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1954-04-16 第19回国会 衆議院 内閣委員会外務委員会連合審査会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年四月十六日(金曜日)     午後二時十二分開議  出席委員   内閣委員会    委員長 稻村 順三君    理事 江藤 夏雄君 理事 大村 清一君    理事 平井 義一君 理事 山本 正一君    理事 高瀬  傳君 理事 下川儀太郎君    理事 鈴木 義男君       大久保武雄君    永田 良吉君       長野 長廣君    船田  中君       八木 一郎君    山崎  巖君       粟山  博君  早稲田柳右エ門君       辻  政信君   外務委員会    理事 今村 忠助君 理事 野田 卯一君    理事 並木 芳雄君 理事 穗積 七郎君    理事 戸叶 里子君       北 れい吉君    佐々木盛雄君       須磨彌吉郎君    福田 昌子君       細迫 兼光君    加藤 勘十君       河野  密君    西尾 末廣君  出席国務大臣         国 務 大 臣 木村篤太郎君  出席政府委員         法制局長官   佐藤 達夫君         保安政務次官  前田 正男君         保安庁次長   増原 恵吉君         保安庁長官官房         長       上村健太郎君         保安庁局長         (保安局長)  山田  誠君         保安庁局長         (人事局長)  加藤 陽三君         外務政務次官  小滝  彬君         外務事務官         (条約局長)  下田 武三君  委員外出席者         内閣委員会専門         員       亀卦川 浩君         内閣委員会専門         員       小関 紹夫君         外務委員会専門         員       佐藤 敏人君         外務委員会専門         員       村瀬 忠夫君     ————————————— 本日の会議に付した事件  防衛庁設置法案内閣提出第九四号)  自衛隊法案内閣提出第九五号)     —————————————     〔稻村内閣委員長委員長席に着く〕
  2. 稻村順三

    稻村委員長 これより内閣委員会外務委員会連合審査会を開会いたします。  先例によりまして内閣委員長であります私が委員長の職務を行います。
  3. 稻村順三

    稻村委員長 本日は防衛庁設置法案及び自衛隊法案の両案を一括議題となし、質疑を行います。質疑の通告がありますから順次これを許します。並木芳雄君。
  4. 並木芳雄

    並木委員 まずお伺いしたいのは、自衛隊法案防衛庁設置法案二つ並べて読みますと、相互に入りまじつている点があるのじやないか、こういう感じでございましたから、その中に保安庁機構、それから部隊機構、そういうものがまとめて入つておりまして、割に読みやすかつたのです。ところが今度は防衛庁設置法案の中を見ますと、詳しいことは自衛隊法に盛られておる。また自衛隊法の中を見ると、何条でしたか、防衛庁に置かれる陸上自衛隊機関云々というような文句が入つてつて防衛庁に置かれる機関であるならば、防衛庁設置法の中へ含ませたらいいだろうというような点があるのであります。長官はどういう基準に基いてこの二つをわけたか。どうして一本にしなかつたのか。われわれがこの法案を審議するときにどういう心構えでもつてよりわけて解釈すれば筋道が立つのか。どうも入り組んでおるようでありますから、その点を明確にしていただきたいと思います。
  5. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。防衛庁設置法自衛隊法二つにれけた理由から申し上げます。防衛庁と申しますと、静的な面から見た国家行政組織上の行政機構であるのであります。自衛隊と申しますと、いわゆる防衛庁の業務の実体をなしまする部隊行動という動的な面から、これを把握して規定したのであります。両者はとにかく二つまとめてその全きを期するわけであります。
  6. 並木芳雄

    並木委員 この二つ法案をながめますときに、私どもとしては主観的の考えと、希望的な気持も手伝うためでありますか、明らかに軍隊という感じがいたします。私どもはそれでいいわけなんです。そうすると、どうしても何かそこに不足をして来るような感じがいたします。それはとりもなおさず統帥権の問題だろうと思うのであります。いろいろ国防会議とか、統合幕僚長とか、職がきまり、あるいは会議の形式があげられておりますけれども、私は長官としてはやはり統帥権というものが将来必要になつて来るのではないかと考えておられるのではないか、そう感ずるのであります。ただいまの憲法では司法、行政、立法と三権分立になつておりますけれども内閣総理大臣にあまりに多くの権限があるということは、先般来指摘されておる通りであります。そこでこれは将来の問題になると思いますけれども、この日本の主権を四権に分立させて、統帥権というようなものを何らかの形でつくるお考えがありますかどうか。この機会にお尋ねをしておきたいと思います。
  7. 木村篤太郎

    木村国務大臣 将来統帥権というようなものを認め意思があるかどうかという御質問のようであります。さような意思は毛頭ございません。旧憲法下におきまする統帥権、要するに軍事行動に関する指揮命令、これに伴うところの訓練その他についての指揮、これが内閣から別個の機関をもつて取扱う、要するに国務大臣をまつたく排除した一つ権限をその組織に与えておるのであります。新憲法下においてはさようなものは認められないのであります。いわゆる自衛隊行動にいたしましても、これは行政権一つの分野に属するものである。行政府の長たる内閣総理大臣はすべてその指揮権を有する。そのもとに長官が各部隊指揮監督する。この建前をとつておるのであります。ここに旧憲法下における統帥権と非常な差異がある。少くとも新憲法下においてはさような統帥権というものは認められるはずはない。また将来において、かりに憲法が改正されるといたしましても、昔のような統帥権認めることは私はよくない。こう考えるのであります。
  8. 並木芳雄

    並木委員 しかしながら内閣総理大臣にあまりに大きな権限が集中されるということは長官はお認めになりますか。もしお認めになるならば、この統帥権に匹敵するものを内閣総理大臣が持つようになりますと、これをどのようにしてチエツクして行つたらよいか、その点についての確たるお考えを示していただきたいと思います。
  9. 木村篤太郎

    木村国務大臣 内閣総理大臣指揮命令、それに対してはいわゆる内閣の長たる総理大臣が閣議にすべて諮るべきものであろうと考えます。しかも軍事行動、いわゆる防衛出動等については、原則としてすべて国会の承認を得るということで、国会に大きな役割を持たせておるわけであります。これは民主主義国家においては当然であろうと考えます。しこうして内閣総理大臣指揮命令を受けて防衛庁長官部隊指揮する、その防衛庁長官に対して補助的役割をなすのはいわゆる内局と幕僚長であります。この両々が相まつて長官を補佐する、こういうことになつておりますから、総理大臣権限がいかにも大きいという非難は私は当らぬと考えております。
  10. 並木芳雄

    並木委員 だんだんと自衛隊隊員がふえて参りますと、この募集についてかなり困難を生じて来るのではないかと案ぜられますが、本年度の募集に対する見通しはどうなつておりますでしようか。  それから、勤務年限わずかに二年でございますか、そうすると青年にとつては、自分の就職を犠牲にしてこちらに就職するというようなことにならないと思う。二年間だけ中途半端な勤務をする。それからあと社会に出て就職するということになりますと、中断されますから、私は志願をする者がだんだん少くなつて行くのではないかと思うのです。これに対する対策はどのようになつておるでしようか。たとえば保安隊勤務した者については政府が保証して、これを他に転勤せしむる、こういう点をお考えになりますかどうか。だんだん少くなつて参りますと、今の憲法では許しませんけれども憲法を改正したあかつきにおいては徴兵制度やむなしというところに行くのではないかと思うので、そういう点についての長官のお考えをお尋ねいたします。
  11. 木村篤太郎

    木村国務大臣 御説ごもつともであります。志願制度のもとにおきましては人員の制限は相当あると考えなくてはなりません。また現在あるのであります。一定の人員以外にこれをふやそうとするならば、徴兵制度をとるよりいたし方はありません。しかし現憲法下においては徴兵制度認められていないのでありますから、どこまでも志願制度で行くよりほかはございません。そこでわれわれといたしましても、志願される人の中から優秀な者を採用しなければならぬのであります。そこに非常な難点があるわけであります。私としてはできる限り志願をしてもらつて、そのうちからいい者をとりたいと考えておるのであります。  実情といたしましては、現在幸いに応募者が多いのであります。昨年の欠員八千名、これの募集に対して約六万近くの応募者があつたようであります。今年度におきましても、これは退職期間が切れる人が相当あるのであります。それと新しく増員した人々募集とにらみ合せてわれわれは採用しなければならぬ。現在のところではわれわれの想像した以上に退職志望者が少いようであります。従いまして二十九年度で募集すべき人はわれわれの考えておつた数よりも少い。従つて応募者から相当優良な若人を採用し得るのではないかと考えております。
  12. 並木芳雄

    並木委員 長官のお考えになつてつたよりも少い数の採用で足りるのではないかという御答弁でありますが、そうすると予定されておつた人員に対する実際の募集人数を示していただきたいと思います。
  13. 木村篤太郎

    木村国務大臣 御承知通り二十九年度ではまだ退職期限が来ていないのであります。われわれといたしましては、四万くらい退職者が出るのではないかと考えておつたのでありますが、その半数くらいで収まるのではないかと考えております。そこで新たなそれの補充と、新たに増員の二万分と合せて、正確な数字はわかりませんが、まず大体四万ないし五万、こう見られるのではないか。それに対して応募者がどれだけあるかということになるわけでありますが、相当数応募者があろうと考えております。  それに付随して申し上げたいのは、保安学校入学希望者が非常に多かつたということであります。これは御承知通り募集人員が四百名、これに対して応募者が約六千人です。実際採用した人は新制の高等学校出身者でありますが、相当優秀な者が入つております。この間も私大学行つていろいろ校長を初め教官の諸君と会つて来たのでありますが、この入学者の成績を見るとまず普通の公立、官立の大学の入学者実力相当する、どこへ出してもさしつかえなくおそらく入学できるだろう、こう申しております。四百名の合格者は事ほどさように優秀な者が応募しておるということであります。なおその他の幹部学生なんかに対しての希望者相当多いようであります。まず現段階においては人員には心配ないと考えておるわけであります。  なおあなたの御質問の中の、これらの退職者に対する就職の問題でありますが、これはまことにごもつともであろうと思います。退職者に対して就職をあつせんするということは、われわれもやらなければならぬと思つております。それについてはわれわれは各方面と連絡をとつて十分にあつせんをいたしたい、今からそういうことについて構想を練つておるわけであります。
  14. 並木芳雄

    並木委員 その点はぜひ長官に心がけていただきたいと思うのです。これが一番保安隊に対する、将来の自衛隊に対する関心を深めて行つて、そうして二年間を精神の訓練のつもりで安心して過ごして行こう——その辺からやはり若人の本然の姿が、独立国にふさわしいものとして立ち直つて来るのではないだろうか、こんなふうに考えております。  そこでお伺いしたいと思います。だんだんと人数がふえて来まして、予算の方では制限されるということになると、費用が非常にかかつて来るのです。ですから職員として防衛庁勤務するそういう者のペースなどは変更はないでしようけれども、いわゆる一般隊員と称する者に対する給与がベースを下げられるのではないかこういう心配をしておる向きがあるのであります。今比較的保安隊志願する者が多い、あるいはまた継続して残るという者の中には、うちに帰つても定職がない、食べるにも困るからいるんだという人もずいぶんあるのじやないかと思います。その上さらに将来給与が悪くなるというようなことが伝わりますれば、これは相当の影響を及ぼすので、この際お尋ねするのですけれども、将来ともに保安隊員に対する給与の引下げをするというようなことはあり得ないということを断言していただきたい。私の申し上げるのは、今の額のことを申し上げるのではなくて、べース・アップされたり、また下る場合もあるでしようが、つまり一般給与基準からそれて、不当にこれが安くされるというようなことがないように、長官からはつきり約束をしていただきたいのでございます。
  15. 木村篤太郎

    木村国務大臣 私当局者といたしまして、将来自衛隊員の給料、給与その他を現在より引下げる意思は毛頭ございません。
  16. 並木芳雄

    並木委員 保安隊員すなわち今後の自衛隊員に対して、一種の予備役制度ができることになつておりますが、それと相呼応してかのごとく、最近在郷軍人会復活が各地で見られております。これの実体は、おそらく新しい盛り上る力によつてでき上つた在郷軍人会であろうと思うのです。名前はかつて在郷軍人会でありましようとも、その実体は違つておると私は確信しておるのでありますが、長官はそういう方面を調査されておると思いますので、この際、在郷軍人会復活に対して、どのようにこれを取扱つて行かれるお考えであるか。これをただ野放しにして行くつもりであるか、あるいは政府としては積極的に力を入れて行くつもりであるか、あるいはむしろまだ時期尚早であるとして、これに対しては警告を発して行くおつもりであるか、そういうところの見解をお尋ねいたしたいと思います。
  17. 木村篤太郎

    木村国務大臣 現在警察予備隊時代退職者並びに保安隊員退職者が各府県に相当散布されておるのであります。この人たちが自発的に一つ団体組織して、自衛隊に対する協力態勢を整える、この人たちは、相寄り相助けて自活をはかるとともに、今申し上げました通り、将来自衛隊協力をして行こうという活動をやつておるように見受けられます。私はまことに頼もしい限りと思うのであります。また一面において、いわゆる旧軍人が、昔の在郷軍人会と別な意味において、あるいは郷友会というようないろいろな名目で団体組織し、自立をはかり、将来民防組織にまで発達させたいという希望のものも相当あるやに聞いております。この人たち考え方は、いずれもわが国の防衛の全きを期したいという純粋ないわゆる愛国心から出ておるものと私は了承しておるのであります。しかし政府は、これに対して指導的立場に立つということは今のところ考えておりません。こういう団体の自主的の運営におまかせして、そうして真に盛り上る力となつてわれわれに協力してもらいたい、こう考えておる次第であります。
  18. 並木芳雄

    並木委員 非常事態が突発いたしました場合に、かつて戒厳令という制度がございました。今度の自衛隊法あるいは防衛庁設置法あるいはその他でもけつこうですが、万一不幸にして日本非常事態が発生した場合に対しては、かつて戒厳令相当するような措置をとられるのでございましようかどうか。非常事態が起つたときに、どのような措置によつて戒厳令と同じような取扱いをして行くお考えであるか、はつきりしていただきたいと思います。
  19. 木村篤太郎

    木村国務大臣 御承知通り警察法には非常事態宣言規定があるのであります。それについての詳しい規定は設けておりません。また現在の保安庁法にもありません。また御審議願つておりまする防衛庁設置法並び自衛隊法においても、さような規定は設けていないのであります。これは今後の問題として十分に慎重審議した上で結論を出したい、こう私は考えております。
  20. 並木芳雄

    並木委員 非常事態緊急事態の生じました場合に、現在の自衛隊法案においては駐留軍との共同動作については何ら規定をいたしておらないようでございます。これはだんだんと自衛隊が成長して参りますと、アメリカ軍と対等の動作がとれるようになつて参ると思うのであります。行く行くはもちろん米軍にかわるのでございますから、その場合は問題はありませんけれども、その段階に至るまでにアメリカ軍との共同動作をとる場合に、どういうふうにやつて行かれるお考えでございましようか。行政協定には単に二十四条に緊急事態に処して協議するとあるだけでございまして具体的にどういう方法によつて、どういう段取りで出動する、どちらがイニシアチーヴをとる、そういうことがはつきりしておらないのであります。これは実際に事態が緊迫した場合にはかなり混乱を生ずるのではないかと思います。以前私が質問いたしましたときに、政府当局から、この点は今考慮中であるというお話でございましたが、この両法案が出ました今日においては、当然何らかの結論が出ておらなければならないはずであると思います。
  21. 木村篤太郎

    木村国務大臣 行政協定二十四条に今のような規定は設けられておるのであります。要するに外部からの武力侵略のような事態差迫つた場合においては、日米間においてこれに対処すべき共同処置をとることになります。この共同処置をどういうぐあいにふだんからとつて行くかという御質問でありますが、われわれといたしましては、米駐留軍との間にふだんから緊密な態勢を備えて行くべきであつてアメリカ軍隊日本自衛隊に対しての指揮権を持たせるというようなことはきめておくべきものでないと考えております。自衛隊に関する限りはあくまでも防衛庁長官がこれに対して指揮命令をし、アメリカ指揮命令は受けない、この建前を堅持して行きたいと考えます。ふだんからさようなことではつきり約束をするということはかえつてよくない、むしろさような事態が発生したときに、どういう面において協力態勢をとつて行くか、たとえば一部の方面において協力態勢をとる場合に、どちらに指揮権を持たせるか、また別の方面において協力態勢をとる場合、どちらに指揮権を持たせるかということは、そのときにおいてきめても私はおそくはないと考えております。ただふだんからそういう場合に協力できるような話合いをしておけば足りると私は考えております。
  22. 並木芳雄

    並木委員 そうすると、意見を異にした場合にはどうなりますか。米軍の方としてはこれは急迫した不正の侵略であつて自衛権発動として日本自衛隊出動すべしと考えておるのにかかわらず、長官の方ではその時期にあらず、自衛権発動範囲外であるということでもつて意見が対立したというような場合にはどうなりましようか。
  23. 木村篤太郎

    木村国務大臣 防衛出動をなすべきやいなやということは、日本自体がきめるべきことであります。アメリカ駐留軍によつてきめらるべきものではないのであります。もちろんその当時においてアメリカ意見を聞くこともありましよう。しかし決定はあくまでも日本側自体においてこれをきめるべきものと考えております。
  24. 並木芳雄

    並木委員 日本の方は実力がだんだんと備わつて来た、そしてアメリカ共同動作をするところまで来ておるにかかわらず、アメリカの方では出動する、しかるに日本の方としては防衛庁長官が独自の立場から出動考える。これは法案でそうなつております。ですからその通りでありましようけれども、実際問題として違つた形がとれるでしようかどうか、それを私は心配しておるわけなんです。アメリカの方ではこれは緊迫した不正の侵略であるということで出動している。それを日本の方で手をこまねいて見ておるということがあり得るかどうかということなんです。ただいまの長官答弁ですと、日本側決定権があつて、すべての問題を日本がきめるのだとも受取れるわけでありますけれども長官答弁は、私は自衛隊に関する限りという意味だろうと思います。アメリカ軍に対してまで日本長官がそれだけの決定権を持つているという答弁ではないと思います。従つてやはりアメリカ軍の独自の考えでもつて危険に対処して行く場合と、日本自衛隊が対処する場合の二本建になるのでありますから、その間の調節がどこかでとられなければいけない、こんなふうに考えるのですが、いかがでしようか。
  25. 木村篤太郎

    木村国務大臣 それが行政協定第二十四条によつて日米共同措置をとるということになつております。よくその間に協議をいたしまして、しかるべき措置をとることになつておりますから、私は何らさしつかえないと思います。
  26. 並木芳雄

    並木委員 最近MSAに反対し、また自衛隊などの創設に反対する人々の口からは、原子力が横行しておる今日、もはやかくのごときちやちな防衛力の増強というものは意味をなさないのではないか、その根拠を失つたのではないかという声が聞かれるのであります。これに対して長官としてはどういうお考えでございますか。私は原子力とかあるいは水爆というようなものは大体使用すべからざるものである、こういう考えを持つております。従つて使用すべからざるもの、すなわち禁止すべきものであるという前提に立てば、なおそれはちやちな自衛隊であるかもしれぬけれども、だんだんとこれを大きくして行くという基礎でございますから、是認して行きたいのでありますが、もし原子力とか水爆というようなものの行使されることを前提にいたしますと、そういう反対論も一理あるということも認めなければならないわけでございます。この際長官のはつきりした回答を求めたいと思います。
  27. 木村篤太郎

    木村国務大臣 私は原子力がすべてを決定すべきものとは考えておりません。原子爆弾をいよいよ使うということになりますと、私はおそらく世界の破滅を来すものと考えております。原子爆弾を持つておるもろもろの国においても、決してこれをやすやすと使う意図は持つていないと私は確信しております。むしろこの原子爆弾の発達によつて、お互いに戦争のむだなることを理解して世界が平和に行く第一歩ではなかろうかとすら私は考えております。しかも原子爆弾については相当の管理の方法も将来あるいは講ぜられる時期が来るかと思つております。しかしながら原子爆弾を用いるような大きな事態に至らざる事態各所に起ることは想像にかたくないのであります。現にさような事態の発生しておるところもあるのであります。原子爆弾が発達したからといつて軍備を撤廃していいというような議論は、私は成り立たぬと思います。現に各国においても軍備を拡張こそすれ、決して縮小しておる国はないのであります。日本においてもある程度の自衛力をやはり漸増して行くのが相当であろう、私はこう考えております。
  28. 並木芳雄

    並木委員 原子力を除いても各所において起るもろもろの現象を見ると、やはり防衛力というものを強めて行かなければならないという長官の認識であります。そこで思い出されましたのは、今度の仏印における問題でございますが、これに関連して最近アメリカ方面では東南アジア集団防衛機構のことを考えておる模様でございます。十四日のアメリカ下院外交委員会ドラムライト国務次官補代理証言に立つております。その証言の中に、太平洋同盟機構についてでありますけれどもダレス国務長官はこの問題に関して、ビルマ、インドネシア、セイロン、パキスタン、インドに対してさえ呼びかけた、本格的な太平洋同盟が結成される場合には、日本も必ずこれに参加することになろう、こういう重大な証言をしておるのでございます。従つて前々から集団安全保障機構に入ることによつて海外派兵という問題が起つて来るのではないかという私ども質問も仮定の問題ではなくして、今日ようやく現実の問題となりつつあるのでございます。  そこでお尋ねするのでありますが、東南アジアにおける集団安全保障あるいは西太平洋における集団安全保障というような問題について、アメリカとか英国などから日本意見を求められた場合、またこれに参加するように申出があつた場合、政府としてはどういう態度をもつてこれに臨んで行く所存でございますか、この際お尋ねいたしたいと思います。
  29. 木村篤太郎

    木村国務大臣 ただいまお話の各機構については、われわれは十分存知していないのであります。またいずれの国からもさような機構についての話合いはありません。万一ありました場合には十分それを検討いたしまして、日本の利益になるような処置を講じたいと思います。
  30. 並木芳雄

    並木委員 日本の利益になるような処置を講じたいという長官の御答弁は、今までの政府答弁から一歩前進したものと私は承りました。今までは、どんなことがあつてもそういう機構には参加いたしません、ですから海外派兵の問題は起らないから御安心くださいということであつたのであります。従つてどうしてもお尋ねしなければなりませんが、日本の利益と思われる場合には、将来場合によつてはこれに参加することも考えられる、こういうふうに了承してよろしゆうございますか。また、参加した場合に派兵を約束する必要は必ずしもないのじやないか。アンザス同盟では、たしか自国の憲法従つてやるということが入つております。先般衆議院で承認いたしましたMSAの協定でも、憲法従つてこれを実施するという条項が入つております。従つてもし海外派兵というような問題が心配ならば、そういう一箇条を入れて、派兵の方はやらない、しかしながら集団安全保障機構には参加する、別途これに対して責任を果す、こういうことによつてお互いに助け合うということがあるいは考えられるのじやないかと思うのです。そこで長官のただいまの答弁を私は今までより一歩前進したものと拝聴いたしましたので、それらの点についてさらに解明をしていただきたいと思います。
  31. 木村篤太郎

    木村国務大臣 私はさような場合に、日本の利益になるように処置をいたしたい、こう申したのは、入ることが利益であれば入る、入らざることが利益であれば入らない、こういう意味であります。それで万一入ることが利益であるとして、日本がさような集団安全機構の中に入つたといたします。そのときに、並木君は今派兵はごめんこうむつてそれ以外の日本において尽すべきある義務を負担すればいいじやないか、こういうことでありますが、私は今その機構はどういうものかわかりませんから断言はできませんが、機構に入つた以上やはり日本もある程度の負担をしなければならない、そう甘い考えを持つておられない、自分だけは安全、危険なことは全部他人まかせということでは世の中は通らぬのであります。入りました以上は、あるいはある程度の負担ということが出て来るかもしれません。そこでわれわれは、それに入れば日本の国に利益になるか、入らざるが利益であるかということを十分考慮して処置をいたしたい、こう考えております。
  32. 並木芳雄

    並木委員 その点は実は非常にはつきりしたと思うのです。今までそういう点についての政府の明快な見解をわれわれは求めたいと思つてつたのですけれども、言を左右にしてほんとうに歯にきぬを着せたような答弁しか聞かれなかつた、しかるに今の長官答弁は、われわれが期待したよりももつと一歩つつ込んで、そんな甘い考え集団安全保障というものは成り立ち得ないのだというその考えを、私は基本的なものとしてその通りだと思うのです。そこでお伺いしたいのですけれども、あるいはこれは前の質問とダブるかもしれませんが、問題がやや現実化して来ましたからこの際お尋ねするのでありますが、集団的自衛権に基いての派兵を約束するような条約を結んでも、これは憲法違反ではない、こういうふうに思うのです。憲法で禁じられておるのは交戦権だけであつて、この点を除外すれば、自衛隊は戦力にあらず、従つて憲法では禁止されておりません。その戦力でないものが海外に出る、集団安全保障機構に入つてそのとりきめに従つて海外に出て行くということ自体は、何ら日本憲法では禁止しておらない、この点については間違いはないと思いますけれども、念のためお確かめいたします。
  33. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 日本の国を独自の力で守ることさえできないものがよそのお手伝いができるかどうか、これは別問題といたしまして、理論上の問題といたしましては、憲法においてはいわゆる国際紛争解決の手段としての戦争ということは禁止しておる、それに当らぬものは一応許されておる、それから戦力の保持は禁止されておる、それから交戦権は許されない、こういう条件を規定しておるわけであります。従いまして、今のお話に交戦権というようなお話が出て参りましたが、交戦権を持たずに一体どの程度にお役に立ち得るかどうかという実際問題がまたあるわけであります。それもかまいませんというような考え方、きわめて平和的なお仕事をやらしていただくという場面が理論上ありますれば、これは理論としては当然可能である、これが三段論法の結論であります。
  34. 並木芳雄

    並木委員 要するにもし憲法で禁止しておれば、法制局長官ともあろう頭の鋭い人は、言下に憲法違反と答えて引下るところでありましたろうものが、ただいまの御答弁によつて憲法には抵触しない、これははつきりしたと思うのです。そうでなければ、集団安全保障に入る権利、すなわち個別的な自衛権のみならず、集団的な自衛権認められておるということは、これは意味をなさないことなんです。だからもし平和条約あるいはその他安保条約などで日本が集団的自衛権認められておるというならば、将来憲法を改正した場合において認められるという条件がついておらなければならなかつたわけであります。しかるにそういう条件がつかずに、日本には個別的及び集団的自衛権があるというふうに認められておるということは、現行の憲法下においても集団安全保障態勢に入り得る、こういうふうに解釈がされるわけでありまして、これはくどいようですけれども、もう一度念を押しておきたいと思います。
  35. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 今のようなことをお答えいたしますと、あしたの新聞に法制局長官は海外派兵が可能なりと答弁したというふうに大きく出るわけであります。従つてそれに対してはよほど慎重にお答えしませんとまたいろいろ御心配をかける向きが出て来るわけでありますから、あらかじめお断りしておくわけでありますが、要するに三段論法の結論としては先ほどのようなことが言い得ることであり、私としては大きな間違いはないと思いますけれども、第一に触れましたように、交戦権がなくしてお役に立ち得るかどうかという常識論としてそこに大きな問題があるわけであります。それから第二に、現実にそれをおやりになるにしても、その都度協定とか、あるいは自衛隊法——今の提案申し上げておる自衛隊法ではそんなことは全然予想しておりませんから、今の法律のままではできないわけであります。従つて協定を結ぶことについて、あるいは自衛隊法を改正することについてまた国会の御判断を願う機会がそこにあるわけであります。その際に国会の御判断として、こういう交戦権がなくして一体お役に立つかという問題が実質的に出て来るかどうか、これは事実問題として大きな問題であることを念頭にお置き願いたいと思います。
  36. 大久保武雄

    ○大久保委員 ただいまの御答弁に関連いたしましてMSAの第三条を拝見いたしますと、その他の政府に対し装備、資材、役務その他の援助を提供することができる、こういう規定がございますが、これはその他の政府でございますから、たとえば朝鮮であるとか、あるいは今度の仏印の場合に、これはどうなりますか。これはただいまの問題と関連していかに考えたらよろしいか。装備、資材、役務というのは、自衛隊のものであるか、あるいはその他のものであるか、この辺を外務省からでも、保安庁からでも、法制局長官からでもけつこうですから、御説明を承りたいと思います。、
  37. 下田武三

    ○下田政府委員 御指摘の装備、資材、役務、その他の援助と申しますことは、もちろん兵力の援助を意味しないことは、この協定の建前上当然のことでございますが、そういう援助がどこに行くかという点につきましては、その都度日米間できめまして、たとえばフィリピンならフィリピン、韓国なら韓国がこれの装備を必要としておるが、韓国ではもちろんできない、またアメリカ本国から送るには運賃が高くなり過ぎるから、日本でつくつてつてくれというふうに、個々の場合に具体的に相談いたしまして、装備、資材、つまり物的な援助をするということに相なる次第であります。
  38. 大久保武雄

    ○大久保委員 装備と申しますと、自衛隊の装備は入らない、こう解すべきでありますか。
  39. 下田武三

    ○下田政府委員 理論的には、もし自衛隊の装備があり余るようになりますれば、そういうことがないとは言えませんが、実際問題といたしましては、今自衛隊自身が足らなくて、アメリカから援助をもらおうという段階でございますから、実際問題としては自衛隊のものを割いてやるということは起り得ない。従いましていわゆる域外発注によつて日本の工場で生産したものを援助としてやる、但し日本からやる場合にはただでやるのではなくて、もちろん代金はもらつて売るということに相なると存じます。
  40. 高瀬傳

    ○高瀬委員 関連して。今装備の問題が出ましたが、本日のワシントンのUP電報によりますとアメリカから約五億ドル程度の兵器を直接援助として日本に与えるというニュースがあるのです。これは一体ほんとうかどうか、ちよつと伺つておきたい。
  41. 下田武三

    ○下田政府委員 外務省におきましては、そういうことを正式にアメリカ大使館その他の径路からは何ら聞いておりません。
  42. 高瀬傳

    ○高瀬委員 保安庁の方ではいかがですか。
  43. 木村篤太郎

    木村国務大臣 そういうニュースに該当するようなことはわれわれ存知しておりません。ただMSA協定が成立いたしますと、アメリカから相当のものがおそらく援助されるものと考えております。船も相当数もらい受けたいと考えておりますが、あるいはもらえるかもしれません。
  44. 高瀬傳

    ○高瀬委員 並木君の質問を妨害したようでたいへん失礼ですが、これは必ずほんとうのニュースだと私は確信いたしますから、一応読み上げてみます。「米下院外交委員会が十五日発表した暫定案によると、現在米議会に上程されている一九五五年会計年度(本年七月—明年六月)相互安全保障計画案には約五億ドルと見積られる米軍余剰兵器及び軍需品の所有権を日本に移譲する規定が含まれている。」というのです。「この移譲は対外援助法そのものに規定される対日直接軍事援助計画に追加して行われるもので、」すなわち現在きまつている一億五千万ドル程度以外のものになるわけです。「対日直接軍事援助計画費は一億五千万ドルと報ぜられている、右の余剰物資の所有権移譲は現に日本にある米国製兵器その他について行われるもので、そのうちの多くはすでに日本側の手に渡されており、それらも右措置によつて正式に日本側に所有権が与えられるわけである」こういうのです。これはちよつと私は問題だと思うのですが、一体どういう内容をもつてこういうものをアメリカがやろうとしておるのか、日本はこれをくれるなら何でももらおうというのか、断るのか。そういう点についてこれは的確なニュースだと思いますから、ひとつここで伺つておきたいのであります。
  45. 下田武三

    ○下田政府委員 正式な話ではないのでございますが、米国側といろいろ話しておりますときに、私ども承知しておりますのは、米国側は予算が大分余つておるということでございます。そこでその余りの予算をどういうふうに使うかという点を米国側でいろいろ考えておるということは承知いたしております。ただいま御指摘のお話ですと、あるいは現在までに保安隊に事実上貸与されております武器、装備、これを日本に正式に渡す場合のやり方、これはいろいろ考えられると思います。予算措置を伴わないで廃品同様にして無償でやるというやり方と、あるいはFOAの予算から一応国防省の予算に繰入れる——中古の兵器の減価償却した六割あるいはもつと低く三割というような評価額で、国防省予算にFOA予算から繰入れるという方式も考えられると思います。そういうような措置に出ました場合は、確かにただいま御指摘になりました予算の剰余の使い道も生ずるのではないかと思つております。しかしこれはアメリカ側自体からどういうようにしたという決定的な話は私ども何ら承つておりませんので、正確なことはこうであるという御説明は、今の段階では申し上げかねるのであります。
  46. 高瀬傳

    ○高瀬委員 そうしますと将来近いうちにもしアメリカの外交委員会で決定すれば、そういう五億ドルの援助があり得るということは想像できるわけですか。
  47. 下田武三

    ○下田政府委員 かりに今の報道のようなことが実現いたしますれば、そういうこともあり得るかと思います。しかしそれによりまして日本がもらうのが急にふえるということではなくて、結局現在保安隊がすでに事実上貸与を受けているものを正式に日本にくれるにあたつての米国内部の予算操作の問題でございますので、ただいまの報道からだけで、ただちに日本が今まで伝えられました一億二千五百万ドル、あるいはそれ以上の厖大な援助をもらえることになるかどうかという結論は出て来ないように思います。
  48. 並木芳雄

    並木委員 あとにまだ質問者がおりますから、私はなるべく簡単に切り上げたいと思いますが、先ほどお尋ねして、また答弁を得た問題はまことに重要と思いますから、その点だけはまとめておきたいと思います。  さつき佐藤法制局長官は、海外派兵の問題に関連して、交戦権の点についての制限を受けることはありましよ う、とともに自衛隊法で禁ぜられており、自衛隊法を改正しなければ、海外派兵を約束する集団安全保障機構には入れないと言われたのですけれども自衛隊法のどこでこれは禁ぜられて来るのでしようか。私は自衛権というものは個別的自衛権と、集団的自衛権二つつて日本憲法九条に認められておる自衛権は、その両方を含むものと思つてつたのです。従つて自衛のために自衛隊行動する、それは集団自衛権の場合でも起り得るわけであります。従つて自衛権発動としての行動自衛隊法はどこにも制限していないと思うのです。もし海外に派兵してはいけない、集団安全保障機構に入つて、集団的自衛権発動として行動する場合に、日本の領土、領空、領海を離れて、第三国の領土、領空、領海に入つてはいけないという規定はないと思うのでありますけれども、どの点でそれが抵触して来るか、もしそれをできるようにするにはどういうふうに改正したらよいのかお尋ねいたします。
  49. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 まだ法律が成立いたしませんのに、改正のことにまで御相談にあずかることはいかがかと思いますけれども、私の申し上げました趣旨は、この自衛隊法の第三条におきまして「わが国の平和と独立を守り、国の安全を保つため、直接侵略及び間接侵略に対しわが国を防衛することを主たる任務とし、」ということが書いてあります。そうしてその場合に実力行動考えるわけであります。その実力行動はどういう限界でできるかといいますと、かねがね申し上げましたように、自衛権の範囲内においてこれは限られる。自衛権というものはどういうものかということの三つの要件等は申し上げておる通りであります。そういう角度から自衛権を厳格に考えますと、実力行動のできるのは自衛権の限界内しかできないわけでありますから、それがよその国にまで出て行つてその働きをするということは、普通の場合には厳格な自衛権意味においては限界外のことになりはしないか。そこでかりに交戦権でも持つておるとすれば、またそれはそれとして何かのお手伝いができるかもしれませんが、それは憲法第九条の二項において交戦権はないわけであります。だから活動の範囲は前に申しました範囲内に限局されて来るのではないだろうか、そこで結論は、よそにお手伝いに出てもお役に立ちますまい。むしろ私の言います趣旨は、海外派兵という意味は当らない。海外に対する公務員の派遣という趣旨であります。(笑声)
  50. 並木芳雄

    並木委員 どうも長官答弁しているうちにだんだん新語を発見して来て、公務員の出張ですか、(笑声)自衛隊の公務員、それはなんでもいいですが、長官の頭はこのごろ混乱しているのじやないかと思うのです。そこで今の長官答弁の中に、自衛権というのを私は特に個別的自衛権、集団的自衛権というものにわけておるにもかかわらず、それに対してわけておらないのです。その点私は不満なんです。これは両方含まれる自衛権、ですから集団的自衛権というものも自衛権にはちつともかわりはない、日本を守るために集団するのだ、そういう意味合いで私はこの自衛隊法もこのままでいいのじやないか、直接侵略でいいのじやないかと思うのです。それが証拠に、いつか長官と問答したときに、もしすごい私しい兵器が出て来て、その基地をこちらで息の根をとめなければあぶなくてしようがないというときには、これはやはり自衛権発動として反撃し得るという問答があつたのです。それから考えても私は自衛権というものを集団的自衛権と名前を二つにわけたにしても、これは結局日本自衛権だ、日本自衛権発動である、こういうふうに考えれば、この直接侵略という言葉でもつていいのじやないかと思うのです。その点もう一度ひとつ明白にしていただきたいと思います。
  51. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 問題は日本憲法上許されておる自衛権というものの幅がきまりさえすれば、それに集団的という文字がつこうが、個別的という文字がつこうが、実体はかわらないことと思います。かりに平和条約なり何なりで、集団的自衛というものが加わつておりましても、憲法で許されない権能を与える条約というものはありません。あくまでも憲法の範囲から厳格に自衛権というものを考えればそれでわれわれは済むと思います。それで日本の持つておる、認められておる範囲内の自衛権をあるいは独自の立場で働かすこともありましようし、よその国と手をつないで働くこともありましよう。よその国と手をつないだからというために、日本の本来許されている自衛権というものは幅広く広がつてしまうということはもちろんありません。従つてだからあくまでも自衛権というものは一つのものであるとお答えすれば御了解いただけると思つております。
  52. 並木芳雄

    並木委員 それではつきりしたのです。要するに当然憲法違反にはならないということは言えると思うのです。その範囲の問題ですから…(「それは違う。」と呼ぶ者あり)もしそれが違うのだつたら、はつきり言つてもらいたい。与党の方でわからないのなら、あとで聞いてください、私には今の長官答弁で、要するに日本自衛権発動の限界というものに対するいろいろの違いがあることは、憲法の趣旨を逸脱しないようにしてもらいたいということであるので、これはもうその通りだと思うのです。当然それが集団安全保障機構に入ることが、そうしてその中で自衛隊を海外に派兵することがあり得ると約束をしても、それは憲法違反には当然ならない、私はそういうふうに解釈するのです。もし違つておれば違つておるようにはつきりしてもらいたい。補足しますけれども自衛権発動としてそういうことがあり得るのだから、憲法違反にはならないと思うのです。
  53. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 私の一元的に考えております自衛権というもので、前の場合の例にとつてみますれば、昔は満州が日本の生命線であるということで、満州を日本の手に納めることは日本の自衛を全うするゆえんであるということで、満州に兵隊を出したことも自衛権と言つてつたわけであります。しかしこれは私の言う厳格な意味自衛権ではないと思います。自衛権というものの三原則から照らしてみれば、これはそこまで出て行つてどうこうということは自衛権の限界からは明白にはずれておることと思います。それと同じようなことをよその国と一緒にやることは当然できない、こういう結論になります。
  54. 並木芳雄

    並木委員 それではさつきの木村長官とニュアンスが違うのではないですか。そんなに小さく小さく縮めて、しまいには公務員の出張だというような考えなら、せつかく木村長官がそういうような待避的な、もつと強く言えば利己的な考えでもつて集団安全保障に参加しよう、その権利を得ようということは虫のいいこととだと思います。私はやはりアメリカでドラムライト氏が証言しているように、将来本格的な太平洋同盟が結成される場合には、日本も必ずこれに参加することになろうとまで言つておる集団安全保障、こういうものは今の佐藤長官のお考えではなくして、先ほどの木村長官のお考えであろうと思うのです。要するに日本意思として他国を侵略したりするようなことがなければいいのであつて日本を守る、日本の自衛であるという見地に立つならば、これはただそれが地域的に広がつただけの話であつて、何ら本質的にはかわりはないと思うのであります。その点はむしろ木村長官にお尋ねしたいと思います。私の言う通りだと思うのでありますけれども、木村長官はどうお考えになりますか——それではどちらの方でもいいです。
  55. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 私の申し上げたことを明らかにしたいと思いますが、私の言うのは、海外公務員派遣と申し上げまして、お笑いになりますけれども、海外に対する公務員の派遣がその相手国に対してお役に立つ場合もあり得ると思います。立つか、立たぬかという問題はまた別問題であります。実際上の問題としてお役に立つか、立たぬかという一点に私は尽きると思います。(「相手国の役に立つだけではないか」と呼ぶ者あり)それが双方お互いのためでありますから、日本のためにならないようなことをいたしませんということを木村長官はお答えになつております。それは日本立場で判断してそのことがいいか、悪いかというわけであります。
  56. 並木芳雄

    並木委員 木村長官、その点について何か答弁ありませんか。
  57. 木村篤太郎

    木村国務大臣 別にありません。
  58. 並木芳雄

    並木委員 もう一点、先ほどの交戦権なんですけれども佐藤法制長官は交戦権の制限があるからお役に立たないと、しきりにそこでのがれようとしますけれども、これは実際そういう場合に遭遇したときにどうでしようか。憲法では交戦権は認められておりませんけれども、実際となつたら交戦権は行使されるのではないですか。実際そういう危急な場面にぶつかつて捕虜の問題やら、あるいは船舶拿捕の問題やら、そういう場合にただぽかんとしているわけにいかぬと思うのです。これは実際の場合にはそういう危険に対処してもおそらくお役に立つのではないですか。法制長官がいくらお役に立たないと言おうとしても、お役に立つと思う。その場合に日本憲法には違反するかもしれませんけれども、国際条約、国際法には何ら抵触しないと思うのです。この点はいかがでしようか。国際法上、日本憲法でこういうようにきまつているものを、かりに実戦の場合にそういうことが起つたとしても、どこの国からも苦情も言われなければ、国際法違反でもない。言いかえれば日本の交戦権を制限した、これは認めないということは、前から言つておるのですけれども、盲腸のようなもので、実際の役に立たない規定だ、あつてもなくてもいい規定だ、こういうふうに思うのであります。従つて私は長官がお役に立たないと言われるが、制限されているからお役に立たないと言われるのは少し違うのではないか、こういうふうに考えます。いかがでしようか。
  59. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 お役に立たない方は、さつきの例で申しますとよそにお手伝いに行く場合のことでありますが、むしろただいまのお尋ねの重点は、日本が攻められて侵略を受けた場合に、交戦権がなくてはそれこそ日本のお役に立たないのではないかという点が御心配の重点だと思います。そういう点から考えますと先刻来申し上げますように自衛権というものが明らかに認められておりますから、それを防ぐ必要最小限度の措置自衛権発動として、それ以上のものは許されない、これはそれ以上のものがあればあり従いで、あるいはのびのびとした戦争の形をとれるかもしれませんけれども、これはこれとして憲法がおそれている部面になるわけであります。憲法は、第二項で交戦権を放棄しておしますのは第一項の趣旨を貫くために、一方においては実力としての戦力は放棄する、同時に法律の権利としての交戦権を放棄して、第一項侵犯の手がかりにさせないようにというおそれからできておるのでありますから、その憲法の趣旨から申しますと、あればあり従いということは、一方においては大きな弊害の根拠になるということであろうと思います。従いまして自衛権を許されておるその範囲内においての行動は、できる限りにおいては国を守るという必要最小限度の措置はとれると言わざるを得ませんし、またそれが正しいことであろうと思います。
  60. 並木芳雄

    並木委員 国際法上は何ら…。
  61. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 国際法的にはもちろん交戦権というものは一般的に認められておるわけでありますから、これを放棄しておるのは日本憲法日本のとる行動に対して禁止をしておる、それだけの法律的の意味でございます。
  62. 並木芳雄

    並木委員 大分時間もたちましたからこれで終ります。
  63. 稻村順三

  64. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 私は機会あらば木村保安庁長官に承りたいと考えておりましたが、なかなかお目にかかる機会がなかつたが、たまたま参りましたところきようお目にかかりましたので、この際私は承つておきたい。時間はきわめて簡単にいたします。しかし私にとりましてはまことに重大な、最も基本的なことだという考えに立つて承るわけであります。  ただいまも外務委員会で審議いたしておりますが、MSA受諾に伴うところの秘密保護法がございます。申すまでもないことでありますが、この法案はMSAによつてアメリカから貸与されます武器に対してのみ秘密を守らなければならぬということでございます。私は少くとも独立国であり、そうしてそこに日本の国土の防衛に当る自衛隊というものが存在いたしております限り、これは考え方によりましては軍隊といつてもさしつかえなかろうと私は考えます。国内の治安に当るものがかりに警察であるというならば、対外的な防衛の任務を持つたものは軍隊であると考えれば軍隊といつてさしつかえないと思います。しかる場合におきましてこの日本防衛に当つております自衛隊に、言葉が適当かどうかわかりませんが、軍機と申しますか、私は日本独自の機密というものがあつてしかるべきであると考えます。たとえばこの際防衛出動する、こういう場合におきましては当然ここに何らかの防衛秘密ということが起つて来る、私はかように考えるわけであります。先般もただいま御出席になりました増原次長にも承つたのでありますが、日本独自の国家機密というものが当然存在するのだ、私はかように考えるわけであります。おそらくは長官日本独自のものがあるのがあたりまえだ、こうお考えであろうと私は考えます。しかりとするならばただいま出ておりまするMSA協定に伴うところの、アメリカから貸与される武器に対してのみ秘密を守るのではなくして、もつ日本独自の立場から国家機密を守るということの必要性がありはせぬか、このことについては国土の防衛を担当されておりまする長官といたしましては真剣にお考えになつていることじやなかろうか、今後この問題をどういうふうに処置しようというお考えであるか、まずこの点からひとつつておきたいと思うのです。
  65. 木村篤太郎

    木村国務大臣 ただいまの御質問のような御趣旨も他にも受けたのです。そのときに私の申しましたのは、木村といたしましてはいわゆる一国独立国家たる以上国家機密がある、国家機密はある程度これを保護するのは当然である、いわんや今度自衛隊ができた以上は今仰せになりましたような防衛出動時における自衛部隊行動、装備、編成その他は相手方にわかつてはいけないのだ、スパイをされてはいかぬのであります。そこから日本防衛がくずれるという危険性もなきにしもあらずであります。そういうことについてはぜひとも保護すべき必要があると私は考えておる。そこで今御審議を願つておりまする秘密保護法案は、MSA援助によつてアメリカからもらい受ける装備その他についての秘密の保護のみに限つております。これと同時に、いわゆる今仰せになりました国家機密についての保護も一緒にやればいいじやないかという御質問、私も一応さように考えたのであります。しかしながらこれはあらゆる観点から十分に考究しなければならぬ、国民の権利に重大なる影響を及ぼすのでありますから、まだその時期じやない、よく検討いたしてその結果においていたすべきものなればいたしたい、こう考えております。
  66. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 さらに私はこれに関連してもう少し進んで承つておきたいと思いますが、今世界独立国のどこをながめてみましても——アメリカやイギリスのような大国はもちろんのことであります、フランスをながめてみましてもあるいはイタリアをながめてみましても、永世中立を宣言いたしておりまするスイスにおいてすら、軍機に対する保護法は厳然として存在をいたしておるのであります。ひとり日本だけが国家機密というものがない、法律上は存在し得ないのであります。一国は独立国として当然国家の機密というものは現実にはある、しかし法律上は秘密というものがないという日本は、まことにかたわのような状態になつておる。それで今日は日本という国は、世界のスパイの百鬼夜行いたしておりますとろの、スパイの都ともいうべき状態であります。終戦以来今日まで行われておりまする日本を中心とするところの幾多の機密の漏洩あるいはスパイ事件、ごく最近の一例だけを申し上げましても、ビキニから焼津へ持ち帰りました原子の灰がいち早く、日本が東京へ持つて帰りましてその検査をする、アメリカがかけつけてその検査をするというよりも前に、それよりもはるか以前にこの灰がすでにソ連に持ち去られているということは、外国の報道はこれを伝えておるわけなのです、ところがこれを規制する何らの法律がないというわけで、まつたくスパイを野放しにいたしておるというのが私は今日の現状であると考えます。長官はただいま、独立国である以上、国家の機密があるべきは当然であるということをお認めになつておる。しかしそれが国民の権利義務に重大な関係があるから慎重にお考えであるというようなお話でありまするが、私はこれらが遠い将来の検討にまつたり、そうしてその上で決定しようという問題ではなくして、保安隊が国内の治安から新しい使命を帯びて外敵に対抗するのです、そうしてわれわれ八千五百万の国民というものはこの保安隊に万全の信頼感を寄せなければならぬ、こういう段階となつて参りました。特にMSAの受諾によりまして、日本防衛体制というものがここに画期的な飛躍を遂げたこの段階におきまして、長官考え方がやや現段階に遅れておる、そぐわないような感じを私は率直に受けるわけであります。従つてこれは、いつの日かきわめて近い日に、日本独自の国家機密防衛措置をとらなければならぬ、その立法措置をとらなければならぬ。その時期は決して遠いものではない、私はかように考えるわけでありまするが、長官のこれに対する御所見はいかがでありますか。
  67. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。御指摘の点はまつたく同感であります。先刻も申し上げましたように、事国民の権利義務に重大なる影響を及ぼしますから、さような法案を作成いたすについては十分に慎重に考慮しなければならぬ、どの点までその機密の保護の対象を伸ばして行くか、あるいはその方法いかん、手続その他について国民の迷惑にならぬように十分に配慮しなければならぬから、それらの点については慎重に考慮して、われわれはこの法案の作成をいたしたい、こう考えております。
  68. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 政府立場から申しますると、いろいろな事情もあるかと考えまするが、私は最後にそのことを強く希望するということを特に強調いたしておきます。  さらに私は日本がスパイや間諜をまつたく野放しにした非常に変態的な状態に置かれているということが、日本の自衛体制確立の上におけるところの非常ながんであるということを考えますと同時に、もう一点私はこの際長官に承つておきたいことがあります。それは、今日国家機密が漏洩する、この国家機密の漏洩はどこで漏洩をしているかという問題であります。率直に申しますると国家機密の漏洩をいたしておりまする者は——日本におきまして外国人が非常に多い。しかもその国籍を申しまするなれば、ソ連並びにその衛星国の者が多いのであります。これを思想の面から申しますると共産党員であります。ところがこの日本の共産党は、今日は憲法のもとにおきまして、合法政党として存在が認められております。従つて保安隊の中にも、共産党員がいないとは長官自身も断言はできなかろうと私は考えます。現に私たちが今ここで記憶によみがえつて来ることだけを思い起してみましても、先般も福岡の総監部におきまして、軽機関銃が盗まれてしまつた。しかも盗まれて紛失したものが、まだ発見をされないというようなことも私は承つておる。東京においてはいかがでしよう。東京の総監部におきましては、新聞にも出ておりましたが、保安庁が民間に頼んでつくつた映画のフイルム、これは作戦や軍機に非常な関係があるものである。四十本ほどつくらしたが、その中の十五種類約三十本ぐらいが盗まれておる。盗んでおつた者もわかつて参りました。これは日本におりまするところの朝鮮人、密入国で出入国管理法違反の問題で取調べた結果、はからずもその中から保安隊のフイルムが発見されたということをわれわれは知つたわけであります。近くはいかがですか。これは先般も私は外務委員会において問題にいたしましたが、三重県におきまするところの相当大がかりな、保安隊の内部に共産党のフラクシヨンがありまして、外部との連携があつたということもすでにある新聞によつてはスクープされているところであります。私ども国警に行きましてこのことを調査いたしましたが、そういう事実のあつたことを認めております。私たちが日本防衛のためにほんとうに信頼を置いておりまするところの保安隊の内部に、かくのごとき共産党員が存在し、フラク活動がある。外部からはこれに対して反戦の気分をあおることもできれば、武器を持ち出せということを扇動することもできる。反乱を起せということを扇動することもできる。それは自由自在です。そういう扇動をしたからといつて、別に共産党というものは合法政党として認められておりまする限りは何ら処罰の方法はない。また隊内におきましては、単にその人間が共産党員であるというだけの理由によりましては保安隊から排除することはできないでありましよう。しかし今日あなた方の考えもわれわれの考えも、共産党というものは暴力的なものであるということは申すまでもございません。私どもいささかそういう方面のことを勉強いたしておりまするけれども、ここでそんなことを申し上げる必要はございませんが、とにかく暴力と離れて共産主義という思想はあり得ないのであります。その共産党員が保安隊の中に存在しておることが現実の問題として、隠れもない事実として今現われて来ておる。われわれはこういうものに信頼を置くことはできない。もとよりそれは少い部分ではありましようけれども、たとい少くてもその保安隊の内部にそういう者がおつて、しかもこれを排除することができないというようなそういう法律の建前になつてつて、われわれが安心して武器を託することはできないと私は考えます。そこでこの際私は佐藤法制局長官に承つておきたいと思いまするが、なぜ共産党員の保安隊への就職を禁止するという法的措置をとらないか、私は保安庁長官にも承りたいのでありまするが、これは憲法に保障されたところの言論結社の自由によるのであるから、共産党員であるからといつて保安隊から排除することはできない、こういうふうなことをおつしやるかもしれませんが、保安隊へ入るときは、強制徴兵でなく契約によつてつて来るわけでありますから、その契約のときの条件といたしまして共産党員は採用しないぞ、また共産党員であることが判明した場合には排除する、こういう法的措置をとるということは何ら憲法に違反しない、違憲ではない、私はかように考えるわけでありますが、法制局長官のその点に関する法的見解はいかがでございますか。
  69. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 憲法の大原則といたしましては、その人の信条、思想等によつて公職につく資格等を差別することはできないわけでありますから、その点からも制約があると思います。かりに共産党というものが非合法政党である、明らかにこれは国のために害があるという烙印が押された後においては、これはお話のような段階にも入り得ると思いますけれども、そうでない段階においては今の憲法上の原則を慎重に考えなければならない、こういうふうに考えております。
  70. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 佐藤法制局長官の見解と私のそれとは大いに異なつておると思います。徴兵制というものがありまして、政府の思う人間を自由に徴兵する場合におきましては、そういうことも言い得るでありましようが、たとえば会社が社員を採用するときに、共産党員は採用しないということを言つたからといつて、どこが憲法の違反になるのでありましよう。同じことではありませんか。保安隊は契約によつてつて来るのであります。契約をするときに雇い主が共産党員であるものは採用しないということが、どうして一体憲法に違反するのでありますか
  71. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 何党とかいうことでなしに、およそ暴力主義的な破壊的なものの構成員でありますが、これは保安庁法にもありますし、国家公務員法にもございますが、そういうものを欠格条件として排除しております。今度の案でございますれば、三十八条の欠格条項のところに、第一項第四号といたしまして、「日本憲法又はその下に成立した政府を暴力で破壊することを主張する政党その他の団体を結成し、又はこれに加入した者」、こういう形の条項は現在もございますし、今度の案にもございます。
  72. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 私は詳しく読んでおりませんが、その中に規定されておりますところの、暴力をもつて国家を破壊するという政党——共産党は今回私の側から申しますると不幸にして暴力をもつて国家を破壊する団体とは法律は認めていないのです。法律においては共産党は合法性が認められておるのです。従つて共産党であるというだけの理由によつては部外排除ができないでありましよう。できますか。
  73. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 現在の、お話のような段階のもとにおいては、共産党はとにかく合法政党になつております関係上、今のような結論はむずかしいことになると考えます。
  74. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 私は共産党は合法政党であるから部外排除ができるとかできないという問題を言つているのじやないのです。先ほど一つの例をあげましたが、会社が社員を採用する場合におきまして、この会社の方針として共産党員あるいはシンパサイザーのごときは採用しないということを会社がきめたからといつて憲法違反にならないでしよう。同じじやありませんか。保安隊が契約によつて隊員募集する場合におきまして、契約条項として共産党員は採用しないんだ、もしそのことが判明した場合におきましては、いつにてもこれを排除するのだ、こういうことをきめることがどうして憲法違反になるんですか。
  75. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 国が一方の関係に立つております場合は、会社の場合とは違うと思います。たとえば宗教の関係で申しましても、たとえばキリスト教の団体が出版事業をやつておる、その出版社においてキリスト教の信者だけしか採用しないということはあたりまえのことだろうと思います。ところが国の公務員を採用する場合に、キリスト教の人しか採用しない、あるいは仏教の人しか採用しない、これは憲法上の制約になるわけでございますから、普通の会社の場合とは違うように考えております。
  76. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 そこで直接木村長官に伺いますが、共産党であるということがわかつておりましても採用いたしておるのでありますか。共産党員であることが判明したならば、その理由によつて採用しないでありましようか、いかがでありますか。
  77. 加藤陽三

    加藤政府委員 私からお答えいたします。私どもといたしましては、保安隊員の採用につきましてはその者の適格性を考慮いたしまして採否を決定いたしております。その者がいかなる思想かということを判断いたしまして最も適格性のある者を採用することにしております。またつけ加えて申しますと、自衛隊法四十二条に身分保障の規定がございますが、その第三号にその者がその職務に必要な適格性を欠く場合には、この者を排除できるような規定もあるのでございます。それから六十一条に政治的行為の制限がございますが、その政治的行為が何たるかは一般職員についての人事院勧告に照応いたしまして、適当な事項を政令をもつてきめることにしております。現在保安庁法施行令できめておりますのは、特定の内閣を支持し反対するという政治的行動をする者は、これに該当するものときめてあります。それらの点によりまして保安隊の運営に適格でない者は排除できるという仕組みになつております。
  78. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 一体共産党が保安隊に適格性を持つておるというようなお考えはありますか。
  79. 加藤陽三

    加藤政府委員 私どもは今申し上げました通り、共産党員とか何とかいうことでなしに、その者個人の適格性によつて判断するということにしておる次第でございます。
  80. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 私はなぜそういうなまぬるいことをして、そうしてわけのわからないような答弁を続けなければならぬのかと思うのであります。国民は今日そんなことを望んではおりませんよ。それでこの際承りますが、保安隊の中におきましては、思想教育というようなことは別にやらないのですか。共産主義がいけないのだというような教育はやらないのですか。一体今日の保安隊は反共的な思想の上に立つてできてないのですか、確固たる反共的な思想があつて初めて、祖国を託するに足る力強い保安隊だと考える。その点はどうですか。
  81. 木村篤太郎

    木村国務大臣 保安隊員の教育につきましては、共産党が悪いとか何とかいうことを目標にしてはやつておりません。とにかく保安隊員たるべき者は、日本の国土防衛の第一線に立つ大きな重責をになつておるものである、この自負と抱負を持てということを第一に掲げております。第二に保安隊員は規律訓練、これを十分にしろ、規律訓練のしつかりしないときには保安隊というものはくずれて行くのだ、これに重点を置いております。思想的面については、別にどの思想がいいとか悪いとか申しません。ただわれわれは一社会人としてもりつぱに尊敬されるべき教養を身につけなければいかぬということにおいて、しつかりした人間たらんことを期してやつておるのであります。その中において私は十分に、どういう思想がいいか悪いかということが、おのずからその人の判断によつてわかるようにすべきであろうと考えておるのであります。どの思想が悪い、どの思想がいいということを表に立てて教育はしておりません。さような次第でありまして、われわれは共産党であるからいけないというような教育は、今のところでは施しておりません。
  82. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 私は大いに見解が違う。共産党であるからいけないのです。共産党であるということは、とりもなおさず、先ほどおつしやつた暴力をもつて国家を破壊をしたり、日本侵略しようという使命を持つておるのです。日本共産党も世界の共産党の一翼なのであります。世界の共産党の至上命令が何であるかということは、はつきりおわかりでありましよう。そういう使命を持つた日本共産党員が保安隊に潜入いたしておる。そういう場合におきましては、共産党員であるというだけの理由によつて、りつぱに部外排除の名目は成立つ。それをすることは決して憲法違反ではないと思う。私は長官に承りますが、一体国土の防衛をしなければならないというが、何から日本を守るのですか。外敵の侵略でありましよう。予想される外敵の侵略は何でありますか。日本を取巻くところの共産主義陣営の侵略から、光栄ある祖国を防衛しようとわれわれは考えているのじやありませんか。私は長官の心境も私の心境と同じような立場であろうと考えます。ただいろいろ政府立場からおつしやつていることだろうと考えますが、長官に最後に承つておきます。どうです、ひとつ共産党員は絶対に採用しないという鉄則を立てる、もし就職後共産党員であることが判明した場合におきましては、これを排除するというような法的措置をとる、私はそういうふうになさるべきだと考えるし、国民も要求いたしておると思いますが、これに対してお考えはいかがですか。
  83. 木村篤太郎

    木村国務大臣 われわれといたしましては、あくまでも暴力は否定して行きます。共産党員たると何党たるとを問わず、暴力は絶対に否定すべきであろう、その意味においてわれわれは、仰せになりますように、共産党員が暴力をもつて来ればこれは排除しなければならぬ、こういうふうに考えます。そこで今申し上げました通り、教育の方法としては何党とか何とかいうことは一切指示はいたしません。つまり暴力否定の見地から教育をしておるのであります。そこで今仰せになりましたように、共産党ということを表に掲げて共産党員及び共産党員たりし者を保安隊にとらぬという明文を置けということでありますが、これは私は日本憲法下においては実はむずかしいと考えております。しかしわれわれは、採用するにおいてはおよそ暴力的破壊思想を持つておる者は、これは危険であります。これらの点について重点を置いて採用のときに十分考慮するわけであります。なおつけ加えて申しますと、近ごろ、あなたの仰せになりますように、共産主義者のこの隊に対しての働きかけが相当頻繁になつていることは事実であります。われわれは十分それに対して考慮をいたしております。しかしこういう者のやり方は普通の犯罪者のやり方と違うのであります。きわめて巧妙にやつておりましてそれについて把握することがなかなか困難であります。われわれは十分慎重にあらゆる手段を講じて、そういう危険な者の保安隊に入ることをどこまでも阻止しなければならぬという見地から万全の措置をとりたい、こう考えております。
  84. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 私はもう一点だけ申し上げて、質問を打切ります。他に御質問の方もあるようでありますから……。
  85. 稻村順三

    稻村委員長 たくさんあるのですから、少し短かくしてください。
  86. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 私はただいまの長官のお言葉によりまして、これはやや佐藤法制局長官のお考えとは長官は違うようでありますが、長官答弁を得て私も非常に意を強うしたのであります。共産党員であるというような理由によつて、部外排除することもできるというお話であります。これは決して憲法に違反するものでないという御所見、私もその通りだと思う。佐藤法制局長官は、後日もう少しこの問題を真剣にお考え願いたいと私は考えます。そうしてあらためてまた承りたいと思う。  最後に私は長官に申し上げておきます。繰返すまでもないことでありますが、あなたは暴力は否定されておるのでありますが、共産党という政党の至上命令というものは、暴力によつて革命を起し、国家を転覆することなんであります。暴力によつても、自分たちの目的を達するためにやる一切の行為は合理的であるという考え方に立つておるのです。従つて共産党というものは、とりもなおさずあなたの言われておるところの暴力政党であるのだから、これは保安隊に入れてはならない。この鉄則をただいまもおやりになつておると私は思いますが、現に三重の事件やあるいはその他いろいろな事件など、内外呼応してフラクシヨンの活動が行われている、こういうことを見ましたときに——先般来もここに参考人の方がお見えになりまして、軍人出身の方もお見えになりまして、そうしてこのMSA協定やあるいは防衛法案の審議にあたりまして、もしもこの自衛隊というものが、赤の手によつて利用されるということになりましたならば、たいへんなことになる。これが日本の革命に転化しないとだれが保証できるかとおつしやつたことを、私は与党席におりましたけれども真剣に承つたのであります。およそ世界の革命の歴史を見ましても、軍隊の赤化ということが革命の発端であります。かような見地から考えますと、まことに憂うべき事態のあることを真剣に私は痛感をいたしますがゆえに、あえて私は答弁はいりませんが、お願いをいたしておきます。ただいま私の申しました趣旨に沿つて、すみやかに何らかの法的な措置をとつて、共産党員である者の就職を禁止する、部外排除ができるというような方向へ持つて行かれるように政府もお考えを願いたい。私たちもこの国会立場から、及ばずながらこれらの問題につきましては努力をいたしたい、かように考えることだけを申し上げまして、私の質問は打切つておきます。
  87. 稻村順三

    稻村委員長 細迫兼光君。
  88. 細迫兼光

    細迫委員 木村長官に伺うべき性質のものかもしれませんが、私法制局長官にまず予備的に承りたいのであります。木村長官も法律の専門家ではありますが、長年の政治家生活に、法律的な良心——良心と言つては何ですが、純真性をどうも混濁せられておるような傾向が見えますので、純粋な法律問題としてまず法制局長官に承りたいのであります。この自衛隊法によりますと、海上自衛隊の実質上の存在は自衛艦隊——第十五条などに見えますが、自衛艦隊であります。これは軍艦の集団であると解釈することが自然だと思うのであります。しかもこの任務は外国からの侵略に対して、わが国を防衛するという任務を持つた、そうした軍艦の集団であります。こういう存在は一体国際通念上海軍ではないのであろうか。いかがお考えでございましようか。
  89. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 海軍あるいは軍隊、軍艦についても同様でありますが、これは私は国際法的に確定した基準、定義というものはないと思います。御承知通り軍縮条約において、たとえば軍隊の定義ということをするために、多数の国の学者がひたいを集めて考えたのですけれども、とうとうその定義ができなかつたといういきさつさえあるのであります。これは法律的な厳格な定義というものでなしに、一般の通念として考えるほかないと思います。そこでいろいろな定義の立て方がございますけれども、今お言葉にありましたような定義を立てますれば、それは軍艦であり、あるいは海軍であると申しても、これは理論的にはさしつかえないことと思います。
  90. 細迫兼光

    細迫委員 そう考えてもさしつかえないということより一歩進んで、私の断定によれば、外国の侵略に対して自国の防衛を任務とする軍艦の集団である、これは海軍であると確信いたすのであります。今の長官の御答弁の範囲におきましても、これは憲法に違反する存在でありはしないかという疑いが濃厚であります。憲法第九条の表わしておりまするいわゆる戦力、これは文字通り正直に読みますれば、陸軍という戦力、海軍という戦力、空軍という戦力、その他の戦力はこれを保持しないということであつて、従来の政府の御答弁のように、総合したその力が、今日大きな国際戦争において役に立つようなものでない限り戦力でないというような、総合的な意味においてあの字句が使われているとは解釈できないのであります。個別的にこれは単数を並べたものであつて、陸軍という戦力、海軍という戦力、空軍という戦力、その他のあらゆる、そういう名前ではないがあらゆる戦力は保持しない、こう理解しなくちやならないと考えるわけであります。そうしますれば予想せられる自衛隊、少くともその海上自衛隊なるものは、憲法違反の存在に相なりはしないかと疑うのでありますが、いかがでありますか。
  91. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 ほんのちよつとしたところを除きますれば、まつたく同じように考えております。おつしやる通り陸軍という戦力、海軍という戦力、みんな戦力という言葉がついているわけであります。要点はここで、第二項において戦力というところに尽きると思います。ただその戦力というものを気に食わぬと私の申し上げるのは、総合されたものと考えていらつしやらないように思いますから、そこが気に食わぬというのですが、私どもとしては、総合したものと考えなければこれは意味をなさぬ条文であると考えております。その点において違うわけであります。今の憲法の趣旨から申しますと、およそ力をおそれておるということの一言に尽きると私は思います。ある段階に達した力というものをおそれておる。その段階は何かという場合に、たとえば警察のような実力というようなものはおそれていないことはここにはつきりしておるわけであります。そこでどの程度に線を引いた力というものを禁止しているかという点が問題になるわけであります。これは考え方によつていろいろ違いましようけれども政府といたしましては、近代戦を遂行する力ということで、そこを憲法のめどとしておるわけであります。そこで陸軍とか、海軍とかいろいろありますのは、今のお言葉にも出て参りましたように、これはその実力部隊の持つておる任務の問題、目的の問題であります。この目的というものは、かねがね申し上げておりますように、あるいは国内の治安維持の目的というならば許されるのかというと、私は目的というのは看板なりレッテルなりのようなもので、いつでもはげ落ちるものである、そんなものを憲法が相手にしているはずはないと思います。かりに内乱に備えての治安維持のためという看板を掲げておけば、どんな力でも憲法の上ではいいかというと、そんなものではないと私は思います。従いまして今のお言葉にもありましたように、陸軍という戦力、海軍という戦力、およそその戦力というものを念頭に置いて憲法は禁止しておるというふうに考えるわけであります。従いまして個々のものを取上げて、これを陸軍と言つてもよろしゆうございましようし、海軍と言つてもよろしゆうございましようが、その力そのものが憲法の恐れる力になつておらないならば、これは単なるレッテルの問題である。レッテルを張りかえて、治安維持というレッテルを張ろうと張るまいと、憲法の関知するところではない。そのよしあしは政治の問題として、国会においてきめらるべきことで、憲法の問題としてはそこまで考えられておらない、そのように考えておるわけであります。
  92. 細迫兼光

    細迫委員 私もちよつとのところを除いては、御同意してよろしいのであります。長官のお言葉の中にも任務という問題が出て参りました。私はこの憲法が禁じておるのは必ずしも力そのものだけではないと考えております。それはなぜかといえば、この憲法が戦争を放棄しておりますことと関連して考えますときに、その力のみならず、外国軍隊と交戦するというその事柄自体に役立つ何物をも保持しないことを宣言しておるのであつて、大前提においてそういう任務が生ずべき根本を放棄しておるのでありますから、ここではその任務をこそ重大に取上げておるのではないかと私は思う。国際通念上、外国の侵略に対して自国を防衛する一つの力は、客観的に見てどんなに小さいものであつても、これは陸軍であり、海軍であり、空軍であり、一つの戦力である。日本憲法が禁じておる、そういう任務を持つた戦力という意味において戦力である、こういうふうに思うのであります。たとえばニュージーランドなんかは、陸軍が三千、海軍が一万、空軍が三千五百で、ジェット機なんか持たないといいますが、これはおそらく確実なことでありましよう。東京新聞の梅原論説委員の書いたものによるのでありますから……。こういう国際的には問題にならないような貧弱な力しか持たないものであつても、国際通念上これは軍隊である、戦力である、こう私は思わなくちやならぬ。何が一体日本憲法において許された範囲か、許されざる範囲かというけじめをつけるキー・ポイントは、むしろ力そのものよりも任務そのものではないか。外国侵略に対して国の防衛をつかさどる任務を持つた武力は、すなわち国際通念的には陸軍であり、海軍であり、国際通念的に言われる戦力ではないか、かように考えるのでありますが、いかがでありましようか。
  93. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 任務に着眼して考えますと、先ほども触れたのでありますが、たとえば大きな内乱を予想して治安の維持のためだという看板を掲げておれば、相当のものを持つていいかどうか。これは許されなければならぬという結論になるわけであります。私どもは先ほど触れましたように、そういうものはレッテルですぐはげるものでありますから、およそ力が恐ろしければ、任務のいかんにかかわらず許さぬというところで一貫しないと、どうも話が通じないように思うのであります。そこでお言葉にちよつとありました、陸海空軍というようなものならばどんな小さなものでもいけないという立場をとつておる学説もありますが、私どもそれを考えてみますと、「陸海空軍その他の戦力」とある場合において、陸海空軍というようなものならどんな小さなものでもいけないという立場をかりにとりますと、その他の戦力というのは何かといいますと、いつでもそれに転化し得るようなものというふうにずつと読まなければならぬと思います。そうすると陸海空軍はどんなに小さなものでもいけない、ところがその他の戦力はどんな大きなものでもいいかというと、そういう理論は出て来ない。陸海空軍に転化する力はいけないということで「その他の戦力」を読まなければならないから、どんな小さな陸海空軍でも、およそ外敵と戦うようなものはいけないということになると、これにいつでもかわり得るような実力のものは「その他の戦力」でいけないということになつてしまいますから、普通の警察力も何も持てなくなつて、どうも論理が貫けなくなるというように考えまして、先ほど申し上げましたような、およそ戦力ということで、すべての任務を離れて考えないと説明ができないのではないか、かように思つておるわけであります。
  94. 細迫兼光

    細迫委員 承服しがたいのでありますが、これ以上は押問答になると思いますから次の問題に移ります。それは国際紛争という問題について、同じく法制局長官にお伺いいたしたいのであります。  私の意見と申しますより権威ある国際法学者の言葉によりますれば、国際紛争とは大よそ二国以上の政府間において意見が合致しない、主張が合致しないで、そこに解決点の見出されない事態、これを国際紛争というべきであろう、こういうことなのでありますが、すなわちそれは民間のいろいろな紛争とは性質が異なつておる。こういう観点に立ちまして、さて問題を明確にするために具体的な例を引きますが、李承晩ライン、これは李承晩の一方的な宣言であつていやしくも公海上において他国を排他的に排除することはできない。これは公海自由の原則に反する違法なものだと私は思つておる。しかるに李承晩の方では何とかかんとかりくつをこねてその正当性を主張しておる。これは一つの国際紛争ではないか。また一つには竹島問題。竹島に何か急迫不正な侵害があつた場合にこれを排撃し、これを防衛するということは、わが国の自衛権発動として、当然に武力を使用することができるのだというような御見解が従来政府側からなされておるのであります。ところがある一つの島、地域——国際的な現実の問題として、川の中に横たわる一つの中洲の島というようなものについて問題の起つた実例を、私小さい経験によつてつておるのでありますが、竹島が日本の所属だ、韓国の所属だといつて、お互いに政府同士がそこの所属の問題について見解を異にしておる、こういう事態は国際紛争の一種じやないか、かように考えるのでありますが、御見解はいかがでありましよう。
  95. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 それはやはり国際紛争の一種と申してよろしいと思います。
  96. 細迫兼光

    細迫委員 しからば木村長官にお尋ねをいたしますが、たしか木村長官のお言葉ではなかつたかと思いますが、そうでなくても政府の責任ある御答弁でございました。竹島に急迫不正の侵害がある場合には、自衛権発動としてこれを撃退することができるということでありました。これはおそらくどこにも紛争のないわが内地の領土と同一視したお考えの上に立つておると思うのでありますが、その緊急不正な侵害を排除するというような瞬間的な行動においては、あるいはなお容認せられることがあるかもしれませんが、これが発展いたしまして互いに艦隊を出動さして、その排撃行為が次第に激化するというような状況は、これはいわゆる国際紛争を解決するための武力行使ではないだろうか、これは従来の御答弁より一歩進めた質問でございますが、御所見を承りたい。
  97. 木村篤太郎

    木村国務大臣 申し上げるまでもなく、国際紛争とは当事国でその主張をお互いに異にし、一致しない争いがあつた場合であります。その争いがあつた場合に、一方が武力をもつて自分の意思を相手に押しつけ、相手の意思を屈服させるためであります。これが国際紛争解決の手段で、その場合において武力の行使をしてはいかぬ。今お示しの竹島において不時に韓国の艦隊が出動して来て、ここに暴力を持つて来た、日本がこれを排除するために武力を用いるようなことは、私は決して国際紛争解決の手段ではないと考えております。さような場合においては自衛権発動として見るべきものであろうと考えております。これが争いになつて、相手の意思を屈服せしめるところに武力の行使はしてはならない。戦いを交えるというようなことがあつてはならぬことは当然であります。公になつてお互いと主張し合い、その意思表示の場合において相手方の武力を排撃するということは、何も国際紛争解決の手段ではないと私は考えます。
  98. 細迫兼光

    細迫委員 お言葉ではございますが、由来、ことに近い時代におきましては、いずれの戦争におきましても、自衛を名としないものはないのであります。日本の大東亜戦争における宣戦の宣言においてもその例を見るのであります。今や自衛のため決然立つて一切の障害を破砕するほかないのであるという宣言であります。これは一つの例示でありますが、しからざるものはほとんどないのであります。自衛行為が客観的に戦争に発展して行く、その発展して行つた戦争は、わが憲法においてこれは禁じておると私は思うのでありますが、長官の解釈を拡大して行くと、瞬間的な、また衝動的な自衛権発動が発展して行つて戦争状態になつても、その戦争の内容が自衛ということの発展であるならばよろしいのだというところまで行かざるを得ない論理の筋だと思うのでありますが、そこまで発展さしてよろしいでございましようか。
  99. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。自衛権の行使におのずから限界があるのであります。いわゆる急迫不正の武力侵入、これを排除するために自衛権は行使されるものと固く信じております。それが排除し得ればそこで自衛権の行使というものは当然とめるべきものとわれわれは考えておるのであります。
  100. 細迫兼光

    細迫委員 まことに明確を欠く御答弁でございますが、問題の主点を少しく角度をかえまして、交戦権は——交戦権という問題に入りましようが、これは今のような木村長官のおつしやるような抜け道を許さない絶対的なものだと思うのであります。交戦権は認めないということでありますが、この交戦権の問題につきましては、かつて木村長官と論議を上下したことがありまして——私も国際法はとても不勉強でいまだによくわからないのでありますが、この交戦権は政府の御解釈によりましても、船舶の拿捕であるとかあるいは捕虜に関する権利であるとかいうことになつておる。その中に平時においては許されない外国兵を殺傷するということが含まれておるかどうかということについてかつて論議を上下いたし、木村長官はそれは含まない、こういう御答弁であつたのでありますが、その後の論議の発展によりまして、政府の厳格な解釈によれば、法制局からの御答弁でありましたが、平時に許されない外国兵を殺傷するという事項も、憲法認められていない交戦権の中に含まれるのだということは今やはつきりいたしました。木村長官との前からの続きの交戦権に関する議論においてまず勝名乗りをあげておきますが、そういう交戦権の行使が自衛権発動としては許されるのだというような御見解に結局ならざるを得ないではないか。これはきわめて簡単に申してしまいましたから誤解があるかもしれませんが、そういう結論に相なるかと思うのでありますが、いかがでございましようか。
  101. 木村篤太郎

    木村国務大臣 日本憲法第九条第二項のいわゆる交戦権を否認しておる規定は、要するに国際法上交戦権として有する権利をさすものとわれわれは解釈します。今お示しの船舶拿捕、臨検その他、もろもろの戦争状態より来る交戦権を持つている権利をさすものとわれわれは考えております。
  102. 細迫兼光

    細迫委員 そのほかに、明確に言えば、侵略された場合に相手国の将兵を殺傷する権利、これも交戦権に含まつておるということ、これは議論の余地のないところであります。この外国兵を殺傷するということを否認したままこの自衛権発動ということがあり得るかという問題でありますが、それはあり得るということを従来にも漏らされておつたことがありますから、おそらく同様な御答弁であろうと思いまするが、進んで、たとえば竹島において韓国の侵略が継続せられるというような場合に、こちらも継続してこれを排除するということになりますと、相当継続した戦闘状態がここに起ります。最近の事実としましては、宣戦の布告せられた戦争はむしろ少いのでありまして、アメリカにおいても、かつて十ばかり戦争をやつておりますが、宣戦布告なき戦争がその中に五つあると申します。国際法学者に聞きましても、さように申しております。宣戦布告なき戦争、戦争と名づけられない戦争が最近多くなつたと承つておるのであります。いかに自衛権は万能だと言つても、認められない交戦権もその範囲では振りまわすことができるんだという御議論にいたしましても、継続的にそこに攻防作戦、大砲の撃ち合いということが行われるという客観的に見て戦争状態が起りますれば、宣戦布告なくしてもこれは戦争である。その段階に至りますれば、もはや自衛権発動云云という段階通り越しまして、戦争状態と相なり、従つてそこに交戦権なくんば、大砲を撃つて敵艦を撃沈し、あるいは敵の将兵を殺傷することはできないと思うのであります。そのけじめを一体どこでつけられるか。これからはやれないのだ、これまでは自衛権発動として、たとい憲法で交戦権が否認せられておろうとどうであろうとやつてかまわないのだという限界、境界線は一体どこに設けられるか、自衛隊の将来の行動において不安なものを多く含んでおると思いますから、お尋ねいたしたいと思います。
  103. 木村篤太郎

    木村国務大臣 自衛権の限界は、先ほど申しましたように、つまり急迫、不正の侵害を排除すればいいのでございます。それより進んでは相ならぬ、そこに限界を求むべきものであろう。私がこの際特に申し上げたいのは、細迫君の御議論によりますると、かりに対馬の一角あるいは九州の一角にどこかの某国が、これはおれの国のものだといつて、不正の侵害をして来たときに、日本は何も手を出すことはできぬような結論になるのではないか。それであつてはいかぬ。さような不正の侵害に対しては、われわれはこれを排除するだけの力を持ち、また排除しなければならぬ。しかしそれを排除すれば、それより進んではいかぬ。急迫、不正の侵害を排除すれば、それでとどめておく。そこに自衛権の限界がある、こうわれわれは考えております。
  104. 細迫兼光

    細迫委員 攻撃は最良の防禦だということは、昔からの戦争の原則だそうでございまして、それではおつしやるような範囲の自衛権発動ではとても自衛そのものを達し得ないということになつて、そこに大きな危険性を生むと思つて、そういうところまで申し上げたのでありまして、これは木村長官の一時の議論上のごまかしにすぎないと私はあくまでも思うわけであります。しかし後の質問者もございますから、問題を別なところに求めて参ります。  間接侵略という問題でございます。自衛隊法の内容につきましても、基本的人権の問題その他に関するいろいろな問題を私は感ずるのでありますが、主として外交に関する方面のみをまず取上げたいと思うのであります。  従来の御説明によりますれば、間接侵略とは、国内におけるいわば内乱状態を想定しておられると思うのであります。ところが私ども現実の情勢に照して危惧しますることは、仏印などの問題における事柄であります。仏印も共産主義勢力に握られてしまつては、わが国に対して危険だというようなことから、これに対してあるいはどこかからの要請があつて、いろいろな寄与をせにやならぬような方針がとられた場合、その口実として、あすこが共産主義勢力に握られれば、わが国の防衛にとつて危険だ、仏印の戦争に何かの寄与をするということも、これ日本防衛の一環であるというようなことが言われる危険性があると思うので、あらかじめこの逃げ口を封じておきたいと思うのでありますが、さような構想なり予想なりは現在において持つておらないと思うのでありますが、念のためにはつきり宣言を承りたいと思うのであります。
  105. 木村篤太郎

    木村国務大臣 他国の国内の戦争に対しては日本は絶対関与すべきではない。さような場合に日本自衛隊がどうのこうのということは、私は思うだに想像もつかぬことで、さようなことは絶対あり得べきことではない、こう考えます。
  106. 細迫兼光

    細迫委員 どうぞ変説、改論なさらないように希望いたしまして、あとの人に質問を譲ります。
  107. 稻村順三

    稻村委員長 戸叶里子君。
  108. 戸叶里子

    戸叶委員 私は二、三点御質問したいのですが、その前にはつきりしておきたいことは、先ほど並木委員に対して木村保安庁長官ははつきりと、東南アジアの集団防衛アメリカから要求された場合に、日本にもしもそれが呼びかけられたならば、日本の利益になるならば利益になるような方法をとつてそれに参加することもあり得るし、また参加したならば甘い考えではいられない、やはり義務も尽さなければならない、こういうことをおつしやいましたが、これは現憲法においては許されないことと思いますが、もう一度はつきりお答え願いたいと思います。
  109. 木村篤太郎

    木村国務大臣 もちろんわれわれの国の行動というものは、憲法の許されたる範囲内に限られるのであります。今並木委員に対する私の答弁の要旨もまたここにあるのであります。もちろん参加した場合におきましても、憲法の許されたる範囲内においてわれわれは行動すべきものであろう、こう考えております。
  110. 戸叶里子

    戸叶委員 そうなりますと、参加すること自体は決して憲法違反でない、こうお考えになるのでしようか。
  111. 木村篤太郎

    木村国務大臣 この機構の内容を十分検討しなければ、何とも申し上げることができないと、私が申し上げたのはそこであります。
  112. 戸叶里子

    戸叶委員 先ほどそれに対しまして法制局長官は、木村保安庁長官との考え方がたいへんお違いになつていらつしやるようでしたが、何とかこれを合せようとして、公務員の出張のようなものならあり得る、こうおつしやいましたが、公務員の出張ということにしても、それに協力するということは現憲法においてはできないことだと思いますが、その点はどう思われますか。
  113. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 要は協力の仕方といいますか、そのときに受持たせられる仕事の実体の問題になると思います。従つて私は、交戦権がないというままで行くのでありますから、お役に立つ場合は少いでございましよう。例をとればちようど建設省のお役人が技術者としてお手伝いに出て行くという場合に、むしろ近くはないかと思いましたから、公務員派遣と申し上げた気持はそういう気持であります。役に立つか立たぬかは実際問題でありますけれども、そういう憲法上の制約があるということだけは、どこえ行つても背負つて行かなければならないということでございます。
  114. 戸叶里子

    戸叶委員 木村保安庁長官に重ねてお尋ねしたいのですが、そうしますと、たとえば先ほど並木委員がはつきり仏印の例を引かれて言われましたが、もしも仏印の場合に集団防衛というようなことが考えられて、そして日本にその中に入ることを要請された場合には、仏印自体の問題から考えるならば、これは内乱であるかもしれませんが、他の国がこれに加わつて来ますと国際紛争ということになつて参ります。そこでそういうふうな国際紛争には、絶対に日本は参加する——国際紛争の解決のための集団防衛には参加することができない、こういうふうに私どもは了承いたしますが、それでいいでしようか。
  115. 木村篤太郎

    木村国務大臣 私は先ほども答弁いたしましたように、いわゆるこの集団防衛機構の内容が少しもわからぬのであります。どういう目的でもつて、どういう内容になつておるか、まだわれわれははつきりわかりません。それだから何とも言えませんが、少くともわれわれは日本憲法の許されたる範囲内において行動すべきである。それだからもしも外国派遣とかいうような問題ができた場合には、これは日本で禁止されておれば、もちろんそういうことはあり得ないことなんでありますから、その派兵とかいう問題を抜きにして、どういう協力をするかということを考えるべきであろう。こう考えております。
  116. 戸叶里子

    戸叶委員 そこで自衛権の問題に移りたいと思いますが、先ほどの細迫委員の質問の御答弁を聞いておりますと、自衛権発動というものは不正な侵略を排除するのである、こういうふうに木村保安庁長官は答えておられます。ところが実際問題といたしまして、排除しようといくら努力をいたしましてもなかなか排除ができない、そうすると日本の方でも軍艦か何か知りませんが、だんだんそういうものをふやして、向うもだんだんふやして行つて、それが長引いて三箇月なり五箇月なりあるいはもつと半年ぐらい続くというような場合が起きて来ると思います。こうなるとこれは明らかに戦争というふうなことに解釈されると思いますが、それでもなおこの自衛権、こういうふうにおつしやるのでしようか。
  117. 木村篤太郎

    木村国務大臣 他国、外部からの不当な侵略行為があつた、これに対して日本防衛する、それが少々長引く、いたし方ないのであります。これはわれわれといたしましては排除し得るだけの万全の処置を講じたらいい、これは独立国家の当然の責務であると思います。その場合にわれわれは国民の大多数は協力するであろうと考えておりますから、日数の問題ではないと考えております。
  118. 戸叶里子

    戸叶委員 日数は問題にしないといたしましても、その場合に、向うもいろいろな武器をそれに応じただけのものをふやして行つても、それでまたそれがどんなに長引いても、両方そういうようなことが行われても、これは自衛権である、自衛権の範囲内である、こう了承していいわけですね。念のためにもう一度……。
  119. 木村篤太郎

    木村国務大臣 私はこれは自衛権の範囲内であると思います。そういうことをして、日本が途中で侵略されてしまえば、日本の国が破滅になるのでありますから……。
  120. 西尾末廣

    ○西尾委員 ちよつと関連……。先ほど伺つておりますと、法制局長官細迫君の質問に答えて、たとえば竹島の領土権が日本にあるのかあるいは韓国にあるかということについて争いがある、それを解決するということは、これは国際紛争である、こういうことを明言せられたのであります。そういうような意味において、それを国際紛争であると考えることは、日本の側にとつては、そうでなくて自衛権だと言うでしよう。韓国の側では、韓国の領土を守るための自衛権だと言うでしよう。そのいずれが正しいかということについて、そこに国際的な紛争が起つた長官の言明はこう仮定するのが正しいと思うのであります。その国際紛争を解決するために、長期——これは時によれば今度の自衛隊が創設され、アメリカからいろいろMSAの援助に伴うところの艦隊が提供せられ、日本が全艦隊をあげてこれを守ろうとする、あるいは韓国もまた全艦隊をあげてこれを守ろうとする、そういうことがかりに一年続いても、それはやはり自衛権の範囲内として認められるというふうに拡張解釈ができるならば、それはいわゆる国際通念からいうところの戦争と何らかわりがないことになるのじやないか、国際紛争を解決するための戦争というものとかわりがないことになるのじやないかと思いますが、そこまで拡張解釈することは日本憲法の精神に反するのじやないかと思いますが、法制局長官並びに木村保安庁長官のお答えをあわせて願いたいと思います。
  121. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。相手方が侵略して来る……。
  122. 西尾末廣

    ○西尾委員 侵略じやないのです。日本侵略と思うが、向うは侵略じやない。
  123. 木村篤太郎

    木村国務大臣 そこでわれわれといたしましては、つまり繰返して申すようでありまするが、自衛権の限界というものがある。つまりわれわれの方から見て不正の侵害を排除すれば、それでよろしい。その排除することに時間がかかる、これはやむを得ない。しかしいつ排除するかわからぬが、一たび排除すれば、そこで自衛権の限界があるから、われわれは手を引くべきであろう、こう考えておるのであります。
  124. 西尾末廣

    ○西尾委員 もう一つ……、その排除すればというのが、これは仮定の問題でありますけれども、また事実上あり得るのでありますが、韓国と日本との力のバランスがとれておる場合にはあり得るのでありますが、そういう場合には、これは一年もかかるということが考え得る。排除すればでなくて、排除が簡単にできた場合は問題ないのでありますが、排除が簡単にできなくて、長期にわたつて戦争状態が続くということが日本憲法で許されている範囲であるかどうか。そこまで拡張解釈することは危険ではないか。こういう意味でありますから、もう一度御答弁願いたい。
  125. 木村篤太郎

    木村国務大臣 そこで今お説のような限度ということになりますと、ある程度のもとにおいては日本が手を引く、向うはやつて来る、そうすると日本の国土が侵害されてしまう、そういう結果私は陥ると考えております。自衛権にはどこまでも日本を守るということであります。守り得ればそれでいいのであります。それより以上は進まない。守るときの手段は尽すべきである、こう考えております。
  126. 西尾末廣

    ○西尾委員 ただいまの御答弁を聞いておりますと、この事実は現在の政府憲法解釈に基いて自衛隊を創設して行くということによつては解決できない問題が起つて来るのではないかということを発見するのであります。この点についてこの問題は中途半端な問題である。ほんとうに日本の自衛をするためには、もつと大規模な軍隊を持たなければならぬかもしれないし、あるいはそういうことがかえつて日本の幸福を脅かすということであるならば、断然軍隊を持たないようにするということをしなければならぬかもしれない。いずれにいたしましても中途半端であつて、結局はそれでは解決つかないということが予想されるのではないかと思いますが、この点についてもう一度お尋ねいたします。
  127. 木村篤太郎

    木村国務大臣 一国が独立国家としてほんとうに完全なる自衛体制を整えて行くということになれば、あるいは憲法を改正して戦力を持たなければならぬであろうと考えます、率直に申しまして。しかし現在の日本の状態といたしましてはさようなことはできないのであります。それだからやむを得ずアメリカと手をとつてアメリカ駐留軍の手によつて日本防衛の一部を分担してもらう。しかしわれわれといたしましても、いつまでもアメリカの手によつてやるということは国民感情の上からいつても許すことができないから、いわゆる自衛力漸増方式をとつて日本防衛をやつて行こう、こういうことでわれわれは苦心をしているわけであります。そういう段階のもとにおいては、われわれといたしましては日本の国力に相応してやるよりほかに方法はないんじやないか、こう考えているのであります。
  128. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 後にお尋ねの点はこれは大きな政治論でありますから、われわれがお答えすべき筋ではございませんけれども、前段において自衛権の限界について時間的の問題をお取上げになりましたから、その点について一応お答え申し上げたいと思います。私ども自衛権の本質について考えておりますところはあくまでも、言葉は適当かどうか知りませんけれども、その力の物理的の限界だけを考えているわけでありまして、時間的の問題は本質にはならないと考えております。従いまして六箇月たつたからもういよいよ時間切れで、自衛権の限界が来た、これでもうやめようということで、その後は敵に撃たれつぱなしということにはならないのでありまして、急迫不正な侵害が続いております間は、それに対する対抗は時間の長短にかかわらず当然できる。但しその物理的限界という言葉を使いましたけれども、その限界はあくまでも先刻来申し上げましたような限度にとどまるべきでありますから、途中でしびれを切らしてしまつて、それじやいつそのことその本源をついて相手国をつぶしてしまえということで出かけて行つて抜本塞源的な措置をとろうとしても、それは自衛権の限界の外にあるのでありますからできませんし、また戦力を持たずしてそんなこともできつこないということが実際の結論になるだろうと思います。
  129. 戸叶里子

    戸叶委員 二、三自衛隊法案の中の箇条について伺いたいと思いますが、五十三条に隊員が服務の宣誓をしなければならないと書いてありますが、宣誓というのはどういう内容のものであり、そしてまたもしも守らなかつた場合には何か罰則があるのかどうか、この点を承りたいのであります。
  130. 加藤陽三

    加藤政府委員 お答え申し上げます。五十三条の服務の宣誓は現在でも保安庁法規定していることでございまして、どういうふうな内容の宣誓をさせるかということにつきましては、大体今研究を進めつつあります。今考えておりますところは、五十二条に服務の本旨のことが書いてありますが、こういうことを中心といたしましてそれぞれの職種に応じまして必要なる適当なる宣誓の文句を考えたい。かように思つております。これについては罰則はついておりません。
  131. 戸叶里子

    戸叶委員 そうしますと宣誓を守らなくても別に罰則もないし、どうということはないわけですね。
  132. 加藤陽三

    加藤政府委員 宣誓をしない者は職務を執行させないというように考えております。職務をとるについての要件と考えております。
  133. 戸叶里子

    戸叶委員 次に伺いたいのは、五十五条で自衛官は長官の指定する場所に居住しなければならないと書いてありますが、自衛隊員が一応そういう場所に居住しなければならぬということはわかりますが、自衛官がその指定されたところに住まなければならないというのは、どういう目的があるのですか。
  134. 加藤陽三

    加藤政府委員 この法律におきましては、「隊員」と書いてありますのは自衛官及び自衛官以外の職員までも含んだ観念でございます。隊員の中で特に自衛官については住む場所について五十五条の規定を設けまして隊員をしぼつた意味でございます。その自衛官はどういうものかと申しますと、これは第三十二条に書いてございます。三十二条に書いてあります者が五十五条によりましてそういう場所の指定の適用を受ける、こういうことになるわけであります。
  135. 戸叶里子

    戸叶委員 指定する場所に居住しなければならない理由は、どういうわけですか。
  136. 加藤陽三

    加藤政府委員 この具体的な内容として規定しておりますことは、ただいまの保安庁法について申し上げますと、保安隊員は営舎に居住さしております。これは士補以下の者であります。それから警備隊員につきましては、艦船にある者は艦船に居住するという規定をしております。これらは一朝任務の遂行に必要となりました場合におきましては、ただちに行動ができるようにしなければなりませんし、または平生の訓練の面から考えましても、こういうような規定を設ける必要があるからでございます。
  137. 戸叶里子

    戸叶委員 その目的はわかりましたが、そうしますと憲法の居住の自由というところと違反するとはお思いにならないか。
  138. 加藤陽三

    加藤政府委員 違反すると思いません。
  139. 戸叶里子

    戸叶委員 どういうわけで違反しないのですか。
  140. 加藤陽三

    加藤政府委員 これは現在も保安庁法にもありますし、その前にも海上警備隊を設けました際に、同様な規定が置かれているのでありまして、憲法の何条でございましたか、かような場合につきまして本人の許諾に基いて居住場所について制限を受けるということは、憲法上に違反しないと思つております。
  141. 戸叶里子

    戸叶委員 ここだけでなしにいろいろなところで非常に憲法に違反と思われるところが私どもの解釈によるとありますけれども、一応これに対して違反でないというふうに一方的にきめられているようで、私どもは賛成できないところでございますが、しかしそれをここで言つていても時間がありませんから次に移ります。  五十九条に秘密を漏らしてはいけないということがありまして、先ほど佐々木委員から非常に私どもの驚くような意見をいろいろと述べられました。それで私はこの秘密ということが一体どういうふうな範囲を持つているか。たとえば私どもの了承したのでは、MSAの協定の三条によつて秘密保護法というものが今外務委員会にかかつておりますが、それと同じ秘密だけに限つたものであるかどうか。その点を承りたい。それからついでですから伺いますが、罰則はあの秘密保護法の中にある罰則と同じであるかどうか。
  142. 加藤陽三

    加藤政府委員 この五十九条の規定は、国家公務員法におきまして一般職の職員についても同様な規定があるのであります。これは、この職員は全部特別職でございますので、一般職にありまする規定をこの法律の中にも別に書き直したわけであります。でありますから、これは秘密保護法の秘密ということでなしに、一般の官庁秘密というふうに考えております。  罰則の点につきましては第百十八条の第一号に「第五十九条第一項又は第二項の規定に違反して秘密を漏らした者」とありまして、この者は「一年以下の懲役又は三万円以下の罰金に処する。」とありますが、これも国家公務員法に規定する一般職の者についての秘密を漏らした場合の罰則規定と同様でございます。
  143. 戸叶里子

    戸叶委員 そうしますと、MSA協定の秘密保護法とここの条項とは全然関係はないわけですか。
  144. 加藤陽三

    加藤政府委員 お答えを漏らしましたけれども、それとは別に、一般職の国家公務員と同様な趣旨で規定を設けておるような次第でございます。
  145. 戸叶里子

    戸叶委員 次にお伺いしたいのは、予備自衛官の問題がございますが、予備自衛官は年に二回ずつ招集されて、そうして訓練を受けることになつておりますが、そうしますと、もしも普通の企業あるいは会社なりに働いていた場合に、その訓練を受けるために招集されたときの休暇はどういうことになつておるか。欠席になるのでしようかそれとも休暇としてもらうのでしようか。  それからまたついでですから伺いますが、日給をとつている人ならば、そのときの給料がどうなるか。それからもう一つ、これを雇用している雇用者がそれを拒んだ場合には、雇用者が何か罰せられることになるかどうか、その点をお伺いいたします。
  146. 加藤陽三

    加藤政府委員 この予備自衛官の訓練招集の期間のことでお尋ねがあつたのでありますが、一年を通じて二十日を越えない期間招集いたしまして訓練をいたします。この予備自衛官はそれぞれ別の職業を持つことを前提として考えておるのでありますけれども、その職につきまして、この人たちが有給の休暇をとるかどうかということについては、直接にはこの法律には規定しておらないのであります。またその場合におきまして雇用主がこれを拒むことができるかどうかということにつきましても、それぞれの関係の法令なり、会社なら会社の規則等に基きまして、しかるべく措置せられることと考えておるのであります。ただこの法律といたしましては第七十二条に特にその者に不利益な取扱いをしてはならないということを規定しておりますけれども、これとてこの規定に違反した場合につきまして雇用主を罰するというようなことは規定してございません。
  147. 戸叶里子

    戸叶委員 今の御答弁で私はつきりしなかつたのですが、有給であるかどうか、これでは規定してない、そうすると有給になるともならないともどちらの場合も両方出て来るわけでしようか。
  148. 加藤陽三

    加藤政府委員 お尋ねにつきまして私の考えておりますることは、たとえば一般職の公務員につきましては年に二週間以内でございましたか有給の休暇をとり得る期間がございますので、その点は有給の休暇がとれると思います。会社等に勤めております者につきましても、それぞれ労働基準法なりその他の関係法令によりまして有給休暇をとり得る期間が定められておるだろうと思います。その定められ方によりまして全部が有給休暇となり得る場合もありますし、そうでない場合もあり得ると思います。その間の条件を承知せられた上で予備自衛官を志願する、こういうふうに考えております。
  149. 戸叶里子

    戸叶委員 そうしますと、一般の公務員の人たちでこの予備自衛官になつ人たちは、休暇の制限というものが行われて、他の会社なり何なりに勤めた場合には、ほかの一般の公務員から比べて不利な気の毒なことになるのではないかと思うのです。ほかの一般の公務員ならば、有給休暇としてその間休めるのに、それだけが有給休暇はなくて、招集されて訓練を受けなければならない、非常にほかの公務員と比べると損をするような気の毒な立場になるのではないかと思いますけれども、この点もしもその訓練を都合が悪いとかいうふうに、あるいは個人的な理由なり何なりで、あるいは雇用者の関係等で拒否した場合にはどういうことになるでしようか。
  150. 加藤陽三

    加藤政府委員 今の初めの方のお尋ねでございまするが、休暇の点につきまして特別な規定を設けようといたしますと、国家の方でそれに対してある程度の保障をするというふうな問題も当然に起つて来ると思うのでありまして、そういう点について、この際はそこまで深くつつ込んで研究するというところまで行かなかつたのでございます。この予備自衛官になりました方が訓練招集を拒むというふうな場合がありますと、それは拒む理由にもよるだろうと思いますが、病気のために来られないという場合はやむを得なかろうと思いますが、そうでない場合にはその者を免職する。  それからその附則に書いてございますが……。
  151. 戸叶里子

    戸叶委員 免職ですか。
  152. 加藤陽三

    加藤政府委員 やめさせる……。
  153. 戸叶里子

    戸叶委員 何をですか。
  154. 加藤陽三

    加藤政府委員 予備自衛官をです。  それから月千円の予備自衛官手当を支給するということがその附則の方に書いてございますが、その千円の手当の支給につきましては、本人の責めに帰すべきような、われわれの方で法律上妥当と認められないというような仕方で訓練招集を受けないというふうな場合には、ある程度の手当を支給しないというふうなことも考えております。
  155. 戸叶里子

    戸叶委員 次に八十条に「内閣総理大臣は、第七十六条第一項又は第七十八条第一項の規定による自衛隊の全部又は一部に対する出動命令があつた場合において、特別の必要があると認めるときは、海上保安庁の全部又は一部をその統制下に入れることができる。」、こういうふうに書いてありますが、そうなりますと、もし全部海上保安庁の職員が入れられたというようなことを仮定したときに、その職員の身分はどういうことになるのでしようか。  それからまた、こういうふうなことが行われて行くとするならば、これは昔の国家総動員のように持つて行かれるというおそれがないかどうか、この点を承りたいと思います。
  156. 加藤陽三

    加藤政府委員 この八十条によりまして特別の必要があると認めたときに海上保安庁の全部または一部を統制下に入れるとありますけれども、この考え方は、海上保安庁の任務を、本来の任務の範囲内において海上保安庁のものを統制下に入れて使用するということでありまして、御承知のごとく、現在海上保安庁の職員は一般職の国家公務員でありまして、国家公務員法の適用を受けておるわけであります。それを自衛隊員のような特別職の公務員にするというふうな考え方はないのであります。海上保安庁の現在の組織をもつて統制下に入れて行動させるということに考えておるのであります。
  157. 戸叶里子

    戸叶委員 海上保安庁だけでなく、陸の警察というものもそういうふうに利用される場合はないでしようか。
  158. 加藤陽三

    加藤政府委員 同じような考え方を推し進めて参りますと、警察につきましてもそういうふうな問題があるいは起るかと思います。しかし私どもがここでねらつておりますのは、海上保安庁の持つておる船というものが、海上自衛隊の船と同種のような、それに近いような任務を、海上の治安という任務を持つておりますので、その船を立体的に有機的に使いたいというところに主たるねらいがございますから、海上保安庁についてだけ規定したわけでございます。
  159. 戸叶里子

    戸叶委員 私はけつこうでございます。
  160. 細迫兼光

    細迫委員 ちよつと補足いたしまして御質問いたしたいのでありますが、さいぜんからの御答弁によりますと、自衛権発動の名によればほとんど何でもできる、あるいは時間的に幾ら長くても、大規模なことでもできるというような、まるでどこでけじめがつくのかわからないよううな状態でありまして、実はわれわれはますますこういうものに反対せざるを得ない決意を固めざるを得ないのでありますが、なお一点つつ込みまして、この自衛艦隊に含まれる軍艦は、私よく承知しないのでありますが、国際法的に何か国の一部とみなすというような特権を持つておるように聞くのでありますが、そういうことが国際法上あるかということを法制局長官にお伺いします。そうして次に木村長官に、そういう特権があるとするならば、この自衛艦隊についてそういう特権を主張するつもりがあるかということをお尋ねいたします。
  161. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 御推測の通りに、国際法上軍艦に対しては特権を認めております。
  162. 木村篤太郎

    木村国務大臣 特権を認められれば、やはり私はその特権を持つ方がいいと思います。
  163. 細迫兼光

    細迫委員 それで大分はつきりはいたしましたが、もう一つ、当事国双方がいずれも自衛権発動だといつて大砲を撃ち合うという状況が続いて行くという、そこにまたけじめのないところに何か私は節をつけることができやしないかと思いつきの一つといたしまして、木村長官にお尋ねをいたしますが、あくまで自衛権発動で自衛行為を徹底的にやつて行くのだとおつしやいます。ところが具体的に韓国李承晩との間に——私は必ずそういう問題が韓国との間に近く起るに違いないということを予言してはばからないのでありますが、韓国において宣戦の布告をしても、なお続いて木村長官のいわゆる自衛権発動行為をやつて行くことが憲法において許されているとお考えでございましようか、どうでございましようか。
  164. 木村篤太郎

    木村国務大臣 韓国といわずどこの国といわず、日本に対して不法に宣戦を布告して国の侵略を試みれば、日本自衛権発動をし得るのは当然と考えております。
  165. 細迫兼光

    細迫委員 どうもたいへんなことに相なりましたが、何をか言わんやでありまして、私は質問を打切ります。
  166. 稻村順三

    稻村委員長 大分時間も経過いたしましたので、穗積七郎君の御質疑は、内閣委員会で適当な時期において委員外発言として許可いたすことにとりはからいたいと存じますから、さよう御了承願います。  それでは内閣委員会外務委員会連合審査会はこれにて散会いたします。     午後五時三分散会