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1954-12-15 第21回国会 参議院 労働委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年十二月十五日(水曜日)    午前十時五十三分開会   —————————————  委員氏名    委員長     藤原 道子君    理事      剱木 亨弘君    理事      田村 文吉君    理事      田畑 金光君            加藤 武徳君            宮澤 喜一君            山本 米治君            吉野 信次君            早川 愼一君            宇垣 一成君            阿具根 登君            菊川 孝夫君            赤松 常子君            苫米地義三君            長谷部ひろ君   —————————————   委員の異動 十二月十五日委員赤松常子君及び剱木 亨弘君辞任につき、その補欠として山 田節男君及び白井勇君を議長において 指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     藤原 道子君    理事            田村 文吉君            田畑 金光君    委員            山本 米治君            早川 愼一君            阿具根 登君            菊川 孝夫君            山田 節男君            長谷部ひろ君   委員外議員            大倉 精一君   事務局側    常任委員会専門    員       磯部  巌君    常任委員会専門    員       高戸義太郎君   説明員    運輸省自動車局    業務部長    岡本  悟君    労働省労働基準    局給与課長   宮島 久義君    東京陸運局自動    車部長     蜂須賀国雄君    警察庁警備部警    ら交通課勤務  高見沢万吉君   参考人    ハイヤータクシ    ー協会会長  藤本 威宏君    全国旅客自動車    組合連合会中央    執行委員長   伊坪 福雄君    日本乗合自動車    協会專務理事  石塚 秀二君    全日本交通運輸    労働組合協議会    事務局長    大場 近信君    本城運送株式会    社取締役社長  橋本 末吉君    全国自動車運輸    労働組合連合会    会計係     小松崎隆次君    主婦連合会副会    長       三巻 秋子君    東京陸運局自動    車運送協議会委    員       鈴木  清君   —————————————   本日の会議に付した事件調査承認要求の件 ○労働情勢一般に関する調査の件  (自動車交通運輸労務者労働問題  に関する件) ○本委員会の運営に関する件   —————————————
  2. 藤原道子

    委員長藤原道子君) 只今から委員会を開会いたします。  第二十回国会の閉会に伴いまして、従来調査して参りました事件である労働情勢一般に関する調査が切れてしまいましたので、この際新らしく本院規則第三十四条に基きまして調査承認要求書議長に提出いたしたいと存じます。  なお諸般の情勢より本会期も長期に亙るとも思われませんので、事件の名称は従来通り労働情勢一般に関する調査とすることといたしまして、要求書の案文、その他の手続きは委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
  3. 藤原道子

    委員長藤原道子君) では御異議ないものと認め、さように決定いたします。   —————————————
  4. 藤原道子

    委員長藤原道子君) 引続きまして、自動車運輸労務者労働問題を議題に供します。  本件につきましては、去る十一日の理事会において参考人出席を求めることに申合わせてございましたので、本日次のかたがたを正式に参考人として御発言願うことにいたしたいと存じます。労働者側全国旅容自動車組合連合会中央執行委員長伊坪福雄君、全国自動車運輸労働組合連合会会計小松崎隆次君、全日本交通運輸労働組合協議会事務局長大場近信君。使用者側ハイヤータクシー協会会長藤本威宏君、本城運送株式会社取締役社長橋本末吉君、日本乗合自動車協専務理事石塚秀二君。公益側として主婦連合会の副会長三巻秋子さん、東京陸運局自動車運送協議会委員鈴木清君。以上八名のかたがた参考人として御意見を伺うことに御異議ございませんか。
  5. 藤原道子

    委員長藤原道子君) 御異議ないものと認め、さように決定いたします。  それでは参考人かたがたに一言御挨拶を申上げます。皆様御多用の折から御出席下さいまして、誠に有難うございました。本日は最近続出しております自動車事故発生の事実に鑑みまして、事故発生原因、その防止方法、延いては自動車運輸労務者労働条件自動車運輸事業の規格、形態等当該労務者労働問題に関連ある事項につきましてそれぞれのお立場からその現状及び将来の希望等忌憚ない御意見を承りたいと存じます。甚だ勝手でございますが、時間の都合上お一人約十分程度に御発言を願うことといたしまして、一応全参考人の御意見の出揃つた後に御質疑に入りたいと存じます。なお本日御出席政府側は、労働省宮島給与課長警察庁後藤田警ら交通課長運輸省岡本業務部長東京陸運局蜂須賀自動車部長、以上が御出席でございます。  では最初藤本威宏さんにお願いいたします。
  6. 藤本威宏

    参考人藤本威宏君) それでは東京交通事故発生原因について、経営者としての所感を述べさせて頂きます。  事故発生原因についてでございますが、これは事故の性質からみた運転手側のほうと、それから轢かれるほぅの通行人の側と、それからその他の、例えば道路とか車両とかいつたような関係と、三つに大きく言つて分けられる、このように考えております。それで先ず第一に運転手側原因でございますが、これは幾多の原因があるのでございますが、根本的な問題は経済的な要因であると考えております。これは御存じのように、乗る著と乗せる者とがあるのでございますが、この両方の何と申しましようか、需給調整と言いましようか、需給と言いまするか、現在においては甚だしくいわゆる供給過剰になつております。つまり車が多過ぎると、こういう状況になつております。これは昨年から比べまして車両数においては大した増加はございませんが、その実質から言いますと、いわゆる新車との代替によつて車が非常にたくさん走るようになつて来た。それからデフレの影響を受けて乗るほうが非常に減つて来たと、こういつた両方状況から参りまして需給のバランスが非常に破れて来た。そのために経営者のほうでは非常に経営が苦しくなり、それでそのしわ寄せをどうしても運転手のほうに持つて行きがちになつているこの事実であります。つまり現在においては東京タクシーといいますものは一日に三百五十キロから四百キロくらい走らなければ一定の収入が得られない。同時に経営すらもそれをやつても困難であると、こういう状況になつて来ております。三百五十から四百といいますと大体岡崎から名古屋くらいまで東京から一日のうちに走ることになつております。こういつたようなことをしなければいわゆる採算が立たない。又運転手さんのほうから言わせれば、そうしなければ自分生活を維持するに足る収入が得られない、こういつたところにこの根本的な原因があるわけでございます。従つて運転手さんとしてはそういつたような重荷を背負つて相当無理なことをしなければならない。むちやな運転交通違反もしなければならんといつたようなことが間接的に響いて来ていると考えております。一例を申しまして、例の交通安全週間になりまして、交通規則をよく守つて参る週間がございますが、この週間になりますと、収入が約一割減つて来る。逆に言いますればそれ以外の週間においてはどうしてもそれだけ交通違反を多くしているということになつて来ております。而もこれが実際言いますと、収入がそれだけ運転手さんのほうも減つて来る、こういうような状況が現在来ております。ちなみに申しまして、関西との状況を比較してみますと、関西においては特に大阪、京都、神戸、この辺におきましては需給調整が非常によくとれている。そのために交通事故も、いわゆる運転手が俗に言う煽られないと申しますか、めちやくちやしなくても収入がやつて行ける、こういう状況から交通事故等においても非常に少いのでございます。その原因ちよつと実例を申しますと、いわゆる自動車は一キロ何ぼ収入があつて、何ぼ経費がかかるかということで計算するのでありますが、経費のほうは大体一キロ二十二円五十銭ということは前回の自動車運送協議会でも出た数字でございます。然るに東京においてはこれが十八円程度になつておる、関西が大体二十四、五円というところが標準でございます。こういつたところまで及んで参りまして、どうしてもこの経営しわ寄せというものが運転手さんのほうにかかつて来るということは、これはむしろ最大原因じやないかと考えております。無理をしなければならない、交通違反もしなければならん、そういつたような経済的要因自身が非常に問題であると考えております。これが第一番目の経済的原因でございます。  二番目には不適格なる運転手さんが現在職業運転手として採用されている。このことは現在ハイヤーとかタクシーとか或いはトラツク、こういつた事業に採用される制限といいますものは道路運送法で二カ条あるだけでございます。これは年齢の若干の制限運転手免許をもらつてから一年とか二年以上といつたような制限、これしかないのでございます。ところが御存じ通り、これだけ一日四百キロも走るような而も交通頻繁なこの状況、これを目の前におきましてこういつたような簡単な条件だけでは職業運転手としては非常に困難がある、無理がある。どうしても免許証を取つてから、而もこれは乗りつぱなしじやございませんから、免許証を取つてから二年というようなことでは職業運転手としては実際不適格な者が多い。又一般免許とそれから職業運転手さんとの差別を単に免許を取つてからの一年とか二年という差だけではつけられないものがある。而もこの中には相当のいわゆる無謀なことをする常習犯もあるのでございます。ところが一方において、これも前と関連しますが、非常に車の増加が多かつたものですから、そういつた者までが採用しなければならないといつたような段階に現在来ておつたわけでございます。そういつたような事情で以てこの不適格なる運転手さんが非常に多かつた。これも一つ原因思つております。  三つ目原因は、これは我々経営者のほうの原因でございますが、これは戦後の相当厖大資本を要するハイヤータクシー業、こういつた事業におきまして脆弱資本の、或いは経営者として不適格な者が相当つたということは事実でございます。そのために或いは休養施設とか或いは労務管理等において非常な不備がありまして、そのためにそういつたような運転手さんのほうの疲労とかそういつた点についても遺憾な点があつたことは事実でございますが、更にここで問題になつておりますのは、ハイヤータクシーには名貸という行為がございます。これは経営が苦しくなつて来たものですから、その経営を放棄してしまつて個々運転手経営を任してしまうということでございます。つまり月に幾らというお金だけ月に幾らというお金だけ取つてあとは何でもし放題といつたような、道路運送法にも違反するような悪質業者が極めて増加して来た。これも大きな原因だと考えております。今言つた以上の大体三点がいわゆる轢くほうといいますか、車を運転するほうの大きな原因であります。  それから二番目に通行人のほうの件でございますが、残念ながら日本においてこの自動車交通が発達したことは極めて最近のものでございますから、通行人交通道徳というものは極めて低調である。これは殆んどがろくに交通規則も知らないし、又平気な顔して危険な所で以て横断する。こういつた点が極めて多いのでございまして、私はこれは今までの交通事故原因のうち、本当にこの運転手さんのほうが全面的に過失があるということは極めて少い。むしろ交通規則を守らなかつたという点も大きな原因があると考えております。この点におきまして、例えばちよつとそれますが、現在強制賠償保険というものがやはりこの議会で問題になつております。これはいわゆる事業者或いは自動車保持者保有者に全部強制的に保険を掛けさせる、こういつたことがありますが、この件もいわゆる社会保障一つでございますが、これも現在のような交通道徳、それらを以てしては厖大な費用になるのじやないかと考えておるものであります。蛇足でございますが、ちよつと申上げます。  三番目にいわゆる交通上の問題といたしましては先ず道路の問題があります。現在の東京道路状況を見まして、この道路状况で以て現在の自動車を走らせるには余りにもこれ又均衡が取れておりません。戦前から比べまして戦後の自動車増加といいますものはもう厖大なものがございます。数倍にも亙る増加があるのでございますが、それにもかかわらず戦前同様の道路ではこれは到底収容し切れない。このことは一つ大きな問題と考えております。同時にもう一つ自動車車両自身の問題でございますが、これは先ほどの経営者のほうの脆弱性云々もございますが、これは例えば非常に整備の不備な車を使つているとか、そういつたこともあります。こういつた原因がございますが、一番大きな原因というのは飽くまで、先ほど言つた経済的原因である。これなくしては到底ほかのことをどれだけやつても駄目である。いわゆる交通事故発生要因をほうぼうに持つてつて、ただ規則だけで取締ろうと思つてもこれは到底とまるものじやない。而もこのことは、ちよつと触れますが、これを強化することによつて逆交通事故増加しているということがあるのでございます。それはものすごい多額な罰金或いは就業停止といつたような強硬な処分が行われるために、それを取り返そうと思つて又無理をする。こういつた悪循環をなしていることが現在の状况でございます。  これらを総合いたしまして、なおちよつと参考に申上げておきますが、それじやそれだけ経済的要因があるならば、特にハイヤータクシーにおいて行われている給与制度自身つまり現在歩合制度が非常に大きな部分を占めていることは通例でございますが、これ自身を改正したらどうかといつたような御意見もあるかと思いますが、ただ問題なのは、タクシー事業といいますものは直接的な労務管理は何らできません。その点においては丁度いわゆる保険外交員とか自動車のセールスマンとか、それと同じように直接管理が何らできない。従つてどうしてもこれはこの給与制度自身によつて労務管理の若干の手助けをしているということは事実でございます。つまり一回朝出たら何をしているかわからない、どういうような働きをしておるかわからない。従つてどうしてもこういう給与制度自身で或る程度労務管理をしなければならないといつたようなこういつた業態でございます。それならば月給制度にしたらばどうかと言つたらば、これは到底できない相談で、事業の実態からしてできない相談である。丁度保険外交員を全部月給にしろということと同じでございまして、これはできる相談ではない。こういつたことは一つ参考までに申上げておきたいと思つております。それから先ほど脆弱資本云々という話がありましたが、これは規模の大きさによるものではございません。労務管理がむずかしいタクシー事業といいますものは、やはり三十台から五十台ということが経営の一番、経営単位といいますか、それ以上は労務管理が極めて困難で、適正規模ではないと考えております。  それから総合しましてでは対策はどうかといいますと、事故防止最大対策は、需要に応じて適正な車両数を策定することであると考えております。まあ具体的に言いまして、現在東京ハイヤータクシーから申しますと一万二千五百両が走つておりますが、私どもはこれは一万両が適正台数と考えております。これによつていい点は、先ず違反をしなくても、交通事故をしなくても運転手さんが生活を維持して行くことができるということ、同時に経営者のほうも無理をさせないで、そういうような尻をひつぱたくこともなくて、それで一応経営をやつて行つて、こういつたような公共事業を維持して行くことができるといつたこと、こういつた利点がございます。第二番に道路との均衡が取れる。これだけで取れるのでないのでございますが、幾分か緩和する、路面と車両との関係が緩和する、これが利点でございます。以上の利点があつて、先ず先ほど言つた根本的原因の経済的問題についての解決はこれ以外にないと考えております。  二番目には運転手さんの職業運転手としての就職については厳重な制限を設けるべきである。適格者かどうかということについての相当制限を加えなければならない。このことは公共に対する運輸業としての大きな一つの責任と考えております。何しろ人命をあずかり、交通事故発生すればここで又人を殺すのでございますから、そういつた意味においてどうしても適格なる運転手さんがこういつた職業運転手としては然るべきじやないか。こういつた意味から現在の道路運送法の二条だけでは誠に不十分でないかと考えております。  三番目には一般市民交通道徳の涵養といいますか、徹底といいますか、これはあらゆる方法によつてつて頂きたい。その次に四番目に、これは我々の問題でございますが、現在の、先ほどちよつと申上げました名義貸とか、その他の悪質な経営者、或いはもう経営者として言うに足らないような脆弱資本を以てただすべてのしわ奇せを運転手さんに負わせておるような経営者については、これはどうしても排除しなければならん。この四つが行われれば、私は事故発生というものは極めて減るだろう。特にこの一番目とニ番目の問題、この二つによつて非常に大幅に事故というものは減少するのじやないだろうか、このように考えておる次第であります。  以上原因対策についてお答えするわけでございます。
  7. 藤原道子

    委員長藤原道子君) どうも有難うございました。では次に伊坪さんにお願いします。
  8. 伊坪福雄

    参考人伊坪福雄君) 警視庁行つてたちが調べました、或いは警視庁が発表しておるものを見ますと、一日に大体事故が五十六件か七件ほどあるということです。それでそのうちの三名平均が死亡して行く、こういう事故があるということで、このうちの八〇%がハイヤータクシーに関する問題であると、こういうような資料が出ているわけでございます。私たちハイヤータクシーに従事する従業員といたしましては、このような事故で一日三人も死んで行くというような姿があることは非常に遺憾なことであつて、これを少くするという面に対してこれは協力を絶対に惜しみません。併しながら警視庁といたしましては、違反に対しまして、或いは事故に対しまして厳重な処分をすればこれが減つて行く、こういうことを言つているわけでございますが、私たちといたしましては、警視庁が如何に厳重、過大な処分をしても事故は減らない、こういう面から私はその原因対策に対して述べたいということ。それからもう一つは、警視庁ハイタク従業員のみに不当過大なるところの処罰をやつている、こういう面は資料を挙げまして一つロ述したい。この二つの面でやつて行きたいと思います。  第一番目の原因でありますが、これは今、藤本さんのほうからも述べられたと思いますが、非常にハイタク労務管理が杜撰であるということ、その一例を挙げますというと、名義貸の問題が今藤本さんから述べられたのですが、その内容を私は調べてみたときに唖然とするような状態があるわけです。名義貸はどういう形で以て行われているかというと、三十台なら三十台の車をやはり申請するわけでございますが、勿諭これは自分の車ではなくして、一台の車から甚だしいのは二十五万円近いところの名義料を取つているということ、この名義料を取つた金で仮に三十台で四百万円なり五百万円の金が入るというと、その社長さんはそれによつてアパートを作つている実例がございますが、それを又それによつて抵当権を設定して五百万円ぐらい借りて待合を作る。最初から健全な事業をやるのが目的ではなくして、アパートとか待合を作ることを主眼としてやつている。こういうところを私たちが調べてみると、運輸省役人が入つているわけです。これが情実行政一つ氷山一角ではないか、こういうことも私たちは言えるわけです。こういう車が一体どれくらいあるかというと、推定でございますが、三千両以上あるというのが姿でございます。東京において現在二百八十何社ありまして、一万二千五百台から動いている、そのろちの三千両近い車がこのような名義貸という姿でやつているのでございますが、議員かたがたのお手許には資料として出したのでありますが、現在これは整理に当つている今の宮田局長のほうから声明がございまして、これを一月四日までに整理しなければ厳重な処分をするのだということであります。これはこの前の河原局長声明のも尻切とんぼになつているので、三千両近い車と推定されるものが現在六十四社、六百五十台くらいしか只今名義整理委員会のほうへ届けが出ていない。ですからほんの氷山一角だけしか頭を出していない、あとは全部潜つておるというのが現在の姿です。これらの車というのは名義料最初に納めて、あと車庫代と称して三万円くらい大体出しておるのが相場であります。ですからこれは丁度ばくち打ちがてら銭を取つておるのと同じように、こういう儲け方はないと思うのですが、納めておる。ですから会社で車がないので、自分の家へ車を持つて行くのでございますが、あとで交代している。ですからこれが違反を起した場合に、警視庁あたりでその召喚状なり何なりをやつて運転手住所が不定という面が出て来るこれがこの前の即決裁判手統法案を作るときの要因になつておる。こういう運転手がたくさんある。運転手住所不定、私に言わせると健全なる企業の中に現在住所不定従業員がいるというのはおかしいのですが、こういうかたがたがたくさんいるということ、こういう人は燃料と目分のふところのそろばんを弾いたり何かして乗客を乗せる。名義貸ですからこれは度量衡の違反になつて現われる。或いは安く乗せたから高く取るためには今度は法外な値段をお客にふつかけて来る。こういうような紊乱した姿が現在の巷に現出するわけでございます。こういうような姿がたくさん巷に出て来ると健全な業者が食われてしまう。こういう面からこの名義貸の問題は十分やらなくちやならんのじやないか、このように思つておりますが、私たちに言わせるとこれがなかなかできないわけです。できないのは、最前申上げましたところの、そのような会社の中に役人が入つておるということ、或いは名義整理委員会の中に今度は業者名義貸をしておるところの社長などという者が入つておる。これでは丁度泥棒がお巡りさんになつているような姿ですから、なかなかこれがうまく整理されて行かない、こういうような姿が出ておりますので、この問題はむずかしいと思うのですが、こういう面も十分この事故を起しているところの一つ要因になつておる、こういうことも言えると思うのです。  それからその次にハイタクに働いておる従業員状態ですが、これは藤本さんが経営者自身のロからも自己反省立場で今述べられた通り、非常に杜撰にやつておる。それで固定給などは、それはたくさんある会社もあるのですが、大部分が二、三千円くらいでこき使つてあと歩合で追い廻しておるわけです。それで藤本さんの言われた中においても、仕事仕事で、これは無軌道を走つて外へ出て商行為をするのでありますから、これは若干歩合給ということは当然だと思います。併しながら少くとも二万円から払う給料の中で二千円か三千円の固定給なんてそんな馬鹿な話はない。このようなことから私たちは考えてやつておるわけです。これに関しましては一昨年の六月でございましたか、お手許に出した資料があると思いますが、労務管理の問題に関しましては一昨年の六月に基準局長、それから警視庁の警ら交通部長、東陸事務所の事務所長、この三者によつて二十一カ条に亙るところのハイタクの企業者に対する労務勧告書が出されているわけです。この実例を見ても如何にハイタク業者というものがそのような形で従業員自身使つておるかということは、この一事を以てもわかると思うのですが、更にこの問題が実行されていないということです。  それでもう一つは大体小型、中型車において藤本さんが言われた通りに、三百五十キロから四百キロも走らなければ業務に協力しないという形で以て首になる例がたくさんあるわけです。そういう面で私関東同盟と称しまして五十一単産、八千余名の組合員を持つているわけでございますが、一昨年十五、六件ほど労働委員会に持込んだわけですが、すべてが不当労働行為だということで経営者側の敗北に終つておる。この一事を以てしてもわかるように、四百キロから走らされるということになると、相当スピードをかけないとお客さんを乗せた場合やつて行けなくなつておる、これが大きな違反原因になつておる。警視庁もそういう事故に対しては厳重に処断するというが、片方では三百五十キロから四百キロ近くも走つて来いという、それでしわ寄せされるものは一体誰かというと従業員です。これではとてもたまつたものじやない、というのが私たちとして対経営者との戦いの場になつておるのでございますが、そういうような状態でございます。こういう面が出ておるということ。  それから警視庁の不当過重の問題はこの資料で出しておるわけでございますが、一時停止をちよつと怠つた場合、大体私たち調査では官庁の車などは説諭か五百円くらいの科料で済むわけです。ハイヤータクシーの車になると目のかたきにするわけじやないのですが、千円、二千円の罰金もある。行政処分と二重処分になりますが、七日ばかりの就業停止、一時免許証をあずかられる。罰金を食つた上、免許証をあずかられてはたまつたものではない、こういう形が出ております。こういう面に対しては非常に不当じやないか。同じ違反で片方は説諭か五百円程度の科料で済むのが、七日くらいの就業停止を食い、免許証一時あずかり、それから罰金、こういう形が出ております。スピード違反で十キロのオーバーでも三千円くらいの罰金、七日の就業停止を食う、こういうことを資料として私たちがつかんだわけでございます。たくさんここに略式命令書を持つて来ておりますが、これを見ても軌道内通行なりで二千五百円も罰金をとられるとか、日本道路の現状では、藤本さんの言われたように、池ノ端から神明町へ行く道路を例に挙げても、軌道内に若干入らないと通行人がおつたりなんかするからこれは走れない場合がある、こういう場合でも軌道を通つたというので二千五百円からやられる。警察官としては点数主義でやつておるから点数を挙げればよろしいのだといえばそれまでですが、私たちとしては迷惑千万だということなんです。こういうような面、それからちよつとした打撲擦傷でも八千円の罰金で以て四十日間の就業停止、こういうような面がたくさん出て来ているわけです。これでは従業員としては苦しくなつて来たということと、もう一つは罰金を納めない者に対しまして、警視庁といたしましては強制執行と申しまして手錠をはめて連れて行つて入れてしまうわけです。これは一日百円の割合で入れてしまうから、三千五百円になつた場合においては三十五日も拘置所の中に入らなくちやならん、こういうような状態が現実私たちが抑え付けられている姿です。こういうような警察官の主観に基いてこういう取締をさせられるということ。それから特にハイタクの乗務員だけが行政処分と司法処分二つを厳重に併課されているというところに私たちとしては納得できないところの面が出て来るわけでございます。そういうような面で私といたしましては経営者労務管理の完全化、こういうものがはつきりとなされて行くならば、この事故というものは相当つて行くのじやないか。  それから警視庁が如何に厳重に処分したといたしましても、後に四百キロも走れという経営者がたくさんあつてそうして迫い廻されたのでは、これはどうしても運転手は首になるのは辛いからスピードを出し過ぎる、こういう姿が出る。それで二百八十何社あるうちに組合は五十社ほどしかない。東日本交通さんでさえも組合を作つたら、何も要求いたしませんのに、組合を作つたというだけで全員解雇、所轄の労政事務所に行つて話を付けましたが、こういうような社長さんがたくさんいるわけです。前に夏川さんが人権問題で相当ワンマンと言われたが、これ以上の経営者がたくさんいるということ、そこに事故の起る大きな要素があるのじやないか、こういう面から一つ経営者のほうも十分この問題に対して反省してもらうと同時に、名義貸の問題或いは賃貸というような姿が巷にあるわけですが、これが非常に事故を起している大きな要因になつておるのですが、こういう要因に対しましてもメスを加えたならば、この事故相当つて行くのじやないか、警視庁のいう不当過重な処分の中からも一日三人死んで行く、五十五、六件も事故があるという、こういう姿は絶対に減らないということを申上げて私は終りたいと思います。
  9. 藤原道子

    委員長藤原道子君) どうも有難うございました。次に石塚秀二さん。
  10. 石塚秀二

    参考人石塚秀二君) 一つお断り申上げますが、今日私ここへ参りましたのはいささか連絡不十分でございまして、実はこういう正式の委員会で公述的なことをするとは思つておりませんでした。で、どういう事柄をお聞きになるかも存じておりませんでした。何ら数字的な資料もございませんし、申上げることもあらかじめ用意しておりませんが、ただここへ参りまして今までの間に思い付きましたことを逐次申上げてみたいと思います。  それでお尋ねは、最近交通事故が非常に多い、それについての原因はどういう点にあるのか、それを改善するにはどうすればよいかというようなことにあると存じまするが、交通事故と申しますと、大別しまして、自動車で申せば自動車と通行者との関係事故、それから自動車自体の事故というふうに大別できると思いますが、そのうち通行者との関係事故については、これは従来とも乗合自動車としましては乗客をあずかつておる関係もありまして、速度をそうむやみに出してもおりませんし、又運転手といたしましても万全の注意を払つて運転しておりますので、まあ大体において通行者との間に起つた事故というものはこれは多く通行者側に相当過失がある場合が多いと私は存じます。それで今ここで問題になつておりますのは、恐らく通行者との関係事故ということよりは、自動車自体の事故ということに重点があると存じますが、この自動車自体の事故について考えてみますると、乗合自動車で申せば、その事故によつて乗客に非常に影響を及ぼす、死傷者を出すというような、事故の内容は分けて考えますと、例えば衝突であるとか顛覆、顛落であるとか、或いは踏切における事故、こういつたものに分けられると思うのでありますが、これらの事故が乗合自動車において最近特に多くなつたとは私は認めておりません。この数字的な根拠は、恐らく監督官庁において常時とつておられますから、官庁においてはその数学があるでありましようが、特に乗合自動車において事故が従来よりも殖えておるとは私は思つておりません。ただ乗合自動車事故が乗客に及ぼす彰響が非常に大きいものですから、新聞などにはときたま自勳車が顛覆した、或いは踏切で列車や電車と衝突したというようなことが大々的に報道されますが、件数自体としては特に殖えたとは思つておりません。  それでこの事故原因について考えてみますると、これも事故の要素の何と申しますか、対象になりますものは、大別しますと、第一には道路との関係において考えられます。第二には車両自体の整備関係ということが考えられます。それからその次に乗務員の責任に属する、主として運転手でありますが、乗務員の責任に属する内容のことが考えられます。それから次に乗合自動車経営ということがどういうふうに行つておるか、それによつて事故原因があるかないかというようなことが大きく分けて考えられると思うのであります。それで第一の道路との関係において事故が起りはせんか、又殖えておりはせんかというような疑問があると思いますが、実は御承知でありましようが、最近建設省においては現在の道路状態から考えるといわば道路に対してオーバー・ロードになるような自動車がたくさん走つておるという見解から、狭い道路には小さい車しか通つてはならんというような制限を今考えておるようでありますが、これは自動車事業をやる者にとりましては非常な大問題でありまして、我々今それに対する対策を考えておるのでありますが、素人目には道が狭いから事故が起るというようなことも或る程度考えられると思いますが、実際は却つて道が狭い場合には特に注意運転をしまして、又そういう狭い道ですれちがうなどのときには、これは相当無理がかかつておりますから、お互に慎重な注意を払つて行きちがうというようなことで、勿論スピードも出せませんし、徐行で行き違わざるを得ないというようなことで、本当は私は狭い道だからそこで事故が特に起るということは考えられないのであります。むしろ七メートルもあるような十分余裕のある道路において安全だからというのでスピードを出して走る、或いは行き違うというようなときに却つて事故が起るというような場合もあるのでありまして、特に狭いからという原因事故が殖えるということは私としては考えられないと思います。  それから第二の車両の整備が不十分であるからして事故が起るということは、これは相当あり得るのでありますがこれについては業者としましては監督官庁からのやかましい監督もございまして、これは整備については逐次その状態を向上しておると思つております。それから次に乗務員の責任によつて生ずる事故、これの内容を考えてみますると、労働時間が適正であるかどうかというようなこととか、私生活においてたとえば前夜無理をしておらんか、又夜ふかしをしやしなかつたかというような問題があると思います。それから本人の運転技術の巧拙という問題があります。それから又定められた法規をその通りつておるかどうか、或いは速度制限を守つておるかどうかといつたような事柄が考えられると思ぅのでありますが、この労働時間につきまして考えますと、これは労働基準法に厳重な制限がございまして、現在乗合自動車としてはこれを厳格に守つておるものと認めております。業者としましては現在の規則が余りに厳重であつて事業上非常に支障がありますので、むしろこれを緩和してもらいたいという要望が非常に強いのであります。殊に車掌、御存じのように乗合自動車の車掌は殆んど全部女子でありますので、この女子に対する労働時間の制限、超過勤務或いは休日の問題、そういうことが基準法によつては非常に厳格に定めてありますので、これを厳重に守りますことは非常に業者としては苦しいのでありますので、これをむしろ緩くしてもらいたいという要望があるくらいでありまして、今日は労働時間については十分に無理のないようにやつておると思つております。それから次に申上げました私生活の問題ですが、これはどうも一々監督できませんので、前夜夜ふかしをしたとか、酒を飲み過ぎたとかいつたようなことがあつたためにひよつと事故を起したというようなことはこれは戒むべきことでありますが、これを絶滅するということもなかなか困難であろうと思われます。それから次に運転技術の問題ですが、これは運転手として常時精進しなければならん問題でありまするので、これについては一昨年から全国の運転競技会を催しまして、運転手諸君の技術の向上に資しておるわけであります。それからその次の法規の遵守、これもまあ厳重に行えば事故は大いに減るわけでありますが、なかなかこいつも完全に行われておるとは実は思われないのです。例えば特に大きな事故を起しますのは踏切の事故でありまして、列車と衝突するというようなときには大事故になりますが、これなどは明らかに法規を厳重に守つて、踏切の手前で一たん停車して線路に支障のないことを確かめてから運転するということであれば、先ず絶対にこういう事故は起り得ないのでありますが、これがときたまああということは、これは法規が完全に遵守されないという意味で、又踏切施設が完全でないという点にも原因はあると思います。それについては御承知でもありましようが、毎年秋に踏切事故に関する、踏切無事故月間と申しますか、そういつた特に踏切における運転操作の注意を喚起するための催しを例年やつております。これは全国的にやつております。まあ乗務員の責任に考えられるような項目はそんなことだと思いますが、これらの点について将来とも完全に行くようにやつたならば相当事故は減るんじやないかと思われます。  それから最後に、乗合自動車経営状態が無理が行つておるかどうか、経営状態の悪いことによつて事故が起りはせんかという問題がありますが、現在乗合自動車は全国に会社が約三百幾つかありますが、これは大体御承知でもありましようが、それぞれ自分の路線を持つておりまして、いわば或る一定区域は自分の縄張りになつております。勿諭独占ではありませんが、大体において自分の社の分野というものを範囲を持つておりまして、そのために他のハイヤータクシーであるとかトラツク事業のような甚だしい競争がない。それで大体において事業も安定しておる。勿論この交通事業というものは、御承知のように非常に利益の挙がる事業ではありませんが、併し乗合自動車などは景気、不景気にかかわらず、大体一定の乗客がありまして、特に景気が悪くなつたから、不景気になつたから事業状態が悪くなるというようなことがないという利点があるのであります。大体現在において全国的に見ますと、乗合自動車業界は安定しておると思います。従いまして会社従業員に労働時間その他において無理をする、労働条件が悪くなつておるということは認められません。それでまあ大雑把に申上げますと、私としては乗合自動車に関しては特に事故が殖えておるとは思つておりません。勿論年々運行します車両が一割五分か二割ずつ増加しておりますから、車両増加に伴つて或いは相対的に事故件数は殖えておるかも知れませんが、割合から見て従前より事故が多くなつたということは認められないと思います。  簡単でございますが……。
  11. 藤原道子

    委員長藤原道子君) 有難うございました。その次に大場近信さんにお願いいたします。
  12. 大場近信

    参考人(大場近信君) お断り申上げておきますが、実はバス関係としまして、私鉄関係から参考人を出す予定でありましたが、地方委員会のために予定された者が出ておりませんので、代つて私が出て参りましたので、本委員会の喚問に対するお答えになるかどうかわかりませんが、大体の要旨を申上げて御参考に供したいと思います。  バス関係といたしましては、定期路線と一般貸切、この中には観光バス等も含まれますが、私は先ほどの参考人が申上げましたように、バス関係にしてはあまり事故等は少いのでありますが、定期路線関係においては労働時間と申しますか、或いは定期的に時間割がきまりまして路面を走る関係上スピード違反その他についてはあまり起きていないのでありますが、どうしても一般貸切のうち、特に観光バスにつきましては非常に労働条件その他がハイヤータクシー運転手と同一な条件に置かれている点に問題があると思うのであります。  例えば、遡りまして、定期路線の面におきましても、ひどい乗務時間になりますると、七時間五十分も連続で走らなければならないのもあります。それから拘束時間におきましても、長いのになりますと拘束時間が十時間、短いので八時間という全国的なデータが出ております。観光バスのほうにおきますると二日も三日も連続で一両について一人が運転する関係上、二日乃至は三日間に亙つて運転をしているというような状態が出ております。そういう関係でどうしても睡眠不足その他の関係から、特にこの観光バスの点については労働条件或いは給与面について改善を図つてもらわなければ、安眠その他の問題から事故発生原因になるのではないか、こういう工合に考えられておるわけであります。  特に結論的に申上げますと、これらの陸運、路面運輸につきましては、個々まちまちなやり方でなく、国の政策としてこれらを統一して行くならば、労働条件につきましても東京における或いは田舎の山間地を走るものにいたしましても技術においては同じことなのでありますので、やはり同じ賃金とか労働条件に置かれなければならないという工合に考えられるわけであります。  従いまして先ほど申上げましたように、路面連輸につきましては国家の政策の上に大きく一つ計画的な下にこれを図りますると、国の経済の動脈といわれる交通運輸企業も本当にスムーズに行き、又その下に働いている労働者の生活条件というものも同一の下に待遇が置かれれば、自然的に尊い人命及び尊い財産というものが不幸な事故によつて消滅をするというようなことがなくなつて行くのではないか、こういう工合に考えられます。従いまして特に本委員会において諸先生方の十分なる御審議を願いまして、根本的な事故対策その他につきましてはやはり国の政治の下に交通運輸というものを統一した考え方で打ち立てて頂きたい。これが私としてのお願いであり、意見を申上げた次第であります。
  13. 藤原道子

    委員長藤原道子君) どうも有難うございました。次に橋本末吉さんにお願いします。
  14. 橋本末吉

    参考人橋本末吉君) 私の場合は、実はお電話を頂きまして、労働問題について懇談したいから出席を願いたい。ただそれだけの御連絡で軽い気持で出席したのでございまして、改まつた資料というものの持合せもございませんし、又今までのいろいろな御意見に対しましてこれを一つのもとにいたしまして考えた一端を申述べ、御参考になれば幸甚だと思つております。  今日の目的は事故の防止ということが主たる根幹のようでございますが、いろいろ先ほど来お説を拝聴いたしました事故の防止という問題につきまして、まあいろいろ原因があると思います。例えば経済問題を中心にしてのこれに関連する問題、或いは法的な問題、更に運転手の道義頽廃と申しますか、或いは技術の低下、従つてこれを法的権威によつて解決できるかどうか、これは不可能だと思つております。先ほども、厳重な処分によつてのみでは事故防止はできないという御意見がございましたが、誠にその通りだと思つております。先ず運転者というものにして考えるならば、先ほどの二重処分の問題もございまするが、これは私は二重処分でない、三重処分だと思つております。先ほど来二重処分だと思つておりましたが、これは三重処分にも考えられるわけですね。例えば非常に高額な罰金を科せられる。従つてこれによるところの経済問題に非常に大きな障害を生ずることも勿論でございますが、続いて就業停止、更に司法処分、いわゆる手錠をはめて拘引し、留置する、三重処分だと思つております。これは私法律というものを余り存じないのでございまするが、こういうことは一応憲法にも違反することじやないかというふうな考えを持つわけでありまして、飽くまでも道義の高揚或いは指導というものによつて良心的に職分を全うしなければならんというような観念に基いてこそ事故の防止ができるのではないか、かように考えております。  例えば警視庁を中心にしての安全協会、安全協会というものは各警察ごとに支部がございますし、更に運転者会というものの組織も持つておりますし、更に運転者のほうには事業者というものがあるのであつて、かような処置を講ずる前にやはり安全協会を通ずるとか、或いは警察を通じて業者に一応この面を知らしめて十分にその原因を納得せしめて、然る後に一応法の権威によつて処置すべきではないか。指導も又何ら通達もなく、法の権威によつてかような極端な処置を講ずるということは、反動はあつても必ずしも事故の防止のもとにはならないというふうに考えております。  それから法的な面にも非常に矛盾があると思つております。只今のように行政の行き過ぎ、又その半面法治国であるにもかかわらず法の行政上の非常に貧困性が又これらの一因をなしておるのではないかというふうにも考えられます。というのは、経済的の原因とか或いは資本の脆弱とかということも勿論でございまして、先ずトラツクの場合、又これを道路運送法という面から考えましても、道路運送法にははつきりその法の精神が謳つてあるのでございまして、又これに基いて許認可、いわゆる免許するということにたつておるわけでございまするが、資本の問題ということになりますると、非常に語弊があると思うのでございますが、現在のトラツク関係の許可というものを見ますると、大体その過半数というものが個人を対象にして申請がされ、許可になつております。これはその申請の資格においてはやはり資力、信用というものが一つの原則でなければならないと思うのでございまするが、現在トラツクというものの相場も、普通の新車ということを考えますると、一応百二、三十万円のものが相場になつておりまするが、かような場合に大体十五万か二十万の車を三台或いは五台購入して、これを白番号でいわゆるもぐり営業する。これが一応荷主というものを獲得して、次の段階に申請をし許可になるというと、これによつて非常に交通道義と申しますか、いわゆる遵法精神の冒涜と申しますかというようなことから非常に業界が混乱し、いわゆる生存競争というものより、生存闘争というような建前から非常にお互いが無理をして事業をしておるという関係も伴い、これのしわ寄せがややもすると運転手のほうに廻ると、そこに無理があり、事故原因を起すということも考えられるわけでございまして、又この免許の問題等につきましても、いわゆる道路運送法の運用というものにさような行政上の不備が非常に多い。又半面労働基準法、この場合も一応組織の整つた会社においてはこれを徹底的に枠にはめちまう、それから三両、五両の車は全然野放し政策であるというところにいわゆる業者の噛み合いというものが非常に立場の対立から、これもやはり運転手の面に関連を持つということ等がございまして、なかなかいろいろな法的な矛盾或いは行過ぎ、又タクシーハイヤー或いは乗合、トラツク等、それぞれの実情が根本から違つておる。すべての問題につきましてここで一概にこうすれば事故の防止ができるのだということはなかなかむずかしいと思つております。  要は、以上のようなお互いの国家政策として統一的な運営方法というような御意見もございましたが、やはり或る程度まで、会社の組織云々によらず、一応はすべての統一した法の線に乗せるということを以て業者の責任とし、又運転者に対しては飽くまでも遵法精神に立脚し、又道義の高揚というものの両面から指導育成して行かなければならんというふうに考えております。差当つて自動車の数は記憶はございませんが、トラツク協会の数字で見ますると、乗用車、トラツクというもののみを対象にして考えてみましても、戦後は七万五千台ですが、現在は五十五万四千台あると、従つてこれは警視庁の係のかたに伺つたのですが、自動車の殖える数と運転手の殖える数というものを対照すると、自動車の殖える数のほうが多いというのが現状だそうでございます。従いまして先ず東京の場合には鮫洲へ行つて試験をすればもう明日からその免許証一枚で立派な運転手だというような考えで、これがそれぞれの任務に就く、タクシーの場合には六カ月経過しなければ客を乗せて運転することはできないそうでございますが、トラツクの場合には今日免許証を修得して明日から運転ができるのだというような、非常に技術的においても誠に運転者としての資格のない者がたくさんおる。勿論法律的な面にも違反し、巡査に咎められ、罰金を納め、そしてどうやら運転手としての一人前な性格を持つわけでございまするが、そういうふうに今日免許証をもらつて、明日からもう荷物を積んでこの頻繁な道路を疾駆するというところにおいて又事故の大きな原因の一因があるのではないか、従いまして現状においてはいわゆる需要供給というような面を考えて見ましても、供給度のほうが遥かに凌駕しておる。いわゆる飽和点に達し、而もそこにお互いに葛藤的ないわゆるダンピング行為によつて営業行為を続けなければならん。運転手の素質が、そういう結果であるということによつて、そのすべてが事故原因に基くことに相成るのではないかということでございます。  車両の数から考え合せると、事故は決して殖えてはいないというような御意見も尤もだと思つております。併し私たちの体験から見ますると、必ずしも事故原因というものは不注意、その不注意というものはやはり技術の未熟、法の無視という二つに基因すると思つております。それから歩行者のことも先ほどお話がございましたが、申述べるまでもございませんが、安全協会、運転者協会、こういうものによつて春秋二回の安全運動実施の場合におきましてもいろいろの事故の防止に腐心しておるわけでございますが、如何に、ただ単に輸送事業を担当する業者或いは運転手事故の防止を強要しても、これはやはり歩行者というものに対するところの交通道義といいますか、交通法規を十分に知らしめると申しますか、いわゆる道義の高揚ですね。道義の高揚というものをこれをやはり一つの大きな運動にして、いわゆる全国民がこの交通事故を、いわゆる交通法規、法令、こういうものを十分に一応体得して、いわゆる自動車業者も、又これに対する歩行者、自転車、これらのものに対しましてもやはり一致した線でないことには、ただ法の力にのみ、或いは我々業者のみ、運転手に対する法的な力のみによつて事故の防止はできないと思つております。  いろいろ皆さんの御意見というものを取り混ぜて、私の取りとめのつかない意見でございまするが、大体以上申述べて御参考に供したいと、かように考える次第であります。
  15. 藤原道子

    委員長藤原道子君) どうも有難うございました。続いて小松崎隆次さんにお願いいたします。
  16. 小松崎隆次

    参考人小松崎隆次君) 先ほど伊坪参考人のほうからハイタクの運転者の現状の報告がありましたので、その点についてトラツク事業のトラツク運転手も同様であります。トラツクの性格として非常に長距離運転をする。これは定期に多いのでありますが、広島或いは姫路、そういう方面から東京まで走つて来ておる。そういう中で非常に長時間運転のために疲れる。それについて休むところもない、こういうところから酒を飲む、その酒を飲むことによつてこれは泥酔運転なり、或いは無謀操縦になる。そういう中で、これは例でありますが、関西でヒロポンを打つて運転をしておる、そういうようなところもあります。それから二十七年の道路交通法の一部改正で罰金制度の面について私たちが、二十七年の当時に過料というものがありまして、その頃には過料二百円から三百円、こういうようなあれでありました。現行はそれが過料項目というのが殆んどなく、最低罰金五百円から八百円、こういうようなつり上げによつて、それで我々の実際の生活権を脅かしておる、こういうような状態になつております。  それから現在の私たち生活状態はどうか、或いは給料状態はどうかと言いますと、大体五人家族で一万五千円から二万円程度、これはハイタク運転手よりも低いと思います。まして小型運送、これはオート三輪車だとか、それから小型四輪車、こういうものを運転する運転手では大体一万円内外、こういうような他産業に比べて非常に安い賃金で働いている状態であります。  それと同時にこれは取締りのあれになりますが、ほかの免許証による職業も多いのでありますが、二重処分を受ける、行政罰を受ける免許証保持者というのは運転手よりほかにないのであります。その罰金が先ほど申上げましたように最低五百円、この五百円もそのとき取締る交通取締官の心証によつて罰金、科料が非常に違う。それで罰金、科料或いは行政処分等を見ますと、二十日或いは四十日、そういうような就業停止まで一緒に受ける。こういう場合に就業停止を受けて罰金を支払う。その罰金を支払いたくても働くことができない、こういうような状態であります。これが全部運転手の負担になつて現われて来るので、我々の一万五千円から三万円程度生活状況では到底そういうようなあれも支払えないというのが現状です。こういうような事故をなくすためには労務管理がしつかり行われればなくなるのではないかと、こういう工合に思います。以上です。
  17. 藤原道子

    委員長藤原道子君) どうも有難うございました。  それでは今度は公益者側として三巻秋子さんにお願いいたします。
  18. 三巻秋子

    参考人(三巻秋子君) 只今労使双方のお話を聞いておりまして、お互いに内容暴露で、何だかそのしわ寄せを食つているのが利用者じやないかと、こう思うのでありますが、私たち台所をあずかつております主婦の立場から今日申上げますならば、不注意から起つた最近のあの相模湖の遭難事件以来、今度はタクシーかバスかと世評に上つているほどでございまして、毎日利用しております私たちはそれに対してひやひやしておる状態でございます。生存競争が激しくなればなるほど、この違反とけがは正比例することは確かでございまして、先ほどから両者がこれを認めていらつしやいます。  客の立場から今受けております被害とサービスの悪さは一般の定評でございまして、私たちみんなの者から実例を少し聞いて来たわけでありますが、それを少し申上げますならば、街に速度制限板というものがございまして、三十とか五十とかいう字が書いてございますが、あれはあつてなきがごときで、六十とか七十とかはもう普通のようでございます。流し運転をしますためにガソリンは無駄のあることは勿論で、乗せたら最後、私たちはまるで躍り上るくらいの状態でございます。若い人ほど危険でございまして、私たちは年寄りばかり探して乗るようなわけでございます。罰金の償いのために又違反するのだと今も、さつきも言つてらつしやいましたが、私たちから望むならば、周辺地区など行つてくれと言つてもなかなか行かない状態であります。雨の日には余計くれということを暗に強要します。釣銭はやらぬようになつておりまして、私たちが催促して初めてそうかと言つてとぼけて出すようにしております。殊に煙突行為はざらでございまして、降りるときに、「ああうつかり忘れておりました」ということも、事実私はそういう目に会いました。メーターがちよつと変なのじやないかという声も聞くのでありますが、そういう感じがございますが、七十円なら七十円のに乗りまして、七十円までは割合に長いのでありますが、そのあとからの早いこと、刻々にたつて行くような気がいたします。道が通れないという理由で、ちよつとしたところでも何だか遠道をされまして、着く前になつてすつと上つてしまつて残念だということはみんな感じておるのであります。夜など相乗りをやりましてみんなから百五十円ずつ取つているようなこともよく見受けます。又、女子供と見まして、最近実例もございましたが、場所でない所で停めてもらつてちよつと出たわけですが、そこへ後から出て来た自動車によつてちよつと自動車が故障をしたのでございますのに、女子供と見ましてこれに罰金として二千円を払わされた事実を知つております。これは事故防止のために最近車体の中に名前を書かなければならないのですが、それも書いていないのが大部分でございます。  次に事故最大原因を考えますならば、車体の点験と整備の不備によることは、これは勿論でございますが、ぼろ自動車のエンジンの故障で以て、これは困つた問題でございますし、その上に過労から居眠り、酒の上の運転、只今皆さんから申上げられたと同じであります。中にはポン中毒さえあるということを聞いておりますが、今も御証言になりました。その上に営業免許というものは大変杜撰でございまして、田舎から出て来たズーズー弁のあんちやんが地理不案内のために、目的地までまるでぐるぐる廻りして行きますので、急ぐ用事も間に合わない。而も特別運賃を取られることがあるのです。それは訓練の不徹底のために、免許が下ります場合には通例五千円かけて五日間通えば免許が下りるという話も聞いております。法規も取締規定もわからないまま街へ出された運転手が、信号を無視するのは勿論でございますが、街の真ん中に追いやられてしまつて、どつちかわからないでうろうろしているような状態であります。これは非常に悪口ばかり申上げまして申訳ございませんが、それは皆から集りました声であります。最近取締で警察のかたが即決裁判をしていらつしやるということでございますので、これは大変結構だと思います。  こう考えて来ましたときに、先ず運転手の質の向上が望ましいのでございますが、これは持ち逃げとか横領するとかということが大変多いという事実があることを私は或る会合で聞きました。これは一方的でなければ大変仕合せだと思います。その上に経営者と雇人との間に相当食い違いがあるように思います。先ず経営が成り立たないからうんと儲けて来い、それには経営面で金融の問題なんかに相当いろいろやつた事業に行詰りを来した。それを全部雇人にしわ寄せしているのじやないかという感じがいたします。そうして無理に働いて来いというのが今の実状だと思います。名義貸とか業界の利権争いに夢中になつている。今も御証言がございましたが、経営の合理化を忘れ、運転手の質の向上とかそういうことにはお互いに業者同士も横の連絡もなく、訓練も何もないのが事実だと思います。又安定せる労働条件が望ましいのでありますが、今のような二十四時間交替制は本当にどうかと思いますので、この際大いに半日制を研究したらどうかと思います。殊に給与体系が相当複雑であるということを聞いております。この会合に出ますためにちよつと車に乗りまして運転手に話しかけてみました。その結果から計算いたしますと、車にはそれぞれ基準の料金があるということを聞きました。それが八千五百円から七千円ということでありますが、そのうちの約二割が手取りになつているようですが、それが千四百円ぐらいになる都合でございますが、十五日働いて月二万一千円の儲けということになつておりますが、それに固定給会社によつてまちまちでございまして、二千円から一万円ぐらいあるようでございます。それを加えて、而もその上に手当をもらう。その手当がガソリンを上手に使つたガソリン手当とか愛車手当とかいろいろ複雑に亙つて、如何にも儲けて来いというような式の経営者のやり方、そういうものを合計すれば、或る程度相当にはなるでありましようが、危険な仕事をしていらつしやるだけに気も荒く、而も過労のために飲み代に金も使つてしまうので、家庭生活には余り持つて来ないということで、結局生活状態が余りよくないのじやないかということを経験しました。  私は素人考えでございますが、さつき月給制にはとてもならんと申されましたが、月給制にするとか、個人経営を認めてやるとか、又固定給を認めてやるということをすれば横領もなくなるし、過激な職業であるだけに厚生施設や福利施設をうんと見て、一時の休み場も、一軒でなければ何軒かの家で共通に作つてつてちよつとの間もそこで寝て、運転をやるようにすることが経営者としても望ましいと思います。一方的に責めるばかりが能ではございませんので、お互いに働きいいようにしたほうがいいと思います。これは本当に素人考えでございまして、誠に申訳ありませんが、最後に公益事業であり、人の命をあずかるような大切な仕事であることをよく御認識して頂きまして、社会悪の甚だしい現在においてお互いに、困るのは運転手のかたばかりじやございません、経営者ばかりではございません、今のデフレ時代は本当に誰も彼も困つておるのでございます。こういうときに業者側も本当にそれは注意しなけれぱなりません。先ほど交通道徳がないとおつしやいますが、それは本当であります。経営者もハンドルを握る人も、お互いが経営の合理化と待遇改善を図つて、飽くまでも人命を第一にやつて頂きたいということを強く要望するわけであります。当局に対して、一、二度の悪いことも放任するというような取調べであるということもございますが、これはやはり人命主義から言いますならば、私たちは本当にこれをうんと取締つて頂きたいと思います。  こういう点で、まあ交通道徳の点から申しますならば、ちよつとちぐはぐになりますが、先に右側通行に、左側通行ではいけないということに急に変えられました当時私たちは非常に困つたのでございますが、最近馴れて来ましたが、国鉄は未だに駅の中が左側通行になつているということで、これを何とかお考え願いたいと思います。右側やつたり、左側やつたりということで戸惑います。幸い本委員会でお取上げ頂きまして、結局意のあるところを必ずや各委員のかたが何らかの対策をお立てになつて頂くことを私は本当に期待してやみません。最後に利用者の立場を離れまして、女の立場として一言申しますならば、夫の体を案ずる妻の立場ということを、私は利用者の立場で人命を愛するというその立場と同じだということをよくお考え頂きまして、結局これだけ悪いことを申上げましたのは、運転手のかたばかり責めているのじやないということをよくお含み置き願いたいと思います。バスに対して、今日バスのかたおいでになつていらつしやいますのでちよつと申上げたいと思いますが、大型のバスが最近大きくなり放題でありまして、道路の狭い所は歩けない状態でございますので、これを新らしく許可するときには相当厳密な方法を考えて頂かないと、それこそ人の命は危いと思います。殊にそれに繋りまして、各業者が道に荷物を並べ放題並べておりますので、そういう点も道路の幅員という点で取締りをやつて頂きたい。まあ杜撰な考えでありますけれども、私は一端を述べまして参考にいたします。
  19. 藤原道子

    委員長藤原道子君) どうも有難うございました。恐れ入りますが、鈴木清さんにお願いいたします。
  20. 鈴木清

    参考人鈴木清君) 鈴木でございます。  最近におきます日本の都市、特に東京都等におきますところの交通事情というものは日増しに悪化の状態を辿つております。例えば東京都の中にどのくらい路面交通に携わる車両があるか、私どもの聞いております範囲におきましては少くとも十八万以上の許可を要する車両が動いておる、このように聞いております。この十八万以上に亙るような非常に厖大車両が毎日この狭い東京都区内にありまして、結果におきましていろいろ事故が起ります。この事故というものがどの程度つておるであろうか。この点昨日の朝日新聞を拝見いたしますと、本日ここに私持つておりますけれども、大体毎日三十何人というものがこの交通事故のために死傷をしておる、このように出ております。これを年間に直しますと、年間一万人の死傷者が東京都区内において警視庁の調べによるとある、このように書かれております。その中に特に交通事故によつて死亡されるかたが本年の一月から十一月の終りまでにすでに六百数十人という数にこれ又上つておる、このように記載されております。即ち一日二十人くらいの国民が東京都区内においてこの交通事故で死んでおる、このような状態になつておるわけであります。そういたしますと、如何に東京都内における交通状態というものが悪い状態になつて来たか、こういつた点につきましては十分皆さんが御理解を願えるところであろうと考えておるわけであります。なぜこのような交通事故が頻繁に毎日我々の身辺で起つておるのであろうか。この原因を究明し、この原因を十分に我々が議論をし合つて、将来このような事故が一日も早く減少さすことに我々は努力をしなければならんと考えておるわけであります。それにはいろいろ原因があるかと考えております。而も現在東京都区内に起つておるこの厖大事故の内容の七割乃至八割はハイヤータクシーによつた事故である、このように又調査の上では出ておるそうであります。なぜハイヤータクシーがそのように厖大事故を起すのであろうか、こういつた点につきましても特に探及をしなければならんのではないか、このように理解をいたすわけであります。この点につきまして原因はいろいろあるかと考えております。先ほどから参考人がいろいろ申述べました。例えば運転手の話、或いは経営者関係或いは道路関係車両関係、いろいろ事故原因というものはあるかと考えております。まあ併しながら本日の会合は、この交通事故と労働の需要というものの関係を究明されておる模様でありますから、その点について二、三私の意見を陳述いたしたいと考えておるわけであります。  私、現在東京自動車運送協議会委員をやつております。この自動車運送協議会におきまして、本年一月東京陸運局長から東京都区内における一般乗用旅客自動車需給調整に対する基本的方針の作成、これについて御諮問を頂いたわけであります。以後数カ月に亙りましてしばしぱ会合を重ね、答申を陸運局長にいたしました。この答えは、即ち当時この協議会で論議されましたことは、東京都区内においてハイヤータクシーというものがすでに飽和点に来ておるのではないか、若し飽和点に来ておるとするならば、如何にしてこの飽和点というものを調弊するか、こういう論議をいたしたわけであります。先ほど藤本さんが御指摘の通り、当時会合におきまして業者側の代表のかたは、この飽和点に達した、こういうことを以ていろいろ頻繁に事故が起る、或いは業者経営の内容が悪化の一途を辿つておる。要はここで車両の数をストツプすべきであるという、こういう提案が業者のほうから強力に主張されたのであります。併し協議会といたしましては、各界の代表がいろいろ論議をいたしました結果、答えといたしましては、東京都区内におけるこのような車両を直ちにストツプするというと、やはり道路運送法に示されます通り、公正な競争によつて公共の福利を増進する、こういう建前に立つとなかなかむずかしい問題であつて、直ちにストツプをするということは当を得たものではない。併しながら将来新規免許を許可するに当りましては、厳重な経理内容の計画なり或いは労務管理の計画なり、こういう内容について資格の審査をして許可をすべきである、こういう結論を答申をいたしたわけであります。自来東京陸運局におきまして、この結論に副つて陸運行政をやつて頂いておるものと私どもは期待をいたしておつたわけであります。この点につきましては先ほど藤本さんから若干の御意見があつたわけでありますが、特に私はこの事故原因といたしまして、労働関係の問題として先ず第一番に挙げなければならんことは、ハイヤータクシー運転手というものは一般交通の乗務員等と異なつた性格を持つつたものがある、このように理解をいたしております。労働事情と申しますと直ちに労働条件、即ち賃金なり労働時間なり或いは福祉厚生施設、こういう内容がハイヤータクシー運転手はどのような状態になされているか、こういうことになるわけであります。例えば労働時間の問題にいたしましても、本年、私本年中央労働基準審議会の委員をやつておりましたけれども、この中央労働基準審議会におきまして、労働大臣からの諮問といたしまして、ハイヤータクシー運転手を主に対象とし、即ち現行基準法四十条或いは規則二十六条というこの関係で、労働基準法施行規則の改正案が労働大臣から出されました。この改正案の二十六条の中で、乗務員、少くとも乗務員と名の付く者については、現行認められておるところの一日十時間勤務、一週間六十時間勤務、即ち一昼夜交替という勤務の制度というものはよくないものである。従つて一昼夜交替、即ち一日十時間勤務という勤務形態はなくすべきであるという労働大臣の諮問がで出たわけであります。この点につきまして中央労働基準審議会としてはいろいろ論議をいたしました。私どもの知つている範囲におきましては、現在の日本におきまして交通事業に携わつているところの乗務員はいろいろあります。国鉄或いは私鉄、或いは飛行機と、いろいろ乗務員があるわけでありますが、この中で一昼夜交替といつたような最悪の勤務条件仕事をしているところの労働者というものはハイヤータクシー運転手と、一部日通等におけるところの路面貨物自動車と申しますか、短距離におけるところの路面貨物自動車、このような乗務員が一昼夜交替の勤務をやつている模様であります。この一部ハイヤータクシーなり或いは路面交通、この乗務員に対する勤務というものが一日十時間、一昼夜交替といつたような勤務状態では無理だ、こういう労働大臣の御意見が出ておつたわけであります。この点につきまして、例えば乗務員の仕事の内容というものを考えますと、少くとも乗務員という仕事は国民の貴重な生命なり財産というものをあずかつて、その職務に従事しているものであります。その車の動いている限り一番緊張度が高い業務であると言わなければならんと思うわけであります。この点は労働者といたしましても明確に認め、そのように諮問をいたして参つたわけであります。少くとも日本で、而も乗務員でやつている一部のそういつたものにつきましては、密接に事故との関係があるので、将来こういつたものをやめたい、こういう意味のものがあつたわけであります。併しながら審議会といたしましては、いろいろ慎重審議をいたしました結果、労働省が出された諮問については改正をすべきである、こういう結論を出しましたが、いろいろな事情もございますので、直ちに改正をすることはいろいろな障害があるだろう、だから暫く状態を見て、この間にいろいろな諸問題を解決をして、その上に立つて一昼夜交替というものを乗務員に対しては全面的に禁止をする、このように結論を出しました。従いましてこれが具体的な改正の内容は労働大臣が別にきめる、このような内容で、大体結論としては出したわけであります。従いまして本年の七月一日からこの施行規則の改正が出されましたので、この七月一日から何カ月か、或いは一年ぐらいたてぱ当然ハイヤータクシー運転手なり或いは一部貨物自動車運転手に対しまして一昼夜交替が禁止されるのではないか、このように理解をいたしておるわけであります。  この際特に申上げたいことは、一昼夜交替の勤務というものが、甚だ何と申しますか、特殊な勤務でありまして、法律によりますと一日拘束二十四時間、即ちハイヤータクシー運転手等に聞きますと、朝の九時乃至十時頃に出勤をし、翌る日の九時乃至十時頃に帰るという二十四時間勤務の形態であります。この勤務の形態の中で、夜間四時間の睡眠時間は取らなければならん、このように規則の上できめられております。併しながらハイヤータクシー運転手諸君の実情をいろいろ拝見いたしますと、今のいろいろな事情の中で、夜間始んど寝ておらん。寝ておるにいたしましても、まあタクシーの中で仮眠、こういう程度の時間であつて、而も現実に運転手諸君の車に乗りましていろいろ尋ねますと、一時間とか二時間程度うつらうつらする程度であつて、殆んど寝ずつこで稼いでいるというのが現在の状態ではないか。従いまして先ず乗務員の生命といたしますことは安全が第一であります。こういう安全を確保するには十分なる休養を乗務員が取つて、迅速にお客を目的の地まで連れて行く、こういう立場が望ましいかと考えます。これには先ず乗務員に疲労を与えない、こういう立場から今の一昼夜交替の勤務というものを一時も早く、これを当時基準審議会で答申をいたしましたごとく措置をされることが望ましいのじやないか、このように第一点としては考えるわけであります。  第二点につきましては賃金の問題でありますが、賃金の問題もこれ又一般の労働者、特に交通企業関係の労働者と異りまして、歩合給が殆んどその内容を占めておる、こういう内容になつておると聞いております。一般の例えば国鉄なり私鉄なり、これらの従業員の賃金の内容を見ますと、やはり殆んどの大部分固定給、即ち基準内賃金で占めておりまして、若干の基準外賃金、即ち受取給なものがついておるわけであります。この点がハイヤータクシー運転手はまるつきり逆の状態にあるわけであります。従いまして御本人が一日中寝ずつこで駆け廻らなければ御本人の生計というものは維持ができない、こういう立場に追い込められておるわけであります。この点につきまして、先ほど申し上げました自動車運送協議会におきましてもいろいろ論議をいたしまして、私どもの意見といたしましては、少くとも一般の国鉄とか私鉄とか、こういう乗務員並みとは申さないけれども、総収入の半分くらいは固定給を以て確保すべきではないか、こういう意見を申上げまして、大体これが趣旨につきましては御了承になり、監督官庁において今後指導を頂くようになつておるわけでありますが、現状はまだ私が今申上げました通り、先ず固定給が明確に付いておるというのは二、三の大会社、而も大体総収入の半分くらいしか付いておらん、その他の大部分会社、大部分運転手というものは先ずまるつきり歩合給であるか、或いは固定給が付いておつても二、三千円くらいしか付いておらん、こういう関係になつておるものと聞いております。従いまして運転手という者は年中生活の不安というものを感じながら一日中車を飛ばして稼いでおる。こういうのが現在の実態じやないかと考えております。従いましてこの点につきましても本委員会で今後の十分な措置というものをやつて頂くことがこれ又事故に対する大きな関係ある問題として考えて頂きたいと思うわけであります。で、そういう意味におきまして、賃金なり或いは労働時間なりというものは他の同じような職務に従事している者と大きく特に変つているという点につきましては十分御理解を願つたほうがいいのじやないか、このように考えております。  更に福利厚生関係に至りましても、始んど現在のハイヤータクシーの内容ではございません。夜間勤務をやつても寝る休憩室というものはろくにないし、更に休養時におけるところのいろんな福祉厚生関係というものは先ず殆んどございませんと言つても過言でないほどであります。そういう内容におきましてこれ又乗務員という者がいつも身体が不安の状態に置かれておる、こういう言い方がそこでできるのじやないか、このように考えるわけであります。そういう意味におきまして、特に事故と労働事情という関係は今申上げた二つの勤務時間或いは賃金、こういう問題との関係に大体尽きるのではないか、このように考えますので、これらの点につきましてば今後法的な措置或いは行政官庁におけるところの指導的な措置、こういう措置をやつて頂くことによつて我々の望むように交通事故というものは逐次減少の途を辿つて行くのではないか、このように理解をいたすわけであります。  特にここで申上げたいことは、私たまたま国鉄の仕事関係をいたしておりますが、国鉄におきましてもいろいろ事故がございます。併しながら国鉄における事故の計数というものを申し上げますと、少くとも今の国鉄におきまして従業員か平均三十年勤続といたします。この従業員一人が三十年勤続をしているうちに一回責任事故を起せば、現在国鉄が起している事故は更に増大する、こういう数字になつております。言い換えれば三十年の間に一遍も事故を起さん、こういう数字が国鉄の事故の数字であります。こういつたものを私鉄或いは他の乗合自動車等の事故率というものから比べてこのハイヤータクシー事故率というものは極めて驚異に価するほどの事故の件数に上つておるわけであります。そういう点につきまして、いろいろの原因というものがこれ又あるとは考えておりますが、特に労働問題として私が今申上げました点につきまして慎重なる御配慮を頂くことを最後にお願い申上げまして私の陳述を終りたいと考えております。
  21. 藤原道子

    委員長藤原道子君) どうもいろいろと有難うございました。それでは皆さん続いて御質疑に……。ちよつとその前に申上げたいと思いますが、只今労働省警察庁運輸省東京陸運局が見えておりますので、御質問もここを考えてお運び願いたい。それから更に警視庁の後藤田さんが一時から退席したいと言われておりますのですが、先に……。
  22. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 先にやります。
  23. 藤原道子

    委員長藤原道子君) では御質疑をお願いいたします。
  24. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 じや私ちよつと一時までに終るようにいたします。今各それぞれの立場から参考意見を拝聴いたしますと、いずれも交通事故は多くて困るけれども、何とかしなきやならんと言つておりながら、どうも結局は国のほうでまあ何とかせよと、こういうことになることだと思いますが、併しまあアメリカにおきましてもあれだけ自動車がありますと事故があるので、これはまあ文明の一つの病気だ、社会病だと、こう見なけれぱならんけれども、だからといつて軽視するわけには行かんので、少しでも少くして行かなければならん。そういう立場一つお聞きするのですが、先ず第一番に業者かたがた一つ自主的にこの事故防止一つ取組む、こういうふうな態度を持つてもらわなければならんと思うのですが、そこで一番にお聞きしたいのですが、この名義貸というこれが一番悪質なものだと思うのですが、先ほどから言われておりましたが、この名義貸というようなものは結局自動車自分で買つておいて、そして経営の衝には当らずに運転者諸君に月二十万なら二十万、これで儲けるだけ儲けて来い、こういうふうに貸し与えるのを名義貸と言うのですか。この点について実態をもう少しはつきりして頂きたい。藤本さんから一つお願いしたい。
  25. 藤本威宏

    参考人藤本威宏君) ちよつとお答え申上げます。名義貸というのは非常に広い意味がたくさんあるのでございますが、まあ名義貸の広い意味の根本は、先ほど言つたいわゆる経営放棄ということだと思つております。で実際行われておる形態というものは、先ほど伊坪さんからも話がありましたが、車は会社のものでないのです。会社のごとく見せかけて免許を取つて、そして実際はその車は会社のものでなくして、各運転手車両主の車なんです。車両主から車を持つて来たのを会社の車のごとく見せかけて、帳簿上もそうして、それでそのときに名義料を十万とか十五万とか二十万とか取るわけなんです。あとは月々三万なら三万取ればあとは何をしてもかまわない。帳簿だけごまかすのが会社仕事だ。いわゆる正規に収入があつて正規に払つたがごとく帳簿には見せかける。これがいわゆる本当の意味名義貸と言われております。それに準ずるものでまだあるのは、いわゆる賃貸制といいまして、会社に、これは会社の車なんですけれども、会社に一日幾らつて来ればあとはお前の収入だ、取り放題取つていい、こういうようないわゆる賃貸制度、これはいわゆる本当の意味名義貸に準ずるものでございます。更にそれに途中の形態がありまして、それは会社が半分金を出そう、車両主は半分金を出す、両方で共通して車を持つているという形態もございます。非常に形態がまちまちでございますが、この特に交通事業として一般市民に与えておる大きな影響から考えて見ますと、要するに経営放棄、いわゆる野放し、こういつたことが名義貸制度の一番大きな社会悪の問題でございます。従つて例えば事故をして何か賠償金を取られるというときになつたら会社は逃げてしまうわけです。これは自分のものではないのですから逃げてしまつて車両主が自分でやらなければならない。車両主は名義料だけ納めて、自分でガソリン買つて自分で修理して、自分でそういつたものは全部払つて行くというのはそういうことなんです。従つてこれは悪質というか、大衆に対しては今言つたような悪影響を及ぼすし、いわゆる道路運送法から言えば料金をダンピングする、いわゆる先ほど三巻さんからたくさん御指摘になつたことの大きな部分はその辺にあることは、もうかまわないからお上りさんと見ればふつかけて取る、東京駅から上野まで行けと言うと、ぐるぐる廻つてとんでもない所から行くとかいろいろありましたが、あれは結局そういうところにたくさんあつて、これは戦前の雲助と同じことです。戦前の雲助時代にそういつたことがありました。それを今一歩々々脱却して、道路運送法を守つて正規の運送業者が正しい交通事業に持つて行きたいと思つているのにそういつた癌があつて、それを現在陸運局と労働組合のほうと一緒になりまして、名義貸征伐を大々的にやつているわけです。一月の五日までですが、まだ時間がありますが、更にこれを馬力をかけて、あらゆるところから情報をとつて整理しようと思つて大車輪になつて今やつている最中でございます。
  26. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 今のお話を聞いておりますというと、陸運局のかたにお尋ねしたいのですが、割合にこれは整理整理と言つては語弊がありますが、取締ろうと思えば取締り得る問題だと思つております。免許制度というものは免許のしつ放しではない。従つてこれは監査もやらなければならない、或いは聞き込みその他で立入検査も、陸運局の、道路運送法の中には立入検査も認められているように私は思つているのですが、ああいう条項を活用すれば、この名義貸制度ぐらいは簡単に、簡単にとは行かないけれども、少し努力すれば摘発してこれは統制ができると、こういうふうに考えるのですが、陸運局の御説明を願いたい。
  27. 蜂須賀国雄

    説明員蜂須賀国雄君) 名義貸制度でありますが、只今藤本参考人からお話がありましたように、名義貸の実態は非常に複雑になつておりまして、いろいろ噂がありまして、こちらから調査に参るのでございますが、帳簿は我々は見ることができますが、本人に対して拘束したりするいろいろの調査権はありませんので、会社の帳簿、その他から推定して証拠をつかむということはなかなかむずかしいのであります。殊に最近は二重、三重の帳簿ができておりまして、帳簿面からは全然名義貸というものはだんだん巧妙になつて参りまして、ぼろが出ておりません。ただ車両主のところへ参りまして、車両主と経営者と話合いがついていないという場合には車両主から発見できる場合もありますが、特に車両主と経営者がお互いにぐるになつておりまして、そうしてやつておる場合には、こちらが調査権というものは非常に限定されておりまして、なかなかむずかしい面があるような状態でございます。勿論これにつきましては一番よく知つているのは経営者でございまして、経営者の協力があれば御指摘のように上手に行くのではないかと思います。ただ経営者のほうで、現在やつているように経営者側にも協力を願いまして、そうして整理を遂行して行こうということでやつておりますので、経営者側の協力が十分得られるならば相当の効果が得られると私は考えております。
  28. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 この点をお尋ねするのは、これは運輸委員会仕事のようでありますが、事故が起きる、事故原因労働条件が悪いから起きる、そうすると労働条件が悪くなるは何か、悪質業者があるからだ、そうすることになりますと、悪質業者の退治ということもやはり追及して考えて見なければならん、こういう関係から労働委員会から御質問するのですから、あらかじめ御了承願つてお答え願いたいと思うのであります。そうすると、藤本さんにもう一ぺんお尋ねしますが、あんたのほうでは協会というのはあるのですか、名義貸をしておるものでも協会員には入つておるのか、入つておらんのか。そういうのは協会へ入つてないのか。入つてつたならば、協会員であれば、あの人は名義貸だということくらいは、玄人だつたら、本当の正しい業者か何かぐらいのことはおわかりだと思います。この点どうですか。おわかりにならんですか。
  29. 藤本威宏

    参考人藤本威宏君) この件に関しまして、現在協会には名義貸の会社もたくさん入つております。ただ我々といたしましては、現在の立場はおつしやる通りでございまして、いわば協会内でみずからその仲間を摘発するといぅことは、極めて人間的にいやなことでございます。併しながら事態ここまで至りまして、これではどうにもならない、みずからこれはやろうということで、現在これは強引に摘発をやつております。実にこれはいやな仕事なんでございますが、今言つた公共にも大きな害悪を流し、或いは正規の業者にも非常な被害を与えている現在でおきましては、もうこれはどうしても追い込み運動をしなければならんということで、現在陸運局長から整理委員会を作つてくれというような話がございまして、それを現在協会内でその委員会を作つて摘発をやつております。それでこれは官庁ともよく連絡し、又労働組合のほうともよく連絡いたしまして、現在先ほど蜂須賀さんが言つたように一番知つているのは運転手諸君であり、経営者なんです。如何にごまかしても、ここだけはなかなかごまかせないものでございます。従つてそういう点から積極的に呼ぴ出しては、どうだお前あるのじやないか、出せ、そういうところまでやりまして、現在十月五日から一月五日までにきれいにするような努力をしておりますが、先ほど伊坪参考人からのお話のように、現在まだそのうちの一部しか出ていないが、あとの追い込みを現在一生懸命かけて、一応一月五日までにやつて行こう、こう考えておるのでございます。従つて名義貸は確かに蜂須賀さんのお話のように官庁だけでは非常に困難だということは存じております。従つてたち業者全体も官庁と一緒になつて、この件は今整理する段階にあつて、これはもう少し時間を見て頂きたいと思つておりますが、ただ私申上げたのは、悪質業者がいるから、これは困るのだというだけではないのでございます。これは先ほど言つたように大阪と比べて見られてもはつきりしているし……。
  30. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 それはあとで。
  31. 藤本威宏

    参考人藤本威宏君) それはあとでしますが、名義貸の話は以上、大体その通りになつております。
  32. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 名義貸をやつておる業者はうすうすわかつておりながら、協会員として協会の加入費、その他も納めておるから、なかなか人情として手はつかんというのだが、やはり事故をなくしよう、それから運転手諸君の待遇もよくしようという場合には、そういう悪質者から先ず一つ淘汰して行かなければならん。その悪質の人たちを協会員に認めておきながら、飽和点に達しておると言うが、先ず悪質の人からやめてもらつて、いい人を多くしてもらう、そういうことはやらなければならん。それは相当涙をふるつてやらなければならん。又運転手会のほうにも協力を求めて、運転手さんのほうからもそのために職を失うものは俺のほうで何とかするからというくらいにしてやつて行かなければならん、そういうふうに私はお願いしたいと思うのです。  次に先ほど三巻さんから大分痛烈な御批判がありましたが、我々の見るところでは、まだ東京都、これはおべつかを言うわけではないが、東京都はいいと思うのですが、ハイヤーに乗つても、僕はサービスはいいし安いと思います。東京は何と言つても一番安いと思います。地方へ行きますとひどい。東京都は一応安い。それで安いというのは業者も多いからだと思うのですが、業者が多いので、競争しているから安く勉強するのじやないかというふうに思えますが、併しこれではもう飽和点で、もう少し少くしなければならんということになりますると、三巻さんが先ほど言われましたように、雨が降つて来る、東京駅で乗ろうと思つてちよつと日比谷へ行つてくれと言つても、いやちよつと困る、新宿か池袋なら行くけれども、日比谷くらいではちよつと困るというのが、以前にはあつた。最近は殆んどそういう人もなくなつたのですが、これを少くしますと、だんだんそういうことになるのじやないかということを恐れるのですが、この点はどうなんですか。業者が少くなる代りに、車両の台数でもそういうことのないようにして、そうしてこれ以上殖やさんということはわかるのですが、それは保証されるかどうか。
  33. 藤本威宏

    参考人藤本威宏君) この点はいつも一般のかたの誤解があるのですが、現在東京都は非常に安いというお話を伺つたのですが、これは料金が安いのであつて、いわゆる運輸省で認可されておる料金自体が安いのであつて、これは煎餅屋とか菓子屋と違つて、競争があるから安くなるものではございません。これは丁度考えてみてわかりますことは、電車の料金やガスの料金を御覧になるとわかりますように、これらのものは殖えたから安くするとか高くするものじやないのでございまして、料金は飽くまで原価主義から出ております。原価計算から何ぼにするのが妥当であるということが出て来ると思います。それで経費のほうは、先ほど言つた二十二円四十銭というものは出て来ておるのでございます。結局収入のほうはこれに伴わないというところに問題があるのでございます。従つて私はここではつきり言えることは、逆に車両が減つていわゆる百キロ走りまして、現在のところは四十キロしか乗つてくれません。あとの六十キロは貴重なガソリンを空費し、貴重な外貨で買つた車を空費して、現在タクシーというものは走つて、これがせめて五十五から六十まで、百キロのうち六十キロお客さんが乗つてくれるという状況まで来ました場合には、私は逆に言つて、料金を下げても採算がとれるから、下げられると思つております。これは逆でありまして、この料金制というものは原価から割出して来ておる。原価と収入から割出して来ておる。従つて私は今言つた少くとも二十二円以上になる、百キロ走つて五十キロから六十キロお客さんが乗つてくれれば、逆に安くしても間に合うのであります。かかる費用は同じでございますから、私はこれは国家的に見ましても、これは非常に詰らん話であつて、現在百キロ走つて、そのうち六十キロが空費されておる。ガソリンも使われておる。自動車も無駄に使われておる。又運転手さん自身から言つても、百キロ走つて本当に仕事をしているのは四十キロだけなんですから、こういつた馬鹿げたことをしなけれぱならんということは、国家的に見ても詰まらん話だし、同時に殖えれば安くなるということは、これは今一般的に言う煎餅屋、菓子屋の話であります。自動車の料金に至つては、殖えれば制限することによつて安くできる根拠ができる。そうすれば運輸省と話合いまして、それじや安くできるのだから料金を下げろ、違反者は取締る、これは公共的から言つたら大きなプラスになると思うのであります。この辺どうかその点でお考え願いたいと思います。
  34. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 次に飛びますが、警察のほうで急いでいるそうですが、ちよつと一点お聞きしたいのですが、今二重処分、或いは橋本さんのごときは三重処分だとこう言われたのですが、やはりこれは厳重に取締るだけでは、これは事故防止にならんこういうふうに私たちも思いますので、或る程度の温かい手で一つ指導して行くというふうに一つやれないものかどうか、そのやり方の、これは素人考えでございますが、例えば一例を挙げますと、運転手の諸君がみんな免許を持つておるものですから、警視庁では名簿をわかつておるものですから、いろは順に整理しておけばわかる、それで一回スピード違反、追越し違反がある、幸いえらい事故はなかつたけれども、事実それは違反行為を行なつたというときには丸をつけて、これは運転手会というのを組織をさせて、ここへ通知をする、運転手会のほうでは、お前一遍やつたのだから十分に自主的に、一つ今度をやらんように、或いは二回目やつたら再び通知する、三回目になつたら初めて裁判にかけて処分するというように少し温かい——それが月に三回にもなつて来るということになるとちよつと放つておけんというぐらいまでの手心を加えてやるぐらいのとこまで行けるか行けんか、この点を一つ警察庁のほうから御意見を聞きたいのです。これはあまり素人考えかもわかりませんが……。
  35. 高見沢万吉

    説明員高見沢万吉君) 課長が止むを得ない用事で帰りましたので私からお答えします。  只今のお話でございますが、数字的に申しますと、交通違反を犯したものを全部警察といたしましては送致をしているということではございませんし、それからその殆んどについて行政処分つまり免許の取消、停止を行なつているということではないのでございます。ご参考までに申上げますと、昭和二十八年におきまして交通違反を犯しまして取締を受けた者は全国で四百八十七万件でございます。そのうち警察といたしまして送致をいたしましたのは九十二万五千でございます。これにつきまして検事が起訴いたしましたものについて、司法処分が行われていると思うのでございます。それから行政処分でございますが、このうち免許の取消、停止を行いましたのは約四万五千件でございます。これは行政処分につきましては、悪質なものというものについて警察署長の内申が公安委員会にありまして、公安委員会がこれを審査いたしまして処分をいたしているわけでございます。数字的に見ますると、そのような状態でございまして、これは大部分のものについて処分が行われておるものではないということを一つ御了承願いたいと思います。
  36. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 先ほどからの参考人意見を聞いておりますと、大分その取締が厳しくて、罰金刑等を受けますと、すぐ千五百円の罰金刑が来るというのですが、これは四百八十七万件の中で九十二万件だけはその罰金刑なり何なりを受けたと、こういうのですか。
  37. 高見沢万吉

    説明員高見沢万吉君) これは警察といたしまして検察庁に送致をいたしました数でございます。その後は検事が取調をいたしまして、起訴不起訴を決定し、なお、起訴いたしましたものにつきまして、裁判所が判決を行うということでございます。
  38. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 そうすると、検察庁に送られる場合には、何回も同じ人で同じような違反行為をやつたからして送致をする、こういうふうになつているのですか、その大体の水準と申しますか、それはいろいろのケースはあるだろうと思いますが、どういうケースで送られることになつておりますか。
  39. 高見沢万吉

    説明員高見沢万吉君) 大体地方におきましては、運転手さんの顔も覚えておりまするので、二、三回犯したものというものについて送致をしているのではないかと思います。又巡査が警察署長に報告する場合でも、これは初めてで止むを得なかつたというものにつきましては、警察署長に対する報告自体がそう行われていないかと存じます。そこで絞りまして、なお警察署長も送致をするについては、そういう点を考えて送致をしていると思うわけであります。それからそういう運転手諸君の顔見知りでない所におきましては、事案の内容について巡査が違反を報告し、又違反報告を受けたものについては、警察署長が送致の手続をするというふうに考えております。
  40. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 今度は受けるほうの伊坪さんにちよつとお伺いしておきたいと思うのですが、例えばもう少し、この二重処分というものを、これは困るということを非常に強調されておるので、でき得るだけそういうことのないようにするためには、例えばあなたのほうで提唱されまして運転手会というようなものが結成されておられるというのですが、自主的に警察単位ぐらいな意味一つ結成されまして、まあそういう所で人を使うということはなかなかできないので、いろいろ休日等に働かなければならんということになつて、これは非常にむずかしいだろうとは思います。併し最初のうち事故をなくして、警察のほうでも取締る必要のないくらいにするためには、少し休み時間等を利用しまして、寄り合つて自主的に統制して行く。警察のほうから話があつた場合に、運転手会のほうで、これはもう何回も起したので仕方がないと認めたり、これだけは一つまだこういう事情があつて止むを得ず引つかかつたものであるから、二度目は気をつけろということで、あなたのほうでもらい受けて、再び起させないようにするということを、逐次一つモデル・ケースに、一番多い警察管内にでも設けてやつてみる、こういうことはできるものですか、できないものですか。
  41. 伊坪福雄

    参考人伊坪福雄君) その面は安全協会というのがありまして、警視庁から来て頂いて、いろいろな面に対して、事故防止に対する講習会があるわけでございます。そういう面をやつておるわけですが、そういう面で運転手会というのは現在あります。これは労働組合が大体さいぜん申上げましたようにも東京都内で八千名、それからあとは二万六千ほどハイタクのほうの従業員がおると思いますが、これは組合が今言つたように私の推定では二百八十社のうちで二百以上が名義貸の会社なので組合はなかなかできない。そういつた意味で組合以外には運転手会というものはないので、交通安全協会のほうでは運転手が警察単位に入つておる。  もう一つ今の私のほうで述べたいことは、二十七年だと私は記憶しておりますが、参議院の地方行政委員会に出まして、二十八条の項目の中に無謀操縦という点があります。これは構造、装置の故障した車を運転したり、それから酪酊して運転したり、無免許で運転したり、速度を違反した場合、こういうようなことをやつた場合においては、三カ月以下の懲役であり、五千円以下の罰金ということになつておるという、この二つの項目しかなかつたわけです。これを地方行政委員会に私ロ述いたしまして、議員の方々の御努力によつてこれが改正願つて、その中に科料という項目ができたわけです。その当時は科料だと二百円か三百円です。当局としては真向うから反対したのです。厳重処分しなければ駄目だ。ところが通つてしまつて科料という項目がその中に挿入されたのです。ところがその通つたあとにおいて、どういうことを取締の面においてやつておるかというと、二百円、三百円というのはどう探してもない。科料を受けているのは全部五百円から八百円です。科料を値上げしてしまつた。そういう根拠がどこにあるかと私は問いたいのですが、そういうふうに値上げしてしまつたのです。労働者の科料という項目を挿入してもらうという意図に反して、私に言わせると反動的に値段を二百円から三百円だつたものを、五百円から八百円に上げてしまつた。そうして科料という項目をごまかしてしまつた、こういう面が出ておるわけです。それで即決裁判手続法案が昨年の十二月に公布になつたと思うのですが。その場合にも、そのようなことのないようにと十分私たちは衆議院に出ましてロ述し、議員の方々も附帯条項がついておるわけであります。それが、即決裁判法が出たあとにおいては、これは十キロ千円であつたものが千五百円になつた。そうしてさいぜん申上げましたようにまちまちなので、十キロ、オーバーで千円の人もあるし、或いは十日就業停止を受ける者もあり、挙げて運転手のみにそのしわ寄せがなされておる。そういう問題については、何を物指としてこういう不当科料に持つて来るのか、その面を却つてお伺いしたいのであります。
  42. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 次に藤本さんも言われましたように、一日三百五十キロから四百キロくらい走らなければ、なかなか一家の生計を立てる収入を取るためには、そのくらい走らなければならない。そうして岡崎、名古屋間というものは、仮に乗つておるだけでも、運転せずに旅容として岡崎まで乗つて行くことでも大変疲れてしまう。又運転手たるや、その疲労度というものは、これは相当な疲労に私はなると思うのです。そんなようにやらなければならないというところに一番これは無理があると思うのです。そんなえらく走らなければ儲からん。それには車が多過ぎる。いろいろあると思いますが、そういう点から検討しなければならない。取組まなければならない問題だと思いますが、そこで、そのような過重労働をやつておる運転手諸君の給与制度ということについて、これは伊坪さんにお伺いしたいのですが、退職金制度というものは確立されておるものかどうか。  それから第二には、公務傷病の補償、自分事故の責任はなくとも、相手が例えば外国の車の輪の大きなやつで、アメリカ軍の車にぶつかつたとか、或いは相手が日本人でもトラツクの大きなやつにぶつかつてしまつた自分がハンドルを切りそこなつたわけではないけれども、向うが規則違反したため自分がハンドルを切つたために街路樹にぶつつけ、それで傷を負うというような場合の公務上の傷害、或いは疲労によつて、このくらいの労働をやつておれば長続きはしない、だから肺結核になるというような人も相当多いと思いますが、これらの人に対する補償というものは、これはせめて組合に加入しておるような会社においては、できておるものであるかどうか。公務員並みに行かないにいたしましても、大体それに近いような補償ができておるかどうか。  その次に、有給休暇、一週間も働けば一日か二日くらいは寝なければ、私はあとは回復できないのじやないか。続いてはとてもやれんと思いますが、有給休暇というのは、基準法に基いたところの有給休暇は完全に大体賦与されているものかどうか。  それから次に共済制度、これは共済組合のような、国家公務員の共済組合といつたものに相当する共済制度というものは、これは使用者側も負担をし、又組合員も負担しての共済制度、これは業界をプールしてでもいいが、一社単位でやつておるかどうか、そういうものができておるかどうか。  それから次に、やはり先ほどから使用者のかたも言われるように、まあ道義の昂揚という言葉で言われましたけれども、やつぱりこれはお互いに重要な、おれは運ちやんだというように考えずに、これは本当に重要な仕事、人命を預り、社会になくてはならない重要な仕事をやつておるのだという自覚は、仕事に当つてつてもらわなければならないと思いますが、これらに対する相互に教育し合う、こういうような制度ができておるかどうか、これを一つお伺いしたいと思うのですが、この五点を……。
  43. 伊坪福雄

    参考人伊坪福雄君) 最初に傷害の面ですが、傷害を受けたときに、或いは個人の過失によつて傷害を起した場合、或いは相手からぶつけられた。結局個人の責任ではない、運転手の責任でない事故、こういう面に対しましては、これは私たちも二百八十社あるうちに五十の組合しかないのですから、そういう面で私個人のところを言いますと、相手からぶつつけられた場合には、当然本人の責任ではありませんので、不問ということになりまして、それに対する傷害を受けた場合においては、災害補償法だとか、会社のほうの規則の中からやつておりますが、全般的な面から見たならば、私はこれはやつておる会社は少ないと思う。あらゆる事故に対して乗務員が責任を負つておるという姿が非常に多いのじやないか。但しこれは二百八十何社ある中に五十社しかないのですから、全般的な面では言えませんが、いろいろな状況から判断しても、挙げて乗務員に責任を負わされておるところが多いのではないか。但し、組合のあるところは、私の申上げましたように大体話を進めておるのであります。
  44. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 三月休まなければならないというところには、一月分の平均賃金だけは補償されるようになつておるのですね。
  45. 伊坪福雄

    参考人伊坪福雄君) それはなつております。私たちのところでしたら、三カ月分補償という形で全部出ておりますから、三カ月分ですね。そういうような事故によつて休んだ場合、公傷の場合には幾ら。大きな会社の場合です。併しながらこれはすべてではない。ちよつと例にとるわけには行かないので……。
  46. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 肺結核になつて休まなければならないという不幸な人もできて来ますね。そういう人はどのくらいあるでしようか。大体傷病給付がなされておりますか。そういうことでないときは……。
  47. 伊坪福雄

    参考人伊坪福雄君) そういう面で各会社とも労働協約の中から打ち出されておるということです。
  48. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 大体できておるのですね。
  49. 伊坪福雄

    参考人伊坪福雄君) できていないでしよう、こういう面は。
  50. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 肺結核というものは一番職業病として多いとみなければならんと思う。夜遅くまでこんな労働をやつておるのですから、若い人になる人がある。そういう人が六カ月以内くらいまでは休養しても、或いは半分給料はもらえるとか、或いは三分の一——それ以上になつたら三分の一になるというような、そういう制度ができている会社はどのくらいありますか、五十社のうちで。
  51. 伊坪福雄

    参考人伊坪福雄君) その面はちよつと調査ができないのです。大体健康保険法の範囲内くらいしか適用していないと思うのですが……。  それから共済の面でございますが、共済の面も今申した通り、二十四時間も働くのに寝る施設もないというような状態なんですから、恐らくこの共済の問題も、やはりこれは特定の組合でも作つている以外には、これは調べてみても全然そういう施設はないと思います。
  52. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 有給休暇は……。
  53. 伊坪福雄

    参考人伊坪福雄君) 有給休暇の面も大会社との交渉の中から折衝をやつておるので、組合でも作つているところは労働協約の中に織込んでやらしておりますが、組合のできてないところは叩き放題で以て、二割の歩合ですから、勿諭この有給休暇というものをよしんば作つてつたとしても、二割なら二割の歩合で以て出されるのですから、働かなければ食えないというので、よしんば作つたとしても有名無実だと思うのです。そういう面からこういうものはないといつていいくらいで、特定の組合のある会社だけは会社との協約の中から、こういうものもできておると思う。その一つの例は、私たち全国旅客自動車組合で労働協約の基本案というものを出したわけです。そうしたところが、これに対してハイタク業者がどういう会合を持つたかというと、聞くところによると、労務委員会というものを作つて、今の基準法はハイタク業者には合わない。基準法を直そうじやないかという本末顛倒したところの会議を持つたことがあつたわけなんです。そういう面からみても、これは今の質問の中に織込まれている問題も、挙げて組合でもないところは全然適用されてないということが私は言えると思う。
  54. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 退職金制度……、
  55. 伊坪福雄

    参考人伊坪福雄君) これも私の知つている範囲では二、三十しかないと思います。制度をとつている会社は。
  56. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 それでは藤本さんにもう一点だけお伺いして、私他の委員に一応お讓りしたいと思うのですが、やはりあなたも今言われましたように、能率を上げるということ、即ちできるだけ行き帰りともお客があつて、せめて百キロ走つたならば六十、或いはそれ以上くらいまで空車で走ることのないようになればいい、それがためには車が多過ぎると言われるのだが、これ以上どんどん殖えて行たら、ますます今伊坪さんから言われましたように待遇の面、これはどうしてもそこへしわが寄つて来ると思う。これを上げようと思つたら、やはり業界のほうでもこれ以上は余り殖やさんように、仮に殖えても、会社を大きくして企業統制をやつて会社を成るべく大きなものにして、そして車は必要だというなら新らしい車と入れ替えたり、どんどん殖やして、必要に応じて殖やして行けばいいが、せめて百キロ走れば六十キロは実入りで走るというくらいまでにして行かなけれぱならんと思うのですが、それがためには、先ず先ほど申しました名義貸の征伐と、それから今行なつておるところの会社は合併なりなんかして、業界を大きなものにするということの指導をされなければならん、協会のほうでそういうふうな指導もされなければならん。一方陸運局のほうでも十分考えられて、これ以上新規免許というものについては相当厳重な、やはり審査をやつて行かなけれぱならん、そういう段階へ来ているのじやないか、こういうふうに思うのですがね、そうせんことには、これはどんどん殖えて行げぱ殖えて行くほど、競争が激しくなり、空車で走る分が殖える、そうすれば儲らん、ガソリンだけは使うということになつて、特に、どうしてもやはり一番弱い運転手のほうへ行く。この通り業者も多い時代ですから、手近な自動車の運転免許でも取ろうというので、運転手のほうの供給も過剰になつて来る、こういうことになるのじやないか。これは業界が一番本腰を入れて、この問題と取組まなければならん問題と思うのですが、今の業界ではそういうふうな構想なりを持つて一つ政府と或いは陸運当局に対しまして、こういう構想で一つつて行きたいというものをお持ちになつておるか、これを一つ伺いたい。
  57. 藤本威宏

    参考人藤本威宏君) 今の御質問でございますが、名義貸しの問題につきまして先ほどお話申上げましたが、これは最大努力を尽してやるつもりでございます。現在もはやりつつありますが、更に努力をして、この悪貿な癌だけはやめなければどういう方法をとつてもだめだと思つておりますので、これは現在もやつておりますし、努力しております。これは労働組合のほうにも協力願つて、その整理員の中には組合の方からも出席員が出ておつて、徹底的な整理をしようというので業界はとりかかつておりますが、それは今後も大いにやりたいと思います。  それから新規免許を減らす、台数をじつくり調整するという問題については、現在大体一万二千五百ございますが、これ以上余り出し手もない、というのは、余りにもひどい。六〇%くらいが一時不渡りを出した、業界では。そういつた状況でございまして、これはお話にならんで、現在は新規免許を出し手もないのでございますが、現在、一万二千五百ではだめだというので、業界全部申し合せで、名義貸し制度の問題が来年一月四日に済み次第、業界がきれいになり次第、自分たちの車を一割ずつ減車しよう、みずから減らそう。これは非常に辛らい話でございますが、これはやろうということを業界自身で申合せているくらいに、現在窮境に追い込まれております。  それから合併の問題でございますが、この件につきましては、先ほどちよつと申上げました通りタクシー事業は大きければ安定しているという問題ではございません。これは労務管理ということが非常に重要問題でございますので、どうしても三十から五十、六十程度、百になつてしまうと、もう労務管理はできないのに近い、非常に困難になつて来る。そういつた関係で、柄ばつかり大きくすることが能ではないと思つております。内容をよくすることが根本だと思つております。そういつた意味で、ただ脆弱資本その他の部分が現在吸収されたりするということは、これはどんどんと今後も行われると思いますが、ただ数字としては、経営単位というのは、今言つた三十、五十程度が一番やりいいというのが事実でございますので、むしろやたらな表面的な合併よりも、それぞれの五十なら五十、小じんまりと堅実経営するほうが業界の一番いい方法ではないか。又そのほうが組合のほうとしては運転手諸君につきましても幸福ではないかと考えております。ただ伊坪参考人から散々悪口があつたのですが、伊坪さんのほうも余り資料はないはずでございまして、それは本当の一部でございまして、私はもう一度全般的に調査してみますけれども、今言つた退職金制度も有給休暇もないのが大部分であり、給与制度のないのは当り前だ——こういうわけではないのでありまして、その点は一つ御了承願いたいと思つております。
  58. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 もう一点だけ藤本さんに言つておきたいと思つておるが、我々でも、例えば夜行で東京駅で、これから先特に痛感するのでございますが、夜明けの五時頃に着くと、ちやんと運転手は待つていて、乗らんかというので乗つて話を聞いてみるのだが、全く前の晩から車の中にいる。それも昔の外車のずつと暖房でもきくやつならいいが、あの狭い車の、暖房も何もない、中で寝るところもないのに、よそへ行つて宿屋か何かに寝ればうんと金を取られるし、車の中で夜明かししてお客が来るか来んか待つているのは、それはあの状態は実に気の毒だと思う。又トラツクのほうになると、夜の夜中に走つている。そうしてそのトラツクの運転手諸君に聞いてみますると、もう眠くなつたら仕方がないから、寒くても何でもいいから、危いからとにかく車を止める。止めて二十分なり三十分なり眠る。そうすると、ずつと眼がさえて来て、一時間二時間はつつぱしれる、こういう仕事をやつておる。ですから、今のがいやならよそへ行けというのだけれども、仕事がないものだから、それで以て我慢してやつておる。そういうことをいいことにして、やつらはどこにもよう行かんのだというふうにやつてはいかんのだと思うのですが、それらの人に対する給与の面については特段に温かい配慮をする、そうすることがやつぱり事故防止の大きな対策一つになるであろう、こういうふうに思うのですがね。どうですか。
  59. 藤本威宏

    参考人藤本威宏君) これは先ほど伊坪参考人鈴木考参人、更に三巻参考人のほうからもお話があつた件でございますので、一括して申上げたいと思いますが、例の給与制度の問題でございますが、これは先ほど言つたような意味から言つて、どうしても業界から言つて労務管理ができない、直接的な労務管理ができない。先ほど鈴木さんのお話があつたように、汽車を動かしておるならばこれは構わない。ということは、ダイヤがきまつてつて、必ず行くんですから、これはまあそれで構わないのだけれども、これはどこを走つておるかわからない。車が寝ておるのかも知れん、起きておるのかも知れん、何しておるかわからんといつた業態では、どうしても歩合制を主としなければ工合が悪い。これは保険外交員とか何とかというものとそのだけは同じだと思つております。ところが、今言つた生活の安定ということがございます。私はこの点に関しては、現在私労務委員会をやつておりますが、その中心問題は、この給与べースとは別に、一定の生活保障給、これを別個に設ける方法で考えております。そういつた方法で最低の保障をここまでしよう。但し給与制度はいじらない。こんなような方々で調整をとりたいと思つております。業態からいつてはどうしてもそうなつて来る。併しそうかといつて運転手生活が不安になつては困りますから、両方を噛み合してそのようなことにしたらいいじやないかと考え、現在その線で研究しております。なお、夜間走りつきり走つて云々といろお話もありますが、何と言いましようか、非常にいい経営者が多いところでは、夜中じゆう走つて来いという要求はしていない。逆に、これは変な話になりますが、夜中はどうしてもいろいろなおかしなことも起き勝ちなものですから、必ず二時に上つて来いとか、必ず三時に上つて来いといつて、仮眠させるということが、むしろ経営者のほうとしても望んでおる線であります。ただ今言つた、全体的に言つて、そういつた収入が何ぼくらいなければならんといつた線がありますので、その点から運転手諸君も無理しなければならん点が出て来るのでありまして、とにかく私は需給調整はここで明確に打出されて、そうして今言つた百キロ走つて六十キロ乗つてくれれば、これは値下げの余地も出て来るし、それから運転手諸君のほうにも、そういう点において無理させない点がたくさん出て来るじやないかと思つております。要はこの辺が根本問題であつて、これが解決されないと、実際もうどんどんと潰れて来るのを待つ、これでは私は名義貸しに必ずそれが走つて行く、これは、煎餅屋や菓子屋ならば、経営が不振ならば店をたたむから、いわば需給調整になるわけです。ところが自動車業に限つてはそうならない。ということは、それらが皆名義貸しを始めて行く、従つて、不況になると名義貸しが殖えるということは恐るべきものがある。要するに、景気がいいときは名義貸しは余りない。自分経営してもやつて行ける。ところが不況になつて来ると経営ができないものだから、皆それを名義貸しに流してしまつて経営を放棄してしまうということが、現在名義貸しが増大する原因でございます。従つて、根本のところを抑えてもらわなければ、これは私はあとの枝葉末節をやつても困るのでございます。実はこの間も労働組合のほうの幹部諸公とも会つて話しておるのでございますが、これは現在のハイタク業者というものは大きな壁につき当つてしまつて、こちらから押されて煎餅みたいになつてしまつている。従つてこれ自身を動かさなければ、みんなが生きて行く道がないじやないか、こういう話を現在しているのでございますが、私はその点において、この基本問題、これを解決できれば私は行けると思つております。ただ勿論私たちの仲間にもいいものぱかりいるとは思いません。これは極く悪質なものもおります。おりますが、どうか一つその点は我々協会のほうも十分指導してやつて行きたいと思いますが、現在ではまともないい経営者自身がそういつた事情に追込まれておる。従つてそのしわ寄せが、どうしてももつて行きどころがないから、運転手のほうに行くんだ、その状況は私は関西と関東の差を比べてみて頂ければ、明瞭であると思つております。
  60. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 併し保険外交員と言われるのはちよつと違うので、それは自動車一台ついていつて一時間働らいてどれだけというのは、これはたしかにそんなに毎日々々サボつているわけにはいかんと、その点労務管理の行過ぎであると思いますが、それは御意見として……。
  61. 田畑金光

    田畑金光君 二、三御質問したいのですが、運輸省或いは陸運局にお尋ねしたいと思いますが、やはり事故発生原因をなくする第一の問題は、経済的な要因であるということも只今までの質疑応答でよく了承されたわけであります。輸送力の需給アンバランスというものが最大の問題であろうと考えるわけであります。併しハイヤータクシー業現在のような集中的な傾向がみられるというのも、我々は日本の社会的経済的な諸条件一つの現れだと、こう見るわけであります。監督官庁としまして、道路運送法によりますると、一般自動車運送事業免許に関しまして条件があるわけであります。それは第六条をみますると「当該事業の開始が輸送需要に対し適切なものであること」、第四号をみますると、「当該事業を自ら適確に遂行するに足る能力を有するものであること」、こういうような免計の基準というものが明確に謳われておりまするが、今問題となつておりまする名義貸等の問題等は、監督官庁としてこういう免許基準の厳格な実行の面からも相当程度阻止できるのじやないかと、こう私は考えるわけであります。ところがお聞きしますると、名義貸の悪質な会社の中には、曾つて陸運局の職員であつたような人もいるということを聞いているわけであります。我々がみましても、ややもすれば業者と陸運事務所とのなれ合等が非常に健全な運送事業等の発展を阻害している。事例があるわけであります。こういうような点に関しまして、陸運当局はどういう免許等に関しまして態度をもつて臨んでおられるか。或いは又名義貸の防止に対しまして、先ほどの御説明もありましたが、非常にこれは我々として納得が行きませんが、来年の一月五日まで名義貸を阻止しようとする行政官庁としても努力を払つておられるようでありますが、如何なる見通しの下に努力を続けておられるか、その点第一に承わつておきたいと思います。
  62. 蜂須賀国雄

    説明員蜂須賀国雄君) 現在陸運局の職員が業界のほうに行つておるから、陸運行政はうまくいかない、こういうお話でございますが、これにつきましては、私の記憶のある知つておる名前は東京で三名くらいおりますが、恐らく知らないものもいると思いますから、十名前後あると思います。ちなみに東京ハイタク事業は二百九十五社であります。そのうち十名前後行つていると思いますが、ただ過去におきましても陸運局の旧職員が行つておるから行政面において差別をつけているということはないと思います。将来においても勿論そういう意思はありません。  それから名義貸等の問題でございますが、これに対しましては、前に鈴木参考人からお話がありましたように、自動車運送協議会といぅものが陸運局の下にありまして、この自動車運送協議会経営改善ということで諮問いたしまして、その諮問の答申といたしまして、名義整理につきましても答申を頂きましたので、その答申の線に沿いまして、陸運局としては公示をいたしまして、そうして只今名義貸の整理をやつているわけでございます。  それから需給関係でございますが、需給関係につきましても、これは運送協議会のほうに、これも利用者側、一般市民との関連が非常に強いことでございますから、ここで直ちにストツプすることについてはいろいろな問題があるのでありまして、それにつきましては、運送協議会のほうに諮問いたしまして、その結果、多方面に亙る検討をして答申を頂きまして、その答申によつて厳重にやつております。なお、車の数についてみますと、本年度になりましてから、多少の増減はありますが、全体的にみますと、むしろ東京は車が減つております。さつき藤本参考人からおつしやいましたように、車の性能のよさということでございますが、これに対しましては現行道路運送法では車を入れ換えするということにつきましては、届出事項になつておりまして、届出で自由に車は換えられるということになりますが、性能の悪い車がいい車に換るということにつきましては、勿論自由に業者はできるのでございまして、その結果、今まで三百キロ走つてつた車が四百五十キロ走る、従つて供給力が多くなる、その結果供給過剰になつて参るということでございますが、これについては、むしろ我々として別の方面からも検討すべき点があるのじやないかと思つております。
  63. 田畑金光

    田畑金光君 関連して重ねてお伺いいたしますが、只今の御答弁の中にもありました東京道路運送協議会の諮問に関しまして、その第二回諮問書に対する答申の第八項末尾に、名義貸等に対する措置として、当局が厳重に行政措置を講ずべきことを要求しているわけであります。ところが十月五日以降名義貸について調査をなされているようでありまするが、十二月十三日現在におきましては五百二十六台に上つているわけでございます。先ほど伊坪参考人の御説明によりますると、恐らく一万二千五百車両のうち三千車両名義貸に該当するのではなかろうか、こういうような御説明もあつたわけであります。当局といたしましては、その名義貸しの取締りに対しまして一体どの程度車両があるという見通しの下に目標達成に努力を払つておられるのか。並びに陸運事務所の曾つての職員等が十名前後は民間会社に入つているだろうというお話でありますが、そのような職員の働いているところにおいて名義貸等の事例があつたかなかつたか。この点に関してお尋ねをいたします。  更に私が最初にお伺いいたしました輸送力の需給のアンバランスの問題でありまするが、免許基準の際に、これは具体的に例えば協会等との連絡とか、或いは協会を通じ、その実態を把握するとか、どういうふうに具体的に免許に際しての適格性を計つておられるか、この三つの点について更に御答弁を願いたいと思います。
  64. 蜂須賀国雄

    説明員蜂須賀国雄君) 名義貸の車の数でございますが、これは非常にまちまちでありまして、私ども的確な数字は申上げられませんが、大体デフレの関係で殖えて来たといつておりますので、やはり三千両前後と思つております。それから過去の陸運局役職員が業界に行つてつた会社違反があつたかどうかということでございますが、それにつきましては個々について違反があつたのがあります。その結果、その会社免許取消しになつております。それから免許の際の需給でありますが、これにつきましては協会に直接諮問はしておりません。これは陸運局のほうの側に毎月でございますが、年間或いは月ごとに報告書を得ております。その報告書は勿論参考にして利用しております。なお、輸送の需給関係についてでございますが、これは東京を全般的にものを考える場合と、特にハイヤータクシーと言われましても、ハイヤーのほうでございますが、ハイヤーにつきましては東京都全部についてでございませんで、ただハイヤーの営業所のある周辺地区について考える場合とあります。そういう意味で同じ東京でありましても周辺地区になりますと、車が足りないという声も出ております。そういう面で協議会の答申もハイヤーについては免許になっております。タクシー・オンリーという会社についてはその後免許になっておりません。
  65. 田畑金光

    田畑金光君 続いてお尋ねいたしますが、一昨年の六月に東京労働基準局長、東京陸運事務所長、警視庁交通部長の三者の名において、タクシー業者に対する三者労務勧告ということが出ておるわけであります。これが二十一カ条に上っておるわけでありますが、給与の問題もありますし、労働時間或いは災害の問題と衛生管理の問題と労働条件一般について述べられているわけであります。これらの要望事項が具体的に守られているといたしますならば、労務管理相当向上いたしまするし、従って事故防止ということも大いに軽減できることが期待できようと思います。一つ労働基準局或いは陸連事務当局或いは警視庁当局三者で労務勧告をなされた以上、この勧告の実行についても、行政的な指導等を相当関与して来られておると考えられますが、三者の一つこの勧告に関するその後の対策、措置、経過等について承わつておきたいと思います。先ず労働省の基準局長のほうから……。
  66. 藤原道子

    委員長藤原道子君) 本日は基準局長は所用のため御出席ございませんので、宮島給与課長が見えておられますから、給与課長から御答弁願います。
  67. 宮島久義

    説明員宮島久義君) お答え申上げます。只今指摘されました勧告書のそののちの実施状況でございますが、ほかの官庁のほうからはどういうふうに見られるかわかりませんが、我々のほうから観察いたしますると、余り改善されていないという結論になっております。で、これは経済の問題などもからんでなかなか困難であったものだろうと考えておるわけでありますが、結局このハイヤータクシー労働問題を解決しようといたしますると、先ほど業者側及び労働者のかた及び公益のかたが、いろいろ述べられたような関連性が非常に多くて、我々だけでなかなか処理し切れない面が多いのであります。併しそう言っておりましても、結局何もやらないということになりそうでございますので、先ほど鈴木公益側参考人から述べられたような基準法の規則の改正が先般行われまして、近いうちに従来の一日十時間制、週六十時間制を普通の一日八時間制、週四十八時間制に改善して行くという線が、この規則の改正の結果出て参っているわけであります。そこへ持って行くための手段といたしまして、一つこの問題を考えなければならないということと、結局ハイヤータクシー関係の労働者が労働強化になっている結果、いろいろ胸部疾患とか神経系統の疾患なども多発している面が見られますし、又現実には交通事故による死傷が起つておるわけであります。これを何とか改善したいというふうに考えまして、最近は大阪、それから名古屋等も東京と一緒にこの各ハイヤータクシー業の労働条件の改善について、一面基準法の監督をやると同時に、他の面で行政指導といたしまして、この改善に着手しておるわけであります。この改善の大方の線はこの前私出られなかったのでありますが、私どものほうの監督課長が御説明したかと思っておりますが、なお、若干附加えて御説明いたしますと、大きい問題はやはり労働時間の問題とそれから賃金の問題に集約されるかと思います。  その労働時間の問題といたしましては、只今御説明しました規則改正の線に早く持って行くことが望ましいわけであります。それで指導といたしまして、できるだけ二交替制をとるような勧告をしたいと考えておるわけです。現実に東京都内で二交替制をとつて非常に成功している、成功しているということは、結局経営の面からも労働者の賃金などの労働条件の面からも、それぞれ各側が満足して喜んでやつておる、そうして客観的に見ても、その状況がいいというような成功している面もあるわけであります。従いまして非常な困難がそれぞれの場合に伴うかと思いますが、一定の規模のところについては或る程度の可能性があるように私は考えて、その面を指導の面に出すことになっておるわけであります。それからどうしても一気に二交替制に持って行かれないところにおきましても、一日二十四時間の拘束ということになりまして、その労働時間は準備時間なども含めて十六時間に切り上げるような労働時間の配列も労使双方に考えて頂いたらどうか、結局これは行政指導と言いましても、労使に勧告して労使それぞれの常識に訴えて改善して行かなけりやならん問題でありますので、そのような線で使用者側並びに労働者側に御相談申上げまして御協力頂くような線でやつているわけでございます。それからなお、労働時間の問題と関連いたしまして若干細かい問題になりますが、このオーバー・タイムの問題なども同時に解決したいと考えております。  それから賃金の問題として一番大きいものは、先ほど来、御指摘になっております通りハイヤータクシー運転手の賃金が始んど歩合給である。それでその歩合給の中に固定給部分が非常に少いということ、これが結局は労働強化になっているというようなことを指摘されておりますが、我々もその面を認めるのであります。ただ併し歩合給に対する考え方といたしまして、私はこの歩合給というものが賃金支払制度として決して悪い制度ではないと考えております。これは悪い制度とかいい制度というのはちょっとおかしいかと思いますけれども、賃金の支払い方法というのは、労使が納得するということと、それからいい労働を提供する、或いは量の大きい労働を提供する者が余計の賃金をとれるような形になっているということが、まあ大体労使の間で満足されて、それがうまく実施される性格を持っております。従いまして、この歩合給という制度は、一般の製造工場などでも行われておるわけでありますし、炭鉱の先山などでは殆んど出来高払制がその主体をなしておるというようなこともございまして、歩合給自体を悪いというふうに考える必要はないのじゃないかと考えるわけであります。ただ歩合給をやる場合に、そのために労働強化になって、労働者の衛生状態が非常に悪くなるというようなことは、これは歩合給から出て来る弊害でございまして、それを是正することが考えられなけれぱならんと思いますし、又法律的に申しますならば、歩合給を設定した場合には、一定の保障額を同時に設定しなければならないことになっております。基準法の二十七条でその規定を持っておりますが、ただその規定の中には一定額といっているだけで、どれだけということはいっておりません。ただそういうことになっておりますが、私どもの従来の労働慣行などから勘案いたしますと、大体通常歩合給でとれる賃金額の六割程度を保障額とするということがいいのではないかというふうに考えております。これは今申しましたように、法律で規定されていない線をお奨めするわけでありますから、労使納得の下に御採用頂くように私ども御指導申上げるのでありますが、結局この賃金が浮動して労働者の生活が不安になるという場合を考えてみました場合に、何か事故でも起して、それで所得が得られないという場合は、労災法なり健康保険法なり、そういう社会保障制度で或る程度補償されるわけであります。六割までは補償されるわけでありますし、その上に労働協約などで協約されているものもあるのであります。で、流して歩いてお客が拾えない場合があるのか、そこの辺についてまあ私ども研究してみるのですが、はつきり掴まえられません。即ち同じ腕前の人が同じくらい努力して一日流して歩いて、賃金がその日によつて相当変動するのかどうか、若しこの変動ということが余りないならば、只今申しましたような歩合給でやつて一定の保障額を設定することによつて、賃金に関する不安定、即ち生活不安ということは起つて来ないと考えていいと思うのです。併しその日によつて非常に変動する、そうしてその変動が通常とれる賃金の六割もとれないほど少い場合があるということになつて参りますと、その場合には賃金の制度として歩合給か果して適当かどうか、従つてこの固定給を考える場合に、保障給ということでなく、別の線からの固定給というものを考えなければならんのかもわからん。そこの辺はそれぞれの事情に従つて労使双方お話合の上でうまくやつて頂くような、そういう指導方針をとつているわけであります。  それから賃金の問題でもう一つ非常に大きい問題だと思つておりますことは、いろいろな手当が出ておりますが、その手当の中で非常に労働者を労働強化に追込んでいるものが相当見受けられます。例えば代表的なものとして、トツプ賞、努力賞などというものがございますが、これらの手当につきましても、余りに刺激的であるということを一つ労使でお考えになつて、そしてこれをもつと別なもう少し落ちついた賃金制度に変えて行つて頂いたらどうかというようなことも内容にいたしまして賃金の面の改善を考えているわけであります。  以上簡単でございますが、結論といたしまして、前に東京地区について出された三者の労務勧告書というものが、余り効果をまだ出していない。従つて我々といたしましては、更に只今申しましたような指導の、面におきましても、現在相当力を注いで改善の方法を取つておるということを御報告申上げておきます。
  68. 藤原道子

    委員長藤原道子君) ちよつと皆さんにお諮りいたします。委員長誠に不手際でございまして、開会の時間が非常に遅れましたために、もつと早くすむつもりで……、すでに昼食時間も相当経過いたしました。事は人権問題かと思いますので、非常に恐縮いたしております。質疑なさいますかたも、お答えになるかたも、ポイントを一つはずさないように成るべく簡潔にお願いいたしたいと思います。
  69. 田畑金光

    田畑金光君 先ほどの質問には、なお警視庁、陸運局の答弁を求めておりましたが、時間の関係上答弁は結構でございます。そこで警視庁或いは検察庁にお尋ねいたしたいのですが、道路交通取締法が昨年改正されて科料が附加されたということ、或いは又去る国会で交通事件即決裁判手続法の制定を見ましたが、これは交通運輸事業等の特殊性に基く法の制定であり改正であつたと思います。ところが先ほど来聞いておりますと、まあ形式的なと言つては言いすぎるかも知れませんが、些細なる事犯に対しましても非常な厳罰で臨んでおる。事故をなくするためには厳罰以外にないんだという態度で警視庁や検察当局が臨んでおられるように見るわけであります。併しなぜそういう事故が起きたかという原因を探求することが一番大事なことじやないかと、こう考えるわけなんです。今の警視庁や検察関係のやつておることに対しましては、先ほど来、協会の代表も労働組合の代表も非常に行きすぎてはいないか、こういう意見が出たわけでございます。私たちもそういうような経験——たびたび見ておりまするが、些細な違反件数を上げることによつて、警察官の職務上の成績が左右されるようなことで、こういう重大な問題が取り扱われていたんでは大変なことだと、こう思うわけであります。一体検察或いは警察当局は、この問題に関してもう少し事態の本質というものを認識理解して、法の運用について緩厳よろしきを得べきであると考えるわけですが、この点についてどうお考えであるか、お尋ねいたします。
  70. 高見沢万吉

    説明員高見沢万吉君) お答えいたします。第一の刑事処分の問題でございますが、これは先ほど伊坪参考人から申されましたように、法第二十七条の改正によりまして科料を作られたわけでありますが、併しながら刑事処分につきましては、裁判所の問題でありまして、私のほうからお答えはできないのでございます。  それから取締りの問題でございますが、これは私どもといたしましては、交通事故が最近激増いたしておりまして、指数を申上げますと、昭和二十年を一〇〇といたしますと、昭和二十八年は九〇〇というような指数になつております。そこで私のほうといたしましては、取締りを強化する方針を以て臨んでおるわけでありますが、取締りの強化と申しますのは、必ずしも刑罰を求めるということではないのでありまして、違反事件が起つたならばその場で取締りは行う。併しながら事犯の内容によりまして現場で説諭をして済ませる場合もあるわけであります。又これを警察署長に報告をする場合もありますし、警察署長はその事犯の内容に応じて処置をするということになるわけでございまして、問題はむしろ警察官の取締りの態度というものにあるのではないかと思うのであります。そこで私どもは取締りは強化をしなければならんし、その扱いと言いますか、事犯のまあ被疑者の処遇と言いますか、そういうものにつきましては指導的な態度を以て臨みまして、再び違反を犯さないように法の解釈、或いは運用等についても指導しながら取締つて欲しいということを出しておるわけでございまして、我々といたしましては、まあ不当な態度であつたということをしばしば耳にすることはございますが、今後取締りなどの態度についてはできるだけ留意して行きたいというふうに考えておる次第でございます。
  71. 阿具根登

    ○阿具根登君 今の問題に関連してちよつとお尋ねいたしますが、私は人命という問題からついて取締りは強化してもらいたいと思う。その点は何よりも自分の子供が死んだ、怪我したという人の立揚になつて見る場合に、私は一概に取締りを軽視することはできないと思うのです。併しその取締りそのものが非常に私は間違つておるのではないか。例えばこの前課長の話を聞いたのですが、東京の主要道路であつたならば三十二キロですが、その他は四十キロかになつておる。ところがそれではそれで走つておる人がおるかというと一人もおらない。こういうことなんですね。そういうことがあつたならば常識としては四十キロなら四十キロ、或いはその他のところなら五十キロなら五十キロまで、普通今全部やつておる問題を十分考えて、そうしてやるならばいいけれども、普段はそういうやつをいつも見て見逃がしておつて、何か事があれば取締るとか、或いは蔭に隠れておつてつかまえる、そういうことはただ警察官の点数稼ぎというと悪い言葉ですけれども、そういうことにのみ役立てられるのであつて、実際は実行できないことをきめてある。そういうことについてどういうお考えか、ちよつとお聞きしたいので。
  72. 高見沢万吉

    説明員高見沢万吉君) 只今御指摘頂きました点は私ども全く同感でございます。交通の事情に必ずしも合致してないようなスピード制限が行われている、ということは私も認めているわけでございます。ただこれを、それならば現在三十二キロに制限しているところを四十キロまで上げた場合にどうするかということでございますが、実際上の問題といたしましては、今までのまあ弊風と言いますか、今までの情勢と言いますか、そういう点から四十キロ、或る程度制限を行われた場合にも、多少の違反はしてもいいのだということがそのまま又続きますといたしますと、これは大変なことになりますので、そういうふうな点からも勘案いたしまして、なお、自動車運転手諸君にもそういう趣旨を十分徹底いたしましてからでないと、そういう処置は行われないのじやないだろうか、行えないのじやないかということは、行なつたならば却つて事故が増大するのではないかというふうにも考えているわけであります。ただそういうことはこの前も交通課長も申しておりましたが、根本的にはのつておりますので、早急に研究はいたしたいと思つております。
  73. 阿具根登

    ○阿具根登君 ちよつと意見になるようですけれども、先ほど何ですか、参考人の話を聞いても、あなたの話を聞いても、何か運転手というものは悪いことをするものだという観念が皆様の中にはあるわけですね。例えば労務管理がどうとか、どこかで寝ておるかも知れない、遊んでおるかも知れない、又四十キロなら四十キロにしても悪いことをするのだ、最初からそういうふうにあなたがたの先入観が運転手というものは悪いことをするのだというお考えを持つておるから、これはこういう弊害か起きて来るのではないか、こういうふうに思うのですがね。私はもつときれいな気持で見たいと思う。この人たちは何がためにそういうことになつておるのかということを、例えば警察の面で言うならば、三十二キロで走る人はいない、走れば大きな車に却つて邪魔になる。アメリカなんかでは別に何キロ以下では走つてはいけないという法律まであるくらいです。そういう事情まで知つておりながら、検挙数を出しておられる。而もその根本になつている問題は、当然これは四十キロで許さねばできないのだけれども、四十キロにすれば四十五キロ、五十キロで走るだろう、こういうふうに相手を悪いことをするとみなしているところに、大きな問題があると思う。これは警察関係についていつたので、まだほかの問題は、あとで私の番が来たら伺います。そういう考え方を……。
  74. 高見沢万吉

    説明員高見沢万吉君) お答えします。私は全部とは考えてないのでありますが、警察取締りといたしましては、その一部の者にそういうものがあるといたしますれば、我々といたしましては最悪の事態を考えていたさなければならないと思いますので、慎重に考えなければならない問題だというふうに申上げたいと思います。
  75. 田畑金光

    田畑金光君 時間がありませんので、私最後に藤本さんにお尋ねしたいと思いますが、先ほど来御意見つておりますと、現在のハイヤータクシー業の隘路がどこにあるかということが、殆んど見通しておられると思うわけであります。ただお話を通じ、又伊坪参考人のお話等を通じて感じましたことは、現在の困難な問題が解決するためには、どうしても業者や、官庁も努力してもらわなければならんし、同時に又業界においても努力してもらわなければならんと存じております。更に又労働組合の協力がなければうまく参らんのじやないかと、こう見るわけであります。この点に関しまして、二百数十社あつて、労働組合がまだ五十前後しかできていないというこの事実であります。或いは会社によつては労働組合を作ると、直ちに不利益処分、不当解雇をするような、不当労働行為が行われているという事実であります。私はこういう脆弱資本、弱体企業の建設発展というものは、労使の協力が大前提だと、こう思うわけであります。そういう意味合におきましては、業界等においても業者の自主的な申し合せに、或いは自粛の下に労働組合の健全な発展、或いは結成を期待することこそ望ましいんだと、こう考えるわけであります。そういう労使の協力によつて職場を明朗化する、並びにその明朗化の上に立つて監督官庁の若し行き過ぎがあり、或いはあやまつた行政措置があるならば、これを糾弾する、こういうことが必要であると思うわけであります。この点に関しまして、対労働組合の問題について業界としては如何なる態度を以て臨んで来られているか、或いは今後どういう方針で臨まれようとするか、一点伺つておきたいと思います。
  76. 藤本威宏

    参考人藤本威宏君) この点に関して、非常にむずかしい問題なんでございますが、私はこう考えております。この労働問題については、えてして起きがちなことは、労使ともに非常に誤解をたくさん持つていることです。ということは、ちようど一般産業で、昭和二十一年から二年くらいに、非常に組合を作れば何をしても大丈夫だといつたようなあやまつた、と申しますか、非常に極端な考え方を持つてつたものがありましたし、一般組合員もそう思つた時代がございました。ちようど現在の段階が、殊にハイヤータクシーとしてはそういう段階に現在来ている点が多々見受けられるのでございます。要するに労働組合を作れば、何をしても大丈夫だという極端な考え方が、これが現在未熟な労働組合の場合には起きがちなものでございます。それでそういつたようなことが事例もありましたし、又そういつた意味から言いまして、経営者のほうが労働組合に対して非常に今こわがつているという点もございます。また、この点は私も実はこの関東同盟と私とは非常に仲がいいのでありますが、そういつた意味において関東同盟のほうも組合をよく教育して、本当の意味の組合を育ててくれなければ困る、又、私のほうは経営者のほうを十分にこの点を納得させなければ困る、両々相待たなければここに必ずうまく行くものじやない、こういうふうに言つておるわけでございますが、現在うちの協会では、労務委員会を作つておりまして、経営者に対する啓蒙やら先ず基本的な労働三法に対する啓蒙宣伝、或いは就業規則の実施の件、又労働協約の問題にしても、賃金ベースの問題にしても、現在研究して、これを模範にして各会社でするように現在教育しております。又この労使間の紛争についても、何とかこれを円満に妥結するように努力しております。こういつた意味で、私は正しい意味の労働組合は大いにこれは育てなければならんし、現に私も自分会社でそう考えてやつているのでございますが、ただ、今言つたような難点、丁度二十一年、二十二年頃に一般産業に起きたあの一回洗礼を受けた後の形がまだできていない。丁度あの前の恰好の労働者意識が非常に強いのでございます。その点もありますので、これは関東同盟のほうともよく話合つて、それで組合員のほうの協力は是非してもらい、私のほうは経営者のほうの認識を高め、両々相待たなければ、これは、いたちごつこでございます。そういつた意味で、現在私のほうも労務委員会を開きまして、その点については、早くいい組合が、健全な組合ができるようには私個人でも考えておりますし、又組合もそのように指導している次第でございます。
  77. 田畑金光

    田畑金光君 今の点について伊坪参考人から何か御意見があれば一つお聞かせ願いたいと思います。
  78. 伊坪福雄

    参考人伊坪福雄君) 藤本さんは非常に進歩的な経営者であり、そのようなお考えを持つておるのですが、関東同盟といたしましては八千人の組合員を抱えておりますが、五月に年度大会を打出したときに六つの運動方針が打出されておりますが、ここで簡単に基本的な面を言いますと、ハイ・タクの資本が非常に脆弱である、こういうような形。それから勧銀情報の八月号あたりにも、ハイ・タクの経営者には金を渡してはならん、不渡りが出るから。こういうような資金面で非常に困つている。私たちとしては企業の健全化と併行して、そうして我々の生活権というものを改善して行く、こういう基本線でやつておるわけであります。ですから藤本さんのちよちよこ口出しがあつたような曾て二十一年、二十二年あたりにやつた形は私としては絶対にとつておりません。それからもう一つは協会でございますが、この業者の協会が現在四つに分れておる。二百八十何社、まとまりが一つもないのです。私に言わせるというと名義貸しという問題が出たのですが、この間も名義整理委員会に私が入つて行きまして、口を切つたわけです。こんなに出てしまつて大変だ大変だと言つて……これは言葉を換えて言いますと、陸運行政の弛緩と、それからこの業者の不統一が生んだ崎形児に対して、自分で生んだものに対してたまげて大騒ぎしている。私に言わせるとおかしい。これに対して更に業者がわかつてつてもどうにもならない。ここに出した資料の中でも一台しか名義貸しの車が出ていないのですが、私たちが調べたのには、三十三台のうち一台しかここへ出ておらん。そうして或るところでは十八人が会合して、この名義貸しになつて、どうなつちやうだろうとやつている。業者自身はよく知つているのです、たくさん名義貸しがあるということを。こういう面に対しては成算が立たない。こういう面が協会の不統一だと思うのです。そういう面から、先ず業者自身がやはり東京にも四つか五つ協会を持つてばたばたしておるのじやなくて、これもまとめて統制あるものにするならば、これは労務管理の面においても、健全経営の面においても、組合のほうで協力してくれる面があると思う。藤本さんが経営者のほうで、そういうことを言つても、机の上のことで何もできない。これは、ですから藤本さん個人の考えであつて、どのように言つても作文以外に一歩も出ないのだと、こういう考えを持つております。
  79. 藤本威宏

    参考人藤本威宏君) 大分いろんなお叱りを受けたのですが、先ず第一に私も関東同盟はそう非常に極端なものでないということは十分認めております。ただ一般従業員がそういつたことになりがちな傾向を多分に持つておる。従つて関東同盟にいい指導をしてくれと言つたことであつて、これは誤解でございます。  それから第二番目に、この業界不統一云々……でございますが、ただこう言つた問題に対しては、連合会を作つてこれは同一歩調で進んでおりますので、そういつた御心配はないと思つております。ただ名義整理の問題について、一番むずかしい問題については、経営規模の問題だけではないのでございます。ということは、先ほどちよつとお話がありましたように、人の車でも何でもそれを担保にしてしまつておるのです、会社が……。そのために、出ようと思つてもそれこそ担保保があるから出られないという問題が起きて来る、ざつくぱらんに申上げまして……。従つてそれを解決するために非常にむずかしい問題が起きて来る、経済的な問題が……。要するに人の車は、僕が扱つてつたのですけれども、会社の名前になつております。これを担保にしてお金を借りてしまつておる。そのために名義貸のことで、これは出て行こうということでも、それがあるものだから出られない。こういうような非常にこれに類似した複雑な問題が多々あります。その意味で、要するに話合いがついたものしか出られないという傾向があるのであります。決して隠しているとか何とかいうのじやなくて、何とか解決しようと思つても、お金の面までタツチしないとこの問題は解決しない面が多々あります。この点で実に苦労しているのでございます。悪ければ、切れぱきれいになるというだけの問題であつたならば何ら心配はないし、ただ問題が、三千両からありますと、これは一つの政策問題でございます。三千両と言いますと、運転手から言いますと六千人でございます。六千人、それの家族を入れますと大体二万以上の人間の生活の問題にも関係して参ります。そういつた意味で簡単にぽかつと行けないということが一つ従つてそれを何とか救済しなければならんということまで考えなければならん。救済するについては、それらも集めて食べて行けるように、きれいにして行かなければならん。そのためには今言つたような会社のほうの担保をどうするか。会社に借金がある。或いは貸金がある。お互いに経済行為が複雑しておりますので、そこでむずかしい問題が起きて来て、これは遅々として進まないということは、そこに原因があるのでございます。従つて単に、簡単にそういつただけの問題でしたらきめられる。そこまで行くと、じやその先どうなつて行くのかと言いますと、その点はそれは簡単にすぽつと行けなくて、この債権はどうしよう。それじやこの会社の車については担保をどうやつて抜こうか。抜かなくてこう持つて行くのか、どうしようか。ここまで面倒を見てやらんとできないのでございますが、それがいわば三千台それぞれそう言つたような問題があるとすると、これはそう簡単に竹を割つたようには行かない。こういうことが第一でございます。その点が一つ。決して経営者が分裂しておつたからこんなことになつたということではないのでございまして、その点はどうか一つ御了解を願いたいと思つております。
  80. 長谷部ひろ

    長谷部ひろ君 ちよつと伺いますが、運転手さんの年令というのはどのくらいなんでございましようか。大体平均いたしまして……。
  81. 藤本威宏

    参考人藤本威宏君) ちよつとこれは統計は全部出ておりませんが、推定で行きまして大体二十九か三十だと思つております。
  82. 長谷部ひろ

    長谷部ひろ君 私がなぜそれを伺つたかと申しますと、そうしますと、私はよく七十円とか八十円とかという車を拾うわけなんですよ。そうすると、もう、あのでこぼこの道路を勢い切つてびゆーつと行きますから怖くて仕方がないのです。運転手さん、大丈夫大丈夫と聞きますと、なに、あの、車のほうが心配なんだから、車のほうが大事なんだから、それで、大丈夫ですよ、奥さん大丈夫ですと言つて、追い越し、でこぼこ道路を跳び上るようにして行くので、私ははらはらしているのです。そういつたような人を跳めますと、大体若い年令層のほうが多いと思つたから、今それを伺つたわけなんです。  それからもう一つ。これは或るところなんですけれども、私、乗りまして、夜なんですよ。暫くずつと参りましたら暗闇のところへ出たのです。そうしたら懐中電気をメーターの所へ照らしまして、そうしてがちやつと倒して上へ上げちやつたんですね。それで私、まあやつているなと思つて、それから自分の目的の所まで参りまして、そうして幾ら上げるかと、こう言つたんですよ。そうしたら、四百五十円くらいくれというのです。大ていそこまでは二百円くらいの所なんですよ。そこで私、あんた暗がりの所で今これをがちやつと上げたんでしようと、そういつたんです。それはあんた、これだけ走つたら、これだけのメーターが出るということは、まあ経験上おわかりでしようけれども、こういうことをなさるということは、あなた食べられないから、悪いと知りながらこういうことをなさるのでしようからね、あんたにも罪があるけれども、あんたにこういうことをさせるような業者の人たちにも大きな罪があるということを申上げたようなわけなんです。ですからやはりこの悪徳業者というものの徹底した処分ということと、それから又こういうような運転手さんたちの最低の生活の安全を保障するということの業者側のお考え、本当に暖かい気持で、いたわりながらこういつたような人を育てて行つて上げるということが一番大事だと思うのです。そういうことが健全に行われて行かないということは、やはり私どもの責任で、これは政治の貧困という結論がどこから考えたつて出るんですからね。私のはこれはお伺いじやなくて、まあ意見みたいなものですけれども、まあ今後どうぞよろしく業者の側も運転手さんの方もお願いいたします。
  83. 藤原道子

    委員長藤原道子君) お諮りいたします。只今委員外ではございますが、大倉運輸委員から委員外質問を求められておりますが、よろしうございますか。
  84. 藤原道子

    委員長藤原道子君) では大倉議員
  85. 大倉精一

    委員外議員(大倉精一君) それでは大変時間もたつたようですし、又、各委員の御質問で、大体いろいろなことが済んでおると思いますので、一切の前置きを抜きにいたしまして、私は一問一答主義でやりますから、御答弁も一つ簡単にお願いしたいと思います。  先ず取締当局の方にお伺いするのですが、先ほどのお話で、行政処分は悪質のものだけをやる、こうおつしやいましたのですが、悪質なものというのはどういうようなことなんですか。ちよつと具体的に一、二の例を挙げてお聞かせを願いたいと思います。
  86. 高見沢万吉

    説明員高見沢万吉君) まあ私の悪質というのは、表現が悪かつたかも知れませんが、それは先ず事案の内容によるものというのが一つあると思います。それから更には、事案というのは交通事故が主でございます。それから交通違反でございますが、違反の事案の内容の悪いものというのは、無暴操縱がそれに該当するわけでございます。無暴操縱と申しますのは、御承知のように、酩酊運転であるとか、或いは重大な構造、装置の不備による自動車を運転した、或いは制限速度に違反したというようなものがございますが、それがまあ事案の悪質というふうなものになるわけでございます。それからなお、ほかの軽微な事案につきましても、回数を重ねておるというようなものは、まあ我々は悪質というふうに見ているわけであります。
  87. 大倉精一

    委員外議員(大倉精一君) 例えば、私は具体的にお尋ねしたいのですが、いつかの新聞に、このくらいの記事が載つてつたんですが、朝おかみさんが表を掃いて火をつけて燃しておつたら、うしろから居眠り運転手が来て殺してしまつた。こういう事件が起つたと思いますが、これは恐らく非常な無理な勤務時間のために、夜明けにうとうとやつて轢いたんだと思いますが、これは悪質になるのですか。
  88. 高見沢万吉

    説明員高見沢万吉君) ちよつと今のにお伺いしたいと思いますが、轢いて、その被害はどの程度ですか。
  89. 大倉精一

    委員外議員(大倉精一君) 新聞では死んだと書いてありますか、私は現場を見ないからわからないんですが……。
  90. 高見沢万吉

    説明員高見沢万吉君) 行政処分は、法律で交通事故を起した場合というのがございます。そうして、政令でその処分を……。
  91. 大倉精一

    委員外議員(大倉精一君) 私の聞いているのは、一問一答ですから、悪貿か悪質でないか、その点……。
  92. 高見沢万吉

    説明員高見沢万吉君) その基準は、総理府令で定めているわけでありますが、人を殺したというのは、事案の内容が、被害が大きいから悪貿ということになるわけであります。一般的にはそうなると思います。なお、今の場合は、何と言いますか、そういつた正常な運転ができない状態において運転をしたということは、我々のほうは悪質というふうに考えております。
  93. 大倉精一

    委員外議員(大倉精一君) これは正常な状態でないような恰好で運転をしたというんですが、これはそういう無理な勤務時間の下に、一つの居眠りというものは人の生理的な自然現象です、そういうものを悪質というふうに片付けられるというと、非常に僕は納得できないんですが、まあそれはそれとしまして、例えばスピード違反が悪質であるというお話がありましたが、スピード違反を見付けたときに、例えばその人の労働条件とか、どうしてそのスピード違反をやらなければならなかつたかということ、そういうことを勘案されるかどうか。勘案されないんですか。
  94. 高見沢万吉

    説明員高見沢万吉君) それは我々の考えておりまする交通取締りの問題と別個の問題でございまして、事情はそういう内面的な事情があるかと思いますが、まあ先ほど申されましたように、疲労をしておつても運転をしなければならなかつたというような状態にあつたということは内面的な事情でありますが、運転者といたしましては、当然そういうふうな場合には、交通事故の起らないように注意しながら運転をしなければならない義務があるわけであります。そういう運転者としての当然の義務があるにかかわらず、それを怠つたということになりますと、悪質ということになると思います。
  95. 大倉精一

    委員外議員(大倉精一君) それは僕は非常に重要だと思いますが、あなたの、今悪質なものという一言で片付けられるというところに非常に重要なものがある。例えば居眠りをやる、或いはスピード違反をやる、これは確かに法律上そういうことはいけないでしよう。いけないでしようが、半面、先ほども陳述があつたように、一日四百キロ走つて来い、四百キロということになると、一時間に四十キロくらい走らなければならん。そうすれば、やはり自分が生きて行く、雇つてもらうためには、四百キロ走らなければならん。スピード違反もやらなければならん。これが悪質になるかならんかという判断の基礎にならんですか。
  96. 高見沢万吉

    説明員高見沢万吉君) 我々のほうで、いわゆる言葉は悪いんですが、悪質であるか悪質でないかというのは、事故を非常に起している部類に属する違反といいますか、そういうものは一般的に悪質と言えると思うのであります。
  97. 大倉精一

    委員外議員(大倉精一君) まあ、うなぎ問答みたいになつて、なかなか悪質の標準がつかめない。そのときどきでやられる公算が非常にあるんですが、もう一つ聞きたいんですが、そういう警官に、これが何件摘発して来いというノルマがあるんですか。
  98. 高見沢万吉

    説明員高見沢万吉君) 交通警察に関してはございません。ただ聞くところによりますと、外勤制度といたしまして、これは一人で、まあ自由な勤務になりますので、受持区内における犯罪、或いは事故発生状況、それに対するその警察官の責任を遂行した基準といたしまして、警視庁では、発生状況と、それに対する警察官の検挙の状況といいますか、こういうものを睨み合せているような表があるように私は聞いております。
  99. 大倉精一

    委員外議員(大倉精一君) これも警察官の給与も非常に悪いんですが、大体一日に何件摘発すれば、一件について五十円やる、こういう奨励制度があるように聞いておりまするが、そういうことも絡み合つて来るんではないかと思いますが、如何でしよう。
  100. 高見沢万吉

    説明員高見沢万吉君) 給与上の問題については、そういうことはないと思います。
  101. 大倉精一

    委員外議員(大倉精一君) 私はまあ監督といいますか、その取締当局に対しまして、法律を濫用といつては語弊があるかも知れませんが、機械的に適用されないように、特に年末に向いますから、特に希望申上げて、次の質問で二、三お伺いいたしたいと思います。
  102. 藤原道子

    委員長藤原道子君) 簡単にお願いいたします。
  103. 大倉精一

    委員外議員(大倉精一君) それでは運輸省の方にお伺いしますが、免計基準の六条の三項ですかの中に、適切なる計画のあるものが一つ免許基準になつておるわけですが、この適切な計画とは労働条件が入つておるのか、入つていないのかお伺いしたいと思います。
  104. 岡本悟

    説明員岡本悟君) お答えいたします。入つておるかと申しますのは、大体その事業を遂行する上からいいまして……。
  105. 大倉精一

    委員外議員(大倉精一君) いや、労働条件は入つておるか入つていないのか。
  106. 岡本悟

    説明員岡本悟君) 労働条件は入つておりません。
  107. 大倉精一

    委員外議員(大倉精一君) これはハイヤータクシーに関する限り、やはり労働条件或いは給与とか、労働時間というものをつけて免許申請をしておるのですか、如何ですか。
  108. 岡本悟

    説明員岡本悟君) ちよつとはつきり聞えなかつたのですが……。
  109. 大倉精一

    委員外議員(大倉精一君) ハイヤータクシーの場合、免許申請をする場合において、従業員はこういう条件で従業してもらいたいという労働条件がついておるように思うのですが、ついておりませんか。
  110. 岡本悟

    説明員岡本悟君) そこまでは要求しておりません。
  111. 大倉精一

    委員外議員(大倉精一君) そこでお伺いするのですが、免許をされるという基準がここに載つておるのですが、これは非常に漠然たるもので、一つの作文だと私は思うのです。先ほどもどなたか御質問になつたのですが、この需要供給なんということもなかなかわかる資料もなかろうし、或いは供給なんていうこともなかなかわかる資料もないと思うのですが、この不当競争をやり、或いは事故をたくさん起す、この問題が労働条件に決定的に関係がある。こういうことがだんだん明確になつて来ておるのですが、これに対しまして、当局といたしまして、免許基準に決定的な要素の労働条件というものを深く勘案してというお考えはないのでありますか。
  112. 岡本悟

    説明員岡本悟君) これは免許基準に大体載つておりますように、我々は免許する際に、資力、信用を非常に問題にしております。その資力信用を問題にしておりますというのは、いろいろ問題がございますが、やはりその事業を的確に遂行して行く能力、その中には、この事業の根本的な要素としております労務管理を適切にやつて行く能力があるということも含まつておるように考えております。
  113. 大倉精一

    委員外議員(大倉精一君) 資力信用を判断をするに足るという的確なるものは、私は労働条件だと思う。それで現状をみておりますと、資力信用を十分だと思つて免許をしておるにかかわらず、事実はそうでない。例えば今、名義貸の問題もそうですが、私はこの名義貸の問題は非常に大事だと思うので、将来この委員会において十分考究しようと思つておりますが、現状においてはそういうことを勘案してやられていないように聞いております。例えば小運送面におきましても、小さな駅で免許をした、免許をしたが金がないので仕事が始められないということもあります。従いまして、労働条件というものが資力信用を判断するに足る一つの尺度になる、かように私は考えておりますが、而も労働条件に関する問題が非常に免許基準について勘案されていないということは、ちよつとおかしなことになるのですが、この点もう一回お伺いしておきたいと思います。
  114. 岡本悟

    説明員岡本悟君) それは資力信用のあるものを選定しまして免許する、労務管理も十分行える、こういうふうに考えておるのでありまして、決してそれを無視しているというのではないのであります。
  115. 大倉精一

    委員外議員(大倉精一君) 経営者ちよつとお伺いしたいのですが、免許申請の場合にそういう労働条件はつけていないのですか。
  116. 藤本威宏

    参考人藤本威宏君) 現在のところ、つけておりません。
  117. 大倉精一

    委員外譲員(大倉精一君) つけていない……。
  118. 藤本威宏

    参考人藤本威宏君) つけていないと思います。今までの労働条件として具体的に挙げては、つけておりません。
  119. 大倉精一

    委員外議員(大倉精一君) 先ほど免許制度というものは、タクシーハイヤー、トラツク、小運送、こういうものの自由放任営業は公益のためにならない、こういうことで、運輸省免許をするという一つの責任を持つておる。ところが運輸省が、これは不当競争にならない、需要供給は十分である、而も資力信用は大丈夫、こういつた大鼓判を捺して免許して、その後において全くそれと反したような現象が起つて来た場合、或いは眼鏡違いで免許した場合、そこから不当競争が起り、いわゆる労働者の搾取が起るということになつて来たらば、どこが責任を負うのですか。
  120. 岡本悟

    説明員岡本悟君) これは見方の相違だと思うのですが、我々としては厳重に免許基準に従つて慎重審議しまして免許したのでありまして、その結果の起つておる事態につきましては、或いは情勢が非常に変化しまして、免許した当時と変つて来ていれば、業界と話して、業界が或る程度自発的に減車の措置をするとか、そういつた場合には、我々も行政処分においてそういつたことをどんどん認可して行くということになると思うのです。
  121. 大倉精一

    委員外議員(大倉精一君) 答弁が非常に抽象的なんですが、情勢の非常な変化ということを言われるのですが、この運輸事業に関する限り私は情勢の非常な変化ということはないと思う。突発的に情勢が変化するようなことは私はないと思う。それでは今のこのハイヤータクシー状態、或いはトラツクの状態、こういうものが今不当競争になつているような面があると思うのですが、今の状態は不当競争になつているか、なつていないか。その点の見解をちよつと伺つておきたいと思います。
  122. 岡本悟

    説明員岡本悟君) 只今の御質問は非常にむずかしい問題でございまして、我々としては不当競争になつていないというふうに考えております。
  123. 大倉精一

    委員外議員(大倉精一君) いない……、これは不当競争になつていない。それじやその資料を出せと言つても、その資料は出せないと思います。従つて、不当競争になつている、不当競争になつていないということは、一つの観念であつて、不当競争になつていない証拠を見せろ、資料を見せろと言つても、出て来ないと思います。それは別としまして、それでは運輸省は、不当競争にならない……、或いは公正なる競争或いは経営の堅実ということで免許したのちにおいて、規在のように各委員の質問の中でも明らかになつたように、事故原因或いは不当競争の原因そのものが労働条件に起因しており、労働条件が根本的な原因である、こういうような場合には、運輸省はやはりその業者を指導する責任があると思うのですが、この労働条件については、やはり指導される責任があると思うのですが、その点は如何ですか。
  124. 岡本悟

    説明員岡本悟君) 一般的な責任はあると思います。
  125. 大倉精一

    委員外議員(大倉精一君) これはちよつとあいまいだから、私は明らかにしておきたいと思うのですが、先般運輸委員会で私が質問したときには、そういう運輸行政の中の労働条件については運輸省は責任がないという御答弁になつているのですが、この部面にいて、この労働条件に対する指導の責任と言いますか、そういう責任は、これは労働省にあるのか、運輸省にあるのか、ひとつ労働省にもお尋ねしたいと思います。
  126. 宮島久義

    説明員宮島久義君) 私にとりましても大変むずかしい御質問になつているわけですが、労働条件が適正なものかどうかという基準といたしまして、労働の条件の内容……。
  127. 大倉精一

    委員外議員(大倉精一君) お答えは簡単でいい。責任は労働省にあるのか運輸省にあるのか、どつちか、こういうことだけでいい。
  128. 宮島久義

    説明員宮島久義君) そこで適正基準というこをはつきりしませんと、その責任ということもはつきりして来ないと思うのです。そこで、その基準法にはつきりきまつているような労働条件について違反があるという場合には、基準法上の責任がありますし、それから、行政指導の面といたしまして責任がどの程度あるかということは、なかなかはつきりしていないと思います。
  129. 大倉精一

    委員外議員(大倉精一君) そこで私は、これがもやもやしたところの根本の問題だと思います。先ほど労働省から、労働条件、賃金等のいろいろな具体的な案が出ております。この問題はひとつ今後業者の間とはつきりして参りたいと思います。今日は時間がありませんから、このぐらいでやめますが、経営者にもちよつと一言お伺いしたいのですが、優秀運転手というものに対して何か表彰規程とか何か措置はとられているのですか。
  130. 藤本威宏

    参考人藤本威宏君) これは交通違反等につきましては、警視庁からもございますし、協会からもございます。又各会社もそれは各会社でやつているようでございます。この一年間の無事故とかそれから無違反とか、そういつたことにつきましては、勿論、警視庁からは警視総監から、今言つた協会、会社それぞれからやつております。
  131. 大倉精一

    委員外議員(大倉精一君) 私のお尋ねしたいのは、無事故という表彰、これは外面的な表彰かも知れませんが、恐らく会社のほうでは、収入をよく上げてくれる運転手会社の成績を上げてくれる運転手、これは優秀な運転手だと思うのですが、そういう者に対する優遇の措置はとつておられると思う。ところが、ここが大事なことであつて会社のいう優秀運転手は、これは交通違反、スピード違反をやらないと優秀運転手になれない。例えば一日四百キロ走つて来い、走つて来なければ馘にするぞ、それだけノルマを上げて来い、そうすると、会社のいう優秀運転手というものは、四百キロちやんと走つて来る運転手であつて、こういう運転手警視庁では不良運転手である。こういうことになるのですね。そこで私の聞いているのは、そういうノルマを上げて来る優秀運転手は、これは優秀運転手として表彰するのか。或いは何かの優遇措置を講じておられるのか。こういうことをお伺いしているのです。
  132. 藤本威宏

    参考人藤本威宏君) これは一般の給与の制度か歩合給が非常に多いという関係から、そういつた方は例えば収入が非常によろしい、或いは先ほど基準局の方からお話があつたように、或る会社において、これは例えば企業性の上において或いは特色があるとか、こういつたことは考えられますし、又ボーナスその他において余計もらう点がありますが、いわゆる特別表彰ということは実は余り聞いたことがありません。但し会社で一番いい運転手というのは、無事故であつて、一番成績のいい運転手であることに間違いありません。
  133. 大倉精一

    委員外議員(大倉精一君) そこで私は最後に一点経営者にお伺いしたいのですが、これは経営者全般のことじやないと思うのですが、四百キロ走つて来い、こう言われて、そういうノルマをやつて、恐らくそれに違反する奴は会社では馘にするとか何とかになるだろうと思うのですが、そういう交通違反をやつて罰金をとられる、これは会社が負担すべきだと思う。これは運転手が負担すべきものでないと思うが、これは会社に負担させるというような、協会でそういう指導をさせる意思があるかどうか。これは当然だと思うのですが、それを一つ伺いたい。
  134. 藤本威宏

    参考人藤本威宏君) 先ほど伊坪君から、四百キロ走つて来いという会社の例を上げられましたが、何キロ走つて来いというようなことをやつておる会社は極く少数だと思つております。又そういう会社事故を起しても、いわばその罰金は俺が持つてやるからというようなことはございます。併し一般会社では、むしろキロ数についてはつきり言う場合は少いのであつて、むしろ一般的に言つて、給与べースから考えてみて、運転手さんのほうが無理をしている、又無理をしなければならん、こういうことが一般的にあるわけでございます。そういつた意味で、そこで何キロ走つて来いということは、これは私も二、三聞いたことがありますが、聞いて、これはひどいというような話合いになつておる程度でございまして、それが一般的ではないと思います。
  135. 大倉精一

    委員外議員(大倉精一君) ちよつと組合のほうにも聞きたいのですが、私は、そういうノルマを課せられている、四百キロと言いませんが、まあそれに近いようなノルマを課せられている会社、或いは運転手諸君の数は相当あると思うのですが、正確な数字は知りませんが、それがあるのかないのか。ちよつと聞かせてもらいたい。
  136. 伊坪福雄

    参考人伊坪福雄君) その問題は、藤本さんが最初の公述のときに、大体三百五十キロから四百キロ走るというのが通例だと言つておりましたが、それは藤本さん語るに落ちると思います。
  137. 大倉精一

    委員外議員(大倉精一君) そうなると、私は藤本さん、大変なことだと思う。四百キロ走つて来い、三百キロ走つて来いということは、交通違反をやつて来い、こういうことである。それであなたがそういう指導をされるとは思わないが、業界がそういうことをやつている。而も協会もそれを黙認しているということであれば、当然それに並行して、四百キロ走つて来い、若し交通違反に引つかかつたら俺が引受けるからという保証がなければ一方的でまずい、従つて協会のほうも今後そういう無理にノルマを課せないように指導をされるか、或いは課したとすれば、スピード違反の負担はこちらが持つてやる。こういう指導をしてもらいたいと思うのだが、どうですか。
  138. 藤本威宏

    参考人藤本威宏君) その点について私はさつきから申上げておるのでございますが、ちよつと申上げますと、一般収入のうちで経営がぎりぎり、払える人件費というのは大体二割三分程度でございます。それが一ぱいのところでございます。ところが現在は、それでは、売上げは非常に少いために、そのためにそれでは追つついて行けないわけでございます。そのためにいろいろな会社では二割五分になり、それがもつとオーバーしている。これが現在の状況でございまして、そういつた意味からいつて、今言つた四百キロ走つて来いと言つておるのでないのでございますけれども、今言つたように、どうしてもそれだけ走らないと、運転手さんのほうも自分が十分の収入を得られないためにそういつた現象が起きて来ておる。要するに、こちらのほうとしても、経営を破綻させない限りにおいては走りたい、併しここまで行つてはどうもならんところまで来ておるというのが実際のところでございます。
  139. 藤原道子

    委員長藤原道子君) 簡単に願います。
  140. 大倉精一

    委員外議員(大倉精一君) もう最後です。御答弁は求めませんが、これは運送屋でも、ハイヤータクシーでも、この商売は人間の頭をはねて儲ける以外に何も利潤がないのです。それで、この商売は、会社の言うように、運転手さんの相場がきまつておれば、新しく営業する場合に、タクシー幾ら、何々は幾らという原価計算をやるのだけれども、肝心の人間の原価計算をやらない、日本の国は。皆そうです。そうして何でもかんでもやつて、人間のやつはあとから雇つて来て、これだけ働いて来い、いやなら辞めてくれと、これでもつて運転手さんが長時間無理している、スピード違反もやらなければならん。場合によつては手錠もはめられなければ喰つて行けない。こういう悲惨な状態が現在の運転手さんの状態だと思います。あなた、さつき盛んにおつしやつたが、それは経営の問題で、運転手さんはちやんと走つておる。命令通り四百キロで走つておる。皆儲からんから運転手我慢せいというのが運送屋の常套手段です。そこで、こういう交通事故その他の問題が起ると思いますが、これは一つ進歩的な経営者が、藤本さんあたりが指導されて、更に行政的にも、我々もやりますけれども、将来十分に一つ御注意を願いたいと思うわけです。以上を以て終ります。
  141. 阿具根登

    ○阿具根登君 じや基凖局にお尋ねしますが、この勧告書はいつ出したのですか。これは陸運局も見えておるからどちらでもいいですよ。この勧告書はいつ頃お出しになつたかということを聞いておるのです。
  142. 蜂須賀国雄

    説明員蜂須賀国雄君) これは昭和二十八年の六月十五日でございます。
  143. 阿具根登

    ○阿具根登君 それじや陸運局にちよつとお尋ねしますが、バスが通る場合の道幅とか何とかきまつておると思うのですが、何か規格があつて許可されておるかどうか。
  144. 蜂須賀国雄

    説明員蜂須賀国雄君) パスが通る場合は、道路管理者の意見を聞きまして、これは道路管理者のほうで或いは警視庁のほうで大体の基準を作つておられると思います。
  145. 阿具根登

    ○阿具根登君 そうすると、それは大体の基準があるので、何もそれは……。
  146. 蜂須賀国雄

    説明員蜂須賀国雄君) それは向うがやつておりますから、詳しい事情は知りませんが、内規のような基準があると思います。
  147. 阿具根登

    ○阿具根登君 そういう基準に従つてやるということになれば、私たちが見る範囲では、非常に常識で考えられないというようなところにバスが通つておる、こういうことは、これは基準にはまつておるということなんですか。それとも基準外に何か特殊なことがあつておりますか。
  148. 岡本悟

    説明員岡本悟君) その問題につきましては道路管理者の意見を徴しなければならないというふうになつておりますから、運輸省としては、道路関係については道路管理者の意見に従うよりほかないことになつております。
  149. 阿具根登

    ○阿具根登君 あと簡単に御質問しますが、経営者側のほうにお尋ねしますが、今まで歩合でやるとか或いは基本給でやるとかいう問題が相当論議された点だと思います。で、一応の統計は現在できておると私は思うのですね。それで、もうすべての問題は私は皆さんの腹の中にあると思うのですよ。その統計をちよつとお尋ねしたいのです。例えばもうこれは無尽蔵に客があるというわけじやなくて、或いは朝から晩まで走つたところで、それはきまつておる客なんです。三人乗せても四人乗せても同じことなんです。そうしたらぱはつきりぎまつて行くと思うのですね。先ほどちよつと大倉委員のお話を聞いていれば、百キロのうち四十キロ走つておるから駄目だ。あなたの意見を聞いておると、五十キロだから駄目だ。そうすると、それを主にしてこれは全然適用できない。こういうことになるかどうかお尋ねしたいと思います。
  150. 藤本威宏

    参考人藤本威宏君) 極めて困難だということは言えると思います。結局現在のままで、ずつとその勧告だけを全面的に実施しろということになりますと、極めて困難な問題だと思つております。  それでただちよつと私が附言して申上げたいのは、現在の一昼夜交替もいいのでありますが、実際はこれを実施しておるところもございますが、その会社の実態を調べてみますと、極めて特殊な勤務者しかその会社には就業できないという事実もございます。それが二交替になりますと、つまりつたり来たり、往復時間が、例えば一時間ございます。そうすると一日にこれはその往復に伴つて来る時間が非常に大きい。そのために逆に休養ができない、そぅいつた事情がありまして、これは先ず住宅問題から解決しないと非常に困難な問題だと思つております。従つてその点、ただ機械的、形式的にはめられると困るのでありまして、運転手の実態で、例えば私の会社でそれを実施する場合に、やめて行かなければならん運転手がたくさんある。これは現在例えば埼玉から通つて来ておつたり、それから王子のほうから通つて来る。これは現在住宅問題で極めて辺鄙なところに住宅があります。そうすると交替が頻繁になればなるほど、往復に要する時間が倍加いたします。その関係で逆にこれは休めない、こういうことがございますが、労働時間の問題については御勘案を願いたいと思つておりますが、その他たくさんの問題がございますが、これは現在の百キロのうち四十キロしかお客さんが乗つてくれないという状況では、私、非常に困難があると思つております。ただこの問題は、来年にでもなつて年末年始が終つたあとで、例えば一割減車してやることは覚悟しておりますが、そういつた方法によつて需給のバランスがとれる、これは実施されたら基礎ができて来るものと思つております。
  151. 阿具根登

    ○阿具根登君 今の問題を組合にちよつとお尋ねします。これに対する組合のお考え方と、私は炭鉱ですが、炭鉱にもこういう歩合制があるのです。そうしてやはり歩合制によつて生活が苦しいから上げて行かなければならん、その歩合が又上つて行つているのです。そうすると、自分自分を非常に苦しめる結果になつておる。こういうことになつておるのですが、皆さんの場合は、先はど言つたようにもう一応の限度が来ておると思うのです。何ぼフルにやつたところで、これはきまつておるはずなんです。そうすると非常にまあ大きな負担になつておる。こういうように考えるのですが、今の皆さんの歩合制で、極端にお尋ねしますが、どのぐらいの収入になつておるか、最高ですね。一応これはきまつておるはずと思うのです。その点ちよつとこの問題に絡んで……。
  152. 伊坪福雄

    参考人伊坪福雄君) この問題に対しては、資料自動車運送協議会の第二号諮問議案として出たときに、組合としては資料は出してあるわけです。併しながら……。
  153. 阿具根登

    ○阿具根登君 ちよつと答弁中ですけれども、私の質問がおわかりにならなかつたかも知れませんが、なぜこういう質問をしたかというと、先日私が聞いた場合には、組合のほうからもこういうことをやつてくれというような、自分たちは食えないのだから、それで一昼夜交替にやつてくれという陳情があつておるということを聞いておつたから、こういう質問をあなたに対してしておるのですが、その意味で……。
  154. 伊坪福雄

    参考人伊坪福雄君) 組合といたしましては、一昼夜交替というのは、結局ここに私たちの搾取の拠点があるのだから、これは半昼夜交替にしてもらいたい。こういうところの上申は出しております。但し同じ組合でも、これは岡山だと思いますが、あすこに二つ三つぐらい組合があるのです。これは小さい組合です。これが基準局かどこかに、一昼居夜交替のほうがよろしい、こういう陳情がなされたように聞いております。全国旅客といたしましては一昼夜交替ということをやることによつて、これは労働者に対する搾取の拠点があるのだから、これは半昼夜交替に改めてもらいたい、こういうところの意見を出しております。  それからもう一つは賃金の問題でございます。賃金の問題も完全なる資料とは行かないのですが、大きな企業だとか、小さな企業とか、中ぐらいというような中から割り出してみましても、これはいろいろまちまちでございますが、全国旅客としては、三人家族二万六千円、そのうちの六〇%は固定給で以て行つてもらいたい。それから、無軌道を走つておる商行為をやるのだから、やはり四〇%の歩合制を認めるようにという、非常に良心的な給与の制度を経営著のほうに申込みまして現在やつております。それで各会社によつて、二割とか一割とか一割五分くらいとか非常にまちまちで、この平均をとるといぅことはむずかしいのでありますが、資料をとりますと二万円程度しか行つていないのじやないかと思います。
  155. 小松崎隆次

    参考人小松崎隆次君) トラツクの運転手の賃金収入状態を申上げます。トラツクのほうは歩合制度というものは余り行われておりません。併し基準賃金が非常に安く、大体五人家族で先ほど申しました一万五千円から二万円、こういうふうな状態であります。
  156. 大場近信

    参考人(大場近信君) 私鉄のバス関係ちよつと申上げます。関東では最低が一万四千二百九円、最高一万六千四百八十円、それから関西におきましては最低が一万五千九十五円、最高が一万六千二百十二円、それから中部地方、山陽地方に入りまして、これは平均が一万二千七百円、近郊、やはり都心を離れた地区の関係においては一万一千四百十七円というようなデータが出ております。賃金が。  それから勤務時間については、田舎に行くほど労働時間、拘束時間八時間から十時間、最低が八時間、最高が十時間、その間に中休み、これが一時間から二時間というのが、このデータに出て参ります。
  157. 阿具根登

    ○阿具根登君 基準局はおわかりにならんかも知れませんけれども、私のこの前の質問について基準局は、組合は非常にこれを一日交替を希望しておるということを答弁なさつたんですけれども、只今の組合側の答弁では僅か一カ所ぐらいしかない。それを言つたのは、これは基本問題として、そんなことを言つた覚えはないと言つておりますが、その点はどうですか。
  158. 宮島久義

    説明員宮島久義君) 前の答弁というものをはつきり知りませんけれども、私の承知しておるところによりますれば、労働時間はできれば二交替制にしたい。ただ併しその場合、二交替制になるために賃金が低くなるのがつらいということで、はつきりと労働者から二交替制を希望する意見が出て来ないという面はあると思います。そういうことでございます。
  159. 伊坪福雄

    参考人伊坪福雄君) その面は、私のほうの全国旅客で、その分野の海と陸の交通関係の八十五万の協議体を持つております。その事務局長をやつておるのが大場さんです。そこにこの問題を持ち出しまして、この問題を十分討議した中から、やはり二十四時間制を働かせるところから無謀操縱の運転なりいろいろの形が出て来るんです。これはやはりなくさなくちやならん、こういう面で、施行規則の改正という面で意見が一致して、そうして、ここにおられますところの中央基凖審議会でございますか、審議会の委員鈴木さんやつておられますので、その方にお願いして、そこで審議してもらつたわけです。ただたまたま岡山県のタクシー会社で、僅か五十台はないかと思いますが、十台か二十台ぐらい組合と経営者が一緒になつて陳情に来たということを聞いておりますが、全般的な面で私たち一昼夜交替ということは反対しております。
  160. 阿具根登

    ○阿具根登君 皆さんの意見を聞いておりますと、自動車関係の方だけは八時間では食えないのだ。それだから十時間も、これは一週間のうち六十時間も、それ以上も働かねばできないと、こういうことになつていると思うのです。ところが一般労働者は殆んど、それは苦しいでしよう。非常に苦しい生活をしておるけれども、基本法の範囲内の八時間で食つておる。それは、そうするならば、一般労働者と同じ、或いはそれ以上に神経を使う、或いは人命までも預つておるようなタクシーハイヤー或いはトラツクの運転手の方々が八時間で食えないということは、これはどう考えても問題が起るのは当然だと思うのです。これは十分一つ関係者の方々は、会社の方々も或いは基準局或いはその他の関係の方々も十分お考え願いたいと思います。又あとであるでしようから、私はこれでやめます。
  161. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 本日参考人の各位からいろいろ意見を聞き、又議員各位から質問いたしました結果、私が感じますのに、とにかく人間の命は大事だ。ところがいろいろ現在の状態では、まあ自動車はどんどん殖えて危険な状態にさらされている。これはもうトラツク、バス、ハイヤータクシーを含んで危険な状態にさらされている。その原因がどこにあるかというと、いろいろございまするけれども、一つは我々委員会の所管事項である労務管理、労働者の待遇という問題にも大きく響いておると思います。これが影響しておると思います。併し労働者の待遇を上げようと言うだけで、無制限に上げたのでは、会社は潰れてしまう。商売は成り立たんということもある。それを成り立つようにするためには、運輸委員会におけるところの陸上運輸行政の面にかかつて来るだろう。或いは又取締りの立場にある地方行政委員会に関する警察関係の問題にかかつて来るだろう。併し、だからといつて、これはほうぼうにかかわりがあるから放つとくわけに行かんと思いますので、やはりもうこのまま放つといたらますますひどくなる。デフレの影響を受けて、競争も激しくなる。だから運転手諸君の過重労働もますます加わつて来る。そうすると病人が出て来るというようなことになつて、鶏が卵を生み、卵が鶏にかえる。こういう悪循環を繰り返すと思いますので、従いましてこの際やつばり国会としてもこの問題と真剣に取り組んで、今後の陸上自動車運送の面をどうして調整して行くか。これはもう統制というのじやなしに、調整して行くという問題を私は検討しなきやならんと思う。で、当委員会は所管事項の労働問題からこれを取組んで行かなければならないし、それぞれの所管委員会と一度、合同委員会調査会等を持つて、それぞれ担当をきめて、根本的にやつぱり一つ掘り下げて検討しなきやならん。こういうふうに私は思う。非常に複雑だということはよくわかりました。従いまして、委員長におかれまして、本日の速記ができましたら、各委員も十分これを検討しまして、そして各関係委員会、地方行政委員会、運輸委員会、場合によりましては厚生委員会もですね、まあそこまでは発展しなくても、運輸、地方行政の両委員長に対しまして、合同の調査をする機会を一度持ちたいということを委員長からお申出を願いたい。こういうことを、まあこれは決議をするわけに行きませんので、今日はおる委員だけで申合せをしまして、当委員会もこの問題を一つ掘り下げて一遍取り組んでみるということにいたしたい。かように思いますので、委員の御賛成を得て、今日は申合せということにしておいて、委員長にお取計らい願いたいということで行きたいと思います。
  162. 藤原道子

    委員長藤原道子君) 更にそれに法務委員会も含めまして、さように運びたいと思います。御賛成を頂きたいと思います。
  163. 橋本末吉

    参考人橋本末吉君) 私にも一言発言させて頂きたいと思います。大体タクシーハイヤーの問題が中心になつていろいろ御意見を伺つたわけでございますが、トラツクの場合においても、ハイヤーの場合においても、いわゆる交通業者として、先ず道路運送法の面から考え合せますと、先ほど鈴木さんの御発言にございましたように、道路運送法の目的は、公正な競争によつて、いわゆる不当競争を防止して、公共事業に服するといぅのが原則になつておると思うのでございます。併し現在は余りにも不当競争がその度を過ぎているのではないかと、かように考えられるわけでございます。陸運局の蜂須賀部長さんもおりますし、非幣にお差障りがあると存じますが、部長さんは不当競争はないというような御意見でございました。私は不当競争というものが秩序を紊乱し、かような労使共に塗炭の苦しみをしているのだと、而も利用者側にも更にこの幅寄せが大きな迷惑を来たしておるんではないかと、こういうふうに存ずる次第でございます。何となれば、先ほど来タクシーの場合には名義貸しの問題でいろいろ取上げてございます。これを半面トラツクの場合に見ますると、トラツクの現在の免許条件は大体三両が最低になつております。小型の場合においてもやはり四、五両というのが枚挙にいとまのないほど申請され、且つこれの大半が認可になつております。乗用車の場合には現在二百九十五社だというふうに承わつておりますが、トラツクの場合には戦時中一次から二次統合を強制されまして、当時は四十三社でございました。現在は大体一千社でございます。その一千社が始んど特定免許、或いは限定と称しまして、大体当時は十台が基本で認可されております。それがだんだん下りまして、只今申上げたように最低三台でどしどし認可になつている。その半面、当初に申上げましたように、一方、タクシー関係には名義貸しという大きな癌はあり、我々においては十五万円か二十万円の老朽車によつて、これで第一前提としてもぐり営業をやつております。それが一応の基礎を基きまして申請をし、許可をとつている。これが大きないわゆる法の盲点でもあり、秋序の混乱でもあり、又事故に大きな関連を持つているということ、これは又更に不当競争の原因となる。何故に不当競争ということを申上げるかと申しますと、我々にしては、とことんまで労働基準法という枠にはめ込まれて事業をしなければならん。勿論拘束八時間で実働七時間で、而も共済組合というものも設置してございます。これはいわゆる運転手一人に対して月額三十円、又会社側一台について三十円、これによつて事故原因を探求して共済会というものが事故の負担をしております。更にこの不足金というものは会社が負担して、努めていわゆる法を基礎に、いわゆる注意度の面等と噛み合せて、飽くまでも誠心誠意事故の解決をいたしてございます。それから保険というものも、勿論全般を称して国民保険と申しておりますあらゆるすべての保険も、いわゆる基準法に則つて扱わなければならんということ、退職金の問題然り、有給休暇然り、大体大づかみに言いまして一年の勤務日数は三百日というふうな状態になつております。と言うのは、週休休暇、毎週の日曜を休む、それから年次有給休暇が最高二十日でございます。更に祝祭日が私どものところでは九日でございます。この面から行くと、大体出勤しなければならんというのが大体三百日でございます。そうすると、六十五日というものはこれはいろいろな名目で休ませなければならんということ、この半面、只今申上げましたように、大体一千社の中に、基準法の適用を受けている会社は大体百社ないと思つております。殆んどが基準法というものを棚上げしちやつて運営しておるというのが現実でございます。そこに不当競争が生じ、事故に大きな関連性を持つということを申上げても過言でないと思つております。更に車両数の問題にも触れたようでございまするが、これは業者といたしますと、車両数は減つていると思つております。併し先ほど申上げましたように、白ナンバーのもぐり業者がどんどん殖えております。かようなものが現状でございまして、そこに先ほど御意見もあり、私もこれに同感申上げたように、いわゆる国家政策として、飽くまでも統一した運営が必要である。これによつて初めて不当競争も防止できるし、又公益事業としての本分が全うできるというふうに信ずるものでございます。かように、基準法の面におきましても、さような矛盾があつて、片一方はもぐりの野放し政策である。いわゆる基準法を何ら適用しないのである。野放し政策である。我々はとことんまでそこへぶつこまれておる。そこに大きな不当原因がある。それから数の面におきましても、今年の七月以降、これは大きにデフレの影響も関係あると思つておりまするが、大体七月は二割五分、八月以降大体二割の減収になつております。而もこの二割という推定は、月額一千万なら一千万の収入がなければ経営が成り立たないのだという基礎から考えまして、やはり一千万なければ経営が成り立たないのだというにもかかわらず、八百万なり八百五十万。これでは毎月みすみす二百万円なり二百五十万円の赤字を来たしておる。これがやはり無理を生じ、又労務者にも非常にしわ寄せをし、不当なる労働行為にも関連をする。勿論労働組合というものもございまするから、我々においては不当の労働行為というものは到底許されるわけではないのでございますが、そこで参考までにトラツクの場合を申上げますると、トラツクは、大体トラツク協会の平均走行キロ、これは一日七十五キロでございます。かように低いキロの結果に相成つております。かようなわけでございまして、非常にタクシイ、ハイヤー関係と事情が違うわけでございますし、又、実は私はトラツクが専門業者でございまするが、タクシーにおきましても、富国交通というものの代表取締役をやつております。いろいろハイヤータクシー状態を一応申上げてみますと、一昼夜交替とか、或いは待遇上における給料の半額を固定給にすべきではないかと、鈴木さんの御意見でございましたが、誠に御尤もでありますし、又四百キロなり四百五十キロ走つて来いという業者も一部あると思つております。併しこれは事によつて、例えばルノーとかワーゲンとかいうものは、非常にあれはスピードの出るような装置になつておりまして、先ずセコンドであつても四十キロ出さなければトツプに入らないというような高速を原則にした車両でございまして、而も非常に人気がある関係上、自然に四百キロや四百五十キロ走つてしまうのです。私の経験で見ますると、大体平均三百キロに行つていないのです。三百五十キロも行つておりません。そこで一体、一昼夜ということを考えてみますると、非常に過酷な制度でございまするが、一昼夜に平均三百キロと申しますと、三十キロ平均走つても、十時間の労働で解決はつくわけでございます。そういう考えから行きまして、時間的には不当のように考えられまするが、決して不当じやない。いわゆる運営上の問題だと思つております。二部交替ということが理想だと思つております。併しこれはいわゆる住宅の問題とか何とかとして、実行がなかなかむずかしいということが一つの問題、それからいわゆる社会情勢というものは非常に深刻な関係上、実際にそれは理論に帰するのではないかということが考えられるわけでございます。従いまして、相成るべくならば二部交替で、勿諭労働基準法の枠も適用されなければならない。又いわゆる固定給によつて最低の生活保障もしなければならんということに相成ると思つております。併しこの問題には触れなかつた思つておりますが、勿諭お差障りがあるという点から恐縮だと思つておりますが、先ずいろいろなこの問題を解決するにつきましては、これは業者が称してサイド・ポケットとか、チヤージとかいうことを言つております。先ず事業の最も利潤として入るところの大半、これは大半と言いますか、一部と申しますか、大体これが業者のふところに入らずに、途中で流れてしまう。称してチャージとかサイド・ポケツトとかいわれておりますが、この解決がなくしては、いわゆるニ部制も、固定給によるところの生活保障、労働基準法の枠にはめることも無理だと思つております。従つて結局、結論は理論で終るのではないか。いわゆる根本問題から考えまして、国策的に、国家方策として統一した運営方法ということこそ、道路運送法もあり、又労働基準法もあるということに相成るとかように考えておるような次第でございます。又賃金の問題にもいろいろそれぞれの方から触れましたが、トラツクの場合は大体基準給ということから考えますと、大体べースというものが基本になつておりまして、大体の掴みから申しますと、三十二才のB級、扶養者二人ということによつて、一万三千円べースとか一万二千円べースとかいうことの規定が大体共通しておるように考えております。併し今申上げましたように、労働基凖法という面から考えますと、三割以上といろうのが時間外で支払わなけれぱならんということでございます。従いまして三百万円というものの基本給を保障するにおいては、一応四百万円の給料を払わなければならない。一方は何ら拘束されずに一万三千円なら一万三千円きり支給しないのだ。而も時間に制限なしに、朝六時からでも、夕方七時になつても八時になつても、いわゆる規定の給料以外に給与は支給しないのだ、そこに大きな矛盾があり大きな不当競争が生ずるということになつて、要するに輸送秩序の紊乱ということを申しておりますが、私はこれは輸送秩序の紊乱ではない。国家秩序の紊乱だということを言つております。何となれば、いわゆるあらゆる法の盲点をつき、而も脱税行為をやつている。これはトラツクの場合でございます。という観点からいつても、とりもなおさずこれは国家秩序の紊乱だということを申上げても過言でない。それから今日はいろいろの面の方がお集まりになつておるといぅことを知らないで、非常に極論を吐いて、御気色に触れた方もあると思つております。と申しますのは、二重処罰の問題、これはいろいろ御意見もございます。御尤もだと思つております。私は憲法違反ではないか、行政の行ぎ過ぎではないかということを申上げましたが、要はいわゆる自由民権の尊重というものからも考えたとぎに、いわゆる事業上の過失なり違反であつて、そこで先ほど警視庁もあり、安全協会もあり、而も安全協会、各警察ごとに支部があり、運転者会がある。私は勿論、運転者会長もしておりますし、事業者の一人として飽くまでも包容力を持つた指導によつて育成向上を図らなければならんということが私の理念でありますとともに、而もそのいろいろな機関を通じて、こういう場合にはこういう処罰をするぞということを、これを十分に納得させて、そうしてやはり法の尊厳というものによつてこれに適用される場合には、これはやむを得ないと思います。私はあくまでも法の運営を緩和してくれとか、行き過ぎだとかということでなく、やはりはつきりその行政上の面を滲透させて、又業者においても、安全協会においても、警視庁においても納得させ、その反面指導、育成、向上という理念と並行してやらないことには、事故の防止は成立たないのだということが先ほど私が申上げた問題であつて、法の行き過ぎとかということはちよつと私の或いは行き過ぎた意見であつたかも知れません。私はさような意見から申上げた次第でございまして、いろいろまだあると思うのですが、とにかく時間の関係もございますし、まあ御参考に供すれば結構だと思います。いわゆるこれをいろいろお取上げ願いまして、先ず道路運送法を、陸運局の方々もお帰りになつたようですが、非常に或いは運送法を緩和したがために更にこういう結果になつたと思つております。これは運送法というものは変りはないのですが、タクシーの場合には二十台というものを一つの目録にして申請しなけれぱ書類を受付けないようになつております。併しトラツクの場合には先ほど申上げたように三台でも何台でも取上げてみんな許可してしまう。そこに又基準という言葉がございますが、私はあれは陸運局の扱い方ほ、あれは条件という扱い方で、その条件に合致すればどんどん許可するのだ、私は基準という文字が使つてある以上は、あくまでも広く信用を原則とし、又本日取上げた事故の問題についても、事故の負担能力という面から考えても、防止の面から考えても、やはり基準というものはあくまでも基準であつて、何台が基準であるか、少くとも公益事業という面から行きましても、すべてあらゆる広範囲から考えて、あくまでも基準でなければならない。条件がかなえば二台でも三台でも免許するということではいかんと思う。従つて道路運送法の盲点というものを是正しなければならないし、又その盲点があるために非常に陸運局としても扱い方に困難を来たしておると思つております。従いまして、道路運送法の改正、勿論基準法のいわゆる統一した運営上の問題、これもいわゆる一方において適用し、一方においては野放しだということは、例えば一つの警察単位ですね、私はこういうことも考えておるのです。いわゆる不当競争という面から解釈したときに、これは一つのいわゆる警察を単位にした連合体的な労働組合というものを作つて、あくまでも法に従うところの組織を持たしてこそ、いわゆる公正な事業或いは公正な営業行為ですね。自由競争という明文に則つた事業が成り立つのじやないかということを痛切に感ずるものでございまして、どうぞこれらの点も御参考頂きまして、何とかこの矛盾したすべての問題を、もう少し正常な、いわゆる法治国として、いわゆる立法精神に基くところのすつきりした行政ができるように、又それに我々がのつて事業ができるような状態になつてこそ、事故の問題も自然に少くなつて行くのではないか、かように考える次第でございます。
  164. 藤原道子

    委員長藤原道子君) どうもありがとうございました。  では本件につきましては、本日はこの程度に止めたいと思います。参考人の方々には誠にありがとうございました。非常にお忙がしい時間を御出席願いまして、大変時間も遅くなりました。甚だ申訳ないと思つております。貴重なる御意見を多々お聞かせを頂きましたので、先ほどお聞き及びのように、本委員会といたしましては、関係委員会と合同審査に持つて参りまして、いろいろ伺えば伺うほどむずかしい問題がたくさんございますので、徹底的にこれの解決を図りたい。かように存じております。誠に本日は御苦労様でございました。今後又何かにつけて御意見を伺うことがあるかもわかりませんが、そうしたときにも又御協力をお願いいたします。誠にお昼を過ぎること三時間半、委員長誠に不手際でございまして、申訳ございません。本当にありがとうございました。
  165. 山田節男

    ○山田節男君 明日、例の駐留軍の不当労働行為に関する問題、若し明日の午後ということになれば、これは時間的に参考人を呼ぶということはむずかしいかも知れませんが、一人は東京都内、一人は青森県の大三沢の米軍基地の湯川某ですか、若しこの委員会で御了承頂ければ、青森県の方が間に合わなければ、東京都内の当事者ぐらいは、一つ呼んで頂いたらどうかと思うのです。この点一つお諮り願つて……
  166. 藤原道子

    委員長藤原道子君) お諮りいたします。実は速記をやめてから御相談しようかと思つていたのでございますが、明日午前十時から労働委員会を開きたいと思いましたが、大臣がどうしても都合がつかないそうでございます。午後一時でございましたら、大臣は出席できる見込みでございますので、一時にいたしたいと考えております。只今山田委員の御発言のように、いろいろ不当労働行為があるようでございますので、是非参考人を呼びたいと、かように考えているのでございますが、今のお話の湯川さんですか、この人は東京にいるらしうございますので、或いは出席願えるのではないか、かように考えているのであります。  なお明日の労働委員会、今日は人数が少うございますので、お諮りしてその場で一つ参考人にお願いできたらと、かように考えております。よろしうございますか。
  167. 山田節男

    ○山田節男君 お願いします。
  168. 藤原道子

    委員長藤原道子君) ちよつと速記をとめて……。
  169. 藤原道子

    委員長藤原道子君) 速記をちよつと起して頂きまして、只今相談いたしました明日の委員会の件でございますが、労働大臣の挨拶を受けて、それに対して質疑応答をする。それから駐留軍労務者の労働問題参考人出席を求める。それから日雇労務者の年末手当等についての問題等を一時からの委員会で取扱いたいと思いますが、御異議ございませんか。
  170. 藤原道子

    委員長藤原道子君) それでは本日はこれを以て散会いたします。    午後三時三十一分散会