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1952-03-11 第13回国会 参議院 大蔵委員会 第21号 公式Web版

  1. 会議録情報

    公聽会 ———————————————— 昭和二十七年三月十一日(火曜日)    午前十時三十六分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     平沼彌太郎君    理事            大矢半次郎君            菊川 孝夫君    委員            黒田 英雄君            西川甚五郎君            溝淵 春次君            小宮山常吉君            小林 政夫君            森 八三一君            波多野 鼎君            菊田 七平君            油井賢太郎君            木村禧八郎君   事務局側    常任委員会専門    員       木村常次郎君    常任委員会専門    員       小田 正義君   公述人    一橋大学教授  井藤 半彌君    日本租税研究協    会副会長    原 安三郎君    東京商工指導    所長      中西 寅雄君    日本労働組合総    評議会常任幹事    福祉対策部長  矢田 勝士君    日本財務職員労    働組合連合会中    央執行委員長  齊藤 甚助君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○所得税法の一部を改正する法律案  (内閣提出衆議院送付) ○法人税法の一部を改正する法律案  (内閣提出衆議院送付) ○相続税法の一部を改正する法律案  (内閣提出衆議院送付) ○砂糖消費税法の一部を改正する法律  案(内閣送付)   —————————————
  2. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) これより大蔵委員会公聴会を開会いたします。  本日は所得税法の一部を改正する法律案その他の税法改正三案につきまして、一橋大学教授井藤半彌君、日本租税研究協会会長原安三部君、東京商工指導所長中西寅雄君、日本労働組合総評議会常任幹事福祉対策部長矢田勝士君、日本財務職員労働組合連合会中央執行委員長齊藤甚助君、以上の五氏から御意見を伺うことにいたします。先生がたお忙しいところを有難うございました。それでは先ず最初に井藤半彌君にお願いいたします。
  3. 井藤半彌

    ○公述人(井藤半彌君) 一橋大学井藤半彌でございます。御命令によりまして公述いたします。実は二月二日に同じく衆議院の大蔵委員会公聴会で同じ法案について卑見を申述べました。それと大体一致するのでありますが、それから後多少調査したもの、その他もございますので、あのとき申述べなかつたことをも付加えさして頂きます。大体併し同じことになると思います。  そこでこういう税制改正法案を取扱うについて、どうしても二つの立場から取扱わざるを得ないのであります。一つは一般的なその背景、それからもう一つはその具体的な改正案の内容です。そこで一般的な背景と申しますと、租税制度全体の概観であります。これはまるで学校の講義みたいなことになるのでございますけれども、一応これを述べておきませんと、具体問題に入り得ないのでございますので、極めて簡單に一般的なことを申述べさして頂きます。一般的なことと申しますと、現在我が国の租税の数量と種類はどうかという問題であります。そこで先ず数量の問題から入ります。これはもう釈迦に説法のようなことを申上げて恐縮でございますが、極めて簡単に申上げます。二十七年度の予算によりますと、租税及び印紙収入が六千三百八十一億、それから租税と同じ意味の専売益金が千二百十三億、合計いたしますと広い意味の国税は七千五百九十四億であります。それから地方税でありますが、この推算は絶えず変つております。私が今日申しますのは、一番新らしく、最近に地方財政委員会の事務局で出した数字でありますが、地方税の合計は二千九百二十四億と言われています。両者合計いたしますと、国税、地方税を合計して一兆五百十八億であります。例によりまして租税の国民所得に対する割合、これはもう皆さんも……これはいろいろな資料が出ているのでありますが、租税の国民所得に対する割合は二十七年度は二一%、二十六年度同じく二一%であります。二十五年度は二三%、二十四年度が二九%、二十三年度が二四%、二十二年度が一八%、ずつと飛びまして昭和十年度一三%、そこで二十七年度の二一%というのは、昨年とこのパーセンテージから言いますと全然同じことであります。それから国税だけをとりましてもやはり同じことで、国税だけをとりますと一五%、昨年も国税だけをとりますと一五%、だからまあ昨年と今年と少くとも租税の国民所得に対するこの比率から言うと同じことだ。これが当てにならんということは多くのかたが言うことであります。そこでこれはもう昨年のこの参議院の公聽会で申上げたのでありますが、これでは余りに大雑把過ぎるので、もう少し真相に近い数字といたしまして、このエンゲル係数を使いまして、この国民所得から食費に当る部分を引いた残り、これがいわば負担能力の最大限と解釈いたしまして、そうして租税のそういう意味の負担能力に対する割合を計算いたしました。これは昨年も計算してありますが、今年は係数が改まつただけであります。そこで二十七年度のエンゲル係数は幾らと見るか、これは推計の問題でございますが、今年の一月のエンゲル係数が五一%であります。それで今日は五一%という数字を使います。それから去年のエンゲル係数が、これも私の目の子の、概算でありますが五四%、二十六年度が五四%、それから二十五年度がこれはエンゲル係数でございますが五五%、二十四年度は六〇%、二十三年度は六三%、二十二年度が六三%、十年度が三〇%、これはエンゲル係数によりまして食糧費を計算し、これを国民所得から引いた残り、これを分母におきまして、分子にこの祖税の金額、そして割算いたしますとどういう答えが出ますかというと、昭和二十七年度は四三%であります。昭和二十六年度は四六%、昭和二十五年度が五〇%、二十四年度が七二%、二十三年度が六四%、二十二年度が五一%、昭和十年度が一九%となつております。それでこのあとの今申しました数字のほうが、前申しました祖税の国民所得に対する割合よりはより真相に近い数字であるということは言うまでもないことであります。それを見ますと、二十六年度に比べまして二十七年度はまあ国民の負担が軽くなつておるということになつておるのであります。なぜこうなつたかというと、エンゲル係数が低くなつたからであります、これは数量の問題、それから内容の問題でありますが、これも極めて簡單に申します。そこで租税の内容がいいか悪いか、一般的に調査するという場合に、これは極めて教科書的なことを申しますが、この租税を直接税と間接税に分けてどちらが多いかということ、その場合直接税の多いほうがいい、少いほうが悪いということが、これは常識論の問題でありますが、そう言われております。これは私ずつと前から気がついておることでございますが、特に強く主張したいことは、我が日本におきまして直接税とは何か、間接税とは何かという、この概念がはつきりしておらないことであります。所得税は直接税だ、それから物品税は間接税だ、こういうようなことについてはまだ誰も疑義がないのでありますが、直接消費税であるとか或いは流通税であるとか……、直接消費税と申しますと、遊興飲食税であるとか、通行税であるとか、入場税であるとか。それから流通税……、こういうものが果して直接税か間接税かということは人によつて皆解釈が違うのであります。それで直接税が何%、間接税が何%と申しましても、人によつて解釈が違うのでありまして、この検討が案外我が日本では行われておりません。それで一番普通に行われている解釈は、御案内の通り、直接税というものは国家がその税金を負担せしめようと思うものから直接取る税金が直接税、間接税はそうでないものから取る、価格引上の形で転嫁せしめて取る、これが間接税だ。これはまあ一番普通の解釈でありますが、そういう解釈をとりますと、遊興飲食税とか入場税とか通行税という、これはいわば直接税なのであります。消費税でありながら直接税になる。これはどうも不合理ではないか。私は次の解釈のほうがより正しいのではないかと思います。それはどういう解釈かと申しますと、直接税というものは税源即ち所得又は財産を標準としてかける税金が直接税。それから間接税というものはそれ以外のもの、税源の存在を間接に推定せしめるものを標準としてかける税金が間接税、こういうふうに解釈すれば、さつき申しました直接消費税などは皆間接税に入るのでありまして、私はそのほうがいいのじやないか。というのは勿論どちらでいいとも言えないのでありまして、こういう分類というものは目的によつて皆違います。そこで財務行政とか何とかいう立場で言えば、さつき申しました分類が或いは便利かもわからんのでありますが、併し大衆が負担するか金持が負担するかという立場から、税金を分類するという立場をとりますと、私があとに申しました解釈のほうがより正しいのではないかと思うのであります。こういう解釈をとりますと、大蔵省で発表しております分類——大蔵省は三分法をとりまして直接税、間接税、その他のものというのでありますが、大蔵省の言うその他のものというのは、すべて間接税に入るのであります。私はどうもこの解釈のほうがよりいいのじやないか、そういう解釈をとりまして、これは日本の学界におきましても、それ以外のところにおいても、割合に見当の立たないものでありましてこれは一つ問題があるのつではないかと思つております。そういう意味であとのほうの意味に解釈いたしまして、日本の国税を、国税だけでありますが、直接税と間接税に分類いたしますと、昭和二十七年度は直接税は六〇%で、間接税は四〇%であります。それから二十六年度もやはり直接税は六〇%で間接税が四〇%であります。それからあとはもう簡單に申上げます。二十五年度、これは直接税だけ申上げます。従つて一〇〇から引けば間接税が出るのでありまして、二十五年度五六%、二十四年度五七%、二十三年度五一%、二十二年度五三%、それから戰争中の真最中の昭和十九年度が六七%、昭和十年度が四一%となつております。まあこれを見ますと、昭和十年の頃は直接税が少なかつたが、戰争中は直接税が重くなつて来た。これはまあ租税体系という点から行くと非常によかつたのであります。ところが終戰後又直接税の比率が減つて来たのでありますが、又去年あたりから法人税の増徴などによりまして、直接税が殖えて来ております。そこでまあ大雑把な学校の教科書論といたしましては、日本の租税制度が最近一両年内はいい傾向に向つておるということになるのであります。これも私いろいろな機会に申上げることでありますが、現在我が日本におきましては直接税、間接税の区別というものは無意味に近いということは、直接税は金持が負担する、間接税は大衆が負担すると申しましても、現在我が日本におきましては所得税その他の直接税というものは、とかく大衆課税、大衆が負担する大衆課税的色彩が強い、だから直接税も大衆が負担する、間接税も大衆が負担する、と申しますのは、直接税といいましても、所得税納税者の中核をなすものはいわば大衆と目すべき人々であるからであります。これについても私前からいろいろな計数を申しておりますが、今年又違つた……少し変えて申しますと、数字を変えるだけでありますが、それは所得税申告納税であります。所得税申告納税の昭和二十六年度のもの、これの三十万円以下のものをとります。この三十万円というものは基礎控除その他控除前の所得でありますが、それで三十万円以下の者は全体の何%を占めておりますかといいますと、申告納税者の人員三百八十万人のうち三十万円以下のものは八二%、それから申告納税の所得高の合計が八千四百八十九億円のうち六〇%は三十万円以下のものであります。それで三十万円というと非常に大きいようでありますが、井藤でも三十万円を突破しておるのでありまして、これは昭和十年頃の貨幣価値で申しますと、大体一千円であります。昭和十年頃とこの頃と比べますと、物価指数は大体三百倍になつておりますので、三十万円と申しましても、昭和十年頃の貨幣価値で申しますと一千円、昭和十年頃は御案内のように第三種所得税は千三百円が免税点であつたのでありますからして、現在はどうかというと、昭和十年頃だつたら所得税を拂わなくてもよかつた連中が所得税の大部分を負担しておるという状態になつておるのであります。これは一例であります。もつとほかの角度からもこういう証明はできると思います。それで直接税、間接税と申しましても、現在我が日本におきましては、この分類はやや昔のような意味を持つておらない。これを裏から申しますと、現在我が日本におきましては間接税というものにも存在の理由がある、ということは直接税も間接税も大体同じ階級が負担するのです。ところがこの間接税は納税の便宜とか、それから納税者が税金を拂うことについて選択ができるとか、その他いろいろの便利なことがございますので、そこで納税者の便宜などを考えまして、同じ取るのだつたらもう暫らくの間は間接税に重点を置くほうがいいのじやないか、これは我が日本が遺憾ながら余り社会経済状態が進んでおりませんので、それに対応した税制が必要となつて来る。だから当分の間やはり間接税中心主義というものが意味があるのじやないか、少し脱線いたしますが、そういう立場から申しますと、遊興飲食税の半減論であるとか、或いは入場税半減論等は私は反対でございます。これは地方税の問題でございますが……、一方で間接税中心主義というものを唱えながら、典型的なる奢侈消費税を半減しようということは、理窟として成立たないのじやないかと思つております。脱線いたしましたので元へ戻します。念のために申上げますが、私は間接税を重くせよというのではございません。私は直接税も減税して頂きたい。間接税も減税して頂きたい。ですが将来減税する場合には、直接税を更に減税して頂きたい。これが私のいわんとするところでございます。ちよつと長くなりましたが、これで一般的なものは終りまして、そういうものを背景といたしまして、今度の問題のこの改正案について意見を申上げさせて頂きます。  今度の改正案は皆さん御案内の通り、これは部分的な改正である。又その一部はすでに昨年の秋に臨時措置として国会を通過したものを平常化するものでありまして、割合に私は問題は少いと思うのであります。それで個々の点について私は賛成、反対の意見を申述べますが、結論的に申しますと、大体賛成でございます。それでは私全部賛成かというと、必ずしもそうではございませんので、そこで個々の問題について意見を申上げさせて頂きます。部分的にいうといろいろやはり問題があるのであります。先ず所得税から申上げます。この所得税につきましては、果して実質的に見て減税であるかどうかということが問題になつております。成るほど基礎控除が上つておるとか、税率は下つておる、併しながら貨幣の価値が変化しておるのだからして、実質的にみて減税でなくて、單なる制度の調整だという説もあるようでありますが、それで果して所得税だけを抽出して問題にする場合に、実質上の減税かどうか、これは私は結論的に申しますと、実質上のやはり減税だと思うのであります。それは何によつてこれを申しますかというと、貨幣価値の変化というもの、貨幣価値の下落というもの、物価の騰貴というものと、それから所得税制度の改正を比べていうのであります。例えて申しますと、これも申上げるまでもないことでございますが、例えば十万円以下のものに対しては一%の所得税、二十万円のものには例えば二%の所得税がかかつておる、こうした場合に貨幣の価値が半分になる。それから国民の所得はノミナルで倍になる。そうすると例えば従来十万円のものに対して一%、二十万円になつてもやはり当然一%でなければならないにもかかわらず、税制が変らないと二%の税金がかかりますので、これは増税になる、そこで税率を二十万円のところを一%に下げましても、実質的に見れば少しも減税になつておらないのであります。こういうはうな建前で貨幣価値の変化というものと、それから税率その他を比べて、果して実質的にみて減税になるかどうか、これを調べてみたのであります。これもやや話は脇にそれますが、第一次シヤウプ勧告におきましては、あらゆる所得階層のものについて減税になつておるということをシヤウプ使節団の人々は言つておりますが、あれは私は間違いであると思う。あれは貨幣価値の変化というものを見ておらないのでありまして、これは確か衆議院大蔵公聽会であつたと思いますが、シヤウプ勧告においてすべての所得階層に対して減税であるというのは必ずしもそうはいえないのであつて、あのとき私数字を挙げて申しましたが、シヤウプ勧告におきましては、一部のものは実質的に見て増税になつておつたのであります。今の貨幣価値で計算してみますとどうなりますか、今度の場合は私は大体実質的に見まして減税になつておると思うのであります。それはいつと比べてかと申しますと、昭和二十五年と比べて、二十五年というとシャウプ勧告による新税制の実施されたとき、それと現在と比べますと、確かに実質的に減税になつておる。但し私の計算では地方税は含んでおらない、市町村民税も入つておりませんから御注意願いたい。あのシヤウプ税制と現在の改正案と比べると、実質的には減税になつております。それは現在物価は何倍になつておるかということに関係するのでありますが、この場合物価指数を比べますと、消費者物価指数は、これは全都市を取りました。東京都でなくて全都市の消費者物価指数は昭和二十五年四月が一二四・三、ところが最近の物価指数と申しますと昭和二十六年十二月が一六二・八であります。そういたしますとこの間に約三一%、大体三割消費者物価指数が高まつております。それから日銀の卸売物価指数をやはり使いますと、五七%の騰貴となつております。一方を取ると三一%、一方を取ると五七%と大分違うのでありますが、どちらを取るのがいいかと申しますると、これはやはり国民生活に関係あることでございますので、国民生活に直結いたしております消費者物価指数を取るほうがより理論的と思いますので、私は消費者物価指数を取つて、大体三割物価が高まつておる。これに比して基礎控除扶養控除はどうかということをちよつと見てみますと、そういたしますと基礎控除でありますが、昭和二十五年のシヤウプ税制の実施されたときは基礎控除は二万五千円でした。今度の改正案ではそれが倍になつて五万円になつておりますから、これは確かに実質的には負担は軽減になつております。それから扶養控除でありますが、昭和二十五年初めのシヤウプ税制におきましては、一人について扶養控除は一万二千円でありました。今度は大分細かくなりまして、三人までは二万円になつております。これもやはり三割以上であります。一万二千円の三割増にしても二万円になるのであります。これは実質的に減税であります。ところが四人目からどうかというと、今度の改正案は一万五千円になつております。そうすると、ちよつと細かに計算いたしますと、一万二千円の三割増になりますと、一万五千何百円ということになるのでありまして、これはやや三割を割るのでありますが、併しながらこれは大体物価指数に比例していると見て大なる誤まりはないだろう。四人目からでございますので大体これは合うと思います。それから税率について申しますと、一々申上げませんが、例えばシヤウプ改正におきましては二〇%というのは五万円以下の金額ですが、今度は八万円以下である、二五%はどうかというと、これはシヤウプ税制では二五%は五万円超であるのが、今度は八万円超になつている。これを一々検討いたしますと、全部三割以上の貨幣価値の開きということが考慮されております。  以上申しましたことは皆やはり実質的に見まして、一昨年よりは減税になつていると言えるのであります。ただ減税になつているとは言えない、むしろ増税になつているというのが一つございます。それは何かというと、勤労控除の点であります。勤労控除につきましては、我が国におきましては従来シヤウプ勧告以前におきましては二五%であつたものが一五%になつた、これが少な過ぎるということが絶えず問題になつているところであります。この一五%のパーセンテージはこのままといたしまして、一五%と言つておりますが、最高はどうかというと三万円であります。三万円と言いますと、勤労所得二十万円以上の人は幾ら勤労控除があつても三万円以上は引いてもらえないということになるのであります。これはシャウプ税制以来今日まで据置になつているのであります。併し今度の税制改革によりましては、貨幣価値の変化ということを考えまして、ほかの点につきましても、例えば簡易税率を適用する範囲をどうするとかいうあらゆる点について、多少貨幣価値の変化ということが考慮されているにかかわらず、勤労控除の最高三万円だけが据置だということは、これは私は再考を要するのではないか、この分はいわば増税なつているのであります。この点は幾らにしようと具体的に言われると困るので、政府の收入の問題、その他いろいろの問題がありますが、この三万円据置ということはほかとの釣合上どうかと思うのであります。念のために申上げておきますが、私は貨幣価値の変化に従つて基礎控除扶養控除、税率等を自動的にスライドせしめよというのでございません。そんな簡單なことでは国家財政はやつて行けないのでありまして、国家收入の必要とかその他いろいろの事情を考えてやらなければいけないので、これは自動的にスライドせしめよとは言いませんが、併しながら考慮することは必要ではないかと思うのであります。それが一つ。  それからもう一つ、やはり今度の所得税改正ついて私が賛成できないことは、それは讓渡所得の問題、相続の場合の、讓渡所得相続という形で財産の移転があつた場合に、この讓渡所得が計算されますが、これを非課税とするということ、これは私は今度の税制改革においては改惡じやないかと思うのであります。この問題は相続税ではございません、所得税でございますので、この点御区別をお願いしたいのであります。それでこの讓渡所得課税でありますが、これはいろいろのものに讓渡所得税がかかりますが、一番主なものは不動産、それから更に重要なものは有価証券であります。殊に株式であります。そこで株式の讓渡所得をかけるということは、配当した場合には個人に所得税がかかる、配当金に対しては個人に所得税がかかる、それを配当しないで社内留保を多くする、そういう形で個人が拂う配当所得税の脱税、ということは少し強過ぎますけれども、個人の負担を軽くする、そういう目的で配当しないで社内留保をするというようなことが大きな家族会社ではよく行われているのであります。それで、これは讓渡したときに計算いたしまして、そうして、そこで過去において拂われておらなかつた所得税の一部を取るということは、或る面、確かに合理的なものであります。それで相続の場合にはやはり過去において拂うべかりし所得税を取ろう、これが日本の現行の制度であります。ところが、これを今度はやめることになつたのでありますが、これは私は理論的に見てよくないのじやないかと思うのであります。これによりまして財閥という言葉も強過ぎますが、大財閥が讓渡所得相続という形で長く讓渡所得税を拂わない、又別の言葉で言うと、所得税を拂わないで済むというふうなことがあります。この讓渡所得課税の問題は皆さん御案内の通り、このシヤウプ税制従つて日本現行税制における理論的に言うと一番重要な問題である、ところがこれはなかなかうまく実施はできておらないのでありますが、それが今度この相続の場合にこの讓渡所得を非課税にするということは、これは改惡ではないか、それで外国の立法例を見ると、讓渡所得についてはいろいろございまして、英国並びにブリテイツシユ・ドミ二オンスにおきましては、あらゆる讓渡所得は原則として、原則としてでありますが、非課税であります。そのためにいろいろな脱税が行われるということは、最近戰後に出ましたイギリスの財政学の書物を見ましても、ここに英国の所得税制度の欠陷があるということを言つておるのであります。ところがアメリカではどうかと言うと、讓渡所得課税ということは非常に発達しておる。但しアメリカでは相続の場合は讓渡所得は免税にすると、このためにアメリカの大富豪は所得税を拂わないで脱税をすると言われておるのであります。何故この相続の場合はアメリカでは讓渡所得税をかけないかと申しますと、相続の場合は財の移転と言つても、本当の移転があつた、売買があつたわけではないのであります。これはいわば、アンリアライズド・インカムである、現実化されておらない所得、所得と言つても本当の讓渡所得で、株なら株を売つた場合は現金が入つて来るが、相続の場合は売るものではないので、いわば讓渡、アンリアライズド・インカムで、アメリカの大審院、最高裁判所におきましても、アンリアライズド・インカムを課税の対象とすることについては否定的な立場をとつております。そういう立場もあつて、こういうことになつておるのではないかと思うのでありますが、所得税制度としては、私はこれはよくない。それで我が日本の制度はアメリカの、少し言葉が強いようでありますが、惡例に右へならえをやつたのでありまして、これは改惡ではないか、更に大袈裟なことを申上げますと、讓渡所得課税のこういう方面につきましては、日本の制度は理論的に言いまして世界最良と言われておるのでありますが、それは少し大袈裟でありますが、今の点だけを抽出すれば世界最良であります。それが少し惡いと言いますか、理論的に言つて変な方面に向きつつあるということを指摘したいのであります。そこで今度のこの相続の場合の讓渡所得非課税によつて、誰が利益を受けるかというと、アジみたようなことを申しますが、大相続者、相続財産の多い人が利益を受ける、相続財産の少い人は利益を受けない、何故かと言うと、今度の税制改革案の所得税法改正案を見ると、山林所得、一時所得、或いは讓渡所得の合計十万円のものが控除して計算される、そういたしますと、相続の場合は十万円の控除ということは当然適用されて、相続財産の少いものは、これによつて余り恩惠を受けない、十万円控除のほうで恩惠を受ける。そういたしますと、やはりそれを超えた相続財産をもらう人が利益を受けるのではないかと思うのでありますが、そこで何故日本の今度の改正案でやろうとするのかと言いますと、アメリカのアンリアライズド・インカムの非課税というところに理論的な根拠があるのかも知れませんが、もう一つの基礎は株式の評価が困難である、市場に上場されておる株式の場合はいいのでありますが、そうでない株式の評価は困難である、そういう便宜上の意味にも出るのではないかと思うのでありますが、便宜もやむを得ないのでありますが、近頃の日本の租税制度その他の動きを見ると、無記名定期預金を復活するとか、課税上いろいろ何とか手加減をするとかいうような、ちよつと課税の一般理論から言いますと、どうかと思われるような傾向が非常に強くなつておるのでありますが、私はこの点は何とかお考えを願いたい。やはり税金は税法通り嚴重に励行を願いたい。殊に今度の改正案その他によりまして、源泉徴收ということが非常に多くなつております。そのためにこのほうは非常に嚴格に取つておるのでございますが、それとの負担均衡という点から申しまして、賦課税におきましてもやはり嚴重に取つて頂きたいと思うのであります。それで所得税についてはそれだりけ……。  それから法人税でございます。法人税につきましては、これは極めて今度は問題が少くて、余り問題がないと思うのであります。ただこれに関連いたしまして、我が日本の現行制度におきまして、法人税の欠陷と思うところを指摘いたしたいと思うのでございます。それは御案内の通り、これは法人税とそれから配当金に関係あることでありまして、個人所得税と両方に関係あることでございますので、さよう御了承願いたいのであります。それで現在の日本の現行制度は御案内の通り、シヤウプ勧告によりまして、大体法人擬制説的な考えをとつて、法人所得に対して二重課税をするのはよくない、こういう建前をとつております。ところが現在日本では、シヤウプ勧告も同様でありますが、二重課税をやつております。法人税もかける、個人に配当した場合は個人所得に、二重課税をやる。併しながら二重課税しつ放しではいけないというので、負担緩和のために、個人の所得税から配当金を二五%引いております。これは日本の現行制度であります。ところがこの日本の現行制度につきましては二つの欠点がある。一つは不合理性であります。もう一つは反社会政策性がある。これを指摘したいと思います。それにつきまして説明の便宜上、皆さんよくお聞きを願いたいと思います。便宜上こういう表を作つて参りましたので、この表を御覧願いたいと思います。この大きな表でございます。そこでこの表を簡單に御説朗いたしますと、私の申上げたいことが皆さんおわかり下さることと思うのでありますが、一番左の上に所得階層、それからABCDEFGHI……JKLMNはあとにお廻わしいたします。Aは基礎控除による免税の階層、Bは八万円以下の所得、ずつと行きましてIが二百万円を超える階層、そこでこの次の欄を見て頂きますと、一般個人所得税、これを仮に一としておきました。この一は何を示すかと申しますと、配当金以外の所得に対する租税であります。配当金以外の所得に対してはAは免税、零、あとは百円について二十円、二十五円、これは税率をずつと書いたものであります。どうぞこのずつと下の備考を御覧願いたいと思いますが、備考の一といたしまして、この備考の一番上の、一番に当るのですが、配当金以外の個人所得百円に対する税額であります。これは別の言葉で申しますとフルストツプでありますが、どういうことになるかと言いますと、法人税が仮に全廃されまして、個人所得税一本建となつた場合に、配当金にかかる税金、まあそういうことになります。その次が今度上へ戻りまして、法人税であります。二番が法人税、この下の備考を御覧願いたい。備考に書いておきましたように、法人所得百円に対する法人税額、即ち四二%であります。ABCDEFGHI、これは四十二円、この通りこれは問題ございません。この三番は配当金に対する個人所得税、これは備考を御覧願いたいのでありますが、配当金に対する個人所得税、これは備考の三番ですね、法人所得が全部個人に配当されたものと仮定いたします。別の言葉で言うならば、社内留保はないと仮定するのであります。法人所得が全部個人に配当されたものと仮定する。その場合に、法人所得百円から法人税四十三円を控除した残り五十八円、これが個人に配当されますので、五十八円に対する個人所得税額を各階層、ABCDEFGHIについて計算したのであります。そうすると皆さんに御注意願いたいことは、ここに少し変なことが出て参りまして、Aは勿論免税であります。という所得階層は、法人税の四十二円は、これは拂わなくちやならないが、配当金に対する個人所得税は拂わなくてもいい。従つて零。問題はBの八万円以下の階層は、法人税は四十二円拂います。△とありますが、これはマイナスであります。マイナス一円九十銭、△はもう一つございますが、これはマイナスということでございますが、これはどうかというと、むしろ返してもらえる計算になつております。なぜこういうようなマイナスが出て来たかと申しますと、Bの八万円以下のものは、個人所得の税率は二〇%、ところが配当控除率は二五%であります。だからして結局返してもらうほうが多い。この人は配当金以外の所得の部分からこういう二円九十銭だけは返してもらうことになるのでありますので、税率という点から言いますと、そうすると結局どういうことになるかというと、三番の配当金に対する個人所得税の税率は、結果から言うと〇%、マイナス二・九%、〇%、それから二・九%、五・八%、こうなるのであります。ここに一つ私は不合理な点が現われておると思います。そこで四番は、二番と三番を合計したものでありまして、四は法人税と配当金に対する個人所得税を合計したもの、つまり三番と三番を合計したもの、それを見ますというと、Aという所得階層は百円について四十二円、ところがBの八万円以上の階層は、さつき申上げましたようなわけで、三十九円十銭、それからC、八万円以上十二万円までが四十二円、それからこういうことであとはずつと御覧頂きますと、高まつて行きますが、そこでこれがさつき申しました現在の日本の制度の不合理性というものを、この点を指摘いたしたいのであります。八万円以下のところは累進税でありながら却つて少くなつて、Aより税率が軽い。これは私は不合理性という名前で言いたいのであります。もう一つは反社会政策性ということはどういうことかいうこと、日本の現行制度のような、こういう制度におきましては、やはり所得の配当金でありますが、配当所得の少い人には、比較的多い税金がかかつて、配当金をもらう金額、配当金をたくさんもらう、二百万円、三百万円とたくさんもらう人には、比較的軽い税率となるということ、それはどれとどれを比較すればおわかり下さいますかというと、一番と四番を比較して頂きたいのであります。そういたしますと、先ず一番におきましては、A基礎控除による免税の階層は、配当金以外の場合は〇%、ところが配当金のほうについて法人個人通算すると、四二%重くかかつておる。あとはずつと四番のほうが重いのです。重いのですが、この所得の金額が殖えるに従つて、一番と四番の税率の違いが少くなつております。先ず極端な場合は、Aが〇に対して四二、HIのIを見ますと、Iは五五%、一番は五九・四%、こちらのほうが、四のほうが多いのでありますが、併し開きが少い。そこでこれをもう少しわかるように、これは税率を仮定したのです。線を引つ張りまして、JKLMNは、日本の税率でも何でもないのですが、今度は六〇%という税率がかかる。一番の配当金以外の所得に対する租税六〇%という階層ができる。六〇%、六五%、七〇%、七五%、八〇%、こういうものができると仮定して計算しますと、四番と一番とを比べて頂きたいのでありますが、Jはどうかというと、一番の配当金以外は六〇%、四番は六二・三%、Kは六五%、六五・二%、この辺は大体一致しております。Lになりますと逆になりまして、配当金の場合は法人、個人二重課税であるにかかわらず、六八・一%になつております。二重課税だから税率が重いかというと、そうではないので、高額所得者に対しては二重課税のほうが軽くなるのであります。Mはどうかというと、一番は七五%、ところが四番は七一%になります。Nは八〇%に対して七三・九%、これを私は反社会政策性と言いたいのであります。これは日本の現行制度のようなやり方に内在する一つの欠陷であります。これに対する対策でありますが、どうしたらいいか、その対策は先ず不合理性を除去するにはどうしたらいいか、これは法人擬制説を前提にしての話であります。その場合はこの配当控除率現在二五%、配当控除率を所得税の累進税率の最低率以下にすればこういう不合理性はなくなるのであります。例えば配当控除率二五%を二〇%とする、所得税の最低率は二〇%、或いは最低控除率を更に少くして一五%、こういうふうにすればさつき申しましたような不合理性はなくなります。或いは又そういうやり方をするか或いは英国式の課税方法をとる、英国式の源泉徴收の方法をとつて、それから前にかけた法人税をあとから返す、あとから人民に拂戻しをするという形をとれば今の欠陷がなくなるのであります。そこで私は、これはシヤウプの考え、法人擬制説を前提としての話であります。ところが法人擬制説を前提とせないで、法人実在説の立場をとればどうか、そうしますと、この表にございまする五番目でありますが、これがやはり法人実在説をとりまして、法人税引受取配当金百円に対する個人所得であります。これを見ましてもさつき申しましたような理由でありまして、このBのところがマイナス五%という不合理性が出て来ておるということを御注意願いたいと思います。これは日本の法人税の現行制度における欠陥じやないかと考えております。私は法人課税については、結論を申しますと、二つに分ければいいのじやないか、法人と言いましてもいろいろの種類がありまして、この頃のように、法人課税をすると税金が少くなるというので、個人経営と同じようなものが法人の形態を採るということが多い、私は法人を二つに分けて、家族会社的な、いわば個人経営的な、組合的な色彩の強い法人、これに対しては擬制説的な考えをとる、それ以外の大部分につきましては法人実在的な考えをとるほうがいいのじやないかと考えております。これはやや話が横道に外れましたが、この機会に申上げさして頂きます。  今度は相続税の問題でありますが、今度相続税基礎控除十五万円を三十万円に引上げ、それから税率を引下げました。私はこの案には賛成であります。併しながら引下げたと申しましても昭和十年頃はどうだつたかと申しますと、昭和十年頃は遺産相続税の税率は最低一%、最高二一%、それに比べますと、今度は二〇%乃至七〇%であり、それから貨幣の価値の変化なんかから申しますと、これはかなり重いものじやないか、現在の制度でも相当重いと思うのであります。それでこれについて問題になりますことは、所得税率との関係であります。ということは、外国では所得税の最高率と相続税の最高率と比べますと、殆んど例外なく所得税の最高率のほうが重いのであります。数字を申しますと、アメリカで、中央の政府の税金だけではないのでありますが、アメリカでは所得税が九一%、相続税は七七%、イギリスでは所得税が九七・五%、相続税が八六%、フランスでは所得税が七八%相続税が七七%、ドイツでは所得税が九五%相続税が八〇%、勿論こういう国は所得税の制度は日本とは違いますが、こういうふうに軽い、日本におきましても、シヤウプ勧告の直前は、所得税の最高八五%相続税の最高が六五%、ところがこれが逆になつておりまして、これがどうかということが問題になつておるのであります。私は結論的に申上げまして逆になつておつてもいいと思うのであります。日本におきまして所得税の最高五五%というのは、あの富裕税が補充税としてあるという問題、勿論ドイツでも財産税がかかつておりますが、富裕税があるということが一つ。もう一つ、二番目は個人の勤労意欲と財の蓄積という立場から申しますと、所得税を軽くして相続税を重くすることが資本の蓄積、勤労意欲から言つて望ましい、そういう考えはアメリカの学界で起つておりまして、私はこの考えが正しい、そういう意味から日本の現行制度はこれでいいのじやないかと思います。日本の現行制度には次の重大な欠陷があるのじやないかと思います。今度の相続税について次の重大な欠点があると思います。それは御案内のように、日本の相続税は二九四五年にアメリカのラデイツクという人が唱えたものであります。これは学問上の名前はアクセツシヨン・タツクスというのですが、これは極めて精密なものでありまして、日本の相続税、アクセツシヨン・タツクスというのは世界で最初のものじやないかと思います。シヤウプ勧告によつて最初の税が二つできました。一つは附加価値税、一つはアクセツシヨン・タツクスであります。その内容は皆さん御案内の通り、これは精密なものでありますが、御案内の通り過去から我々がもらつたあらゆる相続財産又は贈與財産を合計して、アクセツシヨン・タツクスで累積して、而も一生を通じて三十万円を引く、これはなかなか面白い考え方であります。併し現行制度には次の欠点があると思うのであります。それは何かと申しますと、貨幣の価値の変化を一年間や二年間無視してもいいのでありますが、一生を通じて計算つしまして、過去のものを累積して税金を計算するということ、これは理論的に申しますといろいろの不合理が出て来ます。この点は不合理でありまして、これをなくするにはどうしたらいいか、これは面倒臭い話でありますが、物価指数を基礎として過去の取得金額に調整を加える必要があるのじやないかと思うのであります。若し精密なものにするというのならば、そういうことにしなければならないのじやないかと思います。  それから最後砂糖消費税であります。砂糖の消費税、これは今度の税制改革によりますと、関税をも含めまして小売価格の三割程度の税金となるのでありますが、これもいろいろ問題があつると思いますが、これは止むを得ぬことじやないかと思うのであります。  以上申しましたことを結論付けて申しますと、今度の税制改革というものは部分的な改革であります。個々の点については私は賛成できないところもございますが、大体まあいいのじやないかと思うのであります。それからもう一つ、この機会に申述べさして頂きたいことは、我が日本においてはとかく税制改革が多過ぎる、勿論社会経済が変れば、それに応じて税制が変るということは当然なことでございますが、余りにも多過ぎる、それで我が日本としては止むを得ない事情もあつたのでありますが、租税体系に伝統がないのです。ドイツとかイギリスとか、フランスとかは皆伝統があるのです。日本は或るときはイギリス式、或るときはドイツ式、アメリカ式、或いはフランス式等にになつておりまして、これはまあそれも過ちを改むるに憚ること勿れで、改正することはいいのでありますが、余りに頻々と変りますために人民が租税制度に慣れないのであります。そのために心ならずも、脱税というような意思がなくても脱税をするとか、滯納するとかいうことが人民の側に惡意がなくても起るのでありまして、納税成績の挙らん一つの理由は、改正が余りに頻々過ぎるということじやないかと思うのであります。それも止むを得ない事情でありますが、我々は何とかして税の変化の少いようにして頂きたい。これは私の希望でおります。これを以て私の公述を終ります。
  4. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) 御質疑がありましたら……。
  5. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 いろいろ非常に参考になる公述を頂きまして感謝いたしますが、ただ一つお伺いいたしたいのは今度の税制改革によつて所得税ですね、それが実質的にも二十五年度に比べますと軽減になつておるという御説明の中で、基礎控除を例にとられまして、二十五年二万五千円の基礎控除が五万円になつておる、即ち倍になつておるが、物価騰貴率は倍になつていない、それを一つの例証にされましたが、基礎控除が最低生活を保障するに足るほどの基礎控除であれは確かにその通りだと思うのです。併し、基礎控除が殆んど生活のほんの一部だけしか控際しない場合です、仮に基礎控際が倍になつて、物価騰貴率が五〇%くらいになつても、それによる物価騰貴による生活圧迫というものは、基礎控除を倍にしても、私はカバーされないのじやないか、従つて基礎控除が倍になつて、物価騰貴率より多くなつたということだけで、そのまま税の実生活における負担の軽減になつたというふうには言えないのではないか、こう思うのですが、その点について一つ意見を伺いたいのと、それからもう一つは、先ほど市町村民税を除いて御説明になりましたが、仮に、正確な数字は若しお持ち合せがなければ、感じでもよろしいのでございますが、これを入れましたらどうなりますか。その点と、それからもう一つ、政府のほうでは、大体二十七年度の予算を編成する基礎として、CPIですね、CPIは、昭和二十三年を一〇〇としまして、昭和二十六年、一五六・三、二十七年一六三・二、まだ二十七年度も多少上るという前提に立つておるのであります。それを又考慮に入れた場合、市町村民税を入れましてどうなるかですね、この二つの点ですね、ちよつとお伺いしたいと思います。
  6. 井藤半彌

    公述人井藤半彌君) 今のお話の第一の点であります。これは、多少私ちよつと詭弁的な言葉になるかもわかりませんが、私言つたのは、二十五年に比べて減税なつておると言いましたね、ということは、現行制度がいいというわけではございませんですから、それですから、私今の木村さんの御説は全然賛成でございます。それですから、私は直接税につきましても、もつと減らしてもらいたいというのでございます。それから、もう一つは、この市町村民税を入れればどうなるかという問題でございますが、御案区内の通り、この市町村民税市町村民税の場合は、何かよく近頃オプシヨン・ナンバー・ワン・オプシヨン・ナンバー・ツー、オプシヨン・ナンバー・スリーということを言つておりますね。それで、このオプシヨン・ナンバー・ワンでございますと、機械的に一八%ですかやりました。で、オプシヨン・ナンバー・ツーになりますと、所得額を標準にするのですね。これは大分狂つて来るのであります。オプシヨン・ナンバー・スリーになりますと、一層ややこしくなつて参ります。それ以外に、何か去年の春の税制改革におきまして、この基礎控除は認めるが、扶養控除は入れない金額を取つてもいいとか、少し重い数字をも認めるというような制度もやつておるのであります。それで、各地方々々によつて制度がまちまちなものでございますから、一般的には言えないのでありますが、オプシヨン・ナンバー・ツーを取つたといたしました場合に、而もこれが累進税をかけた、而もそのかけ方如何によりまして、実質的に申しましても、増税となり得るものもあり得ると私は思うのであります。
  7. 大矢半次郎

    大矢半次郎君 相続の場合に、讓渡所得に課税しないのが改惡だというような御意見のようですが、論理的に言えばそのようでありますけれども、実際の面から言えば、日本での讓渡所得の課税というのは誠に不徹底なのであつて有価証券のごときは殆んど行われていない、不動産課税に多くかかつているというような状況で、そういう点から見れば、むしろやはり今度の改正のほうが実情に適しておるのではなかろうかと、讓渡所得の課税はなかなかむずかしい。原則的にはいいことであつこも、英国あたりでは、原則として殆んど課税していない。アリカでは日本のように課税していない。日本のは世界最良の制度というのは裏返しに言えば、実際に最も適しない税制だと、こう言えるのじやなかろうかと思いますが、その点如何でしよう。
  8. 井藤半彌

    公述人井藤半彌君) お説は私御尤もだと思います。ただ私の申上げたいことは、讓渡所得というものは、これは大矢さんにいろいろ申上げるのは釈迦に説法申上げるようで恐縮でございますが、シヤウプ勧告従つてそれを基礎といたします日本税制、殊に所得税及び法人税におきましては、讓渡所得課税というやつが、いわば扇の要のようなものになつております。この讓渡所得課税につきましては、アメリカの学者の中にもいろいろ議論があるが、日本に参りましたシヤウプ氏及びその団員の一人であつたあのヴイツカリー氏、こういう人たちが、アメリカにおきましては讓渡所得課税ということを非常に力説しているのであります。勿論これに相当反対しておる学者もございます。このシヤウプ氏とヴイツカリー氏が、讓渡所得課税というものを非常に活用いたしまして、そうした所得税法人税を通算して、いい制度を作りたい、そこでこういう制度ができた。ところが、この制度が少し十二、三歳国、これは十二、三歳国という言葉はよくないですが、余り発達しておらない国、日本には少し向かないじやないかという大矢さんのお説私も全然同感でございます。併し、若しそうであるならば、私の申上げたいことは、所得税相続税だけでなくて、全面的に再検討する必要があるではないか、それはやはりシヤウプ勧告を若し前提とするならば、扇の要とも言うべき讓渡所得税についても変な形にして置くということは私はよくないじやないか。シヤウプ勧告の第一次勧告の附録の中で、あれは多分ヴイツカリー氏が私は書いたと思うのでありますが、あの中で、讓渡所得課税というものをやらなければ、シヤウプ勧告法人税所得税は何ら意味をなさないと言つておりますが、私は理論的には確かに御尤もだと思つております。ですから、日本という国は讓渡所得割合に課税しにくい、もう一つ、これは私は先ほど公述の中に言わなかつたのでありますが、アメリカと日本と違いますことは、讓渡所得課税日本で仮に課税いたしましても、所得の中で讓渡所得の占める地位は低いだろうと思います。アメリカでは確か一五%とか、二〇%を讓渡所得が占めておる。これは証券制度が非常に発達しておるためだと思います。それは、私は日本にこういう讓渡所得課税というものは、日本の国情、少くとも現在の日本には奬め過ぎと言いますか、合わないではないかという御説は私も全然賛成でありますが、若しそうであるならば、この讓渡所得だけを改めないで、法人税についても擬制説的な要素も強く持つておりますが、その他について再検討をする必要があるじやないか。つまり讓渡所得だけに手をかけるとなるというと、一部だけいじくつても理窟の通らないものになるじやないか、こういうように考えております。
  9. 大矢半次郎

    大矢半次郎君 今のお話誠に御尤もで、大体私も同じように考えております。そこで先ほど法人税につきましては、結論として法人を二つに分けて、個人的色彩の強いのは擬制説によつて二重課税を避ける、大会社は実在説によつて二重課税をして行くべきではなかろうか、こういうお話でありますが、その点と、今のお説の讓渡所得の関係ですね。どういうふうに結び付けておられるか。私はお話の通り、確かに讓渡所得課税シヤウプ税制の基本的のものであるが、それは日本の実情に適しない。根底から実際と外れておる。従つて、法人個人を通じてその点は十分に究明して、そうして立派な実情に合う税制を打立てなければならん、これが今後の一番大きな問題だと考えておるのです。先ほどのお話を伺つておると、何か大会社については実在説をとる、個人的色彩のものは擬制説をとるというのが、この讓渡所得とは関係なしにお考えになつておられるような印象を受けたのですが、その点を一つ
  10. 井藤半彌

    公述人井藤半彌君) 今の御指摘御尤もでございますが、実は言葉が足りませんでしたのでございまして、大会社につきましては、実在説的な課税方法をとる、それから家族会社的色彩の高いものにつきましては、擬制説的な課税方法をとると私申しましただけで、それでは具体的にどういうとり方をするかという問題でございますね。これについて実は私御説明申上げなかつたのでございまして、この点につきましては、きつと大矢さんのお目にも或いは触れておられるかと思いますが、私去年の秋頃から三回ほど、これについて論文やその他書いたことがございます。一番初めは日本租税研究協会の九月の大会で報告いたしました。その次にこれは内容も大体同じことですが、少し違いますが、アカウンテイング、企業会計という日本語の雑誌、その中にもその問題を扱いました。もつと詳しいことは、昨年の十二月発行の一橋大学の機関雑誌「一橋論叢」にやはり法人所得の二重課税をする……これは実は一番詳しく書いた。併しやや間違いがあることを実は発見いたしました。末梢的な問題で……。これまで三回実は発表したことがございました。そうして仮に法人擬制説的な立場をとるとして、それではどういう課税形態がいいか、これは私は外国の立法なんかと比べまして九つ挙げました。それで日本のは九つのうちのただ一つなんですね。それでどれがいいかということになりますと、これは又いろいろございまして日本に今行われておるのは一つだけでありまして、過去の明治二十三年から三十二年までは法人税をやめて個人だけに課税いたしました。それから幾何か両方課税するが、配当金には個人所得税はかけない、これが一つのかけ方。それから大正九年から配当金の四割引にするとか何とか日本でも四つほどの方式が行われたことがございます。あとまだ私の調べたところで、もう五つございまして、どれがいいか惡いかということは、なかなか検討を要するのでございます。それから私がここで申しました家族会社に擬制説的なかけ方をすると言いましても、それでは果して擬制説的な課税形態をする場合に、この九つのうちのどれがいいかということは、これ又大いに問題があるところでございます。私は、ここでこの結論を申しますと、内容をここで申上げませんが、パートナー・システム・メソツドと英語で言う組合課税方法をとるか、或いは英国式のとり方をするか、どちらかがいいのじやないかと考えております。それで現在の日本制度はどうもさつき表で申しましたように、理窟が通らない、理窟が通らんけれどもこれは便利なんです。どちらかと言うと、便利なという点では確かに便利だけれども、間違いますといけませんから、擬制説的なものをとるといたしましても、九つの方法のうちのどれかを検討して、そうして擬制説的なやり方をするほうがいいだろう。パートナー・システム・メソツド或いは英国式の方法をとるのがいいのではないか、こう考えております。それに関連しまして讓渡所得の問題でありますが、これはですね、この擬制説をとるとらんにかかわらず、讓渡所得課税というのは当然問題になると思うのでございますが、それで日本におきまして証券制度がだんだん民主化し、又発展いたしますと、そういうような立場から申しますと、やはり何かの形で、勿論今度のように十万円までは引くとか何とかいう便宜規定を設ける必要はありますが、やはり讓渡所得については私は課税する必要があるのではないか。その場合余り細かなものまでも取られると問題があると思いますから、日本では讓渡所得課税ばかりでなく、山林讓渡所得、一時所得合計いたしまして十万円までは基礎控除をするとか、こういういろいろな措置は当然必要ではないかと考えております。併しやはり讓渡所得課税は何かの形で私は存置して頂きたいと考えておるのでございます。   —————————————
  11. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) 次に日本租税研究協会会長原安三郎君にお願いいたします。
  12. 原安三郎

    公述人(原安三郎君) 私は租税研究協会の副会長をやつておりまするが、実際運営面を司つておりまするので、詳しいことは井藤さんなどの御研究を願つておるわけなんですが、ただ今度参議院のほうに廻つておりまする今年度の税制改正の要綱を拝見いたしまして、それについて私たち実際面を司つておる側からの考え方を述べさして頂きたいと思つております。本年度の税制改革の今議題になつておりまする御討議中のものは、大体が昨年の補正予算のときに特例法として持たれたものが平年度化したということで、そのときに相当研究をされましたもの……、たしか衆議院公聽会公述人として出ましてお話を申上げたことを繰返すこともございますし、又租税研究協会あたりでいろいろ提案しておりましたものが幸いに具体化したものもございます。併し或る場合は我々の希望の一部分さえも取上げて頂けなかつたというようなものもございますわけであります。つきましては、これを順次プリントにございます順序で申上げたいと思います。  所得税については、いろいろその後、昨年の大体の補正予算できまつた臨時特例法の範囲で順次これをそのまま運用されることになつておりますので、やはり従来から見て二百万円以上五五%となりました点だけが、最高の限度として使つておりますが、これは大変いいことで、従つてやはり資本蓄積をせしめる、個人的にもやはり資本の蓄積が必要でありまして……前途を楽しまないで、その日暮しに国民をさすという、税金を稼ぐために働くという感じを持たしめないで、余裕を持たしめる考えから行きまして、少しでも税率を下げて頂くことがシヤウプ勧告の基礎でございましたが、この点は非常に結構だと思います。あとで申上げたいと思います。それでこの際申上げたいのは例の富裕税の問題ですが、これはやはり連関性を持つておりますから、私は富裕税を廃止するという点からこの最高限度をもう少し上げてもいいという考え方があるのです。このほかに低收入者に対しての税率は今申上げましたように、資本を蓄積せしめ、貯蓄を殖やす意味において結構ですが、金額の多いほうは二百万円以上五五%の線をもう少し上げたら富裕税を廃止するということがいいのではないか、この考えております。富裕税は、シヤウプさんは一種の社会政策的の観点からああいう税をお置きになつたように考えております、又一方、それあることによつて何となく高額所得者が余計税を拂うという感じを持たしめることは結構ですが、あれが一種の財産税の性格を持つておりますし、非常に徴税に費用もかかりますし、又税務官吏とそれから納税者との間の摩擦もなかなか多いのです。いわんや又税務署関係で決定した不動産などの評価に非常に観念的の評価がありまして、而もそれが近頃全国的に行われております地方税の固定資産税の課税客体の評価と食い違いがあつて一つのものに評価が二様になつておるというがごとき考えを国民に持たして、甚だよろしからんと私は思うのであります。而も固定資産税のほうはあの評価が若し不十分であるならば、一定の期間内に異議を申立てることを許されておるわけであります。税務署関係で……国税庁でおきめになつて各所に知らすわけでありますあの富裕税の基礎になつております評価と、その間何ら固定資産税との連関性がありません。固定資産税の基礎になる評価も世間にはいろいろ非難はありますけれども、先ず一応各市町村でこれを細かく扱つておりますから、おいおい完全なものになると考えますが、今の富裕税の基礎のものはその考え方が観念的に決定される虞れがあるように思うのです。でありますから、そういう点から考えましても、又美術品その他のものの評価の点においても、なかなか折衝とか応待とか甚だ好ましからざることが行われておる。而も税額は二十億前後を予定しておられたのに、二十七年度では十一億ぐらいに減りました。一つの社会政策的の意味でお置きになつておれば別問題ですが、そうでないとすれば、あれはむしろ廃止して所得税一本にして、高額收入者のほうの税率を上げるほうが趣旨が一定するではないか、又いろいろ摩擦及び徴税費の点から言つても富裕税を廃止するように私はいたしたいと思います。これはただ提示された法案なつております所得税に関係がございまするから申上げます。それから青色申告に関することについて、十八歳未満並びに配偶者を除きましたものに対して、その経費の中にその人たちの給與を認めるという制度は、かねてからたびたび青色申告者優待として当然のことでありますけれども、優待に対する提案を中小企業者のためにあらゆる機会に我々が唱えておりましたことが一応実行されましたが、まだそのほかに希望することは青色申告をいたしますのが当り前で、正直なという言葉は間違いで、納税者の課税基礎になる收入並びにその他の申告、所得の申告は正直であるべきはずなのです。大体が不正直者が多いために、正直者が却つて珍しがられておる、そうして不正直者が得をしておるという感じが非常に強かつたのが、青色申告にもこういう制度一つでも殖やしてもらうということによつて、青色申告者が殖えるということになるのじやないか、当初青色申告は、当事者である税務署がこれを阻止しないが、消極的な扱いをしておりました。私は、これはシヤウプ勧告がなくても、かくのごとき制度日本全体に行われることを心から希望しておるものの一人であります。即ち私の持論は日本国民全体が家庭を單位として、そうして貸借対照表を個人が全部国家に提出する習慣をつけることが非常にいいのであります。全部の人が、個人々々が貸借対照表を出すことができますれば、勿論記帳をしておらなければできませんが、そうなると徴税費も課税費も非常に助かる貸借対照表を以て納税期に三度でも四度でもこれを分割拂にして銀行の窓口で税金を小切手で放り込む。窓口はそれをチエツクする、同時にこれが最後の整理をする税務の役所で処理される。そうして間違いなく受理ができるというぐらいにすることができますれば、会社から個人がもらつておる收入もそれではつきりいたしますし、いわんやそういう場合には法人は当然立派な申告ができるはずでございますから、かくのごとき方法をとれば、今七万ぐらいの人を使つておる税務官吏も、或いは七千人で済むということもありますし、又国民が喜んで納税をするということもございまするから、非常にいい制度だと思いますが、その前に税制が十分確立されて、国民が全部納得が行くという税制はございませんが、まあ一番摩擦の少い税制制を確立する必要があると思いますが、そうなれば、そういうふうな制度をとりたいと私は思つているぐらいでありますから、その一つの現われである青色申告はシヤウプ勧告……これあるかなと私は感じましたわけなんです。ところでそうなれば、今度ぐらいの程度で青色申告者はもう安心して申告するかどうか、これはまだ不足じやないかと私は思います。それが青色申告をした人はその利益の少くとも一〇%か二〇%は一応棚上げしてもらつてその残り税金をかける。それを所得税の対象にするような程度にしてもらうと青色申告者が非常に殖えるのじやないか、こう思います。現在では青色申告をしたものがどうもそれ以上税務署に掘下げられることがあつて、税務官吏の心理状態も青色申告をしておる者がまだ何かあるのでないか。こういうふうな従来の不正直な人たちが多かつた関係から、相変らず掘下げ主義、何か惡い点を発見しなければ納得が行かないというような行動が多いことを遺憾とするわけなんでありますが、ここに所得の一部が一応控除され、その残りのものに税がかかる……、丁度ドイツの会社に関する法人税所得税の一部が、一部と言つても五〇%が昨年度まで一応課税の目的にならなかつたという、この五〇%は行過ぎでございまするが、こういう何%かの控除をするなんということを青色申告者に許すとすれば、青色申告というものがますますその数において又申告において非常に正直なものが出る、こういうことになるのじやないか、そういたしましたら私の今考えておりまするような制度も将来において確立するということに考えられます。で、私考えますのは、日本税制などはいつも英、米、独、仏などという先進国の税のあり方がどうであるかということにいつも考えられておりますが、これは日本日本のあり方があるのではないか、そんなふうに考えます。でありますから、これは日本国民が大体納得の行くという習慣、従来の歴史などから考えて納得の行くというものがそこに現われて来るのじやないか、税制がときどき変ることで甚だ国民も安定いたしませんし、税務官吏の取扱も困るというような御説が井藤先生から先ほどありましたが、これはまだシヤウプ勧告というものの大きな線が日本にそのまま即するか、或いは日本に合うか合わないかということを考えないで、一応規定されましたが、これが日本のあり方、あるべき姿においおい修正される期間はここ一、二年……、早いほど結構ですが一、二年は止むを得ないのじやないか、その一番いい姿を決定いたしましたら、かくの如きことも比較的皆様が納得して納税をし、又課税を楽にするということも行われて、税務方面における摩擦が非常に減るのでないか、こういうふうに考えます。その意味から税制のたびたびの変更もこの際止むを得ない。併しながら国民全体がこの線で遠慮のない意見を国会その他に反映いたしまして、そうしてそこで立派な結論を出して頂くことを希望するわけであります。私、ここで青色申告者に連関いたしまして少し詳しいことも申上げましたが、さような形に持つて行きたいということから青色申告者に一応の天引の基礎控除をもう少し許して頂いて、経費の上において給與の実際使つておる人たちの給與の増加を見ている以外に、より多くの奨励方針なり、或いは正直者をほめてやる、正直者を奨励するということの意味から、さようなことを決定して頂くと非常に仕合せじやないか、こう考えております。たまたまこの青色申告の裏付になつておりまする公開経営という一つの団体の世話をしております実際から、切にそのことを考えましたわけであります。  それからその次、変動所得に対する問題は細かいことを申上げますといろいろありますが、先ずこの退職手当の問題は、相当退職手当そのものが長期勤務した人たちの最後の老後を養う退職手当が一緒に総合されるなどということが是正されましたので、この点について先ず段階的にはここらでおきめを願つても、従来から見れば一つの進歩であり、企業体に従事しておる人たちが老後を比較的安心しながら働けるということになつて参つたと思つて、これは喜んでおるわけなんでありますが、ただここにこの第五のところに医師の社会保險に基く收入に課税し、又公認会計士及び弁護士、この公認会計士と弁護士のほうは会社から頂くものを除くとなつておりますが、これは当分仕方がないと思いますが、ここに原稿料その他、これは原稿料は原稿料以外にいろいろ著作権、著作という一つのまとまつたものとか、或いは映画の賃借料というものが入ると思いますが、これは会社でなくして、そうして一般個人からその支給でも取るということになつておるのは何となく公平を欠いておるような気がいたしておりまするが、ただこの税制を是正する上において、單に公平ということから理論的にのみ論ずることもどうかと思いますが、この点でお考えを詳しくいたされて御研究の結果、公認会計士と弁護士のほうは会社からもらうもの、それからその他のものは個人からもらうものでも差支えないということにしてあるのは、その点についての御研究をお願いしたい。なぜこういうふうに区別をつけたかということは、これは私の研究ではまだはつきりいたしません。そこでこの中間に現われております納税義務者に対する一種の鉱業権その他の特許権、こういう使用料に対するものの税金が、これは確か二〇%になると思いますが、これが我々非常に問題にしておる点でございます。それは終戰後アメリカから日本の技術を見に来ております技術者のすべての意見が、大体日本は十年乃至十五年遅れておる、それを新らしい発明を今日本が取りあえず研究して、十年、十五年の遅れを取戻すよりも、現在すでにある世界の技術を取入れるほうが便利だ、そのほうが日本の復興にはいいという意見が一致しております。我々も同感です。そういう意味から残念ながら研究所とか、或いはその他の研究機関が非常に不活発であります。なかなか実績が挙らない、こういう場合、日本としては合理化並びに近代化の線から海外の技術を取入れなければならんわけです。これが非常に広く取入れられております。殊に鉱業関係、マイニングの関係は大きなものは相当約束もされ、実行されておりますが、これに対して二割の課税が新らしく起るんですが、この問題は大蔵省筋に相談して見ましたら、日本の課税がなくとも海外でその国々にいずれも二〇%程度の税が取られておるから、その特許料を海外で差引いてくれるから特許権者は損がない、こういうことが言われておるわけであります。一応この説明は国際的にそういうようになつておるようでありますけれども、特許というものは非常に秘密を要するものでありまして、大体秘密契約になつております。個々の特許を我々が国内で使用する場合に非常に細かい規定がございます。それは他の社がこれを窺い知ることに相成つておりません。それは向うの特許を持つていらつしやるかたにも、他のそれに類似した特許を持つていらつしやるかたも知り合つていないと思いますが、そういう関係でありますから、この税金のごときもはつきり幾らのロヤリテイをもらつておるという点がなかなか計算がしにくいという結論が出て来るんじやないかと思います。即ち特許使用料一ヵ月百万円或いは十万ダラーということがきまつておれば結構ですが、或るものは生産高により、或いはその技術者の給與によりなどといういろいろな面からこの特許料を決定しております。計算が非常に細かく相成つて、而もそれが両者の秘密に相成つております。そういうことからここにロヤリテイ課税という問題が起りますが、これだけが日本の特許使用者が余分に使用料を拂わなければならん、こういうことが行われる虞れがあるのです。で、これは一々の内容を私見ておりませんけれども、その中に日本が持つロヤリテイ、特許料その他の使用料の料金を上げた場合に、その分だけはその金額に応ずるだけ高くする、或いはその他の方法においてコンピートする、こういうことがあるのではないかと、こう思われます。これは各社の間でやつておることでありますから、殊にこの種のものは秘密がよく守られるか知りませんが、大分どうも皆この規定を聞いて、青くなつておるという状態から見て、ここに事実が存在しておるんじやないかと思います。でありますから、大蔵省が考えておりますように、日本が二〇%課税しても、アメリカ政府が二〇%課税しておられるとすれば、その分はアメリカ政府が取らないで日本政府がそれを取るのであります。勿論二五%課税してアメリカが二〇%しか課税しておらなければ、その五%はやはり特許権者の負担になるわけでありますが、そういうことでなく大体同額のものが取られておるものとしても、その場合にその通りに行けばアメリカの取るところを政府が遠慮して、日本政府が取るということになりますが、特許権者並びに使用権者にも影響がないわけでありますが、今申上げましたような契約の中にそういう細田かい事情があつて、これを掘下げて一々基準にすることはできないわけであります。そこに非常にデリケートな線がございますから、この点はよくお考えを願つて、これは特許権に対する使用料、又これは使用料と書いてありますが、これはあらゆる面を含むことに恐らく法律はきめると思いますが、この点を絶対に取るということを御遠慮になることがいけないまでも、せめて五%、一〇%でも相当大きな数字で辛いんじやないかと思いますが、この点どうか日本の今の幼稚な事業を育成するということで、現在まで海外の指導育成を技術的に大いに得ておるという点をお考えになつて、これから又一年、二年、数年は講和発効後ますます多くなる、技術上の合理化、近代化ということが天下に唱えられておりますが、その一つはこういう種類の取入れでありますが、ここ十年もたちますと或いは日本の特許が海外で逆の立場に立つということが考えられますが、今までの日本においては戰争一辺倒に行つておりましたから、技術が非常に退歩しております。その点から是非ともこの点に御注意をお願いしたい、こう考えるわけです。これは私実はたまたま書類を持つておりますものを皆さんにお分けしようと思つておりましたが、部数が足りませんから、一応皆さんのお手許に最近に今私の申上げましたことを、もう少し詳しく書いたものをお廻しして御賛成を得たいと思います。  法人税の問題を申上げます。法人税は私はやはり英国式の形の課税を希望いたしておりますわけなんでありまして、この点で私は、日本の法人に関する扱い方は、さつき井藤先生のお話の中には税金を少くするがために非常にたくさんの株式会社が存在するということを言われておりましたが、これは全く五万円、十万円の会社ではできませんが、日本立場、この国の産業の一翼というか、或いは考え方によれば、そのフアウンデーシヨンにもなつておる企業は全国の取引所に現われておる株の銘柄約七百種類、これをもう少し切り詰めまして、そうして世間一般、国氏全体が大会社なりと見ておるのが三百社前後にしかなりません。こういう種類のものがいわゆる株式会社として、この法人税の影響が非常にその仕事を生かすか殺すかということに相成るわけなんです。ここに御注意願いたいのは所得税との関係で、一般個人所得税というものそのものが最近の、殊に終戰後の傾向は減税の目標となつておりますので、増收を見ながらあまり殖えない状態に参つております。ここに私今朝参りますときに数字ちよつと見て来たんでございますが、二十四年度から今度の二十七年度の予算を見ましても、これはもう皆さんのほうがよく御存じでありますが、二十四年度の所得税を一〇〇と見ますと、本年度は金額の上において八〇%になつております。ところが法人税のほうは二十四年度の予算を一〇〇と見まして本年度は三七五である、三倍七分五厘になつております。即ち二十四年度は法人税收入というのは五百億しか見ておりませんですが、今度は千八百七十九億になつておりますが、一体この法人は私今申上げましたように、いわゆる大きな資本を集積して、そうして大きな事業を営むことになつておる会社を意味するわけなんですが、日本の国のこの大きな戰争をするということのここまで八十年の間に育成されておるのは、日本株式会社組織であつたと思います。この株式会社組織は集積された資本を経営者がよく運営したということも株式会社に対する信用が殖えたものであろうと思うのであります。今後の日本もやはりそうでなければ日本の立ち上りはむずかしいんじやないかと思います。そういうことから株式会社、即ち株式組織による資本集積をしておるものを尊重するということ、單に税金が取りやすいということでこれに重きを置くということよりも、今申上げましたようにこれを育成し進めて行くという形をとりませんと、現状では非常に各会社とも税金負担が多くて蓄積資本がございません関係もたびたび言い古されておりますが、而も自己資本の獲得、株式増資にしても又社債の獲得にしても、社債の振出しにしても意のごとく参りませんというこの頃の特別事情は別として、自己資本でこれを進めて行くという、蓄積資本で進めて行くということが、終戰後、特に最近の状態ではひどくできなくなつたのであります。昨年の三五%が本年四二%になつておりまして、補正予算後二割殖えておりますが、これをただ英米などに比べて法人税が少いんだという考え方は間違いなんであります。日本の現状から考えて頂く必要があるので、日本もここにおいてこういう強い、額の多い、率の高い法人税でない時代を少くとも数年過さしてもらいますと、これが立派に合理化、近代化の目的が達せられまして、英、米先進国と比べて日本の品物がコンピイーテイブ・プライスされ、国際的の競争価格でも、コンマーシヤル・プライスでも出せます。又日米協力と申しましても、何といつても設備その他が遅れておりますために、同種品で東南アジア方面で同じ品物が受入れる機会の非常に少いことを虞れておりますわけなんですが、そういう点では生産設備及び合理化設備が遅れておる、これが自己資本でやれないという点に非常に苦労がある。自己資本でやつて行く、自己資本を入れるをいうことはこれに対する利廻りを必要といたしますが、株主の資本利潤から使わしてもらうということによつてその目的或いは内部の仕事を進めるという利益がありますけれども、これはもう皆さん御存じの通り現在の四二%に対して、事業税のほうは損益勘定に入れて経費として見てもらいますけれども、これもはね返りがございまして、少くとも公称利益に対して六%二、三分影響いたします。又住民税にもこれが早速影響いたします。少くとも六〇%程度のものはこの種の負担がはつきりいたしております。それ以外に配当とかそういうものを計算いたしますると、社内に残るものは、相当いい利益に対して、利益処分が比較的少かつた会社でも三〇%前後のものしか残つておりません。昨年まではドイツは五〇%一応純益を控除して、その残りの五〇%を法人に対して税金をかけておつた。これがどれだけ西ドイツの復興に役立つたかということを我々思いますときに、日本は法人だけが狙いをつけられて、いつも、惡い言葉ではありますが、搾られているということになつておるのではないか。昨年度は貨幣価値も下つてつたけれども、相当利益が出たのは、これは朝鮮動乱から来たアブノーマルなことで、これを以て推すことはできない。いわんや昨年度六百三十億の予算が八百五十五億法人だけは殖えた、そうして千四百億に御研究になつて補正予算ができておりますが、今度これが千八百七十九億となつておりますが、これは大変な負担で、この点は一体我々自身が終戰後法人だけがこんな負担をしなければならん状態なつておるということに鑑みまして、我々自身のこの一番大切な日本経済の基礎になるべき法人が、かくも税金でいじめられるという形をとられることを非常に遺憾に考えておりますわけなんでございます。ところが海外の実例を見ますと、日本は余りそれぞれ法人の率が少くないという点ははつきりしております。ただドイツが差引きません代りに本年度五〇%程度になりましたから、これが日本に追いついて参りましたことになりますが、日本は又そたをどんどん上廻つて来ておるということが考えられておりますので、法人税については私は二〇%なんぞはここで極く楽な形でありますが、二〇%程度の超過利得税を取られましても、一般の税率を下げて頂くことを考えて頂かなければならん、三五%は多いと私は思つております。これも日本の国力の基礎になる法人を育成して頂けば、法人自身がこれに耐え得られる時代は数年ならずして来ると考えられますので、その時代には当然海外と同じような、率の課税があつても差支えない。現在の弱り切つたところでこの大負担をせしめられることは困るということに御承知を願いたいと思うのであります。  ただこれに連関しておりますのは、さつき井藤氏も触れておられましたが、この前三五%の法人税の時代に、個人配当金を申告いたしますときに二五%控除されましたものが、そのまま今度は法人税の七%の上昇にかかわらず放置されておるのであります。あれはたしか所得税法の十五條にありましたと思いますが、あれは今お話にあつたように法人を英国式の見方で、個人の集合体だというこの見方、この問題の取入れ方によつて決定しておりますが、この一応決定しておる、シヤウプ氏のきめられたことの中で、今度の四二%に睨み合して、私は少くとも三〇%以上は個人所得申告のときの配当関係とか、二五%を二〇%以上控除して頂くことにしなければ不公平でなかろうかと、ここに法の修正が手遅れになつたことがあるのではないかと、こういうふうに考えております。  次に相続税の問題です。この相続税のことは、これはやはり所得税をシヤウプ氏が一般税率より下げたということと連関しておりまして、国民の貯蓄心を殖やし、そうして子孫に資産を残すという考え方のいい惡いは別問題として、少くとも自分の生きておる間に目分の儲けたものは全部浪費してしまうんだというような考え方を持たしめないようなことから言つて、この所得税率の高いことは甚だ好ましいからん。いわんや一般所得税を下げておいて、相続税の率を上げたという形は甚だ面白からんと思つておりましたが、これは一応下げられました。一応下げられましたことは大変喜ばしいことだと、こう考えますが、もう一段これを下げて頂くことが望ましい。高い税率を課せられるということは非常に蓄積心を少くし、又は相続税脱税のための手段を講ぜしめるということが考えられるわけなんです。私はただここに考えますのは、アメリカの相続税よりも日本相続税は少し高くてもいいという私自身の個人論はございますけれども、これは日本人は、蓄積ということは結構でありますが、アメリカのほうは子孫に美田を遺すとか遺さんとかいう観念よりも、社会事業に自分の蓄積したものを死ぬまでに使つてしまう。一応は儲けておいて、そうして死ぬまでにこれを又使う。そうして社会のために使うという形が非常に多いわけであります。その点から言つて日本は一応蓄積することばかりになつておりますが、この考え方はここで税金の問題とは別に一つ我々が考慮しなければならん問題ですが、日本のこの蓄積を希望するということは、相続税問題についても、この蓄積されたものを有効に使える、子孫に廻さなければならんという点にむずかしい点があります。これは法制上の問題ではございませんけれども、人間教育上の問題ですけれども、考えなくちやならんわけでありますが、その点でアメリカの相続税税率が少いというのには、その蓄積者というか、或いはその資産を成した人たちが、一応自分の一生に儲けて使うという、こういう考え方が入つておる。その使い方が、社会事業に使う、或いは亡くなつても遺言状にこれを社会事業に使わしめるようにしてあるということが、少し日本の習慣とアメリカの習慣と相続税に対する見方が違うと思います。  ここに問題となりますのは承継制式になつておることは、これは修正して頂かなければならんと思います。相続税相続関係から……それは遺産相続のときの率は低かつたのですが、これは当然なことだと思います。資産の増加はないのでありますから……。この点は承継問題と一緒になりつておりますのは、シヤウプの特例でございますが、この点はむしろ分けて頂くほうがいいのじやないかと思います。併しこの税率をどうするかという問題については詳しく検討して頂かんといけないと思う。私はそういうことまで考えておりませんわけでありますが……。  次に消費税の問題でありますが、私は今のところ所得税一本、直接税一本のシヤウプの考え方でなく、どうしても消費税或いは流通税によるという形をとるほうがいいのではないかと、こう思いますわけであります。それは流通税によりますと、物を余計消費し、又はその機関を余計使う人たちが、サービスを使用するだけ余分に税金負担するという公平性を保ち得られるわけであります。これのみによるわけには行きませんが、そういう形の線に出ることを考える点から言つて消費税の増徴も止むを得ないのじやないか。ただこの砂糖に対する消費税はどうかということについては、税率について私は意見は申上げかねますが、ただこの消費税は現在日本の生活に対して僅か三%、これは計算は非常にむずむいのでありますが、いろいろの実例を取上げましても三%乃至五%くらいしかかかつていない、生活費のうちで……。でありますからして、間接税消費税というものはもつと殖えてもよいではないかとこう思つております。所得税日本全体の平均が二〇%以上ということを考えます上から言つて、これを補完税という名前にいたしますか、消費税という名前にいたしますかは別として、自然に所得税を減じて、この方面にも広く国民負担力を殖やして、そうして日本の国情に合う税制確立の線に持つてつて頂くようにしたほうがいい、その点から言つて消費税を殖やし、その他の流通税を殖やすことは、現状から言つてもつと殖やしてもいいのではないか、こう考えます。これもやはり大衆意見でありますから、私は八千三百万分の一の意見でございますけれども、一応さように考えております。  極く自分の親しく関係しておる点については詳しく申上げましたが、その他はほんの常識としての意見を申上げた次第であります。
  13. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) 御質疑がありましたならば……。
  14. 油井賢太郎

    油井賢太郎君 原さんにお伺いするのですが、今お話の外人に対する課税ですね、二〇%課税というのは、これは実際的に及ぼす影響は金額にしてどのくらいになつておりますか。
  15. 原安三郎

    公述人(原安三郎君) わからないのです。現在では……。
  16. 油井賢太郎

    油井賢太郎君 どうしてわからないのですか。
  17. 原安三郎

    公述人(原安三郎君) 今のところは、やはり今申上げた通り秘密になつておりますから、ここで今幾ら捕捉できるかということをここでこの際急に起つた問題でもありますし、又どれだけということを言つておりますけれども、全体集計した計数は出ておりませんです。それはまだ今現在相談が進行しつつあるものはあります。又講和発効後これが非常に殖えるものもあるのじやないかと思います。或いは講和発効を條件にして、そうしてこのほうも発効するというようなものもあるらしいのであります。
  18. 大矢半次郎

    大矢半次郎君 法人税税率が高いからして、むしろこれを軽減して、一方超過利得税ですか……。
  19. 原安三郎

    公述人(原安三郎君) 超過利得税を五%くらい……。
  20. 大矢半次郎

    大矢半次郎君 超過利得税を起したほうがいいのじやないかという御意見ですが、私よく存じませんけれども、資産再評価の点等も考慮して超過利得税を起すのはもう少し待つたほうがいいのじやなからうかというのが、大勢のように伺つておりましたが、もう今日はそれはそのときが来た、こういうふうなお考えでございますか。
  21. 原安三郎

    公述人(原安三郎君) こういうことなんです。私の考え方は、法人税全体を三五%を二〇%にして頂くそうして超過利得税を取る。超過利得税のほうは小刻みにする。五%くらいずつ上げて行く。そういうわけで、でき得べくんば五分くらい上げて行けばいいけれども、一割程度で五分くらい上げて行く、そういう形で持つて行きたいと思つております。そういうことに考えますれば、資本金問題も皆研究して参ります。現在問題になつておりますのは、超過利得税がございませんから、資本に対する問題については非常に軽く考えております。各社は固定資産の十分の一くらいの資本金で、利得税がないために……、それを整備をして各社の資本金が固定資産に見合つておる資本金、それにアメリカ式の考え方にすれば、流動的固定資産というものも殖えたかも知れませんけれども、私は一応そこまでは考えておりませんけれども、これは固定資産に見合つておる資本金にしたいと思つております。現在では再評価しましても固定資産に見合つておりません。それは利得税がないから……、我々が会社の内容を見るのに非常にその点について凸凹です。これは再評価を強制しなかつたからこんなことになつたのですが、何かそういう基準ができれば、皆そこでまあ我々が会社を見る見方を楽にするということでなく、本当のことを株主に見させるという意味からいつてもこういうことは必要である。併し一般税として全部利益にかかるものは三五%を二〇%程度に持つて行く。そうして純益が累進、即ち超過利得税は累進で行く。あの前の率は高過ぎました。
  22. 大矢半次郎

    大矢半次郎君 法人税は四二%を三五%程度にというようなお話かと思えば、それではもつと……、もう二〇%に……。
  23. 原安三郎

    公述人(原安三郎君) 私はもつと下げる、法人育成主義ですから……。
  24. 小林政夫

    ○小林政夫君 ちよつと私いなかつたのですが、先ほど油井さんからお話があつた外国人に関する特許料、使用料に対する税率を下げろというお話があつたようでありますが、これは大体予算委員会等で配付された資料によると、三十五、六億あるようです。この前も主税局長に私聞いて見たところによると、どうしても二重課税を防ぐということになるので、契約を、日本の支拂者のほうでそこをうまくやれば、いわゆる日本側の課税をすることが即日本の事業者の負担にならない。で、特許料、使用料を受取る外人は、どうせアメリカでもその收入に対してはかかるのであつて、こちらでかかつただけは向うでそれだけ引かれるわけだから、ここで日本で捕捉することが即支拂者である我々日本人の事業者の負担にはならないというようなまあ答弁をしておるのですが、その点について実際はどうですか。
  25. 原安三郎

    公述人(原安三郎君) それが、もうこういうことはたびたび我々も聞かされますし、又事実そういうふうになつておるのだと言われておるのですが、今の契約が皆秘密契約になつておりまして、それが若し税金がかかれば、その分は上げろという條件があると思うのです。それからもう一つ日本で取られるかアメリカで取られるかということは、もうすべてが明るみに出ているものであれば、それでうまく行くものですけれども、どうも甲の会社の特許の価値はどうだ、乙の会社の特許の価値はどうだというふうに、アメリカの間だけでも同じ種類の技術の特許がありますので、すぐわかるものですから、幾らと見て当事者に特許しておる。又日本ではどこの会社というように広くやりませんために、この秘密が守られておる。ですからそこが、はつきりお役所の役人たちの考えは役人の考えであると我々が批評せざるを得ない。そういうところなんですね。
  26. 小林政夫

    ○小林政夫君 まあそれで、租税臨時措置法でこの税率を当分一〇%でしたか……にするような案が提案されるようですが、併しまあそういつた特許料、使用料に対して課税するという事態の起らない前の契約であるならば、新らしい事態としてその当事者間において契約の更改を折衝する余地はないものですか。
  27. 原安三郎

    公述人(原安三郎君) それはあります。ありますけれども、その税率だけ上げて契約しろと言いますよ。
  28. 小林政夫

    ○小林政夫君 だけれども、向うはどうせ日本でかからなくてもアメリカでかかるのだから、日本でかかるだけのものは、向うの税がかかるとしても、それだけは引くということは日米租税協定でできるわけですね。
  29. 原安三郎

    公述人(原安三郎君) いやそこがむずかしい。問題は、それならお前のほうはよせ、私のほうはそれだけほかのほうでやるという場合に、僕のほうは二割出すということが起つて来ないとも限らない。特許の獲得ということは、同種の間で競争がありましてね。
  30. 小林政夫

    ○小林政夫君 日本の業者間ですか。
  31. 原安三郎

    公述人(原安三郎君) 例えば甲会社がアメリカの乙会社と契約をしたものを、日本の乙会社がこれを欲しいという場合に、更改のときに又こちらへ働きかけて来るということにもなります。又もう一つは、これは申上げられないのですが、税金をかけられないというので歩合が保つておるので、若し大体税がかかれば税だけ上げろという意味の秘密契約があるのではないかと思うのです。向うさんが税金がかけられておるのだから、或いは向うが助かるのだからという、或いはそこのところが出しておるのか出しておらないのかわからんから、若しそれがはつきりして来れば、各社が特許を公開されて税金を取られるということになれば、アメリカに税金を取られて、取られるほうが少くとられて、結局收入は、ネツトは少くなる。その分だけはお前のほうで持つてくれ……はつきりそうまで言わなくても、プライスを上げて行くと、こういうことですね。
  32. 小林政夫

    ○小林政夫君 それは日米租税協定がはつきりできたら、まあ実際上の使用料、特許料を多くして来るということは別として、税が上つたからそれだけは余分に持てということは、まあそう急に……。
  33. 原安三郎

    公述人(原安三郎君) そうは言わないでしようね。
  34. 小林政夫

    ○小林政夫君 言えないと思うのですね。
  35. 原安三郎

    公述人(原安三郎君) そうは言わないでしようけれども、今度はそれに見合うだけのものをしてくれなきやお前のほうには使わさないということになる。結論は同じになる。実際問題としては……。それからもう一つ問題は、大分そういういろいろ契約をしかけているものがあるらしいのです。それも講和発効後でなければ為替関係などもわからないのですが、講和発効後と言つております。今度はそいつが本当に暫定協約ですから、だんだん上げて行くのです。こういうことになるのですね。
  36. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 原さんの今のお話の法人税でございますが、二十四年がまあ個人所得税は一〇〇として今年が八 ○だと……、ところが法人税は一〇〇が三七五になつたと……。
  37. 原安三郎

    公述人(原安三郎君) 法人税ですね……片方のほうは一〇〇が八〇になつておりますが…。
  38. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 一つは三七五になつておる、こうおつしやつた。これはそれだけ法人の利益が上つた……、二十四年あたりは非常に法人の利益が上らなかつたためで、今年は法人税が殖えたというわけじやないのですか。その営業成績がよくなつた、上昇したことに伴つて税額は殖えたのじやないのですかね。
  39. 原安三郎

    公述人(原安三郎君) まあそれは法人税というものは收益税ですから、收益が殖えたということからも来ておりますね。
  40. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 ところが二十四年から二十七年にかけての、特に給與所得のごときは殆んどもう上つておらないのですね。大した上りを示しておらないということが一つと、もう一つは、私がこの法人税を考えるときに問題になるのは、全般的に法人税というものを廃止してしまつて、全部個人所得だということにして、配当を受けた者にぐつとかけるということになれば、それは別問題としまして、法人が今のような法人税のような恰好である場合には、俗にいう、この前問題にもなつたのですが、あの社用族というようなことになつて、利益が上がれば盛んに資本蓄積に廻わすどころか、あのほうにどんどん使つてしまう。それがいわゆる問題になつたことがあつたのですがね。これがあなたの言うように、税金を大いに安くすれば全部資本蓄積に廻して、設備の近代化のほうに廻して行けば成るほど好ましいのですが、儲かれば儲かつたでえらい景気のいいことをやつてしまう。それが倒れたならば救済を国に求めて来る。今の救済を要求しておる商社などは、大抵はあの一時儲かつた時分には物すごいことをやつた。ところが今度は赤になつたら救済だと、こういうことになつて来ると、これとの関連で……。
  41. 原安三郎

    公述人(原安三郎君) 常識問題からかも知れません。実はこういうことがあるのです。実際ざつくばらんに申しますと、終戰後大きな会社で、元の財閥に属した奴は、殆んどもう六分の者は役員が若い人に変りました。この人たちの考えは、会社の資本金をむしろ殖やして配当をうんとして、贅沢な生活をしたいという、そういう考え方が終戰後強かつた。このやり方、この状態株式会社としては非常に惡いやり方、考え方なんですね。これを一応ほかの新興階級が贅沢なやり方をして皆マイナスになつたという、あれと同じ状態ちよつと現われたのですね。そうして問題になつたのは、今のお説が逆に行くるのです。税金でこれだけ取られてしまうのだから、経費で出せばこれだけは経費と認めてもらえる。そのうちに交際費で使われたものや料理屋で使われたものは認められないということになれば、先生たちも使わないかも知れませんが、経費となれば当然金がかからない。こういうふうにたくさん税金を取られれば、蓄積ができないのだから、これを使つてしまえ、会社が倒れるほど使いやしませんけれども……、これは前の経営者と違う考え方がありますから、蓄積ができないなら使つてしまえという考え方、宵越しの金は使わないという、昔の江戸つ子のような考え方が横溢しておるのですね。これは全体ではないのですがね。まあ私などは極端なものでして、銀行に御馳走などをしたことはありません。向うも利息を取るのだからというので御馳走はしないのです。銀行家もいらつしやるでしようが……。それで有名なんです。株主総会でも、交際費がないから、御馳走しないのです。銀行は利息を取るのだから僕のほうから御馳走しないのだ……。まあこういうことは相当あるのです。あなたがたはあちらの築地あたりのいわゆる社用族が問題になるものですから、この社用族先生も一応税金を拂つてはやれない。我々は仕事の擴張のために飲んだり食つたりはしないのです。ものがあれば仕事の擴張に使用してます。自分だけ一人行つて飲んだり食つたりしても意味がないのですから、不必要な御馳走はしてないのです。最近は金融業者に御馳走するのが大分あつて、貸付課長のほうが頭取よりも芸者の名前を余計知つているという、そういう世の中なんですから、これはよくないのです。これは日本法律や習慣の行き過ぎも終戰後ありましようし、アメリカのバター臭いものに変えられたものがたくさんあるのであります。これも日本人の考え方に帰つて来ようと思うのですが、そこへ今途中に御説のようなことがあるのですが、御説のように一方で税金を取られてたまらんから御馳走に乗り出そうじやないかというのが、個人にあるのと同じように、個人の集団の会社にもそういうものがあるのです。そういう点で使う金はたくさんあると思いますけれども、よその会社では非常にあるのですね。これは間違つているので、第一株主の鞭撻が足りませんよ。私たちは株主総会に一人でも多く会社に出て来てもらつてそういうことをしないでやつているのです。そういうことは行き過ぎです。
  42. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 それから資本金と固定資産の関係ですが、一体なぜ資本金を殖やさずに……例えば今代表的なのは日清製粉、東京海上あたりだと思いますがね、あれはどういう関係でああいうふうにしているのですか。
  43. 原安三郎

    公述人(原安三郎君) 東京海上のほうはアメリカのほうの示唆で駄目だと思うのですけれども、日清製粉は……。
  44. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 日清紡績は……。
  45. 原安三郎

    公述人(原安三郎君) 紡績のほうは、これはまあ私は詳しく内容を聞きませんけれども、資本金を殖やすと配当金が減りますね。
  46. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 それから株の……。
  47. 原安三郎

    公述人(原安三郎君) 株を余計もらうという考え方もあるし、あそこは何となく地味にやりたいという考え方ですね。それがその会社の方針なんですから……。地味にやりたいという考え方から言えば、成るべく資本を殖やしたり何かしないで行くのが地味だ。それと逆に配当を殖やして資本金を減らすほうが派手なんです。日清は非常に地味に行こうとしている会社です。何でもかでも地味です。そういうことは形では地味のようで、会社の一つの方針のうちに認められます。併しながらそれは一時ですね。結局は固定資産税に合うように資本を置かなければならんのです。
  48. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 それが本当でしようね。
  49. 原安三郎

    公述人(原安三郎君) その上に個別的な流動資産をプラスしたものですね、一ヵ年に十億か……。
  50. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 もう一つお伺いしたいのは、捕捉率ということだと思うのですがね。僕らはずつと若いときから月給取ばかりやつて来て、これまで役人ばかりやつて来たものは法律通り税金が取られるのです。地方税にいたしましても何でもそうです。ところが法人なんかだと成る程度……私の勘でございますが、相当から繰りができるのじやないかと考えるのです。而して捕捉率という点においては四二%は、形式的には四二%になつているけれども、これは帳面上の四二%であつて実質的には必ずしも四二%は私は取られておらないと思うのですが、これはどうですか。
  51. 原安三郎

    公述人(原安三郎君) あなたの御説は一億儲かつているのは、実は四二%かけているのは二一%くらいだと、こういう見方ですか。
  52. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 そう極端ではないが……。
  53. 原安三郎

    公述人(原安三郎君) そうはできま関せんね、そうできないばかりでなく……。
  54. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 やる余地があるのじやないですか。
  55. 原安三郎

    公述人(原安三郎君) いや、ありません。今日この頃は絶対にないのです。今日は御存じの通り会社の内容をはつきりさすことが組合の人たちと仕事を一緒にする上に必要なんです。組合の人たちというものは大変大勢おります。この人たちが皆会社の帳面を見てますから、私たちはパブリツク・リレーシヨンと言つて、頻りに会社の内容を得意先や株主に知らせると言つてパンフレツトを出しております。あれは社内の人間が知つてるということが一番大事で、そうしなければこれを抑えて仕事はできません。そういう意味からも、今は大体そういうものを隠したり、或いは含みを持たせしめたりということは終戰後絶対にありません。
  56. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 ところが昭和電工の事件が問題になつたときに、あの帳簿を押收してみましたところが、大分そういう事実があつた。今問題になつているのは帝石ですね。帝国石油に御関係があるか知りませんけれども、帝石のやつは労働組合が摘発しまして、大分妨害しているというので、その摘発した労働組合の幹部を首切つたというので、新潟のほうでえらい問題を起しているのですが、そういうところを見ると、実際問題としてはかなりやつているのではないですか。
  57. 原安三郎

    公述人(原安三郎君) これは大きな会社では、売つている品物の値段と、それから売上の数字と、コストはどうしても……特殊なものは別です。その会社一社しかないものは別問題ですけれども、そうでないものは、経済雑誌、経済記者というものでも、外部からあらゆる角度から見ているが、これは外部です。内部の組合には全部内容を知らしめるようにしているのです。その点は知らせて、やるほうがやりいいですよ。むしろそんなに工場が十七、八もあつたりする会社が一々それを……何でまごつくかというとストツクでしよう、それから貸金を減らすりか、減らす項目がきまつてるのです。減らすものがきまつてますから、とてもうまく行きませんよ。それをやつたら損するほうが多いのですよ。それからもう一つは、一応本当の線が出たらあとは変更しませんよ、これは常識論だけれども……。
  58. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 常識論になりますけれども、私はそこへ入つて調べたわけでもないので、常識論でございますけれども、給與にいたしましてもなかなか表面に出ている給與以外に何とかかとか、やはり法人関係では景気のいい、儲かつたときにはどさつと出していますね。
  59. 原安三郎

    公述人(原安三郎君) 今はなくなりましたね。
  60. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 その当時出しておつた。それが問題になつたので、狙われるということになつたのではないのですか。
  61. 原安三郎

    公述人(原安三郎君) それは二、三年前までありましたね。あれはGHQの命令で大蔵省がやつたのでよかつたのですよ。あれでやつぱりちやんと皆やることになりましたよ。今出されたら膏汗が出るかも知れませんが、今は全然ありませんよ。それがまあ短いのです、いいときが、そうでしよう。二、三ヵ月ですからね。
  62. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 その点は言えるのですね。
  63. 原安三郎

    公述人(原安三郎君) 念のために申上げます。税金が多いために我々が企画しますと、もとはコスト、それから人件費、いろいろなものを入れましたね。この頃は企画をする前に税金を入れなければならんことになつちやつたのです。これでは儲け高も出ないのです。税金の率が多いでしよう。この税金が拂える仕事がなくちやいかんということになつた。だから儲かる仕事がなくなつた。株式会社が取引をする前に聞いてみると儲かつているというが、税金が拂えるかというと拂えない、それじやこの仕事は駄目だということになる。だから終戰後、日本に新らしい仕事は何も起つておりませんよ。それが問題だ。民間放送のラジオや航空機会社のほかは、終戰後船会社や漁業会社は新らしくは何もできていませんよ。本当にまじめに拂つたら儲からんので、やる仕事はない。税金負担が多いですから。だからなかなか日本は……先にブレーキがかかつてます。だから全般的に……。
  64. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 貧乏人が羨むほどのことはないですね。
  65. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) どうもお忙しいところを有難うございました。  それでは午前はこれで休憩にさせて頂きます。    午後零時四十九分休憩    —————・—————    午後一時四十七分開会
  66. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) それでは委員会を再開いたします。  東京商工指導所長中西寅雄君に公述をお願いいたします。
  67. 中西寅雄

    公述人中西寅雄君) 本日は、私は所得税法についてお話を申上げたいと思うのでございますが、これは今日申上げることは、私個人の考えというより、むしろ私たちが中小起業者に対して絶えず接しておる、その場合における中小企業者が所得税法についてどういうふうな改正の要望をしておるか、そういうような点についてお話申上げる次第でございます。  第一の点は、事業主に対して勤労控除を認めてもらいたい、こういう主張でございます。いわゆる事業者控除を認めるということでございます。日本法人税法所得税法とは、同じ事業の所得を計算する場合においても違う法律の建前になつておるように思うのでございます。法人のほうは、主としていわゆる財産増加説という学説を基礎にして法人税法が組立てられており、それから又個人のほうは所得源泉説、こういうたふうの、別個の学説の建前に従つて組立てられておるように思うのでございます。こういうふうに法人と所得の税法の立て方を、同じ事業でありながら異にするというやり方は、ドイツにおいて以前においてそういつたふうの建前になつておつたように思うのでありますが、今日イギリスにおいても又アメリカにおいても、事業の所得たる点において、その所得を計算するその計算方法というものは、個人と法人との間に差違がない、差違を認めない、同等に取扱うというのが現在のやり方であるというように思うのでございます。ところで日本の場合におきましては、法人の場合においては重役等の給與というものは、これは総損金として経費としてこれが認められるということになつております。併しながら所得税法によりますれば事業主の所得、事業主の俸給に相当するところの部分は、これは必要経費とは認められないで利益として考え、事業所得として考えられる、こういう建前になつております。こういうふうな建前は外国においては今日まあドイツのほうはよく存じませんが、その他の国においてはないようでありまして、例えば米国においては個人所得の計算においても事業主の俸給というものは、一定の額を計算してこれを必要経費として差引くと、こういう建前になつておるように思うのでございます。又アメリカの上院の中小企業特別委員会で中小企業者に対して所得の計算をするための非常に簡易なるところの帳簿組織というものをば作りましてそれを勧奨いたしておりますが、それなんかを見ましても明らかに事業主の給與というものはこれは必要経費として控除して置いておる次第でございます。單に法人税所得税、こういう観点からいたしますならば、個人の給與をば所得として見るか、或いは必要経費として見るかということはそう大きな実質上の問題にはならないと思うのでございますが、この給與の計算の仕方の相違ということが地方税としての事業税というものが適用される場合になつて参りますと、非常なる不均衡を生じて来るわけでございます。つまり法人の事業所得というものと、個人の事業所得というものの中には計算の方式が違う、それをおのおの事業所得と考えて事業税を賦課するということになれば、中小企業等のつまり個人に対するところの個人事業に対しては事業税というものは非常に高くなつて来ざるを得ない。この不均衡を是正してもらいたい。この不均衡を是正するためにはむしろ根本に遡つて、そうして個人の事業所得というものを計算する場合において、事業主の給與に対する控除をば認めるということが最も合理的な方法でないかと思うのでございます。従来個人の場合において法人と異る計算方式をとつたというのは、恐らく個人の場合においては事業主の給與を計算するというふうなことは非常な困難をもたらす、こういうふうな観点によつたのだろうと思うのでございますが、併しこれはやはり同種の事業の比較的小規模の法人について実際に行われておるところの重役等の給與をば基準といたしまして計算上それを控除するということは決してむずかしいことではないと思うのでございます。若し一般に中小企業者全般に対してこういつた取扱をするということが困難であるとしましても、青色申告者の場合においては綿密なる帳面をつけておるのでありますからして、この青色申告者に対しては少くともこの事業主の控除ということを認めてもらいたい、これが一般の要望であるようでございます。青色申告制度も政府その他の団体の非常なる努力によりまして、これを個人事業者に勧奨はいたしておるのでありますが、それが何らの見るべき特典というものがないために、あまり普及をしていないように思うのでございます。そこでまあこの青色申告者に対して、特に事業主控除を認めるというふうなことをいたして頂きますならば、この点これが一つの特典となり、青色申告制度というものを普及する点においても非常に大きな効果があるのではないか、こういうふうに考えるのでございます。  それから第二の点は、基礎控除及び扶養控除をば増額してもらいたいという要望であります。今度の改正所得税法案によりますれば、五万円の基礎控除が認められることになつております。これは非常に中小企業者にとつては有難いことでありますが、元来この基礎控除及び扶養控除というものは、最低生活を保障するという趣意に基いているものだと思うのでございます。ところで現在の基礎控除及び扶養控除において、果して中小企業者の最低生活というものが保障されておるかどうかということは問題になると思うのでございます。中小企業者の最低生活費というものの保障に関する統計というものが非常に少いのでありまして、不完全なる資料によらなければならないのでありますが、併し昨年六月に、ここに公述人として来ておられます日本租税研究協会会長の原安三郎氏が会長なつております東京都におけるところの公開経営協会、これには中小企業者が百人ばかり集まつて、そうして実際に帳面をつけて経理の状態を明らかにするいわゆるガラス張り経営をやつておるのでありますが、ここで作つたところの、この協会で作つたところの資料によりますると、昨年の六月におきまして中小企業者の世帶員は平均五人半、こういうふうに出て参りました。それに要する直接生活費、衣食住に関する直接の生活費というものが、一ヵ年に二十二万一千円ばかりになります。然るにこれに対して、税法の認めるところの生計費の保障が、即ち基礎控除及び扶養控除として認められるものは十四万円ということになりまして、約八万円ばかりの不足になります。つまりこの八万円ばかり、一ヵ年に八万円ばかりというものは、なお最低生活を保障されていないということになるのでございます。それから一般消費者、一般消費者というものを数字にとつて見ますと、やはり昨年の六月の東京都の生計費調査をとつて見ますれば、世帶員が四・七人、この世帶員数で直接生活費は十六万九千円、然るに基礎控除及び扶養控除される額は十三万五千円となりまして、三万四千八百円ばかりの不足を来たします。一般消費者のほうも最低生活が保障されていないのでありますが、併しそれに比較して中小企業者のほうがより多く保障されていない。だから一般勤労階級と比較しまして中小企業者のほうが、今日の状態においてはなお基礎控除及び扶養控除が低過ぎると、こういうこともいわれるのであります。これは昨年の大月の統計でありまして、その後の物価騰貴ということを考えますれば、この数字というものはもつと大きくなつて来るだろうと思うのでございます。で勿論今日国家の必要上この基礎控除というものをずつと増して行きますれば、国家の必要とするところの財政というものを賄うためには、税額の不足を来たすということは言い得るだろうと思うのでございますが、併しこの点についてやはり日本の税法において根本的に考えなければならない点があるのではないかというふうに考えるのでございます。日本の税法は戰時中、特に戰後シヤウプ勧告以来所得税中心主義というものに非常に向つて来ておることは事実であります。この建前は例えば大企業家とか成いは中企業家のほうにも所得が非常にたくさんある、こういうふうな場合においては所得税中心主義というものは、所得の分配を公平にするという意味において、非常に優れたところの税の建前であると思うのでございます。ところが日本の場合においては、所得の層というものは非常に少数の大企業以外は殆んどすべてが一般大衆としての中小企業者及び勤労階級というものによつて構成され、これに対して、所得税法人税或いは事業税というふうに所得を中心として高い税率の税をかけるということになつて来ますれば、この所得税中心主義というものは必然に大衆課税ということになつて来ざるを得ない。そうなつて来るとこの所得税中心主義というものの本来の趣意というものが没却されるのではないか、若しこういうふうな大衆課税というものになるとするならば、むしろこういつたふうの所得税中心主義といつたものよりも、間接税という方面にいま少しく重きを置いて、そうして間接税のほうに中心を置いて行く、こういうやり方はむしろ税に対する重圧感をば除去するという点から考えまして、又今日日本にとつて最も必要なるところの資本の蓄積というものをば刺激して行くといら点から考えても必要なことではないかと思います。そこでこの中小企業者或いは一般消費者に対するところの基礎控除又は扶養控除というものをもつと増額して、それから生ずるところの税不足というものを間接税に向けて行くということがより合理的な方法ではないかと思うのであります。取引高税とかその他の物品税について従来中小企業者これに対して最も反対をいたして来ておつたのでありますが、今日のように所得税というものが重圧感を與えるようになりました場合においては、中小企業者のほうにおいても、むしろ取引高税を復活したほうがいい、或いは物品税によつて行くほうがいい、こういつたふうの要望が強くなりつつあるということを御報告申上げたいのでございます。  第三の点は、事業所得の計算において、收支の計算の思想をば取入れてもらいたいということであります。これは或は立法上の問題ではないかも知れません。所得税法によれば日本個人企業の事業所得の計算は発生主義によるというふうに解釈されるような文句があるのでありますが、この発生主義ということを現在の税務行政の運営において非常に嚴格に解釈いたしておるのではないか、つまり発生主義ということを明確化するために、権利確定主義というふうな一つの原則をば立てました、それを以て非常に嚴格に機械的にこれを当てはめて行く、こういうふうな点で大企業法人税のほうにおいてもいろいろの問題を惹起しておることは事実でありますが、特に中小企業の場合において、この発生主義というものを嚴格に解釈して適用して行くということになつて来ますならば、非常に多くの複雑性と混乱を生じて来なければならなくなつて来る。そこで全体の建前は発生主義という建前でありましても、これに非常に彈力性を持たせて、そうして收支の計算ということの思想ば非常に加味して行くというふうにやつて行くことが、中小企業という場合において、ものの所得の計算において却つて合理的ではないか、それは発生主義と收支主義との間には個々の事業年度の所得の計算において多小の食い違いは生ずるかも知れないけれども、数ヵ年の平均ということをとつてみれば、その間に何らの相違がないのであります。そうしてそういうふうに数ヵ年の平均というものを見て所得を課して行くということが、これが税法の基礎としての所得の計算というものの近代におけるところのやり方であると思うのです。シヤウプ勧告の根本を貫いておる思想もそういう点であると思います。それによつてつて負担の公平ということも期し得られるのじやないか、特に中小企業者の場合においては、記帳能力というものが非常に不充分であり、その中小企業者に対して現在のように嚴格なるところの発生主義をとつてつたならば、青色申告をしたいという人があつても、この記帳などの複雑性から、到底これに随いて行けないということになつて参ります。  第四の問題は、企業組合に関する問題であります。御存じのように中小企業の企業組合は、中小企業等協同組合法に基きまして作られたものでありまして、中小企業者が僅かな資本と勤労というものを中心として結合して行くという中小企業の立場から見まして、非常に重要なる又社会的意義の深いところの一つの組織であります。ところでそれが中小企業等協同組合法によつて一つの法人として企業組合というものが認められているわけであります。これに関して、この中小企業が成立する場合において、最初から地味に本来的な中小企業の更生策として協同組合の本来の事業をやつて行くということで作られたものもあつたのでありますが、この間たまたま少数のものが、若しこれが法人となつたならば税のほうが非常に軽減される、いや軽減されなくても、一々細かい帳面を個人でつけなくとも、伝票さえ書いておけばそれを全体に集めて帳面がつけられる、それによつて青色申告もできる、こういうふうな観点から税の煩雑さをば逃がれるという建前からして企業組合を作つたものも多少はあるわけでございます。  ところで税務当局のほう、これは運用上の問題であると思うのでございますが、税務当局のほうにおきましては、この企業組合に対しては所得税法に関する基本通達におきまして経理に関する非常に細かい取扱いをきめまして、そうしてその一つ一つの條項に違反したものはこれを企業組合とは認めないで、個人所得税を課するという建前をとつておるのでございます。その通達に記載されておるところは、合理的な部分もあるのでございますが、何しろこの通達は非常に難解でありまして、税務署の人たちも殆んど了解することができないほど複雑である。一般は殆んどこれが了解できないというふうな事情もございまして、この運用においては非常に混乱を来しておるのでございます。そこで若しも一部のものにその通達に反するような経理の仕方をしておるものがありますれば、全面的にそれが企業組合としての存在が否定せられて、そうして所得税として個人所得税が課せられる、これが今日の実情であります。昭和二十六年六月末に企業組合数が六千八百十九ございます。そのうち税法上法人と認められたところの組合数が三千七百七十一、それから否認されたものが二千四百四十一、その他のものが、未解決のものが六百七ということで約半数が否認されておるわけでございます。これに対する中小企業者の要望というものは、若し組合員の一部のものに経理に関する不完全なものがあつても、企業組合全体を否認することなくして、それを一つの法人として認め、それに対して更正決定をしてもらうことが、これが正しいやり方ではないか。例えばほかの法人の場合においてはみんなそういうふうにやつておる。特に中小企業だけが一部のものに欠陷のあるものがあつた場合において、それを全部法人性を否認されるということは、これは非常なる不合理であるということであります。なぜこういう要望をするかというと、まじめに企業組合の組合員となり、経理をしておるものも、たまたまその一部のものに経理の不十分なる、不完全なるものがあるがために、その法人性というものが否認されて、そうして全体として個人所得税が課せられるようになつて来る、このことは非常に不合理な点ではないかということでございます。これに対して税務当局のほうは、これは中小企業等協同組合法によつて法人性を認めるかどうかということは別個の問題だ。税のほうではそういう観点ではなしに、実質的な観点から税を課すのだからして、その実質的に組合というものと認められないものに対しては、それを否認することが当然であろうということが言われるのでありますが、そういうふうな立場というものが果して許され得べきものであるかどうかということが問題だと思います。そういうふうにして行くならば、この国の法律によつて中小企業を集めて企業組合を作つて行くというこの国全体の建前というものが、税法によつて阻害されるという結果を生じて来はしないか。いずれにいたしましても、企業組合というものは、中小企業の更生の策として最も有力なる一つの、零細経営を更生さして行くための、一つの有力なるところの手段と考えられておるものでありますからして、これを普通の法人と認め、そうして有限責任会社、同族会社等と同じように税法において取扱つてもらいたい、これが要望でございます。  大体その他の点においてもいろいろございますが、大体今日中小企業者のほうで所得税について要望している点は以上のような点でございます。
  68. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) 何か御質疑がありましたらお願いします。
  69. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 第一の事業控除ということです。これは事業主の給料というような恰好にしろ、こういう意味ですか。事業控除にしますと、これは本当の給料、給與所得のような工合な控除をするのか、それとも給料ということにはなつたら、これは又給與所得に税がかかるということになるが一体どもらを言つているわけですか。
  70. 中西寅雄

    公述人中西寅雄君) これは大体給料というふうな意味なんでございます。
  71. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 そうすると給與所得は源泉徴收……。
  72. 中西寅雄

    公述人中西寅雄君) 源泉徴收をしてもらう……。
  73. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 事業主の給料を所要経費の中でも認めて、それは給與所得にせよ、そういうふうな……。
  74. 中西寅雄

    公述人中西寅雄君) はあ。
  75. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 そういう例があるのですか。
  76. 中西寅雄

    公述人中西寅雄君) これはアメリカでもどこでも全部これでやつておるようでございます。やはり事業の所得という場合においては、法人であると個人であると、ちつとも変りあるべきはずがないのだ、それで一定の基準を設けまして、そうして事業住の給料に相当するものはこれを必要経費として差引く、こういうような……。
  77. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 その場合に勿論事業主並びにその中小企業においては家族的経営が多いと思います。そういう場合には家族も子供もやはり給與をもらう。それから娘ももらう、こういうふうな恰好にして全部使用人というような、事業に対する使用人というようにして給料を拂つて、それは皆源泉徴收をやる、こういうのがいいというのですね。給與所得のように控除にやつてしまうというのじやないのですね。
  78. 中西寅雄

    公述人中西寅雄君) 控除でやるのでなくて、一応事業主のこの、その他の家族の専従者はもう必要経費として認められるように今度なるわけです。それを事業主のほうまでも認めて頂きたいということでございます。
  79. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 それからもう一つ、昨年六月の統計による中小企業世帶人員は五・五人で直接生活費は二十二万一千円、ところが控除がこれに十四万よりない、こういうお話でございましたが、これは控除だけが十四万円であつて、その事業利益は全部税金なつてしまうのじやないので、これは共産主義の社会とは大分違うのでございまして、控除だけで生活せよというのじやないのですが、この点はどうですか。
  80. 中西寅雄

    公述人中西寅雄君) 直接生活費が……。
  81. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 直接生活費というものはどういうものです。
  82. 中西寅雄

    公述人中西寅雄君) これは衣食住に関するもので、文化費等を含んでいない、それが二十二万円かかる。だからそれだけのものが最低として保障しろというのは、それ以上のものに対して税金をかけるのは差支えないが、それまでは控除をしてもらいたいということなんでございます。
  83. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 ところが理論を押し進めますと、直接生活費で最低生活を保障せよという理論で、これだけの控除は或る程度引き上げても、そうするとあとの利益に対する課税というものはむしろ苛酷なものになる。というとこの今のエンゲル系数というのが又問題になつて来るだろうと思うのですが、今の平均エンゲル系数からいつたら、相当利益の多いのは苛酷な税金を課せられるということになるのじやないのですか。そうすると社会主義的ななにで、我々としてはむしろ……、そういうことにならんですか。
  84. 中西寅雄

    公述人中西寅雄君) いや、今度の改正法で十四万円までは控除しようということになつたのでありますから、それをもう少し上げて頂きたい。十四万円というのはこれはやはり生活を保障するという意味で、これは決して共産主義とか、そういうふうな意味ではございませんで、やはり最低生活だけは保障するという建前だと存ずるのでございますが……。
  85. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 いやわかりますが、それを強調せられますと、これはむしろエンゲル係数国民生活水準というところに来まして、非常に中小企業のかたの利益金が多いということになりまずと、どうしても文化費が、これは直接生活費で衣食住だけはこれだけ…、これは労働者も一般の公務員も大体この水準であるから、そうすると中小企業のかたの文化費というものも或る程度限定されるということになると、それは課税能力があるというようなことになつて来るので、むしろこれは生活費云々というのは賃金労働者とはちよつと違うので、その点がどうでございましようか。
  86. 中西寅雄

    公述人中西寅雄君) これは中小企業者のほうが一般消費者よりも多くなりますのは、家族の数が多いから一つはこういうふうになるのでございます。中小企業者のほうは……。何のほうは四・七、四・七人ということになるのでございまして、家族の数が中小企業者のほうが多いという点でこういうふうに少しばかり殖えて来るわけでございます。
  87. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 私の申上げるのは、そういうあなたの今おつしやいましたような理論をおし進めますと、当然これはエンゲル係数の問題になつて、今の国民平均のエンゲル係数から見ましても、基礎控除を或る程度直接生活費と結付けて考えられました場合には、それ以上オーバーするものには相当高い税金負担してもいい、それはなるほど税は低いにこしたことはございませんけれども、どこかで税源を探さなければ……。
  88. 中西寅雄

    公述人中西寅雄君) いや…。そこでこれから上のものを所得税によらないで、間接税のほうに持つてつてもらいたいということなんでございます。間接税のほうにですね。所得税というものをもう少したくさん取るということよりも間接税というもののほうに向けて行く。どうせこれは大衆課税になるのでございますが、こういうふうに大衆課税になるならば、むしろ所得税に課するよりか、間接税に課して、知らんうちにすつと取つてもらつたほうが重圧感も少いのじやないか。こういうふうに俸給の所得者というものに高い税金を課するという意味じやなくて、間接税のほうに持つてつてもらいたい、こういうことでございます。
  89. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 次にもう一つ簡單にお尋ねしたいのですが、発生主義を嚴格に解釈すると、中小企業においては混乱を来たす、收支計算主義を加味するというお話でございます。これはちよつと今のお話では抽象的なような感じがいたしたのでございますが、具体的によくわからんものですから……。
  90. 中西寅雄

    公述人中西寅雄君) 例えば青色申告をする場合に、所得の計算上帳面をつけたりなんかしているのでございます。その場合において期間的な損益の計算ということを非常に重きを置いているのでございますから、利子等を支拂いましても、その利子のうちにおいて次の年度に繰越すべきものは控除しろとか、或いは又收入でも、受取つていなくても、もうその権利が確定したならば今期の收入にそれを掲げろ。ところが中小企業者のほうはやはり現金というものを中心としてものを見れば、非常に簡單にうまく行くのですが、それをそういつたふうの発生主義によつて権利が確定したときにおいて、すべて損失は発生し、又は利益收入があつたというふうに見ることが非常に混乱を来しておるわけです。それでそういう点をもう少し收支の計算を出して、商人が通常利益と考えておるようなそういうような建前に、この所得の計算をしてもらわなければならない、こういうことです。
  91. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 そういたしますと、初年度は非常に税金が軽いかも知れないが、次年度においてかなり大きく負担しなければならないという、そういうとき固まつて来る場合があると思いますが……。
  92. 中西寅雄

    公述人中西寅雄君) そういう場合もありますし、あとのほう……。結局まあそこでそれを数ヵ年に平均すれば大体平均されるということになる。
  93. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 これは事業の消長等からすれば非常に激しいものである。中小企業は特にずつと平均してコースを辿らないで、むしろ激しいのではないか、消長が激しいのではないかと思いますが、何か却つて無理が生ずる場合があるのではないか、その点は……。
  94. 中西寅雄

    公述人中西寅雄君) 二、三ヵ年すれば平均してしまうことでございますから、こちらのほうにも無理がある、今おつしやつたような点もあるでしようけれども、結局全体的に見れば、こうすれば初めて帳面もつけられ、或いは青色申告のほらにも……。
  95. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 そういう点からこれを刺激するようになるでしようね。
  96. 中西寅雄

    公述人中西寅雄君) はあ。
  97. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 わかりました。
  98. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) 有難うございました。   —————————————
  99. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) 次に矢田さんにお願いいたします。
  100. 矢田勝士

    公述人矢田勝士君) 巷ではバズーカ砲か生活安定かの声が高く、特に勤労者の間では再軍備反対、生活権を保障せよと叫んでいる中で、政府は自衛力漸増と、資本蓄積とを合せ看板にしている。大砲かバターかの課題は世界共通の悩みであつて、アメリカにおいてさえ増大する軍事費による赤字財政とインフレに因つていると聞いております。安全保障條約と、これに基く行政協定に対しては、労働者を中心とした国民反対は非常に強い。国会においても自由党を除く全野党のかたがたは、これを必ずしも承認していない。行政協定は吉田内閣が言葉が過ぎるかも知れませんが、国民をつんぼ淺敷に置いて、国会の審議権を無視していると、国民は見ております。自主権を代償にアメリカの軍事基地を認め千八百三十億の代価を支拂おうとしておる。この一般会計予算の二一%余りにも及ぶ国民の納得していない支出を賄うために、税金を納めよということに対して、私ども国民は先ず承服しかねるのであります。日本国憲法に背いて実質上の再軍備を行い、その費用を国民の税負担で賄うものだ、そうして日本は資本の蓄積が必要であるといつたようなことは、これらのしわ寄せが勤労者の上にのしかかつて来ることは当然ではなかろうかと思います。  私は勤労者を代表する国民の一人といたしまして先ず第一に違憲の疑いのある財政支出を含んだ国家予算を賄うための税金を納めることは、決して合法的でないと思うのであります。従つて私どもは非合法まで行い、結果的には憲法を無視することの危險まで犯して生活を破壞に導くような愚かしいことはしたくないのであります。先ず国会並びに政府は基本的な問題としてこの点に対して明白な回答を国民に與えて欲しいのであります。  次に今回の税制改正は課税の簡素化と資本の蓄積のために行うのだとされておりますが、これを換言すれば目的は資本蓄積のためで、その目的を果すための方法は簡單にということであつて大衆的攻奪を通じて簡單な方法で資本を蓄積しようということになるかと思うのであります。こんな一方的な資本家擁護のやり方があるかと思うのであります。その意図は後に少しく具体的に申上げようと思う内容に明らかに現われておると思うのであります。資本蓄積が国民生活権の保障、これは相対立しておる中で日本経済自立のためには生産復興と資本の蓄積も勿論必要でありましようが、これは飽くまで努力目標であつて憲法に保障された生活権の保障より先に資本蓄積を図るということは本末顛倒になつておるのではなかろうかと思います。即ち昭和九—十一年頃は国民所得に対する国税割合が九%にしか過ぎなかつたものが、今日では一七%にも吊上つています。地方税を含めると二五%にも及んでおります。而も地方財政の歳入不足二百億とインフレ傾向を合せて行くならば地方税はますます増徴の方向にあるように存じます。日本国民の生活状態は生活水準において戰前の七〇%程度(これは二十六年十月東京の五人世帶におきまして七〇・九%、十一月で七二・四%というものを示しております。)にしか当つておりませず、勤労者の実質收入は七〇・二%(これは二十六年の十月であります。)にとどまつており、昭和十年頃三四%であつたエンゲル係数が今では国連の報告によりましても五七%にもなつております。これは全く人らしい生活が営めてないということを証明していることになるかと思います。ついでに国民所得をどう使つているかと申しますと、二十六年七月の国連調査では食費に五七%、資本蓄積に一五%、税金に一四%、医療費六%その他八%と報じられております。私ども勤労者が人たるの最低生活を営み、労働再生産を求めようとすれば、私どもの計算では十六歳で最低六千円を必要といたします。ところが現実は四千円以下で働いておる諸君が非常に多いのであります。生活から落伍して生活保護法の適用を受けている者が百九十万人ほどもあると聞いておりますし、遺家族はお燈明料で親子三人で月一千六百円といつたような国民生活状態では、資本蓄積を先にすることは人道としても又社会正義上からも許しがたいのではないかと思います。  以上のような基本的態度に基いて私は以下具体的に意見を申上げて見ますならば、先ず第一に所得税についてであります。政府は二十七年度税收入の基礎を国民所得五兆三百億、これは一人当り六万四百五十七円に当ると推測されておりますが、先の臨時特例法を平年度化すると言つていますが、徴税対象としてのこの見積りは明らかに過大評価で、当初四兆九千億と発表されたことのあることからもこれが言えるのではないかと思います。無理に均衡を図ろうとした欺瞞的数字で、資本蓄積と自衛力のために勘定を合わせて銭足らずということになり、勤労大衆増税される結果となつて来たのではなかろうかと思います。即ち二十六年度に比べて租税、印紙收入は六千三百八十一億七千万円、全体の七四%で、これは昨年度に比較しますと一四%増になつておりますし、専売益金一千二百十三億、これは二%の増ということになつております。私どもの所得税に対する意見は、第一に政府案は下に高く上に過少である、而もこれまで百万円以上五五%であつた税率を基本額二百万円以上を五五%と大幅に切下げを行い、他は一律に五%下げたようでありますが、五万円以下では依然として前年度と同じ率をかけられております。この点貧乏日本としては甚だしい矛盾で、最高税率はアメリカで八二%、イギリスで九二%、ドイツで九五%であるということを聞いておりますが、これに対し日本は上だけは下げて、下層のほうは一年間に物価は二五%も上り、賃金は二〇%しか平均して上つていないにかかわらず、税金は依然として高額を拂わせられておる。私どもは最高八五%ぐらいまでに引上げて、十万円以下ぐらいまでは課税しないというくらいの大幅の修正を頂きたいと思います。次に基礎控除の問題でございますが、五万円に引上げたということでありますが、これは成年一人六千円の最低生活費が要り、平均家族構成二・八人で消費單位を仮に二といたしましても月一万二千円は最低生活を営むのに必要で、当然税金対象の所得からは控除すべきであつて、この意味から基礎控除は少くとも十二万円乃至十五万円とすべきであると思います。第三に扶養控除も三人まで二万円となつておるようでありますが、これもやはり三倍の六万円程度の、それ以上、即ち三人以上で一万五千円のところを四万五千円くらいにすべきではなかろうかと存じます。第四に勤労控除の問題でありますが、シヤウプ勧告以前は二五%であつたものが、アメリカ流の資本蓄積を急ぎ、一人当り一千六百ドルの所得を持つておるアメリカの真似をして、その十六分の一の所得しかない日本がただ勤労大衆から搾ることは妥当でないと思います。この点はシヤウプ勧告以前の二五%に返すべきであつて、それでも他の申告所得の徴税実績や、企業が製造業、サービス業を問わず、先ず必要経費、積立金等を落しておいて利益計算を行い、それを控目に申告して而も二十五年度の実績は七九%しか納税されていないということからいたしますならば、勤労者の場合におきましては源泉徴收のために同じ二十五年度で納税率百七・八%にもなつております。労働の生産性は価値通りに実現されていない低賃金でありまして、何ら差引くものがないことを考えますれば、勤労控除を三〇%に引下げてもよいのではないかと思います。第五に変動所得の中において退職所得は大分軽減されて参つておりますが、高額所得のほうは別といたしましても生産の第一線を去り、老齢に入つて生活資料獲得能力を減退しているものであります場合、やはり十万円以下くらいには非課税とお願いできれば幸いであると思います。第六になお所得税法が如何に勤労大衆に圧迫を加え、資本家、高額所得者を保護しているかの好例といたしまして、生命保險、これは従来控除限度二千円を四千円に引上げ、相続税におきましても生命保險金の二十万円まででありたものを四十万円までに引上げて非課税としているこのこと自体は惡いとは申しませんが、勤労者が公務員、民間を問わず、各種の社会保險関係で必要とする保險料率は一一%にも達し、世界一の高率を示し、事業主、労働者ともに喘いでいる今日、この社会保險料が何ら税法上控除の対象になつておらず、保險金についても生命保險のごとき保護がないことは吉田内閣が如何に社会保障制度に冷淡であるかを示す証左であろうかと思うと同時に、私どもは社会保險料の所得からの控除は再三、国会にも陳情申上げていることでございますが、この際是非実現を願いたいのであります。第七に、第三條に規定してあります法人非課税の問題でありますが、例えば労働組合、職員組合等が積極的に労働條件を改善、向上さす団体であつて、この法人が非課税の対象になつていることは結構でございますが、これらの同じ構成員の消費面を合理化し、労働者の生活を防衛しようとするところの、営利を全く目的としていない消費組合の法人に対しては、非課税の措置がとられていないのでありますが、事業面で見ますと、これは国営なるがゆえに非課税の対象の法人になつております共済組合と類似している点が非常に多いという点から申しましても、消費組合を非課税法人の中に是非入れて頂きたいと思うのでございまして、以上のような、少し言い過ぎの点もあつたかも知れませんが、例えば私の例をとつて見ますならば、専門学校三年卒業で教員を十二ヵ年いたして、私妻と二人で月收一万二千三百七十五円、現行所得税は九百七円でありますが、二十七年度も変つていないのであります。地方税二百五十円程度とられると手取が一万一千二百円ぐらいになります。やつと麦飯を食つて、ガス電気、水道その他公課に等しい料金、寄附金、家賃、交通費に加えて恩給掛金二百十五円、共済組合費三百九円等を差引けば、どんな工夫をしても貯金はおろか、健康で文化的な生活を営むことは不可能であります。公務員の低賃金、重税の白書にこれがなるかと思うのでありますが、一ヵ月一万円足らずで二人の大人に生きて行けというのが政府の政策であります。  次に砂糖消費税の一部改正案について申上げますならば、戰争前における直接税と間接税割合は大体六三%乃至六四%の直接税に対して、間接税は三〇・五%くらいであつたものが、戰後だんだん上つて参りまして、間接税と直接税の比率も接近し、特にシヤウプ勧告後の二十五年におきましては、両者の比率が五五対四三・一となり、二十六年度はちよつと開いて参りましたが、直接税五八・七に対して間接税三九・八ということでありまして、今度の改正では五八・二に対して四〇・二というように直接税が勤労者に過重な上に、更に大衆課税としての間接税が非常に大きくのしかかつてきているのでありまして、国民がインフレと共に如何に苦しんでいるかを考えて欲しいのであります。政府の言い分によりますと、食管の赤字を砂糖で埋め、政府が入札制で商売をして高利を改めてもまだまだ不足であるから、砂糖だけでも税收を七十億近く上げたと言われるように受取れるのでありますが、四月から統制を外せば消費税七割、間接税十割のこの度の値上と共に、砂糖だけでも政府が余りに暴利を取り過ぎるのであつて、我々の計算では年間六十万トンの砂糖の消費からすれば、恐らく税收も百億を越すのではないかと見ております。  更に重大なことは、この度の改正案ではありませんが、酒税でありますが、ここでも来年度百四十五億の増收を挙げるために、国民の配給内地米食率や、労働加配米の内地米の食率は引下げて、高い補給金のかかつた外米を輸入して食わせておるのに対して、酒のほうは二万四千トンも内地米を多く廻し、一般国民は政府のために全く踏みにじられたような大衆課税をされておるのであります。私はこの席をかりて三月五日高橋国税庁長官と労務用の特価酒の問題で交渉した場合の一節を記録によつて申上げますならば、あたかもフランス絶対主義下における徴税請負人フイナンシエーのごとき日本にも徴税官がおるかのような印象を受けたのでありまして、これは嚴重な反省を促しておきたいと思うのであります。即ち現在労働者に対する厚生の一つの方途として労務用物資というものがあり、その中に現在物調法に基いて労務用特価酒というものがあつて酒税法の面で保護されておるのでありますが、これが物調法の廃止と共になくなるということで交渉いたしました際に、長官の言われる一、二の言葉は、例えば政策だから今後はやめたいと冷たく言い放つたり、農民に食糧増産用というのを出すというから、鉱工業の生産者にも既得権であるから出して欲しいとお願いすれば、第一あんな扱いは役所でうるさいからやめるのだ、或いは政府に僅か全体で四万八千石の対象であるから、一億くらいの税收しか増税にならないのだから、七百万労働者の既得権という意味からもお考え願いたいと言えば、僅かなことで大した利益はないからいいじやないかとか、最後に私どもはいろいろと事情を申上げておりましたら、官吏の汚職が出るからやめるのだ、これに至つては全く暴言であるかと思うのであります。  第三に法人税の問題でありますが、特例で税率を二割引上げて、四二%にしたと申しておりますが、今度の改正によりますと、徴收猶予期間の利子を四銭から二銭に引下げたり、還付金の制度の強化等によつて、やはり他の無記名預金や、信託預金と共に、資本家保護がはつきり強く出て来ていると思います。勤労者はこの点でも不満が多いようであります。このようにして政府は昭和九十年頃の国民一人当り二十七円であつた税金を二十六年で九千二百二十円に吊上げ、今度は更に国税だけで七千六百七十三円にし、地方税と合せると一万二千円にも税金がなるのであります。国民がいや応なしに所得の四分の一近くは税金に持つて行かれるのであります。先ほども出ましたがフランス人が一七八九年のあの大革命を行わなければならなくなつ一つの理由に、ブルボン王朝の国王十分の一税案というものが原因になつたということを考えますれば、私どもも空恐ろしい感じがいたすのでありまして、是非こういうような勤労大衆に重大な圧迫を加えております税制に対して、大幅な改正をお願いしたいと思います。
  101. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) 質問を願います。……別に質問ありませんですから、有難うございました。   —————————————
  102. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) 次に齊藤君にお願いいたします。
  103. 齊藤甚助

    公述人齊藤甚助君) 只今御紹介にあずかりました日本財務職員労働組合連合会央執行委員長齊藤甚助であります。私は本日の税法改正公聽会におきまして、直接に税務行政の運用を担当する税務職員の立場から、先ず前段において納税者の最近の動態について申述べ、更に現下我が国税制改正の指向しなければならない方向について、続いて後段においては税務官庁の実情について申述べ、税務行政改善上の問題点を提起いたし、委員各位の深さ御理解と、これが解決のために異常なる御熱心を御切望してやまないものであります。  先ず二月の二十日現在の昭和二十六年度租税收入状況を分析いたしますと、申告所得税收入額は、予算額一千二十二億二千百万円に対しまして、四百三十一億八千五百万円で、その割合が四二・二%であるのに対し、源泉所得税におきましては、予算額千三百二十二億八千九百万円に対して、收入額は千三百五十一億六千七百万円、その割合は一〇二・二%を示しております。勿論申告所得税につきましては、二月末日限りの確定申告を同時に納入される金額が相当ありますから、この此率の差をそのままに比較することは当を得ないものでありますが、併しながら恐らく三月末日の收入状況を予想対比いたしますときに、源泉所得税は百数十%を示すのに対し、申告所得税は一〇〇%を遥かに下廻るに過ぎないことが判明いたすことでありましよう。この申告所得税の不振は何を意味するものでありましようか。諸種の原因が挙げられますが、明らかに所得税の過重負担に対する自然抵抗であります。これに対しまして源泉所得税の好調の原因は、給與支拂時におけるところの天引徴收であることに存するのであります。若しも給與を一旦支拂をして、後日所得税を徴收することといたしましたならば、恐らくは高額所得者を除いて、殆んど徴税不能に陷ることでありましよう。問題はここにあるのであります。取りやすいところから取るという現在の徴税制度は、速かに是正せられるべきものと考えるのであります。若しも徴税技術上、現行制度が止むを得ないとするならば、所得税法を速かに改正して、軽減措置を講じ、特に勤労所得控除額、現行一五%、最高三万円を大幅に引上げる必要があるのであり、公平の原則は実際的に行われなければならないのでありますから、先ず何をおいても本問題の実現をお願いいたしたく思う次第であります。  次に全般的に所得税の軽減が行われなければならないのであります。本年一月末の租税の滯納状況を見ますと、滯納件数の合計、本年度分が百八十三万五千三百五件、過年度分三百八万三千三百三十件、四百九十一万八千六百三十五件のうちに、申告所得税の滯納件数は、本年度分百三十三万八千七百六十件、過年度分が二百三十三万二千六十八件、計三百六十七万八百二十八件であり、その占める割合は本年度分七三%、過年度分七五%、計七四%となつておるのであります。今年度の滯納件数は、今般の確定申告をめぐつて激増することが予想されますから、その比率も相当に上昇することと思います。又申告所得税の滯納金額は、本年度分百四億四千二百万円、過年度分二百四十九億百万円、計三百五十三億四千三百万円で、総額の四五%を占めております。なお差押え件数の同日現在は、八十八万八千四十八件、二百八十九億五千万円のうち、申告所得税が六十六万九千件、百二十億三千万円を占めて、その割合は件数七五%、金額四一%となつております。而も差押え一件当り滯納金額は一万七千円の少額を示しております。  以上申上げました通り、滯納件数、金額及び差押え件数、金額中、零細な申告所得税が圧到的数字を示しておることは何を物語るのでありましようか。これこそ所得税負担が過重であることの何よりの証左と言えるのであります。当局はしばしば我が国租税負担の重くない理由として、税率の比較において、或は国民所得と財政負担比率の比確において諸外国の例を用うるのでありますが、若しも当局のその見解が正しいといたしますならば、所得税の滯納件数も諸外国のそれに等しく殆んど皆無であるはずであります。どうか滯納の発生しないよう所得税法を是非とも制定して頂きたいと考えるのであります。かかる見地からして、今回の改正案は極めて不十分であります。日銀統計局の調査に基く生計費は、世帶員数五人の標準家族において、昨年中の合計が二十万三千七百六十三円となつておりますが、本年の生計費の高騰を見込んで最低の生活費には課税しない所得税法でありたいと考えます。それがためには、何をおいても基礎控除、扶養親族控除等を更に引上げて、最低生活費は課税の対象としないまでに改正されなければならないのであります。当局の言明に従えば、現行所得税法の各種控除は最低生活費に合致せず不十分である、その理由は財政需要が巨額であるからだという、このような考えの下に税法が制定せられているならば、デモクラシーに全く相反するものと言わなければならない。個人の尊嚴を基本原理とし、国氏は国家の道具ではないとする思想に立脚する憲法の精神に反することであります。民主政治の形式的意義は、多数決原理によることで、国民の輿論である所得税減税が実現されない理由はどこにあるのでありましようか。国民の大多数の願望の実現しない責任は誰が負うべきものでありましようか。国民生活に明るい希望の燈を点ずる真の民主政治は先ず所得税減税から始めらるべきであることを声を大にして叫ぶものであります。  ここで所得税実質的な減税が実現されても滯納者は減少しないであろうとの危惧について申上げたいと思います。国民納税道徳の問題であります。私どもの日常接しておる納税者のかたがたは極く少数の人々を除いては真劍に納税しようと考え、且つ努力をいたしております。一例を申上げますと、日本橋人形町に某という呉服の小売を行う小会社がありますが、社長は数年前調査に当つた税務職員の円満な人格と民主的態度に感激して、現在一点の曇りもない経営経理と申告納税を実行しており、誠に感歎おくあたわざる人物であります。その某氏は従業員と一体となつて問屋、銀行筋の信用も厚く、事業の科学的経営を行なつて、事業成績は向上の一途を辿り、納税についても常に準備を怠らず、期日前に納入するほどの熱心さであります。このようなまじめな納税者は極めて稀でありますが、国民納税倫理高揚の拠点として是非とも守つて上げなければならないと思うのであります。ところがこの会社において最近月掛三千円の納税預金を四千円に増額しなければならん状態に立ち至つておる模様で、多くを語りませんが、正直に行動することの困難性を痛感しているらしいのであります。私はこれこそ重大問題だと思います。戰後古い国民の道義が崩壞し、新らしい国民道徳の高揚が叫ばれておりますときに、このような人々は先駆者とも言い得るのでありますが、その新らしい芽が摘まれようとする、誠に我が国の将来のために憂うべき事態であります。天野文相の国民道徳実践要領よりも、これらの新らしい道徳の先駆者を擁護する政治こそが新らしい国民道徳確立への唯一の道であることをお考え願いたいと存ずるのであります。若しも政治に携わる議員皆様の手によつて、明るい前途が約束されるならば、これらの善良なる納税者はこの白堊の殿堂に満腔の尊敬と信頼を寄せて、自己の義務を履行し、民主国家を謳歌して民族の将来について希望のスクラムを組むに至るでありましよう。国民納税道徳は民主政治を機軸としてのみ打立てられることであります。私ども税務職員も、そのような減税措置の講ぜられた後においてなお且つ正当の理由なしに滯納するような納税者がありましたならば、全力を傾けてその非であることを説明いたし、明朗円満なる税務行政を必ず推進することを誓うものであります。  次に納税者立場に立ち、法人税の問題について暫らく考察をして見たいと存じます。戰後統制経済体制から逐次統制が撤廃され、今はまさに自由競争の時代であります。この間にあつて企業は如何なる状態にあるか。競争に勝利を占めて、その繁栄をもたらすためには運用資本の増大向上、店舗の施設改善、生活、販売技術の優位性の保持高揚、宣伝等に力を注がなければならないのであります。資本の蓄積が喫緊不可欠の至上の命題であります。かかる状態にある企業に対し、資本の蓄積を阻害する重税が課せらたるならば、企業は脱税をするか、又は滯納するか二者択一の立場に追込まれることになる。そのいずれかの途を選ばなければ、倒産没落は必至であるからであります。特に戰争により資本の大半を消耗した我が国の企業において、極めてはつきりと認められるところであります。従つて所得税法人税については真劍に考えなければならず、先般の法人税率の四二%への引上げは企業に取つて、又税務行政上に取つて由々しい大問題であります。大資本を有する法人に取つては価格変動準備金の創設、退職給與準備金の損金算入、特別減価償却等の措置によつて税率引上げもカバーせられると認められるのでありますが、その制度の恩典に浴しない中小法人においては、税率の二割引上げという企業に取つての惡影響をそのままこうむるだけであります。従つて先ほど申上げましたように、これらの中小法人は脱税か滯納かのいずれかの道を選ぶことになるのでありましよう。我が国の会社企業は先進国のそれと全く異り、戰後所得税の過重負担からの逃避策として設立されたものが多く、いささか古い統計でありますが、昭和二十六年三月末日の総数二十三万九千法人のうち、運用資金百万円以下のものが二十万四千を占め、その比率は八五%を示している状態であります。このような観点に立つとき、税率引上げの問題は国民経済の運行について、なお又税務行政の運営に重圧となつて来ることは必至であります。  以上、所得税及び法人税について実質負担の軽減の必要性について申述べたのでありますが、特に金融問題その他経営政策上、自由競争に必要でありながらも、その手段を持たない中小企業にとつては、その実現が一層要望されるところであります。我が国国民経済の構造を概観すれば直ちに看取されるところであり、中小企業がその大部分を占めており、それの対策が政治的に、経済的に又社会的に極めて重要であることはしばしば論ぜられるところでありますが、租税政策においてもこの問題を真劍に取上げて頂きたいと思うのであります。中小企業が自由競争に敗れて没落して行くことの原因が租税負担にあるような事例が生じたとするならば、租税政策が不公正のそしりを免れないばかりでなく、社会的影響は測り知れないものがあります。若しも納税者が重税によつて倒産したとするならば、その心理は如何なる変化を辿ることか、又その徴税に当る税務職員は何と考えるか、思うだに憂慮に堪えないところであります。国費の増大を理由にして、減税が行い得ないならば、国民生活に不急不要の経費を減額することこそが民主政治の要諦であります。又国富が小であるとか、国民経済が弱小であるから零細所得まで課税するのだとの見解を持する向きには、国民経済の繁栄のための諸外国との経済交流の方法について研究を進めて頂くよう御進言願いたいと存じます。又直接税の抵抗が強いからして、徴税方法の容易な間接税に移行すべしとする議論がありますが、全面的に反対であります。租税には御承知のように、所得と能力に態じて負担すること、即ち応能課税の原則が貫かれなければならないと存じます。間接税の増徴は、財政学者の教えるところの所得に対する逆進率を高める作用をなし、社会的不正義を増大するばかりでなく、徴税技術上も極めて困難を伴うことになります。物品税の現状が雄弁にこれを物語つておりますが、租税の転嫁が行われず、納税義務者をして不正行為を余儀なくさせるばかりであります。どうか皆様におかれても租税負担の軽減を中心とする税法の合理的改正のために絶大なる御盡力を重ねてお願い申上げます。  次に税務行政の現状について申上げたいと存じます。私ども税務職員は、第一に公平であること、第二に親切であること、第三に能率的であることをモツトーとしておりますが、現状はかくあることを許さないような態勢になつているのであります。私どもが課税の公平を企図する場合、先刻も申上げましたように、所得税法人税物品税等の納税者負担過重のために脱税か、滯納か、いずれかの道を歩まなければならないのが現状でありますから、税金が高くなればなるほど事務量が厖大化する、これに対して人員の過少という現実であります。調査検査事務、徴收事務、滯納整理事務の厖大な量と人員のアンバランスのため到底課税の公平は期し得られないのが実情であります。定員法改正による人員整理は、税務行政の混乱を顧みない人々の暴挙でなくて何でありましようか。最近又行政機構改革に名を借りて人員整理が計画されている模様でありますが、それこそ不公平を更に助長し、社会的不正義を増大する結果となりますから、この点について深甚なる御注意を喚起したいと存じます。次に、私どもが親切な税務行政をモツトーにいたしておりますが、納税者のかたがたに御満足を頂けないのは何に原因するのでありましようか。根本的には高い税金を拂う納税者から見れば、税務職員は惡人に見える。甚しきに至つて税金が高いのは税務職員の仕業だと考えている。税金の高い責任は国会が負うべきものでありますが、あたかも私どもの責任であるかのように誤認されている。これは私どもの最大の精神的苦痛であります。現在の職員の大多数は退職、転向を考えております、生涯を捧げるには余りも劣惡な処遇であります。給與では生活できず、住宅問題に苦しみ、老後の生活の安定もなく、いわんや子弟の十分な教育など思いも及ばない、職場においては、いつどこに転勤させられるかも知れない、身分の保障のない私ども下級の職員、社会の非難を直接身に受けるのも私ども下級の職員であります。このように物心両面の苦難に身を委ね、将来に希望のない、むしろ不安定な境遇にある私どもに公僕精神に徹せよ、親切であれと命令せられましても、神でない、仙人でない私どもが如何なる考えに打沈んで行くかはよくおわかり願えると思います。優秀は相次いで職場を離脱して行く。税務行政はどうなつて行くのでしようか。第三の、能率的な事務組織と運営について考えたいのでありますが、現状は施設の不完全、什器、備品、事務用品の不備、出張しようとしても旅費の予算がない。すべては明治時代から引続いている極めて非近代的な態勢であります。経済界、一般社会から取残されている古臭いシステムでどうして新らしい時代に即応した能率的な運営がなされましようか。要するに税務行政が公平で、親切で、能率的であるためには、一として国民租税負担の軽減、二として所要人員の確保、三といたしまして生活の保障、四といたしまして住宅問題の解決、五といたしまして身分の保障、六といたしまして老後生活の安定、七といたしまして庁舎その他施設の改善、八といたしまして什器、備品の完備、九といたしまして旅費予算等、徴税費の大幅増額等の諸問題を解決して頂かなければならないのであります。委員、皆様の御盡力を切望いたす次第であります。  以上、税法改正に対する意見と税務行政の改善について申上げたのでありますが、最後に「納税者には喜んで納められる税法を、税務職員には安心して仕事のできる態勢を」を作つて頂きたいことを重ねてお願い申上げまして、私の公述を終りたいと存ずるものであります。
  104. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) 御質問を願います。
  105. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 只今の税務行政の問題について、いろいろ第一線に今働いておられるかたがたの非常に苦心されておる実情についてお伺いしたのでありますが、この問題については、前から我々も非常に関心を持ち、前に川上さんが参議院におられる頃は、その第一線の声がよく反映されておつたのであります。併しその後川上さんもここから去られ、その後又いわゆる減税とか何とか、税制改革が行われて、その結果、税務職員も少くてよろしいと、課税対象が少くなつたから税務職員も少くていいと、こういうようなことが言われて、そうして税務行政の第一線における人たちの、今伺つたような問題は、そう深刻な問題になつていないのじやないかと我々も考えておつたのです。ところが只今のお話を伺いますと、依然としてこの問題は解消されていないと。そこで最近ではややもすると、税制改革の結果、納税対象人員が少くなつたから税務職員も少くてよろしいのだと、こういうような一般の考え方があると思うのですよ。それで、今のお話では、まだこの問題は解決されておりませんので、対策として所要人員、第一線の税務官吏の所要人員をどの程度に殖やしたら合理的であるか。それから徴税費もどの程度に殖やしたら、国際的なまあ慣例なんかあると思うのです、アメリカとかイギリスとか、その他と比べて、予算の何%くらい、税收の何%くらいがいいのか、それに対してどの程度現在の徴税費というものが不足しているか、そういうようなことと、それから外国における滯納件数、こういうものを若しか資料でもございましたら伺いたいのです。これは非常に先ほどの公述は参考になつたのですが、政府は一概に外国の国民所得税率ばかり比較して滯納件数、こういうものの比較を今までやらなかつた。我々も今後そういう税金が重いか軽いかという比較をする場合に、この点は非常に重要だと思いますので、諸外国のそういう滯納、差押え、こういうような実例がわかりましたら伺いたいのですが。
  106. 齊藤甚助

    公述人齊藤甚助君) 前段の問題でございまするが、今の現在の人員では少い。然らばどのくらいの人員があつたならば我々の職場が完全に保たれ、且つ国民の公僕としてその使命が達せられるかということでありますが、勿論これは程度問題があるわけであります。先般行政整理、改正のときも我々の人員は全定員であるところの六万一千二百名はどうしても確保してもらいたい、あの当時でさえも人員が足りなくて起動をし、或いは過重労働をし、あまつさえ非常に同僚が病床に倒れて行く。而も他官庁に比べてその病欠者が、その数の類例を見ないような、こういうふうな逆境にあり、更にはアルバイトを年通算五千名も採用していた事実等から考えて見て、実際現行政整理、職場の実態を解せぬ行政整理などとは、誠に笑止千万であるとして、先般国会にお願いをしてようようにして国民の支持の下に、千百名の復活を見たわけでありますが、九千一百八十名が整理の対象になつたわけであります。併しながら、この問題は、法律が認められたので、我々としても涙を呑んでこれを認めざるを得ないわけであります。勿論法治国であります以上、我々は秩序と共にこれを受けなければならんと、こういうことになるわけでありますが、少くとも前回の六万一千二百名は是非とも、税法等の改正等には、自然、納税人員も少くなるから、少くせよということでありますが、六万一千二百名だけは是非とも我々は現在確保して行きたい、このように考えております。なお、あまつさえこれに加えまして、今度行政整理されましたその職員の中には、最も優秀な、而も一生税務署に暮そうと思つてつた人が、生活に破れて職場を去つて行くという現況であります。このような実情を考えるというと、誠に我々は由々しい問題であり、且つ、本問題打開のために是非とも御理解を願いたいと、かように思うものであります。  なお徴税費の問題でございますが、これは二十六年度に対しまして、二十七年度は十億が少くなつたわけであります。勿論国家には台所があると同時に、我々も又国家の歳入のみならず、歳出というものを当然考えなければなら凄い問題でありますが、これもやはり少くても、前回同様に十億だけはこれにプラスをしてもらいたいと考えておるのであります。勿論この問題について決して事足れりとするものではなくして、勿論我々の職場の事情から、完全に事務を遂行するには、まだ現在の状態では徴税費が足りないということを考えるわけであります。即ち二十六年度百四十一億四千四百万円に対しまして、二十七年度が十億減らされた百三十二億二千五百万円でありますが、二十六年度でさえも超過勤務或いは旅費等の不拂いが相当あるわけです。勿論旅費は余りありませんが、いわゆる義務出張というような形態になつております。超勤につきましては、実績に対する三分の一、場合によりますというと、半分ぐらいであつたというような実情がございますわけです。従つてなお十億プラスしても又前回のような不合理が生ずるわけでありますが、おのずから国家財政という見地から考えて、我々も又この講和後におけるところの幾多の問題を背負つて考えるならば、或る程度までは考えはなければならないと、こういうように考えつつ、少くとも前年の十億減らされたこの節減された十億は、是非とも最小限度プラスをして頂きたい、このように考えるわけであります。なお又第三点は、ちよつと木村先生何だつたでしようか。
  107. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 外国の滯納とか差押えとか。
  108. 齊藤甚助

    公述人齊藤甚助君) 第三点の外国の滯納でありますが、余り滯納はない、ないというようなことから、先般調査をいたしましたのでありますが、集計がしてありませんので、持参して参つておりませんから、後刻提出をしたいと、かように考えておりますので、御了承を願いたい、かように思います。
  109. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 もう二点ばかり伺いたいのですが、本年度の課税の何といいますか、割増課税といいますかね、前年度を百として本年度百五十、五〇%、五割増の線でまあきめたと、こういうふうに言われておるのですね。この問題は一応前から随分問題になつているので、一応政府は割当課税はやらん、やらんと言つておるのですが、実際聞くとやつておると、実際にはそういうふうな、一応前年度を百として、本年度五割増と、こういうような形でしよつちゆうやるわけですが、これはもう大蔵大臣あたりに聞くと、やつてない、やつてないと言うのですね、割当とかそういことはないんだと。それで殊に私は二十七年度非常に大きな問題になると思うのです。それは政府の国民所得の見積りが、これはまあ予算規模とこの割合ですね、これが昭和二十六年度と大体同じぐらいにするために、大体一七%程度にするために、相当工作してあるのですよ。それで五兆三百四十億であつたのを、今度五兆二百七十億にしましたが、併しそれも二十七年度の景気を見ますと、そんなに殖えそうもないんです。けれども安定本部の調査によると、むしろ二十七年度の法人なんかは所得が減るんです。ところが、税のほうを見ると、又非常に法人は税が多くなることになつているのです。これは税率改正もあると思うのですけれども、それで政府の見積り国民所得と実際の国民所得とは違うんだと思うのです。その見積り国民所得をまあ水増しというんですか、これを基礎にして割当課税をするということは、これはもう二十七年度は相当、さつきおつしやつたように、申告納税はこれは本当に今でも限界に来ているので、今よりも更に徴税困難になつて来ると思うのです。この点で割当課税の問題ですね、これは第一線にいられるかたがたはどういうふうにお考えか、この実状を一つ伺いたいのです。
  110. 齊藤甚助

    公述人齊藤甚助君) お答えいたします。今の割当課税の問題或いは割当課税があるのではないかという問題は、たまたま我々のよく聞くところでございまして、誠に遺憾だと考えておるわけでございます。なお今のいわゆる五割増の件がどうかという問題につきましては、フアイナンスの一月号だつたか、記載しておると思うのでありますが、東京、関信、仙台、金沢、熊本、大阪、名古屋ですか、七国税局で調査をいたしまして、大体調査件数が五十二件のように見ておりまするのですが、その五十二件、平均三十五万程度の業者でありますが、これを各局ごとに調査をしたところが、昨年より五割五分増であるというようなことから、総体を見て相当上昇しておるのではないかというふうなことから五割増という説が出たのではないかと思うのでありますが、なお又各職場においてもそのような話を我々は耳にいたします。併しながららただその五割をどうしても増額をしなければならないという拘束力はないのではないかと、かように考えておるわけでありますが、非常に我々といたしましてもこのようなことであつてはならず、飽くまでも嚴正に而も法律を忠実に、そして国民の公僕としてその税制を運用して行かなければならない、かく痛感しつつこれをひたすら実施いたす考えでおるのでありますが、何しろ結果的に見ますと非常に人員が少い等の問題から完全な調査ができなかつたということは言えるのではないかと思うわけであります。従つてそのような誤解等も生んでいるのではないかと思うのでありますが、そのような問題につきましては、当然割増であつてはならず、ない者から取るという考え方であつてはならず、国民納税の義務があると同時に、又権利を主張することも当然国民として與えられた権利でありまするので、異議の申立は堂々と主張されることによつて誤りは是正して行かなければならないと、このように我々は考えておるわけでございます。
  111. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これは非常に重要な問題ですからね、第一線におられるかたがたは特にこの点についてはしつかりした態度をとつて臨んで頂きたいのです。それは政府の上のほうから、恐らく私はそういう形で来ると思うのです。いつもそうです。もう何回もこれは問題になつておるんですね。そこで実際減税々々と言つているけれども、商店なんかでこれをどれだけかけようというときに、頭に今度は五割増ということがありますと、本当に実際は調べないで更正決定をしたりなんかしておるんですね。この点はどうかこういう労働組合のかたがたは十分こういう面では、特に又組合としても公正にやることについては意義があることだと思うのですから、是非そういう飽くまでも税法に忠実に実情に応じた徴税をやるという意味で、若しそういう割当的なことが来ましたら、それはもう排除して頂きたいと思うのです。恐らく上から来るよりほかないのですから、そういう場合には我々も国会でも勿論問題にいたしますが、どうも今度は私は税に無理があると思うのです。でありますから、きつとそういう形で来る。景気が惡くなつて来るのです。ところが政府の予定している税收は相当多く予定しているのですから、税率は、所得税は下げても実質的には税金としては多いのです。法人税なんかは特に無理が来ると思うのです。そういう点で一つ十分御努力願いたい。御努力といつて、別に正しいことをやるのであつて割当課税をこの際一つ排除して頂きたい、我々もそういう点は無論努力しなければなりません。それから第二に青色申告の問題でありますが、青色申告についてはいろいろ恩典を與えるとか何とか奨励の策をとつておりますが、実情はいわゆる実地に調査して見なければこれはわからん問題だと思うのです。従つて実際には、更正決定なんかは白色申告と言つてはおかしいのですが、青色申告したと同じような決定をされておると思うのです。天降り的に決定されている。従つてそうすれば明かに税法違反に私はなると思うのですから、この点は青色申告した人に対してはこれは実情を調査してやらなければいけないのですから、青色申告をしない人と同じような形で更正決定をするということは誤りだと思う。この点は最近の実情はどうなつておりますか、又多少の特典を與えても、実際においてはしない人と同じように更正決定されるのでは、これは青色申告を幾ら奨励したつて私は発達しないと思うのです。その点について御意見を伺いたい。
  112. 齊藤甚助

    公述人齊藤甚助君) 青色申告を認められても、政府が勝手に決定をするということがあるとすれば、私の記憶する範囲内では違法行為ではなかろうかと考えるわけでありますが、それは若しあるとすれば誠に遺憾なことであり、堂々と法律の下に従つて税務署と交渉して頂くなりして頂きたいと、かように思つておるわけであります。従いまして勿論税務署で調査いたしまして、その権威を認めた以上は、同時にその事実を確認いたしますれば、やはりそれを認めなければならないと考えておるわけであります。そのように思いますので、今の青色申告が認められて税務署の調査なくして更正決定をされるということはあり得ないと考えておるわけであります。以上でよろしうございますか。
  113. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 実際問題として、そういう調査というのはできるのですか。
  114. 齊藤甚助

    公述人齊藤甚助君) それとも木村先生が青色申告というのじやなくて……、申告納税制度の建前に立つて申告をしたものに対して、本人が申告をするわけでありますが、その申告をしたにもかかわらず、それを認めないで税務署が参りまして決定する、いわゆる税務署で決定している、こういうのではないのですか。
  115. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私は青色申告のことを言つているのです。
  116. 齊藤甚助

    公述人齊藤甚助君) 青色申告のことですか。それならば当然それでなければいけないと思います。従つてどこまでも青色申告は正しいと認めて、且つ正しいものはやはり育成保護しなければならない、このように考えますので、若しも正しいものを守るという観点に立つて、正しい犠牲の中に不正直者が育成されるというような反対な現象ができるとすれば、これは税務行政の円満なる運営の上に誠に癌となりますので、このような問題がありますれば、我々職員といたしましても明るい職場、明朗なる税務行政の進出のために強く立上りつつ、本問題の是正に向つて進んで行きたいと思うわけであります。
  117. 森八三一

    ○森八三一君 今木村委員の割増課税というのですか、割当課税と言いますか、そういうことに関連する問題でありますが、そういうような事実がないんだ、又そういうことがあれば当然納税者としては異議の申立てもできるのだから、法的にそういう措置をとらるべきであるというような御説明であつたのでありまするが、もう少し私は実際の実務をおやりになつておる職員の立場からお聞きしたいと思うのでありますが、まあ農村の課税の事例で申上げますと、水田は一反歩はどの程度の所得であるか、畑はどうだとか果樹園はどうだとか、或いは家畜はどうだとかいうような基準を一応その県なりその郡なりの、それぞれの農業関係の機関なり役場等と相談して一応標準がきまり、その標準に当てはめてそれぞれの課税と申しまするか、農家におけるそれぞれの経営規模にその基準を当てはめますれば、算術的に納税額は出て来るということになるのであります。そういうように、きちんと子供でも計算ができるように大体の基準がきめられておる。併しその基準というものは広く公表はされておらない。そこでです、今年の実例になりますが、農家に対してお前の家の所得幾らだ、だから結論的には納税額は幾らになるというような通知があつた。そこで今申上げました基準に当てはめて計算すると、所得が数万円水増しをされておるというような事実になりまするために、税務署に行つて税務署のほうへ、私の家の所得の査定は間違つておりませんかという質問をいたしますると、間違つておらん、どういう計算でやつたのか、税務署のほうには間違いがないというお話があるので、それでは税務署はどういう基準で一体そういう結論を出されたのか、それをお示し願いたいというと、僕のほうのやつは見せるわけに行かん、お前のほうは違うというなら一体どういう計算でやつたのだ、そこで持参をした書類を出しまして、私のほうはこういう基礎に基いて、自分の家の経営規模はこうだから、結論がこうなりますと言つて書面を出しますと、お前のほうの計算が正しいのだと言つて是認をされておるという事実が、これは実に枚挙にいとまがないのであります。ところがそういう計算ができて行けるような智能のある息子でもあるとか、主人公がしつかりしておれば問題はありませんが、そういう計算ができんとか、忙しい零細農家のことでありますので、やれん人は、まだ基準も公表されておらないことでありますので、承知をしておらん人は、結局言われるがままに納税をしておるという事実があるのじやないか、こら私は最近における数個の具体的な事例から考えておるのでありますが、そこでです、お伺いいたしたいことは、木村先生もおつしやつたように、上のほうから来ておるということをそのまま受けて、実際の行動としては、そういうような割増課税というか、水増し所得の計算というか、ということが実際には行われておるのではないかということを最近しみじみ感じておるわけでありますが、そういうことをもう少し本当のところを一つおつしやつて頂けないでしようか。若しないとおつしやるならば、私は具体的な事例を持つておるから、どこの税務署の管内で何件こういうものがあつた、而もです、一反歩当りとか鶏一羽についての所得基礎数字というものが一応確定しておる。それに当てはめてやると違つておるという事例があるという具体的な事例を持つておるのです。もう少し詳細に……。
  118. 齊藤甚助

    公述人齊藤甚助君) 私が持つておるものがどうも隠くなしておるように思われ、私も非常に遺憾だと思うのでありますが、ただ帳簿がないので、相手かたが帳簿がないので、然らばそのない人にはどのような課税をするかと申しますれば、これはやはり負担の公平というような見地から立ちまして、やはり推定計算ということが言われるのじやないかと思うのであります。若しその推定計算と本人の計算と対照して本人が正しければ正しいのをとるのが当然の理であろうと思うのであります。本年におきまして、こういうことを聞いておるわけであります。昨年はややもするというと納得でなければならないというので納得々々ということが叫けばれておる。この申告納税制度を強調されたために、或いは非常にまあ取引的な課税をしたのではないかというような誤解があり、又そういうようなことが或いはあつたのかも知れませんのでありまするが、そのような問題は、本陣は是非とも是正して行かなければならない。本年に関しましてはこの二月の末日の確定申告には、今までの方法よりか税務署は相当強硬であつた、その強硬というのは税務署で正しい調査というものは正しい申告の慫慂であり、指導でなければならない、こう考えて、むしろ今までの妥協的な、妥協課税、適正課税でありません、適正課税でないいわゆる法に基かないところの妥協課税に陷り、誤解を招くというようなところから、正しい課税というものは正しい申告指導でなければならない、こういう観点に立つて相当強硬であつたというようなことを聞いておるわけであります。従つてそういうことがら或いは今申されましたように、調査の過程において、君の税務署ではちやんと調査しているあれがあるのだ、伏線があるのだ、だから税務署はこのような決定をする、併しあなたが若しも正確に記載した帳簿があるならばお出し下さい。ところが、出して見たところが比較対照して見たら、どうも役所のほうが誤りだつた、こういうようなことによつて税務署が割当をしておるのだというような考えは当らないのではないかと思うわけでありますが、勿論税務署が飽くまでもこれは全体に対するところの理想調査、これが完全にできましたならば、或いは又業者自体が完全なる帳簿がありますれば、その帳簿に基いて調査をすれば、よりよい正しいものができ上ると考えるのであります。このようなものがやはりないので、勢い推定に基いた課税ということも行われるわけであります。そういうことによつて割当であるとかいうような問題が起るのではないかと思うのでありますが、若しこういう事実があるというようなことがございますれば、是非とも我々といたしましても非常に苦労しておるわけであります。この苦労を皆さんに喜んで頂かなければならない。殊に税務署がいわゆる青色申告に対して善導しなければならない、こういうような点に鑑みまして、先般のときも我々が話しましたように健全なる営業には健全なる経理を前提としなければならない。即ち税務署のために帳簿をつけるというような考え方ではなくて、本当にお互いが経済観念に徹したときに初めて国民も富める、同時に国家も富める、こういうことが言えるのではないかと思うわけでありまして、とかく税務という問題になると非常に重要な関心事を持つておるわけでありますが、遺憾ながらその納めるときにのみ考えられて、その日常税務に対する考え方に対しては極めて浮薄な考え方が非常に強いのではないか、こういうことにも考えられるわけであります。我々も皆さんと共に国会を通して正しい課税をやつて行きたい、そうして皆さんに喜んで頂きたい、このように思いますので、大いに誤りは是正して参りたい、かように思いますので、今後とも御鞭撻を願いたいと、かようにお願いするわけであります。
  119. 森八三一

    ○森八三一君 これは今日ここで議論をするとか質問をする問題ではないと思いますので、改めた機会に大蔵当局に十分質問したいと思いますが、今私の申上げましたことはですね、これはもう具体的な事例なんで、もう一遍申上げますが、水田は一反歩所得幾ら、鶏は一羽について幾らだという基準をその県の農業委員会なり農業協同組合の幹部と相談をして、税務署別にちやんときめてしまう、そうすると個人々々の農業経営機構というものは形があるのですから、鶏は何羽、牛は何頭、畑は何反歩、それに基準をかけてしまえば誰がやつてもすぐ計算ができるのです。できるから農民もそういう計算をする。ところが税務署のほうから来た所得総額はそういうことで計算をしたものと比べて見ると相当額大きい。そこで税務署へ行つて、税務署の御計算は違やしませんかといつてお伺いをすれば、おれのほうは違つておらん。で、私の計算では違います「税務署はどういう計算で御計算になりましたか一つ内容を知らして頂きたいというと、そこまでは見せるわけに行かん、お前が違うというやつを見せろ、それで差出しをする。私の聞いておる事例では十人が十人お前の計算でよろしいといつて、税務署のほうが多いということについて説明がないというのです。若し税務署の調査が正しい、信念があればお前の家では鶏が何羽多いじやないか、お前の家の耕作反別が、何反歩お前のほうは減しておるじやないかといつて御指摘があればいいのです。ところがそういう経営規模というものは税務署のほうの台帳も農民のほうも知つておるのできちんと合つておる。そうして以て基準がきまつてつて計算的に出て来る、非常に数字が多く出ると文句を言う。そうするとお前のほうの計算でよろしいといつて一〇〇%持つてつたやつが通つておるという事例を今月になつてから数件聞いておるのです。そこで私は、只今木村委員のおつしやるように、何らか割増しとか、見立てでも何でもないのです、單位当りの基礎所得金額というものがきまつてつてあとは経営規模を掛け合せれば答はすぐに出て来るのです。そこで税務署のほうでその掛け合せる計算の間違いがあつたからお前のほうが正しいのだという御回答があるとか、お前のほうの基礎が鶏の羽数が違つておるとか、牛の預数が違つておるからという御説明があれば、それは私の家の鶏はいつ幾日減りましたからこうなつておるという説明が、或いは農民のほうが嘘を言つておるという具体的なことがはつきりする。そういう説明は何にもないのに、持つてつた書類はこれでよろしい、お前のほうの計算でいいというわけで何万円かの所得がすぐに減つてしまう。そういう事例が枚挙にいとまがないほどあります。そこで上のほうから何か指令があつて、これだけは取らなければいかんということが起きておるのではないかという心配を私は持つております。これは大蔵省当局に別の機会にお伺いいたしたいと思いますが、今公述を願つたようなお気持で、本当に熱心にやつて頂いておるということは感謝いたしますが、そういうようなことについて十分一つ注意をしてやつて頂きたいという希望を申上げまして今日の……、答弁はして頂かないでもよろしうございます。
  120. 齊藤甚助

    公述人齊藤甚助君) ちよつとお答え、お答えというよりもちよつと申上げておきたいと思うのですが、ただもう調査の方法といたしまして、一つの科学的なその方法といたしまして、或いは鶏とか或いは課税物件の対象というものは、いろいろ調査の対象になるわけでございますが、非常に一応は、一面科学的であるが、実情にそぐわない非科学的のところが相当あるように考えております。例えば鶏一羽でも、一律同等に全部同じかということに対しては、私内容によつて非常に違うと思います。従つて一応の目安としては、標準率が違つておると思います。併し個々の実態條件に即して行かなければならないというのが税務署の課税に與えられた……むしろ税務署は税金を取るというのではなくて、公正な調査をするのが税務署の使命であり、本分でないかと、こういうふうに考えておるわけであります。従つて若しもそのようなことがあれば、我々としても直ちに是正して行かなければならないこと、こういうふうに考えておるわけでありまして、なお又そのようなことがたくさんございますれば、常に我々も意見をお聞きし、そうして皆さんに喜ばれて行きたい、こういうふうに考えております。ただ問題はそういうことによりますところの、やはり人員が少いということがあるのじやないかと思います。例えば一人々々が本当に正確な帳簿をつけて、わざわざ税務署までおいでにならなくても、自分のその帳簿を一つ一つ調べて、そうして本当に完全な理想的な調査をして、喜んで税金を納めて頂く、こういうことも言えるわけであります、こういうことは一応完全に、十人が十人全体を一律に調査するということは極めて今後としても、理想的ではあるが、できがたいという問題でありますが、併し最小限度、少くとも実除の調査というものは三割以上はどうしてもやらなければならないのじやないか、こういうことが言えるわけであります。結局今のような問題も、一応の標準率、目安というようなことを以て、簡單に調査をし、簡單税金を算出するというような、非常に誤つた、姑息的な考え方がそのようなことに出て参りますので、そのようなことはやはり避けて、飽くまでも理想的な調査に基いて実情に即したところの調査でなければならない、こういうふうに考えておるわけであります。どうしてもこういう問題の解決の焦点となる人員の増であるとか、或いは徴税費の多額のと言いますか、前年度と同様なことぐらいは是非我々は確保してそうして皆様のために万全の措置を講じて行きたい。なお参考に申上げますが、広島国税局の中で可部町税務署とそれから海田市の税務署、先般三月一日の共産党の襲撃を受けまして、百名の、まあ税務職員は七十四名だと思いました、そのうち四十二名が、やはりこれは新聞に出ましたように催涙彈と申しますか、あれを投げつけられまして、四十二名が急性胸膜炎を起すなどして、その病状が一週間乃至二週間の重傷を負つたという事実もございますわけです。こういうような問題もからみ合せてお考え願つて、我々は最後までとにかく国民の公僕として、むしろ公務員法上においては忠実の義務があるわけですが、誤つた問題に対しては我々自体が局主的に慎重に運営して行かなければならない。深く考えつつ、且つ皆さんの御盡力に常に応えて行きたい、かように思つておりますので、今後とも御鞭撻を願いたい。且つ又我々も率直に国会を通して我々の正しい姿を現わして行きたい、かように考えておるわけであります。よろしくお願いいたします。
  121. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) 非常に参考になる公述を伺いまして、有難うございました。  それでは本日は委員会はこれを以て閉じます。    午後三時五十八分散会