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1952-06-14 第13回国会 参議院 内閣委員会 第42号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年六月十四日(土曜日)    午前十時三十一分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     河井 彌八君    理事            鈴木 直人君            中川 幸平君    委員            草葉 隆圓君            楠瀬 常猪君            横尾  龍君            楠見 義男君            竹下 豐次君            赤松 常子君            波多野 鼎君            栗栖 赳夫君            松原 一彦君            三好  始君   国務大臣    建 設 大 臣 野田 卯一君    国 務 大 臣 大橋 武夫君   政府委員    警察予備隊本部    次長      江口見登留君    警察予備隊本部    長官官房文書課    長       麻生  茂君    警察予備隊本部    人事局長長官    官房長     加藤 陽三君    警察予備隊本部    人事局人事課長 間狩 信義君    調達庁長官   根道 廣吉君    調達庁長官官房    長       辻村 義知君    調達庁管理部長 長岡 伊八君    行政管理庁次長 大野木克彦君    行政管理庁管理    部長      中川  融君    行政管理庁監察    部長      柳下 昌男君    海上保安庁次長 三田 一也君    労働政務次官  溝口 三郎君   事務局側    常任委員会専門    員       杉田正三郎君    常任委員会専門    員       藤田 友作君   —————————————   本日の会議に付した事件連合委員会開会の件 ○調達庁設置法の一部を改正する法律  案(内閣提出衆議院送付) ○保安庁法案内閣提出・衆議院送  付)   —————————————
  2. 河井彌八

    委員長河井彌八君) これより内閣委員会開会いたします。  諸君にお諮りを申上げます。大蔵委員会から連合委員会開会の申入れがありました。これにつきましては委員長はあらかじめ大蔵委員長と交渉をいたしまして、大蔵委員の持つておる意見を代表して、できるだけ質疑応答してもらいたいということを申入れてあります。ところが委員長はどうもその通りに行くかどうか、日時で多少疑問のある返事をいたしました。でありますが、できるだけこの内閣委員会においての審議のための発言を十分に願わなければなりませんから、そういう方針で、連合委員会においてもそういう方針で進みたいと考えます。  本件は承諾することに御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 河井彌八

    委員長河井彌八君) 御異議ないと認めます。さよう決します。
  4. 中川幸平

    中川幸平君 私は議運でも、連合委員会運営について話したことがありますけれども、現在まだきまつてはおりませんけれども連合委員会を申し込む場合は、これまでは一委員からこの法案について内閣委員会連合を申込もうかということを委員長に進言いたしまして、委員長から全委員に諮つて異議なしということで、漫然と連合委員会を申込むような嫌いがあるのですけれども、どうか委員長間で相談をして頂いて、その委員会の要点を一つまとめて、そうして発言するようにお取計いを願いたいと思います。そうでないと、思い思いの質疑を繰返すということになつて内閣委員会審議に非常に支障を来たす虞れもあると思うので、さようにお願いいたします。
  5. 河井彌八

    委員長河井彌八君) 中川君に申上げます。私は連合委員会を申込まれた委員長に対しましては、これまでいつでも中川君のおつしやる通りのことをあらかじめ申入れまして、それをやつて来ております。併し実際やつてみすと、お考え通りにうまく行かないというのもあればそうでないのもあるのであります、というのは、その委員諸君のお考えちよ委員会ではまとまらないのがある、そのままにこちらへ来まして質疑応答ができまするから、どうもそういう結果になるのです。成るたけそれは避けたいと思います。そういうように努めたいと思いますが、ここへ出て来た以上発言を余り制限することは適切でないと思いますから、とにかくそういう方針ではやつておるということだけを申上げておきます。
  6. 波多野鼎

    波多野鼎君 ちよつと連合委員会の問題でありませんが、この前資料要求をしてあるのですが、即ち各部の仕事及び従来部の下にあつた課の数、各省に亙つてずつと一覧表的なものを出してくれということを、あれはどうなんですか。
  7. 河井彌八

    委員長河井彌八君) 波多野君に申上げます。行政管理庁から資料は到着したそうですから……。
  8. 波多野鼎

    波多野鼎君 到着した……。
  9. 河井彌八

    委員長河井彌八君) ええ。だから今差上げます。
  10. 波多野鼎

    波多野鼎君 そうですが。  それからもう一つお願いしたいのですが、それはやはり資料ですが、今度の改正設置法案を見ておりますと、従来の設置法でなかつた業務で、所掌事項といいますか、所掌事項が加わつておるのが大分あるのです。それから従来の所掌事項で削除して来たものもありますし、変更したもの、こう三色あると思うのですよ。それでこれも一覧表的に出してもらいたいと思うのですがね。つまり従来の所掌事項に追加した事項の欄と、それから所掌事項から削除したもの、それから所掌事項について変更したもの、この三色の一覧表一つこれも作らして頂きたい。随分妙なものが入つて来ているんだ、所掌事項の中に……。これを一々見ているのは大変ですからね。行政管理庁でできると私は思います
  11. 河井彌八

    委員長河井彌八君) 波多野君に申上げますが、行政管理庁に御要求いたします。  よろしうございますか。   —————————————
  12. 河井彌八

    委員長河井彌八君) それでは調達庁設置法の一部を改正する法律案を議題といたします。  前回に引続きまして御質疑のありますかたは御質疑を願います。
  13. 松原一彦

    松原一彦君 今折角資料をお配り頂きましたから、この資料の御説明をお聞きしたら如何でしようか調達庁の……。但し、ちよつと速記をやめてくれ。
  14. 河井彌八

    委員長河井彌八君) 速記をやめて……。    〔速記中止
  15. 河井彌八

    委員長河井彌八君) では速記を始めて下さい。  それでは「調達庁業務資料」としてそれの部の第二号ですか、本日受取りましたこの資料について政府の御説明を伺います。
  16. 辻村義知

    政府委員辻村義知君) それでは只今手許に差上げました資料の御説明簡單に申上げたいと思います。  第一頁は、「調達局別国有接收不動産調」でございまして、これは前回差上げました資料国有不動産関係のものが洩れておりまして、御注意頂きましたので、追加いたしまして差上げましたものでございます。各局別に「土地面積」、「建物延面積」につきまして、何坪あるかということの調べでございます。  それから第二頁は「特需の概況」でございまして、これは御要求がありました御要求を満たし得る資料であるかどうかにつきまして実は自信がないのでございますが、只今我々のほうで差上げられます資料はこれだけしかございませんので、取りあえずお手許に差上げました次第でございます。これは銀行調特需発註額でございまして、時期を分け、又「物資」と「役務及び工事」別に金額を出しておきましたのであります。  その次の第三頁は、「名古屋調達局所管業務についての参考資料」でございまして、前回資料では呉の調達局関係だけのものを取りまとめて、別に差上げましたのでございまするが、その資料について名古屋局管内の同じものが欲しいという御要求でございましたので、この点差上げましたのでございます。  その(1)が従来の米軍使用施設面積でございまして、民有、公有、国有別土地建物についての面積を記してございます。  その次の(2)が従来の米軍使用施設名称及び所在地でございまして、県別施設名称並びにその所在地を列挙いたしてございます。  それからその次の頁の(3)の米駐留軍の使用する「施設及区域」として予定せられるもの、これは平和條約発効後米駐留軍が使用する予定の「施設及区域」でございまして、これはまだ確定いたしませんので、或いは一部変更になるかも知れませんが、一応只今の予想でございます。施設名称所在地別に出してございます。県別に出しておりますのですが、それから最後の頁の頁数で十頁になりますが、(4)といたしまして特需状況、これは名古屋局管内だけの特需状況でございます。需品別役務別工事別契約金額を出してあります。  大変簡單でございますが、以上でございます。
  17. 竹下豐次

    竹下豐次君 この数字を呉と名古屋と一々対照すればわかるのかも知れませんが、なかなかそれも時間を潰しますので、この間から私が繰返してお尋ねしております点を明白にして頂きたいと思います。  名古屋と呉と比べましてこの点がはつきり名古屋のほうを残して呉をやめても差支ないのだという、目に付くところを一つ挙げて見て頂きたいのでございますが、この間飛行場お話がありましたけれども、それから米軍駐留とそれから今の連合軍との関係がどういうふうになるかわからないということになつているのでありましようけれども、又これも併しすつかり引揚げるのだということがはつきりしていないと思います。だとすればもう暫くはそのままにして置かれてもいいのではないかと思うのですが、ところが未解決のものを解決したものであるかのごとく早廻りして、それを理由にして呉はもうやめるのだということはちよつとおかしいのじやないか、こういうふうに考えます。この点をはつきり一つ
  18. 根道廣吉

    政府委員根道廣吉君) 呉と名古屋仕事を一応の数字で見ますとほぼ似寄つたようなものであることは我々が提出いたしました資料によつて承知通りであります。併し全体今日まで五年間の間調達庁として仕事をして参りました経験と言いますか、恐れ入りますが、勘と申しますか、そういうものを総合いたしますと、一つ減らすならば名古屋と呉とどちらかということに相成るとそれは呉でなければならないと私は感じたわけであります。  それから先刻飛行場というお話がございました。飛行場というとちよつとおかしいのでありますが、飛行場は至るところにありますけれども名古屋は従来空軍司令部がございましてその連絡機関であることからも名古屋のほうが重かつたのであります。本庁におきましてそれがわからないというときには名古屋の局に行つてこれは調査せしめた例も多々あると思います。又空軍関係特需等につきましても、元も相当程度名古屋において事情を調べなければならないという問題もございます。それから又御承知のように名古屋は相当な商工業の中心でございまして、やはりいろいろな事件名古屋のほうに現在も輻輳しておりますし、将来も多いだろうと思われる点もあります。又米軍特需といたしてやつておりまするそれによつて将来生じまするところの紛議というようなものも多分にあると思いましてそういうことにつきましては実際名古屋のほうが多いのではなかろうかということは想像できるわけでありまして彼此考慮いたしまして一つをなくすならば名古屋より呉のほうが多少不便はあるでありましようが、又地方の人たち大阪までわざわざ出て来なければならんというような不便な事態は起さんように措置すれば呉局を廃止するのはやむを得ないとこういうふうに考えたわけでございます。
  19. 竹下豐次

    竹下豐次君 名古屋を存置しなければならないという理由は今お話を承つたのでありまするが、一番冒頭にお話の点この間もちよつとお話なつたのですが、一つをやめるということにすればというその前提ですね、それがもうすでにおかしいのでありまして、名古屋はどうしても残さなければならないという理由があるならばそれを残すということも必要でありましよう。併し呉のほうはやめなきやならんという理由はつきりしない。そうしてやめたほうがどれだけの利益があるか、国家財政にどれだけの利益があるとか、或いは今のようじや却つて仕事にも都合が惡いから大阪と一緒にしたほうがいいのだというような説明でもありませんと、ただ一つをやめることの前提ということからスタートされちや私どもとしては何故に一つをやめなきやならないのかということをどうしても聞かなければいけないわけで、まあ長官のお立場としては内閣でそうきまつたのだからということが本当だろうと思つておりますけれども政府委員としてここで御説明になつておるのでありまするから私のほうはただ一人の長官としてあなたのお話を受取るわけに行きませんから、やはり政府を代表された政府委員だと、私はもう政府委員のおかたの発言総理大臣発言と同じ値打を認めなきやならんものだと思つております。それだけの敬意を拂つておるわけなんですが、その点を考えますとこの間からの御答弁を伺い、今頭の中で整理して見まするというと、どうもやはりそのやめるという方針になつておるからやめるのだということの以外にやめたほうがいいのだという説明はちつとも頭に来ないのですね、その点を一つ……。
  20. 根道廣吉

    政府委員根道廣吉君) 御説のようにやめたほうがいいのだという理窟は立ちません。その辺よろしく御判断をお願いしたいと思います。(笑声)
  21. 栗栖赳夫

    栗栖赳夫君 もう一言これはちよつと念を押して置きたいのですが、これはもう事情を私はよく存じておりますので私の言うことは全部おわかりだとむしろ思うのですが、こういうものについては駐留軍でございますね、そういうものとの間で十分お話なつたとかいうことはないのでございましようね。
  22. 根道廣吉

    政府委員根道廣吉君) この点につきましては駐留軍当局調達庁関係としては何ら話合つたことはございません。
  23. 栗栖赳夫

    栗栖赳夫君 それで私は自然地元関係であり、呉の市長も商工省時代にいろいろ懇意でであり、地元のほうの日本のほうの側も向う側も非常に希望しておるということをここで申し伝えまして質問を私はこれで終えたいと思います。
  24. 波多野鼎

    波多野鼎君 この問題はもうすでに論議されたか存じませりから、若し論議されたとすれば簡單に御答弁願つて結構ですが、一つは今度の駐留軍調達政府方針或いは駐留軍方針として大体直接調達ということにきまつたように思うのですけれども、最近のいろんな新聞、情報など見ておりますとそれも何だか少しぼけたようなふうに感じますが、この点は一体どうなつておるのか、この調達庁機構をどうするかという問題は、私は駐留軍物資調達がどういう形で行われるかによつていろいろ変つて来ると思う。その基本方針がきまれば、今の呉の問題なども皆さまつて来る、一つその点どういうふうになつておるのか、駐留軍物資調達について日本政府はどういうような管理をするのかということを一つ説明願いたいと思います。それと併せて保安隊の問題とこれは何か関係があるのか、保安隊物資調達については何か関係があるのかということも一つ併せて……。
  25. 根道廣吉

    政府委員根道廣吉君) 駐留軍物資調達方式につきましては保政協定に一応きまつておるわけであります。併しこれが現実には直接調達であるのか、間接調達であるのかということは條文上は直接には出て参らないのであります。併しながらこれに関連いたしましていろいろ米側話合の結果、日本側の負担する部分については米側金額を引渡す、引渡しをすればその金額米側が使用する。米側がみずから使用するならばみずから発注をしなければならない、こういうような段階に相成つているのだろうと思います。併しこの点につきまして、私がとやかく批評するのはどうかと思うわけでございますので、現状だけを申上げますると、そういうことの結果、駐留軍の一切の調達は直接に向うでやるということに相成つておるのであります。従いまして調達庁といたしましては、発注その他に関しましては直接に關與するところは今後はないわけであります。ただいろいろ予想されまするところは、米軍の直接調達で以て生ずる各種の紛議があるであろうということが予想されるわけであります。この紛議は結局において行政協定にありまするように、合同委員会裁定を求めるということに相成つておる、その裁定ということが結局非常に問題でありまして、果して円滑なる裁定ができるかどうか、日本側の満足の行くような、少くとも日本側業者言分が通るような裁定ができるかどうかということにつきましては、私としては非常に疑問があるような気がいたします。併しながらその裁定に持つて行く以前におきまして、日本側として業者の言うところをいろいろ実質的に取調べまして、その理由のあるところ、少くとも日本的に見まして理由のあるところはこれを取入れまして調達庁がこれを取まとめ、そうして日本政府としても業者言分尤もなりと、こういうふうにこれをまとめまして、これを業者とその程度紛議を解決するつもりはないかというような話合を進める、又それができましたらそれを合同委員会に公にする以前に、その下部機構等に形式的に持出しまして、若しこれを合同委員会として呑める、即ち米側も入つた合同委員会としてこれを呑めるということになれば、その紛議は形式的に合同委員会に付されて、或いは裁定がデイスカして、将来紛議を生ずるということをできるだけ少くすることができるのではないかと考えております。そういう場合における仕事調達庁に課せられるものと予想いたしておるわけであります。なお保安隊との関係只今のところ何らございません。
  26. 波多野鼎

    波多野鼎君 この米駐留軍調達の問題は、行政協定を論議した場合にも非常に重要なポイントになつてつたと思う。で、私どもも実はこの直接調達方式には非常に疑義があるということを感じております。特に日本経済の今後の運営の上から言つて、厖大な軍需品駐留軍需要が起きて来るというようなことをやられますと、勿論日本経済を撹乱するようなことはしないということは謳つてありますけれども、実情は非常に困難な問題が起きて来ることが当然予想されるので、そういう困難な問題が起きたあとでいろいろごたごた仲裁などをやつてみたところで、話にならない。既成事実は解消できないのです。跡始末では意味がないのです。そこで私個人の考えとしては、是非とも間接調達方式に持つて行かなければ日本経済自立という見地からいつて非常にまずい、まあこう考えておるわけなんですが、この調達庁機構を今度変えるというときに当つて政府側調達庁というのはまあなんというのか、駐留軍調達の外側に立つてつて、そうしてなんか紛議でも起きたとかというような場合跡始末的なことばかりやるという機関では、これは私は意味がないと思うんです。そういう機関としてこの機構を今後も縮小して行くというのならば、私は非常に問題だと思う。そうでなくて、できるだけ日本経済軍需が撹乱を起さないようにして行く、その調節の機関として調達庁を置くという意味ならば、調達庁機構はこれでは不十分だ、どちら付かずで、なんだかわけがわからんですよ。これは基本方針がきまらないのじやないかと思いますが政府のほうで……。
  27. 根道廣吉

    政府委員根道廣吉君) 只今波多野委員の言われましたことでございますが、直接調達をやるということは基本方針としてきまつておるわけであります。従いましてその観点に立ちましてこれは調達庁機構を変えて行こうという意味でございます。
  28. 波多野鼎

    波多野鼎君 調達庁というのは本来今後どういう役割をしようというのですか、方針でいいのですから伺いたい。特に問題になつておるのはこういうことなんですよ。米駐留軍日本駐留して、それからその連中がいろいろな軍需需要を発するというばかりでなしに、いわゆる特需といいますか、新特需と申しますか、例えば南方地域方面への軍需品発注なんかも今後ありそうな気配が見える、米駐留軍が直接発注するだけでなしに、アメリカ政府と申しますか、極東軍と申しますわ、なんかよくわかりませんが、そういうものが日本注文を発するということも考えられる、で、そういう注文が彼らの手によつて、資金も彼らに渡しますから、彼らの手によつて勝手に注文を発せられたのでは困るというのが我々の考え方なんです、勿論勝手にやらない、めちやくちやに日本経済を破壞するような注文はしないというようなことはこれは約束はできておるわけなんですが、そこが非常に問題だと思うんです。そこで駐留軍が必要とする物資、それから南方方面へ出す軍需品、そういうものの注文を引受けるというか、斡旋すると言いますか、なんか注文主日本業者との間に政府が介在して、そうして注文を受けるのが一番妥当だと私は思つてつたが、行政協定では直接発注ということになつて、併し直接発注を認めておけば非常に困難な問題が起きるということは誰だつて予想しておる、政府つて予想しておるだろうと思う、そこで直接発注という建前にはなつておる、が、その直接発注をなんらかの形で間接発注方向に緩和して行くような行政措置を私はとらなければならんと用つて、そういう見地調達庁設置法考えておられるのか、それとももう間接発注なりという方向へ持つて行く考えはないのか、直接発注できまつておるのだから、だから業者との注文の、発注と言いますか、何と言いますか、契約の外に立つてつて政府はその跡始末というぐらいのことをやるのだというだけの見地で、この調達庁設置法というものを改正されるのか、どういう、どちらのほうで改正されるのですか。
  29. 野田卯一

    国務大臣野田卯一君) 考え方の筋といたしましては、日本駐留する外国の軍隊がおる。その軍隊がいろいろなものを調弁するという場合に、その軍隊日本の商人と直接の取引をするということのほうが筋じやないかと思うのです。それを日本官庁が下働きをするということは、独立後の日本としては如何なものであろうか。占領されているときには、日本官庁駐留軍下部機構みたいに使われることはこれは止むを得ないとしても、独立して対等の資格をかち得た現在の日本として、その日本の役所が向う下部機構のように使われる、命令されて使われるということは如何なものであろうかという考え方はあります。そこで私は直接調達のほうが筋じやないか。日本が独立したという建前から言うと、それが筋じやないかと思う。但し日本の国内で向うが直接調達するために、それのやり方がよろしきを得ないために、日本経済界にいろいろな動揺を来すとか或いはいろいろな紛議を来すとか或いはそれがために対米感情が惡化するというようなことになつてはいけませんので、その点につきまして十分向う連絡をいたしまして、そういうことのないように、日本経済とよく調和のとれた調達の仕方をする、こういうふうに調達方式を実行してもらうように十分話合うということが必要だと思います。現在は御承知のように、直接調達なつた直後でありますので、とかくいろいろな問題がよく起ると思いますが、私の耳にも相当いろいろ入つて来ております。これにつきまして私も外務大臣と相談いたしまして、成るべくそういうことの少くなるようにこれからいろいろと交渉すべきものは交渉する、或いは注意を促すべきものは注意を促す、或いは話合をするものは話合をするというふうにしたい、こういうふうに考えておる次第であります。
  30. 波多野鼎

    波多野鼎君 野田さんの言われるのは、独立したから政府駐留軍下部機構のように、手先のようになるのはまずい。理論的に言うとそれはその通りだ。私も政府駐留軍下部機構のような格好になつて動くというようなことを考えておるわけじやない、そのほうがいいと思つておりません。そうじやなくて駐留軍発注日本経済に重大な影響を及ぼすようなものが相当予想されるから、政府行政機構の上でそれを阻止するような一つ機構をとつておくべきじやないかと私は思うのです。併し日本経済に撹乱的な影響を及ぼさないようにする、話合をする、外務大臣通りじ或いは向うの大使を通じて話合をする、それは当然やるべきことだ、ただそれだけじや足りないというのだ。じや足りなくて調達庁という政府機構の中にそういう機構的な撹乱をチェックするような機構を持つておかなければならんじやないか。若し野田さんが向うが勝手にやるのは困るというお考えであるなら、調達庁機構の中にもそういう機構を整えて行くべきじやないか、こういうわけなんです。
  31. 野田卯一

    国務大臣野田卯一君) 波多野委員の言われることもよくわかるのですが、向う調達の形式もいろいろあるでしようが、例えばアメリカの政府が国内で注文を出す、そうすると、アメリカのメーカーがその注文を得たその中の一部を日本のメーカーに注文して来るというような形があるわけなんです。併しそういうものに対して政府がいろいろなことをやるということは当然やらない。それからアメリカの政府が今度は入札に付したときに、例えばアメリカにおいてアメリカの政府がフイリピンに発注する、もつと近くになれば沖縄においていろいろなものを発注するという場合に、日本の商売人が行つて日本業者がそれに応ずる、こういうことも考えられる、これは現にある。これまでも制約するということはなかなかむずかしい。今度は向こうの駐留軍日本にいる機関日本業者を相手に、日本業者、或いはアメリカの業者、或いはイギリスの業者を相手にいろいろ発注する、こういうふうに変つえ来ておるわけです。いろいろな段階があると思うのですが、それにつきまして法律的にこれを縛るとか或いは制度で以てこれを縛つて動かないようにするということは如何なものであろうか、こういうふうに考えるわけです。段階々々に即応してやはりお互いに日米提携して大目的のために共同しておるわけなんですから、その精神に基いて経済行為もしてもらうということを要請するのは日本側として当然の要請であろう。向うも必らずこれはわかつてくれる、こういうふうに確信をいたしておるのであります。
  32. 河井彌八

    委員長河井彌八君) 速記を止めて。    〔速記中止
  33. 河井彌八

    委員長河井彌八君) 速記を始めて。
  34. 栗栖赳夫

    栗栖赳夫君 関連して、今の大臣のお話はこの調達庁の三條の一号と、それから昨日私通産省へお尋ねして答えのできなかつた、御研究願いたいと言つた十四ですな、そこに明文があるのですが、その線に沿うて説明してもらうと常識的には非常に御尤もですけれども、この権限を與えてあるのをその場合にどうするかという説明がないと、法文に副わん説明であつてちよつと如何と思うのですが……。
  35. 根道廣吉

    政府委員根道廣吉君) 只今のお尋ねの第三條におきまして、「條約に基いて日本国に駐留する外国軍隊(以下「駐留軍」という。)の需要する建造物及び設備の営繕並びに物及び役務調達。但し、他の行政機関の所掌に属するものを除く。」とあるここだろうと思いますが、行政協定の面におきましては、米軍が直接調達をすることができることに相成つておるわけであります。又場合によりましては日米双方話合の上で、日本側が或る種の間接調達もなし得ることになつておるわけであります。その道がここに開かれていることと考えております。現に同じ調達でありましても、労務関係の例をとりますと、労務関係につきましてもこれは行政協定條文上は日本がやるということが明確になつておるわけではありませんので、いずれともやれる建前になつております。併しこの点につきましては、米国側と特別に契約を結んで、これは日本側としてやるというようなやり方をしてあります。ここは非常に広い意味でございまして、書いてあるから何でもかんでもやるというわけではないのであります。書いてあるものでなくても必要のある場合にはやるというふうに考えております。
  36. 栗栖赳夫

    栗栖赳夫君 今波多野さんが済みましたら私は詳しくお尋ねいたしますが、ここに通産省のほうは條文が入つているのであります。ここは何も入つておらんのでありますが、直接調達といえどもここに何か権限を與えなければできない。或いは契約するにしましても調達庁に権限規定がないとこれはやれないと思います。そういうような点で規定が落ちているのじやないかと思うものでありますから、その点私は改めて波多野委員の後にお尋ねすることに一つ……、或いは御研究になつてまとめてお答えを願つても私は差支えありません。
  37. 波多野鼎

    波多野鼎君 野田長官の言われるのは非常に問題があると思うので、つまり日本の財界と言いますか、業者というものですね。業者が非常に弱体であるということ、そうして新聞にもしばしば報ぜられているけれども、出血入札をやつているというようなこと、そういう日本経済の全体的な弱さ、そこへ以て来て、アメリカの連中が日本に入つて来て日本業者と競争してやつているといつたような非常に大きな問題があると思います。これは別なんでありますが、それはそれとして、とにかく日本業者というものが独占禁止法その他によつて区々ばらばらに切りさいなまれている、而も資本蓄積が少なくて弱体だ、そういうものがたくさんおつて、そういうたくさんいる業者に対して発注者はもう独占的な力を以て発注して来る、だから丁度、たとえて言えば痩犬がたくさんいるところにアメリカ駐留軍が来て肉をぶら下げて走つて行くようなものですから、博犬が息を切らして追つ駆けて行く、そこへ以て来てアメリカの太つた犬が横から取つてしまう。そういうようなことだと思うのであります。そういうようなことは日本経済の自立ということに非常に悪い影響があるから、政府としてもそういうことを阻止するために法的な措置を講ずべきじやないか。その法的措置というのをどこでやるかということは調達庁でやるべきじやないか。そういう点がこの調達庁機構改革に出ているかどうかということを聞いているのであります。出ておれば何でもないのであります。
  38. 野田卯一

    国務大臣野田卯一君) 今のお話の点は問題を擴げますと大変むずかしい問題になると思います。  それは出血入札というふうな問題でなしに單に駐留軍関係ばかりでなしに、私は建設大臣ですから建設業者全体を指導しており、規制しているわけでありますが、そういう立場から申しましても建設業者が一番困る結果、あの出血入札をやるわけであります。お互いの競争が激甚でせり合つてやり、あとにまで響いてしまう。そうして若しその仕事がないといたしますと、たくさんの人を抱えて遊ばして置かなければならないという点もありまして、みんな犠牲にして出血入札をするということは、これは国内でも非常にあるわけであります。  これに対しまして我々といたましても業界の前途を憂えまして、何をかそういうことにならんようにというわけで、いろいろの手だてを講じて業者を指導しているわけであります。それは内地の会社がやろうが政府がやろうが皆同じ問題であるのであります。又たまたまその相手方が進駐軍であるということだけでありまして、これは進駐軍だけの問題ではないのであります。  このことにつきましては日本経済全体として考えなければならない。駐留軍軍だけ惡い駐留軍だけを目当にするということはいかないと思います。  貿易の問題につきましては例のまぐろの問題で御承知通りでありまして、結局業者が無理矢理競争して安く売つてしまう。余り安く売つてしまつたからアメリカの業者を刺激してああいうことになつて日本は丸損をする。ああいうことは一つの例でありますが、ああいうことは貿易界ではたくさんあるのです。日本の貿易を運営して行くためにそういうことをどうするかということが、根本的に大きな問題であるわけであります。だからこういう根本的問題に触れないで、進駐軍のものだけを取立てて法制的に機構的にやるということは穏当であろうか、こういう点について深甚な考慮が必要だと思うのであります。これは経済全体に対してそうだと思うのであります。
  39. 波多野鼎

    波多野鼎君 それで自由党の自由主義経済というものが限界に来ているということなのであります。私はそう思うのであります。それは別といたしまして、日本経済全体の運営方針といたしまして、一つの新らしい見地を持たなければならないということは野田さんも考えておられると私は思う。それは別といたしまして、差当り我々が注目しなければならん日米間の感情の問題もあれば、いろいろなこともある、非常にデリケートな局面にあるときに、駐留軍の入札において出血入札が行われる、そうしてアメリカの太つた犬に喰われてしまうのだといつたような感じを国民に持たせるようなことじや駄目だと思うのであります。そんなことをすれば、日米経済協力とかというようなことはできはせんですよ、そこでそういうものを、差当りその問題をとり上げて、全般的な問題はあとにして差当りその問題をとり上げて、そこから自由党の自由主義経済政策を修正して行く足掛りにすべきだと僕は思うのであります。それはそれとして、その問題を真剣に考えなければいかんので、全体の問題を考え直さなければ駄目だ、この問題だけでなしに、全体の問題を問題として、差当りこの問題は国際的なデリケートな問題だから、十分とり上げて行く、こう思うのであります。
  40. 野田卯一

    国務大臣野田卯一君) 御趣旨わかるのであります。その点駐留軍だけいろいろと対象にして特異なことをするということは避けたい。それに対しまして、例えば駐留軍発注する土木工事について、ジョイントヴエンチヤーというような新らしい制度もできてやりかかつておるのであります。アメリカもそれを希望しておるのでありよす。ジョイントヴエンチヤー、やはり業者の、相当なものを引受けるような施設業者がグループを作り、それをグループにしてやつて行きますから、お互いの間のフリクションというものは、それによつて合理化されているわけであります。でありますから、そういうジョイントヴェンチャーを十分利用してくれ、日本側運営よろしきを得るようになれば、今みたいに出血するとか、それがために期限に遅れるとか、こういうような仕事をするというようなことがなくなるわけであります。いろいろな方法を併せ用いて、お話のような点を私は矯正して行く必要がある、こういうふうに考えておるのであります。法制的に或いは法規的にそれを押えるというようなことはこの際実際問題としてやりにくいことではないか。
  41. 楠見義男

    ○楠見義男君 今の波多野委員質疑に関連して野田さんに伺うのですが、直接管理調達という問題について、基本観念としては自由経済だ、だから政府は被害のあるような場合には、或いは紛争が起るような場合には間接的に防ごうとするのだ、こういう考え方で進んでおられる以上、この問題は解決しないと思うのであります。ということは、根本的には占領行政、占領軍が駐留軍に代つた政府においてはやはり日本から言えば安全保障をしてもらつているという弱み的な気持があることが一つと、それからもう一つは、波多野君からも言われた日本経済が非常に弱い、こういう点、従つてその間に生ずる国際間の非常に望ましからんような欠陷が生ずることを慣れることと思うのであります。そこで本来自由経済でやるのだから、自由の立場で調達すべき、だということであれば、何も北大西洋條約において、まだ発効はしておりませんけれども、あすこで外国駐留軍調達については、すべて間接調達をやるというような方式でするわけかないと思うのであります。日本だけが直接調達方式をとつて、ヨーロッパのほうではすべて間接調達でやつている。それにはそれだけの、今我々が心配をし、又波多野君から今言われたような点が、私は心配じやないか、例えば請負なら請負で結局向う業者が請負う。但しそれは能力もないのだから結局日本の弱い下請業者を使つて、これは言葉は適当じやありませんが、搾取する、こういうところから折角安全保障條約というものに基いて、又行政協定に基いていろいろなことをお互か個々にやろうと思つてもそれは目的と反した結果を生ずるので、北大西洋條約においてはああいうふうに全部間接調達ということになつているのじやないかと思います。だから政府としてじやもう自由経済で自由契約建前だ。こういうことで反省も、というと惡いが、そういう気持を持たないで行かれると私は改善の余地がないと思うのだが、だからやはり北大西洋條約等の事例もよく参考にお取りになつて善処せられる必要があるのじやないかと思うのですが、どうですか。
  42. 野田卯一

    国務大臣野田卯一君) お話の点も私一理あると思いますが、北大西洋條約、まあこれが発効しますが、今後の問題となると思うのですが、あれも非常に参考になる。どういうわけでそうなつたか、又その前の運営状態はどうしているかということもよく見て調べて考えて行かなければならないと思いますが、それを一つの例として、一つのポイントというのは、これは私のうろ覚えの推測みたいになりますが、やはり北大西洋諸国が軍隊を持つているということも一つの原因じやないかと思います。ですから軍事調弁を軍隊がやつている、それと一緒にやつてあげましようというような観点があるのじやないかと思います。これがまあ現状であります。まあ向うも未だあれが発効していない、いろいろと問題があるわけでありますが、日本におきましても、私は今お話のような点はできるだけいろいろな方法を講じて避けて行きたい、どうしてもそれを除去することができないものであるかどうかというような見極めをつけたいと思います。若しいろいろそんな方法によつて大体大過なく行けるというならば、そういろいろと神経質になる必要もないかも知れませんが、今は過渡期でありましていろいろ問題があるのであります。この点につきましては皆さんがたの御趣旨もよくわかりますので十分慎重に対処して行きたいと思います。
  43. 楠見義男

    ○楠見義男君 私はなぜ北大西洋條約の場合における例を引例するかと申しますと、政府はそういう肚がないのじやないか、端から諦めているのじやないかというふうに、あ弱腰というと言葉は適当じやありませんが、そういうふうに思われる節があるものだからこういうふうにくどく伺うのですが、そういう意味では刑事裁判権とか、或いは民事裁判権とかについては、今回の行政協定は北大西洋條約に基く行政協定と比べると日本に取つては必ずしも有利ではないといいますか、問題になつていることは御承知通りなんであります。ところがあのほうの、民事裁判権なり刑事裁判権というものは北大西洋條約が発効したらこちらのほうもそういうように直すのだということは政府のほうでも言明された、ところがこの調達方式に関する限りはそれと同じように直すかと言うと、それはもうそういうことは考えておらないということを言われる。だからあなたは一方刑事裁判権、民事裁判権におけると同じような心構えというか、気持を持つて将来に努力すると言いますか、そういうものを持つて然るべきじやないかと思うのですが、その点はそうじやないと、こういうことを言われるものだから、だから政府はやろうと、努力しようと思うということをおつしやつても、一方そこにそういうようなことの言明がないものだから非常に一般的に不安を感ずるのです。
  44. 野田卯一

    国務大臣野田卯一君) 私は閣僚全部の意見であるかどうかということは申上げかねるのですが、直接調達ということになつて、それから特別調達庁向う調達を、間接調達を全部やるということをやめるという気持ですが、これはやはり独立意識が強かつたのです。日本の役所が何も向う軍隊の手先になつて向うの命令を受けてやるということは必要ないのじやないかという気持が可なり強かつたのであります。だから弱気で出たよりもむしろ強立意識が強くて出たという面もある。だから問題は向うが金をうんと使うとか、金をやたらにたくさん出すとかすると、その金の半分は日本が持つているのですから濫費されては困るので、併し逆に日本人がいじめられては困るので、経済的な混乱を起すとかいうことは非常に我々はその問題を重要視して考えているのですが、日本の役人が手先になつてやるのはどうか。むしろ作るなら財団法人とか、特別の会社を作つてやらせたらどうか。日本政府が、税金を拂つている役人がやる必要はない、だから道理としては屈従的な気持で考えているのじやない。独立意識が強いということは事実です。この点だけはお考え願いたいと思います。
  45. 楠見義男

    ○楠見義男君 私は政府が屈従的な気持でおやりになつたとは言わないのです。それは今おつしやるように独立的意識が非常に強くておやりになつたのだろうと思いますが、それと同時に従来の下請機関で、向うさんについておつたという下請機関的な性格から、独立になつたと同時に今度は逆に背後に日本経済というものを控えているのだから、日本経済が非常に被害を受けるという場合、被害者擁護的な立場でおやりになるべきだと思うのです。向う側についておつたのが、これは適当な言葉じやありませんが、露骨ですが、こちらの被害者擁護の立場で立つという気持が、今の独立的意識が強かつたという背景に、もう一つそういう要素が加わつているのじやないかということは、例えば全体の問題として特別調達庁については再々御説明もあつたのですが、その仕事の何においてどう変つているかというと、量的には相当縮小している。併し仕事の内容においては質的の変化を来たしている。質的の変化とは何かと言うと、従来は向う側の下請機関であつたけれども、今度はこちら側の被害者擁護的な立場に立たなければならんという意味の質的変化が起つて来た。例えば進駐軍の不法行為に対する賠償の問題であるとか、或いは接收解除の問題であるとか、或いは新たな土地その他の接收の問題であるとか、こういうものはすべて質的変化を来たして、被害者側の立場でこれをやつてくれるということを再々言つておられるのですが、私はそうだと思う。そこでそういう観点から言うと、例えば、これものちほど伺いたいと思いますが、例えば次長の問題なんかもそういう観点から検討する必要がありやせんか、ということは、従来は例えば長官の下に次長があり、各部に次長がある。これは長官だけでは手が足らないから、それの代理者のような立場で渉外関係等の上において言葉もできる、又仕事もできるという人を次長に置いておつた。今度は質的に変化を来たしたのだから、被害者の立場から向うと折衝するという場合には、余計にそういう立場を、例えば言葉もよく通じ、向うの気持もよくわかり、又日本の特殊の事情というものも向うによく了解させるという長官或いは部長に代わる次長というようなものも必要じやないか。すべてこれは被害者擁護的立場に立つという観点からそういう問題が起つて来ているのじやないか。そこで今の直接調達間接調達の問題はそういうふうに一応その程度にして、次長の問題なんかそういう観点から出たというものが今度は必要でなくなると、こういうような原案ですが、それでやつて行けるのかどうか、勿論我々はひとり特別調達庁に限らず、すべての行政機構について次長というようなものは成るべくやめたい、全般的にはやめたいという気持は持つているのですが、その結果従来はそういうことで、渉外関係の上から言つて非常に大きな役割を次長というものがしておつたのだとすれば、今度は被害者の弁護側の立場に立てば余計そういう問題が必要になつて来ると思うのですが、その点をどういうふうにお考えになつているか。これはむしろ直接今までの仕事に当つておられた根道長官のほうの御意向を承われば非常に仕合せだと思います。  それからちよつとそれに加えて私は特に、例えば労務者関係仕事でいろいろごたごたが起る場合が予想されるので、こういうところにには余計必要じやないかと思うのですが、労務部だけじやありませんが、全体としての問題としてどういうふうにお考えでしようか。
  46. 野田卯一

    国務大臣野田卯一君) 私はさつきの直接調達間接調達との問題ですが、これにつきましては私は直接調達で行きますれば、将来は先ほどちよつと申しました請負工事に非常に便宜に使われるような考え方で、むしろ例えば電気関係の機械を発注すると言えば日本でアメリカの軍の規格に十分叶い得るような電気の機械を作り得る業者というのは指折り数えるほどしかないのです。それにはジヨイントヴエンチヤーについてグループが話合つて適正なる値段できめて行くというようなことができるようになつて行けば、私は今お話のような点は非常に少くなると思うのです。むしろこつちで法律とか機構で縛るよりも、むしろそつちのほうを合理的に経済的に仕組んで行くほうがいいのではないかというふうに考えております。  それから今あとの点の機構の問題につきまして、これはこの前もやはりあなたでしたかど、なたか知りませんが、同じ質問が出まして、そのとき官房長でしたか非常に適切なる御説明をしておられましたが……。
  47. 楠見義男

    ○楠見義男君 聞いてなかつたのです。
  48. 野田卯一

    国務大臣野田卯一君) そうですが。非常に明快な適切な説明をしておられましたが。
  49. 楠見義男

    ○楠見義男君 それじや私は普段その衝に当つておられた長官が一番よく、あんなものは要らなかつたと、こうお考えになるのか、やはり有用だつたと思うか、今度は質的変化を来したのだと、量的変化を来したと同時に質的変化も来したのだから、今度は次長はなくても、仮にあなたが引続いて長官になつておられて、そうして次長というものはなくていいのだということ、これはまあ妨害官吏とか何とかいうことじやなしに、心配なしに言つてもらいたい。そうでないと本当のことは我々聞けないのだから。
  50. 波多野鼎

    波多野鼎君 いつかの機会に答弁したというのですが、もう一遍答弁して下さい、明快なるやつを……。
  51. 野田卯一

    国務大臣野田卯一君) 官房長より何か前々回に答弁があつたようであります。私もその席におりませんでしたので何と答弁いたしたか承知いたしませんが、次長がなくて済むかというお尋ねであります、又各部の次長等がなくていいか、あるに越したことはございません。併しながら政府全体といたしましてできるだけ我慢のできるだけ我慢をして行政機構を縮小する、この方針に則りまして私といたしましても一応なくすることに同意をいたしているわけであります。勿論なくして明日から困難を来さんかというと、そうではないであろうと私は言わなければならんと思います。これは当り前であります。二人よりも一人のほうが困難であることはこれは当然であります。又仕事の性質の上から行きまして調達庁には一般の他の業務と労務関係業務とあります。これは非常に質的に違つております。労務関係業務は特に時間をとることが非常に多いのであります。今後におきましてはその方面において米側と折衝することが他の部門より多い、昨年以降米側と折衝いたしましたものの内容及び度合は労務関係において他の部門の何倍かになつております。その点は大体において私自身当つて参りました。従いましてその他の部分を有能な総務部長的なものがおれば統一的にやつて行けるという予想も一応は立つわけであります。併しながら何分にも一時に機構を変えて行くわけでありますので、その間においては多少その衝に当るものが非常に困難を来すだろうということは想像に難くありません。併しながらそれにいたしましてもそのような状態でやつて行こう、場合によりましてまあ例えば私一人では到底やり切れなければ、更に有能な人を挙げて以てそれに当らしめて行こうと、こう考えております。
  52. 楠見義男

    ○楠見義男君 そのあつたほうがましだということは、ましと言うか、多々ますます弁ずということはこれは誰も考えることなのですけれども、私の言つているのはそうじやなしに、我慢できるかできないかという限界のところなのですね、従つてさつきも申上げたように、できれば次長なんかというものは成るべく各省を通じてやめたほうがいいという意見は私も持つておるのですが、ただそれがそういうことじやなしに今おつしやつたように我慢できるかできないか、我慢できない場合に特別調達庁が役所としてお困りになることは、結構だとは言いませんけれども、そういうことを我々は問題にしているのでなしに、特別調達庁が困ろうが困るまいが、それはいいが、実際の問題として機構改革で私どもの一番問題にしているのは国民の問題なんです。国民がそういうことによつて又特にこの血の気の多い或いは又その取扱い対象としては非常に複雑な、困難なこの労務関係仕事についてここで齟齬を来すということは結局まあ二十万人ですか、二十一万人か何かの労務者があるのですから、このほうの利害関係を我々は非常に重視するのですが、調達庁部長が困ろうが困るまいがというような問題じや実はないのです。そういう意味から率直にそれは困らないなら困らないということを確言できるならば一つつてもらいたい。我慢できるならばできるということを
  53. 野田卯一

    国務大臣野田卯一君) これは少し根道君も答えにくいのじやないかと思いますが、困るか困らないか、恐らくやつて行ける自信があると思います。それはこの前に官房長が非常に明快な過去において沿革から推してそれを御説明したのですが、初め置かれた動機、それから私も実は特別調達庁の前は特別調達庁は法人でございましたね、このときに副総裁を置いて中村君でしたね、そのときに私も関係しておるわけです。そのときの事情もよく知つておるわけです。そのときは厖大な仕事で今から見れば何倍かあつたでしよう、それから大変初期でして向う機関の下請機関としてやつていたのですが、そのときにどうしても渉外関係が必要だというわけで外務省の中村君が入つて副総裁になられたというようないきさつを知つておるわけです。それから幾多の変遷を経て今日に至つて業務も相当簡素化して縮小して来ておりますし、性格もきまつて来ているし、それからいろんな点から見て現在の、今後のなすべき仕事程度では、まあ昔に比べればここも一応整備していると言うことができる。だから各部の次長というようなものは部長、課長がおりますから、それでこれくらいの程度仕事はさばけるのじやないか、大分長くやつておりますので仕事の筋もわかつて来ておりましようし、取扱い方もわかつておりましようし、アメリカのほうだつて昔のように乱暴も言わなくなつて来た。そのような傾向から見て新らしい機構程度で新らしい任務は遂行できるのじやないかというような意味合いの答弁が明快に相当詳細にあつて官房長から、それで私は……。
  54. 波多野鼎

    波多野鼎君 官房長の明快な説明をもう一遍聞きますが、これはあとに留保して置きます。今の野田さんの答弁じや明快じやないですね。(笑声)  それから今の問題ですね、この次長とそれから渉外の問題ですが、私も今の長官の言われた言葉の中にあつたのですが、行政機構の改革ということは何も局を減らしたり、人員を減らすことが能じやないですよ。或る場合には人員を殖やしたりすることも必要なんです。眼目はどういうふうにしたら日本国民のためになるかがパブリック・サーバンドとしての官吏が、役所が十分な働きができるかというところに行政機構の改革の眼目があるのです。減らすことは目的じやないと思います。そこで今後のこの調達庁仕事、まあ先ほどから聞いているのだけれども間接調達、直接調達の問題にかかつて渉外事務が非常に複雑だと私は思う、却つて複雑になるのじやないか。そういう心構えでやらなければ日本国民は迷惑しますよ、日本国民が向うの厖大な財力、強大な軍力におされちやつてどうにもならんようになつて来る。私は今まで従来は占領軍があつて、これが下請機関のようだつた渉外的な仕事が相当多かつたけれども、今度は独立したから要らんといつたようなことは、まるで認識不足だと思う。で、私は長官にもう一遍聞きたいんだが、渉外的な仕事をすべき次長というものは必要ではないか、特に労務関係なんかに特に毎日の問題で、労務関係を専門に担任するぐらいの次長が必要なんですよ。どうですか、それは。
  55. 楠見義男

    ○楠見義男君 ちよつとその御答弁頂く前に、野田さんがさつき言われたように私は次長というものはなるべく少いほうがいい。ただ今度の機構改革で例えば法制局なら法制局というものは昔は次長なんかなかつた、ところが今は次長というものが出て来ておる、それにはそれだけのやつぱり理由があるだろうと思う。それからあなたがおられた主計局、主計局には次長が二人おる。私は主計局の次長については一番の弁論者なんですが、というのはあれだけの仕事をするために、局長というものは年柄年中国会に引張り出され留守番の役をしなければならんし、それだけのやつぱり仕事はあると思う。それで官房長が明快な答弁をされたというので、うつかりすると又妨害官吏を作るような引張り出し方の御質問は私どもいたしたくはないし、官房長もお困りになると思うからいいですが、これは虚心担懷にやつて頂ければ、あなたが中心になつてやられれば妨害官吏にならないんだから、やつぱり本当のことを言つてもらいたい、というのは結局国民が困るんだからということなんですよ。
  56. 野田卯一

    国務大臣野田卯一君) それはよくわかつているんですが、調達庁については仕事、過去のほうからずつと比べますとよくわかりますし、もうそろそろ残務整理も随分……、労務の場合は今まとめられておりますけれども、あとは兵舎の残務整理、これは向うと折衝もありますけれども向うは大体こつちに任せる、例えば横浜へいらつしやいますと厖大な接收地がある、公共物の九割が接收せられておるが、今度どんどん解除されており、その解除されたうちで一つの例を挙げますと、ずつとあの管内土地が全部接收されて、かまぼこ兵舎になつておる、あれを全部取拂われると野原のようになつて空く。ここを区画整理して元の所有者に返さなければならん。この仕事は大変なんです。私もそれを早くやつてくれというわけでこの間現地へ参りましたが、盛んに陳情を受けたけれども、その仕事は、各人の家が拂われてしまつて、それですつかり原形を止めないようになつておりますので、補償金を拂わなければならないということが一つある、これは特調の仕事です。これは新らしい別な渉外関係でも何でもない。国内関係の問題です。財務局かなんかでやるような仕事です。それが一番多く、それを早くやつて頂きたいということで、私も局長に頼んでおるわけです。その他港の接收にしても、大体向うはばつと手を引いてしまつてあとはそちらがやつでくれというふうになつて来て、昔と仕事の性質がうんと違つて来ていると思います。個個のケースに当つてそういう感じがする。ですから渉外関係仕事は昔と比べてそれはぐんと減つてしまつておる。各省ともやはりこういうことはあるのです。渉外関係は我々のほうでもやはり警察予備隊の仕事その他の関係でもいろいろあるわけです。併しそれは練達の士がおりまして通訳してくれますから大抵間に合うというようなことが多いんじやないかと思います。そういう意味でいろいろな機能並びに規模がうんと縮小いたしておりますので、先ほどの特調をこの程度でやつて行けるというような見込をつけられるのも無理はないと存じますが、決して民間に非常な迷惑をかけるというよりも、むしろ今のように一時に解除が殺到するから、その仕事をやるのに、てんてこ舞をするだろうということは、これは一時なんですが、どうしようかということについて今考えております。例えばよその官庁とも話合をする必要があるのではないかと思います。で、時期的に切羽つまつておるようなところもあつて、その辺のところはどうしようかということを政府部内で相談しておるわけです。何十万坪もぱつとやられますと、これはあとの整理が一時に殺到する、放つておきますと変なバタ屋とか、変なものがバラツクを建ててあとで管理がうるさくなる、なんか早く手を打たなければならない、こういうわけですから、これは或いはその他の役所が主体となつて一時にぱつとやるというようなことを非常態勢がやらなければいかんのではないかというようなことも考えております。御参考までに実情を申上げたわけであります。
  57. 根道廣吉

    政府委員根道廣吉君) 只今のお尋ねにちよつとお答えいたします。渉外関係はどうなつておるか、渉外関係といたしましては非常に減つております。これは渉外関係というのは英語で以て米人と話合いをする、こういうことを意味するとしますならば非常に減つております。その場合に今よりずつと以前でありますと、長官次長、或いは部長等が軍の余り上でない人に再三呼び付けられるわけであります。私はできるだけ出て行かんことにいたしております。昨年以来余り出て参つておりません。従いまして、その点につきましてはそんな困難はないだろうと、今、野田大臣の言われましたように私もその点は考えております。ただ何分にも調達庁関係する仕事というものは国民の全般に関係するものでございまして、種類が非常に各種に亙ります。そういう意味の対外的の折衝が非常に多いのであります。又一面国会のほうにおきましては、恐れ入りますが、私が委員会で呼ばれますのが衆参両院約十三ぐらいございます。到底一人の体では次長があつてもこれは間に合いません。そういうようなことでできるだけ出ておるのでありまするが、半分は到底廻り切れないのであります。  それから又次長云々の件につきましての関連でございますが、一番困難いたしますのはやはり対外的の、対外折衝であります。特にそれは労務関係の問題について多いのであります。これが労働問題に関しては労務を部長で一切長官を代表してやるということがあり、それを動かさないで済むならば長官の職務は割合に楽であります。併しこれがなかなかそう参らんのであります。そうして又国会に私が出席しております間にも再三面会の要求があります。これを防ぐためにどうしても代りに次長に会つてもらうというようなことがあつたわけであります。併しながら今後その場合に部長が全権を持つて長官の代りにやるということで物事を運んで参りますれば、必らずしも次長なくしては労務問題が困るということは言えない、かように考えております。
  58. 楠見義男

    ○楠見義男君 実は私は今次長問題の、これで私の質問が入ると仕事のボリュームがもつと掘下げられたと思うんですが、次長問題が出ましたから私のお尋ねするのはその間に挟まるものとして一つのお答えをお願いたいと思います。お答えがすぐできん場合にはゆつくり御研究になつても構わんと思います。私はこのまあ通産省の條文の出ておるところでもお伺いしたんですが、調達庁のほうからもお伺いしたいと思うのですが、私は通産省の條文のところで物資の供給に関することですが、物資の点と、それから労務の点と、物資労務に見合う決済代金の点と、三つは分けてお尋ねいたしたいと思います。  物資の点でありますが、物資は先ず数量の調整というようなことが起きて来る必要があるのでないか、それからその価格の当否という点を考えなければならんのでないかと思うんです。数量の場合におきましてこの直接調達になると日本の内地の需要と、鉄材とかその他のものにつきまして、これは電気の問題につきましてもこの直接調達するものとに優先の順序があるのかないのか、これを先ずお伺いいたしたいと思います。事務当局のかたで結構です。
  59. 辻村義知

    政府委員辻村義知君) 駐留軍が使用いたします物資の数量の調整についてお尋ねがございましたが、これは只今私から実はお答えする筋ではないと思いますが、合同委員会審議されております事情を洩れ承わりますと、日本経済に不利な影響を及ぼす心配のあるような重要物資につきましては、両国の間で適当に話合いをいたしまして、成るべく駐留軍物資調達によつて日本経済に惡影響を及ぼすことのないようにいたしたいという観点で、数量等についても、この観点から話合うことで協議を進められつつあるように伺つています。
  60. 栗栖赳夫

    栗栖赳夫君 いや、そう進んで来られると呉の問題もよほど簡單になるのですが、そうすると、日本側ではその場合に話合いをするのはどこの機関が事務をまとめることになりますか。
  61. 辻村義知

    政府委員辻村義知君) そうした手続につきましては、まだきまつておりませんよう伺につております。
  62. 栗栖赳夫

    栗栖赳夫君 そうすると、きまつておらんじや済まん、調達庁はお急ぎだと思います。きまるまで待つたのではいかんのじやないかと思うのですが、そこで私は政府としては、或いは野田建設大臣にお尋ねしてもいいのですが、調達庁が事務的にはこれに当るべきではないか、主としてですよ、思うのですが、如何でございましよう。
  63. 野田卯一

    国務大臣野田卯一君) 今の問題はいろいろなものに、物質の点お挙げになつたのですが、物資の点につきましても合同委員会合同委員会で今の問題を取上げているはずであります。勿論例の資金を使う場合でも、資金の使用計画というものは向うで立てて日本側に示すことになつています。そういう点から大きなものについては又そこに問題が出て来るわけであります。そういう点を合同委員会でまあ取上げてやつておりまして、今栗栖委員お話はそれをどこでやるかということでございますか
  64. 栗栖赳夫

    栗栖赳夫君 私はね、もう一度言いますと、先ずこれは計画というものが一つなければならんと思うのです。これは私いつも言うアダム・スミス流の自由経済をおやりになるのじやないかと思うのです。それから実際の行為が要ります、契約するとか、何とか。それからあと支拂いというものが附いて来ると思うのです。その計画は誰がされるのか、それから実際の行為についての例えば直接調達すれば、そのときに、物資はこの分はいかん、日本が迷惑にならんようにしようということであれば、そのとき誰がいかんと言うのかということを物資について今お尋ねしているのです。これは或いは御研究になつて調達庁をあけるまでの仕事の分量、次長を置いか置かないかという問題、結局これを結論付けようと思うのですから、お考えをまとめて頂いてお答え頂いてもいいのです。それであれば私の問題点を次々挙げておいてもいいと思うのです
  65. 野田卯一

    国務大臣野田卯一君) 調達庁が企画的な調達事務に当るので、今例えば米駐留軍がどういうものをどういうふうに調達しようかという調達計画でこういうことをいたして、どの程度日本側に示すかという点がある、それを調達しまして金の支拂いをします。支拂計画が立つわけですから、これに関連してこういうものを調達する、こういうふうに金が要るのだ、そういうことに相成るかと思うのでありますが、例えばこういう電気の機械なら電気の機械をどうするかということになれば、これはむしろ通産省なら通産省というところのほうがよくわかる、それから土木のほうであれば建設省でもわかる、そういうふうになつて、若し日本経済に大きな影響を及ぼすようなことをすれば、合同委員会には各部に関連がありますから当然相談があると思います。
  66. 栗栖赳夫

    栗栖赳夫君 それで私は昨日質問したように、通産省では調達庁所管にかかるものを除くと思うのです。そうすると調達庁と、通産省でまとめるのが本当だと思う。「総括」という字句があります。そして除くとあるから、そこが二元的になるんじやないか。それから調達庁はどれだけ関與されるか、ちよつと読んでみますと、「條約に基いて日本国に駐留する外国軍隊日本国に在留する外国人等に対する物資の供給及び役務の提供に関する事務を総括すること。」、これはよくわかるのです。そうして括弧して、(調達庁の所掌に係ることを除く。)とあるのです。そこで調達庁にはこの種のものはこの條文には入つておらないがやらなければいかんのじやないかということを私お尋ねするわけです。それには物資の量の点と適正なる価格で行くかどうかという点をおやりにならなければいかんのじやないか。それからそういう直接調達した場合には、そういうものをどこが報告を受けるのか、その報告がないというと数量の調整その他も日本はただ盲でおるだけであつて、これはちよつといかんじやないかということが言えるのではないか。いかんじやないかというのは通産省で言うのか、除くとあるから調達庁で言われるのじやないか、調達庁は何もそういう権限はないのじやないか、権限問題、法律問題を言うのじやないが、次長仕事はかなりこういう点でも大きくなつて来るのじやないかと思うのです。
  67. 野田卯一

    国務大臣野田卯一君) ちよつと今の点は私問題があると思うのです。物動計画に当嵌まるようなどういう計画を立てて、それからどこで調達するかという、結果を報告しろというように、特別駐留軍調達についてそう言格にやれるかどうかという問題があるのです。日本経済の全体で五兆という国民経済の中から千何百億というものを使うわけですが、それについてやりますと、民間のこともそれは合せて見なければならん、それから政府の全体のものとも合せて見なければわからんということに理窟を言うとなつてしまう。昔の物動計画的なことを認めて行くか行かないかとうことについては、又政府部内においてもよほど考慮を要するものがあるのじやないか。だからそれは莫大な計画量になるというなら別ですけれども日本経済の中で行けるという程度のものでありましたら、全体の金額は大体わかつておりますので、日本経済を掻き乱すほど大きくなつて行けば問題でありますが、そうでないと、そこまでやかましく言つていいかどうかという問題があるのではないか。ですから大体の計画で非常に問題になりそうなものは当然向うでも、相談はありましようが、日本でもそれにタッチする必要があると思います。大体日本経済でこなして行けるものであれば、條件とかいろいろ変な問題があるでしようが、そういうことは別としてやつて行けるのではないか、それを特調で物動計画的なことをやらせるのか、具体的にきまつた場合にここで措置するということになるのではないかと思います。今のお話の点でちよつと感じましたので申上げます。
  68. 栗栖赳夫

    栗栖赳夫君 そこで私さつき一つ次長問題が起る前に申上げたかつたのは、今大臣のお尋ねも、それから質問も、多くは国民経済的な面からこれを見ておられる、私が今質しているのは、国民経済的な面からと、それから決済の点は、これは国家の財政が相当負担するのですから、国家財政見地から又見なければならん。国家財政見地から日本の分担分について直接調達をする場合に、国民経済の面では大体よくても国家財政の面ではこれはチェックもでき、価格も適当かどうかということを相当考えなければ、政府が国会に対する、又国会議員が国民に対する責務が果されんことになる、私はこの直接調達は独立云々という大臣の説明はその面においては賛成なんです。併し国家財政、国家の資金がそれだけ出るのであつて、これをどうチェックするか或いは投資をするか、こういうことの面において全部ではないのですけれども日本の分担分についてはどうされるか、そういう点についてもさつき申上げましたような点を相当やつておかなければいかんのではないか、こういうように考えるわけであります。
  69. 野田卯一

    国務大臣野田卯一君) 私御趣旨はよくわかりますが、或る程度やはりアメリカを信頼しなければならんと思うのです。向うが買うものを一々値段を調べて、これでいいというので許可する行き方はこれは考えなければならんと思うのです。各省予算で使う場合も、各省で買入れるものはチエツクしておらない。各省は自分の判断で買つておる。又発注しておる。それを第三者のほうでこの省はどうと一々チェックするということはやつておりません。これにアメリカ軍全体にそういうふうな濫費をしないように要望すると共に、やり方を見ておりますとわかりますから、注文は幾らで受けるかということは大きなものはわかりますから、そういうことがあれば反省を求めるとか、何とかというふうにすべきであつて、一々の問題を判断してチエツク・システムでやることは政府部内でもやつておりませんけれども、それをアメリカだけに求めるということも何かむずかしいのではないかと思う。又或る程度信頼してやつて頂いて、併しよく事情を見ていればわかりますから、いろいろな問題が起れば、又起りそうであれば、いろいろと反省を求めたり、注意をしてやつて行くというようにやつて行けばいいのではないかと思います。こちらは分担でやつておりますから、それはでたらめにならないように注意して行くことになつてはおります。
  70. 栗栖赳夫

    栗栖赳夫君 私一々というわけじやありませんが、過去の例によつていろいろな問題も起きているのです。だから必要なるチエツクということは私は必要じやないかと思う。そういう場合に一体予算を大蔵省から配付して、どういう経路においてどこの省が、通産省も相当ありましようけれども調達庁もそういうことはやらなければ、責任を負つて国家の金を……、これはやらなければいかんのじやないかと思うのですが、その点はどうですか
  71. 野田卯一

    国務大臣野田卯一君) 調達庁が自分で調達されるものについては適正な値段で買つて会計法上の面でやられる義務はあると思います。併しそれ以外のものについては直接調達庁が触れない問題については責任はないと思います。
  72. 栗栖赳夫

    栗栖赳夫君 解釈論としての今お話ですが、調達庁が立法問題として現われているのですから、その点を調達庁に與えておかないと困るのではないか、盲点ではないかということで、少くとも我々がそういうものを直接調達するということは、国家の金を使う点においては、相当我々はこの面においては私は反対の点がある。一般国民経済に及ぼす面の点と国家財政に及ぼす面があると思う。今大臣のお話は法の解釈論ですけれども、立法としては権限をどこにも與えておかんようなことではいかんのじやないか。そういう点で先ほど言つた盲点があるのじやないか。又そういう点を直接調達庁が知らんというのでは困るのではないか、そういう点、次長仕事というものが今まで議に上らなかつた質疑応答の中に上らなかつたものがあるのではないか。こういうのが最初から聞こうとした点であります。それから次長はそれで大丈夫か。それでやれるかどうかという問題になるのです。
  73. 野田卯一

    国務大臣野田卯一君) その点はもう一遍問題を取上げて行きたいと思いますが、前の終戰処理費なら終戰処理費の場合におきましても、終戰処理費の使用は、その終戰処理費を使つて調達する実務は調達庁がやつて来ておられるものが多いのですが、併し終戰処理費を幾らとするかということにつきましては調達庁は無関係なんです。これは日本政府と進駐軍とが話合つて大蔵省が……。そうしてこれは司令部からこうしたいと言われて、それが中心になつてきまつたということになつております。今までの終戰処理費が仮に六百五十億なら六百五十億の金を出すかどうかということは、これは大蔵省と駐留軍との折衡で、今後どうなるか知りませんが、向うとこつちの政府ということできまつて行くのであります。その内容に調達庁がタッチするということはないと思います。調達庁はこれを調達してくれということについて調達する義務を遂行するという任務にとどまるのであります
  74. 栗栖赳夫

    栗栖赳夫君 終戦処理費は大蔵大臣をしていた私と野田さんとやつたのですが、内容がわからないために非常に苦労した。今度独立したのですから、そういうことがあつてはならない。私は事前の計画その他のみならず、使つたことが適正かどうかということはどうせ会計検査院が調べる。その前に役所として一応の責任を負うものがなければならんのじやないか。各省に跨るのもありましようが、調達庁にもそれがなければならんのじやないか。それはどこに規定がありますか。私がお考え願いたいというのはその点なんです。
  75. 波多野鼎

    波多野鼎君 関連して……。ジヨイント・アカウントは向うに任しきりじやないと思う。日本の分担分はある。そうすると、どこで総括して国会なりに報告するという恰好になるのですか。
  76. 野田卯一

    国務大臣野田卯一君) これは大蔵省の主計局が主管するのじやないかと思います。主計局でなければ他の局で……。
  77. 波多野鼎

    波多野鼎君 現実に金を使うのは今栗栖さんが言つたように調達庁でもあり、又通産省でもあるでしよう。通産省なり、調達庁なりから大蔵省へ報告しなければならない。そういう責任者は調達庁は誰かというのです。
  78. 野田卯一

    国務大臣野田卯一君) 調達庁調達庁仕事としてやる金ですね。例えば動産の賃貸料を拂うという金はその防衛支出金の中から調達庁に廻されて調達庁が支出するということになつてくるわけです。アメリカ自身が使う場合計はアメリカの勘定に入れられるということになつわけでも。
  79. 栗栖赳夫

    栗栖赳夫君 今波多野さんとの質問でよくわかるのですが、大臣の言われたようなことは国庫の金を使うのに困るじやないか。これでは何をすることもできないじやないかということが、私どもの全体を通じての質問の最後の決着です。お考えを練つて何して頂けばいいのです。調達庁に何もないのはどうだろうという点です
  80. 辻村義知

    政府委員辻村義知君) 只今の御質問について大臣から御説明がございましたが、私少し事務的に補足をしておきたいと思いますが、先ほど申上げましたように、駐留軍需要する物資のうち、木材とか、石炭等の重要物資につきましては、調達物資の報告量なり、何なりについて両国が話合をするということになると思います。その他の物資はこれは軍が直接調達をやるわけでありますから、購入の数量、時期、価格も軍が自由にやることになります。
  81. 栗栖赳夫

    栗栖赳夫君 ちよつと……。今の自由にするというその尻はどこに現われて来るかというのです。国庫の金を使つて負担してやるものもあるのです。その点を調達庁でなさるのか、何省でなさるのか、通産省にはちよつと規定があるように思うのですが、調達庁にはないじやないか、こういう点を私は言つているのです
  82. 辻村義知

    政府委員辻村義知君) 購入した物資に関します情報は、購入後駐留軍のほうから日本政府、大蔵省だと思いますが、こちらへ報告があることになると思います。なお先ほどの御質問に関連いたしますが、重要物資につきましては、そういう両国の相談の上で軍が直接購入することになると思いますが、そういう相談を日本側が受けまする場合に、どこがそういう相談に乗るかということになると、これは所管によりまして、農林物資であれば農林省、通産物資であれば通産省が、日本政府としての意見を決定いたしまして、これを軍側に連絡することになると思いますが、そうした各省に跨がる物資を軍が各省別々に協議することになりましては、非常に不便でありますので、むしろ日本側が取りまとめて、そうした協議のチヤンネルになるような機構が必要ではないかというようなことで、今具体的な方法につきまして、合同委員会で御協議中のように伺つております。若しこれが通産省がそういう各省に跨がる連絡事項を扱うことになれば通産省の事務ということになりますし、調達庁が扱うことになれば調達庁の事務ということになりますが、これらはなお検討中でございまして、未決定であります。
  83. 栗栖赳夫

    栗栖赳夫君 それで私の尋ねる趣意がはつきり出て来たわけですが、そこで私もあなたと結論は同じで、決定するのを待つて通産省とか、こういうものを本当はきめなければならんのです。併しそれじや会期等の関係もあろうと思いますので、その要領でも大臣から報告してもらうとか何とかして、ここの態度をきめたいと思うのです。ところが通産省のところには調達庁の所掌を除くとあるものですから、そこでこの辺の私字句は……、建設的な質問をしておるのですから、字句はよくお考えになつて一つ政府全体の意向をまとめて、どこでまとめるか、まとめるのが必要だ。調達庁がおまとめになるのか、或いは通産省がおまとめになるのか、やりよいようにしてお図りを願いたいと、こういう趣意なんです。これが私の質問の趣意でございます。仕事の分量等は、この次長が要るかどうか、調達庁へ来れば次長が要ると考えられる点もあるかも知れないと、こういうふうに考える次です。私の今日の質問を終ります。
  84. 赤松常子

    ○赤松常子君 簡單ちよつとお尋ねしたいのでありますが、只今政府の御説明を聞いておりますと、直接調達になると大変日本利益だからというような楽観的な意見でございますが、私ちよつと心配なことがあるのでございます。それより前に先ずお尋ねしたいのでございますけれども間接調達自体には、業者発注先との交渉なり、或いは価格の決定なりにどの程度調達庁は関考なされていたのございましようか。
  85. 根道廣吉

    政府委員根道廣吉君) これまでの終戰処理費よります調達について申しますると、調達庁即ち日本政府であります。日本政府が各個の業者契約によりまして、物資調達役務調達、その他の調達をやつたわけであります。物資調達その他につきましては、一般に競争入札であります。これは国内の会計法規に従つてつて来たところであります。で、その契約の結果、いろいろな問題が起る場合があります。その場合は契約に基き、その他関係法規に基きまして、その分は処理されて行くわけであります。最後的には、場合によりましては、日本政府が被告になつて業者から裁判等によつて決をとるというような場合もあるわけであります。直接調達のほうは別といたしまして、今まではすべて日本政府が責任を負つて日本の国内法規によつて全部処理して来たと、こういうことであります。
  86. 赤松常子

    ○赤松常子君 実は私心配な点と申しますのは、一昨年私アメリカに参りまして、ワシントンに参つたのでございます。そういたしますと、日本に進駐しておられた人々が相当数帰つておられました。ところがその人々は、相当日本に進駐しております間に一財産作つてつておられるのです。家を作るとか、或いに誠に立派な支那の陶器であるとか、日本の美術品であるとかいうものを部屋に一ぱい飾つてありまして、私は非常にそれを見まして悲しく思い、憤りを感じたのであります。そういう間接調達時代でも、そういう金というものがどういうルートで入つたかということは大体想像できるのでございますけれども、これが直接調達になりましたら、いよいよ野放しになりまして、そこに不正な贈賄、收賄ということが行われるように私思うのでございます。一銭一厘でも何しろ日本の資産というものが、そういうふうに不正なルートで流れて行くということに非常に私は警戒しなくてはいけないと思うのでございますが、そういう点どういうふうにお考えでございましようか。又占領中そういう点について政府はお気付きでございましたでしようか、どうだつたでしようか。
  87. 根道廣吉

    政府委員根道廣吉君) ちよつと速記をとめて頂きたいと思います。
  88. 河井彌八

    委員長河井彌八君) 速記をとめて……。    〔速記中止
  89. 河井彌八

    委員長河井彌八君) 速記を始めて。
  90. 波多野鼎

    波多野鼎君 改正法律案第六條の第十五というところに、「特別調達資金の経理に関すること。」とあるのは、具体的内容はどういうことですか。
  91. 根道廣吉

    政府委員根道廣吉君) 特別調達資金と申しますものは、昨年前半来労務の調達契約によつてつておりますその資金であります。形におきましては、この資金は労務ばかりでなしに、需品及び役務となつておると思いますが、それを米軍契約して、調達するに際しての運転資金的なものに使うという意味の資金であります。これが現在七十五億円あります。そのほか借入れることができる金額として五十億くらいあります。それだけの枠を以て動かしておりまするが、現在これを動かしておる対象は労務の調達に関するものであります。
  92. 波多野鼎

    波多野鼎君 それから次の、今お話が出たが、需品というやつですね、この十七にある「工事並びに役務及び需品の調達」、この需品の調達は、先ほどからもお話があつたように通産省でもやりますのですね。これは何か品目によつて違いが出て来るのですか、所管の違いが……。
  93. 野田卯一

    国務大臣野田卯一君) 通産省の設置法関係は私は存じませんのですが、需品と申しまするところは、すべての需品を意味するわけであります。若し通産省のほうにそういう関係がありますれば、それらの調達全般に関する総括調整のほうを指しているのではなかろうかと思います。
  94. 波多野鼎

    波多野鼎君 長官どうですか、この点……。通産省の設置法の十四号、先ほど栗栖さんが引用された條文ですがね、「物資の供給及び役務の提供に関する事務を総括する」とあるのだが、その場合の物資と、ここに言う需品とは感じが違うのかどうか。
  95. 野田卯一

    国務大臣野田卯一君) 間接調達をやる場合には、需品の間接調達をやる場合には、全部調達庁でやることになつております。それから直接調達につきまして、通産省関係のものが相談を受けることがあると思います。その相談を受ける、取りまとめをするということがある場合の所管局というものを通産省の設置法で規定いたしておるのではないかと思います。
  96. 波多野鼎

    波多野鼎君 そうするとここの第六條の十七にある「需品」というのは間接調達される需品、軍需品という意味なんですね。そうすると石炭と木材はどうなるのですか。
  97. 辻村義知

    政府委員辻村義知君) これは先ほど長官からも御説明申上げましたように、調達庁の権限としては間接調達もできると、いうことになつておりますので、それが第三條の規定でございますが、その第三條の規定を受けまして、只今御質問の第六條では総務部の所掌事務を規定しておりますので、そういう間接調達をやることになります。間接調達をやる場合には調達庁がこれに当る、調達庁においては総務部がこの職務を担当するという規定でございまして、現実には繰返し御説明申上げましたように、全部直接調達、目下のところ直接調達でございまして、間接調達の品目はないのでございますから、現実の問題といたしましては、ここに該当する品目はないわけでございます。
  98. 波多野鼎

    波多野鼎君 先ほど話に出ましたね、駐留軍が直接調達する場合でも日本側と相談して調達する、合同委員会なんかで相談して調達する、その品目としては石炭とか、木材とかいつたようなものを挙げられましたが、この日本側と相談して調達するというものは実際は間接調達のことじやないのか、こちらへ来るつもりじやないのか。
  99. 辻村義知

    政府委員辻村義知君) 私の説明が足りなかつたと思いますが、重要物資について両方が相談をいたしますのは、その数量とか、購入時期のことでございまして、現実の調達は全部軍が直接その協議の線に基いて実行いたすわけでございます。
  100. 波多野鼎

    波多野鼎君 そうしますと十七の「調達に関する」ということは今生きていないのだ、ただこういうことを書いておくのだということですね。
  101. 辻村義知

    政府委員辻村義知君) その通りでございます。
  102. 波多野鼎

    波多野鼎君 それじやそれと関連して長官ちよつと聞いておきたいのですが、通産省の問題の「物資の供給及び役務の提供に関する事務を総括する」というのはどういうことですか。
  103. 野田卯一

    国務大臣野田卯一君) 調達庁の所掌にかかるものでないというのは、今の説明にありましたように具体的なものはない。あり得るかも知らんという意味合でこういう留保を付けておると思われる。それから総括するというのは、通産省の中で総括するという意味合ではないかと思います。
  104. 波多野鼎

    波多野鼎君 報告を受けるということですか。
  105. 野田卯一

    国務大臣野田卯一君) 相談をしたりいろいろなことをするわけですね。みんな各部の人を集めて連絡するとか、まとめるとかいうことだろうと思います。
  106. 栗栖赳夫

    栗栖赳夫君 私はこれはまだはつきり連合の会議でも十分きまつておらんのに條文が出て、こういうように予想してやつておられるのじやないかと思います。これは国会の責任上止むを得ないところもあるのじやないかと思うのです。そうすれば秘密会か何かで、その会議の模様その他を、必要があるなら秘密会にして模様か何かをお話を願うというと、この点がはつきりいたしまして、我々もおよそこのくらいの見当が付く、こういうようになるのじやないかというようなことがわかるのじやないかと思います。それを一つ提案しておきたいと思います。
  107. 波多野鼎

    波多野鼎君 それに関連して、通産省、農林省あたりから、合同委員会に出ておる人を呼んでその点の話合いを聞きたいのです。農林省からは農地局長が出ておりますね。
  108. 河井彌八

    委員長河井彌八君) 今委員長のところでわかりましたのは、東京調達局長で合同委員会調達部長の安田君が出ておりますから一応説明してもらいます。速記をとめて……。    〔速記中止
  109. 河井彌八

    委員長河井彌八君) 速記を始めて下さい。
  110. 辻村義知

    政府委員辻村義知君) 例えば軍人の家庭なんかで、自分の私費で雇いまする労務者は別といたしまして公の関係で雇用される労務者は全部調達庁調達をいたします。
  111. 鈴木直人

    ○鈴木直人君 そのときの支拂いする金は駐留軍のほうから支拂いますか、或いは日本政府から支拂いますか。
  112. 根道廣吉

    政府委員根道廣吉君) この支拂は日本政府調達資金を以て賄います。そのあとにおきまして契約に基いて米側よりドルを以て償還を受けます。
  113. 鈴木直人

    ○鈴木直人君 そうしますと、駐留に必要とするところの経費は日米間において分担をして、日本側が分担すべきところの部分については一括して米国にそれを渡して、そして米国の資金に入れた分のうち労務に必要な部分のものを米国のほうから直接支拂うのであるが、あらかじめ日本政府自身の金を調達局の中に持つてつて、それでどんどん支拂つて行くが、その穴埋めは全部あとアメリカ側から渡される、こういうことになりますか。
  114. 根道廣吉

    政府委員根道廣吉君) 労務に関しまして、全部向うから日本の要しましたものは、その関係業務の人件費、事務費等一切を含めて償還をされます。
  115. 鈴木直人

    ○鈴木直人君 そうしますと、先ほどの七十五億、五十五億というような金は、いわゆる駐留に必要とする分担金をアメリカ側の勘定に入れないで、日本政府だけが日本の金を持つているというものではなくて、全部一応アメリカ側にそれをやつて、そうして又向うのほうから穴埋めとしてもらう、こういう金ですか。曾つての占領軍におけるところのものはそういう意味でなくて、日本政府の中に入つていて、日本政府独自の経理で以てそれを支拂つてつたようですが、それとは今度は違うのですか。
  116. 根道廣吉

    政府委員根道廣吉君) 今の資金は日本政府の直接の予算ではございません。いわゆる資金でございます。国庫余裕金の中から、それだけの現金を持つて来て支拂の用に充てるということであります。又その金額及びそれによつてアメリカから償還を受ける金額というものが日本の負担分と見合になつておるということに直接関係は私はないと思います。
  117. 鈴木直人

    ○鈴木直人君 そうしますと、間接調達というものと直接調達というものの中に、間接調達の場合に、日本政府自身が金を持つていて日本政府自身の金で支拂つて行くという間接調達というものはないということになるわけですね。
  118. 野田卯一

    国務大臣野田卯一君) 予算からという意味だけですね。
  119. 鈴木直人

    ○鈴木直人君 予算にそれが入つておりましても、その予算は分担金として全部アメリカ側にそれを一応納めてしまう、こういう形になるのであつて、アメリカ側に納めないで、日本の予算の中にあつて日本の予算が独自にそれを支拂うということは今後はない……。
  120. 根道廣吉

    政府委員根道廣吉君) 只今のところ、アメリカ側に日本のお金を引渡してしまつて間接調達若しありとすれば、その金を使う、それ以外の形態は現在のところないわけであります
  121. 野田卯一

    国務大臣野田卯一君) 間接調達のほかに家賃の支拂があります。賃貸、それは日本政府が直接予算から拂う、これは間接調達とはちよつと違います。
  122. 松原一彦

    松原一彦君 伺つておきたいのは、今回の整理がどこまでで切れるか、よくはわかりませんけれども、今回調達庁で一番減員が多いのでありますが、減員せられる整理人員は約二千人、その中で建設省、保安庁、営繕のほうに廻る者が五百人、保安庁文官が百人、保安庁隊員がおよそ百人といつたような配置転換があるやに聞いておりますが、残り千三百人に対しての何かの職業上の御斡旋等につきまして、お見込が立つておりましようか。立つておりましたならば、いずれの機会かに一つ詳しくお話を頂きたい。これは非常に不安を感じておる大きなものの一つであります。経済調査庁では一千百九十四人というものが行政管理庁のほうへ、すでにこの行先がきまつておりまして、実際の整理は七百四十七人となつておるが、この調達庁のほうが一番出血が大きいのですが、これに対するお見込が立つておりますならば、今でもよし、又後の機会でもよろしうございますから、承わつておきたいと思います。
  123. 辻村義知

    政府委員辻村義知君) 今回の行政整理の関係で、只今お話のごとく、調達庁は約二千名の減員をいたすわけでございますが、その中で実は今お話のありましたような、ほかの省にと申しますか、移管できる職員というのは一人もございませんので、全部整理の対象になつておるわけでございます。併しながら建設省や予備隊で相当増員になりますので、できるだけそのほうに吸收して頂きたいと考えまして折衝を重ねておる次第でございます。或いは試験をお受けになり、又個々の選考を受けまして、できるだけ多くとつて頂きたいと、かように考えて御相談申上げております。幸いに建設省も警察予備隊のほうも非常に好意を持つて頂きまして、十分我々の相談に乘つてつて頂いておりますので、相当の人数はこの二つに吸收して頂くことができると思います。併しこれとても実は数の上から申しますと、どのくらいになりますか、非常に大きな期待は目下のところ持てないのではないかと考えておりまして、大部分のものは今後それぞれ就職先を斡旋いたしまして、生活に心配のないようにしなければなりませんので、こうした時局柄でありまして、こうした多数の人間をそれぞれ生活の心配なく就職の斡旋ができるかどうかということにつきましては、実のところまだ確たる自信がございませんので、非常に苦慮をいたしておりますような事情でございます。
  124. 河井彌八

    委員長河井彌八君) それでは調達庁設置法の一部を改正する法律案審議は本日はこの程度にとどめて置きます。   —————————————
  125. 河井彌八

    委員長河井彌八君) 諸君にお諮りをいたしたいことがございます。会期も非常に切迫しつつあるのでありまして、議案は御承知通りたくさんあるのであります。そこで明日も日曜でありまするが、委員会を開いてはどうかと委員長考えておりますが、諸君の御意向を伺います。
  126. 楠見義男

    ○楠見義男君 私は率直に申上げて余り賛成しないのですが、という意味は、相当疲れておるのですよ。私自身も疲れておるのですが、各委員のかたが疲れておる。そこでこういう状態でやつてつたら、普通清新な休まつたからだで一時間でできるものが頭が動かないと二時間も三時間もかかる。むしろゆつくり休まして頂いて、そして時間をきちつと始めてやつて頂いたほうが私はいいのじやないかと思います。
  127. 鈴木直人

    ○鈴木直人君 私は委員長のお考えのように実は賛成をしたわけでありますが、それは会期中にまあ成るたけこの結論を得たいという念願もあつて、成るべく時間的に多く能力を使いたいという考え方からなんでありますが、今楠見君のお話のように一日休むことによつて、休まなかつたよりもより以上の能力を挙げることができる。こういう見通しであれば、問題は会期中に成るたけ結論を得るような方法に進んで行くための方向に進みたいのでありまして、そういう気持であります。
  128. 楠見義男

    ○楠見義男君 私は具体的に提案いたしますが、十時の開会というのが十一時頃になつてここで一時間とる、二時の開会が四時頃になつて三時間、三時間なら今日やつてしまつたほうがいいと思うのであります。三時間やりますれば、例えば今日連合委員会が四時に済めば、四時から七時までやるとか、そういうふうにやつて頂きたい。そういう提案をいたします。
  129. 栗栖赳夫

    栗栖赳夫君 今の一つ四時から七時までやつて頂きたいということにしてはどうですか。
  130. 河井彌八

    委員長河井彌八君) それでは明日はやらないという意味ですか、必要によつてやりますか、もう一辺相談しますか。実は事務局との相談等もありますから、早くきめたほうがいいと思います。  それから委員長としては甚だ申上げ兼ねますが、とにかく開会の時が毎日非常に遅れるので、私は非常に不満に考えております。私は諸君に対してもそういう感じを持つのみならず、政府に対しても強くそういうことを感じております。政府に対しては随分たびたびそのことは警告しておるのでありますが、現状かようなふうであります。
  131. 松原一彦

    松原一彦君 あなたのほうは決して遅刻なさつておらんです。私は知つている、遅刻しているのは委員ですよ、楠見君遅刻しないように定時に出勤して一つやりましよう。
  132. 楠見義男

    ○楠見義男君 私は一番早い場合が多いのですよ。
  133. 河井彌八

    委員長河井彌八君) それでは本日は一時から連合委員会の予定がありますから、それが済みましたら内閣委員会を続行いたします。それ故に、内閣委員会只今は休憩をいたします。    午後零時五十三分休憩    —————・—————    午後三時二十三分開会
  134. 河井彌八

    委員長河井彌八君) それではこれから内閣委員会開会いたします。  議題は、保安庁法案を議題といたします。
  135. 波多野鼎

    波多野鼎君 連合委員会の答弁の中に、従来の警察予備隊などで欠陷があつた点を補充したと、補充しなければならんという理由の第三として、従来は警察官等職務執行法によつて、武器の使用などが規制されておつたのを、今度六十一條以下で明確にしたと言われますが、従来のそれとの相違点を一つ挙げて頂けませんか。従来の警察官等職務執行法によつて武器が使用される場合と、今度の新らしい規定によつて使用される場合との違いの点を一つ挙げて見て下さい。
  136. 江口見登留

    政府委員(江口見登留君) その材料によつて御比較を願いたいと存じますが、一番重要でありまする、変つておりまする点は七十條でございます。七十條によりますると、警察官等職務執行法によりますると、武器を使用し得べき場合は、「犯人の逮捕若しくは逃走の防止」或いは「自己若しくは他人に対する防護」、それから「公務執行に対する抵抗の抑止」というような場合に武器の使用が認められているわけでございます。で、先ほど申しましたことについては問題がございません。最初に申しました点については同じでございますが、二番目に申上げました「自己若しくは他人に対する防護」、つまり人に対する侵害がある場合に武器を使用し得る場合を警察官等職務執行法は規定いたしております。ところがそれだけでは不十分な場合が考えられるわけであります。従いまして七十條をお読み下さいますと、その一号にも書いてありまするように、「職務上警護する人、」、それから施設又は物件が暴行又は侵害を受けたと、こういうふうに規定してございます。これらは例えば保安庁の建物自体が襲撃を受ける、或いはその他武器、彈薬庫等の問題もございまするし、或いは重要電源地帶と申しますか、そういうようなものも考えて、国民生活に非常な危險を及ぼすような場合のことも想定いたしまして、これらのような場合には武器を使用し得るようにしないと、保安庁を設けました趣旨に合致しないというような点が相違点でございます。
  137. 波多野鼎

    波多野鼎君 今の警察官等職務執行令ですか、法ですか、これは私よく知りませんが、ここに電源地帶があり、或いは又警察署などが襲撃された場合に、警察官の職務執行法によつては武器は使用できないのですか。    〔委員長退席、理事中川幸平委員長席に着く〕
  138. 加藤陽三

    政府委員(加藤陽三君) 現在の警察官等職務執行法によりますと、その第七條に「警察官等は、犯人の逮捕若しくは逃走の防止、自己若しくは他人に対する防護又は公務執行に対する抵抗の抑止のため必要であると認める相当な理由のある場合においては、その事態に応じ合理的に必要と判断される限度において、武器を使用することができる。」、こうなつておるのでありまして、施設に対する防護のため必要がある場合において武器の使用ということは警察官等職務執行法においては認めておらないのであります
  139. 波多野鼎

    波多野鼎君 そうしますと、警察官等職務執行法というものが少し変なような気がしておるのですがね。そういつたような建物、電源地帶など、相当これから危險な地位に陷る可能性がある。そういう場合にいつもこれが出て行かなければならない。警察官は出るわけに行かない。いつもこれが指導しなければならないということになりますか。
  140. 江口見登留

    政府委員(江口見登留君) 警察官等職務執行法の第七條の前文は先ほど申した通りでありますが、それに但書がございまして、正当防衛又は緊急避難に該当する場合或いはそれ以外の場合においては……ちよつと訂正いたします。只今のような施設に対して侵害がありますような場合でも、勿論正当防衛とか、或いは緊急避難とかというような場合におきましてはその警官察自体の判断において武器を使用することができることは、これは一般刑法の原則から来るとこであります。従つてそういう事態が険惡になる場合には、刑法の只今申上げた規定によつて警察官は武器を使用して参つたのであろうと、かように存じております。    〔理事中川幸平君退席、委員長着席〕
  141. 波多野鼎

    波多野鼎君 それでお聞きしたかつたのは、命令出動、第六十一條ですが、非常事態に際してこれは出動するものでありますが、そういうような或る警察署が危ないとか、電源地帶が多少不穏といつたような場合には、常にこれは非常事態であるというように判断して、これが出動しなければならんのであつて、警察ではどうにもならんという解釈でありますか。
  142. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) その点私からお答申上げます。たびたび申上げておりますが、保安隊又は警備隊の出動いたしまする際は、一般の警察力では收拾できないような事態が起つた場合に、これをより強力な保安隊、警備隊の実力行動によつて收拾しようというのがこの出動すべき場合であり、又出動の目的であります。従いまして御質問にかかるような電源地帶なり、或いは警察署の襲撃という場合におきましても、それが一般警察力の発動によりまして收拾できるような事態でありまするならば、例えば一度占領されましても、所在の警察力を組合いたしまして、直ちに原状回復ができるような場合、そういう場合は警察予備隊の出動すべき場合ではないというのが政府考えでございます。
  143. 波多野鼎

    波多野鼎君 今のような武器の使用の問題に関連してやはり問題が起きる。今のような御答弁では、非常に抽象的過ぎると思います。最近起きているような事態を見ていますと、初めから武器を持つて或る程度武装をして襲撃をするというようなことが大体計画的に行われているように思うのです。そうしてそういう暴徒と言いますか、それに対抗する一般の警察官の武器の使用は、緊急避難、正当防衛、これでなければできないということであれば、初めから相手は武器を持つてつて来るのですから、初めからこちらのほうも保安隊が出て行かなければならないような事態じやないかというのです。
  144. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 当初より相手が武器を持つて来ておる、そうして到底警察では手に合わんと認められれば、これは最初から保安隊が出るべき場合だと存じます。要はその認定の問題であると存じますし、又その場合におきましても、警察の準備の状態というようなものも相当影響を與えると思うのであります。例えば先般のメーデーの際におきましても、警察予備隊といたしましては、視察員を派遣いたしまして、事態の推移を見ておつたわけでございますが、大体警察力で処置できるだろうと、こういう見当を付けておりました。従つて出動のことはいたしてつおりません。併しいつ如何なる事態が起るかも知れないというので、一応待機の状態には置いておりました。併し出動には至らなかつたわけであります。
  145. 江口見登留

    政府委員(江口見登留君) 先ほど私七十條の條文だけを説明いたしましたが、七十條のほうは六十一條によりまして出動命令が下された場合でございます。それから七十六條をお開き願いますると、七十六條は、出動命令が下されなかつた場合におきましても、武器庫とか、彈薬庫とか、火薬庫とかいうようなものに対して襲撃があるというような場合におきましては武器が使用できる。この二つの條文が先ほどの御質問の警察官等職務執行法から変つた規定であるということを附加えてお答え申上げたいと思います。
  146. 波多野鼎

    波多野鼎君 それでは第六十一條の非常事態という概念は相当広い概念だというふうに理解していいわけですね。現状においては非常事態というのは相当広い概念だと……。
  147. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) これはその通りでございまして、丁度これと同じ字句は、警察法におきまして非常事態宣言の場合に用いてあります。それと同じ程度の観念であると思います。併し非常事態宣言が行われたということを要件とはいたしておりません。従つてあれよりも広いということは言えるかも知れません。
  148. 楠見義男

    ○楠見義男君 それでは私は逐條的に伺つて行きたいと思うのでありますが、先ず最初に第三條の二項であります。二項の終いのほうに、「長官の指揮監督は、それぞれ当該幕僚長を通じて行うものとする。」、こういう言葉が使われておるのでありますが、私はこの点を伺う前に間違つておるかもわかりませんが、こういう感じを持つておるので、その点から伺いたいのであります。それは例えば破壞活動防止法案等においては、政府は意識革命というものを非常に重要視されておる。その意識革命が漸次具体的な国民総武装蹶起というような最後の革命段階に来るということを非常に重要視せられて、その観点から、單に教唆、扇動ということにとどまらず、宣伝の部類に至るまで、例え破壞活動防止法の第三條の一号のハでありましたか、こういうようなことまで実は御心配になつてつておられる。ところが、一方再軍備の問題になつて来ると、政府はむしろ意識革命を助長しておられるのじやないかというような、これは行過ぎかもわかりませんが、憲法で武力の保持は禁止している。又再軍備はできない。これは経済的の問題もありますが、憲法上禁止されておる。ところが実勢は、警察予備隊というものについても、これは議論があつて、現在はすでに軍隊だというような見方もあるし、私ども必ずしもまるまるそれに同腹はいたしませんけれども、そういう議論もある。ところが今回更に、又さつき申上げたように、警察予備隊と海上保安庁と従来任務が違つておる、そういうものも一緒にして、そうして旧陸海軍当時のようにいかめしい幕僚総監部というようなものでやつて行く。そこに一方では意識革命を恐れて鎮圧することを考えながら、一方では意識革命を助長するがごとき態勢が逐次とられつつあるのではないかというような感じを持つのであります。旧陸海軍当時には、御承知のように例えば三長官が意見が一致しなければ陸軍大臣もきまらなかつた、すべてものが動かなかつたと、こういうような時代もあつたことは御承知通りなんです。こういうことがだんだん逐次下克上となり、或いは又政府と独立しての力強い動きとなつて今次の戰争に引ずり込まれたと、こういうようなことなのでありますが、そこでここにある「長官の指揮監督は、それぞれ当該幕僚長を通じて行うものとする。」ということは、これは官庁経験者としては当然常識的なものだと私は思うのですが、例えば大橋国務大臣が今の長官とか、次長を通ぜずに、直接函館の部隊長とか、どこどこの部隊長に命ずるということは、私は官庁常識上考えられないことなんです。普通の行政機関でも、大臣がいろいろなことを次官、局長を通じて命ぜられるということは常識上当然のことであるにかかわらず、特にここに当該幕僚長を通じて行うものとするということが書かれた点が、非常に大きな意味がそこに蔵せられておるのかどうか、この点が非常に心配になつて参るのであります。それは保安庁法案についての政府委員説明にも、これと同じように、それぞれ当該幕僚長を通じて行うものとしておると、これと同じことを説明にも言つておられるのでありますが、この点が特にこういうふうに書かなければならん理由がどこにあるのか。以下逐次各條について伺いますが、こういう思想がずつとあとのほうまで、例えば十條にも……、あとで伺いますが、そういう思想が出ている、特にこういうものを置かなくてもいいんじやないか。それから現在の予備隊令にはかかる規定はないのです。ところが警察予備際を運営して行く上において、こういうようなものがなくて非常にお困りになつたという例があるのかどうか、これらの点を一つお伺いしたいと思います
  149. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) この幕僚長を通じて行うということは、幕僚長を通じなければ長官の指揮監督の命令は各部隊に出ないということを書いたわけでございます。従いまして内局の局長とか、或いは次長、こういう者も保安庁長官一つの補佐機関でございますが、こういうものから部隊長に対して命令が出ることはない。常に部隊長の命令は長官より、幕僚長を経て部隊に行く、そうしてそれは長官の名の下に幕僚長が指揮監督を事実上取り行うということを意味するわけでございます。この点が一般の行政官庁における場合とは多少違うかと存じます。例えば一般の行政官庁が地方機関に命令を出します場合において、その所掌事項に従いまして会計事務ならば官房長なり、或いは官房会計課長から伝達をする。それから各局の実体的な事務の場合には各局長が伝達をするということもあるわけでございます。併しこの保安隊、警備隊の場合においては、内容の如何を問わず、一切保安庁から出る部隊に対する命令というものは、これは幕僚長を経なければ行かない、こういう趣旨でございます。これは部隊の統制というものを飽くまで厳格にして一糸乱れざる統制を保つ上からするというような必要事項であると考えまして、かような規定を置いたわけでございます。  次に警察予備隊においては、同様の規定が予備隊令のうちにないが、それで不都合がなかつたかどうかという御質問でございますが、実は警察予備隊令には部隊及び幕僚機構については政令規定してございません。その後漸次整備いたすに連れまして、幕僚機構というものを作つたわけでございますが、これは警察予備隊においては総隊総監或いは総隊総監部というものを本部の直属機構として別途に作りまして、そうして爾後すべての指揮監督に属する命令は総隊総監を通じて行うことに今日いたしているわけでございまして、この保安庁法と同様の規定はございませんが、実際上の必要に基きまして、すでに一年半の間実施いたした事柄でございます。
  150. 楠見義男

    ○楠見義男君 今お述べになつた総隊総監部を通じてやつているということは、これは先ほど私が申上げた官庁常識として当然総監部を通してやつて行くのであつて、従つて現在の警察予備隊令には総隊総監部を通じて行うものとする。こういう規定はないけれども、再三申上げるように、官庁常識としてそういうものは行われているのじやないか、だから今お述べになつた各省の会計課長とか、或いは局長なんかというものがやることは、農林大臣とか、或いは通産大臣とかいう命令、指揮監督とかいう場合には、これは局長とか、何とかというのじやなしに、やはり大臣名とか何とかでやつているので、これは内部的には委任事項を出すような場合には訓令とか何とかで、そういうことが明らかになつているので、その論じやなしにむしろ現在も官庁常識として総隊総監部を通じてやつて行く、而もそれは規定はないが、事実そういうふうにやつているのだ、そうすると、ここで特にこういうものを掲げて、十條とか、それからいろいろのあとから出るものと関連して行くと、背広は背広で浮いちやつて、兵服は兵服で一つのものができちやつて、その大将に幕僚がいる、それでいろいろこれは審議は別ですけれども、現に新聞の声の欄とか、天声人語の欄とか、いろいろなことで今いわれているのですが、ここが独立しちやつて、その兵服は本部の長官次長或いは局長にはなれないという規定があとにも出て来ますが、全く浮いちやつて、実際動くのはここである、この幕僚総監部であつて、これを通じなければ一切行かない、又下からもこれを通じなければならないということで一王国をなす。結局昔の軍国主義的なことになる心配はないかというその点なんですよ。
  151. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) これははつきり申しますると、各国における軍隊統制の機構というものを研究した上で作つたわけであります。もとより私どもは警察予備隊或いは保安隊というものが、各国の軍隊とは全然性格においても又目的においても違うものであるとは存じますが、併し治安の面に協力いたしまするところの実力部隊であるという点においては、少くとも国内においては同じような事実上の力を持つておる。こういう観点から、これの統制並びにこれに対する指揮ということは、できるだけそうした部隊が国の意思、即ち政府の意図に反して独立国として働くというようなことのないようにしなければならないと考えたわけでございます。而して従来の日本の陸軍などで、こういうことは今いろいろ振返つて見まするというと、命令系統はともかくといたしまして、実際上相当下剋上的な働きがある。で、私どもはこういう実力組織というものを完備する上から行つて下剋上というものが最も危険なものであると、こう考えておるわけでございます。従つて常に上部の命令が下部によつて完全に遵守されるということを保障しなければならんと思うのでございまして、そのためには何が上部の命令であるか、何が命令でないとかいうことをはつきりした形で示す必要がある。そこですべての命令は幕僚長を通じる、幕僚長を通じれば如何なる命令も来ないということによつて政府の命令というものをはつきり認識させる、こういう形式によつてそのことをはつきりさせる、又命令を遵守させるという実効を期待する、こういう次第なわけでございます。
  152. 波多野鼎

    波多野鼎君 ちよつと関連してですが、私は今ここにある長官の指揮監督というのは、部隊が部隊として行動する場合の指揮監督だと、ちよつと読んだときは理解したのですが、今の大臣の説明では一切の事項だ、部隊に関する、例えば物を買入れるとか、買入れないとか、演習地を幾らで買うとか、買わんとかいつたようなことまでも、これを通じるのですか、幕僚長を通じなければやれなないのですか。
  153. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) これはそういう意味でございます。すべての命令がこの幕僚長を通ずる。こういうわけでございまして、即ち各部隊の事務に属しておりまする限り、それは幕僚長によつて一元的に統制される。そうしてその幕僚長を通じて政府の命令が部隊に下達される、こういう意味でございます。
  154. 波多野鼎

    波多野鼎君 そうしますと、第三條第二項の、三頁の終りのほうに、「統督する。」という言葉がありますね、「服務についてこれを統督する。」というのと、この「長官の指揮監督」というのは内容的にはどう違いますか。
  155. 加藤陽三

    政府委員(加藤陽三君) 第三條の第二項に統督という言葉を使つておりますが、これは国家行政組織法の中におきまして、大臣の部下の服務に関する監督の関係についてこういう言葉を使つておるのでございます。保安庁長官国務大臣を以て充てられることになつておりますが、国家行政組織法上の言葉をここに借りて参つたのでございます。このことと但書との関係は、本文が原則でありまして、但書に書いてありまするところについてのみ例外的に、例外的と申しますか、部隊その他の機関に対する指揮監督を幕僚長を通じて行うということなのでありまして、統督ということは全部を包括する観念でございます。
  156. 波多野鼎

    波多野鼎君 今のようにこの指揮監督ということを、およそ部隊に関するすべてのことは幕僚長を通じなければならない、長官は幕僚長を通じなければどうにもならない、例えば会計的な事務について内局の誰かが局長を通じてやる、部隊に対して命令を出す場合に……、というようなことさえもできないのですか。
  157. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 現在そういうことはいたしておりません。
  158. 波多野鼎

    波多野鼎君 それではできないのですか。
  159. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) いたしておりません。
  160. 波多野鼎

    波多野鼎君 そうなれば、今楠見君が言われるように、全くこの幕僚長というものは独立の機関になりますね、完全に長官は浮いてしまう。
  161. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) これはどういうふうに御説明すればいいか、保安庁の仕事運営して行く場合におきまして、どこを軸にして考えて行くかは別にいたしまして、一面には部隊に関する仕事というものはございます。この仕事につきましては、保安庁長官は幕僚長を軸として仕事を運んで行こうというのであります。それから部隊外の仕事がございます。例えば他の官庁に対する関係、それから対国会の関係、或いは対国民の関係、こういう関係におきましては、一切官房長及び各局を軸として仕事を運んで行く。これがこの機構の根本的な考え方でございまして、即ちこの両者というものは常に協力しなければ一人前に動けばいいという機構になつておるので、その全体を長官が統轄をするというふうな形になつておるわけでございます。これによりまして政策に関係のある事柄、法律、予算に関係ある事柄、これらはすべて内局ががつちりと押える。それから人事に関することもこれは内局でがつちり押える。法律、人事、予算、この三つによつて部隊を統制して行こう。これが国民の部隊として民主的に政府が部隊を完全に統制する手段になつておる。これが法規、人事、予算、この三点であると考えるのでございます。而して部隊内におきましては、一糸乱れざる統制を以て一元的に統制して動かして行くということが部隊の活動を一層能率的にするゆえんでございますから、隊内の事柄については、幕僚長というものに一元的に統制をする能率を、それからその能率を持つた力を民主的に統制するというこの二つの考え方を組み合せて作りましたのがこの内局及び幕僚監部、二つの性格の異なつ機関を設けたゆえんでございます。
  162. 楠見義男

    ○楠見義男君 その一元的運用上幕僚長を通じてやつて行くということの御趣旨は、これはおつしやる通り私も認めておる。ただ問題は幕僚長を通じなければ長官は何もできないという点が非常に心配の点なんです。ということは、後ほど逐條的にもお伺いしようと思つておりましたが、丁度幸いですから、例えば十七條の二項の例なんかを見ましても、保安官とか、警備官というものを、常に本庁と部隊とがそれぞれうまく運営できるように、そういう人々も長官官房或いは各局に勤務させる。これなんかは非常に結構なことだと思うのですが、ところがその人間の身分については「その所属する部局又は部隊の長の監督を受けるものとする。」というようなことで、長官自身も手が付けられないような感じの規定がここに出て来ておる。そこで問題は、さつき申上げたように、一元的運営の上から見れば非常に結構なことであるが、たまたまこういう字句がここに入つて来ることによつて、ほかのと彼此勘案して、幕僚長を通じなければ何も長官はできない、こういう点が非常に私は心配になつて来る、そういう点で伺つておるのです。
  163. 波多野鼎

    波多野鼎君 ちよつと関連して一緒に答えて下さい。つまり一元的に能率的に運営するというその考え方は僕もよくわかる、賛成なんです。ただ一元的に能率的にということによつて幕僚監部というものに絶大な権力が集中する危険があるということを虞れるのです。ここの指揮というものは、必ず幕僚長を通じなければならかという意味の指揮監督は、部隊の行動に関する面だけなら私はいいと思う。又それで十分じやないかと思う。部隊の行動、出動、訓練、そういう問題ですな、それに関連する面だけなら幕僚長を通じなければ長官は何もできないとしたつて私はかまわんと思います。併し大臣が今言われるように、経理の問題まで全部幕僚長を通じなければならないという理由はない、そういうことをしては却つておかしいと思う。
  164. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) これは予備隊の機構というものを先ず現実に申上げる必要があるかと存じますが、現在の警察予備隊におきましては、七万五千の制服職員に対しまして、本部の部員即ち保安庁法で言えば官房及び内局勤務者でございますが、その数は百名でございます。これはすべてのものを合せて百名でございまして、その中には通訳からタイピストまで入れての百名でございまするから、幹部というものが如何に少いかおわかりになると存じます。それから今度保安庁になりました場合におきましても、この制服職員の数が十一万でございますが、それに対しまして制服以外の内局の職員というものは二百六十名でございます。これらの数を以ちまして、完全なる仕事を事大小となくやるということは到底不可能でございますから、この機構は根本的な考え方といたしまして、幕僚監部が実施面を担当する、單に官房及び内局においては、政策若しくは方針の基本に関する事項を処理して行く、これが考え方になつておるわけでございます。そうして政策及び方針の基本といううちで最も重要な事柄といたしましては、人事、予算、従つて経理、これが一番の根本でございまして、これによつて部隊の統制を図つて行こうというのがこの考え方なんでございます。従いましてできるだけ国の全体の政策というものの線を逸脱しない限りにおいて、幕僚監部以下の制服職員に隊務の運営をさせて行く、これを国の政策並びに方針という大綱的な面からチエツクして行くというのがこの心になつておるわけでございます。従いまして長官と幕僚長との関係が問題になつて来るわけでございまするが、これは専門的な事項については單なる補佐機関であります。又、如何なる事項につきましても、長官に対する関係においては、單なる補佐機関でありまして、決定機関ではございません。長官の決定したる命令を部下に伝達するという機関なのでございまして、この点においては長官の権限が実質的に幕僚長によつて阻害されるということはあり得ないわけでございます。又、長官の指揮監督に服しない、いわゆる下剋上の傾向が多少なりとも見えますれば、これは長官の権限によつてその地位を転ぜしめることは無論できるわけでございまして、この人事権は飽くまでも長官の固有の権限として保留されておるわけでありまするから、この固有の人事に対する権限並びに予算を通じての統制、これによつて部隊というものを完全に政府が掌握しようというのがこの考え方の基礎なんでございます。
  165. 楠見義男

    ○楠見義男君 私はこの幕僚長というものがシビリアンならまだいいと思うのですが、それが軍服の大将で、集団の軍服の大将で、而も旧陸海軍将校も……、将校その他は長官次長官房長にはなれないが、これにはなれる。ここに実は私は非常に、先ほど申上げるように、危惧の念を持つて、十七條であとで又伺いますが、十七條のようなことが出て来たり、或いは十條なんかも今国務大臣は單純な補助機関である、だから上からの命令をただ伝達するだけだと、こういうようなお話もありましたが、例えばその十條なんかを見ますと、これはついでですから、十條の御説明を頂きたいと思うのですが、この十條の規定を見ますと、長官官房及び各局が基本的な実施計画を立てる場合に、その作成について第一幕僚長又は第二幕僚長に対する指示をする。ところが、一方に第一幕僚長又は第二幕僚長は、その作成した基本的な実施計画について、長官から承認を受けると、そこで基本的な実施計画についても幕僚長は一応長官から、或いは各局を通じて補佐を受けて、長官からこういうものを作成をしろということを指示する、そうして幕僚長が作つたものを長官が承認するというので、すべて基本的な実施計画についても、長官は單純な認証機関のようなもので、実際の作成機関は幕僚長がやる。而もこれは軍服の大将だ。そうしてこれを通じなければ長官は命令ができないと、こういう点は非常に独立性を持たして、普通の行政官庁と違う。これは勿論実戰部隊ですから、或る場合においては違うとしても、いろいろの基本計画にしても、身分関係にしても、こういう点が非常に私は旧陸軍的な機構だけでなしに、ああいう弊害が更に再現する虞れを内蔵しているのではないかという心配を持つのですがね。今単純な補助機関だとおつしやいますが、十條の規定についての説明を、一遍これは事務当局のほうが詳しいと思いますから説明して頂きたい。
  166. 江口見登留

    政府委員(江口見登留君) 楠見さんのおつしやいます通りなんでございまして、第一幕僚長、第二幕僚長の作成した方針及び基本的な実施計画について長官が承認する。だから全部が第一幕僚長、第二幕僚長を通じてやるのじやないか、イニシアチブをそつちがとるのではないかという御質問でございますが、それには十條に書いてあります「指示」というものが被さつておるわけであります。保安隊の基本的な実施計画の作成について、長官が第一幕僚長に指示するのでございます。この指示の梓の中において、こういうことを作成してみろということを長官のほうから言われて、それで幕僚監部においてその方針に従つたものが出て参つて、そういうものを承認する。更にこれをチエツクする。承認という手続まで考えておるので、御質問のようなことは万々なかろうと私は考えておるのであります。
  167. 楠見義男

    ○楠見義男君 例えばこれはいいことか惡いことか知りませんよ。が、チヤーチルとトルーマンが何とかで会見をして、大きな作戰をすると、これは一つのシビリアンがそういうことをやるわけですね。ところがこの場合は全く旧陸海軍当時と同じように、それは成るほどこういう基本的な実施計画を立てて見ろと、こういう指示はするけれども長官とか官房というものは実施計画は立てられない。立てでみろということは言えても、立ててみろと言われたことを受けて幕僚長がこれをやつて、これはどうですかという承認を受ける恰好なんですね。
  168. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) この点は極めて重要な問題でございまするから、楠見委員の繰返し御質問になつておられることは誠に御尤もでございます。私どももこの機構のこの点は、実は保安庁法の立案に際しまして、一番苦心をいたしました点なんであります。今御説明になりましたごとく、トルーマン或いはチヤーチルが作戰を相談する。そうしてその場合に、こういう作戰にきまつたからこの通りにやれということ、長官の権限でございます。で、その場合には、その命令に従つて長官が動かなければならないわけでございます。ただ、何分一つの作戰ということに相成りまするというと、大体根本方針というものはチヤーチル、トルーマンできめられるわけでございますが、そのために如何なる部隊が動き、如何なる資材が必要か、こういう専門的な事柄になりまするというと、これはやはり専門家たる幕僚長の分野になるわけでございまして、そういう事柄については無論幕僚長が、長官の指示した作戰に基いて計画を立て、そうして長官の承認を受けなければなりません。その場合に長官は、それを承認するかどうかという仕事があります。その承認するかどうかという長官仕事について、補佐する機関は内局であるのでございます。併しながらそこで内局の補佐を得て決定をいたしました長官方針というものは、常にこれが部隊に対する命令として最後には出なければなりません。その際には幕僚長を通じてのみ伝達される、こういう考え方なんであります。そこでこの幕僚長には二つの面があるということになるわけでございます。一つは、長官の命令を各部隊に伝達する機関でございます。これは幕僚長の専属の権限に相成つております。一つは、長官が、部隊に対する命令を含むところのすべての保安庁の職務執行上必要なる決定をなすについての補佐機関たる役目でございます。この補佐機関といたしましては、幕僚長のほかに内局というものがあるわけでございまして、この場合は補佐機関としては専属ではなく、専権に屈するのではなくして、内局と併列して補佐することに相成るのであります。その場合に内局が担当すべき部分は、一般的な方針或いは大綱についての事柄、こういうことを分担いたしまするし、幕僚長は専門的な事柄を分担するわけでございます。併しそれは飽くまでも両者を統轄して、長官を補佐いたしまするところの次長というものの線で統制されて、そうして次長の補佐を得て、長官の責任で決定され、必要な事柄は更に内閣総理大臣の決裁を得て方針がきまる、こういうことになります。併しそうしてきまつた方針をやはり伝達するときには、先ほどの伝達機構を通じなければならない。私どもはいろいろ考えたのでございますが、権力の権限は何であるかと申しますると、それは命令をすることだろうと思うのでございます。そうしてその命令ができる場合においては、常に内局というものの補佐を似てできる。従つて幕僚長が権力の根本となるべき命令を独占的にきめるということは、不可能な機構にこれはなつておるわけでございます。そうしてきめられたところの命令を執行するということは、これは一元的に統制をとつてやるということが能率的である、こういう考えから実は幕僚長を通じて行うという形をとつたのでございます。この点はアメリカにおける国防省及びそれに属しておりまする陸海空の三軍長官機構、又は英国におきまする国防省の機構、これらもいずれもそういう方式をとつておるのでございまして、これらの民主国におきまする先例というものから考えまして、民主的な部隊運営の上から言つて最善の機構であると考えております。
  169. 楠見義男

    ○楠見義男君 私はトルーマンが、先ほどトルーマンの話が出ましたが、トルーマンが作戰計画を立てたり、或いはマツカーサー元帥を罷免したり、そういうことならいいと思うのですよ。それから今大橋さんが言われたようなことならいいと思うのです。ところが今おつしやつたようなふうにはこれは読めないのですよ。というのは今お述べになつたように、幕僚長が長官のきめた作戰計画の下に、具体的に資材の手当をしたり、部隊を動かせる、こういうふうになつていないのですよ。というのは、十條で、保安隊及び警備隊に関する各般の方針及び基本的な実施計画を作成する場合に、これは長官が第一幕僚長又は第二幕僚長に指示するわけですね、作れと……。そこで幕僚長が案を作つて承認を受けるわけです。認証を受けるわけですね。勿論気に喰わない案が出て来れば、いつまでも承認しないでしようが、そうすると具体的な何と言いますか、実践計画というものはいつまでたつてもできないことになつてしまう。そうしてただ承認はする。それで命令は、三條に戻つて、この当該幕僚長を通じなければできない。だから幕僚長がうんと言わなければ何もできないという形になつておる。だから今あなたのおつしやつたようなふうならいいのだけれども、そういうように読めないのですがどうでしようか。
  170. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) これは幕僚長がうんと言わなければ動かないという点は確かにそうだろうと思いますが、それは併し幕僚長の命令違反ということに相成ると思います。直ちに罷免すべき重大な理由になると思います。要するに幕僚長というものは、長官の命令を部隊に伝達して、その執行を監督するというのが最大の職務でございます。そのためにこそ、すべての命令は幕僚長を通じなければならない、こういう形になつておるわけであります。それが逆に、長官の命令をチエツクしたり、或いは長官の意図が徹底しないという理由になるといたしますると、それは当然幕僚長に期待された最大の任務が、その人によつて執行されていないということを意味する、こう考えるわけでございます。
  171. 楠見義男

    ○楠見義男君 理窟はおつしやる通りですが、それでは旧陸海軍当時にどんどん首が切れたかというと、それは一つの実力を持つておりますから、幕僚長を変えても、その次の幕僚長が同じ穴のむじなというと言葉は惡いのですが、それをやつてしまうと、長官というか、本庁が侵されてしまう。これは旧陸海軍時代には、軍の統帥権という名によつてこれは独立をして手がつかない。今度はそういうものが仮にないとしても、とにかく幕僚長という地位がそういうふうに、組織がそうなつておりますから、組織がそうなつていなければいいのですが、組織がそうなつていると、そこまでがつちりと結べば、シビリアンというものは全然手も出ない、足も出ない、こういう心配がある。これはもう旧軍国時代に戻ることを余りに恐れ過ぎる、或いは被害妄想狂的な考え方かもわかりませんが、とにかお組織をそういうふうにすることは、どうも危ないという気がするのですが、これ以上になりますと、議論になりますからこの程度にいたします。
  172. 波多野鼎

    波多野鼎君 今楠見委員が質問されておりました点は、非常に重大な点だと私は思うのでありますが、ここで幕僚長というもの、或いは幕僚監部というものが非常に独立的な地位を獲得する懸念は私は非常に多いと思うのですね。そこで先ほどのその問題に関して国務大臣は、シビリアンの数が少いからしようがないのではないか、経理とか、そういう調達ということまでも幕僚長を通じなければやれないようになるのだと言われますけれども、これは議論は逆なんであつて、この保安隊の構成を如何に民主的にというのか、して行くという、旧軍隊的な弊害に陷らないようにするという基本方針をもつと貫いて行くならば、シビリアンをもつと多くしてもいい。何も二百人とか三百人に制限する必要はない。むしろ現地部隊というものは実力の中心なんですから、現地部隊を内局が握るということに、握るというのじやないが、内局も現地部隊に対して影響力を持つておるという構成にしないといけないと思います。そこで、シビリアンの数が少ければ、増やしたらいいじやないか、それから今の一元的なる指揮監督をしなければならないと言われる点は、第二十條の第一号ですかにある教育、訓練、行動、編成、装備、配置、情報、このあたりまでなら一元的に指揮監督できる。これは幕僚長がやらなければならない。併しそのあとに書いてあることは、幕僚長でなくてもいい。内局でやつて行けばいい。そういうようなふうにやるのが一番旧軍隊的な弊に陷らないゆえんだと思うのだが、如何でしようか。
  173. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) これは非常に重大な問題でございまして、或いは答弁はもうよろしいと言われるかも知れませんが、もう一度率直に私の意見を申上げたいと思います。実はこの機構は、例は甚だ適切でないかと存じまするが、昔の軍部の例を借りて申しまするというと、昔の陸軍におきましては、陸軍省というものがありまして、そうして陸軍省の次官、局長以下全部軍服でやつてつたわけでございます。ところが今回の保安庁におきましては、統制をとる中枢機関は制服職員でないものでなければならないという考え方で大臣、次長、局長すべて制服外の職員が当る……。
  174. 波多野鼎

    波多野鼎君 そこまではいいんです。
  175. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) そこでもう一つ従来二十條の一に掲げてあつたような事柄は、これは参謀本部において方針を決定し、陸軍省においてそれを国の事務として法律的な手続を経てやつてつた事柄なのでございます。即ち軍における一切の行政というものは、軍政、軍令の両機関の合作によつてできておつた。例えば教育につきましては参謀本部で教育総監部というものがありまして、これもやはり天皇直属の一つの軍令機関でございます。それから訓練、行動、編成、装備、配置、情報、こういつた事柄につきましてはいずれも参謀本部で方針をきめ、それに基いて陸軍省が手続をとつてつてつたというわけでございます。で、この幕僚監部は、従いまして参謀本部及び陸軍省双方の仕事一つにまとめたようなものでございまして、これは昔の意味における軍令、軍政の区別は今後の保安隊、警備隊においては区別する必要がないというのが考え方の根本であります。それはすでに軍令の独立ということではございませんので、機構的には軍令、軍政を区別する必要がないわけでございまするから、機構としては一元的にしてしまつた。あとはこの仕事がどういう機関に與えられたかという問題でございますが、これらの仕事というものは、部隊の内情によく通暁いたし、又部隊の細かい点まで知つておる人たち、即ち制服の職員というものがやはりタツチしなければ微に入り細を穿つた計画が立ちませんので、そこでそうした細かい点は幕僚監部がこれを担当する。併しながら幕僚監部における制服隊員というものは、その従来の経歴、教育等から考えまして、国の大きな政治の方針、そういつたものと直接に関係するということは困難であると思いまするから、専らそうした面につきましては特別の制服外の職員を置いて、その人に考えさせて行く。この両者の意見の一致したところで長官が決裁をして、そうしてやつて行くというわけなんでございまして、これは決して幕僚長において部内の全権を與えるという意味では断じてないわけでございます。即ち如何なる事柄につきましても内局は常に監督をし、その監督の立場から監督上必要なる指揮を長官になすように補佐する権限を持つておるわけでございます。要は長官がこれらの幕僚監部及び内局の双方の補佐を如何に調整し、そうして完全にその職務を行うか否かということにかかつておるわけでございまして、これはこの官制の下においても幕僚長でなく、内局が或る事柄については権限を行う。それが無條件に実施されるということになりますというと、部隊全体が或る局長の実質上の掌握下になるような場合もないとは言えない。殊に予算経理の面を担当しておりまする経理局長というような人が、そのつもりになつてやれば、相当経理の面から実質上部隊を左右するということも考え得るわけでございます。要は長官というものがその職責を十分に自覚をし、これを運用して行く、又或いは幕僚長も含めてあらゆる補佐機関がよくそれぞれこの保安庁の機構というものの精神を了解いたしまして、それぞれの立場から補佐をして行くということによつてのみこの目的は達し得ることは、一般の行政機構と同じであると考えます。
  176. 波多野鼎

    波多野鼎君 そこでまあ理論的な考え方に多少私とは食い違いがあるとは思いますが、とにかく内局といつておる経理局にしろ装備局にしろ、これは現地部隊と何ら直接タツチしていないんですよ。あなたのさつき説明にもこれは国務大臣が一番上に立つて何とかかんとかいう、シビリアンがとにかく上におるんだから大丈夫だと言われるのでありますけれども、上にシビリアンだけは置く。これは結局私の言いたいのは、経理局なり装備局なりというものが現地部隊に足を突込まなければ駄目だということです。そうでなければ浮いてしまう。どうなんですか、足を突込むようになつておるんですか。
  177. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 現地部隊に足を突込むということの意味でございますが、長官が現地部隊を監督する上から言つて方針について、大綱的な事柄についての補佐ということはこれは無論内局、従いましてそうした面においては内局が現地部隊に足を突込むのはあり得るわけです。
  178. 波多野鼎

    波多野鼎君 それだけなら浮くというのです。
  179. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 併しながらこの幕僚長といえども、その如何なる命令といえども長官の承認なしに出される命令はないわけでありまして、長官がそれを承認する際においては、必ず内局がそれを見るということなしに出されることはないわけなんであります。で、この点については御心配のような御懸念は絶対にない。又現実諸外国の実情におきましてもそうしたことはないと、こういうふうにも考えております。むしろこの際にシビリアンと、それから制服職員の職務の限界というものを明確にしていない諸国において、却つて非民主的な部隊活動が行われるというのが実際じやないかと思います。
  180. 波多野鼎

    波多野鼎君 意見の食い違いのようになりますからこれ以上申しませんが、とにかく第三條の今の必ず長官の指揮監督は、すべての部隊に関するすべての問題について、幕僚長を通じなければならんということは私はまずいと思うのですがね。これは意見ですからあとで申上げますが、相当重大問題だということを十分政府当局においても認識して頂きたいと思う。さつき楠見君が旧軍閥に対する被害妄想から来ておるかも知れないなんて自分で言つていましたが、私も旧軍隊的のめばえができやしないかということを非常に恐れる。これは用心し過ぎてし過ぎることはないと思います。余りのんきに考えていると却つてまずいのであつて、用心し過ぎることはないと私は思つております。この点については非常に問題があるということを政府当局においても十分認識して頂きたいと、こう思うのであります。この点については打切ります。
  181. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 今の旧軍隊の弊害というものは、これは或る人が一元的に旧軍隊を統帥したということから出て来るのではなく、一元的な統帥が派閥の存在によつて不可能であつたということによつてできておると見ておるのが私の見方なんでございます。例えば陸軍大臣が真に国家のために良心的に見て必要であると考えた処置が、現実には下剋上の少壮青年将校その他の実力によつて阻止されておる。ここに軍の腐敗の根本があつたと、こう思うのでございまして、今後日本において部隊組織というものを考える場合には、常に上部の命令が確実に下部において嚴守されるということが必要であると思つております。そこでこれは現実の我々の研究の一端を御披露する意味で申上げますると、人事について、私もいろいろ関係をいたして見たのでございます。これは総理から私に次のような話がございまして、どうもアメリカの軍隊の実情を見ると、二、三日前にマツカーサー元帥なりリツジウエイ大将なりに自分が話したことが、一日か二日で末端まですぐ徹底しておる。これは日本の旧軍隊においてはなかつた事柄であるが、どこに原因があるかよく考えてくれ、こういうことで私もこれを研究いたしました。その結果、私はその原因が人事にあるということに気が付いたのであります。即ちアメリカの人事におきましては如何なるポストといえども、そのポストにありまする人が他に異動いたしまする場合においては、直属上官の意見というものが必ず聞かれておる。ところが昔の陸軍などではそういうことなしにやられておる。従つて中央においてでき上つておる一つの派閥の流れに足を突込んでさえいれば、中隊長の命令或いは大隊長、連隊長の命令を平素どういうふうに取扱つておろうが、それらの上官の意見というものが自分の出世には関係ない。それよりむしろ中央における派閥勢力との関係によつて異動が行われる、こういうことが結局派閥を頼りにした下剋上というものを惹き起し、延いては軍隊の命令が施行されないというような基本をなしておる、こういうふうに考えまして、そうしてこの点は今後の部隊管理の上から心すべきことと思つておるような次第でございます。この例は問題になつている事柄とは全く違つたことではございまするが、併し一元的な統制ということが却つて政府の命令を末端まで徹底するゆえんである、こう私の考えておりまする論拠としては同じように存ずる次第でございます。
  182. 楠見義男

    ○楠見義男君 最初の三條で引かかつたんですが、次に第三條第三項の「前項の任命権の一部は、部内の上級の職員に委任することができる。」、これは具体的にどういうふうにお考えになつているのでしようか。
  183. 加藤陽三

    政府委員(加藤陽三君) これはこの法律に基きましての具体的な内容は決定されておらないのでございまして、研究中でございますけれども、今までのやり方といたしましては、現在の警察予備隊の三等警察士と申しますか、これ以上の任命権は長官が持つているのでございます。それ以下の一等警察士補以下の隊員につきましては、或いは連隊長に委任をいたし、或いは管区総監に行く、こういうふうに相成つております。大体それを標準といたしまして研究をし、決定をして行きたいというふうに思つておるわけでございます。
  184. 楠見義男

    ○楠見義男君 これは今の設例になりました一等警察士補以下につきましても、任用については選考任用とか、或いは試験任用というようなことをやりますね。それはそれぞれの連隊長とか何かに自由にやらせると、こういう意味ですか。
  185. 加藤陽三

    政府委員(加藤陽三君) 試験なり選考のやり方につきましては、本部のほうにおきまして方針を示しまして、その方針に従つてやらせることといたしております。
  186. 楠見義男

    ○楠見義男君 それではその次に第四條について、海上保安庁のかたにお伺いしたいと思うのですが、運輸省でも結構ですが、来ておられましようか。……海上保安庁の関係につきましては先ほど申上げたように、現在の警備隊は従であつて、保安庁の本来の仕事が主であつたのでありますが、この書き方で行きますと、従来主であつたものが従になつて、従であつたものが主のような書き方になつて、従来と性格、任務の上において変更を来たしておるように思うのでありますが、この点は従来と性格、任務上変更なしという政府しばしばの御説明とは全く相反した結果になつておると思いますが、その点は如何でしようか。
  187. 三田一也

    政府委員(三田一也君) その点は従来と変りありません。
  188. 楠見義男

    ○楠見義男君 従来と変りがないとおつしやるけれども、ここへ行きますと、「あわせて海上における警備救難の事務を行うことを任務とする。」と、こうありまして、その従来の主なるものが「あわせて」というふうに従になつておるのですが、その点はどうなつているのでしよう。
  189. 三田一也

    政府委員(三田一也君) 「あわせて」という意味は、公安局がやる仕事をここに掲げておるだけでございまして、海上公安局の仕事がこの警備救難の事務を行うという意味なんです。
  190. 楠見義男

    ○楠見義男君 だからその点を伺つているんですよ。海上公安局ですね、海上公安局の仕事が従来は主であつた、海上警備隊の仕事が従であつた。それは運輸大臣もしばしば海上保安庁法の改正の際に私のみならず各委員から御質疑があつたときにお述べになつたことです。それが変つておりはせんかということなんです。これはやはり運輸大臣が御答弁になつた事柄に対する質問ですから、海上保安庁の次長のかたにお聞きするのは或いは無理かもわかりませんから、別の機会に運輸大臣に……。それからその次に第六條なんですが、第六條の十一号、甚だ細かいことのようでありますが、「所掌事務の周知宣伝」とありますが、周知の点は大よそ見当がつくのでありますが、宣伝というのは、これはどういうことを考えておられるのでしようか。周知のほうは例えば警察予備隊なり海上保安隊なりを知らして隊員を募集するというときには想像つくのですが、宣伝というと……。
  191. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 別に宣伝に特別の意味考えておりませんので、周知宣伝、併せまして国民一般に保安庁所掌事務の内容を知らせて、これに協力の観念を啓発したいということなのであります。これは各省の官制等に見受けられる字句でございます。
  192. 河井彌八

    委員長河井彌八君) ちよつと速記をとめて。    〔速記中止
  193. 河井彌八

    委員長河井彌八君) 速記を始めて。
  194. 竹下豐次

    竹下豐次君 予備隊には制服の職員と制服外の職員とがあるわけですが、これについて……。
  195. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 制服職員につきましては、専ら幹部級につきましては、特に長く制服職員として予備隊に勤務するということのために採用をいたし、又それぞれ専門的な事項につきまして特に武器の操作等につきまして、或いは部隊の運用等についても特別の教育をして現在の幹部を養成いたしたわけでございます。そのほかに、先ほど来楠見委員からも御指摘になりましたように、旧軍人で士官学校、或いは海軍兵学校等を卒業した者を千人ほど採用し、又近く千人ばかり採用する予定を立てております。これらは大体幹部全員のパーセンテージにいたしまして二〇%近くに相当するものでございます。一般職員につきましては、創設当時は、もとより旧軍人以外においてそうした仕事に通暁しておる者がありませんでしたので、各省から適当な人を選んで制服外の職員としたわけでございます。これらの人々はいずれも個人の都合から適当な時期に元の官庁に帰りたいという考えを持つておる者のもあつたわけであります。一年半の間に大体帰りたい者も一通りつてしまいましたので、今後残りました職員は、専ら保安庁職員として長く保安庁の仕事に従事してもらうというふうにいたしたいと思つております。そうしてこれらの職員につきましては、やはりそうした方針を立てます以上は、警察予備隊なり、海上警備隊なりの専門的な事柄につきましても、或る程度その大綱を理解するに必要な程度の知識を持つて行くことが必要であると存じまするので、今回保安庁設立を機会に職員のために研修機関、即ち保安研修所を設けて、この保安研修所においては制服職員及び制服外の職員として将来保安庁の首脳部となり得る資格があると認められる人たちを併せて教育をする、十分な職務に必要な程度の専門的な知識をここでつけるようなことを考えております。
  196. 竹下豐次

    竹下豐次君 これは私の意見みたいなことになりますけれども、私に制服外の職員を今お話のように今後やるというお考えがあるということのほかに、我々議会人としても従来とはよほど違つて行かなければならない。従来は議会人というものは殆んどもう軍のことに関係するという気持がありません。それから気持はありても知識がなかつた。勉強しなかつたのです。今後はそれでは私は議会人として済まない。しつかりそのほうの知識を有する議会人もおらなければならない。そうしなければ間違です。そうしますと、これは直接保安隊のことに関係しますけれども、批判の立場において監視するという立場において非常な責任を持つということになりますので、いろいろなそういう非難を強い方面からなされるといこうことになつたら、制服軍人だけが昔のように我がままをするということはとても許されない。そういう意味において楠見君が心配されるほど私は実は心配しておるわけでありません。この私の気持を一つ考えの中に入れておいて頂きたい。
  197. 河井彌八

    委員長河井彌八君) ちよつと議事進行の方法について御意見が出ましたが、実は委員会を順序よく進行させるためには、政府説明を聞きましてから全体の質問に入り、そうして各條についての質疑をして行くということは極めて合理的だと考えます。併し実際の状況を見ますと必ずしもそうはいかないのであります。というのは、例えば総括質問にいたしましても、大臣の出席のできない場合がありまして、実はそれもできないということもあります。又委員諸君におかれましても総括質問を持つておられましてもそれがその席に居合せずして逐條に入つたような場合もあります。従いましてどうも初めからそれではこういうふうに行くということをきめてやりますならばよろしいのでありますが、今まではそう行きかねておつたのであります。従いまして、私はやはり三好君の言われるように、所要の大臣が出て来たらば、その点について総括質問に戻られるということは止むを得ない、又それが当然だと思います。今は逐條的に入りましたから、その條文に入りましたならば、関連質問としてどしどし御発言を願うほかはないと、かように考えておりますが、どんなものでしようか。初めから秩序をきめて、順序をきめて行きますことは非常に結構ですが、なかなかそれが実行できないからこういうふうになつたわけなんです。
  198. 楠見義男

    ○楠見義男君 私は実は逐條的にいろいろお伺いしておるのは、單純に逐條的な疑問というだけでなしに、さつきお聞き及びのように、二條とか、十條、十一條とか、こういう点が明らかにならないと、総括的にこの保安庁法というものを承認すべきか、すべからざるものかという判断をつけることをまあ主にしておるわけなんですが、同時にその中間において純逐條的の質疑もいたしたいと思つておりますけれども、私は実はそういうつもりでやつておるわけなんです。
  199. 河井彌八

    委員長河井彌八君) なお申しますが、楠見君の言われる通り、私は委員会は、これは少し丁寧過ざるかも知れませんが、委員会というものはあらゆる方面から十分に検討することが目的でありまするから、自然そういういろいろな場合が起つて来ると思います。そういう場合において、できるだけその意を盡すように運営して行くのが正当だと考えまするから、余りこうやかましくやりたくはないという気持で委員会をやつておりますから、委員諸君もそのおつもりでどうぞできるだけ効果を挙げるようにお進めを願いたいと思います。
  200. 波多野鼎

    波多野鼎君 第六條に関連して、中で第四号ですがね、第四号の「所掌事務の遂行に直接必要な装備品、船舶、航空機、食糧、需品等を調達すること。」と、この点に関連して御質問したいのですが、第一に聞きたい点は、米軍からまあ船だとかいろいろなものを貸與を受けるということは、予算委員会あたりではしばしば言つておられましたが、あれはあの予算委員会のときにはまだ貸與を受ける形式なんかきかつていない、まあ多分貸してくれるだろうくらいのあいまいな話だつたのですが、そのときに私は、それじや困ると、丁度終戰後のアメリカの援助というものが、我々援助をもらつたものだと思つていたところが、大蔵大臣がこれは借金だと言い出した、返さなきやならん、そういつたような事態が起きて来ているので、この武器などについて、或いは船舶などにつき、借りるという場合に、一体これはあとで返さなきやならんのか、どういうものかという点はきまつたのですか、どうですか、これを一つ……。
  201. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 丁度予算委員会において御質問のありましたのは、講和條約発効前のことだつたと存じます。その当時の御質問に対しまして、目下向う話合中であるということをお答えいたしておきました。それは丁度それより暫らく前に先方から一つの申出があつたのでございます。その申出は、当時の武器の日本政府に対する貸與方式といたしては、両国政府の権限ある機関によつて正当に受渡しが行われておるのではない。それは各駐屯地におりまする米軍顧問将校が米軍の所在の武器を管理する管理官になつておる。保管者であります。その保管着たる米軍将校が、その責任において予備隊に属する隊員個人に使用を容認すると、事実上使わせるという形でを行われておつたわけでございます。従いまして、アメリカの法律によりますると、それは依然として米軍機関たるその顧問将校の責任において保管されておると考えられておつたのでございまするから、その武器についての亡失、損害等がありました場合には、保管義務者たる将校の個人的責任の問題を生じたわけでございます。それがために、現実に予備隊において借りておつたピストルが盗まれた、そのためにそこにおつた顧問将校がアメリカ政府に何ドルかの賠償をしたというようなこともあつたように聞いております。これに対しまして、米軍といたしましては、法律関係はともかくとして、現実の事態を眺めるというと、事実上武器を占有しておるのは日本の隊員である。その過失によつて品物が亡失、破損した場合に、何ら事実上の麦配力のない米軍存校の個人的負担になるということはおかしい。そこで、米国の国内法上におけるその負担を取除きたい。その方法としては、日本の警察予備隊の中央機関に一括して武器の引渡しをいたしたい。それでそのままアメリカの将校は日本側の中央機関に一括して武器の引渡をし、その領収書があるならば、その領収書によつて国内法上の責任解除を受けられる、こういう申出であつたわけでございます。そこで日本側は、そういうことならばこちらで領収をしようと、又領収書を出そう、そうして一括して受取つて、その後は日本側機関日本側の国有財産と同一の注意義務を負つて、保管義務を負うことにしよう、こういうつもりでやつてつたのでございますが、その條項のうちに、使用のために引渡した物件についての有償か無償かということは、将来両国政府間において協議をしようという條項があつたわけでございます。それから又亡失、破損についての義務は、或いは責任は、将来協議をしようと、こういう事項があつたわけでございます。そこで我々は、亡失、破損について、その責任を将来協議するということは、これは物を借りる以上は当然のことだと存じます。併しながら使用の対価というものは、これはこちらとしては拂わないでいいものと理解をしているわけであります。然るにそのことを将来協議するということは、如何にも使用の対価をこちらが拂うということも十分にあり得る場合を前提として、そういう文書を作成したということになるわけでございますので、これは日本側の立場としてちよつと困るという話をしたしました。成るほどその点は尤もである、もともとアメリカ軍としてこの武器を日本側に引渡すというのは、これによつてアメリカが何らかの対価を期待しているわけではない、アメリカとしては日本の自衛力の強化ということが日本側の責任において行われる、それが事実上促進されるということに熱意を持つているが故に引渡すのであつて、対価の問題はそれでは研究の上取消しをしようということでございまするが、その点はなお先方から何分の申出がないところを見ますと、只今ワシントンと協議中ではないかと思つております。そういう状況でございます。そこで今警察予備隊の考え方といたしましては、これらの武器というものは無條件に日本側に引渡されたものである、そしてそれの引渡しを受けたことによつて日本側といたしましては、自主的にこれらの武器によつて警察予備隊を装備し、そうして警察予備隊の実力をできるだけ十分ならしめる、そういうことを目的にこの武器を使用すれば、それで我々の責任は完全にカバーされている、こういうふうに了解をいたしているわけでございます。
  202. 三好始

    ○三好始君 私は今日は遅くなるから、私、初めちよつと長くなると思つて遠慮しておつたのでありますが、この前私がお尋ねいたしました問題に関連した問題が出て来ましたので、この点一点だけ確めておきたいと思うのであります。私はこの前お尋ねいたしました問題の一つに、アメリカの上院のヴアンデンバーグ決議と予備隊の武器との間にどういう関係考えられるかという形で問題を出したわけであります。私は貸與を受けている武器の問題は、返却であるとか対価の問題が重要な問題なのではなくて、むしろヴアンデンバーグ決議との関係から武器の貸與が保安隊、現在で言えば予備隊の性格に繋がつて来る問題だと思うのでありまして、むしろそこに武器貸與の一番重大な問題がある、こう思つているのであります。私は先般ヴアンデンバーグ決議の関係部分を朗読いたしたわけでありますが、決議の前文の中にも、軍隊を共同の利益のため以外に使用しないという合衆国の政策を再確認しという表現が使われておりますし、又決議の第三項には、「継続的且つ効果的な自助と相互援助に基礎を置き、且つ合衆国の安全に影響を與える地域的その他集団的取極に合衆国が憲法上の手続きに従つて加入すること。」、こういう規定もなされているわけであります。アメリカといたしましては他国の国内治安維持のために、アメリカの武器を貸與するということはヴアンデンバーグ決議の精神から言つて許されないことだと私は了解いたしております。現在武器の貸與を受けている予備隊は、大橋国務大臣の御説明もありましたように、アメリカの国家機関から日本政府乃至国家機関に貸與されているものではないと私は考えているのであります。これは先ほど来の御説明の中にもそういう趣旨が出ておつたと思うのであります。つまり予備隊の顧問将校の責任において、貸與を受けているというような表現の中にもその辺の事情が窺われる次第でありますが、私はそういう点から言つて、若し大橋国務大臣が先ほど最後に申された武器の貸與を受けた責任を、自衛力の充実ということを実現することによつて果して行くのだということが、本当にアメリカの政策、アメリカのヴアンデンバーグ決議の趣旨を貫いて、これと矛盾しないような形で実現しようとすれば、それは警察予備隊を軍隊的な性格として規定するよりほかないということになつて来る。私はここに大きな問題があると思うのであります。現在非常にややこしい、アメリカの顧問将校の個人的な責任において貸與を受けているような形をとらざるを得ないというアメリカの事情を理解しないで、との問題を考えることは恐らくできないだろうと思うのです。このヴアンデンバーグ決議と予備隊の武器との間に、どういう関係があるかということをお尋ねしたときには、何でもないような御答弁であつたと記憶いたしておるのでありますが、問題がこういうふうに具体的になつて来ますというと、私はここでもう一度お尋ねしてみなければいけないと思うのです。ヴアンデンバーグ決議が存在するために、これが動かせないものとして存在するために、現在のような貸與形式がとられているのではないかと、こういうことについての御答弁をお願いしたいと思うのであります。
  203. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) アメリカが国内法上如何なる根拠に基さ、アメリカの国内の政策の如何なるところに基礎を置いて武器貸與をいたしているかということについては、私は答弁はいたしかねます。私の答弁できまする範囲は、日本側が如何なる考えでこれを受取つているかということでございまして、その点は只今申上げたところでございます。
  204. 三好始

    ○三好始君 貸與をする側の立場を全然理解しないで、貸與関係が円滑に行われるとは到底考えられないのでありまして、私はこの点で多分大橋国務大臣は、ヴアンデンバーグ決議の内容も精神もよく御存じなんじやないかと思うのでありますけれども、それだけに或いは御答弁することを、本当のことを知つていることを言わないで、答弁されているんじやないかという感じもないでもないのでありますけれども、ヴアンデンバーグ決議の内容を知つている者にとつては、この問題は全く常識だと思うのでありまして、こういう問題を回避して武器貸與の問題を考えて行こうとしても、それは無意味なんじやなかろうかと、私はこんな感じを持つているのであります。そこで若し武器貸與の関係を、誰にも納得できるようにすつきりした形にしようと、若し大橋国務大臣が企図せられるとすれば、それはアメリカに対して新たに作られるところの保安隊、警備隊は実質的に軍備なんだという説明をせざるを得ないと思う。日本の国会なり或いは国民に対してはそういう説明をしなくても、アメリカに対してはそういう説明をせざるを得ないだろうと私は考えております。ここに保安庁法なり、或いは保安庁法に盛られている保安隊、警備隊の対外的な性格は、明らかにぜざるを得ないような時期が来るのじやないか、こんな気持がいたしているのでありますが、ヴアンデンバーグ決議の内容に関連しての御答弁はせられないようでありますから、これは後ほど又岡崎国務大臣なり、木村法務総裁が委員会へ御出席の際にお尋ねいたすことにいたしたいと思います。
  205. 波多野鼎

    波多野鼎君 この間の予算委員会の時に予備隊の小銃などの貸與は、今説明されたような恰好になるということはよく了解しておつたのですが、そこで今度日本側向う側との間に有償か無償かという点と、それから破損についての、この二点について政府側の取極をするという話が進んでおる、向う側はワシントンに訓令を仰いでおるという話ですが、これがだんだん話が煮えて来ますと、これは條約というような形で契約されますのですか、きまりますのですか。
  206. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) これは條約ではなくして事実行為として行政的に措置される、こういうふうに考えております。
  207. 波多野鼎

    波多野鼎君 そうすると例の行政協定的なものとして取極められるというわけですか。
  208. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) いわゆる行政協定にあらずして、現実の武器の引渡しという事実行為によつてこの行為は完了するものでございまして、将来に亙つて権利義務を約束するものではございませんから、それだけの一つ行政措置として処置されるものと考えるわけであります。
  209. 波多野鼎

    波多野鼎君 そういう点はもう少し話が進んでからお伺いしたいと思いますが、それからフリゲート艦、軍艦ですね、あれの貸與はどういう恰好で行われているのですか、今。
  210. 三田一也

    政府委員(三田一也君) フリゲートと申しますのは千五百トン級の船のことと思いますが、これは十隻貸與を受けることになつておりまして、そのうちの一部が、大体四隻と思つておりますが、それが内地に来て整備中でありまして、まだ完了しておりません。
  211. 波多野鼎

    波多野鼎君 その貸與はさつきのお話のような顧問が責任を持つてやるというような恰好じやないのでしよう。
  212. 三田一也

    政府委員(三田一也君) そのことにつきましては、先ほど国務大臣から御説明もありましたように、まだ確定しておりませんで交渉中でありますが、暫定的には海上保安庁長官とこちらにおりまする米国の極東海軍司令部との間で暫定的に取極をして受渡しをして、追つて公式の協議をしようと思つて目下その手続を進め中であります。
  213. 波多野鼎

    波多野鼎君 暫定的な取極はもう済んでおりますか。
  214. 三田一也

    政府委員(三田一也君) まだ済んでおりません。
  215. 波多野鼎

    波多野鼎君 それじやまだこちらに引渡しを受けたということじやないのでしよう。
  216. 三田一也

    政府委員(三田一也君) まだ正式の、暫定的にも引渡しを受けたという形にはなつておりません。
  217. 波多野鼎

    波多野鼎君 そうするとこれは何ですな、両国政府間の取極が確定しなければ引渡しは受けないというふうに了解してよろしいのですか。
  218. 三田一也

    政府委員(三田一也君) それでは困りますので、暫定的に先ほど申上げましたように海上保安庁長官米軍司令部との間で取極をして受渡しをしようという話合いを進め中であります。
  219. 波多野鼎

    波多野鼎君 その暫定的な取極の中にも、私は今問題になつたヴアンデンバーグ決議の問題やら、米国の武器貸與法の問題ですね、これは全部出て来ると思うのですよ。問題にならざるを得んと私も思うのです。で、そういう問題はもう少しあとで事態が進んでからお伺いすることにしておきまして次の点は、最近、今日新聞で報ぜられるところによると、アメリカ駐留軍日本で武器なぞを買う、そうしてそれを保安隊に貸付けるというような話がちよちよい出ておるのですが、これはどういうことですか、爆彈や、その他を。
  220. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 現実に武器はアメリカの国防省或いは国務省から日本側は受取らずに駐留軍から引渡しを受けておるわけでございます。彈薬についても同様でございます。而してこの引渡しをいたしまする武器、彈薬は駐留軍司令部によつて調達されておるわけでありまして、それは即ち米国の費用によつて米国の当該法規に従つて調達されるわけでございますが、その調達は、従来引渡しを受けましたものは無論米本国の生産にかかるものでございますが、今後は日本において製造されたものが引渡されるかも知れません。併しそれは飽くまでも警察予備隊が日本国において調達するというのでなく、駐留軍司令部が米国陸軍の装備として調達したものを無償で日本側に引渡す、こういう形になると思います。なお現実には日本の国内におきまして、彈薬或いは一種の武器等について発注を受けたものもあるようでございまするから、将来は或いはそういうものが引渡さるということも有り得るかと存じます。
  221. 波多野鼎

    波多野鼎君 そういう日本でもできるだけ武器、彈薬、爆彈などをアメリカ駐留軍の経費で買つて、そうして日本側にただくれるということはどういうことを意味するのか。日本側が例えば今の保安隊の経費が非常に少くて困つておる。そこでその少い部分をそれで補つてやるということなのか。或いは又防衛分担金ですか、あれで買うのですか。それとも又別個の経費で買うのですか、アメリカが、そういう点はどういうことになつておりますか。
  222. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 御承知のように防衛分担金を以つて支弁いたしまするものは大体項目がきまつておりまして、これは日本における不動産の使用料、それから日本におきまする労務費、そういつたようものでありまして、武器につきましては私の記憶といたしましては分拠金ではなく、これは純然たるアメリカの軍事予算で処置されておると、こう聞いております。
  223. 波多野鼎

    波多野鼎君 そうしますと、保安隊の活動というものですね、活動或いは機能というものを我々は国定予算の面から一応捉えることもできると思つてつたが、国家予算の面からも捉えられなくなりますね。つまり駐留軍の経費で以て爆彈なんぞをどんどん保安隊に貸付けて来るということになると、保安隊がどれだけの活動をするということは、国家予算に現われた数字からは捉えられないということになりますね。
  224. 三田一也

    政府委員(三田一也君) 現状におきましては少くとも武器、彈薬については、日本政府の予算というものは使用されておりません。従つてお説のようなことが言い得るかと存じます。
  225. 波多野鼎

    波多野鼎君 こういうことは国のあれですか、独立国の活動機能の上でどういうことになりますかね。日本日本人が保安隊を作つている、併しそれに必要な武器彈薬というものは、よその国が、日本政府が知らん、恐らくこれは日本政府に相談はないのじやないかという気もしますが、日本政府が知らん間にどんどんどんどん武器彈薬を保安隊に注入して来るいうことはどういうことになりますかね。
  226. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 日本政府の了解なしに予備隊に勝手に武器彈薬を持つて来るということはございません。日本政府はこれを了承し、又それを使用することを隊員に許しておるのでございます。
  227. 波多野鼎

    波多野鼎君 それなら日本政府はどういう方針で、どの程度内のものを入れるのですか。
  228. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 日本政府といたしましては、大体米軍と相談いたしまして、米軍のほうでこれだけの武器彈薬は自分のほうで貸與ができる。彈薬に至つてはこれは消費いたしまするから結局贈與のような形になつております。で、その範囲で現在は警察予備隊の訓練は支障なくできると認められておるわけでございます。若し将来或る限度以上の武器はくれないということになりますると、こちらとしては警察予備隊の運営上必要な武器彈薬というものは、無論自給しなければならんということになります。これは当然政府としては予算を必要とすることになりまして、この範囲においては当然予算の御審議を頂かなければならんのであります。それならば現在国外から武器彈薬を供給されておるから、これは政府とアメリカだけの話合いで国会に関係なく運営できるかということになるわけでございますが、併しこれにつきましては、国会は基本法たる法規の審議権を持つておりまして、又そのほかに国政調査権を持つておられるわけでありまして、そうした面におきまして国会の監督は予備隊に対して完全に行われ得る状態になつております。ただ予算を使用いたしませんから、武器彈薬に関する限り予算の議決という形で監督するということは、これは事実上その機会がありませんが、その他の一切の国会の権限は、当然その下に予備隊が運営されておる、こう思つております。
  229. 波多野鼎

    波多野鼎君 問題は二つあるのですよ。今武器彈薬をアメリカ駐留軍が供給しているのが今後とまりやしないか。とまつた場合にどうするかという問題と、そうじやなしに、今私が心配しているのはむしろそのほうじやなくて、どんどん武器彈薬を供給しまして、そうして我々が国家予算でつかんだ、或いはこういうことで審議しながらつかんでおる保安隊というものの性格なり機能というものが、それ以上の機能を果すことになりはしないかという問題と両方ありますよ、問題は……。ですから、あとの問題のほうで、日本政府としてはどの程度の武器彈薬の供給を受入れるつもりでおるのかということなんです。
  230. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 日本政府といたしましては現在のところ、先般装備表を委員会に提出いたしておりますが、この装備表に記載した装備を使用させるということを了解を得ております。なおその後装備が必要であるということになりまするならば、こちらから要求する場合もありましようし、或いは向うが気が付いてこういうものを使つてはどうかという場合もありましよう。併しその場合において、予備隊がその武器を装備するかどうかということについての決定的な決定の権限は完全に日本政府が持つておるわけでございまして、これに対しては国会の十分なる御監督が可能である、こういうわけでございます。
  231. 波多野鼎

    波多野鼎君 国政審議権で以てしよつちゆう見て行けばわかりますけれどもね、そういうひまが余りないのじやないかという気がする。そこで装備表というのは国会に出されたのですか。
  232. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 現在の装備につきましては、先般提出いたしてあります。
  233. 三好始

    ○三好始君 私は今問題になつておる保安隊、警備隊の装備について、国会が予算を通じて監督をすることができないことから、非常に大きな装備を持つようになつて、事実上保安隊、警備隊が憲法第九條で禁止しておる戰力になりはしないか、こういう意味に触れるような問題が出ましたので、この際お尋ねいたしておきたいのでありますが、保安隊十一万は近代的な装備をすれば十分な戰力になり得る兵員であります。その装備について、国会が監督権を持つておる場合には、国会が、予算を通じて内容を審議する機会を持つておる間はそう厖大な装備をすることによつてつて来る各種の問題を未然に防ぐことができますけれども政府は一方的に、少くとも法規上は国会の審議を経ることなくアメリカ側と交渉によつて自由に装備を持てるということになりますというと、これは仮に政府がとつておるような戰力に対する定義をとるとしても非常に危險な状態が考えられる。私は先般来質疑をしたときに申上げたように、戰力の定義は、憲法第九條において全く政府と違つた見解を持つておるし、それが又正しいと信じておるわけでありますが、仮に政府の戰力の定義を認めるとしても、私は十一万の保安隊に非常な優秀な装備を持たすというと、政府のいう戰力になつて来るのじやないか、そういう危險性が国会としては何にも審議を通じて阻止する機会がないということになりますと、これは大変なことになるのじやないかと思います。成るほど国政調査権という憲法に規定のある方法もありますけれども、それは波多野委員の申すように、そう予算とか法律案審議を通じて監督するほど確実な監督ができる方法ではありませんから、そういうところに非常な問題があるのじやないかと思います。ですから政府はそれほど大きな装備は予定しておりませんということだけでは安心できないのでありまして、私はそういう問題は保安庁の性格から考えましても、法律乃至予算で国会が審議できるような状態にしておくほうが正しい行き方だと思うのでありますが、これについてのお考えを承わりたいと思います。
  234. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 三好委員のお説には私全く同感でございます。予算を要するものは予算の面を通じ、法律を要するものは法律の面を通じて国会が監督できるような状態におく、これは当然だと思います。而して現実に警察予備隊が米軍から借用いたしておりますものは財政支出を伴いませんから、予算の面を通じて御監督を受けるということは、これは実際上できない相談であります。そこで政府といたしましては、保安庁法の中に特に第六十八條に「保安隊及び警備隊は、その任務の遂行に必要な武器を保有することができる。」、現に任務遂行に必要な限度内でなければ武器は保有できないという趣旨を明らかにいたしたわけでございます。この法律を通じて国会の意図が十分に徹底すると、こう考えております。又政府としては、当然六十八條がなくても、憲法の第九條の趣旨に照らして、如何なる武器を保有すべきかということを決定すべきであり、如何に米国が何でもかんでも考えてくれるからといいましても、憲法九條の範囲を逸脱して考えられることは、これは断じてなさるべきでない、こう考えております。
  235. 三好始

    ○三好始君 政府が憲法第九條にとつておる解釈は、極めて常識的であり、国民の納得できる程度の解釈であれば問題ないのです。ところが、すでに国民に知れ渡つておる事実でありますが、政府は憲法第九條の戰力に対して、近代戰を有効適切に遂行し得る編成装備を持つた実力が第九條に言う戰力だ、こういう定義を下して、それがどこまで強大な武力を意味するのか想像もつかんような状態であります。そういう政府のとつておる戰力の定義をもとにして、それに逸脱しないということでは、そう安心できないのであります。又六十八條の「保安隊及び警備隊は、その任務の遂行に必要な武器を保有することができる。」、任務遂行の範囲といいますけれども、一体その任務というのはどういうことなのか。これは非常に範囲の広い内容を持つておると想像できるのでありまして、現に六十一條にいたしましても「内閣総理大臣は非常事態に際して、治安の維持のため特に必要があると認める場合には、保安隊又は警備隊の全部又は一部の出動を命ずることができる。」、こういう命令出動の基準を示しているわけでありますが、非常事態とは一体如何なるものか。これは先日も私が指摘いたしましたように、小規模な暴動も含めることができれば、場合によつては天災地変を含めることもできる。従いまして、この非常事態に戰争を含めることも可能である。こういうことになつて参りますと、この任務遂行に必要な武器という限度は一体どこに引かれるか。これは非常に問題なのでありまして、憲法第九條のとつておる戰力の特殊な定義と併せ考えて、六十八條の規定が将来保安隊、警備隊が持ち得る武器についての一つの制限を見ておるように受取ることはできないのでありまして、こういう抽象的、包括的な規定は、先ほど私が申しました国会が法律案或いは予算案を通じて監督権を行使するということを実際上不可能にするだろうと思うのであります。この点は、先般参考人として来て頂いて意見を述べて頂いた際に、東大の田中教授が指摘しておつた問題の通りであります。田中教授は、この法律案は、重要な事項を総理府令或いは法令に余りにも委任し過ぎておるということを指摘いたしております。これは極めて重大な問題だと思うのでありますが、それは装備についても言われると思うのでありまして、六十八條を以て装備の一つの限界を示しておるというふうに考えられないのであります。その点は、政府の独断に傾く虞れがないだろうか、こう思うのでありますが、如何ですか。
  236. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 政府は、第六十八條の規定が有効なる限界を示し得ないといたしまするならば、憲法第九條の規定がおよそ予備隊の装備についての立地的限界を明らかに示しておる、こう考えております。そこで、この解釈について政府は独断でやつておるというふうに言われまするけれども政府といたしましては、この解釈はすでに国会においてたびたび申上げておる通りなのでございます。国会の御監督の下に、政府はこの解釈をとつておるわけでございます。決して政府が国会を無視してそうした解釈をとるということは、今日の国家機構からいつてあり得ざることであると、こう考えております。
  237. 三好始

    ○三好始君 こうなつて来ると、問題が憲法第九條の問題になるのでありますが、これは総括質問として総理大臣並びに法務総裁の出席せられた際に更に掘下げてお尋ねいたしたいと思うわけでありますが、政府は国会の意向を十分に反映した立場で憲法第九條を解釈しているとは私は認めておらないのでありまして、少なくとも野党の殆どを挙げて、憲法の戰力の定義については、政府考え方が余りにも一方的であり、然も非常識であるという考え方を持つていることは明瞭であります。これはひとり国会の野党側だけでありません。すでに言論界その他学界におきましても、これは大多数の意見と認めてもいい状態になつているのでありまして、少くとも国会の納得の下に政府は憲法を解釈しているというお気持を持つているとすれば、これは認警の誤りではないかと思うのでおります。が、併しこの問題は総括質問としてお聞きしたいのでありますが、今日はこれ以上触れることはやめておきます。
  238. 波多野鼎

    波多野鼎君 もう一つ、今第六條の第四号に関連する問題ですが、この装備品の調達において、今日も午前中に調達庁の問題が論議されましたのですが、それと通産省との関係、国の経済活動とマツチするような調達をしなければならない、アメリカの特需品或いは新特需品についても、全部総合的に考えてやつて行かなければならんというような意見も私出しておいたのですが、そのことに関連してこれは調達庁、まあ主として調達庁ですけれども調達庁調達する武器彈薬などあると思うのですが、そういうものと調達の強行とかいつたことなしにうまく話合つて行く機関はできるのですか、どうなんですか。
  239. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 予備隊或いは保安隊調達というものは、相当量的に大きなものでございまするから、これが国民経済に及ぼす影響ということは十分に考えなければならんと存じます。従いまして、特に装備につきましては、内局において装備局というものを設けまして、調達上必要な関係機関との連絡調整、こうした仕事を特に装備局において担当せしめることにいたしたわけでございます。装備局は、現在警察予備隊本部にもございますが、物資の大量なる調達或いは主要物資調達等につきましては、現在もこの装備局が中心となりまして、通産省等の事務当局と十分に連絡をとつて、国民経済の振興に障害を生じないように留意をいたしておるわけであります。今後においてもそうしたやり方をいたしたいという意味で、装備局を内局に置くことにいたしております。  それから調達庁との関係でございますが、調達庁物資調達につきましての重要物資については調達庁自身が通産省と連絡しながらやつておるというのが今までのやり方でございました。そうした物資については、結局調達庁における調達物資も、又予備隊における調達物資も、総合的な立場において通産省が調整に当つておるという実情でございます。今後もやはり同様の関係を持続したいと思つております。
  240. 三好始

    ○三好始君 第六條に関して質疑が出ておりますので、第六條についてお尋ねいたしたいのでありますが、十六号に「保安隊の訓練の目的に適合する場合において、国又は地方公共団体の土木工事を引き受け、及びこれを実施すること。」こういう規定がありますが、この「保安隊の訓練の目的に適合する場合において、」というのはどういう意味でしようか。
  241. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) これは、実は予備隊の編成について申上げました際に、施設部隊というものを申上げたのでございます。これは技術部隊でございまして、必要な際における部隊行動を援助いたしまするために、道路を造りましたり、或いは橋梁を架設いたしましたり、或いは部隊所要の土木工事を引受ける、こういうようなことがその主たる任務と相成つておるわけでございます。ところでこの部隊が出動をいたしまする場合に、任務を遂行いたしまするためには、平素からそうした仕事について訓練をしておく必要があるわけでございます。ところで折角訓練をするために橋をかける、済んだら又壞す、そうして又この次かける、これもまあ訓練の一つのやり方ではございまするが、併しどうせ訓練をしますならば、一般の公共団体等において橋梁の架設をする、そういう場合に訓練として或る作業をやつてもらえば、非常に都合がいいという場合もあろうと思います。又予備隊といたしましても、いつも同じようなところで、同じような演習をするよりは、そういう実地に当つて作業をして行くということが一層訓練の目的に適合するわけであります。従いましてそうした場合に、その一事を引受けるということを考えたわけであります。併しそのために本来の訓練の目的を逸脱することがあつてはなりませんので、「訓練の目的に適合する場合において、」と、こうして絞つたわけでございます。
  242. 三好始

    ○三好始君 そういたしますと、原則としては保安隊の恒久的な施設工事のごときは含んでおらない、こういうことになるのですか。
  243. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) そういう恒久的な保安隊自体の施設、これは例えば宿舎等の建設工事につきましては、官制上建設省がすべての国の営造物を一元的に管理することに相成つております。従いましてそうしたものは本来建設省の所管事項に相成つております。但しそれを訓練の目的に適合する場合において引受けることは、無論第十六号の範囲内に属する事項でございます。そのほかに一般の土木工事にあらずして、例えば予備隊が演習地を取得し、これを整地する仕事であるとか、或いは又陣地を築造するというような施設、これは訓練としてやる場合もありますし、又訓練にあらずして、本来の職務としてやる場合もあるわけでございます。訓練の場合は無論十六号で処理するわけでございます。
  244. 三好始

    ○三好始君 十六号の規定しておる「土木工事を引き受け、及びこれを実施すること。」というこの事実上の仕事は、行動部隊としての第一幕僚長の指揮下にある部隊がやつて行くのですか、それとも内部部局が関係して行くのですか。
  245. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) これは單純の部隊内の行動にあらずして、対外的な問題でございまするから、保安庁の戰権でございまするが、これは内局が引受けるかどうかということは決定するわけでございます。内局が引受けるということを決定した後において、或る種の部隊をそれに充てるか、その部隊をどう行動させるかということは、保安庁長官から幕僚長に対する命令となりますから、その限度においては、第一幕僚長、第二幕僚長を通じてこれに指示するということになります。
  246. 三好始

    ○三好始君 そうしますと、「土木工事を引き受け、」という、ここまでは内局の仕事としてやつて、「及びこれを実施すること」という実施については部隊がやるということになりますか。
  247. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 土木工事の引受けということは、もとより方針に関することでございますが、実施の場合におきましても、実施の中に方針に関する事柄と、その方針の実施に関する事柄とあると存じます。そうした方針に関する事柄については、内部部局の管轄になるわけでございます。
  248. 三好始

    ○三好始君 そういう場合に、内部部局はどの局が担当するのでございますか。
  249. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) これは経理局において経理上の点は担当いたしますし、又そういう引受けをすることが、部隊全体の管理上支障ないかどうかということは、保安局で担当することに相成ると存じます。
  250. 赤松常子

    ○赤松常子君 私一つお尋ねしたいのでございますけれども、こういう非常に、時には生命を危険にさらすような困難な場合もございましようし、これがまあ大体提案理由説明には、国家の平和を維持し、ということも謳われておりますけれども、こういう部隊の精神的支えというものは、どういうふうなところに重点を置いてお考えでございましようか。
  251. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) この点は部隊の隊員が、国の平和並びに秩序というものを維持することが自己の最大の使命であるという強い自覚の上に立つてのみ、その職務の遂行が期待できると思うのでございます。そうしてこの自覚の基礎となるものはやはり社会の分業の上における自分の職責というものを自覚することであります。それはその自分の分担いたしまする分野を通じて、国家社会を守るということになるわけでございまして、而も高度の危險性のある仕事でございますから、どうしても犠牲的精神を以てその職務を遂行するということが要請されると思うのでございます。その根本はやはり国家及び民族に対する大きな愛国心と申しまするか、そうしたものが基礎にならなければならん。これはもとより申すまでもないことだと存ずるのでございます。而してそうした考えを隊員に涵養するについて、どういうやり方をして行くかということが次に問題になると存ずるのでございます。旧軍隊時代におきましては御承知通り軍人に賜わりたる勅諭というのがございまして、いわゆる五箇條の道徳律というものを日夜暗誦して、そうした精神を養成いたしたことは御承知通りでございまするが、よくこれらの五箇條というものを一々分析して考えて見ますると、例えば忠節を盡すを本分とする、礼儀を守るを本分とする、或いは武勇を尊ぶとか、信義を重んずるとか、こうした事柄はおよそ人が国家というものを成して社会生活を営んで行く上には、社会生活の如何な分野を、国家の如何なる仕事を担当する場合においても必要な事柄ばかりであると思うのでございます。如何なる職に従事いたします者といえども、あの軍人に賜わりたる勅諭の五箇條の一項目たりともなくても済むという仕事は、社会的な仕事にはない、こう思うわけでございます。こう考えて参りますると、昔の軍隊の訓練といたしましても、一般社会人と違つた軍人の道徳律というものを掲げて訓練する、訓育をするということは果して適当であつたかどうかということについて私は多大の疑問を持つておるわけでございまして、それよりもむしろ一般人に要求されるところの国民としての一般的な道徳律、それが現実的に有効に行われるということこそ必要なことではなかろうか。恐らく昔の五箇條の御誓文を以て特別な軍人精神であるという、そうした考え方というものは、昔、国が階級的な組織を成しておりました当時、武士だけが武士道という特別な道徳律を持つておるのであるというふうな考えをいたしておつたそうした封建的な道徳観の残滓ではなかろうかとさえ私には感ぜられるわけでございまして、私は警察予備隊についてそうした意味における特別な道徳律の強調ということはむしろ適当でない、むしろ国民として模範になるような、そうした意味における、道徳律としては一般国民と同じでありまするが、それをできるだけ高めて行くということこそ必要ではないか、こう思うのであります。現実の警察予備隊の訓育におきましては、こうした一般的な道徳は、作業のあらゆる面、日常の生活を通じて指導して行くというやり方をいたしております。特別に或る箇條書を今やる、何かさせるというようなやり方、或いは特別な時間について、一週間に何回か道徳の話をすれば、それで道徳教育終れりという、そういう教育の仕方をとつておりません。常住坐臥、日常の作業を通じて国民としての高い道徳的水準を実現するように努力させるというふうな式をいたしておるわけでございます。
  252. 赤松常子

    ○赤松常子君 これは又国民全般に言われることでもございますし、終戰後の思想混乱は深刻でございましたし、よりどころを全然失つている状態でございます。なお独立いたしましてやや立直りかけたとはいえ、まだまだ受けた痛手というものは決して癒えていないと思うのでございます。で、昔は陛下の軍隊と言われて、何か一本のものがあつて、決して私それがいいとは思いません。本当に民主的な、お互いの連帶責任による考え方というもので国家を守り、民族を守つて行くべきものだと思うのでございますけれども、今お伺いいたしまして、非常に高い理想はよくわかつたのでございますけれども、現実にそれをまあ実現できるかどうか、今警察予備隊などでそういう訓練、訓育方法をなすつていらつしやいますが、実際それでやり得るものか、その点をお聞きいたしておきたいと思います。
  253. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 諸外国の軍隊教育等について考えて見ましても、特に米国などでは軍人についての特別な道徳的な教育というようなことは実際やつておりません。強いて言えば軍人は政治に関係してはいけないんだ、政治は政府のやるものだ、軍人は常に政府のきめた政策を忠実に実行する、命令は絶対に服従する、こういつた程度のことが強いて言えば教育上注意されているかと思いますが、併しこれは道徳律というようなものよりは、むしろ職務上当然の義務なり責任なりというものを教えてあるということでないかと思うのでございまして、およそ如何なる職業につきましても、その職業に就く者について特別な道徳教育ということをするということはこれはほかの職業には余りないことでございます。普通教育としての道徳教育、いわゆる職業上の特別の道徳教育ということはほかの職業にもないことであると思います。私は予備隊、或いは警備隊というものについても、ほかの国民が他の職場において、特別な道徳教育を受けずして、而も高い道徳水準を実現し得るということが期待せられておるのに、特に保安隊、警備隊の隊員だけにそれが期待できないという道理がないと、こう考えております。
  254. 赤松常子

    ○赤松常子君 もう一つ、三十頁の審査の請求及び公正審査会についてでございますけれども、いろいろ内部に勤務いたしておられますかたがたに、たまたま問題が起きると思うのでございます。それでこれに関する対策といたしまして、公正審査会というものができておるようでございますが、これの構成はどういうふうにお考えでいらつしやいましようか。
  255. 根道廣吉

    政府委員根道廣吉君) お手許に公正審査会に関する成案要項というものをお配りできる時期が来るかと思いますが、只今我々が考えておりますのは、現在の警察予備隊にもすでにこういう制度を設けて、いろいろな処分を受けた者に対する救済の方法を講じております。これを只今つておりますのは、この委員会のメンバーは五人として長官が指名する。そうしてその五人の内訳は、先ほども申上げましたが、制服の職員と、制服でない職員とがあります。むしろ制服でない職員の数を殖やしたほうが、部内にあつて而も公平な判断ができるのではないか、こう考えておりますので、そういう組織の下に運営いたして行きたい、かように考えております。まあ内部部局で申しますと、局長が一人この審査会長になるわけであります。あとは局長級、或いは課長級、部隊のほうにおきましてもそれに相当するくらいの一等警察正、これらの人を二名程度加えた委員会運営して行きたい、かように考えております。
  256. 赤松常子

    ○赤松常子君 それは拜見すればわかるのでございますが、各部隊のあるごとにこの公正審査会も設けられるわけでございますね。
  257. 根道廣吉

    政府委員根道廣吉君) 公正審査会は、その処分について不当だと考える者が長官に申請するということにいたしておりますが、各部隊ごとには設け得ません。中央に設けまして、あらゆる調査を部隊を通じてやつてもらうことはございますが、もつと高い立場で判断するほうが、救済機関としては適当でないか、かように考えております。各地方のほうまで、これを設けようとは考えておりません。
  258. 赤松常子

    ○赤松常子君 昔の軍隊でございましたら、命令でも絶対服従で問題が解決した場合もあると思うのでございますけれども、今度は民主的に運営して行かなければならんというわけでございましようし、そういう内部にいろいろこの不正だとか、或いは矛盾だとか、或いは不満だとかございますと思うのでございますが、それらの空気抜け煙突の作用をするような、こういう機関の配慮ということをよく考えて頂かないといけないと思うのでございますが、今のお考えで十分でございましようか、如何でございましようか。
  259. 根道廣吉

    政府委員根道廣吉君) 部隊の性質上、殊に行動部隊でございまするので、命令に対する絶対服従というものは、これは鉄則であると考えております。むしろ昔の陸軍が腐敗をいたしましたのは、上層部の命令が末端をで徹底しない、下剋上とこういうがああした事態を引き起したのだと思いますので、命令に対する絶対服従ということは飽くまでも厳守しなければならんと思います。併しながら部隊の中における実際の隊員の処遇等について必要以上に自由を拘束したり、或いは又待遇が不当であるというようなことでは、部隊の能率に影響をいたしまするから、この点は管理上十分留意しなければならんと思つております。殊にそうした面を高い立場から監督をし、絶えず、とかく専門的な立場に立ちます者は、視野が狭くなりまするから、それを補いまして、より高い、より広い視野からそうした問題を見て行くというのが、内局の人事局の使命であり、又その他の関係の内局の使命になるわけでございます。
  260. 楠見義男

    ○楠見義男君 それでは逐條的な質疑を引続いて……。先ほど第六條までやつたのですが、第六條の十六号について先ほど三好君からも御質疑がありましたが、この場合の費用というものは、私は、「保安隊の訓練の目的に適合する場合」というのだから、訓練目的をこういうことによつて達せられるから、恐らくこれは国の場合は問題ありませんが、地方公共団体の場合でも無料でやるのではないかと思つてつたのですが、先ほどのこれの所管部局は経理部というふうなお話がありましたが、或いは有償で以ておやりになるのじやないかというふうに疑問を持つたのですが、有償で行くのですかどうでしようか。
  261. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) これにつきましては、先般政令案をお手許に差上げてあると存じますが、この土木工事は無論訓練のためでございますから、それについて対価をとる考えはございません。ただ材料等は予備隊の経費で支弁するわけに参りませんので、そうしたものは現物を以て、或いは費用を出してもらう。経理局でなぜこれに関與するかと申しますと、保安隊の隊員が、そこで場所によりますと出張しなければなりません。それら特別の勤務に服したりするわけでございます、そうした面で経費の要る場合は、当然経理局が関係します。経理局に関係ない面、即ち訓練上適当であるかどうか、或いは又他の予備隊の事務に支障があるかないかという面につきましては、公安局が監督をいたすわけでございます。
  262. 楠見義男

    ○楠見義男君 そうしますと、今の経費の関係の点は、六十六條における災害派遣の場合も同様に考えていいのですか。
  263. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 災害派遣につきましては、本来の任務として出動いたします。従いましてその場合において公共団体から出動についての対価をもらつたということはございません。又予備隊等において使用する材料、それから工具、そういうものは無論予備隊自身の費用負担でやるわけでございます。又必要があれば、予備隊の費用負担において、予備隊の材料を用いて、公共団体のために運搬をするということもあるわけでございます。この点は訓練のための土木工事についても同様でございます。
  264. 楠見義男

    ○楠見義男君 次に第十條に移りますが、第十條につきましては、先ほど問題になりましたので、重ねてお尋ねすることは省略いたしますが、ただもう一度明らかにしておきたいのでお伺いするわけなんですが、先ほど私が申上げたこと、即ち保安隊及び警備隊に関する各般の方針及び基本的な実施計画を作成する場合に長官が第一幕僚長或いは第二幕僚長に指示する、その指示を受けて第一幕僚長又は第二幕僚長が基本的な方針なり実施計画を定めて承認を受ける、こういうふうに條文通りに読んだのですが、又そういうようなことだという江口次長の御答弁がありましたが、そういうふうに了解していいですか。
  265. 江口見登留

    政府委員(江口見登留君) 先ほど御答弁申上げたと存じますが、附加えて申上げておきたいことは、十一條以下で各局の任務が規定してあります。従いましてすべてを第一幕僚長を通じ第二幕僚長を通じてやらなければやれないというのではないのでございまして、その基本的問題につきましては長官官房、各局自体が自分で発案する、自分で起案したものを直ちに長官に持つて行つて進言するということもできるのでございます。ですから運用としましてはできるだけそうするのがいいのでございまして、それ以外の非常に専門的な調査、研究を要するというものを幕僚監部を通じて部隊のほうにやつてもらう、こういうふうに両建で考えております。基本はいわゆる本部であるけれども、命令をなし得るという線は十一條等から自然に出て来るわけでございます。
  266. 楠見義男

    ○楠見義男君 それでは私の誤解であつたと思うのですが、即ち今お述べになつたことは、保安隊及び警備隊に関する各般の方針或いは基本的な実施計画について、こういう径路で幕僚長に作成を命じてやらせる基本的な実施計画や各般の方針もあれば、そういう径路を経ずに独自の各般の方針、或いは基本的な実施計画の作成もあり得ると、こういうふうに了解してよろしうございますか。
  267. 江口見登留

    政府委員(江口見登留君) さようでございます。
  268. 楠見義男

    ○楠見義男君 それからその次に十六條なんですが、十六條の二項ですが、非常に細かいことのようなんですが、私は最初に申上げたように、できるだけ旧陸海軍当時の臭いがなくなることが望ましいと思うのです。そこで二項で「長官官房及び各局に、課長、部員、事務官、」云々と、こうあるのですが、ところが五項では「部員は、命を受け、課務に参画する。」、これは恐らく課員のことと旧陸海軍当時にはこういう名称で部員というのでやつてつたのですが、それを踏襲されておられるのではないかとも思いますけれども、どうしてこれは部員という特別のこういう職名と申しましようか、官名と申しましようか、設けておるのでしようか。
  269. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) これは実は従来のものをそのまま踏襲したわけでございまして、御承知のように現在では警察予備隊本部ということになつておりまして、そうしてその所要職員は部員ということに相成つておるのでございますが、それをそのまま何気なく踏襲したわけでございます。なお旧陸海軍時代にこうだつたというお話でございましたが、旧陸海軍時代におきましては、参謀本部では部員と申しておりました、それから陸軍省では課員と申しておりました。これに対して海軍省におきましては課員ということを言わずに、課に勤務しておる者を将校は局員と、こういうふうに申しておりました。たしかそういうふうに陸軍と海軍で課員と言つたり局員と言つたりしておりました。併しこれはそれとは違うわけでございまして、前には大体原則として軍人が課員や局員になつておりましたが、今回の部員というのは制服職員でないという点で違つております。特に部員と申しましたのは、一般の事務官、或いは技官等特別な専門に属する技術的な問題についての補佐機関でなく、政策的なそうした重要な仕事についての補佐者という意味で、一般の事務官、技官から区別をして表現したわけでございます。これは主として給與等に関係をしております。
  270. 楠見義男

    ○楠見義男君 同じく第十六條の六項でありますが、「旧正規陸海軍将校又は」云々というこの條項は、衆議院で修正されたように承知しておりますが、その修正の理由は、憲法で職業の自由というものが保障されておるのだから、従つてこういうふうに、旧正規陸海軍将校というものをはつきり書くことは、憲法違反の虞れがあるというような理由だと伺つておるが、そうですが。それともほかの理由ですか。
  271. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) これはそうではございません。憲法上の解釈といたしましては国の公務員に一定の資格を積極相に規定し、或いは消極的に規定するということは、その資格が真にその職員の仕事の上から言つて適当な場合には、これは私は憲法に違反するものではない、こう考えておるのであります。特にこの削除に対して政府が同意をいたしました理由を申上げますというと、この原案におきましては二つのものが一緒に規定してあるということがわかつたわけであります。それは三等保安士以上の保安官、或いは三等警備士以上の警備官というものは、これらの人は旧軍人もありまするし、旧軍人でない人もあります。併しながらそれらの人が如何なる主観的な性格、素質を持つておりましようとも、そういう職務を担当しておつたということによつて、これらの部隊を更に一段上に立つて管理することを任務といたしておりまするこれらの局長、課長等になるということは、この管理機構と実動部隊機構との限界がずるずるになつてしまい、延いては旧軍隊の弊害を生じやすいという意味で、これははつきり資格上区別する必要のあることである。そこで旧正規陸海軍将校というものは、これは御承知のように、現行法の観念としてはそういうものはないわけでありまして、それはこの憲法以前における一つの経歴が今日のこういう仕事の性質から見まして適任でないということが一般的に言えるだろう。こういう問題と考えたわけであります。即ち前の問題は資格があるかないかという問題でありまして、後の問題は旧陸海軍とこの保安庁の内部部局というものは全然無関係のものでございまするから、因果関係はないわけでございまするが、ただ旧陸海軍正規将校の経歴のある人はどちらかというと適任でない人が多いだろう。こういう新らしい機構を運用する上から言つては、そういう意味から言つて、これは適、不適の問題になるわけであります。そこで資格の問題と適、不適の問題を同じ條文に無差別に書いているという点がこの條文法律的な欠点であると、こういうことに気が付いたわけであります。而してかような点が明らかになりました場合においては、いわば旧正規将校を採用しないということは、これは保安庁法を運用する上の方針の問題になつて来るわけであります。保安官或いは警備官の幹部の経歴者を採用しないということは保安庁の機構の本質から来る問題でございまするから、政策の問題と本質の問題を区別して考えたがよかろう、而して政策の問題についてはこれは当然政府の意思というものが主になるわけでございます。政府といたしましては不適任と認められる陸海軍正規将校をかような職員に上げ用いるということは不適当であると確信をいたしております。この方針は飽くまでも貫くべきものである。こう考えまするが、それは政府がそれだけの固い方針を飽くまでも実行するという意思があればできることでありますし、本質の問題とは違いまするので、その点について削除をするということは差支えなかろう、こう考えて削除に同意をいたしたわけでございます。特にかような書き方は憲法上どうこうという問題はないにいたしましても、ややもすれば保安官、警備官はこれからなる人もたくさんあるわけでありますが、陸海軍正規将校ということになると、これは過去の一つの経歴でございますから殊更にそれらの人に対して差別待遇をしたかのごとき感を與えるわけであります。これは今日の時局から見まして国民全体が協力一致を必要とする際に、殊更国民の一部に対して差別的待遇を與えておるかのごとき感じを與えることは、政治的にもおもわしくない措置ではないか、こう思つて削除いたしたわけでございます。併し方針としては飽くまで貫きたい、これは固い決意を持つておる次第でございます。
  272. 楠見義男

    ○楠見義男君 ここで、問題が今の御説明で二つあるのですが、一つの点は立法技術上の問題として前者は適、不適の問題であり、後者は資格上の問題である、従つてそれを同じ項目の項の中に書くことの適否の問題なのですが、そういう意味から行くと、立法技術の上からいつてそれが変だということになれば別の項で書いてもいいじやないかというような問題が一つと、それからもう一つの点は、運営問題として政府としては依然従来と同じような、この原案でお考えなつたと同じように、旧正規陸海軍将校を任用することは不適だということを確信せられており、従つて今後運営の上においてもそういう方針を確実に続けて行きたい、こういう点第二の点でありまするが、この点については今お述べになつたように、差別待遇を與えるかのごとき感を国民に與えることは適当でないという見方もありますが、同時に折角そういうふうにしつかりと確信を持つておられるにかかわらずこの條項を外すことによつて、本来こういう人は旧軍閥主義に戻ることとを慣れるの故を以て不適格者と言いますか、というふうにしておつたのを、この規定を削除することによつてそういうものも任用するのだという逆の誤解を国民に與えておることもこれ又事実なんです。従つてこういう旧正規陸海軍将校というものを不適当なものとして将来も任用しないのだということであるならば、それを明らかに法文で書いておつたほうがむしろ将来にいろいろ禍根を残し、或いは又そのときの政府の如何によつては折角今確たる方針をおきめになつたことが崩れる場合もあり得る。こういうふうに思われるので、むしろ折角の御説明でありましたけれどもそういうことであれば残したほうがむしろいいじやないかと、こういうふうに思うのでありますが、その点はどうでしようか。
  273. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) この点につきましては、おおむね心あるかたはおのずから結論を出しておられると思うのでございます。そうして現内閣といたしましてはこの方針を嚴守すべきものである、固い考えを持つている。法律に明らかにされなくても、これを守るということは現内閣の続く限りは確実に保証されるということに確信を持つているわけであります。実際現内閣もそれはいつまでもあるとは限りますまいが、少くとも今日の国会によつて指名されるという内閣制度が続きます限り、この方針に外れた方針をとるような内閣が現実に出て来るということもない。こういう見込を持つているのであります。(松原君「ノーノーそんなことはない」と述ぶ)かたがたそういう見地から現内閣でなくてもそうした方針が守られるであろうという場合に、強いて差別的待遇を與えるかのごとき感じを国民の一部に與えることは、協力一致を必要とする今日の場合、政治的に見て賢明でない、こう考える次第であります。
  274. 楠見義男

    ○楠見義男君 協力一致を求めることを必要とする場合に適当でないという、協力一致を求める相手方は旧正規陸軍将校を指しておられるのですか。
  275. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 協力一致というのは国全体を再建する意味において国民がそれぞれの立場で全力を盡すということを協力一致ということを申したわけでありまして、その場合に国民の一部に自分らは他の国民から差別待遇をされているというような感じを與えることは再建のための努力についての熱意を失わしめる虞れもあるので、皆気持よく再建できるようなそういう努力を醸し出すという上から申しまして、こうした必要のない事柄で差別待遇の感じを與えることはできるだけ避けることが政治的に賢明である、こう考えたのであります。
  276. 楠見義男

    ○楠見義男君 私はこれ以上は討論になりますから省略しますが、将来如何なる内閣といえども国会で指名される総理大臣の下における内閣であればそういうものはないと、こういうお話でございますが、私は実はそういう保証はなかなかむずかしいのじやないかという気がしておるのですが、この問題が憲法上の問題で、こういう字句があることが憲法上非常に疑義がある、こういうことであれば又別の問題でございますけれども、そうでなければむしろこれは存置しておつたほうがいいのじやないか、はつきりとしておいたほうがいいのじやないか。こういうふうに思うのでございますが、これは今申上げましたように討論的になりますので、これ以上は申上げませんが……。
  277. 松原一彦

    松原一彦君 それにちよつと関連して私も希望を、お尋ねしたいのでございますが、初め、これが憲法上の疑義があるということで衆議院側が発議して出されたのをあとで政府が削除せられたのでありますけれども、国民が疑義を持つのはやはりこれを削除したところにあるという楠見氏のお考え方に私は同意するものでありますが、従つて憲法上に疑義がないものとするならば、これは原案の通りにされることのほうが私はすつきりとしておつていいと思う。いわゆる民主国会におけるシビリアン・コントロールということが数日前から出ておりますが、いずれにいたしましても、この文字があつたほうが国民は安心すると思うのです。現下の情勢から見ましてもこれははつきりとして置くことのほうがよろしいという所見を私は持つのでありますが、衆議院の修正を更に再修正して参議院ではこれを原案通りに復活して政府は御異議ありませんか。
  278. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 参議院の議決がありましたならばその際に考慮いたしたいと思つております。
  279. 松原一彦

    松原一彦君 わかりません、もう一遍……。
  280. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 参議院において再修正をされるといたしまするならば、その際に政府といたしましては意見を、重ねてこれに対して述べることは当然であると思います。それは今はその時期でないと思いますので、私といたしましてはこの字句は削除して差支えないものである、こういう考えを持つております。
  281. 松原一彦

    松原一彦君 いや、私は原案を支持しよう、政府に最も忠実に支持しよう、こういうのであります。それが差支えないとおつしやるならば、原案を支持しては差支えがありますかというのです。
  282. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 政府といたしましては一応政府の信ずるところを申上げるわけでございます。その上国会において如何なるお取扱いをなされるかは、国会の御意見だと思いますから、それに対していい惡いを言うべき立場かどうか、これは私もちよつと疑問に思いますから、又時期としても現在はその時期でないと思います。
  283. 松原一彦

    松原一彦君 ちよつとそれは、これから先は議論になりますから私は差控えたいのでありますけれども、これによつて実は安心していたのであります。これを突如として削除し、政府が如何にも示唆されてせられたように、新聞の一部分に書いておりますので、非常な疑惑を受けておるのであります。だから私はむしろさような疑惑をとつて除けることのほうが賢明ではないか、かように考えて今お尋ねをしたのでありますが、と申しますのは、政府がかねて米国との間に結んでおる約束の一つが国防力の漸増でありまして、今までは警察力であつたが、これで国防力としての積極的なスタートが切られたのですから、これは幾ら多くなるかわからないのであります。当然私は軍備というものの形になつて来る。これが先般の田中教授も言つてつたように、警察予備隊までがリミツトであつて、これから上にスタートすれば、どうしてもこれは客観的な軍隊であるという、これはまあ一般の学者の通念である、通念ですか、批判的な一般の意見であるということを言つておられたようでありますが、そういうようなことは私はごまかしてはいかんと思うのです。今長官はこういうことを言われたですね。如何なる内閣が出てもそういうことはあるまいと言われましたけれども、私は余り賛成もしておりません。改進党は現は再軍備を呼号いたしておる。勿論、或いは再軍備というものは現実を客観的に見た場合においては現に進行いたしておる。ごまかし切れない進行があるとした場合に、国民が安心するのは、それは仮に再軍備と鮮かに打出しても、これをコントロールするものは文官である、文民であるというところに私は民主主義政治の原則があると思うのです。だからして現にあなたがたが御懸念になつておる、この明文に現わしたる保安隊、警備隊の正規の将校を、これを支配者の中には入れないと言われる、その御懸念が、同時に旧軍人をも採用しないのだとならなければ平仄が合わない。これは平仄から外れるのです。若し憲法上疑義があるならば、これはいたし方ないけれども、憲法上疑義がないとするならば、日本の憲法は現に憲法の明文の中に内閣の構成は文民でなくちやならんということをはつきり謳つておる。即ち文民以外の者があるとするならば、旧軍人以外にはない。旧軍人は、もはや軍人というものがなくなつておるのだから文民だと言つても、これは世間が承知しない。そういうような意味におきまして、私はここに出された原案が正しいと思う。政府の原案が正しい。国民はこれで安心している。堂々とこの原案を主張せられて私はおやりになることが賢明だと思う。で、これは意見になりますけれども、重ねて今私はこれを削ることが差支えがありますかとお尋ねしているのです。意見は言わんとおつしやるのは非常に卑怯です。差支えがあるならあると言つて頂けばそれは又考えます。削つて差支えはないと言われるならば、削れば差支えはあるかとお尋ねするのだから、あなたの職責の範囲内において差支いがないと言つて下さるならば、これは私は原案を作成せられたる責任もはつきりせられるゆえんだと思う。原案が誤つてつたということであるならば、それはいたし方がありません。この点をお尋ねするのでございます。
  284. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 政府は衆議院の修正に同意見であるということは、原案が誤つてつたということを自覚したということを意味するわけでございます。而してこの点についてどういう点で誤つてつたかと申しますると、先ほど来申上げました通り、この警備官、保安官の幹部を任用しないということは、これは本質的な問題であり、法律的に規定することは当然なことだと思うのであります。併しながら旧陸海軍将校を任用しないということは、本質的な問題にあらずして、これは政策的な問題であり、運用上の方針の問題である。こう思いましたから、運用上の方針の問題でありまするならば、政府がそうした確固たる方針をみずから確立する以上は、法規によつてこれを強制する必要がない、こう思うわけであります。且つ又将来のことを考えましても、この機構というものの本質が明らかになりますならば、旧陸海軍正規将校をこれらの職に任用しようということは政府としても考えるはずはないし、又そう考えるような政府が国会から支持されるということもあり得ないとこう思いまして、私がこれは必要のない條項であるということを自覚したわけでございます。すでに必要はないといたしまするならば、他に弊害がなければ無用の條項でも存置することはできたと思います。併しながら、かような條項を存置することによりまして、殊更に国民の一部が差別待遇を今以てされているという感じを與えるといたしますると、これは今日の日本としてマイナスでございまするから、その限りにおいては弊害があると言わなければならない。弊害があつて、而も必要ないということならばこれを削除することは正当である。こら考えたわけでございます。
  285. 松原一彦

    松原一彦君 どうも本質的に、何故にこの三等保安士以上の者が長官次長官房長等になられないのか。経歴のある者というのですから過去の者に違いない。三年経ち、五年経つた者が何故になられないか。むしろそこに差別をつける。かねて御説明のある通りにこの保安隊は警察隊であります。従つて警視総監になつてつた者が長官、次官、官房長になられないかということなんです。ここに差別をつけるというのは、一体何のために本質的にここに差別をつけて、一旦保安隊、警備隊に入つてつた者は一般国民がなり得る文官、つまり長官次長官房長等になられないか。これは全くわからない。この点につきまして、どういうふうな御見解でしようか。
  286. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 実力部隊は常に政治によつて行動を規制されるわけでありまして、その規制される部隊と規制する政治の分野とが画然と区別があるということがこの機構の根本になつておるわけでございまして、これが乱れるということを防止するためにこうした制限が必要である、これがこの根本でございます。
  287. 松原一彦

    松原一彦君 どうもいよいよわからなくなつて来る。実力部隊とは一体何ぞやということになる。実力部隊というものが警察隊ではない、特殊の実力を以て戰うものであるということであるならば、先般も私が申したように、あなたがたみずから進んでこれは軍隊であるということを言つておられるのか。それならばここにこういうことは一切書かんがよろしい。政府治上の方針として政治運営の上からこれは使わんとあなたがたがおつしやつたらよろしい。これを明文で法律に現わす以上はこれは実力部隊という言葉がすでに変な言葉である。あの警視庁予備隊というものも実力部隊です。堂々と鉄兜をかぶつて押しまくつて来る。ピストルも持つている。これは実力部隊です。それならばあの実力部隊を使うところの警視総監それはやがて文官にはなられないということになる。これはどうしても論理の矛盾がある。実力部隊が何故にこの警察と違うかということになる。
  288. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 警察につきましてもその点は一応現行警察法においては考慮されておると思います。御承知のように警察というものは今日これを監視するのは公安委員会でございまして、この公安委員には警察官の経歴のある者はなり得ないという法律上の制限がある。この点は警視総監は東京都の公安委員にはなれないのでありまして、又国警長官その他国警々察官の経歴のあるものがなれないということは当然現行の警察法でも同様の結論になつておるわけでありまして、この保安庁法が全くそういう意味において新規なものとは考えられないと思います。
  289. 松原一彦

    松原一彦君 それならばここでは公安局という新らしいものができるのでありますが、海上警察だと私ども考えておつたのにかかわらず、水上警察だと思つてつたのにかかわらず、公安局というものができてその部隊の人人の名前は海上公安監、海上公安監補、一等海上公安正、これは多分大佐であろうと思いますが、その組織は警察の組織とは違つて二等兵から上等兵等とずつとなつております。立派な軍隊組織を持つた海上保安庁というものがある。ところがここには三等保安士以上の保安官として又三等警備士以上の警備官として公安官というものは一切入つておらん。何故にここに差別をつけられるのでしようか。若しこれが同一のものであるならば警視総監であつた人が或いはやがて制服を脱いで個個の長官となり次長となられることがあり得ると思うが、あつてはならないものでしようか。又海上公安局の公安官、この職を奉じた人々が将来これはなられるでしようか。海上公安官はこの長官次長官房長、局長になれる。同じ意味における三等警備士以上三等保安士以上の者はなられない。ここに区別をつけたゆえんは何故でしようか。
  290. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) この警備隊或いは保安隊というものは先ほど来申上げておりまする通り国の非常事態に際しまして、一般警察力を以て処置し得ない事態に対処するための実力部隊であるわけでございます。従いまして国内においてはこれに匹敵するような実力を備えておる部隊は到底考えられないわけでございまして、これが即ち実力といたしましては国の最大最高のものである。従つてこれは完全に政府の統制下に立たせる必要がある。そのことが政治の民主的な運営を可能ならしめるゆえんであるわけでございまして、そうした見地から特に保安隊、警備隊についてこうした規定を備えたわけなのでございます。
  291. 松原一彦

    松原一彦君 私は質問を打切ります。これはなぜそんな一体ごまかしを御言いになるのかということを、むしろ私は憤る。というのは、そういうのをいろいろ軍隊と世界で言うのです。どこでもそういう軍隊でないものはあり得ないのです。客観的にさような実力部隊で、そうしていざとなれば出動して武器をとつて戰うものを軍隊と申すのです。このことははつきりおわかりだろうと思うのです。私はそういうことは必要だと思う。私も必要だということを信ずるが、この現憲法下においてそれができ得ないところに悩みがある。それをあなたがたは無理に潜つて行こうとしておる。而も実質は如何にも軍隊であるが故に、軍人はこれを管理する公安官と等しいものとはなれないなれないと言つておられるところに悩みを持つておる。私は質問を打切ります。これ以上は同じことでありますから……。これ以上は首相に対して質問いたします。
  292. 竹下豐次

    竹下豐次君 私はこの問題は旧軍人とほかの者と差別待遇をすることは非常によくないと思います。もう戰争も済みまして、平和になりまして、曾つてつた人だつて又立派な国民になつておるわけです。それを法の上においてのみならず、事実上差別待遇をするということはよくないと思います。先ほど大臣の御説明を聞いておりますと、やはり差別待遇をしないということを言つております。それで法の上には現わさない。併し実際は将校は採らないのだ。こうおつしやるのは、そのお話に少し矛盾があつたのです。何の何がし、曾つて陸軍大佐であつた竹下豐次が不適任だ、竹下が不適任だとおつしやるなら採らないというのなら、差別待遇でない。併し私が曾つて旧将校だつたというので採らないというのなら差別待遇だ。どうも差別待遇をしないのだ、だから法文には書かない、併し旧将校は採らない、旧将校という一括した言葉で大臣がお現わしになるのは、どうも矛盾がある。お採りにならないのは、一人丸々をお調べになるか、どうせそうなりましようが、その人が不適任であるからである、旧将校であつたから不適任であるということじや私はないはずだと思う。そうでないと大臣のお言葉はあとと先とが合わないことになる。そういう意味のお言葉が少し足りなかつたのではないかとさつさ思いましたので、大事なことと思いますから伺います。
  293. 鈴木直人

    ○鈴木直人君 ちよつとそれに関連して、答弁の前に……只今お話を聞いておりますと、旧陸海空軍将校という言葉から受けるその感じから以て、それを警察予備隊に採用しないという考え方のようでありますが、それを旧陸海空軍正規将校は、或いは曾つての軍国主義的な思想の凝り固りであるようなふうに、世間も感じ、まあそういう感じがあるのです。従いましてそれでそういうものは採らないという、そういう資格を持つておる、経歴を持つておる者は採らないということにすると、何となく今度の警察予備隊は昔の軍隊の復活であるという、まあ感じを受けるのですけれども、実は個人々々から見ますと、例えば大尉、中尉、少尉ぐらいの者は、実に若いのです。実際にもうここに並んでいるような人たちなんです。そうしてそれが中学校を出まして、そうして兵学校なりに優秀な人が入つて、忽ち大尉ぐらいになつてしまう。佐官以上ぐらいなら相当やはりそういう色彩はあるでありましようが、全く若い者が多いのであります。で、そういうのが旧陸海軍の将校だという一括した概念の下に、すべてその途が閉ざされるというようなことは、これは私は考えものなんだと思うのです。実はどうして申上げるかと申しますと、今ちよつと席を外しましたのですけれども、私の高等学校の同窓会が先ほどありました。で、ちよつと出て来ましたのですけれども、高等学校や大学を出て、それが海軍に入つて少尉ぐらいになつたのですな。たまたまそれが警察予備隊に入つたのです。そのために将来もう駄目だというようになつては非常に困ると、その人を見るとまだまだ非常に若いものであつて、それを一括的な旧陸海軍将校なんというものの下にそれが駄目になるということにいたしますことは、これはやはりよほど研究ものだと思うのです。今大臣の話によると、それを採らないという方針も又どうかというふうに私考えるので、竹下君と全く同感なんでありますから、その点は一つ私からも申上げておきたいと思います。
  294. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 竹下さんの御質問にお答えを申上げます。旧陸海軍正規将校を採らない方針であると申しましたのは、これはものを概括的に言つたことでございまして、無論旧陸海軍の者の考え方なり、或いは動き方というものを、警察予備隊の将来に保安庁へ持ち込まれる虞れのあるということを前提にして採らないと言つたわけであります。例えばたまたま終戰当時に少尉になつたばかりである、その後いろいろ長い期間他の職場においてその人が民主的な部隊の運営管理において適任であるということを立証するような十分な証拠がある、こういう者を採らないということはこれは無論私の申上げた筋ではございません。併し先ず一応ここに書いてありまする職務は局長とか、課長とか、或いは官房長次長長官というようなところでございますれば、年輩か申しまして、現在すぐ採るといたしますならば或いは将官とか、或いは大佐とか、そういうところになつておる人だろうと思います。現実にそれらの人が入つて来られるということは、これは予備隊の管理上支障が少くないのでございまして、そうい意味において私は一般的に現在の段階においては不適任である、こう考えるわけであります。そこで最初から申上げましたるごとくこの條項の中には適不適の問題と資格の問題が一緒くたに入つておる。その点を衆議院において指摘されました。無論衆議院がどういう理由で指摘されたか、それは或いは私の考えとは違うかも知れませんが、私はその衆議院の考えを、一部の考えを聞いたときに仔細にこの條文考えまして、これは適不適の問題と資格の問題を一緒にしておるという点において確かに誤つておる。で方針の問題というものはこれは政府考えによるべきである。資格の問題ということならばこれは本質の問題であるから、法律に規定すべきものであろう。そこで本質の問題を法律に規定いたしてありまするならば、運用上において本質の問題を規定したその事柄と同じような事柄が他の原因によつて心配されるような場合には、やはりそれについては本質論的立場を通すと同じような心構えで運用するのが当然だろうと、そういう意味で、実際民主的な部隊管理運営というものを保持せられる上からいつて不適任な人が国会の支持を得る、政府の政策として採用せられることはあるまいと、従つてそれを制限することは法的には必要あるまいと、こう思つた趣旨であります。だんだん時代の進歩によりまして、現在においては、そうした問題になつた、又民主的な部隊管理という上からいつて心配のない人が、現在若い人たちが多年の勉強によつて将来そういう能力を実証される場合に、それをも阻止しなければならん理由はないと思います。
  295. 中川幸平

    中川幸平君 議事進行について……。この法案は相当重要法案でありますから、総括的或いは逐條的にも慎重に審議をしなければならんと私は思つております。そこで、本日の連合委員会に引続いてこの法案質疑を続行されたのでありますが、相当時間もありまするので、質疑を打切る程度までやつてもらえるものと私ども期待をしておりました。と申しますることは、いずれの法案に対しましても、一瞥して、私から申すまでもなく、賢明なる皆さんは、どの点とどの点を質さなければならん、時間があればこれも質そうかという大抵の見当はあろうかと思います。さようなことで、私いろいろ期待しておりましたけれども、まだ三好君初め相当質疑が残つておるようでありまするし、予算委員会等でも多少質疑の整理をいたします、通告をとりまして時間の制約をするというようなことも、予算委員会等でもやつておりまする例がありまするが、次回にでも一つその点を御考慮頂いて、持時間というか、何というか、そういうような点をおきめ願つて一つ続行して頂くというようにお考えを頂きたい。
  296. 楠見義男

    ○楠見義男君 私は、この今審議しておる保安庁については、実は今日初めて質問の機会が廻つて来たのです。それで議事を引延ばすとか何とかいう意味ではなしに、むしろ今質疑を打切られると、私は保安庁法案というものには反対したいのです。反対したいのだが、今私が了解をしておる程度で意見を求められるならば、私は保安庁法案に反対なんです。併し、ただ反対ということを初めからきめておるのではなしに、これこれの点に疑問があつて、これではこの保安庁法案は否決すべきものと考えておるのだが、そういう点を一々聞いて、自分の考えが間違つてつたというならば、できるだけこれを賛成する……ということはまだ行過ぎかも知れませんが、了解をできるだけつけたいと、こういう意味で聞いておるのですから、従つて私は、速記もなくてもよいし、皆さんおられなくてもいいのです。私は私の了解する点を委員会でなくても対談でも明らかにしさえすればいいことなんですから、お疲れになつたらお帰りになつても一向構いませんから、どうぞ……。それで今伺つておると、私が了解しておるところと、この今の項目については、先ほども申上げましたように、討論的な意見はここで打切るつもりでおつたのです、この項目に関する限りは……。ところが今大橋大臣の御説明を聞いておつて疑問を持つて来たのですが、それは先ほど適、不適の問題、資格の問題をお述べになつたから、立法技術上として、或いは同一項目の中に入れることは或いは不適かも知れないということを申上げました。同時にお述べになつた点は、旧正規陸海軍将校というものは適、不適の問題であつて、そうしてどちらかというと、こういう人は望ましくないのだ、従つて方針としては保安庁に入れないのだということを、総括的に、旧正規陸海軍将校という包括的な名称の下におけるすべての旧正規陸海軍将校を指したものと私は了解しておつた。ところが今竹下さんなり、或いは鈴木さんなりの御質問に対して、それはそうじやないのだ、差当りは採らないでやる方針だけれども、旧正規陸海軍将校で民主的に訓練された人は、これは将来繰入れることがあり得るのだ、こういうようなお話がありましたから、大分そこで私は疑問を生じて来たのですが、それはそうなんでしようか。
  297. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 法律は改正されざる限り永久に続くものでございますから、私は永久の方針として旧陸海軍正規将校というものを排除する必要はないと思つております。併し現段階においては、これは排除することは当然だと、こういう考え方を持つております。
  298. 楠見義男

    ○楠見義男君 そこでですね。方針として確たる方針を以て旧正規陸海軍将校は採らないということであつて、而もそれは政府運営方針である。こういうお話でありますが、運営方針必ずしも立法事項ではありませんが、同時に又立法事項法律に規定して悪いということもないので、むしろ私はそういう意味から行けば、随分例もあることでありますから、変えたほうがいいのじやないかと、こう思いますが、これは私の意見であります。ただここで申上げておきたいことは、こういう差別待遇をすることによつて、国民の一部に差別待遇的な感覚を與えて、非協力の者が出て来ることを惧れられる、こういうお話でありますが、確かに旧陸海軍将校についてはそういうような感じを持たれる方もあろうかと思います。同時にこれも削除することによつて、先ほど松原さんからもお述べになつたように、私もそう思うのでありますが、逆に旧陸海軍将校以外の一般国民の中で、勿論竹下さんとか、鈴木さんのような御意見の方もありますが、それ以外の意見を持つている方も相当あるわけです。現にここでも私もそうですし、松原さんもそうなんです。従つて一部の非協力を慣れられると同時に、他の一部の非協力の点もお考えになる必要があるのではないか。これは意見であります。そこで私は委員長にお願いをしたいと思いますが、これは衆議院で修正されて、大橋国務大臣も或いは正確にわからないかもわからんというようなことも今お述べになつたのでありますが、修正をされた衆議院のかたの御出席をお願いして、この点は一つ明らかにしたいと思いますから、(「賛成」と呼ぶ者あり)そのようにお取計らい頂きたいと思います。
  299. 竹下豐次

    竹下豐次君 私のさつき申したことに誤解があつてはいけないと思いますから申上げておきますが、私も今大勢の旧軍人なり、将校なりを採用されるほうが望ましいということを言つているわけでは決してないのです。ただ一括して旧将校は採用しないのだということをおつしやるのは、話に矛盾がある。こういう意見を申上げただけで、個人別に御覧下さつていけないというならば、それは一人もお採りにならない場合もあるかも知れない。そういう意味で申上げておるのですから、誤解のないように……。
  300. 鈴木直人

    ○鈴木直人君 私の申上げましたのは、今或いは将官とか、佐官というような意味の人を長官なり、次官なり、課長なりにぽつと持つて来ることが望ましいということを言うているのではないのであつて、曾つて若いがその方面に志しまして、そうして優秀な人が少尉、中尉、大尉ぐらいになつて、まだ二十何歳という極めて若い人がこの方面を志して入隊した後にその人の成績が非常に優秀だけれども課長にもならない、なることができない、それ以上になることができないというその塞がれたような法律はどうであろうかということを実は申上げておるのであつて、今佐官や将官を長官次長やそういうものにすぐ持つて来て入れるということについては私も他の反対の人と同感なのであつて、だんだんとこう若い人がその法律のために課長にもなれない、その上にもなれないという法律というものはないほうがよろしいと、こういうことを申上げているのですから、それを御了解頂きたいと思います。
  301. 楠見義男

    ○楠見義男君 次に第十七條の二項についてお伺いしますが、これは先ほども十條、二條との関連において申上げたことでありますが、一項において保守官又は警備官をこのシビリアンの中にまぜていろいろの企画立案に参画せられたり、そういうことは結構だと思いますが、ところが二項でその身分上の事項についてはその所属する部局又は部隊の長の監督を受けるものとする。私は先ほど申上げたようにシビリアンと、それからそうでない部隊、特に幕僚監部を通じての独立的なことについての心配をしているのでありますが、長官が包括的に第三條の規定においてすべて職員の任免権を持つているわけでありますから、仮に保安官或いは警備官についての不始末、或いはその他のことがあつた場合に、長官みずからがそういうものの罷免とかというようなこともできて然るべきではないかと思うのでありますが、ところがこの規定の書き振りから言いますとその長官の権限を配慮いたしまして、その所属する部隊の長を通じなければいけないようなふうにも、排他的のようなふうにもとれるのでありますが、この点はどうなんでしようか。
  302. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) これはその職務については飽くまでもその所属いたしました局の局長の、又課長の指揮監督の下に職務を執行する、但し昇給をするとか、或いは昇進をするという場合にはこれはやはり制服隊員でございまするから、制服隊員としての一般の基準によつてしなければならんわけでございまして、それは勿論その権限は保安庁長官にあるわけでございます。で、保安庁長官はその権限を行いまする際には人事局長に補佐をさせます。そうして人事局長が補佐するに際しましてのいろいろな調査その他は、必要な場合には幕僚長を通じてとるわけでございます。それで一番最初に吉田総理がアメリカの軍隊は非常によく命令を守るのはどういうのだろうということで、その際に申しました通り、直属上官というものの進達意見に基いて人事を行なつて行く、これがアメリカの軍の規律を維持する根本である、こういうことを発見いたしましたので、現在予備隊におきましても人事についてはそうしたやり方をいたしておるわけでございます。従いまして、その意見その他については部隊の長の監督を受けるということがその方針を貫く上からいつて必要となるわけでございます。勿論この部隊の長がそうした進達を上層部に向つていたしまする際においてそれは部隊の長だけでできるものではございません。部隊の長から幕僚を通じて、そして人事局を通つて次長を経て長官が決裁をする形になるわけであります。その際において、人事局がそれを決裁するように長官に持つて行く際には、無論勤務しておる現実の部署、即ち局長の意見ということが取り得るわけでございますが、その場合において單に局長だけではやれない。それはやはり幕僚監部において一般的な制服職員の基準そういうものに準じてやる、こういう意味を明らかにしておるのがこの趣旨でございます。従いましてすべて人事は、下級の部隊長或いは幕僚長に委任されております事柄は別でございますが、幹部以上の人事はすべて長官の決裁事項でございまして、これは幕僚長だけでもできませんし、人事局即ち内部部局だけではできないので、この両方が協力して初めて実現できる、こういう一般の幕僚監部との職務分担の線に乘ることをここで明らかにしたいという趣旨でこういう規定を入れたわけであります。
  303. 楠見義男

    ○楠見義男君 今お話なつたように、例えば昇級とか昇官とか、こういうことについて、特に本部に行つてつたために特別の待遇がされ、従つて元の部隊に戻つたときに非常に不均衡になるとか、そういうことのないようにするということについては、これは行政官庁にもそういうこともあることで、このことは私は結構だと思つているのです。それから一般的に今お話なつたようなことについても結構だと思つております。ただ私の今の聞きたいと思つておることは、仮にそれがその人が非常に不始末をする、直ちに即座にでも罷免をしたい、こういう場合でも、そういう長官の本来の最高の権限が排除されるような、「部隊の長の監督を受ける」と、こうあつて、それを通じて来なければそういうことができないというふうな、さつきの幕僚長における疑問と同じようなことになるのか、そういう場合にはもう当然長官がずばつとやれるのか。勿論それは今おつしやるよう人事局長なりその他の補佐は付けてやることだろうと思いますけれども、そういう権限を排除しておる。最終的には勿論長官がおやりになることだけれども、そういう手続の上においてそういうものを排除しておると、こう読むべきか、そうではないのかという点なんです。
  304. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) これは長の監督を排除する意味ではなくして、その部隊の長の権限ではないということだけを意味しておるのでございます。従いまして一般的の長官の権限というものはこの規定によつて、排除されていないのです。これは部局の長の指揮監督ということがその前段にございます。従つて制服の隊員が……。
  305. 楠見義男

    ○楠見義男君 わかりました。
  306. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 勤務しました場合に、直接に制服を着ない局長の身分、監督の下には立たない。併し長官の権限を排除する意味では無論ございません。
  307. 楠見義男

    ○楠見義男君 わかりました。
  308. 三好始

    ○三好始君 今日は大変遅くなりましたからこの程度で散会して頂きたいのですが、私保安庁法案審議についてさつき中川委員からも発言がありましたが、関連して希望しておきたいのですが、この法律案は憲法との関連もありますし、具体的な内容においても相当重要な法律案でありますから審議は慎重を期すべきだと思うのであります。慎重を期すべきだという点については中川委員も同感のようでありましたが、質疑は本日は漸く一般の委員のかたがたの質疑が始まつたばかりでありまして今までは殆んど私一人でやつてつたような状況でありましたから、到底質疑打切りを問題にするような段階ではないと思うのであります。この法律案の内容につきましては、さつき楠見委員は今のところは反対だというようなことを申しましたが、率直に申しまして私も今のところ反対であります。併し私は反対せんがための反対ということでなくして、一つの根拠を持つて反対だという気持を持つており、その根拠の最大なるものが憲法との関係であります。憲法第九十九條には、国会議員はこの憲法を擁護する義務があると明記せられております。こういう疑義がある問題を、納得が行かないままで通すことには賛成するわけに行かないのであります。若し政府が閣僚なり、或いは専門家の法制意見局を総動員してでも結構です、場合によつては、言葉は惡いかわかりませんが、国際法、憲法に関する御用学者を総動員しても結構ですが、私の違憲論を説き伏せるだけの理論を以て私を説き伏せるということができれば、私は虚心坦懷に賛成いたすものであります。今のところはそういう納得できるような理論も承わつておりませんので、今のところ反対、こういうわけなんであります。それともう一つ申しておきたいのでありますが、予算委員会ですでに戰力を中心にした憲法問題が論議せられたからもう盡きているのじやないかという御意見に対して、私はとんでもないと言いたいのでありまして、予算委員会の戰力論争は私は委員会速記録を全部調べて見ましたけれども、あれは問題の一部分を示しただけでありまして、むしろ私に言わしむれば、これは問題を提供したのにとどまつております。あの中からどういうふうに憲法論が発展して行くかということは、これから先の問題であります。その部分的なものは、すでに私示しましたけれども、今後私の立場でどうして違憲だということを断定せざるを得ないかという根拠は順次申上げて行きたいと思いますけれども、これは決して予算委員会で盡きておるというふうに考うべき問題ではないということだけは、自信を持つて申上げることができるのであります。ですから何度も要求いたしましたように、是非とも首相と法務総裁の出席の機会を早く作つて頂くように委員長にお願いいたしたいと思います。
  309. 河井彌八

    委員長河井彌八君) 諸君にお諮りいたします。本日はこの程度審議を以て散会しようと思いますが、御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  310. 河井彌八

    委員長河井彌八君) なお続けて申上げます。本案の審議につきましては、まだ大分いろいろ問題が残つておると思います。従いまして御要求のごとくに、総理なり又法務総裁なりの出席を求めて更に開会するつもりであります。これを以て散会いたします。    午後七時十六分散会