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参考人(鈴木強君) 電
電通の鈴木でございます。
国会が休会中であるわけですが、特に本
委員会が私
ども日本電信電話公社に従事する十七万の
職員と、更に
公労法適用下の百万に近い労働者が極めて当面切実な、而も重要な要求として掲げております
仲裁裁定の問題につきまして御
審議を頂いておりますことにつきましては、私
ども心から敬意を表する次第でございます。なおこの機会に、特に
国会の中で私
どもの従事しております
電信電話の
事業につきましても、いろいろと今日
公社が発足して一年有余になりまして、たくさんな問題を掲げておりますが、絶えず
国会の中で
国会議員の
立場から御指導と御鞭撻を頂いておりますことにつきましても、この機会に御礼を申上げたいと思います。なお今日は補助
説明的に、私
どもの中央執行
委員の山本君もこちらに来ておりますので、その辺も
一つ、後ほどいろいろ御質問の際に御答弁等をや
つて頂くことになりますので、その点は御了承願いたいと思います。
さて、今議案にな
つております
仲裁の問題について
政府の出しております件でございますが、我々電
電通の労働
組合としましては、すでにお手許にも御配付にな
つておりますように、本年の三月の臨時
全国大会で、最近の
労働生産性の向上の現況に鑑みまして、少くとも我々
電通の労働者の
賃金というのは戦前に復帰して頂きたい、復活して頂きたいという
根拠の下に、一万八千五百三十二円というベースをきめまして、
公社当局に私
どもが要求をしたわけでございますが、その後団体交渉が、昨年の皆様方の御協力を得て行政措置として
実施いたしました
調停案を
実施してまだ日も浅いし、更にその後の物価の状況等を見ましても、べース・アツプをする必要はないというような
最終的な
公社の
態度でありましたために、団体交渉が決裂いたしまして、その後
公労法に
従つて我々は
調停の手続をとり、更にその出された
調停案につきましても種々検討いたしましたが、我々はこれを不満として
仲裁に提訴をした次第でございます。そうして二ヵ月有余
仲裁委員会に慎重なる御討議を頂きまして出しましたのが、今お手許にあります問題にな
つている
電通の
仲裁裁定でございます。その内容は
調停案と全く同じでございまして、特に我々この問題については非常に検討を加えましたが、とにかく
実施時期が、
調停案では四月以降にな
つておりますが、
仲裁では八月にな
つておるというような点等いろいろ不満はございました。併し我々が日本の法治国家の国民として、又
公労法に不満であ
つても左右されておる労働
組合としては、これらの不満はあるとしても、やはり出された
仲裁というものは承服しなければいけないという
態度で、私たちは
仲裁裁定の
実施を決定した次第でございます。その後
政府に対しても、或いは
公社に対しても、いろいろと私
ども仲裁定が
実施できますように交渉も持ちまして、そこで我々が
仲裁裁定が出まして
公社とのいろいろと交渉の中で明確になりましたことは、
公社としてもいろいろと検討を加えた模様でございますが、
結論としては、
仲裁が妥当だということを認めまして、すでに補正
予算の手続も、
仲裁裁定を基礎にした補正
予算を出しまして、
政府にもいろいろかけ合
つたようでございますが、
政府が御
承知の
通り公労法十六条二項によ
つて、
予算上の問題で
実施できないという
態度に出ておる次第でございます。これは先ほどからもいろいろと御
質疑がありましたように、極めてナンセンスな話でありまして、当然
予算的な措置を講じなければ出せないということは当り前なことであ
つて、ならばなぜできないかという理由を明確に付して出すべきにかかわらず、ただ単に
仲裁委員会から出された
裁定と、その
理由書だけを付して今
国会に承認の件ということで出しておる。こういう
態度について我々は全く不満でございます。少くも
公労法というものができました経緯は、先ほどからも御論議がありますように、いろいろ経緯をと
つておりますが、この二十三年の七月に例のマ書簡が出まして、少くとも我々がストライキ権を奪われた。労働
組合が基本的な争議行為というものを奪われて、その代償として
公労法というものができたわけです。それがいわゆる
仲裁の
制度であ
つて、我々ストライキのない労働
組合としては、この
仲裁裁定というものは法理的に申しても、
最終的には両当事者が完全にこれに服して
紛争が解決できるというものであるというように私
どもは確認して、いわゆる
公労法第三十五条というものが立法の大精神であるというふうに
考えておるわけですが、たまたま十六条の二項というような条項がありまして、これがいわゆる問題にな
つておることはすでに御
承知の
通りでして、こういう点がいわゆる日本の
公労法上の一番これは欠陥であ
つて、
予算上、資金上で
実施できないということにな
つて、折角出された
仲裁というものが
実施できないということで、過去五年余りいろいろとこの問題は毎年年中行事のように問題にな
つておる。少くも我々は
労使間の
紛争が、
最終的に
仲裁で決定して、
裁定が出たならば、お互いにもう働け働けで一生懸命
仕事に精進して、そうして国民の皆さんに満足なサービスができるようにという形に持
つて行くのが
公労法の精神であるにかかわらず、日本では
仲裁裁定が出てから労働
組合の闘争が激しくなるというような馬鹿げた私は今の労働情勢を見まして、非常にまあ残念に思うわけですが、こうい
つた点は
一つ公労法の大精神から
考え、当然なことでもあるし、法の運営等については是非とも
国会の皆様方がよろしく
一つ御配慮を願いたいと私
どもは思
つておるわけでございます。
もともとこの
仲裁の
制度に対していろいろ今日批判が出ておるのですが、我々はむしろこうい
つたふうな蛇の生殺しのような、そうしてこれがどこで解決するのかちつとも見当がつかないような
公労法であれば、これはむしろ撤廃して、そうして基本的に我々に憲法で保障されたところの争議権というものを与えて、そうしてその中で対等に
労使が要求を解決して行くほうがずつとましだと我々はつくづく
考えざるを得ないわけであります。特に我々も昨年八月に
公社になりまして、
公社当局もいろいろと
考えておるようでございますし、我々は特に今日あらゆる角度から、専業に対する批判もありますので、何とかして我々は
事業を国民の皆様の要望に副うようにということで、労働
組合がむしろ積極的に
事業の再建闘争ということを取上げて、今日定員も不足でありますし、職場の環境も悪いし、あらゆる悪条件の中でも我我が
事業と共に
とつ組んでや
つておるというような
立場にあるだけに、本当に
公社にな
つて、何とか
一つここでいい妙味を発揮できるだろうという期待を持
つて発足した
公社が、昨年の
調停案にしても然り、又今回最初に出された
仲裁というものがこういう形で葬られるとするならば、十七万の
職員というものが働く意欲というものをなくしてしまうであろうというふうに私
どもは、極端でございますが、
考えております。それでこれはちよつと先ほど山田先生からもアメリカの例が出されたようですが、先般ILOのアジア
会議が東京で開かれまして、私もたまたまそこに日本代表顧問で出席する機会を得ましたのですが、その際ビルマ代表の方々と
お話したことがあるのですが、ビルマは
公務員といえ
ども争議権があるそうであります。併しやはりこの日本の
仲裁制度と同じような
制度がございまして、そこで
最終的に
労使の
紛争が判定される。それはもう直ちに
法律で両当事者が拘束されて、それが
最終の解決の場として
実施されておるので、まだ
曾つてストライキ権を行使したことがないという
お話を私は聞きました。ビルマは第二次世界大戦後に独立した国でありますし、そうい
つた短い歴史の中でもなお且つ労働
組合と経営者側との慣行というものはそういうふうに明確になされてお
つて問題が解決されるということを聞きまして、日本の
公労法なんかを
考える場合には、誠に私は残念のような気がしてたまらないわけであります。こういう経緯を
考えてみると、少くも
公社当局が一万五千円の補正
予算を組んで、
郵政大臣を通じ大蔵省に要求をしたことは
実施できるという肚が明確にあるわけです。ところがそれに対して
政府が、まあ十把一からげのような形で、八つの
裁定を十六条二項という、この例外的な条文を盾にと
つて、
予算の補正もしないという恰好で出されたところに、我々としては
政府のこういう
態度に対して誠に心の中から憤激を感ずるわけでございます。
従つて我々はこの
仲裁が示された後、私は
電通の
公社の経理状況はどうな
つておるのかということについても、
組合は
組合としていろいろと検討をしてみましたが、
仲裁の
理由書の中にも書いてありますように、資金的には今後
労使の協力があるならば十分できると
考えられるというふうに謳
つてあるわけですが、御
承知の
通り、昭和二十七年度の
公社決算書も漸くでき上りましたが、それを御覧にな
つて頂いても、昨年度当初
予算から比べて百億
程度の増収を上げておるわけです。而もいろいろ支出を
考えて差引計算してみますと、四十三億円というものが明らかに昨年度利益金として、これはあるわけです。こうい
つたことは勿論私
ども先ほど申上げたように、我我も経営者の諸君と協力をして再建闘争を積極的に推進している過程で、例えば昨年の
事業計画の中で
電話の加入増設、こうい
つた点、或いは市外回路の増設等を見ましても、当初予定しておりました加入
電話の増設等も十二万九千個でありましたが、十八万二十個というような
数字まで我々は実績を上げております。更に市外回線増設予定についても、官制九万キロの予定に対して十二万四千キロというような実績を収めていることもこれは又事実でございまして、こうい
つた点、更に我々が
一つの工事をする場合でも、その工事計画に対して、いわば
従業員が突貫工事的に
仕事に従事して、予定の工事日程から早めた完成をしておるということで
事業の収入を得ておるという点もございます。勿論これは最近
事業の機械化とか、いろいろ工夫をこらしておるために、我々が全部働いたから儲けたのだというような私は極端なことは言いませんが、少くともこの四十三億というものが、そこに働く十七万の労働者の積極的な
事業に対する協力があ
つて、それと経営者の諸君の努力というものが一体とな
つて現われたこの利潤の四十三億であるというふうに
考えておりますが、こうい
つたとにかく利潤を上げておりますので、我々としてはまあこの四十三億というものを、非常に我々ベース・アップする場合の大切な財源だというふうに
考えております。ただ我々としてはどうも納得できないのですが、
あとから聞いた話ですと、四十三億儲けた中ですでに十九億というやつを昨年の八月に
公社に移行する場合に政令で以て固定資産に繰入れられておるということを、私
どもは
あとで聞きました。これは以てのほかで、経営者のやることで、
事業の管理運営であるから労働
組合は像を容れることはないと言われればそれまでかも知れませんが、少くとも十九億というものを我々が全然知らん間に固定資産に繰入れられておるというような措置がとられたことは、非常に我々としては不満です。死んだ子の年を数えるようなもので、止むを得ませんが、それにしても四十三億のうちから十九億を引いても、二十四億というものは利益金がどこかの銀行に積み立ててあるという勘定になるわけです。それから私
ども今年になりまして、先般の料金改訂の問題等も
国会で御
審議を頂き決定して頂いわたけですが、第一・四半期分どの
程度の収益があるかということで非常に期待を持
つておりましたが、決算によりますと、本年度の第一・四半期すでに十八億の利益金を出しております。更にこの
仲裁の
理由書にありますように、今後我々が本当に努力して行けば、我々は今年度五十億
程度の少くも
組合側の
見積りで行けば利潤を積み立てて行くことができるであろうという
判断をしております。まあすでに東京、大阪、名古屋、こうい
つたところも
電話の準則時化ということも完成しておりますし、我々が今後積極的に今申上げたような
事業に対する努力をすれば、その
程度の利潤は我々としてもできるのではないかという
考え方を以ちまして、
仲裁裁定に必要な資金としましては、
基準内
賃金が約二十五億五千万円になります。それから更に
基準外
賃金として年末手当の一カ月分のこのベース・アップに伴う増加の分と、そのほか夜勤手当とかいろいろな諸手当がございますが、そうい
つたようなものを大体
組合としては約十五億九千万円に踏んでおります。そうすると、その合計が四十一億四千万円になりますので、当然この
仲裁裁定というものは完全に
実施ができる。
従つて公社には資金上から言いますならば、当然
仲裁裁定を
実施する
能力があるのだということを明確に確認できますし、このことは、先ほど申上げますように、
公社当局がすでに補正
予算の中で一万五千円の補正
予算を出しておるということとぴ
つたり合うわけでございまして、どうもこういう点から行くと、今回
政府のと
つた承認を求める件については、我々としてはどうも納得できない。やはりこれは明らかに
政府が打出しているところの統一
賃金的な問題、いわゆる私
どもが上ることによ
つて一般の
公務員の問題、或いは地方
公務員の問題、こうい
つた関連性の上で機械的に十六条の二項というものを出して来たのだというふうに我々は
考えざるを得ないわけであります。
ただここで資金的な面で我々も心配になる点は、先般の
国会で料金の改訂をして頂きましたが、その際建設資金として不足額が約二十五億あることは皆さん御
承知の
通りでありますが、
公社のほうはこうい
つた点がはつきり見通しがつかないので、この儲けた中から二十五億円をというような気持もあるのじやないかと思いますが、これは私
どもどうしても納得できないので、少くとも前の料金改訂の場合には、この二十五億の赤字については、
国会ではその措置をとるという決議もされておるのでありますから、そうい
つた点は是非今後皆様の御協力によりまして、先般
久保委員から塚田
郵政大臣にも御質問があ
つたようでありますが、実は私も傍聴いたしておりましたが、どうか次の
国会におきましてこの二十五億の補正をして頂くように、これは是非御努力願いたいと思います。
そのほか支出の分として
公社が
考えておるのは、御
承知の
通り、
電信電話事業も先般の水害によりまして相当被害を受けました。今見込まれておるのが、復旧費として約十四億五千万円
程度が
考えられておりますが、これはまあ増収分から補填するというのが
公社の
考え方ですが、あえて我々はこれについては反対いたしません。併し少くとも二十五億の不足分については、是非
一つ、前
国会の
議決事項でもありますので、次期
国会において第二補正として
国会の補填をお願いするのでありますが、こういうものを引いても完全に
実施できるというのが
公社の資金計画、これがまあ
組合側の見た
公社の経理状況でございます。
それからこの機会に是非申上げて御協力頂きたいのは、
公社の定員問題でございます。この点は、
仲裁の
裁定理由書の中にもありますように、従来これは
電通省当時からも非常に問題でありましたが、御
承知の
通り、
公社の、或いはその当時の
政府の
考え方として、
事業の実態に即した定員の配置ということがなかなかできませんでして、機械的に定員法というものができて、五分なら五分、一割なら一割というものを切られてお
つたということで、我々の
事業実態に合
つた定員措置というものがなされておりませんでした。そのために、
仕事が日に日に拡充されて行きますので、何といいますか、姑息的な手段として
賃金支弁の用員という者を抱えておるのが実態でございます。そういう観点から、特に本年の四月そうい
つた人たちの身分が社員に切替えられたために、給与総額全体から見ますと、きめられた給与総額の中で、入
つて来た
賃金支弁の
人たちが給与総額を食
つて行くというような恰好に実はなるのでして、そういう点で非常に我々は困
つているわけですが、今回
仲裁委員会でもそうい
つた点はやはり是正しなければならないという趣旨を
理由書の中に述べられておりますから、こういう点
一つ是非とも今回の
仲裁裁定を契機にしてすつきりして頂きたいと思います。そうい
つた点から、
組合としては、
予算定員と実在定員の差約八千七十一名というものを
予算定員の中に組入れて頂きたいという
考え方を持
つておる次第でございます。
最後に申上げておきたいのですが、以上申上げましたように、我々は少くも民生的な労働
組合運動を基調にしまして今日までいろいろと努力をして参
つておりますが、先ほ
どもお話に出ましたように、国鉄の先例もございます。併し今日まじめな全
電通の労働
組合の組織の中に入
つている
組合が
考えていることは、
仲裁が出て、その
仲裁が、
公社は大体まあ
仲裁書にもあるように、資金的には可能だと、而も
公社がその補正
予算の措置をと
つたことも、これは全
職員が知
つております。
従つて、
公社にそういう
能力があるということを
仲裁委員会が認め、而も
公社がその意欲に燃えて独立
企業としての運営をして行こうというのにかかわらず、
政府が一括した
立場で不承認の
態度に出て来ることについては非常に憤激をしております。で、私
どもは、
お話のありますように、年末を控えてこれをどういうふうに収拾して行くか、
組合幹部としても非常に悩んでおりますが、若しこの
仲裁裁定というものが不
実施ということに不幸にしてなるならば、これによ
つて生ずる不測の
事態というものは、私
どもとしては絶対に保障することはできません。我々としても相当な決意を固めて、今年は
法律を遵守し、而も
仲裁裁定というものを活かして行きたいという
考え方から、非常な決意を以て闘いを進めて行きたいということも率直に
考えております。今日我々は
法律を守ろうという意欲に立てば立つほど、下からの
組合員の盛上る力というものを抑えることができません。ですから、去年に増した困難が当然予想されるという
考え方を持
つておるだけに、是非とも
電気通信事業に対しては、深い理解を以て今日までいろいろと御指導して頂きましたこの
電通委員会において、慎重に
公社の経営状態についても
一つ御
審議を願
つて、是非とも我々の
最終的な争議の解決の場として出された
仲裁裁定を
実施できますように、格段の御助力をお願いしたいということを申上げまして、私の陳述を終ります。どうも有難うございました。