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1951-05-31 第10回国会 参議院 文部委員会 第41号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年五月三十一日(木曜日)    午前十一時三十五分開会   —————————————   委員の異動 五月三十一日委員若木勝藏君辞任につ き、その補欠として上條愛一君を議長 において指名した。   —————————————   本日の会議に付した事件 ○産業教育法案衆議院提出)   —————————————
  2. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) それではこれから本日の会議を開きます。  日程第一として産業教育法案、この前第一章を始めておりまするが、少しまだ残つておるところがあるようなんで、大体第一章の質疑をお願いいたします。御意見のあるかたは……。
  3. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 ちよつと速記をとめて……。
  4. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) ちよつと速記をとめて下さい。    〔速記中止
  5. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) 速記を始めて下さい。御意見のあるかたは……。
  6. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 政府委員のかたにお尋ねいたします。第四條の「当該学校実験実習に必要な経費又は生徒若しくは学生の厚生に必要な経費に増額して充てる」と、こういうように実験実習より生ずる收益について書かれているわけでありますが、現在各学校において、この実験実習による收益はどういうふうに扱つているかどうか、その実情並びに監督の衝にある文部省として、実験実習より生ずる收益はどういう取扱い方にしたら最もよろしいか、教育の上によろしいかというような御研究もなさつておられるかと思うのですが、それらに対しての見解を承わりたいと思うのです。今日は大臣は来られなかつたのですな。
  7. 杉江清

    説明員杉江清君) 間もなく局長が参ります。
  8. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 実験実習より生ずる收益取扱い方に対する助言指導の衝にある文部省としての見解は、これは大臣に聞きたいと思うのですが、ただ現在実情はどうなつておるかという点についてだけ説明員のかたからお伺いしたい。
  9. 杉江清

    説明員杉江清君) 申上げます。現在会計法上、その收益は国又は地方公共団体財政に帰することになつておりまするので、その原則で運営されて行つておると思います。私どもといたしまして、この收益の問題についてはかねがね研究しております。それは地方から、こういうふうなまあ意見があるわけであります。それは県によりましては、收益をあらかじめ相当多額に上るものと予定して予算に計上してそれをまあ事実上そういつた收益を上げることが、ややもすれば強制されるようなふうに実際上なつておる。まあ率直に申上げますれば、そういつた收益を上げないと、次の予算がとりにくいというような、殊に事実上成るべく学校としてはできるだけそういつた、予定された收入を上げるように努力をする、それが教育的な弊害を生ずるから、そういつた点を何とか改めるように文部省としても考えてもらいたい、こういうふうな意見が我々のほうにも出ております。それで文部省としましても、その点そういつた弊害のないように、機会あるごとに地方に対しても要望している次第であります。
  10. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 この法案でやはり第四條は、相当重大だと思いまするので、これは後ほど大臣がお見えになるそうですから、大臣がお見えになつてから、四條についての質疑はいたしたいと思います。それ以上は四條についてはありません。五條、六條についてありますが、よろしうございますか。
  11. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) どうぞ。
  12. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 第五條についてお尋ねいたしますが、「教員資格待遇及び定員については、産業教育特殊性に基き、特別の考慮が払われなければならない。」、特別の考慮と、こういうふうに謳われているわけでありますが、この特別の考慮というのは、立案者としてはどういうことをお考えになつていらつしやるか、案を承わりたいと思います。
  13. 横田重左衞門

    衆議院専門員横田重左衞門君) 第五條考慮内容と申しますのは、立案立場考えましたのは大体三つでございます。その一つ産業教育に従事する教員資格、言換えますと、教職員免許法で規定されているあの資格に対して、何らかその特殊な性質の授業でございますので考慮したいということでございます。第二は定員でございます。この定員の中で特に考えられますのは、実験実習に重きを置きたいと思います際に、実習助手というものが、例えば高等学校設置基準などに大体科目の数等によつて定員が大体きめられておりますが、これらに対して、もう少し緩和の方法考慮したいということでございます。それから第三は待遇の問題でございます。待遇につきましては、基本給をどうこうするということでなくして、実験実習の際に特殊なことに従事するために、特殊な消耗部分が出て来る。そういつたような部分を特に考慮したいというような三つ内容を大体含めているのでございます。
  14. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 もう少し掘り下げて資格について、更に待遇について、すべての場合を言つて頂くのは御無理でございますので、例えばというように特例を挙げて、もう少しお考えになつている点を突つ込んで御説明願いたいと思います。今のはほんの抽象的なことで、これでは十分把握できませんから、お考えになつている点をもう少し具体的に……。
  15. 横田重左衞門

    衆議院專門員横田重左衞門君) 今の順序に従いまして申上げますと、例えば資格の問題で、教員免許状の場合に、これは実例から簡単に申上げますと、大学を出て来ますと、一級乃至は二級という一つ教職員資格が得られる現在の教職員免許法の規定になつておりますが、実際に工業農業という特殊な技能技術を要する教育の場合には、それだけの資格を持つて来た人が果して技術技能が優れているかと申しますと、実際教育面実情を見ますと、理論は優れておりますけれども、実験実習の場合に殆んど生徒と大差ないような程度の場合もあり得ることがあつて、そういう点で、単に教職員免許法できめられておる、ああいつた資格條件を備えることだけが、特殊な技術技能を要する学校においての、教員としての万全な資格かどうかということに多少の疑点を感じておりましたので、さような点から具体的に申しますと、教養課程単位を減らしてでも技術面、特殊な学校における先生は特殊な教科内容に従がつた面をもう少し必要とするのじやないかというようなことを考えたのであります。それから定員につきましては、先ほど、具体的に申上げましたが、実習助手というような場合、それから正教員の場合でありましても、電気とか、その他の非常に多角に亘る課目の場合は、一人では到底やり得ない実験実習の場合もありますので、そういうやはり一つ教科課程に対して多角性を持つものに対しては、それに応じた教員を殖やして行けば、教授上非常に都合がいいのじやないかというようなことも考慮に入れておつたわけでございます。それから待遇は、具体的に申上げますと、例えば水産の学校では季節、潮の関係などで、海に出る場合或いは実習の場合、漁の場合などで、被服などに特殊な必要性を有しておりますし、そそれから工業方面では理化学方面で危険な薬品を扱うために貴重な衣類を破損する。そのために個人的負担が非常に多い場合もあり得るというようなことを考えまして、そういう面における特別……、言葉は該当いたしませんでしようけれども、特別手当というような意味待遇考えておるのでございます。
  16. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 提案者のほうの第五條に対するお考えは大体わかつたわけでありますが、産業教育振興という立場から、第五條の点については、教育の第一線において、いろいろの要望があるとも考えられるのであります。指導助言立場にあり、監督の衝にある文部省職業教育課として、この第五條の案文を御覧になつて文部省としては、この教員資格或いは待遇或いは定員、これらについて特別の考慮が払われるとすれば、現代の教育界における実情から、文部省としての考えとしてはどうあつて欲しいというような見解を持つておられるかどうか、現在のままで十分だとお考えになつておるかどうか。若し希望があれば、どういうような希望を持たれておるかということを私はこの際承わりたいのです。提案者言葉によりますと、例えば免許法にあります免許改正意味しておると思うのです。教養課目とそれから専門課目、こういう言葉が出ておるのでありますが、指導監督の衝にある文部当局でも、どういうようにお考えになつておるか、参考に承わつて置きたいと思います。
  17. 辻田力

    政府委員辻田力君) 第五條の問題でございますが、只今お尋ねの第一番の資格の問題について申上げますと、現在産業教育関係学校は、先生採用するのは非常に困難を極めておるのでございます。そういう意味におきまして、よりよい先生にたくさん来てもらうということが教育振興になりますので、その実情に応じて、できるだけ範囲も拡げて、その要請は教育免許法改正いたしまして、範囲を拡げて適材を採用したいというように考えておるのであります。例えば先般商船学校商船高等学校となつて文部省に移管されましたが、その場合にもいろいろ従来の実績等考慮いたしまして、商船高等学校教員に適当な人を得にくい実情もございますので、教育免許法改正いたしまして、その範囲を拡充して、とりやすくしたわけでございますが、それも一つの例であると思つております。次に定員の問題でありますが、これはやはり実験実習という方面、特に実習方面助手等が相当普通の場合より多く要るということは当然でありますので、その方面にも考慮をして行かなければならんと思つております。その場合に平衡交付金との関係がありますので、十分関係方面とも相談してきめて行きたいと考えております。それから待遇の問題でありますが、待遇は基本的な基本給という、そういうものはどうするかということは我々としてはすぐには考えておりませんにしても、実験特に実習というような場合に、夜遅くまで実習して行くという場合には、若干の手当等を与えなければ、普通の場合とは違う事情がありますので、適当でないと思つておりますから、その点考慮して行かなければならんと思つております。
  18. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 先ず資格の点については次のように了承してよろしいわけですね。産業教育を行うに当つては特殊の指導面がある。その特殊の教科指導する教員については、免許法に欠陥があつて採用に困難がある。そういう特殊の教科指導に当る教師確保のために、採用の困難を打開する意味において、実情に即した免許法改正用意がある。こういうふうに了承してよろしうございますね。
  19. 辻田力

    政府委員辻田力君) 免許法のことは、勿論いろいろ審議会等もありますので、十分研究してもらわなければなりませんが、只今お尋ねがありましたので、文部当局としてどう考えるかということに対する考え方として相当考えておりますが、手続としてはいろいろありますから、結論的なことは言えませんが、そういうふうに考えております。
  20. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 続いてお尋ねいたしますが、定員の件について産業教育をやつておる学校で、生きものを扱つておる農学校なんかは特にその場合に当ると思いますが、実習助手が足りないということは常識だろうと思うのですね。まあ定員の枠を拡げるように努力するということは政府の意向としてもお聞きしたわけですが、定員についてはこれだけではないのじやないか、で繰返してお尋ねしますが、私が今ここで申上げることは釈迦に説法になるかとも思いますが、高等学校教育単位制というものをとつた趣旨から言つて、これは専門課程高等学校であろうと、普通課程高等学校であろうと、特に専門課程高等学校はひどいと思いますが、あの単位制専門教育の方針としてとつたことから考えて、単にこれは実習助手定員だけの問題ではないと、こういうふうに考えているのでありますが、これはこの高等学校単位制を十分やるために、現在の定員暫定基準乙号定員というものに対して、その直接の指導教育に当る初等中等教育局としては、どういうふうに把握されているか、所見を承わりたい。
  21. 辻田力

    政府委員辻田力君) 只今お尋ね通り、現在の教育定員が十分であるとは思つておりません。我々としましては、できるだけ結核教員のこともいろいろあると思うのでありますが、お話がございました産前、産後の教員の場合のことも考え定員をできるだけとりたいと思つているのでありますが、どうしても財政上の考え方等をいろいろ睨み合せて考えなければなりませんので、これは現在のような実情になつているのは遺憾だと思つております。併しこの努力を飽くまでも続けて行きたいと思つております。従つて実習教員だけが足りないということではございませんが、併し実習教員が足りないと言いますが、非常に実習が足りないために教育上困つているということは、これは一つの現象でありますので、特に取上げている次第であります。
  22. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 現在暫定基準のあの乙号基準で行けば、私は学習指導要領ですね。特にこの専門課程学校学習指導要領というものは、これは書換えなければやつて行けないのじやないか、こう見ているのですが、その学習指導要領の編集との関係はどう扱つておりますか。
  23. 辻田力

    政府委員辻田力君) 暫定基準と言いますか、理想的なと申しますか、或る程度理想を織込んだ基準と二つの基準地方にお示しいたしまして、一応二十六年度三月限りですが、暫定基準をやめて、理想的な面を織込んだ基準に切替えようとしたのでありますが、実情をいろいろ調べましたところが、まだそういうことは非常に無理であるということが実ははつきりわかつて来ましたので、暫らく暫定基準を又適用することとしたのでありますが、我々としましては、学習指導要領実習する上において、できれば甲号基準と申しますか、それによつてつて行きたいという希望は捨てないわけであります。ただ地方財政、国の財政、両面から考えて今のところは止むを得ない処置だと思つておる次第であります。
  24. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 繰返してこの問題についてお尋ねしますが、先ず定員となりますと、やはり私は産業教育は振わない、専門課程教育は徹底しないということとも関連があると思うのでありますが、八十五単位の中の必須の三十八単位ですね、これらと切離して考えることはできないと思いますが、関連があると思いますが、やはり専門課程高等学校の八十五単位の中の必須の三十八単位を見るというふうに考えておりますが、あの線を押して行かれるつもりでありますか、それとも検討するつもりでありますか。文部省の御意見を伺いたい。現在どう考えておるかということですね。
  25. 辻田力

    政府委員辻田力君) 現在いろいろな面から、実態調査をいたしておりますが、我々としましては、できるだけ無理の行かないようにしたい、而も理想に一歩々々近付きたいというような両方の面があるわけでありますが、現在ではそういうような意味において検討を重ねております。検討を重ねておりますが、今すぐ変えるということはここでは明言しかねると思います。
  26. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 結局八十五と三十八の単位を堅持して行くとすれば、学生負担は重くなるかも知れないが、或る程度学校教育目的に書いてあるように、技術に習熟させるというような目的を達しようとすれば、八十五単位をもう少し出さなければならんと思いますが、八十五単位を出てから教育するということになりますと、そこに定員というものをもう少し大幅に獲得しなければ、それはできないと思うのですが、それが解決しないから結局学校教育目的を謳つてあるが、施設も不十分であるが、中途半端な教育を受けて卒業するということになると思う。だから今施設だけよくすれば職業教育は徹底するのだ、こういうことを言われておるのですが、私はそこもやはり一つの盲点じやないか、それをやはり並行的に解決しなければ、定員の問題に関連すると思いますが、解決しなければ施設だけよくしただけでは、私はこの問題は解決しないと考えておるが、それに対する考えはどうですか。
  27. 辻田力

    政府委員辻田力君) 産業教育と申しますか、職業教育と申しますか、この振興のためには施設設備だけを充実したので、それで万事終了したというわけではないことは今お話通りであります。教員の問題もありましようし、教科書の問題もありましようし、そのほか教育内容教育方法、いろいろな面から改善して行かなければ教育振興は期し得られないと思います。ただ現在あらゆる面で努力はいたしおるのでありますが、施設設備の面が最も困つております。で、特に戦災によつて壊れたもの、或いは転用等によつて壊れたもの、或いは破損しておるもの、いろいろなものがありまして、この点は非常に喫緊なことだと考えておりますので、この法律案の中にこの面をお取上げになつたのは、私としては当然ではないかと思つております。併し第五條、第六條にもありますように、教員教科書の問題、そのほかいろいろな問題があると思いますので、これらは必ずしも法律を要せずに、実施によつて実施と言いますか、運用によつてできるものも相当ありますので、今後努力いたしたいと思つている次第でございます。
  28. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 それでは定員の点についての質問をこれで打切りまして、次に待遇の点でありますが、提案者のほうでは、特殊な業務に携わる人の衣服あたり給与することを考えている、こういう御説明であります。文部当局としては、実習手当のごときものを待遇方面考慮したい、こういうことを承わつたわけでありますが、この実習手当となりますというと、超勤意味する、超過勤務意味しているのだと、こういうふうに了承してよろしうございますね。
  29. 辻田力

    政府委員辻田力君) 超勤意味は、尤もなかなか厳格に解釈しますと、いろいろな意味があると思いますが、ここでは超勤というよりか、特に何ですね、実習のために特例の時間、或いは労力負担をかけますので、そのために実習手当のごときものを、これは実習手当を出すということをきめたわけではございません。実習手当のごときものを出したいというふうに考えている次第でございます。
  30. 矢嶋三義

    矢嶋三義君  それではお伺いしますが、例えば農学校の場合を例にとりますと、養蚕をやる、このお蚕さんというのは、ともかくどのくらい忙がしいかということは御存じの通り、晩も眠らずにやるのですね、ああいう労働に対しては如何なる手当を現在出されておるのですか。超勤手当を出さないで、今の給与法律で如何なる名目でこの手当を出し、又は出そうとするのでありますか。
  31. 辻田力

    政府委員辻田力君) 現在農業のそういうお話のような場合に、夜勤手当を出しているのではないかというお話でございますが、私自身、そういう場合にどういう名目で出しておるかもつと調べたいと思いますが、夜勤手当を出しているそうです。
  32. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 その答弁では満足ではないのです。職業教育課のほうで、少くともそのくらいのことを把握していなければ、職業教育が怠慢だというので責任を追及されます。産業教育が振わんというのも盲点はそこにあるのだ、職業教育課が知らないということはない。答弁願います。
  33. 杉江清

    説明員杉江清君) 超過勤務手当は一般的には出してはならないことになつておるのでありますが、徹夜作業などには、それに相当する手当夜勤手当というようなことで実質上出している所があると承知いたしております。
  34. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 どうして超過勤務手当を出さないのですか。超過勤務手当はちやんときまつてつて、夜の十時までは幾ら、十時から五時までは何割と、やはり深夜手当として出すという、ちやんと法律できまつているその超過勤務手当の制度をどうして適用しないか、その理由……。
  35. 辻田力

    政府委員辻田力君) 教員超勤手当の問題は、この委員会においてもたびたび取上げて御議論になつた点でございますが、その際いつも申上げます通り教員職務態様につきまして、普通の公務員とは又変つている面が相当ございますので、教員につきましては、超過勤務というふうな形でなくて、特別なそういう教員職務態勢特殊性を十分織込んだ特別の給与体系を作るという、いわば先般来大臣も言われましたが、別表を作りまして、それにすべて織込んでやりたいというので、目下人事院その他のところとも打合せをして、できるだけ早い機会にその成案を得て、国会の御承認を得たいと考えておる次第でありまして、今のところ超過勤務を出すということについては、そういう意味において研究しておるわけでございます。
  36. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 それでは次にお尋ねしますが、専門課程を扱つている高等学校で職員を得がたいというのは、学校性質上から言つて実業界あたりから転進して来るかたが相当多いわけなのです。そういうかたは又必要なわけなのです。そういう人に対する現在の給与準則取扱い方というのは御承知だろうと思うのですが、あの前歴計算あたりを有利に取扱つて、そうして実業界から、例えば工業学校なら電気科教員とか、建築科つた建築業界からエキスパートを学校に招請するのに支障となつているああいう前歴計算の仕方を改正するような用意はないかどうか、どういうお考えであるか、それを承わりたい。
  37. 辻田力

    政府委員辻田力君) 給与関係の問題は非常に複雑でございますので、十分研究しなければ、簡単に結論的なことを申上げることは軽卒だと思いますが、併し今の実業界、而も非常に殷賑な実業界の面と教育界とをすぐマツチさせて、その給与をパラレルにするというようなことはなかなか困難ではないかと思います。従つてその問題をすぐ取上げてどうというようなことは考えておりません。ただ我々としましては、給与体系の根本に則つて、その産業教育の面から考えて著しく労力をかけるというような場合には、それに対して然るべき手当等を出すということは、これは適当ではないかというふうに考えております。実業界給与そのままというのは、それは実業界言つてもいろいろございますので、そのまま右から左に転任して来た場合に、その給与をそのまま受け継いでやるというようなことは困難ではないか。現在ではやはり給与体系原則を変えることはできないと思つております。
  38. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 私がお尋ねしておる点は、実業界待遇をそのまま持つて来ることは考えていないので、はつきり申上げますが、私はこういう見解を持つているのですが、それに対する文部省見解を承わつて置きたいと申しますのは、普通科高等学校におる例えば普通課程先生英語とか、数学とか、国語の先生、そのかたと、専門課程高等学校におる英語とか、数学、そういう普通課程先生給与は差があるべきではない。同じ取扱い方をすべきだ。たとえ産業教育を重視して、教員が得られないからといつて専門課程取扱つている教員にそういう差別の待遇をすべきではない。併し例えば例を挙げますというと、工業学校電気教員をとろうという場合、これは或る程度実業界経験のある人をとらなければならない。その場合その人の、少し小さくなりますけれども、給与計算の仕方は、実業界におつた時の勤続年数というものを五割とか、八割とかマイナスして見る。そういうところから非常に待遇が下る。そのために採用できぬわけです。そういう実業界経歴年数というものを、教育界におつたと同じようにやはり十割に見るというような方法によつてこの問題が解決できるのではないか。そういう給与取扱い方を変えるべく文部省として努力すべきではないか、こういう私は見解を持つておる。それともう一つは、例えばタイプライターの教師、こういう特殊なものです。こんなものは会社におつたほうがよほど待遇がよくて、学校に行つた待遇が下るのだから、これらは給与のほうで取扱い方を変えなければ人を得られないわけです。そういう点は文部省においても相当研究されておると思います。先ほどから質問しましたけれども、そういうことを提案者からも説明がない、又政府からも説明がないのですが、そこで私はそういう私が持つている見解を申述べて、監督立場にある文部省として、これに対してどういう見解を持つているかということを確めたい。
  39. 辻田力

    政府委員辻田力君) 只今矢嶋委員のお説は全く同感でございまして、現在そういう方向に進んでやつております。例えば今お話通り実業界における経験年数教育界における経験年数を同等に見て計算をするという方向に進んでおります。
  40. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 それでは第五條は打切りまして、第六條についてお伺いいたしますが、これは産業教育に関する教科用図書の編修検定及び発行に関しての特別の措置を講ずるということを謳つておるわけでありますが、現在専門課程を扱つておるところの高等学校における教科書の供給状況、それからその量、質、価格、それらについて細かいことは要りませんが、大体どういうふうな状況にあるか。又若し解決すべき問題点があれば、それをどういうふうに把握されておるかという点について、簡単で結構ですから、文部省説明を承わつて置きたいと思います。
  41. 杉江清

    説明員杉江清君) 先ず発行状況について御説明申しますが、これは或いはお届けいたした資料の中にも載つておると思いますが、一応申上げます。先ず発行部数でありますが、職業関係教科書は非常に種類が多いけれども、発行部数が少いというところが大きな特色である。ここにあらゆる問題の根源があると言つてもいいのでありますが、その発行部数の状況を申上げますと、千部以下が八十三点であります。五千部以下合せて百九十六点、全体の六六%を占めております。六千部以上一万部以下が三十九点で一四%を占めております。で、普通課程に属する教科書は大体一万部以下を占めるものは殆んどないわけでありますが、職業教育関係教科書只今説明いたしました通り、八〇%が一万部以下であるということです。で、二万部以上三万部以下が三十五点、一二%であり、三万部以上は僅か八%に過ぎません。これも普通課程に属する教科書は大体十万部以上がむしろ多い現状に比較しまして、著しい差の存するところであります。
  42. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 価格の影響は……。
  43. 杉江清

    説明員杉江清君) 現在の料金算定の方法を、これは詳細に御説明すると少し複雑になりますが……。
  44. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 大略で結構です。大よその……。
  45. 杉江清

    説明員杉江清君) 結局現在のような状況であると、一万部以下のものについては極めて発行困難であり、数千部のものについては新らしく発行することは殆んど不可能な現状であります。それは一応現在の教科書の定価の算定の方法がきまつておりますから、それによりますと、こういつた少数部数を出すに償うだけの定価が現在付けられない状況でありますので、こういつた少数部数のものは欠損になるのであります。
  46. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 そういう実情からこの提案者お尋ねしますが、第六條で「特別の措置が講ぜられなければならない。」ということは、どういうことをお考えになつていらつしやるのか、それを先ず伺いたいと思います。
  47. 横田重左衞門

    衆議院専門員横田重左衞門君) こちらの構想いたしましたことは、只今文部省当局の御説明がありましたが、そういうことに対しての如何なることを措置として考慮してやるかと申しますと、教科書発行に関する臨時措置法という法律案がございまして、その面で非常に発行部数の少いものに対して、発行者に発行しやすくしてやる方法はないかというようなことであります。それから編修等におきましても、これは非常に費用がかかるのに、定価が一定の基準によつて定められて、原価割れをするというようなこともありますので、編修の費用を少くする意味では、時によつて文部省が編修してもいいのじやないかというような、編修の方法についても考慮する点があるのではないかと考えた次第でございます。
  48. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 文部省としては、こういう実情に対する打開策としてどういうことをお考えになつておられるか、お聞きいたしたいのです。
  49. 辻田力

    政府委員辻田力君) この点はいろいろな方法があると思いますが、例えば今専門員のかたから御説明がございましたように編修について、場合によつた文部省で、非常に発行部数が少くて経費が割高になるというようなものにつきましては、文部省でやる、或いは又場合によつては、そういうものに対して発行の補助を出す、これは決定したわけではございませんが、考えられる。或いはそういうようなことで、又そのほかにもいろいろな方法があるだろうと思います。そういうことを考えて、最も適当な方法考慮したいと思つております。
  50. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 仮に第六條が削除になつたような場合には、編修に対して補助するような場合がありますか。
  51. 辻田力

    政府委員辻田力君) 特別の法律はやはり必要だと思います。この場合には、結局六條はいわば一種の臨時規定と申しますか、精神的と申しますか、この條文が残れば、その線に沿つて、その点を酌んで新らしく法律を作るなりして実施しなければならんと思います。
  52. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 仮に第六條が削除になつた場合に、その必要性を、その精神的な面を考えて、行政上、行政の操作によつてこの教科用図書の盲点を解決する方法として、どういう方法があるか承わりたい。
  53. 辻田力

    政府委員辻田力君) 私はできればこういうふうな規定があつたほうがよいと思いますが、併しそれは国会の御審議の都合でございますが、これが若しないということになりますと、やはり先ほど申上げましたように、新らしい法律を作つて、これの補助法というようなものを作つてやるほうがいいと思います。単に行政上の措置として補助するというようなことは非常に困難であると思います。
  54. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 さつき文部大臣への質問を保留した点を残して、第一章の質問を私は打切ります。
  55. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) 他に御意見ありませんか。
  56. 高田なほ子

    ○高田なほ子君 第一章の中の第三條の第四号についてでありますが、産業教育技術者の養成指導についての基本的な方針をどういうふうに持つておられるかという点を御質問申上げたいと思います。アメリカのスミス・ヒユーズ法による職業教育に対する産業教育の基本的な態度は、国の雇用に役立たせる、教育を有効適切な雇用に役立たせるというような基本的な方針を立てておるために、公の監督或いは統制の下に学校や学級で統制のある教育が行われているようでありますが、この産業教育振興する当面の技術者養成指導に当つての基本的な態度というものが明確にされておらないように思うのでありますが、それを承わりたいと思うであります。
  57. 石井勗

    衆議院専門員(石井勗君) 只今の御質問を次のように受取りましたが、念のためにちよつと繰返して申上げて見ます。アメリカのスミス・ヒユーズ法においては、国が全体をまとめた一つの方針で産業教育を進めるという点で、多分に国の力も注入してそこに方向が一つはつきりしておる。ところが日本のほうの、ここに考えておるところの産業教育法において、産業教育に従事する技術指導者の養成の方針がはつきりしていないと思うがどうか、こういうお尋ねでございますか。
  58. 高田なほ子

    ○高田なほ子君 そうです。
  59. 石井勗

    衆議院専門員(石井勗君) ここにありますところの産業教育の最初の目的、すでに過去において数回御説明をお聞取り頂いたはずでありますが、その目的従つて産業教育が遂行せられております。その産業教育をするために設備その他の不足もありますが、指導者の面において多分に不足するのでございます。従つてこの線で第一條で言うところの産業教育振興する目的のために産業教育指導者を養成しよう、こういうことを考えております。
  60. 高田なほ子

    ○高田なほ子君 学校教育たる産業教育ということになつておりますが、産業経済を包括した概念を以て、この産業教育法案ができているとすれば、日本の産業経済の動向によつて技術者養成の基本的な態度がぐらぐらと変るというようなことの危険性も考えられるので、アメリカのスミス・ヒユーズ法の基本方針のように、職業教育というものの基本的な考え方が、教育そのものを雇用に役立たせるというような基本的な態度ができているなら別問題でありますが、国の経済の姿によつてこの技術者養成の基本的な態度がいろいろに変つて来るというようなことであつては甚だ危険であると考えますので、そういう質問をするわけであります。もう一度御質問いたします。
  61. 石井勗

    衆議院専門員(石井勗君) どういう御質問と受取つたらよろしいか、ちよつと判断に苦しむ節もございますから、或いはピントが若干違うかも知れませんが、その節は一つどうぞお知らせ願います。ここに言つております産業教育は、第一條にもございます通り、いわゆる企業家、事業家にサービスする機械的な人間を作る、その手段たるものを作るというようなことを決して目標にしておるのでございません。根本においてはその一人々々が立派に生活能力を持ち、人間として生きて行く力を根本に付けるということを眼目に置いておることは、第一條から御推察頂ける通りであります。ただ産業が各種のものがあり、そうして日本の国全体としましても、国際のいろいろの繋りの上に、資材その他の関係からも、貿易関係からも、その関係を無視しては成り立ち得ないことでございますし、それから更に国内においての各種産業の相互の比率関係というものもございます。更に詳しく言えば、各地方、都道府県その他の気候風土などから来るところの制約がございますから、おのずからそこに一つの産業の形態というものは出て参りましよう。それとも十分睨み合せつ、その一人一人の生活能力を付けるという点にこの教育の目標が置いてあります。従つてそういう教育指導者たり得るような技術者を養成するということが、ここで期待しておるところの指導者養成の精神でございます。
  62. 高田なほ子

    ○高田なほ子君 世界の軍拡経済によつて日本の産業経済が影響を受けるということは、これは申上げるまでもありませんが、今の御答弁を要約すれば、職業教育振興は、決して日本の産業経済を通した手段そのものではない、そういうふうにまあとれるわけですが、それでよろしいわけですね。
  63. 石井勗

    衆議院専門員(石井勗君) 日本の産業経済を通した手段そのものでないという意味が、ちよつと私に受取れないのであります。
  64. 高田なほ子

    ○高田なほ子君 例えば曾つての太平洋戦時における学生総動員は、これは高校の中の一つのシステムのような非常に変つた形でありながら、やはり教育の一環としてそれがやられたわけです。そうすると、国家の産業というものと教育というものが非常にごつちやになつてしまつて教育の正しい目標というものが失われ勝ちであつた産業教育法の立案過程において、まさかそういうことは考えておられないかも知れませんけれども、産業経済を包括した概念であるというふうに解釈いたしますと、教育そのものが世界の軍拡政策の手段になるというふうな非常な危険性を持つので、私はそういうことを質問しておるわけです。そういう危険性のないように、はつきりとした基本的な考えというものが伺えれば、それでよろしいわけなんです。
  65. 石井勗

    衆議院専門員(石井勗君) 先刻申上げました通り、一人々々が健全な生活能力を持つた、そうして人格、教養の上にもバランスのとれた立派な国民を作ろう、こういうことを目標にいたしておるのでありまして、従つて全般この法案を通して御覧頂けます通り、いわゆる一般教養と申しまする普通科目のほうに食い込むとか、それを犠牲にするというようなことは毛頭考えてありません。又この産業技術などに関する仕事が学課の中に余計加わつて来まするけれども、それを運営する場合にも、どこまでも人間を作るという上に重点を置いて考える。即ち一般教養科目と十分なる連絡をとりつ、それを念頭に置きつ進めて行きたい。どこまでも人間として立派なものを作るということに重点を、特に注意を置いて立案いたしたつもりでおります。
  66. 高田なほ子

    ○高田なほ子君 これについての具体的な方法は極めて複雑であろうと思うのでありますが、一般に現在の教員が非常に足りない。従つてこの教員の数を増して行かなければならないことにつきましては、いろいろ講習その他の行政の方法があろうかと思うのですが、それらの具体的な万策について承わりたいと思うのでありますし、又それに要する予算はどういうふうに考えられておるのか。それも換わりたいと思います。
  67. 石井勗

    衆議院専門員(石井勗君) お話通り教育は人なりという言葉がございますほどに、指導教員というものにいい人を得るか否か、又それを必要数確保し得るかどうかということは、この教育を成功に導くか否かのキー・ポイントになるということは全くお話通りで、私どもも同感でございます。それで個々の細かいことは法律一つ一つに規定すべき事項でないと考えましたがために、そこまで触れておりませんが、第五條に掲げておりますところの教員資格待遇定員というようなことなどは、まさにその問題を念頭に置いたから掲げた次第でございます。それから更にこの講習その他の問題についてどう考えておるかというお話でございますが、お話通り、この講習会などもやらなければならないと思つておりますが、現存の大学、それは短期大学をも含めることに勿論なりますが、この現存の大学を多分にその方面に動かす、そうしてこの技術関係の大学には、えていわゆる教職課程を持つておらないところが多いのが実情でございます。これを何らかの方法で補う。例えて申しまするならば、都会地にありますところは、他の附近にありますところの教職課程を持つておる大学に協力を得させる、或いは場合によつては行政庁が中心になりまして、暑中休暇その他のような機会を得て、特に教職課程の問題についての講習会式のものを経営させるというようなことをいたすことは、大量に作る上においての構想でございます。なお個々の問題につきまして、先刻もお話が出ておりましたが、産業界に現実働いておる人の中から、こちらへ輸入をして来る、或いはこちらから向うへ輸出されて行くのをできるだけ防ぐという問題なども非常に考うべき問題であると思つております。その点において先刻来お話の出ておりました待遇の問題などは相当考慮しなければならない。併し骨が折れる問題であるということも考えております。なお先刻、矢嶋委員お帰りになつて残念でございますが、関連しますから……。提案者の側からも何の話もなかつたというような言葉もございましたから、ついでに一口申上げますが、この法案を起草する途中において、この資格の通算の場合、民間の年数を教育職員としての通算の問題にデイスカウントが現在行われておる。割引せられて計算せられるということ、このことを非常に苦に思いまして、私ども法規その他の改正手続も必要であるが、実情はどうなつておるかということ、できれば行政措置として一時も早くそれを解決してもらいたいというので、実は新年早々に本年の一月、人事院の関係局課長に面会に参りまして、いろいろ実情も調べ、そうしてこちらの希望も持出したのでございますが、幸いにしてこの十割まで換算し得る、すべてを十割というのではありませんけれども、十割まで換算していいという措置を昨年の十月に人事院がとつてくれておるのでございます。これは不幸にして各都道府県までに十分その意味が滲透しておらないというだけでありまして、人事院としては、それをとつておるのでございます。なお誤解を生ずるといけないから申上げますが、人事院のきめますのは国家公務員についての事柄を直接に規定いたしますが、御承知の通り、そのままが地方公務員に準用されますから、結果においては地方教職員も民間の年数をフルに教職の年数に計算するということは、すでに道が開けておる次第でございます。私ども法案の上においていろいろ考えております点、なおいろいろ申落した点があるかも知れません。全般としては是非ともこの教員の質の向上及び量の獲得ということについては、いろいろ大きい方法、或いは手近かの方法によつて、あらゆる手を打たなければならないと思つております。
  68. 高田なほ子

    ○高田なほ子君 実は質及び量の獲得についての具体的なお話を伺つたのでありますが、教職員免許法により資格の獲得に際しまして、教員が旅行する場合の費用が国家が三分の一持ち、地方が三分の一持ち、それから又自分が三分の一持たなければならないというのが現在の状態でありますが勿論やはりこの講習を受けるに当りましては、そういう現在の制度が準用されるということが一応考えられるのでありますが、そういう点については、あなたはどういうふうにお考えになつておりますか。これは非常に質と量の問題については大きな影響があることでありますから、どういうふうにお考えになりますか。
  69. 石井勗

    衆議院専門員(石井勗君) それらの点についても、できるだけ教員負担の軽く行くようにして行きたいというほのかな気持は持つておりますけれども、行政庁の立場でありませんから、余り細かなことまで具体的に考えておりません。
  70. 高田なほ子

    ○高田なほ子君 ほのかに持つておるということでありますが、これは当然ほのかでなく、若しそういうお考えであれば、全額これはもう負担させるべきであつて、本人の負担というようなことは、これは絶対に避けなければ、よき産業技術者を得ることができない。こういう方面に進んで頂きたいということを希望條件として申上げるわけであります。  もう一点簡単ですが、天野文部大臣産業教育実施に当りまして、十四日の文部委員会で、別個にこの産業教育というものを取出さないで、高校のシステムの中に入れたいと考えておつたという、こういう御理想であつたと思うのでありますが、この第三條の第五項は、産業界との協力という言葉が出ておるわけでありますが、高校のシステムの中に産業教育を取入れることができなかつたというのは、多分私の推測するところによると、産業界との協力を得なければ、到底この産業教育というものの振興は成り立たない。こういう考えの下にあられるのではないかと思いますが、それをどういうふうに解釈したらよろしいのでございましようか。
  71. 石井勗

    衆議院専門員(石井勗君) この産業界との協力の問題については、非常に皆さんからいろいろの御心配の御質問が出ております。この本法案考えておりますところの産業教育は、高等学校教育体系と離れたものではないのでありまして、高等学校の職業科の内容を多分に充実して行くことを第一に考えておりまして、それからそこの別科などの短期的なものも、できるだけ多くこれを拡充して行こう、それらで網羅し得ないところの、つまり高等学校に入る資力、経済力を持つていない人々を社会教育で更に補つて行くという考え方でございまして、高等学校職業教育と別個に、ほかに構想した法案ではない次第でございます。それで従つて産業界との協力、産業界から、何と申しまするか、寄附とか、その他のものがなければできないというふうには、これは考えておらない次第でございます。ここで申しまするのは、卒業後、どうせそちらに行つて働かなければならない人々でありますし、精神的に或いは個々の具体的な問題においてでぎるだけ連繋をとつて行く、それがために学校が裨益するところもありますが、又場合によつてはその産業界の一会社では実験のできないようなことを学校に頼んで実験をしてもらう、或いは学校側の研究しておりましたことの結果を発表して上げることによつて、産業界にそれが便益になるというような問題もありまして、これは何と申しまするか、こういうこともやつたほうがいいという程度考えておりまして、これによつて初めて産業教育を立てようという考え方ではないのであります。
  72. 高田なほ子

    ○高田なほ子君 職業教育内容を充実するのであるという非常に重要な目標はわかつたのでありますが、多分十四日の文部委員会に、これが実施に当つて地方財政を圧迫することはないか、こういう質問に対しまして、長野委員長は、先ず生産を増強させることである、生産を増強させれば地方の財力というものが非常に増大して来る、これは結局国家の経済の増大になつて来るのだから、その循環性によつて地方財政を圧迫するということは考えられない、こういう御答弁があつたように私の記録には載つておるのでありますが、さてその生産力の増強ということを掘下げて見ますと、これは労働力をどうしても多分に吸収しなければならないということになるのでありますが、産業界と協力して青年学徒の労働力を吸収するという考え方、それによつて国家の経済を増させて行くと、こういうような循環性についてはいささか疑問があるのでありますが、産業界との協力によつて学徒の労働力を吸収させる、こういうことは明らかに職業教育内容の充実という目標とは非常に違つて来ると思うのでありますが、そういう危険性があるかないか、この  一点だけ伺いたいと思うのであります。
  73. 長野長廣

    ○衆議院議員(長野長廣君) それは、今の御質問の要領は、当時私が話した私の気持とちよつと食い違つておると思います。私の申上げたのは、この教育によつて青少年の産業的教養とその能力が上るということによつて、そういういい国民ができて来ることによつて地方住民ができることによつて、初めて地方の産業が起きて来る、こういうのでありまして、彼ら自体を産業へ使つて、そこで産業が上つて行くという意味を申したのではございません。そこをどうぞ誤解のないようにお願いいたします。
  74. 高田なほ子

    ○高田なほ子君 長野さんは非常に善良にものをお考えになつて、又善良にそういう結論を下されていることには敬意を表するのでありますが、世界の軍拡経済というものは、長野さんがお考えになること、それほど緩慢なものではない。そうした場合にこの法律言葉が悪用せられまして、産業界との協力、こういう美名の下に職業教育内容を真に充実させるところに目標を置く職業教育振興が違つた方向に行くということを非常に私は憂えるので、そういう御質問をしたのでありますが、希くば長野さんの善良な意味における職業教育振興が曲げられないということを非常に希望して質問を終ろうと思います。
  75. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) それでは文部大臣に対する質疑だけを残して、第一章は大体終了したものと認めてよろしうございますか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  76. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) それでは午前の会議はこれで終了いたしまして、午後は両院協議会がございまするので、その協議会が済んで時間的に余裕があれば午後再開することとし、時間的余裕がなければ、本日は散会という取計らいにしてよろしうございますか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  77. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) ではこれで終ります。    午後零時四十五分休憩    〔休憩後開会に至らず〕  出席者は左の通り。    委員長     堀越 儀郎君    理事            加納 金助君            成瀬 幡治君            木内キヤウ君    委員            木村 守江君            工藤 鐵男君            高田なほ子君            梅原 眞隆君            山本 勇造君            矢嶋 三義君   衆議院議員    文部委員長   長野 長廣君   政府委員    文部省初等中等    教育局長    辻田  力君   事務局側    常任委員会専門    員       竹内 敏夫君   衆議院事務局側    常任委員会専門    員       石井  勗君    常任委員会専門    員      横田重左衞門君   説明員    文部省初等中等    教育職業教育    課長      杉江  清君