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1953-08-04 第16回国会 衆議院 海外同胞引揚及び遺家族援護に関する調査特別委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年八月四日(火曜日)     午後二時十九分開議  出席委員    委員長 山下 春江君    理事 庄司 一郎君 理事 臼井 莊一君    理事 柳田 秀一君 理事 受田 新吉君       小平 久雄君    長谷川 峻君       福田 喜東君    白浜 仁吉君       田中 稔男君    帆足  計君       辻  文雄君    有田 八郎君  出席国務大臣         法 務 大 臣 犬養  健君  出席政府委員         検     事         (矯正局長)  中尾 文策君         法務事務官         (保護局長)  斎藤 三郎君         外務政務次官  小滝  彬君         引揚援護庁長官 木村忠二郎君  委員外出席者         外務事務官         (アジア局第五         課長)     鶴見 清彦君         大蔵事務官         (主計官)   大村 筆雄君         日本国有鉄道理         事         (営業局長)  津田 弘孝君     ————————————— 本日の会議に付した事件  閉会中審査申出の件  ソ連及び中共地区残留同胞引揚に関する件  外地における戦犯抑留同胞に関する件     —————————————
  2. 山下春江

    山下委員長 これにより会議を開きます。  初めに、外地における戦犯抑留同胞に関する件について議事を進めます。  外地における戦犯受刑者は、来る十日芝浦に内還されるマヌス島の百六十五名を最後として、一名もいなくなり、戦犯問題も全面釈放を実施するよう促進すべき最終段階に至つているのでありまして、昨日本院において議決されました戦争犯罪による受刑者赦免に関する決議案の趣旨にありますごとく、この問題の全面的解決をはかるべきことは、わが国の完全独立のためにも、また世界平和、国際親交のためにも喫緊の重要事であります。本委員会は、設置以来、戦犯問題のうち外地における戦犯受刑者内地送還及び赦免減刑に力を尽して参つたのでありまして、マヌス島の百六十五名の内地送還により、外地戦犯受刑者がいなくなることは喜びにたえないのでありますが、外地戦犯受入れに際して、本委員会は、なお今後の戦犯に対する措置について、受刑者の心境に憂慮すべき事態が惹起しないよう、政府当局において万全の策を立てるようこいねがうとともに、全力を尽して行きたいと思うのであります。  この際、現在までにとられた措置並びに今後の対策について、政府当局説明を聞きたいと思います。犬養法務大臣
  3. 犬養健

    犬養国務大臣 戦犯問題につきましては、たびたび本院で熱情あふれる決議がなされたのであります。それと同時に、他方、外国関係は、今委員長が言われましたように、来る十日の朝マヌス島から帰つて来られる人を最後に、海外に抑留されている人は一人もなくなるというわけでありまして、この点は、私ども実に心から喜んでおる次第であります。と申しますのは、これはごく率直なお話でありますが、巣鴨に拘禁せられておる人たちに対して、また留守宅に対しても、十分心配のないようにすると同時に、他面減刑赦免ということを各外国政府勧告といいますか、要望いたしておるのでありますが、なかなかはかどらない。一方、今巣鴨に入つておる人々留守宅にも心配のないように、あるいは日常もう少し慰めることができるようにということをやりますと、海外に抑留されている人たち帰還が遅れるというような相互関係がありまして、この点実に苦慮しておつたのであります。このたびその問題が一まず解決するということは、私ども当局としては、心持が非常に楽になつたのでありまして、この意味で、国民の深い喜びと別個に、当局としてはさらに新しい段階に入り得る時期になつたわけでございます。  委員長のおさしずもありますので、皆様これはとうに御承知のこととは存じますが、一応各国別戦犯受刑者の現状を申し上げ、それから、従来当局のとつておりました処置を申し上げたいと思います。  アメリカ関係は、御承知のように、現在に至るまでに七十三名が仮出所許可されております。現在三百五十三名が巣鴨在所中でありますが、仮出所適格性を得た者百十一名に仮出所勧告手続を終り、仮出所適格性を得られない長期の者が百九十五名ございますが、これに対しても赦免減刑勧告手続を終つている次第でございます。仮出所適格性を得ておる者のうち、六十八名に仮出所許可をいたして参つて、ほかに決定通知のみが最近参りましたのが五名で、昨日も申しましたように計七十三名になるわけでございます。アメリカにおきましては、これもすでに御承知とは思いますが、昨年九月戦犯釈放のための三人委員会があちらに設けられました。アメリカやり方は厳格に個別的かつ司法的に行う建前をとつております。その結果は、日本側勧告順序向うはよつていない。また刑期の長短にもよらないで、向う側のいわゆる個別的、司法的な処置によつて釈放決定している、こういうやり方なのであります。アメリカは、国全体の政策としては、日本と親しくしておるわけでありますが、戦犯者関係在郷軍人その他の空気が、私どもが思つているほどには寛大ではないのであります。昨年職業野球戦犯者人たちに見てもらつて、一日慰めをしたことがあります。ああいう問題も、われわれの予期以上に非常に響きまして、アメリカ輿論を刺戟したようなことがあるのであります。従つてアメリカとしては、国民に対しても厳格に日本戦犯釈放の標準は個別的かつ司法的にとるのだということを申して、今日まで来ておるわけであります。従つて、今申し上げましたように、日本側勧告順序によらずに、向う独自の見解で減刑あるいは赦免というようなことを事務的にやつているわけであります。この結果、日本国民の願望しているほど多数の人が今日まで仮出所その他の処置がとられておらなかつた、こういうわけであります。こちらでも、できるだけ事務的に、個別的に根拠があるような調査をしては勧告しておりますが、そのために今翻訳中の事件が約百件ありまして、これはとても私どもの役所にいる翻訳のできる者だけでは足りないので、外部にお願いして翻訳しているというようなふうで、形容して言えば、昼夜兼行のような気持でやつているわけであります。今申し上げたように、アメリカ方針が個別的かつ司法的であるというようなことで、こちらの期待ほど早く行かない。これについては、後ほど申し上げますが、何かここで特別の手を打ちたい、こう考えているのでございます。今日まで向うからの決定通知に接しない案件についても、こちらはその後の家族の困窮のぐあいとか、本人の健康状態ということを、またさらに追いかけて向う通知しまして、そして同情ある処置がなされるように、こちらでも促進するような、側面的な手段をとつておる次第であります。  次にイギリス関係でありますが、イギリス関係は十三名の減刑措置がとられておるのでありますが、それによつて釈放される人は四人にすぎません。現在百五名が巣鴨在所中でありますが、その大部分が仮出所適格者であります関係上、すべて勧告手続を終つておりまして、これに対する先方審理促進をはかるために、何かやはり手を打たなければならない、こういうふうに考えておるのでございます。  フランスは、さきに行われました大幅な減刑措置によつて、現在五名を残すのみであります。これは、法務省関係からも昨年の暮れに行きまして、フランス当局に会いましたときに、非常に予期以上のよい、あたたかい話がありまして、ただ私ども、公表は当時することを遠慮しておりましたが、多大の期待を持つてつたわけでありますが、はたせるかな、さきの大幅な減刑措置に接したことは御同慶にたえない次第であります。現在三名残つておる人に関しても、勧告手続をすでに終了しておりまして、これは近く何らかの吉報があるのではないかということを期待しておるのであります。  オランダは、最初は本国で日本戦犯者の問題を扱つておりましたが、最近は東京オランダ大使館で三人委員会というものをつくりまして、そこで処理をしておるのであります。御承知のごとく、オランダは、最近十二名の仮出所許可をして、現在三百六名が巣鴨在所しておりますが、そのほとんど全員について仮出所または赦免勧告手統を終つておりまして、これは公式的な通知ではありませんが、近く何らかの好意ある決定が行われるであろうと期待し得る根拠を持つているわけであります。  濠洲関係でございますが、濠洲関係は現在二十七名が巣鴨在所しておりまして、この勧告手続もほぼ完了しておりますが、来る八日マヌス島から帰還する濠洲関係者に対しては、内地帰還後、ただちに調査の上赦免減刑及び仮出所勧告手続をとる考えでおるのであります。マヌス島から帰つて来る人々に対する私ども処置心構えについて、もし委員長から御指示がありましたら、御説明いたしたいと思います。  次にフイリツピンでありますが、最近フイリッピンから帰還して参りました五十三名の巣鴨在所者釈放につきましては、今般フイリッピン政府のとられました特赦の措置が、フイリツピン政府独自の立場においてとられた措置であると考えまして、今後も先方の自発的な寛大な措置期待される根拠を持つているのでありまして、そうして、わが方においては、いつでも勧告のできる準備を完了して、情勢に応じてすぐに適切な方法をとれるようにしているのであります。ただ一言、蛇足とは存じますが、申し上げますならば、どの国もそうでありますが、ことにフイリッピンは、国内の政情の関係もあるのでございましようか、自発的にそういうことをしたのだ、日本からいわれてしたのではないぜという建前を、従来も終始とつておるのでありまして、このフイリツピンのとつて参つた態度については無理からぬ点もあるように思われますので、特にフイリッピン関係は、日本から言つて措置がかわつたというような感じを国の内外に与えないように、私どもは細心の注意を払つておる次第であります。この点は委員各位にも御了承を願いたいと思います。しかし、それを別といたしまして、本年末までには皆様に喜んでいただける朗報が来るのではないかと私ども期待いたしている根拠も持つておる次第であります。  なお、残る問題はA級戦犯でありますが、さしあたりA級戦犯については七十歳以上の老齢の方から勧告を始めておりますが、このA級戦犯の問題はBC級より多少徴妙な点がありますので、その扱いについては私どもは特に心づかいをしながらやつておるということを申し上げておきたいと思います。
  4. 山下春江

    山下委員長 どうか大臣のお心構え及び扱い方について御説明を願いたいと思います。
  5. 犬養健

    犬養国務大臣 それでは、委員長の御指示もございますので、来る八日の軌内地に帰還されるマヌス関係戦犯者をお迎えすることについての当局の用意、心構えを申し上げます。  実は、マヌス島から帰つて来られる人に関しましては、濠洲政府からは、波止場、に着いてから日本側があまり英雄扱い受入れをしないようにしてもらいたい、それから、報導関係者とインタービューなどをすぐにそこでやらないようにしてもらいたいということを言つて来ておるのでございます。私どもとしましては、マヌス島から帰られる方が巣鴨に入られてから、ただちに、今申し上げたように、調査の上赦免とか減刑とかいうことを勧告する、その場合には濠洲政府の同意を得るように懇願する立場にありますので、帰つて来る人についての向うの条件も一概にそれは困ると申しかねる点があるのでありますが、一方、しかし、おそらくマヌス関係戦犯者家族などは待ち切れないで波止場に行かれることでありましようし、同じ村や同じ町の友人ども久しぶりで顔が見たくてたまらぬという友情に燃えて行く人も少くないと思いますが、当局としましては、濠洲からそう言つて参りました手前、ゆつくりした面会は、巣鴨へ到着後してもらう建前をとつておりますけれども、さりとて、家族などが波止場久しぶりに顔を見て、手を取合う、あるいは涙にむせぶというようなときに、当局は、巣鴨会つてもらう方針なんだなどと言つて、手を取り合つておる人をさくというようなことは、これは人情に反するわけでありますから、そういうことは厳にしないように、私は係官にしばしば命じているわけでございます。久しぶりで帰つて来るのでありますから、バスども、従来刑務所バスを出すわけでありますけれども、かりに刑務所バスを使う場合も、刑務所という字はぺンキ塗つて、そうして久しぶりで帰つて来る人の心持に報いたいと思つておりますし、また、正式に言えば、巣鴨プリズン行きとバスの頭に書くわけでありますが、これも帰つて来られる人及び家族の心中を察しまして、単に巣鴨行きと書いて、ほかのバスにまぎれて乗らないだけの処置にとどめておく、それから、たくさんの人でもありますから、なるべく一般のバスを雇つて行くというような方針をとつておりまして、できるだけ、着いたときに自然に発する人情を阻止しないという方針でおりまして、これは私も気にかかりますので、すでに四、五たび、当日波止場へ出る係官注意を与えている次第でございます。  この点は、委員長も非常に心配さ必まして、よく本会議で私に会われるたびに御注意がありまして、おそらく当委員会全体のお気持であろうと思いますので、細心の注意を払つておりますが、もし私どもが気がつかない点がりますならば、御遠慮なく御注意をいただきたいと思います。私どもは、帰国上陸第一日の人たち気持というものは十分に尊重して行くつもりでございます。ただ、この前フイリツピンから帰られた折の経験から言いますと、非常にあそこが混雑してしまいますので、あまり混雑しないように何か整理しなければならぬと思いますが、しかし、今申し上げたように、家族同士が話しているのを、早く乗つてくれと言うようなことはしないようにいたすつもりでおります。この点、つけ加えて申し上げておきます。
  6. 山下春江

    山下委員長 以上政府の御説明及びマヌス引揚げに対する当局のお心構えは承つたのでありますが、これに対する御質問があれば、この際これを許します。臼井委員
  7. 臼井莊一

    臼井委員 ただいま犬養法務大臣ら、マヌス島の帰還戦犯の方に対しできるだけあたたかい気持を持つてこれをお迎えするというお話で、私どもも非常に喜ばしく思うのであります。ただ、伺うところによると、何か竹芝棧橋ですか、あの方へというようなお話があるのですけれども、先般フイリツピンから帰還され、あるいは釈放された戦犯方々の状況を行つて見ましたところが、出迎えの方が非常に多い。百六十五名かの方がお帰りになると、相当出迎えの方も多くなると思いますが、家族の方は、阻止しようとしても、なかなかせきとめ切れない気持でもつて参るのでありますから、従つて、これに対する面会をお許しになるのか、またその方法をどういう程度になさるのか、その点一点をお伺いしたい。
  8. 犬養健

    犬養国務大臣 これは、当日の準備をしております政府委員がおりますから、詳しくはその方から申し上げさせたいと思いますけれども、私は、ただいま申し上げましたように、船が着いて自分の夫やむすこ、あるいは父親の顔が見える、いずれ巣鴨でゆつくりというような、そういう気持の余裕はないと思います。どつとそばにかけつけるということになると思うのでありますが、そのときに、原則は巣鴨面会させるからということで引きさくというのは、いかにも不自然だ、こういう考えを持つております。場所も狭いのでありますが、何か標識でも立てて、一通りごあいさつでも済みましたら、拡声機でも使つて、今後の御相談その他は、はなはだかつてですが、巣鴨の方でゆつくりやつてもらいたい、遠路の方はごあいさつは今のうちに急いで済ましてくださいというふうにして、そこで人情から自然に発するあいさつもいかぬというような態度はとらないつもりであります。なお、場所が狭いことについての応急処置を、政府委員が心得ていると思いますから、説明いたさせたいと思います。
  9. 臼井莊一

    臼井委員 場所が狭いことを政府当局もお考えのようですが、先般フイリツピンから帰還のときには横浜でお迎えしたのですから、やはり横浜にせられた方が、場所も偉いし、混乱を除く上においても、あらゆる点において便利でもあり、またあちらからお帰りになる方にしても、日本に第一歩を印する印象が非常に違うと思うのでございますが、この点、どういうわけで横浜にできないのでありますか、その点を伺つておきたい。
  10. 中尾文策

    中尾政府委員 ただいまの上陸場所関係でございますが、横浜でなくて、私どもがこの芝浦にということを希望いたしました理由は、主として、今度帰つて来られます方々の中に相当病人がおられるという点でございます。大体二十数人御病人があることは初めから聞いておりましたので、医療班なんかも派遣したわけでありますが、最初向うから電報が参りましたときに、担架を必要とする病人が二人ということでありました。ところが、その後五人にふえまして、昨日参りました電報によりますと、これが七人になつております。なおそのほかに病人が二十人ぐらいあるという電報が入つております。それで、重病人——程度はわかりませんが、少くとも担架を必要とするという程度の御病人だということになりますと、巣鴨まで運んで参りますのは相当難儀だろうと思います。そういう点からいたしまして、やはりこれは病人本意にしなければならぬじやないかということが考えられるのであります。それで、横浜よりずつと近い芝浦ということを希望したわけであります。場所が狭いという点はたいへん遺憾でございますが、ほかの方々も長途相当疲れておると思いますので、病人の点を考えまして、ただいま芝浦を希望しておるわけであります。
  11. 臼井莊一

    臼井委員 その病人の方が、はたして横浜から病人車で運んで来るのに耐えられない方であるかどうかはわかりませんけれども、さしつかえない程度であれば、われわれとしては、何か横浜にする方が、国民気持から言つても、またお帰りになる方、家族の方の気持から言つても、非常にいいのではなかろうかと思う。なお、そういう詳しい事情を知らぬで、何か差別したように世間から誤解を受けるということは非常に困る問題ではなかろうか、——何か裏玄関から、東京裏玄関と言うわけではないが、お入れしたように、ことに先般のフイリツピンの方を横浜でお迎えした直後でありますだけに、その点を私たちは非常に心配するわけであります。この点については、責任ある政府のおやりになることでありますから、私たち考え方ばかりでもいかぬでありましようし、病人の生命の危険を冒してまでということをわれわれ言うわけには行きませんけれども、その病人程度がさしつかえないのであれば、われわれはぜひそうお願いしたい。ことに、一番心配するのは、先ほどお話も出ましたように、出迎え方たちの混雑が相当予想されますので、その点から言つても、私たちは非常に心配するのであります。  それから、ついでにお伺いいたしますが、先月末に私たち新聞で拝見したのですが、ソ連からの電報によると、参議院議員大山さんがあちらでモロトフ外相会つて——あちらでは戦犯という言葉を使つておりますが、われわれはそう考えませんけれども、とにかく抑留されている方が、場合によればこちらへ帰れるというような朗報伺つたのであります。その後日赤の方から何か電報を打つたということは聞いておりますが、その結果につきましてまだ伺つておりません。政府において何か情報がありましたら、お聞かせ願います。
  12. 小滝彬

    小滝政府委員 大山参議院議員がそういう話をされたということは新聞報道言つておりますけれども、私どもは何ら公の報道に接しておらないのであります。しかし、それに先だちまして、最近ソ連にまだ残されておる人から手紙が近親の方あるいは友人の方によこされまして、その数が延べ一万通くらいになります。その中には、近く帰れるらしいというようなことも書いてあります。またソ連の最近の出方から見まして、あるいはそういうふうな考え方ソ連政府にもあるのではないかというようには観測しておる次第であります。実際的措置といたしましては、御承知のように、国連で設けました俘虜特別委員会を通じて、国際的な輿論を喚起し、またできればソ連代表にもこの委員会へ加わつてもらつて、これを促進しようと努めて来たわけでありますが、これまでの三回には、ソ連代表は加わつておりません。八月の二十四日からゼネヴアで第四回の俘虜特別委員会が開かれることになつておりますので、政府といたしましては、日本側からも代表を派遣して、ソ連に抑留されておる人が一日も早く帰れるような措置を講じたいということを考えておる次第であります。  また、一方、ゼネヴアにあります国際赤十字を通じまして、ソ連側意向はどうであるか、なるべく早く帰してもらうような措置をとることを申し出ておるわけであります。この申出に対しましては、ヨーロツパにあるソ連の公館も協力してくれておるようでありますから、あるいは何らかの回答に接するかもしれませんが、現在のところは、これに対してはつきりした反響はございませんが、これには一応望みをかけてもいいのじやないかというような、そういう気持で、国際赤十字を通じても先方意向を伝え、これを促進するように努めているところでございます。  また、国際連合総会も近く開かれることになりますので、その際、輿論の喚起という点、またさらに各国の協力を求めるという意味をもちまして、総会の議題にも俘虜即時帰還の問題を取上げてもらいたいと考えまして、在外使臣、特に関係の深いヨーロッパ、中南米、米国あたり政府にも現に当つておるのでありまして、政府といたしましては、一日も早くこれが実現されるように、各方面から努力を続けているような次第でございます。
  13. 山下春江

    山下委員長 臼井委員に申し上げますが、中共ソ連の方は後にもやりますから、戦犯抑留者の問題を先にお片づけ願いたいと思います。
  14. 臼井莊一

    臼井委員 一点だけお願いいたします。ただいまの話のついででありますが、七月三十一日の朝日に、「大山交渉好ましからず」という見出しで、小瀧次官お話の中に、結局この問題は政府政府との話合いでやるのが常道であるというようなことを書いております。はたしてそうお話になつたのかどうか知りませんが、これは、直接日本政府ソ連政府の間では、現在の国交上できないので、やはり国連を通して話したいというお考えでありますか、それとも、機会を見て直接お話になりたいというお考えでありますか。
  15. 小滝彬

    小滝政府委員 新聞報道は、あるいは正確でなかつたかと存じますが、あの際共産党の川上委員にお答えいたしましたのは、まず族券法違反として国外に出られるような者は好ましくないというような点を第一点に申し上げました。それに対して、また川上委員は、国民代表して参議院議員ともあろう者が交渉するということに対して何か異存があるのかということを申されましたので、国民全体を代表して大山さんがいかなることを申されたのか知らないけれども大山さんを国民全体の意向代表した国民代表としては自分らは認めたくない、いろいろそういうことによつて誤解を生ずる場合もあるということを申した次第でございます。もちろん、こうした問題は、いろいろなチャネルを通じて、いろいろな機関を通じて最善を尽さなければならないのでありますけれども外務委員会の席上でも申しましたように、ただその人の魅力とかいうようなことで、こういうものが解決するものではない。ことに、ソ連の国柄から言つて、ある特定人物によつて動かされるというようなことは考えられない。むしろ向う平和攻勢に利用されて、特定の人が英雄なつたりするというようなことは、国民におもしろくない影響を量ますので、われわれは、あらゆる機関を通じて、国民に信頼を受けた政府の方で最善を尽したいこういうふうに考えているということを申し上げた次第であります。
  16. 臼井莊一

    臼井委員 もう一点だけお伺いします。大山さんは族券の許可なくして入つたという点で問題がありましようが、しかし、国民、ことにその代表である国会議員が、できるだけ向う政府なり国民なりと話し合つて、先ほど犬養法相の言われたような国民感情をあちらの方にできるだけ反映するような方法というものは、われわれとしてもとるのが望ましいというふうに考えます。もし議員の中でソ連の方に行つて話したいという希望者がある場合に、旅券は、あちらの方で受入れさえすれば出そうというお考えであるか、その点いかがですか。
  17. 小滝彬

    小滝政府委員 私どもは、族券を下付いたしますにつきましては、旅券法の規定によつて、これを審査して下付する考えであります。
  18. 山下春江

    山下委員長 受田委員。
  19. 受田新吉

    ○受田委員 犬養さんは、先ほど、近く年末くらいまでには戦犯釈放について何らかの朗報があることをわしは信じておるというお言葉があつたのでありますが、その根拠はどこにありますか、お尋ねしたいと思います。
  20. 犬養健

    犬養国務大臣 お尋ねの点は、非公式にいろいろあちらの公私ともに関係のある人と会いましたときに、そういう話が出ておるのであります。但し、これは、先ほど申し上げましたように、どこの国でもそうでございますが、日本から言われて急に今までの態度をかえて釈放するという形をとりたくないということを率直に言つておりますので、この辺、せつかく好意でやつてくれておることでありますから、その立場を尊重し、その気持も尊重して、非公式に言つて来たことは、あまり政府としては表向き申し上げない、こういう形をとつているわけであります。しかし、いろいろの話を聞きまして、大分空気もよろしいようでありますし、非公式には年末までに何か朗報がありそうなように受取れる談話も聞き取れます。それで申し上げた次第でございます。単なる想像ではないのであります。
  21. 受田新吉

    ○受田委員 日本のキリスト教団の戦犯釈放運動の委員長加藤亮一牧師のところへ、アメリカ政府に最もつながりの深い人より、きわめて近い将来戦犯釈放喜びがあるであろうというようなお便りが最近届いておることもお聞きしておるのですが、少くともそうした人道的な立場に立つ諸団体、宗教的団体等は、全面的にこの戦犯釈放に対しての熱意を持つておることはわれわれもうかがい知ることができるのであります。私は、昨年アメリカへ参りました際に、現在のダレス国務長官にも戦犯釈放をお願いして帰つたのですが、あちらの当局者としても好意を持つていることははつきりしている。しかし、実際に戦犯釈放の取扱いをするのは、政府の正式機関によるのであるから、そうした個人的な意見で非常に空気がよくなつてつても、実際にはなかなかその案結ばないというおそれもあるのです。従つて日本国の輿論を喚起し、先ほど来出ましたような国際的な人道的、宗教的諸団体等を通じ、あるいは国連のいろいろな機関を通じて、強力に呼びかけるとか、あるいは日本国民戦犯釈放に対する熱意、そうして戦争に対して犯した罪をわびる気持、こういうものを強力に現わして、この戦犯釈放に拍車をかけるようなつもりはないか。ただ向うが好意をもつて釈放してくれる日を期待しておるというような形では、私はいかぬと思うのです。平和条約第十一条の戦犯に関する規定には、「赦免し、減刑し、及び仮出獄させる権限は、各事件について刑を課した一又は二以上の政府決定及び日本国の勧告に基く場合の外、行使することができない。」とあり、日本国の勧告戦犯釈放あるいは減刑の重要なる要件になつております。そうすると、この勧告を強力にやるということは、日本国の責任だと思うのです。先ほどの大臣のお言葉によつて、この釈放あるいは仮出獄についてできるだけ勧告をやつている実情を伺いましたし、なおまだ勧告をしない少数の者があることをお話の中で伺つたのですが、勇敢に勧告をしないと、釈放減刑の要件が成立しないのであります。この点について、全面的な釈放勧告を勇気を奮つてするほどの措置がとれないのでございますか。平和条約の条項と照し合せて御答弁いただきたい。
  22. 犬養健

    犬養国務大臣 受田さんのお話、ごもつともであります。先ほど年末までに朗報があるということを期待しておると申し上げたのは、フイリピンの関係でございます。アメリカ及びオランダは、先ほど申しましたように、個別的かつ司法的でございまして、従つて、非常に事務的だと言つてよろしいでありましよう。この現状を打破するには、今お話が出ましたように、宗教家が宗教的な立場から向うに渡りまして話をする、いろいろの角度からの特別措置が入り用だと思います。  それから、勧告は、今申し上げましたように、全力をあげてやつているのであります。従つて、今朝も、もし翻訳という事務のために勧告が遅れるようでは、まことに御当人に相済まないので、できるだけ人数をふやし、経費を使つてもいいから、翻訳を至急終了しようじやないかという話を、たまたまやつてつたようなわけでありまして、事務的な方ももちろん全力をあげるつもりでございます。また勧告適格性を持つていない人に対しては、先ほど申し上げましたように、別の角度から釈放、仮出所というようなことを頼んでいるわけでありまして、事務に乗つて行くべき筋は事務に乗せ、事務に乗らない人たちに対しては別の大所の立場からほかの処置をとる、二段構えになつておるのであります。それで万事順序を尽したかということになりますと、この事務的な個別的審査というものは、待つておる人の心理から言うと、なかなかまだるつこいものであります。また高い立場から見まして、いつまでもこの問題がぶら下つておるということは、必ずしも国と国との親善関係を増すゆえんでも私はないと思います。そうすれば、事務的な速度を飛び越えてするにはどうしたらいいかと申しますと、従来の経験から言いまして、やはり宗教家のような方が海外に行かれて、つぶさに話合いをしてもらうというようなことは、最も有効なことの一つであると確信いたしておりまして、この点も、この国会が済みましたら、さつそく私はそれについて話合いを政府部内で続けてみたいと思つております。
  23. 受田新吉

    ○受田委員 大臣の御努力と熱意は十分うかがえるのであります。実際問題として、宗教家で加賀尾教講師のような戦犯釈放に偉大なる功績をあげた方もおるんだし、また国内においても、その高度の知性と情熱を傾けて宗教家が努力してくれたならば、もつと効果のあがる場合がたくさんあると思うのです。従つて、そういうところは、民間の諸団体、宗教団体というふうなものとの連関を密にして、政府自身の力と、そうした裏に働く人間的な声と、両方を通じてこの問題の解決に当らなければならぬと思うのです。私たちは、年末まで待たぬで、もつと近いうちに朗報を聞きたいのです。しかも、比島や濠州の戦犯がみなお帰りになるというこのとき、ソ連中共以外は、外地で服役しておる戦犯はみな国内へ帰られたというこのとき、何ら遠慮なく勇敢にこの戦犯赦免についての措置をとつていい段階に来ておると思うのです。従つて、法務大臣とせられては、事務的な形でなくして、もつと深みを持つて、閣議でも各大臣の協力を得て、もつと全大臣がこれに対しての熱意を持ち、——戦犯は、ほとんど例外なしと言つていいほど無実の罪です。その罪なき罪に今日まで苦しめられた同胞たちを一刻も早く救うというこの線で、全閣僚は一致して陣頭指揮をされなければならぬ。国民の陣頭に立つて、その点勇敢に推進され、実績をあげていただきたいと思う。  もう一つは、戦犯方々が大部分無実の罪であるということでありますが、事実は冤罪を受けたままで、その後あるいは釈放せられ、あるいはもうなくなられた人もあるのですが、その人たちの罪は消えておりません。従つて、無実の罪であつたということを証明する道がなくなつておるのです。少くとも無実の罪で御苦労いただいた戦犯人たちに、よし、なくなられた人であろうとも、その罪をそそいであげるのが、やはりわれわれ国民の責任だと思います。従つて、法務大臣といたしまして、この戦犯で罪なき罪に御苦労していただいた方々が、その罪をそそぐことなくして地下に眠り、あるいはこれから苦難の人生を歩まれることについて、冤罪をそそぐための措置を国際的な裁判所等に申し出られて、その罪をそそいであげるという赤誠をお持ちかどうか、これをお伺いしたいと思います。
  24. 犬養健

    犬養国務大臣 無実の罪の方も中には相当ありましよう。また、私が面会に参りまして、こういうわけで自分は無実の罪であるということを今もつて確信しているというお話の中には、ほんとうにそうらしいと感銘を受けた人もありました。また、そのままなくなつた方もありましよう。しかし、そういう国家としての雪冤といいますか、無実の罪に対して何かの処置をとるというこは、熱意とを持つてやりたいと思つております。これも率直な御報告になるのでありますが、フイリツピンのモンテンル、マヌス島から帰つて来てもらわないことには、こちらの人の優遇方法も思うままにできないというのが、もう飾りけのない実情であるのでございます。私たちも、たまには、職業野球ばかりでなく、もつとお慰めする方法考え得るのでありますが、今度は皆さん帰つて来られたので、その点は重荷をおろしたのであります。海外の当時の空気は、日本に帰してもいいけれども日本に帰すと英雄扱いして大事にしてしまうから、なかなか帰せないということを、これは非公式の話でありますが、聞きますので、巣鴨に入つている人に対しても、もう少し慰める方法もあろうかと思うときも、まあ目立たないようにというように心を使つて来たわけでございます。この問題は来る八日の朝にすつかり解決いたしますので、今度は残る問題に私どもは心置きなく熱情を傾けることができると思うのでございます。その中には、今お話になりましたような、無実の罪のまま死んで、永久に消えて行つた人に対して、私どもが国家としてどういう処置をとるかという人道的な問題ももちろん含んでおります。今までは、そういうわけで、こちらを立てればあちらが立たずというような、当局としては非常にむずかしい二つの問題にぶつかつておりまして、さぞかし、国民からごらんになられたら、歯がゆいと思われることもあつたのでありましよう。また歯がゆいと思はれることは決して不当ではない、こう考えております。今後とも、この問題については、国民に対して常識のある処置が行われているという感じがなくならないように、全力をあげたいと思つております。この心境だけを申し上げておきます。
  25. 受田新吉

    ○受田委員 今の国際的な裁判所その他の機関に訴えてその冤罪をそそいであげるという具体的な措置については、まだ用意がないわけでございましようか。
  26. 犬養健

    犬養国務大臣 今までも、数ある中には、どうも無実の罪に泣いている入があるように思われました。これについての措置も、私はずいぶん心を使つてみたのでありますが、受田さんがすでに言われたように、法律的に言いますと、証拠が集めにくいという実際問題があるわけであります。この点で私どもは非常に苦しんだわけであります。最後措置としては、何かの方法でこの人たちが無実の罪であつたというだけの始末はしてあげたい、こういうふうに考えておるわけでございます。問題は、日が大分たつてしまつていて証拠が集めにくいというところに事務的に困難さがありますけれども、なお、私どもは、困難であるからといつて、その問題をなおざりにするという心持はないのでございます。
  27. 受田新吉

    ○受田委員 その無実の罪に泣いていることの現われとして、巣鴨で御苦労していただいている方々の中には、自分は正しい道を歩んだのであつて、決して罪を犯していないのだという正義の叫びを続けている人もたくさんあるわけで、うそか偽りかは、特に法務大臣でいらつしやる犬養さんにしてみれば十分おわかりいただけると思う。正しいという人を長く苦しめるということは忍びないことです。刑死された人人の中には無実の罪で死なれた人々が多数ありますが、遺家族援護法の中には、これは厚生省に関係しているのですが、公務死としての正式な取扱いをしていない。援護法では、公務死に準じたような形の条項があるのですが、しかし正式の公務死としての取扱いを受けていない。これは、援護法のみならず、あらゆる法律において、この刑死者は公務で死亡したという取扱いを受けていないという現状です。この点、無実の罪で御苦労していただいた方は公務死として取扱うべきではないか。この点、死後の取扱いについても、遺族の取扱いについても、今後赦免される人々の取扱いについても、重大な問題であると思うのですが、この取扱いをいかがなさろうと用意されておりましようか。
  28. 犬養健

    犬養国務大臣 この問題も、私ども念頭にあり、また相談したこともあるのであります。ただ、御承知のように、政府となりますと、万事事務に乗るわけになります。そうなると、無実の罪だという証明が、ときがたつてしまつていて、なかなかむずかしいというような事務的な障害がありまして、これは厚生省がおもにやられる問題外ありますが、厚生大臣も大分心配しておられることを私は知つておるのでありますが、最後の結論が出ていない。これはごく正直な申し上げ方だと思うのであります。
  29. 受田新吉

    ○受田委員 次に、先ほど臼井さんから出された竹芝に上陸されるマヌス島からお帰り方々の問題ですが、まだ問題が解決していません。先ほどのお話では、竹芝にしないで横浜にして、もつとゆたかな気持で故国の土を踏ましてやつたらどうかという臼井さんのお尋ねに対して、どうもお答えがあいまいであつたのですが、私は物事をあいまいにしておくことはきらいです。竹芝でなくて横浜にお上りいただく、とは、国民的要請である。病人等の取扱いについてのお話がありましたが、横浜へ上つても、病人はちつとも支障はない。竹芝へ上つた方が病人は都合がいい、横浜へ上つた方が悪い、そういうことを考える必要はないと思うのです。幾らでも病人人々を保護する道はあるのですから、この点、常識として、故国日本を踏めば横浜ということになる。この間比島から帰られた方も横浜に上られたのですから、同じ取扱いをされて、故国の土を踏ましめ、なつかしき肉親にお会いさせるという措置をおとりになることに、どうして逡巡しておられるのですか。この点、勇敢に、この委員会の声をお聞きいただいて、横浜でよかろうと——、まだ間があるのですから、ゆつくりと連絡がとられます。ひとつ最後態度をここでお考えいただきたいのです。
  30. 中尾文策

    中尾政府委員 やはり問題は病人のことなんでございますが、寝台車で運ばなければならないような方がかなり数があるわけでありまして、そういう方を横浜から巣鴨までお送りするということは、相当長距離でもございますので、やはり芝浦にした方が病人のためによい、こういうふうに考えたわけであります。そうして、別に、普通の病人の方と区別いたしまして、七人病人があるということを電報を打つて来ているところを見ますと、そういう方々はやはり普通の病人よりははるかに重いのじやないかというふうに考えられますので、そういう見地からいたしまして、芝浦港にいたしたいと考えたわけであります。
  31. 受田新吉

    ○受田委員 病人のためのみということがはつきりしたわけですが、芝浦へ上陸されて、早く巣鴨へ行ける、その間の距離が短かいので苦痛が少いであろうというような理由ですか。その点であつたならば、また申分がありますが……。
  32. 中尾文策

    中尾政府委員 そういうわけでございます。
  33. 受田新吉

    ○受田委員 これは、船で帰られるのと車で帰られるのとの差異の問題ですが、車でも、病人であれば特に丁重に取扱えばいいのであり、動揺の少い、クッシヨンのいいものならば、船よりもむしろいいかもしれないのです。そういう条件を整えて、この人々をお迎えすればよいのであつて病人が非常にふえたから急に竹芝に変更されたということに対しての政府態度が、どうも釈然としません。医学的に見て、竹芝に上つて動揺される距離を少くするというような事情があるのか、行刑政策の立場から、病人を運搬するときのそうした常識があるのかどうか、この点いかがですか。その病人が、横浜から行かれることが、距離が長いので、非常に病気が進行するというようなことは、普通ないと思う。普通の重病人つて、車でずいぶん長い距離を運ばれておるのですから、一刻も早く故国の横浜の土を踏んで、空気のいい、条件のいい、竹芝のような濁つていない、きれいな港で、いい空気に触れながら、京浜国道を——非常に道路もいいですよ。病人にしても、むしろ風に吹かれながら京浜国道を上つて来る方がいいじやないかと思うのですがね。大臣の御裁断を願いたいと思うのです。
  34. 犬養健

    犬養国務大臣 いきさつを率直に申し上げたいと思います。結論から申し上げますと、そう大した問題ではないのでありまして、かえたから国がどうなるというような大きな問題でありませんし、一度言つたことは死んでもかえないというように意気込む必要もない問題でありますので、受田さんの熱心に言われる気持、それから臼井さんも非常に熱心でありますから、これはひとつ検討してみます。ただ、いきさつを申し上げますと、中尾局長は非常にまじめな人でありまして、船からわざわざ——担架を要する病人が五人あると言い、さらに二人ふえて七人と言つて来まして、非常に責任を感じているわけであります。受取つてから巣鴨に行くまでに病気を重くしたりして、せつかくみんなが喜んでいるのに、そういうまずいことをしては相済まぬ、なるべく近いところで上げて、車というのは船よりゆれるから、大事をとつて、近いところから自動車で運びましようというのが話の起りなんであります。しかし、これは考え方でありますから、受田さんのおつしやることが絶対不合理で、中尾局長の言うように竹芝が百パーセントいいのだという問題ではないのでありますから、お気持もよくわかりましたので、ひとつ委員会が終りましたら、さつそく医者などとも相談してみまして、できるだけ良識のある処置をとりましよう。別に言い出したから、引いたら恥だというような問題ではありませんから、十分お心持をくみとつて、もう一ぺん相談してみたいと存じます。さよう御了承願います。
  35. 庄司一郎

    ○庄司委員 関連して、法務大臣に一言申し上げて、御善処を願いたい問題がございます。それは、戦犯者の留守家族、特にその子供でございますが、長い間父親は外地において戦犯者として抑留されておる。あるいは恩典によつて内地に帰されても、すぐ巣鴨のプリズンに投獄されておる。その留守家族に対して、あたたかい愛情が、向う三軒両隣から寄せられればけつこうでありますけれども、多数の国民同胞の中には、理解のない人もあるのであります。あるいは小学校に行つても、あれは戦犯の子だ、おやじは戦犯だ、軍国主義である、さような冷たい眼、冷たい言葉でもつて、かなり差別待遇的、あるいは虐待に至る程度に生活が押し詰められておる、かような傾向が戦犯留守家族の子供の義務教育等においてあるのであります。その結果として、純真な子供たちの魂が、長い間にはいじけて、よからぬ傾向を帯びて来る、あるいは反抗的精神と申しましようか、あるいは世をのろうような傾向があります。戦犯者留守家族の子供は、父親の直接の監督がありませんし、また世の中から白眼視され冷遇されておるので、いわゆる不良少年になる傾向があるのであります。本員は三十何年の間司法保護あるいは少年保護の任にあるでありますが、これらを何とかもり立てて保護して行かなければならない。もとより周囲の国民があたたかい同情を持つて留守家族をもり立ててやる、あるいは何ら罪とがのない子供を養護してあげるというふうに行かなければならぬのでありますが、一部には、今申し上げたような悲しい事実があるのであります。そのために不良少年化しておるというような傾向もありますので、法務省あたりには、少年愛護の運動の機関があられるのでありますから、戦犯留守家族の子供の保護愛育のために、法務大臣においては、地方都道府県の責任者の会合等においては適切な手を差延べてもらいたいと思うのであります。私は、長い間地方において青少年の保護事業に関係をしておりまして、まことに気の毒な状態にあるこれらの少年たちを、何とか愛護して、痛めつけられた魂を元の清純な精神状態に指導して行かなければならない、こんなふうに考えて、これを私の信念として、少年保護の事業に携わつておるものでありますが、今から三十年前に、白樺派のかおり高い創作を書かれた大臣におかれては、これらの気の毒な子供たちに愛育の手を延ばしていただかなければならないと考えておるのであります。今愛の運動がせつかく向上して参りましたけれども法務省関係の愛の手が、それらの気の毒な戦犯留守家族の家庭、特に子供さんの上に均霑して来ないということは遺憾千万に考えております。どうか、戦犯留守家族、特にその子供たちのいたいけな、純真な魂が傷つけられないように、法務大臣は、あなたの職務を通し、また愛の運動の手を通して、十分あたたかい愛の手を延ばしていただきたい。これらに対して、法務大臣の御意見があれば伺つておきたいし、同時に御善処を願いたいと思います。
  36. 犬養健

    犬養国務大臣 庄司さんのだんだんの御意見はしごく御同感であります。庄司委員の長年の少年保護事業に献身しておられる御事績は、つとに私も承知しておりまして、敬意を表しておる次第であります。御承知のように、日本の農村の空気というものは、ある意味では非常にきびしいところがあるのでありまして、戦死者のお墓参りがどうもぐあいが悪いということになると、もう絶対に墓参りをするのはやめたり、まことに極端から極端に行く点があります。そういうことから、多分お話のようなことが広い世の中にたくさんあるのじやないかと思います。この点は、率直に申しまして、主として厚生大臣の御配慮を願わなければならぬ問題でありますが、私も国務大臣として連帯責任でありますから、十分その点は熱意を持つて善処したいと思います。ただ、私は多少法務省としてその仕事を主役になつてやることをどうかと思つておる点を率直に申し上げて、お教えを請いたいのでありますが、大体保護司の方のお仕事、これは、自腹を切つて、実に、社会の下積みとなつて、よい仕事を、うるわしい仕事をやつてくださるので、ほんとうに私どもは感謝しきれない気持でおりますが、保護司の方が戦犯家族の少年少女をお扱いになつて、午前は不良少年のところへ行く、午後は戦犯のむすこさんのはからいをするというようなことをすると、どうもかえつて迷惑なこともあるんじやないか、その点、私、実は非常に遠慮をしておるのであります。このたび、保護観察というもの、つまり刑務所に入れば人間はよくなるという考え方を根本的にかえまして、できるだけ外でもう一度りつぱな人生を再出発してもらうというふうに、今度御承知のように刑法を改正してあなた方に御賛成を願つたのでありますが、その場合でも、保護観察というものは相当気をつけませんと、狭い村の中で、あれは要視察人だということになつて、かえつて希望を失うような点がありますので、法務省関係の保護事業というものは、よくよく人に目立たないようにして、心をこまやかに使うということが、私は一番大事な点であると思うのであります。そういう点から言つて、保護司の方に不良少年をいたわつていただく、同時に同じ方に戦犯の人の坊ちやんやお嬢さんを心づかいしてもらうということがいいか悪いか、これは厚生省とよく相談してみたいと思います。しかし、法務省としましても、戦犯のお父さんとか夫とかいう人を預かつている主務省でありますから、関係は至つて深い仕事をしておりますので、厚生省が主になるにせよ、全幅の協力を惜しむものではございませんし、あらゆる心を使つて、不当なゆがんだ気持から、りつぱなおとなになれる人が横つちよにそれるというようなことのないように、十分気をつけたいと思います。具体的な方法につきましては、いろいろ厚生省と打合してみたいと思います。この点、御了承を願いたいと思います。
  37. 小平久雄

    ○小平(久)委員 私は、関連して一点だけ簡単に法務大臣にお聞きします。  先ほど、戦犯者巣鴨における待遇について、法務大臣がたいへんあたたかい気を配つてかかつておることを承つたのでありますが、ただ、しからば、従来の巣鴨における戦犯に対する処遇に比して、今後日具体的にどういう面に御改善をなさろうとお考えか。なるほど、いろいろ慰安のことなどに気をお配り願うのもけつこうでありますが、私は何回かあそこを訪れましたが、卑近な例で申しますと、たとえば服装等にしても、ああした画一的な服装を何もさしておく必要もないじやないかというような気がいたしておるのであります。あるいはまた食事等についても、従来どの程度のものを差上げておるか、よく存じませんが、そういう面もあるいは今後一層改善をしてかかるというお考えかどうか。あるいはさらに、私は、特にこれはむしろお願いをかねて申し上げたいのでありますが、今度帰つて来られる方を含めまして、故国にはなるほど帰つたが、まつすぐ巣鴨に行かなければならぬ、こういうことでありまして、この間、なるほどあるいは阜頭において、あるいはさらにゆつくり巣鴨において、会談も、書くこともできるかもしれませんが、私は、戦犯方々気持からいたしますれば、たとい一日であろうが二日であろうが、ほんとうに故郷へ帰りたい、行つてみたいという気持がほんとうの気持じやないかとお察しするのであります。いろいろこれからのことにつきまして相談することもたくさんありましよう。こういう点において、でき得べくんば、適当な機会において何日間か、とりあえずほんとうに国に帰してやる、帰省を許してやるというくらいのことは、ぜひひとつつてもらいたいという、気がするのであります。こういう点、あるいは御当局から答弁はむずかしいかと思いますが、要するに、具体的に今までと違つてどうしてやるのだというような点を、できるだけこまかくこの際お考えを願いたいと思います。
  38. 犬養健

    犬養国務大臣 国民感情が期待しておられるほどに、はかばかしく行かないということについては、まことに相済まぬ、また遺憾に存じております。今私ども考えておりますことは、もちろん全面赦免ということが一番手取り早く、これよりいいことはないのでありまして、この関係をやつておりますが、それは相手国のあることでありますから、すぐに行かない場合を考えておかなければならない。すぐに行けば一番いいのであります。巣鴨の中に入つておる御当人としては、留守宅の生活ということが一番問題でありまして、私が見舞に上りましても、その点が非常に言われるわけであります。今までも、いろいろな手仕事、工芸その他機械の組立てというようなことの簡単なことをやつてもらつておりまして、そしてその収入を、これにはむずかしい規則が従来あるのでありますが、その規則をごく常識的に活用して、留守宅に金を送つてもらつておるわけであります。一番いいのは、リーダーズ・ダイジェストの発送の袋をつくることが相当の金になるのでありますが、平均すると、まだ留守宅もそのために安心というわけに参りませんので、もつと幅広くいろいろな種類の仕事を巣鴨の中に持ち込みたいと思つております。ところが、これはもつともだと思うのでありますが、そういう設備を非常に努力しますと、中の人から言うと、これは長いのだ、これはたいへんだ、こうなるわけであります。一例を申し上げますと、学徒で出陣して戦犯という肩書きをもらつてあそこに来ておる人、勉強のまつ盛りに戦争に行つて、学問から離れた人、これは、顔を見ても私は胸が迫つて来るのであります。そこで、通信教授で学位がとれるような方法考えたのであります。ところが、一人もこれは希望者がない。そんな学位がとれるまで長くいてたまるもんか、こういう気持なんでありまして、つまり、そういう設備に十分努力すると、長い言訳じやないかというようなふうに心理が動いて来るのでありまして、なかなかこの点は、当局になりますとむずかしい点があるのであります。しかし、全面赦免ということに極力努力するかたわら、それまででも、一日でも留守宅に収入があつた方がいいのでありますから、誤解はあくまでわれわれが説明をいたして解いてもらうと同時に、それまでの毎日の収入ができるだけゆたかになるようた方法をとりたい。また一人でも学位をとりたいという方があれば、通信教授をして、そして一週間に一ぺんくらいそれのまとめ役に大学の先生が来て、口でまとめてもらうというようなこともやつて、学位をとつてもらいたい。私の気持から言うと、そういうことをする一方、全面赦免のできるだけの努力、こういう二段構えでやつて行きたいと思つております。  それから、服装のことも、小平さんから見れば、御不満の点もありましようが、平和条約十一条で戦犯日本政府が引受けたわけでありますから、どうもユニフォームを着せておくことは、今までとしてはしかたがなかつたと思います。これは、大蔵省とも話して、できることとできないことがありますけれども各国の例など調べまして、一番寛大な方法をとつて行きたいと思つております。  それから、故郷に帰すことは、率直に申しますと、非常に微妙な問題なんであります。昨年あなた方にたいへん寛大な決議をしていただきまして、そして自由に国に帰れるように、当時私どもは、農村の方なら、なるべく農繁期のときに帰つて、そして家の経済方面も助けてもらうようにしたいと、いろいろな計画はあつたわけでありますが、日本国における一時出所のはからいが各国を刺激いたしましたので、この点、私は、今マヌス島から帰つて来た方をすぐお国にそれぞれ帰すことには相当慎重な配慮がいるのではないか、とにかく、将来は減刑赦免ということが最後の目的でございますので、減刑赦免ということは、早く言えば当該国にお願いをするのでありまして、それとにらみ合せて、過度な刺激をしない方法で、もしいい方法があつたら、これは善処したいと思つております。どうも、従来はその点、反動と申しますか、刺激がありまして、御当人にかえつてきゆうくつな目にあわした事例もありますので、そういう過去の事例にかんがみまして、御質問の気持は十分わかつておりますので、それを体して善処したいと思つております。
  39. 柳田秀一

    ○柳田委員 議事進行に関して……。本委員会海外同胞の引揚げ及び遺家族援護の委員会でございます。せつかく法務大臣もおいでになつておりますから、戦犯の問題に関連して、この機会に十分質問したいということはわかりますが、ただいま本会議も開かれておるのでありますし、特に巣鴨に入つてから後ということになつて来ますと、本委員会の所管ではないのではないか、むしろ法務委員会においてお尋ねになるべき問題じやないかと考えます。また中共及びソ連の方の引揚げの案件も残つておるかと思いますので、適当に議事をお進めになるようにお願いいたします。
  40. 山下春江

    山下委員長 次に、長谷川委員。
  41. 長谷川峻

    ○長谷川(峻)委員 ただいま議事進行がありましたから、簡単に要領よく質問をいたしますから、大臣もそのおつもりで御答弁願います。  その第一は、大臣は戦犯者のことを非常に心理的に、生活問願などについてもお考えくださつておられるということですが、竹芝さん橋の件です。これは、今まですでに三人の委員から申されておつたのですが、行政関係の事務的な話とまた違つて、政治的な非常に複雑な神経の問題があると思います。私たちも、せんだつて横浜さん橋にモンテンルパからの引揚者を迎えに行つたのでありますが、大臣はその際お見えにならなかつたと思いますが、国民的感情として、長い間苦労された人、また遺骨になつてつて来た人、それを迎える気持が非常によかつた。しかし、どうしてもあの竹芝さん橋では狭い。行つた者がきゆうくつする。それから、そこでちよつと悪い感情を与えますと、帰つて来た人たちのせつかくの気持を直すのに、非常に時間がかかるのではないかという政治的配慮から、これはぜひ横浜にお願いしたい。  それから、もう一つは、アメリカの場合です。これは、ケース・バイケースで一々勧告されておると思うのですが、在郷軍人の感情が悪いとか、いろんなことがありましても、日本が民主主義陣営に入つておる、またアメリカが特殊的な手段を日本に講じておる実情から行きまして、私は、この際に、平和条約十一条の勧告というものを、事務的にとらずに、一括して勧告ができるようにアメリカに向つて要請する必要が、政治的配慮としてあるのではないか、これは国防の上からそういうことが考えられるのであります。  それから、昨日本院において戦犯釈放についての決議がなされました。委員長も熱心に、しかも全国民に訴えるような発言をし、それに答える大臣も非常に熱情あふれる御答弁をされたのですが、従来フイリピンの例をとりましても、政府自体が赦免をやつたということよりも、個人的な人間の力が大きいのではないかと思うのです。先ほども、大臣から、アメリカの宗教家であるとか、あるいは各種の団体の人たちに御賛同を願つて推進していただくというお話がありましたが、従来この赦免については三つの例があります。すなわち、中国がやつたような全面赦免、あるいはまたフランスがやつたような全員減刑とか釈放、それから今度のフイリピンの場合、こういう三本建になつております。今度政府は初めてほんとうにやられる段階に来たと思うのですが、昨日の本会議決議に基いて、政府は一体どの線をとつてやろうとしておるのか、その腹構えを具体的にこの際委員会を通じてお聞かせ願いたいと思うのであります。  それから、わが政府代表者が各国をそれぞれ訪問して要請してまわるくらいの腹構えが必要ではないかと考えるのですが、この点についても伺いたいと思います。
  42. 犬養健

    犬養国務大臣 まず、竹芝さん橋の問題ですが、先ほど申し上げましたように、政府が言い出したら、あとへは引かないというような問題ではありません。私はずつと前に竹芝さん橋へ行つたことはありますが、記憶はあざやかでありません。今度私見に参りまして、私の良識において、不適当とあれば、かえてもちつともさしつかえないのであります。善処したいと思います。  それから、しばしば申しておりますように、アメリカオランダやり方は、三人委員会で事務的、個別的、司法的でありまして、率直に申して、これが事務的な勧告だけでは、私は政府が責めを果したとは言えないと思います。そこで、最後の問題にも触れるのですが、政府からたれか相当な人を出す必要もありますし、それから、フイリピンの書くの動機がカトリックの精神、キリスト教の精神が人の心を動かしたというのが相当大きい。また日本の教師など、宗教的精神を持つた人の熱心なる働きが相当大きいので、政府の仕事のほかに、そういう立場の人が、人種を越え恩讐を越えて人を説くということも、動機が純粋であるだけに、私は大分前からその主張者の一人であります。実は、今まで海外に抑留されている人を早く引取る、それまでは、いろいろのことはあるけれども、とにかくそれを先にしなければならぬということであつたのでありますが、来る八日にこの問題が解決いたしますと、あとは事務的な勧告以外の何か大きい手を打たないと、政府は怠慢のそしりを免れない、こう率直に思うのであります。この点は早急に政府部内で話し合つてみたいと思つております。どうかその辺御了承顧いたいと思います。
  43. 長谷川峻

    ○長谷川(峻)委員 もう一つ、具体的に考えますことは、最近戦犯者各国の好意によつて釈放される者がある。しかしながら、フイリツピンから帰つて来た、マヌスから帰つて来たというふうにして、巣鴨はまた戦犯者が収容された当時と同じ以上の人間がふえつつある。それから、各国からの好意によつて釈放されることはありがたいのですが、前から入つている人たちが、国が違うがゆえに情状酌量というのか、処置が違うのですね。前から入つている者があとに残つておるという形がここに出て来ておる。これは、かつて犬養国務大臣も牢屋に入られたし、私も入つたのですが、とにかく、入つた者は実際出されるということはありがたいことでして、それに対して親切にしてくれないくらいうらめしいことはない。しかも、私は、ずつと三、四年前から、友人が入つておる関係で、ときどきお伺いしておるのですが、私は、あの巣鴨刑務所は世界中で一番従順だと思います。かつて逃亡、脱走をした人もない。それは、国民に対する信頼、友人に対する信頼、自分を生んでくれた身近な者に対する愛情、こういうものによつてつながれているためだと思います。後から来た者が、ただ国が違うがゆえに先に出て行く、そうしてBC級の者も一時釈放をされないでいるということは、今日の段階において、それこそ真剣に考えなけれげならない。ことに、人間一人を釈放することはたいへんなことだというふうに考えるのであります。この点についての十分なる配慮と御努力をお顧いいたしたいと思います。  最後に一つ。この前第四次引揚船の白龍、白山、あの方々と一緒に帰つて来た赤十字の工藤参考人からの供述によりまして、中共にも相当戦犯者がいるということが新聞にも公表され、この委員会においても発表されたのであります。こういう今までお互いの中に表現されていなかつた戦犯者の存在というものが、こういう形で出て来た。あるいは戦犯者にあらざるところのソヴイエツトにいる人もある。こういうことに対する対策を今から立てておいていただきたい、従来は、一応記録の上に残されておつた者が帰つて来て、これが今度はお互いの国の中で、お互いに努力して釈放される段階になつて来たけれども、今度は、そういうものではなくして、ソ連中共から新たに出て来た。これを今度は政府並びにお互いの努力によつて一生懸命やらなければならぬと思いますが、こういう点についての法務大臣の見解——あるいは外務大臣に聞くことかもしれませんが、関連がありますから、お伺いいたします。
  44. 犬養健

    犬養国務大臣 この問題は、今ちよつとお触れになりましたように、外務省に関係がありまして、外務大臣ともごく根本問題から話し合つてみたいと思つております。特に申し上げたいのは、個別的な司法的な措置というものは非常に長くかかります。あとから入つて来た者が、宗教的な配慮あるいは司法的な措置で非常に早く出る、これは、神様ではなく人間でありますから、そのために不平を持つ。そうなつて参りますと、いつまでも過失の問題が清算しきれない。根に残つて、好ましくないと思いますが、ただ、もう少し思い切つた手を打つには、日本国民は戦争及び虐殺ということを心から憎むべきものだと思つておる国民だということをはつきりさせて、そうして一方では、もう年月もたつておることであるから、過去を清算したいのだというふうに、事実はつきり言わなければならぬものだと思つております。率直に言いますと、片方の方の輿論がこのごろあまり強くない。これは、向うも当然わかつているのだという意味だと私は解釈いたしておりますが、いざ思い切つた措置各国に申し入れるときには、片方の点もはつきりさせる必要がある、こう思うのであります。
  45. 臼井莊一

    臼井委員 関連して……。ただいま長谷川委員からお話のあつたように、昨日戦争犯罪受刑者赦免に関する決議案が本会議に上程されましたときに、犬養法務大臣からはこれに対する熱意ある見解の御披瀝があつたのですが、外務大臣からは何らお考えを承ることができなかつたことは、私ども非常に残念に考えております。もちろん、昨日は外務大臣の不信任案等が出まして、さだめしそれどころではなかつたのかもしれませんが、私たち戦犯の問題につきましてアメリカの方へ陳情をいたしますと、さすがに民主主義をもつて任ずるアメリカさんで、御返事がございましたが、やはり平和条約十一条ということで、個別的にやるんだという御見解ですが、法務大臣としては個別的かつ司法的ということより方法はないとしても、外務省としては、ことに平和条約締結当時の国際情勢と、その後における情勢とがかわつて来ておりますから、これにこだわることなく、広く政治的に解釈をして、アメリカに対しても戦犯に対する適当なる処置を交渉すべきであると思います。ソ連が案外に早く先手を打たぬとも限らぬのでありまして、これは打つていただくと非常にけつこうでありますが、現在基地問題等に関して一部には反米思想が相当に流れている際に、これを政治的に行うことが日米国交の上にも必要だと思うのですが、外務大臣がいらつしやいませんが、小瀧次官にでも、せめてひとつ御見解の一端をお伺いしておきたいと思うのであります。
  46. 小滝彬

    小滝政府委員 ただいまのお説、まことにごもつともでございまして、昨日の決議の次第もありますし、そうした政治的な手を打たなければならないということを痛感している次第であります。すでにフイリピンであるとか、フランス、濠州などのいい例もありますし、のみならず、最近の世界の情勢を見ますと、比較的に国際的な緊張もやや一時的でも緩和して、例を引くのはいかがかと考えますが、皇太子殿下が欧州にまわられたのに対して、新聞報道している以上に各国で好感をもつて迎えられているというような、対日感情の緩和と申しますか、そういう空気がただよつているようであります。そこで、具体的な措置につきましては、実は今確定しておりませんので、この委員会で速記つきで申し上げるのは、差控えなければなりませんけれども、先ほど言及しましたように、ゼネヴアで開かれる会議には、最も有力な方に二、三名行つていただく。それは、単にゼネヴア会議に列席するばかりでなく、ただいまおつしやいましたような趣旨にも活動していただきたいというような所存でございます。
  47. 山下春江

    山下委員長 この際委員長からも犬養法務大臣にちよつとお願いをいたしますが、先ほど大臣のお言葉によりまして、竹芝を横浜にかえることは必ずしも不可能ではないということでありますが、これは本委員会全員の希望であり、なお国民の希望でもありますので、できればそういうふうにお考え直しをいただきたいことと同時に、八日の当日は、政務多端の折柄ではございますが、大臣がちよつとでもあちらにお出向き願えれば幸いだと存じますので、とくとお願いをいたしておきます。  戦犯問題についてはこの程度にいたして、議事を進めたいと思います。     —————————————
  48. 山下春江

    山下委員長 この際、閉会中の審査についてお諮りいたします。今国会も会期終了の日を控えまして、本委員会といたしましては、海外同胞引揚げの問題として、現在中共地区よりの引揚げが行われており、またソ連地区の残留同胞の状況も好転して来るのではないかと察せられる現況にあります。その他留守家族及び引揚者の援護問題、遺族援護の問題等、早急に解決をはからなければならない種々の問題に対し、閉会中もその調査を一日もゆるがせにできないものと考えるのであります。従つて、今国会閉会中も、引続き、国会法第四十七条の二項によりまして、継続して審査いたして行きたいと思うのであります。閉会中審査を行いますには、その旨を議長に申し出て、院議によつて付託されなければなりませんゆえ、閉会中審査すべき案件として、細別すれば種々の問題にわかれますが、海外同胞引揚に関する件並びに遺家族援護に関する件と大別して、閉会中の審査を議長に申し出たいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  49. 山下春江

    山下委員長 御異議なきものと認め、さよう手続いたすことに決します。  次に、中共地区よりの第五次引揚船が八月十日ごろに舞鶴に入港するよう予定されておりますので、この上陸状況及び受入援護状況の実地調査の必要もあり、またその他に実地調査を必要とすることもあると思われますので、閉会中審査の際、その実地調査を必要とする場合におきましては、委員を派遣いたすことにいたしたいと思いますが、その際の派遣委員の人選、派遣地等の決定並びに委員派遣の手続等に関しましては、委員長及び理事に御一任願いたいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  50. 山下春江

    山下委員長 御異議なきものと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  51. 山下春江

    山下委員長 次にソ連及び中共地区残留同胞引揚に関する件について議事を進めます。帆足委員。
  52. 帆足計

    ○帆足委員 先ほど来各地の俘虜対策、戦犯対策について御意見がありましたが、私は、犬養法務大臣お話を聞いて、保守政党でありますけれども、非常に情味兼ね備わる御答弁で、これを外務大臣の御答弁と比較いたしますと、まつたく雲泥の相違がありまして、さすがに不信任案を出される方はかくのごときかと思つて、感慨無量でありまして、その下にお働きになる政務次官の御心中のほど、ひとしおとお察し申し上げます。何事にも忍耐と寛容が必要でありますゆえに、大いに各委員の御意見を御参照くださいまして、この問題の解決に御努力願いたいと思うのでございます。  そもそも理解しやすい相手または語りやすい相手と外交するのならば、これはだれでもできることでありますが、鉄のカーテンとか竹のカーテンとか、理解しがたく、理解されがたく、交渉しがたき相手と交渉をつけることこそが外交官の本領であるということを、まず十分考えていただきたいのでございます。さらに、先ほど自由党の委員の方から非常によい御発言があつたのでございますが、いわゆる自由諸国の方々と話し合うにあたりましても、戦犯釈放その他の問題につきましては、民間人がとくと語り合つた方が筋が通り人情が通りやすいというのが近代社会の一つの特色でございますが、鉄のカーテンのかなたと交渉する段になりますと、一層その必要が痛感されるのでございます。今から二十年前にソ連というわれわれの理解しがたい新しい体制がこの地球上に生れましたが、アメリカもイギリスも長い間これを承認いたしませんでした。しかしながら、存在するものを無視して政治というものを行うことはできません。大陽が暑いといいましても、暑ければ、パラソルをさすか、軽井沢へでも参ればよろしいのでございまして、暑い太陽の存在を最初から無視して、宇宙の外にこれをけ出してしまおうなどということは、夢物語りでありますから、存在するものを前提としてこの委員会で相談いたすとするならば、やはり英国の例をとりましても、まず通商から話を始めまして、あとで承認問題が起つて来た。アメリカもまたそのようでございました。日本におきましても、後藤新平伯がこのために民間外交の実をあげ、またそのほかに、文化人、学者、地理学者等がかの地に往復いたしまして、かの国を承認いたします前に既成の事実としてそういう一連のことが行われた。今日の岡崎外交と違いまして、当時の保守政党の指導者たちは多少今日より聡明でありまして、後藤新平伯のごときラジカルなデモクラットを十分に駆使されたという点が今日の保守反動内閣との若干の違いであろうと私は思います。従いまして、そういう過去のいきさつから考えましても、民間外交が政府の交渉よりも多少先駆する傾向があるということは、これはもう歴史の示すところでありまして、外務省当局が、帆足とか高良などという鼻息の荒いのが、まるで外務省のようなことをやつて、お株を奪つてしまうなどという、くだらぬやきもちなどやかれずに、自分らの手の及ばぬところを多少でもやつてくれた、有能な人物もおるわいというように御理解くださいまして、さらにまた、改進党の方や自由党の方々も、いやしくも国の利益ということになれば、やはりこれは超党派的といいますか、国民的感情のもとにやることが私は必要であろうと思います。特に、昨今における原爆の発達は著しいものがありまして、超音航空機、レーダー、ロケツト砲の発達はまた驚くべきものがありますので、外務省の首脳部の方々は、自衛権とか戦力とかいうようなかわいらしいことを論ずる前に、まず近代兵術の初歩の書物と原爆と航空機の最近の発達の状況くらい一応お調べくださつて外交をお考えなつた方がよいのであるまいかという感じすらいたすのでございます。そういうきびしいときでありますので、国と国との間を昔のちやんちやんばらばらというような一面からお考えなさらずに、原爆の時代に、二つの世界が全面戦争をすることはもうできぬところに追い詰められまして、平和いうことが人類の今課題になりつつある時代でありますから、せつかく新憲法を持つている日本政府としては、もう少し高邁な見地に立ちまして、なお寛容な見地に立ちまして、ソ連、中国との問題を考えていただいたらどうであろうか。幸いにして、先般私どもが参りましたときの経験から見ましても、語り合つてみればまた道も開けるという感を深くいたしたのでありまして、中国では南漢宸華北銀行総裁が私に言われるのに、中国におりました戦犯方々は、南とかビルマの方に国民党と一緒に逃げて行つた者もあるし、一部台湾に逃げて行つた連中もあるが、多くは閻錫山将軍と一緒に籠城して戦つて、非常に多くの犠牲者を出した。それらの方方は戦犯という名前を着せられているけれども日本の過去の監獄のような生活をしているわけではなくて、一部は労働には従事しているし、一般の市民と同じ生活を許されている者もあるし、いろいろ学校のようなところへ入れられている者もある。しかし、健康その他については中国当局としても十分気をつけているつもりであるというような話がありまして、私が、ソ連でもうすでに手紙の往復を許しているのであるから、ぜひとも手紙の往復だけは許してもらいたいと言いましたところが、それは黙して、答えを聞くことが遺憾ながらできませんでした。しかし、あとで上海へ参りましたときには、これは漁船の別の意味の捕虜で、終戦後収容された方々ですが、漁船の乗組員の捕虜の健康その他については特によく気をつけて、手紙のやりとりについても便宜をはかろうということでありまして、国に帰りまして、さつそく一まとめにして手紙をわれわれが添書をして送りましたところ、非常にたくさんの返事が参りましたが、その返事はほとんど全部奥さんとおつかさんにあてたものばかりであるのに驚きました。おやじにあてた手紙はほとんどありません。人情というものは、これは国のいかんを問わぬものでございますので、語り合つてみればぼつぼつ開ける点もある。また漁船問題などの例でも、向うもいろいろ誤解がありまして、こちらは気象通報とか飛行機の通報であるものを、向うではスパイと思う、領海の定義が違う、案外行き違いがあつたということも私は発見いたしました。また、シベリヤの諸君の手紙が着き、カン詰なども送れるようになりましたことも高良さんが向うへ行きまして捕虜収容所長と会いましたことも一つの動機となりましたことは皆様承知の通りですが、その後、当然来るべき父親たちからの手紙が来ない方がありまして、そういう方々には、私ども、捕虜収容所長あてに実は添書をつけて出したのでございます。すると、うまくその当人に着きまして、御返事をいただいたような例もございました。従いまして、とにかく国体も違い、政体も違い、イデオロギーも違いますけれども、しかし、同じ人類に属するわけでありますから、語り合えば意思の疏通はある程度できるという次第でありますので、政府当局としては、いつまでも過去のいきさつにとらわれず、そうして、日本も相当意地が悪いし、ソビエト政府も相当のものでありまして、意地の悪い同士でありますので、お互いさまでありますから、むしろお互いに相手の心理もわかるというくらいの寛容の精神をもちまして、また両方ともアジア人種でありまするがゆえに、違うところもございますけれども、非常に共通性もあり、特に中国におきましては非常に理解しやすい同文同種の間柄でありますから、中国の問題としては、ソ連ですらが文通の自由を許しましたので、誠実に中国と話し合えば、文通の自由も許してもらえ、やがて帰還することも認められる日が遠くはないのじやないか、またソ連におきましても、そういう空気が至るところにみなぎつているふうでありますから、この際ひとついつまでも頑固な立場にお立ちにならず、もつと緩やかな気持でこの糸口を開いてやるというようなお心組みに願いたいのでございます。  どうか、次官におきましては、外務委員会においてもしばしばわれわれが主張したことでありますが、これは超党派的な願いでありますから、アメリカに遠慮してお答えしにくい節もございましようけれども、ヒューマニズムの見地から、なるべくその方針に沿おうと努力しているという程度の御返事でもいただけるならば仕合せでございまして、一挙に解決というわけにも参りませんけれども、国際情勢の見地を見ながら、ぼつくその方向に御指導あらんことをお願いする次第であります。
  53. 小滝彬

    小滝政府委員 ただいま帆足委員からいろいろ外交の問題を御教授賜わりまして、欣快しごくに存じます。私も三十年近く外交官をしておりまして、外交はやさしい相手とやるよりも、もつとむずかしい相手とやる方がやりがいがあるということは、各種の国際会議に列席して体験したところであります。まことに帆足委員のおつしやる通りであります。そうして、やはり外交は国民の支持を受けなければならない、国民外交でなければならないということも、私自身いろいろな通商交渉などを通じまして体験したところであります。うそをついたりすると、日印交渉でも失敗したというようなことを、私は長々経験いたして来ておりますので、この点もまことに御説の通りでありまして、それにつきましては、ただ政府の役人とか職業外交官だけがやつてもしようがないので、皆さんが出て行くのもいいし、国民のいろいろなかわつた傾向の人が出て行かれるのもまことにけつこうなことであろうと存じます。しかし、これは相手国もあることでありまして、帆足委員は語り合つてみればわかるとおつしやいますけれども、こちらから語り合おうとしても、相手にしてくれない。人道問題だけをひつさげて、戦犯だけは帰してくれ、そういう申入れをしても、ちつとも返事もよこさない。しかも、いろいろ宣伝をせられましたりなんかしますと、手足が出ない。この困難を今後は切り抜けて行かなければならないのでありますが、お互いさまというよりも、私どもは、今まで向うの方が手も足も出ないように仕向けておつたのではなかろうかと思うのであります。われわれとしては、イデオロギーが違うから国交をしないとかいうような考えは持つておりませんし、また私個人は、帆足委員も御存じの通り、通商問題を長らく取扱つておりまして、この通商問題から傾向がさらによくなつて、そうしてそうした問題に入つて行かなければならぬということを常に痛感しておるものでありますが、しかし、これには今までの経過もありますので、何もアメリカを恐れてというような関係でなしに、日本が今自由主義の陣営に加わりまして、国際連合と協力関係を持つて平和に貢献しようという立場をとつております関係上、あるいは中共がそれと戦闘を交えるというようになれば、ただちにそうした交渉にも入れないという困難を体験した次第であります。しかし、帆足委員のおつしやる気持はよくわかるのでありまして、今後の国際情勢にも応じまして、私どもは最善を尽して善処して行きたいというふうに考えております。
  54. 山下春江

    山下委員長 長谷川委員。
  55. 長谷川峻

    ○長谷川(峻)委員 前委員から大分レクチユアーを聞かされましたが、今度は、具体的に、中共引揚げ並びに第一次以後の引揚船について若干お伺いしたいと思います。  一つは、五万九千の在中共帰還者があるという発表がありまして、その後中共の方から三万という発表があつた。この数字が、その後の経過において変更されたというふうなことがあるかないか。
  56. 小滝彬

    小滝政府委員 ただいまのところは三万ということになつております。
  57. 長谷川峻

    ○長谷川(峻)委員 それでは、中共の発表したやつでずつと行つておるわけですね。それで、今まで引揚げて来た数字と合せて、大体合つているわけですか。
  58. 鶴見清彦

    ○鶴見説明員 その点に関しましては、最近第四次までに一万九千二百八十六名の帰還者がございました。第五次で約三千二百名が帰つて来る予定になつております。今まで第四次までの一万九千二百八十六名の方々につきまして、残留者についてのいろいろなことをお聞きになつておる方がございますので、その方々につきまして、さらに残留の数字をチェックいたしております。従いまして、五万九千は昨年の五月一日現在の数でございましたが、新たにその五万九千についてもちろん修正を要するわけでございまして、現在その調査究明を続行中でございます。
  59. 長谷川峻

    ○長谷川(峻)委員 先日私たちは舞鶴に参つたんですが、よくほかの団体の方が言われておることは、あそこでいろいろ思想調査をしておる、これは軍事調査に利用されておるのではないかということが一つの逆宣伝になつております。むろん、軍事調査というようなことを、ああいう引揚者を対象にしてやることは、この場合の通念上妥当でないと思うのですが、そういう一つの宣伝を打破する意味においても、もしやつていないならば、やつていないということをはつきりこの際聞かしてもらいたいと思う。
  60. 小滝彬

    小滝政府委員 軍事的な調査をしておるというようなことは絶対にございません。その点は、この席を借りまして明らかにいたしておきます。
  61. 長谷川峻

    ○長谷川(峻)委員 かつて私、自分友人フランス減刑によりまして出て来たのを迎えに行つてみて、帰る旅費を持つていない、——その当時手当も何も出ていなかつたと思うのです」が、最近フイリピンからの送還以来、かれこれ一万円くらいの手当が出ておるようでありますが、これが今後戦犯の最終の帰還手当として将来とも確実に出るかどうか、長官からはつきりこの際お願いしたいと思います。
  62. 木村忠二郎

    ○木村(忠)政府委員 その点につきましては、この前受田委員の御質問に対しましてお答えいたしたのでありますが、おの際お答えいたしました内容につきましては、あの答えは若干間違つておりまして、はなはだ申訳ないのです。私が理解しておりましたのでは、あの通りに思つてつたのでありますが、実際に細部の事務的な打合せがついておりましたのは、向うから釈放されてこちらに帰りました者、すなわち、こちらに帰りますまでの間に釈放されました者については帰還手当を一万円出すということに了解がついておつたのでございます。それ以後の者につきましては、まだこちらだけの希望でありまして、財務当局におきましては、それは了解されていないというふうにおつしやつておられたようであります。その後いろいろと折衝いたしたのでございまして、大体財務当局の方におきましても、ことしの四月一日以後、つまり今度の中共引揚げの場合に通用されました帰還手当がきまりました以後におきまして、外地からこちらに帰つて来ました戦犯者に対しましては、これは大体同じような条件のもとにあると認められるから、出すことがよかろうというところでもつて、その辺で話合いが今のところはついたようなことに相なつておるのでございます。その他の、すでにそれ以前に巣鴨に入つておられまして、今後出まする方々、これにつきましての問題でございまするが、これにつきましては、中国からの帰還者に対しまする帰還手当を出すことにいたしました起旨が、日本の内地の事情に非常にうとくなつておる、そういうような状態と、それから、帰還いたしましてから後におきまする諸般の状況、これに対応いたしまするためにも、必要なる軽費もいるだろうというようなところから、これに対してこれを出すことにいたしたようなわけでありまして、すでに長く日本の内地におきまして服役いたしておりまする方々におきましては、その間におきまする各種の処遇の問題もあり、外地から帰つて来まする人々との間には事情を異にするものがある、従つて、これに出すことにつきましては、同じ理由では出すわけにはいかないのじやないかというようなお話でございます。そう言われまする点につきましても、一応ごもつともな点もあると考えるのおりまして、われわれといたしましては、これに対しましていかにすべきかということにつきまして、なお検討してみたいと考えております。
  63. 長谷川峻

    ○長谷川(峻)委員 結論として、巣鴨に入つておる人たちが出て帰るときに、一万円なり二万円なり出すということになるのですか、出そうとしておるのですか、それをはつきりしてもらいたい。
  64. 木村忠二郎

    ○木村(忠)政府委員 巣鴨から出て来られまする方々に対しまして、出すということに現在はなつておらないのでございます。
  65. 長谷川峻

    ○長谷川(峻)委員 それは出すようになりませんか。
  66. 木村忠二郎

    ○木村(忠)政府委員 この点につきましては、いろいろな情勢もございまして、こういう帰還手当といつたようなものにつきましては、やはり政府部内におきまして意見が統一されまして、気持よく出すということになりまして初めて出されるものというふうにいたしたいと考えております。現在のところでは、その気持の統一がまだできておらないのでございます。これにつきまして、もう少し検討いたしてみたいと思います。
  67. 長谷川峻

    ○長谷川(峻)委員 先ほど来、実は、中に入つている間の職業の御心配だとか、多少自分の小づかいなどについての御心配もあるようなお話ですが、中共引揚げ以来、今まで出してなかつた一万円も出した。ですから、私は、従来は出していなくとも、今からすぐ、巣鴨から出て行く者に対してはやはり帰還手当というものを出すように、政府部内で——政府部内といつても、直接関係があるのはあなた方でありまするが、この委員会の空気を大蔵省なり何なりに反映させるのはあなた方です。あなた方で足りない分は、この委員会決議でやらなければ、せつかくここまで引揚げをやつて来まして、そこまで手を打たなければ、これはお互い委員会の不備ですから、お互いの方でやらなければならぬ。委員会の方で、そういう点は政府の不熱意だということを言つているわけですから、主計局もそこにおられるようですが、これは徹底的にやつていただきたい。大体経済事情も違つて来ておりますし、私は実際驚いたのです。せんだつてフランス関係戦犯者が出されたときに、迎えに行つてみたところが、帰りの旅費が足りなくて、どこかから千円もらつて来た、その他地方の復員局に行つてわずかに千円ばかりもらつて、結局するところ、家族も何も迎えに来ない。それほどつらい生活をしている。実際、中においては、私の知つておる戦犯者は、封筒を張りながら、自分たち全体で会報を出すために、一箇月に三千円か四千円を稼ぐためにあくせくしておる。ところが、一般のほかの刑務所にいる者は、一日働けば幾らかずつ金が入つて来て、出るときには何万円か持つて帰るやつもおる。結局、国の犠牲になり、ある場合には、先ほどの大臣の話ではないが、無実の罪をきておる者が、中にいて使う小づかい銭ではなく、自分たちの消息を知らせる会報をつくり、あるいは留魂録をつくるそのガリ版の紙を買うのに困つておる。そして、中にいて、自分の故郷を思つて苦しみ、なおかつ出て行くときの旅費にさえも困つておる。ですから、これは私は、ぜひとも一万円なり何万円なり帰還手当というものを出すように、よその国からの引揚者だけじやなく、中におる者にもそうしていただきたいということをお願いします。
  68. 木村忠二郎

    ○木村(忠)政府委員 この点につきましても、私自身としての見解につきましては、この前の委員会でも申し上げたのですが、それにつきましては、中国から帰りました者に対する帰還手当というものを、この前の帰還から初めて出すことにいたしたわけであります。それを出すことにいたしました趣旨というものは、外地に長くおつたということが一つの理由になつております。その理由が、ずつとこちらに長くおりまする方々につきましては、必ずしもそのまま適用にならない。それから、これは、こちに働いておられまする間におきまする各種の労働に対する対価ということになるのでありまするから、今申しました帰還手当と必ずしも同じ歩調になるとは言えませんけれども、一応そういうようなものも給与せられるような状況にもなつておるというなことも聞いております。そういうところから、出ました方々に対しまする直接のその当座におきまする保護という問題につきましては、法務省の方においてお考えになることが至当であるという考え方も成り立つというような、いろいろな見解もございまして、私たちといたしましては、戦犯の問題につきましては、先般留守家族についての援護もできましたし、また、今回の法律の改正によりまして、刑死者の遺族に対しまする援護もできるというような状況でありまするから、これらに対しまして相当なる処遇をいたすということは必要であると考えまするが、いかなる形でやつたらいいかということにつきまして、もう少し検討する要があるのじやないかと思いますので、これらの実現につきましては、出られました際にただちにいろいろ何かしなければならぬという点はまつたく同感でありまするが、そのやり方につきまして、十分検討いたしてみたいと考えております。
  69. 受田新吉

    ○受田委員 関連して……。今の問題ですが、この前お尋ねして、長官から、ちよつと行き過ぎであるというお話があつたのですが、今日は、その行き過ぎの通りに実現したということで、これはたいへん喜ぶべきことですが、大蔵省主計官は、この間、巣鴨の待遇は相当なものであつたというお言葉があつて帰還手当を出す必要がない理由に、巣鴨の待遇のよいことをあげていらつしやつたのです。非常によい待遇ということを、最後に、相当な待遇というふうに直された。また、このことは外国の国民感情の上にたいへん悪影響を及ぼすことだし、巣鴨の待遇については世界における刑務所の中では一番いい条件でやつているという大臣のお答弁もさつきあつたわけですが、つまり、刑務所におる者としては国際的に一番いい待遇をしてある(「いいものを見つけて、それをやつてやろうというのだ」と呼ぶ者あり)ということがあつたのですが、この点、われわれもたびたび巣鴨に行つて見たが、あのおりの中におることが非常な待遇とはだれにも思えないのです。従つて、この刑を満了されるまでの苦痛をわれわれ国民全部が補つてあげるという立場から、今度もどつた人が巣鴨に服役されて釈放されるときに一万円出せることに一歩前進してきまつたならば、四月以降の人がそうなつたなら、今まで入つていた人にも同様の待遇をすべきであり、特に未帰還者の援護法で保護されるという長官のお言葉があつたのですが、保護されるのは今度もどつた人も同様に保護されるのであつて、今度もどつた人を別に扱つた援護法ではないのですから、その援護法の精神から言つたならば、この四月以降に巣鴨にもどつて服役される人も、それ以前に巣鴨にもどつていて今度一緒に釈放される人も、同等の帰還手当を出すという方が筋だと思うのです。この点について、閣内において意見が一致しないということですが、犬養法務大臣がおいでになるので、法務大臣の立場から、閣内の意見が一致しないのを直していただきたい。マヌス島あるいはモンテンルパから帰られた人が、巣鴨におられて、釈放されるときに一万円の帰還手当を出されることにきまつた、ところが、今まで巣鴨におつた人が出るときにはそれを出さぬということは、これは私は間違いだと思うのです。巣鴨におられる人はいずれも苦労されたのは同じですから、今度四月以降に帰られて巣鴨に入られた人も、以前から巣鴨におられた人も、出るときには同じ一万円を帰還手当として出すべきじやないでしようか。額が少いことはわれわれ今十分考えているのですが、現行制度から言つて、一万円を同様に出すのが筋が通ると思うのです。今、大蔵省とか関係各省の間においてまとまつた意見に達しておらぬ、閣議の決定に至つておらぬというお話があつたのですが、閣議決定の運びに御関係の深い犬養法務大臣のお力で閣内がまとまつたら、たいへんありがたいことだと思うのです。大臣のお考え方を伺いたいと思います。
  70. 長谷川峻

    ○長谷川(峻)委員 今のお話は、先ほどから論ぜられておるのですが、ぜひひとつつていただきたいと思うのです。大蔵省の主計官が、巣鴨の拘置所が世界一よくて、あんなところはぜいたくだと言うなら、かわつてつてもらおう。それから、閣内でそういうことに反対している大臣があるなら、はつきりこの委員会に名前を通告してもらいたい。それくらいにしなければ、この問題は解決しないのですよ。それは、入つている者の気持になつてごらんなさい。にぎり飯を食いたいためにどんな奴隷的な仕事でもするというのがあの中における人情なんです。外において青空のもとでお日様を仰ぎながら月給をとつて天下泰平に暮していたのでは、あの中の気持はわからぬ。そのくらいの信念をひとつつていただきたい。
  71. 犬養健

    犬養国務大臣 お答え申し上げます。これはほかの省との関係もありますから、私は最善を尽すつもりでありますが、ほかの大臣のおらぬ本委員会で、私がいい子になつて返事をしてもいけないと思いますので、相談をしてから善処したいと思います。
  72. 長谷川峻

    ○長谷川(峻)委員 もう一つ。今手当の問題が出ましたが、それとあわせて、また金の話になつて来るのでありますが、前日第四次引揚げを見に行つた場合に、家族の出迎人が非常に少かつた最後に、ああいうふうに紛糾したために、各県の出張所が、それぞれの県の留守家族に向て、ぜひこの場所に迎えに来て、誤つた団体に扇動されて帰ることをがえんじない自分の肉身を連れもどすように説得してくれという処置さえもとつたように聞いているのですが、一刻も早く十数年会わなかつた自分の肉身に会いたいのは人情であります。しかし、それはおそらく経済的な事情も許されなかつたので、舞鶴まで来られないのだろうと思う。これはひとつ、政治家というものはこういう面にそく隠の情を起してくれなければならぬと思うのです。そうなりますと、留守家族が舞鶴に来る場合に、せめて旅費の半額くらいでも負担するとか、あるいは鉄道の割引券の若干でも交付するとかいうような特別な措置でもとつてやることの方がいいのではないか。そこに政治のあたたかさが皆さんに通ずるのではないかと思うのですが、この点について政府関係者の御意見をお伺いしたいのであります。
  73. 津田弘孝

    ○津田説明員 ただいまのお話に対しましてお答え申し上げます。国鉄といたしましては、こういつた中共その他からの引揚げをされる方々の輸送取扱いにつきましては、万全の措置を講じて、いろいろやつておるわけであります。ただいま御指摘のありました引揚者を出迎えに行く家族の運賃の問題でございますが、これは、国鉄といたしましては、たとえば無賃で輸送するというようなことをすれば、むしろ非常にいいと思うのでありますが、何分にも、御承知のように非常に輸送力が逼迫いたしております。従いまして、引揚者の輸送につきましては何をおきましても、客車の供出、輸送の手配、ダイヤ編成等々をいたしておるのでございます。これが、非常に数多い家族方々まで輸送するということになりますと、なかなか輸送的に困難なことになつて来る。しかしこれは、輸送の上である程度ならしてやれば、やれないこともないと思うのであります。運賃に関しましては、これは厚生省の方で大蔵省から予算をおとりになりまして、一人々々の引揚者からは国鉄は運賃をいただかないのでありますが、厚生省から運賃あと払いという制度によつて一括してちようだいいたしておるような次第でございます。一般の族客運賃と全然異なつたわけではありません。ただ、行先きがばらばらになりますので、大体平均の輸送距離五百十キロというところで一人について五百十キロ分の運賃をあと払いでいただくということになつております。もし、出迎え家族に対しましても、厚生省あるいは大蔵省の方面でさような御措置を願えるならば、国鉄といたしましても、輸送の状況ともにらみ合せつつ、引揚者自体に対すると同様な取扱いをすることは、一向さしつかえないと考えております。
  74. 山下春江

    山下委員長 この際、犬養法務大臣から本委員会の熱烈なる要望をおいれくださいまして、閣議で御協議願つたことの御報告があります。大臣は非常に時間をお急ぎでございますので、それを承りたいと思います。
  75. 犬養健

    犬養国務大臣 先ほど、マヌス島から帰られる方を横浜で迎えるようにという各委員からの熱烈なる御意見がございましたので、閣議というほどの大きなことでもありませんが、さつそく相談をし合いまして、病人の方は赤十字社と緊密に連絡して、できるだけ横浜から無事に運ぶことができるような措置をとることにいたしまして、横浜港で迎えることにいたしました、(拍手)
  76. 山下春江

    山下委員長 ありがとうございました。委員長も厚く感謝いたします。ちよつと速記をとめて。     〔速記中止〕
  77. 山下春江

    山下委員長 速記を始めてください。受田委員。
  78. 受田新吉

    ○受田委員 長官にお尋ねしますが、引揚同胞対策審議会が終戦後の多難な引揚げ促進と引揚者の受入れ態勢についてのいろいろな問題を討議して来て、非常な功績をあげて来たわけですが、これは、当初きわめて短期間にこれを終える予定であつたのが、その後一年々々と延ばされて、この八月末日までということで続けられて来たわけです。この委員の一人でいらつしやる長官として、内閣の中に属しておるこの審議会が、今後もう一年くらい続いて、まだ処理できていない中共そのほか各国引揚げ促進あるいは引揚者の受入れ態勢などに貢献する必要があるのではないか、受入れ態勢の完備のためにさらに一年間延長される必要があるのではないかと思いますが、この点どうお考えになるか、政府側としての御答弁をいただきたいと思います。
  79. 木村忠二郎

    ○木村(忠)政府委員 この引揚同胞対策審議会は、引揚げの問題並びに引揚者の援護の問題につきまして、その施策を立てる上におきまして非常な力がございました現在でいろいろな施策が円滑に行きましたのにつきましては、その方面に非常に力があつたということは私も認めておるところでございます。現在までのところ、一応昨年で終るはずであつたのでありますが、こうしたものを本年まで延ばしたような次第であります。これも皆さん方の非常なるお力でもつて延ばされたような次第であります。政府といたしましては、この点につきましての予算的の措置等も今いたしておりませんので、これにつきまして、私どもといたしましては公の意見を申し上げるわけにはちよつと行かぬのでありますが、今後引揚げにつきまして各種の解決しなければならぬ問題があるという点は御指摘の通りであります。われわれといたしましては、そういうふうな問題が現在あるということは認めるということを申し上げておきたいと思います。
  80. 受田新吉

    ○受田委員 これは、この前大石さんから提案されて、満場一致きまつたことですが、アメリカを初め各関係国の大公使館に対して、戦犯釈放の感謝あるいは今後の残された人々釈放の懇請とを兼ねた意味で、わが委員会代表者がその懇請感謝の訪問をすることを決議しておるのでありますが、これを、今国会が終ろうとするこの段階において、明日ごろに委員が手わけしてあの約束を実行されることを、委員長としてお諮りいただきたいと思います。
  81. 山下春江

    山下委員長 その点は、明日手わけして実行いたすようにいたします。
  82. 受田新吉

    ○受田委員 ソ連代表部へ懇請の意味で行くことも、つけ加えていただきます。
  83. 山下春江

    山下委員長 その点は承知いたしました。  それでは、本日はたいへんおそうございますので、次会は公報をもつてお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。     午後四時五十三分散会