○澁江
政府委員 土地収用法の一部を
改正する
法律案について、
逐條御説明を申し上げます。
まず第二章
関係の
改正につきまして申し上げます。第十四條及び第十
五條の
改正規定でございます。
第十四條は、
現行法上は
障害物——いわゆる
土地収用法の
対策に
なつております
公共工事をいたす場合における
準備行為として
障害物の伐除、
町村長の
許可を受けて強制
土地立入り等ができる
規定でございますが、これに対しまして今回の
改正は、
ダム工事等を
施行する場合の
地質調査のためのボーリングを、
起業者は
知事の
許可を得てできるごとくに
改正いたしたいのでございます。この際の「
試掘等」の字句には、
試掘、
試錐に伴う
障害物の伐除を含んで考えております。「
試掘」と申しますのは、主として横に掘る長隧道でありまして、
半径一メートルないし二メートルに及ぶ場合を予定いたしております「試すい」と申しますのは、やぐらを組みましてドリルで縦穴を掘るという場合を予定しておるのであります。現在の
試錐の実際の
作業から申しまして、大体
半径二十センチメートル内外の場合を予定いたしております。
〔
委員長退席、
瀬戸山委員長代理着席〕
試掘、
試錐いずれの場合におきましても、深さは大体三、四十メートルに及ぶのが
通常でございます。
試掘、
試錐に伴う
障害物の伐除は、
試掘、
試錐の
作業と一体をなす
工事として取扱
つておりまして、一括して
知事の
許可を受けしめることにいたしております。この場合に、
現行法の
障害物伐除と異なりまして、特に
試掘等につきましては、
知事の
許可事項といたしてございますが、これは、
試掘等の場合におきましては、
土地の形質の
変更を伴う場合が予想されますので、単なる
植物等の
障害物の伐除の場合に比較いたしまして、慎重に取扱う必要がありますのと、
試掘等におきましては、主として
ダム建設に伴う
準備作業でございますので、その
事業の規模から申しまして、
市町村長というよりも、むしろ
当該関係都道府県知事の
関心事でございますので、そういう意味合いからいたしまして
府県知事の
許可事項といたしたのでございます。
次に、第十四條の第二項の
関係になります。第十四條の第二項は、従来
障害物の伐除の場合におきまして、
土地所有者ないしは
占有者に対する
事前通知の
規定をいたしておるのでございますが、今回新しく追加いたしました
試掘等を行う場合におきましても、
同様土地所有者ないし
占有者に対する
事前通知の
規定を追加いたしたわけでございます。
第十四峰の第四項でございますが、これは新しく挿入いたした
規定でございまして、先ほど申し上げましたように、
試掘等に伴う
障害物の伐除の場合におきましては、
一般の
測量あるいは
準備調査のために行います
障害物の伐除と違いまして、特に
土地所有者の
事前の
同意、
事前の
通知の
義務を省略することはできない。
一般的な
障害物伐除の場合におきましては、この
事前通知あるいは
事前同意が事実上困難である場合は省略することを許しておりますが、これに対しましては、そういう特例を許さないということに
規定をいたしたのでございます。その
理由は
試掘等に伴います
障害物の伐除は、
一般の
測量等による
障害物の伐除の場合と異
なつておりまして、それを行う
地形等は、あらかじめ知ることができるものでございますし、かつ
試掘等に要する期間も、
相当長期にわたるのが
通常でございますから、
一般的な
障害物伐除の場合と、その取扱いを異にする必要があると考えたからでございます。
次に第十
五條の第二項でございますが、これは
準備作業において
土地の立入りをいたす場合に、特に先ほど申し上げました
市町村長の
許可の
証票等を携帯する
義務を
規定したのでございますが、
試掘等の場合におきましても、これと同様の意味におきまして、
知事の
許可証を携帯する
義務を
規定いたしたのでございます。
次に、第二章の二の「あつ旋
委員のあつ旋」の
関係の
規定を御
説明申し上げます。あつ
せん制度は、
土地細目の
公告、いわゆる
収用法の手続の一部でございます。
土地細目の
公告前でございますれば、
事業認定の行われました前後を問いま
せんで、これをなし得ることに
なつておるのでありますが、しかしながら、
用地取得に関します
紛争の現状から見ますと、ほとんど全部が
事業認定の以前に起きるということに
なつておりますので、そうした過去の実績からいたしまして、あつ
せんの衝を
事業認定の衝の前に行うことに
規定いたしたのでございます。
そこで第十
五條の二のあつ
せんの
申請でございますが、あつ
せんの
申請をなし得る
事業は、ここに
規定してございますように、
土地收用法で
規定いたしております第三條の各号の一に掲げるものでなければならないということにいたしております。
土地收用法以外の
法律によりまして、
土地等を収用または使用し得る
事業があるわけでございますが、これらの
事業は、それぞれ特異性がありますがゆえに、
収用法とは別個な手続を設けているものでございますから、これを
収用法上のあつ
せんを行い得る
事業から除外することにいたしたわけでございます。あつ
せんの
申請を行い得る者は「
関係当事者の双方又は一方」ということに
規定いたしております。従いまして、
関係当事者の片方が
申請をする場合におきましては、相手方の
同意を得る必要はないことに
なつております。この場合の「
関係当事者」と申しますのは、
起業者及びその相手方、すなわち
土地所有者あるいは
土地に権利を持
つておるいわゆる起業の補償の対象となり得る
当事者でございます。そういう意味でありまして。従いまして「相手方」と申しますのは、
紛争にかかる
土地等に所有権または所有権以外の権利を有するものを意味いたしております。従いまして、単なる政治的あるいは感情的な
起業者に対する反対者は、
関係当事者という概念の中には入
つて参りま
せん。この場合の相手方は、場合によりまして多数の場合が想定されます。またそれから多数の者が代表者を選んで、その者が相手方になる場合も考えられるわけでございます。
十
五條の但書の
規定を御
説明申し上げます。但書の
規定は、
土地細目ないし権利細目、
土地細目と同様な手続でございますが、そういう細目の
公告申請があつた後には
申請はできない、こういう
規定に
なつておるわけでございますが、その
趣旨といたしますところは、
土地細目の
公告の
申請という
土地等の強制取得のための手続が、すでに
起業者から
申請された場合におきましては、もはや
起業者においてはあつ
せんに応ずる意思がないものと推定されるわけでございまして、そういつた
関係におきましてあつ
せんの
申請はなし得ない、こういう但書を
規定いたしたのでございます。
次に第二項に移ります。あつ
せんを行いますのは、
知事でも収用
委員会でもございま
せん、特別にここで
規定いたしましたあつ旋
委員がこのあつ
せんに当るということに
なつております。二項のあつ
せんを行うに適しないと認められる場合の
関係を申し上げますと、あつ
せんを行うに適しない場合と申しますのは、たとえば第一に、
事業が第三條の各号の一に該当しない場合、第二に、
事業が第三條の各号の一に該当いたしておるといたしましても、収用しようとする
土地が、はたしてその
事業の
合理的な利用に適しているかどうかという点について疑問がある場合、第三に、あつ
せんを
申請いたしました者が、
関係当事者とは認められない場合、大体こういう場合をあつ
せんに適しないと認められる
土地というふうに
規定したわけでございます。
次に第三項でございますが、
事業施行地が二以上の
都道府県にわたるような場合が想定いたされます。かかる場合におきましては、必ず一つの
都道府県のあつ旋
委員のあつ
せんに付さなければならないばかりではございま
せんで、
申請を受けたそれぞれの
都道府県がそれぞれのあつ旋
委員のあつ
せんに付してもさしつかえない、こういうことにいたしておるわけでございます。しかしながら、一方におきましてそれぞれの
都道府県のあつ旋
委員のあつ
せんに付することが適当でないという場合におきましては、
関係都道府県の協議によりまして、いずれか一方の
都道府県のあつ旋
委員があつ
せんに当ればよろしい、こういうことにいたしております。この場合におきましても、あつ旋
委員の人選等におきましては、
関係都道府県の学識
経験者等からこれを選定することができるわけでございまして、そういつた意味からいたしまして、一方の
関係都道府県のあつ旋
委員のあつ
せんをも
つてしても、十分な運営の円滑を期し得ることができると存じております。
第十
五條の三でございますが、あつ旋
委員は、
規定をいたしておりますように、五人といたしておりますが、この機関は常置機関ではございま
せんで、かつ
委員も非常勤の職員という建前にいたしております。
委員の手当、実費弁償等は、もつぱら
都道府県の條例によ
つて支給される建前にいたしておるのでございます。
あつ旋
委員の任命は、
知事の任命にいたしておりますが、その
事前に収用
委員会の推薦される者のうちから任命することにいたしておるわけでございます。
次に第十
五條の四に移ります。この
改正法案の
提案理由にも述べられておりますように、
土地等の収用手続に入る前の段階においてあつ
せんが行われるものでございますから、あつ旋
委員は、すでに
土地細目等の
公告という収用手続がとられましたならば、あつ
せんは打切ることにいたしております。
次に第十
五條の五に移ります。あつ旋
委員のあつ
せんが終つた後におきましては、すなわち「終つたとき」と申しますのは、あつ
せんが成功した場合でございます。それからその他の事由によ
つて「あつ
せんを打切つた」——と申しますのは、あつ
せんが成功せずして、中止のやむなきに至つた場合でございますが、それぞれの場合におきましてあつ旋
委員からその結果を
都道府県知事に
報告する
義務を
規定いたしたわけでございます。
十
五條の六でございます。これはあつ
せんの
申請書、あつ
せん拒否の場合の
通知、あつ旋
委員のあつ
せんに服した場合の
通知等におきまして、政令でそれぞれの
施行上の必要な
規定を定める根拠
規定でございます。
次に三十
一條第二項の
改正であります。三十
一條は、
土地收用法上
事業認定かありましてから三年間に、
起業者がいつでも
土地細目の
公告の
申請をいたしまして、強制収用手続に入ることができることを
規定しているわけでございますが、今回このあつ
せん制度を
規定いたしましたのに即応いたしまして、あつ
せんの
申請があり、あつ旋
委員のあつ
せんに付せられました場合におきましては、このあつ
せん制度の継続中三箇月間は
起業者は
土地細目の
公告の
申請をすることをむしろ
禁止いたしまして、あつ
せん制度に実効性を持たせようという考え方から
規定せられたわけでございます。この三箇月の
土地細目公告の
禁止は、
起業者側からあつ
せんの
申請があつたときはもちろん、相手方から
申請のあつた場合にも
適用せられるものであります。
次に九十
一條の第一項でございますが、
土地の立入り、
障害物の伐除あるいは
土地調書の
作成のための
測量調査のために、
土地所有者の受ける損失の補償については、すでに
規定がございますが、今回の
改正によりまして、
土地の
試掘等による損失補償についても同様の必要がございますので、その
趣旨を
規定して追加いたしたのでございます。
次に百二十
五條の
改正であります。百二十
五條は、
収用法上の手数料の
規定でございますが、このあつ
せん申請に対する手数料につきましては、
起業者が
申請者である場合におきましてのみ、これを徴収することにいたしました。あつ
せんそのものは、究極におきまして
起業者の
事業遂行を円滑に達成せしめるためのものでございますし、
従つてその利益を受ける者は当然
起業者でなければならないと考えたからであります。一方
土地所有者側に対しましては、あつ
せんの
制度をできるだけ利用せしめるという建前におきまして、むしろ
土地所有者側からはこの手数料を徴収しないことに
規定いたしておるのでございます。手数料の額につきましては政令で別途定めることにいたしております。
百三十六條の御
説明を申し上げます。百三十六條は、
収用法上の代理人の
規定でございますが、あつ
せんの
申請をした場合におきましても、代理人を通じまして、このあつ
せん申請等をなし得る
規定を追加したのであります。
百三十
七條は、収用
委員等の秘密を守る
義務を
規定した
條文でありますが、あつ旋
委員につきましても、職務上知り得た秘密を守る
義務を課することといたしたのであります。
百四十三條は、罰則
規定でございますが、先ほど申し上げました
試掘等のために
土地の立入り等をなす場合におきまして、
都道府県知事の
許可を必要といたしておりますが、その
許可を受けないで
土地に
試掘等を
行つた際に、該当者に対しまして三万円以下の罰金を科し得ることにいたしたのでございます。
以上が本
改正案の
逐條説明でございます。