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1954-04-13 第19回国会 衆議院 大蔵委員会 第39号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年四月十三日(火曜日)     午前十時二十五分開議  出席委員    委員長 千葉 三郎君    理事 淺香 忠雄君 理事 黒金 泰美君    理事 坊  秀男君 理事 山本 勝市君    理事 久保田鶴松君 理事 井上 良二君       宇都宮徳馬君    大上  司君       大平 正芳君    尾関 義一君       苫米地英俊君    福田 赳夫君       藤枝 泉介君    堀川 恭平君       福田 繁芳君    柴田 義男君       春日 一幸君    平岡忠次郎君       山村治郎君  出席政府委員         大蔵政務次官  植木庚子郎君         大蔵事務官         (主計局長)  森永貞一郎君  委員外出席者         参  考  人         (経済同友会幹         事)      西野嘉一郎君         参  考  人         (経済団体連合         会税制委員会副         委員長)    金子佐一郎君         参  考  人         (日本証券業協         会連合会会長) 小池厚之助君         専  門  員 椎木 文也君         専  門  員 黒田 久太君     ――――――――――――― 四月十日  委員安藤覺辞任につき、その補欠として山村  新治郎君が議長指名委員に選任された。 同月十三日  委員小西寅松君及び堀川恭平辞任につき、そ  の補欠として尾関義一君及び有田二郎君が議長  の指名委員に選任された。 同日  委員尾関義一委員辞任につき、その補欠とし  て小西寅松君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 四月九日  所得税法の一部改正に関する請願池田清志君  紹介)(第四三一四号)  同(只野直三郎紹介)(第四三二二号)  入場税国税移管反対に関する請願田中稔男  君紹介)(第四三二一号)  揮発油税軽減に関する請願臼井莊一君紹介)  (第四三四二号)  杷柳製魚釣籠に対する物品税免除に関する請願  (有田喜一紹介)(第四三八三号) の審査を本委員会に付託された。 同日  揮発油税率の据置きに関する陳情書  (第二六九八号)  公認会計士による強制監査制度廃止に関する  陳情書  (第二七〇〇号)  自由職業人に対する源泉徴収規定廃止に関する  陳情書  (第二七四  九号)  旧外貨債有効化に関する陳情書  (第二七五〇号)  協同組合の行う火災保険事業法制化に関する  陳情書  (第二七五一  号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  参考人より意見聴取の件  交付税及び譲与税配付金特別会計法案内閣提  出第八五号)  企業資本充実のための資産評価等特別措置  法案内閣提出第一一五号)  株式会社以外の法人の再評価積立金資本組入  に関する法律案内閣提出第九〇号)(参議院  送付)     ―――――――――――――
  2. 千葉三郎

    千葉委員長 これより会議開きます。  本日はまず交付税及び譲与税配付金特別会計法案及び修正案一括議題として質疑を続行いたします。井上君。
  3. 井上良二

    井上委員 交付税及び譲与税配付金特別会計法案審議にあたりまして、この会計に繰入れられて参ります入場税税収につきまして、先般来いろいろこの修正案をめぐりまして、政府の本委員会における税収見込みと、それから提案者側におけるいろいろの御説明との間に多少意見食い違いを来しておりまして、われわれ野党側委員といたしましては、政府与党である自由党が主になつてこの修正案提案をいたします場合、これが国会を通過いたしました場合は、当然政府がその責任を持つて法案の執行に当らなければなりません関係から、政府のはじき出しました税収根拠と、提案者側説明をいたします税収根拠との上に食い違いがあるような説明のもとに採決をされますことは、本委員会の権威の上からも穏当を欠くことでありますので、この点に対して提案者側において、ある者は政府税収見積りを妥当とし、それに敷衍する説明行つており、一方は全然税収減はない。税率の引下げによつて、いろいろの計算の根拠に立つて、多少違うところがあるのは、これは予算でございますから、五億や十億の開きでとやかく議論をしておるのではなしに、少くとも五十億に近い大きな開きが出るか出ないかということが議論中心でございます。その点に関して提案者側の人々の中には、税率を引下げても税収減にはならぬ、こういう説明をしておきながら、万一税収減を来した場合はかようようの処置を講ずるという修正案をつけるということは、はなはだ穏当を欠きます修正でございますので、われわれとしては、一体どちらを信用して提案者側説明を聞いたらいいかわかりませんから、もしほんとうに税率を引下げましても政府の言う通り税収減にならぬ、あるいはまたある一人が説明いたしました通り税率を引下げても税収減にはならぬ、こういう立場を依然として貫かれますか、提案者側における統一せる見解を承って、われわれの本案に対する質疑を打切るか、それともまた質疑をするか、その点について一応提案者側からどう意見を統一されたか、この際提案者側の統一せる見解を承りたいと思います。
  4. 大平正芳

    大平委員 入場税法案に対するわれわれの修正によりまして、昭和二十九年度におきまして幾ばくの税収が的確に確保されるかということについて、提案者側答弁にニュアンスの相違がございまして、各位の御審議支障をお招きいたしましたことは、まことに遺憾に存じます。この際提案者側の統一した見解を申し述べまして、御了承を得たいと思います。  そもそも入場税は、御承知のように、今回新たにこれを地方税から国税移管せんとするものでありますので、これを国税に移した場合にどれだけの税収が得られるかを的確に見積ることに相当の困難がありますことは、まず第一に御了承願えるかと存じます。また税率を引下げることに伴う消費増をどの程度に見積るべきかということも考慮に入れますと、この見積りの困難はさらに加重されて参ります。このことも十分御了承願えるかと存じます。政府内部におきましても、われわれの修正による税収見積りについて、自治庁は過去の徴収実績に徴し、大蔵省は従来の映画の配給収入等基礎といたしまして、それぞれの見積りを立てておられます。われわれは政府側見積りがそれぞれの根拠に立つております以上、これが間違いであると申すわけではございませんが、それらが唯一可能な見積りでないことも、政府当局自身の当委員会での答弁によつても明らかでございます。われわれといたしましては他の根拠によりまして、われわれの修正成立によつて必ずしも減収を来すものとは考えておりません。しかし冒頭申し上げましたように、この入場税税収見積りには未確定の要素がありますゆえに、種々の困難が伴つておりますので、万一にも予定税額をあげ得ないで地方財政運営支障を招くようなことがあつてはならないと存じ、万全を期する意味におきまして、入場譲与税法の附則に所要の修正を加え、これに対応することといたした次第であります。これによりまして中央地方を通ずる予算の全体の構造や財政運営には支障を来さないという確信を持ちまして、提案いたした次第でございます。右御了承をお願いいたしたいと存じます。
  5. 淺香忠雄

    淺香委員 ただいま議題となりました交付税及び譲与税配付金特別会計法案及び修正案に対する質疑はこの程度で打切り、ただちに討論採決に入られんことを望みます。
  6. 千葉三郎

    千葉委員長 ただいまの淺香君の動議のごとく決するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 千葉三郎

    千葉委員長 御異議ないようでありますから、交付税及び譲与税配付金特別会計法案及び修正案に対する質疑は以上をもつて打切り、これよりただちに討論に入ることにいたします。討論は通告順によつてこれを許します。春日君。
  8. 春日一幸

    春日委員 日本社会党両派を代表いたしまして、ただいま議題になりました交付税及び譲与税配付金特別会計法案に対しまして、強く反対意思を表明するものであります。  以下その理由について申し述べます。この法律案は、先般国税移管暴挙を断行されたところの入場税法案に重大な関係を有する法律案でございます。この入場税国管に伴いまして、自由党から提出されましたその修正案は、何人が推算をいたしましても五十億以上の歳入欠陥を生ずるであろうことは明確な事柄でありまして、特にこの問題は、本法案と重大な関係を有するものであると思うのであります、  そこで私どもが反対の第一の理由として申し上げねばならぬことは、そもそも参議院において、この入場税の問題に関連をいたしまして、特に緑風会並び社会党両派から強く政府並びに与党に対して要望されましたことは、あの入場税を一体どうするのだ、こういうことであつたのでございます。当時国会の重大な関心事でありましたこの入場税の推移につきましては、本院においてはこれが議題として供されておるにもかかわらず、審議はほとんど行われておらなかつたのでございます。そのことはすなわち入場税国管反対に対する国論に、政府並びに与党が迎合したのでございましようか、あるいはこの法案審議未了になるのもやむを得ないというような意思が示されておりまして、もはや積極的に審議すら行われていなかつたのでございます。参議院は、予算に重大な関係を有するところのこの入場税並びに繊維品消費税が、その取扱いがどういうぐあいになるのかわからない状況においてこの予算を通すことはできない、すなわち廃案にするというのであれば、これは当然予算修正をなさなければ参議院としての審議責任を尽すゆえんにはならないというので、この法案を出すのか出さないのか、通すのか通さないのか、修正するのかしないのか、こういうような強い意見政府に出されたにもかかわらず、政府はそれに対して何ら的確な意思表示を行わなかつたのでございます。しこうして参議院において予算自然成立をいたしました後において、突如としてこの法案が、しかも修正を伴つて提出されて参つたのでございますが、このことを端的に申しますならば、この法案参議院における予算成立する前にあえて提出しなかつたことは、参議院における予算審議権並び議決権を圧殺したものであるのでございまして、さらに加えて、参議院において予算成立した後において突如としてこの修正案を出して参つたということは、参議院における予算審議権並び議決権をさらに謀殺をしたという二重の罪悪を重ねたと思うのでございまして、このことは、政府並びに与党責任として特に糾弾をされなければならぬと思うのであります。しこうして問題になつておりますのは、この法案は三つの目的を持つておるが、なかんずくその一つは、地方財政貧富の均衡をはかるというのが一つ目的になつておるのでございます。しかしながら、この入場税によるところの譲与税によつてこの目的を達成しようということでありますけれども、このことは先般本法案に対する質疑の中で詳細に述べております通り、これは別途設けられておりますところのタバコ消費税において人口割にこれを配分することによりまして、地方財政貧富権衡は、このタバコ消費税によつて十分はかられておるのでございまして、ことさらにこの入場税を国に移管し、そうしてこれを譲与税によつて地方に配分して、しこうして富裕県が収奪されたところの財源を、タバコ消費税によつて補完するという三軍の愚劣な手続をとることなくして、ただひとりこのタバコ消費税の配分によつて地方財政貧富権衡は十分に調整ができるのでございます。しかるに政府は、実際的にそういう解決がはかられるにもかかわらず、あえてそのことを避けて、こういう国論に抗して入場税国税に移し、他にまたタバコ消費税によつてその調整を行うというような、実に複雑な手続をとつてつておるのでございまするが、このことは税制を複雑怪奇なものにするものであり、まことにわれわれの了解いたしかねるところでございまして、これまた反対をせなければならない理由一つであるのでございます。  さらにまたこの法案関連をいたしまして、富裕県貧困県との問題がいろいろ論ぜられておりまするけれども、それはただ単に基準財政需要額とその収入額との数字的な関連の上において、形式的に富裕県とか貧困県とかいうような区別がそこに生じておるのでございまするが、この平衡交付金法が制定されましてすでに数年間、この間地方におきましても、中央におきま しても、いろいろ問題の解決を見ておる点があり、さらにはまた時運の進運 にかんがみまして重点度を置きかえられなければならないところの幾多の新しい問題が発生をいたしておると思うのでございます。従いまして、今やわれわれは独立を達成させなければならない立場におきまして、この基準財政需要額算定基礎についても、この新しい現状の上に立つての再検討が必要であろうと考えるのでありますが、現在この交付税法案におきましては、基準財政需要額算定基準についても、何らとりわけての検討が加えられていないのでございまして、このことがすなわち形式的な富裕県と、形式的な貧困県を生じておるゆえんであるのでございます。かりに東京都のごときは富裕県の代表的なものといわれておりまするが、その富裕県である東京都において、義務教育小学校がなお二部教授のやむなき事情にあるというような事柄等も考え合せまするならば、形式的富裕県実情というものが、これまた貧困県と同じような立場に置かれておるということ等をなおあわせて考えなければならないのでございまして、従つてこの交付税並びに譲与税目的といたしておりまするところの地方行財政権衡をはかるという立場においては、もはやこの機会においてこれらの基準財政需要額算定基準等についての実情に即した修正等が伴つてなされなければならぬと思うのでございます。  いずれにいたしましても、本法律案は無理にこの地方税であつたところの入場税国税に移して、地方独立財源を奪い去り、これによつて地方自治の根幹を危うくすること、さらにはまたこの法案の衆議院における取扱いを通じて参議院審議権を圧殺、謀殺する等のさまざまなる暴挙と悪法が重ねられております法律案でありますので、わが日本社会党両派は、かくのごとき悪意に満ち、反民主的な反動立法に対しましては、断固として反対せざるを得ないのでございます。  以上簡単に反対理由を申し述べましたが、いずれ本会議において、この問題につきましてはさらに反対の趣旨を敷衍いたしまして討論をいたすことにいたします。
  9. 千葉三郎

    千葉委員長 討論は終局いたしました。  これより採決に入ります。まず黒金提出にかかる修正案について採決いたします。本修正案賛成諸君起立を願います。   〔賛成者起立
  10. 千葉三郎

    千葉委員長 起立多数。よつて修正案は可決せられました。  次に、本修正案修正部分を除いた原案について採決いたします。これに賛成諸君起立を願います。   〔賛成者起立
  11. 千葉三郎

    千葉委員長 起立多数。よつて本案黒金提案のごとく修正議決せられました。  なおこの際お諮りいたします。ただいま修正議決いたしました本案に関する委員会報告書の作成、提出等手続につきましては、委員長に御一任を願いたいと存じます。これに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  12. 千葉三郎

    千葉委員長 御異議なしと認めます。よつて委員長に御一任をいただいたものと決しました。     —————————————
  13. 千葉三郎

    千葉委員長 次に、企業資本充実のための資産評価等特別措置法案株式会社以外の法人の再評価積当金の資本組入に関する法律案一括議題といたします。本日は両法案につきまして特に参考人出席をお願いしておりますので、参考人より意見を聴取することといたします。  その前に参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。本日は御多忙中のところ、また雨天にもかかわりませず当委員会に御出席いただき、まことにありがとうございます。また当委員会の都合によりまして、去る八日に御出席願うことといたしておつたのでありますが、本日に変更いたし、また本日も長時間お待たせいたしましたことをおわび申し上げます。  これより参考人各位の御意見を拝聴いたしたいと存じますが、参考人の方方におきましては、ただいま議題となつております資産評価関係の両法案につきまして忌憚ない御意見の御開陳をお願い申し上げます。なお参考人各位から意見をお述べいただく時間は、一人大体二十分程度といたしまして、委員各位参考人に対する質疑は後刻一括して行いたいと存じますので、あらかじめ御了承願います。  それではこれより順次参考人各位より御意見を拝聴いたします。まず経済同友会幹事であり芝浦製作所専務取締である西野嘉一郎君にお願いいたします。
  14. 西野嘉一郎

    西野参考人 私は今委員長からお話がありました西野でございます。  ただいまここに提案されております企業資本充実のための資産評価等特別措置法案に対しまして、原則といたしまして、私は結論から申しまして本案賛成の意を表するものでございます。特にこの法案に対しましては、一企業経営立場から申しますならば、いろいろこまかい点において異議を申さなければならない点がございますが、私は国民経済的な見地から本案に対して賛成の意を表すると同時に、本案がすみやかに成立をいたしまして公布されることを切望するものでございます。  その理由といたしますところは、われわれ経済同友会が昨年の十一月の大会におきまして、新資本決定法なる法律の立案を提唱いたしたのであります。その動機といたしますのは、わが国経済基礎でありますところの企業が、まことに資本蓄積の問題に対しまして微力であり、ちよつとした経済的な危機に見舞われましても、ただちにこれが危機に陥るということではいかぬ。顧みるに、よくいわれることでありますが、西独貨幣経済実態を見ますと、一九四八年の貨幣改革によつてりつぱに資本の再評価が行われ、逆の意味において十倍の再評価がなされ、しかも戦時戦後の戦争損失は、三年ないし六年間においてりつぱに補填するということが、ドイツマルク貸借対照表並びに新資本決定に関する法律において行われたのであります。その結果、戦前減価償却による率が国民所得に対して三・五%でありましたものが、この法律を出した一九四九年から五二年にわたりまして、約二倍の七・三%に相なつております。またドイツ企業は、これだけの償却をいたしました関係上それぞれ赤字を出しておりますけれども、新規設備投資に対する減価償却割合は、戦前一九三六年は三〇%で、再投資された割合は三〇%であつたのでありますが、一九四九年から五二年にわたつて五二%に上つております。これらは何を意味するかと申しまするならば、りつぱに評価が行われ、減価償却が十分に行われて、企業自己金融によつて再建をあんなにりつぱになし遂げたということであります。これを顧みまするに、わが国実態はまつたく逆でございまして、戦前国民所得に対する減価償却割合は六・二%であつたのでありますが、二十七年度におきましては二・四%に下つておるのであります。また売上高に対する減価償却割合は、六%であつたものが、現在やはり二%見当であるのであります。これを換算いたしてみますと、現在法人企業減価償却は、大体千三百億ないし千四百億くらいになつておると思うのであります。約三千三百億くらいの償却をしなければ戦前状態にならないのであります。これを言いかえまするならば、現在二千億の償却不足をし、企業資本の食いつぶしを依然として続けておるのであります。なお企業は、戦後の復興を急ぐために、固定資産の拡張、設備拡充をいたさなければならなかつたのでありますが、それらの資金はほとんど全部借入金によつてつて参つたのであります。先ほど西独の話を申しましたが、西独の場合は、五割五分ないし六割が自己金融、いわゆる減価償却の再投資によつて行われたのでありますが、わが国の場合は、日銀の調査によつて私が推算したところによりますと、大体二割が減価償却による再投資、八割は借入金によつて設備拡充が行われておるのであります。このような実態のために、企業支払い能力はまことに貧弱で、最近のような金融の引締め、緊縮予算によりただちに破産に追い込まれるという状態であります。こういうような問題は、一企業の任意の措置にまかすべきでなくして、強制の形において、国民経済的な視野から企業の内容を充実すべきであると考えるのでありまして、われわれが昨年の暮れ新資本決定法を提唱いたしたゆえんも、そうした含みがその中にあるのであります。そうした意味におきまして、この案に賛成するのでございます。  もう一つの問題は、そうして起つて来ました再評価積立金資本組入れすることによつて、大きな弊害をなしている過小資本の是正をこの場合はからなければならないということであります。御承知のように、資本金戦前の三十倍——物価は三百倍からになつておりますが、株式会社資本金は三十倍近くしか増加いたしておらないのであります。法人税のごときは、国民所得に比較いたしますと、六百八十一倍の増加になつております。企業の利益は、少いといえども二百倍になつておりますが、法人企業の払込み資本金は大体二十七倍ないし三十倍であります。物価が三百倍からになつておりますのに、資本金かくのごとく過小である。これは一つのマジツクになつておりまして、株式の問題、あるいは配当金の問題、いろいろな問題が、国民経済の中において一つの錯覚をわれわれに起させている原因になつていると思うのであります。そこで私は本案の、四割の組入れ促進に対しましてはあとで少し説明いたしますが、原則的に賛成を表するものであります。本案中心はそこにあると思うのでありまして、われわれといたしましては、本案提案した以上、四割程度のものならば組入れを強制してよいのではないかと考えているのであります。  本案は、御承知のごとく一割五分の配当制限ということを表に出しまして、その配当制限をえさにいたしまして組入れの促進をはかろうといたしておるのでありますが、私はこの一割五分の配当制限は、かえつて現在の企業に萎縮を与えるものであると考えるのであります。むしろ配当制限を行うのでありますならば、西独がやつたごとく、もつと低い六分とか一割以下の配当制限行つて、その面から強制的に資本の組入れを促進するというなら意味がわかるのであります。一割五分といえば、現在企業としては近寄つて来ている配当率であります。大蔵省の調査によりますと、有配会社の半分程度のものは一割五分見当であると報告されておりますが、そういう実情でありますので、この一割五分の配当制限をしたからといつて、必ずしも組入れが促進されるものとは考えられないのであります。優秀な企業は、一割五分以内の配当によりましてもりつぱに増資ができますから、むしろ積極的に組入れを促進しようとしないだろうと思います。また弱体な企業は、一割五分以上の配当をすることは困難でありますから、これまた組入れを促進しようという積極的な意図を持たないのではないかと思うのであります。こういうことから、この一割五分の配当制限を行うことによつて、かえつて目的を達することができず、また株界その他に必ずしも好影響はないと思うのであります。むしろここまで踏み切るならば、われわれ同友会が提唱いたしておりますように、四割程度であるならば、この組入れを一時に実行することは困難にいたしましても、三年間くらいの余裕を置きまして、その間分割して強制組入れをさす。先ほど申しましたように、資本金戦前の三十倍にしかなつておらないのでありますから、こういう貨幣価値の錯覚を起さすようなことをともかく漸進的にも修正さすことが絶対に必要でありますので、私は四割組入れの強制を主張いたしたいのであります。  この点につきましてはいろいろ反対意見があるように存じております。その中で最も大きな反対は、組入れを促進するならば配当率が下る、従つて有償増資を妨げるというのでありますが、これは私はむしろ逆だと思うのであります。なるほど現実の問題とすればそうかもしれませんが、かりに現在のような税制におきまして——幸い過日有償増資一割まで損金算入の特別措置法案が通過いたしましたけれども、今までの考え方で置きますと、二割の配当をいたしますと、それに対して法人税その他で四割くらいコストがかかつたのであります。現在は多少緩和されたと思いますが、そういうような非常に高いコストでなつておりますときに増資をするということは——過去における増資は、むしろ資本調達という真の意味より逸脱した考え方のもとに増資が行われ、いわゆる株主を優遇するという意味から行われて来た場合がかなりあつたのではないか、全部とは申しませんが、ある部分あつたのではないかと私は考えております。  またもう一つ意見は、株式数が非常に増加する、従つて株価が暴落するのではないかという御意見があるのでありますが、この点につきましては、私は、最近大蔵省あたりでも考えておりますが、五百円株に引上げるということをぜひ実行していただきたいと思つておるのであります。先ほど申しましたように、株式の払込み資本金は約三十倍近くでありますが、株式取引所にかかつておりますところの取引金額は戦前の十七倍にしかなつておらないということであります。しかも東京株式取引所に上場されておる株数は、二月のごときは一日に二千万株、平均六百万株ないし八百万株くらいのものが上場されておるのであります。アメリカのニューヨーク株式取引所のごときにおきましても、平均一日百五十万株ないし二百万株くらいしか取引されておらぬのでありますから、株式数におきましては、日本の東京株式取引所はおそらく世界一であると私は考えておるのであります。  こういうような非常に経済的に錯覚を起すような問題は、そこにいろいろ問題があると思います。株式というものは生きものであり、いろいろな点があると思いますが、この際やはり国民経済的な視野から、物価が三百倍にもなつた以上は、当然にある意味における貨幣改革を断行しなければならないような実態にあるのを、それをせずして、そうして企業の面、経済の面において貨幣改革を断行したと同じような効果をもたらすためには、本案の実施は非常にその助けになると考えておるのであります。  投資対策その他の問題につきましては、まだまだ考えるべき問題がたくさんあります。資本調達の問題につきましては、無額面株の発行、あるいはまた優先株制度の普及、株式配当金の普及あるいは転換社債制度の普及、こういうような問題につきましてもつともつと研究し、これを普及し、税法上の処置をとるならば、資本調達は、本案の三箇年くらいの間には必ず何らかの方法によつてこれがなし得られると思うのであります。また株式を併合し、五百円株を出すことによつて、端株の問題のごときは、アメリカで行われておりますところのフラクシヨナル・シエアの考え方をこれに利用するとか、あるいはまた株券を新規に発行することに対しての手数に対しましては証紙を用いるとか、いろいろな問題で技術的な解決方法は幾らでもあると思うのであります。  次に、再評価税の問題に対して一言触れたいと思うのであります。再評価税の問題に対しましては、本案は、いろいろな角度から非常にこれを修正し、免税の処置がとられておるようでありますが、これは過去の一次、二次に行つたところの均衡上の問題を相当考慮に入れられておるように思うのでありますが、私は、この点につきましては考慮する必要がないと思うのであります。第一次、第二次の再評価をいたした人は、減価償却の点において、十分再評価税を上まわつた免税の処置がとられておりますから、この際私は再評価強制する以上、無税を主張いたしたいと思うのであります。  次に、固定資産税の軽減の問題、これも自治庁の非常な御努力によりましてこの軽減の処置がとられたのでありますが、非常に趣旨はけつこうだと思います。しかしこの中に償却資産は家屋を除くということになつておりますが、この点につきましては、私はやはり同じ趣旨において、家屋も同様に償却資産として今回の軽減処置の中に包括すべきであると考えております。  なお増資費用の問題につきましては、登録税の問題も、無償交付のときは相当少くなつておりますけれども、強制をし、促進をするためには、株のごときものは全免をするとか、印紙税程度のものでこれを処置してしかるべきではないかと思うのであります。  最後に一言申し上げたいことは、今回の強制評価のわくが大体八〇%になつております。そうしてなおあと二割というものが任意になつておるのでありますが、さらにまた陳腐化資産を持つている場合は大蔵大臣に申請して、そのわくを縮小することができることになつております。今回の強制評価をいたします上において、大蔵省として行政上最も考慮をしたのはこの点であると思うのであります。この点につきましては、技術的に一部に異論もあるやに思います。と申しますのは、陳腐化資産の問題は、それぞれの点において大蔵省が査定した金額を再評価の金額に決定すべきであるという意見も一部にあるようでありますが、実際上、行政上の問題といたしましては、やはりこの原案のように、八割までを一応再評価を強行する、さらに陳腐化があれば認めるという方法でなければ、実際上この再評価の即時実行は困難であると私は考えるのでありますが、これに二割というアローアンスがありますから、その範囲内において陳腐化の問題を解決すればいいのではないかと思つております。  こういうような点におきまして、本案の中の技術的な問題に対しては、私は多少意見も異にする点がありますが、結論といたしましては、冒頭に申しましたように、一企業、一経営、一業界という面から申しますと、これに対してそれぞれの面からいろいろ異論もあり、われわれ同友会の新資本決定法を決定いたしますときにおいても、それぞれの角度から異論がありましたけれども、何としましても国民経済的な視野から企業資本蓄積促進するという意味において、ここに本問題を取上げるべきであるということを申し上げたのでありまして、この意味から、本案に対しては私は賛成の意を表するものでございます。
  15. 千葉三郎

    千葉委員長 発言は到着順によりたいと思いますので、この際日本証券業協会連合会会長であり、山一証券の社長である小池厚之助君にお願いいたします。
  16. 小池厚之助

    ○小池参考人 私は本案に対しましては、大体において賛成の意を表したいと思うのであります。しかしその中の一部に対しましては、この法案に不賛成であります。ただいま西野参考人のお述べになりました御意見にも不賛成であります。私は証券業に従事しておりますが、私は証券業という狭い見地からのみ議論を申し上げるつもりは決してございません。やはり西野参考人と同じように、国民経済的な立場から私の意見を申し述べたいと思つております。  大体概論を申しますると、本案は適正なる償却を事業会社にさせるということが趣旨であります。この趣旨はまことに賛成であります。しかしながらこの法案の中で賛成いたしかねる点は、主として再評価積立金資本金組入れの問題であります。この問題は後に詳しく述べたいと思いますが、理論的にはまさにそうあつてしかるべしと一応は思うのであります。現実においては、そういう処置をとられますると、各般いろいろの悪影響のあることを憂えるものであります。  一応感じましたことを申しますると、再評価の最低限度——これは第六条と第四十八条にございますが、再評価限度額の八〇%を強制するということがございます。この問題は本案が適正償却をさせるということが趣旨でありますから、大体において私は賛成でありますが、しかしただいま西野参考人もお述べになりました陳腐化の問題のことを考えますと、幾多の事業会社の中には、企業の種類によりましては、減価償却資産につきまして再評価を適当とする有効度の限度が異なるのでありまして、重要基礎産業、特に重化学工業等にありましては、八〇%以上の実施の困難な企業が少くないと思います。それでこれを七〇%程度に引下げるべきだと思うのであります。また再評価不足につきましては、利益配当の制限及び租税特別措置法第五条の十一による配当金の損失処分の特典を与えない規定が制裁規定となるのでありますから、特にこれに対する罰則を定める必要はないと思うのであります。  次に、再評価不足または再評価を行わない場合の利益配当の制限について意見を申し述べますると、再評価不足または再評価を行わない場合には、配当率を一五%以下とする制限がございますが、これはこの処置に対する制裁の趣旨によるといたしましても、この際特に戦時中やむを得ず見られた配当制限の思想を法案に織り込むことは、時宜に適しない措置と思われるのでありまして、賛成いたしかねるのであります。配当制限の思想が実質的に精神的に市場に及ぼす影響は重大でありますので、これらの制裁措置といたしては、前に申し述べました通り配当金の損金処分の特典を与えないことで十分でありまして、それ以上のことは必要ないと思うのであります。たといこの利益配当の制限をやむを得ず実施するといたしましても、一五%以下の配当率に制限することは、現在の株式の投資基準としての実際の配当率から見て低過ぎると思います。これは投資意欲を減退させ、自然株価も低落させまして、爾後の増資を至難とするのであります。規定としましては、証券市場の推移等を勘案して、当初の二年ないし三年間はまず二〇%程度の制限にとどむべきだと思うのであります。  次は、最も大切と思う点であります再評価積立金資本組入促進問題であります。これは本案の中で最も重要な事項の一つだと思うのでありますが、これは先ほど西野参考人が詳しくお述べになりましたが、私は不幸にしてその御意見賛成しかねるのであります。今日本におきまして必要なことは、いかにして事業会社が産業資金を調達するかということであると思うのであります。ただ形式の上でもつて資本金がふえて、その資本金借入金の率がよくなつたといつて喜んでいるわけには行かないのであります。実際現在の事業会社はまだまだ多額の産業資金を必要といたしております。その調達方法といたしましては、第一は増資によること、それから内部留保によること、それから社債によること、銀行借入れによること等がございます。この銀行借入れはなるべくこれを押えまして、いわゆるオーバーローンを解消して行かなければならないことは申すまでもないのであります。自己資本の充実は、内部留保と増資による以外はないのであります。この内部留保は、今回のこの法案によりまして、償却によりまして内部留保がふえるのでありまして、これはたいへんけつこうだと思います。増資は、これはまた別個に大いにやつて行かなければならぬ問題だと思うのであります。先ほど西野参考人は、過去における増資は、株主の優遇の点が大いにあつたのじやないか、自己資本を調達するというよりも株主優遇の面が大いにあつたのじやないか、全部とはもちろんお考えになつたわけではないでしようけれども、そういう面もあつたのではないかというお説がありましたが、なるほどそういう面もあつたと思います。しかし大部分はやはり自己資本の調達がおもな目的であつたと思うのであります。この自己資本を調達いたしますときには、やはりその当時の金融事情、金利水準、こういうものがやはり基礎になるのだと思うのであります。現在株式の利まわりは、いわゆる投資銘柄というものは一割を越えております。東京証券取引所に上場されております全部の株式の利まわりはまだ八分そこそこでありますが、おもなる代表的事業会社二百社をとつてみますと、しかもたとえば東京海上だとか、三越というごとく非常に低利まわりになれている特殊の株を除きまして、おもな事業会社の利まわりをとつてみますと、今一割三厘ぐらいに当つております。今日ほかの金利の水準を見ますと、御承知通り定期預金は六分であります。それから社債が約九分二、三厘にまわつております。これで大体定期預金と社債と、それから株式の利まわりのつり合いがとれていると思うのであります。戦前の金利水準を見ますと、昭和十二、三年の例をとつてみますと、その当時の定期預金が三分三厘である。そのときに社債の利まわりは四分三厘、株式の利まわりは六分ないし七分であります。それでありますからして、現在定期預金が六分であり、社債の利まわりが九分四、五厘するというときには、株式が一割以上にまわらなければなかなか増資が困難になるということは、これは火を見るよりも明らかなことであります。もしこの法案のごとくに、この二、三年のうちに再評価積立金資本に組み入れますと、多くの会社が非常に配当を下げて行かなければならない。そういたしますと、おそらく現在の収益がありましても、有償増資をしませんでも、一般の株式の配当というものは一割を割るのじやないかと思うのであります。今日の金利水準がしばらく続くものといたしますれば、一割前後であればたいていの株式は五十円前後になるということに考えていいかと思います。五十円前後といたしますると、これは増資はできません。アメリカのごとく無額面の株、ノー・ヴアリユーの株が多く発行されておるというところでは、株の値段にかかわらず増資はある程度可能であります。日本のごとく大体額面が九九・九%あるという証券界におきましては、額面そこそこに普通の株価があるというところでは、増資は絶対に不可能となると思うのであります。やはり当分の間は、事業会社は積立てをなるべくたくさん持つて、そうして相当の配当もしながら増資をして行くのが実情に適しておると私は信ずるのであります。事業会社の経営といたしましても、大体なるべくたくさんの積立てを持つということが健全であります。ただ再評価積立金は、インフレーシヨンという特別の理由によつてできました積立金でありますからして、これを資本に組み入れよう、そうして実際の利益率のほんとうのことを経営者にもわからせよう、あるいは株主にもわからせよう、こういう御趣旨は理論としてけつこうであります。私は理論としてそのお考えに反対するものではございませんけれども、実際の問題といたしましては、その結果は多くの会社が減配をしなければならないことになる。有償増資が今後できない程度まで減配せざるを得ないという結果になることをおそれるのであります。それでこの再評価積立金資本組入促進措置、すなわち本案の第十八条関係でありますが、この点は削除を願いたい、こう思うのであります。あるいはこの点について、削除は極端ではないか、何か妥協せないかという御意見が出るかもしれませんが、私は今申しました日本の経済界のまだここ数年の間の実情を考えまして、そういう条項は削除していただきたいと思つて、妥協のことを考えない次第であります。これが大体私の申し上げたい一番のポイントでありますが、また後刻御質問でありましたら喜んでお答えします。
  17. 千葉三郎

    千葉委員長 次に経団連の税制委員会の副委員長であり、十条製紙の専務である金子佐一郎君にお願いいたします。
  18. 金子佐一郎

    ○金子参考人 私は、今回法案として提案されました企業資本充実のための資産評価等特別措置法案の趣意に対しましては、賛成であることを申し上げたいと思います。  ただこの法案が再評価強制を伴うという意味におきまして、一、二意見があるのでございます。この資産の再評価という問題は、理論的に考えて正しいと思うことも、それを実際の企業経営に適用する場合にその通り考えてよいかどうかということは、おのずから別個の問題であると思うのであります。従つて本案を考える場合に、的にはよろしいと考えられても、それが企業実情に合うかどうか、また日本の経済事情に即するかどうかということをあわせて考えないと、この法律をほんとうに生かして行くことはできないのではないかと思うのであります。特にこの資産の再評価強制という言葉だけで言うならば、シヤウプ勧告においても強制が指示されておりますので、当初からこれを強制すべきか、あるいは任意にすべきかということは、今日まで論議されていたのであります。ただ注意しなければならないのは、資産評価という言葉に狭義と広義があるのであります。狭く解釈いたしますれば、今回の強制措置のように、帳簿価格を再評価いたしまして、反対勘定として再評価積立金を設けること、これが一応資産の再評価といわれておりますが、当初われわれが資産の再評価というのは、単にこれにとどまらず、減価償却をそれに従つて増大し、この名目利益を修正し、これにかかつていた税金を排除し、資本の食いつぶしを是正するという処置、並びに再評価積立金資本に組み入れるという処置、この二つをも含めた意味の再評価強制が考えられていたのであります。従つてこれらが全面的に実施できるかどうかということは、企業実情を勘案しなければならぬのであります。今日までは、全面的の今申し上げたような再評価強制は無理であるということで、簿価の再評価に今回はとどまつたわけであります。昨年同友会におきまして再評価強制ということを取上げたのも、やはり資本の組み入れ等を強制の考え方の中に含めたものでありまして、それらについて割切つて行かないと問題が混乱すると思うのであります。  そこでこれらの資産の再評価、言いかえてみれば、狭義であろうと広義であろうと、これが実施できるかできないかということは 企業の収益力が正常であるかどうかにかかつているのであります。日本の各会社の収益力、また経営状態というものが正常であるならば、こういう問題は、どんなに強制いたそうと支障なくできなければならないわけなのであります。しかし遺憾ながら現在のわが国企業実情は、減価償却費を増大し、あるいは再評価積立金資本に組み入れるということになりますと、りくつではこれが合理的な措置であるとして認められても、実際は行い得ないのであります。ここに、今回の再評価強制ということが帳簿価格を再評価するという経理上の処置によつてなされる程度にとどまつたということが言えるのでございます。ただこれだけでも非常に意義がありますので、今後は各会社が企業の収益力とにらみ合せて、そうして減価償却費を増そう、あるいは再評価積立金資本に組み入れようと考えたら、随時これがなし得るという態勢に置かれたことだけでも大きな意義があると思いまして、この点におきましては全面的に賛成する次第でございます。しかしながらここに問題となりましたのは、これだけでは企業に何ら実質的の影響をもたらさないということで、何とかしてこの減価償却費を増して資本の食いつぶしを防がせよう。または再評価積立金資本に組み入れて、資本に対するところの利益率、配当率を適正にさせようということが、強制はできないが、配当制限を条件といたしまして促進させようという当局の意向も、またおのずからわかるのであります。ただこれらがはたして現在の企業実情に合うかどうかということは、すでに他の参考人からも述べられておりますが、この点についてもひとしく私見を述べてみたいと思うのであります。しかし、まずこの問題について考えます前に、一、二法案の箇条に従つて気のついたことを申し上げてみたいと思います。  この再評価の対象となります資産という中に、土地が取残されているということは、これでよろしいかどうかということであります。従来は土地が減価償却の対象にならないということで、特別扱いを受け付けたことは明らかでありますけれども、今回のごとく会社の資本構成を是正するために、再評価積立金を自己資本として計上させるということになりますと、土地だけが昔の低い価格で残つていてよいのかどうか、この点は一応指摘しておきたいところであります。ただ土地には六%の再評価税がかかつておりますので、これを取除くことが、土地の譲渡をいたしました場合の譲渡所得との関連もあつてできがたいというのであるならば、これは個人の場合のように、譲渡の必要が起つたとき、そのときに課税すればよろしいと思うのでありまして、そういう措置が講ぜられるならば、土地の再評価も、一応強制しないまでも、できるように、任意にさせることがよろしいのではないか。現在もちろん土地の再評価は任意にはなつておりますが、六%の税がかかつているからには、実質的にはこれはなし得ないのでありまして、これを妨げていることを認識いたさなければならないと思います。  次は、陳腐化資産の問題であります。陳腐化資産の問題は、今回の再評価強制をするにあたつて一番がんになつている問題と思います。何となれば、再評価強制するといつても、陳腐化資産であるといつて、この最低限度額をやらないで、これがのがれてしまうというおそれがもしもあるならば、この強制ということはある意味において骨抜きになるおそれがあります。しかしこれは企業といたしましておそらくそのようなことはいたさないにいたしましても、逆に当局からこれは陳腐化でないと考えられて、ここに論争が起る心配があるのであります。何となれば、陳腐化資産というのはまことに客観性が薄いのであります。従つてこれらの論争が起らないように、当局も企業実情を理解してやるべきでありましようが、法律においても、でき得る限りこれらに対する措置が適正に講ぜられることを希望いたす次第であります。  それから次に問題になりますのは、先ほどから西野並びに小池参考人から申し上げました問題で、この再評価積立金の四割を資本に組み入れることが一割五分の配当制限とからみ合つていることでございます。ここに私はこの問題について指摘いたしたいのは、再評価積立金の四割、これだけでは意味をなさないということであります。何となれば、この再評価積立金の四割が資本とどういう割合にあるかということを考えなければならない。資本金が少くて、再評価積立金が多い会社は、この四割を組み入れますと、資本の数倍増資をしなければならないことになるおそれがあるからであります。また資本が比較的大きく、再評価積立金の少い会社は、一対一の増資によつてこの問題が片づく場合もありましよう。かかる場合においては、この会社において無償株交付を一対一で一回いたしますれば、あるいはこの問題を解決できるかもわかりません。かかるように、この資本金対再評価積立金の四割というものを考えないで、軽々に四割だからよかろうということでこの問題を取上げることは危険だと思うのであります。しかしながらこれは西野参考人も申された通り、私自身としても、今日資本金に再評価積立金を全額たとい組み入れても、会社といたしましてはこれに対して適正な配当がつき、そうして資本が適正化すという利益が受けられるというような経営状態で本来ならあるべきだろうと思います。しかし遺憾ながら現在の日本企業の大部分は、これらのものに耐え得るような事情にないのであります。これらは冒頭に申し上げました通り、理論的には望ましいことであつても、この問題は現在としてはむずかしいのであります。特に本年度から今後一、二年の間を想像いたしますのに、増資すらも、あのように一割までは非課税だというような優遇を受けながら、実際は行えないのでございます。それからまた現在この上無償株を三年の間に交付するといいましても、無償株を交付すれば、その会社がそれによつて適応するようなりつぱな収益力があるならば問題はないのでありますが、この問題が伴わないと、比較的悪い影響が起つて参るのであります。そこで問題となり、もう一つ考えなければなりませんのは、この再評価の積立金を資本に組み入れて資本金を増すというと、必ず配当率が下る。またこれが目的であるように聞いております。しかしこれがおのずと増配になるということはあまり多く問題にされてない。これは私はぜひ申し上げておきたい。つまり配当というものが増配であるか減配であるかということは、率などをもつて考えては非常にこれは矛盾を来すのであります。利益のどのくらいの割合配当にまわすかということが、配当割合を決定する問題でございます。それを率が少くなるから配当する割合が減つたのだ、こうお考えになるのはおかしいのでありまして、現在三割配当しておる会社が一対一で無償株の交付をして、再評価積立金資本に組み入れますれば、一割五分に配当が下るというなら問題はないでしようが、多くの会社は三割から一割五分にはいたしません。二割という配当にとどまりますならば、これだけ会社といたしましては配当にまわる金額が多くなりまして、そうしてそれだけ増配という問題を起すのであります。かかる問題は、本来会社の収益率が適正ならば、これも合理的な措置と思うのでありますけれども、現状ではむしろ資本蓄積を慫慂すべき時期でありますので、これらの措置も矛盾を来すのではないかと思います。こう考えて参りますと、このような措置は理論的には正しいけれども、実際は現状にはあまり適しないのではないか、従つて資本の四割を組み入れを急がせるということがこの現在の経済界の実情と沿わないということになれば、この問題については再検討する必要があるという点であります。しかし法律はそのような事情がわかつておるから、一割五分に配当を制限して強制しないのだというところにこの問題が考えられるのでありますが、しかしこれは、私は西野参考人の申したことについてなるほどと考えさせられるのは、一割五分という中途半端の問題を取上げておることでございます。これをほんとうに理論通り資本に組み入れた方がよろしい、またそうすることが日本全体の立場からいつてよいということにきまるならば、また実情がこれを許すならば、私は配当制限というものをもつと低目に持つてつてもむしろいいくらいであります。いなまたそういう配当制限ということをとらないで、何らかの形においてこれを強制してもいいと思う。しかし現状はそれを許さないことは明らかであります。そうなれば小池参考人が言われたように、一割五分の配当という制限を、何らか株価の上におきまして、また株の利まわり採算の点から見ても、むしろいつそのこと二割程度に引上げて調整することが実情に合つていいのではないかという感が深いのでございます。それは現在でも、一割五分の配当をしている会社は総会社数の四割だと聞いております。それならばこのような経済事情のもとにおいては、三年後においてはおそらくその間に増資もありましよう。また経営状態もなかなか困難になつて参りますので、おのずと一割五分の配当に大部分のものが入るのではないかということも考えられます。しかし中には、企業努力によつてせめて二割程度まで配当したいという企業があつてもよろしいのではないでありましようか。またそれらの希望があることが、株式市場に非常によい影響をもたらすものと私は思います。一割五分で、これ以上はなかなか配当が容易でないということを言われるよりも、ほんとうに力は一割五分でも、努力すれば二割になり得るのだという余地を残すことが必要であります。こうなるならば、現在の資本組み入れを強制するような、促進するような感じのある問題は、実情に遺憾ながらあまり合わないとするならば、その配当を一割五分に条件をつけることの方が悪い影響があるとするならば、この際これをむしろ緩和して、この問題を調整した方がよろしい。将来わが国企業の収益力が増大し、そうしてこれらの資本を組み入れても、無償株を発行しても企業の経営にあまり影響がないという時期が来たら、あらためてこの問題の再検討をされることがよろしいのではないか、このように考える次第でございます。従つてこの資本組み入れの問題につきましては、理論的に考える面ばかりでなく、経済実情とよくにらみ合せて、できる限りそこに調整をとられんことを希望してやまない次第でございます。  なお減価償却費の励行につきましては、これは九〇%とは言いながら、強制の線から行きますれば、八割に対する九〇%でありますので、七割二分であります。従つてこれに対しては、ある程度まで企業といたしまして、実際的にこれだけの減価償却費をやらないで、高率配当をするのはどうかということを言われてもやむを得ませんので、この問題は第二次的にいたしまして、原案に賛意を表してもよいと私は考えております。  以上であります。
  19. 千葉三郎

    千葉委員長 質疑の通告がございますので許します。まず大平君。
  20. 大平正芳

    大平委員 問題の再評価積立金の四割資本組入れの問題でございますが、これにつきましては、賛成反対もいろいろ御意見を伺つておりまして、私どもの方でも非常に苦慮いたしておるのでございます。しかしこの法案のこれがバック・ボーンというか、これをはずすと大した意味もなくなるという意見もあるのであります。しかし今金子先生のお話を聞いておりますと、なるほど対案の割合がまちまちでございまして、また急に組み入れても証券市場を非常に圧迫する点もありますので、日本の経済実態に即して一体これはどういうふうに考えたらいいものか、端的に四割組入れという方式でするか、あるいはそれを若干下げて三割にしたらいいのか、そういう一本調子のやり方でなくて、資本割合とかいうものをもう少し具体的に考慮に入れて法案を考えたらいいのか、そのあたりに名案がございましたら、ひとつお教えを願いたいと思うのであります。われわれもこれ非常に考え抜いて、おるのですが、非常にむずかしい問題であります。この点、金子先生から具体的な御意見を伺つておきたいと思います。それが第一点。  それから法定限度の八割を強制評価するというのでございますが、土地の問題でごさいますけれども、それは土地を入れるということになりますと、小池さんが言われた八割、七割——八割は若干無理であろうという点で軽減されるのでありましようか、その関連を伺いたいと思います。  それから本法案自体の関係じやないのですか、先ほど西野さんが言われましたが、五百円株の問題であります。これは理論的にも実際的にも非常に重要な提案たろうと思うのでございます。この点は商法改正の問題になりましようが、五百円で株の値がきまるということに相なつた場合に——これは小池さんに伺いたいのですが、一体証券市場の方にどういう影響があるか、一体受入れられるものかどうか、法案自体と関係がないのでありますが、この機会にお伺いしたいと思います。
  21. 金子佐一郎

    ○金子参考人 ただいま御質問の、この四割資本金組入れに対する具体的な改正案があるかどうかという御意見でございますが、私はこの際この問題についてはこのように考えております。まずだれが考えましても、今回の再評価促進するということについては、財界あげて反対するということは、個個の立場は別といたしまして、全般的にはまずもつてできないのではないかと思うのであります。そういうことならば、資本に組み入れるという考え方も支持してよいのではないか。従つてこの資本金に再評価積立金の四割を組み入れるということは、このまま残しておいてもいいのだ。これを二割にし三割にするということを考えることも一つの緩和策でありましようが、しかし今日この再評価強制し、また減価償却費と資本組入れを促進しようという、この趣旨だけは生かしたいのでありますけれども、その四割をどうしても、企業実情を無視して、実施をこの三年間にしなければならないような感じは、これは取除いた方がいいのではないか。そこでもしもこれをほんとうに強制できるとお考えになるならば、もつと強制させるような措置をいつそとつた方がいいではないか。しかし現在強制することができないということが明らかならば、決してこの問題を骨抜きにするという意味ではないが、企業の努力によつて配当も少しはできるようにし、また株価も維持し、またせつかく先般の、増資に対して非課税までの措置をとつていただいて、企業資本の充実をはかろうという今日のことでありますから、これこそ容易ならしめていただきたい。その線で配当の率を二割という程度にまでこれを修正していただくならば、大体解決するのじやないかと思うのであります。というのは、二割以上の配当をしようとする場合には、その積立金の四割を資本に組み入れることも、まずやむを得ないだろうということをもし言うなら、これも一つの考え方じやないか。同時に二割という線は、私の見通しでは、今後二、三年のうちには企業配当はこの程度以内に一応収まるだろう。場合によれば一割五分の中に収まるかもわからない。しかし二割までできるという余地ができると、先ほど小池参考人が言われたように、この株価の利まわり採算という点も大分よくなつて参ります。それから企業努力も何かそこに明るさをとりもどし、そうして二割程度配当が許されるなら、あるいは増資も容易になるのじやないか、こういうような面で、むしろこの際積立金の四割なりを資本に組み入れるというその観念的な考え方はやはりここでくずさないでおいて、これを実情にさしつかえないような方面で調整をするならば、配当の二割制限の程度にこれを五分引上げておくということが解決する一つの道ではないか、私自身はそう考えておることを申し上げます。  それから土地について御質問がございました。土地を再評価することがどうかということでございますが、土地は減価償却を許されておらないのでございます。従つてこれを再評価いたしますとすれば、会社の決算報告書は真実性の原則に基いて、皆様がごらんになつたときに、できるだけ会社の実情に即する数字が載つていなければ意味をなさないのであります。今度の帳簿価格を再評価するという意味も、今まで潜在していた会社の含み資産、これを表に現わす一つの仕事なのでございます。それをやるならば、土地だけその中にもぐつていて、非常に安い価格で記帳されていることも、貸借対照表の真実性の原則からいつても非常におかしい。また今回のねらいが必ずしも減価償却とか資本組入れというばかりでなく、再評価積立金をつくりますことによつて自己資本がそれだけ増します。資本構成を是正するということにも考えが及んでおるのであります。それならば土地も同じように再評価させましてもよろしいのではないか、ごう思います。  先ほど小池参考人が言われました八割を七割にしたらどうかというのは、このお考えは、あくまでも減価償却等が伴つて、あるいは会社がそれに伴つて何らか困難な問題が附帯するかどうかということを考えられての御懸念からだと思いますが、帳簿価格を今日の時価に近い正しい適正な価格にすることは、私は何も企業として必要がないのではないか、このように思います。ただ取残されたのは何ゆえ取残されたのか、おそらく六%の税を課税しておる関係から、これを取上げ得なかつたのではないかということが考えられますので、この点一応の問題として述べたわけであります。
  22. 小池厚之助

    ○小池参考人 株式の額面の引上げ問題でありますが、その前に一つ申し述べたいのですけれども、四割の再評価積立金資本組入強制をやるために、株券がふえるから圧迫するだろうという考えは、私どもあまり持つておりません。これは実は投資力の問題でありまして、この点はあまり深く考えておりません。むしろ私どもの言う重点は、今後の増資は有償増資が必要だ、こつちの方に重点がございますから、その点ちよつとお含み願います。  それから額面の引上げ問題ですが、これは証券界が当面している大きな問題なのであります。これは発行会社の手数の方からいつても、われわれ業者の手数の方から申しましても非常に重大なことでありまして、私どもいろいろ考えておりまして、いずれは額面を引上げるのが適当なのではないかと考えておりますが、しかしこれもやはりタイミングの問題と申しますか、その施行についてはやはり研究を要する。率直に申しますれば、時期がまだ少し早いのじやないかということを考えております。と申しますのは、大蔵省の調べによりますと、東京の証券取引所に上場されております上場会社の株主の持株数は大体五百株を割つておるのであります。四百何十株でありますそうしますと、多数の投資家の中には、現在百株あたりの株でも大いに持つたというので得意になつて喜んでおられる方も、十株になつてしまう。十株だと何だか株を持つた気分にならないというような心理的な問題もあるのじやないかと思います。それからこれはいずれば是正される問題と思いますが、今これを即時実行するとしますと、当面は五十円の株価が五百円にはならないと思います。その例はたくさんあるのであります。小林富佐雄君の東洋製罐が最近額面を五十円から五百円にかえました。そのかえます前は、株価が百七十円ないし二百円くらいしていた。それですから五十円の株が五百円になりますれば、千百円から二千円になつてしかるべきなんであります。これが 額面を引上げましたあと、今千円そこそこであります。一般の株式も下りましたけれども、下つた率が非常に多いのであります。これはやはり百七十円の株なら買いやすいけれども、千七百円となると買いにくいというサイコロジーが働くのじやないかという気がいたしております。しかしこれだんだんと日本の経済がおちつけば、そういうことは是正されることはもちろんだと思います。利まわりによつて買われるのでありますから、たとい千七百円になつても二千円になつても、利まわりが相当ならば当然是正されるべきものと思います。現在におきましては、大体において額面を引上げますと株価が下るというのが実情であります。それやこれや考えまして、私どもも決して根本的にこの問題に反対しておるわけではございませんが、まだ少し時期が早いのじやないか、非常に株数が多いとむしろ私どもは商いの手数がかかりまして、そのために経費が非常に膨脹して来るのであります。額面を上げて行くことは望ましい面もたくさんあるのであります。しかし今申しました通り、日本の今の株主の持株が一人五百株を割つておるという実情におきましては、もしこの額面を上げますと、現在の株式の売買単位百株を十株に下げて行かなまねく知識を網羅した形においてこのければならない。こうなるとわれわれの手数が実は同じようになるというようなこともございまして、あれやこれや考えまして——もつとも事業会社の方は、なるべく券面が五百円なり五千円になつた方が株主に対する手数が省けるからというので、これを非常に御希望になるのであります。これは売買単位もだんだん百株から五百株に引上げるとか、あるいは千株に引上げるという方法もあるのじやないかと考えております。われわれといたしましては宿題であります。決して反対はいたしませんけれども、同時にすぐ賛成もいたさない。結論としてはもうしばらく研究させていただきたい、時期尚早ではないかということを考えます。
  23. 春日一幸

    春日委員 議事進行について……。ただいま本法案につきまして貴重な御意見を承つたと思うのですが、この法案わが国貨幣改革にも匹敵するような重要法案であり、もつて及ぼす影響は、国民経済、さらに国民の資産、いろいろと波及するところが非常に重大であろうと考えるわけでございます。そこで本日御意見の公述を願いましたのは、主として企業経営の当事者の方々で、そういう視野からいろいろ御検討願つた御意見を承つたと思うのであります。私どもは、この法案は非常に厖大な法案であり、しかもこれは画期的な重要な法案であるという立場におきまして、少くとも高橋正雄教授、都留重人氏、向坂逸郎氏、大内兵衛氏、鈴木武雄氏、これら経済学者の御意見を十分承つて、学問的に、また実際的にそれぞれ御検討をいただいた御意見を拝聴して、われわれはそのあまねく知識を網羅した形においてこの法案審議に入りたいと思うわけでございます。非常に問題は重大でございまして、しよせん何らかの施策を講じなければならぬ問題ではあるが、しかしこのことは、あたかも心臓の手術のようなもので、外科や内科の知識の枠を網羅しなければならない。もしあやまつてこのことを行えば、たいへんな結果を及ぼす心配なしとはしないのであります。従いまして、ただいま申し上げました諸学者に、同様な方法によつて急速に御意見の公述を願う機会を特に与えていただきたい。なお本日御公述を願いました貴重な御意見は、すべてこれ専門的な事柄に属しますので、非常に緊張して拝聴いたしておりましたが、聞き漏らした点も相当あると思うわけであります。従来の慣例によりますと、この速記は一週間ないし十日を要しますので、これも本案審議の資料といたしまして十分役立つかどうかか心配でありますので、願わくは本日の公述は特別の謄写版刷りにでもいたしまして、明日でも本委員会に御配付を願うような措置をおとりはからい願いたい。そういたしまして、引続き私がただいま申し上げました数氏の学者の御意見をもあわせて拝聴いたしまして、それらの資料をわれわれの知識といたしつつ、いろいろと本法案検討に入りたいと思いますので、委員長においてそのようにおとりはからい願いたいという動議を提出いたします。
  24. 千葉三郎

    千葉委員長 いかがですか、春日君の御意見は……。
  25. 福田繁芳

    福田(繁)委員 ただいまの春日君の御意見は一応了承できるのですが、せつかく公述人が来られて今参考意見を伺つておるのですから、後刻の理事会で適当にきめたいと思います。
  26. 千葉三郎

    千葉委員長 さようにとりはからつてよろしゆうございますか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  27. 千葉三郎

    千葉委員長 ではさようにとりはからいます。柴田君。
  28. 柴田義男

    ○柴田委員 西野さんにお尋ねいたしますが、私どもはまた提案理由説明をはつきりのみ込んでおらぬのでありますが、法案説明には、ただ資本金五百万以上となつておるのです。五百万以上という簡単な提案でございまして……。   〔「五千万円だ」と呼び、その他発言する者あり〕
  29. 千葉三郎

    千葉委員長 静粛に願います。
  30. 柴田義男

    ○柴田委員 五百万円でも五千万円でも、私の伺わんとすることは同じでございます。単に五千万円以上というのでございましても、たとえば固定資産を非常にたくさん持つている会社と、割方固定資産はよけい持たないでも、その経営企業体によつていろいろな点があると思いますが、こういう関係を全然見ないで、全部資本金だけで五千万円以上の資本金に対する再評価をやる、こういうようなことではたしてこの法案目的が達せられるかどうかという点です。  もう一つは、日本の現在の貨幣価値というものは、もはや平価の切下げをやらなければならぬような状態にまで迫られている、こういうように私どもは見ているわけです。ドル換算にいたしましても、現在は実質的には一ドル対三百六十円というのは無理なようにわれわれは見ている。これは国際市場等をごらんになれば十分おわかりだろうと思います。こういうさ中にいまなおこの再評価をやらなければならぬというのは、貨幣価値との関連において妥当なのかどうかという点です。  もう一つは、先ほど来金子さんも土地の再評価に対しましては反対のような御意見でございますけれども、再評価の大きな目標が土地になかつたのかどうか、これは提案者に対しましてわれわれはもつと理由を究明しなければなりませんけれども、土地とか建物とかいうようなものは、現在の状況から見ましたならば、各会社の帳簿価額とは相当大きな開きがあるのではないかとわれわれは見ている。ただ先ほども金子さんの御説明を伺つておりますと、減価償却を認めないから、土地に対する考え方はこれに反対であるというように承つたのであります。今大きな比重を持つているものは土地ではないかとわれわれは考えますが、これらに対しましていかようにお考えでございましようか。もう一度西野さんから承つてみたいと思います。
  31. 西野嘉一郎

    西野参考人 第一の問題でありますが、私の了解している程度では、資本金が五千万円以上の会社、それから資本金が三千万円以上で一億以上の固定資産を持つているものが再評価の対象になつておると思います。従つて法案の内容から見ますと、大体この辺のところをねらえば間違いがないじやないか。大蔵省から提出されております資料によりますと、五千万円以上の株式会社、これは法人企業でありますが、全産業におきまして千百五十一社あります。この千百五十一社で持つている固定資産が、五千万円以上の株式会社をとつたら八二・五%あります。大体日本の株式会社で、資本金三千万円以上で一億以上の固定資産を持つている会社を入れますと、私たち推算しますと、二千社くらいあるじやないかと思つております。大体株式会社の九〇%くらいがこの中に包含されるじやないかと思います。従つてこれだけのものを対象にすれば、この再評価の問題は一応解決するじやないか、その中に入るじやないかと、いろいろの資料から考えておるのであります。  それから第二の御質問の点でありますが、貨幣価値が三百倍にもなつているときに今こんな再評価をしてもどうかというお話であります。先ほどどなたかお話がありましたが、西独におきましては、貨幣改革行つて、同時に逆の意味において、つまり十分の一に金銭的債権を切り下げることにした。これは十倍の再評価強制されたと同じことになつたのでありますが、わが国におきまして、今ここで貨幣改革を行うとか、平価切下げを行うとかいうことは、もつと大きな経済的な問題を惹起することになりますので、問題を起さずして、企業経営の面において同じような効果をもたらすことが本案の趣旨ではないかと思うのであります。従つてこのような非常なでこぼこになつている企業経理をこの際本案の趣旨に従つて是正するということが、緊急を要する問題では大いかと私は思うのであります。  それから第三の点は、金子さんの御意見は、土地を再評価の対象からのけたのはおかしいじやないか、再評価すべきじやないかという御意見であつたと思いますが、私も同様の意見を持つているのであります。土地は再評価の対象とすべきだと思つております。ただ前に六%の再評価税をとりましたから、今度再評価の対象にいたしますと、六%の再評価税を返さなければならぬという問題が出て参るのではないかと思います。そういうことで償却資産でもないし、本案の主目的はつまり減価償却を充実させて資本の蓄積をはかろうということでありますから、土地を、大蔵当局としてはそういう困難な問題を一応たな上げにするため除いたのではなかろうかという金子さんの御意見だと思うのであります。私もそういう御意見があるならば、土地をやつたのはきわめてわずかでありますから、再評価税をこの際返してでもやはり今回土地を再評価の対象に入れるべきではないかと思つております。その場合に特に気をつけなければならぬことは、地方税法における四百十四条の例外規定で、家屋を今度償却資産から除いておりますが、そのときにまた土地も除くということになりますと、これから固定資産税の問題に大きな問題が企業経営としてそこに惹起いたします。またせつかく評価の対象に土地を置いて、四百十四条から土地と家屋を除くというと、これはとんでもないことになりますので、もし土地を入れるならば、土地も家屋と同じように、今回の四百十四条の例外規定と申しましようか、四百十四条の中に土地と家屋を除くということでなしに、やはり土地も家屋も同じように、現状の固定資産税の対象価額と同じように、三年か五年か、本案にありますようなすえ置き期間を置くということに対して処置をとつていただきたい、こう思うのであります。
  32. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 参考人のどなたでもけつこうですが、この企業資本充実のための資産評価等特別措置法案が通過した場合、最終の利得者はだれか、こういう点で少し質問をしたいのであります。最近町村合併促進法というのができまして、四月一日を期して今まで町であつたものがいきなり市になつたのがたくさんあります。しかしその実態を見ますと、きのうまでの町は依然として実質的にはかわりませんで、名前だけが市になつている、かような例をよく見受けます。私はこの法律案によりまして、今回ここに出ております法律案が施行された場合、企業というものは非常に合理化されるということが皆さんから言われておりますけれども、この法律案はどつちかというと心理学的な法案だ、こういうふうに考えるのであります。但し反面きわめて実利法案である。それはどういうことかというと、企業資本充実のためにという最も主要テーマの点においては心理学的なものだ、逆に減税という点におきまして実利的な要素を多分に含んでおります。この点で私質問申し上げたいと思うのであります。大体税法が、法人税にしても所得税にしても、租税負担の公平の原則というものでちやんと規定されております。ただ最近租税特別措置法というもので傾斜減税がうんと行われております。これはどのくらいの比重を占めるかというと、大体二十九年度の法人税の総額が千八百億くらいに対しまして、租税特別措置法によつて減免の税額は六百億くらいになるのです。ですから非常に大きなものであります。私はこうしたいわゆる大法人、特定法人に対する減免措置特別措置というものに、かてて加えて今回のこの法律によりましてそうした傾向が拍車を加えられやせぬかとおそれているのであります。もつと具体的に申し上げますと、たとえば再評価積立てを資本に組み入れる。四割組み入れて——例としまして十億円の資本が百億の資本なつたといたします。それで再評価益金を要するに無償株配付の形でやるとします。そうしますと、今まで二割、三割を配当しておつたのですが、その結果資本金の絶対額がふえたので、そこで配当率があるいは五分に下るかもしれぬのです。しかし無償で配付を受けている株主諸君にとつては、従来の二割が五分に下つても、持株の絶対量がふえるのですから、そのあとに配当されるいわゆる配当金の絶対額はかわつて来ません。こういう点で株主自身は可もなく不可もない状態に置かれると思うのです。ところが、たとえばそこに従業している従業員は、期末手当とか、そういうふうなものを要求する場合において、二割も三割も株主に対して配当しているというのに、なぜわれわれの期末手当を上げてくれぬか、かような点で主張されているわけであります。ところが今度は五%の配当きりしないということになれば、五分しか配当していない会社の現状においては、労働者諸君に期末手当を上げるわけにはいかぬというふうな意味で、こうした法律が施行されたあかつきにおいて、いわゆる減税という社会的な負担が現実の問題としてあるにもかかわらず、この法律自身によつていかなる社会的効果が生れるかということが、やはり私どもの重大関心事であります。今言つたように、労働者の賃上げの口実が阻止されるというふうな点から見ても、一つの社会的な効果というか、それに対しまして減殺される——減殺されるというのは誇張としても、そうした点は、私どもは見のがしてはならぬ点であろうと思うのであります。ですからこの法律による最終の利得者は経営者なのか、それとも株主なのか、従業する従業員なのか、あるいは国民経済そのものであるかどうか、こういう点に対しまして、ひとつどなたでもけつこうですから、お害えいただきたいと思うのであります。
  33. 西野嘉一郎

    西野参考人 私は今の御質問に対しては、本案が通過すれば、これは株主でもなく経営者でもなく、国民経済というか国家であると思います。国が今後において企業減価償却を通じて——減価償却というのは一般の減税と違いまして、一時的には減りますけれども、それがだんだん減つて参りますと、企業は機械とか設備が回転をしさえすれば収益を生んで参ります。従つて今はある一種の税金は課税所得が減るかもしれませんが、将来は必ずそれがふえる源をつくるというように考える。減価償却による減税というのは、一般のいわゆる減税とは非常に趣が違つている。従いましてこうした処置は、いろいろな角度がある思うのでありますが、国民経済実態をなしているものは何といつて企業体だと思うのであります。いろいろな角度から申しましても、企業実態が堅実になり、それからそれがやはり現在の——いろいろありますか、従業員の所得に対しても、やはり企業実態がよくならなければ個人所得も増加いたしませんし、国民経済も伸展いたして来ないのでありますから、何と申しましても自由経済の今日におきましては、企業実態をやはりよくするということでありまして、それがやがて将来において国民経済を堅実にし、国家の財政に寄与するものである。本案の通過は、結論的には収益が国家財政を豊富にするものであると私は確信しております。
  34. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 むろんあらゆる法律案提出されるのには、国民経済的な観点から出されておりますが、これはお題目あると思う。われわれがそれを分析をして行くのは、今の大まかな一つ国民経済のお題目ということでなしに、そういう点ももう少し検討を要する、かように考えて申し上げているのであります。そこで再評価の積立てを資本に組み入れる際に、やはり今度は有償の増資、この点を抱き合せてやつて行くとか、こういうような規定をやはり設けなければ片手落ちだと思います。この減税額を機械の再取得のために充てるとか、そういうことで、むろん間接的には国民経済のために寄与することは事実でございましようが、やはり有償の株の発行、こういうことを大きな観点から見れば、抱き合せてやつて行く義務があろうと思います。企業者の側にあるあなた方にこのことを申し上げてもどうかと思うのですが、そうした積極的な増資、自己資本の調達が、この減税のテーマとともに考えられて行かなければならぬと思いますが、この点についてどのようなお考えでしようか。
  35. 小池厚之助

    ○小池参考人 私は先ほど申しました通り、日本の企業は、大部分の企業が有償増資をなお必要とするという根本の考えがございますから、その意味におきましては御議論賛成であります。但し企業の個々によつて事情が違いますので、必ず抱合せをしなければならぬというふうにきゆうくつにきめることはいかがかと思います。  それから先ほどのだれが利益するかということでありますが、実は今は減税のように見えても、あるいはとるべからざる税金をとつていた点もあるのでありまして、それを適正にもどすということでありますから、だれが利益するということではないと思うのであります。
  36. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 減税というのはフエーヴアにあらずして、今までが取過ぎた、この点は言えると思います。たとえば全産業で調べたもので、戦前の商品コストの中に占める償却割合は八・六%、ところが、ちよつと数字が古いのですけれども、昭和二十四年の上期には〇・九%、こういう点からいいますと、確かに今までの租税が不当にとられておつたということが言えると思います。この点は一応承認するのですが、われわれとすれば、この法律が施行されての社会的な一つの効果ということも、やはり広い視野から考えていただかなければならぬと思う。かような点に対しまして注文をつけたいのであります。それから、これは三十二年、三十三年になつてからのことでしようが、再評価をして、従つて、その再評価された分だけ比例して償却を損金として認められて来ますので、そこに減税ができると思うのですが、この法律強制部分、つまり五千万円以上の資本金を有する会社、あるいは五千万円でなくても、三千万円以上の会社にして再評価限度一億ですか、これに達するものが対象になつておりますが、推定減税分はどのくらいになりますか、おわかりになりますか。
  37. 西野嘉一郎

    西野参考人 先ほどちよつと私申し上げましたように、戦前の率までやつて約二千億の減価償却不足を生じております。この第三次再評価の限度というのは、戦前の率でなくて、現在の限度一ぱいまでやれば大体倍になるのですね。私推算をいたしますと、第一次、第二次で七割五分くらいやつておるということであります。今度の第三次は五割増すのですから、限度まで行くと倍になるということです。千億ぐらいはふえるという勘定になるのですが、八割で切りますし、さらに全部を含んでおりませんから、そういう推算からいえば、やはり大蔵省で資料を持つておられると思うのですが、四、五百億くらいのものじやないのでしようか、しかし、これは瞬間に生ずるものでありまして、減価償却でありますから、翌期々々とだんだんそれが少くなつて参る、ですから、初めには五百億、四百億になるかもしれませんが、必ずしもそれだけが計算できるものではないので、二、三百億のものじやないかと思うのです。翌期からそれがまた減つて行つて、何年かすればそれがもう百億円くらいになる。それが逆に税源になつて来て課税の所得になつて来るということでありますから、累積されるのではなくて、どんどん減つて行きます。機械のごときは七年とか十年とかいうのがありますので減つて参りますから、現在、つまり国民経済として、企業は今ここ二、三年が注射をしなければならないときでありますから、ここに時をかして、この法案を実施して企業資本蓄積の力を起さしめるということが必要でありまして、三年なり四年なりして企業に実力ができれば、今申し上げましたようなことが、課税の所得に入つて行つてもよいのじやないかと思つております。この案をやりますことによつて、そう驚くべき数字にならないと私は思つております。
  38. 千葉三郎

    千葉委員長 この際一言参考人各位にお礼を申し上げます。本日は御多忙中のところ当委員会に御出席をいただき、資産評価関係の両法案について長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただきましたことは、当委員会法案審査のためにたいへん参考になりました。厚くお礼を申し上げます。  本日はこの程度で散会いたします。    午後零時二十七分散会      ————◇—————