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1952-07-05 第13回国会 参議院 水産委員会 第47号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年七月五日(土曜日)    午前十時十九分開会   —————————————   委員の異動 七月四日委員小串清一君及び入交太藏 君辞任につき、その補欠として青山正 一君及び玉柳實君を議長において指名 した。   —————————————  出席者は左の通り。    理事            松浦 清一君            千田  正君    委員            秋山俊一郎君            小滝  彬君            藤野 繁雄君   事務局側    常任委員会専門    員       岡  尊信君    常任委員会専門    員       林  達磨君   参考人    工 学 博 士 柴田 三郎君    国立公衆衛生院    衛生工学部長理    学博士     洞沢  勇君    東京水産大学教    授       稲葉伝三郎君    東京大学教授農    学博士     末広 恭雄君    東京工業大学資    源化学研究所文    部教官     小島 良夫君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○水産物増産対策に関する調査の件  (水質汚濁防止対策に関する件) ○議員派遣要求の件   —————————————
  2. 千田正

    理事千田正君) 只今より委員会を開会いたします。本日は公報でお知らせ申上げました通り水質汚濁防止対策に関する件につきまして特に各界の権威者かたがた参考人としておいでを願いまして、各参考人からの御意見伺つて今後の水産委員会が、現在各地に起きているところの、この水質汚濁のために水産業界に及ぼすいろいろな問題が各地から輿論として起きて来ておりますので、その調査に先立ちまして、各権威者お話を承わつて委員の御参考に資して頂きたいと、こういう趣旨の下に本日は非常にお忙しいところを学界並びに各研究方面権威者のかたにおいでを願つたわけであります。御紹介申上げますが、向つて右のほうから御紹介申上げます。工学博士柴田三郎氏、柴田氏は経済安定本部の中にありましたところの資源調査会におきまして永らくの間水質汚濁に関する問題を研究されておるところの権威者であり、且つこれの法文化に関しましても従来非常なお骨折を願つておるかたであります。次は国立公衆衛生院衛生工学部長理学博士洞沢勇氏を御紹介申上げます。洞沢博士のほうは特に公衆衛生立場からこの問題を研究しておられますので、いろいろ後に各位から御質問願いたいと思います。次は東京水産大学教授稲葉伝三郎教授を御紹介申上げます。水産大学におきまして特に水産動植物に及ぼすところの水質汚濁に関する問題につきましてはいろいろ御研究になつておると思いますので、皆様の御参考に聞いて頂きたいと思います。次は東京大学教授農学博士末広恭雄氏でありまするが、御同様に水質汚濁の問題につきまして研究しておられますので、やはり我々の研究の目標としますところの水産動植物に関する問題につきましていろいろ御意見伺つて頂きたいと思います。次は東京工業大学資源化学研究所小島良夫文部教官を御紹介申上げます。小島教官も同じく水質汚濁に関する問題につきまして水産動植物或いは各方面に亙る御研究をなさつておられますので、皆様からいろいろ御質疑を願いたいと思います。最初柴田三郎氏から、いろいろ御研究になつておると思いまするが、時間も余りありませんので、その点御考慮願いまして、重点的に水質汚濁防止に関する問題につきましてのお話を承わりたいと思います。
  3. 柴田三郎

    参考人柴田三郎君) この問題は非常に各方面に亙るので、今お話通り、時間もたくさんかかりますから、先ほどの挨拶の御趣旨に副うような点だけを申上げたいと思います。各方面において昨今漁業問題で工場に対して工業廃水処理してもらいたい、それでなければ賠償金をもらいたいという問題が各所にたくさん起つているのですが、その場合に私はその調停者になるのですが、非常にやりにくいのは、結局は何ら法令的なものはないということが一つ、最近の一つの例を挙げてみましても、或る川がありまして、そうしてその川の上のほうに鉱山があつて鉱山廃水を出すのです。ですけれども、そこではちよつとした処理方法を作つているのです。それは何によつて作つているかというと、鉱山保安法というのがあるのです。それでそれが命ずるところの簡単な処理をやつております。ですけれども、それによつて一つも水はきれいになつていない。川水が魚が棲めるようになつていないのです。そこへ漁民が押しかけて行くと、それは鉱山保安法によつてつているのだから、ちやんと法律化されているのだ、こう言つてしまうので、漁民は取りつくしまがないのです。それで下のほうの海の出口のところに或る化学工業があるのですが、その工場廃水に関しては何にも法律がないのです。そういうようなものですから、何ら設備もしてない。ですから、漁民はそこへ行つて何とかしてもらいたい、こう申すのですが、その場合にその工場はどのような処理をしていいかわからないのです。どんな法律もないし、昔は内務省の工場課かなんかがあつて戦争前の話ですが、それには工員の安全のために廃水を或る程度よく処理するようにという条文があつたのです。それでやはり工場法によつてこのほうの処理をしていますからと言うことができたのですが、今ではそれがなくなつてしまつたらしいので、何にもないので、何にも処置をしていない。専門家でないので、廃水処理方法工場は知らないものですから、どうやつていいかわからないから、出し放しにしている。そうして漁民が行つて何とかしてもらいたい、この水を見てみればわかるじやないか、文句は言えない。漁民のほうも尤もな話なんです。ところが工場のほうとしてもどのような処理をしていいのか、金をかけて飲めるような水にするのがいいのか、上から流れて来る鉱山の水と同じくらいの水にすればいいのか、どうもそれもわからないから、非常に困つているのです。そういう場合に何か工場法か何か、又水質汚濁防止法はそれを目的にして作つたのですが、それでいいと思うのです。鉱山保安法というものがあつてもかなりの程度漁民には迷惑をかけているんですが、余りよくない処理をしていてもそれが認められているもんですから、漁民のほうは成るほどそうかと思つて、下のほうの水はそんなに汚くないのに下のほうにだけ文句を言つて来るということになるので、それは公正を旨にする立場から見ると甚だ不公平で、下の工場鉱山ほど汚くないのですから、処理しなくて出したつて鉱山と同じ責任はないのですが、漁民は下のほうにばかり賠償金を持つて行くということも起りがちなのです。そういう場合甚だ不公平なのは、保安法というのがあつて片方化学工場にはない。それから水産保護法というのがあつて、今後は漁民のほうでやかましく言うならば、水産保護法で以て行つて魚族に害があるからここのところに廃水を出さないでくれ、又とめることができると書いてあるから、とめてしまうということもできるだろうと私は思います。そうなると通産省がどつこい待つてくれということになるだろうし、甚だ困るので、やはり何としてもアメリカ英国のように何らかの水全体に亙る法律みたいなもの及び規約みたいなものがあつてくれれば大変助かるんじやないか、こう思うのです。甚だ不公平になりますから、いろいろな法律があつて鉱山鉱山だけを庇う法律があり、化学工業化学工業を庇うような法律が若し出たとすれば困る。又水産のほうでは漁民だけを庇うような法律が出たら困る。漁民の要求するだけの厳格な廃水処理をしたら、工業廃水処理のために工業があるようになつてしまつて工業をやらないほうがいい。一つ二つ日本で私が関係した小さな工場でありますが、今のところ生産をやめているところがあります。廃水処理費用が非常に高くつくので、その設備費がない。そういうことになるとこれはなかなか問題は複雑になるんじやないか。日本工業も必要でもあるし、農業水産も必要です。そのバランスをとるという以外に日本という国の将来は生きて行く途はないと私は思つておるんですが、そうなるとそれを裁く、みんな公平にそれを世話してやる何らかの水というものの法律があつたほうがいいんじやないか。なぜ法律があつたほうがいいかというと、水は誰の資源でなくて、人類全体の資源なんですから、人類全体が或る程度利用する権利もあるが、それを或る程度以上汚くしないという義務もあるのですから、そういうはつきりした公共のもので権利義務のあるものは或る程度規約なりスタンダードがあつて国家なり地方自治体が公平に万民が水を利用できるようにすべきでしよう。こんなことをしてやることが国家一つの責務でしよう。水というものは世界全体の水であり、どこからどこまでもつながつているものですから、世界全体の法律になるのが本当でしようが、それはなかなかむずかしい。そこで水利用公平化には法律が必要であろうと思つています。それで大体は私考えるのには、今のところは非常に工業のほうでは工場経営水質汚濁問題がからんでむずかしくなつて来ていますので、場所によつて漁民の反対が強くて県知事に持つて行く、県知事は公選になつたので、昔のように抑圧ばかりできないのですから漁民の言うことを聞かなければならない、県庁の前に毎日頑張つているので困るというので、工場に対して何らかやつてくれということになると、工場はどの程度処理したらいいかと県知事に開き直る、県ではエキスパートがいないので飲めるようにしてくれと言いますが、工業廃水は飲めるようにできないと思うのです。なぜかというと、日本全体の海や川の水が汚いのは第一の問題は八千万の下水だと思います。八千万の下水と言つたら大したものであつて、それに日本には年々工場ができるようですね、日本沿岸漁業がだんだん駄目になつて白魚が川でとれなくなつたことはどこでもあるのですが、それは結局八千万の下水による問題がなかなか重大なのである。アメリカあたりでは工業廃水より下水問題を非常に大きく取上げて一億五千万の人口のうち約八千万人ですか約五〇%近くが下水処理を完全にして後放流している。日本では大体全人口の四%しか下水処理をやつておりません。そこに工業廃水の問題が入るのですから問題がなかなか複雑なのですが、日本という国は又ちよつとアメリカと違うから私は下水処理というのはむずかしい思うのです。なぜかというと、アメリカでも英国でも大小便が下水に入りますから、そして海や川に捨てるのが習慣ですからどうしたつて処理しないそ駄目なんです。衛生的の立場から非常に水を惡くするので下水処理をどうしてもしなければならないというので処理が発達した。けれども下水ばかりを処理して工業廃水処理しなければきれいにはならないので、工業廃水を考えるなら米国のように法律ができてやらなければならないわけですが、日本というのは下水の中に便所が入るのはむしろ大都市に限られている位で、一般には農民が肥料として活用しているので、下水から来る病菌というものはアメリカ英国に比しては(比してはの話で害がないわけではないのですが)幾らか少いわけです。このように下水処理というものが遅れている。ところが一般工業廃水というものは色がついている、又下水よりも、さかなを害する毒物があるので甚だ水質汚濁責任が大きいのです。工場へは廃水を何とか処理してくれと頼んでいるのですが、私どもが田舎を歩いて見てみましても、川や海に沿つている町や市の下水汚濁さかなを殺していることも少くない。一つ二つ工場ばかりが水産業に惡いのではないのです。ですけれども日本全体として下水を完全にやるというと、一人当り一万円ぐらい金を出さなければならないでしよう。だから日本人口一人当り一万円出すということはなかなかできないので、結局は工業廃水資本家がやつているので幾らか金を出してやつてもらわなければならない。日本のやり方は合理的だと思います。ほんといつてアメリカのような下水処理をやれば公平なのです。農民漁民もお役人も下水を出すというのですから、下水処理して然る後に工業廃水処理すべきものだと思います。工場のほうが金を出しやすいので工場にやつてもらうというのはよくわかるのですが、ジャステイスの点からは下水処理しなければいけない。日本の国はその通り行かないので、余計なことを言うと怒られるかも知れないが、資本家に頼んで工場だけでも汚濁防止をしてもらわねばならないのです。汚濁が一でしたらその〇・五だけでも直して行こうということは甚だ意義があると思うのです、そう考えると余り漁民が苛酷なことを工場に要求するのは甚だ間違つている、かわいそうだと私は思うのです。例えば自分のところの下水も相当集まれば非常にさかなを害する物質になるのですが、それを何ら処理しないで工場の水を飲めるようにしてくれ、そうでなければさかなを殺すのだから賠償金を出してくれというのは私は甚だなさけないと思う。工場廃水をせめて自分のお勝手から出す下水ぐらいにしてくれというならわかるのです。ところがそうじやないので、下水の水を瓶に汲んでさかなを入れておいたところが死んでしまつたとかの甚だむずかしいことを言うのです。それは飲める水を瓶の中に入れておいても魚は窮屈ですかう間もなくまいつてしまうのですが、そういうことはおかまいなしに工場に問題を持込んでおる。従つて工場余り厖大費用がかかるのでやれないのです。ところがそれをよく話してあなたがたの鮮処理下水程度まで廃水処理して下さいと由出れば工場でもそのくらいの程度ならやるというのでだんだん実行されて来てこの一、二年大分大きな工場がやはり始めている。私が関係しましたものでも島根二つ三つ大きな一日五万立方米ぐらいの水を出す工場が非常によく廃水処理して、その出る水が川海水と混じたものべ魚族を入れても死なないぐらいよいよやつております。それは県がよく工業経済を考え処理方法を考えてやつているからですが、そうでないとすると県が惡口を言うだけならどのような方法をとつたらいいかと工場が県に聞いてもわからない、どこに行つて聞いたらいいかわからん、遂に投げてしまうことがあるのですが、それを教えてやらねばならない。教えてやるというのは研究機関がなければならないし、教えてやるところのスタッフがなければならないのですが、それが日本にはどこにもないのです。学校でも教えているところがない。そこで工業廃水処理工場としては何とかしてやりたいと考えるところが多いのですが、どんなふうな処理をして行つたらいいか、どの程度までやつたらいいかがわからないでいるのです、若しわかるなら実行するところが多いでしよう。例えば島根県の或るところで一億円かけて処理したのですが、それで問題は解消されているのですが漁民はそれでもなかなか満足しない。そこに飛魚が飛んで来たが寄らなかつたのです。そこで私は言つたのですが、あなたたち飛魚の心理はよくわかつているのですか。飛魚はそこに行くと漁民に殺されると思つたから逃げたのかも知れない、廃水のためだつたとはわからないじやないかと言つたのだけれども、こういう場合には甚だむずかしいのでそういう場合は科学者水質判断に頼る以外ありません。飛魚が下りないことまで廃水のせいにされては工場としては一億円もかけてきれいにしているのですから気の毒だと思うのです。それ以上きれいにせよとならば国家が補助しなければならない。そういう点に法律みたいな規約があれば廃水処理はこの程度まできれいにすればよろしい、この製鉄工場廃水はこの程度まできれいにしなければならないとわかつて都合がよいでしよう。工場は金をかけても問題がそれで解決するなら非常に安心していられるから金をかけることをしがちである。ところが廃水処理する、それでも害があると文句のみ言われた上で賠償金をとられるとなるなら、賠償金をだんだん値切つて出したほうがいいじやないかということになつていつまでたつて河海の浄化は行われません。賠償金はもらつて魚族は帰つて来ないので天然資源さかなが少くなるという有様になるから何か規約があつて廃水処理したほうがよいのじやないかと思うのです。  それからもう一つ非常に痛切に感じていることは地方では非常に工場誘致ということを盛んにやるのですが、いろいろな条件を附して材料を安く売るとかお金を貸すとか、よいことのみ言うのですが、一方その工場ができてしまうとその廃水水産物が困つてしまう。片つ方は県で誘致する、片つ方は誘致された工場廃水問題に悩みがあるのだから、結局はその県が水産が大事な県なのか、農業が大事な県なのか、それから工業をどうしても誘致しなければ生きて行けない県なのか考えなければならないと思う。折角漁港となつてさかながたくさんとれているところに工場をわざわざ持つて来なくてもよさそうなものだと思うのです。もつと考えてどこに工場を建てたらよいかと検討すべきでしよう。そういう点が一つも統率されていない。ただ工場が誘致されてあとから騒ぎが大きくなることが多いのです。ここは水産のための港として重要性を持つからここに汚水、例えばパルプ廃水とか製鉄廃水とかが出ることはまずいからそれら工場は別なところに作ろうとすればよい。これが統一されていないのです。日本の国はこんな狭い国なんでありますから国が工業水産による水利用を統一してもいいと思います。だから例えば大分なら大分宮崎なら宮崎のは漁業を大事にしようと規約するとよい。ところが北九州あたりは、もうすでに化成工業或いは製鉄業あたりで汚されてしまつて魚余り獲れないが、ここは工業地帯だから余りやかましく言うまいというごとく統率されるならば非常に便利である。それから工場同士でもまとまつておれば、或る工場から出る廃水と別な工場から出る廃水が混合し合いば、片方中和剤となつて他を沈澱さしてしまうことがしばしばあるのです。ところが何百里と離れている所へ自分廃水を持つて行くことができないので、わざわざいろいろなものをそれをきれいにするために使つているという無駄なことがありますから、できるだけそういう工場は集中するような方針をとればいいのですが、隣の県でもパルプ工場を置いて税金が上がつているという点からうちの県でもやろうというだけから工場を建設し、ために非常に漁港として漁獲が二億円もあるというところが荒される。その場合に工場から税金を一億取つても魚の生産と比較しようがない。あとで困ることが出て来るが、そういう点を日本国は統制をとつてつたらいいと思う。  それからもう一つ、あなたがた政治家だからお願いしておきたいことがあるのは、日本国家日本国家方針というものをもう少しはつきりしなければいけないのじやないかと思います。それは工業立国としてもいいでしようが、それには英国のように工業国になつていてオランダとかベルギーとかデンマークとか、農業及び水産国と仲よくなり、ドイツに侵されると自分の命のように戦つて工業製品農水産物の交換の確保をしなければなりますまい。この前の戦争では日本は満洲から豆が入つて来ておつたけれども、それでも随分食糧に困つた。今後戦争でもあれば豆も入つて来ないかも知れない。工業国なつたらどこから食べ物が来るか。もう戦争をしないうちでも中国朝鮮とは仲が惡くては戦争をしたらどうなるか……。工業を殖やして国策として中国朝鮮と仲よくしておけばよいのだがそれには朝鮮人は嫌いだ、中国人は虫が好かないということをやめて仲よくしなければ駄目でしよう。将来工業廃水処理するということについて国家が補助するなり何なりして、工業を盛んにするようにやつて行かなければいけない。  要するに私の今まで申上げたおしやべりを極言するならば、日本アメリカ英国真似ばかりするのですが、そういう真似をするばかりではなしに日本は非常に特殊な国だからオリジナルなことをやらなければならない。なぜかというと、人口厖大で土地が狭い、山々が多いので食糧生産をせまくしては生きて行けない。だから工業だけではいかない。工業農業水産三つあるが、これは共存しなければならない。それには水が一番大事だ、その水を守るということに国は大なる費用を投じ、研究機関指導機関を設けてやつて行くことが大事である。そういう点から水質汚濁防止法というか、水質汚濁調整法というようなものが今出て来ている。これの是なりや否やという問題をよく考えて欲しいと思います。それだけであります。
  4. 千田正

    理事千田正君) 有難うございました。いずれ又各委員からもお尋ねがあると思いますけれども、次に洞沢勇君にお願いいたします。
  5. 洞沢勇

    参考人洞沢勇君) 私も今日は質問に答えるというつもりで来たものですから、別に筋書がないのですから、日頃感じていることをちよつと申上げますが、やはり汚濁防止というようなことが騒がれてから各工場で、非常にこの問題について関心を持つようになつたのですね、そうしていろいろな相談にも私のところへも来るのですが、一番感ずるのは、やはりこういう問題は何か国家で統一して重点的にやつて行かないと、あとで収拾できなくなるのじやないかということなんです。例えば今柴田さんのほうからお話があつたのですが、あちらの県こちらの県で、小さい問題を一つ一つ同じようなことを繰返して行くというようなことで、今言つたように、或る地方では、工業を重んずるか水産を重んずるかということで、どつちかへ国家で以て総合的に計画性を以てやつて行かないと、どつちも虻蜂とらずになるのじやないかと思うのであります。
  6. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 お話中ですが議事進行について……今お話伺つておりますというと、水質汚濁防止法に関する必要性とかというような問題が多いようでありますが、私どもは実は本日参考人おいで願つてお話を伺う要点は、今お話のように、水質汚濁の問題が水産に及ぼす影響があちらこちらに起つております。それを如何に処理すべきかということで、近々我々は調査に出ることになつておりますが、私どもはそういう問題について、実はよく知らない、従つて直接に工場からどういうふうに汚水が出て、それがどうふうな害を及ぼすものであるかという科学的なお話を承わりたいと思うのであつて、その必要性だとか或いは政治問題とかというようなことは今日の問題でないと思いますので、そういう点のお話を願うように、どうか一つお運びを願いたいと思います。
  7. 千田正

    理事千田正君) 只今秋山委員からお話がありましたのですが、各参考人かたがたがそれぞれの権威者でありますので、皆さんの御研究なつた点は広範囲に、且つ又深いと思います。それでそのうちから特に水産の問題に関する、いわゆる只今秋山君から申述べられたような方向の点につきまして、特に重点的にお話を願いたいと思います。どうぞお話をお続け願いたいと思います。
  8. 洞沢勇

    参考人洞沢勇君) それで何とか統一された何かで以て、計画性を以て行かないとどういう状態になつて行くかというと、今一つの例として、一番進んでおるアメリカについて、この問題について考えて見ても、例えば私はまあオハイオ港で、ずつと古く一九一〇年ぐらいから調査しておりますが、だんだん汚水がひどくなつて来ております。そうして水産なんかにも大なる影響を及ぼして来ております。一番著しいのは、最初水質汚濁というとすぐ工場ということだけ考えるのですが、オハイオ港について考えて見ると、最初住民下水ですね、これのほうがずつと多いのです。最近になつていろいろ下水道なんかできた関係から、工場廃水による汚濁のほうがひどくなつて来ている。そのことで、住民から出て来る水質汚濁の策としてはいろいろありますが、下水一つ水産業のほうでは注意して見なければならないと思います。というのは、例えば我々が一日生活していて、そうしてどのくらいのものを出すかというと、一番小さく見積つて我々がとにかく息をしている限り、水の及ぼす影響としてどのくらいのものが出るかというと、最低限度は少くとも十三グラム、魚に必要な酸素、要純酸素を一日に十三グラム水の中に入つたときに消費するだけの汚物を出しているのです。これをもつと一般的に言えば、四十グラムから七十グラムぐらい消費することになるわけですが、最低といつても十三グラム、こういうものが結局どこへ流れて行くかというと、終いには河とか海に流れて行くのですが、そうするとだんだんと水の中の酸素を取つて魚の生存ができない。ひどくなつて行くと生存できないところまで行くわけなんであります。例えばあとで稲葉さんとか末広さんのほうからお話があると思いますが、魚というものはそれぞれ必要な酸素の限度というものがあります。例えばますなんかですと、最低限度一リットルの水の中に二CCの酸素がないと死んでしまうのです。併しこれはまあ最低限度のところで、多くはまあ繁殖とか、そういうことを考えますと、一リットル中、ミリグラムに直して五ミリグラムから三ミリグラムですね、この範囲が一つの限度になつている魚が多いのです。ところが我々が排泄するもの、下水のようなものが川へ入つて来たときに、どれくらい酸素を取るか、そういうように、一日一人当り、幾ら少く見積つても十三グラムの酸素を消費する能力を持つているだけの廃水を出しているのです。だからだんだんと人が多くなつて、川を汚染するだけで、魚がそこへ上らなくなつて来るということが多いわけです。例えば木曾川は昔さけの仲間が上つて来ても、下のほうへ都市ができて、そういうふうにほかの有毒物質がなくても、酸素を取ればそれで上れなくなつて来るという所が日本各地にあるわけであります。だからこういう点を、もつと汚濁防止とか何かで、或る限界をきめて、そうして水産を保護しないとうまく行かない。併しそれにはただ工場だけでなくて、一般下水、こういうものも注意しなくちやならない。例えば我々の屎尿、一日に出す大小便が一体どのくらい酸素をとる物質かというと、一リットル出すとして十グラムです。十グラムの酸素をとるだけの、それが水の中に入つたときには、結局十グラムの酸素を十分にとるだけのものになるのです。こういうものが水の中へだんだん入つてつて、魚の生存権をだんたん脅かすということになつて来ます。それからそのほか、例えばこれは末広さんなんかが関係されておつたのですが、例えば浜名湖あたりのあさり中毒なんかで非常に騒いだのですけれども、あれの関係を見ても、必ずしも工場廃水というのでなくて、あの辺の町の下水が流れて来ているのです。そして湾の中の底ですね、水は比較的きれいであつても、底質を変えて来ているのです。例えばあのときに私も底質をとつて来て調べて見たのですが、酸素をすぐ吸収してしまうほどの汚染を受けておるのです。ですから底に棲んでおるものは生理的に非常に影響を受けるのですね。こういう所が日本の各都市の湾に近い所は繰返されて、実際は目に見えないけれども、湾の中の生物というものは移動しておるのですね。こういうものがだんだん水産業に対して致命的な影響を及ぼすわけです。それからかきのようなものについても、外形ではよくわからないけれども工場なんかの諸金属物質が排泄されて行く、そういうものが貝の中に蓄積されて、或る地区の貝のようなものは銅だとか、或いは亜鉛のようなものを非常に含んでおるところがあるのです。だからこんなことは総合的に皆さんのほうで調査されるときに、そういう点にも一つ注意してやつて頂きたいと思うのです。それから汚濁ということで、酸素を非常に取るとか、見た目が汚いというほかに、いま一つ衛生的な面で問題になるのは、特にこの屎尿が入つたようなときには、病原体、こういうものが非常に分布される。ですから東京湾なんかでも、以前は非常にきれいだつたのが、今では東京湾の沿海というものは、殆んど大腸菌で汚染されておるのです。そういう所で育つた貝というものは、非常に非衛生的なんですね。戦時中あおやぎを食べて、非常に消化器系伝染病が殖えたのですが、そういうことが繰返されておるのです。特にかきなんかでも、非常に養殖池というものに対して、いま少し水質的な検討というものをやらないと、大腸菌がたくさんおるような海水で貝を養殖したものを、我々が食べる、或いはきれいなところで飼育したものでも、今度は我々の手に入るときに、その辺の東京湾の近くへ一日漬けて置く、こういうことによつて汚染されたものを持つて来るということで、どうしても我々の、この沿岸の汚染というものは、衛生上でも大いに保護しなければならん。まあそういう問題は限りなくあるわけですが、例えば衛生問題として水道ですね。水道のほうで影響を受けたものを、少しここで印刷したのがありますから、あとで又皆さんから見て頂きたいと思います。まあ非常に話が混乱しておりますけれども、ただ有毒とかそういうことでなくて、そういうふうに酸素が無くなつて魚の生存権が脅かされる、それから見た目はきれいであつても細菌学的に汚染されて、それが伝染病の発生とかというものに対して非常に大きな原因をなすというようなことも、一つ今後調査されるときには、注意してやつて頂きたいと思うのです。ですから工場廃水、同時に普通の下水ですね、下水というようなものについても注意して見て頂きたいと思うのです。それから非常に徐々に影響が現われて来るけれども、底質ですね、非常に水産業の盛んな湾だとか、そういう所の底質というものが実際には致命的な影響力を持つているというようなことを一つ御注意になつて方々見て頂きたいと思うのです。まあ非常に簡単ですが…。
  9. 千田正

    理事千田正君) 次に稲葉伝三郎君。
  10. 稲葉伝三郎

    参考人稲葉伝三郎君) 水産資源保護法とか或いは新らしい漁業法によりまして、いろいろ水産方面漁民が保護されて来るようになつておりますものの、この水質汚濁という問題は古くから叫ばれておつて、未だにそれに対する法が制定されておらないので、非常に片手落のような気がいたしますので、委員さんの各先生がたの御努力で、これから実を結ぼうというようなことになつたことを非常に喜んでおる者でございます。この際水質汚濁の、各工場からどんな廃水が出てその廃水の例えは硫酸に対しては魚が何万分の一まで堪えるかというようなことは、いろいろ研究されておりまするので、その点は末広さんからでもお話願うことにいたしまして、存外考えが落ちるようなことで実際困つておる二、三の例を御参考に申上げまして、なおその方面に御協力下さいますことをお願いしたいと思います。その一つは、現在千葉県の内湾分場で起きておるような問題でございます。大きな製鉄所が千葉市の奥にでき、あれから出て来る廃水の中にたくさんの石炭酸が排泄される、それは成るべく薄くして出そう、それが何十万分の一というような、いわゆる分析ではやつとわかる程度くらいに薄めましても、あすこの生産物というものは御承知の通りのりでございまして、のりはこれは香りを非常に貴んで皆頂くものでありますから、その僅か何百万分の一という石炭酸の臭いがのりに附きますというと、干したときにのりの香りよりか、更に石炭酸の臭いが附いて、のりが駄目になつてしまう、こういうような場合がございます。  それからもう一つは、これはこの間も問題になつておりましたので御存じかと思いますが、立川の進駐軍の所から出ます油の廃水が、あすこの井戸水に影響を及ぼして、飲用水が飲めなくなつた。こういう問題がありますというと、勿論飲用水の問題ですから、いろいろなところから抗議が出て、そうして改良されて行くものと思いますが、魚の死なない程度、そうして油が目立たない程度になりましたような多摩川の川下におきましてもその臭いのために取れた鮎だとかその他の魚類が食用に適しないというような、臭いが附いてしまうと、こういうことがございます。で、こういうようなことになりますというと、単なる工場がどれだけの何万分の一の水にして出すというようなことがありましても、非常に漁民としては収入がなくなつてしまうというような場合があります。もう一つの例は、これは霞ケ浦或いは浜名湖で起きた事柄でありますが、干拓をして埋立をいたします。その埋立をする土が浜名湖のように有名な三万酸性土讓と、こういうようなものであつたわ、或いは霞ケ浦のあの丘陵地帯から持つて参りますというと、その土の中にたくさんの硫酸アルミニュームが含まれておりまして、それが埋立てたところの土地で乾燥されまして、いわゆる白い結晶になつて、そのまま何も害のない形で、水産のほうには害のない形であるのですが、一度雨が降りますというと、それが溶け込んでしまいまして、そうしますというと、あの硫酸アルミニユームが一%で約三日ぐらいたちますというと、うなぎが皆死んでしまうというようなやはり毒があり、〇・一%ぐらいにならないというと、斃死しないようにならないというような状態でありますので、雨が降つたために……、その土地は乾いておるときには何もなくて、雨が降つたたびにそういうような水産物に害を及ぼすと、こういうような場合があります。で、これは雨が降つたために水産物に害を及ぼすということは、よく工場の沈澱池なんかに硫酸銅或いはその他のものを沈澱させる。今の工場法と申しますか、先ほど柴田さんから言われましたような設備をしております。急に大雨が出、その沈澱池にも相当流れ込んで来る。そうすると沈澱の作用をしないものがほかの川に流れ込んで急激に魚が死んでしまうと、こういつた例が極く最近酒匂川の所に起きております。こういうような事柄がございますので、そういう方面一つ御考慮を願いまして、この法案の成立に御努力下さらんことをお願いする次第でございます。
  11. 千田正

    理事千田正君) 次に末広恭雄君。
  12. 末広恭雄

    参考人末広恭雄君) 私はもと農林省の水産試験場におりました関係から、各種の水質汚濁の状態なんかを見て歩きましたし、又その試験にタッチしましたりなんかしまして、その後大学のほうに変りまして、又現在も水質汚濁研究方法についての一つの案を持つて研究をしておりますけれども、そういつたわけで、水質汚濁に非常に興味を持つておりまして、深く研究したわけじやございませんが、今までの、まあ全世界と申しては大変話が大きくなりますが、とにかく世界中の今までの文献、昭和二十二年までの文献を集めまして、ここに私の著書がありますが、これが水質汚濁に対する魚類の行動、今おつしやつたいろいろな死ぬとか、逃げ出すとかいつたようなことがすべての工場、或いは下水といつたような所から流れ出るであろうところのその薬物なり、細菌に対して、その魚がどういう反応をするかというのをこの本にまとめてございますが、これを一々説明すれば非常に長くなりますので、これは又いつか御覧頂くとしまして、この中の一番大事な、水質汚濁に関して一番大事な点だけを、極く簡単に五分ぐらいの程度で話をさして頂くのですが、先ず水質汚濁と申しても、非常に……今お三人のかたのお話がありましたように、いろいろな点から考慮されなくてはならないので、先ず水質汚濁の魚に及ぼす有害作用には、人為的のものと、それから自然的のものがございます。そうして人為的のものには化学的の作用、つまり化学工業関係の工場、それからその他から流れ出る流水によるいわゆる化学的の作用をするもの、それから今度は、次は機械的の作用、つまり鉱物関係の工場、例えば鉱山から出るような惡い水ですね、その水にはいわゆる化学的の有毒物質もございますが、そのほかに例えば非常に細かい石炭の粉といつたようなものが魚の鯉に附いて、魚を殺すといつたような機械的の作用を持つておりますところの作用、それからもう一つは生物学的作用でありまして、それはさつき言われた下水の問題、廃棄物並びに細菌の問題、それから酸素がなくなるといつたような生物学的の問題であります。それが人為的の問題。それからもう一つ、第二の自然的のほうは、やはり化学的、機械的、生物的に分れますが、化学的のほうは火山から流出した毒水、それから機械的のほうは豪雨による土砂の崩壊といつたようなもので、それから第三の生物学的のものは、やはりその自然の川の状態において酸素がなくなるとかなくならないとか、或いは又浜名湖のような古い湖水になつた水が惡くなるといつたような問題でありまして、恐らく今ここで取上げられるのは、前者の人為的の問題であると思います。それでそのことにつきまして、今申したようにドイツ、アメリカ或いはその他の国、日本も勿論入つておりますが、それについて今までの調査をやつてみますと、この本に書いてございますが、その毒物たり得るものは非常に多いのでございまして、それに対して魚がどのくらいの程度で死ぬか、それからどういう程度に逃げ出すかという二つのことに分けて、ここに表がありまして、ここに詳しくそのいわゆるリミツトが書いてあるわけです。その致死量、逃げたのを嫌避量と申しますが、その嫌避量はどのくらいであるか、それから致死量はどのくらいであるかということを、例えば石炭酸もあるし、硫酸もあるし、硝酸もあるといつたようなことがこの表に書いてございます。これは又いずれその一々に当りまして、今後でも或いは今日でも御質問下されば、それに対してそのデータをお知らせいたします。  それからこの日本におきまして一体どういう状態にこの工場廃水などの害があるかということもここに書いてございますが、これは農林省で調べられた多分データと思いますが、製紙工場、或いは化学繊維工場、それから酒を造る工場、澱粉工場、それから木材工場といつたようなもののいわゆるその被害件数ですね、それを表にしてここに書いてございます。  それで要するにこういう今までの研究からして考えてみますと、我々がその工場と、それから工場廃水とその漁業者の立場、両面から考えてみますと、先ほどもお話があつたように飛魚は来ても逃げてしまうといつたようなわけのわからんことも結局表現されるわけですが、それはつまりは確たるデータが個々の魚によつてきまつていないのだろうと思うのです。又きまつているものがあつても、それが業者並びに工場に徹底していないためだろうと思いますので、そこは我々の研究者と緊密な御連絡を頂きまして、そのほうの資料を十分に示して頂きたいと思うのでありまして、その魚の種類によつて非常に抵抗性も違うということも勿論でございますから、そういう点で今申したように、十分そのいわゆる基礎のデータですね、確たるデータというものを示せば、そこにいわゆる両者の間の紛争というものはそのデータによつて解決され得る可能性が非常に多いと思います。こういうような関係で、この本にまあ今申したような細かいデータが出ておりますし、今なお又現在その研究中でございますからして、その場合に当りましていろいろな御相談を受けたいと思います。
  13. 千田正

    理事千田正君) 次に小島良夫君。
  14. 小島良夫

    参考人小島良夫君) 私が戦前水産講習所におりまして、当時の水質或いは底質、これらの問題について只今九大に行つております富山博士と一緒に、戦前各地工場廃水問題において水質或いは底質の汚濁についての問題がおきまして、それに依頼されまして調査しました具体的な例を申上げようと思つております。  先ず戦前は非常に軍需工場、或いは工業が盛んになりましたためにやはり各地工場廃水がありまして、そのために水産物に対する汚濁、斃死という問題が起きました。先ず群馬県での碓氷川の水質汚濁問題が起きまして、これは碓氷川の流域の水を使いまして鯉の養殖をやつております。この水の中にはあそこに亜鉛工場がありますので亜鉛がある、この亜鉛による汚濁のために鯉が斃死された。この調査に対しましてやはり碓氷川のほうの亜鉛工場に行きまして水質の科学調査を行いました。我々が行くということが工場にわかりますと、これは今度若し調査されるかたは非常に注意されるといいと思いますが、調査団が行くと工場ではそれ来たとばかりにその日の廃水を非常に減らします。又非常に水量を減らしたり、或いはそのときに限つていわゆるその浄化装置を厳重にして一目見てもきれいな水を流しているというようなことをやるのであります。こういう調査されるときには不意に行くということが一番いいと思います。私どもの行つたときもやはり不意に行つたのですけれども、そのとき亜鉛を、これは硫酸亜鉛でありますが、これを流しておりまして沈澱池とか、濾過池というようなものを持つておりますけれども、非常に廃水の水量が多いためにオバー・フローとして相当流れる。そのために硫酸亜鉛の量が非常に多くて鯉が斃死するというようなことが起きたのであります。  なお引続いて群馬県の、これは人工的な問題ですが、いわゆる草津温泉或いは白根火山の濁水ですね、この問題のためにあそこに吾妻川というのがありまして、これが利根川の本流に合するのであります。吾妻川というのは酸性河川でありまして、草津温泉自身のP・Hが一から二ぐらいでありまして、これが利根川本流に流れる距離が非常に長い距離でありますにもかかわらず本流と合するところのP・Hは四であります。これではなかなか魚が棲めるはずがないのでありまして、その吾妻川は殆んど無生物地域と言われております。  それから次に製紙、紙のほうですね、製紙の工場廃水のためにこれは駿河湾で起きた問題でございますが、御承知のように駿河湾は田子浦の附近はさくらえびの繁殖場であります。いわゆるさくらえびの産卵場がありまして、この産卵場が製紙工場廃水、主としてリグニン、或いはそういうものが多くて水面を見たところいわゆる黒褐色の水がずつとその排水品から千メートルも二千メートルも先まで扇状に水面を波立たせておりまして、勿論水質が汚濁された場合はその附近におります水族は、魚族のほうはこれは泳げますからどんどん逃げてしまいます。それから底棲生物、これはなかなかちつとやそこらで逃げられないのでありまして、殊にさくらえびの産卵場なんか丁度深さが相当、二十メートル、五十メートルぐらいの深さのところでありますが、これがリグニンとか、そういうような有機物が一旦海に入りますと硫酸塩と結合しましてこれが凝固沈澱しまして、而もこの有機物が嫌気性醗酵いたしまして、硫酸塩が還元して硫化物となります。この硫化物が土讓の鉄と、硫化鉄というような状態になつておりまして、この海底の底質というものがいわゆるおはぐろ泥、直つ黒な泥になつております。この硫化物の泥というものは大体直つ黒の泥でありまして、一プロから二プロ、いわゆる乾燥泥に対しまして千グラム中に一グラムというような硫化水素を含んでおります。このような真つ黒いおはぐろ泥においては勿論生物はおりませんし、又そこに発生する硫化水素のために底棲生物というものは斃死するのが当然であります。  次にこれは宮崎県で、ここにおられる稻葉先生も一緒に共同研究されたのでありますが、宮崎県の土々呂にあります、これはベンベルグ工場廃水の問題であります。これは硫酸銅を使うベンベルグ工場でありまして、これは銅で廃水されまして、これもやはり私どもつている間にはどうも廃水が非常に少いのであります。併しこれはやはり水質ばかりでなくて、私どもも底質を調べたのでありますが、この底質も、勿論硫酸銅といいましても銅ばかりでなくて、やはり有磯物が相当含まれておりますために、この底質もやはり真つ黒でおはぐろ泥となつておりまして、なおこの水の中に含まれております銅のために土々呂湾にあるかきが、いわゆるみどりがき先ほど洞沢先生がおつしやつたように水中にある銅が長年生物の蛋白と一緒に結合して有機的な銅というようなみどりがきになるわけであります。これは勿論食べるとすぐ中毒して腹下しするというような危険なものであります。そのために全然業者はこのかきを取ちないのであります。  次にこれは宮城県の石巻でありまして、これはパルプ工場廃水の問題でありまして、やはりこの宮城県の石巻のパルプ工場廃水のために水族及び底棲生物が相当被害を受け、又そこら辺にいなくなつたというような問題が起きまして、これもやはりリグニンとか、亜硫酸とかでありまして、亜硫酸が相当たくさん流れておりまして、これはやはり工場としては濾過装置とか、或いは沈澱装置、中和装置というようなものを行なつておりますが、それでもやはり手を抜くというような操作がありまして、このときは私どもはやはり何も会社に予告なしに行なつたために相当実際的なものを調査しましたが、このときはやはりリグニン、或いは亜硫酸塩、亜硫酸ソーダの廃水が非常に多くありまして、これがいわゆる水質を調査した結果、有機物を計るのに過マンガン酸加里の消費量を計りますが、この廃水の海に出たところにおいての過マンガン酸加里の量が二千三百ミリグラム・パー・リッター、非常に危険なものでありまして、勿論水質もそうでありますが、この廃水による影響のために底質も汚濁されておりまして、先ほど申上げましたように、おはぐろ泥を流しているところが非常に大きな面積を占めております。以上のような、これは戦前のものでありますが、それから戦後方々の工場が相当操作が、或いは戦災を受けたなどで操業停止したために、戦後は一時廃水の問題というものが起きなかつたのでありますが、最近又非常に方々で起きまして、これはやはり山口県の三田尻の水質汚濁に及ぼす影響がありましてこれはやはりアルコールのいわゆる醗酵工場廃水でありますが、これも有機物が非常に多くありまして、やはり先ほど言つたよう廃水の水質はおはぐろ泥をなし、それからここに、やはり三田尻には人絹工場がありますが、この人絹工場は非常に浄水装置がよくできておりますために、この廃水においては魚の致死量まで行つていないというような状態であります。  それから又最近千葉県に非常に澱粉工場が多いのでありますが、この澱粉工場廃水もこれ又非常に有機物を含んでおりまして、又晒粉を使いますために、晒粉の廃水も非常に入つております。このような澱粉工場みたいなものは、大きな会社でなくて、非常に皆各個人で、いわゆる町工場式のものが多いのでありまして、これは大きな会社だと相当の資本を以て浄水装置というものも施しておりますが、小さな個人でありますると、こういうところまで手が廻らないのでありまして、徒らにただ土地を掘つて、そこへ廃水を溜めておいて、そうしてオーバー・フローさせて流しておるという状態ですから、殆んど浄水というものは行われないで流しておるのであります。このためにこの千県県の、千葉市の附近の海岸では、あさり、はまぐり、或いはのりが相当澱粉工場廃水によつてやられている。而も又底質が硫化物の生成をなしておる。なお硫化水素の問題につきまして、いわゆる有害物質の魚類の斃死に関する見解、これはやはり富山教授と一緒にやつた実験でありますが、これは従来は有害物質の魚類の斃死に関するいろいろな致死量というものは、大方いわゆる一つの実験槽を作りましていわゆる止水、水が動かない、止めておくそういうようないわゆる容器の中で行なつたところの実験でありますが、私どもがやつた実験は、これは一定時間に幾らかずつ水を流す、いわゆる流水式の装置を以て毒物を入れて、そうしてそれに鯉を飼つて、その斃死時間を見たのでありますが、これは止水の場合に比べて、流水式の場合は非常に微量な毒物によつて魚が早く死ぬということがあるのであります。特に硫化水素、これは硫化ソーダを使つたのでありますが、このP・Hが五から八までの間で各種やつたのでありますがやはりP・Hが低いときには硫化水素としまして、〇・五五ミリグラム・パー・リッター、この場合において二十四時間で魚が死んでしまう。それからP・H八においては、八ミリグラム・パー・リッターで二十四時間で死ぬというような結果が出ております。それから先ほど申上げましたように、硫化物、いわゆる底質中の硫化物は一プロから二プロ、これは真つ黒い泥になりまして、やはり〇・五プロくらいのところからもう生物が棲めなくなるというような結果が出ております。  それから私どもこういう水質汚濁防止に関する対策といたしまして、水質ということのみにかかわらず、やはり魚類はこれは水が汚なくなれば逃げるというような手もありますが、これは底棲生物、いわゆる移動性の少い魚類に対してはこの水質の汚濁ということが非常に大きな問題でありまして、この点水質汚濁防止ということに関しまして、間接的に水質の汚濁防止という、こういうことも考慮に入れたほうがいいのじやないかと思つております。今年水産資源保護法が出ておりますが、この項目の中においても、僅か水質汚濁に対しては二項目くらいしか挙げておりません。なお今後水質汚濁防止法というものが設置され、細分に水質汚濁に関する範囲をぐつと狭めて條文を作られて、それにはやはりこういう水質を汚濁する鉱山とか、工場は、その浄化設備を完全にしなければ操業してはいけないというような、相当厳重な法令を以て行なつたほうがいいのじやないかと思います。なおいわゆる廃水量の限度、或いはなお水産動植物の繁殖用に必要な特定の区域というものを設けまして、この区域内においてはそういう工場を作つてはいけない。或いは有害物資について、直接水産生物に影響のあるもののほかに、有機物とか、繊維とか、或いは鋸屑とかいうような、間接的に魚類に刺戟性を与える、刺戟するようなものを含めたほうがいいのじやないかと思つております。  以上私の実際に行なつ調査、なおその対策に対する若干の考察を申上げたのであります。
  15. 千田正

    理事千田正君) 以上で一応参考人かたがたからのお話が終りましたのですが、これから各位の御質問に入りたいと思います。  質問に入ります前に、只今本会議が開かれて、日程第十五の……、各條約関係の法案が提出されておりまするが、これを審議討論するまでに約六時間を要するという報告でありますので、一時休憩して本会議に入つて参りますか、それともこのまま続行して皆さんの御質疑をして、一応切りをつけるか……。
  16. 松浦清一

    ○松浦清一君 本会議も開かれておりますけれども参考人の先生がた大変御多忙中おいでを願つておるのですから、このまま続行してお開きになることを希望します。
  17. 千田正

    理事千田正君) 松浦君の御希望の通り続行することに異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  18. 千田正

    理事千田正君) 異議ないと認めまして、これから各委員から各参考人かたがたに御質疑をして頂きたいと思います。
  19. 松浦清一

    ○松浦清一君 参考人の先生がたにいろいろお教え願いたいのですが、私どもが、日本の国の置かれている国際的な環境、それから国際的な情勢の上から判断した日本の将来の立場というものを考えてみまするというと、どうしてもやはり日本工業国として立つて行くということが必然的に運命づけられているような気がするわけなのですが、日本工業が発展するということは、或る意味においては国際的な非常な危機を思わせるし、或る意味においては非常にいいということも考えられるのですが、こういう方向に日本立場がなつて参りますと、そのために沿岸漁業に及ぼす影響というものが、只今いろいろお話を伺いましたように、工場から排出される毒素のために魚が死滅したり、或いは成長を妨げるというような結果になるということも非常に重大な問題だと考えているわけなのですが、これに対しまして水質の汚濁を防止するための法律を作るということ以外に、沿岸の漁業に非常に大きな影響があるから、沿岸漁業影響のあるような工場の建設というものはやめてもらいたい、こういうようなこともどうかと思われるので、積極的に水産委員の、或いは日本水産業の将来を考える者の立場から考えて見て、やはりできる工場を阻止するということよりも、日本の置かれている立場上どうにかしてその毒素の流れて来るということを防止する方法はないものだろうか、こういうことが知りたいということが今日いろいろ御多忙中の先生がたをお願いをして教えて頂いているわけなのですが、その知りたいという点は、概括して大体製鉄、パルプ、鉱山、澱粉、醸造、化学肥料、レーヨン、こういうような工場があつて、そこから流れ出て来る毒素というものがそれぞれの業態によつていろいろ別なのであるか、又は同じようなものが流れて来るのであるか、又どういうものが出て来るということを概論的に伺いましたけれども、どういう魚族に対してどのような影響があるのかという問題、それからそれを防止するのには一体どういう装置をしたらいいか、又日本の今日の科学能力を以てしてはどうしても防止することができないのであるか、こういうことを小学校の五年生くらいに教えるつもりで一つお教えを願いたいと思うのです。そこで今いろいろお話伺つておりましたところ、末広先生がいろいろそういう点についての研究をなさつておられる模様でありますが、具体的に製鉄とパルプと鉱山、例えばこの三つを対象にして同じような毒素のものが出て来るのですか、違うのでしようか、どういうことなのでしようか。もう少し具体的に言えば私はここに製鉄、パルプ、鉱山、澱粉、醸造、化学肥料、レーヨンの七つに分類して見たのですが、その一つ一つについて違う点と同様の点を御説明願うとよくわかると思うのですが。
  20. 末広恭雄

    参考人末広恭雄君) それは私の希望としては、製鉄或いはパルプ、澱粉といつたようなところからどういうものが流れ出るかという方面ですね、そういうほうは私は知らないのです。ですからむしろ化学関係のかたと御協力しながらその魚に及ぼす影響というものの御説明はできますが、今おつしやつたようなふうに化学の面までも担当して御説明するということはちよつと私としてはできかねるのであります。
  21. 松浦清一

    ○松浦清一君 それじやどなたでもよろしうございますから、例えば製鉄からどういうものが流れて来るか、そういうことを一つ御説明願えませんですか。
  22. 洞沢勇

    参考人洞沢勇君) 柴田さんがいいのじやないですか。
  23. 千田正

    理事千田正君) それでは柴田君お願いいたします。
  24. 柴田三郎

    参考人柴田三郎君) それでは私応用化学が専門ですから、幾らか知つておりますからお話いたします。  製鉄所というのは鉱石を熔鉱炉でとかして銑鉄にする作業が主のようですが、必ずしもそうじやないので、そのために石炭ガスを使つて、ガスによつて熔接する。それから石炭ガスを発生する場合に各種の副産物を発生する。それから又コークスを使いますが、そのコークスもよそから持つて来たのでは、大変な大きな工場なんですから不経済なので、自分の所でコークスを造り、そのガスを作り、その燃料を使つて鉱石をとかすのです。結局は製鉄業というと鉄をとかすだけでは大した毒物が出ないようなんですが、ガス、石炭化成工業になつてしまうのです。惡水というものは主として石炭工業から出まして、ガスを洗うというと、そのガスに入つているところの亜硫酸ガスが廃水に入つて硫酸性となる、又硫化水素も落ちる。ガスを洗つただけでも廃水に毒物が入る。それからそのガスをとつた残燈からコールタールが出ますね、ピツチ、あれをそのまま捨てやしないのですが、染料をとつたり、石炭酸をとつたり、ベンゾールをとつたり、それからいろいろな薬物をとりますし、アンモニアもとりますが、その場合にそういうものが全部とられるわけじやなくて、廃水中にアンモニアや石炭酸その他が相当たくさん量入る。例えば一リットル中に三グラムなり、二グラムぐらいのアンモニアがその廃水に入つて来ます。それから石炭酸も入る。それからクレゾールですね、要するにクレゾール、石炭酸、そういうものをタール酸と言つておりますが、全部それは生物に毒なものです。それからいろんな鉄を冷す場合なんかに石墨が大変に一緒に落ちて来て黒鉛、これが又廃水に入つて来る。それから石炭も洗いますが、洗炭所というものがあつてコークスを造るために石炭の泥やなんか洗い流さなきやならん。その洗い落した泥が大変な粘土その他細かい石炭を含んで、それも廃水に入つて来る。あらゆるそういうものが、相当少い量のものもありますが、入つて来る。それからピリジンなんていうもの、今いろいろいわゆる肺病の薬か何かの原料に使うピリジン、ピリジンをとつて、そのピリジンなるものが又相当な魚族に対してはかなり毒物なんです。そういうものが相当量入つて来るのです。それで昔から産業廃水で以て一番面倒とされているのはガス工業廃水、それからその次にパルプ工業廃水言われているくらいなかなか面倒な廃水なんです。それでそういうふうに今言つた通り主として石炭酸とかクレゾールのごときタール酸、それから油、つまり黒いタール類、その細かいタール類が水と混つてエマルジヨンというものになつてどんどん流れて来ます。それから今言つた通りアンモニアが相当出る。アンモニアというものも水に或る一定量あれば魚族を死滅させます。そういう今言つたようなそんなもの、それから石炭の粉、それからカルシウムか、ナトリウムとかも石炭と混つたり、要するに粘土質のものが混つて、その何と言いますか、石炭工業ではボタというのですが、そういうどろどろしたもの、それから黒鉛、それから硫化物そういうものが出ます。水量も相当製鉄所では大きいので、大抵富士製鉄や日本鋼管あたりでは全排水量は一日二十万立米や三十万立米ぐらいでありましようか、結局その中でボイラーなどを冷却したり、鉄を冷やしたりするというのは余り害がないのです。そのうちどうしても何とかしてもらわなきやならんというものはせいぜい五千トンから一万トンですが、この五千トン乃至一万トンを処理してもらつたほうがいいじやないかと思います。  それでその処理はどんなところから処置をするかというと、いろいろ過去において研究しましたが、これからもしようと思つております。というのは、産業廃水問題というのは、アメリカつて盛んになつたのはここ二十年以来のことであつて下水と違つて産業の廃水処理というのは今なお研究中であつて、どの方法が標準だというものはまだ確立されていないのでありますから、私が言うのよりもつといい方法があるかもわかりませんが、挙げますと、大体要するに先ほど申しました酸素を生物的に消費する物質、皆さんがおつしやつている水中の酸素を使うということは少いのです。なぜかというと薬物的なものですから。ですけれど結局は水の中の酸素に酸化されるから化学的には消費します。それから先ほど忘れましたが、非常な毒のシアン、即ち青化物というものが相当発生します。この製鉄の廃水にはありまして、シアンとか石炭酸というものは川水に放流されれば、川水の酸化菌によつて、酸素によつて長い間には酸化されるのですが、日本の川は非常に短いので、長く流れていないので酸化される暇がない。海に入つて、海の水に少量あつても魚や海苔が臭くなる。そうして大変品度が落ちます。その品度を落さないようにするにはどうするかというと、一番経済的な方法は製鉄所内で廃水に酸素を加えてしまう。川の生物を利用する代りに、その製鉄所の廃水処理工程中で石炭酸やシアンを分解する菌を優先的に繁殖せしめることができます。そういうものを繁殖させてそこに盛んに空気中の酸素を送つてやるのであります。そうして自然にだんだんに殖えて来るところの酸化菌、それから空気中の酸素によつて処理するのですから薬は要らない。それによつて石炭酸、シアンを酸化してしまう。廃水処理しても全然これがなかつたようには自然水を保護できないが、例えば製鉄所の廃水が海に出て今まで二キロくらいの範囲に出ていたのが、そういう処理をすれば〇・五キロくらいにとどめ得ると思いますが、私の考えでは製鉄所の廃水が出る所で魚族が死ななくて済むようにも処理はできるが、そういうことをすれば製鉄所はやめろということに等しいから、それは無理だと思います。世界でもそういう処理はしていないのですから、せめて三分の一の汚濁度にとどめてしまうということになれば大成功だと思います。それには今言つたように生物酸化法、生物を殺す物質を出すのに生物で酸化できると言うとおかしいようですが、甚だおかしくないのは、温泉あたりに硫黄バクテリヤが硫黄を蓄積し、珊瑚虫がカルシウムを蓄積して珊瑚を見ればわかるでしよう。鉄バクテリアが鉄を蓄積して行くというようなこともありまするから、石炭酸やシアンに適する微生物が繁殖してそれを分解することがおわかりでしよう。併しそれは限度がありまして、余り多量の石炭酸やシアン、青化物は酸化できないので、その限度がありますが、その限度も大体わかつております。大体シアンが百万分の二百五十、石炭酸が百万分の三百くらいまででしたら処理できます。工場としては廃水処理すると多分毒物の七割くらいは除去できます。その程度処理方法をやつてもらつて工場は破産しません。私が指導して九州の田川鉱山のモンドガス廃水処理をして成功したことがありました。それから石炭の粉とか粘土とかいうものは沈澱池で沈澱してとる方法ですが、現在の沈澱池は非常に小さくて滞流時間五分か三分くらいで流れてしまつて形だけのものしか作つていない。そこでせめて一時間から一時間半水が溜つておるようにするとよいでしよう。今のところは沈澱法よりもよい方法がないから沈澱時間を長くするよりほかないだろうと思います。それからその次に、鉱山といつても広いので、銅の鉱山あり、石炭の鉱山あり、銭鉱、硫化鉱、いろいろあるのですが、結局日本鉱山というものは酸性の水を出すので、今さつき皆さんが申されましたP・Hが低いということになるのですが、その酸性を何とかしなければならないのですが、鉄は硫化鉄ですから無論酸性の水を出すのです。それから石炭でも、石炭の中に含んでおる硫化物のために石炭を洗つた水は酸性になつておりますから、それを石灰の粉若しくは生石灰、消石灰で中和するというのが一番の方法です。併し相当金がかかる方法です。例えば同和鉱業でやつておるのでありますが、石炭一トン当り百円の石灰費を使つております。併し漁民がなかなか面倒を言うところなのでやつております。同和の或る山では一年一千万円の石灰費を使つております。そのために川へ放流されても鮎が余り死なないようにやつております。或る鉱山によつてそれほどできるものなら、ほかの鉱山でもできるのじやないかと思います。けれども私が見たところでは同和鉱業のようによく行つておる所はありません。同和鉱業ができるのにほかの鉱業ができないことはないと思います。そのほか日本の坑水には大抵鉄が多い。なせ鉄が多いかというと、銅を流すということは余りしない。鉄と銅とを置換する。そのためにP・Hが低くなると共に鉄が水に溶けて赤い鉄の水が出る。赤い鉄は色はくどいのでありますが、鉄というのは百万分の百くら  いまでなら魚も死ぬとは言いきれない。併し百里の場合がしばしばあります。結局今説明したように、中和するために石灰を使うと濃い水酸化物となつて赤い沈澱物になつて落ちてしまう。銅であつても石灰で以て中和すると水酸化銅として落ちますから非常にうまく除ける。大体日本鉱山は石灰類を使う。そのほかの方法もありますが、研究の途中にありますから申上げられませんが、その石灰を使うのにいろいろありまして、石灰の石にしてそれで撒布濾床というのを作り、坑水を濾せばそれかいいのですが、石灰を細かい粉にしてこれを空気に掻きまぜてやる方法があります。それから消石灰にする方法でありますが、それでも来る水が酸性である。少し理窟つぽくなりますが、P・Hというもの、水素濃度というもので五・〇以上にとどめてもらいたいということに、水産委員のかたがいらつしやつて鉱山に交渉すれば向うでもわかつて下さつて言うことを聞いてくれるかも知れません。  それから石炭山ですが、これもさつき言つたように酸性になりますが、それよりももつとひどいことは、細かい石炭の粉末ですね、それが田圃の水に入る。それは農業方面のことですが、それから結局は魚の匂いも臭くなります。これを防ぐには沈澱池を大きく作ればよいので、日本の炭山では沈澱池が余り小さ過ぎる。もう少し大きくすればよい。それは結局は小さな川だつたら川のダムを作ればよいので、現状では魚族に被害を与えます。川を堰きとめて、ダムを二つ、三つ作つておけば川が沈澱池の役目をする。ドイツのルール地方では石炭鉱山の考えで河にダムを盛んに作つてそうして処理しておりますが、そんなにしておれば案外経済に処理できるのではないか思います。  石炭鉱山のほうはそのくらいにして澱粉工場、澱粉工場というものは毒物は何かというと、廃水の中に有機物が非常に多いのですが、魚族水産物に必要な酸素を澱粉廃水が使つてしまつて、結局魚族が死滅するのです。その上に漂白剤として亜硫酸ガスを使うこともありますし、又塩素を使うこともあります。ですからそういう漂白剤の毒物が水の中に入る。それからもう一つあるのは繊維、さつまいもの繊維や何か非常にたくさん出ます。その繊維が結局泥状になつて河底に沈澱して、それが腐敗することがありますから、その繊維と漂白剤と、それから酸素を除去したい。その三つを何とかしてもらうのがいいのですが、処理方法として最初は沈澱をしますが、その沈澱をする場合に澱粉というのがコロイドになりやすい。それだからなかなかそのままでは沈澱しかねるこがあります。この場合やはり石炭を入れるなり、鉄剤ですね、これを小量加えるなりすれば、殆んどきれいに沈澱するのです。沈澱の泥の問題ですが、先ほどどなたかおつしやつた通り、泥が雨のために流れる。この泥の問題ですが、一方法は消化法です。これはタンクの中に汚泥を密閉してしまう、そうすると結局これは腐敗して最後にメタンガス、炭酸ガス等のガスを出します。腐敗した後の汚泥は非常に乾きやすいから乾かした後畑の肥料にできる。澱粉工場の沈澱の上澄みは見かけはきれいですが、相当脱酸素物質が残る場合もありますが、川の水が多かつたり、海の水がきれいだつたらそのままの放流でいいと思います。問題が起るようだつたらそれを生物酸化、石の層を濾過するとか、空気をよく掻き廻してやるとかしてやれば安全だと思います。  それからもう一つ醸造工業というお話が出ましたが、醸造工業は多分お酒、合成酒及び醤油のごときものを言うのであると思いますが、醸造工業廃水というものは二つあると思います。いもの搾り汁、そういうどろどろしたのが廃水の中にまざつて流されてしまいますが、あれが流されるのはかなわないのです。相当の繊維もあるし、川の底や海の底の泥に沈澱するものもありますから、あれをよく搾れば家畜の飼料になりますから、あれを機械的に外国では盛んに脱水しているが、その脱水機械を備えることは工場経済にひびを入れないでできますから、搾つてもらつて豚や何かの食物に廻してもらえばいいと思います。それもいやだというならば、残渣だけ集めて、さつき申上げましたように空気を全然遮断してしまう消化法をとる、そうすると、そこからメタンガスや炭酸ガスが主として出て燃料になり、残りは非常にさらさらしたものになります。それは非常に乾きやすいので肥料にする。それから上澄みは結局は生物酸化のようなもので処理することが一番いい。これがなぜ経済かというと、自然界に繁殖するところの酸化菌及び空気中の酸素を使用するので非常に経済である。世界的に皆この方向に向つて来ております。なぜかと言うと、薬品を使つて処理するということは、この地上に限りあるところの資源廃水のために使うのでもつたいない。できるだけは空気とか酸素を使うということがよいからです。醸造工業廃水というものの処理はそうむずかしいものではない。ただ先ほど言つた繊維を除くのがなかなか難物なんですが、機械的にいろいろな金網スクリーンを置いてとつたりそのあと沈澱させて除去する。これは腐敗を早くするからむずかしいので、結局薬剤を加えて沈澱を促進させる。最もよいのは残渣を廃水に入れないことでしよう。入れないようにするということは、これの水分を搾つて取る。搾り滓を家畜の飼料か肥料にする。浮いている固形物を川水に流すということだけはやめてもらいたいということをお話する。それだけはやめるべきが工業道徳だと私は考えております。  それから化学肥料、これは硫安工場や何かのことですが、これも相当に水産物に害があるのであります。なぜ害があるかというと、大抵石炭をガスとして、その石炭ガスの中から合成すべき一方の物資を取る。例えば水素を取りまして、空気中から窒素を取つてそれらを化合して硫安にするというのが化学肥料の原理です。その他石炭を乾溜する場合に製鉄所の廃水と似たものを出します。ガスを作つて、そのガスの中の成分から肥料を取る。コールタールをただ捨ててしまうということはしないで、タールから石炭酸とかいろいろのものを取るということになりましよう。製鉄所と同じようなシアン化物、青酸加里のようなもの、それから石炭酸、そういう毒物が出ます。それからアンモニアも相当流れておる、タールも流れて魚族に非常な害を与える。それですからそれを処理する方法も、製鉄所と同じく生物酸化法という方法をとつてもらう以外に途はないと思います。そうすると汚濁度が三分の一くらいになると思います。  もう一つの問題のレーヨン工場廃水処理ということについてですが、ここでは、アルカリの廃水と酸性の廃水二つが出る。アルカリ廃水と酸廃水とを先ず分離しておいて、それを混合して、不足のアルカリを加えて中和している。そうしてそのあと沈澱して、そうして砂で濾過するのが現在までのレーヨン工場のやり方ですが、結局は中和が足りないと酸性のほうが強くなりますね。大抵のレーヨン工場は酸性のほうが強くなつているようです。そのために魚が参ることがあります。次に硫化物が相当出ます。つまり硫化水素がそれに入ります。次に細かい繊維が出ます。この三つが出て来るのであります。繊維は大分砂濾しによつて除去できるが、その砂濾しはすぐにつまつて一週間もたつたら使えなくなるので、視察に行つたときは水を出しているが、常に通していないことが多い。砂濾しは役に立つていません。細かい繊維は今のとこる流れています。日本のレーヨン工場はなかなか立派な処理をしておりまして、どこを廻つて見てもレーヨン工場は何の処理もしていないというわけではないのです。必ず処理をしているんですが、その処理ちよつとばかり旧式です。砂濾しはすぐにつまつて中で硫化物が出るので、東洋レーヨン、倉敷レーヨンでは砂濾しはよくないといつてやめたら大変工合がいい、こういうことを聞いております。更に私が奨めた方法は撒布濾過法です。この方法がなぜいいかというとそれは硫化物を酸化するからです。空気を与えて酸化すれば硫化水素が硫酸塩や単体の硫黄になる。島根県の大和紡績は戦争中相当立派な処理をやつたが、それでも魚族を殺して非常に問題が多かつたのですが、何とかしたいということで、私がお手伝をして、硫化物を酸化して空気中に発散して水に出さない。硫黄にして沈澱するようにする、その方法は詳しくなるからここでは申上げませんが、やはり生物酸化しよつたんですが、酸化槽の上に立つと硫化水素で頭がくらくらするくらい、硫化水素をとつてしまう結果として水がきれいになつておりまして、すでに三カ月やつておりますが、魚族が死んだというのは一つもないといつて工場は大変喜んで、私も見て参りました。大体以上の処理によれば、レーヨン工場方面汚濁は大変なくなるのじやないかと私は期待しております。  それから一つパルプ工場お話を忘れましたパルプ工場廃水というものは害を与えるものはどんなものがあるかと申しますと、大体主としてやはり水中の酸素を使用することが困る。なぜかというと、材木には砂糖分がたくさんあるのですが、その糖分というものは川の水の中に入るというと、酸素を使うので、その糖分による害が非常に多いのです。澱粉なんかも砂糖と同じようなものですから、同じような害があるのです。それからリグニンとかタンニンのようなものは案外相当な量まで害がないものなんですが、ただ色がある。褐色の色を呈している。魚族が背中に青色をつけているのは保護色のためですが、褐色の中に入ればほかの大きな魚やとびやたかに見つかるものですから、おつかながつてつて来ないこともある。その色が余り感心しないのですが、色を無くするということは甚だむずかしくて、工場の経済を侵すことになるので甚だむずかしいんじやないかと思いますが、海の水の酸素を使つているのが非常に多いので、アルコール醸造工場と同じく酸素を使用するというのでは廃水界の王様です。この酸素消費量を三分の一くらいに減らしてしまえばパルプ工場廃水というものは非常に改善されるのじやないか、こう思つております。それはどうするかというと、やはり生物酸化法より経済的には行いようがないようです。つまりその微生物酸化菌というものと空気とを利用して酸化して、そうして色をとるならば鉄と石炭を加える。或いはマグネシウム塩を加える。海水のマグネシウムも応用できるが、海水をパルプ廃水の五分の一乃至八分の一加えなければならないので、相当な水になるのでなかなかむずかしいのですが、所によつて漁民余り色のことを問題にするので、色を除くところまでもやることになつて、今計画中の会社がありますが、最近できたのは江津の山陽パルプですが、それは世界にでもないくらいの大規模な処理を始めました。やはり酸化するのですが、沈澱槽や酸化槽が非常に理想的にできています。下水処理よりも第二の沈澱池というものを立派にしましたら、沈澱物が一時間半乃至二時間沈澱されるように設計されましたが、非常にきれいな水になつて出ています。実害というものは殆んどありません。ただ色は幾らか付いておりますが、これをとるためには何千万円か金がかかるので本当に実害がないならば色をとるのはその次でいいのではないかというので、色をとる装置までしていますが、もう少し待つているということを私は申しまして、色をとるまではできる装置になつてつていつでもやれるのですが、結果を見て無駄に経費を使うべきじやない、こう思つて、色をとるのは第二段にしています。酸素をとる量が、百万分の千くらいあるやつが出るのですが、大体百万分の二百くらいになつておりますが、百万分の百五十くらい、つまり下水くらいになつたら満足だと思いまして、そうなるように努力しているようです。  それからもう一つ製紙工場があります。製紙工場のは、酸素をとるなんというのは、パルプ工場が百万分の千もとるとすれば、百万分の五十しかないのできれいなんですが、一つ問題なのは、白く濁つています。というのは、粘土のようなものを入れて、細かい白い繊維で濁つているのですが、それがなかなかパルプ廃水に劣らない。それが害を与えておると思います。なぜかというと、海の底に入つて海のマグネシウムなんかと一緒になつて沈澱物になつて、魚にまとわりつき、それから川へ入つて白濁したものが川の水のいろいろな物質と一緒になつて沈澱物になります。廃水はきれいなんですが、きれいにするために働いた沈澱物、微生物が魚や水産物に附いたり海苔に附いたりします。海苔に附くことは一番の問題で、よく製紙会社がパルプ会社よりやかましいのは、海苔に繊維が一面に附いてしまう、そうして海苔の気孔を塞ぐから製紙会社は害があるのですが、それをとるのは、経済的にみてまだやり方を知らなかつたのですが、結局は製紙会社のは何時間沈澱しても、白く濁つているのはとれないのですが、沈澱ばかり指導しているからまずいので、沈澱剤として鉄塩を加えるなり石灰を加えるなり、その廃水の性質によつて違いますが、いわゆる酸度、アルカリ度というのをどつちかにアジヤストしてやるというときれいになることがあります。いわゆるH・Pコントロールというのが技術ですが、それだけで製紙会社はきれいに相成る場合がしばしばあるのです。従つて廃水処理するのに、製紙会社廃水余り金がかからないのです。色もとれて実害もなくしてしまえと言えば、パルプ会社は立たなくなると思いますから、そこのところは、実害を四分の一、三分の一にしてもらいたいということなら甚だ合理的で、工場もやるつもりになるだろうと思います。  大体のところで今御百質問のありましたことに対して主なる処理方法の標準になるべきものだけお話いたしました。
  25. 松浦清一

    ○松浦清一君 詳しくお話を伺いまして、鉱山関係で同和鉱業が非常にいい設備をしておるということですが、その他の関係でどれくらいの程度のものをやれば工場の経営にもさして大きな影響はないし、沿岸魚族に対してもこれくらいなら辛抱しなければならんという代表的な各業種別のところをちよつとお教えを願いたいと思います。
  26. 柴田三郎

    参考人柴田三郎君) そうですね、それは鉱山の人に憎まれるかも知れませんが、大体水質汚濁防止法で、課長連中何十人に吊上げになつて懲力たことがあるのですが、あんな目に会いたくないと思います。鉱夫を連れて行つて殺してしまうなんて言われたこともあります。困つてしまいますが、大体において日本で一番問題になるのは岩手鉱山の松尾鉱山でしよう。御存じの通り北上川が花巻辺で二つに分れて松尾鉱山に入つて、それがまつ赤になつて流れる。あれくらいに大影響を与えているものはない。北上川に鮭が上らないというのは、そこへ上つたにしても花巻あたりまでに来るまでに白くひつくり返つてしまう。水産の技師がよく言つていますが、そのくらいになつていますが、結局は廃水は同和鉱業と同じ性質のものです。ですから同和鉱業が一トンについて百円の処理費を出せば、松尾鉱山も一トンについて百円の処理費を出してできるはずですが、松尾鉱山というのは、御存じの通り硫化鉱として日本一として自他共に許しておつて、岩手県の財政の大部分をなしておるので、岩手県もじつとして触れていないことになつているようですが、松尾鉱山としても何とかやらなければならないという気持は持つているのですね。それでこの頃やり出した方法は、深い井戸を掘つてアメリカの石油地帯でやつておるのですが、廃水を井戸の中に圧搾空気と共に吹き込んでしまう、そうして一旦出た廃水を地下に滲透させてしまうのですが、それはまだ四分の一か五分の一しか廃水処理していませんから、他の水は流れておる。その井戸を皆作つたらボーリングで大変な経済になつてできないと思いますが、できたとしても日本では問題になつてむずかしいのじやないかと思います。それはアメリカの石油地帯で、よく石油地帯から出た廃水が塩分を含んでいてたまらないから、井戸へ戻してやるのですが、アメリカの石油地帯は耕作物もない。アメリカ鉱山でアリゾナ地方とかテキサス、カリフオルニア地方では農地も余りない所をやつておるのですが、日本のように井戸水を飲むという所は、大体滲み込んじやう。しまいには地下水から害が来るのじやないかと私は心配しております。大体そういう影響が幾らかあるということを岩手県の技師から聞いておりますから、押込むものがだんだん地下水に滲み込むということが見えます。某県の例ですと、初め素掘の池に廃水を入れ、地下に惨み込ませた。ところが井戸水に滲透する、それから農作物を害する、それで懲りて川に処理して出すように考えているんですが、そのあとで土壤が変化してしまつたのです。このごとく廃水を地下水に滲透させることは影響が大きくなるのじやないかと思いますが、とにかく松尾鉱山としてはその方法をやろうとしております。それよりも同和鉱業のように処理したほうがいいかも知れません。水は流れるのが天性ですから、処理した後放流してもらいたいのです。同和鉱業の柳原などはやかましい。鉱山の排水口のすぐ下に魚がすめというのは私は酷だと思うのですが、同和鉱業には土地の漁民がそこまで要求して行つておる。廃水処理しても相当儲けがあつてあの鉱業は相当成立つておるのです。松尾鉱山なんかはもつとよく処理していいのじやないか。なぜならば、この前石巻湾の汚濁調査に行きましたが、あそこの多少の汚濁因はパルプ工場のためもありますが、北上川の水も相当影響を与えています。北上川汚濁には松尾鉱山影響を与えている。松尾鉱山の排水をきれいにしてもらえば北上川の魚族が助かるばかりでなく、石巻や仙台湾にいる魚族が助かることになると思う。同和は先ず良心的に行つている。或る鉱山が良心的であるのだから、ほかも良心的であつていいと私は考えます。それから別子鉱山なんかも相当やかましくやつているのです。で、川の水の色がそこに行つて青くなつておりますが、それももう少し沈澱銅として銅を回収してくれるようにしてもらつたらよいと思います。  それから足尾のほうは相当解決がついて渡良瀬川の魚はそう問題はないだろうと思います。日立鉱山は宮田川に出しているのですが、あの川は大昔は「あゆ」ぐらいはいましたが、今はおりません。灌漑用水用にも使つていません。一里ぐらいで海に入つてしまいます。だからあそこは大して問題にならないのじやないかと思います。それから小さな鉱山がいろいろあるようですが大体大きな例はそのくらい。それから釜石の製鉄所の上に釜石鉱業所というのがある、そこのところは鉱山保安法によつて沈澱処理をやつておる。やはりさつき小島さんがおつしやつたように沈澱した汚物は山にちよつと堰を作つてためておくと、大雨が降つて一遍に溢れ出してしまつて川に流れてしまつて、雨が降ると「あゆ」を放流したつて全然駄目になる。漁民組合は「あゆ」を放流することにきめたつてそれはどつちも愚かな話で、鉱山の排水をそういうところに捨てないで、何とか処理してもらわなければ、あのようなところに「あゆ」を放流しても死ぬことは当然だ。それは生物虐待になる。そんなことをしても無理だろう、それは誰かが教育しなければならない。県の水産課が何をしておるんだという輿論を聞きましたが、排水を処理してから「あゆ」を放流しなければ魚が死ぬことはわかつておるでしよう。稚魚を琵琶湖から買つて来て、処理しない廃水の入る川に放流しても、それは生物虐殺だ、このような点は水産かたがたが教育に努めて下されば漁民はわかるのじやないかと思います。
  27. 千田正

    理事千田正君) ほかに御質問ございませんか。
  28. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 大体私どもの伺いたいことをお聞きいたしました。これを本当に我々が腹に入れるためにはこんな短時間では到底駄目だと思いますが、大体のアウト・ラインを伺つたのでありますが、先ほど来洞沢さんのお話の中にございましたが、今皆さんのお話の中にもありました家庭或いは住民の排泄する汚物或いは下水といつたようなものが魚族に非常に有害な影響があるというようなお話がありましたが、又一面私どもが考えると、村落或いは市街地から出るところの汚水というものが、或いは又魚族の繁殖を助けるといつたようなことも我々は従来考えて来たわけです。例えば揚子江、揚子江の沿岸には非常に大きな都市が並んでおりまして、それから流出するところの汚水と申しますか、そういう有機物その他のものが相当たくさん流れて来る、その河口である支那東海の揚子江の出品の附近には非常に魚族の繁殖が多いというような事実は漁業者はよく知つておるのでありますが、こういうものが害が多いのか、或いは繁殖を助ける、或いは生物の生育を助ける面が多いのか、この点はどういうものでございましようか。
  29. 洞沢勇

    参考人洞沢勇君) それは両方まあ本当なんですが、結局問題は、例えば下水を出す、それを受ける川とか、或いはこれを受ける包容力がどのくらいあるかということできまるのです。それで包容力の少い場所へ多くの下水が入つた場合には、これは明らかに害になる。例えば東京都内の川は戦争前はどうであつたかというと、包容力の少いところに東京都内の汚い水がたくさん入つたものですから、この水の中の酸素が大分消費されてしまつて、そのために魚が上らなかつた。実際に目黒川であるとか、ああいうところは戦争前は魚が余りいなかつた。ところが戦争になつて八割の東京都民がやられてしまつた。そのとたんに出る下水がなくなり、それで御承知のように戦争前に魚というものは全然いなかつた所が、ほかの人が魚釣りに行つてとれる、それは棲息できなかつたために余り上らなかつた魚が上つて来た。それはこういう包容力の強い、今おつしやつたような揚子江のような所はそれけ包容力が大きい。そういう所に下水が入つて来れば魚の餌になる。微生物の繁殖は魚自身の餌になるというので殖えて来た。そういうふうに、そこのところの兼ね合いがむずかしいから、普通の場合には酸素なんか十分満足される場合には、そういう有機物のある所のほうがどつちかというと繁殖しやすい次第であります。受ける川、海とか、流す下水の量によつてこういうものが有毒になるか、有益になるかどうかということが決定されるのです。
  30. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 各工場或いは鉱山あたりから出て来る汚水が、しよつちゆう流れて来る所では水産物の抵抗力ができておつて案外参らない。だが、これが余り日頃その害を受けていない、例えばその対岸であるとか、或いは少く離れた地方等において海水の流れ、或いはガス等によつて海の水等が変化した場合に、その影響が関係するというような例があるものでしようか。そういつたようなことを耳にすることもあります。従来何ら実際の害がなかつたと言うが、一朝にしてだつと死ぬ。例えば貝類に多いようでありますが、逃げるものは逃げるでありましようが、貝類は先ほどもお話があつたように逃げるわけには行かない。日頃はそこに害がなかつたのに俄かに全部死んでしまう場合がある。それは対岸の汚水が海の水の潮流の関係その他によつてそこへ来たために、何ら抵抗力がないので、いきなり死んでしまうといつたような説をなす者もあるのですが、そういう事実があるものでしようか、若し御研究になつておれば伺いたいと思います。
  31. 柴田三郎

    参考人柴田三郎君) そういうことはよくあるのですが、その原因は幾つもあると思います。大体今秋山さんがおつしやつた通り、魚が大体ああいうものに馴れるということはありますが、だから川の魚が海の魚より案外丈夫なのは下水廃水に馴れるからであります。そういうことでむしろ川の魚のほうが案外汚水に馴れております。これで魚に抵抗力ができる場合があります。今秋山さんがおつしやつたその問題ともう一つ関連いたしておりますが、意外の方面で魚が死ぬということがありますが、それにはいろいろその原因がある。常に馴れておつて、いつも毒物が百万分の一ぐらいずつ同じ数量で出して来れば馴れてしまう。その水に馴れて来て抵抗力が強くなる。ところが時として工場は一回濃い廃水を出してしまうことがある、つまり一月に一遍ぐらい工場が大掃除をすることがあるとすると、濃い廃水を放流する、常に或る程度の毒物に馴れているところに濃い毒物ががつと来るから死んでしまう。又廃水吐口と離れた別のほうで死ぬということを只今秋山さんが申されましたが、それは河海水の水質の変化が現われるのは、その場合があるからです。それから工場の作業が失敗して、製品を失敗して、その失敗した製品をそこに置くわけに行かないから捨ててしまう、そうして貝が死んでしまうということがある、それは人為的であります。もう一つ嵐のときによく死にますが、四国でも一遍貝が死んだ、何か台風の嵐のときに泥水が引かき廻され、汚水が上のほうに上つて来る。それで汚水を常に出さなければいいのですが、汚水からの汚泥が沈積してそれが溜つてしまいまして、それが洪水で一時に攪拌されて上へ上つて来るから、それで魚族がたまらずに死んでしまう。  もう一つの原因は、或る工場なり、鉱山なりの排水同士がぶつかつた場合、その場合に新らしい毒物なり、害物なりができるということはしばしばあり得ることなんであります。薬品と薬品とが化合して毒物ができる。今まで何でもなかつたのが、潮流の関係でこつちの海水があつちに流れたりするのでありますが、そういうふうに潮流の関係と暴風で一緒になつてしまう。そうすると、そこで以て毒薬物ができて一遍に魚類が引つくり返る。そういうことはしばしばあります。川の魚が生きているのは酸性では約五・八くらいまででしようか、そこで川は弱酸性でも川魚は死なないが、廃水が海に入ると海魚は酸に弱いから死ぬのであります。そういうことが九州の某化学会社で例がありました。沖のほうでは魚は死なないのだから、漁民に言つたところ、やはり死ぬというので、立会で行つて調べて見ますと、結局は海の水と混合してその海の水を廃水の成分が分解して有害物質を生じたのです。このごとく今御質問のようなことはしばしばある。そういう場合に工場自分のせいじやないということがあるのですが、おのおのの工場の排水自体はわからないのですが、鉱山の排水と工場の排水と混つた場合に好ましからざるガスが発生するというようなことがしばしばあるのである。非常に気を付けないというと、却つて罪のなさそうなところにさようなことがある。工場に損害賠償をもらうというふうに導いて行かないと、工場もつむじを曲げてなかなかやらないと思うのです。
  32. 末広恭雄

    参考人末広恭雄君) 今秋山さんの御質問に対して柴田さんがお答えになりましたことに附け足さして頂きます。今の淡水の魚と、海水の魚のことですが、淡水の魚のうちに非常に抵抗力の強いものと弱いもの、例えば強いものは「うい」の類ですが、そういう種類と、非常に弱い「あゆ」とか、「ます」の類といつたようなものがありますので、その点にまだ多少その影響も……多少じやない相当影響があるということが考えられることが一つと、それからもう一つは、今柴田さんもおつしやいましたが、毒物に馴れる、多くの工場から出るような毒物に対しては、魚は馴れることがあるということを十分認められております。  もう一つ貝ですが、貝の場合は、浜名湖の事件にもそういうことがあるのですが、「あさり」のように逃げることのできないものと、「はまぐり」のように非常に予想外の移動力を持つておるものとでは、斃死の様子も違つて来るというような場合もありますので、その点はやはり考慮に入れて考えたほうがよいと思います。
  33. 洞沢勇

    参考人洞沢勇君) 今の潮流の関係で急に死ぬというような問題ですね。これは非常に湾なんか多いわけです。それで例えば湾又湖水のようなところですね。そういうところで養殖なんかやつておるときに魚が急に死ぬことがあるのですが、これは非常に特殊な例があるのですね。例えば普通の季節のときには死なないのですけれども、夏の暖かい時に急に死ぬことがあるのです。そういうような場合には、工場排水が湖水へ流れ込んで来るのだけれども、普通のときは水とよく混ざるために濃度が薄くなるのですね。ところが或る例では、夏暖かくなると水が層をなして固定するのですね。その層をなして固定した、非常に比重の差が大きいところへ、物質がずつと拡がつたのですね。そのためにそこを境にして硫化水素が出たりして、その間の魚は急に死ぬ。それから日本でもそういう例は工場排水ではよくありますが、一つの有名な例としては、ロシアのオブ河ですね。あそこではときどき急に或る季節になつて川の魚がみんな死んじやうのです。これなんかもやつぱりその説が二つぐらいあるのですけれども、有機物が非常に出て酸素がなくなるというのと、有毒なものが出るという説とがあるのです。そういうときには有機物も殖えておるし、酸素も非常に減つておるのです。ですから、そういう問題を今後調査されるときに特に気を付けなければならないのは、魚は移動力があるからすぐ逃げるというのですが、逃げるものもあるが、自分に有害なものでも、それを識別しないで却つてつて来るものがあるのです。だから場所々々によつて、種類によつて、視察されるときには十分吟味された上で結論を出されないと、普通の人が言つたことで、調査の結論を出すと案外間違うことがあるのです。先ほどから酸性だとか、有毒物質の量というような問題が一番大きな問題になつて来ますけれども、この問題についても、今までのいろんな実験結果から見ても、必らずしも、例えば酸性が何度から下になつたら或る「こい」なら「こい」は死ぬということを言つても、一概に言えない場合が出て来るのです。それは一番厄介な問題なんですが、水質によつて酸性度が違つて来るのです。同じ酸性度でも有毒に働く場合と有毒に働かないというような場合も出て来るので、こういう場合も、若し皆さんが現場へ行つて調査されるときに、一応あとで断案を下すときには、よく吟味されないとまずいと思うのです。  それからいま一つ水産業の人たちとか、工場の人とかが間へ立つて入りますと、いわゆる普通に見ても、成るほど常識的にそうだという結論を出しておられる、そうして視察に行つたかたがその通りだというふうに判断されることがあるのですが、実際には魚が逃げるとか、寄つて来るとか、致死量が幾らとかいうときには、十分なるまだ科学的な検討を要するような問題が非常に多いわけですね。であるから、こういう問題もまあ社会問題として起つたようなときにはやはり慎重にやられることが必要だと思うのです。現に今まで外国なんかでも有毒作用というようなことについてやつた実験でも、まだ一般に利用できない欠点を持つた報告もありますし、なかなかそういう問題がデリケートなんですね。ですから、はつきりと線を引くときには、やはりよく注意されないと、関係者の間でもそういうことが科学的な根拠なしに結論を下しておる例もありますから、こういうことは問題は広く、あらゆる分野のこの意見をよく聞かれて判断されるというふうに持つて行かれることが間違いが少いのじやないかと思います。
  34. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 お話伺つておるうちに、だんだんむずかしくなつて参りました。専門家かたがたが御研究になつて、なお且判然としないものを、我々素人が行つて調査をして断案を下すというようなことは、これは到底私はできないと思います。大体皆さんおいでを願うということは、私が提案したわけですが、まるつきり行つてみたところで何もわからないで、見て来ただけになるので、一応の予備知識は持つて行く必要があるというのでお話を聞く機会を作つたわけでありますが、私はもともと水産関係の者で、曾つて有明海で養殖「かき」が一遍に死んでしまつた、どうしても赤潮とか何とかというような、或いは苦潮だとか言つておるが、そういつたようなことも判然としない。そうすると、一方では大牟田方面の排水がしけの関係或いは風の吹廻しでこの辺に来たために斃死したのだろうというような説をなすものもあつて、我々はわけがわからず、死ぬだけ死んじやつたということもあるわけです。で、こういう例は外国にもあるということであつたのですが、結局今お話のありますように、はつきりしないために、どこへも持つて行きようがないというので、言つたつておれのほうの害じやないと言われれば、それをはつきり立証するわけに行かない、殊に毎日毎時出て来ておる汚水ならば、これは分析してみてもわかりますけれども、臨時に来るやつについては、どうもそのまま続いておればいいけれども、それつきりでわからないということになると、さつぱり掴みどころもないわけですが、我々もこれから各地にいずれ出て行つて状況をみて参ることになります。確かに鉱山或いは工場等の排水が水力に及ぼす影響のあることは、これはまあ概念的に認められるのであります。然らば何がどういう毒物が出て、それがどういうわけで死ぬ、或いは先ほど来のお話の、細かい繊維が非常に流れて来ると、それがために網にそいつが引つかかつてしまつて操作がうまく行かん、網が腐つてしまう、まあ普通より腐りが早いというような例は、附いておるか、附いていないか見ればわかるのですが、さてそれが魚に影響する、殊に海棲の魚族、例えば「いわし」であるとか、「あじ」、「さば」のごときものが来なくなつたとか、これは死んでおるのを見ればわかるのですが、ただああいうやつが来なくなつて来たというだけでは、果して毒物のために来なくなつたのか、そこらの判定は非常にむずかしいと思うのです。従つてそういうことを立証するためには、その海水なり、底質なりというものを十分検討しなければ判断もできないのじやないかと思うのですが、今のお話によりますと、魚が死ぬということは酸素の欠乏によるというようなことが概念的にはわかつたわけですけれども、直接に毒物として、例えば我々が青酸加里を呑めば死ぬといつたような性質のものもあるのじやないかと思います。直接いわゆる毒物となつて害するというようなものは、どんなものでございましようか。柴田さん……。
  35. 柴田三郎

    参考人柴田三郎君) それは製鉄所、ガス会社でもそうですが、青化物、それが相当製鉄、メッキ工場、ガス会社、そういうものから出て来ます。それから石炭酸とか、クレゾールのようなものもやはり化学肥料工場、製鉄所、ガス会社、そういうものから出て来ます。それからアンモニアも化学肥料、製鉄所、ガス会社から出て来ます。それから鉄も相当出ます。それから銅、これは主として鉱山から出て来ます。それから硫化物というものが又鉱山排水及び人絹排水から出ます。それですから人絹工場に行つたら、硫化物をどのくらい除去しておりますか、どのくらいになつておりますかということを聞けばいいと思う。鉱山でも硫酸塩はどのくらいあるかということを聞けば話はわかると思います。大体そのくらいじやないでしようか、主だつたのは……。大体日本工業廃水として毒物として考えられるものはそのくらいでありますね。それから魚族にはどのくらいの量で害があるか、これは洞沢さんも言つた通りなかなかむずかしい問題で、水が硬水であるか、軟水であるかということによつても違つて来るわけですが、一番わかるのは、製鉄所の排水で、沈澱池などを作つて幾らかでも処理しておるかどうかで、この排水が害を与えておるかどうかわかるのでしよう。この今挙げた御質問の鉄製所、パルプ、鉱山、澱粉、化学肥料、レーヨンという工場で何も処理方法をしていない、溜池一つぐらいもないというのは確かに近海を汚濁しておるという結論を下してもいいのではないかと思います。そこでどうかしてその実害を半分ぐらいにしてもらいたいものだというようなことを言えば向うでも話はわかるんじやないかと思います。その場合に赤潮のせいだというかも知れませんけれども、あなたのところの廃水は無処理で出していて海の色が変つているんじやありませんか、色が違えば魚というものはなかなか寄らない、又本当に臭気が微量であつて魚族は鋭敏であるから、それを避けて寄らないということであるから、何とかこの辺の臭いだけはとつてもらいたいと言うのが上手な話術ではないかと思います。
  36. 洞沢勇

    参考人洞沢勇君) 視察に行かれるならば、ここに行つてみたらと思うところがあるのですが、どこでも工場水産のほうが対立してそうして問題を起しやすいのですが、福島県では汚濁防止に関する、これは別にどうというのではなくて、会社側と水産のほうで会を組織しておるのです。ここでは非常に緊密な連絡をとつて工場同士でもちよつと失敗をやつて漁場に有毒なものを流したと考えれば、すぐお互いに連絡して最大の努力を払つて害を防ぐようにしておるのです。これは非常に何というか、民主的に行つておるいい例じやないかと思いますから、ここなんかも一つ視察されたらよいと思いますね。場所は郡山です。
  37. 千田正

    理事千田正君) ほかに皆さんのお気付の点で、特に従来問題になつておるという点がございましたら、お知らせ願いたいと思います。
  38. 松浦清一

    ○松浦清一君 柴田先生に伺いたいのですが、各業種別にどういう工場が比較的理想的な排水装置をやつておるかということがわかわましたら、お知らせ願いたいと思います。
  39. 柴田三郎

    参考人柴田三郎君) 業種別ですと、日本で排水を先ず比較的よく行なつておるのはレーヨン工場、これに大抵よくやつていますよ。東洋レーヨン、倉敷レーヨン、大和紡績、そういうような人絹を作つておるところですね。そこでは非常によくやつております。それから鉱山でも同和鉱山統は非常によくやつておりますから参考にたると思います。それからあとは製紙工場、これも沈澱処理とか、砂漉というのはよくやつているほうです。業種則でありますが、併し全部が全部そう丁はないので、やはり漁民との対立のうるさいところは相当よくやつております。大体製紙工場も相当な設備をしておるところは多いわけですが、いい惡いは別です、うまく指導されておるかどうかは別です。それからパルプ工場は大体において今までうまくやつていません。いませんが、東北パルプは幾らか沈澱槽があります。併しそれも改造しなければなりません。島根の江津というところに山陽パルプの工場がおりますが、それは日本一のパルプの排水処理だと思います。これなんか参考にされたらよいと思います。そこに今年の五月から工場ができて排水処理に約一億五千万円くらいかけておりますから非常に立派にできておるはずです。模範とするに足るのではないか思います。それから排水処理あと余り参考になるのはないようですね。製鉄所はまだどこでもやつていないのです。八幡の製鉄所なんか同じ水を繰返し繰返し使つてボイラーの冷却水にしたわ、熔鉱炉の鉄を冷すのは用いて成るべく廃水を多く出さないようにクローズド・アップ・システム、自分のところで閉じ込めてしまう、出す水を少くするということを考えております。併しそうして後に出る毒物を減らすということは製鉄所は今のところまだやつておりません。川崎製鉄所や富士製鉄所がやらなければならないといつて自発的に私にその研究を頼んで来ておりますから、半年くらいかかつて何かいい方法を考えてやろうと思つております。そうすれば、それがモデルになつて日本中にできるようになるのが運命です。なぜかといいますと、或る工場でやつて或る工場でやらないと、君のところは排水処理もしないで儲かつておると言われるといい気持はしないのです。自分のところは汚水のたれ流しだと言われるのは誰でもいやですから、モデルができるとやるものです。パルプ工場も山陽パルプが江律に立派な処理場を作つたのでうまく行くと思います。製鉄所はやつていませんが、九州の田川鉱山というのがあるのです。これは三井系統の鉱山で遠賀川の上流にあります。これは昔私が研究した方法なんです。モンド・ガスを作るガス廃水ですが、十分よく処理していまして、空襲でどうなつたか知りませんが、若し壊れないとしたらやつているかも知れません。後藤寺の近所です。九州においでなつたらお聞きになればよいと思います。  それから澱粉工場は単なる食物だと思つて漁民も油断していたが案外に毒なんです。それに気が付かないのでやつているところがないようですが、これはやらなくてはならないと思うのです。川水を非常に汚濁しますからね。それから静岡県の大井川のところにパルプ会社、KP会社、これはパルプ会社にもいろいろありましてクラフト・パルプ、それも幾らか模範となる処理はしておるらしいです。ここは参考になると思いますが、完全ではありません。完全と思われるのは島根の江津の山陽パルプ以外にはないと思つております。  それから醸造工場は熊本の八代に一番汚ないものの元になる「いも」の搾りかすや何かを腐敗させて、メタン・ガスを作つて、それを利用するという相当大きな設備戦争中これも又私が指導したのですが、できていたはずですが、今どうだかわかりません、行つてみませんから……。
  40. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 八代ですか。
  41. 柴田三郎

    参考人柴田三郎君) 八代に恐らくたしかそういうのが二つつてつているはずです。ですから八代に行つて熊本県に連絡すればおわかりになると思います。案外もう指導が戦争のどさくさで乱れてしまつてそのままかも知れませんが、何しろ山陽パルプは立派なんです。排水装置というものは下水処理も完全にできていませんので、緒についたばかりじやないかと思いますかり、日本では下水処理が先になると思います。さつき言つたように一人当り一万円以上も出して下水処理場を作るということはなかなか不可能と思います。今のところは自発的に工場方面でも処理しようということになつて動いて来ているのでありますから、これは非常にいい機会だと思います。
  42. 松浦清一

    ○松浦清一君 肥料工場はどうですか。肥料関係ではどうでしようか。
  43. 柴田三郎

    参考人柴田三郎君) 肥料関係はやつていないのです。それはやつていないのは水産のほうもまずかつたのです。肥料というものは、そう害がないと思われておりますね、ところが害があるのです、石炭などから作るのですから……。肥料工場はやつておりませんが、これはやつてもらうことをお願いする先ず親玉のほうかも知れません。
  44. 千田正

    理事千田正君) 大体皆さんの御質疑もこの程度で終りたいと思いますが、長い時間非常にお忙しいところ委員会に御出席下さいました参考人かたがたに厚く感謝申上げます。  なお委員会といたしましては、皆様方の御供述を参考といたしまして、今後日本水産業界のみならず、工業その他の日本の産業に寄与する方向に、水産委員会としての結論もそういう方向に向つて進みたいと思いますので、調査の結果なお且ついろいろ今後皆様方の御支援を得なければならんと思いますので、研鑚した一端でも将来ともに御注意なり御指導なりを頂きたいと思います。委員の各位にお諮りいたしたいのでありますが、それは十二日から一週間乃至十日の自然休会に入ると思いますので、その間に調査に行くか、或いは正規の八月一日以降の休会に入つてから調査に行くかというような問題並びに場所、日程その他に関しまして皆さんの御意見を伺いたいと思いますので、お諮りいたします。
  45. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 私は自然休会中に行つて頂くほうが都合がいいと思うのですが。
  46. 松浦清一

    ○松浦清一君 これは委員長一任という形にしておいて懇談しましようか。
  47. 千田正

    理事千田正君) 只今松浦君の御発言がありました通り、日程、場所、人選、こういう点につきましては、一応委員長にお任せを願いまして、各委員との間に十分折衝いたしまして、きめることにいたしたいと思いますが、如何いたしましようか。
  48. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 結構ですが、それは委員の人の都合によりまして、休会中に行く者もできようし、或いは自然休会中に行く者もできて差支えないと思いますが、そういう意味において、適当に各委員の都合を聞き合わしてお願いいたしたいと思います。
  49. 千田正

    理事千田正君) 秋山委員のおつしやること十分に了解いたしますので、そういう点も皆様にお諮りの上決定いたしたいと思いますので、委員長に一応お任せを願いたいと思いますが、御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  50. 千田正

    理事千田正君) 御異議ないと認めます。  つきましては本日の委員会はこれで止めることにいたします。次回の委員会はいずれ公報を以てお知らせいたします。本日はこれで散会いたします。    午後零時五十六分散会