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説明員(佐藤
源郎君) それでは私から概略をお話申上げます。
先ほど鉱山局長から御
説明のありました
調査の結果は、すべて露頭
調査による結果でございまして、現在までに露頭以上に本格的な探鉱作業が行われたところは、一番奥の奥野と申しますところの更に奥地に旧坑個所がございますが、その個所につきましては、私どもの二月における
調査の際は、まだ雲が厚く積
つておりまして、又時間の
関係から、そこを
調査するわけにいがなかつたのでありますが、これは日本鉱業株式会社が過去恐らく十年前後に一応の探鉱をした個所と聞いております。そしてそういう本格的の探鉱作業を行
なつた個所につきましては、私どもは
調査を行いませんでしたのでありますが、私どもはすべて露頭を見て歩いたわけでありますが、すべて露頭の状況は、
先ほどの
鉱山局長がたのお話のように、今回は露頭状況ではいい結果のものは見当らなかつたのでありますが、大体金鉱脈と申しまするのは、特にそれが日本の第三紀時代の……、いささか專門的に過ぎますが、第三紀層の前後に胚胎いたしました金鉱脈と申しますものは、露頭と、それから実際の鉱脈の内部との間に相当著しい変化が現実に存在しますのがむしろ通則でございまして、
ちよつと略図を掛けますとよろしいのでございますが、例えば露頭で三グラムというようなものがありましても、それでその鉱脈全体の
価値が判定できるわけのものではございませんので、更にそれを鉱脈に沿いまして十メートル、二十メートル、百メーターと掘
つて参ります間に、数十ぐらい、或いは百ぐらい以上の富鉱体が、塊まりをなしまして
ちよこ
ちよこ
ちよこ入
つておるという場合に遭遇いたしましたことが、過去の幾多の実例において現実に認められております。従いましてこの露頭状況が、余り金のいいものが見当らなかつたということだけで、その鉱脈全体、従いましてその
鉱区全体の
価値が無
価値であるとか、或いはもう捨ててもかまわないというような判定は、誰も下し得ないのでありまして、特にこの伊豆半島の、日本で最も古くから金鉱山が開発されております、日本の中でも最も重要な産金地帯の中にある石英脈は、一本一脈といえどもこれを無
価値であると、露頭の状況から言
つて無
価値であるとは断定できないと私どもは
考えておる次第であります。これを
一つの例をとりますと、
先ほどお話に出ました
伊東温泉の極くそばに露頭を持
つております、いわゆる松月院露頭、松月院というお寺の境内に近いところに露出しておりますいわゆる松月院露頭でございますが、これが大正年間に、私どもの
地質調査所の先輩が
調査いたしました際は、百三十六グラムとか、或いは数十グラムというような非常な高品位のものを出しましたにもかかわらず、今回の
調査の際はやはり三グラム以下の極めて貧鉱しか見付からなかつた次第でありますが、そのことは取りも直さず、大正年間露頭であつた所が、現在はそこを掘り盡してすでに
価値の低いところにぶつか
つておると、こういうふうに
考える次第であります。更に又それを奥に掘りました場合に、又富鉱体ができて来ることも、そういう可能性も容易に
考えられるのであります。日本の金鉱脈は欧米各国の、世界各国の実例に徴しますと、やはり何と申しますか、非常に
規模が小さくて、この
規模が小さいと申しますのは、鉱脈の大きさという
意味とは必ずしも限りませんのでありますが、いわゆる鉱脈が外国のものに比べて長く続かなかつたり、或いは一定の幅、一定の厚さで延長しなかつたり、又品位の問題も同じ程度の品位のものが長く通じているということがむしろ非常に稀れでございまして、大体の場合は今申上げましたように殆んど無地の加工
価値のないように見えますまつ白な石英脈の中に殆んど偶然的に、この偶然と申しますのは、大体申しましたことでございまして、專門的に申しまと、いろいろ富鉱体が出て来そうなきめ手はいろいろあるのでございますけれども、一見したところでは、例えば露頭の状況などではこの下に果して富鉱体があるかどうかということは現在の私どもの專門の
技術の
範囲内では容易に判定し得るものではないのでございまして、特にその鉱脈の周りの精細な
地質調査を行いましても、必ず下に行けばいいとか惡いとか、断言的な言葉は用いることができないのであります。従いまして露頭状況だけではその
鉱区全体の
価値は判定できないという私ども
考え方をこの御返事に代えて申上げたいと思います。