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1954-07-31 第19回国会 衆議院 労働委員会 第34号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年七月三十一日(土曜日)     午前十時四十九分開議  出席委員    委員長 赤松  勇君    理事 池田  清君 理事 鈴木 正文君    理事 持永 義夫君 理事 稻葉  修君    理事 多賀谷真稔君 理事 井堀 繁雄君       大橋 武夫君    並木 芳雄君       黒澤 幸一君    島上善五郎君       大西 正道君    日野 吉夫君       矢尾喜三郎君    中原 健次君  委員外出席者         調達庁長官   福島慎太郎君         法務事務官         (人権擁護局         長)      戸田 正直君         大蔵政務次官  植木庚子郎君         農林事務官         (食糧庁業務第         一部長)    伊東 正義君         通商産業事務官         (石炭局調整課         長)      町田 幹夫君         労働事務官         (労政局長)  中西  実君         労働基準監督官         (労働基準局         長)      亀井  光君         労働基準監督官         (労働基準局監         督課長)    和田 勝美君         労働事務官         (婦人少年局         長)      藤田 たき君         労働事務官         (職業安定局         長)      江下  孝君         参  考  人         (高倉鉱業岩屋         鉱業所労働組合         書記長)    古賀  茂君         参  考  人         (高倉商事株式         会社取締役)  中山 亀彦君         参  考  人         (高倉鉱業株式         会社企画部長) 古野 常雄君         参  考  人         (高倉鉱業岩屋         鉱業所組合員) 秋好トムノ君         参  考  人         (同 )    今村 国年君         参  考  人         (全駐留軍労働         組合中央執行委         員長)     市川  誠君         参  考  人         (全繊同盟本部         副組合長)   仲川  衛君         参  考  人         (同組織部長) 山口 正義君         参  考  人         (近江絹糸労働         組合大垣支部副         支部長)    内田 秀雄君         参  考  人         (同執行委員) 菅家 泰子君         参  考  人         (近江絹糸労働         組合津支部副支         部長)     池本正三郎君         参  考  人         (同執行委員) 北山香保里君         参  考  人         (近江絹糸労働         組合中津川支部         支部委員)   早川 ヒサ君         参  考  人         (同副支部長) 鈴木 六郎君         参  考  人         (近江絹糸労働         組合岸和田支部         婦人部長)   鷲沢 愛子君         参  考  人         (同副支部長) 中前 研二君         参  考  人         (近江絹糸労働         組合彦根支部書         記長)     下村 宏二君         参  考  人         (同副支部長) 吉田美代子君         参  考  人         (近江絹糸労働         組合長浜支部執         行委員)    木下 準仁君         参  考  人         (同執行委員) 宮元 節子君         参  考  人         (近江絹糸労働         組合大阪本部財         政部長)    西島 恒雄君         参  考  人         (同本部婦人部         長)      三輪美智子君         参  考  人         (近江絹糸労働         組合東京支部副         支部長)    川又 キミ君         参  考  人         (近江絹糸労働         組合富士宮支部         調査部長)  岩原 利子君         参  考  人         (近江絹糸労働         組合大垣支部組         合員)     池尾  昇君         参  考  人         (近江絹糸紡績         株式会社人事係         長)      石田 嶺江君         参  考  人         (近江絹糸労働         組合大阪本部組         織部長)    高村  茂君         専  門  員 浜口金一郎君     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  小委員及び小委員長選任参考人招致の件  失業対策労使関係及び労働基準に関する件     ―――――――――――――
  2. 赤松勇

    赤松委員長 これより会議を開きます。  失業対策労使関係及び労働基準に関する件について調査を進めます。
  3. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 議事進行について。この前、中原委員からも質疑が出ておりまして、本日参考人が見えておりますので、ことに池尾石田参考人から、監督署及び安定所饗応の事実について述べていただきたいと思います。
  4. 赤松勇

    赤松委員長 ただいまの議事進行異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 赤松勇

    赤松委員長 それではさよう決します。  まず池尾参考人より発言していただきたいと思います。池尾参考人
  6. 池尾昇

    池尾参考人 ただいま御質問になりました関係官庁饗応の事実のことについて答弁申し上げます。  まず関係官庁には監督署とかあるいは職業安定所とか、あるいは労政事務所、それから関係官庁とはちよつと言えませんけれども警察とかいうものかありますが、まず監督署については、私の知つている範囲では饗応の事実はまず問題になることはないと思うのです。それから安定所ですが、これは大体近江絹糸を訪れる安定所職員については、ほとんど全部接待しております。それから労政事務所ですが、私の知つている範囲では一回ほど接待したことがあります。それから警察も私の知つている範囲では一回ほどあります。簡単に言いますとこれだけです。
  7. 石田嶺江

    石田参考人 石田でございます。ただいまの御質問に対しまして答弁いたします。  監督署関係接待でありますが、これは全然ありません。それから安定所関係接待でありますが、これは儀礼的に、最小限の接待と申しますか、たとえばその晩泊られるときには、夕食を出すという程度のことはありますが、これはあくまでも儀礼的なものだというふうに考えておりまして、饗応というようなことはやつておりません。これは御質問範囲外かとも思いますが、私が安定所あるいは関係中学校をまわりましたとき、もしくは会社におきまして、近江絹糸は他の会社と比較した場合、来客の待遇が悪いというようなことは、しばしば耳にしております。そういつた程度であります。次に労政事務所でありますが、これは私が知つておる範囲で、会社接待したということは記憶にありません。警察関係は私は直接関係しておりませんので知らないわけであります。  以上、簡単でありますが御答弁にかえます。
  8. 中原健次

    中原委員 あなたの工場は何工場ですか。
  9. 石田嶺江

  10. 中原健次

    中原委員 ただいまの参考人から御説明がありましたが、ちよつと実は奇異に感ずるのです。今両君が話されたような意味なら、仲川参考人のようなああいう発言があろうはずがない。そうすると、せつかく暑い中を遠路御苦労願つたのでありますが、何者にか何といいますか、遠慮を感じなければならぬような立場でものを言うておいでになるのではなかろうか。少くとも参考人諸君の御発言というものは、今回の近江絹糸事件解決への一つの大きい要素であるとわれわれは考えます。これはただ単に関係官庁に対する接待というように簡単に考えられるかもしれませんけれども、やはりそういうところに深い根があつて、そういうことで問題の解決が運びにくくなつているということにもつなかると思います。そういう意味で、何となくただいまのお話は、たとえば安定所職員に関する場合、儀礼的にきわめて最小限度接待をしたこともある、たとえば夜おそくなつた場合に食事を提供したごともあるが、その程度であるということで、非常につつましやかな感に聞えるのです。ほんとうにそうなのか。あなたの良心に省みて実際言わなければならぬことを遠慮しておいでになるという感じを強くするが、この点についてどんなものですか。かりに夕方になつて夕食を出すという場合に、ただ単に折詰めの弁当であつたのか、それとも何かかわりの膳が出たりするようなものであつたのか、あるいはのどもかわいておろうからというのでお酒もまじつてつたか、そういうようなことは実際はどうなのか。願わくば遠慮のないところ、労働者的な良心はつきりと言うていただきたい。そうしないと、私どもが真実をつかもうとするのに真実がつかみにくくなる。真実がつかみにくくなると、この問題を気持のいい、円満な、よき解決に持つて行きがたくなる、そういうことの一つの弊害になると思います。そういう意味で、いろいろお立場のこともわかりますが、このことがあなたたちの職員としての立場を不利益にするようなことになることは、もちろん明らかに不当労働行為であります。そういうことでなしに、労働組合という立場からの、もつと責任のある意味で、内容的に遠慮なく、事実を事実として並べていただきたいと思うのです。従つてただいまの安定所職員に対する接待の場合、内容的にはどういうものであつたか、非常にこまかいことをお尋ねするようですがじつはこまかくない。たとえばどういうふうな食事を提供したか、このことをもう一度伺いたい。
  11. 石田嶺江

    石田参考人 ただいまお尋ねの件でありますが、私は仲川参考人がどういうことを述べられたかということは全然存じておりませんので、私は事実を事実として申し上げているのでありまして、決して遠慮もしておりませんし、また遠慮しなければならないような状態でもありません。それで事実を事実といたしまして具体的に申し上げます。安定所に対する接待でありますが、これは先ほど義礼的というふうに申しましたが、それが非常に抽象的で、いけないという御質問のようでありますので、もつと具体的に申します。たとえば、夜になりまして夕食を出す、そのときに、冬でありますれば、安定所職員に対しましては、一番接待をしたときで、会社の炊事におきましてすき焼の用意をしまして、それを清泉寮という寮で出す。そのときに冬でありますればお酒を出します。その場合の具体的な接待ですが、芸者を呼ぶとか、そういつたことは全然なくて、私とかあるいは人事係の者が出て、それからお客さんが出る。それだけで食事をして、あとは寮のふろへ入つてもらう。それから本館という、普通の社員の宿舎になつている建物がありますが、そちらの方で休んでもらう場合もあります。なお夏でありますれば、暑いからすき焼ということもできませんので、いつも会社喫茶部で販売しておりますカツライス――これは会社で補助いたしまして三十円で皆に販売しておりますが、そのカツライスと、それからもう一品くらいオムレツか魚のフライか、そういつたものをつけまして、それにビールとあられ、ビールは大体一本から平均二本でありますがそういつた程度接待で、その場合には本館の一室でやる場合が多いわけでありますが、それ以上のことはやつておりません。  以上できるだけ具体的にその接待の状況を申し上げたつもりでありますが、まだおわかりにならないところがありますれば説明いたします。
  12. 中原健次

    中原委員 もう一度池尾さんにお伺いしたい。労政事務所が一回、警察が二回、監督署の場合は特にそれというほどのものではたかつた安定所の場合も、ほとんど全部単なる接待という程度のものだというふうに、非常に質素な程度接待はしたけれども大したことはない、こういうふうに私は受取つたのですが、もしそうだとして、その単純な好意的な接待、ときが来たからそのお食事を差上げたという程度以上のものではない、こういうふうに聞いたわけですが、これについても、ただいま石田参考人お話がありましたように、もう少し具体的に、内容的な話を聞かせていただければ都合がいいのです。  なお先日聞いたところによりますと、必ず女子職員諸君がおちようしを持つて接待役を命ぜられている、そういうことが仲川参考人から言われておつたわけです。しかも仲川参考人によりますと、監督関係職員あるいは官庁職員の出入りに対しては、そういう意味での接待に心が配られておつたというふうに受取れるような説明があつたのですか、本日の両君の御説明ちよつと開きがあるように感ぜられたために、従つてその内容を一層明確にしていただきたいと思います。
  13. 池尾昇

    池尾参考人 それではお答えいたします。その前にちよつと御説明申し上げたいと思うのですが、石田さんは組合に入つておりません。それから私は組合に入つております。石田さんは私の係長です。そういう立場であります。  今御質問の点ですが、安定所の場合は、訪問されるたびに、かなりの接待をしております。そうして、これは富士宮工場の例ですが、富士宮工場ちよつと接待が悪くて、安定所職員がむくれて帰つたために、現地において募集上の支障をずいぶん来したという事実があります。この事実が本店人事課の方に報告されまして、そのために本店人事課から各工場に文書でもつて富士宮工場でこういう事実があつたから特に接待には注意されたいという連絡がありました。こういう実例からいたしまして、各工場では安定所職員訪問があつた場合には、特に接待には留意しておるのは事実です。  それから第二番目に、女子事務員をその接待使つたという事実ですが、これについて御説明申し上げると、ただいまの石田さんからの説明の中にもありましたように、清泉寮というものがあります。この清泉寮というのは、女子事務員が約四名ほどとまつておりますが、ここでよくいろいろな接待なんかが催されるわけであります。女子事務員が、一旦仕事が終つてから、夕方の六時くらいからここでいろいろな接待が催されて、終るのがやはり十二時近くなるのです。ここで接待が行われるのは事実です。ただいまの御質問に以上お答えいたします。
  14. 中原健次

    中原委員 そうなりますと、石田参考人の御発言と今の答弁大分内容が違う。たとえば、実にささやかな最小限度の儀礼的なという非常に念の入つた前置きがあつて、ただ単に腹が減る時間だからというので食事を差上げたという程度の御説明石田参考人からあつたにかかわらず、池尾参考人お話によりますと、たとえば富士宮工場におけるその接待の行き届かざりしために、いろいろと齟齬を来したということから、その経験に基いて、本社が各工場に向つて、役所の職員訪問に対して滞りなく、手落ちなく接待に留意せよ、こういう指令を出し、従つてその指令に基いて、各工場がそれぞれ懸命に役人の接待に当つた、こういうことが想像されるわけであります。なおかつ、清泉寮における接待の場合に、六時から十二時近くまでその接待の時間がかかつておるとすれば、単にささやかなその場の空腹を満たすだけの食事のふるまいとも考えられない。そういうふるまいにそんな長い時間を要するかどうか、これは常識上想像がつくわけです。従つて、先日の仲川参考人お話と、参考人お話は大体一致するかのように思うのですが、そういつた場合に、たとえばもてなしには必ず酒をつけるというそのことが、事実としてなされておつたということになつて参りますと、その酒も一本が二本、二本が三本へ発展することも考えられないでもない。そういうことについて、たとえば特にどういう場合においてはどれだけの酒の量が何人に対して使われたというような事実がもしあるなら、御指摘願つておきたいと思います。
  15. 池尾昇

    池尾参考人 お答え申し上げます。もう少し詳しく申し上げますと、安定所職員安定所職員でも、安心所長もおりますし、普通の職員もおります。このような場合に、所長にもへかわらず、あるいは単なる職員にもかかわらず、百人が百人とも清泉寮へ連れて行つてつたわけじやない。もつとも、ただ工場内でビールを出した程度で終る場合もおりますし、特に所信の場合は、冬でしたら酒、夏でしたらビールを出して、特に酒の場合は、今申しましたように、清泉寮において、かな鳥そくまでいろいろな接待したことはあります。その酒の量については、そのときの事情で違いますので、一つ一つについては申し存られません。
  16. 赤松勇

    赤松委員長 他に御質疑はありませんか。
  17. 島上善五郎

    島上委員 せんだつて工場からかなり具体的に伺いましたが、多少伺つておきたい点がありますので伺います。  信書開封で、信書開封を現にされたという証言がございましたが、そのほかにさらに寮母の前で、来た手紙を読まされたという事実をどこかで御存じの方がありましたら、ひとつお聞かせ順いたい。それから知合いとかあるいは男の人から写真が来たが、その写真も、手紙を読まされた際、取上げたのか、あるいは私物検査の際取上げたのか知りませんがそういうよな事実もあるように聞いておりますが、そういうことがあるかどうかといいうことを伺いたいどなたでもけつこうです。
  18. 高村茂

    高村参考人 ただいまの御質問に対しまして、お答えいたしたいと思います。実は私組合総務関係を担当いたしておりますので、先日来各弁護士会の方、特に近畿の弁護士会人権擁護委員長藤原昌人先生中心といたまして、各地区にわたりまして非常に熱心に御調査願いました。その結果すでに百人以上のそういつた事例が出ております。この問題は弁護士会の方から、法務局その他へ告発と申しますか、そういつた態勢をとつていただけるように準備をしてもらつておるのであります。この問題につきまして、本日ここに参考人として列席いたしております者の中に、実際にそういうふうなことをやらされた者は不幸にしておりませんが、そういつた方面から、皆様の方からお諮り願いますれば、そういつた事例が非常にたくさん出て来るものということを、この席で私ははつきりお答え申し上げることができると思います。たとえば開封につきましては、池尾参考人人事の係をいたしておりますので、これに御発言を許可願えれは私はけつこうではないかと思います。さらに寮で舎監の前で読まされるとか、そういつた問題も、私の方で弁護士会に提出する資料といたしまして調べました中にも、すでに相当数あるわけでございますので、この点もあわせてお諮り願えればけつこうじやないかと思います。電報の件も同様でございますのでひとつよろしくおとりはからい願いたいと思います。
  19. 島上善五郎

    島上委員 せんだつて参考人の中で、現に自分の信書開封されたという方があつたように記憶しておりますが、その方がおられましたら、もう一度その事実をはつきりお聞かせ願いたいと思います。
  20. 菅家泰子

    菅家参考人 去年のことでしたが、私に速達が来たんです。それで舎監の方から呼ばれて行つてみますと、その速達をその場であけて読むように言われました。それで中を読んでみて、口に出すことができないようなことが書いてあつたんです。ですけれども、先生はそこで中にどんな内容が書いてあるか話すように言われたんです。ちよつと口に言われないようなことが書いてあつたのですけれども、それを先生がどうしても追究するので、何とか言葉を濁して具体的なことを話したんです。そうしたら、一旦会社をやめた人とあまり手紙のやりとりをしてはいけないとか、交際をしてはいけないというようなことを先生から注意されたわけです。
  21. 島上善五郎

    島上委員 たしか、せんだつての新聞でしたか、会社側の言い分として、たくさんの手紙が来るのだから、間違つてそういうこともあつたかもしれない、こういうような言いのがれが載つておりましたが、もちろんそんなことではないと思う。きようの週刊読売の記事を見ますと、開封する際に――もちろんこれは全部が全部開封するわけでもないが、会社側として何か一定基準のようなものかあつて、たとえば同じ局内の消印で出したものは開封する、男の文字で女のところへ来たものは開封するとか、中小紡績工場から来たものは、引抜きされるおそれがあるということで開封するとか、そういう一定基準があつて、それに目をつけて開封するというふうに会社でやつてつたかのような記半が載つておりますが、もしそういう事実を寮母及びそういう関係方面にお知合いがあるとかで、御存じの方がありましたら、そういう点をひとつお聞かせ願いたいと思います。
  22. 赤松勇

    赤松委員長 島上君、実はこの手紙開封をする人事課の係の――あそこにいる仲川さんだと思いますが、先般この委員会仲川さんから詳しく話をした。人事課の連中は蒸気に当てて開封するのだというふうな陳述もずつとあつたわけです。それでこの調査は一応終つております。ただその基準というのは、新しい事実ですから、この点についてひとつ明らかにしてもらいましよう。
  23. 池尾昇

    池尾参考人 では信書開封基準について申し上げます。この基準は――私は近江絹糸大垣工場ですが、大垣工場からその当時よく岐阜にあります川島紡績へ転職する子供が多かつたのです。このために、岐阜川島紡績へすでに転職した子供より、大垣工場へまだ残つている者にあてて、向うの様子を書いた手紙がたくさん来ておつたわけです。その内容によつて、ずいぶん向うの方へ転職したことがあつたわけなんです。この点に目をつけましてへそのような川島紡績から来るのはほとんど全部開封していました。これは私は人事課におりましたので、私も実際にこれを開封したことがあります。それから人事課行つていた信書開封基準は、転職の防止がおもな目的だつたわけなんです。  それから大垣の場合でしたら、同じ大垣局区内から発信人はつきりしない、たとえげ英語の頭文字で書いてあるものとか、あるいはうしろ発信の住所が鹿児島になつているにもかかわらず、消印岐阜とか大垣になつているもの、こういうものは一応怪しいものとして開封しておつた事実があります。それから異性間に出された手紙ですが、これは人事課としてはあまり周知していなかつたと思います。  以上お答えいたします。
  24. 井堀繁雄

    井堀委員 議事進行――本日出席されている参考人その他から、もつぱら人権に関係したことについて供述書委員長の手元に提出されておりますが、記録に残す意味朗読をしていただき、それを中心質疑をせられんことを要望いたします。
  25. 赤松勇

    赤松委員長 ただいまの議事進行に関する井堀君の発言、よろしゆうございますね。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  26. 赤松勇

    赤松委員長 これは内容は同じものですね。
  27. 高村茂

    高村参考人 そうでございます。     〔委員長朗読〕   供述書    大阪市東区備後町五ノ八近江絹糸紡績労働組合           高村  茂   私は昭和二十七年三月十日彦根工場保険課に入社、本年一月十四日大阪本社に転勤と同時に係長を命ぜられ、爾来工場長会議工務部長会議を始め重役室に於ける係長以上の訓示等、最高一週間三回平均一週間一回(社長渡欧中を除く)をうけてきました。社長は深夜生産を中心とする労働強化、労働組合問題、労務管理につき重点をおき、たえず指示してきたことは昨日各参考人より発言いたしました通りで、その内容は訓示の際工場課係員か記録をとり社長の検閲をうけ訓示要旨としタイプをして各係長宛配付しておりました。  即ちこれを抜スイすると  二月七日本店に於ける社長訓示要旨  一、深夜生産   深夜廻したならよいではやらぬ。少なくとも男子で精紡二十台廻す女子の三乃至四割仕事をする様にせなければならぬ。男子が一台や、一台半持つて居ては何もならぬ。現在の男子で全台を廻す様に能率向上に努められたい。  一、労働問題   全繊関係に於て津、中岡、彦根植村の問題があり彼等を会社に復帰させることに依り全繊は第二組合を結成させ近江絹糸に反対するものであるがこれに関し組長室長に説明して置くべきである。会社と全繊の関係を更に研究し工場長あらゆる手段をもつて全繊に対抗する。    更に指導組織として     A 職場組織     B 寮関係の組織     C 労働組合を作り教育了解せしめる必要がある。教育指導した半を本店に報告する。  一、毎月減員計画表の提出   見習工員が現在人員の二、三割増加の見込みはつきりと減員計画を樹てて提出。  一、当社の速度はきわめて早いから自分の速度を考え会社に合わせるべきである。  一、労務問題   学卒補充をし男子工員を増さないで腕を延ばし能率を上げる、従業員の不良の者は毎月計画的に整理して行く。   四月四日大垣工場に於ける社長訓示要旨  一、人の陰口悪口を言う、こういう人間は会社より排除せよ。しやべる隙間があれば仕事に全力を揚げて努力する様にしむけられたい。  一、梱当りの人員整理、新入者が入る為反対の方向に進んでいるが、人員整理は何としてもやらねばならぬ、整理表を持つて来る者が少ない。工員の整理表を毎月十日迄に人事に提出、整理計画表も提出する。  一、健康調査を行い不健康者は家で休養させる方法をとる、帰りの旅費くらい負担してよい、余剰人員整理の一方法である。  一、整理具体化の問題、二千人の人間の内から月二人、三人の整理では問題にならぬ、これでは命令されるから致し方なくして居る様なものである、これは根本的に考えねばならぬ。一、全従業員の技能試験を実施する、技術試験は工場毎に独創的に実施する、全従業員の技術試験は三ケ員以内に完了する。社員工員について行ない科目は各科係に依り異なる、精紡なら糸継ぎ時間とか台掃除とか注意すべき点等を試験科目とする。  一、新入は別として男子工員には一年契約をつづけて作成せよ、当社の男子工員は二、四〇〇人居る、其の内一、二〇〇人深夜番である内四〇〇人深夜専門、八〇〇人が交代番、従つて八〇〇人が深夜に実働する状態である、A、B、C番が深夜に回ることになると現在の一・五倍の機械が回ることになる、新入を入れて古い人を深夜に廻す、日清紡では全部女子を使用する、保全を簡単にすれば女子でも出来る、保全を女子にして一、二〇〇人の男子をどれ丈深夜にまわすか。  一、メーデーを慰安会とする計画を作れ。  一、社員の入れ替え、富士宮は女子社員が余るという。配置転換を本店総務に連絡する。のごときもの、があり、これは単に現在訓示要旨を組合で保管するもののみであるが、毎回社長の根本方針としてこれらを強調していたことを認めます。     ―――――――――――――    供述書     岸和田市西大路町     近江絹糸紡績(株)岸和田工場            鷲津 愛子   私はこの会社に入社して四年八ケ月になり現在仕上科の組長をしています。女子の超過勤務、深夜業を強制されて参りました事実を具体的に申し述べます。岸和田工場仕上科のみに於ける最低人員六〇名のところ現在四〇名、それなのに毎日二、三人が退社する等甚しい人員不足にて、どうしても深夜業超過勤務を実施しなければ一日の織上つて来る反物の整理が出来ない。又毎日一回工場の行事として能率品質生産に於ける工場対抗競技を行い只管対抗意識のみにて生産高を上げることを目的とするのであるが、人間の本能として作業条件の悪い事や給料の低い事を意識せず只、競技に勝つのみと一生懸命になる。而して若し優勝しても、全く大人に玩具を与えるよりも劣る様なわずか五円のうどん券一枚渡す。それも六百名に対し二十枚程度のものでした。競技に依り強制労働をさせられておりますので、品質の低下は著しく、必然的に仕上科の仕事を増し、そこに先に述べた如く絶対人員数も割る様な状態で、競技が終つてもその処理に追われておりました処、一月、二月、三月においては出荷した製品にクレームとなりまして、三千反受取つた事実もありまして、その修正に未成年者も全員超過勤務、深夜業をし、月に平均致しますと、私は百十時間(超過勤務のみで)公休も月一回という事も何回もありました。又早出居残りを身体の都合上出来ないと云うと、「組長がそんな事を云つて誰が整理するのだ」と工務、主任に叱られ、又役目上部下の嫌がるのを無理に順番をきめ、工務主任による一日の処理反数を平日の数倍に増され、それが終らぬ事には寮に帰してもらえず、昨年暮より今年三月ごろ(新入工員が入社するまで)まで人員不足に依り特に女子の深夜業を強制されて参りました。なお右の深夜労働賃金は、時間外労働賃金しか支給されておりません。   以上供述致します。  昭和二十九年七が三十日     ―――――――――――――    供述書     岐阜県中津川市中津川     近江絹糸紡績中津川工場            早川 ヒサ   昭和二十八年十月二十日頃、その日の夕方より集団赤痢が発生、その時の模様を供述致します。  最初内田たかね外十二、三名の者が頭痛を訴え、下痢に苦しんでいました。その後同様の症状の者が続出したわけですが、当工場(従業員一千名)には看護婦一名だけで医師はおりませんから、その一名の看護婦がこまつたわこまつたわと走り廻つて居りましたが、手の付け様もありませんでした。そこで私達は町の医者を呼んで下さいと舎監に申出ましたが、今大垣工場の医者に電話を掛けましたからすぐ見えますと言い、町からの医者を呼ぶごとを禁止し、その上外出も禁止してしまいました。又その時松本、柴金舎監に、食当りでありますから赤痢などとは絶対に云つてはいけないと固く口止されました。一日一昼夜私達の手によつて看護した訳ですが、「苦しいから医者を呼んで下さい」「お母さんを呼んで下さい」と泣き叫ぶお友達を見かねて、会社のやり方があまりにもひどいと寮長の後藤千世子さん外数十名の人達と相談を致しまして、舎監をごまかし外出をし、後藤千世子、牧野和子の二名が市役所へ申し出ました。すぐ大井保健所の人が来て下さいました。すると会社では、今保健所から来たから病人を仏間へ運んで下さいと言われ、内田たかね外百名近い患者を仏間へ運びかくしてしまいましたので、その時見て戴いた病人はわずか八名にすぎません。その事に憤慨し、再び市役所へ「仏間へかくしましたから見て下さい」と申出、又来て下さつたのですが、今度は一番苦しんで声をたてている様な人を舎監高橋事務部長にせきたてられ、運びかくしました。私達は唯可愛想に愛想にと病人運びながら云つているだけで何も出来なくてほんとうにすまなく思つております。又患者がたくさん部屋に入つている所では、あちこち移動をさせ、その回数も六―八回に渡りました。その度に患者は死んでも良いからこのままにしておいて下さいと訴えていました。私達はこの様に苦しむ友達を見ている事は出来ませんでした。その後は保健所の方と大垣工場の医者及看護婦の方が来られて幸いに死ぬ様な人もなく、この赤痢患者も二ヶ月に渡る看護の後皆全快致しましたが、なぜ赤痢になる迄食堂管理をほうつておいたのか、又外出止迄して町の医者を呼ぶことを禁じたのか。会社は私達をおさえつけ、病気になつても手当も完全にしてもらえないほんとうにみじめな生活でした。社長さんが口ではいつも大慈大悲の仏心と云う半を唱えていながらこの様な事をするにもかかわらず、組合があまりにも会社の言いなりになつていて、私として市役所に届けでるのが精一ぱいでした。     ―――――――――――――  大垣市林町五の人  近江絹糸紡績労働組合大垣支部         池尾 昇         仲川 衛  私達は大垣工場人事課員として勤務中、上司より信書開封を命ぜられ、これを実施したことについて具体的に次の通り申し述べます。一、まず郵便物が本人に届く迄。  (1) 郵便局よりの手紙を庶務課にて、会社宛と個人宛のものを男女子寮別に分類し、事務部長に全部提出する。  (2) 事務部員長は   (イ) 会社宛(当然の事乍ら開封してある)の手紙は検閲の上各係に配布する。   (ロ) 個人宛の手紙も全部宛名、発信人を調べ、不審な点の(後述する)あるものを別にし、人事課に廻す。  (3) 人事課に廻された個人宛の手紙は、再度、宛名(受信人)発信人を調べる。次に不審と思われる信書開封し、内容検閲後は元通り密封し他の手紙と共に寮へ廻す。尚、人事課員は事務部長より直接開封する様命ぜられ開封したことがある。  (4) 寮、事務所にては、各寮(桜寮とか梅寮とか)に分類すると同時に、再々度一つ一つ手紙を調べてその後本人に渡る。  二、不審に思う信書の判定規準について。  (1)信管開封の目的は、寮生(工員)の動行を事前に知る事であると思われるが、大垣工場にては、主として転職(近江絹糸を辞めて他社に就職する事)防止であつたと思う。故に既に他社に転職した者より大垣工場の工員宛に来た手紙はほとんど開封していた。  (2) 次に開封の規準になるのは無断退社(正式の退社届を提出せず他社に就職する事)した者からの手紙(よく、発信人住所は鹿児島県とか宮崎県でありながら消印岐阜局とか大垣局とかになつていた)である。  (3) 異性から来た手紙開封については、人事課は殆んど関係しなかつた様で、寮事務所にて行われていた。  三、この信書開封の事実は、相当以前から行われていたもので一つの習慣的業務となつていたか、すべて上司よりの命に依るものである。  四、尚、工員の中には「信書開封される」といつた考えが一般に持たれている。  五、人事係では一月平均二、三通開封しました。(寮事務所でも開封します。)  六、具体的実例  (1) 本年二月二十日、発信大垣発信人信子、受信人小串敏子の手紙発信局が大垣であることに疑義をもち開封したが、二月二十二日スポーツ・センターで三時の待合せの手紙であつたが、これを密封し女子寮に廻したが、小串敏子は四月十一日津工場へ転勤を命ぜられました。尚、今回のスト決行後本人に聴聞しましたが、この手紙は受取つて居らないと云う事が判明しました。  (2) 村上恵子(大垣工場より川島紡へ転職)より能美ヒデ子宛の封書を開封した所、川島紡績の事について話し度いからとの内容であつたので、その予定時刻に鹿児島屋(大垣工場前の雑貨店)で張り込むよう上司より命令をうけ、村上恵子他五、六名の話し合つているのを聴取し、その内容を詳細に報告いたしました。     ―――――――――――――    結婚の自由及別居生活の問題について     大阪市東区備後町五の八近江絹糸紡績労働組合             西島恒雄   私は昭和二十八年三月入社致しました。会社は勿論正面より結婚するなとは云いません。然しそれを違つた言葉で表す事により、事実上結婚出来ない様に心理的圧迫を加える処に、彼等の巧妙さがあり、知能犯と云われる所以があります。結論として社長の考え方は、「結婚すれば能率が下る」と云うのが彼の根本的な考えであると云う事は間違いありません。即ち独身の社員に対しては寸したミスを見つけて、或は女の事を考えて居るのと違うか、下らない事を考えるからだとか、又既婚者に対しては、君は近頃どうかしている、女房を貰うと急に伸びなくなつた等、事毎にあたりちらし、又これを独身社員の前で公然と口にし、あげくの果てには転勤を余儀なくさせられる状態です。現に高馬常務を始め、池原、舟橋重役及び工場長の殆んどが、別居生活を営んで居る現状を見ると、到底当社では結婚出来ないとの考えを余儀なくさせられます。又労働の強化の面より見ても、現状では結婚出来ないと云う感を益々強めるばかりです。(本社では平均退社時間が夜八時頃の現状です。)特に本社に於ては本年三月、従業員は未知のうちに、会社の指名せる労働者代表と「女子が結婚した場合は退社しなければならない」と就業規則を変更し、基準局に提出しました。こればかりは基準局もひどすぎると云う事で、会社側に撤回を求め書類を返却したのですが、そのまま争議に入つてしまつたので、会社は訂正して書類を提出したかどうかについてはわかりません。     ―――――――――――――    供述書     静岡県冨士宮市     近江絹糸紡績労働組合富士宮     支部             岩原利子   昭和二十八年十二月三十日午後六時頃、長野県出身の菅沼美佐子さん、が病気の為部屋で床についていました。そこへ仕上の係長が出勤する様に呼び出しに来ましたが、「病気の為に出られません」とはつきり拒絶しましたが、「倒れるまで働け」と暴言を吐かれました。此の様なことは私の工場では数限りなくあり、その為、少々気分が悪くても出勤しなければならない状態がしばしばです。又個人別生産高競技が実施されますが、これは課別に行われ、吾々を酷使する一番苦しい競争です。この為に、先番の時は朝の三時半から出勤して(普通の時は五時から出勤)機械を廻し各自の成績を挙げねばなりません。もしも成績が悪ければ、台付の者(実際に機械を運転している者)が他の係へまわされたり、ひどい時は管理係(美化班とも言い、掃除及び雑用係)へ廻されて首きりの対象とされるので、致し方なく一生懸命働いて居ります。  また二十八年度の一月から三月頃までの渇水期には、日中は停電が多く生産が挙らなかつたことが有りました。この時会社は「工員の収入が少くなるのは気の毒だから」と言つて女子、未成年者の区別なく深夜運転をさせられました。このことは、長浜工場でも同じ理由でやらせられたと友人から聞いて居ります。     ―――――――――――――   供述書    近江絹糸紡績岸和田工場           中前研二  私は昭和二十五年七月岸和田工場に入社以来、仕上係長として今日に至りましたが、当工場では爾来タイム・レコーダーは全く使用されず、残業手当に関しては、同二十五年暮より繊維業界の不況に依り社員の残業手当は遠慮して貰いたいとの社長よりの通達で、その月から社員の時間外手当は一切支給されず、そして工員に於ても毎週先後番の交代日に於て(毎週日曜、先番者は午前五時より午前九時迄と更に午後五時四十分より午後十時三十分迄の勤務である。後番者は午前九時より午後五時四十五分までの中、昼食事に四十五分の休憩がある。)此の場合、後番者は一斉休憩をして居らず、尚先番者にありては、八時間四十五分就業して、而も休憩は全然なく、八時間の給料しか支給されて居らぬ状態である。毎月末に中間調査と称し、十五日及び三十日に行われる原糸の棚卸しの時には、午後十時三十分作業終了後に於いて、約三時間女子に深夜労働を強制されて居り、更に毎週一回美化デーと称する機械掃除を、先番勤務後三十分程度年少者の区別なく全員強制的に服務せしめられており、これらに対する残業手当は全く支給されず、この状態は争議以前迄継続されておりました。  又工場の食堂にては一間も離れぬ所に便所があり、しかも不潔極まりなく、食事中に悪臭気が吹込み、それを防臭するでなし、繩も食堂内に入り、全ての食物にたかり、甚だしい時には食物の中に入つて居る様な状態で、非衛生極まるものであります。福利厚生施設に就いては、募集時に岸和田工場は野球、庭球、排球部もあり、寮ではミシンが何台もあり、自由に使える、又就学したい者は会社に学校があり、誰でも勉学できると云う様な条件で、写真入りの募集ビラを作り、それを真に受け入社して来たのでありますが、工場へ来て見れば、何もその様な設備がない点に全員憤慨し、その改善方を何回となく申し入れましたが、何らなされることなく今日に至りました。     ―――――――――――――   専門炊事婦について    大阪市東区備後町五ノ八近江絹糸紡績労働組合          三輪美智子  私達本社の通勤以外の女子事務社員は全て堂島寮(社長の自宅)及び豊中寮の寮生ですが、いずれも専門の炊事係がおかれていない状態ですので、一週間ずつ交替で寮当番と称して各寮の炊事、掃除、風呂わかし等一切の寮責任を負わせられます。わけても堂島寮の当番の如きは、社長の身廻り整理すら行わせられている現状で、しかもこの当番は日曜から土曜迄となつているので、公休すらとれない有様であります。当番は終り職場に帰れば、一週間分の仕事がたまり、この面から労働量が増大し、残業をしなければならないことになります。尚現在男子社員寮の炊事係の人達は家事見習という名目で、採用されながら、朝は六時頃から起き朝食の準備をし、昼は会社に出て昼食の準備、夜は又寮に帰り夕食の準備を行い、就寝するのは午後十二時頃となり、まつたく女中同様の扱いをうけている。(又毎晩風呂をわかすのも寮の一切の掃除をするのも日課となつている)     ―――――――――――――   供述書    滋賀県彦根市西馬場町    近江絹糸紡績彦根工場           下村宏二  私は二十四年七月二十六日入社した者でありますが、今から丁度五年前、近江絹糸の経営する近江高校の別科に入学しました。これは週三日、一日二時間勉学できる制度でありますが、その内容たるや新制中学の復習程度で、数学に至つては新中の本を教える状態で、私達は滋賀県立東高校定時制に通い勉学することを決意し、二十六年三月二十三日に受験し、合格したものは当時五十数名おりましたが、葉室舎監及び近江高校校長より、外部の高校に行く者は首にするとおどかされ、現在四年経過した今日にあたつては、昭和二十七年三月津工場建設に当り殆んど全員が転勤を命せられ、或は故意に運転番にまわし通学を妨害する等、不当な扱いにより解雇せられ、又自らやめざるをえない様にしむけられ、現在私の同級生は種々と妨害を受け、白眼視され、毎週水曜日には連絡日と称し、仏間に強制的に上げさせられ、オキヨウを読まされたり、真剣週間と称し掃除を徹底的に強制される、又工場長の訓話、僧侶の法話を強制され、仏間に上げさせられる等、外出は自由に出来ない為、学校には勿論行けない状態が続いて来たのであります。  最近の例を申し上げますと、本年の四月私を含めた十数名大垣工場に転勤又は出張を命ぜられ、私達はその時理由を追求した所、君等外部の学校に行くるのは会社の方針に従わない者であるからだとか、又事務部長は技術の交換だと申しました。なおわれわれは大垣出張中、私は台つけを行つておりましたが、同行の他の方は撚糸台のすえつけ工事人夫がわりとして、ハツリ(穴掘り)を行わせられる等、技術指導は何ら受けていず、新聞にこのことが報ぜられるや、単に数日の出張でしがなかつたということで工場に帰されました。  出張先の大垣工場谷口工場長のごときは、われわれに不良学生であると、女子従業員に伝える等、いやがらせを行い続けました。しかもこの出張は技術交換と言われておりながら、彦根工場現場係長が、この出張をよく知らなかつたことは、われわれに対する通学妨害以外の何ものでもないことを立証するものであります。  仏教強制絶対反対の項目に関連し、二十六年六月二日の二十三名圧死事件の事実を伝えます。事件発生と同時に現場に負傷者救助に当つたのでありますが、八十数名に上る負傷者に対し、医者一人看護婦三人ではとうてい看護できないにもかかわらず、外部の医者より応援を求めたかつたため、二十三名に上る多数の犠牲者を出したのであります。  医療設備の不備に原因があつたのも事実であるが、この件に関して争議以来明るみに出たことでありますが、二十数名の犠牲者の中には、まだかすかに呼吸している者もありました。そのような者に対して、まるで豚の子でも死にかかつているかのごとく、これもだめ、これもだめと言つて、白い布をかぶせて行つたのであります。またこの事件の裁判のときには、私の同僚に偽証を強要されたので、会社の仕打ちをおそれ、偽証せざるを得なかつた事実があり、会社が仏教の精神、宗教の根本を知り、真の宗教に通ずるものであれば、このような非人道的な行為はできなかつたはずであります。  労働強化を強制する各種対抗競技を廃止せよの項目に対してであるが、工場(現場)又は寮において、糸切り競技とか清潔整頓競技等と、いろいろ競技をさせられるわけでありますが、特に寮における掃除の競技でありますが、工場で疲れた身体を引きずつて寮に帰り、一体みしたいのでありますが、ただちに掃除を徹底的にさせられ、その競技に負けたら最後、係長並びに担任より罵声を浴びせられるこわさのあまり、からだを無理して掃除したために、多くの犠牲者を出しております。   密告者報償制度、尾行等、一切のスパイ活動及びスパイ活動強要をやめよの項目に関連し、去る六月六日組合結成前夜、私は夜業に出たのでありますが、君は今日仕事をしなくてもよいからさつさと帰れ、私は何も理由なしに帰る必要がないと言つたら、山田担任、友成、前川の三氏に引きずられて工務室に入れられ、藤田副工場長より、貴様はきよう男寮で何を話していたかとおどかされ、それから重役室寄りの工銭の部屋に午前二時まで入れられ軟禁状態にあり、その内夏川工場長遠藤事務部長より、組合を結成するな、また母親が心配するとか言つて、私の精神状態を混乱に陥れたのであります。     ―――――――――――――   供述書    岐阜県中津川市中津川    近江絹糸労働組合中津川支部           鈴木 六郎   二十八年十月五日、工員久保田清子は松本初枝舎監に呼び出され、「長野県松本市から速達郵便が来ていたが、紛失して見当らないから、あなたの、心当りのところへ手紙を出して下だい」と言われた。早速彼女は心当りの松本市万国福音協会の百瀬先生のところへ問合せの手紙を出してみたところ、折返し百瀬先生から返事があり、「聖会があるから都合をつけて来て下さい」ということでした。此の時は松本舎監が直接久保田清子の所へこの速達の返事を持つて来た。ところがその時はすでに聖会の開催日は過ぎていた。   それから十日ほど過ぎてから、松本舎監が久保田に対して、「なくなつていた速達舎監室の私の机の下から出て来た」と言いました。   久保田は故意にこのような処置に出たのではないかと言つております。なぜならば会社は仏教を強制し、他の宗教を出来るだけ排撃しているから。又もしこれが父母の病気を知らせる便りだつたとしたらと今で患いますとはらはらすると言つている。     ―――――――――――――     供述書      大阪市東区備後町五丁目日労     労働会館内     近江絹糸労組大阪支部            西島恒雄   昨年末項本社営業部勤務の山口克昭が日曜の日直をしていた。彼がその日の夕刻来翰の整理をしているところへ西村貞蔵専務(夏川社長実弟)がやつて来て、各課毎に分類した手紙を見ていたが、その中に当時本社人事課勤務の塚本泰三宛の手紙があつた。それは親展の手紙であり、差出人は現在大垣工場男子寮舎監西口(当時鹿児島出張所長)であつた。西村専務は山口にはさみをとらせ、その場で開封して読み、それを自分のポケツトに入れて立ち去つた。当日塚本はおらなかつたので、帰つて来るとすぐ山口は彼にその由を伝えた。塚本が出社すると、予想通り重役室に呼ばれ、手紙のことで叱られた。   手紙内容は、西口が会社の不平を述べてあつたらしい。   もしその手紙が親展でなかつたら専務は開封しなかつたろうと思われる。会社は社員の行動を厳重に監視するためである。  なお前掲の塚本泰三は現在信越出張所長をしている。     ―――――――――――――    供述書            内田秀雄          昭和六年九月四日生      近江絹糸大垣工場勤務   労働強化について社長等の重役は基準法はアメリカが日本の産業復興を恐れて作つたもので、占領政策の名前で日本がいつ迄もこれを守つていては、世界の産業界から取残されてしまう。敗戦国民はもつと働かなければいけない。戦勝国においても女子が深夜業をやつているところがあるという訓示が再三行われた。有休(有給休暇)も工場の都合の悪いときは支給しなくてもよいということになつているのでとれないのである。一人の欠員があつても作業に支障を来すものとしている。又人員が多くても新入生が多くて欠員をカバーできない状態にあります。欠員でもその運転に支障ないときはその人は不用な人であると訓示されます。   さらに最近二、三年は次のような競技が相次いで行われ、労働強化に拍車をかけています。すなわち   一、出来高競技   二、品質向上競技   三、クレーム絶滅競技   四、糸切減少競技   五、清潔整頓競技   六、保全競技   等が、工場対抗、科別対抗、番別対抗、班別対抗で行われる。   出来高競技は一ヶ箇月を通じて行われ、一〇%向上目標が出され、次の月はまたその一〇%というようになるので、何回か後には、どのようにしても目標に達せなくなる。工場には「必勝大垣の面目を死守せよ」「打倒彦根」等の文字が赤字で張り出される時があり、後日基準局から注意があり監督官の来る日は外されることもある。この競技は生産を上げるものであるため、時間外労働をしたり、種々の違反が行われている。一例として二十八年の二月ごろには、先番の女子が三時半ごろから出勤したり、後番が十一時ごろまで居残つたりしたが、会社は従業員が勝手に就業したのだと取合わなかつた。が幹部は承知しており、時間外にまわすことを強要した。監督署に発見されると、組合の名で取消したり、うそをあえで言うことを強要した。又毎週美化デーがあり、先番終了後十五分から三十分は強制的に美化作業を行わせしめた。   始業、終業は五分前に始め、終業時間後五分を経なければ台を出ることは許されない。また就業中における食事も交代にやるため、四十五分の休みも十分とることもできません。寮に帰れば舎監より、草取り、地ならし、れんが、コンクリートのかけら等を片づける作業を各部屋に割当ててやらせる。やらなければ成績が悪くなり、昇給にも影響する。また寮においても競技は部屋別、寮別、工場別等で行われますが、項目は次の通りです。   一、整理整頓競技   二、真剣週間   三、美化競技これらの競技に勝つても、当工場においては一度カツ丼が当つたことがあります。     ―――――――――――――    供述書     岐阜大垣市林町六の八〇     近江絹糸紡績大垣工場        用度課 林  玲子   私は昭和二十七年三月大垣工場に入社しました。私たちの寮は「清泉寮」と称する会社の外部にありまして、二階には夏川工場長、谷副工場長がおり、一階には女子事務員である竹内富枝(人事課)、上野金子(貯金係)、有賀敦子(営業課)それに私の四名品が(二つの部屋に)生活しておりました。普通の日は朝五時半起床、六時まで三十分間掃除、六時半までに身仕度して事務所へ出勤する。勤務後寮においては掃除当番を一人ずつ一日交代に定めてありました。しかし勤務後といつても、四時半に終業のベルが鳴るのですが、実際に仕事を終えるのは早くて六時で、それから当番は清泉寮に帰つで、お風呂仕度、各部屋の掃除をするわけですから、これを全部終えると八時ごろになります。当番以外の人は普通平均して九時ごろに寮に帰つて来ます。しかし工場長の帰りが十一時、十二時とおそくなつても当掛は起きて待つていなければなりません。またときには警察とか労政事務所等を招待したこともありましたが、そのときは私たちは勤務が終つた後、六時ごろから饗応の仕度等女中と同様に接待をしました。こうした宴会はおそくなるのは当然で、夜の十二時、一時ごろになつて跡始末をし、掃除をして、またお風呂へ入つたりしていると一時半、二時と深夜に及ぶことになります。こうした来客はやはり社用である以上、また私たちの部屋をも使われるのだから「早く休みなさい」と言われても休むことはできないのです。このような宴会等の翌日でももちろん通常の時刻に出勤します。このように休む時間が減少されると事務能率に関しても妨げになるのは当然です。このように私たちに与えられた自由な時間はほんとうに少いのです。現に四月末に竹内富枝さん(人事課)は寮での労働と事務多忙とに無理をされて一週間程度病気で休まれた事実もあります。   右供述いたします。     ―――――――――――――    岐阜大垣市林町    近江絹糸紡績大垣工場          菅家泰子    外出の自由について   大垣工場では門限は八時で五分でも遅れるとそれが三回で一週間の外出禁止また無断退社の出た部屋は部屋長以下全員が一ケ月の外出禁止になります。   普通の日は一応外出は自由ということになつていますが、行事が非常に多く月、火、金、土曜は和洋裁。水曜は趣味教育。木曜は報恩行事。日曜は交代日でそれぞれ強制的に行わせられるので、自然外出は公休日以外はできないようになつています。  また寮母も「女子は一週に一度外出すれば十分です」と常々申します。お経を唱える日は外出禁止。メーデーも外出禁止となつております。    有給休暇、生理休暇について   私は入社して三年になりますが、生理休暇はもらつたことはなく、また有給休暇は一日いただいただけです。   私が入社のとき、生理休暇、有給休暇は完全もらえると安定所では聞いて来ましたが、一年過ぎて有給資格があつても「忙しいから」とか「人が足りないから」といつてつたくもらえません。こつそり係長に「なぜ有給休暇をいただけないか」といつたところが、「担任者にしかられるからがまんしてくれ」と言つていました。   生理休暇はまつたくもらえず、私も三年間勤めて一度もとつたことはありません。新入教育にも教えず、工場全員が生理なぞでは休めないものと思つています。舎監に言えば「だれもがあることで、それで休んだりするとくせになつて休まなくてはいけなくなるからがまんして出なさい」と言われます。また大垣では病気欠勤は工場内の医者の証明がなくては休めません、だから生理とははずかしくて言えず、無理して出ることになります。    外出の制限について     富士宮市大宮     近江絹糸紡績労働組合富士宮     支部           岩原 利子   私たちの私生活は別表のごとき日課表により一応自由な時間があるようにはなつていますが、実際はこの間に自治会の行事等(会社が指示します)のために拘束されているのがほんとうです。   例えば先番勤務を終つてから食事をしますが、退場と同時に社歌を唱え体操をしてから昼食をとり寮に帰り、各自分担の掃除を一生懸命させられ、これが終つてからでないと外出は許されません。特にこれが寮対抗の特等は、時間をかけて徹底的にやらせられ、これのみでもすでに相当の時間が削られますが、また   日曜 洋裁 和裁 舎監か昔のままを教えます。   月曜 工場訓育各科の打合せ、その他品質、増産について、現場責任者が注意します。   火曜 連絡日 舎監等から日常生活についての注意   水曜 お茶、お花社外より先生が来て指導   木曜 報恩行事 鑑手帳の正信念仏偶を唱えさせられる。   金曜 舞踊 外部より先生が来る交代日 先番と後番の交代日となり、さらにこれ以外に所持品検査、小使帳検査、寮長、部屋長会議が行われ、これらに不参加は許されません。また他の名目で外出止めを申し渡される日がたびたびあります。   行事の際に外出することは、例えば和裁を習うために社外に出ようとすれば「会社が高い経費をかけて皆さんに教えてあげようとするのに、外で習うとは何ということですか」等のごとくいやみを言われ、言行の日に外出した者は門衛で記帳され、女子寮に連絡される等、その後の処置は会社にいたたまれなくするようでした。しかし趣味教育も設備の不十分な中でやれというところにも無理があると思います。   又就寝時間は八時三十分となつていますが、毎日七時四十五分から自治会がありますので、(わが誓願を読みます)これに遅れれば以後一週間から一ケ月の外出止めの処分を受け、場合によれば本人のみならず部屋員全員に対しても行われ、その理由についての弁解は許されません。   もちろんこのことはただちに各自の成績に影響します。     ―――――――――――――    滋賀県長浜市七条町    近江絹糸紡績長浜工場          木下 順二   私は昭和二十五年十月に入社し現在の職場は準備施糊部に勤務しています。  一、女子深夜業について   昨年六月深夜逆転を実施するにあたり、男子約五十名を織布工として採用いたしましたが、織布工として未経験の者ばかりですので、約二週間養成期間として指導を行つた後、ただちに深夜専門に配置しましたが、一時ごろになれば大半の機械がストップし生産が上らないので、会社女子の経験工を出して指導すればどうかということになり、さしあたり荒尾久仁子外二、三名が選出されました。  このとき女子の深夜業は違反なるため、もし監督署が来て発見されてはまずいからという理由で、女子も男子と同じ帽子をかぶらされ、男に変装して仕事をするよう命令され、操業を続けました。  一、十二時間労働について   現在糊付機械はホットエヤーとスラッシヤーの二台ありますが、スラツシヤー・サイジングの方は十二時間労働で午前六時から午後六時まで、午後六時から朝六時まで二交代制となつており、現在人員は男子六名、女子二名、計八名で作業を行つています。休憩は糊付に限り一時間となつていますが、一台につき最低人員二名となつている関係上、一時間の休憩なぞとれません。その交代は一週間交代になつているが、そのうち二名ないし三名は、二週間に一回公休をいただくだけです。   仕事場は百五度が常温となつており、その上窓の開放厳禁で非常に疲れがはげしい。     ―――――――――――――
  28. 赤松勇

    赤松委員長 なおこの際大蔵省の方も非常に急いでおられますので、昨日御要求のありました大蔵省関係に関する質疑を行いたいと思います。大蔵省の植木大蔵政務次官が来ておられます。井堀繁雄君。
  29. 井堀繁雄

    井堀委員 大蔵省にお尋ねをいたしたいと思います。先日の委員会に課長お二人御出席をいただいて、お尋ねをいたしましたが、徹底ができませんので、あらためてお伺いをいたしたいと思います。  昨日の委員会で、労働省当局に賃金遅配の状況についてお尋ねをいたしましたところ、明らかになつております金額だけでも十五億七千万円に達し、先月に比べて約七千万の増額を見ておるという御報告がありましたが、これはもちろん基準法に照らし、基準監督署を通じて明らかにされた数字でありますので、事実はこれに倍するものであるとわれわれは擬するにかたくないのであります。このような賃金遅払いの問題は、労働者にとつては致命的な、生活をただちに根本から脅かす問題であることは説明を要しない。ことに労務を提供した後に、当然支払わるべき賃金が得られないということがこのように全国的に拡大することがこのまま放任されますと、これはゆゆしい社会問題になりますことは何人も想像するにかたくない。ことに労働基準法は、賃金問題についてはかなりきびしい規定を設けて、そのことの起らないように事前の監督、早期解決のために全力を払わなければならぬことは申すまでもないのであります。にもかかわらず、現在十五億七千万という莫大な賃金未払いの事実がすでに明らかにされておるわけであります。現在全国三十九の労働者の自主的な組織になる労働金庫が、この問題の解決の一助をはかつておりますことは、昨日の朝日新聞にも掲載されております。現に賃金遅配の立てかえその他の金額が、四十五億円の貸出しの中の最も多い部分として紹介されておるわけであります。これは申すまでもなく、労働者の零細な収入の中からやりくり算段をして余裕金を預金し、あるいは引出すといつたような操作の中において、預金がこういう方面に貸し出されるというのでありますから、実際においては、労働金庫の性格からすれば、こういう貸出しが拡大することは、金融機関としての立場から考えれば、健全な方向でないことは申すまでもないわけであります。でありますから、金庫の立場からすれば、この種の貸出しが増加することは、厳に警戒を要すべき事柄であります。こういう立場をとる金庫においてすら、かような非常事態に備えて貸出しが大胆に行われておるというこの事実は、非常に重大であると思うのです。一方には、昨年第十九国会の際に、厚生年金保険法の改正案をめぐりまして、当時私から厚生大臣に尋ねて明らかにされたことでありますが、当時雇い主労働者の手によつて積み立てられております金額が一千百十億をすでに突破しておつたわけであります。このような労働者の、あるいは雇い主の貴重な金が、一方には大蔵省の資金運用部に管理されて、他方労働者の未払い賃金がかくのごとき状態を露呈しておるという事実を私は明らかにいたしまして、解決が困難な労使関係の問題を労働省にわれわれは迫りますと同時に、他方においては労働者が莫大な積立金を一方にして、それを漫然と管理しておるといえば言い過ぎかもしれませんけれども、労働者に還元されない方面に大部分が使用されておる。かんじんな労働者が、当然労働者の権利であるところの生活権を匹敵いたします賃金の受取りができないというような状態から、生活に困難をきわめておりますこの姿の解決に、こういう金が還元融資されるということ、は、われわれは常識として十分想像ができるので、こういうような事実が存在しておるにもかかわらず、一向問題の解決のために役立つていないという点を私は指摘いたしましてお尋ねをしたわけであります。事務当局といたしましては、そういうものに対する大胆な答弁が困難である模様でありましたので、追究を避けて本日御出席をいただいたわけであります。  以上が昨日お尋ねいたしました経過でありますが、そこで私はお伺いいたしたいことは、一方には莫大な賃金の遅払いが起つておる。その解決のために労働金庫というような機関が、きわめて基礎の脆弱な機関であるにもかかわらず、その危険を冒して救済の道をはかろうとしておる。この事実に労働省が期待を寄せて、大蔵省との間に折衝をはかつた結果がこの新聞に報道されておるようですが、労働省の方からも明らかにされておるようであります。労働省の考え方としては、全体にわたる賃金遅配の問題を造船に限つてというように圧縮して、三億五千万程度の大蔵省の余裕金を労金に預託するという形で、この問題の解決の一助にしたいという申出に対して、大蔵省がこれを拒否したという新聞記事なんです。難色を示しておるという表現でありますが、この点について伺つたら、課長は、新聞の報道と必ずしも一致しない、そういう強い拒否のものではないという回答でありましたので、この点は私は疑いを解いておるわけであります。しかし、それはそれとしまして、こういうような問題を、一方には、大蔵省としては還元融資を大幅にいたしますという――まあ立場は違いましようけれども、厚生大臣は台閣の一人として答弁をしておるわけであり出す。それがまだ今日何ら具体化していないときであります。たまたまこういう案が出て来たのに対して、きわめて消極的であるということは、われわれとしてどうしても理解できないのであります。こういう点についてお尋ねをいたしたいと思うのであります。私からお尋ねいたしたい趣旨は、こういう際に思い切つて労働者の最も困難な、最も直接的な問題に対して、大幅な還元融資が行われてしかるべきではないか、まずこの点について大蔵当局の御見解を伺つておきたい。
  30. 植木庚子郎

    ○植木説明員 お答え申し上げます。最近のデフレ政策の実行の結果、各方面がそれぞれ非常な悩みを続けておることは、まことに残念であり、かつまた大いにわれわれとして気をつけなければならぬ点だと存じております。ただいま御指摘の労務者の俸給、給与の遅欠配等の問題がありまして、これについて労働金庫が何らかこの際の救済の役を大いに努めようという御意思があり、厚生省当局でもこれに対して適切なる措置を講じたいというお考えのあることも承知しております。ただわれわれ大蔵当局といたしましては、何と申しましても資金運用部の資金の運用計画といたしましては、すでに国会においても御承認を得ております通り、一年を通じての一定の計画がございます。ところがその計画が、国会当時において申し上げましたよりも、いろいろの点から変更をしなければならない点がございまして、若干これに修正を加えて、目下それぞれ進行いたしておるような次第であります。こういうような事態におきまして、一年を通じての資金の運用計画がございますが、その間時期的には若干資金の余裕がある場合がございますから、こういう余裕を年度内において適当に、最も有効に利用するということは、これまたわれわれも考えておるところであります。今回のただいま御指摘の点につきましても、厚生省からのいろいろな御要望に対しましては、われわれといたしましても、でき得る限り御希望に沿いたい考えではおるのでありますが、何分にもこうした問題は、やはりこの遅欠配が永久に続くものかどうか、あるいはかりにある時期において解消するものとしても、その貸し付けた資金が年度内に返つて来まして、基本計画であるところの年度計画の実行にさしつかえを起すようなことはないかどうかというような点を十分研究しなければならない立場であります。そのために、厚生省からのお話に対しても、即刻けつこうですということは申し上げかねておりますが、われわれも事務的に十分この点御相談も受け、研究もいたしまして、でき得る限りの善処をいたしたい、かように考えておる次第であります。
  31. 井堀繁雄

    井堀委員 そこでもう少し具体的にお尋ねいたしたいと思います。御方針はそれぞれ全体の金融政策等もおありになることは、よく承知いたしておりますが、賃金の遅払いというような問題は、従来の予定した政策とは異なつた、いわば突発的な事態における変則的な姿であります。こういうものに対して、一般的な金融政策でこういう問題を処理しようとすることは、とうてい望めないと私どもは承知しておるわけであります。でありますから、こういうような事態に対しては、大蔵省としては、やはりしかるべき臨機の措置をお考えになつておることと思う。そういう方面で、何かこういう問題に対する措置をおとりになる御方針でもあれば伺つておきたい。
  32. 植木庚子郎

    ○植木説明員 突発的に起りました事案に対しての臨機適切なる措置の問題につきましては、特に定めておる方針というものもございません。たとえば、最近新聞紙上に伝えられますような地方公務員の給与の遅欠配問題もあるようであります。こうした問題、さらにただいま御指摘の労務者の、ことに造船関係労務者の給与の遅欠配の問題等々につきましては非常に心配をいたしております。これに対しては、何としても冒頭に御指摘になりました通り、労務者の給与そのもの、あるいは公務員の給与そのものが適時適切に渡らないということは、非常に重大な問題であることは承知しておりますので、これに対してはあらゆる手元資金のくふうをいたしまして、でき得る限り善処して行こう、こういう考えであります。ただ、その場合におきましても、たとえば地方公務員の場合でも、当該府県におきましてルーズな経理をしておられて、そうしてこれに対して将来どういうふうな財政の建直し計画を立てるか、こういう計画等も何もなしに、ただ給与が遅欠配だから助けてくれ、こう言われるのでは困ります。従つてこれなども、十分当該地方庁の確実な計画を立てていただいて、これに対して善処しよう。従つて、そういう場合におきましては、大蔵省としましても、場合によりまして、皆様からごらんになればやや事務の運び方がのろいじやないかというようなおしかりを受けるようなことがあるかもしれません。しかし、これはやはり国家資金全体の運用の立場としては、やむを得ざる状態であることを御承知願い、われわれとしてもこういう場合に極力急いで措置するように努めたいと存じます。労務者の給与の問題につきましても同様でありまして、でき得る限りわれわれとしては当該実情を把握し、これに対してでき得る限りの措置を講じたい、かように存じます。
  33. 井堀繁雄

    井堀委員 はなはだつつ込んだお尋ねをするわけでありますが、賃金遅配の問題は、先ほど労働省の数字が明らかになりました。十五億七千万円というようなものは、かなり大きな数字なんです。こういう事態が起つておることは明らかであります。この問題の解決にあたつては、もちろん所管としては労働省でありましようが、きようはあなたのほかに政府側の立場にある方もいらつしやいませんから、そういう意味でお尋ねするわけでありますが、この賃金の多額の遅欠配が、今後も加速度的に増大するおそれが多分にあるわけであります。これをどうするかという方針を政府として持たなければならぬ喫緊た問題であると思う。これに対する御所見はどうでしようか。
  34. 植木庚子郎

    ○植木説明員 デフレ政策の基本的にはあくまでも、遂行しようと考えております政府の立場としましては、当然今後のいわゆる経済情勢の推移については、でき得る限り注意を払つて、そうしてそれによるしわ寄せが、ある部門、ある業種、あるいはある階級だけに起つて来るというようなことがないようにすることは当然の問題であります。しかしその対策は、なかなか困難であります。困難ではありますが、ある部分にしわ寄せになることを極力排しまして、そうして各方面ともが同じように苦労もし、また苦しみをお互いにわかつて行く方向に持つて行くことは当然なことだと思つております。具体的の問題につきましてどういう措置に出るかということについては、それぞれ関係所管省ともよく相談して、そうしてでき得る限り善処して行く。ある部分へのしわ寄せば排斥しなければならぬというふうに考えております。
  35. 井堀繁雄

    井堀委員 すでにこの問題は、これから考慮してとか、相談されるという事柄ではない。あなたもデフレ政策について、全体的な立場から考慮を払つておいでになるのでありますから、私どもは説明を要しないと思う。今賃金遅配の問題が大量的に集団的に発生しておりますのは鉱山、炭鉱であります。しかも中小炭鉱、それから造船、これに関連する下職協力工場、さらに急速な金融引締めのために中小企業、こういつたようなものが特徴のある賃金遅配の傾向であります。そのうち石炭と造船の問題は、政府としては明らかな政策を打出しておるわけであります。その結果がどこに出て来るかということは、必ず予定していたに違いない。その場合に、企業に対しては融資その他の政策を明らかにしておるようであります。そのもとにおる労働者にとつては、これは経営者と異なりまして、共同の責任を問われる何ものもないわけであります。それが賃金が払えない、しかも労務を提供したあとの賃金である。このことは、デフレ政策遂行の衝にある政府としては、どんな犠牲を払つても即刻解決をしなければならぬ緊急な事態であるということはお認めになると思うのであります。そこでこれからということではなしに、今起つておるものをどうするか。私は労働省に追究しておるのでありますが、労働省が法律を――法治国でありますから、賃金の支払いを怠つておるような事実を黙過するわけには行くまいと思う。ところが事実は、ないそでは振れないということになつて、しかもそのしわ寄せば政府のデフレ政策、合理化政策の結果であるから、道義的には政府にも責任があるという態度がかなり露骨になり、労働者もこれはある程度寛容な態度で見守つておる傾向があるわけでありますが、これはまた当然であると思う。そういう状態を、もし政府が――今あなたのおつしやられることがすべてだとするならば、賃金の遅払いはどうにもならぬ、そのうちに何とかなるというお考えであれば、労使関係の空気が急速に悪化することは必然だと思う。このことによつて発生いたします社会問題で、政府は抜き差しならぬはめに立つて責任をとることになると思う。そういう事態が最も予測できる今日においては、とりあえず賃金の問題は、即刻できるような問題は、あなたの直接の所管ではないにしても、次官としてそれぞれの責任を分担されておると思いますので、もう少しつつ込んだ御見解をこの際述べていただきたい。
  36. 赤松勇

    赤松委員長 なおこの際ちよつと委員各位に御了解願いたいことは、今持ちまわりの理事会でもつて午後の委員会の運営について次のようなことをきめました。委員諸君の希望としては、昼食を抜きにして休憩しないでやつてもらいたい、こういう意見です。それで政府側の方はたいへんでしようから適宜そこをうまく、なるべく短かい時間に御飯を食べていただきたい。それから参考人の方も交代でやつてもらいたい。それでできれば二時半程度までに近江絹糸の問題を終りたいと思う。一応の各党の発言基準だたけを申し上げておきます。但し三時から駐留軍と炭鉱関係をやらなくちやなりませんから、三時になれば委員長専断をもつて全部の議事を打切りにして駐留軍と炭鉱関係に入りますから、御了承願いたい。そうでございませんと、とてもきよう中にやれませんから――その間質問時間は自由党、これはうんと質問があるようでございますが、今池田理事にお願いして十分、改進党三十分、左派社会党三十分、右派社会党三十分、労農党十五分、こういうふうに今理事会できまつたわけであります。大体この基準議事進行に御協力を願いたいと思います。
  37. 植木庚子郎

    ○植木説明員 デフレ政策の実行に伴いまして、いろいろなきゆうくつな部面が出て来る、ことに現実に現われております中小企業等、一例でありますが、これらに対する措置といたしましては、すでに国会においても御協賛を経ました通り、投融資計画におきましても、でき得る限り他の投融資よりもこれを尊重して、そうして措置を講じております。しかしながらこれが十分かという御反問に対しましては、必ずしも十分であつたとは言えないかもしれません。その意味において、われわれとしてはこの際でき得る限りいわゆる実行上の問題についても気をつけているつもりであります。たとえば、最近において実施いたしました中小企業向けの貸倒れ準備金の増率というような問題も、これによつて一般金融機関ができ得る限り中小企業の窮境に対して、大胆に貸付ができるようにという趣旨でやつておる一つの例でございます。これなどもやはり当局で、予算のときには考えておらなかつたが、しかしなお実行の上で気をつけている問題なのであります。あるいは国会当時に考えておりました九月までに政府の預託金を全部毎月引揚げて行こうといつた考え方を、六月七月分についてはこれをあとまわしにして、この際引揚げをやめておるというようなこともその一例であります。こうしたできる限りの措置を講じておりますが、たとえば今のお話の労務者の給与の遅欠配等の問題につきましては、これはもう御指摘の通りほんとうに容易ならぬ問題でありますから、でき得る限りの措置を講じて参りたいことはもちろんでありますが、当該事業の経営者としては、やはり当該事態に処すべき十分なる研究もしてもらつておかねばならぬし、準備もしておつてもらわなければならぬ、また今後に対する計画にしても、ただのんべんだらりといつまでも仕事がないのにかかえていてもいかぬというふうに考えるのであります。そうすれば、おのずからだんだんと失業者の増加も出て来ようかと思います。こういう問題に対しましては、失業対策として、これまた前年に対して、わずかではあつたかもしれませんが、政府としてできるだけの措置は講じておる、また今後とも現在の予算の運用の上におきましても、その対策を十分にして参りたい、かように考える次第であります。
  38. 井堀繁雄

    井堀委員 この問題はきわめて私は重大だと思いまして、徹底するまでお尋ねをいたしたいのでありますか、時間の関係もございますので、無礼な聞き方をするかもしれませんが、ひとつ率直にもう一、二お答えをいたたきたいと思います。  一つは、還元融資を厚生大臣が誓つておるわけです。これは社会保障制度審議会、社会保険制度審議会の両方の審議会の正式な答申が出ております。これに対してもお答えがありませんが、大幅な還元融資を考えたいといつて明らかにしておるわけであります。これは今日ほど要請されている時期はないと思う。その方法や具体的なことについては、あなたからお答えいただくことは困難だと思いますが、その方針だけをひとつこの際はつきりしていただきたいと思います。
  39. 植木庚子郎

    ○植木説明員 還元融資の問題につきましては、やはり原資の増加して行く近年における趨勢、今後の見込み等に徴しましても、でき得る限り政府としても今後一層努力をすべきものだと考えます。本年度におきましても、前年度は二十五億見当であつたものを、おおむね十億円ふやしまして三十五億円にしたということも、なるほど十億円くらいわずかだというような御指摘があるかもしれませんが、しかし資金計画全体の面から考えますと、これを十億ふやしたということは、よほど力を入れてやつた事情にあることを、ぜひ御了承願いたいと思うのであります。
  40. 井堀繁雄

    井堀委員 もう一つお尋ねしておきたいのは、先ほど申し上げた賃金遅欠配のような問題は、今までの街頭で一般にいわれておりますように、労働者を犠牲に供することによつてデフレ政策は遂行されているということの一番はつきりした証拠として突き出される問題だと思うのです。私はいかに反動性を暴露した政府といえども、このような法律違反をあえて乗り越えて、労働者の生活をいけにえにしてまでデフレ政策を行うようなことは、政治のケースではないと考える。こういうことは政治問題というよりは、もう常識の問題だと思うのです。でありますから、こういうものに対しては、すみやかな手を打つことを計画しておつたものと予測してお尋ねしておつたのです。ところがお答えが非常に抽象的で要を得ないので、残念に思つているわけですが、もう一度念のために伺つておきたいと思います。賃金遅配に対して特別な手をお打ちになるお考えがあるかないか。これがもしないということになれば、単なる政策上の問題として争うよりも、政府の信を問わなければならぬ、労働者の声にこたえて伺わなければならぬ大きな問題だと思いますので、この点について、はつきり責任ある御答弁を伺つておきたい。
  41. 植木庚子郎

    ○植木説明員 事態は仰せの通りまことに大切な問題であります。従いましてわれわれとしましては、主著のお申出も十二分に尊重いたしまして極力善処をいたしたい、かように考える次第であります。
  42. 黒澤幸一

    ○黒澤委員 大蔵政務次官ちよつとお尋ねしておきたいのですが、七月二十七日の朝日新聞の朝刊に、小笠原大蔵大臣は、二十六日改進党の三浦政策委員長らと会見いたしまして、その席上、次のように述べたということが載つておるのであります。その要点は、失業対策費は本年度予算で昨年度より五%増の失業を見込んで計上してある、来年一月から三月分を今年内に支出すれば、少くとも今年末までは切抜け得ると思う。しかし、失業対策費は必ずしも十分と思つていないから、今冬の通常国会で必要な補正予算を出したい、こう述べておるのでありますが、     〔委員長退席、井堀委員長代理着席〕  この点につきまして政務次官は御承知であるかどうか。それからまた大蔵省当局としては、さような失業対策について補正予算をお出しになる御意向があるのであるかどうか、その点をお聞きしておきたい。
  43. 植木庚子郎

    ○植木説明員 大臣がそうした言葉をその際にお述べになりましたかどうか、私は直接大臣から同つておりません。また大蔵省でただいま大臣がおつしやつたと伝えられるそうした決定をしているかどうかは、私最近出張しておりまして、つい聞き漏らしております。ただ事態として、私個人の意見を申し上げます。個人の意見として申し上げますと、予算の当時考えておりました五%程度の予算の増額で、しかもそれを年度間に半分的に割振つて、はたして今日の失業状態に処し得るかどうかということについては、私も多大の疑問を持つております。従つて大臣がそう仰せられたといたしますと、あるいはその事態を十分御認識になりまして、そして一―三月分に本年使うべき予定のものを、今日予想以上にふえた失業状態に善処するためにこの際年末までに使用したい、なおそれで足りない場合に一―三月分の問題が当然起きますから、これについての予算措置については、時期が来た場合に適切に補正をするなり何なりの措置を講じよう、こういうことを述べられたものと思いまして、当然かくすべきものと考えます。しかしながら、その補正予算を出す時期が臨時国会になるのか、あるいは通常国会の冒頭でもよろしいのか、その点については、私はここでは何とも申し上げか拠る次第であります。
  44. 黒澤幸一

    ○黒澤委員 御承知の通りと思いますが、昭和二十九年度の予算を見ますと、完全失業者は三十七万ということが予算が組まれておりますが、労働省の昨日の発表によりましても、本年の五月には五十八万の完全失業者が出ておる。しかも御承知のような中小企業の不振による事業の縮小、あるいは閉鎖、倒産というものが現在続出しておりまして、こうした状態が続く限りにおきましては、予想外の厖大な失業者が街頭に出て来るのではないかというふうにわれわれは予想し、心配しておるのであります。そういたしますと、当然これは予算関係におきまして、失業対策の万全を期することはできない結果が、出て参るのでありまして、補正予算は必至の情勢になつて来ておると思うのでありますが、もう一度はつきり補正予算をお出しになるお考えがあるかどうか、その点お尋ねしておきたいと思います。
  45. 植木庚子郎

    ○植木説明員 その点やはり今後の情勢等ともにらみ合せなければならぬと思います。この点につきましては、ただちに補正予算の問題に入る前に、御承知のように、今年は実行予算というものを考えまして、予算の節約をはかつております。この節約をはかりました主たる費目は物件費、施設費ということに相なつておりますが、この中には、いわゆる事業費において相当額の節約をしておりますから、まず予備金を出すとかあるいは補正予算を組む前に、財源さえ許しますならば、当該節約で使わないことにしております費目を生かしまして、そうしてこれをそれぞれの所管省において当該事業を実行することによつて失業者を救済することもできる部分があるのであります。こうしたあらゆる手段を講じまして、なお足りない場合におきましては、補正予算を出さなければならないことは当然であろう、かように私、個人的にも考える次第であります。
  46. 黒澤幸一

    ○黒澤委員 政府におきましては、増大する失業者を公共事業方面に吸収して行くというお考えのようにお聞きしたのでありますが、御承知のように、公共事業費は、昨年度に比較しますと非常に大幅に削減されておる。ことに先ごろの実行予算によりましては、公共事業費が九十一億また予算から削られておるように私承知しております。そういたしますと、この限られた公共事業方面に失業者を吸収するということは、なかなかこれはできないのではないか。もしそういうことを強行することになりますと、今まで公共事業に働いておりました潜在失業者といいますか、あるいは安定所の窓口に登録されない完全失業者がそこに吸収されて来る。また公共事業に働いておる特殊な職業的な労働者があると思いますが、そういうような関係でありますところへ予算がだんだん減らされて来る、それに従つて事業面も当然減らされる。そういうところへ失業者を吸収するということは、非常にむずかしいことではないか。もし無理にやれば、今申し上げました方面に圧力が加わる。それで私は、そういうことを無理してやるよりは、やはり足りないものは足りないということで、補正予算を組むのが究極のところはよいと考えておりますが、その点はいかがでありましようか。
  47. 植木庚子郎

    ○植木説明員 御賢察の通り、公共事業に失業者を吸収しようとしますことは、相当困難がございます。しかし、これもやはりくふうのしようでございまして、政府が全体として予算をでき得る限り圧縮しなければならないこういう情勢におきましては、各省でもあらゆるくふうを講じまして、そうしてこれによつて失業者をできるだけ救済して行くということは、当然政府としてしなければならぬ問題だと思います。しかしお説の通り、非常に困難でございますから、それによつて吸収し得るものは非常に少いかもしれない。従つてある時期に参りますれば失業救済のために適切なる予算を補正することは必至の勢いにあるのではないかと考える次第でございます。
  48. 井堀繁雄

    井堀委員長代理 近江絹糸関係について、ただいまより調査を始めます。池田委員
  49. 中原健次

    中原委員 ちよつとそれに先だつて議事進行上のお願いがあるのです。それは、参考人の中に仲川衛さんを加えていただくことができればよいと思うのですが……。
  50. 井堀繁雄

    井堀委員長代理 この際本問題について、仲川衛君より参考人として御説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  51. 井堀繁雄

    井堀委員長代理 御異議なしと認めてさよう決します。  それでは池田委員発言を願います。
  52. 池田清

    ○池田(清)委員 きようは労働大臣が見えると思つたのですが、お見えになりませんから、局長さん方に申し上げたいと思います。  参考人の方から詳しいお話を伺つて近江絹糸の実態がわかつたのでありますが、会社側のこれに対する弁明と申しますか、そういうようなことが十分に聞けないことは、まことに遺憾でありますけれども、大体の模様は間違いないと存ずるのであります。私はこの問題が、日本の労働史上においてきわめて重要な問題であるように考えるのでありますが、私は近江絹糸については、労働省に非常な責任があるのじやないかと思う。当局からこれに尽した経緯については、詳しく伺つたのでありまするが、参考人から述べられたような事実が多年にわたりそのまま行われ、これが阻止されなかつた、郭清されなかつたということはまことに遺憾千万である。もうすでに日本の労働界も相当に進んでいるわけであります。紡績界においては、この問題については非常に注目されているわけであります。でありまするから、労働省としては、もつと早く問題を見つけて、これを郭清するというか、粛正すべきであつたと思う。これは返す返すも遺憾に思うのであります。これについては、私は歴代の大臣には非常な責任があるのじやないか、かように考える。もとより本省の局長以下の方々は、非常な努力をされているわけであります。その努力に対しては、私は感謝するのでありますが、今日までかようなままで来たということには、非常な責任があるということを痛感される、かように感ずる次第であります。そこで、私は労働行政の基準法に関する運営が十分に行つていないということに帰すのではないかと思うのであります。小さい、四角四面な基準法の適用については、むしろ行き過ぎるくらいの運営があるということも聞いているのであります。基準法については、従来いろいろと論ぜられ、日本の国情に沿わないものができている。であるから、これは労働省における運営というものが妙味を得なければいかぬのである。つまり、こういう大きな失態と申しますか、違法については、十分その手が届かない。そうして弱い、小さいものについては行き過ぎがある。こういうような運営上の行届いた手が届いておらぬ、こういうふうに感ずる次第であります。私はまだ日本中に、これほどでないかもしれぬが、あるのではないか、こういうふうに感ずるのであります。そうすると、こういうようなまだ隠れた、のがれた大きな違法がある。これについて大臣、局長方には、今後これを契機として十分御注意になつて、運営を誤らぬようにしていただきたい。  なおこれに関連して申し上げたいことは、今も話したのでありますが、小さい工場――どうでもいいというわけでもありませんが、まあ見のがしてもいいような小さい工場、たとえば時間等の関係が非常に勤勉な工場で、時間が過ぎる。そういうようなところに対して、あまりにも苛酷な手が延びるような感じがあります。これはさつきも申し上げた通り、運営の妙味をひとつ発揮していただきたい。  基準法については、この間も若干の改正がありましたが、将来はわが日本の現在の貧弱な状況に適応したものでなければいかぬと、私どもは感じているのでありまして、いずれは先々に問題になると考えるのでありますが、当座としては、今申し上げるような大きな工場、また小さい工場について運営の妙味を得ていただきたい、かように考える次第である。これに関して局長から責任のある御答弁を得たい、かように考える次第であります。
  53. 亀井光

    ○亀井説明員 基準法の運営の問題にからみまして御質問がありましたが、申すまでもなく、われわれが基準法を運営して参るにつきましては、いわゆるしやくし定規的な運営と申しますか、重箱のすみをつつくような運営は、できるだけ避けるような指導方針をとつてつております。すなわち、それによりまして労働者の実質的な労働条件が維持「向上されるならば、そういう手もわれわれとして使わざるを得ないのであります。ただ、それが形式的な違反として、罰則を科するというだけであつて、それによつて労働者の実質的な労働条件が何ら改善されないという場合におきましては、われわれとしましても、別な行政方針をもつてこれに当つているわけであります。具体的な事案々々につきまして、労働基準法の持つております基本的な精神と使命のわく内におきまして、幅のある運用をして行くという運営方針を従来とつて来たのであります。  そこで、われわれが過去七年間実施をして参りました中で気づきますることは、労働組合が自主的な組合であり、自主的な組合としてのりつぱな資格と要件を備えておりまする大企業におきましては、基準法の違反はだんだん減つて来ておりまして、ほとんどないと言つていいのではないかと思つております。と申しますのは、かりに内部的に違反がありますれば、労働者みずからの申告がございます。またわれわれが調査に参りましても、労働者から真実の声を聞くことができたわけでございます。そういう面から一般的な企業における労働基準法の運営は円滑に行つているものと、われわれは確信いたしております。ただ近江絹糸の場合は、毎々申し上げますように、従来の労働組合が何らの自主性を持つておられないというところに、私は問題があつたのではないかと思う。基準法の違反が内部的にございまして、われわれも、先般も申し上げましたように、特に重点を置いて近江絹糸の各工場の監督を命じておつたわけで、違反はその都度発見されます。従つて、その都度また行政命令によりましてその違反を是正されるのであります。ところが、時間がたちますと、同じことがまた繰返される。そこで最後のきめ手でございまする司法処分をいたしまするについて、証拠固めをしようといたしますと、労働者の口から真実が語られない。その違反についての何らの確実な証拠がつかみ得ないというところに、われわれとして悩みがあつたわけでございます。従いまして、そういうことが今回の事件になつた。その責任いかんということになりますれば、われわれのその点に対する努力が足りなかつたということについては、われわれ自身反省もいたしまするが、事実はそういうことであつたと思うのであります。  そこで、近江絹糸の今回の問題を契機といたしまして、われわれがさらにそういうことのありそうな事案につきまして、別な角度からこれらについて十分監督をいたす。すなわち、そういう自主性のなさそうな、労働者みずから臆病で、これらの違反の事実を十分告げ得ないというふうな事態のありそうなところについては、それ相応にまた別の角度からわれわれが監督行政を行つて行くというふうな態度も、今度の事件を契機としてわれわれ教えられるところがあつたと思うのであります。これはまたそういう角度から今後の行政運営をはかつて行きたい、かように思つております。
  54. 井堀繁雄

    井堀委員長代理 島上君。
  55. 島上善五郎

    島上委員 先日来、組合の方々から詳しい事実について承り、さらに先ほどはまた供述書を通じて一層具体的な事実を承知したのでありますが、労働基準法違反、不当労働行為、人件蹂躙等にわたつて、実に何と申しますか、あきれてものが言えないと言うよりしかたがない。労働基準法違反というよりは、むしろ労働基準法そのものをてんで無視してかかつている、こういつた言葉が適切ではないかと思う。たしか先ほどの供述書の中にも、社長が訓示の際に、基準法はアメリカが日本の産業復興を恐れて押しつけたものである、こういうような言葉があつたと私聞きましたが、今度の争議発生直後だつたと思いますが、夏川社長が新聞紙上に談話として発表した言葉の中にも、日本の労働基準法初め労働法は悪法である、これを粉砕しなければならぬという談話があつたことを私は記憶している。そういうような考えですから、労働基準法そのものを頭からもう無視している。悪法であるから粉砕しなければならぬという考えのもとにかかつてつたとしか考えられない。そして、御承知のように自主的な第二組合ができまして、労働者がたまりかねて立ち上つてから、初めてそのような事実が明るみに出されましたけれども、それ以前は、労働組合というよりは、まつたくの御用組合の組織をもつてそういう事実を隠蔽しておつた基準監督署から行きましても、それをひた隠しに隠しておつた。隠しておつたというよりは、会社側労働者に隠させておつたというようなことであろうと思う。しかるに基準監督署のこれに対する監督ははなはだ緩慢で、なるほど労働省から出された、近江絹糸紡績株式会社労働争議概況という、七月二十七日付の資料によりますれば、監督実施の回数は相当の回数に上つている。彦根工場九十二回とか、長浜工場二十四回というふうに、回数はなるほど相当の回数に上つている。けれども、その中で司法処分にされましたのはごくわずかの件数であるし、司法処分以外のものについては、発見の都度これが是正を命じ、再監督をした結果、その是正の状況をおおむね確認した。ただ冨士宮工場においては、十分に是正が行われていなかつた、こういうように記載されておりますが、私はこれも事実と相違すると思う。是正の勧告をしても、勧告された当座は、なるほどちよつとの間それを実施するよう覧せかけて、結局それがずるくとまた元にもどつてしまう、こういうことではないかと思う。  私は、ここで労働基準監督局長に伺う前に、まず組合の方に念のために一点だけ伺つておきたいのですが、監督署から参りまして是正の勧告をされたかどうかということは、あるいは御存じないかもしれませんが、監督署から調査に参りました直後に、急に会社が改善をして、その後ずつと引続きよくなつたというような事実が今まであつたかどうか。監督署が来ても旧態依然であつたか、それとも監督署が来た後には非常に状況が改善されておつたかどうかということを、組合の方から一点まず伺いたい。
  56. 内田秀雄

    ○内田参考人 ただいまの御質問でありましたが、確かに今まで監督官の方が相当多くの回数来られまして、それでただいまの質問では、監督のあつた後次第によくなり、ずつとよくなつたことが続いたかというような質問ですが、確かに来たその当座は多少はよくなつたことはあります。しかし、結論においてはまた元へ逆もどりするような状態でありますが、以前と比べれば少しずつよくなつております。たとえば、前の食事時間の問題ですけれども、以前は食事を急いで食べて、すぐそのまま飛び込んで来るような状態が多かつたのですが、最近は一応四十五分は休めというふうには言われております。しかし実際休めないことは、上部の人も知つておられますし、また完全には休んでおらない状態ですが、休むようにということは言われておりますし、また寮におきましても、かつてははるかに部屋の定員を越した、たとえば十五畳に二十五人とか二十二人とかおつたことはありますが、再三の注意を受け、現在は大体において定員までになつております。まだ多少定員を越しているところもありますが、大体においては定員までになつております。そのように多少はよくなつているという状態です。
  57. 島上善五郎

    島上委員 多少はよくなつたが、ずるずるまた元へもどる傾向が多いということを伺いまして、私も多分そうではないかと想像しておりましたが、どうも基準監督署の監督状況が、回数だけが多くて、うわべだけの監督をしている。昨日来の参考人お話の中にもありましたが、事前にわかつてつて監督署が行くと、名札をはずしたり、仏間へ急に移転したりしてごまかし、あるいは深夜に電気を消して机の下にもぐり込ませたりしている。こういうようなことでは、監督の実をあげることはとうてい及びもつかないことである。一体なぜこういうように監督の実があがらなかつたのか、そのほんとうの原因は一体どこにあるのか、会社からごちそうされて監督官が堕落してしまつてつたのか、それとももつと深いところに原因があるのか。労働基準法違反は、近江絹糸の問題で大きくクローズ・アツプされましたけれども、今日日本の労働者の自主的な組織のない工場においては、相当広汎にあるのではないかということを心配いたしますので、一体なぜ近江絹糸の監督がこのように十分に行われなかつたのか、その原因がどこにあるのかということについて基準局長から所見を承りたいと思います。
  58. 亀井光

    ○亀井説明員 御質問の御趣旨は、今日まで近江絹糸において違反を繰返しながら、なおかつそれが十分是正されずに今回の争議まで来た、その原因は何かという御質問だろうと思います。その中で一言お話のございました、監督官が饗応その他を受けて監督の手をゆるめたのではないかという御質問ですが、これは絶対にそういうことはございません。先ほども参考人お話の中にございましたように、そういうことは絶対ございませんことを、私確信を持つて言えるのであります。  なお過去のわれわれのとりましたいろいろの態度につきましては、一昨日並びに一昨々日二日にわたりまして詳細に御説明をいたしましたところでございますが、結論は、私は経営者の頭の問題だと思います。法律に違反すること、あるいは罰則を科せられることをすら、何ら意に介さない経営者でございますと、何回是正命令を出し、その場は是正をされましても、また同じ違反を繰返すのであります。それを最後のきめ手として司法処分に持つて行きましても、罰金刑ぐらい何とも思わないような経営者でございますと、これはやはり同じようなことが繰返されるのではないか。問題は、私は経営者の頭の切りかえ並びに労働組合の自主的な活動によるそれに対する関心、私はこの二つが足りなかつたことが近江絹糸の今回のいろいろな問題の根本ではないかという気がいたします。
  59. 島上善五郎

    島上委員 それでは、なるほど経営者が何回是正勧告を受けても馬耳東風で、司法処分にされて罰金を食つても平気の平左でおるということになれば、どうもしようがないということも言えるでしようけれども、労働省の報告文書の中で、違反に対しては発見の都度是正を命じ、再監督によりその是正の状況をおおむね確認した、ただ冨士宮工場においては十分でなかつた、こういう考え自体が、私は少し甘過ぎるのではないかと思う。おおむね是正勧告が実施されておるということではないと思う。これは昨日、一昨日来の参考人の供述あるいは先ほどの女書によつても明らかなように、恐るべき違反を平気の平左でやつておる。ですから、是正命令がおおむね実施されたわけではなくて、あべこべにおおむね実施されなかつたのであると私は考えざるを得ない。労働組合が立ち上つて、この報告の中にも、第四のところに、争議発生と回持に多数の申告があつて、これで本社及びその他の工場関係箇所に対する捜査を徹底的に行つた、こういうふうになつておりますが、もしこれが労働者が自主的に立ち上つて多数に申告しなかつたならば、こういうこともおそらくやみからやみに葬り去られておつたに違いない。ですから、再監督によつておおむね是正されておつたというような、そういう甘い見方をしておるという監督署の手ぬるさにも、私は大きな原因があると思う。どんどん司法処分をやつたらよろしい。罰金食つても、それでも平気の平左でまたさらに重ねるなれば、あるいはいたし方ない、頭の切りかえがなければどうにもならぬというようなことにもあるいはなるかもしれないけれども、それにしても、司法処分の件数が、実際に行われている違反の状況に比して非常に少いというのは、是正勧告がおおむね実施されているというような甘い見方をしておるからそういうことになるのだ。私はどうしてもそこに大きな欠点が一つひそんでおるように思われてしかたがない。重ねて基準局長のこれに対する御見解を承りたい。
  60. 亀井光

    ○亀井説明員 司法処分の問題は、もうすでに何回も私御答弁申し上げました通りに、いやしくも司法処分そのものは経営者の人権に関することです。従つて確たる証拠がなければ、われわれも決意がつかないのです。そこでその確たる証拠は何かと言えば、これはやはり物的の証拠並びに労働者の供述、それでなければいたずらにだれでも犯罪人として司法処分していいじやないか――そうは行かないのでありまして、われわれはそれらの確信を得るにめに従来苦心をしましたが、それについて十分な確証が得られなかつたということは、繰返し繰返し私申し上げたはずと思うのでございます。過去において五件しか司法処分がなかつたじやないかというおしかりは、私は甘んじて受けますが、そういう事情のあることも、御賢察をいただきたいと思います。
  61. 島上善五郎

    島上委員 時間がないそうですから、これで最後にしますが、その確たる証拠をつかむための監督が事前に漏れておるというところに、私はやはり何かあると思う。それは買収されて堕落したときめつけるわけではありませんけれども、事前に漏れておつて、名札を動かして持つてつたり、仏間に移動したり、電気を消して机の下にもくつたりさせるというところに大きな欠点がひそんでおる。こういう点については、もつと確固たる証拠をつかむために、事前に漏れることのないように、もつとしつかりした監督をしてもらわぬことには、今後他にもこういうような事例が予想されますので、そうしませんと、この監督なんか全然何にもなら、ぬということになる。そういう点は今後十分気をつけてほしい。このように厳重に注意をしお願いをして、私の質問を終ります。
  62. 井堀繁雄

    井堀委員長代理 黒澤委員
  63. 黒澤幸一

    ○黒澤委員 近江絹糸の実情につきましては、私たち新聞その他の報道機関を通じてのみ今日まで知り得たのでありますが、本委員会におきまして今日まで四日にわたる間に、参考人のいろいろの供述を通じて、大体その実態を把握したのであります。近江絹糸というような、まさに奴隷工場が日本に存在しておるということは、われわれは非常に遺憾に存じておるのであります。しかも労働基準法が施行せられまして、ここに七年の日子が過ぎております。労働組合法が施行せられまして、やはり六年からの日子が過ぎております。こういう長い間、このような奴隷工場が続けられておつた、そのことがわれわれはふかしぎにたえないのであります。ただいま亀井局長からも、監督署としても非常に努力して来たということでありますが、私はそれを否定するものではありません。しかしながら、いかに努力して来ましても、基準法が施行せられてから、七年間もこの同じ状態が続けられて来た。このことについて、私は労働大臣がおいでになるならば、政府に遺憾の意を表してもらいたいと思うのでありますが、その局に当る基準局長その他の労働省当局においても、この事態が今日まで続いて来て、その結果がかような大きな紛争が起つて来たということに対しては、私はその局にある者が国民に向つて一言遺憾の意を表するくらしなことは当然ではないかと考えておるのでありますが、そういうことを聞かないのは、われわれとしてこれまた遺憾にたえないのであります。それで、かような状態か続いて来た一つの原因といたしまして、参考人の供述を通じて、これは基準局関係、監督署関係はあまりないようでありますが、安定所関係におきましては、近江絹糸会社訪問した方は全部饗応を受けておる。そうしてまた、監督署の方がおいでになるときに、それが事前にわかつておる。私は、こうしたことも、こうし労働関係の法律の適用あるいは取締りが緩慢になつた一つの原因ではないかと考えるのでありますが、こういう饗応を受けたり、あるいは会社へ行くことが事前に会社の方に漏れたということに対して、今まで労働省当局におきましては御承知がなかつたのか、その点をお聞きいたしておきます。
  64. 亀井光

    ○亀井説明員 前段の問題は、私の所管外でございますので、後段の問題につきましてお答え申し上げます。監督官がいやしくも司法権を発動するにつきましては、極秘裡に計画を立てて、その計画に基いて司法権を発動するのが当然なことであります。私は、この点は今度の近江絹糸の場合を問わず、かねがね一般的繕えず地方の局長あるいは監督課長あるいは監督官に指示して参つたところでございます。今回の近江絹糸につきまして、そういうお話も聞きましたので、各監督署別に個別に詳細に調査をいたしました。その結果、監督署側から、これについては積極的にそういう行動をしたことは絶対にないという確証を得られました。そこで、しからばどういう関係でそういう実態になつたかということについて、各署の意見を聞きました。これは一部推測でありまして、確たる証拠をつかんだわけではございませんが、各署に対する経営者側の情報キヤツチの組織があつたのではないかと思います。たとえば、捜査をいたしますのは、主として深夜に多いのであります。これは深夜業が主体となります捜査がおもでございます。その結果、退庁時間後に監督署に自転車の台数が急にふえた。そういうことがすぐに情報としてキャッチされているのではないか。あるいは監督署長が夜遅くまで監督署長室にあかあかと電気をともしておる、そうい言うないろいろな状況をキャッチする何らかの手段が講じられていたのではないか。一昨日でしたか、工場に参ります際に、ベルですぐに速報されたという話がありましたが、内部的にはあるいはそういうこともあつたかと思います。われわれの側からいたしましてこれらの秘密が漏洩をしたということは絶対にないことを、私ここで申し上げておきたいと思います。
  65. 黒澤幸一

    ○黒澤委員 職安局長に私お尋ねいたしたいのですが、お見えになりませんので、それは後に保留しておきます。  なお基準局長にお尋ねしますが、安全衛生施設ついて、いろいろ参考人から供述を受けたのでありますが、たとえば寮に非常階段がないとか、寮の前に寮より高い豚小屋がある、寮の廊下は暗くて昼間でも電気をつけなければ歩けない、戸締りはしていない、なめくじが昼間でも出るという非常に不潔な事情が述べられたのであります。それから食堂の近くに便所があつて、食堂にはえがたくさん入つておる。こういう事情は、会社に監督官が行きますときに、警戒するとしないとにかかわらず、一目瞭然にわかるのではないかと思います。こういうことが現在まで続けられて来たという事情にあるのでおりますが、これらの点につきまして、どういう御処置をとられておるか、伺いたい。
  66. 亀井光

    ○亀井説明員 寄宿舎の状況は、各会社工場で違うようでございますが特にはなはだしい例も、参考人の供述の中にもあつたようでございます。岸和田の問題は、確かにその通りでございまして、われわれも実はこの争議が発生する前に、送検の手配をしておつたところでございます。たまたま送検になりましたので、今度この問題と一緒に処理したということでございます。それから富士宮の寄宿舎の畳数の問題も、同様の問題でございまして、これは再々に会社に注意をいたしておつたのでありますが、なかなか是正をされない。総数におきましては、総畳数と総労働者数とでは一応合うのでありますが、ただ寄宿舎別に参りますと、女子の寄宿舎に非常に超過人員があつた。従いましてこの点につきましては、一昨々日の報告の中に申し上げましたように、従来の違反の中で、引続き継続しております違反につきましては、富士宮の畳数の問題があるわけであります。これはただちに今是正をさしたところでございまして、事務室あるいは備品室、あるいは社宅、そのほかの買収家屋というふうなものにそれぞれ分散させまして、現在におきましてはこの問題の処理は一応済んでおります。そのほかの工場の寄宿舎のいろいろなお話につきましては、具体的にわれわれは実は報告は受けなかつたのでありますが、おそらく察するに、その都度是正の処置はとられたのではないか。ただ問題が建物の関係でございまして、なかなか容易にその実現ができなかつたというふうな事情もあつたのではないかというように思います。
  67. 黒澤幸一

    ○黒澤委員 なお千名近くいる工場におきまして、一名の医者もいない、おりましても看護婦が一名ぐらいしかいない。工場によつては一名の看護婦さえでもいない。それて救急箱を備えつけてありましても、その救急箱の中にもほとんど薬が入つていないというようなことを参考人から述べられたのでありますが、こういう点について、どういう監督を今日までおやりになつて来たか。このことは非常に重大な問題でありまして、生命の問題にも関係すると思うのです。先ほど赤痢が発生したときの状態を聞きまして、われわれは涙の出るような思いで聞いたのでありますが、こういう施設に対しまして、監督署といたしましてどういう処置をとられて参つたのであるか、その点をお聞きしたいと思います。
  68. 亀井光

    ○亀井説明員 安全衛生規則によりますと、常時千人以上の労働者を使用する事業場におきましては、医師である衛生管理者を置かなければならぬ。これは各事業場で置いておるようであります。千名未満につきましては、医師たる衛生管理者を置かなければなりませんが、兼務でもさしつかえないという現行法の規定でございます。この調査をいたしましたところ、たとえば中津川におきましては、大上という開業医を医師たる衛生管理者として兼任をさせております。
  69. 黒澤幸一

    ○黒澤委員 時間がありませんから、これ以上お尋ねしませんが、先ほど参考人からお述べになりました赤痢が発生した工場はどこでございますか。  (「中津川でございます」と呼ぶ者あり)その中津川工場には、お医者さんが、ないようでありましたが、何か会社の方で開業医を嘱託にしておるというようなことがあつたのでしようか、参考人のどなたからでもお答えを願いたいと思います。
  70. 鈴木六郎

    鈴木参考人 昨年の赤痢発生の当時は、医者は一名もいませんでした。それで看護婦――安江という人でありますが、その人が一名おりました。
  71. 黒澤幸一

    ○黒澤委員 何か町の医者を嘱託にしておりましたか。
  72. 鈴木六郎

    鈴木参考人 そういう方は、中津川では日赤を使用しておりました。そういうのは保険証で行つていたので、会社には一名も医者はいなかつたわけであります。
  73. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 近江絹糸の問題を聞きますと、その深夜業、あるいは無制限労働、あるいは対抗競技による優勝旗制度、工場罰、あるいは寄宿舎制度の役割が演じました外出禁止による拘禁制度、さらに募集の状態、こういうものを見ますと、これは明治三十六年に農商務省の工務課で調査いたしました紡績の職工事情に大体同じような感じを私は持つのであります。いな職工事情を読んで研究をして、こういう工場をやつておるのではなかろうかという疑惧さえ持つわけでございます。そこで時間がありませんから、私は次の諸点についてお尋ねいたしたい。  まず第一には、これらの基準法違反は、本社の命令によつておるように感ぜられます。それは先ほど委員長供述書を読みましたが、その社長訓示にも十分現われておるところである。この点について、どういうように御理解あるか、これをお尋ねいたしたい。  さらに、ふくろう工員といいまして、深夜業専門にやつておるものは、なるほど形式的には基準法違反ではありませんけれども、これは何も深夜業をやらなければならないという作業の形態ではないのであります。これをずつと専門的こ深夜業をやらせておるということは、これは人権擁護の立場からいいましても、さらに労働基準法の趣旨からいつても、私は、違反の疑倶ありと感ずるのであります。あるいは形式的に違反がないとするならば、将来にわたつてどういうように処置されんと考えられておるか、その点をお尋ねいたしたい。  さらにその次には、一軒休憩の問題でございますが、一曹休憩が行われていない。これは一曹休憩という法律の制定を見たところに、やはりこういつた近江絹糸のような脱法行為の行われることを危惧してやつておるのであつて、この点についてはどういうように処置されんとするのであるか。  次に、時間外労働の点であります。私は行事とか、あるいは美化運動、こういうものもやはり時間内作業であるので、当然労働時間の中に考えられるべき性格のものであると存じます。ことに行事において強制をして出ない者は処罰し、さらに工場長が訓示をするなどということは、これは当然労働時間内において行われるものであつて、やはりその行事は労働時間であると考えるが、その点についてはどういうように考えられておるか。  次に、今話がありました医者の問題であります。先ほど、なるほど労働安全衛生規則を読まれてのお話でありましたけれども、これは深夜業を含んでいる作業でありますので、五百名であれば当然専属の医師を置かなければならぬと考えます。そこで現在岸和田工場には五百七十二名の従業員がおる、こういう点になりますと、これは深夜業を含む業種でありますから、当然医者を置かなければならない。しかも専属の医者を置かなければならないが、この点についてどういうように考えられておるか。  次に栄養士の問題でありますが、当然附属寄宿舎規程の二十六条におきましては、ご存じのように一回三百食以上、あるいは一日五百食以上の給食をする場合には、栄養士が必要であるが、この栄養士はおそらくないと思いますが、これについては、どういうようにお考えであるか。  さらにその次でありますが、寄宿舎においての問題がいろいろありましたが、工場と寄宿舎が四間しか離れていないという指摘があつた。騒音で眠れぬという話がありましたが、これは当然法律違反であると考える。この点については、今後どういうように処置されんと考えられておるか。  さらに超過勤務の割増し賃金の不払いです。この前私が参考人の方に聞きましたけれども、十分説明がなかつたのですが、私が交代日における先番と後番の関係を調査いたしましたところ、次のようになつております。すなわち先週の先番が、交代日におきましては先後番と言いまして、午前五時から九時まで、朝食は午前の作業後にやつております。その次に九時から午後五時四十五分までは、中番が出ております。そしてこれは先週の後番と申します。五時四十五分から十時半までは、先後番と言いまして、朝勤務した者が出ておる。夕食は午後の作業の終つたあとにやつておる、そういうことになりますと、実働が八時間四十五分になるわけでありますが、これについてはどういうようにお考えであるか、以上を声尋ねいたしたいと思います。
  74. 亀井光

    ○亀井説明員 八点にわたる御質問でございましたので、順序を追つて答弁いたしたいと思います。  今度の違反につきまして、本社の命令に基く違反があるのではないかというお話でございますが、これにつきましては、われわれも今度の操作の重点を実はそこに置いたのでございまして、本社関係の物的証拠からそれを見出すべく目下努力いたしておりますが、まだ調査中でございまして、その結論が出ておりません。ただ各工場に共通的な違反、しかもそこに同じ形の違反がありとすれば、そこに本社から何らかの指示があつたのではないかと、容疑としては考えられますが、まだ確たる結論は得ていないのでございます。  次に、ふくろう労働の問題でございますが、これはお話の通り、形式上労働基準法の建前からいいまして、ただちに通反とは申しがたいのでございます。ただ、年少労働者の健康あるいは福祉という問題から、われわれとしましてこれが賛成しがたいものであるということは、言えるのでございますが、ただちにそれが基準法違反であるから是正を命ずるということにつきましては、法的な根拠がないために、われわれとして積極的にでき得ない。ただ、目下これが健康の上にどういうふうな影響があるかということについて調査をするように、それぞれ関係の局にまわしております。それが現実の数字として現われて参りますれば、われわれとして今後のこの問題の処理の仕方を考えたいと思つております。  一齊休憩につきましては、これは津と大垣におきましては休憩をいたしておるようでございますが、そのほかの工場については許可をいたしていませんので、基準法違反容疑の事実としてあげておるわけであります。  時間外労働としての美化運動あるいは行事というようなものが、時間内労働になるのではないかというお話でございます。これはいろいろ解釈上の問題がございますが、われわれとしましては、その職場における労働者の実働時間という解釈をとつております。従つて、職場を離れまして美化運動なりあるいは行事というものが、そこに強制されたかどうかということは別にしまして、ただちにそれが時間内労働であるかどうかということにつきましては、まだわれわれとしてはつきりとしたお答えができないのでございます。さらにこの問題は調査をいたしてみたいと存じます。  それから医師の問題でございますが、深夜業が常に行われておるかどうかということから、五百人未満についても専任の医師を置かなければならないじやないかということでございます。これは今捜査の段階におきまして、そういう実態として深夜業を連続やつておるという実態があり、そして五百人という数の問題と医師との関連、これは捜査の容疑の対象になりまして、その証拠との関係におきまして違反であるかどうかということが、これから決定されて参るわけであります。  それから栄養士の問題も、これは実は確認をいたしておらないのでございますが、お話のように、栄養士が置かれていないとすれば、基準法の寄宿舎規程に違反することになつて来ると思います。  それから長浜の寄宿舎が、工場からすぐ近くにあつて、騒音のために安眠ができないというお話がございました。さつそく長浜の監督署に連絡をいたしましたところ、現実には織布工場から十メートルぐらい離れたところに寄宿舎があるようでございますが、しかし安眠が妨害されるという程度のものではないという報告が実は来ております。私現場を見ておりませんので、これについての私自身の意見を申し上げるわけに参りませんが、そういう報告が参つております。  それから超過勤務の割増し賃金の不払い、これは確かに違反の容疑として出ておりますから、今その物的証拠を調べております。
  75. 井堀繁雄

    井堀委員長代理 矢尾委員
  76. 矢尾喜三郎

    ○矢尾委員 職安局長、基準局長、労政局長にお伺いしたいと思います。近江絹糸は、ただいま予備交渉が行われまして、団体交渉に入る前でございますから、刺激を与えるような言葉は慎みたいと思うのでございますが、私の選挙区は滋賀県の近江絹糸の発祥地でございまして、夏川一族が彦根の町工場を経営しておりました当時からよく存じておりますし、私も滋賀県下におきまして約三十年間労働運動をやつておりました関係上、その実態はよく知つておるのでございます。今日労働基準法の違反であるとか、いろいろの問題が陳情されておりますが、夏川社長を盟主とする一族が、五十万円くらいの資本金から今日の大をなした原因はどこにあるかと申しますと、それはすべて労働者の搾取の上に立つて築き上げて来たものであるという見解を私たちは持ちます。ほかの方法によつて夏川財閥をつくり上げて行つたという理由があるならば、私は承りたいと思うのでございますが、さような理由は一つもないと思うておるのでございます。この立場に立ちまして考えて参りますると、少くとも近江絹糸が今日の事態に立ち至りまする過程におきまして、労働基準法ができ、あるいは労働組合法ができた。こういうものを労働省といたしまして率直にお考えくださいまして、それを強く実施するように努めていただきますならば、こういう事態は起らなかつたであろうと考えておるのでございます。たとえば、今日一番問題となつております職安局長にお尋ねしたいのでございますが、先日大西委員に対して、職安局長はおられませんでしたので、他の方がかわつて答弁せられたのでございますが、最初会社側からの要求に応じて募集に着手せられ、そうしてあつせんされておる。しかしながら、当初の賃金というものは、ほかの滋賀県には日清紡あるいは鐘紡、大体において大きな紡績の工場がございますが、その紡績と比較いたしまして、最初の条件といたしましては、あまり賃金の面におきましてもかわらないのでございますけれども、二年、三年たちますると、そこに大きな差異が生じて来ておる。その差異というものにつきましては、従業員の諸君がるる述べられましたように、長く勤続することができないとか、あるいは長く勤続をさせないとかいうような、あらゆる方法が講じられておるのでございますから、平均賃金においても少くなつておるのでございます。しかしながら職安といたしましては、最初の労働条件というものがかわらないから、ただ単に募集されておる。しかしながら、会社が提示いたしましたる募集条項につきましては、いろいろの条件があると思います。ひとり賃金の問題だけではなくして、あるいは学校の問題、あるいは宿舎の問題、すべての問題があげられておるのでございます。職業安定所といたしましては、最初ただ単に募集をして、そうし会社へほうり込んでし支えばそれで責任がないという立場をとつておられるのならば、何ら責任はないのでございますけれども、一たび職業安定所を通じてあつせんをせられました限りにおきましては、その後会社が募集の際に職業安定所に申し出たすべての条項を完全に実施しておるかどうか、学校の問題においても、あるいはその他寄宿舎の問題においても、有給休暇の問題においても、すべて会社がこれを実行しておるかということを調査なされまして、もし実行をしておらないという事実がございますれば、あえて争議が起らなくても、この職業あつせんに対する拒絶をすることもでき、また会社に対しましても是正をせしめることもできると考えておるのでございますが、職業安定局長といたしましては、今日までどういうふうなお考えをもつて臨んでおられたかということをまず伺いたいと思います。
  77. 江下孝

    ○江下説明員 お答えいたします。職業安定所が当初求人を募集いたします際には、ある程度労働条件につきまして、会社側に明示を求めるわけでございます。お話の通り、近江絹糸につきましては、最初の条件に十大紡とほぼ違わない条件で提示いたされておりますが、その後の賃上げその他について、十大紡と比較して非常に悪いということも、安定所はある程度承知いたしておるのでございます。そこで安定所といたしましては、もちろん近江絹糸の各工場に対しましては、機会あるごとに十大紡との比較を申し上げまして、何とかやはりできるだけ大きな会社らしくやつてもらいたいという勧告を当然いたしておるのでございます。先ほどお話になりました労働基準法違反という問題になりますと、これは労働基準局関係の調査にまちまして私どもとして判断をするわけでございますが、それ以外の当初の募集条件と違反しておるというような点がありますれば、これは当然会社に対して是正措置を要求しているはずでございます。御承知と思いますけれども、新しく学校の卒業生が入りました際には、必ず一定期間後に就職後の補導ということをやるわけであります。就職後の補導と申しますのは、就職後新しく入つた者がどういうように職場に居ついているか、何か職場について不満がないかということを聞くことになつております。これは必ず実施をいたしておるはずでございます。その際にいろいろ新しく入つた者から話を聞くわけでございます。話を聞きまして、いろいろ不満の点があれば、会社に対して、こういう点は直してもらいたいということを当然申し上げるはずでございます。さように従来とも措置して参つたということを私は確信いたしております。
  78. 矢尾喜三郎

    ○矢尾委員 ただいまの御答弁によりましても、私は了承することはできないのでございます。一たび争議が起りました後におきましては、要は今後の問題でございますので、過去のことにつきましては深く申し上げる時間もありませんし、申し上げませんけれども、少くとも近江絹糸におきましては、今日まで募集要項と実際の面におきましては雲泥の相違があつたという事実を私は申し上げまして、この点につきましても、職安局長といたしましても、今後の問題として十分御研究願いたいと思う次第であります。  次に基準局長にお伺いいたします。基準局長は、先ほど島上委員質問に対しまして、監督官が買収されたりあるいは饗応されたというような事実は絶対にないということを声を大きくして申されました。私も直接買収されて、こうするああするというようなことをしたとは毛頭考えておりませんけれども、少くとも今日まで基準監督官として地方に駐在されておるところの大部分の人々は、いわゆる責任者と称する人々は、近江絹糸に限らず、各会社工場におきまして、何々の式典があるとか、あるいはどういう会合があるというようなときに招待をされまして、そうし会社社長あるいは重役などと席を同じくして酒食をともにしておられるというような事実は、私はよく知つております。そうして私も席をともにしたこともございます。しかしながら、近江絹糸に関する限りは私は知りませんけれども、そういうようなことにおいて、私たちが労働委員といたしまして、昨年近江錦糸を調査いたしました際におきましても、私たちは彦根の旅館にとまつた。しかしながら、そのときにすでに会社の重役適中が会社に来ておつて、そうしてそのときに監督署長本出席されるようなことでございましたたから、われわれ労働員といたしましては、会社を視察に行つたけれども、何ら会社から饗応を受ける必要もないという立場から、経費の点におきましても負担いたしましたが、その際におきまして、監督官が出席するというようなことは、後日において誤解を招くというので離席をしてもらつたような事実もございますので、そういうようなことで知らず知らずの間にそういうようなことにひきずり込まれて、そうして親しくなつて行く、親しくなつたことにおいて、知らず知らずの間に今日ほかの面におきましても、スパイ行為をやるというような点におきましても、意識的にスパイをやるという気持はなくとも、あとで検挙されて初めて自分のやつたことがスパイであつたということがわかるように、少くとも今日地方に駐在されておる監督官というものが、知らず知らずの間にそういうところにひきずられておる嘉例はたくさんあると思うのでございます。そうしてまた私はお伺いしたいと思いますことは、基準局長といたしまして、少くとも今回の争議が起りましてからは、第二組合もできて十分なる確証をあげることができたということを申されたのでございますけれども、少くとも争議が起らなくとも、近江絹糸の違反というものは――ただ単に地方的に一箇所あるいは二箇所存在しておる会社が違反をしておるのでございますならば、それは手薄な役所でございますから、十分なる監督の手が行き届かなかつたということも言い得られますけれども、今日この近江絹糸の争議が起りましてから、全国の新聞あるいは雑誌その他におきまして、今日までの違反行為が大々的に宣伝されて、もうたれ知らぬ人がないというようなことまでになつておるのでございまして、少くともこの監督の立場におられるところの人々が、これを人に聞かなかつたならばわからない、聞いてみたけれどもほんとうのことを言わなかつたということは、私たちといたしましても、従業員をつかまえていろいろのことを聞いて、知りません、わかりませんの一点ばりで済まされたこともございますのでよくわかりますけれども、この労働基準監督官というものは、もつと大きな労働基準法の百一条あるいは百三条というような面におきまして「労働基準監督官は、事業場、寄宿舎その他の附属建設物に臨検し、帳御及び書類の提出を求め、又は使用者若しくは労働者に対して尋問を行うことができる。」この尋問の点たけを取上げておりますけれども、時間外の労働あるいは深夜業その他におきましては、帳簿の検閲その他におきまして、相当私たちは確証を握ることができると思うのでございます。そういたしますと、人的証言は求めることはできなくとも、物的な証拠は求めることができると思うのでございますが、その点につきまして、今日までの立場において基準局といたしましては落度がなかつたかどうか。  また長浜工場のことが今出されましたが、私はここへ参ります二日前に長浜工場に参りまして実態を調べました。あの長浜工場は二十四、五年前に、その前身である日本ビロード株式会社という、やはり女工さんを中心とした三百七、八十名おりました会社の争議を私が指導いたしまして、二九日間籠城いたしまして争議に勝利を占めたという経験を持つております。それで、その後私たちは、その会社といろいろ団体協約その他を、まだ非合法の時代でございましたけれども、結びました。大会その他をやるときにおいては、労働運営の大会をその会社の食堂を借りてやつたというような経験がありますので、その工場の内部につきましては、すみからすみまでよく知つております。参りましたところが、二十四、五年前に私が参りましたときと建物は少しもかわつておらず、そうして全員仏壇の置いてある二階に上つて座談会を開きました。そうしたところが、床がぶかぶかしておる。さつきもだれか言われたように、二階にだれかが上つて来ると、下の押入れの戸があかないという現実でありまして、そうして機械の音が寄宿舎に聞えるとか聞えないというお話がありましたが、深夜に機械を動かされたならば完全に聞えます。門の外にある人家まで響いておるような状態でありましたから、工場内では、昼ならばまわりの騒音でやかましくて聞えないという事実もありますけれども、しかしながら夜間深夜であるならば、それは響くくらいに聞える。また昭和二十六年に彦根の工場におきましてああいう大きな問題が起つて、そうして相当な人が死んだ。そういうときに、実際において監督の立場におられる人は、近江絹糸の最も優秀を誇つておる彦根の工場においてああいうことが起つたのであるから、ほかの近江絹糸工場においてはどうかという実態を調査せられるならば、彦根の工場が問題にならないほど長浜の工場の建物というのは古い建物です。私たちがやりましたときは二十四、五年前でありましたが、そのときにすでに二十年も前に建てた建物でありましたから、もう四十年ほどたつておるような建物でございますから、危険を品にするよりも、私は今日まで放任されておつたということにつきましても、非常に監督官といたしまして無責任ではないかという考えを持つておるのでございます。  最後に、時間もございませんから労政局長にお伺いいたしますが、この争議は今日違反を摘発するとか、あるいは今日までの違反がどうであつたとか、こうであつたとかいうような問題を中心にいたしまして、この争議を解決しようといたしましても、絶対に私は解決しないと考えておるのでございます。今予備会談が行われておりますけれども、必ず本団体交渉に至るときにおきましては、もう一つ暗礁に乗り上げるのではないか。それは何かと申しますと、合繊加盟の問題であると考えておるのでございます。私は今日まで夏川社長が、全繊は赤である、あるいは全繊は危険な団体であるというような放送をしておるということは、結局全繊が赤である、あるいは危険な団体であるということを認識せずして言うておるのではございません。少くとも現在の従業員を全繊に加盟させない。そのなぜ全繊に加盟させないかと申しますと、法律に違反するようなことは何でもない。しかしながら全繊に加盟することにおいて、次に起つて来る問題は、今この委員会会におきましても取上げられておる問題、従業員の口から次から次から述べられておるところの問題、こういう問題の改善の要求をせられるということはもちろんである。そうしてまた人間らしく生活のできるような賃金を要求されるということも当然である。この賃金の要求――あらゆる手段をもつて今日まで労働者を搾取して来ました夏川といたしましては、自分の利潤が少くなる、自分のもうけが薄くなるということに対しまして、一番恐れておるのでございまして、この点におきまして、十分労働省といたしましても、この争議解決の面におきまして御考慮がなければ、絶対に私は解決しない、再び暗礁に乗り上げるのではないかと考えておるのでございますが、労政局長といたしましては、この争議はそういうようなことにおいて起つた、そしてそれを解決する点については、どういうお考えを持つておりますか、労政局長としての御見解をお伺いしたいと思います。  結果におきまして、過去に起きました事例は、もうはつきりしておるのでございますから、将来において近江絹糸労働諸君が、少くとも健全な労働に従事し、そして喜んで働けるような工場にするために、労働省としては万全の力をいたしてほしいという大きな希望を申し上げまして、私の質問を打切ります。
  79. 亀井光

    ○亀井説明員 ただいまの御質問は、大きく三つになるのじやないかと私聞き取つたわけであります。  第一点は、一般的に地方の基準局長なり、あるいは監督署長が、どの程度使用者との交際をすべきか、あるいはそれが饗応になるかどうか、あるいはまたそれが職務の執行の上に妨げになるかどうかというような御質問だと思います。これは非常にむずかしい問題でございまして、われわれとしましては、それが職務に影響があるようなことであれば、絶対に禁止するような指示をいたしております。ただ今会社の行事その他の場合でございまして、一般の方々と一緒にその中の席に列するというような場合においてまでこれを禁止するかどうか、これは非常にむずかしい問題でございまして、単に監督署長なり、あるいは基準局長だけが呼ばれるというような席には絶対にお断りすべきところでございますが、一般の方々とそういう行事のような場合出るということまで禁止することはどうであろうかという実は気はいたしておりすが、御趣旨の点は十分今年ともい注意しまして、そういう誤解なり、あるいは職務執行に妨げのないような処置をとらせたいと考えております。  第二点は、従来の旧組合員当時の労働者として、何ら労働者みずからの口から違反事実を言わなかつた。しかし書類、帳簿を実地について検査する権限があるのだから、そこかち証拠がつかみ得たのではないかという御質問でございますが、これはもちろん監督の都度労働者の供述をとるだけではなく、物的証拠の押収に努めるのでありますが、二重帳簿その他の工作がとられていたような形跡もあるのでございまして、帳簿上からはただちに出て来ない、あるいは帳簿上でそれらしいものがあつて、何の太郎兵衛について、たとえば賃金台帳に違反の事実があり、それを本人に尋ねましても本人がそういうことがないと言つた場合には、証拠力として非常に薄弱になつておる。そういうようなことで、過去こおいてはそういう権限はもちろん行使をして参つて来ておりますが、そういう点で的確な証拠力としての力が足りなかつたということは言えるのではないかと思います。  最後は長浜の宿舎の問題でございます。先ほど申し上げましたのは、長浜の監督岩からの報告をそのまま申し上げたので、基準法上建物が古いから違反であるということには、すぐにはならないのであります。現在の状況では建物自体については違反はない。もちろん古い建物である。従つてさらにこの問題も調査をしまして、そういう点のいろいろな違反というものと離れて、また別な点で問題がございますれば、これはまた注意をして是正をさせて参りたいと考えます。
  80. 中西実

    ○中西説明員 今度の争議は、実は過去年来の全繊とのいろいろのしこりが爆発したという関係でございまして、非常にこの解決が困難であることは十分に承知しております。ただ会社側、ことに社長は、繰返し組合の結成は法律上自由だ、その結成した組合が上部のいかなる団体に加盟するか、これも組合のことだということを言つております。しかしながら、気持の上においてきわめてこれをきらつておることは確実でございます。ようやく数日前から一応の話合いの緒につきました。しかしながら、今後相当の紆余曲折が続けられるのじやなかろうか、たた客観的に見まして、ようやく解決の期に来ておるような気もいたします。中に立つた者が相当ねばり強い根気を持つてつてやろうという覚悟でやりますれば解決の彼岸にも到達し得るのじやなかろうか、しばらく中労委の活動にまちたいというふうに考えております。     〔井堀委員長代理退席、委員長着席〕
  81. 赤松勇

    赤松委員長 日野君。
  82. 日野吉夫

    ○日野委員 ここ二、三日次々と驚くべき戦慄を覚える事実が明らかにされたのであります。今近江絹糸労働争議について、中労委のあつせんが進行いたしておりますが、どうきまるにいたしましても、この問題は相当重要性を持つ問題だと考えられるのであります。われわれは協議というよりも、むしろこれは人権擁護の運動だろう、こう考えておるのでございますが、具体的な事実はすでに究明し尽されておりますので、総合的に見て大体こういう事態の存在を許したことがおかしいのであります。今争議になつてからわかつたのではない、以前から労働省はこのことを知つていた。知つておりながらこの事態をここまで持つて来たということについては、これは相当労働省に責任があるのじやないか。過般来、ここでいろいろ質疑応答が行われているのでありますが、亀井基準局長の説明を聞きますと、しばしば基準法違反ということで若干摘発もしておるけれども、的確なる証拠の把握ができない、この壁にぶつかつたために、これをやり得ずして、数件やつただけだ、その都度適切に注意、勧告はしているか、この事態に至つた、こう言われておる。所管局長の答弁を聞くと、今はあつせんを中止しているが、会社は臨時人夫、アルバイト等を頼んで工場に入れているというようなことです。結局亀井局長の答弁からいたしますと、どうして的確な証拠が把握できなかつたかというと、御用組合の存在である。御用組合の壁にぶつかつて、それか不可能だ。最近は新しい第二組合が出てから次々と的確な証拠の把握が容易になつた、こう言われておるのであります。中西労政局長はこれに対して、御用組合の資格やそうしたものがいろいろ論議されておりますが、きわめて形式的な面だけを取上げて、実質的な旧組合が一体何であるかということの究明が一つもなされていない。今日この事態を引起した原因は、私はこの御用組合の存在であろうと思う。御用組合の処理をやり得なかつたところに、この事態を引起した原因があつて、結局これは労政の面に携わる労政局長あたりに重夫な責任があるのじやないか、こう考えるのであります。ドイツのことわざに、法律はくもの巣のごときものだという言葉がある。小さいちようやとんぼは、くもの巣にひつかかるが、大きいねこや犬はくもの巣にひつかからない。やはり近江絹糸の夏川社長のごときは、山ねこのごときむちやくちやな存在であつて、今の法律ではなかなか抑えられないと思うのであります。こういうケースのものを取締るのには、もつと熱意と、もつと強い正義感を持つて労働省が当らなければ、これはやれない。一体事ここに至る過程において、いろいろ汚職やそうしたもののあれが疑いとして残されて、亀井局長は指揮権を発動しておられるようだが、これは別として、もうちつとこういう衝に当る諸君の部下諸君が、この事態を見送つて、だれ一人正義感を持つてこの存在を食いとめ、阻止しようとする努力をされなかつたことがふしぎである。あまりにも熱意がなさ過ぎる、正義感が欠けておるのではないかと、こう思う。無価局労働省が一貫した一つの積極的な政策を持たないことによつてつた争議であつて労働行政の不徹底が生んだ世紀の悲劇だと、こう考える。そこでこうした事態のもとで、亀井局長に伺うのであるが、局長は労働基準法の改正を考えておられるけれども、もつとこういうケースを抑えるだけの何か一つの案を考えておられるのかどうか、そういう案がありましたら、ひとつここで御発表願いたい。  時間がありませんから、一括して中西労政局長に聞きますが、過般あなたは、事実とすれば重大に考えるという発表をされておる。この数日の調査で、およそこれが事実かどうかという疑いはお晴れになつたと思うのであります。その場合、今後も、今矢尾君が言うように全繊加盟の問題等が問題になり、この御用組合をどうするかということが大きい問題であるが、事実なりとの認定をするとすれば、どんな処置をなされるかという御答弁労政局長から伺いたい。これはここ吉田内閣が続いて、まあ朝鮮事変で若干目やかされて今日までおつたとは思うのですが、労働省のあり方は、あまり経験のない、見識を疑われる労働大臣も出ており、そうしてあまり理解も熱意もなく、労働者を敵視するような考え方が随所に見えており、吉田さんなどは労働者を不遇のやからとさえ呼んだことがある。こうした首脳部をいただいて、あなた方の苦労のほどはわかる。しかし、これは労働か行政を完全にやることなしに日本の再建はないりであるし、デフレ政策を今遂行するといたしましても、一番に重要な問題は、これを遂行する必須条件は、やはり労働問題の完全解決である。たとえば失業問題等を注視し、しかもこの過程に、苦しまぎれにこのデレフを切り抜ける資本家の唯一の攻勢は、労働者を犠牲にすることである。こういう事態に対して、労働大臣はしばしばかわるけれども、事務当局は――これはいろいろな圧力ややりにくい点もあろうけれども、毅然たる正義感の上に立つた労働行政の用意がなければ、おそらくこの事態の処置はできなかろう。そういたしますと、中西労政局長あたりの地位というものは重要である。いたずらに政府の方針に迎合する――ここで聞いておりますと、毎日の答弁が、いかにもその場をごまかすような、きわめて消極的な、その都度政策のように聞えるのであるが、何か一つこの事態を切り抜け、近江絹糸の問題等を取扱つてみて、何か一つ期する――つまり私がいう正義感もなければ熱意もないというが、労政局長あたりもう少し部下に正義感を持たせ、そうして熱意を持つてこのデフレ強行下の労働政策を遂行するところの一つのプランがあつたら御発表願いたい。  もう一つ、時間がありませんから簡単でありますが、人権擁護局長が見えておられるようでありますから伺いますが、昨日の井堀君の質問に対しての答弁もあつたようで、夜間の高等学校が完備しておるということが募集条件で、これに応じて――ことに過般ぼくの方にこういう実例があつたのですが、非常に優秀な中学校を終えた子供が高等学校へ入れられないということで、向学心に燃えて、夜間高等学校の完備したという近江絹糸の宣伝によつて近江絹糸へ行つた。ところが事実は過般来調査しておるようなことである。こういうのは、まつたくこの人間の一生を誤る、取返しのつかない重夫問題なので、こういう募集方法等を職安を通したか、あるいは別の手で行つたか知らぬけれども、全然ほつておるということは重大なことじやないか、こういうことが考えられる。今いろいろ問題になつておる赤痢患者等も、幸い中津川工場で死亡した者がなかつたと申しますけれども、こういう処置を誤る、時間を逸することによつて、これは取返しのつかない重大問題が起るのであります。あまり積極的に権限を持たない方が人権擁護局の趣旨であるというようなことも一言われておるのですが、突くはこれはやはりある種のケースに対しては特にそういう予防的な意味において権限を付与すべきものだという一つの考え方を持つている。つまり、今の近代立法の一つの趣旨は、公共の福祉ということが中心である。公共の福祉のためには、守つてやらなければならぬ人権に対しては、消極的に――訴えのあつたときにのみ活動するというような構想は、理念としておもしろくない。あなたはこの間の井堀君の質問に対して、人権を必要以上に侵害してはいかぬからこういうことは避けたいという個人の意思の発表がありましたけれども、私はそうでなく、むしろこうした事態、こういう混乱期でございますので、遅れたものについて公共の福祉を守るためには、積極的な一つの権限の付与が必要じやないか、そういう趣旨で考えておるので、これに対して局長の一応の見解を承つておきたい。
  83. 亀井光

    ○亀井説明員 労働基準局に対します御質問の趣旨は、今回の近江絹糸の問題を契機として、将来こういう問題がほかの工場、事業場に起らないためには、どういう方途を講ずるか、その方途があるかという御質問だと私受取つたのでございます。その御質問の中に、正義感の問題と熱意の問題のお話がございましたが、これは私まつたく同感ございまして、われわれの行政が社会正義の上に立たなければ、この行政の浸透は期し得られないことは申すまでもないところでございまして、かねがね私は地方の職員を指導し、教養するにつきましては、この点を一つの柱として指導して参つておるわけでございます。従いまして、今回の近江絹糸の問題からいろいろ教えられるところもございます。これは一つは、技術的な問題として捜査の能力の問題、あるいは監督官の素質の問題、こういうものにつきまして、私は将来精神的には、先ほど申し上げました社会正義の上に立つて、熱意を持つてこの問題の処理に当るということとともに、監督官としての捜査の能力あるいは資質の向上というとかうな面に重点を置きまして、近江絹糸のこの事件を十分反省しながら、今後の処置を考えて参りたい、かように考える次第であります。
  84. 中西実

    ○中西説明員 近江絹糸の第一組合ないし第三組合というものがどういう性格かという点につきまして、いろいろと参考人の話やら、われわれが見聞きしておりますところから見ますと、御用組合の疑いが十分にございます。ただ、個々の組合について、これが労組法上の組合として失格だということの認定は、労働委員会でやりますので、従つて労働委員会の決定にその方はまかせたいというふうに申し上げておるのであります。ただ今回のいろいろなトラブル、また今までの基準法違反というのは、そういつた御用組合的なものを許しておいたからだというお話がございますが、われわれの問題としますのは、そういつた御用組合的なものの存在を許したその原因にも問題があるのではないか。つまり、毎々申すようでございますけれども、結局従業員個々の考え方というものが、従来やはり問題であつた労働省といたしまして、個々の組合に対して干渉する何らの権限も、現在の法律上ないのでございます。これは基準法あるいは職安法と違いまして、組合に対しましては、労働大臣は何ら積極的に関与する権限がございません。日本の法制では、自由設立でありまして、従つて健全な労働組合の発展はわれわれのこいねがうところでありまして、そのために日夜労働教育ということに努力いたしておるのでありますが、何らかさらに積極的にということになりますれば、これは立法論としては問題になるかと思います。たとえば組合を届出制にするとか、あるいは一定基準で認可制度にする、そのことは立法論として当初にも十分問題になつたのでありますが、それはかえつて革新政党の方から、あるいは組合運動者の方から非常な反対がございまして、今のような自由設立になつておりまして、一に自主的な運動としてこの発展を望むというのが建前になつております。この点はひとつ十分に御了承いただきまして、われわれもしそういつた御希望が議員さん方の中にありますれば、また十分考えたいと思いますが、今のところは労働教育というところで、十分に今後指導して参りたいというふうに考えております。
  85. 日野吉夫

    ○日野委員 時間の制約を受けていますから繰返しませんが、十分ひとつ今の立法の問題を考慮してもらいたい。十九国会では労働委員会だけ一つも政府提出の立法がない、そこらにも労働省の一つの何が現われているのではないか。誠意と熱意を持つて、かかる事態を繰返さざるように、ひとつ十分努力あらんことを願つて、終ります。
  86. 赤松勇

    赤松委員長 なお戸田人権擁護局長の答弁が残つております。答弁を求めます。
  87. 戸田正直

    ○戸田説明員 お答えいたします。夜間通学の問題が、実は御質問の最初に出たのであります。あるいは人権侵害かどうかという問題ではなかろうと存じますが、一言申し上げますと、私どもこの通学の問題もいろいろ調査いたしまして、中には富士宮工場等においては、富士宮に四千坪の敷地があつて、学校が設けられておるということを募集広告に入れてあるようなところも調査の結果現われた。ところが来てみますと、学校がない。これは九月にできるのだということで、いつの九月かわかりませんで、そのままになつておるという実情も出ております。これは職業安定所の問題で、人権侵害というような問題ではなかろうと存じます。  それから今の強制権限の問題でございます。すでにたいへん私どものために御配慮願つて非常にありがたく思つておりますが、この問題につきまして一昨日もお答えいたしたのですが、強制権限を持つことがいいかどうか。今回のようなこの事件について強制捜査権がないために、非常に私の方で調査に困難を来し、苦労しておるということも一昨日申し上げたはずであります。そこで強制捜査権を持つということは、その前提として、いわゆる法律の違反を前提としなければなりません。そうしますと、今度は人権侵害という一つの犯罪構成要件と申しますか、そういうものができませんと、どうも法律違反というわけに行きません。また強制捜査権を発動するわけにも参りません。そこで憲法に規定されております基本的人権の保障というようなことは、非常に広汎なものであり、私たちの今までの経験では、いわゆる人権侵犯事件に対する犯罪構成要件というものを、まだきめるまでの段階に至つておりません。それで、これは私の私見でありますが、人権侵害事件調査処理というものは、必ずしも処罰することが本来の目的ではございません。人権擁護ということは、国民に人権ということをほんとうに認識してもらい、自覚してもらう、そうして将来もし違反のあつた場合は、再びそういう侵害を起してもらわないようにしてもらう、反省をしてもらうというところに、人権擁護の本来の目的、ねらいがあるのでありまして、決して人権擁護は処罰すること自体が目的ではございませんので、もしいろいろ調査の上で、法律違反があり、処罰すべき刑事上の問題が発見されたというような場合には、これを告発いたしまして、検察庁等において処理をお願いする。また今回のような問題でありますと、労働基準局に今までの私たちの調査を通告いたしまして、その処理をお願いする、こういうようなことに相なるのでございます。そこで、この強制捜査権というようなものも、一昨日も申しましたが、人権擁護ということが、御承知のように新しい仕事で、きわめてむずかしく困難な問題で、非常に慎重にいたさなければなりません。われわれは常に謙虚な気持をもつてこの人権という重大な問題に対しては当らなければならないという考えを持つております。そこで、もし私たちがここに強制権限を持つということになりますと、大勢の職員の中には、あやまつてこの権限を濫用する者が出て来たりして、人権擁護局職員の人権侵害事件に対して、一体どこでこれを救済するのかという問題が出て来るのであります。そこで私は、人権擁護局がもし人権を侵害するということになりますと、これは屋上屋を重ねるにさらに屋を重ね、これはとどまるところがないことになると思います。そこで問題が国民の人権というきわめて重大な問題でありますだけに、慎重に、そして謙虚な気持で、熱意を持つて当らなければならない仕事だと考えておりますので、従来の私たちの経験、また人権擁護の性質また人権擁護局の機構、職員の人数、予算等から考えまして、ただちに権限を持つということは、私は非常に危険があるのじやなかろうか、かような考え方から、私の現在までの気持におきましては、強制捜査権等の権限を持つということは、私は現在の段階においてはまだ好まない、かように考えておる次第であります。
  88. 日野吉夫

    ○日野委員 強制権限の……。
  89. 赤松勇

    赤松委員長 ちよつと待つてください。約束の時間を守つていただかないと運営上困るのです。なお中原君の発言がありますし、山口参考人より発言を求められておりますから、責任を持つて時間を残しますから、ちよつと待つてください。大西君からやかましく発言を求められておるのです。
  90. 大西正道

    ○大西(正)委員 職安局長、この前あなたが見えておられないときに、次官並びに課長に聞いたのですが、要領を得ませんから、ここでお伺いいたします。あなたは近江絹糸に対して従業員のあつせんをされる場合に、これまで地元の職安があつせんをした場合に、募集条件とその後の会社の実施した状況とに相違があつたかなかつたか、こういうことについて事実をどのように見ておられるか、これをひとつお伺いいたします。一々答弁を聞いてからやれば非常にはつきりするのでありますが、時間がありませんからそれをひとつはつきりつてください。  それからもう一つは、職安局長と基準局長とにお伺いいたしますが、富士宮工場の寄宿舎の概況の数字をあげますと、男子寮と女子寮との総計が、畳数が千九百二十五畳ということになつておるのであります。これに対しまして、入居者数が五月末において千四百四十六名になつておる。こういうことはあなたの方は当然御存じだと思うのだが、職安局長もこういうことは知つてつて、そうして畳数はこういう状況だということを知つてつて、そうして入居者がこれだけあるということについても御存じであるかどうか。もし知つておれば、これはもう明らかに畳数と入居者との関係において許せないことだと思うのだ。これはわからなかつたとかいうようなことは言い抜けにすぎぬと思う。これを知らなかつたということは、あなた方の職務怠慢だから、当然知つておると思うのだが、どういうふうにこれを考えており、また今後どう処置しようとしておるか、これをひとつお伺いしたい。  それからもう一つは、この前職安局長に聞くべきところであつたのですが、職安法の十六条の問題であります。著しく労働条件が不当である場合には、その申込みを受理しないことができるということが出ておるのだが、これまでこういう措置をとつたかどうかということについてはもうここで追究いたしません。今後今のような賃金の状況であれば、私は他の十大紡と比べても不当に労働条件が低いと考える。あなた方もそう考えれば、今後この争議が解決した後も、労働条件その他がかわらなければ、この近江絹糸に対しては求人の申込みを受理しないという態度をとるべきであろうと思うのだが、その点をどう考えておるかということであります。  それから労政局長にお伺いいたしますが、これもこの前にちよつと聞いたのであるが、第一組合、第三組合は、参考人の陳述によりましても、またおそらくあなた方も、もうこれだけ問題が大きくなつたのだから、調査をしておられると思うのだが、会社側を代表する人間がこの組合に入つておるし、それが大体中心になつてこの組合を動かしておるのであるから、当然これは、好ましくないとかいうようなことでなしに、これはこの二条によつて正しい意味での労働組合としては認めることができないと思うのであります。それを、その判定は労働委員会がやるべきものである、労政局長はこういうふうな逃げ口上を申しておりますけれども、しかし私は、こういう重大問題について労政を担当しておる責任者といたしまして、労働委員会並びに中労委に対しての意見を述べて行くこともできると思うのであります。その点についての一つの見解と、さらにもし、なおそういう問題に対して介入できないというのならば、過般国鉄の三役が誠首されたという理由をもつて、この国鉄労働組合を法外組合であるというような見解を労政局長はとつておるのであるが、国鉄の労働組合に対してそういう一つ立場はつきりと表明することができるならば、当然この第一組合、第三組合に対しても、労組法の第二条に抵触するものであつて、正しい意味での組合でないという見解を表明して、第二組合の育成強化に当るべきだと思うのであります。昨日の中労委のあつせんの話合いによりましても、社長の言葉の中に、第一組合がどう言うかわからぬというようなことを言われておることを見ましても、この点について、ひとつはつきりした見解を示さなければならぬと思います。  それから最後に、基準局長でありますが、多賀谷委員からの、掃除等を強制的にやらせておる事実があるが、これは労働時間の超過にならぬかという質問に対して、それについてはまだ何とも言えないという見解であるけれども、私は、これはそういうふうな考え方をとらないで、基準局長としてはもう一歩積極的に進むべきではないかと思う。私どもの考えでは、少くとも使用者側の命令によつて、しかもその工場の中において半強制的にやられるこういういろいろな競技とかあるいはまた掃除というようなもの、特に能率の向上の何とか競技というのは、実は競技ではなくして、働かすための方便のようなものであることは当然でありますが、掃除のごときも、こういう意味からいつて、これは一つ労働時間と考えてしかるべきものだと思う。こうしてこそ初めてこういう悪質なものの基準法によるところの摘発がはつきりとできると思うのだが、この点について、ひとつ見解を表明していただきたい。なお、時間の関係で一括して申しましたが、お答えによりましては、ひとつあとで時間をいただきまして、さらに一問一答を進めたいと思いますから、委員長ひとつ御了解を願いたいと思います。
  91. 日野吉夫

    ○日野委員 人権擁護局長にひとつ伺います。今法的根拠があればやれるということでありましたが、高等学校がまた職業安定所等にもこういう事実を通告しまして、募集等にそういうことのないようにいたしたいと思います。
  92. 赤松勇

    赤松委員長 ちよつと待つてください、大西君の質問が残つておりますから。
  93. 中西実

    ○中西説明員 近江絹糸の第一組合、第三組合の資格の問題でございますが、これは確かに先ほど申しましたように、御用組合の疑いが濃厚でございます。ただこれの決定権は労働委員会にある。国鉄労組につきましては、御承知のように、国鉄職員組合組合員は職員でなければならない、役員もまた職員でなければならないと公労法の四条の三項にはつきりとあるのであります。従つてこれははつきりした法律完備だということは、もしそういう条件で募集したとすれば、これは欺瞞行為であることだけは間違いない、詐欺募集ということになるので、十分法的根拠はあると思うのたが、人権擁護局長、こうした募集を中止させる手続がとれるかどうか。もしとれるならば、ひとつ遅滞なくその関係手続を厳重にやつてほしいと思うが、所見をひとつ伺いたい。
  94. 戸田正直

    ○戸田説明員 お答えいたします。学校がないのに学校があるというのは、うそであることは間違いありません。しかし、これが刑法上の詐欺罪になるかならないかというと、詐欺罪にはならないと思います。法律違反ということについては、これは相当疑問がございますので、今ただちにどうも申し上げにくいのですが、おそらく法律違反ということは非常に困難ではないか。しかしそういうことは好ましくないことでありますから、違反でございますので、違法性のある状態だということか申し上げられるわけでございます。一般の労組につきましては、この資格の関係、ことに非組合員の範囲というものは、この間から幾度も申しましたように、法律にはつきり書いてございませんし、明らかに使用者の利益を代表する者が入つておれば別でありますけれども、その資格認定は、資格審査を厳重に調査いたしました上でないと判定ができない。ただ労組法の二条の一号よりは、二号あたりに相当問題があるのじやないかというふうに考えられるのではなかろうか。それにいたしましても、こういつた個々の具体的な組合の認定につきましては、これは最後は労働委員会でやることになつております。その点公労法と労組法は全然立て方が違つております。
  95. 亀井光

    ○亀井説明員 第一点は富士宮の宿舎の畳数の問題だと思いますが、十二月末の調べでございますと畳数が千九百二十五畳に対しまして、入居人員が千二百二十人、これは大体一・五畳を占めておる。五月末でお説の通りに千四百四十六人を入れましたために一・三畳になつております。しかし六月になりますと人数が千二百五十一人になりましてこれまた全体としましては一・五畳を満足いたしております。ただ問題は、それよりも各寮別に見ますと違反があるわけでございます。従いましてわれわれはその点を追究いたしまして、先ほども御答弁申し上げましたように、現在は是正させておるわけでございます。  第二点の御質問の美化運動が労働時間になるかどうか。これは先ほど多賀谷委員の御質問に対しまして私がお答えしましたのは、実は寄宿舎の中の問題というふうにとりましたために、問題があるということを申し上げましたが、それが事業場の中でありますれば、当然労働時間の中に入るわけであります。現在におきましても、その問題は労働基準法違反容疑として今調査を進めております。
  96. 江下孝

    ○江下説明員 求人条件と違った労働条件について、いかなる措置をとつておるかということでございますが、先ほどもお答えいたしました通り、私どもといたしましては……。
  97. 大西正道

    ○大西(正)委員 いかなる処置ではなしに、求人募集要件と実施条件とが違つておる事実を、あなたの方は認識しておるかどうかということがまず第一点。それは具体的にどんなもの、どんなものというふうに言つてもらいたい。それに対してどういうふうに処置しておるか。
  98. 江下孝

    ○江下説明員 ちよつと長くなりますが……。
  99. 大西正道

    ○大西(正)委員 長くなつてもそれを言つてもらわないと困る。
  100. 江下孝

    ○江下説明員 求人条件と労働条件が食い違うということにつきましては、各工場につきまして絶えず調査をいたしまして、おおむね求人条件と合つている場合が多いのでございますが、近江絹糸の場合につきましては、やはり求人の条件と合わないというものが具体的に相当ございます。そこでそういう問題につきましては、安定所の方で個々の問題を取上げまして、会社に善処方を要望してくれということを従来とつてつたわけでございます。
  101. 大西正道

    ○大西(正)委員 職安法の違反で処罰谷委員の御質問に対しまして私がお答えしましたのは、実は寄宿舎の中の問題というふうにとりましたために、問題があるということを申し上げましたか、それが事業場の中でありますれば、当然労働時間の中に入るわけであります。現在におきましても、その問題は労働基準法違反容疑として今調査を進めております。
  102. 江下孝

    ○江下説明員 求人条件と違つた労働条件について、いかなる措置をとつておるかということでございますが、先ほどもお答えいたしました通り、私どもといたしましては……。
  103. 大西正道

    ○大西(正)委員 いかなる処置ではなしに、求人募集要件と実施条件とが違つておる事実を、あなたの方は認識しておるかどうかということがまず第一点。それは具体的にどんなもの、どんなものというふうに言つてもらいたい。していないのですか。
  104. 江下孝

    ○江下説明員 それは職安法の違反ということではございませんで、つまり求人条件に沿わない労働条件で、こさしますので、これについては将来会社に対して相当厳重に説諭をするとか、勧告をするとか、こういう点はできるわけでございます。
  105. 大西正道

    ○大西(正)委員 六十五条を何と見ているのですか。職安法第六十五条の九号によつて、これは当然あなたの方としてやらなければ、職務怠慢ですよ。
  106. 江下孝

    ○江下説明員 これはお話の通り、労働条件が法令に違反する場合に、それに応募をいたした、あるいは職業紹介を受けたいという場合でございます。
  107. 大西正道

    ○大西(正)委員 違う、もつとよく読んでください、そんなことじやないですよ、何を言つているのですか。
  108. 江下孝

    ○江下説明員 申し上げます。これは労働条件が法令に違反する工場事業場等のために、職業紹介、募集または労働者の供給を行つた者と申しますのは、民間の職業紹介を行います者、あるいは民間におきまして労働者の募集あるいは供給を行いました者、これらに対する制裁の規定でございます。官庁が行うということは、一応建前上あり得ないということに相なつておるわけでございます。
  109. 大西正道

    ○大西(正)委員 九号です。
  110. 江下孝

    ○江下説明員 九号ですか、これも同じように民間の業者の行いましたものに対する罰則でございます。これは「虚偽の広告をなし、又は虚偽の条件を呈示して、職業紹介、労働者の募集若しくは労働者の供給を行つた者」と書いてありますので、これは民間の業者が行つたということでございます。  それから第二点の富士宮の寄宿舎の問題でございますが、これにつきましては、基準局長から申し上げましたように、私の方でもその点気づきましたので、会社側に両三度是正を要望いたしております。その結果最近是正されたように伺つております。  それから十六条の解釈の問題でございますが、「著しく不適当である」という言葉でございまして、この判定はなかなか微妙でございます。そこで近江絹糸の場合に適当するかどうかということにつきましては、私どもといたしましては、紡績工場は、もちろん十大紡もございますが、中小の紡績もたくさんあるわけでございます。そこで大きい工場であるから当然労働条件はよくなくてはならぬということも、一応はいえるわけでございますけれども、しかしそれが大きいからといつて、必ずしも労働条件が非常に高くなくてはならぬということもいえない点もあるわけでございます。そこで中小企業の紡績業に比べますれば、決して近江絹糸も悪くないのでございまして、その点につきまして私どもといたしましては、近江絹糸工場がこの条件に該当するということを、にわかに断定することは早いのではないかと考えております。
  111. 赤松勇

    赤松委員長 中原健次君。
  112. 中原健次

    中原委員 四日間にわたつていろいろな重大な資料が提供されまして、いまさらのように近江絹糸労働事情については、ただ驚くばかりであります。しかるに労働省当局としては、なおかつ調査中であるという言葉が、ことに基準局長の口から述べられ、今日に至つてなおかつ調査中という状態が続けられて、これに対する指導庁あるいは監督官庁としての労働省当局か、何らまとまつた見解を持つことができるに至つておらないということ、そのことは、はたして労働省としての職務を正当に行使しておると言い得るのかどうか、これはたいへん大きな問題だと考えるのでございます。このことについてまず最初に、基準局長はどう思うか。少くとも数々の労働基準違反の事項が、枚挙にいとまないほどに指摘されておる。おそらくこの指摘された各種の労働基準違反の労働諸条件は、これはどのような雄弁をもつてしても、これをそうでないと説明づけることはできないであろう、私どもはそのように判断する。ことに深夜業等の問題が、年少女子とを問わず、これはすでに恒常化して、恒例的な労働事情になつておるようです。そのように一種の恒常性さえ持たされた深夜業が、そのままに監督官庁それ自身の目でいまだなおかつそれがはつきりつかまれておらないというのであつてみれば、これはたいへんなことだ。おそらく心を込めて公務を執行しておるとは言いがたい。あるいはまた労働条件の明示を関係労働諸君の目に十分見えるように工場に明示しなければならぬと思うのにかかわらず、そういうものは一度も見たこともない、こういうふうに言われておる。あるいはまた有給休暇の問題にしても、これは有給休暇は与うべきものなんです。工場の理由のいかんによつて与えなくてもよろしい、こういうことになつておらぬ、与えなくてはならない。しかるに、いまだなおかつこの問題が保障されておらない。あるいはまた生理休暇の問題にいたしましても、今のようなそういう状況の中では、おそらく生理休暇を申し出るの勇気を持つことができない。そういう大きな威圧を感じながら、奴隷的な条件のもとに仕事を強要されておることは、これだけ見ても想像することかきわめて容易だと思う。にもかかわらず、そういう問題に対しても、何らの指導的な措置が講ぜられておらない。ことにまた対抗競技の問題は、かなりつぶさに聞かせてもらいましたが、そのような条件をもつて対抗競技が強要されて行くということになつて参りますと、おそらく文字通り、からだのすべての精根をそこに削りとられてしまう。おそらく、そのような条件の中に追い込まれて労働が強制されて行くということになりますと、これは明らかに不当な労働強化の条件が、いわゆる奴隷的な条件が、そこに強要されておるということは、これはおそらく何人もが否定しようがないであろうと私は思う。私だけじやない、おそらくこの実相を聞かされたすべての人が、一様にそのように断ぜられるであろうと私は思う。しかるにかかわらず、そういうような恐るべき、不当なる労働条件の強要の実情がありながら、その実情が労働省当局において何ら指摘されておらない、重視されておらない。従つて、それに対する許す限りの措置を講ずる努力ももちろん払われておらない。もちろんたまたま何件かの処分に出られたこともあると、局長の報告の中にありましたが、これはきわめて家々たるものであつて、そのようなことで、このような劣悪化されておる労働条件を救うことはできないと同時に、労働者にまつたく自由なる意思で対等の気持で資本に対抗する条件などそこに望まれようはずかない。おそらく労働組合法、労働基準法、そのほかの労働関係法が制定された目的、またその制定された精神によつて期待されておるものに対して、この近江絹糸の実情ははたしてこれに近づくことのできるものであつたか、またあるであろうか。私はこのことを労働省当局者の諸君がほんとうにすぐれた知性を持つて、あるいは理性を持つて、この問題について真剣な検討を願わなければならぬと思う。しかるに先ほども特に基準局長は、万遺憾なく職務を執行されておるかのような現橿つて、いろいろ言われました。しかしながら、ほんとうにみずから省みてそれは恥じるところのない御発言であつたのであろうか、私はそれを疑う。さらに人権が決定的に無視されておるという諸事項については、これはもう先日来皆さんによつて十分指摘されておる点でありますが、たとえば、仏教がその絹糸工場の利潤追求の手段として利用されておる。ほんとうに心から仏教を信奉しておる者としてはうなずけないようなことが、しばくその他に繰返されながらも、二言目には仏陀を拝むことを強要しておる。その強要の中には一体何があるか、これは崇高な信仰心を助長しようとするがごときものでは毛頭ない、あくまで労働奴隷としての劣悪なる労働条件を強要して、その中にまた感謝を引出そうとする、そういうことが目的とされて、この宗教の強要がなされていることを、われわれ見のがすわけには行かぬのであります。あるいはまたそれと関連してか、人の当然の自由であるべき結婚の自由、あるいは結婚への条件を成立せしむべき諸条件を拒否しておる。あるいは信書か容赦なくほとんど片つぱしから点検されておる。中にはきわめて巧みにその文書をはがしながら、気づかざるようにこれをまた元のように封じ去つて、本人は見られていないかのごとくに錯覚に陥つておるけれども、実際はすでに見られておる。こういう事情も、先日来の参考人諸君お話の中からうかがうことができる。あるいはまた赤痢の重患者の措置のごときは、これはまつたく聞いてあきれる。一体どこにそういうような措置を平気でやり得るような人間が今日の時代に発見されるか、私はおそらくこういう恐るべき、憎むべき病者に対する不当な措置をなし得るような人は見つからないと思う。ここにただ一つ、夏川社長を先頭とする近江絹糸諸君の中に、そういうことが平気でできる、まつた良心も理性も知性もない、ただひたすらに不当利潤の追求だけが全部を占めておるような観を呈する、そういう実態がこの中にうかがわれる。しかもその場合に、保健所員あるいは役所の人たちがそういう実態を聞かされて、あわてで現場にかけつければ、一体何たることであるか、重患者を仏間の中にぶち込んで、その人々の前に病者が映らないように措置しておる、こういうようなことは、おそらく今日の時代の良心感覚ではもうとうてい想像ができない。しかもそういう驚くべき残酷な姿が、今われわれの前に映じておる。その前になせ労働省当局はこれをはつきりとつかむことができなかつたか、私はそう思う。今このことが問題になつたから初めて調査を進めるというようなしぐさは、実に労働行政の最も恥ずべき状態だと言わざるを得ないからであります。しかるに淡々として、ただいま調査中だ、こういう答弁をもつて、これらの事実を目の前に見せつけられながら、聞かされながら、その場を糊塗しようとするような心情は、職務遂行を十分やつておられると言える立場を保証することができるかどうか、私はそうじやないと思う。しかも、その反面には大垣工場を初め、その他それぞれその現場における官庁職員諸君接待をされることをもつて常態としている。ことにこの点に関しては、職業安定所職員に、その最たるものか立証される。そう言えば、基準局の方は、さようなことはいささかもない、こう言い切ろうとなさつておるようでありますけれども、これはあの近江絹糸の実情の中から、まだつかみ出されるであろう事実がたくさん想像される。ことにまた、先日の参考人の意見の中では、監督署はつきりとその中に入つておる。なおこの場合、それと関連いたしまして私が聞きたいことは、労働省当局は、ほんとうにこのような実態を見せつけられても、なおわれわれはみごとに職務を怠りなくやつてつたと言い切るのかどうか、私はそのことをお聞きしたい。おそらくこのような実情を見せつけられ、かつこれは、もはやわが国内だけの問題じやない。全世界の人権に関心を持ち、労働に心を注いでおるすべての人がこれは注目している。あきれたことだ、何というとてつもないことが日本の近江絹糸に起つているのかと、だれもが注目しているに違いない。そういう条件の中において、関係各局長諸君がどのようにしてそれに答えをなさろうとするであろうか、こういうことをあえて言わざを得ない。時間の関係があるので、私は個々の問題についての答弁を求めようとはいたしておりませんが、このような考え方から、今回の近江絹糸に起こつております数々の劣悪なる労働事博の中で、監督官庁あるいは行政権の執行者として、あるいは場合によれば司法的な処置をすべき立場の者として、ただ善処するという言葉に類似の言葉をもつて、われわれの答えとなさるのが至当なのかどうか、私はそのことをお聞きしたい。  なお最後に、具体的には安定所職員饗応の問題、これはきわめてはつきりしておる。この饗応の問題は、ことごとくと言つていいほど安定所職員にはまず酒をふるまわれておるようです。
  113. 赤松勇

    赤松委員長 中原君、ちよつと御相談ですが、もうすでに十五分を過ぎたのです。時間がずつとずれて来ておりますから、まだやつていただいていいのですが、簡潔に質問をしていただきたい。なお今駐留軍の方の長官も来ましたし、炭鉱の参考人も来ております。なおそのあとで決議をお諮りしたい。このことについて自由党から発言を求められておりますので、その点を含んで、できるだけ簡単にお願いいたします。
  114. 中原健次

    中原委員 要するに安定局長は、おそらくさきの参考人の実情の報告をお聞きになられたであろうと思うのですがもしあれをお聞きになつていられるとすれば、あのような実情に対して、どういう答えをしようとするつもりであるか、まずこれを伺つて、あわせて一応以上の諸点を羅列いたしましたが、これらの見のがすことのできないおそるべき劣悪なる労働者の人権の蹂躙、そして憲法の精神をまつたく顧みないばかりか、労働諸法規の存在するごとさえ忌みきろうておる、そういう態度をもつて臨んでおるこの労働に対する資本の措置に対して、政府はどのように臨まれようとしておるのか、そのこともお答え願いたいと思います。
  115. 亀井光

    ○亀井説明員 非常に御質問が広くて、どういう点についてお答えしてよいかわかりませんが、総括的にお答えいたしますと、ただいま多数の帳簿書類を調査いたしております。いやしくも司法処分をしますについては、的確なる自信のある証拠がなければできないものでございまして、むしろ相手の人権を侵害する結果になることをわれわれはおそれるのでございます。従いまして、慎重に目下調査をいたしております。その結果、法律違反がありますれば、われわれは法の命ずるところに従いまして処置をとりたい、かように考えております。  なおお言葉の中に、一昨々日でございましたか、仲川参考人の言葉の中に、監督署にも饗応を受けた者があるというふうなお話がございましたが、その日の速記録を見ていただきますれば、そういう言葉は二言も出ておりません。
  116. 江下孝

    ○江下説明員 お話安定所職員近江絹糸工場におきまして饗応を受けたという証言でございます。私は実はかねがね一番この問題について心配をいたしまして、現地の職員に対しましても、厳重にこの点については示達をいたしておつたのでございますが、もし仰せのような点があつたといたしますと、私は非常に残念に実は思う次第でございます。私自身といたしましても、職員の指導につきましての責任を感じますとともに、今後十分これは戒めて参りたいと思います。  ただ一言申し上げたいと思いますが、おそらく安定所職員会社におきましてそういう饗応らしいものを受けるという場合は、新しく学校を出ました人たちを郷里から引率をいたしまして工場に参りました場合、あるいは就職後の補導を会社内で行いますような場合に、夕方になつたということで、あるいは食事をということもあつだろうと思います。そこで、もちろんごく儀礼的な範囲でございますならば、これは当然でございますけれども、それにいたしましても、そういう場合に儀礼的な線を越えたといたしますれば、これは厳重に将来戒めるべきことであると思います。安定所といたしましては、御承知の通り非常に求職が多くて求人が少いのでございまして、求人者とはむしろサービスの意味で絶えず連絡をとつておく必要があるわけでございます。安定所は絶えず求人者を訪問いたしまして話し込むというようなことも再々あるわけでございます。あるいは多い中でございますので、そういう例もないとは申し上げられませんが、私はかねてからそういうことによつて絶対職務権限を左右することのないようにということを指示して来たのでございます。安定所職員も非常に苦労はいたしておるのでございますが、そういう点につきましては、再度申し上げますが、今後十分戒めて参りたいと思います。
  117. 中原健次

    中原委員 一番最後に基準局長にもう一度申し上げますが、もちろんいろいろ厖大な資料をお集めになつておると思うのです。それほどにたくさんに違反事項といいますか、不当事項が累積しておるのです。私が今問題としておることは、調査中であるということを否定しようとするものではない。いまさら調査中であるというような条件でこの問題に取組んでおることは、すでにおそいじやないか。このような問題の持ち上る前に、基準監督当局としては、こういう問題を十分討議されて、資料が十分集められ、これに対する措置がすでに十分なされておつてしかるべきだとわれわれは寄る。にもかかわらず、そのことが怠られておつた。いや、言い訳ほどしかなされておらなかつたということに対する局長としての責任は一体どうなんだ、このことを申し上げておる。だから、調査はしつかりしてもらいたい。手の届く限り手を届かして、この不当な労働措置に対して、基準監督当局のなすべきことの最善を尽してもらいたい、これは当然の要求です。これはやつてもらわなくちやならぬことだが、そういうことはすでに手落ちではないか。これに対して私はいわゆる良吏としての良識のあるお答えが聞きたい。ただそのことなんです。  なお安定局長の御答弁の中に、なるほどそういう特殊な催しの場合の接待といいますか、そういうことは、あるいは事情によれば許されなければならぬ場合もあるであろうと考えられないでもない。しかしながら、先ほどの陳弁の中からくみとれることは、そうでない。工場終つてから、たとえば八時なら八時から十二時というような時間までだらだらと延ばさておるのです。こういう事実が重ね重ね行われておる。こういうことは、単なる儀礼的な、食事の時間が来たから食事をふるまわれたというようなことでもつて説明できる事柄じやなかつたのです。なおこのことについては、もちろん職員諸君のいろいろな異議良心的な努力がまつたくないというのじやない。しかし、今現われておることについては、残念ながらわれわれはこのことを追究せざるを得ない。従つて、こういう事実をはつきりとつかまれた場合に、断固としてこれに対する措置をなされなければならなくなるのじやないか、それだけの決意をわれわれは必要とすると考えるのです。なぜならば、今後ほんとうに正当な労働行政を行うて行くためには、こういうことが軽く扱われては、良識あるりつぱな仕事ができないからなのでありまして、そういう意味で申し上げておるわけであります。  時間もないようでありますから、ただ以上のことを強く申し上げまして私の質疑を終ります。
  118. 赤松勇

    赤松委員長 この際自由党の方から何かありますか。
  119. 持永義夫

    ○持永委員 近江絹糸の問題について、当委員会として今決議をされるそうでありますが、その決議をされるについて、われわれの立場と申しますか、考えを一言申し上げておきたいと思います。  今度の労働委員会において、特に近江絹糸の問題を取上げられて、連日委員長初め各委員、また政府側さらに第二組合側、それぞれ熱心に御検討いただきましたことについては、われわれ非ただ率直に言いますると、今度の委員会におきましては、両当事者を呼んで公平に調査はされてないのでありす。というのは、会社側社長を呼ぼうというお話がありましたが、これについてはわれわれの立場といたしまして、ちようど今交渉の進行中でありますので、この際社長を呼んで刺激を与えるということは、あるいは交渉のために支障を来すおそれがあるということで、特にこれはしばらく延期してもらいました。これはわれわれの希望から出たのでありますが、しかしほんとうを言いますと、やはり社長かあるいはこれにかわるべき会社の当事者を呼んで、当事者としての意見を聞くのがほんとうでありましよう。また組合側といたしましても、第二以外の労働組合の人たちの意見も聞いて調査することが当然でありましようが、そこまて今度の委員会は及んでおりません。しかしながら、今日まで数回にわたつてわれわれがここで聞いたことは、大体において、間違いなかろうと考えます。しかし、ほんとうを言いますと、やはりただいま申し上げましたように、会社側、さらに他の組合からの意見も聞いて、いろいろ調査すべきであつたでありましよう。その点につきましては、われわれ決して不服を申し上げるわけではありませんが、そういう次第でありますから、本日の決議自体につきましても、われわれももとより賛成でありますが、巷間伝えるところによりますと、やはり労使おのおのの方にそれぞれの行き過ぎがあつたのではないか。われわれが新聞によつて承知するところによりますと、そう感じます。従つて、その点については、この際われわれは触れません。とにかく四日間の審議における調査について決議されることは異議ありませんが、そういう意味合いにおいて、ほんとうを言いますと、われわれは資本家側あるいは第二組合以外の組合側からの意見が聞きたかつたということを特に申し上げておきたいと思います。  それからもう一つ、これは特に重大でありますが、皆様がこういうふう連日熱心に御調査願いましたことは決して争議を長引かせようとか、あるいはただ会社を制裁するということが最後の目標ではありますまい。おそらく皆様方の一致した考えといたしまては、やはり何とかしてこの際争議を円満に解決して、再び事業が立つて社長自身も大いに反省をして適切な事業の運営をされることを希望されておると私は確信いたします。従つてこの委員会調査ということも、目的はそこにあるのだ。本日決議をいたしますが、その決議の最後にありますように、願わくは一刻も早く労使間における交渉が円満に妥結して、再び元のりつばな事業が成り立つように、そうして今度は更生した、いわゆる法令に準拠した事業運営がなされんことをわれわれは心から念願する、こういうことを申し上げて、われわれは決議案に賛成いたしたいと思います。
  120. 山口正義

    ○山口参考人 時間がないそうでありますし、それにただいま休戦中でありますので、多くは申し上げたくないのでありますが、ただ今度の近江絹糸の争議は、世間並の待遇にしてもらいたい、人間並の扱いをしてもらいたいというための闘いであります。そこで、この争議がここまで参りました経過につきましては、この委員会で審議されましたように、やはり取締り当局の責任が多分にあることがおわかりになつておるわけでありますが、われわれといたしましても、この点はまことに残念に思つております。職業安定所の職業紹介を停止されました後におきましても、なお暴力団等が月給八千円、食事付、宿屋付ということで、二十四日ないし二十五日、彦根、大垣に二十名、三十名参つております。これは警察によつていろいろ調べられて、凶器等も持つて来ている事実があるわけであります。こういうことがやはりその後においても行われております。しかも、この休戦中に出荷は停止する、ピケははずすという約束でありましたけれども、われわれ争議団に対しましては、きのうからある方面から出荷を強要されておる。ピケは解け、そのかわり荷物は出してやれというような状態になつております。従つて、この争議は、まことに残念でありますけれども、われわれはこのままの形では円満に解決しないのではないかという不安を持つております。そこでわれわれとしましては、加盟組合の全繊同盟の全国大会がこの十一日から新潟で開かれますが、この大会が開かれますとわれわれは大会の決議によつて、残念でありますけれどもこの争議をILOに提訴することになるというおそれもあるわけであります。従つてそういうことのないように、どうぞ本委員会なり政府の力によつてこの問題が一日も早く解決上、円満な経営の状態が始まりますよりに特にお願いを申し上げまして、この時間を借りまして感謝とお願いを申し上げる次第でございます。
  121. 赤松勇

    赤松委員長 それでは私から一点亀井基準局長にお伺いいたします。亀井基準局長は、本委員会において労働省の態度を明確にされました。それは争議とは別個に法律津反はあくまでこれを追求するのである、こういう態度を明確にされましたが、これを再度確認してよろしいかどうか。
  122. 亀井光

    ○亀井説明員 その通りであります。
  123. 赤松勇

    赤松委員長 次にお尋ねしますが、夏川社長の違反の物的事実が判明しておるかどうか。
  124. 亀井光

    ○亀井説明員 その点はまだわかりません。
  125. 赤松勇

    赤松委員長 先ほど来参考人から陳述がございました。なお私あて供述書も来ております。それによりますと、高村君の供述でございますけれども、工場会議、工務部長会議、こういう会議において社長みずからが深夜作業の問題あるいは労務問題、こういう諸問題につきまして、不当労働行為あるいは基準法違反等々の訓辞を行つた、しかもそれが文書によつて指示されておる、こういう事実が明らかになつておるのですが、このことは基準局においてすでにお調べになつておるかどうか、この点はいかがです。
  126. 亀井光

    ○亀井説明員 押収した物的証拠の中に入つておるように報告を受けておりますが、まだその内容については承知いたしておりません。
  127. 赤松勇

    赤松委員長 それでは本委員会におきまして、すでは一方の当事者がこの点につきましての物的証拠をば提示してこれを明らかにしたのでございますから、基準局においても早急に会社当局をお取調べになつて、この物的証拠が判明いたしましたならば、夏川社長に対する法作違反についてこれを追究するという態度にはかわりはございませんね。
  128. 亀井光

    ○亀井説明員 内容をよく存じませんので、それがただちに夏川社長の責任に及ぶかどうかということは、私ここで責任を持つてお答えできないのであります。
  129. 赤松勇

    赤松委員長 だからまた一方の会社側を調べなければならぬということはわかります。会社側を調べた結果、今の供述なり、陳述なりが事実であつたということが判明した場合には、当然これを指示あるいは訓示したところの社長は法律違反に問われることは事事なんですから、その場合基準局長として、昨日来の態度を明確になさいましたように、断固として法律違反として処罰なさるという態度にかわりございませんね。
  130. 亀井光

    ○亀井説明員 再度のことでございますが、証拠それ自体が社長の捺印その他社長の正しい訓示であり、あるいは指令であるという物的証拠にならない限りは、非常に証拠力として検討を要する問題があろうと思います。その点はまだ私内容をよく存じておりませんので、ここでお答えをする背任もないし、また権限もないと思います。
  131. 赤松勇

    赤松委員長 最初の争議とは別個に、法律違反の追究をやるということとは事実なんでございますね。
  132. 亀井光

    ○亀井説明員 それはわれわれ当然法律違反は是正させなければならぬと思います。
  133. 赤松勇

    赤松委員長 そうすると物的証拠があがつて、それが明確になつた場合には、当然法律違反として処置されるということになりますね。
  134. 亀井光

    ○亀井説明員 法律の命ずるところに従つて処断したいと思います。
  135. 赤松勇

    赤松委員長 それでは理事会で決定いたしました決議案文についてお諮りいたします。  ただいま調査中の近江絹糸紡績株式会社の争議問題について、決議を行いたいと存じます。  まずその案文を朗読いたします。    近江絹糸紡績株式会社の争議に関する決議  一、近江絹糸紡績株式会社においては、過去において既に労働組合法及び労働基準法違反の事実があり(労働省提出資料)、今回の労使間の争議に関し、当委員会において事実調査を行つた結果、憲法上の基本的人権侵害並びに労働組合法、労働基準法等についての違反の事実が認められた(第二組合員陳述)。    これらの法規産反の事実については、厳重なる処置を講ずると共に今後充分なる監督を実施するよう政府当局に申入れる。  二、当争議の調査によつて判明せるが如き事実行為は国際信用の上に影響するところ大である。    よつて、すみやかに争議の解決するよう希望する。    右決議する。  以上であります。これを本委員会の決議とすることに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  136. 赤松勇

    赤松委員長 御異議なしと認め、さよう決します。  それでは連日にわたりまして近江絹糸の関係の参考人の方々御苦労さまでした。右のような決議をもつて委員会といたしましては、この決議の責任を負つて、最後まで問題の正しい処理のために努力をしたい、かように思い。ますから、どうぞ工場にお帰りになりましたら、従業員諸君にもその旨よろしくお伝え願います。どうも御苦労さまでした。     ―――――――――――――
  137. 赤松勇

    赤松委員長 それでは委員会は土曜日でもあり連日やつておりますから五時で終りたいと思います。が、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  138. 赤松勇

    赤松委員長 それではさよう決します。  最初に駐留軍の労務関係から行いたいと思います。各自お急ぎでございましようからただちに質疑に移りたいと思います。  それでは先日に引続き駐留軍労務関係に対する質疑に移りたいと思います。多賀谷真稔君。
  139. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 福島長官にお尋ねいたしたいと思います。予算削減に伴います人員整理の点でございますが、もうすでに北海道におきましては移駐という問題の前に、予算削減に伴う人員整理を言つて来たように聞いたわけでございます。こういうようなきわめて大量の解雇をやります場合には、やはり政治的にも、また人事的関係からいいましても、当然米軍においては政府に事前に話があつてしかるべきだと思うのです。こういつた点について特調の方に話があつて行われたものか、また話合いをすべきような状態には置かれてないのか、こういう点について、一言承りたいと思います。
  140. 福島慎太郎

    ○福島説明員 ただいま御指摘のありました点は、北海道において最近解雇になります通知が昨日ありまして、九月十四日から解雇発生する部分の通知に、予算削減という理由も移駐という理由にあわせて記載してあつたことは事実御指摘の通りであります。しかしながら、北海道の移駐に伴つて人員整理の問題が起ることは、かなり早くから政府には相談がありまして、北海道移駐、引続いて自衛隊かこれに入るという関係の打合せは、かなり前から行われておりました。これに伴つて整理の関係ということについても、話合いは行われおつた次第であります。そしてそこへ予算削減に伴う大量解雇という問題が起つて参りまして、これにつきましては、今月の二十三日以来協議に入つておりますので、今回の陸軍の処置といたしましては、われわれは十分丁寧に協議態勢をとつてつたと考えておる次第であります。北海道問題の方は、移駐に関連する整理ということで前から計画されておりましたのに、最近の予算削減に伴う整理という理由をつけ加えた存でありましてしこの方が私どもとしてはむしろ大量整理に伴う整理人員の考慮の上に、北海道関係が、それも北海道関係で移駐ということで整理したのも、予算削減という数の中に入るということになりますと、それだけほかの地方の整理が少くなるわけでありまして、そういう事態をはつきりさせた方が、かえつていいのであると考えておる次第でございます。
  141. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 長官が一昨日お話になりました予算削減に伴う人員整理の中に、このたびの移駐も含めて行われるのであろう、こういうお話がありましたが、今お話の通り、むしろ予算という言葉がついた方が、主たる目的は移駐であるのでかえつて今後の交渉がやりやすい、こういうお話でありました。その点がその通りであるならば私了解するわけでありますが、現地の方はどういう受取り方をしておるのでしようか、これは市川参考人からお伺いいたしたいと思います。
  142. 市川誠

    ○市川参考人 整理の人員の問題につきましては、きよう現地の方から本部に連絡があつたのでありますが、九月の十四日に解雇が発効する者が五百四十七名通告をされたのであります。これは千歳で三百三十名、札幌で二百十七名という数字であります。  この受取り方の問題でありますが、北海道といたしましては、最初部隊が東北地方に移動するというような点で問題が提起されておりましたので、それに伴う対策の問題いろいろと議しておつたのであります。一点として申し上げるならば、労務者の中では、東北地方に部隊が移動するならば、部隊と同行するという希望者もあつたのであります。私どもの方で調査した事情によりますと、およそ調査対象四千二百名ほどに対しまして、七百四十名ほどの部隊との同行希望者があつたのであります。従つて、これらにつきましては、いろいろ労働者の職業、あるいは北海道地域において失職した場合に、その地域におけるあとの就職の可能性等の問題も考えまして、できるならば部隊との同行の問題も一つの具体的な対策の一点として考えておつたのであります。部隊側にも、この点につきましては十分善処を求むるような申入れもいたしておつたわけであります。今回のように予算削減という名目で出された場合には、おそらく部隊側といたしましては、この同行希望者に対しまして、それは撤退に伴う整理ではないから、同行というような問題を組合側が申し入れた場合に、それは予算削減によつて整理されるものであるからという理由で、おそらく同行希望を拒否して来るのではないか、そういうような点が危惧されるわけであります。従つて、そういうような状態になりますと、現実的な失業対策というような面から非常に食い違いが出て来て、なかなかむずかしい問題になるのではないかという点から、今回初めて第一次として出されました五百四十七名の解雇の通告が、予算の削減という理由で出されて来ました点におきましては、きよう通知を受けたばかりでありますが、十分その事実、真相、原因等をきわめまして、たとい予算削減であろうとあるいは撤退であろうと、現実に北海道の労務者が、LSO労務者でございますが、四千数百名失職する事態は歴然としておりますので、そういうようなあとの対策の問題と関連せしめまして、究明して行きたい。おそらく部隊側としては、同行希望を断つて来るというような見地から、この理由を出して来たのではないかというように、一応警戒的な立場をもつてこれを見て、今引続いて調査中、こういう事情でございます。
  143. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 長官にお尋ねいたしますが、今お聞きの通り同行を拒否せられるのではなびろうか、こういうことを非常に危惧しておるようでありますけれども、この点については十分向うと協議して、その希望に沿うように努力され、またその実現の見込みがあるかどうか、お尋ねいたします。
  144. 福島慎太郎

    ○福島説明員 同行の問題でありますが、これは同行したいという諸君が七百数十名おるということは事実であります。それからアメリカ側に対して、できるだけ同行せしめてもらいたい、また東北地方における宿舎その他の関係もくふうの余地はある、多少の設備はあるではないかということで話をしておつたわけでありますが、そのときは今の予算削減の理由というのは、まだ出て来ていない時代の話であります。そのときにおいて、すでにその同行は、座間における陸軍司令部の担当者としては、努力はしてみるが困難であるという大体の話であるわけです。その困難の理由といたしますところは、移駐いたしますのは騎兵第一師団というものが動く、騎兵第一師団にはLSO労務者は一人もいらないのだ、こういう主張をするわけです。北海道にはキヤンプ千歳とかキヤンプ真駒内とか、そういうキヤンプがありまして、そのキヤンプに一人の司令官がついていて、それ白保が一種の宿屋みたいな部隊で、LSO労務者はそのキヤンプに雇用関係を持つておる。東北地方にも、キヤンプ何というのですか、名前をちよつと度忘れいたしましたが、やはり同じような構造でキヤンプがあつて、それに司令官もあり、現在でも労務者もついておるというわけです。中にとまつているお客さんだけが越すので、宿屋の方は越すのじやないのだ、違う宿屋に行くわけだから、宿屋の方はその場で廃止になつてしまう、移駐する騎兵第一師団には一人も労務者がついておらない、従つて転勤という理論上の形がなかなかとりにくいのだ、こういうことを一応アメリカ側としては、主張しておる。そこでやむを得なければ、どうせ東北におけるキヤンプで新たに人を増員する必要もあるであろうから、東北地方に縁故のある人もしくは東北地方から行つた人は、東北地方に自発的に移つて、そこで採用問題ということになればということも申しておつたのですが、しかし、その東北地方のキヤンプの司令官の立場としては、東北地方のキヤンプそれ自体においても、かねがね人員整理なども相当にやつたことがある。過去において人員整理をやつたキヤンプで、今度人を新しく採用しなければならぬといつた場合には、過去において整理した人に手を伸ばすべきであつて、よそから連れて来るということは、どうも東北地方の事情としては感心しない、こう言つて東北地方のキヤンプ司令官はがんばる。こういうような事情を説明されておりまして、今の予算問題が出て参ります以前から、同行するという問題は、労務者諸君の側に熱心なる希望があり、七百数十名に及ぶ熱心なる希望者があるにもかかわらず、実現は困難ではないかと考えておつた点なのであります。従いまして、予算削減の理由がついたからこれが困難になるという筋合いのものではございませんで、前々からそういつたようなアメリカ軍の組織の関係もしくは東北地方のかつての退職者に対する仁義の問題、そういつた関係から、困難性を指摘されておつた問題であるわけでございます。
  145. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 今の同行の件については、きわめて困難であるというお話ですが、これは東北のキヤンプの方で増員する場合には、元解雇した人を雇い入れる、こういうことが明確になり、事実そういうように扱われるといたしますと、われわれもこれは困難であろうと思うのですが、必ずしもそういう状態になくて、新たに雇用する、また前に解雇された人がすでに再就職をするような状態に置かれておるかどうかということも疑問ですし、私はこういう際にはやはりそこで折衝されて、何らか同行希望者の意に沿うように努力いたしてもらいたい、かようにお願いする次第でございます。  続いて、今後の人員整理の予算に伴う問題でありますが、予算に伴う人員整理の人員と時期をやはり早急に把握して、そうして労務者に対処させなければならない点もあるであろうと思うのですか、今後は全面的に協議があるものかないものか。今、協議態勢はできておる、こういう話でありますが、それはこちらの態勢だけであるのか、十分向うは協議するということを確約しておるのかどうか、お尋ねいたしたい。
  146. 福島慎太郎

    ○福島説明員 全面的な人員整理に伴います協議という問題につきましては、今日までの事態において、なすべき協議はすべて陸軍側はなして参つたわけでございまして、今後はこれを各部隊に指令を流しまして、各部隊から数字を取寄せまして、それに基いて何人の総解雇を必要とするか、それがどういう地方に何人ずつ分布されるか、そういうアメリカ側の第一案を得ましてから日本政府と協議に入ろうということは、確約いたしておるのでありまことは、確約いたしておるのでありまして、協議態勢は陸軍側にも、また日本政府側にも十分整つておるわけでありまして、またわれわれとアメリカ軍側との間に協議が始まりますれば、組合側にも参加してもらつて、三者会談の形で相互に了解を遂げて行きたいと考えておる次第であります。
  147. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 さらに特別退職手当の問題ですが、こういう特殊な労務者、ことに短期労務者といいますか、そういう特殊な労務者については、やはり特別退職金という問題は当然である、こういうお話であります。額については別でございますが、その理由は承認できるだろう、こういうお話であります。そこで私はお尋ねいたしたいのですが、こういつた労務者は、むしろ二、三年の者が、一般の者よりも――一般といいますと公務員ですが、公務員よりも低い、あるいは六年から十年になるとむしろ高い、こういう話であります。それについて、私はきわめて疑問を持つわけですが、こういつた労務者ですから、割合に低い年限の者が高くなくちやならないのに、公務員のように比較的長期、一生を通じて勤める、こういつた性格の者の方がむしろカーブとしてはだんだんあとになるほどよくなくちやならない。下の方は、少くとも五年とか十年という間は、比較的少いというのがカーブのように考えるのですが、この点逆になつておるようですが、その事情をちよつとお聞かせ願いたいと思うのです。
  148. 福島慎太郎

    ○福島説明員 もともと駐留軍労務の退職手当というものは、公務員の線のちよつと上まわつたところに比率的、比例的には定め、数字的には比例の数字として定めたものなのであります。短期の者も長期の者も、公務員よりは若干有利に、ここら辺がせいぜい、向と申しますか短期、いつ何時終りになるかわからぬ労務関係であるからということできめたのだろうと思いますが初めの制度というものは、短期の者についても長期の者についても、公務員より若干上まわる線にきまつてつたわけなんです。ところが、それと同時に給与ベースそのものについても、公務員よりも一割でありましたか、これも短期の労務者であるからというので、これまた上の線にきまつたわけです。それで退職手当の倍率というものが公務員と同じような動き方で、しかもちよつと上まわつておるという線でありましたので、ベースが違いますから、年数がふえて来ますと金額がやはり比例的に大きくなる。従つて六年以上の者は――四年くらいでしよう、以上の者は公務員との離れ方がますますはなはだしくなつてつたわけです。長期の十年くらいになる者については、現在の制度でも、公務員よりも相当いいわけなんです。ところが公務員の行政整理退職手当というものが、これは数回ございましたのですが、今の駐留軍労務者の関係と公務員との関係を最初に定めました、後に、公務員の行政整理退職手当関係が動き出して来たわけであります。下の方だけが最低保障といつたような制度ができまして、いろいろな関係で下の方だけが公務員の制度が追い越して現在になつておる。上の方は従来から相当駐留軍労務者の方が公務員を抜いておりましたので、公務員制度のかわり方がありましても、これはまだ追いついて来ておらないというのが現状である。ですから一年、二年、三年くらいが、現状では駐留軍労務者の方が公務員に比較して不利だ、こういう現状になつておるわけであります。ところが、もう一つ考慮を加えなければならない問題がございますのは、駐留軍労務者の場合に、平和発効を機として雇用関係を切りかえるということで、一ぺんそこで退職手当を清算してしまつたわけであります。これについては、もちろん清算したくないというアメリカ側の議論もありました。清算しろという組合側の議論もあつた。日本政府としては、清算するという建前に賛成いたしまして、むりやり清算したわけであります。でございますから、初めの四年なりなんなりというものをこの際ゼロにしてしまつた。まあかりに私がアメリカの立場たと仮定すれば、あのときに清算しろしろと退職手当をとつてしまうから今全員が二年とか三年とかいうものになつてしまつたのじやないか、あれをとらずにおけば、今日みな六年、七年、八年ということになるのだから、公務員の退職手当よりもはるかに上まわつておるのじやないか。公務員の退職手当以上のものがほしいというのはいいが、あのときの退職手当を返せ、こういう議論をしたくなるであろうということでございます。その点二つ組み合せて正直に申しますといずれか有利に解決しなければならぬと考えておりますので、議論は相当こみ合うとは思いますけれども、公務員の新たにできました最低保障といつたような線に準じて一年、二年、三年の諸君の全部が、全部初めから六年も七年も勤めておつたわけではございませんから、退職手当をもらつた、もらわないという議論に関係のない人もいるわけでありますから、一年、二年、三年の諸君の部分については現在の公務員の線を若干上まわるくらいの線を、われわれとしては最後の線として考えておるという状況であります。
  149. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 一般の公務員にも特別退職手当というものがあるのですから、ことに予算削減に伴う行政整理という点においては同じである。でありますから、せひできるだけ努力して、その線を確保していただきたいと思うのですが、もしアメリカがどうしても出さぬと言つた場合には、これは政府としても何らか考慮をされる余地があるのか。現在あるいは予算がない、そういう予算に使われない、こう言われるかもしれませんが、考え方として、私はやはり使い得る予算がある、かように思うのですか、長官はどういうようにお考えですか。
  150. 福島慎太郎

    ○福島説明員 この点がどうもはなはだお答えしにくい点でありますが、私どものレベルにおきましてお答え申し上げ得る限度におきましては、これがアメリカからとれないということになつた場合には、日本政府でかぶるだけの努力をするかということになれば、もちろん私どもとしては、努力をしなければならぬと思いますが、しかしその実現の可能性があるかということになりますと、われわれの事務的なレベルにおきましては、本年度の予算その他の関係におきましては、実現ははなはだしく困難であると申し上げるほかはない。しかしながら、公務員等に比較して駐留軍労務者の特別退職手当というものの持つております意義その他の関係から、政府としてこれをどういうふうに考えるかということになりますと、はなはだどうも申訳ないのでありますが、私ども以上のレベルでお答えいたさないと、確たるお答えができないのではないかと考えております。
  151. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 どうも長官は予算の責任者でないからと、暗にそういうことをほのめかされての話ですが、まつたくその点もやむを得ない点もあるかと思うのです。しかし長官としてはその腹でひとつ努力していただきたい、かようにお願いする次第であります。  続いて職業安定局長にお尋ねいたしますが、北海道にこれだけ失業者が出るわけです。炭鉱の方は比較的北海道は大手ですけれども、中小炭鉱もかなりある。大手も、企業は廃止しませんけれども、すでに失業者が昨年から出て、それが失業保険が全部切れておる。また中小企業も失業保険を現在とりつつある、これが失業になつて現れつつある、加うるに駐留軍労務者の失業者が出る。こういうことになりますと、当然北海道にはやはり特殊な職業補導というようなものが考えられなければならないと私は思うのです。この職業補導について、どういうようなお考えであるか、お尋ねいたしたい。
  152. 江下孝

    ○江下説明員 北海道の駐留軍労務者の離職の問題につきまして、私どもといたしましても、一時に非常に大量の失業者が出るおそれがありますので心配をいたしております。これにつきましては、調達庁とも緊密に連絡をいたしまして、とにかくその離職者の生活安定を期する意味におきまして、最善の手を打つということで、目下諸般の対策を立案中でございます。現在失業対策課長が北海道に参りまして、この問題につきまして現地におきまして相当こまかい点にまで打合せをしておるはずでございまして、いずれ帰りまして具体的にまた計画ができました場合には御説明をいたしたいと思います。職業補導の問題は、お話の通りこういう際には非常に有効適切に働く事業であると思つております。そこで非常に乏しい予算ではございますけれども、今回北海道の離職者に対しましては、何かこの職業補導を新たに実施するという面で、目下いろいろ検討をいたしておるところでございます。
  153. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 では北海道については、具体的に職業補導を行うという線に沿うて検討中である、かように了解してよろしいでしようか。
  154. 江下孝

    ○江下説明員 全員職業補導というようなことには、なかなかなりまいと思いますけれども、特に必要な方々に対しては、職業補導も、一部の失業対策といたしまして実施をいたしたいという意味でございます。
  155. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 この際、ついでですからお尋ねしておきますが、知識人の職業補導というのは、戦前にもあり、戦後にも少しあつたと思うのですが、そういつた関係は今後どうされるのか、お答え願いたいと思います。
  156. 江下孝

    ○江下説明員 お尋ねの意味は、知識人の失業救済という意味でございましよう、そういう意味に考えてお答えいたしたいと思います。  終戦後失業対策事業を実施いたしましたときに、当然知識層の失業対策も必要であるということで、一部実施いたしたこともございましたけれども、とにかく現在の日本といたしまして、最も緊急なものは荒れた国土の回復であるということからいたしまして、もつぱら建設復旧の作業に重点を置いて現在まで実施をいたして来たわけでございます。最近、お話の通り知識層の失業問題が、だんだん大きく取上げられるようになつて参りましたので、これは今ただちに実施するということはまだ申し上げる時期ではございませんが、実は慎重にこの点もあわせて考究中でございます。
  157. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 この際市川参考人にお尋ねいたしたいと思います。この前も実情をお話なさいましたが、さらに現在の駐留軍労務者として政府並びに当委員会にどういう要望があるか、ごく簡単に条項別にお話を願いたいと思います。
  158. 市川誠

    ○市川参考人 昨日も簡単に申し上げたのでありますが、今まで北海道の撤退の問題並びに陸軍部隊の予算削減に伴う大量整理等を想定いたしまして、いろいろと折衝して参つたのであります。その中では、やはり現行測度、要するに現在の失業対策事業あるいはその他の諸法がありますが、それらのわくの中で参りますと、いずれ本頭打ちしてしまう。労働省と折価いたしましても、ほかに就職する余地のない者は失対事業に行つてくれ、失対事業がなかつたら生活保護法々受けてくれという言い分が、政府当局者の回答になつているわけです。これでに現実の失業対策の問題が解決しないのではないか。駐留軍の労働者ばかりでなく、他の産業にもかなり労働者の生活の危機は来ている。こういう情勢におきましては、やはり現行制度のわくを越えた失業対策というものが、全般的な見地から講じられなければならないのではないか。それらの点については、国会等で十分に御審議の上、御配慮願いたいと思うのであります。もちろん労働者といたしますれば、今働いているところを首切られたにいたしましても、単に自分が生活をし家族が生活して行くだけの生活収入を得る事業がありますならば、失業の問題をそうとやかくは現実的には言つて参らぬと思うのでありますけれども、他にどうしても生活の資料を得る働き場所がないために、この首切りに対する問題はきわめて険しい問題として労使間に横たわつて来ていると思うのであります。そういう点では、特にわれわれのような駐留軍労働者は、占領直後から、だれも行きたがらない職場に、当初はひどいものは都道府県等の徴用的な令状に類したものも出され、そして職場につけられた者が、他はなかなかよい職が在のでそのまま続いておつたという形態があるのであります。そういうように長い間まじめに働いて来た者が、いよいよ用がなくなつたということだけで首切られるということは、非常につらいことでありますので、この際完全な失業対策というものができるまでの間としては、その中間的な、あるいは臨時的な生活保障という見地からも、私どもが具体的に要求しておりますところの特別退職手当の支給の問題を現実的な問題として考えてもらいたい。特に先ほど申し上げたように、現行制度のわくを越えた措置を考えてもらいたいという点は、現在失業した労働者に対しては、失業保険金が唯一の生活の資になつておりますが、この給付期間が満つるまでの間に他の事業場に就職するということは困難でありまして、給付期間が切れた後も失業の状態に置かれているというのが最近の情勢であります。こういう状態を見ますと、失業保険経済という問題があるかもしれませんが、駐留軍労働者の失業という問題は、要するに政府が再軍備政策をどんどん強行して参りまして、自衛隊の肩がわりということが今度端的に出て来た問題であります。そうとすれば、われわれとしてはこの際政府の施策によつて犠牲者を出す、この犠牲者の救済の問題につきましては、失業保険法の改正の問題、具体的には給付期間の延長という問題を当面の措置としてやはり早急に措置をしてもらいたい、こう考えているのであります。いずれにいたしましても、このような失業保険給付期間の延長とか、特別退職手当の支給という問題は、ほんとうに臨時的な失業者に対する弥縫的な措置でありまして、抜本的にはやはり一般的な産業復興によるところの雇用の増大をはかつて失業者を吸収するという問題が、根本的な問題でありますが、それらはなかなか言うべくしてただちに求め得られない問題であります。この際一般的な労働事情、その中において特に恵まれない状況下に過して来たところの駐留軍労働者のために、ぜひとも速急に現行制度のわくを越えての対策を確立してもらいたい。それに至るまでの経過といたしまして、一、二触れたようた問題について、政府当局に速急な措置をとつてもらいたい。特にこれは政府の責任において相当はつきりした措置をとつてもらいたい。また軍当局に対しましても、いろいろ予算削減というような理由で拒否をするであろうということも予想にかたくないのでありますが、すでに十年にもなんなんとする期間、日本の土地におつた外国軍隊として、やはり自分たちが使つてつた労働者に対するところの労働報酬の問題から行きましても、完全に補償されておつたかどうかという問題も、われわれの側から言いますれば、かなりの言い分がありますので、軍当局にも、政府といたしましては強硬な態度をもつてこの問題の解決について補償してもらいたい、かように考えています。先ほど調達庁長官が、占領時代の退職手当を清算したという問題に言及されましたが、労働組合として、労働者としてあの要求をいたしましたものは、占領時において五年勤めましても、軍の理由によつて、お前は不良解雇だと言われたときには、三万、四万の退職金が一銭ももらえないでほうり出された。そういうような労働者に対して、日本の労働法による保護というものはとられなかつたのであります。独立後においても、そういうような事態に対する補償というものはちつともなかつたのであります。そして労働組合といたしましては、少くともこの際占領時代の退職手当というものをはつきり支払つておいていただいて、今後どういう理由で解雇されるにいたしましても、過去数年にわたる勤務に対する退職手当が一銭ももらえない事態があつてはいけないというので、現実的な補償の問題から、占領時代の退職手当を清算してもらうというようなことを要求したというような経緯もあるのであります。幸い独立後におきましては、私どもの具体的要求なりあるいは交渉も、そのような軍の不当な措置についてはあくまで追究して行くし、政府側といたしましても、占領時代に比較しますれば、それらの問題の解決についてもやや改善されたこともあることは事実でありますが、そういうような経緯もありまして、占領時代の退職手当の清算という点をわれわれは取上げた次第であります。いろいろこまかい点を申し上げますと、かなり苦しい、そしていためつけられた事態というものは枚挙にいとまがないのです。今申し上げましたように、軍側の、お前は不良だというような事由によつて、ほんとうに二年、三年、四年勤めた者が、退職手当を得ることができないで職場を去つてつたこれらの人たちに支給すべき退職手当相当額としては、詳細に計算したことはございませんが、おそらく数億に達する退職手当というものが無支給のままに置かれておつたという占領時代の経緯等も考えた場合に、今、軍が、ある地域における任務が終つて撤退する場合におきましては、最終的措置といたしまして、当面最小限度の補償問題として、特別退職手当の支給の問題等を焦眉の急務の問題として措置していただきたい、労働者としてはこのように要求する。これはすでに組織された私ども組合員だけの要求ではなくて、一般未組織の労働者の要求にもなつておりまして、この要求を闘い取つて行くためには、かなりの決意を持つております。大量整理等の発表、情勢のいかんによつては、かなりの労働問題としての険しい状況というものが出て来ることも予想されますので、以上申し上げた点はきわめて一、二の点でありますが、これらについて特に重点的に措置を願いたいということを要望しておきたいと思います。     ―――――――――――――
  159. 赤松勇

    赤松委員長 それでは炭鉱関係の労働問題について、本日御出席を願うことになつておりました参考人高倉矢一君は病気のため出席できませんので、古野常雄君より参考人としての御意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  160. 赤松勇

    赤松委員長 御異議なしと認め、さよう決します。     ―――――――――――――
  161. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 食糧庁に食糧対策協議会の答申に関してお尋ねいたします。私十分承知していないし、答申案ですから、この答申について今後食糧庁がおきめになるのであろうと、まあ常識的に考えてお尋ねしておきます。また食糧対策協議会の内容もよくわかりませんし、検討されたその経緯についても、実は十分承知しておりませんので、その説明も願いたいのです。私が質問をいたしたいことは、労務加配米についてでございます。答申によりますと「労務加配は現行の業種及び配給基準量を調整する。」こういうふうに書いてございます。そういたしまして、なお説明書には、労務加配は業種及び基準量を整理して、加配米の数量を逐次減少することを考えておるというように書いてあります。でありますから、表面から申しますと、調整をするということで、労務加配のわくででこぼこを調整するというように見受けられるのですが、この説明によりますと、そうでなく、逐次減少するのだ、こういうように書いてありますところを見ますと、次の条項にございまするやみ米の流通最中相当部分は業務用に充てられているので、必要に応じ業務用米の供給を実施して、やみ米の減少に努める。さらにその説明につきましては、従来業務用に流れていたやみ米の減少をはかるものであり、特に大消費地に重点を置いて実施することが適当である、こういうようにも書いてありまして、これらを総合的に考えてみますと、むしろ労務加配米を減少して、その面のみではございませんけれども、一部を業務用にまわすのではなかろうか、こういうようにも考えられるわけであります。今炭鉱の関係者が参考人として本委員会に来ておりますが、炭鉱あるいは造船を初めといたしまして、産業労働者は非常な悲惨な状態に陥つております。こういう状態の中で、今労務加配米を調整されるということは、これはきわめて重大な、深刻な社会問題を惹起すると思うのであります。それでなくても、今賃金を下げんとする動きがあり、また現実に賃金を切下げられ、あるいは遅配、欠配にあえいでおるので、今の配給制度あるいは労務加配というものがなければ、現在の状態では、むしろ米屋を襲つたあの暴動が起るやもしれない。起らないというのは、やはり主食を配給し、労務加配をつけておるからで、こういう面もなきにしもあらずと思うのですが、こういう事情の中で、なぜ労務加配米をいらわれるのか、この点についてお聞かせ願いたい。
  162. 伊東正義

    ○伊東説明員 お答えいたします。食糧対策協議会の答申でございますが、その答申の出ました経緯を簡単に申し上げますと、その答申案につきましては、官庁側から案を出すということは全然いたしませんで、委員さんの中で特別委員をつくられ、さらに少数の起草委員をつくられまして、委員さんの独自の考え方で答申をつくつておられます。それで答申の基調でありますが、私たちその答申を読みまして感じますことは、たしか前文にもうたつてありますように、現在直接統制をやつておるのは米だけだ。それで米につきましても、できるならば間接統制といいますか、現行の麦式な間接統制、そういうふうに持つて行くことが理想であるが、現在はいろいろな社会経済情勢あるいは政府の手持ち等から考えて、まだそこには一挙に行けぬ。しかしだんだん食生活の改善でありますとか、あるいは国内の食糧の増産をはかりまして、だんだんそつちの方に持つて行きたいというような基調で、答申が書かれているように私たちは見ております。  それで中をごらんになりますと、わかると思いますが、たとえば集荷の問題にしましても、来年度以降は予約制ということで、集荷団体の機能を活用して、割当をやめるというような思想が盛り込まれております。それから配給の問題のところへ参りますと、たしか十五日程度ということが書いてあるはずでございます。内地米、準内地米、外地米を入れて十五日程度という表現が使つてあります。その説明にも書いてあるのでありますが、十五日程度と書いたのは、現在生産県とか消費県で実は配給日数が違つております。これは御承知の通りでございます。これをなるべく平均化したいということが一つ。それからもう一つは、輸入食糧の問題で触れておられるのでありますが、去年のような凶作の場合は、実はあとで四、五十万トンも米を入れまして、外米で十五日の配給日数を維持するというようなことをやつたわけであります。その答申案の思想は、たとい凶作の場合でも、外米をどんどん入れるということは考えたらどうか。外米が麦に比較して割高であります間は、外米の輸入は大体一定限度にして、足らぬ分は麦製品でやつたらどうかという思想が入つているのであります。それを受けまして十五日程度としてありまして、非常な凶作の場合には、十五日を切るということも考えられるのだというふうな説明が実はあるはずでございます。  今申し上げましたように、その答申の基調が食管制度というものの荷をだんだん軽くして行こうという思想で書いてあるわけでございます。それで今御指摘のありました労務加配の問題でございますが、これにつきましては、委員さんの間でも実はいろいろ意見が出まして、答申案の中にはつきりと減らせということを書くべきだと言う委員さんもございましたし、また炭鉱関係の高木さんでございますか、出ておられまして、そういうことは困るというような発言をされたり、中でいろいろ意見があつたのでございます。しかし、多くの委員さんの意見は、そこに書いてありますように、今の業種なり配給基準量は、これは昔と言つては何ですが、安本時代につくられたままになつておりまして、その当時いわゆる食糧の物量を確保するというような目的でいろいろな基準ができているのでございます。それをもう一回検討して、ただ物量的な問題でなく、いろいろな問題に関連して参りますが、そういう問題も含めて検討したらどうかという意見が強かつたわけでございます。それから量の問題は、労務加配だけを減らすという意味はございませんで、さつき申し上げましたような配給の方も、場合によつたらだんだん減らすというな思想に出ているものでございますから、そういうようなことで書いてあると思います。  もう一点の、業務用米のことでございますが、これは説明にも書いてあると思うのでありますが、今の食管制度の一番盲点といいますか、出ておりますのは、やみの問題であります、なるべくやみでなく、配給の方の正式なルートに乗せて行く方をよけいにしなければいかぬのではないか。これはさつき申しました思想から行きますと、少しニュアンスが違うような感じがいたしますが、今の法律の穴をふさぐべきではないか。それには今のやみ米が非常に高くなるような場合には、ある程度それより低い価格で政府が売つて、価格を押えるとか、そういうようなことをして、正式なルートに乗るものを若干多くするようなことを考えたらどうかというようなことで、それは書いてございます。われわれといたしましては、その答申を受けまして、これをどういうふうにするかということを実は今検討中でございます。  今述べられました労務加配をどういうふうにするかということにつきましても、これは実に業種が多うございまして、中央指定にしてございますのが百三十幾つ、地方指定が百十幾つかございます。基準量の段階も中央で十九段階、地方で十八段階、実に功緻といいますか、えらい詳しいものができているわけでございます。これをどういじるにしましても、どういう基準でどういじつたらいいかということは、これは私見になりますが、食糧庁だけでそういうものをいじくるということはなかなかむずかしい。これは検討するにしても、相当いろいろな専門家の方に集まつてもらつて手をつけぬことには、簡単には手をつけられないのではないかと考えております。今その答申を受けましてどうするかということは、政府で検討中でございます。
  163. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 この答申の委員の名簿を拝見いたしまして、この委員さんについてとやかく言うことは控えたいと思いますが、答申全般を見ますと、少くとも中流家庭以上を標準にしてのお話のようにしか聞えない。現在麦を入れてみましても、これは御存じのような副食の問題も伴うわけでございまして、パンということになりましても、重労働者は長い間の慣習で必ずしもこれが適合しない、こういう面も出て来るわけでございます。今それでなくても非常に労働者は社会不安におびえておる。単に労働問題としてよりも、社会問題として、治安問題としてこの委員会あたりでも取上げようとしているような空気も非常に強い。労働省では取扱いかねるという問題まで出ておる状態であります。こういうときに、いいにしろ悪いにしろ、これをいわれるということは、労働者に対する影響が非常に大きいと私は思います。ですから、このデフレの状態が一応正常に帰つて、さらに再検討されるということならばともかくといたしまして、現状において、しかも非常にデフレの政策にあえいでいる産業の労働者に対して、この調整が行われるということになりますと、これはゆゆしき問題になると思う。先ほども触れましたが、米が配給になり、加配米が何とかいただけるということで、社会不安を緩和している面が非常に私は多いと思います。米だけは何とかなる、こういう点が、現在これだけの事情にあつて、暴動化しないゆえんであろうと私は思うのですが、そういう、点を十分考慮なさつて、食糧庁としては十分な対処をしていただきたい、そうして十分各層の意見を聞いていただきたい。なるほど委員は各層であると言われますけれども、労働者出身もいませんし、高木さんはやはり社長でありまして、石炭協会を代表されてはおりますけれども、必ずしも従業員の意思がどの程度強く反映したかどうかもわかりませんので、それを希望いたしておきたいと思います。  なおこの問題については、今日時間がありませんので、次の機会にまた関係の方に来ていただいて、十分質問を試みたいと思いますので、本日は希望にとどめて私の質疑を終りたいと思います。
  164. 伊東正義

    ○伊東説明員 今御意見が出たのでありますが、対策協議会の委員さんの問題は、御質問の通りだと私は思います。それでさつき申し上げましたように、労務加配を調整するというような場合におきましては、当然労務加配を受けておられる人というような関係の団体の人とか、あるいはいろいろな栄養学者とか、経済学者、いろいろございますが、そういうもつと広い範囲の関係の人に集まつていただいて、その御意見を聞いた上で調整するということは、はつきり申し上げてよかろうかと思います。
  165. 赤松勇

    赤松委員長 なお労働省に対しても、この加配米の基準変更等については、及ぼす影響が大きいので、農林省と十分連絡して、石炭産業に従事する炭鉱労務者の生活を圧迫しないように善処してもらいたいということを強く希望いたします。
  166. 和田勝美

    ○和田説明員 ただいま食糧庁の方からお答えがございましたが、私どもの方といたしましても、労働者の生活の問題でございますので、その生活水準が下ることのないよう、加配米の基準変更等については、農林省とよく連絡をとりまして善処いたしたいと思います。     ―――――――――――――
  167. 赤松勇

    赤松委員長 それでは高倉の問題に移ります。
  168. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 高倉鉱業株式会社会社側の方にお尋ねいたしたいと思いますが、一応参考人であります従業員の方並びに九州炭労の方からわれわれは事情を聴取したわけでございます。それで今後においてあなた方の賃金不払いに対する見通しはどういうような状態であるか、また金融関係は今後どういうようになりつつあるのか、そういつた点を具体的にお話を願いたい。と申しますのは、当委員会におきましても、財源の問題として具体的に取上げられ、石炭局長等を煩わしておる次第でございますので、ぜひひとつ具体的な答弁を願いたい、かように考えます。
  169. 中山亀彦

    ○中山参考人 こういう場所で申し上げてよいかどうかわかりませんけれども、去年七月の水害にあいましてこの方、非常なる経営不如意になりまして約一年になりますが、その間私の方の従業員、鉱員組合の方々か、非常に不本意ではありましようが、会社の苦衷をお察しくださいまして、今日まで協力してやつていただいたことを厚くお礼を言うとともに、これを指導していただきました炭労の指導員各氏にもお礼を申し上げたいと思います。  今まで経済的に不調であることは、この前委員長さんにもよくお話申し上げました通りでございまして、現在では何とかして資金を調達しなければいかぬというので、平田山と申しますが、超粘結炭がこの正月からずつと約三万トンばかりありましたのですけれども、現在では捨て売りに売りまして、今一万五千トンばかりまだ持つております。これがはけ口がないので何とかしたいと考えておりますけれども、どうもその点が思うようになりませんので、現在貯炭しておりますものは生産費は六千六百円かかつたのでありますが、このごろの話を聞きますと、こういう時節であるというわけでありますが、大体特性がありますので、超粘結だから一般炭に向かぬという意味合いか、千六百円というような値がついております。それはどういうわけかと申しますと、業者なり工場あたりは、今どうか知らぬが、全国で四百万トンとか貯炭がある。それでもう買わない、いらない、こういうようなことで、千六百円という炭価は、進駐軍に納める炭にまぜて持つて行くと、千六百円ぐらいは出してやらなければ困るだろう、こういうありさまです。それでどうも売ろうにも売り切らぬような状態でありますので、金策といたしましてはそれを一つと、それから銀行方面に対しまして、連合融資というような形で六千万円ばかり出していただきたい。それには御承知の会社の土地が福岡にありますのを持つて行く。しかしこれは開銀さんに抵当に入つておりますので、これも何とか操作して抜いていただかないと抵当に入らないということと、去年の六月から八月に機械化合理化計画としまして資材を投入したのが、機械だけで約一億八千万ばかりの価値の品物があります。それを、先日無理に御相談しまして、組合の方に譲つてでも、何とか労働金庫の方からでも融資ができぬかということを相談しましたけれども、これもできないということで、今は銀行融資に専念しておる次第であります。これも銀行に聞きますと、銀行は日銀の引締めとかなんとかで金が思うようにないから出さない、こういう状態であります。それでそういうことを言われましても、われわれとしましては、今まで銀行に依存して来たのだから何とかしてくださいということで相談しておりますが、日銀とか開銀の支店長さんも、それはそうだろうということで大分心配していただきまして、幾分ずつ話はできかかつておりますけれどもまだ決定した話ができ上りませんで、非常に工員諸君に御迷惑をかけておるような次第であります。
  170. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 七月には幾ら払われたのですか。
  171. 中山亀彦

    ○中山参考人 七月は、今月ですが、まだ一人平均千五百円しか払つておりません。きよう二千円平均、金を無理にこしらえて、払うように段取りをつけて、けさこちらへ出て来たわけでありますが、これもはつきり申し上げられません。まだ聞いておりませんので……。そういう状態であります。
  172. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 どうも話がわれわれが現地におりましたときよりも少しも進んでいないことを非常に残念に思うのですが、五月の月には千円しかもらつてない。六月には若干ありました。しかもそれは会社が奔走したというよりも、むしろ佐賀県が、県として生活資金の一部を出し、さらに労働金庫が出したということで五千月以上払つたのですが、また今月は千五百円だ。こういうことで、今月ももう終りになつておるので、五月は千円、七月は千五百円ということでは、これはどうもたいへんゆゆしき問題であると考えるわけです。、会社の方も、どうも強粘結炭を持たれて非常に困られておるようですが、それが一向売れない。常に値の話は聞くのですが、売つたという話は聞かない。これも非常に残念に思うわけです。また今土地の問題が出ましたが、この委員会でも、かなり具体的に土地等の話が出ておるのであります。そこで高倉社長がこの前上京されまして、開発銀行等に担保の問題でお話があつておるやに聞いておる。さらにその土地を農林中央金庫の福岡支所に譲り渡す、こういう交渉もなさつたやに聞いたのですが、そういう点がどういうようになつているかお聞かせ願いたい。と申しますのは、われわれ会社の内部に立ち入つて申訳ないと思いますけれども、これは筑紫、平田山、さらに岩屋という多くの従業員をかかえて、しかも休んでおるならばともかくも、操業をしながら千円とか五百円しかやつてないというのは、大きな社会問題でございます。でありますから、一企業のことでございますけれども、これは重大なる問題であるといつてわれわれ取上げておるわけでございます。ですから、そういう点についても明確なる御答弁を願いたい、陳述を願いたい、かように考えます。
  173. 中山亀彦

    ○中山参考人 土地は、この前社長が上京しまして、農林中金に買つていただくということで話をしていただきましたらしいのですけれども、何分帰つての話によりますと、地代が地代でもありますし、それから農林省の許可がないとその土地は買うことができないというような話も聞きましたので、この許可をもらうにしましても、相当日数がかかるだろう。それでその間その土地を抵当にして銀行に融資をしていただきたい、こう申し入れましたけれども、私の方の主力銀行であるのが地方銀行でございますので、どうしても自分一行では――それに対する私の方の希望は六千万円ですが、六千万円の融資ができない。それでそういうことでは困る、どうも私の方はやつて行けない、もうあすの日でもはつきりすれば手をあげなければいけない。手をあげるということは、働く人にこれまで協力してもらつたのが水のあわにもなりますし、問題が大きいからそういうわけに行かないから、何とか融資していただけないかというようなことをるる説明して、相談したけれども、結局は三行で共同融資ということに、話合いが現在できつつありますが……。
  174. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 何融資ですか。
  175. 中山亀彦

    ○中山参考人 合同融資と申しますか、それでまたそれがはつきり結論か出ませんで、とまつております。
  176. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 実は本省の石炭局にも、これほど困つておるのたが、一体石炭局長はこの実情を聞いておるか、こういう質問をいたしましたところ、いや実は話がない、初めて聞くのだ、こういう話であつたわけです。現地の通産局の石炭部長にも聞きましたところ、いや、全然寄りつかれぬので困つております、こういう話であつたのでございます。今話によると農林省の許可ということでありますが、農林省といえば役所であります。こういう問題もやはり石炭局にお話になつて、ひとつあつせんを願うなりその他をされるべきであると思うのですが、そういうところにもお寄りになつていない。そういうことになりますと、一体あなたの方ではこの会社をどういうようにされるつもりですか。従業員には五月は千円しかやらない、七月は千五百円しかやらない。暴動寸前のような状態になつておる。御存じのように新目尾ではレールその他を会社側が全部組合に渡した。そこで組合はそれをスクラップで売つたので、次に新しい業者が来たけれども、事業の操業がなかなか困難になつた話も聞かれた通りであります。そういう状態になりますと、われわれこの前現地へ行きましたときに、もうがまんができぬから、何でも売ろう、こういう従業員の声に対して、組合あるいは炭労がそれを制して、一週間待つてくれといつてなだめておりましたが、私はおそらくさらにさらに激化しておるであろうと想像するにかたくない。そこで、一体今後どういうようにされるつもりであるか、それをお聞かせ願いたい。それと同時に、では農林中金の方で買うというならば、もう手放されるのかどうか。最初はどうも農林中金に買つてもらうような話を具体的に進められておつたようでありましたが、何か土地が惜しくなつたのかどうか知りませんが、それを今度は担保に融資の問題が出て来ておる。こういう点もどうもはつきりしないのですが、それをお聞かせ願いたいと思います。
  177. 中山亀彦

    ○中山参考人 その土地は、私の方としては、買つていただけますなら売りたいのは腹一ぱいであります。しかし、その方ができぬので、できぬではその日が困りますから、それで銀行にそれを担保にしてでも金を融資していただきたい、こういうことに話が移つたわけであります。売るということは、取消したわけではありません。  それから、今の五月が千円で今月が千五百円と申しますのは現金でありまして、大体現物で平均約六千円ばかりに相当する現物を出しておるわけであります。はなはだ申し上げかねる次第ですけれどもそういう状態であります。それで現在のところ私の見積りましたのでは、今後何とかいたしまして一億二千万ばかり金をこしらえたら平常に復するという確信がありますので、その金策に社長と努力しておる次第でございます。
  178. 赤松勇

    赤松委員長 秋好君、その七千円か六千円の物資の裏づけで、それだけのものを払つた会社は言つているんですが、その状態についてちよつとあなた向うの生活実態を話してください。
  179. 秋好トムノ

    ○秋好参考人 大体現金を月に千円か千五百円もらつておりますが、米とか麦、みそ、しようゆ、調味料、これだけを印鑑でもらつております。しかし実際は野菜代とか魚代は一銭ももらつておりません。それでほかの筑紫、平田山なんかは、野菜とか魚などを印鑑で扱つておりますが、岩屋はまだ扱つておりません。それで坑内に主人を下げるためには、タバコを買つたり、またおかずなんかも、みそだけしか印鑑ではとれませんので、何かほかのおかずをとるためにはどうしても先ほどから米の問題が出ておりましたが、加配でも先月の加配を今月二十八日にもらつたような次第でございますが、少い中から米を売つておかず代とかタバコ代に充てているような状態でございます。
  180. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 私も実は現地で調査し、また会社側からの金額の明示も受けたわけでございます。もちろん今参考人からも話されましたが、なるほど現金は四月に千七百四十円、五月が千円、六月が六千円、七月が千五百円、こういう現金のほかに、主食と調味料を出しておる。しかし、野菜とかその他の副食は、この千円から買わなければなりませんし、しかも加配米もまだとつてない、こういう話でございます。しかも坑内で作業をする人間でございまして、そういう点から見れば、出炭が下るのは当然であります。このまま推移しますならば、どうしても出炭は下るでしよう。栄養失調になつて働きに行けない、ジリ貧になると私は思うのですが、こういつた点、今後どういうようになされるつもりかお尋ねをしたい。どうにもこうにもならぬということだけでは、経営者として勤まらないと思うのです。農林中金の問題が出ましたが、それでは土地の問題で開発銀行からの担保は抜けたんですか。この点ははつきりしておるのですか、お尋ねいたします。
  181. 中山亀彦

    ○中山参考人 開発銀行からは、その道がつくことにならなければ抜いていただけません。まだそのままになつております。
  182. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 参考人において、ことに従業員の方ですが、今会社側が見えておるのですけれども、何か会社側に聞かれたいことがあつたら聞いていただきたい。何か話の食い違いがあるようにも聞くわけです。
  183. 赤松勇

    赤松委員長 ちよつと待つてください。石炭局長にも御出席を願つて――こういう企業の問題にわれわれは立ち入りたくはないのです、これはあなたたちの責任なのですから。けれども、問題は失業問題じやないのです、これは働きながら賃金がもらえないという問題なのです。それで餓死寸前ですから、やはり経営者の大きな責任なのです。そこで石炭局長にも一応話したら、石炭局長は、この話を初めて聞いたというわけです。そうすると、経営者の非常な怠慢ということになる。聞くところによれば、緒方さんのところに行つたり何かしてやつておられるようですけれども、やはり実際面を担当しておられる通産省なりその他の協力を得なければだめなのです。そういう点の運動が全然行われていない。
  184. 中山亀彦

    ○中山参考人 この点につきましては、たびたび社長が上京しますので、石炭局にもお伺いしまして、局長さんによく相談して何とか……。ほかの筑紫、岩屋は、今のところ貯炭というのは、安く売つても売れば売れますので、きのう来るときにもちよつと話がありましたのですが、若松で現在はカロリー当り三十五銭という六千円以上の石炭で二千百円か二百円ぐらいにしかならない。生産費は幾らかかるかといこと、三千四、五百円ぐらいかかるわけです。どうしてもやつて行けません。やつて行けぬというのは、今までは曲りなりにも会社に資材みたいなものがありましたので、あれを売りこれを売つて、どうかこうか――十分はできません、約束した週千円払いというのを半分ぐらいしか払えぬのでありますが、それでも現在の従業員二千五百人かかえておりましたのですが、これもこれ以上ということもちよつとできませんので、朝から晩まで一緒になつてつておりますけれども、銀行の方もそう急に話ができません。できそうでできませんので、組合との話もやかましゆう言われますけれども、それはうそになりまして、今日のような状態になつておる次第であります。
  185. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 中山参考人に再度お尋ねするのですが、では土地の問題は、開発銀行の方で、譲り渡す人間がはつきりしたら、そのとき担保を抜こう、こういうように言われておるのか。どうもそういうように聞いたのですが、その点は確かであるかどうかをお尋ねしたい。  さらに、平田山の貯炭の問題も、土地の問題も、買手さえあれば売られるのか、それとも中央の石炭局等であつせんができれば、それに沿うてそういうようにされるのかどうか、この点も一つ明確にお尋ねいたしたいと思います。  さらに、合同融資ですか、三つの銀行だというのですが、これはどういう銀行であるのかこれもお聞かせ願いたいと思います。
  186. 中山亀彦

    ○中山参考人 最初の土地は、現在佐賀県知事の鍋島知事も上京中ということで、ここが済んだら帰りに寄つてお伺いして来いということでありましたが、その土地のことについては、知事さんも御承知であられることと思います。  それから銀行は佐賀興業銀行と、福岡銀行と開発銀行の三行で話をしていただいております。
  187. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 一応様子がわかつたのですが、ここで石炭局にお尋ねいたしたいのです。実はこの労働委員会も石炭問題で暮れておるような状態であります。そこで今個々の問題でございますけれども、現地では非常に大きな問題になつております。ことにこの高倉鉱業のあります地区の町村及び県は、ことに佐賀の県知事等は、この問題は最も大きな問題である、こういうことも言つておるわけでございまして、そういう意味で取上げておるわけです。今後明日から、いな今日からでもやつてもらわなければならぬのですが、この高倉鉱業を正常な状態に帰す、こういうことについてどういう見通しがあるのか、またどういうようにお考えであるのか、ひとつお聞かせ願いたいと思います。
  188. 町田幹夫

    ○町田説明員 御承知のように、石炭の問題は非常なやつかいな問題でございまして、何も一高倉炭鉱の問題ばかりでなくて、中小炭鉱はほとんど全部がそれに似たような状態にあるのではないかというふうに考えておるのであります。われわれといたしましても、一般的にこの炭鉱問題を何とか処理したいというので、日夜苦労しておりますのですが、なかなかわれわれの力が及ばず、現在のような状況になつておりますことは、まことに残念でございまして、今後ともこの石炭の問題の解決のために一層努力いたしたいと考えております。ただ当面の高倉炭鉱の一企業体の問題でございますが、実は私も話を局長から先般聞きましたばかりでありまして、会社の経理状況その他実情等について、今一応のお話は承りましたけれども、詳細にまだ承つておらぬような状況でございますので、そういう点につきましては、せつかく会社の方も見えておりますので、後ほどまた詳細にひとつお伺いいたしまして、十分相談いたしまして、何か役所の力で解決のできる方法がありますれば、できるだけ役所といたしましても御協力申し上げて、これが解決をはかつて参りたい、こういうふうに考えております。
  189. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 労働省にもお尋ねいたしたいのですが、どうも次官がおられませんので、ひとつ局長にお尋ねいたしたいと思いますが、これはやはり労働省としても大きな問題でございます。これだけが失業群に入るということになりますと、職安局長の仕事の中に入つて来るのです。ここにありますところの町村は、炭鉱のまん中にありまして、大きな炭鉱をすでに新屋敷の問題でかかえ、岩屋の問題におきましては、この前も失業者がすでに出て、それがいろいろ紛糾が起りまして、また失業群に加わる、こういうことになります。また平田山等は北松炭田のまん中にあるということで、これはたいへんな事態になると思いますが、労働としても正常な建直りということについて、ひとつ格段の努力を払つてもらいたい。幸いに経営者の方も見えておられますので、月曜日からおそらく労使でいろいろ奔走される思うのですが、これについて労働省でもぜひ参加して努力していただきたいと思うわけです。これに対してひとつ答弁をお願いしたいと思います。
  190. 江下孝

    ○江下説明員 お話を聞きまして、私どもも非常に憂慮いたしております。失業者をできるだけ発生せしめないで切り抜けて行くということが、最善の策でございますので、労働省としてすぐ失業問題ということにならないように、通産省その他関係省と緊密な連絡をとりまして、労働者の生活の安定にできるだけ資するように、省をあげて努めて参りたいと思います。
  191. 中山亀彦

    ○中山参考人 現在九州の中小鉱は、何とか議会の方にお願いいたしまして、根本的に救済する方法を講じていただきたいと思います。現在私たちが出しておりますところの石炭が、若松で三十銭、三十二銭だというカロリー当りでは、どうしても食つて行けません。食うどころではない、食うのに半分しかありません。少くともこれは若松で六十銭ぐらいには販売のできますように何とか努力をしていただきますと、どうかこうかやつて行けます。それでなかつたら、どの炭鉱にしましても、全部ここ何箇月しか持てぬだろうと思います。大手さんにしましても、大手さんの炭はきのうの話では四十六銭だという話でございまして、大手さんは四十六銭で機械化でいいかもしれませんが、これも千円ぐらいの赤字じやないかと思います。そうしますと、十日か一箇月食つて行きましても、結局はここ盆過ぎたら、ほとんど全部が手をあげなければならぬ状態になるのじやないか思います。ただわれわれとしましては、手をあげたら、今まで協力してくれた鉱員諸君にどうするか。それはさつきも多賀谷委員さんからお話がありましたが、売れるだけのものはスクラップにして、相当使える機械でも現在私の方では売つております。しかし一週間千円と申しますけれども、二千五百人かかえておりますと二百五十万いります。今のところスクラップの二十トンや三十トン売つたところで、みそ、しようゆの代にならぬのです。それかといつて、かつては私の方は相当銀行にも信用がありましたけれども、いよいよ最近のようになりますと、銀行の手元金がないとかどうとかで、どうしても私の方に融資していただくほどの金がないと言うのです。がしかし、金がないといつて払わぬわけには行かない。そこで大体私の力は今計画して現在予算を組んでおります。一万七千トンの月産でありますが、それが賃金の未払いということで、現在六千トンから七千トン、それで二千五百人の従業員を食わして行こうということは、とてもむずかしいことです。それで六千六百円ぐらいかかる。平田山の石炭でも千七、八百円ぐりいで投売りをしなければならぬということですけれども、これは鉱員諸君の前でも、全部手放すということは困難です。これは普通は製鉄所に入るのが四千三百円ぐらいしておる。しかしそれも量に制限がありますので、私の方はそれに加わることができぬ状態であります。北松炭の強粘結炭ば、聞きますと、一箇年六十万トンぐらいしか生産能力がないそうです。これは戦争中は血の一滴だといつて、相当の犠牲を払つて坑口をあけた。現在でも私の方は新鉱開発に月六百万円ずつ金を注ぎ込んで掘進をしておるわけです。そういう状態でありますので、やめるにもやめられぬということになつておる。ところがやるにしても、千五、六百円の石炭に六千円も費用をかけておつたのでは、とうていできません。それで何とか別に職場がありますなら、もうあれは廃鉱にしますけれども、職場が別にないので、その鉱員の持つて行き場がなくて、日夜苦労をしておるわけであります。しかし戦争中はあの強粘結炭がいつたのです。あれで足りなかつた。それが今日になつてそろばんに合わぬからということで、自由経済と言いますか、自分かつてにすることになりましたら、あすこは取残されてどうもならぬということになる。しかし万一の場合がありますれば、あの北松の六十万トンがなかつたら日本は困るだろうと思います。その点委員長さんにもお願いしまして、何とか根本的に中小鉱の人間の食われるようなふうに救済していただくような方法を立てていただきますように、お願いする次第であります。
  192. 池田清

    ○池田(清)委員 時間が迫つているのに恐縮ですが、関連しまして、問題があまり深刻でありますから、ちよつと質問をしたい。  参考人にお聞きしたいのですが、能率を上げるとか、あるいは経費を節約する、そういう点については、もう万遺憾なくやつておらるることと思いますが、今だんだん話を伺うと、値段が安いというので、なかなか経理が立たぬ、非常に御苦心のほどが察せられます。そうしますと、人を減らしてはやつて行けないのかどうか、この点をひとつお伺いいたします。  それから一億二千万という金があれば、完全に引続いて経営ができるのかどうか、この二点をお伺いいたします。
  193. 中山亀彦

    ○中山参考人 お尋ねになりました人数のことでありますが、これは現在のところ、私の方が三山で大体二方二千トン出さなければ人並じやない、最小限度の生活ができない。これを確保するためには、現在の人員よりも少かつたら困るのです。ところが、資金の都合ではこれも減らさなければならぬということになりますと、重大問題が起るわけなんです。しかし社長としましては、十年、二十年一つかまの飯を食うて来た人間に、今自分に資金がないようになつたから事業が継続できない、だからお前たちはどこにでも行つてくれということは死んでも言えぬということで、無理やりに今二千五百人かかえております。それで資金がないと、結局二万二千トンの予定が六千トンから七千トンくらいしか今出ておりません。それでこれはやめた方がいいくらいのところです。電力量の代しかありません。今、わずか週千円と申しますけれども、週千円を払いますと、結局現金をもらいますのに千二百トンぐらい掘らなければ、千円ずつ行きまわらぬわけです。それと、月に六千円ぐらい現品を渡しておりますが、二千五百人おりますから、これはちよつと千三百万くらいになりましよう。そうしますと、千三百万円くらいに石炭を売りますには、五千トンないし六千トンくらい掘らなければ、その米代がないわけです。そうすると、米代は現在のところは手形で無理に商売人を頼んでおりますけれども、手形は一箇月しか余裕がありませんから、一箇月目にはぜひそれは払わなければ、現在のように銀行に不渡りを出さなければならぬような状態になつておるわけであります。そうしますと、機械代、電力代、それから火薬代、坑木代という資材代金が、約出炭の四分の一ぐらい見なければいかぬのでありますが、二万二千トン出しますのには、どうしても五千ないし六千トン見なければならぬのでありますが、それは払われんのです。一銭も払わない。けれども、従来二十数年間やつて来たので、坑木屋は坑木屋、九州電力は三箇月ぐらい待つてくれますし、火薬屋も無理に言いまして、半年ぐらい金をやらぬでも協力してくれて、あなたの方の社長は上手だから何とかなるだろう、金ができたら二万二千トン出るだろう、出るときになつたら、そのときに返してくれと言いまして、今日まで協力してもらつております。そういう状態ですから、どうかこうか今日まで泳いで来ましたけれども、もうお盆が越せません。お盆が越せないということになりますと、炭鉱を全部投げ出しても、鉱員諸君にはほんとうに支払いができぬのです。それで何とか無理に機械の方に転換してでも、土地を抜いてもろうて買い手があれば売る。それから石炭は何ぼでも売れるほどでも売らなければ、鉱員に申訳ないといつたところで、売らなければしようがないだろう、こういうことです。それでそれ以外の機械や何かは、ちよつとはずせません。はずしますと、はずした日から鉱員諸君の仕事場に困る。倉庫なんかに予備品にとつてつたのを全部売るか、抵当に入れるかして、金になるものは全部金にして、今のところ何もありません。
  194. 赤松勇

    赤松委員長 社長個人のものもないのですか。
  195. 中山亀彦

    ○中山参考人 ありません。それでこういうふうな話もあつたがと言うたら、多賀谷さんがそう言うなら見つけてもらつてくれ、そうしたら七割あげて三割もろうてもいいから見つけてもらえということをじようだんに話しましたが、何も持ちません。むろん初めから大手さんと違つて金かあるわけじやなし、株式会社ではありますけれども、ほとんど一人ということで、あの川崎炭鉱から筑紫をわけてもらいますし、筑紫で働いた金で岩屋をわけてもらい、岩屋と三山で得た金で平田山をわけていただいたので、大体昔から金を持つていたのじやありません。私たちは坑夫の子供に生れて――今は鉱員と言いますが、昔は坑夫と言いました。学校も三年ぐらいしか行つておりません。そうしてたたき上げた資本金ですから、そうあろうつたつてありません。それで何とかして私たちを救済するということでなしに従業員諸君を救済してもらいますような方法ができましたら、全部政府の方に持つて行きます。それはあしたにでも持つて行きます、決して事業に未練はありません。それは社長の精神を私はよく知つております。私が十四、五才の時から一緒に炭鉱でやつて来たので、それはよくわかります。
  196. 赤松勇

    赤松委員長 一億二千万円あれば、あとはやつて行けるかどうかという御質問なんですが……。
  197. 中山亀彦

    ○中山参考人 一億二千万円ありますと、絶対に間違いありませんやります。
  198. 池田清

    ○池田(清)委員 お話で苦難な状況がよくわかりました。そこでこの問題を取上げたからには、委員会としては、会議はきようで終るわけですけれども、その責任としては、これは解決のつくまでというわけにも行かぬかもしれぬが、糸口として通産省、労働省の方に渡りをつけたわけです。しかし、つけただけではこれはなかなか進まぬ。政府を信用しないわけじやありませんが、せつかくここまで持つて来たのだから、何かめどの立つまで委員会としてはめんどうを見るというのか、これは委員長に御相談するのですが、そういう手を打つ方法はないものですか。
  199. 赤松勇

    赤松委員長 このあとで、実は皆さんに御相談申し上げようと思つておりましたのですが、当面の失業対策というものは、政府だけの問題でなくて、国民全体の問題になつて参りましたから、当委員会におきましても、今まで珪肺と港湾の二つの小委員会がありましたが、問題がこういうふうになつて参りますと、どうしても常時そういうことに努力する小委員会が必要じやないかということで、各派の申合せによりまして、あとで皆さんにお諮りして小委員会を設置していただこう、こう考えております。それでさつそく予定では持永さんに委員長になつていただくということに理事会の話でなつておるわけです。その持永委員会において、この問題について早急に何か打開の方法をひとつ考えてもらつて、そして労働者の諸君も失業しない、会社の方も建て直るように、何とかひとつ政府の協力を得たい、かように考えております。さよう御了承を願いたいと思います。
  200. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 最後に参考人にお尋ねしておきます。先ほど個人財産のことが出ておりましたが、実はあなた方の誠意がそれだけ官庁に届いていないということを、非常に遺憾に思うわけです。会社はつぶれた、従業員は首になつた、しかし会社の個人の財産が残つておる、こういうことでは非常に困るということを、この高倉については聞くわけでございます。新屋敷の場合ですと、具体的に各幹部の財産まで全部担保に入れて、石炭局で十分御相談になつておる。ところがあなたの方では岩屋の水害以来、呼び出しても出て来ない、こういうことで、率直に言いますと、石炭局としては実情に暗いわけでございます。そこで、われわれも石炭局にこれらの問題のあつせん方をお願いするにも、非常に困難を来したというような実情もあつたわけでございますが、それはともかくといたしまして、一応実情がわかりましたので、今後とも石炭局あるいは労働省においても、しつかり相談にあずかつていただこうと考えるわけです。それで、もし今あるいは平田山の一万五千トンの石炭の売場を見つけるとか、あるいは土地を売り払うとかいう話ができますと、一応賃金の未払いはなくなり、賃金は平常通り払われるものであるかどうか、この点を一言だけお尋ねしておきたいと思います。
  201. 中山亀彦

    ○中山参考人 今私が申し上げました一億二千万円ばかりこしらえますと、平生のときの支払い方法を絶対にやつて行けるという確信を持つておるわけであります。これをしませんと、結局われわれが予算しております二万二千トンは絶対に出ない。それで支払い方法を平常に復しまして、そうして今鉱員諸君に約束しておりますことを実行して行くなれば、月二方二千トンの出炭は、三箇月ぐらいたちますと平生に立ち返る、こういう確信を持つて大体計画だけはしておりますけれども、一つできぬのは、金融ということだけで、それで行き詰まつておるわけであります。
  202. 井堀繁雄

    井堀委員 時間がおそいので、はなはだ恐縮ですが、ひとつ労働省にお尋ねをいたしておきます。先日来造船、炭鉱の問題を中心にして、失業問題並びに賃金遅払い等、非常に深刻な問題が露呈して来ておりますが、ひとり炭鉱、造船に限つた傾向ではない、最も顕著な集団的な傾向であることは事実ですが、これよりももつと深刻な中小企業、零細企業等に起つておる現象も、決して軽視できない実情にあるわけであります。もちろん私どもは、失業防止に労働省が熱意を燃やしておることについては、疑う余地はないのですが、このことについては、十九国会の際にも、私どもからきびしくいろいろな事実並びに見通し等を述べて、労働大臣に失業対策についての見解を迫つたのであります。速記録をごらんいただけばわかると思いますが、労働大臣の当時の回答では、完全失業者四十万程度でありましたものについて、せいぜい一割か二割の失業者が出る程度であるというきわめて楽観的な見地に立つて、絶えずわれわれに応答して来ておるわけであります。ところが、今日すでに顕在失業者としての数においても、失業保険の経済に赤信号か出て来る危険な状態が相当できるわけであります。こういう状態である。今の石炭の問題を聞いてもわかりますように、必ずしも楽観を許さない、大量の失業者の危機が伝えられておるわけであります。こういう点については、私どもから言わせますならば、当然貿易の伸び悩みや、あるいは金融引緊め、あるいは政府のとつておる極端な一部の経営者のみに重点を置く偏在した封建的な財政政策の結果であることは言うまでもないのでありますが、こういうものを今日批判する前に、深刻な失業の問題あるいは賃金不払いの問題が次から次に出て来ておるわけでありますから、こういう状態に対して、一体労働省は、十九国会における労働大臣の見解をそのまま堅持されて、失業対策並びに職業紹介行政に対して臨んでおるのかどうか、まずこの点について承つておきたい。
  203. 江下孝

    ○江下説明員 前国会におきまして、失業の見通し、これに対する対策を労働大臣が申し上げたのでございますが、見通しがやや甘かつたのではないか、その甘い対策の上に立つた施策では不十分であろう、さらにこの際飛躍的な施策を講ずべきではないかというふうに一応受取れるのでございます。お話のごとく、失業の発生が、私どもが当初予想いたしましたよりやや早く来ました。その点におきましては、確かに今となりましては、相当失業問題は楽観を許さない状態にあるというふうに率直に認識をいたしております。  そこで、今までの諸施策の問題でございますが、失業者に対して最も考えなければならぬ手は、まず定職をあつせんしてあげるということだと思います。これにつきましては、現在職業安定所中心といたしまして、民間の求人開拓ということを全面的に打出してやつておるのでございます。これもなかなか限度がありまして、そう右から左にと配置転換はできない。公共事業に対しまして、さらに雇用の配置転換を行うということも今考えておる問題でございます。これらの点につきましては、現在までやつておりました施策を、さらに強化いたすということでございます。そういたしましても、失業者を全面的に吸収することは困難であるというために、失業対策事業を――これは実は毎度申し上げて恐縮でございますが、失業対策事業を実施いたしまして最低生活の保障をしておるわけでございます。そこで今やつております段階は、民間の産業なり公共事業に、とにかく一番困つておる失業者をまず優先的にあつせんするということを極力やつてみたいということでございます、これをやりまして、なお将来の問題といたしまして、今お話のようなさらに新しい施策ということも、当然将来において考慮しなければならぬということに相なろうと存じておりますが、そのときにおきまして、十分これについては研究をして立案をいたしたい、現在までのところ、既存の予算計画のもとに十分な能率を発揮いたしたいというふうに考えております。     ―――――――――――――
  204. 赤松勇

    赤松委員長 それでは小委員会の設置についてお諮りいたします。失業対策調査のため、失業対策委員会を設置いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  205. 赤松勇

    赤松委員長 御異議なしと認めて、それでは失業対策委員会を設置することに決します。  次に、本小委員会の小委員の数は六名とし、小委員及び小委員長の選任につきましては委員長より指名いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  206. 赤松勇

    赤松委員長 御異議なしと認めてそれでは失業対策委員に、    持永 義夫君  丹羽喬四郎君    並木 芳雄君  多賀谷真稔君    日野 吉夫君  中原 健次君を、小委員長に持永義夫君を指名いたします。  なお小委員及び小委員長に欠員が生じました場合の補欠選任につきましては、委員長に御一任を願いたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  207. 赤松勇

    赤松委員長 御異議なしと認めて、さよう決します。  この際失業対策委員長の持永義夫君より発言を求められておりますので、これを許します。持永義夫君。
  208. 持永義夫

    ○持永委員 現在の日本の経済状態において相当な数の失業者が出ることは予想されておるところであります。これに対しまして、国会側といたしましても、もとより最善を尽すつもりでありますが、特に政府側におかれましても、どうかこの問題を真剣に検討を願いまして、万全の策をとつていただきたいと思うのであります。  先ほど私は高倉鉱業の中山さんの話を聞いておりまして、まことにただごとに聞いておられない、非常に感激を持つて聞いたのでありますが、おそらく政府当局の方々も、同じ気持であつたろうと思います。つきましては、各炭鉱について、こういうことが相当あるだろうと思う。実は先般国会が終了しまして私帰る際に、特に労働次官にはこの点についてお願いしておりました。それは炭鉱の中で相当生活に窮しておる労働者が草の根を食べておるということを耳にしましたから、どうか早くその実情調査をしてもらいたいということを労働次官にお願いしておつたのでありますが、おそらく労働省とされましても、ある程度つていただいたこととは思いますけれども、具体的の各炭鉱の問題について、こういうような悲惨な例があるとするならば、これはわれわれとしてもほうつておけません。また政府としてもどういうところに隘路があるのか、またその隘路をどういうふうに打開すれば救済ができるのかということを、ひとつ労働省が中心になられまして、特に通産省の石炭局と十分に連絡をとられて、具体的にその救済策を立てていただきたい。全般的の失業対策ももちろん大事でありますが、それとともに、個々別別に特にひどい、人道上から見て看過できないような状態の炭鉱につきましては、ひとつ特別な考慮を払つて、十分対策を講じていただきたいと思う次第であります。願わくは、今後労働省が主になられて、石炭局と連絡をとられ、何かそういうような特別な委員会といいますか、相談でもよろしゆうございますから、そういうことを進んでやつていただくように、特に私からもお願い申し上げておく次第であります。
  209. 江下孝

    ○江下説明員 先ほど御答弁の際に申し落しましたが、このデフレのしわ寄せが、労働問題にどうしても動いて行く、特に雇用問題にこれがしわ寄せをされて行くということは、大体明らかな事実でございます。そこで私どもといたしましては、もちろん労働施策の面で、できるだけ社会不安等を起さないように、新しい施策も盛り込んで運営すべきでございますけれども、なかなか労働省だけの力ではこの点がむずかしいのでございます。先般内閣の経済審議庁に、労働省が主唱いたしまして各省の労働対策連絡協議会を設置してもらつたのでございます。この協議会で諸般の労働問題、特に失業対策の問題につきまして、政府としましては、各省一体となつて施策を進めて参るというふうに現在しておるのでございます。先般公共事業への労務者の吸収につきまして一案を得たのでございますが、さらに石炭等の労務の失業の問題につきましては、今通産省と協議をいたしまして、この次の議案として提出することになつております。おそらく近くある程度の具体的な案が出ることだと思つております。ひとり石炭に限りませず、全般の失業の問題につきまして各省と一体となつて労働省が中心となりまして進めて行くという政府側の態勢はすでにできてございますから、今後十分御趣旨に沿いますように努力して行きたいと思います。
  210. 赤松勇

    赤松委員長 この際お諮りいたします。ただいま調査中の駐留軍関係の労働問題に関し、決議を行いたいと存じます。   まずその案文を読み上げます。    駐留軍労務者の退職手当に関する決議   駐留軍労務者の給与については、従来その特殊な勤務の事情を考慮し、国家公務員に比べて相当程度上位の給与水準が支給されるよう定められている。   ところが退職手当については、国家公務員に特別措置がなされているにもかかわらず、駐留軍労務者に関しこの点の考慮がなされていないために、国家公務員の退職手当より低位に置かれている現況である。   今般の米陸軍部隊の大幅なる予算削減並びに北海道撤退に伴う大量解雇の問題が発生している現在駐留軍労務者の退職手当については、国家公務員等と比べて相当程度の特別措置をとるよう申入れる。   右決議する。 以上であります。  これを本委員会の決議とするに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  211. 赤松勇

    赤松委員長 御異議なしと認めて、さよう決します。
  212. 福島慎太郎

    ○福島説明員 ただいま本委員会の決議をちようだいいたしたわけでありますが、この駐留軍労務者の特別退職手当の問題に関しましては、かねてからアメリカ軍との間に交渉を重ねて参りました問題でありまして、最近の事態にかんがみまして最近特にまた力を入れ、強力に交渉中の問題でございます。アメリカの方では、自然たやすく応じて来ないというのが現状でありますが、さらに一層強硬にこの交渉を貫徹したいと考えておる次第でございます。ただいまの御決議は、われわれのアメリカに対する交渉その他に強力なる御支持を与えていただく趣旨においてちようだいしたものと考えておりますが、今後なお一層力を入れまして、アメリカ側との交渉に目的を貫徹したいと考えております。一言ごあいさつ申し上げます。
  213. 赤松勇

    赤松委員長 なおこの際委員長よりごあいさつ申し上げます。三日間の予定でございましたが、さらに一日追加いたしまして、四日間委員会を開いたわけです。この間近江絹糸等の問題、ただいまの駐留軍労務者の問題等につきまして、超党派的に二つの決議をするに至つたということは、非常に私としてうれしく思います。なおその他失業問題等につきまして連日熱心に御審議をいただき、また政府の皆さんにおかれましても、非常に御多用のところ御出席をいただきまして、ありがとうございました。  なお、先般帝国酸素等の証人の喚問等もございますが、こういう点につきましては、後ほど委員長より理事会に諮りまして、皆さんとその日時等につきましては十分お打合せをして決定したいと存じます。  次会は公報をもつてお知らせいたすこととし、本日はこれにて散会いたします。     午後五時三十一分散会