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1954-03-19 第19回国会 衆議院 外務委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年三月十九日(金曜日)     午前十時五十一分開議  出席委員    委員長 上塚  司君    理事 富田 健治君 理事 福田 篤泰君    理事 野田 卯一君 理事 並木 芳雄君    理事 戸叶 里子君       麻生太賀吉君    大橋 忠一君       北 れい吉君    佐々木盛雄君       喜多壯一郎君    須磨彌吉郎君       上林與市郎君    福田 昌子君       細迫 兼光君    加藤 勘十君       河野  密君  出席国務大臣         外 務 大 臣 岡崎 勝男君  出席政府委員         法制局長官   佐藤 達夫君         法制局参事官         (第一部長)  高辻 正己君         保安政務次官  前田 正男君         保安庁長官官房         長       上村健太郎君         外務政務次官  小滝  彬君         外務事務官         (欧米局長)  土屋  隼君         外務事務官         (経済局長心          得)      小田部謙一君         外務事務官         (条約局長)  下田 武三君         農林政務次官  平野 三郎君         食糧庁長官   前谷 重夫君  委員外出席者         通商産業事務官         (鉱山局鉱政課         長)      村田  繁君         運輸事務官         (海運局外航課         長)      岡田 良一君         専  門  員 佐藤 敏人君     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  日本国アメリカ合衆国との間の相互防衛援助  協定批准について承認を求めるの件(条約第  八号)  農産物購入に関する日本国アメリカ合衆国  との間の協定締結について承認を求めるの件  (条約第九号)  経済的措置に関する日本国アメリカ合衆国と  の間の協定締結について承認を求めるの件(  請約第一〇号)  投資保証に関する日本国アメリカ合衆国と  の間の協定締結について承認を求めるの件(  条約第一一号)     ―――――――――――――
  2. 上塚司

    上塚委員長 これより会議を開きます。  日本国アメリカ合衆国との間の相互防衛援助協定批准について承認を求めるの件外三件を一括議題といたします。本日は各協定について逐条審議を行うことといたします。  まず日本国アメリカ合衆国との間の相互防衛援助協定について質疑を行います。
  3. 戸叶里子

    ○戸叶委員 議事進行。ただいま委員長は、きようから逐条審議に入るということをおつしやいましたが、それは理事会申合せに反すると思います。理事会申合せでは、各党に属する委員に一人一時間ずつの総括質問の時間が与えられております。ところが社会党にいたしましても、まだ私どもの方は二時間残つております。その各党に割当てられた総括質問が済んだ上で逐条審議に入るということになつておりますので、その理事会申合せを尊重していただきたいと思います。
  4. 上塚司

    上塚委員長 それではただいまの戸叶里子君の御発言の通り、まず総括質問を継続することにいたします。河野密君。
  5. 河野密

    河野(密)委員 大臣がお見えにならないそうですから、お見えになりましてからまた残りの時間質問いたしますが、大臣に御質問いたす伏線として事務当局お尋ねをいたしたいと思いますから、そのつもりでお答えを願いたいと存じます。  今ここに出されております協定は、日本の将来の運命に関する重大な問題であると存じますので、これは慎重に審議をしたいと思うのであります。この協定について問題となる点は、大体三つあると思うのであります。一つは、この協定日本憲法とがどういう関係になるかという問題、一つは、この協定日本経済にいかなる影響を及ぼすかという問題、それから第三は、この協定によつて日本防衛力漸増計画がどういうふうになるのか、同時にその結果日本の内政に対してどういう影響を与えるのか、この三つの点が重要であると存じます。これらの根本問題については、やがて外務大臣並びに保安庁長官お尋ね申し上げたいと思うのでありますが、その前提といたしましてお尋ねいたしたいと思います。  第一に、普通MSA協定といわれておるこの協定には、軍事援助経済援助技術援助の三者があるといわれておるのでありますが、この協定によりまして軍事援助は何と何であるか、経済援助は何と何であるか、技術援助はどういうものであるかということについて、まず御指摘を願いたいと思います。
  6. 下田武三

    下田政府委員 米国対外援助軍事援助経済援助技術援助の三種類があることはお説の通りでございますが、この協定軍事援助目的とするものでございます。経済援助つまり第二次大戦後ヨーロツパ諸国経済的疲弊を回復するためのマーシヤル・プランに発足いたしました米国経済援助は、米国政策としてこれを打切るという方向に向いつつあります。日本講和発効前にヨーロツパ諸国に与えられたような経済援助に均霑することを希望いたしておつたわけでございますが、独立回復諸般の施設を進めた結果、この協定によつて援助を受けるという政策が確立しましたときにおきましては、あたかも米国経済援助に対する政策転換をなしつつあつたときでございます。  米国経済援助を振り返つてみますと、ヨーロツパ諸国疲弊を回復せしめるためのマーシヤル援助から、朝鮮動乱勃発によつて経済よりも軍事に重点を置くという流れに移行し、さらに第三の転換といたしまして、米国余剰農産物処理と関連せしめた意味の新たなる経済援助転換を来しつつあります。ちようど日本米国援助を申し入れたときが、あたかもこの第三の転換に際会しつつあるときでございました。従いまして昨秋池田特使が行かれまして、ヨーロツパ諸国並経済援助ということも強く要請されたのでございますが、何分米国の根本的な政策転換に反して、日本だけ経済援助を継続するということは、非常に困難であつたわけであります。最近はどこの国とも経済援助協定を結んでおりません。スペインのみは例外でございますが、スペインは二、三年前から口をかけておつたのが、やつと二年の交渉の後にでき上つたのであります。それ以外に経済援助を新たに結んだことはないわけでございます。  そこで御質問のどこが軍事援助であり、どこが経済援助であるかという点でございますが、その点はMSAの本協定相互防衛援助協定は、建前といたしまして軍事援助でございます。ただ軍事援助なのでございますが、そこにできるだけ経済的な利益を導くための導線を至るところに置くように折衝に努めて参りました結果、その経済的の意義が他の国の同種協定と比べまして非常に重要視されておる。これは前文あるいは第一条あるいは付属書におきまして、経済的意義ということを非常に強調いたしております。農産物購入協定経済的措置に関する協定投資保証協定は、これは軍事援助ではなくて、経済援助であります。つまり米国の先ほどの第三の転換期に立ち至つた段階において可能であると考えられる経済援助の新形態でございます。最近の米国政府の発表あるいは声明等によりましても、この余剰農産物処理に関連せしめてますますこの方面の経済援助ということに移行するのではないかと思います。そう見ますと、日本は第三の形態経済援助の先鞭をつけたということもいえるかと存じております。
  7. 河野密

    河野(密)委員 いろいろ御説明になりましたが、結局するところ、本協定軍事援助である、こういう点が今の御説明の要点であつたと思います。私の伺いたいことはそれで尽きるのであります。本協定軍事援助である、経済援助はむしろ従たる、付属的なものである、こういう点は今の御答弁で確認されたわけであります。  そこで次にお尋ねをいたしたいのでありますが、この相互防衛援助協定の第八条によりますと、「軍事的義務を履行することの決意を再確認するとともに、」と書いてございます。それから  「自国政治及び経済の安定と矛盾しない範囲で」云々と書いてございます。これを率直に読んでみますと軍事的義務という決意を再確認すると書いてございます。「ミリタリイ・オブリゲーシヨンズ」であります。それからその次に「自国防衛力及び自由世界防衛力発展及び維持に寄与し、」こう書いてございます。「デイフエンシヴ・ストレングス」「防衛力」と書いてある。その次には、「自国防衛能力増強に必要となることがあるすべての合理的な措置云々と書いてございます。「デイフエンス・キヤパシテイズ」というのであります。そこでお尋ねをいたしたいのでありますが、この「ミリタリイ・オブリゲーシヨンズ」という中には――このあとに書いてあります「デイフエンシヴ・ストレングス」「防衛力」を発展維持するということは、軍事的義務の中には入るのですか、入らないのですか。それから「ミリタリイ・オブリゲーシヨンズ」というものと、「デイフエンシヴ・ストレングス」、「デイフエンス・キヤパシテイズ」、これらは一体どう違うのですか。これらを明確にお答え願いたい。
  8. 下田武三

    下田政府委員 この第八条は、御承知のMSA法第五百十一条(a)をそのままとつたわけでございます。この五百十一条(a)というのは、エリジビリテイつまり援助資格に関する条、項でございます。でありますから、第八条で新たなる義務を負わすということが目的規定でございません。つまり援助を受ける資格のあるのはどういう国かということを規定することが目的でございます。それがまず第一の大きな建前でありまして、これによつて新たな義務を負わすということよりも、こういう考えであり、こういう政策である国には援助を与えようというエリジビリテイ規定であるということが、非常に大事な点であると思います。  そこで御指摘の第三の条件たる、よその国でございますと、自国政府当事国となつておる条約に基いて負つている軍事的義務と書いてあるのでありますが、この点は誤解を避けますために、日本は、日本政府軍事的義務らしきものを負つている条約安保条約だけしかないのでありますから、初めから安保条約ということをはつきりここに規定いたしたのでございます。それで安保条約に基いて負つている軍事的義務、これはたびたび外務大臣から御説明申し上げましたように、非常に消極的な義務でございます。つまりアメリカ軍の駐留を認めるということと、第三国に基地その他を貸さないという消極的なる軍事義務であります。しかしながらそうした軍事的義務を失わないのでありまして、そこでこの第三条件日本の場合に当てはめまして、消極的とはいえ、安保条約をすでに結んでおるのでありますから、この義務を履行するということだけをここにはつきり書いたわけであります。  次の自国及び自由世界防衛力発展維持、これもここで新たにそういう義務を負わすということよりも、そういう政策である国に物をやろうという考えから、ここに書いておく一つ条件でございます。次の防衛能力増強、これも同じことでございます。そこでこれも実は日本は、朝鮮動乱勃発以来特需の発注を受けたり、その他いろいろ寄与をすでにいたしておるのであります。ですから、その資格は何もここで書かなくてもあるわけでございます。しかしアメリカMSA法建前として、第六条件を満足せしめる国でなければ援助を与えられないということになつておりますので、しかたなしに、と申しますか、日本はちつとも恐れる義務じやないのでありますから、ここに全部六条件を書くことにいたしたのであります。それでその意味でありますが、「デイフエンシヴ・ストレングス」というところから何か人力、つまり人間を供出して、他国の兵力の弱いところ・足らないところを補おうというふうに解される向きもありますが、それは全然そういうことはないのであります。これは各国に共通する規定でありますから、それぞれ各国の事情を考慮して書かれております。デンマーク、アイスランド、そういう人口少い国に持つて行つて、人手をたくさん要するような仕事をやつてくれ、そうして寄与してくれといつても無理であります。また日本のように天然資源の貧弱な国に、天然資源をたくさん要するような大砲であるとか、タンクであるとか、そういうものの生産を初めから求めてもこれは無理であります。でありますから、そういう各国の、人口の少いところもあり、資源の貧弱な国もある。そういう国はそれでよいのだ、その条件の許す限りでコントリビユートしてやればよいというのが目的なのであります。そういうだけのものであります。そこで日本人間を出せるかと申しますと、その点は憲法との関係を生ずるわけでありますが、憲法との関係におきましては、二つ制限がある。第一は国の交戦権はこれを認めないという制限と、戦力はこれを保持してはならないという制限でございます。そこでMSA協定関係の持ち得るのは、戦力を保持してはならないという規定だと思います。交戦権の禁止の規定は、これはいかなる意味においても関係を持ち得ない。つまりこの協定はもともと援助の授受に関する規定でありまして、部隊の使用兵力使用ということを目的とした協定ではない。でありますから、交戦権規定とは関係を持つて来ようがないわけであります。それでいかに防衛力漸増を見ましても、戦力に達することはこの憲法の認めないところでありますから、その制限はこの協定関係を持つて参ります。そこで第九条におきまして憲法のわく内で、つまり憲法の許容する限り、憲法規定従つて措置するということを設けたわけであります。  次に防衛能力の点でございますが、これはキヤパシテイでございまして、つまり産業その他諸般防衛力構成要素意味するわけであります。つまり自国のそういう産業その他諸般の、精神的の面もあるかもしれませんが、諸般の総合的の能力増強するため必要なる措置をとる、ここにも合理的な――リーズナブルということが書いてございまして、決して無理してやる必要はない。さきの防衛力発展維持につきましても、政治経済の安定と矛盾しないという条件と、一般的な経済条件の許す限りというところで二重の制約を課しております。第五の条件では、合理的な無理でないという制約をしておるわけであります。でございますから、これはそういうふうに解釈して参りますと、日本としてこれをここへ書くことはちつともさしつかえない。これを書いたことによつて新たな義務を負うというよりも、日本がすでに平和条約国連協力の線を受諾して以来、またさかのぼつて朝鮮動乱勃発以来これは当然出て来ることであります。当然出て来ることであり、日本がすでに既定方針としてやつておることであり、それを書くことによつて援助を受ける資格が生じ得るのでありますから、ここに書きましてちつともさしつかえない、そう考えた次第でございます。
  9. 河野密

    河野(密)委員 今条約局長からるる御説明がございましたが率直に申し上げまして説明を聞けば聞くほど納得ができないのであります。以下少し立ち入つて質問を申し上げます。  まず第一に、ここに「自国政治及び経済の安定と矛盾しない範囲で」ということが書いてあります。それから今リーズナブルなということを言つておられましたが、そういうことが一体自国政治及び経済の安定と矛盾するかしないかという判定は、日本がするのですか、アメリカがするのですか。合理的な措置というのも、合理的なりやいなやということは、日本日本憲法に照して、日本自身の責任において判定するのですか。それとも援助を与えているアメリカが、お前のところはそれは合理的であると判断するのですか、それはどちらですか。
  10. 下田武三

    下田政府委員 協定の中にある条文によりましては、「両政府は」という主語で始まつておるところがございますが、第八条はこれはすべて冒頭から、日本国政府はこれこれの決意を再確認し、これこれの措置をとるものとするといつて、唯一の主語日本国政府であります。従つて日本国政府のなさんとする判断は、これは日本国政府のみがいたすのでございます。
  11. 河野密

    河野(密)委員 そういたしますと、日本国政府日本国憲法従つてこの「防衛力」あるいは「防衛能力」というものを判断してもよろしい、こういうことでこれは間違いありませんね。そういたしますと、第九条に「この協定のいかなる規定も、日本国アメリカ合衆国との間の安全保障条約又は同条約に基いて締結された取極をなんら改変するものと解してはならない。」こういうことを特に断つてあるし、その憲法規定従つて実施するものであるということは、第九条は第八条のまつたく注意的な規定である、こういうように解釈してなくても、その精神においては何らかわるところがないのだ、こう解釈してよろしいのですか。
  12. 下田武三

    下田政府委員 法律的にはその通りでございます。第九条の一項の安保条約につきましても、安保条約をどう改訂するという規定がない以上、ほうつておけば改変されないことは当然でございます。それから第二項の「憲法上の規定従つて実施する」ということも、これはいかなる条約協定におきましても、それぞれの当事国政府が、自分の憲法のみならず、憲法下の法令に従つて実施するわけでございまして、これは念のための規定でございます。なぜ念のための規定を入れたかという点につきましては、外務大臣から今まですべて詳しく御説明申し上げてありますので、繰返すことを避けさせていただきます。
  13. 河野密

    河野(密)委員 そうしますと、安全保障条約前文に書いてあります、日本が将来自衛力漸増する、防衛能力漸増することをアメリカは期待するというのは、ここに書いてあります安全保障条約に基く「ミリタリイ・オブリゲーシヨンズ」という中に入るのですか、入らないのですか。
  14. 下田武三

    下田政府委員 安保条約前文に期待するといつております。これも何ら改変されておりません。依然としてアメリカは期待し続けております。また三万ほどの増強でも決してアメリカは満足しておりません。依然として期待し続けておるのでありまして、安保条約前文も何らかわつておりません。それとは無関係に、この協定の前の段階において日本政府が独自できめた自衛力漸増方針というものがあるわけであります。その政策とつた結果、この協定を結んで援助を受けるということに相なつた次第でございます。
  15. 河野密

    河野(密)委員 私の聞かんと思うのは、第八条に書いてある安保条約に基く「ミリタリイ・オブリゲーシヨンズ」というものと、前文意味も、防衛力漸増を期待すということも、一つになるのですか、ならないのですかということを聞いているのです。
  16. 下田武三

    下田政府委員 これはなりません。
  17. 河野密

    河野(密)委員 ならないとすれば、第九条は単なる注意的な規定でなくて、そういうこともアメリカは期待しているということが生きておるというために、第九条は書かれておるものじやないのですか。
  18. 下田武三

    下田政府委員 御質問の趣旨がよくわかりません。
  19. 河野密

    河野(密)委員 第八条にいう「ミリタリイ・オブリゲーシヨンズ」という中に、前文防衛力漸増の期待というものが入つていないとするならば、その点を特に喚起するために、安保条約のとりきめはこれによつて何らの変更を加えるものではないということを特に断つたのではないですか。
  20. 下田武三

    下田政府委員 第九条一項の目的はその点にはございませんで、むしろ世上いろいろのうわさがされておりましたように、安保条約軍事的義務――現在消極的な軍事的義務でありますものを積極的な軍事的義務に改変するような、端的に申しますと、海外派兵であるとかそういう問題につきまして、全然そういうことはしないのだ、つまり安保条約日本が負つている消極的軍事義務だけで、それ以上の何らの義務を附加するように改変するものではないという点を明らにする点がねらいでございます。
  21. 河野密

    河野(密)委員 そこで私はひとつお尋ねしたいのでありますが、今御説明にありましたように、この中には「防衛力」「デイフエシヴ・ストレングス」、「防衛能力」――「デイフエンス・キヤパシテイズ」という言葉がございますが、この「デイフエンス・キヤパシテイズ」ということと、憲法第九条第二項にいつている「ウオー・ポテンシヤル」という言葉は同じなのですか、違うのですか。「防衛能力」といつても、これは戦争をする潜在的な力、ウオー・ポテンシヤル――武力といえば日本語では違うようでありますが、現在の条約の原文の「デイフエンス・キヤパシテイズ」というものと「ウオー・ポテンシヤル」というものとは、実質的には全然同じものだとわれわれは考えるのでありますが、違うのでありますか。この点を明確に法制局長官条約局長の間で御答弁が願いたいのであります。
  22. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 憲法九条第二項にあがつております「ウオー・ポテンシヤル」すなわちわが憲法正文によりますと「戦力」という言葉を使つておるわけでございますが、これはたびたび申し述べました通りに、装備編成された一つの現実的な総合力なつたもの、それをいうのでありまして、この協定の方でいつております「防衛能力」という言葉は、これは先ほども下田君からお答えしました、また外務大臣も申し上げておりますように、そういう現実具体的のものではなくて、もつとそのうしろにあるすべての基礎的な諸条件というものを含めた広いものであるというふうに考えております。
  23. 河野密

    河野(密)委員 下田条約局長からもう一ぺん伺いたい。
  24. 下田武三

    下田政府委員 ただいま法制局長官から御説明になりました通り考えております。つまりウオー・ポテンシヤル」と申します場合には、ウオー戦争に向いている、そういうことを言い得るための条件であります。キヤパシテイの方は、それよりもつと漠然とした、これを戦争の方に向ければ向け得られるかもしれませんが、必ずしもそれを必須の条件としないいろいろな要素である、そういうふうに考えております。
  25. 河野密

    河野(密)委員 これは狭いか広いかはしばらく別として、同じものであるということだけは間違いのないことであると私は思うのであります。たとえば今保安隊に来ておるタンクとか飛行機とかいうもの、これはデイフエンシヴ・キヤパシテイの中に入るのか、あるいはウオー・ポテンシヤルなのかということは議論余地のないことであろうと思います。これは観念が、日本語に直せば防衛能力とかあるいは武力――武力防衛能力というものは非常に違うように思いますが、われわれの貧弱な英語の知識をもつてしても、デイフエンシヴ・キヤパシテイウオー・ポテンシヤルというものとは、まつたくその範疇を同じゆうするものであるということは、議論余地のないことだと思うのでありますが、重ねてお尋ね申し上げます。
  26. 下田武三

    下田政府委員 憲法の方は日本語正文でございまして、戦力ということになつておりまして、これは近代戦争を有効適切に遂行する能力、ところがこのデイフエンシブ・キヤパシテイと申しますと、たとえば造船所がございます。これは軍艦をつくろうと思えばつくれるかもれませんが、普通の船をつくつておる造船所がございます。また民間航空機をつくる飛行機会社もございます。これもいざ戦争というときには、軍用機をつくれるかもしれません。しかし何もウオー目的として活動しておるわけではありませんが、それに仕向ければ利用はできるかもしれません。ただそこに何らウオーと特定された目的でなくて、造船所なり飛行機工場がある、そういう個々の構成要素をさしてキヤパシテイというのだろうと思います。
  27. 河野密

    河野(密)委員 私は今の御答弁では、この問題は少しも明確にならないと思います。しかし今度は法制局長官の方にお尋ねをしますが、憲法第九条は、これはたびたび申し上げますように、第九条の一項は、これをすなおに読むと「武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。」こう書いてあります。それから「前項の目的を達するため、」云々と書いてあるのであります。これを私たちは法制局長官に聞いていただきたいのですが、これをわれわれがすなおに読めば、この第一項で「武力により威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。」こう書いてあります。これを裏から読む人は、国際紛争を解決する手段としては放棄するというのだから、国際紛争を解決する手段でなければいいのだろう、こういう読み方をするのであります。そこでかりにそういう、読み方をしても、前項の目的を達するために、陸海空軍は持つてはいけないぞ、陸海空軍その他の戦力ウオー・ポテンシヤルに至るまでも保持しないぞ、こういうことを私は規定したと思うのであります。そうしてその場合にも、また裏を返してここでもいろいろ議論がありますように、かりに自衛権というものは各国で、いずれの独立国でも持つておるのだから、自衛力の裏づけとしての武力が、戦力に至らない程度であるならば、これは持つてもいいだろうという議論が出て来る。そこでそういう議論をあらかじめ封ずるために、その次に国の交戦権はこれを認めないぞ、かりに戦力に至らないような武力ならいいのだというような議論が出て来ても、そういうものは交戦権で押えるのだ、これが私は日本憲法を制定したときのすなおな解釈であると思います。これがその通りだと思うか。この憲法はこうすなおに読めるにかかわらず、その裏から読んで行こうというのが、私は政府のやり方だと思うのであります。第一項と第二項とをばらばらにしてしまつて、第一項においては、国際紛争解決の手段でなければ、こういう武力の行使をしてもさしつかえないのだ、こう読もうとする。それから第二項は、これまたばらばらににして、第一項との関係を少しも考えないで、これは戦力に至らなければいいのだ、こういう解釈、私はこういう憲法の解釈というものは、まつたく現在の憲法の精神と違反しているものであつて、こういう解釈をするならば、憲法の正当なる解釈でないものによつて、本協定憲法に違反しない、あるいは憲法範囲内でもつてこれをやるものだ、こういうふうにしようというのは、まつたく憲法解釈上の誤りであると私は思うのでありますが、法制局長官にこの点を明確に御答弁願いたいと思います。
  28. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 河野委員のお言葉のうちの五分の一ぐらいは同感でございます。ただ全体といたしまして、ただいまばらばらとおつしやいましたけれども、私どもはばらばらとは考えておりませんので、一通り今のお話の筋をたどつて申し上げますと、この御指摘の第九条は、おつしやる通り、これは国際紛争解決の手段として一切の武力を用いてはならないというふうに禁じておるのでありますから、第一項だけを見ますと、学者も言つておりますように、自衛権は全然否定されておらない、のみならず第一項だけを見ると、自衛戦争も否定されてはおりません。これは憲法制定の審議の際に、政府当局もそう言つて答えております。第一項に関する限りにおいては、自衛権、自衛戦争すらも禁止せられておらない。しかし眼を転じて第二項を見ますと、ここに戦力の否定と、それから今お言葉にありました交戦権の否定と二つある。これは何のためかということは、結局この第一項の侵犯の具に供されないように、第二の備えとしてここに戦力の否定と交戦権の否定をきめておるのである。従いましてこの戦力の否定は第一項の目的のためであろうと、あるいは自衛の目的のためであろうと、あるいはまた治安維持という名目のものであろうと、一定規格の強さを持つた闘争力というものは一切いけないというのが、私はこの戦力の否定の趣旨であろうと思います。それから次には、ものの具体的な力の方から押えておるとともに、次には今お言葉にありましたように、今度は交戦者の立場としての具体的権能の行使の場面から一定の制約を加えておる、五分の一と申し上げたのはその点であります。それも憲法制定のときから政府が一貫してお答え申し上げておるところであります。  そこで今度はそれを裏を返すわけでありますが、第一項においては、自衛権は否定されておらない。それから第二項において戦力に達しない実力を持つことは否定されておらない。従つて戦力に達しない実力をもつて国内の治安維持に当るということは当然許されますし、またそれによつて直接侵略に対抗するということも、当然戦力に達しない限りにおいては、その規模のものを持つことは許される。しかし先ほどのお言葉のように、交戦権制約はございますから、自由奔放の戦争の姿はできないという結論になるわけであります。
  29. 河野密

    河野(密)委員 私も今の法制局長官説明は五分の一程度しか了承いたしません。そこでもう一つお尋ねいたしますが、この協定とそれから自衛隊の設置というものは、われわれは、これは池田・ロバートソン共同声明以来、一貫して両者は不可分なものだと考えておりますが、これは政府としてはどうですか。これは外務大臣に聞かなければ無理かもしれぬと思うのですが、条約局長、どうですか。
  30. 下田武三

    下田政府委員 この協定と自衛隊設置とは関係ございません。つまり米国側から一方MSA援助武器をもらい、一方従つて自衛隊にしろというような関連をつけられて要請されたものでも何でもございません。米国MSA法が昨年の改正で日本にも援助を供与し得る可能性が生じましたので、日本の方からイニシアチーヴをとつて、まずいろいろな点で念を押した上で、これなら大丈夫だというので援助を受けるということを日本から言つたわけであります。それから自衛隊の方は協定とは無関係でありまして、まつたく日本独自の考え保安隊を少し増強して、そして同時に自衛隊という名前を付するということに、独自の政策からきまつたものと了承いたします。
  31. 河野密

    河野(密)委員 それではもう一つお尋ねしますが、この協定によつてアメリカが負うべき義務は何と何と何であるか、それと日本が負うべき義務は何と何と何であるか、明確にしていただきたいと思います。
  32. 下田武三

    下田政府委員 これは各条に当つて見ませんとわかりませんが、大づかみにいいまして、アメリカが与えるのでございますから、アメリカに供与の義務があるわけであります。日本はただ受ければいいわけであります。受けるにつきましては、もらつた物の秘密を保持しなければならぬとか、あるいはいらなくなつたら返さなければならないとかいう義務が発生するのでありますが、大づかみにどつちの義務が多いかというと、これは物をくれる方の義務がはるかに多いわけであります。日本義務は秘密を保持するとか、いらなくなつた物を返すという付随的の義務であり、それもアメリカに供与の義務があつてこそ初めて発生する義務であります。
  33. 河野密

    河野(密)委員 これだけ国の重大な問題をそういう御答弁で切り抜けようという気持は、少しくこれは考え違いじやないかと思います。国の運命に関する問題ですよ。それをアメリカの物をくれる方の義務が多くて、日本の方は大した義務はない、こういう考え方は非常な考え違いじやないかと思うのですが、もつと明確にアメリカはこれだけの義務を負うのに対して、日本は秘密を守る義務とか、工業所有権の保護の義務とか、私は逐条にわたつて調べてみました。しかし最も大きな日本で負うべき義務は一体何だ、現に、ミリタリイ・オブリゲーシヨンズという言葉さえ出ておるではないか、いかなる義務日本が負うべき一番大きな義務かということを聞いておる。
  34. 下田武三

    下田政府委員 私は正直にそう思つておるのであります。たとえば貿易とりきめを見ますと、大体こつちが五千万ドル売る、先方が五千万ドル売る、ギヴ・アンド・テークで均衡しております。これはアメリカがギヴ・アンド・ギヴであります。アメリカから一方的に物をもらうのであります。よこすから秘密を守るとか、工業権の保護をするとか、いらなくなつたら返すというこつちの義務は、すべて向うがよこすという義務に付随して発生する義務でありまして、ギヴ・アンド・テークの普通の観念からいいますと、これは一方的にギヴ・アンド・ギヴでございます。
  35. 河野密

    河野(密)委員 条約局長はさつき第八条は日本政府の自主的な考えできめるのだと言われたが、私はこれがいやしくもこの協定における日本の負うべき最も大きな義務だと思う、これが義務じやありませんか。それじや条約局長に伺いますが、日本がこれをもらつて小麦はどうもありがとう、そのほかの武器を貸してくれるのもありがとう、しかしこれは日本の現状において政治経済に矛盾しないと書いてあるから、今ちよつと日本においては政情が騒然としているので、これはしばらくやりません、こういうことができるか、できるとお考えになりますか、どうですか。
  36. 下田武三

    下田政府委員 この第八条の規定も、先ほど申しましたように、決してこれはこの協定の主眼点の規定ではございません。エリジビリテイ、すなわちこういう考えを持ちこういう政策をやる国に物をやろう、物をもらうという、ただ資格に関する規定にすぎないのでありまして、決してこれがこの協定の主眼でも何でもないのであります。この資格関係のある六条件はいずれも日本にとつて新たな義務では実はないのでありまして、既定方針に沿つたものにしかすぎない。それを書くことによつて向うのギヴ・アンド・ギヴの義務が発動し得るなら、これは一向かまわないものだと考えるのでございます。
  37. 河野密

    河野(密)委員 それでは日本はこの協定を結んでもアメリカに対して何らの義務を負わなくてもよろしい、こういうことなのですか、明文上の義務はない、こういうふうに言い切れるのですか。
  38. 下田武三

    下田政府委員 そうは決して申しておりません。ギヴ・アンド・テークというギヴとテークの均衡が普通の例であります。これはもう比較にならないほどギブの方が大きいのです。そうして日本義務はすべて付随的なものであるということでございます。(「ミユーチユアルとある」と呼ぶ者あり)ミユーチユアルという言葉もございます。が、ミユーチユアルらしく、わが方からもアメリカで不足したものがもしあつたならば、半製品とか加工資材をやるということを掲げてミユーチユアルの体裁を整えておりますが、実体は一方的に向うのギヴが多いわけであります。
  39. 河野密

    河野(密)委員 私は今の条約局長の話を聞いておつて思い出したが、よく世間でただほどこわいものはないと言う、ただでくれるというこれほど恐ろしいものはないと思うのです。  そこで条約局長並びに法制局長官に伺いますが、自衛隊法の第三条の任務のところに、「わが国の平和と独立を守り、国の安全を保つため、直接侵略及び間接侵略に対しわが国を防衛することを」目的とする、こう書いてあります。そこで条約局長お尋ねいたしますが、この自衛隊法に書いてある直接侵略というのは、一九三三年七月三日にロンドンで締結された国際条約の侵略の定義に関する条約というのがございます。この侵略の定義に関する条約の侵略と、この自衛隊法の中に書いてある直接侵略及び間接侵略の侵略というのとは、これは私は同様に解釈してよろしい、国際的に認められた侵略という意味に解釈していいと思うの、ですが、その通りでありますか。
  40. 下田武三

    下田政府委員 侵略という言葉意味は同様と解してさしつかえないと思います。ただ侵略によつて何事が起るかということになりますと、これはいろいろの条約なりいろいろの法律によつてそれぞれ意味が異なつて来るわけでありますが、侵略自体は事実でございますから、それから発生する法律的効果を別にいたしまして、同じような意味だと考てよろしいと思います。
  41. 河野密

    河野(密)委員 そこでこの侵略の定義に関する条約の第二条に、侵略の場合を五つ書いてあります。一、二、三は他の一国に対する開戦の宣言とか、開戦の宣言がなくとも一国の領域の侵入とか云々、航空機の攻撃ということが書いてございますが、第四番目に他の一国の沿岸または港の海上封鎖ということが侵略と書いてあります。第五番目、これがさらに重大であると思いますが、一つの国において編成された部隊が他国に侵入したような場合において、被侵入国の要求があるにかかわらずその部隊に対して補給をしたり、それを援助、保護しているようなもの、それも一つの侵略である、こういうように見ておるのであります。それで私はこの四と五とがきわめて重大であると思うのであります。そこで直接侵略に対抗すると一口に申しますが、この直接侵略の中には、この二つのことが加わるのだろう。今条約局長が言われたように、侵略というものは国際的に許された条約の定義がある。してみると他の一国の沿岸または海上封鎖というものも入る。それから一つの国に侵入した部隊に補給をやめろと言うにかかわらず補給しておる、そういうものも侵略に入るということになる。そこで自衛隊が侵略に対抗するということであるならば、自衛隊自身が一つ憲法違反になるという問題ばかりでなく、先ほど来いろいろいろ問題となつておりました海外派兵の問題というものも、この問題とからんで来るわけなのであります。この協定自身には外務大臣もしばしば言われたように、海外派兵の問題はないでありましよう、言うこと自身がおかしいでありましようが、その裏づけだと見られる自衛隊が直接侵略に対抗するということ、その侵略というものは外国から侵略した部隊に対する補給、その基地、そういうものも十分含まれておる、こういうふうになつて参りますと、これは海外派兵をしないのだということ自身が矛盾して来ると私は思うのであります。いかがでしようか。
  42. 下田武三

    下田政府委員 私は少しも矛盾すると存じません。侵略の定義に関する条約は、第二条の五つに掲げたものが顕著なる侵略と認めて規定したわけであります。この条約規定と、今御審議を願つておりますMSAとがいかなる意味で関連を生じるのか、私にはどうもわかりかねるのであります。
  43. 河野密

    河野(密)委員 それはいかなる意味で関連せしめるか、この協定海外派兵義務を道義的にか何か負つておるのじやないかという質問がありましたのに対して、海外派兵義務なんというものは負つておらぬのだ、海外派兵義務はこれにはひとつもないのだということをいつておるが、自衛隊法の第三条によると、直接侵略に対抗するのだと書いてある。しかし直接侵略というといかにも外国から攻めて来たものだけを防ぐというように聞えるけれども、実は国際法上許されておる侵略の定義を読むと、単に侵略した部隊に補給するのをやめろと言つてもやめない場合にも、それは侵略と見る。たとえば国内に反乱軍が起つた、それに対して補給をする。補給をやめろといつてもやめないものは侵略と見ると書いてある。直接侵略に対抗するといえば、こういうものにも対抗しなければならなくなるじやないか、だからもしこの協定がそういう海外派兵というような問題を全然否定するものであるとするならば、それは当然どこかに明文がなければならぬじやないか、こういう趣旨なのです。わかりませんか。
  44. 下田武三

    下田政府委員 その最後の点がわかりかねるのでございます。御指摘になりました。四の一国の沿岸または港の海上封鎖――横浜なり、舞鶴なりに軍艦を並べて封鎖するというような場合は、これは直接侵略であることは明らかであります。もう一つ各国の所属領域において、つまりある国で編成された部隊が日本にやつて参りまして、それに補給する。あるいはそれに補給することをやめてくれと言つておるにかかわらず、やめることを拒絶して来たというような場合、これも外国で編成された部隊が日本に来るという段階で、まず直接侵略になると思うのであります。これが軍隊であるかどうかわからないような国の部隊を編成、潜入して、日本で開き直つて軍隊だといつて軍事行動を始めた場合、これは外国の教唆または干渉による間接侵略と見ることもできるかもしれませんが、向うと密接な連絡を持ち出しましたならば、やはりこれは外部からの侵入という意味で直接侵略ということもできるかと思います。いずれにしても侵略の定義に関する条約で掲げましたような行為が、日本に対して起りますならば、すべて自衛隊法の第三条にいう直接侵略及び間接侵略のいずれかに該当することになると思います。
  45. 河野密

    河野(密)委員 それでは具体的な事実をあげてひとつお尋ねしますが、李承晩ラインというものをつくつた。公海を一定の区域を限つて、公海自由の原則に反して、あれは自分の領土であるというものをつくる。これは侵略になりますかどうですか。
  46. 下田武三

    下田政府委員 これは侵略とは考えません。
  47. 河野密

    河野(密)委員 日本一つの反乱あるいは内乱が起つた、それに対して外国が補給する。補給そのものは侵略とお考えになりますか。
  48. 下田武三

    下田政府委員 これはつまり外部からの干渉による場合でございますから、間接侵略の一形態と思います。
  49. 河野密

    河野(密)委員 それらの場合を考えまして、そういう場合に海外の基地あるいは補給路を断つことは、この自衛隊の任務の中に入るというふうにお考えになりますか。
  50. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 今までのお話を横で伺つておりましたが、この侵略の定義に関する条約は、御承知の通り侵略してはいけないという側からの制約であろうと思います。従つて非常に広くあらゆる侵略と認められ得るような場合を禁ずる趣旨でできておると私は思います。ところがただいま問題になつておりますMSAには全然関係ないと思います。むしろ自衛隊の問題としてお尋ねだと思いますから、自衛隊の問題としてお答えをいたしますが、自衛隊法に関係して来ておる面は防ぐ方の面を考えたのであつて、侵略する方の面のことは全然考えておりません。従いまして侵略の定義に関する条約が、われわれの自衛隊の関係において、どれだけ実際の意義を持つものであろうか、一々外敵の急迫不正の侵害を受けました場合に、あの条約をひもといて、これは一体あれの第何条に当るかということは、自衛隊の立場としては必要ないだろうと思います。急迫不正の侵害がある場合には、直接侵略に対抗の措置を自衛隊がとるのでありますけれども、自衛隊法には、わが国を防衛するため、必要な防衛措置をとる、とありますから、あらゆる侵略に対して、あらゆる自衛の行動をとるということにはなりません。必要かいなかの判定がそこに加わつて参ります。それからたびたびお話申し上げておりますように、自衛権の限界というものは、これまた厳としてあるわけであります。この自衛権の限界について下田君が三原則を述べました、すなわち他に方法がなくて、そうして急迫不正の危害があつて、それを排除するために必要欠くべからざる最小限度の措置という制約をかぶつておりますから、その方向で自衛隊は動くというふうに御了解願えば、これはけつこうなことであろうと思います。
  51. 河野密

    河野(密)委員 私がこういうことを質問いたしますゆえんのものは、この委員会で私は静かに伺つておりますと、日本憲法の解釈を非常に広くして、先ほど申し上げましたように、憲法第九条の第一項においては、自衛のための武力の行使であるならばさしつかえないのだ、第二項においては、この戦力に至らない程度の防衛力であるならば持つてもさしつかえないのだ、こういう解釈をしている。さらに進んでは、この自衛のためであるならば、その基地その他に出動することもさしつかえないのだ、こういう議論日本憲法の第九条の解釈から出て来るという議論がここでしばしばなされておる。これは条約局長もお聞きの通りだと思うのであります。これに対して当局は――ことに岡崎外務大臣が主としてでありますが、当局はそれに対して肯定も否定もなされない。そういうことはできないのだということは一ぺんもおつしやつたことはない。それをできるとも言わないけれども、できないとも言わない。そういう憲法の解釈の上に立つて、自衛隊の第三条の直接並びに間接の侵略に対抗するものだということが漠然と書かれておる。その侵略というものは、今国際法上許された侵略というものを考えれば、海外にある基地に対する行動ということも当然含まれるように解釈できる。こういうふうになつて来ると、この日本の自衛隊が海外出動をしないのだという保証はどこにもないということになるのであります。しかし、これは見解の相違であるといえばそれまでであります。  そこで法制局長官に一点お尋ねいたしますが、この海外派兵を約束したのではないかとか、海外派兵義務づけられたのではないか、海外派兵を禁止するという条項がないじやないかという議論がしきりになされたのでありますが、法制局長官は、この第九条の二項にある「この協定は、各政府がそれぞれ自国憲法上の規定従つて実施するものとする。」この規定が厳として存するならば、日本海外派兵などは、この憲法上の規定従つて実施するという一つのことによつてあり得ないのだ、なぜこう御答弁ができないのですか、できるはずだと私は思うのですが、その点明確にしていただきたい。
  52. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 九条の今御指摘の項目までたどりつくその手前の段階で、この協定全体をながめてみました場合に、ただいま御指摘のような海外派兵義務づけるような手がかりになるところは、私は全然ないと思います。従いまして、このMSA協定についてさような義務と申しますか約束と申しますか、そういう点は見当らないわけでありますから、今の九条の第二項にたどりつくまでもなく、そこで話は消えてしまうというふうに私どもは信じておるわけであります。
  53. 上塚司

    上塚委員長 河野君、すでに持ち時間は経過いたしましたが、なお多少の延長を認めます。
  54. 河野密

    河野(密)委員 問題をもつて問題に答えることはやめていただきたいと思うのです。私の申し上げたことに率直に答えていただきたい。憲法上の解釈として法制局長官は責任を持つて答えていただきたい。私もこの協定の中に海外派兵義務づけられておるというようなことを言つておるのではない。海外派兵義務づけているのじやないかという質問があつて、なぜこの協定の中にそういうことを書かなかつたのかという質問がたびたびあつたときに、岡崎外務大臣を初めとして、そういうことを書くのはおかしいのだ、こういうことの一点張りの御答弁であつたのであります。しかし、この第九条二項に日本憲法従つて実施するのだ、こう明文で書いてあることから、明文で書いてある以上は、日本憲法建前上、海外派兵のごときものはあり得ないのだ、こう明確になぜ答えられないのか、もしそれであるとするならば、日本憲法の解釈として海外派兵も可能なりという立場に政府は立つておられるとしか考えられないが、法制局長官の明確なる答弁を願いたいというのが私の趣旨で、少しも無理じやないと思う。答えられないはずはないと思う。
  55. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 先ほど申しましたように、MSA協定に全然問題はないと私は思いますけれども、しかしせつかくのお尋ねでございますから、この問題を離れてお答えするわけでありますが、第一、海外派兵という言葉は、われわれ新聞等を読んでおりましてもどうも一向わからぬのであります。と申しますのは、一体日本の領域なり領海を越えて外へ出すことを全部海外派兵というのか、あるいは自衛権の行使としてかりに公海の上で敵を迎撃することは、海外派兵に入らないのか入るのかというような角度からの疑問がいろいろありますから、一口にはお答えできない問題だと思います。この自衛権の発動としての場合についてのいろいろの想定の御質問がありまして、私はその際には自衛権の厳格な限界の上において、あるいは領海を越えて公海の上で敵を迎え撃つということはありましようということは言つております。これはまつたく日本の自衛権の発動の問題でありまして、あるいは自衛隊法の御審議の際に出て参るべき問題かもしれません。それ以外の関係において、たとえばよその国を助けに行くためにどうであるとかこうであるとかいう問題がございましようが、それについてはたびたび外務大臣もお答えしておられますように、これは日本の意思でそういう協定を結ぶなら結んで、しかも自衛隊法をわざわざ改正をお願いして――とにかく国会の御意思によらずしてそういうことはできつこないのであります。その国会の御意思によらずしてはできないことを、アメリカの力を借りて、アメリカとの約束でそういうことはできないということを書いてもらうのは、日本の自主的な立場からどうであろうか、ということをおそらく岡崎さんは頭の中に置かれて、お答えしておつたのだと思います。
  56. 北昤吉

    ○北委員 朝鮮事件中機械水雷が私の郷里の佐渡島の周辺に盛んに流れて来たのです。ちよつと戦争になつても機械水雷などどんどん流す、航海が非常に危険になるのですが、こういうことに対して自衛権を発動するというとどうやればよいのでしようか。こうなるととても日本海は航海できないのです。私は戦時中新潟と佐渡との間を機械水雷のために船が通らぬから漁船で渡りました。戦時中数回そういう苦しい体験をなめておるし、今度の朝鮮事件中もたびたび機会水雷の危険があつて、漁船が発見して手当をしたようなことがあるのですから、そういうことは間接侵略を援助する意味でやることはあり得ると思います。こういうときにはどうすればよいのでしよう。機械水雷を流す本拠をつかなければやれないと思うのです。  それからもう一つ河野君からミリタリイ・オブリゲーシヨンに関連して、デイフエンス・キヤパシテイの問題があつたのですが、私はどうもキヤパシテイというのは陸軍、海軍、空軍及びその他の戦力全体にかかるしように思うのです。政府の今までの答弁では、戦力は狭いものだ、自衛権は広いものだ、経済上の安定生活なんというものは自衛権のおもなものだ、こう答えておる。ところがここにはこういうことが書いてある。「ポリテイカル・アンド・エコノミツク・スタビリテイ・オブ・ジヤパン」日本政治的、経済的安定というものを予想して、そうして「デイフエンス・キヤパシテイズ」――このデフエンス・キヤパシテイには、それであるから経済的、政治的安定というものが入つておらぬのです。それを条件としてミリタリイ・オブリゲーシヨンズと書いてあるところを見ると、デイフエンス・キヤパシテイは、自衛力という広い意味じやなしに、単なる軍事力であろうと思う。条約局長は広い意味とつたようですが、陸軍、海軍、空軍及びその他の戦力全体を含めたものになりはしないか、こう思うのですがいかがですか。
  57. 下田武三

    下田政府委員 第一の機械水雷の点でございますが、自衛ということが起りますのは、外国の意思に基く行動に対してのことでございまして、外国の意思が入つてない、誤つて流れて来る機械水雷を除去することは、自衛権発動の問題ではございませんで、危険物の除去の水上警察の行動であろうと思います。  第二の御質問に対しましては、第八条に掲げました六条件のうちの第四条件防衛力デイフエンシヴ・ストレングスと第五の防衛能力を区別いたしますためには、先ほど私が申し上げましたように解釈をいたさないと、同じことになつてしまうのです。すなわち、第五の防衛能力の方も力自体というようにいたしますと、第四の防衛力と同じことになつてしまいます。そこで防衛能力というのは、先ほど申しましたように、本来は何も戦争だけに向けられたものでない、造船所キヤパシテイであるとか、航空業のキヤパシテイであるとか、方々にころがつております要素をさすのでありまして、第四の方に至つて初めて防衛自体を目的とする力をさす、さういうように解しておるのでございます。
  58. 北昤吉

    ○北委員 どうもわかりません。デイフエンス・キヤパシテイというとやはり防衛能力であるから、造船所などは普通の船をつくる目的であり、デイフエンス・キヤパシテイのうちに入らない。これはやはり陸軍、海軍、空軍その他の戦力を含めたものだと思うのですが、もう少し広く解釈できないのですか。私は経済的安定と区別しております。だからいわゆる自衛力は、政府の解釈する経済的安定を含めた自衛力という意味にはならないと思う。陸軍、海軍、空軍その他の戦力全体を含めてデイフエンス・キヤパシテイ造船所などは目的が違うのだから、デイフエンス・キヤパシテイだというわけには行かぬと思うが、いかがですか。
  59. 下田武三

    下田政府委員 キヤパシテイは、つまりストレングス、力を生み出す要素をいつております。従つて要素の方を増強するために、制限といたしましては合理的な措置つまり無理に造船所ばかり広げてみても意味ないのでありますから、そんなむちやな措置を要求するわけじやない。造船所を広げることがちつとも無理でない、リーズナブルの範囲造船所なり、工場を広めればいいという制約になつております。ところが第四の防衛の力、つまり要素を、総合して生んで来る力の方の発展維持ということになりますと、政治経済の安定、また人力、資源、施設その他の一般的経済条件という二重の制限をしておる参わけであります。
  60. 細迫兼光

    細迫委員 河野君との問答におけるギヴ・アンド・ギヴの問題なのですが、例のMSA法五百十一条の資格六つの中で、第五にうたわれております自国防衛力増強、これに対応するものが例のMSA協定の第八条の「自国防衛能力増強に必要となることがあるすべての合理的な措置を執り、」ではないかと思うのですがいかがですか。
  61. 下田武三

    下田政府委員 仰せの通りでございます。
  62. 細迫兼光

    細迫委員 そうだとすれば、アメリカはこの言葉だけで、日本は、「自国防衛能力増強に必要となることがあるすべての合理的な措置」を、いたしますという言葉だけで、MSAをくれましようか。私はこの言葉に裏づけられる事実がなくてはアメリカさんはくれない、アメリカさんも、そうは甘いものじやないと思うのです。この自国防衛力増強という言葉の裏づけこそが、自衛隊にほかならないと私は思うのでありますが、それでもあなたは自衛隊とこの協定とが、何らの関係がない、何らの条件じやない、こうつつぱろうとなさるのでございましようか。
  63. 下田武三

    下田政府委員 先ほどのギヴ・アンド・ギヴのお話でございますが、結局援助というものは、無理やりに押しつけられる援助だという考えから来るなら、すべて義務になつてしまう。ところがそうでなくて、日本独自の政策自衛力は独立国としてやはり増強しなくてはならないのだ、だから念を押した上でくれといつておるのであります。こちらが意思があるからくれといつておる、それだからやろうという約束になつた以上は、供与をやる方がはるかに大きな義務を負うことは、常識上当然だろうと思います。  ところで今の第五の点でございますが、防衛能力増強ということは、保安隊増強をさすのでは全然ございません。これは先ほど来申し上げておりますように、このキヤパシテイ増強するという意味であります。
  64. 上塚司

  65. 福田篤泰

    福田(篤)委員 今まで各委員から熱心な御質問がありました。真剣に審議が行われておりますが、今まで伺つておりますと、わが国経済界に相当重要な影響を持つ投資保証に関してまだ取上げてないと思いますので、この点に関して専門的なお立場からお答えをいただきたいと思います。  まずお伺いしたいことは今回の協定を定めました投資保証制度の目的とその根拠法につきまして、御説明いただきたいと思います。
  66. 小田部謙一

    ○小田部政府委員 根拠法といたしましては、米国の改正一九四八年経済協力法第百十一条(b)の(3)でございますが、目的といたしましては、アメリカMSA法とか経済援助法とかをやりましたときに、政府の金で自由諸国家間の、経済的ポテンシヤルというものを高めようと考えておりましたが、政府の力だけでは足らない、この際やはりアメリカの民間の資本を動員する必要があるということを考えたわけでございます。ところがアメリカの民間の資本が出る上におきまして、障害になるものと申しますと、今世界の各国とも為替管理を執行いたしておりますために、たとえばアメリカ人が資本を投資いたしまして、そこでは利益を得ましても、それを自国に送ることができない、利潤の送金をすることもできなければ、元本の送金をすることもできない、そういう場合が起ることもございます。またある国におきましては、アメリカ人が投資しましても、収用されてしまうというようなことがあるのでございます。そのような危険のために、アメリカの民間資本というものは、相当尨大なものがあるにもかかわらず、自由諸国家間に必ずしも流れて行かないおそれがあるのではないかということも想定いたしまして、投資をしようとする投資家が、アメリカ政府にある一定の料金を払いまして、一種の保険を買うという制度になつておるのでございます。もしそこで保険の発生事由、すなわち最初に約束されたように、利潤を送つて来ない、元本を送らせないというような際においては、一応これをアメリカはドルでもつて資本家に支払つてやる。そしてドルで払つたあとはどうするかといいますと、今世界では為替管理をしておりますし、外貨が少くなつて元本を送らせないであろうから、その国のいわゆるローカル・カレンシイでそれを受取りまして、そのローカル・カレンシイで受取りましたものを、アメリカ政府は行政的の費用に充てる、そういう目的のもとにつくつたのでございます。
  67. 福田篤泰

    福田(篤)委員 この協定日本は一体どういう利益を得られると考えますか。
  68. 小田部謙一

    ○小田部政府委員 実はわが国の外資法におきましては、外国人が投資しました場合に、二年すえ置きますと、あと二十分の一ずつ毎年利潤を元本も送れることになつております。すなわちある年限がたちますれば、アメリカの資本も送れるのでございますから、もしアメリカ投資家が日本の外資法で約束したことが十分守られるということを確信いたしますならば、この投資保証の利益は何も出て来ないのでございます。ところが最近のように国際収支の状況が悪くなるという場合に、新しく投資をしようとする者は、日本の外資法ではたとへそうなつていても、外資法というものは日本の国内の理由でいつでもかえられるのではないかということを考えられまして、そこで逡巡することがあるのでございます。そういうと遂にあたつて、この協定に基きまして、アメリカ資本が保護を受けられれば、そういうことにかまわず投資ができるが、つまりアメリカの資本がそういうふうな危険を考えないで、日本に入つて来るということが考えられます。
  69. 福田篤泰

    福田(篤)委員 この協定によりまして保証される投資額の最高と最低について、お伺いしたいと思います。
  70. 小田部謙一

    ○小田部政府委員 この投資協定には別に最高と最低というあれはついておりません。ただこれの額としてアメリカが基金として便つております額が、約一億ドルございます。そして現在の段階におきましては、そのうちの約六千万ドルというものは、各国のためにすでに保険しております。もとよりこれは保険金も入りますから、必ずしもその二億ドルはくれませんが、大体残つた限度においてアメリカ政府保証できる、こう考えております。
  71. 福田篤泰

    福田(篤)委員 この投資保証を適用する場合に、たしかアメリカ各国別に限度を設けております。それはどうですか。
  72. 小田部謙一

    ○小田部政府委員 今まで確かありましたところにおきましては、各国別に別に限度を設けておりません。
  73. 福田篤泰

    福田(篤)委員 限度は設けていないと言われますが、今まで協定を結んだ国はどういう国と結んだか、その限度については何らかのとりきめがあつたか、もう一度……。
  74. 小田部謙一

    ○小田部政府委員 現在アメリカとの間に投資保証に関する協定、あるいは協定の形におきまして、あるいは交換公文の形において結びました国が、十八箇国ございます。そしてその協定に基きまして、現状において現実に投資保証制度の利益を受けております国は、デンマーク、フランス、オランダ、イタリア、トルコ、イギリス等にわたつております。イギリスの場合は約八百万ドルぐらいの投資保証になつております。
  75. 福田篤泰

    福田(篤)委員 今回日本が結びましたのは、MSA協定の一環として、先ほど外務省側の答弁にありました通り経済的な利益をもたらすものという範疇であると思いますが、外国とのとりきめの形式はどうなのですか。
  76. 小田部謙一

    ○小田部政府委員 外国とのとりきめの形式は、大体交換公文によつておるものが多うございます。但しスペインとの協定経済援助協定の中の一助としてこれが入つております。
  77. 福田篤泰

    福田(篤)委員 今保安庁の官房長が来られましたので、大分お忙しいようでありますから、保安庁の官房長に一つお伺いいたしますが、今まで衆参両院の委員会その他において承つておりますと、このMSAで与えられる日本援助内容については、大分はつきりして参りましたが、それを金に直すと、陸海空で一体どのくらいの金になるか、総額はどれくらいか、まだばらばらになつておりますので、まとめて御答弁願いたいと思います。
  78. 上村健太郎

    ○上村政府委員 MSA協定に基きます援助の額は、まだ自由討議のようなかつこうで先方と話合いをしておりますので、はつきりしたものはきまりませんが、私どもの方で援助を期待いたしておりますものを金額に直して申し上げたいと思います。  陸上におきましては、これは大体二個師団分で、新品価格にいたしまして約二百八十億円、それから海上、すなわち船でありますが、これは新造価格の約六〇%を見ておりまして二百二十億円、航空機におきましては、新品価格で約五十億円、合計いたしまして、総額陸海空合せて私どもが援助を期待いたしております額が、価格の計算において非常に大ざつぱではございますが、約五百五十億円、すなはちドルに換算いたしまして一億五千万ドル程度になると存じます。
  79. 福田篤泰

    福田(篤)委員 外務省にまたしばらくお伺いします。現在までにアメリカ投資保証を及ぼしたその総額と、投資保証を及ぼしておる種類内容について御説明を願います。
  80. 小田部謙一

    ○小田部政府委員 現在までアメリカ投資保証を及ぼしておる額は四千二百万ドルくらいに達しております。そうしてその種類といたしましては、トラックとか自動車、土木機械、石油精製、カーボンブラツク、化学薬品、鉄道施設、ミシン、時計等、相当広範囲にわたつております。
  81. 福田篤泰

    福田(篤)委員 先ほど形式を伺つた理由で、大体外務省のお気持はわかりますが、このMSA投資保証関係と申しますか、それについて経済局の立場からの回答をいただきたいと思います。
  82. 小田部謙一

    ○小田部政府委員 もちろんこれはMSA並びに経済援助協定に関するアメリカの法律に基きまして、その法律を見ますと、このアメリカの達成しようとするMSA目的を到達するためには、政府の資金だけでは足りないから、民間の資本を動員しようという意味でございますから、そういう意味におきましては、このMSAの本協定投資保証協定とは非常な密接な関係を持つておるものでございます。しかし条約そのものといたしましては、本協定と必ずしも相関関係を持つておるようには規定しておりませんので、この協定のみでも発効し得ることになつております。
  83. 福田篤泰

    福田(篤)委員 この投資の対象となるものはどういうものをお考えになつておりますか。
  84. 小田部謙一

    ○小田部政府委員 こういうふうに今の各国の例を見てみますと、相当広範囲にわたつておりますので、今後日本で、たとえば自動車工業だとか、もちろん軍需生産もあるでしようし、化学薬品もあるでしようし、そういうものが多く期待されるのではないかと思います。そしてこの協定は、一つ申し忘れましたが、今まですでに日本投資してあつたものについては、この保険は及ばないということでございます。新しく機械を拡張するとか、合理化するとか、そういうときに及ぶということになつておりますから相当広汎になると思います。
  85. 福田篤泰

    福田(篤)委員 改正された一九四八年の経済協力法第百十一条の(b)の三項の規定、これは一体どういうものですか。
  86. 小田部謙一

    ○小田部政府委員 この改正された経済協力法第百十一条(b)というものは、大統領にこういうふうな権限を与えるということが書いてあるのでございまして、その内容は今までにすでに申し上げました通りMSA目的をさらに増進するためにこういうふうな保険契約ができる。保険契約をする場合にはたとえば料金は幾らにするとか、そういうようなことがこまかく書いてあるわけであります。
  87. 福田篤泰

    福田(篤)委員 保証の与えられる期間は一体いつまでですか。
  88. 小田部謙一

    ○小田部政府委員 改正経済協力法によりますと、一九五七年までに保険契約に入らなければならないということになつております。但しその期間は、その一九五七年六月三十日までに入りさえすれば、今後二十年間はいいということになつております。但しランドール委員会では、この問題を取上げまして、この投資保証協定というものはもう少し延長した方がいいだろうという勧告をしておりますから、おそらくこの期間は延びるものだと思つております。
  89. 福田篤泰

    福田(篤)委員 円貨の取扱いについてもお伺いしたいと思いますが、協定第二条第二項の前段を見ますと、アメリカ政府の取得する円貨に与えられる待遇を規定し、後段は御承知の通りアメリカ政府による円貨の自由な使用規定しております。このような円貨に対する待遇につきまして、円貨の使用以外に具体的にいかなる事項をお考えになつておりますか。
  90. 小田部謙一

    ○小田部政府委員 今の前段の規定はどちらかといいますと、一般的にアメリカ政府が肩がわりしまして取得した円貨というものが、同時に個人、つまり米国人だの英国人だのに与えられる待遇に比較して、不当な待遇を受けないということが書いてあるのでございまして、後段の方はその円貨を現実に使う場合において、アメリカは何に使うかと申しますと、非軍事的な行政事務費に使う、こういうふうにブレークダウンして書いてあるわけであります。
  91. 福田篤泰

    福田(篤)委員 今の御説明に関連して、協定第二条の二におきまして、アメリカ政府が代位して取得しました円貨に対して、米国民の私人の取引より不利でない待遇を与えることになつておりますが、これはアメリカ投資保証保証のない投資と差別待遇を禁止する趣旨でそういうものを設けたのか、あるいはまたアメリカ国民の他国における取扱いと比較しまして、それよりも、不利でない取扱を要求している趣旨でありますか、いずれでありますか。
  92. 小田部謙一

    ○小田部政府委員 これはアメリカ政府投資保証をしているアメリカ人の資本と、そうでない資本を別に差別待遇しようという意味は毛頭ないのでございまして、ただこれで受けました円貨というものに対して、日本政府が与える場合において同様の待遇を与える、すなわちあるときをとつてみます。と、そのときに日本は国際収支が悪くて利潤を送らせなかつた、そのようなときはアメリカ政府ももちろん利潤を送ることはできませんし、これを円貨で日本で使いますが、もし将来ある時期がたちまして、それと同様の立場に立つた私人に対してはドルで送らしてもいいという時期が来ましたならば、あるいはアメリカ政府日本に対してドルで送らせてくれと言うかもしれぬ、こういう趣旨であります。それから第三国人との比較におきましては、そういうように国際収支がよくなりまして、ドルが送れるか送れないかという際に、英国人に許してもアメリカ人に許さないということがないように――もちろんこれは通貨別にいろいろな差別はありますが、その限度を越えて差別待遇をしないようにということであります。
  93. 福田篤泰

    福田(篤)委員 第二条二でありますが、アメリカ政府が代位して取得した円貨につきまして、これはわが国内で使用するだけでありますか、それともドルに交換を日本側に要求する権利があるのか、どちらでありますか。
  94. 小田部謙一

    ○小田部政府委員 第二項だけから見ますと、この円価額はアメリカ日本国内で、アメリカの行政費として自由に使用することができるようになつております。ただしかしそのうちの第一項を見ますと、合衆国の国民の投資行為から生ずる私人の資金に与えられる待遇よりも不利でない待遇が与えられるとありますから、日本の国際収支状態がよくなりまして外貨が豊富になり私人に対しては利潤をドルで送らせるような事態になりますれば、アメリカ政府もあるいはその持つている円貨の中のある部分をドルで送らせろということは生ずるのだろうと思います。
  95. 福田篤泰

    福田(篤)委員 きまつていないのですね。
  96. 小田部謙一

    ○小田部政府委員 ええ。
  97. 福田篤泰

    福田(篤)委員 第二条第三項、仲裁者の規定でありますが、これを見ますと、もし選択協定が成立した場合には自動的に仲裁者がきめられてしまう、その決定に対して最終的に服さなければならないことになつております。これはわが国にとつて不利でないかと思いますが、交渉過程におきまして何らかこれを緩和する努力をされたかどうか、これについてお伺いいたします。
  98. 下田武三

    下田政府委員 別にこの点は日本に不利であるとは存じておりません。もしそういう不安があるとすれば先方もそういう不安があるわけであります。条約によつてはもつと複雑な、第一次、第二次、第三次と、最後に国際司法裁判に持ち込むというような規定もあります。日米間の関係で、簡単な問題をそう複雑な手続をもつて規定する必要もありませんので、第二次に国際司法裁判所の指定する仲裁にまかす。それに両方とも男らしく従うということにして一向さしつかえないと思つて、こういうように定めた次第であります。
  99. 福田篤泰

    福田(篤)委員 しからばお伺いしますが、自動的にという意味はどういうように解決するのでありますか。
  100. 下田武三

    下田政府委員 これはあらためて相談し合うということなしにということであります。
  101. 福田篤泰

    福田(篤)委員 アメリカ政府が代位した場合の日本政府に対する請求権は、両政府間の直接交渉の主題となるといろ規定がありますが、本来この種の請求権は私人、個人の投資から生じたものでありますから、アメリカ政府が裁判上の救済手段を尽さずして、ただちに外交的仲裁を求めることを認めることになると思うのでありますが、この点について御見解をお伺いします。
  102. 下田武三

    下田政府委員 この種の請求権は私人の投資から生じたものでございますが、アメリカ政府が代位いたしました場合には投資アメリカ政府の財産となるわけであります。従つてこの私人の請求権は政府に代位され、請求権の性質には変化がなくてもこれを取上げる主体がアメリカ政府となるために、請求権解決の方式がかわつて来る次第でございます。換言すれば、米国政府は当分が代位した請求権は投資を行つた私人にかわつてでなくて、自分自身の請求権として取上げる。そして国と国との関係でその解決を求めるということになるわけでありまして、この項の規定はこの原則によりましたものでありまして、ほかの外国の投資保証のときでも同様の前例があるわけであります。
  103. 福田篤泰

    福田(篤)委員 投資保証の事由の最初にあります収用の範囲でありますが、これはどういうようにお考えでありますか。
  104. 小田部謙一

    ○小田部政府委員 この収用の範囲に関しましては、日本日本の収用法の対象となつておりまして、財産などの収用に関しましては、日本の法律とアメリカの法律とはほとんど同様でございます。ただ企業の収用に関しましては、日本においてはどうするかという規定が必ずしもないのでございますが、通商航海条約におきましても、収用の場合には、わが国は正当な損失補償をいたすということが書いてありますので、この点何もさしつかえないだろうと思います。
  105. 福田篤泰

    福田(篤)委員 本協定における収用は、日本における収用と差異がありませんか。
  106. 小田部謙一

    ○小田部政府委員 これは、アメリカの法律に基きまして、アメリカ人が一種の保険契約を締結するのでございますから、その間において差異が生ずることもあるだろうと思います。日本においては収用ではないが、向うにおいては収用であるとして差異が生ずることもあるだろうと思います。アメリカ法に基いて、収用ということに当てはまりましたときには、アメリカの個人は金をもらう。そういうのは非常に極端な場合の相違でございまして、大体収用というのは日本の概念と同様でございます。もしそういうことが起つた場合に、アメリカ政府はそのときは情勢によつて日本政府に、支弁した額を要求することもあるし、また要求しないこともあるということを申しております。実際問題といたしまして、この協定を結んだ国は十何箇国ございまして、すでにたくさんの国が保証を受けておりますが、収用の問題でそういうことは一度も起つたことがございません。
  107. 福田篤泰

    福田(篤)委員 従来の実績ではそういう問題は起つていないようですが、やはり相当これから問題が起ると思うのです。そういう問題が起つた場合に、代位したアメリカ政府日本政府に要求する補償金額は、投資家に支払つた金額と同額でありますか、それともプラス・アルフアなり何らかの条件付なのか、それについてお伺いいたします。
  108. 小田部謙一

    ○小田部政府委員 この話合いをしましたときにその点が非常に問題になつたのでございますが、アメリカ政府説明といたしましては、一応日本でやつた収用が不当であるか不当でないか――このことは投資保証協定以前の通商航海条約のときも問題になつたのでございますが、正当の保証であるか正当の保証でないか――日本が正当の保証であると考えましても、アメリカが正当の保証でないと考えました場合には、政府としてこれを取上げて問題にすることがあり得るのでございます。この場合アメリカ政府が、たとえば百万ドルの金を払いまして、日本の法律も考え、この百万ドルというのが正しければ要求することもあるかと思いますが、しかしそんなに要求すべきでないと考えました場合は、それ以下でも済むということになつておるのであります。
  109. 福田篤泰

    福田(篤)委員 アメリカ政府投資保証契約は、日本政府の許可を条件として行われると思いますが、実際問題として今後いろいろなトラブルが起ると思いますので、その条件についてお伺いしておきたい。
  110. 小田部謙一

    ○小田部政府委員 日本では、実は外資法に基きまして、外国人は外資審議会の審議を経て、大蔵省の許可を得て初めて利潤を送らせる保証をするわけでございます、その他の場合は、日本に入つて来まして会社に投資して利潤が出ましても、それをドルでアメリカに送らせてくれということは、言えないのでございます。ですから、日本政府義務を履行しなかつた場合にのみこの外資法を発動するわけでございますから、日本が外資法の許した範囲内のものに限り、しかもその問題に関しましては、アメリカ政府からこれを保険契約にかけてよいかどうかということを、各プロジエクトごとに尋ねて来ることになつております。その上で日本が判定をしまして、よいとか悪いとか言うのでございまして、ちようど現在の外資法のもとにおきまして、アメリカ人のいろいろいろな申請に対してよい悪いということ、あるものは是とし、あるものはしないということがございますが、それについてそう大したトラブルが起つていないと同じように、これによりましてもトラブルは起らないじやないかと、思つております。
  111. 福田篤泰

    福田(篤)委員 御承知の通り、現在支店の経費だとかあるいは支店活動に伴う利潤の送金につきましては、個々のケースを審査して個別的に許可を与えております。これは長期にわたる送金がむずかしいのであります。この場合、本投資保証の制度に基いて、日本政府承認を与えられなくなると考えられる場合もあるのでありますが、アメリカ政府はこの点に対してどういう処置をする意向でありますか、交渉の経過とともにアメリカ政府の処置についてお尋ねいたします。
  112. 小田部謙一

    ○小田部政府委員 今日本政府は外資法に基きまして、外資法の許可を得たものだけ、利潤の送金を義務づけられることになるわけでありまして、普通の商人が入つて来て利潤を送らせてくれと申しましても、それは外国為替管理法に基きまして、一々大蔵省の許可を受けなければならぬ。そうして大蔵省の許可に基いて、あるものは送らせ、あるものは送らせないということをきめておるのでございます。それでこの協定ができましても、その点に関しまして、日本政府がある投資に対して、外国為替管理法上、国際収支の関係上、一々これを許したり不許可にしたりしようと思つているものに対しましては、この投資保証協定とは何ら関係もないのでございまして、その点は交渉の過程におきまして、アメリカ政府にも十分了解をしてもらつております。
  113. 福田篤泰

    福田(篤)委員 今度の協定は、先ほど来の説明で二、三言及されましたが、外資法と非常に関係があるわけですから、外資法とこの協定との関係をどうお考えでありますか、伺いたい。
  114. 小田部謙一

    ○小田部政府委員 現在の外資法では、日本の国際経済に役立つとか、外貨収入を増進させるとかいう目的のために、ある業種が申請をした場合において、それを許可しあるいは許可しないということになつておるのであります。たとえば株式について申しますれば、二年間すえ置いてあと二年ごとにその五分の一ずつ送金させるとか、社債の場合においてはどうするとか、技術援助の場合は、それがよいと思つた場合においてはある程度の対価を外貨で持つて行くことを許可しておりまして、投資保証協定をやりましても、この外資法をかえるという何らの必要もないのであります。ただ外資法のもとで許したうちのあるものが投資保証協定の対象になるということになつております。これによつて外資法がかわるということは全然ないわけでございます。
  115. 福田篤泰

    福田(篤)委員 この投資保証協定と日米通商航海条約との関係でありますが、この協定の条文を検討して参りますと、日米通商航海条約規定する内国待遇、最恵国待遇を日本側に与えればそれで十分だと解釈されているのですが、これについて政府はどういう解釈をとつておりますか。
  116. 小田部謙一

    ○小田部政府委員 この投資保証協定と日米通商航海条約とは総論と各論というようなものでございまして、日米通商航海条約におきましては、アメリカ人が投資をした場合、その投資をした者の利潤とか元本を送らせるとか送らせないということは、まつたく外貨の事情に基くということになつております。ただその場合、現在のようなポンドとかドルとか通貨地域別の困難があるときは別として、大体第三国人に比して区別されないということが規定されております。本協定に基きましてはそのうちの一つをとりまして、通常はアメリカ人の投資に対して日本保証をしないのだけれども、日本の国際収支に役立つか、外貨の収入増加に役立つもので、利潤とか元本の送金を外資法で許している場合には保険の対象になり得るということを規定しております。その点で各論になつております。  それから収用につきましては、日米通商航海条約は、ただ財産が収用された場合には正当な補償を与えなければならない、しかもこれは内国民待遇、最恵国民待遇に反してはならないということを規定しておりますが、収用された場合においては、アメリカ政府が一応肩がわりして、その後はアメリカ政府が請求をするのでございますが、その場合にもちろんアメリカ政府に払うべき額というものは内国民待遇、最恵国民待遇という原則に縛られるのは当然でございます。
  117. 福田篤泰

    福田(篤)委員 大体投資保証に関する一応の御説明をいただきましたが、この前の委員会であなたから御説明をいただいた中に、例の小麦協定の問題があります。過剰小麦の購入についてカナダが困るのじやないか、カナダのは安いのだから、おそらく日本アメリカ協定につきましても、カナダから文句が出ているはずだがどうかということをお伺いしましたが、これは話がついたという御答弁であります。ところがその後のワシントンの新聞報道で見ますと、十六日からワシントンでカナダとアメリカとの経済調整会議が行われておるのであります。カナダ側の主張と伝えられるところによりますと、パキスタンのようにただで余剰小麦を、やつて飢餓を救うような場合にはちつともさしつかえないが、いわゆる貿易の形で日本とカナダが小麦を大きな対象として考えている場合に、MSA協定によつてアメリカ日本にどしどし小麦を送つてはカナダが困るということを申し込んだという説が伝わつております。これによりまして、この前の御答弁によつてカナダと話がついたというが、アメリカとカナダの経済調整会議の模様はどうであるか、ワシントンからの報告があれば、その内容についてお聞きしたい。
  118. 小田部謙一

    ○小田部政府委員 カナダとアメリカとの経済調整に関する報告は、ワシントンからまだ来ておりませんが、第一番には、今進行しておりますカナダと日本とに関する協定はもう了解がつきまして、間もなく調印されることになるかと思います。それでことし日本MSAによつて余剰農産物である小麦を買うことについては、カナダに関しては問題はございません。ただ問題は、大統領の教書にございます通り、来年度は今年よりも相当大がかりなものであります。今年は一億ドルでございますが、来年は三億ドルという相当大きな額を対外援助に使う。その場合にあるいはもちろん日本の国際収支の関係から、同じような協定締結するかもしれぬというようなことを考えますと、カナダ側といたしましては、今年のことはまず解決ついたとしても、来年以降に関しましては、アメリカとして十分カナダ側の立場も考えた上で、余剰農産物処理をやつてくれなければ困るということは、当然申し入れるだろうと思います。この問題は単にカナダとアメリカだけ問題ではございませんが、FAOの会議がありましたときにも、農産物の生産国である国から、アメリカ余剰農産物を持つていて、それを普通の商取引よりも有利な方法で処分されると、どうしても普通の商取引をする方の国がアブロゲートされる、この問題は何とか調整しなければならぬという問題は出ておるわけでございますから、当然カナダは来年度のことに関してアメリカと話合いをしているのではないかと思います。しかしこれは今年のことではありませんし、現在のカナダと日本との間に進行している協定については十分了解がついています。
  119. 福田篤泰

    福田(篤)委員 この問題は、前にも質問しました通り、ますます今後、増大する過剰小麦の事情については、私は外務大臣のお考えは甘いと思うのでありまして、一応カナダの例をあげましたが、これと並行して米の輸入についても、アジア諸国から話合いが出ております。そういう場合に、よく今からアジア並びに欧米、日本の食糧需給の状況並びに輸入計画とにらみ合せて、そういう各種のエレメントを農林省の方と御研究の上で相当機動的にやらないと、単にこちらが余つたからこれだけもらうという簡単な考えでは、必ず行き詰まると思うのであります。この点十分御注意願いたいと思います。時間がありませんから、残余の質問を留保いたします。
  120. 上塚司

    上塚委員長 これにて暫時体感いたします。    午後零時四十五分休憩      ――――◇―――――    午後三時三分開議
  121. 上塚司

    上塚委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  質疑を許します。細迫兼光君。
  122. 細迫兼光

    細迫委員 通産省鉱山局の係の方に伺います。  鉱業権につきましては、鉱業法第十七条によりまして、日本国民でなければこれを享有することができないということになつておりますが、御承知のように第十六国会で附則がつきまして、ことしの四月二十七日までは当分の間鉱業権を外国人でも享有することができるというようなことに延期せられたようでありますが、これによつて影響を受けますのは朝鮮人であります。現在租鉱権を持つておるのが相当にありまして、これがこういう法律の結果、四月二十八日になりますと当然に事実上無償で自分の財産権が消えてしまうような結果に相なりはしないかと思うのでございますが、さようなことに相なるのかどうか。その方の御解釈とお取扱い、これに対する何らかの対策についてのお考えがあれば、承らせていただきたいと思います。
  123. 村田繁

    ○村田説明員 ただいまの御質問にお答えいたします。ただいまの先生の御意見にもございましたように、鉱業法の第十七条には、日本人または日本国法人でなければ鉱業権が持てない、かようになつております。これは鉱業法が制定されまして以来ずつと今日までとつて来ておる建前でございます。数年前に鉱業法の大改正をやりましたときにも、この基本的な考え方は全然くずされておらずに今日に至つておるような状態でございます。ところが御承知のように一昨年の四月二十八日平和条約が発効になりました。発効と同時に、従来日本国籍を持つておりました韓国人は日本国籍を喪失して外国人並になる、こういう建前なつたわけでございます。そういたしますと、従来日本人ということで鉱業権を持つておりました者が、一昨年の四月二十八日以来とたんに鉱業権が持てなくなり、従つて一部掘つておつたようなものもございますが、そういう連中が全然鉱物の掘採ができなくなる。これはまことにお気の毒であるとしいうようなことから、通産省といたしましては外務省その他これに関係した官庁間でいろいろ相談いたしました。そして先刻御承知のような鉱業法の一部改正を行いまして、その附則でもつて、一昨年の四月二十八日から二年間、本年の四月二十七日まで引続き鉱業権が持てるということにいたしました。その間に、本来の建前である日本人または日本国法人でなければ持てないという体制のところへ持つて行くように、行政指導をして参つたような状態でございます。その結果、一昨年の四月二十八日現在で試掘権、採掘権合せまして朝鮮人名義のものが約七十件あつたわけでございますが、その改正法律の施行と同時に、現地の機関を動員いたしまして、それぞれ朝鮮人の鉱業権を持つておられる方々に、本年の四月二十七日で切れることになつたということでいろいろと指導いたしました。あるいは日本人に鉱業権の譲渡をする、あるいは日本の法人格を持つところの会社をつくる、そうすることによつてその会社に名義変更をする、こういうような処置によりまして、逐次本来の建前に行くように指導して参りました結果、地方の状況で昨年の十一月十日には、すでにその処置によりまして二十五件ばかりは解決しました。残るのが昨年十一月現在で四十五件あつたわけでございますが、これなども、鉱業権の登録をいたしております原簿に記載してある住所に連絡をとりましても、全然連絡がとれない、いわゆる行方不明というようなものがその四十五件のうち相当数あるというようなことでございました。それ以外の朝鮮人名義になつておる鉱業権につきましては、先ほど申しました処置で大体において今月一ぱいから来月初めくらいまでには片がつく、こういうような報告を得ておりました。実はきようも午後その地方の担当官か集めまして、その後の状況を正確に開くようなことにいたしておりますが、前に連絡を受けた状況通りに大体行つているものというふうに考えますので、先ほど御心配のようなことは、実際の問題といたしましては、大して問題になるようなことはないのではないか、かように考えておる次第でございます。
  124. 細迫兼光

    細迫委員 外務次官にお願いいたしますが、お聞きのような状況に相なつております。いまだに朝鮮人が鉱業権、租鉱権を持つており、始末のできないものが四十五件あるというような状態であります。これは、もともとその当時日本人として正式に取得した財産権でございます。あるいはその後外国人となつてからのものもないとも限りませんが、それは想像ができません。鉱業権を持つてないようになつてから、わざわざ鉱業権を持つ物はあるまいと思いますから、おそらくは、はつきり日本国民として正当に取得した権利だと思うのであります。しかるに事実上の問題としまして、この四月二十七日でこれらの財産が雲散霧消するという境遇に差迫つておるのです。今日通産省でその跡始末に御努力くださつておるそうでありますが、しかしもう一月もたてば消えてなくなるものを、そう高くは始末できません。足元を見られて、結局ただで取上げられることになるのであります。これは外国人の財産ということでありますから、あるいは憲法の例の財産権云々とは直接かかわりないかとも思われますけれども、しかしそれと全然関係のないこともありません。相当な有償行為をなさなければならぬと思いますが、それと関係ないといたしましても、外国人の財産を無償没収にひとしき状態に陥れるということは、日本の国際信用上いかがかと思われるわけでございまして、何とかこれに対する御対策を考えてはいただけないかと思うのでございますが、御所見を承りたいと思います。
  125. 小滝彬

    ○小滝政府委員 実は、今細迫さんのおつしやつたような議論は、この法律の改正をやつたときに出るべき議論であつただろうと考えます。そういう考えもありますので、二年間の猶予期間を認めるということにしたのであります。しかも現に、通産省の方から説明いたしましたように、この法律に従つて鉱業権がなくなるからというので、それを処分した人もありますのに、あとに残つた者の権利だけを後々まで認めるということになれば、そこに不均衡も生じて来るのでありまして、この所有者側ができるだけすみやかにこれを適当な方法で処分するということを私どもは希望するものであります。  率直に申しますならば、今御指摘のような関係もありますので、これまで平穏無事に持つておつた権利であるから、もう少し長く期間を認めようという議論も、この改正をするときにあつたのであります。またその後日韓会談等でも、在日朝鮮人の財産に関しまして、そうした考えも一部には持つてつたのでありますけれども、現在としてはそういう特別な措置をとるまでにはつきりした考えは持ち合せておりません。しかしながら今通産省で説明しましたように、全部が片づけばけつこうですが、どうしても残るというような問題があれば、その際事実上没収というようなかつこうになりますのは、法規上さしつかえないにしても、いかがかと考えております。
  126. 細迫兼光

    細迫委員 実情は先ほど申し上げましたようなことでありますから、国際信用を高めるためにという観点から、外務省並びに通産省の一層の御努力をお願い申し上げたいと存じます。  つきましては運輸省の方に船舶のことについてお伺いいたしますが、やはり朝鮮人に関する問題であります。船の所有が日本国民でなくてはいけないようになつておるようでありますが、その結果、小さな船を所有して沿岸で海草をとつたり貝類をとつて暮しております朝鮮人が、その船を所有することができないで、仕事をすることができないというようなことに陥りまして、まことに困つているという実情があるのでございます。これは船舶法その他の関係におきましてどういうお取扱いになつておりましようか。続けて船を所有し、操作し、仕事をすることはさしつかえないことになつておるのではないかと思いますが、お尋ねいたします。
  127. 岡田良一

    ○岡田説明員 船を所有することは、今度は韓国人として船を所有するわけでありまして、引続き所有することはさしつかえないものと考えられます。ただ日本の国籍を持つた船は所有できないというわけでありまして、韓国籍であるとか、その他自己の好むところによりまして、しかるべき国籍に登録して所有できるわけであります。  それから船舶法の三条の方の関係でございますが、一応法律的に申しますと、沿岸輸送の特許または不開港場入港の特許が必要である。特許を受けなければ、沿岸輸送なり不開港場に入港できないということになりますが、それも申請がありますれば、こちら側としては従来からの関係等から考えまして、あまり不利にならないような取扱いをいたしたいと思つておりますが、ただいまのところはそういう件に関しては特に申請がないようですから、あまり問題がないように思つております。なおよく調査の上その点を確かめたいと思います。
  128. 細迫兼光

    細迫委員 輸送というような大きなものでなく、二十トン以下の小さな船につきましては、あまりやかましい手続をいらないような取扱いになつているのではなかろうか、つまり地方の公共団体にまかせておるというようなことで、得やすい方法で所有し、操業ができるようなことになつていないかと想像せられるのでありますが、その辺いかがですか。
  129. 岡田良一

    ○岡田説明員 ただいまのところ二十トン以上の船につきましては、日本の国籍証書を持つているわけでありまして、二十トン未満の船は地方の府県でやつております船籍証――昔船鑑札と申しておりましたが、最近名前がかわりまして、船籍証と申しておりますが、そういうものでやつているわけでございます。現在のところは法律的には船舶法三条の規定は、主務大臣の特許を受けるということになつておりますので、それを地方自治団体に委任することは法律上困難かと思います。地方の海運局なり、支局なり、運輸省関係の出先機関において事実上処理を簡単にさせるという方法は考えられます。
  130. 細迫兼光

    細迫委員 これにつきましては、独立前と後と、法律としましては改正せられたことがないというような意味におきまして、別にかわつていないと思いますが、朝鮮人の国籍の方がかわつたものだから当然に影響を持つて来るというような関係になつて、やはり朝鮮人の国籍問題と重要な関係を持つのであります。外務政務次官にお伺いいたしたいのでありますが、韓国との交渉などにおきまして、従来からおりました、つまり降伏以前からおりました朝鮮人に対する国籍等の取扱いについては、どういうふうな構想をもつてお臨みになつていらつしやるでしようか、漏らすことができればひとつ承りたい。
  131. 小滝彬

    ○小滝政府委員 韓国人の国籍は今非常に不明確な状態にあります。この問題は日韓交渉でも、在日朝鮮人処遇問題、国籍問題として取上げられましたが、何ら決定的な話には到達いたしておりません。日本側が独立後外人登録をいたしました際に、朝鮮または韓国いずれと書いてもいいが、とにかく今度日本人でなくなつた連中の登録を求めましたところ、登録した者が五十五万――そのほかに密入国者もあると思いますが、登録に出た者が五十五万くらいあります。同時に韓国代表部で、在日朝鮮人の保護という意味で、代表部として登録を求めましたのに対しては十万くらいということになつております。それでは大韓民国としては、その十万人は全部韓国人として認めて、そのとりはからいをするかというと、必ずしもそうなつてはいないのでありまして、朝鮮人送還の問題が起りましたときにも、向うへ帰そうとすると向うは受取らないというような問題がありました。そういうぐあいでありますので、はつきりしたステータスを持つておりません。日本人でない者として取扱つてはおりますけれども、韓国の国籍というものについてはまだ決定しておらないのであります。これも今後日韓交渉が再開せられることになれば、ぜひ解決しなければならぬ問題だというように考えるわけであります。
  132. 細迫兼光

    細迫委員 主として納税の面におきましては、何らの差別なく日本国民同様にその義務を尽しておる朝鮮人諸君でありますから、権利の面におきましてもこれとつり合つた考えのもとに、形としてはおかしいかもしれませんが、便宜な取扱いを各方面においてお願いいたしたいと思うのであります。またそれは国際信義を高めるゆえんだと思います。すなわち生活保護法適用の問題あるいは印鑑証明などもとれないで困つておるそうでありますが、そういう問題は他の問題でありましようし、MSA審議の重大な時間でもありますので、私の質問はこれで終ることにいたします。
  133. 上塚司

    上塚委員長 今外務大臣を呼んでおりますから、しばらくお待ち願います。――その間上林君の質疑を許すことにいたします。
  134. 上林與市郎

    ○上林委員 昨日MSA協定と直接の関係のある農産物の輸入につきまして、前提となる大体の数字を事務当局からお伺いいたしましたから、その点は省いて御質問申し上げます。この前の予算委員会で農林大臣にいろいろ私どもの考え方を申し上げてただしたのでありますが、今輸入計画を立てるにあたりまして、国内の生産の問題と食糧管理方式の問題を離れては、これを議論することは不可能であります。と申しますのは国内の生産、それから管理方式の問題を全然顧みないで、アメリカの余つた小麦、大麦をこちらにくれるから、いくらでももらおう、こういう外務大臣答弁のような形で入れることは、これは日本の農業を破壊します。日本の食糧事情を困乱に陥れます。こういうことを考えますので、これは事務当局からではなくて、根本の方針として、まだ自由販売をやる意思があるのかどうか、これを聞いておきたい。
  135. 平野三郎

    ○平野政府委員 今回MSAによりましてアメリカ農産物を入れるということは、アメリカに余つておるから何でもいいから入れるのだ、こういうことではまつたくないのでございまして、政府としては一貫した食糧政策を立てておるわけでございます。こまかい数字につきましては、この前の委員会で申し上げましたように、もう一定の計画があるわけでございまして、その中の分としてMSAで入れるということが外貨の節約その他の関係において、日本側にとつて非常に有利である、こういうことでこの協定締結いたしたのでありまして、食糧政策の一環としてやつておることでございますから、御了承願いたいと存じます。  なおまたお話の通りの外国からの輸入という問題につきましては、国内における食糧管理政策と関連する、もちろん不可分のものでございます。従つて食糧政策としては同様計画をもつて今立てておるわけでございます。ただこの管理方式を実情に即するように改訂して行きたいという考えは持つておるわけでございまして、ただいま内閣に食糧対策協議会というものを設けて、早急に結論を出すべく検討を続けておりまして、来米穀年度から何らかの改正をいたしたい、かように考えておるわけでございます。従つてお尋ねの自由販売の問題につきましても、その審議会を通じまして今研究をいたしておる段階でございます。
  136. 上林與市郎

    ○上林委員 さきの連合審査会でも、わが党の議員からいろいろこれに関連した質問がございましたので、私は今あえて詳しい問題は言わないで、質問しているのですが、自由販売をやるのですかやらないのですか。前の予算委員会で自由販売をやる根本の方針であるということを農林大臣はちやんと言つておる。だから現在でも自由販売をやる御意思であるかどうかということを聞いているわけです。
  137. 平野三郎

    ○平野政府委員 自由販売というごく抽象的な言葉だけでははつきりいたさないので、どの程度のものが自由販売であるか、これはいろいろ方法があろうと存ずるわけでございます。麦につきましては、御承知の通り現在は政府が価格の保証政策をやつておりますけれども、農民は自由な価格で売ることができるわけでございまして、従つて麦は自由販売になつておるわけでございます。ただ米だけが完全統制をやつておるのでございます。従つて米につきましても麦と同様の方法をとるべきではないか、こういう意見がございますので、これらの点を今検討いたしておる次第でございます。
  138. 上林與市郎

    ○上林委員 もう一ぺん前提の議論事務当局からお伺いします。仮定の議論になるようですが、根本方針としては自由販売をやるということをいつておりますから、これは決して仮定にならぬと思う。そこできのうお尋ねしてはつきりいたしたのは、二十九年度輸入計画は百九十六万三千トン、大麦で百三万三千トンですが、自由販売をした場合、この輸入計画はくずれませんか。事務当局から前提になる議論として一応聞いておきます。
  139. 前谷重夫

    ○前谷政府委員 お答え申し上げます。麦の現在のやり方は、一応政府が米のように個々の農家に対して割当て、政府の一手収買という形はとつておらないわけでございます。従いまして麦は国民の主要食糧でもありますし、同時に農家としては米に次ぐ重要な農作物でございますので、これに対しましては全般的に輸入管理をいたしますとともに、政府がその輸入いたしたもの、及び国内で一定価格で買上げたものにつきまして、その市場価格及び一般消費の状況に応じてこれを売却いたしておりまして、いわゆる間接的な方法によりまして、需給及び価格の調整をいたしておるわけでございます。従いまして国内の需給の状況、価格の状況を考えまして輸入計画を立てるわけであります。この輸入いたしたものはすべて食糧特別会計において買い上げて、需要の状況に応じまして放出いたしておるということになりますので、将来といえどもこの輸入を計画して参る、そうしてまたこれを確保して参る、こういうことにつきましては考え方に違いはないわけであります。
  140. 上林與市郎

    ○上林委員 それでは政務次官の平野君にもう一ぺん考え方をお伺いします。MSA協定による農産物の輸入、国際小麦協定による小麦の輸入、これらを見ましても、傾向としては国際価格が下つておるということは事実であります。これは一昨日来から政府承認しておるところです。またアメリカ経済学者も指摘しております通り、農業恐慌の声さえすでにアメリカ自国で起つております。そういうことを考えてみますと、余剰といわれるほどですから、近い将来に農産物アメリカの価格が上昇することはとうてい考えられない。そうしますと安いのがこつちへ入つて来ますが、これを計画しないで入れるということが、国内の農業を圧迫することは農業政策のABC論だと思う。その見解に私はかわりはないと思う。すでに麦は統制を撤廃されておりますが、米を自由販売にするかしないかという問題、これは全国民的な食糧確保の面から見ましても、また食糧政策について見ましても、大きな問題であると思います。今後増産計画を立てる場合に、農業の自給度を高めて行く、これはちやんと自由党の政策の中には書いてあるが、国内の自給度を高めるということは、予算は足りないけれども、とにかく増産というその名前だけはうたつておる。それと根本的に矛盾しないかということを実は聞きたいのですが、米の自由販売を今言つておる通りやる方針であるのかどうかを聞いている。これは事務当局でなしに政府から答弁してもらいたい。
  141. 平野三郎

    ○平野政府委員 お話のようでございますと、確かに矛盾いたしますけれども、よく御説明を申し上げますが、今回のMSA協定による農産物の買付は、決して日本の農業を圧迫するということにはなりません。これはおそらく自由党内閣としても、いかなる内閣ができましても、日本の農業というものに関する限りは、どこまでも農産物価格の保証政策というものはやらなければならないと思つております。お話の通り穀物が世界的に過剰でございます。従つて下落の傾向にあることは事実でございます。こういう外国の安い農産物が、どんどん国内に入つて来るということになりますと、必ず国内の農産物価の値下りを来し、農業恐慌が起る、こういうことになるわけでありますから、政府としては、農産物価格にてこを入れて行くということが絶対に必要であるという考えを持つております。従つて麦につきましては自由にしておりますけれど、しかしながら価格の保証をいたして、農民が希望する場合におきましては、無制限政府がこれを買い入れるということをやつておるわけであります。従つてその制度の存在する限りは、たとい外国の余剰農産物日本に入つて参りましても、日本の農民に影響を与えるということはないわけでございます。ことに今回の輸入計画というものは、日本が現在必要といたしておるものを買うわけでございます。ことに本年は幾らか多くなつておりますのは、二十八年産米の異常の不作の結果、輸入量を増加しておるのでありまして、これは必要なものを入れておるわけでありますから、その面から農産物価に悪影響を与えるということも、これまた絶対にないわけでございます。また米につきましても同様の精神をもつて政府は臨んでおりますから、将来かりに米の統制をはずすということをいたしましても、少くも麦の場合と同様に、米の価格について、政府がどこまでも保証するということは絶対にかわらないわけでございますから、この点は御安心をいただきたいと思います。
  142. 上林與市郎

    ○上林委員 本日の質問は、予算委員会、農林委員会の質問でございませんので、価格政策その他の問題はきようは伏せてあえて申し上げないのでございますが、自由販売の方針でやるのか。麦の統制を撤廃したことは成功しております。そこで根本の方針としては自由販売の方針で行きたいということを前の予算委員会でちやんと答弁をしておる。だから今もその方針をくずさずにやつておるのですかということを聞いておるのです。価格政策その他の問題はいろいろ議論はありますけれども、これは予算委員会や農林委員会じやないから私は申し上げないのですが、これだけはどうしてもお答え願わないと、自由党の農業政策の根本が明らかにされないわけです。この前は、現在はまだ自由販売はできないが、根本の方針としては自由販売をやる方針なのだ、こう言つておる。
  143. 平野三郎

    ○平野政府委員 実は昨年の十二月十五日衆議院の本会議において全会一致をもつて食生活改善に関する決議が成立いたしております。この中には明らかに配給量の切下げをしてもかまわない、外貨の節約をする。これは社会党を含めて全会一致で決定をしておるわけでありまして、国会からそういう御意思が明らかにされておるのでございます。しかしながら政府といたしましては、今米穀年度に関する限りは、現在の配給率を維持して行きたい、こういうことですべての需給計画を立てておるわけでございます。しかしながら国会の御要望もありますので、来米穀年度からは何らか改正いたしたい。こういうことで今その具体的方策について研究をいたしておるわけでございます。
  144. 上林與市郎

    ○上林委員 それ以上自由販売の問題は固執いたしませんが、もう一つお伺いします。それはこの前、委員会で私がお伺いした場合に、資料も出していただきませんでしたし、また答弁もその席上ではなかつたわけです。私もあえてその席上でほしいと言わなかつたのですが、きようは木村保安庁長官がおりませんので、欠席裁判はしませんけれども、保安隊の隊員が非常に士気旺盛であるということをしきりに言われておりますが、霞を食つて士気旺盛であるということは全然考えられないので、そこで食糧需給計画を立てます場合に、保安隊の食糧も全部これに含んでおるのか、これを承りたい。
  145. 前谷重夫

    ○前谷政府委員 麦については御承知のように現在政府は配給制度をとつておりませんから、これは一般の場合と同様に自由に入手しておるのであります。米につきましては、一般の場合と同様に一つの通帳制度によつて配給をしております。ただ一般基準に従いましてそれぞれやつておるわけでございますが、保安隊につきましては、従来労務加配と同様の加配制度をとつております。この加配制度については、この計画によつてつて参るというふうに考えておるわけでございまして、ある程度の増加はあり得るものということで計画を進めておるわけでございます。
  146. 上林與市郎

    ○上林委員 もう一つ、最近相当大規模な演習をしきりとやつております。私も富士山麓の演習に参加する機会を得ましたが、ああいう演習の場合の食糧調達はどういうふうにしてやつておいでになりますか。
  147. 前谷重夫

    ○前谷政府委員 保安隊につきましては、合宿いたしておりますものにつきましては、一般基準量とそれに一定の基準に従いまして――御承知のように一般の工場労働者に対して労務加配をいたしておりますが、その一定の基準に従いました加配をいたしておるわけでございます。それ以外には別にわれわれといたしまして臨時の配給をするということはいたしておりません。その範囲内におきまして、保安庁当局におきまして、それぞれやつておられるというふうにわれわれとしては考えております。
  148. 上林與市郎

    ○上林委員 私の質問が一目してわかるような資料を出していただけませんか。
  149. 前谷重夫

    ○前谷政府委員 ただいまのお話、保安隊であと成年男子でありますから、これは基準量はきまつておりますが、加配量はこういうふうになつておるということはお話申し上げたと思います。
  150. 上林與市郎

    ○上林委員 資料は出していただけますか。
  151. 前谷重夫

    ○前谷政府委員 資料はお出しいたしますが、具体的にはどういう点の資料でございますか。
  152. 上林與市郎

    ○上林委員 ちよつと疑問に思うことは、交通も非常に整備されておりますのであれですが、富士山麓の演習に参加する部隊、それから参加者、これはほとんど全国から集まつておるそういう場合、工場の労働者に対する労務加配と全然違つた現実の形が出ておると思うのです。そういうようなことがわかるようになればいいのです。それ以上申し上げますと、ここの問題でなくなりますからあえて申し上げませんが、そういう実態がわかるような資料であれば、さしつかえないのです。
  153. 前谷重夫

    ○前谷政府委員 承知いたました。
  154. 須磨彌吉郎

    ○須磨委員 ちよつと関連して。食糧庁長官にちよつとお伺いしたいのですが、今度のMSA 余剰農産物協定を実行して入つて参ります小麦五十万トン、大麦十万トン、こういうものは厚生委員会であるいは問題になつておるのかわかりませんが、これを学校児童の食糧とか、そういう厚生事業の方に振り向けるという計画は立たないのでしようか、お伺いいたします。
  155. 前谷重夫

    ○前谷政府委員 この配給につきましては、先ほど申し上げましたように食糧庁といたしましては、一定の需給計画の内におきまして、これを輸入するという考え方をとつておるわけでございます。従いまして従来よりも別個の形におきましての配給ということは考えておらないわけでございます。御承知のように学校給食に対しましては、現在文部省と協議いたしまして、昨年末でございますが、大体四百万人に対しましての学童給食をやつておるわけでございます。この点につきましては、二十九年度におきましても、それを拡大して参るという計画を考えておるわけでございます。その需要というものは、もちろん全体の需要量の中に含めて考えておるわけでございます。
  156. 上塚司

    上塚委員長 外務大臣見えましたから河野密君。
  157. 河野密

    河野(密)委員 午前中に外務大臣がお見えになりませんでしたので、条約局長お尋ねをいたしまして、種々な点についての疑問を解こうとしたのでありますが、必ずしも明確なるお答えがいただけなかつたように思うのであります。しかし私は重複を避けまして、新しい二、三の問題について、外務大臣お尋ねをしたいと思います。  けさほど条約局長お尋ねをした第一の点は、本協定がいかなる性質のものであるかということであつたのでありますが、本協定軍事援助協定であるという明確なる御答弁をいただきました。そこでこの協定によつてアメリカ側が負うべき義務、それから日本側が負うべき義務は、何と何とであるということを尋ねましたのに対しまして、アメリカ側の負うべき義務というものは、非常にたくさんあるけれども、日本側の負うべき義務はほとんどないのだ、きわめて軽微なものにすぎない、この義務を比較するならば問題にならないものだ、こういうような御答弁があつたのであります。私はこれははなはだ了解に苦しむのであります。そこで重ねて岡崎外務大臣お尋ねするのでありますけれども、この協定全体によつてアメリカ側が負うべき、最も大きな義務は何であるか、日本側が負うべき最も大きな義務は何であるか、この点をひとつ明確にしていただきたい。
  158. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 アメリカ側の負うべき一番大きな義務は、やはり日本に対する物の形による、たとえば兵器であるとか、装備であるとかこういうものを援助いたしまして、日本防衛力強化に資する、こういう点じやないかと考えております。日本側の負うべき義務につきましては、これに見合つてアメリカ側の不足するような物資を日本側で生産して供給するという点はありますが、これは実質的にはあまり大きなものじやないと思います。精神的な面で特に考えておりますのは、自由世界の防衛にも寄与しようという点でありまして、これが実質的にどの程度になりますか、日本の生産力等に関連がありますから、はつきりはわかりません。将来だんだん具体的になつて来たときに明らかになると思いますが、域外買付等を通じて自由諸国側に対する防衛力発展に資する、そして世界の安全に寄与する、こういう点になろうかと考えております。
  159. 河野密

    河野(密)委員 私のお尋ねをした趣旨は、アメリカ側にお話のように、防衛援助の本協定の第一条にありますように、装備、資材その他を日本に供与する義務を負う、これがアメリカ側の一番大きな義務であろうと思います。これに対して日本側の負うべき義務というのは、第八条に規定してあります、いわゆるのMSAの五百十一条に掲げられております六項目であります。これは単なる供与を受ける一つ条件だとは言つておりますけれども、その条件であるとしても、その条件日本では満たさなければならない義務があると私は思うのであります。これが日本側の負うべき最も大きな義務である。ここに問題があると思うのでありますが、どうして故意にその点を忌避されるのか、その点が私にはわからないのであります。
  160. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これはお考えによりますが安保条約前文には「期待」という字で書いてあります。日本政府としては、アメリカに期待せしむることを義務としてまではその当時やらなかつたのでありますけけれども、アメリカが期待しているということを前文に書いてこれを承諾いたしますことは、日本としてもこれをやろうということを決意しておるから書いたのであります。従いまして政府の根本方針は、前々から独立国として必要な自衛力漸増はやつて行こう、こういうことでありますから、義務としてここに掲げてはありますけれども、実質的にはここに掲げてなくてもやるつもりでおるのであります。従いましてわれわれはこれを大きな義務考えておりませんが、しかしこれは意見の相違でありますから、もしそうお考えになればそれもやむを得ない、こう思つております。
  161. 河野密

    河野(密)委員 それはどうも奥歯にもののはさまつたような御答弁だと思います。  その点はしばらく別として、先ほど伺つた点でなお明確にならなかつたのであります。それは安保条約に基いて負つておる軍事的義務を履行することの決意を再確認するという文句があります。このミリタリイ・オブリゲーシヨンズの中には、安保条約前文にあつてアメリカが期待しておるというその点も含まれてミリタリイ・オブリゲーシヨンズつまり軍事的義務となつておるとわれわれは思うのでありますが、入つておるのでしようか、入つておらないのでしようか。
  162. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 その点は入つておりません。安保条約において負つております義務は、安保条約の中に明らかに書いてある義務だけでありまして、この自衛力漸増と申しますか前文にありますようなことは、あの当時の安保条約の中では義務といたしておりません。
  163. 河野密

    河野(密)委員 それは日本側の解釈でありますか、それともアメリカ側もそれを肯定しておる、認めておる、つまり両者の話合いによる解釈でありますか。
  164. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 もちろんアメリカも認めておる解釈であります。
  165. 河野密

    河野(密)委員 そこでお尋ねしたいのでありますが、そうしますと第八条では義務として書いてなくても、第九条の第一項によつて当然アメリカ側はそれを期待する、日本側はその期待に応ずるオブリゲーシヨンズを持つ、こう解釈されると思うのですが、その点はどうでしよう。
  166. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 第九条とおつしやるのはよくわからないのでありますが、協定の第九条でありますれば、そういう意味は入つておりません、第八条の中に自国防衛力発展及び維持ということを書いてありますから、われわれはやはり自国防衛力発展及び維持ということをアメリカに約束いたしております。
  167. 河野密

    河野(密)委員 いずれにしてもそれは別でありますが、安全保障条約前文にあるモラル・オブリゲーシヨンズにしてもそういう義務を負うておる、こう解釈してさしつかえないわけですね。
  168. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 安全保障条約では法律上は義務でなかつたのでありますが、今度の協定ではこれを日本政府義務として受託しておる、こういうことであります。
  169. 河野密

    河野(密)委員 わかりました。その点きわめて明確になりました。  そこで私はこの協定安全保障条約との関係についてお尋ねするのであります。この安全保障条約についてはいろいろな議論もございますけれども、この安全保障条約の明文の中に、どこにもアメリカ日本を防衛しなければならないという義務規定はないわけであります。その点について予算委員会の他においてもたびたび論議があつて、私たちが聞いた範囲においても、全体の精神において日本を防衛する義務アメリカは負うものである、こういうように答弁をされておつたのであります。ところが今度は、安全保障条約前文においてアメリカ側が日本に対して期待をするというのを、日本としては、この防衛能力自国防衛力及び自由世界防衛力まで入れて、発展及び維持に寄与することを義務として約束をしたわけであります。日本側の方は一歩進んだのであります。これに対してアメリカ側の面における安全保障条約の問題は何らかの進展を示しておるのかいないのか、これを承りたい。
  170. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 まず安全保障条約の方から申しますと、これはもうしばしば申し上げておりますから蛇足の説明のようになるかもしれません。しかし安全保障条約の中でアメリカの駐留軍が日本におることを認めるというのは、日本の安全を保障するためにおるのでありまして、もし日本の安全を保障しないというならば、この安全保障条約そのもの全体が意味をなさなくなつてしまうのであります。この中に義務という字がないことは、予算委員会でも昨年論議をされたのでありますけれども、そのときに吉田総理も、アメリカ側としては日本の安全を保障する義務がこの条約から当然出て来るのだという説明をいたしたと記憶しております。その直後、一日、二日あとに、アメリカ側からも同様に、日本の安全を保障する責務を持つておるのだということを発表いたしたと記憶しております。今度の問題は要するにそれとは別であつてアメリカ日本の兵器、装備その他の援助をする、それに対して、日本自国防衛力及び自由諸国の防衛力発展維持に寄与する、こういうことを約束いたしたのでございます。従いまして、この協定からこれは生ずるのであつて安全保障条約との関係からは直接何も出て来ないのであります。従つてこの協定援助を受ける限りはわれわれはこういう約束をいたす、この約束をいたすのがいやならば、この援助を受けないだけである、こういうことになると考えております。
  171. 河野密

    河野(密)委員 私がなぜこの点を御質問するかと申しますと、安全保障条約からは出て来ないと言われますけれども、日本の方は、安全保障条約から一歩を進めて、とにかく防衛力増強ということを約束するわけなのであります。それに対して、アメリカの与えるものはその装備と資材であるわけであります。しかるに一方、アメリカ日本を防衛するところの義務はどうなるか、こういうことを考えてみましたときに、昨年の十月三十日の池田・ロバートソンの会談において発表された共同コミユニケを読んでみますと、両国出席者は「日本を侵略の危険から守り、かつ日本防衛についての米国側の負担を軽減するため、日本自衛力を強化する必要があることについての意見の一致を見た。」、日本防衛についての米国側の負担を軽減するということが前提になつておるわけであります。これから見ますと、われわれはむしろこれに反対でありますから、そういう点を言わなくてもしかたがないとしても、MSA協定に賛成なさる諸君は、日本防衛力増強するところの義務を一歩進んで負うについて、アメリカの方は日本を防衛するところの義務を一歩しりぞいている、この事実について、もつと私は積極的なる検討があつてしかるべきだと思うのです。アメリカは、現在問題になつているこのMSA協定によつて日本を防衛する負担をむしろ軽減する方向に向い、それに対して日本は新たに負う、その代償として与えられるものは装備である、こういう点について、もつと深い関心を寄せるべきものだと私は思うのでありますが、この点についての岡崎外務大臣の所見を承りたい。
  172. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 われわれは、本来からいいますれば、日米安全保障条約などを結ばずに、日本日本として自分の独立を守る手段を講ずるべきであると思うのであります。それが、急に独立をいたしまして、国力もまだ十分でないために、やむを得ず日米安全保障条約によつて、暫定的にアメリカをして日本の防衛に当らしめるという、やむを得ざる処置に出たのであります。従つて、時至らば、できるだけ早くアメリカの駐留軍の撤退を求めて、日本の力で国を守りたい、こう考えておるわけでありますから、大きな方針としては、当然アメリカの駐留軍の漸減ということを考えておるわけであります。また同じ自由主義諸国の中のよその国が、いずれもアメリカの負担によつて防衛力増強したり、その他の措置をやつておるのでありますが、アメリカの力といえども限りがあるのであつて、できるだけアメリカの負担を少くして行くということは、相互的な当然のことであろうと思つております。従つて自衛力増強するにおいては、アメリカの負担を軽減させるように努力いたすのは当然であろうし、またアメリカの駐留軍を撤退せしむることに努力するのも当然であろうと思つております。しかしこれは、いつも申します通りアメリカの駐留軍が日本におるから、それだけで必ず日本の安全は保てるのだというわけでもないのであります。これは一種のデイターレント・パワーになつておりまして、日本にいる駐留軍では、侵略を受けた際、これを防ぐに十分でないとしましても、その背後にあるアメリカの強大なる国力、武力を対象として、これに挑戦するにあらざれば、うかうか日本を侵略することができないというのが本旨でありまして、その意味においては、日米安全保障条約の存在する限り、アメリカの駐留軍が減りましても、アメリカ日本を守るという責めにおいてはかわりはないと考えております。
  173. 河野密

    河野(密)委員 私の言わんとするところは大体、この協定によつて日本義務において一歩進んでいるにかかわらず、アメリカの方は後退している。アメリカの一種のモラル・サポートがあるのだというふうな意味に解釈をすれば別でありますが、そういう意味で池田・ロバートソン会談の共同コミユニケによつても、むしろアメリカの負担というものは軽くなる、この協定によつて日本側の負担、義務というものは重くなるのだ、こういう趣旨がはつきりすれば、私の言わんとすることは尽きるのであります。先ほど条約局長はまつたく逆のことを言われておりますから、われわれは承服し得ないわけであります。  次にお尋ねしたいのは、この協定によりましてわれわれに与えられる問題は、この防衛力漸増計画日本の内政、経済等にいかなる結果を与えるかという問題でございます。こまかい点はお尋ねいたしませんが、この協定経済措置に関する協定がございますが、先ほど問題になつておりました小麦の問題にからんで、五千万ドルの金が日本に提供されることになるのでありますが、そのうちの一千万ドルは日本に贈与せられる。これは特別会計に繰入れますから、問題はしばらくないといたしまして、あとの四千万ドルは円で支払われ、これは日本銀行におそらく積み立てられることであろうと存じますが、その協定の中に、四千万ドルの金はアメリカ合衆国が自由にこれを使うことができる、こういうことが書いてございます。そうして自由に使うというところに特に注釈を加えて、第一条(2)における「自由に」とはいかんということがあつて、「四千万合衆国ドルに等しい価額をこえない円資金の使用の方法が自由であることを意味するものと解釈することが了解される。」こういうことで、「自由に」ということが特に注釈まで添えて書いてあるのでありますが、この「自由に」という点にこれほど丁寧に註釈を加えられた理由は一体どこにありますか。
  174. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これは早く申しますれば、普通ならばアメリカにドルを払つてこの小麦を受取るわけであります。そうしますと、アメリカとしてはもしかりにドルで日本に注文すれば日日本としてはおそらく喜んであらゆる注文に応ずるでありましよう。それと同様にただ円で支払うのでありますから、この円は日本の国内において保持されますけれども、アメリカ側の金なのでありまして、日本側の金ではないのであります。従いまして自由に使えるのだということを――とかく国内に円を置きますと、それがいろいろの意味で自由を束縛するような措置が講ぜられやすい点もありますので、これは自由に使うのだということを念のために言つておるのでありますが、議事録に記載してあります趣旨は、自由ではあるけれども、日本の商業輸出等については十分考慮を払つて、輸入を阻害することのないように、たとえばある兵器をある国に日本がつくつて売ろうとしておる。そのときにアメリカが自由なる日本円を持つているから同じ兵器を買つて安くその国に売りつけて、日本の商売のじやまをするようなことのないように、そこに念を入れる、こういう意味で議事録を残したのであります。
  175. 河野密

    河野(密)委員 今の岡崎外務大臣の御説明によりますと、「自由に」ということを議事録に残したのは、日本側のために残したように理解されるのでありますが、そういう御趣旨でございますか。
  176. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 ただいま申しましたのは両方の意味のつもりであつたのでありまして、アメリカ側の円でありますから、日本政府はそれに対してこれを買つてもらつちや困る、あれを買つてもらつちや困るというようなことを言わないように、自由に使わせる。しかしながら今度は日本の国内において買うのでありますから、日本の輸出等を阻害しないような考慮だけはアメリカとしても十分払つてもらう。つまりアメリカ側にも自由に使わせるけれども、しかし自由といつても輸出を阻害しないだけの考慮は払つてもらわなければならぬ、こういう点で両方の意味に申し上げたのであります。
  177. 河野密

    河野(密)委員 私はこの協定はきわめて重大な協定だと思うのであります。それは経済的な意味においてもむろん重大でございますが、日本の今日の底の浅い経済状態において、この円がどういうふうに出動するかということが、日本経済全体にとつても大きなものでございますが、それはしばらくここでは論じないといたしまして、もう一つ私は政治的にきわめて重大な意味があると思います。それはこの円というものが、使いようによつては私は日本の政界あるいは財界等に対するアメリカ一つの大きな支配力になり得る可能性が多分にあると思うのであります。しかもこの円を自由にアメリカの意思によつて使い得るということは、私は日本の内政上ゆゆしき問題ではないかと思うのであります。私は決して反米的な立場とかそういうことは毛頭考えておりません。考えておりませんが、これは岡崎外務大臣もよく御存じだと思いますけれども、たしか昭和二十三年だと思いますが、芦田内閣が崩壊するときの昭和電工事件、あの事件の際においても、あれはアメリカ側の示唆によつて、むしろアメリカ側の要求によつてあの事件が摘発されたということは、これは今日隠れもない事実であります。今日巷間伝えられるところによると、自由党政権の安定その他の問題に対してアメリカ側の力がないとは言えないのじやないか、あるいはアメリカ側の干渉があるやに巷間一般に伝えられておるのであります。そういうときに政治的にもしこの積み立てられた円が、そういうアメリカの意思によつて自由に使われるということになりますならば、私はこれが日本の内政干渉となりあるいは政界、財界に対する支配力にならないとは、これは何人にも保証することができないと思うのであります。協定を結ばれるときにおいて岡崎外務大臣その他の当事者は、こういう事実に対してどういう考慮を払われたか、それらの点を承りたいと思うのであります。
  178. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これはこの経済措置に関する協定の本文の一条にごらんの通りで、この資金はアメリカの域外買付のみに使用される。その域外買付の対象は、日本における自衛隊等に供給する物資と他の自由諸国に供給する物資の両方を含みますが、要するに域外買付以外には使わないのであります。しかしそれにしましても相当多額の金でありますし、一ぺんにあるところに集中して発注されたりしますと影響が相当ありますから、そこで日米通商条約当時にもアメリカの自由になる円がむやみに株や何かに集中されては困るという懸念もありましたが、同種類の懸念によりまして、この円は自由にアメリカで使える、つまりアメリカの金である、しかしその目的は域外買付のみに限られる、しかしそれでも日本政府と協議をして、それが一方に片寄らないように、妙なふうに輸出産業を圧迫したり、あるいは日本国内の需要についても片ちんばにならないような協議だけは十分して適当な運営をはかる、こういう意味でこの議事録をつくつているようなわけでありまして、できるだけそういう御懸念のないようにつまり産業に対する不当な影響のないように努力いたしますが、そのほかの使途に使われることは全然ないわけであります。
  179. 河野密

    河野(密)委員 私はこの点は表面的の問題よりもむしろいろいろな問題がからんで来ると思いますが、これはあまり触れることを避けたいと思います。  最後に、この協定全体でけさほど岡崎さんがお見えにならないときに私は尋ねたのでありますが、この協定に現われておりますいわゆるデイフエンシヴ・ストレングス――防衛力、デイフエンス・キヤパニテイズ――防衛能力というものと、それから憲法の九条にいうウオー・ポテンシヤルというものは結局において同じものである、同じものを指さすものである。言葉の魔術でいろいろ言いくるめられても、これは同じ趣旨のものである。ウオー・ポテンシヤルというものを禁止するといつておる以上は、デイフエンシヴ・ストレングスあるいはデイフエンス・キヤパシテイズというものも、当然それをいいということには相ならないと思うのであります。従つて私はこれはこの協定憲法に違反するという有力なる一つの点であると思うのであります。しかしその点これ以上議論はいたしませんが、私は最後に岡崎さんにお尋ねしたいのは、一体岡崎さんはこういう協定を結ばれるにあたつて日本憲法――この条項の中にも憲法範囲内でというようなことを書いておられますが、日本憲法というものについての実は岡崎さんの考え方、信念というようなものを私は伺う必要があると思うのです。むしろこういうものを積み重ねて憲法を改正すべきものだという考え方の上に立つてこれを結ばれたのであるか、それとも日本憲法というものはできる限りこれを厳格に解釈して行きたい、そういう考え方の上に立つてこういう協定を結ばれたのかという考え方が私は一番重要な点じやないか、キイ・ポイントではないか、こう思うのでありまして、その点を最後に承りたいと思います。
  180. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 この憲法がただいまの実情に適しないであろうという意見もわれわれは十分聞いております。また憲法を改正すべきであるという意見もよく承知しております。しかしながらただいまのところはまだ憲法は改正されておらないのでありますから、不便であろうとどうであろうと、現行憲法範囲内において政府としては協定なり条約なりを結ばなければならない、こういうかたい決意のもとに、すべて現行憲法に合うようにいたして協定をつくつたのであります。デイフエンス・キヤパシテイズデイフエンシヴ・ストレングス、あるいはウオー・ポテンシヤル、こういう言葉についてもいろいろ御意見はありましようけれども、私どもの見るところでは、デイフエンス・キヤパシテイズと申しますと、これはウオー・ポテンシヤルよりももつと広い意味と思つております。つまり日本の一般的経済力とかあるいは人力とか、こまかくいえば道路であるとか何であるとか、いろいろなものがあろうかと思うのでありまして、これがみな集まつてデイフエンシヴ・ストレングスを形成するものであつてそのデイフエンシヴ・ストレングスのバツクグラウンドにあるものであろうと思います。それからデイフエンシヴ・ストレングスというのはそれによつてできます広義の力でありまして、その中には憲法にいう戦力も含まれておりますし、戦力でない部分も当然あろうかと思つておりまして、われわれの考えておりますのは、現行憲法の中では戦力に至らない程度の、戦力を除いた程度のデイフエンシヴ・ストレングスということで考えております。要は不便であろうと何であろうと、とにかく現行憲法のある限りは、現行憲法の条章を一歩もはみ出さないようにして協定をつくるというのが、われわれの趣旨であります。
  181. 上塚司

    上塚委員長 須磨彌吉郎君。
  182. 須磨彌吉郎

    ○須磨委員 外務大臣に二、三お伺いいたしたいと思います。MSAの四つの協定につきましてはいろいろな質疑が本委員会において行われておりまして、大分論じ尽されたと思いますが、きようは最も根本的な考え方につきまして二、三お尋ねをいたしたいと思うのであります。  外交は常に二つの面があるわけでありまして、プラスの面とマイナスの面があることはもちろんでございますが、今回のMSAというものは一九四七年アメリカのトルーマン政府がギリシヤ及びトルコを助けることから始まつて、六十五箇国となり、わが国がこれに批准いたしますれば六十六箇国になるわけであります。そういたしますと自由主義と申しますか・民主主義国家群が共産主義国家群に対する体制が、私は大体MSA体制と名づけていいかと思うのでございます。それにわが日本が入ることになるわけでございますから、従いましてここにMSA体制として当然起つて参ります問題は、共産圏国家群とわれわれが対立する場面に出くわすということはもちろんだと思うのでございます。まず第一に私どもはさような考え方を持つておるのでございますが、外務大臣においてもさようなお考えでおられるのでありますか、第一点にそれを伺いたいと思うのであります。
  183. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 われわれはこの協定をつくらなくても、自由主義諸国との提携の強化ということは、外交政策一つの根本方針といたしております。従いましてこの協定で特に新たなる方向に向つたということではないのでありますが、これによつてそれがさらに一歩を進めたということは言えると考えております。そこで自由主義諸国と共産主義諸国との間には冷たい戦争がある、対立があるということは事実でありますけれども、このMSA目的は、これによりまして自由主義諸国の防衛力の強化をさらにはかつて、共産主義諸国からの無責任なる侵略とか挑戦とかいうことをなくしたい、これによつて世界の平和を確保したい、こういう意味でありますから、この意味において私どもはさらに自由主義諸国の結束強化ということをはかりたいと考えております。
  184. 須磨彌吉郎

    ○須磨委員 大体私どもの考え方と同じことであるわけでございますが、従いましてこの協定が成立いたすことによりまして、すでにいろいろな反響を呼んでおる様子でございます。たとえばソビエト方面ではもちろんでありますし、中共方面でももちろんでございますが、アメリカ日本MSAをやり、最近はパキスタンに軍事援助を与え、トルコへも経済援助を与えて、今や中共を包囲する陣営ができて来たというようなことを盛んに申しておる様子でございます。ところがさような宣伝はともかくといたしまして、三月の四日にダレス国務長官が、カラカスで開かれております第十回米州会議の総会の席上におきまして、共産主義は米州の――つまり米国の両大陸の意味だと思いますが、米州の理想に敵対するものであつて、今やわれわれはこの米州に共産主義の棲息する権利を認めないものであるという演説をいたしておるのでございます。これは非常に強い言葉で表わされておる様子でございますが、かよういたしましてだんだん共産主義陣営との対立というものは、非常に迫つて来ることになるわけでありますので、かような米国の出方というものが、わが国がこのMSA体制に入りましたことによつて、漸次わが国にも影響をいたして参ることは私は自然だと思うのでございます。つい三日前のダレス国務長官の演説の中にも、これからはアメリカの外交政策並びに戦略の変化によつて日本というものにも変化が及ぶであろうというような言及もあつたようでございますから、さようなことはもちろん私は当然のことだと思うのであります。従いましてこのMSA体制に入りますためには、今後さようなことから生じ、もしくは生ずることあるべき事態につきまして、アメリカ側ととくと事前の話合いを遂げるということが、外交上の基本的心構えであろうかと思うのでございますが、さようなことについてのいろいろなお話合い等がかつてあつたものでございましようか。なしといたしましてもこれからいたすような御用意があるものでございましようか、その点を承りたいのでございます。
  185. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 アメリカのいろいろな政策が――といいますか、戦術が変化することは、これはあり得ると思います。これが一見挑戦的であり戦争気構えであるということもよくいわれますけれども、アメリカ側としましては朝鮮問題等の経験にかんがみて、結局共産国家が理解するような言葉は、実力であるというようにだんだん思い込んでおりますので、自然力を充実するというふうに傾いては来ておりますけれども、根本は、力を充実するということによつて、共産主義国家にやはりこれは挑戦をしても歯が立たないというところまで持つて行つて戦争を思い切らせて平和に持つて行くという、大きな先の見通しをつけていることと私は考えております。アメリカ側とは常に機会あるごとに根本方針についても当地においてはいろいろ話をいたしており、また日本の大使もアメリカにおいて話をいたす機会がしばしばあるのでありますが、しかしこのMSA援助だけを取出して申しますれば、これはおつしやるように世界の非常に多くの国に与えておる援助でありまして、これを日本が受けたからといつて急に非常な変化があるというわけではなくて、要するに世界の非常に多数の国と同じ程度のことが日本にも行われるというふうに考えております。根本的なアメリカ方針なり、また日本の外交政策なりとこのMSA援助とが、すぐに密接不可分の影響があるというふうに考えてはおらないのであります。
  186. 須磨彌吉郎

    ○須磨委員 大体賛同のできる御見解だと思いますが、このMSA協定批准になりますことによりまして、いろいろとられる措置がこれからできて参ろうかと私は思うのであります。特に日本内におきまする共産主義活動に関しますあるいは取締りでありますとか、これに対する対策等についても非常な変化が来なければならぬような事態になろうかと思いますが、これはもちろん法務大臣とか、そういう係の人たちのすることでありましようが、私はきようお伺いをいたしたいことは、保安庁長官はおられませんので、保安庁長官にはまた別の機会にお伺いいたしたいと思いますが、一番大きな問題は、この防御に関連いたしますMSA協定ができますことによりまして、今後日本の防衛計画というものがどうしても問題になつて来ると思うのであります。今私は五箇年計画ができておるか、おらないかというような押し問答をする用意は一つもございませんけれども、アメリカ考え方をよく研究いたしてみますと、これは外務大臣も御承知でございましようが、最近二、三回にわたつてヘンスレー記者の報ずる報道によりますれば、米国におきましては、日本の防衛五箇年計画というものを非常にまじめに考えておつて、すでにそれに対しては五億ドルの予算も必要であろうという説があるということを、しつこく報道を続けて来ている様子でございます。これは私は存じません。あるいは外務大臣も内容はわからないとお答えになるかもしれませけれども、かようなことがあることは、アメリカ日本に対する関心を知る上において重大な資料だと私は思うのであります。またいま一つは、スタツセンのエージエントと申しますか、そういうふうな人が現在東京におるそうでありますが、この人などのごときは、五箇年計画をさらに十箇年計画に延ばすべきであるということを明らかに申している様子を私は聞いておるのであります。かようなことの計画を立てるか立てないかを私はお聞きするのではありません。かような興味をアメリカが持つことは当然だ、またアメリカはそういう用意をすることは当然だと思いますが、ただこれに対しまして、今までの日本政府のやり方というようなことを原則といたしましてこういうものに対処する、コレスポンデンスするような用意を持ちませんと、このMSA協定が効果を発揮しにくいのではなかろうかと懸念をいたす次第でありますが、今申し上げましたような材料のいかんにかかわらず、さような御決意があられるものかどうか、それを承りたいのでございます。
  187. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これはMSA関係もさることながら、アメリカ側としては、日米関係の全般から見ましても、そう長く日本国内に駐留軍を置くということは考えものであるという気持も持つておりますし、また独立国として、戦前には世界に雄飛した日本が、相当程度の防衛力を持つて自国の守りくらいはできないはずはなかろうという期待も強いのでありますから、いつアメリカの駐留軍がどういう形で漸次撤退できるかということを早く知りたいという気持は当然あると思います。それを知るには、日本の防衛計画がはつきりすれば、それではつきりするということになりますから、従つて防衛計画を早く知りたいということも当然のことと私は思うのであります。一方保安庁におきましては、やはり防衛の計画というものは必要であるということで、いろいろ研究しておりますが、なかなかきめかねているというのが実情だと思いますが、幸いにして三党の話合いというものがだんだん進んで来ておりまして、保安庁といたしましても、この三党の話合いが結論に到達すれば、これを十分尊重し、考処に入れて防衛計画を決定する、こういつておりますから、われわれもその日の早からんことを期待しているのであります。
  188. 須磨彌吉郎

    ○須磨委員 それではその問題はそれといたしまして、多少条文について伺いたいことがございます。第二条でございます。「日本国政府は相互援助の原則に従い、アメリカ合衆国自国資源において不足し、又は不足する虞がある結果必要とする原材料又は半加工品で日本国内で入手することができるものを、合意される期間、数量及び条件従つて、生産し、及びアメリカ合衆国政府に譲渡することを容易にすることに同意する。その譲渡に関する取極に当つては、日本国政府が決定する国内使用及び商業輸出の必要量について十分な考慮を払わなければならない。」という条文でございますが、これは私の研究によりますと、ルクセンブルグとの条約等にも同じ文句の条約がありますので、あるいはこれはこのMSA協定のモデル協定の中の一条かもしれませんが、ここにある、すなわち自国資源において不足し、日本にあるものというのは、どういうものを予想されているのでございましようか、伺いたいのでございます。
  189. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これはおつしやる通り、モデル協定一つでありまして、特にただいま具体的にそれじや何があるかということは、向う側も何も申しておりませんし、アメリカになくて日本にあるものというと、竹くらいのものじやないかと思つて、われわれにもあまり見当がついておりません。しかし将来話合いが行われまして、ほんとうに向うになくて、こつちにあるものがあるといたしますれば、これは有償になることは当然でありますが、供給はいたしたいと考えております。
  190. 須磨彌吉郎

    ○須磨委員 まさに私の懸念おくあたわざるお答えを得たのでございますが、これはアメリカ側といたしましては、最も重要性をもつて置いたモデル中の一文だと思うのであります。それをわが当局においてお気づきにならずにおられるということについては、無限の憂慮を覚えるものであります。と申しますことは、ここにあります、日本にあつてアメリカにないもの――アメリカは世界で知られる富裕国でございます。わが日本は世界で知られる貧乏国かもしれませんが、世の中は非常にかわつているわけであります。かわつて来ておりますのは、私どもが今回の予算にも出しました原子炉の問題についても御承知の通りでございますが、いわゆる原子力であります。このことにつきましては、さようなお答えもございましたから、一応私の研究を述べまして重大な御関心を喚起いたしたいと思うものでございます。この中でアメリカは当然考えられるものはタングステンでございます。タングステンがアメリカにはございませんで、モリブデンをもつてアメリカはこれを補充いたしておりますことは、天下公知の事実でございますが、いかに大米国といえどもなくて困つているのは、今の原子力に関連いたしますウラニウム、ジルコニウムその他の放射性の元素でございますが、これを出しますものは、すなわちレヤー・メタルとして知られます稀少物資でありますが、これはアメリカはあれだけ広くてもどうしてもない。非常に探しまして、最近に至りましてはカリフオルニアの南の湾に出たのでありますが、これは非常に悪質なもののようで――と申しますよりも、ピユーリテイと申しますか、その純度が非常に低いのでございます。しかるに私が聞いておりますところによりますと、きようは内容を申し上げる自由を持ちませんが、私はかつて広東に総領事をいたしておりますときから聞いておりました。今から十七年前のことでございますが、わが国、福建省、海南島、これに連なるこの一帯の地帯というものは、かような放射性のものに富んでいるということが、つとに実は目をつけられておつたのでございます。敗戦の結果日本に何があるかといえば、このレヤー・メタルを見つけることであるということを私は常に心に入れておつたのでございますが、驚くなかれ、日本には世界のどこにもない良質のウラニウムがある様子でございます。かような意味をもつてこの条文を読みますときに、実に戦慄を覚えざるを得ない感がいたすのでございます。元来このようなモデル協定の中に、かようなモデル・アーテイクルが設けられたのは、まことにアメリカが先を見て、利益を持つた一つの条文でございます。それにわが日本が気づかないでおるということにつきましては、ひとりアメリカにおける関係のみならず、日本の外交をこれから遂行なさいます御担当の皆様御当局に対しましては、私はいささか失望せざるを得ないものでございます。われわれは国小さくなつたといえども、これほど貧乏になりましても、かような稀少物資において富裕国になるかもしれない、これがわれわれの外交の抱負でなければならぬと思うものでございます。これにつきまして申し上げたいことは、元来このウラニウムから出ます元素につきましては、アメリカでは二三五と名前をつけておりますが、これは一〇〇%のものでありまして、ピユーリテイの実にいいものであります。これは原子爆弾、水素爆弾の原料となりまして、アメリカでは格納庫に入れて、特に秘密に保存しておるものであります。その次に、質度の悪いもので九九・五%というものがあるのでありますが、これは二三七という名前がつけられておるのでございますが、さような爆発性のある実にたつといものが、わが日本にある様子であります。さらにこの二三七と称せられる産業用、技術用その他経済用に使われ得るところの、平和的産業に役立つものも豊富にあるらしいのでございます。そうしますと、ここにわれわれの実に驚くべきことがございます。かような規定のもとに――実にこれは用意された条文でありますが、向うで思うような合意されたる期間、合意されたる数量、合意されたる条件でもらいたいと書いてあるのであります。これほど綿密な用意のあることを知りますときにおいて、私はここに注意を喚起いたしたいのは、こういうものを執行される場合においては、実はこれはほんとうを言うとこういう条文をつけるならば、これに付属書をつける、あるいは何か議定書を必要とすると思われるくらい重要なものでございます。そして今申しましたピユーリテイの高いものはやらない、ということは、昨日の本委員会においても問題になつたのでございますが、この原子爆弾によつて三回が三回とも、わが日本だけが、人類の中で一番最初に犠牲になつたのでございますから、さような爆弾用に使いますものは一切輸出しない、かような意思をはつきり示すことも一つでございます。さらにまた条件といたしましては、平和産業用に使われますような原子力を、つまり二三七に当りますものを反対給付として日本が受けるにあらずんば、かようなものはお渡しいたしませんということを言うのも、私はりつぱな条件となろうと思うのでございます。私のつたない研究でございますが、この二三七のごとき平和産業に用いられるものが、もし二百トンわが国に生産ができ、もしくは二百トンわが国に輸入ができることになりますならば、日本の電気は水力、火力を問わず、全部いらなくなるというような驚くべき動力であるのであります。かようなことを考えあわせまして――私は本条を置いたことに文句を言うものではございません。これを遂行することにあたりまして、私のような門外漢が言うことは非常に私はおこがましく思うものでございますが、さらにこのことの専門家等も集中せられましてこれを御研究に相なり、これらに対する条件をとくとお考え置きを願いたいと思うのでございます。特に申し上げたいのでございますが、わが国にかような鉱石がありといたしました場合において、日本の鉱業法という法律におきましては、これが明記されておらないのであります。ウラニウムだとかチタニウムとか、そういうような元素の名前はないのであります。従いまして鉱業法のいわゆる鉱種として指定はできないために、今これをやるといたしますと、採石法でございますか、そういうふうなものによりまして、暫定的な措置として、土砂扱いにこれを指定するしかいたし方ない国でございますが、かような措置政府におきましては内政的には急いでとる必要があるわけであります。私の考え方といたしまして、このMSA協定の中で最も重要な問題をお気づきにならなかつたことを重ねて遺憾に思う次第でございます。同時にこれを今後わが国が、内にも外にも十分な効力を発揮されるような御解釈と御適用のために、万全をお尽し願いたいと思うのでございます。これを希望として申し上げるのみならず、私のただいままで申し上げましたことに対しまする御所見でもございましたら、関係のお方々から承りたいと思うものでございます。
  191. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 御忠告はつつしんで拝聴いたしました。お話のような注意を十分にいたすつもりでおります。またもしそういうような稀少物資といいますか、これが日本にあることが発見されますれば、これはいずれの意味においてもないよりはいいと思うのでありまして、それに対する手当等は十分考慮をいたしたいと考えております。ただ私の経験からで、これは一般をカバーしないかと思いますが、申しますと、占領直後から独立まぎわになるまで、主として占領直後から二、三年の間でありますが、日本の各地でウラニウムその他の稀少物資が出るという報告を外務省によこしたり、その当時のGHQによこしたりしたのがありまして、その都度GHQではそれつというので各地に人を派して調査をいたしたことがしばしばあります。主としてこれは西の方で、今おつしやられればそれに符合するのでありますが、中国から九州にかけてそういうものがあるというので、実際あつた例もあるそうであります。しかし実験の結果は結局、何といいますか、ものの役に立たぬ。とにかくあることにあつたけれども分量が非常に少くて問題にならぬとか、あるいは非常に雑物が多くてどうすることもできないとかいうので、結局すべて捨てられてしまつた。その件数は、おそらくいいかげんのもあつたのでありましようが、二十数件を越えて三十件くらいあつたのじやないかと思います。GHQとしてはずいぶん秘密に、こつけいなほど秘密にして、非常に大勢の人を動員して調べたこともあるように思つております。かなり徹底的に調査いたしました事実はあるようでありますから、はたしてそういうものが今後出るかどうか、これは専門家でなければわかりませんが、もしそういう可能性がありますならば、十分御注意の点を参照いたしまして善処いたしたいと考えます。
  192. 須磨彌吉郎

    ○須磨委員 ただいま外務大臣から御説明がございましたが、私は無責任にかような注意を喚起しているのでないということのためにも、一言つけ加えておきたいと思うのであります。今回のは、持つてまわつて来て、それがあつたからといつて喜んだというものではございません。私が本委員会のごとき重大なるMSA協定を論ずる際にあつて、人に信ありとして御質問申し上げるゆえんは実はさようなことではございません。すでにアメリカの原子力委員会において確証を持つて、これはピユーリテイ絶大なものであると証言をいたしておる事実を私は知つておるのでございます。しかもそれは少量ではないことも知つておるのでございます。さような確証に基いて申したのでございますから、どうぞひとつお笑いにならずに十分なる御覚悟をもつて御研究に邁進されんことを望んで私の質問を終るものでございます。
  193. 上塚司

    上塚委員長 次は福田昌子君。
  194. 福田昌子

    福田(昌)委員 顧問団のことにつきまして少しお尋ねいたしたいと思います。この顧問団とただいま保安隊において訓練いたしております米軍の軍人とはどういう関係になるのでございましようか。
  195. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 ちよつと御趣旨がよくわからないのですが、もう一ぺんはつきり……。
  196. 福田昌子

    福田(昌)委員 保安隊に訓練の指導をする将校がついておりますが、それと今度MSA協定によつて生れるカントリー・チームとの関係です。
  197. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これは性質は違いますけれども、MSA協定が成立いたしまして顧問団ができますれば、結局その顧問団が、武器の使用等は管轄するのでありますから、今の保安隊におります人々は、終局においては顧問団に吸収されます。しかしその過渡期におきましては、つまり保安隊の保有しております武器はアメリカ側から直接貸与を受けておるので、これをMSA協定によつて切りかえるか何かしない間は、やはりこの武器の保管という責任がある程度今の保安隊に派遣されておる人々にあろうかと思いまして、それらの過渡的のことがちよつと一月二月重なつたり何かするかもわかりませんが、結局はこれらの人々は顧問団に吸収されるということになつております。
  198. 福田昌子

    福田(昌)委員 今の保安隊にいるアメリカの軍人の一部がカントリー・チームの中に入つて来るということでございますか。
  199. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 要するに終局というか、この数箇月後の状況を見ますれば、保安隊におるアメリカの顧問というような人々は一人もいなくなりまして、一部本国に帰るか、あるいはほかの部隊に編成されるかわかりませんが、要するに残つたものは顧問団に吸収される。要するに顧問団一本になる、こういうことになります。
  200. 福田昌子

    福田(昌)委員 このカントリー・チームの所属でございますが、これはアメリカ本国におきましてはどこに所属する人たちになるのですか。
  201. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 将来アイゼンハウアーのメツセージ等があつて何か変更があれば別でありますが、ただいまのところは、FOA、対外活動本部ですか、それに所属するはずであります。
  202. 福田昌子

    福田(昌)委員 結局MSA協定によつて生じたこの顧問団の職責というものは、安全保障長官の代行をすることになるわけでございましようか。
  203. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 FOAの長官の代行をするというような意味じやないと思います。顧問団は一定の任務を与えられまして、その任務の範囲内で活動することになります。
  204. 福田昌子

    福田(昌)委員 このカントリー・チームの特権でございますが、三段階にわけられて御説明がありましたが、その外交官としての特権、その上に軍人としての特権がプラスすると見てよろしいのでございましようか。
  205. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 軍人としては特に特権は持つておりません。駐留軍の一員でありますれば、行政協定に基いて特権を与えられておりますが、それ以外の者に対しては特権は与えられておりませんから、従つて外交官の待遇なり何なりの待遇なりというのがその人たちに与えられる特権全部ということになります。
  206. 福田昌子

    福田(昌)委員 駐留軍とはもちろん形の上では無関係だと考えられますので、その駐留軍としての軍人に与えられている特権というものは、このカントリー・チームには全然ない、外交官としての特権だけだというわけでございますか。
  207. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 その通りであります。
  208. 福田昌子

    福田(昌)委員 今度のMSAの交渉を八箇月の長きにわたつていろいろと審議折衝なさつた。その折衝の最も難渋をきわめた一つの問題に、この顧問団の問題があつたということを伺つておりますが、なぜ顧問団の問題でいろいろ折衝が難渋を来すようなことになつたのですか。
  209. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これは、技術的に見るとどうも必要なようにも言われるのでありますが、人数が、初め向うが考えましたのが非常に多かつたものですから、これを減らすことにいろいろ時間がかかつた。次には、その人数に見合う費用がまた非常に多かつたので、これをできるだけ節約するということにまた時間がかかつた。こういう意味であります。
  210. 福田昌子

    福田(昌)委員 欧州のMSA受諾国におけるカントリー・チームの数とか、またカントリー・チームの職権、そうしてまた、カントリー・チームの相互の国における交流とかあるいは一つの統合した話合いの機関、そういうものがあるかどうか、その点を承りたいと思います。
  211. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 欧州におきましても顧問団の人数等は発表されていないようであります。正確なことはわかりませんが、実際上を見ますと、援助の額によることはもちろんでありますが、大体の比率から見ますと、日本の方が特に多いということはないようであります。
  212. 福田昌子

    福田(昌)委員 伺うところによりますと、欧州においては、パリにカントリー・チームのスタッフがあるとかいうことを伺いますが、この点について、欧州の状況を御説明いただきたい。
  213. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これは政府委員から御説明いたします。
  214. 土屋隼

    ○土屋政府委員 詳しくはただいまちよつと申し上げる資料を持つておりませんが、概括的に申しますと、パリにおりましたカントリー・チームの、いわば欧州関係に対する代表機関というものが一ころあつた時代がございます。その後NATOの関係が発達いたしまして、NATOの方の関係の代表団が別途できておりますので、その方が主になりまして、カントリー・チームを総括しての、本部長官を代行するような機関は現在においては存在いたしていないわけであります。
  215. 福田昌子

    福田(昌)委員 たとえばアジアにおきましては、台湾の蒋介石政権、あるいはまた李承晩政権、あるいはまたインドシナ・そういう国々におけるカントリー・チームと日本のカントリー・チームというものとは交流があつたり折衝があつたりすることがあるのでございましようか。
  216. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これは、人間の交代とか転任とかいうことで、あり得ることはあるかもしれませんが、カントリー・チームとして折衝のあることはないと思つております。
  217. 福田昌子

    福田(昌)委員 聞くところによりますと、この極東におけるMSAの受諾国の中のカントリー・チームというものの関連機関として、マニラに本部ができるというようなことを伺つておりますが、そういうことをお聞き及びでございましようか。
  218. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 それは別段私も聞いておりません。
  219. 福田昌子

    福田(昌)委員 私どもは、MSAの調印に至るまでの長い間の折衝の難関の一つにこのカントリー・チームの問題があつたということは、大臣の御答弁だけでは解せない、もつと複雑なものがその内部に伏在しているように聞いております。私どもは、このMSA協定によりまして、日本の国内政策というものは、軍事援助の肩がわりとして経済的にいろいろの制約を受けて参るということを非常に心配をいたしておるものでございますが、ことに、その制約を受けます動きにおいて一番私たちが心配いたしますのはまたカントリー・チームであるわけでございます。従つて、カントリー・チームの全貌というものをできるだけ知りたいと存じますので、欧洲におけるカントリー・チームの数とか、職務の内容とか、それからまた、欧洲におけるこれまでのいろいろな動きというようなものについての資料をいただけたらいただきたいと思います。
  220. 土屋隼

    ○土屋政府委員 資料の点につきましては、私どもも、でき得べくんば御審議を願う必要上提出いたしたいという考えをもちまして、MSAの交渉を始める初期から、各国の在外事務所に電報を打ちまして資料の収集に努めて来たのでありますが、遺憾ながら現在まで御提出申し上げるような資料として、特にわれわれが取上げられるものは、一つもなかつたというのが現状でございます。それからただいま大臣から御説明がございましたカントリー・チームの交渉について、時間がかかる難点があつたのではないか、大臣の御説明では足りないところがあるのではないかというお話がございましたが、交渉に当りました私どもから実情を申し上げますと、住宅の問題、行政費の問題、人数の問題、これは根本的に大して大きなものではないようなものの、われわれ交渉員としてはなるべく日本に有利なように数も少く、経費も要しないようにということで最後までねばりました関係上、不必要に時間をとつたというようなことになるかもしれないと思います。
  221. 福田昌子

    福田(昌)委員 私どもはただ単なるそれだけの折衝で、時間が長くかかつたということを了承するわけに行かない。何か御説明いただけない点を心配するのでございますが、私はこまかな点でお伺いさせていただきます。このカントリー・チームの家族はどういう待遇を受け、そしてまたこの日本における税金関係の点におきましては、どういう立場に置かれるのでございましようか。
  222. 下田武三

    下田政府委員 家族につきましては、東京におります外交官のそれぞれの階級に応じまして、家族も付随的に特権を認められております。それから免税の点につきましては、これはやはり外交官並に、ある種の範囲で税金の免除が認められておるわけでございます。
  223. 福田昌子

    福田(昌)委員 この経済的措置に関する協定の一条の二項と、防衛援助協定の二条との関係はどういうことになるのでございますか。
  224. 土屋隼

    ○土屋政府委員 ただいま御質問の点は、経済的措置に関する一条によりまして日本が買いつけた小麦の円貨の積立てをいたしますから、この積み立てた円貨を、こちらにございます本協定の第二条の半加工品その他半製品につきまして、アメリカ側に日本側が合意によつて渡すことがあるという品目を買いつける際に使うことができるかという御質問であるかと思いますが、買いつけることはできます。
  225. 福田昌子

    福田(昌)委員 結局具体的には五百五十条の小麦協定によつて買いつけた中で、ことにその五千万ドル分の中の二〇%贈与になつた一千万ドルを残して四千万ドルの分は、このMSA協定の本文にある第二条におけるアメリカ側の日本国内における物資の買付の面にまわせる、こう解釈していいわけですか。
  226. 土屋隼

    ○土屋政府委員 アメリカ側が日本で行います域外買付と称しますのは、先ほど大臣から御説明がありましたように、主としてアメリカ軍が自分で使用するために買いつけるもの、第三国に与えるために買いつけるもの、日本に与えるためにアメリカが買いつけて日本に渡すもの、こういうものが域外買付の内容でございまして、この協定の二条にございますのは、城外買付という形になることはなるのでございますが稀少物資につきましては、特に両方が合意した条件によるということがあありますので、できるだけ限定された品物を限定された条件日本政府が承諾した場合にのみ買うのだということになりますので、一般的に申しますと、さしあたり四千万ドルがこの買付に充てられることは、今の段階ではとうてい考えられないと思います。従つて一般域外買付の中に入る四千万ドル、こういうふうに承知しております。
  227. 福田昌子

    福田(昌)委員 この経済協定の一条の四千万ドルに該当する分が、本協定の二条ときわめて密接な関係がある。そこで二条の適用する範囲に利用され得るこのように解釈してよろしいかどうか伺いたい。
  228. 土屋隼

    ○土屋政府委員 将来のことでもありますし、稀有のことでもございましようが、理論的には可能だろうと思います。
  229. 福田昌子

    福田(昌)委員 そういうことになりますと私どもといたしましては、せつかく四千万ドルのこの利用によります域外買付に大きな期待をいたしているわけでございますが、この二条に多分に使われるということになりますと、四千万ドルに期待する効果というものが非常に薄くなることを非常に心配するわけでございます。今後の運営におきまして、この二条に該当する範囲というものが四千万ドルの中に占める割合が少いように御交渉願いたいと思うのであります。  次にお尋ねいたしたいことは、投資保証協定に関しての点であります。日本はすでに日米通商航海条約を昨年結んでおりますが、その上になぜこの投資保証協定を結ばなければならなかつたかという感じを持つのであります。どういう必要があつて投資保証協定というものをお結びになつたのでありますか。
  230. 土屋隼

    ○土屋政府委員 この投資保証協定を結ばなければならなかつた理由というのは、実はございません。従つて結ぶ意図は毛頭なかつたのであります。ただ私どもとして考えましたのは、日本ではその経済発展意味から外資導入ということが非常に叫ばれている折柄であります。外資の導入につきまして、いわば一番隘路となりますものは、日本に持つて来た元金なり、あるいはそれによつて生ずる収益を自国に持つて帰れるか帰れないかという点につきまして、外資を持つて来る人に非常に不安があつた点にあるわけであります。従つて今度のMSA協定を結んだことに関連しましてこの投資保証協定を結ぶということになりますと、アメリカ日本政府が将来においてその外資の元とか利益とかいうものについては責任のある立場をとる、またアメリカ政府側といたしまして、債務者にかわりましてアメリカ自身がドルで払つてしまうということになりますので、おそらくアメリカの民間投資家は日本に安心して投資ができるということになるのじやないか、これは日本経済に利益だろうと考えます。
  231. 下田武三

    下田政府委員 先ほどの第一の点でございますが、経済措置に関する協定の四千万ドルの大部分がMSA協定二条の方の半加工品で食われてしまうというお話でありますが、経済措置に関する協定第一条(2)にはつきり書いてありますように・アメリカ合衆国軍事援助計画を支持するための調達ということであります。軍事援助計画というのは、アメリカ自身が自分を援助するのでなくて、第三国を援助するための計画であります。従いまして、これは従来やりました朝野あるいはその他の第三国を援助するためとか、あるいは日本自身援助するための調達に使うのでありまして、半製品や半加工品というものにはほとんど行く余地がないと思います。
  232. 福田昌子

    福田(昌)委員 その点につきましては、今局長の御答弁通りの線が守られるように私ども期待しております。そういうような御交渉を願いたいと思います。  この投資保証協定の点でありますが、今投資保証協定というものは、すでに日米通商航海条約を結んでいる以上、さほど必要とは思わなかつたけれども、結んだという御答弁でございました。私どももそうであろうと推察するのでございます。要しまするところ、MSA協定なるものは、日本が最初音頭をとつておりましたほどには日本経済界の援助にならない。しかしこれまでの立場もあつて、どうかして経済界の援助を受ける方法を講じなければならないというような意図から、外資導入に対する一つの便法と申せば当らない言葉でございますが、外資導入を容易にする一つの方法としてこういう協定を結ばれたのだと思うのであります。この投資保証協定でございますが、この保証協定を結ばれましても、この協定によつて保証を受ける業種というものはおのずから限定いたされると思うのであります。アメリカの民間投資に対して全部この協定による保証が与えられるとは考えられないのでありますが、その業種というものはどういうものでございましようか。
  233. 土屋隼

    ○土屋政府委員 ただいまの点は、私ども実は民間投資の問題につきましては経済局長の取扱いでございますので、後ほど経済局長が見えますから、業種その他につきましては経済局長が見えましたら正確なところを御返事申し上げるということで留保させていただきたいと思います。
  234. 福田昌子

    福田(昌)委員 それではこの投資保証協定の点につきましては、来られてからまた重ねてお尋ねすることにいたしまして、ただ一点だけお尋ねいたしておきたいのですが、この点も担当の方がおいでになつてからお尋ねした方がいいかと思うのですが、この投資保証協定によつて保証を受ける業種に入つた場合におきましては、その業種が必要な場合においては、投資の額面に相当するものを外貨にかえて自由にこれを持つて帰ることができるということになるのでしようか。
  235. 下田武三

    下田政府委員 どういう場合に保証が行われるかという原因につきまして、二つの限定がございます。第一は当該投資企業が収用された場合、第二は当該投資企業から得た利潤を再びドルに交換しまして送金するというコンヴアーテイビリテイの保証と二つあるわけでございます。でございますが、日本の外資法に基くコンヴアーテビリテイを正常に認められた範囲で行う場合には、この保証の原因にならないということに了解がついております。この点も経済局長が参りましたら詳しい御説明を申し上げることにいたしたいと思います。
  236. 福田昌子

    福田(昌)委員 この投資協定はこれまで日本に導入されております外資に対しても適用されるものがあるのでありますか。
  237. 下田武三

    下田政府委員 これは既存の投資企業には適用がございません。今後のものだけでございません。今後のものだけでございます。
  238. 福田昌子

    福田(昌)委員 経済局長が今見えませんので、見えるまで一応質問を保留して次に移ります。  顧問団の点でありますが、日本の防衛体制が漸次強化されるに従つて顧問団は漸減するというお話でございましたが、どういう階級から漸減して行くものなのでしようか。
  239. 土屋隼

    ○土屋政府委員 ただいまのお話で、防衛体制が漸増すれば顧問団が減るかとおつしやるのは、結果的に見るとそういう点もありますが、因縁関係があるというよりは、援助を初年度受けますのに、新しい兵器その他が来ますので、これの日本側に対する技術指導その他からそれは少し多くなるわけでありますが、一年、二年と進むに従つて援助兵器同体の運用についてもなれて参ります。そういう点から、また新しい兵器が来るということよりも、知つている兵器が来るということになりましようから、そんな点からも顧問団が減つて行くということの方がほんとうは正しい表現でございますから、さよう御了承いただきます。だんだん減る数から申しますと、まず新しい兵器というものはそうたくさんあるはずはありませんから、新しい兵器を持つて来て、それを教える段階の人は、ある段階になると減つて参りまして、もはや二年、三年となると必要がなくなつて参ります。ですから、そういう兵器の訓練をする人、あるいは教育をする人、またそれに付属した人がだんだん減つて来る。それから顧問団の中にはずつと下の方まで仕事をする人がおるわけでありますが、それが減るに従つてこの人たちもだんだん減つて来るということは事実であります。しまいまで残るのは、結局毎年援助計画を立てて行かなければなりませんが、その立てて行くのには日本における援助計画の実施の状況というものを報告し、本国政府がそれをとつて予算を組んで行くわけでありますから、そういうブレーンになる人が最後まで残るということが考えられます。
  240. 福田昌子

    福田(昌)委員 私どもも結局最後まで残るのは、そのブレーンに当る人だけだろうということを考えるわけでございまして、これは当然のことであるし、また一方それに非常に心配の種も残つて来るということも言えると思うのであります。そこでカントリー・チームというものの日本に駐屯する期間というものは、大体どのくらいのところと御想像しておられますか。
  241. 土屋隼

    ○土屋政府委員 MSA援助を受けておる国は、多かれ少かれ顧問団が駐在するわけでございます。従つて顧問団の駐在は、理論的に申しますと、MSA協定の続く期間と同じことであるということになります。そこでただいまのMSA協定には期間というものが一応限つてはないわけでありまして、もちろん終止その他の条項はございますが、一応はそのまま続いて行くという状態にありますので、顧問団というものもそのまま続くということになりますが、御存じのように、この協定というのは、アメリカの予算が毎年限られて行きます関係上、それによつて大きくもなり、小さくもなるということにもなるわけでありまして、顧問団が非常に小さくなるか、なくなるかという問題については、期限というものはないわけでございます。
  242. 福田昌子

    福田(昌)委員 この顧問団とアメリカの国防省との関係はどういう形になるのですか。
  243. 土屋隼

    ○土屋政府委員 もともと国防省の人がなつておるわけでありますが、身分は一応対外活動本部の長官の指揮下になり、そしてそこから月給が出るという形で、いわば国防省から出向を命ぜられた人たちとして対外活動本部で働きまして、日本に参りましては直接の統率をするのは大使だということになります。
  244. 福田昌子

    福田(昌)委員 私どもこのカントリー・チームの職責についての御説明を伺いますと、国防省に所属する役人であつて、外国軍人の訓練の監督に当るという御説明があつたような感じがいたすのでありますが、その国防省から出向されてFOAの役人になつておられるということであれば、FOAの職権としては当然その援助いたしました国の装備とか資材、役務、財政的な内容に対するある程度の知識、調査、そしてまた本国への報告の義務があるのではなかろうかという感じがするのでありますが、折衝においてこういう点が問題にならなかつたかどうか、この点伺いたいと思います。
  245. 土屋隼

    ○土屋政府委員 折衝の中でこの軍事顧問団は私どもにも新しい問題でございましたから、いろいろな点から先方の意見をただしてみました。私どもの結論として得ました顧問団の性格はMSAの実施につきまして大いに実施の任に当る、その関係におきましては、日本政府とも相談して、計画の円滑なる運営に資する、一方来年度その他の点もございますので、その運営の状態につきましては本国政府に報告する、こういう義務が顧問団の主たる義務でありまして、新しい兵器その他もあります関係上、訓練も日本側から要請すればこれに当る、こういうことになつているわけであります。これから推しまして、われわれが確かめたところによりますと、顧問団はもちろん本国政府に対して報告その他はいたしますが、MSA日本援助するという実施面について、必要なる限度の調査と報告とを任務とするものでありまして、日本の全般的の問題について報告するということは、顧問団の任務でございません。そういう目的のためには大使館にすでに陸軍武官、海軍武官、空軍武官がいることでありまして、これがその職責に当るべきものだと思います。
  246. 福田昌子

    福田(昌)委員 もちろん日本の財政経済の全般にわたつての報告の義務はないだろうと思いますが、MSA援助することによつて生れて来る範囲内の日本の財政的な変動、そしてまたMSA援助によつて日本の防衛体制の内容というようなことについては、当然カントリー・チームの報告の義務になつておると思うのでございます。そういたしますと、結局カントリー・チームというのは、これまで御説明いただいております外国軍人のための、日本保安隊のための、新しい兵器に対する訓練、指導ということだけではなくて、経済的な――もちろんMSAを受諾したその援助範囲に限定されておるわけでありますが、そういう経済的な問題に対しても、ある程度の仕事の範囲が与えられておるというわけでございますが、結局経済的な仕事の面もこれが代行していると見てよろしゆうございましようか。
  247. 土屋隼

    ○土屋政府委員 アメリカの本国政府に対する顧問団の報告の内容が、MSA実施にあたつて日本経済に及ぼす影響、あるいは日本の防衛計画に対する影響というものを報告することはあり得るだろうと思います。しかしながら、これはアメリカ政府内での問題でありまして、日本政府にそれが影響して、日本政府に対する、経済なり防衛なりの問題について顧問団が何か言う口実なり職能があるというふうには解しておりません。
  248. 福田昌子

    福田(昌)委員 そうすると、たとえば、この防衛援助協定の本文の第二条にわたる、さつき質問いたしましたような条項に関しましては、カントリー・チームは全然関与しないということになるのでありましようか。
  249. 下田武三

    下田政府委員 国防長官が対外軍事援助に関して持つておる責任がMSA法できまつております。この合衆国政府の責務を援助を受ける国で遂行するのが軍事援助顧問団でございますどういう責任であるかと申しますと、五つございまして、第一が軍用完成品の必要量の決定、幾らどういう装備をやつていいかという必要量の決定、第二が役務計画と統合することができるような方法による軍用装備の調達、役務計画と申しますのは訓練その他サービスでございますが、それと統合ができるような方法による装備の調達、第三が援助の受領国による完成品の使用ぶりのインスペクシヨン、それから第四に、受領国の軍人と書いてありますが、日本の場合は保安隊員――将来の自衛隊員でございますが、自衛隊員のトレーニングのインスペクシヨン、最後に軍用完成品の移動及び引渡し、そういうきわめて技術的、事務的な任務を外国で遂行するというのが主たる任務でございます。
  250. 福田昌子

    福田(昌)委員 といいますと、この二条はあまり該当しないと-いうことになるわけでありますか。
  251. 下田武三

    下田政府委員 その通りであります。
  252. 福田昌子

    福田(昌)委員 そうすると、その御答弁からいたしますと、もちろんこのMSAの五百五十条による小麦協定の線から生れて参ります。四千万ドルの使用分についても、カントリー・チームは全然タッチしないということでございますか。
  253. 下田武三

    下田政府委員 お説の通りでございます。
  254. 福田昌子

    福田(昌)委員 そうなりますと、アメリカのFOAの職員であり、そしてまた国防省から出向しておるお役人であるといたしましたならば、職責に対して怠慢だということになると思うのでありますが、この点いかがでございますか。
  255. 下田武三

    下田政府委員 しかし、アメリカの法律で認められた職責以外のことをする権限はないのでございまして、一般的の政治経済に一歩でも足を踏み出して参りますと、先ほど欧米局長が申しましたように、これは空軍武官、陸軍武官海軍武官、それぞれの大使館付武官の仕事になつて来るわけであります。
  256. 福田昌子

    福田(昌)委員 カントリー・チームと極東軍との関係はどういうことになつておりますか。
  257. 下田武三

    下田政府委員 直接極東軍と関係ありません。むろん極東軍に所属しておりました者が、事実上軍事顧問団に入ることはあり得ますけれども、命令系統から申しましても、軍事顧問団はアメリカのFOAの指揮下にありますし、極東軍というのは全然別の系統の軍隊でございますから、関係はありません。
  258. 福田昌子

    福田(昌)委員 MSA協定というものは、大体日本防衛力漸増関係して、そのMSA援助によつて日本防衛力の装備、資材、役務というようなものに、非常なプラスになるからということでお結びになつたように私伺うのであります。そしてまたカントリー・チームなるものはそのMSA協定によつて日本が受ける援助に対する十分な監督のために来るのだということを承つておるのでありますが、そういたしますと、今の局長の御答弁からでは、カントリー・チームの職権というものは非常に間違つて報告されておるという感じがいたします。その本来の性質に対してただいまのような御答弁であれば少し矛盾しておる。もしただいまの御答弁がほんとうであれば、カントリー・チームの人たちは職務に怠慢であると感ずるのでありまして、どうも御説明が食い違つておる。何か隠されたものがあるという感じがいたします。この点もう少し十分な御説明をいただきたいと思うのです。外国で欧州各国軍事顧問団というものがある程度秘密になつておるというようなこと、ただいま御説明いただいたような程度のものなら、何も秘密にする必要はないと思われるのでありますが、秘密になつておるというところに、すでに重大なものがあるということを感じます。また局長の御答弁においてもいささか食い違いを感じます。私はカントリー・チームの今後の動きというものに非常に関心を持つておるわけでございまして、その関心の上からいたしての、質問に対しては、いささか遺憾な感じがいたしたのであります。  経済局長に投資保証協定に関連して御質問いたしますが、投資保証協定が効力を発生いたしました場合、この投資保証協定によつて保証を受ける業種というものはどういう業種でございましようか。
  259. 小田部謙一

    ○小田部政府委員 この業種はどういうものかという業種別にきめられてはいないのでありますが、ただ従来の各国の先例を見ますと、バスとかトラツク製造業とか、ミシンとか、時計まで、相当広範囲にわたつておるわけであります。それでは実際問題としてどういうものに投資保証の利益が受けられるかといいますと、まずわが国では、外資法によりまして、ある業種が入つて来ます前に、その外資法で承認を受けますれば、ある一定の基準で利潤なり元本なりの送金ができることになつております。たとえてみますれば、株式の場合ですと、二年間すえ置いて、あと五分の一ずつ毎年利潤と元本は送れるということになつております。ところがこれだけではどうも日本だけの国内法であつて、心配である。ことに日本の国際収支が最近のようになると心配である。最初の約束では、二年すえ置きで、あと五分の一ずつの利潤と元本が送れるという約束で入つて来ても、その後どんな変動でいつ何どき送らせないかもしれないという心配がアメリカ投資家に生じた場合、一定の料金を払つてアメリカ政府に保険契約をするわけであります。そういたしますと、たとい日本政府が送金を許さないというような場合になりましても、支払いを受けられるということになるのであります。その際にはもちろんこれこれの業種のものをアメリカ政府としてその保険契約にかけていいかということを日本政府に聞いて来るわけでありまして、そのときに日本政府は、業種によつては、これは困る、業種によつては、これはよろしいということが言えるのでございます。
  260. 福田昌子

    福田(昌)委員 日本政府としてこれはよろしくないと思われる業種はどういう業種でございますか。
  261. 小田部謙一

    ○小田部政府委員 現在のところ外資法で利潤及び元本の送金を許しておりますのは、日本の国民経済に役立つもの、もしくは国際収支の改善に役立つもの、そういうふうな規定がございます。それでおそらくこの外資法で承認を受けましたものの中のあるものがこの保険契約の対象になるものと思われますから、当然日本経済の貢献に役立つもの、もしくは国際収支の改善に役立つもの、この二種類の業種に限られるものと思います。
  262. 上塚司

    上塚委員長 福田君、もう時間が来ておりますから、できるだけ簡略に集約して御質問を願います。
  263. 福田昌子

    福田(昌)委員 たとえばミシンとか、自転車とか、そういうものにアメリカ保証協定による保証を求めて参りました場合、日本としてお許しになるのですか。
  264. 小田部謙一

    ○小田部政府委員 現在のところ外資法を運用する上におきまして、各省からなります審議会がございます。その審議会で、個々別々にケースが起りますれば、自転車なり、ミシンなりが、どういう条件日本に入つて来るか、あるいは日本産業と競争しはしないか、あるいはこれが外に輸出されれば国際収支に役立ちはしないか、そういうことを各メリツトとメリツトでないところを双方に考慮いたしまして、その結果、審議会でこれをいいというものを許しております。ですから、今ここで抽象的にミシンとか自転車は許すのか許さないのかということはいわれても、お答えできないわけでございますが、個々別々にいろいろな条件を付して参りましたとき、許すか許さないかを決定する、こういう仕組みになつております。これがおそらくこの場合も適用されるものと思います。
  265. 福田昌子

    福田(昌)委員 その審議会においていろいろ審査いたしまして、個々の条件を検討するのだというお話でございますが、その条件とは何でございますか。どういうものが条件に入つて来るのでございましようか。
  266. 小田部謙一

    ○小田部政府委員 これは従来の外資審議会の審議を見ておりますと、あるものが国際収支の改善に役立つか役立たないか、あるいは日本経済の改善に役立つか役立たないかということを一々具体的にやつております。たとえてみますれば、消費産業ですと、これは日本経済の貢献にあまり役立たない、しかもそれが日本の国民だけで消費される、国際収支にも役立たないというようなときには否定される。しかしたとえば薬の例などをとつてみますと、日本ではまだそれができないその特許を買わなければできない。しかも日本の国際収支に別に役立つわけじやありませんけれども、国民の衛生福祉に役立つ、そういうときは許される、そういうわけでございまして、もちろんその審議会に持ち出されるときに、日本の業界とアメリカの業界と大体話合いが済んだ。契約を持つて来て、その契約で入れてくれるかどうか、そうしてその場合、たとえば利潤の送金があまりに多過ぎるとか、それから技術援助の対象とします対価があまりに高過ぎるとか、そういうものを一々こまかく検討した結果、決定しております。
  267. 福田昌子

    福田(昌)委員 そういたしますと、この投資保証協定によつて保証を受ける業種の個々の例というものは、現在ある外資審議会でそのまま検討されておきめになつていいわけですか。
  268. 小田部謙一

    ○小田部政府委員 一応日本の法律では、外資審議会にかけられて、その承認を得たもののみが、その利潤を元本の送金が許されておるわけであります。この協定によりますれば、日本政府が当初利潤だの外貨送金を許しながら、しかもある事情のもとに許せなくなつた場合にのみ保証の対象となることになつておりますから、当然業種は外資審議会の承認を得たものに限られる。しかも必ずしも外資審議会の承認を得たものが全部というわけじやなくて、たとえば外資審議会の承認を得たものであつても、これを保険契約の対象にするかしないかということを一々アメリカ政府が個々別々に聞いて来るわけです。そのときときに、これはいいとか悪いとか日本が決定するのでございまして、今のところ、このために別に新しい委員会をつくるということは思つておりませんので、おそらく外資審議会で、この仕事は扱うことになる、そういうふうに思つております。
  269. 福田昌子

    福田(昌)委員 そういたしますと、この外資審議会でいろいろ審議していただきます場合の条件というものは、その契約の内容にわたる条件でございましようか。金額に関するものでしようか。それとも企業別によつてしんしやくなさるのですか。
  270. 小田部謙一

    ○小田部政府委員 これは前にも申し上げました通り、業種によりましても、また日本にのみ消費される、たとえば日本の飲料水になるというようなものは、大体否定された場合が多うございます。それからまた業種のみならず利潤の送金が多過ぎるような場合もこれを否定されて来ました。おのおの業種だとか、利潤の送金の額とか、そういうことを全部総合いたしまして、個々別々に決定しております。
  271. 福田昌子

    福田(昌)委員 そういたしますと、この保証協定を結ばれた時期が、MSAの本協定を結んだ時期とまつたく一緒になつているというようなことから関連いたしまして、結局この保証協定によつて保証される業種というものは、日本防衛力増強に役立つ業種ということに限られると思うのでありますが、この点大体そのような業種にお限りになるつもりでございますか。
  272. 小田部謙一

    ○小田部政府委員 従来外資審議会でやつております場合においては防衛産業に限られるということはございませんが、大体の傾向としては、日本にとつて重要な基幹産業、これが新しい資本が投下されれば改良され、合理化されて行くという見地から、大体の部分は基幹産業というふうになつております。それでこの場合も、別にMSAと本協と一緒に結ばれましたからといつて、防衛産業に限られるということはありませんで、アメリカ側で保証する場合に、各国例を見ましてもミシンとか時計に至るまでやつておりますので、あとは日本側が、これは日本経済に役立つ、かつ国際収支の改善に役立つということを認定しさえすれば、相当広範囲の業種にわたるわけであります。
  273. 福田昌子

    福田(昌)委員 たとえば発電あるいは車両工業というようなものにこの投資がされる、そういう場合の保証が外資審議会に求められて参りました場合に、大体お許しになるということでございますか。
  274. 小田部謙一

    ○小田部政府委員 実は車両などの問題に関しましては、車両と申しましてもいろいろございますが、自動車工業の例にたとえてみますれば、日本は現在のところ日本の企業で相当部分は足りているのであります。しかも外貨の割当を今年は少くしておりまして、こういうふうな奢侈品に属するものの輸入は禁止または制限をしているのでございます。それでございますから、こういうものを外国人が日本に新しく立てようとする場合に、これが日本国民だけにおいて消費されるということになれば相当問題があるわけであります。ただしかしこれが主として輸出に向けられるということになりますれば、つまりパートを輸入しまして、それをこちらで組み立てて輸出に充てるということになりますれば、国際収支に役立つということになります。その点から相当日本にいい結果をもたらすのじやないかという結論になるのではないかと思います。これは個々のケースを見てみなければあらかじめ車両工業を許す、かれは許さないということは、ちよつとこの際一概に言えないのじやないかと思います。
  275. 上塚司

    上塚委員長 まだですか。
  276. 福田昌子

    福田(昌)委員 これでやめます。外資審議会のメンバー、どういう人たちがメンバーになつてつてその任期はどういうことになつているかという点が一点と、もう一つはこれは、質問であり要望でございますが、この投資保証協定というものは米国側に対して非常に安心感を与え、外資導入の点については、さそい水になると思うのでありますが、しかし日本産業の面から見ますと、これはよほど気をつけていただかなければ、将来に非常な憂いを残すことに相なると思うのでございます。従つてこの投資保証協定によつて保証を受ける場合の決定にあたつての審査ということに対しては、十分政府当局において注意して、将来に対する遠大な見通しのもとにおきめいただきたいと思うのであります。これを誤つて軽軽しく運営されるということになりますと、日本経済というものに対して非常な憂いを残すと思います。これは要望でありますが、先ほどの外資審議会のメンバーについての御説明を願いたい。
  277. 小田部謙一

    ○小田部政府委員 外資審議会の現在のメンバーは関係各省の次官というものが委員になつております。外務次官とか大蔵次官、通産次官、運輸次官、そういうふうな産業関係に関心を有する各省の次官がメンバーになつております。それからその下に関係局長とか関係課長とかいうもが出まして、あらかじめ審査をしまして、その結果を審議会に報告する、そしてそこで決定する、そういうふうになつております。
  278. 上塚司

    上塚委員長 それでは本日はこれをもつて散会いたします。    午後五時四十五分散会