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1953-07-30 第16回国会 衆議院 予算委員会 第26号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年七月三十日(木曜日)     午後二時十三分開議  出席委員    委員長 尾崎 末吉君    理事 小峯 柳多君 理事 西村 直己君    理事 西村 久之君 理事 川崎 秀二君    理事 八百板 正君 理事 今澄  勇君    理事 池田正之輔君       相川 勝六君    植木庚子郎君       江藤 夏雄君    倉石 忠雄君       小林 絹治君    迫水 久常君       庄司 一郎君    鈴木 正文君       富田 健治君    中村  清君       灘尾 弘吉君    羽田武嗣郎君       葉梨新五郎君    船越  弘君       本間 俊一君    八木 一郎君       山崎  巖君    芦田  均君       小山倉之助君    櫻内 義雄君       志賀健次郎君    椎熊 三郎君       中村三之丞君    古井 喜實君       青野 武一君    勝間田清一君       福田 昌子君    武藤運十郎君       八木 一男君    横路 節雄君       和田 博雄君    加藤 鐐造君       小平  忠君    河野  密君       中居英太郎君    平野 力三君       三宅 正一君    石橋 湛山君       根本龍太郎君    三木 武吉君       黒田 寿男君    福田 赳夫君  出席国務大臣         内閣総理大臣  吉田  茂君         国 務 大 臣 緒方 竹虎君         外 務 大 臣 岡崎 勝男君        大 蔵 大 臣 小笠原三九郎君         厚 生 大 臣 山縣 勝見君         労 働 大 臣 小坂善太郎君         国 務 大 臣 安藤 正純君         国 務 大 臣 木村篤太郎君  出席政府委員         内閣官房長官  福永 健司君         法制局長官   佐藤 達夫君         保安政務次官  前田 正男君  委員外出席者         専  門  員 小林幾次郎君         専  門  員 園山 芳造君         専  門  員 小竹 豊治君     ――――――――――――― 七日十八日  委員小澤佐重喜君及び水田三富男君辞任につき、  その補欠として倉石忠雄君及び鈴木正文君が議  長の指名委員に選任された。 同月二十二日  委員勝間田清一辞任につき、その補欠として  伊藤好道君が議長指名委員に選任された。 同月二十三日  委員櫻井奎夫君辞任につき、その補欠として武  藤運十郎君が議長指名委員に選任された。 同月二十四日  委員荒木萬壽夫君、竹山祐太郎君及び三浦一雄  君辞任につき、その補欠として櫻内義雄君、古  井喜實君及び稻葉修君が議長指名委員に選  任された。 同月二十五日  委員中居英太郎辞任につき、その補欠として  吉川兼光君が議長指名委員に選任された。 同月二十七日  委員福田昌子君、八木一男君、小平忠君及び始  関伊平辞任につき、その補欠として萩元たけ  子君、長谷川保君、中村高一君及び三木武吉君  が議長指名委員に選任された。 同日  委員中村高一君辞任につき、その補欠として小  平忠君が議長指名委員に選任された。 同月二十九日  委員高橋圓三郎君及び稻葉修辞任につき、そ  の補欠として山崎巖君及び芦田均君が議長の指  名で委員に選任された。 同月三十日  委員河野金昇君、河本敏夫君、伊藤好道君、萩  元たけ子君、長谷川保君、三鍋義三君及び吉川  兼光辞任につき、その補欠として志賀健次郎  君、椎熊三郎君、勝間田清一君、福田昌子君、  八木一男君、青野武一君及び中居英太郎君が議  長の指名委員に選任された。 同月三十日  理事荒木萬壽夫君の補欠として川崎秀二君が理  事に当選した。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  理事の互選  昭和二十八年度暫定予算実施状況調査に関す  る件     ―――――――――――――
  2. 尾崎末吉

    尾崎委員長 これより会議を開きます。  お諮りいたします。理事荒木萬壽夫君が委員辞任されましたので、理事補欠選任は、先例によりまして委員長において指名するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 尾崎末吉

    尾崎委員長 御異議なしと認めます。よつて川崎秀二君を理事指名いたし申す。
  4. 尾崎末吉

    尾崎委員長 これではこれより理事会申合せによりまして、昭和二十八年度御宅予算実施状況調査に関する件に閥達して、特に防衛力問題について政府質問を行うことといたします。質疑を順次許します。芦田均君。
  5. 芦田均

    芦田委員 現在われわれ国民が深い関心を持つ問題は、何といつて国家防衛の問題であります。わが国周囲の情勢が依然として不安定である限り、防衛問題がますます朝野の関心を集めることは当然のことでありましよう。ところが吉田内閣防衛に関する方針はすこぶるあいまいであり、明瞭を欠いております。その上に政府閣僚諸公発言は、申せば朝令暮改、毎日のようにかわるために、一般国民政府の真意がどこにあるかということは迷う点がすこぶる多いのであります。それゆえに内閣総理大臣の口から直接政府の政策を聞き取り、国民に徹底させるようにとりきめなければならぬというので、本日委員会が開かれたのであります。吉田総理職務柄とは申しながら、この暑さのさ中、連日にわたるこんにやく問答でたいていの御苦労ではなかろうと深く察しをいたします。  さような趣意で、私が今日ここに政府閣僚諸公お尋ねしたいと思いますのは、独立日本の自衛問題、これに付随するアメリカからの軍事援助、またこれに対する吉田内閣方針についてであります。  まず問題となりますのは、自衛力の滑川と称する政府方針が、実質的に汁なはだ明確でないという点であります。一体自衛力とは何をいうのか、私はここに六月三十日付の参議院会議速記録を持つております。これによりますと、堀木議員質問に対する岡崎外務大臣答弁は、直接侵略に対する防御の責任を、今後MSAの協定を結べば保安隊がこるのではないかという質問に答えて、こう言つておられる。「これは日米安全保障条約におきまして直接侵略に対する防衛アメリカ側がすることになつておりまするから、この条約の面から申しましても、保安隊は依然として国内防衛、これに専念する二とが至当であろうと考えております。」かように答えられておる。ところがこれに引続いて木村国務大臣が次のよりに述べられております。「直接侵略に対してはアメリカ駐留軍の手によつて国内の平和と治安については保安隊がこれに当る、」と明瞭に中されておつて木村岡崎国務大臣見解はまつたく一致しております。またこの見解は、保安庁法第四条に規定した保安隊性格にも合致しておる。それは、保安庁法審議の際の政府説明速記録で見ると、明らかにこれを裏づけておるからであります。言葉を詰めて申せば、直接侵略に対する防衛は、保安隊の主たる任務ではなくて、もつぱら保安警察をその職責とするものというのが、従来の政府見解でありました。吉田総理大臣は、この両国務大臣の言明を率直に御承認になることと思いますが、その点をお答え願います。
  6. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えいたします。  政府防衛計画ははなはだ不明瞭だというお言葉でありますが、これは、政府としては常に繰返して申す通り集団攻撃、あるいはいわゆる直接攻撃でありますか、これは日米安全保障条約によつて国防計画を立て、治安については保安隊をもつて当てる、この方針は常に一貫してかわらないのであります。従つて大臣答弁もこの趣意に出たものと私は確信いたします。すなわち保安隊治安の責めに任ずる、これは保安庁法でありますかに書いてある通り。ただ木村保安大臣としては、常に言われるように、もし直接攻撃があつた場合に、保安隊任務にあらずとして横を向いているはずはないのだ、これは保安隊のみならず、国民といえども国の防衛のためには、いわゆる自己防衛のためには防禦の衝に当ることは当然であります。しかしそれは直接の任務ではない、保安隊任務とするところは、治安であり、秩序の保全であるということは、保安庁法に明記されておりますから、両大臣意見が食い違うとは、実は私は考えておりません。
  7. 芦田均

    芦田委員 ただいま総理の御答弁を伺いましたが、七月に入つて木村岡崎国務大臣参議院及び衆議院委員会答弁をしておられます。そうしてその答弁を見ると、先ほど六月三十日の速記録を引証いたしましたが、そのときの答弁とは著しくかわつております。七月十六日の参議院外務委員会において、岡崎君は佐多委員質問に対して、アメリカから軍事援助を受ければ、新しい一つ義務を負うことになる、これは直接侵略に対して日本防衛に当る義務であるという意味を答えられております。速記録がここにありますから、必要とあれば朗読をいたしますが、そういう意味のことをお答えになつておる。七月十八日の衆議院外務委員会において、木村国務大臣須磨彌吉郎君の質問に対して、「御説ごもつとも、保安隊性格がかわり、保安庁法を改正するかもしれない」と、はつきり答えられております。岡崎外務大臣もこれに相づちを打つて、「今日保安隊と言つておるが、実質的には自衛軍と同じようなものになると考えられてもやむを得ない、」と須磨君に答弁をしておられます。そうすると、六月の三十日から七月十八日に至るわずか二週間ばかりの間に、政府保安隊性格をまつたく一変されたのであります。まことに目まぐるしい跳躍であります。国会審議をまたずして、保安隊性格をかつてにかえるというのは、どういう根拠によつてなされたのであるか。それをお尋ねいたします。
  8. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。保安隊任務性格は、保安庁法第四条に明確に規定しておる通りでおります。わが国の平和と秩序維持するため、これを裏を返せば、日本治安維持するためであります。これはわれわれの従来からとつて来た方針であり、解釈であります。外務委員会における須磨委員に対する私の答弁は、現在の保安隊性格なり任務なりを即座にかえると申したのではありません。来るべきある時期において、あるいは保安隊は直接侵略に対しても対処できるようにしなければならぬかとも考えられる。その時期がいつであるということは申しません。従いまして、保安隊性格はすぐかわるべきものであるということは、私は申しておるのではありません。今におきましても、私は、やがてある時期になれば、保安隊任務なり性格がかわるべきときが来るのではなかろうか。そのときには、むろん国会の決議を経てやるべきものであつて、われわれがそういう考えを持つてつても、国会においてどういうお考えのもとにやるか、それはわからないのであります。しかしさような時期が来るかもしれぬと私は考えております。
  9. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 今参議院衆議院速記に基いてのお尋ねでありますが、参議院のときは、多分速記に載つていると思いますが、私は、理論的に申せば、ということを断つておるのでありまして、その前にお聞きになつたときには、現在の保安隊現状について、その任務等を申し上げたのでありますが、佐多君の御質問につきましては、私の考えでは、戦力を保持しない限りは憲法違反にならない、従つて、理論としては、保養隊が直接侵略に当つても、戦力に至らざるものを保持している限りは、憲法違反ではない、こういうお答えをいたしたのであります。なお衆議院における須磨君の答弁につきましては、これは前提に須磨君の御質問があるのでありますが、私が須磨君の御意見を誤解しておれば格別でありますが、須磨君のおつしやたのは、MSAを受けるということについては大体同感のようにお話でありまして、また憲法を改正しないということについても、そのように考えておられると私は了解いたしました。従いまして、憲法を改正しない範囲内で、なおMSAを受けるということは、いずれ日本防衛の力を増強する意味で受けるのでありますから、この点で防衛力漸増しようという考えについては、須磨君と意見が一致しており、しかしそれによつて憲法を改正しないという点についても意見が一致しておるとすれば、その間における力を、須磨君は自衛軍と言つておられますが、われわれは保安隊と申しておる。しかしこれは実質的に同じじやないかと須磨君がお考えになれば、これはお考えになつてもやむを得ない。こういうことを申したのであります。
  10. 芦田均

    芦田委員 ただいま両国務大臣よりいろいろお話がありました。率直に申せば、他の委員会における国務大臣発言を一々とらえて、これをかれこれ言うような考えではありません。私はもつと根本の問題をはつきりただして行きたいと思うのでありますが、ただいま政府の御答弁によれば、いずれも一致して、直接侵略が起つたときには、アメリカ駐留軍によつて防いでもらうのだ、国内秩序維持のためには、保安隊がその任務に当るという。なるほど安全保障条約の前文を読めば、そういうことが書いてあります。しかし私か心配するのは、日本に外からの侵略が起つたときに、日本防衛アメリカ人がやつてくれるからといつて日本人はうしろの方でパチンコをやつて見ておる。一体そういう計画でできておるのか。私はきわめて率直にものを申しますが、政府閣僚諸公が、外からの侵略のとしきには、アメリカ軍が守つてくれると議会の演壇の上から公々然とお話になる。それを聞いて、外国人はくすくす笑つております。一体世界歴史をごらんになつて、一国の政治指導者が、外から侵入者が来たときには、外国の兵隊が守つてくれる、そいうことを、平気で国民に告げた前例がありましようか。フィンランドのように三百五十万の人口しかない小国でも、二億三千万の人口を持つソ連に対して、正しいと思つたときには敢然として立ち上つて戦つた、その気魄こそ今日ヨーロッパの国々が生き残つておる理由です。その気魂が、あの小国をして独立維持させておる。内閣諸公言葉が、国民思想にどんな影響を与えるかということを、お考えなつたでありましようか。それをお伺いします。
  11. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。私はこの議会を通じても常に申しております。一体独立国家たる以上は、みずからの手によつてみずからを守るという体制を一日も早くとらなければならぬ、これがわれわれの気持であります。しかしながら、いかんせん、ただいまの日本現状、特に日本財政的面あるいは国民精神的面から申しまして、さような体制を即時とることはできない、そこでやむを得ざる立場において、遺憾ながら、外敵の侵入に対してはアメリカ駐留軍の力により、日本治安維持については保安隊がこれに当る、両々相まつて日本の平和と秩序維持する二とになつておるのだ。こういうことをわれわれは申しておるのであります。しかしこの体制は、やはりいつまでも紡げるべきものではなかろう、一日も早くわれわれは日本国力を回復いたしまして、みずからの手によつてみずからの国を守るだけの体制はとりたいものである。この信念は終始かわらないのであります。今後われわれといたしましてはできるだけ日本国力の回復の早く来らんことに努めて、そしてみずからの手によつてみずからの国を守る体制をとつて行きたい、こう考えている次第であります。
  12. 芦田均

    芦田委員 木村国務大臣のお考えになつておることはわからないことではありません。私どもが言うのは、その守りたいというお考えをいつ、いかなる方法によつて実行に移されるかということを伺つておる。吉田内閣総理大臣を初め、閣僚の方々がすでにみずからの手で自分の国を守らなければならぬと、しばしば繰返して言われておることは私もよく承知しておる。まことにけつこうです。われわれの心配するのはそのお考えをいつ、どういう方法実行にお移しになるかという点である。いつまでたつてもただ「守ることを期待する」と言うだけでは国民は決して安心しません。いよいよ侵略があつた保安隊も出て行くたろう、消防隊も出て行くだろう、青年団も出て行くだろうとおつしやる。当然のことです。しかしそういうことは議会の論壇で論議をする必要のないほど当然のことです。なるほど日本戦争に負けて貧乏だ、けれども貧乏なら貧乏なりに、その力に応じて万一の場合に守るだけの準備をしなければならないのではないか、それをどするかということを申しておる。  ことにお考え願いたいことは、国際法の上において正規軍と呼ばれるものと、消防団保安隊等不正規部隊が出て行くとぎとは全然違つた立場で相手から取扱われる。私が申すまでもありません、総理も、外務大臣もよく御承知でしよう。国際法正規軍というものと不正規軍というものとの間にははつきりと区別がある。正規軍でなければ戦闘法規適用は受けません。木村国務大臣が大切に育てて来た保安隊が一旦防衛のために出てごらんなさい、これは不正規軍ですよ、俘虜としての取扱いすらも受けやしません。戦争法規慣例適用されないような部隊をつくつて、そしてみじめな目にあわせる。その責任一体だれが負いますか。吉田総理大臣はその点を御承知責任をとつておられるかどうかお伺いいたします。
  13. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えをいたします。今日われわれは直接侵略等アメリカ軍にまかして、われわれは安心して顧みないのだということをかつて申したことはないのであります。日本独立安全は、これは日本国民みずからの力によつて防衛することが、原則の上から当然なことであるということをすでに申しておるのであります。しかしながら今日国力これを許さないから、やむを得ず安全保障条約によつて一応国力の充実を待つてと申しておるのであります。ゆえに日本国力が許すたらば、また日本国力がみずから守るに足るだけの国力を回復し得るならば、したならばその瞬間においてもただちに持ちたいと考えます。  以上お答えいたします。
  14. 芦田均

    芦田委員 ただいまの御答弁――これは一昨年の十月十八日でありましたか、この席上で吉田内閣総理大臣よりいろいろ条約に関する説明を伺つたことがありますが、その当時から今ここでお話なつたと同じことをおつしやつておられる。何年たつてもそれ以上一歩も前に進まない。そこにわれわれの不安がある。あとで申しますが、アメリカ駐留軍といえども永久に日本にとどまるのではありません。条約には断定的に日本にとどまると書いておる。遠からず撤退するにきまつている。そのあとをどうするか、やはり金がないから何もつくらないという御趣意であるか、この二点を総理大臣からお伺いいたしたい。第一は国際法の上から正規軍不正規軍との間に取扱いの別があるが、保安隊正規軍として取扱われない、それでかまわないかということが一つ。第二は金がないから守るだけの力はつかないとおつしやるが、アメリカ軍が撤退するときになつても、金がなかつたらやはり何もなさらないのか、その点お答え願います。
  15. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えをいたします。金がなかつたらいつまでもアメリカ軍に依頼するかというお尋ねは、これは少し極端な話で、金がでぎるように、国力が回復するように十分努力いたすつもりであり、また同時に努力いたしつつあるのであります。また御指摘の通り漸増を――日本国防漸増ということは、これは米国においてもなるべく早く引揚げたい、われわれもその時期の早く来ることを希望し、そうして引揚げの一日も早からんことを期待しているのであります。ゆえにただいま申した通り国力がこれを許すならば、今日ただちにでもみずから防衛する力を養いたい。今日集団攻撃という事態による集団防衛ということはひとり日本だけが持つている、日本だけで有しているわけではなくして、ヨーロッパにおいても大西洋同盟でありますか、あるいはイギリスにしても集団攻撃に対しては集団防衛の線をもつて当るということは、日本だけ考えているのではなくして、これは今日の共産国集団攻撃に対する防衛としての通念であるとすら考えるのであります。ゆえに、通念であるからといつて日本国防がいつまでも外国に、米国に依存するという考えはない、ということは漸増ということを約束いたしているところによつてもおわかりにたるだろうと思います。  それから現在の保安隊お話のような正規軍であるか、あるいは国際法適用が受けられるか受けられないかということは、これは法制局長官からお答えいたさせます。
  16. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 現在の保安隊一つの組織をもつて責任者のもとに立つております関係から申しますと不正規軍といたしましても国際法正規軍隊に準ずる扱いを受ける場合はあろうと存じます。
  17. 芦田均

    芦田委員 吉田総理大臣はお疲れでありましようから、私はそうしばしば御自身で御答弁を煩わすような考えはありませんが、しかし総じて閣僚諸公いずれも言葉の魔術で国会通り抜けられるものとお考えになつているように見える。この点確かに強将のもとに弱卒なしと申しますか、その感を深くしますが、ここに一、二年来現内閣閣僚諸公自衛力もしくは軍備問題に関する言行録を編集したならば、厖大な書物になるだろうと思います。ところがその間説明が常に変転常なく、時に応じて肯定してみたり否定してみたり、堅白異同の弁を弄せられた跡は、わが国国会歴史においてもまさに画期的な事実であろうと思います。内閣閣僚諸公法制局長官次長等保安隊性格に対して徹底した見解を発表することができないというのはどこにある。結局は憲法第九条の第二項にいうところの「陸海空軍その他の戦力」のその陸海空軍に相当するか、戦力に相当するか、保安隊性格がどうなるか、それを憲法にひつかからないように言いのがれしたい一念で、本国会においてもああでもないこうでもないと言つておられる。そこでお伺いいたしますが、憲法第九条第二項に書いてある陸海空軍とは、一体憲法解釈としてどういうお考えしなつておりますか、総理大臣の御意見を伺います。
  18. 吉田茂

    吉田国務大臣 これは申すまでもなく戦争に目的を置いて、そうしていわゆる木村国務大臣近代帳を遂行するに足る戦力を備えておるもの、こう私は解釈しております。これが政府見解であります。
  19. 芦田均

    芦田委員 ただいまの御意見は、従来他の閣僚諸公からお答えなつた点よりははるかに進歩を示しておる。さだめし法制局長官といろいろ御研究なつたことと思います。ただいまお述べになつ定義は私もこれを了承いたします。すなわち軍とは外国侵入に対して備えるために国家が持つておる武装した力である、こういうふうに言つておられる国際連盟が二十数年前にジユネーヴにおいて軍縮会議を開いて、世界中の専門家がここに集めつて軍とは何ぞや 軍に準ずるものとは何ぞやという研究をして、記録がたくさんに残つております、もつとも岡崎君はまだお若いころのことで御承知はないと思いますが、しかし吉田総理はおそらくそのころ外務次官であり、また大使を勤められておつたと思うから、それを御承知ないはずはない、それだから世界の常識として憲法の第九条第二項に誓いてある陸海空軍とは何をいうかということがはつきりきまつておるにもかかわらず、政府答弁を聞いておると、憲法にいう軍とか戦力とかいう問題について珍無類の答弁が続出いたしております。近代戦に耐える装備を持つものでなければ軍でない、今も総理大臣はそうおつしやつた。そうすると李承晩軍隊やフイリピンの軍隊は軍でないということになります。あるときには侵略能力のないものは軍ではないとも答えておる。そうするとスイスやスウエーデンの軍隊などは軍隊でないということになる。ところが本質的に申せば保安隊警備隊も不完全たがらこれは軍です。軍縮会議専門家がきめた定義に当てはめて考えてごらんなさい。保安隊高射砲やバズーカ砲をひつさげて野戦訓練をやつておる。海上警備隊は三インチ砲の実弾射撃をやつておる、もしこれが軍でないというなら地球の上に軍というものはありません。そういうあいまいな言葉をもつて警備隊保安隊も軍ではない、戦力でもないと言わらる、そこにどうしても割切れないところがある。  保安隊性格についてはさらにあとで申し述べることにして、私は次の質問に移ります。一体日本政府は、吉田内閣とばかりは申しません。どんな内閣が現われても、政治責任の上から、条約義務からどうしても自衛軍を持たざるを得ない立場におる。それなればこそ政府はすでに久しく憲法違反すると恐縮しながら陸海軍を編成しておられる。そのことは国民がみなすでに心得ておりますかり御安心なさつてよろしい。  条約義務という意味はこういうことです。安全保障条約の前文にアメリカ駐留軍は所定的措置として日本侵略から守り、国内秩序維持に協力すると書いてある。しかし暫定的措置と断つてあるのだから、長い期間でないことだけはだれにもわかります。アメリカ軍引揚げて行けば、あとはどうしてもわれわれみずからの手で国を守らざるを得ない。吉田総理大臣アメリカ軍がいつごろまで日本に残るものとお考えになつておるか、大体の御見当をお伺いいたします。
  20. 吉田茂

    吉田国務大臣 ただいまも申す通り日本国力がこれを許すならば日本はみずから防御すべきであり、防衛したいと考えておるのであるが、国力が、これを許さないのであります。すなわち国力が許されるまでは、防衛軍、自衛軍なるものを持つということは国家のためによろしくない。国民が安心して云々とおつしやるげれとも、むしろ今日は国民保安隊なるものの任務、その性格は何であるかということはよく了承いたしておると私は考えます。
  21. 芦田均

    芦田委員 日本が金持ちになるまでアメリカに守つてもらうのだ、こういふうに聞えました。そうなると結局不定期に、いつまでだか見当がつかない期間日本に残るということであるが、一体あの条約の前文に書いてある御定的にという言葉は、条約締結の当時日本の経済力が十分に防衛力強化に役立つものという意味であると交換公文ででもおきめにたつてあるのか。
  22. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えをしますが、あえて交換公文でいついつかということをきめておらないことは当然であります。何とへればこれは当時米国当局者と日本当局者といいますか、政府との間に東洋の平和あるいは太平洋の平和をどうして守るか、それには日本の一角が共産軍に占領されただけでも、アメリカの太平洋防衛計画といいますか、太平洋政策がくずれるのであるから、日本アメリカ防衛計画の一環である、利害を同じゆうするから、お互いに相互的に独立なり安全なりを保障しようといしうとを申しておるのであつて、御承知通り、保障条約の中には期限がついておりませんか、その間に漸増ということ、漸減ということを考えておるゆえんは、たえず日本国力が回復し得ることを確信し、またわれわれもそう確信して、なるべく早く国力の充実をはかつて、そうしてみずから守るということにいたしたい、不定期といわれて百年も二百年もというふうに響きますが、われわれはそういうふうには考えておりません。暫定であるといつて、期限を付していついつかまでにということはきまつてないだけの話で、漸増をする、漸減をするということは相互の間の了解であり、なるべく早く国力を回復してみずからの軍隊を持つ、また持たせよう、そういう考えであの条約はできておるのであります。
  23. 芦田均

    芦田委員 吉田総理大臣は、暫定的ということは暫定的ということで別に何年とかいつまでとかいう意味ではないというお答えでありましたが、それは説明ではありません。ただ前文を読んで私に聞かしてくだすつたにすぎない。安全保障条約の前文に有名な文句があつて、直接もしくは間接の侵略に対して日本漸増的にみずからを守る責任をとるものとアメリカが期待すると書いてある、そこで日本全権はこの期待に対して欣然として判を押して帰つて来た。ところが岡崎外務大臣はこれを説明して、これは単なるアメリカの期待であつて日本の負つておる義務ではないと申された。かようなおとなげない議論はいたずらに国際的感情を傷つける以外に何の効果もない答弁であります。条約の相手がかく期行するという言葉を相手がそのまま書き下して調印をすれば、政治的にはこれを肯定したことになる、それが紳士間の協定というものでしよう。そこで日本安全保障条約にいわゆる漸増的に責任を負うという義務を負わされておることは、だれが見たつて間違いない。それだからアメリカ引揚げる見通しがある、日本漸増的にみずから守る責任があるという、そのせつたから防衛計画がないはずはありません。第五次吉田内閣にも必ず案があると思う。けれどももし第五次吉田内閣に案がないとおつしやるなら、吉田総理は第十次内閣までつくるお考えだというから、せめて第十次吉田内閣の夢物語でもけつこう、どうか御考案をお聞かせ願いたい。
  24. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えをいたします。夢物語でなくて現実の答弁としてお答えいたしますが、現在の保安隊計画をもつて当分の間国防に当り、また安全保障条約をもつて集団防御に当りたいという計画であります。
  25. 芦田均

    芦田委員 現在の保安隊の力以外に防衛計画はないと申されましたか、どうもそう簡単には信用はできません。木村保安庁長官はあの記念すべき九州旅行において、(笑声)それが木村長官のために人生最善の日であつたかどうかはしばらく別として、少くとも防衛問題のためには確かに記憶せらるべき旅行でありました。木村長丘は保安庁において防衛計画研究しておると言われた。そうして長官自身も案を持つておると言われておる。それはそうでしよう、いやしくも国の独立と自由と関心を持つ者ならば、一応防衛力のことを頭に置かないはずはありません。吉田内閣がときに応じて自衛力漸増ということを言われる。先ほど総理大臣もそれを申された。自衛力漸増をするとおつしやるならば、それは計画があるということの証拠である。私はこの予算の実際問題についてごく簡単にお尋ねをいたしますが、ここに昭和二十八年度保安庁予算案一般説明要旨という保安庁でつくられた文書がある。この部厚いものを読もうなどと考えてはおりませんが、その一端だげを引用して申し上げます。吉田内閣の予算原案には、国庫債務負担行為を合せて昨年度に比べて二十八年度は二百億円を増加するという案でできておる。その中に船舶建造費が百三十二億三千万円、飛行機購入費合計二十三億五千万円となつておる。ところが飛行機だつて使えば古くなりますよ、もう来年にはすぐ新規に買い入れなければ役に立ちません。新聞で読むと、ダレスさんは日本にさらに小艦艇を供給する計画だといつておる。艦艇が増加すれば人件費も雑費も増加します。その程度のことは中学生だつてわかる。それだのに政府当局は、現存の保安庁の案以外に何にもないというお答えであるが、それで国民が納得するだろうか、木村長官が九州において自分には案があるとと言つたのは、たまた語るに落ちたにすぎない。吉田内閣総理大臣は、木村長官がこの際男らしく警備漸増計画を発表することに同意をされるお考えはありませんか、それをお伺いいたします。
  26. 吉田茂

    吉田国務大臣 私からお答えいたします。各省大臣がおのおの自分の省についての計画を持たれることは当然であります。木村保安大臣が保安計画を持たれるということもこれまた当然であります。その保安計画たるものが閣議に提出されて、そうして閣僚その他できますれば、これは政府の案になりますが、今日のところは木村君としてもあるいはその他にしても、おのおの自己の省にある計画はむろん持つておるでありましよう。しかしこれはまだ政府案と言うべからざるものであります。われわれもまだ十分承知しないのであります。でありますから、現在のところは、予算に出ておる保安庁の経費あるいは企画をもつて現在の防衛計画といたすというお答えをいたしたのであります。
  27. 芦田均

    芦田委員 その点はこれ以上お尋ねをしても、結果は同じだと思いますから、お尋ねはいたしません。  先般ワシントンの電報を読んでおると、アメリカ政府は、日本が近く軍事援助を受けて、行く行くは地上兵力十個師団、三十五万人を整備することを目標としておると、丁寧にダレス国務長官から発表されておる。これを見ると先さまにはちやんとりつぱな計画がある。知らぬは亭主ばかりなりと申したいが、亭主も多分御承知でしよう。われわれはこのころ多くの場合、外国人からばかり日本のことを教えられる、外交に関してわれわれが耳をおおわれておる程度は、はなはだ申しにくいことたが、東条内閣当時とあまりかわりはありません。だから政府が知らたいといわれればいわれるほど国民が迷う。今までは金がたいから軍備はできないというのが政府の一枚看板であつた。ところがアメリカが今度軍援助法によつてわが国に数億ドルの金を出そうと申し出した。政府は今までの公約の手前があるから、恐る恐る国民の顔色をながめながら、これは軍備のためではないと繰返し中開きをしながら軍事援助を受けましようとアメリカにいわれた。これは俗にいう耳をおおうて鈴を盗むという行き方です。アメリカから新しく金を受取り武器を受取る、与える側にも受ける側にも一定の計画がなくて受渡しができるはずはありません。日本政府に付らの計画がないにもかかわらず、アメリカ政府が今年中に一億数千万ドルの援助費を出すという、それではあたかもどらむすこに遊興費を出すと同じことです。アメリカ人はそれほどばかでもありません、吉田総理アメリカ人に向つてはさすがにばかやろとおつしやつた話を聞いたことはありません。(笑声)相当にりこうなアメリカ人が無計画方針に軍塩援助金を出すわけはありません。だから吉田総理がどんなにないないといわれても、両国の間に防備計画について話合いがあるべきは当然のことです。万一これかないとしたらそれこそたいへんな怠慢です。今も吉田総理は、共同防衛方針で行くのた、日本アメリカが協力して太平洋の防備をするのだ、アメリカに防備計画があるともいわれた、その一環として日本が当るのだともいわれた。それで日本計画がたいというのはどういうことですか。これはきわめて単純な常識からいつても納得行かない御説明である。この問題に伴うて起る不安は、日本の防備計画を少しも国民の前に示されることなく、国会の要求を無視して政府、官僚がひとりできめて実行されやしないかという懸念にあるのです。それでよいのかということです。国民国会もいつでも既成事実の前には頭を下げて、御無理ごもつともというほかに道がないということになれば、国民は心からの協力ができるだろうか。吉田総理はこの問題を非民主的に押し通すおつもりであるかどうか、それともまたこの際善心に立ち返つてMSAの援助によつて受取る援助金及び武器、資材の使用を、概括的にもせよ国会の承認を経て後に決定するお考えであるか、その点を明らかにしていただきます。
  28. 吉田茂

    吉田国務大臣 むろん日本MSAによつて援助を受ける場合には、国会の承認がなくしてできるはずはないのであります。また民主主義国においては耳をおおうて鈴を盗むがごときことは、やりたくともできないはずであります。     〔「何だやつとるじやないか」と呼び、その他発言する者多し〕
  29. 尾崎末吉

    尾崎委員長 御静粛に願います。
  30. 芦田均

    芦田委員 ただいまの総理お答えを一応念を押しておきますが、MSAに基く工事援助は、国会の同意なくしては実行できないとおつしやいました。それはわれわれも政府も同一の見解でありまして、近く調印されるであろうアメリカの軍塩援助に関する日米間の協約は、むろん国会におかけになるに違いない。私が先ほど念を押したのはそれではない。その協約は外交文書です。実質的にどういう軍事援助が行われるかということはあの協約には現われて来ない。しかしあの協約に基き実行さるべき軍事援助方法あるいは武器の種類あるいはそれを配給する部隊の編成、そういうことを国会の議を経ておきめになるつもりであるかと申し上げたのですが、おそらくそれをも含めて総理の御答弁があつたと思いますから、間違つてつたあとで御訂正ください。私は一応総理の御答弁をそのように了解して次の質問に移ります。  私がお尋ねしたいというのは、軍備がなくて米国軍事援助が受けられるのかという疑いについてであります。アメリカ合衆国は一九四八年以来世界各地の国々と協約を結んで、軍事援助方針をとつて来た。一九五〇年の朝鮮事件に刺激されて、自分みずからも厖大な軍事拡張計画実行に移しておる。それはアメリカが同盟国と手をとつて、共産下義国の武力に対抗できる実力を、一日もすみやかにつくろうと決心しておることを物語るものであり余すが、こういう事情は、総理はもとより閣僚諸公もよく知つておられます。だからMSAの援助は、アメリカ外交の基本政策ともいうべきものでしよろ。アメリカが一九四八年に対外軍事援助方針を決定したとぎに、有名なヴアンデンバーグ決議と称するものができた。アメリカ上院の決議によれば、いかなる国といえども効果的、継続的な自衛と軍事協力を行うことなしに、漫然と安全保障の上にただ乗りすることは許されないと書いてある。だから軍備を持たない国にアメリカ軍事援助を与えたという例は、世界六十三箇国に軍事援助を与えておるアメリカであるけれども、一つもありません。そのことは安全保障条約を結んだときから、はつきりわかつておることなのです。それだからアメリカはそういう趣意日本に対して軍事援助を与えようというのである。これを受けようとする日本は、その趣意を十二分に納得の上で受取るのでしよう。だから軍事援助を与え、もしくは受取るというのは、日米間の軍事協力をおもなる目的として、日本の武力増強をはかる、そういう目的であるということは、たれが見ても一点の疑いをいれません。この明々白々たる事実を吉田総理大臣が否定なさるだろうか、この点をお伺いいたします。
  31. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 ただいまの御質問お答えいたします。     〔「総理が答えろ」と呼び、その他発言する者あり〕
  32. 尾崎末吉

    尾崎委員長 御静粛に願いします。
  33. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 アメリカ側で、日本憲法がありまして戦力を持てたいというのは承知いたしおります。現にダレス国務長官も、日本には再軍備を禁止する憲法があるということを申しておられるのであります。従いまして一般的に言えば、もちろん軍隊がある国に援助をいたすのでありますが、日本の場合におきましては、この特殊な憲法の結果によりまして、ただいまの保安隊なり警備隊なり、戦力に至らざるものに対して援助を与えることは了解されておるとかたく信じておりますが、ただいまその趣旨でまだ交渉中であります。     〔毎日かわるじやないか」「君の信任が出ておるじやないか」と呼び、その他発言する者あり〕
  34. 尾崎末吉

    尾崎委員長 御静粛に願います。
  35. 芦田均

    芦田委員 日本政府は、アメリカのダレス氏を初めあるいはアリソン大使に対しても、日本で軍備という字を使うことは禁物であるから、どうかこれだけはアメリカの方から言わないようにしてくださいと、懇切丁寧に話がしてある、それだから、交換された公文を読んでごらんになつてもわかる。日本の方ではたるべく軍備という疑いを受けたくないというか、ごまかしたいというのか、内地を守る兵隊、ホーム・フオースというような字を使つておる。そうするとアメリカの方では、その字を使わないでセキリテイ・フオースというどつちにでもとれるような字を使つて返事をよこす、ただいま岡崎君からお答がありましたが、アメリカ軍事援助日本に与える目的を裏書きするものかある、それはアメリカ防衛保障法いわゆるミユーチユアル・セキユリテイ・アクトという法律の五百十一条には、武器援助を受ける国の資格をちやんと列記してある。これは政府も御本知のことであり、同僚の大多数も御承知のことです。日本政府、か武器援助を受げる決心をしたのは、今申した五百十一条の条件を承知の上で受けるという返事をされたでしよう。ところがこの五百十一条の中に、軍事的義務を遂行するということかある。吉田内閣はこの文句をきらつて、何とか今度の協定の中にそういう文句は入れないようにとしばしば交渉したらしいか、ためだつた、だめでも実は大した影響はない。どうぜこの協定がアメリカ議会にかかつたときには、アメリカの議員諸君から、日本政府が五百十一条の条件をのみ込んだかどうかを聞くにきまつております。そのときに日本政府が承諾したとアメリカ当局が言わなければ、議会が批准するはずはない、だからわざわざ軍事的義務を遂行するよどという条件を協定の小に入れ上りが入れまいが、結果は同じたのだ、ただ、政府はいかにも体裁が悪いから、何とかこれだけは入れないでくれと談判した。ところがだめだ。そこで今度このMSAの日米協定が国会にかかるとぎが来たら、必ずその際には、申出的義務の内容ということについて、政府の奇想天外な説明があるものと私どもは期待しておる。  しかし吉田内閣が軍事的義務の遂行を約束したということは、これは通常人の常識から申せば何もふしぎはない。ただ、従来の吉田内閣の声明が軍備をしないというのでありますから、つじつまを合せるのにお困りになつだけのことだ。元来軍備をしたいというものが外国の近代共器をほしいというのはおかしなことです。軍備を持たない国が軍事協力をしたり、軍事的義務を果すという約束をすることもおかしな話だ。それならば軍備なくしてアメリカ軍事援助を受けようとすることがトリツクではないか。そうでないというのならば一体これを何と説明なさいますか。岡崎君の説明はもう聞かなくともたくさん。どうか吉田総理から御説明を願います。(拍手)
  36. 吉田茂

    吉田国務大臣 岡崎君は従来MSAの交渉に当つておりまして、私よりもむしろ交渉の経過はよく承知しておられるから、私にかわつて答弁せられたのであります。また、お話によると、再軍備という字は使つてくれるなと懇請いたしたと言われるが、これは芦田君よく御存じかと思いますが、私はかつて懇請いたしたことはないのであります。また日本にいかなる援助を与えるか与えないかということは、今後にかかる問題である。日本憲法に反し、もしくは日本の国情に反する補助は受けられたいということはもう当然であります。これははつきりここに申しておきます。
  37. 芦田均

    芦田委員 どうも暑さのために私の頭が少し働かなくなつたとみえまして、せつかくの吉田総理の御答弁があまりはつきりいたしません。が、いろいろ政府答弁を聞いておつてはつきりすることは、吉田内閣が、軍備を持つことの必要は十分に認めておりながら、反対論に恐れをなしたり、ごまかしの軍備をやつて、そして選挙においてはこれで投票をかせぐ手段に使う。(「ノーノー」)昨年以来二回の総選挙で年術問題に対して自由党の政府は何とお約束したか。これはみんな知つております。そうして現実には軍備をやつておる。政府のこういう行動がわが国民の道義の上に、まことにおもしろくない影響を与えておることを、内閣諸公もともととお考えになつてしかるべしと思う。政府は不完全な軍備を自分で行つておることを認めておる。みずから認めておるはかりではない。アメリカに対して保安隊をアーミイという字で説明しておる。海上警備隊をネーヴイと書いて平気で文書を交換しておられる。しかし日本国民に向つては、軍備ではない、あれは自衛力だといつて今日までごまかし続けて来られた。そこに国民の混迷を来す根底がある。日本の威信を軽からしめる原因がここにひそんでおる。今回のMSAの交渉にあたつても、そういう不徹底な態度で臨んでおられるから、過去一箇月にわたる折衝は、内外に向つて日本政府の因循姑息な態度を遺憾なく暴露している。政府の態度を見ておると、あたかも悪い行状をして、国会でしかられて、それをひたすら弁明するのに汲々としておるような態度である。政府はなぜ国民に向つて、堂々とMSAを受ける理由をはつきりとお示しにたらぬか。そうして、国民の支持を求める態度に出られないか。アメリカに対しても同様です。MSAの関係者が東京に来ている。あの人たちが何と言つていますか六十三箇国を相手に、われわれはMSAの交渉をやつた人間だ。日本政府のような態度は今度初めて見たと言つております。(拍手)聞いてごらんなさい。  MSAの援助をうけるかどうかということは、単に武器と金銭とを受取るとか、やるとかいう問題ではない。これは日米協力の根底に触れる問題だ。日本がサンフランシスコで結んだ二つの条約を御破算にする決心をしない限り、この軍事援助を象徴とする共同防衛の線を逸脱することは、だれにだつてできるととじやない。だからわれわれは、MSAの援助は進んで受けるべきであると考えております。けれども、これを与えようとするアメリカ側にもそれぞれ条件がある。日本が将来軍事的義務を履行するとか、あるいは自由世界防衛力を増進し、維持するために全面的に寄与することが求められておる。それにしても、アメリカ軍事援助という振そでを贈ろうというからには、これを着せるような娘がいなくては話にならぬ。その振そでを喜んで受取れと主張するわれわれにおいても条件があります。われわれがアメリカ軍事援助を受けようというのは、わが陸海空の守りのために必要だと思うからである。単に国内の保安警察のためならば、独立国の体面にかけてもアメリカからの援助はまつぴらごめんをこうむりたい。戦争に敗れて貧乏な日本であつても、国内秩序維持のために、この上外国から援助を受けようなどとは考たくありません。吉田総理は、かように申すわれわれの主張が無理だとお考えになりましようか。その点だけ簡単にお答え願いたい。
  38. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えいたします。しばしば申しますが、日本としても国力が許すならば日本の安全独立はみずから守るべきである、この点は芦田君も私も同様の原則を持つていると思います。しかしながら違うところは、現在の国力がかくのごとき戦力を有する軍隊を持つというようなことはできないから――不幸にして今の国力をもつてしては、敗戦後の日本としては、大きな防備を持つということは事情が許さないから、ここで安全保障条約を結ぶに至つて安全保障条約によつて守らんとするのであります。日本がどういう兵器をもらいたい、戦力に相当する兵器をもらいたいということを申したことは、かつてないと私は思います。これは保安庁長官から詳細御説明いたしましようが、私の承知しているところでは、どういう兵器をもらいたい、再軍備にかわるような兵器をもらいたいというような注文をいたしておるのではなくて、米国駐留軍日本に与えた兵器なるものは、向うの都合によつて日本へ供給して、これを使つている程度で、中には日本保安隊として不要なものもある、また不適当なものがあるといわれるのは、保安大臣も言つておられる通りであります。ゆえに日本が注文して、こういうものがほしい、軍備にかわるものをほしいということを要求したことは、かつてないはずであります。
  39. 尾崎末吉

    尾崎委員長 芦田君にちよつと申し上げますが、時間が迫つておりますから……。
  40. 芦田均

    芦田委員 時間がだんだん迫りますから、私はあとでごく簡単に、二、三点だけお尋ねいたします。  吉田内閣は今日まで軍備はしないしないと言つて来られた。その結果が、一体どういう影響を与えたかということをお考えを願したい。不幸にしてわが国においては官尊民卑の思想が骨の髄までしみ込んでおる者が多い。だから政府大臣の声明だという理由だけで軍備は無用であると考え、さらに一方においては一身の安泰のみを求める無抵抗主義の」平和論、そういう安易な軍備反対論に迷わされているのが相当に多い。もし平和条約調印の前後に吉田総理大臣が、せめて独立を回復する以上、日本は行く行く自衛軍を持たなければならないと、これだけでも声明されたならば、国防に関する国民の思想は、今日とは著しく異なつた方向に動いて来たと私は思う。吉田総理は愛国心を強調されます。私はそれが吉田総理の衷心の叫びであることを信じます。けれどもその叫びが案外に民衆の胸に迫るものがないのは何のためた。それは国民の心の奥深くひそんでいる愛国の情熱とその実行の段階との間に、何らのつながりを示されていないからだ。その結果は、祖国防衛の精神そのものさえも燃え上らない状態になつておる。そればかりではない。政府の軍備反対論によつて、多くの国民に絶望感を与えておる例が目の前にたくさんある。その一つの例はあの竹島の問題です。海上保安庁の巡視船が、七月十二日に竹島の海岸に接近したときに、三十七、八名の朝鮮人が、竹島に移つて来て、海岸には武装した朝鮮の船が一隻碇泊しておつた。わが方の巡視船は射撃を受けて退却した。これは海上保安庁の報告だから政府もむろん御承知でしよう。そういう報告を読んでわれわれはじつと歯を食ひしばつて忍耐しておるが、政府が縮み上つているために、遂にはそれが卑屈なあきらめとなつて国民の意気を沮喪させておる。政府一体こういう状態をいつまでうつちやつておこうとするのか。(拍手)どうか、総理大臣からお答えを願います。
  41. 吉田茂

    吉田国務大臣 政府の所信、あるいは政府の発表しておる意見は、終始一貫いたしております。ごまかしでやるとかいうようなことは、反対党は終始一貫してこれを言われますが、政府としての態度は、はなはだ簡明であります。終始一貫同じことを申しております。これを信ずるか信じないかは別でありますが、政府はなすべきことはなしつつあります。このためにいかなる吾妻があつたか、私は、害毒よりもむしろいい効果の方が多かつたと思います。
  42. 芦田均

    芦田委員 竹島の問題についての御返事がありません。まことに遺憾でありますが、結局政府は何もしなかつたし、今後もまた何もしないという御方針と了解します。  もう一つつけ加えて申します。先般木村保安庁長官は、保安隊海上警備隊においては志気旺盛だと申された。今日の保安隊吉田内閣の私生児である。私生児であるばかりでなく、世間ではこれを畸型児だと言つております。なるほど軍隊に似て軍隊にあらず、警察に似て警察にあらずという姿、どう見ても日陰者といいたい姿である。精神的に日陰者である結果は、木村長官が志気は旺盛であるといわれても、その志気旺盛の裏に恐るべき絶望感がひそんでおる。彼らの多くは迷つております。少壮幹部の偽らない告白を聞いてごらんなさい。彼らは自国を守る熱情をもつて、薄給に甘んじてはぜ集まつて来た青年です。それが世間から白眼視され、肩身の狭い思いで、制服さえも町の中では身に着けることができない気持でおる。もつと重大なことは、彼らが国に忠誠をささげんとする心持を表わすことさえも、差控えなければならないような境遇におる。今の保安隊海上警備隊の青年たちは、この現在のこんとんたる世相の中にあえぎながらも、身を張つて民族の自由と独立を守ろうという熱情に燃えて集まつた純情な青年なのです。彼らをして前途に希望を持てないという絶望感に陥らしめるは、まことに容易ならぬ損失だと思います。私はあえて御返答を得ようとは思いません。どうかこの点をとくと考えていた、だきたい。あの純情に燃えた青年たちを私は殺したくありません、  最後に一つだけつけ加えて私の質問の結論といたします。吉田総理が老躯をひつさげてこの難局に際して、国政燮理の任に当ろうとされる意気は、私は深く了とするものであります。吉田総理の外々たる憂国の念慮については、何人も疑うものはありません。だが今日までの施政の跡を顧みて、われわれはときにはなはだ残念だと思うことがあります。私は民主主義の運用に最も大事なことは、政治家のリーダーシツプ、すなわち政治的指導力を発揮すること、反対意見に対しては、寛容の精神をもつて臨むことだと信じておる。特に今日の政治に欠けておるものは、政治の指導力であります。なかんずく国防外交の指導についてこれを痛感いたします。吉田内閣は、なぜもつと率直大胆にその情熱を傾けて、所信を国民に披瀝し、国民の理解と協力とを求めることに努力せられないのであるか。軍備の問題でも、軍事援助の問題でも、ないしは基地供与の問題でも、国民は問題の核心をつかむことができない。いたずらに反米運動の波にあおられて右往左往しておる。善良な国民は、勢い身近の屋根の上から大声でどなるものに引きずられて、合理的な帰趨が見つからない悩みに生きておる。日本現状は、思想的にも経済的にも決して政府が楽観せられるようななまやさしい状態ではありません。各方面ともに思い切つた革新を必要としておる。しかしいろいろと思い悩んで、最後には今の政治の行き詰まりを打開しなければどうにもならぬというところに舞いもどつて来る。これがその結論でしよう。今日ほど国民がよき政治、力強き政治指導を待望しておるときはないと思う。私は吉田総理が心を平らかにして、野人の言に耳を傾けられんことを要望いたしまして私の質問を終ります。ありがとうございました。(拍手)
  43. 尾崎末吉

    尾崎委員長 三時三十五分より再開することとして、この際暫時休憩をいたします。     午後三時二十三分休憩      ―――――・―――――     午後四時十五分開議
  44. 尾崎末吉

    尾崎委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  質疑を継続いたします。和田博雄君。
  45. 和田博雄

    ○和田委員 私はMSAの問題を中心にいたしまして、この国会が始まつて以来、あるいは前の国会以来、ずつと政府がこの問題についてわれわれの質疑応答に対して答弁をして参りましたが、しかしその答弁がどうもはつきりしないし、お互いに矛盾する点もあるやにわれわれは考えられますので、そういう点について少しく質問をしてみたいと思うのであります。  申すまでもございませんが、MSAがこれだけ騒がれ、ことに今度の第十六国会は予算委員会を初めとして各委員会がほとんどMSA問題を中心にして質疑が展開されましたのは、このMSAを受けるかどうかということが、実は日本の将来の行き方をきめて行く一つの大きな事柄になりますので、いわば日本がわかれ道に来ておるようなふうに思います。それでこんなに問題が繰返され展開されているのだと思います。  さて前の芦田委員の質疑応答を開いておりまする際に、MSAの協定は、国会の承認を受けなければ、政府はこれを結ばないということを吉田総理答弁されたのでありますが、その際に芦田委員が、防衛力、防御計画をも含めてそうだと思うかということで質問を先に移して、政府の御答弁は、その点についての答弁はなかつたのでありますが、防衛力防衛計画そのものをも含めて今度のMSAの協定というものは、国会の承認を経なければ政府は結ばない、こういうふうに理解してよろしゆうございますか。その点を吉田総理からはつきりと御答弁をしておいていただきたいと思うのであります。
  46. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 ただいまの御質問に対しまして、(「総理々々」と呼ぶ者あり)総理にかわつて御返事いたします。MSAの交渉につきまして、それがどういう内容になりますかは、これからの交渉の結果であります。それで今まで各国でもうすでに交渉をいたし、MSAの援助を受けておりますが、その中にはアメリカ側の要望によりまして、機密事項として発表いたしておらない部分もあるようであります。われわれも各国並のことをやる程度にすぎませんから、大体においてできる限り内容なり、輪郭なり、国会その他国民にわかるように、できるだけの御説明もいたしまするし、報告もいたしますが、それがたとえば機密事項の保持というようなこともありまするし、どういう結果になりますか、まあ大体ただいまの予想では、各国で受けておりまする形になると考えておりますけれども、詳細のことは今後の交渉によります。ただここで申し上げられますのは、できるだけ詳細に報告を申し上げるつもりである、こういうことであります。
  47. 和田博雄

    ○和田委員 どうも納札が行きません。MSAの交渉をやつて行く途上において、私も芦田委員と同じように、必ず政府側において何らかの防衛計画というものを私は出して行かなければならない破目になると思うのであります。これは普通常識的に考えまして、援助を与える国が、何もそこに将来の一画もないものに対して援助を与えておくということはあり得ないし、ことにこのMSA性格からいいましても、私は当然防衛計画というものは出して行くことになるのだろうと思うのであります。そうしてそれに、ことに今岡崎さんが触れられましたように、機密保持のことまでも今度の協定の中には入つているということになつて来れば、何についての機密を保持するかということは当然考えられるのです。それは防衛計画あるいは兵器その他の防衛計画に含まれること以外には機密保持の問題はないのであります。そうすれば交渉の途上においてどうなるかわかりませんがという御答弁でありますが、私はやはり防衛計画というものは、今度の協定を結ぶ場合には、国会の承認を当然得るのだというように解釈せざるを得ないのでありますが、そういうように解釈してよろしいのでございましようか。その点をもう一度、これは総理大臣からひとつお答えを願いたいと思うのであります。
  48. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 ただいま交渉の当事者になつておりますから、私からお答えいたします。  防衛計画につきましては、ただいま本交渉は途中なので、今直接やつている部分は少いのでありますが、しかし今まで私の得た印象によりますと、そういうものを出すことになるかどうか、私は出す必要がないのじやないかという印象を得ております。これはもちろん将来のことに属しますから、今はつきり申し上げられませんが、そういう気持を持つております。但し、仮定の議論として、もし何かそういうものを肥すということになりますれば、もちろんこれは国会の了承を得た政府の案というものができる場合であろうと考えますが、そのときは、総理も保安庁長官も、そういうものができれば発表するということを言つておられます。しかしそういうことになるかどうか、おそらくならない方が多いのじやないかと私は思います。
  49. 和田博雄

    ○和田委員 私はなぜ総理に御答弁願いたいかといいますと、たとえば戦力に対する問題、憲法に対しての考え方等、いろいろな総理考え方と各主管大臣考え方との間にやはり非常に矛盾があるのであります。本日も開いておりますれば、総理大臣は、憲法はかえない、直接侵略に対しては、これはアメリカ軍がそれに対して戦つて行くのであつて保安隊は間接侵略だけだということをはつきりとされておる。しかし、先般の木村及び岡崎大臣答弁によると、そこを広げて、MSAの援助を受ければ、日本のいわゆる自衛軍といいますか、保安隊で直接侵略までもやつて行かなければならぬということを言つておられる。こういうように、しばしば総理大臣の言われることと岡崎及び木村大臣の言われることとは違うのであります。政府はそういうことをつつ込まれるごとに、いや違つていないということいろいろ言われますが、しかし記録を読み、また静かに考えると、どうも違つておるように思う。そこで私は、この点はやはり総理大臣からはつきりしてもらいたいということを言つておるのであります。今岡崎さんは出さなくてもいいように言われましたが、しかし、そういうものを出さなければ、具体的にMSAの交渉なり、あるいは向うがどういう援助を与えるのかといつたようなことはちつとも進捗しないと思う。そういう漠たるものであつては、アメリカ側がこれを承諾するはずはないと思う。一つの経済的な金を貸すのにも、開発のちやんとした計画を出して、それに基いてどれだけ金を貸すかということがきまつて来るのであつて、武器を直接貸す場合においてもそれは同じだと私は思います。条約の中にいろいろなことが書かれるであろうけれども、しかしいよいよその物を貸したりありうはくれたりする場合においては、ちやんとした一定の計画従つて、あるいは向うの承認を得、あるいはこちらでもつて同意したようなものをもとにしてやつて来ることは、これはだれが考えてもそうならざるを得ないと思うのでありまして、その点についてははつ弄りとした御答弁をお願いしておきたいと思います。
  50. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 その点につきましても、これは仮定の議論になつて、まだそこまで話が進んでおりませんからでありますが、たとえば、現在保安隊警備隊等をまぜまして十一万人おるといたします。これをかりに本年は増員しないと仮定しまして、この十一万に対してまだ十分なる武器等が渡つていない場合とか、あるいは、今二通りはあるが、さらにこれを漸増というか、能力を増強するために、現在の基礎においてこれこれの武器を、必要とするというような場合も当然あり得ると思うのでありまして、必ずしもこれからずつと何年どういうふうにするということをしなくても援助というものは考え得ると私は思つております。
  51. 和田博雄

    ○和田委員 そうすると、MSAの交渉が進んで行つて、こちらから何らか防衛計画を出せということになつて、それをもとにしていろいろ相談ができ上つた、そういう場合にはそのものは国会にかかりますか。
  52. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 その国会にかかるというのは、私の今考えておりますのは、国際協定なり条約なりを国会の承認を求めるのは当然でありますが、政府がその範囲外でもつて国内のいろいろな措置をいたすことは当然ありますが、これは国会の承認を求めるというのじやなくて、今まで保安庁長官等が、案がきまつておれば報告すると言うように、報告であろうと考えております。しかしこれは、まあ将来のことに属しますから協定の結果になります。
  53. 和田博雄

    ○和田委員 そうすると、芦田君に答えられなかつたところの、MSA国会の承認を経なければたらない、しかもその中には防衛計画等も含める、あと防衛計画をも含めるという点については政府は同意しかねるということに、なるのですか。
  54. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これははつきりしたものが出て来ませんと、どうということは、まだここではつきり申し得ませんが、要するに、国際協定なり国際条約というものは当然憲法の規定によつて国会の承認を得るべきものであります。従いまして、そういう性質のものは必ず国会の承認を得る、こういうことになるわけであります。
  55. 和田博雄

    ○和田委員 私はそういうことを聞いているのではない。その協定なりあるいは条約なりの内容が、いわば細目協定といつたようなものになる、そういうものはやはり国会に出さなければならぬと思うのでありますが、その点を聞いておるのであります。
  56. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 そういう防衛計画というものは細目協定になるかどうか細目協定というのはどういう意味か和田さんのお話が私にはよくわかりませんが、私の今の印象では、そういうものは入らないのじやないかというふうに考えております。しかし、協定の一部であれば当然国会の承認を経ることになります、
  57. 和田博雄

    ○和田委員 ひとつ端的に答えていただきたいのでありますが、防衛計画とい、ものは将来のことだからわからないが、かりに出すとする、こちらからも出さなければならぬ事態になつて来て、出した場合には、それは国会にかけるかどうかということを、簡単に、イエスか、ノーかを答えてもらいたい。
  58. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私の方から申しますと、これは協定、国際的な約束であるかどうかということを基準にして判断をいたすのでありまして、その範囲に入れば国会にも出して承認を求める、しかし、それ以外のことであれば国内的の措置でありまして、あるいは法律を要するとか、あるいは予算を要するとか、こういう関係のものは、また別途の関係から国会の議決を経るために出すのは、これはまた当然のことだと思います。
  59. 和田博雄

    ○和田委員 そこで多少話が本筋に入つて来たのでありますが、芦田委員質問の中に、御自分の御意見とされて、安全保障条約の中にある自衛力漸増アメリカ側の期待は、芦田委員としてはこれは義務考える、これを今さら義務であるとかだいとかいうことは外交の点からいつておかしい、しかし今までの政府答弁されて来ておつた限りにおいては、安全保障条約における自衛力漸増は単なる期待であつて義務ではなかつたが、今度のMSAの援助を受けることによつて初めて新たなる義務として帯びるのであるということを言つておられるわけであります。そこで、自衛力漸増というものが国際上の両国間の義務となる限りにおいては、どうしてもそれは国会に諮らなければならないということになつて来るのだろうと思うのであります、自衛力漸増が新たなる義務になる限りにおいて、その自衛力漸増の具体的な案と計画がそこに出て来るへぎことは当然であります。従いまして、日本自衛力漸増義務を、今度のMSA条約によつて、どういう計画によつて帯びるかということが、実際そこに具体化されて来なければならぬと私は思う。その限りにおいては、これは、今のあなたの御答弁従つても、当然国会に出すべきだということになるのであります。そうすれば、防衛力計画というものは当然出さなければならないものである、ただ、今それが不確定のものであろということだけは言えると私は思うのでありますけれども、それが確定した場合には当然これは出さなければたらないと思うのですが、いかがでありましようか。
  60. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 先ほどの芦川さんのお話のときに、自衛力漸増というのは、アメリカ側から言えば期行であるけれども、日本側から言えば何でもないのたと、私が与したよりに言つておられますが、それは多少誤解であつて、私が始終申しておるのは、これはアメリカ側から言えば期待であるけれども、日本といえども、何も知らないような顔をして、それを前文に載せて調印をいたしたわけではなくて、日本もそれをやるつもりであるからこそそういう前文があつたのであつて、法律上からいえば義務ではないということは申すまでもありませんけれども、日本としてもでぎるだけそういうつもりでおるからして前文に載せたのであつて従つて自衛力漸増する考えでありますというのが政府考え方であります。そこでただいよおつしやつたような問題でありますが、今度自衛力漸増するということを、お説のように、義務として日本が引受ける、こういうことになります場合におきましても、それにはいろいろの――五百十一条(a)項の中にもいろいろの条件がついておるわけであります。それで自衛力漸増ということにつきましても、これはだんだん話合つてみなければわかりませんけれども、たとえば経済上、政治上の条件が許す場合――ただいまはそれがかりに思うようにならないということになれば、ただちにそういう計画を化すということでなくしても、自衛力漸増するという日本側の考え方がはつきりわかりますれば、それでもいい場合もあり得ると思います。必ずしも和田君のおつしやるように、防衛計画がどうしても伴わなければ、自衛力漸増義務は引受けられないのだということにもならないのじやないかというふうに考えております。
  61. 和田博雄

    ○和田委員 そうすると自衛力漸増に対しては、かりに義務として引受ける場合があつても、あるいは義務として引受けなければならないのだが、計画そのものはなくてもかまわぬ、しばらくの間は計画自体もなくてもかまわぬ、こういう解釈ですか。
  62. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私はなくてもかまわたいというのではなくして、もしこちら側で、いろいろ保安庁でも考えておられるようでありますが、それはいろいろ慎重に考えなければなりませんから、この話合いが済む間にそういうものができるかできないか、そういうことはわからない。そこでかりにできない場合がありましても、――これは決していいことじやないかもしれません。これは意見の相違になりましようか、しかしこれがなければ絶対にいけないのだといふうには、私は考えておりません。こういうわけであります。
  63. 和田博雄

    ○和田委員 しかしなければいけなくても、やがては持たなければいかぬということだけは、岡崎外務大臣もそうお考えになるのでありましようね。いつまでもなくてもいいのでなく、何か持たなければならないというのでなければ、私は何のためにMSAを受けるのか、またアメリカがそんな交渉に一体真剣に相談に乗るのか、どうも疑わざるを得ないのであります。
  64. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは木村保安庁長官も研究中だというお話でありまして、結論はまだ出ておらないにいたしましても研究しておられることはMSAに関係なく、やはり安保条約から言いましても、自衛力漸増する建前をとつておるのでありまして、先ほどお答えしましたように、芦田さんは多少その点を誤解して、私どもはどうでもいいのだというふに考えておられるようにおつしやいしなしたが、そうではないので、こちらもやるつもりでおるのであります。ただ今申し上げておりますように、このMSA援助に関しては、少くともただいまの現状において必要な武器等が参りますれば、それだけでも少くとも強化されるものであります。われわれは防衛力の強化ということを目的としてこの援助を受けようとしておるのでありますから、それだけでも十分値打があると考えております。それで別途に、保安庁で必要あればそういう計画はもちろんお立てになるでありましようが、これは私の出しやばつてお答えすることではありません。
  65. 和田博雄

    ○和田委員 私は問題をそのようにそれてもらいたくないのであります。私がきようお聞きしているのは、MSAという問題に対してやはり事柄の真実をはつきりしておきたい、これは国会へどうせかかつて来る問題であるとは思いますけれども、やはりこの国会へかかつて来るまでの間に、国会の意思やあるいは国民の意思をあなたたらが交渉される上において反映しておく、そういう観点から、やはり私はほんとうのことを言つてもらいたい。そこでMSAがなぜ与えられるかといえば、あなたたちがいつもいわれるように、MSAにはアメリカという相手がある。アメリカ世界政策から日本MSAの援助を与えるのであります。何も日本アメリカが恩恵を施すために、MSAの援助をくれるわけではないのであります。この点は岡崎さんは百も承知だと思うのです。なぜそんなら日本アメリカがの援助を与えるかといえば、それはこの部屋においても私が何回も繰返して申し上げますように、アメリカ世界政策であるところの巻き返し政策、言葉をかえて言えば、自由世界集団防衛体刷を完成して行く、こういう立場に立つておるのです、これはもう相互安全保障法を読めば一目瞭然たることである、従つて日本に対してアメリカが欲しておるところのものは、やはり日本の軍力です、戦力です。それを日本にやはり自衛力漸増という形でアメリカとしては持たせて、そうして安保条約の筋四条の、アメリカ側もこれならば集団防衛体制ができたということを認め、日本側もそれを認めて、アメリカ日本から撤退して、そうして日本がいわゆる自衛するという体制に持つて行く、これはやはり一つのてこなのですよ。これを除いてMSAの価値はないと言つていいと私は思う、日本の場合は……。そのときに交渉されるあなたが、また吉田総理が、事柄の内容、本質というものを十分知つておりながら、なぜこの国会においては、そういう計画がなくても大丈夫なんだろうといつたようなことが言えるのか、もしも言えるのならば、私はその根拠をはつきりと示していただきたいと思う
  66. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 和田君のおつしやる前段には私はまつたく同感でありまして、アメリカ側も何も慈善事業をやつておるのではなくて、日本防衛の力がふえるということは、それだけ世界の平和の維持になり、結果において、アメリカの安全にも寄与するという考えから援助をしようとしていることは明らかなことでありまして、私はちつとも隠してはおりません、また日本としましても、安全保障条約の前文にもありますように、でき得るならば自衛力漸増いたしたいという考えを持つておるのでありますから、そういう機会があるたびに努力をして、漸増して行こうというつもりでおります。その結果として、ここにMSAというものがありなすから、われわれはこれを受けて自衛力漸増する一助にしたい、こう考えてやつておるのでありまス。しかし同時にこれは日本には憲法の規定がありまして、陸海空軍その他の戦力は保持できないことになつておりますから、戦力に至るものは持てない、それを持つということになれば、これは憲法の改正が必要である。こういう考えでおりますから、戦力に至るものは持てない、それを持つということになれば、これは憲法の改正が必要である。こういう考えでおりますから、戦力に至るものは持たないけれども、戦力に至るまでにはまだいろいろの自衛力の強化の方法は十分にある、そう考えておりますが、その範囲で自衛力漸増をやりたい、こういうつもりでおります。
  67. 和田博雄

    ○和田委員 私はこれは総理大臣聞きたいのですが、今の吉田内閣の安全保障の行き方は、今までは直接侵略に対しては安保条約のもとにおいてアメリカ、そして間接侵略におい丁は保安隊という方式に立つておられると思うのです。そうして今やろうとしておられることは、安全保障条約の四条に規定された状態を早くでかして、アメリカ軍日本から撤退してもらいたい、しかしその場合においても、日本というものは、一つアメリカとの集団防衛体制の中に自衛力漸増されておつて、そういう状態のもとにちやんとそこに日本という国がある、こういう状態に持つて行くための政策をMSAによつてつてつておる、こういうふうにわれわれは考えるのでありますが、そういうような外交方針だと理解して総理のお考えと違わないのかどうか、それをひとつ明確にしておいていただきたい。
  68. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えをいたします、ただいまのところ、交渉の任に当つておられるのは外務大臣で、MSAとして、アメリカ考え方を直接によく了承して知つておられるのは私よりも外務大臣であると考えて、外務大臣にかわつて答弁させておるのであります。それで今日、まだ外務大臣は交渉の結果について、私にも話合つておりません。すなわちただいまのところは交渉の最初であつて、深いところまで行かないのであります。しかし……(「職務怠慢だ。」と呼ぶ者あり)怠慢なことはない。これは交渉といたしては当然のことであります。交渉には順序があつて、初めからして結論を出すことには行きますまいが、交渉に臨む立場といたしては、現在の保安隊の組織をもつて出発いたしたいと思うのであります。すなわち漸増計画によつてMSAの援助を求めるという考えはないのであります。ゆえに計画がないと申せば計画がないのであります。つまり現在以上の計画はないのでありまして、予算に現われました保安隊計画以上は持つておらないのであります。またこれをもつて交渉する考えはないのであります。今後は交渉の結果としてどういう結果としてどういう結果になりますか、それは別として現在のところは現在の保安隊その他の設備をもつて交渉の基礎として出発しております。こういう態度であります。
  69. 和田博雄

    ○和田委員 私たち社会党は再軍備には反対しております。そして外交方針としても中立の政府をとつております、しかし日本独立ということについては、われわれは非常に熱意を持つております。自由党は、吉田さんは安保条約を結ばれて、そして日本独立をかち得るために、国力が充実していないから、アメリカ軍隊によつて一応は守つてもらう、しかし自衛力漸増して、将来は日本の力で守りたいということをしばしば言つておられるのであります。これは一つの方式であります。私と意見は違いますが一つ考え方だと思う。そこでその考え方に立つて議論をしてみるときに、アメリカ軍隊が早く日本の領土から去つて、そしてあなたの考え通りに、自衛をして行こうとするには、自衛力をやはり漸増して行つて、そしてもしも戦力を持つということが必要であれば、あなたの立場に立つて憲法は改正して行かなければならぬということ、これは論理上はそういうことしなつて来るのであります。ところが憲法は改正したくない、そして軍隊は持たないと言いながら、実は実際的の軍隊保安隊を持つて来たのが今までのやり方であつたのです。そして今度MSAの援助を受けてこの安保条約というものを破棄するかはりに――破棄ではなしに実質上の力によつて実態の内容をここにつくつてしまつて、そして安全保障条約というものは当業廃棄されたと同じような形になる。しかしそのあとには日本一つ漸増された自衛力を持つておる、そして一方ではアメリカとり間に集団安全保障を結んで太平洋軍事同盟か何か知らぬが、安全保障態勢をつくろうとしておる、こういう状態になつたときに、この安全保障条約というものは、自由党の立場からも、もつと戦力を持て、軍備を持てという改進党の立場からも、これはなくなつて来るわけです。MSAはこれを一歩進めて行くための何としても一つのてこであるということは疑いない。そうなつて来れば、今は憲法があるから戦力に至るものは持たない、こう言つておられるわけなんです、しかしその戦力の規定たるやきわめてこれはあいまいであつて国民を納得させるわけに行かない。そこでいろいろな疑惑が生じ、いろいろな問題が起つておるのだろうと私は思うのです。そこでそういう外交方針はつきりさして、国民の理解を得るためにも、これは何としても自衛力漸増計画なら計画、あなたたちが戦力に至らないこれが計画であるというものをやはり示して来るのでなければ、この問題はいくら言つたつて、これは、この国会においてはなるほど水かけ論で済むかもしれませんが、国の政治の上からはこれはなかなか済まない問題であつて、私は国の立場から非常に憂うべき結果が出るだろうと思う。……(発言する者多し)私は、反対の立場から言つている。しかしもしも自由党の立場からほんとうにこれをやるとすれば、そういう状態にたらざるを得ないと私は思うのであります。それをなぜあなたは計画については今ないからということだけでつつぱられるのか。大きな外交方針としては実際まずいと私は思うのでありますが、今総理のお言葉を聞けば、保安隊で当分行きたいということを言われておるのですが、そこのところはほんとうにつつ突んで、どう考えておるのかという根本問題をやはり総理大臣としてははつきりされるべきだと思うのでありまして、もう一度聞きたい。
  70. 吉田茂

    吉田国務大臣 政府の主張は終始一貫してかわらないのであります。これをごまかしなりと言われるのは、反対党の諸君であります。政府としては何もかわつておらないのであります、それでただいまも申した通り、現在の保安隊漸増する。いかに漸増計画をなすか、国力が充実しますればむろん漸増も急増もいたすつもりでありますが、今日はいまだその時期でない。のみならず外国においては、日本がまた軍備をして四方八方攻め出すのではないかという疑惧の念も持つております。この疑惧の念がいろいろな方面に影響を及ぼして、外交とか、貿易とかそういうことにいろいろ支障を生じておるので、日本としてはごく誠実に条約の規定を守り、憲法の規定を守る、漸増計画もこれは漸を追つて国力に応じて進める。漸増計画をいたしたために外国の猜疑心をあるいは疑惑を刺激するようなことはいたしたくない。ゆえに今日においては現在の計画をもつて進む。また議会か知らぬ間に軍――軍と言われますが、これはできない話で、先ほどもしばしば申す通り、予算において制限せられ、法律において制限されており、この民主主義の国において国民が知らぬ間に軍がいつの間にかできでしまつたり、やみ計画でやれといつてもやり得るはずがないのでります、ゆえに私は終始一貫問題の軍備――防衛なるものはやみ軍備でなく、予算に現われた通り計画であれば、国民は納得するであろうと思います。疑惑をもつて曲げて考えれば別でありますが、政府は正直にそう考えておるのであります。
  71. 和田博雄

    ○和田委員 私はきよう芦田委員総理との岡の質疑応答を聞いておりましても、総理大臣安全保障条約が結ばれた当時のお考えで、はつきりと軍隊はつくらない、憲法は改正しない、保安隊は間接侵略に備える、直接侵略に対してはアメリカ車でやるということを終始言われておるのであります。ところが木村大臣にしても、岡崎君にしましても、芦田委員も言われましたように、わずかに一週間くらいの間にすいぶん今のお考えとは離れたことを言つておるのであります。たとえばこの直接侵略に対しても、MSAを受ければ直接侵略に対抗する新たな義務か出て来るであろうとか、あるいは保安庁の方もかえなければならぬだろうとか、あるいは戦力の規定においては侵略を行うことのできない程度の装備なり設備なりを持つ能力ならば、これは戦力には至らぬであろうとか、きわめて広汎な、非常に広く解釈できるところのぎりぎりのところまでも戦力解釈を広げてしまつて、初めの政府の立つてつた場所からはるかにこつちの方に移つておるのであります。もしも総理大臣がほんとうに今のようにお考えになつておられるなら――私はそうたと思いますが、それなら木村君や岡崎君の言つたことは、これは間違いだ、それはおれの意思じやないということを私ははつきり言つていただきたいと思う。(「かつて解釈をするな」と呼び、その他発言する者多し)かつて解釈じやない……。
  72. 尾崎末吉

    尾崎委員長 御静粛に願います。
  73. 吉田茂

    吉田国務大臣 先ほど私ははつきり解釈いたしたつもりでありますが、たとえば保安大臣としては保安大臣としての計画を持つておられるでありましよう。これをもつて現在研究しておられるのであろうと思います。また外務大臣は何と言われたか、ちよつと今覚えませんが、いずれにしても外務大臣外務大臣計画を持つておられましようが、しかしこれが政府方針となる場合においては、閣議においてきまるなりあるいはまた議会の協賛を経てからきまるのであります。
  74. 和田博雄

    ○和田委員 私は外務大臣及び木村大臣の言は、今のところこれは各国務大臣としての言であつて政府の言ではない、しかしそういう言葉はこれがもしも閣議にかかつた場合は採用しない、そういうような御意向であるように思うのでありますが、私は大臣が少くとも総理考えられることとは違つた、誤解を招くような事柄をこの国会において言うことは今後これは絶対にやめてもらいたい。あなたはそういうことを言う大臣には注意をしてもらいたいと思います。そこで私はもう一歩進めて、これは戦力というものの規定のしかたが非常にあいまいでありますから、こういうことにもなるのでありまして、一体戦力というものを政府は統一した意見としてはどういうように考えておるのか、その規程をもう一変はつきりしていただきたいと思います。
  75. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 たびたびあらゆる機会に申し上げておりますが、一口に申し上げますと、今日のわが国の置かれている事情のもとにおきまして、戦争を有効適切に遂行し得る力というふうに考えております。
  76. 和田博雄

    ○和田委員 どうも戦争ということで、今度は近代という言葉が落ちたりしておりますが、もう少しほんとうに戦力とはどういうことを考えているのかということを、佐藤君は佐藤君で違つたことを言うし、ほかの人はほかの人で違つたことを言うので、話にならぬと思うのであります。これははつきり政府の統一したことを言つてもらいたい。もう一ぺん木村長官に言つてもらいたい。
  77. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたしますこの憲法第九条第二項の戦力は何を意味するか。これはしばしば問題になつて私も答弁をしておるのでありますが、要するに近代戦争を遂行し得る有効適切な装備編成を持つた一つの実力である、こう解釈しております。なお申し上げておきますが、だんだん和田委員お話を承つて私は少し申し上げたいのであります。総理がただいまの保安隊の行き方でやりたい、こういうことを申されておる、その考え総理は一貫されておると思うのであります。と申しますのは、自衛力を増加するということにはいろいろの方式があろうと思う。人員を増加することも一つの方式であります。また装備を強化することも方式であります。そこでこの方式をいかなる点に求めるかということになりますと、人員を増加するよりは、今の保安隊の装備、精神力を増強して、これをりつぱなものに育て上ることがいいのじやないかということを総理は言われておるのであります。われわれといたしましても、その考え方はもつともでありまするが、現在の段階において自衛力漸増いたしますについても、国家の力を見なくてはならない。いわゆる財政力はどうであるか、国民はその気持になつておるかどうか、これが先決問題であります。アリソン大使も申しておるのであります。これは決して日本の政治の力、財政の力を無視して日本に対して自衛力漸増を求めるということはできない、自衛力漸増するかいなかということは日本政府見解に基くものだ、こう申しておるのであります。そこで一番問題になりますのは、現在の段階においてはたしてどれだけのものを増加し得るか、またどれだけの装備を強化することができるか、これらについていろいろ検討しなければ、この結論は生じたいのであります。しかしながらわれわれ保安庁といたしましては、これはあらゆる角度から検討いたして、成案は得ておりませんが、今せつかく研究の段階にあるのである、これを申し上げておるのであります。
  78. 和田博雄

    ○和田委員 時間がありませんから、いらぬことは答弁せぬようにしていただきたいと思います。そこで今近代戦を有効適切にというように定義されたのですが、それとこの間の侵略が行い得ない程度のということとどういう関係なんですか、この二つはまるで違つたカテゴリーに属するものだと私は考えますが、この点については木村国務大臣はどういうふうにお考えになりますか、簡単にひとつ答弁願います。
  79. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。侵略戦争をし得るような編成装備を持つたものはおおむね戦力であると申しておるのであります。
  80. 和田博雄

    ○和田委員 そういうことは定義にならぬのであります。この間外務委員会で有田さんか外務大臣と質疑応答されておりましたが、相手によつて、こちらの軍隊がわずかなものでも侵略しようという意思があれば侵略できる、条件さえ備えればできるわけでス。最初は戦力という問題については、政府保安隊なんかについても目的ということを非常に重視しておつた。ところがいつの間にかその目的をはずれてしまつて、今度は近代戦を有効適切にというような非常に抽象的なことを言い出したわけであります。一体なぜそういうふうに戦力についての概念規定を広げなければならなくなつたか。今まで通り解釈では、保安隊かだんだんと進んで行くに従つて、もはや実際的に今まで通りの中には包含できなくなつて来た。だからこそ解釈の方をだんだんと抽象的に広げて行つたのが、私は今までの政府のやつたやり方だと思うのであります、だから私かこの点についてやかましく言つておる、総理大臣がどんなに厳密な規定をして、元通り一貫した説明をされておつても、現実に保安隊を預かるあなたの方でかつて解釈をずつと抽象的に広げて打つて、実際的にそれを満たして行けば事実ができちやう、憲法が現にある。しかし憲法に位半だと現つてみても、事実がもうできちやつて、事実ができてはもうやむを得ないではないかということにいつでもやろうとするあなた方のやり方を、またここでも繰返していると言われてもしようがない、だから直接に保安隊を預かつているあなたといえども、戦力の規程においてはできるだげ厳密に、最初の規程通りにやつて行くのが、これが政治だろう、そういうふうに私は思うのですが、どうですか。
  81. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。戦力解釈については終始一貫しておるのであります。決してかわつておりません。要するに客観説をとつて近代戦争を有効的確に遂行し得る装備能力を持つた実力部隊であるということにわれわれは終始一貫しておるのであります。
  82. 和田博雄

    ○和田委員 私は時間がありませんので、木村さんとそういう言葉の争いはやめますが、これは速記録をごらんになつて、ずつと過去から見てくれば、政府解釈かかわつて来たことは、だれだつて一目瞭然にわかることであつて、そういう御答弁をされることは、ぼくは木村君のために非常に惜しむのであります。そこでこの問題については政府としては、近代戦を有効適切に遂行する能力と言い、あるいは国力が充実しない間はそういうものは持てないのだと言う以上は、国力が充実したときに政府として持とうとしておるところのいわゆる戦力の具体的なものはどういうものかということを当然持つてつてしかるべきだと思うし、その考えがなければならぬと思うのですが、この点、改進党は憲法を改正して戦力を持てと言つておる。あなたの方は憲法を改正せずに、戦力に至らぬ前のいわゆる実力を持とうとしておる。だからこそお互いこの間の外務委員会におけるように、MSAは受けたい、憲法は改正しない、内容はだんだん接近したのだというような妙な問答が行われて来るのでありますが、政府としては一体国力の充実した場合において持とうとしておるところの、そうして遠い将来ではなしに、近い行来において国力の充実に従つた戦力というものはどういうものを考えておるのか、私はこれをまだ一ぺんも伺つたことがないのです。この点は当の木村大臣から御答弁をいただきたい
  83. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。御承知通り戦力を持つ、いわゆる再軍備をするということは容易ならざることであります、和田委員も御承知通り、これをやるには、どれだけの財政力の負担を国民にかけるか、われわれがまず考えなくてはならぬのは、いくら再算術いたしましても、国民の経済が安定し、民心がしつかりしないと、これは持てないのであります。そこでいかに国力とマツチしたいわゆる防衛力を持つかということを、われわれは考えなくてはならぬのであります。今申し上げるように、直接侵略日本から逆にやるような大きな戦力を持つというようなことはとうていできかねる。われわれといたしましては、国力相当たいわゆる自衛力漸増をやらなくてはならぬ。その国力の増進に従つて、それにマツチするようにするということはわれわれ考えておるのであります。そこで一体どれまでの程度になるかと言いますれば、容易にそういうことは言い得るものではないのであります。われわれは四囲の情勢、いわゆる国際情勢、内地の治安情勢をにらみ合せて、かつ日本国民の財政力をよく検討いたしまして、それにマツチしたように徐々に漸増して行くということがその方針であります。
  84. 和田博雄

    ○和田委員 何度聞いても同じ答弁で、その都度都度の御答弁でることを非常に残念に思います。こういう問題はいやしくも保安庁の長官であるならば、また自衛力漸増計画研究しておると、ある場合には言うくらいならば、ちやんとした計画たり構想なりを持つてつてしかるべきであると思う。言えないからというて、この場合はこれで済むかもしれませんか、やがては事実となつて出て来る。事実となつて出て来たときに、国民として最も困る状態が起きてはいけないからこういうことを言つておる。それをどの委員会においてもその場その場の御答弁をされて行くことを私は非常に残念に思います。  そこで私は方面をかえて聞いてみたいのでありますが、MSAの援助を更けましたときには、もちろん五百十一条の義務は一から六まで負うのだろうと思いますが、そのときに第二号の国際緊張の原因を除去するために、相互に合意し得る行動をとるというのがあるのですが、その具体的な内容はどういうものであるのか、政府としてはこれをどの程度に考えておられるのか、その点をひとつお伺いいたしたい。
  85. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 ただいまのところ日本に関する限りは国際的緊張の原因になるようなものはないと考えております。しかし将来も必ずないとは言えないわけでありまして、これはいろいろなものが想定されますが、たとえばある領土について自分の方の領土であると言い、相手方はそうでないと言う場合もありましようし、またかりに大げさに言えば輸入禁止を非常に強力に方方の国がすれば、やはりこれは一種の国際的緊張になる。いろいろた例があり得ると思います。そういう場合にできるだけ相互に相談して、その緊張の原因を取除くような措置を講じて行く、こういう一般原則であります。
  86. 和田博雄

    ○和田委員 国際的緊張の原因というものは、何も自分の国になくてもよいのではありませんか、日本側がそういう原因を与えておらなくても、やはり一般的にそういう原因があれば、そのこともさすのではありませんか。
  87. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 そのことも広義に言えばもちろんさします。しかしアメリカ日本との間の二国間の協定でありますから、主として二国間の問題になりますが、これはいずれは自由主義諸国の間にもできるだけ材料その他を供給するという規定もあり得るわけでありますから、必ずしも二国間たけと限定する必要はないと思います。
  88. 和田博雄

    ○和田委員 私は法律の建前からいつて、これは二国間に限出してはいけないと思います。広く解釈する点だと思つております。こういう点でお互いに合意し得る行動をとるということがあれば、この援助を受けることによつて日本はやはりアメリカ世界政策の一環としての防衛ということになるのですから、こういうような規定からいつてみても原因を除くために、たとえば日本防衛力を、あなたたちは軍隊と言わなくても、一つ防衛力を持つておれば、その防衛力が、この原因を除くために集団的に動く、何らかの活動をするということは予定されるように思うのでありますが、その点をひとつお聞かせ願いたい。
  89. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは国際連合の規定に沿うという大前提のもとに通常やつておりますので、国際連合においては紛争の平和的解決ということを根幹にいたしております。何か今のお話だと、お互いに武力のようなものを結合して、じやまになるものを追い払うというふうにとれるのであります。――それが間違いならば取消しますが、そういうような考え方でやつておるのではなくして、日本とよその国との間に国際的な紛争の種になるようなものがあり得、また日本アメリカとの間にもあり得るかもしれない。またアメリカとよその国との間にもあるかもしれない。要するにこれらの紛争や国際的な緊張の種になるようなものは、できるだけ除いて行こう、こういう趣旨に、普通に解釈していただきたいと思います。
  90. 和田博雄

    ○和田委員 私はそう解釈せずに、むしろこういう規定によつてアメリカとの間に結んだ集団防衛体制が動く場合には、日本はしばしばいわれておるように海外州兵の義務はこの条約の表面からはそこになくても、MSAを受ける協定の中のこういつたようなものを義務とすることによつて、やはり海外出兵というものも、その可能性は非常にあるというふうに思うのであります。か、その点はいかがでしよう。
  91. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 今おつしやつたことは、和田君のお話は私は常に尊敬しているのでありますが、今の御解釈は少し強弁と言つては失礼でありますが、どうも強弁のようにとれます。私は普通に解釈いたしまして、国際的な緊張の原因というものは、やはり仲たがいになるようないろいろな原因かあると思います。それをできるだけ除去して行こう、こういう普通の解釈によるべきだと思います。
  92. 和田博雄

    ○和田委員 その御解釈は私は納得いたしかねるのであります。なぜならこれは何べん繰返してもこれが集団防衛一つ体制であるという点からいつて日本の持つているいわゆる戦力、こうゆうものが集団的に動くということは、これを結ぶ以上は予定しなければならぬと思うのであります。そこでそういうような集団的に動く場合に、その根拠にたるところの条文というものかやはりこの小にはあるのでありまして、今あなたのおつしやるように、非常に狭い解釈をとるということは、これはこつちだけかつて解釈しても、あなたはしようがないとおつしやるかもしれませんか、私どもはその点があなたのような非常に狭い解釈では納得が行かない、こういうように思うのであります。  もう一つ、この五百十一条の中での自国の防衛能力を発展させるために必要なすべての適当な措置を講ずる、こういうことがあるのでありますが、これはどの程度の義務を負うのであるか。たとえば憲法改正というものまでも当然含んで来るのであるか、憲法改正のようなものは含まないという解釈なのか、それは一体向うとの話合いはどういうようになつているのか、それを伺いたい。
  93. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 前の点につきましては、たとえば一国の武力とか防衛力とかいろいろな言い方がありましようが、そういうものを海外に出すのにそんなあいまいだ規定で出すことを約束するということには、常識上私にはとれないのです。こういう重大な約束をかりにするとすれば、はつきり書かなければならぬことは、たとえば国際連合でも武力を提供するという一般的な約束がありますが、実際武力を提供するには特別な協定をつくらなければやらないということになつているくらいで、和田君のおつしやるような、そういうようにどうでもとれるようなあいまいな規定を置いて、それで海外に武力を出すのだというふうにとるのは無理だと思います。  なお今おつしやつた第二点でありますが、これはもちろん政治的、経済的ないろいろな条件があります。それから第五項には合理的な手段をとるということになつておりまして、憲法とか――今の法律もそうでありますが、憲法のようなものを特にかえなければならぬというような約束ではないのであります。
  94. 和田博雄

    ○和田委員 いや、私がなぜこういうことを言うかといえば、あなたはMSA条約を結ぶときに、日本の特殊性というものを盛んに言われているわけなのであります。日本の特殊性は何かといえば、それは何といつてアメリカが占領中につくつた、われわれが承認してつくつた憲法戦争放棄をしている点なんです。ですから、自衛力漸増ということをやつて行くときに、向うがほんとうに期待している自衛力漸増日本がやるときに憲法がさしさわりになる。しかしそれを表面から憲法をかえろということは、アメリカとしてはとうてい言えないことだと思う。なぜならアメリカが占領中につくつた憲法をわずか十年もたたないうちにかえろといつたようなことは、アメリカとして外交政策上とうていとり得ない政策だと思う。そうすれば憲法の改正によつて――自衛力をぎりぎりのところまで、戦力に変化するところまで持つて行くのには憲法を改正しなければならぬ。その一つの糸口としてこういうような条文がやはり材料になつて来ると思う。われわれはそういうふうに思うのです。ですからMSA条約でこの義務を帯びるときには、一々のものについてその解釈の限度といつたようなものは書くつもりなんですか。それとも包括的に書いてそれで済ますつもりでありますか。どういうような考え方でおられるか、それを伺いたい。
  95. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 協定はおそらく普通の形になると思います。しかしながらこの解釈についてはオフイシヤルな、公式の議事録と申しますか、そういうものもできる場合もありまして、もし不明な、残しておかなければならないオフイシヤルな解釈が必要な場合には、そういうような措置をとるつもりであります。
  96. 和田博雄

    ○和田委員 あまり時間がありませんが、私はMSAのこの条約を結ぶについては、当然政府は調印前に国会の承認を経ると同時に、日本憲法に抵触するような規定は、これは入れない、排除する。そしてもちろんその限度において交渉を始めて行くと思うのでありますが、そういうような考え方であるかどうか。これはひとつはつきりとしておいていただきたいと思います。総理大臣いかがですか。(「総理大臣が聞いていない。和田さん、もう一ぺん質問したらいい。」と呼ぶ者あり、声)憲法違反するようなそういう条項がある場合には、逆に言えば、MSAの援助を受けない。MSAの援助を受ける以上は、憲法の規定に従つた援助でなければならぬ、こういうようなお考えであるかどうか。
  97. 吉田茂

    吉田国務大臣 当然でございます。     〔「時間々々」と呼び、その他発言する者あり〕
  98. 和田博雄

    ○和田委員 MSAをめぐつて、今まで私はいろいろな点を聞いて参つたのであります。しかしまだ十分に納得がいたしかねるのであります。もちろんこの問題は、今までいろいろな視角からあらゆる委員会質問されましたので、質問の点は重複する点が多々あると思いますが、どうも政府根本の態度が非常にぼやかされておるように私どもは考えます。もしも政府憲法の改正もしない、そして保安隊戦力でない、やはり警察目的の保安隊というところでとどめておくということがはつきりとしているならば、そして現に防衛計画までも持つていないというならば、私はMSAの交渉はやらなければいいと思う。やる必要は全然ないというように認められるのであります。そういうような立場からお聞きしたのでありますが、答えを聞いて、ますます私はこのMSAそのものに対して、多くの期待を持ち、またこれによつて日本の経済をよりよくして行くという希望のもとに、政府がもしもこれをやつているとすれば、それは私は非常な錯覚であると考えると同時に、このMSAというものによつてアメリカ世界政策の一環として、ますます日本の地位を固めて行くことは、アメリカ依存のこのきずなを切り取ることのできないものにしてしまう結果に、どうも陥つて来るということをわれわれは心配するのであります。  この意味において、日本の外交方針として今非常に重要なときに、このMSAの交渉を始められているわけでありますが、私はこのMSA憲法に明らかに違反して来る部分が出て来るし、MSA自体が、日本にとつて何らプラスになる面はないという確信のもとに、政府に対してMSAの交渉を打切るべきである、この援助はもらうべきではないということを申し上げて、私の質問は終ります。(拍手)
  99. 尾崎末吉

    尾崎委員長 これにて暫時休憩いたします。     午後五時十四分休憩      ――――◇―――――     〔休憩後は開会に至らなかつた