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1952-05-27 第13回国会 衆議院 人事委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年五月二十七日(火曜日)     午前十一時三十四分開議  出席委員    委員長 田中不破三君    理事 田中伊三次君 理事 藤枝 泉介君    理事 平川 篤雄君 理事 松澤 兼人君       伊藤 郷一君    今村 忠助君       小澤佐重喜君    田中  豊君       本間 俊一君    今井  耕君       岡  良一君    岡田 春夫君  出席国務大臣         国 務 大 臣 大橋 武夫君  出席政府委員         警察予備隊本部         次長      江口見登留君         警察予備隊本部         人事局長    加藤 陽三君         警察予備隊本部         人事局人事課長 間狩 信義君  委員外出席者         専  門  員 安倍 三郎君     ————————————— 五月二十七日  委員三宅正一君辞任につき、その補欠として岡  良一君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 五月二十六日  国家公務員職階制に関する法律第四條第一項  第三号による職種名称および定義の件(内閣  提出議決第二号)(予) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  保安庁職員給与法案内閣提出第二二八号)     —————————————
  2. 田中不破三

    田中委員長 これより人事委員会を開会いたします。  議事に入る前にまず御報告いたします。昨二十六日、国家公務員職階制に関する法律第四條第一項第三号による職種名称および定義の件、内閣提出議決第二号が、予備審査のため本委員会に付託となりましたので、御報告いたしておきます。  ただいまより保安庁職員給与法案を議題として質疑を継続いたします。松澤兼人君。
  3. 松澤兼人

    松澤委員 昨日はいわゆる基本以内ということで質問申し上げたのでありますが、きようは部隊運営に関する現実的な問題といたしまして、多少気になることがありますので、御質問申し上げたいと思います。  それはどういうことかと申しますと、この保安庁法案を見ますと、保安隊あるいは警備隊というものは、政府がどのようにお考えになろうとも、一種の部隊組織あるいは軍隊組織であるということはよくわかるのでありまして、これが将来には軍隊になりはしないかということを、私ども非常に懸念しているわけであります。これが昔の軍隊化もしくは軍国主義化といつたようなものになる危険はないのか、実際部隊の中には相当の旧軍人も入つているということを聞いております。これらの人々考え方というものがどういうものであるか、単に国内の治安維持あるいは平和の確保というだけであるのか、あるいはさらにもつと積極的に、軍隊化もしくは軍国主義的な傾向になるおそれはないのかということを、非常に懸念しているのであります。その懸念は、単に私ばかりではなく、国民もまたそういうことを考えていると思います。そこで実際部隊運営なりあるいは管理なりの点について、そういう危険が全然ないのか、あるいは旧軍人がどの程度にまで、その部隊指揮監督運営に対して発言しているのか、それらの点について承つてみたいと考えます。
  4. 大橋武夫

    大橋国務大臣 警察予備隊創設に際しましても、何分お話の通り、この警察予備隊武器を使用いたします実力部隊でありまするので、これが旧来のわが国軍隊弊害とせられました軍国主義的な物の考え方復活の因をなすおそれは、決して杞憂とばかりは言えませんので、あくまでも民主憲法を維持するという建前からいたしまして、この復活に対して、これを絶対避けるような十分なる配慮をいたして参つておる次第でございます。すなわち一昨年の八月創設の際におきましては、一部の意見といたしまして、大体武器を使用するという点において旧軍隊と同じような点がある、従つて軍隊幹部は、この新しい予備隊においても幹部として優秀ではなかろうか、こういう点において、できるだけ旧軍人、しかも正規将校採用するような措置をとつてはどうだろうかという話もあつたわけであります。しかし当時は何分にも追放中でもございますし、また軍国主義復活ということを最も警戒しなければならないと考えましたので、政府は当時正規陸海軍将校採用するような方法はこれを厳に排斥いたしまして、そうして旧陸海軍正規将校以外の人々からすべての幹部採用するという措置をとつて参つたわけでございます。  その後昨年の八月以来、旧陸海軍正規将校追放解除が行われて参りました。敗戦以来すでに五年を経過いたしておりまするので、この間において、旧軍人諸君もいろいろな面において十分なる反省を加えられたものと認められまするので、そういう方々のうちで、予備隊幹部として適当な経歴、資格ありという方々は、これを予備隊採用するということは、予備隊の発展の上から必要であると認めまして、逐次採用を進めて参つたわけでございます。すでに現在までに約千名の正規陸海軍将校採用いたしております。これらの正規陸海軍将校採用するにあたりましては、まず二箇月間基本的な訓練をいたしております。これによりまして、新しい警察予備隊あり方、特に民主主義憲法のもとにおけるかような実力部隊あり方というものについての一般的観念を、十分に涵養いたしまして、そしてまた多少新しい予備隊に適合する技術的な指導をもいたしました上で、各部隊に配属をいたし、各隊の幕僚あるいは連隊長というような諸君から、各級の指揮官というような地位に、これを配しておるわけでございます。  今日までの実情から考えますると、旧軍人諸君の物の考え方というものは、新憲法のもとにおいて、きわめて穏健なる方向に向つて非常な進歩をしておられる。そして特に旧軍隊軍国主義というものの根幹をなしておりました統帥権独立といつたような考え方に対しては、相当思慮ある考え方をされるようになつておるようでございます。きようの新聞などを見ますると、一部の旧軍人諸君の間で、統帥権に対する考え方が研究せられており、その考え方といたしまして、平常時において、部隊一般管理という面においては、これは主管大臣権限とする、しかしながら部隊統帥ということは、総理大臣に直属いたしまする幕僚長権限を持つべきであるというような考え方が出ております。この考え方は、ちようど憲法時代におきまする、大元帥のもとにおける統帥権独立という考え方を、行政府の首長である総理大臣のもとにおいて主張しようという、きわめて危険なる考え方であると私は思うわけでございます。かような考え方が、旧軍人諸君のうちに、なおいささかなりともあるということは、これは将来この種の部隊創設につきまして、統帥権の問題は、わが国といたしまして、十分になおしつかりした考え方を確立する必要があるということを明瞭に示すものである、こういうふうに私としては愚考いたしておるわけでありますが、予備隊の中に入つて来ておられる旧軍人諸君のうちにも、初期においては多少そうした考え方もないことはなかつたようであります。しかし最近におきましては、現憲法下における統帥権あり方というものについての、これらの諸君の研究も漸次進んで参りまして、昔の憲法においていわれたような意味における軍政軍令、こうした区別に対応するところの行政管理部隊統帥というような差別は、今日の憲法下においては許さるべき考え方ではない、こういうことも漸次わかつて参つたように存じておるわけでございます。この部隊管理部隊統帥ということは、民主主義憲法のもとにおきましては、軍政軍令というような区別と同様な区別があるべきものではないというのが、政府の基本的な考え方でございます。従いまして、保安庁法におきまして、保安庁長官保安隊警備隊管理するということは、これは行政管理をいたしますると同時に、部隊統帥の全権を持つということを意味するわけでございまして、部隊統帥行政管理というものは、同一機関において、同一権限によつて、完全に一元的に行わるべきものである。かつての日本において、統帥権独立がとなえられ、軍政機関軍令機関が分離対立せしめられ、そして軍政機関は、これは内閣の一省をなすものであるけれども軍令機関というものは、大元帥に直隷いたす、政府の政治的な権限より完全に独立したものである、こういうような考え方は、今日の憲法のもとにおいて断じて許されざるものでありまするのみならず、このたびの保安庁法においても、厳にこれを排斥いたしておるのでございます。これらは一元的に完全に行政府統制下に入るべきものである、こういうふうな考え方で行つておるわけであります。こうした考え方は、漸次予備隊内の旧軍人諸君においても了解いたして参つておるのでございまして、現在予備隊に入つておられる諸君は、いずれも民主主義憲法のもとにおける正しい部隊組織あり方というものについて、十分なる認識を持ち、またそうしたあり方を確固たる基礎の上に築き上げるということについて、相ともに努力しなければならぬということについて、十分なる自覚を持つておられる次第でございます。今日の段階におきましては、隊外における旧軍人諸君のお考えは存じませんが、少くとも保安隊警備隊の中におられる旧軍人諸君については、軍国主義復活というものは心配はない、こう確信をいたしておる次第でございます。しかしながら、いやしくも国家の重大なる問題でありますから、私どもといたしましては、この問題につきましては、念には念を入れて実情を監視いたしまするとともに、あらゆる機会を通じまして、正しい考え方に指導するように、万全の努力をいたしておるような実情でございます。
  5. 松澤兼人

    松澤委員 ただいま、旧軍人採用については、きわめて短期間の基本的な訓練をして、それぞれの部隊に配属するということを言われたのでありますが、わずか二箇月ぐらいの基本的な訓練をやつて、今まで長い間身につけていたものが、国務大臣の言われる、いわゆる民主主義憲法のもとにおいて、部隊管理を民主的にやつて行くという気持になれるかどうか、私はそれを非常に懸念するのであります。一方におきましてはやはりこれを軍隊化し、筋金を入れて行くという隊外の動きとともに、隊内にいる旧軍人人たちが横の連絡をとらないということは、私は保証ができないと思うのであります。従つてほんとうにこの部隊というものが民主的に運営されることが何よりも必要なことであつて、これができなければ、この部隊というものがわれわれの心配するいわゆる軍国主義化するということになるのであります。そこで、卵をぬくめていれば必ずひよこになるということは当然でありまして、中にやはり観念的に一つ信念なりあるいは理念なり持つている者がいるとすれば、それをぬくめている間に、いつの間にかそこでは軍隊的なものが芽ばえて孵化して来るということを想像しなければならないのでありまして、この点私は非常に心配いたします。隊内にいる旧軍人隊外の旧軍人と横の連絡をするというようなことは、公式的にもあるいは非公式的にもこれは厳に慎まなければならないと思います。これらに対して隊内の規律はどういうことになつておりますか。
  6. 大橋武夫

    大橋国務大臣 まずお答え申し上げておきたいと存じます点は、旧軍人を含みますところの制服職員、すなわち保安隊警備隊実力部隊を形成しまする制服職員というものの幹部の使命でございます。保安庁組織、また警察予備隊本部組織といたしましては、保安隊及び警備隊に関しまするすべての方針及び基本的な実施計画作成ということは長官権限でございまするが、これを補佐する機関制服職員にあらずして、いわゆるシビリアンすなわち制服を着ないところの職員、こういう人たちがこの重要なる方針及び基本的な実施計画作成について長官を補佐する、こういうふうになつております。そして制服職員すなわち幕僚長並びに幕僚職務というものは、専門的な事項についての助言及び基本的な実施計画並びに各般の方針を、長官の決定に従いまして各部隊において実施するという面だけでございます。すなわちすべての政策というものは、専門的な事柄専門家たる制服職員立案作業に当りまするが、しかしながらこれらについて長官が決定的な案をつくるについての補助機関というものは、制服職員ではない。制服職員はこれらの事項実施する実施機関である。こういう考え方保安庁機構というものを構想いたしたわけでございます。従いまして今日旧軍人諸君は、この制服職員にのみ採用をいたしております。でありまするから、その権限といたしましては、制服外職員助言によつて最終的に決定せられたる方針部隊に流すというだけなんでございます。この面におきましては、個人の持つ信念とか理念とかいうことではなくして、その職務長官の決定したる方針を流すということなんでございます。従いまして今日旧軍人諸君予備隊の中に入つておられ、個人的にいかなる信念理念を持つておられましようとも、その信念理念が国の政策として取上げられるという機会はないれけであります。これらの諸君の仕事というものは、決定したる国の政策部隊に流すという実施面なのでございます。むろんこの実施面を担当する場合においても、信念理念がおのずから実施に際して影響をいたして来るということは、これは十分に考え得るところでございます。しかし予備隊といたしましては、完全なる人事権長官が掌握いたしておりますから、今日予備隊なりあるいは保安隊警備隊の基本的な考え方と、われわれの考えておりまするその点について、旧軍人的な信念なり理念なりを依然として持つておるというような場合におきましては、これはわれわれとしては断固処置しなければならない。私どもは完全なる人事権の掌握ということによりまして、この予備隊を正しい信念、正しい理念のもとに導き得る権限を与えられておるのでございまして、この権限の行使については万全の用意をいたしておる次第でございます。従いまして旧軍人の隊内、隊外の横の連絡、こういうような事柄は現在の段階におきましては、私としてはきわめて弊害が多い、こう考えておりまするのでわれわれの許しを得、われわれの監督のもとに行われるもの以外は原則として禁止をいたしております。
  7. 松澤兼人

    松澤委員 原則として禁止をされても、実際にそれが行われるかどうかということは、現在におきましてはまだ部隊の中におけるそういう傾向というものはきわめて微弱でありましようし、部隊の中におきましても自重していると思いますが、この組織が漸次大きくなつて来るということになれば、いわゆる量的なものが質的なものにかわつて来るということで、私はその段階におきましては、機構の上において国務大臣たる長官がどんなに人事権なりあるいは行政権なりを掌握していても、上から流すものがしばしば曲げられたりすることが起つて来るだろうと思う。そういうことを私は心配するのでありまして、すでに保安庁あるいは保安隊の方におきまして、確固たる一つ信念があつて、この基本的な理念に照して処置して行くということであれば、処断をすることは容易であります。しかしそれすらまだ十分にできておらないということでありますから、隊員行動なりもしくは旧軍人の隊内における活動なり、あるいは上から流されて来た施策に対する取捨選択の態度というものが、どの限界まで認めてどれから先が認められないというそのけじめがはつきりしないと思う。  そこで私は昨日からの基本的なものについて伺いたい。それは部隊運営して行く上における政府態度であり、また国の態度である。これに適合しないものは処断して行くのだという確固たる一つ態度が明確に打出され、それをまずつくることが必要であるということを申し上げておるのであります。ただそういうものがなくして、野放しでもないでしようが、旧軍人考え方の中にあるものを、国務大臣としてはどの程度まではいいけれども、どの程度から先はいけないというそのけじめを、どういうふうにされるか、それをお伺いしたい。
  8. 大橋武夫

    大橋国務大臣 政治活動は一切許しておりません。これは公務員として当然のことでございます。隊外における旧軍人との交渉、これが政治行動として行われる場合において、これはいかなるささいなことといえども断じて許すべからざることと考えております。友人とのつき合いということは、これは当然あり得ることでございまして、これは合理的な程度においてはむろん許さなければならぬ、そういう方針でやつておりますが、ただいままでのところでは、ある政治的な意図を持つて隊外連絡をするという旧軍人幹部は、幸いにして一名も出ておりません。この精神については非常によく徹底いたしておると感謝をいたしております。
  9. 松澤兼人

    松澤委員 政治活動禁止されておるようでありますが、しかし政党に所属するということは認められておると思います。そうして政令で定める範囲内の政治行為というものはできるのじやないか、こう思います。従つてその政治行為、あるいは政治団体役員たることは別といたしまして、政党に所属するということが可能であるとすれば、やはりある程度の政治的の意見の発表ということは行われるはずだと思う。
  10. 大橋武夫

    大橋国務大臣 りくつはどうか知りませんが、私ども予備隊幹部政党加入するということは適当ではないと思つております。これはりくつでなく、予備隊管理上適当でないと思つております。幸いにいたしまして、今日まで加入をいたしておる者は現実に一人もございません。
  11. 松澤兼人

    松澤委員 私はりくつを言つているのではなくて、法文上そういうふうになつているから聞いておる。政令で定める政治行為という規定があるようであります。これはどの範囲のものですか。
  12. 江口見登留

    江口政府委員 政令案としてわれわれが現在事務的に考えております点は、ただいま御指摘の保安庁法案の五十六條にありますが、そこに基本的な、してはならない政治的行為が掲げてありまして、その他は「政令で定める政治的行為をしてはならない。」ということになつております。それには大体現在の国家公務員法に基きまして一般公務員がやはりこういう種類の行為をしてはならないという規定が設けられておるのであります。それに対応いたしまして、この政令案といたしましても同じような規定を設けて行きたいと存じております。それは非常に詳細に長く、国家公務員関係におきましても規定されておりますが、その方をお読みくださいますと、大体この政令できめたいと思つておる内容もおわかりになるのではないかと思います。昭和二十四年九月十九日人事院規則十四の七というのがございます。実にこまかいことで長く書いてありますので、朗読は省略いたしますが、大体国家公務員に対しまして禁止せられておる政治的行為をやはりこの保安隊あるいは警備隊につきましても同じように禁止規定を設けて行きたい、かように考えております。
  13. 松澤兼人

    松澤委員 もちろんその点は、結局そういう内容を持つ政令を定めるということになるであろうというふうに私も考えておりました。そこで五十六條の三項を見ますと、政治的団体役員になつてはならない、あるいは同様の役割を持つ構成員となつてはならないということになつておりますが、政党党員になるということは禁止されていないように思いますが、その点はいかがですか。
  14. 大橋武夫

    大橋国務大臣 法文上はその通りでございます。ただ私の申し上げましたのは、今日まで警察予備隊実情から申し上げまして、党の役員となるばかりでなく、党に加入した者もないという状態であります。しかし法文はおつしやる通りでございます。
  15. 松澤兼人

    松澤委員 それではここに法文がありますけれども、何かほかの政令でもつて政党党員になることも禁止をされるお考えでありますか。
  16. 大橋武夫

    大橋国務大臣 これは禁止いたしておりませんが、予備隊の実際の幹部加入をいたしておる者はございません。かような状況は非常に望ましいことである。今後においても維持されることを希望はいたしております。しかしこれを法律で強制する考えはございませんし、また隊内規律をもつて強制する考えもございません。自発的にそういう状態であるという今日の状態は非常にけつこうなことで、おそらく今後もそういう状態が維持されるのではなかろうかと期待をいたしておるわけでございます。
  17. 松澤兼人

    松澤委員 政党党員になることがいいか悪いかということは、これはまた別の問題だろうと思います。現在政党党員が一人もいないということは、それは国務大臣がおつしやる通りだろうと思うのでありますが、将来なつた場合に、なつてはいけないという法律的な根拠がなければそれをとめるわけに行かない。外部に出て会合等に出席する、勤務がどうもおもしろくないということであれば、処罰はできるかもしれませんが、そうでなければ、やはりその党に所属するということを禁止なら禁止する法律的な根拠というものをつくつておかなければいけないのじやないかと思つて、質問しているわけです。
  18. 大橋武夫

    大橋国務大臣 実は旧憲法時代におきましては、軍人選挙権も停止されておるような状況であつたのでありますが、現在の予備隊員選挙権は与えられております。従いまして、これに対して政党への加入禁止するというような措置法律上は無理だと思います。現在私どもといたしましては、法律的にあるいは隊内規律によつて政党加入禁止ということを強制する考えはない、こういうわけでございます。
  19. 松澤兼人

    松澤委員 それでは旧憲法時代には禁止されていたけれども、新憲法になつてからは当然選挙権は行使できるのであるから、従つて政治団体構成員になることはむしろ喜ぶべきことであつて、そういう者が一人も隊内にいないということは、むしろ悲しむべき現象であるとも言えないことはないと思います。しかしもしそれが一つの具体的な構成になつておるということであれば、規律の上からいつて、この点は十分考えなければならない問題であろうと思うのであります。これは意見でありますから、私は答弁は必要でございません。それからさらに問題は、部隊民主化ということはもちろん必要なことであるし、そうかといつて実力を行使する部隊であれば、やはりそこに軍隊的な要素が必要である。この二つの問題をいかに調和するか、調整するかということが、非常に重要な問題であろうと思うのであります。今国務大臣は、非常に民主主義的な理念を徹底させることに努力をされていると、しばしば繰返して言われておりますので、私はこの点たいへんけつこうだと思います。そういう民主主義的な理念を徹底させて行くと、今度はその部隊軍隊的に運営する場合におきましては、かえつて弱くなつて来るという点で、この軍隊化民主化の兼ね合いが非常に問題だと思うのでありますが、この二つのものをどういう点で調整されるか承つてみたいと思います。
  20. 大橋武夫

    大橋国務大臣 御質問の御趣旨をよく理解いたしかねたのでございますが、部隊民主化規律を害して来はしないか、こういう御懸念かと思いますが、私は部隊民主化ということは、この部隊が国の民主主義を守るための有効な組織であり、そうして常に国の民主主義政治というものを確立するという線に、部隊活動が守られるべきものである。こういうことが部隊民主化であると考えておるわけでございます。たとえば労働組合民主化といいますると、組合員の全体の意思組合活動を決定する。その意思を決定するについては民主的な方法によつて決定される。こういうことが組合民主化ということだろうと思いますが、部隊民主化ということは、そういうこととは全然違うのでありまして、部隊そのもの活動をする、その活動民主主義を守るためのものである。活動それ自体が民主主義を伸ばすために活動すべきものである、こういうことが私は部隊民主化だろうと思うのでございます。かような部隊民主化ということを守りますためには、もとより規律というものは厳重に保たれ、上部の命令が下部において厳格に守られるということが保障されなければならぬと思うのでございます。従いまして上司の命令に対しては厳格に服従するという厳重な規律を要求しなければならない。これが主であつて部隊民主化ということは、この上部において予備隊管理政策として採用せられ、それが上部の命令として下部に流された場合に、その通り実行されるということによつて、初めて部隊民主化が保障される、こういうふうな考え方をいたしておるのでございます。あるいはこの点は松澤委員のお考え方と私の考え方に多少のギヤツプがあるかもしれませんが、私の真意はそういう点でございます。
  21. 松澤兼人

    松澤委員 それでは少し問題をかえまして、この出動しなければならない治安の状態というものの判定は、どういうふうにして行われますか。あるいはそれに関連いたしまして、実際上の出動の手続というものは、どういうふうにして行われるものであるか。ひとつ詳細にその手続あるいは事態の判定ということについて御説明願いたいと思います。
  22. 大橋武夫

    大橋国務大臣 出動につきましては、保安庁法案の六十一條以下に規定をいたしてございまするが、これをいろいろに分類をいたして観念いたしております。第一の考え方は、命令出動という題で規定をいたしてございますが、これは内閣総理大臣が全国の情報を総合いたしまして、非常事態であり、治安維持のために特に必要があると認めて出動を命じた場合でございます。これは国内の他の機関の要請によらずして、内閣自体の発意によつて出動が命ぜられる、政府自体の発意で出動命令が出るという場合でございます。この場合には、二十日以内に出動いたしたということを国会に報告をいたして、承認を求める手続が要請されておるわけであります。それから第二には、他の機関の要請によつて出動をする場合であります。要請出動という表題で規定してございますが、これは都道府県知事が、その関係の都道府県内の区域における治安維持上重大な事態につきやむを得ない必要があると認めた場合に、公安委員会と協議をいたしまして、内閣総理大臣部隊の出動を要請する場合であります。この場合においては、この要請を受取つた内閣総理大臣審査の上、事態やむを得ないと認めまする場合には出動命令を出すのでございます。この場合は一般的の権限を持つております都道府県知事の要請に応じて、その関係府県内の治安維持のために出動をいたしたのでございまするから、都道府県知事がこの旨を府県会に報告をする。政府としては、特に政府の発意によつて出動をした場合のごとく、国会に報告して承認を求めるという手続をとらない、こういうふうに規定をいたしてございます。第三には、災害の場合に、部隊隊員が応援のために出動をする場合であります。これは災害派遣という表題で規定をいたしてありますが、都道府県知事その他政令で定めるものの要請に応じまして、保安庁長官あるいはその委任を受けたものが、部隊を災害に際する救援のために派遣をする、こういう場合は武力の行使を伴わない場合が多いのでございまして、救援のための派遣でございますし、これは手続としては特に県議会あるいは国会の報告という手続を規定いたしてございません。そういうふうな考え方になつております。なお詳細な点につきましては、政府委員から御説明申し上げます。
  23. 江口見登留

    江口政府委員 ただいま国務大臣が御説明申し上げました通りでございまして、それに基いて手続的な規定を要するのは要請出動の場合、それから災害派遣の場合にこれらの手続は政令で定める、こう書いてございますが、その政令の案としてわれわれの考えております点は、きわめて事務的な中身ばかりでございまして、たとえば六十四條に参りますと、都道府県知事は「当該都道府県公安委員会と協議の上」というようなことを規定してありますので、はたして協議したかどうかということを明らかにするために、その協議の写しをつけて出してもらいたい。その出動要請をする事由は一体どういう点が事由なのか、あるいはそういうような要請をする場合の事務的な手続を、六十四條については規定いたしたいと考えております。それから六十六條の災害派遣の場合の手続も同様でありまして、その災害派遣を必要とする事由を詳細に書いて、それからまたどれくらいな人数が必要であるかということを知らしてもらいたい、あるいはそれがどのくらいの期間必要であるかということも参考のために知らしてもらいたい、そういうような災害派遣を要請する場合におきまする事務的な内容について、こういうことと、こういうこととを具備した上で出してもらいたい、あるいはこの要請は文書をもつてすることが原則であるけれども、それが間に合わないときには、口頭でもよろしい、あるいは電話でもよろしい、その場合にすみやかに文書によつてその手続を完備してもらわなければならない。そういうような事務的な手続を規定いたしたい、かように考えております。
  24. 松澤兼人

    松澤委員 非常事態に際し、治安維持のために特に必要ということでありますが、非常事態ということの判定が非常にむずかしいのではないかと思うのです。もちろん外国から侵入があつたというような場合ははつきりわかりますけれども、国内における一種の騒擾が単に騒擾だけにとどまるものか、あるいはこれが非常事態であるかということの判定が非常に困難ではないか、こう思うのであります。こういう判定はいかなる手段あるいは手続によつてされるか。一例をあげてみれば、メーデーの場合における皇居前広場における騒擾が、いわゆる部隊の出動を必要とする事態であるのかどうなのか。たといあの程度の規模であつても、あれがさらに数時間あるいは数十時間にわたつて対峙しているというような場合には、これも非常事態と考えられるのか、あるいは同様のものが、たとえば横浜でも、あるいは川崎でも、ああいつた性質の事件がほとんど同時的に起つたというような場合は、非常事態と考えられるのか、部隊を出動するその対象となる非常事態というものの判定は非常にむずかしいのではないか、こう考えるのですが、実際上の問題として、ああいう擾騒事件なり、もしくは治安上非常に不安であるということの問題の基本的な内容というものが、どういうような標準によつて判定されるのか、その辺のところを承りたいと思います。
  25. 大橋武夫

    大橋国務大臣 保安隊というものの基本的な目的なり使命といたしましては、国内治安の確保維持ということでございますが、国内治安確保ということについては、通常の場合におきましては、これは第一次的には警察機関の責任になつておるわけでございます。保安隊を設けまするゆえんのものは、警察機関の能力に限りがありまするために、これによつては事態の収拾が不可能であると認められる場合において、補充的な意味で保安隊が出動する、こういう基本的な考え方をいたしております。この点は、現在の警察予備隊令には明文をもつて、自治体警察あるいは国家地方警察の警察力の不足を補うために設ける、こう書いてございます。この考え方は、当然保安隊においても承継せられておる考え方でございます。ただ規定といたしましては、その表現といたしまして、非常事態に際し、治安維持のために特に必要があると認める場合に出動するという表現でこれをうたつたわけでございます。従いまして出勤すべき場合は、すべて一般警察にこれをまかせておいては事態の収拾が不可能であると認められる場合、そういう場合を非常事態として出動すべき場合、こう考えておるわけでございます。これをいかなる機関がいかにして認定するかということになりますが、先ほど申し上げましたるごとく、要請出動の場合においては、都道府県知事がある程度の認定をいたし、その要請に基いて内閣総理大臣が認定をする。内閣総理大臣の一方的な命令によつて出動をいたしまする場合においては、内閣総理大臣が認定についての全責任を負うわけでございます。これは事態によりましては、閣議等において決定されるということもあり得ることと存じますが、それらの手続はすべて政府の部内の手続として、法律において制限をいたしてございません。
  26. 松澤兼人

    松澤委員 具体的なメーデーの場合や、あるいはあれと同質のものが、各地で時を同じゆうして起つた——そういうようなことも警察力で何とか制止ができるといいますか、あるいは鎮圧ができるというような場合は、もちろん警察力だけでやつて行けばいいと思うのですけれども、各地に時を同じくして起つたというような場合は、ほとんど警察力の範囲を越えたものであつて、一種の非常事態ではないかと考えるのですが、そういうものも、その規模あるいは内容から見て非常事態と考えられるかどうかという点を伺いたい。
  27. 大橋武夫

    大橋国務大臣 御指摘のような事態につきましても、現実に警察力によつて事態を収拾することが不可能であると認められる場合においては、当然非常事態として出動をするということは考えられることでございます。
  28. 松澤兼人

    松澤委員 小さな問題のようでありますが、保安庁法によりますと、都道府県知事及び市町村長に募集事務の一部を委任させるということであります、こういういわゆる割当募集制度というものを現にとつていらつしやるようでありますが、今後もやはりこういつた方針をおとりになるのですか、どうですか。
  29. 大橋武夫

    大橋国務大臣 松澤委員は割当募集を今現にやつておるようであるがと言われましたが、さような事実は断じてございません。現在の募集は、あくまでも本人の自発的な応募を基礎といたしまして、その中から競争試験の上で適任者を選択して任用する、こういうことをやつておるわけでございます。今後におきましても、強制的な手段を伴うところの募集ということは、現在の保安隊としてはなすべきでない、こう政府考えております。
  30. 松澤兼人

    松澤委員 聞くところによりますと、たとえば岩手県に二千人ほど募集をしてくれという依頼があつて、四百人しか集まらなかつたというようなことは、いわゆる私は割当募集というような意味に解しているのでありまするが、強制募集という意味ではもちろんありません。各県に何人くらいひとつ募集してくれないかということを言つてつて、県側としましてはそれに応じて、たとえば四百人なり、あるいは六百人なり募集の手続をして、これを警察予備隊の方に移すということを聞いているんですが、そういうことは全然やつておらないのですか。
  31. 大橋武夫

    大橋国務大臣 そういうことは全然やつておりません。従いまして強制的に募集をするということはいたしておりません。ただその地方においてどの程度の応募者が予想されるかというような予想について話し合うということは、これは経費の分配その他の事務上の都合がございまするから、まあこの県では千人くらいの応募者があるだろうというよな話は、これはいろいろな事務的な打合せの際にやる場合もあろうと思います。しかしそれはどうでも千人だけの応募者があるようにしろ、こういう意味ではないわけであります。むろん事務をお願いいたしまする以上は、府県知事なり市町村長ができるだけその管下に募集をしておるぞという趣旨を徹底いたしまして、応募者に募集の機会を広く与えるように努力をしていただくことはこれは当然のことでございまするが、しかし強制的な募集というようなことは毛頭考えておりません。
  32. 松澤兼人

    松澤委員 私は先ほども申しましたように、それを強制募集というふうには言わなかつたんです。まあどの程度強制力を伴うかということは別として、各県においてこの程度のものは募集してほしいというようなことが、もし警察予備隊として言つておられるならば、私はそれを割当募集制度だ、こういうふうに申しまして、こういうことではやはり地方公共団体としても相当困る場合もあるのでしようし、そういうことを私は質問いたしまして、どの程度のことか行われておるかということをお聞きしたわけなんです。そういうことは全然やつてない、ただいろいろ募集の目安等について話し合うということであるというのであれば、私も了承いたしますが、しかし募集について相当な経費も必要だと考えます、その都道府県及び市町村に対する経費というものは、もちろん保安隊においてお持ちになることと思いますが、とにかく国で事務の一部を地方公共団体に委任して、あとで経費を出さなかつたりというようなこともあるようであります。そういう点については経理上何らの心配するところがないのであるかどうか、念を押しておきたいと思います。
  33. 江口見登留

    江口政府委員 経費につきましては全額国庫で負担することにいたしまして、財政当局とも御相談の上それだけの分を計上してございます。ただ最初のことでございまするので、こういう募集をやりました後、都道府県あるいは市町村といたしまして、それだけの経費で足りるか足りないかというような問題の検討は今後残ると思いますが、決して地方公共団体の御迷惑になるようなことはいたしたくない、財政上の適当な措置を講じて行きたい、かように考えております。
  34. 田中不破三

    田中委員長 本日はこの程度にとどめ、次会は明後二十九日午前十時半より開会することにいたします。本日はこれにて散会いたします。午後零時三十四分散会