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説明員(
山本三郎君) 私
利水課長でございますが、御指名を頂きまして
琵琶湖の
総合開発化のことを御
説明申上げます。この
琵琶湖の問題を御
説明する前に、現状を先ず簡単に御
説明申上げますと、これは非常に雑駁な図でございますが、この図を御覧頂きます。ここが
宇治になります。現在は
琵琶湖のここに
洗堰という非常に原始的な板を入れまして
琵琶湖の水を操作する堰がありまして、これで
琵琶湖の
水面を
調節しております。これは
内務省時代に
直轄工事で施工いたしまして、その後ずつと
建設省で直接管理しております。これは淀川の
下流の
洪水を
調節いたしますと同時に、又
琵琶湖の
水面を
調節いたしまして
沿岸の
被害をできるだけ除去しよう、こういう
目的のために操作されておるわけであります。こういうふうにいたしまして
洪水並びに
下流の
利水の問題を
建設省が
直轄で管理しておりますが、
電気といたしましては
洗堰の所から
水路式で取入れまして、延長約八キロの
水路で
宇治という所に導いて、
宇治発電所というのがございます。これが三万二千キロだと思いますが、
水路式の
発電をや
つております。それから瀬田川の
下流にやはり
宇治という
堰堤を作
つておりまして、これを一部
堰堤のすぐ直下へ落しまして大峯の
発電所というのがございます。それからもう
一つは
水路式で
志津川という所に持
つて参りまして
発電しております。合計六万四千キロの
設備があるのでございます。そういうわけでございまして、
発電をいたします所は三カ所ございますのですが、これを
洗堰とこの
宇治の現在あります
堰堤との間で
発電すれば、この間の
落差で
発電できるわけであります。それからこの
調節ももつとうまくやりますると、
下流の
用水、
大阪、
神戸方面の
水道並びに
工業用水それから又
大阪の郊外の
灌漑用水の問題にもつと寄与できろということにな
つておるわけであります。結局そのほかにもう少し
調節をうまくやりますれば、
琵琶湖の
沿岸の
被害を除けます。結局問題は
三つあるわけであります。より以上に
琵琶湖に手を加えまして
琵琶湖の
沿岸の
洪水を除去してやろうというためと、それから
発電所の
落差が余
つておりますのを、もつとよく利用しよう、或いはもつとピークに使えるような
発電の
機構にしたらどうか。こういう問題とそれから
下流の
用水の
目的にもつと
琵琶湖を利用したらいい、もつと利用する方法はないか、この
三つの問題が残されておりまする
琵琶湖の
総合開発の重要な点だと思うのであります。それに対しましてお聞き及びのことだと思いまするが、いろいろな案がありまするのですが、煎じ詰めますと
三つの案が考えられておるわけでございます。これはお手許に差上げましたプリントの三十七ページに表がございますが、この表がわかりにくい表でございましようが、
三つの案を比較して示しておるわけでございます。そのうち一番上の横に一段式案というのがございますが、これは
地建が
立案に当
つた案でございます。それから二段式の
一案というものでございますが、これはその二段式のうちの
一案というのは
ちよつと修正した案でございまして、二段式の二案というのは
滋賀県で
立案している案でございます。取りあえず二段式の
一案というのはお考え頂かなくても
ちよつと修正した案でございますから、一段式案と二段式の
一案の
関西電力の案それから二段式の二
案滋賀県
修正案を一応お考え頂ければよいと思います。
概略を申上げますると、一段式案というのはそれではどういうことかといいますると、この赤く引いた所に大きな
堰堤を作りまして、こちらの図面で申上げますると、これが先ほど申上げましたこれによりまして
琵琶湖の
水面を
調節するわけであります。これがありまして、それから
志津川というのがこの
位置にあるわけでございます。結局さつき申上げましたように、この間の
落差がまだ余
つておる、それをどういうふうに処理しようかという問題ですが、一段式というのはこの
宇治の新
宇治という所に一本大きなのを作りまして、
琵琶湖の
水面をここまで延長しよう、そうしましてそこでここへ一遍に大きな
発電所を作りまして、従来ここから取
つていたような水は取るのをやめて、ここで一遍に
調節をして落してしまおう、こういう案でございます。それによりますと、
最大発電力というのは約二十万
キロワツト、結局この表によりますと十九万三千三百
キロワツトであります。約二十万
キロワツト・アワーの
発電機をここに据え着けまして、一遍にここで
発電しよう、こういうのでございます。
それから次の二段式というのは
関西電力が考えておるのでございまして、ここに外畑という
堰堤を作りまして、ここに遊んでおりまする
落差を使う。それから更にこの
志津川の所にございまするこの
志津川の
発電所を更に増強いたしまして
発電力を
増加しようというのが二段式になるわけでございます。この
堰堤を作りまして
琵琶湖の
水面をここまで持
つて来る、それから更にここで水が又更に余るからこれを増強しよう、こういうのでございます。
それから
滋賀県の案でございますが、これは丁度この
堰堤の
位置を変えまして、
鹿跳に
堰堤を作りまして、
琵琶湖の
水面をここまで持
つて来る。そしてあとはやはり
志津川の
発電所を増強しよう、こういう案でございます。これらはすべて
立案者によりましていろいろと基礎に使いました
資料など異にしましたが、それを何とかいろいろの
資料を揃えなければいかんということになりまして、
建設省で、ここに掲げましたように、
電気或いは土木の
権威者に委嘱いたしまて、いろいろの
資料を揃えまして検討して頂いたその結果が、この
琵琶湖総合開発に関する
意見書というものにまとま
つておるのでございます。
これによりますと、この三案の
工事費が三十九頁に算出してございます。それから四十一頁には各月別にどれだけの
電力が発生できるかということを検討してあります。それから四十二頁に
資料五号として
増加する量と
発電原価が出ております。それによりますと一段式案によります
増加する
電力量は一億三千九百万
キロワツト・アワーでありまして、
発電の
原価は五円四十銭、それから二段式の
関西電力の案によりますと
増加する
電力量は一億九千四百五十四万四千
キロワツト・アワーでありまして、
発電原価は五円二十七銭になります。二段式二
案滋賀県案によりますと
増加電力量一億八千八百八十四万六千
キロワツト・アワーでありまして、
発電原価は五円五十六銭になります。これから見まして私が御
説明するまでもなく
電力量が最も大きいのはやはり一段式案になります。こういうように
水路で流して行く時には或る
程度落差がこれで死にますから、
堰堤で全部まとめてやりますと、その損失がなくなるから
増加の
電力量は一段式案が一瞬大きくなるわけでございます。併しこれによりますと、こういう既設の
発電所が全部駄目になるわけでありまして、それらの
残存価格がどのくらいあるかということを評価いたしまして、それらを勘案いたしまして出したのが、こういうような
発電原価でありまして、
関西電力案が五円二十七銭で一番安く、一段式案が五円四十銭、二段式二案が五円五十六銭、こういうような
結論にな
つたのでございます。
それからそれでは
下流の諸
用水はどういうように放流してやるかということでございますが、三十頁にございます
責任放流量、これは
電気には或いは要らない場合があ
つても、
下流の諸
用水を確保するために必ずこの
琵琶湖から放流してやらなければならん量でございまして、三十一頁に毎月
責任を以てこれだけの
流量は
下流の
水道或いは
工業用水或いは
灌漑用水のために放流してやらなければならん量をきめてございます。この量は
地建が
下流地方の諸
事情を考慮いたしまして、これは十年先頃にはどうしてもこれだけの量が諸
用水のために必要であるという判定をいたしまして出した量でございますが、いずれの案もこの
流量を確保するということに足を揃えております。
それでは
委員さん
たちはどういう
結論を出したかと申しますと、四頁に
結論がございます。それを読上げて見ますと、「以上要するに各案とも
発電原価が高く、このままでは
早期着工は困難と考えられる。
従つて今後更に湖の利用、水深、補償問題、
下流への
放流量、
最大使用水重、逆
調整池問題等を再検討して、現在及び将来の
電力事情に適応する経済的且つ効率的な
開発計画を
立案すべきである。」これはどういうことかと申上げますと、第一に
発電原価が非常に高くなる。これはいろいろさつきの
工事費の算出のところにもございましたが、護岸の
補償費或いは
ダムを作りますために、この大石村というところが百七十戸ばかり浸水するのでございます。それらの費用に十四、五億かかる。それからその他
発電機などもだんだん高くな
つておりまして、こういう比較的
低落差の
水路の多い
発電所でございますから、
水路式発電機が
思つたより高くかかる。こういう結果から現在や
つております各
電力会社の
計画しております
発電所に比べて非常に高い、こういうことを言
つております。四十五頁に
電力五カ年
計画案による
貯水池地点建設単価一覧表というのがございますが、それによりますと三十七
カ地点の平均の
キロワツト・アワー当りの
建設費は二十三円三十銭になります。こういうものに比べると少し高いじやないかということになります。
それから
琵琶湖の
電力は
火力の
代用になるということでございますが、それでは
火力の
発電原価はどのくらいかかるかということですが、これは
公益事業委員会のほうで
作つたのでございますが、四十七頁に
資料七号というのがございますが、これは十三万二千
キロワツトの
火力発電所の
発電原価の概算でございますが、それによりますと
発電原価は
石炭を
使つた場合は大体六円五十銭から六円の間である。これに比較しますと
琵琶湖の
単価は大体同じくらいになるのでございますが、他の水力のものに比べて非常に高いということを
委員さん
たちは
結論付けておるのでございます。
それからもう
一つは、
下流に流す
責任放流量というのを考えておりますが、これはこれだけすぐは要らないのだ、将来はこういうふうに放流するにいたしましても、漸進的にこれに近付けて行つたらいいじやないか、これに余り制限されますと
電力が自由に発生できないから、
融通性を持たせて順次開発して行つたらいいじやないかというようなことを言
つておるのでございますが、この
責任放流量というようなものももう少し検討して見る必要があるのではないか、こういうふうに言
つておるのでございます。
それから逆
調整池の問題というのは、新
宇治に大きな
堰堤を作りまして、ここに大きな
発電機を据え付けまして、現在毎秒三百三十トンの水を流しておるのでありますが、もつと大きな量を流すようにして
石炭の
代用発電をさせたらいいじやないかというのですが、併したくさん水を出しますと
下流に対しまして非常に悪い影響を与えます。もう
一つは
宇治のここに小さい
堰堤を作りまして、これから出す量をもう一遍ここで
調節して
下流に平均化して流してやろう、こういうような意味で考えておるのでございます。
それから現在、将来の
電力事情に適応する経済的且つ
効率的開発計画を
立案すべきであるということは、これは
電力の需給の想定の問題でありまして、
琵琶湖をうんと
石炭代用の
発電所にするか、或いはそう大きな
設備をしないで平均化して常時
発電させるということが最も重要な問題だと私どもは思うのでありますが、こういう点を更に検討しなければならんと思います。この点は非常に
委員さんの間でも問題に
なつたようでございますが、こういう点をもう少し検討する必要があるのではないか、こういうふうに
結論付けられたのでございます。こういうようなわけでございまして、
建設省といたしましては従来この
洗堰を
直轄管理いたしておりますが、これも
相当古くな
つておりまして改造しなければならん時期に来ております。従いましていかなる場所に
堰堤を作りましても、この
調節というものは
下流の京都、
大阪、兵庫それに
滋賀にも
関係いたしますので、この
堰堤だけはどこに作りましても、その操作は
建設省でやらなければ問題でございます。従いまして今のような
結論が出ておりますので、今年度も更に少いのでありますが
調査費を計上いたしまして、これらの
堰堤についても、又
下流の
用水の問題などについてもう少し検討して見なければならんというようなことで、更に今年度も
調査を続行する。こういうように考えておるのでございます。以上簡単でございますが、私の
説明を終ります。