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1951-05-29 第10回国会 参議院 文部委員会 第40号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年五月二十九日(火曜日)    午前十一時一分開会   —————————————   本日の会議に付した事件産業教育法案衆議院提出)   —————————————
  2. 堀越儀郎

    ○委員長(堀越儀郎君) それではこれより本日の会議を開きます。  先ず産業教育法案を議題にいたします。この法案は大体この前に総括質問を終了しまして、一部逐條的にも質疑が出ておりますが、更に遡つて総括意味の御質疑を頂いて結構でありまして、逐條も、條を逐つてもよし、又御気付きの点を次々と御質疑を頂いても、自由なやり方で御質疑を頂きたいと思います。文部大臣政府委員提案者もお見えになつておりますから、御質疑のあるかたは御発言を願います。
  3. 岩間正男

    岩間正男君 この前総括質問の打切りのときにおりませんでしたので一、二補充的に総括質問を付加えさして頂きたいと思います。  その中でお伺いしたいのは提案者についてでありますが、この提案理由を見ますときに、こういう條項につきましてこれは明快な御意見を承わりたいと思います。それはこの提案理由説明の中に、戰前青年学校実業補修学校における状況について述べられておるのでありますが、現在はそういうものもなくなつておる。そこで百六十万の中学卒業者のうち百万に近い数の者が職業的に丸腰のままで社会に出されておる。而もこれらの者は殆んど労働基準法の制約を受けて正規就労ができない、就職ができない。それでこれらのものを教育することか非常に重要だ、こういうふうに述べられておるのであります。それでこの提案の御説明の中で問題になりますのは、現実に成るほどこういう事態が起つておるのでありますが、この労働基準法によつて就職ができない。そこで何とかこれを新らしい組織教育する、こういうことが言われておるのでありますが、これが逆に、何かこの文章の中には、労働基準法そのもの適用が非常に邪魔になつておるというふうに聞えるのであります。そうして、だからしてその適用に対して抵触しないところの何か組織作つて、それによつてそういうような遊んでおる労働力というものに対しまして或る種の組織を作らなくちやならん、これが短期教育という形で出されておるように思うのでありますけれども、そこで私はお聞きしたいのですが、提案者としましては、一体労働基準法というものに対してどういうふうな見解を持つておられるか。現状において適用を受けない二年間、これは適用を受けないというところには非常に立法精神としましては、これらの青少年労働に対しましてこれを保護するというような趣旨が多かつた、こういうふうに思うのでありますが、この適用を受けない現状に対しましてどういうふうに考えておられるのでありますか、この点が不明瞭なのであります。伝えられる講和態勢の中におきましては、これはリツジウエイ声明などにも明らかでありまして、いろいろな今までの占領治下におけるところの政策について再検討を加えなければならない。そういうものの中に労働基準法或いは労働三法のごときものがどういうふうに守られるかということが大きな問題になつて来ると思うのでありますけれども一体提案者におきましては、どういうふうにそれを考えられておられるのでありますか、この点が私には不明瞭なのであります。この提案理由説明文章だけを聞いて見ますというと、その点に我々は一種の疑問を持たざるを得ない、この点につきましてこれは提案者の御意見を承わりたいと思います。
  4. 石井勗

    衆議院專門員石井勗君) 私から申上げます。労働基準法によつて満十八歳からの完全主就労を規定しておるということについて、提案者として如何に考えておるか、こういう質問であつたと承わりますが、その問題につきましては、青年心身発育過程として満十八歳までは当然に保護されるべきで年齢である。心身ともにまだ完全な発育を遂げておりませんから、労働基準法のその年齢は決して低過ぎるとは提案者としては考えておらないのであります。そこにかく表現の、説明の場合に申上げましたのは、以前そういう法規がなかつた時代と比較しまして、その法規が出たがために、そこに年数の計算の上に非常に数字的にはつきり出て来るということから、又世間において満十八歳ということをはつきりと意識しておらない人々もあるという点において、十八歳を出しただけでありまして、満十五歳で卒業した者が満十八歳までは法的には、中学の卒業生の約六三%というものが放任状態になるということを申上げた次第でありまして、先申しましたように、労働基準法の十八歳が邪魔になるとか、低過ぎるとかいう気持は提案者側は持つておらないのであります。
  5. 岩間正男

    岩間正男君 どうも御説明だけでは不明瞭なのでありますが、どうもこれは文章の書き方の問題にもあるのだと思いますが、こういうものに制約されて正規就職が不可能だ、そこで何とかこれに対しましてこれは職業教育を授けるということになつておるのでありますけれども、これは何か労働基準法そのものに対しましてむしろ無用の長物だというような感じがこの中に籠つておるのじやないかというふうに見られるので、それに対する対策として実は青年教育における短期教育のようなものが考えられる。そういうふうな一連の繋がりを私は考える。そうして殊にこの短期教育というような形で一旦日本の現在置かれておりますところの情勢が非常に緊迫して来る。日本においても、伝えられるところのこれはアメリカ軍拡経済の一環としての軍需生産というようなものが、当然これは情勢によつて要請されて来る。現実におきましても朝鮮事変の中では相当日本軍需品が作られておるということはまぎれもない事実であります。而もこの情勢が非常に緊迫して参りましたときは、曾つてこの青年学徒工場動員のような態勢が、そこに起らないということは実は私は保しがたいと思うのであります。いわば労働基準法の裏を潜つて、そういうような一つ態勢を作るというようなものに、この法案情勢如何によつては悪用されないであろうかと、こういう点について非常に疑いなきを得ないのであります。そういう点は一体労働基準法そのものを飽くまで守るというふうにお考えになるのでありますか。この法案提案者としまして一体どういうような見解に立つておられるのでありますか、その点甚だ不明瞭かと思うのであります。殊に私はこの法案を先ず実施面から考えて見ますと、実施して見たけれども予算はそれほど伴つていない。そうしますと工場設備が十分に行かない。学校のそういうような工場施設が十分に行かない。そうしますと工場のほうに、実地にそういう場所に行つて実習させるというような事態も起るのではないか。そういうことが起つたときに、それがいつの間にか曾つて工場動員と同じような性格のものにだんだん変つて行くというようなことも起り得るのではないか。いわば体のいい、労働基準法を潜り拔けて、そうしてそういう態勢を強化するというような面がこの法案の中に胚胎しておる。そうしてそれが情勢如何によつて非常に大きく取上げられて、この面だけが大きく過大に強化されるところの憂えが出て来るのではないかと思うのでありますけれども、こういう点について提案者は一体どういうような確信を持つておられるか。この点を明らかにしてもらいたいと思います。(「心配無用」と呼ぶ者あり)
  6. 石井勗

    衆議院專門員石井勗君) 先刻申上げました通り労働基準法は私どもは満十八歳を決して邪魔であるとか、或いは低過ぎるというふうに思つておりません。その制度をどこまでも遵奉するということは私どもはなから賛成をいたしております。なおこれの予算が十分に伴わないから学校設備ども十分にできなくなり、工場にその学生生徒を託して一種の労働基準法潜つた一つの変形した工場労働をやらせるのでないか。そうなるのではないかという、こういう御心配のようにもう一つの点を承わりましたが、その点は私どもとしまして十分考えたつもりでおりまして、この教育学校がやることに限定をいたしておりまして、それはそれぞれの教育委員会、或いは府県知事というものが更にその上に監督をいたしておりますし、なお産業教育だけにつきましてでも、地方々々においての審議会というような幾多の民主的組織においてこれを監督しておりますので、そういう弊害は決して起り得ないということに考えております。
  7. 岩間正男

    岩間正男君 そうすると、今のような工場実習にやるというような事態はこれは起らないのですか。全然これはそういうことはこの法案の中では予想していないのですか。
  8. 石井勗

    衆議院專門員石井勗君) 工場が極く数の多いことでありますし、例外的にいわゆる短時間の練習とか、或いは見学を兼ねた形で行くことがあり得ることも想像いたされますけれども、ここに法案に盛られております精神はどこまでもやはり独自の……学校相互協同等にいたしましても独自の設備を以て進めて参るということを建前にいたしております。
  9. 岩間正男

    岩間正男君 これは或る議員地方行つて申されたそうでありますが、この産業教育などを振興するには、どうしても産業界経営者協力を十分に得なければ絶対これは不可能である。こういうことを申されたそうでありますが、そういう点から考えまして協力の範囲というものは経済的な財政面協力だけを指すものでないというように考えておる。真の技術面協力、そういうことも出て来ると思うのでありますが、今の例えば工場で実脅させるというようなことも一つ教育考えておられるかどうか。その点如何ですか。
  10. 石井勗

    衆議院專門員石井勗君) 数多い中にはそういうものも起る可能性はあると思いますが、これは産業界との協力でありまして、学校側産業界、即ち教育界産業界との相互協力ということで考えております。
  11. 岩間正男

    岩間正男君 これは実質的に大体七カ年計画というようなことになつて正規の十五億の予算が仮に取れるとする。このことも果してどれだけの保障があるのかは、これは大蔵当局から聞いてみますと、明確な回答はなかつた。そうしますというと、仮にこれは取れたとしても第一年度、第二年度非常に微弱なものだ。然るにこの法案提案者は非常に緊急なそういう態勢日本でこれが起つておるから日本の国策としても今産業協力を非常に振興しなければならないのだ、こういうことを言われておるのでありますが、そうすると、その過程におきましては非常に欠点があつて設備が十分でない。当面それを充足されるには今のような工場実習というような立場が大いにとられて行くのではないか。どうも今のような御説明だけでは我々は満足できない。もう一つ協力態勢でありますけれども学校にどういうような技術者を入れて行くとか、そうしてそれらによつて、これはいろいろな産業指導を仰ぐとか、こういうことを考えておられるのですか。その点は如何ですか。
  12. 石井勗

    衆議院專門員石井勗君) すべて教育立場において学校独自の計画において必要なり、有益なりと認めたときに、産業界から技術その他の援助を受けます。
  13. 岩間正男

    岩間正男君 私はこの法案の中に、そういうような一つの将来経営自体の進展によつてはどうとも使えるような法條があるということを問題にするのでありますが、今の工場のほうに出て行く場合、或いは工場から受入れて技術指導を仰ぐ、そういう面、而もそれが非常に情勢如何によつてはそういう面だけが非常に重視される。そうして技術教育というものが行われるのでありますが、この場合にやはり問題になるのはこの基礎的知識の問題でありますが、基礎的な科学的知識というものが十分に啓発されていなかつたならば、ここに與えられる技術というものは、非常に何と言いますか、單なる技術、徒弟的な技術、こういうものに陷ると思うのであります。こういう点に対するこれは提案者の顧慮、こういう点は、これはまだお伺いしてなかつたと思いますが、どういうふうにしてこういうものをここに落さないように、殊に現在六三学制におきまして学力の低下ということが非常に大きな問題なんです。殊に読み、書き、算の能力低下ということは、これは戰前に較べて相当にひどいことになつておる。そういうことのために科学的な知識を修得する、そういう基礎的な能力さえも欠けておる。こういう形で今そこに技術教育というものが課せられて行く。こういうことになつて来ますと、当面した、非常に目前のことに間に合うだけの技術の遂行だけにこの教育自体が追込まれる一つの要素の上に、この法案そのものは成立つておる。更に先ほどから申しますように、事態の発展に如何によつてはそういうものが非常に偏重され、過大にその面だけが非常に膨れ上る。こういう危險がここにあると考えられるのでありますが、そういう点から教育的な見地から、十分にこれに対する対策をされて行くということは非常に重要な問題だと考える。これを考えることなしに、こういうような法案を單に今必要だと言つて対症療法的に出すということは、これは教育的に非常に問題がある。現にこれに対しましては相当教育界あたりでは反対が起つておる。現に教育学者の間からもこれは日本教育はいびつになるのではないかといつて長文の電報を寄せられた。これは教育大学の教授のようなかたも出て来ておる。こういう点が非常に私は心配されておると思うのでありますが、こういう点につきまして勿論文相から……文相とされてはどういうふうにこういう点を、こういう欠陷に対して、この実施面において欠階を是正するような方法をとるべきである、こうお考えになるのでありますか。
  14. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) その点は私も岩間さんと同感なんです。これを下手にやるというと、そういう危險が起る。だからそれが起らないように文部省で、これは諮問機関なんでありますから、文部大臣諮問機関たる審議会に対してよく意見を聽いて、文部省がしつかりしておればそういう弊害に陷らないようにすることができると、自分は思つております。なお岩間さんのお説に対して私はこういう点でどうかという疑問を持つ点は、工場実習とか或いは職場の人を呼ぶとかということは、何かあなたがすべてそれを悪くとるような傾きがあるけれども、そうものを横から見ないで、正直に真直ぐに見れば、何もそんなに悪くとらないでいいのではないか。要するに産業教育というのはみんなの人にそういう技術などを習得させようというのです。それを若しすべての学校設備作つて全国学校設備作つて、そして全国学校が別々に事をやるというのであれば、私は到底できないと思う。それだからして、どこかの工場を借りて幾つかの学校が協同してやるとか、又工場のほうから人を呼んで来て、その人から実習させるとか、要するにそういう教育の目的が達せられればよいのであつて、そういうことを一一何か悪くとつて、私に言わせれば横からものを見るという考えは、私はどうも服し得ない。大体の趣旨においては、岩間さんと教育のことを心配する点においては非常に同感なんです。けれども、ものを横から見るという点において私は服し得ない点があるということを言わせて頂きたい。
  15. 岩間正男

    岩間正男君 横から見るというお話がありましたが、私は決して横から見ておるつもりはないのでおります。私が心配しているのは、文相の言われるような純粋な教育体系におきましては、成るほど今言われましたように、あらゆるそういうような工場技術とか、そういうものを吸収するということは我々として何ら差支えないと思うし、又我々は高度な一つ生産教育というようなものを、むしろ今の六三制などとに欠けておる、こういうものをもつと総合的に発展させる立場から言えば、そういうものを十分に一つ社会施設として使用しなければならないということは今まで、主張して来た。ただ現実はどうか。現実はそれを本当にこなすことのできる子供になつているか。それだけの能力があるかどうか。そういうような基礎的な知識がすでに欠けている。而も現在の産業界の様子を見ますと、終戰後五カ年を経過しまして、大勢は非常に労働条件の酷使の問題であるとか、或いは労働基準法違反の問題、こういう問題も先ほど問題にしなかつたのでありますけれども、現に、現在におきましても青少年のまだ未成年者が、基準法違反によつて相当使われているということはまぎれない事実なんです。こういう実態が非常に起つている。そして労働基準法違反條項の中に大きな分野を占めている。(「それは関係ない」と呼ぶ者あり)これは労働省の事件を聞けばわかる。こういう形で日本労働行政というものは進められており、殊に最近反動的な吉田内閣やり方によりまして、政策におきまして、(「話が違う」と呼ぶ者あり)ますますこの体制がもとに戻されつつある。そうして先ほどから私が心配しましたように、リツジウエイ声明の線によつて再検討するというような名言前の下に、労働法規なんかが改悪されるようなところに追込まれようとしておる情勢がある。このことは何も我々、たけが言つておるのじやなくて、世界の輿論が明らかに示しておる。例えば国連の経済社会理事会におきましては、日本労働政策に対しまして非難決議議をいたしておる。こういう事態が出ておるのでありますから、その中で何と言いますか、いわば勤労者一つの奴隷的な低賃金の生活のほうに追込まれておる態勢の中で、そういうことが完全に行われることはできない。教育的なそういうものを本当に十全に果たすことはできない情勢じやないか。純粋に言つたら、文相の言われた純粋教育理論としては、成るほど私たちもそういう点については何ら異論のないところである。併し現実はどうか。絶えず現実的な観点から問題を論じで行くということが重要だと思うのでありまして、そういう点から、殊に六三制の基盤において基礎的な知識が欠けておる、能力が欠けておるところに、そういうものを持つて来て、利用する場合には、どういうよりな結果が生ずるかということを憂えるのであります。そこで話をもう少し進めまして、私は長野委員長にお伺いしたいのでありますが、大体百六十万の中学卒業者のうち百万ぐらいが、現在において丸腰のままで社会に放り出されるということを言われるのでありますが、こういうことの起つておる原因ですね、これは一体長野委員長はどういうふうにお考えになるか。一体根本的な原因、この原因については我々は探究しないとこれは仕方がない。こういう現象が起つて、そうしてその結果だけについて言つておるのでありますが、この原因について我々は探究してその原因をもつと深く対症療法的でなくて、その問題を解決するような途も考えて行くということは非常に重要だと思うのであります。こういう点からお伺いしたいのでありまよすが、これをどういうわけで起つておるということをお考えになりますか。
  16. 長野長廣

    衆議院議員長野長廣君) その原因は、御承知の通り中学校卒業者をそのまま上級学校に入れるということは、その生徒家庭事情或いは本人の事情、いろいろな面から困難であると共に、又それだけの者を収容するだけの現在高等学校設備の余裕もおのずから制限されておると思います。従いましで百六十万の学生が出ましても、その生徒が直ちに進学して行くことが個人及び現在の学制立場から困難であるということにあると思います。
  17. 岩間正男

    岩間正男君 何だかどうも原因の御説明には少し足りないと思うのですが、これはどうなんでしようか。例えば一般の国民生活が現在の物価高或いは物凄い重税、而も失業が非常に多い、こういうところからどんどん生活が落されて行く、従つて教育費なんか負担できないような状態になつておる、だから中学校を終えるのがやつとで、それでもう上の学校に進めない。ここがいわゆる現在の政治貧困、無策なんです。こういうところが一つ原因であります。それから第二のそれを収容する学校が足りない、こういうことなんでありますけれども、これもどうも現在の憲法が何ら教育面で実施されておらない。そういう点から予算が絶対不足であつて、そういうものを十分に収容する施設のほうにまで手が延びない。それ以下のところでずつとつかえておる。小学校中学校のところでつかえておる。そういう問題を十分解決しないで、そこから起つたところの問題だけ、おできができたのでそのおできに膏薬を貼るということだけ考えたのでは、やはり依然としてこの法案そのものは私は何ら根本的な教育権策にならない、こういうふうに考えるのでありますが、こういう点は長野さんとしてはどういうふうにお考えになりますか。こういう私の考え方に御賛同項けるというふうに考えるのでありますが、これはどうですか。
  18. 長野長廣

    衆議院議員長野長廣君) 最初の問題、社会事情が思わしく行かない。これば政治貧困にある、つまり子供らが上級学校に進み得ないような社会環境或いは国民生活現状ではないかという意味かと取りましたが、それはそういう面も非常にあると思います。併しながら仮にそれらの面が急速に充足せられたと仮定しましても、中学校を卒業した者を直ちに入れる学校がないのであります。それだけの者を入れる学校及びその卒業した者に丁度適応した、只今申上げたような職業的訓練職業的技術教育をするようなこの切実な学校制度が足らんものですから、結局入れない、こういうことになると考えられます。今回産業教育施設を充足せんとするゆえんのものも、やはりその欠陷を補うて直ちに卒業した者を家庭生活或いは工場生活農村生活のそのままに働き且つ勉強できるようにいたしたい、こういう考えであるのであります。
  19. 岩間正男

    岩間正男君 その学校の足りないというのは何のためですか。
  20. 長野長廣

    衆議院議員長野長廣君) つまり足りないということは、中学校以上の、高等学校というものはありますけれども、その学校が非常に収容力生徒の大多数から見るというと極めて少いものでありますから、結局収容しきることはできない。たとえ入学し得る能力があつても、入学することができないということが現状と思います。
  21. 岩間正男

    岩間正男君 天野文相にお伺いしたいのでありますが、憲法の条項が若し完全に果されるということになりましたならば、これはどういうことになるでありましようか。現状は非常に高等学校が足りない、収容しきれない。こういうことになるのでありますが、これは当然そういうものを全部收容するような組織よで取られなければ、憲法條項は満たされていないと、こういうふうに思いますが、如何でございますか。
  22. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 憲法條項を一ぺんにこの敗戰国が今すぐ満たせといつてもなかなか満たせない。だから我々はできるだけ努力をしてその條項を満たせるように進んで行こうと考えておるわけです。
  23. 岩間正男

    岩間正男君 私は理想的な状態が来るならば、やはり満たされなければならないのではないかという質問をしたのでありますが、無論それは時間もかかるし、段階もあることであろうと思います。だからですね、どうも私は長野さんの説明でこれは非常にその御説明それ自身が自己矛盾に陷つているのではないかと思うのでありますけれども、一方においてはまあ子供の、この教育を受ける立場生活條件経済條件が満たされない形になつている。それと並行しまして又学校が非常に不足である。こういうところに落されているのでありますが、こういう問題のほうの解決はそのままにして置いて、そしてその結果やはり基礎的な科学的な知識貧困ということが現実に起つておる。だからそれを満たすために今度は産業教育というものをするのだというお話でございますが、これは教育体系から行つてしばしば論議されましたように逆立ちではないか。どうなんですか。殊に一国の文政を担当する立場から考えまして、これは非常に国会も責任を負わなければならない問題なんですが、こういう問題に対してどれを先にし、どれを基礎的に建設して、そうして然る後これは力があればその次に選ぶと、こういうふうに私たち段階を追わなければ、先ほど文相説明されましたように一ぺんに満たすことができないというような状態においては、そういう方法を取らざるを得ないと思うのですが、現在におきましてどうも只今の御説明通り、だからといつて、そういう意見を……おできになるような原因作つておいて、だからおできに膏薬を貼らなければならないという議論は、私はどうも納得できない。そうでなくて、おできを出さないように努力するということが私は文教の政策の根本でなければならないと、こういうふうに思うのですが、その点先ほどの御説明との間に私は合い違いが起るのではないかと思うのですが、どういうふうにお考えになつていらつしやるのですか、その点も一度改めてお伺いいたします。
  24. 長野長廣

    衆議院議員長野長廣君) おできというような引例を取られましたが、知は実は六三三四の制度というものは、私もそれに参画してやつたのでありますが、当時は非常に立派なものであると思いましたけれども、それ自体は相当なる効果を挙げておると思いますが、只今問題となつておる中学校を卒業した後の教育状況は、大多数に対して何としても不十分であります。勿論これは憲法の條章に基いて一般国民生活を上げるために、その他教育全般に対するところの再検討をするということも必要でありましようけれども、特にその中でも我々がこの際国家の海運と共に、先に考えなければならんという点はこの産業教育の問題である。つまりそういう欠陷ができた、つまり単なるおできに対する療法という意味でなしに、当然これは生れ出て来なければならんが、まだできていないものであるから、速かにこれを充足しようというのであります。
  25. 岩間正男

    岩間正男君 どうも私の御質問申上げることに対する答弁がはつきりしないのでありますが、木村君がさつきから向うで請求しておりますから譲ります。
  26. 木村守江

    ○木村守江君 私は提案者並びに文部大臣にお伺いしたいと考えております。新学制ができまして、六三三四の制度が生まれましたが、その内容たるや誠に蓼々たるものでありまして、その成果を十分に発揮し得ないことは御承知だろうと思います。そういうような点からその内容の整備充実を図つて、そうしてこの六三三四の新らしい学制を活かして行こうというようなお考えの下に、かような法案を提出されることは誠に時宜を得たものだろうと考えまして、私満腔の賛意を表する次第でありまするが、この法案を見ましたときに、私はこの法案に大きな忘れ物があるのじやないかというような考えを起すのであります。それは第一にどういうことかと申しますと、この法案の中には準法人の経営する各種学校は入つていないということであると思います。これにつきまして、提案者並び、に文部大臣は、準法人の経営する各種学校が実際現在の日本産業教育に何ら役立つていないというようなお考えであるかどうか、御説明願いたいと思います。
  27. 横田重左衞門

    ○衆議院専門員(横田重左衞門君) 提案者の側から只今の御質問にお答えいたしたいと思います。仰せの通り、準学校法人になつております各種学校職業教育の面における貢献と申しますか、それはおつしやる通りの面も多分にあると存じます。然しながらこの法案を作りますときに、第一に構想いたしましたものは、先ず学校教育体系に基いてやつて行きたいということでございまして、特に学校教育体系で主幹をなしておることは、第一條の学校というものによつて体系付けられておるのでございまして、その主幹に従つて、いわば学校教育法の補足的構想でやつたものでございますから、勢い学校教育体系の主幹を外れない線で構想して行くという考えでございましたので、準学校法人はその点で省いたのでございます。
  28. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 私にもお尋ねでありますので、私も各種学校がこういう面に非常に貢献をされておるということはよく知つておりますけれども、これはただ法律を作るというのではなくして、財政的の意味でそういうことを考えるのでありますが、どこまでもそういう説を拡げて行くということはできないと思うのであります。元元只今お話のありましたように、この法案というものは今までこの六三三四という線を少しも壊すものじやなくして、これを補足する意味を持つておるから、その点を主体としてものを考えて行くのが当然ではないかと考えております。
  29. 木村守江

    ○木村守江君 只今の御答弁を伺つたのでありますが、この法案は大体において学校教育法の体系に則つてつておるというのでありますが、この中には御承知のように新制中学校を終えて、労働基準法適用を受ける満十八歳までの教育につきましても相当大きな関心を持つて、これに当つておると私は考えております。かような観点からこの新制中学校を終つていわゆる労働基準法適用を受ける間のことを取上げていることを考えますときに、私は学校教育法の体系を取つてやつたために準法人の経営する各種学校が入らないというような御説明は当らないと思うのでありますが、如何ですか。
  30. 横田重左衞門

    ○衆議院専門員(横田重左衞門君) この法案で御承知のように、只今のように義務教育を終つて高等学校へ進み得ないものに対する措置、それにつきましても、この措置をする主体が、いつも学校教育法第一條に基く学校が中心で行うという線で飽くまでも終始しておりますので、それらの点におきましても、やはりその第一條の学校ということが中心でやつております点で、準学校法人というところまで行かなくても、その学校でやり得るという考えで第一條の学校でやり得るという考えで構想いたしております次第であります。
  31. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 速記をとめて下さい。
  32. 堀越儀郎

    ○委員長(堀越儀郎君) ちよつと速記をとめて。    〔速記中止〕
  33. 堀越儀郎

    ○委員長(堀越儀郎君) 速記を始めて下さい。
  34. 木村守江

    ○木村守江君 ちよつと只今矢嶋君が言われた言葉なんですが、私は今日の質問は、この原案のものと、それから我々が大体作ろうとしておるこの修正のものと、両方比べていろいろ質問するところに本当の修正案の妙味があるのです。そういう点から只今の議事進行に関する質問は、誠に何と言つておるのだか、自分の意見だけを述べてちつとも議事進行でないと思います。これは余計なことでありますが、(「余計なことを言うな」「休憩々々」「そんなこと言うなら、委員会を開くなら定足数を揃えてやつて下さい」と呼ぶ者あり)文部大臣はこの準法人の各種学校については、財政的に援助ずるということを考えなければならない。そういうために入れることができなかつたというようなお話でしたが、ややもすれば各種学校の経営というものは、一つの利潤追求の形態であつて、いわゆる営利的経営と見るべきものが多い。そういうような各種学校に対して国庫の補助をするということは妥当でないというようなお考えのかたもあるようでありまするが、文部大臣におきましては、各種学校が、いわゆる利潤追求の営利的形態であるとお考えなされますか、どうか、御意見を拜聴いたしたいと思います。
  35. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 政府委員からお答えいたします。
  36. 辻田力

    政府委員(辻田力君) 各種学校が利潤追求のものでおるということは、我我は考えておりません。飽くまでも教育的な機関であるというふうに思つて、おります。
  37. 木村守江

    ○木村守江君 この提案者にお伺いいたしまするが、先ほど提案者説明によりますと、学校を主体としたいわゆる青少年教育ということを申されましたが、私は社会教育家が学校協力して青少年教育に当るというのであつて、これは学校を主体とした青少年教育というものばかりじやないのじやないかと考えるのですが、その点如何ですか。(「提案者の言うことに間違いはなかろう」と呼ぶ者あり)
  38. 横田重左衞門

    ○衆議院専門員(横田重左衞門君) これは中学校を終えた者で学籍を置かない者も無論第九條で、御承知のように、社交教育として行うところでとらえておるわけでございます。それを実際に実施する場合に、実施機関として学校で行うというふうなことになつております。
  39. 木村守江

    ○木村守江君 それでは只今の答合弁は、学校協力して、学校において行うというように解釈していいのかどうか。これは実際の問題として、成人学級、青年学級というようなものは、社会教育家が学校協力を得てやつておつたもので、学校が主体となつてつておるのではないと考えますが、その点如何ですか。
  40. 横田重左衞門

    ○衆議院専門員(横田重左衞門君) 只今のお説のように、学校協力してやる場合と、それから学校が中心になつて主体となつてやる場合と両方現在ございます。
  41. 木村守江

    ○木村守江君 それでは結局元に戻りますが、準法人の各種学校を、この法案の中に織り込まれなかつた理由は、先ほど文部大臣が言われたように、財政上の関係で入れ得なかつたというような結論と了承して差支えないですか。
  42. 横田重左衞門

    衆議院專門員(横田重左衞門君) その理由も一つの理由でございます。それからもう一つの理由は、高等学校がございましても、地域的な関係で通学その他において不便な点を感ずる青少年や、家庭的な事情のあるのもございまして、そういう人たちにも機会を與えたいという観点からいたしますと、村立、町立の地元にある中学というものでそういう教育をやることが、又教えられる者の立場に立つて見ましても、至極便利である、仕合せなことではないかというふうに考えるのも一つの理由でございます。
  43. 木村守江

    ○木村守江君 今のお答えは非常に変なんですが、私はこの前から話しておるように、各種学校一つ学校形態の変態的な発達というように見てもいいと思うのです。そういう点から、いわゆる学校正規設備のない場所に、変態的な各種学校のようなものができて来るのだと思うのです。そういう点から考えて、むしろ今のような地域的に学校に通えないというようなところに、各種学校の存在があるのではないかと思うのです。そういう点において、この学校を利用したならば最もいい青少年教育になり得るのじやないかと思うのですが……。
  44. 横田重左衞門

    ○衆議院専門員(横田重左衞門君) 仰せの通り、そういうふうな位置に設けられた各種学校もあると存じまするが、全般的に見ますと、義務教育制に基いて行われる学校の設置が殆んど各般に亘つてよく分布されておるということで、各種学校はそういう点から申しますと、非常にそういう例は極く極く少数な部類に入るように私どもは存じております。
  45. 木村守江

    ○木村守江君 どうも今の答弁は、私には納得できないのでありますけれども、極く極少数だからそれを入れないのだというようなことでは、私は結局やつぱり文部大臣が言うような財政的関係で、ここに織込むことができなかつたのだということじやないかと思うのですが、如何ですか。
  46. 横田重左衞門

    ○衆議院専門員(横田重左衞門君) 財政的な関係が率直に申上げますと、主要な点でございますが、只今申上げました一つは、各種学校がありますのは多く都会地に偏在しておるように見受けられますし、たまたまありまするのは市町村にありましても、非常な異例な状態でございまして、中学は殆んど全国的に分布されております。それから先ほど申上げましたように、第一條の学校体系に基づいて行いたいというこの法案の構想の骨子をなしておる点から、そういうこのような法案にいたしたのでございます。
  47. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 只今木村さんは、私の言うのは、ただ財政だけのことから言うのだというふうにお聞き取りのようでございますが、財政も勿論でございます。けれども同時に私はシステムから言つて各種学校も入つて来ないいのだ、この二つの理由でございますから、どうぞ御了承を願います。
  48. 木村守江

    ○木村守江君 只今の御答弁は、私は各種学校というものはいわゆる学校システムの変態的な発達だと思います。而も変熊的な発達のものではありまするが、系統的な学校教育一つの拠点になるというような考え方もあるんじやないかと思います。そういう点から言つて特に成人学校青年学校、そういうような教育の形態は、ややもすればこれは変態的な学校形態のような教育過程をとることがあるんじやないか、そういう点で以て利用したならば最も効果的じやないかというのが私の考え方であります。それに対しての御意見を伺います。
  49. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) それは私も御尤もだと思います。が併し本質的に言えばやはり学校体系というものを乱すということが困るということが一つあります。それからそういうものがどれだけ入るかと言えば財政上入らない。この二つの理由から財政上入つていないと自分は理解しております。併し木村さんの言うように特別の場合には確かに入れるということが実際には適するでございましよう。けれどもその範囲というものは非常にむずかしく、なつて来て体系を乱すことがあると私は思います。
  50. 堀越儀郎

    ○委員長(堀越儀郎君) それでは午前はこれで休憩いたしまして、午後は一時から再開いたします。    午前十一時五十四分休憩    —————・—————    午後一時五十二分開会
  51. 堀越儀郎

    ○委員長(堀越儀郎君) それでは午前に引続き会議を開くことにいたします。大体総括は終つておりますので、第一章総則をまとめて審議いたしますが、御意見のあるかたは……、第一章総則。
  52. 岩間正男

    岩間正男君 第一條の目的のうち、「産業教育を通じて、勤労に対する正しい信念を確率」するということがまあ謳われているのでありますが、勤労に対する正しい信念というのは一体どういうことを指すのか。これは抽象的な言葉になつております。この点が日本の終戦後の態度と関連しまして、明確にこの点をすることが必要であろうと思うのです。というのは、過去の日本の帝国主義時代においても、やはり同じような勤労に対する正しい信念ということが同じような言葉で言われた。問題はそのような言葉の概念ではなくてその内容にあると、こういうふうに思うのでありまして、提案者としてはこの正しい信念というものをどういうふうに考えておられるか、この点をお伺いしたいと思います。
  53. 長野長廣

    衆議院議員長野長廣君) 私どもは自分の、つまり勤労ということは、これを平面から言いますと、職業つまり社会の何らかの部分を分担負荷するその職責と言いますか、社会の一分子としての責任、これが即ち我々の持つておる職業である。その職業の社会的責任を実現するということは即ちその職業に対する信念であると思います。この信念ということは究極するところ、その職業に対する歓喜、つまり自分の絶対の再びを以てその職業に対しておる。言い換えたならば、その職業自体の中に自己の全人格を傾倒して、そうしてその職業を通して社会に自己の実現をなす。社会の進展と、社会の完成を図つて行くということが、私は職業に対する重大な意義であると思います。かような意味におきまして、單に勤労というものが大切だから勤労を尊重するということでは本分ではないのであります。勤労の中に自己の全人格を沒入して、而もその中に無限の喜びを発見して精進又精進をして行く姿、これが私は真に職業に対する信念の確立した人であると、かように解釈をしておるわけであります。
  54. 岩間正男

    岩間正男君 御説明を伺つたんでありますが、どうも只今の御説明ではやはり私のお聞きしておることに対して具体的な御答弁ではないのではないかと思います。私どもは今お話のように、当然社会の一員として労働を通じて社会に奉仕する責任がある、そのためには厭々ながらやるのではなくて、喜びを以て全人格を傾倒して、無限の精進をすると、こういうふうにおつしやいますが、併し例えば勤労奉仕というような面ではそういうことが言われて来たんであります。勿論同じような例を、確かこれは戦争時代にやはり同じような言葉で以て説かれたのではないかと思うのであります。私は今の御説明から先ず伺いたいのでありますが、一体果して現在の社会情勢が、喜びを以て全人格を傾倒して、この労働に従事することができるような情勢になつておるかどうか。こういう点であります。私は恐らく今長野さんが説明されることと反対の現象が起つているのではないかと思う。第一に先ず職を持たない、職に就くことができないそういう失業者、或いは又職から追い出された数がこれは厖大な数に達しておるのでありまして、先ず職に就くことができないということが一つ。それから職を持つていてもこれは待遇の條件、経済的な面に、こういうようなものが充足されていないために、喜びを以てやりたくてもこれは十分にやれないような條件に満されているのでおります。そういう状態の中において、今のような、いわば精神訓話のようなことを説かれますと、これは飽くまでもそういう労働者といたしまして、当然憲法並びに極東委員会の労働に関する十六原則であるとか、或いは日本労働三法が保障しておりますところの基本的な一つの人権である、こういうようなものが、本当にこれは守られるという方向の中で、そういうような政策が推し進められておつて、そういうことが着々日本の民主化の線において続けられておるならば、今のようなお話も一応成立つと思うのでありますけれども、これは全く反対の事実が現在の社会に充満しておる。こういう中におきまして、勤労をやれ、飽くまでも滅私奉公的な考えを以て無限の精進をすべきであるということを説かれるときに、これは逆に労働者に対しまして、これは労働を強化し、或いは又労働者の真の労働への自覚というものをこれは目潰しにして、そうして勤労奉仕的なところにこれを追立てるという危險性が十分にあると思うのであります。只今のような御説明の範囲では非常にこの勤労に対する正しい信念というものは危いものである、こういうふうに考えるのでありますが、これは現在の憲法並びに先ほどから私が挙げました極東委員会の労働に関する十六原則、並びに日本労働諸立法と関連しまして、果してこういう今の御説明のようなものがどういう結果になるかということについて、これはどうお考えになつておるか、この点を明らかにして頂きたい。こういうふうに思います。
  55. 長野長廣

    衆議院議員長野長廣君) 只今申されました極東委員会、その他たくさんな事項は、これは現在の社会の実情であります。これらの実情に対しては私岩間委員と同様に、これらの諸要素が国民生活の上により以上の、いや現在誠に満足しがたい実情にありますから、これを満足するようにしなければならんと思います。それはおのずからあらゆる政策の面で社会政策その他の労働政策等々、あらゆる政策の面で解決しなければならんと思うのでありますが、教育の面におきましては、誠に現在の我が国の敗戦下における実情よりして、未だ挽回をせざる復興の途上にある実情よりして、誠に環境としては国民生活上不利な状況にありますけれども、これをそういう不利の状況の中にあつてもなおこれを一つできるだけ解決をしようという、各種の政策と相待つて教育政策においては、この産業教育、いわゆる勤労教育というものを徹底をいたしまして、如何なる逆境にあつても、この国を建直して行くという人間が、国民ができなければならんわけでありまして、そういうような意味において努力をいたしたいと考えております。なおこれが戦争中における滅私奉公云々という、そういうような一、私どもは何と言いますか、客観的な立場に置かれて云々するのではないのでありまして、みずからその自分の持つておる農工商それぞれの職業に満腔の愉悦、誠に至上至高の絶対の信仰を持つて自分の職業に盡すというその気持、一切の滅私奉公何々と他から強いられるようなものでは絶対ないということを特に考えておる次第であります。
  56. 岩間正男

    岩間正男君 私は只今の御説明は非常に危険なものをはらんでおると思うのであります。やはりはつきり新憲法が樹立され、特に労働十六原則が極東委員会で決定された、こういうようなところには今までの日本の帝国主義侵略戦争、侵略戦争を起した帝国主義そのものが、今言つたような滅私奉公的な、如何なる逆境にあつても、とにかくこれは精神的な、何と言いますか、解決によつてこういうものをやつて行く。そういうことでこれは御承知の通り、東條時代にはこれは食わなくてもとにかく働け。そうしてひもじくてもまあ勝つまでは腹が減つたと言いませんと、こういうようなわけで、これは先代萩の千松みたいな恰好に追込まれて、ああいうようなところに行つたのであります。そういうことをやつちやいかんというので、御承知のように極東委員会の十六原則というものが、これは厳然と日本の民主化のために出されて来た。つまり労働者の基本的労働権、或いは団結権或いは罷業権、こういうものを十六原則におきまして保障しておるゆえんのものは、飽くまでも労働者の身分並びに待遇、経済的なこの條件、こういうものを充足させることによつて、それを精神的な観念的な説き方でなくて、飽くまでもそういうような裏附のある、経済的な裏附によつてそういう問題を解決する、それなしには如何にこれは念仏を唱えてもそれは実現できない。そういうためにこそ、そういうような、新らしいこれは政策が打立てられたんだと思うのであります。ところがまるでそれに対しまして、先ほどの御説明によりますと、現状はやはり全く充足されない。失業者も多いし、賃金も非常に低いし、労働者の生活は保障されていない。殊に朝鮮事変後におきましては、物価が最近五割、六割というような上昇を示しておるので、実質賃金におきましては、これは三割、四割という低下を示しておる。こういう苦しい中におきましても、併し飽くまでもこれは国を復興させるのだから頑張れ、こういうことを説いたとしても、それは東條時代の軍閥と全く同じだと思うのであります。そこでそうしますというと、長野さんの今のお説を推し進めて行けば、例えば今労働者は実際食えないで、ひどい場合におきましては、自分の賃金で半月の生活も支えることができないという実情さえ呈しておる。こういう場合日に、例えば賃金を要求するというのは、当然これは労働者の基本的権利であつて、当然これは正しい要求だと私は考えるのでありますが、これは産業教育におきましては、そういうような労働教育政策、そういうものに対しましてこれを否定するのであります。只今の長野さんの御説明によれば、飽くまで腹は減つても、飽くまで正しい信念において、苦しくても我慢して、日本のいわゆる産業を與すためには諸君頑張つてくれ、こういうような教育をしなければならないというように私は聞いたのでありますけれども、そういうことをしますと、そういうことになりますと、全く日本労働者の権益を守ろうとする資格、又下からそういうような要求によつてつて来るとこるの労働運動に対しましては、これを抑圧する考えであるかどうか。この点は今の御説明との食い達いにおいて私は十分な御説明を頂きたいと考える。
  57. 長野長廣

    衆議院議員長野長廣君) 全然只今挙げられた御心配の点は私どもは持つておりません。そうして特に青年にしろ、一般国民が安らかな、よりよき生活をする、経済生活精神生活、ともによりよき生活をするということに努力する。そういう面についてのできるだけ研究もし、指導もし、体験もしてもらいたいという、こういう意味で、最後には第一條によりよき生活のできる郷土を作るとまで言うてあるのでありまして、今岩間君の言われまする労働の方式その他、生活環境のよろしくない、こういうことはできるだけその職業生活の中からも生み出して、できるだけ郷土を立派な住みよい所にしようということを特に第一條に謳つてあるゆえんのものはそこにあるのでございます。
  58. 岩間正男

    岩間正男君 私はその点については、あとのほうで触れるのでありますが、この私のお伺いすることに対してぴたつとした御返答とは私は思えないのであります。大体どういう教育労働に対してされるのであるか、今の御説明では明確でないのでありますが、当然私は新らしいこういう時代、日本を再び戦争に駆り立てない、帝国主義の手先に青少年を供しない、こういうような建前をとるならば当然これは労働者の基本的権利を守り、そうして生活権を守る。こういう態度がむしろ慫慂されて、勧められて、当然労働者の一つの資格としてこれは教育されなければならない、こういうふうに考えるのでありますが、この点に対しまして、一方では如何なる逆境の中にあつても、国を守るというような、いわゆる勤労奉仕的な、滅私奉公的な説が説かれておる。この二つの良い違いがはつきりしないようであります。それはどうもそこのところをもう少し明確に私はこれは説明して頂きたいのでありますけれども、具体的にお聞きしますというと、そういうような労働者の基本的権利を守るのは、当然日本憲法下においては正しいところの権益の行使であると思うのでありまして、教育の体制の中においても絶対これは保障されなくちやならないと思うのでありますが、産業教育の構想の中にはどのような一体教育理念を持つて労働者、労働観念、私は勤労観念という言葉は、これは古い、嫌いなんでありますが、労働観念を打ち立てる考えであるか、如何ようなる一体勤労観念を打ち立てようとお考えになつていらつしやるのでありますか。この点は非常に法案の審議に立つて最も中心的な眼目をなす重要な問題であると思いますので、改めて伺います。
  59. 長野長廣

    衆議院議員長野長廣君) 幸いに私は岩間君の御心配せられておる基本観念その他で一致しておるのであります。そうしてできる限りあなたのおつしやるように、労働と、そうして労働をする人間とその生活との間に矛盾のできないようにそこの点を観無量の間に微妙に説明したのがこの最後にありますよりよき郷土を建設する、よりよき郷土を建設するということは、よりよき生活を建設する。こういうことでございまして、これ以上、法文としては、我々の頭では、名文はないのでありまして、迷つたような次第でありますが、若しより以上の言葉がありましたならば承わりたい。従つて第一條における私どもが非常に大事にしておる項目は、岩間さんの御主張は私どもと一致する、このよりよき郷土を作るということであります。よりよき郷土を作るということは、よりよき精神的、よりよき物質的、よりよき国民生活、それから勤労と生活と報酬、その他あらゆる点において矛盾のない、観無量の、つまり一致点を見出した言葉がよりよき郷土、よりよき生活環境をいう意味においてあるのでございまして、その点に御了承願いたいと思います。
  60. 岩間正男

    岩間正男君 観無量、いわば何だか御神託のような感じがするのでありますが、どうも私はそういうことをお聞きしておるのではないですよ。つまり今具体的に言いまして、労働者の権益として団結権とか、労働権とか、罷業権、こういうようなものは守られなければならない。これは日本の今までの帝国主義時代の反省からはつきり出て来ておる。そうしてこれは極東委員会においても確立された、これは方針なんです。最近は又こういうようなものに対して逆行するような傾向がありますが、これはポツダム宣言下においては儼とした事実であると思うのであります。連合軍が日本を正しく統治しようと考えるならば当然この政策は推進されなければならない。従つてそういう権益については、当然これは産業教育の中に教育の具体的な内容としてこういうものを教えるのであるかどうかということをお聞きしたのでありますが、こういう点はどうなんです。一体こういうことは例えば今後の産業教育の中のカリキユラムの編成のときに当然問題になつて来るのでありますが、そういうカリキユラムの中にそういうものを、考えておられるのでありますか。これは非常に重要なんです。観無量の御説明だけではとても私たちは納得できない。具体的にそういうものほどういうふうに扱われるかということを明確にお示し頂かなければ私は納得できないのでありまして、この点もう一度御答弁を煩わしたい。
  61. 長野長廣

    衆議院議員長野長廣君) 私が観無量といつたのは、或る意味においては絶対の信念でございます。絶対的信念というような意味でございまして、その言葉が観無量という言葉に入つたのでありますが、そこは御了承願います。それからあなたのいわゆる御心配になつておる点が最も私の心配した点でございます。これについては單に技術を教えるとか、工夫、創造の能力を教えるというようなことだけでは……、ただこういうことによつて日本産業を勧めるとか、国家を進展さすとかいうことで個人の生活精神生活、物質生活を無視した要求に陥つて行くので、特に私あなたと同じような心配をしたので、ここによりよき郷土を建設する、つまり郷土というのは精神界及び物質界におけるよりよき郷土、住みやすい郷土、この問題を外しますと、或いは私は憂うることはあなたと同じような、如何にもこれらの生活を無視して一定の国家の方針で、独断でこれを押し付けたように誤解されるおそれがありますので、特に私のほうでここによりよき郷土、よりよき精神界、よりよき物質界を作り上げるということが絶対必要である。こういうことを表示した次第でございます。あなたの心配と私の心配とは一致しております。恐らく私は岩間さんが更に一層考えて下さつたら私の気持もわかりましようし、従つてこのよりよき郷土を建設するということは決してこれは過去の妙な押し付けた青年教育でないということを御理解を頂くものと存ずるのであります。
  62. 岩間正男

    岩間正男君 長野さんと意見が一致しているようなお話を頂いて大変有難く思つているわけでありますが、どうも私は何ら一致しているとは思えない、納得が行かないわけで残念なのであります。私のお聞きしている点に依然としてお答えがないのでありますが、仮によりよき郷土を建設するといたしましよう。そういうふうにしましても私は現在置かれている労働者の條件、半カ月の生活しか月給でくれないというような條件、戦争後物価がどこまでも上つて、そうしてぎゆうぎゆうと苦しめられている。ここにいられる公務員諸君もこれは同感の顔を示しておられますが、恐らくこれは誰でも持つている実感であります。こういうような事態において、一方では失業者が溢れておる。青少年などにも非常に多い。百六十万も中学を卒業しながら、百万も遊んでおる、こういうお話でありますが、厖大な数になつておる。こういう形では如何にこれは産業に努力しよう、如何に本気になつてやろうと、こういう考えを持つている人もやれない、第一職場がない、こういう形では長野さんのよりよき郷土を建設することは私はできないと思う。だから先ず労働者の基本的な生活権を確保してくれ、食えるだけの賃金はこれは保障してくれ、こういう叫びは尤もな叫びであり、単にこれは自分を食わせろという利己的な要求ではない。実は同時にこれによりまして日本産業を本当に推進して、あなたの今言われたように喜びを以て全力を打込んで労働をやる、そういうことをするためには、これは食えなければできないのですから、先ずその土台であるところの物質的な基礎、経済的な基礎を確立してくれというのは、当然正しい要求なのであります。ところが今日労働者がそういうような要求をするというと、それは何かとんでもないことである。これは経営者に対して反逆をするのであるというような誤つた考えが滔々として行われておることは、非常な大きな間違いだと言わなければならん。我々労働階級の気持のわかつている立場からそういう意見を忖度すれば、むしろ本当に働くためにはこれだけの土台をはつきりしてもらわなければ何ともならない。むしろ本当に喜んで働くための土台を確保してくれというこの一つの要求が経営者側から容れられない。頑迷な経営者がこれを拒否するということによりまして、どうしてもやむを得ないこの要求が非常に激しい形で現われてくるだろう。それは或る場合には愛国的な要求なんだ。本当に国を産業によつて富まし、皆が働いて豊かな国を作ろうという要求を強く持つておればおるほど、やはり先ず食うだけの物質的條件を満足させる、これは当然の要求であります。だから私はこの愛国的な要求と労働者の要求と繋がつておるということははつきりと申上げることができる。そういう点から考えましても、当然産業教育におきましては、いわゆる正しい労働観というものは、当然今言つた労働者の基本的権利をはつきり認めさせ、これをどのようにして確保させるかということを教えるということが、現在の憲法の建前なり、或いはこれは極東委員会の労働に関する十六原則の立場、或いは労働三法の建前からいたしましても、そういうことがはつきりいわれると思うのであります。だからそういうことを教えられるのであるか、教えられないのであるかということを私は再三お伺いしておるのでありますけれども、これに対しては長野さんのほうから御説明はなくて、よりよき郷土というようなことでお話があるのでありますが、そこが私はわからないのですから、その点もう一度はつきり……。ここに速記録がありますので、この速記録に対しまして私たちは是非責任のある態度で以て残しておかれることが、今後の産業教育法案の運営上重要であると考えておるのです。御答弁願いたい。
  63. 長野長廣

    衆議院議員長野長廣君) 誠に御熱心な重要な御質問であると思います。殊に失業問題、数百万の失業者の問題、生活難に喘いでおる国民の問題、こういう問題を産業教育でどう取扱うかというような意味だと私は聞きましたが、御承知の通り労働対策或いは失業対策というような筋合のものは、政策としては労働省その他厚生省等でやつておることでございまして、でき得る限り失業者の救済されるように努力をせられまして、我々から考えても甚だ至らんのではありますけれども、着着相当の効果を挙げて行つておると思います。然るに例えばここに自分の郷土に一つの公共事業を起して失業者を救済する、漁村で魚が取れないから海岸の埋立をやつて、これは現にやつておるのでありますが、そういうような問題がよくありますが、これらについても然るべく教育の内容と連関をとりまして、よりよき郷土を建設するように導いて行くというような……、導くというか、悟つて行く、大体私は青年教育は余り教えるというのじやなくて、自覚せしめて行く、悟つて行く。教えるというのじやなくて、みずから確信して行く、みずから努力し体得して行く。こういうような体験的な教育に行く部分が比較的多いと思うのであります。そればかりではありませんけれども、そういう点から申しますと、只今申されました生活内容ということの貧困は、これは一番深刻であります。教育上においてはよくこれを取上げて、そうして憲法上の、あなたからいわれましたところのあの原理におきまして、その理解に基きましてより郷土を立派にして行くようにしなければならないと思うのであります。この点は決してあなたと意見を異にしておりません。それから生活難に対する要求などを労働者がすることは不都合であるというような観念は、昔は相当そういうことに誤解をした人もあつたかのように言われましたけれども、今日では相当常識となつて国民も又これを認めておるのみならず、むしろ感激してこれを受入れ、共に憂慮いたして解決を盡さんとする形勢にあるということは私が言うまでもない、岩間さんもよく御承知の通りそういう形勢はできております。なお青年教育の側におきまして現実に自分らが教科書も買うことができない、職もないというような実情に煽られておるものがあるとしましたならば、これらに対しては懇切にこれを指導誘掖すると共に、又これらに対する国の施策その他をよく調べまして、そうして極めて温情あると共に、又一面青年を激励し、発憤せしめるというように、適宜に調和した一致点を認めた指導を與えまして、指導といいますか、自覚せる活動を促すといいますか、そういう建前において進みますならば、言葉は足りませんが、それがおよそ私の気持は岩間さんに御了承頂けると思います。大体そういうふうに考えておりまして、青年教育においては、決して現実の重大問題に対して矛盾した気持を與える、強いてこういうことをせよとか、神がかりな押し付けをするというようなことは絶対やつてはならんと思います。むしろ私は青年本位で、青年自身が自分で悟つて自分で憤激して、憤激ではありません、感激して、そうして自分の仕事の上に精進し、よりよき自分の郷土を作ることにおいて、あらゆる間違えられます事柄の誤りを調和して、常識的な解決に進んで行くようにしたい、かような考えを持つております。
  64. 岩間正男

    岩間正男君 どうもすつきりした線を導き出すことは困難で、或いは私の頭が悪いのかも知れませんが、まあ今までの日本教育は、実際は例えば社会現状というようなものを知らせるということを余りしなかつた。成るたけこれを知らせないで頼らせ信じさせる。こういうような教育、これは太平洋戦争時代からこの教育の誤りについては言われたのであります。或いはこれは信念とかいろいろな形で精神的に説かれたのでありますが、こういうことがまあ日本一つの昏迷と、そうして今日の破壊を、敗戦後の破壊をもたらした原因なのでありますから、当然これははつきりした見通し、国の動向についてもこれを持つということが非常に重要だ。殊に勤労青年の場合、労働青年の場合労働を通じまして、なおそういうことを具体的につかむということは非常に重大だと思うのでありますが、ここでお伺いしたいのは、この教育の一体理念というものは何ら明確にされていない。勤労教育産業教育の理念というものが、今までの御説明では依然として私はわかりません。そこでもつと具体的にお聞きしますが、一体どのような労働者の人間像というものを考えておられるか、これはまあ非常に重要になつて来ると思います。例えばこの労資協調的な、言葉をはつきり申上げますと、労資協調的な勤労信念を持つた人を作ろうとするのであるか。それからそれとももつとこの労働というものの本質に本当に目覚めて、労働を通じて、この国の一つの新らしい動向なり、社会の混乱を切り開いて行こうとするような人間を作ろうと考えておられるのであるか。ここによつて全く産業教育法案の私は岐路が決せられると思うのであります。つまり敗戦によつて今日社会を、青少年を混乱させておる。この青少年を再び手段として使うか、そうしてこれを日本の今当面している立場からしますというと、これは当然この資本の餌食に供するというような形になると思います。これは極端な言葉かも知れませんが、そういうふうに使う、或いはこれを本当に自覚させて、そうして日本の進路を切り開く、困難な日本の道路を切り開く、こういう一体青年を作るか。これは全くこの法案の理念がどういうような人間を作るかということを目指しておるかということによつて私は決せられる問題だと思う。これは非常に重要な問題で、勿論こういうことが今日論議されないで、そうして審議が打切られるというようなことがありましたならば、これは少くとも償うことのできない損失であると考えております。そういう点からお伺いしたいのでありますが、私は一体労資協調的な、そういう人間をこれはお考えになつておるのかどうか。もつと具体的に申上げますと、この点が明確にされることが必要なんです。どうも長野さんのこの御説明によると、どうも過去の人格主義とか或いは勤労主義とか、或いは体験主義というような名前で呼ばれておる。そういうふうな教育のにおいが非常にあるのです。これは長野さんにもそういうにおいがあるのです。こういうものは論破しなければならない現実にある。こういうことをどうお考えになりますか。そういうことを日本が要求し、そういう人間を勤労を通じて作り上げなければ、この困難な、いわば私は断崖の上におかれておると思うのでありますが、この祖国をして本当に誤りなきを期することができない。これは非常に重要な問題なのでありましてこれは長野さんの太つ肚なところを、一つ肚を割つて聞かしてもらいたい、こういうふうに思うのであります。
  65. 長野長廣

    衆議院議員長野長廣君) 私の用語がやや古い言葉を使つたというような点から、御心配を頂いたのでありますが、これは私も古く教育界に活動した人間でございまして、日本現状説明するには、あえて不都合がないという程度だと思つて使つたのでありまして、新らしい言葉を殊更に使うとすれば使い得ないのではありませんが、そこは賢明な岩間さんに一つ御了承願いたいと思います。それから労資協調的な人間を作るか、労働の本質に目覚めて、国の進む動向を切り開いて行くような人物を作るか。前者の場合でもややもすれば手段として人間を使う。いわゆる人間を機械に使うような虞れがありはせんかというようなふうに思つたのでありますが、そうでございますね。
  66. 岩間正男

    岩間正男君 はあ。
  67. 長野長廣

    衆議院議員長野長廣君) 私の考えとしては、殊更な協調とか、資本に都合のいいような精神青年に吹き込むと、こういうような殊更なことはいかんと思つております。併し我々の生活は一切調和であります。天の力と地の力が一緒になつて、この宇宙界を造成していることから考えましても、一切は調和でございますから、調和を無視したあらゆる政策はこれはいかんと思います。やはり大きな大調和があるということはこれは考えなければならん、併しながら私は労資協調というような言葉は使いたくありません、私の現在としては……。それは青年をして我々の自分の協同生活に感激を持ち、職業に向つて一つの感激を持つ、これでなくてはならん。よりよき自分の産業を打立て、経済の独立を図らなければならんということに一つのそういう根本な生活面に彼らが感激をするとか、或いは又自分の郷土を先ほど岩間さんが頻りに述べられ、私も一致しておると申した、ああいう不合理がある、不調和があることに感激して、そうしてみずから自覚してむしろ私は郷土の自然人として自覚して、言葉は悪いけれども、殊更人間が作つた協調とか何とか……、作つたものではなくて、自然の人間としてここに感激する、これでなければならん。よりよき郷土を建設しなければならんとここに発奮努力する。その姿、そういう姿を我々が見るときに、これが一番尊い、青年自体が本当に人間として自然的に心の底から湧き出た感激、不満、希望、再び、悲しみ、いろいろありましよう。そういうことをそのまま彼らをして自由に取上げしめる。そうして彼らが誤りのない、よりよき郷士を作れば、結局よりよき郷土の集つたものはよりよき国家ですから、よりよき社会ですから、そういうものを作つて頂いたらいいと思うのでありますが、私はそういう点については、国家がどうの、社会がどうのということを申したくありません。ややもすると岩間さんのおつしやるような青年を覇束せしめるような基盤を與えます。不自然な虞れがある。人間は飽くまで自然である、その伝統より受けた社会人としては自然、この自然的な人間が本然の姿において自覚する。その自覚の姿において自分のよりよき郷土を建設するというところに、私は飽くまで日本の、国の青年教育の誤りなきを期するのじやないか。ただ一つここにのみ私は大いなる頼りをなして、この條文を作成した次第であります。
  68. 岩間正男

    岩間正男君 まあ非常に信仰的な言葉に満ちた御説明を頂いておるわけでありまして、自然人としてこれの自覚に徹して理想境を作る。こういうことなんですが、どうも私たち現実のこの社会を見ますとなかなかそういうふうに行かない條件、それからそういう御説明では律しきれない、説明のつかない條件がたくさん出ておると思うのです。私はなぜ今労資協調的な人間を作るのかどうかということでお尋ねしたのでありますが、これは非常に単に勤労教育だけに関係した問題ではないのです。今の日本教育の理念の中で我々はこれは一つの何と言いますか、民族的な反省の上に立つて非常に考えなければならん問題があります。それはアメリカ教育との比較です。率直に言えば六三制というような形で出されて来ておる問題なのでありますが、恐らく勤労教育におきましてもこういうようなアメリカ式的なシステムというようなものが恐らくこの法案はついて来ると私は考えるのです。そういう点をお聞きしておるのでありますが、やはり今の日本のこの困難を切り開くという原動力は、これは次の階級を担う青少年にあると私は固く信じておるのであります。そうしますと、殊にその大部分を占めるこれは労働階級の人、こういう意味教育というものは全くこれは日本を左するか右するかという大きな影響を持つものだと思うのです。そういう点から考えるのですが、アメリカ教育の大体の目標は大つかみに言つて、これは資本主義的な労資協調、而も支配者がそれによつて自分の都合のいい、そういう労働者を作る。そういう形におけるところの教育、こういう形でこれは推進められているだろうと思う。ここにアメリカ教育の何ともならない一つの限界があるのです。又教育理念に対してはこれは我々は浅学で十分に教育のそういう学説を十分多量に読んでいるわけじやないのでありますけれども、とにかくアメリカの教育学者の現在陥つておる立場というものは社会に対する不可知論、社会の今日のいろいろな現在経済恐慌の問題、或いは失業が大量に出る。或いはこれによつて戦争が週期的に発生せざるを得なりい。言わば社会科学によつてしか解明できないような問題が実はアメリカの教育者によつては殆んどつかまれていない。だからいわゆるわからないわからないの一点に来ておる。こういう形によつて、できるだけはつきりした目標を持つた子供たちを作るというよりも、むしろあらゆる條件反応で、いろいろな條件が出て来たときによりよき反応ができる人間を作ればよいのだということで、或る意味では目的が非常に渾沌としたところのアメリカ教育にあることはアメリカの教育者自体が言つておる。この形が今日の六三制の混乱を招き、又喜び産業教育にも延長されるであろうということを私は懸念するのです。こういう形を、模倣的な形をとつておつたならば日本教育体系というものは完成しない。これは敗戦後に世界的に課せられておるところの日本国民の役割というものを本当に達成するためには、やはり当然ここに正しい批判と発展によりまして、こういうものを切り開いて行くことが非常に重要であり、殊に具体的にこういう産業に従事するという青年においてこれが求められて来ると思うのです。そういう点から考えて今のこの長野さんの御説明はやはりどうも私は余りに、こう何だか信仰的な言葉に満ちておつて聞いておるとうつとりしてしまうようなところがあるように……。併しうつとりとしてはこれはいけない。やはり日本の苛烈なるこういう段階の中にありまして、我我の教育目標というものはこれは非常に峻嚴なものになつておるわけです。こういうものをはつきり打ち立てて、教育一つの追求をしたければ私はどうもこれは本当にこの産業教育法案というものは変なものになると思うのです。そういう点からこれは今労資協調のような、そういういわば資本家に都合のいい、そうして全くその要求するところにばかりぴつたり符節を合したようなそういう人間を作るか。それとも社会の矛盾とか混乱、こういうものに対しまして、これを何とか切り開いて、正しい姿を打ち出して行こうとするような人間を作るか。このことが日本の運命にとりましては非常に重大な問題なのでありまして、これは先ほどのような自然人の理想境というようなことでなく、もつと現実に問題を引戻して御答弁を願いたいと思うのであります。恐らくこれは長野委員長が非常にきれいな言葉で法案説明されて、これは或る意味では非常に主観的な御説明になるかも知れなついので、この法案は別な意図を持つて活きるかも知れません。そういうことを考えますときにやはり現実的か問題に問題を引戻して御答弁願いたいと思うのであります。その点如何ですか。
  69. 長野長廣

    衆議院議員長野長廣君) 私の意中がまだ十分私の説明の不徹底から御理解頂けなかつたと思いますから、もう少し申添えておきますが、先ほど申しました憲法で言う基本的人格の自覚ということ、つまり個性の自覚、能力教育するという点を考えて見ますと、私が自然人というのはやはりここに生まれ出ておる一青少年というものは、これは自然人だから自然の人間だ。その個性は自然に親からもらつておる。天賦の個性を尊重いたしまして、個性をこちらで曲げて指導するのでなく、彼らの自覚、彼らの個性を中心とする知情意の活動を指導して、そうしてここに全き完成をして行くという意味でございまして、結局あなたの最初から言われた基本的人格の自覚云々というような問題は、私誤まつた第三者の指導のあることは考えていないから自然人という言葉を使つたのです。即ち生まれたままの自然の姿、これを引出して教育する。教育は申すまでもなくその本性を引出して陶冶して行くのがこれは本然であります、教育でありますから、その本然に戻つてあなたへ御心配頂き、我々も心配いたしました憲法の基本的人格ということを尊重するのであります。従つてそれを如何なる形で表現したらいいかということを二年間に亘つて私も研究工夫いたしてみましたが、よりより郷土を建設するという言葉こそ最も、彼らを無理に引き付ける、命令する、指導する、批判を與える……、言葉であらずして、最も彼らが自由に、彼らが本然の、心の底からその個性の発展に基いて欲求するところの、彼ら自身やつて行つて、只今まで岩間委員のおつしつやいました、つまり曲げてやるのはいかんというそういう意味から、私は特に自然人という言葉を使つたのであります。これは申すまでもなくそのものが持つ個性、純粋なる個性を尊重する。こういう意味でございます。大体この辺で一つ御了承頂きたい。
  70. 岩間正男

    岩間正男君 長野さんがいらつしやるような、例えば玉川学園というような学園でおつしやれば、これは私たちは或る程度納得できるかも知れないのです。あの自然の環境で、恵まれたところ、条件のいいところでやる。併し例えばそういうような教育というものは殆んど日本には現実的にはなかなかできない。我々は自然人ということを言われましたが、同時に社会的な社会人であつて、そうしてその社会には先ほど申しました混乱に満ちたいろいろな條件がある。労働問題にしましても誠に大きな問題がぶら下つておるのでありまして、そういうものの解決なしに單にこれは勤労というような観念を言いましても、これは非常に危い。これは人間を一つの何と言いますか、麻酔の中に追い込むためにはなかなか立派な言葉であるかも知れませんけれども、併し現実のそういうような問題を解決するにはなかなかそういうわけには行かない。残念ながら非常に約四十分に亘りまして正しい労働観を御説明願つたのでありますが、これは私ども未だどうも納得できません。これはまあそれまでやつてもできないから、如何かと思いますから、次に移りたいと思うのでありますが、次にはこの第一條に「経済自立に貢献する有為な国民を養成する」こういう言葉があるのであります。これも成るほど言葉そのものとしてはいい言葉でありますが、これは現実的に見るときにどういうことになるか。この経済自立の内容というものは一体どういうふうにお考えになつておるか。例えばこれは安本でも日本の経済自立三カ年計画というものを立てております。又池田蔵相の説明なんかを聞きますと、日本の経済は自主性がある。尤も占領下における自主性だということを言つておるわけでありますが、自主性がある。それから終戰処理費の使用なんかについても非常に自主性がある。こういうことが我々予算委員会においてしばしば引出したところの池田氏の答弁であります。併し果して一体日本の経済というものはこれは現在自主性があるか。そうしますと、そうでないところの反対條件、現象をたくさん挙げることができると思いますが、これは時間の関係から申上げませんが、そういう條件がたくさんある。私は曾つて開発法案の討論の中で、我々の持つている自由は孫悟空の自由じやないかということを言いました。孫悟空がきん斗雲に乘りまして三千世界を飛翔した、十万億土を飛翔した。そうして随分遠くへ飛んだと思つてふと気が付いて見るとお釈迦様の手の中だつた。そういう形で以て、日本の置かれておるところの自由というものは、全くそういうような、いわば孫悟空の自由であつて、その背後においてがつちり握つておるものがある。この開発銀行というのは、これは台湾銀行や朝鮮銀行と同じように過去の日本の帝国主義的な、台湾や朝鮮を支配するところの、金融機関として大きく働いたところの、いわゆる孫悟空の頭にはめたところのあの緊箍兒じやないか。これによつて実は都合が悪い、孫悟空こが暴れ出すと、自分で勝なことをしたくて、いわゆる自主性を、自分が自立的なことをやろうとして暴れ出すと、どこまでも締りがかかつて来る。これによつて、緊箍兒の金の輪が頭の中へぎりぎりはまり込んで行つて全く自由は失つて来る。こういうことじやないかということを私は討論したのでありますが、誠にそういう形は長野さん自身もかずかず思い当られることがあると思う。こういう形の中におきまして、経済の自主性に貢献するということは非常にこれは、若しも本当の意味での日本民族の独立と自由、こういうものと連なつたところの経済の自主性を確立するのであつたならば、実に容易ならざる努力と、それからそれに対する認識が私は必要だと思う。先の私の質問申上げましたところの、いわゆるどのような労働青少年を作ろうと考えておられるのであるかという、いわゆる産業教育の目指しておる人間像の問題になつて来るわけです。どのような人間を作るかによりまして、真の掛け声でないところの、全く欺瞞されたものでないところの、経済自立が確立されるか、或いは名前だけの自立経済でありまして、背面におきましては、その経済の八〇%までは完全に私は外国に握られておるというような、いわゆる名だけの自主的な態勢もできるのであります。そういう点からどのようにしてこれはこの経済自立というものを達成され得ると考えておられますか。この法案には成るほど立派な一つの項目として謳われておるのでありまして、これを達成するところの、産業教育を通して達成するところの手段というものについては具体的な御説明がなければ我々は了承することができないのでありまして、この点御説明を願いたいと思います。
  71. 長野長廣

    衆議院議員長野長廣君) 経済自立という問題についてこの法案を作る場合にどういうふうな考えを以て作つたのであるかということと思いまするが、私は日本の経済を自立するということの必要なこととか、或いは自立させるについては、教育の面でなく他のあらゆる政治の面でこれこれあるじやないか。これはもう岩間さんが十分御承知のことだからここで申述べる必要はないと思いますから、私は申述べません。ただ経済自立をするということについていろいろこれには心配なことが、これは岩間さんが幾らかほのめかされたことによつて他を類推して何百と挙げることができましよう。併し私は心配をなくするためには、この次の社会を受持つところの青少年、いわば或る意味においては現在の産業界その他社会面において第一線に活動しておるところのこの青少年があなたのおつしやるように認識、自覚を持ちまして、又人間道に徹したところの確信を持ちまして、そうしてよりよき郷土の建設に努力を重ねて行くというところに私はその覚悟とそれを担当して行くだけの、つまり信念と能力、これを現在の青少年に與えて、全国津々浦々にそういう自覚した青年が活躍し、他を誘導して拳村挙町の運動となつて行われて行くところにおのずからことが解決して行くのではあるまいかと思います。なおここに申添えておきますが、巻町挙村というようなことは自然の動きであります。殊更に私は昔ああいう運動をやつたときの意味というふうに誤解されんように特に申添えて御理解をお願いいたす次第であります。要するに御心配になられたような点のないように、そういうことを十分漕ぎ抜けて行くような理解のある、能力のあるところの国営を作るということが我々の狙いであると思います。なおそれをどういう点にどうやるか、こういうことはおのずからこの法規ができた後における文部当局の計画であり、或いは審議会等における地方にそれぞれ即した計画というものがおのずからできるわけでありまして、その具体問題はこれは別としまして、根本観念においてはさようなことを担当し得る次の国民を養成する。そういう心配のない国民を養成するというのが私どもの狙いであります。
  72. 岩間正男

    岩間正男君 まあ御説明の範囲内では抽象的に一応そういうような活動する能力のある人間を作る、こういうお話ですが、やはり日本現実に立つて考えますと、相当な決意が要ると思います。これは民族的な決意が要る。と言いますのは、例えば終戦処理費一つを取上げて見ましても、千二十七億、二十六年度の予算でありますが、千二十七億に当るところの終戦処理費が実は終戦後五カ年半、そうしてヴオリーズ陸軍次官のアメリカ国会における言明によれば、日本のもう占領政策はほぼ終つた。日本におるところの軍隊は目下戦争の訓練をされておる、こういうふうな、証言をされておる中に千二十七億の予算が組まれておる。私はこの問題は予算委員会で池田蔵相初め閣僚諸君に質問したところであります。併しこれについて自主的に組んでおるというだけで明確な内容についても具体的に言われない。而もすでに講和というようなことも課題に上つて来まして、そうしてこの終戦処理費は当然これは国民の負担を軽減するために返されるのだと思つておりますというと、いやそうでもなさそうだ。これは駐屯費の一部を負担する、或いは再軍備の費用を負担するというような形になりそうだ。長野さんの心配しておられる産業教育における予算も実は我々から言いますと、仮にこの終戦処理費の全額とは言わないまでも八割ぐらい教育予算に持つて来るとすれば、六三制並びにこういう産業教育法案、大学或いは児童給食の無償、或いはその他いわゆる憲法の線に近いところの教育が相当大きくできる。地方財政におきましても現在の殆んど破滅に瀕しておるところの地方財政をこれは救う、大きな私は活を入れることになる。ということは、地方財政の四二%は現在教育費の負担で参つておるのでありますから、そういう事態が起る。文化国家、平和国家というものを本当に念願するならば、そういうように我々自身の経済を、我々自身の財政を我々の自主性によつてそういう運用をしたいということは、これは恐らく日本の八千万国民の殆んど大多数が考えておるところだと思う。然るに事実、事志しと違つて別なふうに運用されようとしておる。こういう段階に対しまして経済の自主性ということを口にするならば、こういう問題に対して当然憲法が保障し、ポツダム宣言が保障し、そうして世界に対して何ら恥ずるところのないこういう問題について十分に要求し、或いはこれに対しましてこの要求を貫徹するところの運動を貫くというのが私は新らしい時代の青年であり、同時にこれが日本の当然置かれておる現状からして当然愛国的なこれは青少年の叫びじやないかとこういうように考えます。だからこの経済の自立というのが掛声だけであり、現在の吉田内閣がとつているような実は孫悟空の経済の自由であつてはならない。そうでないところの当然に実質的に民族の独立と自由を本当に勝ちとるところの自由でなければならないし、それには非常に大きな一つの信念と、これに対するところのたゆまざる努力が要ると、こういうふうに考える。そうしますと産業教育法案がこういうことを謳つておるならばこれを本当に勝ちとれることのできるところの青少年をどのような方策によつてこれを作るのであるか。要するに経済の自立に貢献する有為な国民を育成するというのでありますから、その組織方法と、それからその教育の内容ということがどうしたつてこれは重要な問題になつて来る。そうでない限りは空念仏だ。これに対して十分な御答弁が頂けなければ、これはどんなに美辞麗句を並べましても、この第一條の目的は、要するにこれは国会を通過させるためにできたところの條項だと考えざるを得ない。これじや駄目なんだ。長野さんそうでしよう。こういう点からもつと肚を割つたところで一つもう一つ御返答を頂きたいとこういうふうに思います。
  73. 長野長廣

    衆議院議員長野長廣君) 只今までだんだん申されたことはあなたの御趣旨から出られたものと拝聴しました。私に、このこと自体をどうこうするということはこの際私がここでお答えしてもどうかと思います。ただ私ども日本の経済を自立するについては自主自立の経済を確立するには最も適当なる人材を、国民を養成して行く、こういう建前においてやるべきものであるというのでありまして、この教育の内容につきましては私どもの立てた、お互いにこしらえた法律の精神に則りまして、或いは文部大臣なり或いは審議会なりにおいて十分策定をしてやつて頂かなければならんと思います。只今あなたの申されましたことは一つ教育の内容、この意味においては方針にかかりましようが、でありまして、行政上に主としてかかることと思いまするが、今後本法が成立しましたならばお互いに一つこの法律がそういうような点についても適切にあなたの申されたことがいい悪いということではございません、私はその判断を持つここに機会を有しないのでありますけれども、それはそれとしてとにかく立派な教育の行われて行くように、経済自立の教育の行われて行くようにお互いに行政庁なり文部大臣を監督いたしまして遺憾なきを期したいものだと考えます。なおこれについて文部当局からお聞き頂くならば仕合せだと思います。
  74. 岩間正男

    岩間正男君 文部当局はその点について……。
  75. 辻田力

    政府委員(辻田力君) 現在行なつておる教育憲法の、或いは教育基本法の精神に副つてつておることは当然でございますが、憲法並びに教育基本法の中に勤労を貴ぶことが書いてあります。我々はこの産業教育を通じて一層その点を憲法精神、或いは教育基本法の精神を実際生かして行きたいと思つております。それでそういうことにいたしましてこの上に教育基本法の第一條に書いてありまする教育の目的、これを十分に発揚できるようになりますれば、これが従つて経済自立にも貢献し得る有為な国民を育成することができると思つておるのでございます。なおこれを具体的にどういうふうに示すかというふうになりまするが、これは社会科或いはその他の学科、教課の中に織込みまして遺憾なきを期したいと存じておる次第でございます。
  76. 岩間正男

    岩間正男君 まああなたの立場としてはそういう抽象的な御答弁しかこれはできないのだろうと思うのでありますが、私は現実の問題、日本の当面している問題、少くともこれは相当重大なポイントをなしておる問題について具体的に例を挙げて説明してその返答を求めているのでありますけれども、まあこれはお二人とも抽象的に避けられているようでありますからこの点追求しても無駄かと思うのでありますが、ただこういうことだけはどうでしよう上長野さん、もう少し背骨の通つた、そうしてつまり骨のある日本人ですね、あんまり奴隷みたいな、何と言うか、もう右向けと言えば三年も右向いているようなこういう意気地のない人間では日本の困難は、これは私は今国難だと思います。こういう時代を切抜けることはできないと思うのです。先ほど申しました一つの問題を、教育の問題、予算の問題、終戰処理費の一つの問題を、これは片付けるだけであつても大変なことになると思う。そういう点でもう、一つの国の影響の中で、その影響で三拝九拜して有難がつて、そうして大局を見ることがない、或いは一つの足許に起つておる困難に対して熱意を持つてこれを解決するという情熱を持たない、いわゆる奴隷化されたような形であつては絶対にこれは経済の自立ということは達成できない。これはそういう意味です。とにかく骨のある、そうして民族的なやはり一つの資格を持つ、そうして更にもつと具体的に言えばこういう現在の日本の置かれておるようなこの態勢、つまり軍事基地化されつつある軍隊が駐屯しようとしているこういう態勢に対して飽くまで……こういう態勢から平和を守り抜いて、そうして平和の基盤というものを日本に確立すると、こういうような少くとも條件だけはこれらの労働青年の中に教え込まなければならないとこういうふうに私は考えるものであります。こういう点についてどういうふうにお考えになつておるか、この点は提案者としてやはり御答弁を頂いて置きたいとこういうふうに思うのです。
  77. 長野長廣

    衆議院議員長野長廣君) 骨のある人間を作れ、つまり奴隷化した人間でなくて、自主自立而して民族的自覚のある人間を作れ。こういうことでありますが、私はその根本精神については大いに必要であると存じます。そこで私は特に第一條におきまして、よりよき郷土を作れ、單に技術や学問の端くれを教えるだけではない、よりよき郷土を作り、よりよき郷土を作るということは我々の国、社会青少年の一番接触しておる、一番利害関係の深い、一番感激に満ちた自分の郷土であります。でありますからこれを立派なものにするということについては、先ほど岩間委員が非常に御心配をせられた現実生活精神生活、物質生活、あらゆる点において矛盾撞着があるのではないか。帰するところこの青年立場から言いますとその郷土こそ青年が一番接触して、これらの矛盾撞着を彼らに感ぜしめておるのであります。又かような自分のところから、自分の生活を美化しようとすれば、自分の生活を確固たるものにしようとするならば、必ず先ず自分の郷土をそうしなければならないというように考える、これが自然の道であると考えます。この意味におきまして私どもは飽くまでこれを具体的に申しますとよりよき郷土を建設するように努力せしめる。そうしてあなたのおつしやられたように基本的人格の自覚ということ、つまり個性の自覚、能力教育するという、この点に大いに力を加えてそうして憲法の指示るところに全きを得るということに努力しなければならんと主張しておる次第でございます。今日の我が郷土をよりよくするにはよほどの決心が要る。よほどの反対を受けますけれども自己の確固たる信念に基きましてこの反対を説き伏せてそうしてよりよき郷土の完成に邁進せしめる実際運動、その感激、感激という言葉はお気に入らぬかも知れませんが、根本的に自覚した、つまり骨を教えるということは私は十分この言葉においてこの法律の中に植込んだつもりであります。なお足らなければこれはより以上の言葉を加えて頂くと結構だと思います。さような気持を持つておりますのでどうか御了承を願います。
  78. 岩間正男

    岩間正男君 民族の独立ということ、平和、こういう点について、どういうお考えですか。
  79. 長野長廣

    衆議院議員長野長廣君) 只今申上げましたように自分の郷土は、即ち自分の民族生活の根基であり、自分の国から、社会からいいましても、自分の郷士は一番近接したものでございます。そこに感激あり、そこに努力をすることが、本当の私は具体的な努力だと思います。自分の郷土をかくしなければならん。国家のためにどうする、社会のためにどうするということを言うと、あなたのおつしやるような抽象論になるのであります。我が郷土をどうするというような具体的なことから私は解決することが、本当に我が郷土をよくすることになるのではないか。産業の欠陥、経済的欠陥、人口その他の行き方の間違つているということを理解するのみなら、やはり意気ある、郷土に自覚ある青年を作ることにおいて十分それができるのじやないか、かように考えておる次第であります。
  80. 岩間正男

    岩間正男君 言葉のやり取りだけの問題じやなくて、事実この法案がどう具体的に遂行されるかというような問題になると思いますが、第一條につきまして非常にいろいろ質問の時間を費したのでありますが、まだいろいろな点で食い違いがありますけれども、一応この辺で第一條については区切つ  て、ほかのかたに……。
  81. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 私は本法案の審議の際には別個の考えを持つておりましたが、理事会でそう決定したそうでございますので、大体その線に沿つて簡単に若干確かめて置きたいと思います。  その前に第一にお伺いしたいのですが、是非私は委員長に諮つて頂きたいことは、この文部委員会は各会派少くとも一名ずつを以て常に運ばれておつたと思うのであります。而も本日は三時で打切るという理事会の決定だそうでございまして、私個人的な見解として続けたいと思うのでございますが、続けるとするならばここで一応休憩して、各会派からおいで願つて、いないところもございますので、改めて継続するかどうかを確認して、そうして継続して頂きたいというふうに提案いたすものであります。私も第一條に関する質問を是非したい点がございますので、私としましては本日続けて頂きたい。こういう希望を持つております。
  82. 堀越儀郎

    ○委員長(堀越儀郎君) ちよつと速記を止めて下さい。    〔速記中止〕
  83. 堀越儀郎

    ○委員長(堀越儀郎君) 速記を始めて。質問のあるかたはどうぞ。
  84. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 若干疑点を質して置きたいと存じます。  先ず第一條で、終戦前の教育にはよく郷土という言葉を使つたのですが、終戦後の新教育になつてからは、あらゆる場合に地域社会という言葉が用いられているのでございますが、「よりよき郷土の建設」と、この新教育で使い馴れている地域社会社会の形成者と、そういう言葉をお使いにならないで、特に「よりよき郷土」と、この郷土という言葉を使つているのは何を意味するのであられるのか、それが第一点と、それから地域社会と郷土という言葉との間に相違があるのかどうか、その点を伺いたいのです。
  85. 長野長廣

    衆議院議員長野長廣君) それは地域社会の中に入ると思います。
  86. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 そうなりますと、地域社会会のほうは郷土より範囲が広いと、こういうような解釈でございますか。
  87. 長野長廣

    衆議院議員長野長廣君) それはそうなりましよう。範囲が広い狭いというよりは、狭くも見ることができますし、とにかく地域社会ということ自体が抽象的な言葉なのですから、その中にはいろいろあるだろうと思います。例えば郷土の中には、自分の部落もあろうし、部落でも小部落もあろうし、又やや大きくなつては町村、それから大きくなつては市になりましようし、又県全体を郷土という場合のことも考えられます。それらを一括して地域社会と言えば言えないことはないと思います。
  88. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 そういうような意識で殊更に地域社会を使わないで、この郷土という言葉をお使いになつたのでございましようか。
  89. 長野長廣

    衆議院議員長野長廣君) それはそうでしよう。
  90. 石井勗

    ○衆議院専門員(石井勗君) 大体そういう意味でございますが、なお郷土と申しまする場合には、結局その本人を基準にしまして、私なら私の郷土という、いわゆる中心になるものとの密接な関係が表現をされておると思つております。
  91. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 意見になるからその点はやめますが、それでは次にお尋ねいたします。この法案学校教育法と社会教育法の補足的な法案であるということをこの法案審議の冒頭に当つて発議者は我々に説明されておるわけでございますが、然らば教育基本法にも、或いは学校教育法にも、地域社会のためとか、或いは有為なる社会の形成者とか、こういうような言葉があるのに、その補足法であるこの法案に特にこの「よりよき郷土の建設」というのは入れる必要はないのじやないかと、こういう見解を私は持つておるのでございますが、教育基本法並びに学校教育法、社会教育法、それらに副つて出て来たもので、その補足法であると、こういう大前提の下に打出されたこの法案に、特に「よりよき郷土の建設」ということを再び謳われたのは、何か理由があるのでございますか。私は必要がないと思うのですが、それに対する所見は如何ですか。
  92. 石井勗

    ○衆議院専門員(石井勗君) お話通り、遡つて教育基本法、或いはもう少し近いところで申しますれば学校教育法及び社会教育法の補足的、補強的な規定でありますから、それに書いてあることは一切省いたつて済むというお考えも成立ち得ると思いますが、やはりこの線に沿つたところで或る範囲のものを似た表現、或いは極端な場合には同じ表現で繰返すということも、例なきにしもあらずであると思います。それからこの場合におきましては、先刻来お話が出ました、第三者に利用されるとか、或いは国の犠牲になるとかいうようないろいろの誤解を生ずる虞れも過去から見ましてなきにしもあらずで、自己みずからの、いわゆる今のお話で言いますれば関係の深い地域社会それ自身の足許から固めて行く、それ自身の幸福というものと決して矛盾し、或いは無視しておるものではないという気持を盛込んだにほかならないのでございます。
  93. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 本法案産業教育法でありますので、教育の中の産業教育その面に関する目的を謳えばいいのであつて、大前提としての教育目的というものを私は謳う必要は、今意見を承わつたところでは必要はないとこう考えますが、これは意見になりますので、これでとどめます。  次にお伺いいたしますのは、先ほど岩間委員との問答の間に、或いは調和のある人間とか、或いは感激を子供に植えつけるとか、或いは単なる技術を覚えるような教育を目標としているのでないと、更にはその精神界云々というようなお言葉まで出ておつたわけでございまするが、そうとなりますというと、ここではつきりと私は質問しなければならないことが出て来るわけでございます。と申しますのは、先ずお尋ねしますが、この法案審議の冒頭に当つて職業教育法としないで、どうして産業教育法としたか、職業と産業との相違如何、こういう質問に対しまして、職業となるとこれは美術とか或いは音楽が入つて来ると、従つてそれを排除して狭い範囲にするために産業教育法という言葉を使つたのである。  こういう答弁を頂いたわけでございますが、現在といえども提案者はその点再確認されることと存じますので、その点から御質問申上げますが、職業教育と言つた場合に、現在の学校教育で美術なり音楽というものがはつきりと入つているのに、この法律を作るときにそういうものを初めから排除することを目標として産業教育とするということについてどういうふうに考えられるか。更に「有為な国民を育成する」とあり、更に先ほどからこの精神界とか、或いは調和とか、或いは感激とか、そういうものを発言されたわけでありますが、そうなりますれば、これは当然私は美術なり音楽なり、そういうものを補助するかしないかは別問題として、そういうものを包含したところの教育、即ち職業教育と、こういうふうに私は銘を打つべきであると思いますが、それに対する所見をお尋ねします。
  94. 石井勗

    ○衆議院専門員(石井勗君) 広い意味におきまして職業教育の振興を図つたほうがいいというお考えも、勿論私ども同感できるのでございます。ただ併し最初から相当な予算を伴うという見通しを私ども根本に持つてこの起草にかかつたのでございまして、従つてもう少し狭い意味産業とこの場合限定いたしたのでありまして、これによりまして、殊にこの経済面と直接の関係の深い方面をやつて行く教育の上においてはそれは非常に必要でありますが、更に日本現状から申しまして、全体的にこの経済力の非常な貧困を来たしておりますから、その方面にも貢献をするという意味から私どもはこの産業教育という範囲を一応想定したのであります。
  95. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 私も一応そう承わつておつたのでありますが、先ほど岩間委員との問答を聞いておりますと、「よりよき郷土の建設に貢献する有為な国民を育成する」と、そこに非常に経済界に対して精神界というものを特に強調されておるわけなんですね。そうなりますと、学校教育における職業教育指導において、はつきりと音楽というもの、美術というものがあり、これが円満なる調和のある人間育成のために如何に必要な教科であるかということは、私が申上げるまでもないと思うのです。そこに私は答弁者に非常に矛盾を感ずるのでありますが、矛盾を感じになりませんか。
  96. 石井勗

    ○衆議院専門員(石井勗君) 矛盾を感じておりませんです。先刻来申します通り、今のお話の音楽、美術、或いはこの医療関係、弁護士の仕事、これはやはり職業になつております。それらが一国の文化の上に貢献しておらないというようなことは毛頭思つておらないのであります。けれども先回に御答申上げましたような気持からこれを産業教育と限定をいたしたのでございます。
  97. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 人格の育成という立場から教育考えますというと、これは私は円満な調和のとれるということを考えなくちやならんと思うのです。そういう立場から考えますというと、ここに私は相当問題があると思います。特に学校教育法によつて教育課程によりまして第一線で教育を続けられているところの美術或いは音楽、そういう方面の教育者は、私は相当の意見を持つていると思うのであります。時間が許すならば私はそういう第一線の人人の意見を参考に承わりたいということを提案するものであります。
  98. 堀越儀郎

    ○委員長(堀越儀郎君) 第一章で、ほかに何か御意見ありませんか。
  99. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 私の提案をともかく採決をとつて下さい。
  100. 堀越儀郎

    ○委員長(堀越儀郎君) 定足数がないからその点はあとで考慮いたしましよう。
  101. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 理事会でやつてくれますか。
  102. 堀越儀郎

    ○委員長(堀越儀郎君) ええ。何かほかに御意見ありますか。
  103. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 第三條ですが、ここは非常に重要な問題があると思うのです。この第一條で、例えば音楽とか美術とかというものを除くために職業教育という名前を使わないで産業教育という名前を使つたと、それは結局必要は認めるけれども予算その他の関係上産業教育というものにしたのだと、こうなりますれば、第二條は青少年その他の一般公衆というものを排除して、そうして生徒学生とすべきではなかつたかと、こう考えるのでありますが。その点はどうお考えになりますか。
  104. 石井勗

    衆議院專門員石井勗君) この点は先般からいろいろの機会に御説明を申上げております、義務教育終了者年々百六十万の六三%、即ち約百万というものが土の学校に行かないでそのまま社会に出るのでございまして、年齢的に申しまして、身体的にも心理的にも、そうして更に労働基準法との関係もありまして、そこに三年間のブランク状況が出て来るのでございます。高等学校に入ります者は、不十分ながらとにかく高等学校においての教育の場を持つておるのであります。年々約百万というものが、学籍のない者が現実送り出されております。それを頭に置いたがためにここに青少年その他の一般公衆……、一般公衆と申しましても、大体いわゆる学籍のない者という範囲を度外視することは無理であろうという考え方からかく表現したのであります。
  105. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 現在中学校の職業科施設並びに高等学校の専門教科の施設が如何に不十分であるかということは、十分御承知と思うのでありますが、先ずこれを充実するということが先決問題だと思うのです。その充実ですらなかなか多額の予算を要して早急にできないと思うのでありますが、そこに重点を置くためにこの際再少年その他の一般公衆というものは第一條における見解と同様にこの際これを削除したほうがよいと思うのでありますが、そういう点についてお考えなつたことはございませんか。
  106. 石井勗

    ○衆議院専門員(石井勗君) 中学校高等学校におけるこの教育施設、殊に実験、実習のごとき経費を要する施設の不十分であると、これを充実するにも大変な経費を要するというお話は非常に御尤もであり、実状そのままを示しておると私も存じております。これを大いに充実しなければならんということは全く同感でございます。けれども今朝ですか文部大臣もおつしやいました御答弁のうちにありましたように、学校へ行くものだけの教育が頭へ先へ来て、学校へ行き得ないものの教育がおろそかになり勝ちであるということについて深く反省をしなければならんというお話が出ましたが、私どもまさに同感でございまして、先刻申しました年々百万というものがここに放出せられる、これを放置するわけには行かないだろう、只今の学校施設を大いに充実しなければならないということと、それから学籍を持たない年々百万のこの大量の青少年を如何にするかという問題、確かにここに二つの若干矛盾するところの場面が出て来るのでありますが、その点を考慮いたしましてできるだけ学校の充実を期しまするが、その学校施設学校教育自体と、更に今の百万を対象とする社会教育にも利用される、両方に使われるという意味におきまして、ここに青少年教育を挙げましたが、学校がなす社会教育というふうに考えを組んで行つた次第であります。
  107. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 それではお尋ねいたしますが、午前中の質問では、各種学校は大臣の答弁では予算、それからシステムの関係で各種学校は入れないと、こういうふうに答弁されておるのでありますが、青少年その他の一般公衆というのはこれは学籍はないのですね。ところが各種学校というのは、学校教育法でちやんと謳われていて学籍があるのですね。青少年その他の一般公衆さえ入れるのにどうして各種学校を入れないのですか。今仰せられるような立場から青少年その他の一般公衆を入れれば学校教育法の中で謳われている各種学校というのは当然入れるべきだと思うのでございますが、相当な食い違いがあると思うのでございますが、如何ですか。
  108. 石井勗

    ○衆議院専門員(石井勗君) 各種学校に手を延ばし得なかつた事情は今朝すでに答弁がありましたことで、その問題を繰返すことは成るべく避けますが、只今の各種学校におるものは籍がある。それを潤おさないで学籍のないものを礼金教育として潤おす。学校教育を中心にやるという考えでありつつ、学籍のある各種学校にあるものを潤おさないで、学籍のない今の満十五歳以上の中学卒業者に対して潤おすというところに矛盾はないか。こういうお尋ねのように伺いました。それでよろしうございますか。一応矛盾あるかのように見える面もあるかと思いますが、その点は決して私どもはかく感じておらないのでありまして、各種学校はそれぞれの意味において教育の上に相当な貢献をしておられることも承知をいたしております。すでにここに通い得るというものは義務教育を終了した上に、更にそれだけ行き得る状況におるのであります。今の百万というものは主として経済事情でありましよう。学校に行きたくても行き得ない状況におるものでありまして、これらに向つてはどうしてもできるだけの国において膳立をしてやらなければならない。或いは各種学校へそれがために今まで行つておつた人々が経済事情の急変によつて行き得ないという人が起つた場合にも、この面において救い得るのではないか。各種学校にすら行き得ない大多数のもの、これを私どもは看過し得ないと考えた次第であります。
  109. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 私はこの点はつきり明快にして置かなければならないと思うのです。と申しますのは、各種学校の先生はそういう答弁では了解できんと思うのです。それで私ははつきりして頂きたいのですが、若しも義務教育を終えて学校に行き得ないところの青少年教育するという立場から一方をやるのならば、その立場でやつたらよろしいと思うのです。ところが歴として資力があつて学校に行き得るところの大学、高等学校中学校という、そういうものには補助しておるわけだ。ところが先ほどから各種学校学校へ行き得る生徒であるから補助しないというお言葉が出ておりますが、こんな言葉は端くれでありまして、根本は青少年その他の一般公衆でございます。これから第一條に謳う学校以外の青少年その他の一般公衆、この青少年その他の一般公衆には各種学校生徒も勿論これにも該当するわけですね。何が故に各種学校生徒だけを落されるかということは各種学校の先生にとれば私は納得できんと思う。青少年その他の一般公衆を除いて学校教育法の第一條に謳うところの学校生徒学生を主対象として立法するならば、各種学校を落されてもそれは了解がつくでしようけれども、そうでなくして、こういう形で出されて今のような御説明で各種学校を落されましたのでは、各種学校としては私は了解できんと思うのですが、重ねてその点の説明を承わつて置きます。
  110. 石井勗

    ○衆議院専門員(石井勗君) 各種学校の問題については先刻申上げましたように、午前中に提案者側からも、文部省側からも御答弁がありましたから、そのことは先刻申し上げました通り御遠慮をすべきであると思いますが、今朝出ました話も学校形態、学校教育法第一條の学校が我が国の教育の中心形態をとつておる。それを中心に盛立てて行くという考え方が基礎を成しておりますので、先刻私が申上げましたのはこの青少年のほうに対してやつて、そうして各種学校にやらないという比較問題としてのお話かござしましたから、その部分についてだけの気持を申上げたにほかならないのであります。文部大臣の午前の答弁を御参照頂ければ幸いであると思います。
  111. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 これは文部大臣の午前の答弁は私聞いておつたのでありますが、それを聞いた上で、私は理解ができないので、御質問申上げておるわけですけれども、これ以上意見になりますから追及いたしませんが、各種学校の関係者としては了解できんと思います。更にこの点についてお伺いいたしますが、午前中承わつたところによりますと、専門員のほうからはこの法案学校教育を主にして、学校教育法の第一條に謳うところの学校産業教育というものを主に考え学校という教育の場において行われるところの社会教育というものを従に考えておるのであるというような御説明が午前中木村委員にあつたわけでございます。それから只今もそういうようなことがあつたわけでございますが、そうなりますと私はこの提案理由の訂正をお願いいたしたいのであります。提案理由の補足説明にははつきりと「この法律案は義務教育を終了いたしました大多数の青少年に対しまして自主的生活能力の基礎を培いたいというところに重点を置いてあります。」と、こういうふうに提案されている。私たちがこの法案の審議の冒頭において承わつた当時の提案者説明と、本日午前中承わりましたこの法案に対する立場とでは相当私は説明に懸隔があつて、いずれが提案者の真意であるか迷つておるのでございますが、そこをはつきりして頂きたいと思う次第であります。
  112. 石井勗

    ○衆議院専門員(石井勗君) 義務教育を修了しました青少年を対象とすることを重点とするということを申上げましたのは、百六十万人出つつある、それを一括して申上げておる場合でございます。先刻社会教育の問題でお話が出ましたから百万の範囲を申上げた次第でありまして、高等学校設備高等学校の職業科、別科、これについてもこの法案の中においてはむしろ一番の中心の系統としてこれを強化するということに重点を置いて言つていることは御覧頂いた通りと思います。従つてもう一度要点を申しますると、義務教育修了者に重点を置くということは、百六十万の義務教育修了者が年々出つある、これに対して重点を置くという意味でございます。青少年のところで申しましたのは上の学校に行けない、即ち高等学校に入れないという数の百万のことを申上げておるのであります。
  113. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 一向わかりませんな。これは提案理由も変つて来たのでしようか、そうですが……百万という数が多いから重点でございますか……。
  114. 石井勗

    ○衆議院専門員(石井勗君) 義務教育修了の者にこの教育の対象として重点を置いておるということを提案理由に申上げましたことは、つまり年齢的に申しますると、満十五から満十八ぐらいまでの間のところの全国青少年産業教育というものに主力を注ぐ、こういうことであります。そこでその中に高等学校に入つております者、これが約六十万、それから高等学校まで進む力を経済的に持たない、恵まれない者これが約百万で、こういうことを第二段に申上げたのでありまして、年齢的に申しましてこの中学修了者というところを一番重点に置いておるということは動かないことであります。
  115. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 そうなりますと、この提案理由の第二のところはこういうふうに書くべきじやなかつたのですか。産業教育には学校教育でやるものと社会教育でやるものとがあるが、学校教育でやる産業教育を主にして、社会教育でやる産業教育を従的なものに扱う、こういう表現にすべきじやなかつたのですか。この提案理由の第二では、「公立私立の学校学校教育として行う産業教育と、もう一つはそれらの学校が中心となつて行う社会教育の両面を対象としておるのでございます。」そこにあなたがたが冒頭に言われました学校教育社会教育法の補足法としての性格があつたわけでありますね。だからそれらを併せ考えると、どうしても私は提案理由でははつきりとどこに事点があるかということが把握できないわけですが、如何でございますか。
  116. 石井勗

    ○衆議院専門員(石井勗君) 結局同じことを申上げる形になりますが、中学校を卒業して出て来ます者が年々約百六十万見当ずつある、それに約今の三年間の教育を與えたい。今は学校組織として高等学校が置かれておりますが、その内容、殊に設備或いは教員その他にも非常に恵まれない状況にさらされてあります。高等学校のほうも多分にこれを充実しなければなりません。併しそれは中学校を卒業して出て来ます百六十万のうちの六十万人がそれを通る道になるのであります。あと百万人というものは学校から縁のない状況の下に置かれております。その面を社社会教育の形で行こう。勿論その中から別科などを拡充いたし、殊に地域的に便宜を図ることによりまして百万のうちがもつと高等学校に入り得るということで、数が学校の正系のほうへ、正しい系統の数のうちへ移動する部分がだんだん出て来るであろうということを思いますし、又好ましいことでありますが、全体の年々出て来る百六十万のものを約三年間やる、ここに重点を置く。そこに重点を置くその準備と申しますか、その前期時代といたしまして、中学職業教育に更に助成をする。大学のほうはこれに対しての教員補給、教員を供給するという仕事において大学のほうにもいわゆる助成をして行く。で、中心の一番の重点はどこに置いたかと申しますと、只今申しました滿十五から満十八、この三年間の青少年教育するというところに重点を置いている。こういうことを申上げているつもりであります。
  117. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 それだつたら、学校教育の、社会教育のと問題にならなかつたのですね、冒頭問題になりました、それを最初はつきり話されれば、中心年齢はこれで行くが、十五から高等学校を終るまでの十八歳ということははつきりしているのでありますから、それが社会教育であろうが、学校教育であろうが年齢というものは十五から十八歳ということを対象にしているのだということを申しますと、冒頭に問題になりましたように、学校教育とか社会教育とか大学云々ということは問題にならなかつたのであります。それで繰返して私はお尋ねいたしましたが確認できました。第一條に謳われるところの学校で行われるところの産業教育、これを主にしたものであるということか確認できたわけでありますが、それでは続いてそれに関連してお尋ねいたして置きますが、そのために短期の教育を充実いたしまして、できる限り多くの青少年教育の機会を與えることに留意してあります、そのために短期の教育を充実いたしますという、その短期の教育というものは何をされるのですか。
  118. 横田重左衞門

    ○衆議院専門員(横田重左衞門君) 短期の教育と申しますのは、従来高等学校にあります別科の教育形態を含むのであります。それから講習会のようなものも含むわけでございます。
  119. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 この法案の審議の冒頭に定時制或いは別科でやればどうかという質問に対して、その当時別科というのは各中学には設けられない、田舎の中学校もあるからというような御答弁を頂いたのでありますが、田舎の中学校に設けられるものと言つたならば、講習を指されるわけですね、そうですが。
  120. 横田重左衞門

    ○衆議院専門員(横田重左衞門君) 田舎の中学校高等学校の分校として設ける場合も一つ考えられます。それから今申上げました講習会という方法考えられると思います。
  121. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 その講習会は学校教育としてやるのですか。社全教育としてやるのですか。
  122. 横田重左衞門

    ○衆議院専門員(横田重左衞門君) 学校が中心となつて学校でやります社会教育でございます。その社会教育と申しますのは学校教育法の第八十五條に一つの例がございますが、そういつた意味の社全教育でございます。
  123. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 それではその点について最後にお尋ねをいたして置きますが、そうなりますと、中学校を終えた生徒で約七割五分という人は高等学校に行かれないのですね。そういう生徒に短期の教育を充実させるという方向に参りますと、学校という教育の場において行うところの社会教育というものが主ということになりますね。
  124. 横田重左衞門

    ○衆議院専門員(横田重左衞門君) さようでございます。
  125. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 そういたしますと、学校教育法の第一條に謳われているところの学校において行われるところの学校教育を主とするというのとは矛盾いたしませんか。
  126. 石井勗

    ○衆議院専門員(石井勗君) 或いはちよつと御質問意味を取違えておるかも知れませんが、学校学校教育教育の中心体系をなしておるということは事実であり、又制度の上にも明示しておるということは御異論のないところであると思います。只今申しました社命教育中学卒業生の七五%とおつしやいましたが、県によつて七五%のところもあると思います。それから私ども全国的の最近の文部省のデータから全国比率で六三%と押えておる次第でございますが、この多数の者が学校において社勢教育として産業教育をしてやらなければならん。学校がやる社外教育をこの法案で補助をすることを規定しておる。従つてこれが行われるようになれば、その社会教育の大部分というものは公民館その他でやる社会教育もあるであろうが、学校へ来て学校がやるところの社公教育にこれらの人々が大部分吸収せられるものであるがと、こういう御念をお押しのお話と私承わります。その意味において社会教育としてやりますところの学校教育学校のやりますところの社会教育が、この六三%、あなたの言われる七五%が、大部分は学校が行う社会教育に吸収する、こういう意味でございます。
  127. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 その点質問しまして、最後にもう一点お尋ねして置きますが、終戰前にありました実業補習学校ですね、或いは青年学校、ああいう性格の教育機関と、それからこの法案に謳われているところの義務教育を終えて、而も学校に行けないところの青少年教育というもの、その両者の性格をどういうふうにお考えになりますか。
  128. 石井勗

    ○衆議院専門員(石井勗君) 誠に申訳ないのですが、その戰前組織というもの、制度とかなんかは聞いておりましたが、私現場を取扱つたことがないのでございまして、実は正確なその姿を私は掴んでおらないのでありまして、ここで描こうとしておりますところの今後のこの構想というものだけは私ども一応頭にはつきりしております。よく伝え聞きますところの青年学校或いは徒弟学校青年を道具にする、或いは企業家、資本家の都合のいいような唯々諾々として動く機会的な人間を作ることを目的としておる。或いはあとには青年学校などは軍事教練の負担が非常にたくさんになつて、軍の希望するままになつておつたというようなことがありましたならば、それの点はおよそ我々の描いておるものと相当逆なものでありまして、どこまでも人間としてみずから喜んで、自主性を持つて働き得る人間、これを作ることを目標としてやつて行く。これが本法案の狙つておるところの構想でございます。
  129. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 その点満足な答弁を得ました。第二條でもう一つ別の点からお伺いいたしますが、それは最後に「職業教育として行う家庭教育を含む。」とここに括弧内に書いてあるわけでありますが、この「職業教育をして行う」というのはどうしておつけになつたのですか。
  130. 横田重左衞門

    ○衆議院専門員(横田重左衞門君) これは深い意味があるわけじやないのでありまして、一つの学科編成上、例えば中学に職業普通家庭科というのがございます。家庭科というものは独立でなしに、職業科も独立でなしに、職業と家庭科とくついたのが一つの教科課程になつておる。この括弧の中は中学のものをそういうふうに従来ある学科課程の名称に従つて入れたものであります。
  131. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 そうなりますと中学校家庭教育は入れるが、高等学校家庭教育は入れないと、こういう御見解でございますね。
  132. 横田重左衞門

    ○衆議院専門員(横田重左衞門君) 高等学校には家庭技芸科という單独したものがございます。高等学校で通称家庭科と申しますのは家庭技芸科と言つておりますので、高等学校家庭科は入るということになります。
  133. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 高等学校は入る。それでは職業教育として行うということはどうして職業教育として行うということと言えますか、なくてよろしいじやございませんか。
  134. 横田重左衞門

    ○衆議院専門員(横田重左衞門君) これは只今申上げました中学のことを懸念してここに断つたのであります。高等学校のことは実はここに入れて置かなかつた。高等学校家庭技芸科というものがありますので、そのまま御了解願えると思います。中学の学科課程を懸念いたしまして、括弧で特に断つたわけであります。
  135. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 局長、その御見解でよろしうございますか。
  136. 杉江清

    説明員(杉江清君) これは中学校のほうは今御説明通りでありますが、高等学校のほうにおきましては実際はいわゆる家庭技芸科と、一般課程としての家庭科と両方あるわけであります。一般課程のものが入るかどうかということが問題だと思います。これは今のところいわゆる普通課程の中に入つておるわけであります。ここでこういうふうな規定がありましたのはいわゆる家庭技芸科はこれは職業課程の中に入つております。だから家庭技芸科はこういう規定によつて必ず入ることになりまして、私はその家庭技芸科は入る。併し一般課程のほうは除くと、こういう趣旨であろうと思います。
  137. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 さすが文部省政府委員だけあつて明快な答弁でありますが、併しそうなると私お伺いするのでありますが、終戰後男女共学の高等学校になつて、女子の学校に男子が入つたならよいのですが、男子が今までいた学校に女生徒が学区制によつて半ば強制入学をさせられた場合に、普通科課程の高等学校においてその家庭施設というものは極めて不十分である、不十分というより殆んどないのです。従つて学区制を布き、半強制的に男子のおつた学校に女生徒を收容して置きながら、女性として当然修むべき家庭科の授業ができないという状況であります。いつぞや本委員会におきましても、産業の振興といつても先ずこの家庭の問題から解決しなければというような発言も或る委員からあつたくらいでありまして、そういう角度から考えまするときに、相当施設の費用も要する、家庭教育施設の充実のためにも、私はここで除くべきではなくて、これは当然入れるべきだとこう考えるのでありますが、立案者としては、その点どういうわけでそういうふうに区別なすつたのでありますか。
  138. 石井勗

    ○衆議院専門員(石井勗君) お話通り高等学校の普通科のほうにおきましても、只今の御指摘の一般家庭科も同様、或いは物理化学、生物学の中の実験施設から申しましても、お話にならない貧弱な状態になつております。私どもとしてはこのいわゆる普通科のほうも勿論文教問題として全部大いに盛立てて行きたい気持は山々であるのであります。併し全面にそれらの問題まで行くとしますれば、それは現制度では平衡交付金などの問題になるのではないかというふうに私ども考えておりまして、産業教育の面だけということで考えて参りました、従つて今の家庭科というものについては、先刻来御質問のありました通り、私どもの頭にも一体どこから区分をつけるか、全部含めていいかどうかという問題は、起草中には何度も実は問題になつた次第であります。そこで今の一般家庭科のほうとは一般学科というふうな考え方をいたしたものでありますから、一般学科という点で教室も不十分であり、或いは物理化学その他の設備はなお不十分であるという状況であるから、形式上家庭科というものが二つに切れても止むを得ないのではないかというような、こういう考え方を持つた、その気持がここに現われておる次第であります。
  139. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 例えば農業をやりましても、中学における職業科としての農業と、それから高等学校の専門課程としてやるところの農業、これは教育目的はおのずと違つていることは、学校教育法に明記されているところであります。併し家庭教育となりますというと、中学校にやつておるところの家庭教育高等学校にやるところの家庭教育というものの目的は、私は区別はできない、こういうふうに考えますが、勿論コース・オブ・スタデイーによつて中学校の職業科と高等学校の職業科といろいろありましようが、ともかく中学校の職業科というものは施設をすることはできないと思います。施設云々と出て参りますれば、第二條に大学高等学校、或いは中学校とこう謳つておる以上は、当然私は高等学校の普通科における家庭施設、殊に男女共学を牛強制的にやつておる現段階においては、当然それを含むために、これは職業教育という言葉は落すべきであるという、そういうことを重ねて申上げまして第二條に賛成いたします。
  140. 岩間正男

    岩間正男君 第三條の一に、「産業教育の振興に関する総合計画を樹立すること。」である、こういうことが掲げられておるのでありますが、この産業総合計画というのはどういうことなんです、その内容について大略を話して下さい。
  141. 石井勗

    ○衆議院専門員(石井勗君) 産業の種類が非常に多種多様あります。それにそれぞれのローカルの特徴がございます。同じ同一の産業を狭い国内といえどもどこへ持つて行つても同様に伸びるというものでないことは十分御承知の通りであります。そしてそれぞれの産業が又いろいろの他の方面にも影響を持つております。更に教育といたしましても、この上は大学から下は中学校、小学校の義務教育にまで、殊にこの問題に一番関連のあります高等学校の程度におきましてもその土地の状況、各府県の産業の状況、或いは人口の状況、気候風土、いろいろと睨み合せるのでないと本当のものが出て来ないのであります。ここのところは主として各府県單位、地方公共団体のやる仕事ということで掲げてありますが、各府県について見ましても相当その問題を考慮しなければならない、それらの全体として非常に困難なことでありましようけれども、できるだけ相互関連の視野から材料を先ず揃えてその上からいろいろの第二以下の計画が立てられるべきものと、こういう考え方を持つた次第であります。
  142. 岩間正男

    岩間正男君 そうすると只今お話でありますが、学校施設に対してそれを総合して考えるという、計画を立てると、こういう意味なんですか。何だか総合計画というのはもつといろいろな産業のいろいろな種類がありますね、そういうものをどういうように総合してやるかというようなそういうほうにも触れて行くと思うのであります。学校施設的な、今お話があつたのでありますが、それはどうですか、簡單に一つ願います。
  143. 石井勗

    ○衆議院専門員(石井勗君) 何か最初に私が前半申上げたところをお聞き落しになつたように思います。前半にその問題を申上げまして、産業自身が非常に種別が多いものでありましてそれの問題を前半に申上げまして、そして後半に又今の教育という面で学校の問題を附加えて申上げたのであります。
  144. 岩間正男

    岩間正男君 この総合計画を立てるに当つてこれはどういう観点から立てられますか、つまり総合号計画を立てる目標ですね、それが明らかでない……。
  145. 石井勗

    ○衆議院専門員(石井勗君) できるだけ客観的事実を基礎にして、その客観的事実を総合して結び合せて判断をするということは動かないことであろうと思いますが、その狙いは何であるかというお話でありますれば、真接には産業教育そのものが振興せられるようにということ、従つて産業教育を通じて産業の振興にもなつて参ります。
  146. 岩間正男

    岩間正男君 これはこの計画を立てるとき、無論審議会意見を聞くわけですな、そうでしよう。その場合ですね、一体どういう観点から立てるかということなんです、私は。そうしますとその計画を立てるときにいろいろ立て方があると思うのです。例えば中央審議会の例を見ますとこれには参加している人が財界、経済界、教育界それから労働界、それからまあ官庁関係というふうにあるわけですけれどもね、これはどういう立場から出さなければならないと考えておるのですか。つまり教育を受ける主体から立てるべきであるか。それから殊に審議会の発言権を考えるというと、恐らくこれは産業経済界あたりの人の発言が非常に強力になつて来るのではないかと考えられるのです。そうしますとそういうときに大体総合計画というものが教育を主体とした立場から立てられるのであるか。それとも或いは又産業的な一国の政策面を取入れた点から立てられるかによつてその計画の内容というものは非常に変つて来ると思うのです。これはどうでありますか。
  147. 石井勗

    ○衆議院専門員(石井勗君) 産業教育の振興を目的とする総合的見地から出て来るはずでございます。更に或いは言葉を変えて申しまするならば、第一條の目的の究極の「もつてよりよき郷士の建設と経済自立に貢献する有為な国民を育成する」これを目標に立てられるべきだと思つております。
  148. 岩間正男

    岩間正男君 教育はやはりこれは我我から見ると、我々から見なくても社会科学的に見ればやはり階級性を持つんです。だから教育と漠然と言つても我々は承知できない。この教育が例えば支配階級が非常に有利なために作つている教育もある。或いは実際これは人民の立場から作られている教育もあるわけです。そこで産業教育を立てるというのだけれども、これはどつちかに性格を持つて来るわけです。それでこの産業教育法案においてはどつちを主体にして考えるのか、そこで教育の使われかたというのは非常に変つて来るわけです。性格が変つて来る。どうなんですか、これは産業経済人というのは相当、非常にウエイトを持つて審議会に入つて来る。そうしてそれから来るところの総合計画というものが、大きく出されて来るときに、これに対してどういうふうな調整を現実にされようと考えておられるのか、これはどうですか。
  149. 石井勗

    ○衆議院専門員(石井勗君) 産業教育を振興することが、当面の総合計画を立てる目標であるということを申上げましたが、結局産業教育産業を振興することを目的としております。産業が盛んになり、経済が豊かになるということ、それを目的としております。
  150. 岩間正男

    岩間正男君 そういう答弁にならない答弁で以てここのところを逃れようとしている。こういう態度では困る。実際もう少し説明のできる人を呼んで下さい、発議者を……、説明にならない。私らが聞いているのは、そういう抽象的な言葉というものは役に立たんのです。これは問題にならないのだ、まるで答弁になつていないですよ。私はどつちの立場で……恐らく構成から見るというと、これに対して一つ産業経済人の要求というのは、非常に大きく盛られで来るのじやないか、こういうものに対してどのように教育的の立場から調整するように考えておられるか、こういうことをお伺いしているのであります。これは産業教育の建前、その産業教育そのものが性格的に内容がどうきまるかということは、今の総合計画と実質面によつてきまる、そのことを聞いているのでありまして、そうするとさつぱり答弁にならない。循環論でいつまでも同じことをやつている。掘り下げてどういうふうかという私の具体的質問に対して答えて下さい、おわかりになりませんか。
  151. 横田重左衞門

    ○衆議院専門員(横田重左衞門君) 只今のお話でございますが、産業資本家的な立場からやる教育もあるし、そうでない場合もある。というふうに教育を分けて考えると、そういう教育もあるかも知れませんが、私どもこの立案に当りましては、如何なる意図を持つて教育をするかという、その一つの何と申しますか、階級的な立場と申しますか、一つ立場において考えたわけではないのでございます。そういう建前前で、一つの一定の立場があつて考えたものではないのでありまして、直接立案に当つている私ども立場としては、そういう考えは毛頭なく、教育ということだけの観点でやつているわけであります。
  152. 岩間正男

    岩間正男君 やはり御答弁にならないと思う。私はそういう抽象意見では、これは日本教育は駄目だというのです。大体戰争に追い込まれたのは、こういう抽象的な、観念的な議論ばかりやつて現実と離れていた、現実ではそういうことはない、どつちかです。今の立場教育というのは、具体的に社会的な一つの機能として果たされている性格を見るとどつちかなのであります。本当に人民の側からの利益のための教育であるか、或いは又それを強調させて、そうして資本家にそういう一つの利益を提供するという立場でやれば、いわゆる資本主義的な労使協調の立場をとるか、そういう二つの立場になる、どつちかなんです。中間的なあいまいな観念、教育的にはそういうものはあるかも知れないが、現実にはない、そういうことから私はこういうことを聞いている。資本家は資本家の側から大きな要請が中央審議会を通じて出された場合に、教育的な観点から、これに対してどのような調整をするかという具体的なことを聞いているんです。これに対して速記を読んで御覧なさい、さつぱり答弁になつていない。これは皆さんが答弁できなければ長野委員長を呼んで一つ答弁させて頂きたいと思います。
  153. 石井勗

    ○衆議院専門員(石井勗君) その問題につきましては、中央及び地方産業教育審議会というものが置かれることに予定をいたしております。そうしてその委員は各方面の相当な人々を委嘱するということを前提といたしております。これは各地方公共団体にも、又中央にもできることになつております。これらがおのずから各方面の人々がここに集まることでありますから、その協議によつていずれにも偏しない、いわゆる妥当なものができるものと私どもは予想しております。
  154. 岩間正男

    岩間正男君 これはやつぱりおかしいと思います。そうしますというと、あなたの御意見をもつと押し進めれば、当然教育を受ける立場の利益を代表したものは審議会に入らなければならん。そうでなければわからない、例えば今言つたように、数によりましても、学識経験者、経済界、産業界教育界の学識経済者、それから労働界の学識経験者、こういう形で集められて来る人々が、現実的にどういう形を持つているか、あなたが今までしばしば論じられていたことは、今の二つの対立があるのだから、こういうような利益問題について、お互いにやはりこれは相当力関係もあるでしようが、そこは調和させて行かなければいけない、要求を踏みにじるのだということは、教育は破壊されるから、そこのところを主張する立場と、それから今あなたの御説明を押し進めれば、この中央審議会に、教育を受ける階級を代表するところの利益者が入つていなければ、絶対にそういうものは守れないということをこれは明らかに裏付けた御答弁になると思うのですがどうですか。若しそうだとすればこれは審議会の構成そのものを別な角度から謳わなければならん。審議会のことも同時に、これが單にああいうものを羅列して、殊に勤労階級の学識経験者というものはどういうものですか。それは現実的にありそうもない。そういうものを集めて来て、而も文部大臣が任命するという形をきめますこの政令というものは、今の問題な解決するのにならないと思う。そうして中央審議会の構成を変更しなければならんという意見ですか……。
  155. 石井勗

    ○衆議院専門員(石井勗君) 先刻の岩間さんの御質問に対して、被教育者の代表が委員の中に入らなければならんのじやないかという御質問がございましたけれども、私どもはこれは教育対象になるものではあるけれども、この審議会についてはその委員に入れる必要はないものという考えで立案をいたした次第でございます。
  156. 岩間正男

    岩間正男君 必要のないものといつてもそれはおかしい、勝手極まります。独断専行だ。私が言つておるのは、そういう形で進められて来た、今までの日本教育はそうだつたのです。その意味で場合によつては、我々全く手段的に使われて来た。こういうものは防がなければならん。防ぐのは当然の教育の自己防衞だ。そういうことから考えして、本当に教育を振興したいのだというならば、当然そういう立場から考えられなくちやならん。ところがそういうことは必要がないとお答えになつておる。その考えそのものが、如何にこれはそういう面についての理解が薄かつたか、或いはそういう面についての具体的な事実というものを、全然把握されないところのものであるか、或いはもつとはつきり、そういうような一つの支配的な階級に奉仕する意図を持つてこういう審議会が作られた。こう断定をされても、これは弁解の余地はない。なぜそういう方向をとられるのか弁解の余地はありますか、あなたは論駁できますか、お答えありますか……お答えがないようでありますからこの次に移ります。お答えありますか。長野さんによく言うて頂きたい。  それからその次にこれと関連して第五号であります。産業界との協力を促進することというのでありますが、これは協力してもらうのだ、飽くまで教育の自主性は守り抜くのだ、こういうことであります。ところが、由来現実産業人というものはなかなかソロバン高い。御承知のように、一体利益にならないことでは余り協力するということはしておりません。これは日本の文化の状態を見ればわかる。日本の文化が五万円くらいの保護資金があると、それで文化の維持ができるといつても五万円出すものはない。文化財保護、そういうものに寄附したつて儲けにならんことです。何事もソロハンで計算する、これははつきりしておる。この協力というやつはソロバンにならなければやらんのです。私のソロバンと申上げておるのは、今ここで利益が何方円上つて来るということだけ指しておるのではありません。無論経済家、産業人はもつと先を考えるでありましよう。実は今まで協力してくれておるように見ておるが、ごつそり将来取るということを考えてる。こういう意味協力は、日本産業人を見ますときに、これは日本だけでないでありましよう、これは世界の大体大きな資本家というやつは、そういう慾張り者なんだ、そう断定して間違いない。こういうことから見ると、産業界との協力は非常にマイナスだと思うのですが、どれだけの協力をさせて、その協力に対して、無償の協力なのであるか、そうしてこれに対する反対給付のごときものはおるのかないのか、こういう点について十分検討されないというと、折角この法案作つてもらつたが、三年後に実際はこの適用を受けるところの何百万の子供たちに怨まれることが起る、これについてお答えを願いたい。
  157. 横田重左衞門

    ○衆議院専門員(横田重左衞門君) 只今のような御心配は過去にもあつたことでありましてその御心配は誠に御尤もと思うのでございますが、ここで発議者が言うようなことを言つちやおかしいですが、専門員として(「身代りになつてつて下さい」と呼ぶ者あり)専門員の案だと思つてお聞きを願いたい。(「本当のことを言つて下さい」と呼ぶ者あり)産業人に対してそういう御心配とお疑いを持つということも考えられることではありますけれども、一面教育をする教育者のかたがたの識見というものを信ずることがあつてもいいのじやないかと思います。
  158. 岩間正男

    岩間正男君 私も教育界に三十年いた人間です。それで教育者を信じろというお話でありますが、そんならば教育者の俸給を今の三倍ぐらいにしておいて教育者を信じろというならはいい、ところが食えない態勢にしておいては、産業人が手を延ばして来るときに、何が起るかはつきりしておる。信じろと言つても根拠を與えないでおいて言うのは無理だ。私は信じられない。こういう態勢について非常に疑惑を持たれる産業界協力というものは、これに対する一切の保証をどうする。絶対そういうものに無償の保証をさせるということを法案に定めるなり、何なり念を押して置いて頂かなければどうなるのです。あとでごつそり取られる。行きはよいよい帰りは恐いでは困る。
  159. 横田重左衞門

    ○衆議院専門員(横田重左衞門君) 只今の御心配教育をやつて過程の中で起つて来るつの現象だろうと思います。教育そのものについては、やはり教育の任に携わる教育のかたの高い識見というものによつて行われる以外に方法はないのじやないかと思うのでありまして、産業人が若しそういうことをやつで来るかどうかということは教育をやつて過程の中で起つて来る現象ではないかと思うのであります。その現象の問題でなくて、法案はやはり根本的な問題から、教育という観点できめて行くべきじやないかということが私ども立場でございます。
  160. 岩間正男

    岩間正男君 一応そう御答弁なさることは止むを得ませんが、例えば非常に立派な名目の下に工場動員というものが行われた太平洋戰争中に、工場動員の実際の事務に当りました先生たちの中には、やはり資本家に買收されたような形になつた者が多々あるのであります。そういう具体的な事実が出て来ておるわけなんですが、これは産業教育法案によりまして具体的な生産というものを相当やることになる、第六條ですか、第六條だつたと思いますが、相当な收益があるわけなんですが、そうしてそういうものについて、どうしても産業人の……産業界との協力というものがそこに出て来ますと、仮に学校内部の生産そのものよりも、一番狙つとおるものは、労働力を提供しておる、安く労働力を提供しておることで学校では直接そこは利益を取らないにしても、産業人は協力をする、機械設備、そういうもので協力する、とどういうことになるかというと、そこから出た子供たちは今度は実際就職するときは、或る種の協約を結んで置いて、安い賃金でやるということの可能性が出て来る。そうしますと、産業人は一種の投資として教育をやつて来る、こういうものに対しまして、教育的見地から守り抜くという條項がなければ、そういうような自衞の弁がなければ、私はこの線は破られる、一番危い線になると思うのであります。こういう点について御考慮がなければ、私は非常にこの法案現実的な問題とし出て危い。殊に労務がますますこれは多く必要に迫られて、或いは日本状態がもつと急迫した情勢に追い込まれると、日本経済の再軍備、軍事生産再編成という課題も今噂さされて問題になつておる、そういう場合にそのうしろから支配するものは何に目を着けるかというと、これは飽くまでも日本の低賃金、この低賃金に目を着ける、低賃金の根拠は依然として青少年の低賃金だ、日本の低賃金のあらゆる根拠は青少年の低賃金が土台になつて、逆に全体の賃金が低くなつておるというのは残念な姿であります。そういう姿が最近非常に復活しておるのでありまして、そういうような労務提供というかつこうになつて、そういうものの、いわば狼が口をあけておる、その口に小さい小羊だけを入れて、労務だけを提供するということを誰かいなめるか。こういうものについて、どうしても、これに対してはつきり防衛の策を考えなければおかしいと思うが、これは全然お考えにならないのですか、これは如何ですか。
  161. 横田重左衞門

    ○衆議院専門員(横田重左衞門君) 只今申上げましたように、教育して行く過程の中の現象の問題でありまして、そういうふうにいろいろと考えますと、俸給にかかわらず、いろいろのたくさんの心配事が出て来ると思います。それに対して一々防禦の法規を設けるということであつては、教育の任に携わる先生がたの識見を無視しておるのじやないかと、私どもむしろそう考えるのであります。
  162. 岩間正男

    岩間正男君 そういうようなことは我々は絶対承服できない。先生の識見は我々も同僚として信頼しておりますし、その信頼するとか、しないとかいう個人的な問題でなく、そうせざるを得ないところに落しておることが一つ、それから実際問題として、現実的にそういう形が起つておるのでありまして而も一つ一ついろいろの問題が発生するという御説明でありましたが、これほど大きい問題がありますか。日本のいわゆる青少年労働の問題について、いわゆる産業教育法案の中でこの日本青少年の低賃金を組織化して、そうしてそれを、いわゆる先ほどから、はしなくも石井さんですか述べられたが、学校教育中心だと言われた矢嶋君の答弁の中にはつきりこれは十五歳から十八歳のものの賃金が中心である。そして学校教育社会教育もいわゆる百万人と六十万人とこれは差別がないようなものである。これは私も聞いている。果せるかな、明らかなことを言われた。これは肚の底をあなたがおつしやつたのだということを解釈したのです。こういう形が出て来ている形において、これは何を目指しているかというと、この法案の性格が、今までの審議して来た形から非常にひつくり返つているような感じを私は持つのです。少くとも百八十度転換するような大きな意味を、先ほどの御答弁はどういうふうなお感じで御答弁なさつたか知りませんけれども、そういうような性格を持つ御答弁ですよ。その中でこれを守るということは、日本の過去の、くどく申上げる必要はないのですけれども、帝国主義侵略戰争の一番大きな基礎というものは低賃金であつた、低賃金によるところの労働搾取、これによるダンピング、これが基本であつた。これがどうしてもこういうものにまで追い込まないところの大きな防禦態勢ということを考えることなしには絶対にこういうような法案は戰時立法でないということの保証がないわけです。我々はこういうものを戰時立法にしたくないために防禦態勢というものをはつきり打立てて置かなければ問題にならないと思う。これは小さい問題ではありません。一国の政策に関するところの重大な問題であります。ポツダム宣言下におけるところの日本の重大な問題であります。そういうふうにお考えになるのは、これはとんでもない判断だ、これは失言だと思う。
  163. 横田重左衞門

    ○衆議院専門員(横田重左衞門君) 大変大きな御見解からのお話でございますが、いろいろ考え方、見方も相違する点があるのではないかと私考えるのでありますが、ただ一言申上げたいのは、産業界教育と申しますのは、賃金をもらつて工場に行くのでなくして、基礎的な知識を、学校で授けられたのを応用するという場面になるのでありまして、そこへ行つてそこの会社の生産物に労働力を提供するという問題ではないのでありまして、自分が学んでいる基礎的な知識をそこで応用するという意味教育でございます。
  164. 岩間正男

    岩間正男君 まあなかなかうまく御答弁なさいますが、こういう国会の論議だと思つてそんなことを言つてはいかんと思う。もつと現実に立脚して……そうでなければ認識不足だと思う。そういうことじやないのですよ。それから私の言つておるのは、やはり一方で、これだけの基準にならなければ補助しないということは、これは私立学校あたり、今度は産業人を養成してこれだけの寄附を出してくれということで、これは補助してもらう、こういうような形になつて来る。そのときに、さつき言つた五万円も出せないところの日本産業人が、果して一体五十万とか三十万とかいう厖大な、いや、もつともつと大きな金になることもありましようが、これを出すか、出すような人もありましようが、なかなかそうは行かんじやないか。そいうことによつてこれは実際に教育の自主性というものは破壊されている。私たち現実に六三制あたり非常に見ているのですが、やはり経済問題が中心になつて来る。例えば寄附の問題が起ります。六三制の校舎建築の費用が走りない、或いは学校の運営費が足りない、そこでPTAへ行つて片付けますと、PTAのやはり力のある金持がやはり多く出すことになる。学校での発言権は拡大しそ行く。これによつて貧しい家庭子供はだんだん見捨てられて行く、学校の先生を信頼されることは結構でありますけれども、何と言つても先生も生きた人間でありますから、学校のほうへ利益を與えてくれる人が来ると、どうしても玄関先へ行つて草履を揃える、お茶を汲む、誰よりも先ず女の先生がお茶をいれるというふうに追込まれて行く。日本の教職員組合がそういうことに対してそういうような一つ教育の自主権ということで鬪つている、鬪つておりますけれども、毎日々々足を引張ろうとしてそういう基盤を崩して行こうとする、こういう教育態勢でありますから、これは警戒せざるを、得ない。しつかりした考えを持つてこれは立案しなければとんでもないことになるということを私は申上げたい。この点どうなんです、御決意は。
  165. 横田重左衞門

    衆議院專門員(横田重左衞門君) 御承知の通りしつかりした考えを持つて立案しておるのでありますが、御心配の点は如何とも先のことでどうすることもできないのでございまして、運営と先生の教育の力とそれでやつて行く以外にないのじやないかと思います。
  166. 岩間正男

    岩間正男君 そんな先になると心配のある法案はやめたらいいじやないか。どうなるかわからないような、誰に要請するかわからないようなそんな法案出すことがあるか。
  167. 杉江清

    説明員(杉江清君) 大きい立場からの見解は別としまして……。
  168. 岩間正男

    岩間正男君 大きくも小さくもない。実際の立場だ。
  169. 杉江清

    説明員(杉江清君) 実際に教育を実施する具体的な方法として二、三申上げて見たいと思いますが、最近京都府でこれは商業学校一つ実習といたしまして、各商店とか銀行それから各中小企業家のいろいろな実業界の人と連絡をとりまして、京都府にある実業教育振興会というのが音頭をとりまして、実業界の人々と学校の人々と集まつて、そういつた職場においてこれは僅かな期間ですけれども、約二、三週間じやないかと思いますが、実際実習を行なつた。そのときに勿論教育的な計画に基いて一定の実習教育目的をはつきりさせまして、そうしてこの現場に行つて先生もそれを巡回して指導した、そうして非常な効果を挙げたという報告を私どもは開いております。これなどは実業界との協力ということがうまく行つた一つの例であろうと思います。それから又地元の産業界の発展に非常に盡しました地元の学校につきましては、地元の産業界の人々が特別な関心を持つておりまして、その実験実習のためには翼に教育的な見地から協力する、又現にしている。それは例えば休暇中にそういう生徒実習のために働いてもらう、而もそれも教育的な見地から、これは使つている。こういう例も相当実際にあるのでございます。それから又そういつたところでは、実験実習の機会などもやはりそういつた業者の人々からの寄附を受けている。それもそういつた打算的な考慮でなくして、真にその学校を発展させるためにこういつた寄附を多くしているというところがある、そういうような……。それからなお学習を実際行う場合においても、今現に学校の教職員の定員ではいろいろ教育に真に適切な人が得がたい場合があります。殊に技術に関するような教員では真に適切な教員が得がたい場合には、やはり地元の産業界の人々の協力を得てそういつた科目のその部分については又臨時に、又或る程度長期に亘つて事業の一部を便宜臨時的に担当して頂くというようなことも実際に行われておる例もあると思います。だから御心配の点、は、これは教育的に是非配慮して行かなければならないのですけれども、併し学校施設と人が不十分な現在におきましては、そういつた弊害に十分気を付けながらも、実際こういつた産業界との協力の下に促進して行く方法を具体的に考えて行かなければならないと私ども考えております。なお言い落しましたが、そのことはまあ……。
  170. 岩間正男

    岩間正男君 そういう美談的なこともあると思います。産業人の中には必ずしも利益だけでなしにやつておる人もいないわけではありません。又或る場合には、もつと大きなことも考えるし、大きな立場を持つている人もないとは言わない。それはいいのでありますけれども、あとのほうの御説明のほうがどうも感心しない。予算が足りないからどうしてもすべての教育ができないということで、実際どうなるかというと、だんだん主体性がなくなつて来る。そうして予算を取つて見るとわかるが、来年の十月頃は産業教育がどういうふうになつているか、私は掌を指すようにわかると思う。これによつて非常に法案がどうも最初は勢い込んでやつて見たが、それほどできない。再来年の今頃はもつとひどい、こういうことが起つて来る。そうするとますますそういうふうな産業人のほうに依存せなければならない、こういう形によつて教育の自主性というものがだんだんに侵犯される、そこに現在の何というか、基礎的な教育予算とそれから教育における組織の問題が出て来るわけなんです。それをあとのほうであなたが心配されてはしなくも附加えた、こういうところにあるわけなんです。私はこの問題を扱う上において是非関係者に警戒を持つて頂きたいということは、これはとにかくそういう日本のここ二、三十年の歴史の中にはつきり現われた事実でありますから、この青少年労働、そうして真にこれは低賃金の一番挺子になつて、これによつて進められて行つて、そうしてこれによつてどういう蔭のほうにいろいろな女工哀史的な犠牲が生れて来たか、こういうものを足場にして日本の帝国主義は海外に市場を設けて、市場獲得のために武装して侵略して行つたか。そうしてそれらのはつきりした経済的な基礎は、このようにして集められたところの、つまり青少年を主体として日本の勤労人民から搾取したところの、こういうものによつて大きな経済的根拠を作つて、みずからの軍備を拡張して行つた。こういう時代があるのでありまして、こういう事態が最近又非常に復活の傾向が出て来ている。こういう事態の中で教育問題教育問題というような純粋教育理論というようなことを観念的に何ぼやつて見ても防ぎ切れないのでありますから、この点についてこれは再びこういうことはしないというようなはつきりした覚悟をきめられなければ、この産業教育法案というものは非常に危い運用のされかたが起らないということは保証できない。皆さんの御説明の中ではとても保証できない。これは今話されたちよつとした美談的な話があつたからこれでうまく行つていると言つたつて、これは問題にならない。九牛の一毛である。そういうことで私をここでちよつとうまく丸めようとしても、とてもできない、(笑声)それは御決心を固められたほうがいい。(「異議ない」と呼ぶ者あり)私はそのことを十分に皆さんに警告します。これは日本の民族の将来の重大な—問題ですから考えて頂きたいこういうことであります。
  171. 堀越儀郎

    ○委員長(堀越儀郎君) 第一章の質疑はこのくらいにして……。
  172. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 まだまだ第一章には四條、五條、六條と大きな問題があります。
  173. 堀越儀郎

    ○委員長(堀越儀郎君) 速記を止めて。    〔速記中止〕
  174. 堀越儀郎

    ○委員長(堀越儀郎君) 速記を始めて……。  今日はこれで散会いたします。    午後四時四十五分散会  出席者は左の通り。    委員長     堀越 儀郎君    理事            加納 金助君            成瀬 幡治君            木内キヤウ君    委員            木村 守江君            平岡 市三君            荒木正三郎君            梅原 眞隆君            高橋 道男君            矢嶋 三義君            岩間 正男君   衆議院議員    文部委員長   長野 長廣君   国務大臣    文 部 大 臣 天野 貞祐君    政府委員文部省    初等中等教育局    長       辻田  力君   事務局側    常任委員会專門    員       竹内 敏夫君   衆議院事務局側    常任委員会專門    員       石井  勗君    常任委員会專門    員      横田重左衞門君   説明員    文部省初等中等    教育職業教育    課長      杉江  清君