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1952-05-22 第13回国会 衆議院 労働委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年五月二十二日(木曜日)     午前十時三十二分開議  出席委員    委員長 島田 末信君    理事 倉石 忠雄君 理事 福永 健司君    理事 船越  弘君 理事 森山 欽司君    理事 前田 種男君       天野 公義君    三浦寅之助君       柳澤 義男君    山村新治郎君       石田 一松君    川崎 秀二君       熊本 虎三君    柄澤登志子君       青野 武一君    中原 健次君  出席国務大臣         労 働 大 臣 吉武 惠市君  出席政府委員         特別調達庁長官 根道 廣吉君         労働政務次官  溝口 三郎君         労働事務官         (労政局長)  賀來才二郎君         労働基準監督官         (労働基準局         長)      亀井  光君         労働事務官         (婦人少年局         長)      藤田 たき君  委員外出席者         專  門  員 横大路俊一君         專  門  員 濱口金一郎君     ————————————— 五月二十二日  委員稻葉修君辞任につき、その補欠として川崎  秀二君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  労働関係調整法等の一部を改正する法律案(内  閣提出第二二〇号)  労働基準法の一部を改正する法律案内閣・提  出第二二一号)  地方公営企業労働関係法案内閣提出第二二二  号)     —————————————
  2. 島田末信

    島田委員長 これより会議を開きます。  前会に引続いて労働関係調整法等の一部を改正する法律案労働基準法の一部を改正する法律案及び地方公営企業労働関係法案一括議題といたしまして、質疑を続行いたします。熊本虎三君。
  3. 熊本虎三

    熊本委員 この前私が資料の提出方をお願いしておつたのですが、まだ私の手元に参りませんので、それに関する部分は次会まで留保させていただきたい。そのことを前もつてお断りしておきます。  まずお尋ねしたいことは、特別調整委員任命の問題であります。これは公聴会等でもいろいろ意見が出たようでありますが、現在の中央労働委員会の強化によつて屋上屋を架するがごとき調整委員というような特別なものを任命する必要はない、こういう意見が強いようでありますし、私自身もまたそう考えておりますが、あらためて大臣の御答弁を求めたいと存じます。
  4. 吉武恵市

    吉武国務大臣 特別調整委員制度は、実はいざという場合の予備委員意味でつくつておるのでありまして、これも労務法制審議会等意見の結果採用した事項であります。現在の労働委員だけでもやれないことはないでありましようが、予備に日ごろからつくつておくということが、いざという場合に役立つという考え方なのであります。
  5. 熊本虎三

    熊本委員 そうなつて参りました場合に、どうしても現在の中央労働委員機能及び心構えに影響が起きるのではないか、実際法制上の問題は別といたしましても、中央労働委員会機能等に制約をされるものがあり、さらに進んでは、あれほど積極的に日本の労働問題に関してみずから責任を感じて行つております中央労働委員会の志気にも影響が起ると、私はあくまでそう思うのでございますが、その点さらにあらためて大臣のお考え方を承つておきたいと思います。
  6. 吉武恵市

    吉武国務大臣 特別調整委員の件は、中央労働委員会と別個に運営するつもりはございません。一体化して行くつもりでございまして、ただ日ごろから予備として置いておくという程度のものでございますから、その点の御心配はないと思つております。
  7. 熊本虎三

    熊本委員 次にお尋ねいたしたいことは、昨年一箇年間におきまする中央労働委員会で扱いました三十数件の事案について、それに要しました事件発生以来解決までの平均日数はどのくらいになつておるかということでございます。
  8. 吉武恵市

    吉武国務大臣 中央労働委員会で扱いましたものの平均をとつてみますと、大体五〇・四日でございまして、五十日ないし五十一日ぐらいの間だつたと覚えております。
  9. 熊本虎三

    熊本委員 それは中央労働委員会の手にかかりましてからの平均数字だろうと了承いたします。ところが要求を決議してから、両者相互間の努力期間、さらにまた仲裁並びに調停案が出ましてからその諾否期間があるわけでございまして、これらのものを通算した何か計数がございましたら、その点をお知らせ願いたいと思います。
  10. 賀來才二郎

    賀來政府委員 ただいま大臣から申し上げました数字は、労働委員会調停申請がなされましてからの調べでございまして、その以前に要求が出て会社と自主的交渉をしておる期間についての調べたものはございません。この五十日は調停申請がありましてから妥結をいたしました日までの日数でございます。
  11. 熊本虎三

    熊本委員 公聴会におきまする藤田君の調べによりますれば、三十六件を平均いたしまして、組合から要求を出して調停にかかるまでの間に四七・二、それからこれを受理して調停案を出すまでに五一・四、さらにこれに関する諾否期間がございますので、これが一九・二、こういう平均数字になつておるということが発表されました。そこで私は公益委員である藤林氏にこのことについて質問いたしましたとこり、確固たる計数は持つておらないか、大体藤田さんの申されたことは、私の考え方をもつていたしましても多くの間違いはない、こういう裏づけがあつたわけであります。この三十六、七件の起りました事案平均いたしますと、百日の期間を要しておるということに相なろうかと存じます。その三十数件の事案中で、調停期間中に実力行使をやつたものがあるかどうか、制限の有無にかかわらずそういう事案があつたかなかつたかということについて、労働省はどういう数字を持つておられるか、お尋ねいたしたいと存じます。
  12. 賀來才二郎

    賀來政府委員 三十日の冷却期間を経まして調停案が出るまで、あるいは出てから具体的な再交渉なりあつせんかあります前に実力行使をやつた件数か幾らかということにつきましては、今その数字手元に持つておりませんが、私の記憶するところによりますと、二十五年以降におきましては、調停案が出ますまでにやつた例はほとんどないようであります。しかしながらそれ以前の期間におきましては、たとえば電産におきまして冷却期間が過ぎた、ところが依然調停委員会は進行いたしておりまして、それが二十日も一月もかかる、これでは困るというので、調停案を促進させるためのストライキというものを実施した例はあると記憶いたしております。
  13. 熊本虎三

    熊本委員 二十五年度以前においてはあつたようでありますが、二十五年度以降はそういう事態はなかつたという御答弁でございます。中央労働委員会の方からの御説明を聞きましてもその通りでございます。  そこで終戦後の労働運動は幾多の変遷を来しておりますし、特に二・一ゼネスト以前における労働問題というものが、正常なる労働組合主義に立脚したものであるかどうかにつきましては、率直に申し上げまして私ども遺憾に考えております。しかしながらその後の日本労働運動は、ようやく反省すべきは反省し、大綱としては正常なる労働組合主義に立脚した合法的なる運動をやる方向に向つている、このことは、今の統計を見てもわかりますように明白なる事実だと考えます。それを思いますときに、今度の労調法改正がはたして時宜に適したものであるかどうかということに、私はさらに疑義を深くするものでございます。従つて私は、労働運動が自主的に自省いたしまして常道へ返りつつある際に、たとえば十八條のごとくに、過去における一つ政策に使用されたということが單に労働組合責任のごとく規定されて、その上に立つたいわゆる申請却下権というようなものをここにあらためてつくるというような方法は、最も時代に反したる改正案であると私は考えるのでございますが、その点について関係者はどうお考えになりますか、お尋ねしたいと存じます。
  14. 吉武恵市

    吉武国務大臣 熊本さんのお話通り日本労働組合あり方がだんだん正常化しつつあるという点は、私も率直に認めるのであります。しかしながらそれでは今日の労働運動あり方について、全然心配向きがないかといわれますと、熊本さんたちはその御確信はあるようでありますけれども、まだそう言い切れないものがあるのではないかと私は思うのであります。しかし多少心配はあつてもほつておいていいのではないかと言われれば、そういう御意見も立つでありましようけれども占領下は御承知のようにGHQ権威がございましたし、また二・一ゼネストの際におけるマッカーサーの声明等も生きていたという事情下にあつたがために、だんだんと心配向きが少くなつたという点も考えられるのであります。でありますから、独立後における日本経済自立がとにかく要請されるときであるし、また今まではGHQ権威があつたが、今度は日本国自体において考えて行かなければならないという点を考えますと、心配がないということであればいいのでありますが、現に心配向きもある。一方においては組織労働者を常に虎視たんたんとしてねらつているものがあるということになりますと、必要な措置を講じておくことが大切ではないかと存ずるわけであります。  それから却下の点につきましては、前々から申しますように、公益事業等につきまして冷却期間のあるのは、いきなり争議に入つて一般大衆に迷惑をかけるというよりも、その間にできれば調停なりあつせんなりして話をつけようという意味で、冷却期間があるわけでありますが、今日まで行われました実績は、労働委員会関係のある方は、労使を問わず、みんな異口同音にあれは無意味規定になつてしまつた、こう言われておるわけでありまして、何とかあれを有効に利用する方法はないものかというところから、労務法制審議会みずからこの却下制度考えられたわけであります。ただ運用を誤れば何の法律つて悪いにきまつておりまするが、運用を誤りさえしなければ、この法の制度がかえつて自主的に解決をさせて行く道ではないだろうか、かように思うわけであります。それで、労働委員会却下することでありますから、その点は抽象的に考えますると、むやみに却下して労働運動を抑圧しやしないかという御心配はあるでありましようけれども労働委員会は三者構成でありますし、いずれは自分のところに持ち込んで話をつけなければならぬという責任を感じておるのでありまするから、皆さんが御心配になるようにこれを濫用することは、まずできないものじやないか。それで一応はまず話をつけてごらんになつたらどうですかということで返して、その間に労働委員会では両方の意見を非公式に聞くなり、あるいはあつせんをするなりして、大体問題はこういうところにあるなということを見て引取るということもあることでありますから、私はそう御心配はいらぬのじやないかと考えております。
  15. 熊本虎三

    熊本委員 大臣の言われることは、相当私と同じような点があるわけなんですが、ただ言われますように、従来も行われて来たそういう却下というような、しかつめらしく官僚的な字句をもつて制度の上に法制化するというようないやらしいことをしなくても、機熟せずと考えれば、中央労働委員会両者に相談して、努力を要請した事実は幾多ある。にもかかわらず、却下という文字法文上入れて、いかにも天くだり本義的な圧迫感を抱かせるようなこと自体が、私はむだじやないかという考え方であります。なお労働運動にも、私どんなに申しましても、ことごとくがそうであつて行き過ぎがないという保証は私もできません。しかしそのこと自体は、おのおのの体験から来る自主的な、自発的なものでなければならない。上から押えることによつてこれを是正しようという考え方は、ますます問題をこんがらかすゆえんである。何回も申し上げまするが、戦前における日本労働運動に関する限りは、何らの保護政策もなければ、立法もない。ただやむを得ず自然発生的に起きて来る労働争議を、何かしなければならないということで、争議調停法というものがへんぱな形で現われて来たにすぎない。でありますから、法制上これを認めるとか、認めないとか、あるいはこれによつて規制するとかしないとかいうようなことによつて日本の正常なる労働運動考えることは、過去の験体をもつてしてもはなはだ危險千万である。全部がそうと私も言いませんが、これからもあるいは行き過ぎがあつて、国家的にも多少の悪影響が起るようなことがなしとしない。しかしそれらは、同時に労働者自身にも得策でないことであつて、要するに体験を経て正常化するという多少の犠牲は、まだ過渡期にある限りにおいてやむを得ないわけなんです。でありますから、こういう意味において、私ども右翼だとか、だら幹だとか言われながら、その渦中にあつて日本の自主的な労働運動正常化を志す者といたしましては、その過渡期にあり、相当に是正されつつある場合において、これによつてかえつて労働運動を混乱せしめるがごとき方向にしいて改正されるということは、まことに残念しごくである。なお政府といたしましては、占領治下にあつては、要するに連合軍一つの威力があり、重大な権限があつたが、それがなくなつたからということを言われますが、これはある意味においては、労働運動への侮辱であり、ある意味においては、あまりにも政府の今日に処する自信なき動揺から来るものではないかと、私ども考えざるを得ないのでありまして、まげてこの問題に関する限りは御一考を願いたいと思うわけでございますが、あらためてこの点に関し、もう一度御答弁を願つておきたいと存じます。
  16. 吉武恵市

    吉武国務大臣 却下制度について、今まででも話合いでやればやれたのではないかというお話でありますが、やつて行われたことはないのであります。と申しますのは、これがほんとうに経済的な要求で、お互いに何とか早く解決しようという気持が沸けば、お話のような話合いでもうまく行くと思いますが、なかなか組合もそう簡単に行かない点は、熊本さんも御承知であろうかと思います。熊本さんあたりの御所属の組合では、そういう事例はなかつたかと思いますけれども、やはり組合の中には、初めから三十日の冷却期間を早く獲得しよう、権利を早く獲得しようという前提でぶつかられるものがありますから、そういう方に、話合いでもう少しやつてごらんになりませんかと言つても、法律制限のない限りは、承知しましたというはずがないわけであります。でありますから法律によつてほんとう冷却期間を生かし、また自主的解決を促進する意味でありますれば、こういう法制化がないと、組合指導者もお困りになるのではないかと存ずるのであります。  それから組合法関係いたしまして、占領下の問題をとられてのお話でありますが、私は必ずしも占領下権威によつてものが片づけられたことがよいと言つているわけではございませんで、そういう事実のもとにあつたということをお話しておるわけであります。これも熊本さんのように、体験を通じて正常化をはかることも確かに必要でありましよう。しかし体験を経ることにおいて非常に国民大衆犠牲を與えることは、特に独立後における日本が一本立ちをして行こうというときには、よほど愼重に考えなければならぬものと思います。従いまして私どもは、今度の企図したこの法制は、決して労働組合にとつて悪くなるとは思つていない。これは立場が違うから御批判は自由でありますが、こうすることにおいて組合正常化され、また労働條件労働者の言いなりになる、全都が全部通るということは、調停委員会の議を経てやることでありますから、そういうふうにはならないかもしれませんが、三者構成労働委員会が間に入つて問題を解決して行くということであれば、結論から申して、労働者にはそう不利にならないという感じを持つております。
  17. 熊本虎三

    熊本委員 これも何回も質問したことで、これ以上は議論になろうかと思いますが、とにかく大臣の方の見方といたしましては、たとえば冷却期間運用——悪くいえば運用ですが、そうして罷業権をとるというようなことは、ことごとく労働組合が悪意であり、あるいは政略的であるからというふうな御見解でございますけれども、私どもから見ますと、経営者の無理解と頑強なる利益追求の観念から、逆に労働組合が追い込まれておる場合が多いと思う。そのことについて何らの措置も講ぜられなくて、このままで行きますと、それらのすべては労働組合のみが責任を負つて、これを運用しておる、だからこういう無理をしなければならぬということに相なるわけであつて、その点はなはだ残念しごくでございます。従つてこの前も変な質問をいたしまして、なぜ警察官に拳銃を持たせるのかということまで言つたようなわけで、この問題が悪化すればストに訴えるかもしれないということで、経営者はいやいやながらも解決に乗り出すのです。もし国家社会考え国民生活に及ぼす影響等考えて問題を処理する経営者があるとするならば、事例をあげてお知らせ願いたい。その考え方程度はいろいろあろうかと存じますけれども、みずからの経営利害関係によつて、問題を長引かせたり惡化せしめたりする原因は、おおむね経営者にあることは、私ども断言してはばからない。労働者罷業権というものは最惡事態最大権利であつて、これをやすやすと拔くことは労働者にいかなる利益があるか、そのくらいのことは、今日の労働組合指導者の大半は考えておるはずである。他意をもつてする特定のもののみが、これを運用して何ものかにしようということはあるかもしれませんが、少くとも労働運動指導者にして、争議の結果がどうなるかぐらいのことを考えず、むちやな争議に突入することを好む者はない。でありますから、多少は考え方の上に相違はあるにしても、大局的に言えばそうあるべきが今日の労働運動指導者であると、私は信じます。そうしてこういう問題が起るのは、経営者側があまりにもみずからの利害にこだわつて、でき得るならば少しでも出すまい、でき得るならば労働條件の向上はどこかで食いとめたいという考え方、悪徳という言葉をもつて表現することは当らぬかもしれませんが、経営者考えはそこにあるわけでございますから、その点に御考慮がなされないと、正常なる労働組合運動に、そのことのために必要以上の不安と、必要以上の尖鋭化を来す、かように私は考えます。その点については残念ながら意見の一致を見ない次第でございまして、もう御答弁の必要はないかと存じます。  次に、三十五條の二に、公益事業及び規模の大きい産業の争議で、特に国民生活影響があるものと決定したときということになつておりますが、一体どういうふうな機関決定されるのか、それが法文上出ておらぬと思います。ただ大臣決定したときはというのでありますが、大臣一人でおきめになるのか、どういう機関でやられるのか、その点を伺つておきたいと思います。
  18. 吉武恵市

    吉武国務大臣 これは前にも申し上げましたように、そういう緊急な事態に立至りましたとき、これはほつておけないという認定を労働大臣がいたします。労働大臣がいたしますにつきましては、これは政府責任においてやることでありますから、もちろん政府にはかつてやることでありましようが、主務大臣責任において決定をいたしましたら、これを発表すると同時に、労働委員会にその調停、あつせんあるいは事実調査を依頼することになつております。
  19. 熊本虎三

    熊本委員 その際に、生命を打ち込んで日本労働行政に精進しております中央労働委員会意見しんしやくというようなことが何もないわけであります。これらの機関があれほど熱心に問題を処理されておりますのに、この決定に対しては政府責任であるから、政府部内でこれを決定し、中央労働委員会にはその依頼をする、こういうことでは、民主的な労働行政の処置についてはなはだ不満足でありまするが、それらの点について御勘案になつたことがあるかどうか。
  20. 吉武恵市

    吉武国務大臣 ごもつともな御意見でありますし、また公聴会等で聞いておりますると、そういうお考えを述べている方もございます。また必ずしもそれに賛成されない意見もあつたように思います。要するにそういう非常の事態は、ほつておくと国民生活にたいへんな損害を與えて問題になるということは、政治の問題でありますから政府責任でやるべきではないかと、私は思つております。民主的なという点からおつしやれば、中央労働委員会等意見を聞くという方法もあるでありましよう。しかし実際の場合に労働委員会に聞いたといたしましても、組合代表の方がこれはほつておいては困るなと個人的にはお考えになりましても、従来の経験から見ましても、それは緊急調整にかけていいのだという意思を表明されることは、おそらくむずかしいのじやないかと思います。労働委員会は三者構成でありますから、労働委員代表の方は皆反対される。そうすると勢い使用者側代表公益代表とで、どうもこれはほつておいては困るでしようから、私の方でやりましようという意思決定をされる。公正で信頼をせらるべきである労働委員会が、初めから労働側委員と対立したままでその事件を引受けられるということは、私は非常に問題をむずかしくしはしまいかと思うのであります。もちろん労働大臣が発動する場合においては、各方面の意見もいろいろ聞いて発動することは、政治あり方として当然なことでありまして、私自身が、個人的に考えてすぐやるということはあり得ないことであります。それを労働委員会責任を分担さして意見を聞くということは、文字の上においては非常に民主的に見えますけれども、実際の面になりますと、それがかえつてあとでまとめる場合に災いする。この間の公聴会でもありましたように、労働委員会というものは、できるだけ政府から独立さして、政府の意図によつて左右されるということなしに、もし問題を持ち込まれたら公正な判断をもつて治めて行く。そこで初めて労働者側信頼するという行き方をとりませんと、こういうものを発動する際に、労働委員会意見を聞くということは、どうもありありとその結果が目に映るわけでありまして、この点は十分お考え願いたい。
  21. 熊本虎三

    熊本委員 一々もつともな御答弁でございますが、そのために公益委員といういずれにも属しない、労使の承認する特別の委員がございます。従つてこういう労働問題において、政府並びに官僚がこれに介在するような考え方をせしめるような法案の出し方は、政府としてもはなはだ残念ではないか。私どもは、それができるだけ民主的に公平に行われるという社会的信頼こそが、問題解決のかぎであると思う。そのためにこそ公益委員というものも選任されておるわけであつて、それにお気づきのないはずはない大臣が、ことさらにそれを拔かして、労使両者利害のある方方ではまとまらぬという御意見は、はなはだ何かまだ他意があるのではないかとすら、私疑わざるを得ない。私どもといたしましては、何でもかんでも反対しようという目的をもつて反対するのじやなくて、日本独立後の経済逼迫の折から、いかなる労働行政あり方日本再建最大寄與をするものであるかという観点に立つて、ものを論じたいと考えておる。従つてそういう場合においては、大臣といたしましても、もう少し親切に——何でも通したいためにものを論ずるという答弁の仕方は、はなはだ残念だと思います。  さらに次に移ります。三十九條、四十條の罰則でございますが、元の法による三十九條、四十條、四十一條、四十二條という罰則関係規定は、おおむねは経営者不当労働行為に関する規制が多かつたわけでございます。ところが今度改正されました法案によりますると、この三十七條及び三十八條に基くものに対して違反したものということになつておりまして、それは一方だけとは書いてありません。しかしそれを犯しそうなものはことごとく労組である。従つて今度の罰則改正は、おおむね労組関係を対象としてきめられた罰則になつてしまつて経営者不当労働行為に対する規制が、どこかへ隠れておると私は見るわけでございますが、その点いかがでございましようか。
  22. 賀來才二郎

    賀來政府委員 不当労働行為に関しまする従来の規定は、たとえて申しますと、調整中に労働者がなした発言を理由といたしまして労働者を解雇し、その他不利益な取扱いをすることができないという禁止規定がありまして、それに伴います罰則がありましたが、この点は組合法の七條に移しまして、不当労働行為一つといたしまして、そこの規定によりまして救済方法をとることになつたのであります。従いまして、ただ不当労働行為にまとめて移したというのでありますから、実体においてはかわらないのであります。
  23. 熊本虎三

    熊本委員 そうしますと、この調整法の改正に基くものは、結果論としては労組を対象とした罰則である、こう解釈してよろしいかどうか。
  24. 賀來才二郎

    賀來政府委員 この緊急調整あるいは冷却期間の違反に関しまする規定につきましては、従来もやはり罰則がついておつたのであります。従来の罰則は団体罰でありましたものを、従来の経験からいたしまして、個人罰にかえただけであります。
  25. 熊本虎三

    熊本委員 個人罰ということになりますと、これははなはだ重大問題でございます。要するに冷却期間中に争議行為に移るというのは、一人じやございません。千人おれば千人、二千人おれば二千人が決議の上でやると私は解釈いたしますが、そういう場合に個人処罰ということになりましたならば、一体どういう形で処罰されますか。それを承つておきたいと思います。
  26. 賀來才二郎

    賀來政府委員 個人罰にかえましたが、裁判の取扱いといたしましては、結局情状ということも酌量されますし、公正なる決定が裁判所においてなされるものと考えております。
  27. 熊本虎三

    熊本委員 そうしますと、労働省が提案した趣旨は、もちろん裁判所によりまする判決あるいは情状酌量等は考慮に入れられておるか知りませんが、その対象となるべきものは、二千人いれば二千人に、そのきめられました三万円なら三万円、五万円なら五万円という処罰を各個人別にしようという御意見ですか。
  28. 賀來才二郎

    賀來政府委員 違反行為をいたしました者は、一応処罰の対象になるわけでありますが、しかしながら冷却期間の問題につきましては、中央労働委員会の請求を待つということは以前の通りであります。緊急調整に関しまする争議行為の違反につきましては、これは中央労働委員会の請求を待つておりませんで、直接やれるのでありますが、やはり先ほど申しましたように、違反をいたしました行為者全部は一応対象になります。しかしながら御指摘のような数の場合におきましては、裁判所におきまして、やはり主要なものに対しまして適当な、公正なる措置を講ずるものと考えております。
  29. 熊本虎三

    熊本委員 はなはだもつてけしからぬと思います。そういうことに関して、條文上は個人的処罰ができるという方法にしておいて、あとは裁判所の裁量にまつなどというようなべらぼうな法案はないと思う。要するにこの改正法案は、従来団体を対象にしたものを特に個人処罰に切りかえる。しかも先ほども言つておりますように、労働法の七條に持つて来たと言われますけれども、普通における争議行為以外の労働組合圧迫に関する不当労働行為については、これは削除されまして、ありません。従つて経営者側が日常やりまする労働組合に関する不当労働行為というものについての具体的なものを削除して、要するに一方を庇護しておいて、そうしておおむねかかるであろうところの労働者を対象とするものに対して個人処罰に付する、あとは裁判所の裁量でやつてくれるなどというようなべらぼうな法案は、私はないと思う。でありますから、そういうようなことがひそめられているところに、いかに正常にして合法的な運動をやろうという労組といえどもつて、あらん限りの反対をしなければならない。こういうようなべらぼうな案を出されることは、まことに私は残念しごくであります。この点はぜひともわれわれが修正するまでもなく、政府側において罰則等についてはいさぎよく改めて、條文の書き直しをさるべきではなかろうか。そうしないと、先ほどから繰返し繰返し言いまするが、労働争議いわゆる実力行使に入る場合に、労働組合法が規制するがごとく、その決定すらも無記名投票によらなければならないという形で行われる争議を、個人対象に罰則をきめるなんということは不当千万なことである。もう一ぺんお答えを願いたいと思います。
  30. 吉武恵市

    吉武国務大臣 これはこの前も申し上げましたが、正常な組合は、熊本さんも御承知のように組合で民主的に討議をされ、決定をされて、そして代表意思に基いて行動をとるというのがそのやり方であります。そうしますれば、勢いその団体の責任者が処罰されるという行き方は、これはおつしやる通りだろうと思う。しかし過去において行われました争議は、熊本さんの言われるように行われた争議ばかりではない。一昨々年でございましたか、七月に行われました国鉄の争議、すなわち神奈川県で行われたあの問題、あるいは三鷹その他中央線で行われた争議等は、国鉄の執行部ではストはやらないと決定しておつた。しかし末端で、いわゆる山ねこ争議言つておりますが、かつて次第に争議をやるのであります。明らかに法がそういうことはやつちやいかぬぞといつて、公益保持の建前から争議を一時とめて調停をしようというときに、かつて次第にやる、それが処罰されないというのでは、何のために法律をつくつたかわからない。でありまするから、やはりやつていけないということをあえて行う場合には、その行為者を処罰するということは、もう刑罰法規の原則であります。ただお話のように、たくさんの者が一つ意思に基いて行われる場合には、それが組合決定に基いて中央からの指令によつてつたということになれば、情状酌量ということは常識上考えられますので、そういう場合にはおのずからその責任者が処罰されるであろうということを申し上げておるのでありますから、その点はひとつ悪意にお考えにならないで、御了承願いたいと思います。
  31. 熊本虎三

    熊本委員 せつかくの大臣のお言葉で、悪意に考えないようにとおつしやるけれども法文にそれを書いておいて惡意に考えるなということは無理なんです。もし言われるがごときことであれば、団体またはその首謀者であるとか、あるいはその指導者とかいうように、何かそこに識別をつけるべきであつて、法治国における法律の中で個人対象ということを明記しておいて、あとは酌量とか常識判断というようなことはなすべきことでない、私はそう考えます。これは意見の相違であればやむを得ませんが、あくまでもねらいはそこにあるとするならば、法文上にそれを明記すべきだ、私はさように考えますが、もう一ぺんお答え願います。
  32. 吉武恵市

    吉武国務大臣 ただいま申し上げた通りでございます。
  33. 熊本虎三

    熊本委員 それでは次に移りまして、地方公営企業についてお尋ねいたしたいと思います。地方公営企業労働関係法と公共企業体労働関係法との関連性におきまして、公共企業の問題では仲裁裁定の問題にからみまして、せつかく官庁の労組の公益性にかんがみて罷業権を制約し、これにかわる救済策として仲裁裁定の法文ができたわけでございまするが、それが従来の実績から見て、おおむね一方が死文化されている、こういう形で非常に論議されているわけでございます。それが今度地方公営企業の第十條に現われているところでございますが、これが公共企業体労働関係法の十六條並びに三十五條の抵触とともに、地方公営企業の問題に対する支障があつてはならない。従つてこれに対しては、これらの決議や採択されたるものがただちに効力を発するようにしたい、かように考えますが、これについて御意見を伺つておきたいと思います。
  34. 吉武恵市

    吉武国務大臣 これは私前にも申し上げましたが、熊本さん御承知のように、労働法上における仲裁制度というものは、仲裁が出るとそれが両当事者を拘束するというのが原則であります。ところが国家の予算で決定される問題あるいは地方の公共団体の予算で決定される問題につきましては、もしそのままを文字通りやるということになると、国会の予算の審議権まで拘束することになるわけであります。地方ならば地方議会の予算の審議権まで拘束することになる。ですから三十五條におきましては、両当事者を拘束するという原則はもちろんうたつておりますが、但し十六條に該当する場合はそれによるぞ、例外だぞということが條件付になつておる。これは議会制度というものがある以上は当然ではないか、かように存じます。
  35. 熊本虎三

    熊本委員 その点は一応原則論として私も反対するものではございません。しかし実際問題として、たとえば人事院の決定あるいは仲裁裁定がこれに制約されまして死文化するということになりますと、一方における罷業権の制約等のかね合いにおいてはなはだ片手落ちだと存じます。従つて国会の審議権を無視するようなことはできないにいたしましても、もつと人事院の決定とか、仲裁裁定というものにつきましては、権威ある方法改正さるべきである、かように私は考えておるわけでありまして、その点についてさらにお答えを願いたい。従来の経過を見ると、あまりにも一方が重大であるということによつて、せつかくの制度が死文化されて、一般労働者の期待を裏切るということはさることながら、その機関に携わりまして、愼重審議、熱意をもつてされたるその権威が無視されるということは、あつてなきがごとき状態になります。でありますから、いろいろの兼ね合いからこれを勘案して、もう少しこれが権威あるものであり、労働者の安心できるものであるという制度を考究すべきであろうと私は考えます。その点について、しかたがないとおつしやるのかどうか、何か考えなければならぬだろうとおつしやるのか、その点もう一度お答え願いたいと思います。
  36. 吉武恵市

    吉武国務大臣 これはこの間の公聴会の際にも組合代表の方から意見がございましたし、御意見としては私も相当敬意を表して聞いておるわけでありますが、この前にもお答えいたしましたように、最終決定は国会または県がやるべきであるという建前は、私はどうしてもとらざるを得ない。そうした場合に、それならば仲裁の裁定を無視して一体国会が独自の見解でやるかというと、過去の実績に徴しましても、一昨々年の暮れでありましたか、国鉄の第一回の裁定の際は、国会はとうとう半分を承認いたしまして、半分承認をしなかつたという実例がございます。しかし第二回の、その翌年すなわち昨年の三月行つた專売裁定の際には、これは私も関係いたしましたが、政府はむずかしいと言つてつたのだが、とうとう国会で承認したのであります。それから昨年の暮れ、国鉄及び専売の裁定についても、話をつけまして国会は承認をさせておる。でありますから、私は今日の民主政治下における国会というものは、相当御信頼になつて——公正に取扱われた仲裁裁定の趣旨をそう没却することはまずないという気がいたします。もしそれが意見が違うということであれば、逆にあるいは仲裁裁定の方に無理があるということもあるのではないかと思うのでありますが、逝去において行いましたのは、第一回のときに多少のいざこざがあつただけでありまして、あとは大体何とかして仲裁裁定の趣旨を尊重しておりますので、私はまず今のところで行つても御心配はないと思います。
  37. 熊本虎三

    熊本委員 いろいろと期間を経、議論を経て相当に斟酌されたというのでございますが、これからは別でございます。あの当時のものは、物価の推移に従つて、高騰するものを基礎としていろいろと生活実情が勘案されて裁定され、あるいは決定されたものであつて、それが半年ないしは一年近くもなりましてから、これが承認されたのされないのというようなことであつたのでは、その効果はとうてい半分にも及ばない。でありますから、これからの物価指数がどうかわつて行くかにつきましては別でありますが、あの当時の問題からすれば、これが決定になるときにはすでに次の問題が解決されておらなければならないときである。時間的ずれの関係から考えて、ほとんど効力は何分の一にも達しない。かようなことで、それだけことごとくが労働階級の生活を圧迫しておることである。でありますから、そういう点により何らかの便法を加えて、そうしてせつかくの仲裁裁定というようなものは、時期的にこれを迅速にすべきである。そうしてそれをなさなければならないところに重要性があるわけでありますから、そういう点についての御考慮を願つておきたい。かように私は考えているわけでございます。  どうも書類が見つかりませんので、はなはだ質問がちぐはぐになつて恐縮でございますが、今一つ念のために聞いておきたいと思いますことは、今この法案を出されて、団体交渉権もなかつたものにこれを與えられておりますことは、たとえば地方公営企業体につきましては一歩前進ということは言い得るわけであります。しかし労働法の原則あるいは憲法等の原則から行きますれば、公営企業の中には一般民間経営と識別を明確にすることができないものがあります。そういうものがおおむねでありますために、私は当然他の方面で規制するものは規制するといたしましても、罷業権を與うべきだと考えておりますが、今はできなくても、将来労働行政を担当し、労働行政の正常な、公平な措置をしようという観点に立つならば、この点労働大臣も御同意されてしかるべきだと思いますが、はたしてその考え方はいかがでございましようか。
  38. 吉武恵市

    吉武国務大臣 これは国家公務員でありましても、地方公務員でありましても、公務員は国家公共の奉仕者であります。でありますから、一般の国民あるいは地方民に奉仕するという性質にかんがみまして、私は遺憾ながら争議権は無理であろうと思います。けれどもその実体が民間の企業と似たようなものであるものについては、団体交渉によつて待遇の改善の道を開くことは必要であろうと思つて、今回の措置をとつた次第であります。
  39. 熊本虎三

    熊本委員 大体時間も長くなりましたし、政府の方からも求めた資料が出ておりません。私自身も整理した書類が一つ今見当りませんから、私の残余の質問を留保させていただきたいということを委員長にお願いしまして、一応これで打切ります。
  40. 島田末信

    島田委員長 留保いかんは時間の関係その他とにらみ合せて十分考慮してみましよう。——柄澤登志子君。
  41. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 大臣にお尋ねいたしたいと思います。昨日までの公述人、参考人の御意見も承つたのでございますが、実は私も総括質問の時間があつたのですが、大臣の御出席がないために公述人の公述のあとになりましたので、きようは委員長のお許しを得まして、総括質問と逐條審議とを続けてやらしていただくことになつておりますことを御了承願いたいと思います。  公述人の労働者側代表意見は、大体お聞きいたしまして、今次の改正並びに政令第二百一号が百八十日間の延長を指示されて、団結権制限の行われている状態においては、占領下と何らかわらない状態に置かれているとわれわれは認めざるを得ない、こういうことが大体共通した意見であつたように了承しております。この前の昭和二十四年の労働法規改悪の際にも、全労働者がこの法規改悪に対して反対いたしました。当時の経済九原則という吉田内閣がアメリカから押しつけられましたこの方針、これを具体化するために当時大量の企業整備、賃金遅配、そういつた労働者に対する圧力が、政府政策によつて急速におおいかぶさつて来た事態に労働法規の改悪が出て来た。この事態、つまり政府の方針の無策を糊塗するために、法規の改悪によつて労働者の生活権を守る闘いを弾圧して行こうという政府政策、これに対して労働者はまつ向から反対し、これに対して闘うことが日本の経済を守り抜いて行くことだと自覚しておつたと、記憶しております。大臣の御見解や、政府の御趣旨を承つておりますと、どうしても緊急調整をやらなければならない事態というものを、政府の判断で一方的に御解釈になつて、そういう手段を断行しようという御方針であることが実にはつきりしております。だからこそ労働組合が納得できずに、今日の新聞によつても、第三波ストは来月初旬に整然と行われるということが、政府に向つて宣言されていると思うのであります。今占領制度がなくなつたという見解の上に立つ労働大臣が、なぜこの法規を出して、社会の秩序、公共の福祉を守つて行くことを、自分一存の判断でやり得るのだという確信を持つておやりになるのか。今の事態はどうしても出さなければならない事態だという、その根拠について御説明願いたいと思います。
  42. 吉武恵市

    吉武国務大臣 この前の二十四年のときの改正は、政府の無策を糊塗するためにやつたのだと言われますが、私どもはあの改正は、戦後せつかく日本における労働組合を確立しよう思つてやりましたけれども、遺憾ながらその運用の面において一部の極左的な人々によつて悪用されて、方々に欠陥が出て来た。これではいかぬ、やはり労働組合は健全に民主化する必要があるという趣旨であれは改正なつたものと、私は確信をいたしております。今度の改正につきましても、いつも申し上げますように、一つは現業官庁における職員をあのままにしておいてはおもしろくない。せめて団体交渉によつて待遇がきめられて行くべきであろうという点でやりましたのが一つ。地方公労法についても同様であります。また問題になつている緊急調整でありますが、この点につきましても、日本独立後における経済自立の上において、国民生活を著しく脅かすような争議が起つてもそれはしかたがないのだということでなしに、合理的な、公正な機関でこれを解決して行く道を開くことは、私はこれは必要だという確信をもつて提案しておるのであります。しかしながらこれは国会の御審議、御判断を仰がなければならないと思つて、今提案しておるわけであります。これは今国民大多数の方々は御賛同願えるものであると、私は考えております。
  43. 石田一松

    ○石田(一)委員 ちよつとただいまの緊急調整の問題について関連して質問したいと思います。  午後欠席をしなければならないやむを得ない事情がありまして、掛持ちができない委員会ですので、ちよつと一言お聞きしておきたいと思うのです。二、三点あるのですが、第一点は、草案の草案によると、総理大臣緊急調整権を持たそうというのであつたのが、労働大臣にかわつたおもな理由。それからもう一つは、この第一項にあります「公益事業に関する労働争議又はその規模が大きいため若しくは特別の性質の事業に関するもの」、こういうことになつておるのでありますが、これはその労働争議をやるところの組合自体が所属する事業の種類によつてこれを禁止なさろうというのか、公益事業に関する争議であつても、たとえば専売公社がやる場合はよくても、国鉄がやつた場合はいけないということになるためには、特別の性質の事業に関するものと、こうなるのか、これは職種によつて判断を区別しようとしておるのかということ。最後にこの第一項の終りの「国民生活に重大な損害を與えると認めたときは、」とこうなりますと、政府はどういうお考えか知りませんが、これはむしろ今問題になつておるゼネスト禁止法にかわるべき性質のものではないのか、この点をこの際特に労働大臣にお聞きしておきたいと思う。もしこれがゼネスト禁止法にかわるべきものであるというならば、ゼネスト禁止法というものは今後政府としてはもう出す考えはないのかどうか。もう一つは、ゼネスト禁止法にかわるものであるとするならば、治安立法的な性格のものを労働者の保護法であるこの法律中にお加えになつたという矛盾が起きないかどうか、この点について簡単でけつこうでございますから、御説明願いたいと思います。
  44. 吉武恵市

    吉武国務大臣 緊急調整の件でございます。初めの草案に総理大臣とあつたというお話でございますが、私どもはそういう構想は初めから持つていなかつたのでありますけれども労働大臣にするか総理大臣にするかということは、これは一つ考え方であると思います。労働大臣にいたしましたのは、労働問題につきましては労働大臣が全責任を負うし、またよく知つておる。従つてその発動についても十分愼重に取扱うことができるので、労働大臣の方がよくはないかと考えたわけであります。それともう一つは、率直に申しまして、初めの草案は読売新聞に拔かれましたように、また今御指摘になりましたように、治安的なと申しますか、そういう非常に国民生活が危殆に陷るような場合には、総理大臣のインジヤンクシヨンというものが必要ではないかというような構想があつたものですから、そういう質問があつたと思うのですが、ここの緊急調整はそういうものを予想しておるわけではありません。文字通り公益事業あるいは大規模な争議あるいは特別な性質の事業で、ほつておいたら国民生活に重大な損害を與えるし、これはほつておけないという場合に、それを労働委員会で治めてもらうという趣旨でございます。だからどこまでも労働問題を主体にして考える。  それから公益事業争議、大規模な争議、特別な性質という文字を掲げましたのは、現在もその文字が十八條にございますから、そのままをとつたわけでありまして、現在ありまする趣旨も、公益事業は一般の公共に関係があることですから、これが大きくなりますと、ほつておけぬことはおわかりのことと思います。それから大規模につきましても、公益事業とまでは言えぬにしても、たとえば昨年の十月ころの電気危機の際に、石炭がない、電気はとまつてしまうというときに、石炭の大規模の争議が行われて長く続くということになりますと、国民生活に非常に大きなシヨツクを與えます。でありますから、そういうときも、やはりできるだけ自主的に解決させたいのですけれども、そう行かぬときには、しかたがないから一時やめてもらつて労働委員会で治めてもらう、こういう趣旨です。それから特別の性質も、これも現在の法律にありまするように、たとえばある種のワクチンとか何かの工場にいたしましても、工場自体一つか二つかもしれない。しかしそれが争議に入つて長く続くという場合、そのかわりがないということになり、片一方そういう伝染病があるというときには、これはたいへんな不安を起します。でありますから、そういうものも予想して書いておるわけでありまして、従来ともこういう問題は、特別に扱わなければならぬという構想でございます。  それから、第三にお示しになりましたゼネスト禁止法をこれで肩がわりするのかというお話でございますが、そういう趣旨ではないのでありまして、ゼネスト禁止ということは、どういうところから出たのかよく存じませんが、元は、二・一ゼネストのときにマッカーサー元帥から出た声明というものが、事実上ゼネストをとめた指令でございまして、占領下はそれがあつたわけでございます。それが独立いたしまするとなくなるので、そういうものにかわるものが必要ではないかというところから議論になつておると思うのであります。しかしマッカーサー元帥の声明にいたしましても、ゼネストを禁止するとは言つていないのでありまして、私もゼネストだから禁止するという行き方はどうであろうかということは、しよつちゆう委員会でも申しておる。しかしゼネストのようなものであつて、これをほつておけば国民生活を危殆に陥れるようなという文字は、マッカーサー元帥の声明の中にも使つておる。     〔委員長退席、船越委員長代理着席〕 そういう場合に政府は手が出ない、ほつておくのだというわけには行きませんから、そのときには最後の手段としてさしとめをやる必要がありやしないかという点を、私は一応考えたのでありますが、しかしそういう問題は、治安的な問題である、従つて労働問題としてそれを片づけることはおそらく無理じやないかということで、提案の際にこれを落して提案をしておる。従いまして、そういう緊急な治安的な処置についてはどうするかということは、目下検討中でございまして、そういうものを出すか、出さないかということは、今のところまだきまつておりません。しかし私も、そういう問題は、労働問題として片づくものでもなし、また労働問題として取扱うべきものではないのじやないだろうか、労働問題としてはせいぜいこの緊急調整が限界ではないかと思う。たまたまアメリカにおいて、タフト・ハートレー法においてもそういう規定がございまして、アメリカでは六十日間一応さしとめまして、そのあと十五日間にいろいろな案を提示するわけであります。六十日間そういう国民生活に非常に重大な影響を及ぼすときにはさしとめまして、その間に調査をいたします。調査をして、そのあと十五日間に案を提示してこれで話をつけるが、話がついてもつかぬでも、そのあとさらに五日の間にこれの手続をして天下に発表する。そうして初めてもうまとまらなければ争議に入つてもやむを得ないという措置を講じておられる。従つてアメリカでは、八十日間にこういう問題は何とかしようという努力を払つておるのでありますから、日本においても、今までは占領下でありますから何とか話がつくこともあつたが、そうでない独立後のこれからは、せめて六十日の間に何とか公正な労働委員会にお世話を願つて治めてもらうという努力は、必要ではないかと存じて提案しております。
  45. 石田一松

    ○石田(一)委員 今のアメリカの話ですが、アメリカにおいても、先般ある製鉄事業の争議に際して、トルーマン大統領がとつた行政措置に対しては、私の聞いたところでは、アメリカの裁判所自体がこれを不当であるというような決定をしている事実もあるのであります。あながちアメリカのやつていることが必ずしもよいのではなくて、アメリカにも厳正な判断をする裁判所は、こういうものはいかぬと判定しておることもあるのでありますから、そういうことは理由にならないと思います。ただこの際私がお伺いしたことからもう一ぺんお聞きしたいのは、先般の本会議において、この労働三法の改正案の提案の趣旨弁明を労働大臣がなさつたときの言葉の中に、地方公営企業の従業員あるいは公務員の一部を公共企業体の方にまかせたことによつて、公務員だつたならば交渉権も持つていなかつたのに、こういうものを與えるのであるということがありました。これは聞けば表面上まことによいのですが、今度の地方公営企業労働関係の新たな法律によつて、今までこういうわくにはめておられなかつた者までもこのわくの中に入つて、しかも今度緊急調整なる三十五條の二で、いわゆる公益事業の名によつて、その規模が一地方の問題であつても、その地方全体に大きな影響を及ぼすというようなおそれがあつたときには、これまでも労働大臣国民生活に重大な損害を與える云々ということで、その解釈次第によつては、悪意ということではありませんでしようが、弾圧しようと思えばいくらでもやれる、私はこういう解釈です。それで三十五條の特別の性質の事業に関するというのは、ちよつと御説明のあつたワクチンの問題なんかは、一つの工場でもこれをつくらなかつたならば予防注射も何もできないことになれば、これは人命に関する重大問題で、こういう処置は必要かもしれませんが、これを一々繰広げて行くと、国民生活に直接関係のない工場、会社というものはほとんどないのです、要するにこれを一日でも二日でも休んだら、国民のある部分が相当の損害をこうむる。そうだとすると、そういうことから全般的にあらゆる争議について、労働大臣は、国民生活に重大な損害を與えると認めることによつて、この調整というものを持ち出せる、こういう危険が多分にあるのではないかと、この点について非常に心配するのでありますが、もう一ぺん重ねてお聞きしたい。
  46. 吉武恵市

    吉武国務大臣 前段のアメリカの例をとりましたことも、私はあまり本意ではございませんでしたが、とにかくアメリカにおいては労働運動はある程度発達をしておるのでありますから、一応は参考にする必要があろうと思います。  それから御指摘になりました大統領の接収権というのは、私が今申しましたタフト・ハートレー法ではございません。それより別に、なおアメリカでは大統領の非常権の発動として接収権を持つておるわけであります。いきなりこの間の争議の際には大統領が接収したわけであります。これを日本に取入れるかどうかという議論があります。けれども、ちよつと日本の状態においてはどうであろうかと、私は思つております。  それから後段に御指摘になりました地方公営企業については、先般も申しましたように、現在の段階では、争議権も団体交渉権も団結権も與えられていないのであります。たとえば市電にいたしましても、昔は労働組合を持つていたわけですが、それが占領下なくなつているということは、独立後においておもしろくないと考えまして、少くとも団結権と団体交渉権だけは持たせてよいのではないか、ただ争議権になりますと、国家公務員なり地方公務員は、何といつても国家及び公共の全体のために奉仕する立場にありますから、仕事は似ておりましても、そのものの給與というものは国会または県会で決定されるものでありますから、団体交渉で仲裁の裁定が出て、それが妥当であるかないかということは、最後は国会なり県会なりできめれば公正に行くものと考えられますので、せいぜいこの程度は書いておきたい、こういう趣旨であります。
  47. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 大臣のお言葉でございますと、経済九原則に当時の労働攻勢の原因があつたのではなしに、一部の極左分子の扇動によつて労働争議が起きたんだという御見解で一貫しているものと思うのでございます。当時は、明らかに共産党というものが組合の中でも幹部の地位を占めて、信頼を得て選出されておりましたし、また公然と活動できた時代であります。しかし経済九原則という方針がなければ、労働者はいたずらにストライキをやるものじやないので、そのことは、大臣がそうでないとおつしやるのであれば、それじやアメリカでなぜストライキが起きるか。赤を退治して、完全に資本主義の常道に立ち直つたと言われるアメリカの労働組合に、しかも緊急事態のもとで、なぜストライキが起きるか。確かに日本と違つた緊急事態のはずであります。しかもアメリカでは赤を全部退治しておるはずであります。それでもなぜストライキが起きるのか。大臣のお言葉が、ある特定の思想の人たちの扇動によつてストライキが起きるのだとおつしやるならば、それじや資本主義の国であり、労働運動の最も進んだと吉武労働大臣がお認めになつていらつしやるアメリカに、今朝鮮戦争の飛行機以外のガソリンはとめなければならないというストライキが起きていること自体、これはどこに原因があるというふうにお考えでございますか。
  48. 吉武恵市

    吉武国務大臣 柄澤さんのお説によりますと、経済九原則の結果争議が起つたようにおつしやいますが、私は経済九原則というものは、日本のインフレを救つたものだと思つております。相当各方面にきつい犠牲というものもあつたでありましようが、あれによつて日本の経済は救われたと思います。また九原則によつてストが起つた例もあるでありましようが、私が先ほど申しましたのは、率直に言つて二・一ゼネストにいたしましても、経済九原則以前のできごとであります。これは戦前において、いろいろ労働運動その他についての圧迫があつたという反動もまた否定できぬところでありますが、しかしながら占領後において急激なる思想の影響があつて、不必要に持つて行かれたということは、だれでも認めるところではないか。そこで二十四年に改正いたしました労働組合法その他の改正案というものも、ストライキをやつてはいかぬという改正ではございません。組合というものは民主的に行われなければならない、ストライキをやるときに、幹部の地位の者がかつてにストに入るような行き方をとつてはいけない。その場合には、秘密投票によつて民主的にみんなが決定してやるならやむを得ぬという行き方であります。その他不当労働行為にいたしましても、詳細に列挙してある。また組合運動というものは、憲法が保障をしておるから何でもやつていいという誤解もございましたから、しかし暴力は振つてはいけないという規定を入れておるのでありまして、その点は過去のことでありますから、詳しくは申し上げません。  アメリカにおいてもストがあるという話でありますが、私はストを否定しておることは一回も言つておりません。これは経済的に労使双方で話がつかない場合は、ストに入ることはあり得ることでありまして、それ自身を私はとやかく言つておるのではありません。ただこれが国民生活に重大な影響がある場合には、できるだけそれを避けて、公共な機関解決する努力は必要ではないか、かように言つておるわけであります。
  49. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 もう古いことについてはあまり触れないでおこうと思いますが、あの当時の改正は二十一條と二十五條の削除ということが大きな問題であつたと思うのです。二十一條では労働協約を守らなければならないということで、戦後労使双方がお互いに協約を結んで守つて来たものを、経済九原則によつて破棄して、そうして首切りをやらなければならない、工場閉鎖をしなければならないという事態なつたので労働協約がじやまになつて来た、それを破棄することが主たる目的であつたということは、これはもう自明の事実でございます。経済九原則に対して、政府がもし政治的な政策を打てるような社会主義の性格を持つたものであるとか、あるいは資本主義の国でももつと今よりも前の時代であつて、職印にはけ口を求めなくてもいいような時代であるならば、あるいはもつと手を打てたかもしれない。しかしそのときのはけ口は工場閉鎖と、首切りと、賃金不払いという労働者に対する一方的な弾圧に向けられて来て、確かにそれは、あなたの言うようにインフレをあるいは抑制して、日本の資本家を肥え太らせて来たかもしれない。しかし犠牲なつたのは労働者なのです。それに対して防衛する闘いを規制し、弾圧して行こうというのがあの法律の出た目的であると思うのであります。でありますから今かりに吉武労働大臣が一部の極左分子があつたからストライキが起きたのだ、争議が起きたのだ、行き過ぎがあつたのだとおつしやるならば、それじやアメリカではどうか、どういうふうに御答弁なさるのかということを御質問申し上げたので、アメリカの現在の軍備拡張政策というものでも、やはり物価の値上りとかの戦争政策労働者の生活を守るということが、両方政策としてやつて行けなくなつて来ておる。そこに争議が起る大きな根本的な原因があるのじやなかろうかと、私ども考えているのでございます。ただその点を一つの思想的な分子があつて、その極左分子が扇動するから事態が起るのだというような御見解でもしこの法律が出されているのだとするならば、あなたは人民広場を貸すという問題についても、裁判所が決定しておるのに貸さないで控訴した。責任は何も感じていない。あれは共産党がやつたのだということで、てんとしてそこにすわつておられるという根拠とが一脈相通じているわけです。だからあなたはあらゆる労働争議日本労働運動の偏向というものは、全部思想的な過激分子がやつているのだという見解に立つて、今度の改正もやつたのだというふうに主張なさるわけでございますが、承つておきたいと思います。
  50. 吉武恵市

    吉武国務大臣 私が先ほど申しました二十四年の改正は、日本労働運動が一部の極左分子によつてつて運用されて来たために改正が出た。すなわち民主化のために改正をしたと言つておるのでありまして、日本労働争議がすべて極左分子によつて行われたなどとは言つていないはずでございます。  それからアメリカの例をおとりになりましたけれども、これは先ほど申しましたように、経済的な意味において、労働者労働條件の維持改善のためにやむを得ず争議手段に出るということはあり得ることでありまするし、また私は日本においてもそれを否定はいたしておりませんから、御了承を願います。
  51. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 そうしますと、共産党の極左分子の指導というものは労働争議の起る一因だというふうに御訂正になつたわけでございますか。
  52. 吉武恵市

    吉武国務大臣 そういう場合もあつたかと思つております。
  53. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 そこで具体的な問題に入りたいと思うのでございますが、あの当時も——たとえばその後松川事件などが起きまして有名になりました松川、東芝関係だけでも相当な数の労働組合が、——あの当時は長野などでもそうでございましたが、東芝、川岸というような工場も、一つの工場がつぶればれ、その地方の農民がそこの労働者として働いて行く、あるいはその部落全体がその工場でやはり潤いを得て行くというので、工場閉鎖とか首切りに反対して、労働者と農民の共同闘争というものが地域的に当時展開したと思うのでございます。今度の紡績の操短なども、やはり農村とは密接な関係がございまして、女工が数千名、全国では数万というふうに操業短縮のために農村に帰つてつている。ある地域では、やはりいなか等では、その工場の操業短縮などがその部落全体に相当大きな経済的な影響を與えるような場合に、地蔵的な闘争も緊急調整の対象として大臣は強制調停の命令を出そうというふうなお考えでございますか。やはりそういうようなものも対象として含まれているというふうに了承してよろしゆうございますか。
  54. 吉武恵市

    吉武国務大臣 今、例をあげられましたのはどういうふうなことを予想されているのか知りませんが、私どもは、緊急調整法文に掲げてありますように、それ自体が、たとえば公益事業の大規模の争議、あるいは特別の性質に対しましても、それが公共の福祉に著しい障害を及ぼすものであるということ、しかもそれをほつておいたならば国民に重大な損害を及ぼすぞというときに、やむを得ず発動するということであります。ですから一地域だつたらやらないとも言えませんけれども、一地域でそういう事態があるかどうかという点について、私はそうあり得ないのではないかと思つているのです。しかしながら一地域と言つても先ほど申しましたように、あの薬品の工場だけをねらつて混乱をさせようと思うならば、一、二の工場だけでもやられれば、衛生上非常に脅威を與えられるということになりますから、そういう地域的な問題もあるでありましよう。しかし一般的に考えまして、緊急調整に掲げられているといえば、全国的であり、しかもそれが非常に大規模に行われて、だれが見てもこれでは困るじやないかというときに初めて発動されるものではないかと私は信じております。  それから東芝かいろいろな松川事件その他で、常に工場と農民とが相ともに利害関係を持つというお話でございますが、それはあり得ると私は思うのです。あり得ると思いますが、私は率直に言つて、広島の日鋼事件あたりに現われました争議の様相を検討してみますと、共産党の方はこれを故意に結びつけて、いわゆる地域的権力闘争という一つの戦術によつて無理をされている。これは広島の日鋼事件で露骨に現われていると思うのです。一工場で争議を起させて、その争議を契機にしてその地域の農民を巻き込んで、地域闘争にかり立てて、それを県庁やあるいは警察に押しかけて、いかにもそれが国民大衆の盛り上つた反抗であるかのような様相を呈してやられる。そこに非常な無理があります。     〔船越委員長代理退席、委員長着席〕 無理があると同時に、日本労働運動としては迷惑千万である。そういうことをされるために日本労働組合は発展を阻害されるのでありまして、私は職工と農民その他の関係あることは異議はございません。ともに考えなければならぬことでありますが、それを名目にしてことさらにこじつけられる点については、私はいかがかと思います。
  55. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 共産党が望んでいない労働者や農民を無理やりにひつぱつてつて事態を紛糾させるさせるというような御見解については、先ほどもすでに第一回の御訂正をなさつたはずでございましたけれども、またまたそういう御発言がありまして、大臣の頭の底には——もちろん共産党は労働者の前衛の党であり、革命を望んでいる党でありますから、日本の民主革命のためには闘います。指導もいたします。しかしながら日本の大衆の置かれているもろもろの案というものを、全部共産党が無理に盛り上げて行つたのだというふうなことで、責任を全部共産党に転嫁するということは、大臣としてお愼みになつていただきたいと思うのでございます。しかもそういう例をおあげになりますと、私もたくさんございます。たとえば電気がなぜ消えるのか、ストライキをやるから消えるのでしようか、あの電気の制限ということは、労働者のストライキで消える場合よりも、むしろ別な原因でたまたま電気が非常に暗かつたり、あるいは制限されて来ておるということは、大臣も御存じだと思うのでございます。この点はいかがでございますか。これは電気というものが日本の経済自体の目的のためではなしに、別の目的のためにアメリカに握られておる。石炭もその通りでございます。そういう具体的な例をあげて行けば、ストライキが労働者の生活を守る防衛のためのものであり、それが国民の生活に迷惑をかけているか、もつと大きな日本政府のやつております植民地的な、隷属的な方針が国民に迷惑をかけているか、どちらが迷惑をかけておるかということは、これは自明の事実じやないかと思うのでございます。その点について大臣はどうお考えでございますか。
  56. 吉武恵市

    吉武国務大臣 私はもう一度はつきり申し上げますが、日本労働争議はすべて共産党がやつているなどというようなことは申しておりませんから、その点は御了承いただきたい。ただ一例として農民との結びつきをおつしやいましたからそういうことを故意に結びつけられてやられた例があるということを言つただけであります。  それから電力問題その他につきましていろいろ御意見があつたようでありますが、電気の消えた原因は明らかにストライキでやられたからでありまして、ストライキ以外に電気が消えたというのは、水が少くてそのために電力不定になつたのは私は知つておりますが、どうもアメリカのおかげで電気が消えたということは私はちよつと存じません。
  57. 島田末信

    島田委員長 柄澤君にちよつと申し上げますが、きのうあなたは特別調達庁長官への質問が一点だけ残つておるというので、今日長官をお呼びしているのですが、長官は午前中という約束が少々時間が過ぎておる。もしそういう質問がおありでしたら今すぐお願いしたいと思います。一点だけ許します。
  58. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 一点でも事態が明らかになりません場合には続けていたします。  昨日長官の御答弁では、国家公務員と駐留軍関係の給與体系は、特別職の給與法関係でつながつて、ベース・アツプのときにはまつたく同じに上つていた、差はなかつたということでありましたが、その点が私の聞き違いであつたかどうかということが一点。もう一つそれに関連いたしまして、全進同盟からベース改訂に伴う昇給額について、特調に申し入れたのでございますが、JLCというのですか、こちらから国家公務員と給與体系が違うから、昇給額の改訂は認めないということがはつきり言われておるのであります。そうしますと長官のおつしやることは詭弁であつたのか。あるいはことさらにそういうことをおつしやつたのか。その点がどうも食い違つておると思いますので、責任をもつてひとつ御答弁願いたいと思います。  それからさらにそれに関連をいたしまして、そういう状態の労務者の事実をお認めになりました場合に、だれか責任をもつてこれらの保護をやるか。きのうの御答弁では、労働三権が與えられているのだというような御見解もありましたか、これは公務員としての取扱いが受けられた場合には、つまり争議権はないものということに今度の改正でもなるわけでございます。争議権の裏づけのないこれらの労務者が、何として行政協定のもとで、自分らの生活の基本権を守れるかどうか。非常に悪い状態に置かれておる労働者に対して、無責任なる御答弁つたと思いますので、伺いたいと思います。
  59. 根道廣吉

    根道政府委員 ただいまおしかりを受けましたが、何も詭弁を申し上げたわけではございません。駐留軍労務者の給與は、従来までの取扱いは、一般公務員のベース・アツプがありますならば、それに準じて上げて参る。一般的に申しまして、片方が上れば、その割合いをもつて上げたということが完全に言えるわけであります。これをもつて労働者も満足しておるわけであります。しかしながら二面において、給與そのものの体系は、公務員の給與体系そのものとは同じではありません。いろいろなわけ方あるいは職種の関係も違います。従いまして一から十まで数字が完全に合うということには参りかねるわけであります。ただいま御例示になりました給與の値上げの問題でありますが、これは御指摘のようにベース・アツプのときに、給與の額の段階を上げるのに、割合に応じて改めて上げてくれという要求組合側から出たわけであります。これはわれわれといたしましても、そのように軍側に対して要求したのであります。しかしながら従来のやり力といたしまして、必ずしもその要求は軍の認めるところとならなかつた理由もあつたのであります。ただいま引続き要求中ではありますけれども、過去の例を申しますると、昨年の七月一日以前におきましては、昇給率は六箇月ごとに五十円であつたのであります。それを昨年の七月一日以降の米国政府側との契約におきまして、一躍二百円に引上げたのであります。そういう関係におきまして、米側といたしましては、今までその他のベース、家族手当とか地域手当というものは、そのままの割でやつたのだけれども、昇給だけは全然離れた関係でやつておるではないか。ついこの間四倍にしたではないか。だからそういう例をあわせてみて、去年の十月にべース改訂があつて、約二割近いものが上つても、昇給率を上げるというものは少し違うじやないか、こういうようなことになつておるわけであります。従いましてこれは現在なお米側と折衝中の事項に属しております。御了承願います。
  60. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 そういたしますと、七月以降と申しますのは、ドル払いになりましてからということでございますかということが一点。それからドル払いになりました以降は、米側から直接支払いを受けるような家族労働をしておりますメイドなどが、政府のきまつておりました給與よりも少く、総額で五千円くらいしか受けていない。政府の方からの給與の支払いは、たしか三十ドルくらいになつているはずですけれども、本人には五千円くらいしか渡つていないという陳情を受けたことがあるのでございます。そういう点につきまして、ただいまの質問に関連いたしまして、あなた方が責任を持つてどのくらいそれを把握し、——今のように折衝中だというような御答弁でございますが、今後独立後の日本政府として、権威ある態度で日本労働者を守つて行くかどうか、そういう実態を、できますれば調べて御報告いただきたいと思うのでございますが、御存じの状態について御答弁願いたいと思います。
  61. 根道廣吉

    根道政府委員 ただいまおあげになりました種類の労務者につきましては、昨年の六月三十日をもつて日本政府の雇用を離れております。その後は個人関係において、米国人たる個人あるいはクラブ等と契約をして勤務に服しておるのだと思います。これは調達庁の所管外でありますから、現在のところ私といたしましては、詳しく御報告申し上げることはできません。
  62. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 昨日も申しましたが、米軍の直用ではなしに、日本政府の間接の雇用にしてもらいたいという声が非常に多いというのは、ただいまのメイドの例などもございますように、いろいろな点で日本労働者がかつてに首切られましたり、あるいは横須賀などの例でもございますように、一万二千円を一万五千円に賃上げ要求をした。職場大会を開いて、会社はこれこれの生産が上つておるのだから、これだけの賃金が払えるはずだということを執行委員が報告したところが、それが軍の機密に属するから解雇するといつて首を切られた。なるほど刑事特別法というものがございますから、これこれのものをつくつて、これこれの生産費がかかつて、こうなつておるということを言えば、あるいはそれが軍の機密に触れるということで、刑事特別法にひつかかるということに主張の根拠を置いておるのかもしれないのでございますが、もしそういう状態であるとするならば、日本労働者は、刑事特別法その他の、組合法関係だけではなしに、いろいろの関係によりまして、常に戦々きようきようとして、職場で賃金の要求もできない。正当な根拠を持つた要求もできないというような状態だと思うのでございますが、そういうことにつきまして、特別調達庁としては、ただ單に調達してやることだけで、何らこういう労働者に対して責任をもつて保護するという立場をとつておられないのじやないか。ひんぴんとしてこういうことを耳にするのでございます、特別調達庁として今後どういうふうな御方針でこういう事件に立向つておいでになるつもりでございますか。何か特別な法律を別につくつて、駐留軍関係の全労働者を、全部日本政府の力によつて保護して行くという確たる証拠がなければ、独立した国としての資格がないと思うのでございますが、それについての御見解を述べていただきたい。
  63. 根道廣吉

    根道政府委員 会社の雇用人に関する労働條件の改善等のお話でございましたが、これは私の方の所管のそとであります。またその他駐留軍関係の一切の労務者を日本政府において間接的に雇用してやる意思があるかどうかということでございますが、日本政府として駐留軍の関係の労務者に関與いたしておりますことは、米国政府の使用になる者に対してでありまして、それ以外のものは皆私の関係であります。これらは現在の状態においては、日本政府が仲介して云々ということは、あたかも各外国商社に対する雇用等に干與するのと同じようなことにも相なります。今のところはそういうところまでやらなければならぬとは考えておりません。
  64. 島田末信

    島田委員長 特別調達庁関係の質疑はもう許しません。
  65. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 労働大臣にお尋ねしたいと思います。ちようど今駐留軍関係の労務者の問題が出ましたので、関連して伺います。これはやはり労働大臣の所管の問題だと思いますので、労働大臣として、刑事特別法関係で、軍の機密だというようなことで解雇になつたただいまの例、こういう事実があつた場合に、大臣はどうお考えになりますか。
  66. 吉武恵市

    吉武国務大臣 私まお示しになつておる点の内容をよく存じませんからお答えをしにくいのであります。しかしながら、もしそれが不当労働行為であれば、現在不当労働行為救済の道は開かれておりますから、その手続をおとりになつたらよらしい、かように存じております。
  67. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 三越のストライキのときも、コロンバンのストライキのときも、問題の紛糾しました大きな原因は不当労働行為であつたと記憶しております。コロンバンのときは、婦人が初めて労働組合をつくつたということで、それを理由にして首を切つていることに対して、全従業員が結束して闘つたのであつたと記憶しておりますし、三越のストも、労働基準法を明らかに破つて、正規の出動時間前に出動させて店を開く準備をさせていた百貨店に対して、労働者が時間通りきちんと出勤した。基準法から行けば何ら抵触していない、ただ従来の慣習を、労働協約にも何にもうたつていないところの慣習を破つたということで、当時要求は通つたのでありましたが、それがいけないといつて組合指導者を首切つてつたのを記憶しております。そういうことが実力行使によつて、資本家が、三越の数百年ののれんでお客さんを吸い寄せているというのではなしに、労働者の協力あつて初めて店を開くことができるということを思い知つてか、とにかくあのときも一応退却した形になつたと思いますが、それに対して警察が全力をあげて弾圧し、さらに首切りも手をゆるめずに、資本家は第二組合をつくつて分裂させて来たと思います。そういう場合に、労働委員会に提訴して闘うということをやつておりますが、非常に長い期間がかかりまして、労働組合代表藤田さんが言つておられましたけれども、問題の解決するのに三月以上かかるというような具体的な例をあげて、労働者の生活不安を訴えておられたと思うのであります。労働委員会があればそれで事足りるのだということで大臣は突放されて、しかもそういうときに立ち上つた労働者のストライキでもそれが緊急に調整しなければならないと大臣がお考えになれば、とめることができるのだということが今度の法律の趣旨ではないかと思うのでございます。駐留軍というような特殊な仕事に入つております労働者——この仕事の性質というものは、今度の行政協定の條文の中の公益事業関係並びにそれに類するところの特別な事業というふうに規定しておられます。そういうものに私どもは該当しておるのでないかというふうに考えて、実は何ら守られておらないこの労働者の基本的な権利を、この法律も明らかに無視しているのではないかと心配しているわけでございます。行政協定では、公益事業が全部米軍に優先的に供與されるということ、それから基地並びに隣接近郊の地で無制限に拡大されて、それらを管理する権利、権力、権能を向うが持つているということが規定されているのでございまして、それらの地域で役務を提供するところの労働者は、吉武労働大臣がかねがねおつしやつておりましたところの、国内法をもつて優先的にこれを処置するというような御答弁を承つてつたのでございます。行政協定よりも日本の労働関係の法規の方が優先的に労働者を守るんだ——どもから言えば弾圧するということに考えられるのでございますが、そういうような御答弁でございましたけれども、今のような事実がございます。たとえばこういう採算でもつて、ジープならジープというものを職場で何台つくつて、そのために何時間労働強化されて、労働者は賃金をこれだけしかもらつていない。だから賃金をもつとふやしてもらえるのだと言つただけで、その労働者は首にされております。現に東日重工がストライキに立つております。これは一工場だけではありません。関係の工場が相当広汎にやはり立ち上つていると思います。今日の新聞で拝見したのでございますが、こういう場合に、この特殊な性格の事業の労働者というふうに、今度の法規の中で指摘しておりますところの條文に該当しているのかいないのか、大臣はどういうふうにお考えになつて、十分に国内法を適用すると言われるのか、われわれは、これが適用されて緊急調整の対象になるおそれがあるのではないかというふうに考えておるのでございますが、この点についてひとつ承つておきたいと思います。
  68. 吉武恵市

    吉武国務大臣 緊急調整につきましては、その中に掲げられておりまするように、公共の福祉に著しい障害を及ぼすものであり、しかもそれをほうつておけば国民生活に重大な損害を與えるということでありますから、そういう具体的な事項に該当するかしないかできまるべきものであります。
  69. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 それはもう何回も聞いておるのでございまして、国民生活に重大な影響のあるという言葉の内容が、そのときどきの情勢によつてかなり政府としてはかわつて来ておられる。今重大だから、この法規を出して、争議を押えて行かなければならないという根拠になつておられますその根拠は、やはり労働者が、全部反対までして行政協定の破棄や労働法規の反対に関連して、両條約の反対ということを、民族独立の立場から政府に向つて要求しております。そのことが政府の方針とまつたく相反しているわけです。政府は無理やりに行政協定でもつて追い込んで行こうとしている。全国民がどう考えようと引き込んで行こうとしておるのに対して、そこで働いて実際に戦車を直したり、ジープを直したり、飛行機をつくつたり、弾薬を運んだりしている労働者がそれに対して反対している。そういうことはまつぴらだ、日本を戦争に追い込むのはいやだ。そういう基地になれば日本は爆撃されるかもしれない。原爆の基地になるかもしれぬのだ。そういう吉田内閣のやり方は反対だ。なんで大東亜戰争に敗けたんだ。戦争はこりごりだというのが今の労働者意見です。その全部反対しておる労働者を、無理やりにあなた方の方に向かせようとしておるのが今のあなた方の内閣です。そういう場合に国内法規、今のいわゆる民主的な労働三権、国内法規で三権を許してやつて行くというように、たいへんりつぱなことをこの間からも言つておいでになるのですけれども、それであなた方は行政協定をおやりになれますか。それをどうしてやろうというのか。今度の法律を出し、また木村法務総裁がゼネ禁を出す、緊急事態法律を出して行くのだ。どうも心配でしようがないからそれを出さなければならない、本国会にどうしても出したいと言つておられる根拠はそこにあるのじやないか。どうでしようか。行政協定に労働者をどうして協力させて行こうと考えていらつしやるのか。全然反対だといつて向うを向いておる労働者を、どうしてあなた方に協力させるのですか。そのためにこの法律を出されたのではないかと思いますが、ひとつ正直なところを御答弁願いたいと思います。
  70. 吉武恵市

    吉武国務大臣 どうも柄澤さんのお言葉を聞いておると、行政協定に反対だからストをやるように聞かれますが、ストライキというものは、そういうことのためには認められておらないことはしばしば申し上げた通りであります。これは緊急調整も何もあつたものではありません、行政協定に反対してストをやるということは、明らかに法の保護を受けないのであります。問題外であります。それから労働者が行政協定に反対をしておる。それはそういう政治的な見解を異にされることは自由であります。私はいつも言つてやるように、国民が政治的にどういう御見解を持たれようと、これについてとやかく言つたことはございません。ただ問題は、その見解を異にする、それをストによつて実現をはかるということは許されない。これは民主政治下において許されるはずはないのであります。それからそういう行政協定に反対しておる者が職場に働くと思うか、こう覆われるのですが、そういう場合に何も強制して働かしておる覚えはございません。ですからおいやな方はおやめになればけつこうです。それを何かいかにも強制しておるように言われますけれども、それは何かの誤りだ、かように考えます。
  71. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 行政協定に反対しているストは違法だと思うという御答弁でございます。この点については私どもとはまつたく違つた立場においでになるので、御意見として承つておきたいと思いますが、そういう場合には、これは違法だから当然弾圧参するのだという御見解であるというふうにさらに了承したいと思います。しかしだんだんはつきりして参りました。実際このような無理な政策をやるために、経済九原則以来企業整備をして工場をつぶしたり、首を切るために組合運動を弾圧し、さらにレツド・パージで共産党を追い出し、さらに最近ではどうにもこうにも、につちもさつちも行かなくなつて、経済恐慌で紡績の工場もつぶれて来た。日雇いなどもあぶれておるが、これに対して手を打たない。もう戦争に追い込む以外にない。軍需工場か予備隊かというのが今日の日本人の状態です。そういう際に行政協定に反対していない労働者にも、こういう職場で今言つたように、賃金値上げのことでこれだけの生産を上げていて、これだけの賃金を要求しておるだけで、ひつかかるような刑事特別法というようなものを政府はおつくりになつた。だからどんなささやかな、生活を守るための要求を掲げても——客観的に見れば、その仕事があなた方の行政協定を遂行する一つの役割を果す軍需工場だ、そういう際に、これは行政協定に反対しておるのだから緊急調整でやるのだというのが今度の改正の大きな目的になるのじやないか、こういうことを伺つたわけですが、吉武労働大臣は、そうであるということをそれとはなしに説明してくださつたというふうに了承してよろしゆうございますか。
  72. 吉武恵市

    吉武国務大臣 先ほど申しました通り、行政協定その他政治目的のためにストライキをおやりになることは、法律が認めておりません。
  73. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 私の申し上げましたのは、それに関連した労働者が、どんなささやかな要求をもつてつても、それが首になつたり、ストが禁止されたりする今の状態に対して、この法律はそれを遂行するためにやるのじやないかということをお聞き申し上げたのであります。その点でございます。
  74. 吉武恵市

    吉武国務大臣 経済的な要求について意見が不一致の場合において争議の起ることは、現在の法律で認めております。その場合にそれをほつておいたならば国民の生活に重大な障害を及ぼす場合には、緊急調整にかかる場合があるでありましよう。しかしながら経済的な要求の趣旨でなくて、お話を聞いて行くと、どうも政治的なねらいが主のようでありますが、そういう争議はお愼みになつた方がよいと考えます。
  75. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 争議は私がするのではないのでございます。これは日本の大衆がやるのです。革命もその通りであります。しかし大臣は今も何か非常に抜けた御返事をなさいましたが、国民生活に重大なる影響があるという判断をなされるのはあなたです。つまり国民生活を守るのには外国の軍隊にいてもらわなければならないという判断をしておるのが今の吉田内閣です。労働者はそう思つていない。外国の軍隊に守つてもらう必要はない。独立するのだと日本の人民の多数が言つている。ところが外国の軍隊に守つてもらわなければならないという政府の一閣僚のあなたが判断をして、ストライキを押えることができるということは、独立運動や平和運動といつものを——経済的なささやかな労働者要求を揚げて闘う場合にも、あなたの判断いかんでどうにもなるのではないかと思うのです。この点を私たちは今特に主張するわけですが、労働大臣ほんとうのことを言つた方がよいと思います。あなたはそうでなかつたら、行政協定を実施する一閣僚としての役割が勤まらないのじやないか、こう思うのです。
  76. 吉武恵市

    吉武国務大臣 私は正直に申しまして、法律の解釈は客観的にその通り解釈すべきものでありまして、これを曲げて運用するつもりはございません。
  77. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 総括質問はこの程度にして逐條審議に入ります。  調整法関係はあとにして、基準法関係を先に伺つておきたいと思います。二十四年に一部改正されましたし、また基準監督署が何をやつておられましても、また手をこまねいておる状態でありましても、基準法というものは労働法関係の中では、やはり労働者の保護法という点において、形式的でも日本ではすぐれた進歩的な法律つたと思うのでございます。今度は独立したのだということで、経済自立の建前からということでございましたならば、大臣にお伺いしたいのであります。今までのように、予算が制約されて、賃金はこれ以上上げてはいけないということを外国から言われなくともよいはずであります。それならば最低賃金制の確立ということを基準法の中でうたうことが最も必要なのではないかと思うのでございますが、その措置が予算上の指揮とともに、この法律の上でもなされなかつたのはどういう理由でありますか。
  78. 吉武恵市

    吉武国務大臣 基準法の中に最低賃金制の規定はございます。ないわけではありません。ただそれの運用の面について、目下委員会をつくつてそれに諮問しておるわけであります。ただ私は率直に言いまして、日本の経済がまだほんとうに固まつていない。それに対してただ軽卒に最低賃金というものをきめますことは、日本経済の上にもどうかと思えるばかりではなしに、労働者自体の賃金の上においてもどうだろうかという感じがするのでありまして、その点を愼重に取扱つているだけであります。将来最低賃金制の確立の必要なことは、私も十分認めております。
  79. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 もちろん今のままの賃金ではどうにもならないということはわかり切つたことでございますが、この点につきましては、予算的な措置が裏づけにならない限りどうにもならないことでございますから、労働大臣としてはやはり補正予算ということを考えて、労働者の賃金の問題について、全般的な裏づけをおやりになるお気持ちは、今ございませんでしようか。
  80. 吉武恵市

    吉武国務大臣 別にこれはそう予算に関係はないと私は思つております。それから先ほど申しました最低賃金に関する審議会については、すでに予算的な処置はしてございまして、現在検討されておるわけであります。別にそう予算がなければやれないというふうには考えておりません。
  81. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 その点はまだ質疑はございますが譲りまして、十八條の貯蓄の問題に関連して見解を伺つておきたいと思います。使用者に対する罰則がない場合には、單なる届出制にしたということでは、それが使用者の有利な形になつてしまうのではないかと思われますが、総額にいたしますと相当な数字になると思いますが、いかがでありますか。
  82. 亀井光

    ○亀井政府委員 認可制を届出制にしますことによつて生ずると想像されますいろいろな問題について、制約は加えておるのでありまして、中止命令がその一つであります。あるいは遅滞なくその請求があつた場合に返還しない場合の罰則規定もあります。
  83. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 罰則はどんな程度のものでありますか。
  84. 亀井光

    ○亀井政府委員 現行法の百二十條の一号中の改正がありまして、十八條の七項が加わつております。この百二十條の改正で五千円以下の罰金ということになつております。
  85. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 二十四條についてお聞きしたいと思います。賃金の一部を控除して支払うことができるということであります。それも労働協約なしでやれるということになりますが、これは現物支給とか、そういうことを意味するものであるかと思いますので、事実上の賃下げにならないかと思いますがいかがですか。
  86. 亀井光

    ○亀井政府委員 現物給與につきましては、ことさらに不必要なるものを使用者が労働者に押しつけたり、あるいはそれによる賃金の低下を来すというおそれがございますので、現物給與については改正を加えておりません。ただ賃金の一部控除は、共済組合の掛金とか、あるいは購買の代金等について一部控除することを、現行法では労働協約のある場合において認めておりますが、やはり十人未満の場合、あるいは労働協約の締結されないような場合、組合のないようなものにつきましても同様必要な事情がありますので、今回の改正を加えたのであります。
  87. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 炭鉱なんかでもそうでございますが、税金なんかを賃金から引かれることに対して非常に反対が多いのでございます。税金を払う払わないは自分たちに自主的にやらしてもらいたい、食えてから税金を払うのだという声が非常に多うございまして、事実上の賃下げになつておるわけです。毎月ばんばん引かれるのであります。地方税法の改悪以来そうなのですが、従つてそういうようなことにこれでもつて合法的の根拠を與えることになるのではないかと思うのでございます。そうでなければ、共済組合なんかでしたら今まで通りでやつて行けるのですから……。
  88. 亀井光

    ○亀井政府委員 所得税につきましては、税法によります源泉徴収の規定がございます。基準法外の法令に基きまして控除するのでございまして、基準法外の問題でございます。
  89. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 わかりました。  それから第三十三條でございますけれども、三十三條の「災害その他避けることのできない事由によつて、臨時の必要がある場合においては、使用者は、行政官庁の許可を受けて、その必要の限度において前條若しくは第四十五條の労働時間を延長し、又は第三十五條の休日に労働させることができる。但し、事態急迫のために行政官庁の許可を受ける暇がない場合においては、事後に遅滞なく届けなければならない。」そのあとで現行法の「その延長時間に相当する休憩又は休日を與えるべきことを、命ずることができる。」というのを「延長」を削つて「その時間」とした理由はどこにあるのでございますか。
  90. 亀井光

    ○亀井政府委員 これは字句の整理でございまして、改正法案を見ていただきますとわかりますように、「労働時間の延長」を「労働時間の延長又は休日の労働」に改め、「その延長時間」を「その時間」に改めることになりますが、「その時間」の中には延長時間も入りますし、あるいは休日に働きました労働時間も入るという解釈でございます。
  91. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 これはさつき申し上げましたように、ストライキの場合以外の電休ということが相当多いのでございますが、そういうような場合とか、あるいは石炭不足で平和産業に石炭がまわらないというような場合に休業したときにも、これがやはり該当するわけだと思いますが、そういう場合を指しておるのでございますか。
  92. 亀井光

    ○亀井政府委員 これは現在とつておりますわれわれの解釈としましては、風水害、火災、地震あるいは急病人の発生等、まあ公益上または人命の保護上緊急必要のある場合というふうな解釈をとつております。
  93. 島田末信

    島田委員長 柄澤君にちよつと御注意申し上げます。あなたの共産党の持ち時間はすでに済んでおりますが、委員長の裁量で続けております。そのつもりで質疑を簡単にお願いいたします。
  94. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 総括質問は一時間でございまして、それ以外に三十分ぐらいというお話でございましたが、これも済んだのでございますか。
  95. 島田末信

    島田委員長 総括質問、逐條質疑合せて本来一時間の割当であります。但し一時間は大分前に済んでおりますが、しんしやくしております。
  96. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 時間の制限はあまりしていただきたくないということを希望して、質疑を続けさしていただきたいと思います。そう長くありません。  五十四條でございますが、命令で定める危険な事業または衛生上有害な事業の建設物、寄宿舎その他の付属建設物を移転し変更しようとするときは行政官庁に届け出なければならないというのは、今度は命令で定める危険または衛生上有害でないものは届け出なくてもよいということになつておりますが、土方の飯場であるとか、大きな炭鉱の組夫の収容所でありますとか、そういうような君たちの働いております工事場、こういうようなものは一体だれの見解によつて危険でないという判定を下し、届け出なくてもよいのか、届け出ればそこへ役所から行つて、これはあぶないとかどうとかいいまして監督することができるのですが、このごろこういうところでは、昔のような封建的なものが帰つて参りまして、非常に危険であり、厚生施設もないのが現状であります。これはもつと強化してもらいたいと思つておるくらいなのに、こういう改正をなさいます意図はどこにあるのですか。
  97. 亀井光

    ○亀井政府委員 これも法案に書いてありますように、仮設のものに限定されておりまして、命令で定める危険または衛生上有害でないものについては、目下基準審議会におきましてその具体的な事例について検討を加えておりまして、この審議会には御承知のように労働者代表者の方もお出になつておられますので、御心配になりますようなことは命令で規定されないものと考えております。
  98. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 労働者代表が出ておられましても、坑内労働者なんかは明らかに意見が違つており、総評の代表が参りまして反対しておる。小椿さんは賛成したそうでありますが、小椿さんは炭労の大会で不信任で大衆からけ落され、総評の役員を辞任し、大衆の信頼をなくしております。やはりああいう審議会でああいう発言をしたということも抗議の的になつておるというように承つております。労働大臣は、それをしきりに総評の代表者と言つていらつしやるようでありますが、労働者代表でありましてもそういう場合もございましよう。だからここではむしろこれを厳重にあなた方の方でやるというふうに、監督強化していただく方がよいのではないか、そういう意思はございませんか。
  99. 亀井光

    ○亀井政府委員 現在の手続におきましては、青写真をつけたり相当詳細な手続を要します。これはわずか一週間とか十日というような期間しか使用しないものまでもそういう煩瑣な手続をとりますことは、これはかえつて害こそあれ利益はないのでありまして、また届出がなくなりましても監督ができないというものでもございませんし、監督権は当然持つておるわけでありまして、御心配はないと思います。
  100. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 その次に、基準局にもひどいのがございまして、八王子などの紡績女工さんたちが訴えに参りましたことに対して、そんなことは八王子辺にはざらにあるのだから、一々取上げてはおられないというような、非常に傲慢なことを言つたということも聞いております。それは人が足りない、予算が足りないということもあると思いますが、そういう今のようなお言葉だけでは、どうも私は信用ができないのであります。  それから児童の問題になるのでありますが、婦人少年局藤田さんに伺いたいと思います。少年労働の問題は、皆さんの御努力で、非常に反動的な線の中で婦人少年局だけはどうにか生命を保つて来たと思いますが、今度婦人の問題、少年の問題がこういう形で実質的に非常に抑圧されて来ておると思います。そこで坑内労働の問題や時間外、深夜業の問題ですが、特に技能教育という美名をもつて児童憲章の趣旨にも反するようなことが基準法の中で法制化されようとしているのでございますが、これについて婦人少年局として御意見をここに反映せられておられるのでございますかどうか。それからどういう御見解を持つておられますか、承りたいと思います。
  101. 藤田たき

    藤田政府委員 労働基準法改正について労働基準審議会が開かれますにあたりましては、私たち婦人少年局の者は大きな関心を持つてこれを見て参りました。そしていろいろ労働組合の皆様方の御意見も伺つたりいたしまして、これを見守つてつたのでございますが、婦人少年局といたしましては、この程度改正がなされましたにつきましては、ただいまの状態においてはやむを得ないことだと思いました。
  102. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 外国の例などを政府はいろいろ述べておいでになるようでございますけれども労働組合代表が公述にお見えになりましての御意見では、外国には厚生福利施設があり、日本とは違うのだということでございます。藤田さんが言われた、ただいまの状況のもとではやむを得ないというお考えの根拠は、どういうことでございますか。戦時中に坑内労働をさせられていたのがようやく禁止になりました。御承知のように日本の炭鉱の坑内はまだまだ災害が多く、最近はむしろ災害がふえて来ております。九州などの例を承りますと、昨年だけでも年頭と年末では倍くらい災害がふえておりまして、九州全体で毎日一人くらいずつ死んでいるらしいです。私この間参りました夕張などでは、カツペ採炭になりましてから指を折り、足をくじき、足の上ヘカツペが落ちましてつぶれたり、毎日けが人が出ております。そういう状態の中で、日光を與え、身体を伸ばしてやらなければならない少年たちを坑内に入れる、しかも現場の中へ入れなければ教育にならないというようなことを通産局の係の方がここでおつしやつたが、藤田さんは望んでいないのだけれども、国情としてこういうような條約を結んだときであるからやむを得ないという考えなのですか、どうですか。
  103. 藤田たき

    藤田政府委員 御指摘の通り諸外国において、またILO等において、いろいろ坑内労働等について技能養成のことを考えますときなど、厚生施設、教育施設について深い関心を払つていることは当然のことでございます。しかしてまた日本におきましても、私は坑内労働、ことにその技能者養成につきましては、技能者養成審議会で、たとえば発破に関し、落盤に関し、また高温度だとか、多湿とか、そういつたことなどに関し、詳しく専門的な見地からの調査研究をいたしまして命令が出されることを信じております。そのような状態において坑内労働における技術養成がなされることは、ただいま御指摘になりましたような坑内における災害を減少させることにやや役立つのではないかと存じております。
  104. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 大体これらの人たちを使用いたしますのは、純粹に産業教育の建前からだと藤田さんはお考えでございますか。
  105. 藤田たき

    藤田政府委員 技能者養成の立場からと信じております。
  106. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 去年でありましたか、産業教育法ができたのは御承知と思います。一般の教育につきましても、吉田内閣の反動的な政策というものが、院内でも非常に問題になりまして、一昨日も文部委員会でおそくまでもめておりました。そういうふうに一般の教育を低下させ、さらに技能者養成とか、青少年の教育とかいつても、親の生活が安定が保障されなければそれはできないと思います。事実私どもが地方の炭鉱に参りますと、母親の切実な声として基準法を廃止していただきたいというのですが、その母親というのは、教育に無関心ではない。教育させたいけれども金がかかつてやれない。基準法があるために働かせられない。しかし坑内に入る場合には、よけい金がとれるから入るのです。うちのあんちやんに坑内に入つてもらうのはいやだ、いやだけれども、金取りのためにやむなく入れるというわけでありまして、決して望んではおりません。産業教育という美名のもとに、そういう非常に状態の悪い、有害な地下産業のうち、特に坑内に十六歳かちの少年を入れるということについて、わくを設けて少年の産業教育のために、坑内の設備をよくするというような資本家はないのでございますよ。そういう点は甘くお考えになつてはおりませんか。藤田さんは、机上プランで、婦人少年局長として、日本全体の婦人、少年等の問題を取扱うにつきましては、少し軽率ではないかと思います。
  107. 藤田たき

    藤田政府委員 ただいまおつしやいます通り、この坑内における年少労働者の技能養成なども、もちろん母親また父親の生活から切り離して考えることはできないのでございます。父や母は、一刻も早く技能養成がなされることを望んでおることも事実だと思います。婦人少年局といたしましては、口幅つたいようでありますが、婦人の地位の向上、生活の安定のためにいろいろ調査をいたしましたり、いつも努力を続けておるものでございますが、ただいま資本家のわくでもつて、坑内におけるところの労働條件をよくして行つて、初めて技能者を養成することになるのかとおつしやいますけれども、先ほど私が申し上げました通り、坑内のいろいろの條件に関しましては、技能者養成審議会というものが開かれ、そこでもつて専門的な立場からいろいろと協議せられ、その審議会が認めないような労働條件の悪い、技能者養成に適さないような場所においては、技能者養成をすることは許されないのであります。労働委員の中にも信頼を置けない者があるというようなことを先ほど御指摘になりましたが、私たちとしては、専門的な技能者養成に関するところのりつぱな労働者代表が出てくださることを信じておるものでございまして、そういうような條件のもとに、この技能者養成ということが、お母さんやお父さんたちも安心してなされるようになることを期待いたしておるものでございます。
  108. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 少くとも立法機関である国会が、有害な地下産業の坑内労働に、大事な少年たちを産業教育というただそれだけの美名によつて使うといつても、現実のところは何らの保障もないわけです。その審議会とか何とかおつしやいますが、それが、どう資本家を規制して行く実力を持つておるか、どんな力を持つておるかということになると、ほとんどその力はないと思います。婦人少年局長さん、現実にこうなんですよ。北海道の夕張炭鉱では、暖房用石炭を掘るんだと言つて労働強化をさせまして、戦後最高を掘つておる。ところがその石炭が、それでは北海道の家庭の主婦が待つておるところに行つておるかというと、一かけらも行つていない。それでわれわれは通産省に参りまして、炭政局長に会つて、資本家は暖房用炭を掘らせるといつて労働者に増産運動をさせておいて、その増産された石炭を一かけらも北海道にやらないで、全部室蘭から積み出しておる、優先的な出荷にしておる、これが特需炭ですが、こういうことをやつて、ペテンにかけておる資本家に対して、炭政局はどうにもできないかどうか、政府はどうにもできないかどうかと言つたら、実際に今のところできないと言うのです。会計法とか、統計法とか何とかいうものがあるそうで、できないのだそうです。ですから北海道全体で特需炭が朝鮮向けへ何ぼ出て、進駐軍に何ぼ出ておるということは明らかにできるけれども、北炭夕張の資本家が、自分の山からどこへ何ぼやつておるということは、あなた方に報告できませんというのです。それが今の日本国内の法律だそうです。そういう資本家に対して、審議会というものをおつくりになつて、石炭の一かけらも自由にできない政府が、少年労働の保護をどういうふうにしてやるか。その見通しがおつきにならない以上は、婦人少年局長としてはどうかと思う。たとえば三時間しか入れないとか、学習を必ずさせるとか、紫外光線に当てるとか、ソビエトのように地下産業の労働者に対するところの厚生施設があるところではいざ知らず、日本の現状においてはどうでございますか。
  109. 藤田たき

    藤田政府委員 ただいまおつしやいました通り、一日のうちに、たとえば二時間あるいは三時間とか、それからまたどういうふうな坑内の労働條件のものであるとか、そういう詳しいことは、この技能者養成審議会において定められるということが自明のことであるようにしなければならぬと存じます。そうしてそれはまたそうであるという期待のもとに私たちとしてはこれをするわけであります。公益、労働、使用の三者構成によつてなされるところのこの審議会というものに、それくらいの信頼が置かれなければならないのでありますし、そういうような條件が備わつておらない所は技能者養成をさせないということは、労働基準監督の任に当るものとしてはなし得ることでありまして、全然そういう制度がないということは言われないと思います。
  110. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 もう一、二点でやめたいと思います。炭鉱は審議会が持つておるものでもなければ、国有でもないのであります。これを私有しておる資本家が自由に掘つておるのでありまして、炭鉱の会計帳簿を見ますと、坑木なんかと同じ費目の中に労働者の人件費が載つて、資材費みたいに相なつておるというような状態でありまして、そういう状態のもとで、ただいまの御答弁はまことにたよりないと思うのでございます。監獄労働と戰時労働の方向に、今産業教育法なり何なりが動いております際に、やはり政府の権力に屈しないで、藤田さんなどが労働省の中において婦人少年労働のために、ぜひひとつ闘つていただきたいと私たちとしては思うわけです。  次に、深夜業や休日返上の問題につきましても、一面において、婦人労働者が戦後あのように職場から追われ、首切りの一番先の対象になりまして、非常に大きな社会問題になつておると思います。そういう際に、さらに婦人労働者の労働強化になる、深夜業とか、休日返上でございますね、こういうことをいたしますれば、全体の婦人労働者の失業の機会をつくつて行くということに結論としてはなると思います。それだけではない。むしろこのことによつて、男子の労働者一つの低賃金の圧力が、そういう作業をますますやつて行くことになるのではないかと思うのでございますが、その点はどういうふうにお考えでございますか。
  111. 藤田たき

    藤田政府委員 深夜業につきましては、労働基準審議会の労働委員の方々も、記録によりますと、初めから御反対はなく、たとえばエアガールまたは寄宿舎の管理者のようなきわめて特定の方々、さらに中央労働基準審議会の議を経て労働大臣の告示するところの人々というふうに、きわめて特殊な人に限られておりますので、私は深夜業が男性の方々の低賃金をもたらすとは考えられないのでございます。また時間外のことにいたしましても、一日二時間、一週六時間、年間百五十時間というものはそのままでございまして、一週間に六時間の定めを二週で十二時間としただけでございます。御承知通りの状態のものでございますから、男子の低賃金をもたらしましたり、また女子の労働者にとつて健康上その他の害が非常にあるとは、私どもとしては思われないのでございます。
  112. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 このことは、この法律ができる前にも特殊な職種であるということについて了承しております。この法律ができますときにも、すでにその状態はあつたのでございまして、それでもなおかつ保護が必要があるという建前で法律がつくられたわけでございます。ですからその業種のうちの婦人労働者の労働時間を長くして、労働強化にして行くということは認めざるを得ないと思うのでございます。これは職場を奪われてほうり出され、失業しておる他の多くの婦人労働者の問題と関連しておると思うのでございまして、こういうふうに、この法律ができるとき、すでにこの業種はこれだけの時間でということできめられたものがくずされて行くことによつて、すべての産業に——今紡績でも十二時間労働とか十時間労働ということが平常になつておるのです。工場で働く婦人労働者だけではございません。官庁、銀行、百貨店、あらゆる婦人労働者が低賃金のために時間外労働というようなことをしいられて、それにみずから乗ずるというような状態にあるわけです。婦人労働者の持つていた既得権、今まで権利として保障されていたものが一角からくずされることによつて法律があつても時間外や休日返上で苦しめられている婦人労働者に、これらが当然なこととしてしいられて行くことになる、こういうことを私ども言つておるわけでございます。そういう事実があることは婦人少年局長も御承知だと思いますが、その点についてどういう対策をお考えでございますか。
  113. 藤田たき

    藤田政府委員 ただいまこの改正によりまして二つの点がくずされて行くということをおつしやいましたが、たとえば時間外労働につきましては、法律の中にはつきりと年間特別な時期であるところの決算のときということが書かれております。また深夜業に関しましては、三者によつて構成せられておりますところの審議会においても、その問題が心配せられた向きもございましたが、エアガールまた寄宿舎の舎監とか、そういつた人々については、労働代表も了承されたのであります。そして今後新たなものを加えて行くときには、必ず労働基準審議会において愼重に審議し、労働大臣決定をまつて告示されるというような、非常に厳格な規則がついておるのでございますから、御心配のようなことはないと私は信じております。
  114. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 御心配のようなことはないというお話でございましたが、私どもはこの前の不当労働行為のとき、たしかコロンバンのときでしたが、ミス・ウィルソンが、厳罰に処すべきなのだ、これは違反者なのだから即刻罰すべきだということを言つてお帰りになつたと思うのです。やはりこういう理解がなければだめだと思うのです。今行われていることに対する罰則をつくることが必要なくらいじやないかと思います。だから法律があるから守られるだろうじやない、今法律が破られている事実に対してどうするかということの方が先でないか。そうでなければ婦人の保護はやれないのじやないかと思うのでございます。その点については、どうでございましようか。
  115. 藤田たき

    藤田政府委員 破られております事実に関しましては、私ども婦人少年局といたしましては、基準局とは別個の一般的な調査という立場から、常に大きな関心を示しておりまして、労働基準局長その他と常に御相談申し上げて、できるだけ破られる事実がないように、大きな努力をいたしておるつもりでございますが、今後もますますいたしたいと存じております。
  116. 島田末信

    島田委員長 柄澤君の質疑も終了いたしましたから、午後二時まで休憩いたします。     午後一時二十八分休憩      ————◇—————     午後二時二十八分開議
  117. 島田末信

    島田委員長 休憩前に引続き会議を開きます。柳澤義男君。
  118. 柳澤義男

    ○柳澤委員 労働大臣にお尋ねいたしたいのであります。地方公営企業労働関係法案についてでありますが、まず第一條からお伺いしたいと思います。  この第一條の規定を見ると、前段の方にはなるほど「労働関係の確立を図る」ということで労働権の保障的意味が含まれておりますが、後段を見ると「地方公共団体の経営する企業の正常な運営を最大限に確保し、もつて住民の福祉の増進に資することを目的とする。」というふうにありまして、この後段の規定では労働権の保障的な意味が含まれておらぬ。もつぱら公共の福祉とこの事業を営む方の立場の規定があるように思うのであります。ところがこの法律は名前からして労働関係法ということでありまして、どちらに属するのかはつきりわからないのでありますが、労働大臣はこの法律もいわゆる労働法の一つだとお考えなのかどうか、これをはつきりしていただきたいと思います。
  119. 吉武恵市

    吉武国務大臣 お話のごとく地方公労法は、一つには団体交渉権を認めること、もう一つは、労使間の調整をどうするかということを規定し、二つの内容を持つたものであります。それからもちろん労働者の基本権を保障するものと同時に、その労使間の問題をどうするかということも、労働法の一つの重要な法律内容でございます。
  120. 柳澤義男

    ○柳澤委員 ただいまのお答えでは、労働法の重要な一つであるというように承つたのですが、しからば、憲法二十七條に勤労の権利が定められており、二十八條にその具体的な例として団結権、交渉権、行動権の三つが保障されております。しかしてこの憲法の規定は、少くとも経済的自由の保障を規定したもので、経済力なき者と、経済力ある者との間の調整をはかつて、経済的優位な者が経済的劣位にある者の権利を侵害しないという建前でこの団結権、交渉権、行動権が認められておるものと私は解釈するのであります。そういたしますれば、労働三法は、いずれもこの憲法に定めるところの基本的な権利の保障を裏づけるという規定でなければならない。たとえば財産権を保障しあるいは身体生命を保障する憲法の規定の裏づけとして刑法、刑事訴訟法があると同様の関係に立つべきである労働法である以上は、労働権——私は団結権、交渉権、行動権を憲法上の労働権と名づけておりまするが、この憲法上の労働権を保障する規定がこの労働三法でなければならない、かように私は考えるのですが、ただいまの労働大臣お話の、労働法の一つであるというこの法律と、憲法二十八條のただいま申し上げました団結権、交渉権、行動権の規定との関係はいかに御解釈になるのか、明らかにしてほしいと思います。
  121. 吉武恵市

    吉武国務大臣 御承知のように、憲法二十八條は、労働者の団結権及び団体交渉権、団体行動権についての規定をいたしております。従いまして地方公労法もそれに基く一つ法律でございます。従つて先ほど申し上げたように、労働組合をつくり、また団体交渉をすることを許す法律でございます。ただ問題は、憲法二十八條に保障する労働権と同時に、一般公共の福祉という問題が憲法十二條及び十三條に規定されておりまして、そこの調和の問題がございます。従つて現在国家公務員及び地方公務員につきましては、その公務員たる性質にかんがみ、これは国家、公共の福祉一般に奉仕するものであるというところから、争議権が認められていないのであります。争議権ばかりではございません。現在のところは、団結権、団体交渉権も認められていないのであります。しかしながら地方公務員の中でも、市電とか水道等一般の企業的なものにつきましては、国鉄、専売等とその性質が似ておりますので、せめて組合をつくり、また団体交渉をする権利を認めるべきではなかろうかというところから、今回提案したような次第であります。
  122. 柳澤義男

    ○柳澤委員 今のお話から、この法律もまた労働法の一つとして憲法の保障する労働権を具体的に裏づける規定であるとおつしやるのではないかと思いますが、どうも公共の福祉の問題がはつきりしません。くどいようですが、簡単でけつこうですからもう一度承ります。この労働法の精神も、またこの法の目的も、この憲法上認められている三権を具体的に保障する、いわゆる権利の裏づけを行う規定であると解釈してよろしいでございましようか。
  123. 吉武恵市

    吉武国務大臣 先ほど申した通りでございまして、この地方公労法は、憲法二十八條に保障するところの団結権及び団体交渉権を保障する規定でございます。
  124. 柳澤義男

    ○柳澤委員 私も、あくまでさような憲法の保障するところの規定は、原則的、基本的なものであつて、これが具体的に規定されるのがこれらの法律である、従つてその裏づけをなす規定であると解釈すべきものと思つてお尋ねいたしたのでありますが、幸いに労働大臣も同じような考えであります。そういたしますと、もつぱらこれらの法律の労働法なるものは、たとえば人身保護、財産の保護に対するところの侵害を受けた場合の刑法、刑事訴訟法と同じような意味において、この基本的権利が侵害されないように保障せられるいろいろな権利関係を明らかにするものでなければなりません。少くともこの労働権の保障、権利の裏づけであると見まするならば、この法律の第一條後段におきまして、「住民の福祉の増進に資することを目的とする」というようなはなはだあいまいな目的があるが、この法律がいわゆる憲法上の基本権を裏づけるところの規定であるとおつしやるなら、こういう後段の規定がありますと、はなはだその点この法律の目的を不明確にするものではないかと思うのであります。のみならず、さように考えれば、この法律の表題からして労働関係法の関係という言葉はまことに意味がなく、かえつてただいま申されるように基本的な労働権の保障的規定という点から見ますと、関係というようなあいまいな言葉はおとりになつた方がよいのではないかと思いますが、労働大臣はいかがお考えになりますか。
  125. 吉武恵市

    吉武国務大臣 労働法につきましては、立法の方法はいろいろございます。フランスなんかの労働法のように、組合法関係法もその他の労働関係一切を一つの労働法規としてまとめているところもあります。日本の労働法の体系は、労働組合法と基準法と、労使間の関係をいかに調整するかという三つの労働法の体系をもつて進んでおるのであります。従いましてこの公労法にいたしましても、今回提案いたしました地方公労法にいたしましても、お話のように概念的に言うならば、団結権を認めるのならば団結権を認めるだけの法律をつくり、そうしてその際の団体交渉によつて行われる関係をいかに処理するかという法律は別にもう一つつくるということも、これは法律の体系としてはいくらでもできます。しかしそうばらばらにわけないでも、問題は一つの問題である。団体交渉を認めても、その団体交渉を認めた場合、その間に話がまとまらなかつたらどうするかという問題が現実に出て来る。そうすると、それは現在の公労法と同じように、それだつた調停なりあるいは仲裁委員会にかけたときに、もしそれでまとまらなかつた場合はどうするか、それは県会なりにかけまして、最後的な承認を求める関係になります。でありまするから、お話のように、団結権を認めるなら認めるだけの法律をつくつたらどうかということも一つ方法ではありますが、そう二つにわけて法律をつくりませんでも、問題は、やはり一つ関係の問題でありまするから、従つて地方公労法にいたしましても、国家の公労法にいたしましても、一つの中にまとめてあるわけであります。
  126. 柳澤義男

    ○柳澤委員 ただいまのフランスの御説明、私もフランスにいまして労働法をいささかやつたつもりでありますが、今のようなお説で日本の労働法なるものを御解釈になられるということは、少くとも紛争のあること、あるいはあるべきことを前提とした法律をつくられておる。それなら私は憲法の団結権、交渉権、行動権の保障的な、裏づけ的な規定であり、他のすべての法律体系において憲法が基本権を認めますと、これに対して具体的な裏づけ規定がすべて存在する。それと同じような意味合いにおいて、すなわち憲法二十八條とこの労働法との関係は、他の法律におけると同じような関係であるという、先ほどお尋ねいたしましたところとまつたくかわつて来るのでございまして、ただいまのように労使の紛争ということが起つたらどうするとか、しないとかいうことで憲法の保障規定を定めるということそのものが、私は考え違いじやないか。紛争のあるということを考えて、紛争処理の規定のみに力が入つているように思う。紛争のあるなしの問題は、これら労働法に規定すべきではないと私は思う。少くとも権利の具体的な保障規定を設けるこの三法の建前におきましては、先ほど労働大臣自身がおつしやられたような、憲法と、この法律との関係に立ちまするならば、私はこの紛争を前提とした調停規定なんというものは大体間違いではないか、かように思うのであります。むしろ紛争が起つて権利が濫用されるならば、行動権にいたしましても、交渉権にいたしましても、権利の範囲を逸脱し、公共の福祉に反する行動に出るならば、これは権利の行使ではない、権利の濫用は権利の行使じやありません。そこまで法律権利として認めておらないのでありますから、権利の行使でない行動があるならば、他の法律によつていくらでも処断できます。刑法その他すべての法律によつて処断することができる。ひとり労働権についてのみ、紛争を前提とした大きな立法をなさなければならぬということは、法律体系においてもまことに悲しむべき混乱を来しておるのではないか。その意味において権利の行使でない。違法な行動があれば別の法律でやつて——これは決して労働運動と限らない、労働行為と限らない。むしろそれは單なる不法行然としていくらでも処断できるものであつて、この法律に両方をあいまいに盛り込むということは、先ほど来の御説明では納得できません。私はさように考えて、労働政策の最高責任者が、紛争を前提として法律をこしらえようというような考えでおるならば、幾回もここで他の委員から質問がありましたように、特に労働大臣は、三月ストなどでも政府が諮問委員会に諮問中でまだどんな立案に着手するかわからないうちに、労働法改惡反対というような計画を立てて国民に呼びかけておる。ことに地方公労法などは団体交渉権を復活しようというのであるのに、内容も知らぬで反対しておるという御説明をしばしば繰返されておりましたけれども、私はこの労働法の建前は、先ほど来申し上げたような建前でなければならないと思う。しかるに紛争を前提とした規定をされようとするところの労働行政の思想というか方針というか、そういうものがまだ出もしないうちからゼネスト計画などにぶつつかつてしまつて、非常に悪い感情を與える結果になるのではないか、こういうことをおそれるのでありますが、この点に関する労働大臣のお考えはいかがでありましようか。
  127. 吉武恵市

    吉武国務大臣 先ほども私申しましたように、法律のつくり方としてはわけてつくることも可能であります。決してできぬことじやありません。しかしながら、わけてつくらずに済む問題ではなかろうか。つまり紛争を前提とするとおつしやいますけれども組合をつくり団体交渉をするということは、それによつて対等の立場に立つて意見を吐き合つて妥結するのであります。妥結しない場合においては、いわゆる団体行動権としてストライキ権まで憲法は保障しておる。でありますから全然紛争がないものだということなら、初めから組合をつくつたり団体交渉権を認める必要はないのであります。労働問題というものはやはりそういう意見の不一致という問題があり得るということは考えなければならぬ。そうしたならばその不一致の場合はどうするかということのこれは労働法でございますから、ただ組合をつくつて団体交渉権を認めればいいというわけには参らない。でありますから地方公労法におきましても団体交渉権だけ認める法律をつくつておくことも一つであります。そのかわりにまた、そのときに話が一致しなかつたらどうするかという法律も別にいるのであります。ですからそういう法律を別につくれとおつしやればそれも別であります。しかしそれはただ形式をかえただけの問題でありまして、問題の解決にはならぬ。でありますから世界の国の労働法の中にも、一本のうちに労働法をまとめた国もございますれば、一々わけた国もあるわけでございまして、私はその点については別にそう違いはないと思つております。
  128. 柳澤義男

    ○柳澤委員 ただいまのお話はそれは考え方であります。私の言うのは、そういう建前で紛争を前提としての規定を設けようということが常に労働運動を刺激しているから、何べんも労働大臣が説明されたように、内容も発表せぬうちからもはやストの準備をするといつたように刺激しているのではないか、そういう実情はないかということをひとつお尋ねいたします。
  129. 吉武恵市

    吉武国務大臣 それは法律をわけましても同じことであります。問題の内容についての意見でありますから、法律の形式を二つにわけても同じことになるわけでありまして、わけたから問題がなくなるというはずのものではございません。
  130. 柳澤義男

    ○柳澤委員 私はもはや労働大臣考え方はお聞きしたのであります。第一段の、要するに法律をわけるかわけないかというようなことは、すでに聞きましてわかりました。しかし私の言うのはそうではない。紛争を前提としなければ労働法は考えられないというような労働大臣のお考えのもとでこういう立法をされる、それがまた労働行政の最高責任者の考え方であるというようなところから、内容発表の着手さえしないのに、すでに日本労働組合の相当有力なところを刺激した結果になつているのじやないか。これは将来のわが国の労働運動にとつては大きな問題だろうと思うのです。いつも発表もしないのに、彼らはかつてゼネストを準備して騒いでいるというようなことでのがれらるべきものでない。十分に安心をし、発表を見てからおもむろに態度を決定するように指導して行かなければならない。その基本の点はどこにあるかというと、労働大臣労働行政に対する基本的な考え方、労働権の行使には必ず紛争が伴うものである、そしてこれが立法をまずもつてやらなければならぬという考え方が、はたして将来の労働運動を育成して行くか、あるいはまた労働立法があるために、その内容がいい惡いにかかわらず、国民に重大な損害を與えるような大衆行動に出られるということはやぼの骨頂じやないかと思うのです。こういうことはその原因を十分つきとめて、反省すべきは反省し、その建前に間違いがあれば欣然これを改めて、納得の行く立法が常になされて行くように向けて行くことが、われわれの義務でもあると思うのでありまして、今度ことに三月ストあたりから、もはや何もわからぬうちからかなりゼネストの計画があり、しかもまた労働大臣も、それを未然に防止すべく何回かの折衝をせられているようなことさえもしばしばおつしやられておるので、私はなぜそのような結果が現われたか、労働組合がかつてに、改善か改悪かわからぬうちに、何でもかまわない、政府が何かやろうとすれば反対するのだという建前なのか、あるいはそうでなくて、先ほど申し上げたような労働行政に対する根本的な建前が刺激を與えたのではないか、この事実を労働大臣はどう見るかという点をお聞きしたいのです。
  131. 吉武恵市

    吉武国務大臣 御趣旨の点を聞き違えているかもしれませんが、御指摘になりました、地方公労法において団結権を認めることと、紛争の際にどう処置するかということが一つ法律になつているからいけないという意見は実はないわけであります。組合もそれについて文句は言つていない。組合の方では地方公労法に団結権を認めるならついでに争議権も認めたらどうかという意見はありますけれども法律が一本になつているについての議論はあまり聞いていないのです。
  132. 柳澤義男

    ○柳澤委員 法律が一本になつている話はもう前に了承しているのです。今はそのことを聞いているのじやないのであります。労働政策の基本方針がこの立法の上に現われている。従つて過去のあなたの体験によつて、この事実をどのように考えているかを聞いているのであります。
  133. 吉武恵市

    吉武国務大臣 しかし御承知のように労働者の基本的な権利を保障すると同時に、問題が起つたときにそれをいかに処理するかということが労働問題に対する重要な問題であります。ですから今度の提案についてもそれをあわせて考えているわけです。
  134. 柳澤義男

    ○柳澤委員 その点は先ほど来何べんか聞いておるのでありまして、ただいま繰返しお尋ねするのは、そういうことじやないのです。紛争を前提とした規定を出しているような労働大臣考え方が今次のストライキを刺激したのではないか、率直に言えばこのように聞いているのです。どこまでも労働者がだだつ子で、労働省が何かやろうとすればすぐストライキをけしかけて来るのだとお考えになるのか。こつちのやり方、考え方に何か間違いがあるので、前もつてそういう行動に出ているのだというふうにはお思いにならないかどうか、その率直な考えを聞きたいのです。これはわれわれが将来の労働政策に対する根本的な立て方を十分につつ込んで研究しなければならぬ大きな問題であります。労働者に対して、お前らはばかだからいつもわれわれを脅迫するためにストをやるのだろうと考えているのならば別ですが、しかしそうではなくて、こちらの考え方も基本的に直せば将来のストを未然に防ぐこともできるし、納得する立法ができるということも考えられるのですが、今までのように、両方入れて立法したのもある、別々にやつたのもありますよ、だから都合で両方入れてやつたのですというだけでは、この大きな問題の底にあるものは解決できない。そこでその事実を簡単でよろしいですから率直にお答え願いたい。
  135. 吉武恵市

    吉武国務大臣 労働組合の方で反対されておるのは、今度の労働法の中における緊急調整であるとか、冷却期間の際における却下制度等、労働者権利制限が加えられるようなことについての反対であると思います。これは労働者側から見れば無理からぬところであります。しかしながら私どもが提案のときに説明しておりますように、争議というものは自主的に解決されるものであるという原則については異議はございません。しかし万一その争議が公共の福祉に重大な障害を及ぼし、しかもほうつておいたら国民生活に非常に大きな損害を及ぼすようなときにどうするというための調整の制度が必要だから、そういうときには公正な機関にかけて調停なりあつせんをしてもらう、こういう建前で出ているのです。労働者が反対されている点は先ほど申したことであつて、それは意見はあるだろうと思います。
  136. 柳澤義男

    ○柳澤委員 労働大臣のお答えを何べん求めましても、私の申し上げることに対してピントが合つておらない。お聞きしたいところはそこではありません。しかしあとにも質問者が控えておりますので、これは宿題にしておきます。  私は先ほど申し上げたような点から言つて、この法体系では、外国の立法も承知しておりますが、日本の場合は紛争ということが頭にあるので、憲法上の労働権の保障の裏づけの規定がすつきりされているところがない。組合法と基準法が大体その点を保障しておりますが、これとても法体系から言えば実にだらしのないものであると思われるのでありますが、これは参考にとどめまして、その内容に参りましても、ただいま質問しております地方公労法の関係から見ても、公述人の方々があげられた例でありますが、たとえば同じ憲法の保障する労働権の一つである争議行為につきましても、都電には争議権がない、同じ場所であつても地下鉄にはこれがある、あるいは同じ地下鉄であつても東京と大阪ではそういう基本的な権利制限に重大な違いがある、こういう矛盾が指摘されておるのであります。こういう矛盾はどこから来るかというと、何でもない、法体系がめちやくちやである、労働法というものは紛争を前提としてでなければ考えられないという考え方である。憲法の保障するところの権利を守つて、具体的にこれが行使できるように定める法律であるのに、これをただ紛争解決のいろいろなこまかい規定のみにとらわれ過ぎておる。そういうような結果から、法体系がめちやめちやになる。そのために、こういうような実際の例が起つて来るのであると私は思うのであります。少くとも憲法上の労働権を、経営の主体が公共団体であるから、あるいはそうでないからということで、この労働権の適用が区別されるというようなことはあり得ないはずです。これは事業の性質、運営の実情から公共の福祉に反するかいなかによつて制限というものは決定さるべきものである。本質的に、その企業をだれが経営するから、働いておるところの勤労者の憲法の保障する権利制限がされる、されないなどということは、まことにもつて法治国の法律として、こんなはずかしいものはないと私は考えるのであります。そういう点もすつきりと是正して、同じ区域において、同じ性格の仕事がなされておるのに、片一方に憲法上の権利が保障され、片一方は、これを制限せられるというなどは、ただ單に外部的な勤労者の立場から見れば、外部的な経営主体の性格によつてきめられるなどという、そんなばかばかしい公共の福祉というものはあり得ないはずである。こういう点に対しては、労働大臣は、いかにお考えでございましようか。
  137. 吉武恵市

    吉武国務大臣 これは御承知のように、企業は似ておりますが、国家公務員、あるひは地方の公共団体の地方公務員というものは、国家全体、あるいは公共団体全体に奉仕する性質のものであります。つまり普通の企業でありますと、それは雇う者と雇われる者という関係に立つて、片一方は、これによつて利益を受けるという立場にありますが、国家とか、公共団体とかいうものは、それで利益を受ける団体ではない。しかもこの給與の状況というものは、国会の予算あるいは地方公共団体の予算によつてきめられるものである。でありますから性質が違うのであります。そこで今日御承知でありましようが、国家の公務員につきましても、争議権というものは、認めていないのでありまするから、やる仕事が同じだというだけでは、これはきめられない。われわれはかように存ずるのであります。
  138. 柳澤義男

    ○柳澤委員 まことに奇怪なお説を、私は承る。利益の帰属がどこにあるとか、予算がいかようにしてつくられるかということによつて、あるいはそれが公務員であるから、いわゆるパブリツク・サーヴアントの立場にあるからということで、憲法の保障する権利制限されるとか、制限されないということは、とんでもない話であると思います。これは、少くとも公共の福祉に反しない限りにおいて、働く者それ自体に許された、認められたところの基本的人権であります。団結権、交渉権、行動権は、憲法の保障するところの経済的自由の基本的な規定である。これを制限し得るものは、單に公共の福祉に反するという点であります。公共の福祉に反すれば、もとより権利の範囲を逸脱するものであつて、その範囲外は権利でないから、当然その範囲で活動すべきものであるけれども、これを他の法律をもつて、お前はどこに勤めているから、基本権はないのだというようなことが言われるようであつては、これは一般に、その人の立場においてこの憲法というものは、まつたく理解できないものでありましよう。労働大臣が、公務員としての身分によつて、この権利がないというようなことでは、まことに嘆かわしいことである。どこまでも公共の福祉という以外には制限されないというようにお考えになれないものでしようか。これは私の説が間違いだとおつしやるのでしようか
  139. 吉武恵市

    吉武国務大臣 もちろん国家の公務員及び地方の公務員は、国家、公共団体の全体の奉仕者である。従つて争議権がないというのは、もちろん公共の福祉の建前からであります。
  140. 柳澤義男

    ○柳澤委員 公共の福祉に反するということは、争議も起らないうちに、その人がそういうような事業に携わつておるから、何にも起らないけれども制限して置かなければならぬといつたような、今のお話になろうと思います。その事業が公益的なものであるから、公共の福祉に反するというように、私は聞きとりましたが、団結権、交渉権、行動権というものの内容は、必ずしも同じ態様によつて現われるものではありません。先日来私はアメリカにおける労働争議の実情をつぶさに研究して参りました。アメリカにおいてストライキをやつている実情を見まして、私は驚嘆したのでありますが、大きなプラカードに要求を書いて、きわめて粛々と二列に並んで行進をしておる。これは今の労働運動の諸君も大いに研究してもらいたいところでありますが、どこをどうとつつかまえても、これを制限すべきものは、一般的に考えられません。列を乱さないように、他人に迷惑をかけないように、公共の福祉反にしないような行動をとつております。公務員の身分があるから、地下鉄が大阪と東京では違う。都電と地下鉄とでは違うというような公共の福祉は考えられないのであります。少くとも他人に迷惑をかけないというのが、公共の福祉に反しないということであると私は常に考えております。そういう意味におきまして、ただいまの御説明では、これも私には納得できませんが、次の質問者の時間を制肘するので、この辺でこの点については宿題としてとどめて、次に進みます。  具体的な問題に入りますが、ただいまお尋ねの地方公労法の第八條に、「条例にてい触する協定」というのがあります。また第九條にも、「規則その他の規程にてい触する協定」というのがあります。第八條を見ると、「地方公共団体の長は、当該地方公共団体の條例にてい触する内容を有する協定が締結されたときは、その締結後十日以内に、これを当該地方公共団体の議会に付議して、その承認を求めなければならない。」とうたつてあります。第九條もこれと同様な意味でありますが、これらの規定を見ると、公共団体の定めておる原則たる條例に違反する協定を設けてもよろしいということを、この法律は認めておることになる。少くとも條例は、その地方公共団体における憲法であります。この特殊利益を持つところの公共団体の特別の規定であります。その住民はすべてこれが遵法を要するのであります。しかるにこの法律においてこれらの法規に違反をしても当然違反する内容を有する協定が締結されるということを認容しております。しかも「公共団体の長は、」ということになつております。してみますと、まつたく條例という法律の遵法精神は破壊されるものと思われるのであります。法律の明文をもつて法規を守らぬでもよろしいという規定をしておるように思われますが、この点労働大臣はいかがにお考えでしようか。
  141. 吉武恵市

    吉武国務大臣 これは御承知のように、地方公営企業についての職員に団体交渉権を認める以上は、双方の意見を闘わして妥結すればそれに従うのが建前でなければなりません。もし万一意見が自主的にきまらない場合には、地方公労法の建前としては仲裁にかけます。仲裁は労働委員会がやりますが、地方労働委員会にかけてどうするかをきめます。きまつてこうすべきだという意見が出ますれば、その意見をできるだけ尊重するというのが、団体交渉権を認めた趣旨に沿うわけです。しかしそれだけでもつて県会を拘束するということはおもしろくございませんから、最組決定はちようど公労法が国会の承認を求めるのと同じように、県会にかけまして、県会がそれは団体交渉をし、労働委員会が間に入つてこうなつたがよいというふうにきめたのだから、それは認めたらどうかということで県会が承認いたしますればそれを尊重し、もしそれが従来の條例と違つておれば條例をかえて行く。そうあるべきではないか。もし従来きめた條例に反して裁定が行われ、しかも條例の方がよいと県会が認めたときには、おそらく承認しないでありましよう。承認しなければもちろんそれは採用にならないという建前になるのであります。條例というものはいろいろございまして、もちろん組合との間で団体交渉の対象にならぬものを交渉してかえるということはできませんが、條例の中には給與に関する條例もありましよう。従つて団体交渉で給與に関する事項について裁定が下り、県会が承認してそれが従来の給與準則というものと違つておれば、その妥結に従つて給與の條例をかえるということが建前である、かように存じます。
  142. 柳澤義男

    ○柳澤委員 私もかつて地方労働委員をしておりました経験がありますが、ただいまのお話は、実際地方労働委員などをやつてつた立場から見ると、実際と非常に遠い感じがいたします。いやしくも地方公共団体の住民たるものは、條例に服すべきであるという遵法精神は労働委員会といえどもかわりありません。労働委員会であるから定められた法律を越えて、遵法精神を破壊してまでも組合に押されなければならぬような場合は、私がやつてつたときは労働運動の最も盛んであつた時分ですが、決してありません。そういうときにはまず先に條例を改正してもらうという手続を経ます。そうしてその改正された條例に基いて、少くとも法律を遵守して協定を結ぶということが当然であります。しかるにこれはこの法律をもつて無理に條例の遵法精神を破壊して、それに抵触する内容を有する協定が締結されたときはということになつております。締結された後において條例をかえるということを、法律をもつて公然認めようとする。日本国民の遵法精神そのものからいつてこれでよろしいか。国民が法律を守ろうとする尊い気持が、この一つの條文によつて多く破壊されることは当然であります。多数組合をつくつてもさもさやつたら、労働委員会もこれにのつかつて、現在定められておるところの條例を無理やりにその協定で改正する。しかもそれが法律で保障されている。そんなばかな話がどこにあるか、少くともそういう情勢にあるなら、條例をかえなければいかぬ。その改正された條例に従つて組合もまた労働委員も行動すべきであるというのが当然の法律の建前でなくてはならぬと思います。かくのごとき法律をこしらえて、日本国民全体の遵法精神を破壊するというようなことは、法律をもつて生きておるわれわれとしては断じて許しがたいところでありますが、労働大臣のお説はただいま御説明の通りということでございましようか。
  143. 吉武恵市

    吉武国務大臣 多少誤解があるかと存じますが、一般の條例をかえるという趣旨ではありませんで、つまり地方公労法によつて団体交渉権を認めます。そうしますと給與その他についての労働條件について理事者側と団体交渉いたします。団体交渉をいたしました結果、たとえば給與について今まで十段階にわけるという給與規則が條例できまつてつたとします。それが十では少いから十二にしよう、それは組合意見を入れようということになつて、かりに妥結したとするならば、それに従つて給與準則というものをかえて行くということが建前でなければならぬ。ただ條例できまつておるから、かえないのだということであつては、団体交渉をしてみても意味がないのであります。そのために起る変更であります。
  144. 柳澤義男

    ○柳澤委員 それは私は誤解ではないのです。條例は改正できないものではない。ただ單に交渉で條例に抵触する内容を有する協定が締結されるということを法律が認めておつてよろしいのかどうか。そんなばかな話はない。おつしやるような場合はしばしば起ります。かつて起りましたが、そういう場合は常に條例を改正することを先にしております。これは常にできることであります。給與の面だとおつしやるけれども、この法律には何にも書いてない。当該地方公共団体の條例に抵触する——その住民が従わなければならない規則に抵触する協定を、その長が締結してもよろしいというようなことは、あまりにもつて遵法精神を破壊するというのが私の考え方であります。今のお答えでは私にはとうてい理解できません。たとえ給與であろうと、給與が不当であつたら、先に條例を直すのがよい。條例を直さないでやれとは私は申しません。條例を直してしかる後に締結すべきものである。締結されたときではなく、締結しなければならないような状況のときには、その條例を改正するように必要な文句をいくらでも書ける。こういう條例をあとから改正させる、有効に存在しておる條例を守らぬでもよいという書き方をせぬでも、いくらでも方法はあると思うのであります。私はただそのことを申し上げておきます。  さらに労働関係調整法の一部改正の点につきまして問題となつておるいわゆる緊急調整、この問題は皆さんがきわめて詳しく質疑されましたので、私はほとんど盡されておると思いますが、この規定が通過いたしました後において、非常に疑問の大きいところがありまして、これが解釈の一助にもなると思いますので、労働大臣の明快なお答えを願つておいた方がよいと思つて、二、三お尋ねいたしたいと存じます。  まず三十五條の二の問題ですが、「公益事業に関する労働争議又はその規模が大きいため若しくは特別の性質の事業に関するものであるため」というその規模の大きいというのはいかなる標準、どのような程度をもつて大規模であると目されるか。特別の性質の事業という問題も、どこから判断して特別の性質という区別をつけるのか。この具体的な点。もう一つついでですが、「労働争議につき、これを放置することにより」云々とあります。この「労働争議につき」というのは、労働争議が開始されてからか、争議の動きその他明確に予想される場合も含むのか、この点を簡単にお答え願いたい。
  145. 吉武恵市

    吉武国務大臣 この緊急調整の発動については、お話のように非常に大事なことでございます。従つてその一つの要件は、公益事業であるか、大規模の争議であるか、特別の性質かということ、同時にもう一つの要件は、公共の福祉に著しい障害になるということであります。しかもそれがほつておいたならば、さらに国民生活に重大な損害を及ぼすと認められること、こういう三つにしぼつてあるわけであります。そこでお尋ねの公益事業は、これはもう法律規定してありますから明瞭でありまするが、大規模につきましては、例を申し上げますれば、全国的に石炭のストに入る、これは私は大規模と言えるのじやないかと思う。それでは、全国的の石炭のストはみんなこれにかかるかというと、それは、全国的に石炭がストに入りましても、それがすぐ公共の福祉に重大な障害を及ぼすとは私は言えないのじやないかと思う。
  146. 柳澤義男

    ○柳澤委員 抽象的な標準をお示し願います。
  147. 吉武恵市

    吉武国務大臣 抽象的な標準は、何人以上ということはございません。三つの要件がそろつていて、それがほつておいたならばたいへんなことになるという緊急な状態に立ち至れば発動する、こういうことであります。それから特別の性質ということも非常に抽象的なことでありまするが、先ほども申し上げましたように、たとえば薬にいたしましても、ある特殊な注射液なんかつくる工場が一つか、二つという場合がございます。しかしそれが長期にとまりまして予備がないということになりますと、これは伝染病の建前上ほつておけぬということもございますので、こういうものが特に加わつておる。それで、この公益事業、大規模の争議及び特別の性質というのは、現在もこの種の規定労調法の中にございまするが、それと同じような考えを持つております。
  148. 柳澤義男

    ○柳澤委員 そうすると、その制定はだれがされるのですか。
  149. 吉武恵市

    吉武国務大臣 労働大臣であります。
  150. 柳澤義男

    ○柳澤委員 それは他の法律についてもずいぶん疑義のあるところでありまして、他の法律にあるというので、ずさんな規定をそのままこれに持つて来られたのではたまらぬと思うのです。これは労働大臣の非常に大幅な権限を承認することになります。さらに、「これを放置することにより国民生活に重大な損害を與へると認めたとき」という、この「重大な損害」ということは、私は分析すると二つに考えられやせぬかと思う。如上のような行動の結果、重大な損害を與えるということは、一つは、その安寧秩序を破るような争議の行動が、たとえば不穏である場合というようなものが対象として考えられる。すなわちこれは治安上重大な損害を與えるということが一つ考えられます。もう一つは、その行動自体でなく、その行動の結果として経済上の損害、たとえば生産をまつたく低下せしめるとか、つまり争議によつて経済的な損害を及ぼす結果になることが考えられます。この三つの治安上の損害と経済上の損害とにはつきり区別されるものと思いますが、この場合には両者を含めるのか、それとも経済上の損害だけを意味するのか、これを明確にしていただきたい。
  151. 吉武恵市

    吉武国務大臣 御指摘になりましたように、これは両方含むと思います。いずれにいたしましても、国家、公共の福祉に重大な障害を及ぼすというものでなければならないと思います。
  152. 柳澤義男

    ○柳澤委員 これは両方含むとすれば非常に重大な問題だと私は思います。たとえばその労働者の行動権、争議行為そのものが不穏であり、その行動が安寧秩序を破るようなものである場合に、これを対象として発動されるのは当然いわゆる治安関係である。労働大臣が、そういうようなもつぱら治安上の問題までもこの中に当然含まれるということになると、私は非常に大きな問題であると思う。それは治安立法として当然別に考えられなければならないものであつて、ここにはもつぱらそうした行動の結果、経済上に重大な影響を及ぼすと認められるものに限定さるべきものではなかろうかと考えるのです。しかしながらただいまのお説ですと、その両方が入るということでありますが、そうなると、この点は法務総裁に聞かなければならない。法務総裁は、かつてここで他の方に答弁されて、こういう争議行動についての治安上の問題については、治安立法を今国会に出すようなお話をされた。今の労働大臣のお説では、その分野までもこの緊急調整規定一本でもつて干渉するということになりはしないかと思います。そういうようなことは、おそらく閣僚として閣議できめられることでありますから御承知のことで、法務総裁が何と答えたか知らぬとはおつしやられないと思いますが、その間の調整はいかにいたすのでありますか。
  153. 吉武恵市

    吉武国務大臣 法務総裁が今考えられております治安立法は、国家緊急事態に対しての処置であります。私どもが今ここで考えておりますのは、労働問題として、労働争議として問題が起つて、それをほつておいたならば国民に重大な障害を及ぼすときには、緊急調整によつて、つまり公正な機関にかけて問題を解決しようということでありまして、法務総裁が考えられておりますのは、労働問題以上の問題であります。そういう問題は、あるいは労働問題の名のもとに出て来るかもしれませんが、それ以上の問題であるときには、これを治安立法として取扱うという問題であります。
  154. 柳澤義男

    ○柳澤委員 だから私は先ほどからそれをお尋ねしておる。同じ労働争議でもたくさんの人の行動が不穏であるというような場合も含むのか、また治安上の重大な損害も入るのかと申し上げたら、経済上の問題だけではないとおつしやられるから聞いたのであります。ただいまのお話ですと、治安上の問題は入らないようなお話でありますので、前の御説明とどちらをとればよいか、もう一ぺん明らかにしていただきたいと思います。
  155. 吉武恵市

    吉武国務大臣 争議というものには、治安上の問題も付属いたします。私どもの今ここに考えておるのは、労働問題として出た場合に、それをほつておいたならば国民生活に重大な障害を及ぼす場合には、それが経済的に大きな打撃のものもありましようし、あるいは国民の安全に関する問題もありましようが、そういういずれの場合でありましても、労働問題としてそういう状態になつたときに緊急調整を行うというものであります。
  156. 柳澤義男

    ○柳澤委員 明晰なる頭脳を持たれる労働大臣にして、どうも重大な損害についてあまり分析されておらない。治安上と経済上が明確にわかれて来る、同じ労働争議と言いながら限界がついて来る、行動が不穏化するというような場合には、治安上の問題で単なる労働争議ではない、こういうふうに私は解釈するのですが、労働大臣は、この場合も当然随伴して来るとおつしやられます。随伴して来るにしても、程度が過ぎて治安の方に入つて行けば、随伴するであろうけれども、当然その安寧秩序を維持する面についてのものが治安立法に相当讓られて来るものと思いますが、これ以上お尋ねしても同じことと思います。  もう一つは、緊急調整決定をなすということがありますが、緊急調整どいうことがどういうことであるかということは、労働者を対象としてなるべくわかりやすく書かねばならないこの法律の建前からしましても、これだけではちよつと内容が明確でありませんが、争議行為をストップさせて、優先的に中労委に調整させるということなのでありましようか、それとももつと具体的な内容があるのでありましようか。
  157. 吉武恵市

    吉武国務大臣 そういう意味であります。それは次の條文に掲げてある通りであります。
  158. 柳澤義男

    ○柳澤委員 緊急調整決定権を労働大臣に認めたこの法案が、緊急調整決定する権限は一度だけでしようか、累次更新できるのでしようか。その点をひとつ伺いたい。
  159. 吉武恵市

    吉武国務大臣 これはもちろん争議について具体的にきまるものでございますから、その争議については、この調整は一つであると思います。
  160. 柳澤義男

    ○柳澤委員 累次更新することができるのでしようか、累次更新することが全然ないのでしようか、どうも明確でないので伺いたい。
  161. 吉武恵市

    吉武国務大臣 その争議については一つであります。
  162. 柳澤義男

    ○柳澤委員 これで五十日の間争議をすることができないということになつておりますが、五十日では長過ぎないかという質問が大分ありましたけれども、五十日もたつておると、いわゆる緊急調整でなくても、一般原則によつて調整できるようになりはしないでしようか。従つてこの五十日ということは、意味がないのではないでしようか、いかがでございましようか。
  163. 吉武恵市

    吉武国務大臣 これは過去、中央労働委員会等において調停をいたしました実績から見ても、大体五十日ぐらいかかるのであります。でありまするから、まずこれくらいは必要ではないかと思います。
  164. 柳澤義男

    ○柳澤委員 その五十日の争議停止は、一切の行動権の停止でございましようか。その点をお尋ねしておきたいと思います。
  165. 吉武恵市

    吉武国務大臣 これは一切の行動権じやございませんで、争議行為であります。
  166. 柳澤義男

    ○柳澤委員 争議行為、いわゆる憲法二十八條に言う行動権のうちの争議行為だけをとるということでございますか。
  167. 吉武恵市

    吉武国務大臣 その通りであります。
  168. 柳澤義男

    ○柳澤委員 なお質問したい点がありますが、私は時間の関係上、この程度にしておきます。
  169. 島田末信

    島田委員長 青野武一君。
  170. 青野武一

    ○青野委員 私は昨日から特別調達庁長官に御出席をお願いしておいたのですが、やむを得ない事情のために午前中だけで、今問い合せてみますと、何か長官室で重要な会議があるということでございますので、吉武労働大臣にひとつ御質問をしたいと思います。特別調達庁長官には、明日でも御出席願えれば、あわせてそのときに質問したいと思います。  大体私が御質問をいたしまする前に、労働省といたしましても、特に政府といたしましても非常に苦慮しております労鬪を中心にするいわゆる第三波スト、それがきようの新聞を見ましても、大体の計画がはつきりして参つたのでございます。これは必ずしも労鬪の態度ということではございません。社会党に所属する労働委員としての私が、こういう点が日本労働組合にとつて、今度の労働法改正に対する不満な重要箇所ではないかと思うことを一応申し述べまして、それによつて各項目別に、時間の許される範囲で御質問したいと思います。  第一に、まだゼネスト禁止法は出ておりません。おりませんけれども、大体私がここで日本労働組合意思代表して、こういう点に不満があるという点を大別すると三つであります。これはこまかく並べて九つになります。一々こまかい條文を通じて批評し、あるいは労働組合の立場からいろいろ意見を申し述べて行けばまだたくさんございますが、大体三つにわけまして、かりにゼネスト禁止法といつたようなものが出るといたしまするならば、それを二つにわけて、ゼネスト禁止法については、一、ゼネスト禁止法の制定はしないこと、二は、その他治安に関する單独立法においても、労働組合運動を対象とするゼネスト禁止法類似のものをつくらないこと。  その次に大別しての二でございますが、争議の調整について四つにわけて申しますと、一が、公益事業争議行為冷却期間を廃止して、大体一週間の予告制度にすること。二が、調停申請労働委員会による却下制度は設けないこと。三が、政府原案の緊急調整制度は事実上のスト禁止法であり、政府争議介入であるからこれを取除くこと。四が、争議権の禁止という前提ではなく、争議の有効な解決に重点を置き、労働委員会制度の活用という建前において、現行法の労働委員会による争議調整規制を整備する方向でもつて改正をすること。  大別しての三になりますが、なお公務員関係の労働基本権復活は不十分であるから、次の趣旨に沿うて改正すること。一、公務員のいわゆる単純労働者(教員並びに地方公務員中の単純労務者を含む)と公共企業体並びに地方公営企業体の労働者争議権を與えるものとし、争議調停制度については別途考慮すること。二、仲裁裁定の政府に対する拘束力について明記すること。三が、非現業公務員に対しては団体交渉権を認めること、また公務員法の公務員の政治活動の禁止、団結権に関する諸制限等を撤廃すること。  大体大きくわけましてこの程度が労鬪の考えている点ではないかと——私はその機関に直接参加しておりませんから、これが労鬪の方針であり、態度であるということを明言することはできません。しかし私は社会常所属の労働委員としてこの点に不満があり、こういう態度と意見を持つておるから、やはり月がかわりますと三波のストが必然的に決行せられるのではないか、かように考えておりまするので、項目別に従つて簡単に——自身も重要な会議を控えておりますので、残余の分は明日に讓らせていただきたいと思います。     〔委員長退席、船越委員長代理着席〕  今申し上げましたことに関しまして、ついでと申し上げてはまことに何でございますが、一応ここで研究を要する問題がございまするし、勢い関連をしておりまするのでお尋ねをいたしますが、二十日の日に同僚労働委員の諸君から御質問になりました例の呉、山口地区の国際連合軍、中身はイギリスと濠州軍と聞いておりますが、これらの国連軍の下で使われている日本人の労働者約一万三千人が、最近一箇月平均給料三千円を削除せられて、そしてこれは駐留費の中から日本政府が負担すべきであるという主張をなされている。ところが新聞紙の報ずるところによりますと、国連に加入するまでは、日本政府にさような負担をする必要はないのだ、義務はないのだということが書かれております。しかしこの問題はやはり全国的に大きく波及するおそれがございますので、早急に解決しなければならぬ問題と思います。新聞によりますとクラーク国連軍司令官と岡崎外務大臣がこの問題について急拠話し合うということも報ぜられておりました。そして最後に問題が紛糾すれば、勢い終戦処理費の中からでもこの三千円を一応立てかえるか、労働者に対する不払い、遅払い等を緩和するために何らかの処置をとるためには、終戦処理費から流用しなければならぬのではないかといつたような新聞紙の見通しも書かれてございます。これについてはすでに二十日であつたと思いますが、同僚委員からの質問もございますし、政府といたしましてはこの問題についてどの程度に話が進められているか。もし閣議でも開かれたといたしますならば、この問題についてどのような協議が具体的になされましたか。これは單に山口、広島地区の国連軍と日本労働者との関係だけではありません。おそらく全国的に起つて来る問題で、扱い方一つによりまして非常に大きな問題を将来に残すと思いますが、その点について吉武労働大臣並びに特別調達庁の長官にお答えを願いたいと思つておりましたが、長官が御不在でございますから、吉武労働大臣にこの点お尋ねしてみたいと思います七
  171. 吉武恵市

    吉武国務大臣 最後の点について申し上げます。例の呉地区における英濠軍に雇われております労働者の給與につきまして、お話のように三千円近い切下げが行われようとしているということを聞いております。私どもとしては、独立した直後に、そういう待遇の低下を来すことは好ましいことでないと存じまして、できるだけ従前のように存続をしたいという希望を持つているわけであります。これをだんだん調べてみますと、英濠軍の方にもいろいろ意見がございまして、今までの條件ではなかなか続けにくいからいうことで、組合側といいますか、労務者側と話合いをしているようであります。一部の君はもう切り下げてもいいからということで判をついて契約をしている向きもあるということであります。しかしそれはよく中の文字がわからないために判をついたのではないだろうかという向きもございます。いずれにしましても、そういう問題でもめますことははなはだおもしろくないことでございますから、これはぜひひとつ円満に解決をするように、そしてできるだけ従前の待遇が続けられるようにということを、目下外務大臣を通じまして折衝させているような状況でございます。
  172. 青野武一

    ○青野委員 それで大体の輪郭はわかりましたし、納得をしたのでありますが、私ども日本人の立場から、日本労働者——露骨に申しますと、連合国とは、御承知のように先月二十八日午後十時半に一応形だけでも平和條約が締結いたしました。そうすると残つて来る問題は国連軍と日本政府が、はたして日本に駐留する條約をどうきめるのか、黙認するのか、それらの諸君が日本の国民といろいろな関係で摩擦を生じたときにはどうするかということが、やはりこれも大きな問題として残されて行くときに、労働者の生存権を脅かすといつたような問題が、強い軍事力を背景にして一方的に押しつけられる。そして日本の国会も政府もそれに手が出ないといつたようなことで、労働者の生活を保障して、安心して進駐軍労務に従事して行くことのできないようなぐあいに放任することは許されない。従つて外務大臣にそれぞれ交渉をしていただいているということは私どもよく了解をいたしますが、できれば閣議で、労働大臣と外務大臣が相協力一致して政府一つの線を打出して、将来に残されて来る問題を十分に考慮して、やはり労働者の生活権の確保、安心して進駐軍労務者として十分に労働力を提供できる、そういう態度をひとつ急速にとつてもらいたいということを希望すると同時に、一応向うが、どうしても財政の関係でその金を払うべきが当然でございますが、払わないということで問題が紛糾して行きますと、その目かせぎのわずかな給料をとつておる人が、一挙に一箇月三千円も給與を減額されるということは、直接生活に響く。たくさんの家族を抱えた者はより以上の窮地に追い落される。それをいかにするかという点については、政府側において具体的な工作が払われておると思いますが、一応この給與問題の減額に関する話合いが最後的に決定するまでは、それは何らかの方法によつて労働者の收入減にならないような方策をひとつ立ててもらいたい。そういう点についてこれは希望でありますが、そういう御意思政府側にあるか、特に外国軍隊と日本労働者関係でございますから、外務大臣が交渉の任に当るが、それらの労働者の生活の安定と、向上、労働権を尊重するということを、国外的な勢力に向つて労働大臣はこの際強い決意をもつて、閣議その他を通じてひとつ交渉をしていただきたい。そういう線にまとめ上げるように努力をしていただくお考えがございますか、その点をひとつお答え願いたいと思います。
  173. 吉武恵市

    吉武国務大臣 御意見の点は十分考えてみたいと思いますが、問題はただこれを日本政府で一時負担するということになりますと、将来のこれらの国連軍の費用の負担の問題にも関係して来ることでございますので、これは軽軽には取扱えないと思います。私どもとしては、労務者の待遇ということにつきましては、お話のごとく重大な関心を持つておりますし、また今後の問題もあることでございますから、最善の努力を払うつもりでおります。
  174. 青野武一

    ○青野委員 昨日から逐條審議及び総括的な質問を含めて、各党の代表者によつて順次御質問が行われておりましたが、私は出席して聞いておるときもございましたが、いろいろな用件で出席できない場合もありましたので、多分重複して行くだろうと思います。しかし非常に大きな問題は先ほど申し上げましたような項目でございますが、一応ここでお尋ねをしておきたいと思いますのは、地方公営企業労働関係法のうちの各條文にわたつてであります。厳密に申しますと、相当項目質問を申し上げたいと思いますが、時間の関係で明日また発言のお許しを願いまして、できるだけ重要な点だけを三つ四つお尋ねしたい。同僚委員からいろいろ御質問がございまして、私が質問をしなくても了解した点もたくさんございます。しかしこの地方公営企業労働関係法の目的というものがここに書いてございますように、その重要な箇所は、地方公共団体とそこに働いておる職員との平和的労働関係の確立をはかる。そして「地方公共団体の経営する企業の正常な運営を最大限に確保し、もつて住民の福祉の増進に資する」と書いてありますが、地方公共団体の経営するところの企業に従事する労働者の、たとえば生活権を確保する、労働権を尊重するという明文がないことは、私ははなはだ遺憾である。従つて、目的がこういうふうに局限せられておりますから、第三條に地方鉄道事業、軌道事業、自動車運送事業、電気事業、ガス事業、水道事業とありますが、これはたいていの市が水道事業をやつておりますし、また自動車運送事業も各市がやつております。特に県営でやつておるところが相当ございますが、そこで働いております五十人か多くても三百人くらいの小さい労働組合の諸君が、一たび給與の問題で地方公共団体の理事者と対立いたしましたときに、団結権としては、「労働組合を結成し、若しくは結成せず、又はこれに加入し、若しくは加入しないことができる。」というようなややこしいことが書いてございますが、一応職員の団結権は認めておりますけれども、「職員でなければ、職員の労働組合組合員又は役員となることができない。」ということは、かなり私は制肘を加えた内容ではないかと思います。しかも第六條に参りますと、「地方公営企業は、その定める一定数を限り、その職員が労働組合の役員としてもつぱら職員の労働組合の事務に従事することを許可することができる。」と書いてある。これは「許可することができる。」でなくて、許可すると書いてさしつかえないのじやないか。それから、「この場合においては、いかなる給與も支給してはならない。」とある。おそらく日本労働組合は、特定の例は別といたしまして、大体において、終戦後六年八箇月の今日では、そこの経営者とか、資本家とかから金をもらつて労働組合の専従員をかかえておるということはないと思う。そういう点から考えまして、この間国鉄の代表者の野々山君が参考人で参りましたときにも言つておりましたが、大体六百五、六十名くらいおりましたが、自発的に専従者の数を全国的に百名ほど減らしました、もちろんこの負担は組合の負担でございます、こういうことを言つておる。従つて、私はあわせてお尋ねしたいと思いますことは、この職員でなければ職員の労働組合組合員または役員になることができないということでありますが、私は必ずしも職員でなければ役員になれないとは思えない。これは裏返しにいたしますと、そこの職員が解雇せられた場合には、組合のいかなる重要なる地位に立つてつても、勢い組合から脱落して行かなければならぬ。これがやはり行政機構の改革によりまして、人事院を中にはさんで問題が起つた点でございます。こういう点についてはどういうお考えを持つておられるか。それと第六條の、「職員の労働組合の事務に従事することを許可することができる。」でなくて、従事することを得る、とはつきり明文をつくつて、はつきりしておいていただきたい、こう私は考えますが、この点についてどういうお考えを持つておられますか。
  175. 賀來才二郎

    賀來政府委員 お尋ねの第五條の関係でございますが、これもこの企業の職員が持つております公務員という身分の性格から出ておるのであります。公務員たる企業の職員には、単に労働関係法律だけでなくして、地方公務員法の身分関係もやはり残つておるわけであります。さような関係からいたしまして、この組合員が、企業の職員でなくなりますと、これは同時に地方公務員の身分を失つておるわけであります。従つて地方公営企業の職員からできますところの組合の役員につきましては、自然かような制限が加えられておるのであります。と同時に、さような関係から、地方の公営企業体と組合との相互の平和的あるいは友好的な労働関係の確立という面から見まして、も、この制限を加えることが適当であると考えたのであります。  第六條につきましては、地方公務員の身分をやはり持つております関係からいたしまして、これらの職員は職務に専念の義務を負わされているわけであります。この職務専念の義務を持つております公務員あるいは組合員が労働組合の専従の事務員になり、役員になりますことは、専念の義務から離れるわけであります。従いましてこれはこれらの取扱いの例外になるわけでありますから、法の建前からいたしまして企業が許可をするという形式をとる必要があると考えたのであります。ただここで「できる。」と書いてありますが、公労法におきましても実際の建前は許しているのでありまして、その点につきましての問題はないと考えているのであります。
  176. 青野武一

    ○青野委員 重ねてお尋ねを申しますが、第五條の二項です。これはほかの委員がおそらく質問したかと思いますが、ちようど私そのときに出席しておりませんので、伺うのですが、「前項但書に規定する者の範囲は、政令で定める基準に従い、條例で定める。」これは一項の「職員は、労働組合を結成し、若しくは結成せず、又はこれに加入し、若しくは加入しないことができる。但し、管理又は監督の地位にある者及び機密の事務を取り扱う者は、労働組合を結成し、又はこれに加入することができない。」ということは、大体常識的に私どもわかつているのですが、しかし二項の「政令で定める基準に従い、條例で定める。」ということになりますと、大体普通の会社、工場では課長以上は組合に入つていない、どうかすると、入つているところもありますが、これは大体具体的にどういうところで標準をおきめになるお考えなのですか。これがやはり将来非常に制約を受けて来ると思うのです。労働組合の幹部になり、組合の先頭に立つて働き、理事者と対立する、非常に無理な対立があつた後に、結局労働組合側の方が有利に問題が解決した。そこで難癖をつけられて、幹部になつている人が職場を離れて行く。これは全国にたくさん例がございます。そういう点をあわせまして、この二項については、各地方公共団体の企業を経営しているところでは一定の指針がない、全国的でおそらくまちまちになるのではないか。私のおります市なんかも、最近市内の幹線の自動車運送を許可してもらうためにいろいろな手続をしている。今は水道事業だけでございますが、やはり市内の巡環バスを市営で経営するということになりますと、ここに大きな問題にぶつかつて来るのです。これはどういうところに根拠を置いてやられるか、それが一つの標準になつて来ると思いますから、ひとつ明確にお答え願いたい。
  177. 賀來才二郎

    賀來政府委員 この規定によりまして、非組合員になりまする範囲を大幅にして、組合活動を抑圧しようという考え方は全然持つていないのであります。ただ先ほど申しましたように、第二項の趣旨は、地方公務員という身分を持つております関係から、非組合員の範囲になりますものは、地方公務員法を大幅に適用を受けて参ります。しからざるものにつきましては、大幅に排除されることになるのでありまして、非常にこの範囲を切ることによつて重要な法律関係が違つて参るのであります。従いましてそれらのきめ方につきましては、やはり全国いろいろ状態が違うと思いますが、基準を定めまして間違いのないようにし、さらにその具体的な面につきましては條例でその地方々々の、あるいは企業の実情に即応したように定めてもらうという意向を書いてあるのであります。さてこの非組合員の範囲というものをどういうふうにきめて行くか。これは青野委員の御指摘のように、最近におきましては、組合法改正以来地労委、中労委を通じまして、ほぼこの基準というものが常識的にできておるのであります。すなわち、使用者の利益代表するものの範囲というものは、自然定まりつつあるわけでありまして、この大体の基準を企業体なるがゆえに大幅にかえるという意向もございません。ただわれわれといたしましては、今後この政令の基準につきましては研究をいたすのでありますが、大体われわれの考えておりますことは、現高公労法の規定に基きまして、日本国有鉄道、あるいは専売公社の職員につきましては、一応非組合員の範囲、あるいは組合員の範囲というものを定めておるのであります。その基準が、大体今後におきましても基準になるものと考えておるのでありますが、これは非常に詳細な規定になつておりまして、国有鉄道だけにいたしましても、種類、場所からいたしまして相当な数になりますので、これはいずれ公労法をごらん願いますればおわかりを願えますが、御要求がありますれば、現在とつておりまする国有鉄道及び専売公社の範囲の状況は別途御報告を申し上げたいと考えております。なお御参考までに申し上げたいと思いますが、この規定を見ますると、いかにも一方的に定められるように見えますが、実際の取扱い方といたしましては、労働省といたしましては労使意見を十分に聞きまして、できるだけ納得の行くところで定めておるのでございまして、国鉄の例をとりますると、先般助役がどちらに入るかということで、われわれは非常に両者の間の調整をとつた事実がございます。従いまして、御懸念のようなことのないように十分気をつけて参りまするし、またさようなことはないものと考えておる次第でございます。
  178. 青野武一

    ○青野委員 これは柳澤委員も質問しておつたように思いますが、公労法の三十五條、十六條に関係があるのが地方公営企業労働関係法の中に、字句が少しかわつただけで出て参ります。これについて私どもの社会党、並びに本の労働組合の諸君の期せずして一致した意見は、公労法の建前上からいいましても、仲裁裁定は政府に対して一種の拘束力を持つ。それをはつきり條文の上に明記しろ。こういう要求、並びにそういう態度をとつております。それがこの地方公労法になりますると、第十條に予算上、資金上不可能な支出を内容とする協定——これは一方的に国鉄裁定、専売裁定のように、政府の強硬な態度をみな見習うということではないでしよう。あるいは社会党の知事のもとにこういう問題が起る。あるいは社会党の市町村長のもとでこういう問題が起る場合は、スムーズに行く場合がある。またその議会の勢力分野においてはまつたく話にならない場合も、こういう規定では出て来る。それは運用する人と、その理事者の立場に立つておる人と、その地方議会の勢力分野によつて大きく左右せられる問題であります。二十日の公聴会で公述人として吾孫子豊氏、これは日本国有鉄道運輸総局の職員局長の立場から、私が御質問申し上げましたときの御答弁では、この公労法の十六條は、予算上、資金上支出不可能なことという規定がございます。三十五條は御承知のように、これは当事者双方を拘束するもので、公務員として争議権等を奪つておいたのであるから、これは争議にかわるべき公務員の一定の生活を保障するために、マ元帥の書簡によつてできたものでございますが、御承知のように専売裁定にいたしましても、国鉄裁定にいたしましても、組合に言わせれば十分な解決がついておりません。六十億の要求があり、大体その線で裁定が下りましたが、最後は押し詰つた一昨年の十二月二日と記憶いたしておりますが、四十九億五千百八十一万三千円という数字が出ておる。それが最高裁にかかつて、近く何らかの形で最終の判決が下るようになつておりまするように、政府の行き方によつては地方公共団体と、その企業に従事する職員との間には、期せずして摩擦が衣から次に全国的に起つて来る。そうすると、ひいては労働委員会というものがそういう問題に忙殺せられて、今の定員数ではどうすることもできない。事件は山のようにつかえて来る。そういうこともまた予想せられるのであります。この点について私ども意見といたしましては、地方議会に対しても、議会の審議権、決議権は尊重いたします。国会においてもその通りであります。こう吾孫子という日本国有鉄道の職員局長も、私の質問に答弁をいたしました。初めははつきり当事者双方を拘束するのだから、裁判その他でごたごたしないようにはつきりしたものをきめてもらいたいと言つておりましたが、ほかの委員の質問に答えて多少そこが修正されまして、国会の審議権を無視するのではございません。国会の審議権は尊重いたしますが、政府をして予算をすみやかに議会に出せるような点までをはつきり法文の上できめておいてもらいたい。同町に東京都労働組合連合会の中央執行委員長もそういう意見を吐き、それから国鉄労組代表である野々山君がきのう参考人として出て参りましたときにも、組合側の意見を、機関代表して同じような意見を吐かれた。これは公労法と、今度の地方公労法とに関連性がございまするが、この点について政府は、日本労働組合が期せずしてそういうことを要求し、それを希望しておるときにあたつて、あくまでもこの法案で行かれるか。公労法はやはり三十五條と十六條を併記しておくのか。これでは紛糾はいつまでも続きます。そういう点について、無用の摩擦を起すような條文は一応そこで修正をすべきだと私は考えます。それを今度の法案では、地方公営企業労働関係法の中に持ち込んで来ておる。政府対公共企業体の諸君との摩擦というようなことが、今度は全国的な問題になつて来る。その影響というものは非常に大きいと私は患う。その点どうお考えになりますか。
  179. 吉武恵市

    吉武国務大臣 公労法の十六條と三十五條はいつも問題になつておる点で、お説の点はよくわかりますが、御承知のように仲裁裁定はお話のごとく、労働法上はそれが両当事者を拘束すべきものであります。ただ問題が国家及び公共団体でありまするから、予算は国会及び地方議会が決定すべきものでありまするので、仲裁制度をそのまま拘束力ありといたしますと、国会及び地方議会を拘束することになります。そこでやむを得ず、あの法律で、原則は拘束するが、但書をもちまして十六條に規定する場合は別だぞ、つまり予算上資金上に関係のあるものは、国会及び県会の承認を得てきめるんだというふうになつておるわけであります。でありまするから、労働組合側から見ますると、せつかく仲裁機関できまつたもんだから、すぐそれが拘束してほしいという気持はよくわかるのでありますけれども、事が国会及び県会に関係することでございますから、やはりそれは国会及び県会が最終決定をする。その決定に基いて、政府なり、地方理事者がもし承認をすれば予算を出し、承認をされなければ予算を出さない。こういうことにせざるを得ないのではないかと思つております。これは立て方でありますから、いや、仲裁制度は拘束力があるのだから、県会なり、国会が拘束を受けてもかまわないのだという考え方一つありましようけれども、それはやはり、今日の国会及び県会の建前からいうと、私はまずいだろうと思います。従いまして、現在の規定に多少不備の点があると申しましても、現在そういう解釈で行われて来、しかも国会や県会が——県会は今度が初めてになりますが、国会にしましても、それでは片はしからその承認をけとばしているというと、そうではなくて、御指摘のごとく、最初の仲裁裁定には六十億が四十九億くらいになりましたけれども、そのあとはほとんど全部承認をしているわけであります。やはり民主政治の建前から、できるだけ裁定が下つた以上は尊重して行つたらどうかというのが国会の気持で、どの党を問わず、できるだけ趣旨に沿うという気持にかわりはないのじやないか。従つて地方の県会におきましても、民主政治下にありまする以上は、私はそう御心配にならぬでも、運用の面において行けるということを信じておるわけであります。
  180. 青野武一

    ○青野委員 吉武労働大臣のお言葉の中で、私の質問したことに誤解があるようですので、誤解があつてはなりませんから、その点をはつきりしておきたいと思う。そうして御質問したいと思う。私は何も地方議会の決議権と国会の決議権を拘束せよというような意味に修正したらどうかと言つているのではございません。これは国有鉄道の労働組合代表者も、公社側も、同じような意見を、私は質問を通じていただいたのでございます。その点については、今のような條文では、実際問題として不十分であり、問題が解決いたしませんから、せめて地方議会なりあるいは国会に、政府なり、地方議会の理事者が責任を持つて仲裁裁定の内容を予算化してこれを提出するところまでは拘束してもらわなければ、問題は片づかない。今の労働大臣の御答弁によりますると、大体仲裁裁定は六十億程度でございましたが、今申しましたように、四十九億五千百八十一万三千円という数字が出て参りましたが、これ以上は認めないのだということで、問題は裁判行為に移つたのでございますが、これは、国鉄の労組代表者などの公述を聞いておりましても、ほとんど全部労組側の申立て通り決定しておらない。金額はその通りであつても、時期がずれている。これは実際上運用してみて三年になりますけれども、こういう点では問題は解決しない。結局私どもは、マ元帥の書簡によつて二・一ストという苦い経験の上に立つて、国家公務員は国民に対する一つの奉仕機関に従事する者であるから、争議はいけない、そのかわりそれにかわつて仲裁裁定によつて最低生活を保障し、基本的な人権を尊重するという建前になつておるが、実際はそれがその通りに行われておらない。あの書簡は、マツカーサー元帥か対日占領政策の最高責任者として、国際的にも、日本の国内占領政策の上にも非常に御心配になつて出した。それが先月の二十八日に、一応連合国軍と日本が平和條約を締結して、形だけでも独立したということになりますれば、これはとにかくマ書簡によつてできた法律であるから、これを一応御破算にして、再検討して、広く日本労働組合や国民、学識経験者、政府部内の人等の日本労働組合あり方に対する意見をあらためて聞かなければならないと思う。たまたま五月一日のメーデーに、朝鮮戦争を中心にして、強制送還というような問題を中心にして、日本人以外の一部の諸君が何らかの行動に出たことにひつかけて、それによつて日本労働組合運動あり方をぴしやりと押える。地方公共企業体の従業員諸君は、その利益を裏切つて争議をすれば解雇するのだ、解雇しても労働法の保護を受けないのだ、こういうように頭ごなしに地方公労法の中には書いてございます。十二條では、地方公共団体は前條の規定に違反する行為をした職員をただちに解雇することができる。二項においても救済を受けることができない。そうして苦情があるときには、十三條の苦情処理共同調整会議を持つとあります。これについては、労働組合代表者も、公述を通じまして、こんな幅の狭いものでは問題の解決がつかない、もつと強固な機関でやれ、使用者と労働者代表によつて広く経営協議会というような機関を設けてやつてすでに成功しつつある、それをこまかい箱の中に押し込めて、苦情処理共同調整会議なんていうようなものではおそらく問題は解決しないと言つている。わざわざ地方公務員であり、地方公営企業体の職員に対して、争議行為の禁止をしなければならぬという具体的な理由は一つも見つからないではありませんか。公述人も言つておりましたが、隣を走つている地下鉄は自由に争議ができるが、上を走つている東京都電は争議が停止されておるのをどうするか。雨の十日も降つたら、建設省の出先機関の諸君は仕事ができないから仕事を休んでいる、年末になつたら予算がない、予算がないから仕事をやめている、その仕事をやめているときに、一週間全国的にストライキをやつたつて国民生活一つも響かない。同じ公務員の中でそういう相違がある。それからわざわざこの地方公営企業体の労働関係法の中に、地方公務員であり、その企業体の職員であるからといつて、ぴたりと争議禁止をしておる。それを侵してやれば解雇だということではあまりにも一方的である。この点については相当私は行き過ぎておると思いますが、この点について比較対象して見て、どういう根拠に基いてこういう規定が生れて来たか、この点を明らかにしていただきたい。
  181. 吉武恵市

    吉武国務大臣 十六條につきましては、青野さんも国会なり地方の議会を尊重するということでございますので、その点は私たち多少誤つておりましたから、青野さんの御意見は大体了承いたします。ただ問題は、それだから予算をつけて出したらどうかというお説でありますけれども、国会なり県会の意見を尊重するということであれば、まずその意見を聞いて後に、その処置をとるべきではなかろうか、これはせつかく青野さんの御意見でありますけれども、私どもはさように存じております。  なお地方公労法についての争議権の問題でありますが、いろいろそれはお話の点もあります。しかしながら何と申しましても、国家公務員及び地方公務員は、国家及び公共団体の全体に奉仕する特別の性質のものでございますから、その点が一般の民間と違つたものがあるという点を御了承願いたいと思います。ただ実質上同じような企業に従事しておるものでありますから、その待遇につきましては、できるだけ公正にしなければならぬという点は私も考えておりますゆえに、今回団体交渉権を認めまして、争議手段にはよりませんが、仲裁的な機関によつて解決をし、また県会の最終決定によつて判断を願うという点をとつたわけであります。争議権によつて獲得をするか そういう合理的な機関によつて獲得するかという点の違いであつて、実質的に労務者をそう不利な状況に置きたいというつもりは私にはございませんので、その点はひとつ御了承願いたいと思います。
  182. 青野武一

    ○青野委員 苦情処理共同調整会議ということはあまり幅が狭いので、この調整会議を通じてはおそらく期待が持てないと言つておりまするが、この点について、経営協議会といつたような幅の広い、強固なものにしてもらいたいというような公述人の強い希望もありました。それに対するお答えがございませんので、承りたい。
  183. 吉武恵市

    吉武国務大臣 経営協議会の建前は、一般の企業の運営その他についても、労使間が相協力してやつて行こうじやないかという趣旨でありまするから、私はそれ自体は決して悪いとは思いません。しかしそれは法律で強制すべきことじやございませんで、協力態勢ではないだろうか、かように存じております。ここに言う苦情処理委員会というのは、つまり労働條件なり労使関係についての紛争をできるだけこの委員会で処理して行こうという行き方でございますから、これは私はやはり労働法の中に織り込むべきではないだろうか、かように存じておるわけであります。     〔船越委員長代理退席、委員長着席〕
  184. 青野武一

    ○青野委員 一々お答えをしていただきました点について、引続き私の意見を申し上げるのが順序でございますが、実は私はのつぴきならぬ重大会議に列席を強要せられておりまするので、最後に一点だけお尋ねをしておきたい。  御承知のように、政令二百一号に関する問題であります。地方公務員法の五十七條に「単純な労務に雇用される者その他その職務と責任の特殊性に基いてこの法律に対する特例を必要とするものについては、別に法律で定める。」同じく同法の附則二十一項には、「第五十七條に規定する単純な労務に雇用される職員の身分取扱については、その職員に関して、同條の規定に基き、この法律に対する特例を定める法律が制定実施されるまでの間は、なお、従前の例による。」しかし事実上、第二十一項の法の精神は実現をせられぬで、政令二百一号によつてそういう取扱いのまま今日まで放置せられておる、こういうことを私ども聞いております。従つてそういう立場で、單純労務に従事しております人たちは、労働組合法によつて保障された労働組合活動の自由を認めた法律を制定してもらいたい、労働基準法の適用を認めた法律を制定していただきたい、政治的行為の制限を全面的に撤廃する法律を制定せられたい、こういうような陳情書を、単純な労務に従事しておりまする地方公務員諸君のいろいろな方面から私どもは受取つております。これは近いうちに何らかの方法で、それが実現せられるようになつてつたが、それが放任された。一応認められておつて、今度の法案ではそれがはつきり削除せられておる。単純なる電話交換手、給仕、小使あるいは市役所なら市役所、県庁なら県庁の中で、その人の行動によつてそう大きな支配をせられないような、ほんとう文字通り単純な職務に従事しておる人たちまでも争議権を禁止し、そうしてそれに抵触すれば解雇するといつたような行き方は、この前決定をした精神をやはり蹂躪するものじやないか。この点は、私どもは野党全体が不満を持つておるように聞いております。この單純な労務者に対しましては、いわゆる組合活動の自由はもとより争議権も認める、団体交渉権も認めるというふうに、一応決定したものである。そう一旦きめられたものが、二百一号に基いてそのまま放置せられて、今度ここではつきり不当に反対の線を出されたということは、私どもは非常に不満である、この点についての御見解を承りたいと思います。
  185. 吉武恵市

    吉武国務大臣 単純労務につきましては、私どもも何らかの処置をしなければならぬと思つております。しかしながら今回企図いたしましたのは、国鉄、専売と同じように、国においてもそういう国家的な企業、地方におきましても地方の公営企業というものについての労働関係を同じにしようじやないかということでやつておるわけでありまして、これがこのまますぐ單純労務に適用されるかどうかという点につきましては、なお相当検討を要するのではないかと思います。従つて地方公務員法の中にもわれわれ別に、二十項でしたか、二十一項でしたかでわけて書いてありまするように、やはり多少違う体系を要するのではないかと思えるのです。でありまするから、あまり軽率に取扱うわけにも参りませんので、一応今回は企業体につきまして整備をいたしたわけでありまして、将来こういう單純労務については、何らかの処置を必要とするとは考えております。
  186. 青野武一

    ○青野委員 その点で労働大臣の見解はわかりましたが、今回出されている法案では、そういうことをはつきりするという御意思はないものでございましようか。
  187. 吉武恵市

    吉武国務大臣 今回はもう企業体だけに限つて一応処理したいと思います。
  188. 青野武一

    ○青野委員 私は調停申請労働委員会による却下制度あるいは政府原案の緊急調整制度は、事実上のストライキ禁止法であるというふうに考えております。こういう点について御質問を申し上げたいと思いましたが、いろいろな事情で、私自身にも非常にのつぴきならぬ重要会議が控えておりまするので、できれば委員長にお願いしますが、明日ひとつ質問の続きをお許し願いたい。それで私の質問は、これで一応打切らせていただきます。
  189. 島田末信

    島田委員長 中原健次君。
  190. 中原健次

    ○中原委員 私はこの前の総括質問で、関係大臣の御出席がなかつたために途中で遮断されています。それはその場合に明らかにいたしておいたところであります。しかしながら審議の進め方の手続上、これを切離すことが困難なような事情になつて参りましたので、逐條審議とこの両者を兼ねあわせまして、質疑を申し上げることにいたします。  大体先日来の公述人各位によりまして、かなり広い範囲の見解を聞くことができました。たまたまその公述人の見解は、大要二つにわかれました。しかもその公述人の中のほとんど多数の部分は、私どもの見解とやや似通つておりました。すなわち今回の三法案に対する措置は適当でない、しかもしばしばこの法の運営によつて労働行政を誤るであろうというふうな意味の御見解が述べられたと思います。もちろん日経連あるいは国学院大学等の一、二の方の御見解は、ちようど符節を合せましたように、吉武労働大臣のお言葉とやや似通つておりまして、まことに感慨無量なものがあるという現象であつたのであります。  さてそこで、私は今度のこの調整の処置等につきましていろいろお尋ねしたいと思うのでありますが、なるべく時間を節約するために努力するという意味から、最初にただ一点、総括的な見解についてお尋ねしてみたいと思います。それは昨日午後の大臣の御発言の中に、いわゆる健全労働組合運動ということをしきりに説明になつたわけであります。私どもはいやしくも健全な労働組合運動ということについて、その文字の示す通り意味での健全であるならば、これは異存はありません。ところが大臣が構想しておいでになる健全なる労働組合運動というのは、相当内容的には意外な方面に惰しているのではなかろうか。そういうふうなことを痛感させられる向きが多々あるわけであります。たとえば一つ例をとつて申し上げますと、さきの四・一二ストのとりやめの場合に、時の殊勲者とも言われる炭労の委員長が、吉武労働大臣によつて非常におくあたわざる讃辞を示されたのでありまして、それはたしか朝日新聞の紙上で労働大臣談話として発表になつたようでありますが、大臣もそのことを御記憶だと思います。ところが吉武労働大臣がおくあたわざる讃辞をもつていたしましたその武藤君が、続いて開かれました炭労の大会において、そのとつた措置労働者の要望に沿わないし、むしろ労働者利益を阻止する、蹂躪する措置であつたというような判断に基きまして、その大会は非常に殊勲を現わしたと賞讃された武藤委員長外数名の不承任ということになつて現われたのであります。しかもその大会の不信任に基きまして同君らは退陣せられた。こういう事実があつたわけであります。そこで健全な労働運動というのは、そういう労働者の純粋な要望、見解、そういうものを乗り越したところにあるのか、それとももう少し違つたところにあるのか、そういう疑念が実は起つて参るのであります。従つてこの場合これから法案を吟味いたします重要な要件にもなると思いますので、先日来繰返し御説明になられました健全労組の問題について、私のそういう疑念を解いていただきたいと思います。
  191. 吉武恵市

    吉武国務大臣 私が健全なる労働組合運動と申しておりますのは、一つ労働組合の認められました趣旨であるところの組合主義に立脚すべきものであるという点が一点であります。なお労働組合運動は合法的でなければならないという点であります。この二つの点につきまして、終戦後における日本労働組合あり方をごらんいただきますと、とかく労働運動労働者労働條件の維持向上という組合主義の上に立脚しているかといいますと、その点はもちろん基本であるには違いございませんが、往々にしてこれが政治的に利用されて来たということも、これは否定できない事実ではなかろうかと思います。もちろんこれは基本的なものの考え方のところから来るのでありまして、その点は私が中原さんにお話するまでもなく、基本的に政治的な問題を解決しなければ労働者労働條件の維持改善がないのだという前提に立ちますと、もはや組合主義に立つことは意味がなくなります。つまり政治目的第一主義にならざるを得ないのでありますが、しかしそうすることが結局労働者ほんとうの目的を達するかというと、遺憾ながら逆に行く場合が多いのであります。でありますからやはり労働組合というものは、政治とはかけ離れて全然関係がないとは言いません。組合運動政治について関心を持たれることはけつこうだと思いますが、どこまでも本質は組合主義の上に立たなければならない。そして現実の労働者の生活をいかにして向上させるかという、労働條件の獲得の方に向けられなければならないのではないか。その方法といたしましては、もちろん非合法であつてはならないのだという点を申し上げているのであります。先般の十二日のストにつきましても、武藤君のとりました態度についていろいろ御批判があるでありましよう。しかしながら私は決して武藤君のとつた態度がいけないとは思いません。これは私の立場で申し上げるばかりでなしに、将来の日本労働運動の立場から必ず武藤君が理解されるときが来ると私は思つております。と申しますのは、いたずらにストをやるだけで目的を達するわけではない。政府が修正をするというならば修正を待つてからでもいいじやないかという態度は、私はりつぱな態度ではないかと思う。ただストを決定したから何でもかんでもストをやるのだということでは、方法を誤るものであると私は思つております。不信任を食つた食わないというのは、組合自体のことでありますから、私からとやかくは申しませんが、とかく終戦後における七年間の労働組合運動は、ただ強いことを言う者が勝つ、強いことを言つた者がはたして労働者を救つたか。——これは私は人の例をとるのはいかがかと思いますが、かつて土橋君が日本労働運動の先頭を切つてつたその当時は、きわめてはなばなしい意気のいいことを言つておりましたが、その結果はどうなつたか。今日国家公務員及び地方公務員については、重大なる制限を受けたという結果を招来しておるでありましよう。でありますから私はその点はもつと静かに考えて、日本労働運動というものを末長く発達させて行くという点には、十分お考えを願わなければならない、かように存じております。
  192. 中原健次

    ○中原委員 今私はこの席上で武藤君を批判しようと思つたわけじやなかつたのです。ただ話の運びとしてたまたま引用したのでありますが、一応話のついでですからもう一言つけ加えますが、日をちよつと忘れましたが、二十何日ころでありました。国会記者の人たちによつて経営されておる政経新聞、たしかそういうように思いましたが、探せばすぐわかりますが、たしかそういう名前だつたと思います。その新聞によりますと、労働省当局が武藤君やその他数名の、世間の言葉をもつて言いますと愛労系の指導者諸君と数次の会見をせられた。いわゆる公然の場所における会見には、総評その他の人も入つてつたようでありますが、その新聞の指摘いたした何とか寮でお会いになられました場合には、さつき申しましたいわゆる愛労系と俗に言われておる指導者諸君とだけお会いになられた。そして何かいろいろそこに誤解を與えるようなことがあつたとか報道せられておりました。私はまさかそのようなことがあろうとは思いませんが、しかし断じてそうではないと言い切ることもできない。最近の労働省当局の労働運動に対する御関心の度合いから考えますと、どんどん裏側へ入つて行かれて、労働運動指導者と密談を交される。こんなことは何だか労働省の当局が構想しておいでになるような、型通り労働組合運動にすべてを鑄直さしめたい、こういうことがうかがわれるのであります。そうなつて参りますと、労働組合の組織要件から考えますと、とんでもない不当干渉になるのではないか、労働組合というものはそういうものではないと思うのです。労働省の高級官僚諸君が描いているような労働組合なら、労組組合というような名前をつける必要がないようにさえ私は思う。もう少し労組自身が自主的に、みずから組合運動を発展させて行くということが大事なのであつて、なるほど労働問題に対していろいろ御研究だろうと思いますが、官僚としての立場から、あるいは国の労働行政をつかさどる立場から労働組合運動の内幕まで入つて行くということは、これはどうしても誤解が起らざるを得ないと思うのです。もちろんそうでなければけつこうです、それはとんでもないデマである、毛頭なかつたということでありますれば、そういう新聞に対しましてもひとつ御抗議が願いたい。その間の関係を明らかにしたいと思うのです。どうもその間の関係がもやもやで参りますと、やはり疑念をさしはさまなければならないことになつて来る。従いましてそういうあなたの言われるような健全な労働組合運動というものは、今日の吉田内閣のもとにおける労働省の高級官僚諸君の構想したタイプの中にみごとに当てはまる労働組合運動、すなわち言いかえれば、労働者の自主的な意向を官僚的な規制のもとに鋳直して行く、そういう労働組合運動、こういうふうに私どもはやはり理解せずにはおられないのです。民主的ということをしきりにおつしやいますが、それは民主的ではありません。民主的というのは、やはりその組合を構成する組合員の意思がおのずから決定する、その決定した方針が民主的なものを構成すると思うのです。民主的ということの意味はそこに大きな開きが起つて来るのではなかろうか。もちろん組合運動をなるべくあやまちなく育て上げたいという、そのけなげな御熱意に対してはわかりますけれども、遺憾ながらそれは労働者の声とはしばしば背馳するのではないか、そういうふうに思うのです。従いましてそういう重大な考え方の相違がありますと、せつかく精魂を打込められました労働諸行政が間違つて来るのではないかと思う。労働省の立場というものは、そこまでの仕事を委嘱されているのではないと思います。だから労働組合のみずからの意思によつて決定し、その意思によつて行動し、発展成長して行くということを可能ならしめるような一つの軌道を承認して行く、與えて行く、そういう努力を払えばけつこうなんです。あとは労働者自身決定いたします。そういうふうに私は考えますので、いろいろのお骨折りにもかかわりませず、私どもはそういういやみを言わなければならぬ立場に追い詰められております。従つて、先般も申し上げたことでありますが、あなたの打出されます労働諸政策は、どういうものか日経連などの代表者の御発言とまつたく一致する、しばしば相近似している。これは先日来の公述人の公述によつてもだれでもが気がついたところであります。そうすると政府というものの性格は、今日の段階においては日経連の労働政策の線に接近する、そういうところに現在の吉田内閣の労働政策があるのではなかろうか、こういうことになつて参ります。別にふしぎはないと思いますが、しかしそういう事案を私どもはやはりここで指摘しなければならぬような條件に追い込められて来たものと思います。ただいまも健全労働組合の要件の一つとして合法的に行動すべきであるということを言われました。私も同感であります。合法的に行動すべきであります。そんなら合法的とはどういう意味で、どういうケースが合法的かと言いますと、たとえば十八日のストライキは悪法に対する反対を至上の闘争目標としてゼネストを敢行しました。もちろんその解釈によりましてはその悪法なるものが労働組合運動をどんどん圧迫して行く、従つて労働者に辛うじて付與されました労働権をさえも守ることができなくなる、それができなくなることによつて労働者の経済的な立場が恐るべき不利條件になつて来る、こういう認識のもとにまず法的な権益の防衛、獲得という線があそこにストライキとして盛り上つて来たものとも見られるのであります。その他いろいろな問題もからみ合つておりましたから、一概にそうも言えませんが、とにかくそういう点が、大臣のお立場から考えればはなはだ不満な点であろうと思います。そんならそれが合法的でないのであるか、どういう点がそれが非合法なのか、俗に言つてみれば、政治ストライキとかいうような名前でこれが呼ばれているようでありますが、政治ストという名前でもよろしい、名前は何でもよろしいとして、そういうストライキが、政治的なストライキを対象として盛り上げた闘争であるから、これは合法的でない、法を守らないものであるという認定をもしお持ちになるといたしますならば、それは一体どういうことなのでありますか、ここにまた一つの疑問が出て来るわけであります。たとえば十八日の闘争、その他政治ストあるいはゼネストという言葉でも今言われておるようでありますが、そういう一連の争議形態というものは、これはどうして合法的でないのか、その点をひとつ伺つておきたい。
  193. 吉武恵市

    吉武国務大臣 組合についての御見解でございますが、私ども労働組合を私どもの言いなりにするというような考えは持つておりませんか。しかし私ども労働組合に対する基本的な考えは、お話のごとく自主的にきめて行くことであります。私静かに組合あり方を見ますと、今までの労働組合は、組合自体の自主的なもので進めるかというと、どちらかいとえばある特殊の政党、特殊の人によつて利用されがちであつたきらいはなかつたというふうに考えております。もし労働組合労働組合員の意思によつて決定し行動する、それが單なる形式にあらずしてほんとうにそうであるならば、私は日本労働組合というものは健全に育つたであろう、また現に健全に育ちつつございますが、今までいろいろ批判されている一つの大きな原因は、労働者の大衆というものが一部の者によつて利用されがちであつたところになかつたかという点を、ひとつお考え願いたいと思います。私はこれを自由党の思うようになる組合にしようなどという考えは毛頭ございません。  それから合法的であるかないかという問題について十八日のストを引例されておりますが、これは先般の委員会でも私申し上げましたように、ストライキを憲法第二十八條によつて保障するゆえんのものは、労使関係の紛争に対し、労働者労働條件の維持改善のために、最後の手段として許されておるのであります。でありますから、自分の政治的見解を異にする、たとえばあの法律はいやだ、あの條約はいやだ、その政治的見解を貫くためにストライキ権を発動ずるということでございますれば、それはすでに憲法の保障している問題でないことは自明であります。これは私ども日本の憲法について解釈するばかりでなく、政治目的達成のためのストライキは許されるものでないということは、よその国、イギリスでありましても、たしかフランスにありましてもさようであります。アメリカにおきましてはそういうことは行つておりませんから必要はございません。またこの政治的な目的のためにやるストライキ、すなわち労働者労働條件の維持改善のために使用者側との交渉の手段としてやるストライキ以外のストライキは、これは合法的でないということは日本の判例もすでに認めておるところであります。でありますから、そういうストライキは合法であるということが中原さんの御意見であればともかくといたしまして、私どもは、これは国際的に見ましても、また日本の判例におきましても認められていないものだという確信を持つております。
  194. 中原健次

    ○中原委員 憲法第二十八條が勤労者に付與しました権利というものは、使用者側を対象として団結し、あるいは団体交渉し、団体行動する、こういうふうに言われておるのですが、そうなりますと、やはり私は憲法二十八條——こんなことを言い出しますとまた自由党側からやじが出ると思うのですけれども、これはやはり吟味しなければならぬと思うのです。憲法二十八條というものは、そういうふうに経営者あるいは資本家を対象として規定して来られたと思う。だからこれは違うと思うのです。二十八條というのはやはり基本権として規定されたものでありまして、その基本権の中から出て労働組合法の一條がそういうことを規定したと私は思うのです。でありますから労働組合法の規定した範囲内における場合と、憲法が規定した範囲内における場合とはおのずから範囲が違うわけです。従いまして労働者経営者を対象として経済権を維持改善するためにいろいろな交渉をし、いろいろな闘争を展開いたしまする場合に、それの外わくとして締めて行くものが法律、規則、命令等々なのです。そこで法律国家の国民ということになるでしようが、そうであります以上は、やはりこの法律、命令、規則等をわれわれは非常に吟味し、これのわくを越えまいとして非常に心を配るわけです。そうであつてみれば、その制約づけようとするところの法律、命令、規則等々の改正が問題になつた場合、しかもそれが端的な言葉で申すますれば改惡された。労働者の権益をその日から侵害して行く、あるいはきようまで保障されておりましたその権益の水準をさえ侵されようとする。それをもしやられてしまえば、その線でかりに経営者側とどういうような交渉を進めましても、そのわくに頭を打たれまして、労働者の経済的、社会的立場というものは防衛できないということになつて参るのであります。そこで労働者経営者を対象として交渉するということだけでは、とうてい自分のきようの立場が守れない。しかも経営者側の方は、今日の現行法規というものが、これは資本主義社会の避くべからざる傾向の本質なのでありますが、どうもその法律解釈というものが、しばしば法律の制定のとりきめ等においては、何といいましても妙な概念ができてしまつて、あたりまえだと思うことを、うつかりあたりまえだと思つて調べてみれば、資本家的立場に立つてのあたりまえということになつて来るのです。そういうような場合に、しばしばこの法律労働者の権益を侵すことがあたりまえであるかのような印象を與える。しかしほんとうにその本質を知つた者としては、それはそうは行かない。ことに労働者は自分自身が身をもつてそういうことを経験するのでありますから、こういうわくをはめられてしまつたのでは、それで頭を打たれてしまつて、新しい生活どころか、きようまでようやく維持して来た線をさえ維持できなくなる。そこでこの法律だけはどうしてもやめてもらいたい。あるいは廃止してもらいたい。あるいはわれわれが言うように改正してもらいたい。こういうことを要望するわけです。そういう要望が大衆的な行動となつて現われて参りますのが、あなたの言葉をかりれば政治ストライキということになるのでしよう。そうであつてみれば、その政治的ストライキを行うことによつてでなければ、今日の常識で守られておる資本主義の立場における法律の力の加担というものは経営者側の方にほとんど移つてしまう。でありますから対等の立場なんというものはとうていそこに保障されようもない。そこで政治的にも社会的にも対等の立場を堅持して行くためには、あるいはそれを守つて行くためには、何としてでもその闘いを貫き通して、法の改惡を防ぎ、あるいは防遏法規を拒否して行かなければならない。そこにおのずから起つて来る抵抗というものがああいうような闘いという形をとるわけです。だからストライキを行うことによつてむしろ秩序整然とした闘いになるわけです。これを個人々々でやつたら大騒動です。とんでもないことになつちやう。だからそこに今日の労働組合が取上げておりますそういつたゼネラル・ストライキの形というものは、これは今日の資本主義機構内における正常な闘いとして当然承認されなければ、労働階級は立つ瀬がない、私はこういうことになつて来るように思うのです。これをしも合法的ではないと言つてしまうとすれば、これが非合法であるという規定づけをするためには、一体何という法律がありますか。何という法律の第何條にそういうことが規定してありますか。これもひとつお伺いしておきたい。
  195. 吉武恵市

    吉武国務大臣 中原さんは憲法二十八條において保障する事項と憲法二十一條において保障する事項とをチヤンポンにしてお考えになつているのではないかと私は思う。政治的な見解を異にし、政治的な目的を達成するための集会、結社の自由及び政治活動の自由は憲法二十一條が保障している。今言つた労働者労働條件の維持改善に関して使用者側と対等の立場において団体交渉をし、そうして必要によつては手段としてのストライキ権をも認めるというのが憲法二十八條の保障している労働権でございます。でありますから、今申されたような法律であるとか制度であるとか、その政治あり方について意見を持たれることは、国民である以上は当然でありましよう。労働者諸君といえどもお持ちになることは自由であります。その達成のために集会をし、結社をし、あるいは政治活動をされるということは、これはもちろん保障されるところでありましようが、これは憲法二十一條の言つていること。労働組合を認め、団体交渉を行い、そうして争議権を許しておるということは——争議権というのは、御承知でありましようが、普通の場合においては、これは営業妨害であるとかあるいはいろいろな法律に触れるのでありますが、しかしこの団体交渉を行う場合においては、その点は違法性を阻却するということにおいて憲法二十八條が保障している。でありますから使用者と何らの関係のない破防法が通るか通らぬかということは、使用者と交渉して労働條件が上るわけでも何でもない。それを許すということは、先ほど来申しましたように日本の憲法の解釈といたしましても許されていないばかりでなしに、よその国におきましても許していないのであります。日本の判例においても、すでにそういうものはいけないという判例も出ておるわけであります。中原さんが言われるように、政治に対して労働組合といえども意見を持たれることは私否定しておるわけでありません。それがために二十一條の集会、結社、あるいはそれに対する政治活動をすることは、その範囲においてはいいだろう。しかしそのためにストライキもよろしいということはどこから来るのでありますか。そんなものはないのであります。ですからこの前も申し上げましたように、どうもあの政府はおれたちとしては気に食わないから、それを倒すために電気を消す、鉄道もとめる、石炭も掘らない、これも合法的だというのでしたら、議会政治というものは成り立たない。でありますから、中原さんのようなお考えを持たれる思想もありますが、しかし遺憾ながらそれは今日の民主政治下においては認められていない。
  196. 島田末信

    島田委員長 ちよつと中原君に御注意いたしますが、あなたの持ち時間は大分前に過ぎております。今は委員長で操作をしておるしんしやくの時間ですから、そのつもりでお願いします。
  197. 中原健次

    ○中原委員 最後の御回答は、私の質問点から避けられております。私は何という法律の第何條によつておるのかということをお尋ねしたつもりであります。二十八條、あるいは二十一條については議論は何ほでもできます。これはきよう一日やりましても盡きません。あなたも相当意見を待つておりましようが、私も議論は持つております。そう簡単にはこの問題は解決しないでしよう。ただここでこういうことを承つておきたい。これは仄聞するところでありますから、実は実証は持つておるのですが、その程度でいいと思います。内閣の官房あたりに最近妙な声が出ておる。それはどういう声かというと、当面の労働政策、これは具体的には第三波の総評あたりのストライキですが、それを何とかして国民と遊離さして行くというところに重点がある。同時にこれからの労働争議は、そこにいろいろな努力を払いながら、政治ストという形に一追い込んで、かつそれを政治ストなりと規定して宣伝して行く、あらゆる宣伝機関をそこに総動員して行く、こういうことが当面の労働政策の中心である、こういうようなうわさを聞くのです。そういううわさを聞けば、それがまさか単なるうわさではなくて、どうもそういう方向へどんどん進んで行きつつあるように見える。だからこれは私が耳が悪くて聞きそこなつたのではなくて、どうもそういう動きがあるのではないかと思う。そういう基本的な観点に立たれて労働問題を考え、対策を考えられるということになれば、われわれ労働階級としてはとんでもないことだと思うのです。そういうような方針がかりに内にありましようとも、その動きがやはり表面に現われて来て、あなたの言葉を拝借すれば、健全な労働運動などとうていできつこないと思うのです。それではとても手も足も出ない。がんじがらめにされたその形で辛うじてかのような声で労働者の権益を叫ぶにすぎない、こういうことになります。本来労働者に団結権、団体交渉権を與えるというのは、そういう保障がなければ、労働者を人並の水準に高めることができないという現実の実情からです。そういうところに問題があるわけです。ややもすればよくアメリカの労働運動がどうとか、イギリスがどうとかいう引例がここでもよく引かれます。もちろんわれわれは諸外国のそれを見なければならないけれども、諸外国の労働條件日本の今日の労働條件とは大きな開きがある。でありますから、私は日本的な立場に立たなければ妥当適切な判断が出て来ないと思います。いずれにいたしましても、そういうことを耳にいたします。これについてもちろんあなたがそういうことを断言なさるはずはないと思いますけれども、それはいかがですか。そういうことがわれわれの耳に伝わつておりますことと、今日のあなた方の労働諸政策あり方考えますと、やはりここにも一つの一致した符合が見付かるように思えるのです。こういう点につきましていかがでありましようか。それと先ほど申し上げましたゼネストが非合法であるという根拠をもつと具体的に、何法の何條の何に該当するということを示していただきたい。
  198. 吉武恵市

    吉武国務大臣 お話では、内閣では何か総評を政治ストに追い込むのではないかと言われますが、これは率直に言つて、私はそういうストをやられると組合の将来のためにもよくないということを誠意を持つて言つておるわけであります。でありますから追い込むのではない。むしろそういうことをおとりやめになつたらどうかということをしよつちゆう言つておるわけでありまして、それでも総評の方がやると言つておるようで、私ははなはだ遺憾に思つております。私は確信を持つて申し上げる。中原さんのような見解をもつて労働組合を指導されますと、きつと誤ります。これは私があなたに申し上げてははなはだ失礼でありますけれども、おやりになつた結果からごらんになると組合のためにならない。だれが見ても政治目的の達成のためにストをやつてよいのだということが通るはずはないのであります。それを当然だ当然だと言われますと、労働者側は中原さんがそういうからいいのだろうと思つてやり出すと、やつた結果はかえつて労働組合を拘束されるようになります。ですからその点は決して私は自由党内閣だからどうだからなどという意味言つておるのではないのでありまして、やはり日本労働組合は健全に長く育つて行くべきであると思うからこそ言つておることでありますから、どうぞ誤解のないようにお願いいたします。
  199. 中原健次

    ○中原委員 ただいま発言の時間のことについて委員長の方から話がありましたが、私の逐條質問は当然残つておりますから、逐條質問はぜひともやらしていただきたい。逐條質問をいたしませんと、出ております三法案に対する私どもの疑問が解けません。
  200. 島田末信

    島田委員長 ちよつと中原さんに申し上げますが、大体総括、逐條合せて各党の割当時間は、あなたの方は特に人数に制限なく一人前の時間して一時間を用意しておつたのですが、それがすでに一時間四十分に及んでおる。それで総括質疑はお聞きしておりますと、あなたは政治ストを合法化しようという質疑にばかり終始しておつて、とうに逐條審議に入つてもらえるものと私どもしびれをきらしておつたのだが、今から逐條質疑ということになりますと、たいへんな時間になると思うのです。この辺で打切られてはどうですか。
  201. 中原健次

    ○中原委員 ただいま政治的なストを合法化しようという質疑と言われますが、具体的な御回答が得られないのでお尋ねをしておるのです。ただいまの御答弁ではつかみどころがありません。憲法なら憲法でよろしい、第何條の何に該当するか、そうしてそれに伴うて單独法ではこれにあるということをお示し願えればいいわけであります。それがないから解決しないわけです。これは政治的なストライキであるかいなかという議論のかち合せということになるわけであります。総括質問につきましてはもうこれ以上論議しようとは思いません。結局御回答がないというふうにだけはつきり申し上げて、逐條質問に入りたいと思います。きよう時間がありませんでしたら、まだ青野さんも残つておりますし、熊本君も残つておるようであります。またその他の人がまだ残つておるようでありますから、そのときにしたいと思います。
  202. 島田末信

    島田委員長 中原君にだけ多く時間を與えることはできないのでありまして、逐條審議のためになお十分だけ明日余裕をとることにいたしますから、その程度でひとつきようはがまんしていただきたいと思います。  それでは次会は二十三日午前十時より開会いたすことにして、今日はこれで散会いたします。     午後五時十一分散会