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1952-05-07 第13回国会 衆議院 建設委員会 第28号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年五月七日(水曜日)     午後二時八分開議  出席委員    委員長 松本 一郎君    理事 内海 安吉君 理事 鈴木 仙八君    理事 田中 角榮君 理事 村瀬 宣親君       淺利 三朗君    小平 久雄君       西村 英一君    河口 陽一君       中島 茂喜君    増田 連也君       池田 峯雄君    田中織之進君  出席国務大臣         建 設 大 臣 野田 卯一君  出席政府委員         特別調達庁長官 根道 廣吉君         大蔵事務官         (主計局給與課         長)      岸本  晋君         総理府事務官         (特別調達庁労         務部長)    中村 文彦君  委員外出席者         議     員 稻田 直道君         労働基準監督官         (労働基準局給         與課長)    宮島 久義君         建設事務官         (住宅局住宅企         画課長)    鬼丸 勝之君         専  門  員 西畑 正倫君         専  門  員 田中 義一君     ————————————— 本日の会議に付した事件  建設行政に関する件  日本国との平和條約の効力の発生及び日本国と  アメリカ合衆国との間の安全保障條約第三條に  基く行政協定実施等に伴い国家公務員法等の  一部を改正する等の法律案内閣提出第一七八  号)  宅地建物取引業法案瀬戸山三男君外十一名提  出、衆法第二八号)     —————————————
  2. 松本一郎

    松本委員長 これより建設委員会を開会いたします。  建設行政に関する件について調査を進めます。すなわち去る四月十七日午後三時より翌日にわたつてつた鳥取市の大火に関し、その被害実情及びこれが対策等について調査を進めたいと思います。これに関しまして発言通告があります。これをこの際許したいと思いますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 松本一郎

    松本委員長 御異議ないものと認め、さよういたします。通告順によりまして内海安吉君。
  4. 内海安吉

    内海委員 私は去る四月二十日及び二十一日の両目、鳥取市に参り、大火災被害状況並びに対策に関し視察調査して参りましたので、その概要を皆様に御報告いたし、同市の復興対策の御参考に供したいと存じます。  鳥取市の大火は、去る十七日午後三時、鳥取駅の東南方営動源温泉裏手の民家から出火し、約十メートルの南の強風にあおられて、市内中央部を南から北へ、十二時間にわたり燃え続け、旧市街八千戸中の五千二百戸を焼失し、戦後最大の火災となつたのであります。市の中央部には、川幅約三十メートルの袋川が東西に流れており、消防隊はこれで猛火を食いとめようとしましたが、対岸に引揚者のバラツクが建つており、消防ポンプの不足と相まつて、大事に至つたということであります。  鳥取駅より県庁に至る、南北の大通り若桜街道を北に進んだ火の手は、街道の右手にある鉄筋コンクリート三階建の富士銀行建物でようやく食いとめられ、これより先の市役所、県庁は、災厄を免れることができました。同じコンクリートの建物でも、古く建てられた国警本部は、ガラス窓から火が入つて防火に役立たず、また土蔵の多くは灰燼に帰したのでありますが、前述の冨士銀行は、窓の防火シヤツターが完備していたため、さすがの猛火を食いとめ得た点は、かかる大火災に対して、近代的に整備された耐火建築物が、いかに役立つかを物語るものであります。  罹災面積は四十万坪、燒失家屋は五千二百戸、罹災人員は二万四千人と算せられておりますが、このうち六千名が当時なお小学校寺院等に収容されて、不安な生活を送つている状態でありました。鳥取県は、御承知のごとく昭和十八年の大震災によつて、壊滅的な打撃をこうむつてから九年目、ようやく復興の途上において、今日再びかかる大火にあつたので、その惨状は言語に絶するのであります。しかし災害後の食糧衣料等に関する応急対策は、比較的順調に進み、私が市内に一泊した際には、在日米兵站部より、トラツク百二十台に及ぶ、食糧を主とした救援物資が送られ、午前三時頃よりごうごうたるトラツクの響きが明け方まで続きました。深夜に鳥取知事輸送隊長とが、感激的な握手をかわしたと、うような場面も見られたのであります。  現在のところ民心もおおむね安定しているように見受けられますが、何分にも再度にわたる大火災に、市民のうちには、意気沮喪して再起を危ぶんでいる者も少くない状況でありますので、中央より急速的確なる援助の手を差しのべる必要があるものと考えます。鳥取市及び鳥取県よりは、別紙の通り要望書が提出されておりますが、私の直接聞きましたところを総合して、その概要を述べますれば、次の通りであります。  第一に、災害後三日を経た当日、すでに借地借家関係の紛争が生じて、借家人に不安の念を與えている状況にかんがみ、とりあえず知事の権限による建築制限措置を講ずるとはいえ、罹災都市借地借家臨時処理法鳥取市に適用する立法を急速に進める必要があるとのことで、これに関しては、すでに地元議員や私どもの共同提出によつて昨日の衆議院を通過したような次第であります。  第二に、打撃をこうむつた中小企業を立直らせるためには、急速な金融措置要望され、市当局は、商店街厚生運転資金として三千三百戸分五十九億円、一般に対する厚生資金として二千戸分四億円がほしいと言つておりました。  第三に、住宅対策としては、すでに公営住宅法に基く第二種公営住宅千五百戸、住宅金融公庫からの融資二億円、七百戸分が決定を見たわけでありますが、公庫からの融資倍額程度、かつ個人の負担する頭金を少くし、あるいは店舗併用住宅に対する融資も認める等の特別措置要望されております。  第四に、復興計画としては、土地区画整理を行い、主要通路を横幅するほか、近く立法される耐火建築促進法の適用により、若桜街道防火建築帶として、今後再びかれる災害を繰返さざるようにしたいという意向であります。また学校病院等公共的建築物も、できる限り耐火造としたいが、これがため国庫補助並びに起債等に関し、格別の援助をしてもらいたいという要望であります。  県の算定した復興事業費の概数は、建築関係十二億円、文教関係四億円、都市計画関係三億円、その他を合して二十四億円に上る見込みになつております。  最後に以上の諸方策を実現するため鳥取復興法ともいうべき特別な立法を行い、都市計画耐火建築住宅対策資金対策等を総合的に強力に推進することが必要である。すみやかにかかる措置を本委員会においてもとられたいと強く要望されました。  次に鳥取市及び鳥取県の要望事項を御報告申し上げます。  第一に、入江鳥取市長要望であります。住金宅融公庫貸付額に対する各人負担頭金を免除または減額すること。(イ)現在のわくを四億円に増額すること。(ロ)その頭金八千万円を長期貸付とすること。(ハ)または少くとも九割の貸付を認めていただくか、あるいは頭金総額を市の起債に認めていただくこと。金融公庫銀行貸付わくの擴大、商店街厚生運転資金として一戸当り百八十万円、三千三百戸分、金額五十九億四千万円、一般に対しては厚生資金一戸当り二十万円、二千戸分、金額四億円、計六十三億四千万円を増額してもらいたいという希望なのでありました。以上は鳥取市長要望であります。  次に復興計画概要鳥取県の要望について御報告申し上げます。都市計画関係において三億円、これは復興費であります。同上国庫補助見込み金額一億五千万円、さらに地元負担その他において一億五千万円、次に建築関係におきましては、復興費十二億円、国庫補助見込み金額において四億円、その他地元負担等において八億円、民生関係において復興費四千三百三十六万円、国庫補助見込み金額二千百二十八万円、地元負担及びその他において二千百八万円、文教関係において復興費三億九千二百三十六万八千円、国庫補助見込み金額において三億九千二百三十六万八千円、商工関係において、復興費五千八百万円、国庫補助見込み金額は二千八百五万円、地元負担その他において二千九百九十五万円、衛生関係において復興費四億九百七十七万七千円、国庫補助見込み金額二億四百八十八万九千円、地元負担その他において二億四百八十八万八千円、労務関係において復興費二千百五十万円、国庫補助見込み金額千四百万円、地元負担その他において七百五十万円、以上の要求があるのであります。  さらに県の要求でありますが、融資の面であります。起債において十一億九百万円、商工業関係において二十二億四千八百八十万円、農林漁業関係において七千二百七十五万円、合計三十四億三千五十五万円、こういうような要望がありました。なおその後今日まで、鳥取当局において検討した結果、別表の数字が若干かわつて参りましたので、ここで追加して御説明申し上げようと思います。すなわち公共施設復旧等に要する総事業費は、約二十六億六千三百余万円に上り、これらの罹災救助及び公営住宅復旧ため、現在二億円の短期融資が認められておりますが、復興事業促進をはかるためには、さらに最小限八億円のつなぎ資金増額が必要であり、また起債措置早急決定要望しております。  次に鳥取県は、平時においても財政状態がきわめて逼迫しており、昭和二十七年度の当初予算について見ても、総額三十二億五千四百余万円中、地方財政平衡交付金が十二億円、国庫支出金が十億円、県債等国庫に依存するものが三億七千万円あります。県税その他の県固有財源は六億七千万円、総額に対する比率は二割にすぎない状態であります。それが今回の大火により、鳥取市の商工業地帯はほとんど全滅したため事業税入場税遊興飲食税固定資産税等減免措置により、県及び市の財政は、さらに窮迫することになりますので、地方財政平衡交付金増額に関して、強く市民要望しておるのであります。さらに商工業復興資金としては、総額およそ三十六億円を要しますが、これらもとりあえず二十二億円を国庫資金または日銀あつせんの融資としてもらいたいと要望しております。  その他細部にわたる要望事項が数項目ございますが、本委員会と関連が薄い問題と認められますので、私よりの報告はこの程度にとどめておき、足らざる点は本日特に御出席願つております鳥取選出の同僚、稻田、門脇両代議士より補足説明していただきたいと存じます。以上をもつて報告といたします。
  5. 田中織之進

    田中(織)委員 議事進行について……。内海さんの現地調査された報告、非常に御苦労さんであつたと思います。この報告につきまして、私議院運営委員会に出ておるのですが、先般衆議院を代表して、慰問と調査ために派遣せられた方々があるわけであります。その意味で、ただいまの内海さんの御報告は、衆議院を代表して調査に参られた意味合いにおける御報告でありますか、それとも建設委員としての独自の立場における調査の御報告であるかということを確かめたいことが一点でございます。  それから各関係委員会から、実は調査に参らなければならぬ申出もありましたけれども、議院運営委員会におきましては、各委員会からの個々ばらばら調査ではなくて、総合的調査意味で、衆議院を代表した調査団を派遣いたしておるいきさつもありますので、主としてこの委員会が中心になつて、その調査報告に基いて、今後総合的な対策を立てて行かなければならないと思いますので、その点の関係を明確にしていただければ、ただいまの報告も、われわれその意味合いにおいて受取り、これに対する質疑もいたしたいと思います。その点を明らかにしていただきたいと思います。
  6. 松本一郎

    松本委員長 ただいま田中君からの御発言でありますが、当委員会としては、実情調査員の派遣はいたしません。先ほどお話のごとく、議会側として御足労願つて調査をしていただいたのでありますけれども、この調査員報告を、きようは承る予定にはいたしておりません。本日は鳥取市の大火につきましての被害実情について、当委員会として調査するということにいたし、かたがた内海委員は、前建設政務次官等の御関係もあり、かつまた自由党の方から一派遣されて、遠路さつそく現地にお越しを願つて実情等も御調査願つており、かつ当委員会理事でもありましたので、当建設委員会としても、この対策につき慎重なる、かつまた適切なる方途を講じたい、こう考えました。なおまたきようは建設大臣等から、建設省側実情報告も聞きたい、こう考えて、かつ地元鳥取県の選出方々の御意見も、この機会伺つて、要は実情並びにあと復興の具体的な対策を立てる関係上、この調査をするということが目的でありまして、いずれまた機会を見て、国会側から派遣された方の調査報告も承りたい、こう考えております。さような目的できようは建設行政一般の中に組み入れて、この議題を審議する、こういうことにいたしました。どうぞ御了承をお願いいたします。
  7. 田中織之進

    田中(織)委員 ただいまの委員長の御説明で、内海委員から御報告された事情については了承いたしました。問題は鳥取市の非常な大火に対して、早急かつ適切なる方策国会側として講ずることが必要だ、かように考えますので、ただいま委員長お話もありましたように、国会側として調査いたしました調査団報告も、特に本委員会としてはできるだけ早く聴取いたしまして、大蔵省その他各省にまたがる問題でありますから、総合的な見地から、早急かつ適切なる方策が講ぜられるように希望したいと思います。  なお本日はこの委員会に見えておりませんけれども、私の方の党にも、鳥取選出足鹿議員がおられますので、もし委員外発言が許されますならば、農村方面を担当しておる関係もありますので、本委員会においても、発言機会を與えられることを委員長希望申し上げておきます。
  8. 松本一郎

    松本委員長 国会側調査員各位は、明日か明後日お帰りを願うか、こう考えております。しかし事は復興を非常に急ぎます関係で、当委員会専門立場から本日は調査をすることになりました。いずれ国会側調査員のお帰りの上は、その報告を承り、他の委員会とも協議して、各般にわたつてさつそく復興対策を講ずる、こういうことにいたしたいと思います。なおまた地元議員各位からの御発言等ありましたから、いつの機会でも、お願いをいたしたい、こう考えております。御了承をお願いいたします。  次に御発言通告があります。野田建設大臣
  9. 野田卯一

    野田国務大臣 先般の鳥取大火につきましては、私は建設大臣といたしまして、罹災されました市民諸君に対しましては、衷心より御同情申し上げる次第であります。  私はできるだけ早くみずから現地におもむきまして、皆さんを御慰問申し上げ、また御相談に乘りたいというふうに考えておつたのでありますが、いろいろなことのためにどうしても手が放せなかつたのであります。そのことが一応片づきました去る四月二十六日に東京をたちまして、日帰りの旅行でありましたが、現地に参りまして、いろいろと見せていただいたのであります。災害状況等は、県庁からの報告、あるいは写真等によつて大体承知いたしておつたのでありますが、現場に行つて見ますと、駅の近所からながめますと、ほとんど無一物の焼け野原になつておる姿を見まして、災害のいかにも痛々しいのに驚いた次第であります。しかるにもかかわらず、市民諸君が雄々しく立ち上られまして——私の着きましたのはちようど災害の後十日目でありますが、十日目にはすでに五、六百戸の新しいバラツク市民の手によつて建てられておつたのであります。県、市が共同して建てております仮設住宅五百戸のほかに、市民自体の手によつて、五、六百戸の新しい家が建つておる、こういうわけで、その雄々しい立ち上り振りにまつたく心強さを感じた次第であります。  私は市内各所をまわつて歩きましたが、特に力を入れましたのは、市内の燒け残つた小学校に収容されておる罹災民方々でありました。小学校並びに寺院等におられましたが、非常にさんたんたる状態でその日その日を送つておられるというような状態でありましたので、でき得る限り家の問題を考えて上げねばならぬということを痛切に感じたのであります。それからまた家が建ちましても、その後仕事を始められる金にお困りであるということが目に見えておるのでありまして、その生業再開に要する資金の手当という問題に対しましても、政府としては十分あたたかい心でもつて相談に乘り、迅速なる措置を講ずる必要があるということを痛感いたした次第であります。現地ではいろいろと要望もございまして、その中にはすでに中央において着手しておるものもあり、また今後着手すべきものも、いろいろあつたのでありますが、内容は財政上の問題と金融上の問題にわかれるように認められました。法制的な問題につきましては、借地借家につきまして、罹災地借地借家の問題を解決するため立法的な措置がいるのでありますが、これはすでに先月二十八日に衆議院におきまして議員提案でもつてそのことがまとまりかけておるのでありまして、これを急速に通過させていただくことによりまして対処し得るものと考えるのであります。財政上の問題につきましては、御承知のように災害が起きました直後の四日に、とりあえずつなぎ資金として二億円出したのでありまして、これを大体市と県で半分ずつ、一億ずつわけ合つてお使いになつておるような状況でありました。この二億円のつなぎ資金ではとても足らないからというわけで、さらに六億ないし八億程度つなぎ資金が必要である、こういう申出がありまして、ただいまその問題を大蔵省と協議中であります。それから住宅問題につきましては、災害救助法に基きます仮設住宅一千四十四戸でありますが、大体一千戸余を建てることにいたしまして、すでに五百戸につきましては建築中であつたのでありますが、おつかけてまた五百戸程度を増加いたしまして、予定通りに一千戸以上建てたい、こういうふうに考えておるわけでございます。それから公営住宅法による第二種の公営住宅、要するに罹災者を入れるために必要な公営住宅につきましては、法律上におきましても罹災住宅の三割に当るものを建て、またその建てた場合には三分の二の国庫補助ということにきまつておりますので、その戸数は一応一千五百六十六戸というふうに見積られておりまして、この点につきましては、政府の三分の二の負担は、御承知のように八十億の災害復旧費が本年度の予算に計上されておるのでありますから、そこから出したい、こういうふうに考えておる次第であります。それからまた融資住宅、すなわちまた住宅金融公庫からお金を貸しまして家を建てる、罹災者に家を建てる金を貸し付けるという問題につきましては、すぐに二億円というわく設定いたしたのであります。これは十八日に設定をいたしましたが、現地実情は二億円では足りないので、これを四億円にしてもらいたいという御希望がありました。私は二億円では六、七百戸しか建たないと考えておりますが、現地では千戸以上建てたいから四億にしてもらいたい、こういう御要求でありりして、この点につきましては、まず二億わくをつくりましたが、これを必要に応じて三億でも四億でもふやすように目下建設省としては手配をいたしておる、こういうふうな実情であります。こういうわけで、仮設住宅、あるいは公営住宅、あるいは融資住宅というふうな方法をもつて進んで参ります。そのほかに市民自体自分の自力によつてお建てになるものも相当ありますので、こういうものをかれこれ取合せますと、五千戸以上燃えたのでありますが、そのほぼ大部分のものが目鼻がつくことに相なるのではなかろうか、こういうふうに考えております。  それから都市計画の問題でありますが、都市計画は去る昭和十八年に御承知のように鳥取大地震がありまして、それに伴なつ火災が起り、当時の鳥取市はほとんど鳥取に帰したのであります。その直後に都市計画が施行されまして建て直しをしたのでありますが、それが徹底を欠いておつたという点があるのであります。今回は火災の経験に照しまして、できるだけりつぱな、理想的というと言葉があまりりつぱ過ぎますが、要するにしつかりした、りつぱな都市計画を実行したいというわけで、この点につきましては何よりもまつ先に着手をいたしまして、ただちに図面を引きまして、まず建築線設定する必要があるというわけで、建築線設定に着手しておりました。私が参りましたときには、建設省の役人が十数人と、それに学生の応援隊が四十何名一緒になりまして、市内に旗を立てまして、線を引いて盛んに杭打ちをいたしておつたのであります。その作業が大体五月の二日ごろに終つておるはずであります。遅くとも五日ごろには終るというような予定を聞いて参りました。それがきまりますとあと換地処分でありますが、換地処分を五月中には完了したいというようなことを申しておりました。あの分で行けば、現地の人々の非常に御熱心なる御努力によれば、これも実行ができるのではないかというふうに考えておるのでありまして、この都市計画事業を遂行するためには、大体四億円くらいの金がいるのではなかろうかと見積られておりますが、これに対しましても、財政をやりくりまして、何とか支弁いたしたいというふうに考えておるのであります。それから都市計画に次ぎまして、今回の火災は、鳥取市には木造の家屋ばかりであつて不燃建築が少かつたということが一つの大きな原因になつておりますので、不燃建築の町をつくりたい、もちろん全部を不燃建築にするということはとてもできませんので、いわゆる防火帶地区につきましては不燃建築をいたすと  いうことに指定をいたしまして、それがために若桜通りという駅前から県庁に至るメイン・ストリートを防火帶に指定いたしまして、おそらく事業費は四億円くらいかかると思いますが、これによりまして今後の火災防止に十全の備えをしたいというふうに考えております。これにつきましては、議会で御審議中の耐火建築促進法通りますればただちにこれを発動したいというふうに考えておる次第であります。それからその他公共建物、たとえば小学校であるとか、中学校であるとか、盲学校であるとか、あるいは病院であるとか、保健所とか、いろいろなものが燒けておりますが、こういうものにつきましても、今後はでき得る限り不燃建築にいたしたい。今は金がなくて困つておる県財政でありますけれども、火災を再び繰返さないという意味におきまして、ぜひとも不燃建築にいたしたいと考え、また中央官庁出先がありましたり、あるいは会社銀行等出先、あるいは本店もありますが、そういうものにつきましても、今後は不燃建築を原則としてやつて行くように、あるいは勧奨し、あるいはその方針で臨みたい、こういうふうに考えておる次第であります。  それからあと生業等に関する資金の問題でありますが、これにつきましては、県、市におきまして保証をいたしまして、一般銀行から罹災者自分生産資金を借入れることができるような措置を講じておりますので、きわめてこれは機宜を得た措置だと考えます。その他預金部資金の転貸というような方法も考えられておりますが、これにつきましてはまだ結論を得ておりません。ただいまわれわれの方から案を示しまして、大蔵省で検討をいたしておるという実情であります。政府といたしましては、その他いろいろな方法を講じまして、できるだけ早く鳥取市の復興がなり、市民方々が再び安んじて生業に従事されることができますように、最善の努力をいたしたい、こういうふうに考えておる次第であります。簡単でありますが、一応御報告といたします。
  10. 松本一郎

    松本委員長 この議題に関しまして、ただいま稻田直道君より委員外発言申出があります。これをお許しするに御異議ありませんか。お諮りいたします。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  11. 松本一郎

    松本委員長 御異議なしと認めます。稻田直道君。
  12. 稻田直道

    稻田直道君 今回の鳥取市の大火にあたりまして、さつそく国会並びに政府より適時の措置が講じられ、かつ建設省といたされましては、大臣がおいでになりまして、つぶさにその状況を視察になりまして、今お話のありましたような妥当な措置を今後徐々着々とおとりになるということを承りまして、地元代議士といたしまして、まことにありがたく存じておる次第であります。  本件につきまして、さつそく本会議に申出まして、緊急質問を試みたいと存じまして通告をいたしたのでありまするが、いろいろの事情のために、委員会で特に大臣の出席を請うて質問してくれというような内達がありましたので、特に本日御多用中の大臣を引きとめまして、本件につきまして御質問申し上げる次第であります。  鳥取市は十年前にまれに見る大震災によりまして、その八割程度を崩壊し、それがやや今日に至るまでに復興いたしたとたんにおきまして、今回のひどい大火に見舞われましたことは、財政不如意な県、財政不如意な市といたしまして、まことに痛恨にたえないところと存じておる次第であります。こいねがわくは本委員会におきましても、特別の御同情のものとに、今後適切な御措置をお願いする次第であります。これにつきまして、まず金融関係は大蔵、安本、地財委その他に讓りまして、本日は特に建設大臣の御出席をお願いいたしまして、建設に関する三、四の件につきまして、御相談をいたし、お尋ねいたしまして、今後の復興に関する当委員会における種々の御施策の一端に供していただきたいと思う次第であります。  まずお尋ねいたしたいと思いまするのは、今回の災害復旧事業計画を遂行いたしますためには、公共施設復旧等総額約二十六億六千三百余万円の巨費を要するということに大体計算をしておりまするが、目下補助を決定いたしておりまする二億円のつなぎ短期融資は、ただいまも大臣の申されましたように、公営住宅復旧及び罹災救助による短期融資等に大体限られておりまして、これではとうてい目的を達しがたいのであります。先ほども大臣の御報告中にありましたように、今後なお六億ないし、八億をいただきまして、合計十億円といたしてもらいたいと思つておるのであります。これに対しまして、先ほども大体お話がありましたが、なお御答弁が願いたい。なお地方の県、市といたしまして、爾余のものを負担しなければならないのでありますが、まことに財政不如意な県、市といたしまして、これが措置といたしましては必ずや起債によらなければならぬと思うのでありますが、これらにつきましても、建設大臣といたされまして、地財委ともよく御協力くださいまして、復興ために大いに御盡力あらんことを希望いたす次第であります。  右二点につきまして、あらためて大臣の御方針を承りたいと思います。
  13. 野田卯一

    野田国務大臣 稻田議員が今回の鳥取災害につきまして非常にいろいろと御心配になり、東奔西走されております御熱心に対しましては、敬意を表する次第でありまして、私が鳥取に参りましたにつきましても、稻田議員の切なる御要望、御鞭撻があつたこともあずかつて力ある次第であります。  ただいまつなぎ資金について御質問がありましたが、これは御承知のように、四月十八日の朝、現地の損害状況等がわからぬ先に、大体の見積りでもつて決定をいたしたものでありますが、ただいま相当額の追加要求が出て来ております。これにつきましては今大蔵省と折衝中でありまして、大蔵省で一応どの程度出せるかということをいろいろ検討した結果、出次第連絡をつけるということに相なつておる次第であります。  それから第二段の起債の問題につきましては、私鳥取から帰りましてすぐ、地財委の人々とも会いまして、極力起債を認めてくれるように申したのでありまして、現在の鳥取県並びに鳥取市の財政状況からいたしましては、自力でもつて金を出す余地は全然ないというふうに私は認められるのでありまして、この災害ために大分エキストラの費用が——今まで経常費でない臨時の経費がたくさん出る。そのほかに歳入が非常な欠陷を生ずるというようなことで、出るものはよけい出て、入るものは入らないというようなことになりやすので、予政状態はまつたく火の車でありますので、どうしても国庫補助金でまかなわれない部分は起債によらなければならないという原則的な話合いをいたしまして、この点につきましては地方財政委員会なども十分了承いたしまして、その線において最善の努力をいたしたいというふうに申しておるのであります。今後御希望の線に沿いまして、十分地方財政委員会を督促いたしまして、早期に決定してもらうように努めたいと考えておる次第であります。
  14. 稻田直道

    稻田直道君 ただいまの私の私の質問に対しまする建設大臣のお答え、大体満足いたす次第であります。今後とも本件につきましてよろしくお願いをいたす次第あります。  第二のお尋ねは、住宅金融公庫の取扱いの住宅資金は、先ほどの大臣のお話のように、二億円の貸出してもらうことに決定しておるのであります。これもさらに二億円を増額せられたいと思うのであります。この金は商業関係の店舗の部分には通用しないように記憶しておるのであります。住宅の部分のみに通用いたしまして、商業店舗の部分には通用するに難点があるのではないかというようなことを記憶しておるのでありまするが、こいねがわくは店舗の部分に対しましても、その融資が通用するような御措置を願いたい。通用するようでありましたならば幸いでありまするが、もしせないような場合には、特別な御措置が願いたいと思います。なお融資は八割の融資でありまして、あとの二割は金を借りる者の頭金になつておりまするが、この頭金負担というものが、現在着のみ着のままで燒け出された罹災者につきましては、この頭金の二割というのは非常に苦痛なのであります。これに対しまして特別なる御配慮が願いたいと思いまするが、願えないものでありましようか。願えれば何とか御配慮が願いたいと思うのであります。この三点につきまして、すなわち増額を願うということと、頭金の二割ということと、それから店舗に関する融資ということにつきましての三点につきまして、大臣の御答弁が願いたいと思います。
  15. 野田卯一

    野田国務大臣 ただいま御質問の住宅金融公庫による融資の問題でありますが、二億円は一応のわくでありまして、これは実情に応じて広げたいというように考えております。さらに二億円増額しろというお話でありましたが、なるべくその線に沿いたいというふうに考えております。けさもまた住宅金融公庫の総裁と話しておつたような実情であります。  第二点の、店舗にも擴充しろということでありますが、これは法律の正面から言いますと、店舗だけの部分について融資することはむずかしいのでありますが、住宅というものを広く解しまして、店舗の部分にも及び得るような措置をいたしたいと考えております。  第三点の、頭金の二割を何とかならぬかという点につきましては、今までの災害地の実情におきましては、地方公共団体等におきまして財政支出でもつてこの二割を措置いたしまして、あとの八割は国庫の融資を仰ぐというような措置をとつておりますが、同様な措置ができれば鳥取においてもとつていただいたらいかがか、こういうふうに考えております。なおその二割を別途一般金融機関からの借入金によれるかというようなことにつきましては研究中であります。
  16. 稻田直道

    稻田直道君 ただいまの大臣の御答弁、大体満足をいたしましたが、これもなおよく御善処を願いたいのであります。  條三は防火建築帯建設指定に伴いまして、補助をいただくというわけであります。すなわち復興鳥取市に設定せられまする防火地帯建設につきまして、ただいま大臣は四億円程度はいるであろうということを申しておられましたが、この四億円というものに対しまして、特別の高率の補助並びに格別の御援助が願いたいと思います。すなわち防火建築に対しましては、木造と木造でない部分との差額の三分の二は国と地方が補助してくれるということになつておりまして、今年度のその経費は二億円ばかり、この法律によりまして裏づけの予算決定しておるように思われます。この二億円の補助のうちの三分の二というものを、なおより以上に何とかならぬものでありまするか。同時に鳥取市の復興ために、大幅に何とか援助してもらいたいと思いまするが、この補助と大幅の援助ということにつきまして、大臣の御答弁を願いたいと思います。
  17. 野田卯一

    野田国務大臣 防火帶の問題、すなわち耐火建築促進法に基いての補助金でありますが、一般の際は木造建築耐火建築との差額の四分の一を国、四分の一を地方公共団体において補助するというふうになつてつたと思いますが、災害の場合は今お話のように三分の一、三分の一というふうになつておると思います。これにつきましては二億円というわくがございますが、これは大体鳥取災害なんというものは全然予想しておらなかつた数字でありまして、大体二億円は各地に割振つておるものでありますので、今後補正予算等の機会におきましては、その鳥取災害についての部分だけは少くともふやしてもらうという心組みで進みたい、こういうふうに考えております。
  18. 稻田直道

    稻田直道君 本件につきましてはどうかなお特別の御配慮を今後していただきたいと願望いたします。  次は復興鳥取市の都市計画の費用は、概算四億円内外かかるだろうということを先ほど大臣は申されましたが、大体四億ないし五億はかかるだろろと思つております。予算は四億六百円ということにしておるようであります。その国庫の補助は二分の一だと考えておりますが、この二分の一の補助だけでは、今申しますように財政不如意の県、市といたしましては、とても手がつかぬだろうと思いますので、この二分の一をいま少し何とか願えないものでありますか。かつて戦時中の戦災のときには四分の三まで、こうした費用は国庫補助を得ておつたような記憶を持つておるのでありますが、今回のような、戦争のときの災害とほとんどかわりのない不慮の大火のときでありますから、こうした場合におきましては、何とか四分の三に補助を考えてもらうようなことはできないものでありましようか。大臣の御答弁が願いたいと思います。
  19. 野田卯一

    野田国務大臣 ただいまの補助率の二分の一をもつと高率にならないかという点であります。この点につきましては、現地の御要望もあり、われわれとしても十分に検討いたしております。しかしながら今各省と大体話し合つておるところを申し上げますと、補助率は二分の一ですえ置いた方がいいじやないか、そして足らない二分の一は起債を認めて、起債でもつて措置する。その起債でやつた分につきましては——その起債災害ため起債でありますが、この起債の元利の支拂いに要する金は、地方財政平衡交付金の交付の場合におきまして、特別に考慮してもらうということにすれば、地方財政としては負担が非常に軽減することになるじやないか、こういうような考え方で今進んでおる実情であります。
  20. 稻田直道

    稻田直道君 どうかそういうようにおとりはからいが願いたいと思います。  以上四点につきまして、主として建設方面のことにつきましてお尋ねをいたしたのでありますが、大体お願いできる筋もありますけれども、なおその他予算関係におきましてお願いのできない点が多々あるように思います。よつて今後、県及び市の財政力の補強措置といたされまして、臨時特別法でも制定していただきまして、特に建設関係のいろいろの現在ある法律その他によりまするさわりを、この特別の立法措置によりまして除いてもらいまして、復興したいと思うのであります。これはただに鳥取市のみの問題と私は解していないのでありまして、今後こうした都市の、少くとも三百戸、五百戸以上くらいの都市のこうした災害に当てはまるような法律を、この際鳥取市を救うためにもつくつてもらいまして、今後のこうした災害の対処策としていただいてはいかがかと思うのであります。たとえてみますれば、罹災都市復興促進法とでもいうようなものをつくつていただきたいと思うのであります。それがつくられますならば、鳥取市もただちにその適用を受けまして救われるようになると考えるのであります。そうしたことにつきまして建設大臣は御賛成であるかないか。もし御賛成であつて政府立法としてできなければ、不肖私ども議員立法としてでも提出したいという意見も持つておるのであります。これに対しまして大臣の御意見を承りたいと思います。
  21. 野田卯一

    野田国務大臣 御趣旨ごもつともだと思うのでありまして、災害が最近頻発いたしますので、これに対して何とか考えなければならないというように考えております。ただ一点、ちよつと気づいている点を申し上げたいのは、先ほど補助率の点についても話が出ましたが、たとえば鳥取市あるいは鳥取県は非常に貧弱な県でありますから、補助率を上げるというようなことをいたします。それは私はいいと思いますが、そういたしますと、その次に災害が起りますと、どうしてもこれは均霑をするというのが今までの実例なのでありまして、財政状況が非常に苦しかつた鳥取県の例が、財政状況がそれほどでもない県にも同じように行つてしまうということになりまして、われわれといたしましては、財政状況の悪いところには特に手厚くしたいという意図を持つておりますが、法律のきめ方いかんによりましては、みな総花といいますか、同じように行く、財政状況がよくても悪くても同じように行くということになりまして、先ほど申しました二分の一なら二分の一は国庫で補助する、あと二分の一は起債を認める、その起債の元利の支拂いを地方財政平衡交付金で見て行くということになると、全額政府が見て行くということになつてしまうわけですが、ただ高率にしてしまうというだけですと、富裕な都市を潤おすことになるようなおそれもありますので、そういう点もかれこれ十分研究いたしまして、最善の方法をとりたいと考えておる次第でございます。
  22. 稻田直道

    稻田直道君 これをもつて大体建設関係のお尋ねを終りたいと思いまするが、最初に申し上げましたように財政不如意の県であり、市でありまするし、たび重なる大災害をこうむつておるのでありまするから、特に鳥取県の復興に対しまして、本委員会におかれましても、また建設省におかれましても、大臣その他各当局におかれましても、特別の御配慮をお願いいたしたいと思うのであります。委員外の不肖私が長時間にわたりまとて時間を割愛していただいたこと、大臣の懇切丁寧なる御答弁をいただきましたことを厚く御礼を申し上げまして、私の質問を打切る次第であります。
  23. 松本一郎

    松本委員長 本件に関連質問がありましたら……。——村瀬君。
  24. 村瀬宣親

    ○村瀬委員 鳥取に対しましてはまことに御同情にたえないのでございまして、本委員会もできる限りのことをいたしたいと思つております。そこでただいま野田大臣の御答弁について一言明らかにしておきたいと思うのでありまするが、住宅金融公庫の金を店舗に使えるかどうかという問題であります。これは非常に重大な問題でありまするので、はつきりともう一点御答弁が願いたい。それはたとえば二階を一間住宅にして、下は全部店舗であるというような場合に、二十坪以内であつた場合には、それは全部これを使つてもよろしいものと大臣はお考えになるかどうか、この点を明らかにしていただきたいのと、それからもう一つは、いわゆる不燃化建物防火建築の助成法案でありまするが、これは二億ですが、この法案を審議するとき並びに予算措置をいたしまするときには、鳥取大火というようなことは夢にも思わなかつたのであります。従つてこういう場合には、これは政治的良心として、当然そこへ行く分は補正予算で追加することが常識と思うのでありますが、さように了承してよろしゆうございますか。
  25. 野田卯一

    野田国務大臣 あとの点でありますが、現在まだ二億の法律は通つておらないのでありまして、従つて二億は手つかずにあるわけであります。法律通りましたら、それによつて実行して行くということになるわけであります。でありますから、建前から申しますと、補正予算をすぐ出すということもいかがかと思います。従つて今後補正予算等の場合におきまして処置をいたしたい、こういうように考えておるわけであります。  それから住宅金融公庫融資対象に店舗が含まれるかどうかということにつきましては、住宅金融公庫の金は、あくまで住宅に貸出すわけでありますが、しかし住宅と店舗とが一諸になつている場合が相当あるわけでありまして、店舗が付属している——若干付属しているというような場合におきましては、これを住宅金融公庫融資の対象にいたしたい、その割合等につきましては、どの程度にいたしたらいいか、今検討いたしております。
  26. 松本一郎

    松本委員長 本件に関しまする質疑は、この程度にとどめます。     —————————————
  27. 松本一郎

    松本委員長 次に宅地建物取引業法案瀬戸山三男君外十一名提出、衆法第二八号を議題といたし、質疑に入ります。  質疑は通告順によりこれを許します。池田峯雄君。
  28. 池田峯雄

    ○池田(峯)委員 提案者に質問いたしますが、宅地建物取引業を営んでいる業者は、大体どのくらいの数がありまましようか。そういう基礎数字について、願わく政府当局の方から、建物業者がどのくらいいるか、どういう不正を働いておるか、こういう実相を御報告願えれば、この法案に対する質問をする上に非常に参考になりますので、まずその点を明らかにしていただきたいと思います。
  29. 淺利三朗

    ○淺利委員 現在の業者の数字は、ただいままでは、これを捕促すべき正確な統計はとり得ないのであります。表立つて営業しておるのもありますけれども、ほとんど看板もかけないでやつておる、こういうものもあります。そこで大体の推定によります数字は、全国で大体三万、そうして東京においては七千二百人程度、大阪市が二千五百くらい、こう推定しておるのであります。正確な数字をを捕促し得ないのが現状であります。推定で申し上げます。  なお不正行為については、政府で調べたものがありますから、政府の方から御説明いたします。
  30. 鬼丸勝之

    ○鬼丸説明員 不正行為等の実態調査につきましては、昨年の夏、東京都内の組合に加入しておりまする業者につきまして、無記名各自記入の形で調査をいたしました例がございます。これは後ほどお手元に差上げたいと思つておりますが、その他警察署等でも若干の事例につきましては報告がありますけれども、結論的に申し上げますと、計統的にきつちりまとまつたものはなかなか、つかめない、こういう現状でございまして、この点悪しからず御了承を願いたいと思います。
  31. 池田峯雄

    ○池田(峯)委員 もう少し、たとえばこの法律をどうしても出さなければならないという、そういう客観的な條件となつているいろいろの事実、それは新聞や何かでもその片鱗はうかがえるのでありますけれども、それがどの程度の規模においてそういう不当な行為がなされているか、この実態について御説明願いたいと思います。
  32. 鬼丸勝之

    ○鬼丸説明員 先ほどちよつと申し上げました、東京都の組合員一千名について調査いたしました結果、まとまつておるところによりますとたとえば被害といいますか、不正行為のうちにもいろいろなケースがありますが、大別いたしまして、詐欺的なこと、ないしは横領的なこと、その他というふうにわけて比べておりますが、結局総計百七十件のうち、これはそれだけしか件数が出て来ておりませんが、その件数のうちに、全然被害がなかつたというのが二百三十四件です。それから被害があつたというのが百六十七件、あと七十件については、件数には入つておりますが、被害のあるなしが回答されておらない、こういう状況であります。この被害のありましたうち、詐欺または詐欺に類するものが圧倒的に多いのでありまして、これがそのうち四七%程度占めております。それから横領あるいはそれに類するものが二七%程度、その他いろいろなケースがあるわけであります。これらの悪質行為、不正行のうち、同業者と一般人の区別等も出ております。少しこまかくなりますが、同業者の間で、たとえば詐欺に近いことをやつたというのが八十二件、一般人と業者の間の関係のものが百七十件こういうようなことで同業者間のそういう行為が相当にある、こう考えられるのであります。はなはだ不十分でありますが、そういうわけであります。
  33. 池田峯雄

    ○池田(峯)委員 いろいろな不正が、宅地あるいは建物に関連して行われているということは、想像できるのであります。そういう幾多の事実についても知つているのでありますが、そういうような不正が行われる根本的な原因というものは、やはり住宅や宅地を取得することが非常に困難である、こういういうところに原因があるのではないか、とすれば、政府の方でもつと公営住宅やあるいは住宅金融公庫などの融資わくを広げるという措置が積極的になされない限り、たといこういう法律をつくりましても、やはり不正業者があるのではなかろうか。たとえば食糧が絶対的に不足している場合においては、何ぼ警察が取締つても、いわゆるやみ屋さんという職業を根絶することは不可能である。こういつたようなことから考えてみましても、取締れば取締らないよりはいいかもしれませんが、そういう程度であつて、やはり不正ということを根絶することは不可能ではないか、こういうふうに考えられるのでありますが、この点はいかがお考えになつておりますか。     〔委員長退席、内海委員長代理着席〕
  34. 淺利三朗

    ○淺利委員 まことにごもつともな御意見であります。しかし現状におきましては、宅地建物融資が非常に至難であるということから、いろいろ売買取引の業者も続々と濫出し、またその間に不正も行われるということが実情であります。しかしながら、今日の現状からいいましたならば、敗戦後における日本の国力をもつてして、財政経済の貧弱なる現状において、われわれの希望する程度に、また国民の満足する程度に、公営住宅なりあるいはその他貸家等の建築を望むことは至難であります。これをやれば根本的に問題が解決するとは申しましても、しかしこれがやれない以上は、現状としてはやはり、この取引業の不正行為も自然にここに発生して来る。これを放任してよいかという問題になります。今のお話のように言いますれば、いくら刑法が存在しても、あるいは刑事事犯を取締る規定があつても、犯罪は跡を絶たぬのでありますけれども、その根本の解決ができないからといつて、これを放任するということは許されないと思うのであります。でありますから、根本の問題を解決するということは第一義でありますけれども、しかし現状に即して何かの取締り、規制をしなければならぬということは、必要やむを得ざる措置であると考えまして、この立法措置を講じた次第であります。
  35. 池田峯雄

    ○池田(峯)委員 こういう場合があると思うのです。つまり政府のいろいろな政策の結果から、当然生れて来るものと思うのですが、物価の問題が一つございます。つまり物価が非常に騰貴して、建設資材の急激な騰貴があつた。これは過去二、三年の間にそういうことがあつたと思うそういうために、たとえば三年前に契約した価格をもつてしては建物を建てることができなかつた、その当時では建てることができたのだけれども、その後の物価の変動からどうしてもできなくなつてしまつた、そのために契約の履行を遅延させたり、あるいは建物の質を落したり、こういうふうなことが行われたのではないだろうか。大体不正というケースの何パーセントくらいが、そういう場合に当るのだろうか。そういうことも、悪いといえば悪いのですが、一応これはまた了承しなければならないような理由があつたのではなかろうか、こういうふうに考えられるわけでありまして、そういう点も不正として取締るとすると、取締りを強化して、かえつて弊害が出て来るのではなかろうか、こういう点が考えられますので、どの程度そういう不可抗力的な客観的な情勢から不正が行われたか、こういうようなものはどの程度つたか、この点を伺います。
  36. 淺利三朗

    ○淺利委員 御質問の趣旨がよくわからないのでありますが、たとえば建てたものが物価の騰貴のために、不正な工事が行われた、あるいは取引が遅延したということでありますが、これは建築して売るというような場合の問題にあらずして、売買はそのときそのときに行われるのでありますから、ただ売買行為の行れた、あるいは媒介行為の行われたときに、遅滞なくこれを処理するということで取締れるのでありまして、物価の変動があれば、それはその間には媒介行為が長引いておつたということで、当時の契約と違つたということもありますけれども、それは取引でありますから、もし前に申し込んでおつたものが、物価が騰貴した場合には、前に申し込んだ価格ではいけないということで、再協定ができると思うのでありまして、そういう意味においての犯罪行為というものは、あまり予想し得ないと思うのであります。
  37. 池田峯雄

    ○池田(峯)委員 私の言つたような場合が、建築会社などにたくさんあるわけです。たとえば住宅金融公庫の金を、かわつて申請して借りてやる、そういう手続を私の方でとつてやろう。そして代金は何年間に支拂えばよろしい、五年なら五年で支拂えばよろしい、そういつたよなう契約で住宅を建ててもらう、こういう住宅会社というようなものが方々あります。ところがこれが何年たつても建ててくれない、いろいろ聞いてみると、もう物価が変動して当時の価格では建てられなくなつてしまつた。こういつたような事件があるわけなんです。これはやはり相当多くの問題になつているのではなかろうかと思うのです。この法律では、そういうものは取締れないわけですか。それとも、それはやはりその当時に、代金は年賦で、あるいは月賦で返すということになつても、その者の所有になるのでありますからして、これはやはり宅地建物の取引業の一部に入るのではないか、そういうように考えられるわけで、当然私の見解としては、やはりこの法律が適用されるのではないかと思いますが、その点いかがですか。
  38. 淺利三朗

    ○淺利委員 今の御指摘になりました例は、むしろこれは建設業法で取締るべき対象になると思います。これはただ現在存在するところの建物とかあるいは宅地というものを売買、交換あるいはその媒介をするというようなことでありますから、今あげられた事例は、これは建設業法で取締るべき範囲であると考えます。
  39. 池田峯雄

    ○池田(峯)委員 それで了解します。十八條の「不当に高額の報酬を要求する行為、」この不当に高額の報酬というのは、どの程度のことになりましようか。
  40. 淺利三朗

    ○淺利委員 大体料金の標準は、都道府県知事においてこれを定めるということになつております。その程度を越まてやりますならば、自然これは不当ということになります。それも何か特別の事情があつて、わずかのそれに対する対価が認められる程度なら、これは格別でありますけれども、その程度を越えて内密に、いわゆる社会通念上不当と認められるものは、当然この標準を越えたものがこれに該当する、こう解釈せねばならぬと思います。
  41. 池田峯雄

    ○池田(峯)委員 法案の中で、不当に高額の報酬を要求する行為というものを禁止事項とするからには、現実にどの程度の不当に高額な報酬を要求している行為があるのかということに基いて法律がつくられると思うのでありまして、従つて現実にはどの程度の報酬を要求しているのか、それがどの程度に不当なのか、この点をひとつ……
  42. 淺利三朗

    ○淺利委員 大体現在においては料金の基準はありませんが、ただ業者間におきましては、大体は五%程度を両方から受けておる、こういう実情であります。しかしながら、ある者はいろいろの口実を設けて、いわゆるそれよりはなはだしく超過した料金をむさぼつておる者もあるように聞いております。それらのことを取締るために、今回はそれらの標準を「都道府県知事の定めるところによる。」こう都道府県知事が地方の状況によつて、緩急軽重をはかつて定めるように規定した次第であります。
  43. 池田峯雄

    ○池田(峯)委員 そうすると都道府県知事にまかせるのでありますが、五%ずつ両方からとるという行為を正当な報酬だとすれば、現在五%ずつとつている業者は、何らさしつかえないということになる。従つて現在業者がやつている通りのことが肯定されるわけで、これは禁止事項にも何にもならぬ、こういう結果になるのであります。従いまして、やはりどの程度が不当なのか、五%が不当とか、これは一%でなければいかぬ、こういうふうにやらないと、禁止事項にも何にもならないということです。私の考えとしては、たとえばやみというものを取締るけれども、公定価格をやみ値に上げてしまつたのでは、何の庶民階級に対する利益にもならないわけです。それと同じように、現在建物取引業者等がやつておる行為を、そのまま肯定してしまうような報酬の基準を、都道府県知事が出してしまつたのでは何もなりませんから、法律の上で明確に何パーセント以上はいかぬ、こういうふうにした方がよろしいのではなかろうか、こういうふうに考えて質問したわけです。
  44. 淺利三朗

    ○淺利委員 現在においては、ほとんどこれは公にされたものでないのでありまして、ただ業者間のその申合せによつて、あるいは自粛的にそういう一定の標準を設けております。しかしながらこの法律ができますると、初めてその料金の標準というものは定まるのでありますその報酬はどの程度がよろしいかということは、都会地によつても違います。また地方の小都会というように、おのずからその環境によつて異なつて来るのであります。それらを勘案して、都道府県知事が適正にその標準を定める、こういうのが本法の目的であります。なおその五%と申しましても、少額の場合は大体その標準でありましても、はなはだしく高額の場合においては、あるいは一定の最高限度を設けるとか、段階的にその報酬基準を定めるということも、考慮せねばならぬと思うのであります。これらのことは、今後この法律実施の後において、都道府県知事はその地方の実情に即したところの標準を定めてこれを公定化する、こういうことにいたしたいと考えております。
  45. 池田峯雄

    ○池田(峯)委員 各地方々々によつて報酬の額というのは違うと思います。それで最近取引業者の数も相当数に上つておりますし、結局不当に高額の報酬を要求いたしましても、それに対してお客さんがついて来なければどうにもしようがないのでありまして、やはり正当な報酬の方にほうつておいても自然におちついてしまうのではなかろうか、こういうふうにも実は考えられるわけです。でありますから、県知事がこの正当な報酬というものを規定する場合には、やはりそういつた市場価格とでも申しましようか、そういう通例行われている報酬を基準にするほかない。そういうことになりますから、おちつくところにおちついて行くのでありまして、別に法律できめてもきめなくても、同じような結果になつてしまうのではなかろうか、こういうふうに考えられるわけなのですが、この点はどうなのでございましようか。実際に法律の効果はありましようか。
  46. 淺利三朗

    ○淺利委員 現在のように標準がない場合には、一旦依頼した者が、これが高いか安いか、それはそのときの交渉によりまして、その手数料をまけてくれとか、あるいは売る方が買つた人からだけ手数料をもらつてくれというような取引はしておりましようけれども、しかしこれは現在においては何ら基準がない、業者の定めるところに従うのであります。でありますから、ある者は、その基準のないことをたてにして、不当な請求をする。頼んであとで不当な料金をとられてびつくりする、そういうようなことも起つて来るのであります。今度の公定化の後におきましては、これは都道府県知事も幾らとらなければならぬというのではない。最高基準を定めるのですから、業者はそれ以下において、今御指摘のように、あまり高ければ頼み手がないから勉強するということは、これは当然あり得ると思うのであります。ただ現在においては何らよるべきものがないのであるから、頼む方も基準がわからない。また業者としても不当に高いものをとつても、これが法律上何ら罰せられることがないというような現状でありますから、これを規制しようというのが、今回の法案の趣旨であります。
  47. 池田峯雄

    ○池田(峯)委員 最後に一点だけお尋ねしておきたいと思いますが、都道府県知事報告やあるいは立入検査などをやる権限を持つわけでありますが、こういう場合に、おそらく警察署などがその実際の仕事をして行くことになるのではなかろうかというふうに考えられるわけであります。質屋さんであるとか、あるいは自動車屋さんであるとか、いろいろ警察が取締る相手が最近多くなつているのであります。終戦後においては、警察というものは、戦前とはまつたくかわつて、そういう業務にはタツチしなかつたのでありますが、最近再び警察がそういう業者に干渉したり、帳簿検査をしたりするようなことが多くなつて来ておりますが、この法律が出ますと、やはり警察が、宅地建物取引業者などに対して、一つの権限を持つて来る。そういうことになりますと、現実にどういうことかというと、これは業者の組合などが、警察署に対して飲ませたり養わせたり、そういうことが非常に数多く起つて来まして、そして警察の不当な権限の擴張と申しますか、勢力範囲の擴張といいますか、そういうことが起つて来る。こういうことが予想されるのでありますが、この点提案者はどういうふうにお考えになつておりますか。
  48. 淺利三朗

    ○淺利委員 池田君の御懸念のようなことは、この法案の上から出て来ないと思います。と申しますのは、第一に現在の警察の組織を考えましても、元は県知事の下に警察部というものが属しておつたのでありますが、現在は県知事と国家警察地方本部というものは独立の機関でありまして、知事の指揮監督には従わないのであります。その系統が第一に違つております。第二には、この帳簿検査その他の立入りをするのは、知事の権限で、知事の部下の者がするのでありますから、警察権を持つておりません。のみならず第二十一條の第三項において、「第一項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。」という特別な注意規定もしてありますから、そのおそれはないと思います。ただ犯罪行為があれば、これは当然別個の問題として警察が捜査をする。これは別問題であります。この規定からは当然生れて来ないのであります。
  49. 小平久雄

    ○小平(久)委員 関連して……。ただいま第十八條の、不当に高額の報酬を要求する行為という点で、池田委員から御質問がありまして、これに対して提案者は、不当にというのは、前條の第十七條によつて、報酬の額は都道府県知事がきめる、そのきめた以上は要するに不当だ、そういう趣旨の御答弁のように聞きとれたのでありますが、私はそこはちよつとおかしいのじやないかと思います。そう申しますのは、罰則との関係を見ますと、第十七條に対する罰則は、二十五條で規定し、十八條に対する罰則は、二十四條で規定いたしておるようであります。しかもこの都道府県知事がきめた報酬額以上にとつた場合には、三年以下の懲役もしくは三十万円以下の罰金、こういうことになつておりますし、十八條の方の不当に高額の報酬を要求した場合には、今度は二十五條によつて、一年以下の懲役もしくは十万円以下の罰金、こういうように刑罰もかわつておるのでありますから、当然これは何か違つたことを予想して、こういうふうに規定しておるのじやないかと思いますが、その辺いかがでありますか。
  50. 淺利三朗

    ○淺利委員 この十七條の二項においては、「前項の額をこえて報酬を受けてはならない。」こういうふうに消極的に規定してありますが、しかし実際問題として、たとえば東京の人が静岡県にあるところの建物を買うとか売るとかいうような場合に、わざわざそこまで出張するということになると、普通の報酬額ではできない。そういう場合に実費を請求するというような場合も生じて来るのであります。そういう場合に、はたしてこれが予定金額を越えたから、報酬として不当であるかどうかという問題が出て来るのであります。そういう場合に、真に実費として特別に請求することを、取引をいたした者との間に話合いがついてやつたという場合に、必ずしもこれを不当の報酬と認めるわけには行かないと思うのでありますが、それ以外において、われわれの社会通念上、規定以外に不当の高額の報酬を要求したという者を取締る趣旨において、この第十八條が規定されておるのであります。
  51. 小平久雄

    ○小平(久)委員 そうしますと、都道府県知事のきめる報酬というものは、今お話のような実費というものを含めないところできめるという御趣旨でありますか。
  52. 淺利三朗

    ○淺利委員 これは普通の実費は含むのであります。ただ今例にあげましたように、非常に遠いところに行つて取引をして来るというような場合に、そういう普通の報酬の額の範囲内ではできない。その場合に、むしろこの報酬額では引受けはできないからと断つてもいいのでありますが、しかしその人が信頼を受けたり、また特別の事情によつてその人に依頼するという場合には、相互の協定によつて特別の実費を請求するというような場合には、必ずしも不当なる要求と認めない、こういうことになると思うのあります。
  53. 小平久雄

    ○小平(久)委員 ただいま申しましたように、第十七條違反の場合と第十八條違反の場合とは、刑罰が違うわけであります。第十八條では、不当に高額の報酬を要求する行為、こういうことになつておりまして、単に要求しただけでも、第二十四條によつて三年以下または三十万円以下の罰金、こうなつておるし、今度は都道府県知事のきめに額よりも多く報酬を現実にとつた場合においても、一年以下の懲役、十万円以下の罰金となつていて、要求した行為の方がむしろ罰則が重いというのは、常識的に考えておかしいのですが、これはどういう御趣旨でございますか。
  54. 淺利三朗

    ○淺利委員 十七條は、都道府県知事の定めた報酬を越えて、報酬を受けた場合でも、これは不当に高額に属しないわずかのような場合であります。しかしながら、十八條は、不当に高額の報酬を要求した、こういうのでありますから、そこに悪性がある。こういうことで、この方の刑罰を重く見た次第であります。
  55. 小平久雄

    ○小平(久)委員 その点は私はちよつと提案者とあべこべのような感じがするのであります。この不当にということの御答弁は、きわめて不明瞭でありまして、事情によつてはいま少しくらい都道府県知事がきめたよりも高くとつてもいいのだというようなことで、何かぼやけておつて、しかも刑罰があるというのはどうかと思う。いやしくも刑罰がある以上は、その一線をはつきりしておくという必要がどうしてもあると思いますが、いかがですか。
  56. 淺利三朗

    ○淺利委員 それはごもつともでありますが、この不当という場合を、事例をあげて規定いたしますと、非常に法が狭くなります。この点はひとりこの法律に限らず、社会通念上こういうものは、こういう言い方をもつて現わしておる例もあるのでありますから、今御心配のようでありますと、もつと具体的に何か規定しなけばならぬということになりますけれども、それを一々列挙するということは煩にたえないのであり、また実際の運用上困るという考えでこうしておるのであります。これは十七條と対照して見ましても、十七條の第二項を越えてやつた場合の刑罰は低くて、この方が高い、重いという点から見ましても、どの程度が不当であるということはわずかの額を越えたという場合でなく、あるいは二倍、三倍というような法外な要求をした場合を予想しておるのであります。
  57. 小平久雄

    ○小平(久)委員 この点はそれくらいにしておきまして、なお都道府県知事の定める報酬というのでありますが、これはおそらくは建物なり、宅地なりの所在地を管轄する都道府県知事がきめた報酬、こういう意味だろうと思うのです。と申しますのは、たとえば東京の業者が横浜へ行つてあつせんをするかもしらぬし、逆な場合もあるかもしらぬ。業者の考えによつては、少しうがつた考え方かもしれませんが、東京の業者は東京の都道府県知事がきめたところに従うという考えも出て来るのじやないか。この点はいかがですか。
  58. 淺利三朗

    ○淺利委員 犯罪の原則として、これは属地主義になると思うのであります。でありまするから、東京の人と横浜の人との間に行われる取引の場合においては、東京の人は東京の規定によつてつていいわけであります。また横浜の人は横浜の神奈川県知事の定めたところに従つていいわけであります。ただ東京人が神奈川に行つて、神奈川県の県内の人の相互のものを取扱つた場合には、やはり属地主義でありますから、神奈川県の規定に従う、これが原則だろう思います。
  59. 小平久雄

    ○小平(久)委員 最後に一点伺いますが、大体この法律をつくろうとする動機と申しますか、これがやはり業者の間に多少の不在もあつたことが一つの原因になつておるようでありますが、先ほどの御説明によりますと、何か東京都についての調査によると、特に詐欺的な行為が業者の間に多いというような御説明があつたようであります。ところがこの法案を見ますのに、業者の業務を停止するとか、登録を取消すとかいうようなことが二十條に規定してあるのでありますが、たとえばそういつた刑事的な犯罪を起したというような場合には、別に業務の停止とか、登録の取消しとか、そういうことになるようには規定されておらないようであります。ただ単に破産者が復権しないとか、その他いろいろあるようですが、大体犯罪との関係は、犯罪を犯した場合にもそういう特殊の失格、そういうことにならないでしようか。またそういう規定をしないのはどういうわけでしようか。
  60. 淺利三朗

    ○淺利委員 この都道府県知事の取締り範囲は、この規定に違反した場合でありまして、もし実質的にそれが詐欺行為をなすとか、あるいは横領の行為をなすとかいうことになりますれば、これはひとりこの法律の違反になるのみならず、これは刑事上の実質犯になりますから、その面においては警察で取締ればいい。こういうふうに考えております。
  61. 小平久雄

    ○小平(久)委員 先ほどのこの法律をつくろうとする趣旨が、そういう不正な業者を取除こうということが一つの大きな眼目であるという以上は、裁判の結果そういう違反を犯したということが明らかになつた者に対しては、少くとも一定期間業務の停止を命ずるとか、何かそのいうことがなければ、この法律をつくる趣旨の大半が失われるような気がするのですが、その点はいかがですか、重ねてお伺いします。これは刑事犯罪自体の罰はもちろん別でありますことは申し上げるまでもないのであります。
  62. 淺利三朗

    ○淺利委員 第二十條の第二項の四には、「この法律の規定に基く都道府県知事の処分に違反したとき。」第五には「その他業務に関して著しく不当な行為をしたとき。」というようなものが入つておるのであります。でありまするから、二十條においてはそういう御懸念のような場合は登録を取消される原因になると思います。
  63. 内海安吉

    内海委員長代理 本案に関します質疑は次会に讓りたいと思います。     —————————————
  64. 内海安吉

    内海委員長代理 次に日本国との平和條約の効力発生及び日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障條約第三條に基く行政協定実施等に伴い国家公務員法等の一部を改正する等の法律案議題といたします。  質疑に入ります。通告順によりましてこれを許します。田中織之進君。
  65. 田中織之進

    田中(織)委員 従来進駐軍労務者が実質上国家公務員法の適用の中に置かれて来たのでありますけれども、肉体労働を中心とした進駐軍労務者についてこれをいわゆる国家公務員法で縛るということ自体が無理なのであります。今回講和條約発効に伴い進駐軍労務というものがなくなつて、駐留軍に対する労務に切りかえられる機会に、これを国家公務員法からはずすという本法の提案趣旨に対しましては賛意を表するものでありますが、その立場から二、三点お伺いして見たいと思うのであります。従来国家公務員法の適用を受けておりました場合においても、現実に存在する雇用者側の、いわゆる占領軍というものを背景としたところの不当なる労働行為に対しましては、何ら実質的にはこれが保護されて来ておらないのであります。今回これを国家公務員法からはずして特別職にするという場合に、やはり駐留軍といえども神様でない限り、その労働行為の面におきましていろいろの問題が起ると思うのでありますが、それに対しましては国として、たとえば労働三法との関係等におきましてどういうふうな保護をこれらの駐留軍労務者に加えて行く考えでありますか、まずこの点についてお伺いしたい。
  66. 宮島久義

    ○宮島説明員 従来占領下にありましたために、いろいろ御指摘のような不都合な点があつたかと思われますが、講和発効後におきましては独立国となつたわけでございまして、従つて今後その点はずつと改善されて行くものと考えております。事実行政協定等におきましても、この労務関係につきましては国内法規をそのまま適用するという点が確認されております関係で、今御指摘のような点がずつと改善されて行くものとわれわれは考えております。
  67. 田中織之進

    田中(織)委員 そういたしますと、今度これらの駐留軍労務者は国家公務員法のいわゆる適用を除外されて、特別職的な立場に立つわけですが、国内法と申しますと、いわゆる労働三法の適用を受ける、こういう意味と解していいわけですか。
  68. 宮島久義

    ○宮島説明員 特別職からもはずされまして、まつたく民間の企業に雇用される労働者と労働法上は同様の取扱いを受けることになるわけであります。
  69. 田中織之進

    田中(織)委員 それでややはつきりいたしたのでありますが、それではその点についてもう一点お伺いをいたしますと、これらの駐留軍の労務に従事をする者の雇用主体は、その関係から申しますと、これは日本側だというふうに理解していいわけですか。駐留軍が直接雇用の雇用主になるという立場ではなくて、日本側がこれらの労務者の供給者としての雇用主的立場に立つ、こういうように理解していいわけですか。
  70. 中村文彦

    ○中村(文)政府委員 ただいまの御質問についてお答えいたします。この点につきましては行政協定にもうたつてありまする通り、また再々行政協定の点で国会等におきまして御説明がありましたときにも御質問がありました通り、直接雇用の面と間接雇用の面と二通りございます。従いまして直接雇用の面につきましては、米軍自体が雇用主皆ありまして、一切の責任を負うことになると思います。間接雇用の面におきましては、国が一応雇用主の立場に立ちまして一切の責任を負う。ただこの際先ほど労働省の方から御説明がありましたが、非常に実際上困難なことを予想されますのは、実は作業の指揮監督をいたします面が軍でございます。従いましてこの点は事業主がかりに政府でありましても、その面までのタツチはできない、この点がかりに労働三法が完全に適用されましたあかつきにおきましても、多少遺憾なことがあると考えるのでございます。さような面につきましては今後の軍との折衝におきましてできるだけ明確にいたしまして、軍の指揮監督上の問題につきましては、十分に軍として責任をとるように配慮いたすようにいたしたいものだというふうに考えております。
  71. 田中織之進

    田中(織)委員 特にその直接雇用に属する部分の駐留軍労務者の、従つて身分の問題につきましては、従来国家公務員法で保護されておりました当時においてすら実質的にはきわめて自主性のない立場にこれらの労働者が置かれておつたのであります。その関係が、今後もちろん占領被占領という力関係を離れまするけれども、やはり直接雇用の場合の雇用主が軍自体であるというところに、自主的な労働三法の適用等の問題については、これは法的な保護というものをわれわれ期待することは無理だと思うのであります。従つて軍の管轄地域内で労働に従事する関係からいたしまして、先般国会を通過成立いたしましたところの刑事特別法との関係事項もこれは起らないという保証はできないと思うのであります。その意味において特に直接雇用に属する部分の労働條件の問題等については、労働省において今後駐留軍当局との間に相当詳細にわたり、また日本の労働者の立場を十分考えた折衝が行われなければならない、かなり細部にわたつて行われなければならないと思うのでありますが、労働省としてその点の準備があるのかどうか、承つておきたいと思います。
  72. 宮島久義

    ○宮島説明員 従来からその点につきましては協議をいたして参つております。先ほども御説明申し上げました通り、直接雇用の場合及び間接雇用の場合、この二通りに対しまして完全に国内法が適用になるようにという点で十分話合いを進めておりますので、今までのようなことがずつと改善されて来るものと考えております。ただ軍の機密にわたる点もありまして、軍隊の敷地内でいろいろ起つた点について、たとえば基準法上の監督をどういうふうにするかというような点では御指摘のように困難を伴うものと考えますが、これらの点につきましても原則として国内法規が適用されることになつておりますので、そういう事実があればその事実に基きまして従来よりもその取扱いについて法律の保護を受けしめるような交渉ができるものと考えております。
  73. 田中織之進

    田中(織)委員 その点については主管の労働大臣から実はもつと明確な方針を承りたいと思うのでありますが、現実に実質的な植民地的な状態における労働行為ということに相なるわけでありまして、その点から見ますとこうした方面に働く労働者の地位というものはきわめて不安な状態に置かれるのであります。もちろん原則的には国内法を適用するということについての了解がついておるということはわれわれも承知いたしておるのであります。過去の占領下の経験から申しましても、その点については特にこうした方面に日本人以外に労働に従事するものが現実にないわけであります。その意味から特に労働省当局としても慎重なるやはり態度をとつて、少くともこの点については能う限り具体的なとりきめを進めていただくことを強く要望しておくものであります。  次にお伺いをしたいのは、第五條の関係でありますが、従来のこの連合国軍関係の労働者のうちの技能工系統の労務者の問題について、この法律に従いまして法律第百九十号の十一條による労働大臣の一般職種別賃金の適用を今度は受けないことに相なると思うのでありますが、従来の場合の一般職種別賃金の告示に必要な調査とか、あるいはこの告示というものはこれはもう全然行われないのでありますか、どうか、この第五條の関係と、特にこれに関連する法律第百九十号の第十一條第一号との関係、具体的に言えば、労働大臣が告示する一般職種別賃金の適用除外の問題についての御説明を伺いたいと思うのであります。
  74. 宮島久義

    ○宮島説明員 御指摘のように、この法律が成立いたしますると、一般職種別賃金の適用を受けないことに相なるのであります。たが、一般職種別賃金は駐留軍要員に対して適用がなくなるのでありますけれども、いわゆる公共事業費関係の労働者には今後とも適用が残ることになりますので、それに関する限りの職種別賃金は、今後も告示されて行くことに相なるわけであります。従いまして、これに必要な調査はその都度いたしまするし、今申しましたように、告示の改訂を今後もやつて行くことになるわけでございます。ただ従来一般職種別賃金の適用を受けた駐留軍要員の賃金が、今後職種別賃金の適用を受けないといいましても、その影響は事実上あるだろうと考えられます。従いまして、今後労働大臣が告示を改正する、あるいは調査を実施する等の場合におきましては、その事実関係を十分注意いたしまして、調査及び告示の改正に当りたいと考えておるわけであります。
  75. 田中織之進

    田中(織)委員 その点に関連して、附則の二項に、駐留軍労務者の給與その他の勤務條件については、調達庁長官が第九條第二項の規定によつて定めるまでの間は、従来の連合国軍労務者の給與その他の勤務條件の例によるということになつておるので、ただいま御説明になつた点も、特調長官が新しいこの法律の第九條によるところの規定を行いまするまでは、当然そういうことにもなろうと思うのでありますが、第九條の第二項の規定によつて、駐留軍労務者の給與その他の勤務條件については、調達庁長官がきめるまでというのは、大体いつごろきまるのでありますか。それまでの間は従来の進駐軍労務者の給與及び勤務條件がそのまま続くのでありますか。調達庁長官が新しく九條の二項に従つて給與その他の勤務條件をきめるまではどのくらいの時間がありますか。
  76. 中村文彦

    ○中村(文)政府委員 ただいまの御質疑でありますが、時期のことにつきましては、実は明確な見通しは持つておりません。と申しますのは、ただいまも労働省の方から御説明がありました通り、非常にこの問題は重大な問題でございます。労務者の生活條件の大きなデータをきめる事項でございますので、従つてわれわれといたしましては、かような法律百九十号がはずれます機会に、十分な調査資料を集計いたしますところの力を持たねばならぬと考えております。さような見地からいたしますと、これらの調査が十分整いましたあかつきにおいて、初めて十分責任の持てるような独自の決定がいたし得るものと考えるのであります。ただそれまでの措置といたしましては、御承知通り、公務員の給與ベースの引上げとか、PWの改訂とかいうふうな、いろいろな資料がごございまして、それに基いてやつておりましたので、今後もさような資料もあわせ考慮し、また今後の給與の改訂の仕方などもよく考えました上で、取運びを進めたいというふうに考えております。繰返して申し上げますと、時期の早いことにつきましては、私たちも願つておるのでありますが、さようなわけで、調査その他に十分な力を持ちませんことには、責任を持つた措置もいたしかねるというふうに考えますので、この点については明確な時期はちよつと申し上げかねるのでございます。
  77. 田中織之進

    田中(織)委員 その点も直接雇用の問題はちよつとむずかしいかと思うのでありますけれども、間接雇用の問題につきましては、駐留軍の費用の分担の問題もすでに国会の承認を経て実施されておるのでありますから、分担金の算出の基準から見ましても、大体の線というものがきまつていなければならないと思うのであります。そうしてその條件が従来国家公務員法の適用されていた当時よりもよくなることをわれわれ念願するのでありますが、まあ講和條約が発効してから間もないことでありますから、今すぐこの法律に基いて新たなる給與及び勤務條件をつくり出すことはむずかしいという事情も理解できないではないのでありますが、しかしながら、その点は、ある程度のデータは駐留軍の費用の分担額をきめるときにおいても当然なければならぬものだと考えますので、これはひとつ早急に実施していただきたいということを希望申し上げておきます。  それから第九條の関係でもう一点伺つておきたいのであります。この駐留軍労務者の給與は、その職務の内容と責任に応じて定め、また勤務條件は生計費並びに国家公務員及び民間事業の従事員における給與その他の勤務條件を考慮して、調達庁長官が定めるということになつておるのでありますが、その場合、従来行われて来ました進駐軍労務の関係の給與体系は、事務系統、技能工系統、家族宿舎系統、船員系統の四つにわかれておつたと思うのでありますが、この法律制定後新たにこの九條の二項によつて制定される場合には、そういう系統はそのまま踏襲せられるのでありますか、また新しい給與体系の上に決定されようとするのでありますか、その点を伺つておきます。
  78. 中村文彦

    ○中村(文)政府委員 ただいまのお話は、できるだけ早期に賃金調査態勢その他を整えるようにという御趣旨でありますが、この点につきましては、私どももそのつもりでおりますので、大蔵省方面とも連絡をとりまして、できるだけ早急に調査体制を整えたいと考えております。なお次に事務系統、技能系統、宿舎要員、船員というような系統別の賃金体系のきめ方をやつておる点についての御質疑でございますが、この点につきましては、われわれといたしましても、非常に複雑な体系でありまして、こなし方に非常に苦労いたすような次第でありますので、これにつきましても今後十分研究いたしまして、できるだけ早い機会にすつきりしたものにしたいと考えまして、先ほどお話の線に沿うて陣容を強化の上でさらにやりたいと考えております。
  79. 田中織之進

    田中(織)委員 その点は従来労働の業務の内容に従つてきめて来ておるのでありますけれども、必ずしも画一的にきめるというわけには行かないかとも思いますけれども、やはり一貫した給與体系というもので、その間においてでこぼこのないように考慮願いたいと思のであります。  それからもう一点、これは大蔵省関係にお伺いしたいのであります。附則の三項にあります、條約の効力発生までに従来いわゆる進駐軍労務者として在職して来た期間に相当するところの退職手当の問題でございますが、これは法律によつて保障され、また将来退職の際に支給をする、駐留軍労務者として継続いたしまするならば、駐留軍労務者をやめた場合に、過去の進駐軍労務者として在職した期間中の退職手当も同時に計算して支給されるという考え方のようでありますが、これは本来なら、條約の効力が発生すば事態がかわつて来るのでありますから、條約の効力発生と同時に現金で支給しなければならない性質のものでないかと思うのでありますが、その点については、大蔵当局なりまた労働者の方でどういうようにお考えになつておるか承りたいと思います。
  80. 岸本晋

    ○岸本政府委員 ただいまの、従来の連合国軍労務者に対する退職手当は、今回身分がかわつたときに精算して支給すべきでないかという御質問だろうと思いますが、これは国の立場から見ますると、連合国軍労務者は、今回駐留軍労務者にかわりましても、やはり国が雇用主である。従いまして国との間に使用関係が一応形式的には存続するという点にかわりないのでありまして、これが国家公務員法上の使用人であるかどうかという取扱いの点がかわつてつたわけてあります。実質上の使用関係だけは続いておるわけであります。使用関係の続きます以上、これに対しまして、即座に退職手当を支給するということは、実体的に見ると、何か若干の不合理があるのでございます。それを今回この法律案にございますような措置をとるごとにいたしましたのは、第一に、政府立場から見ますると、一応国家公務員のわくからはずします。そういたしますと、従来の国家公務員に適用されておりますした退職手当法というものが、一応適用がなくなるわけであります。そうした意味合いにおきましては、形式的には退職手当は支給できるという理由も相立つわけでありますが、同時にこれは労務者の方からの考え方といたしまして、講和條約発効の際に、過去の退職手当を一応打切つて計算をしておく、その分だけは確保するということにいたしておきますと、将来いかなる理由によつて駐留軍労務者が解雇されましても、講和條約発効前の勤務期間に対する退職手当はいつでももらえる、こういう保証がつくわけでございます。こうした両方側の考え方を総合いたしまして、この法律で御提案申し上げましたような措置を考えたわけでございます。従いまして、実質的には、何と申しますか、使用関係と申しますか、国との間の関係は続いておるわけでございまして、即座に退職手当を支拂わなければならないという理由は当然には出て参らないのではないか、かように考えております。
  81. 田中織之進

    田中(織)委員 私、その点はやはり問題だと思うのであります。ことに間接雇用の関係につきましては、給與課長が今お答えになつたように、実質的な、やはり国が雇用するという関係が継続することにはなると思いますが、直接雇用の関係に入ります分につきましては、おのずから、その関係は違つて来るというふうに解釈される点が一点と、それから国家公務員に対する退職手当の法律が、国家公務員法からはずす関係から見て直接的に適用がなくなりまして、退職手当に関する問題は、これまた最初に私が御質問を申し上げたように、他の国内の労働法規の関係におきまして、今後とりきめて行くべき筋合いのものだと思うのでありまして、その意味から見て、法律的な変化もあるわけでございますし、実質的な占領下と独立後という事態の変化もあるわけでございますから、私はここでやはり一応、従来のものを計算して、現金で支給してやるべきではないか、かように考えるのでありますが、もちろん財政的な関係ではたしてそういうような部分に充てるところの予算上の処置が今ただちにはあるいは困難かもしれないのでありますが、もし補正予算等を編成する機会があるならば、その部分はやはり予算的処置を講じてやつて、現金で支給するのが私は筋ではないかと思うのでありますが、その点を重ねて伺つておきたいと思います。
  82. 岸本晋

    ○岸本政府委員 ただいまの点でございますが、また同じ御返答を申し上げて恐縮でございますが、この点は、なるほど財政上今ただちに支拂うということになりますと、これは七十億、八十億の金がいりますので、とうてい現在の特調費からは出て参らないのでございますが、将来それに補正予算処置を何か講じてやるかどうかという問題になりますと、これは先ほど申し上げました通り、今回とりましたこの措置は、つまり退職手当は必ず身分が変更したときに支拂うべきものであるという観念は必ずしもとつておらないのでございまして、やはり最終退職の際に支拂う、ただ計算といたしましては、講和條約発効のときまでは必ず確保する、そこで精算して一応確保しておく、かような考えに立つて、この措置を提案申し上げたのでございます。従つて、現金支給をやるのが原則だつた、ただ金が足りないからこの際押えたのだ、従つて将来補正予算で何とかなるであろうというような考え方には、必ずしも立つておらないのでございます。
  83. 田中織之進

    田中(織)委員 その点につきましては、もちろんわれわれ貨幣価値の変動の問題まで持出す考えはございませんが、今後駐留軍労務者が現実に置かれる労働條件及び給與等の問題については、これはやはり現に引続き駐留軍の労務者として労働をしている者につきましても、自由な判断の機会を與えることが本筋だと思う。そういう観点から見まするならば、これは予算処置を講じていないから今ただちには不可能だとすればいたし方のない問題でおりますけれども、少くともこれを現金で一応計算して拂つてやるという建前に立ちまして、次の補正予算等の機会にはその問題を考えてもらいたいという、これは私の希望意見でありますが、申し述べて私のこの点に関する質問を終ります。
  84. 内海安吉

    内海委員長代理 この法案も、また前段の宅地建物取引業法案も、質疑がまだ残つておりますから、この次にまた続行していただきたいと思います。  本日の質疑はこの程度でやめまして、次会は公報をもつてお知らせ申し上げます。  本日はこれにて散会いたします。     午後四時十八分散会