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1953-02-17 第15回国会 参議院 内閣委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年二月十七日(火曜日)    午後一時五十九分開会   ━━━━━━━━━━━━━   委員の異動 一月三十一日委員赤松常子君辞任につ き、その補欠として原虎一君を議長に おいて指名した。   ━━━━━━━━━━━━━  出席者は左の通り。    理事            上原 正吉君            横尾  龍君            松原 一彦君    委員            栗栖 赳夫君            中川 幸平君            村上 義一君            成瀬 幡治君            上條 愛一君   国務大臣    国 務 大 臣 緒方 竹虎君   政府委員    総理府恩給局長 三橋 則雄君    大蔵省主計局次    長       正示啓次郎君    大蔵省主計局給    与課長     岸本  晋君   事務局側    常任委員会専門    員       杉田正三郎君    常任委員会専門    員       藤田 友作君   ━━━━━━━━━━━━━   本日の会議に付した事件 ○恩給制度に関する調査の件  (恩給制度に関する件)   ━━━━━━━━━━━━━
  2. 上原正吉

    理事上原正吉君) これより内閣委員会を開会いたします。  本日会議に付します事項は、第一に恩給制度に関する調査であつて、その一は、恩給の不均衡是正公務員給与改訂に伴う恩給金額改訂に関する問題を主といたしまして調査をいたします。  第二は、軍人恩給に関する問題の説明を一応この際聞きたいと思います。これより意見の陳述を求めます。
  3. 松原一彦

    松原一彦君 文官恩給に関する質問要領は、文書を以てすでに当局のかたがたにお目にかけてありますから、御用意下さつておることと思うのでありますが、念のために緒方官房長官に一項目ずつ承わりたいと思います。  第一は、国家公務員法に定められました恩給制度趣旨に鑑み、退職者が相応の生活を営むことができるように、文官恩給現職者給与改訂伴つて比例的に増額することは、過去二回に亘つて政府がすでに自発的に措置をされて参つたことであります。これは過去二回の厳たる事実に鑑みましても、すでに不文律慣行法となつておりますので、受給者は当然かかる措置がとられるものと固く期待をいたしておつたのでございますが、然るに今回に限つてその措置がとられていないのであります。これを少しはつきり申上げますと、昭和二十四年三月に六千三百七円ベースが、次に昭和二十六年の一月には七千九百八十一円べースとなつたのであります。このベース・アツプ伴つて政府は、政府の案として恩給法の一部を改訂してスライドアツプをいたしております。更に七千九百八十一円のベースが一万六十二円べースとなりました二十六年十月には、更に同様の措置をとつておられるのであります。これは一応原則として現職者ベース・アツプがあつた場合には、予算面におきましても、同時に退職公務員恩給に関する生活費の向上を目標として、それに相応する増額が、改訂が行われたのであります。然るに今回、昨年の十一月にベースは一万六十二円から一万二千八百二十円、二千八百円の改訂増額を見たのにかかわらず、今回に限つてその措置がとられていない。このことに関しましては、全国から実におびただしい、数え切れないほどの、私どもの机の上には不満の叫びが寄せられておるのであります。  以下順を逐つて申上げますが、このことにつきましては、一体原則として否認せられたものか、それとも一時的の措置として止むを得ず延ばしておられるのかどうか、このお答えを願いたい。第二には、原則的に否認せられたものとするならば、その理由を明らかにして頂きたい。第三には、一時的の措置であるとするならば、いつどういうふうに今後これを処置せられるか、この三点によつて、今回政府が殊更に措置をとられなかつた理由についての御答弁を頂きたいのでございます。
  4. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) お答えをいたします。過去におきましてインフレ等のため、在職公務員俸給増額されました場合、その前に退職した公務員恩給額増額いたしました例のありますことはお説の通りであります。従いまして昨年の秋公務員俸給増額されました際、その以前に退職されましたかたがたが、その恩給増額されるものと考えられ、期待されておられましたことは、無理からんことと思います。ところで過去の例を顧みますると、遠くは大正年間増額にしましても、又近くは終戦後の例にしましても、俸給増額伴つて直ちに恩給増額措置がとられなかつた場合も少くないのでありまして、お説のごとく最近一、二回の増額だけは、俸給増額に伴い、同時に恩給増額が行われたのでありまするが、いつもそうであつたというわけでもないのであります。政府といたしましては事情の許す限り、在職公務員俸給増額伴つて恩給増額することといたしたいと思つておるのでありまするが、今回増額されなかつたのは、原則として増額しないこととしたためではございません。御質問のごとく、いわば一時前措置とでも言うべきものであります。御承知のように来年度の予算は非常に窮窟にできておりまして、旧軍人遺族傷病者であつて曾つて一般退職公務員と同じように恩給を給せられていたかたがたには、恩給を給することにいたしたいと思つておりまするが、その金額は、一般退職公務員並みには到底出せないというような有様であります。これらのかたがたが戦後数年の間、血のにじむような生活をされて来たことを考えまして、できるだけのことはしたいと思いつつもできかねておるという現状であります。かような国家財政の状況からいたしまして、止むなく俸給増額に伴う恩給増額措置がとられなかつたことは、誠に遺憾ではありますが、止むを得なかつたような次第で、御了承頂きたいと存ずるのであります。
  5. 松原一彦

    松原一彦君 大体の御趣旨はわかりましたが、併しこれは同時に改訂するのが原則であつて、それを怠つておるところに過ちがあつたので、議員提出法律案として、今日まで随分長い間苦労して参つておることは、長官もすでに御承知通りであります。政府関係かたがたは全部御承知のはずであります。従つてそれが原則として認められまして、すでに前二回は議員の側から何らの法案を提出することもなく、政府はべース・アツプの、現職者給与改訂する場合に、予算面にも退職者恩給増額を加えてこれを計上いたして参つておるのであります。漸くここに原則が確定したばかりのところに、今回の御措置は如何にもその意を得ないのでございますが、只今の御説明によつて軍人恩給等のために遠慮せられたものもあり、大局の上から予算措置に非常に困難したから万止むを得ず遺憾ながら延ばしたと言われることも一応認めます。併しそれならば、その一時的の措置をいつどういうふうに今後改訂、善処せられますか、そのお見通しをば伺いたいのでございます。
  6. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) 成るべく早い機会に善処をいたしたいと考えております。
  7. 松原一彦

    松原一彦君 成るべく早い機会にというのは頗る要領を得ませんが、昨年不均衡是正に関する案のときも、ここで随分もめまして、成るべく早い機会にと政府は逃げられたのですけれどもが、これは補正予算を出すならば必ず組むという約束であつたのです。然るに補正予算を組まれましたけれども、このお約束政府は果されなかつた。そうして誠に異様な立法令でありますが、法律の中に、遅くとも昭和二十八年一月からこれを実施するということが書いてあつたために踏みどまりがありましたので、本年一月三十一日の官報に、一月分より実施ということが公示せられたようなわけであります。政府は、法律を以て定めない限り、いつどこで処理するかというような踏みどまりをば示されないのが今日までの例であります。どうかこの際に、いつどう処理されるかのお見通しだけはお示しを願つておきたいと思います。
  8. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) 性質上、補正予算を組む場合に必ずというわけには今はつきりお答えいたしかねるように思います。
  9. 松原一彦

    松原一彦君 いずれ又他からも御質問がありますから、次に進みます。  第二に、新聞紙の伝えるところによりまするというと、昭和二十八年度復活要求予算に計上してあつた文官給与ベース改訂に伴う恩給スライドアツプ所要予算の十三億円が、自由党側要求によつて農林建設方面に転用されたということであります。これは新聞が一斉に全国的に記載してありますので、全国受給者の全部がこれを信じております。従いまして私どもに訴えて参りますことは、我々のような弱い者の権益を、たとえ十三億円であろうとも大蔵省は一応予算に計上し、恩給局も又これを要求し、そうして百十九億七千二百万円、少し数字が違いますかな、として閣議に提案したものを、閣議の席上においてもぎ取るがごとくにこれを他に転用削除したと、こう言つて嘆いておるのであります。憤慨しておるのであります。全国受給者は、このことは到底耐え切れないと今日訴えて参つております。国家公務員法に示す通りに、退職公務員は、退職後において適当なる生活を維持するに足る給与をば恩給の名によつて与えられておる。従つて物価の変動に伴つてこの恩給額のべース・アツプも行われておるのにもかかわらず、一旦予算に計上したものを何故削除転用したか。こういうことにつきまして非常に熱烈な要望参つて復活要望参つておるのであります。官房長官閣議においてかような措置をおとりになつたのであるかどうか。又こういう意見が出ました際にどういうふうに御処理になつたのかどうか。この経過は実は私ども全くわからないのですが、新聞にそう書いてありますものですから、世間がさように信じておりますが、どうも私は腑に落ちない筋があるので、この際いきさつはつきりお示し願いたい。
  10. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) 御質問のいわゆる恩給スライドアツプについての所要予算の計上のいきさつにつきましては、予算決定最後まで、できるだけの措置をいたしたいと考えまして、これに要する経費は、これと恩給以外の所要経費と睨み合せつつ予算決定に苦慮いたしたのでありますが、かような考慮は、ひとりこの経費のみにいたしたことではなく、予算全体の項目について最後まで検討したものでございます。従つてこの経費として一旦決定した額をそのまま他に転用したというふうなことは全く事実ではございません。予算決定が長引きまして、その間、今お話公共事業農林関係等予算復活要求がありました際に、金額としてその財源に使われたものはあると思いますが、一旦決定したものをもぎ取るように右から左に、而も閣議でこのスライドアツプに予定されたものを充当したという事実はありません。いずれにいたしましても、増額のできなかつたことは甚だ遺憾なことでありますが、前に申上げましたように、予算の査定上止むを得なかつたように感じております。
  11. 松原一彦

    松原一彦君 新聞の伝うるところによりますというと、最後閣議において、新規に承認したものが九十四億円であつて、その財源として三十六億円は大蔵省最終案で認めたところの経費の中から節減する。五十八億円は酒税の増収などで賄う。既承認経費の節減の内訳は、予備費から二十億円、国会営繕費から三億円を削減し、更に文官恩給ベース・アツプ一般公務員並みに行う予定を取りやめて十三億円をこれに当てる。これはもう全国新聞が一斉に書いたのであつて、恐らく政府から出されたところの発表事項であると思う。この発表事項が間違いであるということを長官は御明示になるでしようか、その点を承わります。
  12. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) 閣議で今お話なつたようなことをいたしたわけではございません。復活要求のために財源の必要を生じまして、大蔵省で見出した財源のうちに、そういう項目が入つてつたということを意味する新聞記事だろうと考えております。
  13. 松原一彦

    松原一彦君 大蔵省主計局次長がお見えになつておられますが、私ども新聞でのみしかり得なかつたのでありますけれどもが、最初百八億円としての恩給要求が百五億円に削減せられたという記事を見、更にそれが復活要求によつて、百十九億円と増額せられたということになつておるのであります。細かく申せば、百十九億七千二百八十万円ということになつておるのでありますが、この復活の中に十三億円が入つてつたと、その十三億円は、恐らく恩給局からの要求額、これは二十七億円なくては足らんのでありますが、二十七億円のうちの十三億として大蔵省が同意して査定計上せられたものと認めるのであります。その百十九億円は大蔵省も同意せられたものと思うのでありますが、その同意せられた額を更に閣議の席上で十二億円削減することに同意せられたのかどうか、この点主計局次長に伺います。
  14. 上原正吉

    理事上原正吉君) ちよつと松原さんに御相談申上げますが、予算委員会からすぐ官房長官に出て来いという催促がありました。お差支えないでしようか。
  15. 松原一彦

    松原一彦君 それではあとにしましよう。官房長官、それでは私急ぐところだけをちよつとお伺いしますが、只今のところで、官房長官が、今回の措置は一時的の臨時の措置であつて、万止むを得ざるものであつて、遺憾であつたという御表現があつた。一日も早く正常にのぼせたいという御発表をば私は心強く頂きます。  更に承わりたいことは、国家公務員法が制定せられてからすでに六年たつております。昭和二十二年でありますが、この国家公務員法の中には、今後かようなことのないように、第百八条の末項に「人事院は、なるべく速かに、恩給制度に関して研究を行い、その成果国会及び内閣に提出しなければならない。」とあつて国家公務員法に基く新恩給法というものは、もうとつくにできておらねばならんはずであります。それが六年たつた今日に、マイヤース勧告に基くところの人事院の一応の素案は、我々この席で以て何回か説明を受けております。遂にこれは日の目を見ず、これができておれば今回のようなことはなかつたのであります。のみならず、今後恩給というものが、この国家公務員法要求するところによりまするというと、健全なる基礎の下に計画され、而も人事院によつて運用せられるという、この健全な基礎の下に運用せらるるものは保険数理に基くものであつて、決して亡国的なものではな。際限もなく恩給が増加して、非常に国の財政を痛めるものではないような基礎の上に立てらるべく要求せられておるのであります。それが六年もたつた今日、なおその姿も影も見せないというのは一体どういうわけなのであるか。これは官房長官はどういうふうにお考えになつておるかを承わりたいのであります。
  16. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) お話通りに、国家公務員の新恩給制度につきましては、人事院で数年来鋭意研究中であることは承知いたしておりまするが、まだその成果に基く勧告参つておりませんので、勧告がありました場合には、とくと検討いたしまして善処いたして行くということを申上げる以外に、私只今お答えするだけの準備を持つておりません。
  17. 松原一彦

    松原一彦君 お急ぎになつていらつしやるのでしようか、どうですか。
  18. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) ちよつと急ぎます。
  19. 松原一彦

    松原一彦君 せい一ぱい一つ急いで、いつもこういうことで煩わされるということは実に遺憾に堪えない。国民の信を失う。
  20. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) 私がなにしましたあとは、恩給局長が私よりもつと適切な御答弁ができると思いますから。
  21. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 私は恩給のことに関して基本的なことで承わりたいのは、先ほど松原委員も話されましたですが、マイヤース勧告に基くところのあの方針を基本的なものとして考えて今後も推進されようとするのか。まあ、ああいうときにやられたものは、すべて日本の制度に合わないから、一つやめて行うじやないかというような、世間で言えば、一つの逆コースだと言われておるようなものを、今の内閣ちよちよいおとりになつておられるようですが、事恩給に関しては、基本方針はどんなふうにしておられますか、それを承わりたい。
  22. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) 恩給につきましては、先ほど松原さんにお答えしたように、折角今人事院研究しておりますので、その勧告に基いて検討する以外に方法はありませんが、恩給制度そのものに対しましては、その受給者の国に対する功労というようなものに対しまして、十分にそれを認め、尊重して行くつもりは少しも変りございません。
  23. 上原正吉

    理事上原正吉君) 大分急いでおるようなんですが。
  24. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 今のでは私は答弁にならないのですが、私のお伺いするのは、そうではなくて、基本方針が、マイヤース勧告に基く基本精神を、或いはそういう考え方を政府方針としておられるのか。それともそれと全然別なものをもう一つ考えようとしておられるのか。基本的な態度、方針というのですか、基本的な方針が承わりたい。
  25. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) 恩給局長からよくお答えいたさせます。
  26. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 私は政府方針を聞かんとするので、事務官僚がら聞こうとしてはいない。
  27. 緒方竹虎

  28. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 それでは私は保留だ。
  29. 松原一彦

    松原一彦君 今の問題は非常に大きな問題でございまして、国家公務員法は、公務員として勤務した者の退職後の処遇を適正にすることによつて、安心して国家公務に従事するように規定いたしておるのであります。その職に安住し、専念する忠実な奉仕者としての公家公務員要求いたしておりますのに対して、かくのごとくぐらぐらした退職後の国家保障というものはあり得べからざるものと思います。軍人恩給などにつきましては、山ほど私はここに遺憾を表するものを持つておるのでありますが、これは改めて伺います。さような意味から行きましても、今質問しましたところの成瀬君の意見も同じと思いますが、健全なる保険数理に基いて、退職後の生活に安定を与える方針の下に、ある醵出金制度による恩給法というものが組み立てられたものと思うのでありますが、これは遂に日の目を見なかつたのであります。その方針を今後も続けて行かるるのかどうかということは、責任ある国務大臣から承わりたかつたのでありますけれでも、三橋恩給局長からということでありますから、局長から一つ一応のお答えを頂きたいと思います。
  30. 三橋則雄

    政府委員三橋則雄君) 新らしい恩給制度は、御承知のように戦後制定されました国家公務員法の規定によりまして、人事院におきましてその立案をいたしまして、政府のほうに勧告するということになつておるのであります。その人事院におきまして立案をいたしまする場合に、今いろいろと成瀬委員からお話がありましたように、或いはマイヤース勧告そのものをそのまま取入れて行く。或いは又マイヤース勧告を取上げると同時に、そのほかにもいろいろと考え直して取上げるものがあつたら取上げてやるのか。そういうようなことは私たちは全然今のところ思つていないのであります。いずれにいたしましても、国家公務員法という厳たる法律がありまして、その法律によつて新らしい恩給制度というものは人事院において制定立案して、そうして政府勧告する、こういうことになつておる以上は、私たちといたしましては、その政府勧告があつて、そして立派なものが実行されることを期待しておるわけなのであります。
  31. 松原一彦

    松原一彦君 これはあとに廻しましよう。  第五の点について伺います。恩給受給者は決して恩給の上に座食いたしておるものではございません。その実態を調査いたしますと、部落会長とか、町内会長市町村会議員、さては協同組合長司法保護委員各種調停委員等名誉職的奉仕活動の上にその堅実な思想、豊富な経験、高い教養を活かし、思想的にも道義的にも地方における指導者として極めて尊重すべき存在であり、且つ実績を示しておるのであります。かような人たちを冷たく遇することによる社会的思想的影響は、激動期における政治としてプラスになるものとは思われません。自由党はどうも少しこれを御冷遇なさるような感じがする。私は頗る心得ないと思うのであります。というのは、実は社会党の諸君は、露骨にときどき我々に不平を言うことがある。恩給受給者思想が古い、保守的であるということをよく言われるのでありますが、それだけに軽佻、詭激なところもなく、保守的であるだけに、私は腰の据つた社会一つの層をなしていると思う。この現内閣の今のお立場において、かような人人をば冷遇せられるということは、頗る私はその意を得ない。今回のごとく、全国幾十万の人間が一斉に立つて不平を言つておる。これが政治の上に果してプラスになるかどうか。こういう点につきましても、私は内閣の責任あるかたがたから御意見を承わりたいのであります。併し恩給局長としてはどういうふうにお考えになつてこういう人々に対処せられようとしておられるか、一つ所見を伺いたい。
  32. 三橋則雄

    政府委員三橋則雄君) 恩給受給者の中に、仰せのように社会公共のために尽力されておりまする立派なかたがたが少くないということは、私はよく承知いたしておりまするし、又恩給制度の運営の結果から見ましても、非常にいい結果がもたらされておるというふうに思つておるところでございまして、国家がかかる立派な人々に対して、殊更に冷遇するようなことは勿論考えるところではございません。又国家がかかる人々を殊更に冷遇するようなことをいたしました場合におきましては、今松原委員仰せられましたごとく、面白からざる結果を生ずるということも、私は仰せ通りだと思います。この恩給を昨年秋の増額ができなかつたことからいたしまして、若しもこういうかたがたに対して国家が冷遇しておるという、こういうような印象を与えておるのでございましたら、これは大変私たちの不徳のいたすところと思つて、誠に申訳ないのでございます。これは決して私たち冷遇するというような趣旨からいたしたことではございませんのでございまして、先ほど官房長官から縷々御説明がございましたような、止むを得ない事情からやつておることでございますから、一つ冷遇するような心持を持つて政府は対処しておる、こういうような印象だけは何とぞお持ちにならないように御理解して頂ければ非常に結構だと思います。私たちは毛頭そのようなことは考えておりません。
  33. 松原一彦

    松原一彦君 よく御事情わかりましたから、どうぞそれを事実の上に示して、一日も早く一つ安堵さして頂きたいのでございます。  次に、第六項のうちの(一)は終りましたから、(二)の恩給金庫が廃止せられました結果、現在受給者目当ての好ましからざる民間の金融機関が蔟生して、相当高い利子を取つて恩給証書を半ば捲き上げようとしておる事実があります。これは軍人恩給、傷痍軍人或いは不幸な遺族等の今もらつている資金等にも非常に大きく影響いたしますことであつて、一応法律の上からは、恩給金庫事業国民金融公庫がこれを継承いたしたのでありますけれども国民金融公庫法によりますと、あの融資は事業資金にのみ融資させるのであつて生活資金貸出の途が現われていないのであります。そのために貧しい恩給受給者が病院に入院するとか、お産があるとか、子供の学費を送るとかいつたような生活資金貸出は一切できないのであります。そこで非常な悩みを今持つております。これから五百億に余る軍人恩給復活その他援護費等の大きなものも加わりまして、大きな金が動きますが、こういう人々は困り抜いております。恐らく高利の金も借りているだろうと思います。こういう人々のために金融機関を持つことはもう焦眉の急であります。申すまでもない。これに対して政府のほうではどういうことをお考えになつていらつしやるか。これは恩給局長というよりも、むしろ主計局長のほうからお聞きしたほうがいいかと思いますが、次長のお考え一つ
  34. 三橋則雄

    政府委員三橋則雄君) 私から一応のことを申上げまして、主としてまあ大蔵省と申しますれば銀行局のほうの関係になると思いますが、又改めまして銀行局長参りました場合には詳しく御説明をすることになつております。私から一応のことを御答弁いたしたいと思います。  現在の国民金融公庫恩給担保の金融をいたしておりません。又国民金融公庫は一般に融資をいたしておりまするがそれも生業資金に限定されておるのでございまして、消費貸借の金融はいたしておりません。従いまして今松原委員仰せられましたごとくに、恩給担保の消費金融を国民金融公庫にやらせる、こういうことになりますれば、どうしても国民金融公庫法律を改正いたしまして、消費貸借をもするということになるのではないかと、こう思うのであります。そうしました場合におきましては、ただ恩給受給者だけに対して恩給担保の消費貸借を許すか、或いは又その他恩給受給者のみならず、一般の人々に対しましても消費貸借を許すか、こういう問題が又新たに出て来るわけであります。そういうような問題もありまして、国民金融公庫に対しまして、恩給担保の金融を許すにいたしましても、大蔵省の金融当局におきましてはいろいろと検討をいたしておるところでございます。いずれにいたしましても、今松原委員のおつしやられましたごとくに、恩給受給者が金に窮されまして、そうして恩給を担保として、その恩給担保に供されたのが悪徳金融業者のために搾取されるというような結果になることは、できるだけ避けるような措置を講じなければならないことは、これは誠に当然なことだと思います。それでそういうふうな措置を講ずることにつきまして、実は私よりより金融関係当局者ともいろいろ話合つて相談しておるところでございます。即ち恩給担保金融のために、曾つて恩給金庫のような特別な機関を作る、或いは又既存の国家金融機関、或いは例えば国民金融公庫のようなものを利用するか、或いは又特別な他の方途を講ずるか、こういうような点につきましていろいろと練つておるわけでございまするが、何と申しましても、これを実行するにいたしましても相当な金がいるということになるわけでございます。そういうようなこともございまして、実は只今のところ私からはつきりと、こういうふうな思想に大体まとまつておりまするという具体案を申上げるまでに至つていないのでございます。そういうような具体的なことを申上げ得ないことは恐縮でございますが、実情は今申したようなところでございまして、目下種々検討はいたしておるのでございますが、具体的な成案を得るまでに至つていないということでございます。
  35. 松原一彦

    松原一彦君 どうか一つ親切にお考え頂きまして、いつまでもぐずぐずしていないで、例えば国民金融公庫の中に別枠を設けて、そして貸出しでもせらるるということになりますというと、機構はすでにできておるのでございますからして、簡単に行くのであります。せいぜい一つお急ぎを願いたいし、この点につきましては、各党からもいろいろな構想もありましようから、私は以上要望するだけにとどめておきます。  大蔵当局に対しましては、大体只今まで官房長官質問しましたことのほか、こういうことを私どもは承わつておる。大蔵当局は現行恩給制度に対して何か別途な考えを持つておられるらしいということを承わつておりますが、何か別途なお考えがあるのでしようか。この際承わつておきたいと思います。
  36. 正示啓次郎

    政府委員(正示啓次郎君) お答えをいたします。先ほど官房長官にお尋ねの件で、最後大蔵省がらもその間の経緯を述べるようにというお言葉でございましたが、保留になつておりまするので、その点を先ずお答えをいたします。  文官恩給ベース・アツプが今回提案になりました昭和二十八年度の予算におきまして計上されなかつたいきさつにつきましては、先ほど来官房長官並びに恩給局長から縷々御説明通りでございます。この点につきましては、松原委員も御承知通りに、過去におきましては現職公務員給与の引上げに伴つて直ちにスライドいたしましたこともございますし、又その反対の例もあることは、先ほど来お話通りであります。今回、私ども昭和二十八年度の予算を編成する過程におきましても、この点につきましては、先ほど官房長官もお述べの通りに、でき得る限り恩給受給者のお立場というものを考えたいという熱意を最後まで持つてつたことは、これは事実でございます。併しながら軍人恩給その他新らしい財政需要がございまして、又軍人恩給の問題につきましても、予算に計上いたされましたところの金額は、先ほど官房長官お話のように、決定して十分なものではないのでありまして、御承知の審議会の案を更に切つておるような形になつております。そういういろいろの事情によりまして予算編成の過程におきまして、種々数字に移動があつたことは事実でございます。併しこれは先ほどもお話通りに、自由党復活要求のためにもぎ取られたというものではないのでございまして、予算全体、殊に恩給につきましては、軍人恩給との見合い、並びに先般のべース・アツップが過去におけるべース・アツプ等とやや趣きを異にいたしまして、いわば民間給与との不均衡を是正する、こういうことが主になつてつたような点をも併せ考えまして、結論といたしましては、誠に残念でございますが、今回はこの文官恩給のべース・アツプを一応一時見合わす、こういうふうになつたような次第でございまして、その理由はいわば予算全体の編成の問題であつたのであります。新聞に対しましてどういう説明をいたしたかは、当時の係官その他につきましてもつまびらかにいたしておりませんが、事実はまさに申上げた通りでありまして、決して公共事業等の復活のために意を曲げてやつたというようなことは絶対にないのでございます。この点は大蔵省からの説明を御了承願いたいと思います。  なお只今重ねて恩給につきまして、大蔵省は何か異なつた見解を持つておるのではないかという御質問でございますが、我々といたしましては、実は御承知通りすべて比較的薄給で働いている公務員は、いずれは恩給の御厄介にならなければならない人たちなのであります。恩給はいわば我々の退職後の唯一の楽しみなのでありまして、この点大蔵省公務員も決して別の世界に住んでいる者ではございません。我々といたしましては、先ほど来官房長官や或いは恩給局長のほうからお答えのように、戦後の公務員法の精神に基きまして、いわば新らしい体系の、併しながらその基本的精神は、恩給受給者の現職中におけるサービスに対しまして最も報ゆるところ厚い制度を打建てる、こういうことを念願といたしておるわけでございまして、現在の恩給制度の根本を破壊するという思想を持つていないことはもとより、むしろ恩給受給権者の一層の恩典の拡充というような点におきまして、この新らしい時代においてそういう方向に拡充されて行くことを希望いたしておるのでありまして、今回軍人恩給につきまして、苦しい財政の中からとにもかくにも一応これを復活するという措置を講ずることに非常な我々として努力をいたしたのも、そういうところから来ておることは御推察賜わることができると思います。  以上簡単でございますが、お答えといたします。
  37. 松原一彦

    松原一彦君 最後に、私は要望申上げておきます。只今の御説明は一応了承いたしますが、私の了承するところでは、大蔵省恩給制度に対しては別に御異議はないのであつて、今回の予算計上の面におきましても、不足ではあるけれども、一応は恩給局要求をも入れてべース・アツプに伴うスライドアツプをば計上せられたという事実を確認いたします。どうかこの事実をばどこどこまでもひた押しに推し進めまして今後も御継続願いたい。併しながら今回あらゆる事情の面からして、仮に流用、削除でないにしましても十一月にベース・アツプがありましたのは二割八分以上のものであります。そうしますと十月に退職した者と十一月以後において退職した者との間においては、この平均面におきましてもすでに恩給額の上に二割八分の差がつく、これは実に大きいのであります。殊に最近におきまして、退職公務員に対しましては、行政整理の名目の下に恩給法に示していないところの別個の退職金が出ます。これは東京都の小学校長など二百万円、これは一時恩給でも何でもないのが出るのであります。現金で即時に出るのであります。その上に今回のベース・アツプによりますと二十数万円の恩給になる。これは余りにも過去のものとの間に差がつき過ぎる。若しアンバランスを論ずるならば、目の前に大蔵当局は、バランスの破れを作つておるのです。大きな破れです。而もその額が従来に見ないところのおびただしい開きをそこに生じておる。そして一方においては、軍人の六百五十一億円というのは、一万円ベースによつて計上せられたものであつて、それを更に削除して、まあ九カ月分、四百五十億というても、そのベースはダウンしておるのであります。ここに又非常に大きなアンバランスが生じておるのでありますが、私は政道は正しくなくてはならん。信を失つてはならないと思う。大蔵省もすでに法に従つて行動せられておる以上は、たとえ今日明文によつてベース・アツプをしなければならんということが書いてなくとも、法の精神が、今回まで慣例としてスライドして来ておる以上は、かくのごとき大きなアンバランスをこの際新たに作るということは許されないことである。どうしてもこの恩給というものが亡国的なものであり、手に負えないものとするならば、恩給法全体を更改をすべきものであつて、今かくのごとき小細工をして、暫らくこれだけ抑えて置こうということはよろしくない。断じてよろしくない。支払わねばならないものは支払うのが当然である。万止むを得ざる場合においては、国民の同意を得て法を変えてやる。そうでなければ私は許されんと思います。大蔵省の誠意を疑いません。一応計上せられたところのその趣旨を貫かれまして、大多数の国民の信を失わないように、どうか今後の御措置を願いたい。  まだ伺いたいことはたくさんありますが、本日は私としては一応ここに留めておきまして改めてお伺いします。
  38. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 私は、三橋さんが予算査定などについて、予算折衝の中に相当実際問題として大蔵省とやつておいでになると思うのです。あなたのやられた過程において、いつどういう理由で以て消えてなくなつたかという点を一つ説明を願いたい。なぜかというと、今大蔵省お話を聞きますと、公務員であつて恩給を唯一の楽しみにしておるから、そんなものを削るということは思いもよらんというような、誠に勇しい御意向を承わつたわけですが、それが実際問題としては消えて行つておるのですから、どうしてそれが消えて行つたかわからない。そこのところを私は聞かして頂きたいと思います。あなたのほうが進んで引かれたことは絶対にないだろうと私は思う。大蔵省がやはり進んで芽を摘んだろうと思う。その経緯をどうぞ一つ
  39. 三橋則雄

    政府委員三橋則雄君) 政府部内の内輪でいろいろ仕事をしておりますときには、いろいろ細かい問題がございますが、それを一々私がああだこうだということを申上げることも、私の言いにくいことでございますので一つ御了承を願いたいと思いますが、ただ一言だけ申上げさせて頂きたいと思いますことは、私が恩給局長として受給者のために考えて、又私も受給者の立場について大蔵省予算折衝の場合において、大蔵省の諸君に対して、少し口はばつたいことを申上げますならば、予算査定を啓蒙する上におきまして、いろいろなことを申上げました。又大蔵省の同僚の諸君は、私の意見を聞くと同種、又広い面からいろいろと考えなくちやいかんところがあると思います。そういうことで折衝いたしておりまして、私が初めに要望いたしましたことを、大蔵省の諸君はそれは黙目だといつて頭から否認してしまうようなことは決してございません。最後最後までずつと、大蔵省の諸君も今正示次長の言われまするごとくに、考えなければいけないのだという考慮の下に、できるだけの努力をいたして行きたいということで、私も又そのようなつもりで予算の折衝をして来たのであります。併しながら先ほど官房長官からお話がございましたように、これは何と申しましても、恩給増額の問題は大きいのでございます。従つて官房長官といたしましても大きく取上げられまして、そうして最後最後まで、単に私たちの事務費を大蔵省の事務官が査定すると同じような取扱をされないで、最後最後まで全般の見合いのところで、結局予算全体の見合い、先ほどから正示次長の言われましたようなことで結局予算が見られなくなつたのじやないかと思うのです。私は実を申上げますと、できるものだと思つてつたところでございますが、最後のところは、本当の最後のところは実は知らなかつたところでありまして、私たちのようないわゆる燕雀のあずかり知らない、鴻鵠の大きな志のために割かれたのではないかと私は考えております。
  40. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 私は実際受給者連盟の面から言うならば、ここで根を切られてしまつたということは、今後のベース改訂が行われたような場合に、スライドして行く場合にその率が下廻るだろうと思う。予算も切られてしまう。それからもう一つは、補正予算との睨み合せで、若し補正予算が組まれなくてべースが引上げられるというと、その空白期間は受給者が損をする。それは受給者連盟のかたにとれば、私は暗い見通しだと思うのです。それを一つ大蔵省のおかたの言によりまして、私はやはり明るくしてもらいたいと思う。それは言葉の上だけではいかないと思うのです。実質的に私はやつて頂きたいということをお願いいたします。ここで議論めいたことをやつても仕方がありませんから私も打切ります。
  41. 上原正吉

    理事上原正吉君) 速記をとめて。
  42. 上原正吉

    理事上原正吉君) 速記を始めて。  それでは本日の恩給制度に関する御質疑は終了したようでございます。そう認めて御異議ございませんか。
  43. 上原正吉

    理事上原正吉君) 御異議ないと認めます。  それでは本日はこれで散会いたします。    午後三時一分散会