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1952-06-05 第13回国会 参議院 外務・水産連合委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年六月五日(木曜日)    午後一時五十九分開会   —————————————  委員氏名   外務委員    委員長     有馬 英二君    理事      徳川 頼貞君    理事      野田 俊作君    理事      曾祢  益君            杉原 荒太君            團  伊能君            平林 太一君            川上 嘉市君            伊達源一郎君            岡田 宗司君            金子 洋文君            加藤シヅエ君            大隈 信幸君            大山 郁夫君            兼岩 傳一君   水産委員    委員長     木下 辰雄君    理事      松浦 清一君    理事      千田  正君            秋山俊一郎君            入交 太藏君            小串 清一君            小滝  彬君            藤野 繁雄君            佐多 忠隆君   —————————————  出席者は左の通り。   外務委員    委員長     有馬 英二君    理事            徳川 頼貞君            曾祢  益君    委員            杉原 荒太君            團  伊能君            平林 太一君            伊達源一郎君            金子 洋文君            大隈 信幸君   水産委員    委員長     木下 辰雄君    理事            松浦 清一君            千田  正君    委員            秋山俊一郎君            藤野 繁雄君   政府委員    外務政務次官  石原幹市郎君    外務参事官    (外務大臣官房    審議室勤務)  三宅喜二郎君    外務省欧米局長 土屋  隼君    水産庁長官   塩見友之助君   事務局側    常任委員会専門    員       坂西 志保君    常任委員会専門    員      久保田貫一朗君    常任委員会専門    員       岡  尊信君    常任委員会専門    員       林  達磨君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○北太平洋公海漁業に関する国際条  約及び北太平洋公海漁業に関する  国際条約附属議定書締結について  承認を求めるの件(内閣送付)   —————————————    〔有馬英二委員長席に着く〕
  2. 有馬英二

    委員長有馬英二君) 只今から外務水産連合委員会を開会いたします。  北太平公海漁業に関する国際条約及び北太平洋公海漁業に関する国際条約附属議定書締結について承認を求めるの件を議題といたします。先ず本件の提案理由説明を求めます。
  3. 石原幹市郎

    政府委員石原幹市郎君) 只今議題となりました北太平洋公海漁業に関する国際条約及び北太平洋公海漁業に関する国際条約附属議定書締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。  我が国は、昨年署名された平和条約第九条で、公海における漁猟の規制又は制限並びに漁業保存及び発展規定する二国間及び多数国間の協定を締結するために、希望する連合国と速かに交渉を開始することを約束いたしました。この趣旨に基いて、日本国政府の主催の下に、日本国カナダ及びアメリカ合衆国の間の三国漁業会議が昨年十一月から十二月まで東京で開催され、この会議において、北太平洋公海漁業に関する国際条約案及び北太平洋公海漁業に関する国際条約案附属議定書案が採択され且つ勧告されました。  日本国カナダ及びアメリカ合衆国政府は、これらの条約案及び附属議定書案について軽微な字句の修正を行なつた上、これらの案により条約及び附属議定言締結することに意見が一致しましたので、本年五月九日に東京で各自の全権委員を通じてこの条約及び附属議定書に署名いたしたのであります。  この条約及び附属議定書は、日本国カナダ及びアメリカ合衆国の三国の共通関心事である北太平洋漁業資源最大持続的生産性を確保するため、三国の間で有効且つ適切な措置を講ずることを目的とし、我が国にとつて適当なものと認められるのであります。よつて、ここにこの条約及び附属議定書締結について御承認を求める次第であります。  何とぞ慎重御審議上速かに御承認あらんことを希望する次第であります。
  4. 有馬英二

    委員長有馬英二君) それでは、次は逐条説明外務省欧米局長土屋君にお願いいたします。
  5. 土屋隼

    政府委員土屋隼君) 只今石原次官より提出理由についての説明がございましたので、ここに皆さんのお手許に差上げてございます北太平洋公海漁業に関する国際条約案につきまして、各条簡単な説明を加えさして頂きたいと思います。  この条約附属書と共に日本カナダ及びアメリカ三国の共通の関心事であります北太平洋公海におきまする漁業資源を最大に継続的に持続して、その最大な継続的な生産性を如何にして維持するかということに条約の目的があつたわけであります。従つてこの最大の持続的生産性を維持するために有効且つ適切なる方法はどこにあるかということが条約の目的でございました。日本の立場から見ますと、特にこの点について差し加えたいと思いますのは、戦前日本の漁船は北太平洋アメリカ並びカナダ沿岸地域に出漁することについて、ややもすればアメリカ側からの疑惑を招きやすかつたのでありますが、この条約を規定することによつて、当然の権利として行ける部面には日本は出漁して差支ない。何らのアメリカの非難もカナダの非難もないわけでありますし、一方日本として或る意味で抑止しなければならないという条件のきまつたものについては、日本側としてそこに措置を講ずるということが当然に予期されるわけでありまして、その趣旨を目的としたこの条約であることを先ず第一に申上げなければならないと思うのであります。それからあとで説明をいたしまするが、条約特徴として考えられまするのは、従来のこういう漁業について、これは新らしい試みの一つだと考えられますが、必要なる共同保存措置を先ず規定するということ、そしてこの必要なる共同保存措置を規定いたしましたものにつきましては、締約国どこの国にもこの共同保存措置というものは平等に適用されるということを確認したわけでありまして、この点が仮に条約の特徴がありとすれば特徴かと考えるのであります。この共同保存措置の具体的な例といたしましては、条約にございますように、北太平洋漁業国際委員会を設けまして、この漁業国際委員会が必要なる保存措置確定等につきまして研究を続け、又勧告をし決定をするということになりまして、この国際委員会におけるところの勧告というものが各締約国において採用すれば、それが即ち最後的にきめられましたる各国間の共同保存措置ということになるわけであります。委員会勧告いたします共同保存措置には大体二つの場合がこの条約では予期されているわけであります。その第一は、この条約の第四条第一項(b)に規定してございますように、科学的調査だとか、或いは一国において、或いはその他の国におきまして、法的措置を以て漁獲を或る程度まで制限しておるとか、或いはその漁獲された漁獲物が完全に利用されておる、而もこれについて現在もなお科学的調査が行われている、こういう点を考慮いたしまして、こういう点を備えたものにつきましては、すべてこれは委員会決定した漁族についての場合におきましては、この委員会決定に基く勧告に基きまして、各国はこの当該魚種保存措置をとる漁獲活動をする。従つて或る国は制限をされますし、場合によつて全然この漁獲に従事しない国もできるということがこの保存措置一つの場合であります。ところが抑止される国、つまりその漁獲のできない国はどういう国かと申しますと、これはこの魚族につきまして、或る地域について実質的な漁獲を過去においてしていなかつた、つまり実績のなかつた国が抑止せざるを得ないということになるわけであります。それから共同保存措置のもう一つの場合は、第一、つまり今申上げましたように、或る国は漁獲に従事していたし、或る司は漁獲に従事していなかつた。従つてここに最高の継続的生産性を維持するために従来実績のなかつた国は抑止をする、従来実績のあつた国は新らしい共同保存措置の下において、その制限下において漁獲をするというのが只今申上げました共同保存措置一つの場合になるのでありますが、それ以外に、まだこの関係国全部で或る国は漁獲を自制し、或る国は制限下漁獲をするという状態までまだ行つていない。併しながら実際上これ以上漁獲を進めること自体についてはいろいろ最高の生産性維持ということについて疑点があるという事態が発生して来ました場合におきましては、その実際上漁獲に参加している国だけの間で共同保存措置を講じて最高の持続性、つまり保存措置を講じて行くということにする。この場合において漁獲のない国はその漁獲には今までの実績がなかつたことになりますが、併し実際上の利害関係がございませんし、又その実績のない国をやめさせるという状態まで行つていないのでありますから、関係の国だけでこの共同保存措置をきめて行く。この二つの場合をこの委員会が、この条約によつてできます委員会勧告する共同保存措置としてこの条約は予定しているわけであります。それだけの目的と、それからこの特徴とを申上げまして、各条の簡単な御説明を申上げたいと思うわけであります。  先ず第一に前文でございますが、この前文は条約の大眼目といたします点を謳いました。そして従来国際法或いは国際法上の原則に基きまして、公海漁業資源というものを開発する権利というものは締約国各国にあるという事実を先ず確認いたしました。それから、この権利はあるのでありますが、この権利を極度に各国が主張いたしますと、その結果、漁獲資源の枯渇を来する虞れもある場合もあるのでありますから、これにつきましては、当然に最高の継続約生産性というものを維持するために共同の協力、共同の何と申しましようか、義務を負つて資源保存を促進する義務を自由且つ平等の立場において負うということを先ずここに確認したわけであります。それで前文の最後におきましては、こういつたこの条約の予期しますところの事態を考えまして、先ず締約国にとつて共同利害関係がある漁業の最大の持続的生産性を確保するために必要とされる保存措置の確定について科学的研究をする、及びその調整、或いは締約国にその保存措置勧告するため、条約の三締約国を代表する国は、この通りの条約を結びましたと言つて一条以下の条約を規定するために一応の前文を設けたわけであります。  第一条でありますが、これはいわばこの条約の総則と申上げていいかと思いますが、この条文におきましてこの条約の全文に通ずる一般的原則として挙げられたる点を謳つたわけでありまして、先ず第一がこの条約適用区域でありますが、適用区域条約区域とこの条約では謳つておりますが、条約の適用上、この水域は北太平洋の全般の水域、それからその水域に接続する諸海を含むと書いてあります。北太平洋が一体どこで、南太平洋となり、或いは中部太平洋になるかという問題は一つここに論議されなければならない問題になるのでありますが、一応常識的に考えまして、赤道以北太平洋を全般的に北太平洋と呼ぼうということに当時は了解が大体成立つていると思います。一条の第二項に規定いたしました点は、御存じの通り各国には領海につきまして主張のいろいろの食い違いがあります。ソ連のように十二浬を主張している国もございますし、我が国は従来三浬を一応……そうしてこれが国際慣習上、或いは国際法上確立されたる原則といたしまして主張して来たわけでありますが、今申上げましたように、国によつて広い領海を主張する国もあるのでありますが、この条約はもともと北太平洋における漁業資源についての規定をする条約で、国際法の原則をきめる条約でもなければ、領海を規定する条約でもないわけであります。ただ問題は、この条約の中に領海若しくは領水という言葉が出て来ます関係上、各関係国の中で領海とは何ぞやという問題が論議になりますと、この条約締結ということは非常にむずかしくなつて来るわけでありますから、そこで条約の先ず言葉のうちに、各国が領海についていろいろ異なる主張を持つていたにしても、本条約は何らそれに関係なしということにいたしまして、一応このむずかしい問題をこの条約は逃れたわけであります。第三項は、漁船という字をしばしば使つておりますが、この漁業に従事する、或いは漁業に従事する従備を持つている船、いろいろの解釈ができまして、この点も将来漁船が何であるかということが問題になる可能性がございますので、三項におきまして、本条約が規定しております中に使つた漁船という意味はこの意味だということをここに一応の了解として挙げたわけであります。  第二条は、北太平洋漁業国際委員会の設置をここに謳いまして、この条約国際委員会を本体として、この国際委員実施機関によつて条約の実行を期するというわけでありますから、先ず第一に国際委員会の設置の点をそこに挙げてあるわけであります。このうちで特に特徴と思われます点は、この委員会は決議、勧告その他にいたしましてもすべて全会一致であります。従つて各三国からは、規定してありますところによりますると、四名以下の代表が出るわけでありまして、極端に申しますと、日本なら日本から四名の委員が出席するわけで、三国合せて十二名の委員がマキシマムに出席するという可能性もあるのであります。その際も決議、勧告その他は一国は一つの票により、而も委員会の決議として出て来るもの、勧告として出て来るものはすべてこの三国の一票の票が集つた三つの票が一致しなければこの委員会の意思としては、成立しないという点に一つ特徴があるかと考えるわけであります。それからこの四人の委員日本なら日本から出て行くのでありますが、この四人の委員を、第三項に述べておりますように「各国別委員会」と書いてございますが、日本には日本委員会がある、カナダにはカナダ委員会がある、アメリカにはアメリカ委員会があるわけで、この委員会を構成するものが表決としては一票を持つということになるわけであります。第四項はおきまして、五項あたりで毎年一回会合する、その他要請があつたら会合するという、一応ほかの委員会にもありますような規定を設けてございますが、第六項に、国別委員部が四つございまして、この国別委員部から成り立つたところの委員会議長、副議長或いは事務局長というものが当然に選定されるわけであります。これは第一回の国際委員会におきましてその最初の議長なり、副議長なり、事務局長なりがきまるわけでありますが、その際に議長、副議長が同国から出る、或いは議長事務局長が成る一つの国から出るということを避けるためには、議長、副議長並びに事務局長は三国の割当てで、翌年度においては昨年議長をやつた国は副議長となり、事務局長をやる、昨年副議長なり、或いは事務局長を勤めた国はその次には議長を勤める、こういう形に順繰りに廻つて歩こうというのがこの第六項で規定したところで、各国が平等の義務を負担しよう、権利を持とうという点をこういう点で委員会では現わしたわけであります。七項は委員会の本部でありますが、これは第一回の委員会におきましてきめることになります。つまり条約は皆様の御審議を経まして議会の承認を得、批准を経たあとにおきまして効力を発生いたしますと、第一回の国際委員会を開くわけでありますが、この国際委員会におきまして本部の位置をどうするか、それから本部の構成をどうするかということを委員会がきめて行くことになるわけであります。第八項におきましては、各締約国国別委員部のために諮問委員会を設置することができる。国別委員部諮問委員会を以て国内的ないろいろな事情、各般の利益というものをこの諮問会において代表するということをここで可能なように規定してありまして、この諮問委員会は全体の委員会が一応の会議を開くあらゆる場合においてはこの会議に出席してオブザーヴァー的役目を勤める。併し委員会から諮問がある場合においてはこの諮問に答える。但し秘密会委員会決定した場合は除きますが、それ以外の場合においては大体委員会諮問機関として活動ができるようにと各界、特に業界の人たちの意見をここに表現しようというのがこの委員会の意図で、第八項に謳つたところはその趣旨を述べたわけであります。それ以外に関係者若くは一般からの意見も開く必要もありますので、第九項には委員会公聴会を開くことを規定しております。又単に委員会だけでなく、各国別委員部もその国の関心事におきましては、自国の公聴会を別途開いてよろしいという規定を第九項に設けてあります。第十項は委員会公用語で、これは日本語及び英語ということにきまつておりますが、日本語及び英語というのは併用する必要がございませんので、日本から出す資料につきましては日本語だけのものを出す。或いは英語だけのものを出しても差支えない。そうしてこの資料なり或いは委員会の提出するものが、各国の言葉が違うが故に阻害を受けないようにというのが第十項の趣意であります。第十一項、十二項、十三項につきましては経費を規定いたしました。それから十三項につきましては、原則としてこ委員会共同の費用は各国共同の分担、各国の負担したものを共同経費とすれば委員会決定してこれを委員会共同の費用に充てる。各国別の費用につきましては、この国別の事項について活動し、若しくは関連あるところの国からこの経費を支出するという意味で委員会の経費を十一項、十三項、十三項に謳つたわけであります。  第三条は、北太平洋漁業国際委員会の任務であります。この任務はいろいろの点でこの条約を論議します際一番問題になつたところでありますが、委員会の任務については委員会の行う勧告の基礎について定めた第四条かございますが、この四条を憲法とし、そうして委員会はこの三条の規定に従つてその任務を遂行することになりますので、この条約案におきましては、第三条、四条というのがいわばこの条約の骨子になるわけで、そうしてその骨子をなす、更に運営の主体となるのは国際委員会ということになるわけであります。第三条の点で特に説明を差加えなければならないかと思います点は、先ほど条約特徴として共同保存措置のことを申上げましたが、この共同保存措置に伴う点が本委員会の任務といたしまして一番主たる任務に差当りはなるのではないかと考えるのであります。漁獲自発的抑止を行う場合の勧告というのは、委員会が第四条の規定に基いた基礎によりまして自発的抑止のための条件をすべて合理的に充たしておるという事実を確認いたしました無極につきまして、先ずこの魚種附属書に記載する。そうしてこの規定を附属書の中にはつきりと述べてしまう。第二に、その該当しておる一、又は二の締約国がこの魚族の漁獲を自発的に抑止すること、つまり過去において実績がなかつたという点をとらえて、今や期限満限に達しておるのにかかわらず、実績のなかつた国が従来も関心がなかつたのであるから、今後保存措置を講じた暁においても、この保存措置内においても漁獲ができないということで各国が自発的にこれを抑止するということになるのでありまして、その一方従来実績があつてその魚種漁獲に参加していた国があるわけでありますが、この国におきましても同じく義務を課しまして、委員会のきめた必要なる保存措置を引続いて実施して、この保存措置を実施することにつきましては責任を持つて報告しなければならないし、又この毎年々々の実情というものは委員会が取上げて、果してその共同保存措置を長く続ける必要があるかないかという点につきましても委員会決定をしなければならないわけでありますから、そこでこういう際には、こういう事態が発生いたしました際には、委員会といたしましてはこの魚族について常に研究を続け、そうして共同保存措置をするに適当な、その際にどういう措置をとるか、又その共同保存措置をすでにする必要がなかつたか、その際には如何にして附属書からとるかという点をこの第三条は規定しておるのであります。ただここに問題になりますのは、条約締結の際、例えば今年条約が批准を得たとしますと、この国際条約締結の際に、第四条に掲げましたようないろいろの共同保存措置を講ずべき条件がすでにあつたと、こう当時この条約の会議に参加いたしました国が認定した魚種というものが大体予測できたわけでありまして、そこでこの附属書に最初から明記いたしました魚種については、委員会条約の発効後五年間は決定勧告も行わないという点に一つの例外がございます。これは実はこの附属書に最初から挙げました魚種につきましては、日米間、或いは日本カナダ間にすでに戦前において長い間いろいろの論争を招いた魚種であります。従つてこの魚種につきまして長い間の研究の結果、二年や三年で新しい決定をするということはむずかしい魚種でありまして、大部分が四年なり五年なりしませんと、新しい事態と言つて決定するのには無理な魚種なのであります。その結果、五年間を据え置き期間といたしまして、五年の後に初めて委員会がこの問題については新しい事態があり、これについての決定をし、そうしてこの勧告各国にするということにこの第三条はきめてありますが、この点が一つの例外をなすかと思います。又漁獲自発的抑止を伴わない場合の勧告につきましては、今申上げました通り、実際上実績のない国は関係がないのでありますから、これは参加しないということになりまして、従つて漁獲に実際上に参加していた締約国国別委員部だけがこれを共同保存措置決定勧告をし、而もこの共同保存措置決定及び勧告というのは参加した締約国だけが縛られる。参加しない、つまり実績のない国はこの共同保存措置については何らの責任も義務もないということに規定をされたのが一つ特徴であります。このほか委員会の任務といたしまして、各種の報告又は条約違反に対する各国間平等の刑の細目の制定についての勧告、或いは漁獲についての各国の記録の編集、或いは保存措置の効果についての再検討というような任務、これはすべて第三条がこれを謳つているわけであります。  第四条は先ほど申上げましたように、委員会勧告決定をするに当りまして、いわば基準となるこの委員会の憲法でありますが、この基準につきましては、これも委員会におきましては非常な論争があつたわけでありますが、大体合理的なものとして次のようなものを認めたわけであります。先ず四条の(a)、(b)、と並べました点がこの条件になることになるかと思いますが、委員会漁獲自発的抑止勧告することができる魚族というものはこの条件の(b)でございます。(b)に褐げた三つの条件がありますが、この三つの条件を充たしておるという点を認めました場合においては、委員会はこれに従つて共同保存措置を講じ、且つ実績のない国について自発的抑止勧告するということができます。これはいろいろ御質疑がほかに出る問題だと思いますので、私は問題になる点を一、二点拾つてみたいと思うのでありますが、先ず締約国がこの条約効力発生前二十五年間を実質的漁獲の、つまり歴史的利関係のある時期となぜ認めたかという問題でありますが、これは主として日本の事情を考慮いたしました。そうして過去日本水産界の発展から見まして、過去二十五カ年間に日本実績を持つておるところを確保すれば少くとも日本は過去の実績というものを無駄にされる心配はなかろうという見地から二十五年を主張いたしまして、この点はアメリカカナダも承認するところとなりまして二十五年という数ができたわけであります。  それからもう一つの点といたしましては、この(i)、(ii)、(iii)という科学的な調査その他の条件があつて、これに例外規定として但書がついておりますが、この但書のうち、(1)と(2)は問題はないと思うのでありますが、(3)の、「関係締約国漁獲操業の歴史的交錯、この操業によつて漁獲される魚種の交錯並びに関係締約国間の共同保存及び規制に関する長期にわたつて確立した歴史が存するために、その結果として操業及び取締の分離が実行困難となつている水域。」ということを掲げてありますが、これは実際上から、世界に、こういうような歴史的交錯或いは操業及び取締が実際上分離困難というのは、私どもが論議しましたところでは、アメリカカナダとの海岸以外にはないという結論を得たわけでありまして、これを例外規定として設けましたゆえんのものは、アメリカカナダとの水の流れ、その他従来の漁獲実績から見まして、あの間に発生しました一つの魚族は、アメリカの海岸にも行くしカナダの海岸にも行く。而も一度や二度でなくてその間を往復するという現実の事実がありますし、又例えばカナダで育ちました、カナダの川で孵化されました鮭、鱒の類も大きくなるとカリフオルニアの海洋にまで遊びに行く。それが遊んでいる間にカナダにも入つて来る。それでいよいよ五年なり六年の月日がたちまして、育つていよいよ元に自分が孵化した川に卵を生みに帰るというときには、北のほうから入つて来てカリフオルニアの海岸まで行つて、カリフオルニアの海岸から更にカナダの海岸に入り、そうしてカナダの海岸からカナダの川に入つて行くという事実があるのでありますから、その際カナダ側で初めにとるか、或いは回遊しているカリフオルニアでとるか、或いはカナダの川に戻つて来たときにとるか、とこでとつて実績があるわけで、これはアメリカ実績とも言えますし、カナダ実績とも言えるわけであります。こういう点から両者を区別して、どちらの実績だということは実際上の問題として困難となりますので、この二つの国のどちらかが実績がある場合においては、他の国も実績があるということで、アメリカアメリカ実績を主張した場合においても、アメリカ実績があるから、カナダ実績がないからやめるということをこの魚族については言われないということを規定いたしました。本件は、実は直接の関係日本にはございません。この条約を結びに来たカナダの唯一の目的が、この歴史的交錯で自分だけが抑止されてて、アメリカだけが漁獲することがないようにということがカナダの目的たつたのでありますし、日本にもさしたる支障もありません。アメリカ若しくはカナダの一国にだけ抑止はしない。両国を抑止することは理論上あるわけでございますが、一国だけを抑止しないということで日本には直接の関係はないわけでありますが、この点がこの条約で少しいわば特例として設けられた特例になるわけで、これは一にアメリカカナダ魚種関係、海岸の関係、或いは操業の交錯した関係から来る特殊の例としてここに認めましたので、私どもはこの条約を雛形として東南アジアその他の諸国と今後漁業条約を結ばなければならないかと思うのでありますが、その際に、この第三項が日本側にとつて非常な不利になるというようなことは大体予想をしなかつたわけであります。第二項は、先ほどから申しました実際的な実質的な漁獲ということを実績といたしまして、この実績のある国の権利を保護しているわけでありますが、実績は場合によつて戦争があるとか、同盟罷業があるとか、或いは場合によつて何らかの事情で海の流れの二、三年間特殊な事情によつて違うということも考慮できるわけであります。又国内的な事情によつて、従来の実績を場合によつて暫くの間その実績として続け得ないということもあり得るわけでありますから、この条約におきましては、そういつた特殊的に、或いは突発的に発生し得る事態によりまして停止された実績というものは、一応実績の本質的な考慮には影響を反ぼさないという点を特に考慮いたしました。この点は日本は戦争、その後に続く長い期間によりまして、日本の水産業というものは最近の機会において相当いわゆる実績というものを確立していなかつた場所もありますし、又従来の実績も続け得なかつた場合もあるのでありますから、日本のためには恐らくこの条項は有利に解釈し得るというふうに考えますので、各国も又この日本の特殊事情につきましては考慮を加えてくれるものだと予期しております。  第五条は、附属書のことを謳つております。附属書は特殊の魚種と特殊の水域とにつきまして共同保存措置の実際を謳つたものが附属書になるわけであります。この附属書条約と分け得ない一部をなすというのが一番取扱上からも条理上からも当然たと思うわけでありまして、第五条の第一項はこの点を不可分の一部となすという点できめたわけであります。又今後附属書は随時事態の変遷或いは国際委員会が調査の結果修正を見るわけでありますから、この修正を見た際も、これは条約の一部と考えられるわけでありまして、それだけを離して考えないということに考えますから、ここに掲げてございますように、第七条の規定に従つて修正されたこの附属書を含むものと了解するという意味にここは述べてあります。第二項は、さつきちよつと申上げました第四条の共同保存措置並びに抑止の条件を初めから、この条約締結の当時から持つていたものとして規定したものについて規定しているわけであります。この規定につきましては、抑止された国は当然抑止を守るのでありますが、抑止されない国も又決して権利義務がないというわけではありませんで、きめられた制限内においてこの義務を忠実に履行しなければならないという点を謳わざるを得なかつたわけであります。  第六条は、この条約締約国でない第三国が漁獲に実質上に従事した場合におきましては、折角締約国間において共同保存措置をきめ、或る国は抑止するということになりましても、従来この条約締約国でない、従つてこの条約に何ら規制されない第三国が現われまして、この三国が実際上の漁獲に従事するということになりますと、折角の条約の趣旨は没却されるわけであります。そこでこの点を憂慮いたしまして、この条約締約国でない国が、この以外の国が委員会の事業又はその条約の目的の達成を妨げた場合の措置についての規定で、事実を知つた締約国、気のついた締約国はどの国でもいいのでありますが、その国がほかの締約国の注意を喚起して、そうしてこれによつてすべての締約国はこれを妨害的な影響に対して如何なる有効的な措置をとるかということを緊急協議をいたしますし、時間があればこの委員会で取上げまして、改めて保存措置を廃止するなり、或いは保存措置を強化するなり、その他の方法なりをとるということを広く規定いたしました。その結果、ここに妨害的影響に対してとるべき措置について協議するという言葉を書きましたが、協議するということは、決して委員会を無視するものでもありませんで、緊急措置をとり得るようにというので、多少余裕がある言葉が使われているわけであります。  第八条は、各国間の記録に関する義務を説明しております。これはこの委員会もできますし、各国関心事項ですから、当然かと思います。  第九条は、国民及び漁船に対する禁止の事項であります。保存措置を講じまして、成る法的な制限を設けているわけでありますから、これは条約上そういう締結をし、そういう義務を一国が負うわけでありますが、国内的な措置をいたしませんと、実際上各国の国民に対しては実際上の効果は及ぼさないわけであります。そこで保存措置を実施するために、締約国はその国民及び漁船に対してなすべき禁止、又措置の実施のために必要な法令の制定、施行について規定しているわけで、自発的に抑止に同意した締約国の国民及び漁船はその魚種に対する漁獲活動をすることは禁止されます。又魚種に対する保存措置を引続き実施することに同意した締約国の国民及び漁船は、保存措置に基いて決定された規定違反に対して漁業活動に従事するということは禁止されているわけであります。  第十条は、第九条を受けまして、実際上の違反措置があつた場合にどうするか、この違反行為に対する取締であります。この取締の点は、申上げるまでもなく他国の国民に或る程度まで強権を発動しなければならないという場合に予想されるわけであります。仮に日本の禁止した鮭鱒をとつていけないという区間に日本の漁船がいたといたしまして、この漁船が鮭鱒をとつているかいないか、或いはとつていたとすればどうするか、という点が問題になるわけでありますので、こり違反行為の取締につきましては、憲法その他いろいろ国内の法規も考慮に入れまして、ここに規定しました点が先ず法規上は許される点ではないかという点が一つ。第二は、このくらいの規定を設けることによつて、恐らく保存措置というものは大体において実際的な効果を持ちはしないか、この趣旨を汲みまして第十条は規定されております。  第十一条は、批准及び効力発生に関する条項で、批准書の交換は、東京で会議も開かれました関係もございますので、交換は東京ということにきめまして、条約は交換された日から効力を発する、これは当然のことであります。又その当時条約の有効期間を十年と一応してあります。そうして十年後に至りますと、一つ締約国が他の締約国に対してこの条約を終了させるという意思表示を、意思通知をいたしますと、それから一年間経つて効力を生ずる。つまり一年間くらい余裕期間があるということになるわけであります。十年は長いか短いか、これも会議の席では大分問題になつたのでありまして、アメリカカナダの主張はずつと十年よりも長く、十五年、二十年という主張がございました。日本は今後いろいろの新らしい事態も発生することも予期されますし、この条約がよいものであるとして、十年後においては日本も十分協力するであろうと思われますので、一応のここに期間を見て、十年の期間をこの条約を実際上適用したい、或いはそれによつて生ずる日本水産業に及ぼす影響という点を考えて、又この条約については再検討をしなければならないと考えましたので、日本側の主張十年を容れてもらうことにしまして、ここに十年と規定したわけであります。末文は説明の要がございません。条約作成の場所、目附、条約の正文に関しての規定でございます。  附属書でございますが、これは今回条約を協議します際に、すでに第四条に掲げました共同保存措置の条件に合つているというものを日本アメリカカナダから資料を提出いたしました結果、結論としてこの種目だけに、現在においてはこの第四条に合うものとして共同保存措置を講ずるということに合意をみたわけであります。その附属書の一に掲げてありますのは「おひよう」でございますが、これはアメリカカナダでは非常に大事にする魚でございますのですし、又長い間かかつて枯渇しそうになつたのを、保存措置アメリカカナダで生ずることによつて漸く最近殖えたという事実もありますし、日本ではこれをとりに行つた例もございませんし、又日本の水産業から見ますと、必ずしも決定的な影響を及ぼす魚種でもございません。  (b)の「にしん」でございますが、これも海岸近くにあるもので、「にしん」をとりに行くために日本から行くということは、水産上成立たないだけに過去において実績もございません。  次の「さけ」、この点につきましては、日本が必ずしも関心がないとは言えないものでありますが、先ほど申上げました「さけ」の特性から見て、アメリカで孵化した「さけ」は結局アメリカに帰る、アラスカに孵化した「さけ」は結局アラスカに帰るという特殊の事情がございますので、この点から必ずしもアメリカが折角大事にして孵化し、折魚大事にして育てる魚を、公海に出たからというだけで日本がとつてしまつて返さないということも不合理かと思いますし、逆にアジア方面の海域に発生するところの「さけ」がアメリカに行きましたときに、向うがとることも面白くないという点もあるのでありますが、「さけ」の特性から見て、大体ここに掲げたような地域において抑制する、若しくは共同保存措置をすることによつてこの利害関係は避けられようかというふうに考えられたわけでありますが、たた「さけ」について今の点から非常に問題になりましたのは、一体地球の何度から分けたらアジアの「さけ」とアメリカの「さけ」、若しくはカナダの「さけ」を分けられるかという点で、これは「さけ」に聞いてみなければわからないわけでありますが、そういうこともできませんので、何とかこれを分けたいというので議論の結果、西経百七十五度というものを一応の線といたしまして、ここにおいて恐らく両者が分れるだろうという算定なんであります。併しこれは飽くまで推定であります。実際上両者の魚種の資料を持ち合いましたところが、どうも日本側の調査ではもつとアメリカの海岸まで行くらしいし、アメリカの調査によりますと、アメリカの「さけ」がもつと百七十五度よりはアジアカ面に近付くらしいのでありまして、実際上はまあ仲良く遊んでいるかも知れないのでありまして、この点は今後の調査によりまして、両者を分け得るか、分け得るとすれば何度を分けるか、分け得ないとすればどういう点において分けるかという点になるのでありますが、この点は遺憾ながら今回の条約、両者の会議におきましては決定を見ませんので、あとの問題として残すことになりまして、暫定的に百七十五度ときめました。現在日本の漁船はこの百七十五度の西において漁獲に従事し始めているわけであります。従つてこの仮定の線は、将来委員会ができますと、その委員会決定によりましてきまることになります。又委員会が今回三国間で同意を得られなかつた問題でありますから、将来委員会の会議に出ても、全会一致でありますから、きまらないという公算がかなりあるわけでありますが、その際は利害関係のない第三国の科学者に任せてその決定をみようということになりました。そうしてこの第三国の科学者が決定と言いますか、一応の判定を下しましたときに、委員会はこの判定に従つて締約国勧告することになります。従つてその締約国はそれだけの手順を経たものですから、実際上は当然にこれを受諾するだろうと思われるのでありますが、こういう法律上は勿論一国は独立自主権を持つているのでありますから、仮にそういう委員会が、若しくは第三国の委員会決定した結果につきましても、必ずこれをとらなければならないという絶対的な義務はないわけであります。  以上申上げましたことは簡単でございますが、この北太平洋公海漁業に関する国際条約並びにこれに附属します議定案の大要でございます。
  6. 有馬英二

    委員長有馬英二君) 北太平洋公海漁業に関する国際条約及び北太平洋公海漁業に関する国際条約附属議定書締結について只今詳細なる説明がありましたが、質疑は次回に譲りまして、外務水産連合委員会をこれを以て閉じます。    午後二時四十五分散会