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1952-12-08 第15回国会 参議院 労働委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年十二月八日(月曜日)    午前十時五十二分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     吉田 法晴君    理事      安井  謙君    委員            九鬼紋十郎君            野田 卯一君            早川 愼一君            片岡 文重君            一松 定吉君            堀  眞琴君   委員外議員    木下 源吾君   事務局側    常任委員会専門    員       磯部  巖君    常任委員会専門    員       高戸義太郎君   参考人    日本石炭鉱業連    盟専務理事   早川  勝君    住友石炭鉱業株    式会社常務取締    役       村木 武夫君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○労働情勢一般に関する調査の件 ○賃金問題に関する調査の件  (炭労ストに関する件) ○連合委員会開会の件 ○本委員会の運営に関する件   —————————————
  2. 吉田法晴

    委員長吉田法晴君) 只今から労働委員会開会いたします。  本日は労働情勢一般に関する調査及び賃金問題に関する調査といたしまして、炭労ストに関する件につき参考人から意見を聴取することにいたしております。炭労ストに関する件につきましては、前回の委員会におきまして労組側意見を聴取いたしましたので、本日は経営者側のかたの御出席を願つたわけであります。時間の関係もございますので、早速これから参考人のかたの御所見を承わることにいたします。先ず早川参考人からお願いをいたします。
  3. 早川勝

    参考人早川勝君) 先ず何よりも先に、この長い間炭鉱ストによりまして国民全般に多大の御心配と御迷惑をおかけしておりますことを深く済まないと思つております。又国会議員諸公におかせられましても、いろいろと御心配頂きまして誠に恐縮に存じております。なお、先回の委員会には当石炭連明重要会議と丁度時間的にぶつかりましたために止むを得ず本日のことになりまして、勝手をいたしたことをお詑びを申上げます。  委員長からお示しのように、従いまして要点を申上げたいと思います。経過は一応省略させて頂きまして、双方の、即ち労使双方の間において最も大きく対立いたしております点を先ず申上げまして、それから現在の段階における状態をお耳に達したいと思います。  最重要対立点は、実は二点でございます。第一点は炭労側の要求いたしまする賃金倍額引上げでございます。坑内坑外それぞれ率は多少違いますが倍額引上げと相成ります。その根拠といたします点は、いわゆるマーケツト・バスケツト理論でございます。これが交渉の初期の段階において鋭く応酬がございまして、結論を申上げますと、私どもの側からマーケツト・バスケツト理論というものの根本において承認できない点があるということを、理論的に且つ具体的にまあ反論いたしました結果、炭労側といたしましては、この論議はもうやめたと言つてその論議をまあなくしたわけでございます。従つて倍額引上げ基礎になりますところの理論的根拠と申しますか、主張というものは一応炭労側としては引込めたという形に相成つておるのでございます。私どもの側といたしましては事実に基きまして炭鉱労働者賃金が他の産業と比べて低くない、官庁統計及び我々のほうで掴んでおる数字も申しましたし、又炭鉱労働者生活実態調査しております数字を具体的に列挙をいたしまして、これについてまあ納得を求めたのでありますが、組合側としては、これに対する反対資料というものはあえて提示はなかつたわけであります。その点につきまして、即ち賃金金額の点につきましては幾らにしろということについては、最早論議といいますか、理論闘争的には話が行かないのでありまして、今度は問題が標準作業量の問題に相成りました。標準作業量と申上げますと、これは炭鉱の主として採炭夫等仕事をいたします場合に、その採炭夫が一日にどれだけの炭を出せば幾らの金になるという場合の、どれだけの炭をといいます仕事分量を出すのであります。即ち切り賃標準になりますところの能率のほうのベースであります。この能率ベースというものは、少しくどいようでございますが、非常に重要なもので、ここで申上げたいと思いますのは、その切り賃というまあ請負給賃金標準になりますところの実際の作業量はどのくらいにしておくのが妥当か、それを労使双方間できめまして、それがまあ標準に相成るわけでありますが、その標準に対しまして、賃金がいつも仕事量に対して支払われると、ところが御案内のように炭鉱終戦後年々回復いたしまして、大掴みに申しましても毎年一割、一〇%ずつの回復をしております。今後もその回復過程にあると考えております。その理由は相次いで多額の設備資金を投資いたしておりますし、又諸般の機械設備乃至は坑内作業方式等につきましての改善を図つておりますので、この作業採掘作業量実績というものはどんどんと止る一方でございます。ところが丁度例えて申しますと、こちらの場所からこちらの場所まで或る荷物を運びますのに、初めは大八車で運んでおつた。ところがその後三輪オートバイで運ぶようになり、今度はトラツクで運ぶようにと相成りますと、運びます仕事分量は著しく殖えて来るのでございます。それと同じような理窟で、炭鉱における復興過程におきましては、そのきまりました標準作業量に対して、若し標準そのものを変えずにおきますならば、作業の量はどんどん上つて参りまして、それこそとてつもないような賃金の額に相成るのであります。賃金の額に相成るのみならず、それだけ設備を改善し、作業方法を改良いたしましたところの企業努力というものは、一向企業側には酬いられないで一方的に労働者のほうにばかり流れてしまうというのがアンフエアーでございます。そこで私どもの考えといたしましては、作業分量企業努力によつて上つて来たというふうに考えられるものは、企業の取り分にするのが当り前である。こういう主張に立つものでございます。この点につきまして組合側といたしましては、きまつた分量はそのきまつた分量目安にして働いて収入の増加を図る、ところがその目安のほうが引上げられるということになると、自分の収入が減るか或いはもつとたくさん働かねば、その金額は取れないという点につきまして、大変に反対をするのでございます。労働者立場から考えれば、或る意味でそれは理解できるのでありますが、能率がどんどん上つて行き、炭鉱復興する過程においては、その炭鉱労働者側言つております点は妥当でないのでございます。その点十分説得いたしまして、理論としては組合側のそれを納得せざるを得んような状態にあろうかと存じます。ところが両方の二点の問題につきまして、一点につきましてはもう炭労側としては主張すべき根拠を失い、ただ一点の点は標準作業量の問題で押し合いへし合いのままストライキに入つたので、ストライキ長期に相成りまして、双方の間にやはりこれは妥決する必要があるということが、両方執行機関の間で一応話が進みまして、先月の二十四日以来妥決するための、解決するための努力が払われたのでございます。そこで私どもとしては従前の考え方を、妥決収拾のために変えまして、飽くまで標準作業量を改正是正して、そうして炭鉱復興というものを実現し、それによつてコストを低減し、それによつて安い石炭を供給するという考え方が、組合側としてそんなに喉にひつかかる骨であるなら、それでは賃金というほうでは組合側としては理論的な根拠がないのであるから、賃金の問題については私ども主張しておる通り物価上つていないし、生活実態はよくなつて来ているし、及び他産業に比較しても悪い賃金じやないというので、これで我慢してもらいたい。その代り標準作業量は今回に限つて目をつぶろうというのが、先月の末に提案いたしました当方最後案でございます。ところが不幸にして組合側は何らかの事情がありましたと見えまして、それを容れるところとなりませんので、そのまま対立状態が更に継続いたしまして、そこへもつて労働大臣の依頼によりまして中山中労委会長斡旋に乗り出すことになられました。私どもに対しましても、労働大臣からこの斡旋によつて解決するようにという勧告がございました。労使双方に同内容勧告がございまして、私ども中労委会長斡旋下に現在立つておるわけでございます。そこで中山会長が丸々三日間に亘つて双方の間に立たれて斡旋をされて、正確に言えば昨日の零時過ぎに、労使双方の間に斡旋の案を提示して申入れがあつたわけでございます。これにつきまして当方といたしましては、早速昨日から、本日もそうでありますが、検討を加えているというのが現在の段階でございます。ただ、まだここで決定的なところに入つておりませんので、私から申上げることは如何かと思いますけれども斡旋案内容に対しましては、私どもとして不満な点を持つておる。概括的に申上げますれば、今申し上げました標準作業量の問題に関しましては、原則的にはそういうものは引上げるべきであるけれども、この際は据え置きとするということでございます。従つて標準作業量の問題は、先には賃金の額を向うも下げればこつちも下げるということでおりますのに、次に申上げるように賃金の額を引上げて、而も標準作業量据え置きとするということは片手落ちだと思うのであります。この点が第一点であります。  それから賃金の額を七%引上げる、ほかに月額三百円の一種の生産奨励のための金を支給するというのがその第二の斡旋案内容でありますが、これにつきましても、私どもとしては賃金をこの際引上げるということにつきましていろいろ検討いたしました結果、その根拠がないという判断を持つておるのであります。而も中山会長の示された引上げ根拠につきましても、私どもとしてはまだ納得できない節が多多あるのでございます。例えば一、二、三というふうに理由を挙げておられますが、その前提として、やはり炭鉱賃金は他の産業と比べて劣つてはいない、又物価は去年の秋からずつと安定しているということは、斡旋案の中にも容認しているのであります。C・P・Iは一・五%しか変つていないというふうにその点も認めておられながら、更に七%以上の引上げをするということの根拠につきましては、我々は甚だ疑問を持つのでございます。正確に検討した上で、又我々としては態度をきめることと相成ろうと思いますが、例えば昨年やはり中山会長斡旋がありまして、大巾な賃金引上が行われました。その際の中労委会長引上根拠といたしましては、物価CPIで一四%上つている。炭鉱利益状態は前期に比して著しく高くなつている。他の産業に比べて凡そ月額二百円は低い。だからこれらを勘案して、約二割の増額をなすべきである。こういう案を提示されたのであります。今回はその三つの点につきましては、すべて逆になつているのでございます。同じ地位にあるかたの斡旋案が時によつてそう変つていいものであろうかという感じを受けると共に、今度は昨年の十月から現在に亘つてどう違つておるかということを判定されるならば、或る意味で又了解できるのでありますが、今年の一月から他の産業については八、九%上つている。併し炭鉱はこの一月からは二%しか上つていない、それはその筈でございます。昨年の十月に一カ年の協定をしたのでございますから、而も昨年の十月に二割以上の増収を図るように協定をしたのでございますから、その協約のままで一カ年推移するのは当り前でございまして、二%上るのもおかしいくらいなんであります。それとその他の産業が、勤労統計によりまして累次若干パーセント上つているということと比べられているのは如何でありましよう。去年の十月以降、十月の時点において、両方のものを一応標準基礎におきまして、それを基準に現状推測つて、比べられるということなら相わかります。CPIについてもさようでございます。CPIについては、CPIといいますと実質家庭生計調査のことでございますが、これを比較されるにいたしましても、同じ時点から出発して現在どうなつているということを、現在を推し測られるならば、私ども資料として了解できるのでございますが、これ又私どもとして了解できない節がございます。例えば今年の一—三月の間の実績を取りまして、それを基礎にして一〇%ですか、資料がございますが、上つているというに対して、今度は炭鉱賃金の上昇が今申しました約二%程度だ。比べるものが違うのでございます。炭鉱CPIを使いますならば、私どもとしては四二%上つているという事実の数字を持つているのであります。そういうふうに、まだ公式に確定的に申上げる段階ではございませんけれども、示されたるところの内容につきましても、多大の疑点を持つているわけでございます。なおこの斡旋によつて賃金を上げるというふうにいたしますと、トン当り百八十八円コストが高くなる。こういうことを中山氏は申しておりまして、それは影響はあることはあるが、今直ちに炭価に響くというようなことなしに吸収されるのではないかと思うと、こういう判断をとつておられる。その見解に対しましては私どもは納得することはできないのでございまして、炭鉱経営の実情というものは非常に困難な而も長期の見通しに立てばますます困難な状態でございまして、なまやさしいものでないのでございます。その点についてもいろいろと検討をいたしております。現在の段階におきましては概要この程度でございまして、私どもとしては成るべく早期に問題を解決したいという一念には燃えておるわけでございます。よろしくお願い申上げます。
  4. 吉田法晴

    委員長吉田法晴君) お二人で補足せられるところがございましたら……ございませんならば委員の諸氏に御質問ございましたら……。
  5. 村木武夫

    参考人村木武夫君) 補足と申します意味は、例えば支払能力とか経理的内容についての説明を補足したらいいという意味でございますか。
  6. 吉田法晴

    委員長吉田法晴君) 何でもかまいません。
  7. 村木武夫

    参考人村木武夫君) 先ず御理解を深めて頂きますために、炭鉱企業特殊性と申しますか、そういう点を簡単に申上げたいと思うのですが、炭鉱企業はまあ非常に、バルキーな、かさばつたものを生産しておりますので、需要が余つて参りますと山が一ぱいになり、港が一ぱいになりますと糞詰りになつてしまい生産を止めなければならん、而もその余つた、貯炭になつたものを銀行に担保にしてもらえるかと申しますと、これは風化いたしますし、自然発火もいたしますので担保にはならない、従つて石炭を余り出しますと、どうしても値を崩してダンピングをしなければならぬという、非常に商品としては弱い性質を持つた商品であります。そのほかに自然発火とか爆発とか或いは出水というようなそういうような不時の損害を覚悟しなければならない産業でもありますので、そういう点から考えますと、石炭業というものは好況のときに、つまり石炭が不足しておりますときに、或る程度そういう問題を備えた資本蓄積をしなければ、不況に堪えられないといつたような内容を持つた産業であるわけであります。そのほかに最近特に我々の重大な問題として考えております点は、自立後の自立経済に対しまして日本石炭が何といつても高いのでありまして、外国に比べても高いし、戦前に比べましても、物価指数を見ましても三百五十倍ぐらいしか全体の平均上つておらないのに、石炭は四百五十倍も上つておるというような点で、非常に石炭が高いということが日本自立経済を阻んでおる。輸出採算ペースを改善するためにも、どうしても日本石炭を安くしなければならないというような、重大な命題を石炭業界には与えられているわけです。これらの点から考えてみますと、石炭業経営内容その他どうなつているかということでございますが、先ず先ほど申上げました石炭の不足している時に、つまり好況時に蓄積しなければならんという問題でありますが、一番不足したと思われますのは終戦当初から四年間であると思います。その一番石炭が不足しましたときには強度の統制を受けまして、而もその統制が非常に不合理に拙劣に行われました結果もあつたと思いますが、その蓄積すべきときに逆に非常に大きな重荷を背負わされたのであります。それは御承知のように、まだ四百五十何億という借金を背負つている事実だけでもわかりますし、資本の払込み、資本借入金関係を見ましても、払込資本は、全産業日銀統計を見ますと、大体払込資本が三三で借入金が六七になつております。ところが石炭鉱業は二十六年の上期に至りましても払込資本に対する借入金関係は、払込資本が二に対しまして借入金が九八というような全産業に比を見ないような借入金払込資本関係になつておるというような事案を見ましても、蓄積をすべきときに逆に非常に大きな重荷を負わされたまま自由経済に放任されておる、放り出されたというような点が、一つの大きな炭鉱経営を圧迫している材料になつていることは御承知通りと思います。  その次に、それでは石炭が非常に最近景気がいいので儲かつているのじやないかというようなお話がほうぼうから出ますし、長者番付等の問題もあるのでありますが、実際に私ども大手筋炭鉱経理内容は実際どうなつておるかと申しますと、私ども住友石炭鉱業現状で申上げますと、一番好況だと言われておつたのはいわゆる石炭饑饉時代三、四十年来の石炭の不足だと言われております昭和二十六年の下期と二十七年の上期の一年間の状況を見ますと、昭和二十六年の下期の私ども決算ではトン当り利益は四百十七円であります。それから昭和二十七年の上半年の決算の結果はトン当り利益は四百九十九円であります。これは非常に石炭が足りなくて饑饉状態でありましたので、値段をつり上げようと思うならば幾らでも上げられる時代であつたと思うのでありますが、日本自立経済立場を考えまして石炭業界が自粛した結果にもよるわけであります。例えば非常に悪い炭を出しておる炭鉱のほうと、いい炭を出しておる炭鉱とは一千円乃至二千円値段違つてつた、二重価格になつてつたようなことはその辺の消息物語つていると思われますし、又昭和二十五年の事変前の月でありまする六月の状態を一〇〇といたしまして、日銀卸売物価指数を見ますと、昭和二十七年のいわゆる石炭最盛期であると言われる一—三月には、その卸売物価指数生産財平均が一七八に上つております。併しそのときですら石炭価格は一五大にしかなつていないという日銀卸売物価指数状態もその辺の消息物語つているのでありまして、石炭好況にいい炭を出している炭鉱は決してその当時ですら儲けておらなかつた、大して儲けておらなかつたということは、それらの点でもおわかり願えると思うのであります。  なお特に御理解願いたいと思います点は、今申上げました一番いいときを取りました四百九十九円、約五百円のトン当り利益と申しますか考課状で発表しておりますが、これは実は正常の利益ではないのであります。これはむしろ名目的な利益と私どもは見ております。と申しますのは、石炭業の今の税制の問題或いは原価計算の問題には非常に不合理な点があるのであります。例えばセメント工場ならセメント工場、つまり工場生産の例を見ますと、セメント工場が百万トンの生産をいたしました会社が来年百万トンを生産いたしますためには、追加企業費というものは殆んど入れなくてやられるのであります。ところが、石炭鉱業におきましては本年百万トンを生産した会社が来年百万トンの生産をする、つまり生産を維持するために追加投資の金が非常に要るのであります。従つてこの追加投資の金というものは生産維持のための費用でありますので、当然これは費用として損金整理さるべきものであります。その損金整理さるべきものが今の税法並びに原価計算状態から行きますと、これは損金整理されないで財産として、つまり資本支出化せられることになつております。従つてそれだけ毎年損に落すべきものが、逆に財産になつておるのでありますから、不良資産がどんどん殖えて行く、合理化審議会答申案石炭協会が出した数字を見ましても、大体昔は物価に換算されまして、トン当り固定財産というものは千八百七十円ぐらいであつたのが、現在は四千二百五十円ぐらいになつておる。而もこの二千三百八十円も同じベースで換算してみると、固定資産が殖えておる。これは、不良資産がそれだけ殖えておるということです。つまり費用に落すべきものが財産として整理されておるという結果であるということを答申いたしておりますが、正にその通りでありまして、炭鉱の今の点から見ますと、当然費用として落すべきものが財産として年々の償却によつて処理されることしか許されていないという点であります。この点は非常に重要な問題でありますので、石炭協会ではその点を国会並びに政府当局に強く要請することになつておりますが、その金額がどのくらいかと申しますと、大体トン当り百七十円ぐらいに当るのであります。従つて先ほど申上げました当社の利益の最盛時を取りました五百円のトン当り利益も、五百円に対しますと税金は二百四十円かかります。そのほかに配当その他が約四十円かかりますので、税金の二百四十円と配当その他の四十円を引きますと、企業には二百二十円しか残らない、而もその二百二十円の中から、当然健全経営、或いは他の工場と同じ経営内容にするためには、今申上げました不合理費用支出、損金整理すべきものが百七十円ありますので、それを引いたつまり五十円、二百二十円から百七十円を引いた五十円というものが実質的な企業の利潤であるということになるわけであります。即ち、よく炭鉱は非常に儲けているということを言われますが、内容を分析してみますと、五百円の利益が僅かに五十円しか企業に残らない事実になつておるということであります。と申しますことは、例えば私ども会社で申しますと、年間の生産高と申しますものは、約二百万トンでございますので、石炭が三、四十年来の好況だと言われたときですらその企業に残りました利益というものは、その五十円掛ける二百万トン、即ち約一億に過ぎないのであります。而もこの五十円から過去の非常に大きな、厖大な借金を支払つて行くということと、先ほど申上げました炭鉱の負わされておる国民経済上の重大な使命である炭価を下げるという合理化の金を生み出すということが、如何に至難であるかということはおわかり願えるかと思うのであります。これは借金によればいいじやないかということでありますが、借金は先ほど申上げましたように、炭鉱は他産業に比べて非常に多いのでありますし、又自己資本に対する他資本関係から行きましても、非常に借金に頼つて行くということはなかなかその経営から見てむずかしい問題であります。更に非常に問題だと思われますのは、借金をするということは、その借金は当然利益で返さなければならないのでありますが、その利益現行税法では利益の約半分が税金に取られますので、借金を返すためには、その借金倍額利益を生まなければその借金は返して行けないということになるわけであります。そのほかに利子もかかつて参りますので、先ほど来申上げました炭鉱の負わされておる使命でありまする高炭価問題解消のために借金をして倍額利益を挙げて、而も利子負担を殖やして行くというようなことは、これはなかなか又重大な問題でありますので、却つてそういう施策に対しては逆行する形になるんじやないかと思うのであります。従つて今の炭鉱経理状態から見ますと、国民経済の堪え得る、いわゆる合理化、高炭価問題を解決するにも、殆んどそれに応えられないような経営内容になつております。即ち最盛時においてすらトン当り五十円ぐらいしか企業に残らないという内容でありますので、近く襲つて来るでありましよう不況時代の不況対策その他を考えますと、到底こんなふうな状態では企業の防衛すらできない状態でありますし、更には勿論一番重大な使命でありまする高炭価問題の解決の施策すら生まれて来ないというような経営内容になつておりますので、そういう事情から先ほど早川専務理事の言われたように、石炭鉱業連盟の今まで主張されておる立場炭鉱経営実態から生まれて来ておるという点を、特に御認識願いたいと思いまして附加えて申上げておく次第であります。
  8. 吉田法晴

    委員長吉田法晴君) 御質疑ございましたら…。
  9. 安井謙

    ○安井謙君 今早川さんのお話の、まあ能率増進の問題なんでございますが、この前組合のほうから伺つたところによりますと、この能率増進は企業努力でなくて、勤労努力によるものが大部分であるというような見方をされておつたようです。まあそれに対してもうちよつと具体的に能率増進の何割ぐらいは企業努力によると、こう言えるかどうかといつたようなお話が伺えれば……能率増進によつて標準作業量を変えなければ、自然賃金の実質上昇もあるんだと思いますが、それはどの程度上つて曲るか、その点をお伺いできればいいと思います。
  10. 早川勝

    参考人早川勝君) お答えいたします。累年一割程度ずつ一年間一年間をくつて見ますと、協定期間ずつ見ますと、一割ぐらいずつは確実に上つておると思います。そうしてまあ少し組合に対して挙げ足を取るようなお言葉で悪いのでございますけれども組合側としてはもう自分たちは完全な努力をしておるから、これ以上能率を上げられないというようなことを常の機会に申しておるのでございますが、事案はそういうふうに上つておりますので、口先のやりとりから申しますと、全部企業努力上つておると言えば言えないことはないと思いますが、併しそれは組合として交渉のときの戦術の言葉と思いますので、そうは言うのは気の毒かと思います。併し実は何%本当に企業努力の分で何%が労働者努力だということについての公式はなかなか出ないのでございます。投入しました資材費或いはその他のものに改善のための費用等を算出しましてやつて見たこともございますが具体的に何パーセントだと言われるとちよつと勘定はしにくい状態でございます。そこで先ず大きく見て四分六でないか、六割程度企業努力として企業側の取分として取るのが妥当ではないかというような建前をとつておりますが、今回の交渉におきましては、それの六〇%の取分を四〇%に譲歩したわけです。更にゼロにまで譲歩した段階があるのでございます。そのときには賃金はもう向うもそれで収まるならこつちもそうしようという釣合で譲歩したわけでございます。それから現在標準作業量として、現在と言いますか、正確に言えばこの去る九月三十日まで行われております両者間の協定いたしました標準作業量というノルマは実は二年前のものであります。二年前のものでございまして、その二年前のものに対しまして、作業量実績は約二〇%増になつております。ですから二年前に協定したときの賃金よりも事実上二割上げて、それが今払われている、而も今後もまる一年の先を考えますと、更に一割は上がるだろう、こういう見方をしておりますので、これはやはり是正するのが本当だろうという立場つております。
  11. 安井謙

    ○安井謙君 村木さんは今ネツトの利益が五十円だというお話ですが、それは金利や何は含んでのことですか。
  12. 村木武夫

    参考人村木武夫君) 金利は勿論引いたあとです。つまり現在の利益のうちには名目的な利益内容が非常に多いので、それを修正して、実際的に普通の工場生産原価計算状態、或いは税法状態に比べて直して見ると、炭鉱のほうは不合理な点が是正されておらないためにかような状態になつておるのでございます。
  13. 吉田法晴

    委員長吉田法晴君) 速記を止めて。    〔速記中止〕
  14. 吉田法晴

    委員長吉田法晴君) では速記を始めて。御質疑を…。
  15. 安井謙

    ○安井謙君 もう一つそれでは簡単に。統一交渉の問題についての一つのお考えをお伺いしておきたいと思います。
  16. 早川勝

    参考人早川勝君) 只今炭労側と、私ども連盟との間で行なつている賃金交渉は統一交渉でございます。但し全部統一ではございませんで、十数社の統一交渉をやつております。但しそのうち非常に自然條件等が急変して参りました社がございまして或いは又極く企業……。仕事を始める企業の準備中の炭鉱がございまして、そういつたものについては極く例外的に例外扱いは認めようということで、完全な了解ではございませんけれども当方からはそういうことを申入れているわけでございます。従つて一応統一交渉というものが形として成立するわけでございます。で統一交渉が成立しております根拠でございます。根拠は私どもといたしましては昨年までは実は各個交渉をやりました、案は三年ばかり各社ごとに交渉をいたしましたが、蓋を開けて見ますと、三年目の去年の秋には、殆んど同内容賃金が出た。今申上げました十数社につきましては非常に似た内容でございます。ただ先ほど来申上げております例の標準作業量については、各社の実態によつていろいろと違うわけでございますけれども、それに対応する賃金の額につきましてはおよそ似たものでございます。これはずつと古く、まあ労働組合もない或いは戦争前の状態におきましても炭鉱地帯におきましては、大体密集して事業所が存在する関係もございますし、賃金の額というものは余り違わないという、多少それは違いはございますけれども、余り極端な違いはないというのが従前の歴史でもあつたかと思います。従つて昨年までは企業の経理能力もいろいろ違いますし、統制撤廃後更にいろいろと変つた点も出ておりますので、各社各様の賃金を作るべきだという考えで、各社それぞれ努力したわけでございますが、蓋を開けて見ましたところ、そういうふうに殆んど似た賃金になつているという実態から考えますならば、やはりこれは各個交渉よりも統一交渉でやつたほうが物事が進めやすいのではないかという観点を私ども経営者側は持つております。但し経営状態といたしましてはいろいろと違う点がございますけれども、そういうふうでないと労働組合も納得しない、事実上そういう結論になつた、近くなつたというのでございまするので、統一的にやるのも止むなし、或いはそれはベターではないかという考えに立ちましたのでございます。  ちよつと余談でございますが、組合側は又別個の観点であろうかと思います。即ち階級的な立場から考えまして、そしていわば炭鉱賃金の社会性という点から考えますと、大きい組織、全国的組織が責任を持つてきめるということが社会運動或いは労働運動としては当然の主張かと考えます。その階級的の主張を持つ組合側考え方と、私どもが現実論から考えました事実上の考え方とが、たまたま一到したのが今年の七、八月、それが今続いているという状態でございます。それで会社側の事情は事実いろいろ違うのでございますが、御案内のように殆んどコストの中に占める労務費が五〇%に近いものでございますから、これがどう動きますかということは、各社に対して与える影響は殆んど等しい影響を与えるものでございますから、これで私どもが当時判断いたしまして、当事者といたしましても、この統一交渉がベターだろう、こういう考えを持つておりました。
  17. 吉田法晴

    委員長吉田法晴君) ほかに御質疑ございませんですか……。それではちよつと委員諸氏の質疑の間、私からお尋ねいたしますが、協約期間内に作業量といいますか、或いは能率か、その辺が正確でございませんでしたけれども、一割程度は上つたというお話でしたが、これは半年に一割上つたと、こういうお話なんですか。
  18. 早川勝

    参考人早川勝君) 一カ年ごと……。
  19. 吉田法晴

    委員長吉田法晴君) 一カ年に一割大体上つて来ている、こういう御説明ですね。手許に正確な数字はございませんが、昨年の半ば以降の月別の能率、これは大体一人当り拝見して見ますと、月によつて例えば三月であるとか或いは年末であるとか、季節的な変動はありますが、一割上つているという数字は拝見できないような気がするのですが、その点はどういう工合に或いは標準作業量の取方によつて違いが出て来るでしようが、協約その他で拝見いたします能率は一割上つているとは確実に断言できないような気がするのですが、如何でしようか。
  20. 早川勝

    参考人早川勝君) お答え申上げますが、協約の期間の取方にもよるのでございますけれども、丁度下期を含めまして、来年の三月までを入れて考えますると、やはり一割は当然上るものと考えられるのでございます。
  21. 吉田法晴

    委員長吉田法晴君) それは傾向値としてそうなるのですか、それとも例えばこういう要素があつて、そうして一割上るという見通しを建てておられるのか。その要素をどういうものを考えておられますか。
  22. 早川勝

    参考人早川勝君) 一応傾向値としてそういう判断をしております。それから企業努力設備を改善します際の資金の投入の時期とか、或いは施設の実際に着手する方法とか、程度とかいうものによつて時期的には早まつてみたり、ずれたり、或る時期には頭打ちになる。或いは急速に進むということも考えられるのでございますから、その傾向値自体は理論的には申せますが、実際には多少の違いが出て来ることは事実です。長期で考えますと、そういう傾向値は確かに言えると思うのですが。
  23. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 ここに生産費調べという数字を並べたのがあるのですが、ちよつとお尋ねしたいのは、二十二、三年以後最近までの石炭の値、これには総原価が出ているのですが、それを若しお示し願えましたらちよつとお示しを願いたいと思うのでございますが、これはトン当りでございましよう。
  24. 早川勝

    参考人早川勝君) 今ちよつと非常に物価の変動がございますので、今手許にそのときの資料を持つておりませんが、あとでお届けしてよろしうございますか。
  25. 吉田法晴

    委員長吉田法晴君) よろしうございますか。
  26. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 それがわからないとちよつと質問ができないので……。
  27. 村木武夫

    参考人村木武夫君) 原価のほうは協会その他みな届きますが、その売値のほうは独禁その他の関係で而も売先というものが非常に多いものですから、各社の売先の内容を集計しまして、その売値の平均をどこにもこれは出してないので、なかなか調べはむずかしいじやないかと思います。大体の傾向値は通産省ですか、通産省のほうには或る程度資料はあると思います。
  28. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 それじや売値がわからなかつたら、大体最近の利益ですか、それが何割という率でも結構でございますが、大体二十五年度は何割くらいの利益があつたのか、二十六年は何割だとかいうくらいの大体の数字でいいのですが、若し何でしたらお示し願いたいと思います。
  29. 村木武夫

    参考人村木武夫君) 大体のこの一年間くらいの売値の平均は、六千五百円くらいになつております。そういたしますと、先ほど申上げましたトン当りの本当の、つまり利益の公表を、今の税法上の問題になると思いますが、税金というのは当然費用でありますので、本当は税金を引いたあとの利益を発表するのが私は本当だと思うのでありますが、税金を引いたのちの利益と申しますのは、先ほど申上げましたように、追加投資の修正をしなければ、他の会社では二百二十円くらいでありますので、六千五百円くらいに対して二百二十円の利益、その割合だと思います。併し実際にそれを企業健全経営的な立場、或いは先ほど申上げました工場生産工場原価計算並びに税制の立場に直して考えて見ますと、実際には炭鉱の経理は非常に不合理になつておりますので、五十円くらいしかならない。六千五百円対五十円の関係。これが而も石炭最盛期でありまして、三、四十年来の好況時というときに出ました利益なのであります。
  30. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 五十円くらいですか。トン当り平均にしまして…。
  31. 村木武夫

    参考人村木武夫君) はあ、トン当り……。
  32. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 そうですか。
  33. 吉田法晴

    委員長吉田法晴君) これは補足いたしますが、先ほど大分詳しい御説明があつたのですが、最盛期、一応数字に出て来る五百円程度のものがあるとしても、税金で半分は取られると、それから……。
  34. 村木武夫

    参考人村木武夫君) 配当ですね。
  35. 吉田法晴

    委員長吉田法晴君) 配当、それから、これからの追加企業のために投資すべきものを引いて、残るものが今のように五十円程度になる、こういう御説明を先ほど伺いました。
  36. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 配当というのは株主に対する配当でございますか。
  37. 村木武夫

    参考人村木武夫君) さようでございます。
  38. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 それを利益を除いて……。
  39. 村木武夫

    参考人村木武夫君) 五百円の利益から、利益金処分案として計上しておりますが、税金を引きまして、それから株主の配当と軍役賞与を約四十円くらいを引いた残りが企業に残るわけであります。その残りが、引いてみますと二百二十円くらい。その二百二十円は本当に名目的に残るだけであつて、実際は不合理な今の税制でありますので、それを正しいものに直してみますと百七十円くらいが、当然原価の中に織り込んで、振つて落すべきものが落されていない。それを計算いたしますと、企業に五十円くらいしか残らない。実質的に残らない。五十円というのが企業から見た最盛時における実質的に企業に残る金額であるということであります。
  40. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 もう一つ配当は、これはもう会社によつて随分違うだろうと思いますけれども、大体最近では大手筋当りはどのくらいの配当平均としてやつておりますか。
  41. 村木武夫

    参考人村木武夫君) 大体大手筋の炭鉱配当は三割くらいになつていると思いますが、併しこれもちよつと申上げたいと思うのですが、戦前は利益のうちの六七%乃至七五%が配当と役員賞与その他に払われておつたわけであります。ところが現在では先ほど申上げました配当の三割というものは税金が非常に多いものですから、五百円という利益から見た配当関係というものは約八%乃至一二%くらいにしかなつていない。つまり税金関係が大きく、従つて利益が出た、つまり公表された利益の中から出て行く配当の占むる割合というものは非常に少いものであるという点も御理解願いたいと思います。それは非常に資本金が少いことにも関連いたしております。
  42. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 配当三割というのは……。
  43. 村木武夫

    参考人村木武夫君) つまり配当金額というものは、従つて全体的に見まして非常に少い絶対値になります。
  44. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 それは絶対値として少いというのは資本が少いということでございますか。
  45. 村木武夫

    参考人村木武夫君) そうでございます。
  46. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 資本が少くて、相対的に見ますと資本が少いんだが、相当の利潤が上つているのだということにもなるのじやないのですか。従つて三割の配当ができるのだという結論にもなると思うのですが。
  47. 村木武夫

    参考人村木武夫君) つまり本当の利潤というものは、使用総資本に対しての利潤を見なければならんと思うのですが、ただ先ほど申上げましたような利益だけからでは判断できないと思いますが、使用総資本から見ました利益と申しますと、炭鉱は他産業に比べて非常に少いと思う。
  48. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 使用総資本ということになりますと、自分の自己資本もありましようし、それからほかから持つて来る資本もありましようし、ほかから持つて来る資本に対しては、これは当然支払利息というものがありますから、これが充当されて行くと思いますが、そうしてその資本の全体から見て、利潤というものは案外少いんだというお話でありまするけれども、併しそれにしても三割の配当というものは、よしんば資本金が少いにしても、会社経営としてはかなり高配当に属するのじやないかと私は思うのですよ。今のお話では戦争前は六割も七割も配当をやつてつたというお話ですが…。
  49. 村木武夫

    参考人村木武夫君) 配当ということじやないのです。
  50. 吉田法晴

    委員長吉田法晴君) 発言を求めて一つお願いいたします。
  51. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 私のほうから見ますと、普通企業経営の形態の上から言つて、三割の配当というものは必ずしも低配当じやないのですよ。高配当の部類に属するものだと思うのですが、それだけ石炭会社は儲けているのだということが、これによつて一応結果として出て来るのじやないかと思います。その点をもう一度御説明願います。
  52. 村木武夫

    参考人村木武夫君) それは結局帰するところは資本金が非常に少いということだと思います。つまり自己資本対他人資本関係が非常に炭鉱はアンバランスにつておる。先ほど申上げましたように、払込資本借入金関係が、他産業に比べれば払込資本が僅かに二で借入金が九十八になつておるという点でございます。従つてつまりそういう払込資本から見れば出て来た利益はかなりの高額の配当ができることになりますが、金額が非常に少いものである。従つて正常な姿はもつと払込資本を多くして、増資によつて配当を而も少くして行く、少くとも金利並みにして行くというのが正常な姿だと思いますが、現在は非常に炭鉱はゆがめられておりまして、払込資本が二で借入金が九十八というような状況になつておりますので、そういう結果が生まれて来るのだと思います。
  53. 吉田法晴

    委員長吉田法晴君) じや委員諸氏よろしうございますか。木下君委員外質問ございますか。
  54. 木下源吾

    委員外議員(木下源吾君) 少し聞かしてもらいましようか。それでは先ず、時間が余りないようだから、一つ伺いますが、抗内、抗外という区別が大分この賃金の中にあるのですが、どういうことですか。
  55. 早川勝

    参考人早川勝君) 坑内仕事坑外仕事の性質が違いますことは御存じであります。従つて労賃の上にもそれが反映いたしまして、従前は自然に水準がきまつてつたようでございますが、戦後労働組合と全国協定をするようになりましてから、坑内夫と坑外夫の労賃を或る格差を設けることが妥当であろうということであります。そして大体日収にしまして六割の開きですか、或いは五割の開きの地区もございました。月収にして四割くらいの開きがあるというのに進んで来ておつたようでございます。それは大体労資双方了解の上でそういう或る格差を設けて参つております。
  56. 木下源吾

    委員外議員(木下源吾君) そうすれば、他産業に比べれば、標準にすれば、坑内と、他産業坑外と見て差支えないのでございますか。
  57. 早川勝

    参考人早川勝君) 他産業と比べる場合の炭坑側のあれは、坑外を元にするかというお尋ねでございますが、それは他産業とほかのいろいろな條件が等しいように、何といいますか、違つた條件を、抜き放しましてやる場合には、それは坑外と一般の産業と比べるという方法もあると思います。それから又金属鉱山などと比べます場合には、同じく坑外夫で比べていいわけでございまするが、ただこのときに労務構成その他の條件も違いますので、例として申上げますと、御案内だと思いますが、金属鉱山には精錬という仕事が大体付いております。それから機械、選鉱の技術者が付いております。そういつたものがございますので、必ずしもいわゆる賃金の比較上ストレートにそれで見合うものとは言えないと思います。
  58. 木下源吾

    委員外議員(木下源吾君) それで大体概念としては坑外は別として、坑内夫というのが一般労働者仕事、こういうふうに考えていいわけでございますか。
  59. 早川勝

    参考人早川勝君) 必ずしもそうでございませんので、例えば官庁統計として権威が認められております毎月勤労統計等におきましては、やはり全部で比べるという場合もございます。
  60. 木下源吾

    委員外議員(木下源吾君) 私の聞こうと思つているのは、大体他産業産業とよく言われますが、国なら国家公務員ですね、国家公務員、それと比べる場合には、やはり坑外夫を比べるのが妥当じやないかと考えておるので、それでお尋ねしておる。
  61. 早川勝

    参考人早川勝君) さようでございますか。国家公務員がもう御案内のように上のほうが事務次官まできまつておりますので、これは全部突つ込めてどうこうというわけには行きにくいと思うのであります。それからベースと申しまして、基準賃金という言葉が戦後出ておるわけでございますが、まあ仮に公務員と比べますれば、公務員のベース幾ら幾らだというときには、炭鉱の仮に坑外夫をおとり下さいましても、炭坑の坑外夫のベースというものとは少し内容が違います上に、もう一つ新らしくお考え願いたいことは炭鉱のほうの賃金状況と、いわゆる基準賃金だけではほかと比べられないものがありまして、ほかに付いておるのです。いわゆる準基準賃金と申しますか、基準賃金に準ずるようなものが付いておりますので、表面ずら或いは坑外夫の八千五百円でこんな安い賃金はないというふうな或る印象が社会にあるかと思いますけれども、それには又附加給与がほかに付いておりますので、ほかと比べるのには非常に比べにくい状態がございます。総収入ごとに比べるのが一番いいのじやないかとこう思います。
  62. 木下源吾

    委員外議員(木下源吾君) まあ私ども坑内というのはまあ特殊の鉱山の危険、鉱害、技能というものがあるから、こういう考え方で、坑外は大体陸上の一般の労務者、で国家公務員といいましても現業もあり、非現業もある。こういうものと比較さるべきものと、こういうように聞いておるのですが、そこで実はその先ほどマーケツト・バスケツト理論的根拠がないとこう言われておる。一体マーケツト・バスケツトというものはどういうように御理解になつておられるか。
  63. 早川勝

    参考人早川勝君) 簡単に申上げますが、私が理解しておるのは、理論生計費の一種である。ヨーロツパでそういう制度が一応始まりまして、社会保障のときの給付額をきめるのに、そういうのが利用されて来ておるというふうに理解しております。それは理論生計費の一種でありますので、理論的な、まあ何といいますか、幾らか組立てがございますけれども、その理論自体には未だ決定的なこれだけなくちや是非いけないというものではないので、ただ或る組立てをするための数字であるというふうに考えております。例えばカロリーというものが幾ら幾ら要る。だからこれによつて一カロリー当り幾らの金を掛けて拵えたものがこれだという計算なんだ。賃金の額にも相成ろうかと思いますが、そのカロリーを或る仕事については幾らで同じような仕事をするが、ほかの産業では又違つた数字が出て来る。例えばこれは非常に一例でございますけれども炭鉱のほうで要求を出されました際に、その要求書の中にありますカロリーの中で、妻のカロリーを千七百でありましたか、六百だとかいうことが書いてあります。ところがほかの産業で出された、例えば私鉄でございましたか、出されました産業の名前は忘れましたが、その産業に従事するところの妻の所要カロリーが千カロリーであるというふうに、同じような、労働度合の同じものについても違いますのみならず、家族のものについてもカロリーが違つておりますことは、いわゆる絶対値というものがそこに考えられないのではないかということでございます。  それからもう一つ私の理解しておりますマーケツト・バスケツトにつきましては、先ず何でも先に金額をきめておいて、その金額に合うようにマーケツト・バスケツトで必要と思われるものを買込んで、買物籠に買込んで拵えて行くのだ、こういう御説明になつておりますので、それではまあ甚だあやふやで、先ず欲しいだけ、要るだけの金をきめて、あとでそういう理窟を裏付けたものに過ぎないのだ、こういう点が私どもとして反問をした点でございます。
  64. 吉田法晴

    委員長吉田法晴君) ちよつと速記をとめて下さい。    〔速記中止〕
  65. 吉田法晴

    委員長吉田法晴君) 速記を始めて。
  66. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 先ほどその配当の話並びに自己資本のお話がありましたですが、それによりますと、自己資本は少くて大半が借入金で九八%を占めている。この支払利子というのはつまり借入金に対する利子だろうと思いますが、この利子の点から見ますと非常に利子が低いのです。低利で恐らくはお借りになつていると思います。その点についてちよつとお尋ねしたいのですが、その借入金というのは国家資本も入つているだろうと思うし、その他の資本も入つているだろうと思いますが、その詳細なことはあとで資料なり何なり、その他で頂くとしまして、その借入金というものはどういう工合の内訳になつているかということ。それからもう一点はそれに関連して、非常に低利で以て大半の資本借入金で以て賄つている、そうしてその上に三割ですか、三〇%の配当をやつているということになりますと、株主が非常に有利な状態に置かれているのじやないかという疑問が起つて来るのです。その点簡単でよろしうございますから御説明願いたいと思います。
  67. 村木武夫

    参考人村木武夫君) 今の御質問でございますが、大体炭鉱借入金は大手十七社の調べでございますが、昭和二十七年の四月現在で申しますと、復金の借入金が二百二十八億であります。それから見返資金が五十三億、開発銀行からの借金が二十四億、大体その程度であります。これがいわゆる国家資金的な借入金でございます。併しこれは先ほど非常に低利だとお話がございましたが、低利と申しますのは復金の中の炭住資金が解決いたしました分だけがほかの金利と比べて低利になつているというだけで、そのほかは大体通常の金利であります。大体年一割くらいの金利になつております。そのほかに社債が大体約二十四億、それから市中銀行から借入金が百五十億ほどございます。全体で大手十七社四百八十二億くらいになります。ちよつと端数を省略いたしましたので数字的な食い違いがあると思いますが、概略そういう状態になつております。二十四年の十月には全体で四百二十五億ありました借金が相当好況なつたと申しましても逆に借金が四百八十二億に殖えておるわけであります。それから先ほどのお話の炭鉱配当は多過ぎるのじやないかという点は、先ほど私から申上げた点でおわかりになつたと思いますが、最近こそ三割でございますが、昭和二十年から二十四年までどこの会社も無配であつたと思います。従つて資本には余り重きを置いていなかつたという点があるのでありますが、資本も少いし、少々の金額で三割配当ができるということになりますので、こういう石炭の最好況時というときにはそのくらいの配当はすべきじやなかろうかという考え方が考えられます。と同時に昨日来の私の申上げた点でもおわかりと思いますが、これは借金政策によるべきではなくて、将来はやはり増資、社債等の、いわゆる自己資本に、自己資本に近いものによつて炭鉱合理化資金その他も或る程度つて行かなければならんという問題もあると思いますので、増資をいたしますためには、どうしても今のような状態から申しますと或る程度配当をいたしておりませんと増資ができない。併し本当の、正常のあるべき姿はやはり自己資本が正常な状態になつて、而も配当はそんな高率ではなくて、当然配当自己資本が多くなるとできないと思います。一割近くの金利並みの配当くらいに、公共的な仕事をしたものはもつて行くべきではないかと思いますが、そういうような関係であります。
  68. 吉田法晴

    委員長吉田法晴君) それでは、委員会はこれを以て休憩いたします。    午後零時十一分休憩    —————・—————    午後二時二十四分開会
  69. 吉田法晴

    委員長吉田法晴君) それでは労働委員会を再開いたします。  専売裁定に関する公共企業体等労働関係法第十六條第二項の規定に基き、国会の議決を求めるの件が一昨六日大蔵委員会に付託になり、本委員会において連合委員会を開催する希望があれば、提案理由の説明を連合委員会において聴取したいという連絡を受けております。この際、本件について大蔵委会員から本委員会に対して連合委員会を開催したい旨の申入があつたときは、これを受諾することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  70. 吉田法晴

    委員長吉田法晴君) 御異議ないものと認め、さように決定をいたします。  次に、日本電信電話公社の調停案に関し、公共企業等中央調停委員長から過日申入がありました。政府の予算案の決定の方法が調停委員会の権威を軽視するものではないかということでございましたので、いずれ具体的な方法を考えて調査いたしたいと思いますから御一任願いたいと存じます。  では本日はこれを以つて散会いたします。  午後二時二十六分散会    —————・—————