運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1954-03-17 第19回国会 衆議院 公職選挙法改正に関する調査特別委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年三月十七日(水曜日)     午前十一時二十一分開議  出席委員    委員長 森 三樹二君    理事 大村 清一君 理事 鍛冶 良作君    理事 田嶋 好文君 理事 島上善五郎君    理事 竹谷源太郎君       尾関 義一君    高橋 英吉君       中川 俊思君    原 健三郎君       松山 義雄君    河野 金昇君       中嶋 太郎君    飛鳥田一雄君       石村 英雄君    鈴木 義男君       三輪 壽壯君  出席国務大臣         文 部 大 臣 大達 茂雄君  出席政府委員         総理府事務官         (自治庁選挙部         長)      金丸 三郎君     ――――――――――――― 三月十日  委員川上貫一君辞任につき、その補欠として風  見章君が議長の指名で委員に選任された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  小委員補欠選任  公職選挙法の一部を歌正する法律案内閣提出  第七号)  公職選挙法の一部を改正する法律案内閣提出  第七五号)     ―――――――――――――
  2. 森三樹二

    森委員長 これより会議を開きます。  公職選挙法の一部を改正する法律案内閣提出第七号及び内閣提出第七五号を議題として質疑を行います。本日は文部大臣の御出席を煩わしましたので、委員の方の御質疑をお願いいたします。飛鳥田君。
  3. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 それでは教育公務員特例法の一部を改正する法律案について二、三お伺いいたします。この法律案を見ますと、教員について地公法の三十六条の適用をはずしまして国家公務員法の百二条を適用するということになつておりますが、こうしなければいけない、不都合だという具体的な事例がおありだつたのでしようか。
  4. 大達茂雄

    大達国務大臣 御承知通り教育という事務は、ただ一地方に限られたものでなく、国家的な仕事であり、また法律の上におきましても、国民全体に対して直接責任を負つて行われなければならぬこういうことでありますので、その公務である教育というものの持つ特殊性にかんがみまして、地方公務員たる教有公務員国家公務員たる教育公務員との問に、その政治的行為制限について区別をする理由はない、かように認めたのであります。
  5. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 お話を承つておりますと、みそもくそも一緒にするような感じがするのですが、たとえば、国家公務員法適用を今まで直接受けておりました大学教授地公法の三十六条の適用を受けておりました教員こういうものの間に、単に教育国家に対するものだとか、あるいは教育公務員職務特殊性を考慮してというようなことで、その区別は全然抹殺してしまうというように伺われるのであります。何か具体的な事例があつてこうしなければならないのだということでもありまするなら特別、そういう特殊な弊害があなたの方であがつていないとすれば、単にそういう議論だけで問題をかえて行くことはいささかどうかと思うのです。そこで、同じ議論だけといたしましても、大学教授小学校教師との間には性質の違いがある。これは国民全体に責任を持つといつても、影響力の違いが当然あるはずであります。この影響力の違いを、正しくと言つてはおかしゆうございますが、今までの地公法の三十六条と国家公務員法の百二条によつてはつきりと表わしておつたこういうふうに私たち考えるのですが、今のお話ではごの両者区別を撤廃すべき具体的な考慮がないというふうに思わざるを樽ないのですが、なぜ小学校教師日本国家全体に対して責任を負わなければならないのか、地公法の三十六条のように、自分学校の管轄している区域の外に出れば、普通の人間として政治活動ができるというようなことが不適当なのか、もう少し具体的なお話をいただきたいと思います。
  6. 大達茂雄

    大達国務大臣 御承知通り公立学校におきましても、公立大学、いわゆる府県立大学というものが現在ございます。でありまするから、都方公務員たる教育公務員のうもでも、大学教授をしておる人がたくさんあるのであります。それから国家公務員たる教育公務員が何も大学教授に限られておるわけではない。付属の中学校もあれば小学校もある。従つて学校の種類において、国家公務員地方公務員たる教職員の間に御指摘のような区別はないと私は思うのであります。  それから、もともと公務員に対する政治的行為制限は、私の解するところに従えば、また地方公務員法地方公務員政治行為制限に関する規定によりましても、公務員自身政治的な中立を保つことによつてその公務の適正な運営を保障するこういう趣旨のものであります。今日ことに義務教育学校において――むしろ私は今お話の点と考え方は逆でありまして、もし政治的な主張片寄つて教育の場に持ち出される、つまり教員個人の持つておる政治上の主張によつてその公務が左右せられることがあるというならば、その弊害といいますか、それはむしろ業務教育つまりまだ年の行かない子供に対して行われる場合の方が、より強いと私は考えておるのであります。今日御承知のように学校教育の場において強い政治的な偏向した教育が行われておるということは、私は衆目の見るところであると思うのであります。従つて、この点についてさらに保障を強めるために、その意味からも国家公務員一緒にするという理由は現実の問題としても考えられる。りくつとしては、先ほど申し上げたように、公立学校で本大学高等学校もみなあるのですから、その点について国家公務員教職員と何も違いは起らないのであります。
  7. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 今のお話伺つておりますと、教員は本質的に政治活動ができないのだというふうなお説のように伺えるのですが、教員個人的に憲法によつて保障されている政治活動が元来本質的にはできるのだが、その性質特殊性上できない、制限を付するという意味なのか、教育に携わつておる者はもう本質的にそういう活動ができないとお考えなのか、どつちかよくわからないのです。
  8. 大達茂雄

    大達国務大臣 これは教育に携わつておるということではないのでありまして、公務員というものは、教育公務員であろうとそうでない公務員であろうと、すべて政治行為制限を受けておるのであります。何も教員限つてということではありません。今回の一部改正法律におきましても、この原則に対しては何らの改訂を加えるものではない。これはすべての公務員に共通しておることであります。
  9. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 問題は、そういうことではなくして、元来自由であるものを公務員であるために制限が付せられておるというのか、あるいは教育者である以上は本質的にもうそういう制限を持つておるというのか、その点を伺つておるのです。
  10. 大達茂雄

    大達国務大臣 元来個人としては政治的な自由があるわけであります。ただ、その人が公務員という身分を持つておるために、ある程度それが法規によつて制限をせられる。公務員という感じを離れて、教育者だから制限をするということではありません。従つて私立学校先生つまり教育公務員でない先生については、何らの制限はないのであります。
  11. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 そうすると、あなたのお説に従えば、公務員としての政治活動の禁止であつて教育を守るということは無関係だと伺つてよろしいですか。
  12. 大達茂雄

    大達国務大臣 公務員に対して何ゆえに政治行為制限するか、それは公務を守るためであります。教育公務員の場合について言えば、その公務内容たる教育、つまり教育内容とする公務を守るためであります。
  13. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 そういたしますと、教育を守るために必要な最小限度制限を加える、こういうふうにおつしやるのですが、そうだとすると、この場合に、今までの地公法の三十六条の制限では何か具体的にいかぬこと、それでは最小限度を越えているという特殊な事例がありもしないのに、ただ理論だけでかえて行くということは、制限最小限度にとめるという点から行きますと非常におかしいのじやないか。むしろ、為政者の立場としては、人の自由を制限する場合には謙抑な心をもつて行うべきで、その謙抑の限度を越えていはせぬかと思うのですが、具体的にこれこれこういう事例があるから地公法三十六条ではいかぬという事例をお示しいただきたいと思います。
  14. 大達茂雄

    大達国務大臣 具体的にその必要があるということは、先ほど申し上げた通りであります。今日学校教育の場に強い偏向の教育が行われている、もしくはさようなことを目ざしてそれを働きかけている者がおる、これは争うべからざる事実であると思います。しかし、そうかといつて教職員に課せられる政治行為制限というものがりくつに合わないものであつてはならぬと思うのであります。でありますから、地方公務員たる教職員であつてもこれを国家公務員並制限するということは、何らりくつに反するものでなくして、むしろ教育特異性から見て両者区別する方がりくつに合わないのだ、こういう意味のことを申し上げたのであります。
  15. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 今の国家公務員並にというのは、この場合に、地方公務員法の三十六条によりますと、寄付行為とか署名を求める行為とかいうことが許されておりますが、今度はそれが剥奪をせられるという結果になつて参りますが、学校のあります区域外においてそういうことをやることがどういう弊害を生むものか、お話をいただきたいと思います。
  16. 大達茂雄

    大達国務大臣 学校区域外においてということでありますが、御承知通り、現在は、地方公務員学校内で、あるいは自分の奉職しておる職務の所在地だけに限つて政治行為制限を受けております。国家公務員は、これを全国的に、区域に限らず制限を受けております。この点が今度改まつて、全国にわたる、こういうことになるのであります。個々の事例についてはともかくといたしまして、先ほど申し上げましたように、政治行為制限をするということは、その公務員政治に強く没頭する、いわば政治に狂奔すると申しますか、あまり深入りをすると、人間のことでありますから、おのずからその公務をそういう政治的見地から左右するおそれがある、従つて公務員たる者はできるだけ政治的に中立立場をとつてもらう、そのことによつて公務が一方に偏することのないようにということが現行法建前であろうと思うのであります。この見地において、教育公務員においても、同様に、あまり強く政治的に深入りをしない、こういう趣旨であります。
  17. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 私の伺つておることにひとつお答えをいただきたいと思いますが、署名運動を企画したり、これを主宰するということが政治運動とどういう関係がありましようか。そしてまたそれを禁止しなければならない理由をひとつお示しをいただきたい。
  18. 大達茂雄

    大達国務大臣 これは地公法解釈でありますが、政治的目的をもつて署名運動を企画しまたは主宰する、こういうことは、つまり政治活動としては深入り行為である、そういう見地から現行法はできておると思います。
  19. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 これを今度できないようにしてしまわなければならばいという理由ですよ。
  20. 大達茂雄

    大達国務大臣 これは現在禁止せられておる行為じやありませんか。
  21. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 区域外においては禁止せられていないのです。それが今度はいけないことになるわけです。
  22. 大達茂雄

    大達国務大臣 それは、先ほど申し上げたように、国家公務員と同じように取扱う結果であります。
  23. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 何の弊害も伴わない、具体的にこれがいけないという理由もなしに、単に国家公務員と同様に取扱う結果であるというようなことで、人の行為がそう簡単に制限をせられてはたまらないのであります。もう少し具体的な事例を示していただけないことには、あなた方が誠意をもつて政治あるいは教育というものをお考えになつておるとはとれないのです。この点をもう少しはつきりしてもらいたい。
  24. 大達茂雄

    大達国務大臣 これは、弊害があるとかないとかいうことは、あなたの御意見でありまして、意見相違であります。
  25. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 それでは一号の「公の選挙又は投票において投票をするように、又はしないように勧誘運動をすること。」というのはいかがですか。
  26. 大達茂雄

    大達国務大臣 これも同様であります。
  27. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 これは特定政党を支持しておるということは一つもないのであります。投票率がよくなるように、棄権をしないように、こういうことを、するのが何で教育中立性を書するのか、この点を伺つておきたい。
  28. 大達茂雄

    大達国務大臣 三十六条の二項には、「職員は、特定政党その他の政治的団体又は特定内閣若しくは地方公共団体執行機関を支持し、又はこれに反対する目的をもつて、」云々とあり、その目的規定してあるのであります。この目的をもつてこの一号、二号の行為をすることを禁止するわけであります。
  29. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 もしそれだといたしますならば、公職選挙法の百三十七条があれば、仰せのようなものは現行法範囲内でも十分じやないでしようか。
  30. 大達茂雄

    大達国務大臣 公職選挙法の百三十七条は、具体的に子供使つて選挙運動をしてはならないということをいつておるわけでありまして、これとは別問題であります。
  31. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 「教育上の地位を利用して」と書いてあるだけであつて子供使つてという意味ではないと思います。
  32. 大達茂雄

    大達国務大臣 教育上の地位を利用して選挙運動をするということが選挙そのものの公正を害する、選挙に不当の影響を及ぼす、こういう見地から、これは選挙の公正を維持するために公職選挙法において規定せられておる規定であると思います。この地公法にある制限は、公務の適正を維持するためにその政治的行為について制限するわけで、これは趣旨が違うのであります。
  33. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 趣旨そのものをどう解釈するかは別でありますが、条文の上にそう書かれておる以上は、その趣旨はつくつたときの趣旨でなければ使えないという理由はないと思います。この条文解釈してその効果が現われますならば、立法者の意思と無関係にその効果をわれわれは評価してよろしいはずであります。この公職選挙法の百三十七条によりますれば、選挙の公正を害することを防ぐという意味と同時に、いわゆる教育者選挙運動から排斥をせられるというはつきりした事実が現われておる。そうである以上は、その目的を達している以上は、あらためて今回の改正をする必要はないのではないか。あなたのお考えになつているような教育者選挙に携わらないということは、この条文で十分に確保せられておるはずだと思いますが、これによつては不十分だといたします範囲、その事例、こういうものをあげていただきたいと思います。
  34. 大達茂雄

    大達国務大臣 これは、法律をごらんになれば明瞭でありますように、公職選挙法の百三十七条は「学校児童生徒及び学生に対する教育上の地位を利用して」云々と、こうあります。ただ選挙運動をしてはならぬという規定ではなくて、そういう特殊な教育上の地位を利用して、いわば先ほど言つたように、子供使つてする選挙運動、これが選挙そのものの公正を害するから、これがこの条文にきめてある。地公法の方は、政治活動をしてはならぬ、選挙運動をしてはならぬということを書いてある。これは違うのです。
  35. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 あなたは、先ほど、教育特殊性あるいは教員たる地位にかんがみてというお話をなさいましたが、教員といえども、教員としての地位あるいは特殊性という点を離れれば、一個の人間だと思う。そういう立場から考えて参りますと、この百三十七条による「教育上の地位を利用して」ということで、そのものずばり、それ以上の必要を感じられない、こう私たち考えるのですが、必要以上に人の自由を縛る、こういうようなことについてどうお考えになるか。
  36. 大達茂雄

    大達国務大臣 これは現行法に対するあなたの反論のように聞きますが、地公法においては、個人として選挙運動をしてはならぬということを規定してある。公職選挙法においては、その選挙運動をする場合に、その教育上の地位を利用して、子供使つて選挙運動をしてはならぬということが言つてあるのでありまして、これは話が違うのであります。子供使つて選挙運動をするということは、子供自身を毒することであり、また選挙そのものの公正を害することでありまして、これがいけないことは当然であります。これで地公法までもカバーするということは、地公法の方が範囲が広いのですから、公職選挙法規定があれば十分だという議論は成り立たぬと思う。
  37. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 義務教育学校にわける教育政治的中立確保に関する法律案を拝見しますと、教育を不当な党派的勢力から守る、こういうことを主張いたしまして、その対象は「義務教育学校児童又は生徒に対して、特定政党等を支持させ、又はこれに反対させる教育を行うことを」云々と、こうあるのでありまして、先生のいわゆる生徒に対する教育の面、そういう方向以外の、教壇がら離れた先生個人的な自由というものを縛つているようには思えないのです。ところが、こつちに参りまして教育公務員特例法の一部を改正する法律案を見ますると、教育の面にわける制限にはあらずして、いわゆる個人としての先生方行動まで縛つてしまうというふうに範囲が拡大せられておる、こういう差があると思うのですが、なぜ地公法のようなそういうところまで問題を広げて行かなければならないのか、もう一度伺いたいと思います。私はそれで打切ります。
  38. 大達茂雄

    大達国務大臣 これは中立性確保に関する法律案とはまつたく別であります。地公法に限らず、国家公務員法におきましても、公務員個人政治行動制限しておるのであります。職務関係があるということは何ら条件にはなつておらぬのであります。公務員たる身分を持つておるその個人政治行動制限しておる。これは現在すべての公務員について規定せられておるのであります。教員に限つたことでばありません。  これはなぜ職務に直接関係なしに、つまり職務として行われる政治行動だけに限定してこれ吾禁止しないかというふうな御質問のようでありますが、先ほど申し上げましたように、その公務員個人政治的中立性を維持することによつて公務の適正を期する、こういう建前であります。従つて、当然職務関係なしにその公務員個人としての政治行為を禁止する、これは現行法建前でありまして、今回の特例法の一部改正によつてあらためて打出された新しい立法例ではありません。
  39. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 お話伺つておりますと、単にあなた方の主観的な考え方その他によつていたずらに人の自由を制約するようにしか私たちには思えないのであります。どうぞ人の自由を制約しますときには慎重な心持でやられるように希望して、終ります。
  40. 森三樹二

  41. 島上善五郎

    島上委員 今の飛鳥田君の質問に関連して、少しばかり質問したいと思います。   義務教育学校にわける教育政治的中立確保に関する法律案の第三条に「特定政党その他の政治的団体政治的勢力の伸長又は減退に資する目的をもつて、」云々、こういうふうになつておりまするが、文部大臣は、文部委員会その他において、日教組政治的団体であるという答弁をなされたように新聞等で発表せられておりまするが、今日の日教組をいわゆる政治的団体と御解釈になつておるかどうか。
  42. 大達茂雄

    大達国務大臣 私は、本会議におきましてもあるいは委員会におきましても、日教組が実質的には政治的団体と何ら異なるところはないと思う、こういうような答弁をいたしたのであります。またただいまでもさように考えております。
  43. 島上善五郎

    島上委員 そういたしますると、この三条に言う「特定政党その他の政治的団体」の中に日教組も含まれるものであるかどうか。実質的にはそうであるとか、形式的にはそうであるとかということでなしに、法律的な解釈として、この三条の中に含まれるものであるかどうかということを、はつきりお伺いしておきます。
  44. 大達茂雄

    大達国務大臣 私はある団体政治的団体であるかどうかを決定する立場にはありません。これはそれぞれ他の役所の仕事であります。従つて、私が申し上げたのは、日教組は事実上政治的団体と何も違わぬと思う、こういうことを言つたのでありますから、法令適用にあたりまして、それがただちに政治的団体として取扱うことになるかどうか、これはおのずから別問題であります。  御承知のように日教組日政連という政府結社をつくつておる。これは届出がありますから、これは政治団体であることは明瞭であります。その日政連はここに言う政治団体に入ることははつきりしております。日教組が入るかどうか、これは私は常に事実上実体はそうであるということを言つておるので、それがただちに法令適用の上においてそういうことになるかどうかは別であります。  ただ、申し添えておきますが、日政連というものは、日教組が単にこしらえた、いわばお面のようなものであります。日政連自身は何ら実体のないものであります。日教組がこしらえた面をかぶつているだけで、中身は日教組日政連は同じものであります。
  45. 島上善五郎

    島上委員 お面とおつしやるけれども、それは現在の公職選挙法によつて必要があるからやつている。これば日教組ばかりでばなく、他の団体も、労働組合も、あるいは労働組合以外の団体も、自由党を支持される団体の中にも、公職選挙法の必要上そういうお面をかぶつて選挙時に加勢しておるものがあるのであつて、これは何も日教組に限つたことではないのであつて、現在の公職選挙法がそういう必要を生じさせた。私の問いたいのは、公職選挙法の必要からそういつたような政治連盟をつくつておることではなくて、あなたの答弁の中に政治的団体である、実質的にそうであるということをおつしやるから、最終的にそうだと判定する資格を持つている者は他の者であるといたしましても、あなたの解釈として、この三条特定政党その他の政治団体というものに含まれると解釈されるかどうかということなんです。
  46. 大達茂雄

    大達国務大臣 御承知のように罰則を伴うところの規定解釈適用というものはもちろん厳粛にし、いやしくも拡張解釈は許されないのであります。従つて政党あるいはまた政治的団体という場合には、客観的に政党もしくは政治的団体としてはつきり格づけのされたものについて一応適用されると見なければならぬ。政治団体であるかどうかそこに人によつて解釈の違うもの――これは結局裁判官がきめることであります。
  47. 島上善五郎

    島上委員 ずいぶんとあいまいな答弁をしておりますが、日教組は実質的に政治団体である、そうお考えになつているようですが、これは労働組合というものを知らない考え方だと思うのです。日教組はもちろん労働組合法による労働組合ではありませんけれども、今日の日本労働組合あるいは外国の労働組合を見てもそうですが、いずれも政治的な政策なりスローガンを多かれ少かれ掲げないものはないと言つていいくらいです。これをもつて政治的団体である、こういうふうに言つてしまうことは、労働組合の何たるかを理解しない考え方だと私は思う。それは見解の相違だとおつしやればそれまでですけれども、もし日教組がこの法律の中に含まれる政治的団体ということになつたなら、今後日教組活動自体が完全に封殺されてしまうばかりではなく、日教組活動を推進するような行為がいわゆる教唆扇動ということにひつかかる。大会でもつて日教組が掲げている、たとえば再軍備反対というスローガンに賛成、反対の討論を大いにする、そうしてある者は賛成して、この運動を強力に推進しなければならぬということになれば、これが教唆扇動にひつかかるということになりはせぬかということを心配しますが、その点はどういうことですか。
  48. 大達茂雄

    大達国務大臣 この法律案は必ずしも日教組対象にしてできたものではありません。しかしながら、今日日教組の動向をいろいろ見ておりますと、この法律案が成立すれば、日教組のやり方がこの法律案に抵触するであろうと思われる節は非常に多いのであります。その限りにおいて、日教組は今までの活発な活動が押えられる、これは当然であります。かようなことは、私どもから見れば、日本教育中立を保つために、まことに困つた日教組の動きであると思う。従つて、そういう活動を押えることがこの法律案を提出する理由であります。でありますから、法律が成立すれば、日教組に何らの関係がないということはむろんないのでありまして、この法律ができてもできぬでも、日教組が今までのように縦横無尽な、極端に言うと、日本の教壇を荒すようなことをかつてにやるということは、これは当然できないことであります。これをとめるためにできたのであります。
  49. 島上善五郎

    島上委員 日教組が教壇を荒したとおつしやるが、私どもの調べたところによると、今の政府の持つている権力がずいぶん教壇を荒していると思う。現に静岡では、国警本部長が私にちやんとあやまつている。陳謝文を交換している。(「おどかしたからだろうと」呼ぶ者あり)いや、きわめておだやかに話した結果、ああいう結論が出ましたが、これは必要があれば本人を呼んで聞いてもいいのです。とにかく、そういう事実があつて、現在の権力が教壇を荒しておると私どもは解釈する。そういうことは見解の相違だとおつしやるかもしれませんが、しかし事実は、見解の相違ではなくして、今文部委員会に出されている政府のいろいろな資料が虚構の事実であるということが次から次と暴露して、そうして思想調査や教育に対する不当介入の事実が現われておりますから、この事実は私は見解の相違だとは言わせない。そこで私が聞きたいのは、教員組合の活動の中でこの三条に触れると思われる節が多々あるとおつしやいましたが、平和憲法を擁護するというスローガンがあるはずですが、これもそう多々あるうちの一つに該当するかどうか。
  50. 大達茂雄

    大達国務大臣 日教組はいわゆる平和教育ということを非常に重点にしております。むろん平和をとうとふべきこと、平和の望ましいこと、そういう気持を教えるということは、これは当然しごくの話であります。しかし、平和教育という、平和という字を上へつけたからといつて、その中身は何を言つてもさしつかえない、こういうものではない。いわゆる平和教育として授けられる教育内容が、極端に一方に片寄つた政治主張を含み、そうしてそれをもつて絶対に間違いのない、いいことであるとして子供に一方的に注入する、これは許されないことであります。でありますから、平和教育をすることがいいか悪いかでは質問にならない、内容の問題であります。
  51. 島上善五郎

    島上委員 いや、よく聞いてもらいたい。私は平和教育言つたのではないんです。平和憲法です。現在の憲法を守ろうということが、この法律に抵触すると思われる節々のその一つの節であるかどうか、平和憲法を守るというスローガンなりあるいは教育なり行動なりが政治活動と思われる節々があるというそのどこかに当てはまるかどうか、これを私は聞いているんです。
  52. 大達茂雄

    大達国務大臣 平和憲法存守るということは、それだけで何も問題になることはありません。ただそれと合わさつて、いわゆる平和教育ということでいろいろなことを言う。その一連の教育がどの方向をさしておるか、どういう方向に向つておるか、これが問題の要点でして、それについて判断をしなければ、一つ一つを拾い上げて、これはどうだ、これはどうだと言つても、それではいわゆる偏向教育というものの実態をつかみ得ないのであります。
  53. 島上善五郎

    島上委員 私は憲法のことを今聞いておるので、それに関連していろいろとほかのことを聞いているのじやありませんが、御承知のように、教育基本法の前文には「日本国憲法の精神に則り、教育目的を明示して、」云々、こういうふうにありまするし、それから、憲法自体の中にも、この憲法はこれを守つて行かなければならぬという規定があるはずなんです。ですから憲法を守るということは――その上に平和憲法とときにつける場合もありますが、正確に言えば日本国憲法ですが、現在の日本国憲法を守るということは、教育基本法の精神からいつても、それから憲法の建前からいつても、これは当然な話だ。ところが、憲法を改正しようということか言つている者が、例の赤尾敏君を筆頭にして、そのほかにも自由党の中にも改進党の中にも相当出て来た。そうすると、憲法を守るということを教えるこきは特定政党の政策に反対するということになる。そうして憲法を守るということを強く主張している政党の政策を支持するということに、解釈のしようによつてはなると思う。そういうふうに解釈されるかどうかということを伺いたい。
  54. 大達茂雄

    大達国務大臣 これは、政党を支持させ、または反対させる教育ということでありまして、その政党の政策を支持しというのと、ちよつとそこが違うわけであります。政策は、それぞれの政党が、そのときの国情に応じ、そのときについてそれぞれ政策を打出して来るのでありますから、その特定の政策についてこれを支持しあるいは反対するということが、ただちにその特定政党を支持しまたは反対するということにはならない。少くともその政党のよつて立つ基盤になつておる考え方、イデオロギー、あるいはその政党としては切つても離せない政治主張、その政策、その主張というものを支持することがすなわちその政党自身を支持すること同意義である場合には、これは特定政党を支持または反対ということになります。しかし、個々に、そのときどきに打出される政策の一つ一つについて、これに反対し、あるいはこれに賛成するということは、それはその政党を支持または反対するということにはならない、かような考え方で私どもはこの法律案を取扱つておるのであります。でありますから、憲法を改正するという議論がある。あるいは憲法は改正しない方がよろしいという議論がある。その場合に、そのいずれかということを言つたところで、すぐにその法律にいうところの政党を支持または反対させる教育ということにはならないと思うのであります。
  55. 島上善五郎

    島上委員 政党には言うまでもなく政策があつて、その政策によつて政党が立つているわけですから、そうしますと、その政党が掲げている政策を全部支持しなければ、その政党を支持ということにはならぬ、その政党が掲げている政策の一つ二つを支持しただけでは、政党を支持しもしくは反対するということにならぬ、こういう解釈をとつておられるわけですか。
  56. 大達茂雄

    大達国務大臣 これは、ごらんになりますように、政党の政策ということを言つておるのではありませんので、政党を支持し反対する。はつきり言えば、社会党左派が一番いいから社会党左派のような政策が行われなければいかぬ、こういうことをかりに子供に教えます。教えることを扇動します。それは特定政党を支持または反対させるということでありますから、これは教唆扇動に入る。しかしその一部の、個々の政策について言つたからと言つても、ただちにそれがこの法律に触れる、こういうことにはならぬということを申し上げておるわけであります。
  57. 島上善五郎

    島上委員 その政党の政策はもちろん幾つかありますけれども、特に、たとえば現在の段階においては平和憲法を守り再軍備に反対する、こういうことが左派社会党なら左派社会党の中心的な政策である。選挙が行われる際に、政策を二十も三十も並べる政党もありまするし、中心的なもの二つか三つで国民にアッピールするという場合もあるわけであります。私どもは、現在、憲法を守るということは私どもの政策であるけれども、同時に憲法の精神そのものでもあり、教育基本法の精神そのものでもあると思うのです。従つて、憲法を守るということには当然再軍備に反対するということも、憲法第九条に明確になつておりますから、これは当然許されていいことだ。その平和憲法を守るということと再軍備に反対するということを当面の重要政策として出している政党があつて、それを支持することがその政党を支持することだというふうに実質的にはなる場合もあり得ると思うのです。あなたは、たとえば社会党を支持するという場合には、社会党の掲げている政策全部を支持するか、もしくは社会党そのものを支持するか、そういうふうな場合以外は支持もしくは反対ということにならぬ、掲げている重要政策二、三を支持するということは、その政党を支持するということにならぬ、こういうふうにはつきりと御解釈されているかどうか、念のためもう一ぺん伺いたい。
  58. 大達茂雄

    大達国務大臣 私はその全部を云々言つたのではないのであります。例をもつて申し上げれば、たとえばどうしても平和な社会を実現しなければならぬ、この平和な社会というものは、いわゆる搾取もなく、あるいは貧困もない社会、要するに戦争の要因が一切ない、そういう社会をつくらなければならぬ、それをつくるためには暴力をもつてしてもこういう社会の実現をしなければならぬ、こういうことをかりに教えるとする。これは共産党と言わぬでも、共産党のほかに行きようがない。そういうことを言えば、これは特定政党を支持するものと、こうなる。だから何もみんな並べて全部を言わなければならぬ、そういうものじやないのです。これを言えばその政党しか行き道のないようなことを言うて聞かせれば、これはいけない、こういうのであります。そこで、今の平和教育の場合でも、平和教育の一つの大きな眼目として、いわゆる再軍備反対ということが取上げられておる。私どもは、再軍備というものを、現在の憲法をそのままにしておきながら再軍備するのはけしからぬということなら、これは憲法を守ることでありましよう。しかし、憲法自身が、改正の場合も当然予想して特定の手続まできめているのでありますから、憲法を改正してする必要があるという議論は、憲法を破壊する議論でも何でもない。これを憲法の改正反対する議論までが憲法を守る議論だとは私ども思いませんが、しかしそれは一つの政治主張であつて、万人が、憲法がある以上は、憲法を改正するとしないにかかわらず、一切再軍備をしてはならぬということまで、政治上のさるぐつわをはめられたものではないと私は思うのであります。これは一つの政治主張で、再軍備をした方がいいという主張と再軍備をしない方がいいという主張は、政治的な主張であります。その場合に、憲法をそのまま置いておいてということになつては問題でありますが、憲法を改正してという限り、これは憲法を守るとか守らぬとかいうことには関係のない一つの政治的論争であります。そこで、たとえば平和教育というものが、平和四原則というような、たとえば安保条力を破棄せよ、行政協定はやめちまえ、あるいは全面講和でなければならぬとか、あるいはそれに関連して再軍備は絶対にいけないとか、こういうふうにずつと並へて来ると、それは少くとも非常に片寄つた成育になる、基本法第八条二項にいうところの片寄つた教育になる、こういうふうに私どもは思つておる。従つて再軍備に反対するということだけを取上げて、これは一向さしつかえない、憲法を守るということであり、教育基本法の趣旨からいつてこうでなければならぬはずだから、どこが悪い、こういうことでは、それだけでは判定ができない、こういうことを先ほどから申し上げておるわけであります。
  59. 島上善五郎

    島上委員 私は、現在の憲法というものが存在しているのですから、この存在している憲法をそのまま尊重するということは、私は教員のみならず国民の当然の義務だと思う。将来改正すべきかすべからざるかということは、これは政治論としてもちろんあつていいのですけれども、現在存在する憲法を尊重する、守るということは、私は教育基本法の精神からいつても、当然教員はそういう立場に立つて教育しなければならぬと思う。大臣は、私の質問の焦点はぼかすためにいろんなおまけをくつつけて答弁をするからいかぬのです。私はそういうおまけをくつつけた答弁を希望したわけじやない。現在存在する憲法を尊重し守るということは、これは当然教育基本法の精神にのつとつたことである、教員もそういう立場に立つ行為は認めらるべきである、こう解釈しているわけで、それをはつきり伺いたいわけです。
  60. 大達茂雄

    大達国務大臣 それはあなた、先ほど申し上げた通り、その通りであります。憲法が現存する限り、その憲法を守らなければならぬ、こういうことは当然であり、憲法をそのままにしておいて、憲法を守るに及ばぬ、こういうことを学校で教えては困ると同時に、安保条約、行政協定というものがあるのです。その安保条約、行政協定によつて基地を提供しておるのだから、その条約をそのままにさしおいて、基地を奪還せよ、アメリカ人を追い返せと言うのはいけない。
  61. 島上善五郎

    島上委員 どうもおまけをつける答弁をするのでいけない。教育基本法の第八条の「政治教育」の項に、「良識ある公民たるに必要な政治的教養は、教育上これを尊重しなければならない。」こういうことがありますし、今度出された法律三条二項には、「良識ある公民たるに必要な政治的教養を与えるに必要な限度をこえて、」云々、こういう言葉がございますが、その「良識ある公民たるに必要な政治的政養を与えるに必要な限度」という、その「限度」について明確な御解沢を承りたいと思います。
  62. 大達茂雄

    大達国務大臣 良機ある公民たるに必要な政治的教養、つまり政治的ないろいろな主張なりいろいろな政治面に現われて来る現象に付して判断をし批判をする、そういう力を養わせることが私は良識ある公民たるに必要な政治的教養である、こういうことになると思うのであります。従つて、現在の政党その他においてとつている政策について、それを解説して批判するということも、その限度を越えるものでないと思うのであります。しかしながら、この場合に、それは批判してもよいけれども、しかし特に片寄つて一方的な政治主張だけを子供につぎ込む、そういう先入観を与える、そういう素地を与えると、これは子供が将来政治に関する健全な判断力、批判力を失つて、大きくなつても思想的、政治的に子供を方向づげることになるのでありますから、そういうことであつてはならない。これはいわゆる教養を与える限度を越えた、あるいは逸脱してと言つてもいいのでありましようが、とにかくその本旨にもとつて一方的な主張、一方的な考え方を教え込んでは困る、こういう気持をそこに言い表わしているのであります。
  63. 島上善五郎

    島上委員 この法律がもし実施されるということになると、教職員政治的にほとんどものを言う自主性と自由がなくなつてしまう、ロボット化されたものになつてしまうというおそれが多分にある。なお、そればかりでなく実際そうなるのではないか。今ですらも、こういういわゆる政治的だと思われるような問題に対しては、教員がものを言わなくなつて来ている、こういう傾向が非常に現われている。これを文部大臣は望んでいらつしやるのかもしれませんけれども、そういうような教員が一体良識ある公民たるに必要な政治的教養を与える教育ができるかどうか。私ども考えるのに、できないと思います。それは政府の命に従つてそれをたた伝達する程度のことはできるかもしれませんけれども、これは、少くとも私どもから言わしむるならば、それこそ一方的な片寄つた考えをつぎ込む。かつて戦争中あるいは戦争前の日本教育がそうであつたように、政府の志向する戦争にひつぱつて行くために、馬車馬のようにして国民を一方の方向へ持つて行く、そういう目的のために教育が使われたと同じような危険性が、また再びそこから出て来るのではないか。ロボット化して、ものを考える自由も、言う自由も奪つてしまうというような、そういう結果になつたならば、ここにある「良識ある公民たるに必要な政治的教養を与える」ことは不可能なことだ。その点に対してどのような考えでありますか。
  64. 大達茂雄

    大達国務大臣 この法律が出た結果何も言えなくなるということを、日教組が盛んに反対宣伝の項目の一つとしておりますが、片寄つた教育をしてはならぬということは、この法律がきめているわけではない。これはすでに教育基本法において、その第八条二項に片寄つた教育をしてはならぬということをきめているのであります。このきめてあることがどうも守られておらぬ。あるいはこれを先生に守らせないように外部からげしかける者がおる。それがはなはだ困るので、その八条の二項にある基本法の精神を堅持するためにこの法律を必要とする。従つて、この法律ができたからといつて、側からいろいろけしかける人間は困るかもしれないが、しかし先生が何も言えなくなることはない。先生と何の関係もない。もし片寄つたことを言わなければ何も言えぬという先生がいるならば、これは、この法律ができてもできなくても、すでに基本法第八条二項によつて、それは非常に不自由を感じておられるはずであります。
  65. 島上善五郎

    島上委員 今の御答弁によりますと、教育基本法の第八条の二項に、片寄つた教育をしてはいかぬ、こういう条文があるから、これが守られていさえすれば問題はないというようなことでしたが、それならば、この法律――これは現行法ですから、私どももある法律は存在しているという事実を認めますから、このある法律を十分に厳正に実行するようにしたならば、新たにこういうような国民から大きな反対を浴び、疑惑を呼び起すような法律をつくらぬでもよさそうなものでありませんか。それで、けしかける者とおつしやるが、そして私の方を見て言うからわれわれをさしているのだろうが、そうすると、この法律教員を縛る法律たるにとどまらず、国民を縛る法律になるというふうに私は解釈せざるを得ない。けしかけると言うけれども、けしかけるのは何も社会党のみに限らず、自由党や改進党の諸君だつてけしかけている。   〔「けしかけていないぞ」「とんでもない」と呼び、その他発言する者あり〕
  66. 森三樹二

    森委員長 静粛に願います。
  67. 島上善五郎

    島上委員 そういうような国民を縛る恐るべき法律だと私ども考えます。そういう解釈ができる。私どもは、この教育基本法の第八条第二項を守ることによつて、あなたの心配されるようなことは十分に取除かれるものだと解釈いたします。(「除かれていない」と呼ぶ者あり)除かれていない、守られていないからとおつしやるけれども、法律があるのですから、その法律を守られるような措置を他の方法によつてとればよさそうなものであります。それをとることによつて、私どもはこういう法律は不必要だと考えますが、それに対する御見解を伺いたい。
  68. 大達茂雄

    大達国務大臣 その辺で答弁は済んでいるのでありますが、その法律が守られておれば問題ない。それが守られないように側からまぜくる者がおるから、そういうことをやめてもらつて、そういうことによつて先生方が側へ気を散らさぬようにして、八条二項の精神で教育する、こういうことであります。
  69. 島上善五郎

    島上委員 同じような問答を繰返してもしようがないので、私はほかのことを少し伺います。  この法律の必要性を何か理由づけるためにと思われますが、いろいろと資料を出したり、特に共産党員が教員の中に六百何名いるとかいつたような調査を発表したりなどしておりますが、共産党も自由党も同じように法律のもとに平等な天下の公党なのです。共産党員だけを何がゆえにああいうふうに特に調査して発表したのか、いかなる方法によつて調査したのか、またそれならば同時に自由党員も社会党員も何人おるかということを調査しているかどうか、この点を聞きたいと思います。
  70. 大達茂雄

    大達国務大臣 国会の委員会の方へ提出せられた資料は、進んで出したものは一つもないのであります。文部省に関係する資料は、全部委員の方から――社会党左派の委員の諸君からの要求に基きまして出したのであります。国警その他から出た資料もあります。公安調査庁から出た資料もあります。それはそれぞれ委員の側からの要求があつて資料を提出されたのであります。その内容については文部省があずかり知るところではありません。共産党員が何人おるか、自由党員が何人おるか、改進党員が何人おるか、そういうことを調べる必要もなければ、またそういうことを調べる手段もありません。また簡単な教育の実情を学校について調べる場合がある。これをすぐ思想調査とかなんとか言われるけれども、いわんや日教組の中の人々が党派別にどういうふうになつておるかということを調べる必要もなければ、またそういうことを調べる力もありません。
  71. 島上善五郎

    島上委員 それで少しはわかつて来ましたが、五十万教員の中に自由党が三百人いようと、共産党が五百人いようと、社会党が千人いようと、これは別にふしぎなことでもないし不当なことでもない。私は当然なことだと思う。ですから、文部省としては、五十万教員の中にどこの党員が何人いようと、そういうことを調べて弾圧したり、けしからぬという、そういう考えを持つていないということが今明白になつて来たのでありますから、それはそれでよろしいが、あれは国警で要求に基いて発表したものだ、こうおつしやるならば、今ここには国警の人かおりませんから、文部省としてほそれでいいかもしれませんが、私どもはどうも、とかく不当な弾圧を加えるために、そういうものを特に材料として使うように思われてならない。静岡の例で、国警本部長が陳謝している例もありまするが、文部省としてはそういう立場にないのだから、今後特にその点は十分慎んでもらいたい。
  72. 鈴木義男

    ○鈴木(義)委員 今の質問の関連でありますが、先般文部委員会に提出されました偏向教育の一例のうちに、私の選挙区に関係があることがあつて、いろいろな要求がありましたので、私も調査いたしました。それは福島県三神中学校の事件でありますが、全然根も葉もないと考えられるので、中学の名誉のためにもひとつ国会においてこれを明らかにしてもらいたいという現地からの手紙も参つておりますので、一部を朗読いたします。「文部省発表による木村三神中学校の事項について調査の結果、事実叙級であることがわかり、学校、教委等代表者が出県、資料抽出の回答を求めましたところ、県教委としても何にも提出もせず調査もしておらず、さらに白河国警、村の駐在所もまつたく三神村にそれらしい事件のなかつたことを証言しております。私どもとしまして、これは政府または自由党が、法案通過を希望するのあまりでつち上げの事件であり、それを地方事務所や教委、国警の調査も待たずに発表した文部省もまた何をやつているのかわからなくなりました。」こういうことであります。いろいろな方面でこの取消しのために運動しておるが、国会においてひとつ明らかにしてほしい。一体この三神中学問題というものはどういう出所に基いて発表せられたのであるか、その経過及び根拠等を明らかにしていただきたいと思います。
  73. 大達茂雄

    大達国務大臣 これは文部委員会の方でもその出所調査の方法等について御質問があつたのでありますが、実は文部省として積極的にこれらの事例を調査したいのでありますが、調査するきめ手を持たないのであります。教育委員会にその報告を求めるということが正親の手段であります。しかし報告を求めましてもなかなか十分な協力が得られない、大部分は返事をしないというような実情であります。文部省が資料として提出したものは、一部教育委員会から報告が来たものもあります。新聞その他において報道せられて、文部省がわざわざ係員を現地に派遣をして調べたものもあります。また、場合においては現地の学校先生等がわざわざ文部省に出頭して話をした、そういうものもあります。このほかにも自然に集まつて来た資料があります。その中で比較的正確であろうと思われるものを取出して資料として出したわけであります。従つて、これが現実の事実として絶対に間違いのないものだという意味ではないのであります。さようなことは突きとめ得ないというのが実情であります、ただ、文部省として、この法案通過のために全然根も葉もないことをでつち上げて国会に出す、いわゆる偽造の文書を出す、そういうようなことは絶対にないことをはつきり申し上げておきます。この出所については、いろいろ事情がありまして、お答えはできないのであります。なるほど全然そういう事実はないという場合に、こういう資料が出れば御迷惑のかかる点もあろうかと思います、私どもの方で真に事実が無根であつたということが確かまりますれば、その点は訂正することは決してやぶさかではないのであります、ただ、出所等につきましては、ただいま申し上げますように、先生が来て話をして、自分がそういうことを言うて来たということになれば、教員として免職といいますか、そういうふうな迫害を受けるから秘密にしておいてもらいたい、こういうのが相当あるわけであります。これは教員組合が現場の教職員の人事の点についてまで強い圧力を持つておるという実情から見て、これはあり得ることでありまして、さような見地から、出所はこれは文部委員会においても要求があつたのでありますが、私どもの方では出所を明らかにすることはお断りをしておるのであります。その点は御了承を願いたい。ただ、はたしてこれが事実無根であるか、真実であるかという点は、これはなかなか簡単にはわからない。もしまつたく無根の事実で御迷惑をかけるということであれば、これは非常に心苦しい、謝罪をしなければならぬことであります。しかし、たとえば京都の旭ケ丘の中学校、これはもうあらゆる資料から見て絶対に間違いのない、しかも非常に強い偏向の教育をしておる、これは争うべからざる事実だと思います。その学校のPTAの少数の十五人か二十人の人は強く言つておりますが、大部分の手数百名のPTAの人々は、絶対にさような偏向の教育はない、こういうことを証言をしておるのであります。これは、現実においてはいろいろ複雑な事情がありますので、教育委員会がそんなことはないと言つたとか、あるいは文部委員の人々が実情調査に行つた場合に、PTAの人々がそんなことはありませんとこう言つてつたということで、ただちに事実無根であるとか、ほんとうにあつたことであるという断定は容易に下し得ないのでありますから、私どもは、決して、事実無根のことを真実なりと言い張つて、人に迷惑をかけるような気持は毛頭ありません。この実例の中で、三つも四つもかりに間違いがあつてみたところで、私どもが資料を出した、つまり現場の学校教育にかような傾向が現われておる。これはいながらにして得た資料でありますから、私どもの判断ではこれで全部ではない。他にもこういうことは非常にあり得る。それは日教組自身の資料に基いて、日教組がかような偏向教育というものを指令をし、さしずをしておる、これは私どもはつきり言えるのであります。これは日教組の資料に基いて言うのでありますから、間違いはありません、そういうような点から見て、日本義務教育学校においてかような現象が現われておるということだけを認識していただくその資料として出したのであります。一つ一つについて、必ずしもこれは絶対にほんとうであると、こう言つておるわけではないのでありますから、その辺はひとつ、選挙区の関係でありますれば、よくお話しくださつていただきたいと、こう思つております。
  74. 鈴木義男

    ○鈴木(義)委員 今文部大臣が一般的な問題として言われたことは、われわれも了承するのであります。大体ほかのケースはみな双方の言い分というものが出ておる。この三神村の問題については事実無根であるということは、現地にわける一般の人々もみな主張しておることであります。文部省が一方的に発表したということに憤激を覚えておる。でありますから、私は、その一般的な問題でなく、この三神中学校の問題はどういう経路から出て、来たか、それは具体的な人の名前などは言わなくてもよろしい。人の名を言うことはさしつかえがあるということは了承しますから、もう少し具体的に、事務当局からでもよろしい、お答えを願いたいと思う。それで、大体今度警察制度を改正するについても、私が反対するのは、こういういろいろなことがある。戦時中御承知のように治安維持法がたびたび強化され、改正されて、そのきつかけになるものは、つまらない共産党の陰謀ということを針小棒大に報道し、そしてそれを種にして強化をして来た。軍機保護法のごときもそうである。つまらない問題を大きく宣伝して、そしてその都度ああいう苛酷きわまる法律をつくつた。そうして罪に座する者が非常に多かつた。私はやはりこういうことが、上の方ではそういうことは考えておらないけれども、末端の方ではいらざる忠勤立てをして、誇大に報道する。誇大はまだやむを得ないが、全然事実無根の場合には、何かそれらしい中傷と言わなければならぬ。どうしても出所が明らかにできぬし、この経過を明らかにしないと言うならば、村の名誉のために、今現に卒業する者の就職にもさしつかえ、いろいろな影響を受けておるというのでありますから、これを発表した文部大臣を相手にして訴訟でもして、それぞれ証人でも呼んで明らかにするほかに道がなくなる。私はそれほどまでのことはしたいとは思わない。お互いに最高の機関において、正しく取扱う、間違つたことは間違つたと取消していただけば、それはりつぱなことであります。私はどうもこれだけは――多少火のないところに煙が出るはずがないのであるが、どうも火がないようであります、私の調べた範囲では。ゆえに、私の選挙区に関することでありますから、むろん一般的には文部委員会で問答のあつたこともよく存じでおりますけれども、この点について特によく調査をして、もう少し具体的なお答えをいただきたいと思うのであります。
  75. 森三樹二

    森委員長 鈴木さん、答弁はいらないのですか。
  76. 鈴木義男

    ○鈴木(義)委員 文部大臣は答えられないかもしれないが、調査をして答えるということだけはお答え願いたい。
  77. 大達茂雄

    大達国務大臣 これは福島県の問題だけにとどまらず、他にもそういうふな同じような事情を訴えておられるところが一つ二つあるのであります。こういう点につきましては、ただいま申し上げますように、簡単に、事実無根であるとか、これはほんとうであるとかと言い切ることは容易でないと思いますけれども、御迷惑がかかつておるということであれば、私の方でできるだけ調査をして、真に無根であるということならば、これを訂正する、かように考えております。
  78. 森三樹二

    森委員長 島上君。
  79. 島上善五郎

    島上委員 今のことで一つ聞いておきたいのですが、先ほど、事実無根であつて――事実無根のことを発表されれば、いろいろな意味で迷惑をしておると思うのですが、もし事実がなかつたら謝罪をしなければならない、こう言つておりましたが、これは、今鈴木さんも言われたように、子供の就職問題等にも多かれ少かれ影響すると思うので、これについては早急に、しかもはつきりとした形で、事実でないということと、それから謝罪をしなければならぬと大臣自身が言つておられましたから、その謝罪という形を出していただかなければならぬと思いますが、その点についてはどのようにお考えになつておるか。
  80. 大達茂雄

    大達国務大臣 これは事実無根であるということを私どもにおいても確認した場合には、これは訂正することはやぶさかでない、かように考えております。
  81. 島上善五郎

    島上委員 あとの方は語尾がもやもやとしてはつきりわかりませんでしたが、はつきりとした謝罪でもなされるわけですか。
  82. 大達茂雄

    大達国務大臣 さような場合に謝罪しなければならぬと考えれば、謝罪をいたします。
  83. 島上善五郎

    島上委員 さような場合に謝罪しなければならぬと考えれば謝罪をすると、こう言いますけれども、今鈴木委員質問に対して、事実でなかつたら謝罪をしなければならないと思う、こう今私の質問する前に自分自身で言つておられたのです。ですから、事実でなかつたらば、謝罪をしなければならないと考えたら謝罪をするなんと、そういうあいまいなことを言わずに、事実でなかつたら謝罪をする、かような形で謝罪をすると、はつきりと私はこの際答弁すべきだと思う。その点をもう一ぺん伺いたい。
  84. 大達茂雄

    大達国務大臣 ただいまあなたの言われるような意味答弁したつもりであります。
  85. 島上善五郎

    島上委員 それでは、事実でなかつたはつきりと謝罪を大臣がされるものと了解して、ほかの質問をいたします。  今本委員会公職選挙法の一部を改正する法律案が、政府提案として二件出されております。その一件は、例の教育委員の任期を、半数改選であつたものを、今回に限り二年延期して一斉交代にするようにしよう、こういう改正案でございますが、この提案理由によると、半数交代にする積極的な理由がなくなつたということと、地方財政の負担軽減の一助にもなる、これを理由にあげておりますが、どうも、これだけですと、私ども改正理由としては薄弱のような気がするのです。現在のことしの秋改選される委員は任期四年とりうことで選出されたわけですから、当然私どもはことしの秋になつたら改選するというふうにすべきものだと考えております。特に市町村の教育委員会の問題に対しては、これを存置するかやめるか、任意設置制にするかということに対しては、いろいろ今までも議論がありまして、政府自体の中でも何回か考えがかわつて来ておるように思われる。先般この委員会で自治庁の塚田長官をお呼びして質問した際には、私個人としてはという前提が入つておりましたけれども、教育委員会というものを将来このまま存置するということについてはいささか疑義がある、こういう答弁をされております。教育委員会の今後の存否あるいは任意設置制というような問題に対して大臣ばどのようにお考えになつておるか。またこの問題に対して政府の考えがちやんと統一されておるかどうかということを、この法律改正に関連して伺つておきたいと思います。
  86. 大達茂雄

    大達国務大臣 なるほど、お話のように、政府の内部におきましても、地方教育委員会を任意設置にした方がいいではないかという意見があつたということはお話通りであります。しかし、ただいまでは、政府部内におきましては、これは存置するといいますか、廃止をしない、また任命制度にする、あるいは任意設置にするということもしない、現行法趣旨を貫いてこれを育成して行く、こういうことに政府の意向としては決定しておるのであります。将来ともやはり同様な方針を持つて進みたい、かように考えております。
  87. 島上善五郎

    島上委員 もう一点例の学生選挙権の問題に対して伺いたいのですが、これは、政府の原案として、選挙制度調査会の答申に基いたものを本委員会に出されておるわけです。この問題については昨年のいわゆる自治庁通達以来非常に議論がありまして、当の学生はもちろん、一般にも非常に大きな反響を呼び起しまして、この委員会でもしばしば論議されましたが、結局選挙制度調査会に諮問して、その答申の結果本委員会に出されて参つたわけです。それは、御承知のように、学生の選挙権は修学地の寮、寄宿舎等、いわゆる現住地にある、本人が特に申し出た場合には郷里にある、こう解釈を明確にしようとするものでございますが、私どもも、昨年来の議論を経過して参りまして、こういう結論になつたことは当然であり、妥当であると考えるわけです。ところが、この委員会でもうかなり前に一応質疑応答は終了しておりまするが、政府の与党である自由党の中に、これとは全然逆の有力な意見が出て来た、総務会できめたというような事実を聞いております。そのせいかどうか知りませんが、私の承知している範囲では、政府の与党の中にも原案を支持して通したらいいじやないかというような考えと、そうでないものが、まだ調整がついていないように承つておる。鍛冶君はおこられるかもしれませんが、これに対して文部大臣は政府と与党との意見の調整を急速にはかつて、政府原案を通過するようにするというお考えがないかどうかということを伺つておきたいと思います。
  88. 大達茂雄

    大達国務大臣 学生の選挙権の行使の問題でありますから、私どもは関心は持つのでありますが、しかしこれは公職選挙法改正の問題でありまして、私どもは提案者でもなく、ことに党の方でどういう意向があるか、さような点も承知はいたしておりません。また私ども提案者でないものが、この問題に横合いから差出て法案の通過をはかるとかいうことは事実できないことである。これは申し上げるまでもないことであります。
  89. 島上善五郎

    島上委員 しかし、これは政府の提案ですから、当然閣議でも御相談の上出されたものだと思うのです。私は、文部大臣ということよりも、その政府の閣僚の一人として、政府が提案したこういう法律と与党の考えとの間に食い違いが生じておるというこの現状を急速に調整して、政府原案を通すように努力するということは、私は政府の一閣僚として当然ではないかと思うのです。そういうお考えはないかどうかということを伺つているわけであります。
  90. 大達茂雄

    大達国務大臣 私は政府案が成立することを希望はしておりますが、申し上げますように、提案者でも担当大臣でもありませんので、人の仕事に立ち入るわけには行かぬのであります。
  91. 島上善五郎

    島上委員 答弁がちよつとピントはずれなんです。この法案を政府の案として出すときには、閣議で相談して出されたものだと私は了解するのです。もちろんこれをどのように審議決定するかは国会の自主権ですが、その提案者の政府の一閣僚として――政府が提案者なんだから、直接の提案者でないにしても、政府の閣僚なんですから、閣僚として、与党との食い違いが生じて、政府の原案が途中でストップしておる、もしくは否決の運命にあるというような際には、私は当然与党とのその間の意見の調整をはかつて政府原案のすみやかなる通過のために努力すべきものだと思うが、そういう考えがないかどうかということを聞いている。
  92. 大達茂雄

    大達国務大臣 一旦国会に提出せられました以上、これは国会において審議を尽してそれについての取扱いをおきめになるべきものであります。そうして国会通過のため国会の御審議の上に必要ないろいろの質疑等については担当大臣も出ていただいておるわけでありまして、国会に提案されるものは政府の方針であるからといつて、担当大臣でない者が国会の御審議の中に入つて通過をはかるとかはからぬとか、そういう筋合いのものではない。また事実ほかの場合にそういうことがありますか。ほかの省の出したものについて、ほかの大臣が通過をはかつて歩かなければならぬというような例は、私は普通ないと思います。
  93. 島上善五郎

    島上委員 あります。
  94. 大達茂雄

    大達国務大臣 私は、むずかしい法律案も出ておりますし、忙しいので、なかなかそこまで手がまわりません。
  95. 森三樹二

  96. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 教育公務員特例法の一部を改正する法律案の附則崎一項の、公立学校に勤務する職員の選挙運動その他の行為に関する問題についてお尋ねをしたい。この法律によりますと、三十六条の第二項に「職員は、特定政党その他の政治的団体又は特定内閣若しくは地方公共団体執行機関を支持し、又はこれに反対する目的をもつて、あるいは公の選挙又は投票において特定の人又は事件を支持し、又はこれに反対する目的をもつて、左に掲げる政治的行為をしてはならない。但し、公立学校に勤務する職員以外の職員は、当該職員の属する地方公共団体区域外において、公立学校に勤務する職員は、その学校の設置者たる地方公共団体区域外において、第一号から第三号まで及び第五号に掲げる政治的行為をすることができる。」こうあつたのを、今回の改正法律案では、「……区域外において、」というようなものを削つて公立学校職員に関しては、この地方公務員法第三十六条第二項の一号、二号、三号及び第五号の従来許された選挙運動その他の行為を禁止するという改正法案でありまするが、これは、先ほど質問もありましたが、何ら弊害なしに今日まで行われて来ている。それにかんがみて、今回の改正法案でも、地方公共団体に勤務する職員は、その区域外にあつてはこれらの行為をすることはさしつかえない。しかるに、公立学校職員のみこれから除外して、これらの基本的人権に属する言論の自由あるいは行動の自由というものに特に制限を加えようとするその意図を、われわれは了解するに苦しむのであります。この第三十六条の第五項に、「本条の規定は、」云々とあつて、「地方公共団体の行政の公正な運営を確保するとともに職員の利益を保護することを目的とするものであるという趣旨において解釈され、及び運用されなければならない。」と、この第三十六条の公立学校を含んだ地方公務員政治活動に関する解釈、運用の仕方をきめてある。この第五項によりますと、地方公共団体の行政の公正なる運営を確保する必要がある、それゆえにその属する地方公共団体区域内においては政治活動を禁止する。これはある程度やむを得ない点もありまするが、そう必要のない区域外については制限を置かないという趣旨で、従来区域外選挙運動は自由であつたとともに、この三十六条を解釈するにあたつては、職員の利益を保護することを目的とするものでなければならないというように書いてある。この職員の利益を保護する目的をもつて解釈され、及び運用されなければならないという規定に正面からぶつかるものでなければならぬ。何ら地方公共団体の行政の公正なる運営を確保するに必要もないところの区域外選挙運動等について制限を設けるということは、職員の利益を保護するゆえんではない、かように私は考えるのであつて むろんこの第三十六条第五項は改正になつておらないのですから、この趣旨からして、第二項を、このように、一般の地方公共団体の職員には制限しないものを、公立学校職員にのみこれらの政治活動制限するということは、この第三十六条第五項の趣旨に反する改正であつて、第五項と矛盾撞着する改正ではないか、こう思うのでありますが、文部大臣の御意見を承りたい。
  97. 大達茂雄

    大達国務大臣 先ほど申し上げましたように、教育という職務特殊性から今回の改正法案を提出したわけであります。ここに書いてありますように「地方公共団体の行政の公正な運営を確保するとともに」、これは一般地方公務員についてもそのまま言い得ることであります。ただ、先ほども申し上げましたように、教育というものは、ただ特定地方公共団体の行政という面では、これはそういうことを考えられる面もあろうと思いますが、同時にまた国家全体に対するきわめて重大な性格を持つておるのであります。従つて、この地方公共団体の行政の公正な運営を確保するために、一般の地方公務員政治行為制限をされる、それと同じりくつが、教育公務員の場合には、国家公務員並に、全国的な地域において制限をされるのが当然であるということが私は言い得ると思うのであります。  次に、「職員の利益を保護する」云々、これは地方公務員法解釈にわたりますから、私からあえて申し上げるのはいかがかと思いますけれども、つまり、この本条に規定しておりますように、職員の政治的中立性を保障することによつて、職員が政治的に深入りした立場をとらないということは、地方公共団体の首脳部がかわつたような場合に、いずれかの政労に偏した立場をあまりとるということは、今度は首脳部がかわればその人は左遷されるとか、やめさせられるとか、そういう脅威が起るから、ふだんから政治的に中立な、ひとえに自分の行政に専念するという立場をとることが、その公務員の利益を擁護するゆえんである、かように考えてここに書いておることと思います。その点からいつて教育公務員の場合にも、教育公務員が非常に政治に狂奔し、あるいは政治に非常に深入りするということは、その公務員たる地位の上に何らかの影響考え得るのであります。やはりこの点は同様に教育公務員を保護するゆえんになる。この点は同じことであります。
  98. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 地方公共団体の行政の公正な運営を確保するというこの問題は、地方公共団体に勤務する職員は相当関連があるかもしれませんが、教育関係する教職員に対しては、これは地方公共団体に勤務する職員よりも関連が濃厚ではないと思うのでありまして、地方公共団体の職員の方が、他地域に対しても国家行政の一部である地方自治の仕事をやつておる職員の方が、むしろ政治的中立という立場からいえば、地方公共団体の行政の公正な運営に関係があると言わなければならぬ。むしろ教職員の方は、区域外の者はなおさら行政の公正な運営には関係がなくなつて来る。従つて地方公務員の方は区域外でやつてもよくて、公立学校の職員はこれができないというのはあべこべであるように私は考える。  それから、職員の利益の保護という問題は、今大臣の説明されたような理由はむろんありますけれども、これは、もつと広い意味に言えば、人間として持つておる政治的、社会的な行動の自由なり表現の自由なり、あるいは選挙権の行使またはそれに関連する政治的な行動というような、そういう基本的人権の保護という見地もむろんこれに含まれておるものであつて、こういう観点から、地方公共団体の職員よりも行政の公正を害するおそれの少い公立学校職員に、特にこのような制限を強化する必要もないし、またこのことは、憲法に規定する基本的人権なり、あるいは身分や社会的地位によつて政治的、社会的、経済的差別を受けないという憲法上の人権の保障に関する規定に背反するところの結果を来すのではないかと私は思うのであります。むしろ公立学校職員は、その学校の属する地方公共団体区域内で選挙運動などをやつても、地方自治体の行政の公正な運営を阻害しない。区域外ならなおさらである。その地方公共団体に勤務する職員は、区域外では許しておきながら、公立学校教職員に対してはこれを禁止するという理由が全然ない。こういう理由のないことをやるということは、明らかに憲法違反であると私は思うのでありますが、ここまで公立学校の職員の人権を侵害する必要は一体どこにあるのか。大達文部大臣は、昔は自由主義の官僚であつたと私は思う、軍部のファッショに反抗した方だろうと私は思うのですが、ところが、今は逆に、精神的な文化的な方面でファッショの先頭に立つて、かような国民あげての反対の中に、しやにむに教職員の人権 侵害しようとするようなかような立法のために闘うということは、私はまことに慨嘆にたえない。ひとつ軍部のファッショに闘つたように、この文化的、精神的、国民総動員的なファッショとはむしろ逆に、これを押えるような方向にひとつ闘つてもらいたいと思う。これは私はあなたの良心に反することではないかと思う。この点を承りたい。
  99. 大達茂雄

    大達国務大臣 前段の点については、これは竹谷君の御意見でありますから、私から答弁をする限りではありません。私は不幸にしてあなたとは見解を異にいたします。それから私は、この法律をもつてファッショなんというようなことは、とんでもないと思うのです。これもあなたがそうお考えになればやむを得ない。私はこれをファッショだなんと思つておりません。
  100. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 憲法関係質問にお答えを願いたい。
  101. 大達茂雄

    大達国務大臣 憲法のいわゆる基本的人権というものが公共の福祉から制肘を受ける、これはあたりまえ、当然なことであります。現に、公務員法において、国家公務員の場合でも地方公務員の場合でも、その政治制限をしておるということが、その関係から生じて来る。従つて、今回の特例法の一部改正案が初めて教員のいわゆる憲法上の基本的人権を奪うのだ、こういう議論にはならないのでありまして、この問題は、公務員法に関する限り、すでに既定の問題であります。
  102. 島上善五郎

    島上委員 関連して一つだけ。ただいま竹谷委員質問の中で、地方公務員法第三十六条第五項の「職員の利益を保護することを目的とするものであるという趣旨において解釈され、及び運用されなければならない。」という点に関する御答弁に際して、政治的に片寄つていると、その地方団体の首脳部がかわると左遷されるということになれば、職員の利益が失われる、こういうような答弁のように私解釈しております。しかし、御承知のように、憲法第十四条には、「すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。」こうはつきりとうたつてございまして、政治的信条がどのようであろうとも、そのことのために左遷する、不利益を与えるということは、この憲法のもとにおいてはあり得べきことではないと思う。あり得べきでないのに、そういうことが行われて職員の利益が保護されないということが、ただいまの御答弁にあつたようですが、こういう憲法のもとにおいて、政治的信条によつて差別をしてよろしい、差別されるべきものである、左遷さるべきものである、こういうふうに大臣はお考えになつているかどうか伺いたい。
  103. 大達茂雄

    大達国務大臣 先ほど申し上げた意味は、何も法律的に差別を受けるおそれがあると言つたのじやない。世の中では、必ずしも左遷をされぬでも、また罷免をされなくても、仕事の上でいろいろいじめられるとか、都合が悪い、そういう意味のことは幾らもあることであります。政治運動などにあまり深入り公務員がしておると、その場合の知事選挙で、ちようどその政党から出ずに、ほかの政党の知事さんが出て来たような場合には、自然それによつて不利益をこうむる場合が、法律的にはないのですが、あり得るから、そういうことのないように、あらかじめ政治的な中立を保たせるようにしたい、こういう法律趣旨である、こういうことを説明した規定であると私は思います。
  104. 島上善五郎

    島上委員 法律的にはあり得ないことであるが、実際にはあるということになると、実際は法律を無視してやつてもいいということを暗に認めたということになると思います。法律的に政治的信条によつて差別してはならぬということがある以上は、この法律通り実際にもやつてもらわなければならぬし、またやらさなければならぬ。今の答弁は、法律的にはそうなつておるが、実際には往々にしてありがちだ、今までありがちだつたということなら、これは私ども認めますけれども、そういうことはあつてもいいのだ、あり得べきことなんだ、黙認さるべきだというような解釈つたら、これはそのまま承服するわけには行かぬので、その点をはつきりとお聞きしたい。
  105. 大達茂雄

    大達国務大臣 私の言い方が悪かつたかしれませんが、しかし、法律というものと事実との上には、おのずから限界があるのであります。法律がいかに差別してはならぬといつても、しかつてはならぬとか、この人には笑いかけてきげんよくせよ、こういうことは法律外であります。部下が上の人からきげんを悪くされたり、しよつちゆうしかられたり、いじめられたりする、そういうことのないようにという意味だろうと私は申し上げたのであります。法律は一々そこまでみな書いておるものじやございません。法律に保障された利益さえよければ、それで全部が平等であると私は考えておらぬ。この施行法の五項にあるのはそういう意味であると私は解釈をする、こう申し上げたのであります。
  106. 森三樹二

    森委員長 石村さん。
  107. 石村英雄

    ○石村委員 先生政治教育というものは基本法でやらなければならぬことになつておるが、その政治教育が片寄つたものではいけないということは一応わかるんですが、これは実際問題としてはなかなか困難なことではなかろうかと思う。それでさつきけしかけちやいかぬという非常に砕けたお話なんですが、けしかけちやいかぬということは言われると思うのですが、片寄つた教育をしないためには、先生はある意味においてはどんどんけしかけてくれないとわからないということが起るんじやないか。それは自由党を支持するというようなことをやつちやいかぬというのですが、また反対に共産党介支持しちやいかぬという教育をしてもいかぬということになると、先生が共産党はどんな考え方を持つておるか、あるいは自由党はどんな考え方を持つておるか、日本にはいろいろな政党がずいぶんありますが、これに通暁して、子供に対して片寄らない知識を与える、政治教育を与えるということは相当困難なことで、自由党のことはわかつても、共産党がどんなことを考えてるかわからないということもあり得ると思います。またその他いろいろな政党があつてわからない、われわれが知らないのもあるわけですが、こうしたことは、私はむしろけしかけなければいかぬのじやないか。というのは、そういうふうに教えてもらつて、けしかけてもらつて、それを先生が判断して初めて片寄ならない教育ができることになるのじやないかというので、ちよつと極端な言い方をしたわけですが、その意味で、政府の方で先生が片寄つた教育をしなくて済むように十分なる知識を先生に与える、日本における各政党主張をよく先生にのみ込ませるために、片寄らないように公平な知識を先生に授けるというようなことを、文部省として何か具体的にお考えになつておられるかどうか、その点をお伺いしたい。
  108. 大達茂雄

    大達国務大臣 これは、お言葉の通りに片寄つた教育というものはどういうことかということは、具体的にはなかなか判定のしにくい場合があろうと思います。でありますから、この法律案におきまして、いわゆる片寄つた教育の全部を対象として、言葉をかえて言えば、八条の二項に規定してあるような事柄の全部をカバーして、それに対して、そういう教育教唆扇動をするという方法を避けたのでございます。きわめて明瞭に、いわば典型的な場合、こういうふうに限定したつもりであります。それがこの提出した法案の第三条並びに第四条に規定してある内容でございます、むろん、今お話のように、いろいろの政治主張というものを、これは高学年の児童もあり、またきわめてそういうことの理解の乏しい、いわゆる幼児と言つてもいいような低学年の生徒もありますから、むろん一概に言えないことだけれども、一般的に言えば、政治的な理解ということを与える、それに関連して、各政党考えておる考え方なり政策ということを教えて開かせる、これは決して悪いことではないのでありまして、これはいわゆる良識ある公務員たるに必要なる政治的教養を与える、こういうゆえんであると私は思います。しかし、ここに書いてありますように、特に特定政党を支持したり、あるいは反対させるような教育、つまり今のように公平に一般に話をし解説なするということであればよろしいが、これでなければいけないとか、これが一番正しいことであるとか、そういうような支持あるいは反対という内容教育に持ち込むところに危険がある、こう思うのであります。これはやはり先生が気をつけてそういうことのないようにしなければならぬし、従つてまた先生がそういう方面の知識を持たなければならぬ、こういうことは当然であります。これにつきましては、これは大体教育大学と言うか、教育学部と言うか、そういう方面のことでありますが、先生の資質の向上とか、そういう点については、従来もそうでありますが、今後とも鋭意努力をして参りたい、かように考えております。
  109. 石村英雄

    ○石村委員 結局、この法律関係では、先生政党に対する価値判断をして教えてはいかぬということになると思うのですが、私の主として聞きたいのは、教育大学なんかで学校で教えるのだからということですが、文部省として、各政党主張あるいは意見というものを先生に十分浸透させるような何か御処置をおとりになるかということ、つまり先生が片寄つた知識でないように、普遍的な知識を先生に与えるような処置を文部省でおとりになるかどうかということなんです。
  110. 大達茂雄

    大達国務大臣 先生の学問的な資質を向上させるということは、これは、学校において、つまり養成機関においてすることであります。特殊の場合に特定の必要があれば別でありますけれども、一般的に言えば、文部省として、そういうふうな直接先生に対する教育内容に関するようなこと、つまり教育自体のことをするという考えはありません。
  111. 石村英雄

    ○石村委員 もちろんそうでしようが、その資料を与える。先生が片寄つた知識しか持つていない、――価値判断は制限されておるからしないかもしれませんけれども、結果において、自由党のこととか、社会党のこととか、世間によくわかつていることだけしか教えないということが起りはしないか。そのために、先生なつた後においても、文部省がそうした先生に知識を与えるような資料でもお出しになるようなお考えがあるかということです。
  112. 大達茂雄

    大達国務大臣 特に文部省において、先生政治に関する知識の上に非常に有益な資料と考えるものがありますれば、それはそのときそのときそれを提供するということは考えられることであります。しかしながら、一般的に、現存する各政党主張であるとか、そういう類のことを、文部省として学校先生教育意味において資料を提供する、そういう考えはありません。
  113. 石村英雄

    ○石村委員 学生選挙権の問題ですが、これはもちろん文部大臣がお出しになつたものではないのですが、この学生選挙権の改正案を見ますと、結局学生の住所の判定というものが、今までの政府のお考えとかわりまして、修学地に原則としてあるというように、考え方が根本的にかおつておる問題と、もう一つは、学生が選挙権を行使するのにその方が便利だという便宜論、この二つからこの改正案は出ておるように思うのですが、閣僚の一人としてやはりそういうように御理解になつておいでになるかどうか、確かめておきたいと思います。
  114. 大達茂雄

    大達国務大臣 さように理解いたしております。     ―――――――――――――
  115. 森三樹二

    森委員長 この際お諮りいたします。公職選挙法改正案起草小委員及び政治資金規正法の一部を改正する法律案審査小委員でありまする高橋英吉君より、小委員を辞任いたしたいとの申出がありますが、これを許すに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  116. 森三樹二

    森委員長 それではこれを許可いたします。  それでは小委員補欠選任につき委員長より指名いたしたいと思いますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  117. 森三樹二

    森委員長 それでは原健三郎君を公職選挙法改正案起草小委員及び政治資金規正法の一部を改正する法律案審査小委員に指名いたします。  残余の質疑は続行をいたしますが、次会は公報をもつてお知らせいたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後一時十七分散会