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1952-03-28 第13回国会 衆議院 行政監察特別委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年三月二十八日(金曜日)     午前十一時三十五分開議  出席委員    委員長 内藤  隆君    理事 大泉 寛三君 理事 鍛冶 良作君    理事 高木 松吉君 理事 田渕 光一君    理事 福田 喜東君 理事 佐竹 新市君       天野 公義君    井手 光治君       岡延右エ門君    岡西 明貞君       菅家 喜六君    黒澤富次郎君       中川 俊思君    野村專太郎君       椎熊 三郎君    高倉 定助君       井上 良二君    竹村奈良一君       浦口 鉄男君  委員外出席者         証     人         (建設省管理局         長)      渋江 操一君         証     人         (山口県知事) 田中 龍夫君     ————————————— 本日の会議に付した事件  国有財産管理処分関係事件戦艦陸奥関係  事件委員会報告書に関する件  いわゆる京都騒よう事件治安警備状況調査の  ための委員派遣承認申請に関する件     —————————————
  2. 内藤隆

    内藤委員長 会議を開きます。  この際お諮りいたします。本委員会設置の決議によりまして、少くとも月一回の報告書を提出いたすことになつておりまするが、本日も従前の例によつて委員長において簡単なる調査経過報告書を作成して、議長に提出いたしたいと存じまするが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 内藤隆

    内藤委員長 御異議なければさよう決定いたしました。     —————————————
  4. 内藤隆

    内藤委員長 次にお諮りいたします。治安警備状況調査につきましては、すでに篠田弘作委員よりの申出によりまして基礎調査を行うことになつておつたのでありまするが、昨日の本会議における緊急質問にもありましたいわゆる京都騒擾事件につきまして、治安警備の面から、委員を派遣して調査されたいとの申出が、菅家委員よりあります。この事件について委員を派遣して調査を行うことに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 内藤隆

    内藤委員長 御異議がなければ、派遣することに決定いたしました。  委員を派遣して調査を行うことになつたのでありまするが、その派遣期日派遣委員の氏名及び人数、その他所要の手続につきましては、委員長に御一任を願いたいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 内藤隆

    内藤委員長 御異議がなければ、さように決します。     —————————————
  7. 内藤隆

    内藤委員長 それでは前会に引続き、国有財産管理処分関係事件中、戦艦陸奥関係事件について調査を進めます。  ただちに渋江証人より証言を求むることにいたします。  ただいまお見えになつておられるのは渋江操一君ですな。
  8. 渋江操一

    渋江証人 さようでございます。
  9. 内藤隆

    内藤委員長 あらかじめ文書をもつて承知通り証人として証言を求むることに決定いたしましたので、さよう承知を願います。これより国有財産管理処分関係事件戦艦陸奥関係事件について証言求むることになりまするが証言を求める前に証人に一言申し上げます。昭和二十二年法律第二百三十五号、議院における証人宣誓及び証言等に関する法律によりまして、証人証言を求める場合には、その前に宣誓をさせなければならないことと相なつております。  宣誓または証言を拒むことのできるのは、証言証人または証人配偶者、四親等内の血族もしくは三親等内の姻族または証人とこれらの親族関係のあつた考及び証人の後見人または証人の後見を受ける者の刑事上の訴追または処罰を招くおそれのある事項に関するとき、またはこれらの者の恥辱に帰すべき事項に関するとき、及び医師歯科医師、薬剤師、薬種商、産婆、弁護士、弁理士弁護人公証人、宗教または祷祀の職にある者またはこれらの職にあつた者がその職務知つた事実であつて、黙秘すべきものについて尋問を受けたときに限られておりまして、それ以外には証言を拒むことはできないことになつております。しかして、証人が正当の理由がなくて宣誓または証言を拒んだときは、一年以下の禁錮または一万円以下の罰金に処せられ(かつ宣誓した証人が虚偽の陳述をしたときは、三月以上十年以下の懲役に処せられることとなつておるのであります。一応このことを御承知なつておいていただきたいと思います。  なお証人が公務員として知り得た事実が職務上の秘密に関するものであるときは、その旨をお申出願いたいと思います。  では法律の定めるところによりまして証人宣誓を求めます。御起立を願います。   宣誓書の御朗読を願います。     〔証人渋江操一朗読〕   宣誓書   良心に従つて、真実を述べ、何事  もかくさず、又何事もつけ加えない  ことを誓います。
  10. 内藤隆

    内藤委員長 それでは宣誓書署名捺印してください。     〔証人宣誓書署名捺印
  11. 内藤隆

    内藤委員長 これより証言を求めることになりますが、証言は、証言を求められた範囲を越えないこと、また御発言の際には、その都度委員長許可を得てなされるようお願いいたします。なお、こちらから質問をしておるときはおかけになつていてよろしゆうございますが、お答えの際は御起立を願います。  証人渋江操一君は現在建設省管理局長でございますね。
  12. 渋江操一

    渋江証人 さようでございます。
  13. 内藤隆

    内藤委員長 管理局長にいつからおなりになりましたか。
  14. 渋江操一

    渋江証人 二十五年五月からでございます。
  15. 内藤隆

    内藤委員長 日にちは覚えておりませんか。
  16. 渋江操一

    渋江証人 はい。
  17. 内藤隆

    内藤委員長 管理局長として、戦艦陸奥国有財産に返還されたということを御承知でありますか。
  18. 渋江操一

    渋江証人 承知いたしております。
  19. 内藤隆

    内藤委員長 それでは、戦艦陸奥関係についてお尋ねをしたいと思いますが、大体特殊物件というものの意義及び国有財産法との関係を簡単に述べていただきたい。
  20. 渋江操一

    渋江証人 特殊物件は、私ども考えておりますところでは、終戦当時の司令部からの指令によりまして、その当時の旧来陸海軍の所有しておりました物件、これを司令部許可のもとに管理処分することを命ぜられました物件の種類でございまして、その内容には、いわゆる放出物資といわれておるものもございます。それから略奪物件といわれておるものもございます。狭義におきましては、司令部特殊物件として一定の目録に登載されたもの、それの範囲内に限定しておると私ども考えております。国有財産は、これはもつぱら大蔵省所管なつておるわけでございますが、これは一般的には国が所有しておりまして、国の国有財産台帳に記録されておるものでございます。もちろんただいま問題になつております艦体等につきましても、これは終戦という特殊の事態がなければ、ある意味では国有財産であろうかと思いますが、終戦という特殊事態のために、ただいま申し上げましたように、司令部よりの特殊の指示に基いて処理することを命ぜられて、しかもその内容については、一つの特殊物件台帳に記載されておる、こういうものであるというふうに考えておるのであります。
  21. 内藤隆

    内藤委員長 そうすると、搭載物件というのは一体どういうものですか。
  22. 渋江操一

    渋江証人 搭載物件と申しますのは、私が考えておりますところでは、艦体の一部をなしておらない、たとえて申しますれば、ただいま問題になつておりますよう重油ガソリン繊維品食料品、その他、ある意味では艦体そのものの一部をなしていない物品というような、大ざつぱな考え方でございますが、さよう考えておる次第でございます。
  23. 内藤隆

    内藤委員長 建設省がこの特殊物件所管庁となつたそのいきさつを簡単に……。
  24. 渋江操一

    渋江証人 これは終戦当時にさかのぼりますわけでございますが、当時まだ旧内務省が存続いたしておりまして、この特殊物件取扱いは、当時内務省において所管するという関係なつておつたのでございます。その間の詳しい経緯については、よくここで申し上げる資料を持ち合せておりませんが、内務省調査局というものを設けまして、ここで特殊物件取扱いを処理することになつたのでありますが、これが内務省の解体と同時に、特殊物件事務は、調査局から当時建設院総務局移管されることになつたわけであります。しかして建設院からさらに建設省というふうに、機構がかわりましたのに伴いまして、引続き建設省総務局所管と相なり、その後機構改正で、すなわち総務局管理局というふうに変更になりました後におきましても、引続き管理局において管理する関係になつたのでございます。
  25. 内藤隆

    内藤委員長 要するに機構改革によつて内務省から建設省に来た。こういうのですね。
  26. 渋江操一

    渋江証人 さようでございます。
  27. 内藤隆

    内藤委員長 そうすると、建設省戦艦陸奥搭載物件引揚げ、及び処分実施監督山口県知事委任しておるようですが、その経過を少し述べてください。なお委任しました法律関係等も含めて述べてくださればけつこうです。
  28. 渋江操一

    渋江証人 この問題も、終戦当時の問題にさかのぼるわけでございますが、当時旧内務省、さらに府県におきましても、地方公共団体制度も、新憲法改正前でありまして、旧来体制なつていたわけでありますが、当時の内務省におきましては、訓令をもちましてこの特殊物件事務一切を府県知事機関委任をするということにいたしております。そこで私どもこの事務を、具体的には山口県知事委任してあるという関係は、この訓令に基くものというふうに考えておるわけでございます。これを法的根拠から申しますれば、旧憲法時代官選知事から公選知事体制がかわりました後における法的根拠いかんということになりますが、これは私の考えでは、地方自治法の第二条に基きまして、旧来地方公共団体法令その他法規によつて委任されている事務を除くほかにつきましては、地方公共団体内の事務を処理するという建前なつておりますが、ただいま申し上げました関係をこの規定に当てはめて考えてみますと、これは明らかに地方自治法の第二条の、従前法規に基く機関委任事務というふうに私どもは解釈いたしておるのであります。
  29. 内藤隆

    内藤委員長 そういう法的根拠等に基きまして、建設省から委任を受けました山口県当局は、重油四百トン、揮発油二十トン、繊維品十トン、ワイヤー・ロープ、マニラ・ロープ二十トン、食品二十トン、非鉄金属三十トンを海没の現状のまま九十三万三千円で西日本海事工業へ売却する契約を締結したのでありますが、ここで問題になるのは、非鉄金属の三十トンであると思います。これはスクリューあるいは素材機関等で、素材を除いてはいずれも艦体爆破解撤しなければ引揚げられない物件で、いわゆる搭載物件ではないのでありますが、陸奥の場合には、特に極東海軍から返還軍需物資として引揚げ処分許可されておるのであります。西日本海事作業を開始し、重油衣料品食品引揚げ行つたのでありますが、重油は目標の一割程度にとどまり、その他の品も思わしくなく、遂に八百五十万円の赤字を出して作業中止状態になつた。そこで非鉄金属は、当時引揚げても引合なかつたので、これを見送つてつたのでありますが、そのとき陸奥は返還され、国有財産なつ大蔵省移管されて来た。建設省はこのとき県に対し、契約解除、あるいは更改を命ずべきではなかつたかとわれわれは考えるが、この点はどうでありますか。
  30. 渋江操一

    渋江証人 契約変更の必要ありやなしやというお尋ねでございますが、当初の契約は、搭載物件としての品目を、ただいま委員長からもお述べになりましたように、指定してございまして、しかもその数量についてもある程度指定をいたしておるわけでございます。私といたしましては、この引揚げ対象になる品目ないし数量従前方針に基きます限りは、これは大蔵省移管後においても、あえて契約変更の必要はないというふうに考えておるのでございます。もつとも引揚げ作業自体に関しましての取扱いにつきましては、これは大蔵省移管後におきましては、その引揚げ作業実施監督にあたつております山口県当局、これが大蔵省出先機関と緊密な連絡のもとに実施していただくようにということは、私の方からも厳重に申し上げて、そういう取扱いに遺漏のないように実は指示していたわけでございます。
  31. 内藤隆

    内藤委員長 そうすると、ただいまの証人証言では、特殊物件として取扱つたときの契約が、国有財産に返還された場合でも、あえてこれを解除または契約変更更改等をする必要がない、こうお認めなんですね。
  32. 渋江操一

    渋江証人 さよう考えておるのでございます。
  33. 内藤隆

    内藤委員長 陸奥国有財産となつたその前後から、朝鮮事変の影響を受けまして、いわゆる金へん景気となつたので、一旦控えておつた非鉄金属引揚げによつて会社の再起をはかるべく、西日本海事熊谷組工業と提携を策したが、これが失敗し、そこで田中社長葛西専務が二派にわかれて、それぞれ非鉄金属引揚げ争つてつたが、結局田中社長時代の負債中の七百万円を葛西専務が支払うこととして和解をして、県から作業再開許可をとつております。これは葛西は、いわば七百万円で非鉄金属引揚げの権利を買つたのであつて、これを当時の価格に換算すると、五百トンの非鉄金属引揚げなければそろばんに合わない。しかもその協定に際しましては、県も立会人として一枚加わつておる、こういう条件のもとに作業が再開されて行つたのであります。  そこで第二の問題が起つて来るわけです。すなわち最初契約した非鉄金属三十トンと県の裏づけによつて承認された七百万円に相当する五百トンの非鉄金属は、艦体爆破解撤しなければ絶対に引揚げられない物件であるということであります。建設省所管時代特殊物件としての引揚げならば、艦体破壊は一向さしつかえない。しかし所管大蔵省にかわつた後は、大蔵省指示する方針従つてやらねばならぬと私たちは考えるが、この点はどうですか。
  34. 渋江操一

    渋江証人 西日本海事という今の海没物件引揚げ作業を落札しました会社内容につきましては、私は十分に承知いたしておりません。ただ私どもの当初指示いたしました建前からいたしますと、指定品目と同じ品目につきまして、引揚げ数量、これが当初契約しておつたものからさらに超過して引揚げるという関係につきましては、先ほど申し上げましたように、この事務委任してございます山口県の指示従つて承認のもとになすべきであるということにいたしておりまして、さらにその引揚げ実施の結果は、毎月報告を求めることにしたわけでありますが、そのただいま申し上げました指示なり報告に従つた運営されるというふうに考えておるわけでございますが、私ども承知いたしておりました限りでは、毎月の報告基礎にしましていろいろ判断をいたしおつたわけであります。そういう関係からいたしまして、ただいまの五百トン云云の問題は、それによらなければこの落札価格である九十二万円、さらには西日本海事建直しのための所要資金の引当てといいますか、そういつたよう関係において、引揚げ数量を相当大幅に超過し、さらには艦体解撤という問題にまで発展して行くというふうには、実は承知をいたしておらなかつたのでございます。もつとも大蔵省との協議連絡につきましては、先ほど申し上げました通りに、引揚げ実施並びにその監督をいたします関係におきましては、常に緊密な連絡をもつて大蔵省意見を聞きつつやるべきである、こういう考えは持つてつたのでございます。
  35. 内藤隆

    内藤委員長 委員長お尋ねしておるのは、大蔵省意見を徴しておるという程度の問題ではないのです。要するにこれをもつと他の言葉で申しますと、建設省所管しておる時代特殊物件引揚げならば、爆破解撤しなければ特殊物件が出ないという場合にはこれを認めてもいいかもしれない。しかしながら、これが国有財産として大蔵省所管がかわつた場合に、建設省そのままの方法でこれが許容されてもいいかどうか、こういう点なんです。
  36. 渋江操一

    渋江証人 このお話にございます艦体解撤という問題でございますが、これは実は大蔵省移管という問題を離れまして、この最初の物件取扱いをいたします当時からあくまで特殊物件取扱い、すなわち搭載物件取扱いであるという観点からいたしまして、艦体解撤ということは認めておりませんし、またそういうことが行われることを厳重に禁止いたしておるよう指示を実は与えております。従いましてこの引揚げに関連しまして、艦体解撤という問題を実は想定して、大蔵省との連絡その他の問題を考えてはおらなかつたのてございます。事実の問題がどういうふうになつておるかということは、実は私は十分承知いたしておりませんが、少くとも取扱いの上においては、艦体解撤に触れた問題は、もちろん特殊物件取扱いをしておつたときにも、この問題は建設省限りで処理し得るものとは考えておりません。これは司令部許可その他をもちろん必要とする問題と考えておりますが、それも、この具体的の問題につきましては、艦体解撤は厳に禁止するという建前なつておつたのでございます。
  37. 内藤隆

    内藤委員長 ただいま渋江証人証言は、本件に関しましてはすこぶる重要な証言であつたと私は思います。爆破解撤というものは、建設省においてはこれを全然認めていない、また数回にわたつてようなことをしてはいかぬという文書山口県に発しておるわけでありますな。  それから作業期間昭和二十五年十一月三十日まででありましたが、その間期間延長は許さない方針であると山口県によく伝えておられたということは、先般来の証人からも聞いておりますが、そういう厳重な再延長許可しないというものが、なぜ一体その後において約八箇月も延長されたのですか、その間の事情をひとつ……。
  38. 渋江操一

    渋江証人 これはすでに御承知かと存じますが、二回にわたつて期間延長をいたしております。問題は第二回目の期間延長の問題であろうと存じますが、この二回目の期間延長におきましては、引揚げ作業がなかなかはかばかしく行かないという観点もございます。引揚げの衝に当つております西日本海事能力等もやや懸念いたす点等もございまして、これについてはかなり消極的見解を実は持つてつたわけであります。やはりこれも、当時国有財産大蔵省所管移管されたという関係もございますので、建設省だけの見解では不十分であるということが当然出て参りますので、大蔵省にもこの県当局意向等を伝えまして、大蔵省方面見解も求めております。その結果大蔵省としては、一定条件のもとに、厳重な監督の上でこの引揚げ作業をやるならば、さらに県当局意向を多少くみとるもやむなしという見解をとつてつたというふうに私ども承知いたしまして、もちろん公式の協議その他をいたしておつたのでありますが、それによりまして、期間の再延長を認めることにいたしたのでございます。
  39. 内藤隆

    内藤委員長 今までの証人証言を要約して考えてみますと、大体建設省及び大蔵省として三つミステークがあつたように私には考えられます。第一は、いわゆる特殊物件から国有財産に移つた際に、契約もこれを解除あるいは更改を命ずべきであつたのを、それを命じていなかつたことが第一点、それから第二点は、証人爆破解撤のごときは厳にこれを禁じてあつたと言うが、事実はこれをやつてつた、これをそのまま許容しておつたというところに第二のミステークがあると私は思う。それからただいまの証言でありますが、結論的に言えば、昨業期間延長そのもの艦体破壊によつて不正引揚げを助長したという以外の何ものでもないように私は思う。こういう三点の大きなミステークがあつたように私には考えられて来るのであります。さらに先日来の証人によりますと、建設省一体山口県に対して監督その他一切のものを委任しておりますが、その委任するに際して監督経費というものを交付しておりますか。
  40. 渋江操一

    渋江証人 特殊物件経費といたしまして相当の——金額につきましては、はつきりここで申し上げる資料を持ち合せておりませんが、これはもちろん委任事務でございますので、それに必要な経費としまして、国の予算建設省から地方に対して委託費としまして、現に予算を相当補助いたしておるわけでございます。
  41. 内藤隆

    内藤委員長 交付金額はどのくらいになりますか。概算でようございます。
  42. 渋江操一

    渋江証人 ただいま資料を持ち合せておりませんので、庁におきまして後ほど具体的な数字をあげまして、御報告申し上げることにいたします。
  43. 内藤隆

    内藤委員長 あとで書類で出してください。
  44. 渋江操一

    渋江証人 承知いたしました。
  45. 内藤隆

    内藤委員長 前にも申しますように、建設省は大体において三つの大きな失策をしているように思われる。要するに、国有財産に莫大な損害を与えたのは、そういう三点から想像し、またこれを裏づけし得ると私は思うのですが、一体これに対して建設省は何か責任を感じておられますか。
  46. 渋江操一

    渋江証人 私の考えといたしましては、もちろんかような重要な国有財産等に対しまして不要の損害、あるいは思わしからざる結果が生じましたことにつきましては、これはやはり一連のこの事務取扱つております機関といたしまして、申訳ないことというふうには考えておるわけでございます。当初におきまして、かかる結果が起きざるように通牒、指示、ないしは口頭によります指示等をそれぞれ十分いたしておつたつもりでございますが、しかし結果として、事実そういうことが起りましたということにつきましては、私どもとしましてやや遺憾な点があつたというふうに考えておるのでございます。
  47. 内藤隆

    内藤委員長 率直に責任のほども感ぜられるという証言でありますが、一体山口県知事に対して、具体的にどういう責任を問われますか。
  48. 渋江操一

    渋江証人 この点は、法規建前から申しますと、地方公共団体の長というものは、それぞれ公選制による公職といたしまして、先ほど申し上げましたような一応の建前からして事務委任は受けておりますけれども、これの監督は、もつぱら委任条件としましていろいろの指示を与えるということになるわけでございます。身分上の問題とか、そういつたようなことに関連しまして、これはあくまで法令上、制度上は別個の機関でございますから、これらについて云々すべき筋合いではないというふうに考えております。
  49. 内藤隆

    内藤委員長 さらに、たとえば委任した関係訓令によるものとするならば、知事に対して一体どういう行政上の責任がそこに発生して来るでしようか。知事行政上の責任を……。
  50. 渋江操一

    渋江証人 現在の法規建前では、先ほど申し上げましたように、これを委任しました国の側から見ますれば、委任事務に関連しまして、その適正な運営が行われるように事前の指示監督、勧告といいますか、そういつたよう方法があると思いますが、事後における方法としましては、実はきわめて明確な方法というものはないよう考えております。従つてそれについてどういう処分方法が国の立場で考えられるかということにつきましては、実はまだ十分な結論を出すまでに至つておらない状況でございます。
  51. 内藤隆

    内藤委員長 知事に対する行政責任結論をまだ出す程度には至つていない、こういうわけでありますね。
  52. 渋江操一

    渋江証人 私の申し上げましたのは、法令なり制度上の問題でありまして、直接どういう権限に基いてやれるかという点についてのまだはつきりした結論を見出しておらない、こういうのであります。
  53. 内藤隆

    内藤委員長 他に御質問はありませんか。
  54. 佐竹新市

    佐竹(新)委員 証人お尋ねしますが、いわゆる艦体の中にある機関、あるいはスクリュー、そういうものは登載物件とみなされるかみなされないか、その点はどうです。
  55. 渋江操一

    渋江証人 私どもの当初引揚げ対象にいたしておりました登載物件、これは逆に言いますと、あくまで艦体解撤を伴わない品目というふうに、実は先ほどから申しておりますよう考えております。従いまして、引揚げ作業過程において最小限度損傷を、これはたとえばガソリンタンク穴明けをして重油引揚げをする、かよう作業過程における損傷は、これはやむを得ない。その他につきましては、艦体解撤を伴うよう品目は予想しておらない、かよう考えているのであります。
  56. 佐竹新市

    佐竹(新)委員 スクリューはいわゆる艦体であるか艦体でないかということについては、どういう見解ですか。
  57. 渋江操一

    渋江証人 ただいまの原則といいますか、私ども考えておりました当初の方針に準じて判断して行く問題であるというふうに考えておるのでございますが、実は私の見解よりも、むしろこれは、国有財産取扱いをいたしております大蔵当局あたりのはつきりした見解を確めていただく方が、よくはないかというふうに考えております。
  58. 佐竹新市

    佐竹(新)委員 極東海軍並びに建設省許可しておるのは、いわゆる特殊物件の中に、スクリュウも許可しておる。それの許可をされておるあなたの方は、スクリュウをいわゆる搭載物資とみなされて、今度の引揚げ許可されたのであるか、それとも艦体の一部とみなされるか、その点はいかがですか。
  59. 渋江操一

    渋江証人 私ども承知いたしております限りでは、スクリュウとか、そういつた品目の具体的な名称は、実はあげておりませんで、契約内容にも、非鉄金属何トンというふうな表示の仕方をいたしております。
  60. 佐竹新市

    佐竹(新)委員 私のお尋ねするのは、搭載物件を揚げるのですが、その中に非鉄金属が、明細で言えばスクリュウがある。そのスクリュウは、要するに搭載物件とみなすのか、艦体とみなすのか、その見解をあなたに尋ねておるのです。
  61. 渋江操一

    渋江証人 私は率直に申しまして、これも先ほども申しましたよう意味で、搭載物件取扱いということに解されて行くべきではないかというふうに考えてはおりますが、いずれにしましても、契約の具体的な表示といたしましては、品目を明らかにいたしておりませんので、その関係におきましては、私ども搭載物件なりやいなやということについて、具体的に、当時において御相談にあずかり、そうして明示をしておるというわけではございませんので、実は私のこの場における見解を申し上げたような次第であります。
  62. 佐竹新市

    佐竹(新)委員 この特殊物件は、証人が最初証言されたように、司令部の管理である、その司令部、いわゆる極東海軍がこの特殊物件許可を出しておる、搭載物資引揚げ許可を出しておる、従つて極東海軍が従であるか、建設省許可の方が従であるか、この点はどうですか。当時の状況です。
  63. 渋江操一

    渋江証人 これは主従というよう関係において判断すべきものかどうかわかりませんが、最終的な許可は、あくまで当時司令部の海軍にあるという建前におきまして、司令部許可のもとに建設省許可、不許可ないしはその条件というものを指示しておる、こういう事実でございます。
  64. 内藤隆

    内藤委員長 渋江証人に聞きますが、極東海軍に申請するとき、西日本海事が明瞭にスクリュウの引揚げ建設省に相談をしておりませんか。
  65. 渋江操一

    渋江証人 少くとも私の承知いたしておる限りでは、相談を受けておるように聞いておらないのでございます。
  66. 佐竹新市

    佐竹(新)委員 そうすると、当時極東海軍許可をしたなれば、建設省の方はそれにならつて何でも許可をするということになつておつたのですか。極東海軍へ申請する場合には、当時の特殊物件取扱いを引受けておつたところの建設省を通して、極東海軍艦体なら艦体搭載物件なら搭載物件許可の手続を出すのですか。それは二本建ですか、一本建ですか。
  67. 渋江操一

    渋江証人 極東海軍との関係においては、これは特殊物件で、具体的には搭載物件ですが、当面の機関といたしましては、日本政府すなわちそれを取扱います建設省ということになつております。従いまして、その手続の関係におきましては、県、さらに県を通じ、建設省を通じ、そうして極東海軍との協議によつてきめて行く、こういうことになつております。
  68. 佐竹新市

    佐竹(新)委員 そうすると、搭載物件引揚げ許可しておるのでありますが、スクリュウあるいはシヤフトというものを揚げて、これを非鉄金属といつておりますが、その具体的な許可を見ますと、スクリユゥならスクリュウと明示してあるのですから、そういうものは山口県から申請をして、それを建設省を通して極東海軍許可をしたわけですね。許可をしたのなら、それは当然搭載物件として許可をしたわけですね。
  69. 渋江操一

    渋江証人 私が先ほどから申し上げておりますように、極東海軍との関係において、建設省協議し、手続をとつた間におきましては、非鉄金属何トンという表示において協議し、その条件のもとに許可をしております。その非鉄金属内容がスクリュウである、そういつたような点につきましての協議をし、さらにそれにつきまして許可の指令を建設省取扱つておるという事実は、実はないというふうに記憶しております。
  70. 佐竹新市

    佐竹(新)委員 私が許可証の内容を見たところによりますと、スクリュウということが明示してある。それで私は尋ねている。あなたはないと言われますが、建設省を通して極東海軍許可した許可証の中に、スクリュウということが明示してある。だから私は尋ねている。建設省はそういう許可をされたことはないのですか。
  71. 渋江操一

    渋江証人 私の承知いたしております限りでは、ただいま申し上げた通り、個々の品目を明示しておる許可その他の取扱いをいたした記憶はないのでございます。
  72. 佐竹新市

    佐竹(新)委員 そうしますと、これは非鉄金属ということで許可をしておりますが、この非鉄金属というのは、たとえば搭載物件の中のどういうものだと、常識的に解釈をされますか。
  73. 渋江操一

    渋江証人 私は、先ほど来申し上げておる通り搭載物件非鉄金属なるものといたしましては、艦体自体の解撤ということを厳に戒めております関係上、その条件に抵触せざる範囲内におきます品目物件というものに、常識的に考えております。
  74. 佐竹新市

    佐竹(新)委員 艦体自体に対して解撤を認めないいわゆる非鉄金属、こういうよう証言でありまするが、あなたの方の、建設省委任をやつておられまするところの山口県は、この搭載物件引揚げるために、約四トンのダイナマイト、いわゆる火薬を許可している。そして現に爆破して搭載物件を揚げておるのでありますが、こういうことを建設省は認められたのでありますか。艦体解撤しないといつても、爆破すればどうしても解体します。艦体を毀損します。そこで山口県は火薬の許可を与えておるが、建設省は知つておられるのか、山口県の独断でやつたのか、それを伺いたい。
  75. 渋江操一

    渋江証人 個々の実施作業、さらにそれに伴います監督等につきましては、もつぱら県当局委任しております前提に立つておりますので、ただいまお話がございましたような、火薬の使用その他につきましては、前段申し上げました建設省指示を、一応遵守しましてやられるということにおいて、私ども委任をいたしておりますから、そういう関係で処理されておるというふうに了承しておるのでありますが、火薬の使用そのことについて、私ども許可を与えたというよう関係には実はございません。
  76. 佐竹新市

    佐竹(新)委員 そうすると、山口県に対して搭載物件引揚げるために火薬の使用そのものを認めておらないと、こう言われるのですか、それとも搭載物件を揚げるについては、当然火薬を使わなければ揚げられないということを考えておるというのですか、火薬なんかは使つてはいけないというよう考えるというのですか、どちらです。
  77. 渋江操一

    渋江証人 引揚げ作業過程において、火薬を全然使用しないでやれるというようには、私ども常識的に考えておりません。ただ火薬の使用が厖大な数量に上りますれば、これは艦体解撤という問題、爆破という問題になりますが、その点は当然当初申し上げました通り、さらにこの処分をいたしますときに指示しましたし、またその後においても指示されている、つまり艦体解撤を厳に戒める建前なつておるという関係において、この問題は委任された山口県の判断においてやつておられる、かよう承知しております。
  78. 佐竹新市

    佐竹(新)委員 そうしますと、さつき証人の言われたように、火薬を使えば当然艦体を毀損する、艦体を毀損してはならないということを建設省は厳重に言つた。火薬を使つて搭載物件引揚げれば艦体に傷がつく。艦体をある一部破損しなければ搭載物件は出ないということをあなたは認められるのですか、認められないのですか。
  79. 渋江操一

    渋江証人 私はその点につきましては、先ほども申し上げておりますように、搭載物件引揚げ作業に必要最小限度損傷を与えるという事実は、これはやむを得ないというふうに考えておるのであります。
  80. 佐竹新市

    佐竹(新)委員 次は期限の延長の問題についてお尋ねしたいと思うのでありまするが、先般山口県の商工課長の証言によりますると、大蔵省並びに建設省は、期限の延長を与えては断じてならないということを山口県へ指示しておる。それから昨日の中国財務局の局長の証言によりますると、中国財務局の方でも、この期限の延長は与えてはいけない、こういうように言つておるのに、さつきも委員長質問になりましたように期限の再延長をしておるのでありますが、これはどういうわけですか、一旦建設省なり、中国財務局からも大蔵省を通じてそういうことを言い、県は再延長は絶対にしてならないと思つておるものが偶然許可になつた、それはどういうことで許可になつたのですか。
  81. 渋江操一

    渋江証人 この点は先ほど私が申し上げた通りに、私ども承知しておるのでございますが、当時の引揚げ作業をやつております西日本海事作業能力その他から判断いたしまして、多少の疑問があるというふうに考えておつたわけでございます。しかし当時これを大蔵省当局にも相談をいたしました。再延長の事実が国有財産として移管される結果になつた後の問題でございますので、これが最終的な判断につきましては、大蔵省当局意見を実は尊重するという建前をとりまして、大蔵省当局協議いたしまして、その結論を待つて処理して行く、こういうことでございます。
  82. 佐竹新市

    佐竹(新)委員 先般の山口県の商工課長の証言によりますると、西日本海事が期限の延長を願い出た。しかしながら大蔵省なり建設省なり両方から期限の延長をしてはならないということの指示が来ておるので、これは当然許可にはなるまい、こう考えておつた。しかしながらこの許可の権限というものは県にはないのである、当然建設省委任事項を受けているのであるから建設省へ伺わなければならないというので、消極的な、まあ出してみようという程度の書類をつけて、そうして建設省へ出したところが、偶然に許可になつたというので、案外でした、こう言つておるのですが、そういう延長をしたために、重大な不正引揚げというような問題が起きておる。国有財産に移つてから——特殊物件のときに許可をとつたのであるから、そのときに問題が起れば、責任建設省よりむしろ極東海軍の方にあるかもしれない。しかし特殊物件解除されて、国有財産に移つてから、期限の延長をした六箇月の間に不正引揚げが相当行われた、こういうことになつておる。この責任は——山口県はそういうふうに消極的であつたが、証言によれば建設省許可したのだ。この点が疑問なんですが、だれかよそから働きかけて、そういうことがあつたのではないですか。
  83. 渋江操一

    渋江証人 私が承知しておる限りでは、少くとも建設省に関する限りは、さような外部からの働きかけといつたようなものがあつたという事実は別段聞いておりません。
  84. 佐竹新市

    佐竹(新)委員 そうしますと、国有財産に移つてからの大蔵省並びに建設省山口県というものが、この不正事件内容を見ると、全部許可をしてやつておる。許可によつてこういう大きな問題を起さしておるわけです。そうすると、その一番のもとはどこかというと、山口県である。この山口県をわれわれはこの委員会において——次に知事が出ますが、その責任の追究をしようと思いまするが、山口県の知事は、県の処置は万全であると県会でそのことを発言しておるのであります。内容は読み上げませんけれども……。しかしながら、この委員会において今日まで証人を喚問いたしまして調査したところによるならば、建設省なり大蔵省なりあるいは山口県が、たとえて言うなら、火薬を使わせれば当然艦体も破損する。それから鉄を売つておる、その鉄の売却許可証は山口県が出しておる、鉄を売るということは許可なつていない。それを山口県が許可しておる。こういうことに対して山口県知事は重大な責任があり、この責任のもとはやはり建設省が負われなければならない。こういう許可証を出しておる。そうすると建設省は、さつき委員長に言われたように、山口県に対してどういう責任を負わされたか、一体国有財産をめちやくちやにした責任はだれが負うか、この点をはつきりしてもらわなければならぬ。大蔵省が負うのか、建設省が負うのか、山口県が負うのか、その責任の所在はだれです。
  85. 渋江操一

    渋江証人 先ほども、この点も委員長からの御質問もございまして、証言申し上げたわけでございますが、いろいろの紆余曲折がありましたにいたしましても、とにかく事実として現われましたこの特殊物件取扱いが、この当時われわれが考え許可証を示し、当初指示しましたところに反しまして、その結果国有財産に対するいろいろな損害損失というものを出したということにつきましては、私ども、先ほど申し上げましたように、それにつきましては事実といたしまして、まことに申訳ない、かように実は考えて申し上げたわけでございます。この引揚げました物件の、つまり処分方法等につきましては、現在検察当局で、いろいろ調べておられるというふうに聞いておりますが、私どもの立場といたしましては、検察当局の処理は処理、行政上の今までの取扱いとして、この事務委任の結果として現われたことがさような結果になつたことにつきましては、まことに申訳ないことであるというふうなことを申し上げておるわけでございます。
  86. 竹村奈良一

    ○竹村委員 建設省山口県に監督委任して、そして監督経費を出しておるというような、委員長に対する答えであつたのでありますが、そこで私のお聞きしたいのは、国が監督経費を出して県に監督移管して、それでその後引揚げが行われた都度、監督委任したところの山口県から建設省に対して、引揚げ経過等は一体どういう形で報告されておるのでありますか、まずその点を聞きたい。
  87. 渋江操一

    渋江証人 これは当初の許可条件の際にも、実は出してございますが、毎月この引揚げ作業の進捗状況引揚げ品目、さらにその数量、これについて定期的に報告を徴することとし、それをまた徴しております。
  88. 竹村奈良一

    ○竹村委員 それでは毎月引揚げ品目経過等を建設省報告さしておる。そういたしますと、この引揚げた中には、先ほど佐竹委員質問にもあつたのですが、たとえば発電機とか、スクリユーとか、あるいはタービン、シヤフト、こういうようなものがずいぶん引揚げられて処分されておるのでございますが、それでは建設省では、毎月その報告を徴して、しかもその品物が引揚げられておるということを御承知なつておつたわけですか。
  89. 渋江操一

    渋江証人 先ほどもいろいろお話がございましたけれども、個々の物件の種類、つまりスクリューでありますとか、発電機、そういつたような形において実は徴しておりませんで、非鉄金属としては何トンというふうなことによつて、あるいは食料品がどうというふうな、そういう一括しました品目のもとに、その数量を時々定期的に報告を受けておつたようなわけでございます。
  90. 竹村奈良一

    ○竹村委員 そうすると、あなたの方で徴しておるのは、非鉄金属であるとか、あるいは鉄であるとかということだけの報告であつて品目別の報告はない。そういたしますと、もし現地において、たとえば許可品目でないものも許可品目の中に入るがごとき報告が行われておつても、そのままあなたの方は信じておる、こういうことですか。
  91. 渋江操一

    渋江証人 もちろん私どもといたしましては、県に委任してあります以上、県として最善の受託者としての責任、機限において処理されるというふうに期待しておりましたし、またさような前提のもとにこの事務委任をいたしておるのでございます。従いましてこの報告過程において、偽りがあるというふうな前提に立つて徴するということは、実は考えておりません。しかし実際問題としてそういう事実が判明した場合においては、これはもちろん個々の品目内容を精細にただして、許可条件に該当しておるかどうかということはもちろん考えるべきものであると思います。
  92. 竹村奈良一

    ○竹村委員 あなたは非鉄金属とか、あるいは鉄とかいうだけの報告しかとつていないと言われますけれども、たとえば毎月報告をする場合に、その引揚げられた品物の処分方法等も報告されるのがほんとうだろうと思います。その中には当然そういうものが入つておると思うが、それがあなたの方で入つておらぬというようなことが考えられますか。そういうことがはつきりとここで言い得られますか。
  93. 渋江操一

    渋江証人 恐れ入りますが、もう一回……。
  94. 竹村奈良一

    ○竹村委員 ともかくその報告は、非鉄金属だけの報告であつて品目別の報告がなかつたということを、はつきりとここであなたが証言できますか。その点をまずお聞きしたい。これは報告していると思うのですが、あなたは、いやそういう品目別の報告はないということを、ここではつきり確言できますか。
  95. 渋江操一

    渋江証人 私ども承知いたしております限りは、個々の品目についての報告は、実は受けておらないのでございます。
  96. 竹村奈良一

    ○竹村委員 昨日の西日本海事工業株式会社の社長の証言では、品目別のいろいろなことを伝票を切つてつた。ところがある県庁の役人が出て来て、これではどうもぐあいが悪いからといつて、伝票を切りかえて、そして非鉄金属に直した。こういうことを言つておるのですが、そういうような点で報告されておるという事実は、全然御存じはないのですか。
  97. 渋江操一

    渋江証人 繰返すわけでございますが、私といたしましては、さよう報告を実は受けておらぬのでございます。
  98. 竹村奈良一

    ○竹村委員 先ほど佐竹委員質問に対して、あなたは搭載物資と、それから艦体であつたという点については、しごくあいまいであつたのです。そこで私の聞きたいのは、搭載物資と、それから艦体、それから艤装品、こういう区別をあなたはどういうふうに考えておるか。たとえばあなたの方のあいまいな許可書なるがゆえに、艦体の一部を爆破して引揚げても、これは合法的に許可をもらつたものである、こういうふうに当の社長は言つておるのですが、あなたとして許可する場合には、単にそういうあいまいな形ではなしに、搭載物とはどんなものであるか、あるいは艤装品とはどういうものであるか、艦体とはどういうものであるか、こういうことがはつきりしておると思いますが、その見解はどうですか。
  99. 渋江操一

    渋江証人 その点は、私ども指示する内容の解釈の問題になりますけれども、少くとも私どもの当初許可条件として出しておる内容には、艦体解撤をあえてしてまで搭載物件引揚げが許されるのだというようなことは、その当時の文面を見ていただくなり、またわれわれの指示いたしておりますところから判定していただけば、これは明瞭ではないかというふうに考えておるのであります。
  100. 竹村奈良一

    ○竹村委員 先ほどあなたは、大体この問題が検事局にまわつてつて、そうしていわゆる監督委任した山口県に対しては別にまだ行政的な問題としては考えていない、こう言われるのですが、この問題が検事局にまわるまでに、あなたはこういう問題について、少くとも監督委任した山口県に対して、いろいろ社会で問題になつている以上、詳細の調査あるいはその引揚げ物資の品目、あるいはその他のものがどういうふうになつたかという経過報告を求められたことがありますか、この点を聞いておきたい。
  101. 渋江操一

    渋江証人 これは、もつぱら第一次的には委任を受諾してもらつております山口県を通じまして、私どもはさような事実を聞いた場合におきましては、調査報告を徴することにいたしておるのであります。
  102. 竹村奈良一

    ○竹村委員 その検事局に行く前に、あなたは少くともこういう問題が検事局の問題になるまでに、社会では問題になつておつたのだから、少くとも直接監督山口県であるけれども、その監督委任したあなたの方では、これはどうなつておるかという問合せが山口県にあり、あるいは山口県からそういう詳細な報告をとつていなければならぬ。そうしなければ、少くとも国の行政を預かつておる、それを委任されておるあなたが問題になるまで——なつてからしかやらぬというのだつたら、それは全然行政を預けることはできないと思うのであります。一切合財建設省がそういうことで日本全国をやられておれば、至るところで問題が起るまでじつとしておるというのだつたら、国の予算をただぱつぱとかつてに使つて、問題が起つてからおつかけるということでは、とても話にならぬ。だからこういう問題が社会で一応問題になり、検事局が手をつけるまでに、検討していなければならぬ問題である。山口県に対して一体どういうふうにやつておる、現在の経過はどうなつておるかということを、直接あなたの方から山口県に問合せを出さなければならぬ。それを出されていないところに問題があるのですが、それを出されたのですか。検事局に行く前にそういう報告を求められたのですか、求めなかつたのですか、その点を聞いておきたい。
  103. 渋江操一

    渋江証人 これはもちろん私どもといたしましては、県当局からの公の報告なり何なりを基礎にしまして処理いたさなければならぬとは考えておりますが、しかし、ただいまお話になりましたように、これが世上のいろいろの問題になつて、それを放任しておくということは、これまた許されないことはもちろんのことでございまして、全般的の問題としましては、先ほど申し上げましたように、大蔵省出先機関といたしましても、地方の財務局というものと県当局監督当局と十分緊密な連絡の上に処理するということを絶えず言つておりました。従つてそういう過程において問題を十分処置できるように、実は考えておつたのであります。
  104. 竹村奈良一

    ○竹村委員 あなたの答えは答えになつておらない。大蔵省の出先とか、あるいは県当局とか、そんなことはどうでもいい。これが問題になつたときに、あなたは大蔵省の出先とか県当局とか言うけれ歩も、山口県に監督委任しているのだから、こういうように世上に問題になつているが、その詳細はどうかという報告をとられたかどうか、そういう問合せをされたかどうか、この一点ですよ、この点に対してあなたは答えていない。
  105. 渋江操一

    渋江証人 その点は、公文ではいたしてはおりません。具体的な指示報告を求めるということはいたしておりません。
  106. 竹村奈良一

    ○竹村委員 そのことは、結局あなた方は、こういうふうに監督を県に委任しておいたら、もうそれでほつておく、少々問題になつても、ともかく検事局の問題になるまでは放任しておくということを認められたことだと思うのですが、それでいいですね。
  107. 渋江操一

    渋江証人 かりにそういう事実があつたという場合に、私の考えを申し上げますれば、放任しておくということは許されないことであるというふうに考えております。
  108. 浦口鉄男

    ○浦口委員 結局この問題の最も根本になりますことは、やはり搭載物資に対する建設省見解が非常にあいまいであつたというところに、私はすべてのその後に起る問題の原因がひそんでおる、こう思う。そこで先ほど委員長から証人に対しまして、これが特殊物件としてありました当時に許された引揚げ方法が、そのまま大蔵省国有財産としてまかされた後も、その同じ方法がとられたということがそもそも誤りでないかという第二のミステークとしての質問がありましたときに、証人のお答えは非常に不明確であつた。この第二のミステークに対する建設省の認識の不明確だということが、そのままわれわれとしても非常に疑問に思いまする適切でない六箇月間の期間延長なつて、ますます固有財産に被害が及んだ、こういう第三のミステークになる原因だと思う。そこで第二、第三のミステークがなぜ起きたかということは、これはやはり私は最初の搭載物件に対する建設省の非常な無責任というか、あいまいというか、その解釈に発しておると、こう思う。  そこでお尋ねしたいことは、この問題はもちろん御承知と思いますが、昭和二十三年四月十日に、西日本海事工業が山県知事に対して、これこれの塔載物件引揚げたいのだが許可してくれという申請が出ておるのです。そこで山口県知事は、これに対して同年六月二十四日、内務省の通牒に基いて引揚げ許可をした。ところがこの許可に基いて、会社がその年の六月一日に広島海上保安本部長に許可を申請した。ところが極東海軍司令部がそれを知りまして、これは未返還艦船であるから違法であるということで、山口県知事が強く非難をされた。そこで次にどういうことが起きたかと申しますと、この問題から山口県当局としては業者に対して、これは許可がいるものだというふうな一つの消極的な態度をとつて来たわけでありますが、会社はあくまで引揚げさせてもらいたいということから、直接建設省極東海軍司令部に運動した。そこで局長は、まだその当時管理局長ではなかつたかもしれませんが、昭和三十三年の九月二十九日にいわゆる五者会談というものができたわけでするそれには明らかに建設省が公の機関として立ち会つておるわけです。そうして極東海軍司令部と交渉した結果、極東海軍から許可が出て第一の引揚げが始まる、こういうことになつたわけであります。そのときに西日本海事工業は、山口県及び建設省許可書とともに作業計画書というものを提出しております。これには、非鉄金属というものは推進器、工場、機関その他で約手トンのうち、引揚げ可能のものが三十トン、こういうふうにはつきり出ておる。     〔委員長退席、鍛冶委員長代理着席〕 ですから一応極東海軍引揚げに該当しないものであるということで不許可したものを、あえて五者会談に持つてつて、業者とともに再び強く許可を願い出た。その中に建設省が入つておりまして、しかもこの作業計画書にはつきりと非鉄金属というものが品目別に出ているのを知らないで、ただ非鉄金属だから、これは解撤関係なく、搭載物件としてやすやすと出るものだというふうなあやふやな認識で、これを許可されるはずはない。もしそういうことで許可をされたとなれば、これは建設省としてまことにどうも非常に大きなあやまちだ、こう私は思うのです。こうはつきり申し上げれば、私は、ただ非鉄金属という名前で、それ以上明細が出ていなかつたから、そのつもりで搭載物件と思つて許可をしたという第一の過誤は起きない。その第一の過誤が起きなければ、第二のいわゆる国有財産移管した後にも、先ほど証人がお話になつたような、国有財産そのものには何の変化もない、あるいは影響もないから、特殊物件であつた当時の引揚げ作業をそのまま許してもさしつかえないと思つて許したというふうな第二の過誤は起つて来ない。そうなれば筆の、われわれとして非常に不明朗きわまる期間延長ということが当然起つて来ない。そこに、根本的にこの搭載物件をきめるときにおいての建設省の態度というものは実にあやふやだ、まことに無責任だと、こう言われてもしかたないと思うのですが、その点明確にこの際お答えおきを願つておきたい。
  109. 渋江操一

    渋江証人 ただいま当時の経緯等につきましていろいろお話がございましたが、実は私は先ほど申し上げました通り、この業務にみずからタッチした以前のことでもありますので、十分詳細な内容承知しておりませんのを、まことに遺憾とする次第でございますが、五者会談、あるいはそれによる非鉄金属の三十トンの内容は、これは明らかに搭載物件外の艦体解撤を伴うべき、当然予想さるべき品目、そういうものを想定して、これは許可条件になるのだというお話のように承るわけでございますが、私どもとしましては、そういう点を実は予想して許可したという事実はないと、かよう考えておるのであります。
  110. 浦口鉄男

    ○浦口委員 どうも何かこちらで申し上げますど、あなたは知らなかつたからと、こう言われるのですが、私は今事実を申し上げたのです。そういう事実があつたとすれば、それは建設省として当然責任があつたと思う。もつと深く考えて、明確にして許可すべきであつたとお考えになりませんか。
  111. 渋江操一

    渋江証人 だんだんのお話、そういう事実があつたという仮定を前提にして、(「仮定ではない」と呼ぶ者あり)そういう事実であります。私その事実があつたかどうかということを承知しませんけれども、(「君が知らなくても、国会が知つておるのだよ」と呼ぶ者あり)まあそういう関係があつたといたしますれば、それは私は錯誤があつたと思います。
  112. 浦口鉄男

    ○浦口委員 事実はあつたのです。それをひとつはつきりしていただかなければ、私は非常に的がはずれてしまう。そこでそういう事実があつたとすれば、建設省として確かに手落ちがあつた、これはもう私は証人にかわつて結論をつけてもいいと思うのです。ただそこで出だしにおいて、そういうあやまちがなければ、当然私は国有財産にこれが返還後に、契約更改されるべきであつたという結論なつて来ると思う。ということは、山口県の商工課長も、昨日ここに参りました業者も、第二回目あるいは三回目の期間延長をしまして、どんどん解撤をやつて、いわゆる契約以外のものを引揚げ過程においても、最初の契約——最初山口県と特殊物件としての内容において、西日本海事工業契約をいたしました当時の契約通りに、それをそのまま認めてわれわれは継続してやる、こういうことをはつきり言つておるのです。そういたしますと、結果においては、建設省もやはりこの最初の契約にのつとつた業者の引揚げ事実をそのまま認めて来た、こういうことになります。そこに私は搭載物件に対する最初からの建設省の非常な認識の間違いがあると思う。その認識を今私は証人にかわつて結論をつけたわけですが、そういう結論に立つて考えてみれば、当然そういう最初の契約書に基いて、国有財産に移つてからも仕事が続けられるというようなことはあり得ないのです。これは当然契約更改をされるべきであつたと思うのですが、その点どういうふうにお考えですか。
  113. 渋江操一

    渋江証人 契約更改問題につきましては、私先ほどその点を申し上げたのでございます。引揚げ物件対象、その品目、これが当初の契約通り許可条件に合致しておる限りにおいては、変更の必要はないというふうに考えておつたのであります。
  114. 浦口鉄男

    ○浦口委員 証人はどうもみな仮定のことに持つてつてしまうので、それではどうも困るのですが、仮定じやないのです。  そこでこの第三回目に期間延長した事情については、実は昨日の証人として出られた中国財務局長は、当時建設省の許した事情というものを公文書では知らないが、察するところ、国有財産に格別の影響がないということで許したのであろう、こういうふうに証言をしております。本日の証人も大体そういうふうな答弁であつたと私今承知しておりますが、その中で、ただこういうことを、言つていられるのですね。西日本海事が非常に赤字を出していたので、その建直しを援助してやる必要もある、こういうことで許してやつた、その根本には、国有財産に格別の影響がない、また搭載物件引揚げるという条件も前とかわらないというふうな前提があるわけですが、そういうことを許した。もちろん業者が赤字を出すことをわれわれは何も好むわけでもございません。赤字を出した業者が、当然建設省にまた引揚げ期間延長してくれと要求することも、私は当然と思いますが、しかしそこに重大なかぎがありとすれば、官庁としては、単なるそういう業者の利害渇係だけによつて、法的な条件その他をもう少し厳重に検討しないで許したというところに、どうもわれわれは、役所が非常に規則とか法律をふだんやかましく言うにかかわらず、この問題について非常にルーズであつたというふうに考えますが、その点いかがですか。
  115. 渋江操一

    渋江証人 まあ山口県知事委任しておつても、なおかつ問題いかんによつては十分建設省自体としての監督を、委任という事実を離れて、もう少し徹底的にやるべきだというお話のように承るわけでございますが、その点は事後においての問題になるようでございますが、私どものいろいろの手続の上において、必ずしも全部が全部十全の措置が尽されておつたとあるいは言えないということも、先ほど私こういう結果が起きましたことについて遺憾の意を申し上げましたことと関連しまして、さよう考えであるのであります。
  116. 浦口鉄男

    ○浦口委員 監督の面については具体的にもう申し上げません。遺憾の意を表していただきましたことで、それはとどめておきます。  そこで最後に一つお聞きしたいことは、先ほど山口県に搭載物件引揚げ及び処分実施監督委任した法的根拠については、地方自治法第二条の規定による、こういうことをお話でございました。そうならば、これと関連して山口県の引揚げ及び処分実施監督についての疎漏から国家財産に大きな損害を与えたという責任の問題になつて来るのでありますが、委任事項が自治法に基いて委任された以上、当然その責任を果さなかつたことに対する山口県の違法行為も、これはこの法に基いて追究さるべきものと思いますが、その点をあくまで追究をされるお気持があるかどうか、それをお聞きしておきたい。
  117. 渋江操一

    渋江証人 この点につきましては、先ほど私も申し上げたわけでございますが、確かに委任事務の根拠といたしましては、現在の自治法の第二条に基いて行われておるというふうに考えております。さらにこの委任事務の遂行が適法である場合、違法である場合、ごとに違法である場合にいかなる行政措置、あるいは法的根拠に基いて処分をすべきかということについては、先ほど申し上げました通り、実はまだ私としまして十分な結論を申し上げるものを持つておらないというふうに、ことに法的根拠といつたようなものについての私の見解については、十分自信がない、結論が出ていないというふうに考えるものであります。
  118. 佐竹新市

    佐竹(新)委員 一点だけ……。三月二十日付の毎日新聞に、山口県会で山口県知事が、この陸奥の処置について県では遺漏はなかつたと強く主張し、その経緯について県会に報告しておるのでありますが、その中に非鉄金属三十トンの超過引揚げ経費査定方法などかありますか、これは建設省指示を仰いだということを言つております。県の方では建設省にそういう指示を仰いで、建設省許可されておると思うのですが、その査定指示内容は御存じですかどうですか。
  119. 渋江操一

    渋江証人 その点は承知いたしております。
  120. 佐竹新市

    佐竹(新)委員 そうするとこの経費は、大体三十トンの超過引揚げについてあなたの方ではどのくらいに見られたのですか。
  121. 渋江操一

    渋江証人 これは書類でも出ておりますし、私の方で指示しております。公文も実はあるわけであります。県から出て参りました照会としましては、これはもちろん当初の許可条件の際にも、超過引揚げについては、建設省承認の上でその処分等について指示を受けてやれという条件が出ております。それに基いて県のそうした照会もなされて来たわけであります。それによりますと、建設省に提出されました金額としましては、国庫納入分としまして十二万八千八百五円の超過分の国庫納入金というものを協議いたしております。この計算方法は検討いたしまして、一応それを了承いたしております。ただその引揚げ費用の控除方法、ことにそれに関連します業者の利益金の基準というものについても、これもおおむね三割以内という条件指示しまして、県当局に対しまして通知を出しております。
  122. 佐竹新市

    佐竹(新)委員 山口県の商工課長の証言によりますと、二割というように聞いておるのであります。私の聞き違いかもしれませんが、三割ですか。
  123. 渋江操一

    渋江証人 三割を会社の方に、残り七割を国庫に納入する、こういうように……。
  124. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員長代理 他に御発言はありませんか。
  125. 田渕光一

    ○田渕委員 この「業者側はその知事承認はより十一月三十日までに契約量三十トンに対し六十トン、三百トンを引揚げたと県に報告し、県は建設省に対してその代金の決裁の指示を求めた。その決裁による価格は(国庫納金)トン四千二百五十一円、合計十二万八千八百五円」ということが昨日の証言でわかつておるのであります。これはまだ国庫に入つておらないと会社が言うている。そこで査定ですが、その査定が一トン四千二百五十一円、合計十二万八千八百五円の決裁査定が出ておつて、一トンについて四千二百五十一円、ところが会社側の計算書を見ると、非鉄金属のトン当りは、会社山口県との契約では一トン八万円になつている、一トン八万円で引揚げ経費はトン当り六万六千円と見て、差引一万四千円の利益となる。それを業者の契約の趣旨に従つて、業者の利潤の三〇%を差引くと、トン当り九千八百円という数字が表われて来る、この数字は動かすことのできない数字である。それを四千二百五十一円という半額以下に査定したということは一体どうなんです。契約書においては、昭和二十四年に八万円で契約した、それが六万六千円の引揚げ経費がかかる、そこで差引一万四千円の利益がある、こういう契約なつている。その一万四千円の三〇%の利益をやるということになれば、九千八百円が至当である、それを四千円にしたということは、つまり一万四千円の利益が出ているのに対して一万円から見ているということになつて来るのですが、この計算はどういうところからできたか伺いたいです。
  126. 渋江操一

    渋江証人 トン当りの国庫納入金四千二百五十一円という数字が出ました根拠は、販売価格がただいまお話になりましたように、八万円という想定に対しまして、県から出しました書類としては七万二千四百六十三円という数字になつております。これに対するトン当りの引揚げ経費が六万六千三百八十九円、差引六千七十四円というものが純利として計算されておるわけでございます。そのうちの三〇%を先ほど申し上げました通り業者側の純利というふうに見ておりますので、それを差引きました残りが四千二百五十一円、こういう数字になつて参るわけでございます。ただいま申しました超過分の三十トン三百キログラム、これを合せまして十二万八千八百五円、こういう数字に計算されておるわけでございます。
  127. 田渕光一

    ○田渕委員 それはおかしいですね。会社側の計算書が八万円で、六万六千円と出ているのに、どういうわけで県が会社側にそういう場合に好意を与えたか、こういうことなんです。また県が好意を与えて来たものを、なぜ建設省本省がのんだかという問題です。これは動かすことができないでしよう会社側の計算ではトン当り八万円で、六万六千円というのがはつきり出ている。それを何がゆえに八万円を七万何千円というふうにしたか、それは朝鮮動乱——ことにこういうのは光り物なんだ、非鉄金属はトン当り何十万とするものだ、そんなものを、八万円という会社の計算が出ているのに、ことさらに七万何千円にした、そこに県のくさいところがあるとぼくらは考える。少ぐとも八万円というものをなぜそういうふうに見ているか、六万六千円で上るものを、経費をふやして価格を下げている、こういうふうなことで、なぜ業者の出している計算書以上に県が数字に削減を加えたか、これは県の責任ですからおわかりにならないかもしれませんが、それを伺いたい。
  128. 渋江操一

    渋江証人 販売価格の問題につきましては、これも当初の許可条件としまして、時価を基準とするということを指示してございますので、かりにこの七万二千円の販売価格というものが、時価基準に対しましてはなはだしく適正を欠いておる、低過ぎるということでありますならば、これはもちろんその許可条件に照して違反しておることになるわけでございます。
  129. 田渕光一

    ○田渕委員 そこで許可条件に違反している山口県に対して、おわかりになれば——これは仮定じやない、はつきりわかつていろんなら、あなたは山口県に対してどういう処置をとられますか。
  130. 渋江操一

    渋江証人 私どもは、七万二千円のこの販売価格につきましては、それが当時の価格として適正な価格であつたかどうかという点に問題があるわけです。これはあくまで価格査定に遺憾のないようにしてくれという建前で通知をしておるわけであります。この山口県の処分した価格が不適正な価格である、低過ぎるという点につきましては、さよう考えは持つておらないのでございます。
  131. 田渕光一

    ○田渕委員 適正か不適正かあなたの方でわからなければ、われわれは資料によつてあとで判定を下しましよう。そこで建設省から山口県への委任事項の中にこれが入つておる。「本作業は連合軍及び日本政府に金銭の負担をかけないことを目途とし海没現状の儘物件を競争入札によつて一応業者に売却しその代金は国庫(特殊物件収入)に収納すること。」こういうようなぐあいに注意書の三項に出ているのであります。しかるに、私はさつきいなかつたが、建設省山口県に対して監督経費をどのくらい出したかという他の委員質問あるいは委員長質問に対して、数字はわからぬから資料で出すと、こうおつしやつたそうでありますが、数字はわかつておるのであります。たとえば山口県の商工課長の一昨日の証言によりましても、七十五万円の要求をしておると言うし、その前に二十五万何がしをもらつたと言つておる、こういうことになるとこの指示事項委任事項山口県がさらにこれに対して監督費用を要求して来てそれをもらつた、こういうような点の解釈はどういうようになりますか。つまり委任事項の三項の、ただいま申し上げた日本政府に金銭の負担をかけないと、こういうておるのに、作業上の監督費として一応金をもらつておる、この数字を私はつきりしませんので出しませんが、二十数万といつておる、あと七十数万請求して来ておる、これは政府が出させぬようにしろという指示をしておるのに、山口県がそれに反して監督費用を要求して来たら出しておる、この点については、あなたはどういう責任を感じておりますか。
  132. 渋江操一

    渋江証人 作業自体の経費について、これは明らかに連合軍ないしは日本政府に金銭負担をかけない、あくまで自給自足、それによつて収益を上げて行く、その結果を国庫に納入する、こういう建前なつておるのであります。これは契約の上にも許可条件の上にも明らかであります。県の特殊物件に従事しておる職員の経費、それの監督旅費、これは国の委任事務でございますから——これは他の委任事務の場合でも同様でございます、地方庁の必要な人件費と監督旅費の費用は、これを国が補助することは御承知通りであります。これだけの費用がただいま申し上げた費用であります。
  133. 田渕光一

    ○田渕委員 それは国だからそういうことがやれるのです。もし私たち個人の事業とするならば、九十三万円で払い下げたものに対して、二十何万円はもうすでに出した、あと七十五万円また要求して来れば出すというなれば、九十三万円で売つて監督費が百万も二百万もかかるということは、バランスがとれないのですか、そういうようなことを払下げのときに予期しなかつたかどうか。これはあなたではないけれども、こういうことが将来もまた他の各省にも行われるかもわからない、売つたものが九十三万円で、監督費用が国庫から何百万円も出るということならやらぬ方が気がきいておる。この点は国民の血税の濫費ということになりはせぬかと思うが、この点はどうでありますか。
  134. 渋江操一

    渋江証人 県に出しております委託費、これが引揚げ物件の国庫納入金とバランスかとれない、そのためによけいな負担がかかるということであれば、これは特殊物件にそれ以上の委託費を出すということは、言われた通り、国としては損失を招くことでありますから、これはむしろ特殊物件取扱いをやらずにおるに限るということになるのであります。その根本方針に立ちまして、地方には委託費というものを私ども考えておりますし、予算の編成の上においても、そういう観点に立つて経費がつけられておるわけです。これは最終的に計数を申し上げれば、結局特殊物件による収入、それから特殊物件に必要な費用というものの差引計算の上で、どういう結果になつておるかということによつて、御承知願えると私ども考えておるのであります。お話のように、そういう特殊物件の収入を超過しまして、委託費を支出するよう取扱いはいたしておりません。
  135. 田渕光一

    ○田渕委員 そこで怪しくなつて来る。大体特殊物件を九十三万円でやらして、それ以上やらさなければよけいな費用はいりはせぬ。九十三万円で払い下げておるものを、バランスをとればもうかるということは、余分なものを揚げろということを黙認しておる」とだ。九十三万円しか揚りません、非鉄金属の売値がトン当り八万円、引揚げ経費がトン当り六万六千円、それで九十三万円といつて払下げを受けておる。それに監督費を出してあとやらすということが、すでにもうこの契約内容にも、あるいはあなたの方の山口県に対する委任事項にも、逸脱した点がある。ここに乱れがあるから、業者の方ではこれ幸いと揚げて来るということになると思う。九十三万円で一旦打切つて渡さない、八十二万円揚らないならば、さらに監督費を出す必要はないというようなお考えが、当時、あなたではないけれども建設省として出なかつたのでありましようか。これを認めたがために、解撤をやらせ、やつていたということになると思うのですが、これはいかがですか。
  136. 渋江操一

    渋江証人 委託費特殊物件収入とのアンバランスは、全体の問題としては、私が今申し上げました通り、これは国の特殊物件収入をオーバーしてまで出すという考えは全然ございませんが、今御指摘になりましたように、それでは山口県の場合の九十三万円というものは、事実上委託費の上からいえば、非常にアンバランスな負担がかかるようなつておるということでございますが、特殊物件経費は、山口県の場合でもそうでございますが、代金の取立て事務が現在残つております。それからこういう海没物件引揚げに要する経費も、委託費の中に処理される経費の一部であります。従つてその中に、代金取立て事務経費が幾ら、それからこの海没物件に対する経費が幾らと、海没物件を処理する経費が相当かかつておると思います。やはり監督に要する経費がかなりかかつておると思います。その他代金取立費も同様の経費の中で見ておるということを御承知願いたいと思います。従つて九十三万円それ自体非常に無理な数字だということは、これは入札によつてきめられている以上は、一応正しいものだと考えております。
  137. 田渕光一

    ○田渕委員 とかく会計法規によつて、つまり書類上の入札というものは適当だと思うが、業者の方は裏を行くのです。御承知通りそれよりもりこうなんだ。だからこの特殊物件の入札は、会計法によつて競争入札あるいは指名入札をしておるが、結局いかなるものをやつても、談合でやつているということは、私の方でも、あなたの方の建設省のあらゆる関係を見てわかつている。いわんやちやんと会計法規によつて指名入札をしている、競争入札をしている、法規通りに行つているといつても、それならば大きなサルべージに行きそうなものを、ああいうわけのわからないものにこういうものをやらした。なるほど業者に言わせれば、熱意をもつて陸奥引揚げることを名誉と思つてつたということまで言つておりますけれども、結果において引揚げ物件数量以上のものに手をつけた。スクリューをとるのに、艦尾を破壊しなければならぬというので、火薬をもつて揚げている。しかもわれわれが見れば、五十トン・クレーンを持つて来る必要はないと思うのに、五十トン・クレーンで揚げておる。ということは、あなた方は書類上でやつておるが、現場の者は実質上書類通りつていない。入札をやらしたのだから違法ではないというが、とかく役人というのは責任を逃げたがる。そこで私は聞きたい。逃げることは逃げてもよろしいが、一体こういうことになつ国有財産に莫大な損害を与えた責めは、山口県にあるのな、建設省にあるのか、あるいは大蔵省の中国財務局にあるのか。このいわゆる支出負担行為の責任はだれに持つて行けばいいとあなたはお考えになりますか。つまりわれわれはここまで取上げた以上は、どこの局長でもいいから、徹底的にやつてようと思う。それによつて現在の法律の裏をくぐるやつをとめなければ、国民の税金が濫費される。ただ遺憾の意を表します、相済みませんで逃がしておつたのではいかん。一罰百戒もわれわれ国民の代表としてやむを得ぬ。もし建設局長に責任があるなら、あなたにやつて行こう。それ以前の建設局長に対しても、法律が許すならやつて行こう。あるいは現中国財務局長に責任があるなら、国家に何千万円の損害をかけた責任を孫子の末まで示さなければ、行政監察委員会は綱紀の粛正、あるいは官紀の弛緩に対してメスを入れて行けないと思う。これをわれわれは前提として調べているのでありますから、一体この責任をどこに持つて行けばいいかということを、あなたがお気づきならばおつしやつていただきたい。
  138. 渋江操一

    渋江証人 これは前にも出ておりますが、実はその点について一つの問題は、委託事務が適正に行われたかいなか、不適正な場合、委託官庁として国の機関地方公共団体知事との関係において、いかなる処置がとらるべきかという点については、実は結論が出ていないということを申し上げたわけでございます。しからば国の機関として、私どもを含みます関係当局責任問題でありますが、これは私だけの立場では、かような事実上の結果を生じましたことにつきましては、これはまことに申訳ないことであるということを率直に申し上げます。ただこれが法規上、制度上、行政上、あるいはただいまおつしやつたような、いわゆる一罰百戒式なあれを含みます御処置にうきましては、私から申し上げるよりも、むしろ委員におかれまして——会計検査院等においても指摘されると思いますが、かよう意味において御処置願いたい、かよう考えております。
  139. 田渕光一

    ○田渕委員 あなたはそうなんですよ。予算を組んで、その予算の執行者は、まず建設省に例をとるならば、地方建設局長が予算の執行者で、その地区の一切の金銭上、会計上の支出負担行為の責任者だと私も考えておる。ただこれが山口県の責任であるか、中国財務局の責任であるか、建設本省の管理局長責任であるか、大蔵省の管財局長の責任であるか、こういう点をわれわれは調べて行つて、そこに法的な欠陥があればそれを除いて行こうというのがねらいであり、またこういうようなことがどうして行われるかということは、われわれも想像がついております。これはくもの巣みたいなもので、あらゆるものが入り組んで責任のなすりつこをしておる、それが結局こういう事態を起して来るので、こういうことが今日私は日本全国にたくさんあると思う。これは県の実態である、こうつつ込んで行くと、県は建設省委任をしたのだと言う。建設省へ行くと、委任事項通りに県がやらなかつたと言つて、結局国会がぐるぐるまわりされるということになつたら、国民は税金を払う気にはなりません。そこで本年の八千五百二十七億の予算の執行上、かりに建設省の建設局に例をとるならば、不実なことをしたというのが国会の会計検査報告に表われて来るのは三年後である。ところが三年後には、その人はどこかへ行つてしまつているということで、会計法規というものはできているが、私個人は会計検査院なんて認めておらぬ、あんなふしだらなやつは認めておらぬ。会計検査院に行くと見のがされて、不届きな計算ばかりで、厖大な資料になるからといつて、リーダーズ・ダイジェストくらいの一巻の資料しか国会に出して来ない。国会は国権の最高機関であるから、この会計検査院のやり方に対してああせいこうせいと言うこともできましようけれども、三年後でなければ現在の会計検査院の制度ではできない。あなたが今言うように、会計検査院が見ているたろう——この会計検査院の検査に行くものは、みんな大蔵省の系統から来ている。そこで、たとえば専売公社の問題でも、不当な財産の措置をしておるから、あの佐藤会計検査院長はここで陳謝をして、今度は会計検査院で職組から文句を言われると、まことに相済まぬということを言つたというようなことが雑誌に発表されている。局長あるいは会計検査院長、これらには官舎も与えられるでありましよう。自動車も与えられるでありましよう。恩給もついていましよう。退職すれば退職金もとれる。じつとしてうまいこと言つて、ずるずるしておる。これで迷惑をしているのは国民であつて、税金をとられ、払わなければ差押えを食う、これではまつたく税金を払う気持がなくなる。そこで責任の帰趨をどこへ持つて行くかというと、あなたは会計検査院になすりつける。結果において会計検査を調べるのが三年先た。とにかくわれされはこういうようなことを熱心にやつて行政機構の改革をやつて行かなければならぬけれども、この問題に対してあなたが、会計検査院が指摘したら責任を負うということでは、私は納得ができない。まだ仮定で結論が出ておらないというかもわからぬが、いやしくも国権の最高機関である国会が、全国の行政機構の欠陥を追究して制度の改革をしようと、夜七時ごろまで熱意をもつてつているのは、要するにお互いの税金を軽くつしようということにあるので、われわれがどこに欠陥があるだろうとやつていることに対して、あなた方は官僚として、もつと国民の完全なる公僕として、こういう点は悪いと思いますからこう直されたらよいではありませんか、これは私の推定では、山口県が委任行為違反をしているから悪いということをおつしやつても、山口県は損害賠償はよこさないと、もつと積極的な御協力が願える御証言ができませんか。会計検査報告をやるのは三年先である。二年後のことを国会に報告して、国会が決算委員会でやるということになつている。われわれはこの問題をもつと速急にやりたいというだけで、別に局長に対して怨恨私怨、何もあるわけではありません。何とかして、こういう不正の行われないよう方法をここに見出したいという熱意からでありますから、この責任山口県にあるか、中国地方財務局長にあるか、建設省管理局長にあるか、大蔵省の管財局長にあるかこの点あなたに気づいた点があれば教えていただきたいというのが、私の念願するところであります。もし御回答ができなければ、これに対してお気づきの点をおひまのとき資料ででも出していただけますか。すべてのものを扱う実権を持つているのは、大臣ではなくて局長である。全国の各省の局長が国家再建のためにほんとうに心から立つて挺身しなかつたならば、国の財政面は立て直らむと思う。ことに独立後いろいろ機構の改革があると思うが、率直に言つていただきたい、言えなければ資料を出していただいてもけつこうであります。われわれの念願するところはそこであります。どうぞはき違いのないように。
  140. 渋江操一

    渋江証人 ただいま私どもにいろいろお言葉を賜つたわけでありまして、私のごとき国家公務員の立場におけるものといたしまして、十分味合うへきお言葉であるというふうに考えております。この問題に対しまして、さような点について具体的に気づいた点があつたならば十分考え、またその上で会計検査院等の問題に必ずしも行かなくても、万全な措置を、国会との連絡の上においてしかるべき方法等について考え方を出せというお話、ただいまの御趣意にもちろんとかく申し上げる点は何もございません。私どももさらに検討いたしまして、いろいろ考えらるべき点がございますれば十分御連絡もいたしたい、かよう考えております。
  141. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員長代理 他に御発言はありませんか。——御発言がなければ、渋江証人に対する尋問は終了いたしました。証人には長時間にわたつて御苦労さまでした。午後二時半より再開することとして、それまで休憩いたします。     午後一時四十七分休憩      ————◇————— 午後一一時四十九分開議
  142. 内藤隆

    内藤委員長 休憩前に引続き会議を開きます。ただちに田中証へより証言を求むることになります。ただいまお見えになつておられる方は田中龍夫君ですね。
  143. 田中龍夫

    田中証人 そうです。
  144. 内藤隆

    内藤委員長 あらかじめ文書をもつて承知通り証人として証言を求むることに決定いたしましたので、さよう承知をお願いいたします。これより、国有財産管理処分関つ係事件中、戦艦陸奥関係事件について証言を求めることになりますが、証言を求むる前に証人に一言申し上げます。昭和二十二年法律第二百二十五号、議院における証人宣誓及び証言等に関する法律によりまして、証人証言を求める場合には、その前に宣誓をさせなければならぬことと相なつております。宣誓または証言を拒むことのできるのは、証言証人または証人配偶者、四親等内の血族もしくは三親等内の姻族または証人とこれらの親族関係のあつた者及び証人の後見人または証人の後見を受ける者の刑事上の訴追または処罰を招くおそれのある事項に関するとき、またはこれらの者の恥辱に帰すべき事項に関するとき、及び医師歯科医師、弁護士、弁理士弁護人公証人、宗教または祷祀の職にある者またはこれらの職にあつた者がその職務知つた事実であつて黙秘すべきものについて尋問を受けたときに限られておりまして、それ以外には証言を拒むことはできないことになつております。しかして、証人が正当の理由がなくて宣誓または証言を拒んだときは、一年以下の禁錮または一万円以下の罰金に処せられ、かつ宣誓した証人が虚偽の陳述をしたときは、三月以上十年以下の懲役に処せられることになつておるのであります。一応このことを御承知なつておいていただきたいと思います。なお証人が公務員として知り得た事実が、職務上の秘密に関するものであるときは、その旨を申出を願いたいと存じます。では法律の定めるところによりまして証人宣誓を求めます。御起立を願います。宣誓書の御朗読を願います。     〔証人田中龍夫君朗読宣誓書良心に従つて、真実を述べ、何事もかくさず、又何事もつけ加えないことを誓います。
  145. 内藤隆

    内藤委員長 これより証言を求めることになりますが、証言証言を求められた範囲を超えないこと、また御発言の際にはその都度委員長許可を得て答えるようお願いいたします。なおこちらから証言を求めるときはおかけになつていてよろしゆうございますが、お答えの際は御起立を願います。証人田中龍夫君は現在の山口県知事でありまするが、いつ御当選になりましたか。
  146. 田中龍夫

    田中証人 昭和二十二年四月五日の開票でありまして、十六日に就任いたしました。
  147. 内藤隆

    内藤委員長 昭和二十二年の四月、西日本海事工業株式会社から元戦艦陸奥搭載物件引揚げ許可申請が提出されましたとき、県はどういう観点からこれを許可いたしましたか、特にその経済的なねらい等があつたそうですが、この点につきまして御説明を願いたいと思います。
  148. 田中龍夫

    田中証人 昭和二十一年の最初の海没物件引揚げ内務省通牒によりまする許可当時につきましては、私はまことに申訳ない次第でありますが、おりませんでした。その後の極東海軍との問題につきまして、初めて書類等について知りました。
  149. 内藤隆

    内藤委員長 その書類等についてごらんになりま、て、県がどういう観点からこれを許可されたか、その点をひとつ……。
  150. 田中龍夫

    田中証人 最初建設省から、政府の責任において行いまする海没物件引揚げに関しまして、県がこの委任を命ぜられた文書につきまして、この件は非常にむずかしいケースでありますので、県といたしましてはこれに対しまして、当初は最も消極的な態度で臨みました。むしろ最初持つて参りましたときには一応断ろう——普通の特殊物件につきましても非常に管理がむずかしいのであります。かような水中の引揚げ作業というようなものについて十二分の監督をいたしますためには、莫大な経費もかかりますし人員もいるのであります。特に海岸等に倉庫をつくるとかいろいろな設備もしなければならぬ、かような次第でありまして、かようなむずかしいことはとうていできないという観点に立ちまして、一応これを断つたらどうかということを下僚に命じた次第でございます。われわれの方の出しました公文はお手元にあると思いますが、とうていその責任は負えないということまで申しております。
  151. 内藤隆

    内藤委員長 その点につきましてはあとでお尋ねいたしたいど存じますが、たとえばこれを許可したことは、要するに当時漁業用等の重油が全国的にたいへん不足をしておつた。ところがこの搭載物件の中には重油などは相当にあるものという見解から、これを引揚げてその漁業用に供したいというような経済的なねらいもあつたわけですね、この点をお聞きしておる。
  152. 田中龍夫

    田中証人 ただいまの御質問通りに、搭載物件につきましては、あの当時の客観情勢から申しますと、非常な物資の枯渇でありまして、国民の経済的な復興という意味から申しましても、漁撈用の重油その他の件につきまして、これを産業の復興なり民生のために充当するということは、これは県としてもまた国としてもけつこうなことである、かような次第で許可したのであります。
  153. 内藤隆

    内藤委員長 その許可が出ましてから極東海軍から抗議が出まして、一旦県の許可を撤回しておるようですが、その当時の事情をお聞かせ願いたい。
  154. 田中龍夫

    田中証人 これは先ほど申しました昭和二十一年六月の海没物件処理に関する内務省調査局からの通牒に基きまして許可したのだそうであります。でありますが、これがその後海没物件でないということになりまして、許可を取消したということを聞きました。私が先ほど申し上げましたのは、その後の建設省との関係でありまして、今の御質問はその以前の海没物件処理に関する件だと考えます。
  155. 内藤隆

    内藤委員長 そこでその件はさよう極東海軍からの厳重な抗議があつて、県は一旦白紙に返つたわけですね。その後いわゆる五者会談というものがあつたそうですが、その五者会談の内容を御存じでありますか。
  156. 田中龍夫

    田中証人 五者会談につきましては、私は存じません。
  157. 内藤隆

    内藤委員長 そういう会談があつたわけです。昭和二十三年九月二十九日に西日本海事工業株式会社建設省、経済調査庁、山口県、この各担当者が極東海軍司令部にバージンスキー大佐を訪問して、山口県の産業復興のために引揚げ作業許可してもらいたいと熱情を込めて陳情した五者会談というのがあつたのは事実です。その結果建設省より極東海軍司令部に対しまして正式の申請をして、そうして許可が出た。そうして山口県に作業実施監督委任されたのでありますが、委任を受けるときに作業実施監督上の責任について、建設省との間に特に山口県はとりきめをしておるようでありますが、その点はどういうとりきめをされましたか、御説明願います。
  158. 田中龍夫

    田中証人 私がこの件を最初に知りましたのは、極東海軍から問題になりまして、それで建設省から委任の通知を受けまして後に初めて知つた事件であります。それでこの件に関しましては、先ほど申上げます通りに、普通の特殊物件でありましても、これが処理ということは非常にむずかしいものであります。いわんや水中にありますかようなものにつきましての監督責任ということは、非常に困難をきわめるのでありまして、これに基きまして、私といたしましてはこれを一応断つたらどうか、これは内々の話でございますが、そのときにも、中央政府からの委任命令に対して、知事として断るというようなことは今まで前例がないというような反問に対しましても、自分は民選知事なんだから、元の官選知事とは違うから断ろうじやないかと言うたぐらい、この問題については非常に警戒いたしました。その後にどうしてもやれというのだつたらば、県といたしましては今後非常に困難だということをはつきりと文書にうたつて、この委任に対して容易に責任を負えないということで、公文に書いて建設省に送れということまで申した次第であります。その後建設省もこれを了承されまして、そうして県の方にお命じになつたわけであります。
  159. 内藤隆

    内藤委員長 その間の事情は、二十六日にあなたの県の商工課長の小田義男君を喚問したときに大体証言を得ておりますが、ともかくも海中深きところにあるので、大体において責任は持ちにくいというよう文書のとりかわしがあつたよう証人証言しておりました。そこでいよいよこれを許可するに際しまして、サルベージ会社の選定にあたつて、県内の業者のみに限つておるようですが、これは何か特殊の事情でもあつたのでしようか。
  160. 田中龍夫

    田中証人 私といたしましては、この際ただいま申し上げたよう文書建設省に出しまして、それでお引受けしたわけでありますが、その後の経過は、これは後に問題になりましてから部下から報告を聴取いたしたわけであります。入札等の公正を期するということは当然であります。ただ、あの当時の状態から考えましても、かようなものの引揚げに対しましては希望者が非常に限られておつたということを聞いております。なお入札は競争入札にしておると思います。
  161. 内藤隆

    内藤委員長 要するにこの作業がすこぶる困難であつて、普通のサルベージ業者では手を出せなかつたと言われておるのですな。——建設省から委任されたのが昭和二十三年の十二月八日であります。それから西日本海事契約ができたのは翌年の六月の二十日で、その問約六箇月もかかつておるが、これは何か事情があつたのでしようか。
  162. 田中龍夫

    田中証人 この間の時日の遷延の問題については、これは私は後になつ考えるのでありますけれども、ただいまの県の一応これを拒否しようという態度やら、あるいはまた建設省とのお話合いやら、その間に非常に時日がかかつておる、そのために遅れたのであろうと私は考えます。
  163. 内藤隆

    内藤委員長 中央所管建設省との交渉、その他において事務的に遅れておつたということですな。
  164. 田中龍夫

    田中証人 さよう考えます。
  165. 内藤隆

    内藤委員長 西日本海事が落札しましたときに、他の業者から、山口県なり証人なりに対しまして、何か運動のようなものはなかつたですか。
  166. 田中龍夫

    田中証人 私はそれを知りません。
  167. 内藤隆

    内藤委員長 するとあなた自身は、そういう運動がましいものは受けたこ  とはなかつたというわけですね。
  168. 田中龍夫

    田中証人 そういうことです。
  169. 内藤隆

    内藤委員長 山口県の関係部あるいは課等においては、そういうことがあつたかなかつた知事として御存じありませんか。
  170. 田中龍夫

    田中証人 入札等につきまして、希署なんかが普通の場合でもいろいろ来ると思いますが、特に私はそういう事実を存じておりませんので、ここで申し上げられないと思います。
  171. 内藤隆

    内藤委員長 これは、少し何か山口県を弁護するようになりますが、当事務局においての調べでは、六月三十日に窪井義道という人からあなたに——田中知事に対し、松庫商店にこれをやらせてぐれという依頼があつた。松庫商店は、日鉄の代行機関で、鉄鋼の取扱い業者としては屈指の会社であるそうです。かつ社長は、これは名前はどうでもいいですが、某有力者ともじつこんの間柄であり、ぜひここへという運動があつたということでありますが、さようないわゆる運動もなお排して、この西日本に売つたという事情を聞きたかつたので、かように申し上げたのであります。ただいままでの三日間にわたる各証人証言によると、本件は少くとも二つの盲点ともいうべきものがあるように思われます。すなわち一つは、搭載物件とは何ぞやという解釈と、国有財産なつてからの、いわゆる官庁の頭の切りかえがあいまいであつたこと、最初搭載物資として引揚げ許可をしたのは、通常の、いわゆる搭載物件、燃料、衣料、食品などのほかに、非鉄金属が含まれている。これは素材のほか艦と一体をなす機械類も含んでおるのでありますが、そういう意味において、最初極東海軍からの指令に基いて県が業者と契約した品目については、その引揚げの手段として機関類の解撤も当然許されておつたのであります。しかし国有財産なつてからは、艦体大蔵省所管となつたのだから、艦と一体をなす機関類の引揚げは除外されねばならない。すなわちその通常の意味における搭載物件素材である非鉄金属引揚げるための手段として艦体の一部を破壊することは許されてはいるが、艦と一体をなす非鉄金属を剥ぎとるような行為は許されていない。この点に関して建設省も県も明確な観念を欠いて、そうして大蔵省はひとり合点して、一片の通知だけで、業者はまた業者で自分の方にいいよう許可条項等を解釈をして、そうしてこれを公然と剥ぎとつてつた。こういうことが本件の真相のように思われますが、証人はどうお考えですか。
  172. 田中龍夫

    田中証人 搭載物件というものの観念でございますが、ただいま御指摘のような、あるいは重油とか食糧というようなものは、明確に搭載物件でありますし、他方また艦体それ自体はこれは明確に搭載物件ではございませんが、実際問題といたしまして、その間には非常にあいまいな点も出て来るだろうと思います。  なお国有財産の処理に関しましての立場でありますが、県が国からの委任機関としていたしておりまする作業につきましては、やはりその委任されました内容につきましては継続して行い得るのだろうと思います。
  173. 内藤隆

    内藤委員長 そういうおのおのの立場において有利にこれを解釈して適当にやつたということが、今日のこの事件を起した大きな原因だと思う。要するにこれはもう少し立場をかえて言いますと、元来官公庁の不正事件というのは、不当行政処分というか、上から来る政治的な策謀と、下から来る下僚まかせのいわゆるお役所仕事と、こういう二つの形があると私は思う。この場合は、はなはだ知事さんを前に置いてですが、これは下僚まかせに過ぎた結果じやないかと思われますが、その点どうでしよう
  174. 田中龍夫

    田中証人 一つの行政機構としての県といたしまして、本県においても知事としての私は基本的な方針を決定して臨んでいる次第でございます。その間の委任せられた監督事務につきましては、おのおのの司さ司さに従いまして誠実に善意にあらゆる方法をとつていると思います。しかしながらこれは冒頭申し上げましたように、また当初から委員長に申し上げた通りに、実際解撤物件は非常に困難な問題でございまして、その間にいろいろな遺漏ができましたことは非常に遺憾に存じます。
  175. 内藤隆

    内藤委員長 まあそういうような盲点等関係からいろいろ失策があると言つたけれども、ともかくも本件は国有財産に対しまして莫大な損害を与えている。これは三日間にわたる証人の訊問によつて十分に断言し得ることでありまするが、かような大きな損害国有財産に関連して与えている、国家に与えているということは、証人が県の知事として責任を負う御決心があるか。またどういう責任を負うつもりか、ひとつ述べてもらいたい。
  176. 田中龍夫

    田中証人 これらのことにつきましては、県のとりました態度につきまして、まあ私の部下のいたしました処置に対しまして、監督の責に対しましては、御承知通りにあらゆる努力を払つているわけであります。なお県の職員の問題につきましては、いまだその間のことも判明いたしておりませんので、ただちにここでどういうふうに責任をとるということはまだ申し上げられません。
  177. 内藤隆

    内藤委員長 責任は感じておいでになるけれども、具体的にどういう責任をとるということまで行つていない、こういうわけですな。
  178. 田中龍夫

    田中証人 いろいろ新聞に出ましたり、あるいは行政監察委員会の御喚問を受けるというような、かようなことになりましたことはまことに遺憾に存じます。
  179. 佐竹新市

    佐竹(新)委員 証人は今月の二十日に山口県会においてこの軍艦陸奥に関して県会に報告をした事実がありますか、どうですか。
  180. 田中龍夫

    田中証人 この行政監察委員会が私を喚問されますということにきまりましたのは、ちようど県会の最中でございました。一般質問の当日でございます。議会におきましても非常に関心を持つてつた関係から、私は従来の経過を申し上げました。
  181. 佐竹新市

    佐竹(新)委員 それによりますと、これは新聞に書いてあるのでありますが、記事の内容を見ても、県は万全の処置をとつて万遺憾なきを期したということが書いてあるのでありますが、あなたが県会に報告されたように、山口県はこの問題に対して手落ちというものはいささかもなかつた、かよう考えておられますか、どうですか。
  182. 田中龍夫

    田中証人 本件に関しまして、当初建設省とのこれに関しましてのいろいろ監督のむずかしいことや、あるいはまたその後の監督処置に対してあらゆる努力をいたしたことにつきましては、私はできる限りのことはいたしたと考えております。
  183. 佐竹新市

    佐竹(新)委員 そこでお尋ねする点は、今日まで深くこれに関係のある証人を喚問いたしまして証言を求めたのでありまするが、各証言を聞き、調査の途上にあつて考えてみますと、特殊物件搭載物件許可なつておりまするが、その許可外のものが相当揚げられているということで、本委員会の問題になつたのでありまするが、それはどういうものが揚げられているかということをあなたは御承知でありますか。
  184. 田中龍夫

    田中証人 それはこれが問題になりましてからいろいろと調査をいたしまして、一応存じております。なおこれにつきましては、最初のとりきめにもございますように、民生安定なりその他の問題につきましての必要上、所期の明記された物件以外のものにつきましても、建設省の御了解を得るならばということになつております。
  185. 佐竹新市

    佐竹(新)委員 そうすると、本件が事件となりまして、山口検察庁が取調べて、この引揚げ物件を各所に売つておりまするが、売つた中にいわゆる非鉄にあらざる鉄ですね、このくず鉄が相当各方面に売られていることが明らかになつているのでありますが、この鉄は、山口県はこういうものを引揚げまたは売ることを許可したのですかどうですか。
  186. 田中龍夫

    田中証人 常識から申しまして、非鉄金属に付随のものというふうな意味につきまして、県の係官が建設省の方に伺いまして、この点は御了解を得ていると聞いております。しかしながら社会通念に昭しまして、それに籍口してさらに鉄のみを引揚げるどいつたようなことは、私は明らかに業者の不正行為だと思います。
  187. 佐竹新市

    佐竹(新)委員 建設省の方では、要するに山口県がこの軍艦陸奥のくず鉄を引揚げているということで、相当山口県に対してやかましく言つた。やかましく言つたために、なぜ鉄を引揚げたかということをわれわれが証人に聞き、西日本海事の社長が昨日証言いたしましたことを見ますと、山口県が鉄の売却の許可書を出している。この許可書を業者はもらつてつた、ところがたまたまこれが事件になつたために、この許可書が問題になつてはいけないというので、山口県の係官が来て、会社の人たちに、書きかえると持つてつてつてしまつた。事実はこの鉄を売つてもいいという許可があつた山口の合同捜査本部から通知があつて、宇品署の警部が調べに行つたときにはその書類があつた。その宇品署の証明はこの委員会に出されておりますが、この二通の書類をなぜ県は破つたか、これをあなたは御存じですか。
  188. 田中龍夫

    田中証人 さような詳細な点は私ども存じておりません。
  189. 佐竹新市

    佐竹(新)委員 昨日の山口県の地方検察庁の検事の証言によりますと、初めこの問題は窃盗で検挙した。ところが窃盗という自信を失つた。なぜ窃盗にならないかというと、確かにスクリユーなんかのいわゆる許可以外の相当大きなものを引揚げておつたが、これを県が見ていながら黙認した。こういうものが売られておる。県が黙認した関係上業者は盗んではない。監督官庁が黙認したからこれを窃盗でやることには自信がない、こういうことをきのう証言しております。さらにこの許可書に基いて非鉄金属を揚げた。それに鉄がついておる。これに便乗した。要するに鉄を揚げて各方面に売つている事実がある。これは山口県がこういう許可書を出したから売つたのだ、ここが一番大きな問題なのです。こういう大きな不正事件をつくらしたのはあなたの県がつくらしたのである。あなたは県会において、県は万全な処置をとつておると言つている。もちろん下僚がやつたのだから知らぬことかもしれないが、下僚のやることはあなたの責任なのだ。こういう不正な事件を出したのは、もちろん建設省なり大蔵省が期限の切れたものを延長したという上級官庁のこともありますが、主として山口県が業者にこういうことをやらせた結果によるのでありますが、その責任はどう思いますか。
  190. 田中龍夫

    田中証人 期間延長の問題につきましても、県といたしましてはこれを延長したくない方針でありました。さらにまた延長いたしましてから後に、さような不正と思われるようなことを聞きまして、ただちにこれが中止を命じております。県といたしましてはさような不正の防止につきまして、あらゆる努力を払つておる。しかし御指摘の、検察庁の申されまする書類云々の件につきましては、まだ私としましては詳しく存じておりません。なおまたこれらの県の職員が、真にいかなる状態でございましたかということも、まだ詳しく存じませんので、その点につきましてはお答えをいたしかねます。
  191. 佐竹新市

    佐竹(新)委員 この問題は本行政監察委員会で結論をどうつけるか知りませんが、かりにこれは不正な引揚げをやつていた。しかしながら昨日の証人証言なり、いろいろ出ておる書類を見ますと、山口県なり建設省なり大蔵省が、許可をした範囲を非常に広げておる。これは現在窃盗で起訴する自信はないということを検事ははつきり言つておる。検事は、新聞に出ておるところでは横領でやるということを言つておりますが、これがもし裁判になつて無罪になつた結果において、業者が、この作業の中途において中止したので、まだ期間はあつたといつて、国を相手どつて損害賠償を請求するようなことが出てきたときに、またわれわれ行政監察委員会で調べて、国に非常に損害がかかつたということになつた場合に、この損害責任を一体だれが負うか、この点について知事はどう考えますか。
  192. 田中龍夫

    田中証人 法律上非常にむずかしい問題だと思いますが、私はちよつとここで今その点につきましてどうこういうように申し上げる知識を持つておりません。なお裁判等になりましても、いろいろな今後の行き方につきまして研究いたしたいと思います。
  193. 井上良二

    ○井上(良)委員 ちよつと伺いますが、最初委員長から証人に、西日本海事が落札したとき、他の業者から証人に対し何か運動はしなかつたか、こういう質問をされたときに、証人はそんなことは知らぬという証言をされておりますが、さらに委員長が、六月三十日に窪井義道から田中知事に対し、松庫商店にやらせてくれないかとの依頼があつた、こういう陳情を知事にしておるが、この点知らぬのかということに対しての御答弁がございません、この点どうなのでございますか、窪井義道さんという人に会つたことはございませんか、この事件について……。
  194. 田中龍夫

    田中証人 私は、この件について窪井さんがわざわざ私のところまで見えになつてお目にかかつたというようなことはなかつたと存じます。手紙等でおつしやつて来られましたケースにつきましては、これは私の方ではこういつたいろいろな点についての書聖は、各担当の部の方に回付いたします。
  195. 井上良二

    ○井上(良)委員 直接でも間接でもいいのですが、窪井氏からそういう依頼を受取つた覚えがないのですか、ありますか、そこをはつきりしてください。
  196. 田中龍夫

    田中証人 窪井さんからのそういつたお話は、あまり記憶がはつきりいたしませんが、あつたようにも思います。
  197. 井上良二

    ○井上(良)委員 次に、建設省から山口県に、本作業についての実施監督委任されたときに、県としては実施作業上の監督はなかなか容易ならぬことであるから、その責任は負えないということを建設省に申し出た、こういうことでございますが、その責任が負えないということを建設省に申し出たその内容はどういうことですか。どういう点が責任が負えないということを申し出ているのですか。
  198. 田中龍夫

    田中証人 特殊物件の一般につきましても、いろいろとなかなか監督責任というものはむずかしいものでございます。しかるに本件のように水中に深く埋没しているものの引揚げにつきまして、もしこれを完璧にいたそうと思いまするならば、先ほども申しますように、海岸に倉庫でも建てまして、常時これが監視をいたし、かつまた揚がりましたものは一々それを検収いたしまして、その後さらにまたその物件を措置する、それに対しましては非常に経費もいりまするし、また施設もしなければならぬ、かようなことにつきまして、県のこれに対しまするいろいろな処置について万全を期することは非常に困難だということは、当初から考えておつたのであります。
  199. 井上良二

    ○井上(良)委員 その原因はわかつておりまするが、そういう点を建設省に申入れて、建設省はそれでもいい、こういうことであつたのですか。何かこつちから具体的にその責任の負えないことを書いて送りましたか。
  200. 田中龍夫

    田中証人 これにつきまして文書でも申しておると思います。
  201. 井上良二

    ○井上(良)委員 その点は、あなたの方の商工課長から、そうう文書を出したということは証言がありました。そこで知事としてそういうことを本省へ申出でます場合、あえてそういうことをやれ、こういう委任を受けました場合に、あなた自身は、そういうことを申しつけられても、実際上監督は不行届きにもなるし、いろいろな点で問題を起した場合に困る、問題を起さぬようにするためには、必要な監督をやるための経費、また法規といいますか、いろいろな問題がそこに起つて来ますね、そういうものが整備せられない限りは引受けられないというのがほんとうでございましよう。それでもやれという場合には、当然そこにそれに伴う必要なる経費を本省に要求する必要が起つて来ますね。そこでそういう経費を本省へ要求したかということを、あなたの方の県の商工課長に聞きましたところが、要求した、したところが本省から断わられた、断わられたというか認められなかつたというか、結局は監督不十分ということを本省も承知したがゆえに、まあいいかげんにやつておいたらいい、こういうことから出発をしているところに問題が起つておるわけですね。だからあなた自身も、今お話のように、とてもこんなものを引受けてもたいへんだ、引受ける以上は引受けるだけのことをちやんとしてもらわなければやれぬ、こういうお考えがあつたと思う。あなた自身も、部下に命じてやれというならば、当然そういう所要経費を要求するという建前がほんとうじやないかと私は考えますが、あなたはそういうことをお考えになりませんでしたか。
  202. 田中龍夫

    田中証人 後の報告によりますと、六十数万円でありますか、建設省の方からこれに対する監督経費を出しておるということを伺いました。事務上の責任者といたしましては、当然それに対する経費を要求いたします。いたしますが、これは御承知通りに国家事務機関委任であります。これに対しましての諸経費につきまして、不足ではございまするが、やはり監督者の責任ということはあくまでも誠実に守つて行かなければならぬといつた気持で、県の職員も処置していることと思います。
  203. 井上良二

    ○井上(良)委員 搭載物資を引揚げて、これを売却いたしました結果、売り上げた金はどこに入つております。どのくらい金が入りましたか。
  204. 田中龍夫

    田中証人 報告によりますと、九十三万円でございますか、それは国庫に収納してあると存じます。
  205. 井上良二

    ○井上(良)委員 九十二万三千円というものは、これはまだ国庫に入つていないのです。そうするとあなた委任を受けて委任行為をやらなければならぬ責任がある……。
  206. 内藤隆

    内藤委員長 井上君ちよつと。事務局の調べでは、その九十三万何千円は国庫に入つております。
  207. 井上良二

    ○井上(良)委員 その後のものはどうなつておりますか。その後売却したのは……。つまりそれ以上の金額のものですね。全体で三千万円とか五千万円とか言われていますが、その余分に引揚げたものについてですま。
  208. 田中龍夫

    田中証人 今の入札価格は、売却代金とそれに対する諸経費を差引ました三割を業者に認めるということでありまして、今の認定いたしました以上にかつて引揚げ、かつて売却しておるということが、これが今日の問題だろうと思うのであります。その点はもちろん県の監督の問題とも関連いたしまするけれども、私はそこに不正があつたのだろうと考えます。
  209. 井上良二

    ○井上(良)委員 あなたの方は、この艦載物資を引揚げるについて、爆破作業が必要だということで、ダイナマイトの使用を許可しておりますが、ダイナマイトの使用の許可知事の判がいりますか、いりませんか。
  210. 田中龍夫

    田中証人 これは事務上の問題でございますから、乙号か丙号かの書類と思います。部長責任か課長責任文書だと思います。
  211. 井上良二

    ○井上(良)委員 艦載物件引揚げの追加物件あるいはまた引揚げ物件の売却許可証、これは知事の判がいりますかいりませんか。知事は目を通しておりますかおりませんか。
  212. 田中龍夫

    田中証人 目を通しておりません。
  213. 井上良二

    ○井上(良)委員 少くとも山口県として許可をするので、一商工課長としての許可書ではないでしよう山口県として許可をいたします場合は、当然県知事の判がいるはずです。それをあなたが全然見ていないというのはどういうことですか。あなたの方の県は、そういうことにだれか判をつく者が別におつておつきになつていますか。
  214. 田中龍夫

    田中証人 知事の印の押捺の問題でございますが、基本的な問題につきましてのことは、文書といたしまして伺いが参ります。なおそれに基きましてのおのおのの具体的な処置につきましては、あるいは部長でありますとか、あるいは課長でありますとか、おのおのの担当者の決裁によりましていたすのであります。なお対外的にはたとい課長の場合でも部長の場合でも、これは山口県知事という名のもとに出るのでありますが、対内的の伺い文書は、おのおのの担任者において処置されます。
  215. 井上良二

    ○井上(良)委員 問題は、揚げてならないものを揚げるために必要以上のダイナマイトが使用され、そして艦体の一部を破壊をして非鉄金属にあらざる鉄を揚げたというところに問題があるわけです。揚げるということはけしからぬじやないかと西日本の人に言いますと、これは許可をとつておるという。さらにそれを売るのはけしからぬじやないかというと、それも許可をとつておるという。そこで今佐竹君から質問がありましたようなことが起つて来るわけです。それで県はこれは建設省との了解の上だ、事態がどんなに変なことになろうが責任を負わぬという書類を一本もろうておる以上は、責任建設省にあるんじやないか、こういうことになつて、これが刑事事件で片がつく事件でございますならば、国の損害という問題は考えなくてもいいのです。ところが、そういう国の委任を受けた当事者が許可をして、その許可に基いて物件引揚げてそれを処分したということになつて、しかもその作業は、その事件が起つて以来停止されているという事態にかんがみて、これが民事事件として裁判を展開される場合、へたやると国を相手の損害賠償が要求される危険が起つて来る、今佐竹君が言う通り。問題の出発は全部、県の出すべからざる許可を与えておると、いうところにあるのです。その元を探せば、結局監督不行届ということで逃げるかもしれない、ところが現実にこれは監督上の問題ではなしに、認定の問題ですね、最初契約入札をした物件は、これこれときまつておる。その後出しておる書類が、いわゆる出すべからざるものを出しておるわけなんです。出すべからざるものを出したというのは、委任を受けた当事者たるあなたが責任を負わなければならぬ性質のものでしよう。最初引揚げ契約をいたしましたときの事件と、ダイナマイトを渡してどんどん爆破し出してから後の物件とは、品物の内容がかわつて来ている。そして揚げたものを一々県に届けたかというと、県はほとんど監督に来てくれやせぬし、かつてにほとんどを処分したという。そこで問題が起つて来たからあなたの部下があわてて来て、これは鉄にしておくと問題やというので、鉄を非鉄金属という名前にわざわざ書類を書きかえおるのですよ。県庁の役人が書きかえたという証言をここでしているのですよ。これは監督不行届、わしの目が届かないうちにやりよつたというようなことではない。県がやらしたことになるのです。県がやらしたということは、国家から委任を受けておる一末端のあなたの責任なつて来るのだから大問題ですよ。単に沖で作業しておる、海の底で作業しておるので目が届かなかつたという問題とは問題が違う。出すべからざる許可書を出し、それに基いて相手はやつておる。しかも県の者が来て帳簿さへも書きかえておる。そうなつて来ますと、単なる監督不行届でなしに、意識的に県が不正に協力したということよりほかにない、そうあなた思いませんか、この事件を見て。私はそういう解釈をする。単にあなたがすなおに、とても人手も足らないし、場所もたいへんなところでもあるし、経費も十分でないときであるから、監督が十分できなかつた。そこで業者がかつてに揚げてならないものを揚げて、売つてならないものを売つたというのなら、これは相討ちのことです。しかし、そうではない。あなたの方が進んで出しちやならない許可書を出して、その結果事件が発覚し、混乱をして来ると、現に県庁の役人が行つて帳簿まで、伝票まで書きかえておるじやないか。これでは不正行為に対して県が協力したことになる。県は共犯です。そうお思いになりませんか、その点をはつきりしてもらいたい。
  216. 田中龍夫

    田中証人 ただいまの御指摘のような事実の問題につきましては、さらに私十分調べさせてもらいます。
  217. 井上良二

    ○井上(良)委員 さらに調べさせてもらいますと言つたところで、この事件はきようやきのう起つた事件とは違うのだ。これは県の課長みずからここで証言をし、また現に検事の方においてもはつきりそういうことのために窃盗が成立せずに横領だ、こういうことに話がかわつて来ておる。さらにまたあなたの方と契約を結んだ専業会社である西日本海事は、県から許可をもらつて、県の人が伝票を書き直しに来ましたということをはつきり証言しておる。そうなると県みずからがこの不正行為を業者と結託してやつたということにはつきりなる。これはのがれられません。この点はつきりしてもらわなければなりません。これは大事なことですから言うておきますが、その点あなたの方で、おれの部下のやつたことはおれに責任があるということが明らかにならない限り、もし損害賠償を起されたら、国が損害を受けなければならないのだ。単に監督不行届で、必要なものを持ち逃げしたというなら窃盗になるから、刑事事件として処分すればいいが、ここで今あなたが申したよう事件ならば、県みずからが進んでやらしたことになつておる。この点ははつきりしておいてもらわぬと、問題の核心ですからあいまいじや困ります。
  218. 田中龍夫

    田中証人 これらの引揚げの問題につきましてのいろいろな不正事件が起りませんように、県の方針といたしましては、非常にきびしくいたしておつたわけであります。その点は当初からの経緯にかんがみましても御了承いただけると思います。あるいは延期の問題にいたしましても、それから中止の問題にいたしましてもさようでございます。しかしながらさようなことがございまして、書類の改竄等が行われたとしますれば、ほんとうに遺憾な点でございます。
  219. 井上良二

    ○井上(良)委員 それはあなたが厳重に監督をしており、またかりに本省から委任を受けて監督が十分できない場合でもいいが、それでもやむを得ないからやつてくれと言うたにしても、国としては六十万円に達する国費をあなたの方に補助をして、できるだけひとつ県のためになることだからやつてくれということで、県もよろしゆうございますということで引受けておる以上は、やはり県にも責任を持つてもらわなければならぬ。当然予定されることが予定通りつておるならば問題は起らぬです。また監督不行届きということから起つた失態に対しても、われわれはこんなに責めないのです。ただ県がどんなに弁明をしようとも、業者の申請を唯々諾々として許可をしておるというところに問題があるのです。この責任はのがれられない。その結果が事実の問題としてあなたにこういう御迷惑をかけなければならぬことになつて来るわけです。その点が明らかにされませんと、この事件は解決しない。だからそういうことが事実であるならば、何も十一通も許可書が——十二通ですか十一通ですか、出ておつた許可書のうち、二通か三通県がみずから破つてしまうというようなことはあり得べきことじやないのです。証拠書類はちやんと残つておるのに、何でその書類を破るのか、破るところに不正事件があつたということは明らかなんですよ。そういうことが行われておつた。その結果結局国が大きな迷惑をこうむらなければならぬということになりますので、この点は十分ひとつ証人の方においても調査をされて、必要な処置をおとりを願いたいと思います。  同時にこの際伺つておきたいのは、この許可延長いたしましたときに、何か県会議員があなたの方に陳情に来た。吉井とかいう県会議員がいるそうですが、それがあなたの方に運動して延長したということですが、この事件であなたは吉井さんにお会いになつたことがありますか。
  220. 田中龍夫

    田中証人 期間延長は、すでに今までの証人が申し上げたように、これは延長しない方針で参つております。これは大蔵省もその方針であつたと思います。さらにまた建設省にも、当時係官が山口におりまして、申しましたときにも、延長しないというて帰られたのでありますが、これは書類の申達に対しまして却下権がございませんで、中央にそのまま上申いたしたわけであります。その後これが延長になりましたにつきましても、ただいまの御質問の吉井県会議員が私に依頼するとか何とかいうことはまつたくございません。
  221. 井上良二

    ○井上(良)委員 これから延長許可は別であります。私の聞いておりますのは、確かに昭和二十五年の十一月末日で切れるので、それをさらに六箇月間ですか、延長する許可をとつておるのです。その許可をとりましたときに吉井県議が運動しておるのです。これは事実きのうの西日本の社長からの証言です。その場合あなたはお会いになりましたかどうかということであります。
  222. 田中龍夫

    田中証人 私の方には参つておりません。会つておりません。
  223. 大泉寛三

    ○大泉委員 この元戦艦陸奥の沈没が重大性があることは、戦敗国日本としてはきわめて等閑に付されないできごとだと思うから、まことに感傷的な質問だとは思いますけれども証人はまつたく出先の民選公務員として非常に重大な責任を持つておられる立場から、多分お考えになつたろうと私は思うのですが、この船は海軍の軍人が二千数百人乗つておる。しかも原因不明で沈没した日本の一大戦力であつたということを考えてみたときに、これをただ普通の商船が沈没した、あるいは物資の引揚げだというような簡単な考えでは、私はどうもいけないわけだと思う。当時の引揚げに対して許可をされたときの心境は、一体こうしたことを考えなかつたか。私から見ると、まつたく集団的な一つの墓場を掘り下げたようなものである。その墓にある物資をただ引揚げて、それで済むかというよう考えが、私はなぜ起らかつたか。これについて復員局なり、建設省なり、あるいはいわゆるよその監督官庁に対して相談されたか、されなかつたか、またあなたの考えは当時どういうお考えであつたかということを一応聞きたい。
  224. 田中龍夫

    田中証人 これにございます英霊の御遺体の問題でございますが、これは当初からそのことは会社の方でも申しておつたと思います。何しろ最初のこの会社の担任者は軍人でございまして、英霊のことにつきましては、初めから会社としても敬意を払つておりました。なお県といたしましても、世話課を通じまして、揚つて参りまする英霊に対しましての措置は、特に丁重にお扱いするように命じてございます。またよく後に話を聞くところによりますと、英霊をお揚げするためにかえつて会社としては非常に経費がかかつたというようなことも言うておりますが、これも当然なことだと思います。あくまでもこの点につきましては、丁重に敬意を払つていたしております。
  225. 大泉寛三

    ○大泉委員 まあ、いくさに負けてこういうざまになつたのだから、うやむやにされるけれども、もしなかつたらあなたたいへんなことだ。こうしたことは一つの運命だからしようがない。そこで私はあまりにも物件的な処理に走り過ぎて、資材活用というような立場にとらわれ過ぎたと思う。しかも搭載物資に局限されたというけれども、どうも搭載物資と船体というものは、やはりそう区分ができないと思う。もちろんそれはあなたの方の考えでみれば、海中何十メートルの底にあるのだから、要は引揚げさえすれば国のためになる、あるいは資源がそこに開発されるというような簡単な考えであれば、まあそれで済むかもしれないが、どうもいかに局限されてもこれは局限の境がわからぬ、搭載物資と船体の境がわからぬということは気がつかなかつたかどうか。私はどうもそうしたことに気がつかないということは、あまりにも業者の立場になり過ぎたのじやないか。むしろ私はそうしたものは、船体全体を一括してこれを引揚げる、いわゆる処理する、こういう一つの大かかりな問題を考えなければならなかつたのじやないか。引揚業者に対しても、最も有力な者、最も大きな者になぜ相談しなかつたか、こういうふうに私は指摘しておきたい。そうしてこそ艦全体の物資が引揚げられ、また艦と運命をともにしたところの遺体が、そこに解決されるということになるのじやないか。この艦全体として大きな物資であるのだから、これもともに考えるべきであつたと思うのですが、この点はお気づきなか一つたかどうか。
  226. 田中龍夫

    田中証人 ただいまの御意見通りでありまして、先ほど申しましたように、当初入札の希望者が非常に小さいものばかりでございまして、本来ならば、戦艦陸奥という日本でも大きな軍艦なのでありますから、できればやはりしつかりした業者にやらせなければならぬということは考えております。
  227. 大泉寛三

    ○大泉委員 どうもきわめて簡単な御答弁で恐れ入りましたが、これが普通の官庁の局長とかあるいは長官ならば、私はもう少し辛辣に進めたいのですけれども、何しろ公選知事としての県民全体の信頼をになつているあなたに対しては、言い過ぎかもしれませんけれども、少くとも事業に対する許可認可を与えるときには、みずから業者の希望なりあるいはその目的なりというものを、立場をかえて考えるべきだ。ただ自主性のない、業者に利用されるととのみが従来の日本の出先の官吏であつたけれども、少くとも県を主宰される立場としては、やはり私は何事も自主的に解釈しなければならないのじやないか、こう思うのであります。あまりにも業者にひつばられて、とうとうこうした問題に引きずり落されたというように私は思うのでありますが、今後はこの問題に対しましてあなたのお考えは一体どうすればいいのか。これはまあ参考のために私はお聞きしたいと思うのです。ただ搭載物資だけ引揚げてしまつて、あとただそのままに放任しておかれるべき問題でもないので、今後の処理に対して参考的な御意見を承りたい。
  228. 内藤隆

    内藤委員長 その点に関しまして、ただいまの大泉委員の発言はすとぶる重要な意味を私は持つておると考えます。昨日も多少この点に触れておきましたが、結論を本委員会が出す前に、ただいま大泉委員のおつしやつたことく、見方によつては英霊の集団墓地ともこれは見られるものであります。その墓をあばくということは、これは刑事上の立場から見ましても大問題であるのでありまして、この船体の処理をただ関係官庁が簡単に物質的な扱いをし、さような感じで見ておることは、まことに憤懸にたえないものがあるのでありまして、この船体を将来——近き将来でしようが、何らか官庁はこれを処理する意思を持つておると思いまするが、その処理する前に、関係官庁に向つて委員会として厳重な警告を発したいと委員長考えております。これを実行する前に理事会を開きまして、関係官庁のそれぞれの責任者を理事会に呼んで、そうしてこの問題を扱いましようか、あるいはまた正式な何かまたこれに対する調査要求等が出ますれば、これに基いてさらに別個の新なる問題としてこれを取扱うか、ひとつその取扱い方を委員長に御一任願いたいと思いますが、いかがですか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  229. 内藤隆

    内藤委員長 御異議ありませんから、さよう委員長においては処理をしたいと存じます。  ただいまの大泉委員質問に対するお答えを願います。
  230. 田中龍夫

    田中証人 今後の取扱い方に対しまする御質問でありまして、私の所見をお聞きになりましたが、さよう陸奥のごとき、艦艇といたしましても大艦艇でございまするし、また国有の財産といたしましても重大な問題でございます。ことにただいま御指摘のような精神的な意味から申しましても、これはぜひとも国としての直接の重要なお仕事としてやつていただきたいと存じます。
  231. 浦口鉄男

    ○浦口委員 証人はこの事件については、最初から搭載物資を引揚げることに、その作業の困難性から非常に消極的であつた、こういうことはただいまの証言で承りましたが、それにつきましても、最初西日本海事工業がこの引揚げを県に頼んで参りましたときには、内務省の通牒によつてこれを許可したということは事実だと思います。ところがそれが違法ということで、極東海軍司令部から許可にならなかつた。その後五者会談というものによつて再び引揚げ作業が行われるという話がどんどん進んで行つた。ところが証人のお話によりますと、建設省から引揚げについて山口県が委任されて、初めて引揚げが行われることになつたということがわかつた、こういうことをおつしやつた。  最初の引揚げ申請が許可にならなかつたの昭和二十三年六月二十四日で、二回目に五者会談の結果、建設省から山口県に引揚げ作業を委託して参りましたのがその年の十二月八日、この間約半年あるわけです。その間において業者は直接建設省あるいは極東海軍司令部に運動を続けて行つた。ところが証人は、この五者会談というものを全然知らない、こういうふうにおつしやつています。そこで私がお聞きしたいのは、先ほどのお話のように、自分はこの引揚げが非常に困難であるために、許可に消極的であつた、しかし建設省からどうしてもやれと言われて来たので、実は責任が負えないという文書を出した、それはわれわれも承知をいたしております。読み上げてもよろしいのですが、時間がありませんから読み上げませんが、知事はその全責任を負わざるものとすというふうな免責条項を建設省に送つた。それにもかかわらず建設省はそれでもいいからやれという回答があつた。こういうふうに言つておる。私が非常にふしぎに思いますことは、証人知事という立場にいて、そうしてそういう自信のない仕事をなぜもつと積極的に断わられなかつたか。建設省にそういう文書の上で、責任を負わないのだと出してあるから、やられてもそれは責任を負わなくてもいいのだ、そういうよう文書でこれを片づけられたということは、われわれとしては非常に納得が行かない。それでそういう知事が、自分の責任を果せない仕事はやれないと一応考えられたものを、なぜそういう文書を出してまでもやらなければならない事実ができて来たか、その間局長あるいは課長、業者と、私は必ず何か相談があつたと思います。五者会談の話もあり、半年の期間があるわけですが、どういう話が進められて来たか、それを承知されないで、最後に引受けられたことは、常識では考えられないのでありますが、監督の立場上、もう一度その事実をお話を願いたい。
  232. 田中龍夫

    田中証人 これは極東海軍建設省に対しまして、業者といたしまして非常に運動せられたのであります。その結果としての委任命令が出たのであります。それに対しましては、先ほど申しますごとく、実際常識的に考えましても、この作業をお引受けするということについては非常な困難が伴います。でありますから、私は当初、自分は民選知事だから、官選知事時代と違つて委任命令を何でも受けなければならぬということはないじやないかということまで、率直に申しております。しかし行政慣行といたしましての中央からの委任事項に対して、拒否をした慣例というものは、今まで実はないのであります。それでそれに対して反駁文を出しまして、これに対しては責任を負えないということをあえて申したのでありますが、御指摘の通りにそれがさらにそれでもこれからやれということになつて、やつたということは、今日になりまするとふしぎのようでありますけれども、実際あの当時の行政慣行といたしましては、建設省に対しまして、拒否の反駁をするだけでも大体異例でございます。で、私どもといたしましては、それに対してさらに了承するという通知があつたので、機関委任として監督責任を持つに至りました。これは私あのときにこれをあくまでも拒否してしまつておけばよかつた、今日になりまして特にそう考えます。
  233. 浦口鉄男

    ○浦口委員 それでは次にお尋ねをいたしますが、そういういきさつで異例の御努力があつたにかかわらず、引受けなければならなかつたという御証言をそのまま承れば、たいへんお気の毒な立場だということを一応われわれは考えてもよいと思います。ただしかし結局現場の監督責任建設省から委任されるわけでありますのでそこで私のお尋ねしたいのは、建設省からの委任事務は、法的にどういう根拠によつてお引受けになつたか、その根拠によつて、そこにどういう事態が出て来るということまで予想されてお引受けせられたかどうか。もちろん先ほどの御証言で、官庁の監督には限度があるから、業者が指示注意に反して起した事件については、知事責任を負わないということを、これも公文書でしようが、出してはおられますが、委任事項ということになれば、法的根拠によつて引受けられた以上、この文書に優越すると思うのですが、その点どういうふうにお考えなつて最後に実施の腹をおきめになつたか、それをお聞きしたい。
  234. 田中龍夫

    田中証人 県のいたします仕事には、地方自治体としての固有の仕事と、国の責任においてなすべきことを代行すべき、国の機関としての移管事項とがございます。これはあくまでも国としての責任をもつて行われる作業でありまして、これに対しまして、県としては国の事務委任されました限りにおいて、これの責に任ずるわけであります。これはなおまたそれに伴いまして自治法でも、国の委任に対しまする諸経費等につきましては、国として出すということもうたつてございますし、いわゆる国家委任事務として、一つの機関といたしまして行つたわけでございます。
  235. 浦口鉄男

    ○浦口委員 それほど最後の責任もお考えなつてよんどころなくお引受けになつたとすれば、今日のような問題が起きないように、万全の監督がなさるべきであつた、こう思うのであります。ところが事実われわれ三日間にわたつて証人のお話を聞きますと、その監督予算が足らなかつたとか、人員がどうとか、あるいは現地が非常に不便なところであつたとか、いろいろ証言はございましたが、結果において先ほど証人がおつしやつたような、厳重な監督のもとにやつて来たつもりだ、できるだけはやつたはずだというふうな御証言とは、現実は全然食い違つておる。そこに大きなあやまちと、不正が起きる原因が生じたと思うのありますが、その点について証人はこれを引受けられた当時の覚悟と、その後のこういう事態をもたらした経過において、どういう心境をお持ちであるか、責任をお感じになるか、それをおただしします。
  236. 田中龍夫

    田中証人 私はこの陸奥事件くらい残念なことはございません。私が知り得ました最初から、これはただいま申し上げましたごとくに、あくまでも拒否するという立場をとりまして、しかもそれに対しましては、異例の反駁までいたしまして、最後にこれを引受けざるを得なくなりました。その後におきましても、これが中止も命じておりまするし、さらに期間延長等につきましては、県といたしましてはあくまでも期間延長をしないという考えで、拒否権がございませんので、ただ書類手続だけを上申しておるわけでございます。この事件は当初から最後まで非常に残念な問題でありまして、なかんずくかような結果に立ち至りましたことにつきましては、ほんとうに残念に思い、かつ今日のようなこういつた不祥のことの起つておりますことは、遺憾を禁じ得ないのであります。ことに最後の期間延長をいたしましたがために、さらにまたごういつたようなことになつたということ、これはほんとうに残念でございます。
  237. 浦口鉄男

    ○浦口委員 それでは証人は、その間西日本海事工業の役員と、この問題について会談をされたことがあるかどうか。もしありとすれば、何回ぐらい会談をされたことがあるのですか。
  238. 田中龍夫

    田中証人 二十三年当時と思いますが、最初の田中恒治という社長であります。これは陸軍の軍人でありました。この者に会つたことがございます。その後に知つたのでありますが、会社の内紛等があつて葛西というようないろいろな人が代がわりをしおりますが、これらの人々には会つておりません。
  239. 浦口鉄男

    ○浦口委員 そういう内紛、それから葛西から武岡という人に、一口で言えば、権利が譲渡されたというふうな経過を、御存じのように察しられるのですが、そういう過程において、最初のよう証人の意気込みで、なぜこの問題の拡大を阻止することができなかつたか。またその間、業者と局長あるいは課長、早く言えば下僚の担当官の間に、何か証人と別な話合いが進められていたというような事実を御承知でございますか。
  240. 田中龍夫

    田中証人 県におきましては、私を初め副知事、部長、課長、みな同じような気持でございます。この陸奥引揚げの問題につきましては、実際の作業の困難性その他から申しましても、私どもはあくまでもこういつたことの起らないように努めておつたのであります。
  241. 浦口鉄男

    ○浦口委員 ひとつ事務的のことをお尋ねしておきたいのでありますが、これはとりわけ期間延長なつてからの問題であります。いわゆる超過引揚げについての問題ですが、申すまでもなく、これは最初の契約に基いて、引揚げられたものは、刻々と申しましても、月に三回ぐらいまとめてこれを県に報告する、あるいは買却調書を提出して許可を受ける、あるいはそれについての諸経理明細書を出すというふうな契約ができていることは、御承知と思うのです。ところがこれは商工課長にもお聞きしたのでありますが、まあときに出たこともあるというふうなことで、至つてこれはずさんに行われて来た。ところで私のお聞きしたいのは、先ほど最初の評価価格の九十三万三千円は国庫に納入されたことはわかつたわけですが、その後の超過引揚げによつて山口県に納入された金があるかどうか、それをお尋ねいたします。
  242. 田中龍夫

    田中証人 それは存じません。
  243. 浦口鉄男

    ○浦口委員 それはなかつたという意味でございますか、あつたかもしれないがわからない、こういうことですか、どちらですか。
  244. 田中龍夫

    田中証人 不正な意味で、一定の認められました収入以外に収納するというようなことは、私は絶対なかつたと思います。
  245. 浦口鉄男

    ○浦口委員 昨日の武岡証人の話によりますと、何か県から十二万七千円という納入告知書が来たと私は聞いたのでありますが、これはどういう意味の納入告知書と思われますか。
  246. 田中龍夫

    田中証人 その点は全然存じません。初めて伺うことであります。
  247. 田渕光一

    ○田渕委員 先ほど部下のしたことは大体乙号、丙号の書類であるというようなお話がありましたが、昭和二十四年の六月二十日に結んだ山口県と西日本海事工業株式会社との契約は、書類としては甲号でありますか。最初の引揚げ契約書です。
  248. 田中龍夫

    田中証人 最初の文書は甲号であります。
  249. 田渕光一

    ○田渕委員 甲号とすれば、この契約書の中に書いておる文言の全責任をあなたが直接とられますか、どうですか。
  250. 田中龍夫

    田中証人 この契約に対しましては、県といたしましてはおつしやる通りであります。
  251. 田渕光一

    ○田渕委員 同時に乙号、丙号の書類といえども、あなたが監督しておる部下のやつたことでありますから、あなたが責任をとられることは当然だと思いますが、さらに確認をいたしておきたいのであります。いかがですか。
  252. 田中龍夫

    田中証人 これもおつしやる通りであります。この基本文書に基きまする具体的な処置につきましては、当然基本になる文書通りつたのであります。
  253. 田渕光一

    ○田渕委員 そこで契約文書の基本的な甲号書類、並びに協定書、その他これから発したところの文書その他の責任を負うということが明瞭となつたので、まずこれで私は安心いたしたのであります。  そこで先ほど委員長が第一問で、西日本海事工業より登載物件引揚げ許可申請が来たとき、県が許可した観点、特にその経済的なねらいは何であつたかと問われたとき、民生安定のための漁業用の油であるとか、あるいはその他というようなことを伺つたのでありますが、その他特に何かねらいはありませんでしたか。
  254. 田中龍夫

    田中証人 格別ございません。
  255. 田渕光一

    ○田渕委員 さらに念を押して、私はあなたの精神を伺いたいのでありますが、この陸奥引揚げるということは、山口県の産業復興のため、あるいは民生安定のためという経済的なねらいのほかに何もないということをあなたば確言されますか、まだほかにねらいはありませんか。
  256. 田中龍夫

    田中証人 ただいまの御質問につきましては、先ほど申しましたように、当初西日本海事も英霊の問題は申しておりました。これは当然な日本人としての言葉であります。
  257. 田渕光一

    ○田渕委員 しからばこの契約書の全責任を負うところの西日本海事との十一条にあたる文書の中に、なぜこの英霊に関する問題を挿入しなかつたわけですか。特に重要な問題とするならば、なぜこれを抜かしたのでありますか、それを伺いたい。
  258. 田中龍夫

    田中証人 その点は口頭で話はしてございますけれども、これに対しまして、これが主として物資の問題に関連しておりました契約でございまして、書いてございません。
  259. 田渕光一

    ○田渕委員 これは私はけしからぬ話だと思う。先ほどから言うておつたことは、ただこちらから誘導尋問したから、英霊に対することを出したのであつて、当時この契約書に——少くとも大泉君の言うがごとく、これは合同墓場であります。おそらく社会におきまして、区画整理、土地整理等におきまして、墓場の移転をするときにすらも、この作業に対しては、かような精神的な方面のことを挿入する文言が現われるのであります。特に英霊遺体をどうするか、あるいは墓場の中に貴金属かあればどうとかいうようなことまで書くのであります。県知事が甲号として判を押し、全責任をみずから負うものであつて、この十七条からにわたるものに対して——もちろん特殊物件を揚げるについて、必ず英霊に触れることは当然であります。この契約書を結ぶときに、まず護国の英霊に対して追善供養をしてから艦に移しますとか、あるいは触れる場合にはこういうぐあいにしてやりますとか、いろいろ作業上の契約になぜ英霊に関する措置を入れなかつたかという点について、私はあなたの精神を疑うのであるが、このときに気がつかなかつたのであるか、ついたけれども入れなかつたとするならば、何がゆえに英霊を粗末にしたか、あるいは遺家族に対してどういう信念をもつてあなたはこれをされたかということを、まず伺いたい。
  260. 田中龍夫

    田中証人 その点は先ほども申しましたように、これは引揚げる当事者の田中恒治君も元将校でございまして、その当時、そのことにつきましては、口頭ではいろいろと話をしました。しかしながら条文といたしましては、これは特殊物件の処理といつたような話になつておりますので、その点には触れなかつたのであります。
  261. 田渕光一

    ○田渕委員 どうも山口県会と間違つているのか、非常に答弁が簡単であつて質問する方が長い。実に答弁術がうまい。そうならば私は今晩十二時になつても、徹底するまで聞こう。ところが九十三万三千円の金をとるということを目的にするのではなくして、そういうことが文字に現われなけれども、文言外にあつたというが、このことを元陸軍中佐の当時の田中社長がこの契約を出す、これにもまた入れないということは、われわれは佐官整おつた人間として非常に疑うのでありますか、少くともこの九十三万という、こういうものを安くするのであるから、この金はどうでもよいのだ。むしろここに二千幾体の多くの英霊を揚げて、願わくば氏名もわかれば、遺家族に安心さすのだという一点があつて、おま    魚つり事でもしてかかつたというならば、私はいくらか納得できるのです。ただ特殊物件を揚げる一点に尽きている。ところが特殊物件を揚げるについては、墓場を侵すのであるから、必ず触れて来る、触れて来る方は別途に厚生省から引揚料を一柱五千円という金をとつている。まことに私は、この点がさもしいと思うのであります。ところがこれに、知事として甲号書類として判を押され、部下がやつて来たものではあるけれども、あなたが判を押すときに、あなたが契約書をつくるときに、この艦内にあるところの護国の英霊の柱をどういうぐあいにして行く、これに対しては引揚金の方から出してもよろしい。あるいはまたこういうふうな方法をするから、こんなぐあいにしてやつてくれというふうにして、文字を入れなかつたということを、私ははなはだ遺憾に思うのであります。同時にあなたがこれは物質的だけの契約であつたから入れなかつたと言うならば、もちろんここにあるということを最初に知つているのだから、部下をして引揚げの都度、その検収、検査その他において、英霊の状況というものの報告をとつたかどうか、これをひとつ伺いたい。
  262. 田中龍夫

    田中証人 英霊の関係は県といたしましては、世話課がいたしておるのでありますが、この世話課の方には、英霊の御遺体に対しまして、敬意を表するように当初から申しておるのでございます。  なおこれらの条文の中にこれが挿入されておらぬということも、まことに申訳ない次第であります。先ほど申しまするように、特殊物件としての扱いたけになつておりまして、また契約につきましても、さような形をとつております。
  263. 田渕光一

    ○田渕委員 私はそれでは納得せぬのであります。この艦艇を引揚げるためには、三トン近い火薬を渡しているのであります。英霊の遺骨が艦艇の一部にあるときに、もし火薬の使いどころが悪かつた場合はふつとんでしまうのであります。二千幾柱の英霊のはまつている陸奥をば、あまりにも英霊を無視したこの作業が、今日の災いをなして来たものだと私は思う。私は仏を信じ、神を信じますがゆえに、霊魂不滅である以上は、私の弟もそこで死んでおるかもわからない、こういうことを思うがゆえに、私はこれを問題にする。これだけの一点を入れておれば、われわれはこの問題でもほんとうにある程度まで考える。何ら精神的な方面を考えずに、終戦後三年、四年たつたとは言えただ物質的な方面ばかりにこ契約が進んでいる。ことにあなたは官選知事とは違つて民選知事である以上、なおさらそれでなければならぬと私は思うのでありますが、この点に対して、ともあれ一昨日の小田証言を聞きましても、何らこれに触れてはおりません。本件の問題に対する証人として、あなたが最後でありますから、私は聞くのであります。はなはだ遺憾なことだ。  さらにもう一点伺いたいのは、極東海軍司令部のバージン・スキー大佐あてにあなたの部下が陳情いたしております。この艦艇の中にあるものをひとつ引揚げさせてもらいたい。こういうものに対して、陳情書の形式をとつたか、あるいは口頭で言つたかということを、あなたはお聞きになつておりますかどうか。
  264. 田中龍夫

    田中証人 私はその点は存じておりません。
  265. 田渕光一

    ○田渕委員 これは五者会談といつて、つまり西日本海事それから主管省である建設省、これを取締つているところの経済調査庁、山口県、これらが山口県の産業復興のためにということを主眼において、極東海軍司令部のバージン・スキー大佐を訪問しておるのであります。このときにも、日本の国民の感情として長く放つて置くわけにいかぬ、ことに山口県の近くにある、遠く離れた南洋のいわゆる遠洋の地にある遺骨の収集ではない、近くにあるのだからこれをまず揚げたい、こう精神的に言つて、これをするためにはこうして行かなければならない、これに対する特殊物件引揚げ、こう来れば英霊も感激したでありましよう。それをほつたらかしてしまつて極東海軍司令部を説くときにすら、ただ山口県の産業復興のために、生きている者の民生安定のためにという、ほんとうに今日情けない物質方面のことばかりに主眼を置いたから、私に言わせれば罰が当つたのだ。何人かをここに責任をとらせてぶち込むなり、あるいは永遠に損害賠償をとるなりしなければならぬ。この結果から来るところの国家に対する損害を、未然に防止しなければならぬという点に、私は進めて行きたいと思うのであります。実際まことに極東海軍司令部に陳情したときのことも知らぬとおつしやつたが、おやじもおやじなら、下僚も下僚だ、こう私は言わざるを得ない。そこであらゆる努力をした、こういうことを先ほどあなたは委員長に何されたが、部下の失策とは言いながら、国有財産に対して莫大な損害を与えていることに対して、証人は県の長としてどういう責任を負うかと言つたら、県の措置としては監督は十分あらゆる点でやつた、こう言われているが、あなたの部下の小田商工課長は、一ぺんも芸備倉庫の引揚げたものを見ておらぬ。そういうぐあいにしていながら、一面においてその商工課長の下におる係長の河崎潔なる者は、この協定書に立会つている。この協定書に立会つて、これはえらいことをして来たと言われて怒られた。商工部長とも話をしたのだと率直に言つておりますが、ただ引きずり込まれて来たのではありません。この協定書の第六には、もし両者の話がついたならば、火薬の使用権も許可してやろう、あるいはこういうぐあいにしようという協定書ができておる。第六はきのうも読んだのですが、これはあなた御存じだろうと思いますが、これを読みますと、立会人たる県は、山口県は、第一回分割金支払いのありたることを認めたるときは、乙に対し——西日本海事工業の後継者である葛西正美代表者に対して、作業再開及び火薬使用許可をなすものとす。こう六条にちやんとうたつて、河崎潔がぴたつと判を押しておる。こう来ると、山口県産業復興のためにこれは申請したのであるから、このためにここへ来たということははつきりわかつて来る。これに対して、あなたは当時なぜここまで行き過ぎて立入つたことに対して、県の長として河崎潔に対して処置をとらなかつたのであるか、伺います。
  266. 田中龍夫

    田中証人 その立会いの問題は、事件になりましてから聞きまして、なおその当時の模様も課長から聴取したわけであります。これにつきましては、出ますときから、このことについては特に注意をして出しておる。また河崎潔が判を押しましたことにつきましても、そこに出席したということの証拠というだけで判を押したのである。両者の和解の協定の仲介とか何とかいうそれほどの意味でなく、ほんとうにそこに同列したという意味の気持から判を押した、かように申しております。
  267. 田渕光一

    ○田渕委員 これは私が今読んだことで——かりにも山口県知事ともあろうものは、もつと事を知つておらなければならぬ。知事とは事を知ると書いてある。この協定書というものは、りつぱな三者協定じやないですか。一河崎潔という係長がこそこそ行つてつて来たというのじやないでしよう。わからなければ、初めから読んで見ましようか。あなたはこの協定書を本日持つて来ておりますか、持つておりませんか。二十五年九月二十七日の協定書です。
  268. 田中龍夫

    田中証人 私は協定書を持つておりません。
  269. 田渕光一

    ○田渕委員 よろしい。それじやごらんに入れましよう。     〔証人に書類を示す〕
  270. 内藤隆

    内藤委員長 これはどうです。ただいまの証人のおつしやつたような、単に立会つたという程度を越えておることは、今ごらんになればおわかりだと思います。
  271. 田中龍夫

    田中証人 ただいまの御質問でございますが、河崎を県から出しますときにも、課長は純粋の立会いというふうな意味で、それに介入しないことを特に注意もいたしております。また三者協定と申されましたけれども、この第六条にも立会人ということがはつきりと出ているわけであります。今の河崎は、甲、乙並びに県という立場ではないと私は考えます。課長が係官を出しますときに注意しましたように、これに対しまする捺印は、私はやはり単なる立会人という立場で河崎が判を押している、かように信じます。
  272. 田渕光一

    ○田渕委員 そういう法律的なことは法廷にまかせばいいと私は言うのです。私はりつぱに三人の名前を表わして三者協定をしたとは言うておらぬが、県の商工課長が、河崎潔が行くときに、深入りするな、あるいはこうだと注意しているにもかかわらず、立会人河崎潔となつているではないか。そして山口県商工課という公務員の肩書をはつきり使つて、六条における協定をのんで、第七条で供託を認めたときに立会つて、これだけの判がそろつたときに、初めて山口県が事業再開を許す、火薬の使用を許すというのでありますから、精神ははつきり三者協定だ。ここまでなぜ立入つたか。県知事並びに商工部長、商工課長が注意しているのに、あなたの部下である公務員が何で山口県商工課の肩書を使うて——単なるオブザーヴアーならいざ知らず、個人河崎潔ならいざ知らず、最も関係のあるこの問題の担当官、しかも年は四十七、八と聞く。常識がすでに相当円熟の域にまで来ておる人が、この立会いというものは仮装であつて、最初の山口県産業復興のためにという精神でここへ来ておるのだということは、私はこの点から言つても、この下僚のした責任を負わなければならぬと確認されたことから言つても、山口県はこの責任をとつてもらいたいということを私は言うのだが、あなたはどう考えますか。
  273. 田中龍夫

    田中証人 この今の協定によりまして、和解が成立し、そうして作業が再開されましたら、これに対して許容するということは当然の措置だろうと思います。なおただいまの御質問はちよつとはつきりわかりませんが……。
  274. 田渕光一

    ○田渕委員 この協定書は、最初に契約した田中恒治社長を追つ払う計画です。しかも第一回の金が、九月二十七日に結んで、わずか一週間以内に三百五十万円渡すということになつておる。あるいは田中に金ができないとしてこの短かい期間を過ぎたか、あるいはまた十分金があるためにもつと早くして、田中と手を切ろうとしたか、葛西田中——当時の西日本海事工業の軋轢の内容は私はどつちともわかりませんけれども、わずかの短期間内において三百五十万円の金を払え、しかもその金が完全に払われたならば、再開も許そう、火薬も渡そう、ここまで何の立入る必要があるか、私はそう言いたい。何ゆえにこういう小さいサルベージ会社、内紛まで起きているものに、県そのものが、商工課の係長を担当官として派して、ただ単なるオヴザーヴアーで行つて来い、こういうことならいいが、実質はここに立入つて契約を結び、強引に片づけさせて、金を払わせて、そしてここに火薬を与えて仕事をさせて行こうとした。莫大な火薬ニトン半、いわゆる二千五百キロの火薬を与えて、よけいなものを爆破させた。それで上つて来るものが山口県へ入つて来る、こういうふうにわれわれは行くと思う。そこまで知つていなければおれくは追究せぬ。そもそも山口県の産業復興のためにやることであつて、英霊というものを軽視した点は免れないし、さらにこの会社がここまで来れば、そんなものは打切つてしまつて、さらに大きなものに——りつぱなサルベージ会社が日本にはたくさんある。日本サルヴエージとか、岡田サルベージというものがあるのだから、それらになぜやらせないか。あなたの部下の河崎潔については、われわれは想像がつく。飲まされて会社に買収されてしまつておる。りつぱなやつではないと言つたけれども、柳井町の旅館で夜の一時ごろまでかかつてつたという。かような点よりみても、これは厳粛な場所で厳粛に行われたとはわれわれは思えない。かような点にまで進んだということについて、私はここであなたと法理論を争うものじやないが、あなた方があまり深入りするなと言うて、ただ立会いにやつただけのものが、第六条の義務行為を背負つて来、さらに立会人として県の名前を使つた法律的なことはともかくとして、あなた方の依命に反しているのだから、なぜ河崎潔を処分しなかつたかということを聞きたい。     〔委員長退席、大泉委員長代理着席〕
  275. 田渕光一

    ○田渕委員 ただいまのお話のように、その内容まで立ち入りましたことにつきましては、私はまつたく出過ぎたことだと思います。同時にまたこれに対しまして、なぜ処分しなかつたかというお話でございますが、この件に関しましては、今の行政処置は御承知通りに、ただいま河崎潔が問題になつておりまして、県といたしましては、係争の関係が明確になりません間は、行政処置は発動いたしておりません。はつきりした判決が出ますれば、これはまた別であります。かような件につきましては慣行としても県の行政処置は発動いたしておりません。
  276. 田渕光一

    ○田渕委員 これはあなたの方の県会の問題になつたことでありますだけに、河崎潔から始末書をとつておりますか。
  277. 田中龍夫

    田中証人 その点は存じておりません。
  278. 田渕光一

    ○田渕委員 あなたが、甲号書類といい、乙号、丙号に至るまでもそうであるが、部下のしたところの全責任を負うということになつてここまで来ておるのに、今日までその事案が検察庁の問題になつているということをたてにとつて、事案が片づいた上で行政処分をするというような悠長なことを言つておるが、これほど明瞭な、やつてはならぬようなことをやつて来て、これが当委員会の問題となつている現在でも、始末書をとる御意思、あるいはまた部署をかえるなり、あるいは左遷するなりというよう方法の、あなたのできる範囲で、適当なる措置をとるということをお考えなつておられましようか。
  279. 田中龍夫

    田中証人 それは仰せられるまでもなく、当然そういう処置をとらなければ相ならぬと考えております。
  280. 田渕光一

    ○田渕委員 当委員会の問題になる前に、なぜとれなかつたか、事情があればあると率直に言つてもらいたい。私はむしろこれは河崎潔がやつたのではないと思います。率直に言うと、あなたと四角ばつて表向きの話をしているけれども、これを笑い話で、私的に座談をするならば、河崎は買収されておつたろう。それを諸君が知らぬ顔をして、山口県の収入がふえるようにやつたのだろう。県に落ちて来る金だというのでやつたのだろう。こういうぐあいに、私は行き過ぎかもしれないけれども思う。知事としてはそういうことは決してありません、こう言うでありましようけれども、われわれはそう思う。そこに想像が行く。出発点がそうだから……。護国の英霊を揚げるという精神に出たのじやない。もうけを得ようとしてやつた精神が、その虚に乗じて飲まされ、許すべからざる作業時間を延長し、さらに一回も芸備倉庫へ点検に行かず、行つたかと言つて突込んでみれば、抜き打ち的に行つたと言うが、水産の方で問題になつたから行つた。私ども山口県の水業業者から陳情を受けた。どんどん火薬を使うので、仕事にならぬ。魚が死んでしまう。補償してくれということを言つて来た。山口県庁へ行つても取上げぬから、当院へ陳情に上つたと言つている。だんだん専門家に聞いてみると、それは二トンや三トンの火薬じやない、何十トンという火薬をやみで買つて来て、これをやつたものだ、こういうことである。こういうよう事態が起きて、地元健からどんどんやかましく言うて来るのもほつておいて、さて当委員会の問題になつて来ても、これからでもおそくはないのでありましようけれども河崎潔を処置できないという事情はどこにあるか、こういうのです。専売公社の問題を調べてみてもその通り。つまらない一係官、属官にやらせておいて、上の方はみなしこたまやつておる。こういうようなもので、これをどんどん追究して行けば、自殺しそうなかつこうだからやらなかつた。軽い地位に置かれている者に大きな書類操作をやらせておいて上の方はみな悪いことをしているのが、当委員会に現われた例であります。山口県にはそういう例はなかろうと思いますけれども、そういうような点から考えて、これだけ大きな問題になつておるものを、今日まだ何もしておらぬということに対しては、私はできない事情があるだろう、こう思わざるを得ない。あなたは知らぬかもしれませんけれども証人を調べてわかつたんだが、商工部長からこの河崎潔が命を受けて、すべてやつているのじやありませんか。それもあなたは御存じありませんか。
  281. 田中龍夫

    田中証人 処分をできないということに対しまして、何らかあるんじやないかというような御質問でございますが、絶対にさようなことは、私は神かけてございません。かような問題に対しまして、上司の命に反しましての越権の処置につきましては、当然行政処置として処断しなければならぬと考えます。なお商工部長が云々についてでございますけれども、さようなことも、私は一向信じられないことであります。
  282. 田渕光一

    ○田渕委員 なお参考までに、私はここに、西日本海事工業が宇品警察に出したものをひとつ読んで、証人の反省と同時に、もしこれに対する答弁があればしてもらいたいと思う。  昭和二十七年三月二十四日   広島市宇品町三十八   西日本海事工業株式会社出張所         社長武岡  賢   広島市宇品警察署長殿 こうあつて会社印を押してあり、宇品警察が二十七年三月二十四日に、永野という受付の巡査が受付けた判を抑してあります。本文はこう書いてある。    証明願い  当社の作業にかかる旧軍艦陸奥搭載物件引揚げに関し昨年事件発生の当初貴署調査書類として当事務所において山口県商工部長より弊社あて発行の引揚げ物件非鉄金属)の処分指示書の写しをお書取り相なりたるもの十一通にしてかつそのうち三通は「非鉄金属(鉄スクラップ)」と記載ありたること相違なきを御託明くだされたくお願いいたします。   右証明する        広島市宇品警察署長こうありまして、広島市宇品警察署長が判を押しております。そこで商工部長の申請はこれであります。  商工第四七〇号   昭和二十六年三月十三日          山口県商工部長    西日本海事工業(株)社長殿   陸奥超過引揚物件非鉄金属   の代金決裁について  昭和二十六年一月十六日付商工第八六号をもつて払い下げた非鉄金属及び鉄くず三〇、三〇〇キロの価格が左記の通り決定いたしましたから別紙納入告知書により、折返し代金納入願いたいとして、非鉄金属及び鉄くず、数量三〇、三〇〇キロ、トン当り四千二百五十一円、この金額が十二万八千八百五円、こうなつておるのであります。これがおかしいのであります。最初引揚げるときの会社の見積りが一トン八万円、これの引揚げ費用を六万六千円と見て、一万四千円、三〇%の利潤を県に納入するということになつておる。このトン当り一万四千円を、何で四千二百五十一円にしたかというわれわれは疑いを持つのであります。まことにこの商工部長のやり方がけしからぬ。しかも建議省の方を聞いてみると、一切の費用を出さぬという指示をしておる。監督費として七十何万出しておる。九十三万で売つたものを七十何万、あるいは六十何万というような金を出し、さらに要求したけれども、出さなかつたというようなことも現われて来ておりますが、何がゆえに商工部長がこのスクラップの、しかもくず鉄ならいざ知らず、あの砲金でつくつたスクリユー一つ四トンもあるというものを四個、十六トン、これを日立の因ノ島に売つてしまつた。こういうふうにしてもうけているにもかかわらず、なおこれをば、この一万四千円のはつきりしたものを四千何ぼにした、約九千八百円を値引きをしたかというような点について、われわれは疑問を持つのであります、この商工部長のやつたことに対しても、あなたは責任を負わなければならぬのでありますが、負いますか、どうですか。
  283. 田中龍夫

    田中証人 その間の価格の問題につきましては、私詳しく存じませんので、調べましてから措置をしなければならぬと思います。この商工部長のその文書でございますが、これはさらに部内の方をよく調べまして申し上げます。
  284. 田渕光一

    ○田渕委員 今最初から伺つて責任の所在、あるいは契約書の文面、あるいはまた知事責任山口県当局の、いわゆる官選の知事でなくて、山口県民が、最も適任なりとして当選せしめたところの現知事田中君に対して、われわれといたしましては結論を出さなければならぬところに来ております。それは、この問題は数日にわたつて調べて参りましたけれども、結局建設省は、山口県がこうやつたんだと言う。あるいはまた中国財務局は、山口県から書類一本で国有財産に引渡されたのだと言い、あるいはまた大蔵省の管財局は、中国財務局長のやるべきものを差追つてつた、いろいろありまするが、結局この問題は、契約書に基いて、当時の内務省の引継ぎである建設省から、こうやれという指示事項を受けてやつたところの契約の当事者である山口県の責任であると私は思う、ここまで来れば。われわれはこれをもつて、ほんとうに全国にいろいろな物的な問題があります。     〔大泉委員長代理退席、委員長着席〕配炭公団の問題といい、あるいはまた肥料公団、あるいは専売公社、いろいろな事件を扱つて参りましたけれども、この国を滅ぼしたような大きな戦争の、しかも当時国民の感情として、われわれが意を強うしておつた戦艦陸奥に、二千何百人のわれわれ同胞の乗組員が、七年間も海の底にほつておかれた、今日まで山口県がどういう手をとつたか、とらなかつたかという点、あるいはもうけようと思つて探して来たところのものが、事がだんだん現われて来ると、英霊を揚げたということでありますが、これも決して無償で揚げておらぬ。厚生省から、最大の要求の額でありましよう、一柱五千円という費用をとつておる。こんなぐあいにして、精神的に申しましても、特に国民感情とからみ、戦前われわれが何千万かかつたか何億かかつたか、今日つくれば何十億かかるかわらぬこの国民の血税でつくつた艦の中に、われわれのはらからの英霊が放置されておる。その英霊を無視してやつて来た。この契約にその文字が一言も入つていないということは、これはわれわれは感情に走るばかりではありません。終戦直後における道義、信仰の真の欠如というものが、こういう事業をして失敗せしめたものである。やはり事業は天神諸仏の御加護がなければ、できるものじやない。護国の英霊をまつらずにこれをやつたからだと思うのでありますから、この問題をこのまま龍頭蛇尾にして、どこの責任だ、どこの責任だと、私は逃がしたくない。一罰百戒、ほんとうに全国民の模範を示す意味において、あるいは民選された都道府県知事が、国有財産管理その他の扱いをする場合の注意を喚起する意味において、われわれはこの結論を出しおかなければならぬ。逃げようと思つても、結局どこへ逃げても、逃げられません。あなたは官選知事じやない、民選知事で、やつたことをはつきりしておかなければならぬ。この意味において、あなたが責任を認められた点、契約の甲号、乙号、丙号の責任の所在を確認された点、あるいは部下の商工課長が、はなはだ遺憾であつたという点、監督不行届きであつたというような点、こういうよう契約当事者である県そのものも大きな責任を全うしなかつたという責任だけは、私は追究しなくちやならぬと思うのであります。  私は最後にあなたに伺いますが、これに対してあなたは物質的にも精神的にも国家に対して迷惑をかけた、国有財産に対して迷惑をかけたということは、刑事問題の判決をまつまでもなく、いささかでも今日あなたが国民に対して謝罪する意思がありますか、ありませんかを伺つて、この問題に私は結論を与えたい。まだ大泉委員からも質問がありますけれども、私はこれにおいて、この最後の結論の判定の資料にしたいと思うので、ほんとうによく考えた上で返事をしてもらいたい。物質的にも精神的にも、やはり負うべきところを負わなければならぬ。妻子を売つてまでとは言わぬが、私財をなげうつてでも、国民に相済まぬ、英霊に相済まぬ、責任を果しますと、あなたは申されるか、その必要はないと言われるか、その点をはつきりしておきたい。記録に残しておきたいと思いますから……。
  285. 田中龍夫

    田中証人 本件の当初からの経緯は、今さら申し上げるまでもございません。なおまた契約があくまでも適正に施行されるということを前提に置いて進んでおるわけであります。同時にまたこれが適正を欠いた点につきまして、県といたしましては、あるいは中止を命じ、あるいはその他の処置をいたしておるわけであります。なおまた今の県の基本方針と申しますか、あるいはまたこれが命に反して行いましたいろいろな事態というものに対する、先ほど来御質問になりました行政処置の点も、これも当然考えて参らなければなりません。さらにまた県が委任を受けましたその国家事務に対しましての監督責任という問題に対しまして、今日のよう事態が発生いたし、かつまたこれに対しましての委員会までお開きになつて、本件を糾明せられますということは、監督の衝に当る者といたしまして、まことに遺憾に存じます。この点は、かような問題が生起されたことは申訳ないと思います。なお今後のこれが措置等につきましても、さらに詳しく調査をいたしまして、今後の処置を善処したいと思います。
  286. 田渕光一

    ○田渕委員 今後の処置を善処したいというようなことを聞きたいのじやないのです。ここは山口県会じやありません。はつきり申し上げますが、われわれは、あなたが真心から責任を持たれるか、あなたがこのために山口県知事をふつ飛ばそうが、自分の身上がなくなろうが、自分がやつたことに対して、自分の監督不行届きが明瞭になつて来た以上は、自分が責任を負うというのか、自分として責任はないというのか、そこのところをはつきりしてもらいたい。善処しろというような要求を私はしているのじやない。陳謝してくれと言うているのじやない。少くとも民選知事として、山口県の県民を代表する知事として、これだけのことを契約したという権利を持つている。その結果悪かつたとすれば、当然知事としての義務がある。この権利と義務を完全にあなたがわきまえるならば、できないながらも、できるだけ損害の償いをするというのか、全然その意思はないというのか、全然その責任がないというのか、この三つに対して返事をしてください。
  287. 田中龍夫

    田中証人 ただいまの御質問でありますが、御質問の前提として、本件はすべて山口県が悪いのだ、山口県が責任を負うべきだという前提にお立ちになつていただくならば、私はこの点につきましては、県としてとり来りました当初から今日までの処置というものは、いまだその断定をお下しいただくまでのところに立至つていないのではないかと考えますので、軽々に知事といたしまして、それに対しまして、山口県が悪かつた山口県が一切の責任を負うということは、いまだ申し上げかねます。先ほど来申し上げましたように、当初からの建設省との関連におきまして、県といたしましては、これが非常に至難なことであるということは申してございます。またそれに対する免責条項も明記されておるわけであります。なおその間における県行政といたしまして、末端に粗漏の点がありましたことはまことに遺憾にたえませんけれども、それを貫きまする気持におきましては、あくまでも誠実な監督ということをいたしておるわけであります。なおまた契約の更新等につきましても、前の証人が申したと存じますが、県としては、やめるという方針で書類の申達をいたしたものでありまして、その書類の申達が、さらに中央におきまして継続することに相なつておるわけであります。しかしながらこれらの事件がその後に発生いたしましたことにつきましては、まことに残念のことであり、かつまたこれによつて生じましたいろいろな結果に対しましては、遺憾の念禁じ得ないものがあります。しかしながらはたしてこれがすべて県に責任があるのかどうかということにつきましては、私はいまだ必ずしも結論は出ておらない、かようて思います。
  288. 田渕光一

    ○田渕委員 私は最高裁判所の判決をまつて山口県の財産を没収するところまで行きたい。これはしかしこれからの行動だとか、そんな結果を聞くのではない。今日かりにこうなつたけれども、自分らは負うべき責任は負わなければならないというのか、全然山口県にはないというのか、まつた建設省が来たためにこうなつたというのか、あるいはこれはほんとうに中国財務局の責任がここにあつたということがわかつて来るのか、それもあなたはわかりませんか、どうですか。最高裁判所の判決をまつまでは三年も五年もかかるかもしらぬけれども、それをまつてあなたの精神を聞くのではない。ただここまで追い詰めて来て、これだけのものを取上げて、龍頭蛇尾に終つて責任の転嫁でぐらぐらしているのは、結局どこにその真の原因があるのか。山口県として責任の所在を明らかにしなければ、われわれが出しましよう。これ以上あなたも知事として、うかつに県民を代表するところの責任は簡単には負えますまい。ただ私はあなたの精神的な義務を聞きたかつたのです。同時にこの問題がここまで来たという根拠は、一山口県ばかりでなく、一体どこに欠点があつたかということをお気づきになりませんか。参考のために、もしあなたがお気づきであつたならば、その点もひとつこの際証言を  いただきたい。
  289. 田中龍夫

    田中証人 ただいまの御質問でございますが、これらの特殊物件あるいはまた国有財産の扱いにつきましては、いろいろの問題が全国的に各地に起つております。これらの特殊物件というものの扱いの問題は、私はやはりこういういろいろな問題が起きませんように、今後国有財産その他の管理につきまして、はつきりと筋を通しておかなければならぬ、かよう考えます。これもその一例でございますけれども、ことにこういつた海没物件というような水中のものに対する処置につきましては、当初からわれわれが非常な懸念をいたしましたように、今後もかような点につきましては、十二分にその辺をはつきりと前から規定しておかないと、あとになつてから具体的な問題にかりまして、いろいろな問題が起つて来ると思います。なおそれ以上の点につきましては、これは私の申し上げるべき筋合いではないと存じます。
  290. 大泉寛三

    ○大泉委員 沈没した軍艦の乗組員の氏名がやがて判明するのでありましようが、物品としてはないでしようが、しかし何といつても、搭載物件という中には、遺体に属する物件もあると私は思うのですが、そういう物件あるいは遺体の付属品の返還要求があつた場合には、山口県としてどういう処置をとりますか。
  291. 内藤隆

    内藤委員長 あなたの御質問の趣旨は、その遺骨がだれそれということが判明して、それがお持ちになつておつた所有物を遺族から請求された場合に、山口県はこれに対してどういう責任を持つかという点ですか。
  292. 大泉寛三

    ○大泉委員 遺体とともに、物体はもうほとんど腐蝕しているでしようが、そういうものに対して、名前が知れると、自然県を相手に要望されるだろうと思うのです。そういう場合に県としてどういう処置をとられるかということです。
  293. 田中龍夫

    田中証人 これらの御遺体が揚りました場合には、各戦地からもどられました英霊と同じように判明いたし次第御遺族には伝達いたしております。なお当陸奥ような、しかも海岸に近接したところの沈没船でございます。しかも大量にまとまつたような件につきましては、やはり合同慰霊祭を必ず執行しなければ相ならぬものと考えております。なお御遺族の方へも御遺体の判明次第は逐次御伝達を申し上げております。
  294. 内藤隆

    内藤委員長 他に御発言がなければ、田中証人に対する尋問はこれにて終了いたしました。  証人には長時間御苦労様でありました。  次会は公報をもつてお知らせいたします。なお理事会は来週木曜四月三日午前十一時にこれを開くこととしたいと田』います。  本日はこれにて散会いたします。     午後五時二十一分散会