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1953-07-07 第16回国会 衆議院 建設委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年七月七日(火曜日)     午前十時五十四分開議  出席委員    委員長 久野 忠治君    理事 内海 安吉君 理事 瀬戸山三男君    理事 中島 茂喜君 理事 山下 榮二君    理事 佐藤虎次郎君       逢澤  寛君    高田 弥市君       仲川房次郎君    堀川 恭平君       松崎 朝治君    村瀬 宣親君       志村 茂治君    三鍋 義三君       山田 長司君    中井徳次郎君       高木 松吉君    只野直三郎君  出席政府委員         建設政務次官  南  好雄君         建設事務官         (大臣官房長) 石破 二朗君         建設事務官         (計画局長)  澁江 操一君  委員外出席者         建設事務次官  稲浦 鹿藏君         建設事務官         (大臣官房建設         業課長)    宮内 潤一君         建設事務官         (河川局次長) 伊藤 大三君         専  門  員 西畑 正倫君         専  門  員 田中 義一君     ――――――――――――― 七月四日  委員平井義一辞任につき、その補欠として高  田弥市君が議長指名委員に選任された。 同月六日  委員三鍋義三辞任につき、その補欠として伊  藤好道君が議長指名委員に選任された。 同月七日  委員伊藤好道辞任につき、その補欠として三  鍋義三君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 七月六日  建設業法の一部を改正する法律案内閣提出第  一五四号) 同月四日  問田川改修工事施行請願岸信介紹介)(  第二五九八号) 同月六日  破間橋架替え請願田中角榮紹介)(第二  八〇一号)  入廣瀬村、只見村間道路改修工事施行請願(  田中角榮紹介)(第二八〇二号) の審査を本委員会に付託された。     ――――――――――――― 同月四日  産業労働者住宅資金融通法案に関する陳情書  (第六  七九号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  土地收用法の一部を改正する法律案内閣提出  第一四一号)  建設業法の一部を改正する法律案内閣提出第  一五四号)  九州地方における豪雨災害状況に関する説明聴  取     ―――――――――――――
  2. 久野忠治

    久野委員長 これより会議を開きます。  本日はまず建設業法の一部を改正する法律案議題といたします。その提案理由説明を聴取いたします。南政務次官
  3. 南好雄

    南政府委員 建設工事の適正な施行を確保し、かつ建設業の健全な発達に資するため、昭和二十四年法律第百号をもつて建設業法が制定せられ、ほぼ所期の成果を収めて今日に至つているのでありますが、施行以来四年間にわたる経験にかんがみ、なお若干の改正を加える必要があります。すなわち、本法律適用範囲の拡大、建設業者登録要件強化一括下請負禁止強化及び建設業審議会委員任期の延長と権限強化等をはかる必要があると存ずるのでありまして、これが本改正法案提案の主たる理由でございます。  以下、本改正案の主要な点につきまして御説明申し上げます。  まず第一に、現行建設業法におきましては、板金工事外八種類の工事については、それのみを単一に請負うことを営業としている者につきましては、適用を除外しているのでありますが、最近におきましては、この種の工事も、その重要性からも、またその請負金額の点からも、現在建設業法適用を受けている工事と差異を設けられなくなつて参つておりますので、壁紙工事を除き、これらの工事のみを請負うことを営業とする者に対しまして、土木工事等と同様、本法適用することとしたのであります。  第二に、登録要件強化でありますが、現行法におきましても、建設大臣登録を受けた建設業者は同一都道府県にある営業所の一に一定の資格を備えた技術者を置くを建前としてはいるのでありますが、これを登録要件といたすとともに、登録の際の拒否要件を拡大して、現行法では、建設業法違反のゆえをもつて会社処分された場合において、営業所代表者等会社から独立して登録申請して来る場合には、これを拒否し得ないこととなつているのを、登録拒否し得ることとしたのであります。  第三に、一括下請負禁止強化についてでありますが、この禁止の目的を十分に確保いたしますため、無登録業者等に一括請負させる場合あるいは一括して請負う場合等についても禁止することとしたのであります。  第四に、建設業者に対する監督処分のうち、最も重要な処分である営業停止及び登録取消し処分につきましては、これを慎重に行う要がありますので、建設大臣または都道府県知事がこれらの処分を行おうとするときは、必ず建設業審議会に諮問することといたしました。  第五は、建設業審議会委員任期を延長し、その権限強化したのであります。現行法によりますと、委員任期は六月で、二回以上の再任を禁じておりますが、これはあまり短期に失しますので、任期を二年とし、再任を妨げないことといたしたのであります。次に権限強化でありますが、現行法におきましても、建設業審議会は、建設工事請負契約に関して紛争の生じた場合、当事者申請に基いて、紛争解決のあつせんを行い得ることとなつておりまして、本法施行以来そのあつせんしたものは、約五百件に上り、注文者にも、請負者にも多大の利便を与えておりますが、紛争原因を調べまするに、その内容が明確でないもの、あるいは不合理なものが多いのでありまして、このような場合は、その契約内容を公正にするよう、変更勧告をすることができることといたしたのであります。また中央建設業審議会建設工事標準請負契約約款作成し、これが実施を主な発注者等勧告して来たことにより、従来その不合理性庁務性の特に強かつた建設工事請負契約が年とともに是正されつつありますが、なお入札方法合理化注文者予定価格積算の際の諸経費算定基準等作成してその実施勧告し、建設工事請負契約関係合理化を期することとしたのであります。その他以上の諸点に関連して関係條文の整備をはかつたのであります。  以上、建設業法の一部を改正する法律案の主要な事項について、説明申し上げたのでありますが、何とぞ慎重御審議の上御可決あらんことをお願いする次第であります。
  4. 久野忠治

    久野委員長 次に本案につきまして政府委員より逐條説明を聴取いたします。石破官房長
  5. 石破二朗

    石破政府委員 建設業法の一部を改正する法律案につきまして、その要点を逐條的に御説明申し上げます。  まず第三條の改正は、現在建設業法適用を除外している板金工事外七種の工事について、その重要性の増加、請負金額増大等にかんがみ、土木工事建築工事と同様に建設業法適用を受けるようにし、もつて、法に規定する保護、助成、監督がこの種工事にも及び得るようにしたのであります。これに伴つて一件三十万円未満の工事のみを請負う者と、壁紙工事のみを請負う者のみが本法適用除外となるのでありますが、これら適用を除外された業者につきましても、後にそれぞれの箇所において述べる理由によりまして、一括下請禁止及び報告検査規定だけは、なお適用する必要があるので、第三條本文改正をあわせ行つた次第であります。  次に第五條に第二項を追加いたしました。これは現行法の第二十七條におきましても、建設大臣登録を受けた建設業者は、同一都道府県内にあるその営業所の一に、第五條各号の一に該当する技術者を一人以上置くことになつておりますが、現行法では登録要件ではないので、業者は一度登録を受けますと、とかく技術者の設置を怠りがちなので、建設大臣登録業者についてはこれを登録要件として法の趣旨の徹底をはかつたのであります。従つて現行法の第二十七條及び第四十七條第三号は、これを削除いたします。また第六條本文中営業所の定義を削除したこと並びに登録申請書添付書類に関する第七條第四号、登録がえに関する第九條第一項及び登録取消しに関する第二十九條第一号後段改正は、この第五條第二項の改正符節を合せたものであります。  次に登録拒否に関する第十一條改正は、現行法では登録取消しの日または刑に処せられた日に法人の役員であつた者登録申請をして来た場合にのみ、これを拒否できることになつておりますが、他の法令との均衡をはかり、また会社の無責任な営業所長等が、不誠実な行為をしながら独立して登録して来るのを防止するために、これを改めて、それらの処分のあつた日の三十日前に役員、支配人、または重要な地位にあつた使用人については、登録拒否し得るようにいたしました。同條に第六号を追加したのは、第五号と均衡をはかるためであります。  第十六條、第三十一條第四項及び第四十二條改正は、都道府県知事義務を課しまた権限を委任する規定でありますが、現在建設省令によつているものを、地方自治法第百四十九條の改正に伴いまして、政令によつてその細目等を定めることといたすものであります。  第二十一條は、昨年公共工事前払金保証事業に関する法律が公布されたことに基き、請負契約当事者者間に請負代金の全部または一部を前払いする約定がある場合においても、同法に基く保証に基く保証事業会社保証がある場合には、保証人を立てるに及ばぬ旨を規定したのであります。  次に、一括下請負禁止に関する第二十二條改正でありますが、現行法によりますと、登録を受けた建設業者登録を受けた建設業者一括下請負をさせる場合のみを禁止しておりますが、これでは法の趣旨を徹底できませんし、無登録業者等一括下請負させたような場合の方が、より注文者に迷惑を及ぼすことになるので、これを改めまして、注文者の書面による承諾がある場合を除いては、元請負人については何人にも一括下請負させることを禁じ、また無登録業者には一括下請負をしてはならぬということにしたのであります。従いまして、この規定は無登録業者にも適用のあることは、第三條の改正に関する説明の際に申し述べた通りであります。  次に第二十四條の改正でありますが、建設審議会紛争のあつせんを依頼された場合、従来の経験に照しますと、紛争原因請負契約の不備または不合理に基くことが多いので、同條の後段において当時者にその契約内容変更することを勧告できる権限を加えました。またあつせんの性質上、どうしても当時者または参考人出頭を要する場合が多いので、同條に第三項を加えて、これらの者の出頭を求め得ることとしました。この改正に照応して、第四十四條及び第四十九條を改正し、出頭した参考人には旅費、日当を支給し得るようにし、また出頭に応じない者に対しては一万円以下の過料に処することといたしました。  第二十六條の改正は、第五條改正に伴い條文を整理したものであります。また建設業者が無登録業者等部分下請負をさせる場合においても、相当の弊害が認められますので、実情に応じて建設大臣または都道府県知事が適当な指示または勧告をなし得るように第二十八條第一項に第六号を加えました。  第二十八條第二項、第二十九條本文改正は、現行法においては、営業停止登録取消し処分をいたします際には、単に本人について聴聞をしてこれを行うことになつておりますが、これら重大な処分については最も慎重を要しますので、建設業審議会に諮問して適正な処分を行うように改めたのであります。なお第二十九峰第一号前段改正は、従来からも第五條との間に矛盾があるやに感ぜられておりましたので、この際これを是正したものであります。同号後段改正については、先ほど第五條改正について申し述べた際に申し上げました。伺候第二号の改正も先刻申し述べた第十一條改正に伴い整理したものであります。  第二十九峰の二の一條を新設いたしましたのは、従来建設業者あるいは会社業務を執行する役員等の中には、その所在が不明となつて調査聴聞等もなし得ず、従つて処分し得ないという例が相当ありましたので、これらについて官報または都道府県公告にその事実を公告して三十日間当人等からの申出を待つこととし、何らの申出もないときは登録取消しをすることができることとしたのであります。  第三十條を改正いたしましたのは、現行法においては、建設業者に不誠実な行為等があつた場合にも、その利害関係人は、単にその建設業者登録を受けた建設大臣または都道府県知事にのみ、その事実を申告し適当な措置をとることを求め得るのにすぎませんので、さらに利害関係人を厚く保護するために、当該建設業者が仕事をしている土地を管轄する都道府県知事等に対しても、申告及び適当な措置の請求をなし得るようにしたのであります。しかしてその申告を受けた知事のとるべき措置については、第四十二條改正によつて、第二十八峰に規定する指示勧告及び知事登録業者営業停止はみずからこれを行い得ることとし、建設大臣登録業者に対する営業停止及び登録取消し処分を行う必要があると認めるときは、建設大臣または登録した都道府県知事にその旨を通知して、その権限の発動を容易にするようにいたしたいと考えております。  また建設業者が無登録業者に下請負させたような場合に、その無登録業者から報告を徴し、必要に応じてその業務工事施工状況等を検査しなければならぬ場合が多々ありますので、第三十一條第一項から第三項までの規定改正いたした次第であります。また第三十二條に第二項を追加いたしましたのは、第三十條及び第四十二條符節を合せたものであります。  次に第三十四條第二項の改正は、建設業の健全な発達をはかるためには、標準請負契約約款作成及びその実施勧告のほかに、入札制度合理化する基準及び請負価格中最も困難な問題を含んでいる予定価格中の諸経費算定に関する規準を確立して、これを広く採用せしめる必要があると認められますので、中央建設業審議会権限を改めて、この二つの基準作成及びその実施勧告権規定したのであります。以上申上げましたごとく、建設業審議会権限及び責任はきわめて重大となつたのでありますが、現行法では、その委員任期は六月で、しかも二回以上の再任を許さないことになつております。これではあまりにも短期に過ぎると認められますので、任期を二年とし、再任を妨げぬようにいたしたいと存じまして、第三十七條改正いたした次第であります。  以上、建設業法施行以来約四箇年の事例に照して、所要の改正行つたのでありますが、この改正によつて新たにこの法律適用を受けることになる者もあり、またこれを即時施行いたしますときは、種々な困難を生ずる面もあると思われますので、この間の調和をはかりまして、実情に即した方法によつて実施できますように、附則を改正した次第でございます。  以上、逐條にわたりまして御説明を申し上げました。
  6. 久野忠治

    久野委員長 本法案に対する質疑は次会に譲ることにいたします。     —————————————
  7. 久野忠治

    久野委員長 次に、九州地方における豪雨災害状況に関し、九州地方水害調査慰問派遣議員として本院より派遣され、つぶさに現地災害状況を調査いたされました中島茂喜君より、災害一般的応急的対策樹立に資するため、説明を聴取いたします。中島茂喜君。
  8. 中島茂喜

    中島(茂)委員 去る六月二十七日の本院の議決によりまして、各党から選出されました十五名の派遣団に加わりまして、二十八日の夜に東京を出発いたし、二十九日の正午に福岡の県庁に着いたのでございます。  現地に参りましたところ、交通が遮断されておりますために、三班を編成いたしまして、第一班は福岡大分、第二班は佐賀長崎、第三班は熊本を担当いたしまして、三日間にわたつてつぶさに被害状況を視察いたしたのであります。この状況を、ただいまから各県ごとに御報告をいたします。  まず福岡県におきましては、七月一日現在におきまして、土木関係被害は百四十六億円に達しておるのであります。道路決壊箇所が五千二百四十八箇所橋梁流失千二百三十、堤防決壊箇所二千四百八十、山くずれ四千四百七十七箇所に上つております。家屋全壊は千八百十四戸、家屋流失千六百七十一戸、半壊六千五百十六戸、浸水家屋は二十八万一千戸に達しておるのであります。  次に、大分県について申し上げますと、土木関係被害総額は二十五億円といわれております。河川決壊箇所が七百八十二箇所道路決壊箇所が千二百七十箇所橋梁流失二百六十、それから住宅被害は、流失が六百二十九戸、全壊三百四十九戸、半壊九百二十三箇所浸水三万九千八百五十三戸に達しておるのであります。  佐賀県について申し上げますと、土木関係被害総額は約二十五億でございまして、堤防決壊箇所が五百五十箇所、がけくずれが四百二十一箇所道路決壊が千五百六箇所橋梁流失百八十五となつております。住宅全壊が六百二十三戸、半壊七百五十二戸、流失八十七戸、浸水家屋は九万九千百戸になつております。  長崎県について申し上げますと、堤防決壊箇所が五百三十四箇所道路決壊箇所が千四百二十九箇所橋梁流失が五十五、がけくずれが三百十四箇所住宅全壊が百七十四戸、半壊四百四戸、浸水家屋は七千四百四十六戸となつております。土木関係被害総額は四億六千万円に達しております。  次に、熊本県の状況について申し上げますと、堤防決壊箇所が五百九十八箇所道路が千七百六十九箇所橋梁流失百七十、土木関係被害総額は百七億七千万円に達しております。全壊家屋は七百八十三戸、流失家屋が六百七十三戸。半壊家屋が二千七百九十八戸、浸水家屋が七万一千九百十三戸になつております。  なお、私ども視察はしなかつたのでございますが、ちようど視察中にまた豪雨がありまして、鹿児島県、山口県に相当被害があつたということを聞いたのであります。  以上、特に建設省関係被害県別に申し上げたのでございますが、現地におきまして私どもが感じましたことは、何分にも今回の降雨量が、いまだかつてない降雨量でございましたために、今申し上げましたような未曽有被害を引起したのでございますが、この根本的な対策並びに応急対策を樹立いたしますためには、本委員会から至急に委員を派遣されまして、現地におきましていろいろと検討をする必要があると考えられるのであります。これは国会開会中には委員を派遣しないという原則になつておるのでございますけれども、今回の災害が未曽有災害でありましただけに、前例を破りましてでも、一日も早く委員を派遣されるよう、委員長においてとりはからわれるように、この機会に要望いたしたいと思うのであります。  なお詳細にわたりまして御報告を申し上げたいと思うのでございますが、本日の本会議におきまして、調査慰問団金光団長から報告をいたすことになつておりますので、これをお聞き取りを願いたいと思います。  なお御質問がありますれば、私からお答えをいたしたいと存じます。
  9. 久野忠治

    久野委員長 ただいま中島君より御要望のありました委員派遣につきましては、委員長におきまして運営委員会十分協議をいたしまして、御趣旨に沿いたいと存じます。     —————————————
  10. 久野忠治

    久野委員長 次に、土地収用法の一部を改正する法律案議題といたします。本案につきまして政府委員より逐條説明を聴取いたします。澁江計画局長
  11. 澁江操一

    ○澁江政府委員 土地収用法の一部を改正する法律案について、逐條御説明を申し上げます。  まず第二章関係改正につきまして申し上げます。第十四條及び第十五條改正規定でございます。  第十四條は、現行法上は障害物——いわゆる土地収用法対策なつております公共工事をいたす場合における準備行為として障害物の伐除、町村長許可を受けて強制土地立入り等ができる規定でございますが、これに対しまして今回の改正は、ダム工事等施行する場合の地質調査のためのボーリングを、起業者知事許可を得てできるごとくに改正いたしたいのでございます。この際の「試掘等」の字句には、試掘試錐に伴う障害物の伐除を含んで考えております。「試掘」と申しますのは、主として横に掘る長隧道でありまして、半径一メートルないし二メートルに及ぶ場合を予定いたしております「試すい」と申しますのは、やぐらを組みましてドリルで縦穴を掘るという場合を予定しておるのであります。現在の試錐の実際の作業から申しまして、大体半径二十センチメートル内外の場合を予定いたしております。     〔委員長退席瀬戸山委員長代理着席試掘試錐いずれの場合におきましても、深さは大体三、四十メートルに及ぶのが通常でございます。試掘試錐に伴う障害物の伐除は、試掘試錐作業と一体をなす工事として取扱つておりまして、一括して知事許可を受けしめることにいたしております。この場合に、現行法障害物伐除と異なりまして、特に試掘等につきましては、知事許可事項といたしてございますが、これは、試掘等の場合におきましては、土地の形質の変更を伴う場合が予想されますので、単なる植物等障害物の伐除の場合に比較いたしまして、慎重に取扱う必要がありますのと、試掘等におきましては、主としてダム建設に伴う準備作業でございますので、その事業の規模から申しまして、市町村長というよりも、むしろ当該関係都道府県知事関心事でございますので、そういう意味合いからいたしまして府県知事許可事項といたしたのでございます。  次に、第十四條の第二項の関係になります。第十四條の第二項は、従来障害物の伐除の場合におきまして、土地所有者ないしは占有者に対する事前通知規定をいたしておるのでございますが、今回新しく追加いたしました試掘等を行う場合におきましても、同様土地所有者ないし占有者に対する事前通知規定を追加いたしたわけでございます。  第十四峰の第四項でございますが、これは新しく挿入いたした規定でございまして、先ほど申し上げましたように、試掘等に伴う障害物の伐除の場合におきましては、一般測量あるいは準備調査のために行います障害物の伐除と違いまして、特に土地所有者事前同意事前通知義務を省略することはできない。一般的な障害物伐除の場合におきましては、この事前通知あるいは事前同意が事実上困難である場合は省略することを許しておりますが、これに対しましては、そういう特例を許さないということに規定をいたしたのでございます。その理由試掘等に伴います障害物の伐除は、一般測量等による障害物の伐除の場合と異なつておりまして、それを行う地形等は、あらかじめ知ることができるものでございますし、かつ試掘等に要する期間も、相当長期にわたるのが通常でございますから、一般的な障害物伐除の場合と、その取扱いを異にする必要があると考えたからでございます。  次に第十五條の第二項でございますが、これは準備作業において土地の立入りをいたす場合に、特に先ほど申し上げました市町村長許可証票等を携帯する義務規定したのでございますが、試掘等の場合におきましても、これと同様の意味におきまして、知事許可証を携帯する義務規定いたしたのでございます。  次に、第二章の二の「あつ旋委員のあつ旋」の関係規定を御説明申し上げます。あつせん制度は、土地細目公告、いわゆる収用法の手続の一部でございます。土地細目公告前でございますれば、事業認定の行われました前後を問いませんで、これをなし得ることになつておるのでありますが、しかしながら、用地取得に関します紛争の現状から見ますと、ほとんど全部が事業認定の以前に起きるということになつておりますので、そうした過去の実績からいたしまして、あつせんの衝を事業認定の衝の前に行うことに規定いたしたのでございます。  そこで第十五條の二のあつせん申請でございますが、あつせん申請をなし得る事業は、ここに規定してございますように、土地收用法規定いたしております第三條の各号の一に掲げるものでなければならないということにいたしております。土地收用法以外の法律によりまして、土地等を収用または使用し得る事業があるわけでございますが、これらの事業は、それぞれ特異性がありますがゆえに、収用法とは別個な手続を設けているものでございますから、これを収用法上のあつせんを行い得る事業から除外することにいたしたわけでございます。あつせん申請を行い得る者は「関係当事者の双方又は一方」ということに規定いたしております。従いまして、関係当事者の片方が申請をする場合におきましては、相手方の同意を得る必要はないことになつております。この場合の「関係当事者」と申しますのは、起業者及びその相手方、すなわち土地所有者あるいは土地に権利を持つておるいわゆる起業の補償の対象となり得る当事者でございます。そういう意味でありまして。従いまして「相手方」と申しますのは、紛争にかかる土地等に所有権または所有権以外の権利を有するものを意味いたしております。従いまして、単なる政治的あるいは感情的な起業者に対する反対者は、関係当事者という概念の中には入つて参りません。この場合の相手方は、場合によりまして多数の場合が想定されます。またそれから多数の者が代表者を選んで、その者が相手方になる場合も考えられるわけでございます。  十五條の但書の規定を御説明申し上げます。但書の規定は、土地細目ないし権利細目、土地細目と同様な手続でございますが、そういう細目の公告申請があつた後には申請はできない、こういう規定なつておるわけでございますが、その趣旨といたしますところは、土地細目公告申請という土地等の強制取得のための手続が、すでに起業者から申請された場合におきましては、もはや起業者においてはあつせんに応ずる意思がないものと推定されるわけでございまして、そういつた関係におきましてあつせん申請はなし得ない、こういう但書を規定いたしたのでございます。  次に第二項に移ります。あつせんを行いますのは、知事でも収用委員会でもございません、特別にここで規定いたしましたあつ旋委員がこのあつせんに当るということになつております。二項のあつせんを行うに適しないと認められる場合の関係を申し上げますと、あつせんを行うに適しない場合と申しますのは、たとえば第一に、事業が第三條の各号の一に該当しない場合、第二に、事業が第三條の各号の一に該当いたしておるといたしましても、収用しようとする土地が、はたしてその事業合理的な利用に適しているかどうかという点について疑問がある場合、第三に、あつせん申請いたしました者が、関係当事者とは認められない場合、大体こういう場合をあつせんに適しないと認められる土地というふうに規定したわけでございます。  次に第三項でございますが、事業施行地が二以上の都道府県にわたるような場合が想定いたされます。かかる場合におきましては、必ず一つの都道府県のあつ旋委員のあつせんに付さなければならないばかりではございませんで、申請を受けたそれぞれの都道府県がそれぞれのあつ旋委員のあつせんに付してもさしつかえない、こういうことにいたしておるわけでございます。しかしながら、一方におきましてそれぞれの都道府県のあつ旋委員のあつせんに付することが適当でないという場合におきましては、関係都道府県の協議によりまして、いずれか一方の都道府県のあつ旋委員があつせんに当ればよろしい、こういうことにいたしております。この場合におきましても、あつ旋委員の人選等におきましては、関係都道府県の学識経験者等からこれを選定することができるわけでございまして、そういつた意味からいたしまして、一方の関係都道府県のあつ旋委員のあつせんをもつてしても、十分な運営の円滑を期し得ることができると存じております。  第十五條の三でございますが、あつ旋委員は、規定をいたしておりますように、五人といたしておりますが、この機関は常置機関ではございませんで、かつ委員も非常勤の職員という建前にいたしております。  委員の手当、実費弁償等は、もつぱら都道府県の條例によつて支給される建前にいたしておるのでございます。  あつ旋委員の任命は、知事の任命にいたしておりますが、その事前に収用委員会の推薦される者のうちから任命することにいたしておるわけでございます。  次に第十五條の四に移ります。この改正法案提案理由にも述べられておりますように、土地等の収用手続に入る前の段階においてあつせんが行われるものでございますから、あつ旋委員は、すでに土地細目等の公告という収用手続がとられましたならば、あつせんは打切ることにいたしております。  次に第十五條の五に移ります。あつ旋委員のあつせんが終つた後におきましては、すなわち「終つたとき」と申しますのは、あつせんが成功した場合でございます。それからその他の事由によつて「あつせんを打切つた」——と申しますのは、あつせんが成功せずして、中止のやむなきに至つた場合でございますが、それぞれの場合におきましてあつ旋委員からその結果を都道府県知事報告する義務規定いたしたわけでございます。  十五條の六でございます。これはあつせん申請書、あつせん拒否の場合の通知、あつ旋委員のあつせんに服した場合の通知等におきまして、政令でそれぞれの施行上の必要な規定を定める根拠規定でございます。  次に三十一條第二項の改正であります。三十一條は、土地收用法事業認定かありましてから三年間に、起業者がいつでも土地細目公告申請をいたしまして、強制収用手続に入ることができることを規定しているわけでございますが、今回このあつせん制度規定いたしましたのに即応いたしまして、あつせん申請があり、あつ旋委員のあつせんに付せられました場合におきましては、このあつせん制度の継続中三箇月間は起業者土地細目公告申請をすることをむしろ禁止いたしまして、あつせん制度に実効性を持たせようという考え方から規定せられたわけでございます。この三箇月の土地細目公告禁止は、起業者側からあつせん申請があつたときはもちろん、相手方から申請のあつた場合にも適用せられるものであります。  次に九十一條の第一項でございますが、土地の立入り、障害物の伐除あるいは土地調書の作成のための測量調査のために、土地所有者の受ける損失の補償については、すでに規定がございますが、今回の改正によりまして、土地試掘等による損失補償についても同様の必要がございますので、その趣旨規定して追加いたしたのでございます。  次に百二十五條改正であります。百二十五條は、収用法上の手数料の規定でございますが、このあつせん申請に対する手数料につきましては、起業者申請者である場合におきましてのみ、これを徴収することにいたしました。あつせんそのものは、究極におきまして起業者事業遂行を円滑に達成せしめるためのものでございますし、従つてその利益を受ける者は当然起業者でなければならないと考えたからであります。一方土地所有者側に対しましては、あつせん制度をできるだけ利用せしめるという建前におきまして、むしろ土地所有者側からはこの手数料を徴収しないことに規定いたしておるのでございます。手数料の額につきましては政令で別途定めることにいたしております。  百三十六條の御説明を申し上げます。百三十六條は、収用法上の代理人の規定でございますが、あつせん申請をした場合におきましても、代理人を通じまして、このあつせん申請等をなし得る規定を追加したのであります。  百三十七條は、収用委員等の秘密を守る義務規定した條文でありますが、あつ旋委員につきましても、職務上知り得た秘密を守る義務を課することといたしたのであります。  百四十三條は、罰則規定でございますが、先ほど申し上げました試掘等のために土地の立入り等をなす場合におきまして、都道府県知事許可を必要といたしておりますが、その許可を受けないで土地試掘等行つた際に、該当者に対しまして三万円以下の罰金を科し得ることにいたしたのでございます。  以上が本改正案逐條説明でございます。
  12. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長代理 これにて逐條説明は終了しました。  これより質疑に入ります。質疑の通告がございます。これを順次許します。逢澤寛君。
  13. 逢澤寛

    ○逢澤委員 ただいまの説明で、土地收用法の一部改正に関する点は、大体適正だと思いますが、この土地收用法のよつて起るゆえんは、ちようど昨年でしたか、改正にあたつていろいろその所見が述べられたのですが、究極のところは、公共の福祉を増進するために、やむを得ない範囲において他の所有権を侵すという趣旨で、今度の改正もできておると思うのです。そうだとすれば、今説明されたようなことは当然のことであるが、私はこの法文を見てもう一歩進み得ると想定できるのです。たとえていえば、今御指摘になつたように、樹木があると支障があつて測定できないので、それを伐採するというようなことは、全部この規定の中に入つておりますが、それだけではまだ満足でないから、地質の測量をやる、ボーリングをやるにあたつても、この規定によつてその認可までやろう、公共の福祉を増進するために最小限度のことをやろうということであれば、当然のことではありますが、もう一歩進んで私ども痛感することは、今回の北九州における水害の点を考えてみてもわかるように、河川の改修、治山治水を急にやらねばならぬという場合を仮想すると、たとえばダムをつくるとすれば、ダムの基礎である岩盤の調査をやる。それをボーリングによつてやるということは確認しておるのだが、いま一歩進めて、その基礎の調査をやるというところくらいまではこれを進むべきではないかと考えられる。今の御説明では一メートルないし一メートル五十センチくらいの穴を明けることはこれで確認しておるが、その基礎の調査をやるということを確認していないというおそれがある。この点まで御研究ができておるかどうかということを、ちよつと御説明願いたい。
  14. 澁江操一

    ○澁江政府委員 今回の改正では「試掘等」という字句を使つておりますが、すなわち試掘試錐、いわゆるボーリングをなし得ることを規定したのでございます。ただいまのお話によりますと、それ以外の方法において地質調査を可能ならしめる措置が必要ではないかということでございます。この点は前の土地收用法を御審議願いましたときにも試掘等をむしろ規定したらどうかという御意見もございましたが、実際の土地收用法の対象となる河川改修事業でございますとか、そういう場合における実際の必要性から勘案いたしまして、必要と認めた場合には規定しようということで、一応将来の改正にまつということにいたしておつたわけでございます。最近、御承知のようにダム工事が盛んに行われておりまして、その実態から判断して参りますと、やはり地質調査は主として試掘ボーリングによつて行われるのが現状のようでございます。そういうことから勘案して規定いたしたわけでございまして、そのほかの地質調査方法、これを特に土地所有者の権利をある程度強制収用してもやらなければならないという点につきましては、現在一時使用という規定がございます。これはもつぱら収用法の本来の目的にもどりまして、事業認定等の手続を経て、土地収用委員会の裁決に従つてなし得る、こういう道も開けております。もしさような場合におきましては、現行法上はやはり収用法一般の手続に従つて土地の一時使用ということで解決せられるべきであるという考え方に立つて規定をいたしておるのであります。さしあたり私どもの見ているところでは、ボーリング等の規定を今回の改正によつていたすことによりまして、おおむねその目的は達せられるのではないか、かように考えております。     〔瀬戸山委員長代理退席、委員長着席〕
  15. 逢澤寛

    ○逢澤委員 ただいま一時使用に対しての説明があつたのでありますが、一時使用はどういう場合に許可するか、またどういう場合に適用するかということを、ここでわかりましたら、ひとつ知らしていただきたいと思います。わからなければあとから文書でいただいてもよろしい。
  16. 澁江操一

    ○澁江政府委員 現在は収用法五條、第六條等におきまして、その規定をいたしております。すなわち條件といたしましては、三條の各号の一に該当する事業であること、それから手続といたしましては、先ほど申し上げました土地収用と同様の関係におきまして、収用委員会申請の手続をとる、そして収用委員会が認定すれば使用許可を与えられる、こういうことになつております。
  17. 逢澤寛

    ○逢澤委員 私はその実例を承知しておるのでありますけれども、国が施行する電源開発事業にしても、一応の計画が成り立つて、諸般の設備ができて、いよいよ実施するという場合になつて、百分の一ないし千分の一の、ごく少数の一部の問題が解決しないために、その事業を遂行することができないという場合が、だんだん出て来ると思う。私どもも、その実例をよく承知しております。これは公共の福祉に反すると私は思う。土地収用法適用するということは所有権を侵すことだから、なるたけ避けなまればならない。しかしながら、一応の計画をきめて、多数の人がそれに賛意を表しているのに、百分の一ないし千分の一というごく少数の人のためにその事業の遂行ができないで、莫大な投資をしたものがからまわりする、こういうことは、いわゆる公共の福祉を阻害するものであると思う。そうした場合のことをお考えになつて、あつ旋委員において適正な価格と申しますか、最後は価格の問題になつて来ると思う。その場合、公定価格はないとしても、そこにおよそ常識上の価格というものがある。かりにその地方の田が一反歩十万円で取引されておるとすれば、そこに緊急な事業をやる場合にこれがその三倍なり五倍の三十万円とか五十万円ならば、適当だと思う。ところが、これに対して十倍とか三十倍とか四十倍というものを吹つかけて来て、それがために事業の遂行ができない場合が多々ある。そういう場合に、あつ旋委員によつて適正な価格でこれが売買できるような制度を確立するということは、公共の福祉を増進することになると私は思うのですが、こういう点について御研究なさつたことがあるかどうか、お尋ねしておきたいと思います。
  18. 南好雄

    南政府委員 お答え申し上げます。ただいまの御質問は収用法の七十二條に該当する場合と思います。「近傍類地の取引価格等を考慮して、相当な価格をもつて」この「相当な価格」が問題になるのであります。御指摘の電源開発等のダムその他の問題において、究極のところはやはり買収価格、この買収価格が「相当の価格」という非常に抽象的な文句になつておりますために、いろいろむずかしい問題がおきると思うのであります。今お話のありましたように、二、三倍程度のものでありますれば、それは相当の価格ということは申されるのでありますが、しかし十倍、二十倍となつて参りますと、相当の価格ということは、私たちの考えでは少し行き過ぎるようにも考えられます。そこにむずかしさがあるのであります。しかし、非常にむずかしいことであり、またきめなければならぬことでありますが、さてこれを法律規定するということは、なかなか困難なのであります。要はあつせん制度の善用とか、あるいは土地収用委員の良識にまつて、そこに事業遂行の大きな意味の公共的目的を相互に了解していただきまして、適切有効な価格が出て参りますればいいのでありますけれども、なかなか困難でありまして、御指摘のような場合が出て参るのであります。しかし、これを法律規定いたしますことは、なかなか困難であろうかと思いますので、もう少しいろいろの事例に徴しまして、通牒その他でもつて一つの基準を与えることも、可能ではありますが、しからば、それがはたしてほんとうに法的拘束力を持つかどうかという点になりますと、法律規定しにくい関係から聞かなければ、それだけということになつて、なかなかむずかしい問題であります。しかし、反面において再評価の問題とかいろいろな問題がありまして、客観的な土地の価格というものもだんだんきまりつつありますから、御指摘のように二十倍、三十倍というような、足元につけ込むような価格は聞かなくてもいいのではないか、また聞いてはならない価格ではなかろうかと思つております。
  19. 久野忠治

    久野委員長 ちよつと速記をとめてください。     〔速記中止〕
  20. 久野忠治

    久野委員長 本案に関する質疑は次会に続行することにいたします。  本日はこの程度とし、次会は公報をもつてお知らせいたします。  本日はこれにて散会をいたします。     午後零時三分散会