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今井参考人 仲裁委員会のこういつた問題に対する一般的な
立場を一応申し上げます。
われわれの
立場は、個々の
労働問題の
解決をはかるものであります。従
つて一般的に
日本の
賃金政策を定めるとか、あるいはまた
人事院などのように、いわゆる化学的に、いろいろの
資料を時間と
人員に制限なく理想的なものを出すとか、こういつた
立場でもございません。
一つの
企業に起りました
労働問題を、すみやかに
最終的に
解決するという
立場であります。與えられた人数、與えられた日限内において、それを行うために最善を盡すというのが、われわれの
立場であります。従いましてわれわれといたしましては、ここに
一つの問題が起
つて来るわけでありますが、それは
労働問題を
法律の力によ
つて最終的に片づけるということの、よいか悪いかという問題であります。
公労法ではそれがはつきりうたわれておりまして、われわれの
裁定が
最終的な
法律的の
拘束力を持つということにな
つておりますけれ
ども、しかしながら
労働問題のような特に
勤労意欲にからまるような問題は、
ちようど親子関係であるとか、
夫婦関係であるとかいつたような
性質のものと似通
つておりまして、はたで第三者が
両者の
意思にかかわらず、これが
最終だときめましても、これによ
つて真の
解決はとうてい得られるものではないと思うのであります。その
意味から、何とかして
両者の
意思の
合致を求める、そうして
両者が納得したところで話がまとまる、こういつたことが特に
労働問題においては必要かと
考えるのであります。しかしながら
公共金業体の特殊な
性質がございますので、
公労法の
規定があります以上、やむを得ない場合には
仲裁というものが発動せられるわけでありますが、その発動は極力
最小限度にとどめる、でき得べくんば
調停の
段階におきまして、すなわち両
当事者がイエスとかノーとかいうことが言える
段階におきましてこれを
解決することが、
労働問題の
性質上きわめて望ましいことである、こういう
見解を終始と
つて参りました。
仲裁委員会発足以来、
委員のメンバーはかなりかわりましたけれ
ども、この
考え方だけはいまだに続いております。従いまして問題を扱います際におきましても、両
当事者の
意思の
合致した
部分におきましては、われわれといたしまして、かりに
両者の
意思の
合致が間違
つておると認めました場合におきましても、その
意思の
合致によ
つて問題の
審議を進めて参ります。ただ
意思が
合致しない場合におきましては、これは
仲裁委員会独自の
見解をも
つてそのあり方を示す、こういつた
考え方をと
つて参
つておるのでございまして、今回の問題も、その
立場からこれをいたしております。
專売につきましては、
賃金に関しまして
公社発足以来、これは四回目の問題であります。第一回は、先ほど
平林君が申しました昨年の一月に
調停委員会が出した
調停案八千百三十八円という案を、
両者が事実上は納得したのでありますが、
予算上の
関係から遂に成立いたしませんでしたので、これをそのまま
仲裁裁定に持
つて参りまして、それが
予算上不可能ということで
国会のお世話になり、遂に
予算上可能ということに途中で変更になりまして、
実施されたのであります。その後二十五
年度の
賃金につきましては、
調停委員会が八千二百五円という
調停案を出されまして、これは基準外を含んでおりますが、それに基いて
両者が
協定をされまして、
団体交渉で話がうまくまとまりました。
昭和二十六
年度の
賃金につきましては、
調停委員会で話がまとまりませんで、われわれの方へ持
つて参りましたので、われわれの方ではさきに七千九百円という
裁定を行いまして、この
裁定が
実施されまして、今日に及んでおるのであります。この七千九百円という現在の
賃金は、そういつた
裁定によ
つて効力を持
つておる
数字でありますので、この
数字を基礎にいたしまして、われわれは今回の
裁定をいたしたのであります。
公共企業体の
性質上、
予算が
国会のごやつかいにもなりますので、われわれの
立場といたしましては、
賃金に関する
団体交渉は、やはり一年一回これを行うのが適当である。しかもこの七千九百円の
裁定に基きまして、
両者間にかわされました
労働協約によりますと、途中で非常に経済上の変動が起つた場合には、変更するという約束がございますが、この約束は文字
通り解すべきでありまして、いまさら前の
賃金は割安であつた、割高であつたというような議論はかわすべきでない。すなわち経済上の変化だけを文字
通り織り込めばよろしいのであ
つて、新しい
年度の
賃金をきめる場合ならば、あらためて他との権衡であるとか、
賃金そのものに対する本質的な議論を展開することも適当でありましようが、
年度途中における補正は、そういつたきわめて技術的な
立場における修正にとどむべきであるというのが、われわれ三人の
委員の
結論となりまして、この
立場がこの七千九百円と結びつきまして、今回の
結論とな
つておるのであります。
組合側では、それはいかぬ、前の
裁定、現行の七千九百円は安過ぎる、従
つて七千九百円の計算の基礎を、あらためて再検討しろという
要求もございました。また前回の
裁定後、大
企業と小
企業との
賃金の幅が非常に広が
つておる、これを考慮に入れろという強い
要求もございましたが、これもわれわれは拝斥いたしました。
それではなぜこういうふうに
数字が、七千九百円と一万四百円というふうに開いたかと申しますと、一番大きな原因は、七千九百円という
賃金を出しますまでは、過去の
資料、そのときまでにわか
つておつた
資料によりまして、その
資料を中心にものを
考えて参
つたのでありますが、本
年度に入りまして非常に
物価その他の事情がかわ
つておるので、
組合側からは、本
年度は今後の見通しを中心にして
賃金をきめなければならぬという新しい
要求をなさいまして、一方
公社側の方におきましても、経済がかくのごとく浮動な場合におきましては、それもやむを得ないという
立場をとられましたので、この点に基きましてそろばんをはじきますと、
民間賃金は、七千九百円をはじきましたときと比べまして、約二三%はどうしても上るであろう、こうい
つたのがわれわれの技術的な
結論にな
つたのであります。また一方もう
一つ大きな要素といたしまして、昨年の十二月から
実施せられました年末手当、この年末手当の半月分という制度は、七千九百円を決定いたしました際におきましては、これは新たに加わつたものでありまして、結局
基準賃金の繰延べであるという
見解から、本来申せば八千二百円
程度になるべき
賃金をその
部分だけ、約三百円だけ差引きまして、年末手当の半月分を月割りにいたしまして、その
金額分だけ差引きまして
裁定をいたしたのであります。しかしながらこういつた基準外の臨時的な
給與というものは、
資料によりますと民間方面では非常に大きくふえましたので前回の
裁定後の
資料の変動の
一つでございますので、この三百円をもどしまして、八千二百円という基礎に基いて今後の見通しを見る、こういう方法を講じたのであります。ただ問題は、今後主食、電力料、運賃その他のこういつた値上りが、どれだけ
賃金なり生計費なりに影響を及ぼすかという点でありますが、この点はどなたがやられてもきわめてむずかしい問題でありますが、いわゆるCPIがすでに前回の
裁定以来、二七%も上
つておるという点にかんがみまして、われわれは
政府の事務当局の諸君の
意見よりも、この点は結果的にはそれ以上のものがあろうという認定、これまた事実その後においてもそういつた
数字にな
つておるのであります。そこで二三%
程度賃金が上るというものに対するプラス・アルフアーとして、三%の余裕を見積
つたのであります。それが結局一万四百円の基礎であります。まつたく技術的にはじいた以外に何らの手も加わ
つてはおらないということを、この
裁定につきましては御了承願いたいと思います。
その他
組合の
要求といたしましては、赤字補給金の問題も、われわれはスライド制その他の特約がない場合、排斥すべきであるといつた見地から、
調停委員会が認められたにかかわらず、
仲裁委員会は全面的にこれを拒絶いたしました。また一万四百円に変更の日時も、七月という
要求は、七月に
要求した
関係並びに主食値上げ等の
関係から、これを八月といたしたのであります。かように
金額におきましても、さらにその
理由とする根拠におきましても、かなり
組合側に不利にな
つている
関係であろうかと思われますが、
裁定書を交付いたしました際に、われわれもこういう
裁定書の交付は、これで何回目かでありますが、今までにない文句を実は
組合側からその席上で受けたのであります。中にはなはだしい言葉としては、こういう
人事院案をはるかに下まわる案を出したことは、
仲裁委員会が政治的に折れたと認める、こういつた発言さえ
裁定書交付の折にいただいたのであります。私はこれに対しまして、まつたく
仲裁委員会を侮辱するものとして、取消しは求めておきましたが、そういつた
立場で
組合がこの
裁定をお受取りに
なつたことも、その自然の発露であろうと私はそのときに実は思
つたのであります。結局
数字的に申しますと、われわれの
立場から申せば、すなおに取上げてすなおに取上げてすなおにはじいただけでありまして、別に何らのやりくりもこの中には含まれておりません。
ただ問題は、これが
予算上
公共企業体として
專売公社の経理能力の範囲内にあるかどうかという点でありますが、この点は
裁定理由書にもございますように、私
どもは約四億
程度のものは十分やりくりがつくのではないか、今の
補正予算の各費目の中にはないかもしれませんが、先ほどからお話のあるように、
予備費等におきましても見込み得るでありましようし、なお私は今後の
生産増、
国庫納金の増、利益の増といつた面に特に期待をしたいのであります。これは
企業的な
立場から当然なところではなかろうかと
考えるのでありますが、四億と申しますと
金額的にはかなりまとまつたものになりますが、
專売全体の経理から申しますと〇・二%の
金額であります。ピースに引直せば、これは四十円のうち八銭に相当する問題であり、二十円の新生に引直せば四銭の問題であります。新聞紙上で承るところによりますと、
專売公社におきましては十二月からさらに、タバコの小売に対しまして小売の割引料をふやそう、こういう御計画があるそうでありますが、この新聞紙の説によりますと、ピースに対しまして一個
当り二十銭だけよけい小売に渡す、新生につきましても二十円に対して一分ですから同じく二十銭よけい渡す、それに比べますとこの八銭とか四銭とかいう
金額がはるかに小さなものであることは、ぜひお耳に入れておきたいと思うのであります。大体
公共企業体となりまして、官業の悪いところをなるべく改めまして、国民経済のために寄與させるという
立場に立ちますならば、率直に申しましてただいまの
予算総則にあります
給與総額の
建前のように、人数は何人、
賃金は幾ら、こういつたきめ方をするよりも、全体の
予算で幾ら幾ら、これだけの益金を
国庫に納付せよという大幅な経理のやりくりを認めた方が、より能率が上るのではなかろうかと、われわれは常に
考えて議論をいたしておるものであります。もし最も国民経済的に
考えますならば、この
金額は認めるが、しかしながらこの
金額と同等以上の、つまり十億も十五億もひとつそのかわり
国庫納金をふやしてほしい、これだけの
努力を両
当事者に期待するといつた
解決が、私
どもこの際としては最も賢明な措置ではなかろうか。また両
当事者がここで納得されまして、真に
專売事業のために
努力されるならば、従来の足どりにかんがみまして、今後ともそういつた見通しも必ずしも不可能ではなかろうと
考えるのであります。またそれが結局において国民経済に対しまし、ても、最もよい結果をもたらすものと
考えるのであります。
なおまた
最後に一言申し上げたいことは、この一万四百円は国家
公務員と比べますと、割高であるというようなお話も耳にするのでありますが、こまかい検討は私
ども必要がないのでいたしておりませんが、ただいま伝えられております一万六十二円というのが
公務員の
ベースであるといたしますと、大ざつぱに申して確かに
專売の方が割高であろうかと思います。しかしながらもし
公務員に全部引直して
賃金をやることが、
專売給與の道であるという
考え方に立たれるのならば、願わくば
專売公社法を書き直されまして、
專売職員の
賃金は
公務員の例による、こう明白にお書きになりまして、
專売職員からも
賃金に関する
団体交渉をはずしまして、そして一切
公務員並におやりになるのが、妥当ではなかろうかと思うのであります。少くともマ書簡に基いて
公社制度を設けて、
公労法というものを打立てた以上は、そこに私
どもむろんりくつのつかない、また支払い能力を越えました賃上げに対しては、大いに異論を持つものでありますけれ
ども、
公務員の安い高いは必要がありませんから申し上げませんが、そういつたものからとにかく引直して来るということは、結局において現行の
專売公社法並びに
公労法を否認する結果になるであろうということを、一言つけ加えさせていただきたいと思うのであります。