運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1953-11-17 第17回国会 参議院 郵政委員会 閉会後第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年十一月十七日(火曜日)    午後一時四十一分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長    池田宇右衞門君    理事            柏木 庫治君    委員            瀧井治三郎君            中川 幸平君            深水 六郎君            永岡 光治君            三木 治朗君            最上 英子君   事務局側    常任委員会専門    員       勝矢 和三君   説明員    郵政大臣官房人    事部長     八藤 東禧君    郵政省経理局主    計課長     佐方 信博君    公共企業体等仲   裁委員会委員長  今井 一男君   参考人    全逓信従業員組    合中央執行委員    長       横川 正市君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○公共企業体等労働関係法第十六条第  二項の規定に基き、国会議決を求  めるの件(郵政事業)(内閣送付)   —————————————
  2. 池田宇右衞門

    委員長池田宇右衞門君) 只今より郵政委員会を開会いたします。  本日は公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定に基き、国会議決を求めるの件、(郵政事業)を議題にして御審議を願うわけであります。  本件については、質疑に入るに先だちまして、政府仲裁委員会労働組合の三者から説明を聞く必要があると思います。政府からは先日の委員会提案理由説明を求めましたので、本日は先ず仲裁委員会労働組合側意見を聞きたいと思います。従いまして、この際お諮りいたします。全逓横川委員長参考人とすることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 池田宇右衞門

    委員長池田宇右衞門君) 御異議ないものと認めて決定いたします。  これから本日の審議に入りますが、本日は仲裁委員会より今井委員長殿が見えておられますので、先ず今井委員長より裁定の経過について御説明を願います。
  4. 今井一男

    説明員今井一男君) 今回の郵政職員に関する賃金紛争の問題は、結局中央調停委員会におきましての調停案を両当事者が受託いたしませんでした。まあ正確に申しますと、組合側のほうははつきり拒絶したのですが、当局側のほうからは御返事がなかつたのでありますけれども、結局お断りになつたのと同じ結果を来たしたのであります。その結果我々の手に移りまして、すでにお手許へ参つておると存ぜられます今回の裁定をいたした次第でございますが、両者考え方を若干御参考のために申上げておきますというと、職員側のほうはいわゆるマーケツト・バスケツト方式によりまして、平均的にどれだけの生計費郵政職員として必要であるか、まあそれに見合う賃金は幾らであるか、こういつた考え方から一万八千五百円という基準賃金要求されておるのでありますが、私どもの審査したところによりますると、この計算の中に相当過大と認められる点があつたのであります。又その数字的な問題以外に、その職員平均生活費平均賃金とするという考え方自身にも問題があるように感じました。即ち賃金というものは労働の対価であるという考え方からいたしますと、労働条件によりまして、或いは労働の質と量によりまして差がつくのは当然であろうと考えられます。組合考え方によりますというと、結局まあ極論いたしますれば、賃金家族数によつてきまるというようなことにも相成る結果でありまして、勿論得られました賃金が、それでどの程度生活内容を約束しているかという点はこれは詳細に考える必要がありますので、生計費と全然無縁に判断なく賃金をきめるということは勿論妥当ではありませんけれども、併しそれはむしろ端的に申しますれば、得られる賃金の実体的な意味におきまして効果が発揮されると考えられるのでありまして、平均賃金というものをそのままそういつた家族数等の生計費から出すという考え方は勿論当局も反対でありますが、我々としてもこれは採用いたしがたいと、こういう考え方に立たざるを得ないのであります。ほかに組合のほうは現在の賃金類似商業バランスがとれておらないという御主張もあつたのでありますけれども、その点は若干理由の存するところも認められないわけではなかつたのでありますが、お話が細かくなりますので詳細な点は省略いたしますけれども、そのまま組合考え方を取上げるということも、これも欠陥のあるような主張であると我々のほうは認めた次第であります。これに対しまする当局側主張は、前国会で非常に御心配を頂きました不合理是正が実現をいたしましたので、その後いろいろの状況判断するというと、この際ベース・アツプの必要はないという態度が暫らくはとられておつたのでありますけれども、併し当局者として特に強く関心を持つたの電電公社との権衡であります。これは申すまでもなく郵政事業の沿革から申しまして、当局立場として責任上止むを得ない考え方ではなかろうかと思うのですが、同じ局舎の中に電信電話公社諸君と机を並べている立場にありまして、その間に非常な差等ができるということは困る。こういう御主張から最終的には当局側のほうで、結局調停案の額は絶対必要、こういつた意見の表明がございました。仲裁委員会といたしましては、結果的には調停案の額と同じ額に落着きましたので、その意味では当局側数字がまるまる採用されたような形に相成つたのでありまするけれども、併し我々の考え方自身は、むしろそれは偶然的なものでありまして、組合側主張のうち尤もと思われる部分も取上げてこなして行く、こういう方法との出合いが結局こういう数字に落着いたのであります。  これによりまして、民間貸金ベース・アツプの行き方、或いは類似産業との権衡、それから生計費、こういつたようなものを突込みまして、結局この数字に相成つたのでありますが、ただ若しも両者主張が今少しいわゆるつばぜり合いと申しますか、具体的なデーターの取り方、物差に対する見解相違というようなところまで話が近寄つて参りますならば、私どもとしても非常に細かいところまで入つて結論を出したいと考えておつたのでありますが、あいにくのことに両者が相当離れたところで論戦を交しただけでありまして、私どもその中に入りまして、極力意見の歩み寄りをお願いもし、努力もしたつもりでありますけれども、時間等の制約もあり、遂にそういつたことに相成りませんでしたので、従来から仲裁委員会は伝統的に調停段階で問題が片付くことを理想と考えておる立場に鑑みまして、少々の見解相違調停案の額によるのが妥当だと、こういつたこと等も加味いたしまして、この数字と相成つた次第であります。  なお、最低賃金につきましては、組合要求がございましたけれども、これは一つの配分の問題と認められましたので、一応両者間の団体交渉に譲りまして、若し話がまとまらん場合には改めて我々が口出しをする、こういつた結論に相成つた次第であります。  この問題は、結局郵政事業におけるこういうベース・アツプが果して郵政特別会計の中で賄えるか賄えないかという問題でございますが、私ども仲裁委員会では従来から問題を一つ企業体におきましての労使紛争といつた立場で解決するふうに処理して参つております。公労法というものができまして、労使の一方からそれぞれ問題を提起される建前に鑑みまして、これはむしろ当然のことであろうと考えておる次第でありますが、そういつた意味合から賃金をはじき出します場合におきましても、単に人事院勧告等のように、あるべき賃金をはじくという考え方でなくて、その企業支払能力というものを常に頭に置く考え方をとつて参つたつもりであります。併しながら民間企業と違いまして、国営の企業にはいろいろの制限がございますことは申上げるまでもありませんが、併しそれにいたしましても、少くとも若しこれが民間企業における賃金問題でありますならば、恐らく支払能力関係から労働委員会等においてもお取上げになるだろうというような線を目標におきまして、賃金をはじく考え方をしておるのでありますが、今回の裁定によりますと、御承知の通り郵政には公労法適用以外の職員が二万数千人もおりますので、そういつた諸君にも結局はね返ることは疑いを入れないところでございますし、その関係から結局四十億程度支出増が予想されるのでありますが、併し郵政特別会計における郵便事業以外の即ち貯金簡易保険、並びに電信電話事業その他と、こういつた部面を通覧いたしますというと、根幹をなす郵便事業負担部分はせいぜい十七、八億程度考えられますので、そうなりますというと、本年度自然増収が相当に予想されますので、勿論災害の面等で、或いは為替の減収等の問題もございますが、或る程度つじつまが合い得る可能性があるのじやないのか、特に本年度の不合理是正の際に貯金特別会計負担部分が五億円ばかり一般会計に対してまだ頂いてない部分等もございますので、これらの部分考えますというと、郵便事業としてこれだけのものが賄えないということもないのじやないか、こういつた見解と相成つた次第でありますが、併し一方郵便貯金関係におきましても、只今銀行平均コストが七分三厘と言われている際に、特に銀行には例の両建や歩積等関係もございますし、更に又利子のつかない金もございますが、郵便貯金は昨年度利子引上以来、普通預金も三分九厘六毛ということに相成つておりますし、これは私どもが若干政策に口を出すようなことになるかも知れませんが、只今コストの六分四厘という建前は、その金額の大きさからかなり無理があるように感じられる点もございます。又郵便貯金並びに簡易保険電信電話というようなものは委託業務になつている関係等からいうと、建前といたしまして、その他のものに対する財源というものを各会計で持つことは、少くとも郵便事業バランスのとれる範囲におきましての会計負担というのは、これ又当然ではなかろうかという判断をいたしたのであります。併しそれにいたしましても、私ども第一回のこの郵政事業内容を調べまして、とにかく人件費がすでに七〇%を超えるというのは率直に申して一驚を喫したのでありまして、恐らくどんな事業を見ましても、これだけ人件費を食つているという事業は他になかろうと思いますので、これは勿論従来からもなかつた記録であろうと思いますが、勿論郵便事業というものは決してそろばんが合いやすい事業ではございませんけれども、それにしてもこういつた形ではいろいろのサービスにもこと欠くような事態が起りはしないかというような意味では、今回支払能力検討いたしました際に痛感いたしたのであります。申すまでもなく私ども支払能力そのものにつきましては、別に最終的な権威づけられる立場にございません。が併し、我々の与えられた時間内におきまして、与えられた材料を範囲としては、できるだけの一応の検討はしたつもりでございますか、公労法趣旨からいたしますと、こういつた面につきまして、国会でとくと御審議頂くことは当然のことではございまするが、ただ最近一部耳にいたします意見、こういつた耳にいたしますことを申上げるのもどうかと思いますけれども公労法建前からいたしますと、賃金というものは毎年々々改めてきめるという考え方になつているようでありまして、昨年公労法の改正でその明文は削られましたけれども、それにいたしましても、精神は恐らくその通りであろうと思われるのであります。又従来国会で御審議頂きます際にも、各年度ごとに区分した上での御審議願つて来ている関係等もございますので、一説によりますと、仮に本年こういつた数字が出せることにいたしましても、明年から以降が出せないから云々というような議論を聞くのであります。私ども立場から申しますと、公労法考え方としてはこれは少しおかしいのじやないか、この裁定は本年度限りの裁定でございまして、勿論長い目で賃金考えなければならんことは経営上申すまでもないことでありますが、裁定が出ますと問題が法律論的になりまして、或る意味においては労働問題と性質の違つた問題として扱われなければならんことになります点もございますので、そういつた立場から申しますれば、むしろその点は区分し、御審議、御検討頂いたほうが公労法趣旨には合うのではなかろうかというような感じも持つのでありまして、甚だ出過ぎたことでございますが、一言申添えておきたいと思う次第であります。  大体我々の考え方は、比較的詳しく理由書の中に書いておきましたので、お目通し願えればお汲みとり頂けると思うのでありますが、なお御質問がございましたら、如何ような点につきましても御答弁申上げます。
  5. 池田宇右衞門

    委員長池田宇右衞門君) 次に横川参考人本件に対する御意見をお述べ願います。
  6. 横川正市

    参考人横川正市君) 横川でございます。仲裁委員会から仲裁案が提示されまして、郵政省と私どもとの間に起つている紛争国会に持込まれて参つたわけでありますが、本日は非常に休会中御多用なる中にもかかわりませず、終始審議をして頂くことを、更に私ども参考人としてここにその内容を申述べる機会を得たことを心から御礼を申上げたいと思います。私どもは今まで国会の中にいろいろな問題を持込んで陳情申上げておるわけでありますが、組合全体の考え方といたしましても、最近に至つてどもが過去いろいろ経験いたし、或いは思い及ばないで考えておつたことが幾分修正しなければならないのじやないかという考えでおるわけであります。と申しますのは、郵政委員会という郵政省一般事業に関して常に注意を払い、その事業の円滑な運営を図つて頂いているこの会が、これは衆参両院に共通した点として非常に超党派的に事業のことと従業員のこととをよく考えて頂いて、そのたびに適切な御指示、御指導願つているという点であります。私は非常にそういう性格の中での郵政委員会に率直に今までの私ども考えというものを申上げまして、今度の仲裁裁定の問題についても善処方を是非お願いいたしたいと思うのであります。  全逓信従業員組合というのは、これは終戦後いち早く結成されましてその運動方針、或いは行なつて来た過去の業績というものが、一般には全逓共産党指導する組合だというような、こういう印象を多分に与えておつた時期があつたのであります。併し昭和二十四年のこの組合内部におけるところの民主化運動が芽を出しましてから、私ども組合人事院の登録の問題をめぐつて遂に分裂をいたしまして、殊に組合指導の顧問であつた共産党の手から脱皮いたしまして、新らしい民主的な労働組合を結成して今日に至つておるわけであります。こういう紛争の起つた時期に私ども共産党理論攻勢に対して対抗して参つたのは、人事院勧告制度を明確にしたのだから、これをいわゆる紛争を解決する唯一手段として尊重しようじやないか、単に実力行使、或いは法を乗り越えた非常に激発的な闘争を行なつたということよりか、この第三者介入によるところの紛争を解決する手段を最も有効に利用することによつて組合の民主的な運営を図ろうじやないか、こういうことが話されておつたわけであります。併し不幸にして人事院勧告は一応の道義的な責任は持つてつたと思いますけれども、完全に実施されたことはありませんし、又そのたびごとに私どもは非常な苦労をして賃金の問題をやつて来なければならなかつたのは、これはもう国会皆さんのよく知つて頂いておる内容だと思うわけであります。こういう中で全逓というような現業官庁である特殊な仕事については、これは公企体法に変えたらいいだろうというので、本年の一月一日に公企労法適用職員の仲間入りをさせて頂いたわけであります。私どもはやはり今度の公企労法建前から言つて仲裁制度というものが如何に尊重されなければならないかという点について非常に認識を深めておつたわけであります。そういうようなこの組合の今までの運動と、それからそれをいろいろに変えて参りました、国会で作られた法規というものを私どもは尊重しながら現実になつておるわけであります。  さて今度裁定が出たわけでありますが、実はいろいろと専門のかたがたの意見を聞き、或いは過去に経験賞め国鉄専売や、これらの組合意見を聞いて見ますと、明らかにこれはこの仲裁制度によつて紛争を円満に解決して行くというのが公労法建前であります。こういうふうに私どもも認識し、それらの過去の経験を持つ組合考えておるわけであります。そういうことから、私ども仲裁裁定が出たということは、これは少くとも労使間の、現在で言えば全逓郵政省との間の紛争については、これはもう必ず解決してもらえるもの、かように考えておつたのであります。ところが事実もう新聞で報道されておりますので皆さんも知つていられる事項であるかと思いますが、官公労は昨日から大蔵省の前に徹夜で、一体予算仲裁裁定の実行をどうしてくれるかということを大蔵省に対して要求いたしておるような実情であります。仲裁裁定が出るまで私ども生活がどうであるとか、或いは資料がどうであるとか、そう言つていろいろ仲裁委員会に持込んで、そこで最も妥当な仲裁案が決定されましたら、もうそのときに組合としての行動というものは停止してしまうのが本当なはずなんでありますが、それが実は仲裁委員会と話しているときには非常にスムースに円満に事情を話し、そしてその良きを取上げ悪きを捨ててもらうという、こういう段階にあるわけでありますが、さて仲裁が出てしまうと、今度は褌を引締めて闘争しなければいけないと、こういう形に変つて来たわけなんです。私もやはりこういう組合民主化されて、そして唯一と頼んでおるところのこういう第三者介入仲裁を若しもどちらかが守らなかつた場合に、これは非常に不信を招くことでありますし、結果的には組合民主化というものも、或る一部の人たちの実際の扇動や或いはアジによつて激発的な闘争にならないということは保証しがたい問題であろうと思うわけであります。こういうようなことから今国会にかけられております仲裁については、私ども組合立場から見ますと、是非これを実行して頂きたい。勿論今の情勢は農村におけるところの疲弊や、或いは風水害、或いは凶作等によつて国の出費が如何に多いかということについても私は十分認識いたしております。併しながら政府の機関で、こんなに困つておるのだから、予算がこれだけしかないのだから、どうだこれでいいかというようなことを一言も私どものほうには話しかけてもらえないのであります。ただ一方的に十七国会では公企労法十六条後段の予算資金上不可能であるからということでこれを国会議決を得ようとしておるわけでありまして、その誠意のほどにつきましては非常に私どものほうは残念ながら認めがたい、こういう実情にあるわけであります。  それでは、政府の言う予算資金上の問題で、本当にないのだろうか、こういう点で三公社現業のいろいろの内容をそれぞれ研究してみますと、決してないということが正当な理由を以て証明できない事情にあるということが明らかであります。新聞では国鉄郵政というのは予算がないのだからできないのだと言われておりますが、国鉄の場合の今度の風水害によるところの建設資金の中に持込んだ金が国家資金で若しも賄われるならば、今度出されます仲裁を完全に実施してまだ予算上余るというような状態でありますし、郵政の場合も先ほど仲裁委員長説明されましたように、決して予算資金上これが不可能だというようなそういう内容ではないというふうに私ども考えておるわけであります。殊に郵政仕事はいろいろ先生がたに御苦労を願つて十分内容については御検討願つておることでありますので、今更私から申上げるまでもありませんが、雨の日も風の日も外に出て、そうしてどんなつらいことがあつても自分に与えられた職責を守つている実直な、まじめな従業員が大半でありますし、私どもの持つている仕事そのものは非常に華かなものとは非常に縁が遠い、併しながら持つている性格というものは非常に責任のある重要な仕事だということを従業員全体が認識しておるところであります。  今までの郵便企業に従事する従業員給与関係については、一般の社会の通念、常識化されたような関係で、一般官庁従業員よりか郵政従業員は待遇が悪い、それから非常にいろいろな仕事の環境が悪いということは一般がそういうふうに認識しておつたことでありまして、私どもはこういう実情の中で営々として働く従業員が恵れないでいるということについては非常に残念な一念でおつたわけであります。併しながら戦後いろいろな支援関係や、或いは努力によつて幾分改善されて来たことは事実であります。現状ども賃金内容として考えております要求賃金と、それから今度の裁定とは大きく開いてはおりますけれども、その開いた低い賃金であつても、これは大体電電公社一つのまあ比較して余り遜色のない賃金に変つて来ている、或いは専売国鉄人たちと幾分見劣りはしても、大体そこに追ついて来ておる賃金である、こういうふうに考えていいと思つておるわけであります。今度の仲裁裁定でお前のほうの仕事予算がないからこれは駄目だというようなことになりますと、そこには大きな賃金の開きが出て参りまして、今まで私どもが営々としてこのアン・バランスを是正しようとした努力も一朝に消えてしまうということはこれは当然であるわけであります。  そこで郵便関係事業内容考えてみますと、大体まあ普通にはこういう独占事業においては儲かつたからこれを配分する、こういうような考え方は間違いで、儲かつているのは当り前で、これは税金も納めていないし、独占企業で経営しているのだからそれくらいの黒字は出るのは当り前だ、こういうふうに言われるのでありますが、それならば実際上はどうなるかと言えば、郵便料金の決定はこれは国会で行うのでありまして、実際のいわゆる取扱の手数によるコストというものに比例して人件費受信費を賄うという考え方ではなしに、政策的に料金が決定されているということは御案内の通りであります。そのために今なお大体三種あたりではコストから言いますと、約十七円程度かかるのに三種が一円という非常に低廉な料金でこれを配達いたしております。殊に北海道のように遠隔な地におけるところの場合には、まさに郵便配達というようなことよりか新聞配達というようなことに名前を変えたほうが適切なくらい、その持歩いている郵便物の比率というものは九対一程度まで大きく開いているところもあるわけであります。新聞だけを配達しているのが郵便屋さんだというような状況でありまして、而もその持ち歩いているのがコストからいつて殆んど問題にならない低廉な料金でこれを持ち歩いているというのが実際であります。而も郵便企業はこれは機械化することもできませんし、特殊な方法を設けることもできません。やはり親書親書、或いはどんな葉書、新聞、どんな郵便物であつてもこれはそこの家まで持つてつて渡さなければなりません。そのためには人的な非常に大きな面をどうしても他のものによつて補うことができないというのが郵便企業特殊性でありまして、そういつた点から考えてみますと、政策的にきめた賃金、それからそういうような事業内容から人件費が非常に大きくかかる、こういう事業内容はどうしてもこれは現状として服することができないわけですよ。併しそれを実際に本年度会計から見てみますと、今井委員長の大体検討された内容と同じように、本年度において約二十億程度黒字というものが予測されているというふうに言われているわけであります。これは当局に十分聞いて頂けばわかるわけでありまして、私ども実際に当つたものでありませんから、この点についてはその真偽については十分質して頂きたいと思います。こういうふうに低廉な、而も人件費を多く使いながらなお且つ物件費や日常の費用というものを節約しまして、増収を図つているというのが郵便事業の実態であるわけであります。  今一つは、今度の裁定を実施するのに郵政省は実施できないのだ、こういうことを言つている一番大きな癌は何かと申しますと、これは貯金事業であります。貯金事業は御案内のように私ども従業員が営々として一軒々々廻りながらそれぞれの家庭を訪問いたしまして、零細な金を集めて参つているわけであります。その金は大蔵省の預金部資金へ全部入つておりまして、そこから大体六分四厘の利廻り計算でこれらの実際の人件費やその他を賄つておるわけであります。そのコストは七分四厘六毛、一分六毛の大体コスト高になつておるわけであります。これは民間の銀行や相互銀行等のコスト検討してみましても、決して高いコストではありません。ただ民間銀行では恐らくこのコストではやつて行けないのじやないか、八分くらい以上になつているのではないかということが言えるのではないかと思いますが、大体データーで言いますと、七分四厘くらいまでかかつているというのが実情であります。こういう関係から集められた総額は約三千億くらいあるわけでありまして、国家のいわゆる融通し得る資金としてはもう実に厖大な金を私どもは集めてこれを大蔵省に預けておるわけであります。平常におけるところの運営さえ大体三十一億程度の赤字を出しておるのが現在の経営状態でありまして、そういうような状態ではですね、到底まあ貯金事業としては郵政省として持つて行けないというのが現況であります。これを何とか改善してもらう、或いは一般会計から補填してもらえれば、今この一番問題になつております仲裁裁定の実施については、ほかの官庁等の、ほかの公社或いは現業等の困難な度合いとはまあ一部の違いはあるにしても、そう全然お前のところは駄目なんだという投げ捨てにされてしまうような事情ではないわけであります。保険会計についてはこれは非常に皆さんのお骨折りで、資金の運用が一部郵政省へ返つて参りました。そういう関係から決してこれも資金上不可能な状態ではありません。あと他の会計からの繰入れを行うわけでありますが、この点についても決してまあ困難な状況にはないというふうに私ども考えておるわけであります。そういたしますと、全体的に予算上、資金上の問題からも大体今度の裁定は解決するのではないかというふうに思つておるわけであります。  更に私ども公企労法の第十七条で、若しもこの紛争が解決しないからといつて労働組合実力行使を行いますと、その場合は公企労法の適用をされております一切の権利を失うことになるわけであります。これはいわゆる団体交渉をする権利であるとか、或いは調停仲裁等に対して私どもから問題を持込む権利であるとか、更にはこのことによつてその人間が首を切られてしまつても抗弁権を持たないというような、或いは刑法上の問題までも起すというふうに、この十七条の後段におけるところの処罰規定については非常に厳格な内容があるわけであります。先に私ども人事院勧告が若しも通らなかつた場合に、マツカーサーのオーダーで出されたあの内容というものは、これは明らかに罷業権を奪う代りのために出したものだから、若しも実施しない場合は罷業権が返つて来るだろうということを強く主張いたしたことがあつたわけであります。それと同じように公企労法の場合もこの仲裁裁定労使間を拘束するという建前に立つておるならば、これが実施されない場合に私どもは同じように罷業権が労働組合の本来の姿として手に返つて来る、こういうふうに考えることがこれは正しいのではないかというふうに思つておるわけであります。いろいろな学者や或いは関係者のこの法に対する解説もありますし、さつきの国鉄の例から申しますと、地裁では組合側が勝利をし、政府がこれは敗訴いたしております。それから高裁におきましては、審理の結果これは又変りまして、政府が勝つて組合側が負けたという事実はあります。併しいずれにいたしましても、私は国会できめられた法律の解釈が裁判においてこういうふうに白黒変つて来るということは、少くとも国会の権威というものを尊重し、作られた法規によつて労働組合労使間の慣行というものを打立てて行きたいという、こういう気持に燃えておる民主的な労働組合運営については、信頼の問題としては非常に又マイナスになるのではないかというふうに考えるわけであります。こういう建前から是非私ども公企労法という、或いはいろいろな不備な点はあろうかと思いますけれども、不備であつてもこれが作られた権威によつて飽くまでも労働組合はこれを守る。国会もこれを権威付けて実施するために努力してもらう。これが本当に民主的な労働組合運営を助長することでもありますし、これは非常に将来の問題としても望ましいことではないかというふうに思うわけであります。いろいろな関係からここに先生がたに御苦労を願つて検討を願うわけでありますが、是非こういう内容を持つている仲裁裁定については、これを実施するよう格段の努力をお願いいたしたいと思うわけであります。  非常に貴重な時間でありまして、長時間浪費したことをお詫び申上げまして、参考人としての口述を終りたいと思います。
  7. 池田宇右衞門

    委員長池田宇右衞門君) 以上で経過の説明並びに意見の開陳は終りました。  これより質疑に入ります。順次御質疑を願います。
  8. 永岡光治

    ○永岡光治君 これは一つ今井委員長にお尋ねしたいと思うのですが、先ず裁定の中で金額の問題でありますが、一万四千二百円の算出の基準を、細かい説明は省略するが、他の現業官庁及び公社と均衡がとれ、類似産業と均衡がとれておるというのでありますが、果してどうであるかということについて多少私たちも疑問を持つておるわけでありますが、同じ算定方式を以て例えば年齢及び家族構成等を含めましてですね、少くとも公企労法の適用を受けておる職員全部が完全に均衡がとれておるかどうか、念のためにその点をお尋ねいたします。それが第一点。  もう一つ類似産業というのはどういうものをおとりになつたか、具体的にこのことも先ずお尋ねしたいと思います。
  9. 今井一男

    説明員今井一男君) 八つの我々の今度の対象、これに対しまして、基本的には私どもは、我々のほうから積極的に権衡をとろうという考え方は持つておりません。労使主張のうちの合致点を組合せて行こうと、こういつた考え方で参りましたので、人事院等が御配慮になるような形における完璧な権衡はとれてはむしろおらないと申上げたほうがよろしいと思うのでありますが、併しながらそれは建前の問題でありまして、当局側及び組合側のほうには原則としてそういつたことに非常に気をお使いになる傾向が強うございます。特に郵政におきましては、当局のほうでその点最も真剣に配慮があつたようでありました。これが公労法の、特定郵便局長その他の非組合員の諸君をこの標準で手直しいたしますると、電電公社との権衡はとれる、こういつたふうに当局はおつしやいましたが、私どももそう感じたものでございます。  なお、ついででありますから、特に永岡委員のようなかたには御参考になると思つて、余計なことですが申上げますと、若し人事院勧告にあります非現業職員と同じような扶養手当を持ち、或いは勤務地手当を持つと仮定いたしましたならば、若しこの人事院勧告の非現業職員と同じだけの扶養控除が郵政職員にもある、同じような地域分布をしておると、こういう仮定に立ちますと、今度の裁定全逓に対しましては一万四千六百円。  それから類似産業との関係でありますが、実は厳格な意味郵政省に非常にぴたつとした類似産業があるかどうか、これは問題だと思うのです。私どもその点は自信は実は持つておりません。併したまたま裁定の三に書いておきましたように、組合諸君のほうで運輸通信及びその他の公益事業、金融及び保険業を基礎にして考えるというと、大体これが類似産業とお考えになつておられるように見受けたものでありますが、この一番しまいに書いてありますように、類似産業がどのくらい今後上るかという見通しがありませんでしたので、私どもいろいろ推算したのでありますが、不合理是正後の金額に一一%程度アツプさせたならば大体それとバランスがとれる。この場合普通の言い方は金融及び保険と運輸通信及びその他の公益事業、これを御承知の通り貯金関係並びに保険関係を金融及び保険業にリンクさせ、その他の電信電話事業郵便事業を、運輸通信及びその他の公益事業にリンクさせる、そういう考え方をそのまま引き延ばしますというと、まあ推定が加わりますが、一一%ちよつとぐらいでバランスがとれるだろう、基準賃金につきましては。そうなりますというと、大体これもそう大きな開きはない。それはまあ組かに申すと多少の開きはございますけれども、無視して然るべき程度の開きだ、こういつた意味合でこの裁定理由書はできております。
  10. 永岡光治

    ○永岡光治君 次いで、これは今井仲裁委員長は、この公企労法の制定についても相当な見識を持つておられるとまあ私たち考えておりますし、今やはり一番国会で法規の解釈の上で焦点になつている問題も、公企労法の第十六条と第三十五条の関係であるわけでありますが、政府の今国会に出されました国会議決を求むる件というやつは、私ども実に解釈に苦しむのでありまして、どうしてくれというのか、ちよつと政府の出し方を非常に疑問に思つておるのでありますが、先ほど横川参考人からも話がありましたように、公務員法ができ、公企労法ができて、労働争議を、つまり罷業権がなくてもこの三つの法律によつて、それに所属するところの適用を受ける職員生活は保障されるものだという強い期待を持つてつたわけであります。まあ現在もそういう考えでおるわけでありますが、同時に、この公企労法ができた当時の、今は亡くなられましたが、当時の労働法の権威者であり、又この調停についての権威者でありました末弘博士等の論文を見ましても、又説を見ましても、第三十五条は憲法で保障されたところの財産権である。これによつて下された裁定というものは、その労働者にとつては憲法で保障されたところの財産権であり、従つてこの裁定というものは労使双方、つまり政府職員の間を非常に強く縛る契約関係になるので、これは予算がないということは、十六条によつて予算資金がないということは、一時的にその実施を見合わすということにはなつても、その裁定を実施しないということ、免れるということはできないというふうに私たちは聞いておるのでありますが、この点、この十六条と三十五条の関係についてどのような考え方を持つて仲裁委員会は処しておるか、そのこともお尋ねしたいと思います。
  11. 今井一男

    説明員今井一男君) 永岡委員の御承知のように、公労法のおしまいのほうに、この法律の運用は労働大臣がこれをつかさどるというようなたしか意味の文句がございまして、仲裁委員会はこの法律の解釈につきましては、別に何らの権威も何もございません。又私自身この公労法の制定につきましては、少しの参画を個人的にもいたしておりません。おりませんが、ただ第一次国鉄裁定の場合以来幾たびか国会でこの問題が議論されまして、その際に、仲裁委員会として、又私一人といたしましてお答え申上げて参つた経過がございますが、その点、その意味合で御説明申上げたいと思うのであります。私どもの私見を申上げたいと思うのでございます。  調停の次に仲裁というものを設けた、殊に仲裁というものによつて問題を解決しようということになつております以上、特別の規定なり意味合なりがなかつたならば、仲裁でおしまいにならないというと、調停を二度重ねるということになると、意味のないことになると思います。その意味から、原則的に双方にイエス・ノーは言わせないという考え方がなければならんと思うのでございまして、それがその三十五条にも現われておると解釈すべきであろうということになるのでありますが、従いまして、民間の若しも労働争議におきまする仲裁ならば、もうそこで勝負はついてしまいまして、いや応なしのわけで、末弘先生などの言われた財産権の問題などが起ると思うのでありますが、それでは国会関係、特に予算関係で因る場合があるというので、そこで十六条の規定を設けた、こういう形で三十五条を中心に考えないというと、どうしても仲裁意味合公労法趣旨とぴつたり来ないんじやないかと考えるのであります。又予算というものは御承知の通り公務員に対する訓令であるということは、これはもう明治以来のむしろ決定的な解釈であります。従つて予算がないということは何か債務を免れるという理由にはならないこともこれは殆んど疑いを入れないところだと思います。例えば或る省で物をお買いになる契約をした、そのときに予算がなかつたにもかかわらず土地を買つちやつた、そうしてあとで予算がないからお前払わないぞ、そういつた場合に、若し相手が訴えますれば、これは政府のほうが敗けることが明瞭でありまするから、ですからうつちやつておけば仲裁の場合にもそういう形になるわけでありますが、それでは手続上困る、そこで十六条の規定が設けられた、まあかように辻褄を合せて行くほうがむしろ筋は通るんじやないか。従いまして十六条に、この場合には仲裁は効力を生じない、仲裁ではその拘束力がなくなる、こういつたようにはつきりと法律で書いてあれば別でありますが、そう書いてない限りにおきましては、そういう例外的な範囲というものを成るべく厳密に縛つて解釈するほうが法理論としても正しいんじやないか、十六条には国会の承認という言葉がございます。で予算というものにつきましては、国会が憲法の建前として最高の決定権を持つておる。そのために予算をいじらなければならんような場合に、これを勝手にやつたのでは、恐らく仲裁等の場合においてはそういつた問題が多かろうから、その場合においては憲法の予算建前と又変つた問題を生ずる意味におきまして、その場合には国会の承認がなければ金を出すことは相成らんというような建前をとることによりまして、この三十五条がもたらしますところの予算決定権との調整を図つた、これがまあ十六条の趣旨であろうと思うのでありますが、ただ十六条に、それならば修正予算を出すという形で書かれておれば全然もう疑義はないのでありますけれども、たまたまそこに裁定そのものを国会に出すような書き方に条文がなつております。私はまあこれはアメリカ式に全く迂闊に書いたものであろうと思うのでありますが、そういたしますというと、裁定というものをもう一度国会で再審査する、そういつたような議論が起き得るのであります。併し私どもはそう考えることはどうしてもおかしい、何となれば、これが予算範囲外で行われます場合におきましては、国会へも御審議を願わなければならないのであります。勿論裁定を最終的としない裁定というものは非常な間違いをやりやすいから、国会でもう一度見直すという建前をとることもこれは私考えられますが、それならば如何なる裁定でも予算上可能であろうと不可能であろうと、全部国会へ持つて来て国会でもう一度審議しなければ筋は通らないわけであります。たまたま予算に引掛ります問題、現に過去におきましても、十の裁定のうちで三つばかりは予算関係がなくてそのまま履行された例がございます。そういつた場合には最終的になる。そうでない場合には国会裁定を見直す。勿論裁定というものは、限られた時間に限られた人間で大急ぎで作られるのでありますからして、私は再審査しますれば幾らもぼろが出て来得る問題だと思います。併し御承知の通り労働問題というものは拙速を尊んで片付けることが一番大事でありまするし、特に人事のような問題はこれは議論すればきりのない問題でありますので、最終的にどこか独立的なもので任せようという趣旨でできておるといたしますとしますと、これを仮に裁定という文字は使われておりましても、それを国会で再審査するという建前はやはりおかしいのじやないか。従つて裁定という文字はございますが、結局におきまして、予算提出権の政府にあるというような問題等とからまりまして、そういつたような苦しい書き方が生まれておるのだという、さような若干こじつけではありますが、解釈でもしないと、十六条は意味が通らなくなるというような感じを持つのであります。  そのようなことで、公労法のできの悪いことは申すまでもありませんが、それにいたしましても、とにかく三十五条を中心にして考え、十六条は例外として、これを厳格に解釈するという建前だけは貫かないというと、とにかく調停裁定の区別さえつきにくくなる、かような感じを私どもとしては常に抱いておるのであります。
  12. 永岡光治

    ○永岡光治君 只今説明で非常にまあ私たちも解釈上すつきりして来たのでありますが、そうなくてはならないだろうと思うのでありますが、そこでこれも一つそういう立場一つお尋ねしてみたいと思う。そういう立場ということは、最終の決定権は広くは国会ということがこの法律の解釈の上ではできるかも知れませんが、今まで調停をされて来たという立場でお尋ねするわけでありますが、第十六条の「公共企業体予算上又は資金上、不可能な資金の支出を内容とするいかなる協定も、政府を拘束するものではない。」ということがございます。協定を結んだときに、その協定は政府を拘束しないのだということにしておりますが、ここでいうところの「予算上又は資金上」というのは、これは今井さんが大蔵省におられたかたでもありますので、この「予算資金上」という問題についても、一つ政府としての考え方をお持ちだろうと思う。当時の役人としてのお考えをお持ちだろうと思うのでお聞きするわけでありますが、よく私たちが聞くことは、予算上という言葉、例えば二十八年度ならば二十八年度予算の中で款項目に分かれて決定するわけであります。その中で予算総則というものがございまして、例えば郵政事業においては、昭和二十八年度人件費は四百五十八億一千万円、このいわゆる予算総則にきめられているこの金額、これを超えてはいけない。予算上ということはそういうことを言つている。従つて歳出勘定ならば歳出勘定全部、建設勘定だとかいろいろありますが、全部の、この予算上というのは総計の、郵政省に与えられた人件費物件費合せていわゆる全部の総勘定の総計を予算言つておるのか、それとも各款項目に定められたもの、その個々のものについての予算上それを上廻つたらいけないというように解釈するのが正しいのか、この点については私たちもよくわからないのであります。政府は頻りと項を超えたならば、款項目という費目がありますが、それを超えると駄目だということを言われているのでありますが、非常に疑問に思うわけであります。だとすると、若しそういうことならば、幾ら裁定が出ましても、それは最初からきまつているのですから、いつも実施できないということになる。そういう不合理は私はないと思うので、総体の予算ということを考えるべきじやないかと思う。又この「資金上」、この資金というものの解釈も、総勘定に余裕ができた資金、それがあればやはり不可能ということは使えないのじやないか、あれば当然これはできるのじやないか、支出も可能じやないかという解釈を私たちはとりたいのであります。これはやはり政府はそれも駄目だということを頻りに言つておるわけでありますが、この辺の事情一つどのように考えておられるでありましようか。
  13. 今井一男

    説明員今井一男君) 公労法は御承知のように二十三年四月のマ書簡が基礎になつておりますので、私たちマ書簡の趣旨とリンクさせてこういつたものを判断するのが立法の趣旨に合うのじやないかと思いますが、マ書簡は極力政府対労組の対立ということを避けさせよう、それによつて当時盛んでありました全官公の組合が政治運動化するのを防こう、こういつたことが一番の骨子になつているように少くとも私は読んだのでありますが、そういつた狙いから問題を国会と繋ぐ、人事院勧告もそうでありますけれども、そういつたような線がはつきり出ている。従つて十六条の趣旨も、国会の権限を仲裁や協定によつて破ることは相成らんぞ、こういつた趣旨に読むことが私は一番精神に副うゆえんだろうと思う。予算という文字そのものは御承知の通りいろいろに解釈できます。できますが、御承知の通り郵政省がまだ公労法の適用を受ける前、乃至国鉄等におきましても改正になります前におきましては、今おつしやいました千億ならば千億、二千億ならば二千億という予算の枠全体がこれが国会議決の対象でありまして、その中の流用はこれは全部政府に任せるという建前ででき上つております。それでその意味から千億なら千億、二千億なら二千億の枠を超す場合、如何なる理由がありましても、その超す場合は国会議決を必要といたします。その議決を経ないでこれを変更するということは、これは予算の実行上困る。そこで千億なら千億というものを超す場合には改めて国会の承認をとれ、こういつたのが十六条の趣旨であろうと考えるのでありますが、併しこれにつきましては御記憶があると思いますが、第一次国鉄裁定、第一次専売裁定におきまして、国会で二十四年の十二月から一月—三月にかけましてかなり賑やかな討論がありまして、私もそれにずつと出席いたしておつたのでございますが、そのときには流用を大蔵大臣が承認するか承認しないかということが非常に議論になりました。大蔵大臣がこれを承認いたしますというと予算上可能になり、承認しないというと予算上不可能になる。国会から行政府のお前ら限りでやつてよろしいと任された範囲でありましても、なお政府がこれに対して判断を加えて国会に出す出さんという議論が盛んであつたのであります。第一次の国鉄裁定のほうは全体の予算の枠も超える問題でありましたので暫く別でありますが、第一次専売裁定につきましては、全体で約四億ばかりの支出でございまして、全体の予算の中から申しますと、絶対にはみ出す心配のない問題でありました。併しこれを政府国会に提出されたのであります。併し最終的に三月の初めになりましてこれを撤回されまして、全部それを履行されたのであります。即ちその意味からも当時からすでにその全体の枠を超えない範囲内のものは、これは国会へ聞く必要がない問題でありますから、国会の承認の要らないものはこれは予算上可能だ、こういつた建前に私は恐らく政府の解釈もそういうふうに変つたのじやないかと、こういうふうに実は承知いたしておるものでございますが、ところが第一次裁定の二十四年度まではなかつたのでありますが、二十五年度予算からそういつたように給与総額という枠が別個に入つたのであります。二十四年度まででありますれば、今申上げましたように、全体の枠だけの予算予算上可能、不可能という問題にぶつかりましたけれども、二十五年度からはその中の特定の人件費総額というものが幾らという枠ができましたので、その枠を変えるためには、予算の中で国会でおきめになつたルールを変えますので、国会の承認が法律的にどうしても必要になつて参ります。従つて二十五年度以降におきましては、二億なら二億という全体の枠は超えませんでも、人件費を殖やすためにはやはり国会の承認を経なければならんというふうに、国の予算上不可能だという意味が給与総額の決定によつてつて来た、かように理解せざるを得ないと思うものであります。これは公労法の改正というか予算建前の改正でございますが、それによつて公労法の解釈も動いて来た。資金上の問題も私は同様の意味におきまして、国会の御承認がなければ政府限りでやれないものだ、これは資金的に言つて国会の承認が要ると、仲裁裁定が最終であると言つたつて、或いは両当事者がよろしいと言つたつて、それはいかんぞ、従つて例えば現金がない、年末資金を払いたいのだが、年末までに現金がそこにできない、それを借入れしようにも借入金の枠がない、こういつた資金上困る場合に改めて国会のお許しを頂かんというと、仮に年度末までには返せる金であつてもこれは出すことが想成らん。飽くまでも国会予算審議権というものを中心に規定されたのがあの十六条の予算上質金上可能不可能という問題だろうと思うのです。  なおついででありますから、ちよつと一言ございました政府を拘束しないという言葉でございますが、私どもは、政府公社に対して金を払つちやいかん、こういう命令を下しているのだ、予算というものはこれは政府が管理しております関係から、そういう命令権を出すことを少しもチエツクするものではない、こういつた意味に読むことが十六条と三十五条とのつながりとしては好都合なんじやなかろうかと従来考えて参りました。但しこの政府という意味そのものは、実を申しますと、昨年の公労法の改正によつて甚だ法律論的に妙な事態が起つたことも事実であります。即ち昨年までは公社以外のものは公労法の適用を受けませんでしたから、従つて公社という国と別個の法人格のものがその組合員と協定を結ぼうと仲裁裁定を受けようと、これは政府という第三者は全然当事者外であつて、従つて拘束を受けるとか受けないとか、法律論として言うのはおかしい、全然別個のものだ。ところが国営企業が今年一月から入ることになりましたが、国営企業の場合に交渉委員会の形で出て参りますときに、これは個々の官庁の長でありますけれども、併し一個の国の直接の企業責任者といたしますというと、やはりこれは政府というふうにも読めるのじやないか、そうなりますというと、読み方如何によつては前の公社だけの公労法の場合と違いまして、政府を拘束しないという政府そのものがちよつとおかしなことに相成つて来るということは、私ども改正後若干気になる点であります。
  14. 永岡光治

    ○永岡光治君 そうしますと、ここでもだんだん明確になつて来たわけでありますが、政府はこの国会の承認、ここで議決を求めるという……、これは政府委員にお尋ねするわけでありますが、仲裁がいいか悪いかを審議してくれという趣旨であるのか、それとも私の解釈としては、やはり政府はこの仲裁がいいとか悪いとかいうことでなしに、これに要する予算が出せるとか出せないとかいう意味においての予算の問題についてのみ国会審議をお願いするという形になるだろうと思うのでありますが、そういう出し方をしなければならんと思うのでありますが、どういうようにお考えになつておりますか。
  15. 八藤東禧

    説明員(八藤東禧君) 只今の御質問は、事務当局の限界を超える幅がありますので、その点に関しての御答弁は御容赦願います。  私たちの事務当局といたしまして国会へ提出したこの原案の作成におきましては、事実をありのままに申上げる次第でありまして、二十八年度予算の成立内において四十億円は誠に予算上不可能である。そういうような趣旨のことを事実ありのままに申上げたわけでございます。
  16. 永岡光治

    ○永岡光治君 これは実に私もおかしいと思うのです。本会議以来の政府説明を聞いて実によくわからないので、どうしてくれというのかちつともわからないわけです、この承認を以て議決を求める件というのは。それでこれは予算委員会に出ましたときに政府に聞いたら、それはいいとも悪いとも政府は言いかねておるので、審議をとにかくしてくれという趣旨なので、それで十二月の初めに更に通常国会を早めて第二次補正を組むから、そこで審議をしてもらいたいという答弁がありましたから、いよいよ以てどういうふうに私たちは結論を出していいのかわからないと思うので、それじやこれを国会で実施しろと決議したならば、その通りやるのかと言つたならば、これは予算の問題でまだその見通しは付きませんからというので、実は困つた私たちの態度を決しかねる答弁をしておるわけですが、そういう意味で私は当然この国会にこの問題を審議してもらう政府の態度としては、予算資金上不可能、例えば資金の余裕の付く特別会計というものは、かようにすればよろしうございますということを、予算を組替して国会にこれでやつてくれということを出して来るのが至当だと考えているのです。なぜならば、第三十五条の規定を見ましても、最終的にこれは政府は服従しなければならんということを明確にしておるのでありますから、仮にこの資金があれば、これは当然組替えて出さなければならないと思つておるのでありますが、その資金がないと、今はあつても将来はわからんという趣旨の答弁もあるようでありますが、そこでこれを一つ政府委員のほうへお尋ねしたほうがいいと思うのでありますが、只今今井さんの御説明で大体わかつたのでありますが、資金上不可能ということは、たとえ金が余つてもそれはやはり国会の承認を必要とするという趣旨のことでありますが、この予算上質金上という解釈について、この予算総則にそれぞれ人件費がきめられておりますが、相互利用ということは認めることはできない建前になつておるのでありますが、認める範囲はどの程度に限定されておるのでありますか、その点をお尋ねしたいと思います。
  17. 佐方信博

    説明員(佐方信博君) お尋ねの趣旨は給与総額の中において流用をするかせんかという問題が一つあると思います。それから今までのように給与総額以外のほかの項目、旅費だとか物件費から流用するかせんかという問題があります。今の段階におきましては、在来のような物件費から給与総額を出すという途は一応開かれて来ておりません、できないという建前であります。それから給与総額の中におきましては、給与がきまりました本来の趣旨は、給与総額の中においては項目の流用は自由であろうとは思いますけれども、今のところ財政法の規定は飽くまで給与総額の中におきましても、目款の流用は大蔵省の承認を経なければならないということになつております。併し事実問題といたしましては給与総額の中であれば、これを人件費同士では流用してもいいのじやないか、或いはそれを大蔵大臣はそう文句を言わずに流用すべきものではなかろうかというような立場でございます。
  18. 永岡光治

    ○永岡光治君 そうすると、この人件費というのはここで予算総則で言われておるこの基本給、石炭手当、寒冷地手当、宿日直手当、特別勤務手当、期末手当、勤勉手当、奨励手当及び休職者給与、こういうものに限られておると解釈せざるを得ないのでありますが、その他の例えば退職金だとかいうようなものはこれはもう含まれていないと解釈せざるを得ないと思うのでありますが、そのように解釈してよろしゆうございますか。
  19. 佐方信博

    説明員(佐方信博君) 今おつしやいました通り、その予算書に載つておる通りの金額だけが、項目だけが給与総額であります。
  20. 永岡光治

    ○永岡光治君 過去においていわゆる人件費以外のものを流用することについて国会の承認を経ず政府だけで流用した例はないかどうか、あると思うのでありますが……。
  21. 佐方信博

    説明員(佐方信博君) これは郵政事業の場合におきましては、今年の一月からこういう問題が起つたのでありますので、今おつしやいましたようなことは何もないわけであります。
  22. 永岡光治

    ○永岡光治君 郵政事業においてはまだ経験がないということで、それはできないということにはならんと思うのであります。ということは、これはここに議事録にもあるわけでありますが、行政整理の際に退職金とやはりこの基本給と組替える、それをいじらなくてもこの前ここに提案を示されたときに、政府の原案は修正された、併し当初予算政府原案で出されておる、この人が減り、政府原案により整理されると少くなる、併し修正で人件費は殖えることになるので、一体どうするのだ、予算を編成するのかと言つたら、池田大蔵大臣はいやそれは編成しない、退職金のほうから廻せばいいのだ、二十六年十二月ですか、そういう答弁をしておるのですが、それは私はできると思うのですが、どうでしようか。
  23. 佐方信博

    説明員(佐方信博君) いや、今のお話は少くなるといいますか、先ほどの話と少し違いまして、今度は公企労法が適用になつてから給与総額の中にある費目にほかの旅費や物件費から持つて来れるかどうかということになると、原則としてできなくなつて来る。ところが公労法施行以前において、或いは公労法施行後におきましても、給与総額以外の経費にほかの費目から持つて行くということは飽くまでも大蔵省に任されておるところの権限であります。従いまして、退官退職手当のごときはいわゆる給与総額に含まれておりませんから、本当に必要があるならば、それは国会の承認を経ずして大蔵省限りで流用することができるということになるわけであります。
  24. 永岡光治

    ○永岡光治君 できるわけですね。
  25. 佐方信博

    説明員(佐方信博君) さようでございます。
  26. 永岡光治

    ○永岡光治君 わかりました。そこでこれはちよつとお尋ねするわけですが、今日の朝日新聞を見ますと、政府の今考えておる予算の一部が出ておりますが、そこで朝日新聞には郵便貯金特別会計の損失補てんとして六億ですか、これは毎日新聞では郵便貯金の奨励手当というようなことで謳つておりますが、これはどういう性質のものですか。
  27. 佐方信博

    説明員(佐方信博君) 実は今度の第二次補正予算に関しましては、政府間におきまして何らまだ交渉いたしておりません。従いまして、それは大蔵省の原案を新聞社で出したものだと思うわけでありますが、ただ私たちのほうで今いろいろ考えております中で、結局二十七年度貯金特別会計の決算をやつて見ますると、支払い利子が不足しておる。それでその金を欲しいという要求をいたしております。  それから貯金関係等におきまして、いろいろな補正の材料になるような資料を要求いたしておりますので、その分のどれがどういうふうになつているか、まだお互いに全然話はしておらんわけであります。全く大きな数字として閣議で論議されて、どうやつて行くかということが問題になつておりますので、事務当局間では何ら折衝をいたしておりませんから、はつきりお答えできないわけであります。
  28. 永岡光治

    ○永岡光治君 これ以上突つ込んで、一体この公企労法建前裁定をどう取扱うか。現在に至つた政府の態度という問題については、これは郵政大臣みずからの出席がなくては、私は質問をしてもやはり事務当局には答弁しにくい問題があろうかと思いますので、今日も実は郵政大臣の出席することを約束いたしましたので期待しておつたのでありますが、見えません、極めて残念であります。委員長において明日の委員会に必ず大臣の出席を一つして頂くように約束をしてもらいまして、私はこの仲裁裁定に書かれておる内容について一つだけお尋ねしたいと思うのですが、ここに郵便事業としては大体二十億を超える自然増収によつて辻褄が合わせ得られるのではなかろうかという趣旨のことが書かれておりますが、郵政事務当局はこれを確認されますか。
  29. 佐方信博

    説明員(佐方信博君) これは裁定をそのまま呑む場合にはこれだけの金が要る、郵政関係だけで十六億という数字になつているわけであります。そのほかに新たな問題としまして〇・五を今後どうするか、それから私ども自身で補正予算につきましていろいろ要求をいたしておるわけであります。その全体の数字を見ませんと、確定したことは申上げられませんけれども、今の裁定だけということを取上げてみますると、郵政としては自然増収で以てやつて行けるのじやなかろうかというふうに考えております。
  30. 永岡光治

    ○永岡光治君 ここに書かれてある二十億という数字が出ておりますが、大体このぐらいの増収はございますか。
  31. 佐方信博

    説明員(佐方信博君) それぐらいのことは出るだろうと思つております。
  32. 永岡光治

    ○永岡光治君 一応質問を終ります。
  33. 池田宇右衞門

    委員長池田宇右衞門君) 他にございませんか。
  34. 三木治朗

    ○三木治朗君 ちよつと横川さんにお尋ねしますが、最前のお話の中に郵便貯金コストが、六分四厘では上らなくて損失をしておるというようなお話がありましたが、それはどのくらいの損失をしておるのですか、おわかりになりますか。
  35. 佐方信博

    説明員(佐方信博君) どうも横川さんに対するお話でありますが、予算の話でございますから……、二十八年度予算におきましては、貯金会計は支払利子が百七億あるわけであります。いわゆる郵便貯金を預けた人に対しますところの利子が百七億です。それから郵政事業におきまして貯金事業運営しますために、大体貯金局長以下の人件費でありますとか、或いは物件費、そういうものを郵政会計に繰入れておりますが、そういうのが百十八億あります。合せまして二百二十五億というものが貯金会計の歳出になるわけでございます。これに対しまして歳入は何かと申しますと、いわゆる郵便貯金資金運用部に預けておりますところの預託金があるわけであります。それが今まで三千億になつております。その三千億に対しまして六分四厘の利子大蔵省は払う、郵便貯金特別会計はそれを受入れるわけであります。その六分四厘の利子が百九十四億になるわけでございます。従いまして、今の歳出合計から百九十四億の歳入を引きますと差額が約三十一億ほどになるわけであります。その分は一般会計から郵便貯金特別会計へ繰入するというようなことになつております。今度裁定を実施いたしますと、郵政会計への繰入が殖えますので、一般会計から郵便貯金特別会計へ補給する金が三十一億の上に幾分か殖えて来るということになります。
  36. 三木治朗

    ○三木治朗君 その不足の金は毎年ちやんと繰入されているわけですか。
  37. 佐方信博

    説明員(佐方信博君) 予算に上つております数字では必ずまあ賄つているということになつております。
  38. 三木治朗

    ○三木治朗君 そのほかにそれだけで本当にその収支は償い得るのですか。数字の上に出ただけで……。
  39. 佐方信博

    説明員(佐方信博君) 一応償うことにいたしております。
  40. 池田宇右衞門

    委員長池田宇右衞門君) 他に御質疑はございませんか。  別に御質疑もないようでございますから、本日はこれにて散会いたします。    午後三時九分散会