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1954-09-09 第19回国会 参議院 労働委員会 閉会後第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年九月九日(木曜日)    午前十時五十八分開会   —————————————   委員の異動 八月六日委員村尾重雄辞任につき、 その補欠として赤松常子君を議長にお いて指名した。 八月十二日委員田畑金光辞任につ き、その補欠として片岡友重君を議長 において指名した。 九月六日委員片岡文重君及び石川清一辞任につき、その補欠として田畑金 光君及び寺本広作君を議長において指 名した。 本日委員寺本広作辞任につき、その 補欠として石川清一君を議長において 指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     栗山 良夫君    理事            井上 清一君            田村 文吉君            田畑 金光君    委員            阿具根 登君            吉田 法晴君            赤松 常子君            市川 房枝君            大山 郁夫君            石川 清一君   国務大臣    労 働 大 臣 小坂善太郎君   事務局側    常任委員会専門    員       磯部  巖君    常任委員会専門    員       高戸義太郎君   説明員    労働省労政局長 中西  実君    労働省労働基準    局長      亀井  光君    労働省職業安定    局長      江下  孝君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○本委員会運営に関する件 ○労働情勢一般に関する調査の件  (新労働政策に関する件)  (近江絹糸株式会社における労働問  題に関する件) ○理事補欠選任の件   —————————————
  2. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 只今から労働委員会開会いたします。  議事に入りまする前に九月の六日に理事会開会いたしましたので、その理事会申合せにつきまして御報告を申上げたいと思います。  実は八月の二十五日でございましたが、有志議員から只今問題になつておりまする近江絹糸争議が混沌といたしまして解決の見通しが困難な状態にありますので、その真相を当委員会において調査をいたしまするために、直接争議関係いたしておりまする近江絹糸労使並びにこの争議に直接間接に関係をせられた多くの方々がありますので、そういう方々を証人或いは参考人として当委員会に招致をいたしたい。こういうお話があつたわけであります。そこで私は在京の理事並びに委員方々とお打合せをいたし、又労働省ともその後の経過につきまして取調べをいたしましたところ、緊急に理事会開会する必要があることを認めまして、九月の六日に理事会開会いたしたわけであります。この理事会におきまして、九月六日当時の状態における近江絹糸の問題を更に検討を加えましたところ、委員各位新聞紙上等を通じて御承知のように、事態解決につきまして中央労働委員会中心にして労使双方が歩み寄りをせられまして、事態が好転の状況にあるやに承知いたしたのであります。従いまして理事会におきましては、暫らく争議早期解決ということが害ましいのでありますから、事態を静観をいたしまして、若し只今の動きにおいて所期の目的と外れて再び争議紛糾状態に戻るというようなことがありまするならば改めて考慮をしようと、こういうことに申合せをいたしたわけであります。  更に当日の理事会におきましては、本日、明日、明後日と三日間に亘りまして労働委員会開会をいたし、公報を以て御案内を申上げました通りに、労働情勢一般に関する調査をいたすことに申合せをいたしたわけであります。その内容といたしまするところは、新経済政策に関する件、主として通商産業省の関係経済審議庁関係、であろうと思います。これに付随いたしまする労働政策に関する件、これは労働省関係でございます。更に駐留軍労務者労働問題、石炭関係労働問題、その他失業問題或いは個別の産業政策から来ますところの労働問題等につきまして十分な調査をいたしたい、かように考えており、さような申合せをいたしたわけであります。それから委員長といたしましては、この三日間の委員会におきまして、過日行いました議員派遣に関する報告派遣議員から当委員会に対して受けたいと、こう考えておるわけであります。  大体只今申上げましたことが九月六日の理事会申合せ事項、並びに委員長委員会運営のために考えておりまする事項等でございます。御報告を申上げます。……御異議がございませんようでございますから御了承を頂いたことにいたしまして議事を進行いたします。ちよつと速記をとめて下さい。    〔速記中止
  3. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 速記を始めて下さい。午後二時まで休憩いたします。    午前十一時十三分休憩    ——————————    午後二時十七分開会
  4. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 労働委員会を再開いたします。  先ず労働大臣から、最近新聞紙上を通じて発表せられておりまする新労働政策に関しまして一応説明を先ず聴取いたしたいと思います。内容といたしますところは、主として労働組合法関係では解雇制限法でありますとか或いは産業安定法でありますとか、更に労組政治活動に対する資金的な制限の問題でありまして、労働基準法労調法関係等につきまして説明を願いたいと思います。更に労働中央金庫法に対する構想も発表されておりまするので、これらの点につきましても言及をせられたいと思うのであります。
  5. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 私も先般来労働省内部におきまして少し研究してみてもらいたいということを申したことは新聞等にも御報道願いました。自由党におきましてもこの考え方説明してもらいたいというようなことで御説明いたしたものがございます。それに基きまして只今委員長の仰せのような私の考え方を聞いて頂くという意味で申上げてみたいと思います。併しこれは飽くまで構想でございまして、そういう考え方を持つてはどうだろうか、或いはこの考え方に基いて現実に施策を行うとすればどういう点が問題になるか研究して行こうではないか、こういうことでございます。そこで私の根本的の考え方といたしましては、終戦直後総司令部が参りまして、いろいろ日本民主化のことを指導いたしたのでありまするが、その一環といたしまして、労働関係の諸法律も強い指導、干渉を受けて制定せられたことは御承知の通りであります。併しその後相当の年月を閲しておりまするし、我が国内におきましても十分その間の経験を積んで参りました。そこで我が国自身の持つておりまする経済的な基盤というものはどういうものかと考えてみますると、まあ先ず第一に非常に土地が狭い、人が多い、而もその人口が非常な勢いを以て殖えつつある。そこでその人口を養うには資源も乏しい関係上、どうしても食糧を含めて輸入をして行かなければならない。輸入をするには金が要る、その金は、どうして獲得するかというと外国への輸出によつて、そのマージンによつて輸入資金を獲得して行く、こういう基本的な産業自体を維持する国に特有な構造があるわけであります。これを失いますというと、いわゆる海外の市場におきましての競争力において完全に日本の競争が負けるということになりますると、結局国全体が失業をする。日本産業が成立たず、日本の国民もその産業によつて職を得る者も失業をするということになるのでありまするから、やはり日本自体のそうした経済的な基盤をもととして、労働関係全般についてもその後の経験を快調として考えては如何か。勿論その考え方というものが世界全般考え方のレベルを下廻るものであつてはならないし、働く者の福祉を守るという理想を捨ててはならない、捨ててはならないけれども、現実にその基盤を持たずして、ただ単に理想のみを追うということになりますれば、その理想はもとより現実の基盤を失つてしまうということになるのでありまするから、そういう関係を十分に考慮しながら労働関係の問題を見直してみようではないか、まあそういうことなんであります。  ただ私は労働問題についての扱い方或いは労働法制についての扱い方といたしまして、これはやはり労使対等の立場において問題を考える際に双方から信頼を受けるものでなければならんと思つております。併しその信頼というものも理解の上に立つものであつて、ただ単に力ずくでこういう法律があるのだからそれを守つて行けということだけではいけない、それも法律ができる以上はこれは守つてもらわなければ困りますけれども、法律を作る過程におきましてはできるだけ納得の行く方向で行くべきであろう、こういうふうに考えておりますので、まあ勿論多数の意思の赴くところによつて最終的にはきまる問題でありますけれども、こうした考え方をできるだけ世に問うて、一般の議論の花の中から何かそこに実るものがあれば非常な結構なことではないか、そういうような考え方一般労働問題についてお互いに研究して行く、こういうことであるわけであります。只今委員長のお示しの例えば労組の政治資金問題等につきましても、イギリス等におきましては御承知のように労働法規の中に、一九一三年労働組合法第三条、第七条におきまして、労働組合の基金は左の場合を除いて政治上の目的には使用できない。即ち組合員の無記名投票によつて政治目的を行うことを組合目的として承認される場合でないとこれは使用できんという規定になつておりまするし、そうした目的の支払は別個の政治基金からするのである。そうしてその政治基金を醵出し若しくは拒絶することの理由として、組合員が不利益の取扱を受けないということが明瞭になつておりまするので、まあこういうことなども現在の我が国のいわゆる組合基金というものはやはりもう少し明瞭に組合員自身福祉ということと、いわゆる政治資金というものとはつきり区別して考えることがよいのではないか。併しこれをどういう法制で扱うかということにつきましては、これは労働組合法というよりもむしろ政治資金規正法というようなものの中で各党によつて考えて行つたらよいのではないかというような考えを持つておるのでございます。併し労働関係につきましては、今申上げましたように、労働政策の基本というものをやはり日本経済国民全般が守つて行くのだ、こういう立場から、できるだけ合理的な労使関係産業平和を確立する。そういう基礎の下に、やはり組合員個人それぞれが十分に満足されるような、そうした傾向に政策の重点をおきたい、こういうことでございまして、やはりそうした趣旨からいたしまして、労働教育の徹底、労働経済統計の整備、そうして国民一般の正しい理解を深めることによりまして、いわゆる労使の問題は労使だけが満足すればいいというのではなく、やはり国民一般の理解の下に、労働争議というものは、真に止むを得ざる場合にはストライキもいいけれども、何ということなしにただストライキをやつておるということによつて国がよくもならんのだ、そういうようなことをよく認識してもらうようにしたいと考えるのであります。まあこれは飽くまで構想でございまするが、私は争議行為の開始というような際におきましては、やはり民主主義の建前から全部の無記名投票によつて開始の要件をきめるというようなことも考えてはよろしいのではないか。又先ほど申上げましたような政治活動につきましては、これは合理的な限界を設ける必要がありはしないかというようなことを考えておるのでございます。  なお労働者福祉関係等につきましても、これにつきましては現在の労働金庫というようなものをできるだけ広汎に活用してもらうような対策を持ちたいと思いますが、先般来もいろいろ問題もございました、政府の預託の問題もございましたが、これはやはり労働中央金庫というようなものを作つて、更にこれを強力に推進するほうがよろしかろうと思います。又労働者福利共済団体法というような法律を設けまして、いわゆる組織されざる中小企業労働者諸君を団体によりましてその相互の福利を図る、こういう考え方を導入いたしたいと存じております次第であります。又、若し可能であるならばでございますが、労働省内におきましても福祉関係を主とする、つまり労働者諸君福祉関係をのみ考える福祉局というようなものを設置いたしてみたいとも考えるのでございます。  なお労働基準法につきましては、先般来国会におきましても種々御説明を申上げましたこともございまするし、又御質疑もあつたのでございますが、やはり働いて行かなければやつて行けないのでございまするが、現行法におきましても労働時間というものは実労働一日八時間、週四十八時間制になつておりまして、これに対する例外は種種番いてあるのであります。併しながら私どもといたしまして、この労働時間というものは実労働時間であるのだということをもう少し明確にお互いに認識し合う必要がありはしないか。間際労働条約におきまする労働時間制というものは工業的企業及び商業、事業所におきまして一日八時間、週四十八時間という実労働になつておりますが、又炭鉱におきましては一日七時間四十五分、ガラス工場におきましては週平均四十二時間に短縮、公共事業におきましては週四十時間、繊維工業におきましても週四十時間というふうに時間の条約があるわけでございまするが、問題は、労働時間とはそれでは如何なるものかということをお互いにもう少し明確にすることがよろしいのではないか。まあ私どもの解釈といたしましては、労働時間と称するのは、労働者使用者の指揮に服する時間をいう、使用者の指揮に服しない時間を包含しないという、繊維工業における労働時間に関する条約に定めてありまする労働時間というものの考えて方を適当と考えておるのでございまするが、そうしたことをもう少し徹底させる必要があるのではなかろうかと思います。併しよく基準法が悪い基準法が悪いという意見がありまして、私よく聞いてみますと、基準法というのは働く時間ではなくて、ただ単に拘束時間をいうておるんだという意見がありますが、実際に基準法に示してあるところは実労働一日八時間ということなんだということをもう少し徹底させる必要がありはしないか。要するにみんなが働きみんなが調和を保つて産業の平和を保つて行くという態勢、そしてストライキというものはそう濫りに濫用されない、そしてそこに産業平和が確立せられるという態勢が先ほど申上げました日本経済の実態から申しまして必要だということは誰しも考えるところでありますが、それにつきまして、それは他の政策面において種々改善さるべき点もございましようけれども、それは勿論やつてもらいたいことといたしまして、労働政策の面からいたしましては、労働法規解釈等について、或いは労働法規そのものについてもう少し考えてみようではないか、こういうのが私の考えておる主体でございます。  なお委員長の御指摘の中に解雇制限法のことがございましたが、これは西ドイツにおきまして解雇制限法というのがございますのでありますが、これは御承知のことを存じますが、我が国におきましても現在のデフレ下におきまして、デフレに藉口しての首切りというのが非常に濫発せられるというような危険がありとするならば、やはりこれに関しまして社会的に、不当な解雇はできないというような制限を置くことも一つの考え方であると思います。非常に公平なる機関があつて、それの裁定というものが下りましたならば、それに対する解雇というものは社会的に妥当なりと認識せられるものであるから、それに対する解雇反対ストライキというものもこれも行えないということにすれば、これは非常に合理的に話が進むというふうにも思いますので、この点につきましても現実に一体どういう障害があるだろうか、或いはやるとすればどういう点を取上げたらいいだろうというので研究してもらいたいということを申した次第でございます。  次は、これは構想ではございませんで、失業の問題につきまして私どもとして失業対策強化措置を考えておるのでございます。これは現実に是非行わねばならん、これは構想と申しまするよりも具体的な対策でございまするが、本年度におきましては、政府のほうといたしましても、経済の地固めの政策を行う、国際的に日本独立国として繁栄し得る経済的な基礎を作りたい、こういうことで努力はいたしておるのでございまするが、半面におきましてやはり雇用の面におきましてそのしわが失業の形において出て来る事実も否めませんのでございまして、これに関しましては私どもとしてできる限りの手を打たねばならんと考えておる次第でございます。現在のところ大都市及び炭鉱地帯等特殊地域におきましては相当の失業情勢が広がつておるのでございます。これは今後におきましても相当に進展する場合も予想せられまするから、これに対しましては、特に失業対策につきましては先ず地域別に重点的にこれが措置をするということを考えたいと思つております。なお現在失業保険を受けたいという、又受けつつある人は四十数万人に上つておりまするが、この失業保険の切れる時期がやはり問題でございまして、これはやはり明年の一月以降そういう事態が現れて来るわけでございまするが、明年の下半期の後半になりましては特に失業対策費について相当額の増加を必要とすると考えております。この点につきましては現実に具体的に措置をいたしたいと考えております。又その必要を認めておる次第でございます。なお地方財政が、やはり最近失業といいますか、事業不振のために、相当地方負担に支障を生じておる町村がございまして、特定の地域におきましては地方財政が相当悪化しておるようであります。これに対しましては一定水準以上の失業対策事業を行う町村に対しましては、この超過分について補助率を考慮する、或いは交付税措置を講ずるというように、何か失業対策事業一般基準財政需要との関係を睨み合せて、一般基準財政需要の中に占める失業対策費の割合が特に大きい市町村に対しましては、特にこれについて補助率の引上げ或いは交付税増額等措置自治庁において講ぜられるように要望する必要があるのではないか、こういうふうに考えているのでございます。次に大都市又は炭鉱地帯のように特に失業情勢について深刻なものが見られます地域につきましては、目下労働対策連絡協議会において検討されておりますことでありまするが、特に鉱害復旧事業等のような適切な公共事業を一部繰上げの方途を講ずる必要があると存じております。又産業関連施設につきまして、例えば道路、港湾、橋梁のような、その地域におきます産業振興に非常に有効なものであつて、而も受益者において積極的に負担の意思あるものにつきましては、失業対策事業の実施について特別に考慮するという措置を考えたいと考えているわけであります。これは一部におきましては、目的税を創設して失業対策費に充てろという議論もございますが、私はそうしたことも或いは結構かも知れませんけれども、新税の創設ということにはなかなか問題がございまして、この道路を新設するということが非常に有利であるからそれについては負担金を出していい、こういうものがあるといたしますると、その寄付を市町村において受付ける、これについて市町村がそれだけの負担能力ができるわけでありますから、そこにおきまして失業対策事業を実施する、こういうような考えをとつて参る、かように思つているのであります。なお、明年度におきましては、これはこれから大いに折衝せねばならん問題かと思いますが、やはり失業青年層の中から特に国土の建設をするというような気分を持つ者を選抜いたしまして、これに職業訓練を行うというような形におきまして、現在建設省が行なつております或いは農林省が行なつておりますような産業開発青年隊、或いは農村建設青年隊というようなそうした規模の目的において、失業対策としての効果は認めがたいものもございまするが、そうしたような国土の建設をするという目的国土建設隊を設置する。これは勿論労働省におきまして主としてやる事業ではございませんけれども、こうしたものについて労務面からの訓練、或いは人員の配置の計画等をお手伝いさせてもらえるようなそうした国土建設隊というようなことを考えてみたいと思つているのでございます。  なお、失業対策事業運営を改善せねばならんと思いまするが、この点につきましては、やはり一般資材費の増額ということが言われておりますが、これにつきまして、関係各省とも折衝してみたいと存じまするが、やはりこの失業対策事業についても労務監督能率化というものをもう少し考えねばならんと思います。で、産業能率の良否ということは、これは失業対策事業ではというふうに言われる向きもあるかも知れませんが、やはり公共事業失業対策事業を噛み合わせる以上、それをうまく噛み合わせて参る以上は或る程度の労務監督というものはなされなければならんと思います。それに関しまして就労者の通正配置ということもこれ又必要なことであろうと思います。或いはそれにつきまして現場小廻り制を考える、或いは現場直行制を考える、安定所の窓口に何時間も待つてつて現場へ歩いて行くというようなことでなしに、或る程度固定化したならば現場に面行ずるという方法を考えるというような、いろいろな失業対策事業運営そのものを改正するということも必要と存するのでございまして、これらにつきまして、安定局を中心といたしまして十分に具体的に運営し得る方途を伸ばしたい、かように考えておるのでございます。  なお公共事業失業対策事業を有機的に組合せる考え方でございまするが、これに関しましては、これは非常にうまく運営されればその効果は大きいものと存ずるのでございます。そこで地域的に又時期的に失業情勢に応じた弾力的な運営を図りますために、将来やはり公共事業の中にも明年度予算編成等の際には、災対策予備費のような例に倣いまして、失業対策的な公共事業につきまして一定の予備費を流用して労働省の要請する時期或いは地域等において各省が失業情勢に応じて公共事業の実施を計画するような、そういう失業対策的な効果を狙つた公共事業運営につきましても十分に考慮してもらいたいと考えておるのであります。これは労働省自身がやることでなくて、勿論建設省もやることでございますが、これにつきまして労働省として十分その運営に協力さしてもらうということが、全体の国費を有効に使い、失業対策としても有効なる対策の一環となろうかと考えておる次第でございます。  以上簡単でございますが、考えております一端を申述べたわけでございまして、あとは御質問に応じましてお答えしたほうが話の焦点が明らかになると思います。
  6. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 内容に入ります前に、今御説明を頂いた点で一段明かにしておきたい点がありますので、お答えを頂きたいと思います。それはいわゆる新労働政策として小坂労働大臣構想をお持ちになつておる内容の中で、新らしい立法措置を講じなければならないものと、既存法律改正を要するものと二色あるように話を伺いましたが、従つて新らしく立法措置を講ぜられようとしておられますものと、それと既存法律改正しようとしておられるものについてもう一度一つおつしやつて頂きたい。
  7. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 新らしく法律を要しまするものは、労働金庫につきまして労働中央金庫を作ります際にはこれは法律を要するのでございます。又労働者福祉共済団体法、これも新らしい法律になります。これはなかなかむずかしいのでございまするが、勤労所得税の低減につきましてできるならばと思つておりますが、それは税法を改正して頂かなければならんし、それから福祉局労働省内に設けるといたしますれば、労働省設置法の一部改正ということになります。解雇制限法というものを設けるといたしますれば、これも法律を新たに要するわけでございます。労働基準法関係につきましてこれを改正をするとすればどの程度になるか。それは程度によつてでございまするが、私ども考えておりますのは、先ほど申しましたように、要するに実労働八時間というものを明らかにすることということでございますれば、本来そうなつておるのでございまするが、特に法律改正というところまでは要しないかと思います。なお労働関係法規につきましては、これは特に解釈的なものでございまするから、法律を要するというところまで行きますことは、これは要するに研究した結果に待たねばならんと思います。更に失業保険法を改正するとすれば、これは法律を要しない点が、主として予算関係になりまするが、失業保険法の改正ということに触れざるを得ないと思うのであります。更に前国会におきましてお話がございまして、私も御尤もと思つておりまするが、けい肺法でございます。これも新らしい法律を要します。これにつきまして審議会の結論がなかなか出ぬとすれは私のほうから出しますということをお約束申上げておるわけでございますが、これも新らしい法律になります。  以上のような次第でございます。
  8. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 十九国会でこれは相当激しく議論をした中に、緊急失業対策法について根本的な改正をする必要があるのじやないかという意見が出まして、労働省のほうも認められて研究をしようというお約束を願つておるのですが、これはどうなりましたか。
  9. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 只今申上げましたように、失業の問題は予算関係につきまして折衝をいたしておりまするが、別途法律関係におきましても改正を考慮しております。
  10. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) それで只今説明のありました中で、丁度今日の状態においてその構想というものが労働省の事務当局でどの程度研究が進みつつあるか、その経過が全然明らかになつていないわけでありますが、それを一つ明らかにせられたいということであります。それから間もなく臨時国会或いは通常国会が開かれて行くわけでありますが、それらの最近の臨時国会並びに十二月から始まりまする通常国会に提案を予定せられておる法律は、今述べられたうちのどれとどれであるか、これを一つ伺いたいと思います。
  11. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 事務当局のほうから説明をいたします。
  12. 中西実

    説明員(中西実君) それでは今大臣がお述べになりました中の労政局の関係について申上げます。  労組法、労調法関係の点もございましたが、これは目下更に外国の立法例等も参酌して鋭意研究をいたしておる段階で、まだ成案というものを得ておりません。  次に中央金庫法、若し労働中央会庫を作るとなりますれば法案が必要になるわけでありますが、こそは一応の構想はございます。併しながら御承知のように、これは労働省だけでできるものでございませんで、できましても大蔵省と共管になるものでございまして、従つて大蔵省とも十分話合いをしなければならん。これはまだ実は大蔵省との間にやはり相互研究中ということでございます。なお又これは労働金庫、各府県にできました労働金庫当事者の意向も十分に参酌しなければいけません。これあたりも漸く我々のほうで一応の構想につきまして話合いを始めたという程度で、まだ成案に至つておりません。  それから労働者福祉厚生団体法といいますか、仮称でございますけれどもこれは衆議院の労働委員会におきまして前国会から各派一緒になつて研究しようじやないかという話合いになつておりまして、一応我々のほうとしましてもそれの御相談のもとになる案をでつち上げましたので、近くこれをそれぞれの間に御相談に供するようになるということでございます。或いは皆様方の各派の意見が一致しますれば、各派で共同してお出しになる、議員提案になるか、或いは又政府提案、つまり政府部内で話がまとまれば政府提案になるか、ここいらは実は今後の話合いの進行による問題でございます。  それから解雇制限法関係でございますが、これは只今お話ありましたように、西ドイツの解雇制限法を一応参考にして考えを練つておるわけでございますが、いろいろの点で利害がございまして、今なお結論には至つておりません。いろいろと労働者側或いは使用者側、それぞれに意見もございましようし、又内容によりまして、果してそれが円滑に実行できるかどうか、各般の問題がございます。従つて目下そういつた諸点を研究中というところで具体的なものは今のところ固まつておりません。  大体以上のようでございます。
  13. 江下孝

    説明員(江下孝君) 緊急失業対策法につきましては、只今大臣が申上げましたような線で研究をいたしておりますが、現在の法律の運用によりまして実行できるものが大部分でございます。ただなお今後の失業情勢等を見まして、根本的にこれが改正を行うということにつきましては十分に検討はいたしております。そこで臨時国会にはかけられないが、大体この本国会という予定でおります。  それから失業保険法は、これはそう急に今改正を要するという問題ではございませんが、いろいろ比率の問題等につきまして改正の必要がございますので、これも通常国会において御審議を願いたいと思つております。
  14. 亀井光

    説明員(亀井光君) 労働基準局関係におきましては、実は只今大臣から御説明がございましたけい肺法案の問題でございます。これは目下けい肺対策審議会におきまし審議が進められておるのでございますが、この結論が得られません場合におきましては政府提案としまして法案を提案をする予定の下に目下並行的に検討を進めているような段階でございまして、これ又一方予算との絡み合せもございまして、これと並行しながら法案の準備を進めて参りたいというふうに考えております。  もう一つは労災保除法の改正の問題でございまして、この改正の第一は、建設事業関係に保険料徴収についてメリツト制を布きたいというのが第一点でございます。第一点は、漁業労働者につきまして労災保険法を強制適用したい、この二つの点がな点でございまして、そのほか二三技術的な面におきまする改正も併せて行いたいと思いまして、目下準備を進めております。
  15. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 只今の御説明で大体わかりましたが、なお明確にならないのは研究中という法律、或いは改正法律案のことでございますが、そのうちで臨時国会なり通常国会に提出をしたいという意思で研究をせられておるものがありましたら一つ再度に亘つて説明を願いたいと思います。
  16. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) この研究でございますが、これは勿論事務的に諸外国の立法例等々と比較いたしまして、種々研究するわけでありますが、一方におきまして冒頭に申上げましたように、各層各般の方の意見を十分に徴したいと思つております。労働問題協議会等にも諮りまして、いろいろ意見を伺つております。でございますからそういう過程を通りまして一体いつになるかということにつきましては、目下のところ何とも申上げられないというところが偽わらざるところでございます。
  17. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) そういたしますと労働中央会魔法、それから解雇制限法、更に労組法、労調法改正法、この三つにつきましては、三十年度の通常国会には提出はむずかしい、こういう工合に見てよろしうございますか。
  18. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) それは何とも言えないのでございまして、今申上げましたような研究の過程、或いは多くの人の意見を聞いて、その結果がどういうふうに出て来るかということにもよるのでありまして、今はつきりとそれについての予想を申上げることは少しむずかしいのじやないかと思います。刈り体に申上げますと、労働中央金庫法は割合に事務的に話合いがまとまりやすいのではないかと思います。今述べました中で比較的簡単なものではないかと思います。他のものにつきましてはなかなか意見もあろうかと思います。併しそういう意見を通して何か建設的なものをつかみ得ればこれも一つの進歩でございます。十分に意見を聞いてみたいと、かように考えておるわけでございます。
  19. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 只今労組法という説明の中に、公共企業体関係法律も当然入つておるわけでございますか。
  20. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) それは実は別個に、これは後に申上げようかと思つたのですが、これは別の機関がありましてやつておりますので除いておりましたが、今丁度御質問がございましたから申上げたいと存じます。  御承知のように公共企業体合理化審議会の労働専門委員会におきましてこれが只今議題に供せられておるわけでございます。これに関しましてはどういうふうになりますか、合理化審議会の結論が出て、それをどう扱うかということの問題で、私どもだけの問題でなくして関係するところが多いのでございますが、そうしたものは現実に出て来ております。これが結論は別途お考え願つたほうがよろしいかと思います。
  21. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) もう一遍重ねて同つておきますが、今あなたが準備中だと言われました法律案、これについて三十年度の通常国会に出せるか出せないか、今言明できないとおつしやつたのですが、労働大臣或いは労働省の事務当局としては三十年度の通常国会には少くとも提案をしようという意思を以て特別な努力をせられる用意があるのか、或いはそういうことでなくして、通常の労働行政、業務の中で研究を続けて行かれるのか、その点の肚がまえは如何でございますか。
  22. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 私ども常に、今申上げましたようにアメリカの司令部労働関係者の頭できめられたものは世界的にどうなつておるのか、各国の立法例を常に我々として研究して見る必要があろうと思います。又国自身の体験としましていろいろの問題を考えておるわけでございます。こういう問題は常に多くの人の意見を徴する必要があると思つております。そういう趣旨で検討いたしております。  それじや三十年度の通常国会に出すか出さないかということになりますると、今申上げましたように労働関係立法というものは多くの人の理解と協力というものが前提であろうと思います。そのときに私こういう法律を出していいという強力な基盤ができれば出しますし、そうでなければ、それではそうした情勢においてどう扱うかということを研究すべきものと考えております。特にこの法律がなければ予算が成立せん、そうしたものでないものにつきましては、今のところ何とも申上げにくいし、又申上げることはむずかしいというのが実態でございます。
  23. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) いや、私がお聞きしたのは十九国会の途中におきましても労働大臣の命令で通常の労働行政を一時停止……、というのは言い過ぎかも知れませんが、少し停滞をさせることにしてでも、或る一つ目的のために非常な努力をせられたことが一つございます。それと同じような工合に、只今説明せられたような新立法或いは既存法律改正立法について労働行政の通常の仕事を若干割いてでも成案を急ぐ、それは関係者の意見を聞くようなことは勿論要るわけでありますが、そういうことを含めて成案を急ぐ御意思であるのかどうか、こういうことを伺つておるわけでございます。
  24. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 答えが適切でないかも知れませんが、私は通常の労働行政の業務というものは一生懸命やつてもらいたいということで、それを割いてまでということは実は考えておりません。
  25. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 今の委員長の質問に多少関連をいたしますが、こういういろいろな構想がどうして出て来たのか、どういう径路で出て来たのか、或いはどういう意味を持つのか、これについて先ず疑問を持つのでありますが、或いは労働省の中で言いますと、労働大臣が事務局に研究を命ぜられた、こういうことも伺いますし、或いは一番最初出ましたのは自由党の政調会に労働大臣説明に行かれ或いは政調会で研究しておられました新経済政策の中に労働対策として持込まれた、まあそういう印象を受けておりますが、どういう意味か、それから又経緯でお立てになつたのか。成るほどそれはけい肺法のように国会の要望に応えて立案をせられた、或いは福祉厚生関係のように衆議院その他実際の動きがあつてそれを取上げられた、こういうのもございますが、一貫して流れておりますのは大臣の説明を以てしても、従来の労働関係法には占領中に司令部の指導と勧奨によつて作られた。従つて日本の実態に即しないところがあるのじやないか、その後の経験と国際的な水準を考えて再検討する、こういうことでございましたが、若しそれが従来の労働関係法が行き過ぎであるということでお考えになりますと、或いは一番大きな基準法或いは労働組合法等の改正中心になつて参りましようし、或いは労働条件の国際的な水準というものとして問題になつて参りましよう。具体的な点はあとでお尋ねをいたしますが、自由党の新経済政策、そういうものの中でお考えなつたのか、これは一部ございます、発表された経済政策に関連するところもございますが、大筋がそういうことであるのか、それから或いは事務当局等から実際の運用をして来てこういう改正をすべきだ、こういう法律を作るべきだ、こういうことで出て来たのか、私どもが今まで労働省に聞いて参つたところではそうではなさそうでございますが、その辺の基本的な性格とそれから経緯等について先ず承わりたいと思います。
  26. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 私はこういう考えを持つておるのでありますが、我が国の自立経済を達成させますためには、どうしても日本が国際経済社会に或る程度の競争力を持つて行かなければならない、そうでなければこれは日本のような国はどうにもならないのでありまして、そうしたことが最近になりまして特に現実の問題として出て参つた。従来占領下にありましたときは何らそういうことに目を蔽つてつても支障のない状態にありましたが、占領から解放せられましてから一時朝鮮ブーム等もありまして、何かわからずにやつて来たものが、ここに来てはつきりと日本経済の実態、日本経済の立たされている地位を見直さねばならんことになつたのであります。それを現実に見てみますと実に厳しいのであります。それをどういうふうにして打開するかということは、勿論財政金融政策も必要でございましようが、やはり労働関係の面におきまして真の意味の産業平和が保たれ、日本が世界的にいわゆるソーシヤル・ダンピングであるとか、労働搾取であるとかいう非難を受けるごとなしに、別な方法でフエヤーな競争をなし得るだけの基盤労働関係においてお互い労使双方が努力して持つて行くということが必要であるし、そういうことを現実に深刻に反省しなければならん時期になつているのじやないか、こう思うのであります。ところが労働関係法律というものは、御承知のように経験の上に立てられて行くのが本筋でありますが、日本の場合はそうじやない。今のお話にもありましたように、又私も先ほど申上げましたように、司令部が頭で考え日本に勧奨し指導した法律案であります。それでその後の経験もあるし、今申しましたような国際的な観点にも立つて従来やつて来たものを再び思い直すという時期ではないかと私は考える。そういう意味におきまして、私は何も自由党であるとか、そうしたような立場を離れても、日本国民の一人として真剣に、而も淡たたる気持で、今申しましたような日本の立たされている現実の厳しい実態というものを良心的に考えて話合う時期じやないか、こう思いますので、そういう意味から見て労働関係法律について私から考えればこういう点が世間にも相当批判がある、例えはイギリス等においては従来仲裁調停等に持つて行けば、これは仲裁を頼むのですからその間は争議はしないとか、そういつた慣行があるのだが日本ではない。或いは権利争議というものは、これも欧州各国においては行われない。併し日本の場合は解雇反対というようなストライキというものが非常に多い。これは日本人口が非常に過剰であり、又職業が非常に少い、こういうところにもよりましようと思いますが、そういう点については今申しましたように国内で争つて一体解決ができるかというと、やはり或る程度の競争力を回復して日本産業が栄える、そうして初めて解決できる問題なんだから、そういうことを真剣に反省しようではないかという気持がありますので、そういう趣旨に立ちまして事務当局にもこういう点が検討を要すると思うから検討してくれ、こういうことを申したのであります。たまたま自由党におきましてもじや説明してくれというので申しましたわけであります。そうした経緯で、事務当局においてもこれは事務的に検討してくれると思います。私はその間に何ら反社会的な意思を押し付けるような気持は毛頭ございません。殊に冒頭言つたように労働関係法律というものは十分にこれを皆さんが守つて行こうという気分が大切なのでありますから、そこでそうした気持でこの構想を扱つて行きたい、こういうわけでございます。
  27. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 スト規制法の審議の際に、スト規制法のような考え方がどこから出て来たのか、こういうお尋ねをしたところが、国会の中かちという答弁がございました。国会の中のどこからですかと、国会の衆参両院の本会議でなければどこの委員会か明確な答弁がございませんでしたので、大変失礼な便所の中から出たのかという、こういうような質問をいたしたこともございますが、或いはそれらの構想について一番詳しく書いておりますのは日経連タイムスでありますが、日経連から出て来たのでもない。自由党の政策として考えたのでもない。小坂労働大臣の頭の中から出て来たと、まあそれを自由党の政調会にも話をし、或いは事務当局にも研究を命じたのだ、こういう御答弁であつたと思うが、そういうことでございますか。
  28. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) そうです。
  29. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 まあ今の答弁の中にありました、国際経済の中で日本が自立して行くための態勢と申しますか、或いは方策というものについては、これは私どもも異存を申上げるわけではございません。ただその中でどういう工合に労働関係を維持するか、こういうことになりますると、残念ながら小坂労働大臣考え一つにするわけに参らんのでありますが、具体的にこういうことを申上げて再考ができるものかどうかお話をしたいと思います。  先般労働委員会で市川先生と愛知、岐阜二県を廻りました。平和産業が主でございますが、中小企業が非常に多くて、従つて中小企業における働労条件が低いということは現に見て参りました。ところがその中で最も特徴的な瀬戸の窯業関係を視察いたしました際に、商工会議所の代表から、私ども参りました冒頭、深夜業を緩和してもらいたいそれから或いは年少者の労働の使用について緩和をしてもらいたい、こういうまあ要望がありました。その際同行せられました栗山委員長からも、中小企業において合理化なりあらゆる方策について研究した後にそういう問題が出て来て、こういう点がこれが問題になつているのだ、こういうことであるならば、それはまあ考慮をせぬこともないけれども、他の努力は一切しないで、労働基準法改正に最初に持つて来るということについては私どもとしては賛成をいたしかねる、こういう意味のまあ答弁がございました。ところが行つて見るとその小さい工場で小学校の生徒を使つておる。そうして私どもが参りましたから、こそこそつと裏のほうに逃がさなければならん、こういうまあ実情であつたのであります。そのほかに或いは自分の工場で工夫をし、或いは販路を開拓し、或いはパテントを取つたり、これは漁網と漁網の機械を作つておるところですが、非常な一人で努力をしながら技術の改善或いはコストの引下げ、或いは販路の拡張、貿易の伸展について努力をせられておる姿を見たのです。豊岡市の網太という工場でありましたが、そういう改善の努力をしないで、いきなり労働条件の低下或いは労働基準法の緩和という方向が、これは中小企業だけでなしに日本産業に多くございます。そういう方向に労働省が或いは労働大臣が若し動かれるとするならば、これは一方的な労働条件或いは労働関係法規の改悪にしかならんのじやないか、こういうことを考えるのであります。  それからもう一つ、先般労働党の代表が参りましたときに、ガット加入についてまあ御了解を得たいというのですか、或いは御協力を得たいという意味のことを申上げたときに、日本労働条件について或いはソーシャル・ダンピングの危険性があるということ、これはまあ近江絹糸等も見られた人もあるわけでありますが、そういう点が指摘されたのであります。他の財政金融政策もありますが、合理化或いはコストの引下げ、或いは日本の根本をなします経済力の発展について、或いは経済規模の拡大ということについて努力をしないで、ただすぐに労働法の改正或いは労働条件の低下という方向に行くとするならば、これはむしろ小坂労働大臣考えられるような国際競争力を増すということにはならない。或いはガット加入という問題についても大きな障害になるのじやないか。或いは国際的にも批判を受けると私まあ考えるのでありますが、そういう傾向が今お話になりましたいろいろの法文の改正、その他について共通的に流れているかのように私は考えるのであります。労働大臣としてどういう工合にお考えになりますか、経済学者として経済政策についても通じておられる、或いは国際的な水準に持つて行きたいということもありますが、お尋ねをいたす次第であります。
  30. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 私も先ほども申上げたように、国際的な労働水準を守つて行かねばならん、これは前提だと考えております。今深夜業、女子の深夜業の問題が出ましたけれども、これは一般的に女子の深夜業を拡大するとか認めるとかいう、こういう行き方は別に私は考えておりません。例えばまあクリスマス・ランプを輸出したい、こういうような場合に、女子の非常に繊細な、鋭敏な手によつてよいクリスマス・ランプができる。ところがこれがもう少し夜業をすれば積出しに間に合うのだけれどもどうも間に合わない。こういうような場合には、これは短時間のことでありますけれども、短時間のことでありますから認めてもいいだろう。或いは腐のやすい品物を罐詰にするという際には、これは放つておけば腐つてしまう、こういうふうなものはやはりそのときみんなが納得ずくしで努力してやつて頂いたら、これは別に咎めるものではない、こういう趣旨でございます。勿論企業合理化を徹底的にやる、これはもう当然企業努力としてなさるべきものだと思いますし、私どもはこれに対して等閑視するということはこれは全然考えるところではございませんが、併しそれと相並行して一方において企業努力はされる、一方において労働関係の平和状態を作り出して、そうして一致して励むにあらずんば私は日本の将来知るべきのみと本当に心配をいたしますので、こういうことを申しておる次第であります。  労働党の話が出ましたが、私はこれについて批判は絶対に申上げませんが、ただ新聞で私ども見ましたところによりますと、向うから来た人の中にも低賃金という問題について意見が出て、それはやめておごうという話になつた経緯も新聞で読ましてもらつたのであります。これにつきましては、イギリス等に行つて来た者に聞いてみましても、真からそう思つておるという問題は私はないと確信をいたしております。又そういうことを言い出せばほかの国々の間にも日本よりも低賃金であるという国もあるのでありまして、要するに賃金が或る国は何分の一だとか、こういうことだけでその国が低賃金だということを比較をすることは、これは経済学的に言つても誤りである。こういうことは、これは一般の指導君がよく知つておる問題だと私は思います。ですから、要するに私が一番恐れるのは、国全体の失業だということなんです。お互いに権利を主張し、理想的な形態を追うということだけで行つておりまするうちに、足下の基盤が崩れて、日本国民全体がどうにもならん苦境に至り、その後において臍を噛むということよりは、今日の段階においてお互にもう少し日本現実を見直して、占領解除後の朝鮮ブームやそういうようなものの時期を夢と考えて、これらの現実お互い考えて将来に備えるべき時期に達しておるのではないか、これだけなんです。
  31. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) ちよつと速記をやめて下さい。    〔速記中止
  32. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 速記を始めて。
  33. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 総括でも議論をしておると長くなりますから、成るべく端折つて要点だけ質問をいたしたいと思います。  国際的にもこれは問題になると思うのです。現に先ほど労働党の代表が来られた際の片鱗を申上げた。それから公式の際に他国の問題について正式な意見の表示をしないというのは、これは相互の礼儀だろうと思うのです。そういう意味で正式な発言はなかつたと思いますが、基準法についても、或いは労働関係の基本的な法律である労働組合法なり、或いは労働関係調整法なり、或いは公共企業体関係労働法なり、そういう全般についていじろうと、こういうお話でありますと、これは必ず反響がございます。それからなお国内的にも、これは総評といわず産別会議といわず、労働組合も一斉にこれから大きな反対運動をやろうとしておることは、これは間違いありません。  そこで大臣は、自分で考えてみてこういう点は問題だと、こう言われるけれども、それは何と言つてもやはり自由党の政策に関連し或いは自由党としての考えであることには、これはまあ間違いがないのです。そこでこれからいろいろな意見がいろいろな機関から出て参るでありましようが、単に労働問題協議会ということでなしに、それぞれの、或いは基準法でありましたら基準審議会であるとか、或いは失業問題であれば、名前は忘れましたが、失業問題の審議会であるとか、恐らくこれにもかけられるでしよう。その他関係労働組合を初め、政党にいたしましても各方面から意見が出て参る。相当強い反対が国内的に或いは国際的に出て参ることはこれは火を見るよりも明らかであります。そういう反対或いは意見が出ました場合に、それをどういう工合に今後おとりになられるか、或いは撤回なされる部分もありましよう、或いは非常に緩和される部分もあるだろうと思うのですが、基本的な点について国内外の強い反対があるならば、これは基本的な法律関係の改廃については、これをやめる御用意がおありになるかどうか、その点を一つ聞いておきたいと思います。
  34. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 私は構想というものは持つておりまするけれども、それを実現していいかどうかということについてはそれぞれの方に御意見があるということは承知いたしておるものであります。その御意見によりまして、非常に反対が強くて、こういうことはすべきでないという御意見に対しても勿論十分耳を傾けるつもりでございます。その御意見によりまして、或いはお言葉に従えばやめる部分もありましよう。非常に緩和する部分もありましよう。要するに私はその根本は、日本の国をよくして行きたい、日本国民に繁栄をもたらしたいと、そういうことなのであります。そういう国のためによくないし、繁栄にならんという御意見が強ければ、そういう意見に私は従わざるを得ないのであります。この実労働八時間ということは、これは国際的にもそうなつておるのでありまして、そういうことを言うことが非常に日本の信用を弱めるとは私は考えないのであります。無論いわゆる拘束八時間ということで以て、法律の趣旨を歪めて、力関係で運用しておることがありとすれば、その点はやはり法律通りに持つて行くということがよろしいと思います。それは国内の誤解というものはそういう点からは来ないと思うのであります。現に国際間の繊維に関する条約であるとか、その他の条約におきまして、国際労働条約にきめます労働時間というものがきまつておるのでありますから、その法律通りにやろうということで、単に日本が勝手なことをするというのではないのでありますから、その点は法律通りにやつて、而も日本の国のために大きな繁栄をもたらすものであるとすれば、私どもは今の苦しい現実を認識いたしまして、お互にその努力はすべきものだと、こんなふうに考えておるわけであります。
  35. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 法律の起用にいつて考慮するという程度のお話ならば、これはそういうことは全面的に異議を申しません。併し、例えば解雇制限法作つて、行政委員会でありますが、何でありますが、知りませんが、そこで解雇を認めたと、これは土地収用法なり、或いは他の行政委員会の場合も向様でありますが、それを認めた場合には争議を禁止する、こういうことになりますと、これは争議権を認めております憲法の問題と関連してやはり大きな問題になつて来る。或いは又産業平和ということを言われますけれども、それを法律によつて規制をしよう、これは問題は法律関係をいたします。その労働関係の基本的な法律をいじつて、或いは産業平和を実現したい、或いは争議制限したい、或いは労働条件を労働基準法なり何なりについてこれを低下させよう、こういうことになりますと、これは大問題だと、国際的にも国内的にも大きな反対も起るし、我々もお話のいろいろな法律改正或いは構想について、全部が全部逆コースだとは卑しませんが、中にはそれは積極的な点もあります。併し全体を貫いて特色としているものは大きな逆コースの、或いは統制的な労働平和というか、そういう点は程度は違うけれども、曾ての新体制の下における労働態勢或いはフアツシヨ支配、ナチスだとか或いはイタリーのフアシズムの下における労働運動の制限、或いは労働条件の低トそのものであるとは申しませんけれども、その方向にあることだけは間違いない。そこを問題にしておるのです。その点は誤解のないように願いたいと思います。その辺はもう少し日本経済自立を可能にする方策について、貿易の伸展或いは経済規模の拡大、そのための合理化、或いは資本の投入について、施策について十分まだ反省すべきところ、直すべきところがあるじやないか。そういう施策の中で、法律をいじらなくても私は十分今のままでやつて行けるのじやないか、こういう意味で先ほどの愛知の二つの工場の例も実は引いたわけであります。その辺は議論になりますから、補足だけにいたしますが、なお先ほど国会との関係委員長から聞かれましたが、予算との関係はどうなるか、これはすでに労働省の予算は組んで、劣議を通りましたかどうかは知りませんけれども、編成の時期であると思うのです。或いは失業対策については増額をするかのようなあれもございました。併し先ほどの話は、本年度予算について補正が必要であればいたしましよう、こういう大蔵大臣の答弁もございましたが、失業対策だけでなしに、全般につきまして金を伴う面もございます。予算についてどの程度に考えておられるのか、多少各項目別に亘るかと思いますけれども考えておられるところだけ一つ承わらせて頂きたい。
  36. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 予算の点はこれは来年度と本年度の問題と二つある問題でありますが、明年度の予算に関しましては、今事務的に折衝はいたしておりますが、いわゆる基準予算、誰がやつても必要と思われる基準となる予算を一応考えてみよう。こういうことであります。併しこの中で問題になりますのは失業対策費でありまして、これは誰がやつても要るものでありますが、これにつきましてはかなり政治的にも折衝をしております。私自身大蔵大臣によく重要性を説きまして、盛り込みたいと思つております。この点はまだ十分コンクリートになつておりませんので、本日の段階におきましては申上げるのは却つて如何かと思いますので、差控えます。  それから失業対策費の問題につきましては、先ほども申上げましたように、一−三月の間の失業対策費というものは、相当ども十分考慮しておかなければならんと思います。この点につきましては、大蔵大臣とも折衝いたしましてその間に十分遺漏のないようにいたしたいと考えております。勿論これにつきましては、それだけ増額したい、併しこれにつきまして他から財源を求めるということが、まあ一般的ではございましようが、私ども考えでは、節約をいたしたものの中からそれを廻す、全体の規模は崩さん、こういう方針がとれるのであります。先般も予算節約をいたしておりまして、そういう考えで行きたい、こう思つておる次第であります。
  37. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 この失業対策の一−三月の分については、失業対策費としては増額をするつもりだけれども、それは予備費とは言われませんでしたけれども予備費なり何なり予算の規模の中でやりたい、こういう答弁でありましたが、私がお尋ねしたのは、各項目について、これは予算を伴うのであります。例えばけい肺法についてもこれは予算を伴います。それからそのけい肺法の制定に伴つて予算をどの程度要求するつもりであるか、こういうことをお尋ねしたのであります。そのことは他の、例えば労働金庫なら労働金庫にいたしましても、どの程度に最初預託するつもりなのか、法律に関連して構想がおありなんでありましようが、そういう金額の面で、これはまだ全然固まつていないで、幾らの金を要するかというところまで来てないものもありましよう。併し労金のように、或いはけい肺法のように、構想と同時に金が伴つてあれすることは間違いございません。金を要する面についてどの程度に考えておられるのか。これは来年度の予算を審議いたします通常国会にまあ出すとしても、すでに三十年度予算については労働省として要望をしておられるのでありますが、一応構想として考えておられるならば、その案の構想の立て方によりますけれども、金を伴つて考えておられることは間違いがない、その辺も伺いたい。だから個々によつて違うでしようが、違つたなら違つたように一応の御説明を承わりたい。
  38. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 只今お話の労働中央金庫にいたしましても、けい肺法にいたしましても、三十年度の予算を考えております。これにつきましては、予算内容を私から今この席で申上げることは差控えます。
  39. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 まあ予算の点は公けに言いにくければあとでお話を聞くのですが、大体の構想一つ承わりたいと思います。  それから先ほど、これからの相談をいたして行かれる手続についてお尋ねをしたのですが、いろいろな意見を聞いて云々ということでございますが、今まで発表せられて来たところでは、労働大臣が一人で自由党の政調へ行つてお話になる、或いは新聞に発表する、或いは労働省事務当局に研究をさせる、こういうことで、いわばこれは機関でありますけれども労働大臣中心になつて一人でいわば構想を発表されました。今後勿論国会の意見も聞かれるでありましようけれども、先ほど基準法については基準審議会或いは失業問題について云々、それぞれ機関の名前も挙げたのでありますし、或いは労働組合等の意見も当然聞かれるだろうと思うのであります。労働問題協議会ということだけでなしに、関係者の、或いは労働者の、労働組合意見等も聞かれる御用意がおありになるかどうか、重ねて一応お聞きしておきたい。
  40. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 構想が具体的になりましたならば、勿論関係者の意見を十分聞きたいと思います。併しそれに先立ちましても、いろいろ私のところへ積極的に御意見をお述べに来られる方もおられますから、私もいろいろ事情を伺いたいと思いますが、いずれにいたしましても、今お言葉にもありましたように、私の構想でございまして、まだ構想について事務当局の意見も十分に思うところなく、大臣が言うたからこうするというのでなくて、平素思つておるところを十分に活かして、諸外国の法制等も勘案いたしまして、又お話にもありましたように、行き方を誤まてば国際的な誤解を生じまするから、そういう点も十分注意して話してくれ、ただ私の真意はここにあるのだということで、先ほど申上、げましたような日本経済自立の達成、この一点に問題を集中して真剣に考えておる、こういうことを申したのでありまして、情想がまとまりましたら、労働団体の御意見も十分聞き、使用者団体意見も十分に聞き、又関係のいろいろなそれらの委員会もございますから、勿論その委員会意見も聞く、こういうことになつております。
  41. 田畑金光

    田畑金光君 只今までの質疑応答でおおよそ了解つくわけでありますが、改めて二、三の点に関しお伺いしたいと思います。  只今の吉田君の質問に対する労働大臣の態度というものが、事務当局の意見を聞くことは勿論でありますが、労働団体その他の世論にも耳を傾けて、この構想の具体化については考えて行きたい、こういう態度でありました。更に又先ほどの御答弁の中には自由党というような考え方でなく、日本の将来ということを考えて、如何にすれば日本経済的にも自立し得るかという観点から淡々たる気持で対処して行きたい、誠に結構な態度だと思つて敬服に値しますが、そういたしますならば淡々として世論に耳を傾けられる、こういうことになつて参りまするならば、我々といたしましては労働大臣構想が、今日憂えられておる逆コースや行過ぎに陷らないように阻止できると考えまするが、この点改めて政府は世論に耳を傾けて、世論と申しましても単に議会の中において自由党の頭数が多いという世論ではなくして、もう少し常識で判断できる、こういう世論に耳を傾けて、若し小坂構想が行過ぎであるとか、或いは却つて労使関係の平和を乱すとか、こういうようなことが出て来るならば構想については十分に妥協する、或いは譲歩する、こういう御意思があるかどうか、改めてお尋ねいたします。
  42. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 誠に仰せの通りでございまして、労働関係法律というものは先ほども申上げましたように、相互のやはり理解が前提だと思うのであります。由来諸種の労働慣行の上に労働法律いうものはできるということになつておりますが、日本の場合そうではございませんから、私としてもいろいろな構想を持つわけでございまするが、併しその構想一般によつて理解されない、これは行過ぎである、却つて労使関係の平和を乱すということに現実になる虞れが多分にあるとするならば、これは余計なことであります。従つて私はそういうことを無理矢理にやるということは国家のためにならんということであるとするならば、これを撤回するに何らやぶさかではありません。ただ淡々として皆さんの気持を聞いてみたい、こういうふうに思うのでございます。  従来やはり占領下できめられたようなものが何か至上のような感じがして、それで何ら反省しなくてやつて来たという傾きが私はあるのじやないかと思う。私自身もそういう気持を持つておつた時代があるのじやないかと反省しております。これは一つ皆さんにそういう淡々たる気持で日本の将来を見通して問題を再び考えて頂く時期ではないかと、こういうことで考えておりますので、非常にこれが梏桎となりまして、却つて労使間の対立が激化するというようなことになりますれば私はそれに対して淡々とした気持で対処したいと考えております。
  43. 田畑金光

    田畑金光君 私はよくその点はわかりました。そこでお尋ねいたしまするが、先ほど来占領行政の行過ぎ云々というような言葉が再々出ておるわけであります。又今回発表なされました小坂構想によりましても、労働組合育成過重、行過ぎは是正しなくちやならん、こういう言葉も使われておるわけであります。そこで我々が現在までの吉田内閣の下における労働政策のあとを振り返つて見ましたときに、例えば昨年の十六国会におけるスト規制法東寺についても、これはすべて労働者の責任において一昨年末におけるストの処理を図つておる、当時の世論も決してこれがいい法律ではない、なきにしかずという強い輿論というものが出ていたということも見るわけであります。更に又このたびの十九国会における教職員の政治的な中立に関する法律を見ましても、これは世論がどう見たかということは今更申上げる必要もなく、率直に申上げますと、大運文部大臣に現われておる教職員組合運動に対する骨抜き、或いは弾圧、こういうことに見られておるわけであります。更に又この国会にしばしば問題となつておりまする国鉄の紛争議についても御承知のように公労法というものが制定されたが、仲裁裁定というものを過去三たびも政府は蹂躙しておる。こういうような公労法という法律ができて、これによつて労使間の安定を図ろうという狙いが常に政府政策と衝突して、国鉄内部における労使の紛争に発展しておるわけであります。こういうことを見て参りましたときに、従来政府労働組合の育成が過重であつたという御判断をなされておられまするが、これはどういう観点からこういう表現を使われたのか、この線を一つ小坂構想の中における考え方を聞かしてもらいたいと思います。
  44. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 最初にスト規制法、教職員の中立確保の問題でございまするが、スト規制法というものはやはりその当時あの法律を必要とする輿論の背景があつたと思うのであります。私はそのことをこの委員会においても私の見解として申上げました。それに対する反対の御意見もございましよう。又その御意見にして非常に貴重な御注意、御示唆を数多く承わつたのでございまするが、いずれにいたしましてもあれが法律として公布されました。国民もその法律について大多数は賛成してくれておると私は考えております。なお教職員の政治的中立の問題でございまするが、これは先般参りました英国の労働党議員も申しておりましたが、テイチヤース・ユニオンというものは政治的には全く中立だということを申しております。これは世界的な傾向だと思うのであります。それで私ども特に労働組合育成過重ということを申しましたのは、表現を変えたわけなんでございまするが、従来民主的な労働組合を育成するとか、それを期待するとかいうことをよく申しております。労働組合というものは労働組合員個人の民主的意見の尊重の上に立つて民主的な労働組合というものが芽生え、そうして伸びて行くことだと思うのでございまするが、何か組合の中には非常に幹部独裁が行われておるということを言う組合員もおるわけなんであります。そこでやはり個々の組合員の権利が守られ、個々の組合員の利益が大いに尊重せられる、こういうことを中心労働関係というものを考える必要があろう、こういうことなんであります。これは相当労働団体の公式の請いたものの中にも、或る労働団体は非常に行き過ぎておつて、幹部独裁で、政治的な偏向を持つておるということを書いておる文書もございます。そういう点につきましては大いに反省して、民主的な労働組合組合員個人福祉を図る組合、こういうことを中心考えて行くべきではなかろうか、こういうのでございます。
  45. 田畑金光

    田畑金光君 只今の御答弁を伺いますと、労働組合育成過重という内容は、労働組合の一部に見られる幹部の独裁とか或いは個人組合員の権利が内部において無視される傾向があるが、こういうことをなくして行きたいという趣旨だとの御説明でありますけれども、そういうことでありますると、労働組合育成過重というような表現は我我は妥当ではないのじやないかと、こう見るわけであります。あたかも政府の今日までとつておられました労働組合政策が、さも組合員の権利を尊重し、或いは労働組合の生成発展を側面的に協力する、或いは行政措置において進めて行く、こういう方針をとられたかのごとき我々は印象を受けまするが、先ほど申上げましたように、現在までの内閣のとつて来られた態度は断固としてそういうようなことはないと私は申上げたいわけであります。今御答弁のような趣旨でありますならば、現在の労働組合法改正されたのもそのような趣旨で改正されたと考えるわけであります。私はそういうようなことが若し仮にあるといたしまして、労働大臣にお尋ねしたいのでありまするが、そういうような一部に行過ぎがあるといたしますならば法律によつてこれを規制する、立法措置によつてこれを拘束するというのは如何かと考えるわけであります。先ほど申上げましたように、労働大臣の御答弁になりましたような労使の慣行を尊重する、経験を尊重する、こういう時間をかけてそうして健全な内部体制が生れるというようなこういう面に協力することこそ政府のとるべき態度ではないかと考えておるわけであります。イギリスの労働組合が非常に建設的に堅実に運営されておると我々はよく聞きまするが、こういうような問題もイギリスにおいて社会保障制度が充実いたしまして、労働者の最低生活が保障されておるという積極面、或いは又保守算内閣においてすらも労働組合と話合いによつて問題を進めて行ごうとするこの謙虚な態度、これがイギリスの労働組合の健全なる運営を生み出しておると私は見るわけであります。或いは又ドイツにおける労働組合について今日我々が学ばなければならない点も、ワイマール憲法時代からの長い慣行と経験、こういう一つの社会的基盤から生れておると見るわけであります。  私が労働大臣にお尋ねいたしたいのは、今回の小坂構想によりますと、労働三法に手を若けよう、更には解雇制限法を制定しよう、或いは又後ほど質問いたしたいと思いまするが、労働組合政治活動に関する単独立法等も今自由党で構想を持つておるそうでありますが、すべて法律によつて労働者を縛らなければ労使関係の平和が生れない、こういうような態度はむしろ私は逆ではないかと考えます。もう少し労働者に協力を求める、或いは労働組合政府のやり方に対して何らか協力のできる共通の場面を作る、ここに私は労使関係の平和を樹立するキイ・ポイントがあると考えまするが小坂構想はちよつと余りにも法律偏重、こういう私は印象を受けるわけでありますが、この点に関しまして労働大臣考え方を承わつておきたいと思います。
  46. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 先ほど申上げましたことでございまするが、労使関係というのはやはり今お言葉にもございましたように長い慣行の中から出て行くべきものだと思うのでありますが、日本の場合はまだ残念ながら過去においては弾圧の歴史であります。又占領以後におきましてはこれを急速に育成しようという連続の歴史であります。そこで慣行のないところに、殊にアメリカの方々考えによつて作られたので、日本には日本的な労働組合の慣行というものはできていないではないか、こういうふうに思いますが、現在の状態を見ておりますと、やはりこれはそうでないという御意見であります。相当こんなふうに争議ばかり頻発してはどうにもならない、ではないか、経営者も悪い、労働組合も悪いということは随分言われておるのでありまして、併しそういうことをだんだんやつていて、頭をぶつけて見て、さてこれではいかんと反省して、それから健全な労使関係ができるからそれまで待てという御意見もあります。併しそういう場合があつても、やはり日本の場合は非常に経済基盤が浅い、ヌ日本のおかれている立場は輸出貿易の振興を要請されておる立場で、食つて行けない立場に陷つておりますので、頭をぶつけてさてこれからよい労使関係ができるのだ、こういうことをした場合には国全体が食つていけない、こういうことも心配する。そういう意味でやはり或るときには強い言葉で警告し、或るときにはこれをやさ上く警告する、こういうこれは政策としてはあつてもいいのじやないかと思います。それを法律で直ちに縛る、こういうことは、これはまあ私も先ほど申したように、非常に輿論の反対が強いときに、国会内部の頭数だけでこれを強引にやつていいかということは、労働問題については、それが出る基盤がないときにはできない。これについては慎重にいたしまするけれども、やはり私は外国の労働組合の例などを見て、例えば政治資金等の問題についても、それぞれの国において政治資金の規正を行なつているのであります。そういうような問題については、仮に日本としてもいろいろあるのでありまして、皆が誰も知らない間に一部の者に政治資金が使われている、こういう状態は、民主的な労働組合であるとすればこれは批判すべきものである。日本にはなかなかそういうものを批判する立場がない。そういう基盤がないとすれ、は、そういう問題については法律によつて指導するということ、も一つ考えではなかろうかと思つております。こういうことをする場合には、併しそういうことを十分話合つて、而も必要であるということならばやる、こういう態度がいいと思います。法律化することは今はいかん、こう私は思いません。いい法律であれば私はいいと思います。併しごの過程におきましては十分に意見を聞いてやることが必要である、こう思います。
  47. 田畑金光

    田畑金光君 労働大臣の御答弁を承わつておりますると、アメリカの行き過ぎ或いは占領軍の行き過ぎを絶えず口にしておられますが、その占領下において政権を担当して来られたのは自由党であつたと我々は昂るわけであります。若しも自由党がそれだけの確信を持つて、こういう労働法では日本の将来を危くするのだというならば、なぜもう少し確信ある態度で以て来られなかつたかということを我々は悲しく考えるわけであります。  更に又労働大臣のお言葉を承わつておりますると、労働組合というものは常に一部の者の、或いは一部の幹部によつて左右され支配されておると、非常にそのことを御心配になつているようでありますが、成るほど今日の労働組合の水準というものは決して満足すべき段階まで成長したとは私も考えておりません。ただ併しながら過去八年間の日本民主主義の歩みというものが、労働組合の成長にも私は相当なる発展段階を画しておるのではなかろうかと見ておるわけでありまして今の労働大臣の御心配になるのは、終戦直後の或いは二、三年前後の、私は一部極左組合に見られた傾向ではなかろうかと思うの二であります。例えば近江絹糸争議の問題を見ましても、或いは大阪証券取引所に起りました争議をめぐりその他に波及しました一連の証券取引所における争議を見ましても、ああいうところに、これだけの封建的な職場に労働者が自由な組合運動を求めて起ち上つたということは、私は今日の労働階級の前進ではないかと考えておるわけであります。そういうような点を私は見ましたときに、労働大臣考えておられる労働階級或いは労働組合、こういう客観的な認識強化というものが相当私は遅れておるのじやないか、こういうような見方をしなければなりません。殊に私の申上げたいことは、成るほどいい法律ならはそれは結構だと思います。併し法律を作るその環境がどうであるかというところに私は問題があろうと思います。殊に私は現在の政治には倫理がないと思つております。今の日本政治には道徳がないと見ておる次第であります。もう少し政治に倫理、道徳を持たして、国民が協力できる、労働者がこれでは協力できるという政治環境を作ることが私は先決ではないか、こう考えております。そういう観点に立つて眺めましたときに、一体今の政治というものが、労働者の協力を求め得るような雰囲気があるかどうか。労働大臣のおつしやるように経済自立のためには労使共に協力をしなければならんが、その経済自立の底に流れるものが、乏しきを憂えずひとしからざるを憂う、こういう経済の原則というものが確立されて、私はそこに労働必の協力の環境というものができると思います。この点に関しまして労働大臣は今の政治環境、今の経済の自立の方式というものがそのまま労働権、或いは労働者の協力を求め得る態勢にあるかどうか、この点についてお尋ねいたします。
  48. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 私は、今の政治環境という言葉でありましたが、これが十全であとは勿論思いません。又今の経済的な立場労使関係が両方ともよいことをしている、これは双方とも改善すべきであると、こう考える。私は労働関係の面においてはこういうことは考えられるではないかという問題点を指摘したわけでございますが、これはこういうことを言うたからというて、今の政治環境がよろしいとか、或いは経済方面においてのいろいろな施策が万全であるとか、そういう意味ではございません。
  49. 田畑金光

    田畑金光君 大変私の質問に対しまして今の答弁は簡単で満足の行く答弁でないのを残念に思います。併し小坂労働大臣も先ほど来自由党の一大臣という気持でなく、淡々たる心境で現在の状態を観察されるならば恐らくおわかりだろうと思うし、これ以上申上げることは控えます。  そこで私のお尋ねいたしたいのは、これだけの労働政策を実行いたしますためには、どうしても私は強大な政治力というものが必要だと考えております。よきにしろ悪しきにしろ、そういう観点から見ましたときに、今の政治情勢の下において、今の与党の政治力の下においてこれたけの大胆な、或いは我々から昂ますならば誠に憂うべき逆行的な労働政策というものが立法化できるとお考えになつておるのか、私は、先低ど世論に耳を傾けられるかどうかとお尋ねいたしましたが、同時に今の政治力で以て政府の主休的な条件で以てこれだけの重要な政策というものが前進し得るというお考えに立つておるのかどうか、労働大臣の観察を承わつておきます。
  50. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) この席から政治分析を申上げることは私は遺憾でございまするが、差控えさせて頂きたいと思います。ただ私が先ほどから申しておるように、これは淡たたる心境で自分の構想を述べたという裏には、どなたが労働大臣というような労働行政全般を見渡す立場に立たれても、こういう点はやはり問題点だろうと、こういう心境であることだけを申上げさせて頂きます。
  51. 田畑金光

    田畑金光君 この点はこれ以上お尋ねすることはやめますが、もう一つ具体的にお尋ねいたしたいのは、先ほどの労働大臣の答弁にもありましたように、労働組合政治活動と関連いたしまして、自由党の内部においても労働組合から出ます政治資金等の問題について一つ構想を持つておるということを我々は聞いておるわけであります。その自由党の考え方というものが、例えば労働組合一定政治上の目的のために政治資金を支出するようなときは、組合員の無記名投票による多数決によるとか、或いはそのような政治資金組合費とは別個に徴収せしめるとか、或いは又こういう政治資金については組合の決定であつても徴収等については強制をせず、こういうような立法化を構想に持つておられるということを聞いております。そのような構想を持つておられるかどうかということが一つ。  それから現在の労働組合が選挙の場合におきまして特定の政党に政治献金をする、或いは資金の協力を図る、こういうようなことが今単独立法で処理しなければならんほど重大な内容を、或いは日本一般政治に対する影響を狩つておるのかどうか、この点をどう判断されておるのか。  更にお尋ねいたしたいことは、先般吉田総理は八九十日の自由党の支部長会議において大変な失言をされております。政治資金規正法という法律がないように見受けるわけであります。政党が寄付金をもらうのはこれは当然のことであつて、いちくそれを咎めるようでは幹事長のなり手がない、政党政治が根本的に破壊される、こういうことをおつしやつておられまするが、今の政府や与党が財界等から受けておる政治献金というものは、これは我々の常識を越しておると見ておるわけであります。これだけの厖大な政治献金を受けておりながら、なお且つ一国の総理が政治資金規正法を御存じでない。ところが労働組合の僅かながらの献金は単独立法で縛らなければならん。これはどうも法の前の平等という原則も蹂躙されるし、国民の納得の行く公、平の原則というものも完全にふみにじられておるわけであります。こういう点に関しまして良心的な小坂労働大臣はどのように見られるか。一つ労働組合政治献金等の立法化に関連いたしまして、こういう問題に関しまして労働大臣の所信を承わつておきたいと思います。
  52. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 只今のお尋ねの趣旨は、先般来各党が臨時国会を開くかどうかということの前に寄つて話をされているときに議題になつたことは私も聞いております。私はその政治資金規正法につきましての今お話のような問題を自由党が提起しておりますことも承知いたしております。それは諸外国におきまして、例えばイギリスにおいて現在も労働組合政治資金の規正をいたしておりまするが、一九二七年に保守党が内閣を作りましたときにこういうふうに政治資金を改めております。政治資金への醵出は、組合員一定の様式による醵出承認の通告があつて、即ち様式行為で政治資金をしたいという通告をして、その通告が撤回しない限り徴収し得る。そして政治資金の醵出の徴収は他の組合の醵出金とは別個に徴収されることを要する。組合財産は右の醵出金以外には政治基金に繰入れることができない。而も政治基金以外の組合財産は政治目的に使用できない。官吏の労働組合政治目的をその目的自体にできないという改正が一九二七年になされておる。その後に労働党が政府をとりまして、又これを改正して、先ほど申上げたような一九二二年法の趣旨に戻つておるのであります。即ちその中におきまして、労働組合基金は左の場合を除いて政治上の目的に使用できない。即ち労働組合基金というものは、こういう場合は例外であるが、一般的には政治基金に使用できないということを規定しておるのでございます。それはどういう場合にできるかというと、組合員の無記名投票でその政治目的遂行を組合目的として承認する、この場合はできるけれども、他の場合にはなかなか組合の幹部に任せてしまつて組合の醵出金を政治基金に使用することはできんのだ、こういうふうにきめておるのであります。而もその政治目的の支払というのは別個の基金、別個の会計で以て個人が政治献金をする、そうして組合員政治資金を出すことがいやだと言えば政治基金を出すことは免ぜられるし、それを理由として組合員として不利益取扱いは受けない、政治基金を醵出することを組合加入の条件としないことを組合規約に定める、こういうふうになつておりまして、而も組合員一定の様式による通告をすれば政治基金をいつでも醵出しないようになることができるんだ。こういうふうに、現在イギリスにおきまして労働組合政治献金についてはこうした制限を付けておるのであります。政治資金規正法につきましてこれを更に完全なものにしようというのが各党間のお話で、ございましたようで、この献金の規正の内容につきましては各党においてまとまつたところもありますし、まとまらん点もあると私は聞いておるのでございます。自由党の提案の内容はよく私も存じませんが、多分両方、資本家側といいますか、経営者側といいますかの側も労組のほうも両方政治献金というようなものについては規正をする、こういう趣旨であつたように私は承知いたしておりますが、詳しくは存じませんから、或いはこの点は間違つておるかも知れません。併しそういうふうに聞いております。  アメリカにおきましては、タフト・ハートレー法第三百四条で、国立銀行、法律に基き設立されたる法人、労働組合その他あらゆる組合、その他あらゆる法人が選挙又はそのための政治集会等に寄付し、又は候補者、政治委員会等がかかる寄付を受領することは違法である、こういうふうにいたしておるのでございます。少しこれを野放図にいたしますといろいろな弊害が出て参りますから、やはり或る程度の規正は必要ではなかろうかと私も考えておる次第でございます。
  53. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 只今政治資金の問題は労働問題として扱われておりまするけれども、非常に重要な問題だと私は思います。で先ずお開きしなきやならんこともたくさんあります。実際問題として内容的にお聞きしなきやならん点もありますが、例えば現在の労働組合組合の代表を選挙に出す場合に組合の規約に基く組合費というものを選挙に使つておる事例があるかどうかということですね、そういう具体的な数字を一つ示して頂きたい。それから大会の決定その他によつて選挙をやろうということによつて組合費とは関係のない別な資金というものを組合員に強制しないで自由資金カンパの形で集めた金ですね、そういうものもなおいけないとおつしやるのか。又そういう金が実際に各労働組合において過去においてどういう工合に動いたか、そういう実績をつかんでおいでになるのか、ただ幽霊におびえておいでになるだけなのか、実際につかんでおいでになるのか、これは私はやはり資料として御提出を願わなきやならんと思う、そういう構想を持つという以上はですね。この点は一つお答えを願いたいと思います。  それから二に、小坂労相は先ほど政治問題についてはここで言明をすることは差控えたいとおつやつた。併しこの政治資金の問題こそこれは政治問題である。保守党の考え方からいうならば、労働組合の代表が国会へ出て来ることは極めてこれは好ましくないことである。従つてその進出を抑える最もいいこれは首を締めることになるわけです。これは言葉でどういう工合に説明されようと、狙つておられる。現実はこれは否定すべくもないことである。従つてこれは大きな政治問題であります。その場合に、労働組合というところはこれは年次大会を持つて会計をすべて発表してしまうわけです。一銭も機密費というものはありません。そういう組織を持つておる労働組合で、而も今日日本政治情勢から見るならば階級的な代表というような考え方をするならば、実に一部の人々の代表が多く国会に出て来て勤労大衆の代表というものは国会に非常に少いわけです。従つてそういう人が出られないのは金がなくて出られないのであるからして、清浄な金、公表のできる金であるならばどうぞお使いになつて出して上げなさいというくらいの法律改正を自由党がやられるのなら話はわかるのですが、それと全く反対の考えを持つておやりになるということは、これは誠に民主主義そのものに対して私は悪い影響を与える、とこう思います。  そこで更に言葉を継ぎ足しまするならば、先ほど保守党のほうにおいてもこういうことを考えておる、資本家側から金の出るのを考えておると言われますけれども、吉田総理の言明じやないが、政治資金規正法などあつたんじや工合悪いと、こうおつしやるその裏には、どんなに法律制限しようと、保存党の議員諸君と資本家団との間の密接な関係があれば、裏でどういう資金が今後動くか、これは法律では防止し得ないものがある。従つてそこに非常に不公平なものが出て来る。従つていろいろな角度から考えましてもこれは非常に私どもは重大な問題だと考えなきやならん。特に小坂労相は先ほどから政治問題には触れたくないということをおつしやつたんですが、今の世論というものを一つ聞いてもらいたいと思う。この前スト規制法をやるときにあなたが答弁に立たれて、答弁の苦しい状態なつたときには、世論に聞いてやるんだ、この世論一点張りであつたのですが、今日の世論というものを一体どういう工合に見ておるか。これは労働問題として私はもう一遍政治問題をここで言明される十分なる義務があると思う。私はこの間決算委員会の始まつた日に院内の決算委員会の空気を見ながら、実際に街のほうではどういう工合に国民が受取つておるかということを知りたいために、銀座から日本橋の方面のテレビの置いてある店をずつと廻つて歩きました。どこもここも全部人だかりで聞いておる。而もあの政府の態度、自由党の態度に対してはテレビを見ておる大勢の諸君は非常に怒つておる。誠にけしからん内閣である、けしからん自由党であると怒つておる。これが世論である。世論を聞いて政治を行うと言つてスト規制法のときに強行した小坂さんならば、今日自由党内閣のこういう国民から批判を受けておる政府のあなた閣僚の一員なわけなんだから、その世論を聞いてやはり労働問題の中へもこれを入れてもらわなきやならん。私はそういう工合に考える。今の中には御所信を伺いたい点もたくさんありますが、この問題については今私が申上げましたような資料の提出に応ぜられるかどうか。応ぜられないとすれば、正に根拠のない一つの何と申しますか、勤労大衆の代表が議会へ出ることに対するおびえによつてこういうことをおやりになつておると極言しても差支えないと思う。従つて根拠を確かに出してもらいたい。  それから今の政治問題を論ずる場合に、勤労大衆が非常な不満を持つておる、今の政府に不満を持つておる。それに対して田畑君が言われたように、その根本的な不満を政治的に解決することをちつとも努力しないで、法律で以ているくなものを抑えて行くということは、決してあなたの言われる産業平和を招来するものでないと、こう思うのですね。そういうことについての一つ政治的な所信というものを伺つておきたいと思う。若しこの問題に対して私了解できなければ、又明日重ねて質疑を交わしたいと、こう思います。
  54. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 今のは委員長がこう思いますとおつしやいましたが、委員長個人のお考えでございましようね。委員会を統裁するあなたとしての御意見委員会全体をまとめての御意見じやないと思つて委員としてといいますか、個人のお伺いとしてお答えしたいと思います。  この政治献金の問題につきましては、これは労働問題として扱いたくないと思うのであります。ただ私は労働関係を見ておる者として問題点があろうと、こういうことなのであります。これは勿論政治資金規正法で問題になることだと私は思つておりまするが、今の中で私はイギリスやアメリカの例を引いて申上げて、イギリスの中においては労組法の中にこういうことの制限が入つておるのでございますが、併しこういう制限があつてもイギリスでは御承知通り労働組合の代表がたくさん出て来てこのほうが数が多いから内閣まで組織しておるのであります。こういう両方に規正があつてその間にフエアーな競争が行われて行く、こういうことで考えれば私は結構なんじやないか。何もこういうことをやつたからといつて弾圧になると考えることは、私は組合自身の認識の問題ではなかろうかと思うのであります。労働組合というのは政治団体じや勿論ないのでありまして、組合員経済的な地位の向上を図るのですから、それについて政治を行う場合には政治資金の別途の定めをする、こういうだけの話でございます。おのおのみんなが理解して、今の政府はけしからんから政治資金を集めてそうして打倒しようということになれば、その政治資金でやればちつとも差支えない、決して禁止しようというのではありません。こういうことなのでありますから、その点は誤解なさらないように願いたいと思います。
  55. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) そこで過去に正規の組合規約による組合費をそういうものに使つたという実績というものを持つておいでになるのか、或いはその他の費用で組合が実際に選挙に使つたというそういう実績を根拠にしてそういうことを言つておいでになるのか、そういうことがあろうという想像の上に立つてつておいでになるのか、その点を私はお尋ねしたわけです。
  56. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) この点は外国においてこうであるからということで申上げておるので、国内の実績を私は明確につかんでおるわけじやございません。ただ教育二法案のときに何か国会でも問題になつておつたことがあつたように聞いておりますが、私も詳しく記憶しておりません。
  57. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 若し今後こういう問題を更に研究されて行くならば、先ず今の組合の中でそういうやはり実態把握というものを是非私はやつてからいろいろな構想を立ててもらいたいと私は思います。
  58. 阿具根登

    ○阿具根登君 一、二お尋ねします。労働大臣が最初言われた今の労働法はまあアメリカから与えられたものであつて、非常に日本の実情にそぐわないというようなことを言つておるのでありますが、この点について、確かにこれは占領政策によつて与えられた労働運動であつたことは私も認めます。併し民主主義の国家として労働運動を発達させるならば、このくらいのことは当然やらねばできないものだと、当然こういう労働法に向つては進んで来ておるものと私は思う。そうすれば政治、並びに政府考えておられるその考え方がそこまで追い付いて来ておらない、自分たちが遅れておるんだと、こういう結果になつて来ると思うのです。よ子の労働運動のことも言つておられましたが、よその労働運動は非常な弾圧の中から芽生えて来てあれだけかち取つたのだということだけを記憶するならば、今の日本労働運動はそういう大きな弾圧を受けておらないから、それでこういう労働法をかち取るまでにはもつと大きな運動をしなければならない、こういうふうな裏言葉にもなるのじやないかと思うわけです。そこで当然まだこのぐらいの労働法で満足している労働者はないと思う。当然こういうふうな労働法を作らなければならないものがありながら、政府自身が遅れておつて、自分たちが遅れておるので、労働者をもう一遍自分たちの線まで引き戻しておいて、そうして闘つて行こうというようなお考え方のように聞えるのですが、政府のお考えはどうでしようか。
  59. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 別に政府が遅れておるからそこまで引き戻してというような意図はないのでございますが、どうも繰返すようでございまするけれども日本のように非常に貧弱な資源を持つている国で、而も輸出貿易を成功させて初めて存立の基盤を得るというような国で、内部でこう争つておつたのではどうもならんのじやないか、お互いに反省すべき余地がある。で、組合のほうにおいてもまあいろいろいきさつがあつてこの労働関係法律ができていることは阿具根さん御承知通りでございますが、そういう問題についてもう一遍見直して、一部非常に矯激な思想を持つた者がおつて、これを利用してやろうとすればかなり労働組合法上の保護を一方的に使い得るというような点があれば、それはもうみんなの目から見て誰が見ても正しい点をやるには不便がないというところまで改正してもいいのじやないかと、こういうことなんです。特にイギリスやアメリカの労働関係に非常に経験を持つた国の立法例も比較しまして、この国でやつておりまするいろいろな実体的な法規等も研究しましてこれを取入れて行くということは必要じやなかろうかと、こういうことで、殊更に正しく生きようとする者を抑えるとかそういうような意図は私としては意図的には全然持つておりません。
  60. 阿具根登

    ○阿具根登君 国際貿易の面について、これでは日本が国際的な失業者になるのではないかと、こういうお考えであるとすれば、それじや国際的に考えて、日本労働者は各国の労働者と比べてより以上のぜいたくな生活をしておるかどうか。これは日本労働者が各国の労働者よりも非常な好条件に恵まれて、そして各国よりもぜいたくな生活をしておるとするならば、日本の置かれておる国情から見てもこれはそういうことも言い得ると思うわけなんですが、私の知つておる範囲内では、決して日本労働者が各国民より有利に生活をしているとは私は思わない。そうすると労働大臣考え方を私たちが考えるならば、丁度昭和五、六年のように、或いはあの頃のデフレ政策でやりましたような状態にまで日本労働者を引き落して行くのだ、もつともつと日本労働者が昔のように非常に長時間と低賃金で働かねば外国との貿易が太刀打ちできない、こういう結論になると思うのです。こういう点はどうですか。
  61. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 私も同感でありまして、日本労働者が外国の労働者、殊に米英が対象になると思うのですが、それよりいいということは私は思つておりません。それは何とかもつとよくしなければなりませんし、私もこの法律改正において個々の労働者の利益を守る、こういう点には触れたくないというふうに思つております。ただ団結の力を極端に破壊的な方面に悪用されることがないようにしなければならない、こういう考え方でございます。併し日本として貿易を大いにやつて行かなければなりませんが、その場合日本の輸出商品の競争者となるものは決して米英ばかりではございません。他にもいろいろな国がございます。こういう国々に対しましても十分な競争力があるようにして行かなければならんのじやないかと思つております。日本といたしまして人口が非常に多いものでありますから、而も人口が非常に殖えておるものでありますから、やはり国全体の富が増さないと個個の労働者の条件というものもよくなり得る基盤が立ち得られない、この点が問題であると思つております。ただ観念的によくしろということは、これはたやすいのでありますが、併しよくなるにはよくなるだけの基盤作つておかなければよくならないと思うのです。そういう基盤作つて行くためにはみんなが努力しなければ、これはあとで臍を噛むのじやないかと、こういうふうに考えております。
  62. 阿具根登

    ○阿具根登君 ごの論議を進めますと田畑君の論議になりますが、基盤を作るためには誰が一番最初に良心的に考えなければできないかということになつて来ますと、国民信頼を失つたものは誰かということになるわけですが、この問題について論議を進めますと又長くなりますから、この問題については進めませんけれども、事実基盤を作るというふうな、国民信頼できるような政策を立てて、初めて基盤はできて来ると思う。ところが十九国会のような、ああいうぶざまな恰好で、今又決算委員会では、今委員長の言われたようなこういう状態になつてつて基盤を作ると言つたつて、誰が信頼して付いて来るかという問題を考えると、非常に私は大きな誤まりがあるのじやないか、かような考えを持つわけです。それからもう一つは、小坂労相は労使協調を叫んでおられますが、労使に火をつけておるのは小坂労相そのものじやないかと思います。私は政府労使に火をつけておるのじやないかと思う。例えばデフレ政策をやつて失業者の対策も収拾も考えずに首切りをやつて、そうして労使が闘つたら解雇制限法を作るというような、自分が火をつけておいてそうしてあとでちやんと自分で火消しを考えておる。そのしわ寄せば全部労働者に来ておる。こういう矛盾した問題が許されるかどうか。デフレの問題などにつきましても、私どもが当初御質問申上げましたように、失業者が出るということは当然わかつておる。それが失業対策考えられない。社会保障の面も考えられない、そうして首切りによつて争議が起るならば、これは解雇制限法でも作つてこれを緩和しなければならない、或いは争議の首切りを合法化しなければならない。これには又労働大臣考えがあると思いますが、私どもはそういうふうに考える。そうすれば政府そのものがそういう事態を作り上げておいて、そうして一方的に労働者のみに、こういうような法律によつて労働者を弾圧して行く、ますく今までの民主的な労働運動が後退して行くような政策をとつておられる、こういうように考えますが、その点はどうですか。
  63. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 政府政策というものは国民信頼を受けなければできないということは私も同感なんです。何とかそういうようにいたしたいと思いまするけれども、又一方において、殊更に刺戟的な、而も現実を無視したような政策を立てるべきものではないということも私は全くその通りだと思います。ただ今非常に企業がデフレの結果といいますか、経済地固め政策と私どもは言つておりますが、要するに企業基盤を確固にするためにいろいろな財政金融の施策をやつております。それについてもう少し人減らしをすればこの企業が立ち行くという場合があるわけなんです。そういう場合に解雇反対闘争が何カ月も続いて、結局何もならん闘争で労使共倒れという例も見られておる。そういうことももう少し政府の社会保障といいますか、そういう点につきましても十分努力をいたしまして、労働関係の面で、もう少し考える手はないものかと、こういうことであります。併しこれにつきましてはやはり日本の特殊性があるのでありまして、非常に人口が多い。従つて失業するということが、非常に次の雇用の機会を困難にしている。ですから解雇ということは非常なことだというので、これに闘争する気持もわかるのであります。いわゆるイギリスとかドイツ等の場合は非常にうらやましいことには仕事のほうがたくさんあるのであつて、人が少い。むしろどうしたらいい労働者諸君を集められるか、苦心しておる立場にある。ですからイギリス、ドイツにおいては権利争議…、解雇権というものが経営者にあつて、これに反対するストライキというものは法律上成立たないということになつておる。そこでそういう国においては非常に解雇反対闘争というものはないから、勝手に企業というものは合理化をすれば、人員の面では幾らでも操作はできる。併し日本ではそれはできない。できないけれども、国際市場というものがあつて、商業基準でこれを通り抜けて行かなければならん。それがどう調和するかということは、これは実際日本の本質的な悩みじやないかと思つておるのです。勿論労働者諸君の生活をよくしなければならんことを念願としております。今のようなことで、一体それじや日本が将来立派に国際場裡でやつて行けるかというと、私はやつて行けるという自信は現状のままでやつてつてはないのじやないか。それを本当に考え直すべき時期に来ておるのじやないかという構想でございます。それについては今できないという声が非常に強ければそれはできないでございましよう。ただ考え方としてはそういうことを考えて頂きたいと、こういうふうに思うわけです。
  64. 阿具根登

    ○阿具根登君 小坂労相の言われておることがわからんわけじやないのです。併しその論議を進めて行くなら、これは日本が国際場裡で太刀打ちして行くために、そうして落伍するものは死んで行け、いわゆるあの考え方と同じなんです。非常に労働者を首切ることは忍びぬのだけれども、犠牲になつてくれという言葉にしかならないわけです。逆に日本ではそういう立場にあるけれども日本の置かれておる現状から見れば、これだけの人口を抱えて、そうして失業さしたならばどうなるかという問題を考えるならば、何とかして失業者が出ないような機構を考えて行く。或いは最低賃金でも作るとか、そういうことを最初考えてからそういうことを言われるのならはいいけれども、何も救う途は考えずに、日本はこういう苦境に立つておるから、非常に気の毒であるけれども、例えば時間は一時間延長ずる、そうして女子の深夜業とかいろいろな問題で、労働時間は延長するし、或いは低賃金で、その結果は失業者がどんどん出て行く、それで君たちは日本が国際場裡で闘うために、貿易で闘うために死んで行つてくれ、こういう言葉にしかならないと私は思うのです。そういうことが許されるかどうか、そういうことは許されないと私は思うのです。それでその政策は間違つておる、こうしか私には考えられないのですが、その点はどうですか。
  65. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 決して死んでもいいなどという非情なことは私としては考えるべくもないのでございますが、勿論或る企業が実があつてその仕事が伸びる、そうしてその仕事が伸びますから次にその仕事として又新らしく人を抱える余地が出て来るわけです。そこでそういうふうになるまでの閥どうして繋ぐかというと、それで失業者は困るといつてそのままおいておけばその企業全体がつぶれる、こういうことになるわけであります。ですから失業の問題に対しましては、社会保障を十分にするとか或いは農村において、これは日本経済の独特な経済構造でございますが、収容力がまだある。そこでこの農村の二、三男対策ということについてできるだけ対策を講ずる。これはこの問題としては期間的なものだ、或る時期を過ぎて、日本経済が苦しいところを乗越える、そうして繁栄の基礎ができたときには事業が拡大して行くから雇用の余地ができて来る。この道を通らんと絶対に日本経済は縮小してしまう、そこで私は問題があると思うのです。そういう意味でございまして、決して他の施策を放たらかして、これは残念ながら縮小せざるを得ない、これは落伍者だと思つて我慢してくれという気持は毛頭持つておりません。それに出て来るものに対する対策は勿論いたします。勿論いたしますが、企業はそのまま放つておいて、解雇反対をやつて企業が幾日も動かない、そこで会社がつぶれてしまうということは仕事に影響してしまう。そういうことが繰返されるようなことが予想されるような気がする、そういうことがいいかどうかということになると、そこまではいけないという考え方を持つておるわけであります。
  66. 赤松常子

    赤松常子君 簡単に伺いますが、難航を極めております近江絹糸争議に対して大臣初め労働当局の方々がその対策のために大変御努力を頂いておりますことは深く感謝いたします。二度あることは三度あるということは今度は御免こうむりたいと思いまして、二度の心配をいたしましたのですが、今度はどうにか解決に持つて行きたいと私ども考えておる次第でございます。  そこでこれと別に労働基準法違反の摘発を随分各労働基準監督署では監督してなすつたようでございますが、その後の経過、それから措置の進行状態を簡単にお聞きしたいのと、それから夏川社長を喚問なさつたようでございますが、召喚の結果はどういうふうに答えられたか、その辺のことも御報告願いたいと思います。
  67. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 基準局長からお答えしてよろしうございますか。
  68. 赤松常子

    赤松常子君 どうぞ。
  69. 亀井光

    説明員(亀井光君) 近江絹糸のその後の捜査の結果につきまして申上げます。  当委員会に御報告申上げましたように、七月の十八、十九の三日間に亘りまして、本社並びに各工場に強制捜査をいたしまして、書類、帳簿等の押収をひたしたのであります。その後これらの物的証拠につきまして内容調査を進めて参つておりますと共に、又その内容に応じまして裏付の捜査をする必要変じましたので、それぞれ容疑者並びに参考人の供述をとつてつて来たわけであります。その結果本社並びに名工場につきまして労働基準法違反の容疑が明白に把握ができましたのでで、先月の二十三日それぞれ書類を以て地検に送検をいたしたような次第でございます。  その内容の細かいことにつきましては、なお地方検察げにおきまして捜査続行中のものでございますので、私から申上げるのは遠慮さして頂きたいと思いますが、輪廓だけを御説明を申上げますると、本社の関係におきましては、労働時間の違反、これは時間外労働、休日労働、休息の違反並びに女子、年少者の時間外労働、深夜業、こういうものを含むわけでありますが、これにつきましては本社並びに七つの工場全体につきまして容疑の事実が判明いたしましたので、この点について送検をいたしました。それから又危険有害業務につきまするいろいろな安全衛生規則の違反、即ち無免許のボイラー・マンがボイラーの仕事に従事している或いは年少者がそのボイラーの仕事に従事しているというようなことで、岸和田を除きまして、ほかの各工場につきましても違反の事実が明白になりました。これもこの事実から送検をいたしました。なお特定の工場でございまするが、寄宿舎の機数につきまして違反がございました。これは岸和田と冨士宮でございます。更に又寄宿舎の自治会の役員の選挙に干渉した疑いも、ございまして、これは法律に罰則の適用がございます。この点につきまして岸和田と彦根、津の工場を送検をいたしました。大体それが主な条項でございます。  そのほか私生活の自治に干渉等は罰則の適用は、ございません。これは従いましてその是正につきまして勧告をいたしておりますが、そのほか全般的に物的証拠の裏付がないが、併し違反の容疑として我々として疑わしい事項につきましてはそれぞれ、大阪の本社については大阪の労働華華局長、又それぞれの工場長につきましては関係労働幕準局長から是正の命令と言いますか、勧告と申しますか、それと併せまして今後これらの違反が繰返されないようにというふうな点について強硬な勧告をいたしたような次第であります。  愛川社長につきましては、大阪において本社関係関係で供述を取りまするし、又静岡の富士宮につきまして寄宿舎関係の連反につきまして供述を取りましたが、その内容はここで申上げるわけには参らないのであります。まだ捜査続行中のものでありますので遠慮さして頂きたいと思います。
  70. 赤松常子

    赤松常子君 冨士官に起きました畳数の問題でございますが、それが判明いたしましてすぐに寄宿舎の広間、事務所の三階などにこう休ませるようにはいたしておりますが、併しそれだけであつて、今後そういう状態が永続するのでしようか。その先の監督というものが必要じやないかと思うのであります。広間に雑居させて置く、今そういう状態でありますが、ただ人数のほうはまばらにはいたしましたが、まだまだ部屋には人数の名籍を出すとか、こういうような細かいことはいたされてありませんですから、もう少し細かく勧告をして頂きたいと思つております。  それからついでにちよつと私お願がございます。これでもうおしまいにいたしますが、富士宮の問題で投石事件というのがございました。八月の十三日に原綿を入れるということで警官隊との大乱闘が起きました。そのときに市民の人が大変争議団に好意を持たれて、警官の余りにひどい暴虐な態度に反感を持ちまして、それが進みまして、あそこの事務所及び警察の窓に石を投げまして、相当のガラスをこわした事件がありました。それの取調が最近非常に峻烈に行われている事実がございます。その中に人権蹂躪が相当ございまして、去る八月の一十日にも十八の少年を朝の九時から夕方の七時頃まで、お昼御飯も食べさせないで調べた、又日雇の人夫が仕事があるから行くというのに無理に引張つて一日をふいにしたというようなことが相当ございましたので、私どもも抗議はいたしておりますが、この争議中の問題でございまするので、一応本省からもその前後の事情を調査して御報告願いたいと思います。人権蹂躙の事実があるということにつきまして一応本省から調査に行つて頂きたいと思います。その御報告を願いたいと思います。
  71. 亀井光

    説明員(亀井光君) 第一点の冨士宮工場の寄宿舎の問題でございまするが、一応争議続行中ではございましたが、違反が継続しておりますので、一応是正をさせて参つております。併し操業が開始されますれば、現在の社態では必ずしも満足すべき状態でないと私らも考えます。従いまして、操業が開始されますれば別に我々といたしましては勧告措置考えたいというふうに思つております。  第二点の問題は、これは警察の問題でありまして、我々の権限外でございますので、悪しからず御了承を願います。
  72. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 国家公安委員長として一つ……。(笑声)
  73. 赤松常子

    赤松常子君 私は法務委員会でもこれをお願いいたしたいと思つておりますが、この争議は両方に関係がありますから、両方を調べて頂きたいと思つております次第であります。如何でしようか、公安委員長さん。
  74. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 本日はそういうお呼び出しではなかつたと思いますが、(笑声)承わつて赴きます。
  75. 赤松常子

    赤松常子君 そういうことをお願いいたしまして、両方から私は調べて頂きたいと思つております。
  76. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 速記をとめて。    〔速記中止
  77. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 速記を始めて下さい。  この際委員の方にお諮りいたします。当委員会は先に田畑君が一時委員辞任されましたため、理事が一名欠員のままになつておりますが、その後田畑君が再び委員に戻りましたので、この際田畑君を理事に指名いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  78. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 御異議ないと認め、田畑君を理事に指名いたします。  本日はこれで散会いたします。    午後四時五十二分散会