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1954-02-01 第19回国会 衆議院 予算委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年二月一日(月曜日)     午前十時三十四分開議  出席委員    委員長 倉石 忠雄君    理事 小峯 柳多君 理事 西村 直己君    理事 西村 久之君 理事 森 幸太郎君    理事 川崎 秀二君 理事 佐藤觀次郎君    理事 今澄  勇君       相川 勝六君    岡田 五郎君       尾崎 末吉君    尾関 義一君       小林 絹治君    迫水 久常君       庄司 一郎君    高橋圓三郎君       富田 健治君    中村  清君       灘尾 弘吉君    羽田武嗣郎君       葉梨新五郎君    原 健三郎君       福田 赳夫君    船越  弘君       本間 俊一君    八木 一郎君       山崎  巖君    山本 勝市君       稻葉  修君    小山倉之助君       河野 金昇君    河本 敏夫君       中曽根康弘君    中村三之丞君       古井 喜實君    三浦 一雄君       足鹿  覺君    滝井 義高君       武藤運十郎君    山花 秀雄君       横路 節雄君    稲富 稜人君       川島 金次君    河野  密君       小平  忠君    堤 ツルヨ君       西村 榮一君    黒田 寿男君  出席国務大臣         内閣総理大臣  吉田  茂君         国 務 大 臣 緒方 竹虎君         外 務 大 臣 岡崎 勝男君        大 蔵 大 臣 小笠原九郎君         文 部 大 臣 大達 茂雄君         厚 生 大 臣 草葉 隆圓君         農 林 大 臣 保利  茂君         通商産業大臣  愛知 揆一君         郵 政 大 臣 塚田十一郎君         労 働 大 臣 小坂善太郎君         建 設 大 臣 戸塚九一郎君         国 務 大 臣 安藤 正純君         国 務 大 臣 大野 伴睦君         国 務 大 臣 加藤鐐五郎君         国 務 大 臣 木村篤太郎君  出席政府委員         法制局長官   佐藤 達夫君         総理府事務官         (経済審議庁         調整部長)   松尾 金藏君         大蔵事務官         (大臣官房長) 石田  正君         大蔵事務官         (主計局長)  森永貞一郎君         大蔵事務官         (主税局長)  渡邊喜久造君         大蔵事務官         (理財局長)  阪田 泰二君  委員外出席者         専  門  員 小林幾次郎君         専  門  員 園山 芳造君         専  門  員 小竹 豊治君     ————————————— 昭和二十八年十二月七日  委員滝井義高辞任につき、その補欠として武  藤運十郎君が議長指名委員に選任された。 同月八日  委員青野武一君及び菊川忠雄辞任につき、そ  の補欠として多賀谷真稔君及び長正路君が議長  の指名委員に選任された。 同月十一日  委員賀谷真稔辞任につき、その補欠として  青野武一君が議長指名委員に選任された。 同月十二日  委員長正路辞任につき、その補欠として平野  力三君が議長指名委員に選任された。 同月十四日  委員今澄勇辞任につき、その補欠として日野  吉夫君が議長指名委員に選任された。 同月十八日  委員河本敏夫君、青野武一君及び日野吉夫君辞  任につき、その補欠として芦田均君、多賀谷真  稔君及び今澄勇君が議長指名委員に選任さ  れた。 同日  委員今澄勇辞任につき、その補欠として目野  吉夫君が議長指名委員に選任された。 昭和二十九年一月二十六日  委員芦田均君、上林與市郎君、多賀谷真稔君、  福田昌子君及び八百板正辞任につき、その補  欠として河本敏夫君、佐藤觀次郎君、滝井義高  君、山花秀雄君及び足鹿覺君が議長指名で委  員に選任された。 同月二十七日  委員植木庚子郎君、加藤鐐造君日野吉夫君、  平野力三君及び三宅正一辞任につき、その補  欠として岡田五郎君、川島金次君、西村榮一  君、今澄勇君及び堤ツルヨ君が議長指名で委  員に選任された。 同月二十八日  委員中村梅吉辞任につき、その補欠として河  野一郎君が議長指名委員に選任された。 同月二十九日  委員山村新治郎君辞任につき、その補欠として  三浦一雄君が議長指名委員に選任された。 二月一日  委員鈴木正文辞任につき、その補欠として高  橋圓三郎君が議長指名委員に選任された。 同日  理事八百板正君の補欠として佐藤觀次郎君が理  事に当選した。 同日  今澄勇君が理事補欠当選した。     ————————————— 一月二十七日  昭和二十九年度一般会計予算  昭和二十九年度特別会計予算  昭和二十九年度政府関係機関予算 の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  理事の互選  公聴会開会承認要求の件  昭和二十九年度一般会計予算  昭和二十九年度特別会計予算  昭和二十九年度政府関係機関予算     —————————————
  2. 倉石忠雄

    倉石委員長 これより会議を開きます。  この際お諮りいたします。理事二名が欠員になつておりますので、その補欠を選任いたしたいと存じますが、先例によりまして委員長において指名するに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 倉石忠雄

    倉石委員長 御異議なしと認めます。よつて理事佐藤觀次郎君及び今澄勇君を指名いたします。     —————————————
  4. 倉石忠雄

    倉石委員長 次に公聴会開会についてお諮りいたします。去る一月二十七日付託になりました昭和二十九年度予算につきましては、国会法第五十一条により、必ず公聴会を開かねばならないことになつております。つきましては、議長に対する公聴会開会承認要求の手続並びに開会の日時、案件の決定、及び公述人選定等につきましては、委員長に御一任願いたいと思いますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 倉石忠雄

    倉石委員長 御異議なしと認めます。よつてさように決定いたします。  なお公聴会の日数につきましては、先日の理事会におきまして、来る十二日及び十三日の両日にわたつて開くことを申合せいたしましたから、御了承願います。     —————————————
  6. 倉石忠雄

    倉石委員長 それでは昭和二十九年度一般会計予算昭和二十九年度特別会計予算及び昭和二十九年度政府関係機関予算の三案を一括議題といたします。まず政府より提案の理由説明を求めます。大蔵大臣小笠原九郎君。     —————————————  昭和二十九年度一般会計予算  昭和二十九年度特別会計予算  昭和二十九年度政府関係機関予算     〔都合により本号符録に掲載〕     —————————————
  7. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 昭和二十九年度予算編成に関する基本方針並びに予算の大綱につきましては、過日本会議において説朗いたしましたが、予算委員会の御審議をお願いいたすにつきまして、あらためてその内容を御説明申し上げます。  まず歳出について申しますると、第一に、防衛支出金五百八十四億円、保安庁経費七百八十八億円、平和回復善後処理費百五十億円、連合国財産補償費二十六億円を計上いたしました。  防衛支出金は、行政協定によりまして日本側において負担すべきものとされました米軍の駐留に関連して支出を必要とする経費でありまして、二十八年度に比し、総額において三十五億円を減少しております。この経費内訳は、米軍の役務及び需品の調達に充てるため、米軍に対する交付金五百三十二億円、米軍の使用する施設及び区域の提供に必要な経費その他として五十二億円であります。  保安庁につきましては、保安隊陸上自衛隊仮称)に改編し、制服職員及び一般職員定員をそれぞれ二万人及び八千七百人増加し、警備隊海上自衛隊仮称)に改編し、保有船腹量増加に伴い、制服職員及び一般職員定員をそれぞれ五千四百八十五人及び二百十九人増加し、このほか航空自衛隊仮称)を新設し、定員制服職員六千二百八十七人、一般職員四百七十八人とすることといたしました。経費増加給与改善のほか、人員の増加施設装備整備強化をはかるためであります。  以上防衛支出金保安庁経費との合計千三百七十三億円は、二十八年度のこれらの経費千二百三十三億円に比し、約百四十億円の増加なつております。  平和回復善後処理費百五十億円は、旧連合国に対する賠償の支払い、その他対外債務処理等平和条約の発効に関連して処理を必要とする経費、及び平和回復の結果として必要を生ずる諸般経費等に充てることを予定いたしております。  連合国財産補償費は、二十六億円を計上いたしましたが、これに二十八年度以前の繰越額を合せますと、百億円の支出を行い得ることになつております。  第二に、経済力充実発展のための措置として、まず財政投融資の面におきまして、全体としては、金融引締めによる民間投資抑制と相まつて財政投融資の削減を行うことといたしたのでありますが、電源開発中小企業等については特に配意を加えております。財政投融資計画については、一般会計資金運用部資金簡保資金産業投資特別会計並びに公募公社債及び地方債による資金を合せまして、総額二千八百五億円の投融資をいたすこととし、二十八年度に比し、五百八十四億円を削減いたしました。  公共事業費及び食糧増産対策費につきましては、予算が年々増加するとともに、総花的傾向うらみなしとしなかつたのでありますが、二十九年度におきましては、治山治水対策道路事業土地改良等重点を置いて計上し、この際新規計画は一切認めず、さらに一部既定計画の休止を断行するほか、零細補助金についてもこれを大幅に整理し、本年度に比し、総額において百四十一億円を削減し、一千六百九億円を計上いたしました。  この内訳を申し述べますると、治山治水対策費としては四百三十一億円を計上し、本年度に比し、三十三億円の増加なつております。災害復旧費は五百三十三億円を計上し、本年度に比し、百四十三億円の減少なつております。また食糧増産対策費として三百六十三億円を計上し、本年度に比し、五億円を増加しており、道路港湾等事業費として二百八十一億円を計上し、本年度に比し、三億円の増加なつております。  第三に民生安定のための経費であります。国民生活現状について見ますると、今日衣食についてはおおむねその充足を見ているのでありますが、住宅事情はいまだ十分ではないので、二十九年度においては、住宅対策として約十万戸の建設を目途とし、公営住宅建設等に百三十四億円を計上し、住宅金融公庫及び勤労者住宅に対する投融資百八十億円と相まつて、本年度に引続き住宅対策の推進をはかることといたしております。  緊縮財政に伴う社会的摩擦に対処するため、二十九年度においては、特に社会福祉関係経費については意を用い、生活保護費として二百八十二億円、児童保護費として五十六億円、国民健康保険等社会保険充実のために九十八億円、結核対策費として百三十三億円、失業対策費として二百五億円、合計七百七十四億円を計上し、本年度に比し、三十八億円を増額いたした次第であります。  なお旧軍人遺族等の恩給については、制度の平年化に伴う増額等により、百八十八億円を増加し、六百三十八億円を計上いたしましたほか、遺族等援護費留守家族援護費についても所要経費を計上いたしております。  第四に文教振興のための経費でありますが、まず教職員の給与費の実支出額半額国庫において負担することとし、義務教育費国庫負担金として七百億円を計上いたしました。  文教施設については、その整備に努めることとし、公立文教施設については、義務教育年限延長に伴う中学校一般校舎の建築に重点を置き、その基準の引上げをはかりましたが、その他危険校舎の改築、戦災復旧を行うこととして所要経費を計上いたしました。  その他育英事業費科学振興費等増額し、文教振興をはかつております。  第五に警察につきましては、わが国の実情に即して警察制度を改革するため、本年七月より国家地方警察及び市町村自治体警察を廃止して都道府県警察を置き、これに伴い定員を三万人減ずるとともに、負担区分調整いたしましたので、本年度に比し六十二億円の減少となりました。  なお今回の警察制度改正に伴う中央地方を通ずる財政負担は、平年度約八十三億円の軽減と相なるのであります。  第六に地方財政につきましては、中央地方を通ずる財政調整をはかり、地方財政健全化に資するため、入場税を国税に移管上、タバコ消費税を創設するとともに、地方財政平衡交付金制度を廃止し、新たに地方交付税交付金一千二百十六億円及び地方譲与税譲与金七十九億円を計上いたしました。右の交付税交付金及び譲与税譲与金義務教育費国庫負担金を合せますると、本年度地方財政平衡交付金及び義務教育費国庫負担金合計額に比し、二十五億円の増額となるのであります。なお別に財政資金による地方債引受のわくを八百九十億円とし、本年度より百八億円圧縮いたしたわけであります。  次に歳入について申し上げます。二十九年度一般会計歳入総額は九千九百九十五億円でありますが、その内訳は、租税及び印紙収入七千七百十八億円、専売納付金千三百四億円、官業益金及び官業収入百三十二億円、政府資産整理収入八十四億円、雑収入三百五十四億円、前年度剰余金受入れ四百三億円となつております。  租税及び印紙収入及びその他歳入につきましては、最近の収入状況及び二十九年度における緊縮財政に伴う物価の低落その他の諸般経済事情推移等を勘案して、堅実な見積りをいたした次第であります。  なお過去数回にわたる減税にもかかわらず、国民負担はなお過重であり、さらに租税負担軽減をはかることが望ましいのでありますが、現下の財政及び経済の情勢にかんがみ、特に低額所得者負担が過重となつている不合理な現状を是正するため、税制につき若干の調整を加えることが必要であると考えられますので、所得税につき基礎控除及び扶養控除引上げを行うことといたしました。これとともに奢侈的消費抑制をはかるため、奢侈品高級品に対する課税を中心とする間接税の新設、増徴を行うこととしたほか、資本蓄積促進等のため所要税制改正を行うことといたしました。  これらの税制調整に伴う減税額三百二十一億円及び増徴額二百七十六億円を織り込んだ租税及び印紙収入は、さきに申し述べました通り七千七百十八億円となり、本年度に比し、百五十一億円の増加となるのであります。  日本専売公社納付金につきましては、最近の販売実績を勘案し、ピース五円の値上げを見込み算定いたしますと、本年度に比し、八十八億円の増加となりますが、地方制度改正に伴う、タバコ消費税の創設により、二百九十一億円の新たな支出を生じますので、二十九年度国庫納付金は千三百一億円となり、本年度に比し、二百四億円の減少なつた次第であります。  なお今般の税制調整の詳細につきましては、政府委員をして説明いたさせます。  以上一般会計歳出及び歳入について申し述べましたが、次に特別会計及び政府関係機関について申し上げますと、まず特別会計につきましては、米国対日援助物資等処理及び緊要物資輸入基金の二特別会計が二十八年度末をもつて廃止され、一方新たに二十九年度から交付税及び譲与税配付金特別会計が新設されますので、特別会計の数は二十九年度末において三十二となるわけであります。  次に政府関係機関予算は、日本専売公社外機関に関するものでありまして、さきに申し述べました財政投融資方針によつて、それぞれその予算編成いたしております。  以上をもつて昭和二十九年度予算について、その概要を御説明申し上げた次第であります。何とぞ慎重御審議をいただきたいと存します。
  8. 倉石忠雄

    倉石委員長 次に順次補足説明を聞くことといたします。まず主計局長説明を求めます。
  9. 森永貞一郎

    森永政府委員 大臣の説明を計数的に若干補足いたしたいと思います。「昭和二十九年度予算の説明」という印刷物がお配りしてあるはずでございますが、その印刷物につきまして御説明申し上げます。  まずこの印刷物の一ページから二ページにかけまして、予算編成基本方針が五つの項目にまとめてございます。すなわち財政規模の圧縮、財源調達健全化、すなわち国債は出さない、また過去の蓄積資金の放出は行わない、そういつた意味の財源調達健全化、三番目には中央地方財政調整、四番目は経費配分の重点化、五番目は米価その他公企業料金は極力すえ置く、以上五つの基本方針によりまして今回の予算が編成されたわけでございます。  その基本方針につきましては、本会議における大臣の演説、並びにただいまの説明でるる申し上げておりますので詳しくは申し上げませんが、ただ点だけ財政規模について申し上げますと、今回の一般会計予算の規模九千九百九十五億円は、経済審議庁の推計によりますと、昭和二十九年度の国民所得は五兆九千八百億と推計されるのでございまして、それに対しまして一六・七%に当ります。一ページの右の方に書いてございますが、本年度並びに二十七年度よりも、国民所得の関係におきましては、財政規模が相当圧縮せられておることを御承知いただきたいと思うのであります。なお財政規模を考えます場合に、財政投融資との純計を出してみますと、その下にございますように、財政投融資との純計は、一兆二千六百億でございまして、本年度は一兆三千百九十億、約六百億円下まわつております。その国民所得に対する割合におきましても、二一・一%でございまして、前年度に対しまして約一%下つておるわけでございます。  次に行政整理でございますが、経費の節減のために行政整理を実行いたしておりますことは御承知の通りでございます。警察関係約三万名を含めまして総数六万名の定員を整理することにいたしております。これが実施は原則として二箇年間、警察関係が若干延びますが、一般会計特別会計につきましては、大体二箇年間に実施する予定でおりますので、行政整理の関係では、初年度にはただちには経費の節約は出て参りません。退職金あるいは待命給与の支給がございますので、初年度はとんとんでございます。平年度におきます節約額は、一般会計特別会計の約三万名によりまして約七十億円、警察関係によりまして平年度約八十億円、合せて百五十億円くらいになつております。平年度におきましてはその程度の財政規模の圧縮が可能になるわけでございます。基本方針につきましては、今の点だけ補足的に申し上げておきます。  次は二ページの歳出予算のおもな内容でございますが、これも大臣から御説明がございましたし、また後に重要事項につきまして一項目ずつ申し上げるわけでございますが、大体の予算の骨格を御理解いただく意味で簡単に申し上げますと、防衛費におきましては、防衛支出金保安庁経費を合せまして百四十億の増額、防衛支出金は三十五億減少し、保安庁経費は百七十五億増加いたしております。  次に経済力充実発展の経費でございますが、財政投融資につきましては、財政規模を圧縮するため、また最近とかく財政投融資につきまして過剰投資不急不要投資の弊も見受けられないでもございませんので、大幅に圧縮いたしました。その一覧表が四ページに出ておりますので、四ページの表をごらんいただきたいと存じます。四ページの一番下に合計欄がございます。これは財政投融資の種類別を示しておるわけでございますが、まず一般会計は、本年度四百七十一億に対しまして、来年度は二百億、半分以下に減らしております。資金運用部は、本年度千七百二十三億が千五百八十億に減つております。簡保資金は、百九十億が四百六十億に増加いたしております。この資金運用部と簡保との関係は、本年度は簡易保険におきまして積立金の半額を運用いたしておりましたが、二上九年度以降は、積立金の全額を簡保において運用することになりましたための増減が、この増減の主たる理由でございます。なお、詳しくは理財局長から御説明があると思います。  それから産業投資会計は、本年度六百十億円が来年度百七十五億円、これも理財局長から説明があると存じますが、本年度におきましては減税国債の発行二百億、所有国債売却二百億を予定しておりましたが、来年度におきましてはかかる要素はございません。通常の回収金並び利殖金だけでございます。ただ新たな要素といたしまして、緊要物資特別会計を本年度限り整理することといたしまして、その会計の手持ち現金を年度初めにおきまして産業投資特別会計に繰入れることにいたしました。それによつていささかなりとも産業投資特別会計の資金源の充実をはかつたわけでございます。以上の合計、本年度は二千九百九十四億円に対しまして、来年度は二千四百十五億円と減少いたしました。  このほかに公募債につきましては、本年度とほぼ同じ程度の起債を見込みまして三百九十億。それを全部合計いたしますと、本年度三千三百八十九億が二千八百五億と約六百億近く減少いたしたわけでございます。  その二千八百五億の各機関別運用計画は、計の欄をごらんいただきたいと存じます。大きく減少いたしましたのは、開発銀行におきまして、本年度六百億が三百五十億、また金融債引受によりまして、本年度三百億が二百億、また増加いたしましたのは電源会社の本年度二百億が二百六十億ということになつております。中小企業公庫、国民金融公庫につきましては、自己資金を加えますと、本年度よりも相当上まわつた計画に相なつております。  政府事業建設投資におきましては、国有鉄道におきまして、本年度二百三十億が百九十億、電電公社におきまして本年度百七億が七十億、これがおもなものでございます。  地方債は本年度千二百三十三億が千九十億に減少いたしました。これは後ほど申し上げます地方財政計画に即応した計画でございます。  財政投融資につきましてはこの程度にいたしまして、経済力充実発展の経費といたしましては、公共事業費食糧増産対策費があるわけでございますが、この経費が相かわらず予算上の重点の一つであることは申すまでもございません。但し、従来公共事業費及び食糧増産対策費につきましては、とかく総花的傾向のうらみを生じておりました。そこで経費の使用をより効率的にするために、今回の予算におきましては、公共事業におきましては治山治水対策及び道路事業に重点を置き、また食糧増産関係におきましては土地改良事業に重点を置くことといたしまして、相当厳選いたしております。全般的に二十九年度よりの新規事業は一切認めておりません。また既着工の事業につきましても、その経済効果を検討いたしまして、経済効率の悪いものにつきましては、やむを得ず一時休止するというような措置も講じておるわけでございます。総額におきましては本年度千七百五十億が千六百九億に減少いたしております。  その中で治山治水につきましては三百九十八億が四百三十一億、これは三十三億の増加、災害復旧費は六百七十六億が五百三十三億、百四十三億の減少、食糧増産は三百五十八億が三百六十三億、五億の増加、道路港湾等におきましては二百七十九億が二百八十二億、三億の増加、うち道路費の増加は八億でございます。冷害救農土木事業は今年度は計上いたしておりません。  次は民生の安定のための経費でございますが、まず住宅対策といたしましてはほぼ本年度と同額を計上いたしております。一般会計に計上いたしました金額は、百三十七億が来年度は百三十四億円、これに住宅公庫、資金運用部からの住宅融資等、すべての住宅資金を合計いたしましたものにおきましても、本年度の三百二十億が来年度三百十四億と、ほぼ同額計上いたしております。  次にいわゆる社会保障の経費でございますが、生活保護、児童保護、社会保険、結核対策及び失業対策の諸経費につきましては、合計いたしまして本年度は七百三十六億円でございましたが、来年度は七百七十四億円、三十八億円を増加いたしております。  さらに広い意味の社会保障でございますが、旧軍人遺家族等の恩給費、遺族等の援護費、留守家族等の援護費、その三者の合計におきましては本年度五百億が来年度は六百八十九億、百八十九億円を増加いたしているわけであります。  次に文教関係の経費でございますが、義務教育費国庫負担は来年度以降これを全面的に実施することにいたしまして、七百億円を計上いたしております。その他文教関係の諸費用を合計いたしますと、文教施設費、国立学校運営費、育英事業費、産業教育振興費、科学研究費、理科教育振興費、学校図書館其他整備費、以上の合計でございますが、本年度千十五億が来年度は千百四十八億、約百三十億円を増加いたしておる次第であります。  最後に地方財政の関係でございますが、本年度の予算は地方制度につきまして、警察制度の改革を中心とする制度の改正並びに地方税制の改正を前提といたしまして、それを織り込んだ予算を提出いたしております。地方制度の改革の骨子は五ページに一覧表が出ております。ちよつと簡単に申し上げますと、まず地方制度におきましては、国家地方警察及び市町村治体警察を都道府県一本の警察に変革するわけでございます。中央及び管区には府県警察相互の連絡調整等のための維持管理機関を設けることにいたしております。警察官の定員は十一万一千人ということにいたしまして、一般職員を含めて三万人を減少いたしております。但し一挙に整理することは困難でございますので、当分の間、定員外の職員を置きまして漸進的に整理する方針をとつております。実施時期は七月一日でございまして、平年度約八十三億円の節約をここに期待いたしておるわけであります。  その他地方制度といたしましては、市町村教育委員会はこれを存置いたします。但しただいまの二年ごとに半数改選という制度を改めまして、二十九年度施行予定になつております選挙は、これを行わないことにいたしました。  その他各種委員会、審議会等につきましても極力整理統合を行い、また行政機構につきましても極力簡素化するという方針で地方財政計画を立てることにいたしております。   地方税制の関係でございますが、地方税源の分配の適正化をはかり、いわゆる裕富府県における超過財源の減少を目標といたしまして、次のような措置を講ずることにいたしております。まず附加価値税は、これは形式的にも廃止いたします。事業税及び特別所得税につきまして税率の軽減、基礎控除の引上げ等、相当の減税を行うことにいたしております。  それから入場税はこれを国税に移管いたしまして、その収入の九割を地方に還元する地方譲与税として道府県に譲与する。これによりましていわゆる地方財政のロスを少くすることをはかつておる次第であります。  同じような目的から以下の諸税の改革を行うわけでありますが、道府県民税を創設してその反面市町村民税を軽減する。また新たにタバコ消費税を創設いたしまして、その総額が小売価格の総額に対しまして都道府県分が百十五分の五、市町村分が百十五分の十になるように税率を定めるようにする。  また大規模償却資産税を創設いたしまして、大規模の償却資産につきましては、法定額を越える部分を道府県において課税する、さような趣旨の改革を予定いたしております。  さらに道府県税といたしまして不動産取得税を創設し、その反面固定資産税を軽減する。以上のような税制面の改革を予定しておる次第であります。  以上のような地方税制の改革に伴いまして、地方財政調整制度につきましてもこの際変革を加えることを予定しております。その一つは平衡交付金制度を廃止いたしまして、それにかわる推置として所得税、法人税及び酒税のそれぞれに対して、一定の割合を一般会計から交付税として地方に交付する。交付する場合には新たに特別会計を設けまして、その特別会計から交付するわけでございます。わけ方は大体現在の平衡交付金と同じようなわけ方をするつもりでおります。  それから揮発油税でございますが、揮発油税収入の三分の一相当額を地方に譲与することにいたし、これを都道府県の道路面積を基準として配分することによりまして、都道府県の道路の保守改良の財源を確保することにいたしております。  さらに入場税につきましては、国税に移管されましたものの九割を地方に譲与するわけでございますが、その譲与の基準は都道府県の人口を基準として配分する、こういうことを考えておるわけであります。  以上のような制度改革を予想いたしまして、そのほかに二十九年度における経費及び歳入の自然増を加味いたしまして地方財政計画を設定いたしたわけでございます。詳細は後に申し上げますが、その結果地方財政平衡交付金がなくなりまして、それにかわるものとして地方交付金が千二百十六億、それから地方譲与税譲与金が七十九億、このほかに入場税の譲与金、これは一般会計を通さないで特別会計にすぐ繰入れて配付される分でございます。その分がございますが、一般会計に関係あるものといたしましては、交付税交付金地方譲与税譲与金、合計千二百九十五億でありまして、前年度の千三百七十六億円に対しまして八十一億円の減少に相なる次第でございます。  以上二十九年度予算編成の前提と申しますか、基本的骨組みを申し上げたのでございますが、次に歳出面に移りまして、六ページにいわゆる重要事項別の表、二十八年度と二十九年度との対比が出ております。この各項目に従いまして、特に御説明を要する点だけを申し上げて参りたいと存じます。  防衛支出金は三十五億円減少いたしました。その減少いたしました内訳は、在日合衆国軍交付金、これは行政協定によりましてまとまつた金を毎四半期に交付しておるわけでございますが、その交付金において二十五億二千万、それから施設提供等諸費、これは米軍の使用する施設、区域等の提供に必要な経費を日本が負担しておるわけでございますが、その経費において約十億円、合計三十五億円を減少いたしておるわけでございます。  保安庁経費増加額は百七十五億円でございまして、総額七百八十八億円と相なります。その内訳は、官房各局、統合幕僚会議等、いわゆる中央の経費が十八億、今までの保安隊は陸上自衛隊に改められる予定でございますが、その陸上自衛隊の関係経費が四百八十億円、それから海上自衛隊、これも今の警備隊が改称せられるものでございますが、その経費が二百十八億円、航空自衛隊、これは新たに設けられる予定でございますが、その経費が七十二億円ということになつております。これら経費の積算の基礎になりました人員の関係を申し上げますと、保安隊改め陸上自衛隊におきましては、現在の制服職員十一万人、一般職員千八百八十人を、それぞれ二万人、八千七百人増加いたしまして、二管区隊の新設並びに方面隊直轄諸部隊の増強を行うことといたしております。  警備隊につきましては、二十八年度予算において建造いたします新造船舶並びに米国より貸与を受ける船舶の乗組員を増加いたすわけでございまして、現在の制服職員一万三百二十三人、一般職員三百六十六人を、それぞれ五千四百八十五人及び二百十九人増加することといたしております。  航空自衛隊は練習機による訓練を開始するという段階でございますが、その定員といたしまして制服職員を六千二百八十七人、一般職員を四百七十八人予定いたしております。  以上の予算額七百八十八億円のほかに、予算外の国庫の負担となる契約といたしまして、警備船等の船舶建造のために三十三億円、営繕工事等の施設整備のために四十七億円、合計八十億円の国庫負担契約を提案いたしておる次第でございます。  次は平和回復善後処理費でございますが、本年度は当初百億計上いたしておりましたものが、補正の際に減額いたしまして三十億円になつております。これを二十九年度は百五十億円に増加いたしております。増加いたしました理由は、フイリピン、インドネシア、ヴエトナム等の間に協定いたしました沈船引揚げが二十九年度初頭から本格化いたして参ります。それと同時にこれらの国との問の一般賠償協定も、相当交渉が進むであろうということを考えた結果でございます。  連合国財産補償費は、本年度四億、来年度は二十五億九千九百万———二十六億計上いたしております。この経費は、二十九年度百億が必要なわけでございますが、従来からの繰越しが七十四億余りございます。その分を使うことにいたしまして、それと合せて百億になるような金額といたしまして二十六億を計上したわけでございます。なお二十七年度に計上いたしました予算を二十九年度において繰越して使用いたしますために本国会に別途財政法第四十二条の特例に関する法律案を提出いたしまして、二十七年度の繰越しが翌々年度においても使えるということの特例を開いていただきたいと考えております。  次は公共事業費及び食糧増産対策費でございますが、九ページでございます。この経費につきましては治山治水対策費食糧増産対策費道路港湾等事業費、災害復旧事業費、冷害救農土木につきましては、さらにこまかく事業種別を掲げ、なお内地と北海道との使用区分を示してございます。  この公共事業費及び食糧増産対策費の査定の基本方針を申し上げますと、この経費が重点的経費であるという点におきましては、むろん従来と同様でございますが、先ほども申し上げましたように、とかく総花的な傾向がございます。工事の経済的な進行が阻害されており、工事の完成が遅れておる。そういう弊も相当顕著になつて参りましたので、極力重点主義的な予算編成をいたしたのでございます。先ほど申しましたように、公共事業につきましては、治山治水道路事業に重点を置き、食糧増産対策事業については土地改良に重点を置いております。治山治水につきましては本年度三百九十八億円が来年度において四百三十一億、約三十三億を増加いたしておることは先ほど申し上げた通りでございます。なおこのほかに国有林野特別会計におきまして治山のための経費約三十二億円を計上したことを御記憶いただきたいと思うのであります。国有林野特別会計は従来利益金を一般会計に納付しておつたのでありますが、今回の予算におきましては利益金の納付をとりやめまして、その利益金を国有林野特別会計におきまして、重要河川上流の民有林につきまして、それを必要があるものは買い上げて治山事業を施行する。あるいは荒廃地復旧、水源林造成等の事業を行う、それによりまして国有林野特別会計におきましても、治山事業の面において重要なる一翼をになわせるという次第でございます。一般会計の計上額のほかに三十二億円を治山に投じておる次第でございます。  土地改良につきましては百四十一億が百四十五億と、四億くらい増加いたしております。食糧増産事業は重点を土地改良に置いておるわけでございます。新規事業は、先ほど申し上げましたように、一切これを認めないということを申し上げたのでありますが、これに対する例外と申しますか、一年度間で完成する小規模な工事あるいは災害復旧に関連して必要となる復旧助成事業、これにつきましては例外的に認めておるものもございます。それから既定の継続工事につきましても、計画の再検討を行いまして、工事の優先順位に従つて集中的に予算を分配し、それによりましてできるだけ早い時期に経済効果が上るようにという目的を達成せんとしておるわけでございます。その反面経済効果の少いものにつきましては、手もどり、ないしは浪費を生じない必要最小限度の経費に計上額をとどめた次第であります。なお群小工事をできるだけ集約整理することによりまして、一箇所百万円以下の補助金は原則としてこれを認めないということにいたしております。  大体以上のような基本方針によりまして、公共事業の予算を編成したわけでございますが、なお十ページから十一ページにかけまして、各事業別に詳しく査定内容が出ておりますので、あとでお読みいただきたいと存じます。  災害復旧についてだけ一言いたしたいと存じます。昨年はまれに見る大災害でございまして、実は巨額の補正予算を提出いたしたわけでございます。従いまして二十八年度末における未復旧残事業は相当額に上つておるわけでございます。その額に対しまして、最近大蔵省で実施いたしました監査の結果によりますと、相当減少し得る見込みがついたのであります。二十八年災並びに二十七年以前の過年度災につきまして三、四割の査定が可能であるという確信を得た次第でございまして、それに基きまして各事業別に査定を加えて相当圧縮をいたしております。先ほど申し上げましたように、六百七十六億が五百三十二億に減少いたしておる次第でございます。なお残事業に対する二十九年度の復旧率は大体主割ないし四割と考えております。二十八年災につきましては、二十九年度末におきまして大体六割が復旧する、そういうようなことに相なるような査定になつております。但し直轄事業、都市の排土等は事業の性質上、二十九年度中に完成することを予定いたしております。  なお災害復旧費の査定にあたりまして、もう一言申し上げたいことは、いわゆる原形超過工事が相当大きくなつて参つておるのでございます。この点につきましては、再査定をいたすことといたしまして、原形超過工事の特に著しい部分につきましては、これをむしろ改良工事として処理することにいたしまして、別に改良事業の予算を計上いたしておる次第でございます。  次は文教施設費でございますが、本年度九十五億が来年度は八十二億、約十三億減少いたしております。この文教施設費は大きくわけまして国立文教施設費、公立文教施設費、文教施設災害復旧費にわかれます。国立文教施設費につきましては大体本年度と同額でございます。災害復旧費は本年度十五億が来年度十一億余り、約三億五千万を減少いたしております。これは災害復旧費の年度割に基く減少でございまして、特に大幅に減少したということではございません。公立文教施設費、これは本年度六十億が来年度は五十一億と約九億減少いたしております。この減少いたしました大きなものは、義務教育緒学校の危険校舎の改築費の補助でございます。本年度は二十二億でございましたが、来年度は十四億を計上いたしております。ここで減少いたしました理由は、本年度一般会計予算並びに起債等の面におきまして、相当の金額を危険校舎の改築に充当いたしました結果、危険校舎の回復は二十八年度において相当進捗をする予定でございますので、来年度におきましてはこの残りの事業を大体三箇年くらいで完成することといたしまして所要額を計上いたしました。この結果約八億を減少いたしたわけであります。その反面義務教育年限延長に伴う中学校の一般校舎につきましては、従来学童一人当り〇・七坪を基準といたしておりましたが、これを一・〇八坪に引上げ、そのための増加額約四億を増額計上いたしております。  住宅関係でございますが、先ほど申し上げましたように、金額におきましてはほぼ本年度と同額でございますが、戸数におきまして減少いたしております。これは建設単価が相当上つて参りましたための減少でございます。この限られた予算の範囲内で、いわゆる公営住宅に重点を置くことといたしまして、住宅金融公庫の一般住宅につきましては、相当削減するのやむを得なかつた次第でございます。  官庁営繕費、これは本年度二十五億を半減以下にいたしまして十一億円にいたしました。  出資及び投資、一般会計の分は先ほど申し上げましたように二百億でございます。これにつきましては先ほど一覧表をごらんいただきましたので、これは説明を省略いたします。  その次は生活保護費でございます。二十八年度二百六十六億が二十九年度二百八十一億と、十五億増加いたしております。増加の原因は、一つは対象の増加であります。過去一箇年間の実績を基礎とし、人口増加あるいは来年度の予算の影響等を勘案いたしまして、対象人員におきまして五%の増加を見込んでおります。この結果延べ人員百二万七千人、一月当り八万六千人の増加でございまして、ことに下期におきましては、今回の予算の影響が相当出て参ることを考えまして、下期に重点を置き、下期は月十七万程度の人員を対象といたしまして考えております。単価は実績を基礎といたしておりますが、生活扶助につきましては、今般の一月一日から実施されました米価の値上りを考慮いたしまして、八千円から八千二百三十三円に引上げました。また医療扶助につきましては、昨年十二月一日に行われました入院点数等の改訂を考慮いたしまして、引上げを実施いたしております。  児童保護費、本年度五十二億円が来年度は五十六億円、約四億増加いたしております。これは人員が増加いたしました点と消費者米価の改訂、入院点数等の改訂等に伴う自然増でございます。  社会保険費でございますが、本年度九十五億が来年度は九十八億と約三億増加いたしております。増加いたしましたおもな原因は、厚生年金保険におきまして、最近の実情にかんがみて標準報酬を八千円から一万八千円に引上げ、また老齢年金の給付額を大幅に引上げる。その他根本的な改訂が行われる予定でございますが、それに伴つて、従来国庫が一般につきましては一割、坑内夫につきましては二割の給付費を負担いたしておりましたのを、来年度以降、一般につきまして一割五分、坑内夫は二割としてすえ置きまして、保険給付の充実をはかつた次第でございまして、その関係の一般会計からの繰入れの増加が一番大きな原因でございます。もう一つは、日雇労働者健康保険の給付が本年一月から実行されることになつたわけでございますが、療養給付期間を三箇月から六箇月に延長いたしまして、保険給付の内容を充実することにいたしました。それに伴つて給付費が増加いたして参りますので、新たにその一割を国庫において負担することにいたした次第でございます。以上の関係での一般会計からの繰入れの増加が、この経費の増加のおもなる原因でございます。  次は結核対策費でございますが、結核対策費におきましては、病床の増加は公立その他において約九千床を予定いたしております。国立におきましては、今回はベット数の増加はとりやめまして、そのかわりに施設の整備改善を相当はかつております。百二十六億が百三十二億と増加いたしておりますのは、それらの施設費のほかに人件費等の増加によるものがあるからでございます。  次は失業対策費でございます。失業対策費につきましては、対象人員におきまして五%増加いたしまして、一日平均十六万三千人、これを失業対策費の対象といたしておる次第でございます。その結果百億円が来年度は百十一億円、約十億円を増加いたしたのであります。次に失業保険費につきましても、対象人員の五%増加を見込みまして、失業保険の支給金額におきましては二百七十二億円、本年度に対しまして十億円の増加を考えております。一般会計の関係におきましてはほとんど前年と同額になつておりますが、失業保険特別会計の方をごらんいただきますと、約十億円の給付費の増加をいたしておるわけでございまして、それに伴う一般会計の負担額を計上いたしたわけでございます。  次は遺族等の援護費でございますが、二十八億円が来年度は三十二億円に増加いたしております。これは二十八年度に行われました遺族年金の単価改訂の平年度化に伴うものでございます。  次は留守家族等の援護費二十一億円余りが十八億円に減つております。これは最近における引揚げの進捗等に伴う留守家族の減少に伴う減少でございます。  次は旧軍人遺族等恩給費四百五十億円が六百三十八億と、百八十八億円増加いたしておりますが、これは二十八年度におきましては三・四半期分しか計上されておりませんでした。それが二十九年度におきまして平年度化いたしますための増加でございます。  次は国立学校運営費でございますが、二百七十三億が三百三億に増加いたしております。これは給与改訂に伴う人件費の増加、学年進行等に伴う増加でございまして、特に申し上げることはございません。  育英事業費、これも対象となる学生数の増加並びに若干の貸与金の引上げに伴うものであります。  義務教育費国庫負担金、これは先ほど申し上げましたように、二十九年度以降義務教育費国庫負担法を全面的に実施することにいたしまして、七百億円を計上いたしました。なお教材費におきまして若干減少いたしておるようなかつこうになつておりますが、これは理科教育振興法及び学校図書館法の成立に伴いまして経費の移しかえが行われた結果で、別途その分が計上されたためであります。  次は警察費でありますが、国家地方警察費前年度二百十六億が六十億に減少いたしております。これは警察制度の改正が七月一日から実行されますので、その三箇月分を計上したわけであります。  その次の警察費、これが改正後の九箇月分の予算でありまして、九十三億四千二百万円になつております。警察制度の改正によりまして、警察職員は三万人を減少する、そのうち国家公務員といたしましては七万一千七百四十九人が七千八百二十八人、六万三十九百人余りを減少する、そういうことになつております。地方と中央との経費の分でございますが、都道府県警察の警察官等の人件費、被服費等職員の設置に関する経費は都道府県の負担といたしております。その反面教育、通信、鑑識、装備といつたような全国的な統一調整を要する経費、また国家的な警察活動に要する経費、これは直接国庫の支弁といたしまして全額を国が質担いたしております。その他の経費につきましては半額を国庫で補助する、さような建前で今回の予算ができておるわけであります。  次は地方財政平衡交付金でございますが、これは地方税財政制度の改革に伴いまして、二十九年度以降廃止することになりました。  そのかわり次の地方交付税交付金が出て参るわけでありますが、その額は千二百十六億円となつております。地方財政の二十九年度の大体のかつこうな十八ページに書いてございます。すはわち二十八年度の既定財政計画に対しまして、二十九年度に財政需要が増加いたしますのが四百八十九億円ございます。その内訳は、既定財政規模の是正が百四十九億円、給与関係経費の増加四百十四億円、公債費の増加百三十一億円、臨時事業費の減、これは災害復旧費等の減でありますが、二百四十五億、警察制度改正による増加百五億円、その他いろいろございますが、既定経費の節約百二十億円、以上の増加並びに減少がありまして、四百八十九億円財政規模がふくれるわけであります。  それに対しまして歳入の面におきましては、八百三億円の収入増加になる予定でございます。地方税の自然増が四百十一億円、タバコ消費税二百九十二億円、揮発油税の譲与税創設によるものが七十九億円、入場税の譲与税創設によりまして一割が国庫に納付されますための分が十九億円、事業税その他の税制改正に百四億円、これは減少でございます。国庫支出金の減三十八億円、その他収入の増百八十二億円、合計八百三億円の財政収入増加になる。  来年度の歳入歳出関係では三百十四億円だけ歳入が超過するということに相なるわけでありますが、一方富裕団体の超過財源も十五億増加いたしておりますので、差引二百九十九億円だけ平衡交付金を減少しまた起債額を減らせる、そういうことになるわけであります。  平衡交付金におきましては、地方交付税交付金として百六十億を減少した千二百十六億円を計上いたしております。  地方起債におきましては百三十九億円を減少いたしております。  なお以上のような歳入歳出の増減に伴いまして、二十九年度の地方財政規模は九千六日五十三億円となる予定でございます。  次は地方譲与税譲与金でございますが、七十九億円を一般会計から特別会計に繰入れまして、道路面積等に応じて地方に譲与する次第でございます。  海上保安費、これはほぼ前年通り。  国債費、本年度四百四十七億が来年度四百三十億に減少いたしております。減少いたしましたのは、国債の償還でございます。これは前々年度の剰余金の半額を国債の償還に充てることになつておりますが、二十七年度の剰余金が四百二億円でございますので、その半額二百一億円を国債の償還に充てておる次第でございます。国債諸費につきましては、援護公債の利子等の平年度化のため、若干増加いたしております。  次は農業保険費でございますが、本年度百九十四億日が百六十億円、約三十億円減少いたしました。これは二十八年度の凶作に伴う再保険金の支払い財減の不足補填を、二十八年度は八十五億円いたしたのでございますが、二十九年度におきましては、残額五十五億円を補填いたします。その補填額が三十億減少いたしましたために、減少いたしたのでございます。  次は在外公館費、本年度三十二億円が三十七億円に増加いたしております。これは在外公館を来年度におきまして十館新設し、また一公使館を大使館に昇格する、それらの関係の人件費、施設費等々におきまして増加をいたしておるわけでございます。  次に輸入食糧価格調整補給金でございます。本年度三百億が来年度は九十億、二百十億円の大幅な減少をいたしております。これは、一つには、外貨収支の改善のために外米の輸入量を極力節減いたしましたこと、もう一つは、海外における米の市場価格が相当低落いたしましたこと、さらには国内におきまして、一月一日から消費者価格が引上げられましたことに伴う補給金の減少でございます。なお外米の輸入数量は百十四万トンを予定いたしておりますが、これによりましてはいわゆる米食率の引上げは必要としない計画でございます。  食糧管理費五十六億円、これは来年度は計上いたしておりません。本年度限りの経費でございます。  次は、外航船舶建造資金貸付利子補給七億円が来年度は三十七億円、約三十億円増加いたしております。これは昨夏立法されました法律に基きまして、来年度において当然支払いを必要とするものでございます。但し昨年度の予算におきましては、国庫が開発銀行に対しても一分五厘の利子補給をいたしておりましたが、この分は二十九年度におきましては利子補給をとりやめることにいたしまして、今回の予算を編成いたしております。  文官等恩給費、百十五億円が百四十五億円、約三十億円増加いたしておりますのは、昨年十月の恩給法改訂による増加額が平年度化いたしますためのもの、あるいは元南西諸島官公署職員等のための恩給費の増加でございます。  最後に予備費、本年度百七十五億円、これは災害対策予備費百四十五億円を含んでおりますが、これに対しまして、来年度は百三十億円を計上いたしております。  大分時間がかかりまして恐縮でございますが、以下はごく簡単に申し上げたいと思います。  次は歳入でございますが、歳入のうち租税及び印紙収入におきましては、本年度七千五百六十六億円が来年度七千七百十八億円、百五十一億円を増加いたしております。この内容につきましては主税局長の御説明によりたいと存じます。  専売益金、本年度千五百八億が来年度は千三百四億、約二百億を減少いたしております。この増減のところに二九とございますが、これは二〇の誤りでございます。この内容につきましては、先ほど大臣からの御説明にも詳しくお述べになつておりますので、省略いたします。  次は官業益金及び官業収入、本年度百六十五億が来年度は百三十二億、約三十三億減少いたしております。  この減少のおもなものは、資金運用部の利益金を従来は一般会計に受入れまして、一般会計から郵政特別会計に赤字補填として出しておりましたが、来年度は資金運用部特別会計からただちに郵政特別会計に繰入れることにいたしまして、会計の簡素化をはかりましたので、十六億。もう一つは先ほど申し上げました国有林野事業特別会計におきまして一般会計への納付金をいたしておりますが、この納付金をとりやめまして、特別会計内部におきまして治山事業に使用することにいたしました。その関係で三十二億円減少いたしました。他に増加がございまして、合計では三十三億円の減少になつております。  次は政府資金整理収入でございますが、本年度は百三十八億、来年度は八十三億、合計五十四億減少いたしております。減少のおもなものを申し上げますと、有価証券の売払代におきまして二十七億、これは国際電信電話会社の株を本年度は大きく処分いたしておつたのでございますが、来年度はさような大口のものがございませんので、減少いたすわけでございます。それから回収金の収入におきまして三十億減つております。これは公団等の回収金がだんだん整理がついて参りまして、来年度は十五億くらい減少いたします。貿易特別会計の整理収入、これは本年度におきましてその整理収入を一般会計に繰入れましたので、来年度はございません。その分が十億。さような関係におきまして、政府資産収入におきまして約五十四億減少いたしております。  雑収入におきましては、本年度四百三十八億が、来年度は三百五十三億、約八十四億大きく減少いたしておりますが、減少のおもなものを申し上げますと、利子収入、いわゆる指定預金の利子を本年度は四十数億受入れておつたのでございますが、来年度は指定預金の利子はございませんので、その関係で四十数億円減がございます。その他いろいろな項目で増減がございまして、差引八十四億円の減少となつておる次第でございます。  最後に前年の剰余金は四百二億円ございました。二十八年度受入れました金額が四百五十五億円でございますから、そこで五十三億円を減少いたしております。  特別会計につきましては、詳しく申し上げる必要もないかと存じますが、会計の数の増減を申し上げますと、対日援助物資処理特別会計並びに緊要物資輸入基金の二つの特別会計が廃止されまして、そのかわりにふえますものが、交付税及び譲与税配付金特別会計、合計会計数は三十二と相なります。  その特別会計のおもな点につきまして申し上げる次第でございますが、交付税及び譲与税配付金特別会計、これは先ほど申し上げましたから省略いたします。  外為特別会計、これは経費の内容よりも、いかなる国際収支を前提としておるかということが問題になるわけでございますが、予算の積算上前提といたしました国際収支は二十九ページにございますように、輸出によりまして十三億七千五百万ドル、駐留軍関係の収入が七億六千万ドル、貿易外三億四千万ドル、合計二十四億七千五百万ドル、これに対する支払いは、輸入が二十一億四千万ドル、貿易外が四億二千五百万ドル、合計二十五億六千五百ドルでございまして、差引三十九年度中の支払い超過九千万ドル、さようなことに相なつております。なおかように支払い超過に相なります結果、外国為替資金の円資金は三百二十四億円の剰余を生ずることになりますので、借入金の限度は二千億円を千五百億円に引下げることにいたしたわけであります。  資金運用部特別会計産業投資特別会計につきましては、後に理財局長から説明がございますので、省略いたします。  厚生保険特別会計、これも先ほど社会保険費のところで簡単に申し上げましたので、省略いたします。  失業保険特別会計につきましても同様でございます。  食糧管理特別会計でございますが、食糧管理制度につきましては、いろいろ問題がございますことは御承知の通りでございます。政府部内におきましても目下審議会が設けられまして、いろいろ食糧管理制度について審議中でございますが、この予算の編成にあたりましては、とりあえず現行制度を踏襲いたしまして予算を組んでおります。すなわち国内産米につきましては一応統制を前提とし、極力供米を促進して行きたい。また麦等の買上げ数量も、ほぼ前年度と同量と見ております。そのほかてん菜生産振興臨時措置法に基くてん菜糖の買入れ、また飼料需給安定法、農産物価格安定法の関係につきましても、また従来通りの売買を行う前提で、本予算を編成いたしております。輸入食糧補給金が大幅に節約できますことにつきましては、先ほど申し上げた通りでございますので、省略いたします。米麦の買入れ価格でございますが、これは国内産の米麦につきましては、将来の物価水準等を、今日から的確に想定することは困難でございます。従つて本予算の編成にあたりましては、二十八年度の価格と同じような基礎の上に編成をいたしておる次第でございます。ただ米につきましては供出完遂奨励金及び超過供出奨励金は、これを基本価格に織り込みまして一本価格にする。早場米奨励金は別建で八十一億を組んでおりますが、それ以外の諸奨励金は一本化するという前提のもとに、本予算を編成いたしております。米の消費者価格は一応現行の七百六十五を、本年はそのまますえ置いております。以上のような食管会計の予算を組んでおりますが、その結果食糧証券及び借入金収入は、本年度千九百五十億円に対しまして、来年度は二千二百六十億円と、約三百十億増加いたします。但し、その増加のうち百億円は予備費、これは目下のところ使用する見込みはないのでございます。予備費に見合うのでございまして、残りの二百十億が純然たる証券の増加でございます。その発行増加額は、三十八年度末の手持ち食糧が非常に少かつたのが、二十九年度末におきましては正常に復するので、起つて来る発行増加でございます。  国有林野特別会計におきましては、先ほど申しましたように一般会計への納付をやめて、三十二億円を治山事業に充当しておるということのほか、別に申し上げることはございません。  郵政事業につきましても、別に申し上げることはございません。いわゆるベース・アップに伴う所要額は、すべて収支の差繰りでまかなつておりまして、料金の改訂は一切行つておりません。  特定道路整備事業特別会計、これも公共事業におけると同様新規事業は一切とりやめまして、既往の分の継続について重点的に処置をして行きたい。  次は政府関係機関でございますが、まず専売公社、これにつきましては専売益金につきましてすでに申し上げましたので御説明を省略いたします。  国有鉄道について一言いたします。国有鉄道における昨年末、本年初めの給与改訂、これに伴う来年度の所要額は百五十三億円あるわけでございますが、その財源措置といたしましては、一般的な料金改訂はいたしておりません。ただ一、二等の旅客運賃につきまして通行税二割、これを従来は内わくで処理いたしておりましたが、外わくに振りかえまして、これによつて三十億の増収をはかつております。それ以外は一切料金の改訂を行つておりません。従いまして収入面、支出面におきまして極力合理化をはかり、支出も極力切り詰めましてその財源を捻出いたしておるのでございますが、最後にどうしても捻出ができない部分につきましては、二十八年度におきまして償還を繰延べました資金運用部からの借入金三十億円を、さらに一年間繰延べることにいたしまして、三十億円を捻出いたしております。国有鉄道の建設勘定は、資金運用部からの借入金七十億円のほかに、公募の鉄道債券百二十億円、ほかに利用者負担の分十億円、それらと自己資金を合せまして五百四十億円ということに相なつております。建設改良も極力重点的に実施することにいたしまして、とりかえ、改良等に重点を置いたのでございます。その結果いわゆる新線建設費は二十五億円を計上するにとどめております。  日本電信電話公社でございますが、この会計におきましては給与改訂に伴う経費の増加額は、すべて経営収入をもつてまかなつております。建設勘定、電信電話施設費は四百一億円、局舎建設費六十数億円、合計建設勘定五百三十一億円でございまして、この分を公募分の電信電話債券七十億円並びに料金値上げの平年度化による収入増加による損益勘定からの繰入れ、減価償却等によつてまかなつておる次第でございます。  国民金融公庫、住宅公庫、農林漁業金融公庫、中小企業金融公庫、日本開発銀行並びに日本輸出入銀行等につきましては説明を省略いたします。  たいへん長時間にわたりましたが、以上で御説明を終ります。
  10. 倉石忠雄

    倉石委員長 次に主税局長説明を求めます。
  11. 渡邊喜久造

    ○渡邊政府委員 私の担当しております租税及び印紙収入の見積り等につきまして御説明申し上げます。お手元に昭和二十九年度租税及び印紙収入予算説明という書類を、御配付申し上げてあるのをごらん願います。一ページに総括して概括的な説明が出ております。昭和二十九年度一般会計における租税及び印紙収入予算額は、先ほど御説明がありましたように七千七百十八億二千万円、この金額は昭和二十八年度予算に比べますと、百五十一億円の増加なつております。なおそこに註釈を一つ加えてございますが、昭和二十九年から制度を改正いたしまして、租税払戻金を差引いた金額を租税及び印紙収入とするという措置を講じたいと思いまして、別途所要の法案を提案する見込みでございますので、この予算額は従来この九十億円というのが、歳出に別立てになつておりました。それを差引いたものになつておりますので、この辺を彼此計算いたしますと、この百五十一億の増というのは、二百四十一億の増に当るということを、ちよつと申し上げておきたいと思います。この内訳は詳細三ページにございます。  まず現行法による収入見込額を一応出しまして、同時にあとで御説明申し上げます税制改正増減を見込みまして、改正案による収入見込額を出しておるわけでございます。現行法による収入見込額が七千七百六十三億、それから改正案による見込み額が七千七百十八億、差引四十五億減になつておりますが、別途タバコのピースの値上げによる専売益金の増収四十五億円を予定してございますので、その間の増減税による差引はゼロという計算になります。なお全体を通じましての予算の見積りの大意といたしましては、一ページのところに簡単に書いてありますが、この予算の見積りに当りましては、昭和二十九年度におけるわが国の経済は、国の緊縮財政の実施によりまして、最近までのインフレ傾向が一掃されまして、生産は大体戦前の一五〇の線に安定する、物価は若干低落する、雇用量、賃金水準はおおむね現状維持、国民消費の抑制によりまして貯蓄の増強、資本の蓄積が促進される反面、ぜいたくな消費はある程度つて行くだろう、こういつたようなことを一応の見通しの基礎にしております。それでこの予算見積りの前提として考えられております税制改正のあらましにつきましては、お手元に配付してございますその資料の三十一ページ以下にございますので、まず簡単にこれを御説明申し上げたいと思います。  税制改正の一応の考え方といたしましては、最近の経済情勢、国民の負担状況を考えまして、負担調整と資本の蓄積の促進ということを考えますとともに、奢侈的消費抑制、国際収支の改善等に資するために、所得税、法人税等の直接税の負担軽減合理化するとともに、間接税の新設増徴を行う、なお課税の適正、簡素化及び地方財政の財源の偏在是正のために幾つかの改正措置を行う。まず第一に所得税でございますが、所得税につきましては基礎控除扶養控除の額を若干引上げる、これが全体の改正の中心でございます。基礎控除は現行の六万円を七万円に引上げる、扶養控除は最初の扶養家族一人につきましては現状の三万五千円を四万円、それから二人目、三人目につきましては二万円を二万五千円、但しこの改正は本年の四月から実施するということを目途にいたしますので、月給をもらつていらつしやる方のように、毎月税金を納めていらつしやる方は、四月以降につきましてはすぐにこの新しく引上げられました控除によつて源泉徴収をされます。但し一月—三月は従来のままであるという関係からしまして、申告所得税のように一年を通じて納める方につきましては、本年は七万円が六万七千五百円、四万円が三万八千八百円、二万五千円は二万三千八百円、こういう数字になります。明年以降は申告所得税の方におきましても七万円、四万円、二万五千円に引上げられるわけです。なお扶養控除につきましては、四人目以下におきましては現在の一万五千円がそのまますえ置かれる、こういう見積りでございます。これが一番大きな点でございますが、なおその他に幾つかの点で改正をしており、その一つは退職所得に対する控除でございます。現在二十万円の控除額になつておりますが、相当長い勤務年数の方におきましては、二十万円の控除だけでは負担が無理ではないかという考え方が、税制調査会の意見にも出ておりまして、その線に沿いまして、十年を越える場合におきましては、一年について二万円ずつ増加しまして、ちようど二十五年勤務の方が五十万円になるというところを目途にしまして、最高五十万円まで引上げる。こういうことを考えております。それから第二は、山林所得につきましてでございます。これは現在五分五乗の方式をとつておりますが、他の所得と総合した五分五乗をやつております。これを昔のように分離した五分五乗にいたしたい。第三は資本蓄積の促進ということを考えまして、生命保険料の控除額、これを現在の八千円から一万二千円に引上げたい。もつとも本年は基礎控除の考え方と同じような意味におきまして一万一千円。それから個人の長期の定期性預貯金の利子につきましては、現在預金利子は百分の十になつておりますが、これをある程度軽減したい。それから配当所得に対する源泉徴収の税率でございますが、現在二十になつておりますが、これを十五程度に引下げたい。それから青色申告に対する専従者控除の額、これは従来から基礎控除の額と同じになつておりますので、基礎控除の額を引上げる機会におきまして、それと同じような引上げをする。同時に従来要望されておりました専従者の中に配偶者を入れるという改正を行いたい。なお手続の問題が主でありますが、現在行つております予定申告の制度、これを予定納税制度に改めたい。現在予定申告の制度を行つておりますが、大体原則としては前年の所得額を下まわらないということになつておりますので、大体出て参ります申告が、前年度の申告と同じ額が出て参つております。それでむしろそれは予定納税の制度にかえた方がいいのじやないかという税制調査会の意見もございますので、こういつた改正をいたしたい。所得税の改正は以上申したのが主たるものであります。  それから法人税であります。法人税につきましては税率引下げとかいろいろ意見がありましたが、結論的には、この際として税率引下げは行わない。ただしかし資本構成の是正をはかりますために新規払込みの分に対しての配当につきまして、二年くらいを限りまして、一部損金に算入することを考えて行きたい、同時にこの制度は再評価積立金の資本繰入れの促進ということも考えまして、再評価積立金の方から資本に繰入れました場合におきましても、やはりある程度の損金算入を認めて行きたい。詳細につきましてはもう少し細目的な検討をするために、時間的な御猶予をお願いしたいと思つております。それから第二は同族会社の積立金に対する課税でございますが、現在は一定の限度を越えておりますと、百分の五の税率で毎年課税されております。この制度はどうも無理だという批判がございますので、今度の改正におきましては税制調査会の答申の線に沿いまして、その積立金が払込み資本金の四分の一か、百万円か、いずれか多い金額を越えて積み立てられた場合におきまして、百分の十の税率で一回限りの課税をするようにということに直したいのが、この改正の趣旨であります。それから第三は価格変動準備金の問題でありますが、価格変動準備金につきましては、現在は、物価が値上つて行きますときには、変動準備金が積み立てられないという結果になるような制度なつております。この制度につきましては、むしろ物価が値上つているときに、ある程度の準備金をして、物価の値下りのときに備えたい、これが業界の希望でございまして、いろいろ検討してみました結果、この御希望はごもつともであるというふうに思われますので、これもその線に沿つて改正を加えたい。すなわち現在の制度でございますと、たなおろし資産の評価額が時価の百分の九十を越えておりますときに、この変動準備金が積み立てられるのでありますが、今度は時価か取得価額か、そのいずれかの九割に相当する分まで積み立てる、こういうふうにかえて行きたい。ただ後入先出法でやつておる際におきましては、この制度は物価の値上りのときにおきましては低く評価ができる制度でございますので、こういう場合におきましては、この改正は適用する必要がないのじやないか、あるいは商品として有価証券を持つている場合は、この改正を適用していいが、インヴエストメントとして持つている場合は適用する必要がないじやないか、大体こういう税制調査会のお考えをそのまま入れた改正をしたいと思つております。それから輸出所得に対する一部控除の制度、これは昨年から始めておりますが、全体としてはもう少しその効果の成行きを見て行きいた。たださしあたりましては、プラント輸出の場合につきましての現在の三%を五%に引上げるということと、輸出商社に対する控除限度額をある程度引上げたい。なお今度の予算全体の編成方針等とからみ合いまして、法人に対する交際費等について、ある程度の制限をしたい。これの細目ももう少し検討したいと思いますが、小法人についてはあまりこの必要がないのじやないか、少くとも調査課所管の法人を対象にしまして、こういうことを考えたらどうだろうかということを現在考えて、近く法案を提案したいと思つております。  第三に相続税でありますが、相続税につきましては死亡保険金及び退職金に対する控除額を、現行の三十万円から五十万円に引上げますとともに、主として中間資産層以下に対する負担軽減するために、累進税率の緩和をはかりたい、現在の累進税率は、最近における物価の上昇にそぐわない点もあろうと思いますので、こういう改正を行いたい。なお相続財産である立木につきましては、所得税負担を考慮しまして、評価について一定割合の割引を行うという特例を設けたい。以上が大体直接税に関する改正でございまして、大部分は減税措置でございます。  これと見合う意味におきまして、間接税において幾つかの増税及び新税の創設を行いたい。その第一は酒税でざいますが、酒税につきましては、清酒の特級、一級、それからビール、雑酒の特級——これは大体サントリー等の本格的なウイスキーでありますが、これにつきまして若干の税率引上げを行いたい。五%ないし一割の税率引上げでございます。これによりましてどういう価格になるかという点でございますが、清酒などにおきましては、米の値上り等によるコストとの値上りもございますので、もう少し検討してみませんと、この税金とそのコストの値上りとを加えてどういう価格になるか、ちよつとはつきり申し上げられませんが、大体ビールは、現在中身が百七円、びん代が十五円で百二十二円になつております。千円税金を上げますれば三円五十銭ほど上るわけでありますが、いろいろ業者の方ともお話合いをしておりますが、大体今度はびんつき価格で値段をきめることにいたしまして、百二十五円くらいに納まり得るのじやないかということを、今考えております。  砂糖消費税でございますが、砂糖消費税は、砂糖の輸入は本年は非常に多かつたのでございますが、外貨の事情等によりまして、なかなか本年のような輸入がむずかしいのじやないか、大分市況も強くなつております。そういつた点も考慮しまして、昨年も二割引上げたあとではございますが、本年も大体二割程度引上げを行いたい。但したる入黒糖、たる入白下糖等、内地産のこうした黒糖、大部分がこれでありますが、これにつきましての税率は従来通りすえ置きたいと考えております。  次に物品税でございますが、物品税につきましては、主として奢侈品高級品、嗜好品というものを中心としまして、相当税率を引上げたい。高級大型乗用自動車、これは現在三割の税率になつておりますが、これを五割程度引上げたい。電気冷蔵庫に対する税率は、これも三割を四割程度引上げたい、それから新たにテレビジヨンの受像機に対して三割程度の税率で課税して行きたいというような、幾つかの新課税を行うことを考えております。  次に揮発油税でございますが、これは現在一キロリツトルにつき一万一千円でございますが、二千円程度の増税を行いたい。これによる税収は、三分の二を国の道路建設、三分の一を地方の道路建設に充てる、こういう計画なつておりますことは、主計局長の申し上げた通りでございます。  骨ぱい税でございますが、これは税額はわずかな額でございますが、大分以前に定められておりますので、この機会に少し引上げたい。麻雀は現在千五百円でありますが、象牙製、牛骨製その他というふうにわけまして、税率の相当の引上げを行つて行きたい。その他の骨ぱいは二割程度、現在の五十円が六十円になります、その程度引上げを行いたい。  印紙税でございますが、これも二十二年か三年にきめられたままで放つてあります。この機会にある程度引上げを行いたい。委任状につきましては、現在二円を五円、受取書は現在千円以下のものは払わなくてもいいことになつておりますが、それを三千円以下というふうに免税点を三千円まで片方で引上げますとともに、二円を十円に上げるということを考えております。  それから十の繊維品消費税でございますが、これにつきましては目下内容的にいろいろ検討しておりしますが、小売業者の販売するところにおきまして、高級織物、メリヤス、レース及びこれらの製品につきまして、百分の十程度の税率で課税して行きたい。収入の見積りはあとで申し上げますが、大体八十五億円を予定しております。  それから入場税につきましては今度国において直接徴収しまして、その収入の九〇%相当額を人口に按分して道府県に配付する、税率等におきましては、現在の収入見込額を中心にして検討しまして、相当の引下げも可能ではないかというふうに考えております。  その他所得税、法人税、相続税につきましては、申告書を提出した日から一年経過した日以後になされた更正につきましては、利子税を徴収しないことにしますとか、あるいは第三者通報制度を廃止するとか、こういつた幾つかの改正を行いたい。これが今度の税制改正の案でございます。  以上の案を基礎にいたしまして歳入の見積りをやつております。歳入の見積りの方法といたしましては、まず現行法を基礎にした歳入の見積りをいたしまして、同時に改正法によるその増減を差引き、あるいは加えまして、税額を出しております。各種の改正によりましてどういう増減があるかということにつきましては、四ページにございます昭和二十九年度税制改正による事項別増減収額の数字をごらん願いたいと思います。  各税の見積りにつきまして、おもな税につきまして簡単に御説明申し上げたいと思います。まず源泉所得税でございますが、二十七年における給与の支給人員、支給金額、一応この数字がございます。そこでこれをもとにしまして、二十九年度においてどういう数字になるかということをまず計算いたしますと、支給人員におきましては、大体増減なし、多少行政整理等も考えられますので、二十八年度に比べまして一%減、九九%、給与の方は、官吏のベース・アップその他もございますので四・四%増、給与総額におきましては三・四%の増、これから失格人員を引き、同時に失格人員に対する支払給与を引く。課税有資格人員を八百五十三万と見込みまして、この人たちに対する支給給与額から、給与所得控除額、基礎控除額、扶養控除額、生命保険料控除額各種のものを差引きまして、課税所得が八千四百五十三億、一人当り九万九千円、これに対する平均税におきまして、算出税額が二千百三十六億、一人当り二万五千円、これに日雇い労務者の賃金に対する税額を加えまして二千百四十八憾、これから不具者控除その他を差引き、また収入歩合をかけまして、一応の数字を出しまして、それから繰越し滞納の収入見込額を加えまして、一応給与所得に対する税金を二千八十七億。それから給与所得以外の源泉徴収が幾つかございます。利子所得に対する税額、配当所得に対するもの、これらをさらに加えまして二千四百四十一億、これから先ほど申しました還付見込税額というものを、過去の実績によりまして二十億差引きまして、結論として二千四百二十一億という数字を得たわけであります。  改正法におきましては、以上申しました数字をもとにしまして、基礎控除額の引上げ扶養控除額の引上げといつたものをこれに加味しまして、一応計算をやり直してございます。そうした結果といたしまして、八ページにございますが、最後のしりが二千百五十七億という数字になります。  次に申告所得税であります。申告所得税につきましては、二十七年の課税実績をとりまして、これに生産、物価、それから申告及び能率の増等による調整、この中には収益率とかそういつたものもございますが、そういつたものを加味いたしまして、大体本年度においての所得というものは、人員、所得、それがどうなるかというのをずつと計算してでございます。そのBのところに農業関係——括弧の中は二十八年度の所得に対する増でありますが、農業のところが一一一になつておりますのは、これは二十八年度におきましては、冷凍害、災害等によりまして所得率がぐんと減つたものが、この場合におきまして平常の姿にもどつたという関係であることをつけ加えさしていただきます。こうした結果としまして、一応課税見込額、人員で言いますと、営業が百二十六万、農業八十九万、その他がありまして、合計二百六十八万、こういう数字を出しまして、これから控除の金額を差引きまして、一応の税額を出しました。それから翌年度への繰越決定見込額を差引きまして、年度内の収入見込額を出し、また前年からの繰越滞納額のうち、本年度の収入見込額を出しまして、結局七百四十億、それから還付見込税額を十億差引きました七百三十億という数字を出してございます。改正法におきましては、控除の関係を考慮いたしまして、それを全部計算し直しまして、この結果としまして、人員が現行法の場合の二百六十八万が二百三十八万、約三十万ほど減つて参ります。計算方法は大体現行法と同じようなやり方でございます。その結果といたしまして、差引き七百十八億という数字に改正法ではなります。  それから法人税でございますが、法人税は従来と同じやり方をとりまして、二十七年の十月から二十八年の九月まで一年間の申告税額、これを調査課所管と税務署所管にわけまして、その実績を基礎にいたしまして、生産、物価、その相乗積、それから所得率というものを一応加味しまして、二十九年の申告見込税額が調査課所管が千二百十七億、税務署所管で五百六億、合せて千七百二十三億、それから第十六国会において幾つかの税法改正がありましたが、これが平年度化することによりましての減収が出て参りますが、これを差引きます。そうして徴収猶予の関係等も考えまして、年度内の収入見込額をこの分のものを千四百八十八億、それから更正決定の増差分につきましては、最近の実績をもとにいたしまして、これによる年度内収入が二百五十六億、それから従来の個人営業者の法人企業への転換によるその増加というものを別途見積り、同時に滞納分の収入を見積りまして、合計千八百九十五億、改正法におきましては、これら増減を差引きまして、千八百七十六億という数字を出しております。  相続税でございますが、相続税につきましては、二十七年分の相続税の中で、二十七年度課税になつたその実績をもとにしまして、最近における物価の値上り等の率を計算しまして、それぞれ改算した数字を元にして出しております。改正法におきましては、その現行法をもとにした数字から改正による減少をそれぞれ見込みまして、差引き結局三十一億六千二百万円という数字になつております。  再評価税につきましては、これは一応第一次、第二次の関係をそれぞれ見積りまして、同時にこれも近く御提案申し上げたいと思いますが、再評価の税金の延納といつたようなことも考えられておりますので、そういう点を加味しました数字を出しまして、改正法におきましては五十八億という数字を出しております。  間接税におきましては、まず酒税でございますが、本年は凶作のゆえもございまして、まず酒造米が相当減ることが見込まれます。現在の予定としまして、内地米が昨年は御承知のように九十四万石でございましたが、二十万石減りまして、七十四万石、別途運輸入米を八万石ほどいただきまして、八十二万石というのをベースにして、数字を出しております。三倍醸造等も相当いたしまして、できるだけ有効に米を使つて行くことが考慮されております。それから合成酒、しようちゆう等におきましては、最近実績がちよつと当初の見込みより落ちておりますが、最近の実績をもとにしまして、清酒の減による分がある程度こちらの方に需要がまわつて行くという考え方で、入れてございます。それで現行法によりますと千三百七十億、改正法によつて千四百七億という見積りをしております。  それから砂糖につきましては、先ほどもちよつと触れましたが、輸入が相当減少するのではないか。従つてそうした消費の見通しも考えまして、一応現行法において三百二十三億、これを先ほど申したような税制の改正により、ある程度の増税を行うことによりまして、三百八十一億見込んでございます。  それから揮発油税につきましては、二十八年の二月から十月までの課税実績をもとにしまして、これを年間に直したものとして現行法で二百六億、改正法で二百三十七億見込んでございます。  それから物品税につきましては、二十八年の六月から九月までの課税額を、基礎といたしまして、やはりある程度消費が減少するのではないかということも頭に置きまして、一応現行法による数字を二百三十三億、これに改正法による増を見込みまして、二百四十三億。  繊維品消費税につきましては八十五億、先ほど申した通りでございます。  それから取引所税、これは大体昨年の実績をもとにしております。  それから有価証券取引税も同様な計算方法であります。  通行税も同様でございます。  それから関税につきましては、今年は大分輸入がふえておりますが、将来それが多少減ることを考慮いたしまして二百五十億という見積りを出しております。  それからトン税、印紙収入、これも大体他の税と同じように、従来の実績をもとにいたしまして、その現行法による収入を出しまして、そうして改正法による増減を加えた数字になつております。  以上の改正によりまして、改正の収入見込額が七千九百十億になるわけでございますが、これと国民所得に対する租税負担の割合につきまては、一応三十九ペジーに数字が出してございます。国民所得五兆九千八百億と見込みますと、国税だけでございますと一五四%、地方税まで入れまして二一・二%、二十八年の予算に比べますと、多少負担割合がふえておるということになります。  それからなお直接税、開帳税の割合でございますが、これにつきまして、二十八年度の数字は正誤表で正誤してございますが、そこに印刷してありますのはちよつと間違つております。二十八年度におきまして直接税が五五・五、間接税が四二・二、比率が二・三、これが改正法におきまして直接税の比率が五三・七、間接税の比率が四三・三、間接税の方が比率が多少ふえまして、直接税の比率が多少減つておる、こういう姿になるわけでございます。  それからなお改正による負担増減につきましては三十四ページ、三十五ページにございます。この改正によりまして、給与所得者の場合におきましてはどの程度の人が税金、所得税負担するか。三十六ページの一番下にございますが、普通われわれよく言つておりますのは、夫婦子供三人の場合、扶養家族四人の場合でございますが、平年度でございますと二十一万四千百円の場合まで所得税がかからぬ。二十四万円という声がよくあるのでございますが、今度の改正におきましては二十一万四千百円という数字になります。  以上簡単でございますが、私の受持つております租税及び印紙収入予算につきまして、御説明を終ります。
  12. 倉石忠雄

    倉石委員長 次に理財局長説明を求めます。
  13. 阪田泰二

    ○阪田政府委員 理財局関係のことにつきまして、簡単に御説明を申し上げたいと思います。別途「昭和二十九年度予算に関する参考資料、(理財局関係)」といたしまして印刷したものが配付してありますので、これによりまして御説明申し上げたいと思います。  この第一表でございますが、まず昭和二十九年度資金運用部資金運用計画につきまして御説明をいたしたいと思います。  昭和二十九年度資金運用部の原資の増加額は、新しく増加いたしますものが千五百八十億円、それに二十八年度からの繰越百二億円を加えますと、総額千六百八十二億円になるわけであります。この原資を千五百八十億円運用いたしまして、翌年度へは前年度から越して来ましたと同額の百二億円を繰越すことになつております。二十八年度と比較いたしますと、わくにおきまして百四十三億円減少いたしておりますが、これは、御承知のように二十八年度におきましては、資金運用部におきましては、保有国債を売却いたしまするとか、あるいは前年度から繰越して参りました余裕金を九十二億円ばかり食い込みをいたしますとか、そういうようなことをいたしまして運用資金を捻出いたしましたその関係と、本年度は全体の予算編成方針の趣旨と同様、こういう資金を原資に充てないようなことにいたしておるわけでありますが、そのような関係と、第二には、簡易保険関係資金が、昨年度は半分だけ簡易保険の方で別に運用することになつておりましたが、二十九年度からは全額簡易保険の方で別途に運用することとなりましたので、その関係で、総体としてただいま申し上げました百四十三億円の減少となるわけであります。  内容について申し上げますと、原資の方では、まず郵便貯金は九百億円と預託の増加を見たわけでありますが、これは最近の郵便貯金の増加の趨勢等をも考え、なおその増加に大いに努力することにいたしまして、明年度は本年度よりもやや多い九百億円と見たわけであります。  簡易保険の方は、ここにありますように二十億円ということでありまして、前年度に比べまして非常に減つておるわけでありますが、先ほど申し上げました二十九年度からは、全額簡易保険が別途運用することになつ関係であります。なお簡易保険の方では、二十九年度は四百六十億円の資金増加を見ておりまして、これを全部地方債に運用する、かような計画なつております。  それから厚生年金保険の資金の三百億円であります。これは昨年度の百八十億に比べましてかなりふえているわけでありますが、これは主計局長からも御説明いたしましたが、標準報酬月額を現行の八千円から一万八千円に上げる、こういうような計画がございますので、それによりまして保険料の収入が増加し、預託金が増加するということを見込みましたわけであります。  その他の回収金等につきましては、特に御説明申し上げることもございません。  それから運用の方のことでありますが、以上のような資金をどういうふうに運用するかということであります。  郵政事業につきましては、特に申し上げることもございません。  特定道路特別会計に対する貸付の関係につきましては、昨年は一般会計から十億、運用部から十三億、合計二十三億を運用いたしたのでありますが、二十九年度は全部運用部資金で埋めることになりまして、二十億円を計上いたしたわけであります。  それから特別鉱害復旧の関係は、昨年度一億円融資いたしたわけでありますが、これは昨年度の特別な災害の関係でありまして、二十九年度はないわけであります。  それから国有鉄道関係につきましては、七十億円を見込んでおります。これは二十八年度に比べまして半減しておりますが、なお別途公社債を公募で百二十億円発行する予定になつております。合計いたしますと、百九十億円の資金を取入れることになるわけでありまして、昨年度合計額が二百三十億円でありましたから、約四十億円の減少ということになつているわけであります。  それから、ここには電電公社の方は載つておりませんが、電電公社は、同じく明年度におきましては、公社債を七十億円公募する計画なつておりまして、資金運用部からは出さない。  その次にございます住宅金融公庫あるいは国民金融公庫、中小企業の金融公庫、農林漁業金融公庫等の公庫あるいは金庫につきましては、住宅金融公庫を除きまして、いずれも二十八年度より融資額がふえておるわけであります。これは一般会計の方で御説明申し上げましたように、一般会計で昨年度投資にまわしておりました金額が四百二十八億九千三百万円でございましたが、本年度はこれが二百億に減つております。その関係で、これらの公庫等に出資いたします金も大分減りましたので、資金運用部はやはり性質上こういう公庫にでき得る限り金を出した方がいいだろうということで、資金運用部の方で増額いたしました。大体前年度と比較いたしまして、同額程度の運用がこれらの公庫になされるわけであります。  開発銀行に対する資金の貸付二百七十五億円、これも相当増額いたしておりますが、これはあとで申し上げます産業投資特別会計からの開発銀行に対する融資額が相当減りましたので、その関係資金運用部の方は増加いたしておるわけであります。  電源開発関係、これはやはり産業投資特別会計の方からもございますが、合計いたしまして前年度よりも増加しております。  金融債は三百億円が二百億円に減つております。これはできるだけ金融債の一般市中の消化にも努力させまするし、出す万も重点的な融資に努力させまして、重要な産業資金に不足を生じないようにいたしたいと考えております。  地方債の引受につきましては四百三十億円、二十八年度の八百八億円に比べまして非常に減つておりますが、先ほど申し上げましたように簡易保険の方が分離して運用することになりまして、四百六十億円をその方で見ておるわけであります。  なお地方債は別に公募するものとして二百億円を予定いたしておりまして、それを含めると千九十億円。二十八年度の千二百三十三億円に対しまして百四十三億という減少なつておるわけであります。  それから勤労者厚生住宅資金、昨年度の二十五円が三十五億円にふえておりまして、住宅、病院等に融資されるものでありますが、これは厚生年金保険の資金を還元融資するという趣旨がございますので、その関係資金増加に見合いまして、この方の資金増加いたしておるわけでございます。  一番最後に、翌年度へ繰越します資金が百二億円となつております。前年度から繰越しました金と同額でありますが、この百二億円程度の繰越金が、資金運用部としての金繰りをやつて行きます上におきまして、まあぎりぎりの線であるというふうに私どもは考えておるわけであります。  大体資金運用部関係につきましてはその程度にいたしまして、次に第二表を飛ばしまして第三表の産業投資特別会計運用計画につきまして御説明申し上げたいと思います。  この産業投資特別会計につきましては、御承知のように二十八年度減税国債を二百億発行する、なお見返り資金から引継ぎました国債を売却する、あるいは繰越金を使う、いろいろそういうことを予定しまして、六百三十三億円の収入を予定して運用いたしたわけでありますが、二十九年度におきましてはそのような収入がございませんので、前年度から繰越して参りましたわずかな資金と、それから回収金その他の資金、それから緊要物資輸入基金から繰入れまする二十五億円の資金、これだけが財源になるわけでありまして、百八十六億円という資金があるわけであります。これは国債整理基金に対しまする減税国債の利払いの資金等に充てました残り百七十五億円というものを運用資金といたしまして、開発銀行電源開発株式会社に融資することになるわけでありますが、開発銀行関係におきましては、先ほど申し上げました資金運用部からの二百七十五億円、投資会計からの七十五億円、そのほか開発銀行自体の回収金、これは三百億円程度ございますが、合せまして六百五十億円程度資金をもちまして、明年度におきましては電力関係あるいは海運関係、鉄鋼、石炭その他の重要産業に融資することに相なるわけであります。  電源開発会社につきましては、この会計からの巨億円、資金運用部からの百六十億円、合せまして二百六十億円の資金をもちまして重要な開発地点の開発工事を明年度は施行することになるわけであります。  投資会計関係はこの程度にいたしまして、最後に、一番最後の第五表というのによりまして、簡単に本年度予算等に基く明年度国庫の対民間収支の問題、散布になるか引揚げになるかという点につきまして御説明申し上げたいと思います。  まず一般会計でございますが、予算面は収支のバランスが保たれておるわけでありますが、中を見ますと、昭和二十七年度に生じました剰余金四百三億円というものを収入に見ておりますので、それだけ民間に対する支払い超過になるという計算になるわけであります。これが四百三億円、それから食糧管理特別会計関係におきまして、本年の三月末と来年の三月末とを比較しまして食糧証券が三百十億円増加する、こういう予算上の計算になつておるわけであります。但しその中の百億円は予備費に見合うものでありますので、支出が、発行するかどうか未確定でありますので、それを除外いたしました二百十億円をやはり支払い超過の要因というふうに見たわけであります。これに対しまして外国為替関係では先ほど主計局長から御説明ありましたように、明年度の国際収支を大体九千万ドルの外貨が減るというふうな見込みを立てておりますので、その関係上円資金といたしましては、それに見合う三百二十四億日の受取り超過になる、こういうことでこれをまず見ました。そのほかに外貨貸付の関係、これは日本銀行の別口外貨貸付の関係でありますが、これが明年度におきまして八千三百万ドルばかり減ると見込まれます。これは外貨の保有高には関係ございませんが、国内の円資金関係では、これに見合う資金三百億円が外国為替資金に吸い上げられる勘定になりますので、これを計算いたしました。これは昨年度まではあまり大した要素でないので無視して計算に入れてなかつたわけでありますが、今回この制度が昨年十月に改正されまして、だんだんとこの資金も大幅に減少することとなりまして、国庫収入に大きな影響を持ちますので、ここに掲げたわけであります。全部通計いたしまして、差引十一億円の引揚げ超過というふうな、民間からの政府に対する受取り超過というふうになるわけであります。なおほかに個々の特別会計等につきましてこまかい要因がありますが、それは簡単で金額も少いので省略いたします。  なお最後にお断り申し上げておきたいと思いますのは、ここにあげました数字は明二十九年度予算あるいは国際収支の計画あるいは政府資金の運用の計画等が、その計画通り行われました場合にはこうなるという、いわば機械的に算出いたしました数字でありまして、実際の動きはもちろんそのときどきの情勢によつてつて参るわけであります。ことに出納整理期間の関係、前年度からの繰越し、翌年度への繰越しの関係、預託金の関係いろいろございまして、実際の数字はこれとはかわつて来ることがあるわけであります。一応の形式的に算定した数字ということで御了承願いたいと思います。  以上をもちまして私どもの関係説明を終ります。
  14. 倉石忠雄

    倉石委員長 最後に経済審議庁調整部長より国民所得について説明を求めます。松尾金藏君。
  15. 松尾金藏

    松尾政府委員 お手元に配付してございます二十九年度経済見通しのおもな指標がございますので、これを前提といたしましてもう一枚配つてあります来年度の分配国民所得の推計をいたしたわけであります。このおもな点を拾つてみますと、その前提となります点は、申すまでもなく先ほど来いろいろ御説明がございました二十九年度予算でございます。これと関連しまして、金融政策等も関連するのでありますが、さしあたり来年度予算で著しい特徴をなしております財政投融資関係の削減であります。この点は御承知のように、約五百八十億の削減でございますが、そういう点を反映いたしまして、おそらく物価に対する影響といたしまして、生産財の価格を引下げる効果が比較的直接に出るのではないか、こういうふうに想定をいたしました。また一般投融資も自粛されるでありましようし、そういう関係の、いわゆる乗数効果的な影響が消費財の方にも及ぶでありましようし、それらの関係を見積りまして、来年度の物価の見通しといたしまして、生産財の関係で、下から四番目に書いてありますように、本年度一〇〇といたしまして、来年度生産財で九三・六%、約六%程度の下落を想定いたしたのであります。消費財の関係につきましては、予算関係からただちに来年度の消費購買力が急に落ちるというような想定はできにくいようでありますけれども、しかし二十八年度中に物価の上りましたおもな原因の一つとして、凶作または寒流異変等による漁獲高の減少があげられております。そういう原因は二十九年度においては少くも平年度化するというようなことを想定できると思うのでありますが、消費者物価の関係は、その面の面接的な影響で若干下ることを想定できるのではないかと思います。これらの点を勘案いたしまして、消費者物価におきましては、来年度約三・六%の下落を想定をいたしまして、かれこれ来年度物価におきましては、本年度と来年度との年間の比率におきまして約五%程度の下落を想定いたしたのであります。もちろんこれは年間の比でございますが、二十八年度末と二十九年度末の時点の差をとりますと、これよりももう少し下落率が高くなることも考えられるのであります。  こういう物価の状況を反映いたしまして、来年度の生産の見通しをしたのでありますが、これは一番上の欄にございますように、本年度平均で一五二という生産指数を想定いたしております。これに対しまして来年度も年間の比率におきましては大体同じ一五二程度の生産になるのではないかと思うのでありますが、しかしこれは御承知のように、二十八年度の初めの四月におきまして生産指数は一四七・六であつたのでありますが、最近の指数は大体一六〇前後の指数を示しております。それだけ二十八年度間において生産が上昇して来たのであります。これを年間に直しまして、大体平均一五二という想定をしておるのでありますが、来年度におきましても、おそらく現在の一六〇程度の生産の実勢は来年の初めにおいて依然として続くであろうと思われます。あるいはそれよりも若干上昇ぎみを示すかもしれないと思うのでありますが、しかし先ほど来由しましたような物価の傾向等を反映いたしまして、おそらく生産は、みずから物価を引下げるような要素をつくりながら、自分自身もだんだんと下降傾向に入つて行くのではないか、こういうふうに予想をいたしました。ちようど二十八年度の上昇傾向と反対のカーブを描きまして、二十九年度年度末あるいは下半期には相当の生産の下落が起るのではないか、それを年間平均で、やはり二十九年度は同じく一五二という生産指数を予想したのであります。なお、農林、水産の生産関係は、先ほど述べましたように、本年度の凶作あるいは漁獲高の減少が来年度年度化するという意味で、ここに本年度一〇〇に対して一一三・五、約一三%の上昇を見込みました。  こういう関係を反映いたしまして、雇用賃金の関係はどうなるかという点は、非常に見通しもむずかしいのでございますが、やはり生産関係を反映いたしまして、賃金雇用に対する影響は、下半期ごろに比較的出て来るのではないか、こういう想定をいたしております。もちろん賃金は、片方におきましてすでに二十八年度においてかなり上昇しているのでありますが、その上昇が二十九年度においてただちに下に落ちるというわけには参らないと思います。従いまして、二十八年度の上昇傾向を二十九年度に平年度化して考えてみますと、かりにその下半期において、あるいは臨時給与でありますとか、能率給等の面における賃金の減少が若干ございましても、年度平均では本年度に比べてあまり下らないという想定をいたさざるを得ないのではないかと思います。雇用につきましても、生産の一部下落に伴いまして、臨時的な雇用等は若干減るでございましようし、あるいは生産下落のしわ寄せの部分については、やはり雇用の減少は若干起ると思います。しかしそう大幅の雇用の減少も見込めないのではないか、こういうふうに考えております。  これらの点を総合いたしまして、もう一枚の国民所得の推計に入るわけでございますが、ただいままで申しましたような雇用賃金等の関係を反映いたしまして、勤労所得の点におきましては、二十八年度の状況に比べましてあまり低下をしない、むしろすでに上つた賃金等を考えてみますと、二十八年度における一部の下落を織り込みましても、なおここにございますように、本年度に比べまして、勤労所得は約二%の上昇が見込まれるのであります。  個人業主所得の方は、先ほど申しましたように、生産の水準は大差ないといたしましても、物価の下落等を反映をいたしますし、またそういう傾向のときにおきましては、所得率がある程度まで低下することも予想されるのであります。そういう点を反映いたしまして、個人業主所得のうち、特に鉱業、製造業等のいわゆる営業につきましては、ここにございますように、本年度に比べて約五%以上の低下を見込んでおります。しかし農林、水産業の関係におきましては、先ほど御説明いたしましたような凶作、漁獲高の減少等の平年度化を見込みまして、本年度よりはむしろ六・九%程度の上昇を見込みました。個人業主所得全体といたしましては、本年度とあまり大差のないことになるのではないかと思われるのであります。  なお賃貸利子所得等につきましては、本年度と来年度を比べまして、全体の所得はあまり落ちないということを想定いたしました。しかも物価の先安というようなことを想定いたしますと、貯蓄等の傾向も若干上昇するのではないかというようなことを考えまして、本年度に比べまして若干の上昇を見込んでおります。  法人所得につきましては、先ほど営業の所得につきまして御説明いたしましたのとほぼ同様の考え方をもちまして、ここに本年度に比べて九・五%程度の下落を見込んでおります。  これらを総計いたしまして、昨年度国民所得推計の五兆九千五百億に対しまして、二十九年度は五兆九千八百億を推計いたしました。その比率は本年度に比べまして若干の増加でございますが、まるまる国民所得の面では本年度と大差ないという推計をいたしたような次第でございます。
  16. 倉石忠雄

    倉石委員長 それでは午後二時より再開し、質疑に入ることといたしまして暫時休憩いたします。     午後一時一分休憩      ————◇—————     午後二時十六分開議
  17. 倉石忠雄

    倉石委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  質疑に入ります。尾崎末吉君。
  18. 尾崎末吉

    ○尾崎委員 まず総理大臣から御質問を申し上げます。  奄美大島が多年の国民の要望と国会のしばしばの議決や政府のたゆみない御努力とによりまして復帰をいたしましたことは、まことに国民とともに御同慶に存じておる次第でございまして、この段政府に対しましても深く謝意を表する次第であります。  なお日英貿易金融会談は、六十余日のたゆまないわが政府の努力と、ランカシア方面の強い反対等があつたにもかかわらず、これを排して、英国政府当局が大局的見地に立つて努力をいたされた結果、去る二十九日結実をいたしまして、日英新麦払い協定の調印を見、ここに英国側の対日輸入制限措置を大幅に緩和することとなり、年間二億九百五十万ポンドまでの輸出入貿易ができる上、さらに日本の当面するポンド不足に対処するポンド金融措置につきましても原則的な了解が成立したことは、対英貿易伸張の上から考えてまことに喜びにたえない次第であります。ここに政府の努力を謝しながら、二、三この点についてお伺いを申し上げておきたいと思うのであります。  第一に、この協定によりましては、濠州、パキスタン、インド、ニユージーランド等の自治領とは具体的にはとりきめが行われておらないようでありまして、この後の問題として持ち越されておるようでありますが、それらの地域は、それぞれ各種異なつた事情もあるのでありますから——特にランカシアのごときは、すでにこの協定が発表せられたとたんから反対の火の手をあげておるように見受けられますので、これらの英自治領に対する対策は具体的にはどういうふうになさろうとするのであるかということと、一面わが国からの輸出商品のコストが高いために、せつかく大幅のわくがきめられましても、このきまつただけのわくに一ぱいになるだけの輸出ができるかどうか、これらの点、及びわが国の貿易業者が国内需要の利潤を追求するあまりに、輸入を第一義として、輸出を第二義とするような傾向もあるように見ておりますけれども、これらの隘路をどういうふうにして具体的に打開せられるつもりでありますか。これらの点を総理大臣または外務大臣からお答え願いたいと思います。
  19. 吉田茂

    ○吉田国務大臣 お答えをいたします。日英の貿易金融会談については、幾多の曲折がありましたために多少時間をとりましたが、要するにイギリス側としては、貿易あるいは輸出入の状態はだんだん改善するに至りましたが、また英国の外貨資金等も非常にふえて来ましたが、それにしても、なおイギリスは戦前において債権国であつたのが、戦後において債務国になつて、相当の債務、負債を負つております。その関係からいつてみましても、貿易伸張は相当考えなければならないので、現在においても、イギリスとしては輸入はなるべく押えたい。そうして輸出はよけいにして、受取勘定をふやさなければならぬ現状にあるので、従つて日本に対しても、貿易協定は、日本からの輸入をなるべく押えて、そうしてイギリス側の受取勘定をよけいにしたいという大体の状況にありますから、そう簡単に日本からの輸入を促進せしめる方に協力することは、実情むずかしいのであります。にもかかわらず、相当日本に対して好意を示すといいますか、寛大な、従来の態度とよほど違つた態度でもつて日本の相談に応じて来たというのが、今日までの経過であります。  そこでまたランカシアの問題にしても、これは現在よりは戦前において、日本の紡績のために相当苦境に立つた経験があるものでありますから、現在はとにかくとして、再びそういうことに陥りやしないかという懸念からして、日本の紡績の輸入に対しては、相当警戒をいたしておることも事実でありましよう。しかるにもかかわらず、従来の態度よりよほど緩和した態度でもつて日本に臨んだために、貿易協定はでき上つたのであります。そうして属領といいますか、英帝国の本国以外の属領等においても、やはり同じ問題があるので、英帝国としての受取勘定を自然考えなければならぬとするならば、オーストラリアにしても、その他にしても、日本からの輸入に対しては相当抑制をせざるを得ざるような状況にあるので、話はよほどむずかしく、決して溶易な話ではなかつたのであります。ことにオーストラリアとしても、あるいはその他の国としても、国の個々の事情がありまして、あまり自由に日本の物が入つて来られては、英国本国に対する何もありましようが、同時に自国内の産業の関係から、あまりなまやさしい話ではできないような実情にあつたろうと思います。  今後どうするかといえば、むろん日濠の関係にしましても、あるいはパキスタンその他の関係にしても、政府としてはその国の発達を助けるとともに、それが日本自身に対して相当好意を持つような関係に入るようにいたしたいと思つておりますが、これは今後に属することであります。しさいは外務大臣からお話いたします。
  20. 尾崎末吉

    ○尾崎委員 この問題についてもう少し外務大臣に伺いますが、総理大臣から詳細な御答弁を伺いまして大体わかつたのでありますが、具体的には、大体この協定ができ上つたのでありますから、すぐにもさき申しました自治領等に対する交渉をお始めになるのかどうか、そういう点について、おさしつかえなかつたらお伺いしたい。
  21. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これは今わくをつくつたわけであります。これに基きまして、具体的に各自治領その他と交渉いたすのであります。たとえば濠州については、こちらが非常に輸入超過でありまして、これを是正する交渉をいたしております。パキスタンとは、三月の終りで貿易協定が切れますので、それを機会に交渉をしようと思います。南アフリカ方面で日本品に対する関税を上げるというような話がありますので、これはただいま交渉いたしておりますが、そういうふうに各地々々、それぞれの事情に応じて、このわく内で今度は具体的に日本のものが行くように、また向うから買うものも日本の必要なものを買うように、委細の話をいたしたい。そのためには、今お話がありました尾崎君の御意見のように、わくがありましても、日本品が高くちや競争ができないのでありますから、これだけのものは行くようにはなつておりますが、それが行けるようにするためには、やはりコストの切下げとか、そういう点も必要になつて参ります。具体的にはこれからこのわくを満たすために、あらゆる努力をいたすつもりであります。
  22. 尾崎末吉

    ○尾崎委員 この問題はあとから伺おうかと思つたのでありますが、総理にここでお伺い申し上げておきます。それは憲法改正調査についてであります。憲法改正のことにつきましては、これは軽々しく口にすべきではないという総理の従来の御所信は、しばしば伺つておりますし、その御信念のほどもわかるのでありますが、私はここに従来と異なつた角度から、憲法改正に関する調査会を設けられる御意思はないかどうかを伺つてみたいのであります。  それは今日まで論議せられました再軍備のために憲法第九条を改正するかどうかという、そういう目的ばかりではないのでありまして、第一にわが憲法は、連合軍が日本占領中におきまして、相当圧力を加えてできたものであつて、日本の歴史、日本の国情と合わぬ点があるから、これを再検討して、改正すべき点があつたら改正したらいいではないか、こういう国民の声が相当高くなつて参つておることは、御承知の通りであります。  第二には、米国人におきましてさえも、日本に与えたこの新憲法は失敗だつたと言う者も出ておるように聞いておるのであります。  第三に、この問題について社会党の左派の人たちのごとく、再軍備に反対するというために、憲法第九条は改正すべきではない。こういう建前から、平和憲法擁護などと唱えておる人々のそういう中にも、現在の憲法中には疑義がある、こう主張する人があることは、この予算委員会においても、数回私どもも聞いた通りであります。さらにまた米国一辺倒を排撃しなければならない、こういう強いことを大声叱呼いたしておる者もあるのでありますが、その米国一辺倒を排撃するということの裏を返しますれば、憲法第九条の改正には反対ではあるが、その他のことは大いに検討してみたらいいじやないか、こういう意味が含まつておるものと私は見ておるのであります。総理は、憲法改正は、国民が要望する時期が来たならば、あらためて考える、こういうことを言つておられるのでありますから、さき申しました三つほどの事柄は、総理の御所信に合うのではないか、こう思いますのと、いま一つ大きな問題として考えられますことは、憲法は国民のよりどころであるばかりでなく、すべての法律、制度の基本となつておるものでありますから、国民がこれを最も尊重せねばならないことは、今さら申すまでもないのであります。旧憲法に対しまして不磨の大典などと言われておつたのは、この意味であろうと思うのであります。ところが近年、今の新憲法に対しての改正がいいか悪いかという、いわゆる改正論議が強くなつて参りましたことのその影響ではないかと思うのでありますが、ともかく新憲法に対して国民が相当迷つておるということも、これまた私どもがしばしば地方等をまわつて耳にするところであります。そうしたことの現われが、国民全体に対する遵法精神を欠除させる、こういう結果に相なつておるように思われる節があるのであります。最近の出来事では、保全経済会の伊藤何がし等のような不法きわまる人々が出て来て、いわゆる遵法精神を踏みにじると申しますか、法の盲点をつくと申しますか、こういうことをやる者がふえて参つたり、他面には法律によつて保護をせられ、国民の血税によつて給与を与えられておる公務員の組合の中等におきましても、その定められた争議権の範囲を逸脱をいたしまして、計画的と思われるやり方で争議をやつて国民に多大の迷惑をかけながら、これを遵法精神なりなどと、こういうことを唱えておる者も出て参つておるようでありまして、かような事柄は、最も尊厳で最も国民がよりどころといたしておる憲法に対して、改正すべきかすべからざるかというような論議等が起つて来たから、こういう風潮が強くなつたのではないかとも思われる節もあるのであります。かように考えて参りますと、ここに新憲法に対しましての改正を目的とする調査会をつくつて、改正すべき点があるならばこれを改正する。ひとり第九条をさすのではありません。その他の点において改正すべき点があつたら改正する。またこれを現存すべきものは現存する。こういうことにいたしまして、その憲法の尊厳すべきところのものは国民の求めに応ずる、こういう考え方から、憲法改正に関する調査会等をおつくりになるようなお考えはないか、こういう点をひとつお伺いいたしたいのであります。
  23. 吉田茂

    ○吉田国務大臣 新憲法が提案せられたときにおいては、これは多少進駐軍として思い違いもあつたでありましようし、また時勢の変化ということもあり、たとえば憲法九条にしても、もう戦争はしないのだ、戦争は阻止すべきものだ、日本は平和主義において一貫すべきものであり、一貫することを要望するという、まつたく平和主義の気持から、憲法第九条のごときは提案せられたのでありましよう。またその当時は、共産主義国との間の関係も、同じく連合国として共同動作をしておつたような親善な関係であつたものでありますから、共産主義国との間に今日のごとく対立が激化するということは予想もせず、ともにともに世界の平和を守つて行きたい、増進して行きたい、確立して行きたいという気持でもつて、自由主義国も共産主義国に対しておつたのでありましようが、しかしその後外界の事情は大分かわつて来て、そして現に両主義国が対立しておるというような現在になつている。日本としても、平和国家として防備なくして行くことは危険であるというような状態になつて来て、非常な変化が生じておる。また日本の国情をもつて警察国家であるとか、あるいは戦争をするに都合のいい中央集権的の国であるとか、軍国主義の国であるとかというような感じも、占領軍としてはあつたでありましよう。そういう観点からして、日本の憲法として、あるいは日本の義務として、日本国民の感情に即しない点も従来あつたと思います。しかしながら、と言つてただちに憲法を改正する、これは国として考えなければならぬことであつて、憲法の由来はどうであろうが、とにかく日本の国民、日本の国会はこれに対して協賛を与えて成立した憲法で、悪法といえども法である以上は、日本の国民の遵法的な気持から申して、あくまでも尊重するという考えを養わなければならぬと思います。  そこで将来どう改正するかという問題はむろん出て来ましよう。また内外の事情に即応して、国情に適しない憲法は自然改正せられることにもなるでありましようし、また改正を拒んで改正の機運を阻止しようとすれば、かえつてその結果は、反対のおもしろからざる結果を生じましようから、改正が必要ありと国民が考える場合に、その改正を特に阻止するというようなことを考えるべきことではないと思いますが、しかし憲法はとにかく国の基本法であつて、この改正は軽々しくいたすべきものではない。国民が改正を欲し、また改正の必要を感じ、改正の理由を了解するに至つて、初めて政治家としても政党としても考えるべきものである。そういうふうなある主義たとえば共産主義になつたからといつて、共産主義に都合のいいような憲法を故意につくる、不自然につくる、国民の思いがそこに至らないにもかかわらず、不自然にこの改正運動を起すということは、少くとも政府として考えるべきではないし、また政党として考えるべきではないと思います。しかし同時に、憲法のあり方がどうあるべきか、あるいは現在の憲法についての善悪曲直ということは、始終政府として考うべきことでありますが、現在において、政府としてはそういう準備金を設けることがいいか悪いかについては、私は確信を持つておりません。ゆえにさしあたりとしては、政府としては改正委員会といいますか、改正の運動を始めるということは、いたさないつもりでおります。
  24. 尾崎末吉

    ○尾崎委員 総理の御所信は十分にわかりましたので、次に移ります。  大蔵大臣が、わが国の経済は、終戦以来一般に予想されたよりもはるかに急速に回復向上したが、深くその実態を掘り下げてみると、まことに寒心にたえないものがあるとして、率直に二十八年度財政金融についての反省を加えられた上、相当の信用膨脹を生恥じ、インフレ的傾向を助長しておる現状を脱却して、物価の引下げと国際収支の均衡をはかる目標のもとに、一兆円以内、すなわち九千九百九十五億の二十九年度予算編成せられたことに対しましては、衷心から敬意を表するものであります。国民の大多数もまた、国民生活安定と将来の伸張発展のために、敬意を表しておるところではありますが、この一兆円以内の緊縮予算は、その全体としての意義は十分私どもも承知いたしておるのでありますが、その内面に持つ性格について若干の疑問を持つところがあるとして、世上に批判をいたしておる人々もあるようでありますから、それらの点の二、三についてお伺いを申し上げておきたいと思うのであります。  まず伺いますのは、さつき申しましたこの予算の性格であります。この予算が、国の中においては、各種の公共事業費等の量を減じ、国民の所得も減少させることによつて、物価の上昇を押え、インフレ傾向を是正することを眼目とし、外に対しては、貿易上の国際収支において縮小均衡を選ぶものであるとするならば、財政措置及び投資の措置等においてこれを収縮することは、一番本格的なやり方であると思うのであります。従つて昨年来やかましく論議せられました過剰投資という問題も、解決をすることにもなるのではなかろうかと思うのでありまして、もしこの通りでありますならば、いわゆる整理緊縮の予算の性格だと思うのであります。ところが過日の本会議における施政方針演説並びに財政経済等の演説を伺つております中に、愛知経済審議庁長官はその演説の中で、たとい消費水準や生産の上昇の停滞を来しても、国際収支の均衡を回復し、正常な均整ある経済の確立が当面最大の急務である、こう説かれたのであります。これに対しましても、まことに私どもは、そういう見方から申しまして同感の意を表するものであります。ところが小笠原大蔵大臣の御演説の中に、今後は財政の緊縮をはかり、金融の引締めを強化することが絶対に必要である。すなわちこれにより物価の引下げをはかり、わが国通貨の国際的価値を確立し、経済の合理化、近代化を促進して輸出を増進し、堅実にして正常な国民経済の発展を期さなければならない、こう説かれております。また吉田総理大臣は、昭和二十九年度においては、わが国経済の基調を積極的な物価の引下げ及び円の対外価値の強化に置き、通商貿易の振興、従つて国際収支の発展的均衡に最善の努力を傾ける、こう強調されておるのでありまして、総理大臣、大蔵大臣ともに、この予算緊縮財政ではあるが、積極発展を期する、こういう決意を述べておられるのであります。もとより愛知経済審議庁長官の演説も、総体から見まして同趣旨のものであると思うのでありますが、この緊縮ではあるが発展的のものだ、こういうことになりますれば、通商貿易の振興を堅実にしたり、あるいは正常な国民経済の発展ということをはかるための物価の引下げと、通貨の国際価値の確立、こういうことだけでその目的を達することができるであろうかどうか、こういう疑問が生れて来るのであります。それから財政の緊縮や金融の引締めだけを強調して、産業政策に積極性がないではないか、こういう議論が若干出て参つておりますのも、今言つたような点からこういう議論が出ておるように私ども見ておるのであります。従いまして、産業設備の近代化や合理化や技術水準の向上等に必要なる資金の面は、一体どういうふうのことにすればよいのであるか。こういう点につきまして、予算は緊縮は緊縮なりに、その中に政策を生かして行かなければならないことはもとよりでありますから、これらのことをひとつ具体的に、できるだけはつきりと御答弁を承りたいのであります。
  25. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 仰せの点ごもつともでございます。私どもといたしましては、今仰せになりましたように、まず今度の緊縮予算と同時に、金融の引締め、その他一連の政策によつて国内の物価を漸次国際水準まで持つて行きたいのでありますが、一時に持つて行くことは財界に及ぼす影響等もございますので、まず昭和二十七年度のところへ持つて参る。つまり五分ないし一割の低落ということを目途としてやつておるのであります。同時にそれをやるのは、実は日本の商品に国際競争力をつけて、それで日本が国際収支の均衡をすみやかに回復するようにという点から起つてつておるのでございまするから、従つて日本の貿易の伸張等に貢献するよう、あらゆる施策を講じて参りたいと考えておる次第であります。従つて今仰せになりましたような日本産業の近代化、合理化は、コスト低下のためにもきわめて必要でありますので、さきにたとえば世界銀行から火力発電に対する外貨を借入れて、ああいうふうなことをやつたのも、その一つと申してよろしいと思いますが、今後におきましても、たとえば機械の輸入その他には外貨を優先的に割当てるのはもちろんでありまして、現に昨年のごときも、約五千万ドル以上合理化のために優秀な機械を入れて、これをサンプルとして日本の各種の機械の近代化を進めておる。こういうぐあいでありまして、今後とも、これに必要なる資金は惜みなく出す考えでおります。同時に産業の合理化、近代化につきまして必要な国内資金につきましても、これは配意いたす所存でありますが、尾崎委員も御承知のように、多少いわゆる財政投融資といわれておる分には、過剰投資と見られるようなものがありましたり、あるいは政府は、そこまでやらなくてもいいのではないかと見られるものもありましたり、さらにこの財政をいわば緊縮をして、そうして物価を引下げるには少し妨げになるようなものもございましたので、ああいうふうに措置しておるのでございますが、もとより正常なる金融の援助については、これは怠らず今後ともやつて参る所存であります。従いまして金融の引締めは、これを行うことは一層強化したいと思いますが、尾崎委員の言葉で言えば、金融の質、これは今のところ干渉する私ども権限は持つておりません。こういうものは貸出してはいかんぞ、こういう権限は持つておりませんが、勧奨する、勧めること、金融業君を指導することはできますので、その方面に怠りなく指導して、必要な金は供給するようにして持つて参りたいと考えておる次第であります。
  26. 尾崎末吉

    ○尾崎委員 御答弁によりまして相当了解をいたしました。そこで次に移ります。  今の御答弁によりまして、結局今の予算のやり方によつて大いに発展をしなければならないのだ、それについては、また重点的にこれを考えて行くのた、必要なものについては、できるだけ資金等のあつせんをするのた、こういう趣意に承りますので、そうでありますならば、ちよつと問題が小さくなるようでございますが、ここに海運と造船の問題を取上げて御質問申し上げてみたいと思うのであります。  輸出貿易品のコストを引下げて、しかも優秀な品を輸出して外貨獲得を増大させるということのほかに、これらの輸出入の商品を輸送するのに日本の商船で輸送し、運賃の外貨払いを少くして、他面外貨をわが国に獲得する。こういうことは非常に大きなプラスであると思うのであります。現に例を引いてみますと、外貨の獲得は海運と造船とによるものが第一位であるようであります。二十六年度におきましては、百四十万トンの船腹で一構四千万ドルを獲得し、二十七年度には百九十七万トンの船腹で一億八千七百万ドルを獲得し、二十八年度には二億ドル以上を獲得するという目標のようであります。上半期におきましては一億二百万ドルを獲得いたしておるのであります。しかも外航海運によつて得るところの外貨の獲得の手取り率を申しますものは、二十七年度の輸出の際、日本で最も大きな輸出貨物だといわれておりました鉄鋼業や綿織物等が一億ドル程度の獲得であつて、しかもその中で外貨の手取り率と申しますものは、前者が六〇%、後者が五〇%であります。ところが外航海運によるところの外貨の獲得率は八〇%であります。こう見て来ますと、造船及び海運に対して相当重点的な施策を考えて行かなければならないのではなかろうかと思うのであります。御承知の通りにわが国の海運界は、戦争の犠牲により造船の回復が遅れております。これを実情から申しますと、日本の全部の輸出入物資に対する日本船による輸送の数量の比率は、現在四十数パーセントでありまして、あとの五十数パーセントは外国の船によつておるという状況であります。そこで日本商船のいわゆる輸出入の輸送に対するところのこのやり方を、できるだけ助長させる、こういうことが現在の日本において最も大事なことの一つであるように考えておるのでありますが、本年の船の建造並びに海運等に対するそのやり方に違算がないかどうか、特に大蔵大臣はこの点について、本会議における演説においても、この問題は特に強く配意をいたしておる、こういうことを取上げておられるのでありますから、これらについての具体的の御構想をお聞かせ願いたいと思います。
  27. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 仰せの今の海運の問題でありますが、実は本年は財政投融資、特に一般会計からの資金を前年の四百二十九億から二百億に圧縮した等の問題がありまして、結局海運におきましても、若干これを圧縮するのやむを得ないことになつたのであります。しかし海運の重要性につきましては、仰せのごとく私もよく承知いたしております。従つていわゆる三十万トン五箇年計画という線は——今尾崎委員も御承知のように、昨今海運界は非常に不況であります。従いまして政府資金ももちろんでありますが、一般市場から求める資金はなかなか容易でないような状況にもありますので、その実情をにらみ合せまして、かりに中速船を標準とすれば、同じようなトン数とすれば、高速船では大体十七万トンくらいかと存じますが、かりに過去のごとく中速船を主としてやるとすれば、これは船の何によつてわかれますが、二十一万トンくらいの造船が可能になるというふうになつておりますので海運界の実情等から見て、この程度が一番穏当であろうかと実は考えておる次第でございまして、日本が置かれておる国の立場と、また海運が外貨をかせぎます実情はよく承知しておりますので、今のような計画は引続き実行して参るのでございますが、昨年の三十万トンに比べますと若干減じております。これは今の財政投融資圧縮した場合、やむを得ぬのであります。しかしながら私どもとしては、たとえば興業銀行とか長期信用銀行とか、そういつた比較的長期資金を供給し得る方面にもだんだんと勧奨いたしまして、それらの資金調達には支障なきよういたしたい、かように考えておる次第でございます。  なおこれはお尋ねではございませんでしたが、電源開発の方は次年度目に当つておりますので、昨年よりも増額いたしております。この分だけが財政投融資を庄縮しつつも増額しておる、こういう実情であります。
  28. 尾崎末吉

    ○尾崎委員 電源開発の問題は次に伺おうと思いましたが、前もつて御答弁がありましたので、これは了といたしますが、海運と造船についてもう少し伺つておきたいのであります。  ただいま大蔵大臣が御答弁になつたお言葉の中にもありましたように、海運界は非常に不況であります。その不況の原因は、戦災によつて大きな犠牲を受けた日本の海運界の中において、造船の回復が思う通りに行かない。この造船の回復が思う通りに行かないから、現在、どの海運会社もみんな船腹が不足しておることは御承知の通りであります。こういうところにつけ込んで、ヨーロッパ諸国等で、日本の海運界で市場を開拓しようとすることにできるだけ圧力を加える、圧迫をする、こういうことがその一つと、もう一つは、その圧迫をする現われとして、運賃を非常に安く下げて競争する、こういうこと等が日本の海運界の不況の原因であることは御承知の通りであります。このことを裏を返して見ますと、海運界が不況にあえぎながら、一方においては、日本の国内の需要に必要なる諸原料を外国から高く輸入をして来る、逆に日本の商品を外国に安く輸出をして行く、こういうことであつて、日本産業の犠牲になつておるような形が、今日の海運並びに造船の状況だと思うのであります。たまたま最近造船汚職というふうなことを新聞で見るのでありますが、こういうことのために私ども心配いたしますのは、問題そのことよりも、こういう事柄を取上げて、さつき申しましたヨーロツパ等における諸国が、これで日本の海運界は縮み上つてしまうのじやなかろうかということから、さらに日本の海運界を圧迫する、こういう挙に出て来ることが大きくなりはしないか、こういう点を私ども心配いたしておるのであります。こういうことでありますから、どうしても造船と海運の方にいま少し特段のお力をお加えを願いたい、こういうことを考えておるのであります。むろんさつき申しますように、外貨の獲得の点から申しましても、将来の貿易を伸張するためのいわゆる市場の獲得の点から申しましても、今ここにゆるみをくれる、あとずさりさせる、こういうことは日本の国の大きな不利益になる、こう思いますので、それらの点について、いま少し積極的の御答弁を伺つておきたいと思うのであります。
  29. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 海運界の悲況について、特に日本の船舶のことについて、お話のようなことは私どもも考えております。従いまして少くとも金利だけでも、日本の方が高げたをはき、向うがくつではかなわぬから、これを世界と同じ水準に置くという考えは引続き持つておりまして、過日も本会議でお答えいたしましたように、私どもは今の金利補給の程度は引続き続けて参る所存であります。但し三十万トン計画をそのままずつと今年もまた実行するかということになりますと、現在の状況から見ますと、私どもは先ほど御説明申し上げました通り、その船のやり方によつてトン数はわかれますけれども、     〔委員長退席、小峯委員長代理着席〕  現在の本年予想したくらいの予算の計上——予算と申しますか、財政投融資の面で見ております分でちようど穏当ではないか、かように考えておる次第であります。海運界を今後盛んにすることについて、ゆるんだ心を少しも持つておる次第ではございませんので、この点は含んでいただきたいと思うのであります。
  30. 尾崎末吉

    ○尾崎委員 次に移ります。電源開発の問題で、御答弁になつた以外のことで御質問申し上げたいのであります。電源開発会社法をつくりまして、前年度から五箇年計画をもつて電源開発に着手いたしたのでありますが、この五箇年計画というものは狂いのないように継続しておいでになるおつもりであるかどうか、その点をお伺いしたいと思うのであります。
  31. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 これは私ども継続して参る所存であります。ただできるだけ効果を上げるために、重点的に持つて参りたい。たとえば幾つかの電源を同時に開発しようとするために延びて行くということでは、効果が薄いのでありますから、従つて早く効果を生ずるものに重点を置きたい、かように考えております。これは今度の開発銀行電源開発に対する供給資金、その他の資金面も昨年よりふえております。ふえておりつつも重点的にこれをやる。総花的にやるのでなく、重点的にやつて電源開発を効果的に上げる、ちよつと例が悪いかもわかりませんが、たとえばここに五つのものを五箇年でやるとしたときに、ずつと金を入れておれば五つが五箇年間かからなければ完成しないが、一つにまず重点を置けば一年で一つが完成し、二年目には二つ完成し、三年目には三つ完成するということになるのでありますから、これはそれほど極端でございませんが、そういうふうに重点的にやつて、できるだけ電源開発の効果を上げたい、かように考えておる次第でございます。
  32. 尾崎末吉

    ○尾崎委員 御趣意はよくわかりましたが、なお附加しておきたいと思いますことは、お説の通り重点的にやつて行くということは大賛成であります。そこで申し上げますが、実は私も昨年の暮れのころの若干のひまを利用しまして、寒いときでありましたが、只見川の奥のあたりから、御母衣、佐久間等、おもだつたところをわらじをはいて相当調査をやつてみたのであります。その結果、おつしやる通りに、二十八年度において事業計画として割当てられた資金を消化し切れないところが相当にあるようであります。中には、たまたま工事にかかろうとしてみると断層が二箇所も出て来たなどというので、工事に必要な住宅や道路やその他の設備をやりながら本物の工事に入れない、こういうところもあるようであります。また逆に、おつしやるように予想以上に工事が非常によく進んでおる地点もあるようであります。従いまして、今おつしやつた重点的にやつて行くということについて、なお十分の御留意を願いたい。いずれ機会を待つて資料をお手元に差上げることにいたしますが、このことを要望いたします。  いま一つは、現在までの電源の開発は主として東日本に重点が置かれて参つたことは御承知の通りであります。むろん東日本を主としておやりになることまことにけつこうでありますが、西日本に対しましても、東日本同様に電源開発に向つて御努力をお願いいたしておきたい。国民の出した税金による国の予算をもつて、日本を二つにわけて、東の方には非常に恵沢を与え、西の方は長年そのままに置く。このようなことになりますれば、ただ受益者の損得の問題だけではなく、思想的に考えてみましても、政治の上から考えてみましても、まことに思わしくない結果が来るのではないか、こういうことが考えられますので、仰せになつたような重点的というお考えの中に、西日本の方も同様に早くこれを取上げて行く、こういうお考えも入れて、ひとつこの問題を重点的にお進め願いたい、こういうことを希望を申し上げておくのでありますが、二十九年度におきましては、さつきおつしやつたような御趣意によつて、西日本の方にもその開発の手をお伸ばしになるつもりであるかどうか、この点をくどいようでありますが伺つておきます。
  33. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 お答えいたします。ただいま大蔵大臣からお答えいたしましたように、電力開発の五箇年計画の基本の筋は何とかして貫徹いたしたい、かように考えておるわけであります。  次に西日本の問題でございますが、これはよく御案内のように、事実は御指摘の通り過去においては率直に申しまして東日本に重点があつたような観を呈しておりますが、これには御承知のようにいろいろの事情もございまして、これを担当したところが、たとえば電源開発会社ではございませんでも、既存の電力会社その他によつて開発もいたされておりまするし、開発全体として見れば、総体といたしまして西日本におきましても相当進んでおることは事実だと思うのでありますが、今後におきましても、西日本につきましてはできるだけ重点を置いて、ただいま御指摘のような御論議が出ないようにいたして参りたいと思うのであります。たとえば電源開発会社に対しましても、政府は至急に基本的な技術的な調査を各地点について行うことにすでにいたしておりますことも、御承知の通りと思います。たとえば球磨川、奈半利川、吉野川、四萬十川等の調査を開発会社に対して至急に命令して調査にとりかかつておるようなわけでございまするし、球磨川につきましてもすでに開発地点としても取上げることにいたしております。全体として御趣旨を体しまして、経済効率ができるだけよく上るように、またバランスのとれるように、かような計画で進みたいと思います。
  34. 尾崎末吉

    ○尾崎委員 この問題についていま一つ伺つておきたいと思いますことは、水火調整金の問題であります。九分割のときに定められました水火調整金、いわゆる火力発電に対して水力発電の方から若干のものをまわすという水火調整金の問題でありますが、これはたしかあのときのきまりでは、五箇年間で、すなわち三十一年度には水火調整金はやめるというような話合いが、決定にはなつていないようでありますが、あつたかと思うのであります。これはただいま経審長官から御説明がありましたように、東日本にも西日本にもできるだけ公平に水力電源の開発をやろうとおつしやるのでありますから、水力電源の開発が相当軌道に乗るまでは、——水火調整金をやめてしまうということになりますと、ある地方においては安い電力料金で受益をし、ある地方においては高い電力料金を払わなければならない、こういうことになるようでありますから、この水火調整金の問題については、この電源開発が相当軌道に乗るまでそのままにすえ置くべきものだ、こういうふうに私は考えておるのでございますが、経審長官はどういうふうにお考えになつておりましようか。
  35. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 お答えいたします。まことにごもつともな御意見でございますが、われわれといたしましても、漸次これを減少するような方針で水火調整金の問題を処理して参りたい、こういうふうに考えております。
  36. 尾崎末吉

    ○尾崎委員 次は副総理と農林大臣に伺いたいのでありますが、それは食糧政策と、関連して農業政策についてであります。  昨年の第十九国会の初めに、各派の共同提案といたしまして全会一致で可決いたしました食生活改善並びに食糧増産に関する決議に対しまして、その後政府はいかなる処置をおとりになつておるのであるか。過日の総理大臣の御演説の中で、この食糧増産の点について非常に大きく取上げておられましたので、これらの決議案の趣旨をおとりになつたのだろうとは思いますけれども、念のためにこの決議に対しましての処置をどういうふうにおとりになつておるか、このことをまずお尋ねいたしたいのであります。
  37. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 今国会の初めに食糧増産と食生活改善についての各派を通じて出された決議案の趣旨に対しましては、当時私、政府を代表いたしまして、全面的に御趣旨に賛成であるということをお答えいたしたのであります。食糧政策は、やはり何と申しましても食糧の自給ということが根本であろうと考えます。いわゆる国内自給度を高めて参る、そのためには営農技術の改善、普及、または土地の改良というようなことを従来通り政策の根本として推進して参つておるのでございますが、同時に米食偏重ということも多少これをかえて行く必要があるのではないか、そういう点から、政府としても、その米食偏重をかえる方向に政策を向けて行くべく目下検討中でありまして、現在年々百万トン内外の——今年は特に多かつたようでありますが、百万トン内外の米を輸入しております。かりに一トン二百ドルといたしますれば一億ドルの外貨を要するわけでありますが、一面麦は世界的に非常な豊作でもありますし、この米食偏重の傾向を麦食の方に少しでもかえ得れば、国際収支の均衡の上にも非常にいいのではないかと思いますし、また、最近国民的に食嗜好も大分かわつてつておるので、食糧政策の上からこれをかえることも時期が熟して参つておるのではないかと考えまして、そういうことも目下検討中であります。そういう問題を含め、さらに今の食糧管理の制度につきましても、この予算委員会でこの前の臨時国会の末期にお約束いたしましたように、その制度についても検討を進めようということで、先般食糧問題協議会というものを政府の中につくりまして、斯界の権威者を集めて、ただいませつかく検討中でございます。
  38. 尾崎末吉

    ○尾崎委員 そこで、その経過はわかりましたが、総理大臣に伺つてみたいと思いますことは、こういう際でございますし、ただいま副総理が御答弁になつたような事情もありますので、この際食生活改善並びに食糧増産の決議に沿うような趣意と、これに加えまして、今日の日本の実情を訴えて国民に耐乏を求めるという問題とあわせて、一大国民運動を起してみる、こういうお考えはないかどうか。さらに一面においては国力の充実をはかりながら、一面においては人口問題の解決の一助ともする、こういうことのために、国土開発青年隊とでもいうべきものを設けられる気持はないか。これは今日初めて申し上げるのでなくて、第十四、第十五国会におきまして私が御質問を申し上げたことを繰返して言うのでありますが、この国土開発青年隊というようなものを設けられるようなお考えはないかどうか。この二つの点について伺いたいのであります。
  39. 吉田茂

    ○吉田国務大臣 そういう問題は、国民の間に盛り上る精神から出て来れば最もいいのではないかと思います。政府として、今のような運動を起すことがいいかどうかについてはなお考慮いたしますが、ただいまのところは、今ただちに越すという考えは持つておりません。
  40. 尾崎末吉

    ○尾崎委員 農林大臣がお見えにならないようでありますから、農林大臣に対する質問は保留いたしまして、次に移ります。  次に、国土保全と開発の問題につきまして御質問申し上げます。いかに耐乏生活のときでありまして、繋縮予算を必要とするときでありましても、常に国土の保全と災害防止のことだけはないがしろにしてはいけないことであることは申すまでもないのでございます。この意味から、災害防止のために治山治水、生産のために、利水及び電源開発等に対するダムの中で多目的ダムがあるのでありますが、この多目的ダムの建設に関して建設、農林、通産の各省はどういう連絡をもつて、こうしたダムの建設を推進いたしておられるか、この点について、まず建設大臣から伺つてみたいのであります。
  41. 戸塚九一郎

    ○戸塚国務大臣 お答え申し上げます。ダムの問題につきましては、電源開発会社に関係のあるものが御承知の電源調整審議会、これに関係の各省もそれぞれ参与いたしまして決定をいたしておるのであります。その他のものについては、建設省において、必要に応じて関係の各省と連絡をとつて緊密にやつておるつもりであります。
  42. 尾崎末吉

    ○尾崎委員 電源開発会社と建設省との関係はどうなつておりましようか。どういう関連においてダム建設をやつていらつしやいましようか。
  43. 戸塚九一郎

    ○戸塚国務大臣 たとえば、治水に関係いたします点では、特に建設省は電源開発会社と綿密な連絡をとるわけであります。それがただいま申し上げました電源調整審議会で、関係の各省が、多目的でありますので、それぞれの目的にかなつた方法で連絡をとつておるわけであります。
  44. 尾崎末吉

    ○尾崎委員 ついでにもう少し伺つておきます。建設大臣から聞きますが、現在、今申しました多目的ダムの建設の工事中のものが幾らあつて、その進行状況はどういう状況であるか、これは小さな問題ですけれどもちよつと伺つておきたいと思います。
  45. 戸塚九一郎

    ○戸塚国務大臣 いずれも多目的になりまするが、電源開発関係はおきまして、建設省で所管いたしておりまする分では、ただいま直轄で施行中のものが、鬼怒川の五十里ダム外十四、計十五であります。それから県営工事でやつておりますものが、徳島県の那賀川外十二、つまり合計十三であります。そのうち、二十八年度に着手のものが直轄で七、県営で七、そのうち岐阜県の丸山ダム、それから秋田県の小又川、これは従来電力会社でやつておつた電力用のダム工事に治水上の心要で追加した工事でありますので、本年度でこれは竣功いたします。残つているものが、直轄で、県営で六、これは初年度のことで予算も十分でありませんが、工事の準備、用地の補償等の仕事が今進められておるのでありまして、ほんとうに着手するのは来年度からになります。なお、二十七年度以前に着工いたしましたものが順調に進行いたしておるのであります。そのほかに、まだ全然表に出ておりませんが、調査中に属しまするものが、直轄河川で十五、補助河川で九つほど調査をいたしております。
  46. 尾崎末吉

    ○尾崎委員 二十七年度以前のものは順調に進行中であるというのでありますが、二十八年度のものはこれはどうなるかということと、もう一つは治山、治水の問題でありますが、治山、治水、道路は国の将来に対する投資であり蓄積である、それゆえ、財政圧縮の中にあつても特にこれを取上げた、総理大臣は、施政方針の演説の中でこう述べられておるのであります。従いまして、この御趣旨の通りにこれを順調に進めて参つてもらいたいと思うのは、われわれの強い要望なのでありますが、これらの治水の中で、いわゆる河川改修等の中で、直轄河川または中小河川以外のものは、工事中のものを中止するものがあるかどうか、こういう点についてさきの問題とあわせて御答弁を願いたい。
  47. 戸塚九一郎

    ○戸塚国務大臣 二十八年度着手のものにつきましては、先ほども申し上げましたように、初年度でありまするので予算の点でも十分ではありませんが、ただいま工事の準備、用地の補償等をだんだん片づけおるのでありまして、本格的には二十九年度から工事にかかるというわけであります。  それから治山、治水のことでありますが、来年度においてかりに重点を置いたといたしましても、この予算圧縮の際十分でないことは私もまことに遺憾に存じておるのであります。治山、治水のことは、御承知のように、昨年治山治水対策審議会を内閣内に設けましていろいろ研究をいたし、その将来の計画の要綱を発表いたしているのでありまして、その中では特に従来の河川改修等のほかにも、砂防とかあるいは浚渫、なお電気等を頭に入れないでもダムをつくつて洪水を調節するというような点に重点を置いて、今後の計画を立て仕事をして行きたい、かように考えておるのでありますが、その点については残念ながら十分の予算を計上することができませんなんだことはまことに遺憾に存じておりますが、今後はその方針で進んで参りたいと思います。  なお従来行つておりました直轄河川あるいは中小河川の改修に打切るものがあるかというお話でありますが、さようなことはなく、従来の計画に従つて一切打切ることはいたさないで進んで行くつもりであります。
  48. 小峯柳多

    ○小峯委員長代理 尾崎君、農林大臣が見えております。
  49. 尾崎末吉

    ○尾崎委員 農林大臣に一、二伺いますが、まず伺いたいのは、食糧増産のために干拓、開拓等に終戦以来相当力を尽して参たのでございますが、その反面都会の付近のたんぼや畑が住宅や工場等にどしどしつぶされておる、こういう状況のようでありまして、私が調べたところによりますと、二十五年度におきましては一万八千四百八十九町歩が都市付近においてつぶされております。ところが二十六年度におきましては、二万六百二十八町歩、こういう多くのものがつぶされておるのでありまして、この二十五年度における開墾、干拓両方が四万七千二百九町歩であるのに対して、一万八千四百八十九町歩がつぶされ、二十六年度におきましては開墾干拓が三万七千八百六十九町歩であるのに対して、つぶされたのが二万六百二十八町歩、こういうような数字に上つておるようでありますが、こういうことでは、いわゆる食糧増産のために開墾、干拓等をやることが半分ずつはつぶされて行く、こういうことになるようでございますが、これに対してどういう対策をお考えになつておるのか。もし都市付近に住宅や工場等が必要であるといたしますならば、広い土地を使わなくても、高層建築をつくるとかその他の方法があるはずでありますが、これらに対し何らかの対策をお持ちになつておりますならば伺いたいと思います。
  50. 保利茂

    ○保利国務大臣 お答えいたします。戦争中は六、七万町歩くらいつぶれておりましたのが、終戦後はお話のように大体二万町歩くらいそういうことのためにどうしても農地が減つて行く。これは工場等の敷地あるいはその他等のためにやむを得ないぎりぎりのところがやはりその程度出て参るわけでありますが、私どもは一面において国の大きい費用を使つて耕地の拡大をはかつておる際でありますから、農地法の厳格な励行をいたしまして、少しでもこれがつぶれないように、つぶれを少くするようにして参るつもりでおります。
  51. 尾崎末吉

    ○尾崎委員 なお農林大臣に伺つておきたいことは、人造米の問題と麦食奨励の問題とであります。先ほど副総理からも麦食の問題でちよつと御答弁がございましたが、あらためて伺つておきたいと思いますことは、昨年あれほどの凶作でありましたので、国民が相当食糧の問題についてうろたえるか、心配するかと私どもも心配いたしておつたのでありましたが、結果はそれほどの騒ぎも起きなかつた、ということは、今日の食糧は米だけではなくして、ほかに食糧として十分走るものが備わつて来ておるから、昨年あれほどの凶作があつても大して騒がなかつた、こういうことではなかろうか、こういうふうに私どもは見ておるのでありますから、この際米食偏重を排して、麦食の奨励なり人造米の徹底なり、こういうことに向つて相当の御努力をなさるのが大事なことではなかろうかと思うのでありますが、現在までのところの人造米の問題の実情と麦食奨励等に関する問題、この点を伺つておきたいと思います。
  52. 保利茂

    ○保利国務大臣 お話のように昨年の米の不作がああいうのであつたにもかかわらず、食糧の緊迫度が薄いということは結局麦の供給が円滑潤沢に行われておることに基因しておると思います。特に麦については、小麦粉及び精麦の需要状況を見ますと、昨年の作況を反映しまして九月ごろから漸次増加して参りまして、十月ごろからさらにその増加の傾向は著しくなつて来ております。ことに凶作の中心地帯であります関東、東北地方におきましては前年に比べまして六割から七割の増加を示して来ておるわけでございます。むろん今後麦食の奨励と申しますか、粉食の奨励と申しますか、だんだんの予算措置もいたしておりますから、この予算措置に基きましてできるだけ普及をはかつて参るように努力をいたす所存でございますが、一番かんじんの点は、何と申しましても今日一番米を消費しておりますものは農家でございますから、農家にできるだけ粉食と申しますか、麦食と申しますか、奨励をして行く措置が非常に必要である。それから米の供給力をより高くして行くということをあわせ考えなければならぬという上で予算措置も講じておるわけであります。人造米につきましてはこういうふうに日本の食糧事情が米のみに依存できない、むしろ米食偏重を是正して行かなければならないという条件のもとにおきましては、米以外のいかなる食糧でも、とにかく家庭の消費に供せられるようにするということがきわめて必要である、そういう上から人造米も一つの有力な材料でないか、そういう上で人造米も今日相当普及いたしております、しかし今日の日産能力は四百トンくらいでございましようか、この辺が今日の需給状況から行けばいいところじやないかと思いますが、私ども食糧当局としては、人造米の品賀の不良なものが出まわらないようにするために、農林物資規格法で一定の規格検査を行つて消費者が安心して消費できるような方向に持つて行かなければならぬということでやつておるわけであります。
  53. 尾崎末吉

    ○尾崎委員 私の質問はあと二十分でやめてくれということでありますから急いでやります。  また大蔵大臣にあともどりして御質問いたします。大蔵大臣は金融機関の日銀依存の弊風を改め、金融の正常化を促進するため、適当な方策を考慮中である、こういう演説を本会議でなさつたのでありますが、この金融機関の日銀依存の弊風を改めて、金融の正常化を促進するためにどういう適当な方策を御考慮中であるのか。オーバー・ローン等に対する解消の方法などの御構想があればこの際伺いたいと思うのであります。
  54. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 金融機関はそれ自身の努力によつてできるだけ預金を蓄積いたしまして、それで現在のような日本銀行の借入金に依存するという弊風から、一日も早く脱却してもらいたいというふうに、私も考えておるのであります。それがまた金融の正常化であると思いますが、しかし現在の段階ですぐに望むということは、少し無理なことのようにも考えられますので、できるだけ資本の蓄積がしやすいように、租税その他の処置もとる考えであり、いたしますが、また過日も申しました通り、あるいは預金者の保護等につきましても遺憾なきを期して、資本の蓄積ができるようにいたしたいと考えております。しかし一方、たとえば先般来よく言われておる手持外貨を売ることによつて、それに開発銀行、長期信用銀行、あるいは日本興業銀行等にいわば一つのオーバー・ローンといわれておるものを肩がわりさせる、これは何ら根本的の解決にはなりませんが、しかし物の筋を正して行くということには役に立つ、物の筋を正して本来のところへ持つて行くというのには役立つように思いますので、根本としてはあくまで資本蓄積によつてこのオーバー・ローンの解決をすべきであるけれども、そういうことも一つの考え方であると存じまして、目下のところ私も研究いたしておるのでございます。あるいは結果を得次第、そういうことについて御協議を本国会でお願いするようになるかもわかりませんが、ただいまのところ、せつかく結論を出したい、こう思つて努力いたしておる次第でございます。
  55. 尾崎末吉

    ○尾崎委員 まだ結論に至つていないということでありますから、この程度で打切つておきます  次は資産再評価の問題について伺います。資本の蓄積を促進するために、資産再評価をやるということは必要のことだ、こう私も思います。また財政が次年度のごとく緊縮をせられ、金融が引締められた場合におきましては、企業は自己資本を充実させる以外に生きる道がないように思うのであります。そこで資産再評価は絶対に必要になつて来る、こういうことになると思うのでありますが、一体資産再評価をやらせるために、強制手段をとらないでどういう方法で、いわゆるできるだけ便宜を与えるというような程度で資産再評価が軌道に乗るものかどうか。どういうようなことをお考えになつておりますか、この点を伺いたいのであります。
  56. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 資産再評価の問題は、私ども西ドイツで行つた実例等を見まして、日本でもこれがすみやかに完全に行われることを希望しておるのでありますが、なかなかそう行つていないことは尾崎議員がよく御承知の通りであります。第一回のときは資産再評価に対して六分の課税をいたしまして、三分が初年度、一分五厘、二年度、三年度ととつたのであります。しかしこれでは少し資産再評価が十分行われないうらみもございましたので、第二回目のときには御承知のごとくに同じ六分であるが、一分二厘ずつ五箇年に均一に払えばいい、こういうふうにいたしましていたしましたが、それでもなお十分に行われておりません。ところが現在の段階で資産再評価を行いますことは、私どもきわめて必要だ、こういうことを痛感しておるのでありまして、今度は何とかして資産再評価をしてもらいたいと考えておるのであります。     〔小峯委員長代理退席、委員長着席〕 しからばそれをさせるというふうに強制的にやるかどうか、こう言いますと、今までの事情もございますので、また現在の日本の会社その他の現状から見まして、これを一律に強制することは相当困難を感ずる向きがあります。たとえばそれがために配当その他のものが困難に陥つて、ひいて自己資本による資金充実ができないというような問題もありましよう。またあるいは資金の借入れその他に不便を生ずるというような向きもあろうかと思います。従つてそう表から、正面からこれを強制することをしないで、裏の方からこれをできるだけ実際においてやつてもらいたい。しからはどういうようにやるのかといいますと、私どもは国の政治の上で申しますのですから、裏と申しますと租税の面とか配当の面であります。言いかえますれば、ある程度資産再評価をしたものでなければ、それが適当であるかどうか存じませんが、結論を得ておりませんから、一つの試案ですが、あるいは一割五分とか、二割以上とかの配当をすることはできないというような、配当制限をすることも一つの考え方ではないか、こういうように考えられます。それからまた発表する考課状とか、新聞広告等に、資産再評価をこれこれした。しないものはしない。すればこうなるのだ。すればこうなるのだがしていない。こういう事実を明らかにすることもまた一つのやり方ではないか、こういうふうにも考えられますので、ただいまのところでは、それから税金を上げるというようなことは私の頭に置いておりません。資産再評価をやらすことは非常に望ましいと思うのでありますが、これを強制することはどうか、こういう考え方で、今ちよつと私の言葉が適切でないかもしれませんが、いわば配当その他に対する裏からの処置をとることによつてこれを促進して参ることにしたらどうだろう、これもまたおしかりを受けるかもしれませんが、まだ結論には達しておりませんが、そういうようなことで過日来省内では議論をいたしておる次第で、これは近く結論に達しまして今国会に出したい、こういうように考えておる次第であります。
  57. 尾崎末吉

    ○尾崎委員 先ほど造船の問題でお答えになつた点で、十分でなかつたところをあらためてちよつと伺いますが、政府が企図しておられる金融引締めを行うというのは、一体どの程度まで金融引締めを行うのか。先ほどの答弁では重点的に考える、こういうことでありまして、いわゆる質の問題、質によつては大いにこれを生かして行くのだ、こういう点は伺つたのでありますが、一体どういう程度まで金融引締めを行われるかということをはつきりしておきませんと、数日来新聞等で見ますように、各企業家はやはり来年度は緊縮ではあるけれども、できるならば何とかして融通を受けて、そうして第二次合理化にでも持つて行こう、こういうような考え方で、何とかして金融を受けたい、こういう騒ぎが起つて来て相当混乱を引起すおそれがある、こう考えますので、おさしつかえなければ一体どの程度に金融引締めを行おうというお考えなのか、同時にこの際二十九年度におきましては、一体通貨の量をどのくらいならば適当だとお考えになつておるのであるか、この二つをあわせて伺つておきたいのであります。
  58. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 実はたいへんむずかしいお尋ねでございまして、ただ私が考えておることだけを申し上げさせていただこうかと思うのであります。それは、政府といたしましては、今度の緊縮予算が何をねらつておるかと申しますと、申すまでもなく物価の五分ないし一割の引下げをねらつておるのであります。従いまして物価引下げは、政府資金の散布超過をとめるとか、各種の施策だけでは足らないので、特に金融の引締めということが大きく働いて来るのであります。私どもは物価にはいろいろな関連があることを知つておりますが、しかし同時に日本が国際的に安くしなければならぬ物価というものは、そこにはおのずから限られておることは尾崎議員がよく御承知の通りであります。従いまして、言いかえますと、多分尾崎議員は、もう少し大蔵省は質的金融統制でもやつたらどうかという意味のお含みがあるのではなかろうかと思われますが、私どもこの点については考えはございます。しかし資金統制をするかどうかについてはまだ結論を得ておりません。ただ私どもとしましては、各銀行にいつも、演説でも申し述べました通り、今まで自主的に銀行が国の事業に応じて金を出してくれると思つておつたのでありますが、どうも遺憾ながら二十八年度の実績を見ると、さように相なつておらぬ点があるのでありまして、この点から、もう少し私どもが銀行業者に対する協力を求めるだけの十分な処置をいたしたい。これは強制するのじやないのであります。協力を求めるための十分な措置を講じたいと思つております。すなわち、国としてはこれこれこういうものはぜひ必要であつて、こういうことはぜひやりたいと考えておる、またこれこれこういうもの——たとえばこれこれこういうものということは、ビルが建つようなことは望ましくない、娯楽機関、歓楽機関のできることは望ましくない、そういうようなこと等について、十分ひとつ私どもが心を打割つて話をして協力を求める、こういうことにはぜひいたしたいと考えておるのであります。そういたしまして、それでもなお金融業者、金融機関の協力を得られぬときには、お考えのような資金統制に関する立法的措置が必要なのではないか、かように考えております。  それから、それじやことしの暮れの通貨はどれくらいかというお話でございまするが、二十九年末の意味でございますれば、大体本年度程度に行く。これは御承知のごとくに、過日来経審長官がしばしば答弁され薫る通り、大体今、日本の鉱工業生産等は横ばいの状況で、九—十一年を基礎として一五二くらいのものが続いている、こう思われますので、そういう点等から勘案しまして、ことしの程度で通貨が行くならば、相当緊縮の実が上つた、こう申してよいと思われますので、私ども大体本年程度にとどめたい。しかしもう少し収縮し得れば一番望ましいのでありますが、目標としては今年の程度、かように考えておる次第でございます。
  59. 尾崎末吉

    ○尾崎委員 あと五分だそうでございますから、急ぎます。  そこでなおここに大蔵大臣に伺つておきたいと思いますことは、緊縮予算、耐乏予算と申しますのは、一体どの程度お続けになるつもりであるのか。こういう耐乏生活は国民があげてこれに協力しなければならないのでありますが、将来の見通しがなくてははなはだやりにくいことでありますので、一体どの程度の期間耐乏のやり方をやるお考えであるか。それによつてどういう見通しが出て来るのか、これについての大体のお見通しを伺つておきたいと思います。
  60. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 これは私どもも一日も早く日本の物価が国際水準に近づいて、そうして正常貿易によつて国際収支が償うことを念願しておるのであります。従いまして二十九年度予算における一応の目標は五分ないし一割でありますが、御承知のごとく、物価は大体三割くらい世界の水準より高いと思います。従いましてなお両三年はこれを続ける。二十九年とすれば、たとえばこれはあまり正確にこういうことは申し上げられませんが、なお三十年、三十一年くらいは続ける必要があるのじやないか。それだけ耐え忍んでいただければ、これは十分日本の物価が国際競争に応じて、正常貿易によつて日本の通貨価値が維持される、かように私ども考えておる次第であります。
  61. 尾崎末吉

    ○尾崎委員 時間が参つたようでありますから、中小企業の問題や防衛に関する問題、社会保障に関する問題、地方自治法の改正や機構改革等の問題や文教に関する問題等を保留いたしまして、一応本日はこれで終ることにいたします。
  62. 倉石忠雄

    倉石委員長 本間俊一君。
  63. 本間俊一

    ○本間委員 私は、主として吉田総理大臣にお尋ねいたしたいのであります。昨年の六月、二十八年度の本予算審議の当委員会におきまして、憲法と防衛の問題について政府の見解をお尋ねいたしたのでありますが、十一月になりまして保安庁法改正の問題をめぐる松村謙三委員との質疑応答がありまして、いわゆる戦力なき軍隊という新聞語が発明されまして、憲法の解釈について政府の見解が少なからず明朗を欠く点があるのであります。これを明らかにいたしますことは本員の一つの責任でもあると考えますので、この問題をお尋ねいたしたいと思うのであります。  憲法第九条の戦争放棄の規定は、わが国の自衛権を否認するものではない。固有の自衛権はもちろんあるのでありますが、自衛のための軍備は憲法は禁止しておる。従つて自衛のための軍備をいたします場合も、現行憲法の改正が必要である。こういう見解を従来政府はとつておつたように私は思うのでございますが、政府のお考えを明らかにしていただきたいと思います。
  64. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 私からお答えいたします。従来から政府のとつておりまする見解は、今仰せになりましたように、わが憲法におきましても、自衛権はごうも否定していない。従つて自衛権の裏づけである自衛力を持つことは、これまた否定されておるわけではありません。ただこの自衛のためと称して、あるいは外国に侵略するようなことになつては相ならぬ。そこで憲法第九条第二項によつて、戦力は持たせない。戦力というのは、要するに、外国に対して侵略するようなことを企図させるようなことはいけない。それを防ぐために、これを設けたわけであります。そういうことに至らない程度の自衛力であれば、何ら憲法に否定されておらない。従つて政府におきましては、ここに至らざる程度の自衛力を、いわゆる漸増してわが国の防衛に当らせるということで、二十九年度にこれを計画したのであります。
  65. 本間俊一

    ○本間委員 政府の答弁によりますと、自衛権はもちろん否定されておるものではない。しかし私がお尋ねいたしましたのは、自衛のための軍備を持つ場合にも、現行憲法の改正が手続として必要である、こういうふうに考えておつたのでございますが、今政府の答弁を聞きますと、軍備という言葉をお使いになつておらないのでございますが、九条第二項の戦力に至らざる軍備と申しますか、防衛力と申しますか、そういうものならば一向さしつかえない、こういう見解でございますか。その点もう一度……。
  66. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 お答えいたします。要は戦力に至らざる程度のものであれば、それは軍と言おうと何と言おうとかつてである。ただ戦力に至れば、これはまた軍と言おうと何と言おうと持つては相ならぬ、こういう意味合いであります。
  67. 本間俊一

    ○本間委員 そうしますと、お尋ねをいたしたいのでありますが、軍隊あるいは軍備という言葉がございますが、御承知のように、軍隊は構成されました個々のものを呼んでおるわけであります。それを国という全体から見ますれば軍備というわけでありますが、そうすると自衛のための軍備でも、いわゆる戦力に至らざれば、今の憲法で一向さしつかえない、こういう見解だというのでありますか。憲法第九条の解釈を、政府としてひとつどう解釈をするのかということを明らかに伺いたいと思うのでございます。
  68. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 お答えいたします。これはしばしば政府はこの意思を表明したのでありまするが、いわゆる戦力に至らざる程度においてであれば、これは軍と言おうと何と言おうとさしつかえない、いわゆる自衛のためであろうと何であろうと、戦力に至れば、これは憲法で否定されておる。戦力に至らない程度においてであればこれはかまわない。いわゆる戦力とは、しばしば申し上げたように、近代戦を有効適切に遂行し得る総合実力である。これは日米安全保障条約の前文においても明らかにされておるように、他国に攻撃的脅威を与えしめるというようなものは、日本には一応持たせないということになつておる。同様に日本の憲法第九条第二項において、かような大きな総合戦力は日本において持たせない。その範囲であれば、これは軍と言おうと何と言おうと、一向私はさしつかえないものと考えております。
  69. 本間俊一

    ○本間委員 そうしますと、木村保安庁長官は、従来の当委員会の質疑応答におきましても、いわゆる保安隊は軍隊か軍隊でないか、こういう議論がたびたび展開せられたのでありますが、その際に、保安隊保安庁法第四条で明確に、国内の治安を維持するということになつておるのでございますから、すなわち目的が明瞭であるからら、これは軍隊じやないというふうに答弁をせられたように私は思うのでございます。もつともこの目的の相違というところで、区別をいたしまするのは、当委員会において一番最初に主張されたのは植原さんでございますが、私は従来木村保安庁長官は、少くとも保安隊が軍隊であるか軍隊でないか、こういう当委員会の質疑応答においては、この目的説を十分御活用になつて御答弁をされておるように記憶をいたしておるわけでございますが、その点はどうでございますか。
  70. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 お答えいたします。目的説はわれわれはとつていないのであります。それで保安隊のあり方について前国会において御質疑ありましたから申し上げたのであります。それは保安隊はただいまの規定によりますると、わが国の平和と秩序を維持するためにある、何ら外敵に対して処置し得ることになつていないのである。その意味から言つて保安隊は戦力ではない。しかし保安隊がその性格をかえて、外敵の侵入に対処し得るに至つても、これは戦力に至らなければ、決して憲法において否定されておるものでない、こう申し上げておるのであります。
  71. 本間俊一

    ○本間委員 そうしますと、目的の相違で従来議論をいたしておりました目的説は、政府は従来ともとつておらないのだ、そこで憲法第九条の第二項の規定をいたしておりまする戦力に至りさえしなければ、警察隊であつてもあるいは軍隊であつても、軍備であつても、それは一向かまわない、こういう考えが政府の憲法第九条に対する解釈だということが、ただいま明らかになつたわけであります。そうしますと、御承知のように、憲法第九条は、「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。」問題は第二項でありますが、「前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権はこれを認めない。」こう書かれておるわけであります。そこで問題は、第二項の「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。」この解釈なんでございますが、従来は陸海空軍並びにその他の戦力はこれを保持しない、こういうように私は解釈がされておつたように思うのでございますが、政府はこの憲法第九条第二項の解釈を一体どういうように解釈するか、その点をこの際明らかにしていただきたいと思います。
  72. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 この議論につきましても、従来しばしば申し上げておるように、陸海空軍その他の戦力、これを一本に読みまして、そういうような大きな総合戦力は、こはれ持つてはならぬ、こういうように解釈いたしておるのであります。
  73. 本間俊一

    ○本間委員 そうしますと、陸海空軍、その他の戦力と、こういうふうに従来読んでおつたように思うのでございますが、そうは読まないのだ、陸海空軍その他の戦力というのは一つの言葉として、そうして問題は戦力、こういう解釈の上に政府の見解が立つと、こういうわけでありますか。
  74. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 お答えいたします。陸軍とか海軍とか空軍とか、切り離して申すわけではありません。陸海空軍その他の戦力、いわゆる大きなこの一つの総合実力を指して言つておるのであります。要は近代戦争を有効的確に遂行し得るようなところの総合戦力、れを指しおるものとわれわれは解釈いたしておるのであります。
  75. 本間俊一

    ○本間委員 そうしますと、要するに、政府の第九条の解釈は、陸海空軍を持つてもさしつかえない。但し戦力に至らなければ、軍備を持つてもよろしい、陸軍を持つても海軍を持つても、あるいは空軍を持つてもよろしい、こういう見解でございますか。
  76. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 お答えいたします。実質的にまさにその通りであります。これは軍と言おうと、何と言おうと、戦力に至らざる程度であれば、持つてよろしい、あえてさしつかえない、こういう解釈であります。
  77. 本間俊一

    ○本間委員 そういうことになりますと、政府は、従来保安隊警察か軍隊かというような質疑応答が展開されましたときに、保安隊警察とかあるいはそれは軍隊でないというようなことには一向こだわらなくて済んのだじやないかと思うのでございますが、過去において少くとも保安隊の論議においては政府は軍隊か、警察かという議論にこだわつて政府の見解を述べられておるように私は思うのでありますが、その点はどうです。
  78. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 従来政府保安隊はその性格からいつても外国と戦争をする目的でもないから、従つてその意味においてもこれは戦力に至らないのだ、こう言つておるのであります。そこでたとい警察の名を持つておりましても、それは戦力の程度に達するようなものであれば憲法で否定されておる。名のいかんを問わず、また目的のいかんを問わず、客観的に見ていわゆる近代戦争を有効適切に遂行し得る総合的な実力、そういうものを持つては相ならぬ、こういうのであります。
  79. 本間俊一

    ○本間委員 政府が現在憲法をどう解釈しておるかということはほぼ明らかになつたのでありますが、どうも速記録をずつと調べてみますと、最初の政府の見解と今政府の方から明らかにせられました見解との間には、私は相当な開きがあるように思うのでございます。速記録を調べてみますと、昨年の五月ころから政府の方はどうもそういうように拡張して解釈をせられておるように私は思うのでございますが、ずつと終始一貫してそういうことになつておつたのか、あるいは過去においては多少きゆうくつな解釈をとつておつたのかどうか。これは政府の考えを明らかにすることが私の質問の趣意でございますから、さらりと御答弁を願いたい。
  80. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 申し上げます。私は始終さような見解をとつております。多少言葉のあやはありましようが、その趣旨は全部その通りであります。どうぞ速記録をごらんください。
  81. 本間俊一

    ○本間委員 どうも従来私が冒頭に申し上げましたような解釈をいたしておつたものでありますから、憲法をどうしても改正しなくてはならぬという議論も、一方において私は非常に有力に行われて来たのだと思います。しかし政府が、要するに軍隊を持つても、軍備を持つても、戦力にさえ至らない程度ならば一向かまわないというのが、今の憲法九条に対する政府の見解だということでありますから、それで話を進めたいと思いますが、そうすれば、戦力というのは木村長官の言葉によれば近代戦争遂行能力、近代戦争を有効適切に遂行し得る総合的力ということでございますが、こうなりますとこれはその国の地理的条件あるいは相手の国の軍備によりまして非常な相違が実際に出て参ります。たとえどスイスのような小さな国でありまするならば、陸軍二十万ぐらいの常備軍があれは、十分国防の任務を果し得るというような国もあります。そこでしからば朝鮮の軍備は——これは朝鮮を律するのではありませんから、日本の憲法でありますが、朝鮮の軍備などはとうていこれは近代軍備という範疇には私は入らぬと思います。そこで近代戦争を遂行する力、それが戦力だというのでありますが、その基準を一体、どういうところに置かれるか、これは飛行機の数でありますとか、あるいは大砲の数でありますとかというようなものできめることはできません。そこで近代戦争遂行能力の基準は、しからはどこへ置くのか、その点をひとつ明らかにしていただきたい。
  82. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 これはしばしば申し上げておるのであります。さような基準をどこに置くかということは、はつきり申し上げることはできません。あなたがただいま仰せになつたように、つまりその国の置かれた地位あるいは時代、それによつてしばしばかわるべきものと考えております。そこで日本の場合においてどうであるかと申し上げますると、日本の場合においては、結局外国に対して侵略戦争を行い得るような大きな力、こう解釈をすべきであります。われわれの考えておるところでは、かりに今地上兵力を三十万といたそうと、これを運ぶについての輸送船団もなければ、あるいはは護衛するところの艦船も持つていない、またこれを護衛するところの飛行機も持つていないとすると、決して外国に対して攻撃的脅威を与えるものではないのでありますから、かりに地上部隊のみ三十万持つてつても、私はこれは憲法第九条第二項における戦力に至らぬものと解すべきだ、こう考えております。
  83. 本間俊一

    ○本間委員 近代戦争を遂行する能力を侵略戦争を行い得るような力と言うから、十一月に当委員会でたいへんな問題になつたのではないかと思うのであります。もちろんその基準は、私も先ほど指摘をいたしましたように非常にむずかしい。飛行機の数でありますとか大砲の数でありますとかいうようなものできめられませんから、これは非常にむずかしい。どこに基準を引くかということは非常にむずかしい問題でありますが、どこの国でも最初から軍備をいたすのに侵略をしようというようなことでする国は世界中ない。あとから話を持つて参りますが……。従いまして、いかなる場合でも自分の国の本土を守るという観点からその国の軍備が立てられるわけです。建軍の方針というものはそういうところから立てられるわけでございましよう。侵略戦争を企図せしめよるうなと言うから、そうすると日本がかりにどんな小さなものを持つても、終局にはまた侵略をするのだということで持たないということならば、そういうことでなければ何をしてもいいのだということになりますと、これは非常に誤解を招きますし、またこれは問題でございます。そこで私は、もちろん基準の引き方はむずかしいのでありますが、しかしこういう程度のものなのだ、こういう概念のものだということは当然答弁ができるはずたと思うのでございますが、どうです。
  84. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 私は目的のいかんを問わぬ、こう申しておる。いわゆる侵略をし得るような実力、こう申しておる。     〔委員長退席、小峯委員長代理着席〕 これは客観的に判断すべきで、どこの国でも初めから他国を侵略しようということで軍備をする国はまずないでしよう。あるいは二、三の国はあるかもしれません、あるやに思われますが、私はまずまず外国に侵略しようとして初めから軍備をするという国はごく少数であろうと思う。そこでどこの国でも自己防衛ということでやるのでありますが、しかし実質的に見て他国を侵略し得るような大きな戦力であれば、これは自国防衛のためであつても大きな危険性がある。日本の憲法はいわゆる平和憲法であつて、さような大きな戦力を持つことになればなるほどまた他国の侵略に使うかもわからぬ、そういう危険を一切排除しようというので、そういう戦力に至るものはこれを持たせまいとしてあの規定をしたものと考えております。ただわれわれが考えるところでは、つまり客観説であつて、目的のいかんを問わぬ、たとい自己防衛のためと称しておつても、大きな戦力を持つに至れば何どきさような危険を生ずるかもわからぬから、それを否定しよう、この意味において憲法第九条第二項はできておるものとわれわれは解釈しておるのであります。
  85. 本間俊一

    ○本間委員 そういうことになりますと、私問題がある。たとえば日本の近所の国でも、いわゆる世間で言う近代的な軍備を持つておる国もあります。それからまた非常に劣弱な、いわゆる近代的な軍備に入らない防備しか持つておらない国も周囲にたくさんあります。その場合に近代的な軍備を持つていない、非常に劣弱な防備しかないところにも侵略の意思を持つことができるし、また近代的なりつぱな軍備を持つておるところに対しても侵略を企図することができましよう。そうすると、侵略を企図せしめるような力といつても、環境によつては、相手によつては非常に違つて来る。そうすると、この概念の上でも、われわれの理論の上でも、それはまるで違つたものになるのですが、その点はどうですか。
  86. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 しばしば申し上げましたように、それはその国の置かれた地位と環境並びに時代によつてかわるものであるのであります。ただいまのようないわゆる国連その他の集団保障があつて、一朝事があつた場合にはさようなものが出動するということを考えてみまするときにおいて、これはわれわれは相当の実力を持たなければ、他国に危険を及ぼすような心配はないのである。いわんや私の考えておるところは、ただ一遂に国内の防衛のためにやるのであります。その防衛が相まつて他国に対し脅威を与えないような程度であれば、これはさしつかえないということをわれわれは考えておりす。
  87. 本間俊一

    ○本間委員 どうも木村保安庁長官の説明はまずいですよ。たとえば昔の武器と今の武器と非常に違うでしよう。それですから、大体近代的な軍備といえば、それはなかなか基準は設けられぬけれども、近代的な軍備を持つている国といえば大体見当はつくのです。これは常識で見当はつきましよう。ところが今の外国の様子を見ると、たとえばヨーロツパに例をとつてみれば、ルクセンブルグとかあるいはベルギーのような非常に小さな軍備しか持つておらない国もあるのです。それからフランスのような、あるいはイギリスのようなりつぱな近代的な軍備を持つている国もありましよう。それですから、たとえばドイツがルクセンブルグに侵略をする、あるいはベルギーに侵略をするという場合と、それからあるいはフランスならフランスにかりに侵略をしようと思うのと、これは現実に、今実際の問題として非常に違うのです。そうでしよう。それですから、侵略をふらふらと企図し得るような力ということになると、現在ではこれは非常に違うのです。概念の上からいつても、理論の上からいつてもです。そうでしよう。ですから、それでは政府説明は不十分なように私は思うのですが、どうです。
  88. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 私は外国は別として、日本の憲法において日本がどうあるべきかということが規定されておる、それで、日本では第九条、第一項において、「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。」と一本ちやんときめておる。国際紛争を解決する手段ということではないのでありまして、これはいわゆる自衛戦争ならできる。国際紛争の解決の手段としてはいけないが、外国から不当に侵略されて安閑としておられるわけはない。憲法はこれを防衛するいくさは認めておる。ただそのいくさをするところの力であつても、外国に脅威を与えるような、いわゆる近代戦争を遂行するような大きな戦力を持つということは否定されておる。その範囲内においてならば、いわゆる自衛力の裏づけとしての一つの実力を持つということは当然なことであろうとわれわれは考ええております。
  89. 本間俊一

    ○本間委員 いや、それは木村長官無理ですよ。侵略を企図し得るような力ということになりますと、現実に、たとえばヨーロツパでない——私は日本を例に引けば、日本の付近にいろいろな国がありますから、多少遠慮してヨーロツパの例を引いたのですが、侵略を企図し得るような力ということになりますと、現在その国によつてこれは考えの上でも非常な開きが出るのです。それですから、侵略を企図し得るような軍隊という説明をいたしますと、これはなかなか納得いたしません。そこで木村長官はこういうことを言いたいのじやないですか。わが国を一人で守り得る力、独力でわが国を十分守り得るというものになれば、それれ戦力だ、こういうことを言いたいのじやないですか、どうなんですか。
  90. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 お答えいたします。まさにその通りなのであります。わが国を独力で守り得るようなことであれば、これはあるいは外国に対して脅威を与えるような実力であるかもしれない、これはまさにその通り。あるいはアメリカの力を借りずに日本がほんとうに陸海空軍を持つような力になれば、これは戦力になる、それは私も考えております。
  91. 本間俊一

    ○本間委員 それですから、木村長官にひとつ申し上げておくのでありますが、憲法九条の問題でも、その他いろいろ防衛問題が出ますが、侵略戦争を企画し得るというような説明をいたしますると、ただいま私が申し上げましたように非常に違いますから、これはどうしても問題が残つてわかりません。そこで政府の憲法の解釈がいいか悪いか、これは別にいたしまして、これは国民がまたおのおの判断することでしようから別にいたしまして、しからはわが国を独力で、一人で守り得る力ということになれば、これは戦力だ、そうなれば憲法の改正が必要だ、こういうのですね。
  92. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 まさにその通りであります。駐留軍が全部撤退して、これにかわるべきような大きな総合戦力を持つということになれば、これは戦力に該当すると私は考えております。
  93. 本間俊一

    ○本間委員 木村保安庁長官は、わが国を一人で守り得る力ということになれば、それは戦力だ、それから駐留軍がいなくなる、それにかわり得るという概念をごつちやにして答弁せられておりますが、この概念は非常に違うんですよ。これから御質問いたしますが、最初のわが国を一人で守り得るような力は戦力だ、こういう政府の答弁でありますが、一人で守るということになりましても、一体どれだけの軍備がいるか、これは実は非常にむずかしい問題であります。むずかしい問題でありますが、おおよそ積極的に防衛する場合と消極的に防衛する場合とにわけて考えますると、考えはおよそきまるのです。太平洋戦争で破れましたけれども、昔の日本の軍備というものは、御承知のように、これはどういう方針でやつておつたかというと、侵略戦争をするような意図で生れたものではございません。わが国を、日本本土を守るのには、どうしても大陸を守らなくちやいかぬというのが、いい悪いは別にいたしまして、その当時の日本の作戦の根本だつた建軍の趣旨もそこにあつた。そうなりなすと、戦略上どの線まで、どの地点まで来れば日本の国防が危い、生命線というものがおのずから出て来るのです。これは戦略上から出て来るのです。その生命線を侵されれば、これは戦争になる。それですから、日露戦争は、御承知のように、日本の安全と独立を守る、こういう意味合いで当時小さい日本があの大きなロシアに食いかかつて行つたわけです。この日露戦争を称してだれも侵略戦争と言う人はいないと思う。これは戦史の上でも日本の自衛の戦争だということは定説でございます。それですから、日本本土を簡単に守るといいましても、積極的に日本の本土を守るという立場、あるいは消極的に日本の本土を守るという考えの上に立つのとでは実際問題としては非常にかわつて来るわけでございます。たとえばたまたま太平洋戦争で日本が侵略をいたしまして、破れましたから、日本の建軍の基礎がみなそこにあつたようにあるいは思われない方が多いと思いますけれども——あるいは誤解を生ずるかもしれませんけれども、そこにあつたわけです。日本の昔の軍備の中心課題はあくまでもそこにあつたのであります。しからば消極的にわが国を守るという場合を考えてみますと、要するに日本本土へ来るものを入れないようにする、あるいは来たものを倒すということになりますから、日本本土へ上ろうとするものは海軍でこれを防ぐ。今日では昔と違いまして、空挺部隊というようなものがありまして、空から日本へ入るようなこともある。それですから、飛行機で日本本土へ入つた場合には、いかなるところへ落ちても、その敵をきわめて迅連に殲滅するというだけのことを考えなくちやなりません。御承知のように、今日は原子兵器の時代でありますから、その原子兵器を飛行機で持つて来るということになりますれば、これは当然制空権も持たなければなりません。そういうふうに、要するに原子時代でありますから、戦争はないことは希望する、それをわれわれは衷心からこいねがうのでありますが、そういう問題は別にして、今かりに日本を消極的に守るという場合を考えてみましても、消極的に日本本土へ来るものをたたくというふうに考えてみましても、その軍備というものは、これはなかなか相当なものがいるのであります。かような消極的なものでも容易にはできない。これは相当年数もかかります。私はそういうふうにわけて考えておるのでありますが、保安庁長官は一体どういうお考えでしようか。
  94. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 いわゆる防衛について積極的な防衛と消極的な防衛とがあるでしよう。自分の国を防備するために他国に進出してある地点を占領しなければならぬというような考え方の防衛もありましよう。ただ受身になつて日本をほんとうに防衛しようという場合もあります。われわれは憲法に規定されておるこの趣旨は、いわゆる自己の防衛であればさしつかえない、きわめて厳格な意味における消極的意味の防衛と考えておるのであります。しかしその防衛の力も大きくなるとあるいは外に向つて脅威を与えるようなことになるのではないかというので、憲法第九条第二項において戦力は保持しない、ここで押えて行くべきものだとわれわれは考えております。
  95. 本間俊一

    ○本間委員 侵略ということに、どうも木村保安庁長官は非常におすきなせいかどうか知りませんが、言葉にとらわれておるようであります。私が今申し上げた消極的な防衛をかりに考えるにしても、これは相当な軍備がいるのです。相当な部隊がいるわけです。その部隊をつくるのでも、相当先のことです。何年もかかるのです。それですから、ただいま私が申し上げたような程度のものができても、これは侵略なんということはもちろんできません。またそんな考えはない。日本の国民が太平洋戦争であれだけひどい目にあつて、今侵略をするというようなことは夢にも考える者はありません。そこで、そういう消極的なものをつくるのにも相当なものがいります。これをつくるかつくらぬかということはポリシーの問題であります、政治の問題でありますが、いずれにしてもこれだけ小さなものをつくるのにも相当かかる、何年もかかる、今の日本の経済状態からしてそういうことになると思いますが、その点はどういうふうにお考えになりますか。
  96. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 まさにその通りであります。日本のほんとうの防衛をするについての実力を持とうとする場合は、なかなか困難かと考えております。またこれをつくるについても相当の年月がかかるものとわれわれ考えております。御同感であります。
  97. 本間俊一

    ○本間委員 それですから、日本を守るということになれば、どうしたつてこれは日本の外で守るということになるのです。ほんとうに考えますれば、日本の本土に入るような場合がありました場合に、ただ消極的に来たものだけ何とか処理するという程度のものでも、私が今申し上げましたように何年もかかるのです。御承知のように、太平洋戦争でつぶれました日本の軍隊にしたところで、これは何十年かかつてできておるのですから、かりにあの程度の戦力を持つにしても何十年かかるのです。これはどうしてもそうなるのです。そこでさきに木村保安庁長官は、駐留軍にかわり得るものができ、駐留軍がアメリカにみんな引揚げることになれば、それは戦力に達する、こういう意味の御答弁をなさつたのでありますが、さように承知してよろしゆうございますか。
  98. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 お答えいたします。アメリカ駐留軍はどういう実勢を持つているか詳細にはわかりません。しかしながな私は、相当の実力を持つているものと考えているのであります。日本の周辺もいわゆる防衛しているのであります。これらに全部かわるというようなことになれば、私はその実勢から考えて戦力になるのではなかろうか、こう考えております。
  99. 本間俊一

    ○本間委員 戦力になるのではないか、こういうのですが、戦力になるというのですか、戦力になるのではないかというのですか。そこをはつきり御答弁願います。
  100. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 今申し上げましたように、その実勢はわかりません。しかしその艦船といい、航空部隊といい、相当な数であろうとわれわれは推察するのであります。従つてその実勢はわからぬから正確なことは申せませんが、それらのことから考えてみると、われわれはそういうような実力を持つようになれば、戦力に至るのではないかと考えております。
  101. 本間俊一

    ○本間委員 どうも戦力だとは言い切らぬのでありますが、これは言い切れない、私はそう思う。なぜかと申しますと、アメリカの駐留軍は御承知のように、米本国にある米国の軍備というものを背景にして、その一部分が日本本土におるわけです。これはだれでもわかる。従いまして今日本におります駅留軍の背景には、アメリカの軍備というものがものを言つておる。そうでしよう。従つて駐留軍にかわり得るものということになれば、今木村保安庁長官の答弁したように、日本の自衛隊に力ができ、そうしてアメリカの軍隊が本国に引揚げる、そういう場合を今かりに考えてみますと、それは日米安全保障条約というものが生きておつて、そうして日米安全保障条約の背景のもとに日本が置かれるということになりましよう。そういうことになると私は思うのです。そうすると、憲法をつくりましたときには、日米安全保障条約というものは考慮の中に入つていない。それですから少くとも憲法の戦力の解釈には、駐留軍にかわり得るような程度のものが戦力じやないかというけれども、それと先ほど木村保安庁長官の政府を代表して答弁しておられた戦力との間には、これまた非常なる違いがあるのです。そこをひとつどうぞ。
  102. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 アメリカ駐留軍の背景には、アメリカ本土における軍備というものがある、これはもつともなことであります。そこで日米安全保障条約によつて暫定的に外国からの脅威はこれをアメリカ駐留軍によつて阻止するということになつておるのであります、従つて日本独力ではこれはできません。アメリカの力を必要とするのであります。そこでその力たるアメリカの駐留軍が全部引揚げましても、いわゆるその背景においては、安全保障条約の存続する限りは、やはりアメリカというものが背景にあるということは、私は考えられると思つております。しかし日本で独力でもつてアメリカの駐留軍のあとを全部引受けてやるということになると、今あなたの仰せになるように、相当な時間と莫大な経費がかかることはもとより論のないところであります。そういうことになると、日本の今の段階においては許されない。これはもとより当然であるのであります。しかし繰返して申しまするが、日本がこれらにかわつてほんとうの意味における日本の防衛をするというほどの実力を持つということになれは、これは私は憲法第九条第三項の戦力の程度に至るべきものと考えております。
  103. 本間俊一

    ○本間委員 そこは私違うと思うのです。近代戦争を有効的確に遂行し得る総合的力、こういうのでしよう、憲法九条二項の意味しておるものは。いい悪いは別といたしまして、政府の考えはそういうのでしよう。そうすれば、その裏を返して考えてみると、日本を独力で守り得る総合的な力、こういうことになる。そうすると、駐留軍にかわり得るものということになれば、御承知のように、今私が指摘をいたしましたように、安全保障条約というものは、憲法起草のときには考えていなかつたわけでしよう。それですから、政府の解釈がいい悪いは別にいたしまして、政府の解釈をそのまま受取れば、駐留軍にかわり得る程度のもの、駐留軍がアメリカに引揚げる、それにかわり得る程度のものができても、政府の解釈から行けば、憲法の戦力には至らない、こう解釈するのが当然だと思うのですが、その点どうですか。
  104. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 もとより憲法をつくるときには、アメリカの駐留軍なんか考えておりません。当然のことであります。私はただ一つの考え方として、現在の考え方として申し上げておるのであります。アメリカの駐留軍云々は、どの程度のものに達すれば戦力になるかという一つの事例として言つておるのであります。従つてアメリカ駐留軍そのものを論じておるのではありません。今申し上げますように、近代戦争を有効的確に遂行し得るような大きな総合実力が、憲法第九条第二項の戦力であるということは、従来からしばしば申し上げておる通りであります。
  105. 本間俊一

    ○本間委員 どうも長官は少しごつちやにしておられるのではないかと思うのですが、憲法第九条の戦力は、日本を独力で守り得る総合的な力とこういうのでしよう。日本を独力で守り得る力ということになると、たとえば、私が先ほど申したように、かりにわけて考えてみても、積極的な場合と消極的な場合が考えられる。その消極的な場合を考えても、これは相当なものなのです。それですから、今の駐留軍にかわり得るものができれば、それはもう政府の解釈に従う憲法に違反する戦力だ、というのとは非常に違いがあるのです。日本を独力で守り得るというものと、駐留軍にかわり得るものというのでは、実際問題として非常に違いがある。それは政府の考えから言えばどこかということをはつきりしていただきたい。
  106. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 駐留軍のことを持ち出したのは、今申し上げましたように、一つの考え方として言つたのであります。そこで本間君の仰せになるように、周囲の情勢から判断いたしまして、日本が外国の脅威をまつたく感じないような大きな実力的総合部隊を持つようになれば、これは戦力といつてよかろう、こう考えております。
  107. 本間俊一

    ○本間委員 木村保安庁長官は、憲法の禁止しておる戦力は、日本を独力で守り得る力なんだ、こうおつしやるわけですね。そこで、先ほども言うたように、駐留軍にかわり得るものということになれば、当然安全保障条約を背景にして考えるわけでございましよう、そういうものは憲法起草当時には考慮の中になかつたのですから、政府の解釈に従えば、駐留軍にかわり得るものもまだ戦力に至らざるものだ、こういうふうにならなければならぬと私は思うのですが、その点だけひとつどうぞ。——私の質問の要旨は、木村長官の説明によれば、戦力というのは、わが国を独力で守り得る力が戦力だ、こういうのでしよう。それなら、当然日米安全保障条約が背景にあつて、そうして駐留軍にかわり得る程度のものならば、政府の解釈に従えば、まだ戦力に達しないものじやないか、木村長官は、駐留軍にかわり得る程度のものができれば、それは戦力だ。いい悪いは別ですが、政府の考えによれば、その程度のものはまだ戦力に至らざるものじやないか。その点は一体どうですかとお尋ねしておるのです。
  108. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 駐留軍の実力、実勢は、はたしてどんなものかわかりませんが、これが日本の周囲の情勢、いわゆる軍事的情勢から判断して、優にこれを守り得るものであると仮定いたしますと、それに全部かわつて日本の実力部隊が編成されるということになれば、それは戦力に至るべきものであろうと考えられる。裏を返せば、あなたの仰せになるように、日本がまつたく自己の力によつてこれを守るということになれば、これは戦力になる、こういうことです。
  109. 本間俊一

    ○本間委員 それでは角度をかえてお尋ねいたします。日本の国を自分の力で守り得る力は、これは明らかにもう戦力だ、こう政府の方でおつしやる。ところが駐留軍にかわり得る程度のものということになりますと、観念的に言えば、安全保障条約が背景にあるのですから、いざという場合にアメリカ軍が有効適切な作戦をするまで、どうやら持ちこたえる程度のものでしよう。それは日米安全保障条約をやめて、アメリカ軍が帰つて、そうして日本を守り得るものということになれば、政府の答弁は明らかに一致するわけです。ところが日米安全保障条約がうしろにつつかえ棒にあつて、そうして駐留軍にかわり得る程度のものということになりますと、そう大きなものではないでしよう。そうすると、それは政府の答弁からいえば、この政府の考えからいえば、まだ戦力に至らざるもの、日米安全保障条約を破棄できる程度のものになれば、これは戦力である、こういうことでないと非常に違いがある。その点を私はお尋ねいたしておる。
  110. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 よくわかりました。そのことを私は混同しておつたのであります。よくわかりました。その通りであります。
  111. 本間俊一

    ○本間委員 そうなりますと、私は佐々木説あるいは芦田説と違うのじやないか、こう思うのですが、どうです。
  112. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 私は芦田説と違うと考えております。というのは、いわゆる芦田説によりますと、自衛のためであろうが何であろうが、戦力は持ち得るのだ、こういうことになつておるのであります。われわれは、これは自衛のためであろうと何であろうと、これが戦力に至れば持つてはいけないのだ、政府はこういう見解を常に持つておるのであります。
  113. 本間俊一

    ○本間委員 そうしますと、佐々木説、芦田説は、自衛のためならどんな大きな戦力を持つてもいいのだ、政府の解釈は、その持つものは、戦力というわくがはまつておるのだ、こういうことなんですか、どうなんですか。政府の考え方は芦田説、佐々木説とどこが違うか、そこをひとつ明らかにしてもらいたい。
  114. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 政府は自衛のためであつても戦力に至ればこれは禁止されておるのである、こう考えておる。芦田説は自衛のためであれば戦力を持つてもよろしいということでありますから、その間に大きな相違があろうとわれわれは考えております。
  115. 本間俊一

    ○本間委員 そうすると、私が先ほど申し上げましたように、かりに駐留軍にかわり得る程度の防衛力にしても軍備にしても、これは相当何年も先のことです。それを離れてほんとうに日本を守るということになれば、積極的に守るという方策を立てざるを得ないのでありますが、かりにそれを百歩譲つて消極的に日本を守るという場合を考えてみましても、消極的に日本を守り得るというものができ上るのは、相当何年も先なんです。政府の方は戦力の範囲でわくがきまつておるのだと言うけれども、実際は自衛のための軍隊でも軍備でも、要するに戦力に至らなければそれは一向かまわないんだ、その戦力というのは近代戦争を有効適切に遂行し得る総合的力、裏を返せば日本を独力で守り得る力、こういうのでしようが、そういうものができ上るのは何十年も先です。そうすると当分の間は実質上の問題では芦田説、佐々木説と一向かわらぬ。何となれば政府のいう戦力の制限のあるところまでは何十年先のことでありますから、実際のところは当分は一つもかわらない、こういうことになるのではないかと思いますが、その点どうですか。
  116. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 概念から申すと大きな相違があろうとわれわれは考えております。しかし実際問題といたしましては、戦力に至らない程度であれば自衛力を持つてよろしい、どういうことをやつても——どういうことというと語弊がありますが、軍隊と言おうと何であろうと、そういう実力を持つてもよろしい、ただ戦力ということに限定を設けられておるのであります。しかしその戦力に達するまでには相当の年数があるということは私も同感であります。しかしその結果においては芦田説とわれわれとの説とひとしいということについては、私は同意いたしかねるのであります。根本的に大きな相違があるのではないかと思います。
  117. 本間俊一

    ○本間委員 重ねてちよつとお尋ねしたいのですが、なるほど概念の上では戦力という制限があると政府は言う。芦田さんは自衛のためならば制限はない、こう言うのでありますから、なるほどそれは概念の上では違いましよう。概念の上では明らかにその点は違うと私は思う。しかし私が先ほど申し上げましたように、消極的な自衛のための場合を今考えてみましても、それはずつと何年も先のことなんです。そうすると現憲法のもとで日本の軍備は持てるという議論になりますと、これは実質論になりますと違わない、少くとも違わないと私は思う。そういうふうに了解してよろしゆうございますか。
  118. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 その点につきましては、前から申し上げておる通りに、戦力に至らざる程度であれば、これは憲法に規定されておるわけではない、持ち得るということを言つておるのであります。
  119. 本間俊一

    ○本間委員 それではこれ以上追究いたしますまい。政府の解釈がいいか悪いか、これは大いに批判があるところだと思いますが、それは別にいたしまして、戦力に至らざれば軍備をしても一向さしつかえない、空軍を持つても海軍を持つても陸軍を持つても一向さしつかえない、結論はこういうことになるのですが、そう了解してよろしゆうございますか。
  120. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 さようであります。戦力に至らざる程度においては、われわれはそういう実力部隊を持ち得るのである。
  121. 本間俊一

    ○本間委員 そうすれば日本の自衛のための軍備の問題は、これをするかしないか、あるいは急ぐか急がないかということは、政策の問題であり、政治の重大なわかれ道ではありますけれども、現行憲法のもとでは消極的な自衛のための軍備でも、私の先ほど申し上げましたように何十年とかかるのですから、ここしばらくは政府の方からいえばそういう議論は心配はない、憲法に違反しない、よい悪いは別にいたしましてそれが政府の意見だということで、私どもの意見は別にして政府の憲法第九条の見解だけは一応明瞭になりましたから、あとは国民の方で自由に判断して進むべき問題だと思いますから、防衛の問題は一応この程度にいたします。  次に予算に関連をいたしまして、経済金融政策についてお尋ねをいたしたいと思います。今回の予算編成にあたつて、超均衡財政の原則を貫いて、財政を緊縮し、国際的割高の物価を引下げる、そうして国際収支の赤字をできるだけ少くして行こう、こういう根本方針は、私は去る六月にもこういう意味の主張をいたしておつたのでありますから大賛成でありますし、また政府のとりました態度に敬意を表するものでありますが、予算だけで日本の経済が正常にもどるものではございません。そこでこの予算を実施する上に政府はどういう施策をとつて行かれるか、まずその点を明らかにしていただきたい。
  122. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 予算だけで行けないことは本間議員の仰せの通りであります。従いまして、私どもも主として財政面においては予算の緊縮をする、金融面においては金融の引締めを行つて行く、また外貨の面においては輸入の抑制あるいは輸出増進に資するような処置を原材料等においてはとる、必要物資の輸入はする、しかし不要不急品等は入れない、あるいは、産業面においてもコストの切下げをやる、貿易面においてはできるだけ輸出奨励の方法をとる、税制の面ではやはり同じような基本的な考え方のもとに若干ではあるがかげんをしておる、こういうようなぐあいに、総合的に諸施策を進めて参るのでありまして、全般を通じて所期の目的を達成したい、かように考えておる次第でございます。
  123. 本間俊一

    ○本間委員 どうも大蔵大臣の御答弁は御答弁のための御答弁のような気がいたしまして、明瞭を欠くのでありますが、この予算を実行するにあたつて金融の引締めをやる、それからその他いろいろな産業施策をとつていただくということであろうと思うのであります。そこで、三百六十円の為替レートのきめ方に、一つ根本的な間違いがあつたのじやないかという議論を立てる人も現にある、私はこれは動かすべきものでないと考えるのでありますが、この点大蔵大臣はどうお考えですか。
  124. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 一ドル三百六十円とした当時にあやまちがあつたかどうか、私どもはあやまちはなかつたと思う。すなわち日本が一ドル三百六十円のところで初めて国際通貨基金に加入し、そうして国際通貨基金の一国として行動することになつたのでありますから、これは当時国際通貨基金でもこれを妥当と認めてああいうふうに決定した次第であつて、私どもはその当時何らあやまちはなかつたと思う。ただ実勢においてあるいはその後弱かつた等の問題はありますが、それは日本の諸般の施策がどつちかといえばむしろインフレ的に進んだところであるから、そこで私どもは昨年から通貨価値の維持という点に日本のすべての施策を集中しなければならぬ、こういうことを申しておるのでありまして、私どもは今日為替相場について、かりにこれをかえるといつたような議論に対しては百害あつて一利なきことは申し上げた通りで、われわれとしてはあくまで常道によつて輸出入の改善をはかることによりまして、正常貿易で日本の通貨価値を高めて参る、こういうことに持つて行かなければならぬと考えております。
  125. 本間俊一

    ○本間委員 次に、議論をいたしまする前提としてお尋ねをいたします。日銀法、信用調整法あるいは金利調整法、いわゆる金融三法といいますか、これを改正するお考えがありますか。これを改正しないで行こうというお考えでありますか、その点についてお尋ねいたします。
  126. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 これは本間議員も御承知のようになかなか影響するところが大きいし、議論もなお相当あるところでありまして、私どもも軽々に処断すべきものではない。従いまして目下大蔵省におきましてもこれを慎重に考慮しておりまするし、また各方面の意見も今後必要があれば徴そうと考えております。ただいまのところ、これをすぐに改訂する考えは持つておりません。
  127. 本間俊一

    ○本間委員 そうしますと今度の国会には出ませんか、その点はいかがですか。
  128. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 いわゆるオーバー・ローンの解消とか、外国為替問題——為替銀行ですが、それらに関する問題は今度の国会には出したいと考えておりまするけれども、この三法に関する問題はまだ今度の国会に出すところまで参らない、かように考えております。
  129. 本間俊一

    ○本間委員 公定金利はどうします。引上げられるのですか、引下げられるのですか、その点はどうですか。
  130. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 公定金利は今後の実情に即して参るのでありますが、これも御承知のごとくにいわゆるオーバー・ローンの解消等とにらみ合つての問題になつて来ると思うので、もう少し情勢を見きわめた上でやりたいと考えております。
  131. 本間俊一

    ○本間委員 オーバー・ローンの話が出ましたが、オーバー・ローンを解消したいというお気持はわかるのです。そうすればどういう構想でオーバー・ローンを解消なさるか、その点をお尋ねいたします。
  132. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 今日の場合できるだけオーバー・ローンは解消したい、これは本間議員も感を同じゆうされておる通りであります。しかしながらこのオーバー・ローンの解消は、本来を言えば各金融機関がみずからできるだけ貯蓄を集めて、資金を集めて、そしてこれを解消するのが本筋であります。しかし本筋まで待つていいかどうか、つまりよく世間の一部に伝えられておる外貨を売却して、それによつて取得した金等についての調整を加えて、あるいは開発銀行、あるいは輸出入銀行、長期信用銀行、日本興業銀行等、そういつたところへこれのある部分を移して行くがいいか、これらのことについて今考えております。考えておりますが、そういつたことで形の上でも本筋に直す方がよいのじやないか、こういうふうにも考えておりまするので、実質的にはただいま申し上げた通り本筋はあくまで貯蓄の奨励から来て、自分の預金の増加によつてこれを解消すべきものと思いますけれども、まあ形だけでも整えて行くのも一つの解決の案に一歩を進めるゆえんではないかと考えておりますから、これは近く成案を得次第本国会に提出いたしたいと考えております。
  133. 本間俊一

    ○本間委員 そうするとオーバー・ローンの問題は、大蔵大臣としてはまだ構想がまとまつていないということですね。そういうふうに考えてよろしゆうございますか。
  134. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 今日としては一応の構想を持つておりますが、いろいろな影響がありまするので、最後にお出しするのはしばらく時期をかしていただきたい、こういうことです。
  135. 本間俊一

    ○本間委員 今国会には出されるということでありますからそのときまで議論を譲ることにいたしますが、しからば政府財政を緊縮いたしまして、そうして金融も相当締めて行こう、こういうのでありますから、大蔵大臣としては当然債務償還の計画をすべきであつたと私は思うのでありますが、債務償還を立てられなかつたのは一体どういう理由であるか、その点を明らかにしていただきたいと思います。
  136. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 債務償還につきましては、二十九年度予算案でも、二十七年度の剰余金四百二億円の半額二百一億円を債務償還に充てております。
  137. 本間俊一

    ○本間委員 二十九年度予算で債務償還の項目が立つておりますか。二十九年度予算でどうですか。
  138. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 ただいま御答弁申し上げた通り、二百一億円国債を償還することに相なつております。
  139. 本間俊一

    ○本間委員 この政府歳入の見積りでありますが、今度の税制改正を見ますと減税は三百二十一億二千六百万円、間接税増徴いたしまする分が二百七十六億二千六百万円、そういたしますると減税と増税の差はわずかに四十五億円であります。税率はかわらない。年末には御承知のようにベース・アップがあつた。国民所得を見ますと五兆九千八百億円でありますから、二十八年度よりも三百億円多いことになつておる。そうしますと、予算書を見ますと租税及び印紙収入が二十八年度より総額において百五十一億円しかふえていない。そこで直接税と間接税の減らす分とふやす分の差額を足しましても百九十六億円でございます。私はこの見積りは過小評価じやないか、もつと歳入はあるのではないかというふうに思うのですが、どうですか。
  140. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 二十九年度はこういうふうに一大転換をする緊縮予算を実行し、金融面におきましても諸般の面においてもこれを徹底して参る所存でございまするから、従つて歳入の面においても、すべてこれを手がたく見積るということは財政当局としてなすべきことと考えております。
  141. 本間俊一

    ○本間委員 手がたく見積るのはいいのですが、過小に見積りますといろいろあれがあるわけでございます。しからはこれ以上入らない、手がたく見積つたというのでありますから、予算書に書いた収入が確実に入るということは保証なさるのでありましようが、自然増収がないと言い切れますか、この点はどうですか。
  142. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 まだ来年度にも入らぬうちから、来年度の四月以降自然増収ありやいなやということはどうも少し予想いたしかねまするが、しかしながら私どもの考え方としては、税というものは税法に基いて徴税いたしまするから、必ずしも予算書と同額であるとは考えておりません。
  143. 本間俊一

    ○本間委員 そうすると大蔵大臣は自然増収は相当あるものとお考えですか、その点はどうですか。
  144. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 相当という言葉はよくわかりませんが、同額とは信じません。しかし相当あるとも考えません。
  145. 本間俊一

    ○本間委員 先行きのことでありますから議論してもしかたありませんが、もし自然増収が相当ありました場合は債務償還にでも充てられますか、あるいは減税にでも充てられますか、その点は、どうですか。
  146. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 さような問題をひとつ議する時代が来ることを期待しております。
  147. 本間俊一

    ○本間委員 まあ見通しの問題でありますから、これはいくら行きましても平行線でありますのでこの程度で打切りますが、予算書を見ますると、国家財政がそれでなくとも窮迫を告げておりますのに、競輪の国庫納付金はとらぬことになつておる、これはどういうわけですか。
  148. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 こういう緊縮予算をやるときに、国庫がああいうような射倖心から来るような収入な見込むというようなことは穏当を欠いておる。従つて私は、これを見込まないことにしたのが一つであります。もう一つは、地方に財源を与えてもいい、こういう考え方も幾分働いたのであります。
  149. 本間俊一

    ○本間委員 それはちよつと私大蔵大臣の答弁、納得いたしかねます。御承知のように競馬は国営でやつておる。そうしてちやんと馬券の国庫納付金はとつておるのです。競馬の場合を考えてみますと、畜産の奨励、あるいは馬産の奨励ということがある。ところが競輪の方も自転車の振興に一部使つておる。馬は輸出できないけれども、自転車は輸出がきくのです。馬券を買うのも車券を買うのも、射倖心という点においては、これは同じなんです。しかるに、国家財政を詰めて行こうというのに、当然入るものをとらぬ、国庫に入れない。これはどうも大蔵大臣の今度の財政方針と逆行するように思うのですが、どうですか。
  150. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 競馬の方は世界的にどこでもやつておるものだけれども、競輪というものは正直なところあまりほめた話でもないし、私どもは今度の予算を組むにあたりましても、特に射倖心強き競輪、こういうようなものについてはやりたくない、こういう考え方と、もう一つは、私どもが宝くじその他を今度やめまして、もうそういうものの税収を見込まぬ、こういうことにしたのであります。またさつきも申しましたように、地方の方で適当な財源にもなりましようから、地方に財源を与える、こういうことにもかなうものだと思います。
  151. 本間俊一

    ○本間委員 それは大蔵大臣の考えと実際は違うのです。お尋ねいたしますが、そうすると大蔵大臣は競輪のような、あるいは宝くじのようなものはできるだけなくなる方がいいというようにお考えなのですかどうですか。
  152. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 私は率直に言えば、あまり望ましくはないと思つております。
  153. 本間俊一

    ○本間委員 望ましくないということならば、国庫納付金をおとりになる方がよろしいのです。そうでしよう。競輪の方から言つても、国庫納付金がなくなればそれだけ車券の払いもどし金はふやし得るわけです、国庫納付金がなくなるのですから。そうでしよう、そうすれば、結果は射倖心をさらに高めるということになりはせぬか、どうでしよう。
  154. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 どうも本間さんのお話だが、私はまつたく反対に考えます。
  155. 本間俊一

    ○本間委員 そういうことになりますと、それは大蔵大臣違うですよ。よろしゆうございますか、これは地方財政の方へ返してやつて、その分を余計にやるということになれば、さなきだに富裕県と貧乏県の差がひどく、それが非常に問題になつておる、大蔵省の方も何とか調整をしたいということでしよう、そういう法案も出しておる。ところが概して言うて、競輪をやつているところは富裕県の方が多いのです。貧乏県にはない。それだからその趣旨から言つても、これは私は国庫納付金を従来通りとられる方がいいと思う。そうでないと、もうけの方が多くなりましよう。そうすれば今後地方自治団体の方で競輪をやつて地方財政の収入をふやしたいという県が多くなるにきまつております。そうしますと、できるだけこういうものは少くしたいという、少くとも大蔵大臣の考えと、これは逆行して来ますよ。その点どうです。
  156. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 どうも私と少し考えが違います。私はとる気がいたしません。
  157. 本間俊一

    ○本間委員 これは大臣、私はここで争うつもりはありませんが、まつたくそうなんです。大蔵大臣は競輪の実情をよく御存じないから、こういう金はとらぬ方がいい……。それじや今までとつたのはどうなんです。これは競馬だつて競輪だつて同じことなんです。国庫納付金がなくなれば、それだけ車券の払いもどし金をふやすか、あるいは施行者のふところへ入るのです。どつちにしたところで、これは大蔵大臣の考えと逆の結果になるのです。それから富裕県と貧乏県の差も、これはかえつてはなはだしくなりますから、これはなかなかいろいろな問題を残すことになるのです。実際私は心配している。どうです大蔵大臣、この問題はここでがんばらずに、ゆつくりひとつ再考されて——法律改正さえしなければ、とればいいのですから、とつた金が国庫へ入れば、こういうデフレ政策をやろうというときだから、債務償還にでも何にでもお使いになればよろしい。私はこれを言うと、何かほかの方へすぐ使えといわれるかと思つて、用心されていますが、そういう趣旨じやないのです。それですから、どうぞひとつ大いに考え直していただきたい。法律改正をするということになると、大蔵大臣の考えていないいろいろな問題が起るのです。
  158. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 考えますことはひとつよく考えます。ただ私どもが当初やつた心持だけを申し上げておきますと、さつきも申した通り、まあそんな競輪の頭をはねるようなことはよそう、国民が緊張して行かなければならぬときに、そんなものの頭をはねることはよそうといつたことが私の考えであつたのでありますが、しかし今るるお話の関係もありますので、さらに考えてみます。
  159. 本間俊一

    ○本間委員 そういうことになりますと、競馬の馬券の頭を政府がはねるのと同じ議論になるのです。競馬だつて明らかに射倖心です。私も馬券を買つたこともありますけれども、これは同じですよ。ただ競馬の方は歴史が古い、競輪は歴史が浅いというだけの違いで、射倖心であることにおいては一向違いもありませんが、その点どうです。競馬も国庫納付金をやめられますか。どうですか。
  160. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 今おつしやつたように、競馬は歴史も古いし、またどこの国でもやつている。世界通有のことであつて、それをひとり日本のみが異を立てるほどのことでもない。また競輪ほど弊害もないように私は承知しております。
  161. 本間俊一

    ○本間委員 これは要するに政府が法律を改正さえしなければ国庫納付金が入るのです。この問題はいろいろ複雑な事情があるのです。従いましてどうぞひとつ再考していただきたいということを強く要望申し上げておきます。  それから税制改正がちよつと出ました関係上一つお尋ねをしておきますが、今度の税制改正で繊維消費税を一〇%とる、その総収入は八十五億だ、こう言つておりますが、話に聞きますと、税務署はこれで人がふえるので喜んでおるというような話もある。従いまして一体徴税費あるいは何かそういうものが、八十五億をとるためにどれくらいかかるとお考えになつているか、その点をひとつ伺いたい。
  162. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 大体私どもの見込みでは、ただいまのところ徴税費が二億八百万円くらい、人員において六百八十人くらいを要するものと考えるのであります。なお念のために申し上げますが、その二億八百万円のおもなものは人件費であります。一億八千万円くらいが人件費と思つております。
  163. 小峯柳多

    ○小峯委員長代理 本間君、結論を少し簡潔に……。
  164. 本間俊一

    ○本間委員 この繊維消費税の問題は、これはなかなか党でもいろいろ議論がありましてむずかしいことになろうかと思います。大蔵大臣としてもこれはぜひひとつ十分再検討してもらいたい。  そこで補正予算の問題についてちよつとお尋ねいたしますが、本会議では、補正予算は避くべきものと心得ております、とこう言うておられる。大蔵大臣は出しませんとは言わないが、補正予算の扱いはどうされますか。
  165. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 二十九年度予算編成方針にかんがみまして、補正予算は厳にこれを避くべきであると考えております。
  166. 本間俊一

    ○本間委員 なかなか大蔵大臣は避くべきものと心得ておると言つて、出さぬとは言わない。そこで今度の予算を施行して参りまする場合に、たとえばガソリン税の問題とかその他いろいろな法律改正が必要でございます。この法律改正ができなかつた場合には、大蔵大臣としてはこの予算を執行する上にどういう処置をおとりになりますか。
  167. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 これは近く補助金等の整理に関する法律案、こういう法案を提出いたしまして御審議を願うことにいたしております。この予算の本質にかんがみまして、政府としては、この法律案の成立をぜひとも期待いたしておる次第でございます。
  168. 本間俊一

    ○本間委員 一応政府としては通ることを期待しておると答弁するよりほかないかもしれませんが、しかし今の形勢から見ますると、これは四分六分です。どつちを重く見るかは、これはいろいろあります。そこでこれは具体的な問題です。この予算を執行する上において、この法律がどうなるかということはもはや具体的な問題で、仮定の問題でも何でもありません。そこで大蔵大臣としては、いやしくもこれだけの予算をやろうというのでありますから、もしこれが政府の思うように行かな、かつた場合にはこういう方法を講ずる、少くともそれくらいのお考えはなくちやならぬはずだと思いますが、もう一度この点をお答え願いたい。
  169. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 これは私どもが閣議でも、また党その他へも十分御相談してやつておる次第でありまして、私は必ずこれが通過することを期待いたしております。
  170. 本間俊一

    ○本間委員 これはただいまの形勢は、私が申し上げた通りであります。そこでもしもこれが行かなかつた場合には、大蔵省としてはどういう方法があるか、あるいはどういう考えがあるかということになりますと、またそれによつて国会の方の考えも、またいろいろかわると思う。それですからお尋ねをいたしておるのでございますが、何か大蔵大臣としては当然——これがもしも思うように行かなかつた場合には、何かこれはお考えがあるはずだと私は思う。そうでないというと、補正予算は単に避くべきものと心得ておりますと言うても、こういう大きな問題が前途にありますから、この問題と関連をして、少くともいつごろまでは補年予算は出さないというような腹づもりでもけつこうです。それで私は何も大臣の責任を問うというような考えはありませんから、その点ひとつお答え願いたい。
  171. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 私は本予算案は必ず皆さんが通過さしてくだれるものと期待いたしております。従つてほかのことは考えておりません。なお補正予算につきましての問題は、避ぐべき性質のものだと申し上げたのではないのでありまして、厳にこれを避くべきである、かように申しておるのであります。
  172. 小峯柳多

    ○小峯委員長代理 本間俊一君、結論を急いでください。
  173. 本間俊一

    ○本間委員 そうすると、少くとも大蔵大臣は補正予算は出さない、そういうふうなお考えで進まれると了解してよろしいですか。
  174. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 さように御了解願つてけつこうであります。
  175. 本間俊一

    ○本間委員 この十二月に日本の外貨が九億七千万ドルということなんですが、その後減つておるといわれますが、ただいまの外貨ポジシヨンはどうなつておりますか。
  176. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 まだ十二月三十一日現在においては、九億七千六百九十九万五千ドルであります。その後漸次減りつつありますが、最近の数字は手元に持つておりません。但しこの九億七千六百九十九万五千ドルの内訳について申しますと、米ドルが七億八千八百六十六万ドル、英ポンドが四千二百五十二万三千ポンド、ドルに換算して一億一千九百六万四千ドル、それからオープン・アカウントの分が六千九百二十七万一千ドルであります。今後輸入の、特に外米、外麦等の輸入に伴いまして漸次これが減りつつあります。
  177. 本間俊一

    ○本間委員 一体政府は、物価は五%ないし一〇%下るであろう、あるいは下げたい、こういつておる。ところが一万田日銀総裁は二割下げたい、こういうことを言つておるのですが、これはひとつどの程度を目標にして——通貨の収縮は、さつき尾崎さんの質問に対して大蔵大臣は、ことしの十二月の通貨と来年の十二月の通貨とほぼ同じならいい、これはちよつと私お考え違いじやないかと思うのですけれども、十二月を基準にいたしますことは、これは当らない。御承知のように歳末は、年末金融その他で多少いろいろな政治的な問題を含みますから、いやしくも物価を下げる、こういう政策をとられるというのでありますが、その大体の腹づもり、目標をどこに置いておるのですか。
  178. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 先ほども尾崎君にお答えいたしました通り、私どもとしては五分ないし一割の物価引下げを目標といたしておるのであります。しかしながら通貨というものは、単に物価のみで動くものでないことは本間君が一番よく御承知であります。そのときの経済活動いかん、経済情勢いかんということでありますから、物価が五分ないし一割下つたから、通貨が五分ないし一割下るといつたような結論が出て来ないことは申し上げるまでもございません。しからばどうか、従来通貨は年々増加しておる趨勢をここではつきりと遮断して、まず昭和二十八年下期におけると同じような通貨情勢に持つて参るというようなふうにしたい、こう申しておるのであります。
  179. 本間俊一

    ○本間委員 政府は今後国際的に割高の物価を解決したい、物価を引上げたい、今度こういう政策を一貫してとられる。それならば、当面問題になつております電気料金の問題はどうお扱いになりますか。これは通産大臣でも経審長官でもよろしゆうございます。
  180. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 電気料金の問題は、御承知のように去る二十日と記憶いたしますが、関係九電力会社から電力料金の値上げの申請がございました。そこでこれを受けまして、現在慎重に考究中でございます。これは申すまでもございませんが、値上げを申請して参りました理由を検討することも、もちろん一方において必要でありますが、産業界あるいは国民生活全般に対する影響が相当大きな問題でございますから、法規上聴問会も開くことになつておりますし、われわれといたしましては、きわめて慎重な態度で結論を出したいと思つております。
  181. 本間俊一

    ○本間委員 私は、政府がこれだけの予算を組んでそうして物価を引下げる、こういう方針を一貫してとられるのでありますから、政府関係することで、ものを上げちやいかぬ、これはどうしたつてものを引下げると言うのだから、その方策をとつておいて、そうしていろいろなものを政府で上げたらみんなくずれてしまう。この方針はどうしてもとらなくちやならぬ。これは今の経済情勢から申しますれば至上命令だ、そこでいろいろな事情はありましようが、私は電気料金は、少くとも今日は、このきびしい予算を施行する間は上げない、少くとも向う一年ぐらいは上げないというくらいの腰がないと、すぐこれはくずれる心配がある、その点を私は心配をするのですが、どうです。
  182. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 まことにごもつともの御意見と拝聴いたしますが、私も個人的には少くともただいまの御趣旨には賛成なのでありますが、ただいま申上げましたようないろいろの関係から、慎重にただいま考究いたしております。
  183. 本間俊一

    ○本間委員 どうも何と申しますか、政府の腰がぴしりときまつておらないと——これだけの大事な政策を遂行されるのでありますから、この予算審議にあたつては、少くとも電気料金は当分上げないというくらいの答弁は当然せなければならぬと思う。そうでないと終始一貫しませんよ。ですから、その点どうです。まだ就任早々でありますから、何ですけれども、当分はひとつ上げないというくらいのことは言明できなければ、これだけの予算を組んで、これだけのデフレ政策をやろうというのでありますから、政府にそれくらいの決心と用意がなくちやこれはとても行けるものじやないと思うのですが、その点どうですか。
  184. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 ただいまも申しましたごとく、御趣旨はとくとわかります。そういう線で処理いたしたいと思います。
  185. 本間俊一

    ○本間委員 どうも少し時間がかかつて恐縮ですが、最後に防衛関係の問題だけ一言触れて、あとは留保いたしたいと思います。  二十九年度予算を見ますと、各方面非常な斧鉞を加えられておりますが、広義防衛関係費は結局百四十億円ふえております。そこでこれは、政府のいわゆる防衛力漸増方針というものが具体的になつたのでしようが、ほかが非常に緊縮する、ほかが非常に苦しい経済政策に協力をするというときに、防衛費だけが非常に増額なつておるものでありまするから、どうも国民の感じの方から申しますると、これは私どもはなかなか心配にたえないのでございますが、そこで二十八年度は、予算のほかに債務負担行為、予算外の契約をいたしておりますが、その金額が一体どのくらいになるか、二十九年度予算外契約の計画があるかどうか、これは大蔵大臣もう少し削減する余地はないのですか。この防衛関係の費用はどうですか、その点をひとつお尋ねをいたしておきたい。
  186. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 防衛関係につきましては、二十九年度増加すべき人員等につきましても、本日この席上で御説明申し上げました。また船につきましても、あるいは練習用航空隊——仮称でありますが、そのものについても相当増員を要するゆえんを申し述べたのでありまして、私どもは今日のところ、この防衛支出金をこれ以上減ずる余地はないと存じております。なるほどちよつと多いようにも見えますが、しかしこれは、いわゆる自分の国は自分の国で守るという国の方針に一歩を進めるものであり、しかしこの割合が、たとえば一兆円予算といわれるその中の千三百七十三億でありますから、一割三分七厘にしかついていない。また国民所得を五兆九千八百億と仮定すれば、わずかに二分四厘にしかついていない。世界どこの国を見ても、こういう比率の少いところはおそらくないということは、本間君がよく御承知の通りであろうと思います。従いまして私どもは、この程度は独立国としての将来のためにぜひ盛るべきであると考えているのであります。  なお予算負担がどうなるかということは、これは施設とか、そういうものをつくる分が多いのでありまして、ただいまのところまだ詳細なことはちよつとわかりかねております。従つて二十八年度と同様になるかどうか、この点についてはまだはつきりいたしておりませんが、はつきりいたしますれば、金額とともに御提案申し上げて御審議を願うことにいたします。
  187. 本間俊一

    ○本間委員 この二十九年度予算関係して、保安庁経費の明細、それから計画、これをひとつ保安庁長官、あとでよろしゆうございますから出していただきたいと思うのでございますが、国民所得、それからほかの支出の割合から申しますと、なるほどパーセンテージも低いし、実際の金額も非常に低い。これは別にいたしまして、ほかが非常に緊縮しなければならぬというときに、これだけ総額でふえているものでありますから、どうも感じ方から申しますと、もう少し削減の余地があるのではないかと思うのです。  それから予算国庫契約ですが、これは今度の予算総則等を見ますと、八十億か何かになつておりますが、実際はこれがすぐ百億になつたり、百五十億になつたりする。ですから、予算国庫契約も、私どもも十分検討いたしますが、もう一ぺんよく検討していただきたいと思います。  委員長からお話がありまして、もう時間だということでありますから、残余の質問は一応留保いたしまして、本日の私の質問はこれで終ることにいたします。
  188. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 さつき二十八年度予算外のことをちよつと漏らしましたが、あれはちようど二口で百二十何億かになると思います。これは全部二十九年度予算に入つております。それから二十九年度予算外は、今お話のありました八十何億か別途計上してございます。
  189. 小峯柳多

    ○小峯委員長代理 本日はこの程度にしまして、次会は明二日午前十時より開会し、質疑を継続いたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後五時二十七分散会