運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1954-11-05 第19回国会 衆議院 郵政委員会郵政従業員の賃金改訂問題に関する小委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    本小委員昭和二十九年十月二十五日(月曜日) 委員長指名で次の通り選任された。       飯塚 定輔君    坂田 英一君       船越  弘君    田中織之進君       山花 秀雄君    大高  康君       土井 直作君 同日  田中織之進君が委員長指名で小委員長に選任  された。     ―――――――――――――    会 議 昭和二十九年十一月五日(金曜日)     午後一時五十五分開議  出席小委員    小委員長 田中織之進君       飯塚 定輔君    坂田 英一君       船越  弘君    佐藤觀次郎君       土井 直作君  小委員外出席者         郵政事務官         (大臣官房人事         部長)     宮本 武夫君         郵政事務官         (経理局長)  八藤 東禧君         参  考  人         (公共企業体等         中央調停委員会         第二小委員会委         員長)     中村常次郎君         専  門  員 稲田  穣君         専  門  員 山戸 利生君     ――――――――――――― 十一月五日  小委員山花秀雄君同日委員辞任につき、その補  欠として佐藤觀次郎君が委員長指名で小委員  に選任された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  郵政従業員の賃金改訂問題に関する件     ―――――――――――――
  2. 田中織之進

    田中委員長 それではただいまより郵政従業員の賃金改訂問題に関する調査小委員会を開会いたします。  御承知のように全逓従業員組合公共企業体等関係労働法に基きまして、現在公共企業体等中央調停委員会給与改訂に関する調停申請を行つておるわけでありますが、本日はこの全逓従組より申請いたしました調停を処理いたしております第二小委員会委員長中村常次郎君が参考人として本委員会出席をされる予定なつておりますので、中村委員長より本調停案に関する調停小委員会取扱い経過報告を受けて、小委員長に対する質疑を行いたいと思うのであります。間もなくお見えの予定でありますが、その前に郵政省側から出席されておる人事部長経理局長等にこの調停案をめぐる、特に財源的な問題について若干小委員長の方から質問をいたしたいと思います。  今回組合要求しております通り給与改訂を行うといたしますと、省側の見解に示されておりますように、公労法適用職員のみについても年間約百四十六億円の給与原資の不足を来すことになり、本年度給与総額の中でとうていまかなうことはできない、こういうことを新賃金要求に関する団交において省側が主張されておるのであります。確かにベースアップを行うということになると、今年度予算における給与総額の中からベースアップ分支出することが不可能なことは当然考えられることでありますが、調停案がどういう形で出るかということは、これから中村委員長に対する質疑行つた結果でないとわかりませんし、あるいは調停案が出て参らなければその点はわからないと思うのであります。その意味からいたしまして確かに予算の面では給与総額が縛られておるのでありますが、昭和二十九年中における、すでに七箇月を経過しておるのでありますが、少くとも上半期六箇月間における郵政事業関係における収入状況が、二十九年度予算を決定するときに予定いたしました予算額との間にどういう開きを示しておるかということが、本年度中においてたといいかなる形にしろ調停案が出て、給与ベース改訂を行うということになれば、当然補正予算その他の処置を講ずることもあり得るわけなので、そういう場合に備えて伺つておきたいと思うのであります。先般昭和三十年度郵政事業特別会計歳入歳出概算伺つたのでありますが、それに基いてでけつこうでありますが、昭和二十九年度予算額と、まだ集計は半年分しかできていないだろうと思うのでありますが、昭和二十九年の実際の業務運営上収入関係が、予算額との間にどういう関連をもつて数字的に現われておるかという点について、経理局長から御説明を伺いたいと思います。
  3. 八藤東禧

    ○八藤説明員 ただいま委員長から、昭和二十九年度開始以来現在までに至る間にとりまとまつた数字において、郵政特別会計収入状況予算に対していかなる関係を持つておるか、報告せよという御命令であります。ただいま私の手元に集まつております数字に起きましては九月、大臣報告済み数字におきましては八月までの数字が、概算でありますが、出ておる数字であります。なおこれはいわゆる速報と称して取扱われておるものでありますが、数字その他におきましては、何七多数の局がありますので、非常にあと誤差等の修正がありますので、ただいまから申し上げます数字は、決して確定的な、決算的な数字でないということは、あらかじめ御了承願いたいと思います。まず最初に八月末、これは非公式なので、はなはだあれでございますが、八月末の数字におきまして御報告させていただきます。八月末におきまして予算予定しておりました、言いかえれば、これに対応する支出予算が組まれておるところの収入額におきまして、予定におきましては設備負担金を除きますれば、三百五十六億が収入として予定せられておつた次第でございます。これに対しまして八月末におきまして収入済みになりましたものが三百六十一億であります。従いまして約四億四千万円が予定いたされました収入より上まわつておる。割合で申しまするならば、一・二%予定よりは累計におきまして上まわつたような数字でございます。  これをもう少しわけて申し上げれば、御承知のごとく郵政特別会計収入は、郵便業務収入為替貯金業務収入、他会計よりの受入れ、それから雑収入、大体これらの四項目にわけてあげられておるのであります。このほかに設備負担金というものがございますが、これは不確定でございますので、省略させていただきます。これで申しますと、郵便業務収入は、予算上は八月末におきまして百三十四億収入があるものと見込んでおりましたが、累計におきまして百四十一億円の収入でございまして、六億九千万円、比率にいたしまして予定よりは五・二%だけ増収になる、かような数字でございます。為替貯金業務収入は、八月末におきまして七億八千二百万円程度累計収入があるべきところを七億六百万円、従いまして全体として七千六百万円程度予定より下まわつておる。パーセンテージにすれば九・七%予定より減収である、かような数字でございます。他会計よりの受入れ、この中には御存じ通り簡易保険特別会計郵便貯金特別会計、あるいは電信電話公社からの委託業務に対する運営金、その他他会計よりの受入金でございますが、これが八月末までに二百六億三千八百万円収入済みになるべきものと予定しておりましたが、実績におきまして二百五億一千万円の収入、従いまして予定よりは一億二千六百万円ほど、パーセンテージにいたしまして、〇・五%予定より収入が下まわつております。最後の雑収入におきまして、八月末において私どもは八億円収入があるものと見積つておりましたが、実績においては七億四千九百万円、約七億五千万円でございますが、予定よりも五千万円、パーセンテージにいたしまして六・三%の減収と相なつております。  以上四項目を集めましたのが、劈頭申し上げました八月末におきまして年度開始以来三百五十六億円余り収入予定しておりましたものに対しまして、三百六十一億円余り収入、四億四千万円余り予定超過パーセンテージにして一・二%の増収というふうな概数でございます。これが四月以降の情勢を見ておりますると、大体におきまして四月あたりは一%前後でございましたか、予定よりは相当増収実績を上げたのでございますが、累月収入状況が悪化して参りまして、ただいま申し上げました八月、九月はさらに悪化いたしまして予定収入に対する増収というものがきわめて落ちております。ちようど今の数字で申し上げまして、八月末において総計において四億四千三百万円と申し上げました。九月末と申しますか、私の方でまだ正式に報告しておりませんが、九月末の数字で行きますと、四億四千二百万円というように、四、五、六、七、八と積つて来た一千万円前後のものが逆に減つてしまつたという収入状況になつたのでありまして、これを過去の二十六、二十七、二十八年度のそれぞれの月における収入カーブ比較いたしまして、二十九年度はきわめて憂慮すべき最低のカーブを示しつつある、かような収入状況でございます。今後第三・四半期におきまして十一月末になると――十二月、これはいわば郵政省としては最も大きな収入が上る月でございます。また過去数年の実績によりますと、一月、二月、三月というものはおおむね予定見積りよりは落ちるという数字を示しております。少くとも第一、第二、第三・四半期収入歩合は落ちておるというふうな数字を示しております。はたして十二月においていかなる収入増加見積れるか、きわめて重大な関心を持つてども今見ておるのであります。  以上概略でございますが、二十九年度開始以来の収入状況及びそれの見積りとの関係につきまして御報告を申し上げます。
  4. 田中織之進

    田中委員長 ただいま実際の収入予算に盛られた予定額との関係の御説明があつたのでありますが、われわれ従来委員会で伺いましたところ、郵便貯金保険ともに二十九年度においてはそれぞれやはり業務量は相当増加いたして参つておるように伺つておるのでありますが、貯金については業務量が、また貯金の額が増加いたしたからといつて収入関係が他の保険その他のように弾力性を持つておらない特殊性がございますけれども事業量が増大しておるという関係から見れば、今御説明のあつたように、過去二十六年二十七年当時に比べて、予算を上まわる事業収入カーブが出て来ないという点はちよつと理解できないのでありますが、それは何か別の関係があるのでしようか。
  5. 八藤東禧

    ○八藤説明員 ごもつともなお尋ねでございまして、私があるいは説明が不十分であつたかもしれませんが、劈頭申し上げました通りお尋ねの趣旨は、二十九年度見積り予算に対してどれほどの実際の関係を持つたかという点であつたと思いましたので、その点に重点を置いて御説明申し上げたのでありますが、もちろん昭和二十九年度予算は、それぞれの業務におきまして対二十八年度よりは増加しております。たとえばこれを昨年度の実際の収入と本年度の実際の収入との比較にとりますと、それぞれの項目においてほぼみんな増収なつております。たとえて申しますれば、郵便だすで二十八年度におきまして八月末までには百三十億円の収入があつたのであります。それに対して今申し上げましたように、本年度は百四十一億円の収入、言いかえれば五・二%、八月末の累計において前年度実績よりは上まわつておる次第であります。ただこれが私ども予算として組みました場合に、一般に、たとえば郵便では四%増と押えております。そうするとその増収分だけは、当然なければならない、それに見合うだけの支出をすでに組んでございますので、たとえばベース・アツプがあつたり、人員がふえたりいろいろございまして、当然そちらに出てしまう金でありまして、結局今日のこちらの委員会の御目標になつておるような規定的に当然予算支出すべきもの、それに対応する規定的に当然収入あるべきもの、これは相殺して差引いてしまう。あとはプラスであるかマイナスであるかの点に問題があると思います。最初申し上げましたのは、今申し上げましたように、予算収入より実際の収入がどれだけ上まわつたのかという点を申し上げたのでありまして、予算通り収入がありましたならば、一方予算通り支出すべき科目がございます。それによつて全部ゼロにかわる、こういうふうなことなのでありまして、お尋ねのごとく実績においては、今郵便収入の例で申し上げましたように、各業務につきまして、二十八年度実績に比べて、二十九年度はそれぞれ上まわつておるのであります。ただ二十九年度において支出とうらはらになつておる予定収入と比べれば、ただいま申し上げましたような収入状態になる、こういうふうなことを申し上げたのでありまして、過去数年間におけることを申し上げましたのは、それぞれ予算額に対応してその年の増収ぶりはどうであつたかという点を申し上げたのであります。
  6. 田中織之進

    田中委員長 そういたしますと、先般説明資料としていただきましたものに、三十年度予算概計に盛られている三十年度予算額と申しますか、概算額と前年度予算額との比較数字が出ておるわけであります。収入関係で百六十四億三千万円の増加を見込む、こういう形で出て来ております。これはパーセンテージにしますと、大体三十年度は二十八年度比較した二十九年度よりも多く見積つておるのですか、それとも二十九年度実績に基いて内輪に見積つた数字でありますか。
  7. 八藤東禧

    ○八藤説明員 三十年度概算要求の際に、三十年度収入見積り方いかんという御質問と思います。申し上げるまでもなく三十年度収入見積りを立てますために、まず私ども作業にとりかかりますときにおいては、まだ年度初めから数箇月しかたつていない時分でございます。従いまして私たちといたしましては大体それまでに経過した月、たとえば四月、五月、六月、七月というふうな、その四箇月の実際の数字は全部押えております。その実際の数字までを一応基礎といたしまして、あとの八月から明年三月までに二十九年度はどれだけ収入があるだろうかという見積りをいたしました。そういう収入見込みカーブをつけまして、大体三十年度概算要求基礎とすべき二十九年度収入見込み額というものが出ました。それに対応して増収なりあるいは前年並なりという数字を編み出すわけであります。先日御報告申し上げました三十年度概算要求における三十年度収入見込み額は、本年の四月から七月までの実績、それから二十八年度の八月から三月までの伸び万を参考といたしました本年度の八月以降来年三月までの収入見込みを立てた線、その線から二%増加を見込んで立てた数字が、先日申し上げました郵便収入見込み額、それが大体二十一億円でございましたか、二十九年度の私ども見込み予算上の数字よりもふえるだろう、こういう数字であります。
  8. 田中織之進

    田中委員長 そういたしますと三十年度におけるたとえば郵便業務収入郵政その他の郵政国有業務収入で二十九年度よりも二十一億、それから他会計からの受入れ収入の二十九年度よりの増加見込み額九十億五千万円、こういう関係のものは、それを総計しただけでも百十一億の増加を見るわけでありますが、この間の説明では三十年度給与ベースは一応現行をかえない、すえ置くという形で見ているといたしますと、こういう増加分支出としては何に予定しておりますか。
  9. 八藤東禧

    ○八藤説明員 ただいまおつしやいました郵便において二十一億、その他の雑収入において二十四億、それから他会計からの繰入れを、前年度比較して約九十億の増加繰入れを見るというような見積りを立てましたが、このうち人件費がこれこれかかるということは先般申し上げた通りでございます。その見込みが、おつしやる通り給与ベースは本年度とかわりなし、但し人員八千名余り増員を見込んでおります。この八千名あまりの増員に対応する給与額がこれこれということを見込んでおります。それからまた、御存じのごとくそのほかに約五%の昇給原資、これは職員に対して年間において五%程度昇給をするという原資を見込んでおるということで、大体人件費増加額というものが出て来た、こういうことでございます。
  10. 田中織之進

    田中委員長 なお郵政当局にお伺いしたい点もありますが、本日御出席をお願いいたしておきました公共企業体等中央調停委員会全逓全電通等の所管の第二小委員会委員長中村常次郎君が出席をされましたので、ちようど調停小委員会の開会中の時間を差繰つて、一時間の手短で御出席を願いましたので、まず中村委員長より、順序として九月七日に委員会申請書が提出されました郵政職員賃金要求に関する調停申請が、調停委員会の小委員会において現在どういうように処理されておりますか、その点の経過を簡単に御説明願つて委員会として小委員長に対して各委員より御意見を伺いたいと思いますので、その点の御報告をまずお願いいたしたいと思います。中村常次郎君。
  11. 中村常次郎

    中村参考人 それでは公企業体調停委員会第二小委員会に属します委員の一人といたしまして、ただいま委員長からお話のありました調停申請に関する案件に関して、審議状況を一通り申し上げてみたいと思います。  まず九月七日に申請を受理いたしまして、資料等に関しまして事務局員をしていろいろ調査をさせておきました。ある程度それらの資料集計を見ました九月二十日に、当事者双方から事情聴取を行いましたのを皮切りにいたしまして、この問題を中心にいたしまして今日までちようど前後十二回の小委員会を開催しております。  一応列挙的ですがその時日を申し上げますと、九月二十日を第一回といたしまして、九月二十四日に申請事項につきまして委員会内部で、主として小委員三名を中心といたしまして審議しております。二十九日も同様でございます。それから十月に入りまして、十月十二日に主として省側から事情聴取を行いました。同じ月の十八日に今度は組合側の方より事情聴取し、引続きまして十月二十日にも同じく組合側より事情聴取行つたのであります。この内容についてはあとで一通り申し上げますから、一応形式的な点を先に申し上げますと、二十一日に省側から事情聴取し、一応これまでの手続事務局の方の関係を通じて集めました資料等も、ある程度これに直接関係のある資料は出て来るようになりましたので、今度は小委員会といたしまして、この案件に対してどうするかということを中心として、十月二十六日、三十日、十一月二日、昨日の四日、今日とやつているのでありますが、ところで十一月二日に至りまして、組合から新資料が提出されて来たのであります。  御承知通り調停に入りましてから約二箇月の期間があるわけでありまして、それも非常に差迫つておりますので、この取扱いに関してどういたしたらいいか、委員会としても昨日この点をいろいろ研究してみたのでありますが、これは紛争でありますから、当事者紛争を解決するという意味で、当事者意向を第一に考えなければならぬということで、本日午前中新しい資料中心にして、この資料内容についての説明を求め、さらにこの資料について組合がどういうふうに委員会の扱い方を希望しているかということを聞いたのであります。そういたしますと、調停案を作成される前にぜひこの資料を検討してもらいたい、こういう強い要求がありますので、これを検討いたしますと、相当複雑な計算もしておりますように見えますので、どうしてもこれは二箇月の期限内で調停案をつくるということは、この資料審査だけでも実際上不可能である、こういう関係ですから、組合としてはそれではその調停案が出ることが延びるのはやむを得ないと考えられているのかということも確かめたわけでありますが、省側の方で了承されるとすれば、これは調停委員会の方というよりも、むしろ御承知通り法規仲裁委員会の方に両当事者の方から延びるということの了解を得るように手続をいたすことになつておるわけであります。二箇月以内に案が出ませんと、法規仲裁委員会の方に移つて行くことになりますので、調停委員会だけが了承しましてもそういうふうには参りません。それで両当事者の方から、きようあす中に至急その連絡が仲裁委員会の方に行くかと思われます。これは両当事者できめることであります。しかし組合側の方の意向を尊重いたしますれば、ただいま申しましたようにどうしても若干日数は延びざるを得ない、こういうふうになつております。  なお郵政関係当事者の方からお聞き及びと思いますが、今日までのところ両当事者の主張というものは、ほとんど歩み寄りが認められないのであります。これは調停委員会の一員として、個人的な一つの印象かもしれませんが、今日まで調停委員会調停作業を行つております過程におきまして、普通ならば、これを調停に盛り込まなければならないと思われる何らかの端緒というものが、両当事者の間に立つて折衝をいたし、調停作業を行つているうちにつかめたような気持がする問題があるはずなのです。ところがこの問題に関しましては、まことに遺憾ながら、というよりは、むしろはなはだ不手ぎわと申さなければならないかと思いますが、そこまで行き得ないわけであります。そうなりますと、調停委員会としましては、調停委員会立場からこの案件を考えて調停案をつくらなければならない、こういうことになりますので、事務局に命じましておよそこの問題に関係のあると思われるいろいろな指数でありますとか、材料でありますとかいうものを集めてもらいまして、特に最近はその小委員会におきましてそれの検討に熱心に従事しておるというのが実情であります。ただ組合側の方の交渉委員人たちが非常に心配して、きようも公労協の緊急の申入れがありまして、それに会いまして十分くらい遅れることになつたのでありますが、その人たちの心配しておりますように、何らか前もつてきめる一つのわくなり線なりというものがあつて、その線に向つてすべて話を進めようというふうな態度を小委員会がとつておるものでないということだけに、この際あわせて付言さしていただきたい、こういうふうに思つております。  大体概括的なところを申し上げて、何か御質問があればお答えできる範囲内でお答えいたしたいと思います。今申しましたように非常に微妙な段階にもなつておりますし、問題がむずかしくなつておりますので、小委員会として調停案に直接関係のある重大な問題についての結論が得られたというところまでは残念ながら来ておりません。おそらく最終段階至つてそれに到達するようになるではないかと認められておりますところに、今申しましたほかにまた新しい資料が出ている、こういう関係にありますので、具体的な見通しなんかにつきまして、はつきりした結論のようなものを申し上げる段階には、今のところ残念ながら至つていないわけでありまして、その点ふ手ぎわと申しましようか、われわれとしてもまことに残念に存じておる次第であまりす。以上であります。
  12. 田中織之進

    田中委員長 ただいまお聞きの通り調停委員会審査経過について御報告があつたのでありますが、結論を出す直前の非常にデリケートな立場にあるということを率直に申されているわけであります。本日は、われわれ委員会として関心を持つている本問題に対する参考意見を、中村委員長から向う目的で御出席を願つているのでありますから、委員諸君からひとつ具体的な点について御質問を願いたいと思います。
  13. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 中村委員長からいろいろ伺つたわけでございますが、一体今度の紛争解決の方法は、どういうところにあるかということをひとつお聞かせ願いたい。調停委員会賃金委員会と違うものでありますから、そういう点についてどういうようなお考えを持つておられるか。実は先日専売の調停がうまく行かなかつたので、そういう点委員長はどんなふうに考えているのか、ひとつお聞かせを願いたいと思います。
  14. 中村常次郎

    中村参考人 お答え申し上げます。ただいまの御質問は、いわば委員会の心構えというふうなものに関しての御質問のように承つたわけでありますが、調停委員会といたしましては、やはりあくまでも紛争を解決するということに目横を合せて参りたい、こういうふうに考えておるわけであります。このことは一般論になりますが、それには一つ前提があると思います。それは両当事者でこの問題を解決するという努力がなされているということが、当然前提でなければならないと思うのでありまして、もしそうでないとすれば、あるいは結論におきまして御期待に反するかもしれませんが、賃金委員会と同じような結論調停委員会が出さざるを得ないということもあり得ると思います。しかし初めから賃金委員会のようなふうに考えて、問題を処理するということはございません。今のが一般関係であります。  実はそのことにも関連いたしますので、先ほどもちよつと心構えに触れて申し上げたつもりでおつたわけでありまして、両当事者におきまして、この段階においてもまつたく歩み寄りがなされない。それにはいろいろの理由があると思いますけれども、またわれわれもいろいろ承つておりますが、一歩でも二歩でもその歩み寄りがなされるということにおいて、初めてそれがなされるわけでありまして、それがなければすべてがゼロというふうな関係なつておりますので、委員会としてはそれ自身別段方策というものはそこにて立て得ません。さればといつて調停委員会としての性格から申しまして、何らかの宣言を発して引込むということもできませんから、やはりそういうふうになろうかと思います。  それからまたもう一つ専売のことに触れて、先ほどのことに関連してちよつと申し上げさせていただきますと、それぞれの小委員会が能率を上げるために、みな独自にわかれて作業をしておるわけでありますが、専売の案が出ましたことについて、われわれも調停委員の一人として責任を負わざるを得ないかと思いますので、その点についてちよつと申し上げておきますと、専売は専売なりに、あれで相当いろいろな資料を集めて報告されまして、われわれもそれを総会においてやむを得ないというふうに承認したわけであります。その点についてはまさしく責任を持つているわけであります。その場合において私たち感じましたことは、もつともつと両当事者において、理想的な解決はなかなかできないと思いますけれども、具体的な解決、現実的な解決のために努力されることがあれば、調停委員会がもつと円滑に行き得るということで、その点ちよつとつけ加えて申し上げさしていただきたいと思います。
  15. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 今度の全逓申請なつている賃金について、いろいろ御意見があるだろうと思うのですが、民間の賃金とか消費物価の関係、こういうことについてどういうふうにお考えになつているのか、またそれぞれ調査が進められていると思いますが、その中心はどういうところに置いておられるのか、その点もお伺いしたいと思います。
  16. 中村常次郎

    中村参考人 たいへん具体的な内容に入つて来ましたが、先ほど申し上げたことによつと触れるのでありますが、両者の歩み寄りがある程度方向を示しておりまして、その方向に沿うて解決を進めて行けばよい場合と、そういうことが残念ながらできない場合と二つあるわけでありまして、そういうことができない場合におきましては、やはり委員会独自のいろいろ資料を考えざるを得ないということは、先ほど申し上げた通りであります。その場合におきましては、やはり組合側の方から申しますれば、要求の方式というもの、たとえばマーケツト・バスケツト方式というもの、その内容、こういうようなものをもちろん検討いたします。それから過去におきます民間の給与との比較関係というふうなもの、それと関連して現在の民間給与との比較関係、それからまた私たちの利用し得る材料としましては、全産業の毎勤の給与の上昇率というふうなものがあれば、これをもちろん参考資料として調査いたします。それから生計費のことについても調査します。物価指数消費の水準というもの、こういうふうなものももちろん調査をいたすわけであります。すでに御承知と思いますが、物価指数一つの問題だけを取上げましても、計算の仕方というものがいろいろあるわけでありまして、一般に知られておるものだけでも三つくらいあります。割合に高く計算されるような結果が出て来るもの、割合に割安になつて来るようなもの、大体中間くらいなもの、結果においてそういうふうに出て来るような統計方式があるのであります。この場合にどういうふうなものをとつたらいいか、こういうふうなことも検討いたすわけであります。そうして調停委員会は御承知通り三者構成になつております。いわば使用者側の代表、それから組合側の代表、それからわれわれのような者が入つおるわけであります。それぞれの立場というものがありますので、初めから意見がきまつておりませんので、いろいろその方式に関しても主張の差があるわけであります。これを調整するということが調停委員会一つの仕事になつておるわけでありまして、先ほど申しましたように、最終的に調整せざるを得ないというのは、そういう関係を持つておるのであります。専売の場合なんかでも、大体生計費関係から申しますと、二、三パーセントは上つておるということは認めた、専売の方の委員の方も認めておられるわけです。ただそれを恒久的なベースというようなものにおいて考えていいものかどうかということが、むしろその小委員会において問題となり、またわれわれ委員会においても問題にしたと記憶しております。ただやはり小委員会といたしまして、われわれの直接関係の問題としては、公益の方の立場から申しまして、私まだこのほかにいろいろ問題があると思います。今のはただ組合の方から申し上げましたが、今度は使用者側の方に関しましては、やはり現在の経理状況というふうなものもお伺いしますし、それから今度は毎勤――一般の民間産業だけでなく、普通の公務員関係との比較、それから他の公社、現業との比較関係、こういうふうなことをいろいろと、使用者側の方からもお伺いすべきものはお伺いして、かれこれつき合せまして、一口に申せば総合的に判断する、こういうことなのでございますけれども、何か今申し上げた点で不十分な点がございますれば……。
  17. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 今のベース改訂ですが、これはどうも困難な事情とあなたは御判断なさるのかどうか。しかしそれは郵政省の主体の方でどうも財源がないからいかぬというふうに考えられるかどうか。あるいは御承知のようにデフレ予算だから、ベース改訂をやつてはいかぬというふうにお考えになつておりますか。その点を……。
  18. 中村常次郎

    中村参考人 そこのところは実は最終結論のところに委員会としてはかかつて来ると思います。ですからこれかり申し上げるのは私個人の意見として御返事を申し上げたいと思います。私個人の持つておる学問的な立場というものは別だと思いますが、公益という立場から申しますと、いろいろ複雑なものが公益というものに課せられておるのだと思いますので、一般論的に申し上げますと、完全な独立採算制になつておる企業体ならば、私は話が非常に違うと思うのであります。もしそういうことを前提といたしますならば、余裕があれば私はなるべくならばベースを上げてやつた方がいいのじやないか、こういうふうに個人として思つておるのであります。ところが完全な独立採算制でないといたしますと、もし収益でも増大しないという関係におきまして、ベース改訂するということになりますと、それによつて、たとえば物件費ということは大体において公益企業のサービス面に関係を持つて来るかと思いますので、そうしますとそのサービスをよりよくするという問題と、それからベースをより多く上げて職員の動労意欲を維持増進するという兼ね合い問題になると思います。これをどの辺にするかということこそが一番むずかしい問題ではないか、このように考えておるわけであります。私自身も勤労者の一人ですから、だれにいたしましても低いよりは高い方が大いに志気を鼓舞されることは言うまでもないことでありますから、上げることができれば上げた方がいいのじやないかと思つております。ただ現行の日本の――これは労働問題ではなくてもつと別の問題になると思いますが、こういう公共企業体というようなものが、完全な独立採算制になつておるかどうかに非常に疑問があると思いますので、そうなりますといわゆる給与総額いうものをどういうふうに考えたらいいのか。たとえば私たち関係のある郵政事業にいたしますと、これは全部ではありませんが、一部の問題に対しましては、たとえば貯金関係なんかでは、資金募集の方は郵政の方でやる、その運用は大蔵省の方でやるということになつておるのでありまして、こういうものは制度自体に関連した問題で、収益が増大したからといつて、それが自動的に郵政事業にはね返つて来るというものでもない。しかも一部分そういう点がありながら、企業としての努力も求められておるというふうな事業体でありまして、これは部分的な問題だけを取上げて申し上げただけでも、そういうわけで、このことは調停委員会にどうしろと言つてもどうにもならない問題でもあるわけです。ただ私たちは事実としてだけこれを見まして、ただその事実をどの程度まで重要視し、どの程度まで動きのないものとして考えるか、また給与総額などでもその通りだと考えます。だから結局私の気持は、結論として、納得し得るような線であれば、給与総額が動くという結論が出てもやむを得ないのじやないか。しかし輿論を動かし得ないその場当りの結論としてならば、なるべくそういうものは出したくない、こういう気持でございます。
  19. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 全専売の調停がうまく行かないですね。そういうようなことを参考にされて、今度の調停案については、中村さん自身として、何かうまい方法で円満に解決するようなお考えがあるかどうか、ひとつお聞きしたいと思います。
  20. 田中織之進

    田中委員長 今の佐藤君の質問に関連して……。先ほど全専売の場合にも二、三パーセントの生計費の増高という点は小委員会としても認められておる。しかしそれをただちに恒久的なベースアップに持つて行くか、あるいは一時的な支出による補給的なものにするかという点について、判断がわかれたような意味合いのお話がございましたが、ただいまの佐藤委員質問に関連して、現在郵政関係の点についても、ベースアップまで持つて行くべきか、あるいは一時金というような形で、少くとも生計費の増高、現在の賃金ベースとの開きを、もし財源が許されるならば、カバーすべきであるというようなところまで作業が進んでおるのでございましようか。
  21. 中村常次郎

    中村参考人 その点は郵政自体の一調停案に関連しては、ちよつと申し上げかねると思います。その問題は全専売のようにもうすでに出てしまつた調停案は、私から申し上げるべきではないかもしれませんが、出た一つの問題点だけをお話ししますと、調停委員会が何らか政府の政策に協力しようとかなんとかいう性質のものではありませんので、ただデフレが事実として行われておるということは認めざるを得ないと思います。その結果がいい悪いということは別としまして……。ところがそれに対してとにかく生計費がわずかに二%くらいだつたと思いますが、資料も、今専売の資料は持つて来ておりませんが、出ております。そのときにおいて将来このデフレがもつと深化するかもしれないわけです。あるいはそうではないかもしれない、もつとインフレにかわるかもしれない。その点について確たる見通しができないというのが、おそらく一つの問題点であろうと思います。それから財源の点ももちろん問題がございます。それをはたして恒久的なものにしていいかどうか、財源の点に関連しまして、こういうことが一つ問題になります。つまりそういうごくわずかなパーセンテージのものについても、もしもそれにスライドするような、あるいはそれに機械的に応じてベースを上げるというならば、今度は使用主の方から、もしも生計費が下つたという場合にそれに応じて下げてくれというように出て来た場合には、調停委員会は下げざるを得ないのしやないか。もしもそういう機械的なものを取入れるとすれば、こういうふうなことは財源というものとも関連し、いわゆるベースというものの性格からいいまして、はたして機械的に取入れてどうか、問題であろうじやないかというような問題点があつたと記憶しております。いずれもそれぞれ考えさせられる問題でありまして、立場上の是非とかいろいろなことで議論が出ておりまして、従いまして専売の案七のものじやなくて、あとの理由にも出ておつたかと思いますが、情勢がかわつて来るとすれば、別に考えなければならぬじやないかということが出ていたように思います。ですから将来ずつと生計費が上つて行くような見通しか出て来るということであれば、別の判断をしたろうということが、言外に山ておつたと私は読んでおります。
  22. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 予算的にいうと、政府がないないと言つて、実際は何べんも上げているのです。こういう点からやえてもらいたいということ、もう一つはデフレ予算の問題ですが、デフレで政府は盛んに物価が下つたつたと言うけれども、現実に米が上り、電燈料も上り、その他も実際上つて来ておりますから、こういう点についても一応表向きはうまいことを政府は言うけれども、結局勤労者、特に郵政の従業員に対しては最後のところまで来ているように思われるのです。そういう点について中村さんの独自の御見解でけつこうですが、御意見を承りたい。
  23. 中村常次郎

    中村参考人 だんだん調停案に触れて来ますようですから、その御返事はなおしばらく時間をかしていただきたいと思います。ただ消費者物価指数の問題が出て来たので、ちよつと申し上げますと、この指数そのものが間違つておるということであれば、とうてい問題に私たちできないのでありますか、傾向として見ますと、昨年の十月を一〇〇といたしますと、消費者物価恒数は二十九年の九月、十月の平均でいいますと一〇三・八五になつております。本年の一月を一〇〇といたしますと、九月、十月、ごく最近の消費者物価指数は一〇一・七三になつております。しかしこれに対しまして、かりに郵政の方の問題をやりますと、本年の一月ベース改訂がありましたことは御承知通りです。これが今日までにどのくらいになつているかといいますと、本年一月を一〇〇として一〇三・四〇になつております。そうすると物価指数の上昇率よりは、昇給とかいろいろございますので、ちよつと上り気味だというふうな、傾向としてはむしろ逆のものさえも出るのであります。ですから消費者物価指数のみに関係してでなしに、やはりデフレが現実に進んでおりますし、これは非常に大きな意味を持つたのでありますが、こういう点から見まして、デフレが一つの事実として存在するということだけは認めざるを得ない。それをどういうふうに勘案し、勤労意欲そのものをどう維持して行つたらいいかという問題は、むしろこういうものとは離れまして考えらるべきものじやないかというふうに思つているわけなのです。
  24. 土井直作

    土井委員 先ほどの御公述の中にちよつとありました問題で、今度の調停委員会では組合側の方から歩み寄りがなかつた、こういうことで、調停に非常な困難な点を申されておるのですが、関係当局の方では具体的には歩み寄りの意思が相当あつたのですか。組合だけが歩み寄りの意思がなかつたのですか。
  25. 中村常次郎

    中村参考人 お答えいたします。その歩み寄りというふうなものは、ちよつと言い方がまずかつたかもしれないと思いますが、非常に漠然たる意味に使いまして、たとえば今の賃金問題を要求した範囲内の問題と、それから要求した程度の額において論議いたしますとすれば、歩み寄りがなかつたということであります。たとえば最低賃金八千七百円、それから一つの特別な号俸を組合側の方で要求として作成しまして、それに基いて俸給表を体系的に一つつくつてくれということは、言葉をかえて申しますれば、その俸給表通りベース・アツプということなんですが、八千七百万円を基準といたしましてずつと組み立てましたベースアップです。そのことに関しては残念ながら歩み寄りがなかつたわけであります。しかしそれ以外について話が出なかつたわけではありませんが、それは本質問題には触れていないのです。組合の方ではどうしてもベースアップで問題を考えてくれということです。当局の方ではベースアップの問題ではとうてい話にならないという意味におきまして歩み寄りがなかつたと、こういう意味なんです。そのほかにも何らかそれに関連し、付随的にいろいろな触手を委員会としても延ばしたりなんかしましたことはありますけれども、しかしやはり調停案として出ておるものがある限りは、一応それと本格的に四つに組んでみるということが一つの正しい行き方とすれば、それにつきまして申し上げますと、今言つたようなことしかないわけであります。
  26. 土井直作

    土井委員 今度要求されておりますベースアップの問題は、やはり本質的なものである、――本質的なものというよりも、プリンシプル的なものがある。要するに基本ベース要求が八千七百円、これは単に生計費の上昇に伴うものよりも、より本質的なものがあるのじやなかろうかと思うのです。従つて調停を申し出ましたところの労組の方としても、むやみに引下げたり、あるいは妥協したりできないというものが相当あると思うのです。そこで調停者側の立場から考えれば、こういう基本的な給与ベース要求というものに対する本質的な見解というものが、十分確立されていなければならぬじやないか。いわゆる世上ありふれた生計費の上昇とか、そういうような問題とにらみ合せての調停では、この問題の解決ということは相当困難じやないかと思うのだが、それについての御見解を承つておきたいと思います。
  27. 中村常次郎

    中村参考人 それについて答えるとすれば、これもやはり調停案に関連すると思いますので、とりあえずこういうことだけ申し上げたいのですが、過去においても実は再々生計費の要求というものが出なかつたわけではないので、過去の調停委員会また仲裁委員会等にも出ております。調停委員会としてもたとえば今も関係しました理論生計費の問題、それから最低賃金の保障という意味の問題についても触れていないわけではないのでありまして、今度の小委員会がそれについてどう立場をとるかについては、ちよつと留保させていただきたいと思いますが、調停委員会として過去に一つ立場をとつて来ておつたということだけは言えると思います。それを引継ぐかどうかが私たちの問題になるのじやないかと思います。
  28. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 資料上の問題でちよつとお伺いいたします。われわれの調べによりますと、全逓の従業員のベースが大体一万四千二、三百円、管理職を含めても一万五千二百円程度です。これは類似産業を調べてみますと、運輸業なんかでも一万六千三百九十四円、通信業は一万八千四百三十七円、金融業は一万八千五百八十六円で、非常に開きがあるのです。これは十月のベースですが、そういうものに比べて全逓は非常に低いということになるのですが、そういうことは何か調停案にはありませんか。
  29. 中村常次郎

    中村参考人 お答えをいたします。実はそういうふうなことについてはただいま聞いて来たばかりなんですが、組合の方から出ておる資料にもただいまお話のような線そつくりとは申しませんが、類似産業としていろいろ出て来ております。これについてどう取扱うかということは、まだ小委員会としてはきめておりません。ただ参考までに申し上げますと、どういう御資料か存じませんが、たとえば一般に出ております貯金保険などの統計の中にも、実は公社、現業関係数字が入つておるわけなのですから、それと比較すると二重比較のようにもなるわけでして、その内容をさらに立ち入つて分析する必要もあるかと思います。これは労働関係だけですから、労働関係だけでそういうふうに比較されるといたしますと、一方が高くて一方が低いということはすぐ出て来て、これくらい明瞭なことはないということになるわけですが、やはり企業体の持つている性格というものが、労働者においては賃金労働者だから何ら変化がないのだということで、割切つてのみ話を進めて行つていいかどうかということに非常に疑問があるのじやないか、こういうふうに思つております。一方はとにかく競争を前提とした企業体でありますし、公共企業体はかつてインプレーシヨン時代から今日まで公務員と同じように恵まれたものであつたということも申し上げかねるかと思いますが、とにもかくにも独占的な面を一方には持つております。また国家的な面が非常に大きな意味を果しておる公共企業体におきましては、ほかの委員はとにかくとして、公益委員のような立場になりますと、サービスの向上というこごと給与の上昇ということとの兼ね合いというものを、どう考えるかということを常に考えなければなりませんので、ベースの開きということから、ただちにこちらが非常に気の毒じやないかということが言い得るかどうか。しかし非常に貴重な参考資料としては取扱いたいと思つております。
  30. 土井直作

    土井委員 時間がないようですから、もう一点……。今の問題上ちよつと関連しておる問題ですが、要するに全逓の賃金が比較的低いという理由は、戦前からベースの面においては、むしろ一般公務員とは比較にならないような低いところに置かれておる。それを戦後急速に上げて、一般公務員とマッチできるようなところまで行くのに、予算的な処置が相当困難であつたということ、ある意味において不遇の地位に置かれているわけです。それが結局ベースアップの問題が未解決のままに放置されておる原因じやないか。それかり今関連事項と申しましたのは、これはこまかいことだけれども、かなり大きな福利的な内容を持つ問題ですが、他の公企業の関係において、たとえば国鉄のような場合には別途の予算上福利的なものがあるのです。家族パスであるとか、自分らが乗車するときは無賃で乗れるというようなことがある。ところが全逓の場合の多くの人々は、そういう業務上から来る恩沢というものが一つもないのです。これらは見積るというと非常に大きなものになる。それで今佐藤君が言つたように、一般賃金から見れば非常に低いところへ置かれておつて、なお業務上から来るそういう恩沢というものには何ら恵まれるところがない。これなども非常に大きなハンディ・キヤツプじやないかと考えるのです。そこで仲裁裁定をされる場合において、こういうようなことは重要な資料として考えていただく必要があるのじやないかと思うのですが、そういう点について何か論議をされておりましようか。
  31. 中村常次郎

    中村参考人 お答えいたします。国鉄との比較を特にいたすということはいたしておりません。但しそちらの方でそういうふうにいろいろなことがあるということは知つております。それから先ほど申しました通り、この比較のとりようでございます。一般産業の水準から比べますと、低くもなく高くもないというところじやないかと思います。ただそれでいいかどうかは一つの問題で、そこのところに問問があると思います。一般に金融、保険というようなものは、全国的に見ましても高い方でありまして、またそういうふうなことについても、いろいろ問題があろうかと思います。普通の金融業のサービス関係郵政関係のサービスとを決して比較はいたしませんけれども、いろいろ実な違つておりまして、どちらがどうというふうなことは言えませんが、ただそういう高いものと比較することはまた一つの問題じやないか、そういうことは考えなければならぬと思います。それから戦前に非常に低かつたが、上つて来たということも調べております。なおそれについてはいろいろ問題があり、組合の方ではこれに関連しての問題として取上げておりませんが、おそらく関連して取上げて行かざるを得ないのではないか、あるいは将来の問題となるのじやないか。どんな土地にも郵政関係の仕事はあるわけでありまして、たとえば今の金融関係といたしましても、とんでもない山の中では普通銀行の支店はございませんが、郵政関係はございますので、しかも土地の人を使つておりまして、それから特定局あたりになりますと、いわばその土地の人こそ最も使いいい人です。そうしますと、むしろ副業があつてそこに勤めている人がかなり多いというようなことが昔からあつたと思います。そういうふうなものが今日において糸を引いているというような関係もあろうと思います。格差なども内部的に機械的にベースという関係で割切れるかどうか、いろいろ問題を持つているのじやないかと思います。そういうふうな問題をもあわせてこのベース問題に取上げて行くということになると、たいへんなことになりまして、おそらく今日本省関係の人もおいでかと思いますが、むしろそういうふうな格差を改訂するためならば、このベースアップ以上の金がいるのじやないか。そういうふうな問題も持つているわけでありまして、このベース問題をどの範囲まで関連づけるか、またどういう問題と結びつけて考えるかということが私たちのやらなければならない仕事ですけれども、なかなかむずかしい問題でございまして、ただいま御注意のことはよく承つて帰ります。
  32. 田中織之進

    田中委員長 ほかに委員諸君の方でもまだ質疑があろうかと思いますが、今日は中村委員長においては、委員会の開会中まげて都合して出ていただきましたので、いずれまた調停案がきまりまして御出席願うこともあろうかと思いますので、本日は中村委員長に対する質疑はこの程度にとどめたいと思います。  ただ委員長から一言だけ申し上げておきたいのは、先般も本委員会出席を願つた塚田郵政大臣から、最近郵政職員貯金の面においても保険の面においても非常に企業努力をしておる、そのために業績が向上しておるという点は、郵政省側の責任者である大臣も認めておられるわけです。なお企業努力による収益増加というものが出れば、従業員の待遇改善に向けたいという点についても、大臣は原則的にわれわれと同じような見解を示されておりますので、先ほど佐藤委員質問の中にもございましたが、過去調停案が出ましたときにも、いつも調停案実施の財源的な問題についてはいろいろな困難にぶつかるのでありますが、その点は補正予算その他の面で政府側も努力されて参りましたので、十分そういう最近の企業努力による業績の増力ということに対する適当な報償というような考えも、省側においては原則的には認めておられますので、そういう点も加味せられて、ひとつ公正な調停委員会として紛争解決に一歩前進するような案をおつくりくださらんことを、小委員長として希望を申し述べておきたいと思います。  なお省側から人事部長経理局長等の御出席を願つておりまするが、質疑を続行せられますか。――それでは現在までの調停小委員会経過並びに考え方等については、皆さんお聞きの通りでございますので、なお調停案の進行状況に伴いまして小委員会を開いて、委員会としての審査を進めたいと思います。  本日はこの程度で散会し、次回の委員会は追つて公報をもつてお知らせすることにいたします。    午後三時十分散会