いたいと思います。
  83. 木谷忠義

    ○木谷説明員 ただいま御質問のありました石油の関税についてでございますが、石油の関税、その中の重油、原油、そういう面につきましては、今お話がございましたように、昭和二十六年の関税一般改正において、一割の関税がかけられました。ところがその当時の事情としては、そのとき直ちにその一割の関税を実施するのは、各般の状況から見て悪影響があるということで、国会において一カ年間関税を免際しようということになっておりました。自来今日まで続いているわけです。そこでその免税は六月一ぱいに現在なっております。七月以降のことについてどういうふうにするかということにつきましては、政府部内において十分慎重審議いたしまして、ただいま鉱山局長からもお話がございましたが、B、C重油に対しては六・五%、A重油は主として水産業方面に使われておりますから、その影響等も考えまして、免税を続けようということに決定し、ただいま法案を国会に提出して、大蔵委員会で目下審議中でございます。
  84. 永井勝次郎

    ○永井委員 おっかなびっくりで原案の一〇%課税をどうしてやらないのですか。昭和二十六年六月の船運賃は四千九百円、現在の船運賃は千七百円です。三千円以上船運賃だけで下っている。当時関税を一割かけないという理由にいたしました船運賃が、こういうような値下りによって根拠は何もなくなっている。それでは国内における油の価格が船運賃の値下りだけ下っているかというと、ちっとも下ってない。かえって油の値段が上っている。こういう条件の中で関税を復活し、関税をかけることになぜびくびくするのか、その理由を伺いたい。一割をかけると定率法にあるのを、〇・七五をかけるとか、あるいは二%程度をかけるとかと、遠慮しなければならない経済的な根拠があるなら、それを示していただきたいと思います。
  85. 川上為治

    ○川上政府委員 決しておっかなびっくりでやっておるわけではありませんが、関税の従来かけなかったものの中で、ガソリンについて申し上げますと、ガソリンは、現在ガソリンの消費税が相当額かかっておりますし、また今回二千円程度さらに上げようという問題もありますので、これは関税をかけなくてもいいじゃないかという問題があるわけであります。  それから重油につきましては、ABCとありますが、A重油につきましては、先ほども申し上げましたように、ほとんどその大部分が漁村関係でありますので、これは零細企業者の関係から、A重油価格を関税をかけて上げとるいうことは非常に困るではないかと考えまして、A重油には関税をかけない。B、C重油につきましては、B重油の中である程度は水産関係もありますけれども、工場、陸上用が相当ありますので、B、C重油は陸上関係であり、かつまた石炭との競合が相当ありますので、これはある程度かけてもいいではないか。しかしながらたとえば鉄鋼関係とか、そういう方面に対しましては、影響も相当ありますから、行政指導によって、そういう方面にはそう値上りがないように、これは石油業者の方で極力吸収してもらうように行政指導をし、また石炭の方へ転換してもらいたいという方面に対しましては、値段が関税をかけた分だけ上げてもやむを得ないからというようなことで行政指導をやっていきたいと考えております。それから灯油につきましては、農村関係が相当ありますので、これまた現在のところ関税をかけることはどうかと考えているわけでございます。軽油につきましても、同様な意味があるわけでございまして、それぞれ石油の品種によりまして、これはかけた方がいい、これはかけない方がいいというふうに取捨選択をいたしまして、現在B、C重油だけにかけよう。それから原油につきましては、B、C重油に該当するものだけ二%の税をかけようということにいたしたわけでありまして、決しておっかなびっくりで一割関税をかけないということにしたわけではございません。
  86. 永井勝次郎

    ○永井委員 長々と減税をしてかけるという弁明的な、申しわけ的な答弁をする必要は私はないと思う。出す以上は何か理由はつけるのですから、一応の理由はつくのです。私は経済的根拠を示せというのです。現在日本に入っている原油は、CIF価格で六千五百円であります。六千五百円のCIF価格のものを入れて、この中から精製してどれだけ出るかといえば、ガソリン二八%、灯油が八%、軽油が九%、重油が四二%、潤滑油が七%、その他自家燃料及びロス、こういうものを六%と見まして、この精油過程によって六千五百円の原油が日本の国内においてどれだけの価格に売られているかといえば、一万三千円という価格に売られている。倍になっている。精製加工の過程だけで六千円以上の利潤をかせぎ出している。これだけ暴利をむさぼっている油に対して、これを上げれば消費価格がこれだけ上るからといってこれを何パーセントにする。一〇%の関税をかけ、消費税をかけることを何のためにびくびくするのか。その経済的な根拠を私は聞いている。局長から、今度かけましたのは重油はこうだ、諸般の事情というような抽象的な理由を聞く必要はない。こういう精製過程でどれだけの加工賃がかかるか知りませんが、原油にいたしましても、先ほど申しました通りに、中東ものは四百五十円あるいは九百円、こういう原価になっている。これは何も油の反対側から言っておるのではなくて、国連の経済委員会が国際的に発表しているものですから、これは根拠があるものでありましょう。これだけの原価のものを持ってきて、しかもテキサスの価格でここへ運んできて、原油でもう大きくもうけておる。原油で大きくもうけたばかりでなく、国内において精製過程で倍も、一キロについて六千円以上ももうけておる。そういう暴利をむさぼっておる。しかも昭和二十六年から比べるならば、船運賃がUSMCに対してマイナス三五にも四五にもなっておる。こういうような状況の中で、なぜこんなに遠慮してびくびくして課税をしなければならないのか。その政治的な根拠ならばいろいろ理由があるでしょうが、私は経済的な理由がどこにあるのかということを聞いている。大臣から伺います。
  87. 石橋湛山

    石橋国務大臣 その経済的理由は、今局長が申し上げた通り、各方面に対する影響を考えたということであります。
  88. 永井勝次郎

    ○永井委員 影響を考えたのならば、これは、油の国際カルテルの力の前に石橋通産大臣は情なくも屈した、こういうふうに了解していいだろうと思う。経済的な根拠は、諸般の事情といったって、こういうふうな暴利をむさぼっている。だからこういう条件の中で関税は取る、一〇%なら一〇%かけるべきである。またヨーロッパの各国でも、目的税は相当多額な課税をしております。そうしてそういうものを取って、それを総合燃料対策としての立場で——日本には油の資源がないのでありますから、油の方の資源開発のためにもこれを投資すればいい。総合燃料開発のため、石炭合理化のための一助としてこういうものを使ったらいい。こういうふうに油の国際カルテルの前に屈して暴利をかせがしておいて、税金を取らないで、そうして税金をかければ消費者価格が上るのだというような、こうした逃げ口上で間接に油資本の独占利潤を日本からしぼり上げさしているということは、私は許されないと思う。戦わなければいけない。関税なり消費税なり、こういうようなものをもっと高額なものをかける考えがあるかないか。通産大臣としてだけではなしに、国務大臣として通産大臣の発言権は相当大きいのですから、しかも今石炭合理化ということをして油と戦おうとしておる、こういう一つの門出に当ってどれだけの決意を持っているか、伺いたい。
  89. 石橋湛山

    石橋国務大臣 それは、関税をかけてそれが製油業者なりあるいは原油の輸入業者なりに転嫁されるものならお説の通りでありますが、今の日本の状況では残念ながらそう参りません。そこで関税をかければまずこれは消費者に大部分が転嫁されるものと見なければなりません。とにかく日本の石油というものがもっと国内産がふえるとか、あるいは海外からの石油にしましても、もっと競争が増して、そうして原価が下るという情勢が起るまでは、ここで関税をかければ、やはり日本の国内の石油の消費者に転嫁されるものと考えなければならぬから、われわれとしてはそういう観点から関税も考慮したわけであります。
  90. 永井勝次郎

    ○永井委員 大臣の言うように、これに対抗するある程度の国内資源が出たらということなら、永久に戦えません。それを出すためにも目的税を取るべきだ、関税を取るべきだ。ドイツでもそうやっている。イギリスでもやっている、フランスでもやっている。日本ほど関税を取るのを遠慮し、消費税を取るのを遠慮してびくびくやっている国はどこにもありません。それだから自然消費価格、消費量の面において制限がやってくるので、やはり石油業者が負担すべきものはその負担を自分の方で持ち込んでいく、こういう形になる。そういう過程を通して石炭合理化というものが進んでいく。ただばく然とこういう力だけで高かろう、能率は悪かろう、悪くてもこの法律の力によって油を使わないで石炭を使え、こういって押しつけられるような、こういうことをやりながら、その裏づけになるいろいろな油と対抗していく石炭価格の問題を、このような行政指導でやるというような、その行政指導力がどれだけあるかというと、油の関税一つかけることができない、あるいは目的税一つかけることができない、国際カルテルの前にひざを屈してしまう、こういういくじのない政府当局の行政力というものに期待してもだめです。だからやはり国民の大きな力によって国際油のカルテルの力と戦っていくんだ、それは現在の力は弱いでしょうけれども、一つ一つ問題がどこにあるかということをはっきりさせながら、トラック業者あるいは水産業者が、今までの政府のやり方——関税をかけたり消費税をかけることは政府のやり方がいけないんだといって、こちらの方にほこを向けているが、ほこ先はこっちでなくて、油の精製業者に向けなければいけない。精製業者はことに五〇%以上外国資本によって何しておるのであるから、これに対して戦わなければいけないというように、はっきりとほこ先を向けさせなければいけない。ところが油の業者日本消費者をおだてて、そこから運動を引き起しておる、そうすると消費価格が上るからという、そういう問題の分析の仕方や把握の仕方をとり違えて、当面のことをすることにきゅうきゅうとしておるという、こういうやり方では石炭合理化も進みませんし、油の問題の解決、日本の総合エネルギーの開発の問題なんかも解決できるはずはない。私は情ないと思うのでありますが、一つこの辺でふんどしを締め直して立ち上るという御決意があるのかどうか。これはやはり石炭の問題と関連して、われわれは次の問題をいろいろ論議していかなければならぬのですが、法律の力によって油を使うな、こういうことは簡単にできますけれども、使うなというからには、政府政府でそれらの裏づけとしてこういうことをやるんだという、こういうことを合理的に国民が納得できなければ死文になってしまいます。これは実行できないものになってしまいます。でありますから、私は現在出発しようとするエネルギー総合開発計画というものを軌道に乗せるために、真剣にやらなければいけないと思う。十カ年計画だ、五カ年計画だ、総合経済六カ年計画だ、ああいう作文を書いて一時を糊塗しておればよいという頑迷な現内閣に対しては多くは期待できませんけれども、こういう法律によって国民は犠牲を受ける、ボイラー転換をする、何するといって、非常な経済的な打撃を受けるのでありますから、私は十分に政府は責任を感じてこれらの問題と取っ組んでくれなければいけないと思うのでありますが、これに対して通産大臣の決意を伺いたい。
  91. 石橋湛山

    石橋国務大臣 永井君の言われるように割り切って——あなたの説はつまり価格の上でもっておのずから規制が行われる、それが反作用をして精製業者あるいは原油の輸入業者に反省を促すようになる、こういうお説でありまして、非常にけっこうでありますが、これは私は急激にやるべきものではないと思うのです。つまりそういたしますと、国内の一部の産業界、石油を使っている方面に非常な混乱を起して、その混乱の結果、やがて常態に戻される、こういうことになりますから、実際に毎日の行政を担当しております政府としては、そういう大胆と申しますか、急激な処置は、いかなる内閣においてもとりにくいものと思います。お説は非常に傾聴すべき点がありますが、これはやはり時を置いて、相当徐徐にやらなければならぬことだ、かように私どもは考えております。
  92. 田中角榮

  93. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 午前中からこの法律に対する一般的な質問がだいぶあったわけでありまするが、私は、時間の許される限り、この法案の一般的な前提をなしておりまする問題についてお伺いをしたいと思います。  御承知のように、従来経済立法といわれる経済政策関係する法律は、まことに慎重を欠いて立法されまして、そしてそれがまた非常に慎重を欠いて改廃されるがために、わが国民経済へ与えた影響というものは相当重大なものがあると思うのであります。私過去参議院におりました際におきましても、その点をきわめて強く感じたのでありますが、今問題になっておりますこの重油ボイラー制限等に関する臨時措置法案につきましても、先ほど来各同僚から次々に質問がありましたように、まず第一に私はこの提案が非常に不準備な、あるいは粗雑な形で提案されておるような気がいたしまして、まことに遺憾に思うわけであります。御承知のように、本来こういう計画、立法の提案につきましては、当然第一番目にその経済政策的な裏づけがはっきりとしておるはずでありまるし、第二番目には、こういう立法をして、それを施行するに当っての行政措置の準備がはっきりと完了しておらなければならぬと思います。私はまず法案の裏づけとなるべき政策的な裏づけと、それからこれを実施するに足る行政的な準備が完全にできておるかどうかという点、その二つを大わけにいたしまして質問をいたしたいと思います。  先ほど来の同僚からの質問で明らかになっておりますように、本法案重油ボイラー制限等に関する臨時措置法案という名称にかかわらず、重油の実質上の消費規正法でありますることは、大体大臣も認めておられるようであります。従いまして、この裏づけが先ほど大臣みずからがお話になりましたように、せんだってざっと説明をお伺いいたしましたところの、総合燃料対策が裏づけになっておるように感ずるわけであります。先ほど総合燃料対策の必要上立案をしたのだというお話からも明らかだと思います。従いまして、私はまず第一にこの法案条文を整理してみる前に、総合燃料対策それ自身が、今こういう法的な問題を政府として提出するに足るほど熟しておるかどうか、この点をまずお伺いしたいのであります。従いまして、私の質問の第一は、総合燃料対策それ自体の熟し方にあるわけであります。通産大臣かあるいは審議庁長官か知りませんけれども、要するに政府は閣議で了解になったと聞きますところの、この総合燃料対策の裏づけになっております、今お配りを受けました資料の「各種エネルギー供給見透し」というのがありますが、この数字と今日国会を通じて盛んに問題になっております経済六カ年計画というものとの数字の関連につきましてまずお伺いいたしたいと思います。大体この数字は見合った方針で立てられておるものであるかどうか。
  94. 川上為治

    ○川上政府委員 これは大体見合いました数字で作っております。若干こまかい数字は違う点もあると思うのですが、これは経済六カ年計画と大体対照いたしまして作ってある数字でございます。
  95. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 経済六カ年計画は、商工委員会に配られた資料が、御承知のように最近修正計画というような計画で修正されたと思いますが、まだその修正された資料は私どもの方に配付されておりません。予算委員会か何かに配付されたそうでありますが、われわれのこの委員会には配付されておりませんので、至急経済六カ年計画の修正された、あるいは修正計画と称するものですか、お配り願いたいと思います。今大体その数字が見合っておるというお話でありますので、私はお伺いをいたしたいのでありますが、数字がいろいろありますからこんがらかりまして、もしどこかにえらい見当違いがありましたら御指摘を願いたいと思います。当初計画によりますと、鉱工業生産指数が二十九年から三十二年に対して一三二・五というのに対し、エネルギーの総合指数は一二六というふうになっているように私ども計算したわけでありますが、数日前に配られました計画によりまして、これを修正して当てはめてみますと、鉱工業生産指数がぐっとふくれまして、一四一となっており、エネルギーの供給指数の方は一二一・五と、前よりも減っているような数字になっていると思います。この数字は、少々の狂いはどうか知りませんが、経済六カ年計画の当初計画と今度の修正計画との修正の意味と、鉱工業生産指数とエネルギーの供給指数とは大体並行しなければならぬと思いますが、私の見たのが間違いでなければ、これはどういうわけで完全な逆行を示しているのか、お伺いをいたしたいわけです。
  96. 松尾金藏

    ○松尾政府委員 ただいま御指摘のございました一三二・五と申しますのは、これは前に閣議了解で決定いたしました昭和二十八年度を一〇〇といたしまして三十五年度にどれだけ伸びるかという計数で、御指摘のように一三二・五になっております。これは当時といたしましては、二十八年度を基準にして、つまり二十九年度の実績を十分把握できなかったものでありますから、二十八年度を基準年次として三十五年度の伸び方を見たわけであります。今度修正と申しますか、前記三カ年の年次別構想の計数を出しました際には、すでに二十九年度の実績が大体確定いたしておりますので、今度は二十九年度を基準年次として三十二年度までの伸びを出した。その辺で、ただいま御指摘のように、前の数字は二十八年度から三十五年度に伸びておりますが、今度は二十九年度から三十二年度まで伸びておりますので、その辺の計数は当然食い違って参るわけであります。  それから第二の点といたしまして、今度の年次別の際には、エネルギーだけの伸びという特別の計数は出しておりませんけれども、通産省の方で今資料として配付されておりますエネルギーの見通し、これと六カ年計画なり前記三カ年計画のエネルギーの伸びは、若干の計数の食い違いはありますけれども大体計数は合っているわけでありますから、それと比較いたしまして生産の伸びに比べてややエネルギーの伸びの方が低いという点は、これは計画全体として従来もそういう指数の伸び方に相なっております。  なお先ほど鉱山局長から御説明いたしましたけれども、今度の、現在提出されております経済六カ年計画そのものも、まだ最終的な数字というところまでいっていないものでありますので、これらの点は、エネルギーの個々のケースについても、計数の点の整理あるいは最終的には検討をしなければならぬ問題があると思います。
  97. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 今のお話ですと、私の言いましたのは、その出発点が二十八年になっているのと二十九年になっているのとの相違だ、こういうお話ですか。
  98. 松尾金藏

    ○松尾政府委員 前段の点はそうでございます。  後段の点は、同じく前期三カ年についてエネルギの伸びが低いではないかという御指摘があったようでございますが、これは全体において、鉱工業生産の伸びに比べますと、エネルギの生産の伸びは大体やや低いところでつじつまが合うように考えております。
  99. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 その数字はまたあとで検討することにいたします。ただ配付された資料の数字を——先ほど言いましたように、この法案は総合エネルギー対策を裏づけとした立法でありますから、その総合エネルギー対策の裏づけをなす数字が明らかでない限り、私はどうしても審議を十分に進めることができないと思うわけです。なるべく早くこの数字を整理して御提出を願いたいと思います。  それからもう一つ、これは純粋質問であります。どうもわからないのでありますが、各種エネルギーの供給見通しという表の中で、二十八年というのは実績だろうと思います。この二十八年の全部のエネルギーを総合計したものが、一億四百八十四万六千トンという石炭換算になっている。また、最初の経済六カ年計画によりますと、どう見てもそれが同じ数字でなければならぬのが、一億一千八百六十三万六千。それから今度の修正計画と称するものを見ますと、やはり二十八年度が一億七百八十四万一千。次々の計画は、少少の数字は違ったといたしましても、その五カ年計画なり六カ年計画なりのスタートになっておる実績の数字が三つあるが、三つとも違うような気がしてしようがないのでありまして、私はこの二、三日来質問しようと思って屈ら数字を検討してみても、どうも理屈が合わないのであります。大体全部今整備してあるのですが、今言いました三つの数字は、照らし合せて提出されたものでしょうか。
  100. 中野正一

    ○中野説明員 私から便宜お答えいたします。今の御質問は、二十八年のエネルギーの総量が一億四百万トンという数字が、今まで経審あるいは資源調査会等で出ている数字と食い違っているのではないかという御質問だろうと思います。これは石炭換算にいたします場合の換算の率等についていろいろな案がございまして……。
  101. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 ちょっと発言中ですけれども、時間の都合で、いろいろ長い御説明はいらないのです。要するに、同じ数字から出発しているのか、三つ出ている資料は、換算の数字は別でも、スタートは同じかという結論だけ聞きたい。
  102. 中野正一

    ○中野説明員 スタートは同じです。ただ石油製品のところで、今までの数字は輸入された原油を全部そのままエネルギーとして計算しておる。ところが正確に申しますと、これは原油から生産された石油製品の量でございます。しかしこれがエネルギーとしては実際国内で消費されるということになりますので、われわれ通産省の方では正確を期する意味で、国内から生産された石油製品と輸入された石油製品というものの合計で総量を出しておるというような関係で、通産省で出しましたエネルギーの総量の方が、今まで資源調査会で出しておりますものよりは幾分低いということになっております。しかしその基礎になるデータはみな一致しております。
  103. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 私はどうもわかりません。これは一致しておりません。どういうお話か知りませんけれども、もらった資料が、出した三つの数字が全部違っておることは事実であります。ややこしければ言っておきますが、一つの数字は一〇七八四一、もう一つの数字は一一八六三六、もう一つは一〇四八四六という数字になっている。従って、何か換算の理屈があるかもしれませんけれども、われわれ頭の粗雑な議員に勉強さしていただくのに、こういうわけのわからない数字を出されては非常に困るのでありまして、どれが一番権威があるというならば、それを整理して全部修正していただきたいと思います。  それからもう一点この数字についてお伺いしたいのは、この経済六カ年計画のエネルギーの見通しと、それから今の各種エネルギー供給見通しという数字と、もう一つ昨年の末にできましたエネルギーのもとであります電力五カ年計画という数字で、この電力五カ年計画という数字も経済六カ年計画という数字にマッチいたしておりまするか、あるいは経済六カ年計画によって電力五カ年計画の方が今度は修正されるようになっておりますか。
  104. 松尾金藏

    ○松尾政府委員 ただいまお話しのございました点は、基本的には全部一致しておるわけでございます。ただ、先ほども申しましたように、計数の若干の点に食い違いがあるかもしれませんが、これらは六カ年計画そのものがまだ最終的な計数のものになっていないのです。現に、三十二年度までの年次別計画を今度出しましたけれども、これは当初に出しました六カ年計画のときの三十二年度目標とは若干数字を訂正いたしております。そういう意味の訂正が今後も起るであろうという意味で計数の若干の食い違いがある、こういう意味であります。  それから後段の電力の点は、これは御承知のように電力は開発五カ年計画があるわけであります。その目標とするところは、基調は一致しておりますけれども、三十五年度の目標という、六カ年計画というところの、一年の計画の差のところは若干計画を延ばしたような部分もございますが、目標の計画数字はもちろん一致しておるわけでございます。
  105. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 六カ年計画と、それから各種エネルギー供給見通しという数字を中心とする総合燃料対策の数字との比較は、次回にはっきり対比しながら一つ一つ順を追って進めていきたいと思いますが、ただ直観的に感ずることは、最近修正された計画は、自由党からの修正案の意向も盛られて、どうも石橋通産大臣の最も得意とされる拡大均衡への数字が加味されているように見える。ところが、エネルギーのもとになります電力の方はあまり延ばされないことが明らかだったものでありまするから、従って、エネルギー供給力の指数とそれから鉱工業の生産指数とが並行線をたどらずに逆に行くようなシェーレをなしているという感じを率直に受けたわけであります。これは別の機会にはっきりとその内容をお聞かせ願いたいと思います。  それから、数字は全部今試算中あるいは整理中というお話しでありまするけれども、総合燃料対策というのは、これはどうしても長期資源対策という性格を持たなければ全然ナンセンスだと思いまするけれども、この点一つ感じを通産大臣からお伺いいたしたいのであります。総合燃料対策というものは、短期の、つまりカンフル注射的な性格を持つものであるか、あるいは長期資源対策の性格を持つものであるか、大体いずれを考えておられるか、お考えをお聞かせ願いたい。
  106. 石橋湛山

    石橋国務大臣 申すまでもなくこれは長期のものと思います。
  107. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 当然長期の資源対策でなければならぬと思います。長期の資源対策でありますというと、一番計画が長期性を要するのでありまするし、そうしてその中心をなすものは各種のエネルギーの構造的な配置をどうするかということが一番中心だろうと私は思います。従いまして、時間がありませんので、通産大臣の各種のエネルギーの構造的な配置に対する直観的な御所見をお伺いしたいと思います。たとえばこういうことです。石炭資源はやはり従来通り燃料を中心として使うことを重点とするのか、あるいはその他の使い方を重点に置くのかという考え方のようなものであります。
  108. 石橋湛山

    石橋国務大臣 石炭はむろん燃料としてもなお大切のものと思いますが、しかし、たとえば低質炭の発電とか、あるいは製塩に用いるとか、あるいは石炭化学という問題も起っております。それらのものもむろん取り入れて参りたい。しかし石炭化学のごときは、まだこれから発達する工業でございますから、現在のところ石炭需要量を石炭化学によってこれが非常にふえるということにはなっておりませんけれども、石炭化学まで取り入れて考えておるわけであります。
  109. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 私はこの前電力問題のときにもお話しをしておりますと、通産大臣は大体私の意見に賛成をされる。ところが現実に提出されておる、たとえば三十年度の財政投融資計画は、今言われたのと全然逆になっておるのではないかと、まさにその通りということになり、妙なことになったと思います。今度の場合におきましても、石炭資源は大事な資源でありまして、大事に使うということと、それから同時に工業原料の方になるべく伸ばしたいというのが従来の考えだったと思いますし、私もそうだと思う。ところが今の総合エネルギー対策として出てきております五、六カ年計画の中身を見ますと、おそらく大臣総合燃料対策云々と言われますけれども、見ておらないのではないか。これを見ますと、はっきりと石炭を使う中にも、化学工業用としたものは大体一〇%で、これから五カ年間ほとんどコンスタントに大体一〇%である。決してふえておりわせぬ。それからふえておるのは、ボイラー燃料としての炭がふえておるのです。計画をごらんなさい。計画の中に出てきております石炭の消費の数字は、今ある二十八年度までの実績を、大体そのまま延ばすとか、あるいはそのまま線を引くような形で、決してエネルギーの総合的な組み合せができていないのです。従いまして私非常に不安に思いますのは、ちょうど二年前にほとんどこういう思いつきの形で、石炭が足らぬから、それで石油を使え使えというので、ボイラー転換法を出すまじい勢いで、行政措置で石油石油という旗を振られて、一般経済界は相当転換をしたわけであります。しかもそれは設備の転換を伴う変更でありますから、国民経済的に見ればまことに重大なる変更をしたと思う。それがたった一年か二年かの後におきまして、また今度は一ぺんにひっくり返って、ボイラー重油にかえるという方式、私は長期的な見通しを立てるならば、あるいは国内需給の見通しを立てるならば、あるいは今石油に切りかえる方が正しいという結論が出るかもしれないと思いますけれども、それにしてもあまり裏づけがはっきりしなさ過ぎる。そして勘で言っておられることと現実に数字に書いてあるのとがあまり矛盾し過ぎる。今時間がなくなりましたから、この辺でもって第一の問題は別の機会に譲っておきますが、第一の問題で申し上げたいことは、経済政策がはっきりと裏づけにならなければ経済立法化してはならない。その準備が十分にできていないではないかということを私は非常に心配している。従って準備を十分にされるために、総合エネルギー対策をはっきりと立てられて、そして数字の裏づけをはっきりとしてこの委員会提出されることを、まずこの法案審議の前提としてお願いをいたします。繰り返すようでありますけれども、これは委員長におきましても適当にお計らいを願いたいと思いますが、明確なる経済政策の定義とこれの裏づけになりまするような数字的な資料の提出をはっきりとお願いいたしたいと思います。  時間がなくなりましたのではしょっておきまするけれども、第二番目の問題は、先ほど申し上げましたように行政的な準備という問題であります。今この法案を実施するに足る通産省内の、あるいはその他の関係の役所の行政的準備が完全に整っているかどうか、準備が整わない前にやると、法律の方針はいいことであっても、かえってその内容が曲げられることはたびたびあることであります。先ほど来長谷川委員やその他の各委員から非常にこの法案のずさん性に対しまして御意見的な質問が出ていました。私はまことに同感であります。従いまして第一に、あれほど声をからして言っておりました長谷川委員と同様に、私はこのまま実行される場合には、前に繰り返されたところの官僚統制の弊に陥る危険を感ずるものであります。私は通産行政に対する一般の質問に対しまして、石橋大臣に一番最初に苦言を呈したことを覚えておられると思いますが、今この法案を施行せられるに当りまして、従来心配されているところの、あるいは業界や国民一般が心配しているところの官僚統制の弊を再び起さない、大丈夫だという自信を持って施行せられるに足る準備ができているかどうか。これは聞いたところでどうもしょうがないと思いますけれども、ほんとうの確信のほどをまず承わりたいと思います。これが第一点。  第二番目には、先ほどから内田さんからお話が出ておりましたが、ボイラー転換のための資金を獲得すると書いてあるけれども、そのときのお話ではあっせんするというお話でありましたが、これはほんとうに法律ができてすぐ実行できるように、どの程度の準備が現実の行政措置としてとられているか。  第三点といたしまして、これはちょっと別な話になりますけれども、私エネルギーの関係と電気の問題に頭を半分以上突っ込んでおりますから関連的にお伺いしておくのであります。事実上重油規制は電力用重油に対してはっきり規制するつもりであるかどうか。大体電力の場合には三十万ないし四十万キロリッターの重油が必要であるということになっておりますけれども、この三十万ないし四十万キロリッターの火力用の重油に対しましてこれを規制される意図があるかどうかということ。  第四番目に、第六条の対象となっておりまするもの、大体聞くところによりますると漁業用の油ということが第一の対象となっているらしいと聞いているのでありますけれども、その他を含めまして、第六条の発動の準備が今どの程度進められておるかということ。  五番目に今申し上げましたようなものを含めまして、この法律に関連するところの政令並びに省令と準備ができておるだろうと思いますが、あるいは企図されておるものを含めまして、五番目のものはさっそく資料として御提出願いたいにいうこと。ずらっと申し上げましたけれども、この数点の簡単なる御回答を得たいと思います。
  110. 石橋湛山

    石橋国務大臣 今の五カ条の御質問の中に最初経済政策のことを言われましたが、非常にごもっともであります。石炭についてはむろんさっきも申しましたように、単なる燃料としてのみでなく、ほかのもっと有効な用途に使うということは十分考えております。これも申し上げたように、今石炭がどれだけ需要を起し得るかということは、長い目から申しますればおっしゃる通りであります。石炭鉱業維持の上から申しますと、当分の間は燃料におもに使うという以外にはないようであります。そういうことから化学工業その他に使用する面が数量か比較的少いということになっていることはやむを得ない事情かと思います。  それから行政上の、先ほど長谷川君から御質問がありましたがこれは何をやりましても、統制とか規制とかやるならば、いわゆる官僚統制だとか、官僚だということの非難を受けることはまぬがれないであろうと思いますし、それからまた人間のやることでありますから、どんなに公正にやりましても、間違いも起らぬとはほとんど全く言えない。起っていいというわけではありませんが、これは非常に謹慎をしなければなりませんが、そういうことはあろうと思います。しかし今の通産省の機構から申しますと、たとえば重油規制をする機能もなかなか鉱山局だけで、石炭を取り扱っている役人だけでこれをやるわけには参りません。やはり繊維の方のことに手をつけようと思えば、繊維局の意見を十分聞く。あるいはまたそのほかの中小企業の方の問題になりますれば、中小企業庁あるいはそれぞれの業種の係の者に意見を聞かなければ最後の結論が出て参りませんから、実はその点において私はむしろ非常にのろいという感じを抱いておるのでありますが、それだけに慎重なやり方をするような機構にはなっておりますから、その点においては、さっき申しましたように、人間のやることですから絶対に間違いがないとも申し上げかねるでありましょうが、しかしまず間違いはないものと私信じております。  それから資金のことでありますが、今別段金を持っておるわけではございません。しかしながら重油ボイラー転換といってもそう大きなものがたくさん一ぺんに出てくるとは私思っておりませんから、それくらいの資金は、たとえばある場合には中小企業金融公庫からも融資ができましようし、あるいは市中銀行等に話をして融資をさせることもできようと思っております。  それから電力用の重油、これは火力発電にどうしても必要な程度のものは重油を使うことを継続していいと思いますが、一般的に重油で火力を起すことはとめたいと思っております。  第六条については、これは先ほども話が出ましたように、さしずめの対象は水産業であります。この規制と申しますか、指導と申しますか、これも今まで相当通産省では経験済みのことでありますし、十分その準備があると申し上げて差しつかえないと思います。  あとは政令ですか。——それについては資料として提出いたします。
  111. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 今の電気の問題は、私のお伺いしたのは、三十万から四十万キロリットルくらいの重油が要るわけだけれども、これは現実にボイラー転換させるために規制を受けるか、今火力発電所のボイラー転換するようにという勧告なり何なりをされるかという意味です。
  112. 川上為治

    ○川上政府委員 電力関係の油につきましては、たとえばその保安用の油でありますとか、あるいは新鋭火力、こうした方面の油につきましては、三十万ないし四十万の範囲だと思っておりますが、その程度のものは十分確保したいと考えております。
  113. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 私はそういうものの言い方はきらいです。先ほど長谷川君の質問に対しましては、中小企業にしわを寄せないために大口の工場規制する、その中で明らかに電力と言われた。私はそれなら電力を転換されるのかと聞いたのだが、そうしたら大事なものはそうはしませんと言う、そういうものの言い方はお慎しみを願いたいと思います。私が別に聞くところによりますると、大体三十万ないし四十万キロリットルは電力の場合には必要だから確保しようというお話だと聞いておったわけでありますけれども、先ほど長谷川君の話にそれが出たものですから私はつけ加えて聞いたわけであります。通産大臣先ほど来何かやればすぐ官僚統制ということになる云々というお話がありまして、いかにも大丈夫だと言わざるを得ぬという発言をされましたけれども、一番最初に私が通産大臣に通産行政一般の質問をしたときに申し上げましたように、野人石橋湛山大臣はおそらく心中相当心細さを持っておられるに違いないと思います。長谷川君の先ほど意見を聞きましても、同党の中におきましても相当深い心配を持っておられるのでありまするから、従来の経過から見て、私は完全に安心を持っておられる気づかいはなかろうと思うのでありますが、これは意見でありまするからなるべくそういうことがないようにという御注意を申し上げることだけでとめておきたいと思います。  ただ先ほど石炭の使い方という問題に対しまして、私が申し上げたのは、当面の措置ではなく、総合燃料対策並びに総合燃料計画を長期資源対策として立てられるならば、石炭の使い方をこういうところに持っていこうということで、今の燃料に使うのは国民経済的にも、エネルギーの全体のバランスから見ても不経済だから、なるべく水力なら水力に置きかえるような方針をとりながら工業原料用にこれをなるべく伸ばしていきたいというのが、おそらく総合焼料対策の基本にならざるを得ないだろうというのであります。従いましてそういう対策から出てくるのでありますれば、石油の消費規制が先に行くのではなくて、それよりも前に石炭を今の工業原料へ積極的に使うための行政措置の方が先行すべきである。安易につく経済政策によって、小さい取り締り——取り締りというのは、おそらくこの政策の逆に縮小再生産へ追い込むことにならざるを得ない。経済政策の一番の中心は、積極的に、積極的にと行かなければならぬ。従いまして今の炭価の問題、石炭産業自身の問題のためには、まず石油等の問題もありましょうけれども、あるいはそれと並行してよりも、もっと先に経済を拡大して、そして先ほど言われたように、四千二百万トンという経済自身がおかしいので、四千五百万トンも五千万トンも使えるような経済へ持っていくための積極政策がまずとられ、そして同様の意味におきまして、その使い方が工業原料化へという積極的な政策の方が先行しなければならない。それでないと国民経済の将来に対する楽しみがちっともないわけであります。  これは今時間がありませんし、議論をいたしましてもどうということはありませんのでこれで終っておきますが、私は繰り返して申し上げておきます。第一の問題の経済政策としての裏づけをはっきりと立てて下さい。そしてこの法案をほんとうに審議するための前提条件をはっきりとして下さい。第二番目には、ほんとうにこれを実施してもいいかどうかということが、もう少し関係業者も含めて国民が納得がいけるように、金の措置はこうあるらしいとか、あるいは最初六条が適用になるのは漁業だけらしいとか、少くとも行政措置がもう少し国民の前に明らかになるように提示された上で、本格的な審議ができるようにしていただきたいという、この二つの点を強調いたしまして、きょうの質問にかえておきます。
  114. 田中角榮

    田中委員長 佐々木良作君要求の件については、適当なる措置をいたします。  本案に対する総括質疑はこの程度にいたし、残余は次会に引き続き行います。     —————————————
  115. 田中角榮

    田中委員長 この際上林榮吉君より、対沖繩貿易について大臣に緊急質問の申し出があります。これを許可いたします。上林山君に申し上げますが、本委員室は二時三十分から木材利用に関する小委員会使用することになっておりますから、簡潔に御質問願います。
  116. 上林山榮吉

    上林委員 非常に緊急を要する問題でありますので、委員各位の御了承を得まして、要点のみを質疑いたしたいと思います。  問題は委員長お示しの通り日本本土と南西諸島、主として琉球との貿易に関連しての質疑であります。伝えられるところによりますと、琉球政府日本から輸入するめん類、みそ、卵、食用油、茶、魚介類、大豆かす、衣料品など約十数品目の大衆必需品について、琉球政府の税法の改正の結果、物品税が大体二〇%課せられる、こういう確実な情報が入っておるのであります。対沖繩の貿易の昨年の総額は百七十億円程度であると言われておりますが、これが影響を受けるものはその約六〇%でありまして、百億円以上のものがこの対象になるということに相なっておるのであります。これではまことに遺憾でありますので、元来通産省においては沖繩政府あるいは琉球貿易に対しては非常に穏便な処置をとっておられたにもかかわらず、沖繩が税法改正に名をかりて、関税障壁とも称すべきかかる処置をとるに至るということは、私はまことに遺憾であると考えますので、通産当局を初め外務当局がいかなる処置をとられつつあるか、あるいは近いうちにいかなる処置をとられんとするかという問題について質疑をいたしておるわけであります。御承知通りに琉球の会計年度は七月一日から始まるわけでありまして、緊急を要する問題でありますので、この際関係大臣ないしは政府委員の方からただいま私の申し上げた点について御所見とその対策を承わりたい、こういうように考えます。
  117. 板垣修

    ○板垣政府委員 私どもといたしましても一、最近に至りただいま御質問のような情報を耳にいたしまして、日本と琉球間との貿易の円滑なる遂行のためにははなはだ遺憾なことと存じております。私どもといたしましては、まだはっきりした事実の確認を得ておりませんので、さっそくただいま南方連絡事務局を通じまして事実の確認を求めつつあります。なお一方外務省とも連絡をいたしまして、アメリカ側すなわち民政府側に対しまして外務省を通じ、それから琉球政府に対しましては南方連絡事務局及び通産省側から、本件がもし真実であるとしますならば、その是正方につきまして厳重なる抗議を一両日中に出したいと考えております。御承知のように日本と琉球との貿易関係は、全体から見ますれば日本の非常な出超になっておりますけれども、これは相当大きな部分が米軍あたりの建設工事などの反射的利益がありまして、日本といたしましては琉球からなかなか買うものがないのでございますが、これを相当無理をいたしまして特恵的な措置で、琉球の、ことに黒糖、糖蜜、糖蜜類を買い付けております。従いましてこれに対しまして日本側から受け取りますのに対しまして、日本品のみを非常に差別待遇をするような大幅の物品税の増徴をやられることは、私どもとしてははなはだおもしろくないと存じておりますので、本件につきましては厳重に琉球政府側に申し入れをいたしまして本件の措置をとられざるよう申し入れをいたしますとともに、なおその出方いかんによりましては、私どもといたしましてはあるいは相当重大なる決意をせざるを得ない事態になるかとも存じております。
  118. 上林山榮吉

    上林委員 ただいま大臣臨席のもとにおいて政府委員が明確な答弁をされたので、私は政府側の熱意のあるところを了といたしまするが、さらに申し上げたいことは、私はこれは琉球から考えると、なるほど税制の単なる改正であって、物品税を二〇%に上げるということは財政上の単なる処置といえばそう見えるのでありますけれども、内容を吟味してみますと、明らかにこれは関税障壁を設けたるものと認定するのでありますが、これに対するところのあるいは大臣ないし政府委員のお考えはどうであるかという点、さらに本土と南西諸島との間の貿易及び支払いに関する覚書というのが、一九五二年七月十日に大蔵省事務次官、通商産業省事務次官、経済安定本部副長官、外国為替管理委員会事務局長と琉球政府商工局長との間に取りかわされておりますが、この内容を見ると、大体において日本側が琉球政府利益を与えてあるような覚書と私は承知するのでありますが、こういうように日本が平和的にしかも相互扶助的な観念を持っているにもかかわらず、ただいま伝えられておる処置は明らかなる考え違いであると私は思います。情報を調べて後処置したいとおっしゃっておりますが、われわれはここにもうすでに向うの改正法案を入手いたしております。これを一つ御検討願いまして、ただいまの重大決意というのは私は関税障壁に対してこちらも報復的な手段ともいうべき厳重なる処置をとられるものというように了解するのでありますが、そういうように了解していいかどうか。あるいは私の聞くところによりますと、外務当局は外交権がないというような立場から、本問題に対してはやや消極的であると聞いておるのでありますが、政府委員の方で、まさかそういうことはないと思いますが、今後一つ通産省と表裏一体となられて、本問題の解決に緊急なる措置を講じていただきたい、こういうように考えるのでありまして、最後の重大なる決意、私は想像にかたくないのでありますけれども、一つもう少し具体的にお示し下さるならば幸いであると考えます。
  119. 板垣修

    ○板垣政府委員 お話通り今後の琉球政府がとらんとする処置は、形は物品税でございまするが、物品税ならば琉球の国内の同様の産品にも課せられるものと思いますが、私どもの得ております情報によると、日本品だけにかかるということになりますると、おそらく一種の関税類似のものと思います。しかしながら今御指摘のように、これに対する日本側の処置というと、もし関税というような意味でありますれば、これは琉球との領土権の問題とも関連をいたしますので、日本がこれに感情化するということはまだ検討の余地があると思います。しかしながら私どもが非常に特恵的な措置をもって入れておりまする砂糖類というものに対して、輸入制限というような措置で対抗する道はあると思いますが、いずれにいたしましてもどれは最後の最後の手段でございまするので、こういう措置をとらないで済むように、われわれといたしましては、外務省と連絡をいたしましてする外交交渉と、また一種のわれわれの国内的な措置と相並行いたしまして、そういう不測なる事態が起らないように処置をいたしたいというふうに考えております。ただいま外務省側が非常に熱がないというようなお話でありましたが、そういうことは絶対にございません。ただし日本と琉球との関係は、大蔵省、通産省というような国内機関との関係で貿易交渉をやっておりました関係上、主としてわれわれがこれに当り、しかしながらアメリカ軍との関係はやはり外務省から当地アメリカ大使館を通じて交渉してもらうことが非常に有益と存じますので、相ともに本件の円満な解決について善処したいというふうに考えます。
  120. 上林山榮吉

    上林委員 ただいま政府委員が明快なる答弁をいたしましたので、私は了としておりますが、大臣におかれても、ただいまの問題に対して、もちろん御善処下さることと信ずるのでありますが、政府委員の答弁の通り了解して差しつかえないとこちらの方は承知していいのでございましょうか、最後にお伺いいたしておきたいと思います。
  121. 石橋湛山

    石橋国務大臣 ただいま板垣政府委員から申し上げた通りに御了解を願います。
  122. 田中角榮

    田中委員長 次会は来たる二十八日午前十時より石炭鉱業合理化臨時措置法案審議を進める予定であります。  これをもって散会いたします。   午後二時四十九分散会