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1951-11-06 第12回国会 衆議院 労働委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年十一月六日(火曜日)     午前十一時十五分開議  出席委員    委員長 倉石 忠雄君    理事 島田 末信君 理事 福永 健司君    理事 森山 欽司君 理事 青野 武一君       天野 公義君    金原 舜二君       佐々木秀世君    船越  弘君       松野 頼三君    柳澤 義男君       門司  亮君    今野 武雄君       赤松  勇君    中原 健次君  出席政府委員         大蔵事務官         (日本專売公社         監理官)    久米 武文君         労働政務次官  山村新治郎君  委員外出席者         日本專売公社総         裁       秋山孝之輔君         参  考  人         (公共企業体仲         裁委員会委員         長)      今井 一男君         参  考  人         (全專売労働組         合中央執行委員         長)      平林  剛君         專  門  員 横大路俊一君         專  門  員 濱口金一郎君     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  公共企業体労働関係法第十六條第二項の規定に  基き、国会議決を求めるの件(内閣提出、議  決第一号)     ―――――――――――――
  2. 倉石忠雄

    倉石委員長 ただいまより会議を開きます。  これより公共企業体労働関係法第十六條第二項の規定に基き、国会議決を求めるの件、議決第一号を議題といたします。  この際ごあいさつを申し上げます。本日は御多忙中にもかかわらず本件審査のために特に御出席を願いました参考人各位に対しまして、厚くお礼を申し上げます。何とぞ隔意なき御意見の御開陳をお願いいたしたいと存じますから、よろしく御了承をお願いいたしたいのであります。  本件につきましては昨日の本委員会におきまして、西川大蔵政務次官より提案理由説明を聽取いたしたので、ただちに関係各位の御意見を求めることといたします。まず日本專売公社総裁秋山君の御説明を求めます。秋山專売公社総裁
  3. 秋山孝之輔

    秋山説明員 本日は私ども労働関係について御審議をいただきまして、まことにありがとうございます。私ども專売公社理事者といたしましては、従来労使協調を得るために、ことに従業員福祉につきましては、なるべくその待遇について改善をはかるために、今日まで盡力をいたして参つたのでありますが、幸いにして今日までは世の中に申す労働争議というようなことなしに済んで参つたことは、私ども理事者として組合員協調に対しては、常に感謝をしているのであります。しかるところ本年の七月に、ただいまのベース裁定せられたときの一項に、ベースをきめる上において取入れた條項にはなはだしい変化があつたならば、さらに協議をするという一項があるのであります。その一項に基いて、組合ベース・アツプ要求して参つたのであります。これは七月であろうかと思いますが、ただちに双方団体交渉に移りましたが、私ども見解といたしましては、組合の当時の要求の一万一千八百円というものに対しましては、予算上とうていさような多額のベース・アツプはできないという趣旨のもとに、十数回にわたつて団体交渉を続けたのであります。しかしなかなか組合員要求は強く、とうてい団体交渉がまとまらないということで、双方合意の上、法規に基いて調停委員会にお願いを申し上げたのであります。調停委員会においても、あるいは団体としあるいは個人として、双方個別に協議をいたして、相当努力をいたされたのでありますけれども調停委員会調停も一万一千なにがし、百円まではならなかつたのでありますが、そういう金額で、これまた公社としてはとうていこれに応ずることはできないということで、はなはだ調停委員会の御努力に対しては相済まなかつたのでありますが、私どもこれを拒絶せざるを得なかつたのであります。ためにまた両方協議の上、仲裁委員会最後の判定を願うということで九月にお願い申し上げ、仲裁委員会の愼重な御審議をいただいて、月半ばに裁定が下つたのであります。その裁定は、主要なる部分を申し上げますれば、月額一万四百円という金額、それになお付随した項目が五項目ありますけれども、これが主要なるものであります。  そういう裁定をいただいたために、私ども公労法を尊重して、これは最後の決定でありますから、公社といたしましてももとよりこれに服従するつもりで、予算上、資金上の面をいろいろ考慮、研究いたしまして、監督官庁たる大蔵省に対して、ぜひこの案を承認していただきたいということを申し述べたのでありまするが、はなはだ不幸なことでありまするが、この承認を受けられないという状態に立至つておるのであります。ために本日国会の御審議を得て、私どもはこの公労法精神を尊重して、この裁定を受入れたいという希望を持つておるのであります。はなはだ簡單でありますけれども私の説明はそれだけにとどめたいと思います。  なおこの機会に、国家最高の機関たる国会に対して、一言おわびを申し上げなくてはならないと思うのであります。それは何かと申しますと、私どもの社中四万の中から、今日この裁定が成就するように、その精神はよくわかるのでありますけれども国会の付近においてハン・ストをせざるを得ないような状態になつたのでありますが、私は責任者としてこれを阻止できなかつた。このように、民主国家においてさようなことが行われ、私の管掌においても責任が盡されなかつたということについては、この機会国会議員諸君に私はおわびを申し上げたいと考えます。
  4. 倉石忠雄

  5. 平林剛

    平林参考人 私は全專売労働組合中央執行委員長平林剛であります。私ども組合は、組合員が約三万八千、北は札幌地方局から南は鹿児島地方局まで、約六十四の支部にわかれておるのでありまして、專売公社職員で構成をいたしております。  この機会に、私ども企業に対する地位を申し上げておきたいと思います。專売公社タバコ生産については、昭和二十一年当時はわずかに四百六十三億程度生産しかしげることができまませんでしたが、今日昭和二十六年度においては御承知のように八百二十億、つまり戰前の八百億を越え、今回の補正予算におきましては八百四十八億という、厖大な生産数量を上げる役割を果しておるのであります。これは私どもだけの努力だけではなく、專売公社総裁を初めとする経営者の手腕によるところも多いと思いますが、またわれわれの努力も、ある意味では買つてもらえるものではないかと思うのであります。たとえばわれわれ一年間に歳入の面におきまして千八百八十三億以上の金でありまして、補正予算案によりますれば、專売益金といたしましても千百七十五億以上の国庫納付を行つておるところでも、專売企業における役割はどんなものであるか、明瞭であろうかと思うのであります。特に本年四月以降は、販売数量においてこの八月までの間に、專売益金を超えること約六十七億五千万円、現在では七十数億の專売益金確保しておるわけであります。  私ども組合として、かような企業実態に基きまして、本年七月四日、專売公社に対して賃金要求をいたしました。この要求額は一万一千八百円でありました。私ども朝鮮動乱以後の物価の上昇に伴いまして、生活の維持が困難になりましたことと、従来給與に関する協定を行つておりましたが、この協定の根幹になつておりました民間産業賃金が著しく変化して参りましなので、七月以降專売公社との間に団体交渉行つて参つたのであります。この経過はすでに御承知通り、八月二十五日に調停委員会から、基準賃金を八月以降一万一千九十三円にすることの調停案が提示されたのであります。そして公社は一時金として一人当り平均四千七百円の金額を支給しろ、という意味調停案が提示されたのでありますが、総裁説明いたしました通りに、公社は受諾し得ない立場をとりましたので、われわれは今後の物価の上昇に対する生活上の不安がありましたことと、調停案公社が拒否した上は、即時実施することができないから、仲裁裁定を求めようという考えで、調停案を同様に受諾せずしてこの調停案は不成立に終りました。  こんな経過を経まして、今回国会の御審議を煩わしておるような裁定が提示されたのでありますが、今回提示されました裁定は、組合要求からいいますと、基準賃金において約千四百円低いものであります。しかも実施月は八月と相なりました。調停案よりも六百九十三円低いのであります。しかも調停案に提示されました一時金四千七百円は、仲裁委員会の否定するところとなつてしまいました。しかし組合はこの裁定に対しまして、公労法第三十五條の建前から、また組合員生活の窮状を一日も早く救いたいと考えましたので、これに服従をいたしたのであります。これに対する政府態度は、すでに御承知通りであります。私はこの際政府が今回の裁定にいろいろ見解を述べていることについて反対の意見を申し上げたいと思います。  まず第一点は、專売裁定予算上可能であると思うのであります。これはしばしば私ども專売公社との間に団体交渉を持ちまして、いろいろ專売公社の経理の面について検討いたしました結果でも明らかであります。つまり專売公社総裁が明らかにいたしましたように、裁定を履行するために必要な経費はあるのであります。既定予算予備費が約二十億ほどありますが、この中に八億円程度の余剰は生まれて来るのでありまして、大蔵大臣がこれに流用の承認を與えさえすれば、予算上可能であるのであります。  もう一つは、大体政府予算上不可能であると言われておりますが、今この臨時国会においては補正予算審議中であります。私はもし政府公共企業体労働関係法に対する正しい理解がありましたならば、予算上不可能ということはまつたくおかしな話ではないかと思うのであります。專売裁定が提示されたのは十月の十二日であります。これが調停仲裁もみ合つて紛争が続いておりました当時は、大蔵省補正予算を編成中であつたのであります。この補正予算を編成しておるときに、公共企業体労働関係法によつて仲裁委員会賃金裁定をしようとする傾向は、大蔵省当局といえども御存じないとは言えないのでありまして、この補正予算編成中に裁定の傾向を見ながら、その実施が可能なような予算お組みかえるということは、もし公労法に対する精神が正しく理解されていたならば、当然のことであろうかと思うのであります。私は大蔵省当局がこの実態を無視して、補正予算を御自分の政策上の点からつくり上げてしまつて、これで予算上不可能である、かような言葉をおつしやられておるのは、まことに理解に苦しむところでありまして、結局公労法に対する観念の問題ではなかろうかと思うのであります。  また特に政府あるいは大蔵省人たちの中にはしきりに、專売公社裁定を実施すると、バランスがとれなくなるというような御意見が述べられておるようでありますが、私はこれも次の点で正当ではないと思うのであります。第一に、公共企業体労働関係法において、賃金に関する団体交渉権をわれわれに與えておるのであります。それぞれの企業におきまして団体交渉が行われ、その団体交渉の結論によつて賃金協定が成り立つのでありますから、多少はバランスが失われることは、私は当然のことではないかと思うのであります。專売公社法の第二十一條に「公社職員給與は、その職務と責任に応ずるものでなければならない」かような規定があります。冒頭に申し上げましたように、專売公社職員終戰以来、二倍になんなんとする生産実績を上げ、しかも本年度の予算におきましても、予定以上の專売益金を上げておるのでありまして、こういう企業実態に即しても、私は大蔵省がただバランス論だけで專売裁定を御否定なさるのは、あまりにもバランス論にとらわれ過ぎたお考えではなかろうか。大体国会におきましては公労法をお定めになつて賃金その他の紛争については、処理仲裁委員会におまかせしてあるのであります。仲裁委員会專売賃金は一万四百円にするという裁定を下したのでありまして、これは国会の御意思に基いて仲裁委員会がその紛争処理をまかされて、紛争解決のために、裁定を下されたのであります。政府が、この際裁定が出たら、これに対してバランスがとれないとか、やれ何とかいう異議をさしはさんで、ことさらに紛議をかもしておるのは、私は国会がおきめになつ公労法精神公共福祉に反して行く結果をもたらすものであると思うのであります。  大蔵大臣予算委員会におきましても、特に国鉄とのバランスの点を心配されたようでありますが、この点について意見を申し上げますと、專売公社法公労法のいずれを見ましても、国鉄とのバランスがまつたくぴつたり同じでなければならぬという規定はどこにもありません。また国鉄賃金に比較をして、專売賃金が低くなくてはいけないという規定もどこにもないのであります。私試みに最近国鉄あるいは公務員との比較を調査いたしてみましたところが、毎月勤労統計によります工業平均一〇〇に比較いたしまして、昭和二十五年の四月において公務員は八三・三でありまして、專売公社賃金は七三・三であつたのであります。この関係は本年に入りまして、昭和二十六年の一月におきまして工業平均一〇〇に対して、公務員は九〇・一の割合を示しております。ところが專売公社賃金は七五・四でありました。この数字はベース賃金において、公務員より專売公社賃金が低かつたということを表わしておると思うのであります。  この機会專売公社平均年齢その他について御説明しておきますと、專売公社平均年齢は約三十・二歳で、公務員は約二十九歳であります。平均勤続におきましても、專売公社平均勤続は七・七年で、公務員は七年であります。これはいずれも人事院が使用いたしました資料によるところであります。このほかに專売の勤務時間は四十四時間、公務員の勤務時間は四十一時間三十分、私は公務員に比較いたしましても、專売賃金は今まで低かつたのではないか、かようなことさえ言い得るのでありまして、もし大蔵大臣バランスのことをほんとにお考えになつていただくならば、そうしてまた民間賃金との対比をしていただいたならば、この際專売賃金裁定よりもつと上げていただいてもけつこうではないかと思つておるのであります。かりに平均年齢とか勤続とか、そういうものをぴたり同じにしてはじいて、それでバランスがとられたとお考えになりますれば、これはもう一つの大きな理由である專売企業実態を無親したバランス理論ではなかろうか、かように考えておるのでありまして、結局大蔵省当局がこのバランス論を唱えますのは、これは專売企業実態專売労働者に対する無理解によるところが多いのではないか、かように考えるのであります。  ただいま申し上げました通り專売公社労働者は年間千百七十五億円に上る專売益金を国庫に納付し、政府に協力して参りました。本年度におきまして專売公社従業員は、四月当時は約三万九千五百五十人であつたのでありますが、七月現在は三万八千八百十七名というぐあいに、逐次人員が減少しつつある中で、先ほど申し上げましたような專売益金確保、むしろ予定以上の專売益金の増加のために努力をしております。私どもも一日当りの製造では、約三万三千五百八十万本を製造しておりまして、一日平均いたしますと、金額に換算いたしまして五億程度の益金を上げておるのであります。もし大蔵大臣專売労働者に対して、今後も專売益金確保を期待いたしますならば、すみやかに裁定を尊重して、われわれが喜んで專売企業に協力をし、生産努力をする、こういう建前をとられることが、大蔵大臣が一番心配している財政確保の面からも、当然のことではないかと思うのであります。  最後に、全專売労働組合といたしまして、裁定に関する今日までの経過に伴う態度を申し述べますと、私ども公共企業体労働関係法が施行されて以来、裁定に出つくわすのはこれで三度目であります。一度目は、御承知のように昭和二十五年の初春において、例の一億二千八百円の承認、不承認の問題で、国会に御審議を煩わしたところであります。裁定が提示されてから約三箇月間もみにもんで、結局裁定を履行することになりました。第二回目は、昭和二十六年の三月に、基準賃金を七千九百円にすることの裁定がありまして、これは專売公社大蔵省拘束下にありましたために、人員を約千二百名程度減らすことによつて裁定を履行いたしたのであります。言いかえれば專売労働者の一人当りの労働負担の過重によつて裁定を実施されたのであります。今度が三度目であります。私はこの三回の経験にかんがみまして、組合としては公共企業体労働関係法は、この際根本的な修正を行うか、撤廃を行うか、どちらかが必要であるという意思を深め、その実現を要求いたしておるのであります。大体專売裁定というものは、これは労使双方紛争最終的結論であるのか、裁定が提示されてから紛争が始まるのか、どうもこの辺これまでの政府の取扱いは、紛争最終的処理裁定に求めているお考えではないように思いますが、この点について政府は十分御検討願いたいと考えているわけであります。もし政府仲裁委裁定が出るたびに異議がありましたならば、私は今度は政府が私ども交渉相手に直接なつていただきたいと思つておるのであります。そして仲裁委員会紛争処理をまかせるのではなしに、政府みずからが当事者として交渉相手になつていただきたい。公労法法律趣旨を十分お考えになつていただくならば、政府みずからが裁定のたびに紛争を拡大するような方法は、ぜひおやめになつていただきたいと思つておるのであります。われわれの特に強調いたしたい点は、今の月給ではとても生活ができないということでありまして、この点政府バランス論であるとか、あるいは裁定についていろいろ御意見を述べられておりますが、組合員の現状をお考えになつて、一日もすみやかに裁定が履行されることを深く期待するのであります。公労法に対して專売労働者は、今まできわめて忠実な態度を持つて参りました。これからも無用な紛議は、極力これを愼んで参りたいと考えております。ただ三度目の正直と申しまして、今日までの政府見解では、とても普通の態度ではだめではないか、こう観念をしようとしておるのであります。ただいま総裁から、国会の周辺においてハンガー・ストライキに私ども組合員が入つておることについて、国会に遺憾の意を述べられましたが、私もこの点については同様であります。同時に政府に対しても、今までのような態度では、裁定の出るたびに無用な紛議を起すものである、かような点を特に強調いたしたいと思うのであります。今組合では政府に対して、すみやかに裁定が実施されるような無言の抗議を始めようとしておりまして、もしこのままで参りますれば、われわれは今後の生産に対しても協力する態度を放棄するようになるのではないか。もしわれわれが八時間の労働に対して協力しなかつたならば、約五億円の專売益金が少くなつて行くのではないか。私は政府に対してこの際四億円の予算澁つて專売裁定を実施しないで行かれるのか、あるいは今後数百億円の專売益金確保のために、法律に基いた精神従つて裁定を実施せられるのか、どうするかということを強く問いたいと思つておるのであります。  いろいろ申し上げましたが、私は大蔵大臣は国の財政問題については、すこぶる数字の明るい方だと聞いておりますが、しかしわれわれ労働者のほんとうの気持については、あまり御理解がないようであります。その点につきまして私ども專売公社労働者は、国会審議に対して深く期待をいたしております。特に政府の與党である自由党の諸先生に対しましては、現在の紛議がすみやかに解決して、政府公労法趣旨に基いて、よい慣例を残すように御盡力をお願いしたいと懇請する次第であります。裁定を実施することは、決してこれによつてタバコが値上りをするわけのものでもありませんし、予備費の流用によつて国民大衆に直接迷惑をかけることになるわけでもないのであります。むしろよい労働慣行を確立いたしまして、專売労働者生産に対する意欲を燃やし、そのために生産が上り、專売益金確保公共福祉に通ずるものでありますから、国会の御善処を深く期待いたしまして、私の意見を終ります。
  6. 倉石忠雄

    倉石委員長 次に公共企業体仲裁委員会委員長今井一男君に御意見をお述べ願いたいと存じます。
  7. 今井一男

    今井参考人 仲裁委員会のこういつた問題に対する一般的な立場を一応申し上げます。  われわれの立場は、個々の労働問題の解決をはかるものであります。従つて一般的に日本賃金政策を定めるとか、あるいはまた人事院などのように、いわゆる化学的に、いろいろの資料を時間と人員に制限なく理想的なものを出すとか、こういつた立場でもございません。一つ企業に起りました労働問題を、すみやかに最終的に解決するという立場であります。與えられた人数、與えられた日限内において、それを行うために最善を盡すというのが、われわれの立場であります。従いましてわれわれといたしましては、ここに一つの問題が起つて来るわけでありますが、それは労働問題を法律の力によつて最終的に片づけるということの、よいか悪いかという問題であります。公労法ではそれがはつきりうたわれておりまして、われわれの裁定最終的な法律的の拘束力を持つということになつておりますけれども、しかしながら労働問題のような特に勤労意欲にからまるような問題は、ちようど親子関係であるとか、夫婦関係であるとかいつたような性質のものと似通つておりまして、はたで第三者が両者意思にかかわらず、これが最終だときめましても、これによつて真解決はとうてい得られるものではないと思うのであります。その意味から、何とかして両者意思合致を求める、そうして両者が納得したところで話がまとまる、こういつたことが特に労働問題においては必要かと考えるのであります。しかしながら公共金業体の特殊な性質がございますので、公労法規定があります以上、やむを得ない場合には仲裁というものが発動せられるわけでありますが、その発動は極力最小限度にとどめる、でき得べくんば調停段階におきまして、すなわち両当事者がイエスとかノーとかいうことが言える段階におきましてこれを解決することが、労働問題の性質上きわめて望ましいことである、こういう見解を終始とつて参りました。仲裁委員会発足以来、委員のメンバーはかなりかわりましたけれども、この考え方だけはいまだに続いております。従いまして問題を扱います際におきましても、両当事者意思合致した部分におきましては、われわれといたしまして、かりに両者意思合致が間違つておると認めました場合におきましても、その意思合致によつて問題の審議を進めて参ります。ただ意思合致しない場合におきましては、これは仲裁委員会独自の見解をもつてそのあり方を示す、こういつた考え方をとつてつておるのでございまして、今回の問題も、その立場からこれをいたしております。  專売につきましては、賃金に関しまして公社発足以来、これは四回目の問題であります。第一回は、先ほど平林君が申しました昨年の一月に調停委員会が出した調停案八千百三十八円という案を、両者が事実上は納得したのでありますが、予算上の関係から遂に成立いたしませんでしたので、これをそのまま仲裁裁定に持つて参りまして、それが予算上不可能ということで国会のお世話になり、遂に予算上可能ということに途中で変更になりまして、実施されたのであります。その後二十五年度賃金につきましては、調停委員会が八千二百五円という調停案を出されまして、これは基準外を含んでおりますが、それに基いて両者協定をされまして、団体交渉で話がうまくまとまりました。昭和二十六年度賃金につきましては、調停委員会で話がまとまりませんで、われわれの方へ持つて参りましたので、われわれの方ではさきに七千九百円という裁定を行いまして、この裁定実施されまして、今日に及んでおるのであります。この七千九百円という現在の賃金は、そういつた裁定によつて効力を持つておる数字でありますので、この数字を基礎にいたしまして、われわれは今回の裁定をいたしたのであります。公共企業体の性質上、予算国会のごやつかいにもなりますので、われわれの立場といたしましては、賃金に関する団体交渉は、やはり一年一回これを行うのが適当である。しかもこの七千九百円の裁定に基きまして、両者間にかわされました労働協約によりますと、途中で非常に経済上の変動が起つた場合には、変更するという約束がございますが、この約束は文字通り解すべきでありまして、いまさら前の賃金は割安であつた、割高であつたというような議論はかわすべきでない。すなわち経済上の変化だけを文字通り織り込めばよろしいのであつて、新しい年度賃金をきめる場合ならば、あらためて他との権衡であるとか、賃金そのものに対する本質的な議論を展開することも適当でありましようが、年度途中における補正は、そういつたきわめて技術的な立場における修正にとどむべきであるというのが、われわれ三人の委員結論となりまして、この立場がこの七千九百円と結びつきまして、今回の結論となつておるのであります。組合側では、それはいかぬ、前の裁定、現行の七千九百円は安過ぎる、従つて七千九百円の計算の基礎を、あらためて再検討しろという要求もございました。また前回の裁定後、大企業と小企業との賃金の幅が非常に広がつておる、これを考慮に入れろという強い要求もございましたが、これもわれわれは拝斥いたしました。  それではなぜこういうふうに数字が、七千九百円と一万四百円というふうに開いたかと申しますと、一番大きな原因は、七千九百円という賃金を出しますまでは、過去の資料、そのときまでにわかつておつた資料によりまして、その資料を中心にものを考えて参つたのでありますが、本年度に入りまして非常に物価その他の事情がかわつておるので、組合側からは、本年度は今後の見通しを中心にして賃金をきめなければならぬという新しい要求をなさいまして、一方公社側の方におきましても、経済がかくのごとく浮動な場合におきましては、それもやむを得ないという立場をとられましたので、この点に基きましてそろばんをはじきますと、民間賃金は、七千九百円をはじきましたときと比べまして、約二三%はどうしても上るであろう、こういつたのがわれわれの技術的な結論になつたのであります。また一方もう一つ大きな要素といたしまして、昨年の十二月から実施せられました年末手当、この年末手当の半月分という制度は、七千九百円を決定いたしました際におきましては、これは新たに加わつたものでありまして、結局基準賃金の繰延べであるという見解から、本来申せば八千二百円程度になるべき賃金をその部分だけ、約三百円だけ差引きまして、年末手当の半月分を月割りにいたしまして、その金額分だけ差引きまして裁定をいたしたのであります。しかしながらこういつた基準外の臨時的な給與というものは、資料によりますと民間方面では非常に大きくふえましたので前回の裁定後の資料の変動の一つでございますので、この三百円をもどしまして、八千二百円という基礎に基いて今後の見通しを見る、こういう方法を講じたのであります。ただ問題は、今後主食、電力料、運賃その他のこういつた値上りが、どれだけ賃金なり生計費なりに影響を及ぼすかという点でありますが、この点はどなたがやられてもきわめてむずかしい問題でありますが、いわゆるCPIがすでに前回の裁定以来、二七%も上つておるという点にかんがみまして、われわれは政府の事務当局の諸君の意見よりも、この点は結果的にはそれ以上のものがあろうという認定、これまた事実その後においてもそういつた数字になつておるのであります。そこで二三%程度賃金が上るというものに対するプラス・アルフアーとして、三%の余裕を見積つたのであります。それが結局一万四百円の基礎であります。まつたく技術的にはじいた以外に何らの手も加わつてはおらないということを、この裁定につきましては御了承願いたいと思います。  その他組合要求といたしましては、赤字補給金の問題も、われわれはスライド制その他の特約がない場合、排斥すべきであるといつた見地から、調停委員会が認められたにかかわらず、仲裁委員会は全面的にこれを拒絶いたしました。また一万四百円に変更の日時も、七月という要求は、七月に要求した関係並びに主食値上げ等の関係から、これを八月といたしたのであります。かように金額におきましても、さらにその理由とする根拠におきましても、かなり組合側に不利になつている関係であろうかと思われますが、裁定書を交付いたしました際に、われわれもこういう裁定書の交付は、これで何回目かでありますが、今までにない文句を実は組合側からその席上で受けたのであります。中にはなはだしい言葉としては、こういう人事院案をはるかに下まわる案を出したことは、仲裁委員会が政治的に折れたと認める、こういつた発言さえ裁定書交付の折にいただいたのであります。私はこれに対しまして、まつたく仲裁委員会を侮辱するものとして、取消しは求めておきましたが、そういつた立場組合がこの裁定をお受取りになつたことも、その自然の発露であろうと私はそのときに実は思つたのであります。結局数字的に申しますと、われわれの立場から申せば、すなおに取上げてすなおに取上げてすなおにはじいただけでありまして、別に何らのやりくりもこの中には含まれておりません。  ただ問題は、これが予算公共企業体として專売公社の経理能力の範囲内にあるかどうかという点でありますが、この点は裁定理由書にもございますように、私どもは約四億程度のものは十分やりくりがつくのではないか、今の補正予算の各費目の中にはないかもしれませんが、先ほどからお話のあるように、予備費等におきましても見込み得るでありましようし、なお私は今後の生産増、国庫納金の増、利益の増といつた面に特に期待をしたいのであります。これは企業的な立場から当然なところではなかろうかと考えるのでありますが、四億と申しますと金額的にはかなりまとまつたものになりますが、專売全体の経理から申しますと〇・二%の金額であります。ピースに引直せば、これは四十円のうち八銭に相当する問題であり、二十円の新生に引直せば四銭の問題であります。新聞紙上で承るところによりますと、專売公社におきましては十二月からさらに、タバコの小売に対しまして小売の割引料をふやそう、こういう御計画があるそうでありますが、この新聞紙の説によりますと、ピースに対しまして一個当り二十銭だけよけい小売に渡す、新生につきましても二十円に対して一分ですから同じく二十銭よけい渡す、それに比べますとこの八銭とか四銭とかいう金額がはるかに小さなものであることは、ぜひお耳に入れておきたいと思うのであります。大体公共企業体となりまして、官業の悪いところをなるべく改めまして、国民経済のために寄與させるという立場に立ちますならば、率直に申しましてただいまの予算総則にあります給與総額の建前のように、人数は何人、賃金は幾ら、こういつたきめ方をするよりも、全体の予算で幾ら幾ら、これだけの益金を国庫に納付せよという大幅な経理のやりくりを認めた方が、より能率が上るのではなかろうかと、われわれは常に考えて議論をいたしておるものであります。もし最も国民経済的に考えますならば、この金額は認めるが、しかしながらこの金額と同等以上の、つまり十億も十五億もひとつそのかわり国庫納金をふやしてほしい、これだけの努力を両当事者に期待するといつた解決が、私どもこの際としては最も賢明な措置ではなかろうか。また両当事者がここで納得されまして、真に專売事業のために努力されるならば、従来の足どりにかんがみまして、今後ともそういつた見通しも必ずしも不可能ではなかろうと考えるのであります。またそれが結局において国民経済に対しまし、ても、最もよい結果をもたらすものと考えるのであります。  なおまた最後に一言申し上げたいことは、この一万四百円は国家公務員と比べますと、割高であるというようなお話も耳にするのでありますが、こまかい検討は私ども必要がないのでいたしておりませんが、ただいま伝えられております一万六十二円というのが公務員ベースであるといたしますと、大ざつぱに申して確かに專売の方が割高であろうかと思います。しかしながらもし公務員に全部引直して賃金をやることが、專売給與の道であるという考え方に立たれるのならば、願わくば專売公社法を書き直されまして、專売職員賃金公務員の例による、こう明白にお書きになりまして、專売職員からも賃金に関する団体交渉をはずしまして、そして一切公務員並におやりになるのが、妥当ではなかろうかと思うのであります。少くともマ書簡に基いて公社制度を設けて、公労法というものを打立てた以上は、そこに私どもむろんりくつのつかない、また支払い能力を越えました賃上げに対しては、大いに異論を持つものでありますけれども公務員の安い高いは必要がありませんから申し上げませんが、そういつたものからとにかく引直して来るということは、結局において現行の專売公社法並びに公労法を否認する結果になるであろうということを、一言つけ加えさせていただきたいと思うのであります。
  8. 倉石忠雄

    倉石委員長 これより本件について政府並びに参考人各位に対し質疑に入りたいと存じます。  なお一般労働問題についての質疑につきましては、別の機会を持ちたいと存じますので、本件の範囲内に限定して質疑を行われるよう特に御考慮をお願いする次第であります。  なお質疑の通告者も多数あるわけでありますから、なるべく重複を避けられまして、要点を盡されるようにお願いをいたします。  これより質疑を許します。島田末信君。
  9. 島田末信

    ○島田委員 專売公社仲裁裁定実施するにあたりまして、政府は資金上、予算上不可能な理由をもつて公労法第十六條第二項の規定に基き、国会議決を求めて参つたのでありますが、これに対してこの際簡単に数点質問申し上げたいと思います。お答えについては、それぞれ所管の関係者より適当にお願いいたしたいと思います。  まず仲裁裁定を尊重しなければならぬということは、公労法建前から申しまして当然であります。政府といえども、またわれわれ国会といえども、これを尊重することにおいては、お互いに決しておるそかではないと考えるのであります。ただ政府におきましては、既定の予算内においてはこれは不可能だ、さらに今回補正予算も出されておりますが、それらの給與改善費から申しましても、これが議会を通過してもなお四億ばかり足りないという理由をもつて、不可能だと言つておることも明瞭であります。しかしながら公労法精神にがんがみて、仲裁裁定を尊重するといたしますならば、その限りにおいて適法に、また財政秩序を乱さないように、いろいろと経費を節約して、その中からでも捻出するというふうな方法も考えられますが、要はこれはただ單なる事務的な考えではなく、この裁定を尊重して行こうという誠意と熱意を持つて進めば、打開の道は必ずあるのではないかとわれわれも考えておる次第であります。政府においてはこの專売公社仲裁裁定を尊重するとともに、これを具体的にどう解決して行くか、どう最善を盡して行くか、そういう御意思と御用意があるかを、まず承りたいと存ずるのであります。
  10. 山村新治郎

    ○山村政府委員 労働省といたしましては、ただいま島田委員がお話になりましたごとくに、公労法精神により、仲裁裁定の結果は尊重して参りたいつもりでございます。しかし資金上、予算上支出不可能なるがゆえに、ここに国会議決を求め、どういう判定を下されるかによつて政府としての今後の態度をとりきめて参りたいという所存でございます。
  11. 久米武文

    ○久米政府委員 大蔵省政府委員として答弁いたします。仲裁裁定公労法の第三十五條に規定する通り当事者双方に対して、最終的決定として服従しなければならない義務がある。大蔵省といたしましても、この仲裁裁定というものは極力尊重して、これが履行されるという事態が望ましい事態であると考えております。しかしながら公労法は第三十五條におきまして、当事者双方とも最終的決定としてこれに服従しなければならないというのに但書がついておることは、御承知通りでございます。第十六條に規定する事項について裁定が行われたときは、同條の定めるところによるという但書によりまして、第十六條の方を見ますと、「公共企業体の予算上又は資金上、不可能な資金の支出を内容とするいかなる協定も、政府を拘束するものではない。又国会によつて所定の行為がなされるまでは、そのような協定に基いていかなる資金といえども支出してはならない。」こういう現在の法制に相なつておるのであります。第十六條において予算上と申しますのは、現に国会の御協賛を経て成立している現行予算意味でございます。従いまして現行予算におきましては、現行の昭和二十六年度政府関係機関予算予算総則の第二章、日本專売公社の第六條におきまして、昭和二十六年度において、日本專売公社法第四十三條の二十一の規定による日本專売公社の役員及び職員に対して支給する、給與総額は四十一億七千九百六十一万三千円とする。なお但書がついておりますが、四十一億余の給與総額というのは、予算上の制約に相なつております。なお昨日の提案理由説明において申し上げました通り、この給與総額は、今回の予算の補正におきましては四十八億五千九百二十五万五千円ということに相なつております。この給與総額の制約がございますので、かりに補正予算政府の原案通りできまつた場合におきまして、四十八億という補正予算における給與総額を越える部分は、予算上不可能ということになります。かりに專売公社がいろいろな経費を節約するとか、あるいは予備費から流用して来ようとか、いろいろそういうことを考えましても、予算上における給與総額の拘束を免れることはできない。従いましてその点におきまして、公労法第十六條の予算上、資金上不可能ということに相なるのでございます。
  12. 島田末信

    ○島田委員 次に專売公社事業の四月以降における実績を見てみまするに、その製造量におきましても、販売量におきましても、非常に好成績を上げておるようでございます。すなわちタバコの製造におきましては、八月までの予定計画数量が三百三十九億二千百七十二万二千本であつたのが、実績としての増産数量は、三百四十七億一千五百二十七万二千本となつておるようであります。さらにタバコの売上代金におきましては、四月以降九月までの予定売上げに対する予算額が七百四十二億七千八百万円であつたものが、実績におきましては八百六億六千七百万円を見ておるようでありまして、九月末から現在までの益金増收は、六十三億八千九百万円と私は承知しておるのであります。こういう実績を上げた結果から見まして、その原因は決して一、二にとどまらぬと思います。少くとも專売公社職員諸君は、非常に努力されておるということは認めます。かように考えるのでありますが、これに対する秋山総裁見解をお伺いたしたいと思います。
  13. 秋山孝之輔

    秋山説明員 ただいま島田委員のお話のように、專売公社におきましては、本年からさらに上級品に対して十円ずつの値下げをいたしております。なお品質におきましても、所要の原料が数年かかつて充足して来たために、品質も向上をいたし、かつ価格の低廉を来したということから、ただいまお話のような数量の増を来し、しかも売上げにおいて私どもの予想したような結果になつたものと思います。これはただいま申しました單に物質がととのつた、値下げをしたということのみではないのであります。私劈頭に申し上げたように、最も人の和を得るということが、事業の成功を得るゆえんであるということに重点を置いて、組合員諸君とも協力を得ることについては、私及ばずながら今日まで盡力をいたして来たのであります。この点におきましては私の口から申し上げると、いささか自己吹聽のようになりますけれども、いまだ社内において紛争をかもしたというようなことはない。まつたく協調精神によつてみなよく働いております結果でまりまして、私は今日の公社内部の状態を年末、期末はもちろん、長く維持して、公社の存立の意義を全からしめたい、こういうことに鋭意盡力をしておる次第であります。
  14. 島田末信

    ○島田委員 公共企業体は独立採算を建前としておるのでありますが、独立採算を建前としておる以上は、経理内容が充実するに従つて給與関係もまたこれに伴つて順次改善して行くということでなければ、これはいわゆる労使協調精神にも反するものと思うのであります。そこで專売公社の経理内容もだんだんよくなりつつあるようでありますが、そういう建前からいたしまして、專売公社の経理内容が充実するに従つて給與関係を改善して行くということは、独自の立場で行つて決してさしつかえないものだと私は考えておるのであります。これは世間に多少流布されておるように、たとえば一般公務員との給與関係比較であるとか、あるいは他の公共企業体との比較対照であるとかいうことは、一応一般的な今日の財界なり業界の足並をなるべく狂わしたくないという気持から言われるように聞えるが、しかし少くとも独自の立場から独立採算制を堅持して、その建前から給與を漸次改善して行くということは、当然しなければならぬことと考えておるのであります。こういうことにつきまして政府並びに秋山総裁の、将来に対する御見解を承りたい。
  15. 久米武文

    ○久米政府委員 ただいまお話の通り專売公社の経理内容というものは、逐次良好に相なつてつたのでありまして、そういうふうな経理内容の充実に伴つて給與関係についても相当の配慮があつてしかるべきではないかという点は、まことに御指摘の通りかと思います。これにつきましては專売公社職員が大いに能率を上げたというふうな場合には、合理的な賞與制度を確立して、その努力に報いるというのが当然のことであろうと思います。なお給與ではございませんけれども、別に生産報奨金というような制度も考えております。そういうふうな合理的な賞與制度を確立するということは、今後われわれに課せられた大きな問題であろうと考えて、目下いろいろ検討を加えておる次第でございます。  なお公社職員給與についての根本的な方針というものは、公社法の二十一條に書いてある通り、すでに御承知通りでございまして、公社職員給與は、その職務と責任に応ずるものでなければならない。これは公務員の場合と同じでございます。その第二項におきまして、公社職員給與の基準がどういうふうにしてきまるかということが書いてあります。そこを見ますと「公社職員給與は、生計費並びに国家公務員及び民間事業の従事者の給與その他の事情を考慮して定めなければならない。」ということになつております。そういうものはいずれも一つの考慮すべき要素であります。そういうような要素を全部総合した上で、給與ベースをきめる結論が出て来る、そういうのが現在の公社法の建前になつておると了解しております。
  16. 秋山孝之輔

    秋山説明員 ただいま政府委員の答弁にあつたように、大体公社の事業におきましては、民間の事業とはいささかかわつておるようでありますけれども企業精神においてはちつともかわりがないのであります。経理内容が充実すれば、給與の増額もし、設備の償却もするということでありまして、私はその点においては公社の現在の規定が、はたしてそういう目的を達し得るやいなや、相当疑問を持つておるのでございますが、また他の機会もありましようから、その程度で御了承を願います。
  17. 島田末信

    ○島田委員 次に裁定実施するにあたりまして、ただいまのところ補正予算が通過したとしても、約四億円が財源上不足しておるということであります。ところが資金上は可能ではないかというような説もあるように承つておりますが、しからば資金上可能ということになれば、どういう資金があるのかということが問題になると思うのであります。それをお答え願う前に、まず九月末現在までの益金の増収は約六十三億円、さらに予備費は二十億一千万円のようでありますが、これらの使途について、現在具体的にどういうような方法が立てられておるか、お伺いしておきたいと思います。
  18. 久米武文

    ○久米政府委員 ただいまお尋ねの益金の点から申しますると、專売公社の益金として国庫に納付する金額は、現に成立しておりまする予算におきまして千百三十億円でありまするが、今年度四月以降現在までの專売事業、ことにタバコの事業についての好調な推移にかんがみまして、本年度補正予算におきましてはこの千百三十億という国庫納付の額を千百七十五億円に、四十五億円だけふやすという予算補正をするということで、ただいま国会の御審議を仰いでおるところでございます。  予備費の二十億円につきましては、たとえば專売公社が直営の海水直煮式の製塩工場を、福島県の小名浜につくることになつておりまして、目下その工事を進めております。この工事関係で四億九千万円程度予備費を使う、あるいはすでに起つた台風関係である程度予備費を使う、ことに最近の台風におきまして、塩田関係の被害なども相当あるように考えております。現在の段階におきまして、二十億中大体十二億円くらいが、ほぼ使途がこれというふうにきまつております。大体そんなふうな数字になつております。
  19. 島田末信

    ○島田委員 最近災害復旧につきましては、公社法第三十二條第二項、予算総則第三條に基いて処理されていいのだという見解もあるようであります。また葉タバコ輸入費の不足額は、收納価格の改定に基いて、不足財源として補正予算に計上さるべき性質のものではないかという見解もあるようであります。これに対する政府見解を承りたいのであります。
  20. 久米武文

    ○久米政府委員 ただいまの御質問ちよつとわかりませんけれども、全面的にそれを肯定するわけには参らない感じがしております。
  21. 島田末信

    ○島田委員 それはあとまわしにいたします。予備費が二十億あつて、十二億ばかりがすでに具体的に使途が立てられておるので、あと八億余つているじやないか、これで四億まかなえば何でもないじやないかという説も相当多いのであります。ところが予備費は財政法第二十四條から見まして、予見しがたい予算の不足に充てるべき予備費でありまして、これをいかなる場合にも流用していい性質のものでは決してないということを、われわれは確信するのであります。この場合たとえば人件費等を出す場合がありましても、予見しがたい経費であるから、いわば天災地変に基くとか、あるいは爆撃でも食つたというようなことで、地域的にそこの職員生活難に陷つたとか、何か特殊な場合に、その人件費をやむを得ずまかなうのだという場合はあり得ても、通常こういう予算に組まるべき性質のものを、ただちに予備費から支出していいかどうかということは、われわれはその予備費の使途についての見解に対して、いささか疑問を持つておるのでありますが、これに対する政府の御見解を承りたい。
  22. 久米武文

    ○久米政府委員 予備費は、ただいまお話のありました通り、予見しがたい使途に充てる、たとえば地震、台風、その他予見しがたい天災地変というようなものに備えるのが、予算の組み方としての予備費を設ける本来の趣旨であると考えております。
  23. 島田末信

    ○島田委員 いろいろ裁定実施する場合に、資金があるではないかということを申されるので、われわれもそれならば、これでいいじやないかという気持も持つのでありますが、一応それを探究してみますと、移用並びに流用をするのに非常に困難な場合、あるいはそういうことを軽率にやつてはいけない場合もあり得るので、裁定はよほど愼重にして実施するようにせねばならぬが、その資金自体をいかなる性質のものをもつてまかなうかということになりますと、国会におきましてはよほど愼重にこれを行わねばならぬじやないかと考えておるのであります。いずれにいたしましても一面裁定を尊重し、同時に專売公社におきましては職員全員が非常に努力せられまして、先ほども秋山総裁が申されたように、今日実績を上げておるその実績というものは、認めなければならぬと思います。これらの労に報いるためにも、資金上、予算上何とかここに愼重審議を重ねて、無理のない、いわゆる適法に支出し得る資金上の金を見出して、われわれはこの打開の道を講じたいということに最善を盡したいと思うのでありますが、これに対して政府におきましてもその意図をもつて、今後誠意のあるおとりはからいで十分善処してもらいたい。最後に一言これを要望しまして、質疑を打切りたいと思います。
  24. 倉石忠雄

    倉石委員長 それでは次会は公報をもつてお知らせいたします。  なおその際は参考人各位の御出席を再び願いまして、審査を進めたいに思いますから、本日御出席参考人各位は、御足労ながら次回の委員会に御出席をお願いいたしたいと存じます。  本日はこれにて散会いたします。     午後零時三十四分散会