○
参考人(
柴田三郎君) それでは私応用化学が専門ですから、幾らか知
つておりますから
お話いた
します。
製鉄所というのは鉱石を熔鉱炉でとかして銑鉄にする作業が主のようですが、必ずしもそうじやないので、そのために石炭ガスを使
つて、ガスによ
つて熔接する。それから石炭ガスを発生する場合に各種の副産物を発生する。それから又コークスを使いますが、そのコークスもよそから持
つて来たのでは、大変な大きな
工場なんですから不経済なので、
自分の所でコークスを造り、そのガスを作り、その燃料を使
つて鉱石をとかすのです。結局は製鉄業というと鉄をとかすだけでは大した毒物が出ないようなんですが、ガス、石炭
化成工業にな
つてしまうのです。惡水というものは主として石炭
工業から出まして、ガスを洗うというと、そのガスに入
つているところの亜硫酸ガスが
廃水に入
つて硫酸性となる、又硫化水素も落ちる。ガスを洗
つただけでも
廃水に毒物が入る。それからそのガスをと
つた残燈からコールタールが出ますね、ピツチ、あれをそのまま捨てやしないのですが、染料をと
つたり、石炭酸をと
つたり、ベンゾールをと
つたり、それからいろいろな薬物をとりますし、アンモニアもとりますが、その場合にそういうものが全部とられるわけじやなくて、
廃水中にアンモニアや石炭酸その他が相当たくさん量入る。例えば一リットル中に三グラムなり、二グラムぐらいのアンモニアがその
廃水に入
つて来ます。それから石炭酸も入る。それからクレゾールですね、要するにクレゾール、石炭酸、そういうものをタール酸と言
つておりますが、全部それは生物に毒なものです。それからいろんな鉄を冷す場合なんかに石墨が大変に一緒に落ちて来て黒鉛、これが又
廃水に入
つて来る。それから石炭も洗いますが、洗炭所というものがあ
つてコークスを造るために石炭の泥やなんか洗い流さなきやならん。その洗い落した泥が大変な粘土その他細かい石炭を含んで、それも
廃水に入
つて来る。あらゆるそういうものが、相当少い量のものもありますが、入
つて来る。それからピリジンなんていうもの、今いろいろいわゆる肺病の薬か何かの原料に使うピリジン、ピリジンをと
つて、そのピリジンなるものが又相当な
魚族に対してはかなり毒物なんです。そういうものが相当量入
つて来るのです。それで昔から産業
廃水で以て一番面倒とされているのはガス
工業の
廃水、それからその次にパルプ
工業の
廃水言われているくらいなかなか面倒な
廃水なんです。それでそういうふうに今言
つた通り主として石炭酸とかクレゾールのごときタール酸、それから油、つまり黒いタール類、その細かいタール類が水と混
つてエマルジヨンというものにな
つてどんどん流れて来ます。それから今言
つた通りアンモニアが相当出る。アンモニアというものも水に或る一定量あれば
魚族を死滅させます。そういう今
言つたようなそんなもの、それから石炭の粉、それからカルシウムか、ナトリウムとかも石炭と混
つたり、要するに粘土質のものが混
つて、その何と言いますか、石炭
工業ではボタというのですが、そういうどろどろしたもの、それから黒鉛、それから硫化物そういうものが出ます。水量も相当製鉄所では大きいので、大抵富士製鉄や
日本鋼管あたりでは全排水量は一日二十万立米や三十万立米ぐらいでありましようか、結局その中でボイラーなどを冷却したり、鉄を冷やしたりするというのは
余り害がないのです。そのうちどうしても何とかしてもらわなきやならんというものはせいぜい五千トンから一万トンですが、この五千トン乃至一万トンを
処理してもら
つたほうがいいじやないかと思います。
それでその
処理はどんなところから処置をするかというと、いろいろ過去において
研究も
しましたが、これからもしようと
思つております。というのは、産業
廃水問題というのは、
アメリカだ
つて盛んに
なつたのはここ二十年以来のことであ
つて、
下水と違
つて産業の
廃水処理というのは今なお
研究中であ
つて、どの
方法が標準だというものはまだ確立されていないのでありますから、私が言うのよりもつといい
方法があるかもわかりませんが、挙げますと、大体要するに先ほど申
しました酸素を生物的に消費する物質、皆さんがおつしや
つている水中の酸素を使うということは少いのです。なぜかというと薬物的なものですから。ですけれど結局は水の中の酸素に酸化されるから化学的には消費
します。それから先ほど忘れましたが、非常な毒のシアン、即ち青化物というものが相当発生
します。この製鉄の
廃水にはありまして、シアンとか石炭酸というものは
川水に放流されれば、
川水の酸化菌によ
つて、酸素によ
つて長い間には酸化されるのですが、
日本の川は非常に短いので、長く流れていないので酸化される暇がない。海に入
つて、海の水に少量あ
つても魚や海苔が臭くなる。そうして大変品度が落ちます。その品度を落さないようにするにはどうするかというと、一番経済的な
方法は製鉄所内で
廃水に酸素を加えて
しまう。川の生物を利用する代りに、その製鉄所の
廃水処理工程中で石炭酸やシアンを分解する菌を優先的に繁殖せしめることができます。そういうものを繁殖させてそこに盛んに空気中の酸素を送
つてやるのであります。そうして自然にだんだんに殖えて来るところの酸化菌、それから空気中の酸素によ
つて処理するのですから薬は要らない。それによ
つて石炭酸、シアンを酸化して
しまう。
廃水を
処理しても全然これがなか
つたようには自然水を保護できないが、例えば製鉄所の
廃水が海に出て今まで二キロくらいの範囲に出ていたのが、そういう
処理をすれば〇・五キロくらいにとどめ得ると思いますが、私の考えでは製鉄所の
廃水が出る所で
魚族が死ななくて済むようにも
処理はできるが、そういうことをすれば製鉄所はやめろということに等しいから、それは無理だと思います。
世界でもそういう
処理はしていないのですから、せめて三分の一の
汚濁度にとどめて
しまうということになれば大成功だと思います。それには今
言つたように生物酸化法、生物を殺す物質を出すのに生物で酸化できると言うとおかしいようですが、甚だおかしくないのは、温泉あたりに硫黄バクテリヤが硫黄を蓄積し、珊瑚虫がカルシウムを蓄積して珊瑚を見ればわかるでしよう。鉄バクテリアが鉄を蓄積して行くというようなこともありまするから、石炭酸やシアンに適する微生物が繁殖してそれを分解することがおわかりでしよう。併しそれは限度がありまして、
余り多量の石炭酸やシアン、青化物は酸化できないので、その限度がありますが、その限度も大体わか
つております。大体シアンが百万分の二百五十、石炭酸が百万分の三百くらいまででしたら
処理できます。
工場としては
廃水を
処理すると多分毒物の七割くらいは除去できます。その
程度の
処理方法をや
つてもら
つても
工場は破産
しません。私が指導して九州の田川
鉱山のモンドガス
廃水処理をして成功したことがありました。それから石炭の粉とか粘土とかいうものは沈澱池で沈澱してとる
方法ですが、現在の沈澱池は非常に小さくて滞流時間五分か三分くらいで流れて
しまつて形だけのものしか作
つていない。そこでせめて一時間から一時間半水が溜
つておるようにするとよいでしよう。今のところは沈澱法よりもよい
方法がないから沈澱時間を長くするよりほかないだろうと思います。それからその次に、
鉱山とい
つても広いので、銅の
鉱山あり、石炭の
鉱山あり、銭鉱、硫化鉱、いろいろあるのですが、結局
日本の
鉱山というものは酸性の水を出すので、今さつき皆さんが申されましたP・Hが低いということになるのですが、その酸性を何とかしなければならないのですが、鉄は硫化鉄ですから無論酸性の水を出すのです。それから石炭でも、石炭の中に含んでおる硫化物のために石炭を洗
つた水は酸性にな
つておりますから、それを石灰の粉若しくは生石灰、消石灰で中和するというのが一番の
方法です。併し相当金がかかる
方法です。例えば同和鉱業でや
つておるのでありますが、石炭一トン
当り百円の石灰費を使
つております。併し
漁民がなかなか面倒を言うところなのでや
つております。同和の或る山では一年一千万円の石灰費を使
つております。そのために川へ放流されても鮎が
余り死なないようにや
つております。或る
鉱山によ
つてそれほどできるものなら、ほかの
鉱山でもできるのじやないかと思います。けれ
ども私が見たところでは同和鉱業のようによく行
つておる所はありません。同和鉱業ができるのにほかの鉱業ができないことはないと思います。そのほか
日本の坑水には大抵鉄が多い。なせ鉄が多いかというと、銅を流すということは
余りしない。鉄と銅とを置換する。そのためにP・Hが低くなると共に鉄が水に溶けて赤い鉄の水が出る。赤い鉄は色はくどいのでありますが、鉄というのは百万分の百くら
いまでなら魚も死ぬとは言いきれない。併し百里の場合がしばしばあります。結局今説明したように、中和するために石灰を使うと濃い水酸化物とな
つて赤い沈澱物にな
つて落ちて
しまう。銅であ
つても石灰で以て中和すると水酸化銅として落ちますから非常にうまく除ける。大体
日本の
鉱山は石灰類を使う。そのほかの
方法もありますが、
研究の途中にありますから申上げられませんが、その石灰を使うのにいろいろありまして、石灰の石にしてそれで撒布濾床というのを作り、坑水を濾せばそれかいいのですが、石灰を細かい粉にしてこれを空気に掻きまぜてやる
方法があります。それから消石灰にする
方法でありますが、それでも来る水が酸性である。少し理窟つぽくなりますが、P・Hというもの、水素濃度というもので五・〇以上にとどめてもらいたいということに、
水産委員のかたがいらつしや
つて鉱山に交渉すれば向うでもわか
つて下さ
つて言うことを聞いてくれるかも知れません。
それから石炭山ですが、これもさつき
言つたように酸性になりますが、それよりももつとひどいことは、細かい石炭の粉末ですね、それが田圃の水に入る。それは
農業方面のことですが、それから結局は魚の匂いも臭くなります。これを防ぐには沈澱池を大きく作ればよいので、
日本の炭山では沈澱池が
余り小さ過ぎる。もう少し大きくすればよい。それは結局は小さな川だ
つたら川のダムを作ればよいので、現状では
魚族に被害を与えます。川を堰きとめて、ダムを
二つ、三つ作
つておけば川が沈澱池の役目をする。ドイツのルール
地方では石炭
鉱山の考えで河にダムを盛んに作
つてそうして
処理しておりますが、そんなにしておれば案外経済に
処理できるのではないか思います。
石炭
鉱山のほうはそのくらいにして澱粉
工場、澱粉
工場というものは毒物は何かというと、
廃水の中に有機物が非常に多いのですが、
魚族や
水産物に必要な酸素を澱粉
廃水が使
つてしまつて、結局
魚族が死滅するのです。その上に漂白剤として亜硫酸ガスを使うこともありますし、又塩素を使うこともあります。ですからそういう漂白剤の毒物が水の中に入る。それからもう
一つあるのは繊維、さつまいもの繊維や何か非常にたくさん出ます。その繊維が結局泥状にな
つて河底に沈澱して、それが腐敗することがありますから、その繊維と漂白剤と、それから酸素を除去したい。その三つを何とかしてもらうのがいいのですが、
処理方法として
最初は沈澱を
しますが、その沈澱をする場合に澱粉というのがコロイドになりやすい。それだからなかなかそのままでは沈澱しかねるこがあります。この場合やはり石炭を入れるなり、鉄剤ですね、これを小量加えるなりすれば、殆んどきれいに沈澱するのです。沈澱の泥の問題ですが、先ほどどなたかおつしや
つた通り、泥が雨のために流れる。この泥の問題ですが、一
方法は消化法です。これはタンクの中に汚泥を密閉して
しまう、そうすると結局これは腐敗して最後にメタンガス、炭酸ガス等のガスを出
します。腐敗した後の汚泥は非常に乾きやすいから乾かした後畑の肥料にできる。澱粉
工場の沈澱の上澄みは見かけはきれいですが、相当脱酸素物質が残る場合もありますが、川の水が多か
つたり、海の水がきれいだ
つたらそのままの放流でいいと思います。問題が起るようだ
つたらそれを生物酸化、石の層を濾過するとか、空気をよく掻き廻してやるとかしてやれば安全だと思います。
それからもう
一つ醸造
工業という
お話が出ましたが、醸造
工業は多分お酒、合成酒及び醤油のごときものを言うのであると思いますが、醸造
工業廃水というものは
二つあると思います。いもの搾り汁、そういうどろどろしたのが
廃水の中にまざ
つて流されて
しまいますが、あれが流されるのはかなわないのです。相当の繊維もあるし、川の底や海の底の泥に沈澱するものもありますから、あれをよく搾れば家畜の飼料になりますから、あれを機械的に外国では盛んに脱水しているが、その脱水機械を備えることは
工場経済にひびを入れないでできますから、搾
つてもら
つて豚や何かの食物に廻してもらえばいいと思います。それもいやだというならば、残渣だけ集めて、さつき申上げましたように空気を全然遮断して
しまう消化法をとる、そうすると、そこからメタンガスや炭酸ガスが主として出て燃料になり、残りは非常にさらさらしたものになります。それは非常に乾きやすいので肥料にする。それから上澄みは結局は生物酸化のようなもので
処理することが一番いい。これがなぜ経済かというと、自然界に繁殖するところの酸化菌及び空気中の酸素を使用するので非常に経済である。
世界的に皆この方向に向
つて来ております。なぜかと言うと、薬品を使
つて処理するということは、この地上に限りあるところの
資源を
廃水のために使うのでも
つたいない。できるだけは空気とか酸素を使うということがよいからです。醸造
工業廃水というものの
処理はそうむずかしいものではない。ただ先ほど言
つた繊維を除くのがなかなか難物なんですが、機械的にいろいろな金網スクリーンを置いてと
つたりその
あと沈澱させて除去する。これは腐敗を早くするからむずかしいので、結局薬剤を加えて沈澱を促進させる。最もよいのは残渣を
廃水に入れないことでしよう。入れないようにするということは、これの水分を搾
つて取る。搾り滓を家畜の飼料か肥料にする。浮いている固形物を
川水に流すということだけはやめてもらいたいということを
お話する。それだけはやめるべきが
工業道徳だと私は考えております。
それから化学肥料、これは硫安
工場や何かのことですが、これも相当に
水産物に害があるのであります。なぜ害があるかというと、大抵石炭をガスとして、その石炭ガスの中から合成すべき一方の物資を取る。例えば水素を取りまして、空気中から窒素を取
つてそれらを化合して硫安にするというのが化学肥料の原理です。その他石炭を乾溜する場合に製鉄所の
廃水と似たものを出
します。ガスを作
つて、そのガスの中の成分から肥料を取る。コールタールをただ捨てて
しまうということはしないで、タールから石炭酸とかいろいろのものを取るということになりましよう。製鉄所と同じようなシアン化物、青酸加里のようなもの、それから石炭酸、そういう毒物が出ます。それからアンモニアも相当流れておる、タールも流れて
魚族に非常な害を与える。それですからそれを
処理する
方法も、製鉄所と同じく生物酸化法という
方法をと
つてもらう以外に途はないと思います。そうすると
汚濁度が三分の一くらいになると思います。
もう
一つの問題のレーヨン
工場の
廃水処理ということについてですが、ここでは、アルカリの
廃水と酸性の
廃水と
二つが出る。アルカリ
廃水と酸
廃水とを先ず分離しておいて、それを混合して、不足のアルカリを加えて中和している。そうしてその
あと沈澱して、そうして砂で濾過するのが現在までのレーヨン
工場のやり方ですが、結局は中和が足りないと酸性のほうが強くなりますね。大抵のレーヨン
工場は酸性のほうが強くな
つているようです。そのために魚が参ることがあります。次に硫化物が相当出ます。つまり硫化水素がそれに入ります。次に細かい繊維が出ます。この三つが出て来るのであります。繊維は
大分砂濾しによ
つて除去できるが、その砂濾しはすぐにつま
つて一週間もた
つたら使えなくなるので、視察に行
つたときは水を出しているが、常に通していないことが多い。砂濾しは役に立
つていません。細かい繊維は今のとこる流れています。
日本のレーヨン
工場はなかなか立派な
処理をしておりまして、どこを廻
つて見てもレーヨン
工場は何の
処理もしていないというわけではないのです。必ず
処理をしているんですが、その
処理が
ちよつとばかり旧式です。砂濾しはすぐにつま
つて中で硫化物が出るので、東洋レーヨン、倉敷レーヨンでは砂濾しはよくないとい
つてやめたら大変工合がいい、こういうことを聞いております。更に私が奨めた
方法は撒布濾過法です。この
方法がなぜいいかというとそれは硫化物を酸化するからです。空気を与えて酸化すれば硫化水素が硫酸塩や単体の硫黄になる。
島根県の大和紡績は
戦争中相当立派な
処理をや
つたが、それでも
魚族を殺して非常に問題が多か
つたのですが、何とかしたいということで、私がお手伝をして、硫化物を酸化して空気中に発散して水に出さない。硫黄にして沈澱するようにする、その
方法は詳しくなるからここでは申上げませんが、やはり生物酸化しよ
つたんですが、酸化槽の上に立つと硫化水素で頭がくらくらするくらい、硫化水素をと
つてしまう結果として水がきれいにな
つておりまして、すでに三カ月や
つておりますが、
魚族が死んだというのは
一つもないとい
つて工場は大変喜んで、私も見て参りました。大体以上の
処理によれば、レーヨン
工場の
方面の
汚濁は大変なくなるのじやないかと私は期待しております。
それから
一つパルプ工場の
お話を忘れました
パルプ工場廃水というものは害を与えるものはどんなものがあるかと申
しますと、大体主としてやはり水中の酸素を使用することが困る。なぜかというと、材木には砂糖分
がたくさんあるのですが、その糖分というものは川の水の中に入るというと、酸素を使うので、その糖分による害が非常に多いのです。澱粉なんかも砂糖と同じようなものですから、同じような害があるのです。それからリグニンとかタンニンのようなものは案外相当な量まで害がないものなんですが、ただ色がある。褐色の色を呈している。
魚族が背中に青色をつけているのは保護色のためですが、褐色の中に入ればほかの大きな魚やとびやたかに見つかるものですから、おつかなが
つて入
つて来ないこともある。その色が
余り感心しないのですが、色を無くするということは甚だむずかしくて、
工場の経済を侵すことになるので甚だむずかしいんじやないかと思いますが、海の水の酸素を使
つているのが非常に多いので、アルコール醸造
工場と同じく酸素を使用するというのでは
廃水界の王様です。この酸素消費量を三分の一くらいに減らして
しまえば
パルプ工場の
廃水というものは非常に改善されるのじやないか、こう
思つております。それはどうするかというと、やはり生物酸化法より経済的には行いようがないようです。つまりその微生物酸化菌というものと空気とを利用して酸化して、そうして色をとるならば鉄と石炭を加える。或いはマグネシウム塩を加える。海水のマグネシウムも応用できるが、海水を
パルプ廃水の五分の一乃至八分の一加えなければならないので、相当な水になるのでなかなかむずかしいのですが、所によ
つては
漁民が
余り色のことを問題にするので、色を除くところまでもやることにな
つて、今計画中の会社がありますが、最近できたのは江津の山陽パルプですが、それは
世界にでもないくらいの大規模な
処理を始めました。やはり酸化するのですが、沈澱槽や酸化槽が非常に理想的にできています。
下水処理よりも第二の沈澱池というものを立派に
しましたら、沈澱物が一時間半乃至二時間沈澱されるように設計されましたが、非常にきれいな水にな
つて出ています。実害というものは殆んどありません。ただ色は幾らか付いておりますが、これをとるためには何千万円か金がかかるので本当に実害がないならば色をとるのはその次でいいのではないかというので、色をとる装置までしていますが、もう少し待
つているということを私は申
しまして、色をとるまではできる装置にな
つてお
つていつでもやれるのですが、結果を見て無駄に経費を使うべきじやない、こう
思つて、色をとるのは第二段にしています。酸素をとる量が、百万分の千くらいあるやつが出るのですが、大体百万分の二百くらいにな
つておりますが、百万分の百五十くらい、つまり
下水くらいに
なつたら満足だと思いまして、そうなるように努力しているようです。
それからもう
一つ製紙
工場があります。製紙
工場のは、酸素をとるなんというのは、
パルプ工場が百万分の千もとるとすれば、百万分の五十しかないのできれいなんですが、
一つ問題なのは、白く濁
つています。というのは、粘土のようなものを入れて、細かい白い繊維で濁
つているのですが、それがなかなか
パルプ廃水に劣らない。それが害を与えておると思います。なぜかというと、海の底に入
つて海のマグネシウムなんかと一緒にな
つて沈澱物にな
つて、魚にまとわりつき、それから川へ入
つて白濁したものが川の水のいろいろな物質と一緒にな
つて沈澱物になります。
廃水はきれいなんですが、きれいにするために働いた沈澱物、微生物が魚や
水産物に附いたり海苔に附いたり
します。海苔に附くことは一番の問題で、よく製紙会社がパルプ会社よりやかましいのは、海苔に繊維が一面に附いて
しまう、そうして海苔の気孔を塞ぐから製紙会社は害があるのですが、それをとるのは、経済的にみてまだやり方を知らなか
つたのですが、結局は製紙会社のは何時間沈澱しても、白く濁
つているのはとれないのですが、沈澱ばかり指導しているからまずいので、沈澱剤として鉄塩を加えるなり石灰を加えるなり、その
廃水の性質によ
つて違いますが、いわゆる酸度、アルカリ度というのをどつちかにアジヤストしてやるというときれいになることがあります。いわゆるH・Pコントロールというのが技術ですが、それだけで製紙会社はきれいに相成る場合がしばしばあるのです。
従つて廃水を
処理するのに、製紙会社
廃水は
余り金がかからないのです。色もとれて実害もなくして
しまえと言えば、パルプ会社は立たなくなると思いますから、そこのところは、実害を四分の一、三分の一にしてもらいたいということなら甚だ合理的で、
工場もやるつもりになるだろうと思います。
大体のところで今御百質問のありましたことに対して主なる
処理方法の標準になるべきものだけ
お話いた
しました。